運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1979-02-17 第87回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月十七日(土曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 竹下  登君    理事 伊東 正義君 理事小此木彦三郎君    理事 塩川正十郎君 理事 浜田 幸一君    理事 毛利 松平君 理事 大出  俊君    理事 藤田 高敏君 理事 近江巳記夫君       小渕 恵三君    越智 伊平君       海部 俊樹君    倉成  正君       正示啓次郎君    砂田 重民君       田中 龍夫君    田中 正巳君       竹内 黎一君    谷川 寛三君       中村 弘海君    楢橋  進君       野呂 恭一君    羽田野忠文君       藤田 義光君    坊  秀男君       松澤 雄藏君    安宅 常彦君       井上 普方君    石橋 政嗣君       岡田 利春君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    兒玉 末男君       竹内  猛君    平林  剛君       安井 吉典君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       和田 一郎君    大内 啓伍君       寺前  巖君    東中 光雄君       大原 一三君    加地  和君  出席国務大臣         法 務 大 臣 古井 喜實君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 金子 一平君         文 部 大 臣 内藤誉三郎君         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         農林水産大臣  渡辺美智雄君         通商産業大臣  江崎 真澄君         運 輸 大 臣 森山 欽司君         労 働 大 臣 栗原 祐幸君         建 設 大 臣 渡海元三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       澁谷 直藏君         国 務 大 臣         (内閣官房長官田中 六助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      三原 朝雄君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      金井 元彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      金子 岩三君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上村千一郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 中野 四郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         警察庁刑事局長 小林  朴君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  古賀 速雄君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁施設         部長      多田 欣二君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         科学技術庁原子         力安全局長   牧村 信之君         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      上村  一君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         沖繩開発庁振興         局長      美野輪俊三君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁地方振興         局長      佐藤 順一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長         兼外務省条約局         長       中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省証券局長 渡辺 豊樹君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      宮崎 知雄君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省学術国際         局長      篠澤 公平君         厚生大臣官房会         計課長     加藤 陸美君         厚生省公衆衛生         局長      田中 明夫君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省援護局長 河野 義男君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省経済         局長      今村 宣夫君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省貿易         局長      水野上晃章君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         運輸大臣官房審         議官      杉浦 喬也君         運輸省鉄道監督         局長      山上 孝史君         運輸省自動車局         長       梶原  清君         運輸省航空局長 松本  操君         海上保安庁長官 高橋 壽夫君         労働省労政局長 桑原 敬一君         建設省道路局長 山根  孟君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治大臣官房審         議官      石原 信雄君         自治大臣官房審         議官      関根 則之君         自治省行政局長 柳沢 長治君         自治省財政局長 森岡  敞君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       高木 文雄君         参  考  人         (日本銀行総裁森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     小渕 恵三君   櫻内 義雄君     越智 伊平君   田村  元君     楢橋  進君   中川 一郎君     中村 弘海君   根本龍太郎君     谷川 寛三君   藤波 孝生君     竹内 黎一君   稲葉 誠一君     竹内  猛君   矢野 絢也君     和田 一郎君   瀬崎 博義君     東中 光雄君   山口 敏夫君     加地  和君 同日  辞任         補欠選任   小渕 恵三君     奥野 誠亮君   越智 伊平君     櫻内 義雄君   竹内 黎一君     藤波 孝生君   谷川 寛三君     根本龍太郎君   中村 弘海君     中川 一郎君   楢橋  進君     田村  元君   竹内  猛君     稲葉 誠一君   和田 一郎君     矢野 絢也君   加地  和君     山口 敏夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 竹下登

    竹下委員長 これより会議を開きます。昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、一般質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。正示啓次郎君。
  3. 正示啓次郎

    ○正示委員 連日予算委員長を初め委員方々閣僚政府委員御苦労さまですが、きょうは自民党の一般質問最初に若干お伺いをいたします。  まず最初に、最近野党方々で、いま審議の対象になっております予算を修正すべきではないかということで寄り寄り御協議中というふうなニュースが流れておりますが、大変これは重大な問題だと思います。  そこで、私は、限られた時間でありますから端的に伺いますが、これは防衛庁長官にお願いしたいと思うのですが、最近のわが国を取り巻く国際情勢、特にソ連動きというものは、国民が全部重大な関心を払っておる問題であると思うのであります。前の国後択捉の基地問題、そしてまた私はゆうべニュースで聞いたのでありますが、津軽海峡冬景色じゃなくて春景色、まさに春が来ようとする津軽海峡にやぼなミサイル駆逐艦が遊よくしておる、こういうことを防衛庁の方から、いわゆる海上自衛隊ですか、これを見つけた、こういうことであります。大変私は残念なことだと思うのであります。こういうことが初めて起こって、これがますます日本国民のこの北辺に対する関心を高めつつあるということはまことに遺憾だと思うのであります。  こういうときにわれわれ国会といたしましては、与党野党問わずこの国民関心にこたえる体制を築かなければならぬと私は考えるのであります。それを、やはり予算与党が組んだのである、あるいは政府が出したのだから予算のことは別だ、ひとつ気に食わぬものはこの際削ればいいとかあるいは凍結をしておけとか、こういう御議論もあるようでありますけれども、私は、かねてから内閣委員長もやらしていただいて、そのときも与党野党先生方といろいろお話をする機会があったのですが、日本防衛問題について全党一致でひとつ国会としてもなすべきことをなしていくことが必要ではないか、こういうことを痛感をいたし、また国会の中にそういう御意見がだんだんと力強くなりつつあることも御案内のとおりであります。これは議運を中心に防衛委員会をつくれ、こういうふうな御議論もあるようでありますが、私は、いまこそまさに国会防衛に関して特別の委員会をつくる、そしてこうした国民的な関心になっておる北方問題あるいはソ連軍備増強軍事力の誇示、こういうことに対して、わが方も国を挙げてこれに対して真剣に対応していくということこそ国会のなすべきことではないか、こういうことをかたく信ずるのであります。ここでE2Cの予算は過去においていろいろ疑惑があるから、これを凍結せよとか削除せよとかいうのは非常な短絡の議論ではないか。そういうことの疑惑解明は、これはもう特別委員会も設けておることでありますし、近く超党派アメリカ調査団も派遣されることであるから、そっちでしっかりやればいいし、あるいは司直の手で十分これは解明すべきである。先般来のこの委員会集中審議もそういう意味では私は非常に刺激的な効果があった、さように確信をするのでありますが、そうだからと言って、過去の調達方法疑惑があったからと言って、今回政府が出しておるようないわゆる政府間調達方式、こういう方式で非常に苦心をして出したものにまでその疑惑の影響を及ぼしてこの際凍結をするというふうなことでは、どこかの国がにたにた笑って、やはり日本という国はだめな国だなということになりはしないか、こういうふうに私は非常に心配をいたします。  そこで、この予算は、ほかの修正問題には私はきょうは触れませんが、少なくとも防衛充実に関して最小限度必要と考えられておる予算は、これをひとつこの際一日も早く成立をさして、そして特別の委員会なりあるいは予算委員会の小委員会なりでこれについて全党が参加してその実行をコントロールしていく、積極的に参加をする、そういう態度こそが災いを転じて福となす非常に前向きの効果的なやり方ではないか。野党先生方の中にも防衛問題に詳しい先生方はたくさんおられる。そういう先生方は、私の申し上げたことに対して少なくともある程度の関心を持っていただけると思うのであります。しかし、いままでそういう議論はありませんでしたが、そういうことをやるべきときではないかと思いますから、ここに与党野党先生方にそういう考え方についてじっくり考えていただきたいと思うと同時に、どうかひとつ防衛庁長官におかれても、この際、国後択捉状況あるいは先ほど申し上げた津軽海峡駆逐艦が遊よくしておるというふうな状況を踏まえて、一体今日の日本を取り巻く防衛関係というものがいかに緊迫した情勢であって、この際、いつになるかわからぬような予算凍結、あるいはまた削除というふうなことは言語道断でありますが、凍結などということはとうていこれを認めることができないではないかと考えるのでありますけれども山下防衛庁長官の率直なるお考えをひとつ伺いたいと思います。
  4. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  まず最初に、国後択捉両島地域並びに津軽海峡におきますところのソ連艦艇動きにつきまして申し上げます。  国後択捉両島地域におきましては、昨年の夏以来部隊を増強し、基地の建設が行われていることはすでに防衛庁から申し上げているとおりでございまして、私どもといたしましても、わが固有の領土である両島におけるこのような動きにつきましては直ちに抗議をし、おさおさ怠りなく監視をしておるところでございますが、先般も、当院の委員会におきましても超党派の御決議をいただいた次第でございます。  なお、昨日でございますが、十六日十一時三十分ごろ、ソ連駆逐艦クリバック級一隻が津軽海峡を航行中であるということを確認いたしております。これにつきましては、後ほど政府委員からさらに詳細に申し上げさせていただきます。  そうした中におきまして、各般の御意見を承ったのでございますが、もとより国の防衛ということは広く国民のコンセンサスをいただいた上でなければ十分になし得ることができないわけでございますが、ただいまの御趣旨のございます、この国会におきまする十分な御審議をいただくための委員会のことにつきましては、これはもちろん国会でお決めになることでございますけれども、その御趣旨につきましては、私も全く同感でございます。  なお、ただいま御審議願っておりますE2Cの早期警戒機導入についてでございますけれども、私どもは、この導入とそれから疑惑解明は切り離してお願いいたしたい。疑惑につきましては十分御解明願いたい。しかし、この導入につきましては、防衛庁が長年にわたりまして純粋に国防上の見地から専門的、技術的に検討いたしまして、しかも国防会議の議を経て御審議を願っておるわけでございまして、ぜひとも御審議の上お認め願いたいと思う次第でございます。  このE2Cの配置につきましては、まだお決め願っていないうちからでございますけれども、大体予定いたしておりますところは、北方方面に配備いたしたいと思っておるわけでございます。実は、これがもし配備せられるならば、国後択捉両島も眼下に監視することができるわけでございまして、わが国の平和と安全の維持のためには重大な貢献をなすものと思う次第でございます。  なお、このE2Cの購入につきましては、私がしばしば申し上げておりますとおりに、あくまで政府間契約でいたしております。したがいまして、商社の介入する余地はございませんが、なおまた、幸い五十四年度予算でお認め願いましても、この飛行機が入ってまいりますのは五十七年でございます。五十七年ではございますが、それから先いろいろ補用部品修理等に要する部品もございます。この点につきましても、実は大変細かいものもございますけれども、できるだけ政府間契約FMS方式によりまして疑惑の解消に努めたいと思う次第でございます。  なお、E2Cは生産期間が大変時間がかかるものでございまして、しかも、この政府間契約でございますが、アメリカとしては国会の承認を得なければならない武器輸出管理法のたてまえもございますので、そうした意味で本年半ばには政府間契約を締結する必要がございますし、そのためには、ただいま申しましたような米国におきますところの議会手続もございますので、新年度早々から契約に関する準備を開始する必要もございます。ただいまの予算についての御意見でございますけれども、ぜひともお認め願って、そうしたことのできますようにお願いいたしたいと思う次第でございます。  以上でございます。
  5. 岡崎久彦

    岡崎政府委員 昨日、津軽海峡を通りましたソ連ミサイル搭載駆逐艦クリバック級と申しますのは、最新のミサイルを搭載いたしました新型駆逐艦でございます。この駆逐艦は、本月七日ごろにインド洋から対馬海峡を通りましてウラジオストクに帰投したものと考えられます。それはその後、昨日津軽海峡を通過いたしましたけれども、目的はいまのところ不明でございますけれども、恐らくはペトロパブロフスクに向かっておるのであろうと想像されます。通常でございますれば、ペトロパブロフスクに向かう船舶は宗谷海峡を通りまして千島列島を通って向かうのでありますけれども、ただいま宗谷海峡は流氷が多くて結氷をいたしておりますので、恐らく南を通っているのであろうと推定されます。  ちなみに、御質問趣旨に沿いまして最近の極東におきますソ連軍事力増強、その脅威についてごく簡単に申し上げますと、ソ連海軍北洋バルチック、黒海及び極東日本海軍でございますが、通常極東ソ連兵力というのは、大ざっぱに申しまして陸空ともに大体二五%を中ソ国境を含む極東に配備しておりますが、海軍に関しましては、ほぼ三分の一を配備しております。最近のアメリカ国防報告でも指摘しておりますように、アメリカが最も重視しているソ連海軍北洋艦隊及び極東艦隊でございまして、極東艦隊は特にオホーツク及び西太平洋から直接アメリカミサイルでねらえる地位にございますので、攻守ともに非常にバランスのとれた大海軍を持っております。  最近の増勢、これは隻数よりも主としてトン数なんです。小さい船よりも大きな船、つまり外洋の行動にたえる船が多くなってまいりました。それから装備が非常に近代化してまいりました。今回のクリバック駆逐艦も含めまして、高性能のミサイルを搭載しております巡洋艦、駆逐艦の数が増加しております。  以上でございます。
  6. 正示啓次郎

    ○正示委員 詳しく突っ込んでいくことはできませんが、ぜひこれは防衛庁長官与党議員の方方や野党議員方々とひとつ速急にお打ち合わせをいただいて、この予算は私は、これに絡んで不正が過去にあったというふうな疑惑があるわけですから、その疑惑は徹底的に解明しなければいかぬという点においては人後に落ちません。だから、それはそれで国会として当然の議論であるからやる。それからまた、アメリカもこういう不正を追及してその真相を解明し、再び起こさぬためには、これは日本アメリカも両方協力する態勢なんですから、その政府日本政府とがここに過去の過ちを起こさぬようにして契約を結んで緊急必要な防衛充実をやろう、こういうのですから、そういうことをやるについて国会としてどういうことを具体的にやるべきか、これは私は詰めて御相談をいただきたい。そしてこの予算をできるだけ早く成立させるように努力をしてほしいということを最後に申し上げて、次の問題に移らしていただきます。  きょうは日本銀行総裁が見えておりますので、ちょっと先に日本銀行総裁に伺いますが、日本を取り巻くいまのような国防上の問題もあります。しかし、何といってもインフレそれから石油資源の問題、こういうことが日本の内外から起こってきた大きな問題であることは申し上げるまでもありません。そこで、インフレ問題、特に五十四年度の予算、これは野党質問者表現をかりますと、公債にどっぷりつかったという表現でしたかね、こういうふうなことを言っておられる。まあそんなに心配することはないのに、公債が大きいというとこれの影におびえているような、これは予算委員会としても、きのうから資源問題あるいは物価問題なんかで閣僚の答弁は余り神経質にならないでくれというふうなあれが多いのですが、しかし、私はインフレだけはこれは十分用心をして、そして予算の必要なものは予算を組んで成立をさしていく、こういうことでなければならぬという確信を持っておるのですが、その通貨価値の安定の総元締めの日本銀行総裁、私の最も尊敬する森永総裁がお見えでございますから、ひとつお尋ねをしたいのでありますが、きのうもここでいろいろ御議論がありました。それと重複するようなことは避けていきたいと思います。  ただ、いま景気を安定的に回復させる、そっちの方に重点を置くか、それよりもインフレを防遇するということの方が緊急性が高いかというふうなことを世人は非常に関心を持っておると思う。いまの新しい内閣になってからはむしろそっちの方、インフレ防止の方へだんだんウエートが移りつつあるように思うのでありますが、たとえばことしの予算についても財界あたり一般国民の受けとめ方も、まさに物価問題というふうなことに重点を置いた考え方が強かったと思うのであります。これはまさに日本銀行総裁の役目をしっかりとやってください、前に起こったようなことを二度と起こさぬようにしていただきたい、こういう国民的な期待だと私は思うのであります。  そこで、まず森永総裁にお伺いしたいことは、そういう二つ要請景気を着実に回復させて後戻りしないようなところへ持っていくという要請と、一方では物価を安定させるという、通貨価値維持という要請とこの二つがあるのでありますが、日本銀行というところは非常にバランスのとれた政策をやっていかれるところだと思うのであります。その二つ要請をにらみ合わせてこれからの金融政策財政と非常に密接に関連してくるわけですが、五十四年度予算を前提にしたこれからの金融の総元締めとしてのハンドリングの基本的な方針をここで簡単にお述べをいただきたいと思います。
  7. 森永貞一郎

    ○森永参考人 私どもといたしましては、景気の着実なる回復ももちろん大切な問題でございますが、同時に物価を上げない、インフレを避けるということもまたそれにまさるとも劣らない大問題でございまして、いわば両方をにらみながら施策の運営をいたしてまいったわけでございます。幸い景気の方は、構造不況業種でございましたか、あるいは雇用問題等まだ深刻な問題も残っておりますけれども、大勢としては、華やかではございませんけれども、底がたい回復の道をとりつつあるようでございまして、特に昨今為替相場も安定しておるというようなことから、企業家の景況感も逐次明るさを増しておる現状でございます。むしろ一部には企業の流動性が少しふえ過ぎて、その面からいろいろな問題が起こってくる、緩和の行き過ぎもあるのではないかというような面もあらわれておるような状態でございますので、当面はこれ以上緩和を加速することなく、いま程度の緩和基調を維持することによって景気の回復を支援しながら、他方において物価の問題により一層配慮しなければならないのが経済の現状ではないかというふうに考えておる次第でございます。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 お話もございましたし、またこの委員会でもしばしば御議論がございましたが、物価をめぐる環境は決して楽観を許さないのでございまして、私どもといたしましては、インフレの再燃だけは絶対に避けなければならないという気持ちから、どちらかと申しますと、これからは物価の問題により大きな配慮を払いながら施策の運営に当たっていかなければならないのではないかと思っておる次第でございます。
  8. 正示啓次郎

    ○正示委員 やはり森永さんは非常にバランスのとれた考え方でやっておられることがよくわかります。  端的に伺いますが、いわゆるマネーサプライ、これについてたしか一二・幾らの増加になっておったと思うのですけれども、きのうもここでも同じような質問がありましたが、そっちの面からいまさしあたり――いまも行き過ぎた緩和は避けていかなければならぬ、こういうことですが、いまのような通貨供給量の増加あるいは流通速度の増加ということではそういう心配はないというふうな御判断であられると思うのですが、その点が一点。  それから、何といっても、さっき言ったように国債が大変大きなウエートを占めておることはもとより申し上げるまでもありません。しかし、日本という国は、国債を消化しながらインフレを起こさないということをやった世界一の体験国だと私は思うのです。これは大変な成果をおさめたことがあるわけですから、やり方では私はそんなに心配ないと先ほども申し上げたわけでありますが、ただこれには相当このごろ細かい議論が出てきておることは申し上げるまでもありません。長期、中期の国債が非常に消化難あるいは流通価格が下落するというふうなことが起こって、そういう点から工夫を要するというふうな議論がいろいろあるようでございます。ですから、この点についての総裁の御判断をひとつ……。きょうは、実は銀行協会、証券業協会からもどなたか来ていただこうかと思ったのですが、非常にデリケートな問題でありますから、それを総合する立場の日本銀行総裁にこの点についての御判断を伺いたい。これが第二点。  そこで、後でエネルギー問題のときに通産大臣や大蔵大臣に伺おうと思っておるのですが、一方ではイランの問題その他から石油の供給について相当いろいろ不安がある。江崎通産大臣はシュレジンジャー氏と会われるというようなこともニュースで伝わっておるのですが、これは当然やっていただかなければならぬことだと思うのです。と同時に、われわれは自前の資源・エネルギーを開発していかなければならぬ。そのために財界は大平総理に会われて、その財源の裏づけ、これは中山素平氏が前から言っておることですが、何とか財源の裏づけを一緒に考えながらエネルギー確保の問題を考えていかなければならぬ、こういう提言をしておるわけであります。戦争中には石油の一滴は血の一滴なり、これは若い諸君は余り御存じない。石油の一滴は血の一滴なりと言われたその考えを持てば、今日の石油の浪費状況というのは大変なことなんだ。  そこで、きのうの御議論を聞いておりますと、江崎大臣は、これもいま余り神経質になって買いだめとか値上がりが起こっては困る。これはよくわかるのであります。しかし一方では、セーブエナジー、エネルギーを節約しなければならぬということもまた自明の理です。セーブエナジーとセーブマネー、そして貯蓄、こういうことに当然行くと私は思うのです。その貯蓄をやはり総動員して、きのうここで総理が答えたように、いわゆる民間私企業を総動員して自前のエネルギー開発に使っていく、こういう構想でなければならぬと思うのですね。だから、このごろは景気回復に急な余り、日本国民は貯蓄し過ぎるのだ、貯蓄性向は高過ぎる、もっと消費性向を強めなければならぬという議論がありますが、これはとんでもないことで、やはり日本国民の最近の貯蓄なんか見ていると大変な勢いで伸びております。こういうことは大いに助長さすと同時に、エネルギーを節約したらそれで貯蓄をふやす、またエネルギーを開発するための貯蓄をしてもらう、そしてそれを民間資金として動員していって新しいエネルギー開発の財源に充てていく、こういう構想でなければだめだと思うのですね。そういうことがまだ議論されておりませんが、大いにエネルギー節約のための貯蓄、エネルギー開発のための貯蓄、こういうふうなことを日本国民の大きな一つの努力目標としてやっていく必要があるのじゃないか。幸い苫小牧の沖に新しい油田が見つかったなんという朗報も伝わっておるわけです。この点は後から通産大臣にお伺いいたしますが、まず森永総裁にお伺いしたいことは以上三つの点です。  国債消化について、いまこれを消化する立場からいってのいろいろな議論が行われておりますけれども、たとえば長期、中期、短期のやり方をどうするのだ、銀行、証券の両方の立場あるいは国民的立場を踏まえてひとつお話をいただきたいことと、いまの最後に申し上げたエネルギーの問題について、ここできのうもお話しのように民間資金の動員ということになると、これは相当思い切ってやらなければいけないし、またやる余地があるのじゃないか、こういうふうに考えるのでありますが、この点をもう一度お答えをいただきたいと思います。
  9. 森永貞一郎

    ○森永参考人 まず初めに、マネーサプライの増加の状況でございますが、現金通貨と預金通貨を合わせましたM1では、昨年の初めごろは六、七%の前年比増加でございましたのが、ことし年末には一一%ぐらいの増加になっております。いまのはM1でございますが、そのM1に定期預金を加えましたいわゆるM2では、昨年初一〇%台の増加でございましたのが、年末には一二%台の増加でございます。一二%台で三、四カ月同じ程度の高さが続いておるわけでございまして、一‐―三月も同じような一二%台の数字で推移するのではないか。M1、M2だけを見ますと、それが当面非常に急増するというような、そういう形勢は見受けられないのでございまして、ここ数カ月の間、M1、M2が激増するというような情勢ではないような感じもいたすのでございますが、他面、企業の短期保有の有価証券がこのところ非常に激増いたしておりまして、それがいつ何どきでも流動性として働くわけでございます。  加うるに、金融機関の貸し出し態度も弾力化しておりますので、企業から申しますと、いつでも金融機関から借りられるというようなアベーラビリティーの増大ということがございますので、かれこれあわせ考えますと、企業の手元流動性はかなり高い水準に来ておるのではないか。それがどう動くかということによって、将来いろいろな問題も心配も出てくるわけでございますので、私どもといたしましては、この際やはりマネーサプライを中心とした企業の手元流動性の推移に非常に配意していかなければならないのが現状ではないかと思っております。  もう一つ、M2の増加の要因を分析しますと、昨年の初めごろは財政関係が二%ぐらいでございましたのが、年末には五%ぐらいに増加しております。もちろん、M2の増加要因の大きなものは、企業に対する信用の増加でございますが、その方はそんなに大きくは動いておりません。財政面からのM2の増加が非常に顕著でございまして、今後十五兆余りの国債が増発せられる過程におきましては、財政からのマネーサプライ増加の要因が非常に大きく効いてくることをいまから予想してかからなければならないわけでございます。  加うるに、企業の景気回復に伴いまして民間資金需要も出てまいっておりますので、われわれとしては、必要があれば、この民間資金の増加に続いて、やはり調整を必要とするような場面も出てこないとも限らないわけでございますので、その面に備えて今後ともM2の推移、物価の情勢、その他の諸般の情勢を考えながら、金融政策に誤りなきを期したいと思っておる次第でございます。  国債の問題でございますが、マネーフロー、資金の供給状態と申しますか、投資物件の需要がこのところ少し変わってまいりまして、短期は非常に緩和して金利も下がっておるわけでございますが、国債を初めとする長期のものにつきまして、値下がりというようなことが起こっておるわけでございます。特に、私ども国債の消化について万全を期さなければ、予算の執行もできませんし、また物価も上がりますし、マネーサプライも増加するというようなことになりますので、国債の消化につきましては万全を期さなければならないわけでございますが、それにつきましては、やはり資金の長短の流れの変化に即応した国債発行条件を考えていくことが、これからは必要になってきおるのではないか。十年ものに偏しておりまする国債発行を短かいものに若干シフトしていく、そしてできるならば、入札公募制等によりまして、市場の実勢に即した国債発行を続けるということ、これがやはり国債消化に万全を期する上においてぜひとも必要なことではないかと思っておる次第でございます。現在の市況が必ずしも実勢かどうか、もう少し見きわめる必要がございますが、いまのような乖離が長く続くようでございますれば、発行者である政府あるいは引き受け者であるシンジケート団におきまして、発行条件の改定について篤と御懇談をいただくことになるべきではないかと思っておる次第でございます。  第三点の貯蓄でございますが、貯蓄は、個人的な観点からだけでなく、民間の産業資金を賄い、あるいは公共投資を賄うという意味で、その重要性は今日といえどもまさりこそすれ、決して衰えてはいないのでございまして、私どもといたしましては、貯蓄の増強に今後とも大いに意を用いていかなければならないと思っております。ただ、その貯蓄を国債の消化に結びつけますためにも、先ほど来申し上げましたように、市場の実勢に即した国債の発行ということがますます必要になってくるのではないかと思うわけでございます。
  10. 正示啓次郎

    ○正示委員 森永総裁にもう一問お尋ねして、お引き取りをいただきます。  実は新しい経済社会発展計画の中にも、これはきょう副総理というか外務大臣、通産大臣とおられるのですが、もう少しエネルギー問題を入れておかなければいけなかったのではないか。公共投資二百四十兆円ですか、大変大きく出ておるのですが、きのうもお話しのように、エネルギーのために七兆円とか大変な金を動員しなければいけないわけですから、そういうことは公共資金じゃなくて民間資金を動員するのだというのですが、これは不規則発言がありましたけれども、私どもは資金の国家統制なんかじゃないのですよ。日本民族がこれから生きていくために、必要なエネルギーを確保するための貯蓄をやっていかなければだめだ、こういうことを言っておるので、その辺はどうも少し古いですから、まあ考えてください。  それで、そういうこともあわせていくのですが、いま国債消化についていろいろ御発言のあったところで、私ちょっとこの点も念を押して伺っておきたいのですが、世上、金利の自由化、実勢金利に応じて入札応募制をやれとか、いろいろ議論があるわけですが、森永先輩に昔大蔵省でいろいろ教わったころは、そういう点われわれは余り知らなかったのですけれども、いわゆる金利の自由化というのは一体どういうことで、それがいま日本ではどの程度行われておるのか、これからどうなるのか、そして、さしあたり国債消化のためには実勢金利に応じてやるべきだといういまのお話、長短織りまぜていろいろそこに工夫の余地がある、これは全く同感でありますが、いわゆる金利の自由化の問題ということについて、この際、森永総裁から御見解を伺って、総裁にお帰りをいただきたいと思います。
  11. 森永貞一郎

    ○森永参考人 私ども、年来、金利の自由化、弾力化を実現することを念願としてまいっておるわけでございますが、そのねらいは、要するに市場の実勢に従って金利が決まる、それによって資源の配分が合理的に決まるようにという、いわゆるマーケットメカニズムを尊重した経済を今後とも実現することに努力していかなければならないと思っておる次第でございます。もう少し具体的に申し上げますと、金融政策の効率を上げますためには、やはり自由な金利ということによって資源の配分が行われ、資金の供給が行われるということが、どうしても必要ではないかと思っておる次第でございます。  国債に即して申しますと、やはり市場の実勢に応じた発行条件でなければ国債が消化できない。ときにはそのために国債の金利が上がるということもございましょうが、それがすなわち国債の発行限度にも関連した市場の実勢ということにも結びつくわけでございますので、金融の政策の効力を発揮し、財政の健全化を促進する上においても、やはり金利の自由化を今後とも進めていかなければならないと思っておる次第でございます。  昨年来、できることからという意味でいろいろ実行いたしました。たとえば日本銀行のオペレーションの際には、いま買いオペでございますが、入札制によって価格を決めるということをいたしました。政府の側でも、短期国債の発行につきましては、入札制をとられましたことは御承知のとおりでございます。そのほか、コール市場の自由化あるいは手形市場の自由化など実施してまいったわけでございまして、近くはいわゆるCDが発行されることになりそうでございますが、その場合には自由な金利ということで、大勢としては金利自由化の方向に大きく進んでおるわけでございます。今後ともできることから自由化、弾力化を進めていかなければならないのではないか、国債の発行条件の問題もやはりそれと関連した大きな問題ではないかと思っておる次第であります。
  12. 正示啓次郎

    ○正示委員 どうもありがとうございました。  まず金融問題を、後で財政問題を大蔵大臣にいろいろお伺いいたしますが、外務大臣にちょっと伺いたいと思います。  きのう、ここで総理の訪米問題を中心にしてお話がありましたことは、私、きのうの総括質問を伺っておって、大変大きな進展であったように思います。ただ、どこまでも外務大臣や通産大臣、大蔵大臣にお願いしておきたいことは、総理がアメリカにおいでになる前に、やはり地固めをしていただいて行かないと、シュミットが行ったときのこともいろいろあるようでございますが、アメリカという国はとにかくザ・ナンバーワン・オブ・ザ・ワールドでございますから、何でもナンバーワンだと思っているのですから、あそこへ行くとついみやげを持たされる、これには大いに警戒を要すると思います。私どものオレンジ問題も、中川君が非常に奮闘してくれてやっとあれはおさまっておるのですが、機会をとらえて新農林大臣に聞こうと思っているのですが、きょうは時間がないかもしれませんが、とにかく総理がお出かけになる前に関係閣僚、外務、通産、大蔵その他で十分ガードを固めていただいて、六月のサミットに臨む体制を確立していただくようにお願いしたいと思うのであります。  さて、きのうもいろいろお話がございましたけれども、日米の経済問題、これは前の内閣では牛場さんが特別に大臣になったのですが、今度はわれわれの友人の安川君がいろいろやるわけでございますけれども、これは外務大臣を助けておやりになるわけでございますが、連日報道されておりますように、また総理自身も言っておられるように、外務大臣も言っておられるように、なかなか大変だという感を私は深くいたします。  そこで端的に伺いますが、いま日本アメリカが六月のサミットを前にいたしましてほぐしていかなければならぬペンディングな大きな問題、課題、すなわちアメリカインフレ問題と日本の経常収支の黒字問題、これは前から言われておったのですが、ここへもってきて新しくエネルギー問題というのが起こってきたわけでございますが、そういうことについて、大体もう安川さんも行った、牛場さんもまだやっておる、だんだんほぐしてきて、あと新しいエネルギー問題で、きょう報道されたような江崎通産大臣と向こうの特別補佐官との会談というようなことでやる見通しはだんだんついておるのかどうか、三つのテーマに即して両大臣から、まず外務大臣、そして通産大臣からお話を伺いたいと思います。
  13. 園田直

    ○園田国務大臣 総理の訪米の計画は、きのう総理自身から言われたとおり、まだ検討はいたしておりません。外務大臣としては、できるならばサミット前に総理が一遍訪米されることが適当であろうとは考えておりますが、いま御発言のとおり、日米の間には経済問題という非常に緊張した問題があるわけであります。総理が日本の最高責任者として訪米されるについては、大平新内閣の基本的な経済政策及び将来の運営、及び日米間の未来にわたっての問題をなさるのが最高指導者の仕事でありまして、いま横たわっておる困難な問題を総理の力によって打開されるということは適当ではない。したがって、御発言のとおり、私、通産大臣その他の関係大臣とも相談をして、この問題は早急に解決をしたい。したがって、これは期間があるわけでありまして、サミット、東京ラウンド、こう計算してまいりますると、日時の余裕も余りないわけであります。しかし、だんだん煮詰まりまして、問題は圧縮されてきておるわけであります。貿易障害の問題及び黒字圧縮の問題、これをさらに小さく申し上げることは控えますけれども、これは期間をにらみつつあらゆる努力を傾けてこれを解決をし、日米間緊密であればあるほどいろいろな小さい問題があるわけでありますから、このような緊張した問題を政治問題にしないように全力を挙げる決意でございます。
  14. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 現在、通商関係の問題解決のためにアメリカに行っておりまする橋本通商産業審議官に対して、シュレジンシャー長官から、エネルギー問題等でぜひ日本の通産大臣と話し合いをしたいという伝言があったという電報が入ったことは事実でございます。特にシュレジンジャー及びその周りの人たちの意見によれば、今度のサミットではエネルギーの問題がクローズアップされるであろう、討議の中心議題でもあろう、したがって会いたいというもののようであります。この日程をどうするかとか予定をどうするかということは、まだ現在決めておりません。  それから、御指摘のアメリカとの通商関係は、その後、御承知のようにだんだん改善をされてきておることは言うまでもありませんが、なお困難な問題が幾つか残っております。現在話題になっておりまするのがなめし革の問題、これなどやはり同和対策との兼ね合いで、われわれ非常に苦慮しております。  それから官公需の問題。これは電電公社の電気機器あるいは電算機等々を含んだ問題。この間「困った。」という大きな広告が業者によって出されましたが、これは全く困った話でございまして、しかし今後やはり何らかの歩み寄りをしなければならない状況でありまするので、私ども情勢をにらみ合わせながら、実は苦慮しながら問題解決にいろいろ努力しておる、目下模索中であるということであります。
  15. 正示啓次郎

    ○正示委員 いま江崎大臣がお述べになった政府調達というのですか、官公需の問題、特に電電公社の問題、これは非常に特別ないろいろな事情があるようでございますけれどもアメリカは残念なことに日本の実情をよく知らぬのですね。これはミカン問題のときに本当に痛切に感じました。だから、やはりこれは向こうに十分に実情を知らせて、しかも向こうが、とにかくキープフェースというのですか、入札に参加させてくれ、こういうことを言っているようでございますね。それなら、参加してもおまえたちはだめでもいいのかというところまで言って、最後には入札に参加させて、規格が違う、アメリカのサイズを持ってきたって――私の先輩がかつてニューヨークに一緒におったときに、デパートへ行きますと、彼は私より大分年上だったのですが、ベビーサイズのところへ行かないとサイズが合わないのですね。だから、日本の電電公社で使っておるものと規格の違うものを持ってきて、幾ら逆立ちしたって、これは採用にならぬことは当然でありますけれども、やはりこれは、場合によったらそういうこともさして、日米の間に大きなギャップが、いわゆるコミュニケーションギャップのないようにやっていくということが、これはもう外務大臣も江崎通産大臣もその方のベテランでいらっしゃいますけれども、私は特にそういうことをやっていただくようにお願いをしておきたいと思うのでございます。  そこで、外務大臣にもう一つお伺いしたいのですが、実は大平総理、きょうは総理は出られませんが、大平総理の一つの大きなテーマとして、国内では田園都市構想あるいは家庭基盤の充実と並んで、外交の面では環太平洋構想とございましたね。これはやはり総理がぶち上げられたのですから、アメリカでは相当関心を持っておると思うのですが、これはもちろん総理と外務大臣の間では、もしアメリカへ外務大臣がわざわざおいでになられる場合は、これはこういうことを考えておったのだということで、十分意思の疎通を図っておられると思いますが、総理のいわゆる環太平洋構想というのは一体何で、現在はどうなっておって、アメリカからそれはどういうふうに評価されておるかをお伺いしたいと思います。大変御迷惑でしょうけれども……。
  16. 園田直

    ○園田国務大臣 外交が多岐にわたり、二国の間だけではなくて、なるべく関係各国のかみ合いが大事になってきたことは御承知のとおりであります。したがいまして、大平総理の言われる汎太平洋構想というのは、これは適切なる構想で、各国から評価を得ておるところであります。しかしながら、これを現実に直ちに汎太平洋国家の外相会議などをやるということは、なかなか現実問題としては困難がございますので、まず民間代表の会議を行うか、あるいはそれに準ずる会議を行って、逐次考えておる方向に持っていくよう、ただいませっかく検討、努力中でございます。
  17. 正示啓次郎

