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1979-02-16 第87回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月十六日(金曜日)    午前十時三分開議  出席委員    委員長 竹下  登君    理事 伊東 正義君 理事小此木彦三郎君    理事 塩川正十郎君 理事 浜田 幸一君    理事 毛利 松平君 理事 大出  俊君    理事 藤田 高敏君 理事 近江巳記夫君    理事 河村  勝君       奥野 誠亮君    海部 俊樹君       倉成  正君    櫻内 義雄君       笹山茂太郎君    正示啓次郎君       田中 龍夫君    田中 正巳君       谷  洋一君    谷川 寛三君       中川 一郎君    根本龍太郎君       野呂 恭一君    羽田野忠文君       藤田 義光君    藤波 孝生君       坊  秀男君    松澤 雄藏君       安宅 常彦君    井上 普方君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       岡田 利春君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    兒玉 末男君       平林  剛君    安井 吉典君       市川 雄一君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       大内 啓伍君    高橋 高望君       米沢  隆君    工藤  晃君       瀬崎 博義君    寺前  巖君       大原 一三君    山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 古井 喜實君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 金子 一平君         文 部 大 臣 内藤誉三郎君         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         農林水産大臣  渡辺美智雄君         通商産業大臣  江崎 真澄君         運 輸 大 臣 森山 欽司君         郵 政 大 臣 白浜 仁吉君         労 働 大 臣 栗原 祐幸君         建 設 大 臣 渡海元三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       澁谷 直藏君         国務大臣         (内閣官房長官田中 六助君         国務大臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      三原 朝雄君         国務大臣         (行政管理庁長         官)      金井 元彦君         国務大臣         (防衛庁長官) 山下 元利君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      小坂徳三郎君         国務大臣         (科学技術庁長         官)      金子 岩三君         国務大臣         (環境庁長官) 上村千一郎君         国務大臣         (国土庁長官) 中野 四郎君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         総理府人事局長 菅野 弘夫君         総理府統計局長 島村 史郎君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局審査部長 妹尾  明君         警察庁刑事局長 小林  朴君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁長官官房         防衛審議官   上野 隆史君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁経理局長 渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁施設         部長      多田 欣二君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁原子         力局長     山野 正登君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 禮次君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長         兼外務省条約局         長       中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省国際金融         局長      宮崎 知雄君         国税庁長官   磯邊 律男君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         厚生省保険局長 石野 清治君         農林水産大臣官         房長      松木 作衛君         食糧庁長官   澤邊  守君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省機械         情報産業局長  森山 信吾君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         運輸大臣官房審         議官      杉浦 喬也君         海上保安庁長官 高橋 壽夫君         労働省労政局長 桑原 敬一君         労働省労働基準         局長      岩崎 隆造君         労働省職業安定         局長      細野  正君         