運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1979-02-15 第87回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月十五日(木曜日)    午後二時十二分開会     ―――――――――――――    委員異動  二月十三日     辞任         補欠選任      原田  立君     二宮 文造君  二月十五日     辞任         補欠選任      江田 五月君     秦   豊君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         西村 尚治君     理 事                 伊江 朝雄君                 丸谷 金保君                 相沢 武彦君     委 員                 大鷹 淑子君                 岡田  広君                 北  修二君                 増岡 康治君                 案納  勝君                 対馬 孝且君                 二宮 文造君                 立木  洋君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖縄開発庁長        官)       三原 朝雄君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山下 元利君    政府委員        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        防衛庁参事官   岡崎 久彦君        防衛庁防衛局長  原   徹君        沖繩開発政務次        官        坂元 親男君        沖繩開発庁総務        局長       亀谷 礼次君        沖繩開発庁総務        局会計課長    永瀬 徳一君        沖繩開発庁振興        局長       美野輪俊三君        公安調査庁次長  鎌田 好夫君        外務省アメリカ        局長外務省条        約局長      中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        内閣官房内閣調        査官       近藤 恭二君        総理府北方対策        本部審議官   小宮山五十二君        警察庁刑事局保        安部防犯課長   柳館  栄君        水産庁振興部長  矢崎 市朗君        水産庁海洋漁業        部国際課長    中島  達君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する  調査  (昭和五十四年度沖縄及び北方問題に関しての  施策に関する件)  (昭和五十四年度沖縄開発庁及び総理府北方対  策本部関係予算に関する件)  (読谷村の旧軍買収地に関する件)  (国後択捉両島におけるソ連軍事施設問題  に関する件)  (北方四島周辺の危険水域設定による漁業問題  に関する件)  (サンフランシスコ平和条約第二条(C)項に  関する件)  (日ソ善隣協力条約に関する件)  (北方四島の墓参に関する件)  (北方領土問題の解決促進に関する決議の件)     ―――――――――――――
  2. 西村尚治

    委員長西村尚治君) ただいまから沖縄及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二月十三日、原田立君が委員辞任され、その補欠として二宮文造君が選任されました。  また、本日、江田五月君が委員辞任され、その補欠として秦豊君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査を議題といたします。  昭和五十四年度沖縄及び北方問題に関しての施策並びに予算に関する件について政府より説明を聴取いたします。  まず、総理府総務長官沖繩開発庁長官より所信を聴取いたします。三原長官
  4. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 大変お世話になります。  沖縄及び北方問題について所信一端を申し述べたいと存じます。  初めに沖縄振興開発について申し上げます。  沖縄県が祖国に復帰いたしまして以来、本年五月で満七年を経過することになりますが、この間、政府は、沖繩振興開発十カ年計画に基づき社会資本整備など、本土との格差是正自立的発展基礎条件整備のため大幅な投資を継続して行ってまいりました。その結果、空港道路港湾、文教などの公共施設整備は順調に進展いたしまして計画期間中におおむね本土水準に達する見通しとなっております。  最近、沖縄経済はやや明るい兆しを見せてきましたが、沖縄には雇用問題を初めといたしまして、まだまだ解決を要する経済社会的な種々の問題が介在しております。  政府といたしましては、このような状況に対処し、沖縄振興開発をさらに力強く推進していくため、昭和五十四年度予算において、振興開発事業費では現年度より二二・七%増、総体的な沖縄開発庁予算では二一・四%増の予算を計上するとともに、沖縄下企業発展に寄与すべく沖縄振興開発金融公庫機能をより一層高めるよう融資及び出資の増額に努めました。  なお、沖縄においては、戦後三十年余を経過した今日でも、戦後処理問題が残されております。このうち、いわゆる対米放棄請求権漁業関係事案につきましては昭和五十三年度予算から特別支出金を計上して、すでに措置を講じているところでありますが、漁業関係事案以外のものについては、関係省庁連絡会議を設置いたしまして、今後とるべき措置の検討を順次進めているところであります。また、土地位置境界明確化については、地元と密接な連絡を保ちつつ一層の調査促進を図り、法の定める期限までに調査を終えるよう努力をいたしてまいる所存でございます。  総合的な沖縄振興開発計画も余すところ三年となりましたが、今後は、これまでの成果を踏まえ社会資本の一層の充実に努めるとともに、沖縄経済発展に資するため県内産業振興のための諸施策を推進し、沖縄発展県民の福祉の向上に全力を傾注してまいる所存であります。  次に、北方問題について申し上げます。  北方領土問題の解決は、我が国国民の久しい願いであり、政府といたしましても、日ソ間の最大の懸案として対ソ交渉努力をしてまいっているところでございます。しかしながら、ソ連側は機会あるごとに北方領土問題は解決済みであるとの主張を繰り返しており、さらに最近では、国後択捉両島において新たな軍事基地の構築を行っていると判断させる動きがあることば、真の日ソ友好関係促進にとってまことに遺憾なことであります。  政府といたしましては、従来の方針に従い、北方四島の一括返還を前提として、日ソ平和条約を締結すべく、今後、より一層粘り強く対ソ交渉を進めてまいりますが、これを成功に導くには、国民世論の力強い支持が何よりも大切なことであります。  幸い、北方領土問題に対する国民関心は、二千万人署名運動展開、各地で開催された返還要求大会への参加者増大、あるいは地方議会で相次いでおりまする返還促進決議に見られますとおり、近年ますます盛り上がりを見せているところであります。この国民世論の火を絶やすことなく、さらに力強く燃やさねばならぬと考えております。  政府といたしましては、国民の一人一人が北方領土問題の重要性を深く認識し、理解を深めていただくように、各種広報活動に力を尽くすとともに、地方公共団体民間団体との連携を密にし、文字どおり全国のすみずみに至りますまで、返還運動が活発に展開されますよう、諸般の施策を積極的に推進してまいる所存であります。  また、引き揚げ元島民の方々への援護及び北海道現地における啓発活動その他の問題につきましても、関係省庁と相諮って所要の施策充実を期すべく努力してまいります。  ここに沖縄及び北方問題に関する所信一端を申し述べ、委員長初め委員各位の御理解と御協力を切望する次第であります。
  5. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で三原長官所信表明は終わりました。  次に、沖縄開発庁並びに北方対策本部予算について順次説明を求めます。亀谷総務局長
  6. 亀谷礼次

    政府委員亀谷礼次君) 昭和五十四年度沖縄開発庁予算につきましては、委員のお手元予算関連資料を御配付させていただいておりますので、これを中心に私から概要を簡単に御説明を申し上げたいと存じます。  昭和五十四年度におきましては、本年度に引き続きまして、沖縄振興開発計画に基づき、沖縄本土との各面にわたる格差是正を目指すとともに、沖縄における現下の社会的、経済的諸情勢にも対処するよう配慮いたしておるところでございます。  第一に、沖縄開発庁に一括計上されております沖縄振興開発事業総額は一千九百三十億五千二百万円で、前年度当初予算に対し三百五十六億九千五百万円、二二・七%の増となっております。  その内訳は、治山・治水対策事業費道路整備事業費港湾・漁港・空港整備事業費農業基盤整備費等を主な内容とする公共事業関係費一千六百六十九億四千七百万円と、公立学校施設整備経費等内容とする沖縄教育振興事業費二百二十億二千六百万円、及び保健衛生施設等施設整備経費等内容といたします沖縄保健衛生等対策諸費十二億二千百万円、並びに糖業振興経費等内容とする沖縄農業振興費二十八億五千八百万円であります。  第二に、これら当庁に一括計上される振興開発事業費以外の諸経費について申し上げます。  第一点は、沖縄における経済振興及び社会開発に必要な資金を融通するために設けられている沖縄振興開発金融公庫に対し、その業務の円滑な運営に資するための補給金として七十九億六千百万円を計上しております。  同公庫昭和五十四年度における貸付計画は、住宅資金及び産業開発資金充実を図るとともに、中小企業の育成にも配慮し、一千三百五十億円を予定しております。また、前年度に引き続き地方公共団体民間企業と協調して産業の誘導を図るための出資金として二億円を予定しております。  第二点は、離島地域における農林漁業生産力増大農山漁家生活向上を図るため、新たに電気供給施設の導入を促進する経費として三千三百万円を計上するとともに前年度に引き続き沖縄県における伝統工芸産業振興のための共同利用施設建設助成に要する経費等沖縄振興のための特別施策として合計一億四千九百万円を計上しております。  第三点は、沖縄の戦後処理問題の解決を図るため、前年度に引き続き、いわゆる対米放棄請求権のうち、漁業事案に対する特別支出金として十億円を、また、沖縄県の区域内における位置境界不明地域内の各筆の土地位置境界明確化等に関する特別措置法の施行に要する経費対馬丸遭難学童遺族給付経費等として合計十六億六千三百万円を計上しております。  このほか、沖縄開発庁所掌一般行政経費等として四十九億五千七百万円を計上しております。  以上述べました沖縄開発庁計上経費総額は二千七十七億八千二百万円となっており、前年度当初予算に対し三百六十六億四千万円、二一・四%の増となっております。
  7. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次に、小宮山審議官
  8. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) お手元に配付してございます資料に基づきまして昭和五十四年度総理府所管北方関係予算案について、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十四年度北方関係予算といたしまして四億九千五百三十三万八千円を計上いたしております。これは前年度補正後予算に比較いたしまして二七・四%の増となっております。  この内容について申し上げますと、(1)が北方対策本部に必要な経費でございます。この経費北方対策本部人件費一般事務費で四千三百六十万九千円を計上いたしております。  (2)の北方領土問題対策に必要な経費は四億五千百七十二万九千円で、その内訳は四項目ございます。その大部分は4の北方領土問題対策協会補助に要する経費でございます。四億四千五百四十六万一千円を計上しておりますので、これについて御説明申し上げます。  北方領土問題対策協会は、御承知のように、昭和四十四年十月、北方領土問題対策協会法に基づきまして設立されました団体であります。北方領土問題に関する世論啓発及び調査研究等のほか、北方地域漁業権者等に対する低利の事業資金生活資金の貸し付けを含めました援護事業を担当しているわけでございます。  この補助金内容を申し上げますと、事務費六千四百三十四万三千円、事業費三億八千三十七万五千円となっております。事業費のうち、主なものについて申し述べますと、まず、啓蒙宣伝関係費といたしまして一億一千八百五万六千円を計上いたしております。その事業内容といたしましては新聞・週刊誌広告テレビ放送実施等あらゆる広報媒体を活用いたしまして啓蒙活動を行うことにいたしております。五十四年度はさらに北方領土を目で見る運動を推進し、より一層の啓蒙を図ろうとするものでございます。  次に、返還運動関係費でございますが、これについては特に地方における住民運動盛り上がりを図るために県民集会の開催、全国及び県内キャラバン隊派遣等に必要な経費といたしまして二千五百二十二万八千円を計上いたしております。  次のページにまいりますが、推進委員関係費につきましては、地方における復帰運動推進役といたしまして、五十一年度以来、各都道府県に一名ずつの推進委員を設置しております。これら推進委員が県下各団体等に対しまして啓発活動を行うために必要な経費二千三百五十三万八千円を計上いたしております。  さらに、団体助成関係費といたしまして四千四百五十四万九千円を計上しておりますが、その内容の主なものは、日ソ漁業交渉以来北方領土問題に対する国民関心がとみに高まっている状況に対応いたしまして、大量の啓発資料を配布いたしましてすみずみに至るまで国民理解が浸透するよう資料関係等助成費一千七百七十八万八千円、及び現地を訪れる者に対しての啓発資料配布等を行うための現地特別啓発費一千二百二十七万九千円でございます。  次に、貸付業務補給費でございます。この経費は、協会北方地域漁業権者等に対する融資事業を行うために金融機関から借り入れました長期資金につきまして、その借入利息貸付利息との差額、これを国が補給するための利子補給費三千四百七十七万二千円並びに貸付業務の円滑な運営を確保するために当該業務にかかわる人件費及び事務費等管理費について国がその一部を補助するための経費一千五百八十九万二千円であります。  最後に、北方館、これは仮称でございますが、北方館建設費といたしまして一億一千八十一万七千円を計上しております。これにつきましては、近年、北方領土問題に対する国民関心が高まり、納沙布岬に訪れる人は年々増加しております。さらに、より多くの人々に北方領土理解してもらうために北方領土を目で見る運動とあわせまして、納沙布岬の先端に望郷岬公園が造成されますので、その敷地の一部に北方館建設しようとするものでございます。  以上で、大変概略でございますが、御説明を終わらせていただきます。
  9. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で予算に関する説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 丸谷金保

    丸谷金保君 きょうは特に北方の問題を中心にして審議をしようということでございますが、たまたま大臣から初めて沖縄関係についても所信表明が行われておりますので、その点、簡単に一、二ひとつお答えを願いたいと思います。  いまの所信表明の中で「戦後三十年余を経過した今日でも、戦後処理問題が残されて」おると。確かにたくさん問題が残されておりますが、特に、そのうちで昨年当委員会沖縄調査に参りました折に、読谷飛行場に多くの村民が出て、非常に強い陳情を受けたわけでございます。長官防衛庁長官時代にすでにその問題等についても十分御存じのことと存じますが、現時点でこれらもやはり戦後処理の終わっていない問題というふうな御認識をいただいた上で、こういう表明になったものでしょうか、その点ひとつお答えいただきたいと思います。
  11. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 御指摘読谷飛行場につきましては、数日前も読谷の村長を初め議員の方がわざわざ御上京なさいまして、お目にかかりました。  なお、以前からの問題いま私もよく承知をいたしておりまするし、きょう申し上げておりまするのも、そうした戦後のまだ幾多の問題が解決をしておりません。もちろんそうした中に読谷飛行場の問題、特に大蔵等との関係もございまして、これらと折衝を続けておるところでございますが、そうした認識のもとに、先ほど申し上げたところでございます。
  12. 丸谷金保

    丸谷金保君 沖縄の問題については、またいずれかの機会に譲りまして、北方問題に入らせていただきたいと思います。  最初に、いま予算説明がありましたので、その予算の中における問題点として一つお伺いしておきたい。  北方館建設費というのが一億一千万ほど出ております。で通常この種の予算が出されるときには、おおよそ全体の計画というのが固まって、それに基づいて出されておると思うんですが、まだ名称その他も仮称だというふうなことで、そういう説明からは何かちょっとまだ煮詰まっていない点があるんではないかというふうないま説明を聞いていても印象を受けたんでございます。そうしてまた、あそこには、いま趣旨説明のありましたのと同じような趣旨で、かつて国が補助をして望郷の家というのができております、家が。似たようなものができるんではないかという懸念をしている向きもございますが、これらについてはどうなんですか。北方館というのは、どういう形のものでできるのか、それからこれはどこが建設主体になるのか、そういう点細かくひとつ御説明いただきたいと思います。
  13. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) 先生指摘北方館でございますが、北方館総理府予算の中にございます特殊法人北方領土問題対策協会現地啓発事業といたしまして実施いたすものでございます。  これにつきましては、すでに何回か現地の根室その他道庁とも協議を重ねて現在詰めておるものでございますが、さらに先生指摘外務省の方で北方資料館というものを標津の方につくるではないか、こういうお申し越しでございますが、これは強い標津の要請に応じまして北方領土復帰期成同盟事業として建てるものでございます。この相当の実績を持つそれぞれの団体が特色を発揮いたしまして各所に北方領土を目で見る運動と関連いたしまして建設することは非常に啓発事業として寄与するものではないか、こういうぐあいに考えております。
  14. 丸谷金保

    丸谷金保君 そういたしますと、これは管理はどこでやるんですか、建ってから。
  15. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) 管理は、北方領土問題対策協会でやることに現在話が進行中でございます。
  16. 丸谷金保

    丸谷金保君 どうもぴんとしないんだが、話が進行中なんですね、まだ決まってないんですね。
  17. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) これにつきましては、そういうことで固まっております。
  18. 丸谷金保

    丸谷金保君 ちょっとあれなんですが、進行中のと言うのと固まっているのと言うのじゃ大分話が違うんです。どっちが本当なんですか、そこら辺あいまいにしないで。
  19. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) 話し合いということの中で固まったという意味でございまして、固まっております。失礼いたしました。
  20. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、この北方館というのは、その協会がいまキャラバン隊やなんかで資金も集めておりますわね、そういうのも一緒にして建てるということになるんですが、この補助費は、大体建設費のどれくらいの割合でこの補助費が見込まれておりますか。
  21. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) 十分の十でございます、一〇〇%国で補助でございます。
  22. 丸谷金保

    丸谷金保君 いま何か私たちも聞いておると、いろんな資金の募集もしておるという話も聞いたし、ただいまの答弁の中でもそういうニュアンスの答弁がございましたね、キャラバン隊その他で資金を集めているという、協会が。だけど、これはそうするとそれには関係ないということですね。一〇〇%国がお金を出して、そうして管理運営は全面的に協会に任せる、そうすると言うなれば一〇〇%補助ということですね。
  23. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) さようでございます。キャラバン隊とは、その資金集めとは関係はございません。
  24. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) いま先生指摘の点、実は陳情に数日前お見えになりました際に、この建設について予算どおりでいかない場合があるような心配もあるが、というお話がございましたが、私は、その際に、地元に御心配をかけるようなことはしないように努めてまいりたいと思います、という御返事もいたしました。そういうことで、完成までにどうなるかということも十分配慮してまいりたいと考えております。
  25. 丸谷金保

    丸谷金保君 もう一回、ちょっと確認の意味でお願いしたいんですが、建設する主体北方領土何でございますか。
  26. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) 北方領土問題対策協会でございます、特殊法人でございます。
  27. 丸谷金保

    丸谷金保君 これは実はすぐ隣に望郷の家という同じ目的でやっぱり国が相当助成をして市が建設した建物がございます。同じようなものが二つ並ぶというふうな懸念がありますので、建設に当たってはひとつ十分それらの点を勘案しながら使途を明確にしていただきたい、かように思う次第でございます。
  28. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) これにつきましては、市と現在二回ほどすでに協議いたしておりまして、両方の機能が高まる観点からいろいろ話し合って進めております。
  29. 丸谷金保

