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1979-04-10 第87回国会 参議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年四月十日(火曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員異動  四月四日     辞任         補欠選任      高平 高友君     藤川 一秋君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         坂野 重信君     理 事                 梶木 又三君                 藤田 正明君                 和田 静夫君                 矢追 秀彦君                 中村 利次君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 糸山英太郎君                 嶋崎  均君                 戸塚 進也君                 藤井 裕久君                 細川 護煕君                 勝又 武一君                 竹田 四郎君                 福間 知之君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 佐藤 昭夫君                 渡辺  武君                 市川 房枝君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  金子 一平君    政府委員        大蔵政務次官   中村 太郎君        大蔵大臣官房審        議官       米里  恕君        大蔵省主計局次        長        吉野 良彦君        大蔵省主税局長  高橋  元君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省証券局長  渡辺 豊樹君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       宮崎 知雄君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    説明員        経済企画庁物価        局物価政策課長  佐藤徳太郎君        外務省経済局外        務参事官     遠藤  実君        日本電信電話公        社総務理事    長田 武彦君    参考人        日本銀行総裁  前川 春雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十四年度公債発行特例に関する法  律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る四月四日、高平公友君が委員を辞任され、その補欠として藤川一秋君が選任されました。     —————————————
  3. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案の審査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君に参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。金子大蔵大臣
  6. 金子一平

    国務大臣金子一平君) ただいま議題となりました昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案につきまして、その提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  昭和五十四年度予算編成に当たりましては、厳しい財政事情のもとで、経済情勢に適切に対応するとともに、できる限り財政健全化に努めることを基本とした次第であります。  まず、歳出面では、投資的経費について、国民生活充実の基盤となる社会資本の整備を促進するとともに、景気の着実な回復に資するよう、財源事情の許す範囲内でできる限りの規模を確保することとする一方、経常的経費については、その節減合理化に努め、緊要な施策に重点的に配意しつつも、全体として極力規模を抑制することといたしました。  歳入面では、揮発油税等の税率の引き上げを行うとともに、租税特別措置整理合理化等を一層強力に進めることといたしましたが、昭和五十三年度において五月分税収年度所属区分を変更したこととの関連もございまして、租税及び印紙収入が前年度当初予算額同額程度しか見込まれず、歳出増加額のほぼ全額を公債の増発によらざるを得ない状況にあります。  このような財政事情にかんがみ、前年度に引き続き、昭和五十四年度においても、同年度特例措置として、財政法規定により発行する公債のほかに、特例公債発行によらざるを得ないと考えます。  このため、昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案を提出する次第であります。  しかし、このような措置はあくまで特例的な措置であり、特例公債に依存する財政からできるだけ速やかに脱却することが財政運営の要諦であることは申すまでもございません。政府としましては、引き続き財政健全化を図るため全力を尽くす決意であります。  以下、この法律案内容について御説明申し上げます。  まず、昭和五十四年度一般会計歳出財源に充てるため、予算をもって国会議決を経た金額範囲内で、特例公債発行することができることといたしております。  次に、租税収入実績等に従って、特例公債発行額の調整を図るため、昭和五十五年六月三十日まで特例公債発行を行うことができることとし、あわせて、同年四月一日以後発行される特例公債に係る収入は、昭和五十四年度所属歳入とすることといたしております。  また、この法律規定に基づき、特例公債発行限度額について国会議決を経ようとするときは、その公債償還の計画を国会に提出しなければならないこととしております。  なお、この法律に基づいて発行される公債については、償還のための起債は行わないものとしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  7. 坂野重信

    委員長坂野重信君) それではこれより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 竹田四郎

    竹田四郎君 特例法案審議に入る前に、園田外務大臣アメリカへ行きまして、米国政府首脳とお会いしている報道新聞で言われているわけでありますが、この大蔵委員会でも三月初めでしたでしょうか、私は電電公社調達問題につきまして新聞報道その他のことにつきまして質問をいたしました。  その後、金子大蔵大臣から、新聞に出ておりました外務省あるいは政府電電公社調達市場開放について三項ばかりの項目がございまして、その中で、私は特にデータ通信など今後発展される部分から市場開放していくという外務省方針、これは事実かどうかということを実はお尋ねをしたわけです。で、そのことについて金子大蔵大臣から政府の見解としてそういうことはないんだと、こういうお話でございました。  しかし、ここ数日の新聞によりますと、特にバンス国務長官との電電公社資材調達の開放問題で園田外務大臣は、周辺機材というような言葉をお使いになっておりますけれども、かなりアメリカ要求をのんだような報道が出ておりますけれども、恐らく外務省にももうそうした公電は入っているだろう、こういうふうに思いますが、これについては新聞報道との関連で一体どうなのか、その辺をひとつまず外務省からお尋ねしたいと思います。
  9. 遠藤実

    説明員遠藤実君) お答えいたします。  ただいま外務大臣訪米いたしておりまして、米国要人と幅広く種々の問題について話し合っておりますけれどもお尋ね政府調達の問題、これにつきましては今回は交渉はいたさないということでございまして、三月の二十九日に行われました牛場ストラウス会談で合意が成立しなかったわけでございますが、交渉は引き続き行われると、しかし、できるだけ早期に妥結することが望ましいという観点から、園田大臣米国考え方について今回の訪米の際にただすということで参っているわけでございます。したがいまして、そのような、たとえばただいま御指摘がございましたような具体的な話について、バンス長官話し合いを行ったということはないということでございます。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、これもまた新聞報道うそだという、最近の新聞は何を報道しているか、私ども新聞に対する不信を持たざるを得ないわけでありますけれども新聞にはそういうふうに書いてあったし、恐らくこれは電電公社とも外務大臣との間で出発前にある程度の話というものが当然あってしかるべきだと思いますね。  で、五月の大平訪米の前にこういう具体的な個々の問題は解決をしておくと、こういう方針のように私ども伺っているわけでありますから、当然今度の園田外務大臣訪米というものは、そうした一連の具体的な問題の解決、こうしたものがかなり進むんであろう、こういうふうに考えるのはこれは当然であるわけでありますが、電電公社の方にお聞きしたいんですが、これについては何か話し合いがあったんですかどうですか、事前に。
  11. 長田武彦

    説明員長田武彦君) お答えをいたします。  園田外務大臣訪米されます前に、本件について特に外務省とお打ち合わせをいたしたこともございません。  それからまた、新聞報道にありましたようなことを私ども非常に心配しているわけでございますけれども外交交渉事項でもあり、私どもにはよくわかっておりませんが、園田外務大臣の御訪米に当たりましては、米側考え方をただすということにあるというふうに私どもは理解をさしていただいております。
  12. 竹田四郎

    竹田四郎君 この前大木審議官ですか、それが、これは牛場さんの前ですか、三月の末に行かれたと思いますね。あのときは電電公社の方も一緒について行っているはずですね。そのときの話というのはどういうことなんですか、向こうの話は。ついて行っているでしょう、この前。二人くらいついて行っているわけです、電電公社の人が。
  13. 長田武彦

    説明員長田武彦君) お答え申し上げます。  大木審議官に一人同行しておりますが、このときには、言ってみますれば、電気通信専門家として、専門的な立場からわからない点を審議官にいろいろ御説明ができるといいましょうか、言ってみれば、一種の生き字引みたいな形で実は同行をさしていただいたということになっております。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 金子大蔵大臣ね、国務大臣として、これは私もこの前、特にこの通信機器中心部ですね、これについて私の心配を申し上げて、大蔵大臣もその点はほぼ同意見であったように私はそのとき伺ったわけでありますけれども、今度のアメリカとのいろいろな報道によりますと、アメリカは、ただ単に周辺機材だけでは満足しない、どうも中心的な部面まで開放しろという発言政府首脳あたりから害われているわけですが、いままでの話では園田外務大臣はそういう話をしてないと言うんですが、どうも私どもこれを信じ切れないわけです、向こうからはかなり具体的な話すら出ているわけですからね。そういう点では、この園田訪米電電公社機材調達の問題というのは一体どんな関係にいまあると政府は思って園田さんを訪米させたんですか。
  15. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 園田さんは、今度具体的な交渉には当たらないということをはっきり言っておられます。しかし、いずれにしても総理訪米前には片づけなきゃいかぬ問題でございます。どういう点で妥結点が見出せるか、向こう感触をしっかり確かめてこられることはこれは当然考えられることと思います。そういう気持ちで私は訪米されたのではないかと思うんでございますが、牛場さんには先般訪米して、なかなか向こうの守りが固いというか、強硬な要求も出ておるようでありますが、竹田さんがいま御指摘のとおり、そう簡単に譲れない面が多々あるものですから、そこの接点をどこに見出すかということで苦労しておられるところかと考えております。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 子供使いじゃございませんからね、おおよそのところは——細かい数量的にどうだとか、品目はどうだとか、こういうことは、細かい品目について、金額数量等についてはこれは恐らく事務的な話でありますから、これは当然事務レベルでもう一回最終的な詰めというものがそこで行われると思いますが、しかし決定権を持っている外務大臣が、一国を代表する外務大臣が行っているわけですよね。そこでただ向こう意向子供使いみたいに聞いてきますということは、だれが考えたってこれは考えられないですよ。それは当然私は、大きな部面の概略の話というものは当然これはしているはずですよ。これは大蔵大臣が行ったって、ぼくは金融関係のこととか、そういう問題については当然ある程度のところまでは詰めてくるわけですよ。  しかし、これをいつまでも聞いていてもしょうがありませんから、これ政府としたら、園田外務大臣が帰ってきたら、その辺はアメリカ意向なり、それに対する園田外務大臣意向というのははっきり出してくれるんでしょうね。その辺はどうなんですか。  いままでの新聞記者諸君が一生懸命取材したのはうそだと言うし、それで聞けば何にも言わないし、これは日本の国の最新的な先進産業としては大変大きな問題ですし、雇用の問題もありますし、技術の問題もあるし、ノーハウの問題もあるわけでありますよ。ただ単に大根やニンジンをどれだけ買うかという問題とは基本的に違う問題だと私は思うんですよ。それを聞いても答えない。こうではないかと言って聞けば、いやそれは事実と違うと、こういうことでは困ると思うんですが、これは園田さん帰ってきたら政府国民に対してどういうふうにするようになっているんですか。大蔵大臣大蔵大臣政府……。
  17. 遠藤実

    説明員遠藤実君) 園田大臣が帰国されました後に、政府としては今後の交渉に臨む態度を決定するということになっております。したがって、基本的な姿勢としてどのように取り組むかということについては、もちろん明らかにすることになると考えております。
  18. 金子一平

    国務大臣金子一平君) これは外務省の所管でございますので、私からとやかく申しますとかえって誤解を生ずるかもしれませんけれども、大局的な判断を持って帰国をされると思います。それで詰めば恐らく牛場ストラウス会談で決まると思いますけれども、いずれにいたしましても大きな問題でございますので政治的判断を要する、そういう場合の感触を得て帰られると私は考えております。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、政府の一有力な閣僚としてそれじゃ園田外務大臣は何も決めてこないと、はっきりそういうふうに理解してよろしゅうございますか。何も決めてこないと、ただ向こうの、アメリカ政府のそうした政府調達に対する意見を聞いてくるだけだと。ですから、帰ってきてからわれわれが自由にこれについて物を言うことについてアメリカは一切文句を言わないと、何ら約束がなかったと、こういうふうにわれわれ理解してよろしゅうございますか。
  20. 金子一平

    国務大臣金子一平君) それは外務大臣のことでございますから、いろんな話し合いがされることは当然でございましょうけれども最終結論は恐らく東京へ戻っての牛場ストラウス会談ということになろうかと考えておる次第でございます。
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 次の問題に入ります。  最近日銀政府側物価動向についての考え方というものが非常に異なっているわけなんです。国民もこの物価動向についての意見というものが一致しないと、最近では珍しいことだろうと私は思いますけれども、これはますます日本国民金融動向に対する迷いというもの、あるいは先行き不安感というようなものを一層つのっていると思うんですけれども日銀の副総裁お見えになっておりますが、日銀としては森永総裁が、いまや大変な物価情勢だと、こういうふうなことをおっしゃっているし、極端な言い方では四十七、八年当時と似た様相が出ているというようなこともどこかでおっしゃっているようでございますけれども日銀としては五十四年度のCPIなりWPIなりの動向を一体どんな展望をされて森永発言になっているんですか。
  22. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 物価動向につきましては、まず現状について若干申し上げたいと思いますが、御売物価指数につきましては昨年の十月までは毎月低下傾向をたどってまいりましたが、昨年の十一月以降上昇に転じてきたわけでございます。三月の物価指数は、きょうお昼ごろ発表されるわけでございまするが、これも二月とほぼ同様の上昇になったようでございます。そういうことから申しますると、十一月から五カ月間連続して上昇しておるということが一つの事実でございます。しかもその上昇幅が毎月少しずつ大幅になりつつあるという状態が著しくございます。  この上昇原因は、御承知のように海外商品市況上昇から始まったわけでございまして、今年に入りましてからさらに円安がそれに拍車をかけるという状態になってまいりましたが、さらに国内的にも需給地合いが漸次引き締まりぎみになってきておるということも物価上昇一つ原因になっておるというふうに思います。しかも最近の状況では、海外商品市況上昇から始まりましたので、基礎資材物価が初めに上がったわけでございまするが、それが漸次二次製品価格上昇に波及しつつあるという状態がございます。そういう状態の上にいまお尋ね展望をどういうふうに見るかということでございます。  そういう状態の上に起こってまいりましたのが石油価格上昇でございます。石油価格上昇物価指数に及ぼします影響はこれから出てくるというふうに思っております。そういう状況を踏まえまして、三月の物価指数はいま申し上げたとおりでございまするが、四月には電力、ガスの円高差益還元が撤廃されるということもございますし、日本に入ってまいりまする石油価格上昇、これが漸次顕現してまいりまするということから、この物価の最近の上昇傾向というのは、その程度は判定しかねまするが、まだ続くというふうに思います。  消費者物価につきましては、季節的に暖冬であったということもございまして、卸売物価に比べますると比較的落ちついた状態が続いております。しかし、卸売物価指数が上がりますると、当然これは消費者物価にも漸次反映してくるものでございます。そういうことから、消費者物価につきましても今後卸売物価上昇を反映した動きが出てくるというふうに思っております。そういう状況から判断いたしまして、物価状況につきましては私どもは相当警戒を要する段階に入っておるというふうに考えております。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 先ほど三月の卸売物価指数がきょう発表になるというんですが、大体年率にしますと約どのぐらいになるわけですか。
  24. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 三月だけで〇・九でございまするので、年率にいたしますると一〇%ということになろうと思う次第でございます。
  25. 竹田四郎

    竹田四郎君 もう一つ、いまのお話ですと、非常に石油問題、円安問題あるいは海外の市況問題、これを中心としての海外情勢に何か非常な重点があるようにお話を承ったわけですが、たとえば国内企業手元流動性とか市中の過剰流動性とか、あるいはマネーサプライとか、あるいは公共料金あるいは企業価格転嫁志向といいますか、値上げを待っているというようなそういう関係国内要因ですね。まあ海外要因国内要因二つあると思うんですが、いまのお話ですと海外要因に何かウエートが大変あるような感じがしますけれども、確かに海外要因にいまのところウエートがかなりあるという感じはいたしますけれども、しかし、そういう海外要因が今度は国内要因に火をつけてくる可能性というのはあると思うんですね。ですから、そういう国内要因に火がつかないようにぬらしておくということになれば、少し火をかぶっても燃え上がるということはこれはないわけでありますけれども国内要因の、いま申し上げました過剰流動性とか公共料金とか企業価格修正志向とか、これはカルテルも入ると思いますけれども、こういう面の国内動向というのはどういうふうにごらんになっていますか。
  26. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 私先ほどお答え申し上げましたときに、昨年十一月から始まりました物価上昇は、最初は海外商品市況の高騰から始まり、円安がそれに拍車をかけ、さらに最近それが二次製品にも波及してきているということは、やはり国内要因がそこに相当程度影響しておるという意味で申し上げたわけでございます。  国内要因がどの程度であるかというのは、の方法がいろいろございまするが、私ども十一月から三月までの物価上昇は大体三二%、五カ月間で三・一%ぐらい上がったというふうに思います。年率にいたしまして七・五%ぐらいになりますですか。そのうち国内要因海外要因とを大ざっぱに私どもの方の計算で分けますると、約三分の一が国内要因残りの三分の二が海外要因海外要因の中で円安部分がそのうち半分を占めておる。残りの半分は海外商品価格上昇、こういうふうに大体大ざっぱに考えております。  今後、国内物価をさらに押し上げる要因として、あるいは企業流動性であるとかマネーサプライであるとか、そういうものがどういう影響を持つかというお尋ねだと思います。  マネーサプライにつきましては、私ども昭和四十七年、八年当時の経験に照らしまして、今回——今回と申しますか、今度の不況から脱出する段階におきましても、金融緩和政策をとりまする一方、マネーサプライに対する監視を怠らないできたつもりでございます。  現在のところ、マネーサプライ計数はM2で見まして前年比一二%ぐらいのところでございます。一二・二とか三とかいうところ。四十七年、八年当時には一時二八%ぐらいにもなりましたので、それに比べますると落ちついているということが言えるわけでございます。ただ、マネーサプライの水準がそのときの経済状況に応じて適正であるかどうかということは総合判断で考えないといけません。それに景気がまだ低迷しておる状態と、それからその景気回復基調がはっきりしてきている段階とでは、同じマネーサプライ数量でありましてもその影響が変わってくるものというふうに判断しております。  企業流動性が高いではないかというお尋ねがございましたが、私どもも、今度の景気刺激策財政面あるいは金融面でとりました過程におきまして、企業流動性はかなり高くなっておるというふうに判断しております。マネーサプライにもそれがあらわれるわけでございまするが、そのほかに、企業が保有しておりまする短期有価証券であるとか、あるいは金融緩和時代におきましては、企業はいつでも金融機関から借り入れをすることができるという環境にございます。借り入れ可能な状態にあるということも、ひとつ企業流動性が現実に持っておる流動性以上に高まる可能性があるということであろうというふうに思います。  そういう事態を総合的に判断いたしますると、マネーサプライ計数はいま一二%増ぐらいで推移しておりまするけれども企業借り入れ余力であるとか、あるいは短期有価証券保有状況、そういう点から考えますると、いまの流動性状態というのは決して低い状態ではないというふうに判断をいたしております。
  27. 竹田四郎

    竹田四郎君 けさの新聞見ますと、経済企画庁数値発表をしていらっしゃるわけですが、この経済企画庁数値に対しまして日銀の副総裁としてどんなふうなお考えでしょうか。
  28. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 物価上昇傾向、それが海外物価高から始まっておりまする点は四十七、八年当時と全く同じであろうというふうに思います。ただ、取り巻きます経済環境にはいろいろ違う面がございます。いま申し上げましたマネーサプライも、先ほど申し上げましたように、前回は非常に高かった、今度はまあ比較的現在までのところは、私ども水準としては決して低いと思っておりませんけれども、二十何%というような上昇にはなっておらないということがございます。また、企業の稼働率等が違う点も、あるいは雇用状況が違う点も多々ございます。ただ、四十七、八年当時の物価上昇海外商品価格上昇から始まりましたけれども物価の先高感というものが一般的にびまんしてまいりますると、どうしても物資の購入、買い占めとは申しませんけれども物価の先高を見越して物を買う、物にするという動きは出てまいると思います。そういうことが全体的なインフレ心理というものに火をつけたのが前回の例であろうというふうに思います。  私どもは、いまの物価状況が直ちにそういう状態にもうすでになっているというふうには思いませんが、こういうふうな状況から物価の先高感というものが一般経済界あるいは国民の間にびまんいたしますると、それが全体的なインフレ心理に転化するおそれがあるというふうな点を心配しておるわけでございます。
  29. 竹田四郎

    竹田四郎君 日銀では窓口規制等をすでに実施なされて、マネーサプライをふやさないようにやっておられるように聞いておりますけれども、預金準備率の引き上げですね、こういう問題はどんなふうにお考えになっておりますか。預金準備率をどうするかこうするかという議論もいろいろされているわけでありますけれども、これはどんなふうに、上げるというような考え方、当然出てくるんではなかろうか。しかも、いまのお話では企業手元流動性、そうしたこともあるし、金融もいまのところえらく逼迫しているとは考えられない。企業投資行動なんかもかなり出ておりますし、いまおっしゃられた中で買い占め等も私はもう始まっているような気がします、実際。まだ大々的な買い占めというのは行われていないようでありますが、石油製品などを中心として——この間もある畳屋から聞いたら、畳を縫う糸ですね、これなんかももうすでに割り当てが半分になっているとか、あるいは塩ビ管なんかでもかなり買っているというような話も聞いておりますし、ペンキなんかにいたしましてもそういう動きがあるようでありますけれども、そういう点では、私は、企画庁がおっしゃっているように、あの当時の狂乱物価になったらこれは大変な問題だと私は思うんですよ。あんなことを再現するなどということは夢にも考えたことはありませんけれども、まあすでにそういうような状況にあるとすれば、かなり金融の引き締めということを考えないと私はいけないと思うんですけれども、その辺はどんなふうにお考えですか。
  30. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 買い占めという言葉を私使いましたけれども、余り適当な言葉がなかったので申し上げましたが、仮需というふうに申し上げた方がいいかというふうに思います。実需以上に仮需が発生しているということは一部の商品にあるいは起きているのかもしれないというふうに思います。そういうことが激化しないように、それが全体のインフレ心理というようなものに発展しないようにしなければならないというふうに思っておるわけでございます。そのあらわれがことしの一−三月のいわゆる窓口指導からこの枠を前年の貸出増加額に比べましてかなり大幅に削減したわけでございますが、その後これまでの金融政策のスタンスを警戒中立的な姿勢に変更するとともに、さらにこの四−六の銀行の貸し出しに対しましても、貸し出しの増加額の枠を前年よりは削減していただくということで金融機関に協力をお願いしておるわけでございます。これは先ほど申し上げましたように、企業手元流動性がかなり高い。しかも金融機関からいつでも借りられるということが一つその流動性の高い要素になっておるわけでございます。そういう意味で窓口規制の枠が締まってまいりますると、企業が銀行から借り入れ得る余力と申しますか、そういうものがだんだん少なくなってくるということでございます。それが企業の全体の手元流動性を少しでも圧縮するのに効果があるであろうというふうに考えておるわけでございます。  私ども警戒中立型と申しまするのは、最小限度これ以上の金融の緩和はしない。しかも、いま、やや過度に緩和しておる状態を中立的なところまで持っていきたいということを考えておるわけでございます。数量的にはなかなかそれが申し上げられませんが、考え方としてはそういうふうに物価上昇傾向にかんがみて、これがインフレ心理へ転化するということがないように、過度に緩和した状態を少しずつ締めていくというふうに考えておるわけでございます。  預金準備率の問題について御質問ございました。まあ私ども具体的に検討をしておりませんので、ちょっと申し上げるのは誤解を招きますので差し控えさしていただきたいと思いますが、金融緩和政策をとってまいりました過程におきましては、御承知のように公定歩合を下げ、同時に預金準備率も引き下げてきたわけでございます。そういう意味でこれは金融緩和政策一つの手段であったということは申し上げられまするので、その辺で御勘弁いただきたいと思います。
  31. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは、政府側はこの預金準備率についてはどんなふうにお考えですか。
  32. 金子一平

    国務大臣金子一平君) いまお話しの物価の問題につきましては、これは日本銀行政府、全く考え方は一致いたしております。  ただ、先般のOPECの引き上げの問題は、これはそう大きな影響を及ぼしていないと思うんでございまするけれども、六月以降の問題がどうなるのか、不確定要素が非常に大きいわけでございますので、確たることは申し上げられませんが、できるだけ私どもといたしましても物価の将来については十分注意を払っていきたいと考えておる次第でございます。  それから、お尋ねの預金準備率のことは、これはもう全く日銀サイドのマターでございますので、いま日銀からの御答弁のとおりと考えております。
  33. 竹田四郎

    竹田四郎君 副総裁に重ねてお尋ねいたしますけれども、窓口規制をかなり強めていくということでありますが、先ほどのお話しのように、企業が自己金融力というものが非常についてきているわけですね。手元流動性が非常にあるということは、銀行のお世話にならなくてもいいし、金融政策の枠をはみ出ていく問題点ということになるんではないかと思いますが、預金準備率の問題の引き上げはいま検討していないということでありますが、そうすると窓口規制というような政策、そういうことで量的なコントロールによって、日銀のいまのお話でもかなり将来の心配がある。それから大蔵大臣の話でも、六月以降石油状況ということを考えてみると警戒すべき段階であると、こういうお話でありますが、量的規制だけで大体可能性があるんですか、どうですか。
  34. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金融政策につきましては、そのときどきの状況に応じまして弾力的あるいは機動的に配慮していかなければならない問題であることは御承知のとおりでございます。私ども、現在のところ具体的な検討はしておらないわけでございますが、情勢の推移を十分に見ながら対処してまいりたいというふうに考えております。  量的に……、仮に量的と金利の面というのは必ずしもそうはっきり分けられない。量が詰まってまいりますと、金利というのは需給関係でございますから若干上がってくるという傾向は当然持っわけでございます。そういう点から申しまして、量的な規制だけで金利のことは考えないのかという点につきましては、量の規制——その程度によりまするけれども、量の制限がございますれば、それがある程度金利に反映してくるということは当然考えられることであるというふうに考えます。現在のところ具体的な検討をしておりませんのでこういうお答えを申し上げるわけでございますが、御了承いただきたいと思います。
  35. 竹田四郎