建設大臣房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 丸山 良仁君         自治省財政局長 森岡  敞君         自治省税務局長 土屋 佳照君         消防庁長官   近藤 隆之君  委員外出席者         会計検査院長  知野 虎雄君         参  考  人         (日本銀行総裁森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任  稻村佐四郎君     谷川 寛三君   砂田 重民君     谷  洋一君   矢野 絢也君     市川 雄一君   米沢  隆君     高橋 高望君   正森 成二君     工藤  晃君 同日  辞任         補欠選任   谷  洋一君     砂田 重民君   谷川 寛三君    稻村佐四郎君   市川 雄一君     矢野 絢也君   高橋 高望君     米沢  隆君   工藤  晃君     瀬崎 博義君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 竹下登

    竹下委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。工藤晃君。
  3. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 私は、日本共産党革新共同を代表して質問します。  初めに、ダグラス、グラマンなど、航空機疑惑をめぐりまして集中審議並びに証人喚問が行われまして、私自身大変強い印象を受けたわけであります。一口で言って、この疑惑はいよいよ深まった、そういうことでありますし、また、幾つかの重要な点で究明に新しい進展があった、このように思います。  第一、たとえば有森証人のここで証言されたことや、ああいう形で証言を拒否されたことをめぐりまして、とりわけ良心に恥じることをやったと述べられながら、また、特に海部メモに関しましてああいう形で証言拒否をやられ、そして外為法で訴追されることを感じるということを通じて、何らかの不正な支払いに関与していたことを間接的に示すような発言もあった等、とりわけ海部メモの重さということを非常に印象づけられたわけであります。反面、海部氏の証言はいよいよ偽証が強いということも私は強く感じたわけであります。  それとともに第二次FX問題、これをめぐって大きな疑惑が強まってきたわけでありますが、こういう過去の日本の自衛隊の航空機購入問題全般疑惑に包まれ、構造的な汚職をなしているということが出てきたと同時に、またE2Cという問題で、これは先般集中審議におきましてわが党の正森議員が明らかにしたことであります。が、このE2Cの補修部品購入、この額の方が本体よりも多くなって、そしてその五%が日商岩井手数料として支払われ、さらにその四割がカーン氏にいき、それがSECによれば、ある政府高官にいく。こういう筋書きにおきまして、このE2Cの部品購入について五%の手数料ということを、証人喚問に出てきましたところの日商岩井植田社長海部社長もこれを認めたわけであります。だというと、これまで政府側が言ってきたところの、このE2CはFMS方式をとるから、これから不正は起きないということは、いよいよ完全に崩れた。これは一つの新しい段階でありますが、このように、まさにこの航空機疑獄というのは過去の非常に大きな事件であると同時に、現在進行形未来形のものであるということを強く感じたし、これが大きな進展であろうと思ったわけであります。  私自身国会議員の一人として、この問題で国会が徹底的に追及しなければならない、その責任の重さを感じ、またそのことが、この問題に非常に大きな関心を寄せている国民に対して、国会が当然果さなければいけない責任であるということを感じたものでありますが、この点に関しまして、最初首相に、この集中審議証人喚問を通じてどういうことを感じられたのか、そしてまた、この事件究明解明のために新たにどういうことを決意されているのか、伺いたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国会におかれて連日、当委員会を中心に、この問題に対する解明への努力が行われておることに対しましてまず敬意を表します。  政府におきましても、捜査当局はもとよりでございますけれども防衛庁その他関係当局におきまして、この国会審議の状況に重大な関心を持っておることと確信いたします。  政府としては、前々から申し上げておるとおり、本件の真相究明をし、そして疑惑の解消に努めなければならぬという決意には変わりはございません。また、国会が今後引き続き究明努力されるに当たりまして、できる限り協力してまいる姿勢にこれまた変わりはないのでございまして、一日も早く真相解明ができまして疑惑が払拭できる日を待望したいものと考えております。
  5. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 疑惑解明される日を待望するというのでなしに、総理として、また総裁として、積極的にその責任を果たさなければいけないというふうに考えるわけでありますが、とりわけ一つの具体的な問題としまして、先ほども私触れましたように、E2Cの部品購入をめぐっての手数料は、日商側の幹部も五%の手数料が入ることを認めた。こういうことで、E2Cの購入をめぐっては、FMSだからもう不正の余地がないという、これまでの政府側の言い分が完全に崩れた、そういう段階になっているわけであります。  ところが、この政府の対応を見ておりますと、二月十三日、山下防衛庁長官記者会見で、E2Cの補修部品についてもFMS方式購入する努力をすると表明したわけでありますが、この手直しというのは、まことにこそくな手直しだと言わなければならないと思います。もちろんこの飛行機補修部品というのがこういう方式で完全にやれるかどうか、これ自体も大きな疑問でありますが、そのことは別としまして、さっき言いましたように、もうこのE2Cをめぐる疑惑というのはいよいよ大きくなって、そしてこれがある。そしてこれから国民血税である予算をつけてこの購入を始めるということになれば、この不正を仕掛けたグラマン社のもうけというのは今後この予算を通じて保証されてしまうことになる。これがありますし、それから第二に、仮にその部品購入全部がFMSになったとしても、別のそういう不正な関係というのが現に存在する以上、幾らでも別のルートで金は流されるわけでありますから、国民血税をそういう形で不正を働いた者にみすみす渡すということは、もう絶対に許されないことだと思うわけなのであります。  そういうことから私は、首相がここで早くこのE2C予算計上を削るという決断をもうしなければいけないときだと思うわけでありますが、この点について首相見解をお願いします。
