○浜田
委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました
昭和五十四年度
一般会計予算外二件について賛成、
日本社会党提案、公明党・国民
会議、民社党共同提案、
日本共産党・革新共同提案の各組み替え動議については反対の討論を行うものであります。
昨年末のわが国
経済を見ると、財政主導のもとで景気の速やかな
回復を図るため、臨時異例のものとして編成された大型予算による公共投資の拡充と施行促進の効果が浸透し、さらには秋の補正予算の刺激効果もあり、秋までの激しい円高のデフレ化を緩和しながら、順調な景気
回復傾向を示しております。また同時に、円高メリットもあって、物価も安定的に推移しております。年末には消費、鉱工業生産、在庫等の
経済諸指標も明るさを取り戻してきました。ことに
民間企業の経営
努力が実り、
企業の業績は改善の方向に進み、
民間経済の活力にようやく期待が持てるようになり、内需を中心に景気は
回復に向かっていると見ることができるのであります。
かくして、五十三年度の
経済成長率は、内需において八・二%の伸びが見込まれますが、
輸出の減少、輸入の増大による海外余剰のマイナスにより、実質六%程度になるものと推計され、また、
経常収支の黒字は二兆七千億円、約百三十三億ドルと見込まれております。
経済成長率が当初見通しの七%目標を達成しないことに対し、海外から非難を受けるのではないかと心配する向きもありますが、内需を拡大し、対外均衡を図るという
政府の政策は成果を上げたと見るべきであり、
東京サミットを控え、
政府においては、この間の事情を諸外国に十分説明し、納得を得るよう望むものであります。
他方、
経済構造の変革に伴って生じた雇用
情勢の厳しさはなお改善されるに至っておりませんし、また、いまだに立ち直りがおくれている特定の不況産業、業種、地域が多く残っておりますので、これらに対する
対策を一段と充実強化することが景気
回復の傾向を着実にするためにぜひとも必要であります。
しかし、
石油ショック以降の不況を乗り切るため、財政が景気
回復の主役を果たしてきたことによって、ここ数年大量の公債発行を余儀なくされ、発行残高の累増を招きました。いまや、公債発行の抑制に努め、財政再建の足がかりをつくることが強く求められております。
昭和五十四年度予算は、以上の景気
回復の定着と、財政再建の二つの目的を持って編成されたものでありますが、以下、本予算に賛成する理由を申し述べることといたします。
第一は、予算の規模と目的についてであります。
五十四年度
一般会計予算の規模は、前年度予算に対し一二・六%の伸びであり、四十年度予算以来の低い伸び率で、前年度の伸び率を大幅に下回っており、厳しい態度で歳出の縮減を図ったことを示しています。しかし、名目
経済成長率と比較すると、五十四年度伸び率の見込み九・五%を三・一ポイント上回っており、
経済に対する適度な拡大効果が期待されておりますので、財政の肥大化に歯どめをかけ、同時に、景気の浮揚に積極性を持つ予算となっており、財政の健全化と景気
対策という二つの相反する目的を両立させていると言い得るのであります。
この点について、さらに詳しく申し述べますと、まず景気
対策についてでありますが、
一般会計予算のうち、需要創出効果の高い投資部門の伸びは一八・六%と、一般会計全体の伸びを大幅に上回っており、特にその主役である一般公共事業
関係費は二二・五%の伸びで、五十一年、五十二年両年度の伸び率を上回っております。もちろん、臨時異例の増加を図った昨年度には及びませんが、拡大した同年度予算をさらに大きく上積みして、大型の規模を確保しております。公共事業費が総需要に対して大きな波及効果を発揮することは、本年度後半の景気の伸びからも明らかであり、住宅、下水道、環境衛生施設等、国民生活に密着した社会資本の整備が推進されますので、地域社会の
経済、雇用に大きな効果をもたらすものと期待できるのであります。
次に、財政の健全化についてでありますが、前述のごとく、一般会計のうち、投資部門の伸びが大幅であるのに対し、経常部門は一〇・九%の伸びで、国債費を除くとわずか八・六%の伸びにすぎません。しかも、行政事務費について三年度にわたり増額していないことは、物価の上昇を考慮するとき、きわめて厳しい措置であり、
政府みずから冗費節約に
努力する姿勢を高く評価するものであります。そのほか、補助金の縮減合理化、
各種施策の優先順位の配慮など、緊縮財政に努め、能率的な安上がりの
政府づくりを目指しておりますが、
政府においては、行政の簡素効率化のため一層の
努力を払われるよう要請するものであります。
他方、社会保障、文教、農漁業、中小
企業、エネルギー
対策等の緊要な施策に対しては、重点的に経費を配分し、きめ細かい配慮が行われております。また、発展途上国に対する
経済援助について、五十五年度を目標とする三年間倍増の公約が余裕を持って達成できるよう、大幅に増額されていることは、国際信用を高める上にきわめて有意義なことと
考えるものであります。
第二は、雇用
対策についてであります。
雇用
対策の中心は景気の
回復であり、
企業の健全な発展がなければ雇用の拡大は望むべくもないのであります。そのため、本予算が積極的な役割りを果たさんとしていることはさきに述べたとおりでありますが、雇用についても、直接に画期的な
対策を講じており、本年度公共事業が相当の雇用吸収力を持つほか、社会福祉施設あるいは文教施設の整備費等、国が関与する公共サービス部門の拡大は直接多くの雇用の創出につながるもので、
