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山原委員 「君が代」国歌化ということですね。これは
文部大臣のように象徴であってというお話もありますけれども、その論議をきょうするつもりはありません。
しかし、このことによってずいぶん大きな変化が出ております。
一例を挙げますと、東京都の場合ですが、「国旗・国歌について」というのを東京都
教育管理職員協議会が出しております。これは校長さん、教頭さん等によって組織されておるものでございます。これがそうでございますけれども、この中に、現在
文部省の
指導要領はこれを式典その他で掲揚することが望ましいと書かれておるのでありますが、これはもう全く
学校においてどういうかっこうになるかといいますと、たとえばこの「君が代」問題で
学校の中に紛糾があったり
意見の食い違いが出たりする場合の一問一答、校長や教頭がどういう
態度をとるべきかということの指導でありますが、全部職務命令でやるわけですね。たとえば「解決する上で、校長が
基本的に堅持していなければならないこと」としまして「無国籍者を作ってはならない、」。
基本法に心身ともに健全な
国民の育成に当たらなければならぬと書いておりますが、これをさらに「職員
会議で多数の反対
意見があってもこれに惑わされず、校長の信念や
学校管理運営権を貫くことです。この信念と
責任感と不退転の勇気で、すべての校長教頭に「
教育正常化のために」起ち上っていただきたい」。抵抗や反対の強いときは「校長はどのように職員を説得したらよいでしょうか。」これは都内にあった例を述べて、こういうふうにしなさいと書いております。校長が
学校の実態をよくつかんでおく。校長、教頭、幹部職員の協力体制を打ち立てておく。「PTA幹部の意向を握り協力を求める」。そして儀式
委員会で否決をされた場合、職員
会議が紛糾した場合、結局これは職務命令でやるべきである。そしてその中でPTAの支持、協力を求める。PTAの強い要望だからぜひ実施したい。PTA幹部の了承を取りつけておく。必要な場合は父母全員にアンケートをとろう。了解が得られないようならPTA総会を開いて賛否両論を開き、決定しよう。「管理職に強く、父母に弱い反対勢力を抑えた事例も多く出ている。」というようなことですね。さらに職務命令で実施をする。そのために揺るがぬ決意が必要である。「校長自ら実力行使」を行って、それを妨害する場合には公務執行妨害でやる。こういうことまで書かれておりまして、全く
学校の中を敵と味方に分けて、そして強行していくという体制が出ております。その中には、妨害をする者については写真あるいは見ておる者の、現認者の証言を得るというようなこと。まるで
学校の
教育というものが教職員の話し合いによって解決をしていくという立場ではなくて、こういうところまで来ているわけです。そして、結局こういうことでございますから職務命令ということでやられまして、私の調べたところ、東京で職命で強行されたところが新宿、江東、北区、荒川、練馬、足立、葛飾、江戸川、北多摩、南多摩、これらの
学校の随所にこういう
事件があらわれておるわけでございます。しかも国歌化されたこの時期が強行する絶好のチャンスだ、ここで校長の管理運営権を確立せよ、そうしなければ主任制もだめになってしまうというところまで書かれているのです。これはもう
教育の観点ではなくて、全く
学校の管理運営というものが強権によってやられているということを示しておると思います。
指導要領に国歌という名前をつけただけでここまで来るわけです。
それからまた、千葉県の例でございますけれども、ある市でございますが、ここでは、市内の小中
学校十七校のうち六校、朝と下校時、朝は国旗掲揚、帰るときは国旗の降納、そのときに「君が代」が流れると、どこにいても直立不動の姿勢を児童も職員もとらなければならぬとなっております。よそ見をすると、しゃべるんじゃない、気をつけろと、びんたが飛ぶ場合もあると報道されております。昨年小
学校一年生の
子供が下を向いてそのときに足で絵を描いていたのですが、突然びんたが飛びましてけがをしております。以来、登校をいやがる
子供になっておりますけれども、この問題を職員
会議で取り上げるにも取り上げることのできないような、タブーのような状態で、何しろ職務命令でやられるものですから、全くこれが話し合いにならない、こういう状態が出ておるのであります。そのほか、長崎、鹿児島、兵庫、岐阜等におきまして、
教育委員会からこの現場に対する通達が出されまして、「望ましい」と書かれておることがこのような強制となってあらわれておるのであります。
私は、いま千葉の例を申し上げましたが、
韓国にこういう状態があるようです。これは毎日新聞の昨年十月八日付でございますけれども、「午後六時、各市で国旗の降納がおこなわれるが、合図のサイレンが鳴ると全市民がいっせいに掲揚塔の方向にむかって起立しなければならない。これをしないものは、外国人であっても警察に突き出される。この行事は、二、三年前から「国を愛する心は国旗を愛する心から」という市民運動からはじまり、その盛りあがりを待って内務省管轄下の行事となった。これを伝える記事には、「
政府が狙っているのは「民族主義」の高揚だ。愛国心を抱かせることにより国防意識を強め、侵略に対する——という遠大な安全保障プランでもある」と書いております。これは朝日ジャーナルにも出ておるわけでございまして、このようなことが
韓国で行われるということは、私は初めて知ったわけでございますが、
学校の現場においても、こういう事態まで進行しておるということを
考えますと、これを
学校教育という面から見まして、
子供の
教育で、職場が何でも言える態勢があるときに初めて
教育は発展をするわけでございますが、
文部省が
指導要領の中に「国歌」とつけただけでこれだけの強制が行われていって、
学校に一定の混乱が起こっているということは正しいことであるかどうか。「君が代」を歌うことはりっぱだとおっしゃる
文部大臣でございますけれども、しかし
文部省の出しているのは「望ましい」です。強制せよとは書いていないわけでございますが、現実にはこれが強制となって現場にのしかかっているこの実態について、
文部省はどうお
考えになっておりますか、伺いたいのであります。