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1979-03-02 第87回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月二日(金曜日)     午前十時開議  出席分科員    主査 笹山茂太郎君       倉成  正君    櫻内 義雄君       森   清君    池端 清一君       上田 卓三君    加藤 万吉君       栗林 三郎君    兒玉 末男君       上坂  昇君    林  孝矩君       藤原ひろ子君    兼務 安島 友義君 兼務 金子 みつ君    兼務 古川 雅司君 兼務 和田 一郎君    兼務 高橋 高望君 兼務 山本悌二郎君    兼務 依田  実君  出席国務大臣         通商産業大臣  江崎 真澄君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房同和対策室長 黒川  弘君         北海道開発庁計         画監理官    大西 昭一君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房会計課長   安田 佳三君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省貿易         局長      水野上晃章君         通商産業省立地         公害局長   伊勢谷三樹郎君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         通商産業省生活         産業局長    栗原 昭平君         資源エネルギー         庁次長     児玉 清隆君         資源エネルギー         庁公益事業部長 豊島  格君         中小企業庁長官 左近友三郎君         中小企業庁次長 宗像 善俊君  分科員外出席者         公正取引委員会         事務局審査部第         一審査長    奥村 栄一君         大蔵省主計局主         計官      角谷 正彦君         農林水産省農蚕         園芸局繭糸課長 松岡  将君         通商産業省産業         政策局商務・サ         ービス産業室長 細川  恒君         資源エネルギー         庁長官官房鉱業         課長      福原 元一君         日本電信電話公         社技術局長   前田 光治君     ————————————— 分科員の異動 三月二日  辞任         補欠選任   平林  剛君     加藤 万吉君   二見 伸明君     林  孝矩君   大内 啓伍君     玉置 一弥君   寺前  巖君     藤原ひろ子君 同日  辞任         補欠選任   加藤 万吉君     上坂  昇君   林  孝矩君     二見 伸明君   玉置 一弥君     大内 啓伍君   藤原ひろ子君     寺前  巖君 同日  辞任         補欠選任   上坂  昇君     池端 清一君 同日  辞任         補欠選任   池端 清一君     栗原 三郎君 同日  辞任         補欠選任   栗原 三郎君     上田 卓三君 同日  辞任         補欠選任   上田 卓三君     渡部 行雄君 同日  辞任         補欠選任   渡部 行雄君     平林  剛君 同日  第二分科員金子みつ君、第三分科員安島友義君、  第五分科員古川雅司君、和田一郎君、高橋高望  君、山本悌二郎君及び依田実君が本分科兼務と  なった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算  (通商産業省所管)      ————◇—————
  2. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  通商産業省所管について質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。加藤万吉君。
  3. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 昨年も当分科会で、私は化学肥料構造改善計画について御質問を申し上げたわけです。先般、化学肥料構造改善計画答申をされたというふうに承っておりますが、尿素廃棄が四〇、アンモニア廃棄が二〇、過剰設備処理を行うわけですが、この改善計画に基づいて、現状はどういう進行状況にありましょうか、御説明いただきたいと思います。
  4. 大永勇作

    ○大永政府委員 一月の末に安定基本計画を告示をいたしまして、ともに設備廃棄に関します業者共同行為指示をやはり一月末にやっておりまして、現在、それに基づきまして、業界内部設備廃棄計画について相談をしておるという段階でございます。近いうちに出てくるのではないかというふうに考えております。
  5. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 具体化される見通しはいつごろですか。
  6. 大永勇作

    ○大永政府委員 共同行為指示及び安定基本計画によりますと、ことしの六月三十日までに基本的には設備処理しなさい、どうしてもだめなものは来年の六月ということになっておりますが、一応ことしの六月でございますので、それに間に合うように出てこなくてはならない、こういうことでございます。
  7. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 当初、産構審化学部会の協議の過程では、尿素が四〇、アンモニアが二〇と聞いておりますが、その後答申された結果ですと、尿素が四三・三%、アンモニアが二九・七%というふうに承っておりますが、この数字に間違いございませんか。
  8. 大永勇作

    ○大永政府委員 数字を申し上げますと、アンモニアが百十九万トンで二六・一%、それから尿素が百七十九万トンで四四・九%、燐酸が十九万トンで二〇・四%でございます。
  9. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 そうしますと、当初の計画から尿素で四・九%、それからアンモニアで六・一%アップをされているわけですが、何かこれは特別な状況がございましたでしょうか。
  10. 大永勇作

    ○大永政府委員 この前の段階数字というのは、産構審段階での数字かと思いますが、産構審のときにはおおよそということであったわけでございますが、その後よく精査をいたしますと、いまのような数字になったということでございます。
  11. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 今度、産構審答申もこれで基本的には肥料業界の安定をねらっているわけですが、この廃棄処分によって、残存設備能力、これの稼働率と、それから市況の安定という見通しについてはどのようにお持ちでしょうか。
  12. 大永勇作

    ○大永政府委員 稼働率は、これは五十七年現在でございますが、アンモニアにつきまして八八・一%、それから尿素九三・六%、湿式燐酸八一・一%ということにしておるわけでございますが、これは尿素につきましての輸出が多い方、つまり百万トン程度輸出が出るだろうという前提でございますけれども、この程度まで操業率が上がりますならば経営は安定するのではないかというふうに考えております。
  13. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 最近、ヨーロッパ市場ナフサが大分値上がりいたしまして、わが国でもナフサ価格値上げを求める声もあるようですが、相対的にはナフサの値上がりによってわが国市況は強まっているのじゃないでしょうか。もしそうだとすれば、これは短期的なものというふうに見るのか、あるいは中期的なものとして見るのか、多少推定がむずかしいところですけれども、私どもの聞く範囲では、恐らくイランの情勢その他も踏んまえて、ナフサ価格が、わが国のあれだけの価格差のあるものが国際的には縮小されていくだろう、いわゆるナフサ価格に対する国際競争力が相当持てるのではないか、結果としては、尿素にいたしましてもアンモニアにいたしましても、国際市況に相当強くなるのじゃないか、こう言われているわけですね。新聞等でも報道いたしているわけであります。ということになりますと、先ほど六月三十日までに全面的に廃棄処分を展開するという進行その他がこの市況に押されて延期される、あるいは産構審答申計画の内容が緩和されているという状況は見出すことはできませんでしょうか。
  14. 大永勇作

    ○大永政府委員 これは先生もよく御高承だと思いますが、日本の場合には、アンモニアの原料はナフサでございますが、海外の場合には、これはヨーロッパもそうでございますし、アメリカもそうでございますが、天然ガスの比重が非常に高いわけでございます。もちろん、基本的には石油が上がれば天然ガスも上がるわけでございますけれども、どちらかと言えば、天然ガス価格の方がやはり安いという状況がございます。したがいまして、むしろ現在のように石油市況が強くなってまいりましてナフサ価格が上がってまいりますと、相対的には日本肥料工業というのは不利な状況になるということでございます。しかし、現在輸入ナフサについては非常に上がっておりますが、国産のナフサにつきましては、いまでもそれほど上がってないわけでございます。したがいまして、現状競争力が非常に弱くなったオイルショック直後のようなことはないわけでございますけれども、少なくとも強くなっておるというふうな状態ではなかろうかというふうに思います。
  15. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 短期的な状況ですから、いま直ちに中期的な見通しを持つことは困難だと思うのですけれども、ただ世上言われております、確かに尿素にしてもアンモニアにしてもいままで操業度が相当悪いですから、それぞれ廃棄処分をして、操業度を高めて安定を求めるということはわかるのですが、かつてソーダ隔膜法への転換で、率直に申し上げて、通産省指導方向について私ども誤りを持ったのではないかと実は思っているのです。あれが、転換の時期あるいは水銀方式が、国際的な面から見ても、他の手段をもって処する方向があったのではないかということがあったものですから、今度の尿素アンモニア廃棄についてもそういう見通し誤りがもしも起きた場合、たとえば今日四〇%増以上ですから、実は現場では相当の混乱が起きることは必至なんですね。そういうことも踏んまえて、相当慎重を期していかなければいけないのではないか。したがって、この運用分についても、六月三十日という日にちは限られてはいますが、弾力的な運用といいましょうか、廃棄に対する見方をとる必要があるのではないかとすら私は思っているわけであります。この辺はぜひ誤りのないように御指導をいただきたいと思います。  そこで、先ほど四〇%、産構審ではその程度前後ということで目標にしたけれども、結果的には尿素の場合に四四・九%になった、こういうわけですが、どうでしょうか。過剰設備処理について、当初産構審考えておられた以上のものが発生をして、総体として過剰設備処理の量を引き上げたということはございませんでしょうか。たとえば例の三菱グループ日本化成鹿島アンモニア合併による一工業事業場廃棄あるいは宇部興産の中における廃棄、同時に協和醗酵の中における廃棄等が加わって、結果的には四四・九%の上昇を見たといいましょうか、廃棄処分の拡大を見た、実はこういう条件があったのではないかというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  16. 大永勇作

    ○大永政府委員 これは個々設備、どこをどういうふうに廃止するかということにつきましては、業界判断といいますか申し出に任せるというたてまえをとっているわけでございますが、先生いま御指摘のように、産構審でいろいろ議論している当初の段階では、われわれの耳に入っているところでは、いまの三菱グループの方はむしろ残る方というふうな感じがあったわけでございます。その後、三菱グループ内部でいろいろ検討されまして、昨年の六月に、いまの日本化成鹿島アンモニアとの合併構想というのが打ち出されたわけでございまして、三菱グループとしては設備処理する方といいますか、それの方に回ったという事情の変化は確かにあったと存じております。
  17. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 これは後ほど同僚の上坂議員が細かな質問を展開いたしたいと思っておりますが、現状では、日本化成鹿島アンモニアの両社の合併、同時にそれに伴う廃棄処分、この辺はどう把握されていらっしゃるのですか。
  18. 大永勇作

    ○大永政府委員 これにつきましては、基本的な考え方というのは、ことしの四月一日を目途にいたしまして日本化成鹿島アンモニアを吸収合併する、それで合併新会社は日東化学販売面で提携するというのが基本構想でございまして、それを進めるに当たっては三菱銀行、三菱化成三菱油化、三菱レイヨン、三菱商事、この五社で合併準備委員会というのができておりまして、ここで検討をしておられるわけですが、いろいろ地元の問題あるいは組合問題等々ありまして、現段階ではこの準備委員会はなかなか進んでいない状態であるというふうに承知しております。
  19. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 基本的に通産省としてそういう指導方向、そういう合併、そして廃棄処分を受けるものに対しては、三菱グループ内でいま討議をされて、結論がまだ出ていないということですが、それをそういう方向、いま三菱グループ考えている方向を推進されるという立場でこの問題を行政指導されるつもりですか、それとも自主的にどういう方向が出るのか通産省としては見守っていこうとされているのか、積極的に推進されてそういう方向を求められ、同時に全体の構造改善に対する三菱のあり方を位置づけるのか、その辺はどうなんでしょう。
  20. 大永勇作

    ○大永政府委員 われわれといたしましては、四十数%の設備処理というマクロの計画については推進してまいりたいと存ずるわけでございますが、個々の具体的な設備をだれがどういうふうに廃棄するのかしないのかという問題は、それぞれの企業における判断、それから企業同士における相談の結果を尊重してまいるという立場でございまして、そういうことからいけば企業の自主的な判断を尊重するという立場でございます。
  21. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 わかりました。この問題は後で上坂議員からいま少し細かに所見をお伺いしたいと思います。  そこで、本来残存者になるべき三菱関係日本化成あるいは鹿島アンモニア残存者負担が、これによって大幅に変化をする、そういう状況が起きませんでしょうか。  聞くところによりますと、自主的なメーカー負担が五億六千万で、輸出関係に上乗せして八億、合計十三億何がしの残存者負担をそういう形で分担するという話を聞いておるのですが、この場合に、三菱グループにそういう状況が起きたときに、残存者負担が大幅に変わっていくというような状況が起きませんですか。
  22. 大永勇作

    ○大永政府委員 現在のところでは、要するに三菱グループとしては、日本化成あるいは鹿島アンモニアのいずれか一方の設備廃棄するということを言っておるわけでありまして、それを前提にいたしまして、いま先生指摘のような全体では約十五億円という残存者負担になっておるわけでございますので、そのまま進む限りにおいては、この負担変化の問題は生じないということでございます。
  23. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 今度の産構審答申以来、化学肥料構造改善の一番大きなねらいは、やはり業界の安定だろうと思うのです。いまお聞きした範囲では、これで大体九〇%ないしは八〇%の操業度を維持して、全体としては業界として安定するだろう、私は先ほど言いましたように、実は多分に不確定要素を持っているというふうに思っているわけです。たとえば中国市況も、中国の新しい開発その他から見てもっと落ち込むだろうと見ておりましたが、新しい近代化計画もこれあってでしょうけれどもわが国輸出はそう落ち込むとは思えない現状です。それから、ナフサ価格その他を見ても、実は相当不確定要素を内面に含みながら、しかもそれは下向きではなくて、業界の上向きの安定方向というものが、廃棄処分をすることを一〇〇に置いて、総体としては一〇〇を上回るような状況に推移されていく、私どもそういう感覚を持っているわけです。これは先ほども申し上げましたように、これからの若干の推移を見なければ、やや中期的に見なければならない課題でございましょう。そういうことが一つ。  それから設備処理を早急に促進をする、とにかくそれがなければ業界の安定はないわけですから。  それから三つ目には、この問題を起こすことによって雇用が不安定になる、この状態を回避をする。同時に、たとえば日本化成にしてみれば小名浜工場は、御承知のように何といってもあの地域における中核産業ですね、核ですよ。したがって、それに関連する中小企業経営の安定という方向がとられていかなければならぬ、そう思うわけです。  この前段の二つの面はいまお聞きをしましたが、後半のまず雇用の安定という問題についてはどうお考えでしょうか。  昨年、私は当分科会でも質問した。このときはまだ、いわゆる廃棄処分その他確定的要素はございません。むしろ肥料産業の将来的展望と課題の中で労働者を、雇用者をどうするのかという形で御質問申し上げ、なお、昭和四十二年度ですか三年度ですか、当時ありましたエチレン計画ナフサ計画等を含めた、雇用問題の不安定が起きた場合には業界内部でこれを吸収する、そのために通産当局もそれぞれの指導を行うという当時の協定といいましょうか、あるいは処置を行う上の項目を確認をしながら昨年、化学肥料産業における労働者雇用問題については、ぜひこれを踏襲しながら行ってほしい、こう申し上げたわけです。今回のこの処理によって起きる雇用の不安という問題についてはどのようにお考えでしょう。
  24. 大永勇作

    ○大永政府委員 このアンモニア製造業、それから尿素製造業、ともにいわゆる資本集約型の産業でございまして、一工場当たりの単位でいいますと、アンモニアで大体五十人程度、それから尿素で三十人程度、これは直接プラントで働いている人でございます。でございますので、それほど大きなものではございませんので、それぞれの企業化学工業全体の中で十分に吸収できるものだというふうに思っております。  ただ、先生いま御指摘のように、尿素とかあるいはアンモニアを買って、それを接着剤その他にしてやっておる業者でございますとか、関連企業の問題もございますので、われわれとしては、その辺を含めて考える必要があると思います。思いますが、全体としては一連の関連企業の中で吸収可能なものであるというふうに考えておりまするけれども、もちろん中にはそういう関連事業者等で失業が出ることが皆無とは申せません。こういったものにつきましては、雇用保険法指定あるいは特定不況業種離職者臨時措置法につきましても、この二月に指定をいたしまして一応の準備はしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、安定基本計画の実施によりまして雇用不安を生ずることが絶対にないように指導をしてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  25. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 もし数字的なものがありましたら、お示しをいただきたいと思うのですが、この計画を遂行する上で排除される、それは企業から排除されるということじゃない、生産系列から排除される現場労働者は、どれくらいになりましょうか。
  26. 大永勇作

    ○大永政府委員 ちょっと申し上げます。  日本化成の場合でございますが、これは総従業員が八百三十六名おります。そのうちでアンモニア尿素関係は、直接働いておるのが六十四名でございます。それから鹿島アンモニア、これは総従業員数が百四十四人でございますが、うちアンモニア尿素関係が六十七人、こういう数字に承知しております。
  27. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 化学工業は、総合化学的要素が非常に強いわけですから、その部分の人間が一工場内で排除される場合には吸収される、そういう要素が非常に強いと私は思うのですね。  ただ、いまお話に出ました日本化成にいたしましてもあるいは鹿島アンモニアにいたしましても、それ自身中核である場合にはいかんともしがたい状況が起きるわけですね。確かに対象の労働者は六十四ないし六十七名ぐらいありますけれども、それ自身中核になるものですから、それから出る製品を中心にして、次の第二次、第三次加工という形になってまいりますと、特に日本化成の場合には、先ほど申しましたように、中核都市であるだけに、その条件雇用面に及ぼす波及的な面が非常に強いと私は思うのですね。  これは大臣にひとつぜひお願いをしておきたいと思うのですが、たとえば三菱化成とか住友化学のように、一工場で、一地域で何千人も抱えておるところですと、アンモニア尿素から排除される労働者は吸収することは可能ですけれども、こういう中核的な都市の場合には不可能に近い。そのために労使紛争が起きているわけです。私は、たとえば小名浜のようなところは本来は不況地域指定をされて、そして手当てを講ずるという方向が必要ではなかったかと実はいまでも思っているわけです。そういう面では、単にアンモニア尿素あるいは燐酸構造改善の面だけではなくして、雇用の面で起きる状況もいま少し幅広く把握をして対処されるように、これは、ぜひともひとつ望んでおかなくてはいけないと思うのです。どうでしょうか。いまとりあえず一番問題になっております日本化成あるいは鹿島アンモニア等について、そういう地域指定を含めて一雇用対策を強力に進められる、あるいは誘導的な政策をお進めになる、そういう御所見はございませんでしょうか。
  28. 左近友三郎

    左近政府委員 特定不況地域中小企業臨時対策法に基づきます地域指定につきましては、雇用条件、それから地域不況条件等基準がございます。現在、その基準に合致したものを三十指定しておるわけでございます。残念ながら、小名浜につきましては、現在の時点では基準に達しておりません。しかしながら、そういう基準に達していない地点につきましても常時調査をいたしておりまして、その必要な事態に立ちますれば即時指定することにしておりますので、われわれといたしましては、絶えず現状を調査しながら必要な場合に指定をするように努めたいと思っております。  なお、指定はされなくても、その事態で非常に問題がありますれば、中小企業対策としていろいろな政策がございますので、よく自治体と御相談をして、的確な措置はとりたいというふうに考えております。
  29. 加藤万吉

    加藤(万)分科員 上坂分科員とパックで質問をしておりますから、後へ問題を譲りますが、化学産業も、これは石油化学産業を含めてですが、この時期に転換が行われる、いわゆる構造変化が行われるということ自身は否定し得ない状況だろうと私は思うのですね。特に日本産業全般を含めて付加価値性の高い方向に行かざるを得ないわけですから、そうすると、そこから出てくるひずみであるとかあつれきであるとか、それをしゃくし定規にとらえていきますと、たとえばソーダの場合でもそうですが、まだ不況業種にもなっておりませんね。私は何回か当局を通してお願いしているのですが、ソーダの場合に旭硝子は大変すばらしい。しかし、その他の転換によって大変打撃を受けている企業等を見れば、物差しどおり、いわゆる型どおりにものを運んでも進まないという条件が率直に言って、あるわけですね。小名浜の場合でも、確かに条件に合わせれば、型どおりにいけば、それはまだ条件は整いません、したがって、あとは中小企業対策の面で云々、こういう話になってしまうわけですよ。私は、どうもその間に何かやるべき処置というものが欠けている、こんな気がしてならないのです。  大臣、ぜひひとつきめ細かく、転換そのものについては必然性を持っているわけですから、転換に伴うあつれきなり亀裂なりというものは、それ自身の中ではなるべく避けて通れるような条件をつくってほしい。私は労働組合なんかでもそう言っているのです。いまごろ化学産業は、本来はショック死をするところを安楽死状況なんだ。問題は、安楽死の中で雇用が守られ、企業は順調に転換をしていく、その方向をしっかりと見定めて、ひとつ御指導をいただきたいと思うのです。いまの場合の不況地域指定の問題なんかも、しゃくし定規にとらえると、そこにはあつれきが生じ、次への移行が不可能になる。その条件というものをぜひ排除してほしい。私に対する答弁が一つもなかったわけですから、ひとつ大臣の決意を聞いておきたいと思います。
  30. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私も御質問はよく承っておりました。  いま幸いなことに雇用の調整はうまくいっておるようですが、例外もあります。こういう企業整備のために雇用の場を失った不安な人の立場というものは、やはり深刻にとらえなければいけませんね。いまおっしゃるような意味で十分きめ細かに配慮をしていきたい。中小企業庁長官もさっき非常に弾力的な考慮の余地もある、情勢に応じては地方自治体と話し合いながら手おくれのないように処置する、こう言っておりますので、なおこの上ともひとつ細心の配慮をしてまいりたいと思います。
  31. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて加藤万吉君の質疑は終了いたしました。  上坂昇君。
  32. 上坂昇

    上坂分科員 いま加藤委員からいろいろと肥料の問題について質問がありましたが、同じような質問もあるかと思いますが、ひとつお答えをいただきたいと思います。  一月三十一日に化学肥料業界から、特定不況業種指定の申請が行われたわけでありますが、これについて、そのまますぐに受けるという形はどの辺から出てくるのか、御説明をいただきたいと思います。
  33. 大永勇作

    ○大永政府委員 一月にはいわゆる安定基本計画の告示をいたしたわけでございまして、これに基づきまして、現在、業界の中で設備処理計画について協議をしておるという段階でございまして、まだその答えについては受け取っておらないわけでございます。
  34. 上坂昇

    上坂分科員 そうしますと、安定基本計画、それが出て、そこで、それが妥当だと思われるときに業種の指定をする、こういうことになりますか。
  35. 大永勇作

    ○大永政府委員 安定基本計画は役所の方でつくりまして告示をするわけでございますが、これは基本計画でございまして、それと同時に、設備処理につきましての共同行為指示をしております。したがいまして、業界の中で話し合いをいたしまして、どこの設備をどういうふうに処理するかということにつきまして、大枠は変わらないと思いますが、実行計画としてはこの共同行為に基づいて申し出が出てくるということになるわけでございます。
  36. 上坂昇

    上坂分科員 いまアンモニアで百十九万トン、尿素で百七十九万トン、それから高度化成で十九万トン、これが廃棄処分になるという形で出てきているわけでありますが、これを見ますと、私は、輸出というものを余り念頭に置かないで、価格の安定している国内需要に最重点を置いていくのだという方向企業というのが考えているような感じがするわけですね。その点はいかがですか。
  37. 大永勇作

    ○大永政府委員 それは先生指摘のとおりでございまして、現在のところは、尿素にいたしましてもアンモニアにいたしましても、非常に輸出のウエートが高いわけでございますが、やはり将来のことを考えますと、中国にいたしましてもインドあるいはインドネシアにいたしましても、国産化計画が着々として進んでおるわけでございます。また、国際競争力という点からいって、一般的にはやはり値段の方もなかなか国際競争力がないというふうな状態でございますので、輸出のウエートというのは現在よりは少し落とした形で経営を安定させる必要があるということであろうかと存じております。
  38. 上坂昇

    上坂分科員 そこで、輸出あるいは経済協力の面でちょっとお伺いしますが、中国では二十一省に全部大型プラントをつくる計画があるというふうに聞いておるわけであります。一九八〇年末には十四、五基動くのじゃないかというふうなことが言われておるわけでありますが、しかし、まだ現状では、天然ガスの供給の問題がありましてかなり稼働率が悪い、こういうふうに聞いているわけであります。したがって、中国の需要というのはまだ当分続くような感じがするわけですね。それからもう一つ、インドでありますが、インドはこれも国内のプラントを出しておりますけれども、それだけ需要が非常に多いわけですね。したがって、インドも非常に見込みがあるのじゃないか。それからもう一つは産油国なんですが、産油国も、これは国内では余り使わないだろうと思いますから、プラントができれば輸出国に転じていくのじゃないかというふうに思いますが、この辺の見通しの中で、どういうふうに輸出の問題を考えていくかということについて一点。  それから、経済協力というものをかなり進めていく必要があるのじゃないかというふうに思うわけですね。この面から、海外の需要というものをかなり喚起することができるのではないか、こういう感じがいたしますが、その辺について御説明いただきたい。
  39. 大永勇作

    ○大永政府委員 輸出でございますと、確かに先生指摘のように、中国は非常に野心的な肥料の計画を立てまして、われわれが聞いておりますのでは十三プラント、そのうちの十プラントは天然ガスを使いまして、三プラントがナフサということでございますが、こういう建設計画を進めておるわけでございます。先生指摘のように、確かに天然ガスの出が思ったほどではないとかというふうなことで若干おくれぎみであるということは事実でございます。ほかの国にいたしましても、やはり同様な事情が若干あると思います。  そこで、われわれの見通しといたしましては、これは、五十二肥料年度におきます日本尿素輸出は百十七万トンでございますが、五十七肥料年度、これは一応輸出が五十万ないし百万というふうに幅を置いて考えておりますが、われわれがいま稼働率その他をはじくときには百万の方を使ってやっております。つまり、現在の百十七万トンが百万トン程度に減る程度でおさまるであろう、それほど大きく減らないのじゃないかという前提でいま考えておる、こういうことでございます。  それから、経済協力につきましても、食糧増産特別援助、いわゆる第二KRというものと円借款と両方ございますが、五十三年度におきましては金額で約百九億円程度の食糧増産援助ということで肥料を出しておるわけでございます。五十四年度につきましても、全体の食糧増産特別援助がかなり増加しておりますので、いま申し上げました数字よりは多く恐らく経済協力という形で出ていくのではないかというふうに考えておりまして、尿素で申しますと、五十三肥料年度に約十五万トンでございますけれども、これも確かに一つのファクターであろうというふうに考えております。
  40. 上坂昇

    上坂分科員 化学肥料工業というのは、戦後の食糧増産といいますか、そういうものを背負ってき、それから中途ではアンモニア工業として非常に多くの、素材産業といいますか、素材を各コンビナートに提供する非常に重要な役割りを持ってきたと思うのです。したがって、国もかなり多くの行政指導といいますか、そういうもので力を入れてきたと思うのです。これがここへ来てどうにもならないから、まあ設備廃棄することはやむを得ないだろうという形にだけ考えないで、やはりあらゆる面で経済協力なり何なりの面で肥料産業というものの振興を図っていくということが必要じゃないかと私は思うのです。そういう面で、この点について十分ひとつ努力をしていただけるかどうか、大臣の御決意をいただきたいと思うのです。
  41. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ほどから私も傾聴しておりまするが、十分努力をしてまいりたいと思います。
  42. 上坂昇

    上坂分科員 産構審答申を見ますと、「設備処理の方法」というもので、いわゆる企業とあるいは企業グループの自主性を尊重するというふうになっておりまして、四項目ばかり挙げているわけであります。ところが、この四項目を見ますと、地域経済への影響を考慮していないのですね。前半の分析のところでは、先ほど言いましたように、アンモニア工業あるいは肥料工業がコンビナートの中心でいろいろな役割りを果たしてきた、こういうことは言っているのですが、いざ設備廃棄する段階になってきますと、地域の経済への影響というものをほとんど考慮されていないというところに、私はこの産構審答申というものは非常に問題があるような感じがするわけです。「アンモニア尿素工業の構造改善方向」というようにありまして、そしてアンモニア二〇%減、尿素四〇%減のこの設備処理の方法として、まず設備の生産性を維持する、上げる、それから関連製品との関係、こう出ているのずが、実は関連製品というのは、括弧していきまして、企業内の経営の総合的なコストを下げるということでだけ考えられているわけであります。三番目に、これは地域との関係でありますが、公害規制あるいは環境・立地面の制約というのが出てくるのです。しかし、これもやはり環境整備をするという形だけでありまして、住民サイドでありますが、そこの地域のいろいろな企業や経済に及ぼす状況というのが出ておる。「雇用面への影響」というのがあります。先ほど局長の方から、雇用についてはアンモニア尿素の部門については非常に人数が少ないから、これは全体の化学肥料の中では十分吸収することができる、たまたま吸収できないものについては、雇用保険法等の適用でこれを支援していくのだ、こういうようなお話があったわけでありますが、そういう形でだけ考えていったのでは何ともしようがないので、私は、いわゆる特定不況地域指定をするというようなこともして地域経済の疲弊をなくしていく、そして雇用の安定を図っていくという視点を、これはぜひとらえて企業に対しては指導をしていただかなければならない、こういうふうに感ずるわけであります。  それからもう一つ、輸出の問題と、二番目の関連製品との関係、いまの「設備処理の方法」の中にありますが、この関係から見ますと、総合的なコストを下げることだけが問題にされておる。そうなりますと、どうしても企業は、輸出は値段が高いわけでありますから、できるだけ輸出をやめてしまって、そして全部企業を国内向けにしてしまう、こういう方向になっていくのが当然だ。これは一番先にお話ししましたが、そういう形になっていくのが当然だ、こういうふうに思うのです。そういう姿勢が企業の中から出てくるのじゃないか、こういうのがいま三菱化成を中心とした鹿島アンモニア日本化成との合併というものの中にうかがわれるのです。その辺についてひとつ御説明をいただければと思います。
  43. 大永勇作

    ○大永政府委員 先ほど指摘のございました地域経済への影響の問題につきましては、安定基本計画におきまして雇用への配慮を十分やれということと、それから関連中小企業者の経営の安定に配慮しなさいということを言っておるわけでございまして、この雇用問題あるいは関連中小企業問題の安定を図るということで、特に地域ということは言っておりませんが、地域問題を包含しておるというふうにわれわれとしては考えておる次第でございます。  それから、いま先生がおっしゃいました輸出をどう考えるかということでございます。  国内の需要につきましては、これは肥料の需要というのは最近横ばいないしは微増というような形になっておりまするので、現在、たとえば尿素で申しますと約百万トン弱ということでございます。これに対しまして、設備能力は現状で約四百万トンあるわけでございますので、これは廃棄後におきましても二百二十万トンということでございますので、やはり半分はどうしても輸出をしなければならないということでございます。輸出をそれほど減らして内需だけにするということは、設備能力との関係からいたしましても不可能なことであろうかと思います。ただ輸出は、先ほど申し上げましたように、海外の肥料といいますのは天然ガスを使っておるものが多くて、どうしても価格的には安いわけでございますので、輸出価格は一般的に言いますとどうしても安くなりがちである、したがって、これに余り大きく依存することはやはり肥料経営の安定という点からいってなかなかむずかしいことである。おおむね半々というのをめどにすべきではなかろうかというふうに考えておる次第で、ございます。
  44. 上坂昇

    上坂分科員 それから答申に「構造改善を推進するに当たって配慮すべき事項」というのがあるのですね。そこに「事業転換の推進」というのが四項目に挙げられているのです。私は、非常に不思議な気がしてならないんですね。中小企業のように、あるいはいわゆる部品をつくっているとか、電気製品の部品をつくっているとか、そういうところならばこれは事業転換も可能だと思うのですが、何百億とかけた装置工業の化学工業転換をするなんということになりますと、これはそれの倍も三倍もするような設備投資をしなければ、とても事業転換なんかできないわけですね。そういう面から非常に大きな問題を含んでいるという感じがするわけであります。事業転換をするどころでなくて、関係企業まで全部左右をしていくというのがこのコンビナートの中心である肥料産業の問題であるというように思っているわけです。したがって、そういう点を十分考慮しながら出てきた実際の実行計画ですか、そういうものをひとつながめていただかなければならないと思うのです。それが一つです。  そこで、もう一つちょっとお伺いしますが、現状アンモニア及び尿素の製造工場設備ですね、これで実際にいまとまっているところですね、ここを挙げていただきたいと思います。
  45. 大永勇作