    丸谷金保君 本当ですか、そんなにうまくいっていますか。まあいいでしょう。  こういう建物、その他いろんな形で北方問題のキャンペーンをやっておられるわけでございます。たまたま、いまそういう中で防衛庁が発表した一月二十九日のソ連軍事基地というふうなことから北方問題が非常に大きくクローズアップされてきております。この総理府で所管している北方問題、領土返還国民的な運動を高めるということはもっぱら国内的な世論喚起ということであって、そうした相手方に対する問題というのはもう外務省が窓口で、全く関係がないというふうに理解してよろしゅうございましょうか、どうなんですか。
  30. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 私どもが国内の世論喚起し、また国民全体の自主的な北方領土返還への運動展開されますよう御活躍を期待をするわけでございますが、その間に外部の関係には全く関係なしにやるということは私は手落ちになると思っております。たとえば今回のような事態に対処いたしましてどう国民に訴えるか、それがよって来るところはどういうところから来たのであろうかというような、そうした国際情勢等も勘案をいたさねばなりませんので、そうした国民世論喚起あるいは復帰運動展開に際しましては、外務省防衛庁その他関係省庁情勢判断について緊密な連絡をとりながら対処してまいるという点において、私は内ばかりでなく外との国際関係等承知をしながら対処しておる、そういうことでございます。
  31. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、この北方軍事基地の問題が大きく取り上げられる前に、いろんな形で国の機関がこれを調査しております。  たとえば――公安調査庁おいでになっておりますか――もう何年も前から北方水域において領海侵犯、密漁その他の嫌疑で非常に多くの漁船がソ連側に拿捕されております。そうしてそれらの拿捕された漁民が帰ってまいりますと、公安調査庁の釧路の支部から出向いていった人たちが状況をよくお聞きになっております。私もそうした調査を受けた方から直接聞いてきたんでありますけれど、この人たちは択捉に行って大きな施設ができている、飛行場もできている、またどんどん工事が拡張されているというふうなことを実際に見て、それらを調べに来られたときには説明をしておる。公安調査庁の主たる任務は別なことかと思いますけれども、こういうような問題について現地からは本庁の方にはそういう報告等はないのでございますか。
  32. 鎌田好夫

    政府委員(鎌田好夫君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘のように拿捕された船員の方々について事情をお聞きしたということは数回あったようでございます。ただ、それらの報告の中に、いま御指摘のような国後、択捉等に関する基地問題についての報告が上がってきたということは一度もございません。
  33. 丸谷金保

    丸谷金保君 正確にお答え願いたいと思うんですが、そういう調査したのは数回ですか。私が聞いただけでも二人いるんです。ですから、この十何年の間におたくが数回ということはちょっと現地の事情のわかるわれわれにとってみれば、答弁としてはまことにこれ不親切な感じがするんですが、本当に間違いないですか、数回ですか。
  34. 鎌田好夫

    政府委員(鎌田好夫君) 数回と申し上げましたのは、昨年中において数回という意味でございます。
  35. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、この期間にはずいぶんたくさんあったというふうに理解してよろしゅうございますね。
  36. 鎌田好夫

    政府委員(鎌田好夫君) 昨年については調べておりますが、それ以前については正確な回数は調べておりませんのでただいま直ちにはお答えできませんけれども、毎年数回程度はあったというふうに承知しております。
  37. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、それは毎年そういう場合の調査をやっとって――もっとも去年は拿捕が一番なかったんです。近年まれに見るくらい余り拿捕件数がどちらかというとなかった時期なんで、本題でないのでそこのところは飛ばしますけれども、毎年数回というのはちょっと解せない気がいたします。それと、そういう調査の中で話されたことが、少なくとも公安調査庁に関しては全く上がってきていないというふうに理解してよろしいわけでございますね。
  38. 鎌田好夫

    政府委員(鎌田好夫君) 聴取した内容が全く上がってきてないとお答えしたのではございませんで、先ほど御指摘になりましたいわゆる軍事基地に関する問題については一度も報告を受けたことがないということでございます。
  39. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうすると、漁民の人がそういうことを話しても、それは公安調査庁の調査の対象でないから、聞いたけれども聞き流したんであって、本庁に報告するような事項でなかった、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  40. 鎌田好夫

    政府委員(鎌田好夫君) その点までは今回調査しておりませんのでお答えいたしかねますが、担当者がそのような問題について聞いたかどうかということについても私どもとしては承知いたしかねるわけでございまして、本日の段階では、われわれとしてお答えできるのは、そのような報告を受けたことが一度もないということ以上にはちょっとお答えいたしかねるわけでございます。
  41. 丸谷金保

    丸谷金保君 話している方は話していると言うんですけれど、調査された方がそれを調査メモの中へきちっと記録として残してなければ、それは聞いたことにならないということになるかと思います。しかし、そういうことはないんでないかと思うんですけれどもね、ちゃんと細大漏らさずメモしておるんです。ですけれども、まあよろしいでしょう、公安調査庁についてはそれで結構です。  それから内閣調査室。内閣調査室の場合には公安調査庁とちょっと違いまして、相当そうした問題については、この職制を見ますと幅の広い情報の収集及び調査をする機関だというふうに承っておりますが、そうでございましょうか。
  42. 近藤恭二

    説明員(近藤恭二君) 内閣調査室は、情報一般につきましては、必要な問題につきまして、あるいは内調みずから交換資料等について調べる、あるいはそのほかの専門家等について協力を求め調べるということはございますけれども、この問題については現地でそうした調査等の手段がございませんので、具体的な現地の情報収集等はいたしておりません。
  43. 丸谷金保

    丸谷金保君 調査室の機能からいいますと、なかなか現地調査するということにはまいらないだろうと思いますが、ただ、非常に今度は調査室の方は、多くの機関に対していろんな情報調査の委託をいたしておりますね。こういう中から北方地域軍事基地問題等について調査が上がってきている、そういう事例はございませんか。
  44. 近藤恭二

    説明員(近藤恭二君) 必要によっていろいろの団体調査を委託いたしておりますが、この北方領土の問題、特に今度の軍事基地の問題ということにつきましては調査を委託しておりません。
  45. 丸谷金保

    丸谷金保君 そうしますと、少なくともいろいろそういう対外的な問題、領土の問題、軍事基地問題等を含めて調査する機関というのは外務省あるいは防衛庁ということにしばられてくるような気がするんですが、長官、いかがですか、国の各機関と情報交換し合って北方問題の世論喚起に努めていくという立場で、総理府としては、一体、こういう問題の情報はどこから得られることになっているんですか、そのパイプは。
  46. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 今回の問題のようなものにつきましては、いま御指摘のように主として外務省防衛庁からでございます。ただ、地元漁業問題等がございますれば水産庁等にも連絡をしますけれども、今回の問題につきましては、主として外務省防衛庁との連絡で判断をするということにいたしておるわけでございます。
  47. 丸谷金保

    丸谷金保君 内閣調査室、結構でございます。  そうしますと、防衛庁がこの問題について総理府の方に情報を出してきたというのは大体いつごろでございましょうか。
  48. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) この問題に国民運動として私どもが参考にいたしましたのは最近のことでございまして、私が閣議におきまするこの問題の扱い方、それから外務省とは直接いろいろな打ち合わせなどもいたしておりまするが、防衛庁に限りましては、そうした点を参考にいたしまして、防衛庁としては閣議でもこういうお話があった、それから国会の審議の中においても、防衛庁は今度の問題については十分な監視をし、その将来に向かってどういう動きをするかということを十分把握することに努めておるが、しかし一般的な防衛としてソ連が対処いたしておるような判断を一応いたしておる、しかし企図がどこにあるかはっきりつかんではいないというようなところを、今度の問題を国民運動として二月、三月に一つの山が北方問題についてはやるものでございまするから、私から指示をしたということになろうと思います。その程度でございます。
  49. 丸谷金保

    丸谷金保君 私の聞き方がちょっと悪かったんですが、外務省の方とのこの問題についての報告はいつごろからお受けになりましたか。
  50. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 首脳間におきましては、同様、閣議におけることと、外務大臣の処置でございまするが、ここは事務段階におきましても連絡をいたしておりまするが、これは事務段階で担当者が来ておりますから、ひとつ答弁をさせます。
  51. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) 外務省連絡がございましたのは、新聞発表の直後でございます。
  52. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、これ事務的な連絡では事務次官会議、その他でもずっと新聞発表のあるまでこの問題というのは話題にもならなかったんですか、どうなんでしょう。事務次官だれもいないですか。――そうしたら、ちょっとそれじゃもう一回質問変えます。  事務次官会議、その他事務的段階で、各省の情報交換で、総理府外務省防衛庁との間で北方軍事基地の問題が情報として提供されたということはございませんか、新聞発表前に。
  53. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) ございません。
  54. 丸谷金保

    丸谷金保君 ないですか。――実は、私この問題をこう検討していて非常に不思議に思うことは、いまそれぞれ質問いたしたように、いろんな機関調査する立場にありながら、問題として事務的にもこのことが新聞発表以前に何にも政府として取り上げられていなかったということに非常に大きな疑問を持っているんです、疑問というより疑点を。  それはなぜかといいますと、こういうことなんです。私が根室に調査に入って、本当の漁民、それから小さなスタンドの飲み屋さんというふうなところのおやじさん、これらから聞いて実は私自身が偶然としたことがあるんです。そんなことはもう何年も前から知っていると言うんですよ、軍事基地ができつつあるということを根室の人は。つかまっていって見てもきたと。いまごろこういう問題が起きるのはあの飛行機のためでないのか、こういうことなんです。E2Cの問題がおかしくなってきたので突如として防衛庁が一月二十九日に大発表した。しかし、そのことについて各関係機関で一月二十九日の時点まで全くそういうことが世論喚起にも横の関係にも話し合われていなかったといういま質問に対する答えの状況を見ますと、ちょうど外務大臣来ていただいたので、まことにタイミングよく出ていたので、もう一回申し上げます、外務大臣がいらっしゃるから。  実は、いま総務長官を初め皆さん方に、北方領土軍事基地問題について、政府のいろんな調査機関があるけれども、公安調査庁もそれから内閣調査室もこの問題については全く知らないというのです。それから総理府としては、この種問題は外務省あるいは防衛庁からの情報で判断している。そしてそのことについても一月二十九日時点までは閣議でももちろん話題にもならなかったし、あるいはまた事務的な段階でも横の連絡がなされたということもないという話なんです。  それで私たちが現地へ行きますと、現地ではもう早くから知っている。公安調査庁の人に言ったんだが、漁民でおれは調べられたときに話しましたよ、どでっかいものができているという話もしましたと。しかし、公安調査庁はそれらは上部に上がってきていない。ですから、現地へ行きますと、いまごろ急にこんなふうに騒ぎ出したのは飛行機のことがあるからだろうという素朴な話を聞いたのです。どうしていままでこれだけの問題が政府の部内で何にも話が出ていなかったかということに対して、私は、その話を聞いて、ああそうかと、われわれも意外と盲点があるものだなあと、こういう疑点を実は現地の話を聞いて私自身もびっくりしたんです。そういう横の連絡がないということについて、総務長官の方から、引き続きのあれでございますので、所見を伺いたいと思います。
  55. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 先ほどの御質問の趣旨がいまのような御意図にあるということは私は承知いたしませんでしたが、ただ総理府の所管事務といたしましては、御承知のように国民世論喚起していく啓蒙的なこと等があるわけでございます。そういう時点から、私が昨年末総務長官の席を汚しまして、本年度北方領土問題に対する国民世論をどう喚起していき対処していくか、北方領土返還について対処していくかという時点からのことを私は申し上げたわけでございます。  そういうところから見てまいりますと、先ほどの御指摘がございましたように、対内的な問題ばかりではなく対外的な配慮もやはりその点はやらなければなりません。そういう点においては外務省の外交方針等を考え、あるいは防衛的な面では防衛庁の御意向等を踏まえて対処しなければならぬ、こういうことを特に今回の事態が起こりましたので、庁内関係者を集めて世論喚起についてのこういう点を一つ加味しながら対処するようにと方針を示しました。その際に、私どもが政府の意向というようなものはこうであるぞということを私が指示いたしましたので、そこからしましたが、事務的にいま申されますような、この問題について昨年の夏以来具体的にいろいろ出ておることも私も承知をいたしておりますが、そういう点についてどうなったかということにつきましては私が余りつまびらかに承知をしていない。事務当局に聞かせますと、いま申し上げましたように、この点については特に事務同土の連絡はいたしませんでしたと、こう言っておるような事態でございます。
  56. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 本件発表の時期につきましては、各方面からいろいろ御質問があるんでございますけれども、実は、これは前もってわかっていた事実を隠しておりまして時期を選んで発表したということでは全然ございません。  昨年の夏ごろから、非常に頻繁に艦船、航空機等の輸送の動きがございました。その当時いわゆる栗栖発言というものがあったわけでございますけれども、そのころわれわれ考えましたのは、これは演習であるか、あるいは部隊の派遣であるか、あるいは基地の建設であるか、このいずれであるか、いまから振り返ってみましても去年の秋ぐらいまでの段階でございますと、いずれと申しましてもこれは尚早な判断であるという程度の断片的な判断しか入っておりませんでした。それが冬になりましていろいろ具体的な情報がふえてまいりまして、これはどうも地上部隊の派遣に違いないという確信がだんだん深まってまいりまして、それでちょうどその時期に結氷期がもう後一週間で来る、結氷期がまいりましても派遣された部隊が帰る気配がない。これが建設部隊ならもちろん帰るのでございますけれども、これはどうも越冬する様子である。これならもう地上部隊であると確信を持って結論できる。そう結論いたしまして、それから先これは情報源の問題もございますし、非常にこれは機微な話でございますので、まず外務省、それから内閣官房、それからもちろん自衛隊の最高司令官でございます総理、その方面にはしかるべく連絡はいたしました。その後、その間でございますね、防衛庁長官がこれはきわめて重大な結論である、これは一刻も早く国民に知らせなければいけないということを決断されまして、それで早速明らかにする手続をとりました。  われわれがこれは地上部隊に違いないという確信を持つに至りましてから発表まで最も短い時間しか経過していないということを申し上げます。
  57. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは外務大臣が見えましたので、この際、外務大臣より所信を聴取いたしたいと存じます。園田外務大臣。
  58. 園田直

    国務大臣(園田直君) お許しをいただいて外務省の所管事項についてその概略を御説明申し上げます。  まず、北方領土問題について申し述べます。  日ソ関係は、近年、貿易、経済協力、文化交流等各種の分野において着実な発展を遂げてまいりましたが、北方領土問題がなお未解決のまま残されていることはきわめて遺憾であります。日ソ関係を相互理解に根差す真に安定した基礎の上に置くためには領土問題を解決することによって平和条約を締結することが不可欠であります。  私は、昨年一月訪ソし、ソ連政府首脳との間に平和条約交渉を行い、その後昨年九月、国連総会出席の機会にグロムイコ外務大臣と会談し、領土問題の解決の糸口を見出すべく努力を尽くしました。しかしながら、話し合いは進展を見ておりません。  ソ連の提案するいわゆる善隣協力条約の問題につきましても、政府としては、ソ連側北方四島の領土問題の解決に誠意ある態度を示し、明確な意思表示を行うことが先決であり、出発点であると考えており、領土問題をたな上げしたり、あいまいなままに善隣関係をうたう条約の検討を開始する考えはございません。  他方、最近、国後島及び択捉島においてソ連側が新たに軍事力の配備及び施設を構築したことにつきましては、二月五日、かかる事実を涙く遺憾としてこれに抗議するとともに、その速やかな撤回を強く要求し、重ねて、わが国固有の領土たる北方領土の速やかな返還を求める旨の申し入れをソ連政府に対して行いました。  また、ソ連は、昨年六月以来、三回にわたり、射撃訓練を行うために択捉島周辺に危険水域を設定いたしましたが、政府は、わが国固有の領土である同属に接続する領海の一部に危険水域を設定したことは不法であるとの見地から、その都度、外交経路によりソ連政府に対し抗議するとともに、直ちに危険水域を解除するよう要求する申し入れを行っております。  はなはだ遺憾ながら、このような累次の抗議や申し入れにもかかわらず、ソ連側は、領土問題は解決済みである、領土問題は存在しないとしてわが国政府の主張に耳を傾けようとの姿勢を示してはいないのみならず、北方領土の返還要求は、一握りの反ソ分子の運動にすぎないとの非難を公然と行うに至っております。政府としては、ソ連側がわが国民の総意に基づく主張を正しく認識し、昭和三十一年の共同宣言に基づく両国間の外交関係回復当時の原点に立ち戻り、かつまた昭和四十八年の日ソ両国首脳間の共同声明の字句と精神を体して領土問題の解決に向けて誠意ある態度を示すことを強く希望するものであります。  このため、政府としては、今後とも、わが国の立場はこれを明確に貫き、かつ主張すべきは常に主張してソ連側の反省を求めてまいる方針であります。  私は、四島の問題を解決することによって平和条約を締結することこそ真の日ソ友好を進めるための道であるとの確信に立って、冷静かつ着実に対ソ外交を進めてまいる考えであります。同時に、私は、この際、最も大切なことは国民の総意をますますかたくかつ明確にすることであると信ずるものであり、かかる見地から、ここに北方領土問題に関する政府の立場について国民各位の御理解と御支援をお願いするとともに、国会、特に当委員会の一層の御鞭撻と御支援を願う次第であります。  次に、沖縄問題について申し述べます。  政府としては、日米安保条約に基づく米軍の存在は、わが国の安全を含め、極東の平和と安全に寄与していると考えておりますが、特に米軍施設・区域の密度が高い沖縄県においては、それだけに住民の生活にもいろいろと影響が及んでおり、その整理・統合を求める声がかねてより強いことは十分承知しております。政府としては、安保条約の目的達成との調整を図りつつ、このような沖縄県民の要望にこたえるよう努力を傾注するとともに、住民生活への影響を最小限に食いとめるよう米国側との不断の接触を通じ努力している次第であります。  日米間で了承された整理統合計画のうち今日までに相当程度が実施されてきましたが、今後とも、さらに沖縄県民の民生の安定にも十分配慮しつつ、残余のプロジェクトの早期実現につき鋭意努力してまいる所存であります。  以上、外務省所管事項につき概略御説明いたしました。  委員各位の御理解と御支援をお願いをいたします。
  59. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で園田外務大臣の所信表明は終わりました。  引き続き質疑を行います。
  60. 丸谷金保

