○戸
叶武君 人間が窮屈でがんこな場合には、鳥の方からでも窓を開くということが必要なんで、それもドアをたたかないでいきなり突き破るという方式でなくて、たたけよ、しからば開かれんというので、たたきもしないで、五里霧中でもって
条約だけ
締結してみても、そんなことがそれほどの効果が上がらないことは火を見るよりも明らかじゃないかと思うんです。
これは鳥だけの問題でなくて、
沼沢地の問題に対しては、沼の多いイギリスでも、
沼沢地の相当あるドイツでも、早くから
日本と違って乱暴なブルドーザーで土地を崩しちゃうというふうな公害を振りまくようなことはずいぶん慎んでやっているようです。
私が二十年ほど前に農林水産常任
委員長の時分に西ドイツを訪ねましたときに、時の農林食糧大臣リュプケ、後で大統領になりましたが、あの人はアデナウアーと同じ考えで、エアハルトのやっているような
高度経済成長政策を急ぐと、成長の面において、所得の面において
アンバランスが起きて、そこに混乱が巻き起こる危険性があるというので、農業問題に対しても、
日本の農林官僚やいままでのはったりを主とした農林大臣と違って、きわめて慎重に具体的にその面の
アンバランスの是正というところに力を入れて、主要農畜産物の価格の安定を目指していったんです。安上がり農政で農民をごまかすというようなことをやっているから、いまのようなめちゃくちゃな混乱が起きているんです。
そのリュプケ博士と私は、ボンで長い間
一つ一つ質問を用意して一問一答しましたが、その中において、やはりドイツにおいては、ライン沿岸の果樹栽培を主とする地帯と、それからハノーバーのような東ドイツに接近した地帯と、大農を行っている、
機械化農業をやっている地帯とをよく見てもらいたい、それと同時に、ドイツにあるこの沼地、森林、
湿地地帯、そういうものに急激な変化を加えると、天候異変も起きるし、水の問題においても農民を悩ますような問題が必ず起きるから、そういう問題に対しても慎重な態度を払うというだけの
科学的な合理的な実際的な処置をやって、水田をつくれと言ったり水田を減らせと言ったり、そのときどきの思いつき農政をやっている
日本のふまじめな行政と違ったものを、ドイツにおいては、
高度経済成長政策が強行されているさなかにおいても、文明史観と哲学を持たない民族は滅びるというアデナウアーの哲学を基点として、そういう政治の中に歴史観と哲学が入っているのであります。
思いつきの砂利トラ農政、これがいま根釧原野においても非常に混乱を巻き起こしております。重粘土地帯で米がとれない。米がとれなくとも、全部とれなければ農業災害で六割
程度、米が冷害でとれなくとも六割
程度の収入があるから、ほかのものをつくるよりは得だといって、北海道では余りおいしい米がとれない地帯までも水田耕作をやった。今度は、途中でもって土地基盤の整備によって酪農がいいといって、そこへ国家におけるいろんな形の資本を投下した。その中には政治的な実力者があったから中央から金を持ってきたんだといっていばっている。けれども、いま二百頭、三百頭という乳牛をそれによって飼うことができた連中が東京へフェリーで牛乳を送って大変な金持ちになっております。魚よりもあるいは農業よりも酪農がいい。しかし、根釧原野一帯とあのところだけがそう潤っても、内地の農民は、あの地点を一帯とした畜産本位の農政、国家資本の投下、そういうことによって大犠牲を払っていかなくちゃならないというような、こういうえげつない農政が
日本にはびこっております。
やはり、私は、
ポーランドとでもドイツとでも
ソ連とでも相談して、どうやって湿原を
保護するか、
水鳥を
保護するか、国際連帯の力でもってもっと
科学的な合理的な農政なり酪農なり鳥獣
保護というものがなされなけりゃ、その国だけの思いつきでやられたんじゃ
あたり迷惑だと思いますが、どういうふうに
政務次官はお考えですか。これは大臣がいないから、あなたに質問するのは少し酷ですが、あなたでなくても、だれか
専門家の人に、まあ後でこれは大臣にしますか。——
とにかく
日本の
外交と農政、教育部門、厚生、でたらめ過ぎて、こんなことが政治の不信を生み、今度は映画になるそうだが、高橋是清さんだって殺されたんですよ。高橋是清なんてまじめなユーモアたっぷりな人でもなぜ殺されたか、突風のようなあらしが底流に流れているという現実を知らないで、いまのような政治不信の情が高まっているときにおける
外交と、少なくとも農政を気をつけてやらなければ、大変なことになると思うので、一言私は警告だけで答弁を
求めないで、ひとつ大臣に物申してやってください。
要らぬことかもしらぬけれども、
イランのエネルギーの問題あるいはベトナムと中国との激突の問題、同じプリミティブなナショナリズムが横行している。共産主義でも何でもない、きわめて原始的な闘争が繰り広げられている。国家が消滅すると言うけれども、国家という名のもとに人類が本当に八つ裂きにされようとしている。こういう第二次戦争が起きる前のファシズムより悪性な
一つの病菌が世界に広がっているんですから、どうぞ鳥のことだけでなく、人間のことにももっと親切な処置が講ぜられるよう、それがためには、鳥を説得して鳥に潮時を聞いても、私にはわからない、「私しゃ立つ鳥、波に聞け」というように、すっぽ抜かされないように、ひとつこの
水鳥対策も講じてもらいたいことを一言付加して、私の質問の結びといたしますか、まあ
志賀君ひとつ——。