    ○大永政府委員 休止状況でございますが、アンモニアにつきましては、企業数が十八、設備数で二十五ありまして、そのうち現在とまっているのは五つでございます。それから尿素については、企業数十二で設備の数が十九ありますが、そのうちとまっておりますものが九つということでございます。
  46. 上坂昇

    上坂分科員 いまとまっているものは、アンモニアで五設備、それから尿素で九設備ということでありますが、これでどのぐらいの数量になりますか。
  47. 大永勇作

    ○大永政府委員 アンモニアで約七十万トン程度、それから尿素で百三十六万トン程度設備としてとまっているかと思います。
  48. 上坂昇

    上坂分科員 そこで、具体的に日本化成鹿島アンモニア合併問題にちょっと触れてみたいと思うのです。  調査しますと、鹿島アンモニアの場合と日本化成の場合では、地域経済に与える影響というのは、これはもう段違いなんですね。鹿島コンビナートの場合には製鉄が中心でありまして、これは地域的にはそう大きな影響はないのです。ところが、日本化成の場合には、福島県の郡山を含んだ新産都市の、しかも臨海工業地帯の中心でありまして、四十年の歴史を持っているわけです。そしてここが西工場廃棄するということになりますと、これが当然東工場に及んで、東工場に及んでいくと、これがすべての工場に及んでいくということになりまして、大変な問題が出てくると私は思うのです。  鹿島の場合には、これはアンモニア尿素の専業メーカーですね。日本化成の場合には、いわゆるアンモニアを中心とした肥料部門、これが四三・五%持っている。それからコークス部門が二九・一%、その他工業薬品部門が二七・四%、こう持っているわけです。しかも工業薬品部門をとってみますと、地域の経済といいますか、住民の経済にまでずっと浸透しているわけでありまして、非常に重要なものを持っていると思うのです。  それからもう一つのいわき市の小名浜というところは、これは重要港湾でありまして、国際港、昭和五十一年から五カ年計画でいま第五次の港湾整備計画を持っています。事業費が三百八十億予算をとっておられるわけです。取り扱いの貨物量になりますと、昭和五十五年度二千二百万トン、こういうふうにするということを言っているわけでありまして、いま富士興産がどんどん設備を拡張しているということで、ナフサを供給する富士興産、それから日本化成からいろいろな尿素やガスやらもらう堺化学、新日本化学あるいは東邦亜鉛小名浜製錬所等、これはみんな関連をしておるわけであります。この日本化成がもしなくなるというようなことがあったら、福島県全体に非常に大きな損失になってしまうわけでありまして、東北で一番大きなコンビナートと言われる小名浜地区がだめになってしまうという状況があります。  それからもう一つ、これは大臣にぜひ考えていただかなければならぬのですが、いわき市は御承知のように常磐炭田の中心であります。炭鉱閉山以来非常に多くの失業者群を抱えております。目下県下失対事業労働者数の八〇%をいわき市が占めておるわけであります。最近、二百海里問題で漁業離職者が数百名あらわれておるわけであります。五十二年度の有効求人倍率を見ますと、全国平均あるいは県平均が〇・五六になっておりますが、いわき市の場合は〇・四六なんですね。非常に下回っている。それから、五十二年度の完全失業率を見ますと、国は二・二%なんです。ところが、いわき市の場合は二・九%なんですね。ここでも完全失業者が非常に上回っている。このぐらい大変な地域であります。そこへもってきて中核企業がつぶれるということになりますと、これは大変です。私は、合併をやっているということについてこっちをつぶしたらいいだろうとかあっちをつぶしたらいいだろうということを言っているのじゃないのです。そういうことじゃなくて、いま一番大切なのは、景気回復にしても何にしても、地域経済の安定、雇用の安定ということが今度の政府の政策として最重点であるはずです。そういうことであるならば、特に地域の問題というものを最重点に置いて考慮されなければならないだろう、ここが私の考えておるところでありますが、この点についてひとつ大臣の御所見をいただきたいと思います。
  49. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 もうすでにいままでに結論を出す予定で進められておりましたが、いま御質問がありましたように、他の県もありますか、いろいろ問題があるというわけで、結論を出さないで今日に至っておる。私も地元の陳情は大臣に就任しましてからしばしば受けております。したがって、まだ結論を出すまでには相当な時日を要するのではないかというふうに報告を聞いておるわけでありますが、これはどっちに存置するかという点は原則的には企業判断にまたざるを得ないわけですが、いまお話しのように地元経済への影響それから関連企業への影響、雇用問題、非常に重要ないろいろな問題が重なっておりますので、慎重に配慮するように企業側を十分行政的にも指導していきたいというふうに考えます。
  50. 上坂昇

    上坂分科員 いま大臣の御決意をいただいたわけでありますが、ぜひそういう方向でひとつ御指導いただきたいと思うのです。  大体今度の合併については私は非常に疑問を持つのですが、企業合併というのは大体資本力なり人材面なりあるいはシェアなど各面で競争力を強めて、そして業界での主導権を確立していくという方向企業合併の本質だろうと思うのです。ところが日本化成鹿島アンモニアの場合は会社が違うものだから、設備計画をやってこっちが悪い、あっちが悪いということになるとうまくないものだから、一緒にさせておいて、おまえたち話し合ってどっちかやめろというようなやり方のような感じがするわけなのです。これは企業としてはまことに、たとえば親会社の方としては勝手な話だと思うのですね。しかも御承知のように、先ほど局長が言われた五社会議があるわけですが、当面対象になっている工場は全く入らないで、そして親会社と言われるところだけが入ってやっているということですね。これは前にも質問があったそうですが、独禁法違反じゃないかというような質問まであったということを聞いておりますが、そういう状況なんですね。反面、三菱大化学構想なんというのがあって覇権をとろうというような感じも三菱にあるそうでありますけれどもしかし、いまの、現実の日本化成と鹿島の合併としいうのは、どうも私にはそういうふうにとれないのです。そういう面で、三菱企業にとって結局損にならないやり方ならどんな方法でもいい、したがって、地域経済なんか問題にならない、そんなことは勘案する必要はないのだ、こういう感じが非常に強いものですから、この点については大臣がおっしゃったような判断の上に立ちまして基礎産業局長の方からも十分御指導いただけるようにお願いをいたして、決意だけいただきたい。
  51. 大永勇作

    ○大永政府委員 先ほど大臣がお話しになりましたとおり、地域問題、雇用問題、十分配慮しながらやるようにわれわれといたしましても指導してまいりたいと思います。
  52. 上坂昇

    上坂分科員 次に、時間がありませんけれども、一つだけ触れておきたいと思うのですが、官公需の中小企業に対する発注の問題なのであります。  随意契約の問題で、二千万円ぐらいの企業で四百人ぐらいの従業員を持っていて、八百万円とかあるいは一千万円とかいう随意契約をやっているということはいわゆる予決令に違反しているのじゃないか、こういう話をしたら、いや月決めでやっているからいいんだ、こういう回答をしている担当者がいるわけですよ。そうしますと、一千二百万円までは随意契約できることになってしまうのですね、区切って百万円でやっていけば。これじゃどうもおかしいので、そういう認識をしているから、中小企業に対する官公需の発注がなかなか思うようにいっていないと思うのです。この点について十分御指導いただきたいと思うのです。下請企業課長の方には何回も陳情しているから、事情はよくおわかりだと思うのですが、この点について長官の決意だけ伺います。
  53. 左近友三郎

    左近政府委員 いま御指摘の点、われわれもよく承知をしております。ただ、各省各庁が契約をいたしますのは、会計法にのっとりましてやるというたてまえになっておりまして、それの監査はまた会計検査院で監査することになっておりますが、実際問題そういう事例がありますれば、これはまたはなはだ将来について中小企業の受注確保という点についても遺憾なことでございますので、よくその点は実態を調査するとともに、各契約担当者がそういう法規の規定を十分知ってそれを実行するように、いま中小企業庁は官公需確保対策推進協議会というのを開いて各省と相談をしておりますので、その場でも趣旨の徹底を図りたい。また官公需発注のためのPRのパンフレットもございますが、これの中に契約担当者によく周知徹底するような事項を盛り込みまして、周知徹底に努めてまいりたいというふうに考えておりますので、今後はこういうことがスムーズにいくようにわれわれも努力をいたします。
  54. 上坂昇

    上坂分科員 最後に、官公需の発注状況というものを把握することが必要でありますから、毎年事業年度の終了後各省庁から契約の概要、それから物件名あるいは契約の方法、金額、それから相手方、こういうものをちゃんと、資料を全部報告をさせるという方向にすべきではないかと私は思いますが、その点ひとつ十分やっていただけるようにお願いしたい。
  55. 左近友三郎

    左近政府委員 現在も報告をいただいておりますので、その報告の内容をよく検討いたしまして、なるべく実態が把握できるように努力いたしたいと思います。
  56. 上坂昇

    上坂分科員 終わります。
  57. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて上坂昇君の質疑は終了いたしました。  林孝矩君。
  58. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 大臣にお伺いいたします。  けさの報道によりますと、イランのバザルガン暫定政府首相が二十八日の夜に革命グループ間の勢力争いのため行政が困難な状況にあるということを理由に辞意を表明した、こういう報道がなされております。一方、イラン原油に関して三井物産、住友商事、出光興産の三社がイラン国営石油会社との間で原油輸入の直接交渉を進めている、いわゆる国際石油資本抜きの交渉というものを始めているということがわかった、こういうことであります。  私、後で民間備蓄等の問題に関しての質問を行うわけでありますけれども、最初にお伺いしたいことは、こうしたイランの暫定政府首相辞任、こういう情勢を踏んまえてまた新たな日本の原油輸入というもの、イランから二〇%弱の輸入ということでありますけれども、その原油輸入ということに与える影響、こういうものが新たに出てくるのではないか、今後の情勢の変化に伴って出てくるのではないかということが考えられるわけです。当然のこと、大臣はそうした情勢を踏んまえて今後の対策というものを考えられておると思うのですが、最初にその点についてお伺いしたいと思います。
  59. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 私もその新聞記事ば見ましたが、まだ正式にどの程度確度の高いものかという情報には接しておりません。  ただ言えることは、バザルガン政権が発足いたしましてからも国内の治安の問題もなかなか複雑ですし、簡単には安定しないのではないかというのが世界各国の見通しのようであります。     〔主査退席、児玉主査代理着席〕 したがいまして、バザルガン政権が石油生産を一刻も早く復活をしたい、輸出も復活したい、またできるならば直接契約、DD方式で高く買ってくれるところに売るようにしたいなど、いろんな情報が入り乱れて来ておりますが、いまお示しのようにまだ本当に政局が安定して生産が再開されるまでには相当な期間を要するのではないか、御心配はごもっともだというふうに思います。  ただ、わが国の当面の問題にしぼって申し上げますならば、五十四年の一−三月期、これは当初七千二百万キロリットル入荷の見込みをつけました、こう申し上げておりましたが、その後また二百万キロリットル上積みをされまして、合計七千四百万キロリットル、ことしの計画が七千四百五十万キロリットルの目標でありましたので、したがって、まあ一−三月期に関する限りは予定どおりの入荷ができたというわけで、胸なでおろしておるというのが現況であります。しからば、非需要期に入る四月から九月にかけての入荷がどうなるのか、特に四−六はどうなるのか、七−九はどうなるのかということになりますと、まだかいもく見当がつきません。できるだけOPEC諸国の増産協力にも待たなければなりませんし、早くイランが政局が安定して生産に向かってくれる、これだけでもスポット価格に影響しますから、それを期待するわけでありますが、現在御承知のようにIEAの理事クラスの会合に天谷エネルギー庁長官を出しておりますので、また最新情報も的確に入ってくるということを期待しておるものであります。十分イラン情勢等々にらみ合わせながら今後に処したいというふうに考えております。
  60. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 いまのお話の中で、一−三月期予想どおりの目標が達成される、こういうことでありますが、先行き非常に不安定な情勢にあることは間違いない、私はそう思います。そういう状況と、もう一点、先ほど質問いたしました住友、三井、出光、この三社がメジャー抜きの直接輸入交渉というものを進めておる。これに対する反発といいますか、反応というものが当然起こり得るのではないか、こういう心配もまた一方にあるわけですね。政府として行政指導をする立場から非常に乱気流の中で原油を輸入する、作業も非常に複雑、情報もいま大臣が申されたように入り乱れておる。たとえばイランの政府が発表することが一つの政略的な外交上の意味を持っておって発表されるとしたならば、それを分析するということは非常にまた大変なことでありますし、いろんな意味から考えて複雑多様化しておる状態、こういう中で、政府としてはどういう受けとめ方を、直接交渉についてはなさっておるか、この点について……。
  61. 児玉清隆

    ○児玉(清)政府委員 三点になろうかと思います。  まず第一の点は、いま先生指摘のようにきわめて不確定な乱気流の中で、そういったDD取引を決断するという問題でございますが、これはわが国の原油輸入体制自身が現在企業の自主意思決定ということを本来のたてまえといたしておりまして、活力のある商社活動あるいは元売りの油調達の努力というものを最大限に発揮させるということをたてまえにいたしております。今回のイランの騒乱問題が起きまして以後も、できるだけ日本の国内生産にひびが入らないような形で合理的な価格範囲内でできるだけ調達の努力をするようにという指導を基本的にはいたしております。  第二の点といたしまして、たとえばDD取引になりました場合に、それがいわゆるスポット的なものになるか、あるいは長期契約的なものになるかという点につきましても、これは具体的なネゴシエーションの問題でございますので、余りそれを予想いたしまして、長期契約であればこのくらいの価格とか、あるいはスポット価格であればこのくらいの価格ということは一義的にはなかなか指導できない面がございます。したがいまして、全体として商社活動の中でどのくらいの水準が適切か、これは価格、数量ともにでございますが、そういったことを全体総合いたしまして決断するという方向で、わが国としてはわが国が世界における油の消費国としてのメーンを占めておりますので、そういった立場で、しかも日本としてはメジャーとしての各会社の役割り、それからわれわれの望んでおります原油の輸入先の多角化、それからルートの多角化、両方の面を政策的にも考えておりますので、こういった点で、御存じのように、各会社自身がメジャーの反発その他も十分考慮した上での決断を図るということを期待しております。したがいまして、いま急に出てきた話というよりは、商談といたしましては、相当底流としてお互いのネゴシエーションが行われた結果成立するものというふうに考えておりますので、これを結果だけから見まして、日本が一番バッターになることについてメジャーの反発云々ということを一義的に、これは非常にけしからぬとか、そういうことも言えないかと思います。したがいまして、十分現地の感覚もたけておりますので、そういう点で総合的な判断で商社自身あるいはこれを引き取りますところのユーザー、一番困りますのは、引き取り手のない油がふらふらするということでございますけれども、そういった投機的な色彩は今回はないようでございますので、その辺は一応われわれも安心をいたしておりますけれども、なお、今後それがどういう第二段、第三段につながっていくかということも十分注目してまいりたい、このように考えております。
  62. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 もう一点の問題として、石油価格の問題があるわけですね。大臣は、昨日石連会長にお会いになってこの問題を含めて話し合われた。概略要点を御報告願いたいと思います。
  63. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 石連の会長というよりも、出光石油の会長という立場で来られました。そして一方、社長がクウェートにいた。したがって、クウェートから見たアラブ事情等々、イランの情勢等をお聞きしようということで面会の時間をセットしたわけであります。  ところが、情勢については、どうも現地におるからといって、かえっていろいろな話が入り乱れて判断がしにくいというのが結論的に言える報告であったというように思います。ただ、バザルガン政権としては、一刻も早く石油生産に向かいたい、輸出も実行したいと言っておるが、どうもまだ国内治安が定まらないようだ、政権も一応安定したと言われておるが、まだ複雑な要素、すなわち後遺症があるようだというような話でありました。  それから、値上げの問題について大臣から、便乗値上げという感じの値上げはいけないという言葉があったが、自分たちは決して便乗値上げではありませんという説明で、これは繰り返しませんが、よくここでも議論になるように、円高の部分であるとか、今度の一月からの五%の値上げの部分を見ておるとか、値下がりが激しかったとかあるいは石油精製、元売り、全部いまは赤字であるというような一通りの話はあったわけです。したがって、私は、そういう事情は一応わかっておるが、しかし、いかにもこういう事情にあるときに値上げが安易になされるという雰囲気はよろしくないと思う、やはり社会的意義、影響、そういうものをよく考えながら対処をせられたいということを申し上げたわけであります。
  64. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 いま原油の輸入という面、それから価格の面、二つの面の問題を提起したわけでありますけれども価格の問題にしても、これはかつてのオイルショックのときにも問題になったわけでありますけれども、値上げされた油がまだ日本に到着しない間に日本にある油が値上げされる、これをわれわれは便乗値上げと言うわけですけれども、当時も、それは便乗値上げではないという言い方が片一方にあり、議論された経緯があります。  私は、いま大臣に要望とお伺いをしたいわけでありますけれども、そういうふうな状況が起こり得る可能性があるということは、たとえば七九年四段階値上げというOPECの状態であるとか、先ほどから説明がありましたスポット価格の問題であるとか、この時期に原油が値上げされるという方向が出てきていることは事実だと思うのです。いつの時期にどういう形でどうなるかという確定的なものではないにしても、そういうことがささやかれておるという時期において、値上げということが片一方ですでに行われつつある。この事実というものは、便乗値上げではありませんといっても、やはり何かの値上げをしなければならない要素というものがあって値上げがなされた。当然先ほど大臣が昨日の話の中から引用された事由というものもあるでしょう。しかし、ここで厳然として明確にしなければならない、いわゆる便乗値上げというような形の値上げ、これに対してどう臨むかという大臣の決意ですね。  それから、たとえばナフサ、この先物価格というものが高騰するということ、その仮定のもとにすでに品不足という現象がもう起こっている事実があります。ポリエチレンだとか、ポリスチレンだとかあるいはポリプロピレンだとか、そういうものから始まって、加工製品のこれは、今度は値上げというより不足しておるということで流通の過程に乗っていない、こういう問題もあるわけであります。また軽油の実態を見ても、品不足ということで需要に供給が満たない。これはつくり出されたものであるかもわかりません。しかし、そういうものがあることも事実です。ですから、こういう流通の問題、またその価格の問題、これに対してどう対処していくかということは、通産行政の中でもこれから非常に重大な問題になっていく、こう思うわけですね。その点についての決意も含めてお伺いしたいと思います。
  65. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘のように便乗値上げ、これはいけませんね。これはわれわれも十分配慮してまいります。  ただ、いまのところは値上げをしたいというわけで、需要者の方がこれにどう対応するか。いまおっしゃるように、雰囲気は、なかなか今後の入荷の見通しも先行き立たないといったような場面の不安に乗じて、高値を押しつけるというようなことがあってはならぬと思います。需給両者の話し合いというものを冷静に見ていくことも必要ですね。スポット物が高いということが、いま御指摘になったように関連製品などの高値を呼んでおるわけですね。     〔児玉主査代理退席、森(清)主査代理着     席〕  ですから、われわれとしては、生産が早く再開されることをイランに望むということが一つと、それから先ほど申し上げましたように、今後も予定どおりといかないまでも、できる限り多く入荷を図る。これは業界の協力がなければ不可能でありますが、そういったことの努力、そうして同時に、こういう場合のために備蓄をしておるのですから、この備蓄の取り崩しということを当然考慮の中に入れなければならない。そうして価格の激変には十分きめ細かな対応をしていきたい、かように考えます。
  66. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 ある程度一般論的、ある程度抽象論的な意味に受け取れるわけですね。やはり大臣としてもう少し、決定的な瞬間が来てないものでそういう表現になるのかもわかりませんけれども、対応の仕方というものを具体的に考えられなければならないのじゃないか、こういう気がしてならないわけです。いかがでしょうか。
  67. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いまから余りこういう場合にこうするんだ、ああするんだということを大臣が言い過ぎることははいかがかと思うのです。これはぜひひとつ御理解を願いたいと思うのですが、今度はIEAにおいてもお互いに冷静に対処をしていこう、そしてまた、しばしばわれわれ通産省側も言っておりまするように、買いだめとか、買い急ぎとか、そういうことをしない限り、まあ何とか当面過ごすことができるということで対応しておるわけでありまするから、何らか余り業界自身におどしつけるような話をすることも、これも今後の入荷をスムーズに進めていく上に影響があってもなりませんので、その辺はひとつ御推察願いたいと思うのですよ。もちろんきめ細かに対応をします。
  68. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 それでこれは大臣にお伺いするわけですが、民間備蓄、これは備蓄の取り崩しということもいまおっしゃったわけですけれども、一つの計画というものがあって、これは義務を負わされておる。九十日備蓄を目標として、五十三年度末、五十四年度初頭が八十五日、こういうことで民間備蓄が進められているわけですね。その目標が達成されるかどうかということがあるわけです。  それから、その具体的な面ということについて今度は民間の方から申し上げますと、たとえば丸善が一月二十九日に、三月末までに八十五日分の備蓄は困難になった、基準備蓄量減少の申請をする、こういう発言があります。それから、二月二日には備蓄取り崩しの発言が自民党首脳部によって行われた。これはみんな具体的な発言ですね。それから、資源エネルギー庁としては原油入手、備蓄増強等に一層努力するよう所要の指導を行う、これは一月十七日、一月三十一日に言明しております。それから、二月に入っても三月までの原油確保がほほできるということを明らかにしている。いろいろな話が、今度は行政サイドからではなしに民間備蓄をするサイドからこうして具体的に出てくる。石油各社というのは、法により備蓄が義務づけられているわけで、行政当局である通産省が一方で努力をしているその最中に、業界の側からこうしたいろいろな発言が出てくる。こういうことは大臣がいま心配された、いまの段階で具体的に業界におどしつけるというようなことがあってはならない、今度は業界の方はいま申し上げましたような発言をする、片一方で大臣が心配しているのに業界の方はお構いなしにそういう発言をするというようなことになっていきますと、これはまたおかしなものになるのではないか、この点はどのように判断されておりますか。
  69. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 現在われわれは石油備蓄法で九十日備蓄増強計画というものを進めておりますね。この法律によりますと、御承知のように五十三年度は常時八十日分を保有する、五十四年度初めからは八十五日分を保有するという原則があるわけです。ところがこの情勢でありますために、今年度の法的義務である八十日分備蓄水準は、全体では三月末までは維持される見込みでありますが、今後の供給量の大小によってはちょっと不可能になる、したがって五十四年度初めからの八十五日分の備蓄ということは問題になると思います。したがってそういう議論は、いま天谷エネルギー庁長官がIEAでやっておるということになるわけです。  そこで御参考に申し上げますと、二月末で備蓄日数は八十二日分強、それから三月末で八十一日分強、このほかに、当面タンカー備蓄をしておりまする五百万キロリットル、七日間強というものがあるわけであります。これは御参考までに申し上げておきます。
  70. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 石油備蓄法によれば、基準備蓄量減少の条件として「災害その他やむを得ない事由」ということにしているわけですけれども、そういう「災害その他やむを得ない事由」という重みから考えれば、安易な備蓄に関する発言というものは影響が非常に大きいから慎んだ方がいい、私はそう思うわけです。ところが先ほど指摘したように、業界の方がこれだけの備蓄はできないとかなんとかいうような発言をしてくると、業界通産省の目標設定、そういうものの間に若干トラブルが起こってくるのではないか、こういう点を心配するわけです。それから、五十四年度予算で組み込まれているもろもろの事業、こういう諸事業に対して備蓄目標を修正しなければならないというような状況になった場合に、この五十四年度予算の諸事業というものも当然修正変更を余儀なくされる、こういうふうに思うわけですけれども大臣見通しの中でこういう修正変更というようなことをどのような観点で受けとめられておるか、起こり得ると思うか、それとも思わないか。また起こらないためにどういう対策を考えられているか。
  71. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 誤解があってはなりませんが、私どもは景気をことしもどう維持していくか、五十二年から五十三年に確かにある程度好況に向かいましたね。これを何とか維持したいということしの財政経済政策の大きな柱が一本あるわけです。その景気の維持は、雇用の安定を図りたいという二本目の大きな柱に影響するわけですね。そこで一月二十二日の省エネルギー・省資源対策推進会議の、まず中央地方を含める官庁から節約を始め、民間の協力を得よう。企業においては、石油が四倍にも、関連製品が五倍にも暴騰したあの石油ショック以後非常な省エネルギー政策をとっております。したがってメリットは少ないが、一般国民の節約協力を求めよう、こういうことに変わりはないわけで、これはひとつお察し願いたいと思うのです。  そこで第二点の予算上どうか。これはいま取り崩すこともあり得るというのは、今後の入荷がうまくいかなければ取り崩さざるを得ないという見通しを申し上げておるわけですね。もちろん五十四年度八十五日分を確保したいというこの計画そのものについては、ねばり強く努力していかなければならぬ、あらゆる努力をしなければならぬ。ですから、例外的な問題を申し上げておるということも御了承願いたいと思います。したがって、予算の問題については、いまのところ変更するとかいうようなことは考えておりません。
  72. 林孝矩

    ○林(孝)分科員 終わります。
  73. 森清

    ○森(清)主査代理 池端清一君。
  74. 池端清一

    池端分科員 最初にお尋ねをいたしますが、通産省特定不況地域中小企業対策臨時措置法で指定をされました全国三十カ所の特定不況地域につきまして、その実態を本年の一月の末に取りまとめられ、発表されたようでございますが、その実態につきましてどのように把握をされ、またどういう分析をなされておりますか、その点をお尋ねしたいと思います。
  75. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のありました一月付の「特定不況地域の概況」と申しますのは、昨年の十月に特定不況地域対策法が実施されましたので、それに伴いましてこの内容を過去から調べておったデータも含めてまとめたものでございますが、全体の経済は回復軌道に乗っておりますけれども、この特定不況地域につきましては、まだまだ自律的には回復ができない、地域経済の疲弊が懸念されるという点が非常にございます。したがいまして、この指定地域の回復につきましては、関係二法の運用をしっかりやってまいりまして、今後このような地域の景気回復に十分な努力をしなければいけないというふうに考えております。
  76. 池端清一

    池端分科員 ただいまも御答弁がありましたように、わが国の景気が回復基調に向かっている、こういうふうに言われておりますけれども、依然として鉄鋼や造船あるいはアルミ製錬などでいわゆる構造不況業種を抱えている企業城下町は完全に取り残されている、こういうのが現状ではないかと思うのであります。  昨年十二月の常用求職率を見ましても、全国平均は一・八三、特定不況地域ではこれが三・四三、北海道室蘭市のような場合は五・二四という数値を示しておりまして、全国平均の約三倍だ、こういう状況でございます。したがって、特定不況地域は依然として深刻な状況に直面をして苦悩している、これが現実の姿だと思うわけであります。  そこで政府にお尋ねをしたいのは、いまもちょっとお話がございましたけれども、もっと具体的に、この特定不況地域対策、とりわけ中小企業、下請企業の対策についてもっときめ細かな施策を進めていかなければ依然として企業城下町は浮かび上がってこない、こういうふうに思うわけでありますが、それらの対策についての見解を承りたいと思うのであります。
  77. 左近友三郎

    左近政府委員 この特定不況地域に対する対策、ことに下請中小企業に対する対策というものは最も力を入れてやらなければいけないと考えておりますが、二つの側面があろうかと思います。  一つは、現在そういうショックをこうむっておりますので、緊急融資というような金融措置で当面をつなぐという対策でございまして、これは特別の低利の金融制度ができましたので、これを活用いたしたいと思っております。  もう一つは、やはり仕事がなければ困るということでございます。したがいまして、仕事の確保という面に配慮をいたしてまいりたいということでございますが、一つは、特定不況地域には公共事業を集中的に実施し、そこで雇用なり仕事を見つけようということにいたしておりまして、これは公共事業を実施しております建設省、運輸省等々と御相談をいたしまして、補正予算で実施する公共事業については特定不況地域に集中して予算をつけたということになっておりますが、今度国会で御審議を得られますれば、五十四年度の予算についても特定不況地域に公共事業を集中してつけるという方針を考えております。  それからもう一つは、ことに下請中小企業に対しましては、都道府県に下請企業振興協会というのがございますので、そこで下請の仕事をあっせんをしております。しかしながら、特定不況地域のようなところでは、その県内あるいは北海道でございますと道内だけではなかなか仕事が見つかりません。したがいまして、広域あっせんと申しまして、北海道の場合には東日本の各都道府県の下請企業振興協会を一堂に集めまして、そこで広域あっせんということで広い地域から仕事を求めるということをやっております。これは大体二十回、全国の各特定不況地域でやっております。たとえば室蘭などは三回もやっております。こういうことでございまして、こういうものをやりながら仕事を見つけるという対策もやっていきたいと考えております。
  78. 池端清一

    池端分科員 いま、その具体策についてお答えがございましたが、地方自治体としても緊急融資制度なりあるいは仕事の確保ということで大変苦労をしておるわけであります。河川の防護さくをつくるというようなことから、屋外プールの屋根をつける、あるいは公園の整備、野球場の修理改造、そういうことで仕事を確保することに必死の思いでいま努力をしておるわけでございます。ところが、プールの問題になると、これは文部省の管轄だから文部省と相談せよというような話もあったりしまして、なかなか思うようにいってないという実態も聞いておりますので、ひとつこの特定不況地域中小企業対策については、それぞれの地域と緊密な連絡をとって、きめ細かな対策を樹立していただきたいということを強くお願いをしておきたいと思うのでございます。  そこで、特定地域の問題になってはなはだ恐縮ではございますけれども、きわめて深刻な不況に直面をしております北海道室蘭市の例を取り上げて一、二お尋ねをしたいと思うのであります。  室蘭市の場合は、不況からの脱出を図るためには、従来の鉄鋼や造船に依存している現状から脱皮をして、工業構造の多極化を目指した新規企業の立地がどうしても必要である、そのことによって工業の振興並びに雇用の拡大を図っていくという観点から努力をいたしておるわけでございます。しかし、現状は必ずしも思うようにはいっておりません。  そこで、最初に北海道開発庁にお尋ねをしたいのでありますが、北海道開発庁では昨年新北海道総合開発計画を策定されました。この中で室蘭市をどのように位置づけ、そしてまた将来展望をどのように描いているのか、それをまずお尋ねをしたいと思うのであります。
  79. 大西昭一

    ○大西政府委員 御指摘の昨年策定いたしました新北海道総合開発計画におきまして、室蘭市は北海道における重要な工業生産拠点という位置づけをいたしております。しかし、今日、先ほどから先生指摘のとおりに、造船等を初めといたしまして地域経済に大変大きな影響を与えるような状態になっておることも、私ども十分承知をいたしておりまして、そこを克服するためには新規産業の導入ということがぜひとも必要であり、重要な課題であるというふうに考えております。  また、室蘭市はすぐれた港湾機能を有しておりますので、これを有効に活用し、また隣接地域との連携を深めながら、機械工業等の高次加工型の工業の導入によって工業構造の高度化を図りまして、北海道における工業拠点としての役割りをさらに高めていく必要があると考えております。−
  80. 池端清一

