○秦野章君 これは御存じと思いますが、去年の三月二十六日、この次大統領に出るか出ないかと言われている元財務長官のジョン・コナリーがこう言っている。「シカゴトリビューン」に載っている記事ですけれ
ども、「我々は敵味方を問わず
世界中に、公正な貿易に信を置き、それに固執しつづけることを云ってやらないといけない。率直に云って我々は
日本から公正な貿易をしてもらっていない」とある。選挙だから多少ほらを吹くんだろうと思うけれ
ども、こういうことをこういう有力な人材が言っているのですよ。
だから、いま
大臣がおっしゃったように、私は、この
アメリカの誤解――誤解なのかあるいはわかっていてやっているのか、そこらは多少わからないところもあるのですけれ
ども、一種の
日本も成熟社会と言われますけれ
ども、
アメリカの成熟社会は、いまおっしゃったように失業、インフレ、ドルの問題、そういった
一つの苦悩を抱え、さらにその上に人種問題を抱えて労働の質が低下しているというのが定評なんですね。そこらの労働の問題、人種問題を抱えての問題なんていうものは、
アメリカに言わせれば、ある意味では
一つの病弊と言っても、栄光の病弊とでも言うべきものなのか、そこらは問題があろうと思いますけれ
ども、われわれとの対比において労働の質が下がっているということはもうあらゆる資料、文献にも出ておる。
これは
アメリカの品質管理についての
世界的に有名なドクター・M・ジュランという教授が昨年の十月京王プラザホテルで開かれた国際品質
会議に出て、そこへ論文を提出したんですけれ
ども、これなんかを見ても、たとえばとにかく
日本の製品は故障が非常に少ない。それから企業も長期償却の投資に耐えるような体質を持っている、技術者の実務経験を非常に重視して、特に品質管理の考え方に他の国と非常な差があるというようなこととか、とにかく
日本の製品は欠陥率が低いという点を強調し、西欧に比べて二けた以上の違いがあるというようなことを精細なデータのもとに発表しているわけです。特に
アメリカのラルフ・ネーダーなんかも理事に入っている
世界最大の消費者団体と言われているコンシューマーのレポートによりますと、
世界の自動車十種類、十の車種を調べて、その中で結局故障がないのは
日本の車種で上位三つを占めている、上位は全部
日本車なんです。これはトヨタカローラ、日産のサニー、本田シビックなんですけれ
ども、こういう機関の月刊誌で二百万も売れている雑誌に出ている、これは私はかなり権威のあるものだと思うんですけれ
ども、そういうように品質の差というものが非常に出てきちゃった。
いずれにせよ、
アメリカも苦しいから頼むよみたいな話も多少あるのかもわからぬけれ
ども、しかし、言うべきことはもっときちっと
日本も言って、私
どもが最近耳にすることでも、
アメリカへの企業の進出というものは販売会社はずいぶん早くからやっているけれ
ども、生産の方はそうテンポは早くありませんけれ
ども、ソニーとかオートバイとかいろいろあるわけですけれ
ども、
向こうに進出した企業でメード・イン・USAのソニーは売れない、メード・イン・ジャパンのソニーは売れる。これはほかのもの全部そうなんですよ、私調べてみたら。
私は、一週間前ですけれ
ども、三菱の核燃料の品質管理をやっている非常に高度な技術の先端の人の話を、これは東海村でやっていますから聞いてみると、核燃料の管理の仕方、これは
アメリカに行っても勉強するし、お互いに現場を見るんだけれ
ども、全然違うと言うんですね、ちゃらんぽらんらしいですよ。
これはいろんな要素があると思いますけれ
ども、そういうようなことを考えると、ここらの問題というものは一朝一夕には解決がつかぬし、
アメリカは相当苦しい問題を抱えているとは思うんだけれ
ども、しかし、
アメリカの大衆、さっきのコナリーの演説じゃありませんけれ
ども、あるいは国
会議員あるいは大統領が選挙というようないろんな背景があって、みずからの怠慢というのか、成熟社会における一種の退廃みたいな部分が出てきて、それが波及しちゃっているんだ。
そしてそれがまた、一方において、
アメリカは
アメリカ独特のおごりもあるでしょう、私
どもは
アメリカがいいかげんになってもらっちゃ困るわけですから、そこらの問題を十分に反省、批判の上に立つべきである。対米
交渉というだけの問題じゃない、日米
関係の問題というものも、緊密にお互いにもっと言うべきことが言えるという舞台をどういうふうに展開していったらいいか、ジェトロもある、いろいろある、
外務省もやっているということかもしらぬが、そういったような枠だけではちょっと間に合わないんじゃないかという
感じもするんですけれ
ども、その辺の問題については
外務大臣はどういうふうにこれからのそういった対米努力――われわれ自身にももちろん問題が全然ないことはないでしょう、
アメリカが言うように、すぐに流通機構が複雑だとかいろいろ言いますわね。安全度なんかの
検査が厳しいとか、そういうことを言ったら
向こうだって厳しいところもあるんですから五十歩百歩の問題だが、要するにもっと背景の
アメリカの体質の問題について、われわれがヘルプすることはできないけれ
ども、
アメリカがむしろみずからの反省と真剣な
政治努力をやらぬと、これはいつまでたっても追っかけられていくというふうな
感じがするんです。
そういう点についてのこれからの広い意味の
経済外交というか、
政治と絡んだ非常にむずかしい展開をどういうふうに具体的にやって、われわれ自身国
会議員の交流とかそういうものも少しはふえてきましたけれ
ども、大変な問題だと私は思うんですがね、
大臣の御所見はいかがですか。