    竹田四郎君 もうここ一週間以上公定歩合の引き上げ問題というのは、これもその新聞報道がまたでたらめなのかどうかわかりませんが、大蔵委員会では新聞報道は信ずると質問にならないからあれですけれども、公定歩合の引き上げという時期に私は入ってきている。これはただ単に物価問題だけでなくて、やっぱり外国為替の問題も国際間の金利差というものでやはり日本海外への資本流出といいますか、こういうものもかなり大量にいまなっていると思いますよ。  そういうようなことで、当然この国際間の金利差の修正、こういうことのためにはやはり基本になる、特に短期市場の基本になる公定歩合というものは私は考えざるを得ないと思うんです。それでなければ、また同時に日銀が大変最近ドル売り介入によって、これは乱高下なのか物価政策なのかよくわかりませんけれども、一般に言われておりますように、大変な量のドル売りをなさっているわけでありますけれども、それだけで私はいいとは思わないし、これは海外からの一つの大きな批判という材料にもなり得る可能性があると思います。乱高下ならいいわけでありますが、どうも最近おやりになっているのが乱高下だけじゃないような感じがいたします。  先ほどからおっしゃられておりますこれからの物価動向というものから見れば、ある程度ひとつ円高に持っていくということも、特に海外要因が強いということになりますと、その辺でひとつ防波堤を築くためにはやっぱりある程度の円高、こういうところへ持っていかなくちゃならぬと思うのですが、きょう日銀で政策委員会開かれるそうですね、これには公定歩合の問題というのはかかるんですかかからないんですか、おっしゃれないんですか。
  36. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 私はこちらに来ておりますのでわかりませんが、かからないと思います。
  37. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、その公定歩合の件については、自民党はこれは公定歩合上げるべきでないと言っているし、経団連の親玉も上げるべきでないと、こういうふうに言っているのですが、大蔵大臣はどっちなんですか。
  38. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 公定歩合の問題は、これまた日本銀行の所管事項でございますので、私の意見を申し述べることは差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、ただ、私どもとして感じを言わしていただければ、日本企業が果たしていま一本立ちになれるところまできているのかどうか、水をぶっかけられてしょげ返って再起不能になるんじゃ困ります。そこの判断をどう見るかということが一番大事な点だろうと考えておる次第でございます。
  39. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣日銀の所管事項——確かに日銀の所管事項だと思いますよね。しかし、大蔵省は同時に金融政策やっているわけですね。金融政策をやってないで、金融政策はすべて日銀がやっているというならそれはいいと思うんですよ、あなたのおっしゃるようで。しかも、自民党なり経団連なり通産省なりが盛んに公定歩合は引き上げるべきでないという意見がありますわね。日銀の方のわれわれの感触ではこれは上げざるを得ないだろうと、いつ上げてどのぐらいということはなかなかこれはおっしゃれないだろうと思いますけれども、上げざるを得ない。この問題が私は国債の暴落の問題なり、将来へのいろいろな不安感なり、そういうものを呼び起こしていると思うんですよ、これは現実に。これはもう一週間以上続いているわけでしょう。だから、先行きはますます不安をここは与えていると思うんですよね。  そういう意味で、私はこの問題について、やっぱり大蔵省として、これは私の所管じゃないから知りませんと、こう言っちゃおれないでしょう。四月の国債発行だって取りやめたじゃないですか。こういう優柔不断な態度というものが私は金融情勢というものをますます混乱させていく、ますます国債の価格や他の金融債、こういうものの利回り等の状況を乱高下さしていく私は原因じゃないかと思うんですよ。  ですから、この問題については早急に私は結論をやらなければ、ますます五月分だってこれじゃわからぬですよ。あなた方は、四月分発行をとめれば国債価格は強含みになってくるんじゃないだろうか、こういうふうな考え方なのかもしれませんけれども、ずっとこういう状態が続いているということは、国民にとっては非常に遺憾だと思いますしね、国債に対して協力をしようと考えたって買えないじゃないですか。私を初め、五月からは上がるんじゃないかと言ったら買えないし、また五月もどうかわからぬと言ったら、協力しようだって協力できないじゃないですか。だれだって自分のがちょっと買う日にちで違うというようなことになれば、これはやっぱり延ばすということは当然でありますよね。これは私は大蔵省の責任問題だと思いますよ。ただ、私の所管じゃないからいいかげんだというわけにはいかぬじゃないですか。このまま放置しておくつもりなんですか。私は放置できないと思うんです。どうなんですか。
  40. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 公定歩合のお話をお聞きになりましたから、いま公定歩合の問題は差し控えさしていただきますと申し上げたんですが、まあ私ども大蔵省の立場といたしましては、やはり景気物価の両にらみの方針を堅持いたしておりますから、企業全般に及ぼす影響がどうなるか。先ほども指摘のございましたような為替の問題も国債の問題もあります。  そういうことを総合的に判断して結論を出すべき問題だと思うんですが、現在の段階ではまだ金融政策を大きく転換する時期でないというふうに判断をいたしておる次第でございます。
  41. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、大きく変換すべきでないということはあれですか、今度の四月の国債のシ団引き受けですね。これをやめたのとどういう関係になるんですか、なぜやめたんですか。そういうものを大きく変えるべきでないというならなぜやめたんですか。三月に〇・四%レートを上げたわけでしょう。それでなぜ、上げたばかりでこの一番四月に発行しやすい条件が金融情勢の中にあると、こう言われているときになぜやめたんですか、やめた理由は何ですか、これは。下がるからやめたんじゃないですか。価格が下がって流通利回りがまた大きくなる、そういう心配があるからやめたんじゃないですか。これは五月になったら解消するというんですか、どうなんですか、これは。
  42. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 四月に国債の発行を取りやめましたのは、三月末から市場関係者がだれしも異常であるとか、少し行き過ぎではないかと言われるような形で公社債価格の下落が続いてまいりました。その原因と申しますのは、ただいま竹田委員の御質問にもありましたように、金利の大底感から今後先行き金利が引き上げられるんではないか、一般的な金利改定が行われるんではないかという、そういう危惧と申しますか、市場参加者が先行きの金融環境についてはっきり読み切れない。その読み切れないことが増幅されまして悪循環を招いてこれだけの下げを起こしたものだと思っております。しかしながら、昨週土曜日あたりから若干反騰と申しますか、国債価格が持ち直して微騰、反騰の局面に転じております。私どもは、いましばらくすれば市場参加者が値ごろ感というものをつかんでくれるんではないかと、いまこのように棒下げに下げている段階で何らか無理をして国債を発行するということも、今後の市場に対する悪影響残りますし、この際条件を改定いたすにしましても、値ごろ感がつかめておらない市場を対象に条件を改定しても、もたそれが安定的な条件になり得るとは思えないと、そういう意味で、市場が値ごろ感をつかんでくれるまではしばらくシ団引受国債あるいは国債の発行というものは取りやめるべきだと、このような判断で取りやめたわけでございまして、もちろん国債を引き受けますシ団におきましても、私どもが四月のシ団の引受債をどうするかという相談を率直に持ちかけましたところ、いまの情勢では引き受けがたいと、これは私どもも予想したことでございますし、私どももそういう意味では無理をして発行する意思がありませんでしたので、その点ではシ団と完全に意見が一致いたしまして、四月は一応長期債の発行は取りやめようということにいたしたわけでございます。
  43. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういう理屈は私でもわかるんですよ、あなたのおっしゃることは。しかし、それならこの五月は一体四月分を加えて均分したって恐らくかなりの量を発行せざるを得なくなるんですよね。少しは戻るでしょうね、それは。量の供給がないわけですから少しは戻るでしょうね。しかし、それがとにかく十五兆二千七百億という膨大なものをこれから出していくということになれば、まあ五月はどうなるかわかりませんが、五月も同じような状況だということになればまた後へ残っていくわけですよね。だったら後へだんだんだんだんしわ寄せされていくわけですよね。それでは、私どもはこの国債発行には反対な立場ですから、それによって国債発行ができなくなることは、むしろ国債発行をやめさせるという意味じゃ私はいいことだとは思いますけれど、それじゃおたくの方が困るだろうと、こういう状態をいつまでも続けておくというのは、私はそういう意味では非常に混乱を起こすだけだと、こう思うんですよね。だから五月になったら四月と同じぐらいな規模発行でいままでの条件でどんどん売れていくという見通しがあるんですか、どうなんですか。
  44. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 先ほどの御質問で一つお答え漏れがございますので追加いたしますが、四月に国債の発行を取りやめましたことは先ほど申し上げました理由でございまして、四月に発行をゼロにすることによっていわゆるその負担感が軽減し、それによって市況が持ち直すであろうということは全然考えておりませんでした。御質問にそういう趣旨のこともございましたので、その点はつけ加えさしていただきたいと思います。  それと、先ほどの御質問に関連いたしまして、長期債のシ団引き受け、現行条件六・五八という条件での発行は取りやめましたけれども状況いかんによりましては、二年あるいは三年、四年という中期債の公募入札というものは状況いかんによってはやってみたいというふうに考えております。  それから五月以降どうするかというお話で、現行条件で五月以降の消化可能と見ておるかというお話でございますが、これはいまから市場がどうなるかということでございますが、市場の実勢がいまのようであるとすれば、私は五月債の発行というものは現行条件では不可能であると、弾力的に対応しなくてはいけないものであるというふうに考えております。
  45. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは、いまの理財局長発言というのは私は非常に重大な発言だと思うんですよね。五月債も現行条件ではできない、こういうことになれば、やっぱり金利体系全体の問題を考えざるを得ないんじゃないですか、大蔵大臣。しかも日銀とどうも意見が違うというような形でそれをいつまでも置くということは、私は金融の秩序といいますか、そういう状態をますます混乱に陥れていくものだと、いたずらな混乱だと私は思うんですよ。国際的にも金利差の拡大という問題もあるわけでありますからね。これは何かアメリカからとめられているわけですか。金利を上げると景気の足を引っ張る、七%成長というようなことで文句言われていますわな。何回か警告を受けていますわな。モンデール副大統領からもこの間、園田さんが表敬訪問したとき大分強いことを言われたようですわな。それですから、そういう状態をいつまでも私は放置しておくというのは一体どういうことなのかわからないんですよ、これは。  確かにそれは、いまの公定歩合をどれだけいっいつから上げるということ、あるいは為替相場をどうするかということについての具体的な発言というのは、やっぱりそれはかなりそこへ投機を呼んだりなんかしますから、これは言いにくいことだろうということはわかり切っていますよ、そんなことは。しかし、何とか早く関係者との協議の中で解決していかなくちゃしようがない問題じゃないですか。だから新聞の思惑というものもいろいろ書かれていますよね。今週中には公定歩合の引き上げがあるだろうとか、先週末はそういう話でしたな。それできょうあたりの新聞見ますと来週中にはというようなことも出ておりますが、これいつまでも置けばますます売れなくなる、こういうことになるんじゃないですか。だから、そういう決断というものを金融政策の大元締めをやっている大蔵省としては、あるいは大蔵大臣としては、当然敏速に、しかも果断にやらなくちゃならないんじゃないですか、どうなんですか。
  46. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 金利政策をどうするかは、これは純粋な国内問題でございまして、アメリカ側がどう言うからこう言うからということではないと思います。ただ、やはり景気維持による内需主導型の経済を続けることが国際協調の今日は大事なことでございますから、まあそれはそれとして十分考慮すべき問題であると考えますが、一々アメリカから指図を受けてどうこうということは全然ございません。  それで、いま竹田さんからいろいろ御指摘のありましたような問題、先ほど来お答え申し上げておりますように、やっぱり全体を考えて果断にとおっしゃいましたが、同時に慎重に、これは日本経済全体に大きく影響を及ぼす問題でございますから考えてまいりたい、そういう姿勢で取り組んでおることを申し上げておきます。
  47. 竹田四郎

    竹田四郎君 その慎重もいいんですがね、私ども国民判断する点では、政府日銀の間には何か大きな差がありそうだ。まあ恐らく総裁にしても副総裁にしても、いついつからどれだけの公定歩合を上げますということをここでは言えないと思うんです。腹の中ではきょうかあすかという状態のように私どもは見受けます、一般的に。こういう状態、幾ら慎重慎重と言っても、まあ大平内閣は、待っていることが大平内閣の政治姿勢だそうでありますけれども、金融情勢は私はそうはいかぬと思うんですよ。いまだって理財局長、五月分だって危ないと、こう言うんじゃありませんか。いずれにしたって五月分が発行できるような金利体系というものをやらざるを得ないんじゃないですか。五月分が発行されなくてもいいんですか、どうなんですか。
  48. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 日銀との間に姿勢に違いがあるんじゃないかとおっしゃられる点は、先ほど来申し上げておりますように、物価に対する見通しの問題につきましても現状分析においても全然変わっておりません。その点はどうかひとつ誤解のないようにお願いをしたいと思うんであります。  ただ、国債消化の問題をどう考えるか、これはとにかく十五兆何千億という国債の発行額が、本年度予算をうまく執行できるかどうかという前提になる問題でございまするから、私ども全力を挙げていろんな点を工夫してやってまいりたい。いませっかく大蔵当局全力を挙げて構想を練っておる段階でございます。先ほど来、理財局長申しましたような点も十分考慮に入れて対策を講じておる最中でございます。
  49. 竹田四郎

    竹田四郎君 国会ですから大蔵大臣、そう何とか子供をだますような発言では、幾らわれわれでも、これだけ状態が乱れているのに、これどうにも納得できないですよ、そんなことじゃ。早急に結論出してもらわにゃ私は困ると思うんだね、これは。いつまでもこういう状態じゃ、ほかへ響く点が非常に大きいですよ、どうなんですか。何だかわけのわからぬようなことを言って、子供をごまかすようなことじゃこの委員会じゃ済まないと思いますよ。そんな、去年の秋ごろの話ならそれでもいいと思うんですよ。ここまできて、ますますこれでは金利が高くなるんだという状況というものを、やっぱり国民よけい持ちますよ。これはただそんないいかげんなので私をごまかそうたって、私はそれは承知しませんよ。いつまでに決断をしますか。
  50. 金子一平

    国務大臣金子一平君) これはもうこういう事柄の性質上、そう大蔵大臣として軽々に発言できることではございませんが、端的に申し上げましたならば、勇敢に果断にということをおっしゃいましたが、同時に私は慎重に決断を下してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  51. 竹田四郎

    竹田四郎君 大体の時期というものをやっぱり考える必要があるんじゃないですか。そういうことも言えないんですか。それは言えないのは一体どこに問題があるんですか。自民党が公定歩合の引き上げに反対しているからなんですか、経団連が反対しているからですか、通産省が反対しているからですか、どこなんですか、はっきりしてください。国民はいろんな形で、こういうことでさらにいろいろな物価上昇拍車をかけるなり何かされるのはかなわないですよ。経企庁のように、狂乱物価にはならないからいいんだって言うようないいかげんな、新聞発表するなんてのは私はこれはけしからぬと思う。いま失業者はふえているんですよ、統計にあらわれない。定年退職で追い出されている人たちっていうのはいるんですよ。こういうものに対して、狂乱物価は起きないから平気だ——ふざけてるですよ。しかも当の大蔵大臣が何が何だかわけのわからぬ、慎重、果断にやりますなんていうような、そういうことで国民が一体満足すると思いますか。はっきりしてください。このままじゃ私はここで質問中止しますよ。
  52. 金子一平

    国務大臣金子一平君) これちょっと竹田さんと認識が違いますのは、いまおっしゃっているように、すぐインフレ問題がずっと広がって、もう狂乱物価のような、この前のようなことはないにしても、大変な物価上昇が起こるということを前提にお話しいただいているようですけれども、私どもはいますぐそういう段階にはない。もちろん十分注意をしていかなきゃなりませんけれども、今日、全体として窓口規制を日銀が極力やっておられますし、いろんな動きを見ておっても、すぐこの際、大幅に金利を上げなきゃいかぬような段階では私どもはないと思うのであります。  同時にまた、国内要因よりも海外要因による卸に対する影響が出ておるわけでございますが、これは第一次的にはやはり量的規制ということよりも、むしろ個々の物資の値上げを極力抑えるような物価対策を十分やっていくということが大事なことでございまして、後から経済企画庁専門家お見えになっておりますからお話しをいただきますけども、先般、物価対策会議をやりまして、個々の物資についての行政指導も十分やっていこうということで結論が出て、また現に経企庁、通産省を中心に努力をしていただいているような段階でございます。私どもといたしましては、今後の日本の経済が、とにかく財政は限界に来ておりますから、水をぶっかけて、それがすぐはね返りができるような態勢には財政はございませんので、そこら辺の見通しだけは十分に見きわめて結論を出さなきゃいかぬと、こういうふうに考えておる次第でございまして、先ほど来、日銀総裁からもお話のございましたように、いますぐこの問題を取り上げる時期ではない、こういうふうに考えていることを申し上げておきたいと思います。
  53. 竹田四郎

    竹田四郎君 あなたの言ってることはでたらめじゃないですか、それは。個々の物価対策をいまやる時期ですか、どうですか。海外要因が非常に大きいわけですよ。それは先ほども三分の二は海外要因だ、その半分が円安問題だ、こういうふうにはっきり言われているんでしょう。それについてあなたは異論がないわけでしょう。そうしたら、個々の物価の問題よりも金利体系とかあるいは為替市場の問題だとか、こういう問題がいま一番大きいんじゃないですか。これをそのままにほっておくと、今度は個々の問題——買い占めとかそういう問題が起きてくる。それはもちろんやらなくちゃいかぬですよ。そういうように問題をごまかしちゃ私はいかぬと思うのですよ。いま一番必要なのは、大蔵省なり日銀なり、あるいは通産省の石油問題なり、こういう問題がポイントじゃないですか。あなた方がそう言ったって石油価格はもう上がっているんじゃないですか、石油製品価格は。四月から、一七%から二〇何%石油製品上がるということについて業界はもう合意を得ているんじゃないですか。それを個々の物価を個々的に監視するなどという——ぼくは大蔵大臣の経済認識を疑いますよ。そんなことで大蔵大臣勤まりますか、どうですか。
  54. 佐藤徳太郎

    説明員佐藤徳太郎君) 物価状況について御説明いたしますが、消費者物価につきましては二月の全国が二・四%、前年比二・四%でございます。三月の東京都区部速報は二・五%ということで安定しておりますが、卸売物価につきましては先ほど来お話がございますようにいろいろの問題がございまして、私どもとしては警戒すべき状態が幾らか生じているという認識ではもう先ほど来のお話のとおりでございます。  そのような状況にございますために、物価対策につきましては早目に総合的あるいは機動的に物価対策を講ずるということでございまして、二月二十六日には物価担当官会議を開きまして八項目の物価対策の総合的推進ということを申し合わせを行いましてその推進を図っておりますし、さらに四月五日にもこの物価担当官会議を開きまして二月二十六日の申し合わせのフォローアップを行って万全を期している、そういうところでございます。
  55. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまのことは答弁にならない、そんなものは。一つ一つのことを物価担当官会議がやるのはあたりまえのことです。いまそういう情勢では私はないと思う。  金融政策あるいは外国為替政策、石油政策、こういうものは一番大きく影響してこようとしているんです。卸売物価はもう二けた台になっているわけです。それはやがて三カ月から六カ月たてば必ず消費者物価影響してくるわけです。ぼくは金子さん、あなたの態度許されないですよ、それは。狂乱物価にならなけりゃいいという考え方ですよ。狂乱物価はだれも望んでいることではないです。だれもあんなものは再現されていいとは思ってない。反省してもらいたいと思うんですが、どうですか。
  56. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 考え方は先ほど来申し上げましたように、物価のこれからの動向には十分注意をしながら経済の運営をしてまいりたいと、同時に私どもの立場としてやはり景気の維持ということも考えなきゃいかぬ、そこの兼ね合いをどうするかということで総合的に判断をしておる最中でございまして、万一のことがないように、私どもも常々いろんな指標に目を光らせておりますし、必要なときは機動的な措置をとることにやぶさかでございません。ただ、この席でいますぐ金利をどうするこうするということを申し上げるのはまだ早い段階ではないかと、こういうふうに申し上げておるわけでございます。その点はどうか御了承賜りたいと思います。
  57. 竹田四郎

    竹田四郎君 大変くだらない議論で私の時間二十分ぐらい費やされてしまいまして非常に残念ですが、こういう国債の動向というものは、石油の問題、それからそういうことを考えてみますと、私はかなり警戒すべき段階で、いまのうちからそれをやっぱり封ずることを考えるべきだと思うんです。  そこで、恐らくこの国債というものも順調にインフレを起こさないで消化ができるということはかなり困難だと思うんですよ。努力はするでしょう、努力はするでしょうが、私は困難だと思うんですが、大蔵大臣どうなんですか、公共投資を前倒しにはしないで警戒中立型で進めると、こういうふうにおっしゃっているわけでありますけれども景気も経団連の判断と一般国民判断とはこれはやっぱり違うと思います。また大きな企業と小さな企業、あるいは不況産業とその他ののではこれは様相違うと思うんですけれどもね。ことしは思い切って公共事業費をもっと削減するような予算修正をして公債発行というのをもっと減らす、こういう意図はございませんか。とにかくそれは建設国債であれ特例国債であれ赤字であることは間違いないし、建設国債ならインフレを起こさない、特例国債ならインフレを起こすというものでもない、同じですよ。だから、この際思い切って公共事業を、特に政府関係の公共事業、これを大幅に削減していく必要があると思うんですよ。  これは神奈川県の調査でもあるいは大阪府の調査でも、そうした公共事業と地域型の公共事業との景気に及ぼす相違というのはもう実証的な研究で出ているわけですよ。だから後ろ倒しにする以上に、工事の執行を来年度に延期するとか、あるいは予算を削減するとか、こういう措置ができると思うんですが、その点についてどうですか。  私は、時間参りましたからきょうはこれで終わりますけれども、質問が大分残りましたから後で聞くが、この点だけ聞いておきます。
  58. 金子一平

    国務大臣金子一平君) いまの公共事業の執行の問題でございますけれども、昨年は思い切った前倒しをして景気を刺激させるようにいたしましたけれども、ことしは予算編成当時と違って大分物価その他に与える影響も考えなきゃいけませんので六五%ないし七〇%を上半期に契約するように持っていこうということで、先般関係各省庁で打ち合わせをしたばかりでございます。しかし、今後の景気の動きを十分見ながら機動的にやっていかなきゃいかぬという点につきましては、竹田さんのおっしゃるように私も考えておりますし、十分その点は考慮してまいりたいと思います。
  59. 竹田四郎

    竹田四郎君 最後の一問ですけれども、そうすると公共事業費の予算の削減とか、公団公社等の予算執行の来年度への繰り延べというものまで含めていいですね、理解して。
  60. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) ただいま大臣から御答弁がありましたとおりでございますが、先生も御案内のとおり、五十四年度予算財政健全化を片一方でにらみながら、同時にやはり景気を着実に回復をしていくという二つをかなめにして組んだわけでございます。その中で公共事業費等につきましても経済見通し等との整合性も十分にらみながら必要な規模を確保したと、こういうことでございます。  そこで私どもは……
  61. 竹田四郎

    竹田四郎君 私の質問に対してイエスかノーかはっきり言ってくれればいいんですよ。細かいことは知ってますよ。
  62. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) すでに御承認いただきました予算予算どおり適切に執行していくということがやはりいまの課題であると。したがいまして、大臣先ほど申しましたように、執行の面におきまして、いわばなだらかな執行というようなことも含めましていろいろ細心の注意を払っていきたいと思っておりますけれども、現在のところ公共事業費の予算を減額をする、あるいは来年度に繰り延べるというようなことは考えていないということでございます。
  63. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ終わります。また次の機会に。
  64. 福間知之

    ○福間知之君 いわゆる国債の発行、消化難の問題について引き続いて私からお聞きをしたいと思います。特に大蔵大臣、理財局長日銀さんちょっとおっていただきたいんです、もう一、二問ですから。  これはお聞きをしたいんですが、私は先般の予算委員会の総括でも一般でも少し触れました。  ちょうどあのときは六・一あるいは六・六国債が暴落を続けておったときで、資金運用部は三千億円をもって買い出動をしたわけですね。そのときの御答弁をいま翻ってみまして全く当たっていない。  理財局長にお聞きをしますけれども、あのときに〇・四%の利上げをやりましたね。私は大体一%前後の利上げは必要と考えられるがどうかというときに、何か日本式な利上げの計算をあのときに説明されました。そして、〇・四〇二ですか、厳密には。その後で、そういうことを考えているという前提で、そして資金運用部の三千億円の出動をやった。そして何とか持ち直しを図ったが全くそれは裏目に出た。  また、先ほどの御答弁でも、いまここまで来て四月債の発行もできない、五月債も無理であろう、こういう一つの見通しを持っておられて、果たしてこれ十五兆二千七百億円という膨大な大量国債の発行の前途というものをどう当局としては御判断をされているのか。仮に国民経済研が発表しているように、五十四年度政府の当初予想よりも税収は二兆円ほどふえるなどという甘い見方をしていられるとすればこれは別ですよ。それはいいかげんな話でございまして、われわれから言えばそれどころじゃない。  ことしは、いまは日銀判断でもあるように、あるいは四月からは公共料金軒並みに上がります。これが後半において一般消費物価へ転嫁しないとは限らない。そうしますと、むしろ五十九年度で国債を打ちどめたいといういわゆる財政収支試算も、新社会経済七カ年計画だって対米交渉などの影響を受けて大きく変更が余儀なくされるかもしれない。とすれば、それと連動して収支試算は大きく見直さなきゃならぬと私は思うんです。  そういう背景を大きくこう展望したときに、果たしていまの国債管理政策で、継ぎはぎ継ぎはぎでやっていけるのかどうか。私はまず、予算委員会のときとつなぎ合わせまして当局の心底、腹の中を聞きたい。竹田委員じゃないですけれども、われわれ何のために予算委員会大蔵委員会でこの問題を議論しているのかということをみずから疑問に感じざるを得ないんですがね。それから、日銀の方には私、もう一問お聞きして、お引き揚げいただいてきょうは結構です、竹田さん大分お聞き願いましたんで。  予算委員会のときにも日銀総裁お尋ねをして、かなり先行き物価高に対する警戒心が非常に強かった。その点は大蔵当局とやや、やっぱりニュアンスの違いを感じました。さしあたって、先ほど申したこの三月段階からの国債暴落に対する手を打っても効き目もなかったというふうな、さしあたってのそういう局面は、私はやっぱり大蔵と日銀との間に判断の違いというもの、どちらにウエートをかけるかという違いが一般投資家にも悪影響を及ぼしたんじゃないかとも思うんですけれども、これは大蔵に本当はお聞きすべきなんですが、日銀の方にむしろ私この点お聞きしておきたいんです。
  65. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 物価状況につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。これがインフレマインドを刺激するというような段階にならないようにできるだけ弾力的、機動的に処置してまいりたいというのが私どもの決心でございます。そういう状態があるいは債券市況にも影響しておるのは事実でございます。  ただ、先ほど大蔵省御当局から御説明がございましたように、いまの債券市況がやや行き過ぎておるということもやはり事実でございます。銘柄によって価格がかなりバランスが崩れております。どういう状態が値ごろ感として定着するか、その辺のところはまだそういうふうな定着する状況になってないということも事実でございます。  私ども国債の大量消化、今年度大量の消化をする必要がある。しかもそれが昨年度までと違いまして、マネーサプライにも非常に大きな影響があるということを十分承知しておりまするので、これが市中消化が円滑にいくということにつきましては、マネーサプライあるいは物価に及ぼす影響等からいってもその必要があるというふうに考えておるわけでございますが、そういうために、あるいは前から申し上げておりまするように、私どもの方でお願いしておりまする条件の多様化であるとか、あるいは市場実勢の反映であるとか、そういうあらゆる手段を講じて国債の市中消化を円滑にしていく必要があるというふうに思います。そのために、そういう条件なり何なりを判断いたしまする前提といたしまして、いまの市況がやや行き過ぎておるということは私どももそのとおりだと思っております。こういう状態が早く落ちつきまして、まずその値ごろ感というものが出るということが一番望ましいことである。そういうことが今後の国債消化の前提条件になるというふうに考えております。
  66. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 福間委員指摘いただきましたように、三月に国債の条件を引き上げました際は、当時お答え申し上げましたように〇・四%の改定というのは、複利式利回りで市場の実勢をはかれば、これで市場実勢の対応の金利引き上げとすれば十分であろうと。しかしながら、そのときも申し述べておきましたが、先行き金利が高くなるという、そういう心理的要素というものが非常に大きかったわけでございまして、その心理的要因が払拭されればこれで十分であろうというふうにお答えをいたしたと記憶いたしております。その先行き金利高になるんではないかという心理要因がそれ以降払拭されないでむしろ増幅され、それが市場に混乱を招いて今日の情勢を招いたと、そういうものであろうというふうに考えております。  で、ただいま日銀の副総裁が申されましたように、どこが値ごろ感かというところがつかみ得ますまでは軽々には市場にいろいろの手を出せない。手を出すと申しますのは、市場対策をやりますとかあるいは条件改定をやるということは軽々には行い得ないものだろうと思います。  そういう意味におきましては、私どもは値ごろ感を市場がつかんでくれた段階において、国債の発行についてどう対応するかということを弾力的に決めたいというのが現在考えておる姿勢でございます。
  67. 福間知之

    ○福間知之君 日銀の方も、まあ少しいまの暴落は行き過ぎのような御判断を述べましたがね。また理財局の方は先ほど来から値ごろ感値ごろ感とおっしゃいますけれどもね、一体じゃそれはどういう判断でその値ごろ感というものは出てくるとお考えなんですか。  いま私たちは一つの見方として、これは予算委員会でも私申し上げたんですけれども、とにかく長期の国債が発行量の八〇%水準占めて、しかも先行きまあ金利上昇が見込まれるということで買い控えると、こういうふうなことが言われているんですけれども、あのときに、まあ要するに六・一%物が一つの問題になったわけですけれども、結局、私たちもキャピタルロスというものが長期にたわって続くということでいや気が差して売れ行きがはかどらなかったんじゃないかというふうなことが考えられたわけです。  今度、仮に日銀で公定歩合の引き上げということが早晩実施されるとするならば、当然またこの間上げた〇・四%をさらに倍以上上げなければならないだろうというふうにも考えられるわけです。  だから私、値ごろ感値ごろ感とおっしゃいますけれども、これは時々刻々経済全体の動きの中で、あるいは国内における資金需要の軟調、そういう動的な推移の中で値ごろ感があるとするならば生まれてくるんであって、そういうものを、しからばいまの情勢、市況の推移の中では期待されるように生まれてくるんでしょうか。また先ほど理財局長おっしゃったように、五月ごろもこのままじゃいけないということは、裏を言えば条件改定を必要とするということではないんでしょうか。そこらあたり、もう一度両者にお聞きをしたいんですが。
  68. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 値ごろ感というのはいつできるかということでございますけれども、現実に先週の土曜日ぐらいから金利高の天井が見えたというような感じで市場での売り買いが出てまいりました。いままでは売り一方買いなしと、いわゆる棒下げ状況であったのが先週の金曜日までの状況でございます。流通利回りは、六・一%国債につきましては八%を超すというような状況に至りまして、そこでやっと需給、売りと買いが立ち会いができるというような状況になってきた、こういうことから、だんだんある落ちつきを示してくるんではなかろうかと思っております。  もっともこの値ごろ感というものが定着するということは、先ほど来竹田委員の御質問を通じまして御議論のございました、金融政策に対する統一した方針というものがはっきり市場に認識されるとき、それが明確な値ごろ感というものを出してくれるんだろうと思います。市場におきましては、金融が先行きどうなるかということが、悪い方へ悪い方へという増幅をされておるということでございますので、その点が安定的な状況になったときには私どもも市場の実勢としてつかみ得るものが出てくるであろうというふうに考えております。  五月のお話がございましたけれども、私どももいまから五月債の発行につきまして、市場の情勢を見まして、五月債の発行を月内に決めるのか、五月連休明けに決めるのか、これは今後の金融情勢、市場の情勢を見ながら弾力的に対応してまいりたいと思っておりますけれども、いま仮に公定歩合の引き上げがあった場合というお話でございますが、これにつきましては、前提を置きました議論でございますのでお答えいたしかねますけれども、五月の市場の情勢いかんによっては国債の消化につき十分弾力的な姿勢を示さざるを得ない。これは公定歩合の引き上げがあるなしにかかわらずという問題であろうと私は思っております。  ただ、どういうふうに対応するかということは、ここは国会の場でもございますし、新聞の記者諸君も多数おられますし、責任者である私が明確なことを申し上げるということはいろいろ市場に影響もございますので、その辺機微にわたるところは御勘弁いただきたいと存じます。
  69. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 先ほど私、国債の発行並びに消化を確保していくために、抽象的ではございますが、市場の実勢に応じた発行条件ということを申し上げました。問題は、いま議論が行われておりまするように、市場の実勢とは何であるかということであろうというふうに思います。  確かに、いま物価上昇関連いたしまする金融面の政策的な転換というものを見越しました市場に気迷い感があるということは事実でございます。そのために国債の価格がやや行き過ぎて変動しておるということを私どもも案じておるわけでございます。先ほど、そういうような判断というものは固定した考え方じゃなしに、動的な状況のもとにおいて判断していかなきゃならないというお話がございましたが、そのとおりであろうというふうに思います。  私ども値ごろ感と申しまするのは、いま現に相場も動いております。一時非常に下がりましたのがやや持ち直してきているということでございまして、そういう意味で行き過ぎた状態が漸次修正されつつあるのではないかというふうに私ども考えております。果たしてそういうふうになりまするかどうか、これは情勢、市場の状況というものを見ないとわかりませんのでございますが、そういうことで市場がもしもう少し落ちつきまして値ごろ感というものがそこで定着してまいりましたときに、さらに来月物以降の国債の条件、あるいは長いものあるいは短かいもの、いろいろあろうかと思います。そのときの状況に応じて考えられていくべきものであろうというふうに思っております。
  70. 福間知之