    池端分科員 ただいま北海道開発庁から御説明がありましたように、北海道における臨海工業、流通の拠点としての位置づけ、そういう立場に立って東北、北海道唯一の特定重要港湾であります室蘭港も運輸省の港湾計画に基づきまして埋め立てを行い、工業用地を造成して新規企業の立地に取り組んできたわけでございます。ところが、この問題についてはいろいろ隘路がございまして、昭和四十七年に制定をされました工業再配置促進法、いわゆる工配法でございますが、この工業再配置促進法では北海道は誘導地域指定をされております。しかし、その北海道の中でも札幌市と室蘭市は人口並びに工業集積度の面からいって除外をされておるわけであります。いわゆる白地地域、こういうふうになっておるわけでありまして、いま開発庁から御説明がありましたように、新規産業の導入を図る、こうなっておりますけれども企業の進出がきわめてむずかしい、こういう状況なわけであります。この工業再配置法というのは昭和四十七年、いわば高度成長期の中で出てきた法律でございますが、それ以来六、七年を経過して、今日では社会経済情勢はきわめて目まぐるしい変転を遂げて大きく変わってきておるわけであります。したがって、私はこの際、工業再配置促進法における地域指定、これを見直すべき段階に来ているのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで、まず最初に北海道開発庁、あなたは北海道開発計画を進める大元締めの役割りを果たされておるわけでありますので、これについてはどういう御見解をお持ちなのか、開発庁の方からまずお伺いをしたいと思います。
  81. 大西昭一

    ○大西政府委員 私どもといたしましては、先ほど申し上げましたように、北海道における大変重要な工業生産拠点であるというふうに考えておりますので、昨今、特定不況地域として室蘭市が大変いろいろ悩んでおられることも十分承知いたしておりますし、室蘭市当局からいまの工配法上の白地地域を何とか誘導地域にしてほしいという要望も再々私ども承っております。そういう観点から、通産省におかれましてもひとつ何とかこの際御検討願えないだろうかというふうなことで、昨年来接触を続けておるわけであります。
  82. 池端清一

    池端分科員 そこで大臣にお尋ねをしたいわけでございますけれども、実は北海道議会でも昨年の十月に全会一致で室蘭市を誘導地域に追加してほしい旨の要望決議が上がりまして、この要望書が政府並びに国会に提出されておるわけでございます。私どもの調査をいたしましたところによると、この全国三十カ所の特定不況地域のうち、十カ所が実は白地地域になっておるわけでありまして、この工業再配置促進法によるところのいろいろな税制、財政上の恩恵も受けられない、しかも先ほどの国会で成立を見ました特定不況地域中小企業対策臨時措置法、この八条の「特定不況地域における工場の新増設の促進等」というところで財政上の措置が講ぜられるようになっておりますけれども、これは誘導地域にだけしか適用されないで白地地域は何らの恩恵も受けない、何のメリットもない、こういう中身になっておるわけでございます。特定不況地域こそ工業集積度が高くて、しかるがゆえに深刻な不況に直面しておる、こういうような状況でございますので、私はこの際、いま開発庁の方からもお話がありましたけれども、工配法によるところの地域指定の見直しをぜひやるべき段階に来ている、こういうふうに思うのでありますが、通産大臣の御見解を承りたいと思います。
  83. 伊勢谷三樹郎

    ○伊勢谷政府委員 まず私から答弁させていただきます。  お尋ねの工業再配置促進法と申しますのは、この中でつくられます工業再配置計画というのは六十年度を目標にいたしまして定めたものでございます。こういう長期にわたる計画でございますので、なるほどその間、室蘭市のような社会経済情勢の変化が激しいところもあるかとは思いますが、そういう事態に即しまして頻繁に地域指定を変えるということは私は適当ではないのではないかと思います。そういう意味合いにおきまして、確かに全く見直しはしないということを申し上げるわけにはまいりませんけれども、一方におきましては短期的なことで頻繁に変えるわけにもいかぬということで、今後の重要な課題といたしまして慎重に研究させていただきたいと存じております。
  84. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま局長が申し上げたとおりでありまするが、私も四十八年ごろですか、北海道開発庁長官をいたしたことがございます。室蘭の重要度、またいま御説明になったような今日の状況は一応よく理解できます。したがって、今後の問題として慎重にひとつよく検討させていただきます。
  85. 池端清一

    池端分科員 頻繁に見直しをするということは適当ではないというお話でございますが、何も頻繁にやれということを言っておるわけではないし、いままでも頻繁に行われてきたわけでもないわけであります。昭和四十七年に法律が制定されまして、これは先ほど申し上げましたように高度成長期のただ中であります。ところが今日、状況は一変しておるわけであります。そして構造不況・と言われるような状況が出てきたり、特定不況地域というありがたくない名前をちょうだいするような地域も出てきているわけであります。そういう実態に見合って特定不況地域対策を進める一環として、私はこれがオールマイティーだとは思いませんよ、思いませんが、一つの方法としてこれは、ぜひ取り上げていくべき問題だ、こう思うわけです。  しかも大臣、申し上げておきたいのでありますが、道や地元はこの問題について再三陳情いたしておるのであります。固有名詞は申し上げませんが、当時の通産省の幹部は、この地域指定については見直しを行いたいと思う、その際、皆さん方の要望は最優先でひとつ考えていきたいという発言もあった、そういう過去の経緯というようなものもやはり十分考え合わせていただいている。しかも私は、いま室蘭のことばかり申し上げておるわけでありますけれども、この室蘭という地域考える場合、御承知かと思うのでありますが、登別、伊達というこの三市が一つの広域圏を形成している、こういうような状況もございまして、そういう三市合わせたところの工業集積度などというものもひとつ検討していただきたい、こういうふうに思うわけであります。  さらに、先ほど申し上げましたように、全国三十の特定不況地域の中で十の地域が白地地域だ、そういう状況というものもひとつ総合的に勘案せられまして、ぜひ前向きにこの問題については検討していただきたい、こう思うわけでありますが、大臣に再度の所信をお尋ねしたいと思う。
  86. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 よく承りました。今後の問題として検討いたしましょう。
  87. 池端清一

    池端分科員 前向きに十分御検討を願うというふうに私は理解をしたい、こう思うわけでございます。  そこで、大変お疲れだと思うのでありますから、これ以上お尋ねすることは差し控えたいと思いますが、実は、通告はいたしておりませんでしたが、一つだけ問題がございますので、大臣の御見解を承りたいと思うのであります。  実は、わが党の井上普方代議士が、昨日の農林水産省関係の予算分科会で、オレンジ輸入割り当ての問題につきまして、九十一社あるそうでございますが、この九十一社の社名と数量についてひとつ明らかにしていただきたいということを申し上げたのでありますが、これについては、農林水産省としては、私企業の秘密に属するからということで、その公開を拒まれた、こういう話を聞いておるわけであります。やはり実態を明確に把握するためにも、ぜひともこの九十一の社名と数量等については明らかにしていただきたいと思うのであります。これは当然通産省の管轄でございますので、大臣、その点はいかがでございましょう。
  88. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 そういうふうにお答えしたろうと思います。  これは社名と数量ということになりますと、やはり企業上の秘密に抵触するように思いますね。ちょっとぐあいが悪いのじゃないか。社名はどうなんでしょうね。ひとつよく実情を聞きまして、検討させていただきます。
  89. 池端清一

    池端分科員 もうすでにアメリカ等ではこれは明らかにされているのだそうでございますが、日本国内で明らかにされないというのは不当ではないか、こう思うのでありますけれども、その辺の事情を十分お互いに連絡し合っていただいて、ぜひともこれらの実態を明らかにしていただくように、ひとつ取り計らっていただきたいことを要望申し上げておきたいと思います。どうですか。
  90. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 承りました。
  91. 池端清一

    池端分科員 大変お疲れだと思いますので、若干時間が余りましたけれども、ここで私の質問を終わります。
  92. 森清

    ○森(清)主査代理 栗林三郎君。
  93. 栗林三郎

    ○栗林分科員 私は、むずかしい問題を取り上げてまいったのではございません。すでに前年度も、その前の年も、予算委員会の当分科会でお尋ねをした問題です。今度で同じ問題を三回取り上げるわけでございます。したがいまして、政策論は抜きにして、そのものずばりお尋ねしてみたいと思います。  それは、中小企業経営改善資金の運用、その消化実績等に関してお尋ねしてみたいと思います。なお、時間があれば、信用保証協会の業務運用等についても質問をしたいと思いますけれども、そこまで時間が持てるかどうか、時間があればお願いいたしたいと思います。  この経営改善資金の運用に関して、まずその消化実績から伺っていきましょうか。  今年度はまだ年度が若干ありますが、五十二年度はもう終わっておりますので、数字ははっきりしていると思います。五十二年度の消化実績は一体どうなっておるのか。たしか資金枠は四千七百億であったはずでございます。その実績は当然一〇〇%、足りないくらいだと思いますが、その消化実績をひとつ御報告を願いたいと思います。
  94. 左近友三郎

    左近政府委員 五十年のいわゆるマル経資金の貸し付け実績でございますが、貸し付け枠はいま先生指摘のとおり四千七百億でございます。貸し付け実績といたしましては、貸し付け件数が二十三万六千九百九十三件、金額といたしまして三千二百九十九億六千万円でございます。
  95. 栗林三郎

    ○栗林分科員 そうしますと、その消化率は幾らになりますか。
  96. 左近友三郎

    左近政府委員 七〇・二%でございます。
  97. 栗林三郎

    ○栗林分科員 私は、保証人も要らないし担保も取らない、そういうような資金でございますから、中小の皆さんは、中小と言いましても、地方の小都市に業務を営んでおられる、こういう方は中小とは申しかねると思うのですよ。最も零細商工業者と申し上げた方がいいのじゃないでしょうか。そういうような方々が、平俗な言葉で言いますと、これはのどから手が出るほど欲しがっているお金だと思うのです。したがって、このお金を希望しない者なんというのは私はいないと思うのですよ、大企業ならばいざ知らず。それが七〇%にとどまっているということは不思議でならないのです。これは過去二年にわたって、二回にわたって、同じ質問を私繰り返しているわけです。それならば、今年度はまだ年度末になりませんけれども、第三・四半期までの数字はあろうかと思います。その第三・四半期までの、金額はよろしゅうございます、消化率だけで結構です。それとあわせて、年度末の予想される見込みの数字をお答え願いたいと思います。
  98. 左近友三郎

    左近政府委員 第三・四半期までの消化率でございますが、これは五七・八%になっております。ちなみに、昨年つまり年度全体で七〇・二%という消化率のときは、昨年は五四・二%でございますので、昨年よりは消化率は高まっておるということでございます。  それから、五十三年度全体の貸し付け見込みとしてどのくらいの消化率になるだろうかということでございます。ことしは、実は貸し付け枠が五千百億円というふうになりましたので、元も大きくなりましたが、しかし、先ほど申しましたように、消化率は昨年よりは高まっておりますので、われわれの見通しといたしましては、大体七五%程度の消化は見込めるのではないかというふうに考えております。
  99. 栗林三郎

    ○栗林分科員 ただいまお答えいただいたわけですけれども、この理由はいまお尋ねしますけれども、なぜ一体中小の方々がこの資金をいやがるのか。これはいやがっているとしか見えないのですよ。本来は強い希望ある資金だと思うのです。私も地方における小さい金融機関に長い間関係した経験がございます。そういう経験からいたしますと、零細な商工業者の皆さんは、景気のよいときもお金が足りない、景気が悪いときにはなおさら金繰りが困る。ですから好況のときも不況のときも金が足りない金が足りないという金の悩みで明け暮れしているのが中小企業の実態でございます。それでありますから、たしか四十八年度から始められた制度と私は伺っておりますけれども、担保も要らない、保証人も要らない、そして経営改善に一生懸命がんばる者に対しては政府の資金を貸し付けよう、こういう制度でありますから、私どもも大変喜んでおるわけでございますし、四百万と言われておる中小の方々でしょう、この方々からは当然、何遍も言うようですが、もうのどから手が出るほど欲しがられる、希望される資金だと思うのですよ。しかも無担保、保証人が要らないというだけではなくて、利息もかなり安い率でしょう。利息はいま六・六%ですか。これにも少し問題がありますけれども、しかし六・六%という低利、こういうような条件で融資をする制度でございますから、これはもっともっと需要がなければならないと思うのです。それがなぜこのように消化が悪いのか、せっかくの多額の資金が余ってしまうのか。長官は七五%くらいの実績はおさめられるであろう、こういう御答弁でしたけれども、私はちょっとむずかしいと思います。しかし七〇%の消化はできると思います。しかしそれにしても三〇%資金が余るのです。もったいないではございませんか。なぜこれが中小企業の皆さんに喜ばれないのか、なぜ完全消化ができないのか。ひとつその理由について簡単にお答え願いたいと思うわけです。
  100. 左近友三郎

    左近政府委員 いま御指摘のとおり、消化率が七〇%台ということで、はなはだ不振でございます。ただこれは、一つは貸付枠を中小企業の御要望にこたえる、ことに小規模企業者の御要望にこたえるということで逐年増加してまいっておりますので、貸し付けの比率は悪いわけでございますが、貸付実績の金額は年々向上しておるわけです。ですから、貸し付けの実績の向上以上にわれわれの方の枠が大きくなったという点もないわけではないわけでございます。ただ、ここ一、二年の消化実績が低いのは、実は現在のような不況で資金需要がやはり停滞をしておるという点もございます。といいますのは、国民金融公庫でやはり貸し付けておりますが、国民金融公庫の窓口での一般の普通貸し付けというものにつきましては、たとえば五十三年十二月末現在で言いますと、前年同期比の伸び率がわずか三%でございます。ところが、このマル経資金につきましては、前年同期比で一五・七%とふえております。したがいまして、マル経資金が特にきらわれて減っておるというわけではなくて、一般の資金需要が低いというところに原因が多いのではないか。しかも国民金融公庫の一般貸し付けよりは多いということでございます。  それから資金の内容を見ますと、やはり景気が不況でございますので、運転資金の需要が非常に多いということで、この点は非常にふえております。ただ問題は、設備資金の需要が減っておるということでございまして、これは単にマル経資金だけではなくて、いま申しました国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工中金、いずれもそうでございますが、この辺がやはり大きく影響されておるというふうに考えておるわけでございます。
  101. 栗林三郎

    ○栗林分科員 ただいまの長官の御答弁、私はそれはよくわかるのです。しかし過去二回の私の質問に対して長官から返ってきた言葉はみな同じだ。やはり景気景気、景気に未消化の原因を転嫁している。景気ばかり悪い者になっていると思うのです。一般論としては、景気が停滞しておる現状でありますから資金需要が停滞しておる、弱勢であるということは、私も素人でありますがよく理解できるわけです。しかし先ほども申し上げましたように、中小の皆さんは、景気がよい時代よりもむしろ景気の悪い時代に資金需要が強いものです。これは私の経験から申し上げます。いま長官は国融を例にとって申されましたが、ここで国融とマル経の内容比較論をやってしまうと時間がなくなりますので、私も調べてまいりました数字を申し上げてみたいと思うのですよ。  同じ不況下にあってやはり庶民金融に奮闘されておる国融、この国民金融公庫の五十二年度の決算を私は調べてまいりました。この国民金融公庫の五十二年度の決算実績は、当初の資金枠は一兆二千九百億でした。これは完全に消化してしまったのです。そこで資金が足りないというので資金が追加された。五十二年度約三千億追加されました。したがって総枠一兆五千二百十二億、この資金量が九八・九%消化されておるわけであります。これは追加されなければもう一〇〇%を超えているのですよ。足りないというので追加された。三千億も追加されているのですね。ですから一兆五千億、これがほとんど完全消化、九八・九%貸し付けられておる。そうすると、国民金融公庫の関係する業者には不景気がないということになると思うのだな。私は日本国じゅうどこでも不景気風は吹いていると思うのですよ。したがって国融の場合はそのような消化実績を示しておる。それならば五十三年度はどうかといいますと、第三・四半期までの数字を私は聞いてまいりました。現時点で八一%の消化率と聞いております。しかし前年度同期に比較しますとむしろよけい消化されておる。それでありますから、年度末、いまの資金量は一兆五千五百億と聞いておりますが、これは一〇〇%、ことしは完全消化ができるでしょう、こういうお答えでございました。これは分科会はきょうで終わるのだからというのでいいかげんな御返事ではないと私は思います。国融の方は私は委員会を通じて確かめたのではありませんが、しかし正式な手続で資料をいただいたのでございますから、ごまかしはなかろう。そうしていままでの実績から見ますと、国融の方では一〇〇%消化は間違いない。私もそう確信するのですよ。してみますと、一般論としては不況が資金需要に影響しておるということは私も理解できます。しかし、この種の制度の運用のいかんによっては、五千百億程度の資金ならば、私は足りなくなる、完全消化はできると思うのです。したがって、何か未消化の原因があろうかと私は思うのです。その原因をひとつ探求してもらいたい、調べてもらいたい、そしてそこから改善してもらいたいということをしばしば要望してまいったわけであります。  まず、指導要綱がございます。これは政府資金ですから、われわれの税金をお貸しするわけですから、そんなにルーズなものであってはならない、そのことを十分理解して私申し上げるつもりでございます。しかし、中小企業の皆さんですから、石橋をたたいて指導するという状態では、私は指導にはならないと思う。弱いものはやめなさい、滅びなさい、強いものだけが生きなさいという弱肉強食の資本主義の典型的なやり方になってしまうと思うのです。ですから、中小企業の皆さんは弱いのですから、弱い中小企業者を指導し、経営を改善させて一本立ちにさせるためには、多少の危険なり困難というものは覚悟しなければならないものではないだろうか、このように思っておるものでございます。  この指導要綱を見ますと、これは若干改めたと伺っておりますが、指導員が六カ月経営改善に関する指導をして、その結果を見てから推薦が決まる、要綱にそう書いてある。これはまだ改まっていません。六カ月たって初めて推薦が決まる。それで、その金が入るかと思えば、そうでないのですね。実際の窓口は国融でございますから、今度は国融へ行く。国融は、貸す以上は国融の責任で貸すわけでございますから、不良貸しはできぬというのでまた調査をする。二重調査でしょう。そうしているうちにまた時がたつ。こういうことでは必要なときにすぐにその資金を入手することができないと思う。単なる融資と違いますから、経営改善という大きな目的を持つ資金でございますから、私はすぐに出せと言うのではございません。しかし、六カ月とは余りにも長過ぎるのではないでしょうか。実績によっては、業者がまじめで非常によく勉強する、がんばる、奮闘する、信用がある、そういうことを認めることができる場合は、必ずしも六カ月にとらわれないで、二カ月か三カ月ぐらいで早期に推薦手続をしてやる、また国融に対しても、こちらで推薦したのだから、できる限り早く調査を完了してほしい、こういうようにしていただくならば、原則は六カ月でありましても、実務がそのように改善されますと、中小の方々にとってはかなり助かるのではないかと私は思うのです。書いたものは改めておらないが、必ずしも六カ月にとらわれません、こういう御答弁は昨年もいただいておるのです。そこで、これらについての指導、実務はどうなっていますか、ひとつお答え願いたいと思います。
  102. 左近友三郎

    左近政府委員 いま先生の仰せられたことはまことにごもっともだと思います。私の方も、指導要綱は原則として六カ月ということになっております。先ほど先生もおっしゃいましたように、これは国の資金でございますし、また指導というものを前提に置いた貸し付けでございますから、やはり原則は六カ月ということでいたしたいと思います。しかしながら、こういう事態でございます。ことに、おっしゃるようなまじめに努力をしておる中小企業者がこういう手続だけで非常に遅延するということははなはだ申しわけないことでもございますから、これについては、先年も前長官がお答えしたと思いますが、運用でうまくやろうということで考えております。ことに、最近のように景気変動で緊急に金が要るという運転資金などがございますから、そういうときには指導を濃密にやって、短期間で推薦をするということをやらしております。しかしながら、これが完全に全部行き渡っておるかどうかということについては、やはり指導でございますから、末端からごらんになりますとまだまだ問題の点があろうかと思います。したがいまして、われわれは、これは十分努力をいたしまして、こういう点でマル経資金が十分活用されるように今後も一層努力いたしたいと思います。
  103. 栗林三郎

    ○栗林分科員 もう一つ、未消化の原因に、今度は利用者側からの注文がございます。これは私、ずいぶん歩きまして、利用される商人の皆さんから訴えられたことでございます。なるほど、そうかなと思いまして、それならばひとつ、発言する機会があったら皆さんの声を伝えましょう、こう約束したことでございますが、経営指導でございますから、商工会あるいは商工会議所の経営指導員がまじめに熱心に指導されるわけです。そのまじめな奮闘ぶり、指導ぶりに対しては、私どもしょっちゅう見ていますから感謝しています。ところが、その指導が行き過ぎますと、企業内部に介入することになります。何ぼ改善指導でありましても、商工会の指導員に企業内部をすみからすみまで調べられるということになりますと、検察庁ならばあきらめるかもしれぬけれども、やはり指導でなくて介入という感を深くするのじゃないでしょうか。私の事業だと思っておったら、これならおれの事業じゃないじゃないか、これなら商工会の事業じゃないか、指導員の事業じゃないか、こう反発してほしいのですよ。ほしいのだけれども、あそこまで指導されるならとてもだめだと言ってあきらめる方もかなりあるやに私は聞いております。またそういうことを訴えられております。これは指導員がいけないのではない。指導員は熱心に指導される。そのことを私どもは善意にとっていいと思いますが、それが行き過ぎるとマイナスになる場合もありましょうから、こうした中小企業者の声も率直に聞かれて、経営指導員に対して、もっと実務的な教育、指導を本庁の方でやっていただきたい。指導員に対する教育は今後も考えます、やります、こういうお答えは昨年河本さんからあったのですよ。果たしてどんな教育、指導をなさったのでしょうか、ひとつお知らせ願いたいと思います。
  104. 左近友三郎

    左近政府委員 この経営指導のやり方というのは、まことに御指摘のとおりでございまして、指導ということで、非常に行き届いた指導をやろうという熱意の余り、確かに、企業自身のいわばプライバシーと申しますかそういうものにまで立ち入るということになりますと、なかなかむずかしい問題も出てくるということでございます。したがいまして、こういう点は指導の要領ということで商工会、商工会議所を通じて絶えずやっておるわけでございますが、こういう点の末端の方々の本当の声というものをわれわれの方も伺いまして、絶えず商工会、商工会議所に流しておるところでございますので、今後もそういう点を十分実施してまいりたいと考えております。
  105. 栗林三郎

    ○栗林分科員 皆さん方から資料をいただいておりますが、その資料によりますと、全国の消化率、各府県ごとの消化率があります。これは直接名前を出すといろいろ問題もあろうかと思います。また私どもそういう気持ちで申し上げるのではないので、町村名は私はここで申し上げません。全国七〇%前後の消化率だが、ある町は昨年も二〇%台、今年もいままでは二八%、恐らく年度末三〇%には達しないと思いますよ。そういうような商工会もあるわけであります。こういう地域中小企業は、資金繰りが非常に楽だ、金がある、そういうのではないはずですね。しかし、こういうような実態でございます。これはことしだけじゃないのです。去年もおととしもそうなんです。したがって、そういうような商工会の指導下にある地域業者は、まことに不幸なことだと思います。それですから、この業務を商工会から離せというのではありません。これは決まった事業でありますから、ひとつ何とかよい方向へ発展してもらいたいということを希望するものでありますが、毎年毎年二〇%台の業績しか残さない地区に対しては、これは指導能力がないということ、さらに中小企業に対する積極的な意欲がないということ、そういう意欲のないところ、能力のないところに二億、三億という資金をおろしたところで、これは生きる道理がないのであります。したがって、このような極端に悪い、実績の上がらない地区の推薦窓口を変えるべきではないかと思うのであります。むしろ、いまは市町村自治体で零細金融の行政をやって成功しておるところがずいぶんあるのであります。こういうような成績の上がらないところは、むしろそういう自治体に推薦窓口を依頼した方がもっともっと成績が上がるのではないか、こう思うのであります。  そういうような極端に悪い地区に対しては、どういうような措置をとられますか、このままにして放任いたしますか、進んで窓口を変えるという勇断の措置に出ますか。ひとつ大臣からでも御答弁いただきましょうかな、制度に関する部分がございますので。
  106. 左近友三郎

    左近政府委員 この消化実績に地区別のばらつきがあるということは事実でございます。ただ、そのばらつきの中で、一般的に申し上げますと、その地区、県なり市なりが特別の制度融資を行っておる、それが生業資金というような、非常に零細企業の方々には利用しやすい資金がある場合は、実は経営指導自身もそちらの方を推薦をしておるというケースもございます。したがいまして、地元の融資はちゃんと進んでおるのだけれども、むしろマル経資金よりも市や県の制度融資の方が行き渡っておるというケースもございます。こういう場合には、実際上、中小企業の方々の資金需要は賄われておるわけでございますので、問題はそれほどないかと思います。ただ、極端に悪い地域では、また何らかの特別の理由があろうかと思いますので、この点についてはケース・バイ・ケースで地域によってよく調べまして、この対策を講じたいと思います。  ただ、窓口の問題は、実はこの制度は、商工会、商工会議所による経営指導というのが中心でございまして、その経営指導を補完するための制度でございますので、窓口はこのままにいたしたいと思っておりますが、ただ、やり方についてはよく調べまして、いまのような極端な事例は絶滅したいというふうにわれわれ考えます。
  107. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いまの中小企業庁長官の答弁で尽きておると思いますが、まじめな御質問ですから私もよく承っておりましたが、確かに六カ月たたないとというあたりは検討の余地がありますね。これは十分検討させるように、ひとつよくいたしたいと思います。  それから、いまの窓口の問題は、これは商工会とか商工会議所を中心に、経営指導もしながら貸していこうというところから始まった経緯もありまするので、むしろケース・バイ・ケース、いま長官が言いましたように、どういうところに問題があるのか、それをはっきりさせることの方が重要なように思います。市町村名は、ここでは御発言を控えられましたが、どうぞ企業庁長官には率直におっしゃっていただきまして、その問題を適確に解決するような努力を払っていきたいというふうに思います。
  108. 栗林三郎

    ○栗林分科員 最後の一問、お許しくださいませ。  私、質問しなかったが、当局も改善に努力されておる事実は十分わかっています。申し上げますと、今年度も貸付限度を少し上げてくれたようでございます。ありがとうございました。それから期間も、三年六カ月が今度四年になった。わずかでも、中小業者にとっては大変プラスになる施策だ、こう思います。それからまた運転資金は、これはまず据え置かれてしまいましたが、しかし期間が、いままでの二年六カ月から——延びましたか。これは同じ期間で、そのうち据え置きが認められたと言いましたね。わずか三カ月でありましても、据え置きが認められたということは、こういう零細業者にとっては大変助けになることだと思います。  ですから、そういうような条件改善は、私も大変ありがたいと思います。これは業者にかわって、私も厚くお礼申し上げますが、ここまで改善するなら、なぜ利率に手をつけなかったかと思うのです。利率は現在六・六%、いままでは六・八%だ。その六・八%時代の市況の金利はどうであったかということになる。一体、現在の市況の金利、銀行金利はどうか。この六・八%時代の全銀の約定は、たしか六・八%。これは昨年の質疑の中で明らかになっている。そのとき、うちの方も六・八%だった。ところが、一月末の全銀の約定が出ておりますが、この約定金利は、全国銀行の平均で五・九一七%と出ています。四十数カ月間、毎月毎月金利が下がっておる。一遍も上がったことはありません。そうして今日、六・八%から五・九一七まで下がっておる。もう少し下がると言われております。いま五・九一七%の銀行利子の時代に、この特殊な制度の金利が六・六%だ。してみると、いまのような金利が低下した場合、低金利の場合は、もっとこの利率を下げてもよさそうなものだ。ですから、六・六%からもう少し利率を下げる御意思がないかどうか、最後にそれをお尋ねして、質疑を終わりたいと思います。
  109. 左近友三郎

    左近政府委員 金利の問題でございますが、これはわれわれとしてもなるべく低い金利ということで努力をしておるわけでございますが、貸し付けの原資になります政府資金その他の問題もございますので、いまのところ、われわれも非常に努力はしておりますが、六・六%というのが限度であろうかと思いますので、今後も努力はいたしますが、いまのところやはりこの金利でお願いをしたいというふうに考えておるわけでございます。
  110. 栗林三郎

    ○栗林分科員 どうもありがとうございました。
  111. 森清

    ○森(清)主査代理 この際、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  112. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  通商産業省所管について質疑を続行いたします。  質疑申し出があります。順次これを許します。上田卓三君。
  113. 上田卓三

    上田分科員 まず、通産大臣にお聞きいたします。  先般、日米間におきましていわゆる革の輸入枠の拡大が決まったようでございます。そのことに関連いたしまして、皮革産業といいますか、あるいはその中でも鞣製関係についての業界の今後の指導、あるいは通産省考え方というものをお聞かせいただきたいと思うわけでございますが、その前に、きょうは総理府の同和対策室長もお見えでございますので、この皮革産業というものが歴史的に見て未解放部落の重要な産業であったし、現在もそうである、いわゆる同和対策事業特別措置法に言われるところの同和地区の重要産業である、こういうふうにわれわれは思っておるわけでございますが、その点の認識について、通産大臣からまずお聞かせいただきたい、このように思います。
  114. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 皮革産業は、上田さんが言われますように、伝統的な性格がきわめて強うございます。しかもそのほとんどが小規模零細企業、特に生産性の低いという実情にあることは私十分認識しておるつもりであります。このため通産省としましても、同和対策事業特別措置法、これをもととしまして、対象地域における中小企業の振興を図るために、その企業の合理化あるいは設備の近代化、技術の向上、こういった面に今日でも努力をしておるところでありまするが、御指摘の皮革産業の場合は、非常に重要な伝統的な産業であるというとらえ方をいたしております。
  115. 上田卓三

    上田分科員 いま大臣は、皮革産業が同和地区の重要な伝統的な産業であるということをお認めいただいたわけでございます。  そこで、はっきり申し上げまして明治以前、いわゆる幕藩体制のもとでは、牛馬の処理あるいはその処理をした後の皮革については同和地区の伝統産業として、そのことが、また逆に部落差別の対象といいますか、差別を受ける原因にもなってきたわけでありますが、言うまでなく、また差別を受ける代償としての部落の独占的な産業であったということが言えるのではなかろうか、こういうように思うわけであります。ところが、明治四年の太政官布告によりますところの解放令によって、四民平等ということで旧身分が一切廃止されるという状況になったわけであります。本当に身分解放が明治政府によって着々と実施されておったならば、今日の部落問題、いわゆる同和対策事業特別措置法という法律すら必要がないわけでございます。ところが御存じのように、明治政府がやったのは全く形だけの解放令であって、部落の方々のそういう産業あるいは雇用あるいは地域の改善などが何らされることなく、逆に皮革産業などは、あるいは食国産業と言われるものはもっと以後になって出てきたわけでございますが、大資本がこれに目をつけて、そうして部落からこの産業を奪い取っていく、こういう歴史が繰り返されてまいったわけでございます。  そういう点で、今日の原皮の自由化の問題あるいは一定の制限をつけながらの革の輸入の拡大あるいは皮革製品が自由化ほどではないにしても大量に輸入されていくという状況の中で、本当に同和地区産業、伝統産業である皮革産業が非常に壊滅的な状況に追いやられ、今日ではそういう公害問題も含めて極度に苦しい、経営状況自体も劣悪な状況にあるわけでありますが、そういう部落産業と言われ、伝統産業と言われる皮革産業、とりわけその中でも鞍製業についての具体的なデータがありましたら、具体的に現状はどうなっておるのかということをひとつ御報告願いたい、このように思います。
  116. 栗原昭平

