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沖本分科員 私は、
総理府総務長官に、先般
予算委員会の一般質問でも御質問申し上げたのですが、同和問題につきまして問題点をしぼってお伺いしたいと思うわけです。何分関連質問で十分だけやっただけでということで、本日も、特別措置法の期限の延長ということにちなみまして、問題点を投げかけるような意味合いで御質問していきたいと思います。
まず、ある同和団体の月刊誌の中に寄稿されておる東洋大学の学長の磯村英一先生の一文があるわけでございます。非常にその示唆するところが多いのでお読みしてみたいと思います。時間の都合でいろいろな点、はしょりますので……。
「
国会審議の焦点」というところで、
衆議院の
内閣小委
員会からの
要請で、参考人としての意見を述べる機会をもった。ただ私がいちばん関心をもったのは、いったい
国会議員の多数は、同和問題に対して基本的にどのような考えをもっているかについての疑問である。
民間団体によると、衆参両院の
議員の大多数は、与野党の所属を問わず、いずれも“
強化延長”に賛成の署名をしている。地方自治体の首長達は、県・市・町村等いずれの階層も同じように賛成の
要請をしている。しかし
国会での
審議を見たり聞いたりすると、それは“
強化”という面での意見はほとんど触れられずに、同特法の実施によって十年間に“積残された計画・
経費”に論議が集中したことである。
あと、間を飛ばします。
「二、付帯条件の課題」という点です。
延長の
審議のために“小委
員会”がつくられるとなると、たんなる期間延長の決議だけでなく、若干の付帯条件がつけられた。
第一は、同特法の実施にともなう、あまりにもきびしい地方自治体財政への圧迫である。
“特別措置法”という名において、指定された同和地区内で実施する施設・
事業について、原則として“三分の二”の国の補助が規定されているのが同特法の根幹である。しかし、同和
事業以外の
事業についてもいわれるように、国の示す基準単価が、一般の価格とは、大きく違っている
現状からすれば、地方自治体は、わずかの――時には五分の一程度にもなる――補助金で、莫大な財政負担をしなければならなくなっている。現に滋賀県内のある町は、町民の約四割が被差別者であり、その
要請も強いために、町の財政の七割が同和対策に向けざるをえなくなり、ついに部落・地区外の住民から強い反対を受け、町長自体が辞職にまでおい込まれるという事実がある。
以上のような状態は、同和問題の解決は国の責任だとうたった同和対策
審議会の精神に添わないことになる。このような実態は、法の三年間の単純延長という形で解決できるものかどうか、そのような点は、たんなる付帯決議でお茶をにごすことはできないほどきびしい現実である。
「三、三年間の課題」
来年四月に同特法は改めて、三年間の新しい発足をする。しかし、すでに述べたような
国会審議の状態からすると、さし迫った“積み残し
事業”の処理等に追われて、たちまち終ってしまうのではないかという懸念がある。それにしても、はじめに述べた、市町村財政の窮情に対しては、なんらかの特別の特別の配慮をしないかぎり、同和対策の完遂などはまったく期待することは無理である。しかも、この問題は別としてもこの三年間は、行政がどのようにして、その主体性のある措置をとるかにある。すなわち、
第一に、地域社会に適応した同和対策を実現するために、“政策
方針決定”の機関として、改めて地方別に「同和対策
審議会」を設けることが考えられる。
同和問題は、あくまで
国民的課題でなければならない。そのためには、同和対策の直接の対象となる被差別者の組織だけではなく、いろいろな住民組織や学識経験者を加えて、地域に適当した対策の樹立が必要である。
いわゆる“窓口一本”という状態は、必ずしも一般的なものでないことは、現在“休業中”の
総理府の同和対策協
議会においても
合意を得ている問題である。行政当局の問題認識の甘さが、同和問題を
国民全体の目からそらす結果ともなっている。地方
審議会を設置して問題を、県民・市民の前に“開かれたる同和対策”として実現すべきである。
同じことがナショナル・センターである中央
政府についてもいえる。三年延長にあたっては、行政の“調整機関”である同対協に、特別に“諮問”してその意見を聞いた。本来ならば
政府も、
審議会を設置してその意見を聞くぐらいの
姿勢があってもよかったのではなかろうか。したがって、付帯条件にみられるように、すべての問題を将来に残したことになる。地方
審議会の設置が必要であり、地方自治体は、その決定によって、あとは行政の主体性において実施すべきである。
第二は、過去十年間の
努力にもかかわらずいまだに
国民的課題となっていないことへの反省である。すでに小中学校では、同和問題についての理解を求めるテーマが与えられている。しかし、
国民全体としては、もちろん、県民・市民全体としてもその課題とはなっていない。その理由はいろいろあげられるが、この点では行政当局はもちろん、民間の団体にも同じ
趣旨で協力を必要とする。その焦点は、簡単な言葉でいうと、同和問題を「だれでも、自由に易しく」話すことができるような
姿勢を確立することである。
ほかのところはもう省略させていただきます。
この中に非常に示唆される点があり、今後の課題がずいぶん含められておるというふうにも考えられますし、いわゆる参考人としての意見を述べられ、その後の
国会審議の
経過をごらんになりながらこういう意見をまとめられておられるという点があるわけですけれ
ども、とりあえずこういう問題について、これから三年間の延長という課題の中でいろいろな問題点を消化していかなければならないし、また残された残
事業についてどういう形で解決していくか、あるいはこの延長をまたさらにしなければならないか、いろいろな点がこれから示唆されていくわけですけれ
ども、そういう問題を含めまして、
総務長官は今後に対してどういうお考えでこの問題の処理に当たっていかれるか、この点についてのお考えを伺いたいと思います。