    丸谷金保君 この問題はまだ防衛庁やなんかの掘り下げる問題がございますが、外務大臣のおる間に先にお聞きしておきたいと思います。  一つは、二月の二日の日には外務大臣は直ちに抗議することはないというような発言をいたしております。それが五日の日には高島外務審議官から抗議をしている。しかし、その抗議の中身についても大変ソフトな抗議で、一体、こういうふうに抗議をしない、あるいはまた三日ぐらいで抗議をする。そして抗議をすると同時に、事務レベルでは、ひとつ経済問題等は別に話し合っていきましょうというふうな、いろいろと大臣の心境が揺れ動いたそのぶれについて御説明を願いたいと思います。
  61. 園田直

    国務大臣(園田直君) 二日の衆議院における大出委員の質問に対して、軽々しく抗議すべきではないとか、冷静に対処したいとかという言葉を使って誤解を与えておりますが、しかし、その答弁の中に、私はこれに対する私の考え方を言っておったわけであります。  私の真意は、北方四島は日本の固有の領土である、今日のソ連の不法占拠は、これは許されるべきことではないという立場から返還要求をやっているわけであります。したがいまして、この日本固有の領土であるとわれわれが返還を要求する島の解決に逆行するような、あるいは平和的な解決をしたいという精神に逆行するような軍備の強化あるいはいろんな基地等をつくられることは、このわれわれの主張に逆行するわけでありますから、この点は明確にしたいが、ただ、そのためにいたずらに反ソ感情をあおったり、あるいは一方的に日ソの間の関係を悪くするようなことだけにはしたくない、こういう意味からこういう発言をしたわけでありまして、決して揺れたわけではありません。  高島審議官に申し入れを命じましてから、ソビエト側の方で少しおくれておりましたが、私が間際になって、ちょうど火曜日に中国の鄧小平副主席が訪日されますので、これが着かれてから何かやると、いかにも中国と相談をしてやったなどと片腹痛くない推察をされては困りますので、急いで申し入れをやった次第でございます。御了承を願いたいと存じます。
  62. 丸谷金保

    丸谷金保君 このソ連軍事基地をつくり出しているというふうなことは、先ほど申し上げましたが、漁民はいろんな形でもう大分前から知っている、こういうこともあります。それからまた六月の北海道内の新聞では、部隊が増強される可能性、演習のほかに基地の建設が行われているというふうなことについてきわめて明細な記事が何回にもわたって出ているんです。それで当時でも「木道防衛論に衝撃」「ソ連、択捉に港湾基地建設」とか、こういうふうなあれが出ているんですが、私たちは、いま外務大臣が言われたように、固有の領土に対するそうした返還の非常に障害になるような事態が起きたときには、いち早く対処し抗議すべきものではないかと思うんです。それをこの時点まで抗議をしていなかったということについては、何かその抗議をしない、抗議をするというふうに揺れ動く大臣の心根、やっぱり外務当局として非常に慎重に扱わせた何かがあったんではないかという点が一つ。  それから、時間ございませんからあわせて聞きますが、日中友好条約の締結を行った際、当然、大臣としてはソ連が何らかの措置に出てくるであろうということは予知できたんじゃなかろうかと思う。それに対する対応というふうなものを締結の段階でどうお考えになっておられましたか、この二点をひとつ。
  63. 園田直

    国務大臣(園田直君) 昨年六月からのいろんな動きをわれわれは基地強化として承知していなかったわけでありまして、当時から北方四島周辺において演習をやったり、あるいは物資等の輸送等が頻繁になったということがだんだん出てきたわけであります。防衛庁とお互いに連絡をとりつつ、各種情報を総合して、どうも兵力が増強されたという認定のもとにああいう発表をしたわけでございます。  私としては、いろいろ御批判を受けるわけでありますが、今度のソ連の兵力の増強等一連の問題は、わが国の固有の領土に基地を設け、これを増強することは不当であると考えておりますが、ソ連の真意は何なのか、これは軽々しくまだいまのところこれを判断するのは早いかもわかりませんが、私の判断では、ソ連の一連の極東軍備の増強という線によって行われておるものであって、日本に対して脅威を与えるとか、言うことを聞かなきゃ承知せぬだとか、日本におどしをかけられたものではないのではなかろうかと判断をいまのところはしておるわけでございます。  日中友好条約締結のときに、いろいろソ連側から批判を受け、あるいはいろいろ警告を受けましたが、私は、それは今後の日本外交の実績一つ一つで日本の真意がわかってもらえるべきことであって、そのためにあちらの軍備を強化したり、こちらでおどしをかけたりされるようなことは想像はいたしません。
  64. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、現地に入って領土返還の問題、これは北海道でも非常に強く北方四島等の返還について世論もございます。しかし、さらにもう一歩入って根室水域に入りますと、多少ニュアンスが違ってきます。たとえば私が根室及び羅臼で聞いた話でございますが、これは町長がいなくて助役以下の方々に集まってもらった中で、漁協の理事さんあたりからも出ておりますけれども、今度また国会でこんなふうにして強く取り上げられると、一方では飛行機のことがあるからだろうというふうな素朴な漁民や一般の話だとか、それからさらにまた直接の漁協などへ行きますと、これによってまたわれわれが大変だと、報復的に大変なことになるというような心配が非常に多いのです。だから、外務大臣がそれらのこともあわせて実はそうした余り強く刺激をしてもいけないというふうに御判断なすったんではないかなというふうに私たちは推測いたしておるのですが、これは外務大臣の所掌ではないですけれども、そういう場合の現地のアフターケアといいますか、そういうものを十分に考えていただかないと大変なんです。  特に、そのことについては、宮澤さんは前に現地視察をなされましたが、外務大臣にもぜひ、とにかくそれはもう東京へ来て聞く話はそれはそれで結構なんですが、もう一つ下の方で真実の話を聞いたり現状を見るというふうなことを速やかに、早い機会にやっていただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  65. 園田直

    国務大臣(園田直君) 国民の方々の不安、特に北海道、特に根室を中心にした住民の方々が非常な不安と心配をしておられることはよく承知しております。したがいまして私も一遍拝見したいと思っております。いま事務当局に、時期はいつごろがいいか、どういう方法でやったらいいか検討を命じておるときでありますから、なるべく御趣旨に沿って早い機会に現地を拝見に行くようにいたします。
  66. 丸谷金保

    丸谷金保君 ミグのときにもそうだったのですが、いま地元ではそういうことを大変心配しております。  それで水産庁来ておりますか。――具体的な問題なんですが、羅臼ではいまスケソウの沿岸が非常に最盛期です。しかし、これが四月になりますとカレイその他に変わりますので、現在は冬ですから小さな休んでいる船二百七十くらいがこれに加わるということになると、現在操業できる大きな船が、沿岸でスケソウなんかをとっている船がもう少し沖に出てカレイ漁やその他に入るわけです、百三十隻くらいの十九・九トンというのが。しかし、実際にはいま中間ラインを引かれておるのでなかなか沖に出にくいという事情は御存じだと思います。これ休むんです、四月。北方の問題については、非常に多額の、中には問題が起こって返還させなきやならぬように大づかみにどすんどすんと大きな補償費が出るのに、こういう零細な連中が困る。しかも十二海里すれすれのところというのは非常に微妙なんです。これは前に鈴木農林大臣のときに、この海域は玉虫色だというような表現をしておりましたんですが、一体、その玉虫色というのはどんな色なのか、水産庁の方はちょっとこの機会に明確にしていただくと同時に、そういう両国間に緊迫したいろんな外交的な情勢が起こるたびに苦労している羅臼、根室の沿岸の小さい漁民、これらに対する手当てについてどう考えているか、ひとつ。
  67. 矢崎市朗

    説明員(矢崎市朗君) 中間ラインの問題について御指摘ございましたけれども、実は一九七七年、五十二年の日ソの暫定協定におきまして、わが国では、ソ連邦の幹部会令及びこれに基づく決定において定められた水城について、ソ連の権限のある機関が発給する許可証を有していない限りは漁獲を行わないという旨を合意いたしておるわけでございます。  そこで、いま御指摘の中間ラインというお話はその点を指していらっしゃるんであろうというふうに思っておりますが、なお、その水域あるいはその中間ライン等に関して、当時の鈴木農林大臣から玉虫色云々という御答弁があったというふうにいまも伺っておりますが、当時、大臣は、北方四島関係の協定上の取り扱いというものが、いわば漁業の操業に関する手続上の問題として決めた、それを前提とした協定はいたしておりますけれども、もちろん領土権に関するものについて、わが国としては固有の領土であるという立場を基本的に変えているものではないし、また、そういう趣旨の旨を一項入れているという趣旨において玉虫色というふうに言われたというふうに私も記憶いたしておりますが、いずれにいたしましても、実態上、ソ連の支配いたしておる水域にこれは許可証がありませんと入漁できないというのが実情でございまして、そういう実態のもとでいま御指摘のように羅臼等の関係漁民がいろいろとそのための迷惑、弊害を受けている、こういう事実はまさにおっしゃるとおりでございます。  そこで、私どもも、実は、道当局等にも、こういう事態の上でできるだけそういう困った零細漁民を改善いたしていくために必要な措置あるいは事業というふうな面について、よく地元漁民とも相談をしてもらいまして、具体的ないわば再建策というふうなものをひとつできるだけ早く立ててほしい、こういうことで再三申しておったわけでございます。そこで、いまの御指摘のまず四月以降は漁模様によっては大型船の操業を自粛して、むしろ零細な船を優先させるというふうなことにしようかというふうな話し合いが現になされているということは私どもも承知いたしております。  そういう中で道当局といたしましては、定置漁業権の新しい付与に関して、特に締め出された零細の漁民の方々がその恩恵を受けられるようなそういった付与をいたしたいということで、いろいろと鋭意いま努力をされているようでありますし、また先ほど申しました再建策の一環ということに私どもは理解いたしておりますけれども、特にそういう沿岸漁民のための漁業振興の対策ということで、コンブの増殖場の整備でありますとか、さらにウニの漁場の開発でありますとか、いろいろと道の方でも計画を立ててまいっておりまして、私どももこういうものに対して全面的に協力し、できるだけ援助をしていくということで予算措置等も現に講じているわけでございます。  しかし、なおこの後におきましても、さらに道当局、地元等との相談の中で、さらにこういうこともというふうないろいろと対策が具体的に出てまいりますれば、私ども、さらにこれも含めて前向きにできるだけ援助協力をして実現できるようにしていきたい、こういう姿勢でおるわけでございます。
  68. 丸谷金保

    丸谷金保君 時間がございませんので、外務大臣に特にお願いいたしておきますが、いろいろ外交問題の陰で沿岸の漁民が非常に困るということも十分御理解の上で慎重な態度もとらなければならぬということもあるんだと思いますが、そういうことについて今後ともひとつ御配慮をお願いいたしたいと思う次第でございます。  実は、非常に問題が混乱していることで国内法がいろいろあるんです。たとえば関税法では国後、択捉島については当分の間外国とみなす。それから外国為替管理法でもみなし規定がございます。それから外務省は、一応、これは固有の領土という見解をとっております。それから水産関係におきましては、いろんな漁業の法体系の中でみなし規定をつくらないで、ソ連との二国間におけるいろいろな漁業協定の中で相互に守るべき約束をしてこの問題を処理している、こういう状況でございます。それが非常に現地に行きますと混乱のもとになっておる。  たとえば十二海里を出ていくと、これは固有の領土なんだからわれわれは領海内でやっているということで、まず罪の意識がないんです。つかまった者は御不幸という意識はあるんですよ、しかし悪いことをやっているという意識はやっぱりそういうところから出てこないんですよ。そして後で罰金だけがさつと来る。そうすると、一時は、私が前にも指摘したんですが、日本円を持っていくとこれは外為法違反なんだけれども、平気でやっているんです。漁組はそれに平気で現金を持たしてやるというふうなことが続きました。これらは何か国内の北方四島に対する法の体系が、いみじくも鈴木元農林大臣が言ったように、全体として玉虫色なところがあるんじゃないか。ここいら辺をすきっと何か、もともとがこれは外務大臣の所管でございますので、各省に対してきちっとした統一的な見解をまとめるようにこの機会にお願いいたしたいと思います。
  69. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいまの御意見はごもっともでございますから、現実的な困難な点も多いと思いますが、関係各省庁とよく話し合ってみたいと存じます。
  70. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 二月の十三日に、北海道の知事を団長とする北方領土返還要求大会中央要請団、四十五名の方が各界を代表して二百五十万人の署名簿を携えて、参議院の沖縄北方問題特別委員会、それから外務委員会委員陳情に参っております。昭和四十七年度の百万人署名を皮切りにしまして、五十四年までの八年間の間に累計千二百五十万人の署名に上っております。  その内容は、すでに御承知のとおり北方領土復帰実現に関する請願、それから北方領土地域の軍事基地撤廃等に関する要請、日ソ平和条約締結促進に関する要望書、これを持参して参っております。政府にもそれぞれ関係大臣のところへ要請があったと思うんですが、この席でこうした北方四島返還を願い、また今回の基地撤去に対して政府の毅然たる態度を望んでいる皆さんに対して、この機会に政府の取り組みの決意を、簡明で結構ですから、まず最初にお述べいただきたいと思います。
  71. 園田直

    国務大臣(園田直君) 御発言のとおり、北海道、根室、宮城県の代表の方々がたくさんの署名を持って総理大臣以下関係閣僚に意見を申し伝えられました。  総理大臣からは、北方四島の問題で大変皆さんに御迷惑をかけているが、依然として進展しないのはまことに遺憾である、したがいまして皆さんの御熱意を受けて政府はさらに粘り強く北方四島問題の解決努力いたします、こういうお答えをされたところでありますが、政府といたしましては、その趣旨のとおり、まことに遺憾な状態ではありますけれども、あの手この手を尽くし、あるいはまた領土問題ばかりでなく、御承知のごとく、いま民間会議、事務会合等は順調に進んでおるわけでありますから、各種各方面から糸口を見つけて、これに最大の努力をする考えでございます。
  72. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 一月二十九日に、防衛庁から国後、択捉島の軍事基地を拡充強化しているという発表をしまして、直ちにこの発表に対して二月一日の日本向けモスクワ放送はツベトフ東京特派員の内政干渉論といいますか、これを流したわけですが、ソ連は自分の国土でやりたいと思うことはする権利があるんだというようなことを言っているわけですが、この内政干渉論に対して、わが国の外務省としては、当然、反論し、言うべきことはきちっと言うべきであると思うんですが、大臣はこの内政干渉論に対していかなる見解で現在おられますか。
  73. 園田直

    国務大臣(園田直君) 内政干渉という言い分は理不尽な言い分でありまして、北方四島が日本古来の固有の領土であることは明白な事実でありまするし、日ソ共同宣言、共同声明の文言から見ましても「未解決の諸問題を解決し」というのはこの領土問題であるということは、これは当時両国が認めたところであります。したがいまして、その固有の領土に軍備を強化し増強するということは、これは平和的解決の精神並びにわが国の固有の領土であるということに対する解決の道に逆行するものでありますから、強くわれわれは主張したところであります。  これに対して、ポリャンスキー在京大使からも、いま発言されましたように、領土問題は解決済みで、わが国が自分の領土で何をやろうとそれは内政干渉である、こういう発言があったのに対し、直ちに高島審議官からは、日ソ共同声明、共同宣言の原点に立ち返るということで内政干渉ではない、しかも、これは一握りの反ソ分子の考え方ではなくて、全国民の願いであるということを直ちに反論をいたしております。私も、そのように考えております。
  74. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 七三年秋に行われた田中・ブレジネフ最終会談で、会談後に出す共同声明の案文の未解決の諸問題の中には北方四島問題が含まれておりますねと、こういう当時の田中総理の念押しに対して、ブレジネフ書記長ははっきりとダー、そうだと、こう答えておられると思うんでありますが、それも一度だけじゃなかったと、こういうことで、この短い言葉のやりとりの中に北方領土問題が日ソ間の未解決の重大事項であるということをソ連の首脳が認めたということがはっきり裏づけられているわけなんですが、今回のソ連側の行動を推測する限りにおいては、どうもこのソ連の最高首脳の言葉すら当てにできなくなったんじゃないかという危惧を持つんですが、五日に政府ソ連に申し入れた日本側の抗議ですね、これについて現在までのところ、ソ連本国から何らかの態度表明なり回答なりが正式ルートで来ているのかどうか、これについて確認いたしたいと思います。
  75. 園田直

    国務大臣(園田直君) ポリャンスキー在京大使は、反論しつつも、日本側からの申し入ればそのまま本国に伝達することの確約をいたしました。その後、ソ連の本国からは何らわが方の申し入れに対して返答なり、反論はございません。
  76. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 最初、園田外務大臣は、この問題が起きてから直ちに北方四島におけるソ連基地の拡充強化の対応として、当面冷静な態度ということを言われたわけなんですが、その真意、それからその態度は今後も変わらないのかどうなのか、その辺のところをもう少し御説明いただきたいと思います。
  77. 園田直

    国務大臣(園田直君) すぐ目の前の基地の軍事強化でありますから、日本を守るという意味から防衛庁の方々が非常な関心を持ち、これに対する重大な警戒を持たれることは結構でありますけれども、外務大臣としては、やはりこれは、外交はソ連ばかりではありませんけれども、主張すべきことは明確に主張し、反論すべきことは明確に反論をする。ただし、それを一つの日ソ間の感情の対立とか反ソ感情をあおるようなことにすることは決して領土問題解決のためにも賢明ではない。冷静な気持ちの上に主張すべきは主張し、反論すべきは反論すべきであるという考え方はいまでも変わりはございません。
  78. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 重ねて確認しておきたいんですが、防衛庁筋からのいろんな報告によりますと、どうもソ連側のこの国後、択捉の軍事基地の強化拡充、これは今後さらに占有の既得権といいますか、実績を固定化しようという様子が非常に強まっているわけで、田中・ブレジネフの間に取り交わされた共同声明、これはもう死文化されてしまうんじゃないかという非常な危惧を持っているわけですが、外務省としては、この日ソ共同声明死文化という声に対して、いま一度これに対する公式の見解をここで明快にお述べいただきたいと思います。
  79. 園田直