    ○正示委員 何か民間のあれでお互いに連絡を取り合っていく、こういうことのようですが、まあその辺で……。  そこで、ひとつここで外務大臣に、国民に喜んでもらうニュースをちょっともう少し詳しく出していただきたいのですが、外務大臣もおいでになって、昨年五月ですか、福田前総理がアメリカで、例のいわゆるフルブライト計画、これについて長い間の懸案だったのですが、お話し合いになりまして、今度の予算の中にも、これはひとつ日本アメリカも応分の分担をして、しっかりやっていこうということで、十五日九時半からですか、外務省で大臣とマンスフィールド駐日大使が協定に署名した、こういう報道がありましたが、それは大変いいことで、特に日中の留学生交流問題等が大きく浮かび上がってくるとき、いままではアメリカのまる抱えで長い間いわゆるフルブライト計画でやってきたわけでありますが、これで日本人四千三百人くらい、それから米国人が千五百人余り、こんなようなことで五千人余りの方がいままで留学した、こういうことを書いていますが、これから一体どういうふうにやっていくのか。これは国連大学の構想なんかと相ともに、いわゆる文化関係、この内閣の大きな看板である文化交流を一層充実していく大事な柱かと思います。この協定について、いままでの状況、これからの見込み等について外務大臣からお話しをいただきたいと思います。
  18. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおり、去る十五日、外務省の接見室において米国のマンスフィールド大使と私との間で、ただいまの計画に関する日米教育交流計画協定書の署名交換を行ったわけであります。この協定交換は、マンスフィールド大使が議員であられたころから二十五年の長きにわたって、日米両方の議員方々あるいはその他の関係者によって続けられてきた教育交流の問題を今度正式に協定とし、ただいま御審議をお願いをしておる予算におきましても約二億円が計上され、米国においてもこれに匹敵をする百五万ドルの予算が計上されておるわけであります。日米関係ますます緊密を必要とする折から、その根本は人間と人間の交流、さらにさかのぼれば教育の交流であることは御発言のとおりであります。この協定をもとにして、さらに日米の両国民が教育等の問題を通じて心と心から交流ができまするよう、せっかく努力をする所存でございます。
  19. 正示啓次郎

    ○正示委員 ありがとうございました。  もう一つ外務大臣にお伺いしておきたいのですが、きのうもここで、ちょっと違った立場から議論がなされておったようですが、中国とベトナム、ベトナムとカンボジア、そして中国とソ連、これがインドシナとASEANをめぐって、いま非常に大きな、中東と同じような問題あるいはそれ以上に深刻な問題かもしれませんが、これが展開しつつあるわけですが、これについて、ある有力な新聞が論説で、これはひとつシアヌーク元国家元首の提案をもとにして国際会議を早く開いたらどうだ、こういうことを言っておるのを私は非常に興味深く読んだわけです。あそこでごたごたやっておることは、カンボジアの状況は一体どうなっているのだというので、長い間われわれは本当に鉄のカーテンよりもっともっとひどい隔絶された世界の情勢のように感じたわけですが、これを国際会議の舞台に出す、こういうことは非常に私はいいんじゃないか。  後でこれも一緒にお答えいただけばありがたいのですが、国後択捉問題も、外務大臣は粘り強くあくまでも不退転の決意でソ連と交渉しますということ、これはもう当然のことですけれども、やはりこれはあらゆる問題を国際会議に持ち出すべきだと私は思うのです。国連の場でも、軍縮委員会の場でも、また今度の経済委員会、日ソ経済委員会なんかも、事あるごとに、君たちを信用しようにも、この前、国後択捉について後で継続して交渉しようと言っておきながら、手のひらを返すように、もうあれは解決済みだと言うふうな国を相手に、経済の問題だって交渉はできるか。ソ連という国は、私も外務政務次官でクレムリンへ行って、国後択捉早う返せというのを、ソーラン節で歌ってやったことがあるのですよ、一杯ウオッカを飲んでね。そうしたら、向こうはびっくりしましてね。これは外務政務次官といったら申し上げるまでもなく外務副大臣ですからね。それで、そのときの向こうの極東部長がスザリコフ氏、いまは北鮮のたしか大使をしていますが、それがまたグロムイコと日本へ来たときも、またそのソーラン節を、今度は女性軍にも合唱させたのですよ。日本領土の国後択捉ソ連ちょいととって知らぬ顔、返せ、返せ、こうソーラン節で何回も歌ってやったら、しまいにとうとう気分が悪くなりましてね、翌日のパーティは休む、こういうふうなところまでいったことがあるのですが、これは私はソ連という国相手にはあらゆる機会にこれをやらなければだめだ。きょうはそういう問題じゃないから、経済問題だから、政経分離なんてだめですから、経済のことを言ってきても、領土はどうしたのだ、このくらい粘り強くやらないと、ソ連という国は絶対だめな国ですから、やってほしいのです。  そこで、インドシナとASEANとの調整、これはさっきの環太平洋構想なんかにも関係あるのですが、余り間口を広く一緒にやってもなかなか問題が解決しないので、やはり日本としては、きのうもここで御議論があったように、ベトナムに対する新しい援助をどうするかというようなこともきめ細かに詰めていくと同時に、問題を大きく国際舞台に引っ張り出して、そこにスポットを当てて、世界の世論を喚起していくという構想も私は大事だと思うのですが、いまインドシナに起こっておる問題、ベトナム、カンボジア、中国、ソ連の問題をシアヌークの提案の線に沿って国際会議に持ち出すという、国後択捉問題もやはり同じようにそういうことを忘れてはいかぬということ、これについての外務大臣の御所見を伺います。
  20. 園田直

    ○園田国務大臣 まずインドシナ半島の問題でありますが、当初、この紛争が起こる前に、国連事務総長がベトナムとカンボジアを訪問する計画がありました。両国とも拒否をしておりましたが、わが方が仲介をいたしまして、事務総長の来訪を受けて、そして事務総長に対しておのおの正当な立場を主張したがよかろう、こういうことで物になりそうなときにこの紛争が起こったわけでございます。いまシアヌーク殿下が言われたことは、シアヌーク殿下は御承知のとおりにカンボジアの方の国に属する方であって、カンボジアとベトナムはお互いに主張は真っ向から反対しているわけであります。しかし、いずれにいたしましてもこの問題はわが国としては平和的に話し合いで解決をされたい。一番大事な点はこの両国の紛争がアジアの平和を撹乱することにならぬように、こういうことを主張しているわけであります。幸い中国もいろいろ動きがあるようでありますけれども、大規模な両国の戦闘状態になるような行動は起こすおそれはないのではないかといまのところは推察をされます。  また、ベトナムの方もカンボジアに入っておりますものの、過大な兵力の展開、補給等には相当困難があるようであるし、また一方カンボジアの方は、全然壊滅したのかと思ったら、ゲリラ戦の組織的なものをやや復活しかかった、こういうことで、いまのところこれがどうなるかという判断はできませんけれども、しかし、少なくとも日本はベトナムと話のできるごくわずかの国でありますから、われわれはベトナムとはあくまで話し合いを続けつつ、一方カンボジアとも話をし、これと国境を接する中国に対しても、いま申し上げましたようなことで、ひとつ平和的に解決をするという努力を必死になってやっておるところであります。したがいましてこれがだんだんうまくいきまして、そういう機運が出ましたならば、これを国連の方に舞台を移す、こういうことも貴重な御意見であり可能性のあることだと思いますので、ただいまの御発言は胸に入れて今後努力をしたいと考えております。  なお北方領土の問題でありますが、北方領土の問題は佐藤総理のときに国連で演説をされたことがございます。しかし正示委員御承知のとおり、国連という機構はなかなか、ああいう機構でありまして、力関係でいく、拒否権はある、こういうことで国連でいった方が果たして効果があるのかどうか、こういうことも検討しながら、ただいまの御意見は重要な参考として勉強してみたいと考えております。
  21. 正示啓次郎

    ○正示委員 外務大臣、もう一問だけ。北方領土ですが、これは竹島のときもやはり同じ問題があったのですが、竹島とは大分違うと思うのですね。北方領土は本当にどさくさに入ってきて、ああいうふうに武力を行使して押さえてしまった。私は北海道へ北方問題特別委員長として安井さんなんかと一緒に行ったことがあるのですが、沖繩のときは本当に全国民がみんなで力を合わせて沖繩返還ということを言った。ところが、北方領土についてはまだそこまでいっていないのは本当に残念で、それをちょうど燃やすようにいま軍事基地の問題、駆逐艦の遊よく問題というふうにだんだん起こってきている。そこで、あの竹島のときにも韓国は応訴しないから国際司法裁判所に提訴できなかったのですが、北方領土についてはそういう交渉はしておるのかどうか、国際司法裁判所を活用するという問題はやっておられますかどうかだけ伺っておきます。
  22. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 国際司法裁判所に提訴いたします場合に、ソ連はこの強制管轄権の受諾宣言をしておりませんので、このためにはあらかじめソ連とそのような話し合いをいたしまして、これを裁判に出すという承諾を取りつける必要がございます。そしてこの承諾をソ連がなかなかしないと――事実日本側としてそういう話をソ連側に持ちかけたことは過去にございますが、そのときのソ連の言い分は、ソ連は自分の領土を他人に決めてもらうつもりはない、こういう返事をいたしたことがございます。それからさらに、過去の例でございますが、米軍機が歯舞群島の勇留島の上で撃墜された事件が過去に二回ございまして、このときに米国はこれを国際司法裁判所に正式に提訴いたしまして、撃墜されましたのは、ソ連側はこれはわが国ソ連の領空侵犯であるという理由で撃墜したわけでございますが、これを米国が提訴いたしましたときに、ソ連側はこの裁判に応じない、こういう意向を表明いたしましたために、この訴訟は却下されたことがございます。そういうことでございますので、この問題は、国連に提訴いたしましてもソ連として応ずるつもりはないということがはっきりいたしておりますので、遺憾ながら今日そういう状態にございません、私どもはそのように考えております。
  23. 正示啓次郎

    ○正示委員 宮澤局長、釈迦に説法ですけれども、その前にというのは文書で往復されたのですか。こっちが提訴……
  24. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ソ連に対してこれを国際司法裁判所に提訴しようということを文書で申し入れたかというお尋ねでございますか。――文書では申し入れておりません。
  25. 正示啓次郎

    ○正示委員 それを文書でやるべきじゃないかと私は思うのですが……。
  26. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 これは外務大臣が正式に向こうのグロムイコ大臣と話されたことがございます。
  27. 正示啓次郎

    ○正示委員 釈迦に説法ですけれどもソ連というのはこれは形を残さぬと、あの田中元総理が向こうに行ってやったことも、これだってもう少しはっきり文書に残さなかったのは残念なことだと思うのですがね、これはぜひひとつやっていただきたいと思います。何しろとにかく形に残さないとだめですよ、あれは。私の歌は向こうの民謡の事典に残っていますからね。私がトロヤノフスキーと沖繩・北方のときにじゃんじゃんやり合ったのはみんな文書に残っていまして、北方問題特別委員会に記録されております。これはむだなようでも、あの国相手では、日本の効率主義からいくと本当にむだが多いですよ、しかし、やらなければいかぬと私は思いますので、先ほど外務大臣から、あらゆるときに国連の場に出すのがいいか悪いか、軍縮委員会はどうだ、効果は確かにそれはわからぬですけれども、あらゆる機会にとにかくこれはやりましょうや。どうぞお願いしておきます。
  28. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 御提言、ありがたく検討させていただきます。
  29. 正示啓次郎

    ○正示委員 外務大臣、どうもありがとうございました。もう結構です。  それから、続いて資源問題についてなお通産大臣、大変御苦労ですが、伺っておきたいと思うのです。  先ほども天谷長官とちょっと雑談しておりましたら、きのうからここでお話があったように、だんだん石油資源というものが窮屈になり、値段を上げる動きがあちらこちらでにょきにょきと持ち上がっておる。まことに不気味なエネルギー、石油資源の戦争状態だと思います。そこで、これは天谷君もわからぬと言っておりましたので、あるいは通産大臣お答えないかもしれませんが、一体OPECというのはどうなったのでしょうね。ことしの初めから年末までに二段階ですか、だんだん上げていくんだというようなことを言っておったと思うと、イランがあんなようなことになると、途端にばらばらの行動をしておるようですが、OPECの建て値制度といま産油国各国がばらばらにやっておることとの関係、これは日本は何も力がないんだということもさっきも聞いたのですが、これは一体どう理解すべきなのか。石油問題について、できたらまずその点から伺いたいと思います。
  30. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 現在、イランが不安定のために石油需給が非常に窮屈になっておりまして、それが端的に反映しておりますのはスポットマーケットでございます。スポットマーケットにおきましては、現在、公式の販売価格に比べまして約九ドルぐらい値段が上がっておるわけでございます。そこで、OPECの内部におきましても、強硬派と言われているグループと穏健派と言われているグループとがございますが、強硬派の発言力が強くなっているというような一般的状況があると推測をいたしております。今回の値上げ、これはサウジアラビアによる値上げ、それからアブダビ、カタール等による値上げと二通りございますけれども、アブダビ、カタール等は、ごく最近その産出する軽質油に対しまして約一ドル、七%強の値上げを発表しておるわけでございます。これは、商社等に対する通告では、OPECの建て値の変更というよりも、OPECのうちの軽質油と重質油の格差の拡大であるというようなことが一応の説明になっているようでございます。  それからまた、サウジアラビアにつきましては、これも公式確認はないのでございますけれども、一応サウジアラビアの従来の公式の生産量というのは年間を平均いたしまして八百五十万バレル・パー・デーということでございます。ところで、現在一――三月につきましては九百五十万バレル・パー・デーの生産を行っておる。百万バレルふえておるわけでございますが、この百万バレルふえている分につきましては第四・四半期の価格を適用するとかいうような、これも公式確認されてはおりませんが、大体そういう考え方があるようでございまして、そういたしますと、それがバレル当たり十七セントアップぐらいになるということで、したがいまして、これもOPECの決定した価格から外れておるわけではない。要するにこれは、百万バレル分だけ本当はいま生産しない分を先取りといいますか、先食いで生産しておるわけだから、その分につきましては先の方の、高い方の値段をつけるのである、こういう説明になっているわけでございます。
  31. 正示啓次郎

    ○正示委員 とにかく皆目私どもにわからぬことも多いわけでして、これからの先行きということもなかなかむずかしいのですが、余り時間がありません、閣僚を待たせて恐縮でございますからあれですが、きのう大内委員も一言っておられたバンダルシャプールの三井グループの、これは私は新しいホメイニ政権と日本との間の大変いいくさびになると思うのですね。そういう意味で、メジャー離れをしようとしておるとか、国営石油のあれが今度は総理ですから、非常に重大な動きがあるようですが、これはぜひひとつ通産大臣、きのうもお話しのように、もう八五%ですか工事ができておるという、あの施設をうんと日本と新しいイランとの間のパイプにしていただいて、これからやはり、もちろん、石油資源を多角化する、あちらこちらから確保するという努力も必要だし、自前のものを心がけなければならぬということも必要であることは申し上げるまでもありませんが、しかしイランとの間には幸いにしてこのバンダルシャプールのあれがあるということを、きのうの議論から国民も大変喜んでおると思いますが、その期待にこたえるようにこれからも努力をしていただきたいと思いますが、イランはことにメジャー離れというようなことを言われていますね。そして、むしろDDになるのですか。ダイレクトディールというのですか、そういうふうな傾向でしょうか。その点について、通産大臣の、これはシレュジンジャーとお話し合いになるときも日本としてのあれを腹に持ってお話しになるわけでしょうが、ちょっとお聞かせいただいて、通産大臣もお帰りをいただきたい。
  32. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 きのう大内さんの御質問に答えましたように、ホメイニ師が命令をされて、バザルガン現首相が、首相就任前の話でしょうね、あの南部を視察した。そして日本の三井系との、あれは両国の合弁プロジェクトですが、この進捗ぐあいを目の当たりに見て、実にみごとなものだ、これは、ぜひ完成させたい、日本も全面協力を願いたい、こういうことを国家承認の報をもたらしたわが和田大使に言明をされたということは、大変私力強いことだと思うのです。しかも、諸外国の人々が国外退去をしたときに、日本の技術者などがとどまって、そしてこのプロジェクトを守ったという、そのことも非常な好影響を与えておるわけですね。したがいまして、これはぜひわが国としても当然今後ともできるだけの協力をしていく。しかももう完成は目腱の間にあるわけですから、特に新しい首相がそれだけのことを言っておる以上、その期待にわが国としてはこたえていかなければならないというふうに考えます。  それから、先ほどのカタールとかアブダビなども、やはりサウジアラビアなどは、さっき長官から申しましたように、増産分についての値上げには一つの理由があるが、ここで需給のバランスがとれなくなった、直ちに値上げということは反対だということで、OPEC全体の動きにはならなかったわけですね。しかし、そういうふうにだんだん需給の原則が乱れまするというと、いろいろな思惑が入り乱れる。そこヘメジャーの思惑が加わってますます増幅するということは確かにあり得ると思いまするので、今後高値を呼ぶ傾向にありましょうが、しかし、わが国もそういうことを唯々として認めないような形で、よく情報をキャッチしながら対応していくことが大切だと思います。  それから、いまおっしゃるようなGG原油をなお進める、DD関係を深めるという乙とはもとより大切なことでございまして、今後とも、多様化、多角化と同様に、そういった手法についても配慮いたしたいと思います。
  33. 正示啓次郎

    ○正示委員 どうもありがとうございました。労働大臣、農林大臣どうぞ、もう時間ないようですから。江崎大臣どうぞ、もう結構です。  きょうは臨時、緊急に金子科学技術庁長官にちょっと伺います。  核燃料再処理工場の廃液が外へ流れ出した。何川といったかな、茨城県のですね。そういうニュースがありまして、これは、いま江崎大臣と応答したように、自前のエネルギーというのが非常に大事なときに、一般の国民には大きな不安を与えておるわけであります。しかし幸いにして早く金子大臣の方で厳重な注意と事態の調査と、それから再発防止の指示をされたそうですが、その経過をちょっとここでお話しをいただきたい。
  34. 金子岩三

    金子(岩)国務大臣 ただいま正示先生からお尋ねになりました東海再処理施設における事故でございますが、二月十五日、動燃事業団東海再処理施設の廃棄物処理場の地下に設けられている低レベル廃液貯蔵槽から放射性物質が漏洩し、地下浸透水の受け入れ槽に流入し、一般排水溝を通し、敷地外に排出されたことを確認したのであります。敷地外に排出された放射性物質の量は〇・二ミリキュリーと推定され、これは、同施設一日当たりの海中への放出基準値の三千五百分の一程度であるのでありまして、今回の漏洩は微量であったが、正規の排出溝以外のところから外部に排出があったのはまことに遺憾であります。  科学技術庁としては、動燃事業団に対して、漏洩の早期検出対策を講じさせるなど、同様な事態の再発防止に万全を期しておる次第であります。  なお、現在、付近の河川等の環境試料の分析作業を進めているところでありまして、再びこのような事故が発生しないように万全の対策を立てておるところであります。
  35. 正示啓次郎

    ○正示委員 いまのあれはバイミステークなのか、それとも初めから設計がそうなっていたのか、その辺をひとつ明らかにしてください。これはあちらこちらで、ぼくらの地元だっていま原子力発電をやるかどうかで大変大きな問題になっているんですよ。こういうことが起こると非常に影響が重大ですから、その点をちょっと明らかにしていただきたい。
  36. 金子岩三

    金子(岩)国務大臣 これは正規のルートではないのです。このジョイントのパッキングに少し緩みが出て、これから漏れたものが地下水の排水溝の中に流れ込んでいって、水をためておるところから上に一応ポンプで吸い上げて、そして海に流し込むようになっておるのですが、それを月に一回ずつ検査しておるわけですね。先月十九日に検査したときに異常はない、今月の九日に検査して初めて異常を発見しておるわけですね。それで、先月九日異常なし、今月の九日に異常があったということから全部調査にかかって、そのバルブから少しそれが地下に浸透して地下水になって流れておった。正規のルートはちゃんとろ過されまして、これは完璧だというものにして海に放出されておるわけでございますから、それ以外のところから、いわゆるジョイントに異常があって、それから漏れたものが流れ込んでおったという経過でございます。
  37. 正示啓次郎

    ○正示委員 それじゃ、時間がありませんから、ひとつそういうのはもう毎日毎日検査してくださいよ。そして、絶対二度とそんな正規の口からじゃなくてほかから漏れるなんということのないようにやらぬと、日本の原子力発電というようなものはできやせぬですよ。大変重大な問題ですから、これは特に当局の方へ厳重にお願いを申し上げておきます。金子科学技術庁長官、どうもありがとうございました。  三原大臣にひとつお伺いします。待ちかねてくれておるようであります。  この間、テレビで各党の方が元号法案是か非かで討論されましたね。ところが、私はあれをずっと聞いておって、三原大臣の言われたのがずっと正しいと思うのですが、社会党や共産党の方のおっしゃったことはどうも腑に落ちぬのですが、ここに出ておるのは元号制定手続法ですね。単なる手続法ですよ。単なる手続法にイデオロギーが入っておるなんというのは、これはもう本当に笑止のさたなんで、三原大臣とわが党からは西村尚治さんが出ておったのですが、私があそこで念を押してほしかったことは、万一、本当に万々一、いまの天皇陛下が万々一の場合どういうふうにするのですか、国民の八五%が使っておる昭和の元号を、これが新しい元号なしにいきなりそれこそみんなに西暦を強制するのか、むしろこう反問してほしかったのだ。そうしたら、なるほどこれはそういう手続をしておく必要があるなということは、幾らがんこでもわかってくれたと思うのですよね。だから、その点に主力を置いて、このいま出しておる元号法は元号制定手続法である、イデオロギーなんか入る余地はないんだ、こういうことをひとつはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  38. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  現在使っております昭和という元号につきましては、新憲法が制定されまして以後、法的な根拠は消滅したことになるわけでございます。しかし、国民は、いまお話ございましたように、きのうも申し上げたのでございまするが、大体昭和の元号を本当に日常生活の中で使っておられる。その状態というのは、私どもの方で三十六年、四十九年、五十一年、五十二年と一万人を対象にして世論調査をいたしました。その結果は、八五%ないし八九%ぐらいの方々が主としてお使いになっておる、そういう実情でございます。では西暦を主として使っておられるのはどうかというと約三%、それから併用しておられる方が七%というような、そういう大体の数字が四回にわたります世論調査で出てまいっておるわけでございます。これらの方々は、お尋ねをしますと、存続していきたい、そういう切実なお気持ちもあるようでございます。しかし、これらの方々は、その元号はいつまで続くのであろうかということをはっきり御心配をなさっておるというようなことでもないと思いますけれども、承りますれば、大体今上陛下の御在世中は昭和であろう、そういうようなお考えのように私は受けとめてまいっておるのでございます。幸いにして今上陛下は御長寿で御健勝であるわけでございまするが、いま御指摘のように、万一の場合はどうなるかというようなことにつきましては、やはりそういう実態を受けとめまして政府としてはこれに対処しておく必要があろう、そういうような考えでございます。しかし、西暦あるいはいまの昭和の元号との併用等いろいろな御意見もあることでございまするので、私どもといたしましては、いま申し上げましたような実情を踏まえまして、国民方々に明確に安心をしていただける、安定した気持ちでおっていただけるために、ひとつその手続を考えておこうかということで、今回、国民の代表である国会で制度としてひとつお決め願っておくことがよくはなかろうか。そういうことで、中身はきわめて簡潔な手続制度としての手続でございまするが、そうした法律を制定いたしたいということを御相談いたしておるわけでございます。どうかひとつ御理解を願いまして、御協力を賜りたいと思うところでございます。
  39. 正示啓次郎

    ○正示委員 三原長官、もういいです。  大蔵大臣と行管長官、大変お待たせしました。大蔵大臣にもう非常に聞きたいこといっぱいありますが、また御懇談を申し上げますからこの機会は遠慮しますが、ただ、今回のこの予算とともに、どうしても財政再建を、特に一般消費税というのをテーマにして内外の議論を高めてほしいということが政府の大きな方針のように思います。私はこれはごもっともだと思うのですよ。それでさっき申し上げたのは、新しい財政経済計画の中にも織り込んでおるわけですが、これは私はさっきの防衛問題と同じように政府に任せきりじゃいかぬと思うのだ。だから、国会財政再建小委員会をつくってもらったらどうですか、これは政府よりわれわれ国会の問題ですが。そして、一般消費税をどういうふうなやり方でやればいいのか、そういうことを国会の中で大いに議論を高めていくことが非常に必要なことではないか、これに対する大蔵大臣の見解を聞きたい。  それから、行管長官には、いま雇用問題が、さっき労働大臣におってもらったのですが、非常に大事なんで、民間の労働者の方には非常に職業再訓練をやっておるのですね。私は政府の中にも暇なところとそうでないところとあると思うのですよ。大いに活用して、行管が主になって政府の中の比較的暇な人は、忙しいところへいつ行っても仕事ができるように再訓練をやるべきだと私は考えますが、そのくらいやってスクラップ・アンド・ビルドを徹底して実行していく必要があると思うのですが、これについての行管長官の御意見、そしてことしの予算あたりそんなことを本当に考えておられるのか、ないとすればこれは急いでやる必要があるのじゃないか。以上二点をお答えいただいて、私の質問を終わります。
  40. 金子一平

    金子(一)国務大臣 正示さんから財政再建が急務であるということについて御指摘をいただきました。これは全くわれわれとしては感謝にたえないところでございます。いま御提案は、国会の中に財政再建の小委員会をつくったらどうかという御提案でございますが、これは国会マターでございますが、私どもとしてはそういうことでさらに論議を深め、高めていただければ大変幸いだと存じます。
  41. 金井元彦

    ○金井国務大臣 いまお話しの職業訓練的な考え方でもって転換を図れ、こういう趣旨はもうすでに一月十六日の行革に関するところの閣議了解におきまして取り入れております。ただ具体策につきましてはこれから、こういうことに相なります。
  42. 正示啓次郎

    ○正示委員 どうもありがとうございました。
  43. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 これにて正示君の質疑は終了いたしました。  次に、川崎君。
  44. 川崎寛治

    ○川崎委員 私は、まず、先ほど正示委員からも質問がありましたが、インドシナ半島の問題、それから中国、ベトナム国境における大変厳しい情勢、その中で日本は大変むずかしい立場にありますが、アジアの平和のためにどう努力すべきか、そういう問題等についてまずお尋ねをしたい、こう思います。  そこで外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、日中平和友好条約の締結と米中の国交正常化というのは、アジアだけでなくて世界にも非常に大きな影響を与えておる、こう思います。そこでこの二つの大きな出来事ということはアジアの冷戦体制というものを大きく崩した、こう思います。その点についてどうお考えですか。
  45. 園田直

    ○園田国務大臣 まずお答えをする前に、若干の報告をいたします。  例の朝鮮半島における南北対話は、午前十時、まず韓国側、南の方から先に入って、北の方が続いて入り、両方友好的なあいさつを終わった後写真撮影をして、いま会談に入った、こういうことでございます。会談の内容等がわかれば、必要があればまた追って御報告いたします。  日中友好条約、続いて米中の国交正常化、これは鄧小平副主席が訪米されたときの模様等から考えましても、米中、日中、この三国が力を合わせてアジアにおける冷戦構造を強化したという判断と、そうではなくて、これをアジアの平和のてこにしたいという判断と両方あるわけでありますが、少なくとも、米、中、日の間には若干の、あるいは相当の食い違いがあるかもわかりませんが、日米はこれによってソ連に対する刺激あるいはソ連に対する共同行動、こういうことにとられないよう極力注意をいたしております。この問題を今後どのようにてこにして、アジアの平和の安定を図るかということがわれわれの責任であると考えております。
  46. 川崎寛治

    ○川崎委員 板門店における南北会談の問題については、後ほど朝鮮問題にしぼって私はお尋ねをしたい、こういうふうに思います。  いま外務大臣からお答えのように、日中の友好というのがアジアの平和の非常に大きな基礎である、そしてまた米中の国交正常化というものも、冷戦体制を崩すという点では一致をするわけであります。ただ、きのう石橋委員も時間の関係で十分には言っておりませんけれども、非常に懸念をしておりますことは、いま外務大臣も触れられましたように、日、米、中という同盟関係、そういうものであってはならない。だから大国パワー、力のゲームという方向に進んではならない。そのことは、日本の自主外交というものが今日ほど、求められているときはない、こう思います。  日本社会党は、一貫いたしまして非同盟中立の外交方針を貫いてまいりました。非同盟中立の政策が今日国際的に大変大きな潮流であるということは申し上げるまでもありません。イランの動きを見ましても、これは新しいイラン政府というのが非同盟中立の方向を志向しておるということは否定できない、こう思います。そういうわが党の非同盟中立の政策の立場から、インドシナ半島並びに中国、ベトナムの大変懸念される今日の情勢というものについて日本はどうすべきかということをお尋ねしたい、こう思うのです。  社会党は非同盟中立の政策でありますから、国連における非同盟諸国会議がとった態度というのを支持をいたしております。でありますから、カンボジアにおける、他国の軍隊が介入したそのことについてはわれわれは反対をし、軍隊の撤退ということをあくまでも強く要求するわけであります。しかし、今日のカンボジアの情勢というのは大変複雑に動いておる、こう思いますが、日本は、北京、ハノイ、西側といたしましてはそうした関係を持っておる国でありますから、日本の動向というのは大変大事だ、こう思います。あの南ベトナムが崩壊をいたしますときに、すでに日本はハノイと外交関係は持っていたのでありますけれども、残念ながら動けなかった、日本が動けばアメリカの代弁者だということで、あの南べトナムの崩壊過程の中で日本は何ら自主外交というものが展開できなかったわけです。そういう意味では、今日の情勢の中で日本はそういう大変慎重な、しかしきちっとした外交を進めなければならない、こう思います。そこで軍隊の撤退を強く要求していく、しかし援助の問題については約束したことは実行する、ただし将来の問題については、今日の安定というか、そういう平静な状態を待つということが必要であろう、こう思います。先ほども国際会議の提起の問題もございましたが、そういう方向について、いまのカンボジアの情勢というものが落ちつくのに大変時間がかかるのかどうか、日本の外交当局はどう見ておるかということが一つ。  それからもう一つは、シアヌーク殿下が国連にポル・ポト政権の代表として出ました。しかし、出て国連で発言をしました後は、ポル・ポト政権のあり方というものについては厳しい批判をしたわけです。シアヌーク殿下は、自分はこれでもう終わった、だからパリなりに亡命生活をしたいというふうなことなども言っておりました。しかし、今度北京に帰った、帰ったというか北京に行ったわけでありますが、日本の外務省といたしましては、その途中、成田に寄りましたときに三宅アジア局次長がシアヌーク殿下と会っておるわけですね。そうしますと、このシアヌーク殿下がポル・ポト政権を批判をしながらも北京に帰った、私は、これは将来の問題としては非常に大きな背景というか、考えられるものがある、こういうふうに思っております。でありますから、カンボジアの情勢あるいはそうした動きというものについて外務大臣としてはどういう判断をしておられるのか、伺いたいと思います。
  47. 園田直

    ○園田国務大臣 まず最初に、非同盟中立主義の勢力が逐次ふえておる、しかもこれが国連その他における非常な影響力を持ってきたことは、御発言のとおり私も考えます。  カンボジアでございますが、この紛争が起こる直前は、イエン・サリ副首相は数回参りまして直接私と話をし、カンボジア再建の援助等についても話したわけでありますが、具体的な話はついておりません。紛争が起こりましてから全然交渉は切れております。ベトナムの方は御承知のとおりに、いまもわが方も向こうも連絡は続いておるわけであります。したがいまして、シアヌーク殿下が米国へ渡られた、そのことも亡命したいという意向もあるように聞いておりましたが、いずれにしても北京に帰った。帰り道にわが方の三宅次長が会ったわけでありますが、行くときと大分趣が変わっておるが、特別話はなかった。ただ、その発言の中で関心を持つべき点は、自分は政治に帰りたくない、関係したくない、しかし農民や国民が自分を求めるならばという余韻の残った発言をしております。中国がシアヌーク殿下を北京に呼んで何を説得しようとしておるかはもう御推察のとおりでありまして、私も何をするかと想像いたしておりますが、カンボジアの内情は直接に接触しておりませんから、これがどのようにどう片づくかということは断定はできません。ただ、これは短期間のうちに片づかぬだろう、若干時間がかかるだろう、こう思っておるところであります。  ベトナムに対する経済援助、御発言のとおりでありまして、約束したものはもうすでに動いております。したがいまして、今後の問題は、ASEANの国々が不安を持たないようにあなたの方も努力しなさい、こういうことでありますが、慎重にという言葉を使っておりますが、このインドシナ半島の現状をよく見詰めてやりたいと考えております。
  48. 川崎寛治

    ○川崎委員 中国とベトナム国境の武力衝突というのは、次第に激化の様相を呈しておりますね。これは大変懸念をされる情勢だと思います。きのうも議論がございましたし、これまでもあったわけでありますが、私はやはり中国に対しては、武力の行使というものを慎重にするということについては繰り返し要求をすべきだ、こう思います。そしてそのことと、もう一つは、日本は国際政治の中で調停者の役割りというのは、残念ながらそういう力は持ってないと思います。ただ、インドシナ半島とASEANとの平和共存というものを展望するとき、あるいは中国の経済建設というものを考えますときに、日本が果たす役割りというのは大変大きい、こう思います。でありますから、武力による問題の解決ということに対してはあくまでも強く反対の意思を表明し、そして解決を要求いたしますと同時に、アジアにおけるそうした諸国の経済建設、発展ということに対してはあくまでも日本としての役割りを果たしていく。といたしますならば、大国のパワーゲームに参加をしないという立場に立つ日本としては、やはり非同盟中立の政策ということが今日アジアにおいては最も大事だと私たちは考えます。でありますから、そういう方向に、つまり日米間でということを言われましたが、日米安保体制というものを土台にしたアジア外交であってはならない、非同盟中立のそうした方向に転換すべきだということを、今日のアジアの非常に複雑に動いておる、そういう情勢の中であればあるほど私は考えるわけです。いかがですか。
  49. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおりでありますが、ただ、日本が非同盟中立主義の立場に立つべきだという点はわれわれは反対でございます。御存じのとおりに日米安保体制、日米関係を基軸として日本は権衡の平和、抑止力による平和、これで平和を築いておるわけでありますから、非同盟中立主義に対する理解、援助、こういうことをお説のとおりやらなければならぬと考えますが、日本自体が非同盟中立主義に立つことはわれわれは反対でございます。
  50. 川崎寛治

    ○川崎委員 このことは長い論争でもあります。しかし、社会党の非同盟中立政策が空想だ、こういう非難をしていた時代もありましたけれども、それが今日の世界の大きな流れの中ではそうではないということについては、非同盟中立の今日の潮流というものを高く評価された園田外務大臣の冒頭の見解からいたしまして、私たちは、今日、日本が世界の中で果たしていく役割りを考えますならば、非同盟中立の政策を貫くべきだということを主張しておきたい、こう思います。  そこで、次には朝鮮の問題に移りたいと思いますが、南北会談の報告をまず冒頭にされました園田外務大臣は、この会談というものを大変注目しておる、また、日本の平和と安全に大変大きなかかわり合いのある問題であるという認識だというふうに受けとめます。  そこでまず、自由民主党政府はこれまで日本の外交三原則というのを主張してきておるわけですね。それは、一つは国際連合中心、二番目にはアジアの一員としての立場の堅持、三番目には自由主義諸国との協調、こういう主張を自民党政府はしてきたわけでありますが、特に国際連合中心という点については今日も依然として貫かれているもの、こういうふうに理解をいたしますが、いかがですか。
  51. 園田直

    ○園田国務大臣 そのとおりでございます。
  52. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこでお尋ねしますが、朝鮮民主主義人民共和国と中華人民共和国とソビエト連邦、それぞれ社会主義の国です。この三つの国に特別の違いがありますか。
  53. 園田直

    ○園田国務大臣 その国自体の違いというよりも、わが国のその三つの国に対する外交交渉の態度はそれぞれ若干の相違がございます。
  54. 川崎寛治

    ○川崎委員 私は、日本との外交のことをお尋ねしているのではなくて、つまり、それぞれの国が社会主義国としてあるわけですけれども、朝鮮民主主義人民共和国は特別に違った社会主義国だという御理解ですか。
  55. 園田直

    ○園田国務大臣 社会主義国家そのものに対して違うということは考えておりません。
  56. 川崎寛治

    ○川崎委員 そうしますと、戦後三十三年、日本は中華人民共和国とも平和友好条約を結んだ。ソビエトとは国交回復をしてまいってきておる。まだ平和条約の締結にはこぎつけてはいないけれども、そして領土問題という大変大きな問題はありますけれども、国交を正常化してやってきておる。朝鮮民主主義人民共和国とだけが特別に異常な状態が続いておるわけです。冒頭にアジアの冷戦体制は崩れたかということに対しては、そういう認識だったと思います。そうしますと、アジアの冷戦体制が崩れた中で、朝鮮民主主義人民共和国とだけ異常な状態が依然として続いておる。そのことは、本日開かれました板門店の南北会談ともかかわってくると思います。国際連合に一九七三年の十月一日北朝鮮が出席をいたしました。今日国連においては南北両朝鮮は同じオブザーバーの立場にあると思うのです。国際連合における南北朝鮮のステータスというものは国連において変わりはない、全く対等のものだ、同じものだ、こう思いますが、その点いかがですか。
  57. 園田直

