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渡辺武君 それはむちゃな答弁ですよ。第一、県や市の要望に基づいてという趣旨のことを言われたけれ
ども、そこに一番の
問題点があると思いますね。
と申しますのは、私も現地調査しましたけれ
ども、私現地の方々がほかに空港を持っていってくれと、平たく言えば。そう言っていることはまことに道理があると考えざるを得ないんです。あれは人口六十五万の町ですね、たしか。その人口密集地域の上を飛行機が通るわけですね。しかもジェット機になりますと町の上ずっとこう回ると、大体半径六、七キロのところでしょう。町じゅういわば騒音の下になるという条件のもとで、騒音の問題あり、それからまたいろんな危険性の問題あり、地元の人たちが強い危惧の念を抱くというのは当然のことだと私は思うんです。この間ジェット機の試験乗り入れがあったときみんなびっくり仰天したわけですよ、もう大変なことだと。しかもあそこには、葉ネギといって、東京近郊でつくっている白い根の深いやつとは違って、地上に葉っぱで出ているネギですね、非常においしいものですけれ
ども。あれがこの直後に、恐らくこれはジェットの燃料がかかったからじゃないかと思われるわけですが、葉っぱに斑点ができて売り物にならないというような状態まで生まれているわけですね。そういう事態があるだけでなくて、あの広島の地勢ですね、地形、これはもう私申し上げるまでもなく、山で囲んでいるわけですね。海の方には安芸の宮島がある。いわば盆地ですよ。
アメリカが原爆落とすに一番適当な地として選んだすりばち型の地域ですよ。そういうところですから、だから私、飛行機の乗務員などでつくっている民航労連が航空安全推進連絡会議というのをつくっております。その人たちに意見聞いてみたんです。
そうしますと、あの地形はすりばち状の地形だと、その中での操縦は山の斜面が迫って心理的な圧迫は想像を超えると言っております。そしてもし西風が吹いたような場合には、機体が流されて山の方にずうっと接近するというんですね。それでその危険が一層増して衝突防止の警報機が鳴りっ放しの状態で飛ばなければならない、まさに神わざ的な飛行にならざるを得ないと、こういうことを言っているんです。もちろんパイロットさんですから、だから十分に慣熟すればそういう危険なところもやっていけるとは言っておられますよ。言っているけれ
ども、しかし飛行機のことであり、特別に気象条件が悪く、それからまた地形もいま言ったような
状況ですから、いつ何が起こるかわからぬというのが、これは当然考えなきゃならぬことだと思うんですね。
それで人口密集地の上を、すぐ近くに飛行場があって、その上を飛行機が飛ぶなんていう飛行場は、いまは何でしょう、鹿児島空港だって熊本空港だって町にすぐ接近していたのをずいぶん遠くまで移しているわけですよ。大阪空港だってそうでしょう。いま騒音問題で大きな訴訟が起こっているという
状況で、これをどこへ移転させようかというのが重要な問題の
一つになっているわけでしょう。そういう状態を前にして、そうしてあの人口の密集しているところで、特別な危険性があるというところに、これにあなたジェットを乗り入れようという、むちゃですよ、これは。だからすぐ近くには岩国の
アメリカ軍の航空エリアがあって、ニアミスの危険だって予想されないことはないわけですね。そういう
状況がありまして、それで当然に住民は新空港に行ってくれということを言っている。これは私は道理があると思うんですね。ところが、あなたのおっしゃった県や市、この態度はどうかというんですよ。
それで、たとえば五十一年の十一月にさっきおっしゃった広島空港問題協議会というものができました。できたけれ
ども、これには一番切実な問題を抱えている地元の住民は参加してないんです。これは長い間県、市当局との協議があったけれ
ども、結局のところ賛成派は半分以上という構成で県と市が押し切ろうとする。それじゃぐあい悪いじゃないかと、反対派も大体同数で対等平等な立場で協議したらどうだということを主張しているのにもかかわらず、それを足げにかけて見切り発車してつくったのがこの協議会ですよ、地元住民の意見なんか反映されてないんです。
しかも県と市、県と市と言うけれ
ども、県知事と県会議長、それから広島市の市長さんと市会議長、これの四者で四書会談というのが行われて、大体これが地元の
中心機関というふうに見なされているわけですけれ
ども、しかし、一番おひざ元の広島市議会では、これはもう前から議決しておりまして、それで一番最初が昭和四十七年の三月市議会の議決ですね、結論だけ申しますと「現広島空港でのジェット機の新たな運航に当たっては騒音公害対策が十二分に措置され、市民の合意を得るまでは見合わすべきである。」と、これが
一つですね。それから第二は、「将来の広島市にふさわしい新空港の建設実現に努力すべきである。」、こういう決議をやって、しかもこの決議は昭和四十九年の三月に重ねて再確認されている。「広島市民を代表する広島市議会の意向を無視して結論を出されるようなことがあってはならない。」ということを強く決議の中で言っている、こういう
実情です。
だから、地元住民の声も反映していなければ、地元の市議会の議決さえも足げにかけて、そうして一路現空港へジェット乗り入れ、新空港についてはまるっきり
検討もしたこともないと、そんなばかなことを一体地元の住民が納得できるかというんです。
それでしかも、一言だけ申し上げたいんですが、
先ほど申しました「広島空港へのジェット機就航についての基本的
考え方」、この中に——読んでびっくりしたんですけれ
ども、こういうことを言っているんですね。「広島市民一般の意識においては、七割近くの市民がジェット機の就航に賛成」しているということが書かれている。これはインチキですよ。この協議会が専門
委員会をつくって、その専門
委員会の仕事として、広島工業大学の社会学
研究室にアンケート調査をさしたんですね。その中で、「現空港を存続させる」という立場からのジェットの就航、これに賛成しているのは四四・七%にすぎないんです。ところが当分の間は騒音対策等を十分にやって、「ジェット機の就航はやむを得ないが、将来は他の地域へ移転させる」という二一・六%、これまで加えましてジェット機就航が七割だと。これは国に対するうその報告だと言わなきゃならない。ですからむしろ、新空港へ移転せよというこの二一・六%、それからもう
一つは「ジェット機就航が諸般の事情で困難なら、他の地域への移転を考える」一四・三%、これを含め、さらに「広島地域に空港は必要でない」という一三・〇%、つまり移転せよ、もしくは必要でないという、これ合計してみますと四八・九%になるんです。そうすると、いまの空港でジェット機乗り入れせよという意見よりもそうでない意見の方が多いんです。こういううその報告をしてまでもジェット機乗り入れを強行しようとする、こういうことだと思います。
それで、これは昭和五十二年の五月十一日の参議院の交通安全対策特別
委員会の速記録ですけれ
ども、ここで当時の田村運輸
大臣、これがこういうことを言っているんですよ。「地元住民というのが一番これは関係が深いんですから、地元住民のそういう意向を聞くという形をつくることは、それにこしたことはございませんから、そういう御趣旨の御質問があったことももちろん含めて、アドバイスはできると思いますし、また場合によったらいたしてもよろしゅうございます。」と、こういう答弁をしていらっしゃる。これは広島空港のこの対策協議会、これに地元住民が参加してないし、意見反映されてないじゃないかという趣旨の質問に対してこう答えているんですよ。いまの時点に至ってどうします、この地元住民の強い意見——新空港に移転してくれと、地元住民及び県と市がつくったいわば正規の機関と言っていいでしょうが、それがアンケート調査した結果での過半数は、これはいまの空港じゃだめなんだということを言っているんだから、その要望を当然国としても取り入れる
方向で指導すべきだと思うんですね。どうですか。