○吉田正雄君 いまの答弁ですね、常に事故が起きますとそういう答弁が繰り返されるんですけれ
ども、従来の施設者の原子炉に対する安全確保の態度といいますか、そういうものがきわめて甘い。さらにはまた、事故が起きた場合きわめて秘密主義に徹しておる。同時に、国の行政のあり方自体が同じく秘密主義に徹したり、もっと極言をすれば電力会社と同じ立場に立ってこの事故というものを隠蔽をする、あるいはそれが明らかになるといろんな理屈をこじつけるということが行われてきているんじゃないか。その端的な例が私は美浜の1号炉について言えると思うんですね。これはもうずいぶん国会でも取り上げられましたし、いろんなマスコミでもこれが報道されておるわけですし、いろんな雑誌等でも取り上げられておるんです。そして科技庁としても最終的に国の見解ということで、この美浜1号機については見解も発表されて運転再開ということになったわけですが、しかし、この当局の最終見解と早期運転再開
措置というものについては、たとえば京大の原子炉研究者の間から非常に強い疑問といいますか異論が提示をされておるということは皆さんも御承知のとおりなんですよね。私はそもそもこの事件の発端から今日までの経緯というものをずうっとながめてみますと、いま
指摘をしたように、これをもうひた隠しに隠していこうということと、これが明らかになった後の国側の態度というものも、俗に言うへ理屈をつけて強引にこれを押し通していこうという、そういうきわめて非科学的な非学問的な態度というものが政治的な意図からそういうものが出てきたんじゃないかというふうに私は思うわけです。たとえばどういうことかといいますと、大体この問題が出たのは、皆さんも御承知のように、例の田原さんが「原子力戦争」という雑誌を書かれて出たのが七六年の七月なんです。それまでこの事故というのは世には出ておらなかったわけです。ところがこの雑誌で暴露されて、そしてさらにその後五カ月後に会社側がこれを公式に認めたんです。つまり実際に事故が起きたのか七三年の四月四日の第二回定期検査のときにこれが発見をされたんですね。つまり三カ年数カ月というものこの事故を隠蔽してきた。その隠蔽の理由というのが、会社側の言い方というのは、事故は運転中でなく停止中の燃料取り扱い作業中に起こったもので、
関係当局への報告は必要なしと判断したと、こういう言い方をしておるんですね。もしこれが事実とすれば大変な話だというのは、国側が全然これに関与していなかったかと言ったらそんなことはないわけです。定期検査中には国側の方からも立ち会いをするわけですから全然わからなかったなんということにはならないわけですね。そういう点で、この会社側の
説明、弁明というのは弁明にならないということははっきりしておるわけです。そして私はより問題だと思いますのは、京大の原子炉のこの問題に関する
検討委員会というものが設けられて
検討をやったわけなんですけれ
ども、この
検討報告会が持たれる
事前に事務打ち合わせと称して、七八年の九月三十日にこの
検討委員数名が
東京に呼ばれたわけですね。
東京に呼ばれて、そして
政府側と関電側からは三十人くらいの皆さんが
出席をされたわけですね。そしてなぜこういう事故が起きたのかという事故全般について
検討するのではなくて、いろんな原因のうちのただ一点にしぼって、そして京大側に知らせたそのテストデータそのものだけで判断を迫っていくというふうなことが行われたわけですね。これは非常に大変な問題だと私は思うんです。つまり原因というのがバッフル板のすき間からのジェット水流によるフレッティングにあるというふうに決めつけて、それを了承せいということをこの京大の
検討委員会の皆さん方に迫ったわけですね。これは私は大変な問題だと思うわけです。そして京大側はその国側や関電側の
説明に納得をしないわけです。ところが、あたかも納得したかのように皆さん方は一方的に決めつけて、そしてあたかもそれを認めたという記事が「朝日」に載っけられて、十月三日にこの運転が再開をされたということなんですね。ところがその後十一月の二十九日に京大原子炉の
会議室でこの
検討委員会の報告会が持たれたわけなんです。そこには三菱重工側とそれから原研側から
関係者が出てきて折損燃料についての報告が原研側から、それから三菱重工側からはジェット水流の
影響に関する模擬試験の実験結果というものが報告をされたわけです。ところが、ここに出てきた
人たちは責任を持って答えることのできる立場の人ではないわけですね。ですから、京大側の質問に対して十分に答えることができない、疑問を解明することができなくてこの日の報告会というのは終わっておるわけなんですね。だから、そういう
人たちをこの
会議に出したこと自体、きわめて政治的な意図があると言わなきゃならぬと思うのですが、そこで幾つかの点
