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参考人(
森永貞一郎君)
お答え申し上げます。
第一点の公社債市場の
現状でございますが、私
どもも非常に心配たいしております。特に、六分一厘物の発行条件との乖離は〇・七程度に達しておるわけでございまして、それではなかなか新発国債の消化もできにくいわけでございますので、来年はまた国債が
——ことしですか来年度ですか、国債が十五兆円も出るわけでございますので、その消化の万全を期しますためには、やはり公社債市場の
現状を大変憂慮しているわけでございます。もっとも、六分一厘物は少し異常に市価が低落している
感じでございまして、六分一厘物よりも三カ月くらい前に出ました六分六厘物も、いままでは安定しておりましたのが、昨今、百円の発行
価格をわずかに割ってはおりますけれ
ども、まだ六分一厘物との間には〇・三%ぐらいの開きがあるわけでございまして、そのことから見ましても、六分一厘物の
価格形成はやや異常なものがあるのではないか。つきましては、実勢が一体どの程度かということを判断いたしますには、もう少し市場の
推移を見きわめなければならないと思っている次第でございます。
いずれにいたしましても、短期資金はもうあり余っておる。先ほど御
指摘がでございましたように、株式投資等にも流れ込んでおるわけでございまして、資金の流れが少し変わっている、長期物に少し偏しておる国債の発行の形を、やはり市場の金の流れの実態に即して改めるということも必要じゃないか。昨年は三年物の入札公募が行われたわけでございますが、ことしはさらに二年物も四年物も加えて公募入札制を拡充しようという
政府の御方針に承っておりますが、そういうことで、やはり市場のニードの実態に即した発行形態を考えていただくということが必要ではないか。
それともう
一つは、やはりシンジケート団の引き受けも
かなりの額に達するわけでございますので、その部分につきましてはやはり市場の実勢に即した条件改定を、いますぐとは申しませんが、いずれしていただかなければならぬのが実勢ではないか。これは全体の長期金利水準を上げるというような意味じゃなくて、やはりいろんなバランスを見直すというような形で行われるべきではないかと思っておる次第でございます。
金融債についてもいま御
指摘がございましたが、これはまだ発行条件の利回りよりも
マイナスの利回りになっておるわけでございまして、いろいろな長期資金の実情に即した発行条件が望ましいと、その改定をやはり機動的にやっていただくということがどうしても必要じゃないかと思っておる次第でございます。
公定歩合についてもお話がございましたんですが、公定歩合が下がって金利全般が下がってまいります過程においては既発債が
値上がりするというようなことで、新発債の消化も促進されたということでございますけれ
ども、いまの金利水準は、もうこれ以上下げる必要もないし適当でもないという程度まで下がっておるわけでございまして、そういうときに国債消化のために公定歩合を下げて金利全体の引き下げを推進する、これは実は本末転倒でございまして、その効果も一時的なものではないかと考えております。したがいまして、国債消化との関連で公定歩合を下げることは絶対避けなければならないと私は思っておる次第でございます。
次に、マネーサプライでございますが、どの程度のマネーサプライの伸び率であれば
物価も上げない、
インフレも絶対起こさないということになるのかという、その辺の実体経済とマネーサプライの伸び率との定量的な
関係の把握がなかなか理論的にもむずかしいわけでございまして、私
どもまだマネーサプライを目標値化することはちゅうちょしておるのもそのためでございまして、そのために昨年から四半期ごとにマネーサプライの予測を公表いたしまして、それが現実にどうなるか、その間の実体経済の
動きがどうなるかというようなことを始終見きわめていると、それによって国民の間にもマネーサプライに対する御理解が進んでいくようにというようなことで見込みを発表するということを始めたわけでございます。今後さらに一歩進めて目標値化することも検討しておる次第でございますが、それにつきましてはやはり外国の実例、中には試験的に実施いたしましたけれ
ども途中でやめたというような例もございますし、やはり目標値化することの利害得失を十分検討していかなければならない問題ではないか。しかし、もちろんマネーサプライの
推移には過去における苦い経験もございますので、今後とも一層関心を深めていかなければならないのが
現状ではないか。
数字を申し上げますと、M1では昨年の初め六、七%でございましたのが、年末には一一%ぐらいに上がっておるし、またM2も一−三月は一〇%台でございましたのが十二月には一二%台に増加しております。一−三月も恐らく一二%台で終わるかと思いまして、一見落ちついているような
感じではございますが、一方、企業の短期保有有価証券が非常に増加しておるわけでございます。たとえば現先市場などが繁栄しておるのもその反映でございますが、これはやはり企業としては流動性の増加でございますし、また金融機関の融資姿勢が弾力化しておりまして、いつでも借りられるというような
感じが一部には出ておるわけでございまして、そのこともあわせ考えますと、企業の流動性は
かなり高い水準にきておるのではないか。その意味でやはり流動性の高さには非常な関心を持っておるわけでございます。そのときどきのマネーサプライの伸び率が適正かどうかということは、やはりそのときどきの
物価、
景気の
動向、経済全体の
動きなどとにらみ合わせて考えなければならない問題だと思いますが、現在は先ほ
ども御
指摘がございましたように、
物価面が少し心配になっておりまして、その意味で今後ともこのマネーサプライの
動きには万全の注意を払って、いやしくも通貨面から
インフレーションだけにはしないようにということを私
どもといたしましてはかたく期しておる次第でございます。
第三に、
景気か
物価かというお話がございましたんですが、
景気の方は華やかではございませんが、着実な伸びを示しておる
感じになってまいりました。もちろん構造不況産業の問題もございますし、また企業の減量経営ということからする
雇用問題等いろいろ深刻な問題もございまして、そういう面につきましては、きめの細かい
対策をお願いしなければならないと思いますが、一般的に見ますと、
景気の回復の足どりは底がたいものが出ておるわけでございまして、その意味での金融面からの一層の緩和、利下げは恐らく必要でない、適当でもないというのが私
どもの
感じでございます。
支店長会議などで聞きますと、地方の企業経営家の中の一致した
意見として、企業経営は少しよくなった、しかしここでまた
インフレになって
物価が上がるようだとまた苦しまなければならない。ついては、やはり
インフレの再発だけは絶対避けてもらいたいという
意見が大部分でございまして、これはまことに私
どもといたしましては心強く
感じておる次第でございますが、そういう声もございますし、また国民の声もございますので、私
どもといたしましては、通貨面から
物価を引き上げ、
インフレの再燃を招くようなことは絶対に起こさないようにしなければならない。その意味で金融政策の今後につきましても、時々の
情勢に即して、いやしくも誤りなきを期さなければならないと、かたく期しておるのが
現状でございます。
抽象的で申しわけございませんが、いま考えておりますことは以上のとおりでございます。