    国務大臣(園田直君) この前、高島審議官からポリャンスキー大使に申し入れましたのは公式の抗議でありまして、やった形式は口上で申し入れて、その文句を文章にしたやつを渡してございます。今後とも、粘り強くこの点については主張すべきであると考えております。
  80. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから今回のソ連の態度に対しまして、一方には、日本に軍事力がないから、余り弱いからソ連が非常に日本を侮ってこういう既成事実の積み重ねを繰り返し行っているんだ、ですから、わが国ももう少し侮られないように軍事力をさらに強化すべきだ、こういう声もありますし、一方、そういった軍備拡大の競争の理論に引きずられることは決してならない、こういう声も両方ございます。  外務大臣の立場として、今後、ソ連のこの軍事力過信姿勢をいさめるという立場で外交交渉に臨まれるのがベターであると考えるのか、あるいはやはりこの軍事力がソ連に比べて非常に微力であるという点でかさにかかってくるんだ、こういう考え方に立たれているのか、その辺の外務大臣のお考えを聞きたいと思います。
  81. 園田直

    国務大臣(園田直君) 北方四島の返還は全国民の悲願であり、各種各様の方法も通じて粘り強くやっていくことは非常な決意を持っておりますが、しかし、この問題が軍備強化をしなければできないということであれば、これは根本的な平和外交の否定であります。私は、軍備を強化して北方四島を返してもらうとか、軍備強化をすればソ連が基地の増強をやらぬとかということは、それは間違いではなかろうか。厳しくとも、あるいはなまぬるくとも、やはり平和に徹し、平和解決に徹して話し合うことがただ一本の道であるという決意には変わりはございません。
  82. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 園田外相は、田中元総理の訪ソ以後の領土問題並びに平和条約に関する話し合い、これは要請されてきたんですが、なかなかソ連側は田中訪ソに対する返礼としてのソ連首脳の訪日の予定を返答しようとしないんですが、こういった事態になってソ連首脳の来日ということは全く不可能というように考えられるのか、あるいは平和外交を進める中でソ連首脳の訪日というものを強く求めて、実現できるというように予想されているのか、それについての見通しをお聞きしたいと思います。
  83. 園田直

    国務大臣(園田直君) 困難ではあるが、不可能であるとは考えておりません。  私は、道理は道理、力と力の関係で強引に解決、することはできなくても、道理は絶えず勝たなくても最後には通ずる、こういう気持ちでございます。したがいまして今後とも平和的な話し合いの方法で、あるいは経済的あるいはその他日ソ共通の利害の問題、話のできるところから話を進めていく、どこからか糸口をつかんで私は話し合いを進めていきたいと考えております。
  84. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 二月五日から十一日までソ連は捉択島沖合い水域など四カ所で射撃訓練を行うために危険水域を設定することを通告してきたんですが、わが国はこれに対して抗議をされたと思うんですが、射撃訓練が実際に行われたのかどうか、その辺は事実を確認されておるんでしょうか。
  85. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 外務省といたしましては、まだ実際に行われたかどうか確認の報を得ておりません。
  86. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 もしこの射撃訓練が同水域で行われた場合、そしてわが国の漁船がその水域において事実上操業の制約を受けた場合、その制約をされたことについて生じた損害について、これはどのようになるか、外務省としての見解をお伺いいたしたいし、その場合、ソ連に対して損害賠償の権利というものを留保していく考えがあるのかどうか。
  87. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) お尋ねの点につきましては、二月三日、モスクワにおきまして、ソ連外務省に対しまして射撃訓練の中止と抗議を申し入れたわけでございますが、抗議の理由は、この危険水域に指定された一部がわが国の領海にかかっておるということ。それから中止を申し入れましたのは、そのほかにたまたまそこに日本漁船が操業中である、こういうことで生じ得べき危険にかんがみまして中止を申し入れましたが、そのとき、同時に、もしかかる日本側の申し入れにもかかわらず、ソ連側がこれを強行した場合に生じ得べき損害につきまして、日本政府はこれを留保するという旨を明らかにいたしております。
  88. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 昨年の一月三十日、ソ連政府筋の発表によりますと、北方四島を含む南千島の長期的総合開発についての閣議決定がされた。それに続いて二月のソ連学術誌「極東の諸問題」にこのことが発表されているわけですが、この長期的総合開発の中にはいわゆる日本で言う北方四島、これも含まれておりまして、もしこれがだんだん現実のものとなっていくと、領土返還の非常に大きな壁になると思うんですね。そういうことがやはりこういったものを読んだ人たちの中から非常に心配されて声として出ているんですけれども、日本政府としてはこのソ連北方四島も含む南千島長期的総合開発、これについてはいうの時点で知られたのか。また、その事実に対して北方四島返還の障害になるという判断をされなかったのか、されたのか。されたとすれば、それについてのソ連側に対する抗議というような形でのアクションを起こされたのかどうか、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  89. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ただいま御指摘の点は、一昨年十二月に発行されましたソ連機関誌「極東の諸問題」という雑誌の中にレオーノフという人が書きました論文のことをお指しのものと思います。これに関連いたしまして一部にソ連の幹部会において南千島総合地域開発が決定されたというような報道がございましたが、外務省といたしましては、そのような幹部会の決定が行われたということは確認いたしておりません。ただいま申しましたレオーノフ論文につきましては、サハリン、旧樺太でございますが、サハリン及びソ連の主張するクリル地方の全般的な経済発展開発計画を紹介したものでございまして、特に北方四島の開発だけを取り上げたものではないと承知いたしております。  いずれにいたしましても、現在、北方四島にはソ連が漁業のコンビナートその他の施設をつくりつつあることは承知しておるところでございますが、ソ連の占拠そのものが不法であるということでございますので、この占拠に対しましては、御承知のとおり、かねて繰り返し抗議をいたしておるところでございます。
  90. 立木洋

    ○立木洋君 外務大臣、千島の問題ですけれども、歯舞、色丹、これは北海道の一部である。国後、択捉、これは一度も外国の領土になったことのない日本固有の領土である。御承知の北千島、これは一八七五年ですか、交換条約で日本のものになった。正当な手続といいますか、これを踏んで日本の領土になったという意味では、歴史的に言えばこれは日本の領土。だから私たちはこのすべてをやっぱり返還を求める。これはポツダム宣言のいわゆる領土不拡大の原則に照らしても私は正当な要求だろうと思うんです。  それで今日問題になっておりますいわゆる軍事施設が国後、択捉で設置されたという点については、いまのソ連が行っている千島の占有状態を固有化するものである、そしてさらには、日本の国民の切実な要望、また重大な懸案問題になっている領土問題の解決等々の上でも困難をもたらすものですから、私たちとしてはこれはきわめて遺憾なことであるというふうに考えております。しかし、問題は、現在何を考えるべきかということは、これらの千島をどのようにして一刻も早く返還を実現するか、これが全国民の私は要望だろうと思うんです。その立場に立って私はやはり日本政府が明確な、国際法上でも確固とした立場を確立して、積極的な交渉に当たるべきであるというふうに考えるわけです。  その点で幾つかの点を時間がないものですから端的にお尋ねしたいわけですが、現在、日本政府はサンフランシスコ条約二条(C)項で放棄した千島列島、これには国後、択捉が含まれない、いわゆる北千島だけであるという見解であるのは間違いございませんか。
  91. 園田直

    国務大臣(園田直君) 間違いございません。
  92. 立木洋

    ○立木洋君 それでは、このサンフランシスコ条約二条(C)項、つまりサンフランシスコ条約が起草される過程、それから講和条約においてこれが調印される過程で、日本の政府は、二条(C)項で述べられている千島列島というのは北千島だけであって、国後、択捉は含まれたものではございませんということを明言した事実がございますか。
  93. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) まずサンフランシスコの平和条約におきまして、吉田全権は日本代表として演説をされたわけでございますが、その演説の中で「敢て数点に付全権各位の注意を喚起せざるを得ないのはわが国民に対する私の責務と存ずる」と言われまして、「第一は領土の処分問題であります。」と述べられ、その中で……
  94. 立木洋

    ○立木洋君 簡単に。
  95. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 「日本開国の当時、千島南部の二島、択捉、国後列島が日本領であることについては、帝政ロシアもなんらの異議を挾さまなかったのであります。」こういうふうに述べておられます。  それから、ただいま御質問の点であろうかと思いますが、平和条約が審議されました昭和二十六年の国会におきまして西村条約局長は「条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。しかし南千島と北千島は歴史的に見て全くその立場が違うことは、すでに全権がサン・フランシスコ会議の演説において明らかにされたとおりでございます。あの見解を日本政府としても、また今後共堅持して行く方針であるということは、たびたびこの国会において総理から御答弁があったとおりであります。」このような条約局長答弁は、当時の条約発効前のきわめて微妙な事態を反映いたしまして、わが国の立場のみを強く表面に出すことを避けるという考慮もあったためでございますが、多少誤解も生ずることがございましたので、その後、昭和三十一年……
  96. 立木洋

    ○立木洋君 それは後でまた聞きますから。  その発言はよく存じております。これは一番最初私が冒頭に北千島と南千島とは違うかということをなぜ言ったかということは、あえてそのことがあるから述べたわけであって、私は南千島が固有の領土であるということをいささかも反論しないし、それは当然だと思うんです。  しかし、そこで吉田全権が述べられたことも、あるいは西村条約局長が述べたことも、これは南千島が放棄した千島列島には含まれていませんよというふうに明確に述べたものではない、つまり放棄した千島列島というのがどの範囲のものであるかということを明確に述べたものではない、ということはどうですか、イエスかノーかだけで結構ですが。
  97. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 放棄した中にこの四島が含まれているということを明確に述べたものではないと思います。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 そうですね。そうしたら、この条約の起草過程並びに講和条約の中で、日本以外の外国が、ここで述べられている放棄されるべき千島列島というのは国後、択捉が含まれておりません、千島だけでございますと述べた外国がございますが、そしてまたそれが合意になったという事実がありますか。
  99. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) このサンフランシスコ平和条約の当時におきまして、日本が放棄しました千島列島の正確な定義が行われておらなかったということは事実でございますが、その後、この主たる条約の……
  100. 立木洋

    ○立木洋君 後は結構なんです、後は後で聞きますから。時間がないものですから、大変申しわけないけれども。  それで、いまの事実で明確になったことは、サンフランシスコ条約で放棄された二条(C)項の場合に、これが北千島のみであって、国後、択捉が含まれていないということは明確に日本政府も述べていない。さらに外国もこの問題について述べておらず、千島の問題に関してはどの範囲であるかということは明確になっていなかったというふうにいま宮澤さんは述べられた。  ただ、問題は、一般的に国際法上見てみますと、国際法上で領土の問題が問題になった場合、その範囲が明確にされていない場合、慣習的な範囲をとるということになっておると思うんです、国際法的には。国際的な裁判所におけるいままでの諸判決を見ましても、いわゆる領土問題が明確になっていない場合には、慣習的にいままでどういうふうな区分にされておったかということで大体認定されてきたというのが国際裁判所によるいままでの経過だと私は思うんです。ですから、戦前、日本は、千島列島という場合に国後、択捉を含んでいたというふうに日本政府は考えていたのかどうなのか、慣習的にはどうなっておったんですか、戦前。
  101. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 千島列島という名前は大変古い名前で、昔は蝦夷が千島と言っておったようでございますが、通例、北千島、中千島、南千島と言っておったようでございます。しかしながら、条約の解釈におきましてはいかなる言葉が使われておるかということが最も大事でございまして、サンフランシスコ条約のテキスト、日本文と同じく有権的に解釈さるべき英文におきましては「ザ・クリル・アイランズ」という言葉が使われておりまして、問題は、したがいまして、この「クリル・アイランズ」という言葉が歴史的法的にいかなる島を包含するかということでございますので、この点につきましては、立木委員よく御承知の日本と帝政ロシアとの間の二つの条約、これによって解釈されるべきものであるということを日本政府は明らかにしたわけでございます。
  102. 立木洋

    ○立木洋君 慣習的には千島列島において国後、択捉が含まれるという点については、私の質問についてあたなは否定されませんでした。  で戦前の教科書ですね、いわゆる地理を教えておった文部省が責任を持って発行した教科書の中には、国後、択捉というのは全部千島列島に含まれているんです。これは明確な慣習であります。条約においてそれが明確にされていなかったというサンフランシスコ条約の中で、いわゆる慣習的にとられておったこの千島列島、ですから、アメリカ自身が、昨年いわゆる外交文書が公表された中で、一九四九年の段階で明確に述べられているのは、国後、択捉が千島ではないというのには根拠がない、こういうふうに明確に述べている。歯舞、色丹は千島ではないということには明確な根拠があるというふうにアメリカ政府自身が、そういう外交文書が昨年四月に公表されております。  確かに条約上はどういうふうな形になったかということについては、これはソ連との条約であります。サンフランシスコ条約についてはソ連は参加しておりません。参加しておらない当事国の中でどういうふうに決められたかということが、いわゆるサンフランシスコ条約で廃棄した二条(C)項がどういうものを持っておったかということがはっきりされなければならない。それをあなたはソ連との条約云々を持ち出してきて、それに根拠づけようとしても、私は妥当性がないと思うんです。  そういう点から考えてみて――私は先に進みます、宮澤さんが先ほど先の部分についてお述べになりたいそうでありますから。確かに、そういうサンフランシスコ条約二条(C)項で千島を廃棄した状況の中では、起草委員会の中でも、その講和条約の過程でも、千島の問題については、慣習的なものとして南千島も含まれた千島という概念があったと。だからこそ西村条約局長もあるいは草葉外務次官ですか、これで見てみますと、たくさんの答弁昭和二十六年当時あります。いわゆる国後、択捉を千島ではないというふうなことはかえってこじつけになりますとか、あるいは条約で言われておる千島列島というのはいわゆる南千島と北千島を含んでおりますと。その当時のあれを見てみますと、多分にそういうことがあります。もちろんその過程の中では北千島と南千島とは概念が異なるという趣旨説明もございますけれども、その当時の政府の解釈というのは大体そういう解釈であった。それが一九五四年か五五年くらいからですか、その解釈が変えられたというふうになって、放棄した千島列島の中には南千島、いわゆる国後、択捉は含まれないという立場をとられるようになった。このようないわゆる解釈を変えられたということについては間違いないですね。
  103. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) これにつきましては、日本政府が解釈を変えたということではございませんで、誤解を招くおそれのございました点を明らかにしたということでございます。
  104. 立木洋

    ○立木洋君 これは誤解を招く点を明らかにしたということでなくて、高島審議官が、四十八年ですか、答弁されている中でも、いわゆる前段と後段とでは明確な違いがございますということを述べておるんですね。それから池田総理自身もこの点に関しては、いわゆる西村条約局長が当時そういうふうに述べたことは間違いでございましたと明言されているんです。もう池田総理は亡くなりましたけれども、議事録にはちゃんと残っている。だから、これは解釈を変えられたということなんですよ。これは不十分な点を是正したなんというふうな宮澤さんはいわゆる官僚的な答弁をなされますけれども、実際はそうなんですよ。それはそうでしょう。池田さんの言っていることに反論されますか、総理の。
  105. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 私どもは、解釈を変えたということではなくて、誤解を招くおそれのあったものを統一見解として正しく明らかにしたものと解釈しております。
  106. 立木洋

    ○立木洋君 それは筋の通らないお話だろうと思います。もちろん、私は、この解釈を変えるということ、すべての場合に絶対解釈を変えてはいけないなんというふうな前提で申し上げているんではないんです。これは条約法に関するウィーン条約の中でも、変える場合にはどういうふうな手続をとらないといけないというふうな規定もありますよね。  そして、問題なのは、このいま申し上げましたウィーン条約の中の第三節、条約の解釈についてという三十一条の四項の中で「当事国がその意図を有することが証明されるときは、文言に対して特殊な意味が与えられるものとする」というふうに述べられています。だから、これが起草の過程、それから講和条約の過程、その後の国会での批准の過程の中で、千島列島というのはどういうものであるかということを当初日本が述べたものは特殊な意味を持ったと思うんです。この国際条約における千島の範囲に関する内容の問題に関しては、特殊な意味を持った。これはどのように否定されようとも、国際的には特殊な意味を持ったでしょう。諸外国は、何もそれを規定した条文がないんですから、これは日本が当事国として述べたということは、特殊な意味を私は持ったと。そしてこの解釈を一九五五年以降変更されたというならば、この変更された国際的な措置、手続はどういうふうになさいましたか。
  107. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど欧亜局長からも答えがございましたように、私どもの考え方は、これは解釈を変えたということではあくまでもないわけでございます。誤解を招くようなことがあったのでその解釈を明確にしたということでありますので、いま先生のおっしゃられるような条約の解釈の変更に関するその国際的な条約法その他の問題とはディメンションを異にする問題であるというふうに考えております。  その解釈を変えたものではないという点につきましては、先ほど来欧亜局長も述べておりますが、先ほど問題になりました昭和三十一年の森下政務次官の統一見解でも、冒頭において、一応それではいまの南千島の問題のそういう誤解を解くために、ここにはっきりと一つの声明をいたしますと、あくまでもその誤解を解く、要するに解釈上の不明確さがあるのを誤解されないように明らかにすると、こういう趣旨でございます。
  108. 立木洋