    ○園田国務大臣 国際的に見た場合には、国際的な評価はそのとおりでございます。
  58. 川崎寛治

    ○川崎委員 つまり国連尊重という立場から私たちは問題を進めなければいかぬ。しかし、日本としては、日本とそれぞれとの独自の関係もある、これが政府側の答弁になろうか、こう思いますが、日韓基本条約の基本になりました一九四八年の国連決議第百九十五号(Ⅲ)というのは、両朝鮮が国連に出席、そして国連のオブザーバーということによって失効しておる。この点についてはいかがですか。
  59. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  いまの御質問は、国連決議は失効しているかどうかという御質問であったように拝聴いたしましたが、これは法的文書でございませんので、失効しているか否かという形では取り上げられていない問題ではないか、このように理解しております。
  60. 川崎寛治

    ○川崎委員 法的文書でないからどうかこうか言うけれども、しかし、これはもう効力はない、これは明らかじゃないですか。この国連決議に基づいておりました一九四八年の朝鮮委員会も五〇年には朝鮮統一復興委員会と改称した。そして、その決議に基づいてきた作業も七三年の十一月二十一日、国連において朝鮮統一復興委員会の解体を決定しておる。明らかに無効じゃないですか。そういう三百代言のような回答をしちゃいかぬですね。
  61. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 突然のお尋ねでございますのであれでございますが、とりあえず国連総会の決議でございますから、いわゆる純粋な意味の法的拘束力が云々というものとは少し性格が違うだろうと思います。ただ、この第百九十五号も、当時臨時委員会が朝鮮半島における特定の地域の選挙を監視してそれに対する意見を出したという実態、事実そのものを報告しておるわけでありまして、ただいまの状況は私しさいに存じませんけれども、その後の国連総会においてもこの百九十五号という決議はしばしば引用されておりますし、それからわが国としてもこの決議の認識を尊重して、かつて日韓交渉を行います場合に、この決議に基づきまして日韓基本関係条約というものを締結した、こういう関係になっているわけでございます。
  62. 川崎寛治

    ○川崎委員 法的規制のないものを日韓基本条約の基本に置いて、これは「想起し」ということにはなっておりますが、決議というものを土台にしてステータスを決めたわけですね。しかし、実際には国連においては両朝鮮が同等の立場になっておるわけでありますから、国連尊重という立場から言えば素直に――私はこれはきょうの本題ではありませんから、この議論をして時間を空費したくないと思います。しかし、外務大臣どうですか、事務当局の回答じゃなくて、これは明らかに効力を失っておる、つまりその基盤はなくなっておる。新しい事態になっているわけです。そのことをきちっと認識をして、朝鮮半島に対する日本の姿勢というものをどう検討するか、つまりあたりまえだということで来たところに問題があるわけですから……。そのことを外務大臣にお尋ねしたいと思います。
  63. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 お答えいたします。  御指摘の韓国との基本条約第三条で、韓国政府の性格について、これは国連決議第百九十五号に明らかにされているとおりのものであるという当時の客観的事実を確認する趣旨の規定を置いているわけでございます。これは条約締結のときの事実認識でございます。したがって、その後にあるべき国連決議の改廃というものとは別個の問題として当時日韓基本条約が結ばれたという経緯でございます。
  64. 川崎寛治

    ○川崎委員 それはいまの私の質問に対する答えじゃないのです。しかし、これはいま残しておきます。  そこで、われわれはこの決議自体に反対しております。認識が違うわけですけれども、しかしいずれにしましても、いまは国連における同じステータス、南北朝鮮は同じステータスだということをわれわれははっきり踏まえて、そして対朝鮮政策をどう展開していくかということを考えなければならない。つまり冷戦体制は崩れた。そしてその中における一つの大きな基本である、韓国は冷戦体制の最前線でがんばっているんだ、だからアメリカ日本は応援するんだ。そしてまたそのことでずっと今日まで来たわけです。しかし、そのことがいま崩れてしまったとなりますと、南北の板門店における会談というものを深く洞察をしながら、日本の今後の進むべき方向、つまり常識的な、異常でない方向に持っていくにはどうしたらいいかということが日本外交に問われておる大変重要な課題だ、こう思うのです。  そこで、いまの問題は基本的な議論というのは今後に残しておきますが、次にお尋ねしたいのは、一九六五年の日韓基本条約を議論しましたときに、私たちは基本的に基本条約には反対をしました。しかし、条約の議論の過程というものを振り返って進めたいと思うのでありますが、請求権の問題は、これは南だけだということであの条約議論のときには政府側は答弁をしたわけです。そして北の半分には残っておる、こういうことでありました。そういたしますと、朝鮮民主主義人民共和国側の経済的な請求権、本来賠償の議論もあるわけでありますか、経済的な請求権は北側にありということについて疑問の余地がない、こう思いますが、外務大臣いかがですか。
  65. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 日韓会談の長い経緯を経ましてとの請求権問題、これは会談では日本と韓国との請求権問題が中心ではございましたけれども、それはまた朝鮮半島全体との問題も、サンフランシスコ平和条約における関連規定のこともありまして種々取り上げられまして、またこの国会でも当時毎回御議論があったと記憶しております。結局、日韓間の請求権問題につきましては、いろいろ法律上の論議とかあるいは事実関係の確認の困難さとかいうような経緯がありましたので、日韓間では御承知のような形で、請求権及び経済協力という形でこの問題を最終的に解決したわけでございます。その過程においてもしばしば答弁がありましたように、そのときから一貫して政府としては、朝鮮半島の北の部分に関する請求権問題、これは白紙である、こういうことで一貫している次第でございます。
  66. 川崎寛治

    ○川崎委員 白紙じゃないんですよ。椎名外務大臣は請求権問題についても、休戦ラインの北には実際上の支配、管轄権が及んでいないことを念頭に置いて処理しておるので、北の問題はいわば残されている問題であるということでありますから、単なる白紙ではない。
  67. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 御指摘の御答弁、私どもも承知しておりますし、これは請求権の協定ができる前の討議と日韓間のできた後と若干いろいろ議論の分かれがあったかと思いますが、サンフランシスコ条約の経緯から見て、これはこの場合、日本と朝鮮半島との当局の間の特別取り決めの対象になるということが基本にありまして、そこから日韓は日韓で議論が進んだわけでございますが、そういう意味におきましては、北朝鮮、これは現在というよりも戦争の終わった時点における北朝鮮あるいはそこに住んでおられた方の請求権、それから日本ないし日本人の当該地域に対する請求権、それはそれぞれ存在しているという立場でございます。
  68. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、こういうふうにして南北会談が進み始めた。これは私は、一月の中旬に話が始まって一カ月たたないうちに会談にこぎつけたという点については、アジアの大きな情勢の変化の中で南北両政府の統一へ向けてのそれぞれ考え方はありますけれども、この問題に非常に熱心に取り組んでおるという姿勢だと思うのです。今後もこれは決して平たんな道ではないだろうと思います。いろいろとジグザグはあるだろうと思います。しかし、日本が朝鮮半島全体に大変大きなかかわり合いを持っておる。かつて植民地として大変収奪もしたという過去の歴史というものを振り返りますならば、今日こうした会談が進み始めたことに対して、日本としては何をすべきか。園田外務大臣は、日中平和友好条約の締結以後、朝鮮問題あるいは日ソの問題という点について言及されました。つまり今日のこういう情勢の中で両方の動きが大変微妙だから、傍観をしてただ結論を待ちましょう、こういうことではいけないと思うのです。つまり、さっき私が申し上げましたことは、国連におけるステータスというのは全く同じだ、しかし日本は韓国との関係があって、こういう異常な状態というのが依然として続いておるわけです。そうしますと、それを日本が非常に関係の深い国としてどうして統一への環境をつくっていくか、関係国としての。日本のやれること、日本政府がしなければならないことというものはたくさんあると思うのです。その点についての外務大臣のお考えを伺いたいと思うのです。
  69. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおり、いよいよ会談が始まったわけでありますけれども、両方の考え方には相当の開きはあります。開きはありますが、少なくも短期間の間にお互いに敏感に反応しつつこの会談が始まり、しかもじっと見ておりますと、両方とも自分の責任においてこの会談を壊したくないということは非常に明らかでございます。これは御発言されましたとおり、私もこれは一つの国際的な必然性というものが来た、雪解けになったとは思わぬが、そっちに向かった。それから先ほど申し上げました米中、日中という条約が朝鮮半島の話し合いによる平和統一という方向に役立つときが来たのじゃないか、こう考えております。わが日本としては、したがいましてこの対話が壊れないように、漸次、スピードは遅くとも、紆余曲折はありましょうとも、平和統一の方に話し合いで片づくように、そういう環境をつくると同時に、北の方ともいろんな問題があるごとにこれを積み重ねていきたいと考えております。
  70. 川崎寛治

    ○川崎委員 北の方とも積み重ねていきたい、この場合に、大変長いこじれておる問題でありますから一足飛びにいかないにしても、やはり経済あるいは文化あるいは人的交流、こういうものは当然従来以上に進めなければならない。そのことがやはり朝鮮半島との、特に北の方との異常な状態を改善していく方向だろう、こう思いますが、いかがですか。
  71. 園田直

    ○園田国務大臣 その方向がわが国が努力すべき方向であるということは全く同じでございます。ただ、韓国側に立っておりますから、この会話が不当に一方に力を加えるというようなことがないように注意しなければならぬ、こう思っております。
  72. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、まあ日本が被害を与えた度合いというのは南北変わりがなかったと思うのですね。南北変わりがなかったんだけれども、しかし、異常な冷戦体制の中で異常な状態が今日まで続いてきておる。で、私は、日本の請求権協定に基づきます以後の有償、無償あるいは経済協力、それぞれ問題にすべき点もあろうかと思います。その過程の中では、たとえばソウルの地下鉄の問題等、いろんな問題も出てきておるわけですが、概算をしますと、この請求権協定以降今日まで、日本が南側に無償なり有償なり技術協力なりやってまいりましたのは何と一兆円なんです。これはもう一兆円あるのですよ。民間ベースの経済協力はプラント類の輸出承認あるいは民間の直接投資と、三十五億ドルぐらいありますね。そうしますと、大変な南北の差別をしてきたことになります。与えた被害は同じだ、しかし南側に異常につながってきた、そういう異常な状態というのは経済の面でも出ておるわけです。そこで私は、やっぱり少しずつこれを改めていく。そのことは先ほど経済交流なり文化交流なり人的交流なりの問題について、そのとおりだ、しかしという、しかしをつけましたが、答えられた。そこで最小限何をいますべきだろうかといういろんな点を考えますと、私はまず二つお尋ねしたいと思うのですね。  一つは、共和国側に対する経済協力についても私は進めるべきだ。完全な関係が切れました台湾に対しても、いま輸出入銀行は融資されておるのです。それが、国連における地位は同じだという北側に対しては輸銀も切れているのです。これは焦げつきの問題もあるでしょう。しかし、基本的には私はやっぱり輸銀の使用、こういう問題等はかつて四十九年、五十年ごろには輸銀の使用もありました、融資もありました、だから輸銀の融資という問題も当然検討されるべきだ、こう思いますが、大蔵大臣いかがですか。
  73. 金子一平

    金子(一)国務大臣 北側に対する輸銀融資はケース・バイ・ケースによって決めることにいたしております。いま川崎さんからお話のございましたように、四十八、九年には出ておったのですが、その後商談ができない。それは主として支払い資金の関係と了解いたしておりますが、具体的な問題が出ましたならば検討するにやぶさかでございません。
  74. 川崎寛治

    ○川崎委員 一九七二年日朝議連の諸君が参りまして、日朝間で貿易代表部の設置について合意をいたしましたが、それ以後金大中事件等もあり、これはとまったままになっております。両国間でもまだ話は詰まっておりません。しかし、日朝の長い歴史を振り返ってみましても、古井法務大臣はその点で大変御苦労もされてきたわけですが、やはり北側とも今後貿易代表部の設置、そういう問題等について、これは政府の代表部というまでには一足飛にいかぬでしょうが、民間の代表部の問題等についても進めば、当然政府はこれに応援をすべきだ。七三年の通産省の予算では補助金が組まれました。私は、七二年、七三年に朝鮮に参りますときに、当時の田中通産大臣なり当時の中曽根通産大臣なりともこれらの問題について話をし、政府間の通産ベースで接触もする、そのことが焦げついているいろいろな問題等も解消していくことになるわけですし、そういう方向もたどるべきだという提案をし、それらは了承もされ、進もうとしたのです。しかし、残念ながら七三年の金大中事件で全部ひっくり返ってしまって、それがずっと続いておるわけです。だから私は金大中氏の問題というのは大きなとげであると思います。それで先般数時間にしろまた再逮捕というようなことは、これはまた障害にならないかなと思って、実は私過去を振り返って大変心配したわけです。でありますから、貿易代表部の問題については通産省の補助金の予算も組まれているわけですから、通産大臣いかがですか。そういう方向に進めることに異存ありませんですね。
  75. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは二千二百九十万ばかりのものが毎年組まれておるわけですね。したがって、いまあなたがおっしゃるように、民間の代表事務所といったような形で、これが妥当な姿で発足すれば協力できるわけなんですが、問題は、お話の中にも出ておりましたように、現在八百億円の焦げつきの問題がありますね。ああいった問題がやはり片づきませんとなかなか軌道に乗りにくい。いい姿になってくれば、通産省としては毎年予算措置をしておることですから、つくることを検討するにやぶさかじゃございません。
  76. 川崎寛治

    ○川崎委員 いま経済関係で二つの点、原則的なものは進められるという確認ができましたので、両国間のいろいろな障害を取り除きながら、日本側だけの問題でないという点についてはわかります。ですから、それらを解消しながら促進をしていくということに政府の姿勢を正してほしい、こういうふうに私は思います。  そこで、次に人的交流の問題でお尋ねをしたいのでありますが、朝鮮労働党の代表団を社会党が招待をいたしております。このことについて名称がどうの何がどうのといろいろ反対もあるようです。私はかつて一九七二年の四月にドイツ民主共和国の社会主義統一党の代表団を、国交回復の前であります、そして国連未加盟の段階であります、その段階において、当時福田外務大臣でありましたが、代表団を正式の党の名前、正式の肩書きで日本に招待をいたしました。私は、そういう過去の例からいたしましても、また私先ほど来強調しているように、国連におけるそういうステータス、そういう問題等考えれば、ちゅうちょなくこれは正式の名前で入れる、そのことが私は将来に向かってのいい方向を導き出してくる、こういうふうに確信をいたしております。このことについてひとつ法務大臣いかがですか。
  77. 古井喜實

    ○古井国務大臣 ただいまの御質問の問題でありますが、その前にあなたもるるお述べになりましたし、私もこの委員会でも申しましたのですけれども、朝鮮半島に平穏な、平和な時代が来ることをわれわれは願っておるわけでありまして、昨今またよい兆し、動きが起こっておる、大変喜ばしいことだと思って見ておるわけであります。ただ、そういったからといって、幾多の山も、坂も、川も、谷もありましょうし、時間がかかるかもしれぬけれども、一日も早くそういうときが来るように、国際環境もそういう方向に動いておるように私は思いますし、そういうふうな清勢を踏まえて現実の問題を処理しなければならぬ、そういう考えを持っておるわけであります。ただ、現実から一足飛びに飛躍するということがよい結果になるかどうかも考えてみなければなりませんし、情勢を踏まえ、現実から少しでも前向きで歩いていくようにしたい、こういう気持ちでもって、われわれの方と外務省の方といま引き続いて十分相談をしておるところでありますから、近いうちに一つの結論が出ると思っておりますから、それまでお待ち願いたい、そう思っております。
  78. 川崎寛治

    ○川崎委員 理性ある処理を期待をしておきたい、こういうふうに思います。  そこで時間を大変とってしまいましたので、次にイランの問題に入りたいと思いますが、昨日もいろいろとイラン革命以後の石油問題についてございました、しかし、私はこのイラン問題について日本議論がありますときに、この石油問題等での議論でしかないということは大変問題だ、このことは私は大変判断を間違う、こう思います。アメリカのカーター大統領もターナーCIA長官を大変しかったそうですけれども、CIAでさえも情報がとれなかったんだから、わが日本の外務省がとれなかったのはあるいは当然のことかもしれませんが、しかし、特にこのアラブとで大事なことは、情報収集をどうしていくか、このことは、アラブだけでなくて今後の世界の各地ともかかわり合いを持っていくあるいは相互依存関係を強めていくという中で非常に重要な問題だと思うのです。  ひとつ私は苦言を呈しておきたいと思うのですが、この間もちょっと総括のときにお尋ねをして、時間が足らぬものですから大変中途半端に終わっておるわけですが、このときに、園田さんが福田前総理と一緒に行かれましたその前に、わが外務省の中近東局長は、イランは王室だ、日本は皇室だ、だから両国関係は非常にいいんだ、よくいくんだ、こういうことを発表しておるわけですね。私はそういう認識の仕方というか、それがやはり大変な間違いだったと思うのです。もうすでに動いておったわけですけれども、しかし、そのシャーの計画というものが大変テンポ速くいっておりまして、ですから間違いないものだ、こういう判断をしておったと思いますが、特に日本の情報収集がアメリカに依存をしておる。しかし、今日、アメリカは大変判断をあちこちで誤ってきておるのです。  だから、一つは姿勢の問題ですね。つまり、向こうは王室、こっちは皇室だから非常によくいくんだなんという認識ではだめですよという警告をしておきたい。  その次には、日本独自の情報のパイプをどうするか、つまりパイプの多様化ということが今後非常に大事だと思いますが、その点について外務省としては今度の問題、これはもう第四次の中東戦争のときにも経験をしたことでありますが、パイプの多様化、そういう問題についてどうお考えになりますか。
  79. 園田直

    ○園田国務大臣 ウサギの耳が大きいように、武力のない日本、平和外交を進めていこうという日本にとって一番大事なものは情報網の強化であります。残念ながら外務省の機構及び費用、機密費などは全然ない状態でございますから、そういう中で困難ではありますけれども、ここに出入りをしておる民間人あるいは専門家あるいは他国の情報等総合して、情報網はできる範囲でやることが一番大事なことだということは御発言のとおりでございます。
  80. 川崎寛治

    ○川崎委員 総定員法に縛られておる今日の外務省の人員の問題もあると思います。これは、この間SECと日本の機構の問題等でも大平総理に御質問しましたときにも、国際化時代に日本の制度が対応できておるかどうか大変疑問だという点を言われておるのでありますが、そうした点については、これまでの惰性というものを根本的に改める、そのことについては検討しなければ同じことを繰り返していく、こう私は思います。  そこで、今度のイスラム共和国の成立という問題は、宗教上もいろいろありますが、しかし、私は第一波、第二波といまアラブ側が西欧文明に対して挑戦をしてきた、こう思います。つまり、七三年の中東戦争、あの直後、社会党はアラブ連盟の招待で私が団長でアラブ各国を回りました。当時の三木副総理よりも早く社会党の方が出たわけでありますが、そのときに各国を回って各国の大統領や総理やあるいは石油担当の責任者、そういう人たちと話をいたしましたときに、こう言ったわけです。日本やヨーロッパ、アメリカはアラブの安い石油を、がぶ飲みをしていると言いましたが、がぶ飲みをして経済の高度成長を図ってきた、おれたちも豊かになりたい、だから、特にイスラエルの問題等もありますが、レバノンの問題等解決をしていくためには石油で打撃を与える以外にないということで、われわれは石油戦略をとらざるを得なかった、決して日本の皆さんやヨーロッパの人たちに寒い冬を押しつけようなどという気持ちではないんだ、そのことを理解してほしいということを言っておりました。今日においても石油問題というのは日本経済の大変大きなネックになっているわけですね。今度のイスラム共和国の成立というのは、宗教的に見ましても明らかに西欧文明への挑戦である。ホメイニ師の姿勢あるいは今度の新政権の方向というものにもそれがあります。でありますから、そういう中で直接には最も早く影響が出る可能性があるのは私はオーマンだと思います。オーマンには非常にイラン革命の影響は早く強く出てくる可能性があるのじゃないかというふうに判断をしております。それで、サウジの問題についてはきのうもいろいろ議論がございましたけれども、湾岸諸国への影響というものを外務大臣としてはどういうふうにお考えになっておるか。まあいま簡単に判断できないと言われるかもしれませんが、中長期を展望しながらどういうふうにお考えになりますか。
  81. 園田直

    ○園田国務大臣 先ほどの発言の中で川崎委員の言葉の端に出ましたが、中東一帯に対して日本が石油だけをにらみながら外交を進めてきたことは非常に反省をしなければならぬことではないか。むしろ、いまや時代は変わりまして、産油国と消費国がお互いに協力をしてこの資源をどう善用するか、長く使うか、石油の時代が終わった場合に中東諸国がどのように国家の再建を図るか、こういうことについても本当に日本が腹を割って協力する時代になってきた、こう考えております。今度のイランの問題が他の国々に波及することは、これはじわじわ見えているようでありますが、相当速いスピードでいくのではないか。サウジアラビア等がソ連に接近しようなどという動きもこの一つのあらわれである、こういう点から十分注意をして見る必要があると考えます。
  82. 川崎寛治

    ○川崎委員 そういう観点に立ちますときに、外務大臣が閣議の後報告をし、またここでも報告をしておられますバザルガン首相と和田大使との会見というのを手放しで喜んでおりますけれども、私はこれは非常に皮相じゃないかと思う。と言うことは、つまりバンダルシャプールの三井石化の計画というのはシャーの計画なんですね。シャーの計画の目玉だったわけです。そして三井物産は、これがシャーの計画だ、シャーの計画だということを非常にこれまで強調してきた。バザルガン首相が大変好意的に発言をしたことは結構だと思います。しかし、きのうのNHKの報道によりますと、イラン新政権の経済顧問でありますバニサドル氏はもっとシビアな見方をしております。つまり、他国の備蓄のために輸出をするのじゃないのだ、三井石化の計画がイランの国民経済に不可欠かどうか、役に立つかどうかということをわれわれは検討するのだ、こう言っております。だから私は、今日のイランの問題につきましても、大使が会って大変よかった、それで、それがそのまま新政権の計画として承認をされたのだというふうな形で臨んでいったのでは、大変間違いだと思います。だから、イランの新しい政府のもとにおけるイラン国民の経済にどう不可欠のものにしていくかという再検討がなくちゃならない、私はこう思います。その点について外務大臣の方から。
  83. 園田直

    ○園田国務大臣 私も三井の石化プロジェクトに対して簡単に楽観しているわけではございません。しかし、一時はこれが破壊されそうになり、一時は日本人の人命についても危険があった状態からいまの状態に変わり、新政権がこれに対して一日も早く完成させたいという意向があり、現在の総理がわざわざ紛争中に向こうまで行ったことなどを考えますると、ここに日本が努力をする糸口はある、こう考えておるわけであります。御発言のとおりこのイランの新政権が、混乱が終息をし、安定をし、逐次再建の方向に向かう時期が来て、向こうから要求があれば、わが日本はイランのすべての産業復興、経済復興に協力をする用意をしておくべきだと考えております。
  84. 川崎寛治

    ○川崎委員 アメリカは依然として力の政策をとろうとしております。兵器を大変売り込んでおった最大の市場がつぶれたわけでありますから、アメリカの兵器輸出にとっては大変な打撃だと思います。それが今後日本市場にどう向かってくるかというのは今後の問題でもありましょうけれども、しかし、アメリカがいまとっておる力の政策というのは、御承知のように、シャーの計画の中でイランは自給できておった食糧というのを完全に外国に依存をする、そういう状況に、七五%程度の依存のようでありますが、そういう事態になっておる。その食糧でいまアメリカはイランを攻めておる、そして石油を出せというやり方をしておるような情報もあるわけでありますが、そういう力の政策というのは私は間違いだ、失敗する、こう思います。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 私がアラブ各国を回りましたときに言われましたことも、たとえばクウェートでもう三十年もすれば石油がなくなる、そのときに再びベドウィンとして砂漠をさまようことのないようにするにはどうしたらいいかということを考えているのだ。ところが、日本は石油をくれ、そうしたらこうしましょうという、石油石油だ。その点では西欧文明への挑戦ということを私は申しましたが、当時アラブの諸君が、日本は東洋だ、われわれは決して西洋でない、中洋だ。日本は大変活力があると思う。だから先輩としてわれわれの経済発展に協力してほしいのだ、それはオールラウンドで欲しいのだ。たとえばイギリスやフランスはかつて支配者としてまた戦後、第二次大戦後戦争もした。しかし、オールラウンドのつき合いをしておる。フランスなどの場合には、ことしはパリで翌年はクウェートで、こういうぐあいに文化や産業や社会福祉やあらゆる面における、オールラウンドにおけるつき合いをしておる。しかし、日本は石油石油、これでは政治的には後進国じゃないですか。先輩としては残念ながら尊敬できぬ、こういう批判もございました。この点は、ぜひ今後のそうした途上国へのあるいは産油国、あるいは資源外交という面では根本的に考え直さなければならないと思うのです。  そこで問題は、企業の集中投資というのがこれまで高度成長の中で特に進められてまいりました。インドネシアもそうですね。あるいはアラブもそうです。いまはメキシコに走っておる。中国に走っておる。そういうようにわあっと走っている。私はアラブで経験をしたのは、アラブで、もう最後のフロンティアだということで走り込んできておった姿というのを目の当たりにいたしております。そこで日本の外交というのは、特に経済外交は、そうした商社なりメーカーなりそういうものが乗り込んでいって話をつけて、持って帰ったものを集めて経済協力のプロジェクトにしていく。イランもそうですね。サウジはその点利口な面があったと思います。そうした企業主義の外交、しかもかつて池田元総理がトランジスタのセールスマンだという非難を受けました。それがトランジスタから船になり、そしてプラントになっておる、こういういま経過をたどっておるわけでありますけれども、そういう企業主義の経済協力のあり方というもの。発展途上国の国なりあるいは社会主義の国なりというのは、やはり国民生活というものを考えて、どうして国民生活を豊かにしていくかという中で経済協力を考えている。しかし、日本の場合は、特に産油国に対しましては石油石油で走っておるわけであります。  そこで私は、この問題について二つお尋ねをしたいと思うのです。そういうコスト主義、金を入れた、そうしたらそれが利益としてはね返ってくる、それはこの間も指摘しましたように、輸出入銀行法の法律の目的もそうです。経済協力基金法の目的もそうです。そういう通商主義、経済主義、そういう貿易主義の今日の姿勢というのは反省をして、ここで再検討する必要がある。だから企業主義、商社尊重型の外交というものは、イランの問題でも大変反省させられるわけでありますが、この点について、これを改めるべきだという点についての外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  85. 園田直

    ○園田国務大臣 第一は資源外交でありますが、御発言のとおりに、石油をぶら下げて外交を展開することは一番拙劣な方法であります。相手の国の繁栄、相手の国の経済の発展ということに協力をして、そして日本は自分の国にとって大事な国である、だからこれに石油を困らせてはならぬというように持っていくべきであると考えます。  第二番目の市場投資と言われる問題、全くそのとおりでありまして、これは具体的には大型プロジェクトの経済援助重点というものを、その地域の住民が繁栄をし、地域の住民が喜ぶような協力に変えていかなければならぬ、こう思って、ただいまそのかじを切りかえて努力をしているところでございます。
  86. 川崎寛治

    ○川崎委員 それじゃ大蔵大臣お尋ねしますけれども、インドネシアは後ほどちょっとお尋ねしたいと思いますが、インドネシアもいまひどい目に遭っていますね、ルピアの切り下げで。そこで、対外融資についての分散をしなくちゃならぬという大蔵省の考え方、私は賛成です。ですから、そうした集中投資のあり方、あるいはメキシコでも本当にメキシコの国民経済をどうするかという点からすると混乱させられておる、日本側の対応の仕方は。企業がわあっと入ってきて混乱させられておるという意見もメキシコ側からも聞くわけです。しかも、いまメキシコは、通産大臣は今後の石油はメキシコも一つの転換の方向として大きく考えられておると思いますが、国民の中における貧富の差が非常に大きい。それは大変問題のあるところなんですね。ですから、それらの点については対外融資というものについて監視の強化をしたい、こういうことでございますが、そういう審査体制を強化をしようという大蔵省の考え方があると思いますけれども、その点についての大蔵大臣としての考えを伺いたいと思います。
  87. 金子一平

    金子(一)国務大臣 対外直接投資は、これは民間はそれぞれの責任と危険においてやっておるものですから、一地方に集中的にやっていろいろな問題を起こすこともあると思います。しかしいま川崎さん御指摘のように、今後そういった点については、やはり一番大事なことは必要にして十分な情報をどうやって的確に集めてもらうかということでございますので、各省との連携はもちろんでございまするけれども、ジェトロを活用し、あるいは輸出入銀行等におきましても十分の連携をとりながら、直接投資がうまくいくようにこれからもその体制を固めてまいりたい、また銀行等につきましてはそういう方向で指導していくように持ってまいりたい、こういう気持ちでございます。
  88. 川崎寛治

    ○川崎委員 この点は具体的に詰めたい気もするのですが、ちょっと時間がありますので、国際金融局長、この点いかがですか。
  89. 宮崎知雄

    ○宮崎(知)政府委員 ただいま大臣が御答弁になりましたとおり、私ども対外直接投資というのは、民間の投資につきましては、これは一次的には民間の判断とその責任において行われるべきものだと思います。したがいまして、カントリーリスクの問題なども、これは民間の判断で処理されるべき問題だと思っております。ただ、御指摘のように、特定の国に最近いろいろ投資が集中しておるというような状況でございまして、そういう国に投資をする民間の側におきましていろいろ情報が不足しているというような問題があろうかと思いまして、そういう点では情報の提供あるいは資料を提供するとか、そういうような点では政府は協力してまいりたいというふうに思います。  それからまた先生御指摘の、投資先の国でいろいろ問題が起きて、それが向こうの政府からの正式な要請というような形で外交上の問題としていろいろ要請が出てきた場合には、またこれはこれで外交上の問題もいろいろ配慮しながら検討していかなければいけない問題だと思っております。
  90. 川崎寛治

    ○川崎委員 そこで、イランの問題から反省させられる今後の問題として、一つはイギリスもドイツも大変早く対応しつつあると思うのです。たとえば訪問外交というものをそれらの国々もやっておりますね。エリザベス女王が湾岸諸国を訪問をしたり、あるいは西ドイツは外務大臣がサウジに出かけていって経済協力協定を検討するとか、あるいはアメリカもクレプス商務長官に引き続いて今度は、これは兵器の問題もありますからですが、ブラウン国防長官が出かけていくなど、それぞれ激しい動きをしております。  中近東に大変石油を依存しておる日本としては、今日そうした情勢の中で的確な判断をしながら、先ほど来基本的な姿勢の転換、つまり石油のみでない、いかにしてそれぞれの国民の経済発展に、国民生活の安定に日本は先進国として協力するかという姿勢を明確にしながら、これらの国々に対する関係も深めるべきだと、こう思います。それらの点について、日本としてそういうものを早急に進める考えがあるのかどうか、外務大臣にお尋ねしたいと思います。
  91. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいま南北対話の電話が入りましたので、まず御報告いたします。  本十七日の会合は午前十時に開始され、午前十一時二十分に終了した。次に、次回会合は三月七日午前十時に板門店の中立国監視委員会会議室で行うことに合意をした。次に、南北双方のやりとりは次のとおりでありますが、ホットラインの再開について意見が一致したほか、南北双方が従来の主張を繰り返すにとどまった。  会談の細部は省略いたします。大体予定どおりに進んでいるようでございます。  ただいま仰せられました川崎委員の発言は、非常に傾聴いたしておりまして、私も全くそのとおり考えておりますが、そういう方向で事態を見守りつつ、これに対応の策を、手段を準備しつつ、そういう方向に進んでまいりたいと存じます。
  92. 川崎寛治

    ○川崎委員 このイラン問題で最初に情報収集の問題についても触れたわけでありますが、それは要するにイランの場合、パーレビ国王の王宮がありますイランの北の方にみんなかたまっておった。そういう中で、要するにパーレビの意向さえ聞いておればいい、こういうことに間違いがあったわけですね。そうしますと、大変じみな人間同士のつき合いというのをもっと広げる必要があると思うのです。残念ながら学者や文化交流やそういう問題については、大蔵大臣、予算は大変少ないと思います。経済大国といいながら、本当に基本の人民間の交流を進めていくということについての政府の姿勢は、恐らく先進国と言われる中で私は最底じゃないかと思う。そういう交流の基金というのはトヨタの宣伝費にも足らない、こう言われておるわけでありますが、こういうことじゃいけないと思うのです。  たとえばあの石油危機の後、七三年の後、それアラブだというので、カイロのアメリカン大学に日本の商社や石油会社や銀行はどっと人間を出した。そしたら、またたく間に教室を日本が占領しちゃった。そういう商社や石油会社や銀行、そればかりが先行しておる。こういうあれじゃいけないと思うのですね。これは文部大臣も文化交流の責任者として長期の展望、少し大きな構想を持って、いまのような予算の枠ではだめというのであったら、この際、大蔵大臣に検討し直すという回答もとりたいと思いますけれども、学者やあるいは留学生、先ほど中国との問題もありましたが、こうした点についてはやはり若い者同士がつき合える、あるいは学者が交流できる、そして人民レベルの交流がうんとふえるということをやらなければ、政府のパイプだけでは情報はとれないのです。私はビエンチャンでかつて経験をしましたが、まだこれは解放前でありますけれども、フランス語の先生がパリから来る。そして三年の任期が終わって帰ればまた自費でやってくる。一番金を出しておらぬフランスが一番好かれておるのですね。一番金を出したアメリカが一番きらわれて、その次に日本がきらわれておる。いま東南アジアでは日本はうんと金を出しておるのだけれども、余り好かれていない。だから、ゴーホーム田中というのもあったわけですね。そして日本に留学をした諸君が帰って親日家になったか、日本との間の交流のために本当に努力しておるかと言えば、留学生会館をぶっつぶしてみたり――長年の伝統のある留学生会館を赤字を理由につぶしましたね、おととしですか。そんなことをして、日本から帰った者が日本と本当に友好を深めていこう、そのパイプ役になろうという者が育ってないのです。むしろ反日家が育っておるというのでは私は大変残念だと思います。これは日本国民全体の、島国である、国際人としてつき合いにくい性格もあろうと思います。きのう安井委員からも指摘しましたように、元号法制化などということをやって、特殊な社会にしていこうなんということをしておったらだめなんです。どうですか、文部大臣。そういう交流の面で壮大な計画を発表していただいて、外務大臣や大蔵大臣がそれをさらにバックアップしていく、あるいは進めていくということについての御見解を伺いたいと思います。
  93. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 いま川崎先生のお話、まことにごもっともでございまして、これからはやはり総理もおっしゃるように文化の時代でございますから、国際的に信頼と尊敬をかち得る日本人でなければならぬと思うし、資源小国の日本の繁栄というのはやはり国際交流だと思う。そういう意味で、国際交流によって日本の学術も教育も向上するし、国際的にお互いに理解を得ることによって本当の親善ができると思う。先ほどお話しのように、日本に来た留学生が帰って反日になるようじゃ、何のためにやったかわからぬと思うのです。ことしの予算でも大蔵省が大変心配していただきまして、特に東南アジアの学生を大量に受け入れる、国費の留学生もふえたのでございまして、特に日本では日本語という問題がありますので、日本語の体制の整備をするとか、あるいは寄宿舎の問題、これも大事だと思うのです。やはりせっかく来たら環境をよくしてやらなければと思って、帰って反日になるようじゃ困りますので、寄宿舎の増設等、ことしは大幅に拡充いたしまして、まだ足らない点は今後一層にやりたいと思いますが、いずれにしても先生のお話のように、これからの日本の繁栄は国際交流によって日本の信頼をかち得ること、これが根本じゃなかろうかと思って、私も全力を尽くすつもりでおりますので、格別の御支援を賜りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
  94. 川崎寛治