    ○福間知之君 市場市場と言われるんですけれども、理財局長、いま、日本の場合は欧米に比べてもともと個人の消化比率は低いと言いますけれども、去年と最近とを比べてみて個人の消化比率はどうなっているか。
  71. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 個人の消化は昭和五十二年ぐらいから急速に伸びてまいりまして、全体の発行量の二〇%を超すような数字になっております。いま私がこれを二〇%を超す個人の消化比率と申し上げましたけれども、これは純粋の個人ではございませんで、いま便宜個人消化と申しておりますのは、シ団が引き受けました中で証券会社が自分で販売をしたものということでございます。証券会社が自分で販売したものの行き先というものは、いわゆる純粋の個人と、事業法人でございますとか、余資機関でございますとか、あるいは外人への売りがございます。  昭和五十二年以降全般の金利低下を背景に公社債市場が非常に活況を呈しました。このときはむしろキャピタルゲインが生ずるというような状況でございました。そういう中におきまして証券会社が販売努力をいたしまして個人への販売を促進する一方、当時余資を持っておりました機関でございます法人でございますとか、いろいろな外人買いというようなものに売ったということで二〇%を超すいわゆる個人消化があったわけでございますが、金利が上昇に転ずるんではないかという心理的要因が発生しまして以降、すなわち昨年の秋以降は証券会社の販売額というのが激減をしてまいっております。昨年の夏ピーク時におきましては三千億円近い証券会社販売が一カ月あったわけでございますが、昨年の七、八月ごろをピークといたしましてこれが減少いたしてまいりまして、現在十二月、一月という実績を見ますと五百とか六百、その程度に減少いたしております。個人の消化ということは、そういう意味におきましてはいつときの大きな消化比率から現在は消化割合は下がっておるというのが現状でございます。
  72. 福間知之

    ○福間知之君 そういうことになってくると、国債投資そのものに対する不信感が芽生えているんじゃないかという危惧も一応すべきだと思いますし、さらに、いまおっしゃられたように、昨年の七、八月ごろから最近では五、六百億、月間程度だと。昨年は平均で私の調査では千八百億円ぐらいの月間平均で、ピークは三千億ぐらい。歴然たるそこに落差があるわけですね。  これを、理財局長はかつて衆議院でも大分ちょっと問題になったような発言をされていますけれども、一概に個人とは言いませんけれども、事業会社に安く売っているんじゃないのか、証券会社が。そういう面で少し御批判があったようですけれども、しかし、事業会社のウエートというのはかなり高いわけでしょう。純粋な個人よりも高いんじゃないんですか、そうでもないんですか。
  73. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 月々によって違いますが、昭和四十年に国債発行いたしまして以来、証券会社が引き受けましたものは大体九割見当は個人でございまして、残りの一〇%程度が事業法人その他でございました。それが昭和五十二年ぐらいになりまして、純粋の個人消化というものが五十二年、五十三年になりまして八〇%を切って、七〇%あるいは七十数%ということで、残余の二〇%以上というものが事業法人その他余資機関に売られたという数字でございまして、いずれにしましても、証券会社が引き受けてまいりましたものの大部分は純粋の個人に売られているということで、事業法人その他のシェアは多い場合でも二〇%程度であるということでございます。
  74. 福間知之

    ○福間知之君 副総裁、結構です。ありがとうございました。  局長、私申し上げたいのは、事業法人のウェートがふえてきているんじゃないですか。この公社債月報から見ますと、五十二年度下期大体二〇%程度。ところが五十三年五月、六月時点では三二%程度まで高まってきています。まあ金額的に見て、私純粋な個人消化に比べて少ないということは認めますけれども、かなり高まってきているということは事実だし、問題はこれからどうするかということなんですがね。私は、事業法人にどんどん拡大さしていく政策をとるべきだなどとは決して言ってはいないんでしてね。しかし、事実高まってきているということですね。これはどう見られますか。
  75. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 福間委員の御指摘の統計と私の手持ちの資料と若干相違がございますが、事業法人のシェアは確かに五十二年の後半から五十三年の夏ごろにかけてふえております。純粋の事業法人シェアというものは、従前二%、三%程度でございましたものが、五十三年度に入りまして、私の手元の統計では四月−九月が一四・四%、それから四月−十二月が一二・六%、こんなような数字になっております。そのほか事業法人以外に信用組合でございますとか農協でございますとか、そういう余資機関がございますので、これらを含めますといま申し上げました数字がおおよそ五十三年の四月以降では二〇%ぐらいになっておると。これが最近に至って事業法人への販売というものがむずかしくなってまいりまして、証券会社が引き受けたものの大部分あるいは証券会社が引き受けていくものは個人累積投資でございますとか、継続契約の個人の購入者でございますとか、そういう人に対する販売だけに限定されてきているというのが現在の状況だろうと思います。
  76. 福間知之

    ○福間知之君 その事業法人の場合の売買回転率が個人より高いと思うんですね。それが一つのまあ今回見るような事態を誘因することにもつながったのじゃないのか。局長が少ししかったような御発言をされたことは、一概にそれを私一〇〇%けしからぬとは申しませんけれども、先ほど言ったような意味で。  しかし、そこにやはり他の証券との、あるいは資産保有との利回りのロスというようなものをやっぱり事業法人は考える。それが個人よりもかなり単位でも大きく持っているわけですから、特に専門的に事業会社はいろいろ利殖を考えているわけですから、長期の国債であっても実際は短期の国債並みの売買になっている、そういうこともこれ最近の一つの特徴じゃないんですか。
  77. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 御指摘のとおりでございまして、事業法人に売られたものが売買回転率が高いと申しますか、非常に安定的な保有者でなかったということであろうと思います。私が、ただいま御指摘がございましたように、証券会社に批判めいた発言をしたということでございますけれども、私の真意は、証券会社が販売されるものは安定保有層に販売をしていただきたい。個人もそうでございますが、機関投資家でございますとか、そういう形で安定保有層に販売していただければ、後そういうもののはね返りがきたときなどの始末がしいい、市場の安定要因になる、そういうことを申し上げたわけでございます。  たまたま、証券会社の販売シェアが下がる、下げるという記事が新聞に出ておったが真意はどうかという御質問がございましたので、証券会社の販売シェアというものは政府あるいはシ団が人為的に下げるものではございませんで、月々証券会社がと申しますか、シ団が五千億の引き受けをいたしたといたしますと、証券会社がその中で千億持っていく月もあればあるいは二千億持っていく月もある、それは証券会社が自分で売れるという判断でそれだけのものを引き受けてシ団から証券会社販売分として持っていかれるわけであります。それの積み重ねが結果として年間発行額の中の証券会社のシェアになる、こういうたてまえになっておりまして、私はそういう意味では安定保有層に販売していただくということであるならば、むしろ事業法人その他いろいろ安定的でないものに販売をしていただいてシェアが上がるよりも、安定保有層に販売していただいてシェアが下がるというのはやむを得ないことである、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。  福間委員がただいま御指摘いただきましたこともそのことだろうと思いますが、今後とも私どもは証券会社の販売というものはこのような安定保有層に販売していただきたいというふうな希望を持っております。
  78. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 午前中の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時二分開会
  79. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案について質疑を行います。
  80. 福間知之

    ○福間知之君 理財局長にお聞きしますが、午前中の質疑の中でもしばしば触れましたように、最近のような公社債市場のきわめて厳しい環境という中にあっては、発行条件というものを、かねがね私たちはもっと弾力化すべきじゃないかということを言ってまいりましたが、まさに今日の市況、市場環境、さらにまたこれからの大量発行、消化ということを考えた場合に、むしろ毎月でも極端に言うならば条件変更というものはあっていいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。   〔委員長退席、理事藤田正明君着席〕
  81. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 国債管理政策の基本的なあり方の一つといたしまして、国債の発行条件というものは市場実勢に即応してあって、弾力的にこれを決定すべきであるということは御指摘のとおりと思っております。しかしながら、国債の条件を改定することの他への及ぼす影響というものもいろいろございます。金融政策、経済政策の方向といたしまして、たとえば全面的な金利改定に及ぶことが好ましくない事態というのもそのときどきにはあり得ることでございまして、そういう意味におきましては、国債の条件改定というのも他の金融政策、経済政策との整合性を全然無視して行うというわけにはいかないものと思っております。そういう意味では、非常に狭い選択の幅の中でベストを尽くすということであろうと思います。  たとえばこの四月の問題でございますけれども、私は条件改定も一つの対応措置であろうと思いますが、国債管理政策の一つのあり方として、こういう先ほど来申し上げておりましたような市場の情勢の中で、休債をするというのも、私はこれも一つのすぐれた国債管理政策の一手段であろうと思います。そういう意味で、四月におきましては条件改定の道をとらずに休債という手段を選んだわけでございますが、先ほど来お話しのありましたように、今後の問題という点につきましては、今後の市場情勢、あわせてそのときどきにおける金融情勢あるいは経済政策の方向というものを踏まえながら、条件改定についても弾力的に対処してまいりたいと思っております。
  82. 福間知之

    ○福間知之君 市場の環境だとかあるいは金融情勢、それぞれその都度見きわめながらやっていくべきだという説は一般論として私は理解できるんです。  ちなみに、西ドイツですら、日本ほど国債比率が高くない西ドイツですら、昨年の春以来十年物の国債が五回発行されているようでありますね。その応募者利回りはその都度やっぱり変更されているという事実があるんですが、これはそういうことなんですか。
  83. 田中敬

    政府委員(田中敬君) そのとおりでございます。  西ドイツのふならず、米国におきましてもボンド、ノート、いろいろ出します際に月々条件が変わっております。  わが国の国債発行というものがいまだそういうものになじまない形で今日まで経過しておりますけれども、このような大量の国債発行、あるいは一方においてCDの発行その他短期金融市場におきます金利の弾力化が進みます中におきましては、今後の国債の発行条件というものにつきましては、私は現状までよりもより一層そういうふうに、極端に言えば先生が御指摘のように、月々でも国債の発行条件は弾力的に変え得るものである。情勢によってはそうしなくてはならないというたてまえでいくべきであろうと思います。
  84. 福間知之

    ○福間知之君 それで西ドイツの場合、私は必ずしも——条件改定の都度この応募者利回りというものがどういうことになっているのか。上がったり下がったりしているというふうに承知をしているのですがね。だから一概に条件改定をして利率を上げて発行体の方が負担をその都度ふやしていくと、そういう負担感が常に増大するということでもなさそうであるというふうに承知をしています。  したがって、願わくはわが国もそういう姿が望ましい姿ではないのかと思うわけですね。  ところで、いま局長がおっしゃったように、しかし、わが国の場合にどうも金利の体系がかねがね硬直化しているということもこれあって、なかなかそれができにくいということなんですけれども、一体それは何でしょうか。なぜ踏み切れないんでしょうか。
  85. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 金利体系論上踏み切れないという問題ではないと思います。  私どもが昨年来大量発行発行条件の弾力化ということを申し初めて以降の状況を見てみますと、たとえば昨年の暮れから下降局面に、いわゆる国債価格が下降局面に入ってきて、ことしの一月に六・一国債が上場され、その実勢的なものが表示されるようになった段階で、実勢論からすればこれを改定するべきではないかと、初めてそういう局面にぶつかったわけでございますが、御承知のように、三月までこの条件の改定を行いませんでした理由は、あの際申し上げましたように、一月、二月の相場の実勢というものがつかみにくかったこと、それから、かつまた経済政策全般といたしまして内需の拡大、景気回復基調の維持というようなことで、国債の条件改定というものが他の金利の全面改定を引き起こすようなそういう改定は好ましくないと、そういう狭い選択幅の中でございましたので、改定時期が延びた、あるいは改定幅が〇・四%であったというような事情がございます。  いま、第二回目のこういう局面に逢着しているわけでございますが、けさほど来申し上げましたように、いまの相場自体が日銀総裁も雷っておりましたように、異常なほど常識でないような相場でございますので、値ごろ感をある程度どもがつかんだところでいろいろ弾力的な対応をしていくべきであろうというふうに考えております。特に金利体系云々ということで改定を渋ったわけでないことは、たとえば金国逆転というようなことを言われました前回の改定でもおわかりいただけますように、その辺は発行当局者といたしましても相当弾力的になっておるつもりでございます。
  86. 福間知之

    ○福間知之君 しかし、種類の違う国債間ではもちろん連動しなければいかぬし、あるいはプライムレートなんとの関係も長期債の場合は関係が出てくると思いますし、そうするとやっぱり金利全体のあり方が基本的には先進主要国に比べて日本の場合は騰勢ぎみであるということは否めないのじゃないかと思うのですね。私心配するのは、それは国の、発行側の負担は低い方にこしたことはないのですが、それがそもそもいまの大量発行時代においては通用しないのじゃないのか。そうすると長期物から短中期物へのシフトを考えていくということは理の当然じゃないか。ただ、その場合には償還の計画づくりとかややこしい問題が出てくるわけですけれども、そういうことを、一方において種類の多様化を図っていく、特に短期物へのシフトを強めていく、そうしながら、いま言っていたところの、市場の実勢に応じた弾力的な条件改定というものをそれこそ積極的に採用することが、これからのわが国の公社債市場というものの近代化といいますか、合理化といいますか、というものを推し進めていくことになるのじゃないのか。その金利負担に耐えられるということをやっぱり第一義的に考える。そして条件の改定、種類の多様化というようなものが手段として私は考えられる。問題はそれを大胆にやるかどうかということにかかってくる。それなくして金利の自由化などへの壁は突き崩せないのじゃないのか。ある意味では、私は、いまの大量国債発行時代というものを一面においては大変財政上の危機という意識で受けとめる必要があると同時に、これほど大きな経済規模になった国で、財政一つ見ても、もっと円滑に国債などの消化は行われてよい姿を私はつくるべきだと思うのです。国債の発行は一概にいけないとは言えないのですから。その手段が閉ざされてくれば、これは税金をふやしていくという以外になくなってきまっすから、それは私はそういう考え方じゃなくて、災いを転じて福とするということわざがあるとするならば、この場合それは何かと言うと公社債市場の近代化である、合理化である、そういうふうに考えるのです。だから、どれだけの勇気を持っていままでの壁をぶち破っていくかということですね。これは私は官民を挙げて新しい時代への挑戦だと思っているのですがね、私はそういう受けとめ方で見ています。大量の国債発行、ひとつも好ましいと言ってはおりませんけれども、その点はいかがですか。
  87. 田中敬

    政府委員(田中敬君) ただいまの御質問にも関連いたしますし、先ほどの御質問にも関連するわけでございますけれども、弾力的に条件を改定するということを阻んでおります要因というものが、もう一つ大きな要因がございます。  それは、わが国の公社債市場が未成熟であり市場の底が浅いということでございます。長年の歴史を持ち、多くの債券が発行、流通いたしております他の先進国の、特にアメリカ、ドイツ等の市場と比べまして、日本の市場というものは、市場関係者自身がまだ経験も浅い、それからまた市場における市場への参入者が少ない、あるいはディーラーファイナンスが乏しいというような状況でございますので、市場実勢がどうであるかというものが非常につかみにくい状況が一方でございます。そういうものが一つの、条件改定について私どもの決断をおくらせたと申しますか、改定を阻んでいる要因でもあったろうと思います。  ただいまの御質問に関連することでございますけれども、長いものから短いものへということは、確かに、財政資金の調達手段といたしましてやはり財政負担をなるべく小さく抑えるという観点からいたしますれば、同じ金利水準であるときにおいてはむしろ短いもので発行する方が長いものよりも金利負担が少なくなる、いわゆる財政負担の軽減の役にも立ちます。それとまた、長いものから短いものにするということは、ただいま触れました公社債市場の問題としまして短期金融市場というものを育成する効果があって、これが金融調節手段に大きな影響を与える。それから、短期金利というものが長期金利に非常にストレートな形で結びついておる現在の日本の金融マーケットというものが、ある意味で長短分離という形で時折の資金需給の調節というものを短期市場で行えば長期債の金利に大きな影響を及ぼさない、いわゆる長期債市場の安定の役に立つというようなことから、お説のように、長いものから短いものへシフトするというのは一つの有効な大きな政策手段であろうと思います。  それに加えまして、現在のような先高と申しますか、先行き金利が高まるであろうという情勢におきましては、投資家のニーズというものはおのずから長いものを敬遠し短いものへ移るということでもございますので、短いものをふやすということはその点からもすぐれた政策手段であろうと思います。そういう意味におきまして、本五十四年度におきましては、昨年初めて創設いたしました中期債の公募発行方法によりました額を一兆円から二兆七千億円にふやしたわけでございます。  いま、長いものから短いものへ移す手段といたしまして、世上主張が二つございます。一つは中期債、いわゆる公募額を多くすべきだという御議論、それも長いものから短いものへ移る一つの手段でございますし、あるいはまた、シ団引き受けのものを十年に固定せずもう少し短いものにしてはどうかというお説と、二つございます。  前者の、公募額を広げてはどうかということでございますけれども、これにつきましては、本年度初めて二兆七千という大量の公募を実際行うわけでございまして、まずこの公募を行ってみまして、市場がその公募になじんで、今後公募債というものがどういう成り行きをたどっていくかという実勢を見きわめながら、私どももそこは弾力的に対処してまいりたいと思っております。また一方の、長いものを短く、しかもそれはシ団引受方式の債券でもそうしたらどうかという御説もございますが、これも私どもは十分検討に値する問題だと思っておりますので、今後の国債の発行状況、市場状況を見ながらそのような対応も検討してまいりたいと思っております。
  88. 福間知之

    ○福間知之君 いま、シ団の引受債券の長いものを短くしていくとか公募の枠を広げると。これは要するに制度的な改革といいますか、それはやろうと思ったらできますね。それから、私が先ほど言ったその場合の償還計画、これは非常に厄介じゃないのかと、こう思うのですね。だからそこらを考えた場合に、長いものから短いものにシフトしていくことが金利負担に耐える上でも非常に必要であるとするならば、果たしてそこをどう考えるかですね。  まあ、かねがねこの長いものと短いものの話は当委員会でもやってきましたし、もっと多様な種類があって日本の場合はいいんじゃないかと、こういう観点で私申し上げているんですが、アメリカに比べても非常にそういう点では日本の場合は幅が狭いですから、そういう意味で申し上げているんですが、そうするために何がネックになるかということです。いま石橋たたきながら渡っていこうとしているわけでしょう。でしょうけれども、仮に長いものの金利を上げざるを得ないという見通しがあれば、その負担をできるだけ軽減するという意味で、いま局長おっしゃったとおり、やっぱり短いものへの切りかえを余儀なくされるんじゃないかと思うんですがね。それは当局としては長いものが一番売れれば安直で手間もかからないし、それはいいに決まっているんですが、私はいま安易につくことはむしろ避ける方がよろしいと、苦しむ方がいいと、こういうふうな気がしているんですがね。何がネックですか。
  89. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 長いものを短いものにしますネックと申しますのは、原則的に申しますれば、ただいま福間委員が仰せのとおりに、やはり財政資金とすれば安定的に長く安い金利でというのが財政資金調達の基本であろうと思います。その基本が貫き得ないがゆえに金融情勢に応じてこうして短いものを考えるわけでございますが、短いものを考えます際の最大の問題点は借りかえ負担の問題でございます。  二年債、三年債というものを公募入札で発行いたしましてそれが満期が来る、そのときにまた借りかえ債を発行する。それで当年度の新しい債券の公募入札も借りかえ時期が起こるであろうと、その公募負担、そのときにまいります公募の負担というようなものをどう時期的にも量的にも調節していくかという借りかえの問題というのが一つの大きな検討点であろうと思います。  米国におきましても、かつて長いものから短いものへ移り、短いものが余りにも大きくなり過ぎてこの借りかえという負担が大変大きくなりまして、こんなに短くしていいんだろうかと、だんだんまた長いものに戻そうではないかという動きがあったことも事実でございます。そういう意味で借りかえの問題が一つございます。  それと、借りかえの問題を考えない場合におきまして、しからば今度は償還費がどうなるかという問題でございますが、御承知のように、四条債については国債整理基金における借りかえ債の発行というものが認められておりますが、本日御審議をいただいておりますこの法律には国債整理基金による借りかえ発行というものは行わないということが本法律の条文に入っております。特例債を発行いたしましたら、償還期間が来ればこれは全額現金償還のたてまえで借りかえ債の発行は認められないということでございますので、たとえば特例債を短くした場合ということを考えてみますと、特例債を三年、四年、五年というような短いもので発行いたしますと、財政収支試算でお出しをいたしておりますけれども昭和五十九年度特例債はなくなるということになっておりますし、それの裏といたしまして衆参両院に償還計画、いわゆる国債整理基金の資金繰り的な償還計画の見通し表が提出されておりますけれども、これにそごを来してまいります。借りかえができないということであれば、いまの見通しでは昭和六十二年に初めて一般会計から予算繰り入れを行うことによって国債の償還をするということになっておりますが、四条債でこれを行いました場合はそれが繰り上がってくる。そうすると、財政の再建計画中に特例債の償還のために何か国債を出さなくてはならないというような事態も予想されますので、この期間を短くする問題というのは特例債については行い得ない、行うべきでない、こういう問題点もございます。
  90. 福間知之

    ○福間知之君 局長ね、そこでいま御指摘された整理基金からの買い入れ、資金運用部からの買い入れあるいは売却、そういうふうなルールというものは必要なのか必要でないのか、特例債を短くした場合に。いまの法律ではできないことになっていますわね。それをもう既定のものとしていま御発言になっているんですけれども、それを少したなへ置いて考えた場合にどうなんですか。いわゆる流通している債券残高の期間の変更を含めて、いまのルールがどうも硬直的だなというふうにはお考えになりませんか。
  91. 田中敬

    政府委員(田中敬君) ちょっと先生の御議論と私の議論とかみ合っておらないような感じがいたしますが、私が申し上げましたのは、特例債につきましては、この特例債に関する法律によりまして国債整理基金による借りかえ債の発行ができないことになっているわけでございます。いわゆる一般の四条債、建設公債につきましては、国債整理基金が借りかえ債を発行することができることになっております。この借りかえ債の発行と申しますのはそういう法律で授権されておる発行でございますので、年々国会の御審議を得ずに発行できるようになっております。国会議決をいただいておりますのは、当年度新たに発行する国債の発行額の限度について予算で御承認をいただいているわけでございます。  そういうことでございますので、四条債につきましては、たとえば六十年償還を原則といたしまして、年々前年度期首残高の百分の一・六を繰り入れてこれを償還財源とするということでございますので、原則的には十年債でございますと十年たったときに六分の一は現金償還、六分の五は借りかえ債を発行するということによって今日まで来ているわけでございます。ですから、そこにおきましては借りかえ債の発行は行われておるけれども、この特例債についてはその借りかえ債の発行は行われておらないので、特例債の償還期限が来ればこれは全額現金償還をすると、こういうたてまえになっております。  これは初めて特例債を発行いたします際にいろいろ御議論いただきまして、衆参両院におきまして、こういう異例の特例債、赤字債であるので、これは借りかえを行わないで償還期には必ずお返しする、そういう厳しい態度でこれを発行するんだということを政府としては申し上げたわけでございまして、私は単に国債の借りかえとか期間の短縮のいろいろ障害点になるからという理由だけでこの政府の厳しい姿勢を特例債についても借りかえを認めていただきたいというようなことは申すべきでないという感じがいたしております。
  92. 福間知之

    ○福間知之君 それは私も承知しています。私先ほど申し上げたのは、そういう短期債をふやした場合の一つの手だてなり何なりというようなものを考える上で、いままでのそういう既定の方針、基本というものはネックにならないのかということをお聞きしたわけです。  ちょっとつけ加えます。あれですよ、四条国債ですよ。それはむずかしいという前提はあるんですけれどもね。しかし、私はとにかくそういう四条国債でもやっぱり労をいとわないでそういう方向にいく必要があるのではないかと、さしあたっては、というふうな感じ。  それで、将来的には市場が整備され、一般の国債に対する一つの認識度合いも改善されていって、先で長期債という安定した長いものが拡大していくというのが本当は筋じゃなかったのかなと。もうこの数年前から長いものがまず中心でぼおんと来ていますからですね。まあわりあいに資金需要が緩和されていたときはそれで余り矛盾も露呈しなかったのかもしらぬけれども、どうなのかということですな。
  93. 田中敬

    政府委員(田中敬君) やはりいろいろ金融政策が方向を変えるときとか、いまの市場がそれを示しておりますように、先行きについての不安があるときというものは、そういうときにはやはり非常に短いものが受け入れられやすいと思います。そういう意味におきましては、やはり福間委員が御指摘のように、この中期債というものの活用を十分考えていくべきであろうと思っております。まあその一つの方向として、先ほど申し上げましたように、一兆を二兆七千億にふやしたわけでございますが、私どもといたしましても、やはり何せこれだけの大量公募を行うということは初めての経験でございます。市場も初めての経験をするわけでございますので、観念的にそうであるからといって一気にこの公募をふやすということはどういう結果をもたらすとかという、やはり一抹の危惧も持っております。少し慎重に、この四月、五月公募債を発行してその地ならしをして、市場がそれをどう受けるかを見きわめた上でお説のような方向で対応したいと思っております。
  94. 福間知之

    ○福間知之君 次に、その国債の流通市場というものの改善ということと関連して、まあ現在の税制とか会計制度について見直しが必要じゃないかなという意見もあるようですがね、この点はいかがお考えですか。
  95. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 国債の流通に関する税制につきましては、本年の、過般成立いたしました租税特別措置法の中で、金融機関の持っております登録公社債の利子の源泉不徴収という制度がございますが、それを証券会社の持っておるものにも拡張いたすというようなことで必要な整備を図ったということであると私どもは考えております。
  96. 福間知之

    ○福間知之君 ちょっといま聞き取りにくかったんですが、たとえば法人税法施行令百四十条の二、経過利子の源泉徴収方法について投資家によって違いがあるようですけれども、これが五十四年度の改正が考慮をされておったのかおらないのか知りませんが、結果においては見送られているようでありまして、国債の振替決済制度の実現が難航しているという見方があるんですが、この点はどうですか。
  97. 高橋元

    政府委員(高橋元君) いわゆるブックエントリーというような形で公社債の流通の促進を図っていくということの必要性は確かにあると思うんでございます。その点につきまして、制度を現在理財局が中心になっていろいろ検討をしておられるわけでございます。私どももそれに合わせて、ただいま委員からお示しのあったような制度につきまして、五十五年度以降どういうふうに組み立てていくかということを目下検討いたしております。五十四年度で見送られたと申しますよりも、実態の固まりますのをもう少し見定めて、それに対して必要な税制上の措置があればそれを考えてまいりたいと、こういう態度でおるわけであります。
  98. 福間知之

    ○福間知之君 理財局長、いま申し上げた点は最近問題になったんですか、かねがね問題点でということで受けとめ、何とかしなきゃならぬという意識はおありだったんですか。
  99. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 国債の商品性を高める、流通性を高めるということは今後の国債の消化、流通にとって非常に大事なことである、そういう観点から、私どもは、現在国債の売買が行われました際に、現物の引き渡しというものに国債の売買が成約いたしましても相当期間がかかっております、これは株式その他の債券でも同じであろうと思いますが。国債につきましては、私どもは昨年初め以来、この流通性を高めるためにひとつ振替決済制度というものを考えてはどうかということで、私どものところで内々に勉強会をつくって今日まで検討を続けております。  その段階におきまして、ただいま福間委員が御指摘になりまして、主税局長も申しましたような税法上の問題にぶつかったわけでございまして、いま主税局とその仕組みについて双方で検討いたしておりまして、なるべく早い時期に解決していきたいというふうに思っております。
  100. 福間知之