    ○立木洋君 わかりました。それはやっぱり私は、中島さん、答弁における詭弁だと思うんですよ。  池田さんは明確に西村条約局長の言っておったのは間違いだったと。あのときの政府の責任ある立場にある条約局長が述べたんですから、条約局長というのはどういう権限を持っているかあなた御存じでしょう、自分自身が条約局長なんだから。条約局長が述べた、これが間違いだったと池田総理大臣が否定されたんですよ。これは明確に見解を変えたということなんですよ。それを部分的な修正、部分的な修正と言うんだったら、池田さんがそのとき部分的な修正だとおっしゃればよかった。そうじゃないんです。  そして、その後の国際的な措置についてはあなたは言わなかった。一九五五年から五六年にかけてフランスだとかイギリスに対して、日本のいわゆる放棄した千島列島の問題について、国後、択捉が含まれていないんではないかということについて、あなた方の御意見を聞きたいといって照会されましたわね。その照会された結果、どうなっていますか。――それはいま資料がなかったら、後で資料をいただければ結構ですが、私の方で聞いたところでは、いわゆる国後、択捉が放棄した千島列島には含まれていませんという趣旨の同意ある回答は得られなかったものだというふうに私は考えております。ただ、日本の固有の領土であるという点についての同意は得られております。これはつまりサンフランシスコ条約二条(C)項で放棄した千島列島に国後、択捉が含まれていないということではなく、確かに日本の政府がおっしゃるとおり国後、択捉というのは固有の領土でございますということである。サンフランシスコ条約二条(C)項で放棄した千島列島の範囲を明確に日本政府に同意したものではなかったということは、これは明らかであります。後で資料をいただければ結構です。  それで私はもう時間があれですから、最後に大臣にお尋ねしたいんですが、園田さん、この国会でサンフランシスコ条約の二条(C)項で放棄されたとき、これは国後、択捉は含まれていませんということが明言されないで、含まれていますということで批准したんですよ。それで発効したんですよ、ここは。それは国会に対して、国民に対して、あなた方日本の政府として述べられた態度はそういう態度だったんです。ところが、後になって、これはいま言われたような、いわゆる部分的な不十分さがあったから変えました、明確にしました。明確にしたんじゃないんですよ、総理大臣が責任を持って間違っておったということを言われたんだから。そうすると解釈を変えられた。解釈を変えたならば、これに対して国際的な措置をとらなければならない。ところが、措置が十分にとられていない、同意が得られてないんですよ。いまそういう状態にある状況の中で、いま国後、択捉は日本の固有の領土だと、これは確かに固有の領土です。しかし、日本政府としては、これを放棄したんですから、これは審議の経過から見て明確なんですよ、一点の誤りもない。それを放棄しておきながら、その問題で国後、択捉――日本政府は一切の権利、権原を放棄しますといった、この国後、択捉を含む全千島列島に関して述べるという立場では、本当に国際法上、それから諸外国に対して十分な説得力を持つ外交姿勢に立ち得るかどうか。  私たちは共産党としても本当に全千島が日本に返ってほしいんですよ。ああいうふうな戦後の領土不拡大の原則に反するような状態がいつまでも続くということは、これは日本民族の要求だけではなくて、戦後処理の不当な状況を改めていく、そして日ソ関係を真に友好的な関係の基礎の上に確立するということを私たちは本当に願っているんです。願っておるからこそ、日本政府は本当に国際的にも説得力のある立場に立脚をしてやるべきではないか。そうするならばこのサンフランシスコ条約二条(C)項で千島を放棄したということに関しては、この条項をわれわれは廃棄しますということを関係諸国に通告をして、そして日本が堂々と国際的にも、その返還の国際法上も主張できる立場をいまこそ私は確立すべきではないか。  この点に関しては、かつて岡崎外務大臣がこの問題の答弁の中で述べられています。条約というのは――どういう表現を使われたか正確な記憶はありませんけれども、ついては永久不変のものではありません、これは変える場合もあるでしょう、しかし、いま結んで、すぐ変えるというのは、これはいかがなものでしょうかというふうな趣旨のことを述べているんですよ。いままで二十数年間やってきた状況の中で解決されていないんです、現実に。これからどれだけかかるかわからない。  だから、私たちは、本当にあの歯舞、色丹、これはもう日本の国有の領土で北海道の一部である。そして明確にこれは放棄した千島列島には含まれていないんですから。そして一たんソ連自身もこれについては返還しますという合意もあるわけです、返しますという。そしてその後ソ連側が態度を変えたのは、そこで軍事基地をつくられたら困りますとかいって変えたわけですね。だけど、その後、重光さんにしたって、政府関係者は歯舞、色丹が日本に返ってきたって絶対にそこに軍事基地をつくるようなことはいたしません、アメリカからそういう要求があったってわれわれはそういう要望を受け入れるものではありません、こう言っているんですから、ですから、この歯舞、色丹は私は即刻平和条約を結ぶ以前にでもソ連に堂々と交渉して歯舞、色丹を返せということをやる根拠は十分にある。  そうして千島列島全体に関しては、日本政府が先ほど申し上げたような二条(C)項を破棄して、そうして堂々と国際法的な立場もとって、そうして説得力のある外交交渉を展開すれば、これは国際世論から大きな私は支持を受ける内容になり得るだろうと思うんですよ。その点に関して、最後に、まだあとの個々の部分は宮澤さんとそれから中島さんにまだお尋ねする時間がありますから、この後でお尋ねをしますから、この点に関しての大臣の御意見、今後考えていただける余地が全くないのか、そのことで最後に大臣の所見を伺って、私は大臣についての質問を終わりたいと思います。
  109. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまの御発言は十分承りました。サンフランシスコ条約二条(C)項を破棄するということは、これは当時のサンフランシスコ条約参加国とのあれもありまするので、ここで即答はいたしませんが、大事なことでございますから、もう一遍勉強いたします。
  110. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 委員長
  111. 立木洋

    ○立木洋君 後でまた聞きますから。
  112. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 時間がありません。大臣が退席された後でまたあるそうですから、もうしばらく待ってください。
  113. 秦豊

    秦豊君 大臣との時間は九分もありますから、ゆるゆるとやりたいと思いますけれども、園田さん、国後と択捉に対して十九年ぶりに正規軍が配備された、基地建設が行われた、これを大臣としてのあなたがどういうふうに解析していらっしゃるか、位置づけていらっしゃるかということを聞いておきたいんです。  たとえば両島占有の既成事実を強める、それから総合的な示威効果、デモンストレーションとしての効果をねらう、あるいはこれはモスクワから見た場合ですよ、モスクワサイドから見て、いわゆる米日中リンケージのこの体制に対する反撃の第一着手なのか、われわれの観点ではありません、あくまでもモスクワサイドから見た観点です。そうではなくて、これはあくまで狭義の純軍事的な対米核戦略への布石なのか、さまざまな解析が可能だと思いますけれども、大臣の観点を伺ったことがないんで、ちょうどいい機会ですから、どのように位置づけておられますか。
  114. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまの北方領土内の兵力の増強及び基地の強化をやらんとしているかのごとき情報、一貫したものは、私は、ソ連の側から見れば同島の実効支配を誇示する必要もなし、日本に対して特に脅威を与える必要もなし、一にソ連の一貫した極東軍備の増強の線に連なったものであると、ただいまのところでは、判断をいたします。
  115. 秦豊

    秦豊君 最近のソ連の国防軍の文献とか機関紙とか、それからソビエトから発表されるさまざまな安全保障関係資料を見ると、   〔委員長退席、理事伊江朝雄君着席〕 あたかもクレムリンの中の見解がスターリン時代の戦略発想、思想にUターンしたんではないかとさえ思いたくなるような、つまり軍事力の優先はあらゆる政治外交上の要求を通すための第一義であるというふうな発想が散見される。そういう発想の具体化の一つではないかと私も実は思いたいんですがね、重ねてちょっとこの点。
  116. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまの一貫したソ連の極東の軍備強化の一連のものであると考えております。
  117. 秦豊

    秦豊君 きょう私の長い質問が終わりますと、決議というところがありまして、この委員会の皆さんの合意がどう形成されるかはまだわかりませんが、そうするとさきの衆議院、やがて参議院というわけで衆参の択捉、国後問題についての一つの意思表示が公的な機関でされるわけですね。五日にはポリャンスキー氏を呼んで若干のやりとりがあったみたいです。しかし、去る二月五日のような申し入れ、一種の抗議だと思いますがね、抗議のほかに、日本政府として、衆参の決議を受けて、また新たに改めてアクセントをつけてモスクワ側にやるべきことがあるのか、そうでなくて意思表示をする場というのは別に考えておられるのか、その辺はどうなんですかね。
  118. 園田直

    国務大臣(園田直君) これは当然両院の議決があれば、その議決の趣旨に従ってソ連に申し入れをすることになると考えます。
  119. 秦豊

    秦豊君 じゃ二月五日の再現がまたあり得る、あるいは出先の大使をしてソ連外務省というふうな一般的な外交ルートですね、余りアクセントがつかないと思うが、その程度のことしかまだお考えになっていませんか。
  120. 園田直

    国務大臣(園田直君) 両院の決議政府に対して決議をされるわけでありますから、その趣旨に基づいて、ソ連でやるか、こちらでやるか、いろいろ方法を考えてやっていきたいと思います。
  121. 秦豊

    秦豊君 わかりました。  しかし、それにしましても、あねたが再任されて、それでこれから少なくとも七九年の対ソ外交を担当されるわけですけれども、恐らく今後の対ソ外交というのは、だれがどういう観点に立とうとも、客観的に見れば、一種見出し的に言えば冬の時代だと、避けがたいと思いますね。先ほどあなたはわれわれ委員に対して所信を述べられたわけなんだけれども、私はあの部分に賛成なんです。今後の対ソ外交、国後があろうが択捉の基地強化があろうが、あなたが言われたように「冷静かつ着実に」対処をしなければならないという、つまりしたたかで覚めた観点が私は必要だと思うから、あなたのあの部分に賛成するわけです。  ところが、あくまでポリャンスキー氏は、あなたにもこの前五日に言ったように、善隣協力条約を何かあれば出してくる。あれはだれが見ても第二次大戦のいわゆる結末、結果、これを固定しようという一種の現状維持路線なんだ。日本政府の方は、少なくとも圧倒的多数の国民総意が、世論が四島一括返還と、固有の領土論に立っている。そうすると、ソ連は何かあるとカウンターパンチとして善隣協力条約を出してくる。われわれはそれを排除して原点に返れと言う。外交交渉としては凍結の、氷づけですよね、あたかも。しかもソ連は例のアジア集団安保構想を堅持して放さない。二十年かかって実現したヨーロッパ安保を北東アジアに適用しようとすれば、やっぱりこの前の十二月のソビエト・アフガニスタンとか、やがて来月にでも結ばれるであろうソビエト・ラオスとか、   〔理事伊江朝雄君退席、委員長着席〕 二カ国間のさまざまなものを積み重ねてやがてアジア安保に至る、そのアジア安保の重要な部分をなす発想が協力条約だと私自身はそう位置づけているんです。  そうしますと、氷づけにせよ、あなた園田さんの頭の中には、この善隣友好条約なんというのは難点があろうが、いまいましかろうが、反論したかろうが、片づかなければその次に行けないというふうな非常にエッセンシャルな関門というふうにお考えなのか、そうではなくて別な方法で日ソ関係の打開があり得るというふうなとらえ方なのか、その点も伺っておきたい。
  122. 園田直

    国務大臣(園田直君) 日中友好条約締結後、ソ連は、御発言のとおり、日本は日中友好条約が反ソ的なものでないという実績を見せろ、その実績はまず第一に善隣友好条約をどうするかと、こういうのが向こうの口上でございます。  私は、これに対してグロムイコ外務大臣に直接言いましたことは、御承知のとおり日本の国民の悲願は北方四島の問題の解決である、したがって善隣友好条約は相手にしないというようなかたくなな態度はとらないけれども、まず第一に四島の問題に誠意ある、しかも解決しようという態度が見られるならば、私は善隣友好条約についても話に乗らぬというわけではない、ただし、いまの善隣友好条約の内容では反対である、このように返答いたしておるわけでございます。
  123. 秦豊

    秦豊君 最後に、あなた自身がかかわられることしの対ソ外交日程、局長クラスではなくて、次官ではなくて、あなたがタッチされることしの対ソ外交日程のうちですでにコンファームされたもの、いま交渉の途次にあるものを含めて、どういう日程を描いておられますか。
  124. 園田直

    国務大臣(園田直君) まだ解凍も前進もいたしませんが、まず第一には、ソ連の最高首脳、またはこれに当たるべき人の訪日、それから、当然、約束になっておりまする外務大臣の定期会議のための訪日、これを盛んに向こうに要請をしているところであります。しかし、これについては、行くという返事はあるが、いつという返答は依然としてない。したがいまして、私は、この面と、もう一つは、幸いに事務的経済的には話が進んでいるところもありますし、ソ連との間には利害が共通するところもたくさんあるわけであります。そういう両方から、私はあらゆる方面から何とか端緒をつかむべく努力をする所存でございます。
  125. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 以上で外務大臣に対する質疑は終わりました。     ―――――――――――――
  126. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査のうち、北方領土問題の解決促進に関する件を議題といたします。  この際、便宜、私から、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党及び社会民主連合の共同提案に係る北方領土問題の解決促進に関する決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     北方領土問題の解決促進に関する決議(案)   我が国固有の領土である歯舞、色丹及び国後、択捉等の北方領土の返還は、日本国民共通の悲願である。   しかるに最近ソ連が、国後択捉両島に新たな軍事力の配備、軍事施設の構築等を進めていることは、まことに重大である。   我が国の領土問題に対する主張を承知しながら懸案の北方領土にかかる既成事実をつみ上げようとするソ連の態度はまことに遺憾であり、日ソ平和条約の締結、日ソ友好関係の前進に大きな障害をもたらすものである。   よって政府は速やかに、このような領土の平和的返還の障害となる全ての施設の撤去をソ連政府に要求するとともに、北方領土の返還、平和条約の締結に取り組み、日ソ間の安定的な平和友好関係を確立するよう努力すべきである。   右決議する。  以上であります。  わが国固有の領土である歯舞、色丹及び国後、択捉等の北方領土が、長年にわたる日本国民の要望にもかかわらず、いまなおその返還が実現せず、さらに最近ソ連国後、択捉の両島において軍事施設の構築等を行っていることは、日ソ両国の平和友好関係促進にとってまことに遺憾であります。よって、この際、本委員会としてもその態度を明確にし、これらの問題の解決のために政府に一層の努力を要請すべきであると考えまして、本決議案を提案する次第であります。  何とぞ御賛同賜らんことをお願い申し上げます。  本決議案を本委員会決議とすることに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  127. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、園田外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。園田外務大臣。
  128. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいまの御決議に対しまして所信を申し述べます。  政府といたしましては、ただいま採択されました本決議趣旨を十分に体しまして、今後とも粘り強く対ソ折衝を進めるべく、引き続き最大限の努力を払う所存でございます。     ―――――――――――――
  129. 西村尚治

    委員長西村尚治君) それでは、引き続き本調査の一質疑を行います。
  130. 丸谷金保

    丸谷金保君 最初に、水産庁、先ほどからも申し上げておりますように、わが国の固有の領土に対する軍事施設その他の撤去ということをいま本委員会決議したわけですが、地元の周辺として漁業へのはね返りということを非常にいろんな点で心配しております。  これは二月一日の朝日新聞ですが、陳情をどうしたものか、この問題について。そういうことからはね返りを心配して思いあぐねている国境の町の状況等も伝わってきております。しかし、われわれが現地に行きますと、現地の漁民は、生活も苦しいし大変だけれど、魚と領土を取引するわけにはいかないからおれらもがまんしているんだ、こういう実は声があるんです。いいですか、これらの漁民の心情というものを水産庁はしっかり受け取って、これから起こるであろういろんな障害に対するアフターケアについてはひとつ農林大臣によくこの間の事情を話しておいていただきたいと思います。それどうですか。
  131. 中島達

    説明員中島達君) ただいま先生からお話のございましたことにつきましては、私ども水産庁といたしまして、漁業を所管する立場から、漁民の方々の気持ちというのは常日ごろ痛いほど身にしみて感じているわけでございます。  ただいまのお話につきましては、帰りまして、早速、大臣まで御報告を申し上げる所存でございます。
  132. 丸谷金保

    丸谷金保君 三原長官にお願いしますが、このことについては、北方領土返還運動国民的な視野で進めていく上においてもきわめてないがしろにできない問題だと思います。どうかひとつそういう点について長官としても御配慮をお願いいたしたいと思いますが。
  133. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) ただいま根室市等、地元振興対策なりあるいは生活について切実なお訴えがございました。  今日までも、御承知のような、先ほども水産庁が申し上げてまいりましたように、コンブ漁の貝殻島周辺の問題あるいは花咲港の重要港湾指定あるいは特定不況地域の指定等もやったわけでございまするが、なお、先ほども先生から御指摘のございましたように、新北海道開発計画の中にぜひひとつ地元根室を中心といたしまする地域の問題を特に計画の中に入れてほしいというようなことで具体的に進めていただいておるわけでございまするが、今日のような事態の推移で地元が困られるというような情勢の中に置かれたような状態があってはなりませんし、そういう点を十分注視しながら、今後とも、対処してまいりたいと考えております。
  134. 丸谷金保

    丸谷金保君 防衛庁にお尋ねいたしますが、軍事基地の構築等につきましては、すでに昨年の六月に再三にわたって実は新聞紙上等でも取り上げられました。しかし、当時、防衛庁の内部の情報及び意見が非常に混乱しているというふうな状態の中で、対応がきわめて鈍かったのではないかというように思うわけです。  たとえば六月の十七日の北海道新聞では、防衛庁の見解として、部隊の移動、基地建設及び大規模な侵攻作戦のいずれかの三ケースが考えられるが、情報を分析すれば基地建設と判断するのが適切であり、というふうな記事がございます。それから六月の二十九日の同じく北海道新聞で、また防衛庁首脳は基地建設説を明らかにしており、今回の米側情報――要するに米側の情報からそういうふうなあれで内局、外局いろいろなことで分かれたということがありますけれども、そういうことが新聞紙上に出てきております。したがって、この時点でもっと防衛庁としてはすっきりした形でこの問題を国民の前に提起すべきでなかったか。できてしまってからあわてるよりも、そういう事態を察知したら、いち早くそれらのことをもっと明確にしていくべきでなかったか。  特に総理府に対しては、北方問題の返還等をやっておるのですから、十分な連絡のもとに北方領土返還運動を進めるようにすべきでなかったかと思いますが、これはおいでになる前の論議の中で、総理府の方としては一月の二十九日の時点までそれらのことについて各般の政府機関からの情報は受けていなかったということの答弁がございましたので、それらから勘案しますと、どうもちょっと対応の仕方について疑点があるので、その点をひとつ御答弁願いたいと思います。
  135. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 御指摘の点につきましては、御指摘のとおりに昨年の六月ごろからそのような動きがあるような情報はございました。しかしながら断片的な情報でございましたために、私どもといたしましては、それを、今回結氷期を迎えまして一応一段落したこの段階におきまして国民の皆様の前に公表することに私の指揮で踏み切ったわけでございます。  それで、実は、これは確かに重大なことでございます。昭和三十五年に当時ございましたところの勢力が撤収されまして、自後は国境警備隊程度のものが存置されるにとどまりましたのが、昨年からそのように増強されることは重大なことであります。重大なことでございますけれども、これを確信を持って国民の前に、皆さんに申すことが大事であることはもう言うまでもないことでございまして、私はそうしたことで総合的に判断して、このようなことを私のところへ言ってまいりましたので、これは早急に国民の前に公表すべきであると決意いたしまして、このたび、実は、聞きまして最も短い期間に発表いたしたわけでございます。仰せのとおり、昨年以来のいろいろな動きについては時々申し上げるということも決して考えられないわけではございませんけれども、重大なことでございますので、確信を持って公表する時期といたしましては今回がその適当な時期であった、このように判断したわけでございます。  しかし、今後とも、そのような御指摘もございますので、十分おさおさ怠りなく注意いたしまして努力してまいりたいと思う次第でございます。
  136. 丸谷金保