政府の姿勢を評価することができるのであります。また、中高年齢者に対する雇用開発給付金
制度の拡充、定年延長奨励金の充実等、大幅な雇用創出と離職予防の措置を講じ、その他失業給付、職業訓練等について、きめ細かく措置しているのでありまして、これらの
対策が実効を上げるよう
政府の
努力を願うとともに、一言つけ加えておきたいことは、高年齢者雇用
対策の強化により、若年者の雇用が妨げられ、あるいは職場を奪われることのないよう配慮しなければなりません。
この際、雇用について強調したいことは、すでに高学歴化社会の到来下における青年の雇用に対し、国際化、高福祉社会にふさわしい新産業、新職業の開拓に努め、若い人々が生きがいを感じて働ける職場づくりが必要であります。
第三は、税制改正等についてであります。
五十四年度が厳しい財源事情にあることは言うまでもなく、税収その他の歳入の確保を図ることが必要であります。今回は、揮発油税の引き上げ、租税特別措置の合理化等により、四千四百億円余の増収等を図ることとしております。また、たばこ定価、国鉄運賃等の公共料金の値上げを行うこととしておりますが、財政収入の確保及び受益者負担の適正化の見地からもやむを得ないと思います。ことに、二十五年間放置されていたいわゆる医師税制問題に取り組み、その是正を図ったこと、有価証券譲渡益課税を強化したこと、
企業関係租税特別措置についても相当の縮減を行ったことは、国民の税負担の公平を確保せんとするものでありまして、日ごろ不公平税制の是正を叫ばれる野党の諸君も賛意を表されるところと信じます。
しかしながら、このように税制の改正を行った後においても、税収は昨年とほぼ同額しか見込まれず、歳出の増加に見合う額が公債の増額に頼らざるを得なくなり、十五兆円余の公債を発行するに至りました。
この財政危機を打開するため、
政府は、五十五年度に一般消費税を導入する意向を固め、その準備を進めておりますが、国民の協力を得て円滑に導入を図るためには、その必要性、
制度の内容等について、各党並びに国民各層各界と話し合い、その
理解を得るために
努力を重ねることが必要であります。
この際、早期警戒機E2C予算について申し上げたいのであります。
五十一年九月、ミグ戦闘機が北海道に侵入し、わが国の防空体制の欠陥に国民は大きな衝撃を受け、低空侵入機を防ぐため、レーダー搭載の早期警戒機の配備の必要性が痛感されたのでありますが、早期警戒機については、長い歳月をかけ、検討に検討を重ね、すでに「防衛計画の大綱」で決定されており、ようやく五十四年度予算においてE2Cの購入経費が計上の運びとなったのであります。
今般、航空機輸入に関する疑惑が生じたことはまことに遺憾でありまして、かかる疑惑の究明は徹底して行われなければなりませんが、
防衛庁長官が強調しているように、E2Cの購入は、米国
政府と
日本政府との
政府間
契約であり、疑惑の入る余地は全くあり得ないのであります。本機は、
契約から完成まで数年の歳月を要するので、米国
政府との
契約の時期を失することなく、予算の凍結解除の一日も早からんことを切望してやみません。
以上、五十四年度予算に賛成の理由を述べましたが、本予算の目的を達成するかぎは、賃金、物価の安定にあります。
昨年暮れ以来、卸売物価に急激な上昇が見られ、また、海外の原料品の値上がり、ことにOPECの値上げに加えて、
イラン情勢の見通し難による原油需給の引き締まり等、主として海外のインフレ要因が注目されているのでありますが、
石油については、
石油ショック時と異なり、先進主要国間の協力体制も整い、わが国の備蓄量も増大しており、また、国内の物資値上がりについても、きめ細かい個々の政策をとることにより、これを抑えることが可能であります。
公共料金の値上げが物価高を招くという意見もありますが、消費者物価の上昇率が
昭和三十年代前半以来、経験したことのない三%台にとどまっているからこそ微調整を実施したものであり、国民の負担の公平確保のためにも、ある程度の公共料金の引き上げは必要であります。
しかし、
政府も認めているとおり、物価はすでに警戒水域に入っておりますので、本年度の財政金融政策は、物価の安定に最優先順位を与え、慎重に運営されることを要望するものであります。
最後に、
昭和五十四年度予算が各党の賛同を得られず、いままさに否決されようとしております。このような
事態に至ったことに対し、まことに遺憾に思う次第であります。景気にもほのかな明るさも見え始め、ようやく国民も
経済の先行きに対し、安堵感を抱き、将来に対し期待を持つに至った現在、予算の一日も早い成立を待ち望んでおります。
ことに、百二十七万人に上る失業者や中小零細
企業を初め、不況産業の多くは、雇用の機会と職業の確保に全力を挙げているとき、われわれは、一日たりといえども予算の執行に猶予は許されないのであります。わが党は、これまで予算編成の際、各党の意見のうち、必要なものは取り入れ、審議の過程においても誠意をもって話し合いを行い、意見の一致するものも多くありましたが、しかし、われわれの真意を十分くみ取られぬまま
委員会において否決されることは、断腸の思いを禁じ得ません。まして、各組み替え案を見るとき、増税すら叫ばれる時代に減税を主張するに至っては、財政に対し無責任きわまりないものと言わざるを得ません。
したがって、私は、
政府原案に賛成、各組み替え動議に反対するものであります。
終わります。(拍手)