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政府委員(牧村信之君) 現在各都道府県、
原子力施設並びに再処理を持っております茨城県東海村等も同様でございますけれども、
先生が御
指摘になりました点につきましての防災
対策の
計画はすでにあるわけでございます。その中には、住民の退避に関しましても、常々住民の方がどの地区にどれだけいらっしゃるかというようなことの調査を含めた基礎的なことを県並びに市町村が確認しておくというようなことで、もし万一の事故がありましたときに退避をするということが可能なような
一つの骨組みは実はできておるわけでございます。また、そういうような事故が起きましたときに、どのくらいの被曝を受けるおそれがあるときは退避するという基準も一応できておるわけでございます。スリーマイルアイランドの事故でアメリカがサイト周辺五マイルの住民を、特に妊産婦、幼児について避難をさせた現実が出てきたわけでございます。それは非常に低い線量の被曝、約百ミリレムという通常レントゲン写真を撮ると同じぐらいの量の被曝であると言われておるわけでございますけれども、そのような非常に低い線量で退避するのがいいかどうかの
議論はこれからいろいろ出てくるかもしれませんが、現在
日本が決めておりますのは二十五ラドという集積線量でございます。そういうものを考えますと、諸
外国の例等も比較いたしますと、それでは若干高過ぎるかもしれないと、しかもこれ集積線量でございますので、ある時期にどのくらいの線量があったときに避難を開始したらいいのかどうかというような問題につきまして、直ちに結論が出ないと、こういうような問題は先ほど申し上げました専門部会でいろいろ
議論していただいて、その結論を防災
対策に組み込んでいこうということを考えておるわけでございます。
そうしますと、そういうものがないときに、いまの状態でどうしたらいいかということでございますので、そこで
政府が当面とるべき措置というものを考えた五つの点を若干御説明さしていただきたいと思うのでございますが、まず事故が起きたときに直ちに市町村あるいは
科学技術庁、
原子力発電所の場合は当然
通産省に、事故が起きたという緊急の連絡体制を、現在あるわけでございますけれども、さらに徹底いたしまして、それを関係者間で周知徹底を図るということをはっきりする。ただいま私、
科学技術庁と
通産省と言いましたけれども、そのほかにいろんな関係各省がございます。それも含めて国との間の連絡、これを完全なものに周知徹底を図っておこうということでございます。また、それの回線等につきましては、できるだけ多数確保できるようにしようではないかということをいま
検討中でございます。
それから、事故が起きますと当然現地に災害
対策本部等がつくられるわけでございますけれども、中央におきましても、
原子力安全
委員会を中心といたしまして関係各省並びに専門家が集まって緊急に何か起きたときに対する処置を助言できるような緊急技術助言体制を整備しようではないかということでこういうものをつくりまして、
地方公共団体あるいは場合によりましては関係各省に適切な助言、協力を行えるような組織をつくろうということを決めたわけでございます。このことにつきましては、
原子力安全
委員会がもうすでに人選等も始めておりまして、大体の構想ができ上がっております。
それから、三番目といたしまして、事故が万一起きましたときには当然関係
地方公共団体が
対策本部をつくって必要な措置をとるわけでございますが、
先生御
指摘のように、放射線という特殊なものでございますので、
地方公共団体の方のみでは適確な措置がとれないおそれがございます。そこで、国としてはまず
原子炉の事故の
拡大を防止するという観点からの専門家の派遣を、これは
原子力発電所の場合には
通産省が中心になりまして派遣して、できるだけ外に放射線を出さないような措置をとらせる助言組織をつくることにいたしております。
それからもう一点は、残念なことに外に出た放射線に対して住民をどういうふうにしていただくか、こういうことについての、屋内に待機していてほしいとか、あるいは場合によってはこの間の人は退避してほしいとか、あるいは除染をどうするかとか、モニタリングをどうするかとかいうような技術的な問題について助言できる専門家の派遣を、現在すでに体制はあるのでございますが、それをさらに拡充強化するということをいま盛んにやっておりまして、これもほぼ原案ができたところでございます。
それからその次には、当然放射性物質が外に出ますので、従来平常時のモニタリングというのは都道府県がやっておるわけでございますけれども、緊急時の際のモニタリングという別の活動が適確に行われる必要がございます。このことにつきましても、先ほど申し上げたと同じように、
科学技術庁並びに
原子力研究所あるいは近隣の
原子力施設の方々の協力を得まして要員を確保し、また機器を持ち込みましてモニタリングを行う、こういう動員体制を整備する、これも現在の体制の中で、不完全ではございますがあるのでございますが、それを強化、整備するということを現在
検討中でございます。もうほとんどその原案はできたところでございます。
それから五番目に、このような放射線の障害が出たときに当然いろいろな措置が行われる際の医療ということも非常に重要でございますので、こういう現地で行う医療体制をさらに確認しておこうということでございます。この医療体制につきましても、各都道府県では災害
対策基本法に基づいて大体できておるわけでございますが、これも放射線というものが加わりますので、中央からは
科学技術庁の放医研を中心としたお医者さん並びに技術者、看護婦というような派遣チームをすでに組んでおりまして、緊急時にはその方々にいらしていただく。また現地では日赤等のお力を借りて有機的な連携をとる、そういうような有機的連携をとれるように体制を再確認しようではないかというようなことで作業を進めておる次第でございます。それで、そういうような原案を今月じゅうにつくろうと思ってわれわれ
努力しておりまして、六月早々には各省庁等が集まって、大体確定いたしました上で関係市町村といろいろ連絡を取り合って、地元のこれに対する対応のすり合わせをしていきたいと、このように考えておるところでございます。