    ○福間知之君 また、金融機関が保有しているものについてのいわゆる低価法評価義務づけ、あるいはまた国債価格変動引当金制度、これが国債の価格変動を激しくしているんじゃないか、こういう見方もあるわけですね。価格裁定のメカニズムを円滑にやはり作動させるためにそれらの点が障害になっているというふうな認識でいいんですか。
  101. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 細部につきましては銀行局長からお答えいただきますが、私どもはやはり国債というものは、たとえば十年国債を例にとりますと、やはり十年の間には金利情勢というものはずいぶん変わるものでございまして、金利が上がるときもあれば下がるときもある、いわゆる評価益が出たり評価損が出たりするということがございます。これが金融機関の経理に非常に大きな圧迫要因になるということでございますと、国債の発行者といたしましては非常に国債を受けてもらいにくくなる、これは心情的なものでございますが。そういう意味におきましては、金融機関の経理基準でございますそういう評価方法あるいは価格引当金、いろいろの手段があろうと思いますが、なるべく金融機関の通常の経理に圧迫感を与えないような方向で処理をしていただければという希望を発行者としては持っております。金融機関の方でここをどのように対応していただくかは銀行局長からお答えさせていただきます。
  102. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 現在、先生御指摘のとおり、金融機関が大量の国債を保有しているわけでございますが、これの金融機関の経理に与える影響ということがここで問題になるわけでございます。  やはり金融機関としてはその本質から申しまして、金融機関経理の健全性という点、あるいは安定性という点が非常に問題になるわけでございますので、この点から現在国債の評価方法につきましては上場有価証券として低価法を採用しているわけでございまして、これは金融機関の経理の健全性の確保の点から一応このような方法をとっているわけでございます。  ただ、このような方法をとりますと、当然上場価格の変動によりまして評価損というような問題も出てくるわけでございますので、他面において経理の安定性を確保するという点から国債価格変動引当金制度を設けたわけでございまして、これによって当面対処してまいりたい、このように考えておるわけであります。
  103. 福間知之

    ○福間知之君 銀行局長、それはかねがねやっぱりその点が問題として把握されておったわけですか。これ、最近のように大量の国債が発行される時代になり、あるいはまたそれの消化難がクローズアップしてきている過程でその点が理解され出したのかどうなのか。海外の諸国なんかはどうなっているんですか。
  104. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 国債の評価方法は国によって異なりまして必ずしも統一されてないわけでございますけれども日本の場合には国債の大量発行というような趨勢がございまして、これが昨年はまだ評価損というような問題は余り大きく出てなかったわけでございますけれども、将来金融機関経理の安定性というところで問題が出るのではないかということを考えまして、昨年の七月に国債価格変動引当金制度を創設して五十三年上期決算から適用したわけでございまして、低価法を採用している現在の金融機関経理のもとにおきましては、この国債価格変動引当金制度を併設することによってそのデメリットをいろいろカバーできるんじゃないか、このように考えております。
  105. 福間知之

    ○福間知之君 私は逆にお聞きしたいんですけれども、銀行経営という立場からは銀行局長おっしゃるようなことは理解できるんですが、国債発行、円滑な消化という面からいけばそれらは壁にはならないですか、理財局長
  106. 田中敬

    政府委員(田中敬君) これはやはりお受けいただく金融機関判断によるところが非常に大きいんだろうと思います。いわゆるサウンドバンキングに徹して、評価損を出してもそれだけの健全経営性を維持する方が望ましいんだという御判断であればやむを得ないことでございます。  ただ、私ども発行者として希望いたしますのは、そういう評価損が多く出るからなかなか長いものは受けがたいんだと言われると、これ大変困る問題でございます。ただ私、基本的に考えますのは、評価損というものが出てそこで経理の健全性が確保されるわけでございますけれども、やはりこの十年の債券というものは十年持っていただくという前提で出しているものでございます。そういう意味におきましては、その間に金利の変動があっても十年たてば元本は戻り、約定の利息は入ってくる、そういう性格、それを承知で引き受けていただくものでございますので、余りにも——この間からいろいろ新聞に出ておりますけれども、評価損が莫大になったということはある時期においてはやむを得ない。かわりに、考えてみますれば、いま金融機関が保有している国債というのは八%国債が半分以上でございます。これは含み益を持っておる。金融機関が保有している国債の金利、現段階での平均利回りというものは恐らく七分二、三厘になっていると思います。金融機関の資金コストから比べてもそう遜色のないものだろうと思いますし、こういう高い金利のもの低い金利のもの、片方八%国債というのは宝物になり、六・一国債というものはもう捨ててもいいようなという感じを持たれておるけれども、これはならして考えていただくというのがやはり長期債の基本ではなかろうかというふうに考えております。
  107. 福間知之

    ○福間知之君 また議論は、質疑はまあ引き続いて今後もあることですから、きょう時間が参りましたので、最後に、まあ六十年度発行額十三兆円含めまして、残高は恐らく百四十兆円ぐらいの国債を発行するということになると思います。まあ大変なこれは見通しですね。したがって、先ほど来申し上げてきましたように、大蔵当局としてこれからの公社債市場の育成、あるいはまた条件改定などを含めた金利自由化への御決意はいかがなもんでしょう。さらにそれに伴って、やはりいろいろお話がはずんできましたように、国債をめぐる諸問題というようなものを、いままでのような一種の御用金調達的な発想ではだめであって、まさに名実ともにその市場の実勢に適合さしていくというような、そういう新しいシステムに転換をしていく必要がある。まあアメリカからいろいろ日本の金融財政制度の硬直化を指摘されてはおりますが、それとは別にしましても、日本のこれからの金融財政制度として御決意をひとつこれは大蔵大臣に伺いたい。
  108. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 十五兆というような大量の国債を今年度発行しなけりゃいかぬような情勢になりましたが、いま福間さんからお話しのございましたように、従来どおりの固定化したと申しますか、硬直化した体系でこれが簡単に片づくものとは私ども考えておりません。そういう意味で、先ほど来るる理財局長が申しておりますように、やはり市場の実勢というものを十分に反映した条件改定をやり、また種類の多様化も図っていかなきゃいかぬ。そこら辺は十分ひとつ実際の動きを、経済の動き、金融の動きを見ながら判断をさしていただきたいと。どうも従来の惰性でやっているぞという御指摘、私どもも十分そういう点につきましては注意いたしまして、完全な消化に努力をしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  109. 福間知之

    ○福間知之君 まあ国債はそれでとめて、最後に別の問題ですが、最近新聞で知ったんですけども、いわゆるサラ金規制の問題について、当局として法律を提出する準備が進んでるのかどうか、あるいはその中身が大体わかりましたら御説明を願いたいと思います。
  110. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) いわゆるサラ金問題につきましては、これは社会的に大きな問題になっておりますので、大蔵省としてはこれは厳しい規制を行いたいと、このように考えているわけでございます。  規制のポイントとしては三つあるわけでございまして、一つは、現在非常に高い金利で貸し出しが行われているわけでございます。これは御承知のとおり、出資等の取締法によりまして、最高日歩、最高パーセントにしまして一〇九%というような金利になっておるわけでございますが、これをもっと大幅に引き下げるべきではないかという問題が一つあるわけでございます。  それから二番目は、現在届け出制ということで事実上野放しに近い姿になっているわけでございます。これに対して、登録制というような形でもう少し規制を強めていくという問題がございます。  それから三番目は行為規制でございまして、暴力による取り立てであるとか、あるいは早朝、夜間における自宅への訪問というようなことを規制するというような問題があるわけでございまして、この三つの点を中心に、現在も鋭意検討は進めているところでございまして、関係各省庁の連絡会議におきまして逐次その合意を見つつあるところでございます。その法案はいま鋭意検討を進めているところでございまして、何らかの形におきまして今国会において御審議を願いたいと、このように考えておるわけでございます。
  111. 福間知之

    ○福間知之君 金利を一〇九・五からどの程度下げる……まあ伝えられるところによると、第一段階七三%、最終段階五年先に五四・七五%ぐらいだと報じられているんですが、それじゃちょっと高いんじゃないかという見方もあるんですがね。
  112. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 金利の点につきましては検討中でございまして、まだ確定していないわけでございますけれども、大体現在の水準の将来半分程度のところに抑えていきたいと、このように考えておるわけでございます。
  113. 福間知之

    ○福間知之君 終わります。
  114. 多田省吾

    ○多田省吾君 初めに、現在景気が若干回復基調にあるようでございますけれども景気が上向けば当然法人税を中心とした税の自然増収が期待できますが、その場合、当然増収分は全額国債の減額に充てるべきだと思いますけれども、大蔵省はどのように考えているか、御所見を伺いたいと思います。  次に、この前三月一日に私は理財局長お尋ねしましたときに、まあ五十三年度分は四月分も入るわけですが、日にちがたてばわかるだろうということでございましたが、大体五十三年度分はどの程度自然増収が期待できるか、それから五十四年度分の見通しはどうなのか、この二点をお尋ねしたいと思います。
  115. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 五十三年の税収は二月末まで判明いたしておりまして、先般発表いたしました。それによりますと、二月末までに十六兆六千百八十二億円、五十三年度の税収予算は十三カ月分でございますから、これを十二カ月分に修正いたしました予算額に対して八六・八%収納済みであります。前年の五十二年度の税収の進捗がちょうど同じ時期に八五・五%でございましたから、前年に比べて一・三%改善をされておるわけであります。したがって、予算全体として前年度の決算額を一〇・四%上回ると補正後の十二カ月の予算に達するわけでございますが、それに対しまして一二・二というふうに、前年に比べての伸び率が予算を達成するのにぎりぎり必要な率を上回っております。  そこで、五十三年にどのくらいの自然増収が生ずるかというお尋ねでございますが、この点につきましては三月、四月、それから本年度制度改正で取り込みました五月分の増収が今後どうなるかということにもっぱら依存するわけであります。三月、四月分の税収は、昨年の収納額で言いますと二兆五千億であります。それから五月分に予定いたしております予算上の税収は二兆円であります。合計して四兆五千億がどのようになってくるかということでありますが、三月の税収、それから四月の税収と申しますと、これは申告所得税に大きく依存しておるわけであります。  日本銀行の窓口の動きなどを見ておりますと、申告所得税の申告成績はよろしいのかというふうにも思われますけれども、私ども今月の末になりませんと申告所得税の実績というものを把握することはできません。それから、五月分の税収はもっぱら法人税でありますが、この三月決算の法人税がどうなるかということは、民間のいろいろな予測を見ましてもまちまちであります。したがって、自然増収はかなり出るであろうというふうに思いますが、それが幾らになるかということについては、私どもまだ確信を持って見込みできる段階ではないということで御理解いただきたいと思います。  五十四年度どうなるかということでございますが、これは六月になりませんと五十四年の税収の収納がございませんし、今後の経済情勢政府の当初の経済見通しとどのように変わってまいるかということとも関連いたすわけでございますから、私どもとしては、五十四年についていかほどの増収または減収があるのかということについての見込みをいま全く持ち合わせておらない次第でございます。
  116. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 税の自然増収がありました場合の国債の発行額の問題でございますが、ただいま主税局長から御答弁がございましたように、五十三年度につきまして申し上げますれば、税収は予算額に比べかなり上回るかということでございます。  そこで、実は五十三年度の国債の発行額でございますが、先般の補正後の五十三年度予算で御承認をいただいております特例公債発行額は、これは収入金のベースで約五兆円弱でございますが、そのうち約六千億が現時点におきましてまだ未発行になってございます。特例公債法に基づきまして、俗に出納整理期間発行ということでお許しをいただいております調整のために六千億が未発行のまま残っております。  そこで仮に、これは税収のみではございませんが、税収以外の歳入あるいは歳出両方今後にらんでまいりまして、残っております六千億を調整していきたいと、かように存じております。もしも自然増収が出ますれば、その分は国債の減額に充てる方向で考えていきたいと、かように存じております。
  117. 多田省吾

    ○多田省吾君 五十三年度分の自然増収はかなり上回るだろうと、こういうことでございまして、特例公債六千億円分はまだ未発行である。こういうことから考えますと、私はいろいろ言われているように、八千億ぐらいは期待できるのかと、このように考えますが、主税局長はどのように考えておるんですか。
  118. 高橋元

    政府委員(高橋元君) 繰り返すようで恐縮でございますが、自然増収が何千億になるかということにつきまして、この時点であいまいな推定を申し上げることは差し控えさしていただきたいと思いますが、重ねて申し上げますけれども、その金額はかなりの程度であろうかというふうに考えております。
  119. 多田省吾

    ○多田省吾君 午前中も質疑がありましたけれども経済企画庁の分析によりますと、物価を心配しながらも景気動向も勘案いたしまして、公定歩合の引き上げには反対のようなお考えをお持ちのようでございます。しかしながら日銀におきましては、予算審議の最中から、われわれの受けとめでは、大変物価を心配いたしまして、昭和四十七、八年当時の狂乱物価に匹敵するような心配があるんじゃないかということで公定歩合の引き上げを示唆しているようでございましたが、もちろん景気動向景気対策ということもなおざりにできないでしょうけれども、四十七年度後半に起きた過剰流動性のインフレということは、やはり政府日銀の対応策の誤りであったとわれわれは思いますが、本日の発表によりましても、卸売物価の三月における前月比は〇・九%増、年率にして一一・四%というお話でございまして、これは卸売物価の大変な上昇でございまして、クラウディングアウトの発生の危機感もあります。  こういつたこと等あわせて、四十七年当時とさらに基本的に違うことは国債の大量発行が続いていることでございます。  政府はこうした状況を含んだ上で、大蔵大臣にお伺いしますけれども、このインフレに対する考え方、あるいは公定歩合の引き上げに対する考え方お話しできる範囲でひとつお答えいただきたいと思います。
  120. 金子一平

    国務大臣金子一平君) けさほどもお話しのございましたように、ここ最近卸売物価が騰勢を強めてまいっておりますが、消費者物価の方は幸いと落ちついた状況でございます。しかし、今後OPECの総会でサーチャージをどういうふうに課していくのか、あるいは円高であった昨年の情勢から円安に変わりまして、これが国内景気にどういうような影響を与えるか、また一部商品の市況に強含みのものも出ておりますので、こういう点につきまして私どもも十分警戒をしなければならぬ情勢だと考えております。まあ言ってみれば、景気物価と両レーンを——最近は特に物価の動きにつきまして神経をいら立たせておるという状況ではなかろうかと思うのでございます。  ただ、御指摘のように、国債大量発行下というのが、この前の狂乱物価のときと情勢は大変違っておるわけでございますけれども、大量発行いたしましても、これが円滑に消化されるようなことになりましたならば、それはすぐインフレにつながると私ども毛頭考えておりませんので、不消化のままそれが日銀の引き受けに安易に移るというようなことになりましたらこれは大変なことでございます。  そういう意味で、今後国債の発行につきましても、市場の実勢を考えながらある程度弾力的な運営をやっていかなければいかぬし、公社債市場対策もきめ細かな対策を施していかなければいかぬと思っておるのですが、金融政策をいつの時点でどういうふうに持っていくかにつきましては、公定歩合の問題は、これは日銀当局の所管でございますから言及を差し控えさしていただきますけれども、私どもはただいまの時点では、慎重に今後の推移を見守りながら機動的には動かなければいかぬけれども、いま大きく金融政策を変えるべき時期ではないというような判断をいたしておる次第でございます。  私どもとしていま一番恐れておりまするのは、やっと日本経済情勢が上向きになってきた、それに極端な冷や水をぶっかけて経済の回復の芽を摘むようなことになっては、これは財政が非常に弱まっておりますから、なかなか、また財政をはね返すバネがなくなるんで、そこら辺を慎重に総合的に判断してやってまいりたいと、こういう気持ちでございます。
  121. 多田省吾

    ○多田省吾君 特例法による赤字国債の発行は本年度で実施五年目に当たりますが、本年度は十五兆二千七百億円のうち半分以上の八兆五百五十億円が特例公債発行予定ということで、これは大変な赤字国債になっております。昨年までは、あるいは一昨年ころまでは依存度を三〇%に抑え、一応のめどを置いておりましたけれども、本年度は三八%でございますか、拡大の一途をたどっております。私たちは、やはり今後の赤字国債の発行につきましては、当然来年度予算におきましても歳出の徹底的な削減あるいは景気回復による歳入の増加、こういったことを考えに入れながら、やはりこの特例公債発行の歯どめというものを、国債全体の発行の歳どめというものを考えていかなければならないと思いますけれども、今後大蔵大臣はどのように考えておりますか。
  122. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 機械的に幾らまで発行したらいいという筋合いのものではないと思うんです。やはりそのときどきの経済財政事情に応じて、景気がある程度活発になればまた消化力もつくと思うんでございますが、ただ現在の段階のような景気状況で、来年もまたこれだけ大量の国債が発行できるかというと、それは私はもう不可能に近いと思うんでございます。要は、いかに早く赤字国債、特例国債の発行から脱却する財政的な努力を政府としてやるかという点に問題がかかっておると考えておりますので、今後も歳出歳入の全般にわたって見直しを行いまして、極力特例公債の圧縮に努めてまいりたいという基本的な考え方を持っております。
  123. 多田省吾

    ○多田省吾君 それから、市中消化を図るために発行条件の弾力化、自由化ということが強く言われておりますけれども、現在一部の中期国債に採用されております公募入礼方式を段階的に拡大すべきじゃないか、そして国債全般にわたって発行条件の弾力化、自由化を実現すべきだというこの問題、それからもう一つは国債発行形態の当然多様化の問題、わが国では十年物長期国債が過半を占めているわけでございますけれども、欧米諸国においては、一年未満の短期国債から二十年以上の超長期国債まで多種多様の国債が発行されているわけでございます。個人消化を図る上にも、また投資家のニーズに合致した魅力のある国債ということを考える上にも、こういった国債発行形態の多様化ということは大変に必要な問題だと思いますが、前向きにどのように考えておられるか、この二点をまずお伺いいたしたいと思います。
  124. 田中敬

    政府委員(田中敬君) はなはだ恐縮でございますが、第一点をもう一度お願い申し上げます。——中期債の公募拡大でございますか。  中期債の公募につきましては昨年一兆円をことし二兆七千億ということで二・七倍に引き上げたわけでございます。何せ一年間で一兆円という公募の実績を持つだけの市場でございますので、公募額を一挙に拡大をするということが市場にどういう影響を与えるかということにつきまして、私どもはまだ確たる見通しを持っておりません。さしあたりはこの二兆七千億というものを早急に公募をいたしまして、市場の対応ぐあいを見ながら今後の金融情勢あるいは公社債市場の情勢に応じましてこの公募額の拡大ということも考えてみたいと思っております。  それから種類の多様化でございますけれども、ここで申します多様化というのは、一つは期間での多様化もございますが、発行方式の多様化もございますし、また言われておるような非市場性の国債的なもの、そういう国の債務の負い方というものも国の財政資金の調達手段としては一つの多様化の手段であろうと思います。  多様化の一つといたしまして公募債を拡大するという点につきましては、ただいまお答えしたとおりでございますが、多様化の次の手段といたしましては、やはり期間を短縮を図ってこれをシ団で引き受けてはどうかという議論があることも承知いたしております。これも今後の情勢次第で検討すべき問題であろうと思っております。  それから種類という形でと申しますか、発行方式と申しますか、非市場性の国債というものも、たとえばドイツの債務証書借り入れでございますとか、欧米諸国にございます貯蓄国債であるとか、いろいろ手段はございます。それぞれについて長短がございますので、今後これも引き続いて検討してまいりたいと思っております。
  125. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま理財局長のおっしゃった貯蓄国債という、国債の発行条件の多様化の一つの側面としての非市場性の国債だと思いますが、私も本会議で、民間に一応要望されているところの貯蓄国債というものが相当前向きに検討されるべきではないかと、このように思うわけでございますけれども、これも検討対象にしたいということはいまおっしゃったわけでございますが、ただ言葉だけではなしに、やはり今年度は十五兆円を超える国債を発行しようと政府はしておられるわけです。そのうちのシ団引き受けがもう十兆八千五百億円に上るということで、また、この四月は長期国債の発行を停止する、五月もどうなるかわからないというような状況から見まして、当面の消化という点では非常に重大な行き詰まりが現実にあるわけでございます。  そしてまた、国債管理政策がなお不十分であるということで、私はやはりこういった非市場性の貯蓄国債というものをもっと真剣に考えるべきではないか、そうしてまた、一般の国民の皆さんのやはり目減りというものもこの貯蓄国債によって防いでいくと、こういう長所もあるわけでございます。具体的にこういった、口だけではなしに、貯蓄国債の発行ということをどの程度真剣に考えておられるのか、また、どういう見通しのもとに検討されようとしているのか、その辺をもう少しお伺いしておきたいと思います。
  126. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 先ほど多様化の一手法として非市場性国債、たとえば債務証書借り入れというようなもの、あるいは貯蓄国債というものもも検討すべき方法であるとお答え申し上げましたが、言葉が足りない点がありましたことをおわび申し上げますが、貯蓄国債につきましては、私どもは相当の研究、検討を重ねてまいりましたが、ただいまの結論では、以下申し上げるような理由によりまして、わが国においては貯蓄国債の創設は非常にむずかしいんではないかと考えております。  私が申し上げることにつきまして御意見がございますれば、また御意見を賜りたいと存じますが、一般的に貯蓄国債というものはどういうものかということを、貯蓄国債のまず定義から始めていかなくてはならないわけでございますが、諸外国における例あるいはまたわが国でも戦後これに似たものを行ったことがございますけれども、貯蓄国債の定義というものは、通常主として個人の貯蓄資金を吸収することを目的として発行される国債でございまして、大体次の三つの条件のいずれかを備えておるものというふうに言われております。  その第一の条件と申しますのは、貯蓄国債というのは譲渡が禁止または制限されておるものである。しかしながら、この譲渡の禁止、制限の見返りといたしまして、国による買い取り制度が設けられておる。ですから、貯蓄国債を買ったら人に名義変更で売ることはできないけれども、国、しかるべき機関に行けばいつでも買い取ってもらえるということが条件になっておる。あるいはまた、この貯蓄国債というものの消化先と申しますのは個人に限られておる。それからまた、個人に限られておると同時に、一口当たりの購入金額は制限されておるというのも貯蓄国債の性格の一つであろうと思います。  さらにもう一つ大きな問題というのは、そういうふうに個人の貯蓄手段、貯蓄資金の吸収手段ということでございますので、有利な貯蓄手段を提供するという観点から発行条件面、税制面で他の市場性の国債よりも非常にすぐれた条件を持っておるというものが、こういうものが貯蓄国債であろうかと思います。  これを考えてみますと、譲渡の禁止、制限や、買い取り制度、それから、他の貯蓄手段よりもすぐれた条件がある。それから、個人で一人当たりの制限金額が設けられており、税制面で優遇税制度が設けられておると。これはまさにわが国におきます郵便局におきます定額貯蓄と全く同じ性格のものであるというふうに考えられます。  こういう非市場性の国債、貯蓄国債というようなものは、いろいろ他の金融商品、あるいは公社債市場の実態というようなものを考えながら設計すべき問題であろうと思いますけれども、いまわが国では、いま申し上げましたように、貯蓄国債と類似した商品、定額貯蓄というものがあります以上は、これ以上の条件をつければ定額貯蓄が減る話でございますし、定額貯蓄よりも悪い条件になればこれを買う人はいないという問題、なかなか貯蓄国債の商品設計というのは非常にむずかしいというふうに考えます。  それから、もう一つ貯蓄国債の難点といたしますところは、買い取り制度が設けられているということでございます。たとえば、架空の話でございますけれども、五分の金利で貯蓄国債を発行し、金利上昇局面になってこれが七分になったと。買い取り制度があるから、従来売った貯蓄国債が買い取りを請求されると。そうしますと、財政資金の調達手段として発行を予定した貯蓄国債の発行額よりも買い取り額の方が多くなるおそれがあると。そういたしますれば、これは安定した財政資金の調達手段となり得ないというような難点もございますので、私ども委員会におきましても、昨年来貯蓄国債その他のことについていろいろ御示唆をいただいておりますので検討を進めておりますが、現段階におきます貯蓄国債の検討経過というものは以上のようなことでございまして、いまのところ私どもは消極的な姿勢でございます。
  127. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、多様化といっても消極的なものばかりが多いんじゃどうしようもない。  じゃ、非市場性でもう一つの、西ドイツのやっている方法というのは何かもう少し積極的にやれるような見通しがあるんですか。
  128. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 西独で行っております債務証書方式については、私どもは前向きに検討いたしております。  ただ、債務証書借り入れということになりますと、現行の予算総則上は非常に法律的な問題点がございます。現在予算総則でお認めいただいておりますのは、国債の発行限度額十五兆二千七百億円ということでございます。財政法の四条によりますと、国債の発行または借り入れを行う場合には限度額を国会議決を要することになっております。借入金額の限度額というものは授権をいただいておりません。そういう意味では、現在の御承認をいただいております予算のもとでは、現実的には債務証書借り入れという形の借り入れは不可能でございますけれども、この債務証書借り入れと同じような効果を持つ非市場性の国債、言葉をかえて申しますれば私募債的なものは可能であろうと思います。効果は債務証書借り入れと同じでございますので、これにつきましては、いろいろけさほど来申しておりますように、市場が浅い、公社債市場が未成熟である。そこへ大量の国債が出ていくということはインパクトが大きい、そのために公社債市場が乱高下するというようなことがございますので、このインパクトを緩和する意味におきましても、こういう私募債的なものというものは、前向きに検討すべきものであろうというふうに考えております。
  129. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからもう一つは、国債の個人消化策としてのいわゆる窓販問題でございますが、これはかねてからの大きな課題であるにもかかわらず依然として決着を見てないわけでございます。  証券取引法の六十五条の解釈をめぐりまして銀行と証券、双方の意見の相違があることは予想できますけれども、大局的な見地に立って大蔵省は窓販をしようとしているのかどうか。その方向はどうなのか。明確な大蔵省としての御方針をひとつここで伺っておきたいと思います。
  130. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 大局的な見地に立つということは、国債管理政策上これがプラスになるかマイナスになるかという観点での検討だろうと思います。  その点につきましてはまだと申しますか、大変議論をいたしてまいりましたけれどもいまだ議論が尽くされておりません。別に私は国債発行者としてかきね論争にくみするものでもございませんし、この問題は、本来その実態面からそれが必要であるかどうかというものを検討すべきだろうと思います。  実態面から見ました場合でも、やはりそこで発売される国債というものが市場にどういうふうな形ではね返ってくるかとか、いろいろ問題がございますので、いましばらくこの問題につきましては議論を重ねさしていただきたい、結論を出すには時間をいただきたいというのが現状でございます。
  131. 多田省吾

