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参考人(
中川幸次君) 私
どもの考え方も、いま大蔵省側からの御
説明と同じでございます。
けさほど来、趣旨の
説明その他があったようでございますが、
日本銀行から改めてちょっと申し上げさせていただきたいと思いますが、私
ども今度の公定歩合の引き上げにつきましては、
景気の上昇が最近一段と明確になっている。一方におきまして卸売物価の上昇が昨年の十一月以来目立って強まっている
状況、こういう
状況にかんがみまして、インフレを未然に防止するということによって息の長い
景気上昇を図ることをねらいにした予防的な措置ということに尽きるわけであります。
それで、若干敷衍して申し上げますと、卸売物価の上昇でございますが、昨年十一月にそれまでの
円高から円安に変わりまして以降、卸売物価は五カ月連続上昇しておりまして、十一月が〇・二、十二月−一月が〇・六、二月−三月が〇・九と、四月の上旬は〇・八%と一旬だけで上がったわけであります。十一月から三月までの上昇がちょうど三・一%になります。
三・一%を国内要因あるいは海外要因というふうに分けてみますと、為替による卸売物価の押し上げ要因が一%、それから海外で物が高くなったために国内の卸売物価が上がりましたのは一・一%、国内要因によるものが一%、ほぼ三分の一ずつになっているわけであります。
この十一月から三月までの過程、特に四月上旬までの動きを見ておりますと、初めは海外要因のウエートが非常に高かったわけでありますが、ここへまいりましてだんだん国内要因のウエートが高くなってきております。国内要因の値上がりはまだ工業製品といたしましては低次の加工段階のものが中心でございまして、最終的な消費財の値上がりはまだほとんど見られません。しかし、だんだん物価は波及していく、原材料の値上がりから製品にだんだん波及していくものでございますから、やがては消費財の値上がりに波及する恐れが十分にある。その場合には、現在まではまだ大変落ちついております消費者物価の上昇に波及する可能性が非常に強い、そういう点を私
どもは心配しておるわけであります。
幸い、
景気の方でございますが、実は
日本銀行ではけさほど来支店長会議を開催いたしております。いま各地の支店長から報告をとっているところでございますが、その模様は、一言で申し上げますと、だんだん年初来の
景気上昇が一段と明るさを増してきて底がたさを加えてきているということでございます。もちろん、地域によりまして若干のニュアンスの差はございますので、各支店長の報告が全く同じではございませんが、こういった
基調はいずれも各支店長ともそういうふうに申しておるわけであります。
その
背景になっておりますのは、何と申しましても
公共投資の
効果が一層浸透しているところに加えまして、このところ個人消費も堅調でございますし、設備投資も昨年ごろまではまだ製造業はずっと減りっぱなしでございましたけれ
ども、製造業もぼつぼつふえ出しているといったことで、
かなり民間の自律
回復力はついてきているというふうに思われます。そういった
公共投資、
政策需要とそれに加えまして民間の自律
回復力、さらには昨年までの
円高の過程におきまして輸出の数量は減って、海外要因としては
景気の足を引っ張る要因でございましたが、ここへまいりまして大分円安になり、輸出採算も合うようになってまいりましたので、輸出の下げどまりという傾向も見られるというふうになったために、全体としての需要が
かなりふえ出しているということではないかと思います。
もっとも、先行きにつきましてはやや長い目で見ますと、何と申しましても
石油事情がどうなるかまだよくわからぬとか、あるいは
アメリカの
景気がどうなるだろうかといった不安要因もございますので、強気一点張りではないようでございまして、したがって金融態度は総じて慎重であるというふうにみんな思っておりますが、ただ当面は、企業の収益もたとえば上期さらに増益になるようでございますし、したがって、企業のマインドはいまのところは一層明るくなってきているようであります。
雇用状態につきましても、徐々でございますけれ
ども、少しずつよくなっているという報告でございます。
そういうふうに
景気につきましてはやや明るさを加えてきている、さらに上昇がはっきりしている、そういう情勢に照らしまして金融面はどうかということを見ますと、最近の金融は、こういう
景気と物価の上昇に照らしてみれば、やや緩和が行き過ぎではないかというふうに判断したわけであります。マネーサプライは今度の場合には私
どもかなり用心してまいりましたので、前年比一二%増といった水準でございました。昨年までの非常に
景気を促進する、あるいは金融緩和
政策の過程であればこれはまずまず適正値の高い方だけれ
ども、一応適正値の範囲内に入っておったと思いますが、最近のそういう
景気、物価情勢にかんがみますと、あるいは最近まだ銀行の貸出態度が
かなり積極的であるという状態にかんがみますと、やや緩和が行き過ぎているんではないかというふうな判断であります。したがいまして、このまま放置いたしますと、海外高から生じましたものでありましても、それを安易に国内物価に転嫁されないか、それがさらにインフレマインドを
刺激して物価上昇を加速する
原因にならないか、こういうふうな懸念もございますので、ここで金融の緩和が行き過ぎた分を是正いたしまして、輸入インフレが国内へ波及する、そういうのはもうやむを得ざる範囲内にとどめるように、そういうふうな金融環境にするということがいまの金融
政策としては非常に大事だというふうに判断したわけであります。私
どもといたしましては何よりも……