  6. 山下元利

    山下国務大臣 御指摘の中に私の記者会見の模様が出てまいりましたので申し上げたいと存じますが、私はこの答弁の中で申し上げましたことは、ただいま御審議願っております昭和五十四年度の予算に計上されております十一億五千万円はもとより、国庫債務負担行為の三百四十三億についてもこれはすべてFMS方式でございますから、これについては絶対商社の介入する余地はありませんとはっきり申しております。  そこで、この昭和五十四年度予算でお認め願いまして、いよいよ飛行機が入ってまいりますのは五十七年でございます。補用部品というのはそれから先の話でございます。したがって、この修理等補用部品につきましては、これはFMS方式により得るし、また一般契約にもより得るわけでありまして、私は、答弁の中で一般契約にもより得るということは申しておりますけれども、すべてそれが特定の業者を通じて行われるということは申しておりません。  そしてまた、修理でございますから、エンジン等につきましては国産部品も使い得るわけでございます。また、他の商社を通ずる場合もございますが、しかし私は、今回の審議経過にかんがみまして、三百四十三億については絶対不正の余地はございませんが、しかし御指摘のありましたところの補用部品につきましても、できる限りFMS方式によってまいりたい、そのことを申したのでありまして、この前提となるべき数字をお示しになりましたが、これは必ずしも私としては当を得てない面があると思うわけでございます。あくまでも私としては国民疑惑を招かないためにできるだけこのようなFMS方式をとりたい、こう申しておるわけでございますので、御了解願いたいと思います。  なお、代理店契約書の問題につきましては、これは私どもは決してことさらに秘密にするつもりはございません。本来ならばもっと早くわかってほしいのでございますが、繰り返し申し上げておりますとおり、第三者のことでございます。第三者のことでございますから、これにつきましては私どもの方からことさらに公表することは避ける、したがって、そのお扱いにつきましては予算委員長の方でいずれ理事会で御相談願うということになっておりますので、その機会に明らかにされるので、それまでは私の口からは申し上げることはできません。繰り返し申すようでございますが、補用部品につきましてはFMS方式によるようにできるだけ努力する覚悟であります。
  7. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 委員長総理ですよ。
  8. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 防衛庁見解を信頼いたしておりまして、予算に計上しこれを予算化していくという考えにつきまして国会の御理解を求めていくつもりでございます。
  9. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 先ほどの山下防衛庁長官のお話で、第一、今度予算化する、それで購入が始まって、部品購入が始まるわけでしょう。そこで日商岩井が取り扱えば手数料が入ってきて、SECなどその他の資料でこれが政府高官に渡っていくというあるルートが開かれている、こういうことなんだから、まさにこの予算をつけるということがそもそもその不正を行わせる手助けの始まりになるということは明らかじゃありませんか。いま本体で、それから部品で、これは購入する以上一体のものじゃありませんか。そうでしょう。そんなことはわかり切ったことなんだから、始まりをつけるということはよくないことですよ。第一、これは国民血税ですからね。しかも過去に不正があった。過去形であるだけでなしに、これからその不正を仕掛けたグラマン社にお金が渡っていくとか、それからまだ日商岩井カーン氏との契約が一体どうなっているか、いろいろ問題があって、それがこれから渡る可能性がある、そういうことはみすみす許せないということであります。  そういうことで、再度首相にこの問題で、そういう国民血税をそういう方向に使ってはならないということもあります。もし本当に徹底究明ということならば、このE2C予算削減、その決断をすべきときであるということに対しては素直にその言を受けていただきたいし、答弁する必要があると思うわけであります。もう山下防衛庁長官、結構でございますから……。
  10. 山下元利

    山下国務大臣 維持部品につきましては、大はエンジンタービン部材から小はボルトナットに至るまで三万五千点もあるわけでございます。したがいまして、これについては国産部品を使う場合もあれば、ほかの商社から入るものもございますが、私が先ほど申しておりますとおりに、FMS方式によろうとしておるわけであります。  ただ、いま御指摘のとおりに国民の皆様の税金でございます。したがって、できるだけ有利な契約を図りたいと思っております。したがいまして、このボルトナットに至りますまで政府間契約によることが果たして国民のためにどうかということはしさいに吟味しなければならないのでありまして、一般契約により得る場合があるということはそのことを申しておるのでございますが、ただ今回の審議経過によりまして、当初の三百四十三億については絶対不正の起こる余地はございませんし、それから後の修理部品につきましても、ただいま申しましたような考え方でFMS方式をできるだけ取り入れたい、このように思う次第でございます。
  11. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 第一あれでしょう。E2Cの購入をめぐって不正の疑惑があり追及しているところでしょう。それを買えばまさにE2Cを購入するということで、その不正を仕掛けたグラマン社には利益がそのままいくということにもなるし、そうしてまた、さっき言ったように、全部が全部とてもFMSではいきそうもないということからいえば、日商が扱えば関係も出てくるし、そういうことなんですから、この削減ということで早く決断をするように。だから総理の御見解だけでいいですから、私はあといろいろ質問しなければいけないですから、もういいですから、委員長総理答弁をお願いします。