    栗原政府委員 先ほど大臣からお答え申し上げましたように、鞍製業でございますが、非常に零細でございます。事業所数は千三百八十六、従業者数が一万三千百二十三ということで、十人程度という非常に零細な企業が非常に多うございます。そういった状況のもとに生産性も、これは各国比較という正確なデータはございませんけれども、きわめて低いという状況にございまして、私どもといたしましても、わが国製革業の国際競争力が劣っているという現状を踏まえまして、これからこの近代化あるいは高度化といった点について十分努力してまいりたい、かように考えております。
  117. 上田卓三

    上田分科員 ただいまお答えのように、私も資料を持っておるわけでありますが、たとえば一九七五年の工業統計によりますと、いわゆる事業所総数が千三百二十九、そのうち従業員十九人以下の小規模事業が千二百四十、全体の九三%を占めておるわけでありまして、出荷額では全体の五八%、その中でもいまおっしゃられたように、従業員九人以下の零細事業所で見ると千五十八で全体の七九%、出荷額でも三六%、こういう状況で本当に零細な業者が多いわけでありまして、それらが同和地区に密集的に存在しておる、こういうことになっておるわけであります。  そこで大臣に、その次にお聞かせいただきたいわけでありますが、これらの鞣製産業に対して、いわゆる同和対策事業の一環としてどういう施策が過去なされてきたのか、そのことについてお聞かせいただきたいと思います。
  118. 宗像善俊

    ○宗像政府委員 先ほど大臣からお答え申しましたとおりに、通産省の同和対策は、同和対策事業特別措置法第六条に規定されておりますとおり、対象地域において各般の中小企業の振興策を特段の配慮をもって実施することを考えておりまして、経営の合理化、設備の近代化、技術の向上等、各種の措置を講じております。  具体的な中小企業施策といたしましては、まず経営の合理化のためには経営改善普及事業あるいは指導事業、設備の近代化のためには都道府県の設備近代化資金の貸し付け、都道府県貸与機関からの設備の貸与等、技術の向上につきましては巡回指導、普及講習会等、各般の施策を講じておるところでございます。
  119. 上田卓三

    上田分科員 ところが、あなたがいまおっしゃったものは全く表面的であって、実際の部落のそういう鞣製業者の中身というものは、それで救われておるというように理解できますか。逆に言うならば、その施策によって業者として非常に展望の持てるような状況にあるのか、あるいは依然として部落差別の対象として非常に惨めな、ただ単に経済的な面だけじゃないですよ、部落全体に及ぼす就職や結婚や地域の改善等も含めて、どういう状況にあるかということを説明してもらいたいと思うのです。
  120. 宗像善俊

    ○宗像政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、非常に伝統的な性格を持っておりまして、同和地区の産業の方が、皮革産業も含めまして同和地区全般的に非常に苦しい状況にあられるということは同和対策審議会の答申にもるる述べられておるところでありまして、われわれとしても十分に承知しておるところでございます。そのために、われわれといたしましては、一般の施策とは異なった特別な施策を講じて、何とかしてこういう歴史的、社会的な問題の解決の一助になるように努力してまいっている所存でございます。昨今の石油ショック以降の長期の不況、さらに円高が加わりまして、輸出産業全般が非常に苦しい目に遭っておりますが、その中において同和地区産業の皆様方が非常なお苦しみに遭っていらっしゃるということはわれわれも認識しており、その認識に基づいて各種の施策を実施しておるところでございます。
  121. 上田卓三

    上田分科員 いずれにしましても、大資本の進出によって、本当にわずかな大企業が鞣製産業といいますか、その大部分を占める、そしてわずかなパーセントが数多くの零細な業者によって仕事がなされている、こういう状況があるわけでございます。そういう意味では、大資本の圧迫で、あるいは通産省の行政のなさ、そういうことから部落が非常に惨めな状況に置かれ、そのもとでの軽製産業が本当に差別の対象として今日置かれておるわけであります。  そこで、この原皮の輸入によっても多くの鞣製業者の打撃というものもあるわけでありますが、とりわけそういう革の輸入によって、大資本の場合はさほどの打撃はないにしても、零細な企業、部落の企業にとっては本当に死活の問題になっておる。過去においてすでにそういう壊滅的な打撃を受け、さらに今回の二千二百五十万スクエアフィートの輸入枠の拡大によって、本当にこれからもっと決定的な打撃を受けるのではないか、こういうように考えておるわけでありますが、その点、革の輸入に関係して、通産省の行政指導というのですか、そういうものについてどのようにお考えなのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  122. 栗原昭平

    栗原政府委員 今次の日米交渉におきましては、自由化につきましては、わが方としては全くコミットいたしておりません。米国からの自由化要求を退けたというふうに考えております。そういう意味で、いまお話しのように、今回の妥結といたしましては、枠の拡大という形で処理をすることに相なったわけでございます。ただ、この枠の拡大に当たりましても、私どもといたしましては、先ほど来のお話のような困難な事情というものも踏まえまして、たとえばその枠の中で輸出自動車用のシートレザー、これは保税工場で加工するものでございまして、実質的に影響がないという種類のものでございますが、こういったものをその中に含め、あるいは革の中でも中間製品でございますブルーハイドを加えるというよう配慮もいたしておりまして、私どもといたしましては極力業界に影響のないような努力をいたしたつもりでございます。そういった意味におきまして、大きな影響が直ちに出てくるようなことにはならないような形に相なっておるというふうに考えております。
  123. 上田卓三

    上田分科員 現在一千万スクエアフィートの輸入がなされておるわけでございまして、それにさらに二千二百五十万スクエアフィートが増大するということになるわけでございますけれども、過去の輸入によってどれだけの被害を受けてきたのか、そのことをどのように深刻に考えておるのかということを私はいま聞きたかったのです。大したことはないのだ、だから今後さらに枠が拡大してもさほど影響はないのだというようにお考えなのか、これはもう限度だ、これ以上拡大すべきでない、こういうように考えておられるのか、いわゆる伝統産業としての皮革産業、なかんずく鞣製産業というものをもっと育成し、発展させていかなければならぬという、同和対策の一環としてそういう位置づけをするならば、そことの関係で輸入の枠の拡大というものが一体どうなるのかということをひとつもう少しわかりやすく御説明いただきたいと思うのです。
  124. 栗原昭平

    栗原政府委員 私どもといたしましては、この革の産業が特に同和地区に集中しておるという実情に基づきまして、アメリカに対しましても十分この革の問題点、困難性といったものを周知徹底させるように努力いたしてきたつもりでございます。そういったことも踏まえまして、少なくとも自由化というような事態は避け得たものだと私も考えております。  一部、枠の拡大という点は、いまの困難な事情におきまして、私どもとしましては、枠の拡大自体につきましても極力この影響がないような形での拡大ということを考えまして、したがいまして交渉も非常に難航いたしたということでございます。
  125. 上田卓三

    上田分科員 答えになっていないと思うのですね。結論的に言うならば、革の輸入によって零細な鞣製業者が本当に壊滅的な打撃を受けておるということに尽きるわけでありまして、もう枠の拡大に反対するだけじゃなしに、現在あるところの枠そのものもわれわれとしては撤廃してもらいたい、こういうことを強く訴えたいわけでありますが、しかし、現実に日米交渉によってそれらが決定されたという一つの前提に立って考えるならば、たとえば漁業交渉とかあるいは繊維交渉などにも見られるように、そういう輸入によって打撃を受ける国内の業者に対してどのような補償をするのかということで一定の補償というものがなされておるわけでありますが、今回のそういう革の輸入に関して、鞣製業者に対するそういう損害補償を一体どのように考えておられるのか、お答えいただきたいと思うのです。
  126. 栗原昭平

    栗原政府委員 今次の交渉におきましては、先ほども申し上げましたとおり、極力皮革産業に影響がないように努力をいたしたつもりでございます。その内容といたしましては、もちろん自由化はいたさない、あるいは枠の拡大につきましても、輸出用シートレザーにつきまして、あるいはブルーハイド等も含めたといったようなことでございまして、私どもとしては、大きな影響が出てくるようなことはないというように考えてはおりますけれども、仮にまた将来、影響が出てくるというようなことがあり得るといたしましても、ただいまこの時点におきまして、どういった内容あるいはどういった程度の影響が具体的に出てくるかを予測することは非常に困難でございますし、これから輸入の状況がどうなるのか、あるいは国内の需給状況がどうなるのか等々、客観的ないろいろの情勢も踏まえまして、その時点におきまして判断をしてまいりたい、かように考えております。
  127. 上田卓三

    上田分科員 これは大臣からお答えいただきたいと思うのですが、この革の輸入によって、あるいは輸入の拡大によって打撃を受けないようにと言うのだけれども、現実に、すでに現在この輸入によって壊滅的な打撃を受けているのです。その認識が足らぬのですね。現実に受けておる。さらに拡大すれば、本当に全滅してしまうのだという状況にあるのですよ。大臣は少なからず部落問題については認識を持っておられる方だと私は思っておりますし、昨年秋の臨時国会での特別措置法のいわゆる三年延長といいますか、その際にも一定の行動をとられたことを私自身よく存じておるわけでありますが、そういう点で、本当に輸入によって決定的な打撃を受けているというようにわれわれは、あるいは業者は受けとめておるわけであります。通産省はまだまだいけるのだというような認識にあるのかどうか、その点、ひとつ大臣お答えいただきたいと思います。
  128. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 上田さんが指摘される点は、私、本当に重要に受けとめているのです。これは局長も申しておりまするように、自由化をECからも迫られるわ、アメリカからも迫られるというわけで、それは断じてだめということで、やむを得ず枠の拡大ということで妥協をしたわけです。御承知のように国際間の協調体制というものは、やはり一つの妥協ですね。その妥協のしわがいまの零細な業者の上に降りかかる、これはよくわかります。したがって、五十四年度にも三千四十六万七千円の予算がありまするから、今後実態調査をして、この調査も業界の主体性というものを尊重しながら、将来どういう施策をどういうふうに改めたらいいかということなど、ひとつ前向きに十分取り組んでいきたい。こんなことで私も十分とは思っておりませんので、こういった予算措置などをもっと充実させることで、これは御趣旨の存するところをよく承りながら、上田さんとも御相談したいと思うのです。そうして今後の体質改善といいますか、構造改善ができるように、前向きでひとつ努力いたします。
  129. 上田卓三

    上田分科員 具体的には、輸入された革が一体どのようなルートでどこへ流れていっておるのかという問題が一つあるわけです。私の存じておる状況では、いわゆる大手商社が割り当てを受けておる。そういう意味では、通産省が去年の八月ですか、全国の鞣製業者を包括的にまとめて助成金を出してということを聞いておるわけでございますが、しかしそれに入り切らないというのですか、あるいはそういう意味では、同和地区の鞣製業者だけの団結によってそういう一定の輸入枠を、現実に被害を受けている方々に——もともと輸入に反対しているわけでありますけれども、日米交渉の中で、国際状況わが国の置かれたそういう立場から見て、一定の枠をつけて輸入をしているということであるならば、その前提に立つならば、最も被害を受ける同和地区産業の鞣製業者、そういう零細業者にその枠の配分というのですか、そういうものがあってしかるべきだ、本当に一部大手商社の利権あさりにこういうものが使われているとするならば、大きなゆゆしき問題だというように私は考えておるわけであります。そういう点で、私はここで、どこのどういう商社にどういう枠が与えられておるのか、枠の中身を聞きたいわけでありますが、それは別途お聞かせいただきたいというように思っております。  しかし、言えることは、こういう部落の自主的な運動団体といいますか、あるいは業者団体といいますか、そういうものと、今後通産省はこの枠の配分の中身について話し合いをする気持ちがあるのかないのか。先ほど通産大臣から一般論的に若干お答えいただいたと思うのですけれども、いま問題になっているこの革の輸入に対して、われわれの言っておるところの同和地区産業の鞣製業者とそういう一定の話し合いを持っていくという構えがあるのかないのか、そのことを大臣からお聞かせをいただきたいと思います。
  130. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いまお話がありましたが、これは私もよく注目をしてまいりましょう。ただ、従来、皮革輸入につきましては、私報告を受けておりまするのには、枠の使い残しがずいぶんある。そうすると、どうせこれは零細な業者組合をつくるとか、企業協同組合をつくるとか、あるいは新たな商社でもつくって、さてという相談になりますね。そのうまみが一体あるだろうか。輸入枠が従来でも余っておるという状況ならば、ちょっとうまみがない傾向が強いのではないか。その辺は今後の問題として、新たなあなたの問題提起としてひとつ十分検討することにいたしましょう。
  131. 上田卓三

    上田分科員 うまみがあるかないかというよりも、現実にそういう被害を受ける業者の方々と通産省が話し合いをして事を決めていくということでないと、被害を受けない、全然関係のないそういう方々の意見を聞いて、通産省がこのことを進めていくということに対して、われわれは異議を持っておるわけでありますから、そういう点で、あるなしにかかわらず、われわれと今後そういう話をして、最大限被害のないように、被害があるとするならばその見返りを、どういう形で穴埋めするのかということについて話し合いをしていただくということを明確に大臣からお答えいただきまして、私の質問を終わりたいと思うのです。
  132. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 大変熱心な御主張です。よくわかりました。これは新たな問題提起ということで十分検討いたしましょう。
  133. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて上田卓三君の質疑は終了いたしました。  安島友義君。
  134. 安島友義

    安島分科員 通商産業政策とのかかわりについて、まず初めに通産大臣にお伺いしたいのですが、いまいろいろ問題になっております電電公社の機材調達の門戸開放に関してであります。  まず私は、アメリカの真のねらいは何かということで第一点御質問いたします。  いわゆる多角的貿易交渉、東京ラウンドを円滑に調印に持ち込むための妥協案として、電電公社の調達の門戸開放が特に米国から強く要求されているわけですが、この問題を考える場合には、米国、アメリカとの貿易における対日赤字が年間百十六億ドルと言われているわけです。この赤字要因につきましては、単なる日本側の努力だけで問題が解決するとは思いませんが、それはさておきまして、年間百十六億ドルというこの膨大な額と相対的に見ますと、仮定の話として電電公社の年間発注高約六千億と言われておりますが、この一〇%の門戸開放が余儀なくされたとしても、これはこの赤字幅に比較しますというと、言うなればマスコミで報道されておりますように大海の一滴にすぎない。ところが、この貿易不均衡という問題から見ると、規模は小さいかもしれませんが、国内においては通信事業の分野に非常に多大の影響が予想されるわけでございます。  したがって、今度のこの電電公社の資材調達に対する門戸開放のアメリカの真のねらいは一体何なのかということをやはりはっきりとこれは見通しをつけることが必要ではないか、これを突破口として次のより大きな要求への足がかりとするようになるのではないかと私は考えるわけです。したがいまして、安易な政治的妥協が将来に大きな禍根を残すと思いますが、どう考えておられるか。特に、去る二月二十二日の衆議院予算委員会でわが党の安井委員の質問に対して園田外相は、政府の方針はすでに門戸開放やむなしというふうに固まっているような発言をしておりますが、政府部内においては、どの程度までこの問題に対して煮詰まっておるのか、そういう問題とあわせて通産大臣所見をまずお伺いしたいと思います。
  135. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ごろ関係閣僚の会議をやりました。これは外務、大蔵、通産、郵政、内閣官房、経済企画庁、こういった大臣ですね。直接の目的は、この政府調達コードの折衝でアメリカに行っておりました牛場代表それから安川代表からこの話を聞く。アメリカの情勢は一体どんなふうか。これはショーンズ報告にも見られますように、日本は最も市場閉鎖的な傾向のモデル的なものとして電電公社があるのではないかというあの報告ですね、ああいう雰囲気が議員の間に非常に高まっておる。アメリカは民営という立場にありますが、それでも二〇%程度は自由競争にゆだねている。したがって、日本においても全然門戸を開かないといいますか、自由競争にゆだねないなどということは、いまやもうわれわれ代表としてはできにくくなっております。こういうあらまし報告を受けたわけであります。  そこで、それぞれがいろいろな議論をしたわけでありまして、私ばかりでなく他の閣僚も、とにかく議員を中心に非常な反発が強まっておる。金額の問題よりもむしろ閉鎖的なモデルであるなどという言い方は、やはりこれは一つの目標にされておるという形もある。したがって、牛場さんにしても安川さんにしても技術者じゃありませんから、わが国としても本当に困るという事情などについては、特に技術的にわたる問題等もあろうからやはりアメリカに行って、特に議員などにもよく話をする必要があるのではないか、もっと早くそういうことを本来やるべきであったと思う。たとえば牛肉の場合、オレンジの場合に見られるように、あのときには農協長なども年の暮れから正月にかけての場面でしたが出かけておりますね。だから、とにかくそういうことでもう一遍努力をしてもらおう、ただし、これは全然自由といいますか、競争入札にゆだねないというようなことはなかなか通りにくいかもしれぬな、しかし、きょうは決めるために集まったわけじゃないから、なおひとつそのあたりは郵政大臣からよく電電公社と詰めてもらおう、また両代表においてもそのあたりを踏まえながらなお折衝を続けてもらおう、こういうことで特段の結論を見出したという会議ではありません。
  136. 安島友義

    安島分科員 私もこの方に対する専門家ではありませんが、ただ政府部内における論議も、本当にこの実態を把握して論議されているのかどうかということに若干疑問を感ずるわけです。日本に対する感情が悪化しているということは私もよく承知しておりますし、ずいぶん以前ですが、テレビのダンピング問題等で直接アメリカの関係者と話し合ったことも私自身ございます。ところが日本の場合は、率直に言いましてアメリカから買う物というものがきわめて限定されている。それは日本がここ十年の間に飛躍的に技術の進歩、発展が遂げられておりまして、すべての分野においてもアメリカの製品を必要とする分野がなかなか少ない。したがって農畜産物とか、今度のように結局は年間の発注額が六千億という膨大な額に上るところに目をつけたのだと思うのです。  問題はこの不均衡是正、アメリカとの関係をこれ以上悪化すべきではない、やはり国益に沿って一定の譲歩が必要だという考え方も肯定できますが、問題が問題だけに、ただ貿易不均衡との関連においてこの問題を考えるというのはどうかと思うのです。ただ、いま大臣が言われたように金額の問題ではなくて、非常に閉鎖的だというところに問題があるとするならば、それはこちらの方として仮に一部の機材発注をアメリカに行うにしてもこの通信事業に、将来の問題も含めて対応策を考えた上でその辺の方向づけをするという観点で御検討されているということでございますか。
  137. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは通産省としましても、中小企業への影響は配慮しなければいかぬでしょう。それから大企業といえども製品完成までには目に見えないずいぶん大きな研究費を要する。それを随契をどんどん国際入札にゆだねて、いままでの特定な契約を乗り越えていくということになると非常に問題が多いと思います。問題が多いと思いますが、アメリカも二〇%ぐらいは公開入札をしておる、それからEC諸国など国営でやっておりまするところもやはり世界的に入札をさせておるようですね。日本業者が入札をする、落ちる落ちないということはそのときの条件にもよりましょうが、まだ大きなものは入札してないようです。しかし、アメリカだけでも昨年は、百億円ぐらい五十三年十二月末までに輸出しているのですね。ですから、私どもも技術的な詳しいことはわかりませんが、全然受け付けないということでは−現実に百十六億ドルという日米間だけの黒字もあることですし、国際間の話し合いというものは妥協も必要です。したがって、東京ラウンドの早期妥結を望んでおる私どもとしてはなるべく早く解決することが望ましいとは思うが、御指摘のように、そういう問題については十分配慮していきたい。これは電電公社もその気になっておるでしょう。ですから、今後のやり方については十分検討する必要があるというふうに思います。
  138. 安島友義

    安島分科員 次に、電電公社にお尋ねいたしますが、第二の問題といたしまして、日本の通信網の信頼性は保てるのかという観点からお尋ねしたいのです。  通信機器類の政府機関調達についてはスウェーデン、スイス等、一部の国の例外を除いてはどこの国でも国策に沿って随意契約をたてまえに運営されていると聞いております。通信は国の中枢神経をつかさどるものであり、その信頼性の裏づけと長期的に安定したサービスの提供、品質管理等は国益と表裏一体をなしていると考えるわけです。この意味からも従来、公社の立場としてもメーカーとともにその開発を指導してきたわけですし、特に中小メーカーの育成というものを長い期間にわたって続けてこられたわけです。今日、幸いにして世界的レベルの通信網を完備してきたわけですが、今回の門戸開放が、仮定の話ですが、現在言われている一〇%以内の範囲にとどまってもその影響はきわめて大きいと考えられるわけです。その幅が将来さらに拡大しないという保証は何もないわけですね。  これらを考え合わせるときに、安定した通信サービスの提供を使命とする公社はいかに対応する考えであるか。特にコストの上昇、計画的開発の困難、ノーハウの流出等のような問題が考えられるわけです。これに関連しまして、今日の事態を招いた要因の一つには、公社側の対応が十分ではなかったと一部指摘されておりますが、その件についてもあわせてお伺いしたいと思います。
  139. 前田光治

    ○前田説明員 お答えいたします。  先ほど先生おっしゃいましたように、世界の中でこの電気通信設備を研究開発し、あるいは製造する能力を有しております諸国におきましては、公衆電気通信設備を購入いたします場合に、入札の手続をとっておるところはほとんどございません。ありましてもほんの例外程度の数量でございます。さっき先生お挙げになりましたが、スウェーデンは特殊な事情がございまして政府自身が官営の製造工場を持っております。ここがいろいろつくっておるわけですが、ここでつくれないものだけ、ごく一部のものを入札口にしておるという状況がございますが、今度のガット東京ラウンドの問題につきましては、このスウェーデンも含めまして、電気通信設備を政府調達コードから除外するというオファーをしております。したがいまして、現在のところ、ガット東京ラウンドに関しまして、自国で十分な製造能力を有するいわゆる先進国というところで電気通信設備をガットの政府調達コードの対象にしてよろしいと言っている国は一国もないというのが現状でございます。これにつきましては、先ほど先生その理由をいろいろお述べになっておりましたとおりでございます。  なお、門戸開放ということを世上いろいろ伝えられておりますが、ちょっとわれわれには心外なところがございまして、電電公社が主張しておりますのは、正常な電気通信サービスを国民になるべく安いコストで、かついいサービスを提供いたしますためには、それに使います設備、これの購入手続が入札ではだめであって随意契約ならばよろしいということを申しておるわけでございます。決して外国品はいかぬ、日本品ならばいいというふうには一度も申しておりません。そういう意味で門戸開放という言葉がどのような定義で使われているか、これはきわめてあいまいな言葉でございますが、正確に申し上げますと、そういうことでございまして、外国品を排除するということはいたしておりません。これは御承知のとおり、昨年一月に出されました閣議決定がございまして、政府並びにその関係機関は内外無差別の原則に立って物品を調達するという閣議決定がございますので、電電公社もそれに従いまして、内外無差別という立場で調達いたしておるところでございます。ただし、先生先ほどお挙げになりました理由がございますので、入札ということをやりますと、公社の国民に対するサービスに重大な支障が及びます。それから先生お挙げになりましたように、製造される業界、特に中小業界というのは、外国が来る来ないにかかわらず、入札という手続で購入するということは非常な混乱をもたらします。そういったことから、われわれは入札ということを原則としておりますガットの政府調達コードに入ることはできないということを主張しておるわけでございます。
  140. 安島友義

    安島分科員 第三の問題点は中小メーカーに、中堅以下と言った方が適切かもしれませんが、非常に大きな影響が予測される。当然雇用問題にも発展するというように考えておるわけです。まだ決まっておりませんが、今回の政府側の考え方はどうもやむを得ないという方向に固まりつつあるように思われるのですが、それは後でもう一度確認したいと思いますが、もし仮にこういうようなことになりますと、かなり大きな影響を受けるというように私は思います。私の調査によりますと、電気通信機械の約四割は従業員三百人以下、資本金一億円以下のいわゆる中小企業に発注されているわけです。これらの中で、売り上げ高に占める電電公社向けの割合を見てみますと、中小八十社のうちで三〇%以下が二十一社、三〇%以上五〇%未満が十八社、五〇%以上七〇%未満が二十二社、七〇%以上が十九社というように、少なくとも三割程度、五〇%以上というものも相当数に上っているわけです。したがいまして、この全体の一割以下だというように見ますと、さほど影響がないように考えがちでございますが、具体的にこれらが中小メーカーにどのような影響を持つかという点で考えますと、これは相当の影響をもたらすことは確実であると考えるわけです。  特に、電電公社が仮に公開入札に踏み切らざるを得ない、これは公社の方は望んでいないのですが、政府の方が何かそういう考えのように承っているわけなんですが、中小メーカーが担当しているこの端末機器類、これは当然公社の方としても公開入札に、いわゆる競争入札制になった場合にはその影響が大きいところから、どうしてもこの通信網全体への影響を少なくするという意味からも、端末機器等の方にしわ寄せされる。端末機器だけではないが、しわ寄せされることが十分考えられるわけです。したがって、これらのメーカーが幾ら技術的に長足の進歩をしてきたと言っても、海外の大手のメーカーあたりと真っ向から競争しなければならないということでございます。  それから、大枠を仮に政府間において話し合いをした場合には、競争入札であれ随意契約であれ、私は、競争力日本企業が上回っていれば心配はないのだという考えは通用しないと思うのですね。もともと貿易不均衡という問題も絡んでの政治的決着なんですから、日本のメーカーの方が力があるならば、心配ないのだというのは、少なくともアメリカの今日までの日本に対するこの攻勢、攻撃をかけてきているところから考えても、これは信用できない。そういうことを考えますと、今後非常に社会問題化するおそれが十分あるわけです。その場合、政治的解決によって影響をこうむるこれらの中小メーカーに対して、これは仮定の話になりますが、当然政府は何らかの救済措置を図るものと考えられるわけですけれども、これは政府としてはどのように考えておられるのか。  それから時間が参りましたから最後に、先ほどの問題に関連しまして、仮にある一定の譲歩を余儀なくされても、あくまでも随意契約をたてまえにすべきであると考えますが、この方針については政府として貫ける見通しがあるのか。あるいは一部か全般かわかりませんが、競争入札が原則だという考え方で対処されるのか その辺を含めて御答弁をいただきたいと思います。
  141. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まず中小企業の電電公社に対する依存度でございますが、先生指摘のとおりでございます。私どももそういうデータを持っております。しかしながら、基本的に私ども考えておりますのは、日本の電気通信システムはいまや世界的に冠たる電気通信システムである、こういうふうに私どもも認識いたしております。この世界に冠たる電気通信システムが成り立っておりますのは、電電公社が営々として育ててこられました、先ほど先生もおっしゃいました中小企業の方々の底辺がこれを支えてりっぱな設備ができた、こういうふうに考えております。したがいまして、いまここで仮に外国品と競合いたしましても、そういうりっぱなものが直ちに外国品に負けてしまうというふうには私ども考えてないわけでございます。さりとて、だからそういう自信があるから公開入札に踏み切ったらいいのだという議論ではございませんけれども、仮にそういうことになったとしても、日本中小企業の方々、非常に実力を持っておられると思います。そういう考え方が一つございます。しかしながら、いま先生がおっしゃいましたように、もし仮にそういうことになって打撃を受けることがあったらどうするのだ、どういうふうに育成をするのだという御指摘に対しましては、通信工業は通産省の所管でございますので、通産省でも電電公社からの御相談に応じながら適切な対策を講じてまいりたい。その基本になりますのは、昨年国会で通していただきました特定機械情報産業臨時措置法という法律がございます。その特定の機械情報産業に通信業を指定いたしまして、国の十分なる施策を講じてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  それからもう一点御質問のございました、随意契約のまま押し通せるのか、あるいは公開入札に踏み切らされるのかという御質問に対しましては、これは現在外務省の審議官がアメリカへ行って、るる説明をしておるわけでございます。日本が守るべき権益は十分主張すべきだと思いますし、また一方、アメリカの言っていることにも虚心坦懐に耳を傾ける必要がある。その接点をどこに求めるかということが今後の問題でございますので、いまの段階で、随契だけで押し通すとか、あるいは公開入札に踏み切るべきだという結論を出すのは早いのじゃないか、こういう感じを持っておるところでございます。
  142. 安島友義

    安島分科員 どういうように落ちつくかは別といたしまして、いまの答弁の中で私は非常に疑問に思うのは、あるいは楽観し過ぎているように思われるのは、公社の年間調達額が六千億と言われていますが、これはわかりやすいように仮に一割といたしますね、この六百億の範囲内において調達はやむを得ないという、大きな枠組みというものは全く考えないということですか。それは貿易不均衡という問題とのかかわりからは当然一定の目安がつくわけだ。それは日本の技術の方が上だから問題はないのだというのは、余りにもその面だけから見た判断のように思われますが、そうすると、枠というのは決めても、その結果に対する責任は持たなくてもよいと考えるのですか。  時間が参りましたので大臣に、この問題について最終的にどういうような決着を図る考えなのかをお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  143. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは局長がお答えしたとおりです。そしていま外務省の審議官が現地に赴いていろいろ折衝している。電電公社も今度は何か技術者をやって説明をしておるようですから、その効果がどういうふうにあらわれるのか。これはもっともっと早くやっておけばよかったろうと思いますが、私は遅くてもやった方がいいという論者で、早くやれと言ってあの閣僚会議でも激励をしたことですが、ですから、その結果を待つということだと思います。
  144. 安島友義

    安島分科員 日本の将来に悪影響を残すようなことのないようにというたてまえを貫いてほしいということを強く要望しておきます。
  145. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて安島友義君の質疑は終了いたしました。  古川雅司君。
  146. 古川雅司

    古川(雅)分科員 国は、昭和四十九年五月に公布、施行されました伝統的工芸品産業の振興に関する法律の運用に基づきまして、いわゆる伝産振興対策の幾つかを行っておられます。その一つに、東京で行われております全国伝統的工芸品展がございます。この展覧会に対しまして、同振興協会を通してわずかながら補助金を出しておられますし、また、この五十四年度予算案にも計上されているわけでございます。しかしながら、地方別のこうした伝統的工芸品展に対しては助成計画がないのではないかというふうに理解をしているわけであります。ちなみに昨年の一月二十日に行われました第一回の中国地方の伝統的工芸品展におきましても、通産局では非常に御熱心にこの開催に当たりましては協力をされ、推進しておられるわけでございますが、補助という意味では非常に、というより全く顧みられていないということが私は非常に意外に思うわけでございまして、その点どうなっているのか、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  147. 栗原昭平

    栗原政府委員 伝統的工芸品産業につきましては、御指摘の法律に従いまして、予算、財投、税制等の面で助成をいたしておるところでございます。ただ、ただいまお話しの展示関係でございますが、地方につきましては後援はいたしておりますけれども具体的な助成は行っておらないということでございます。
  148. 古川雅司

    古川(雅)分科員 全国の展示会でございますが、先ほど申し上げたとおり東京を中心にして行われているわけでございまして、こうした伝統的工芸品の普及、さらにこの産業の振興という点につきましては、大阪あるいは先ほど挙げました中国地方あるいは九州地方、東北地方、むしろそういった地方的な助成という形を通して今後強力に進められるべきではないか、したがって地方別の助成計画というものも今後当然必要になってくるのじゃないか、このように思うわけでございますが、その点いかがでございましょう。
  149. 栗原昭平

    栗原政府委員 各地方別の産品についての助成につきましては、全国の展示に当たりまして、その際の参加という形でそれぞれ助成をするという形に相なっておるわけでございますが、御指摘のそれぞれ地域別の展示等の催しにつきましても、私どももこれから検討してまいりたい、かように思います。
  150. 古川雅司