    ○川崎委員 文部大臣が大変真剣に国際交流の問題について所信をお述べになりました。私はそれが具体的に展開されることをぜひ期待したいと思うのです。大蔵大臣どうですか、ことしは大変予算をくれたといって感謝をしておりましたが、今後日本が国際社会の中で生きていくということのために大変大事な点ですから、今後の財政の方向として御見解を伺いたいと思います。
  95. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは一番大事なことでございますので、日本を認識してもらい、また外国を認識して仲よくしていくという体制づくりをするためには、必要な予算はどんどんつけたいと思います。ただ、やり方につきまして、先ほどもちょっと御指摘のございましたように、いろいろな問題がございますので、十分そういう点を配慮しながら、できるだけの努力をしてまいりたいと考えております。
  96. 川崎寛治

    ○川崎委員 インドネシアの問題を少しお尋ねしておきたいと思うのです。  十一月十六日、ルピアが五〇%切り下げられました。このために損害は、私はやはり四、五千億ぐらいになる、四千億は超すと思うのですね。この問題について、通産大臣並びに大蔵大臣からこの点についての対策、考え方というものを伺いたいと思います。
  97. 宮崎知雄

    ○宮崎(知)政府委員 ちょっと御質問趣旨がはっきりいたしませんが、五〇%の切り下げによって日本の、どういうことでございますか。(川崎委員「目減り。為替の損失というのは五千億くらいになるでしょう」と呼ぶ)ただいま私ども手元にちょっと資料を持っておりませんので、幾らぐらいの債権の減耗になるのかというのはちょっとわかりません。
  98. 川崎寛治

    ○川崎委員 では、これはひとつまた機会を見て回答願いたいと思いますが、為替の切り下げをやって、そしてただ同然の値段で資本を買い取って自国のものにしていこうというふうな動きもあるという見方もありますが、これらの点は大変深刻な問題も出てくるだろう、こう思います。指摘をしておきたい、こう思います。  そこで、次には、東京サミットを前にして大変日米間もホットな状態になっておるわけですが、十分な時間が残っておりませんので、二つお尋ねをしておきたいと思います。  一つは、タンザニアのアルーシャで行われております七十七カ国グループ会議というのは、日米独の先進国に援助の倍増ということを要求しておりますし、これは政府も援助予算をふやしてやろう、こういう対応でありますが、非常にシビアな要求になってくるだろう、こう思います。  それから二番目には、新国際経済秩序というものを要求をし、この七十七カ国グループの結論として、要求として五月のマニラのUNCTADに要求が出されてくる、こういうことになろうかと思います。それで共通基金創設というものをマニラでは決定したいというのが七十七カ国グループの動きでありますが、東京ミットにおいてはこの南北問題というのは、アジアで行われるサミットでありますから、それだけに南北問題については、途上国への依存度の高い日本としては新しい国際経済秩序に対してどう対応していくかということは大変重要な課題だ、こう思います。日本政府の基本的な姿勢というものを伺いたいと思います。
  99. 園田直

    ○園田国務大臣 東京でサミットが初めて行われるわけでありますが、このサミットに臨む基本的な立場というのは、数回の首脳者会議で世界経済不況打開のために各国が責任を分担し、協調と連帯によって解決したいというサミット精神が培われております。そのサミット精神に立って会議を開くわけでありますが、議題その他については、ただいま準備中ではございますけれども、アジアで初めて行われる、こういう観点からいって、南北問題はこれを大きく取り上げられるべきであろう、また取り上げるべきであると考えて、それぞれの国には打診をしているところでございます。大体各国ともそういうことには御異存はないようでございます。  なお、サミットに先立ちまして開かれまするUNCTADのマニラ会議、これはきわめて重要でありまして、この会議で建設的な成果が得られ、その成果を踏まえてサミットでこれを議題として取り上げ、建設的な方向に進める、こういうことでUNCTADの会議を非常に重要視しておりまして、国会の方でお許しになれば、できるだけ私はUNCTADの会議にも出席をしたいと考えております。
  100. 川崎寛治

    ○川崎委員 細かな議論はまた後の機会にしたいと思います。  そこで、先ほど正示委員も、東京ラウンドと関連をし、日米インバランスの中の一つの問題として、電電公社の問題を取り上げておりました。時間が大変短くなりましたので、この詰め方が大変むずかしくなってきましたが、EC九カ国は、イギリスが公社、そのほかは全部日本の郵政省と同じ官営ということですね。そして東京ラウンドで電気通信施設は除くということがECの姿勢ですね。アメリカとカナダが民営ですね。しかもアメリカの場合ですと、ベル・システムが八五%で、あとの一五%に百数十社がある。しかも、ベル・システムの場合も随意契約で自国。こうなりますと、私は国際収支の問題もこれは大蔵大臣に、一月の統計がきのう発表になりましたので、それらの点も今後の方向などもお伺いしたいと考えておりましたが、時間がありませんのでできませんけれども、ただ、先ほども正示さんからの御質問もありましたが、去年は肉とオレンジ、そういうことで、ではオレンジで何ぼぐらいの黒字減らしになったのか、肉で何ぼなったのかという議論をしますと、これは要するに政治品目ですね。この電電公社の問題も、これは百万から関係労働者がおります。雇用関係は、これを公開入札にすることによって非常に不安定になるということは否定できない、こう思います。でありますから、特別注文品でありまして、一般商品と違うこの電信電話の関係というものを軽々にアメリカ側の要求に応ずべきではない、こう私は思います。そういうことで、慎重にこの点については対処してほしい、こう思います。外務大臣と通産大臣の御見解を伺いたいと思います。
  101. 園田直

    ○園田国務大臣 サミットを前にして東京ラウンドその他を考えますと、いま日米間に最後に横たわっている問題は、いま発言されました政府調達の問題、いわゆる電電公社の問題と関税の問題が残っているわけであります。ただいま非常に微妙な段階で、いろいろ話を進めているところでありますから、具体的にどうこうとは申し上げられませんけれども、ただいまの御発言はよく承って、慎重にやりたいと考えます。
  102. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 外務大臣のお答えで尽きておるわけですが、先ほどもちょっと触れましたように、この間「困った。」という全紙の広告が出ましたね。あれは何億かかかるでしょうね。ああいう形で、せっかくいま通産省からも通商産業審議官を派遣して調整に努力しておる最中に、日本国民に呼びかけて何かアメリカが特に不当なことを持ち込んでくるような、そういう意識をあおる、結果的にはそういうことになりますね。あれは私本当に困った事態だなと思っているのです。むしろあんな金があるなら、もっと業界の人がアメリカへ行って実情をよく理解してもらうような努力をするとか、あるいはもっと物を言うとか、日本国民アメリカと何か対決に持ち込むような印象は、今後とも好ましくない。政府なら政府に依存するというのなら、われわれの懸命の努力というものにやはり期待してもらう。あれは全く困ったことであるなというふうに私は見ております。
  103. 川崎寛治

    ○川崎委員 あとわずか残っておりますが、最後に、グラマン疑獄の非公開資料がきのう届きました。本委員会においても集中審議が行われ、残念ながら生の資料を持っていない議会としては、国政調査の歯がゆさというものを大変感じておるわけです。しかし、疑惑はますます深まったと思います。国民の皆さんもそういうふうに受け取っておると思うのです。引き続いて月末には、ダグラス関係の非公開資料も届く、こういうことでございますが、新しい段階に入りました今日、私は三点お尋ねしたいと思います。  まず、外務大臣にお尋ねしたいのは、けさの公報に、外務大臣から内閣官房長官田中六助殿あてに「衆議院における航空機輸入問題に関する決議の伝達方について」通報いたします、こういうことが載っているわけです。国会が徹底的な疑惑解明をしていくということは国民に対する義務だと思います。そういたしますと、近く衆参両院からもアメリカに代表団が出ますが、政府としてアメリカ側の資料を国会に提出をしてもらう、このことについて外交責任者として全力を挙げてほしい。この点についての外務大臣の所見を伺いたいと思います。
  104. 園田直

    ○園田国務大臣 国会から派遣される調査団の調査及び外務省が手に入れることのできる資料については、決議の趣旨に基づいて全力を挙げる所存でございます。  非公開資料については、司法取り決めによって司法当局と司法当局の手渡しでございますから、私の所管ではございません。
  105. 川崎寛治

    ○川崎委員 司法当局間の問題については、今後われわれとしてはさらに徹底解明のために要求していきたいと思います。  次に、新しい段階に入って国民は、どういうふうに進められるか、かたずをのんで見守っておると思いますが、法務大臣の決意といいますか、新しい段階に入ったこの実態の解明についての考え方を伺いたいと思います。
  106. 古井喜實

    ○古井国務大臣 国会でいろいろ御論議がありましたり、そういうことでまた一層国民関心も高まってきたようにも思うわけであります。私どもの法務、検察の分野におきましては、この問題の究明のために手に入るだけの資料はいままでも検察当局において収集しておりますし、その上に、アメリカが持っております資料を、御承知のようなわけでこっちに司法取り決めをして渡してもらう、こういうことを進めておりまして、これがお話しのようにきのう一口やってきた、こういう段階であります。そういうことでありますので、すべて既定方針に従ってやっております。われわれの考え得るだけのことはやってきておるつもりでもありますので、この上、ああもこうもという御注意があったら伺いたいと私は思っておるのです。考え得ることだけはやっておるつもりであります。  なお、今後につきましても相変わらずのことで、とにかくやらなければならぬ分野においてはもう行くところまで解明をしていきたい、こういうふうに思っておりますので、御了承願いたいと思います。
  107. 川崎寛治

    ○川崎委員 伊藤刑事局長にお尋ねしますが、一月四日にSECの資料の発表があり、それから九日には異例の捜査開始宣言をいたしました。そして本委員会の追及に対しましても、疑惑のアウトラインはつかん、だ、こういうことも述べておるわけです。具体的な今後の捜査の展開について刑事局長の方針というか、今後の進め方というものを伺いたいと思います。
  108. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 まず最初にお断り申し上げておきますが、捜査方針を明らかにしろとおっしゃいましても、これはなかなか申し上げにくいことでございます。いずれにいたしましても、昨夜まずグラマン関係の資料が入りましたので、検察当局はこの週末は返上いたしまして鋭意この検討を進める予定でございます。追いかけましてダグラスの資料も入りますので、これらを十分検討いたしまして、従来の捜査経過の基礎の上にこれらを加えまして、そして先ほど大臣もお答えになりましたように真相の解明のために懸命の努力をする、こういう心づもりでおるようでございます。
  109. 川崎寛治

    ○川崎委員 終わります。
  110. 竹下登

    竹下委員長 これにて川崎君の質疑は終了いたしました。  午後二時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時七分休憩      ────◇─────     午後二時二分開議
  111. 竹下登

    竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。児玉末男君。
  112. 兒玉末男

    ○兒玉委員 運輸政策と農林水産関係について御質問をいたします。  最初に運輸関係でございますが、ある程度項目をまとめてお伺いしますので、簡潔な御答弁をお願いいたします。  まず第一点は、本年度の運輸省予算の編成に当たりまして、特に新幹線の新たな五つの整備線を含めた総合的な交通政策を推進する上において、特に陸上公共交通維持整備特別会計制度を前提に案の構成がなされたわけでございますが、これがついに実現しなかったところの背景は一体何であるのか。  それから、今後の国鉄再建の問題につきまして、その一環として去年に引き続き運賃値上げが決定されております。これは当初四月一日からの予定が五月二十日に延長されました。当初の千九百億の値上げ増収による予算が、このことによりまして二百五十億の減収になるわけであります。実際の増収は千六百五十億、これは政府の方針に基づく値上げ延期でございますから、政府において二百五十億の補正措置が当然考えられてしかるべきじゃないのか。同時にまた、昨年の例から考えましても、約二八%程度の値上げであったのが、実際には一四%しか増収が図られておりません。まさに国鉄離れの現象が著しいわけでございますが、国鉄総裁としてはこの点にどう対応されようとするのか。  さらに、常に指摘をされておる国鉄の閣議了解事項は、構造的な赤字欠損について政府が前向きの姿勢をとること、同時に企業努力、運賃改定、この三つが再建の柱でございますけれども、特に今回の整備五線の問題についても、一体その建設資金の裏づけはどうなっておるのか。あるいは、問題となっている公共負担に対する見直しも、前の国会委員会の決議であるにもかかわらず、いまだに実行されておらない。さらにまた地方ローカル線対策。戦時中に国策上国鉄は五十八万人の職員の入れかえが行われております。応召、現役入隊、徴用、徴発、こういうように多くの要員の入れかえ、敗戦を契機にして国鉄はどうしても引き揚げなり外地からの要員を吸収せざるを得なかった。このような背景が今日の国鉄の構造的な赤字といいますか、大きな要因をなしております。このために退職金の関係あるいは共済年金等も多額の原資を必要とするわけでございますが、このような構造的な欠損対策にどのように対応しようとするのか。  また、去る二十四日に答申になりました地方ローカル線対策の問題でございます。これは約五千キロ程度を国鉄の経営から分離をし、地方公共団体との共有あるいは民間への移転、こういうことがうたわれておりまするが、少なくともこれだけの膨大な既存の線を廃止することは、公共交通の立場から、地域住民の意思が十分反映さるべきであり、同時に、仮に他のバス路線等に転換する場合でも、莫大な撤去費用がかかるわけでございますし、私は、この答申案がきわめて非現実的なものではないのか、こういう点について運輸大臣、大蔵大臣、自治大臣、さらに国鉄総裁の御見解をまずお承りいたします。
  113. 金子一平

    金子(一)国務大臣 私の方から、御質問のありました点についてお答えを申し上げたいと存じます。  まず第一に、新幹線の整備五線の建設の財源をどうするかという問題でございますが、これは御承知のとおり、従来の新幹線に比べますると、輸送の需要が低くて、採算の見込みの立たないプロジェクトでございまして、やはりこれをやるためには、しっかりと財源対策を考えなければいくまいということで、運輸省でも新交通体系のための税制をお考えいただいたのですが、いろいろ御検討いただきました結果、このまま実現するについてはまだ少し問題があるということで、今回は御提案申し上げないことにいたしました。そういうことで、いまのところは、新しい必要な財源措置が具体化するまでは、整備計画を進めることを少し待っていただくということになっております。それが第一でございます。  それから運賃の値上げでございますが、御指摘のとおり、五月二十日に実施いたすことにしましたので、若干ずれができまして赤字が出ることになりまするけれども、国の助成の拡充によりまして、国鉄の一般純損失は減少することとなりますので、さらに政府が補正措置を講ずる必要はいまのところないというふうに考えております。  それから国鉄の共済年金でございますけれども、御指摘のとおり、五十八万人の戦時中の職員の入れかえの問題がございますために、今日大きな赤字が出ておりまするが、運輸省では国鉄共済年金問題懇談会を設けて年金財政の健全化のためにいろいろ御検討いただいておりますので、その結果を待って今後慎重に対処してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  114. 森山欽司

    ○森山国務大臣 ただいま基本的なことは大蔵大臣から話がありました。おおむねそういう線でございます。  御承知のとおり、国鉄は昭和五十四年度、助成金、補給金その他入れますと、広い意味の赤字が一兆二千億円ぐらいになるわけでありますから、これは何とか立て直さなければいかぬ。御承知のとおり、一昨年の十二月に国鉄再建の基本方針というものができ上がりました。これは閣議了解でありますが、そのもとになっておるものは運輸委員会における各党のお考えの上に立って、この閣議了解ができたというようなこと。それによりますれば、昭和五十年代に収支相償うように持っていきたい。五十五年から本格的に取り組もう。それには五十四年度すなわち今年中にそのための再建の方策を立てよう。その方策につきましては、先ほど来いろいろお話がございましたいわゆる構造的欠陥、すなわち国鉄だけではどうにもならぬというような問題。いまのローカル線の問題をどうするかとか、あるいは共済年金等の問題をどうするかとか、そういう問題につきましては、いまローカル線の方は小委員会の方から報告が出ました。それからまた、共済年金の方は目下審議中でございます。またそういうものを固めまして、国鉄の経営努力によって解決しなければならない問題はどの範囲のものであるかということを明確にして、どうしてもことしじゅうにはこれらの問題についての具体的なめどをつけて進んでまいりたいというのが現況でございます。  個々の問題につきましては、大蔵大臣から御報告があったとおりでございますし、非常に広範でございますから、また後ほどの御質疑の際に一つ一つの問題に触れてまいりたいと考えております。  陸上特会の問題は、御承知のとおり、特別会計をつくり新税を創設してということで、いろいろ論議になったところでありますが、まだ結論を得ておらないわけであります。特に、整備新幹線につきましての財源は、これをやろうということになりますと、従来のように財投、すなわち借金によって賄っていくということは困難でありますから、やはり国費でやっていかなければならない。その財源の問題は、どうしても、これは先ほどお話がありました大蔵大臣とともに昭和五十四年度前半に、何とかして財源のめどをつけたいというふうに考えておるわけであります。なかなか容易ではございませんけれども、そういう心づもりでございます。
  115. 高木文雄

    ○高木説明員 私どもの関係の部分についてお答えいたします。  一点は、予算要求の段階で四月一日からの値上げということで千九百億円の増収を期待をいたした。しかし、いろいろな観点から、少し時期をずらしたらどうかということで五月二十日になった。そこで二百五十億円そこに差が出た。それについて一種の補てんといいますか、補償といいますか、そういうものを私どもはいただくべきではないかというお尋ねでございます。これは、諸外国によくそういう例があるわけでございまして、鉄道のたてまえから言えば、この程度いつから上げさせていただきたいということをお願いしましても、国民生活の面といいますか、物価の面からいって、そうはいかないということで、政府の御方針で査定を受けました場合に、その補てんを政府からしていただくというルールができておる国があるわけでございまして、わが国におきましても、しばしば学者その他の方々からそういう議論が出されておるわけでございます。  ただ、私どもの考えでは、日本の場合には非常に事情が違っておりまして、全体として六千億円を超える助成を現在いただいておるわけでございまして、全体としていろいろ大きく助成をしていただいておる立場でございますので、二百五十億円という金額が決して小さい金額であるとは存じませんけれども、しかし、そこの部分だけを抜き出して改めてお願いするというのもいかがかということで、今回は別にそういう御要求、お願いをいたさなかったわけでございます。この問題は、今後国鉄に対しましてどういうふうに助成をしていただくかという仕組みの問題として、今後とも研究に値する問題とは思いますが、まだまだ現状においては他にもいっぱい問題を抱えておりますので、より国民的合意を得たいフィールドについての助成をお願いしている関係上、特にここを抜き出して申し上げなかったわけでございます。  それから構造的欠陥の問題につきましては、いま運輸大臣から御答弁いただきましたように、鋭意、どこまで企業努力でやっていけるか、これはどうしてもがんばってやっていかなければいかぬわけでございますけれども、どこまでやっていけるかということとうらはらになるわけでございますので、過日閣議了解で決められました国鉄の再建の基本方針にのっとりまして、本年中、しかもそのなるべく早い時期に大体のアウトラインをつくりまして政府にお願いをいたしたいと思っておりまして、その段階までに年金を初めいろいろな問題についてどう考えるかということについての基本的考え方を決めまして、お願いに出たいと思っておりますが、いずれも私どもだけでもなかなかできませんし、また、政府としてもなかなか急にお決めになりにくい、年金の問題なんかはそういう問題がございましょうから、どこまで煮詰まりますかわかりませんが、なるべく早くまとめたいと思います。  地方ローカル線の問題につきましては、私ども長年苦労いたしてまいりましたけれども、わずか十線区余り、また百キロ余りのところを十年余りの間にやっとある種の収拾をいたしたわけでございますけれども、なかなか困難でございます。これにつきましてはまだ御答申が出たばかりでございますので、政府の方でいろいろ具体的な案をいまお立てになっておりまして、私どもも内々いろいろお願いをいたしておるところでございます。もう少しお待ちいただきませんと、現段階において私どもとしてどういうふうにやっていくか、また、やれるか、あるいは撤去費はどのくらいかかるかということにちょっとお触れになりましたが、まだとてもそこまで積み上げ計算ができるような状態ではないわけでございまして、もう少し基本的なことについての考え方がまとまりましてからでないと、なかなかお答えできないという状況でございます。
  116. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御質問の国鉄ローカル線の廃止を含む見直しの問題、これはもう言うまでもなく関係する地域住民にとりましてはきわめて重大なことでございますから、いかような方法で実行いたすにせよ、関係住民と十分話し合いをして、その理解を得るということが私は非常に大事なことだと考えております。したがって、あらゆる機会に関係住民の考え方、意向が十分反映するように努力をしてまいる考えでございます。
  117. 兒玉末男

    ○兒玉委員 運輸大臣、さっき質問の中で、先年国会で問題となり運輸委員会決議となりました公共割引に対する制度を、前大臣も再三答弁して、早急に決議が生かせるように努力するということでございましたが、公共割引に対する見直しですね、これをどういうふうに処置されようとしているのか、もうすでに二年越しの懸案でございますが、御答弁がなかったので、再度お伺いしたいと思います。
  118. 森山欽司

    ○森山国務大臣 公共割引の問題はいままでときどき関係閣僚が集まって御相談をして、まだ結論を得てないようでございます。しかし先ほども申し上げましたように、ことしの六月ごろから、この問題に本格的に取り組んでいかなければならない、昭和五十五年度予算からこういう問題を盛り込んだものにして、五十年代には収支のつじつまが合うように持っていかなければならぬということでございますから、この大方針を立てることの一環として、この問題についてもめどをつけたい、そういう考えでございます。
  119. 兒玉末男

    ○兒玉委員 国鉄に関係してもう一点だけお伺いしておきたいと思います。総裁はこの答弁が済んだら退席して結構でございます。  第一点は、今年度の予算編成の一つの軸として五千名の定員を補充しない、削減という問題が起きておりますが、この十年間でも約七万近い合理化による人減らしをやっていることは大臣も十分御承知だと思っております。問題は、では一体国鉄職員の生産性というのがどういう現状にあるか、あるいは現在の国鉄のいわゆる営業キロから割り出した生産性がどうなのかということの問題に若干触れますと、日本の場合を一〇〇にした場合の職員一人当たりの生産性というのは、イギリスの場合が三三、ドイツ連邦の場合が四七、フランスの場合が七三、こういうことで一人当たりの生産性というのは西欧先進国の同じ国鉄の中でも日本が一番高いということが数字で明らかになっております。また営業キロ当たりの年間輸送量というのを見ますと、日本の場合を一〇〇にした場合に営業キロ当たりの指数は、イギリスの場合が二六、日本の四分の一、それからドイツ連邦の場合が三〇、三分の一以下、さらにフランスの場合が三三、アメリカの場合が三二、こういうようにして日本の営業キロ単位の輸送人トンキロというのは、西欧先進国の三倍から四倍近い非常に効率的な運用がなされているわけでございます。しかもこのような鉄道輸送というのは非常に労働集約型の産業でございまして、全く人を配置しないで運用ができないし、また構成する仕事の内容が大変広範であります。若年労働者というものが五年、十年と一定の経験を積まなければなかなか運用ができない、こういう特殊な事情があることを大蔵当局並びに運輸省当局も十分配慮した上で、要員対策については適切なる対応をお願いしたい。  同時に、国鉄総裁としては、今後のこのような国鉄経営に対する労使間の問題として慎重な配慮をすべきだと考えますが、この点についての見解をお伺いしたいと存じます。
  120. 森山欽司

    ○森山国務大臣 いまお話ございましたが、諸外国との比較のお話がありまして、どういう計算のやり方でそういう数字が出てまいったか存じませんが、日本の国鉄の監査委員会報告によりますと、いまの国鉄の能率は一般の私鉄、中小私鉄よりも劣る、それが大きな問題点であるというふうに言われております。そして現に、広義に解釈すれば一兆二千億円もの赤字を出しておって、みんな税金からこれはやっておるわけでございますから、そういうことでは困るわけでございます。したがって、やはりこの際国鉄の立て直しをやらなければいかぬ。しかし、国鉄の立場あるいは国鉄労使の立場では解決できないような問題については、いわゆる構造的欠損ということで、われわれも大いにそのことについて検討をして、国としても考えてやらなければいかぬ。しかし、企業内部で解決できること、能率を改めていかなければならぬことは、これはやっていかなければならぬわけでございます。したがって昭和五十四年度の予算につきましては、予算定員は五千名減ということになっております。一体これはどのぐらい減らしたらいいのかということは、先ほど申しましたように国鉄再建の基本方針のいわゆる構造的欠損をどういう程度のものと考え、どういうようにしてこれの埋め合わせをしていくかの反面として、国鉄の企業努力によって、あるいは労使の努力によって立て直していく面を明確にして、そこから、これから具体的な数字を出していかなければならぬと思うのです。  しかし、国鉄監査委員会の報告にもありますように、一般の私鉄よりもはるかに能率が劣る、中小私鉄よりも能率が劣るというような報告では、これは困るのでありますし、それから一日の実働時間わずか二時間というような職場も幾つかあるということでありまして、もし御必要でございますれば事務当局がるるこの実情を報告申し上げてもよろしいと思いますが、御質疑の時間もあろうかと思いますから、あえてこの際は省略させていただきますけれども、何とかしてこの国鉄の立て直しをやらなければならない。これはもう総論としてやらなくてはなりませんし、各論としてもやらなくてはならないわけでございますので、どうかひとつ、この立て直しの衝に当たります政府並びに国鉄の立場について格別の御了解、御支援をお願いいたしたいと思います。
  121. 高木文雄

    ○高木説明員 先ほど諸外国と日本の能率のお話がございましたが、確かに機械的に並べますと日本の鉄道はかなり能率がいいことに、表の上ではなるわけでございますけれども、これは日本の場合には非常に人口が稠密でございまして、御利用いただくチャンスが非常に多いということで、たくさん乗っていただけるということから、営業キロとかあるいは利用人員とかいう方から見ますと、能率がいいような形に数字の上では出てまいるわけでございます。  しかし実態につきましては、いま大臣もお触れになりましたように、非常にたくさん問題を抱えておるわけでございまして、日本の経済が戦後目覚ましく生産性が上がってきたという過程と比べますと、申しわけございませんけれども新しい事態に十分に対応し切っていないわけでございます。やはり思い切ってここで衣がえをいたしませんことには、なかなかいまのような大きな赤字を払拭できないという現状でございまして、これからまた改めていろいろ各方面から見直しを行いまして、思い切った能率のいい運営に切りかえていかなければならないと思うわけでございます。  私鉄と国鉄とを直接比較することはできませんけれども、しかし非常に参考になるわけでございますが、私鉄の方はやはり営々としていろいろな経費の切り詰めに努力をしてこられておるわけでございまして、そういった面から見ましても、まだまだ私どもは改めて取り組み直さなければならぬという覚悟でおります。そうしたことについては職員諸君ともいままでもだんだんそういう雰囲気を高めてまいりましたが、これからもぜひその経営能率の向上について話し合いをしながら、理解を求めつつ、納得の上で能率のいい運営に大至急切りかえていきたいというふうに考えております。
  122. 兒玉末男

    ○兒玉委員 運輸大臣が何の資料でやったかということでございますが、これは世界各国鉄道統計という資料に基づいてさっきの指数は言っております。  それから、大臣がえらい挑発的な、二時間しか働かないという職員もおる、必要があれば説明するということでございますが、これは時間がありませんので後日運輸委員会等でひとつ具体的な実証を挙げながら、実際そういうのがあるのかどうか。もしあなたがそういうことであれば、鉄道の大半が二時間しか働かないでサボっているという印象を受けるわけです。これは発言は慎重にしてもらいたいということを私は要望申し上げて、次の問題に入ります。  総合交通政策という点で、御承知のとおり、今日都市交通における交通渋滞ということは大変な課題であります。今回大阪が総合的な交通体系という形で、地上のバス、地下鉄、国鉄、私鉄、こういうふうな相互の関連を緊密にしながら、都市交通における混雑を解消しよう、できるだけマイカー等の利用を減らして、大量輸送機関によるところの交通システムに改善をすることによって、利用者の利便を図ろうという大胆な構想のもとに取り組んでおります。また、札幌についてもこういう例がありますし、ソ連等の場合でも、大体自分の行く目的の場所から五百メートル以内に必ずバス停なりあるいは地下鉄の停留所がある。しかも、フランスの場合でもあるいはドイツの場合でも統一運賃で、一遍一遍乗りかえるたびに切符を買いかえるとか、そういう形態ではなくして、統一運賃、いわゆる統一乗車券、こういう形態で大変な利便が図られておりまして、これから、特に燃料資源のない日本の場合においては、このようないわゆる都市交通における思い切った一貫交通体系というものに真剣な取り組みをする必要があろうかと考えますが、これについての運輸省、自治省、建設省の見解を承りたい。特に大阪がいま新たな取り組みをしている実情から、今後の都市全体の問題として御見解を伺いたい。  次に、これに関連をいたしまして、先般、航空行政の中で、実は五十二年一月にアンカレジにおけるところの貨物航空機の墜落事故がございました。私もこの問題は運輸委員会でも追及しまして、世界の航空事故史上にもこのような酔っぱらいによるところのいわゆる墜落事故というのはない。ここにアメリカの航空事故調査委員会並びに運輸安全委員会、それに運輸省の航空事故調査委員会から出されました報告書がございますが、これについて約十一項目にわたり原因と対応が書いてございますが、この中で、まず当初に「翼面上に付着した氷結により事故機の性能に明らかな影響があった。」ところが、酔っぱらいによるということは、一番最後の項に回してございますが、当時の新聞報道あるいはマーシュ機長を乗せた自動車運転手あるいは周囲における目撃者等からしても、全く正常に操縦できる状況ではなかったということで、このアメリカの調査委員会も、十項で「機長は、アルコールの影響をうけており、肉体的、精神的に航空機を操縦できる状態にはなかった。」というきわめて注目すべき指摘をしております。同時にまた、そばに乗っておった副操縦士なりあるいは関係者が、そういう状況にあるにもかかわらず、これを制止し得なかった。それから、空港におるところのいわゆる運航管理者は資格のない人で、この人もはっきり見きわめながらも、この機長の操縦をとめるための十分な措置ができなかったということが正確に指摘をされておるわけでございます。  問題は、これからこういう事故が再度起きないように、私は五十二年の二月の委員会でこの問題を強く指摘してまいりましたが、これに対する事故防止対策について、日本航空の本部並びに運輸省当局はどういうふうにその措置をとったのか。それから、当時の委員会において、事故再発防止のために、主要な個所にはアルコール等の検知器を設置することも考慮したいという答弁がなされておりますが、その対策と運用は現在どうなっているのか。  それからもう一つは、最近日本航空の某機長が新聞を通して、特に関西方面における航路密度が高いために、本当に身の毛のよだつようなニアミスが大変多いという指摘がございます。これは単に操縦士の操縦の未熟ということよりも、密度が多いということと、同時にまた管制員等が大変過酷な労働条件で、瞬時の油断もできないという、こういう管制課員の配置の問題、あるいは管制塔等の機器の整備の問題、こういう点等が十分予想されるわけでございますが、以上の点について運輸省航空当局の見解を承りたいと存じます。
  123. 森山欽司

    ○森山国務大臣 都市にいろいろな交通機関があって、その交通機関の特性を生かして、組み合わせて利用者の便利を図るようにせよということは、まさに同感でございます。そしてまた、現に地下鉄を整備して、その地下鉄を通って鉄道が都心に直接するというふうになってまいりましたし、また、バスと鉄道との有機的な連携を図るために、地下鉄とバス、またはバスとバスの接点となる個所に乗り継ぎターミナルを整備して、利用者が安全円滑に乗り継ぎ等を行えるようにするための予算を五十四年度予算においては計上しておりますが、今後こういう種類の交通機関の特性を生かしつつ、効率的な都市交通体系を形成するための施策は、いま児玉委員のお話しのとおりでございますから、充実をしてまいりたいと考えております。  それから、日本航空のアンカレジの事故に対しまして、貴重な人命、財産を預かっておる定期航空の機長が酔っぱらい操縦をやって、他の職員もこれを見逃しておった、そしてあれだけの事故を起こしたということは、これはまことに遺憾至極なことであります。  事故後、直ちに各社に対して乗務規律の確立についての具体的改善策を運輸省としては指示をいたしたのでありますが、今回の事故報告が行われたのを契機に、今後なお一層指導監督を厳重に行いまして、事故の絶滅に万全を期するように努力したい所存でございます。  これにつきまして、いろいろ当時児玉委員から御指摘のありました問題についてどうなっているかという具体的実情並びにニアミスの問題につきましては、航空局長をして答弁いたさせます。
  124. 松本操

    松本(操)政府委員 まず、アンカレジの事故に関連した問題について簡潔にお答え申し上げます。  先生当時強い御指摘が運輸委員会であったことは、私も十分にその当時承っておったわけでございますが、今回の事故の指摘を見ますと、まさにその中で非常に強く言っておりますのは、操縦者がアルコールの影響を受けていたということ、それからそれによって機体の操縦が適切を欠いておったということ、それからさらに先生御指摘のように、非常に薄く霜がつくという状態であったようでございますけれども、翼に着氷しておった、そのために失速を起こす時期が少し早過ぎた、それが直接事故につながった。当時非常に問題にされました、運んでおりました生牛のおりあるいはさくと申しますか、その中で牛が移動して重心が狂ったとか、そういうことがあったのではないかという点については、この点は特に問題はなかった、墜落してからさくが壊れたようである、このように言っております。  そこで、その前段の酒酔い操縦の点につきましては、事故後直ちに、ただいま大臣が申し上げましたように、関係の航空会社に対しては厳重な指示をしたわけでございますが、さらに日航におきましては、乗務十二時間前からの飲酒の禁止ということに加えまして、十二時間以前であっても乗務に支障のあるような酒は飲むなということを服務規律の中にはっきりと書き加えさせて厳重に実行させております。  それから、御指摘のございました運航管理者の問題につきましては、これは航空法の中にも運航管理者というのは一条を設けて書いてあるわけでございますが、確かに御指摘のように、運航管理者というものが正確にその権限を行っていたかどうかという点に問題がございました。ただ、御指摘の無資格という点につきましては、この運航管理者は私ども運輸大臣の行います試験には合格をしておりましたけれども、ただ社内の格づけといたしまして、正式と申しますか、社長名の運航管理者という地位にはついていなかった、つまり補助職であった、ただし運輸大臣の定める試験には合格をしておったということでございましたが、ともかくそれは別といたしまして、この運航管理者が、所定の欄に機長及びコーパイロット等が互いに健康状態を確認し合って署名をしたのをさらに確認しなければ、航空機を出発させることをしないということも明確に規定の中に書き加えさせまして、これもそのとおりに実施をさせている次第でございます。  それから、さらに運航管理者において疑わしいと判断されました場合には、現在日本航空におきましては四十三カ所、国内十カ所、海外三十三カ所いずれも運航乗務員が宿泊をいたします基地に、先生先ほどおっしゃいました飲酒検知器を置いてございまして、運航管理者において疑わしいと思った場合には、当該飲酒検知器を使用いたしましてさらに確度の高い検査をする、そしてフライトをチェックする、こういうふうな規定にしてございますが、その後、私ども報告を徴しておりますけれども、幸いにして、その飲酒検知器を直接使用しなければならないような状態で運航管理者のところへあらわれたというクルーはございません。したがって、四十三カ所にきちっと整備はしてございますけれども、あたりまえと言えばあたりまえでございますけれども、これを使うというところまでは至っていないというのが実情のようでございます。  それから、そのときにさらに問題になりました、機長がそういう状態であったものをどうしてほかのクルーが発見できなかったのかという点が強く指摘されたわけでございまして、今度のNTSBの報告にもその点が指摘をされております。この点につきましては、やはり機長とそれからその他の乗組員との間の常日ごろの意思の疎通というのがはっきりしていないと、どうしても機長に遠慮をするとかというふうなことで、そういった面のチームワークがとれないのではないかということから、日航の方の乗員のグループのとり方を改善させまして、機種別ごとに、たとえばDC9とかDC10とかいうごとに首席というものを置いておったわけですが、その下に副首席をヘッドとする小さなグループをつくりまして、大体七組ぐらいのクルーをその下に置く、したがいまして、そういうことによって常日ごろ、機長もコーパイもフライトエンジニアも互いに顔なじみである、互いにチェックし合って相互に意思の疎通を欠かないようにしておく、そのかわり問題があれば遠慮なく物が言えるような間柄にしておく、さらにそれに対しまして首席、副首席というものが絶えず、常時チェックに乗りまして、そういったような機長の、コマンダビリティーと言うのだそうでございますけれども、クルー全体をまとめる力があるかどうか、あるいはコーパイロットあたりが機長に対してしっかりと言うべきことは言っているかどうかというふうなこともチェックするようにいたさせておりまして、相当の成果を上げておるのではないか、このように考えております。  したがいまして、以上申し上げましたように、アンカレジの悲惨な事故にかんがみます後の手当てにつきましては、当時運輸委員会等の御指摘に応じてとりました措置をさらに追求することによりまして、現在は相当この点については成果を上げているのではないか、このように考えております。  それから、ニアミスの点について御指摘がございましたが、これは四十六、七年ごろから、ちょうど第二次五カ年計画が始まったころでございますが、そのころから五十二、三年ごろまでのトラフィックの量を見てみますと、そうはふえていないわけでございます。その間に管制官の方はおかげさまでかなりの倍数まで主要な数を確保することができてまいりました。ただ問題は、東西に流れます交通と南北に流れます交通との交差する部分、特に日本は縦長の国でございますから、どちらかと言えば東西に流れる交通量が主でございますが、それに南北方向に入る交通量がわりあいに最近ふえてきた、そういうふうなことが問題になってくるということが一つ考えられます。  それと同時に、保安施設の整備につきましては、現在八つの航空路監視レーダーを含めてほとんどの保安施設が、この三月からは二十四時間運転に入ることになるわけでございますけれども、昨年の時点でとらえますと、レーダーの管制が完全にできます空域と、それからレーダーの管制がまだできないで従来どおりの管制をしなければならない空域とが多少入れこになっておりました。そういう点で、つなぎの面にいささかなりともふぐあいな点があってはいけないということで、訓練その他に努力をしておったわけでございますが、幸いこの三月あるいはこの春過ぎには全部のレーダーが動いて、全部の空域をレーダー管制ができるようになると思っておりますので、職員の訓練その他を十分に行った上で航空交通の安全の確保にいま一層の努力をし、御指摘のございましたニアミスのようなものの根絶を期してまいりたい、このように考えております。
  125. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 大都市における各種の交通機関をできるだけ一本化して、利用者に便利なような方向で進めていったらどうかという御指摘でございますが、基本的には賛成でございます。ただ、いろいろな経営主体が違っておるわけでございますから、これをどのような方法で一本化していくのか、いろいろ困難な問題があろうかと思いますが、できるだけ前向きに対処してまいりたいと考えます。
  126. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 大都市交通につきましては首都圏整備委員会あるいは近畿圏整備委員会等におきまして、国土庁におきまして整合性ある施設が進められるよう計画され、それに基づいて行われております。建設省といたしましては、この計画に基づきまして他の交通機関との間に道路が整合性を持って円滑な輸送ができるよう建設を図っていきたいと思っております。  なお、都市内の交通につきましては、地下鉄とバスとの乗り継ぎ、そういったところにも、駅前広場等、都市計画決定に基づきまして交通の円滑化を図っていきたい、このように考えます。
  127. 兒玉末男