  12. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 防衛庁機種選定、それから導入、予算化、一連のことにつきまして疑惑を招くようなことがないという確信に立ってやっておるわけでございます。国会の方でいろいろ問題点を御指摘になりますならば、精力的に解明政府も当たって疑惑を晴らすようにいたすつもりでございますが、私どもそういう確信に立って予算化いたしておりますので、何とぞ御理解をいただきたいものと思います。
  13. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) いまの発言はまことに遺憾でありますし、この問題は今後いよいよ追及しなければいけないし、必ずこれは削減させなければいけない、こういう決意でありますが、さてそこで、雇用問題について私は質問を行いたいと思います。  さきの委員会におきます不破書記局長質問におきまして、いま大企業減量経営という名による人減らし合理化に対して対応せずしては雇用対策はもう成り立たないということが、きわめて具体的な生き生きとした資料によって明らかにされたと思います。それに対しまして、政府答弁としましても、ともかくそういう失業をふやすような減量経営に対しては何らか対応していかなければいけないという答弁もいただいたと思いますので、きょうまたその答弁を繰り返せということでありませんが、まず政府自身が発表しているいろいろの資料を私が提示することによりまして、この大企業人減らしがどんなに雇用問題を厳しくしているかということを明らかにしたいし、また、その問題について政府見解を尋ねたいと思っているわけであります。  最初に、これは労働力調査で一九七三年から七八年にかけまして、就業者が減ったのは農林水産のほか製造である。それから製造の中では雇用者が九十四万人減ったけれども、百人未満では三万人増、百人から五百人未満企業では二十七万人減、百人未満では増、それ以上が減になりますね。それから特に五百人以上は七十一万人減、こういうことになっておりまして、五百人以上の減がこの間の雇用者の減の七六%を占めるわけであります。なお、千人以上の規模でとりますと、昨年十一月は前年同月比で二十万人減、十二月について言うと十二万人減ということでありますが、これについては総理府政府委員の方でいいですから確認していただきたいと思うのです。
  14. 島村史郎

    島村政府委員 お答えします。  私ども一の労働力統計調査によりますと、いま先生がおっしゃったような数字でございます。
  15. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) それで、就業構造基本調査によりますと、七一年から七七年、製造業での就業者の数は、三百人未満で六十二万人増で、三百人以上では六十三万人減、特に千人以上で四十九万人減ということですが、それもちょっと御確認願いたい。
  16. 島村史郎

    島村政府委員 私どもの調査しております就業構造基本調査では、先生のおっしゃるとおりであります。
  17. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) そのほか事業所統計について用同じような結果が出ているわけであります。これを見てもおわかりのように、特にオイルショックをはさんでそれ以後の長期不況という中で、実は中小企業の方がむしろ製造業部門において雇用がふえているときに、大企業の方がもう著しく減らしている、しかもそれがいまの失業をふやす主因になっているということは、この政府自身統計からも明らかになったと思うわけであります。それにつきまして簡単に答えていただきたいわけでありますが、こうなりますと、いま雇用政策が問題になっておりますもっと前から、こういう大企業人減らし合理化に対して、政府は重視し対策をとるべきではなかったかということと、それから同じ不況進行といっても中小企業の方がはるかに苦しい。それで、この大企業というのは実は世界の大企業でもある。世界輸出市場を脅かすような大企業でもある。そういうところがどんどん減らしているというのは、まさに社会的に不当な人減らしをやっているあらわれではないか。なぜそういうことが起きているのか。その点についての御見解を伺いたいと思います。総理、お願いします。
  18. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ここ数年来高度成長を支えておりました内外の諸条件が構造的な変化を見るようになってまいりましたことは工藤さんも御承知のとおりでございます。それが石油危機によりまして一層拍車がかかってまいった、速度が速くなったということも御案内のとおりでございまして、これが日本ばかりでございませんで、世界的な深刻な不況に直面するに至りましたわけでございます。そういう中におきまして日本企業がどのように対応していくかということは容易ならぬ課題であったと思うのでございます。企業の大中小は全体がそういう波をかぶったと思うのでございます。そして大中小いずれの場合におきましても、これにどのように対応していったらいいかに大変苦労をしたと思うのでございます。  政府も、それに対しまして財政的手段を用意いたしまして、この激変に対応いたしましてもろもろの措置を講じてまいったわけでございまして、財政自体の都合からいきますと無理なことをずっとやってまいりましたために、今日大変な赤字国債を抱えておるということも御案内のとおりでございまして、そういうことによりまして、この激変に対応するためにあらゆる手段を講じてまいったわけでございますが、その結果として、いま労働力調査にあらわれておるような数字が出てまいっておるわけでございまして、それをもししなかったならばえらいことになったと思うのでございまして、こういう対応が少なくともできたということは、私は国の内外において相当評価していただけておると思うのでございます。もちろん完璧でございませんけれども、少なくともあれだけの激変に対しましてこれだけの対応力を発揮できたことは、私は幸せであったと思っておるわけでございます。しかし、その結果、示されておる労働力の状態、雇用の状態はこれでよろしいとは決して考えていないわけでございまして、これに対する対応はまた別に政府としては鋭意やっておるところでございます。  総体として、いま御指摘になりましたような事態に対しまして政府はできるだけのことはやった、民間もできるだけの対応をいたした、しかし波が余り高かったために完璧な対応ではなかったというのが私の感想でございます。