    ○多田省吾君 大体時間はどの程度おいて、めどをいつごろまでにこれは置いているわけでございますか。
  132. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 申しわけございませんが、何とも、いつ結論が出るかということも私自身見通しを持ち得ておりません。
  133. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後にお尋ねしたいのは、国家公務員給与のベースアップ分といたしまして政府は本年度二・五%を計上しております。  最近の景気回復状況から見まして、また例年五%を当初予算に計上してきたことを考えますと、果たしてこの二・五%の枠内におさまるかどうか、大きな問題であり、私はおさめるべきではないとも思いますが、もし一%上乗せいたしますと一般会計に五百七十億円程度財源不足になるわけでございますが、人事院勧告の内容によっては補正を組まざるを得ないと思いますけれども大蔵大臣はどのように考えておりますか。
  134. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) 国家公務員の給与改定の問題でございますが、申し上げるまでもなく、政府は人事院勧告をいただきまして、後で財源問題も含めましてその措置を考えるということでございます。  これも申し上げるまでもないことでございますが、目下のところ本年度の人事院勧告が一体どの程度の水準になるのか、とうてい私ども予想し得ないところでもございます。いずれにいたしましても、人事院勧告が出まして、所要財源につきましても既定予算のやりくりも含めまして、その段階で十分検討をさしていただきたいということでございまして、目下のところ公務員の給与改定のために補正予算を組むとか組まないとか、そういうようなことを申し上げられるような状況でないことを御理解いただきたいと存じます。
  135. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いままでの質問である程度出た点もあるかと思いますが、私は、三月十二日の予算委員会におきまして、五十四年度の国債の消化は、六・一%国債の売れ行き不振から見ても困難ではないかと質問をいたしましたが、大蔵大臣は順調に消化できるのではないかと考えている、こういう答弁をされたわけですが、その後の状況などからやはり私は大変消化が困難である。このように見ておるわけでございますが、その点いかがですか。
  136. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 私どもが本院予算委員会予算を御審議いただいております段階におきましては、ちょうど条件改定をいたしたわけでございます。ある程度、市場の実勢が非常につかみにくかったわけでございますが、あの程度の改定幅であって、かつ市場における先行き金利が高くなるんではないかという心理的要因というものが払拭されれば、これで十分消化は可能であると考えたわけでございます。  ところが、その先行き金利高感というものが払拭されるどころか、むしろ増幅をされておると。それが市場に悪循環を招いて、今日のような異常とも言える相場の実態になっておるということでございまして、その重要な要因でございました心理的要因の排除、払拭ということができなかったのが今日の実情で、当時大臣がお答えした実情と違う点だろうと思います。   〔理事藤田正明君退席、委員長着席〕
  137. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまそういった事情であるということでございますが、大変自信に満ちた答弁になったわけですね、その当時は。しかも私の質問に対して大臣は、六・一%の国債の金利引き上げは消化が行き詰まったということではないと、そういう立場を強調されたわけです。実際、金利が引き上げになったわけですが、それでもなお回復しない。私はこれはやっぱり消化が行き詰まっておると、こう判断せざるを得ないと思うんですが、そうなりますと、いま、私が質問してからちょうど一カ月たった期間でございますが、やはりこういった現実というものを踏まえて、五十四年度一年間にわたる国債の消化策、これはもう本気になって考えないと大変なことになる。四月は国債発行をやめたと、五月も危ないと。やめるやめるというようなことだけでは、これはいかぬのではないか。  幸い、といいますか、不幸中の幸いと言っていいのかどうかわかりませんが、自然増収があると。こういうことで、予想以上の税収があるので、これはやめておいてもいいわと、こういうふうなことがあるから、ある程度安易に考えておられるのかどうかは、これはわかりませんけれども、やはり当初予算をちゃんと組み、十五兆の国債を発行する、それに対する消化策というのはそれなりに考えておられるわけですし、また、財政特例法ではきちんとした償還計画ということは出さなくちゃいかぬわけですし、そういう点では、ただルーズに目先だけをやっておったのでは私はまずいと思いますので、少なくも五十四年度の国債消化策、これはきちんとしなきゃいかぬと思うのですが、その点については、この一カ月間で私は大変な反省をしなきゃならぬと思うんですが、これは大臣いかがですか。
  138. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 自然増収の問題は、五十三年度予算の分でございまして、これはまあある程度見込まれて、国債の減額ができると思っておるんですが、いまお取り上げになりました五十四年度の十五兆何千億かの国債の消化につきましては、あの当時と大分情勢が変わってまいりまして、大変私どもも真剣にこれはやらぬといかぬぞという気持ちになっております。  この前は市場の実勢を見きわめるのに多少時間がかかりましたが、最近は特にこういう情勢に変わってきたものですから、先ほど来いろいろ理財局長から申し上げておりまするように、全般の発行の多様化、弾力化と申しますか、それを思い切って進めて、硬直した市場でないように持っていくことがやっぱり基本的に大事なことだと思うんです。  それから、やはり公社債市場が、何と言っても底が薄いものですから、これに対するきめ細かい手当てをしっかりしてやることが大事だと思っております。そういう意味で、いま大蔵当局を挙げていろいろ対策を練っておる次第でございまして、少し最近は国債の市況も落ち着いて、反騰ぎみにはなっておりますが、しかしやはり先行きにもやもやとしたものが残っておりますから、速やかにこういった空気を払拭できるように持っていきたいという気持ちでおります。
  139. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの答弁だけではちょっと大ざっぱ過ぎますので、もう少し具体的な面での五十四年度の国債消化策、これは金利をもっと上げるのか、あるいはいま言われたような市場というものをもっと確立する、それも具体的にどうやっていくのか、あるいは多様化の問題はどうしていくのか、これはある程度の何と言うか、きちんとしたことを出さないと、いま少しは落ち着いていると言われておりますけれども、これでもし公定歩合が言われているように引き上げになってきた場合、また問題が出てくるわけですから、きちんとした、国民の前に国債はこうやって消化しますと——ということは皆さんもっと買ってくださいと、こういうことになると思うのですけれども、その点はいかがですか。
  140. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 国債の年間消化計画ということでございますが、なかなか年間消化計画というものをきちんと決めるということは非常にむずかしい問題だと思います。一応五十四年度予算で御審議いただきます段階では、十五兆を超える国債を一兆五千億は運用部で引き受ける、二兆七千億は中期債として市中で公募する、残余はシ団引き受けをお願いすると、これが年間国債消化あるいは発行の態様として予定いたしておるものでございます。  これをしからば月々何をどういうふうにやっていくかということが年間消化計画ということであるといたしますならば、なかなか月々の発行額をあらかじめ決めるのはむずかしく、月々の金融情勢に応じて出していかざるを得ない。  ただしかし、わが国経済の一般的パターンといたしまして、資金余剰月、資金不足月というものがございますので、資金余剰月にはなるべく大量の国債を出し、資金不足月には少額にする。そうして日銀の金融調節手段の及ぶ、十分作動する範囲内で国債の発行を行っていくというのが基本的な原則だろうと思います。しかしながら、先ほど申し上げました公募の二兆七千億をそのままにするなとか、あるいは今後の金融情勢の変化に応じて長いものを短かくする必要があるんではないか、あるいは市場に対する圧迫が、余りにも大量国債ということで強過ぎるとするならば、市場に圧迫要因を及ぼさないような私募債的なもの、非市場性の国債を工夫すべきではないか、これらは私どもは今後の年間の消化を考えます際に十分検討すべき問題だと思っております。  そういう意味におきましては、二兆七千億の公募額に固執するつもりも毛頭ございません。今後公募債を発行いたしまして市場がこれを十分こなして受け入れるという見通しがあるとするならば、公募債の額を多くする方途というものも念頭にございますし、十年債というものが、そのときどきの金融情勢によって発行しにくいということであるとするならば、同じシ団引き受けであっても十年債の期限を、何年であるかいうことは別といたしまして、短縮をするとか、一部短縮をするというようなことも考えてまいりたいというふうに考えております。そういう意味におきましては、そういう態様というものをそのときどきの金融情勢に応じて弾力的に行うのだということ、それからその場合具体的にどうするか、どうしたらどういう問題が起きるかということを私ども発行者が十分承知をしておるということがまず前提で、この年間消化計画というものは、月々の金融情勢等に応じて、ごく自然体で、その条件に合う形で条件の改定、あるいは短期化、多様化というものをそのときどきに応じてやっていくという姿勢こそ、国債の弾力発行の姿勢だろうと思いますので、年間消化計画をいまここで、十年債を幾ら公募債に金額的に移すのだというような形で検討するということは余り意味のないことだろうと思います。  ただ、いろいろ問題はございます。短かくすればこれの償還計画に及ぼす影響でございますとか、先ほども申し上げましたような借りかえの問題というようなものもございますので、それらの問題点を十分詰めておくということが、年間消化計画と申しますか、年間の発行、消化を円滑にするために一番大事な問題だと。消化計画というものもをこうしましたという形で外に発表すべき性質、そういうものではないように思います。
  141. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私が言っているのは、そういういま言われたことも十分わかるわけでして、そうではなくて、いまのままだとこれはもう国債買ったら損じゃないかという、あるいはまた金融機関はこれ以上持ってこられたんじゃたまらないと、そういういろんな問題があると思うんですね。したがって、いま私が言っているのは、今月はどれだけどうするとか、十年債をどうするとかじゃなくて、もう少し——じゃたとえば、こういう状況になれば国債金利の再引き上げをやるとか、あるいはいま言われたような多様化、短くするとか、そういった点ある程度のことをやると言わないと、どうもこのまま行けば下手をするとますます下がる一方で終わってしまうんじゃないかと、こう思うわけです。そういった意味で申し上げているわけです。  やはり私は、このまま行きますと、一番先に手をつけなきゃいかぬのは国債金利の再引き上げ、それが避けられないんじゃないかと。ただ、これはやると国債費の増額という大変な問題が出てくるといった点で、なかなかこれはやることがいいのか悪いのかというのは大変私自身もどっちを選択するかと詰められると首をかしげるわけですけれども、いまの情勢でいくと、まず一番最初に出てくるのは国債金利の再引き上げ、これは不可避であると、こう思うんですが、これはいかがですか。
  142. 田中敬

    政府委員(田中敬君) お答えいたします前に、この四月のことを考えてみますと、この四月、結論的にはシ団引き受けの長期債をゼロにしたわけでございますが、選択の手段とすれば三つあったと思います。  一つは現行条件のままでシ団にお願いし、ネゴをし、金額が予定額を削減されても、たとえ千億、二千億、三千億であっても発行するという方法、一つは条件を改定して発行するという方法、それから一つはゼロにするという方法、三つの選択手段があったんだろうと思います。  第一の方法というものは、現在の市場実勢がこれほど発行条件と乖離をしている、かつそれが、乖離の実態というものが、実勢以上と申しますと非常に言葉が矛盾のようでございますけれども、市場が異常なまでに悪循環を起こして過敏な反応を示しているというようなことで、なかなか市場の実勢がつかみにくい、そういう状況でございますので、条件を改定するといたしましても改定のよりどころがないという問題がございます。  それからまたもう一つは、これだけの乖離があるときに、たとえ千億、二千億でも発行するということになりますと、九十九円五十銭で買ったものが、売ろうとすればいまの情勢では九十円であるということが明らかなようなものを発行するということは、発行者の姿勢として今後の国債管理政策あるいは今後の国債発行責任者の姿勢を問われる問題でございますので、まず強行発行は避けるべきである。条件改定も、いま申し上げたような市場の実勢上条件をつかむのがむずかしい。そういう意味では、幸いに先週の土曜日ぐらいから市場が反騰いたしまして、金利の天井感もつかんだようでございますし、これがどの辺のところに落ちつくか、値ごろ感が出るまで待って対応策を考えた方がいいんではないかということで、私どもは先生がいまお気遣いになりました国債管理政策の一つの手段の選択の一つとしてゼロということを選んだわけでございまして、これも私は国債管理政策のある意味の一つのすぐれた手段でもあったんではないかと思います。  今後の見通しがわからない限りはなかなか市場も将来の情勢をつかみ得ない、五月債の発行もむずかしいんではないかというお話でございますけれども、私も今月いっぱい市場の情勢をながめまして、現在のような乖離が実態として出ておるということでございますれば、私はやはり国債の消化のためにはその時点においては弾力的に発行条件について考えざるを得ない、また考えるべきであろうと思います。これはいま通常言われております、けさほども御議論になった公定歩合論議とは別といたしましても、国債の発行について他の経済政策、金融政策との整合性を図りつつ、次回発行のときにもし金融情勢が——金融情勢と申しますか、市場における実勢というものが今日のような状況であれば、発行するとすれば条件の改定というものを考えるべきであるというふうに考えております。
  143. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大蔵大臣にお伺いしますが、いまの理財局長の答弁を聞いておりますと、今月の状況を見て来月になっていま言われた三つの選択のうちのどれかを考えようと。私はそれは発行条件の改定かなといまの答弁を聞いたニュアンスとしては考えるわけですが、ということは国債金利の再引き上げ、しかし一方においては公定歩合の引き上げがぐっとこういうムードがある程度盛り上がっておりますよね、マスコミ等においても、また日銀総裁等のいろんなところにおける答弁でも。私への予算委員会の答弁では、公定歩合の引き上げはしないと言われましたが、その後依然としてマスコミを通じて出てくる話は、公定歩合引き上げというのはもう早晩行われると既成事実のような形で出てきておるわけでして、これが先にありますとやはりまた国債に大変影響が出てくるんじゃないか。もし仮に公定歩合の引き上げがあるとしても、その前に私は国債金利の再引き上げということが先行して、その後で公定歩合ということになるのかなという気がするんですが、その点はいかがですか。
  144. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 日銀政府もいまのところは長期金利の引き上げはいたしませんという姿勢を崩しておりませんから、仮定のお話のいまの公定歩合の引き上げについてのことは私は差し控えたいと思うんですが、その問題は別といたしましても、国債の金利を見直さなきゃいくまいという気持ちは私どもも強く持っております。今月に入ってからの情勢は、先ほども繰り返して申し上げておりますように非常に異常な姿になっておりますので、しばらくこの推移を見て、冷やしてみて、そして来月に入って態度を決めなきゃいくまいと、こういうふうに考えておる次第でございます。それがまた公債発行の弾力化につながるゆえんであると私も考えております。
  145. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの御答弁だとかなり限局されていろいろ言われておりますが、こういうふうな状況がずっと長期間続いてきた場合、結局は落ちつくところ、国債もそうでございますが、最終的には金利の自由化というふうなところへいずれは日本の金融政策というものは行くのではないかというふうな感触を私は受けるんですが、その点はいかがですか。
  146. 金子一平

    国務大臣金子一平君) こういう経済情勢ですから、金利の弾力化、自由化については、私どもは余り硬直化したかっこうでなくて、十分に幅を持った考え方をしなきゃいかぬという考え方を持っておることは御承知のとおりでございます。そういう姿で自由化についても努めてまいりましたし、たとえば先般CDの発行に踏み切りましたね、こういった点でも金利の自由化を一歩前進させたと私どもは考えておるのでございます。今後もそういう点につきましては機に応じて変に臨んで弾力的にやってまいりたいと考えておる次第でございます。
  147. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、五十年度補正で大量の特例国債が発行されるようになったわけですが、それまでは、四十年代の国債というものは発行後一年たてば大体日銀が買い取っていたわけでして、したがって、キャピタルロスというのは市中の金融機関段階では余り生じてこなかった。そして日銀が手持ち国債でたとえ評価損が出ても、これは納付金が減るだけということで問題にしなくても済んだわけです。四十年代はこういうことで何とかやってきたわけです。  ところが五十年代に入りまして大量の国債発行、こういうことになったので、いま言った四十年代のパターンというのが機能しなくなってしまったわけです。ところが私の考えでは、財政当局は、そういった五十年代という大量発行時代という新たな段階状況を無視をして、キャピタルロスというものを市中金融機関に押さえつけている、こういうふうに私は考えるわけです。  私は、予算委員会での質問、大蔵大臣お聞きになったと思いますが、結局余りにも市中金融機関の抱える国債というものが大変ふえてきておる。もう限界まできておるというのを私はデータを挙げて質問したわけですけれども、そういった点で、結局四十年代の高度成長時代のそのままの、要するにわりあい簡単に日銀が買いオペできた。そういったものをいまもなお夢見ておられるのではないか。そうなるとマネーサプライの問題とかクラウディングアウトとかいろんなことが出てくるわけですので、やはりこの大量国債発行時代に対応した国債消化の新しい政策をとらなきゃいかぬと私は思うんですが、そういうのは依然として古いままの形でのキャピタルロスについては市中金融機関に押しつけている、こう私は思うわけですが、その点はいかがですか。
  148. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 先生御指摘のとおり、国債のかなりの量を金融機関が引き受けているわけでございまして、したがいまして、国債の価格の変動に伴いまして評価損が出るわけでございますけれども、ただ、これは先ほど理財局長からも申し上げましたように、一方、以前に発行いたしました国債につきましては含み益も生じているわけでございまして、この辺は全体を総合してその辺のしりを考えるべきものではないかと思っているわけでございます。  ただ、現在金融機関に対しましては、経理の健全性という見地から、その評価方法につきまして低価法をとっているわけでございまして、これによりまして評価損が出てくるわけでございますけれども、これに対しましては、御承知のとおり、昨年から国債価格変動引当金制度を導入したわけでございまして、これによりまして金融機関の経理の安定性というものを確保するように努めているわけでございます。
  149. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 わが国の大変急激でかつ巨額な国債発行が、いま申し上げたように、五十年度補正以降に三、四年という短期間であったわけです。引き受けの大半は金融機関であるわけでして、主要国の中で金融資産及び有価証券に占める国債のウエート、これも大変日本は高まっているわけです。データを見ますと、一九七七年末で見ますと、米国が五・三、これは国債のウエートです、有価証券は一六・七。西独が二・二、有価証券が一四・三。日本は三・九、有価証券は二七・七。六五年では、日本は一・一、有価証券は八・七。大変ふえているわけです。米国とか西独はそう変わっていない。そういった点で、非常に金融資産及び有価証券に占める国債のウエートが高まっている。これだけ急激に高い比率を占めるに至った国債のキャピタルロス、これにやっぱり金融機関というのは大変神経質になっておるわけでして、いま銀行局長言われたようなことである程度のことは満足しているかもわかりませんが、非常に神経過敏になっている点はもう御承知と思います。  しかも、欧米諸国に比べて、国債の保有構成を見ますと、わが国は金融機関の割合が高い。要するに、結局国債というものを、よくこれは議論に出てくるのですが、御用金調達方式でやっておること、間接金融方式、こういったものが大変根強い、こういうことによると思うわけですが、これがまたキャピタルロスを市中金融機関に背負わせる、こういう結果になってきているわけです。データを見ましても、主要国の国債保有構成を見ましても、中央銀行は米国が一四・一、フランスが一二・二、英国が一一・五、日本は二一・九ですね、これは残高ベースですが。金融機関が、米国が一〇・五、フランスが一一・六、英国が七・〇、日本は三四・三。政府米国が二三・八、フランスが一七・七、英国が一三・〇、日本が二八・〇。個人及び企業米国が五一・六、フランスが五八・五、英国が六八・五、日本はうんと低くて一五・八と。これは五十四年二月の日銀の調査月報ですが、七七年末。こういうように大変市中金融機関にみんな背負わせている。先ほど言ったとおりです。  五十年代の大量国債発行時代、これを迎えたにもかかわらず、いままでと同じ惰性でやってきておると、こういうことを私は指摘をしたいわけです。したがってこういう国債消化難が出てきておる。だから、こういう根本的な問題にもう少し手をつけて、五十四年度の十五兆円を突破するこの国債をやはり消化することをきちんとしていかないと、これは大変になってしまうのじゃないか。  最後残る道は何かと、私は財政インフレ、ここへ行ってしまうと、このように思うわけでございますので、ただ市中ばっかりに圧力をかけてやらしていく、それはある程度のことをいまやっていると銀行局長言われますけれども、これじゃ金融機関も大変パンクしそうな状況になりますし、諸外国と比べても、いま私が申し上げたようなデータが出ているわけでございますので、よほど根本的な国債消化というものに対する対策というものをやらなきゃいかぬのじゃないか。先ほど三つのやり方をいろいろ弾力的にやっていくとは言われますけれども、やはりもうちょっと根本的な考え方をしていかないといかぬのじゃないかと、こう思いますが、この点いかがですか。これは大臣にお伺いしたいと思います。
  150. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 御指摘のとおりに、日本におきましては金融機関の国債の保有率が非常にふえております。対処いたします方策といたしましては、やはり金融機関のみに頼らず、個人その他機関投資家等の安定保有層の拡大、育成というのが非常に大事な問題だろうと思います。そのためには、やはり個人に魅力のある国債、あるいは機関投資家に魅力のある国債という、国債の設計もさることながら、やはり個人なり機関投資家に国債に対する御理解をいただいて、これへの消化、拡大を努力することというのが第一義であろうと思います。  また、いまも矢追委員指摘のように、やはり日本は何といいましても間接金融が圧倒的に比重の多い金融地盤でございますので、当初引き受けということになりますと、やはり金融機関への依存度が高まるわけでございます。金融機関への依存が高まり、金融機関の保有国債がふえる、金融機関のいわゆるポートフォリオの構成上あるいは資金ポジション上、非常に国債の保有高がふえるということになりますと、やはり金融機関としますれば、国債を含めました債券というものを市場に売って資金の調達手段を図らなくてはならない、これは当然の成り行きであろうと思いますが、その場合に、金融機関保有の国債を初めとする債券が市場に売られた場合の受け入れる市場というものが残念ながらここ三、四年急速な公社債の発行によりましていまだ未整備の状況と申しますか、十分成熟しておらない。そういう意味では、この金融機関保有問題を解決する手段の二番目といたしますれば、やはり金融機関が売るであろう債券を受けとめる市場というものの整備、育成というものが大事である。市場の整備、育成のためにさしあたりの手段はどういうことかと言うと、いろいろ市場参加、ディーラー問題等が言われておりますが、私はやはりいま何としましても、現在の日本の公社債市場というものが証券会社によって支えられておるという現状を考えます限りにおいては、やはりこれらに対するディーラーファイナンスをどうするかと。市場が拡大していくわりあいになかなかディーラーファイナンスが十分——従前までは機能しておりましたが、今後はこのファイナンスの問題というのは相当大きくなると思いますので、ディーラーファイナンス問題というのは大きな問題だろうと思います。  と同時に、金融機関が市場に売るということになりましても、国債についての市場性、商品性というものを高めませんとなかなか市場に受け入れられがたいということでございますので、やはり国債の金融商品としての市場性、商品性を高める手段をいろいろ考えていくべきであろう。けさほど御議論のありました振替決済制度の問題も、やはり決済手段が早いということは一つの商品性を高める手段でもございますので、こういうものも含めまして今後検討していきたいと考えております。
  151. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これはいまの質問のまとめとして大臣の決意をお伺いするわけですが、先ほども何回も聞いておりますけれども、やはり私は何回も申し上げるわけでございますが、まず五十四年度の大量国債の消化、これは様子を見ながら弾力的にという点はわかりますが、やはりそのときどきも含めた上できちんとした消化策というものですね、国民といいますか、いわゆる国債を買おうとしている人たちが納得できるような、金利の改定も必要でしょうし、先ほど三つの方式は言われましたけれども、もう少し具体的にきちんとした方針を示すべきだと思うんですけれども、その点をどうお考えなのか、これが一つ。  もう一つは、予算委員会でも大臣繰り返して言われましたし、きょうもおっしゃっておりましたが、来年度はそうたくさんは出さぬと、大量国債は出せないと、こう言われておりますが、そうなりますと、果たしてことしの、特に低成長時代、オイルショック以降のいろんな予算編成のあり方ずっと見てまいりますと、出しちゃいかぬ、出しちゃいかぬと言いながら、やっぱり最後はいろんな政策に対する政策需要といいますか、要求というのがたくさんあるわけですから最後は出してしまったと。また、今年度どうなるかわかりませんが、五十四年度補正ということですね、こういったことはいまお考えになっていないとおっしゃると思いますが、私が心配しているのは再三指摘しておりますインフレ、インフレがうんと出てきた場合、これは物価調整減税ぐらいはやらなくちゃいかぬ面が出てくるんじゃないか。そうした場合、その財源としてまた何を持ってくるのか。税収が伸びてくればよろしいですけれども、ある程度は伸びると思いますけれども、またことし自身だってこの補正である程度の国債発行というような事態が出てくる可能性もあるんじゃないか。こうした場合、大臣がせっかく来年からもうこういう大量発行は無理なんだと、こう言われながらもやはり政策要求に屈するといいますか、こういう場合もあるんじゃないかと思うんですが、その点に対してどうこの財政再建という面で、少々国民には厳しい面はあっても、私は財政再建をある程度軌道に乗せることが重要だと思うんです。この二点お伺いしたいと思います。
  152. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 第一段の五十四年度の国償消化策につきましては、いまも理財局長がるる申しておりますように、やっぱり国債を魅力あるものにする、市場実勢に即した発行条件にするということが案外やっぱり一番大事なことでございます。それから公社債市場の整備ということでございましょう。いろいろ具体的な御指摘もございましたけれども、そういう点につきまして万遺憾のないようにいろいろいま検討をいたし、今後の五月債からの発行についての検討をいま進めておる最中であることを申し上げておきます。これはぜひ完全な消化に持っていきませんと、それこそお話しのような財政インフレの危険も出てくるわけでございますから、これだけはぜひ私どもとしては防止しなきゃいかぬ、そういう強い決意を持って臨んでおることを申し上げておきたいと思うんでございます。  それから、来年度以降の問題あるいはことしの補正をどうするかというような問題につきましては、これは経済は生き物でございますし、財政がどういうふうにこれからなっていくのか、時々刻々と動いておりまするけれども、この調子で経済がうまくインフレに巻き込まれないで軌道に乗ってくれれば、私どもは来年度公債発行、これはもうほっといても減らせるわけじゃございません。もちろん歳出歳入の全般にわたって見直しをすることを固くお約束しておりますんで、その努力は払ってまいるつもりでおりますが、相当程度公債発行を抑制することができるように持っていきたいというつもりでおります。  それで、本年度それじゃ補正予算、場合によっては組めるような態勢かとおっしゃいますと、これはいまの財政にはその力はありません。予備費が若干組んでございまするけれども物価調整減税をやるために補正を組めと言われても、もうその力はない、ぎりぎりの限界まで来ておることを正直に申し上げておきたいと思うんでございます。
  153. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、国債の多様化政策について申し上げますが、国債の消化促進という観点に立ちまして五十二年度から国債の多様化が取り入れられておりまして、五十四年度は二、三、四、五、十の各年物が発行されることになっておりますが、まずこの多様化の内容について説明をしていただきたいと思います。
  154. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 戦後国債を発行いたしました当初は七年債というのが一本でございました。その後、昭和四十七年でございますか、これが十年債に変わりまして十年債一本ということで、たった一種類の国債で経過したわけでございますが、昭和五十年以降補正で大量国債が発行されることになりまして、一本でいいんであろうかと、もっと個人の消化に適したものを考えてはどうかということで、五十二年の一月に五年の割引国債というのを創設いたしましたことは御承知のとおりでございます。  その後、昭和五十三年に入りまして個人消化の促進、あるいは資本市場のニーズに合った国債ということ、あるいはまた国債の発行条件の弾力化に即する発行方法という形で三年債の市中公募による発行ということを行ったのが昨年でございます。昨年一年の経験を得まして、市中公募、あるいはこの三年債という期間の短いものが相当市中のニーズに合ったものであるということが確認できましたので、本年度におきましては三年に加えまして二年と四年というものを創設いたしたわけでございまして、現在の予定では二兆七千億のうちの一兆七千億は三年債、五千億は二年債、五千億は四年債ということを考えております。これが多様化の実態でございます。
  155. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまこのように五十四年度をいろいろお分けになりましたが、こういうふうに分けられた理論的根拠というのは何ですか。
  156. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 理論的根拠というのはなかなかむずかしい問題でございます。  御承知のように国債も一つの資金吸収手段でございます。預金あるいは金融債というようなものも民間の資金の吸収手段でございます。国が資金吸収手段といたしまして新たなものを設けるということになりますと、これら民間の資金吸収手段と競合することになります。そういう意味におきましては、二年債というものは民間金融機関の二年定期と競合する問題でございますし、五年割引国債と申しますのは、割引という方法で形は変わっておりますけれども、五年の民間の利付金融債、これは興長銀等の主たる資金調達手段でございますが、これと競合する形のものでございます。四年債と申しますのも、むしろ五年の利付金融債に近いという意味においてはこれもある意味での競争的な関係になってまいります。三年債と申しますのは、現在出ておりますのは東京銀行が三年という利付金融債を出しております。これは発行量が非常に少のうございますので、そういう観点で、いろいろいま申し上げました他の金融機関の資金調達手段との競合性を調整しつつ考えたというのがこの一兆七千と五千、五千という結果になったわけでございます。
  157. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 国債の多様化政策が本格的に言われてきたのは五十三年度補正からだと思いますけれども、この五十三年度と五十四年度を比べまして際立った特徴というのはどういうところにありますか。
  158. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 公募国債の拡大に踏み切ったというのが一番大きな特徴であろうかと思います。
  159. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 建設国債中心に多様化がなったということも言えるかと思うんですけれども、これについては先ほど、特例債は借りかえができないから短期物とすることが困難であると、こういう答弁があったわけですが、いま言われたことも一つですが、建設国債中心になったということに私はなると思うんです。  いま審議をしております五十四年度発行特例国債に関する法律に基づいて発行される国債の多様化、これについては五十三年度と比較をいたしましてどうなっておるのか、お伺いしたいと思います。
  160. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 五十三年度におきまして、先ほど御説明申し上げましたように、一兆円の三年債を公募方式にいたしましたが、これは特例債でございます。本年度予定いたしております二兆七千億の公募予定額は四条公債を予定いたしております。  なぜこういうふうにいたしたかと申しますと、昨年一兆円の特例債を公募にいたしましての反省でございますが、やはり三年という短い特例債を出しますと、三年先に全額現金償還という事態になってまいります。いまの国債整理基金の資金繰りを考えますと、昨年出しました一兆円というものを三年後に整理基金で全額現金償還をいたしましても、現在衆議院並びに参議院に御提出申し上げております国債の整理基金の資金繰りから見まして、やはり昭和六十二年度までは一般会計からの繰り入れが不要であるということでございますが、今後公募債、短いものを拡大するにつきましては、この国債で整理基金の資金繰りを考えた償還ということを頭に入れて考えますと、特例債で行った場合には将来の償還負担が早期に来る。そのときの整理基金の資金状況を考えるということになりますと非常に問題点が多うございますので、今後この期間短縮を行う中期債というものは四条債によるべきであるという結論に到達いたしまして、本年度からはこれを四条債で行うことにしたというのが実情で、矢追委員指摘のように、本年度の特徴と申しますと、先ほど申しおくれましたけれども特例債から四条債へこれを変えたということも一つの特徴であろうかと思います。
  161. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまの御答弁聞いておりますと、結局五十四年度特例国債の発行は大変ふえているわけですね。五十三年度が四兆九千三百五十億から五十四年度が八兆五千五百億円。ところが多様化の方は、いま言われたように、その三年物をゼロにして五年物と十年物の二種類になっておる。そういうように多様化という点では特例国債については減っておると。それはいま言われた二年物、三年物ではなかなかすぐ返さなくちゃいかぬのでうまくいかないと。片方で建設国債も多様化しているからというようなことだと私は思うんですけれども。まあ現実はそうでしょうけれども、ただ、返すのが大変だから多様化を減らしたんだということだけではちょっと説得にならぬのじゃないか。  要するに、特例公債出さなくちゃいけなくなったのは何なのかというと、結局資金が足りないからということですから、特例国債こそやっぱり一生懸命売らなきゃいかぬのじゃないか。そうすると返す方も大変で財政の厳しいのもわからぬではないですけれども、やはりこの多様化というものを、これはうんと複雑にするのもどうかと思います、借りかえ債じゃないですから。借りかえできないですから、それは私も理解はできるんですよ、ある程度は。しかしこの倍近くなったものを、また三年物を削って五年と十年だけにされたという点はちょっと私は何か財政当局ずるいみたいな感じも受けないでもないんですけれども、その点はいかがですか。
  162. 田中敬