    ○兒玉委員 いずれも答弁が抽象的で理解できませんけれども、これは時間の関係でまた次のそれぞれの委員会なり機会をとらえてさらに詰めていきたいと思います。  次に、やはり先ほど航空局長が申されましたが、四十三カ所の検知器を備えても、いままで一遍も利用する機会がない。これはかなり当事者間にルーズな体制があるのではないか。飲んでいようがいまいが長距離航空等の場合には必ず検知をすべきだということを私は運輸委員会でも強く指摘をしておりますので、運用については再度検討を要望したいと存じます。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕  次に、やはり航空に関することでございますが、五十三年度末で、特定空港を指定したところの騒音対策が一応終わります。特に民間航空の場合では全国で十五の飛行場でございましたか、その全体的には八三%近い整備率を見ておりますけれども、成田、大阪、福岡、非常に発着の多い場所においては、まだ予定計画の五〇%にも防音対策なりあるいは移転対策が完了していないという報告がなされております。なお、航空自衛隊、防衛庁の場合におきましても、まだまだ民間航空の場合よりも射爆場を初め米軍関係を含めて達成率がわずかに四三%そこそこという状況であり、特に軍用機の場合においては騒音の度合いが民間航空の場合よりも高いわけでありまして、住民のこの環境破壊に対する被害ははかり知れないものがございます。これに対しまして運輸省並びに防衛庁、それから環境庁としては、早期達成にどのような努力をされようとしているのか、同時にまた、こんなに整備促進がおくれている理由はどこにあるのか、この点についての各省の見解をお伺いしたいと存じます。
  128. 松本操

    松本(操)政府委員 お答え申し上げます。  昨年の十二月二十七日をもちまして環境庁が四十八年に出しました環境基準の最初の五年目標が参りました。そこで私どもといたしましては、この機会に私どもが従来努力をしてまいりました周辺対策、環境対策というふうなものがどの程度まででき上がったかということをチェックしたわけでございます。対象といたしましたのは先生仰せのとおり十五の特定飛行場であるわけでございますが、その中で大体これでできているのではないだろうか、もちろんそれは昨年の十二月の二十七日という時点での話でございます。ですから八五WECPNLという数字が達成されたかどうかという時点での判断でございますので、これから先の問題については改めて申し上げますが、その時点で見ました限りにおきましては、大体五つ、六つの空港についてはまあまあできたのではないだろうか、このように考えたわけでございますが、それは一つには八五のコンターを四十九年に書いたわけでございますけれども、その後航空機の音が下がってまいりまして、御案内のようなエアバスその他の低騒音大型機によりますと十ホンぐらい音が低くなりますので、これが入ってきたこと、あるいはボーイングの727や737のエンジンの改修を全部終わりましたので、これによっても数ホンずつ音が下がったこと、こういうふうなことに合わせて、飛行機の飛ばせ方についてもいろいろ工夫をして指導してまいりました。この結果、八五の線が少し内側へ入ってまいりました。もう一つは、周辺対策といたしましての民家防音工事の促進とそれから移転補償の促進、この両者が相まって、たとえて申しますならば仙台の空港とか熊本とかあるいは大分とかいうふうなところはまあまあ当面の目標はできた、こういうふうになったわけでございますが、御指摘の大阪とかあるいは福岡とかいうところにつきましては、遺憾ながら相当の成果が上がったというところまでは達し得なかったわけでございます。  その理由といたしましては、大阪について例を申し上げますと、もちろん昨年来、低騒音大型機の導入を図ってきたわけではございますけれども、しかし一方、余りにも対象戸数が多いものでございますので、私どもの努力にもかかわらず移転補償もはかどらず、あるいは民家防音工事も思うほど意に任せなかったというふうな点がございまして、大阪について言いますと、八三、四%、数字の上ではでございます。実感的にはもっと低いというふうなこともあるいは言えるかもしれません。  そこで、今後の問題としての取り組み方でございますが、まず音源対策の方についてはなお一層の努力をしてまいりたい、こう考えております。それと同時に、音源対策と車の両輪になりますべき周辺対策につきましては、民家防音工事が従来一室または二室という制約のもとにやってきたわけでございますが、これを五室まで広げる、一般に全室民防というふうな言葉で呼ばれておりますけれども、そういう形にいたしたい。そして次に五十八年の暮れには十年目の目標年次がやってまいりますので、そこへ向かって最大の努力をしてまいりたい。対象の戸数といたしましては約十一万世帯、これに要する経費は三千億というふうに概算を私どもははじいておるわけでございます。  ただ、一遍にそういう遠い目標へ向かってただひたすらに努力をするということだけでは実効が上がらないおそれがございますので、現在の八五という数字からまず八〇という中間的なところの線を引きたい、そこへ向かって最大限の努力をしてまいりたい、こういうことでその第一歩になります五十四年度の予算といたしましては五百六億円、従来の三・四倍という大量の予算をいまお願いしておるわけでございますが、これによって勇猛果敢に民家防音工事を進めてまいりたい、このように思っております。それと同時に移転補償も大いに促進をいたしまして、空港周辺に緩衝緑地帯を置く、あるいはそれをてこにして町づくりをしていくというふうな、かねてから周辺から希望されながらも、なかなか実行が進んでおりませんでした問題についても積極的に取り組むようにしてまいりたい、このように考えております。  それから、成田空港につきましては、これもまた昨年五月の開港以来、初めて田園地帯に飛行機が飛んだわけでございますので、それまでそれなりの努力をして約五百八十戸程度には、いわゆる一室、二室レベルの防音工事をしてまいったわけでございますが、しかしやはり地元の御不満が非常に強いわけでございます。そこで大体八〇WECPNLまで広げるということを目標に五十三年度からいわゆる全室防音に取り組むことにいたしました。五十四年度には八十四億五千万の金を、これは公団の方の金でございますが計上いたしておりまして、約一千戸になろうかと思いますけれども、できれば一両年のうちに何とかこれを仕上げてまいりたい、このようにいませっかく努力をしているところでございます。  したがいまして、結論的に申し上げますと、当初のねらいに対してまあまあというところまでいいけた空港も幾つかはございましたが、総体的に数字的な評価をしますと、まず八点ちょっとというところにとどまっておる。それを五十八年度目標においては、さらにもっと高い達成率でやりおおせることができるように五十四年度からその第一歩を着手してまいりたい、こういうふうなことでいま取り組んでいる次第でございます。
  129. 玉木清司

    ○玉木政府委員 自衛隊関係の問題につきまして、駐留軍を含めましてお答えいたします。  御指摘のように民間空港におきます対策よりも私どもの方が少しおくれております。先生ただいま四三%という御指摘がございましたが、実際の数字は、防音工事が終わりましたのが、この年度末残っておるのを入れまして一万九千に相なります。このほかに移転対策等いたしておりますので、約一千戸の戸数を移転いたしますので、この年度末におきまして対処し終わる戸数は約二万戸ということに相なります。  これに対しまして、こういう措置をとらなければならない数字は概数約四万でございますので、年度末になりましたならばその辺までこぎつけたい、こういう状態でございます。  私どもの方がなぜこういうふうに民間に比べてややおくれるかというのは、先生御指摘のとおり、民間空港におきましてはただいま航空局長から御指摘のような、大型にいたしまして便数を減らすとか、あるいは飛行方法を規制いたしまして夜間を少なくするとかという音源対策におきまして相当の弾力をお持ちでございますが、軍用機でございますので、これらのところが相当限界がございます。地上におきます音源対策につきましては、一生懸命各基地においてやっておるわけでございますが、軍事用の航空機であるという点におきましてその面の限界がありまして、防衛関係の飛行場におきましては、がむしゃらに住宅防音と公共施設の防音工事を進めるという道を歩かざるを得ません。そのためには何よりもまず予算が必要になりますが、いま御審議願っております来年度の予算におきましては、前年に比べて五割増しの予算をお願いしておる状況でございます。  この状態でまいりますと、軍用飛行場につきましては、明年度をもちまして十八飛行場中十四飛行場におきましては中間達成目標を達成できる、残りの四飛行場は残念ながら一年ないし一年半ほどまたはみ出してしまうという状況でございます。さらに航空局長からお話のありましたように、民間空港におきますこの問題の進度に応じまして私どもも当然にやらねばならないことでございますから、民港と同じレベルに一刻も早く追いついてこれを完成するように今後努力をしていきたいと思います。
  130. 上村千一郎

    上村国務大臣 御承知のように航空機騒音の環境基準は昭和四十八年の十二月に策定されまして、そしてそれに対しましてその目標を達成するために、あるいは環境を破壊しておる発生源の調査だとか、空港の構造の改善とか、あるいは周辺の対策というようなものを中心にこの達成を図るように努力を進めておりましたことは御承知のとおりであります。  その中に、大阪国際空港というような第一種空港とか、あるいはジェット機が就航いたしております第二種空港というものにつきましては、五十三年の十二月に中間改善目標を達成するというような意味におきまして決められておるわけです。それで、先ほど他の関係庁の方々が申し上げましたように、この実態の調査をされた、これが最近発表されておるわけです。それで環境庁といたしましては、この主な空港につきましてどういうふうな騒音の程度になっておるのか、あるいはこれに対する対策の進捗状態はどうかということを真剣に調査し、そして運輸省その他関係庁に向かってこの改善方の促進を申し入れるつもりでございます。
  131. 兒玉末男

    ○兒玉委員 答弁を少し簡潔にお願いします。  次には建設省と運輸省関係でございますが、今回高速道路の通過料金の値上げの問題が起きております。これは大蔵省との関係もあろうかと存じますが、これによりまして、高速道路を利用する、特に一番影響の大きいのはトラック運送でございます。なぜかといいますと、トラック運送というのは、中身の貨物が大手の場合もございますけれども、中小零細企業の貨物が大半であります。問題は運送業者が交通料金の値上がりをどういう形で荷主へ負担させるかということで、大変悩みが大きいし、同時にまた大量のバスなり一般の乗用車の場合でも大体四〇%程度の値上げと聞いておりますが、もう少しこの値上げの率を小さくして、これが波及効果というものをできるだけ抑えることが大事じゃなかろうかということで、恐らく運送業界としてもこれは相当真剣な問題として取り組んでいるようでございますが、これに対して関係各省の御見解を簡潔でよろしいですからお伺いいたします。
  132. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 審議委員として御尽力願っております児玉委員でございますので、よく御承知のとおりであろうと思いますが、高速自動車国道の通行料金は五十年四月から据え置きになっておりますが、建設費、維持費その他費用の増大あるいは新規計画の決定等が行われまして改定せざるを得ない、このように考えております。目下道路公団の方におきまして鋭意検討を加えておりますが、認可に当たりましては、運輸省、経済企画庁等と協議をいたしまして、慎重に上げる時期、上げ幅等について検討させていただきたいと考えております。その際におきまして、いま兒玉委員御指摘のトラック運送業その他に及ぼす影響等を考えまして、十分配意いたしまして検討させていただきまして実施をいたしたい、このように考えております。
  133. 森山欽司

    ○森山国務大臣 高速道路の通行料金の認可は運輸省と建設省の共管になっておりますが、ただいまお話しのように、中小トラック業者に相当影響がございますから、そういう点を十分配意いたしまして、建設省とも相談の上料金の認可をいたしたいと思いますが、まだ正式の申請は上がってきておりません。
  134. 兒玉末男

    ○兒玉委員 農林省関係に移りますが、農林大臣、この前の本会議でも私の質問時間の五倍ぐらい長い答弁でしたので、きょうはそうしますともう私の時間がなくなりますので、問題点だけを簡潔にお答えいただきたいと存じます。  第一点は食糧自給対策の面でございますが、最近の農林省の資料によりましても、現在の穀物の自給率を見ておりますと、日本が三七、アメリカ一七二、フランスが八〇、西ドイツ八〇、イギリス六八、イタリア六六ということでございますが、少なくとも一億国民の生活を支える食糧問題でございます。でありますから、米の場合は別として、米以外のいわゆる農産物のこれからの転作ですね、転作する農産物のこれからの長期の生産の展望。大臣この前、年次別だとなかなか言えないということでしたけれども、農林省としては昭和六十年度の目標値を出しておるようでございますので、その道筋について、これはもちろん東北等の米作の単作地帯はなかなか不可能でありますが、やはりこういう点からも総合的な地域別生産体制を計画的に立てながら自給度を高めるべきだ。これが第一点。  第二点は、先般行政管理庁から構造改善事業に対しましてかなり厳しいところの指摘がなされております。これは内容的には大体十二項目ぐらいでございますが、とにかく四千六百億程度のこの構造改善事業に対する補助費の使用というのが非常に低いということでございますが、これは当初の査定の過程において関係団体あるいは農民等の十分な事前のコンセンサスができてなかったのじゃないかということと、それから作業過程段階においてもかなり当初の目的よりも逸脱しているような傾向があるということが克明に勧告をされております。これは場合によっては国費の乱費でもあります。もちろん私は構造改善事業を否定するものではございませんし、これからの経営規模拡大あるいは土地改良ということはきわめて大事であります。この点について農林省としてはどういう受けとめ方をするのか。行政管理庁としては、実施した勧告に対して、どういうふうに具体的に農林省と緊密な連携をとりながらこの改善が、見直しが早急にできる道筋はどうなのか。大蔵省としては、このような予算査定の過程におきまして、特に後で補助金の関係も触れますけれども、一体どういうふうな対応を考えているのか。この点についてまず各省の見解をお伺いします。
  135. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 なるべく簡潔にお答えをいたします。自給率の向上にりきましては、国内でできるものは極力国内でつくるようにいたします。したがいまして、麦、大麦、飼料作物、大豆、小麦、こういうものを重点的に転作の対象としておるわけであります。自給率の低下は御承知のとおり食生活の向上によるものがその主な大きな理由でございます。  それから第二番目は、二次構に対する行管の勧告でございますが、これはごもっともなところもございますので、謙虚にわれわれは受けとめまして、共同利用を前提としておるものを中心に補助をする、個人のものになるようなものはなるべく補助から外すというのももっともなことだと私は思います。なお、普及度等も考えまして、補助をする場合には普及度の高いものは何のための補助なのかという観点から考えますと、これは御指摘もごもっともなので訂正をしてまいりたい、かように考えております。  施設農業に比し、土地利用型の農業の経営規模拡大がおくれているということでございますが、これらについても担い手農家の育成、それから農地の利用権の集積、こういうようなところに重点的に意を配ってまいりたい、こういうようなことでそれぞれの地区に応じた弾力的なしかもむだのない方法をさらに工夫をしていくつもりでございます。
  136. 金井元彦

    ○金井国務大臣 勧告をいたしますと、三月以内にとった措置、それからとろうとするところの予定の措置の報告をしてもらうことになっております。そうしてそれを受けましてから、今度は六カ月たちますと、その間にとりましたところの措置についての実績を報告してもらう。なお、その上でさらに足りない場合には再度勧告をする、こういうふうな制度になっております。
  137. 金子一平

    金子(一)国務大臣 行管の勧告につきましては、早速本年度予算の配分に当たって考え直さなければいかぬ点はもう着々実施に移しております。たとえば普及度高いの機械や設備の補助金は考え直したらどうだというものは、五十四年度から取り上げられております。今後勧告の線に沿って関係省と連絡しながら、補助金の適正化に努めてまいりたいと考えております。
  138. 兒玉末男

    ○兒玉委員 食糧の関係の内容にもう少し触れたいと存じますが、その前に農畜産物の価格の問題でございますけれども、たとえば牛肉、豚肉あるいは乳牛、酪農、これは岡田議員の方で後日質問されるので、特に私の場合は牛肉、それから鶏卵、これらも、特に鶏卵は大変な暴落をしておりまして、もちろん飼料も安くなっておりますが、それ以上に価格の低迷ということが生産農家に大変な打撃を与えております。これは卵価安定基金等の問題もございますが、これらの総合的な価格政策、特に養鶏の場合は、御承知のとおりやみ増羽というのが大変市場を混乱させております。これは何らかの法的な規制というのができないかどうかということで、先般鶏卵生産組合も大挙押しかけてきまして、相当真剣な要請がなされておりますが、このような農畜産物の価格政策について農林大臣の御所見を承りたいと思います。
  139. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 三月になりますと、豚肉それから牛肉等で政府の関与するものの価格を決定しなければなりませんが、これについては一定のルールがございますから、そのルールに従っていまのところ材料集めをしておるということであります。従来の方式で決定をしたい。なお卵価格の下落の問題は、何といってもこれはもう過剰生産にあることは明らかであります。私が代議士になったばかりのころは百万トン生産されて過剰生産で大暴落という騒ぎをしたのでございますが、最近は百六十万とかいうような数字になっておるわけでありまして、そういうようなことが最大の値下がりの原因でございますから、それについては何といっても生産調整というものを最優先でやっていただいて、それから無断増羽というようなものは極力行政指導によってこれを抑えていきたい。それから生産者団体の調整保管、卵価安定基金による価格差補てん、液卵公社の買い入れ、こういうようなものを取りまぜて卵価の安定を図ってまいりたい、かように考えております。
  140. 兒玉末男

    ○兒玉委員 もう一つ価格関係で、私の方の県南、九州はミカンの産地でございます。この前ある日本の大新聞に「官僚どこを向く」ということで「オレンジの陰謀」という見出しで十回にわたり書かれております。この中でギャング・オブ・91という非常におもしろい記号で掲載されておりますが、これは問題の日米農産物交渉におけるオレンジの輸入枠をめぐるいろいろなことが取りざたされております。これによりますと、昨年福田内閣は最後の閣議で、昨年四万五千トン、五十五年が六万八千、五十六年が七万二千五百トン、五十七年七万七千トン、五十八年八万二千トン、こういうふうに大量のオレンジを輸入するわけでございますが、これはもちろん輸入規制でございますけれども、問題は、これが与える国内のミカン作農民への影響、同時にこの価格をめぐっても、大体アメリカ等の価格の二倍から三倍という高い値段で販売されているという問題。もちろん輸入規制でございますから、非常に希少価値といいますか、このような特定の業者が暴利をむさぼるような傾向が大変強い。高級牛肉の場合でも、これはたらい回しをされてとてつもない価格で取引をされておるということが先般指摘になりましたが、このオレンジの輸入枠の拡大と、同時に今後の市場におけるところのいわゆるでたらめな価格政策、それからもう一つはこれに対するところの国内のミカン関係の対応策、こういう点について農林大臣の御所見を承りたい。
  141. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 輸入枠の拡大と値段の問題は本当に痛しかゆしの問題であります。輸入枠が足りないから値段が高いのだ、輸入枠をもっとふやせという意見が一方にございます。確かに輸入枠を増大させれば植段は下がるでしょう。下がるけれども、それによって国内価格までまたうんと下がってしまうということは、また別な問題を起こす。そういうような点も考えてこれは非常にむずかしい問題だ。輸入枠をふやせば下がることは間違いない。しかし国内では輸入枠をふやしてはいかぬ、こういう力の方が強いわけであります。どうすればいいのか、うまい工夫はなかなかないのでございますが、極力、暴利をむさぼるようなことはいけない。だからといって、ダンピングをされてそいつがばたばたとみんな騒ぎになってもこれも困るというようなことがございますので、適切に指導をしてまいりたいと考えております。  なお、去年ですか、一万五千トンから四万五千トンに輸入枠をふやしたわけでございますが、いまのところ幸いに値段は前年対比でまあまあよいところにきておるのは御承知のとおりでございます。今後はどうなんだという御心配でございますが、これにつきましては、特にオレンジの季節枠の対象期間を六月から八月、こうしておりまして、これは国産柑橘類の出回りが非常に少ない、年間出回り量の二%ぐらいですから、そういう期間を選んでやるということはやはり国内の値段が下がらないように配慮をするということであります。オレンジの年間枠も国産柑橘類出回り量約三百万トンに対して最終年であっても大体一%ぐらいでございますから、そんなに大きなものとは考えられません。季節枠のスタートした昨年六月には月間約一万二千トンのオレンジが輸入されて販売されましたが、特に影響がなかったということから考えましても、そう心配したものではないのではないだろうか。大体国民一人当たりにしますと、現在のところはオレンジ一人当たり大体二個になるのです。最終年で大体四個というくらいのことであります。もし万一これが国内に影響があるというような場合には、それに即応するような予算措置は講じておるわけでございます。
  142. 兒玉末男

    ○兒玉委員 今後の牛肉を含めて、やはり国内の農業を守るという基本的な姿勢をひとつがっちり踏まえて今後対応されるように強く要望したいと存じます。  時間がございませんので、水産関係を含めて一括してお聞きしたいと存じます。  第一点は、二百海里時代を受けまして、これから沿岸漁業なりあるいは二百海里水域内におけるところのいろんな漁業をめぐってのトラブル、先般、岡田議員から指摘がありましたが、北海道道南地区における韓国漁船のきわめて横暴な行為、あるいは西日本水域におけるところの警戒体制、こういうような二百海里時代全体における取り締まりといいますか、規制といいますか、これに対応する体制、これは主として海上保安庁の所管であろうかと存じますが、どのような対応を考えておるのか。  それから、水産庁としてはこの二百海里水域時代におけるところの対策をどうするのか。問題は、さらにパプア・ニューギニア、豪州、ニュージーランド等大変入漁料が高い。大臣もこの前御答弁されておりましたが、総体的な漁民が払う入漁料は幾らか。それから先般の漁業大会でも、入漁料に対する国からの助成ということが強く要求されておりまするが、これにどう対応されておるのか。  それから魚価対策でございますが、昨年大変カツオの豊漁で価格が暴落をし、今後の再建の道もなかなか立ってない。これに対する緊急対策というものについてどう対応されようとするのか。それからマグロの問題は、御承知のとおり今月二月十一日でしたか、毎日新聞が取り上げました。いわゆるマグロころがしによって、国から莫大な資金を低利で融資を受けながら、その運用ということがきわめて適切でないということでかなりの不渡りが出そうな形勢で、築地の市場でもかなりの混乱が予想されるやに聞いておりますが、この対策を一体どう考えているのか。  それから、特に農林に関連するところの補給金制度について、大臣は薄まき、ばらまきをやめて補助金制度の根本的な改善を図った、こう言われておりますけれども、数字が示しておりますように五十三年度は一兆五千七百九十億、目の数は二百十八、件数は一千件前後、五十四年度はまだ内訳はわかっておりませんが一兆八千二百十五億、法律補助と予算補助、大体比率は六対四くらいの割合で想像できますけれども、依然として補助金の金額が大きい。やはり国の財政運用の面からもその補助金というものを、大臣はいわゆるばらまきはしない、統合したということを言われますけれども、金額全体はかなり大幅にふえておりますし、加えまして目の数も前年度より六しか減ってない。私も資料いただいておりますが、この補助金対策について大蔵、農林、それから取り締まりの件は海上保安庁。  最後に、第三次総合計画で言っている大隅開発をめぐりまして、沿岸漁業はもし三全総が実施されますと環境破壊ということが目に見えております。しかも環境アセスメント法は三度も廃案。一体、住民の環境を保全する主管庁である環境庁長官としてはこれにどう対応するのか。この問題の解決がない限りは、沿岸住民はこの開発行為には断固として体を張って阻止しようとする並み並みならぬ決意があります。鹿児島県側も、一回の提案が完全に踏みつぶされていま第二次案が出されておりますけれども、十分な住民のコンセンサスを得るに至っておりません。これはやはり環境基準の徹底した対応策が地域住民の生命と財産を守り、そしてまた二百海里時代におけるところの漁民の生活を守る立場からもきわめて重要な課題でございますので、以上の点について大蔵、農林、それから環境庁長官の御見解を承り、最後に取り締まり関係の海上保安庁の関係をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  143. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 非常に数多い質問でございますから、簡潔に申し上げます。  二百海里時代を迎えまして、われわれとしても非常に今後厳しい状況にある。したがって、これについては漁業外交を展開していままでの漁獲量を確保する一方、国内の沿岸、沖合い、こういうようなところの整備を図ってまいりたい、こう考えておるわけであります。  それから入漁料の問題でございますが、入漁料の問題につきましては、場所によって非常に高いところがございます。売り上げに対して一・四%くらいのところもあれば八%くらいのものを要求しているところもある。そういうようなところはとうていむずかしいというようなこともあって、極力これは交渉によって法外もないものは下げてもらうようにまず交渉をしていきたい。あしたからも水産庁の役人がニュージーランドに出かけていって交渉をすることになっておるわけであります。それから、交渉してもまだ高いということもあって採算が非常にむずかしいというような点については、ことしも特に南方等においては九億円、三カ年分の補助金を出して、低利の融資ができるような措置を講じてきておるところでございます。  カツオ等の価格低迷ということに対しましても、これはいろいろ問題があったわけでございますが、三十日間の休業とか低利の融資とか、そういうようないろいろな方法を講じながら、一方、テレビその他による消費の拡大というような両面からこれらの振興を図ってまいりたい。  それから、マグロについて魚ころがしの問題があるじゃないか。一時そういうようなふうにとられがちなところがあったわけでございますが、最近の魚価の状況を見ると、ずっと安定をいたしておって、最近はそういうものはないというふうに考えております。  それから補助金の問題でございますが、薄まき、ばらまきということで御指摘でございますが、私はばらまきであっても、それが効果があるものはいいと思うのです。問題は、余り効果がないものの薄まき、ばらまきは困るということでございますから、予算にはおのずから限界があるので、最も有効な方法で補助金を支出するように心がけてまいりたい、かように考えております。  もし答弁漏れがありました場合は、事務当局から……
  144. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  農林水産省関係の補助金につきましては、ただいま農林大臣が御答弁になりましたとおりでございますが、御指摘のように整理合理化の目の件数はそれほど多くございません。ただ、ただいまの薄まき、ばらまきのお話がございましたように、比較的零細な補助金で目の細分でいろいろ実施しておりましたようなものが相当数あったわけでございますが、こういうものにつきましては、農林水産省と予算折衝の段階におきまして十分協議をいたしまして、できるだけ統合メニュー化といったようなことを図りまして、一つ一つの補助金が機械的に薄まき、ばらまきにならないような配慮はしたつもりでございます。今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
  145. 上村千一郎

    上村国務大臣 大隅総合開発計画は国家的なプロジェクトでございまして、環境庁としましても、その環境保全につきましては非常に重要視をいたしておるわけでございます。現在の段階におきましては、この大隅総合開発計画は鹿児島県独自に計画をお進めになっておりまして、すでに県としましてはアセスメントを行っておられてそれを公表されておるようでございますが、環境庁としましてはまだ関与しておりませんので、これが正式な国家的対象になってまいりますれば慎重に対処していきたい、こう思っております。  それから、水域の環境保全ということは、これはもう二百海里時代ということを考えるのはもちろんでございましょうが、重要な関心を環境庁は持っておるわけでございます。  それから、環境アセスメントの立法化の問題でございまするが、これは環境破壊というものが一度行われますというと、なかなか取り返しができにくいものである。それだけでなくて、永久に取り返しができないという場合もできてくる。特に環境の汚染というものを未然に防止するということが非常に大切であるし、環境アセスメントの制度を確立するということは私はもうコンセンサスができておると思います。ただ、その制度のあり方につきまして、いろいろと問題もあるし、論議もされておるということで、実は立法化というものがおくれておるものと思います。それで、現在環境庁としましては、関係省庁との調整、それから与党の方のいろいろと御理解なり調整というようなことを鋭意進めておる、こういうわけでございます。
  146. 高橋壽夫

    高橋(壽)政府委員 お答え申し上げます。  五十二年の七月に新しい海上秩序ができ上がりましてから、私どもそれに対応いたしますべく、毎年予算をつけていただきまして、船舶、航空機の増強をいたしております。特に、外洋向きの大きな足の長い船がいま盛んに建造されつつありますので、これができ上がりますと非常にその辺の力が強くなってまいります。現在でも、たとえば対馬周辺海域には常時巡視船四隻を配置いたしまして、警戒に当たっておりますが、対馬周辺は、御承知のように、日韓漁業協定に基づきますところの漁業専管水域あるいは日韓の共同規制水域等がありまして、ルールがきちんとしておりますので、もちろん侵犯操業もございますが、この侵犯の数は年々減ってきております。  問題は、北海道周辺でございまして、御指摘のように、道南の沖合いで韓国漁船が出漁いたしまして、日本の漁船には禁止をされている底びきの漁法でやるというところで、日本の漁民との間に紛争が起こっていると聞いております。私ども、領海内につきましてはもちろん取り締まっておりますけれども、公海上におきまするこの種の問題につきましては、やはり日韓の間での北海道道南海域での漁業規制の問題でございますので、水産庁の関係とも連絡をいたしまして、こういった紛争が起こらないようにすることを努力をしたいと思います。
  147. 伊東正義

    ○伊東委員長代理 これにて児玉君の質疑は終了いたしました。  次に、和田一郎君。
  148. 和田一郎

    和田(一)委員 それでは、特に地方財政を中心にいたしまして、数点質問をさせていただきます。  まず初めに、国家公安委員長にお尋ねをいたしますが、例の三菱銀行北畠支店の事件が起きまして、まことに残念な事件でございます。被害者の方の御冥福を心からお祈りを申し上げます。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕  それからすぐに二、三の銀行の事件があった。それで、きのうとおとといと、まことに交番のすぐ隣、または一軒置いて隣の郵便局がやられた。このように金融機関の強盗事件といいますか、頻発しておる。これはずっと毎日記録しておれば、本年に入ってからでも相当な数だと思うのですけれども、こういうことで警察の方としては、金融機関の防犯体制、特に交番の隣というのはずいぶん抵抗がありまして、消防署の近くは早く火事が消えると同じように、やはり安全性がなければならぬ。そういう点でひとつ国家公安委員長のお話を伺いまして、担当の方からも対策を伺いたいと思います。
  149. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように、最近になって金融機関に対する凶悪犯が連発しておるわけでございます。警察としては、従来からもこういった事犯の防止のために金融機関と十分連絡をとりながら対策を講じておるのは当然でございますが、最近のこのような連発の情勢を見ますると、さらに一層、これの事前の防止体制をどうすればいいかという点に重点を置いて、これに対する対策を強化する必要がある、かように考えております。  あとは政府委員から答弁させます。
  150. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 金融機関の強盗事件でございますが、昨年、五十三年中におきまして銀行、郵便局等が襲われた事件が六十八件ございます。そのうち検挙したものが三十六件でございまして、検挙率が五三%ということになっております。本年に入りましてからは、実は本日も郵便局の事件がございまして、山形でございますが、これで三日続いたというような状況になっております。本日現在で金融機関の事件は十三件発生をいたしておりまして、検挙したのがそのうち七件ございます。検挙率が五八%という状態になっております。
  151. 塩飽得郎

    ○塩飽政府委員 金融機関に対する防犯指導につきましては、かねてから金融機関の保安責任者の指定でありますとか、警備員の配置などの体制の問題がございますし、さらにまた非常通報装置などの保安設備の充実強化を内容とします金融機関の保安基準、こういった目安になるようなものも策定してございまして、防犯診断、防犯パトロールなどの実施でありますとか、防犯研修会を開催いたしまして、いろいろと努力をしてまいっておるわけでございますが、先ほど御指摘のとおり交番の近くで事件が発生した、まことに残念なことでございます。そういったことで、これからもなお一層関係者と連絡をとりながら、十分防犯の措置が講ぜられますように努力をしてまいりたいと考えております。
  152. 和田一郎

    和田(一)委員 きょうまた発生したとただいま刑事局長おっしゃいましたけれども、きょうの郵便局の事件は、交番の近くですか、遠いのですか。
  153. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 本日発生いたしましたのは、山形市内の郵便局でございますけれども、交番から一キロばかり離れたところでございます。
  154. 和田一郎

    和田(一)委員 保安部長の、これからしっかりやりたいということでございますけれども、この種の事件でもう少し何か妙案はないものかということをわれわれ感じるわけなんですけれども、こういう問題でございますから公表できない面もあると思います。しかし、警察としても、金融機関のこういう問題だけでは本年に入って十三件、これはすごい問題でございますから、ひとつできれば具体的にこういう点もやりたいということがあればぜひ言ってもらいたいのですが、もう一遍決意のほどと、それからできれば具体的な方策を示してもらいたいと思います。
  155. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 きのうとおととい特定郵便局が襲われておるわけです。それで昨年もかなり件数があるわけです。これはやはり普通の銀行と比べますと、そういった強盗事件というようなものに対する対策といいますか、警備態勢というものが全くゼロに等しい状態にあるわけです。したがって、犯人としてはそういった手薄なところをねらってくる、こういうことだと思うのです。でありますから、私どもとしては一般の銀行などの金融機関はもちろんでございますが、特に、いままでほとんど何らの態勢のない、特定郵便局あるいは信用組合、こういった金融機関に対しても十分連絡をとって、事前の警備態勢に万全を期していきたい、かように考えます。
  156. 和田一郎

    和田(一)委員 また三菱銀行の事件に戻りますけれども、あのときの犯人の持っておった猟銃の問題がございました。猟銃の許可の問題でございますが、その後警察庁とされてはどのような処置をとられておるか、またどのようなやり方で臨まれているかお聞きしたいと思います。
  157. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 梅川という犯人が十五歳のときに殺人強盗を犯しておる、そういう前歴を持った者にこれは合法的に、正当な手続を経て所持を認めたわけでございますが、その認められた銃であのような凶悪な犯罪を犯した、こういうことは私どもに対しては非常に貴重な反省の資料を提供しておる、かように考えます。  私としましては、法のあり方、いままでのこの許可を与えてきた行政運営のあり方全般にわたって根本的な見直しをしなければならぬ、かように考えております。  したがいまして、あの事件の発生した翌日に全国都道府県に対しまして、銃砲の許可申請は一年間に一万件以上も出てくるわけですから、それに対する許可は当分ストップ、とりあえずそういう暫定措置をとりまして、行政運営の方針としては許可を与える基準を厳しく運用するように、とりあえずそのような指示を出しております。根本対策としては、行政運営の対策だけで十分なのかどうか、足りないとすれば、現行法にどういう不備があるのか、そういう点にも触れて、現在鋭意検討を続けておる、こういうことでございます。
  158. 和田一郎