  19. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 私が伺った問題に対して真っすぐにお答えにならなかったわけですね。なぜ中小企業が苦しい中でまだ雇用をふやしておるときに、少数の大企業に限ってどんどん人を減らしていったのか。むしろ資本力も強いし、その利益も大きい、しかも海外へどんどん伸びていけるような大企業の方が人減らしをやるのは、明らかに大企業の横暴をあらわしておるのではないか、その問題に対策をもっと早くからとるべきではなかったか、そういう質問に対しまして、そういう人減らしをやったことはまことに結構なことでございまして、結果として失業が出ましたという答弁でよろしいのですか。  そういうことで、私、もう少し述べますから、後でまたお答え願いたいのですが、特になぜこの間、このように大企業は人を減らしたのか。これは一つのことから言いますと、これは特に売上高上位百社というのは、私調べてみましたところが、輸出額に占める割合というのが七〇年から七六年に四五・八%から五〇・二%に伸びますし、その企業自体の輸出依存度というのが一五%から二二%と著しく高まったという結果が得られるわけであります。つまり、こういう大企業というのはまさに輸出の前線に出ていって、そして一ドル三百六十円の時代から、オイルショック後は、この前も不破書記局長がここで明らかにしましたように、全く人間破壊のような労働強化もやりながら、長時間労働を押しつけながら、そしてまたかんばん方式などで下請にどんどんしわ寄せをやりながらコストダウンをやって、そして輸出を伸ばし、また円高になり、また輸出を伸ばすという、その結果として減ったということが一つ。  もう一つは、これはもう明らかに大企業が多国籍企業化を進めているということであります。これについてはもうアジア経済研究所の調査その他多くの調査か出ておりますし、第一、日本の直接投資の、これは認可ベースの残高でも二百億ドルを超えて、アメリカ、イギリスに次ぐ水準になっている。こういう段階でありますが、ともかく大きな企業が海外へ工場を移していく、アジアの低賃金をますます求めて移していくときになると、そこで国内の生産をそちらに移し、結局国内では減らし、海外ではふやす、こういう形、これが重なったからこそこういうひどい人減らしが起きたということで、きょう委員長にもお許し願いまして、資料を配りますが……
  20. 竹下登

    竹下委員長 はい、結構でございます。
  21. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) この最初の四枚の表でございますね。「人減らし実施企業の海外子会社従業員数」百社ばかりまとめてあります。これまでこれだけまとめた調査はないと思っておりますが、このもとは産業労働調査所の調査、これは東京証券取引所一部上場企業に基づいた調査であります。それから「プレジデント」の調査、「週刊東洋経済・海外進出企業総覧」これからまとめた企業でありますが、ここには好況、不況を問わず各重要な産業部門が網羅されております。  それで、この一番最後のページの結論のところだけまず見ていただいていいと思いますが、これらの百社が国内において十七万、人減らしをやっている。海外においてはどうか、約十二万ふやしていますね。海外でどんどん本格的なオフショアプロダクションの形も含めまして生産を始める。それに伴って国内で減らしていっているという姿がもっと出てきているわけであります。しかもこの百社全体で国内と海外との割合が一〇〇対一一から一〇〇対二一二と著しい変化になっておりますし、特に海外の従業員の方が国内の従業員と比べて三割以上という企業がこの百社のうち三十社もある、こういう状況になっているわけであります。  このことから、この多国籍企業化に伴う人減らし、こういうことがかまさに本格的に始まりつつあるというのがいまの情勢でありますが、こういう雇用問題を今日重視するというならば、まずこの大企業人減らし合理化問題、そしてこの多国籍企業化による人減らしということに対して政府はもっと対策をとるべきである、このことについて先ほどの総理答弁は私、大変不満でありましたから、お答え願いたいと思います。
  22. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは各省にわたりまするので、いま答弁席でそれぞれ足りないところがあれば補足し合おうということで、まず私からお答えするわけでありまするが、さっき総理の言われたことは決して間違っていないので、石油ショック以来、やはり企業合理化を進める、そのために政府も苦しい財政事情の中から思い切って景気刺激政策をとってきたというわけですね。  たとえば、いまお話に出ましたような鉄鋼の場合でも、一億四千万トンの総生産量を一億トン、一億三百万トンぐらいでペイするようにどう合理化するかということは、日本の基幹産業として今後先進諸国に伍して日本の鉄鋼業が立っていくためには最も大事な問題ですね。しかも、この製造業の海外投資については、一方、弱電などでありますると、受け入れ国の輸入制限それから高関税措置、こういったことで輸出が困難になる。それならば、直接国際収支には関係しなくても、基礎収支では日本の黒字減らしという国策にも協調することになるから海外に進出していく、そしてこの市場を維持していく。さらには、拡大ができるというときには部品その他で日本の産業の製品を輸入して組み立てて売っていくということは、国内的にも雇用の面に大いに役立つことだってあると思うのです。  それで、なるほど昭和四十八年の石油ショック後、製造業では百十七万△雇用が減っております。しかし、卸、小売の業態では百二十五万人ふえておる。そうすると、さっき御指摘中小企業にしわ寄せした、そうじゃないですよ。やはり時代のニーズに合ってだんだん第三次産業その他サービス的な産業というものがふえていった。そこへ雇用が吸収されていく。これは時代とともに変化していくわけでありまして、工藤さんの言われるのはいささか極端な例を極端に表現なさるとそういうことになるというふうに思います。