    政府委員(田中敬君) お引き受けいただく側にとりましては、いずれにしても、借りかえ債の発行ということがあるにいたしましても、現実に国債の保有者というものは、特例債を持っておっても四条債を持っておっても償還は受けるわけでございます。そういう意味におきましては、短くするものが特例債であるか四条債であるかということは、国債を買っていただく方には余り関係のない問題でございまして、私はやはり十五兆という大量の国債の中でどれくらいの割合を短期化、中期化するかということに着目すべきだろうと思います。そういう意味におきましては、昨年度の一兆円というもの——年度国債発行額がふえましたけれども、それの救済手段といたしまして一兆五千億は運用部で引き受ける。残りが市中引き受けになる。その中のものの総体として二兆七千億というものを中期化したということは、やはりその中期債の割合がふえたという意味におきましては前進であったろうと思います。  いま御指摘のとおりに、たとえば本年度発行を予定いたしております四条債と特例債を考えました場合に、特例債が八兆五百億円になっておりますけれども、この八兆五百億円は多様化をしないという前提に立つといたしましても、八兆五百億の特例債のうち一兆五千億を運用部が引き受ければ残りの六兆五千億は十年債で出ていく。あと建設公債の七兆円というもののうちすでに二兆七千は中期化が約束され、その計画であると。これが今後の対応次第でどれくらいふえるかということでございますので、今後金融情勢いかんによっていろいろ対応策を考えてまいりたいと思いますが、そういう観点でごらんいただきますれば、市中引受時における中期債の割合というものは拡大こそすれ、縮小する方向には現在のところ考えられないというふうに思っております。  いずれにいたしましても、特例公債につきましては、私どもは心情的にはこれぜひ、市中には十年債もあり中期債もあり、いろいろの長さのものがあっていいわけでございますので、特例債については十年債で何とか消化を図ってまいりたいというふうに考えております。
  163. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 確かに特例国債十年債というのはよくわかるんです、私もね。確かに複雑にすると大変なことはもう百も承知なんですが、ただ私は、素朴な疑問としてさっきから申し上げてくどいようですけれども、五十三年度補正のときに三年物が一兆円で、五十四年度はゼロで、五十三年度の建設国債は三年物は全然なかったのに五十四年度では一兆七千億円も出てきていると。ちょっとこの変化が急激過ぎるわけですね。だから何かあるんじゃないかと、売れ行きが悪かったのか消化難であったのか、そういった点を勘ぐるわけでしてね。だから一方でやめておく、要するに特例公債の方でやめておいて一方の建設の方でふやしておく、こういうふうな理由が、先ほど一番最初にその根拠はどこにあるのか、こういうふうに分けたですね、まず。どうしてその五十三年と五十四年こんなに開きができたのか、そういうことを聞いておるわけでしてね。  結局まとめて言うならば、私はその多様化政策に対する財政当局の姿勢というのが非常にはっきりしていない、もうちょっときちんとした理論的根拠といいますか、説得できるような方向での多様化というものをしていないから、何か行き当たりばったりで、これやってみたけどだめだった、どうも余り売れなかった、消化できなかった、今沢はもう三年はやめだと、やっぱり特例公債は十年でいかなくちゃいかぬ、こういうふうなことになっているんじゃないか。だからこんな差が出てきたんじゃないかと、非常に私、あいまいさといいますか、行き当たりばったりといいますか、そういった点を痛感をするわけで、こういう質問をしておるわけなんです。  そういった点でひとつお伺いしたいのは、五十三年度補正で三年物の特例債を出したことは間違いだったのか、失敗だったのか一この点はどう反省をされておりますか、まず。
  164. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 先ほども申し上げましたように、五十三年度は三年債を初めて創設した年でございまして、これはまずお考えいただきたいのは、三年債を創設したという事実に御着目いただきたいわけで、それが特例債であったか四条債であったかということはまず別の次元でお考えいただきたいと思うんでございます。国債の多様化政策というのは、特例債であれ四条債であれ、多様化という方向に全体の国債発行枠の中のものが向かっておればいい話だろうと私どもは思っております。  そこで、昨年特例債で三年債を発行したというのは別にこれという意味があったわけではございません。四条債であってもよかったし、特例債であってもよかったわけでございます。たまたま特例債にしたということでございまして、した後で考えてみますと、いま申し上げましたように、特例債というのはその期間が満期になりますと全額現金償還しなくてはならない。国債整理基金に相当の負担がかかる、こういうことでございますので、いまここでその点を反省して方針を改め、多様化をするなら四条債によるべきであろうということに方向を決めたということでございます。  いろいろ、私どももたまたま昨年は特例債で行ったと申し上げましたけれども、別にこれはさいころ振ってそっちを選んだというような単純なものではございませんで、いわゆる建設国債というものは六十年償還ということになっております。いわゆる耐用年数に見合いということになっておりますので、建設国債を二年や三年で出して借りかえていくということと六十年償還ということは一体どういうふうに結びつくんだろうかというようなこともいろいろ議論をいたしてみました。  そういう意味で昨年の議論の段階では、やはり建設公債というのは六十年の耐用年数は目当てとして最終的には六十年で返す、そんなものを二年や三年にするのはどうかなあというような議論もいたしまして、それでは償還計画にさしあたり一兆円なら支障がないから特例債によることにしようと、建設公債は短いものも出していろいろ借りかえが起きるというような問題は今後検討しようというようなことで出発いたしまして、本年度の国債発行をいろいろ計画いたした際にその議論を詰めてみまして、やはり六十年償還を前提とした建設国債であっても、一回一回の期間というものは余り問題にしなくても、そのもの自体が六十年たって消えるような償還方式、いわゆる整理基金への償還基金の積立方式というものを確立しておれば問題はない。むしろ特例債をもって将来の償還負担増を来して、現在御提出申し上げている財政収支試算、あるいは国債の償還計画とそごするよりもその方が望ましいと、こういう結論になったので四条債にかえたと、こういう次第でございます。
  165. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間ですので……。  まあいまなかなか誤りとはおっしゃらなくても反省ということをおっしゃっているわけですが、その問題はまた別といたしまして、最後ですからお伺いいたしますが、建設国債の問題また改めてゆっくりやりたいと思います。  大蔵大臣にお伺いしたいんですが、建設国債であれば借りかえということなんですが、まあいろんな多様化、これはやっぱりやらないと売れないということで私はやっていかなきゃならぬと思いますが、借りかえという立場から考えますと、この多様化というのは大変また問題がいろいろ出てくる。しかも、今後大変借りかえ不安という問題が私は出てくると思うんです。借りかえについては私はもうずっと以前からもいろいろ予算委員会等で質問してまいりましたけれども、この問題をどうしていくのか。いままでの借りかえというのは九〇%以上が日銀政府の手持ち国債、こういうことになっていたわけですが、この間の予算委員会の質問で、今後は借りかえ債を市中機関に持ってもらうと、こういうふうに、たしか大蔵大臣の答弁だったと思いますけれども、簡単にこうちょっとおっしゃったんですけれども、そうなりますと、評価損が出ようがどうしようが借りかえ債を市中機関にやらせると、こういうことになってくるわけでは私はないと思うんですよね、答弁は。しかし、答弁だけ取り上げるとそういうことにもなってくる。  先ほど来からもいろいろ言いましたが、市中金融機関の手持ち国債の比率も大変高まっていく、そういった傾向の中で短期国債をふやし、二年、三年に一回ずつ借りかえをやっていかなきゃならぬと、こういうふうになりますと、なかなかこの国債管理政策の中では大変になってくると、その辺を相当うまくやっていかないとむずかしい問題であるわけです。そういった運営の見通しですね、この辺はどう考えておられるのか、それをお伺いして、今回この程度で、また次回にあとの問題譲りたいと思いますが、以上です。
  166. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 国債の借りかえ制度につきましては昭和五十六年までに検討するということになっております。と申しますのは、金融機関が保有いたします従前の四条国債につきまして、この市場性、流動性を付与するためには、四条債というものは借りかえがあるから持っても現金償還をしてもらえないんではないかと。一方、特例公債というのは、全額借りかえ債発行しないと法律に書いてあるからあっちを持った方が得じゃないか。だから、同じ国の債券で同じクーポンのついた国債であっても、片一方は借りかえをさせられるんじゃないかというようなことで商品性が薄くなる、私どもはそこに二重価格が同じ国債について、特例債と四条債で同じクーポンのものでも出るんではないかと、そういう心配をされた向きもあったわけでございます。それといま申し上げましたように、借りかえという問題がついて回る限りにおいては、なかなかこの流動性が確保し得ないという問題がございましたので、従前の借りかえ方式を改めようということを決意したわけでございます。  従前の借りかえ方式と申しますのは、いわゆる乗りかえ発行と申しまして、ただいま矢追委員はほとんどのものが日銀に行っているとおっしゃいましたが、確かにいままでの借りかえはそうでございましたが、金融機関にも、オペで全額行ったとは申し条、金融機関にも残っております。で満期が、十年たって、従前のものですと七年ですけれども、七年たって満期が来た、借りかえというものは、たとえばA銀行、B銀行というものが国債のシ団に参加いたしておるといたしますと、A銀行、B銀行が持っておりますその債券のいわゆる六分の一は現金償還をし、残りはA銀行、B銀行が持っております国債、たとえばA銀行が十億持っておりますとすれば、その満期がきた国債を差し入れることによって新しい国債を引き受けていただくと、これを乗りかえ発行と申しますけれども、しかし新しく引き受けていただくものというものはそのとき引き受けられる時点における新しい条件である。ですから以前のものが六・五%のものであっても、そのときの条件が八%であれば八%で乗りかえると、こういうことです。  しかし、それはいずれにいたしましても乗りかえ発行でございますが、これでは金融機関が今後保有される際に永久的にそこがぐるぐる回っていくという話でございますので、今後借りかえ発行につきましてはそういう乗りかえ発行方式を改めて、たとえば五十七年度に満期が来る国債があるといたしますと、五十七年度に満期が到来する国債が総額で二千億ある、銀行が保有分が千八百億あるという場合に、借りかえ発行額が二千億必要であるということになれば、そのときの引き受けシ団にお願いをして新たに借りかえ債を引き受けていただくというような方法もあるのではないか、あるいはまた、いま発行いたしております公募の二年、三年物の借りかえのときはそれを改めて公募入札にかけるのかどうか、二年債の満期が来たときにこれを借りかえるためにまた二年で公募をするのか、三年で公募する、四年で公募する、五年で公募する方法もあります。いろいろそういう問題がございますので、借りかえ制度の問題というものは今後の課題といたしておりますけれども、いわゆる従前の乗りかえ発行、乗りかえによる借りかえという方向は改めてまいりたいと、まだ私どもは結論を得ておりませんけれども、今後の借りかえ制度につきましては相当重要な課題であるということで、今後も鋭意検討を進めてまいりたいと思っております。
  167. 渡辺武

    渡辺武君 まず、日本銀行の副総裁に伺いたいと思うんですが、日本銀行は従来の金融緩和政策を現在のいわゆる警戒中立型の金融政策に転換しておられるわけですが、その主な手段、これはいわゆる窓口規制ということでやっておられると思うんですが、しかもそれがだんだん厳しくなってきておるというふうに私ども理解しております。  新聞報道によりますと、この四−六月期の窓口指導の内容ですけれども、都市銀行の貸し出し計画額ですね、都市銀行から出てきた、前年同期の実績を約一〇%上回る計画を出してきたのを逆に一〇・一%圧縮したというような記事が書いてございまして、従来銀行の計画でやっておったのを日本銀行がその計画よりも下回るかなり厳しい貸し出し規制という措置を講じたんだという記事が出ておるわけですが、もしこれが本当ならかなり厳しいものだというふうに思うんです。  しかし、同時に反面で、いまの物価情勢その他を考えてみますと、なかなかこれは予断を許さない状況じゃないかというふうに思いまして、現在の窓口規制というやり方では限界があるんじゃあるまいかという感じがしているわけです。今後何らかの新たな措置をとる可能性があるのかどうか、そこをまず伺いたいと思います。
  168. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 私ども警戒中立型と、仮にそういう名前で呼んでおりますが、いまの物価状況から考えまして、流動性が全体にやや過剰ではないかと、これは私どもの金融政策が従来景気回復ということを主眼に考えまして、財政政策とともに景気回復を支援する施策をとってまいりました。それがこういう景気回復それ自身は、最近の状況から見ますとかなり底がたい状況になっていますし、特に内需の回復はかなり確実なものになってきているというふうに思います。  一方物価でございますが、物価は、けさも申し上げましたけれども、なかなか予断を許さない、やや警戒を要する状態になってきているということから、金融政策自身もいままでのような回復支援一点張りということから重点を物価の面にも移しておるという状態で対処しておるわけでございます。  私どもそういう状態に対応いたしまして、金融面から考えますと、一番大事な点は全体の流動性が過剰にならないようにということであろうというふうに思いますが、その流動性が過剰であるかどうかという判断は、景気がまだ回復しておらない時期、景気回復を支援しておる時期と、いまのように景気回復自体はかなり底がたいものがあり、物価をむしろ心配しなければならないという時期と、その流動性状態に対する判断はおのずから違ってくるべきものではないかというふうに思っておるわけでございます。  そういう意味から、マネーサプライはなるほど前年比一二%増ということで比較的落ちついてはおりますが、いまの経済状況物価状況から考えますと、マネーサプライ状況というのは必ずしも低い状態ではない。特に企業の支配し得る流動性というものは、預貯金以外に短期証券あるいは銀行からの借り入れ余力、そういうものもあわせて考えなければなりませんので、そういう点から考えて、現在の流動性は決して低い状態ではないというふうに判断しておるわけでございます。  そういう中で、まずマネーサプライに及ぼす影響、あるいは企業流動性状況に応じまして私ども金融機関からの融資力と申しますか、それを従来の景気回復を支援しておりました時代よりもややきつめにしていただくということで、この一月から窓口規制に対する態度を改めてきておるわけでございます。  いま四−六についてかなりきついのではないかというお話がございました。これはそれぞれの金融機関判断によりまして、あるいは非常にきついというふうに感ずるところと、まあこの程度ならばやれるというふうに考えるところといろいろあると思いますが、去年の四−六の貸し出しの増加額というのは、昨年はまだ景気回復支援ということで私どもの態度が非常に緩い態度でございました。したがいまして、それに対して、増加額に対してこの四−六はかなりの削減をお願いしておるわけでございますけれども、昨年の状態をもとにして考えますると、非常にきついという段階でもまだないというふうに思います。これはただ、その判断はその立場によって違いまするので、いろいろに見る見方が可能であろうかというふうに思いますが、貸し出しの残高の対前年度増加率、これは六月末で大体八・二%ぐらいというふうに考えておるわけでございます。  こういう施策だけではあるいは不十分かもしれないではないか、というお尋ねでございます。もちろん金融政策の手段といたしましては、あるいは公定歩合であるとか、あるいは預金準備率であるとか、いろいろまだその手段としてとるべきものがございますが、現在のところ私どもは、いまの流動性状況に対応して、この程度で対応するのが適当であろうというふうに判断しておるわけでございまして、それ以外の施策につきましては現在は具体的な検討を行っておりません。
  169. 渡辺武

    渡辺武君 ちょっと重ねて伺いますけれどもね、そうしますと、いまの窓口規制よりさらに進んで新たな措置をとるという可能性はあるということでございますな。いわばもとの景気支援政策というのに戻るという可能性はないわけですね。その点どうですか。
  170. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 何と申しますか、景気支援と物価に対する警戒と、この両にらみということであろうというふうに思います。もちろん、私どもいろいろ金融政策を施行してまいる場合におきましても、現在の景気回復の芽を摘んでしまうというようなことが必要であろうというふうには思っておりません。その点は両にらみということで考えてまいらなければいけないというふうに思っております。  ただ、過去の私ども景気支援体制ということから、流動性が全体として過剰である、その過剰である状態というのは、いまのような物価の情勢から申しますると、あるいは先高感というのが一般に充満する、それが火をつけて、インフレ心理というものに火がつくというようなことは、流動性が過剰であるがゆえにそういうふうになるということは絶対に避けなければならないというふうに考えておりますので、いまのような中立型というのは、そういう見地から志向しておるわけでございます。
  171. 渡辺武

    渡辺武君 重ねて伺いますけれども、私、先日予算委員会森永総裁に伺いましたところ、総裁から、現在の物価情勢は四十七年末の狂乱物価直前の状態に近いという趣旨の御答弁があったわけです。  それで、これは私申し上げるまでもなく、いまの御答弁にもありましたけれども、国際的な商品市況石油を先頭として急騰してますし、それからまた、国内でも卸売物価指数それからまた地価、これもまあ急騰しているというような実情と同時に、かなり過剰流動性企業の手元にあって、これが一部投機に向かっている可能性もある、というような状態からのことじゃないかというふうに私思うんですけれども、この三月期の卸売物価動向をきょう日本銀行発表されたと思いますが、その内容の特徴、それからまた、そういう事態を踏まえて、金融政策として今後どういう対応をなさるのか、この辺を伺いたい。
  172. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 物価の最近の上がり方が四十七年の状態に近いという森永総裁の答弁は、あの当時も海外商品市況上昇から始まっております。今度もやはりそこから始まっておるわけであります。当時は為替相場制度が固定平価制度でございました。いまは変動相場制でございまするので、こういうふうな国際収支の状況に応じて円安になってまいりますると、その海外の商品高がそれ以上に国内には加速されて出てくるという点は四十七年当時とは違うというふうに思います。しかし、海外商品高から始まり、それが国内に、輸入品からそれ以外の商品、二次製品なんかにだんだん反映してくる、そういう状態はやや似てきておるというふうに思うわけでございます。この三月の卸売物価計数は本日発表ございまして、〇・九%の上昇ということでございまして、前年比較も前年の水準を初めてオーバーしたということでございます。  この要因は、国内要因、それから海外要因というふうに分けて考えられるわけでございまするが、海外要因、この中には海外商品価格が上がったというのと円安になったということと為替要因でございますね、両方ございまするが、その海外要因からだんだん国内要因ウエートが高くなってきているというのが現象として一つございます。  それから物価指数内容を見ますと、素材価格上昇、これは輸入品はまあ大体素材でございまするので、それがすぐ国内卸売物価を上げるわけでございまするが、そういう素材品価格上昇から二次製品あるいは半製品、そういうようなものの上昇に漸次移ってきている傾向がございます。ある程度はそういう状況が起こるのはやむを得ないことではございまするけれども、そういうふうな国内要因の要素がだんだん上がってきておるという点は、一般のこれからの物価の推移を見通します場合には、われわれといたしましてはやはり注意を払っていかなければならないことではないかというふうに考えております。
  173. 渡辺武

    渡辺武君 一部仮需要が起こっているということも聞いておりますが、その辺どうでしょう。  それからもう一点、一月が前月比〇・六%、二月が〇・九%、三月が〇・九%、この急テンポの上昇ですね、これ年率に直すとどのくらいの上昇率と見られるのか、この二点をお伺いいたします。
  174. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 仮需と申しますか買い急ぎと申しまするか、長い不況の間に企業は在庫を極度に切り詰めてきているわけでございまするので、経済活動がだんだん活発になるという事態に対応いたしましては、そういう在庫を積み増そうという意欲が出てくるのは当然であろうというふうに思います。  それが実需であるのか仮需であるのかというのは、それぞれ個々の場合に応じて判断されなければならないことでございまして、一概には申せないわけでございまするが、一部にそういう事態から仮需的なものが出ているんじゃないだろうかというふうに言われておる事実はあるようでございます。たとえば石油関係の商品であるとか、あるいはこれは消費者物価の方に主に影響するかもしれませんけれども、建設資材であるとかそういうようなものに一部そういう動きがあるということは言われております。ただ、どの程度であるかということについては、見る人のあれによりまして違っておるのではないかと、違う場合があり得るというふうに考えます。  卸売物価上昇年率で申しますると、三月は〇・九ということは、年率にいたしますと一〇%以上、一〇・八ぐらいになるわけでございます。昨年の十一月から物価上昇が始まりまして、いま御指摘のように上昇幅は月を追って大幅になってきておるわけでございます。十一月が〇・二でございましたけれども、十二月と一月は〇・六でございまして、二月と三月は〇・九ということでございまするので、その上昇幅というのは大幅になってきております。この二月から三月までの上昇幅を合わせますると三・一%、五カ月間で三・一%、年率にいたしますと七・五%ぐらいになるというふうに思います。現在のところそういうことでございます。
  175. 渡辺武

    渡辺武君 私ここに、日本経済新聞の五日付の記事を持ってまいりましたが、ここでは日本経済新聞社が東京証券取引所上場の主要八十社を対象に企業金融調査をしたと。その結果、企業の現金と預金、それから短期保有有価証券、これらを合わせた手元流動性が五十三年度下期にピークに達した後、五十四年度上期には四・一%減というふうに、小幅ながら減ったんだというふうに出ているんです。そしてこれは、従来のいわば金融資産選好型の財務政策を転換して、設備投資や在庫の積み増しなど実物資産投資に目を向け始めたものとして注目されるという記事なんです。私、これは非常に重要だと思うんです。  というのは、いまおっしゃったような卸売物価の急テンポの上昇、それから地価の上昇、こういうものとあわせて考えてみますと、景気の底がたい上昇とおっしゃって、それももちろん反映していると思いますが、同時に仮需要的な動きですね、いわゆる投機ですね、これをも反映しているものじゃなかろうかという感じがするんです。そういう意味で、私はやっぱりこの物価上昇というのが非常にいま危険な事態にあるということは十分に認識して対応すべきじゃないかと思いますけれども、いまおっしゃった三月の卸売物価上昇ですね、こういう点を踏まえて今後の金融的な対応、新たな何らかの対応をなさるのか、この点を伺いたいと思います。
  176. 前川春雄

    参考人前川春雄君) いまお話がございましたように、物価の現状につきましては私ども相当警戒を要する段階に来ておるというふうに思います。これは、この三月までの物価上昇はいま申し上げたとおりでございますが、これからも石油、原油価格上昇というのが影響してまいりまするので、物価上昇傾向というのはまだ続くというふうに思わざるを得ない。そういう状態から考えますると、物価につきましてはやはり相当警戒すべき段階であるというふうに思います。  海外物価が高くなったのが国内物価に反映しているので金融政策で対応し得る余地は余りないのではないかという議論がございます。四十七年のときもやはり同じような議論がございましたが、そういう物価が先高であるという機運が一般化いたしまして、それがいわゆる仮需になるということが四十七、八年当時のその後の物価上昇の非常に大きな要素であったというふうに思いまするので、そういう意味で私ども金融面で過度に緩和しておる状態というのはできるだけ早く是正しておく必要があるというふうに考えております。  現在のところ、それじゃどういう施策を考えておるのかという御質問であろうと思いますが、現在、金融政策の手段につきましては先ほど申し上げたような手段がございます。私どもいまは量的な規制ということをまず先行させておるわけでございますが、これから今後につきましてどういった施策をとっていくかということにつきましては、そのときどきの判断で適宜適切に施策をとってまいるというお答えをいたす以外にお答えのしようがないわけでございますが、そういうことで公定歩合あるいは預金準備率ということにつきましては現在具体的に検討いたしておりません。  現状を申し上げてお答えにかえたいと思います。
  177. 渡辺武

    渡辺武君 窓口規制ですね、これでいわば警戒中立型の方針に変わったのがことしに入ってからですね。ところが、もう三カ月たった。依然として卸売物価上昇はかなり急テンポだというような事態ですね。  そうしますと、いままでの窓口規制というやり方ではもうちょっと間に合わないんじゃないかという感じもするんですが、その辺どうですか。
  178. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金融政策だけで物価上昇がとめられるかどうかという点でございまするが、必ずしもいまのような、たとえば石油、原油価格上昇、あるいは海外商品価格上昇ということがございますると、これはことにこれが円安ということが伴ってまいります場合には、物価上昇を金融政策あるいは窓口規制だけでとめるということは困難であろうというふうに思います。ただ、私が申し上げておりまするのは、そういうふうな海外物価高というものは一般的なインフレ心理に転換するということを一番警戒しなければならない。そういう事態になりますと四十七、八年の轍を再び繰り返すということになりまするので、そういう事態には絶対にしてはならないという決意を私どもは持っております。そういう意味で、いまの金融政策につきましてもこういうふうな海外あるいは円安というもの、あるいは国内要因物価も上がってきておりまするけれども、こういうものが全面的な物価高というものに、あるいはインフレ心理の不安ということに転化しないように考えてまいりたいと思っております。
  179. 渡辺武

    渡辺武君 大蔵大臣に伺いますが、大臣の経済演説ですね、この中に、「当面の金融政策の運営に当たりましては、現在の緩和基調を維持することを基本として、」云々というお番葉があるんです。  いまお聞きのように、卸売物価は急騰している、それから海外市況も急騰している、これに円安という事態も絡んでいる。そうしてまた同時に、企業に莫大ないわばだぶつき資金があるわけですね。そして一部には仮需要的な、つまり投機的な動きも見えてきているという事態なんですね。私はやっぱりこうした事態は、これは物価狂乱当時の状態どもよく踏まえて対応しなきゃならぬというふうに考えるわけですが、大臣は依然として「緩和基調を維持する」という方針にいま立っておられるわけですか、どうでしょう。
  180. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 予算編成当時と昨今と情勢がやや変わってきたことは御指摘のとおりでございます。ただ、先ほども日銀総裁からお話がございましたように、今日の卸売物価上昇の一番大きな原因海外の市況を反映してのものであるとか、あるいは為替要因とか、そういうものが卸売物価に反映しているわけでございまして、これが小売、消費者物価に反映したら、それこそまた十分警戒もし、対策を講じなければいけませんけれども、いまの段階で、それじゃすぐ大きく長期金利等の引き上げをやるかどうかというと、これは私どもは、実は先ほども繰り返して申し上げたのでございますが、景気回復をどの程度に見るかということに問題がかかってくるわけでございます。為替の問題や国債の問題、それから経済成長の問題、特に物価のこれからの動きについて総合的に十分判断して結論を出さざるを得ないと思います。  それで量的規制につきましては、これはすでに一月から日本銀行において窓口規制をやっていただいております。今後この動きを十分見ながら必要な対策を講じていくべきところであると、こういうふうに考えている次第でございます。
  181. 渡辺武

    渡辺武君 私、いまの物価情勢についての認識が大臣と日本銀行とでは違うんじゃないかという感じがするんですね。三月上旬の日本銀行卸売物価上昇についての認識ですね。もうこのころから海外要因よりも国内的な要因の方がいわば主導的なものになってきているんじゃないかという点が指摘されておりまして、先ほども三月中の卸売物価上昇についても、やはり国内的な要因の方によりいわば重点が移ってきつつあるんじゃないかという御趣旨の御答弁もあったわけですよ。その点は大臣どう思っておられますか。
  182. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 石油の値段の引き上げ等を通じて二次製品に波及する心配があるという御指摘日銀当局からもあり、そういう点につきましては、これはもう個別物資の指導が一番大事でございますから、通産省なり企画庁でそれぞれの手を尽くしておる最中でございます。  なお問題は、私どもが先月くらいから今月の初めに言っておりましたのは、あの狂乱物価時代と大きく違う点は、一つ日本じゅう全体が列島改造ブームに沸いておった当時の日本状況と今日の状況とは違いますと。ただ、石油の問題が新しくできておりますから、今後の六月以降のサーチャージの動きにつきましては十分警戒を要しますということを申し上げてきたのが一点。  それから大量国債発行下でございますから、これがまあ完全に消化できないぞなんてやっぱりムードができますと、これは大変なことになります。その点は私どもとしても十分考えながらやっていかなきゃいかぬ。その点は特に私どもといたしましても重視しておるわけでございます。  今日の卸売物価の急激なる高騰につきましては、十分私どもも考えておるつもりでございます。
  183. 渡辺武