    和田(一)委員 警察の問題は、今後の皆さん方の努力を心からお願いいたしまして、以上で終わります。  次に、官房長官がずいぶんお急ぎのようでございますので、先に……。  田園都市構想についてお聞きしたいと思いますが、この問題はずいぶんと当委員会でも出されまして、大体はわかっておるわけでございますけれども、われわれはまだちょっとわからない点があるのです。それは、総理が田園都市構想をおっしゃいました。そして、地方分権ということもおっしゃいました。しかし、建設省関係の地方生活圏、それから自治省の新広域市町村圏、それから国土庁のモデル定住圏と各省が現在はさまざまな圏域がございます。正直言いまして、このため地方団体が非常に困惑していることは事実でございまして、その具体的なことは追ってまた各大臣から一々お聞きいたしますけれども、どのように統一されるのか、また、ばらばらでいかれるのか。もう一つ、結局は地方分権ということをおっしゃっておりますし、この構想について地方の主体性を尊重して地方にゆだねるのかどうか、そういう点についてまず官房長官の御所見を伺いたいと思います。
  159. 田中六助

    田中国務大臣 和田委員にお答えいたします。  田園都市構想という大平内閣のキャッチフレーズの一つでございますが、この田園都市構想というのは、総理もたびたび本会議あるいはこの委員会で申し述べておりますように、いままで過去長い間、わが国は近代化を目指して国際的に追いつけ追い越せというような気持ちでずっときておりまして、つまり、それは物の面で非常に豊かになったと思います。しかし、その長い間忘れておったものは何かということを自問自答いたしますときに、やはり精神面、質的な面あるいは心の豊かさ、そういうものが等閑視されておったのではあるまいかということから、心のふるさとと申しますか、そういう一つの田園都市というものをつくり上げて、みずみずしい社会あるいは国づくりの理念をつくり上げようというのがこの田園都市構想でございまして、総理が、本会議だったと思いますが、申し述べておりましたように、ちょうど北斗七星のような、ずっと目標にして目がけていく理念であるという考えでございます。  そこで委員のおっしゃるように、いままでの国土庁の言っておる定住圏構想、あるいは自治省の言っております各市町村構想というようなもの、あるいは建設省の言っておる市町村構想とどうなるのかということでございますが、これはいま申しましたように社会づくり、国づくりの田園都市という一つの理念を目標といたしまして、これらのいままでの構想をずっとミックスしていきまして位置づけまして、それを順列よく組み合わせていくということで、田園都市構想と少しも矛盾することではないわけでございまして、その間、都市あるいは農村でいままでの、従来の構想を加味していこうという案でございます。
  160. 和田一郎

    和田(一)委員 そうしますと、建設省の地方生活圏それから自治省の新広域市町村圏、国土庁のモデル定住圏、一応現在進行形のものもございますし、また本年一県一地域の予算がついたところもございますし、また各地方にこのようにやりなさいという指示が流れていますね。それが今後また変わるということですか。
  161. 田中六助

    田中国務大臣 先ほども申しましたように、総理の田園都市構想というのは一つの、国づくり、社会づくりの理念でございまして、それを目指して従来の建設省、国土庁あるいは自治省で考えられている案をそのまま実現していけばいいわけでございます。
  162. 和田一郎

    和田(一)委員 そうしますと、いままでの各省庁のやり方、それはそれでもいいんだということなのか、また田園都市構想としてまた新しいものをつくるのだという、そこがわからなかったのですけれども、それぞれでいいんだ、こういうわけなんですね。その点について……。
  163. 田中六助

    田中国務大臣 たびたび申し上げて恐縮でございますが、この田園都市構想というのは短期的にすぐでき上がるものではなくて、長期的な一つのビジョン、理念でございますので、いままで具体的に言っておりました国土庁、建設省あるいは自治省の案、それを着々と実行していく間にその理念を目指していけばいいわけでございまして、毎年の予算がついておりますので、それはその理念へ向かっての構想と、ミックスしていけばいいわけであります。
  164. 和田一郎

    和田(一)委員 私ちょっとわからないのですけれども、あとは各大臣に詰めてまいります。  あと一つ。地方分権ということについてどういうふうにお考えか、その点はどうですか。
  165. 田中六助

    田中国務大臣 この田園都市構想というのは、もう一つの特質を申しますと、各都市、各田舎、そういうものの特色を生かそうということがやはり根底にあるわけでございますので、新しいいろいろな構想がございましても、特色はそれぞれ各地方で生かせればいいわけでございます。
  166. 和田一郎

    和田(一)委員 そうすると、地方分権もあり得るというような、そういうふうにとるのですけれども……
  167. 田中六助

    田中国務大臣 つまり画一的なものをむしろ避けようとするわけでございますので、地方分権ということは十分あり得ることでございます。
  168. 和田一郎

    和田(一)委員 あと一間、過疎と過密はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  169. 田中六助

    田中国務大臣 過疎過密、そういうものがいままで非常に問題になっておりますので、田園都市という構想でその構想を目がけて、その理念に向かって過疎過密も同様になくしていこうということでございます。
  170. 和田一郎

    和田(一)委員 そうしますと、過密の大都会の中にたんぽを持ってくるということでしょうか。
  171. 田中六助

    田中国務大臣 極端な御質問でございますが、非常な過密の中にたんぽを持ってくるというようなことでは、それもまた非常にひどい話でございますし、これは私が冒頭から申し上げておりますように一つの理念でございますし、ちょうど総理はうまい表現をしたと思うのですけれども、北斗七星のように仰ぎ見てそれをたどっていくという方向、つまり短期的なものではなくて、長期的な理念としていろいろ具体化していく間に、そういうものを実現していってほしいという一つの願望も含めておると思います。
  172. 和田一郎

    和田(一)委員 では、官房長官、どうもありがとうございました。  あと、次の質問国土庁長官とそれから自治大臣にお願いしたいと思います。  次に地方財政をやらせていただきます。  御承知のとおり、地方財政はもう大変な赤字を生じております。大蔵省の財政収支試算がこの国会に提出されましたが、自治省としては地方の財政収支試算もおつくりになる用意があるのかどうか、まずそれをお伺いしたいと思います。
  173. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のとおりでございまして、現在鋭意作業を進めております。できるだけ早くと考えて努力をしておりますが、今月いっぱいには国会に提案するつもりでございます。
  174. 和田一郎

    和田(一)委員 二月の末ということですね。
  175. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 そうです。
  176. 和田一郎

    和田(一)委員 それで、国の方の財政収支試算は、昭和五十九年度までに国債発行をゼロにするという形ですね。一つの形がございます。自治省でいまお考えになっていらっしゃるのはどのような形か、できればアウトライン、お考えになっていればおっしゃっていただきたいと思います。
  177. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 国の財政と地方財政、おのずから性格が違うわけでございますが、私ども国会に提案をしたいと考えておる案は、大体国が提出した財政収支試算に準じて、やはり昭和六十年度までを一つのタイムリミットといたしまして、その間の財政収支がどう動いていくか、この概要を提案するつもりでございます。
  178. 和田一郎

    和田(一)委員 出てきましてからまたいろいろ論議をさせていただく次第でございます。しかし、五十年度以降大幅な赤字が出ておりまして、五十一年度は不足額が二兆六千二百億、五十二年度が二兆七百億、五十三年度が三兆五百億、そして五十四年度は四兆一千億の財源不足が出ておりますけれども、その原因、これはどういうところにあるのか、まず自治大臣からひとつ……。
  179. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 大きく言って、歳入が激減したということが一つでございます。これはもう説明を要しないと思います。石油ショック以来、国も地方も税収が激減をしております。それから他面、歳出の面におきましては、冷え込んできておりました日本の経済を、その景気を何とか回復しなければならぬ、こういうことで、御案内のように、財政の力で全国的に公共事業に非常に重点を置いて仕事をやってまいってきておることは御指摘のとおりでございまして、公共投資面の支出が急増した。一方において税収が激減し、他方において公共的支出が激増した、この二つが最大の原因だと考えております。
  180. 和田一郎

    和田(一)委員 そういうことになってまいりますと、当然地方交付税法の六条の三の二項で地方財政の財源保障をする必要がある。交付税のアップだ、こうなってくるわけでございまして、これが当然の道筋でございますけれども、これについてまず自治大臣から聞きましょう。交付税のアップはどうするかということです。
  181. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように、地方交付税法の法のたてまえから申しますると、当然制度的な対応をしなければならない状態であることは、これはもうだれが見ても明らかであります。したがって、自治省といたしましては、五十四年度の予算編成に当たりまして、大蔵省に対して地方交付税率の引き上げを要求いたしたわけであります。これに対しまして大蔵省としては、自治省の主張は主張としてはわかるけれども、これに対応する国の財政状態が御案内のようにとにかく大変な赤字に依存をして予算を編成せざるを得ない、こういう状態でございますので、自治省の要求する交付税率の引き上げにはどうしても応ずることができない、こういうことでございます。
  182. 和田一郎

    和田(一)委員 それでは大蔵大臣に御質問申し上げますが、交付税率のアップ、これはもう当然のことだと思うのですけれども、今回五十四年度もそのようなアップにはなっておりません。今後の考え方についてお聞かせ願いたいと思うのです。
  183. 金子一平

    金子(一)国務大臣 地方財政の苦しいことは十分わかっております。しかし去年からことしにかけての財政経済情勢は非常に異常な状態にございまして、いま制度的に交付税率をいじるのには適当な時期ではない。もう少し将来の見通しが立ってから制度的に考えましょう、ただし、地方財政がお困りになっていることは事実でございますから、その穴埋めは別途考えましょう、こういうことで両省話し合いで片づけた次第でございます。
  184. 和田一郎

    和田(一)委員 当分の間というお話でございますけれども、大体見込みはどの辺をめどにしていらっしゃるのですか。
  185. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これはもう今日のような情勢がある程度静まればということでございますので、来年からとか再来年からとかちょっと見通しは立ちませんけれども、常態に戻りましたら制度的に考えたい、こういうことでございます。
  186. 和田一郎

    和田(一)委員 あと一問大蔵大臣に聞きますけれども、大蔵大臣よりまず自治大臣にお聞きします。  五十四年度の地方財政対策のときに、自治省と大蔵省のお話し合いのときに、大蔵省の方からいわゆる赤字地方債という考えが出されたと聞いております。おかげさまで今回は出ておりませんけれども、この点については自治大臣はどうでしょうか。
  187. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように、大蔵省としては国の財政があれだけ大きな赤字公債を発行しておるわけでございますから、地方においても多少の赤字地方債はつき合ってもらいたい、こういう強い要請があったことは事実でございます。しかし自治省といたしましては、ただいまもお話が出ておりまする地方交付税法という法律があるわけでございますから、この法律をそのままにしておいて地方公共団体に赤字地方債の発行を引き受けてくれ、こういう大蔵省の言い分は私としてはとうてい了承するわけにはいかない、法のたてまえからいってこれは断じてお引き受けするわけにはまいりません、こういうことでお話をいたしまして、最終的には大蔵省が私どもの主張を了承した、こういうことでございます。
  188. 和田一郎

    和田(一)委員 それでは大蔵大臣にお聞きいたします。大蔵省のお考えも一応御説明になりましたけれども、また今後このようなお考えが出てくるのかどうか、どうですか、その点は。
  189. 金子一平

    金子(一)国務大臣 今後の経済見通しがどうなるかによって財政状況も変わってまいりまするし、特にまた国も地方も同様の問題でございまするけれども、お互いにぜい肉を落として財政の健全化に努めることによって赤字地方債の発行はなしに済ませるような体制に持っていきたい、私どももそういうような気持ちで、ことしは地方の赤字四兆何千億を全額国で補てんして、一部借入金もございまするけれども、発行なしに済ませた、こういうことでございます。今後もこういう方向で行けるならば行きたいと考えております。
  190. 和田一郎

    和田(一)委員 それではちょっと具体的になってきますけれども、私が言わんとするところは、行政事務の再配分と税財源の再配分ですね。これは各地方自治体にとっては最終の結論ぐらいなものです。何とかこれを早くしていかなければならぬという時代になっております。そういうところに一つの目標を置きまして議論を進めてまいりたいと思うのですが、いわゆる借金はどの程度あるのかという問題が大きくなってくるのです。地方財政に借金がどの程度あるか、これは地方債の依存度でわかるわけでございますが、昭和五十三年度は地方債の依存度が一一・七%、そして、そこへ交付税の特別の借り入れが入りますから一六・二%ということで、五十四年度はその借入依存度というものが一八・五、こうふえてまいります。恐らく今後ふえてくるかもわかりません。これをどの辺までで抑えればいいのかということが一番大きな問題だと思いますけれども、自治大臣、どの辺までで抑えればいいのかということ、おわかりになると思いますけれども、ひとつおっしゃってください。
  191. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 細部の数字は政府委員から答弁申し上げますが、私どもの計算では公債の依存度を計算する場合に財政再建債は別枠にして計算の対象にしておりません。したがって、五十四年度は一二%ちょっとになるのじゃないかと思うのです。もちろんこれは借金でございますから、少ないにこしたことはございません。私どもとしてはこの公債依存度をできるだけ軽減する方向でこれから粘り強く努力をしていくわけでございますが、一体そのリミットは何%か、こういう質問でございますけれども、これは私よりも政府委員の方から答弁した方が間違いがないと思いますから、政府委員から答弁いたさせます。
  192. 森岡敞

    ○森岡政府委員 地方財政におきます地方債の依存度が高まってまいりましたが、その問題を考えます場合に、地方財政全体としての依存度をどう考えるかという問題と、個々の地方団体の歳入における地方債の依存度の問題と二つあろうかと思いますが、いまの御指摘は全体のお話だと思います。  昭和五十年度までは決算で見ますと、大体五%台の依存度でございます。五十一年度から急激に倍増いたしまして、一一%台が続き、五十四年度は、御質問の中にもございましたように一二・六%ということになっております。私どもはそのときどきの財政状況、ことに歳入の状況によりまして、一律に何%超えれば直ちにもう赤信号ということを決め切ることはなかなかむずかしいとは思いますが、やはり一二、三%、全体がそういうラインになりますと、個々の地方団体になってまいりますと、これは一五%とか二〇%とかいうものが出てまいりますし、また現に出てきております。そういう意味合いで、率直に申せばいまの段階はかなりの危険信号に来ておるというふうに思っておる次第でございます。
  193. 和田一郎

    和田(一)委員 大蔵大臣、そのように政府委員の方がおっしゃっていますが、大体一二、三%が限度じゃないだろうか、そこで危険信号だ。自治大臣がおっしゃったように財政再建債は入れないということですから、地方債依存度でいきますと一二・六%、その辺が現在でございまして、今後これ以上ふえますと、それこそパンクするというようなことでございますので、その点のところもよく御承知になった上で今後の運営をしていただきたいと思います。  もう一つ例を挙げます。  次は、個々の地方団体を考えますと、これは大変なのですね。一般財源の中のいわゆる公債費の比率、これは何%何%と出ておりますが、各地方自治体では大体どの辺が限度か。特に自治省では起債の制限をしておりますその基準があると思うのです。その点、ちょっと説明してください。
  194. 森岡敞

    ○森岡政府委員 個々の地方団体の場合に公債費がある一定水準を超えますと、将来の財政運営に大変大きなプレッシャーになってまいりますので、起債の許可方針で一定のルールを設けております。地方債のうちで、先ほどちょっとお話の出ておりました財源対策債でありますとか、災害復旧債でありますとか、その他地方交付税の基準財政需要額に償還費を計算して、いわば交付税計算上その財源措置をしておる、こういうものを除きました公債費の一般財源に対する割合が二〇%を超えますと起債の制限を行う、こういうことになっております。現在これに該当しておりますのは八団体でございます。こういうふうな団体がふえてまいるということになりますと、地方財政はその地域においては大変麻痺的な状況になるわけでございます。私どもとしては、そういうことにならないように今後一般財源の増強を図ってまいらなければならぬ、かように思っておる次第でございます。
  195. 和田一郎

    和田(一)委員 ただいまの財政局長の御答弁は、公債費率が二〇%になったら危ない、起債の制限をする。  これは昭和五十二年度の、単年度ですけれども、二〇%以上になっているところがずいぶんありまして、三〇%のところもございます。これは各都道府県別に出ております。たとえば高知県の吉川村というのは三〇・三%、これは最高です。二五%以上のところを述べますと、大阪府の高槻、枚方、交野、兵庫県の三田、新宮、奈良県の三郷、徳島県の吉野、高知県の赤岡、そのようなところがずっと二五%以上です。二〇%以上はざらにございます。それから二〇%以下のところも、相当ひどいところがあるわけです。昭和五十二年度では、一五%から二〇%の間のところが何と百五十八団体もある、二〇%以上が三十七団体もある。これは各市町村にとっては大変な苦しみようでございまして、確かにこれは公債費率でございますから、このままでいきますと当然ふえてくるということは間違いないと思うのですね。いまの財政局長の説明、ちょっと漏れておったようでございますが、過去三年間にわたっての平均が二〇%以上のところは起債をとめるということらしいのですね。私申し上げたのは、これは単年度ですから、恐らく来年度、再来年度でこのような団体がどんどん出てくるのじゃないだろうか、このまま放置していいかどうかという問題があるのですね。その点について自治大臣どうでしょう。
  196. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように、このままの状態で進んでいくならば恐らく再建団体に落ち込んでいく団体の数がふえてくる可能性の方が強い、かように考えます。したがって、地方財政という立場から考えても、このままで放置するわけにはまいりません。  そこで、地方財政をどう再建するかということが、これはもう焦眉の問題になってきておる。そういうことで、間もなく提案しまする地方財政収支試算におきましても、この危殆に瀕しておる地方財政をどうして再建するかということに焦点を当てて試算を検討しておる、こういうことでございます。
  197. 和田一郎

    和田(一)委員 確かにそれもございますけれども、私が申し上げたいのは、いわゆる行政事務の再配分と税財源の再配分なんですね。  一つ申し上げますと、超過負担、これは六千億円以上あるということであります。それから法令等に関係のないいわゆる通達、通知だけでもってやらされているような仕事、それがどんどんふえるという、これは後で具体的な例を引いて申し上げますが、そのような、何といいますか、固有の事務と言ってしまえば固有の事務には違いないけれども、相当やはり国が責任を持ってやらなければならぬということと、もう一つは権限まで委譲しなければならぬということ、その辺のところが私は一番大きな問題じゃないかと思うのです。現在のままでいきますと、これがどんどんふえる。だから自治大臣がおっしゃったように、収支試算を出してそのとおりやっていきたい、しかしその中身は増税ということになっていくのでしょうから、これは大問題がございます。ですから、そういう行政改革といいますか、そういう面でもっと真剣に取り組んでいかなければならないのじゃないだろうか、このように思って、いま私申し上げておるのですがね。大蔵大臣、どうでしょうか、御所見は。
  198. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いま和田さん御指摘の点は、全く国の財政につきましても同様でございまして、公債依存度三九%を超えるような状況になってまいりました。国としては、いま思い切った経費の節減と増収対策を講じようということで御提案申し上げておるわけですが、地方につきましてもこれは全く同様でございまして、交付税率を引き上げて、もっと国から金を回せと言われましても、それじゃ国債の依存度を引き上げるだけになります。もうすでに今日、地方の財政の規模は国の財政の規模をはるかに上回っておる大きなものになっておること、御承知のとおり。しかも車の両輪のごとく仕事を分担しながらいろいろの行政事務をやっていただいておるわけでございますが、基本的にはいまお話しのように国からよけいな仕事を無理をして押しつけるようなことはしない、ある程度権限も委譲し、それからそれに必要な税源も財源もできるだけやって、両々相まって仕事ができるように持っていくのが理想的だと思いまするけれども、長い慣行でずっとやってきておる行政のことでございますから、一朝一夕にもとから見直すというわけにはいかぬかもしれませんけれども、私自身の気持ちとしては、このままほっておいたら、これは本当に両方とも大変なことになるぞという切実な気持ちを持っておることは事実でございます。今後も努力いたします。
  199. 和田一郎

    和田(一)委員 そこで、まず経済企画庁の方見えておると思いますが、ちょっとお聞きします。経企庁が最近発行されました「新経済社会七カ年計画の基本構想」この中に「国と地方との事務配分についても、財源配分とあわせて、検討を行う。」たったこの一行の文章でございますが、これはもう地方行政にとっては千鈞の重みに値する文章でございまして、これは経済企画庁のおつくりになった書類でございますが、これを見ますと、ことしの五月に基本構想をお書きになる。ですから、その御構想の中で、ただいま私が読みました国と地方との事務の配分、税源の配分、これについてはどのような御構想をお持ちかどうか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  200. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 「新経済社会七カ年計画の基本構想」の中には、先生仰せのとおりの記述がございます。そして五月に向けまして、この基本構想は本計画になるわけでございます。  いま記述がございましたが、経済計画はもともと政策運営の大筋の方向を述べておるものでございまして、具体的な方策ということになりますと、これをもとにいたしまして、たとえば社会経済情勢の変化でありますとか、あるいは増大いたします財政需要に適正に応じていくというようなことを踏まえまして、さらに今後検討を進めていくものである、こういうように考えております。
  201. 和田一郎

    和田(一)委員 検討はよくわかりましたけれども、具体的にはやはり自治省であるとか大蔵省であるとか行政管理庁であるとかというところと御相談をされて、そして盛っているように再配分をやるというような形でおつくりになるのかどうかですね、その点はどうでしょうか。
  202. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 この計画は政府全体でつくっておるものでございますので、当然この件につきましては、所管省でございます大蔵省あるいは自治省、行政管理庁等々で御検討を加えられるものを私どもの方で調整させていただくという形になって出ていくものでございます。
  203. 和田一郎

    和田(一)委員 わかりました。これは期持をさせていただいておりますので、この点……。  それでは、行管庁長官にお伺いいたします。  そちらから出ております書類を見ますと、いま私が申し上げた点については、余り深くはお取り上げになっていらっしゃらないような形でございまして、こういうパンフレットがございますけれども、ただこの中で「権限の委譲」と五文字しかないということ、しかしこれは行政管理の中でも一つの大きな問題であります。各省庁にわたるものですから、やはりおたくの方で中心になってやっていかなければならぬと思うのですけれどもね。それは行政事務の再配分、その事務の再配分の方ですね、その点についての御所見を伺いたいと思います。
  204. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまお話しの事務の再配分、これは考え方二つあると思うのです。これは私見でございますけれども、一つはやはり理念なり思想に基づいて本当に地方分権と申しますか、あるいは自治体本位、こういう考え方に基づいていく方法と、それからただ事務をできるだけ簡素にしていく、だから権限は委譲できるものは委譲するし、許可とか認可の廃止できるものはやめるというふうな考え方二つあると思うのでございます。いままでこの点がわりあいに混同して用いられておるようなきらいがあるように思います。基本的な考え方でやっていくとすれば、これは相当大きな改革をやらなければいけないし、またそれだけの決意を持ってやらなければならぬ、こう存じます。地方制度調査会におきましても、この問題はたびたび取り上げられておりますけれども、その結果は比較的事務的に終わっておるというのが、いままでの実情のように思うわけであります。  そこで、それじゃ事務的な点ではどの程度やっておるかということでございますが、これは私どもの方といたしましては、絶えず調べまして、できるだけ委譲できるものは委譲する、あるいは廃止できるものは廃止するということに努めておりまして、現に一昨年の行政機構の改革という閣議決定に基づきまして整理をいたしましたものが大体千二百件余りになっておる、数にすればかなりたくさんのものをやっております。しかし、私はこのやり方でいきましても、余り基本的な改革にはならない、しかしながら簡素化にはなる、こういう考え方を持っておるわけでございまして、基本的な考え方を本当に推し進めるためには、これは相当な検討と決意と決心が要るのじゃないか、こう考えております。
  205. 和田一郎

    和田(一)委員 行政管理庁長官は、特に地方政治にはベテランでいらっしゃいまして、その任に当たられた方でございますから、その点につきましては、もはやおっしゃったように理論の段階ではなくて、手段のときに来ているのです。シャウプ勧告の中に入っているわけです。ですから、ぜひこういうパンフレットの中に――これは何年度ですか、五十三年十二月に発行しましたけれども、次にお出しになるときにある程度のアウトラインをお出しになるような形ではどうでしょうか、これは。
  206. 金井元彦

    ○金井国務大臣 なるべくよくわかるように、また相当大づかみができるような姿においてこれを提示したい、こう考えております。
  207. 和田一郎

    和田(一)委員 これはいつ出るのですか。
  208. 金井元彦

    ○金井国務大臣 大体毎年一回出しております。
  209. 和田一郎

    和田(一)委員 それでは五十四年度の、十二月ころにお出しになる中には相当つかんで出せる、このように私たちは期待してよろしいですね。  それでは、次に先ほどの田園都市構想に移りますが、実は、この田園都市構想も、結局地方の負担になってくるのではないかという危惧が私たちはするわけなんです。この点について、ちょっと具体的にお聞きいたしますが、まず、田園都市構想と定住圏構想がどのような関係にあるかはっきりしていない。これは自治省と国土庁、ともに「軌を一にする」というふうな文章が書いてありますけれども、具体的にどうするかという点なんですが、その点について国土庁長官からひとつ。
  210. 中野四郎

    ○中野国務大臣 お答えをいたします。  先ほど、官房長官からも御説明を申し上げましたし、総理も機会のあるごとに、これが政治的理念である、率直に申し上げますと、調和のとれた住みよい町づくり、都市と農村との均衡を保ったさわやかな生活のでき得るような環境、特に家庭を基盤とした田園都市をつくりたい、こういう考え方でおられまして、その計画推進の方法は定住構想と軌を同じゅうするものだと言うておられます。したがって、定住構想の推進に当たりましては住民の創意ということが第一であります。そして、住民の努力を基盤としまして、地域の特性を十分に生かしまして、そして地方公共団体が大体主になりますのですから、これが主体になってすべての問題に取り組んでいくというのが基本であります。国としましても、関係各省庁、非常にこれは関係するところが多いために、その諸施策の充実強化という点になりますと非常にいろいろな問題がありますので、要は国土の均衡ある発展であります。それを基礎条件としてこの整備を推進していきたいという考えております。結局、地方公共団体の目指す地域社会づくりというものをば強く支援していく必要があると考えております。こういう見地から、今般、関係十六省庁の各局長が集まりまして、定住構想の推進連絡会議を開いて政府としての推進体制を整えるとともに、その万全を期していきたい、かように念じております。
  211. 和田一郎

    和田(一)委員 それでは、大臣でなくてもいいと思いますが、係の方にお願いいたしますけれども、モデル定住圏構想と言っておるのは、これはだれが何をするかということを具体的にちょっと、時間がありませんので、短く説明してください。
  212. 佐藤順一

    ○佐藤(順)政府委員 お答え申し上げます。  三全総におきましては、定住構想を推進するための新しい生活圏づくりといたしまして定住圏というものを予定いたしておるわけでございます。明年度、五十四年度におきましては、さしずめその中のモデルとするに適当と考えられる圏域を選びまして、そこにおきまする計画策定、そのための調査を国が補助をしていきたい、こういうことで予算措置をいたしておるような次第でございます。したがいまして、考え方といたしましては、各県におきまして、県下全域にわたります地域整備の構想に照らしましてモデルとするにふさわしいと考えられるような圏域を一県についておおむね一圏域ずつ、知事が市町村長と協議をしてもらいまして選定をしてもらいまして、それに対して国としては助成をしていきたい、こういう考えでございます。
  213. 和田一郎

    和田(一)委員 一体そこで何をやるのですか。
  214. 佐藤順一

    ○佐藤(順)政府委員 三全総の定住構想の考え方に即しまして人口の地方定住を促進する、そのために、自然環境、生活環境、そして雇用の場など生産環境、この三つの環境の調和のとれました総合的な居住環境を整備するということを目的といたしまして、それを目指すような事業というものを考えていきたいということでございます。
  215. 和田一郎

    和田(一)委員 自治省のやっております新広域市町村圏ですか、これは大体全国的にネットを張られておると思うのですが、これは各地域ごとに区域が決まっていますね。その区域とそれから国土庁の定住構想との区域は、同一になるのですか、また別になるのか、その点ひとつ。
  216. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御案内のように、広域市町村圏は全国三百二十九、このネットワークができ上がっておるわけでございます。いずれにしても、定住圏というものをつくるにしてもこの三百二十九の区域以外に区域はないわけでありますから、当然この三百二十九のネットワークの中から各府県それぞれ一カ所を選定するわけでございます。したがいまして、それが広域市町村圏の一つで、完全にマッチするのか、あるいは二ないしは三の区域にまたがるのか、これはそれぞれの県によって違ってくるわけでございます。しかし、いずれにしてもその土台となるものは新広域市町村圏の地域であるという事実にはこれは変わりございません。
  217. 和田一郎

    和田(一)委員 区域については自治大臣の説明で大体わかりました。しかしその点は相当ばらばらな考え方を地方で持っていることは事実ですから、私の調べましたところなんかは、別にしなければならないのだけれども、一体どこにしようか、場所がないのだということで、その担当の企画部長さんも頭を痛めておりました。ですから、いま私は国土庁の係の方に聞きましたけれども、一体だれが何をやるのかということが何もないと、ただそこに人口をくっつけるだけの話だ、定住させるだけだ、こうなってまいりますと、これは北斗七星どころじゃないわけです。天の川くらいになってしまうのです。この点は、理想としては非常にりっぱな理想でございますので、国土庁それから自治省さらに今後奮励努力して、ひとつりっぱな案をつくっていただくことを心からお願い申し上げますが、中野長官、ひとつ一言お願いします。短くお願いします。
  218. 中野四郎

    ○中野国務大臣 いま定住圏と広域市町村圏、地方生活圏との関係はどうなんだ。三全総では、御承知のように定住構想を推進するために新しい生活圏づくりとして定住圏というのを予想しております。定住圏は、全国各地にそれぞれの地域特性に応じた総合的居住環境と申しまするか、それを整備するための新しい生活圏でありまして、広域市町村圏、地方生活圏などの施策を充実するとともに、地域が選択した方向に弾力的に対応しつつ定住圏の整備をば推進してまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくまた御支援をお願いいたします。
  219. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 大事な点ですから補足申し上げたいと思うのですが、恐らく全国の都道府県も、定住圏あるいは新広域市町村圏あるいは生活圏、いろんな名称で、その上にまた田園都市構想、一体何のことだろうという気持ちで見ていると思うのです。ですから、これに対して明確な答えを与えるということは政府の責任でなければならぬと私は考えておるのです。  そこで、先ほど国土庁長官からもお答えいたしましたように、十六省庁関係しておるわけでございますから、これがそれぞれ自分の考えで勝手に施策を地方に押しつけたのでは受ける方はたまったものじゃありません。そこで大事なことは、この関係十六省庁が一緒になって一つの統一した思想のもとに、それぞれの分担しておる仕事を進める、足並みをそろえていく、これが一番大事なことだと考えております。幸いに国土庁が中心になって関係省庁協議会をつくって思想の統一を図っております。基本的にはもう完全に一致を見ておるわけでございます。  それからもう一つ、このモデル定住圏、田園都市構想の具体化でございますが、大事なことは、従来の中央の政府の押しつけ仕事であってはならぬということだと私は考えておるのです。田園都市という一つの生活空間をつくろうということでありますから、これの主体はあくまでも都道府県、当該の市町村でなければならぬ。この考え方は、この田園都市構想を推進する場合の一番中核になる考え方でなければならぬ。この点についても関係十六省庁完全に意見の一致を見ておるところでございますので、念のためにお答え申し上げておきます。
  220. 和田一郎

    和田(一)委員 それじゃ、中野長官の御健闘を祈ります。どうもありがとうございました。  それから、もう時間がございませんのでちょっと急ぎますが、今度は超過負担の方に移りますけれども、地方六団体が毎年のように超過負担を調査いたしまして提言をしております、また推進方を願っておりますが、六千億ぐらいあった。それで、五十四年度は大体どのぐらいな超過負担の解消のあれがあるかということをちょっと教えてください。
  221. 森岡敞

    ○森岡政府委員 五十四年度の政府予算におきます超過負担の解消見込みは、事業費ベースで五百二十九億円、国費ベースで三百六十億円程度と見込んでおります。
  222. 和田一郎

    和田(一)委員 ということは遅々として進まないということでございまして、国費ベースで五十年度が千百億円、五十一年度が二百三十、五十二年度が二百五十六、五十三が五百五十四というのは、これは遅々として進まぬ。ですから、本当にこういう点がやはり地方財政の圧迫の大きな原因になっているのです、大蔵大臣。それは国も大変だから地方も大変だということはよくわかりますが、やはりそのような形で守ってやらなければならぬと思うのですがね。  それで、一つ例を出します。厚生大臣においでいただいておりますので、保健所、これがまた超過負担がべらぼうに多くて大変なんです。六団体の報告を見ますと、保健所の事務事業費の超過負担が何と一八二・五%、これはすごい超過負担の率である。ずっと見ていきますと、研究調査費なんかは二九一%も超過負担をしておる。それから非常勤の職員の万を見ましても、これは二四%。とにかくものすごい超過負担であるということで、六団体とも保健所を筆頭に挙げてきているわけですね。大臣の方も相当努力されておると思いますが、具体的にひとつ聞いていきまして、そういうところがあるから超過負担なんだということを指摘していきたいと思います。  まず、全然国の補助も何にももらっていない保健所がございますね、五つか六つあるんですよ。なぜそうなるのかということをちょっと簡単にひとつ言ってください。
  223. 田中明夫

    田中(明)政府委員 全然補助がないというものがあるということでございますが、その例として私ども考えられるのは、保健所の運転手、用務員等の人件費に対する補助などが考えられるわけでございますけれども、私どもといたしましては、保健所の保健サービス等に従事しておりまして、保健所法に掲げる業務に直接的に従事する職員を国庫補助の対象としているわけでございますので、ただいま申し上げましたような建物の維持管理等にかかわる職員というものにつきましては、地方公共団体の一般財源で賄うべきものではないかというふうに考えております。
  224. 和田一郎

    和田(一)委員 国庫負担の対象外になっている保健所があるのですよ、局長さん。それで、厚生大臣が定める保健所の整備計画、これがないのですね。出ていればお示し願いたいと思うのです。これをやっていないから対象外になっているのが全国で五つあるのですよ。しかも、現在は人口一万から六十万人を一つの保健所で抱えているというようにばらばらな形にある。そういう点で、整備計画は一体ないのかということですね。
  225. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 大変申しわけありません。いま公衆衛生局長のお答えを申し上げる趣旨がちょっと違っておりましたところがありますので、あわせてお答えを申し上げます。  その保健所の整備計画、確かにこれはおしかりをいただかなければなりませんが、昭和三十五年の公衆衛生局長通知でお示しをしておる「保健所の運営について」というもので、各都道府県知事さん、また政令市の市長さん方にお示しをしておるわけでありますけれども、その後の社会的の変化に対応し切れておらないという御指摘はそのとおりでありまして、今後これはできるだけ早い機会にその適正な整備計画に基づいてつくり上げて、また見直しを図ってまいりたいと思います。  そこで、いまそういう状況の中で、いわゆる未承認保健所と言われるものが現実にございます。これは保健所の整理統合等によりましてその適正配置を図っていくと同時に、鋭意その解消を進めておるわけでございますが、確かに五十二年度には五カ所ございました。昨年度一年間でこれをいま二つにまで減らしてまいっております。なお今後とも努力を進めてまいりますが、整理統合等につきましても、ぜひやはり関係者の御協力をいただきたいと私どもは願っておる次第でございます。
  226. 和田一郎

    和田(一)委員 それが一つの原因でもって超過負担になっている、これはひとつ大臣の御努力で解消していただければ幸いでございます。  さらにまた、昭和五十二年十一月二十八日になされた地方六団体の調査結果によれば、保健所施設の整備に係る国庫補助金の補助単価はきわめて低く、約五割の単価差が生じている、まずこれを直してもらいたいということ。  それから、面積基準も劣悪であり、六団体の調査によれば約二倍の単価差が生じている、基準が現状に合わぬということです。  もう一つは、一般に施設整備に係る国庫補助負担については、その基準の合理性を担保するために、その基礎となる標準設計及び標準仕様の設定が不可欠である。昭和五十三年度においては関係省庁の共同実態調査に基づき、保育所及び警察署施設に係る標準仕様の設定がなされ、一定の前進を見た。ところが保健所はまだでございますので、早急にこれを設定してもらいたい。そうなれば、それだけまた超過負担が減る。これは一つの具体的な例なんですよ。こういうところに厚生省としても取り組んでいただいて――これは一八〇%も超過負担なんというのは、ものすごく地方に押しつけている現状なんですから、その点についてちょっと御答弁願って――。
  227. 金子一平

    金子(一)国務大臣 超過負担の問題について、従来からいろいろ問題のございましたことは私も十分承知いたしております。極力現実に即するような単価並びに基準に直すように努力をいたしまして、今度の五十四年度予算におきましても相当改善をいたしておりますので、その個々の問題につきましては政府委員から答弁をさせます。
  228. 長岡實