    丸谷金保君 私は、それを国民の前に公表するというふうなことだけでなくて、政府の部内においてどうしてそういうことについての総合的判断が一月の末まで行われなかったかということに対する実は疑点を非常に多く持っているのでございます。  特に、いま防衛庁で持っておる偵察用のファントムIIという機種ですか、この偵察機では基地の状況国後、択捉の状況というふうなものを全然察知できなかったんでしょうか、どうなんでしょう、それを詳しく。新聞社の飛行機でさえもあれだけはっきりした写真を出しましたでしょう。それが防衛庁でこの時点までできなかったのかどうか非常に不思議なんですが。
  137. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 報道につきまして私から一々申し上げることが適当であるかどうかと思いますので差し控えさせていただきますけれども、防衛庁といたしましては、フルにその機能を活用いたしまして情報の入手確認に努めておる次第でございまして、報道関係の写真等もこれはもうすでに報道せられておるとおりでございますけれども、私どもは自信を持ってそれ以上の情報を持っておりますことは申し上げられるわけでございますが、ただ、この情報の入手方法、経路、情報源等については申し上げることをお許し賜りたいと思う次第でございますが、重ねて申しますれば、防衛庁は自分の持つ機能、ただいま御指摘のございました機能を十分に私どもは活用してまいりたいと思う次第でございます。
  138. 丸谷金保

    丸谷金保君 百里基地で、決算委員会の派遣で実はその偵察機を見せていただいたわけです。自衛隊の装備年鑑によりますと、このRF4のファントムIIというやつは非常に能力があるということで、たとえば前方や側方のレーダーや赤外線探知装置などで霧の中でもやみの夜でも確実に戦車その他まで探知できる、こういう能力を持っているんです。そうしますと、新聞社の写真でもあれくらいはっきり出るものをもっと詳しく早く私たちはできないはずがないと、あんなに飛行場でも何でも四千メートルからの滑走路ができ上がったというふうな形までどうしてこれらを防衛庁は問題にしなかったんだろうなという疑点を持っておったところが、大賀海幕長が三十日の記者会見で、日米安保のある限り北方二島のソ連軍配備は脅威とならないという談話を発表しておりますね。ああ防衛庁としてはこの程度のことでは脅威とならないと感じていたから余り大きな問題にしなかったのかなと、こう思うんですが、いかがですか、ここら辺。
  139. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 滑走路の件につきましては、新聞社が持つ以上の情報を私どもは持っております。そして、ただいまのところにおきますと、伝えられるように、滑走路は以前から拡張されたということは確認いたしておりません、国後島におきますところの。これは報道関係ではいろいろと出ておりますけれども、私どもは、以前の滑走路から延長されたということは確認いたしておりません。これは自信を持って申し上げられます。  なお、大賀海幕長が談話を発表いたしましたというのは、大体自衛隊には幕僚長が三幕僚長おりますものですから、三幕僚長ともいつもいずれも定例の記者会見をいたしておりますが、大賀海幕長もその定例記者会見の席上で、海上自衛隊の最高幹部として談話を申したようでございます。それは、有事において、日米安保体制が健在であることを前提として、米ソの海上戦略をグローバルに見た場合は、直ちに脅威になると結論づけることは早計である。両島は日本に近過ぎるため逆に攻撃を受けやすい基地と言えるわけで、ソ連にとって負担になることも考えられる。一般に、前進基地はその背後の勢力、特に制空権のカバーがないとその機能は維持することは困難である。要するに両島の基地の軍事的価値がどうなるかは有事の際の彼我の総合力で考えなければならないというふうな趣旨のことを申しておるわけでございまして、これは防衛庁がこの両島地域におきまする編成、装備等から見まして、主として島嶼防衛を意図しておるのではないかという判断と同じ根拠に基づくものである、このように考えておる次第でございます。
  140. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、根室で拿捕された漁民の人たちの話を聞いていましても、国後より択捉の方がもっといろいろやっているよという、こういう話なんです。あんな飛行場なんかだったら前からあるから別にそれほどでない、むしろ択捉の方があれだ、こういうふうなことを漁民の人たちが言うんです。そして、先ほども申し上げたんですが、特に防衛庁長官に御答弁願いたいのは、いまごろになって騒ぎ出したのは、飛行機でがたがたしているからだろうと。  で、私も、その点を明らかにしていただきたいと思うのは、なぜこの時期に、心配ないと、片一方で脅威にはそれはならぬと言っていながら、大あわてでああいうことをしたというのは、急いで一月末にしたというのは、ちょうど国会のいろんな論議の中でどうもE2Cが危なくなってきたというのに対する援護射撃ではないかと、これは素朴なそういう話を聞いたものですからね、私もなるほどそういう見方で見ると平仄が合ってくるんですよ。片一方では脅威にはそうならないと言っていながら、えらい爆発的なショックな発表を――それから実際に早くからやっておる、しかも国後よりも択捉の方がと、これは漁民の話ですから確認したわけじゃないですが、あっちも相当やっているよと言うのに、もうすでに早くからできている国後飛行場というふうなことに焦点が合った、何かいままでの方法ではどうも防衛庁はそういうことを察知できないから、いまの今度新しい警戒機が要るんだということの伏線を持った発表でないかというような感じを持つ国民もおるんですが、その点の疑惑を明らかにまずしておいていただきたいと思います。
  141. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) この両島地域におきますところのソ連軍の配備は一九六〇年でございますか、昭和三十五年ごろに撤収されました。その後はずっと、昨年の夏ごろまではもう国境警備隊程度のものがおるにとどまっておったわけでございます。それで昨年の夏初めてこのような部隊の増強という動きが出てまいりまして、われわれもその情報をずっと入手しておりましたけれども、やはりこれははっきり申し上げるのには確信を持って申し上げなければならぬと思ってずっと情報を総合的に判断しておりましたところ、ちょうど結氷期を迎えまして、そしてその動きが一段落いたしましたので、この機会に申し上げるのが諸般の情報を総合して適当であると思って申し上げたわけであります。なお、これは春になりまして氷が解け始めましたときにどのような動きをいたしますか、そうしたことを私どもは十分監視してまいりたいと思っておる次第でございます。  なお、早期警戒機につきましては、防衛庁といたしましては、すでにもう早くからこのことを導入いたしたいというふうに思っておりました。で本年の予算におきまして御審議を願っておるわけでございますけれども、これは決してそのことを意図してこのような発表をしたわけではございませんで、われわれが諸般の情報を総合的に判断した以上はそのことを国民の前に公表いたしまして、また、防衛庁としても、このことを知っておって十分今後ともおさおさ怠らないで監視するということをはっきりした方がよろしいと思って申したわけでございまして、決してそのような意図を持って発表したわけではなくて、これは一日も早く私が決断して公表したわけであります。  ただ、この際、申し上げさしていただきますならば、このE2Cを国会において御審議の上、この導入をさしていただきますならば、これはそうした意味におきますところの専守防衛というわが国の防衛上まことに適当な機種でございまして、その機能は十分発揮されてまいるものと私どもは確信いたしておる次第でございます。
  142. 丸谷金保

    丸谷金保君 そういう疑惑を持つのは、一つは、今度E2Cが配置された場合には、予定としてどういう配置計画を持っておりますか、防衛庁
  143. 原徹

    政府委員(原徹君) E2Cの配備につきましては、五十七年度に最初の飛行機が来るわけでございますので、まだ正確にどこということは決めておりませんが、大体、北の方というふうに予定はいたしております。
  144. 丸谷金保

    丸谷金保君 それから羅臼に監視所がございますね。これの能力、内容、任務、これらについてひとつ、あそこに監視所を持っていて、いままでそういうことができなかったのかどうか。
  145. 原徹

    政府委員(原徹君) 羅臼に監視所がございます。これは北部方面隊の沿岸監視隊というのが標津にございまして、その分遣隊と申しますか、そういうものでございますが、それは双眼鏡あるいは監視用の望遠鏡、測距儀。それで任務は沿岸監視の機能を持っているわけでございます。
  146. 丸谷金保

    丸谷金保君 時期として、私たちは、そういう国後、択捉の状況というものを現地の人たちが非常にもう早くから知っておって、しかも防衛庁もそれは横のつながりとしての情報の提供をしておらないので、総理府その他は一月に聞かされるまで知らなかった、こういうことなんですけれども、あれですか、防衛庁だけでこういう問題を、防衛庁長官だけの判断で発表するということになったわけですか、全然政府部内の相談、調整ということなしに。
  147. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 重大な問題でございますので、私どもは、この公表に当たりましては、しかるべく部内においても連絡はいたしてまいりました。
  148. 丸谷金保

    丸谷金保君 部内というのは政府部内というように受け取ってよろしゅうございますか。
  149. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) さようでございます。
  150. 丸谷金保

    丸谷金保君 総理府長官にお伺いいたしますけれども、先ほどの御答弁では、たしか二十九日のその時点までそうしたことは聞いてなかった、こういう御答弁をなさったと思いますけれど、ちょっといまの御答弁と食い違うように感じられるのですが、いかがですか。
  151. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 部内でございまして、私どもは重大な問題でございますので、これはごく限られた範囲内においての連絡でございますので、御了承賜りたいと思います。
  152. 丸谷金保

    丸谷金保君 実は、いまわれわれは北方領土の返還というものについて軍事基地その他の施設が両島にできるということは大変困るという委員会としての決議を行ったわけなんです。そうしますと、限られた政府部内の相談という中に、一番先にそれらの判断なり相談をしなきゃならないのは総理府ではないかと思うんですが、どうなんですか、それは。総理府というのは、あれですか、そういう問題には余り重きをなしていないというふうに理解してよろしゅうございますか。総理府長官ひとつ、そこら辺大事なことなんで。
  153. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) ただいまの本委員会におきますところの決議を伺いまして、まことに北方領土の問題は重大な問題でございまして、先ほど外務大臣から御答弁のありましたように、政府は一致いたしましてこの御趣旨を体してまいるわけでございますが、実は、防衛庁の情報、またその公表等につきましては、これは部内においても連絡いたしております。今後の問題としては御趣旨を体してまいりたいと思いますが、情報の入手、確認等につきましては、事柄の性質上、われわれはこの公表をするに当たりましてはよほどの自信を持っていたさなければなりませんし、公表前におきます場合には、機密を要するという点もございますために、限られた中においての連絡にとどめた次第でございます。が、今後、問題の重要性にかんがみまして、十分努力してまいりたいと思う次第でございます。
  154. 丸谷金保

    丸谷金保君 それは公表の仕方とか時期とか、そういうことはいろいろ問題があると思います。しかし、すでに昨年から米軍レーダーではどうだとか、いろんな新聞の報道になされている問題で、降ってわいたように起こったわけでないのに、どうしてそれほど慎重に構えて、しかもE2Cの早期哨戒機の問題が何か国会の論議の中で少し危なくなってきたという時期にあわててやらなければならなかったという疑惑がどうもいまの御答弁ではすっきりしませんので、それは全く関係ないんだということだけもう一遍ひとつ明快にしていただいてもらって、このことはやめたいと思いますが、大臣ひとつ。
  155. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 公表はあくまで先ほど来繰り返し申し上げていますとおりの事情で公表いたしました。早期警戒機につきましては、また御判断を仰いでいるわけでございます。
  156. 丸谷金保

    丸谷金保君 総理府長官にお願いいたしますが、国民の悲願であり、領土の返還運動というものはずっと進めていかなきゃならないんですが、ここにきわめて心配な風潮が一つあるんです。  一方では、根室やあるいは羅臼等において、魚とは取引できないけれど、おれたちのことも考えてくれという切実な心配をしているのがあります。ところが、一方では、北方領土返還推進協議会というのが根室にあります。それの箭浪という会長さんが「ソ連軍の配置は北海道を制圧する意思がある。こうなっては四島や二島返還などの論議以前の問題だ。これまで右翼の過激な運動には一線を画していたが、こうなっては右翼の運動にも理解を示さざるを得ない。」こういうことを現地の新聞で発表しているんです。だから、こういう風潮が出てくるとこれは大変なことなんで、この点について、これからの返還運動の進め方についての大臣の所信と――これは相当ちゃんとした会の会長ですからね、恐らく北方領土関係のいろんな補助とか運動の中のあれには、そこまで私調査してきておりませんけれども、何らかの形でこの協議会というのはかかわりを持っていると思います。そういう公的な立場の人の言なので、そういう風潮になっては大変だと思います。したがって、これらについて長官の明快なひとつ御答弁をお願いいたして、私の質問を終わりたいと思います。
  157. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) お答えをいたします。  先ほども先生にお答えをいたしましたように、私は、国内の北方領土返還に対する国民の切実な運動展開に対しましては、内の問題と外の問題とがやはりある、内だけの問題ではない。そういう意味で、ことしに入りまして、庁内幹部会において、たまたま今回の政府発表と申しまするか、外務大臣、防衛庁長官から閣議におきましても今回の国後の問題の報告があったのでございまするから、そういうような事態もございましたので、私は、幹部、特に政府広報を担当する者に、こういう事態に対しては、先ほども申しましたように、ソ連に対して衝動的にすぐこれに対処するような国民に対する広報というようなものをやることは慎まねばならぬ、そういう点は特に配慮すべきであるということを指示をしたわけでございます。  それほど配慮をいたしておりますところでございまするので、たとえば先ほどお話の中にございました募金活動等に右翼団体が参加をするというようなことも私は聞いておるのでございます。そういうものと一線をやはり画しながら公正で、しかも、これは先ほども外務大臣の方針の中にございましたように、相当長期にわたるものでございまするから、静かに公正な、しかも力強い態勢で運動展開せなければならない立場でございまするので、そういうような方々の、まあ過激と言えば非常に問題があるかもしれませんけれども、そうした言辞については特に広報担当者としては注意を要するということを指示をいたしたところでございます。そういうことでございまするので、今後におきましても、そうした極端な御表現があったということでございまするが、そういう点につきましては特に注意をしながら対処してまいるつもりでございます。
  158. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 次は立木委員の順番でございますが、先ほど、立木委員国後、択捉帰属の問題についての質問に対して外務省の宮澤欧亜局長答弁されようとしましたのを、私、外務大臣の時間の約束の関係がありましたのでちょっと待ってもらっておったんですが、ここでちょっとその御答弁をいただいて、それから立木委員の御質問に入りたいと思います。
  159. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 一つは、先ほどちょっと時間がなくて私がお答えできませんでした点と、もう一つは、立木委員がおっしゃいました桑港条約の廃棄に関しまして大臣が答弁されましたことの補足をさしていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  160. 西村尚治

    委員長西村尚治君) どうぞ。
  161. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 立木委員の御質問の中で、サンフランシスコ条約に署名した相手国の中でこの領土問題について何か意見を述べたものがあるかというお尋ねでございましたが、これはまず一九五六年の九月七日に、日ソ交渉に際しまして米国政府から日本政府に送られた覚書がございまして、この中に幾つか書いてございますが、最も端的にここで読み上げますべき点は「米国は、歴史上の事実を注意深く検討した結果、エトロフ、クナシリ両島は(北海道の一部たるハボマイ諸島及びシコタン島とともに)常に固有の日本領土の一部をなしてきたものであり、かつ、正当に日本国の主権下にあるものとして認められなければならないものであるとの結論に到達した。」このように述べてございまして、お聞き及びのとおり「正当に日本国の主権下にあるものとして認められなければならないものであるとの結論に到達した。」ということは、これらのものは日本はいかなる意味でも放棄しているというようなものではない、こういう意味でございます。  それから、先ほど桑港条約の一部放棄の点につきましては、大臣の御答弁の補足でございますが、桑港平和条約には廃棄に関する規定もございませんし、また、この平和条約のような一度限りの処分行為を目的といたしましたこの条約の性質にかんがみまして、わが国が一方的に廃棄することはできない。そしてまたその一部、二条(C)項というような点につきましても、条約の規定は原則として不可分でございますので、このようなものを切り離して廃棄するということもできないものと考えております。これが日本政府の見解でございます。
  162. 立木洋

    ○立木洋君 いまの最後のところを、済みません。
  163. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) もう一度申しますか。  二条(C)項のみを廃棄することはできるのではないかというような点につきましては、国際法上、条約の諸規定は原則として不可分でございますから、一部のみを切り離して廃棄することは認められない。したがいまして二条(C)項を廃棄するということもできないというのが日本政府の見解でございます。
  164. 立木洋

    ○立木洋君 後でその点はまた申し上げることにしまして、山下長官がせっかくお越しでありますので、一問だけ伺わさしていただきたいんです。  実は、先ほど同僚議員の方から、今回の国後、択捉にソ連が軍事施設を構築したという問題をめぐって、これはソ連がどのような意図でやったものと考えられるのか、それに対して日本政府は今後どういうふうに考えているのかというふうな趣旨の質問に対して、外務大臣の方から、これは日本に対しておどしをかけたものだというふうには考えられない、これはソ連がアジアの軍備を増強するといういままでの考え方、方針といいますか、そういうものの一環としてやられたものであろうというふうに考える、そして今後そういうふうな事態があっても、これを力で対抗するというふうなことは毛頭考えるべきではなくて、あくまで領土の返還問題も平和的な話し合いでやっぱり努力していくべきだという趣旨の御答弁があったんですが、今後、防衛庁の方としては、長官、どのようにお考えになっているのか、その点の御所見をお願いします。
  165. 山下元利