    渡辺武君 日本銀行の方にもう少し付いたいんですが、いま警戒中立型の金融政策をとっておられるとおっしゃったんですが、その一方で卸売物価がこう急騰していると、それから国際的な要因も、それはなかなかこれは軽視できない非常に重大な問題であること、これは事実なんですがね。で、おっしゃるように、それに加えて過剰流動性がたくさん企業の手元にあるというような状況ですね。これで警戒中立型というのは、どうも私解せないんですよ。これはインフレに対する金融的な対策であると同時に、景気の芽を摘まないようにという考慮も含めてのいわゆる中立型ということになっているのか、その辺を伺いたいんです。
  184. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 私ども金融面で、過去数年間、公定歩合を昭和五十年当時の九%から三・五%までに引き下げてまいりました。また量的にもできるだけ緩和をしながら、景気回復を支援するという姿勢をとってきたわけでございます。そういう閥に、景気回復と国際収支の黒字の縮小と、それと物価と、こういう幾つかの柱がございまして、その柱を見ながらその実現に努めてきたつもりでございます。  そのうち、景気の面につきましては、先ほど申し上げましたように、内需を中心にかなり底がたい回復状況にあるというふうに判断しております。国際収支の黒字幅の解消につきましては、御承知のとおり、予想外の急速な調整が行われておるわけでございます。  ところが、もう一つの柱である物価につきましては、昨年暮れ以来、いままでとは全く違った状況が出てきておる。しかも、円相場が円安に転化するということがさらにそれを拍車をかける。国内の需給もそれに応じてやはり引き締まりぎみになって、それが国内要因だろうというふうに思います。そういう状態で、やはりいままで立ててまいりましたその柱、これはもう柱はその必要ないという事態ではないというふうに考えております。  景気回復ということも、まだいまいろいろ不確定な要素がここに出てきております。石油の問題が一つでございます。そういう意味で、せっかくここまで持ち上げてまいりました景気というものをここで芽を摘んでしまうということは許さるべきことではないというふうに思いますし、またもう一つの柱である国際収支の黒字の縮小ということにつきましても、引き続きそういう事態が実現するように努力してまいるべきであろうというふうに思います。  ただ、物価につきましては、いままでは円高で推移してまいりましたので、物価についてそれほど心配はしておらなかったわけでございまするが、ここへ参りましていままでとは違った状態に来ておりまするので、その物価海外要因から出てはおりまするけれども、それが一般的なインフレ機運というものに転化するということになりますると、四十七、八年の二の舞になりまするので、そういう事態には絶対にしてはいけない。それは金融政策においていままでとは違うと申しまするか、物価についてのそれほどの考慮をしなかった点を、物価についても十分配慮しながら、そのいままで立ててまいりました柱をさらに強固なものにしていきたいということでございます。  そういう意味で、いまは警戒中立型ということで金融政策も推移していくことが適当だというふうに判断しております。
  185. 渡辺武

    渡辺武君 物価狂乱の後、非常に深刻な長期不況が続いたわけですね。やはりあの狂乱物価で設備投資も冷えましたけど、私は基本的には国民の消費支出が実質的に大幅に下がったというところに、その後の長期不況の大きな原因があったんじゃないかというふうに思うんです。そこから引き出される教訓は、これは景気の問題ももちろん大事です、大事ですけれども物価の安定、通貨の安定、これこそが経済の安定的な成長のやっぱり最大の条件になるんじゃないかということだと思うんですね。日本銀行としてはやはりそういう見地でいまの金融政策をやっておられるんじゃないかと思いますが、その点どうでしょう。
  186. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 物価か成長かというふうな対立した考え方ではなくて、真の成長が、実質的な成長が実現できるのはインフレになっては実現できないのではないかというふうに考えております。したがいまして、インフレにしないで成長をいたしませんと息の長い成長はできないと私どもは信じております。  ただいま御指摘がございました、狂乱物価の後、消費が全く落ち込んでしまったというのは御指摘のとおりであろうというふうに思いますが、消費、設備その他の経済活動、すべてインフレの結果、あらゆる先行きに対する見通しが立たなくなったということが不況をさらに深刻なものにしたゆえんであろうというふうに思います。そういう意味で、インフレにしてしまっては真の経済成長ということは達成できないのだということを私どもはかたく信じておりまするので、成長かあるいは物価かというふうに対立した観念で考えるべきではなくて、インフレなき成長ということが息の長い成長につながり、しかも国際収支の面におきましても黒字幅の縮小に資するものであるというふうに思っております。
  187. 渡辺武

    渡辺武君 これは大蔵大臣にも伺いたいと思うんです。どうも大臣の答弁を伺っていますと、いまの物価情勢の認識から対応から、その辺が不徹底じゃないかという感じがするですね。とにかく、せっかく芽生え始めた景気の芽を摘まないようにというようなことが先走っていて、やっぱりいまのインフレ対策の重要性ということについて、私は大臣は不徹底じゃないかという感じがしますけれども、やはり物価、通貨の安定こそ経済の安定的な発展の最大の条件にならなきやならぬというふうに私思いますが、どうですか。
  188. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 私どもの政治目標は経済の安定成長でございまして、その前提になるのはやっぱりインフレなき経済ということでございますから、その点につきましてはもう全く同じ考え方を持っておるわけでございます。ただ、今日置かれた日本の情勢の判断において、やはり物価だけじゃなしに、いろんな面を考慮に入れながら一つずつを検討して総合的な結論を出さなきゃならぬ。しかもそれは機動的にやらなきゃいかぬという点に大変むずかしい問題があるわけでございまして、おっしゃる点はよくわかります。十分ひとつ判断をいたしまして必要な結論を出すつもりでおります。
  189. 渡辺武

    渡辺武君 これは大臣、その政策運用の手法について私伺っているんじゃないんです。それも大事です。大事だけれども、やっぱり現在の経済情勢に対処する基本的な立場ですね、この点が非常に大事だということを申し上げておきたいんです。  それで、重ねて日本銀行に伺いたいんですが、先ほど来同僚委員からの議論もありましたね、いま公債価格が大暴落していると。もう昨年の下半期ごろから漸次低落してきて現在異常な大暴落という形をとっておりますね。これが端的に物語るものは、これは大量国債発行の消化が非常に困難になってきているということだと思うんですね。で、今後日本銀行の金融政策の運用上こういう点についての考慮を払うのかどうか、その点を伺いたい。
  190. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 今年度の成立いたしました予算に基づく国債の消化が円滑に行われるということは、私どももぜひそういうふうに実現していただきたいというふうに思っております。ただそのために、国債消化のために金融政策を運営するのかというお尋ねでございましたらば、国債消化というのは金融政策だけで推進すべきものではないというふうに考えております。金融政策は金融政策でおのずからその目的と限界がございます。国債のいまの価格の暴落状況というのは、何と申しますか、やや行き過ぎの感があるというふうに私どもも思っております。  値ごろ感と申しまするか、多少この数日来国債の市況も変わってまいりましてやや落ちつきが出てまいりましたけれども、これが本当に安定したところになっているのかどうかというのはもうちょっと見ないとわからないというふうに私ども判断しておるわけでございまするが、そういう国債の市況に対応して金融政策を運営するという考え方は私どもにはございきせん。
  191. 渡辺武

    渡辺武君 重ねて伺いますけれども、いま新聞報道などで、日本銀行はやがて公定歩合の引き上げをやるんじゃないか、あるいはまた預金準備率の引き上げもやるんじゃないかという観測記事の中で、特に強調されておりますのは、国債価格が大暴落している、これは先行き金利が引き上げられるんじゃないかということを見越してこういう暴落が起こっているので、日本銀行の公定歩合引き上げというのは、もしやるとすればそういう事態にいわば対応するものだと、言ってみれば国債の消化を安定的に促進させるという目的があるんだということが盛んに書かれているわけですね。そういうことをおやりになるおつもりがあるのかどうか、つまり国債の消化促進のために金融政策を運用すると。重ねて伺いたい。
  192. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 国債消化促進のために金融政策の運営を考えるという考え方は私どもにはございません。いろいろ新聞報道にございますし、市中のいまの国債の債券市場の状況に、そういう金利の先行きに対する気迷いと申しますか、そういう面があることは事実であろうというふうに思いますが、そういう、仮に気迷いという言葉が適当でありまするかどうですかわかりませんが、そういうものを解消するために金融政策を変えていく、あるいは運営していくという考え方は私どもにはございません。
  193. 渡辺武

    渡辺武君 くどいようですけれども、これは日本銀行の金融政策としては私非常に重要な意味を持っていると思うんですね。  重ねて伺うんですけれども、とにかく物価狂乱当時といまを比べてみますと基本的に違った問題がかなりあるんですね。そのうちの一つとして大量の公債発行が続いているということだと思うんですね。それでマネーサプライの増加状況なんかを見てみますと、この大量に公債発行されているということがマネーサプライ増加の重要な要因になっているという事態がはっきりもうあらわれているわけですな。ですから、日本銀行公債の消化をいわばやりよくするためにいろいろ金融政策を運用するというようなことになりますと、これがマネーサプライ増加、インフレの高進ということに必ずこれはもうつながっていくと思うんですよ。そういう点で、先ほどの御答弁は非常に私も結構な御答弁だと思うんですが、重ねて、やっぱり中央銀行としてこの政府公債発行政策とは中立的な立場で金融政策を運用していただきたいと思います。どうですか。
  194. 前川春雄

    参考人前川春雄君) マネーサプライの中で政府あるいは地方公共団体に対する信用というのはだんだんその比重を増しておるということはもう御指摘のとおりでございます。マネーサプライにつきまして、私どもが四十七、八年当時の経験にもかんがみまして、非常に強い関心と注意を払っておりますることは御承知のとおりだと思います。私どもも、今後もマネーサプライ動向というものが物価に及ぼす影響というものが非常に大きいという認識に立ちまして、マネーサプライのコントロールというものをできるだけうまくやってまいりたいというふうに思っております。  それから、十五兆の国債が消化されることが本年度予算遂行上ぜひとも必要であるということについては、私どももそういうふうに考えております。したがいまして、この十五兆の国債の消化をどうやってやるのか、これはまあ御専門の大蔵省御当局のいろいろのお考えがおありであろうというふうに思いますが、基本的にはやはり市場実勢の反映であるとか、流通面の多様化であるとかいうようなことによって、一般に喜んで消化してもらうという状態を招来することが大事なのであろうと思います。そういう意味で、私どもの金融政策が国債消化のために本来の目的を逸脱して曲げられるというようなことは、私どもはそういうふうにするつもりは毛頭ございません。
  195. 渡辺武

    渡辺武君 それから、松沢全銀協の会長さんが、夏以降クラウディングアウトのおそれがあるというような趣旨のことを衆議院の大蔵委員会で言っておられますし、私、先日予算委員会で森永日本銀行総裁に伺いましたが、時期は確定するわけにはいかないがというようにおっしゃりながら、やはりそういうクラウディングアウトという心配があるという趣旨のことを言っておられたわけですが、大蔵省の資金需給計画、これは一体どうなっているのか。十五兆二千七百億円もの大量公債を五十四年度発行するということになっているわけですが、資金需給計画上で、一体クラウディングアウトというのは心配あるのかないのか、需給計画どうなっていますか伺いたい。
  196. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 私どもはこれという資金需給計画というものを持っておるわけではございません。と申しますのは、金融情勢の先行きを見越すということは大変困難でございますので、ある一定の前提を置きまして、ある程度こういう形で推移するのではないかという想定のものは持っております。  それによって御説明申し上げますと、まず金融部門に一体どれくらい資金が流入するか、いわゆる流入がどれくらいあるかというのが第一、それから流出がどれくらい、差し引きどれくらいの資金の過不足があるかというのが大体資金需給を考える場合の原則でございますが、資金流入を考えます場合には、やはり何といっても預金の増加が一番多うございます。本年度の預金のほぼ実績見通しというものが五十三年度は対前年比一三%程度ふえるであろうと見込まれております。それに対しまして私どもは、来年は恐らくこれが一三・五、六%にいくのではないか。そういたしますと、預金が約三十三兆八千億円フローでふえてまいるという計算になります。それから金融部門の資金調達手段といたしましては、別途興長銀等が金融債等を発行して資金準備を図る道もございます。これが本年度四兆円見当であったと思いますが、来年度はそれが四兆二千億円ぐらいと一応想定をいたしております。  それから、資金流入はございますけれども日銀の金融調節によって、たとえば日本銀行における年間の金融調節手段といたしまして資金を吸収されることがございます。これは売り出し手形でございますとか、それから貸し出しの減だとかいろいろあろうと思いますが、そういうものがございまして、これは来年度の私ども国会に御提出いたしました二十八条資料にもいろいろその点が触れておりますけれども、それが約一兆四千億ということを想定いたしますと、差し引きで資金流入というのは三十六兆六千億ぐらいではなかろうか、これはあくまでいま申し上げたような仮定の計算をした数字でございます。  それから、資金流出でございますけれども、まず資金流出の一番大きいものは貸し出しでございます。本年度の貸し出しの実績というものがぼつぼつ出るんであろうと思いますが、私どもは一応本年度の貸し出し実績見込みというものを対前年度比九%増と見ておりますが、五十四年度試算をいたします場合も、貸し出しは九%の増であろうというふうに推定をいたしますと、流出部門におきます大きい部門でございます貸し出しの増というものは十九兆八千億見当になります。  それから、あと資金の流出といたしまして、金融機関といたしましては、関連会社、取引会社等の株式、社債等を引き受けます。これが本年度実績が約二兆三千億と見込まれますが、来年度は二兆五千億見当と一応数字を置いてみます。それと、来年じゃ金融部門が公共債を幾ら引き受けるかということが大きな要因でございます。  来年度の公共債というものは全体で二十六兆二千億余の発行が予定されております。ここで申します公共債は、国債、政府保証債、非政府保証債あるいは地方債等でございますけれども、これら二十六兆二千億発行される公共債が金融部門でどれくらい引き受けられるかと申しますと、これらの引き受け公共債というものは資金運用部資金あるいは公営公庫資金あるいは証券会社が一般公社債市場で引き受けていくものというものがございますので、ネットで金融機関引受分がどれくらいになるかということを計算いたしてみますと、約十五兆八千億円ということが推定されます。  それと、こういうことでございますと、貸し出しで十九兆八千、株式、社債等で二兆五千億円、それから公共債の引き受けで十五兆八千億というようなことが考えられますけれども、公共債の十五兆八千億の保有はいたしますけれども、年間で成長通貨の供給という形でのオペが想定されます。また、金融機関が保有しております各種債券の償還がございます。そういうものを考えますと、十五兆八千億引き受けるけれども、一兆五千億ぐらいはオペ、償還等で資金は還流する。そう二しますと、差し引き公共債の保有増というのは十四兆三千億になるということで、いま申し上げました資金流出の総計と資金流入の総計を見ますと、大体三十六兆六千億で均衡するであろう。  変動要因はいろいろあると思います。預金の増加がどれくらいになるか、想定どおりにいくかどうか、貸し出しが九形の増でおさまるかどうか、変動要因があって、ここから先は応用問題ということで一応骨格的に推定する。  しかし、これはこういう席で申し上げましたけれども、決して公式のものでございませんで、私どもがいろいろ来年の公共債の消化を考える場合に、いまの金融情勢がこのまま続くならばという大きな前提のもとに、申し上げましたような細かい柱についても前提を加えてつくった試算であるという意味で御了解を願いたいと思います。
  197. 渡辺武

    渡辺武君 いま伺ってますと、一応その数字のつじつまついている。そういうことだとクラウディングアウトなんというのはもう全然起こりようもないという計算になっているわけですよ、おかしいじゃないですか、これ。  たとえば、私はある意味で言えばクラウディングアウトはもう始まっていると思うのですね。というのは、昨年の暮れから事業債の起債ですね、これ希望額を大幅に削っているわけでしょう。たとえば昨年の十一月ですね、二千五十億の希望額があったのを千三百四十七億に削った。それからことしの三月は千六百十億円の希望額があったのを千三百六億円に削ったというような実態があるわけです。  もうすでに大量国債を発行するということがいわば前提になって、そうして事業債の発行そのものが希望額よりももうダウンさせられておる、こういう事態ですね。それに加えて五十四年度は、先ほども話あったけれども景気も底固い上昇機運だという話ですから、資金需要はもっとふえるはずですよ。そこへ十五兆三千億円近い大量公債がぼかっとこう出てくるわけですから、これでクラウディングアウト起こらないと言ったらおかしいですよ。だからこの資金需給計画を、これはあなたちょっといろいろ仮定を置いてと言うけどね、大体何でしょう、預金の増加の程度もいわば五十三年度並みに計算し、貸し出しも五十三年度並みの計算と、伸び率でね。そこがおかしいですよ。もっと実態に近づけて、そうしてクラウディグアウトというような事態に対してまじめにぼくは対処すべきだと思うですよ、その点どうですか。もう時間がないんで大臣その点伺いたい。  それからもう一点ついでに伺いますけれども、もしクラウディングアウトなどという事態になってきますと、私はやっぱり日本銀行として国債の買いオペレーションあるいは国債担保の貸し出し、いずれにしても成長通貨を賄うんだという、いわば任務があるわけですから、だからそういう方向に追い込まれざるを得ないと思うんですね。ところが、その成長金融なるものは十五兆を超えるような莫大な公債金融機関に事実上はめ込まれて、そこで民間資金が逼迫して、それで成長通貨がないというんで、日本銀行としては買いオペもしくは公債担保の貸し出しという形で資金需要を賄うわけだから、結局のところこれは実際は成長通貨じゃないんです。これはインフレ的なマネーになっていくと思うんですね。そういう点でどう対処されるのか、これを伺いたい。これは副総裁にも、重要問題ですからぜひ伺いたいと思うんです。  私はもう時間がないから、ついでに全部言っちゃいますけれども、やはりこれは非常に日本銀行としても重大な事態だと思うんですね。ですから政府の国債発行政策に対して、中央銀行としてはあくまで中立性を堅持して、そうしてこういう深刻な金融情勢を持ち来す政府公債発行政策について、日本銀行として言うべきことははっきり言うという立場が必要だと思うんですね。これは西ドイツの中央銀行なんかはそういう立場をはっきりとっているようですね。ですから、私はその点をひとつ日本銀行に要望したいと思うんです。その点についてもお答えいただきたい。  それから大蔵大臣ですね、税収がふえれば、クラウディングアウトのおそれがあるんで税収がふえれば国債発行減額も考慮するんだという趣旨のことを予算委員会でも言っておられたけれども、私はたかがしれていると思うんです、その減額では。ですから、補正予算を組むか組まぬかは別として、機会をとらえてやはり不急不要の経費、これはできるだけ徹底的に削減して、そうして赤字公債発行を徹底的に減額するという措置を当然とるべきじゃないかと思います。その点も伺いたい。
  198. 金子一平

    国務大臣金子一平君) まだ私ども——これは日銀当局からお話が出ると思いますけれども、クラウディングアウトというようなところまではいっていないと思うんです。それで先月ですか、先々月ですか、きょう手元に資料を持ってきておりませんが、事業債は初めいろんな計画があったようですけれども、現実に発行されたものは七割くらいにとどまったというような状況でございまして、私どもとしてはむしろ景気がある程度活発になって、もう国債と競合するくらいになってもらうと大変心強いなという感じでございます。  それから、やはり金融の繁閑もございますし、民間の事業債との競合の問題もございますから、そこはやはり十分に調節をとって、いやしくもクラウディングアウトのないように十分それは心得て措置してまいりたいと考えます。  それからいま最後にお話しの、できるだけ赤字国債を繰り越せとかあるいは削減しろというお話、私どもも不要不急の支出につきましては、これは予算成立したばかりですから、いますぐどれをどうするなんということを考えておりませんし、そういう状況であるかどうかはまだ判断すべき時期ではございませんが、今後の経済情勢の推移によりましては機動的に対処してまいりたいと考えております。
  199. 渡辺武

    渡辺武君 資金需給計画についてはどうしますか。
  200. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 先ほどの御質問のうちの第一点の事業債が昨年の暮れからことしにかけてクラウドアウトされたんではないかという御説でございますが、実態はそのようでないと認識いたしております。これはやはり個々の発行者と受託者の間の話し合いがつかなかったということでございまして、国債がクラウドアウトしたという実態ではございません。  それからもう一つ、資金需給と申しますのはこういうふうにきれいに一応つくってみるものが資金需給計画でございまして、これでたとえば貸し付けがふえればどうするかということになりますと、それは手持ちの債券を売って資金調達をし、貸し出しをする。貸し出しをすればそれは回り回ってまた預金として戻ってくるというような循環の問題もございますので、このとおりにきちんといくとはだれも思っておりませんので、そこの繁閑をどう調整するかということが大事な問題でございまして、いま資金需給計画がこういうふうになったから、これからちょっとはずれたらクラウドアウトだというふうには考えておりません。
  201. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 民間の資金需要が漸次経済活動の活発化とともに起きてくることは当然予想されるわけでございまするので、公共、民間、両部門の資金需要の調整をいかにするかという非常にむずかしい問題にこれから逢着するであろうということは私どもも予想しておるわけでございます。この調整はそのときどきの状況に応じましていたさなければなりませんので、あらかじめこういう状態にはこうするということを想定することは困難でございます。そのときの状況に応じまして公共資金需要あるいは民間資金需要、どちらかになお調整を図っていかなければならないということであろうというふうに考えております。  そういう意味で、あるいは経済状況の推移に応じましては、財政面に関しましても私どもの方から財政規模あるいはその資金の繁閑に応じました財政支出についてもあるいはお願いしなければならない場合もあろうかというふうに考えております。  国債の消化のために、成長通貨の範囲内に、私ども日本銀行の信用創出はその範囲内にとどめるという原則を私どもは堅持しておるわけでございますが、国債消化のためにこの私どもの信用供与の量をふやすというようなことは全く考えておりません。そういうことをいたしますると、それは物価上昇あるいはインフレということに直接つながるものでございまするので、厳にそういう点は戒めてまいりたいというふうに思っております。  国債の発行計画等につきまして、日本銀行も必要に応じて大蔵省にも言うべきことは言えという御示唆ございました。そのとおりだというふうに考えております。  十五兆の国債の消化をいかに順便に行うかということは、これは非常に重要なことでございまするので、この消化につきまして市場の状況に応じました順便な消化を図るということは私どもにとっても重要な要素でございます。そういう点につきましては、私ども意見は随時大蔵省にお願いをするつもりでございます。
  202. 中村利次

    中村利次君 きょう本委員会特例法案審議をやるという、前日のきのう、四月のゼロ発行をお決めになったわけでありますけれども、これはまあ確かに異常な事態だと言っていいと思いますから、きょうはもう午前中からずうっとこの問題を中心にして質疑応答が行われておりますけれども、私もやっぱりこれは十五兆二千七百億の公債を、本年度予算がもう成立をしたわけでありますから、発行をしてこれを消化しなきゃいけない。ところがこの四月ですね、四月に発行ができない、これはもう本当に異常だと思いますね。  そこで、これは公債が、国債が暴落をして発行すべきではないという判断に立たざるを得なくなったと思うんですけれども、その暴落の原因がいろいろの御答弁を承っておりますと、大臣からは国債を魅力あるものにしなきゃいけない、そういう手だてを考えていかなきゃいけないという御答弁もございましたし、理財局長からは、市況をにらみながら柔軟な姿勢で発行条件等については多様化の問題も考えていきたい、これは私は当然と言えば当然そういうことだろうと思いますけれども、しかし柔軟な姿勢をとる、あるいは発行条件の多様化を考えるといいましても、市況そのものがやっぱりこれは回復をしないことにはどうにもならぬわけですね。  ですから、市況に確かに行き過ぎがあるかもしれない、しかしなぜ市況がそういうぐあいに暴落をしたのか、これは金融引き締めだとか公定歩合を上げるということに私はやっぱり原因があると思うんですが、そのほかに何かこの国債暴落の要因があるでしょうか、まずお伺いします。
  203. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 国債暴落の要因そのほかということでございますが、大体、中村委員が御指摘原因が主なものだろうと思います。何といたしましても、一つは大量国債の発行が続く、またここ一、二年大量国債を発行してそのストックが市中に相当ある、その上に今後も大量国債の発行が続くであろうという、そういう公社債市場における大量発行に対する重圧感というものが一つ要因であろうと思います。しかし、これは公社債市場を整備し、あるいはいろいろ今後の発行条件を弾力化することによって私は十分解決し得る問題だろうと思います。  ただ、もう一つ原因でございますいわゆる先行き金利が高くなるというのではないかというこの心理的要因、これは先ほど来申し上げておりますように、三月に条件を改定をいたしましたときに、その心理要因が払拭されればこれでまた安定軌道に乗るんではないかというふうに感じておりましたが、むしろそれが逆に増幅されている現状におきましては、やはり金融政策の先行きについて市場が非常にその落ち行く先が見きわめ得ない、きっと金利高になるに違いない、そういう要因があることがこの大きな暴落の原因であろうと思います。  暴落の原因というのは、価格というものはやっぱり売りと買いで成立するわけでございますけれども、売り手の方は売り手の方で、先行き下がるかもしれないからもっと下がる前に売った方がキャピタルロスは少ない、買う方は、もっと先になれば、もっと安くなれば高い金利で回せるような買い物になるはずだと、そこで出会いがないわけでございますね。ですから一方的に棒下げになったということでございます。  そこで、先ほど来申し上げておりますように、値ごろ感をつかめば需給がだんだん見合うようになってくる、売りがあればそれに向かう買いがあるという状況になる。それがどういう段階でいっ来るかという問題でございますが、私どもは、さっきも申し上げましたが、先週の土曜日来三十銭、六十銭というふうに日を追っていわゆる問題になっております六・一国債の価格上昇いたしております、だんだんそういう意味で金利の天井感あるいは底値感というものをつかんできて、ここから、いまから市場がどういうふうな経路をたどるかということが大事なことだろうと思います。その辺の推移が見きわめられれば、ああ、これが市場の実勢だなあというものが感じ取れるようになるんではないか、そういうふうに期待をいたしておるのが現状でございます。
  204. 中村利次

    中村利次君 公社債市場にしても証券市場にしても、元来そういう性格のものだと思いますね。それは私は、商品市場にしてもすべて大蔵省はもう百も御承知でありますから、したがって、値ごろ感といいましても、どういうんでしょうかね、非常にこれは微妙なあれですけれども、金融の引き締めがどの程度のものになるのか、あるいは公定歩合が〇・五だとか〇・七五だとかいうことが新聞等には報道されておりますけれども、そういうものを先取りして織り込んでいくというのが公社債市場だとか証券市場だと思いますよ。ですから、日銀にしても大蔵省にしても、そういう、何というんですかね、慎重は結構だけれども、そういうはやし材料をそのままにしておいて市況の正常化ということをお待ちになっても、これは私はいたずらに混乱を増幅するだけで、余りどうも、そういうことを百も御承知になっておる大蔵省のやり方としてはいかがであろうかと思うんですよ。その点はどういうぐあいにお考えですか。
  205. 金子一平

    国務大臣金子一平君) いまの中村さんの御指摘は私も十分心得ておるつもりですが、ただ、先ほど来、本朝来申し上げておりますように、いろんな方面の問題を総合的に判断しなきゃいかぬものですから、そういった点をいろいろ検討しながらいまやっておる最中でございます。
  206. 中村利次

    中村利次君 これは確かに微妙ですからね、インフレとそれから景気対策をどうするんだ、どっちをとるんだ、いわく言いがたしでしてね。まあ日銀の副総裁じゃないけれども、これは両にらみという以外にはないと思うんですよ。しかし、日本銀行の私は姿勢というものは実に明確だと思いますね。やっぱりインフレに対してもう徹底的な警戒をしなきゃいかぬ、警戒ではなくてやはり行動を起こさなくちゃいかぬという姿勢ですよね。いままでは財政主導型の景気回復金融面からもてこ入れをしてきたと。それは緩和政策であり公定歩合、低金利政策で、そいつを見直そうというのがもうはっきり姿勢にあらわれているわけでしてね。ただ、景気回復が、冷やしちゃいけない、両にらみと言いながらも、国内消費を主軸にしてきわめて底がたいということは、これはやっぱりインフレ対策に重点を置いていいんだ、かじ取りを変更していいんだというぐあいにこれは受け取られますよ。私は景気回復については必ずしも日銀と同じ見方はできません。どういう視点でとらえるかという点からいきますと、やっぱり雇用問題はいまだ改善されておりませんし、労働市場は荒れっぱなしですから、こういう問題がやっぱり改善されて、国民生活が将来に向かって安定するようにならないと、景気回復はこれで結構だということにはならぬと思いますから、ある意味では大蔵省の優柔不断な、あるいは何かずるいぐらいに姿勢を明らかにしない点についても、むしろその方がいいかもしれないとも思いますが、しかし、やはり公債発行はこのままでいきますと、理財局長は幾らか市況は持ち直しぎみであると言われましたが、私はこれは行き過ぎに対する是正にすぎないんであって、こんなものは、それは公社債市場は大体値ごろ感をつかんだという、そういうことにはならないと思いますよ。ですからやっぱり政府が、大蔵省が金融政策、これは日銀の分野だとおっしゃろうとも、金利政策についてどういう姿勢を持っておるのか、こういうものがやっぱり慎重な姿勢であいまいもことしておる限りは、五月の発行も私はきわめて危なっかしい。  それで、やっぱり柔軟な姿勢で対応をして発行条件の多様化を図るとおっしゃっても、公社債、まあこれは利回りだけで魅力のあるものになるとは言いません。ほかの条件もいろいろありますよ。しかし、公社債だけが金利の上で独走できますか。できないでしょう。いかがですか。
  207. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 金利を考えます場合に長短金利、大きく分けて二つあろうかと思いますけれども、長短金利の格差というものはそのときどきの資金需給なり経済情勢に応じまして、たとえば長期プライムと短期プライムの格差が縮まる時代もございますし、上がる時代もある。あるいはまたアメリカ等におきまして例もありますように、短期金利の方が高くて長期金利の方が低いという局面もあり得ることでございます。そういう意味におきましては、国債の金利だけがひとり歩きできるかという御質問に対しましては、国債金利というものは長期金利でございますので、国債金利を引き上げるということになりますと、債券市場で事業債も出されているというようなことになりますと、やはり長期金利には相当の影響があるけれども短期金利については、別にこれを理の当然としてこれが連動しなくてはならないというものではないと思います。
  208. 中村利次