    古川(雅)分科員 こうした伝統的工芸品の中の一つに筆がございます。広島県の熊野がこの主産地になるわけでございますが、全国的には豊橋であるとかあるいは奈良、この辺も非常に有名でありまして、広島県の熊野筆につきましては、全国の約八〇%の生産量を上げております。五十三年度で、この熊野におきましては五十二億円、三千七百万本、豊橋が十四億円、奈良は五億円という数字が上がっているわけでございますが、今日一つ心配な問題が発生いたしまして、それは、中国との通商関係の中で中国からの輸入の増大が予想されているわけでございます。これに対してどう対処していくかということが大きな問題になりまして、熊野筆事業協同組合の代表が最近訪中をいたしまして現地の事情を掌握するというところまで問題は広がっているわけでございます。この点について、通産省としてはどのように認識をされ、対処の仕方をしていかれるおつもりか、その点お答え願いたいと思います。
  151. 栗原昭平

    栗原政府委員 毛筆の輸入につきましては、過去いろいろ数字がございますけれども、ここ数年の数字を見てまいりますと、全体として必ずしもふえておらないという状況にございます。その内訳といたしまして、中国関係につきましては若干の増加という程度でございまして、最近時点におきまして輸入が急増して業界が非常に混乱するというような状況にはないというふうに私ども考えておりますけれども、なお今後伝産法に基づきます助成等も通じまして、ひとつ伝産品につきましては私どももできるだけその振興を図ってまいりたい、かように考えております。
  152. 古川雅司

    古川(雅)分科員 中国からの輸入が急激に増大する心配はないというふうに御答弁になったわけでございますけれども、もしそうした傾向が見えたりそういう不安が出てきた場合、たとえば具体的に学童用の筆だけは何とか国内産で確保する、そのための輸入に対する一つの規制なり対処の仕方をするというふうなところまではお考えになっておりませんか。
  153. 栗原昭平

    栗原政府委員 現在のわが国の置かれております状況からいたしまして、なかなか輸入制限というものを直接に行うような状態には実はございません。この点は御承知のとおりだと思います。そういう意味におきまして、直接的な規制は困難であろうというふうに思いますけれども、私どもとしては、むしろ国内の産地におきましてできるだけそれの追随を許さないようなりっぱな製品をつくっていくという面でこの振興を図っていきたいというふうに考えております。
  154. 古川雅司

    古川(雅)分科員 いま一つ毛筆の例を挙げてお尋ねをしたわけでございますが、わが国にはこうした数多くの産地中小企業と申しますか、そうした企業形態があるわけでございまして、あるいは外国からの輸入品による圧迫、さらには高度成長経済から不況時代に入ったその中で、非常に荒波にもまれながら、辛うじて息をつないでいるという形態も多いわけであります。ことに、こうした産業構造の転換という大きな問題から考えましても、付加価値の高い、あるいは知識集約型の産業転換をするということがきわめて困難なこうした産地中小企業については、これはやはり何らかの助成の対策を強めなければならない。ことに、御承知のとおり昨年来の円相場の高騰によって円高差損の痛手がいまだに根強く残っている、非常に疲弊をしてまいりまして深刻な事態になることも予想されているわけでございますが、いまの筆の例などは、それにまた追い打ちをかけるように中国からの輸入ということにおびえているわけでございまして、この筆に限らず、こうしたいわゆる産地中小企業の対策について、政府も最近法案を提出して何らかの対処をされる予定だと伺っておりますが、国会への提案の御予定はいかがでございましょうか。
  155. 左近友三郎

    左近政府委員 いま御指摘のありましたように、日本の国内におきますいわゆる中小企業の産地というものについては、円高その他の事情で非常に困っております。そしてまた、それに対する特別融資等々緊急措置はやりましたけれども、やはり将来の国内国外の経済の変動に応じてそういう産地の今後の生きる道を求めなければいけないということで、現在法案の準備をいたしておりますが、この三月の中ごろまでには準備が整いまして国会へも提出して御審議をお願いするという段階になろうと思います。そういうことでございますので、予算措置等ももうすでに準備をしております。
  156. 古川雅司

    古川(雅)分科員 私の伺うところによりますと、これは仮称産地中小企業対策臨時措置法ということでございますが、非常にこれで気がかりになりますのは、その実効はどう見通していらっしゃるのか、予算の措置もしていらっしゃるということでありますが、こうした財政的な裏づけ等も含めてどの程度まで実効を見込んでいらっしゃるのか、補助制度あるいは金融貸し付け、税制、高度化事業、いろんな面にわたるとは思いますけれども、若干御説明をいただきたい。
  157. 左近友三郎

    左近政府委員 現在この法律及び予算措置考えております措置といたしましては、まず予算面におきましては、産地の組合が行います新商品を開発する能力を育成するというふうな事業、これはたとえば商品の調査だとか新製品の試作だとか、あるいは市場調査というふうなことでございますが、そういうものに対する補助制度を創設いたすことにしております。それから都道府県がそういう産地を指導するに当たりまして、その産地の中小企業組合が振興ビジョンを作成するということが計画されておりますが、それに対して国が補助する制度も創設することにしております。  一方金融面におきましては、個々企業先ほど申しました新製品の開発とか生産の合理化というようなことをやる場合には、低利の資金を融資するということを考えております。それからまた、民間金融機関から金を借りる場合の信用保証の制度を拡充するという点も考えております。  それからまた税制面では、個々企業が新商品開発等のために取得します機械に対する特別償却等の準備をしております。そのほか現在でも中小企業振興事業団でいろいろ高度化事業の助成措置がございます。低利の金を貸すという制度でございますが、これについても、この新しい産地の振興事業に十分活用していくような措置考えておるわけでございまして、以上のような予算措置準備いたしまして、そして考え方としては、各産地ごとに産地の特殊性に根差した独自の将来の活動開拓策を考えていただいて、そしてその活動開拓策に合うような振興策、助成策をわれわれが準備したものの中から選んでいただきまして、そしてそれを集中的に実施するという考えでやってまいりたいと思っております。
  158. 古川雅司

    古川(雅)分科員 そのいま準備していらっしゃる法案のねらいでございますけれども、いわゆる中小企業振興事業団がフォローし切れないそういった面を今後この法律によって、また予算措置によって救済をしていくのだ、そのように受けとめればいいのか、あるいは円高差損による痛手、その辺にスポットを当てて集中的に救済策を講じていこうとするのか、その辺のところをひとつ明確にしていただきたいと思いますのが一つ。  それからもう一つは、指定に当たっていわゆる組合単位の指定ということを伺っているわけでございますけれども、事業所あるいは生産額あるいは産地の全国対比あるいは輸出入の状況、そういった基準についてすでにお定めになっているのかどうか、この点も明らかにしていただきたい。
  159. 左近友三郎

    左近政府委員 この法案の目指すところは、やはり円高とかあるいは構造不況産業の影響とか、いろいろ中小企業に最近非常な痛手をこうむるような事象が起こりましたので、その事象に対して緊急措置はもうすでにとっておりますが、その緊急措置でカバーしながら、将来、中長期的にその地域地域中小企業が生きていく道を見つけていくというのがこの法案のねらいでございまして、そのために従来振興事業団でやりましたものも活用いたしますけれども、さらに広い範囲から助成をしていこうということでございます。  それから、この基準、つまり指定基準等につきましては、まだ現在検討中でございますが、極力範囲を広くいたしまして、たとえば現在非常に困っておるということでなくても、将来困るおそれがあるようなものについても指定ができるようにいたしたいと思っております。  それから、地域については、やはり産地の組合がございますので、組合計画を立てていただいて、その計画に従ってやるものについては組合のみならず、個々の事業についてもその組合自身についても援助していこうというようなことで考えておるわけでございます。この指定の具体的な基準等は、まだもうしばらく検討させていただきたいと思いますが、いま申しましたように極力活用しやすいような形で持っていきたい、このように思っております。
  160. 古川雅司

    古川(雅)分科員 法案の提出前にここまで立ち入ってお伺いをするのも大変恐縮でありますけれども、いわゆる単位の組合指定に当たっては、事業所五十カ所以上、全国対比一〇%以上、あるいは生産額十億円以上、全国対比一〇%以上、生産額の減少前年の五%以上の落ち込みあるいは輸出比率二〇%以上か、輸入の影響が生産数の五%以上の減少というような数字も一部で伺っているわけでございますが、大体こういう線で検討を進めていらっしゃると理解してよろしゅうございますか。
  161. 左近友三郎

    左近政府委員 実はまだそれも事務的な一つのたたき台という程度でございまして、まだまだわれわれとしてもそういうものに確定したわけではございません。したがいまして、その内容についてはもう少し検討の余地を残したいと思っておりますので、時間をいただきたいと思います。
  162. 古川雅司

    古川(雅)分科員 三月の中旬に国会へ法案を御提出になるということでございますので、最終的な詰めの段階と理解をいたしますが、広島県の産地中小企業組合を見ますと、先ほど挙げました熊野の筆あるいは縫製品、中小型の鋼船、やすり、伸鉄、それから宮島細工、こういったものが挙げられるわけでございますけれども、この法案に対して一つの大きな期待も一面には持っているわけでございます。こうした産地中小企業団体の現状から見まして、事業所数であるとか生産額であるとか生産減少額であるとか、そういった一定の線をお引きになってその基準の中に当てはまればこの臨時措置法の救済の対象になる、このように期待をし理解をしてもよろしゅうございますか。
  163. 左近友三郎

    左近政府委員 法律で考えておりますのは、業種とそれから地域と合わせまして、たとえて言えば何県の何、何県の絹織物というような形の指定の仕方、あるいは県の中でもまた産地を形成しておれば県の地名を挙げて、その市町村名を幾つか挙げて指定するという形にいたしたいと思っております。  そこで、現在そういうふうな指定ができるところは全国でどのくらいあるか。いろいろ定義の仕方でございますが、やはり二、三百あろうかと思います。そこで一斉に指定というわけにもいきません。またこれは先ほど申しましたように、組合自身の自主的な努力、自主的に改善しようという意欲をベースにわれわれは応援をするということになっておりますので、若干準備の期間も要ると思います。したがいまして、今後二年か三年かかって逐次指定をしていきたいというふうに考えておりまして、初年度は予算的なベースでは九十ぐらいを指定いたしたいと考えております。ただ、ことし指定されなくとも来年ということもございますので、逐次指定をしてまいるということで考えておるのが現状でございます。
  164. 古川雅司

    古川(雅)分科員 こうした産地中小企業については、冒頭から申し上げておりますとおり、不況あるいは円高差損という大きな影響を受けながら、壊滅に近い現状にあるわけでございまして、基準の設定あるいは財政的な裏づけの大小、そういうことによってこうしたせっかくの助成策も間に合わないということが非常に心配されているわけでございます。私がお伺いしたがったのは、こうした対象に入らない、基準に合わないものに対する今後の二次的あるいは三次的な救済というものが当然急がれなければならぬということを申し上げたかったわけでございまして、さしあたって九十近くの業種という御答弁があったわけでございますけれども、それを追う次の段階、次の指定を早めることについて、いまお伺いすると何か非常に悠長な印象を受けてならないわけであります。その点、もっと急速に取り組むべきではないかと思うわけですが、いかがでございましょう。
  165. 左近友三郎

    左近政府委員 われわれの方としては、地元の準備が整い次第逐次指定していくという方針でございますが、いま御指摘のように、実は産地と申しましてもいろいろな種類がございまして、それについてあるいはこの制度に乗らないものが出てくるおそれもあろうと思いますので、それはそれとして、中小企業対策はいろいろございますから、それに対する対策をまた十分考えたいと思っております。また産地の選び方自身も、府県も国と一緒になりまして助成措置をするものでございますから、府県の意見も十分聞いてまいりたいと思っておりますので、府県の方で産地をいろいろ選んでいただくということに相なろうかと思います。その際に、いまのように、今回は選に漏れたけれどもというものに対しても、いろいろ府県と相談をしながら個別に対策を考えていくということは十分考えていきたいと思っております。
  166. 古川雅司

    古川(雅)分科員 先ほど私は、広島の産地中小企業組合の一応六つの組合を挙げたわけでございますが、九十という数字を挙げられましたけれども、この中で大体適用しそうだという業種はございますか。
  167. 左近友三郎

    左近政府委員 産地の指定につきましては、やはり法律が成立をいたしませんとちょっと決まらないという段階でもございますし、また現在、実は各府県と内々、法律はまだ出ておりませんけれども準備ということでいろいろ御相談をしている最中でございますので、名前を挙げることはちょっと御容赦願いたいし、またわれわれ自身もいまはっきりこれだということを決めているわけではございません。
  168. 古川雅司

    古川(雅)分科員 最後に、大臣に非常にマクロなお伺いをいたします。  産地中小企業対策についていまお伺いを進めてきたわけでありますが、政府はそれに対して臨時措置法の国会提出を予定していらっしゃるということでございます。これは先ほどのお伺いの中でも申し上げましたけれども、いわゆるこれまでの中小企業振興対策ではフォローできない面について、何とか救済の手を差し伸べようという意図は十分わかるわけでありますが、さらに将来を展望して考えてまいりますと、こうした中小の、産地を中心とした産業の構造転換という非常に大きな課題があるわけでございます。大臣は、こうしたいわゆる付加価値の高いあるいは知識集約的な産業への転換が非常にむずかしい、しかも非常に家内工業的であり、中小零細企業がいろいろな外的な要因によって窮地に追い込まれている、こういった事情に対して今後どのように対処していくお考えであるか、お伺いをいたして質問を終わりたいと思います。
  169. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 従来の構造不況業種対策、それから円高の対策、これらの中小企業対策をもちろん縦横に駆使するわけですが、今度の産地中小企業振興対策は、業界の創意をひとつ生かそう、今後のビジョンも策定してもらおうというわけで、従来の後始末的な対策とは違った面があると思うのです。壁に突き当たってどうにもならないというものを助成しながら救済していくということでなしに、やはり時代の要請に従って付加価値の高いもの、同じ中小企業でも知識集約型の事業開発は可能なのかどうなのか、製品開拓はできるのかできないのか、とにかくそういう新しい試みにぶつかっていく企業者に大いに協力していこうというわけですから、私、この法律案には楽しみを感じておるわけであります。これはやはり運営面においても、いまいろいろ御質問がありましたが、県なども相談に加えて、十分貴意に沿った、本当によかったと言えるようなものにしていきたい、努力したいと思っております。
  170. 古川雅司

    古川(雅)分科員 終わります。
  171. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて古川雅司君の質疑は終了いたしました。  山本悌二郎君。
  172. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 大臣、最近の国際情勢を見るとなかなか険しい状況にあります。私が申し上げなくても、もう心を痛めていることと思うのであります。恐らく私の前の多くの同僚からも質問があったかと思いますが、私は特に心配をしていることがございますので、大臣からちょっと御意見をお聞かせ願いたいと思うわけであります。  一つは、中近東を取り巻く情勢の中でイランの問題ですが、もう毎日のように新聞に出ておりますし、また大臣のコメントも出ています。ところが、石油状況というのは決して見通しがいいわけではないと思います。むしろ悪くなるという見通しもないではない。そこでわが国は、御存じのようにイランから全体の一七%強輸入をしておるわけでありますから、かなり響いてくるのではないか。備蓄量もだんだん減るような気がいたしますので、まず石油見通しについて大臣にお伺いしたいと思います。
  173. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 全く心配をいたしております。しかし、ここでも予算委員会でも繰り返し申しておりますように、まず一−三月の入荷予定が七千四百万キロリットル、当初申し上げておりましたより二百万キロリットル多くなった。これはことしの一−三月の予定量七千四百五十万キロリットルの五十万キロリットル減、まあいいところの量が確保できたというわけで、大変力強く思っておるわけです。しかし、イランの政情は、毎日報道を見るたびにわれわれがおやと思うような新事態が次から次へと起こっております。もちろん、的確な報道も間違った報道もありましょう。しかし、先行き相当困難である、政局が安定になるまでになかなか時間がかかるという予測ができますので、節約については十分配慮していきたいと思います。
  174. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 そこで、ペルシャ湾を取り巻く情勢が厳しいものですから、一つは、イランの石油化学のプロジェクトをやっております三井が作業員を全員引き揚げるという記事を見ました。この辺の実情はどうなのでございますか。
  175. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは確認しておりません。ただ旅券が切れるのですね。旅券が切れると、まだ再発行の事務機能が充実しておりませんために、一応国外へ退去しなければならない。ところが、国外へ出るにしても、その飛行機便が定期的に発着しないということがあって、実際には新聞に出ておったような事実はまだないようであります。
  176. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 そうしますと、イランのホメイニ師を中心とする政権がなじなものであるのか、実ははっきりわからない、むしろ相当腹を固めてかからないといけないのではないか、私はそういう観測をしているのです。それはどういう見方をしているかというと、ホメイニ師自身考えていることと中で動いている情勢とは大変違うのではないか。それはやはりソ連の石油政策の一環だとある意味では見ていいのではないかというふうに私は非常に厳しい見方をしておるのでございます。この点大臣はいかがでございましょう。
  177. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いろいろな見方があると思います。これは情報が多岐にわたるように、いまここでどうでしょう、私どもそのイランの石油の再輸出を待望しておる立場、それからまたバザルガン政権を即刻認めたという立場から、私がこういう公開の場面でドグマを述べること、これはどうも適当ではないように思いますので、お許し願いたいと思います。
  178. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 気持ちはよくわかりますが、いずれイランにいらっしゃるのでしょう。(江崎国務大臣「まだ決めてない」と呼ぶ)決めてないようですけれども、行かなくてはならぬでしょう。そこで、そのときには、イランのバザルガン政権を認めるとか認めないとかいうことも重要なことでありますけれども、どういう情勢であるかということをやはり腹を決めて行かなければいけないのじゃないか。相当額のものを日本が投資をしておるし、またこれからもしようとしておるわけですね。特にこれは私どもにも直接の関係の、私の選挙区に関係のあるところでありますが、LNGのプロジェクトを考えておる、考えておるというよりもこれは進んでおると思います。いわゆるイランから入ってくるカリンガス、こういうものに対してプロジェクトを組む予定にしているわけであります。それに対して大臣はどんなお考えでいられますか。
  179. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは三井グループが取り組んでおります石油化学プラント、あれなども八〇%程度できておりますが、わが方も完成をさせたいという熱意を持っておりますね。バザルガン政権も和田大使接見の折に、りっぱなものである、しかも国益の線に沿ったこの建設に日本が協力してくれたことを高く評価する、早く完成させたいということを言っておりますね。また、イラン再建のために日本の技術、日本の協力に多くを期待する、非常に好意的であることは間違いありませんね。石油輸出日本を初め従来の締約国とは速やかに再開をしたい、話として聞く限りにおいては日本側にはきわめて好意的。そういうことが、外務大臣が、再建のための調査団を、江崎通産大臣が適当であるからひとつ行ってもらう用意があるなんてことを言った一つのあらわれですね。ですから、いま私どもも政局が安定し向こうから要請がないうちに行くなどということは、これはあり得ませんが、やはり準備をしておくこと、これは御指摘のとおりだと思います。  そこで、いまのLNGに対するイラン側との、イランカリンガス、これを買ってわが方の使用に供しよう、これは昨年の六月に締結されました。その後はこういう政局ですからちょっと話は中絶しておるわけでありますが、なお政局が安定し次第本格的な交渉に進むようにいたしたいと思っておりますが、詳しいことは時間の関係で私省略しましたが、なんでしたら事務当局からお答えさせます。
  180. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 そうですね、もうちょっとお聞きしないといけないと思うのです。昨年締結をいたしましたけれども、実はいまこういう状況だか、大臣苦慮されているところだと思います。思いますけれども、内容に立ち入って話を聞きたいという気持ちは私余りないのです。ないのですけれども、たとえばLNGを運んでくるLNG船五隻をつくらなければいかぬ。そうすると、イランでプロジェクトができないということが決まっているにかかわらず船はつくる段取りになる、この法案が出てまいります、利子補給が出てまいりますが、そのことから少し波及してみたいと思いますが、そういうことについておわかりでしたら、ひとつ……。
  181. 豊島格

    ○豊島政府委員 いま先生から御質問ございました計画の進めぐあいでございますが、実はイランとの話がこういう状況で詰まりませんので、一応そのまま凍結ということでございまして、御指摘の船についてもまだ発注はいたしておらない、こういう状況でございます。
  182. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 いま発注はしておりませんが、しかし今度の利子補給のところにも入らないのですか、これはどうでしょう。LNG船というのは運輸省のあれには入っておりますが、その発注は違うのですか。
  183. 豊島格

    ○豊島政府委員 一応事態の解決することを予想して予算には入っておる、このように了解しております。
  184. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 大臣、そんなようなやりとりでお聞きのとおりですが、心配することはいいことでございまして、やはり心配しないといけないのですよ。先の話でイランの中身がどんなのであるかわれわれがよくわからんでおるわけですけれども、しかし、もしだめな場合はどうするのか、これは三井グループのプロジェクトと違うのです。ガスの掘るところというか、出るところが違うのです。ですから三井グループが引き揚げてしまってもここだけはやろうという意思なのか、いや、これはだめだからブルネイガスを買うとかあるいはカナダから何か入れるとかあるいはインドネシアからとかいろいろあると思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  185. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはやはりエネルギーの多様化の目的に沿う話ですし、イランの政情そのものはどうもこれは予断の限りではありませんが、そうかといってこれが絶望とは私思いません。イランの新政権の考え方が和田大使を通じて伝わってまいりますが、あの意向などを聞きましてもやはりこのカリンガスの問題は可能性あり、また同時に、この計画は政局が安定すれば話を軌道に乗せ、再開してちゃんとすべきであるというふうに私は思います。
  186. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 そうですね、そうあってもらいたいと思います。だけれども大臣、私このイランの革命が起きるときもそうだったと思うのですけれども、やはり情報不足ではないかと思うのです。いろいろなことを聞きましたけれども、これは大臣直接関係ないのです。外務省に申し上げなければいけないのですけれども、外務省もそういう意味では中近東、いわゆるペルシャ湾情勢というものをもう少し的確に把握する必要があるのではないか。ということは、事イランに限らずイラクにしてもシリアにしてもレバノン、ヨルダンにしても、またずっとアフリカに至るあるいは東南アジアに至るまでいま非常に厳しい状況になっている、そういうことを、わが国としては資源のない国だけにやはり非常に的確に把握していかなければいけないのじゃないだろうか、その把握をした上でどう処置していくか、場当たり主義でそのときにぶつかってからああだめだった、それじゃ次に手を打とうかというような行き方は、私はあっては困るのじゃないか、こういうふうに思います。大臣の一層の御努力をお願いいたしたいと思いますし、ひとつ外務当局にもぜひそういうことで情報の収集というものは、これは非常に重要なことであります。特にそういう意味で力を入れていただきたい、こういうふうに思っております。私はカリンガスはこの程度にしておきたいと思います。  二番目に、先ほど質問が出ておりましたけれども中小企業の産地中小企業対策臨時特別措置法ですか、これについてちょっとお尋ねしたいと思います。なかなかいい案を、私どもも昨年来から大分苦労してつくってまいりましたし、また御要求もしてまいったつもりであります。それが具体的にこういうふうに少しずつでもできてきたということは喜ばしいことだと思うのです。  そこで第一に、大体いつごろこの法案を出される予定なのか、また見通しとしてどんな見通しを持っているのか。
  187. 左近友三郎

    左近政府委員 この法案につきましてはいま鋭意法制局等々と最後の詰めをやっておりますので、この三月中旬には、閣議決定をしていただきまして、国会に提出をできるような段取りにいたしたいということでございます。
  188. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 三月の中旬に閣議決定をしていただいて出すということになりますと、三月の下旬から統一地方選挙に入りますね。そうしますと、事実上四月の半ばころまで審議できません。たなざらしにしておくわけですね。そうすると、大体見通しとしては選挙が終わってから、五月ということになりますね。いかがでしょうか。
  189. 左近友三郎

    左近政府委員 国会に提出した後は国会の御審議にお任せをせざるを得ないわけでございますが、この法案は法案の性格上予算関連法案ということにはなっておりませんので、審議では予算関連法案が優先をいたしますので、その後になろうかと思いますが、われわれの方も鋭意努力してなるべく早く御審議を願うようにお願いをいたしたいというふうに考えております。
  190. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 わかりました。そのとおりだと思うのです。予算関連法案でないとすると、ここに計上されている予算はどこから出すということでございますか。補助、援助についてはどういう形をとられるのですか。
  191. 左近友三郎

    左近政府委員 予算関連法案の定め方なんでございますが、もちろんこの法案も実は予算の裏づけがあるわけでございますが、直接法案自体と必ずしも密接に関連してない、つまり法案の中に予算事項が書いてない、こういうことから形式的に予算関連法案でないということになっておるわけでございますので、実質的にはこの予算のバックがあって初めて法案の目的が生きるという形になっておるわけでございます。
  192. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 当然そうでしょうね。予算が全然関係ないなんて言われたんじゃ、せっかく出されたって何の意味もない精神法案になってしまうわけですからね。予算があるのですよ。そしてそのことを産地の人たちが非常に期待をしているのですよ。こんなもの、なければ何にも期待なんかしませんよ。そうでしょう。ここのところが一番重要なところなのです。先ほどから何人か、恐らく皆さん同じ質問をされていると思うのですが、そこが重要なところだけに非常に期待をしていますし、期待をしているだけに早く通してもらいたいというのがみんなの意見なのです。ほかに何にもないんだ。もうそのことだけなんだ。いまや死ぬか生きるかになっている産地がたくさんあるわけです。これでもたしか七十業種か何か指定するわけでしょう。ですから、そういう人たちが非常に、あすはあすはと待っているのは金なんですよ。そういうことです。  そこで、これは私の地元でも重要なものを抱えておる。御存じのとおりであります、燕という洋食器があります。国内の約八六、七%生産をしていると言われているのでありますが、燕周辺ですね。大変なんでございまして、一刻も早くひとつこれに期待をしたいという声があります。  そこで、まずこれから審議をしていただくのですけれども、施行の期日をいつに持っていくかということはどんなふうにお決めになっておりますか。
  193. 左近友三郎

    左近政府委員 法律といたしましては、公布の日から即日施行という形で準備をするようにいたしております。したがいまして、国会が通りますれば、若干の事務手続を経ますれば早く公布いたしまして、そしてまた公布即日施行ということで実施をいたしたいというふうに考えております。
  194. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 それは本当にありがたいことでありますが、先ほども申し上げましたように、本当に待っている人たちにしてみますると非常に期待が大きいと思いますので、施行の日が公布の日からということは本当にありがたいと思います。  そこで二番目は、洋食器業界というのは、局長さん御存じだと思いますけれども、多種多様な関連業種が集まってできているのです。あれは御存じのようにスプーンでもナイフでもフォークでも、それからハウスウエアでもただ盤からぱっぱっとできるわけじゃないのですね。すり屋もあればみがき屋もあるしということで、そういう関連多種多様業種まで含まれるのかどうか、お聞きしたいと思うのです。
  195. 左近友三郎

    左近政府委員 いま法案の検討中でございますが、われわれの考え方は業種を指定をいたしましても、いまおっしゃるように、その業種はその業種単独じゃなくて、関連業種との密接な関連ででき上がっておるものでございますので、業種を指定すればその関連のものも、これは組合計画を立てることになっておりますが、一緒に加わって計画を立てることにいたしまして、そして計画が一緒にできた暁には関連業者も同じような恩典を受けられるということにいたしたいというふうに考えております。
  196. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 七十業種の中に当然いろいろな業種が入るのですけれども、当然洋食器、それからハウスウエアまで含まれているわけでしょうね。これはまだおわかりになりませんか。
  197. 左近友三郎

    左近政府委員 この法律の御審議が終わりまして正式に指定するということになっております。現在いろいろ準備をしておりまして、府県からの意見も聞いております。したがいまして、いまの段階で確定的なことをお答え申し上げることはひとつ御容赦願いたいと思いますが、全国でいわゆる産地といわれるところは当然その候補になってくるだろうというふうに思っております。ただ全国でいわば産地というものは二百なり三百なりございますが、それを一気に一年でやってしまうというわけには、これは予算的な制約もございますので、われわれといたしましては、少なくとも二年ないし三年かかって逐次指定をしてまいりたい。その指定の順序としては、やはり地元の準備の整ったところから着手したいということでやりますので、ことしでもう指定が終わりというわけではございません。そしてまた準備が整えばなるべく早い順位で指定をするというふうな考えでやっております。そしてまたその指定に当たりましては、都道府県と十分御相談してやってまいりたいというふうに考えております。
  198. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 なかなか配慮をしていただいておりまして、本当にありがたいと思いますが、ぜひひとつ洋食器、それからハウスウエアもその指定の中に入れていただきたいと御要望申し上げておきます。  御存じのように、他の輸出業者、関連業種もそうでありますけれども、洋食器業界もなかなか厳しゅうございまして、円高で二百円を割るということがずっとあったわけですね、いままた二百円前後しておりますけれども。そうしますと、二百円を割っていると、業者同士の取引というのは百七十円から百七十五円ぐらいの取引なんですよ。そうすると、一本について十円ずつ損する。二百円だと大体一円二十銭ぐらいの損失なんですね。一円二十銭と十円ではえらい違いまして、台数が非常に多いものですから、それであっぷあっぷしているわけです、本当のことを申し上げますと。そういう意味で、産地中小企業対策臨時措置法という法律ができて、お金がいけば何とかできるし、私もまたそのことだけにこだわるなと産地には言っているのです。たとえば、もうフォークやナイフばかりつくることを考えないで、もっとほかの業種転換考えるべきだ、こう言ってはいるのですけれども、やはり持っている機械がそれしかないというと、それより方法がないんですね。  そこで、私は通産省中小企業庁さんもそうですが、ひとつそういう業種を転換していく。たとえば旋盤がある、ボール盤がある、シェーパーがある。そういうものがあって使えるものがあったらそれを利用して、多少の設備投資をすれば何とかやっていける道があると思うのです。また、そういう業種があるのだから、それにできるような指導の仕方をひとつしてやっていただきたいと私は思うのですよ。それをしない限りは、いつになったってナイフやフォークやハウスウエアを一生懸命つくっていますよ。それはそうですよ。それしか能力がないと言えば大変恐縮ですけれども、能力がないし、またそうしてできた産地なのです。もう町ぐるみになっているんだから。ほかのものをつくる必要がなくなっている、町ぐるみそれをやっているのですから。そういうことでひとつ御理解をいただきたいと思うのです。  それからもう一つ、これは細かいことでいかがかと思いますけれども組合単位になっていくんですね。そうすると、これも産地からの意見がございまして、抱えていて、いまでも人件費だとか事務費だとか大変なんだ、さらに、これをやることにおいてさらに大変になるのだが、何かその辺の手当てというか、いろいろ考えはないものだろうかという話がありましたけれども、いかがでございましょう。
  199. 左近友三郎

    左近政府委員 第一の点でございますが、確かにこれからの産地の活路を求めていくときには、やはり一部事業転換ということも考えなければいけないと思います。  そして、私も聞くところによりますれば、燕の産地では、江戸時代からの産地でございますが、その間いろいろなものをつくって変わってきたわけです。したがって、燕の方々はまたそういう新しいものを求めるバイタリティーがあると思いますので、ひとつそれを生かしていただいて、新しいものに出ていただく。そしてまたそれをわれわれが応援するという形で、燕なら燕の産地の今後の行き方というものを決めたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、組合に若干事務的な経費その他も要りますが、これらの産地の計画をつくる経費その他については、実はわれわれの方でも補助措置考えておりますので、この産地振興に対する事務については、またそれに必要な経費をわれわれが県と一緒に補助で見るということになっております。しかしながらまた、なるべくその点も事務的に余り手続がめんどうにならないようにいたしまして、負担の少ないようにもいたしたいというふうに考えております。
  200. 山本悌二郎

