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政府委員(
高橋元君) お示しのように、現在六十八の品目について物品税をかけて納めていただいておるわけでございます。これを拡大していって一般的な製造税のようなものにしたらどうかということであろうかと思います、御提案は。
そうなりますと、六十八品目に何を取り込んでくるかという、いまは限定列挙、物品掲名主義でございますから、
法律をもって物品を指定して、これに一五%、二〇%というような製造庫出税をお願いをするという仕掛けになっておりますから、一体何を追加していくのだというバランスの問題が大変むずかしくなってくる。これはいま野末
委員からもお話ございましたように、中小企業の問題でございますとか、生活必需品の問題でございますとかいろいろございまして、課税対象を一般的に広げていくという場合に、いまの六十八品目につきましても免税点があって比較的安いものは外れております。それとの関連で、広げていく場合にも、やはり免税点を設けて高い物品だけを課税の対象にすべしという御議論もございましょうし、中小企業製品であれば何ぼ高いものでもかけない方がいいんじゃないかという御議論もあろうと思います。
そうなってまいりますと、一般的に物品税の課税対象の品目数を広げていくといっても非常に実際的にむずかしいし、また、何を課税の対象に取り込むかという客観的な基準というものをつくることは、これは私どもは戦後物品税をずっと緩和する歴史をたどってきておりますけれども、その段階での経験で申しましても、大変それを広げていく場合の客観的な基準を求め、それを現実に移していくことはむずかしいであろうというふうに思わざるを得ないわけです。
それであれば、たとえばいま世界でたった
一つ製造者消費税というのをかけている国がカナダでございます。カナダは製造物品について製造者の段階で消費税をかけております。たしか九%だと思います。ところが、カナダでも非常に問題があるというので幾つかのことが言われておるわけでございますけれども、一等問題になりますのは製造者の段階で、蔵出しの段階でかけますから、それ以後長い
流通過程を経てみますと、
消費者が買ってくる場合の税負担というのは変わっちゃうわけですね。
流通段階が長ければ長いほど
消費者の税負担が低くなる。どうしてもそういうことになります。そうなりますと、いわゆる中立性を害すると申しますんですか、消費税でございますから、
消費者の担税力に応じて本来なら一番末端でかけるのが本来の筋道なんでございますね。小売課税が一番消費税としては理論的には正確だと思います。それに対して一番源泉でございますから
消費者から遠いところで税金をいただくということになりますと、
流通段階の短いものの税負担が重くなるという形で、消費ないし
経済に撹乱が及ぶのではないかというのがカナダで言われておる
一つの一番大きな問題でございます。
もう
一つは、何を製造されたか、製造されたものの値段は一体幾らかと、こういうことを決めるのに大変なトラブルがあるようでございます。たとえば製造者と一口に申しましても、卸屋さんに売るものは三分の一ぐらいで、製造から小売に行くものが三分の一よりもっと多いと、大口のユーザーに売るものも三分の一ぐらいございますというのが実態のようでございます。そうなりますと、製造者にどういうところで税金をかけるのかというのは大変な問題であります。
そこで、カナダでも三十年近い歴史を経ておりますけれども、最近ではどうやら小売業者の段階で一般的な消費税をかけた方がいいんじゃないだろうかという御議論になってきております。これは実は一般消費税と全く段階が一段階であるか多段階であるかという差はございますけれども、発想としては同じことなんで、消費の直前で
消費者の購入する価格に一定の税額を上乗せをさしていただくという
意味の消費税であります。それでないと、執行面からしましても
経済的な効果からしましても非常に問題が多過ぎるというのが現在カナダ、世界じゅうでたった
一つこの国がやっているわけでございますが、カナダが直面しておる問題でございまして、いま確かに野末
委員からお話のありますような製造者消費税というのは
一つの御提案であろうとは思いますけれども、歴史の実験からしますと、まあこういう方法が必ずしも適当であろうかという感じがいたしてなりません。
そしてもう
一つは、サービスとか
流通段階のマージンというのは課税の対象の外にむしろ置かれてしまいます。よく言われますのは、輸入品との
競争関係が大変むずかしくなる。輸入品は輸入された段階での課税価格しか消費税が乗らないわけでございますけれども、国内品についてはそれよりももっと課税対象が広くなるわけでございますね。ですから、その製造者消費税をかけた場合には国内品に比べて輸入品が有利になるという問題が一般的に
指摘されております。そういうこともまたカナダのように、また日本も今後そうなってまいると思いますが、国際
経済の波にさらされております際に税制上の問題として取り上げられておるようでございます。そういう
意味では、製造者消費税の問題というのは一般に考えられておるよりははるかにむずかしい問題を含んでおるというふうに私ども考えておりますし、現在の物品税を広げてそこに至ります政治的なプロセスを考えてみますと、森羅万象すべての製造品について課税するというようなことを考えるとしましても、なかなかむずかしい問題が含まれているんじゃなかろうかという感じがいたしてならないわけでございます。