    中村利次君 わかったようなわからないような御答弁ですがね。やっぱり限界があるはずですよね。だからそういう面においても、どうも非常に五月の発行についてもこのままでは憂いがある。  それから、大量の公債発行という面でも、これは大蔵省の財政収支試算、この試算にはいろんな問題点を指摘することはできますけれども、大蔵省の試算をそっくりそのまま考えても、やっぱり昭和六十年には残高百四十兆ばかりですか、それから予算規模に占める国債費の割合も一五%強ですよね。ですからそういうぐあいに、これは大蔵省の試算をもってしても五十九年で特例公債がゼロになる。しかし、私どもに言わせるとそいつはもう非常に困難であろう。その甘い試算によっても、大量公債は毎年発行されていくわけでありますから、いろんな面で見て楽観できるようなそういう要因、条件というものはない。そうすれば、私は、やっぱりこれはいやであろうとおうであろうと、金融政策がどうなるか、金利政策がどうなるかというものに連動させない限りは、これは市況が国債発行に有利なことには断じてならぬと思うんですけれども、この点はどうですか。これは大臣でも理財局長でもどちらでも結構ですけれども、いかがでしょう。
  209. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 大変むずかしい問題でございますが、やはりいま私どもはすぐ変えようという気持ちはありません、金利政策全体を。しかし、今後の問題として、そういう御指摘のような点も十分踏まえて検討さしていただきたいと考えております。
  210. 中村利次

    中村利次君 私はそうならざるを得ないと思いますしね。ところが、私はそうすべきであるというんではなくて、そうなるのはきわめて困るという、逆説みたいですけれども、私はやっぱりインフレに対してものすごい危機感があるんですよ。この点については私は大体よくわかります、日銀がインフレ対策というものを非常に強くお考えになっておるのが。これは国内要因あるいは国際的な要因いろいろありましょうけれども、どの一つをとっても、私は楽観できるものはない。  国際市況、それに石油問題をとりましても、いまもうすでに石油にかかわる仮需要が日本国内で始まっておる。これは大体関心を持っておれば、これを持っておる人たちの中ではこれを否定できる者はいませんね。ところが、IEAで五%の節約を決めましたが、私はこの五%の節約が大変困難であろうと思うんです。これは六月に開かれますOPECの七月以降の価格問題の取り決めは、この石油の節約ができるかどうか、石油の需給がこれは将来じゃなくて当面どうなんだということが決定的な要因になることは間違いないわけでありますから、石油の大食い国のアメリカ日本——アメリカなんか強烈な節約の政策を発表しています。日本も五%節約を発表していますけれどもアメリカを見たって、私は実現は恐らく不可能ではないか。日本の場合は私ははっきりこれは五%の節約は結果として恐らくだめだろう、こう思いますよ。  そうなりますと、七月以降のOPECの石油価格の決定は非常にこれは私は悲観的な見方をした方がいい。  それから、イランから輸入するのでも、決定価格ではないと言うけれども十七ドル、これは十四ドル五十二セントの二〇%近いプレミアムでしょう。だからいろんなのを考えますと、インフレ要因というものはきわめてこれは強くて警戒すべきである。そこへ、先ほどから申し上げておりますようないろんな理由で十五兆二千七百億の公債を何としても消化しなきゃならないということになりますと、これがまたインフレ要因になるということになります。これは金融金利政策を含めて、下手まごつくとインフレ要因をつくりかねない。ということになると、全くこれはどういうことになるんだという心配があります。  余りこういうことを言うと、どうも日本人なんというものは大変に性悪民族の面も経済的にはあるようでありまして、四十七年のあのどうにもならないインフレにしても、列島改造ムードの中で土地、商品に対する仮需要が、ダブついた過剰流動性がそこにばあっと集中をして、ああいうどうにもならないことになったわけでありますから、それは政府がこういうことを是認されるとどえらいことになるのかもしれませんけれども、やっぱりそういう警戒感なんというものは持って予算の執行その他の政策を実行してもらわなきゃ困るんですけれども、いかがでしょう、大臣。
  211. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 石油の問題は、とにかく六月の総会の決定がどうなるかなんでございますけれども、ただいまのところは十分一−三月の輸入は前年以上の輸入も手当て済みでございますし、イランも半分くらい従来の実績のものを輸出して、半分くらいを輸出してくれると言っておりますし、通産当局に聞いてみますと、油の量自体はそう心配はないと。問題は五%の節約をどうやって守るかということでございましょう。甘いと言われるだろうと思いますが、サウジアラビアもそうサーチャージを上げるということでもないようでございますから、これはもう少し先へ行って様子を見ないと、いまから大変だぞ大変だぞと言うのはかえってインフレムードをあおるようなことになりやせぬかと、私どもは正直恐れておるわけでございます。  それで私ども、先ほど来いろいろお話がございましたような卸売物価の最近の上昇につきましては十分心得ておるんでございますが、簡単にこれ、外国からの要因による卸売物価での上昇でございますから、金融的措置だけで十分その芽が摘めるかどうか、いささかそういう点については疑問に思っておるわけでございます。特に日本の置かれた環境が列島改造ブームに沸いておるころと違います。あるいは世界各国が相当インフレ上昇ぎみの、上昇傾向にあった経済の時代と大分違いますから、そこら辺は一律にするわけにもいきませんけれども、いろいろ本朝来お話のございましたような点は慎重に考えて、私ども日本の経済をお預かりし、金融をお預かりしている次第でございますので、少なくともインフレムードをかきたてたり、またそれへ拍車をかけるようなことのないよう、とにかく全力を挙げてやってまいりたいというかたい決意を持っておる次第でございます。いろいろの御指摘ございましたけれども、今後極力機動的に対処してまいりたい。  ただ、いま金融政策の変更をまだ決断するまでに至りませんと申し上げておりますのは、中村さんからも御指摘のありましたような、角をためて牛を殺すようなことになっちゃ大変でございますので、そこの兼ね合いをどうするかという判断、これにつきましては、各方面からいろいろ意見も出ておりますし、十分意見を聞きながら大局的に誤ることのないようにやってまいりたいと考えておる次第でございます。
  212. 中村利次

    中村利次君 最後の、大局を誤らないようにというのが結論でしょう。何かナマズ問答みたいなのをやって、もどかしくてしょうがないけれども、やっぱりそれほどこれは、双方がわかっていて、何ともその……
  213. 金子一平

    国務大臣金子一平君) むずかしいんです。
  214. 中村利次

    中村利次君 いや、私どもだって、これはもうほんとに、つかまえてどうですと、こうやりたいんだけれども、これはやっぱりあんまりどうもつかまえて新聞の見出しにでかでかと載ることになったら、これはえらいことになるんでしょうから……。  ただ、私は、本当にナマズ問答の繰り返しでしょうがありませんがね、これは決して大臣の御答弁のように甘い見方をしていらっしゃるとは思いません。そういうことであったら、本当に私は公債発行は五月も非常にむずかしくなるし、五十四年度中に十五兆二千七百億の消化はまず不可能ではないかと思いますよ、極端に言えば。  これは、油の問題は私はもう本当に研究していますからね、確かに日本の場合、一−三月期、四−六月期、これは量の上では心配ありません。しかし、これはいろんなあれがありますけれども、私は、これはアメリカだってこの節約には失敗するし、これはカーター大統領のエネルギー政策というのは失敗の連続なんですから。それから日本石油の節約だって、私は予算委員会でも聞いて、時間が足りなくて中途半端になっちゃったんですがね、もうこの五%の節約の中に一%が原子力に転嫁をするとか石炭にかえる。これはできないんですよ。  特に何か、アメリカでああいうどえらいことを、ばかみたいなことをやらかしてくれて、これは全くどうしようもなくなったわけでありますから、これはほかには打つ手はございません。  ですから、私はIEAで決めた五%節約が本当に成功して、六月になれば大体見通しがわかりますから、これは石油節約に石油の大食い国が成功すれば、七月以降の原油の心配するほどの値上げはないと思いますけれども、恐らくこれは、そういうあれはあるまい。そういう甘い見通しは立てられまい。  ですから、もう時間もなくなりましたから、ナマズ問答を続けてもしようがないですからこれでやめますけれども、もう御答弁も要りませんよ。しかし、本当に答弁としては結構ですから実践してください。この心配を杞憂にするためのひとつ実践をぜひお願いをして、質問を終わります。
  215. 市川房枝

    ○市川房枝君 いままでの各委員の方々の御質問と重複いたしますけれども、私は、一般家庭の主婦たちが持っている、きわめて常識的な疑問の幾つかを、大臣及び関係当局の方から伺いたいと思います。  きょうの各新聞によりますと、大蔵省はきのう、この四月発行予定の五十四年度の分の国債のうち、市中消化分をゼロにする、これは売り出さないということなんでしょうね、ことを決定されたと出ておりますが、それはどういう理由でございましょうか。  新聞によりますと、四月六日には額面百円の国債が、大口売買で八十八円六十九銭に値下がりして売れなくなったと、こういうんでしょうか。私どもは、これは大変なことになったと実は思いますが、心配はありませんか。安心できるように御説明を願いたいと思います。
  216. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 新聞に報ぜられておりますことはまさに事実でございまして、市中消化分というものを四月は発行しないということの意味は、国債の発行は、市中で銀行を中心とする引受シンジケート団が引き受けるシ団引き受けの発行方式と、それから公募入札をして金融機関その他が入札方式によって引き受ける発行方式と、それから資金運用部資金で引き受ける発行方式と、現在三つあるわけでございますが、今回中止を決定いたしましたのはシ団が引き受けるもの、シ団が引き受けるものというのは、一般の家庭の御主婦の方に対してはどういう関係を持つかと申しますと、シ団が引き受けます国債のうち、証券会社が何がしかの金額を中で引き受けまして、それを一般家庭、個人投資家に売っているわけでございます。この分を四月については中止をしたということでございます。  で、中止をいたしました理由と申しますのは、いま市川委員が御指摘のように、九十九円五十銭の価格でかつて発行した国債が、九十円そこそこの値段である。非常に、市場の流通利回りと現在発行しております発行条件との差がずいぶんございます。この差があるままで発行するということは非常に無理な消化を強いることになるわけでございまして、これを消化された方も実際の利回りが非常に高いのに、こんな安い利回りのものを持ってもしようがないと、先行きこれ十年持つものでございますので、もっといい条件でないとなかなかこんなもの買えないよというような空気が市中にあるわけでございます。  そういうことでございますれば、この際発行をやめようと、もちろん新しくいい条件にしてお化粧をして売り出すということもあるわけでございますけれども、新しい条件にするにはどういう条件にしたらいいかというのが現在の金融情勢上はっきりつかみにくい。だからそこがつかめるまで、そういう金融情勢が安定するまでは、しばらく今月の発行を見合わせようということだったわけでございます。
  217. 市川房枝

    ○市川房枝君 将来もっと下がることはありませんか。それだったら一般の人たちちょっと買うわけにいかぬということになりますが、どうですか。
  218. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 御承知のように、債券というのは十年間国債というものは普通のものは持っていただくわけでございます。日本のいまから十年前の経済と今日の経済を比べてみますと、金利が上がった時代も下がった時代もございます。金利が上がるような時代は金利が上がる前に買った国債というのは、当然値下がりがしてまいりますし、金利が下がっていく時代でございますと、かつて金利が高い時代に買ったものというものは、どんどんこれはむしろ九十九円で買ったものが百六円にも百七円にもなるという状況でございます。ですから、いまの国債が将来下がるか上がるかというのは、十年の間には上げもあり下げもあると、債券というものはそういう性質のものだ。  ただこの下がる、その値段が下がるということは、中途で解約してこれを個人の方がお売りになる際にそういう現象が起きるわけでございます。ある一定の百万円なら百万円という貯蓄を自分の計画で、いま六分五厘の金利なら一年六万五千円金利が入ってくると、これで自分の生活設計を立てる、貯蓄手段にするんだという覚悟で十年持っていただくなら、十年目には、十年間は毎年六万五千円の金利が入ってきて、十年目には百万円の元本が返ってくる。これが途中で解約するということになりますと、いまみたいに値段が下がっておる、解約してかえって得をする場合もございます。百円で買ったものが百八円だと。債券というものはそういうものでございますし、個人がお買いいただくというのは、そういう長期のプランとして長く持って、最後まで満期まで持っていただくということが一番の要諦だろうと思います。  ただ、その場合に問題なのは昭和五十年に百円で買ったものが、昭和六十年に百円で返ってくるわけでございますが、その間のインフレが大きかったらこれ何にもならないわけでございます。ですから、個人にこういう国債を持っていただくために一番大事なことは、そういう途中の価格の上下を心配するよりも、全体としてインフレにならないように、百円で買ったものが十年先に百円で戻ったときに同じ百円の価値を持つようなそういう経済政策の方が大事なんだろうと思います。
  219. 市川房枝

    ○市川房枝君 五十四年度予算では国債は建設国債が七兆二千百五十億円ですか、それから赤字国債が八兆五百五十億円で、合計十五兆二千七百億円で予算の総額の約四〇%になっている。これは全部借金なわけなんですが、一般の国民から言えば非常にびっくりみんなするわけですが、これみんなちゃんと消化できるといいますか、売れるお見込みですか。あるいはその売るために一体どんな手段をおとりになるか。特に婦人たちに対してどういうふうな説明といいますか、あれをなさるか。  いまお話しの、国債を途中で売らないでちゃんと十年間持っていた方が得だというか、その方が安心だということの、これが必ずしもいまみんなに徹底していませんね。その方法をひとつ伺いたい。
  220. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 十五兆二千七百億の国債が予算で認められ、ことしの国の予算の執行、たとえば福祉のためも教育のためも、このお金が調達できなければ予算で目指した政策ができないわけでございますので、私どもはあらゆる工夫をこらしてこの十五兆二千億は必ず消化しなくてはならない。  その消化のためにどういうことをするかというお話でございますが、けさほど以来御議論があったように、長いものがいやがられるなら短いものにかえて発行するとか、あるいはいまの金利条件に合わないということであれば、そのときそのときの金融情勢に応じて金利の改定をするとかいうような工夫をこらして、これを消化してまいりたいと思います。  ただ、一般の家庭の方に本当にもしそういうことであるとすれば、私どものPRの不足もあるんでございますが、本来国債というものは投機のための債券ではございませんで、キャピタルゲインを得るために、これは将来値上がりするかもしれないからというそういう性質の商品ではない。これは本当の意味で、やはり十年計画的に持っていただくものなんでございますので、先ほど御説明したような趣旨を十分一般の個人の方々にもおわかりいただくように努力をしたいと思います。  さらには、個人の消化の促進ということで、いろいろ知られていない面もございます。いま銀行預金ですと一人三百万円はマル優制度といって税が減免されております。定額貯金もそうでございます。国債でもそうでございます。ところが、一人三百万円の限度というのがございますが、たとえば、銀行貯金を三百万円なすった御婦人でも、別に国債をそれに三百万円上乗せして、その三百万円はいわゆる特別マル優という制度で税金が免除されることになっている。そうしますと、預貯金だけですと三百万円ですが、国債を買っていただければ六百万円までは免税になります。そういう制度もございます。これは一般的によく利用されております。  それから、たとえば十年間持つつもりで百万円国債を買ったけれども途中でお金が要るようになった、売ったらこれひょっとしたら百万円で買ったものが九十六万円ぐらいで損をするかもしれない、十年持っておれば百万円戻ってくるんだから売りたくはないと、そういうお方にはその国債を証券会社に持って行っていただければ、その国債を担保にいたしまして、現在ですと担保の掛け値が九〇%ぐらいでございますけれども、それでお金も借りられるというような方法もございます。  それからまた、御婦人方がお買いいただくのに、何も十万、百万というものを一挙にお買いいただく必要はないんで、一口五千円から国債は買えるというような制度もつくってございます。もし私どもがそういう点についてPR不足でございましたら、その点は今後気をつけまして、十分そういう点が御理解いただけるような手だてを尽くしてまいりたいと思います。
  221. 市川房枝

    ○市川房枝君 私ども家庭の婦人から言いますというと、四割借金で暮らすということですね、これは家庭ではとうてい考えられない。第一貸してくれるところもないし、あるいは借りたって返す当てもないわけなんでして、国が約半額、半分近くも借金で暮らしているということ聞いて、本当はみんなびっくりしているわけなんですが、家庭で借金するという場合、限度は大体二割までぐらいなんであって、そして、もし借金をした場合には家庭はできるだけ節約する、むだを省く、買いたいものも買わないということで支出を減す。いや、収入を増すためには家庭、ことに主婦ですというとそれこそバイトに行って、アルバイトでちょっと収入を図るというようなことでやりくりをやっているわけなんですけれども、国債の場合、私は建設国債はこれはやむを得ないと思うんですけれども、いわゆる今度の赤字国債というものは本当はなくしてほしいんだけれども、あるいはそれこそせいぜい二割ぐらいまで減すということはできないものかどうか、それをちょっと伺いたいんです。
  222. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 四割も赤字国債を出すというのは大変異例のことでございますけれども、ここ数年来、石油ショック後の不況から日本経済なかなか立ち直れませんでした。それで去年も補正予算組んでいろいろやったんですが、なかなか思わしくないんで、ある程度やっぱり景気刺激策予算としては講ぜざるを得ない。しかし、一方においては歳入財源がないんです。御承知のとおりことしの五月まで五十三年度の税収に取り込んじゃっておりますから大変なことでございます。それで四千億くらいの増税をお願いして先般片づけていただいたわけでございますが、一方において不要不急のものは極力切りたいということでやったんでございますけれども、やはり景気をある程度維持し刺激するためには公共事業費を伸ばさなきゃいけませんし、それから社会福祉と文教だけは、これはやはりある程度伸ばさなきゃいけませんので、そういうことをやりますとどうしてもあとは借金に頼らざるを得ないということで、まあ特殊異例の措置としてこういうことになったわけでございますが、市川先生おっしゃるように、できれば四割なんということはことし限りにして、来年からはもっとどんどん圧縮していきたい。そのためには予算全体の規模を圧縮することが大事でございまして、大変むずかしい仕事でございますけれども、私どもはこれに真剣に取り組んでまいりたいという気持ちでおります。
  223. 市川房枝

    ○市川房枝君 この莫大な国債に対して、財政法でちゃんと償還の計画もつけなきゃいかぬということになってそれぞれついておるのを拝見したんですが、結局、何年に幾ら返す、そして十年先の六十四年度までには全額を返すという計算にはなっているんだけれど、返すというときに一体その金があるのか。いま大臣は歳入が少ない、だから公債発行せざるを得ないとおっしゃって、まあそれは現状でありましょうけれども、結局借金を返すためにまた借金をする。公債を返すために公債をまた出す。一種の自転車経営とでもいいますか、それと似ているようでありますが、こういう状態で行って本当に——一応数字の上には出てますけど、私どもの多くはこんなことを続けてだんだん借金が多くなったんでは破産しちゃうと、まあ国が破産するとは一体どういうことになるのか問題ありますけれど、普通の家庭ではとても想像できないと、こういうふうに思うわけですが、いまのお話の福祉なんかは、それこそ節約をしないでもっと困っておる人たちにしてほしいんですが、そのために結局は歳入が少ないから公債にせざるを得ないということでしょうけれども、国でも結局第一番には国の行政のむだを省くというか、あるいは行政の整理というか改革というか、いわゆるチープガバメントといいますか、それが第一番に必要なんだけども、これは大蔵省の管轄とは別になりましょうけれども、私ども国民から言うというとその方がちっとも進んでいないというか——いや、これは内閣の上の力で決定なさればできることなんだけれども、それをいままでも実行されなかったと、こういうふうに思うんです。  まあその節約の方が第一で、それからそれで足りないと国の場合は増税、税金を国民から取り上げると、こういうことになるわけでして、今度のこの巨額な公債発行の裏にはといいましょうか、一般消費税の創設というのはやっぱりそのためでないのかという疑問を持つんですけれども、その関係はいかがでしょうか。
  224. 吉野良彦

    政府委員(吉野良彦君) まず、公債償還財源の問題でございますが、仕組みの問題はもう先生御承知のとおりかと思いますので省略をさしていただきますが、むしろお尋ねは、果たして返していく財源が今後年々本当に確保されていくのかと、こういうお尋ねかと存じます。まさしく私どももその点を深刻に考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、問題はやはりもとを断たなければいけないわけでございます。先生先ほども指摘ございましたが、公債の中でもとりわけ特例公債がやはり不健全で問題であろうと、こういう御指摘でございましたが、私どもそのとおりに考えているわけでございます。  そこで、すでに財政収支試算というような形で、試算ではございますが国会へも御提出をいたしまして、今後の財政運営の手がかりにしていきたいと考えているわけでございますが、その試算によりますれば、ともかくも五十九年度には特例公債をゼロにしたい。  と申しますのは、六十年度から五十年度以来発行いたしてまいりました特例公債償還が本格的に始まってまいりますので、少なくともその特例公債償還が始まります前にはもとを断つという意味で特例公債発行それ自体をゼロにして償還の余力を、財政の力をつけていく必要がある、そういう考え方財政収支試算もお出しをしているわけでございます。  そこで、この財政収支試算でもごらんいただけますとおり、五十九年度ゼロと私簡単に申しましたけれども、この財政収支試算をよくごらんいただければおわかりかと存じますが、歳出の面でもそれから歳入の面でもまことに容易ならぬ実は政策努力を前提にしているわけでございます。歳出の面におきましても、特に経常部門、これは社会保障の問題、文教の問題、いろんな問題が入っているわけでございますが、極力これも切り詰めてまいる、そういう歳出面の徹底した努力が必要である。それからまた、それだけではどうしてもつじつまと申しますか、収支が償いませんことはほぼ明らかでございますので、やはり歳入の面でも、増税を含みまして国民の皆様方に御理解をいただいて実現をさせていただくようにお願いをしていかなければならない。そういう政策努力、実に容易ならぬ政策努力を込めました財政収支試算を実はお出しをして御論議をいただいているわけでございます。  そこで、さらに第三点の、そういういろいろな政策的な努力もさることながら、まず役所自身行政改革も含めましてもっと徹底した努力が要るのではないか、まことにまたこれも御指摘のとおりかと思います。これも再三大臣からもいろいろな委員会でお答えしておりますが、五十四年度予算におきましても役所の生活費というような事務費は徹底的にかなり切り詰めております。いろんな面で努力をいたしておりますし、それからまたいわゆる行政改革の問題でございますけれども、これも定員の削減その他、私どもとしては必ずしもまだ十分だと、満点だと言うわけにはまいらぬとは思いますけれども、できるだけの努力は五十四年度におきましてもやったつもりではございます。ですから、これからもますます従来以上にそういう努力を着実に積み重ねていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  225. 市川房枝

    ○市川房枝君 国としては、足りない場合にはやっぱり節約するか、それから結局はしかし国民からの税金によるほかないということはこれは明らかで、認めるわけですが、一般消費税の問題がいろいろ議論が出ているのですけれども、一般の国民に対する税金でありまして、これは望ましくないと私も思っているのですが、不公正税制の改正によってまた金持ちだとか不当利得業者のようなのに課税すれば相当の収入が得られるのではないかと思います。  不公正税制につきましては、先般成立しました租税特別措置法の改正によってある程度の増税、増収がされるかと思いますが、私もあの当時申しましたけれども、もっと強化してもっと税収をふやしたらいいじゃないかと思いますし、それから、あの法律とはちょっと別ですけれども、法人税というものなんかを見てみますると、欧米諸国と比べると日本はずいぶん低い。たとえば、日本は四〇%なのにアメリカでは四六%、フランスは五〇%、イギリスは五二%、西ドイツは五六%ということになっているので、この際私はもう一遍といいましょうか、この前いろいろ税制のことはお考えになったかもしれないけれども、もう一遍税制を洗い直して、そしてそこから取れるべきものをお取りになったらいいと思いますが、いかがでしょうか。
  226. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 税制の面につきましては、できるだけ私どもことしこっきりの特別措置の見直しで済ますつもりはないのでありますが、ただ一般に言われているように、富裕税を創設してみたり土地再評価税を簡単にできるとお考えになる方多いかもしれませんけれども、そう簡単にいかないのと、税収が大したことないのと、それで法人個人のいろんな仕組みがあります。これをもう切り離して全部御破算にして税収を出したらどうかという御意見もありますけれども、だからといっていま出している国債の十兆、十五兆という欠陥を毎年カバーできるような金額には私はならぬと思います。また、それをやったら大変なことだと考えておるわけでございます。  それから、法人税いまちょっと四〇%と四六%という御指摘がありましたけれども、実効税率はせいぜい一%足らず、前後だと思いまして、これも十分考えておりますけれども、それは特別措置の準備金とかいろいろなものを圧縮することによってだんだんいま各国の標準に近づいておりますけれども、これは仮に一%、二%課税してみても、とても何兆円という大きな金が出るわけじゃないのでございます。どういうかっこうで税負担をお願いするか、十分これから検討し御審議をいただきたいと考えております。
  227. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま私が指摘した点なんか大したことはないとおっしゃって、それは十五兆に比べれば大したことはないのであるのですけれども、しかし国民の間でといいますか、あるいは各政党の間で、この税金はどうだなんと指摘されたものは、私、それについて、これはこうしたってこれだけしか入りませんということをむしろ数字でもっておっしゃってくださると、ああそうかもっとたくさん入ると思ったんだけれどもというあれも出てくるので、ただ、それは大したことありません、大したことありませんじゃやっぱりちょっと納得はいかないと思うのですがね。
  228. 金子一平

    国務大臣金子一平君) 御指摘のとおり、その点は、こういう手段も尽くしましたけれどもということでなければ国民的な合意は得られないということは十分心得ております。
  229. 市川房枝

    ○市川房枝君 最後に、この莫大な公債を消化するように努力をするとさっきお話ありましたけれども、これもし売れ残ったらどうなりますか。それを心配しているのです。そして、それは日本銀行が肩がわりしますか。そうすると通貨が膨張して、それこそ、さっきちょっとお話に出ているインフレになる。物価はもういますでに高くなってきているのだけれどもということで、家庭の主婦でもインフレいやだと言ってみんな心配を実はしているのですが、いや絶対にインフレにはならぬと。先ほどからお話はちょいちょい出ていますけれども、その点を最後に伺っておきたいと思いますが。
  230. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 国債の売れ残りという言葉がよく言われておりますけれども、この国債の売れ残りというのはどういうことかと申しますと、先ほど申し上げましたように、今月国債を五千億発行いたします。シ団がそれを引き受けるわけでございますが、五千億のうち、銀行が四千億引き受けましょう、あと証券会社が千億引き受けましょうといって、証券会社が責任を持って千億持っていただくわけでございますね。その千億を証券会社が個人や法人に売ったときに、状況次第によっては七十億、八十億といういわゆる募集残、いまのお言葉で言うと売れ残りみたいなものがある時点をとらえてみればあったということでございまして、それは結局は証券会社がたとえば今月二十日までに売るのだという予定が五日か六日延びたというだけであって現実に売れ残りというのは出ていないわけでございます。  市川委員が御指摘の、十五兆二千億円の中で国債が売れ残ったらという御質問は、十五兆二千億円が完全に消化されなかったらということでございますね。
  231. 市川房枝

    ○市川房枝君 そういうことです。
  232. 田中敬

    政府委員(田中敬君) そういうことでございますとこれは大変なことでございますので、私どもはいろいろな、けさほどから申し上げていますような工夫をこらして、引受シ団に引き受けていただくとか、あるいは公募をいたしますればお買いになる方はこれだけの金利なら買うといって入札をなさるわけでございますから、そういう方法で売れ残りがないように必ずいたしたいという、売れ残ったときに御指摘のように日銀が信用を供与して実質日銀引き受けになるようなことはこれは財政法でも禁じていることでございますし、御指摘のようにそれこそインフレマネーの供給になる恐ろしいことでございますので、さようなことは絶対にいたさないというつもりでございます。
  233. 市川房枝

    ○市川房枝君 ありがとうございました。  終わりました。
  234. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 本案に対する本日の質疑は、この程度にいたします。  次回は明十一日、午後一時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会      —————・—————