    国務大臣(山下元利君) 政府の方針といたしましては、外務大臣の御答弁されたとおりと思います。  防衛庁は、自衛隊法の定めるところに従いまして、国の平和と独立を守り――自衛隊法第三条でございますが、国の防衛をいたす任務を持っておるわけでございます。そのために必要な情報の入手、監視等はいたさねばならぬわけでございますので、私どもは、このたびの両島地域におきますところの配備は主として島嶼防衛的なものであると考えておりますけれども、やはり国民の御関心の非常に強い地域でもございますので、この状態につきましては、今後おさおさ怠りなく監視をしてまいりたい、このように考えておりまして、ただいまのところ防衛計画を修正するというふうなことまでは考えておりませんけれども、十分な監視をいたしまして、適宜適切な措置はとってまいりたいと思う次第でございます。
  166. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど質問しました件で、宮澤さん、もう一度お尋ねしたいんですが、歯舞、色丹ですね、歯舞、色丹というのは、もう御承知のように、これは明確な北海道の一部であって、ですから、これは二条(C)項で放棄した千島にも含まれていない。ちょうど五一年の九月でしたか、当時のアメリカのダレス長官がこれは千島に含まれていないんだという趣旨のことを述べて、それについてソ連の代表グロムイコですか、それについてはもちろん異論を述べなかったという経緯があったわけですね。ですから、そういう経緯があったからこそ当然歯舞、色丹というのは戦争が終われば日本に返ってくるものだと。だから一九五六年の日ソ交渉の過程の中で、ソ連もこの歯舞、色丹は日本に返す、戻すといいますか、正確にはどういう表現になっておったかあれですが、ということについてはもう合意したと思うんですね。これは日本としては、四島を一緒に返してもらいたいという趣旨から言えば――これは日本政府の立場ですがね、私の立場ではなくて。四島一括返してもらいたいという立場から、言えば、まだ二島だったらこれは不満足だということはあり得ると思いますけれども、しかし、歯舞、色丹というのはそこまで来て現実的には返る可能性も生まれてきた。ですから、これは三十年でしたか、当時の総理大臣の鳩山さんも言われておりますけれども、歯舞、色丹の返還はさほどにむずかしいといったことはない、ただ南樺太――その当時は南樺太も言っていましたから、南樺太及び千島列島を要求することは歯舞、色丹の返還を要求するようにはいかないと思うということが、これは三十年の三月、国会での答弁であるわけですね。ですから、この歯舞、色丹を、これはもう平和条約を結ぶ結ばないにかかわりなく、戦争が終わったら当然返してもらうべき日本の領土ですから、そうしてそういう一定の合意もあった。  その後、先ほど言いましたように、ソ連が今度この歯舞、色丹を返せば日本が基地をつくるんではないか、あるいはアメリカが基地をつくれと言ったらその要望に応じるんではないかというふうな趣旨を持ち出してきて、その後、ソ連が態度を変えたという経緯がありますけれども、しかし、日本としては再三繰り返しそこにはもう軍事基地はつくりませんということを言っているわけですから、これは話し合いをすれば歯舞、色丹というのは早期に返還できる、そういう可能性もあるんではないだろうかというふうに思うんですが、それをなさらない理由というか、また、それを切り離してやるとどうしても困るんだというような政府の考え方が特別にあるのかどうなのか。また、歯舞、色丹を早期に返してもらうというふうなことが可能であるならば、そういう努力をするその可能性もあるというふうにお考えになっておるのか、その点について。
  167. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 歯舞、色丹につきましては、ただいま御指摘のとおり、日ソ共同宣言におきまして、平和条約が締結された後に現実に引き渡される、このように規定されております。この点は宣言上はっきり定められ、日本も合意したところでございます。  そこで、なぜそのときに平和条約ができなかったかということは、もう御説明するまでもなく、日本はさらに国後、択捉の返還を要求しておるわけでございまして、これにつきましては松本・グロムイコ書簡というものがございまして、国交回復の後に領土問題を含む平和条約の交渉を続ける、こういう約束ができておる。したがいまして日本政府といたしましては、この四島はあくまで一括返還して平和条約に持っていく。そういうまず歯舞、色丹は平和条約の後にと合意をいたしましたこともあり、また平和条約という形で一括返還をすることが妥当であると考えまして、一括返還を主張しているわけでございます。
  168. 立木洋

    ○立木洋君 時間があれですから次へ進みますけれども、北千島ですね、得撫島以北の。これについて、私先ほど申し上げましたように、これは歴史的に見て日本の領土だと。そうしますと、いわゆるカイロ宣言、ポツダム宣言を受諾して、日本政府としては領土不拡大の原則でやるわけですから、これは何も外国から力で取った領土でないわけですから、私は日本としては返還を求める当然のやっぱり主張する根拠はあるだろうと思うんです。これは二条(C)項の関係がありますけれども、それ自体として言うならばですね。だけど、この件については園田外務大臣も本会議答弁で、当時の状況でやむを得なかったというふうな趣旨答弁があったですね。これは、いやそれはもう結構なことでしたという意味ではないだろうと思うんです、そのニュアンスから感じる限りは。そうすると、北千島はやっぱり北海道から遠く離れているからとかというふうな問題でなくて、いわゆるカイロ宣言、ポツダム宣言の趣旨に従うならば、われわれとしては当然この返還を将来とも求めていく、そういうふうな立場をとるべきではないだろうかというふうに思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
  169. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) その点につきましては、園田大臣も申されましたとおり、当時の状況といたしましては、日本がこの戦争状態を終結して平和な名誉ある国際社会の一員としてこの中に入っていく、こういうために結びました条約でございまして、日本として、あの当時の状況でございますから、留保するとかしないとか、そういう種類の条約でなかったわけでございます。  ただいま御指摘のとおり、千島列島は平和的に日本の固有の領土でございましたものですから、ポツダム宣言あるいはカイロ宣言の趣旨に従えば日本が失うべきものではなかったと思いますが、しかし、いま申しましたような理由で、日本はこれの放棄に同意をいたしまして条約にサインをいたしましたのでございますから、これはもう日本としてこの千島列島につきましては云々すべき立場にないというのが日本政府の考えでございます。
  170. 立木洋

    ○立木洋君 それから先ほど言われたあの点ですね、これは今度の状況とも関連してアメリカ国務省のカーター報道官が一月の三十一日に述べている。「米政府はこれらの島は」――これらの島というのは国後、択捉ですね、「これらの島は日本固有の領土の一部であり、日本の主権下にあるものと認められるべきだとの一貫した見解を持っている」。これは先ほどあなたが言われた五六年九月アメリカ政府が述べた趣旨と私は同じだろうと思うんです。で日本の固有の領土であり、日本の主権下に属すべきものである、このことについては、これはサンフランシスコ条約二条(C)項で放棄した千島に入っていないということにはもちろん言及してない。で、どのようにして正確に主権下に所属されるべきものなのかという経過についても述べたものではないんですよ、これは。日本の固有の領土だから、当然、日本の主権下に戻されるべきものだろうというのはアメリカとしては考えている、しかし、その手続の問題については触れられてないんですよ。そしてまた、サンフランシスコ条約二条(C)項で放棄した千島列島に国後、択捉が含まれていませんという千島列島の範囲について触れたものでもないんです。そういう意味で、私はやはり先ほど私が言ったような見解に結局はなるわけです。  だから、その点は、これは主権下に属されるということと、どういう形で主権下に属されるべきものなのかという経過を述べたものでないですから、これは私が述べた見解に対する正確な回答には私はならないだろうというふうに判断します。
  171. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) ただいまお尋ねの点につきましては、御質問の意味はよくわかりますが、別の公文書の中にこのように書いてございます。  これは米国政府が出しました文書でございますが、「特に、日本に関するヤルタ協定も一九五一年九月八日サンフランシスコで調印された対日平和条約も歯舞諸島におけるいかなる権原をもソ連邦  へ移譲しなかったしこれら諸島における日本の権原を縮小せしめたものではなく、且つ、これらの文書における「千島列島」という辞句は、従来常に日本本土の一部であったものであり従って正義上日本の主権下にあるものと認められるべき歯舞諸島、色丹島又はクナシリ、エトロフを含んでもいなければ含む様に意図されもしなかったということを繰り返えし言明する。」これは米国政府が国際司法裁判所に提出いたしました訴状の一部でございます。
  172. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっといま聞いただけであれですから、その資料と、それから先ほど申し上げました五五年のイギリスですか、それから五六年にフランスにも照会していますよね、これらの諸資料をぜひ提出していただきたいと思いますけれども、委員長の方で取り計らっていただきたいと思います。
  173. 西村尚治

    委員長西村尚治君) できますか。
  174. 宮澤泰

    政府委員(宮澤泰君) 米国のものは公表することに同意されておりますが、英仏等につきましては必ずしも見解を公表してほしくないという意向もございましたので、公表は差し控えさしていただきたいと思います。ただいま読み上げました訴状の一部、付属でございますが、この点は提出いたします。
  175. 西村尚治

    委員長西村尚治君) では、そういうことで。
  176. 立木洋

    ○立木洋君 それは提出していただいて後でよく検討してみたいと思います。イギリスとフランスの件については、その文書そのものでなくて、後で一回詳しくレクチュアをしていただきたい。どういうふうなものであったかという趣旨についてはお話しいただけるだろうと思うんです。それはお願いしたいと思います。  それで、先ほど大臣の方にお話を申し上げて、国際条約の問題に関して、これは私がるる述べた点に対して、園田外務大臣は、これは関係諸国との問題もございますから、よく勉強してみたいという趣旨答弁があったと思うんですね。この点については、事実上その面ではエキスパートの宮澤さんと中島さんが、それは大臣そんなことを研究する必要はないよなんて言われると困るので、そういうふうな答弁をされた大臣の趣旨を踏まえて、ひとつそういう面でも努力をして研究していただきたいというふうに要望しておきたいと思うんです。  最後になりましたけれども、三原長官にはまだ私一言も質問をしなかったので、最後にお尋ねしておきたいんですが、やはり千島列島の問題というのは何としても日本国民が返還を求めておる重要な日本の島であって、これはもう返還を求めるという点においてはいささかも変わりがないだろうと思うんですね。それについて、どのようにしてやれば最も道理にかなった、そしてより早く実現できる道になり得るか、広範な国際的な支持も受けて、そしてまた国内全体の理解と支持を受けて、そして実現できるかという問題になるだろうと思うんです。この点に関しては、特にいわゆる北方領土と言われている点については所管官庁の責任者でございますから、そういう点も今後とも十分に御検討いただきたいし、先ほど外務大臣の述べた趣旨もございますので、その点もよくお話し合いをしていただいて、積極的な千島列島の返還のために御努力をいただきたいということに関する大臣の御所見を最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  177. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 北方領土の返還につきましては、国民的な課題であり、また国民の悲願でもあるわけでございます。したがって、これが実現を絶対に果たしたいというのが国民の私は率直なお気持ちであると受けとめておるわけでございます。したがって、これに沿って政府といたしましても万全の措置をせなければならない。  その点で、外交的な分野はそれぞれ外務省中心にしておやりいただくといたしまして、国内的な措置につきましては、これは総理府でどうしてもやらなければなりません。しかし、国内的な措置につきましては、先ほど申しましたように、外交的な一つの国の方向というようなものとマッチして対処しなければならぬと思うわけでございます。なお、国外的な問題にいたしましても、いまるる御審議の過程の中にも受けとめられますように、きわめて至難な問題であるし、相当長期にわたらざるを得ないという問題もあるわけでございまするが、そういう厳しい情勢を踏まえて、国民全体がいま願望しておりまする願望の灯が消えないように、私どもとしてはあらゆる施策をやりながら、なおまた国民の自主的な運動展開等にも期待しながら進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  178. 秦豊

    秦豊君 私は、国後、択捉問題で防衛庁に集中しますから、三原長官初め皆様におかれてはごゆるりと。  さっきの山下長官の御答弁を伺っていると、あのように防衛庁が一月二十九日発表をするに至った情報源は発表できない、言えないということでしたね。ならば、いまから私が申し上げることを、間接叙法で聞きますから、そういうものは見当外れかどうかだけ答えてもらいたい。  たとえばアメリカの人工衛星、嘉手納から発進したSR71、厚木のP2Jあるいは三沢基地のP3C、それから防衛庁、自衛隊独自の無電傍受と解析、それからさっき丸谷さんの言われた百里基地から発進したRF4E、それからあとは陸上ないし海上からの不特定ないし特定の多数の情報源、こういうふうなものは常識的には情報源でしょう。
  179. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 詳細な御指摘をいただきましたのでございますけれども、まことに申しわけございませんが、情報源につきましては言及することを差し控えさせていただきます。
  180. 秦豊

    秦豊君 じゃ岡崎さん、私が挙げた具体的、詳細なものは全く見当外れかどうかだけ聞きたい。
  181. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 防衛庁としては、諸般の情報を総合的に集めまして判断しておりまして、それで一般的に常識的に情報源と思われるものは含まれている可能性はございますけれども、それについても確たることを申し上げられる立場にございません。
  182. 秦豊

    秦豊君 窮屈なもんですね、やっぱり宮仕えというのは。  じゃあなた方独自の情報源ないし解析努力によってあのように自信たっぷりな発表をしたのかどうか、米軍の協力もなかったのか、一〇〇%おたくですか。それも言えない。
  183. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) この問題についても、米国と日本との関係におきまして、米国はみずからの情報源あるいはそれが明らかになるような情報の扱い方、それについて非常にセンシチブでございまして、私どもが申し上げられますことは、私どもが総合的に集めまして分析して出しました結論、それと米国が持っております情勢判断、それは大体同じようなものでございますということは申し上げられます。
  184. 秦豊

    秦豊君 センシチブもいいしナーバスもいいけれども、あれほど去年の夏に人騒がせな混乱を招いたおたくだから、あれほど一月二十九日にきっぱりとおっしゃたからには相当な根拠があると、じゃ根拠を聞きたい、言えない。さっぱり話が進まないけれども、これ以上は堂々めぐりでしょう、何を聞いても。  ならば一月二十九日のような、あのような断定的ではあるがアバウトな発表じゃなくて、国後択捉両島に対する、あるいはおけるソ連軍の具体的な配備状況、新聞報道ではなくて、もっとデテール、それほどまでおっしゃるならば。それぐらいは伺いたいですな、国会として。
  185. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 従来の、従来と申しますのは一昨年の現状でございます、それから新たに建設あるいは部隊の配備等が行われたのではないかと推定される地域といたしましては、国後島の南部及び国後島の中部及び択捉島の中部がございます。
  186. 秦豊

    秦豊君 全く具体的ではない。新聞記者に対しては旅団程度と。ソ連の師団編成はあなたも知っているように一万一千ぐらいだ、いまは。ならば旅団なら四千五百から五千、それを中心にしてどういう配備が行われているのかはぜひ聞きたい。
  187. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 旅団程度と申し上げましたのは、そのときわが方の軍事専門家が記者ブリーフをいたしまして、それで兵力の規模を聞かれました。これは少くとも大隊以上、ただし師団の規模には届かないであろうという説明をいたしました。実は、先生よく御存じのとおりでございますけれども、ソ連の自動車化狙撃師団、すなわち歩兵師団でございますけれども、これの正規の編成には旅団というものはございませんで、非常に特殊な目的のための旅団というものはあるわけでございます。しかし、防衛庁説明しぶりが余りに荘漠としておりまして、それでは表現しようがないではないかということなんでございましたので、強いて言えばソ連の正規に編成がないところの旅団、数字にして数千名ぐらいであろう、その程度のことを記者ブリーフした次第でございます。
  188. 秦豊

    秦豊君 話を聞けば聞くほどあいまいなんだけれども、じゃたとえば対空ミサイルとか大口径の火砲の配備とか新型レーダーサイトというふうなのは発表からはみ出したマスコミの独断ですか。
  189. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) いまおっしゃいました中でレーダーは視認しております。それ以外は新聞の推測でございます。
  190. 秦豊

    秦豊君 それから、あなたの言った中部、南部、国後の中部と言えば古釜布という航空基地を含むのか、南部というのは東沸基地を含むのか、この辺はどうなんですか。
  191. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 御指摘のとおりでございます。
  192. 秦豊

    秦豊君 それから、さっきもちらっとあったんだけれども、いま長官の決断で発表したと言われた、結氷期になったから。いまの基地建設というのは国後択捉両島に及ぶものか、それが一つ。それからもう一つは、いまのはほんの序盤でこれから本格的な基地建設が始まるというふうな理解の方が実態に近いのか。それからもう一つ、マスコミによっては四千メーターと言い、専門家を乗っけて三千二百メートルと言い、一部のマスコミは二千五百メートルと言う。同じ空察をしてもあれほど違う。防衛庁がそれに示唆を与えたのか与えないのか。実際には滑走路の長さ、この場合は東沸基地だと思うが、どれくらいと把握しているのか。ということは、そこに配備される機種とか、補給基地にせよ何にせよ、機種が決まりますから、伺っておきたい。
  193. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 建設状況につきましては、結氷期が終わって以後の本年の四月下旬でございますか、それ以後の動きについては、これは推測の域を出ませんでございます。ただ、われわれが注目しました事実としましては、冬雪が降ってからでも建設はかなり進んでいるように見受けられました。ということは、あるいは解氷期になりまして物資の運搬が自由になりました折には、あるいは今後とも建設が続けられるかもしれないと、これは将来の問題でございますから何とも申せません。  それから飛行場につきましては、私どもは今回の基地建設、今回と申しますのは昨年の夏からことしの冬にかけての基地建設におきまして、飛行場が従来よりも延長されたということは確認しておりません。それで長さでございますけれども、これはまたわれわれとしてもいろいろ推定はあるのでございますけれども、どの程度が有効な飛行場でありますことかどうか、これまた軍事的な推定の部類に属しますものでございますから、防衛庁として公式にこの長さであるということは申せない状況でございます。
  194. 秦豊

    秦豊君 ちょっと確認をしておきましょうかな。つまりマスコミが類推で書いた部分が多くて、防衛庁として述べた部分は、滑走路だって拡張と言っていないそうだから、いま聞くと。択捉、国後両島に、あえて問い詰められれば旅団編成程度の独自特殊編成の部隊がすでに配備されており、そしてそれは対空ミサイル、かなり大口径の火砲、それから新型のレーダーサイトを持った編成であるやに見受けられると、そこまでは確認していいですか。
  195. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 防衛庁として申し上げられますことは、仰せのとおり数千名の地上部隊が派遣されまして、戦車及び火砲が配備されておる、そこまでわかっております。大口径かどうかは確認しておりません。それからレーダーそのものは確認しておりますが、レーダーサイトというものが設置されたかどうかもはっきり確認しておりません。
  196. 秦豊

    秦豊君 ミサイルは。
  197. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) ミサイルも確認しておりません。
  198. 秦豊

    秦豊君 あなた方の発表ではないというとそれまでの話なんだが、択捉の天寧基地がありますね。あそこはややクラシックなミグ17を一飛行隊置いてありますよね。あれは増強されている徴候があるのか、あなた方独自の確信に満ちた情報源では。あるいは新しい機種に換装されている心証があるのか、どうなんですか。
  199. 岡崎久彦