    ○山本(悌)分科員 大変細かいことをお尋ねいたして恐縮でございました。本当に産地としてはありがたいことでございますので、十分ひとつ配慮をしていただきまして、困っておる業種を救っていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  201. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて山本悌二郎君の質疑は終了いたしました。  藤原ひろ子君。
  202. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 私は、絹織物の振興対策につきまして、質問をさせていただきます。  絹織物の原料でございます生糸のわが国におきます生産量は年々低下をしてまいりました。その結果、輸入生糸の増大となってきたために、養蚕業を守るということで昭和四十七年に生糸の一元化輸入が行われることになったのでございます。そこで、昭和四十七年から現在までの間にわが国の養蚕業はどのような推移をしてきたのか、また今後の見通しはどうなのか、農林省からまず御説明いただきたいと思います。
  203. 松岡将

    ○松岡説明員 それでは、最近のわが国におきます養蚕業の現況と見通しについて御説明させていただきます。  御案内のとおり、わが国の養蚕業は大変伝統的な、かつ古い歴史を有する産業でございます。かつまた、世界的にもきわめてすぐれた技術体系を有している産業でございますが、しかしながら、わが国の養蚕業は桑園管理の面でありますとか、あるいは蚕を育てる飼育の面におきまして、大変労働集約的でございます。そういった背景がございまして、昨今におきます農村の都市化なり転業化、あるいは労働力不足といったことが加わりまして、ここ数年来、先生指摘のとおり、養蚕農家数なり桑園面積というものも減少してまいりましたけれども、昨年、五十三年に至りまして、繭の生産量七万八千トンということでようやく下げどまり、減少傾向に歯どめがかかるというふうに感じておるようなわけでございます。  農林水産省といたしましては、畑作地帯なりあるいは農山村地帯といったところを考えますと、土地利用型の農業としてぜひともこれを振興していく必要があるということとともに、農業経営の面から申しましても、複合作物といったような観点で農家経済に大きく寄与しているというふうに考えておりますし、また、御案内のように、わが国は世界最大の絹の消費国でございますが、それと同時に、生糸あるいは繭の最大の生産国でもあるわけです。現在でもわが国の絹業が消費いたします原料の七割は国産の原料で占めているというふうに考えておる次第でございます。したがいまして、われわれ農林水産省といたしましては、一つは、現在の繭糸価格安定法に基づきまして、適正な水準に糸価を安定せしめていくということ、もう一つは、桑園の生産量あるいは生産力の増強なり、蚕を飼育する飼育管理の面におきまして、省力化あるいは近代化、生産性の高い養蚕経営を育成していく、そういった施策を万般講じていくという考えでおる次第でございます。
  204. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 それでは次に、昭和四十七年から昭和五十三年までの間に生糸、絹糸、絹織物の輸入ですね、これはどのように推移しているのか、今度は通産省から御説明いただきたいと思います。
  205. 栗原昭平

    栗原政府委員 輸入の数字でございますが、生糸につきましては、四十七年十六万二千俵、それが四十八年十三万四千俵、四十九年七万七千俵、五十年三万五千俵、五十一年五万九千俵、五十二年五万俵といった推移をたどっております。  絹糸につきましては、四十六、四十七、四十八あたりはほとんどゼロに近い数字でございますが、その後若干ふえてまいりまして、これは一元化輸入との関連もございますけれども、四十九年一万一千俵、五十年六万四千俵、五十一年四万九千俵、五十二年三万一千俵といったような推移をたどっております。
  206. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 現在の日本の絹織物を論じます場・合には、この輸入問題を度外視して語ることはできないという状況に今日なっております。また、この輸入も、当初は生糸の一元化輸入だけが行われたわけですけれども、今度は絹糸の輸入が激増して、昭和四十七年には千二百九十六俵であったものが昭和五十一年には五万七千四百二十九俵にもふえたわけでございます。そこで、絹糸の輸入につきましても数量規制をするということで、昭和五十二年から始まったわけですけれども、これをめぐっていろいろなことが今日生まれているわけでございます。  そこで私は、この絹糸の輸入につきまして少しお聞きしたい、このように思います。  まず、数量規制を行っております絹糸の輸入はどのようなやり方で行われているのか、それを御説明いただきたいと思います。
  207. 栗原昭平

    栗原政府委員 絹糸につきましては、生糸の輸入一元化制度が導入されまして以降、生糸まがいと申しますか、準生糸というような意味合いで、輸入は急激に増加いたしたわけでございます。そういう意味で非常に問題があるということで、これは二国間交渉に基づきまして、韓国、中国との間に数量を決めておるという生糸、絹織物関係の状況でございますので、・そういった前提で絹糸の輸入を抑えざるを得ないということになりまして、五十二年五月以降、まず二十カ国を対象に事前許可制というものを適用いたしました。その後、許可制の対象国以外からの輸入というものが非常にふえてまいりまして、したがって、昨年の十月からは対象地域を大幅に、百四十一カ国に拡大しておる。こういった状況で事前許可制の運用によって絹糸の輸入を抑えておるという形になっております。
  208. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 お聞きするところによりますと、通産省は輸入絹糸につきましても実需者売り渡しを検討しているということですけれども、これは本当でしょうか。
  209. 栗原昭平

    栗原政府委員 私ども目下絹糸の輸入につきましては、諸般の状況考えまして実需者と申しますか、たとえば織物業者あるいは撚糸業者等に対しましてその競争力強化という意味合いを含めまして、それらの人に対する割り当てというものを検討しておりまして、近々発表いたしたい、こう考えております。
  210. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 この輸入された絹糸ですけれども、これが輸入商社の手から糸問屋を経て機屋の手に渡るときには一体どれぐらいの価格になっているのか、通産省は御存じでしょうか。
  211. 栗原昭平

    栗原政府委員 絹糸につきましては、実需者割り当てはこれから実施をいたすことになっておりますので、この成り行きを見ざるを得ないわけでございますが、現在行われている輸入絹糸は商社を通じての通常の輸入形態の絹糸でございますが、これの織物業者に対する売り渡し価格というものは、私ども詳細は承知しておりませんけれども、国内の同様の絹糸の価格に比べて若干割り安の価格で取引をされておるというふうに承知しております。
  212. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 私どもが調べましたところによりますと、輸入絹糸というのはキロ当たり国内絹糸の六百円安で機屋に渡されているというのが京都の実情でございます。国内絹糸の場合は、糸の質が悪い場合には取りかえるとかそのほか補償が行われるということが前提になって取引をされているわけですね。ところが、輸入絹糸の場合はそういう補償は全くない仕組みになっているわけです。そういたしますと、六百円安いのは当然のことだ、こういうふうに思います。問題はそれだけではなくて、機屋が生糸の実需者渡しの分を買いましたときにはどうなるかといいますと、キロ当たり約一万円になります。これを練りにかけますと、その費用は高くても五百円です。すると合計一万五百円の絹糸となるわけです。ところが、輸入絹糸はどういうふうになるかと申しますと、CIF価格で五十三年には八千二百五十七円、これに関税とか諸掛かりを加えますと約一万円になります。これが機屋が買うときには一万五千円から一万六千円にもなっているわけです。一キロにつきまして四千円から五千円の利益がだれかのふところに入ってしまっているわけです。全くおかしいというふうに私は思います。一キロについて四千円として、五十三年度の輸入絹糸は四万俵あるわけですから九十六億円、ざっと考えても九十六億円というお金がだれかのふところに入っているわけです。生糸一元化輸入、そして輸入絹糸の数量規制を行うという本来の趣旨から見ましてもこれは全くおかしい、私はこういうふうに思うわけです。ぬれ手でアワのように四割から五割の利益をふところにしている者がいる。このように高い糸で織られた製品ですから、消費者は一層買いにくくなりますし、欲しくても買えない、こういう状況になっているわけです。京都などの和装品、こういったものは婦人であればだれでも欲しい、こう思うものが高くて買えない、こういう状況になっているわけです。こんなことはどうしても改善する必要がある。改善をするならばもっと安く国民の手に渡るということもできるわけです。需要を増進するということもできるわけです。通産省はこのような状態に今日なっているのだということをどうお考えになるでしょうか。
  213. 栗原昭平

    栗原政府委員 お話しのように現在の絹糸の事前許可制におきます割り当て方式でございますけれども、事前許可制を適用した時期が国によって多少異なりますので、一律ではございませんけれども考え方といたしましては、生糸なり絹糸の過去の一定期間におきます輸入実績者を輸入資格者ということにいたして許可を行っているわけでございます。こういった形で資格者を輸入実績者といたしましたのは、許可された量が確実に安定的に輸入が確保されるという必要上、一定の経験なり能力のある人である必要があるという考え方で、従来から生糸、絹糸の輸入業務に携わってきた人の商権というものを尊重する立場で行ってきたわけでございます。しかしながら、ただいま御指摘のございましたように、実際にこれを使う方々の立場というものも当然あるわけでございまして、私どもといたしましては、そういった織物業者あるいは撚糸業者といったユーザーの立場考えまして、今回種々検討の結果、実需者割り当てと申しますか、これを採用することにいたしまして近く発表する、こういった形で対応いたしたいと考えております。
  214. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 大臣にお尋ねをしたいと思うのです。いま経験、能力のある人をということで今日のような商社などを指定されてきたというふうに思うのですけれども、わがふところに入れることに大変能力があるという状況に今日発展してきているということは大変遺憾なことだというふうに思うわけです。この利益は政府が数量規制をしたために輸入商社のふところに入ることになったわけですし、言いかえますると、輸入商社に利益を保障してやっているというふうなものですから、親心子知らずというふうな状態になる中で機屋さんが怒っているという今日の日本状況でございます。怒るのは無理ないというふうに思うわけです。一月十六日には京都の西陣織のネクタイ業者の方々は国を相手に損害賠償を求める訴訟まで起こしてきているという状況でございます。どちらにいたしましてもこの流通の実態にメスを入れて実態を明らかにしなければならない、こういうふうに私は思うのですけれども大臣はいかがでしょうか。
  215. 栗原昭平

    栗原政府委員 私ども当初この一元化輸入の制度というものが当面の間という短い期間であるという前提で、ただいま申し上げたような実績者割り当てという形での事前許可制を行ってきたわけでございます。御指摘のような点もありますので、そういった点も踏まえまして今回実需者割り当てというものを行いまして、関係者、特に機屋さん、撚糸業者あるいは輸入業者、これらの間の御意見も調整いたしまして新しい制度に踏み切ったということでございますので、漸次そういう方向で物を考えてまいりたい、かように思っております。
  216. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま局長がお答えしたとおりでありまするが、これは問題が多いですね。私も西陣会館で関係業者からしきりに陳情を昨年受けたところであります。なお実態を私も十分検討しまして、できるだけ業界に不便をかけておる点を是正できるような努力を講じてまいりたいというふうに思います。
  217. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 いま、検討もし、よい方向にやっていきたい、近々それの発表もしたいということでございますが、念のためにもう一つぜひお聞かせいただきたいと思うのですけれども、いま輸入絹糸の実需者売り渡しを検討中、その検討の中にぜひこの輸入絹糸を全量瞬間タッチ方式で実需者に渡すということを検討してもらいたい、このように私は思うわけです。これは別に輸入商社に損をさせようというふうなことではありません。適正なマージンは保証するわけですから、商社が反対する理由はないと思うわけです。いま、一般から見れば不当にもうけているじゃないか、あたりまえにもうけてください、むちゃなぼろもうけはやめてください、ぼろもうけではなくて、成り立っていける普通のもうけ、「ぼろ」だけ取ってください、こう言っているわけです。しかも、この中でみんな疑惑を持っているわけですね。一体その金はどこへ行くのだろうという疑惑も生まれてまいりますし、そういうことをやはり改めなければならないと思うわけです。こういうふうにすれば絹糸は安くなるわけです。そうしますと機屋も喜ぶし、消費者も大変買いやすくなる、購買力が高まる、こういうことになって喜ぶわけですから、ぜひ、ぜひいま申しました実需者に渡すということを、絹糸を全量瞬間タッチ方式で渡すということを御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  218. 栗原昭平

    栗原政府委員 今回、実需者割り当てを行うに当たりまして考えております数量というのは、実は全部ではございません。一部でございます。数量を決めるに当たりましては、やはりおっしゃるような国内の実需者サイドのいろいろ困難な状況というものを、私どもも絹織物を所管する立場としてよく承知しておりますし、そういった立場、それからやはり輸入商社の方も生糸の一元化輸入に伴いまして、従来自由に取引ができておったという立場でありましたものが非常に不自由になっておるという、商社としても今回の生糸一元化輸入に伴いまして非常に不自由な立場に置かれておるという意味での商権と申しますか、立場というものをやはり配慮せざるを得ないということもございますし、これは輸入先の相手国との関係もございますし、そういった点を総合的に考えまして数量を決定いたしたい、かように考えております。
  219. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 商社も不自由を忍んでやっているのだということですけれども、それじゃこの商社の不自由代が九十六億円にもなる、このままでいいのでしょうか。一部しかやらないとおっしゃいますが、一部をやっても、こういうようなむちゃなことにはならない、機屋や賃機を織っている人や、それを着るという消費者、こういった人たちに潤うというやり方ができるのならば、一部でもそれはいいでしょう、こう言うわけですが、一部ではいまだめなわけです。ですから、ぜひとも全量ということで検討をされる必要がある。国民はうんと不自由をしているわけですから、国民にこそこの不自由代を出すべきであり、商社の不自由代が九十六億円にもなるというのは私は納得がいきません。いかがでしょうか。
  220. 栗原昭平

    栗原政府委員 実需者割当のこれからの扱いの考え方でございますけれども先ほども申し上げましたように実需者サイド、機屋さんなり撚糸屋さんなりのユーザーの立場、あるいは輸入商社の立場等、関係者の意見を十分に私ども聴取いたしまして、御指摘の点も踏まえましてよく慎重に検討いたしたい、かように考えております。
  221. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 慎重にぜひとも検討いただきまして、そして本当に潤うべき人が潤うという状況をぜひともつくり出していただきたい、心からお願いを申し上げる次第でございます。  それから時間がありませんので、最後に一つ確認の意味でお願いをしたいわけですけれども、昨日私は農林水産省に対しまして蚕糸事業団が行っております助成事業、この中で生糸加工品の需要増進のための事業として現在やられている宣伝事業、これに対してぜひとも助成を広げていただきたい。たとえば需要の増進とこう言えば、試験研究事業というふうなものもございますし、需要者動向調査、あるいはネクタイの需要調査なども含まれると思いますが、こういうものとか、産地ごとの宣伝、こういうものがいま行われているわけです。それぞれの地域で大変工夫をしながら、自分たちも出費をして協力し合って、どうして伝統産業、こういったものを振興させていくかということでずいぶん苦労もしているわけです。こういう産地ごとの宣伝事業、それからよい製品をつくるにはどうしても技術の養成をしていかなければなりません。いま後継者がなくて大変困っているという状況もあります。後継者といいますのは、その機を織って生活が成り立っていかない、一家が支えられない、こういう中で親の仕事を継がないという傾向も出てきておりますし、また能衣装などというふうな高級な技術、こういったものをいま京都で織っておられる方は七十代、八十代の方です。もう五十代の方々は青年部だというふうな状況で現在伝統産業が守られているわけです。そうしますと、こういった後継者づくりというふうなことも必要です。もっと助成事業の枠を広げるということで御検討いただきたいということを実は昨日要求をさせていただいたわけです。そこで通産省としても、絹織物の振興のために、ぜひともこういった措置ができるように働きかけをしていただきたい。農林省、通産省がよく御相談いただきまして、こういったことが促進できるというふうに御検討いただきますことをお願いしたいわけです。いかがでしょうか。
  222. 栗原昭平

    栗原政府委員 御指摘のように、私ども絹製品の需要の振興を図るということはきわめて重要なことだと考えておりまして、特に最近は総需要が非常に低迷しておるという状態でございますので、この振興の関係につきましては、通産省といたしましても繊維の構造改善事業協会の振興基金を通じまして若干の振興費用を出しておりますが、ただいまお話しのございました農林水産省におきます関係の需要振興のための資金でございますが、これにつきましても、ひとつ農林水産省とよく相談をいたしまして対処をしてまいりたい、かように考えております。
  223. 藤原ひろ子

    ○藤原分科員 よろしくお願いいたします。  終わります。
  224. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて藤原ひろ子君の質疑は終了いたしました。  金子みつ君。
  225. 金子みつ

    金子(み)分科員 私は、きょうは電子計算機の関連につきまして少し質問をいたしまして、政府の御所見を伺わせていただきたいと思っております。  電子計算機の導入というのが過去十年ぐらいの間に急激に上昇して、いまでもなおまだその計画は各所で進められて上昇の一途をたどっているような感じでございます。もちろん国の機関とか地方自治体とか、民間の会社であるとかあるいは大学、研究所、そういったようないろいろなところで利用されているようでございますが、まずお尋ねしたいと思っておりますことは、電子計算機をつくるメーカーでございますが、そのメーカーというのは一体何社ぐらいあるものなのかということを聞かせていただきたいと思います。
  226. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 わが国におきまして汎用電子計算機シリーズを製造販売いたしております国産メーカーは六社ございます。この六社は通常メインフレーマーと呼ばれておるものでございまして、小型から大型にわたる各種の電子計算機システムを製品シリーズとして供給しておるわけでございます。  なお、このほかに超小型で特定の目的に使用されます電子計算機といたしまして、いわゆるオフィスコンピューターであるとかあるいはミニコンピューターといったものがございますが、これを製造いたしておりますメーカーは、先ほど申し上げましたメインフレーマー六社のほかに約二十社ございます。
  227. 金子みつ

    金子(み)分科員 六社といまおっしゃいましたね。六社というのは、私の理解では富士通信、日立製作所、沖電気工業、三菱電機、日本電気、芝浦、これでよろしいわけでしょうか。
  228. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 おっしゃるとおりでございますが、正確に申し上げますと、富士通株式会社、日立製作所、日本電気、東芝、三菱電機、沖電気、この六社でございます。
  229. 金子みつ

    金子(み)分科員 いまのお話では、この六社がシリーズとして機械を出しているところだということですね。すると、いま電算機を導入している、利用しているユーザーの人たちは、メーカーから直接購入する場合もあるようでございますが、大方の場合はいま貸し出し制度ができている、レンタルシステムと申すのでしょうか、そういうふうに伺っております。ところが、貸し出しをするところが日本電子計算機株式会社、JECCと代表して呼ばれておるようでございますが、この会社が唯一の機関になっているというふうに承知しているわけでございますけれども日本電子計算機株式会社というのは、私が承知いたしましたところでは、いまお話しの六社が拠出金を出して、政府がそれを援助して、十何年前になるのでしょうか、昭和三十六年ですかにつくられたものだというふうに理解しているわけですけれども、それは間違いございませんね。
  230. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 日本電子計算機株式会社、いわゆるJECCは、御承知のとおり昭和三十六年に設立されたものでございます。設立の当初は七社ございました。先ほどお答え申し上げました六社以外には松下電器産業が入っておったわけでございます。その後松下電器産業がコンピューター部門から撤退いたしましたので、昭和四十年以降は六社で運営をしている、こういうことでございます。
  231. 金子みつ

    金子(み)分科員 そういたしますと、この日本電算機株式会社がメーカーから機械を買い入れて、そしてユーザーに貸し出しをするという制度になっているようでございますけれども、なぜ六社にだけ限定されたのかということについて御説明いただけますか。
  232. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 コンピューターには、先生御承知のとおり大型のもの、中型のものあるいは小型のもの、それから冒頭に申し上げました超小型のものと幾つかあるわけでございますが、通常大型、中型のものは大変金額がかさばるわけでございまして、ユーザーの方々にお使いいただきます際に、買い取りをしていただくよりもむしろレソトをした方がユーザーのお役に立てるのじゃないか、こういう考え方がございまして、国際的に見ましても、大型、中型のコンピューターはそういったレンタルになじむ商品ということでレンタル制度をつくったわけでございます。そこで、そういった大型、中型のコンピューターをつくっておりますメーカーが、先ほど来申し上げております六社でございますので、その六社によってこのレンタル制度をつくったわけでございます。  なお、補足して申し上げておきますと、この六社でエクスクルーシブにやっておるというわけではございませんで、この加入は自由ということでございますが、小型のコンピューターあるいは超小型のコンピューターをおつくりになっている方々は若干レンタルと違う、なじまない商品をおつくりになっておりますので、このレンタル制には加盟しておられない、こういうのが実情でございます。
  233. 金子みつ

    金子(み)分科員 そこで私お尋ねしたいと思っておりますことは、六社が拠出金を出してつくったレンタル会社ですね。自分のところの機械をそのレンタル会社で買ってもらって、そして貸し出しをするわけですね。その場合にその貸し出し価格の問題なんかが出てくるわけだと思うのですけれども、私が疑問に思いますことは、六社だけに限られているということで、メーカー六社グループとでも呼んだらいいでしょうか、そのグループの独占企業になるおそれはないのかなということがまず一つ考えられることですね。  それからいま一つは、このレンタル会社が貸し出しを一元的に取り仕切っているという点ですね、ほかにないわけですから。一元的に取り仕切っているということから価格の協定がつくりやすくなるのじゃないかというふうに思うのですけれども、この辺はいかがでございましょうか。
  234. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 国産のコンピューターは、先ほど来お答えいたしております六社体制で生産、販売をやっておるわけでございます。グループ的な動きも片やございまして、数年前にはいわゆる三グループがございました。現在はフューチャーシステムに対応いたしまして二グループというような状況でもございますが、いずれにいたしましても六社間の競争というものは大変激しいわけでございます。  それからもう一つ大きな競争といたしましては、外国機との競争という問題がございます。したがいまして、いま先生の御指摘の六社だけが集まって独占的な価格を形成するというメカニズムは全くございませんで、大変熾烈な競争にさらされているというのが現状ではないか、こういうふうに考えております。
  235. 金子みつ

    金子(み)分科員 同じ問題、公取の方来ていらしたら、ちょっと御意見を聞かしてください。
  236. 奥村栄一

    ○奥村説明員 JECCが国産電算機の賃貸業務を行っておりまして、電算機の賃貸料等の取引条件は、実質的には国産電算機メーカーとユーザーとの交渉で決定されている、JECCはこれに関与をしておらない、JECCは事実上ファイナンス業務を行っているだけだというふうに聞いているわけでございます。したがいまして、私どもの方で聞いている限りにおきましては、独占禁止法上特に問題はないというふうに考えているわけでございます。
  237. 金子みつ

    金子(み)分科員 JECCは関係ないというふうに聞いているといまおっしゃったわけでございますけれども、私が承知させていただきましたところによりますと、JECCがレンタル価格を決めます場合に、これはメーカーとユーザーとがまず契約をするわけですが、メーカーとユーザーとが契約をしたその契約書が大体標準になっているのだというふうに聞いております。それで、その契約書のつくられ方なんですけれども、お話を伺ってみましたところが、その契約書の金額とでも申しますか、それは何円何銭まで同じではないけれども、一定の幅は持つけれども、ほほ同額であるというふうに私は伺ったわけです。そうだといたしますと、協定はしていないとおっしゃるのですけれども、結果的には協定したような形になっているじゃないかというふうに、私は素人ですけれども、素人なりに考えるわけです。その辺、非常に疑問があると思うのですけれども、協定価格カルテルになっているのじゃないかなというふうに考えられるのですけれども、それはやはり私の考え方が間違っているでしょうか。
  238. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 先ほどお答え申し上げました六社が、三グループなり二グループなりというものを形成いたしまして運営をしておりますが、これは実は生産に関する共同研究その他でグループ活動をやっておるわけでございまして、販売になりますと、これは六社の熾烈な争いということになっております。  それから、先生御承知のとおり、コンピューターの業界におきましては、アメリカに飛び抜けて大きなコンピューターのメーカーがあるわけでございまして、現実の問題といたしますと、この飛び抜けて大きなメーカーがある程度プライスを決めますと、それに右へならえというわけじゃございませんけれども、結果におきまして、いろいろと日本の各社がそれぞれ独自の判断価格を形成するわけでございます。結果的に似通ったものもございますし、それから同じようなものではございましても、かなりな値開きがあるものもございます。したがいまして、先生の御指摘になりましたように、ものによっては、全く一致しているわけじゃないけれどもほほ一致に近い状態というケースもございますし、もう少し値開きがしているというケースもあろうか、こういうふうに考えております。
  239. 金子みつ

    金子(み)分科員 御答弁が何だか苦しそうに聞こえますけれども、大丈夫ですか。  そこで、政府は、先ほどおっしゃっていましたこの大手の六社に対しては、設備投資に対して安定した資金を供給するということを目的として、開発銀行を通して融資をしていらっしゃる。それだけではなくて、電子計算機新機種開発促進補助金ですか、そういうことで補助金も出していらっしゃる。金額を一々申し上げることもないと思いますので申し上げませんが、大変に手厚くこの六社に対しては援助をしていらっしゃる。それから電算機株式会社に対しても、開発銀行を通して政府は融資をしていらっしゃるということですね。そしてそのことは、先ほどから二回ぐらい御発言の中に出てまいりました大変に巨大な外資系の企業のことが頭にあるわけですね。ですから、巨大な外資系の企業から国産の企業を保護するという目的でそういうふうになさっているのだろうということは想像いたしますけれども、それにしても六社だけに非常に手厚く援助をして、補助金も出せば融資もする、それから、日本にたった一つしかないレンタル会社に対しても政府が莫大な融資をしていらっしゃるということになりますと、幾ら外資系の企業から守るのが目的であるとはいいながら、何か非常に偏っていないかという感じがするわけですね。そして、言うなれば政府とメーカーとレンタル会社、この三つが一体になってこの事業を持っている。ですから言葉をかえれば、政府主導型の独占企業じゃないだろうかというふうに考えられない節もないのですけれども、そこら辺はそういうふうに考えるのは行き過ぎなんでしょうか。私どもは、政府が使っていらっしゃる補助金にしても融資にしても、それは全部国民の税金なんですから、国民の税金をお使いになるのに、政府が考えているように使うのだからいいじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、何か非常に偏って使われている、公平ではないなというふうに感じておるわけでございますが、その辺はどういうふうにお考えになりますか。意識してやっていらっしゃるんじゃないでしょうか。
  240. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 まず、コンピューターにつきまして、政府が大変な力の入れ方で援助をしておる、助成をしておるという理由から申し上げてみたいと存じます。  御承知のとおり、機械産業わが国経済の発展を担う重要な産業であるということから考えましても、常に新しい機械産業を探求していかなくてはならぬという宿命を持っておるのではないかと思います。私どもはそれを先導産業と呼んでおります。この先導産業の一つといたしましてコンピューターというものがあるのではないか、こういうふうに考えております。  一方、機械工業の特性といたしまして、これは組み立て式、いわゆるアセンブル産業でございますし、大変すそ野の広い産業であるわけでございます。そこで、先導産業としてのコンピューターを育てていくということは、何もそのコンピューターを組み立てております六社だけを助成しているという意味ではございませんで、そのすそ野に多くの中小企業の方々がいらっしゃるわけでございます。そのアセンブルする代表が六社であるということでございますし、また諸外国を見ましても、アメリカの巨大資本に相当席巻をされまして、その国におけるコンピューター産業が大変曲げられたという実例も目の当たりに見ておりますので、私どもはそういう観点からてこ入れをしているということでございます。
  241. 金子みつ

    金子(み)分科員 いまの御発想は、大企業に予算を流して公共事業を興せば町方の職人まで潤うというのと同じような発想だと思って伺っていたわけですけれども、どうも納得ができませんが、時間がありませんので、先へ進ませていただきます。大臣の御所感も伺いたいのですけれども、最後にまとめて伺いたいと思いますので、いまの点、大臣ひとつお考えになっておいてください。  それで、いま一つは、実は実例が一つございまして、その実例を通して御意見を伺いたいことがございます。  それは、東京都の杉並区役所が昨年、日本電気と契約をしてコンピューターを導入いたしました。そのことはそれでよろしいのですけれども、問題だと思いますことは、この契約書によりますと、機械の名前がいろいろ書いてあって、むずかしいのでその点は省きますけれども、契約期間が五十三年十月一日から五十四年三月三十一日までということになっておりますけれども、この契約のときのあり方なんですが、私どもが承知いたしましたのは、これは正価が九百二十万円ぐらいなんですね。もっと細かい数字がついておりますが、まあ、ざっとそんな数字です。ところがレンタル価格というのは、実際問題として区役所が契約上支払います金額、これは四百九十二万円で借りております。そしてあとの分は、金額にして四百二十八万円ぐらいは払わないことになっているのですけれども、この部分は無償提供ということになっているのですね。サービスだというのです。しかもこのサービスの中に、コンピューターとしては非常に重要な主記憶装置なんというものが入っているそうです。そこら辺のことは別といたしまして、どの部分がただで、どの部分が有料なのかというのは別の議論だと思いますけれども、いずれにいたしましても約半額、ほとんど半額でございますね、半額を無償サービスするというのは、商法でございますからサービスがつくということもわからないわけではございませんけれども、ちょっと半分値引きするというのはひど過ぎないかなというふうに思うわけです。私のような素人の者でも、それはおかしいなというふうに感ずるわけなのですね。それで正価、レンタル価格は全く崩さないで、その装置の一部を無償で貸すという形で値引きしているわけですね。このことを私はひょっとしたらおかしいのじゃないかなと思って、独禁法を素人なりにあけて見てみましたら、十九条に不公正な取引方法を用いてはならないという条文がございます。私はこれに該当するのじゃないかしら、この条文が適用されるのじゃないだろうかというふうな気がするのでございますけれども、これは素人のあさはかさでございましょうか。これは公取委の方に御答弁いただきたいのです。
  242. 奥村栄一

    ○奥村説明員 ただいま先生から御質問のございました点につきましては、具体的なケースということでございまして、私どもの方で実は一件、事件がございまして、それを端緒としてただいま検討しておる段階でございます。したがいまして、先生の御指摘のありました点を含めまして、問題を検討しているということでございますので、御了承をお願いいたしたいと思います。
  243. 金子みつ

    金子(み)分科員 私はいま一つ実例を挙げたわけでございますが、この実例そのものについてずばり御回答をいただきたいという意味で申し上げたのじゃございませんで、こういうふうな例があるがということを申し上げたわけでございまして、御答弁は、原則論としてこういう問題、こういうふうなことについてはどうお考えになるかというふうにお尋ねしたわけですから、この実例は調べていないから返事ができないというふうにお答えにならないで、考え方としてはどうかというのを聞かせていただきたい。
  244. 奥村栄一

    ○奥村説明員 一般論として申しますと、「不公正な取引方法」の六に「正常な商慣習に照して不当な利益または不利益をもって、直接または間接に、競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、または強制すること。」という条項がございます。また一般指定の五の方に「不当に低い対価をもって、物資、資金その他の経済上の利益を供給し、または不当に高い対価をもって、物資、資金その他の経済上の利益の供給を受けること。」ということで不公正の取引方法として規制があるわけでございます。したがいまして、先生の御指摘のものがこれに直ちに該当するかどうか、一般論として見ましてこれに当たるとすれば、不公正の取引方法だというふうにお答えするしかしょうがないというふうに考えるわけでございます。
  245. 金子みつ