指摘をされているんですね。これにまともに答えていないわけです。私の方からかわってここでお聞きをいたしますので、きょうここでいいか悪いかの論議はやりません、時間もありませんから。ですから皆さん方の方から答弁をしていただいて、これはまたしかるべき研究機関で
検討していただこうというふうに思っているんです。
まず第一点は、燃料折損はバッフル板のすき間からのジェット水流によって燃料が振動し、これによって被覆管が削られて起こったというのが国側の結論なんですね。そして三菱重工の模擬実験の結果に立脚して、発表者の示すデータも、すき間が大きいほど折損は激しい結果を示しているというふうにこの日言われているわけですね。ところが実際の美浜の炉では、折損事故を起こしたコーナーよりももっとすき間の大きいコーナーがあるのに、ここでは何も起きてない。そこの部分では何も起きてない。したがって、国側の
説明とは現実に起きた場所というものとは全然違っておるし、そういう結論とは全く違う場所で事故が起きておるということなんですね。これはなぜかという点が第一点です。
それからピーニングですき間を二十分の一ミリ以下にしたから以後は大丈夫というふうに
説明がされておるわけですけれ
ども、水面下約十メートルの位置で遠隔操作の水中ハンマーで六出に二十分の一ミリ以下にできるのかどうなのか。また、運転中にすき間が広がらないという保障があるのかどうか、これについても明確な答弁がなされていないわけですね。これが第二点です。
それから第三点は、燃料の折損個所の一部に白色異相が見られ、これの生成原因として燃料が千三百度以上にまでなったとしか
考えられないんですね。この重大な現象に対してジェット水流原因説ではどう
説明がつくのかどうなのかですね、この点も明らかにされていないわけです。この点をまずお聞きをいたしたいということ。
それから会社側は、これは国が余りにも関与してないような
説明をしておるんですね。ところが非常にそういう点でも多くの問題があるわけです。関電側が一切の責任を問われ処分を受けたことになっておりますけれ
ども、本当にそうなのかどうなのか、その点でも三点お聞きをしたい。
まず第一点は、定期検査では国側の担当者か立ち会っているはずですね、その現場で起こったはずの燃料棒折損事故を国側が全く知らないという、そういう言いわけか成り立つのかどうなのかということが第一点です。
それから第二点、ピーニング工事などは
事前届け出をしているはずなんですね、それを国側が知らないということが一体通るのかどうなのかということです。
それから第三点としては、燃料棒の配置がえのやり方は、炉の対称性を確保するために一定の決められた
パターンでやるのが普通であるが、折損燃料棒の取りかえのために異常な
パターンとならざるを得ない、その場合、国の安全審査の立場からこういうことを一体見過ごせるのかどうなのか、こういう点です。
こういう問題、以上六点申し上げたわけですけれ
ども、これらの問題について国側として何ら納得のできる
説明というものかなされていないわけです。きょうまた皆さん方からその答弁をいただいて、いいか悪いかの問題はこれはまた後刻
委員会で必要があれば再度質問をいたしたいと思うんですけれ
ども、いずれにしてもその答弁をいただきたいと思うのです。これは事務当局からいただきますが、そこで大臣、いま申し上げたように、国側のいろんな
説明というものがきわめて不十分なんです。だから推測をすれば、国と電力会社が一体になってこの事故というものを隠蔽をしてきた、明らかになるや、国と電力会社が一体になって理屈にならない理屈、理由を挙げてこれを正当化しようとしておるということなんですね。ところか実際の多くの研究者は、そういう国側の
説明に対して実は納得していないんですよ。今日でもそういう問題提起をしておるわけですね。そういう点で、私が大臣に望みたいのは、開かれた原子力行政なんですから、そういう点で、私は従来も
指摘をしてまいりましたように、隠すべきではないということと、原因の真の追求を行うべきだと、そのことなくして次の事故を防ぐことはできないわけですよ。これは「むつ」問題しかりなんです。あんな隠蔽板を取りつけるなんていう、原因を明らかにしないでおいて、まさにこう薬で張りつけていくようなああいうやり方ですから、私は「むつ」だって再び事故を起こさない保証というものは全然ないと思うんです。そういう点で、私は今後安全行政の基本的な姿勢なりあり方としては、従来のようなことではとうてい納得できない。そういう点で、新大臣として今後の原子力行政とりわけ安全問題についてどのような方針、態度で臨まれるのか、基本的なことだけを
お尋ねいたしたいと思うんです。これは大臣にです。