    政府委員(岡崎久彦君) 今回の去年の夏からことしの冬にかけましての増強におきましては、空軍の増強は行われていないようでございます。
  200. 秦豊

    秦豊君 そうしますと、大体、今度のあなた方の解析は、情報源も定かではない、ただし、米軍の協力はちょっとかりた形跡があると、あなたの表情を読む以外にないんだが、おかしな話でね、国会論議というのはなかなかその実態に迫れない。それはあなた方の秘密の壁がやたらと多いからだ。長官の決断で発表しておきながら、問い詰めると、いや言った覚えはない、マスコミの類推でしょうというふうに韜晦をする。だから国会とは一体何をどうチェックできるのかさっぱりわからぬ。だから非常に不本意ではあるけれども、あなたに言ってみてもしようがないんでね、だからこれ以上言わないけれども。  じゃ防衛局長に今度伺ってみましょう。あなたも相当今度ブリーフィングを終えられ、レクチュアを終えられて蓄積されたと思うから、防衛局長としては、いま少なくとも国後択捉両島展開されている十九年ぶりの実戦部隊――国境警備部隊ではない、こういうふうな展開というのは、一体、基地機能としては単なる監視・前進・警戒基地なのか、補給・連絡基地なのか、あるいはもっと警戒を要すべき軍事的な総合機能を持った基地がいきなり日本の固有の領土に現出したというふうに理解をしていらっしゃるのか、あなた自身はどう考えていらっしゃるんでしょう。
  201. 原徹

    政府委員(原徹君) ただいまの岡崎参事官のいろいろの情報をもとにして私どもは判断するわけでございますが、確かにソ連の一般の師団とは違うものでございますから、そうして航空兵力の増強はない、それから海上部隊の増強もいまのところない、そういうことで判断をいたしますと、それはやはりどちらかというと島嶼防衛的なものであるというふうに判断をいたしておりますので、そのために、これからまた確かに雪解けになりましてから何かまた建設工事が進むかもしれません、それは進まないかもわかりませんが、いまの段階では、そういう島嶼防衛的な性格を有しているというふうに判断をいたしておりますので、当面、その監視は強化しなけりゃいけないが、防衛計画の大綱を変えるというようなことはただいまの段階では考えておらない、こういうことでございます。
  202. 秦豊

    秦豊君 いや、私も一〇〇%あなた方お二人に反対なわけではない。余りにも一般的常識的、世間では世間、六本木を一歩出れば公知の事実についても、あなた方がやたらにべたべたマル秘のとばりをおろすから怒っているのであって、だからそういう態度が続く限り防衛に対する国民合意にはほど遠い、ますます遠ざかるとあえて申し上げておきたいが、お二人に言ってもせん方ないね、これも。だからこれ以上言いませんがね。  じゃあれですか、ぼく自身は冷静な対処を、さっき外務大臣に申し上げたように大賛成、そういう論者です。しかし、もっとやはり突き詰めて考えておく必要もある。たとえばSSN18シリーズといういわゆるSLBMの新しい展開と配備を待って、常識的にソビエト海軍があの海域についての安全係数を高めたいと思うのはユニホームの常識でしょう、あの国のユニホームの。そうすると対日牽制とかジェスチャー、示威行動というよりは、もっと痛切な必要に迫られた、つまり対米核戦略の強化、充実という点で両島を使いこなしたいという意図のあらわれではないのかという見方については局長はいかがですか。
  203. 原徹

    政府委員(原徹君) 全般的に申しまして、ソ連の軍事力というものはこの十年間非常に増強されていることは定説でございます。それはNATOの正面からだんだんアジアの方にやってきているということも、これも事実でございます。そういう延長線上にあるわけでございますから、ソ連としてそれをどういうふうに考えているか、これは推測になりますけれども、オホーツク海というものの意味というものは、千島列島は太平洋とオホーツク海の接点でございますし、確かにおっしゃいますようにSSNの18でございますれば、前はペトロの方から撃たなければならなかったものがオホーツク海から撃てるというそういう状況にもなるわけでございますから、そういう意味で、オホーツク海の、何と申しますか、防衛ということがソ連にとって大変意味があるというふうに、私どももそういう意味があるということはそう思うんです。しかし、結局のところ、意図というものはよくわからないというのが、断定できるような資料というものはないわけでございます。いろんなことが考えられるわけでございますが、どれ一つということで断定するだけの資料は私どもは持っておらないということでございます。
  204. 秦豊

    秦豊君 最後に、簡単に。  聞けば聞くほどあいまいなところへずるずると下がっていく、それにしては自信たっぷりの発表でしたね。だから勘ぐられるんですよ、情報操作ではないかというふうに、丸谷さんから。  最後に伺いますけれども、じゃ今後、国後択捉両島に対するあなた方の常時監視警戒態勢、態勢としてはあるんですね、手段としては、十全なんですね。その場合はポイントはどこに置かれるんですか。港湾の改修、拡張、滑走路、ポイントはいろいろあるでしょう。見どころというかポイント、着眼点、どういうふうにされていくおつもりかだけ最後に伺って終わります。
  205. 原徹

    政府委員(原徹君) やはりただいまの判断は島嶼防衛的なものが主たるねらいであろうというふうに思っておるわけでございますから、それがもし違うとということになると大変だというところがポイントでございますから、やはり空軍力の強化とか、それから海上力の強化とか、そういうところが主たるねらいである、こういうふうに考えております。
  206. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今回の国後、択捉におけるソ連軍事基地建設、これが防衛庁から発表された後、現地の根室漁民の方たちの声としてソ連軍がまた十九年ぶりで増強されてきた、そして今後常駐するとすると、防諜面からも漁船に対する臨検や拿捕、これが従来よりもさらに一層厳しくなるんじゃないだろうか。それで漁民が安心して操業できるためにも国内世論を盛り上げて、北方領土返還運動、これをさらに発展さしてほしいし、また実際現地に生活している漁民の皆さん方の生活実態ということも国民の皆さん方にぜひ理解をしていただきたいんだ、こういうことを切々と訴えているわけです。先日のNHKのテレビ、北対協の北方領土問題解決のキャンペーン、これは一時間番組で行われたんですが、この中でも全国的な北方領土返還運動を盛り上げることが最大事なんだ、こういうことが訴えられておりました。  私は、以前からこれは現地だけの集会、あるいは北方四島からの引揚者がわりあい多く住んでいらっしゃる関係県、そういう限られたところだけの集会、そういうものじゃなくて、もっともっと全国の各県単位で北方領土返還運動、この運動がもっと盛り上がらなければならないし、県別の促進大会というものも開くべきであるということを強く訴えてきたわけなんですが、本日いただいたこの予算書を見ますと、県民集会等の開設費、昨年が千七百万ですね、ことしは千二百万円に減っているわけですが、ここら辺についての総理府としてのお考えは一体どういうことなんでしょうか。各県単位での開催について意欲がないんでしょうか、それとも必要ないということなんでしょうか。
  207. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) 先生おっしゃいます北方領土返還要求大会でございますが、各県になるべくやるように、こういうお話でございますが、これは根室はもとより原点でございまして、非常に熱心にやっておるところでございます。全国的に見ますと格差は多少ございます。これは否めないところでございまして、総理府といたしましても各県に主管課の設置をお願いいたしております。それで各府県でもさらに民間活動を行っている有力者に推進委員をお願いいたしておりまして、運動の盛り上げを図っておる、こういう状況でございます。御指摘の各県ごとの返還運動の集会でございますけれども、これは民間の諸団体がその開催に向けまして自発的に結集される、こういう方向を政府としては強く期待しておるわけでございます。政府といたしましても、できるだけお手伝いできることについて今後十分検討してまいりたい、こういうぐあいに考えております。
  208. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 論議していると時間がなくなっちゃうから次にいきます。  ソ連の方は領土問題をたなに上げにしておいて善隣協力条約というのを強く迫ってきているのですが、東京のソ連大使館が発行している広報誌「今日のソ連邦」、これの中にコスイギン首相が善隣協力条約の問題について日本国民に対するメッセージ等を公表しているのですが、こういった点、ソ連側のこの問題についての熱心さといいますか、こういうものの一端があらわれていると思うのですけれども、わが国としても全世界に対して北方領土返還の問題についてもっともっと世界に対するPR、国際世論の盛り上げ、こういうことに対して熱心な姿勢を示すべきだと思うのですが、北方関係予算の中では海外啓発費八十万六千円、微々たるものなんですが、これは、一体、中身はどんなことをやるんでしょうか。その中身と、それから、今後、世界各国に対しての国際世論を盛り上げるための取り組みの姿勢についてどんなお考えなのか。これはひとつ長官のお考えをお聞かせ願いたい。
  209. 小宮山五十二

    説明員小宮山五十二君) これは外務省連絡いたしまして、海外向けの英文のパンフレットなどを印刷しているわけでございます。
  210. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 対外的な問題につきましては外務省中心にして展開をお願いいたしておるところでございます。国内的には、御承知のように、新聞、ラジオ、テレビの広報媒体中心にする年次計画をつくって処置をいたしておるわけでございます。そのほかパンフレット、印刷物等もやっております。  それから先ほど来お尋ねがございました、各県に対しましては、各県の北方領土返還に対しまする各担当部課、係がおりますので、その担当者会議等を計画的に実施をして各都道府県との連絡を緊密にする。都道府県は各市町村に推進会議を開いていただく体制をつくってもらって、国、県、市町村、そうした系統的な組織体制をもって展開をするという企図を持っておるわけでございます。  なお、民間団体に対しましては、先ほど来審議の中でもございましたが、国民会議をいたしましたり、あるいは講演会、国民大会等を常時開催をして、国内のすみずみまでこの国民運動展開するような計画を進めておるわけでございます。
  211. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今回のソ連軍事基地強化によって、国会でもこうやって取り上げられる、それから抗議がされる、こういうことについて地元の、特に漁民の皆さん方ですが、非常に複雑な心境でこういったり成り行きを見守っておりますね。やはり国益上、父祖伝来の日本固有の地でありますから、やはりソ連の理不尽に対しては強く領土返還ということを訴えなければならぬ、そういったことは理解できる。と同時に、またそれが自分たちのあすの生活へ厳しくソ連側がいろんな対応でのしかかってくる、しわ寄せがくるという点を非常に心配をしているわけですね。二百海里の線引き以後、クォータ、許可証をもらってソ連の漁場で操業しているわけですけれども、記帳漏れがあったといっては多額な罰金を科せられる、あるいはヒトデがまじっていたといっては罰金を受ける。それで抗議をしようものなら、来年度はあなたに対してはクォータは出さぬぞというようなこういう態度といいますか、暗にそういう威圧をかけられる。こういうことで非常に悩んでいらっしゃる、心配されていると思うんです。  しかし、それはそれとして、この領土返還国民運動というものはさらに強めていかなければならないし、さらにさらに広範なものにしていかなきゃならないと思うんですね。一方、現地の漁民たちが非常に苦悩しているという点、長官現地へ行かれましたっけ――これからでございますね。行かれて実態をその目で見られ、また直接耳で聞いてほしいし、また外務大臣も先ほど日程をつくって行かれると言っておりましたけれども、水産庁に漁民に対する経済的バックアップの施策を任せておけばいいというだけじゃなくて、外務大臣それから総理府長官としてもこういった現地の零細漁民の人たちの苦悩というものをはだ身に感じ、そうして大臣同士で話し合って、こういった現地の直接生活に被害を受ける人たちの対応策というものをもっともっと真剣に取り組むべきであると思いますが、これについての長官のひとつ御見解、これを承っておきたいと思います。
  212. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 先ほど丸谷先生の御指摘も同様な御意見がございました。今日までのことにつきましても、先ほど申し上げたのでございまするが、貝殻島のコンブ漁の問題でございますとか、あるいは花咲港の重要港指定、あるいは昨年の国会で決定願いました特定不況地域に入れる、そういう措置をとりあえず制度的にいたしておるわけでございます。なお、関係省庁ともいま言われたような問題を話し合いまして、今回、新北海道開発計画が道庁において設定される、その中には特にいま根室方面を中心にする地帯を特別地域としてひとつ考えていただきたいというようなことも申し上げておるわけでございます。  しかし、先生が言われますように、もっときめ細かく、動きつつある状況に即応して対処せなければならぬぞという御指摘がございましたが、そのとおりだと思います。私どもも、外務大臣も申し上げましたが、私も一日も早く、日程をいま事務当局に御依頼をいたしておるわけでございまするが、早期に行って直接皆さん方から生々しい声を聞いて対処してまいりたい、そういう決意でおるところでございます。
  213. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 北方四島にかつて住まわれた島民の皆さんの財産、権利に関する問題ですが、この補償については、前内閣は総理府として相談の上政治的な補償が行われるように検討するということを約束されてきたんですが、当然、現内閣もこれは引き継いでいると思うんですね。そこで、総理府長官としては、どれぐらい任期があるのかどうかわからないことなんですが、少なくとも総務長官としてこの問題についてどのようにリードし、実施をさしていくというおつもりなのか、具体的にひとつ今後の方針なり計画なりをお示しいただきたいと思います。
  214. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) ただいまの問題につきましては、引き継ぎ事項の中に明確にございまして、私も承知をいたしておるわけでございます。この補償の問題につきましては関係省庁がずいぶんあるわけでございまして、ただいま鋭意補償問題につきましては検討を進めてまいっておるところでございます。  なお、今日までの処置につきましては、御承知のとおり、外地引揚者に対しまする処遇をそのまま適用して処置をいたしてまいっておるわけでございまして、特別措置をそれがためにとっておるわけでございまするが、しかし、今後におきましても、これらの問題につきましては、御承知のように、先般約十億ばかりの資金北方問題対策協に対して支給をいたしました。これを中心に生業に対しまする問題あるいは生活に対しまする問題等について、この運用にプラスして地元金融機関等からも融資を求め、その高い利子等につきましては利子補給等もして対処いたしておるわけでございまするが、なお一層ひとつ現地の状態等もつぶさに検討いたしまして対処してまいらねばならぬ、こう考えておるところでございます。
  215. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 北方の墓参の問題ですが、これまでも中断していたわけですが、今回の問題によってさらに難航するとは思いますけれども、総務長官としては、この北方墓参についてどのような態度で今後取り組まれるのでしょうか。
  216. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 過去におきましては、御承知のように、元四島にお住まいになっておりました住民の方々に対しましては身元証明で行き来ができて墓参もできたわけでございます。ところが五十一年に至りまして、突如として旅券なりビザがなければその墓参はできないというようなきついソ連側の申し出があって、その後、五十二年、五十三年と交渉をしてやってまいっておるわけでございまするが、なかなかオーケーを出さないという状態でございます  しかし、もともと固有の領土でございます。そういう立場をとって平和的にこれを返還を迫っておる日本の立場からいたしますれば、やはりあくまでも私どもといたしましては、ソ連とそこに食い違いが現実のところできておりますけれども、人道上の問題として、先ほど申しましたような居住証明等で、そうした実態を踏まえての墓参がかないまするよう、私は、引き続いてソ連と交渉してまいりたい、そして地元の方の御要請にこたえたい、そういうことでおるわけでございます。
  217. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 最近、北海道で起きている問題ですが、若い男女が個別訪問しながら北方領土返還運動協力をということで、署名や寄付を強要する被害例が道内各地で相次いでいるわけでして、金額は三百円から五百円ということなんですが、手渡してしまった後から、市の皆さん方から寄付はしたもののどうも変だということで関係団体の方に抗議や問い合わせが行われている。道の領土復帰北方漁業対策本部や千島歯舞諸島居住者連盟等の皆さん方は、善意の運動に対して非常に水を差す悪質な行為だということで怒られているわけなんです。  そこで北方領土問題対策協会も一月号の機関誌で街頭募金には決して手を出さないようにという警告をしておりますし、また道警本部の方としても各支庁の方へ注意を促すような通達を出しているということなんですが、手口的には公的機関の名をかたるなどの問題があるならともかく、この程度では犯罪になるかどうか微妙だという道警察の何か意見表明等もあったようなんですが、警察庁としてはどういう見解に立っておられるのか。それから、今後、やはり総理府としてもこういった善意の運動に水を差すようなインチキ行為というか悪質行為、こういうものは非常にマイナスなので、こういうことが今後繰り返し行われないように関係省庁ともよく連携をとって、この未然防止といいますか、あるいは啓蒙といいますか、この面についてももう少し配慮される必要があるんじゃないかと思いますが、この点についての御見解を承って質問を終わりたいと思います。
  218. 柳館栄

    説明員柳館栄君) ただいま先生から御指摘のありましたような事案があるということにつきましては、北海道警の方から私ども報告を受けております。  そこで、これの取り締まりでございますけれども、現在、募金につきまして規制している法律は社会福祉事業法それから更生緊急保護法、この二つがあるわけでございます。これに関連しまして、募金を行う場合には許可を得なければならない、こういうことになっておるわけでございます。それ以外のことを目的とした募金ということになりますと、法律はないわけでございます。ただ、現在、通称募金条例と言われておりますものが六県、それから三十八市町村に私どもの調査ではあるわけでございますが、この条例のあるところでは、それぞれの許可を得た上で募金をしなければならないということになりますので、それの違反ということで取り締まりができるわけでございます。したがいまして、先生いま御指摘の場合には、法律的には大変むずかしいということでございます。ただ詐欺罪になれば当然詐欺罪として処理はできる、あるいはその間に非常に執拗な行為等があれば、それはまた刑罰法令によって処理できる、こういうことでございますけれども、ストレートにこれを何か取り締まるということが大変困難である、こういう実情で実は困っておりまして、PRをするのが一番近道だということでやっておるわけでございます。  ちなみに、あそこに美深町というのが北海道にございますけれども、その町では条例をつくってあるわけでございます。そこが条例をつくっておりまして、その分は一件、北海道警といたしましては検挙いたしております。  以上のような次第でございます。
  219. 三原朝雄

    国務大臣三原朝雄君) 御指摘のように、善意の、またありがたい募金に対しまして、これに便乗しながら悪質な募金をやるというようなものが散見できるということでございます。このことは、私どもも、個人的にやっておるものと、一つの団体的な行動もいたしておるということも承知をいたしておるわけでございまして、先般も、これが対処について話を進めてまいったところでございますが、なお御指摘の点、関係省庁ともあるいは関係団体とも連絡をいたしまして、国民運動としてそういうものをおやめいただくように処置いたしたいと考えております。
  220. 西村尚治

    委員長西村尚治君) 本調査につきましては、本日は、この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三分散会      ――――◇―――――