    ○長岡政府委員 五十四年度に補助基準の改善をいたしましたものの内容を御説明申し上げますが、保育所の運営費の補助金、保育所措置費補助金、防疫業務委託費、国保の指導監督委託費、生活保護、児童保護指導監督委託費及び過疎地域等保健指導費補助金、国保事務費補助金、国民体育館整備費、以上が補助単価の改善でございます。  それからもう一つ、基準の改善がございますが、これにつきましては補助対象範囲の拡大をいたしましたも一のが産休等代替保母費、面積基準その他の内容の改善をいたしましたものが外国人登録事務委託費、警察施設整備費、学校給食施設整備費等でございます。それから大きなものといたしましては公立養護学校等施設整備費、公営住宅、改良住宅、社会福祉施設運営費等につきまして改善を図ったところでございます。
  229. 和田一郎

    和田(一)委員 時間がございませんので、次にいきたいと思うのですが、とにかくこの超過負担については、基本的には国と地方の意見が違うのですよ。ですから、地方の人たちと皆さん方との間でそれを解消する審議会か委員会を設けて、そこで真剣に取り組んでいったらどうなんだろうか。そして、やはり地方も納得をしなければどうにもならない。それも一つの大きな財政の圧迫の原因になっているわけでございますから、その点について、提案でございますが、自治大臣のお考えはどうでしょう。
  230. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように地方超過負担の問題は大きな問題でございますので、これの解消にここ数年間ずっと取り組んで、着々成果が上がってきておると思います。  それで、協議会をつくったらどうかというお話でございますが、自治省といたしましては、全国の地方自治体を代表する立場にあるわけでございますので、六団体とはこの問題についても緊密な連絡をとって、実質的にはもう協議会以上の連絡体制をもって対処しておるところでございますので、今後とも地方団体の要望を体してこれの改善に努力をしてまいります。
  231. 和田一郎

    和田(一)委員 おっしゃいましたけれども、しかしそれでもなかなか解決しないのです。だから六団体と国、こう分けないで、一緒になって同じテーブルで、この単価はこうだ、この数量はこうだ、たとえばいまの保健所だって、お医者さんをお願いするのに国の方は基準が半日分しかないわけですよ。ところがお医者さんだって半日だけというわけにはいかぬでしょう。やはり一日お願いしなければならない、実情はそうなんです。ところが国がこうでございますからだめなんでございます、こうなってしまいまして全然合わない。本当にこれは子供の話と同じような形になってしまう。だからそういう点で、同じテーブルに着いてやってもらいたい。公明党としてはこの法案を出しておりますので、ひとつ自治省もよく御検討の上、取り上げてもらいたいと思うのです。  それから次に、これは私が名前をつけたのですが、押しつけ行政というのがありまして、これは運輸大臣にひとつ具体的にお聞きしたいと思うのですが、運輸大臣は同じ郷土の私の大先輩でございますので、よろしくお願いしたいと思うのです。  大体地方団体の事務というのは、法律によるもの、そしてそれは地方自治法の二百三十二条によってきちっと財政的に与えられたもの、それが国の方の事務を担当するということで、いわゆる別表ということですね。しかし、ただの一通の通達または通知でもって、補助金つけるからこれをやれというのがものすごく多いのです。これが大変な額でございまして、毎年いわゆる財源の不足額、自治省がいつも困っております不足額の中にも相当部分それがあるのです。これはそういうことでいいのかどうかということが一つの大きな疑問なんです。  一つの例を申し上げますと、地方鉄道軌道整備法による欠損補助というのがあるのです。これは法律をよく見ますと、私鉄、特に過疎地帯で赤字になる、それを国の方でちゃんと見てあげなさい、補助しなさい、国の責任でもってやっていけと書いてあるわけです。ところが運輸省の方からは関係の各地方団体に、国の方で二割補助をするからあと持ってくれ、こういうことでどんどん来る。しかし、たとえ私鉄といえども、これは地方団体にとっては権限もなければ責任もないわけです、この点について。これは一体、自治大臣、どういうお考えですか。まず自治大臣の御意見を聞いてから運輸大臣に聞きたいと思うのです。
  232. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 そういう事例のあることを承っておりますが、これはまともに正面から言いますと、決して望ましいことじゃありません。そういうことはやめてほしいと、自治省としては言わざるを得ません。  ただ、私は考えますのに、地方軌道でございましょう、地方自治団体と関係のないものではもちろんないわけです。ですから、もし本当に運輸省が地方の自治体にも応分の負担をしてもらわなければならぬと考えておるならば、そのように法の改正をやるべきだと私は思いますよ。法の改正をしないで、地方自治団体は金を出さぬでもいいというたてまえの法律のもとで、そして一方的な通達で自治体に金を出させておるというやり方は、私は望ましくない、かように考えます。
  233. 和田一郎

    和田(一)委員 自治大臣は非常に進歩的な方でございまして、私もそのとおり思います。これはいわゆる通知行政というのですよ。驚いたことに、私は先ほど財政の方の公債費率二〇%の団体をずっと申し上げましたけれども、その二〇%以上の大変な自治体にも出させておるのです。これはひとつ自治省だって考えてやらなければかわいそうですよ。ひいひい言っているんですから、二〇%以上のところが。そこへ一片の通達でもって、何の権限も何の責任もない、といって住民が使うのだからしようがないじゃないかと言えばそれまででございますけれども、やはり条理をもってやっていかなければならぬ。その点について、私は自治大臣のお考えは非常に正しいと思う。  それで、ちょっと森山運輸大臣にお聞きいたしますけれども、大体どのような現状になっておりますか、時間がございませんので、ひとつ短く御説明願いたいと思います。
  234. 森山欽司

    ○森山国務大臣 私どもの聞いておるところでは、中小民鉄はなかなか経営が苦しい、欠損を出す。そうなると路線廃止というようなことにならざるを得ない。それでは地元で困る、市町村の方で困る、県の方で困る。そういうことで、ひとつ何とかしてもらいたいと国の方に言ってくる。国の方としては、先ほどお話があった法律に基づいて、予算の範囲内においてその欠損を埋め合わせてやることができるということでございますから、そこで国の方からも何がしかの援助をする、しかし地元の方としてもやはり黙って見ておれぬということで自発的に欠損の埋め合わせをしておる、そういうふうに事態を説明しておると私は聞いておるのでございます。しかし、地方行政上の超過負担というふうに、何でもかんでも国に持っていくということでいいのでしょうかね。これもまた問題じゃないでしょうか。やはり地元で鉄道がないと困るのですからね。そういう何でもかんでも国に持っていき、何でもかんでも法律に基づいてということについても問題を感じますね。
  235. 和田一郎

    和田(一)委員 運輸大臣のお言葉とも思えないようなお言葉がいま出てきましたけれども、これはそちらの方でおつくりになった法律なんですよ。地方鉄道軌道整備法というのがあるのです。その第八条第三項に、政府は、地方鉄道業者に対して、その「欠損金の額に相当する金額を補助することができる。」国の責任においてやりなさいと出ているのですよ。
  236. 森山欽司

    ○森山国務大臣 そういうふうにお話がありますれば、その条文の中に「予算の範囲内で、」こう書いてありますこともお忘れなくお読み願いたい。
  237. 和田一郎

    和田(一)委員 それはそうです。だけれども、ただ一片の通知で地方自治体に押しつけるのはまずい、ただいま自治大臣がおっしゃったように、法律事項でやっていく必要があるのじゃないか。というのは、こうなってまいりますと、たとえば年度途中の場合は地方財政計画に入らないのです。そうでしょう、運輸大臣。その金を一体どうするか、これは交付税というわけにいかないのです。
  238. 森山欽司

    ○森山国務大臣 これは特別交付税の中に算入されての処理になっております。その点、お忘れなく。
  239. 和田一郎

    和田(一)委員 それはそういう例もあるかもわかりませんし、そうなってくるかもわからぬけれども、特別交付税というのはいろいろなところに使い道があるのですよ。全部特交、特交、特交でふくらみっ放しで、だから薄くなっていくのです。これが現状なんです。だから、そういうときには法律事項にしてやるとか、または国の全責任でやっていくとか。これは一年間で総額七億円なんですよ。ですから国で持てということばかり言いませんけれども、しかし負担をしておる自治体を見ますと、非常に零細な自治体ばかりなんです。その辺のところはひとつお考えいただきたいと思います。
  240. 森山欽司

    ○森山国務大臣 せっかく同じ出身県の和田議員からのお話でございますから、ひとつ検討させていただきましょう。
  241. 和田一郎

    和田(一)委員 次は、やはり運輸大臣にお願いしますが、国鉄のローカル線問題でございます。運輸政策審議会の小委員会から出されました答申を私持っておりますが、これは答申でございますから、あくまでも政策としてはまだだと思いますけれども、これを受けて、大体どのようなお考えで、どうされようとしていらっしゃるか、簡単にひとつおっしゃっていただきたい。
  242. 森山欽司

    ○森山国務大臣 御承知のように、国鉄の財政はいまや年間一兆円を超える赤字であります。この国鉄の財政を立て直して収支相償うように持っていかなければなりません。そういう角度から申しますと、国鉄だけの力ではどうにもならぬ問題は、国としてそれだけ応援しなければいかぬ。また、国鉄の企業努力により、国鉄労使の努力で打開しなければならない問題は、これを打開してもらわなければならぬ。能率を上げてもらわなければいかぬ。そういうことの一環といたしまして、地方ローカル線は国のいろいろなことが前と変わってきた結果起きた問題でございますから、この問題についてはこのままにほっておけぬということで、かねてから運輸政策審議会の小委員会で検討したものの答申が、一月の二十四日に出ておるわけでございます。私の方は、出ました答申に沿ってまあ検討してみよう、そういう答申案が出ますと、その答申案を尊重してすぐにでもやるようなことをよく言うのでありますが、私の方は、中身を申しますとそう簡単ではございませんから、ひとつ慎重に取り扱ってまいりたいという基本姿勢で臨んでおるというのが現状でございます。
  243. 和田一郎

    和田(一)委員 別にこれをやらぬとおっしゃっているわけじゃございませんので、これは大体この方針に沿っていくという可能性もあるわけですよね。ですからその点について、ちょっと中身を見ますと、また地方団体のことになりますけれども、公的助成という言葉も出ておりますし、それから第三セクターということも出ております。それからバス路線に変更した方がいいと思うところは、その地域の公共団体の入ったところの協議会を設けるという、大体三つぐらいの地方団体の関係する場所が出ておりますね。それをひとつ具体的にどういう意味なのかおっしゃっていただきたい。
  244. 森山欽司

    ○森山国務大臣 現在の地方ローカル線のコストをバスのコストと比較いたしまして、鉄道の方が安い場合、これは従来どおり国鉄がやりましょう。それから、バスの方が安い、しかし鉄道でやった方が適当であると考えられるところは、従来どおり国鉄でやりましょう、いろいろやり方を考えながら国鉄でやりましょう。バスの方が安いというところについては、バス路線に切りかえるかあるいは鉄道でやっていくかは、地方公共団体等の方々と地元各地区ごとに御相談をして、そしてあるいは民間の鉄道会社にやらせることもありましょう、バスの場合はバス会社にやらせることもありましょう、あるいは第三セクターでやらせる場合もありましょう、そういう場合には、国の方がそういうローカル線を無償で払い下げたりあるいは貸し付けたりする、あるいはそれに対して国としての援助措置を講じましょう、こういうのであります。そして、そうなった場合について地方の公共団体にもこれはお助けを願わなければならない。全国的に見ますと、地方の方でお引き受けになりたいという場所もありまして、私の方で出してもいいですよというところもあるわけでございますから、そういうところについてはケース・バイ・ケースで処理していくということになろうかと思います。  いずれにいたしましても、国鉄がやる路線につきましては、都道府県からの御援助というわけにはいかぬと思いますが、第三セクター等で考える場合につきましては、あるいはそういう問題が起きるかもしれません。しかしまた、それは法律上必ずしも違法ではないということのようでありますが、地方財政の現状等から見まして、これはよほど慎重に考えていかなければいけませんから、澁谷自治大臣とも顔を合わせるごとに、この問題を一回本腰に相談せねばいかぬな、こういうことを言っておるようであります。全体の取り扱いにつきましても、まだ最終的な腹というものは決まっておりません。そういうふうに澁谷自治大臣を初めとして各方面と十分御相談を深めまして、この問題の処理をいたしたい、そういう考えでございます。
  245. 和田一郎

    和田(一)委員 いまの運輸大臣のお言葉で、自治体に対する御要望が相当強いようでございますけれども、自治大臣はお考えはどうですか。
  246. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 ただいま運輸大臣からお答えしましたように、現在の法律では、国鉄に対しては地方自治団体は公的な助成はしてはならぬ、これは法律で決めておるわけです。したがって、その限度内においては地方自治体はどうにもできないわけでございますが、新しい第三セクターとかあるいはバス路線に切りかえる、こういう新しい話が出てきておるわけでございますので、これは地方自治体としても非常に関係の深い事柄でございますから、先ほど運輸大臣が申されましたように、十分ひとつ協議をして、しかるべき対応策を考えてまいりたいと考えます。
  247. 和田一郎

    和田(一)委員 大体こういうことは、たとえば森山運輸大臣の選挙区を考えましても、足尾線が入っていますよね。どう考えたって、足尾町が助成できるような形ではございませんよ。真岡線だってそうですよ。しかし、それならそれなりにちゃんとした財源措置もしなければならぬ、こういうわけでございますね。その点自治大臣どうですか。財源措置ですよ。
  248. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 お話しのように地方自治体全体がもう赤字で苦労しておる段階でございますから、何の手当てもなしに地方自治体に金を出せと言っても、これは言う方が無理だと思うのです。したがって、国鉄再建ということもまたこれは国家的な大きな課題でございまするし、それをどう打開するかということでいろいろ苦慮して案を出されておるわけでございますから、そういう新しい事態でございますので、それにどう対応したらいいか十分ひとつ協議をして、しかるべき結論を出したい、かように考えておるわけであります。
  249. 和田一郎

    和田(一)委員 もう時間がなくなりましたので、あと一つ補助金を厚生大臣とゆっくりやろうと思ったのですけれども、次の機会にさせていただきまして、本日はこれで終わります。
  250. 竹下登

    竹下委員長 これにて和田君の質疑は終了いたしました。  次に、竹内猛君。
  251. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、農業の問題に関して、その基本の問題などを含めながら幾つかの点について質問をしたいと思います。  まず最初に農林大臣にお伺いをいたしますが、農林大臣の農業に対する基本的な考え方、こういうものについてまずひとつ述べてもらいたいと思います。
  252. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は大平総理と同じでありまして、農村は民族の苗代だ。もともと人間は土地と水のあるところにしか住めないわけですから、そこで食糧をつくってみんなだんだん成長してきた。都会におる人も何代か前はみんな農村から来た人ばかりであって、私は、天皇家は職業は農業ではないかというように実は思っておるのです。     〔委員長退席、伊東委員長代理着席〕 したがって、私は、どこの国でもそうでありますが、日本においては特に農村の問題は、ただ単に食糧の生産基地というだけではなくして、日本民族の魂の残っておるところだ、こう思っておるわけです。  しかしながら、このように交通が発達をして、世界じゅうと交易ができるというような段階になってまいりますと、農業に携わらない人もたくさんおるわけですから、非常に安いものを食べたい、変わったものも食べたい、こういうような欲望が消費者の間にあることも事実でございます。しかし、何といっても人間の命の糧でありますから、原則的にそれぞれの国々が独立しておる以上、自分の国内で消費をするものは極力国内で生産をさせる。しかし、先ほど言ったように、いろいろな生活の多様化、嗜好の多様化というようなこともあり、あるいは不足をするというような食糧も出てくるので、それらについては必要最小限のものは輸入にまたなければならない。国内は極力これを保護していく。しかし、それには限界もおのずからあるわけでありまして、どこまでが限界だと言われても一口には言いがたいわけでございますが、保護すべきものは保護をする。しかしながら、いたずらに国内で生産するからといって価格が幾ら上がってもいいというわけにはなかなかいかない。そこで、国内で生産するものについては極力生産性を高める創意工夫というものは一緒にやっていかなければならぬ。こういうような基本的な考えを持っておるわけでございます。
  253. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま農村は民族の苗代だと言われましたが、確かに言葉はそうかもしれないが、実際農村の歴史を見ると、軍国主義の時代には下級兵士の養成の場所であった。兵隊と下士官がそこで養成をされて殺されていったというその場所であり、資本主義の今日においては、安い賃金の労働者、そして営々として働く農民の場所になっているし、農村で教育を受けた者は農業に残らずにほとんど都市の工場に行ってしまう、こういうことになっていて、農村に残っている者はお年寄りとおばあちゃん、そして都会で使ってくれない残った者が農業をやっているという状態であって、いま言うように大変苗代という言葉が言われるけれども、中身はきわめて厳しいものがあるのじゃないか、こういうぐあいに私は思いますが、大臣、それはどうだろう。
  254. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 昔はみんな農民であったわけです。しかしながらその後で商工業が生まれ、三次産業ができるというようなことになってまいりますと、やはりいろいろな文化とか生活水準というような問題が出てくるわけでございますから、そこから確かに生活の水準の高い、所得の多い方に人口が移動するということはこれは当然あり得ることであります。したがって、われわれは、やはり農村は民族の苗代だからこれを残すのだと言っても、そのままの低い生活水準や低文化の中ではだんだん消滅をしてしまう。したがって、それを消滅させないためにいろいろな創意工夫を図ってきたところでもございますし、今後ともそういうようにしてまいりたい、こう考えております。
  255. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この問題は議論をしても切りがないから先に行きますが、農村は食糧及びその他の生活の諸物資をつくるところのきわめて重要な仕事をしておる場所であります。これが日本の経済、文化というものを支えてきたということはいま大臣も話されたとおりだと思うし、そのとおりですが、この食糧というものを国内で自給をしていく、こういう方向でなければならない。今日、農林漁業が果たしている社会経済的な役割りについて、どういうように大臣はお考えになるか。
  256. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 やはり国内の安定というものは、国内で最小限度の食糧が生産をされるというところに社会の安心感というものがあるわけですから、自分の民族の最小限度の食糧の確保というものはどうしてもやらなければならぬ、それは大きな農村の役割りである、こう思います。
  257. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは後でいろいろまた問題が出ますが、昭和三十六年の六月十二日に農業基本法が制定をされた。そして、施行されました。そのときに、農業基本法については日本社会党もこれに対案を出した。そして、強行採決の結果、今日の農業基本法が通っておるわけですが、この農業基本法の中でいま実施されていることは、第八条の農業の長期見通しが出されております。この長期見通しについても、実は四十七年のころには、閣議の決定も農政審議会の議も経ない、いわば私文書のようなものがまかれておりましたが、私は、これはけしからぬということでいろいろ議論をして、そして安倍大臣のときの昭和五十年に今日の六十年展望の長期見通しが出ました。もう一つ、この農業基本法の中で実際に行われていることは、第六条だと思いますが、国会に対する農政報告があります。その前の年に実施をしてきたもの、それの報告とこれからやろうとする考え方、こうありますが、この六十年の見通しというのは、これはもう今日何年かたっているけれども、たとえば肉の問題にしても、えさの問題にしても、農地の壊廃の問題にしても、すべてかなり狂っている。そして米の問題については、まさにこれは大変な過剰基調になっておるし、こういう点でこれも見直さなければならない。まして農業基本法が志向している二町五反の農家を百万戸つくることとか、あるいは都市と農村との均衡のとれた状態をつくることであるとか、こういうようなことはほとんど夢のような話なんだ、実際は。だからこれはこの際再検討する。同時に国会に対する農業白書の報告は、これはやはり予算を出すころには報告を出してもらわないと議論のしょうがない。あれは国会の終わる間際になってそっと出してきて、そして議論も何もしないで終わってしまう。あれだけの労力と手数をかけて出した農業白書というものが何らの議論なしにおるということは、これほどむだなことはない。だから本当に農業を愛し、農業をしっかりやるというならば、予算のときぐらいにこの農業白書なり諸般の白書は出して一緒に議論をするというようなことでなくてはならないから、再検討はかなり時間がかかるにしても、少なくともこの点だけは来年からは改めてもらいたい。
  258. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 農業のいろんな白書、基本法の法律を持っておるところはどこでも出しておるわけでございますが、これがおくれるというような御指摘であります。いろんな作業上の詰めの問題で私はおくれておると思いますが、おくれておってもそれが本当に余り読まれないということも確かであります。基本法ばやりで、農業基本法もあればいろんな基本法がたくさんありますが、そういうものがもっと活用されるような工夫は必要であろう、こう思っております。  なお、基本法の見直しの問題については、確かに基本法がずれがあるということも事実です。いろんな見通しの問題にしても、高度経済成長のスピードが非常に速かったために、物によっては、肉類のようなものは六十年見通しで一人当たりの所要量を考えたならば、それをすでにもう五十二年で突破をしておるというものもあれば、あるいは自給率等では、食生活の高度化のためにえさの生産がなかなか追いつかないというようなものもあります。したがってこれらについては、私はこの見直しをするための下準備、研究といいますか、その下準備をするように事務当局には命じてあるわけであります。
  259. 竹内猛

    竹内(猛)委員 下準備をするように命じてあるということですが、これはいままでのような形で事務当局だけに任せないで、もう少しいろいろな要素を加えてできないものか。そうして本当に読まれる白書をつくっていくようにしないと、依然として形式的な扱いになってしまったんではこれは意味がないと思う。これは実際予算が惜しいです。  それをひとつ要求すると同時に、まだ大臣から、農業の果たすいわゆる社会経済的な重要な役割りについてお答えをいただいてない。私は前々から農林大臣、あちらこちらの雑誌や座談会を聞いていると、前の中川農林大臣も同じことを言ったが、農業というものは資源、エネルギーに次ぐ日本の安全保障なんだ、こういうふうに言われたんだ。なぜそれが言えないのか。これはぜひ言ってもらいたい。雑誌やそこらじゃよく言うけれども、ここでは言わない、安全保障の問題。それを言ってもらいたい。
  260. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは私の言った言葉が、それをやさしく言っただけで、一口で言えば安全保障のためにもきわめて重要である、全くそのとおりです。
  261. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう一つ、日本は確かに高度工業国家であることは間違いないんだが、その工業のために農業の方、農林水産業というものが大変みじめな状態にあるということ。ますます兼業がふえて専業がなくなってしまった、こういうことであるわけですから、そこで、なおそれにしても、自然を守り食糧を生産するという重大な任務を持っておる農業は、工業に次いでやはり農林水産業というのは日本の国の基幹産業であるという認識については同じだと思うけれども、これはどうだろう。
  262. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そのとおりであります。
  263. 竹内猛

    竹内(猛)委員 にもかかわらずこの十年間、四十三年から五十三年の間、昨年までの間の状況を見ると、日本の農村は大変後退に後退を続けております。これは農家の戸数にしても、あるいは農業労働力にしても、高校の卒業生の就職にしても、あるいは農家所得の内容にしても、農地の荒廃の率にしても、これは数字がありますけれども一々挙げると時間がありませんから申し上げませんが、大変なこれは後退の状態であります。しかも専業農家というのはわずかに一五%になってしまった。あとは兼業農家ばかりなんです。そして農家の収入の中の約七割というものは農外収入でやらなければいけないという状態であるわけです。こういうような状態である上に持ってきて、自給率というものは前からも議論になっているように非常に少ない。特に、米は別にいたしまして、トウモロコシにしても大豆にしても小麦にしても、これはもう一〇%になっておらない、こういう状態であるわけですから、この状態というものは、これは隠すことのできない事態ですから、これは大臣、率直に認めてもらえるだろうか、そういう状態ば。
  264. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 この自給率が少ないという話でいつも責められるのですが、しかし食生活が高度化したということも考えてもらわなければ困るわけです。たとえば穀類等の自給率が高かった時代には、牛肉とか豚肉とか鶏肉の一人当たりの消費量は少なかったわけです。御承知のとおり卵一キロをつくるのにはその二・何倍というようなトウモロコシが必要だ。牛肉精肉を一キロつくるのには二十キロもえさが必要だ。したがって、二百五十グラムか三百グラムのステーキを一枚食べればバケツで一杯えさ食っちゃうのと同じことになる。そういうことでありますから、牛肉の消費というものが伸びるためにその何倍もの穀類が加速度的に必要になってきた。そのために穀類自給率が非常に低くなった。これは事実なんです、低くなったことは。しかし食生活がこれからも動物たん白というものをいまのスピードでもし供給するということになると、これは自給率を上げていくということは事実上不可能であります。これは千四百万トンものえさを現在輸入しているわけでございますが、それを国内で生産するということになれば、それは現在の田畑以上のものをどこかに開墾しなければならぬということでございます。しかしわれわれとしては、ことに小麦のようなものについてはたんぼの裏作というようなことなども大いにやっていかなければならぬ。それは採算が合わないからやらなかったということも事実なんです。したがって、これらの土地の有効利用については、それができるような基盤の整備とかあるいは価格の問題とか、いろんな条件の整備というものを並行的にやっていく必要がある、こう考えてやってきておったし、今後も一層やるつもりであります。
  265. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ここで食糧自給率の問題もいろいろありますが、たとえば今日五百六十万ヘクタールぐらいの耕地を耕している。外国から輸入してくる食糧を日本の耕地でつくるとするならば、なお八百万町歩の耕地が必要であるということはもうだれも認めていることなんだ。だから、日本国民の今日の食糧のこの状態を守るためにはその両方、千三百万を超える面積がなければやっていけないということだけはもう共通の理解だと思うのです。  さて、そういうときに、これは防衛庁の方にお伺いするのですが、昨年の十月十九日に社会党の松沢俊昭議員が農林水産委員会防衛庁の上野防衛議官にお尋ねをしました。その内容は「国民生活に基づく所要輸入量に関する研究」、こういうものであって、それはオーソライズされていないということで説明はございますが、ともかくその内容は公表といいますか、すでに発表というか、わかっているわけでありますけれども、これによるとどういうことになりますか、ちょっと防衛庁長官の方から説明してもらいましょうか、もう一遍。
  266. 山下元利

    山下国務大臣 御指摘の研究は、公刊資料をもとにいたしまして部内参考のための資料をつくるための研究でございますが、防衛庁としての見積もりではございませんけれども、御指摘のございましたように、海上幕僚監部で「国民生活に基づく所要輸入量に関する研究」をいたしております。その概要につきましては政府委員から答弁いたさせます。
  267. 原徹

    ○原政府委員 ただいま大臣から申されましたように一つの試算でございますが、そういう意味で、海上幕僚監部が分析をいたしましたものについて申しますと、「国民生活に基づく所要輸入量に関する研究」ということでございまして、その中身は、一つは、例の生活保護基準と申しますか、最低生活保護基準を国民生活維持の最低基準といたしまして、そうした場合にどのくらいの輸入量が必要であろうかという計算でございますが、それは大体一億七千万トンから一億九千万トンの原油とか鉄鉱石とか食糧とかそういうものになるというのが一つの試算でございます。  それからもう一つは、輸入食糧が削減した場合にどういう影響があるかということでございますが、四十七年度の生活水準と申しますのが、たとえばカロリーで申しますと、二千四百八十七カロリー、それからたん白質については七十七・二グラム、それから脂肪につきましては五十六・四グラムという生活水準であるものが、輸入食糧が仮に五〇%削減になりますと、カロリーが二千十六カロリー、それからたん白質が六十一・二グラム、それから脂肪が四十四・七グラム、そういうように非常に影響を受けるということの試算がございますわけでございます。
  268. 竹内猛

    竹内(猛)委員 なお、石油が半分とまった場合においての自給率があったけれども、それは農林水産委員会の説明と違うね。農林水産委員会の議事録と違うようですね。
  269. 原徹

    ○原政府委員 そこで、食糧につきましていま五〇%と申しましたわけですが、仮に原油の輸入が半分減る、それから食糧も半分減るというところになりますと、熱量ですと千二百二十三カロリー、たん白質は三十七グラム、それから脂肪は二十六・一グラム、原油が減りますと、肥料の生産等もございますのでそういう深刻なことになる、そういう試算でございます。
  270. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは万一、最も悪い状態の場合を想定したことであるけれども日本の国内の状況というものはそういうことも全然考えられない。日本の国内に問題なくても、周辺にいろいろなことが起こったときにそういう心配がないということは全然ないとは言えません。そこで、なお心配な問題が幾つかありますが、過般ソビエトが冷害に遭ったときにアメリカに麦を買い付けをした。そのときに日本ではえさの値がものすごく上がって、畜産農家が大会をやってこれに対していろいろ要求をしたことがあります。ソビエトにしても中国にしても日本と国交が回復されているわけですから、いろいろな意味で交流があるわけだし、平和条約も中国との間では結ばれている。そういう点で、この人口を持っている国々あるいは冷害がときどき来る国々の食糧需給事情、それを含めた国際的な食糧事情について、この説明をこれは農林省に。
  271. 今村宣夫

    ○今村政府委員 お尋ねのございましたソビエト及び中国の生産の事情でございますが、中国は米その他の作物は非常に作柄がことしはよろしゅうございますが、小麦の作柄が必ずしもよろしくないということでございまして、中国が大体千百万トンくらいことし穀物を買い付けるのではないか、それからソビエトは大体千五百万トンくらいな買い付けになるというふうに言われておりますが、これらのすべてを織り込みまして期末在庫は大体二億トンに相なるわけでございまして、今年度の現在までの状況におきましては需給事情は心配ないばかりでなく、二億トンという在庫は過去の一番ピークに近い数量でございますので、現在の穀物需給事情にはそれほど心配がないというふうに考えておる次第でございます。
  272. 竹内猛

    竹内(猛)委員 心配がないということですから先に進むわけですが、ともかく国内においては千三百万町歩も耕さなければいまの状況の生活ができないという状況でありますから、国際的にも国内的にも問題があってはならないと思うのですね。  そこで外務省にお尋ねしますが、このためには徹底した平和の外交、それからできる限り食糧の多元的な輸入ソースをつくらなければならない。一国に依存するということは非常に危険だ。なるべく多くの国々との間に輸入の、これは石油でもそうですけれども、そういうふうな道、それから、したがってその関係諸国との協力、なお備蓄、こういうような問題について有効な手段、手当てをされていると思うけれども、これについて外務省のお答えをいただきたい。
  273. 手島れい志

    ○手島政府委員 お答え申し上げます。  先生先ほどから御指摘のとおり、食糧などの資源を安定的に確保するということはわが国の総合的な安全保障にとってもきわめて重要なことであると思います。そのためには、御指摘のありましたように、供給源の多様化を図るべきであるということもまことにごもっともでございますので、私どもといたしましては、この観点からも今後すべての国との間の友好関係を維持強化していくように努めておる次第でございます。  さらに具体的に申し上げますと、食糧の主要な供給国との緊密な関係を維持することは最も大切でございますけれども、また同時に世界的な食糧の増産ということも考えまして、たとえば開発途上国の増産のための世界的な努力にわが国も積極的に参加する等、供給源の多様化を伴った安定確保の方途を探求していきたいと思います。
  274. 竹内猛

    竹内(猛)委員 先ほど農林大臣から農業基本法やあるいは六十年の長期見通しについては再検討もするし準備もした、こういうことでありますが、その方法についてひとつ提案をしたいのです。三木総理大臣のときに国民食糧会議というものをつくって、これも農林水産委員会でいろいろ議論をいたしましてそういうものになったと思うのですけれども、二回ほど会議をやった。この国民食糧会議に出席をされたそれぞれの方々の御意見というものはきわめて貴重な御意見であります。いまでもこれは生きている。ところがこの意見意見として活字にとどめた範囲であって、その中の気に食わないところはどうもみんな抜いてしまって都合のいい部分だけが生きた。これは行政がそうしたからやむを得ないと言えばそうだけれども、これではうまくない。やはりできるだけ各層各界の声を集めていくというようなことで、この際発想の転換をして、何とか国民の声を農業政策あるいは安全保障としての農業に反映するような考え方、努力というものは考えられていないかどうか、それをもう一度お尋ねしたいと思います。
  275. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 竹内さんの言わんとすることは、直接生産者の代表をもっといろいろな審議会に加えろ、こういうような御意見かと思いますが、農政審議会としても、あるいは畜産物の価格の審議会にしてもあるいは米価審議会にいたしましても、主要な問題については生産者の組織の代表をみんな入れておるわけでございまして、それらの人の意見は十分に聞いて、それでわれわれとしても、もっともである、そうすべきだという点は、もうそれは謙虚に取り入れてやってきておるわけです。いろいろな行政をやる上においても団体と話し合いがうまくつかないとうまくいかないというような点から、それはいまでもお互いに話し合いをしてやってきておるし、今後もそういうことでやってまいりたいと考えております。
  276. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そうすると、中央地方でそういう各界各層の声を聞く必要は余り痛感しない、こういうわけかね。
  277. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 すでに各界各層の代表に入っていただいておるわけですから、だれを選ぶかということになりましても、やはり農業団体と言えば農協の中央会とか、あるいは全農とか、あるいは農地委員会とか、主婦連とかいろいろな消費者の団体とか、そういうふうな方々はそれぞれのところにうまく入っていただいて十二分に意見の御発表を願い、審議にも参加をしていただいておる。したがって、それ以上に広げていくということは必要がないのじゃないかなというように考えております。
  278. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私は、現在の農政の進め方はどうしても役所が中心になって進められていて、これに一般が引っ張られていく、こう言うと言葉は悪いけれども、よく地方の人は言うけれども、官尊民卑という言葉がある。こういうような状態になっているのではないかということについて心配をしている。できるだけ官民一体ということで、中央もそれからそれに協力するものも一緒になって、そして本当にこの日本の食糧の自給あるいは国土の高度利用、そして環境の保全、こういうようなところに努力をしていくというようなことをやるべきだ、こういうふうに思うのですが、大臣どうだろう。
  279. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 役所に引っ張られていくというのでなくて、大体役所の方は消費者の御意向、生産者の御意向、いろいろあるわけですから、消費者はやはり量は確保してもらいたい、値段は安い方がいい、生産者の方はやはり値段は高い方がいいというようなことで、これはもう当然立場立場で違うわけですから、そこらのところをあらかじめ見通して、大体こんなふうなところでというような案をつくるものですから、いろいろ御議論はありますが、まあ結果は、最初から役所が真ん中に立っているから大体それに近いという話なのです。別に引っ張ったのではなくて、最初からうまいところに案ができているのじゃないか、そういうように思います。
  280. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そういうことを言われるとまた言わなくちゃならぬ。いよいよ来月から畜産物の価格を決める時期が来る。それから続いて米価の要求の大会が開かれる。こういう大会にわれわれが呼び出されて行きますね。あいさつをする。そのときに自民党の代表の皆さんはこういうことを言うのですよ。おれたちは一生懸命やっているのだけれども、農林省や大蔵省の役人どもが頭がかたくてどうしようもないんだ、こういうふうに言う。だから私は、民主主義政治、議会政治の中ではそれはおかしいじゃないか、政府与党と農林省だって大蔵省だって一緒になってやっているはずだから、そんなばかな話はない。そんなことを言う自民党議員はおかしいじゃないかと言っている。だけれども、そういうことを平気で言う人がいるのですよ。たくさんいるんだ、これは。だから今度は、集まってくる農家の人たちは知らないから、あっちの方が問題かなというので大蔵省や農林省の方へ旗をかついで行っちゃう。実際自分の政党、第一党の自民党のもとで行政をやっているその農林省、大蔵省、ここが悪者になって議員はいい子になる、こんなばかな話はないじゃないか、そういうことがよろしくないと言っている。だから、どうしてもそんないいかげんな言い逃れができないようにするためには責任をとらなければだめだ。だれかを悪者にすれば自分がいい子になる、そういうやり方はよくないと思う。これについて私は、やはり責任の所在を明らかにして、そこで堂々と、われわれの責任で上げられないものは上げられないのだとなぜ言わないか、こういうことについての感想を今度は聞きたい。
  281. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはなかなかむずかしい質問でしてね。それは確かに米価要求大会なんかに行くと、各党一致して値上げなんて言っている光景はちょいちょい見られる。しかし、本当に各党一致しているのなら、早い話が、憲法でも変わる世の中ですから、そのとおりになるはずです。しかし現実には、生産者に向かって大幅値上げ、消費者に向かって米価据え置きと言われましても、その差額は税金で賄うほかないのであって、増税はだめだ、公債はいかぬということになってくると、冷房と暖房を一緒にかけられても、これは何とも仕方がない。われわれとしてはしたがって、そういうところはもっと責任のある発言をひとつぜひしていただきたいと思っておるところでございます。それは国会議員でございますから、生産者の立場もわかりますが、やはり消費者あっての生産者でもありますし、そういうような点も考えたところでやっていただかないと、政治家全体に対して、もう当てにならぬじゃないか、お世辞家じゃないかというような悪口が出てくるというところもある。できそうなことを言ってもらわぬと困るのであって、その点はわれわれも過去において反省をしなければならぬ、こう思っておるわけでございます。
  282. 竹内猛