  23. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 江崎さんの御答弁を聞いていると、どういうわけですか、さっき政府統計から、同じ製造業の中で中小企業の方が雇用をふやしているときに大企業の方が減らして、それが今日の大変な失業のもとになっているという事実、先ほども認められたでしょう。その事実に立ってなぜ答弁されないのですか。  それから――ちょっと待ってください、もう長い答弁要らない。第一、これは通産大臣としても、たとえば七一年五月の産業構造審議会中間答申の第三章、これは通産省関係でありますが、その投資に対する評価として、海外投資が雇用機会の減少それから国内産業の空洞化をもたらす問題に触れて、アメリカの例を挙げながら「それが現実化してから是正するということが非常に困難であるということを留意しておく必要がある。」ということが、通産省のところの産構審の中間答申としても出ている。これはもうはるか七〇年代の初めのときですね。もう出てしまったら遅いのですよ。そういうふうに、これは当然政府としてもっと早くから留意しなければいけないことを、通産大臣としてこれは責任をお感じにならなければいけない。  それからもう一つ、労働白書を挙げておきましょう。これも、一九七七年版です。その百九ページに、海外投資の国内雇用への影響で、これは一九七四年までの製造業における海外証券の取得に限定してある一つの試算では、投資先産業の生産が国内で行われている場合と比べて八十一万五千人国内のを減らした試算が出てくる。こういう試算も労働省の方は労働白書で発表しているわけですね。  そういうことですから、これはまさに日本の経済にとっても多国籍企業化というのは新しい事態であるし、したがって、いまそういう形での人減らしが進んでいることに対しまして、政府としてもっとこれを重視して対策をとるべきではないかということに対して、政府自身がそういういろいろな関係資料で、あるいは白書でさえ指摘していることに対して、ここにおられる新しい大平内閣の大臣がそれについては全くほおかぶりされるということは、それは通らないことだと思いますので、もう私は総理答弁をお願いします。よろしく願います。
  24. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 労働白書のことが出ましたので、私の見解を申し上げます。  労働白書の中のいま挙げられた点は、非常に大胆な前提があるわけです。その大胆な前提に基づいた試算でございますので、これをもって一般的に論ぜられることはいかがなものかと思います。
  25. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 労働白書として政府責任を持って国民に示している試算に、こういうことが起こるというようにまことにだぼらみたいなことが入っていいのですか、大胆だとか何だとか。それは試算というのは試算ですよ。しかし、可能性を示しているわけじゃないですか。だからそういう無責任なことを言ってはだめなんです。
  26. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 ですから、前提条件が変われば試算が変わってくるということですよ。そのことも御認識いただきまして、それだけが唯一のものであるというような御主張には賛同できない、こういう意味なんです。
  27. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 唯一であるかないかよりも、先ほど私は百社表を示して、このようにこういう結果が出ているということを示した上で、なおかつそういうことを言われるということや、それから試算が前提があるとかないとか、それはわかり切ったことでありますが、しかし、一つ可能性として労働白書として重視したからこそこれを出したことは明らかなのでありまして、そういう言い逃れで逃れられないと思います。  この問題で余り長くやれませんが、新経済社会七カ年計画の基本構想におきまして、国際収支の均衡について基礎収支の均衡を図るという立場をとっているということになりますと、これは長期資本収支を相当長い間大幅にマイナスを続けるということから、海外投資がふえるということが考えられるわけであります。そういうときに、もうすでに産構審の中間答申その他でも国内の空洞化その他が指摘されている、そして、いまこういう事実、百社表が示すような事実が出ているときに、今後のこの中期計画を実際中身を入れていく段階におきまして、この海外投資が国内の雇用に及ぼす悪い影響ということに対して真剣に対策をとる、それを前提にしてこの計画をつくる必要があると思いますが、これについてだけ答弁をお願いします。
  28. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの海外投資、直接投資による日本雇用情勢に対する影響につきましては、いろいろとお調べいただいて、われわれも大いに参考にしたいと思います。  ただ、私は、七カ年計画の場合に、この海外投資が即日本雇用情勢に直接的な影響を強烈に持つということとともに、むしろ日本の国内の景気、経済が上昇することによって、現在過剰になっていると思われる労働力、また過剰の設備をどんどんと動かすことによって吸収していくということが第一義ではないかと思います。  同時にまた、現在の労働需要そのものがだんだんと教育とかあるいは文化的な方面、福祉的な方面にシフトしていくということも私は好ましい日本の産業構造であり、社会構造の変化ではないかというふうに考えておりまして、御指摘の点につきましては、これからだんだん具体的な、ただいま発表いたしましたのは基本構想でございますが、これからだんだんと本格的な計画に移っていく場合に十分配慮をしてまいりたいと思います。  と同時に、もう一つ指摘しなければならぬことは、むしろ海外でつくった製品が日本もまた輸入される、そうしたことによる影響というものも、これはすでにアメリカあたりでは五、六年前から非常に問題になっている点でありまして、そうしたことも幅広く踏まえながら、今後の労働需要の好転ということを目指して努力をする方向であります。
  29. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) それでは問題を移しますが、五十四年度の予算で、公共事業の伸びで直接労働需要量がどのくらいふえるのか、お願いします。
  30. 金子一平