    金子(み)分科員 それでは、私は当たると思って考えるのですけれども、いまの御答弁ですと一般論としては当たるだろうというふうに、そう考えてもいいわけですね。ただ、この杉並の例がそれになるかどうかということはこれから検討してみなければわからない、こういうことでございますか。
  246. 奥村栄一

    ○奥村説明員 仰せのとおりでございます。
  247. 金子みつ

    金子(み)分科員 それでは公取の方にお願いをしておきますけれども、いまの例を、実際にあっている例でございますから、お調べになっていただきたいと思います。  それから先ほどの御答弁の中で、聞き及んでおる範囲では、という御答弁がございましたね。あれは聞き及んでいらっしゃるという部分だけで、みずから調査をした上でということではなかったと思うのですけれども、御調査をなさいますかどうですか。なさっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  248. 奥村栄一

    ○奥村説明員 これは先ほど申し上げましたとおり、具体的な問題として取り上げる端緒として取り扱いを検討いたしておるということで御了承願いたいと思います。
  249. 金子みつ

    金子(み)分科員 ちょっとはっきりしませんけれども、検討して進めてくださるわけですね。大変大切な問題ですから、しっかりとお調べになって検討していただきたいと思います。きょうお答えいただかなくても結構でございますので……。  あと、もう時間もほとんどございませんけれども通産省にもう一つお尋ねしたいと思うことがございます。いまの問題なんですけれども、公取がはっきりおっしゃっていただかないので、私自身も何とも困っているのですけれども、しかし、さらに続けて検討していただくということをお願いしたいと思っております。それは委員長、よろしゅうございますね。公取にさらに、検討しているということですので、調べてその結果を教えていただきたいと思います。
  250. 奥村栄一

    ○奥村説明員 検討は十分いたすつもりでございます。
  251. 金子みつ

    金子(み)分科員 それでは通産省にもう一つお尋ねしたいことがございます。いまの件ですけれども、正価の二分の一で貸し出しをするというのはどう考えてもおかしいと思うのですね。通産省もそうお思いにならないでしょうか。私はこれはやはり不当契約だというふうに考えていいのではないかと思うのですね。そうでなかったら、初めの値のつけ方自体が間違っていたのではないでしょうか。高くつけ過ぎているのではないでしょうか。商社ですから、商売ですから、赤字を出してまでも、損してまでも約束をしたり売ったりなどということはないと思うのですね。ですから、二分の一まけてもまだなおかつできるということだとすれば、初めの値段のつけ方が高過ぎたのではないかというような気がいたしますが、そこら辺は御専門の立場でどうでしょう。
  252. 森山信吾

    ○森山(信)政府委員 杉並の例の引用がございましたので、私どもが調べましたところをお答え申し上げますと、三八%程度の値引きということでございます。値引きといいましょうか、無償提供といいましょうか。これはいろいろ沿革があるようでございまして、たとえば今回機械を入れましたのは、ある機械の更新であるわけでございますね。前払っておりましたレンタル料と全く同じ見合いで今回レンタルをしたということでございまして、それがベースになった商談でございますから、メーカーの方とユーザーの方でそれを基準に商談をしたということは、これは商慣習としてはまことにもっともなところではないか、こう思っておるわけでございます。  そこで、いま先生指摘のように、登録された価格、JECCには登録された価格というものはございます。これはユーザーの一応の参考になるようにメーカーから持ってこられました価格を登録をするわけでありまして、これはかなり変動し得る要素を持っているのだろうと思います。と申しますのは、先ほど来申し上げておりますように、実際に値を決めるのはユーザーとメーカーのネゴシエーションによって決まるわけでございますので、これがたまたま三八%引きになった、これはけしからぬではないかという御指摘で、ございますが、私どもは商慣習としてはおかしくはないと思いますけれども、この値引き率が余りに大きくなりますと、せっかく私どもがコンピューター業界を振興したいという気持ちにも反するところもございますので、極端な値引きにつきましては十分な配慮はしていく必要があろうか、このように考えます。
  253. 金子みつ

    金子(み)分科員 時間になりましたので、話が中途半端になりますが、これでやめますが、最後に、ずっと話を聞いていてくだすって、大臣、レンタル会社のやり方も、メーカーのやり方も、何かこういうやり方で正しいのかどうかということ、そして通産省となさいましてはいままでと同じように、やはり今後もこういう政策でお進めになっていらっしゃるのかどうかということについての大臣の御所感を伺いたいと思います。
  254. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 先ほど局長も言っておりましたが、やはりこういう先導産業というものは、特に先進国の仲間入りをしておりますし、経済大国などと言われる日本だけに、やはり奨励策をとっていくことは私必要だと思うのです。私の過去の経験によりましても、昭和二十五、六年ごろだったと思います、自動車産業日本で育成しなければならぬというわけで、いまから考えるとちょっと異様な感じがするような話ですが、昭和二十五、六年のことですね。そこで、通産省が自動車産業育成のためにいろいろ手を尽くしてきた、これが今日巨大な、それこそ優秀な産業に育ったということを考えますときに、いまや電算機業界というものも何百枚の性能を発揮するような新しい機種が開発されつつあるというときに、こういうことを不公平だというだけで簡単にやめてしまっていいかどうか、私は多くの疑問を持つわけであります。しかし、いま御熱心に金子さん御質問になりましたことはじっと承っておりましたので、二の制度及び今後の扱いなどについていろいろ疑問に思っていらっしゃるようでありまするから、そういう点など十分ひとつ検討をいたしてみたいと思います。改善の必要があれば、もとより改善することにやぶさかではございません。
  255. 金子みつ

    金子(み)分科員 時間になりましたので、中途半端でございますが、また別の委員会でさせていただきます。ありがとうございました。
  256. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて金子みつ君の質疑は終了いたしました。  和田一郎君。
  257. 和田一郎

    和田(一)分科員 私は、中小企業の保護育成につきまして三点質問いたします。  まず最初に、私たちも中小企業の皆さん方の相談もよく受けますけれども、その中身はやはり最終的には金融ということになってしまいまして、そういうことで具体的な例で申し上げますと、いわゆる信用保証協会のお世話になるということでございます。その信用保証協会、いわゆる中小企業信用保険法、この運用につきましては、特に現今でございますので、保険公庫から保証協会の代位弁済をもう少しふやしてもらいたい、そういう要望が強いわけです。その点につきまして、これは、ある要望でございますと、百分の七十を百分の八十にしてもらいたいとございますけれども、その辺のところを、現況を踏まえて御説明願いたいと思います。
  258. 左近友三郎

    左近政府委員 いまお話のございましたように、信用保証協会が代位弁済をした場合に、信用保険公庫からのいわゆるてん補率でございますが、一般的には七〇%ということになっております。これについては、要するに信用保険というのが一種の保険でございますので、信用保証協会に対して保険業務を行っておるわけでございますので、結局その保険料それから保険収支というようなものをいろいろ勘案いたしまして決めておりますので、現在のところやはり健全な運営をやるためにはてん補率は七〇%ということでいかざるを得ないというふうに考えております。ただ、これは一般の保険でございますので、特に必要な場合にはこのてん補率を上げようということでやっておりまして、たとえば倒産関係の保険、これは例の連鎖倒産を受けた場合の貸し出しの場合でございます。あるいは円高の特例保険、これは御案内のとおり、円高によります特別融資制度と裏打ちをなすものでございますが、こういう場合と、あるいは特定不況地域における貸し出しの場合、こういうものにつきましては、てん補率を八〇%というふうに上げておりますので、そういう政策目的に応じててん補率を一般よりは高いものをやっておるということで現実の御要望に沿いたいというふうに考えております。
  259. 和田一郎

    和田(一)分科員 御説明いただきましたけれども、結局は、最終的には保険公庫に対するいわゆる国からの支出金ですか、これをふやす以外にない、こう思うのですけれども現状見通しについてお願いします。
  260. 左近友三郎

    左近政府委員 最近はやはり中小企業経営が非常に厳しくなりまして、したがいまして、信用保証協会が代位弁済するものも非常にふえてまいりました。したがいまして、ほっておきますと信用保険公庫の経理内容が非常に悪くなるというようなことがございますので、実は最近その情勢に対応して信用保険公庫に対して出資金の増額をやっておるわけでございまして、五十三年度におきましては当初予算で五百億出資をいたしたようなわけでございますが、景気の変動その他につれまして、これではいけないということで実は補正予算でさらに八十億の追加も行ったわけでございます。さらに、今後の公庫の経営基盤の強化が必要だということの観点から、五十四年度予算案におきましても五百六十五億円というものを計上しておりますので、われわれといたしましても、保険公庫の出資金というものが不足を来さないようなことは絶えず配慮してまいりたいというように考えております。
  261. 和田一郎

    和田(一)分科員 大臣にお願いいたします。  五十三年度が五百八十億、五十四年度の当初で五百六十五億、当然これまた足らなくなると思うのですけれども、今後についてのお含みはどうでしょうか。
  262. 左近友三郎

    左近政府委員 昨年も必要な場合には補正予算で措置をしたわけでございます。したがいまして、今後のことにつきましては、いまの段階で云々申し上げるわけにはいきませんけれども、少なくとも信用保険公庫の運営がむずかしくなるというような事態にはならないように、絶えず気をつけてまいりたいというふうに考えております。
  263. 和田一郎

    和田(一)分科員 それでは、次の問題に移りますけれども中小企業倒産防止共済制度が、これは五十二年の十二月だったでしょうか立法されて、そして去年の四月から始まったと思っておりますが、これは私たちも去年の国会でこれを審議いたしまして、何といいますか、非常に期待されるということで見守っておりましたけれども、始まってみますと、加入者が余りにも少ないのじゃないだろうか、そういう現況のようでございます。  それで、具体的な問題として、携わっている方々に聞きますと、やはりもう少し制度を改善してもらいたい、そうすれば、もっと加入者が多いのじゃないだろうかというような、そういう要望もずいぶんあるのですけれども、始まってまだ一年はたっておりませんけれども、この制度につきまして現況をちょっとおっしゃっていただきたいと思うのです。
  264. 左近友三郎

    左近政府委員 中小企業倒産防止共済制度は昨年の四月から始まりまして、そうして本年の一月末までの加入者数は一万一千四百件余りになっております。  それで、これは御指摘のとおり予定よりは大分少ないわけでございますが、これについてはやはり周知徹底を図るために、いろいろな共済事業団を中心に、商工会議所、商工会の協力のもとにPRに努めておりますので、今後だんだんふえてくるのではないかというように期待をいたしております。
  265. 和田一郎

    和田(一)分科員 ちょっと具体的に聞いてまいります。  一つは、共済金の貸し付け限定額の引き上げなんですけれども、現行一千二百万円、これは現状から考えると、どうしてもやはり二千万円が必要だろう、そういうことですが、それについてはどうでしょうか。
  266. 左近友三郎

    左近政府委員 貸付金の額が一千二百万円ということになっておりますが、これは積み立て掛金、つまり毎月の掛金でございますが、掛金を積み立てた額の十倍相当ということになっております。したがいまして、月の掛金が、幾つも種類ありますが、最高二万円ということになっておるわけでございます。そこで、この二万円、そして結局、貸し付け最高限度が一千二百万円でいいかどうかということにつきましては、制度をつくるときにいろいろ検討したわけでございますが、やはり貸付債権の回収の可能性の問題とかいろいろな点でこうなったわけでございまして、現在の貸付実績を見ますと、平均が五百四十五万円ということになっております。そして、一千二百万円の限度いっぱい貸し付けたケースが四十二件ということで、全体の件数の中の一六%ということになっております。したがいまして、いまの段階では限度に達するような御要望がそれほど多いとはわれわれ考えてないわけであります。しかしながら、これも制度をやりまして一年足らずでございます。今後またいろいろなケースが出てまいると思いますので、今後いろいろ経験を積みました上で、必要があればこの辺についてはまたいろいろ検討してまいりたいということで、実はこの制度が一年たちましたのを見て、いま貸付金だけの点、御指摘がありましたが、いろいろな制度の内容についてわれわれも再検討はいたしてみたいというふうに考えておる段階でございます。
  267. 和田一郎

    和田(一)分科員 二つ目は共済金の貸付事由について、共済金の貸し付けの対象となる共済事由のうち掛金の特例前納に対する共済事由を、金融機関から買い戻し請求のあった割引手形に限定せず、金融機関に担保として差し入れた回し手形も対象とされたい、こういう要望もございますが、この点についてはどうでしょうか。
  268. 左近友三郎

    左近政府委員 この特例前納制度というのは非常に例外的な制度でございます。元来この共済制度というのは、毎月掛金を掛けておきまして一定の期間納付をいたしますと、その納付した期間とそれから貸付金を積み上げた額とで一定の利益が得られる、この場合ですと、貸し付けが受けられるというような制度でございます。したがいまして、この一定の期間積み立てるというのが、共済制度のいわば基本原則になっておるわけです。  しかしながら、この倒産共済の場合は、当時非常に倒産も多発いたしましたし、何とか緊急に役立てたいということから、いわば共済制の基本原則を少し曲げてこういう制度をつくったわけでございます。したがいまして、この原則から考えますと若干無理でございましたので、やはり制度としてはきっちりしたものでなければいけないということで、この貸し付けが受けられる対象も、直ちに資金繰りに支障を来すような割引手形だけに限定をしたということでございまして、しかもこの前納制度というものが、現在前納をしてから三カ月たちますと、この貸し付けが受けられる。一般の場合は六カ月たって貸し付けるということになっておりまして、これも短くなっております。そういうことから、現実にそうあったということはわれわれ申しませんが、考えますと、三カ月でございますから、倒産の可能性を見きわめてから前納するというようなケースも悪用すればあり得るわけでございます。そういたしますと、やはりこれはやや問題ではなかろうかということもございます。したがいまして、そういうことをいろいろ当時も議論した結果、一般の場合よりはもう少しはっきりした、その手形だけに限定しようじゃないかということにいたしたわけでございます。この点はそういう原則を非常に曲げてやった制度でございますので、この程度に御了解願いたいというふうに考えているわけでございます。
  269. 和田一郎

    和田(一)分科員 それじゃ、これ以上はちょっと無理だ、こういうことでしょうか。
  270. 左近友三郎

    左近政府委員 この制度については、これが限度であろうとわれわれは考えております。
  271. 和田一郎

    和田(一)分科員 三番目に、共済金の償還後の掛金の取り扱いでございます。  共済金の貸し付けを受けると、その際の十分の一に当たる掛金はこの共済制度の財源に充てられるため掛金の権利を失うこととされているけれども、当該貸付金の償還後に掛金の権利を相当額復権するような改善をしてもらいたい、こういう意見があるわけでございますが……。
  272. 左近友三郎

    左近政府委員 これにつきましては、この貸し付けを受けますと、いままで積み立ててきました掛金のうちの十分の一が掛金としての権利が消滅することになっております。要するに、共済金の貸し付けをいたしますが、これは御案内のとおり無利子ということで貸し付けておりますが、共済制度を運用するためには何らかの経費が要るわけでございます。したがいまして、その経費としてその十分の一というのをいただいておるわけでございます。貸付金の取り立て、その他いろいろございますので、そういう経費としていただいておるわけでございます。ただ、そういう事務的な経費としていただいているということを明示しておりませんで、ただ十分の一権利がなくなるよと書いてあるだけでございますので、ちょっと一般の方には何かすっきりしないというふうな印象を与えることは事実だと思います。したがいまして、やはり一定の経費を負担をしていただく。これは通常は銀行などは利子でいただいているわけですが、それよりはもっと安い額にしなければいけないと思いますが、そういう点をはっきりさしていきたいということで御了解願いたいと思いますが、本件につきましては、確かにそういうふうな、一般の方がちょっとおかしく思われるような点もございます。したがいまして、先ほど一年たった上で検討すると申しましたが、その中の検討条項の一つとしてこの点もひとつ検討してみたいと考えております。
  273. 和田一郎

    和田(一)分科員 それではその検討条項の中で、ただいま御質問申し上げた点については、これは当然改善しなければならぬ、こういうふうに思っていらっしゃるということでしょうか。
  274. 左近友三郎

    左近政府委員 実質としてある程度の手数料的なものはいただかなければいけないのですが、こういう形がいいかどうかということは検討してみたいということでございます。
  275. 和田一郎

    和田(一)分科員 この問題はみんな言うのですよ。この点だけはもっとということがある。これが改善されれば、もっと入るのじゃないだろうか。これは現実の姿のようでございます。  それからあと一つ、最後でございますが、掛金の特例前納制度でしょうか、現在昭和五十四年三月末までとなっておりますけれども、今後加入普及のためにさらに二年間延長してもらいたい、こういう要望がございますが、これについてはどうでしょうか。
  276. 左近友三郎

    左近政府委員 特例前納制度につきましては、先ほどの手形のときにお話し申し上げましたように、非常に原則を曲げてと申しますか、原則を超えた制度でございまして、通例ならばこういうことはやらないのですけれども先ほど申しましたように倒産が多発したという事態、それからまた中小企業の方々、なかなかすぐにこの制度になじみがたいというようなこともあろうかと思いまして、特に一年間を決めたわけでございます。したがいまして、これは法律でも附則という経過措置として決めておるものでございますので、これを一年延ばすということはなかなかむずかしいと思います。ただ、こういうことを御存じないといけませんので、実はことしの一月から大々的に商工会、商工会議所を通じて、この三月末でこの特例制度を終わります、したがって利用される方はぜひいまのうちにしてくださいというPRを一生懸命にやっておりますので、いまのうちに、まだ一カ月ございますから、入っていただいて、この特例制度を当初法律で決めたとおりに終わらしていただきたいというのが私たちの考え方でございます。
  277. 和田一郎

    和田(一)分科員 それでは大臣にこの点について御所見を伺いますけれども、今後この制度のさらに充実強化、これはどう思われますか。
  278. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 充実強化することは私は必要だと思いますよ。まだこれは発足間がないのですから、十分実情を踏まえて充実強化の方向に向かって努力いたしたいと思います。
  279. 和田一郎

    和田(一)分科員 三番目に質問いたしますが、商業近代化地域計画というのがございます。相当あちらこちらでこの計画指定を受けて、国から補助金をいただいて、その地域中小企業の発展のために寄与しておりますけれども、この制度の沿革といいますか内容といいますか、ちょっと簡単に御説明願いたいと思うのです。
  280. 左近友三郎

    左近政府委員 この中小商業というものを合理化するということが、中小企業の、ことに商業対策では一番基本的な問題でございまして、そのためには、しかし単なる個々の商店だけをどうこういたしましてもなかなかむずかしいということで、商業が地域的な性格を持っておりますし、また商業施設というのは単に物を売るというだけじゃなくて一つの都市機能も果たしておりますので、そういう意味で地域的な商業地域というものを近代化していくということが非常に重要だということになりまして、昭和四十五年から発足をしてやっておるわけでございます。それで最近におきましては、特に大型店の進出というようなこともございますので、地域ぐるみ商業の近代化を図っていくという面で商業近代化地域計画というものを今後も重点的に実施いたしたいというふうに考えているわけでございます。
  281. 和田一郎

    和田(一)分科員 五十三年度は何地域指定されたか、五十四年度は大体どういうふうなのか、おっしゃってください。
  282. 左近友三郎

    左近政府委員 五十三年度は十三地域指定をいたしました。五十四年度につきましては、各地の御要望も非常に高いものでございますので、現在予算的には十六地域やれるような計画をいたしております。
  283. 和田一郎

    和田(一)分科員 具体的な例で申し上げますが、私は栃木県でございますが、栃木県の小山市、ここはいま新幹線の工事ができておる。新幹線ができるために駅を今度はデパートのような形の駅にするわけです。それ以外にあそこは大型店が物すごく押し寄せているという感じでございまして、大型店の占めるシェアが何とすべての小売面積の四八・五%、そういうことなんです。人口は現在頭打ちである、そういうことなんですけれども、こういう実態はどうなんでしょうか。本当はそれでいいのかどうか、消費者のためにはある程度いいのかもわかりませんけれども。しかし、市の発展そのものに対してはどうかということが非常に疑問になってまいりますけれども、その点についてはどうでしょう、御所見は。
  284. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のありました小山市の場合、われわれも調べましたが、大型店のシェアが相当大きいということは事実でございます。なお大型店の出店につきましては、御案内のとおり大規模小売店舗法というのがございまして、一件一件地元と話し合いながら決めていくというルールでございまして、結果としてそうなりましたが、そのケースごとには一応妥当だと判断でできたということになるわけです。しかしながら、この大型店のシェアが非常に高いというような場合には、われわれといたしましては、やはりその地域の中小小売店の方の近代化を集中的に進めまして、大型店のいわば攻勢にも十分対抗できるような小売店あるいは小売店の集団というものをつくり上げたいというふうに考えているわけでございますので、そういう地点につきましては、特にいろいろな対策を集中してやりたいというふうに考えております。
  285. 和田一郎

    和田(一)分科員 そこで先ほどの商業近代化地域計画、そういうことも通産省でやっておられると思いますけれども、実際問題としてそういう大型店が集中した場合に、この計画に沿って本当に現在のいわゆる既成の小売店が守られているかどうか、その点はどうでしょうか。
  286. 左近友三郎

    左近政府委員 大型店の進出に対抗して小売店の振興を図るという場合にもいろいろなケースがございます。商店街全体の近代化計画ということで商店街の整備事業を推進する。これは中小企業振興事業団での低利融資の道もございますし、あるいは商店街だけではなくて、むしろ地域全体の計画の中で、いわば都市計画的な配慮の中で商店街というものをどう見るかというようなやり方もございます。そのほか商店街の日常活動、つまり販売の方法とか宣伝の方法とかいうようなところを近代化して対抗するというようないろいろなことがございまして、それぞれにわれわれの方で振興するための予算をある程度きめ細かく考えておりますので、それを現地の御要望に応じて、またその現地の実態に応じた対策を講じていきたいというように考えております。
  287. 和田一郎

    和田(一)分科員 それでは最後に大臣にお聞きいたしますが、大店舗法がございますけれども、結局は大型店が地元と話し合って出てくる、それを拒むわけにはいかぬわけです。それは店舗面積の削減だとか、そういうことで対処する以外にない。しかし、ただいま申し上げましたような大型店が半分ぐらいのシェアを占めているという極端な例にもなってまいりますと、これはよほど既存の小売店の近代化をやっていかなければならぬ、このようになってまいります。私は、この計画自体をまだまだもっと改善する必要があると思いますけれども、この点について、今後の方向大臣の御所見をお聞きしたいと思うのです。
  288. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは昨年改正をしたところでありまするが、どうしてそういうことになりたのでしょうね。地元が承知の上で、結果としてさっき長官が答えましたように、それは非常に影響が大きい。ちょっと全国的にもまれな例でしょうね。そうなったということはいかにも改善しなければならぬ点が多々あると思います。問題は、もうできたことをいまさら売り場面積を狭めろと言ってもこれは係争になるだけでしょうから、やはりその影響を最も受けるとおぼしき小売商、商店街、そういったところが協力態勢で近代化を進める。この近代化方途については、中小企業庁においてもいろいろな施策を持っておりますので、ケース・バイ・ケースで親切に相談に乗りたいというふうに考えます。
  289. 和田一郎

    和田(一)分科員 以上で終わります。
  290. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて和田一郎君の質疑は終了いたしました。  高橋高望君。
  291. 高橋高望

    高橋分科員 中小企業庁長官に、前任の岸田さんはいろいろ私たちの声を聞いてくださった、そのお気持ちをひとつ引き継いで中小企業問題になお一層の御協力を願いたい。まず冒頭にお願い申し上げておきます。  そこで、きょうは当初から大臣にちょっといやなことを申し上げるのですけれども、昨年の秋口に私はワシントンへ一人で出向きまして、中小企業の代金支払い問題の調整をしようといって出ましたときに、事前に御連絡はして行ったのですが、通産省の方のお仕事で向こうでそういう窓口、接触がないからちょっとお手伝いできないというお話で、そんなことはないとは思ったのですが、現地へ出向いて余り大使館のお手数をかけるのもどうかと思いましたので、私個人の力で二、三関係筋に出向きまして、案の定アメリカ中小企業の抱えている問題というものの幾つかに触れることができたわけです。  そこで、私まず通産省にお伺いしたいことは、現在ワシントンでは余りこういう中小企業の問題なんかに関しては、窓口になっておやりになるようなお仕事の方は置いておられないのですか、いかがでございます。
  292. 左近友三郎

    左近政府委員 そういう事態があるとすれば、まことに申しわけないことでございまして、当然ワシントンの大使館にはそういうものについて明るい者も行っておるわけでございまして、われわれとしてはそういう点で十分行動させたいと考えているわけでございます。もしそういうことがございますれば、今後十分注意させるつもりでございますので、御容赦願いたいと思います。
  293. 高橋高望

    高橋分科員 私がお尋ねしたいことは、別に何でもアメリカのまねをしろと言っているわけでもなければ、よその国の制度を日本にそのまま取り入れてこいと言っているわけでもないのです。ただ、こういう国際化時代の中で、公正な競争ということを盛んに諸外国がいま日本に対して要求してきている一つに、中小企業に対する取り扱いの方法、国としてあるいは社会として取り扱っている状態等について、やはりいろいろな意味での情報収集をしていらっしゃらなければ、何かのときにとんでもないところで、政府の大きな方針に対してとかくの声が出てきてしまうのではないか。そんな点で、今後アメリカならアメリカの例をとった場合には、中小企業問題に関してアメリカのどういうところと接触をなさろうとお考えになられますか。
  294. 左近友三郎

    左近政府委員 アメリカには日本と同じように、日本流に訳せば中小企業庁というふうな役所がございます。具体的な連絡はそこととって、状態の把握に努めておるということでございますが、実は中小企業関係者、これは政府だけではなくて中小企業団体、それから中小企業関係の学者などを集めまして、国際シンポジウムというのを毎年開いております。昨年は秋にカリフォルニアで開いたわけでございますが、私も出席いたしました。そういうことで、情報を集めるルートは幾つもございます。したがいまして、アメリカにつきましては中小企業庁を初め、そういう団体ともよく連絡をして情報をとっていきたいと考えております。
  295. 高橋高望

    高橋分科員 それでは長官にお伺いしたいのですが、カーター大統領の行政の一つの姿勢として、関係省庁に一年に一回大きなテーマを出して、それに対して準備し、あるいはいまおっしゃるシンポジウムも含めて全国大会等々をやらせているという仕事の仕方がございますけれども、スモール・ビッグ・ビジネス・コミッティー、中小企業庁と訳すのですか何と訳しましょうか、とにかくカーター大統領に対して、コミッティーの方で提出したプランニングは今年度はどのようになっておりますか。
  296. 左近友三郎

    左近政府委員 まことに申しわけないのですが、現在私まだ承知しておりません。
  297. 高橋高望

    高橋分科員 それはおかしいですね。実は私どもは薄々知っておるのです。そしてむしろ、日本の政党並びに関係のある方、関心のある方はこれの傍聴人くらいの資格はいつでも与えるからこの会議に出てきてくれないかということまで言われているのですが、それが政府の方に対してお話がない。私はどうも冒頭からいやなことを申し上げるようですけれども中小企業に対するお取り組みに何か、うたい文句じゃない、別の世界があるような気がしてしようがないのです。大臣、この辺はいかがでございましょう。
  298. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 それは私も実は知らないのですよ。まことに恐縮なことです。  しかし、それはアメリカよりも、中小企業については日本の方が、その対策、施策については数段まさっておるのですね。したがって、いまあなたがおっしゃるように、日本から来て自由に討議してくれということは、むしろ日本に敬意を払った意味を含めてだと思います。そうかと言って、小企業に対するカーター・プランを知らないではいけません。ですからそれは直ちに調べますが、日本中小企業対策というものは相当なものです。これは私が就任して以来、先進諸国の大使などが訪ねてこられますが、中小企業対策については日本に見習わなければならぬ、学ばなければならぬということを、お世辞の範囲ではなくて、いわゆる社交辞令ではなくて、本当に政策的な意味で言っておられる。私はそういうふうに理解しておりますが、いかがなものでしょう。
  299. 高橋高望

    高橋分科員 たまたま私の教えたのは小さなことで、企業庁長官がお忙しい中ですべてについて御承知おきいただけるということも期待はいたしませんけれども、われわれが個人の立場で関係のところへ参りますと、現実にそういうケース、そういう声が上がってくるということ、大臣のおっしゃるような意味でわれわれがレクチュアする方になるのかもしれませんけれども、私は必ずしもそうではなくて、やはり一緒に考えていこうという雰囲気の中での傍聴をしないかという誘いであったように受け取っておりますので、どうかひとつ関係の筋々を通じてネットワークを張っていただきたいなと思います。
  300. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これはよく承りました。さっきも長官が答えて、繰り返す必要はありませんが、それは個人的な不勉強ですよ、ワシントン大使館におる通産省出向職員の。十分注意いたします。
  301. 高橋高望

    高橋分科員 余り厳しくおっしゃらないでください、現地にいらっしゃる方が一段と窮屈になってもいけませんから。  そこで主題に入らしていただくのですが、きょうは私、実は悲願とも申し上げていいかと思いますが、日本の国に現行慣習化してしまっている手形支払いの問題というものを取り上げて考えたい、こう考えるわけです。  と申しますのは、いろいろ御調査があろうかと思いますが、私、五十二年から五十三年にかけての企業の倒産というものを、アメリカと日本と比較してみた。企業倒産があの時代に日本にふえて金額もふえた。アメリカはどうなっているのだろう、アメリカの経済の方がわれわれよりははるかに規模も大きく、当然のことながらトラブルが起こるだろうと思っておりましたところが、驚いたことに件数も少なければ金額もアメリカの方が少ない。どうしてアメリカの方がこういったことがあるのかと私なりに考えてみますと、やはり支払い代金の決済制度の中に問題が一つあるように思われてならない。それは日本の場合には、連鎖倒産のときにもございましたけれども、手形の支払いが大きいがために、一つの不始末がどんどん波及していってしまう。そこで、手形支払い自体というものを日本の国の商売の慣習の中から何とかない状態に持っていきたい、それがいきなりは無理であるとしたら、少なくとも少なくしてまいりたい、私はこんなふうに考えておるわけです。  昨年一年、景気の低迷の中でいろいろと企業活動が行われたわけでございますけれども、昨年の間に支払い手形と現金で支払われた比率というのは、前年度に比較して大体どのように変化がございましたでしょうか、お教えいただきたいと思います。
  302. 左近友三郎

    左近政府委員 私の方でやっております調査によりますと、下請企業の受け取り現金比率は大体四〇%強ということになっておりまして、これにつきましては、ここ一、二年そう大した変動はないというのが現状でございます。
  303. 高橋高望

    高橋分科員 変化がないということは、昨年減量経営に成功した日本の国のビッグビジネスが、依然として同じような支払い体系を持っているということになるのですか。そのとおりに理解してよろしゅうございますか。
  304. 左近友三郎

    左近政府委員 御指摘のとおりだと思います。
  305. 高橋高望

    高橋分科員 それは実は困るのです。そこなんですよ。昨年の動きの中で、この手形のまず支払い率ですね、現金比率を改善するチャンスはずいぶんあったのではないかと私は思うのです。これが全然変わってないというのが現在中小企業庁で把握しておられる数字です。私は実態はそうじゃないと思うのですが、再度ひとつお答えいただきたいと思います。
  306. 左近友三郎

