○福間知之君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十四
年度の
公債の
発行の
特例に関する
法律案及び同
法律案の修正案に対し、反対の討論を行うものであります。
赤字
公債発行のための
財政特例法は、
昭和五十
年度以降すでに五回を数えるのであります。この間、わが党は、過去の高度成長型の
財政運営を軌道修正し、不公正優遇税制などの抜本的見直し並びに
所得税減税の実施などこそ福祉の充実、
景気の着実な回復という
国民の強い要請にこたえつつ、
財政再建を実現する有効適切な方策であることを強調し、
政府に
政策の転換を要求し続けてきたのであります。
しかるに、
政府、
財政当局はわれわれの主張に耳をふさぎ、依然として旧来の
財政から転換することなく、
公共投資重視の
財政運営を続けてきた結果、
景気回復は遅々として進まず、
財政収支の不均衡はますます増大し、
公債依存度は四〇%にも達しようという、まさに破局的状態をもたらしているのであります。
財政当局は、本
年度で四回目の
財政収支試算を明らかにしております。しかしながら、当初は赤字
公債からの脱却を
昭和五十五
年度としていたにもかかわらず、年を重ねるごとに後退し、今次試算では五十九
年度にまで延びているだけではなく、本
年度は赤字
公債が建設
公債を上回るなど、
政府の
財政運営に対する姿勢に疑問を抱かざるを得ません。収支試算そのものがきわめて適確性を欠き、
国民に対し
財政当局の
責任が問われるところであります。
本
年度十五兆二千七百億円という大量
国債の
発行は果たして完全に
消化できるのでしょうか。すでに
国債の
流通価格は暴落し、
年度当初の
国債発行の一時停止などの事態を生じせしめたことは、わが国
経済の
国債包容力を超えた過大な
国債発行が行われていることを示しているものであり、
政府、
財政当局の政治
責任はきわめて重大だと
指摘しなければなりません。
以下、本案に対し反対の理由を申し述べることといたします。
まず第一は、大量の
国債発行は将来の
財政運営に極度の硬直化をもたらすばかりでなく、
財政本来の
機能をすら喪失せしめるものであります。その約八割が
国債の利払い費である
国債費は、本
年度すでに四兆円を超え、
予算総額の一〇%を超えておりますが、赤字
公債の償還が始まる
昭和六十
年度には約十一兆円で
予算全体の一五%を超え、以後加速度的にその額、比率ともに増加することが明らかになっており、まさに後向きの固定経費の累増によって硬直的な
財政運営しかできないこととなり、増大する
財政への
国民の期待を大きく裏切ることになるのであります。
さらにこの巨額の金の流れについて見たとき、われわれは
財政構造が好ましからざる方向に落ち込んで行くことを無視できないのであります。すなわち、
国債費は一般
国民の納
税金から支払われるものであり、特に大半を占める
利子については、
国債を買い得るより富める階層や
資金的ゆとりのある機関へと還流されていくということであります。これは
財政が担う役割りが大きく阻害されると言わねばなりません。しかも、なお不足する財源対策として、
政府は逆進性がきわめて強く
所得再分配に逆行する一般消費税を導入しようとしているのであります。これは、
所得格差をさらに拡大させ
国民福祉に逆行するものであり、断固として反対せざるを得ません。
第二は、赤字
国債を縮減するための
不公平税制の是正及び歳出の節減がまことに不十分であるということであります。
本
年度の税制改正は、
不公平税制を抜本的に是正する正念場であったにもかかわらず、注目された医師税制について小手先の改正をしたほか、特別
措置について若干の手直しをしたにとどまり、また
利子・配当
所得に対する総合課税化を見送るなど、
政府の真剣な取り組みが
感じられないのであります。しかも、昨
年度に続いて
物価調整減税すら行うことなく、大
企業の各種引当金、準備金に対する減免
措置を温存するなど、財源確保の手段を
大衆課税の強化によってのみ得ようとすることに怒りをさえ覚えるのであります。
一方、行政改革の根本的な見直しが迫られているにもかかわらず、経常的経費の伸びを抑えたことをもってこれを糊塗し、各種補助金の洗い直しを見送ったほか、特殊法人などの制度改革には何ら手をつけようとしていないのであります。
第三は、大量の
国債発行がもたらす民間金融への影響並びにインフレとの関係であります。高度成
長期においては、現在ほど
国債の
発行量も多くなかった上、成長通貨供給の手段として、その範囲内で市中
銀行が引き受けた
国債は一年後に日銀の買いオペによって吸収されてきたため、旺盛な民間の
資金需要にもかかわらず、市中
銀行を中心として
消化されてまいりました。しかし、
昭和五十
年度以降はデフレ基調のもとで民間
資金の需要が低調を続けてきたため、辛うじて
クラウディングアウトは回避されてきたのであります。わが党はこれまで、内需の拡大が緒につけば、これまでの
状況は終わりを告げて、
クラウディングアウトが発生し、日銀の買いオペ必至となることを警告してまいりました。果たせるかな、
国債価格の暴落で二度にわたる
国債の利上げの必要性が
公定歩合の
引き上げをもたらし、
景気回復途上において貸出
金利を
引き上げ、民間
資金を締め出す方向をとらざるを得なくなったのであります。
預金増加の七割を
国債引き受けに回さなければならない
状況は、まさに異常というほかはありません。今後さらに民間
資金の需要が盛り上がった場合、
景気回復の芽を摘む愚を冒してまで貸出
金利を
引き上げようというのでしょうか。それとも、市中
銀行の引き受けを強制する一方で成長通貨の枠を超えた買いオペを行い、インフレへの道を歩もうというのでしょうか。
物価の騰貴が憂慮される昨今、さらに
財政インフレの惹起を危惧せざるを得ません。また、
国債発行とインフレとの関係を断ち切る手段である
個人消化については、いまだ積極的かつ具体的な方策、手法を講じているとは思えません。
最後に、
国民に対し
財政健全化への緊要性を訴えて
大衆負担の増大を強いる前に、
財政危機を招いた
責任を謙虚に反省し、その回復策について
国民の声を十分に徴した上で明示すべきであることを申し添え、私の反対討論を終わります。(拍手)