    金子(一)国務大臣 大体十六万人程度と考えております。
  31. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) その十六万人は、恐らく昨年、五十二年度予算では十七万人ふえるというのに対応したものだと思いますが、大蔵省の中に公共事業等施行推進本部を置きまして、この十七万人という数を出しながら、それが実際にどれだけ吸収されたか追跡調査を行っているのかいないのか、そのことだけについてお答え願いたいと思います。
  32. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  大蔵省として十七万人の雇用吸収の追跡調査は行っておりません。私どもが把握しておりますところでは、総理府労働力調査によりますと、建設業の就業者が、五十三年度に入りまして、四月以降月平均で前年度に比較いたしまして約二十四万人増加いたしております。これにつきまして、民需と官公需の別に把握されておりませんので、その二十四万人増加のうちどれだけを公共事業で吸収したかということが的確に把握は困難でございますが、最近の実勢から見まして、その相当部分が官公需によるもの、したがって五十三年度の所期の目的がほぼ達成されつつあるというふうに考えております。
  33. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 大蔵省の中にせっかく公共事業等施行推進本部を設けていて、それで雇用がこれだけふえるということを発表しておきながら、言ってみれば、少なくともこれまでの政府の政策の中では唯一の計画的に雇用を何とかふやそうというこの分野で、数字は出すけれどもその追跡調査をやられてない。追跡調査は労働力調査である。労働力調査というのは、何か特定の政策に基づいてそれを追跡する調査ではありませんから、どうしてもずさんである。たとえば十二月分について言いますと、建設は前年同月と比べて十九万人増である。これまでいろいろな建設投資の中で官公需は大体四割であるというその数字を当てはめれば、この増分というのは非常に少なくなるわけでありますが、いまこの問題についてさらにここで論議しようということではありません。  もう一つ私が次に問題にしたいのは、不況地域で公共事業の失業者の吸収率制度をとってきた。私が昨年十月六日に予算委員会で、因島、尾道について私自身行った調査に基づきまして、因島大橋、これは尾道――今治ルートのうちの一つの橋、その中のたった一つの橋であるけれども、五百億から六百億の非常に大型なプロジェクトである。しかもここでは、その四割失業者吸収という制度がしかれている不況地域でありますが、実際にどれだけ失業者が吸収されたか。因島が三人、尾道四人、たった七人である。ところが、その後調べたところによりますと、ことしの一月は因島で九人、尾道で七人の十六人、大体そういう結果が出ております。申し添えておきますが、この因島市におきましては、有効求人倍率は十二月においても〇・〇七%という大変なところでありますが、なぜ公共事業の失業者の吸収率制度のある地域で、こういう大きな公共事業をやっても吸収が少ないのかという問題につきまして答弁願いたいと思います。これはやはり総理やっていただけますか。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  34. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 公共事業をやっても吸収率が悪いというその理由は、一般的に申し上げますと、一つには、これは地域によって施工者が手持ちの労働力を持っておる、あるいは事業の種類や工法によりまして無技能の方々をなかなか雇えない、それから離職者が雇用の給付金を受けている、雇用保険の受給中だ、そのためになかなか行かない、あるいはもとの職場に復帰をいたしたい、そういう期待感がありまして思うようにいかないのが一般的でございますが、いま工藤さんのお話は具体的な例でございますので、答弁政府委員からさせます。
  35. 細野正

    ○細野政府委員 お答えいたします。  因島の本四架橋公団の工事につきましても、いま労働大臣から一般的に御説明がありましたようなその理由とほぼ同じ理由で吸収実績が少ないという結果が出ているわけでございます。  ただ、先生指摘の因島の場合は非常に極端な例でございまして、尾道・因島管内全体としましてはかなりの吸収人員を示しておりまして、むしろ未充足が出ているくらいの状況でございまして、因島がその点ちょっと工事の事情が、さっき労働大臣が申し上げましたような特別な事情が重なった、こういうことでございます。
  36. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) いまいろいろ事情を述べられましたが、もっとはっきりさせなければいけないのは、何といっても大手へ集中してしまう工事である。私調べたら、清水、フジタ、銭高、日立造船、日本鋼管、新日鉄、神戸製鋼というところへ集中してしまって、広島県内の業者も少ないありさまであるということが大きいし、それからまた、事業主体そのものが大変無責任だと思いました。本州四国連絡橋公団へ行っても、一体どれだけ工事で吸収しているのか、資料も持ち合わせていない、こういう状態もあります。  だとすると、ともかく吸収が悪いということはお認めになられたわけでありますし、その事情をいろいろ述べられたわけですが、しかし、この雇用情勢が厳しいとき、それだけでは済まされないのですね。では、公共事業でもっと吸収できるようにどうしたらできるのか、しなければならないのか、こここそ新たに出さなければいけない点だと思います。  そういうことで、私は具体的な提案をしますが、これについて御見解を承りたいのです。  ともかく因島にしろ尾道にしろ、自治体としましては非常に努力して、単独事業をそれぞれ因島で千五百万、それから尾道で二千万やっている。そして地元の職安の方は、この方がはるかに吸収があるからというので歓迎している。みんなからまだ歓迎されている。しかし何といっても千五百万、二千万と少ないわけですね。さっき言った橋から見れば四千分の一とか三千分の一というようなまことにわずかな額、その方が四千分の一であってもまだ歓迎される。だとすれば、こういう単独事業に対して、とりわけ失業者を吸収するような単独事業に対しては、その起債だけでなしに、償還その他に対してもっと国から助成するというような対策をとってしかるべきじゃないか。その点について伺いたいと思います。これは総理どうですか。