    左近政府委員 調査の結果は、前年に比べましてつまり一昨年に比べますと、手形と現金との比率、いわゆる現金比率はほとんど変わっておりませんが、手形のサイトといいますか、こっちの方が二・九日短縮化しておるというのが現状でございます。そういうふうな変化が見られたということでございます。
  307. 高橋高望

    高橋分科員 それはわかりました。ということは、現金比率は依然として変わってない。  私が申し上げたいのは、ある中小企業の団体からのお話なんですけれども日本でも有数の、会長さん、社長さんが経団連のメンバーになっておられるような会社で、新年のごあいさつのときに、手形の支払いの比率を変えるのはお年玉のかわりにやってあげるというようなあいさつをされる場合があった、あるいは支払いの日にち、サイトを短縮するというのは何か特別な恩典であるかのごとき言動を平気でなさった、また、それをそのまま聞いているというのが現在の中小企業の大多数の姿勢なんですね。この辺については、中小企業庁長官、お立場から、お名前のとおり中小企業を守るというか、世の中の社会性からいっても貫く何かがいただきたいと私は思うのですけれども、どんなものでございましょう。私はあえてビッグビジネスの名前は申しません、罰があるといけませんから。
  308. 左近友三郎

    左近政府委員 中小企業庁といたしましては、やはり手形というものが極力少なくなる、つまり現金比率がふえるということを願っておるわけでございまして、下請企業振興法に基づきます振興基準でも、下請代金はできるだけ現金で支払う、「少なくとも賃金に相当する金額については、全額を現金で支払うもの」だというふうなことでいろいろ指導をしておりまして、極力現金比率を高めたい、またこのサイトにつきましても極力縮めたいということでいろいろ指導をしておるわけでございますが、まだまだ中小企業庁も力足らずでございまして、現実には改善は遅々たるものがあるということでございますけれども、今後もわれわれは十分努力をしていきたいというふうに考えております。
  309. 高橋高望

    高橋分科員 お言葉だけ聞いているとさつと聞き流せるのですけれども、ビッグビジネスに対してはいろいろな意味で支払い問題について実は御調査なさっているのです。けれども、この手形をまず少なくして現金比率を高めろよとかあるいは手形のサイトをもっと短縮しなさいというような勧告を一年間にどれぐらいなさって、おられますか。恐らくこれは、調査なさっている割りからいったら取り上げる率にまで達しない程度に、この問題に対してはほとんどタッチしておられないのじゃないですか。
  310. 左近友三郎

    左近政府委員 現在、こういう下請の支払い状況につきましては、下請代金支払遅延等防止法に基づきまして通産省中小企業庁の出先の通産局が審査をしておりまして、五十二年度で年間大体三万二千件程度、これは公取もやっておりまして、公取が年間大体二万件程度の調査をやっております。これを調べた上で、問題があるものは立入検査をし、それからまた文書審査をして、必要な場合には行政指導、勧告をするということでございまして、ことに中小企業庁、通産省サイドで調べたものは、最終的にわれわれの行政指導が効かない場合には公取に措置を要求いたしまして、代金法、さらには独禁法の手続をとって措置するということをお願いしております。  これについて、最終的な措置要求の件数でも五十一年度までは実は年間十件とか二十件という程度でございましたが、五十二年度には百八件というものを公取にも措置要求しております。こういうことでございますので、この下請代金支払いについて、いまのような問題についても今後も少し厳しく実施していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  311. 高橋高望

    高橋分科員 ありがとうございました。事情はわかります。ひとつ社会公正の上からいっても、現在までよりは厳しく御勧告をいただきたい。これは一罰百戒でございまして、どこか一つの会社をねらい撃ちでおやりになれば、あとのところはみんなそれにつられて、情報網が発達して、おれのところがやられたということになるとずっときちんとやるようになりますから、全部が全部やってほしいとは申しませんから、一罰百戒の方針で、どこか運の悪いところが出るかもしれませんけれども、これをやっていただいて、あとへ波及効果をねらっていただきたい、こう思います。  そこで中小企業庁長官にあえてお伺いするのですけれども、アメリカの特にこういう中小企業に対する代金支払い、これについてはどのような御理解を持っていらっしゃいますか。
  312. 左近友三郎

    左近政府委員 欧米諸国では、下請代金決済に限らず、一般に取引で手形を使うという習慣がほとんどないというふうにわれわれは承知しておりまして、通常の支払いは現金とか小切手というものでございます。確かに日本はこういう制度があるということが、実は先ほど申しました、ことに連鎖倒産の起きやすい状態があるということでございます。したがいまして、われわれとしては、中小企業立場から言えば、欧米のような取引の慣習があるのが非常にうらやましいわけでございます。しかし、日本の手形制度というもの、これもやはり長年にわたって取引において形成されたものでございますから、一朝一夕にこれをどうこうするというのは非常にむずかしいということで、実は手形の条件をだんだんよくするという形で努力しておるというのが現状でございます。
  313. 高橋高望

    高橋分科員 これは、私ども党の立場で申し上げたいのですけれども、私たち民社党の立場からいたしますと、下請代金については、現金または小切手で支払うように努めていただきたい、行政のあり方としてひとつそういう方向を出していただけないか、まずこう思いますが、その辺についてはいかがでございますか。
  314. 左近友三郎

    左近政府委員 先ほども申し上げましたが、下請企業振興法に基づきます振興基準というものを告示で出しておるわけでございますが、その中に、下請代金の支払いについてはできる限り現金で支払うという、先ほど申し上げました趣旨のことがうたってございます。したがいまして、われわれとしては、この振興基準というのは望ましい形ということでございますので、たてまえとしてはやはりこういう形でいかなければいけないということを明確にしておるわけでございます。したがって、そのたてまえになるべく近づくようにこれから努力をするということでやってまいりたいというふうに考えております。
  315. 高橋高望

    高橋分科員 私どもは、実は法律案というような形まで考えまして、現金または小切手で支払えということを国の習慣にしたいと思っておる悲願があるわけです。お含みおきをいただきたいと思います。  それから同時に、下請代金の支払い期限ですね、現在は、御承知のとおり品物を納入してから六十日以内に現金であるか手形であるか別にして、何らかの形で支払えというふうになっているわけですが、これを現在の社会慣習あるいは事務手続一切を含めた御判断の中から、これは局長自身の私見で結構なんですけれども中小企業庁のお立場で、何日ぐらいまで詰められそうだなというふうに御判断を持っておられますか。
  316. 左近友三郎

    左近政府委員 この六十日ということを決めた背景は、私の推測でございますが、やはりある時期に勘定を締めまして、それからまた請求をする、そしてまた、それから支払うというふうな段階がございます。したがいまして、納入の場合のいつの時期に締め切るかというようなこととも関連をすると思いますので、との六十日というのはそういう勘定の締め切り、それから請求、支払いということから考えて、少なくともぎりぎりの線を決めたのじゃないかと思います。しかしながら、決めたときから日もたっておることでございますから、現在の時点でこれがいいかどうかということはわれわれも絶えず見てみたいと思っておりますが、いまのところそういう決算のやり方から見て、すぐに短縮はむずかしいのではないかというふうに考えております。
  317. 高橋高望

    高橋分科員 私ども党の立場からいたしますと、現行の六十日から四十日ぐらいにはなるのではないか、こういういろいろ案を考えておるわけです。  たとえば事務手続の問題にいたしましても、最近の能率化された状態からいたしまして、少なくともこの制度をつくられたときの六十日よりは短縮できる。これを短縮しようと思うか思わないかがむしろ問題であって、これはお願い事項になりますが、私どもの党の立場では、締め切り後四十日以内に支払えるのじゃないか、もうそういうところまで日本の国のいろいろの機能は発達しているのじゃないか、こういうふうに考えているということだけひとつ御記憶にとどめていただきたいなと思います。  さらに、とかく問題になりますのは、こういうことをいろいろこの場所でお願いをすると、中小企業庁並びに公正取引委員会の方もそうなのですけれども、ペナルティーを恐れるからある程度以上入れないということを言われるのです。ペナルティーというのは、中小企業者にとって何らかの形で支払い側が罰を科す、あるいは仕事を取り上げてしまうとか、減らしてしまうとか、そういうことについて、これは御配慮がないと、やはり中小企業側とすると、いろいろお願い事をして私どもなんかに代弁させるということを控えてしまう。それから実態もわれわれにとってかゆいところに手の届かないような話になってきてしまう。この辺について今後、お取り上げの仕方として何かもう少し前向きに、こういう問題がいままで以上にじかに企業庁なら企業庁あるいは公正取引委員会等に届くことのできるような、そういう組織づくりというか、考え方というのはお考えいただいたことございませんでしょうか。
  318. 左近友三郎

    左近政府委員 確かに御指摘のとおり、本件は、非常に親企業と下請中小企業との間の力関係、その他がございまして、われわれがいろいろな情報をとろうといたしましてもなかなか集まりにくい、特に下請関係のたとえばアンケートなどをとりましても、回収率が非常に悪いというのがいままでの実例でございます。しかしながら、われわれといたしましては、ことに個々中小企業自身はなかなかそういうことで声を上げられないからこそ、役所がそれにかわっていろいろ文句を言わなければいけない。まさにこういうところは政府のやるべき仕事だというふうに考えております。  ただし、絶えず取引の実態をわれわれ自身がウォッチすることはむずかしいものですから、そういう方のいろいろな声を聞かなければいけないということでございますので、中小企業の方々の声をどういうふうにとらえるかということは、われわれも非常に苦慮をしているところでございますが、これについてはいろいろ工夫をいたしまして、極力声を吸い上げて、そしてそれによって一般の中小企業の方ではやれないようなことを役所として大企業にいろいろ注文をつけたいというふうに考えておりますので、そういう点で御了承願いたいと思います。
  319. 高橋高望

    高橋分科員 大臣、時間が参りましたので、お願いを兼ねて最後に、党の立場、私の立場を申し上げておきたいと思います。  私、実は下請代金支払い遅延防止という、この名前は、まことに屈辱的な、発展途上国と言うとしかられてしまいますけれども、何か非常にそういうふうな感じでとられるのですね。私自体としては、この下請代金支払遅延等防止法なんという名前でなしに、下請取引適正化案、下請取引適正化、こういうふうにひとつ省内のお声をまとめ上げていただく方向で、いろいろな面でひとつ御勘案いただきたい、こう思います。  それからまた、私自身、国会開会中ですけれども、この五月にちょっと出向きまして、またわれわれの仲間内の各国の下請業者との話し合いをシカゴでやってまいりますけれども、どうかひとつこういったものに対してのレポート等も小冊子でお届けするようにいたしますから、よろしく御検討願いたい。お願いを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  320. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて高橋高望君の質疑は終了いたしました。  依田実君。
  321. 依田実

    依田分科員 きょうは、最近いろいろな意味で話題になっております金の問題についていろいろお尋ねをしたい、こう思うわけであります。いろいろな話題と申しますのは、先日も新聞を読んでおりましたらば、いわゆる「公設金取引所設置の声」というのがありまして、「通産省も前向き検討」、こういう新聞記事などもあります。いわゆる金の現物取引の問題だろう、こう思うのでありますけれども、また一方では芳しからぬ世評、金の取引をめぐっての話もいろいろございます。そういうものを含めまして、この金の問題についてちょっとお尋ねをさせていただきたい、こう思うわけであります。  御承知のように、日本人というのはそもそも余り金というものに対して嗜好がない。これまで戦争で日本の国土を侵されたことがないとかそういうことで、金というものにいままでは国民的に余り嗜好が強くなかったわけであります。また、中央銀行の持っております金の準備率も非常に低い、こういうことだったわけでありますけれども、しかし、だんだん世の中変わってまいりまして、経済が国際化してくる、あるいはまた石油危機などを含めまして世界的に換物運動、そういう高まりもあるわけでありまして、いままでの日本人と金という考え方とまた違った時代がだんだん来るのじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。  そこで、昭和四十八年に金の輸出入が自由化になっておるわけでありますけれども、最近、金の輸入の量などから見ましてこれまでと違う変化があらわれておるのかどうか、その点からちょっとお聞きをしたい、こう思います。
  322. 福原元一

    ○福原説明員 金の地金の輸入につきましては昭和四十八年の四月に自由化されまして、自由化当初の第一年度は九十四トン輸入がございました。その後四十九年から下がりまして四十八トン、五十五トン、七十五トン、昨年度五十九トンという数字で推移しております。五十三年度に入りまして若干急増の気配を見せておりますが、まだ年度の数字といたしましては、集計が終わっておりませんのでわかりませんが、百トンを超すのではないかというふうに考えられております。
  323. 依田実

    依田分科員 五十三年度急増の気配あり、こういうことでございますけれども、その原因についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  324. 福原元一

    ○福原説明員 金の輸入の増加が今年度著しいと申し上げましたけれども、上期ベースで見ますと前年の同期と比べまして約倍ということでございますが、需要別に見ますと、各部門においてかなりの増加率を示しておりまして、たとえば電気通信機械では三八%の増、それから歯の医療用として二七%の増、メッキ用として二二%、装身具用として三二%、時計用として二五%、かなり大幅な増加を見ておりますが、いわゆる民間が保持するというような、民間退蔵されているのではないかと見られるものは特に大きな伸びを示しておりますが、伸びといたしましては約四倍ということでございまして、数字といたしましては四トンから十七トンぐらいにふえているのではないか、数字としては小さい数字だと思います。
  325. 依田実

    依田分科員 いわゆる工業用とかあるいは装身具用とかいうことではなくて、いわゆる民間の退蔵する、そういうものも数字は小さいけれども四倍ぐらいの、ふえ率としては非常に大きい数字になっておる、こういうお話でございます。これはやはりインフレヘッジであるとかそういう換物運動の一環としてそういう傾向が徐々にあらわれてきておるのではないだろうか、こういうふうに考えてもいいのじゃないか、こう思うわけであります。  そこで、これまでは民間の方々の金の売買というのは非常に限られておる。ほとんどが指輪だとか時計だとかそういうものに加工された上での売買でしたから余り問題はない、こういうことだろうと思うのでありますが、これからは、いわゆる金の延べ棒とか、延べ棒とまで大きいものではありませんけれども、加工じゃなくて金自体として取引が行われる。こういうことになってくると、さあいまの取引の現状、こういうもので果たしてスムーズにいくのかどうか。いまいろいろ言われておるのは、たとえば売るときは、つまりお客さんの方にしてみれば、買うときには簡単に買えるけれども、それをいざ少し利益が出た、つまり投資として買っておいて、ある時期にそれを売りたい、こういうときにはなかなかスムーズにいかない。つまりもと買った店へ持っていかなければだめであるとか、あるいは手数料を相当取られる。それからまた、その価格自体がお客さんとしては、現実、いま世界の価格との比較がよくわからない。こういうことで、いろいろ苦情もあるのではないかと思うのであります。いままではその苦情が小さいことだったからよろしいのでしょうけれども、これからはそういうふうに民間の金の嗜好というものがふえてくるに従って、その苦情というのもいまの取引の形態ですといろいろ出てくるのではないか、こう思うのでありますけれども、いまの取引の形態の中で問題のあると思われる点、こういう点についてちょっとお話をいただきたい。
  326. 福原元一

    ○福原説明員 金の地金は現在一般消費者はどこで買えるかということでございますが、これにつきましては、金の地金商それから百貨店あるいは貴金属店等で一般の消費者も自由に買えるわけでございます。  おっしゃいました、一般の消費者が今度は売り戻すといった場合には、現在のところ、金地金商が若干の手数料を取りまして一般消費者から金を購入しているということでございますが、この金地金商と申しますか、買い取りを行っております会社は、十四社、一協同組合、全国的に見ますと約七十社前後と思われますが、これにおいて現在のところ特段不便があるという話は、私どもはいまのところ聞いておりません。ただ、金の自由化が実施されましたのは四十八年でございまして、まだ日が浅いということもありまして、一般消費者の金の地金の保有ということは、わが国においてはまだ一般的でない、大量に行われていない。先ほど今年度上期で十六トンと申し上げましたけれども、年間を通しまして、従来のところ二十トンぐらいでございます。五年間で退蔵されたとしても百トンということでございます。これは、アメリカやフランスに比べますと、六千トン、四千五百トンという数字が言われておりますが、これらに比べれば非常に小さいということで、個人の売買において、現在のところ、まだ特段の支障があるというふうには私どもは聞いておりません。  それから、同時に金取引に関しまして、自由化後、日が浅いということで、一般の消費者において、金の取引に関する知識というものがまだ広く普及しているということは言いがたいと私ども思いますが、この点につきましても、いまのところ売買に支障があるというふうには私どもは思っておりません。通産省といたしましては、一般消費者が金の取引に関する正確な知識を早く持つというようになる。そのために業界に対して積極的なPR活動を行うように指導する、そうして健全な現物市場というものができ上がるということを私どもは希望しております。
  327. 依田実

    依田分科員 いままでは、最初から申し上げますように、まだまだ日本人というものの金との結びつき、こういうものが少ない。それですから、苦情も少ない、こういうことだろうと思うのであります。しかし、これからだんだん民間の金所有というものがもしふえてくるとするならば、たとえば品質を保証する機関の必要性であるとか、価格などについては、日本経済新聞でしたかに出ておりますけれども、もっと一般の人にわかりやすい形で相場というもの、価格というものがわかるようなそういう機関をつくっておく必要があるのじゃないか、こういうふうに思うのでありますが、現在、不平不満はないということですが、やはり将来に対してそろそろいろいろな準備が必要だろう、現物の取引に関する準備が必要だろうと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  328. 福原元一

    ○福原説明員 申し上げましたように、私どもといたしましては、国民消費者が健全な金に対する知識というものを持つということも必要であろうかと思いますし、同時に、金の地金の売買を行う業者の育成ということも必要かと思いますが、これにつきましては、特に金を買い入れます場合には検定、特に自分の店で売った地金については、  これは自分の店で売ったわけですから、信用して買えるということができますが、それがほかの会社で売られた地金あるいは指輪だとかその他の装身具であった場合には、もう一度検定、品位の鑑定というものが必要でございます。それらの設備を持つまでに至る業者が現在まだ少ないということでございますが、業者がそういう設備を持つと  いうことは、また一方、これは需給の問題もあろうかと思います。それらを勘案して見ておく必要があるのではないかと思います。
  329. 依田実

    依田分科員 いま課長のおっしゃったような、品質を保証する、つまり標準の品質保証をするようなそういう機関、そういうものも必要になってくると思いますし、また、いまのところは、そういう意味で金というものに対する日本人の感覚というのは、まだしっかりできていない。そういうところをまたねらいまして、いろいろよからぬ業界、いわゆる先物取引的なそういう形での金の売買みたいなものをやる、そしてまた、それの被害に遭う、こういうケースも多々あると聞いておるのでありますけれども、その辺の実情というのはどうなっているのでしょうか。
  330. 島田春樹

    ○島田政府委員 いまお尋ねの件でございますが、いわゆる世間で言われます金のブラックマーケットにおける被害というものがある、その辺の実態はどうかということでございますけれども、これを正確に把握することはなかなかむずかしい状況にございます。ただ、私ども、本省それから通産局で消費者相談の窓口がございますが、その相談の窓口の金取引に関する相談件数というのを見てみますと、五十三年度、昨年の四月からことしの一月までで七十二件ということでございます。ただ、お断りしておきますが、この件数は必ずしも被害だけでなくて、いわゆる金取引の一般的な取引相談という問い合わせみたいなものも入っておるわけでございますから、この七十二件がすべていわゆる被害件数であるということではございません。  それでは、一体どういった被害があるかということですが、いろいろなものがあるようでございまして、一様には申せませんが、たとえば例を挙げますと、金の将来の引き渡し時点において価格が下がるという場合、その解約の危険性を回避するために予約金を取る。その予約金の積み増しを要求されるというようなことで、その要求に耐えられなくて取引をやめる。そうすると多額の違約金を払わされるといったケース、あるいは予約金を払い込んだらその直後に連絡がなくなったといったケース、これは極端なケースでございますが、そういったいろいろなケースがあるようでございます。
  331. 依田実

    依田分科員 そういういろいろ弊害のある取引が行われる、そしてまた被害にかかられる人がいる。これも大変なことなので、これに対するいろいろな対策を練っていただきたいわけであります。  通産省として、それに対していろいろPRして金というものに対する知識を日本人に与える、そういう意味でいろいろ対策、PRをおやりになっていると思うのですが、どういうことをおやりになっておりますか。
  332. 島田春樹

    ○島田政府委員 私どもとしては、いまお話がありましたように、こういった問題について一番必要なことは正確な知識を皆さんに持っていただくことが一番大事だと思いまして、被害を防止するために消費者に対する注意喚起というものに力を入れてきております。いままでやっておりますのは、たとえば私どもの方で発行しております「消費者ニュース」で繰り返し消費者に対して注意を喚起するようなPRをする、あるいはこれは取引所と紛らわしいわけでございますので、取引所の関係者でございます全国商品取引所連合会あるいは全国商品取引員協会連合会というのがございますが、こういった関係者に対しましていわゆる金取引が商品取引所法に基づく取引ではないということを消費者に周知させる、そしてその誤解を防ぐように指導しております。業界の方としては全国紙数紙に意見広告をいままで載せております。  それからもう一つは、実際の現物の取引というものが正確に行われるように、先ほど鉱業課長から話がありましたけれども、実際に金を買う場合の知識を一般消費者に啓蒙するような業界としてのPRの資料をつくってPRするというようなかっこうをしておりますし、さらにまたことしに入りましてから関係省で連絡会議を開きまして、PRの資料の作成等について打ち合わせをしながら啓蒙活動を強化することにいたしておるわけでございます。
  333. 依田実

    依田分科員 言ってみればそういう事故を防ぐ、これも一つの対策ではございますけれども、しかし、長い目で見ると金の現物取引はだんだんふえてくる趨勢だろうと思うのであります。そこで現物取引、これについて、ではいまの取引のやり方がいいのかどうか、そうなるといろいろ問題があるのではないか、こう思うのであります。各いろいろな業界あるいは団体から、もう少し金の現物取引についての市場を整備したらどうだ、こういう意見も出されているのじゃないかと思うのであります。これまで金に関する団体でありますたとえば産金鉱山であるとか第一次問屋、そういうものでつくっております金問題研究会というものもあるやに聞いております。こういうところから出されておる提案、あるいは商品取引所関係で言えば東京繊維取引所、こういうところから出されておる議論、どんな議論がいま各界から出されておるでしょうか。
  334. 福原元一

    ○福原説明員 先生のお話がございました地金商、商社等々から成っております金問題研究会につきましては、昨年来健全な金の一般消費者への供給あるいは需要を満たすということを図るために研究を続けてきておりまして、私どももそれを指導してまいったわけでございます。  結論といたしまして、現在のところ、市場のあり方については供給者側も需要者側も現状を変えたいということについての意見はなかったということ、変更することについては時期早尚であるという結論に達したと聞いておりますが、私ども引き続き、金の健全なる売買につきましては、貴金属地金協会を通じましてPR資料も最近つくりまして、全国にこれを配布したいと考えておるものができ上がりましたので、こういうものを通じましてPRの徹底を図りたい、このように考えております。
  335. 細川恒

    ○細川説明員 商品取引関係の方については現在商品取引所法に基づきます商品取引が行われておりますが、その関係者の一部におきまして、金をその他の商品取引所法に基づきます商品取引品目と同様に上場するという希望が表明されておるのも事実であります。
  336. 依田実

    依田分科員 いま金問題研究会の方の議論は現状でよし、こういうお答えのようでございますけれども、それは当業者の方ですから、自分のいまの権益、権利、そういうものを守りたい、保守的な考え方があるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。その商品取引所関係の方から出ている議論、これもまた、時期尚早というそういう点も多々あるわけであります。しかし、数字をここに持っておりますけれども日本は世界各国の中央銀行の金の保有高に比べますと圧倒的に低い、こういうことになっておるわけであります。それでは中央銀行がいま持っておる資産を金にかえる、これは国際経済の上からいってなかなかできないことでございます。ではそういう弱点を補っていくとすると、民間における金の保有をふやしていく、これは長い目で日本の経済の体質を強くしていくことだろう、こう思うのでありますけれども、これは政府としては公式にはなかなか言いにくい点だと思います。しかし、そういうふうにするのが、私たちは考えてみるに、いいのじゃないか、こう思うのであります。そういう意味ではもう少し金の現物取引がしやすい、こういう面で整備を図る必要があるのじゃないかと思うのですが、その点、いかがでしょうか。
  337. 福原元一

    ○福原説明員 金を一般の需要者が自由に買えるようにあるいは売り戻すことができるように、ということは、しやすくなるようにという先生のお言葉だと思います。  これにつきましては、現在個人が金を資産として保有することについて何らの制限はないわけでございまして、その辺の流通は全く自由になっておるわけであります。ただ、先ほど申し上げました金問題研究会に対しましても、一般の需要者がたとえば買う場所はデパートで買えるにしても、売り戻す場合にまだまだ場所が少ない、不便であるというようなことについて、お客様に対してどうあるべきかということも今後の検討課題であろうということで現在宿題を出して勉強さしておるところでございます。
  338. 依田実

    依田分科員 昨年の商工委員会で、公明党の松本忠助さんが御質問になって、それに対して島田さんがお答えになっている中に「現物市場というものができてくるということが、ある意味でそういった被害を防ぐ上でも非常に重要な役割りを果たすであろうというふうにも考えております。」こうあるのです。ここに現物市場というものが出てくる、そういうことがいいのだろう、こう答えている。それはどの程度のことを想定されておるのでしょうか。
  339. 島田春樹

    ○島田政府委員 いろいろ議論がございますが、私ども基本的に考えておりますのは、いまいろいろ金の取引に対する被害が出ておるわけでございまして、考えてみますと、金の取得が財産保全の有効な手段というふうにだんだん考えられるに至っているという背景はそれなりに理由があると考えられるわけであります。したがって、国民が安全に金の現物を取引できるというかっこうになっていかなければ、どうしてもいろいろの被害というのはなかなか防げないという意味で、やはり現物が取引されるようなメカニズムと申しますか、それが現在もあるわけでございますけれども、それをさらに整備し、強化していくというかっこうで進むことが、逆に言うと、現在の金のブラックマーケットの被害を防止をするという上に一番大事なことだろうというふうに私ども考えております。それをどういうかっこうでやっていくかということになるわけですが、それは先ほどちょっとお話がありましたが、現在もう金問題研究会というところ、これは精錬業界、それから商社、金属地金商の三者で構成されるような研究会というものがございます。そこでいろいろ検討、勉強をして、昨年の九月には一応金の取引上の問題については中間報告を出しておるわけですが、現在、先ほどお答えいたしました鉱業課の方で指導しておりまして、こういう実際の実物を扱っておる業者の人たちが研究をしながら、今後安全に金が取引できるというようなふうにはどういう点に問題があるのか、どういうふうにしていったらいいかということを研究していってもらうというふうに指導しておられるはずでございまして、私どもそういうかっこうで業界が努力される。その上でまた私どもとして必要な支援があれば支援をしていくということで臨みたい、こういうふうに考えております。
  340. 依田実

    依田分科員 なかなかその具体的なお話が出てまいらないのでありますけれども、金というもの、いま日本は、インフレヘッジというのは土地、こういうふうにすぐ頭に浮かんでくるわけでありますけれども、しかしいまみたいに土地の価格が高騰する、これは非常に困るわけでありまして、そういう意味で、インフレ自体があっても困るのでありますけれども、しかしインフレヘッジとして金というものがその代替としてまたあるようになれば、それはまた一つの意味もあるのじゃないか、こういうふうに思うわけであります。それと同時に、日本は生産大国にはなっておりますけれども、なかなか本当の意味の国際的な経済大国になっていない。汗水流して一生懸命働いてためた外貨が、ある経済変動で紙くずになるというのじゃ困るのでありまして、そういう意味で金をふやしていく、それには民間の金をふやす、こういう方策がいいのじゃないかと私は思うわけであります。一方には、大体金の嗜好の強い国は、フランスのことを言って申しわけないのですが、フランスとか、いわゆるもう経済の発展しない国、逆に経済の発展しておるところは、日本とかアメリカとかというのは余り金に対して嗜好がないということで、本当は金に嗜好がない国の方が将来伸びる国だ、こういう議論もあるわけでありますけれども、しかし先ほど私が申し上げたような議論も成り立つわけでありまして、せっかく大臣、お聞きになっていらっしゃるものですから、大臣、ひとつ日本の金に対する取り組み方、これについて大局的にどういうふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  341. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 国民の関心が金に対して非常に高まってきた。これは保有数量を見ても、全体量はさっきも大したことはないと言っていますが、一年間で四倍保有量がふえるということは相当なものですね。そうなると、やはりブラックマーケットというものを否定すること、そして正常な取引ができやすい環境をつくること、これはいまの商品取引所に上場するということでなくて、もっとほかに方法はいろいろあると思うのですよ。そういうことに向かってやはり検討を重ねなければならぬなということを、私、いまこの問答を聞きながらしみじみ思っておりました。十分、ひとつ配慮していきたいと思います。
  342. 依田実

    依田分科員 最後に、いま商品取引所のお話が出ました。通産の皆様方のお考えでは、いまの日本の商品取引所そのもののあり方、姿勢についていろいろ御批判があって、なかなかその商品取引所にいわゆる先物取引としてはとても乗せられない、こういうお考えだろうと私は思うわけであります。しかし、いまの商品取引所、これがいい、悪いと、それから将来日本に国際的な商品取引所をつくるのがいいか、悪いかとは、これはまた別問題だろう、こう思うのであります。そういう意味で、商品取引所行政、将来の問題について、行政官庁である通産省としてはどういうふうにお考えになっているか、一言伺って終わりにしたいと思います。
  343. 島田春樹

    ○島田政府委員 いまお話のありました取引所の問題でございますが、先生御案内のようにその取引所というのは、商品取引所法では、商品の価格の形成それから売買その他の取引を公正にするとともに、商品の生産及び流通を円滑にすることを目的とする、こういうのがねらいでございます。したがいまして、この取引所に上場する場合に、やはり当該商品の生産、流通に実際携わるいわゆる当業者というものの判断が一つは十分尊重されなければいかぬというふうに考えるわけですが、当業者の金の上場に関するいまの感じというものは、先ほど先生おっしゃいました金問題研究会の中間報告を見ますと、現在のところ時期尚早である。これは詳しくは省略いたしますが、現在のところはまだ実需取引というものはほとんど現物の現金取引であるというようなこと、それから現行法のもとではなかなか国際的規模の取引所が成立する可能性は薄い。したがって早急に商品取引所に上場するということになると、国際相場と乖離した市場ができた場合に、かえって混乱が起きるというようなおそれがあるというような理由を挙げまして、現時点では取引所の早急な設置は時期尚早である、こう言っているわけです。  それからもう一つ、われわれが考える場合に大事なことは、金が、先ほども話がありましたように消費者にとって関心の高いものであるという点からしますと、やはり委託者の方の観点からも慎重な配慮が必要だろうというふうに思います。  それからさらに金の問題に関しましては、やはり国際金融市場との密接な関係があるというような点も考えなければいけませんので、そういった観点からも慎重な検討が必要だということで、いろいろ問題がございますので、この問題については非常に慎重な立場考えていくべきであろうというのが現在のポジションでございます。
  344. 依田実

    依田分科員 終わります。
  345. 笹山茂太郎

    ○笹山主査 これにて依田実君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算通商産業省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の特段なる御協力によりまして、本分科会の議事を無事終了することができましたことをここに厚く御礼申し上げます。  これにて散会いたします。     午後五時四十八分散会