    竹内(猛)委員 論争するわけじゃありませんが、私はよく農村に行くと言われますね。労働者に向かって賃上げをしろ、農民に向かっては米価を上げろと社会党は言っているじゃないか、そんなうまい話があるか、こう言う。しかし、これは去年も米価は上がらなかったでしょう。昭和四十五、六、七ぐらい三年間据え置きですね。米価値上げ訴訟なんというものが行われた。いまでもやられている。米価が三年間据え置きになっても賃金や物価はどんどん上がったという事実がある。だから、そんなことを言って歩くのはこれもおかしいのだ。だから、そういう点で本当に真実を訴えながら協力を求めるということは、やはり官民一体というように、行政が信頼をされる、政治が信頼をされる、こういうふうにしていかなくちゃまずい。だから、これは大臣、大臣は官僚じゃないのだからよくわかっていると思うのだ、庶民の心が。その庶民の心がわかるところで、ひとつ農業政策なんというものはもう少し温いものにしなければ、まあ田園都市の話はまたこれからするけれども、その辺はどうだろう。
  283. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 その意見は、大体私も似たような考えなんですよ。したがって、私は農業団体の会合なんかにも何回も出て、いまでもいろいろお話をいたしておりますが、農業というものは、やはりそれは国全体としては基幹産業である。産業であるという以上は日本の経済に関係がある。日本の経済は世界の経済にも関係がある。ということになれば、つくられた農産物というものもしょせんは商品的性格が非常に強い。ということになれば、これは消費者にも関係がある。つくればいいというものではなくて、やはり消費者が好むものでなければいかないということになると、そこらのことをみんな考えてやらなければならぬ。そういうふうな点で認識を一つにしようじゃありませんか。現在置かれている立場、国の経済の状況、農業の状況、消費の動向、こういうものについて事実の認識、事態の認識がおおよそ一致をするところまで議論をすれば、あと手法については、人間の知恵なんというのは大体同じようなものですから、おのずから出てきて円満なところに落ちつくのではないか、こう思っておるわけであります。したがって、私は、そういうように客観的な事実が一つしかないのだから、それについて同じような認識に立つための話し合いとか努力とかいうものは大いにやるべきだという考えであります。
  284. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは大臣、ぜひやってもらいたいと思う。別に拒否する理由がないのだもの。そんなに金がかかるわけじゃないのだから、人間が人間と話をして、いいことは、出た結論はやるし、悪いことは、これはできないよと言う、そのぐらいのことをやらなければどうしようもないじゃないですか。  次いで、そのことと関連があるのだ。いまぼくが何遍か言ったことは減反問題に大いに関係があるのですよ。だからこういうふうにしつこく言ったのです。現在は、日本の食糧事情というものは、米過剰の中におけるところの穀物の不足、こういうことになっていると思うのです。米だけは余っている。それ以外の穀物ですね、小麦、大麦、トウモロコシ、コウリャン、大豆、砂糖、これはすべて輸入しなければならない、こういう状態でありますから、私どもは過般、食糧自給促進のための地域農業振興計画というようなものをつくって、そうして地域からもこういう計画をつくるし、中央でも話し合いをしながら農業基本法なり長期計画を見直しをしていく、そして中央と地方との間で話し合いが整理をされた段階で、やはりこれは一つのものにして進めていく、こういうことにしていかなければ魂が入らない、活字だけがおりていって魂が入らない、これではいけない。だから地域を基礎にしてやっていく必要があるのではないか。そのための土地の高度利用、基盤整備、それから機械のセンター、そういうような農業にとって重要なものについていろいろな手当てをしていくということも当然これはやらなくちゃならないことだ。それで、老齢化になった年寄りやあるいは子供が出ていってしまって農地が遊んでいる、こういうような農地についても、その利用の促進をする、あるいは裏作のできるところは裏作、水田の裏作ですね、そういうことについても大いに活用するということで、できるだけ農地を活用していくということについて、積み上げ方式というものと、これを集めてそしてそこに一つの計画を立てるという、こういう考え方をぜひ持ってもらいたいと思うのだが、どうだろう、この考え方は。
  285. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私はいままでも大体それに近いようなことをやっているのじゃないかという気がするのですがね。たとえば減反の問題にしても、昭和四十五年、私が政務次官のときにあれは始まった仕事なんです。当時七百万トン過剰で、それで最初は非常な反発もありました。ありましたけれども、よく考えてみると、うんと余っているときにどんどんつくったのでは、これは食管ももたないし、お互いに困るというような点から、やはりだんだん変わってまいりまして、その間、時間はかかったけれども、最近に至っては、農業団体もともかく自主的に水田再編対策には取り組んでいこうというようなことになってきたわけです。しょせん理解をしてもらわなければ困るのですよ。政府が生産をしたり流通をしたりするわけじゃないのですから、生産者や流通に携わる人や消費者というようなものが事態の認識について同じような気持ちになってもらう、それで初めて政府の誘導策というもの、が抵抗なく下までおりるということになるのですから、そういうような努力は大いにしましょうということでいままでもやってきておるし、今後もできる限りそういうような話し合いの上で、同じ共通の広場を持つということについては努力をしていきたいと思っております。
  286. 竹内猛

    竹内(猛)委員 先ほどからも何遍も繰り返すように、私はいま生産をする農家の気持ちと行政との間に非常に離れがあると思っている。距離があると見ているのです。地方へ行って話せば話すほど、そういう感じがします。  後で減反問題についてのあれはしますけれども、それだから、なるべく地域の声というものをしっかり確かめて、くみ上げて、これを中央の計画の中に入れて、そしてそれを政策化していって、その地域において、歴史的にまた現実的に農家の皆さんが取り組んでいるものをなるべく育てるような、そういう中心のある農業にしていかなければ、米から脱却することはできないじゃないか、こう思う。依然として米に執着を持ってしまう。だから、何とかして米から抜け出すためには、そういう地域の歴史的な産物、産業、これを中心にした、これは価格問題もあるけれども、そういうことにしていく。そして、やはり二千六百カロリーぐらいの日本の栄養と、自給率はイギリス、イタリーよりも同等以上。あのイギリスでも六四%くらいでしょう。だから、日本よりははるかにこれは高いのですからね。日本は世界一の自給率の低い国ですから、そういうようなことにして、備蓄なども加えていけるという方向で計画を立てるということの立て方の問題、それからやり方の手法の問題、これをさっきから私は言っている。渡辺さんならわかっておられるだろうと思うのだ、このことは。
  287. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 よくわからないのですが、大体私の言っていることと似たようなことを言っているのじゃないのかと私は思うのですけれども、もし竹内さんの言うのが何か地域の計画や何かまで農林省が官民一体できちっと計画をつくってやる、これはなかなか、日本は自由主義経済でやっておるので、土地も個人の自由だし、つくる作物についても原則的に自由につくるというようなことでやっていますから、大きな枠としてのガイドラインを政府は示すことができるけれども、個々の農家まであらゆる作物についてきちんと政府が計画を立てるということは、これはなかなか言うべくして実行はできないと私は思います。
  288. 竹内猛

    竹内(猛)委員 自由主義経済だと言っておきながら、米の方だけはあれだけ抑えている。つまり自由じゃない。米は全く抑えに抑えているじゃないですか、米、食糧は。
  289. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 確かに自由主義経済の中で、米については食糧管理法という法律の統制経済をやっております。しかし、これにはやっておく理由があってやっておるし、またやってもらいたいという声が生産者では圧倒的に強い。したがって、一方はほとんどのものが自由になっておるが、ここに大きな問題はあります。ありますけれども、この食管制度の問題については非常にずれがきておることも事実です。事実ですが、四十八、九年のころの狂乱物価のときに、米だけは暴騰しなかったというメリットもあるわけです。しかし、これば統制経済をやっておる以上は、勝手にどんどんつくられて、自由に勝手につくられたのでは値段の方も自由になってしまうわけですから、それはお互いに困るというのですから、だからこれは例外として、例外的に行われておるものだ。そのことを生産者の方もはなはだ希望しておるので、米について自由にしろという声は余りない。ですから、米を抑えておくと言うけれども、それは統制経済を存置させるためには、その統制に御協力いただかなければ統制経済はもたないというのも事実であります。
  290. 竹内猛

    竹内(猛)委員 米が例が悪ければ、白菜でもミカンでもそうです。たくさんつくれば値が下がってしまう。それでみんな困っている。だから、農家は、これだけつくってみても結局金が入らない、これじゃやりきれないということで非常に希望を失う。     〔伊東委員長代理退席、委員長着席〕 そして今度は必要でないものが――必要でないかどうかわからないけれども、いろいろなものがまた入ってくるということで、やはり日本のような狭い国で、これだけの人口があるところでは、最小限度重点的な作目を決めて、それに上乗せをしていきながら、出かせぎ労賃も入れて、そして家計を組み立てていくという方式をとることが一番いいのではないか。つまり、複合的な経営方式をとるのが一番いいのではないか、これ以外に道がないのではないかと思うのですけれども、その点についてはどうなのだろうか。
  291. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 自由経済というのは、御承知のとおり生産のブレーキになるものは価格です。価格が高くてもうかればたくさんつくるし、たくさんつくった結果もうからなくなれば自動的に価格が調整する。価格によって、結局生産か減産かということが自動的に行われる、これが自由主義市場メカニズムであります。しかしながら、なかなかそこらのところが余り変動が激しくては困るというような声が強いものですから、日本においては、主要な作物については価格安定策というものをとっておるわけであります。米、麦はもちろんのこと、野菜についてもある程度の価格安定策をとっておるし、今度はソバについてまでもそういうことをやろうということを言っておるわけです。豚肉、牛肉、牛乳、みんなそういうふうなことをやって、自由主義経済の中でありながらやはり安定帯というものをこしらえて、その中で余り暴騰や暴落をしないようにしながら市場メカニズムというものを作用させておるというのが事実であります。
  292. 竹内猛

    竹内(猛)委員 価格の問題が出たから価格の問題に移りますが、いま価格の問題が一番の問題です。確かに資本主義社会ですから市場メカニズムが大変問題になります。農家は生産者であると同時に、これはまた消費者でもあるわけです。それで、その農家がつくったものの価格を決める場合、自分の要求どおりになかなか決まらない。しかし、農家が買うものは、農機具にしても、えさにしても、肥料にしても、衣類にしても、何でも、これは自分の知らないところで決まってくる。こういう不合理について農家は常に不満を持っている。食管で決められている米も、高いとは言うけれども、なおこれにもいろいろな意見があります。そこで、価格の決定の方法、時期、内容というものについて、いまさっき大臣は現在のままでいいと言われたように思うけれども、私はこれはやはり再検討すべきだと思う。まず物をつくる前に価格の一つの方向を出して、そして、その取り入れたときに追加払いなり何なり生産払いをするということはできないかどうか。これはどうですか。まず、つくる前に予定価格、予備価格を出して、最終的にまたそれを追加払いをする、補正をする。
  293. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはどの農産物についてそういうことをやれというのかよくわかりませんが、米なら米についてあらかじめ予算でこれですよというようなことを決めて、それで物価、賃金がうんと上がったときは追加払いをしろ、こういうふうな意味ですか。
  294. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そうです。
  295. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これはなかなかむずかしい問題なんですよ。御承知のとおり、日本は原則的に自由経済市場主義をとっておるわけですから。ただ、農家の保護のためにいろいろな価格安定制度をとっておるんだ。いまお話があったように農家の人が買うものは勝手に決められる、こう言うのですが、肥料等や農機具等は必ずしも勝手に決められているわけではありません。その他のものは、勝手に決められているものもあるでしょう。あるでしょうけれども、それはつくり過ぎれば暴落するわけですから、農家の場合も、自分が勝手につくって勝手に売っていい品物もたくさんあります。しかし、そういうようなものは値段が保障はされてないという危険も一緒に伴っておるのだということも理解していただかなければならぬし、危険の伴わないように政府が保護しておるものについては、なるほど思うような値段で売れないということがあるかもしれません。両方いいというわけになかなかいかないというのが価格保障制度といいますか、価格安定制度の特徴である、こう思います。
  296. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは大臣から見解を承りたいわけですが、有力な意見として、価格を決めるのに団体交渉で決めろ、こういう意見がある。団体交渉で決めろという意見についての大臣の感想をお聞きしたい。
  297. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一体だれと団体交渉をするのか、価格を決める場合。交渉の相手、これはだれとするのか、そこらのところはよくわかりませんし、むずかしいのじゃないですか。
  298. 竹内猛

    竹内(猛)委員 むずかしいことはわかっていて聞いたわけだから。どういう感想かということを聞いたわけですから。それは前々から言っている、農民組合をつくって、農民組合が政府と団体交渉する、こういうことです。あるいは関係機関と団体交渉する、こういうことです。  価格問題というのは、これは現在の農家の一番関心の深いことであるし、価格決定の中にいろいろな審議会がありますね。審議会の中に農民の代表も入っているじゃないか、おまえらの代表も入っているじゃないかということだけれども、農家のいろいろなものの決定の中の委員構成は必ずしもそういうふうに思っていないということを盛んに言われて、あの構成を変えろ、こういう意見もある。これについても先ほど大臣から答弁があったわけだが、現在の価格の決定方式は再検討する考え方はない、もう、こういうふうに了承していいですか、そう言われたということで。
  299. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 団体交渉というようなことは考えておりません。ただ、実質的に団体交渉ではないが、それに近いような話し合いで決めているものはありますよ。たとえば農機具とか肥料とかいうようなものは、全農を窓口として、それでメーカーと大体話し合いをして契約をしているわけですから。座り込んではち巻きしてやっているわけじゃないが、事実上は話し合いで、一種の団体交渉みたいなものでしょうね、代表者がやっているのですから。そういうものはございます。しかし政府の場合は、これは政府が全体のいろいろな問題を勘案をして価格は決めていかなければならない、こういうようなことのために、消費者の意見や生産者の意見等は十分お聞きをするといういまの制度で私は差し支えないのじゃないか。生産者だけにするというわけにはいかない。やはり生産物はこれは消費者によって消費をされるわけですから、消費者の意見も聞く。また、政府が関与するものについては国民の税金を使う。その生産物を食べない国民もいるかもしれぬ。しかし、そういうような人の税金も使うわけですから、どっちの立場も代表しない中立の方、中立で自由な発言のできる人の意見も入れる、こういうことで総合的にそれらの人の意見を聞いた上で、主な政府の関与している農産物の価格は決められておるわけであります。
  300. 竹内猛

    竹内(猛)委員 価格の問題についてはなかなか一致を見ないから、いずれまた、常に議論をするところですから――中立だといっても、昔をたどれば農林省のOBが多いのですね。OBで団体へ行っている人が多いわけだから、仲間みたいなものですから。そういうふうにみんな見ているのですね。時間がありませんから、これ以上言いません。  今度は土地改良の問題に入りますが、今日までの土地改良の状況を見ていると、米をつくるために非常に努力をされてきた土地改良である。土地改良事業はそういう形でやってきたが、現在米がこれだけ過剰の状態にあるときに、この土地改良の根本的見直しをして、そして排水事業も入れて、時によれば水田から畑に転換をする、また米がどうしても足らなくなったときには水を入れれば水田になる、そういう土地改良の方向に進めていくという基本的な考え方については、大臣、どうだろう。
  301. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 その考え方は大賛成であります。したがって、予算の許す限り、ことしなども、ともかく畑にするために二百三十億というような新しい排水関係の予算もつけまして、五年ぐらいかかったような県営の排水については三年ぐらいでやろう、三年ぐらいかかっておった団体営のものは一年ぐらいでやれるように事業を進捗しようというようなこともやっておりますし、それから、再編対策に絡んでいろいろな小規模の土地改良事業、こういうようなものも、畑につくるためには必要ならば採択基準もむずかしいことを言わないでやろうというようなことでやっておりますので、その意見は、ともかく今後とも極力そういう考えで進めていきたい、そう思っております。
  302. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この土地改良に関連して、農家の中にかなりの誤解があることについてこれを直さなければいけないと思う。それは国営土地改良、県営土地改良、団体営土地改良、それぞれの面積によって国及び県の負担率が違うということで、団体営の土地改良というところは狭いわけでありますから、いろいろな条件が悪い、そういうところは負担率が多いではないか、税金を払っても税率は同じだし、物を買っても別に安くはない、病院に行っても入院料は同じだ、何で土地改良だけおれたちはよけい負担をしなければならないのだということがありました。これは事務当局から聞いたら、私はよく理解をいたしましたが、この説明について、一般の農民に対する浸透はかなり不十分だと私は思います。この点の理解と浸透をよくしなければ、これは、これから土地改良をだんだん面積を狭めてなおやっていくというときになると、いろいろな運動が起こってくることを予想すると大変ですから、これに対してどのような手段をとられるか、お答えいただきたいと思います。
  303. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 これは、私も最初そう思っておったのですよ、何で国営と県営と団体営で違うのだ。私も事務当局から聞いてよくわかった。あなたもわかった。私とあなたがわかれば、かなりこれからわかってくるのではないかと思うわけであります。
  304. 竹内猛

    竹内(猛)委員 土地改良の十カ年計画は十三兆で始めたわけですが、最近の二年間にかなり伸びているが、これは農家が要求する面積からいってみれば、伸びたとはいえ面積はまだ不十分。だから、スピードも上がっていることはわかりますが、もっと広い面積、特に減反という問題があって通年施行の問題もあるわけでありますから、私どもの党では十万ヘクタールの土地改良をやって、そして通年施行で地元の労働力を活用するようにすれば、十カ年間で百万町歩ぐらいの土地改良ができるではないか、こういうことを要求し、提案をしているわけです。それは余りにも大き過ぎるというふうに言われるかもしれないが、大して大きくないですよ。今日の現状からいってみれば、田畑輪換の土地改良をそれくらいやるということは可能だと思うのだけれども、大臣、どうだろう。
  305. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 個別案件については私もわかりませんが、全体の計画に対する五十四年度までの実績というのは、計画が十三兆で、実績が七兆三千六百億、五六・六%。あと、五十五、五十六、五十七とやると、大体金額的にはうまくいく。そこで物価や賃金が上がれば少しずれができるということでございますが、やはり土地改良が非常に重要であるということは大蔵省もよく御認識いただいておって、ことしなどは全くよく、農林予算には申し分のないほど気を配ってくれておりますから、あと三年も間違いなくこの調子でいくのじゃないかと私は思っております。
  306. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その十年計画の話はわかった。そうではなくて、もう一つの、次の十万町歩、百万ヘクタール、これをどういうふうに考えるかということです。
  307. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 せっかくの御提案ですから、十分に検討させていただきます。
  308. 竹内猛

    竹内(猛)委員 水田利用再編対策についてお尋ねをしたいと思いますが、この問題は大変不幸な状態で出発をしていると私は思うのです。この水田利用再編の問題については、五十二年十一月十九日に、塩川さんお見えになったけれども、塩川さんが官房副長官のころに、当時の福田総理大臣に私どもは申し入れをした。どういう申し入れをしたかといったら、こんな重大な問題を農林委員会でも十分な討論ができない。本会議質問しようとしたら自民党が拒否した。そこで野党五党が、これはとうていたまらないということで、十一月十九日に次官は通達を出すということだから、それならばその前に何としても申し入れをしておこうということで特に申し入れをしたわけだ。今日、そういう状態です。  それ以来、本委員会でもいろいろ問題があって、川俣委員がここにおられるが、五十三年二月十八日の予算委員会で、ペナルティーの問題については一つの統一見解といいますか解明を得て通達をしたはずなのです。それが、これを実施してみると、三十九万一千町歩というのは四十四万ヘクタールと、これは大分減反面積が伸びました。しかしながら、百七十万トン減らそうというそれは九十万トンもオーバーをして、二千百十二億円組んだその予算もさらに補正でカバーしなければならない、こうなるとそのこと自体は成功したとはどうしたって言えない。だから、これはどうしてそうなったのかということに対して、大臣は、それは天気がよかったし食うのがいなかったからと言うけれども、そんなことではだめなのだ。そうではなくて、そこには米からかわるべき何物かがないというところにやはり問題があるのだから、天候と食わなかったなどという答弁では、ことしだってそれはだめですよ。
  309. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 確かにそういう面もあるでしょう。あるでしょうが、一応面積的には大体バランスがとれると思ったところが、反当収量が多かったということは事実なのです。その多かった理由について、川俣さんからこの間あったように、二割休んだらあとの八割、その分だけよけいに施肥もやるし手間もかけるからよけいとれちゃう、こういうことも事実あると私は思うのです。ですから、そういう失敗といいますか農民心理というものはあるのですよ。しかし、やはり何といったって天候が一番の問題で、それから思ったよりも消費が伸びなかったということだと私は思います。
  310. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そこで、国全体も目的を達したし、県全体もみんな達しているわけなんです。それは大阪とか東京はちょっと別だけれども、うちの茨城県でも一〇四%ぐらいになっているのだけれども、二十九の市町村が満ちていない。新潟県だって恐らくそうでしょう。そういうときに、どういうところで一三〇%も伸びて、どういうところが一〇〇%にならなかったというのは、山岳地帯の減反をすればできるところがある、そこは条件があるからやる、ところが谷津田があったり、米以外にできない、そういうところはやろうと思ってもやれないのです。そこで、結局、米をつくらなければハスでもつくろうかということになるのです。だれがやったって条件のないところにはできないのです、どんな偉い人だってこれはできないのですから。それを無理やりにやらせないで、県までおろしてもいいから、まあ町村に関する限りは余り国からいろいろなことを言わないで、その辺は自主的にやらしたらどうだね。
  311. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはそのとおりなんです。それはともかく、国としては県に大体割り当てをしまして、それで新潟は少なくとか北海道は多くとかやっているわけですよ。ですから、その県の中で知事さんが町村によってここはむずかしい土地条件だ、ここはできそうな土地条件だというようなことを考えておやりになっていただき、また同じ村の中でもやはり部落によって違うと思うのですよ、そこのところは市町村長がそれぞれの自主的な考えで実情に合ったようにやっていただくということが一番いいだろう、こういうふうに考えておるわけです。
  312. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ともかく法律じゃないのだから、政令、行政でやっているのだから、余り四角張ったかたいことでなくて、現地を無視しないようにそれは、ぜひやってもらいたい。これはこっちの方に本当は言いたい。
  313. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは、農林省は私が主人公で、役人は仮客でありますから大丈夫であります。
  314. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ここで残念な報告をしなければならない。   一月十九日の毎日新聞に、青森県の農業改良普及員が十八日にまとめた「減反黒書」というものが一部載っています。見られたでしょう。――見ないですか。それでは、重要なところだけ読みますから、よく聞いてください。  農業改良普及員というのは「減反を農家に指導する立場にあるが、農家の反発が強いため、昨年七月「まず減反の実態をつかもう」と、調査に取り組んだ。十月から普及員が手分けして水田農家一二二〇戸(回収九三二戸)を対象に減反への協力状況、収入の変化などについて詳細に調べ、十八日に青森市で編集会議を開いてまとめた。「黒書」によると、水田利用再編対策に対して「やるべきである」と答えたのはわずか六%。協力状況では「減反を割り当てられて仕方なく協力」が五五・七%と最も多く、消極的な協力が目立った。これは「奨励金が減ったら非協力」が八七・一%を占めているように、奨励金目当てに転作している実態を示している。水田利用再編対策による転作で収入が「多くなった」は四・一%だけで、六八・九%の農家が「減った」と答え、六四・四%が「転作は失敗」と訴えた。特に手軽に栽培できるため、転作作物として人気を集めたソバは最高でも一〇アール当たり三千七百円の収入しかなく、同二千――四千五百円の赤字を出した農家が目立ち、比較的収益の良い大豆も、米の場合の三 〇%程度の収入にとどまった。 このため、五八・六%の農家が「減反実施後に出稼ぎし始めた」と苦しい〃台所〃を訴えた。また昨年は大豊作で、減反が事実上帳消しになったかっこうだが、割当面積がこれ以上増えた場合「協力する」の二四・一%に対して「非協力」が七五・九%もあり、減反強化に強い反対が予想されている。 こうした調査結果について、同評議会は「予想以上に農家は深刻な事態で、生産意欲は低下している。もはや作付を積極的に減反させようという姿勢ではなく、適当に作物を植えて、奨励金だけもらおう――との意向だ」と、ズサンな減反政策を批判している。同県は昨年一二、七二〇ヘクタールと、米作県として全国最高の減反割り当てを受けた。実際は同県が積極的に集落ぐるみの転作を推進した結果、一三、二二三ヘクタールも減反し、全国有数の「減反協力優良県」」ということになっておるが、その実態は以上のようなものであります。これについて大臣の御感想をいただきたい。
  315. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 設問の仕方がどうであるかつまびらかでありませんが、一部そういうような御感想の方もあることも事実であろう。しかし、よく実情を認識していただけば、やはり食管制度を守るという上においては、過剰生産の累積はお互いみんなが困るという点では御理解いただける、かように考えます。  それから、先ほどの私の発言中、役人は仮客であるということは不穏当でありますから、これは取り消します。これは国民全体の奉仕者であるというように訂正をいたします。
  316. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この設問がどうであれこうであれ、こういう答えが出ていることは事実ですから、この事実に対して素直にこたえるには、やはり基本目標と生産計画と土地利用計画、それから基盤整備等々の計画を農家から取り上げて一緒に話をしていくというのがいいのですよ。それ以外にはないのだ、そういうふうに思うのだけれども、このことを言いたいために前のことを言ったのだから、もう一つ……。
  317. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは物の考え方でありまして、部分的には確かに、転作しろと言ったって何に転作していいかわからぬ、菜っぱ、大根をつくったら非常に損したというようなところがあることは事実なんですよ。これは、つくりなれた作物をつくりたいというのはだれしも同じだと私は思います。長い間つくっておったその習慣を破ることだし、また技術的にもなれないことをやろうということは大変なことである、それは私はそうだと思います。しかし、その点はもっと大きな観点からより御理解をいただいて、そうして御協力を願うようにしておるのであって、それが証拠には、全体としては農業団体でもやはり積極的に転作をしなければならぬというようなところまで御理解いただいてきたわけです。  それからもう一つ、転作がだめだだめだと言うばかりでなくて、米をつくるよりも七万円なりあるいはそれ以上、あるいはそれ以下ということもあるでしょうが、そういう補助金をもらって転作をした方が所得がよけいになるというところもあるわけです。したがって、そういうところはもっとたくさんどんどん転作をしていただいて、足りないものをつくってもらうようにわれわれとしてもお願いをしておるところでございます。
  318. 竹内猛

    竹内(猛)委員 ことしもまた第二年目に入ったようでありますから、これはもうこれ以上議論はしないけれども、こういうことがあるということを踏まえて、もう二つだけ大臣の耳に入れておきたいと思うのです。これはこれらの指導に大いに……。  私の茨城県では二十九市町村の減反の未達成がありましたが、そのものの一つで、米からレンコンにかえたのがいる。このレンコンをたくさんつくったために過剰生産で値が下がった。この間レンコンの生産者の諸君と会合したら、米もだめ、レンコンも半分になってしまった、これではもうやっていけないから、三人いるうちの子供を一人つぶさなければならない、こういうことを若い人たちが言うわけです。これは大変なことだ、そんなことになったらえらい話だということで、レンコン生産者の皆さんと、これは法律でやったことじゃないのだから、農林省の減反をやっている当の責任者の皆さんとゆっくり話をしろ、そのときには君たちだけじゃなくて、村も農協もそれからその周辺のレンコンをつくっている連中も集まってきて話をしてくれ、理解をしてもらいたいということで話をしたのですね。そういうところがあります。これについてはいま農林省の方でもそれなりに準備をしているから、これは一応そういう報告をしておきます。  秋田の八郎潟へ去年私どもは農林水産委員会を代表して調査に行きました。そのときに、五人の自殺者が出ているという。このことについて新聞は余り書いてはいないのだけれども、もちろんそういうことを宣伝する必要はありませんが、十六人の町会議員の中にも十五人しか立候補しない、こういうような状態が八郎潟にはあるのです。あの日本一のりっぱな農地である八郎潟でそういう悲しい事態が起こっているということは、これは減反が始まって以来のことでありますから、こういう問題についても大事な問題として見ていかなくてはならないことであろうと私は思うのです。これは報告としてとどめておきます。  そこで、米の処理の問題もあったけれども、これは飛ばして、時間もありませんから次に移っていきます。  国有林の活用について質問したいと思いますが、国有林野の活用法ができてからかなりの日にちがたちます。今日、二万五千ヘクタールの活用決定がありますが、国有林全体から言ってみると、この活用は非常に少ないのですけれども、これはどういうことなのかということが一つと、もう一つは、国有林の払い下げをするということが新聞記事に出ていたが、これはどういう目的でどこにどんな形で払い下げをするのか、この二点を国有林についてはお伺いをします。
  319. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 国有林野の活用法ができましたのは昭和四十六年でございますが、それからいままでに農業構造改善等に活用決定したものは、いま先生御指摘のとおり二万五千ヘクタールでございます。しかしながら、そのほかそれ以前からの数字を加えますと、畜産等のために活用決定したものが現在三万九千五百ヘクタールほどございます。  それから、これが少ないのはどういうわけかということでございますが、私どもも国有林野事業との調整を図りながら積極的に対応いたしておりますけれども、やはり適地の問題等々があってこういう数字になっているのだろうというふうに考えております。  それから二番目の、国有林の払い下げの問題が新聞に出ておったということでございますが、これは従来から国有林につきましては、不要存置等等については公共用等について御要望があれば、国有林野事業との調整を図りながら対応してまいりましたけれども、今後もそういう点につきましては、国有林の本来の使命の範囲内におきまして、たとえば農業構造改善等に利用すること、あるいは孤立小団地でございまして都市公園だとかあるいは緑地等に利用するのが適切なもの、あるいは事業用の付属地等で保有の必要がなくなったものを宅地、公共用地に使うというようなこと、こういうことによりまして、農用地、公用地、公共用地に供することによりまして国土の有効利用と事業の経営改善を図ることに資したい、こういうことでございます。
  320. 竹内猛

    竹内(猛)委員 この点についても私は要望をしますが、払い下げるとなるとすぐ利権がつきまとうから、そういうものでなしに、公共的なものあるいは農業法人のようなもの、複数なものに払い下げて有効に国有林は使ってもらいたいということを要望します。  続いて厚生大臣、大変恐縮ですからお尋ねします。大変長い間お待たせしまして恐縮です。  私は常日ごろから、政治、特に農業に関する問題、どこでもそうですが、その中心は物や金を大事にすることではなくて人間を大事にすることがその中心でなければならないということを訴えてきているわけです。どうも最近は物と金が中心になって、金さえあれば何でもできるという世の中になった。それに権力がつきまとってくるからいろいろなことが起こっている。入学の問題にしたってそうだし、いろいろなことがあります。  ところで、どこで働いても何をしても、その職場のいかんにかかわらずその労働が大事にされるような、そういう社会でなければいけないと思う。この点について厚生大臣は異論はないと思うけれども、その辺どうですか。今度はそっちの方に聞きます。
  321. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 原則として、もちろん異論はございません。  そこで、本当はゆっくり御説明申し上げたかったのでありますが、むしろ労働環境と同時に、先生一つ御注意をいただきたいことがございます。いま私どもは、実は地域特性での病気に非常に困っております。ひとつ、ちょっとごらんをいただきたい、この色刷り。  これは病気の死亡原因。これはがんです。これは色の濃いところほど死亡率が高い。青い方は低い。非常に地域特性がはっきりございます。しかもこれはその働く場所、都市、農村、その別は必ずしもございません。  また、大変恐縮でありますが、これは脳卒中です。これほど地域差がございます。しかも都市と郡部との別はありません。むしろ私どもにとりましては、これから先こうした点についての努力をしていくことが最大だ、そのように思っております。
  322. 竹内猛

    竹内(猛)委員 都市と農村の差はないと確かに思いますね。思いますが、私は農村の方だから農村の方を言うと、大体わが茨城県の方においても、日本でも平均だと思いますが、人間が百人集まれば、三十人は直ちに入院をしなくてはならないほど悪い、あとの三十人は、これは要治療ですね、あとの残った部分が健康、こういうぐあいにグループが分かれている。これはここのところの七、八年間変わりがないのです。そういうときにその病気の種類を見ると、脳卒中もあるけれども主として腰椎あるいは胃病、高血圧、こういう病気があるのです。その原因と対応についての問題などについてもこれは厚生大臣から聞くと同時に、救急医療という医療問題、医療体制がまことにおくれていて大変なことになっているわけですから、この点を、待っていただきまして恐縮ですけれども、ひとつ親切なお答えをいただきたいと思います。
  323. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かにいま御指摘になりましたような、たとえば農村医学会の報告等に見られる高血圧あるいは肩こりあるいはリューマチ等、いわゆる農夫症と言われるようなもの、これに確かに問題があることは私どもよく存じております。むしろいま農村保健に関する専門家に対して調査をお願いをしておるところでありまして、いずれまた御要求でもありましたらそうした関係の資料等もごらんをいただきたいと思います。また、僻地救急医療というもの、逐年改善をし続けておりますけれども、今後とも努力を払ってまいりたい、そのように考えております。
  324. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農村におけるところの医療体系は、やはり決していいことではないです。無医村もあるしいろいろありますから。これはやはり調査をされていると思いますが、本当にハウスの中で働いている人間などというものは、それでなくても体がくたびれているのにより多い病気がありますから、こういうのはぜひ調査をして万全を期すように求めたいと思います。  大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、いよいよ最後になりました。もう時間が来ているのですけれども、先ほどから補助金の問題が問題になっておりますが、法律に基づかない補助金というものが相当あります、行政で出ているのが。これがいろいろ地方で問題になっていることがある。この補助金に対してやはり整とんをする必要があるのじゃないかというふうに思うのです。補助金問題について大臣どうですか。
  325. 金子一平

    金子(一)国務大臣 法律による制度的なものと、そのときどきの需要に応じて考えられる予算的なものと二通りございますが、先生のおっしゃるように、今後やはり補助金の整理につきましては十分考えて効率的にやってまいりたいというふうに考えております。
  326. 竹内猛

    竹内(猛)委員 私のところには補助金の問題で、地域農政特別対策事業について、個人にはこれは支給をしない、複数に出すということなんですが、この問題について意見が来ているのです。個人を信用しないということになるのでしょうかどうかわかりませんが、ここに具体的に例がありますが、時間がないからこれは申し上げませんけれども、農林省の方にいずれ別のところで話をしますが、こういうことで補助金問題というもの、あるいは補助金の出し方、取り方、いろいろあります。  同時に、農林省の予算について、いつも年末に団体がはち巻きをして要請に来るということですが、単年度で物を決めるのではなくて、農林省予算というものは五年、十年の長期のものです。防衛予算というのはGNPの何%というようなことを言っておるのだけれども、農林予算は国の予算の何%というようなあれもない。中川農林大臣は、一〇%が適当だろう、こう言ったのだけれども、去年あたりは一〇%を割って補正で辛うじてなったということですが、安全保障であり、それから環境をよくするものであるということが確認をされるならば、農林予算というのは五年とか十年とかいう長期な見通しの上に、ねじりはち巻きをしてそれぞれ陳情しなくても、これとこれは柱を立てて出す、そしてあと災害があったりいろいろなことがあれば、それはまた考えるというようなことでいかなければ、役所では年じゅうあれをやられたのではかなわないだろうと思う。一〇%でいいかどうか私は意見がありますが、何とかもっと高くしなければいけない、こう思っておるのですが、この点を大臣、どうだろう。
  327. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大体昔から一〇%なんて言われておったのですが、私は、ことしの予算はかなりいい予算である、大蔵省も国家安全保障の見地から、まあむだはもちろん切られるわけでございますが、最終的にまとまった農林省の案というものは、私はベストなものであると信じております。
  328. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう時間が来ましたから、最後に田園都市構想について、役所の方からも来ておりますので、これは質問ができませんから、ただ私の意見だけ申し上げます。  もう私の前の質問者が、田園都市の構想についていろいろ各大臣から聞きました。私もここで聞いていて、これはさっぱりわからない。そういうわからないものが、具体的に今度は自民党の選挙のスローガンとして出てくる、こういうことになると、これは争わなければならないのですね。だから、本当ならもっともっとここでわからないものの本体を確かめたかったのです。これは十何人かの学者を呼んできていまから話をするのだ。一方で田園都市構想はスローガンで走っている。走っているところへ持ってきて、いまから研究する。この田園都市構想は何を言っているかさっぱりわからない。そしてあっちの役所もこっちの役所も、会合しているうちに総理大臣のいすがなくなってしまうのじゃないかという心配もあるから、もっと早く田園都市構想などというものは、ぴしっとつくったら出して、批判にたえ得るものにしなければいけないということは、これはもう時間がないから、私の意見として申し上げて、終わりたいと思います。
  329. 竹下登

    竹下委員長 これにて竹内君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十九日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十四分散会