  37. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 お答えいたします。  自治省におきましては、御指摘のような因島、そういった地域を含めて百三地域を特定不況地域ということで指定をいたしまして、ただいま御指摘のございましたような単独事業に対しまして起債で見るだけではなしに、特別交付税、そういう面で財政的な援助をいたしておるわけでございます。
  38. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 実際は、もっと積極的に、元利償還のかなりの部分を見るとかいうことまでやらなければ、やりたくてもやれないという実情、それを踏まえていないいまの答弁だと思います。私は、それだけでなしに、実はもう公共事業の中のこれだけは特に雇用吸収に充てる、別枠をとるくらいの決意をしなければいけないときだと思いますが、そのことを申しまして、次のもう少し具体的な問題について述べたいと思います。  中高年齢者の雇用問題は、企業への中高年齢者の雇用の義務づけ、これをやるということはもう当然のことでありますが、それだけでなしに、この問題のどういう対策をとるか、もっと全般的な対策が求められているときだと思います。  それで、まず実態の把握ということが大事でありますので、私は就業構造基本調査、先ほど申しましたが、七七年の速報で、これは残念ながら三十五歳からしか区切ってないので、それ以上しかとれないわけでありますが、三十五歳以上の無業者で仕事を希望する人は五百一万人、有業者で転職希望者、追加就業希望者、これは重なるかもしれませんが、それぞれの数をともかく合計すれば三百四十四万人という数になっておりますが、これも政府委員の方で一応御確認願いたいと思います。
  39. 島村史郎

    島村政府委員 就業構造基本調査によりますと、いま先生のおっしゃるとおりでございます。
  40. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 就業構造基本調査労働力調査よりもはるかに精密な調査であるということを前提にして話を進めるわけでありますが、いま言いましたように、無業者で仕事を希望する者が五百万人以上、仕事を持っていても賃金が非常に少ないとかいうことで追加就業したい、転職したいという者が三十五歳以上で三百四十四万人、合わせると八百五十万人という大変な数になるわけです。もちろん私はこの三十五歳以上を全部中高年齢に当たるということを決して言っているわけではない、統計上そういうことを言わざるを得ないわけでありますが、ともかく中高年齢者の仕事を求めている方の数というものはこのように大きいということを考えるときに、政府が今度新しく出したいろいろな対策でも、やれ五万人とか十万人とかいうのはけた違いに弱いわけです。  そういうことで、非常に抜本的な対策が求められているわけでありますが、しかし、それにしても私がここで特に問題にしなければいけないのは、これまである政府雇用対策の中で中高年齢者雇用促進法、こういう制度が十分活用されていないのではないかということであります。たとえば中高年齢法の中には中高年齢失業者等求職援護措置、これは四十五歳以上六十五歳未満ということでありますが、その中で求職手帳等の措置というのがありますが、実はこの制度というのはまことにあるかないかわからないぐらいしか活用されていないわけであります。  たとえば、広島県で中高年齢者求職手帳の状態を見ますと、月間有効求職のうち中高年齢者は七四年八千五百十六人、七八年十一月一万九千七百五十四人、二・三倍になったのですが、手帳の総数はこの間四十三からたったの三に減ってしまった。三重県の松阪職安では、十二月でありますが、求職者二千十五人のうち中高年齢者が八百九十三人、しかしこのうち実際に就職した人は四十七人である、いわゆる中高年齢失業者への援護措置の適用者が四十七名だけである、八百九十三名のうちわずか四十七名である、こういうことでありますが、こういう中高年齢失業者に対する援護措置、手帳の発給そのものも非常に少ないというのは一体どういうわけなのか、これについて御見解を伺いたいと思います。
  41. 細野正

    ○細野政府委員 お答えいたします。  先生御案内のように、中高年齢の失業者の中で相当部分というものが保険の被保険者でございます。したがいまして、それ以外の方が中高年齢の手帳の措置の対象になるわけでございます。その残りの相対的に少ない部分の中高年齢の失業者につきましても、御存じのように、手帳制度といいますのは保険制度と違いまして、本人の拠出なり労使の負担なりということを全く抜きにした制度でございますから、特別に就職の援護を必要とするという方に対する特別対策でございます。したがいまして、就職意欲が非常に熱烈であって、再就職についての緊要度の高い方について特定の要件のもとに手帳制度を運営しているわけでございます。ただし、先生がいま御指摘のように現下非常に厳しい雇用失業情勢でございますから、この制度が適切に運用されるように、私どももそういう点についての配慮をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  42. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 実際はこれだけ希望者がいて、希望者は全部受けられてという実情でないということが問題なんですね。それから、第一、職安の窓口でもこれがよくPRされてないという問題もありますが、とりわけ、四十五歳以上の年齢制限という問題や、年間所得制限で、夫婦でただ五十八万円以上になるとだめだというようなことだとか、それから職業訓練校というのがありますが、この手帳を受ける期間が六カ月、もう六カ月延ばされることがありますが、ともかくこの六カ月というけれども、訓練校の方は四月からしか始まらないということで、これは絶えずやっているならば受けられるけれども、せっかく手帳を受けても訓練校にも入れない、それから一度手帳を失ってしまうと後一年間はこれを受け取る権利も失う、こういう問題があるわけですね。明らかにこれは、既存の制度が、これほど雇用失業情勢が厳しくなったいまかえって活用されないようなところに行政上の問題があると言わざるを得ないのです。  それにしても、いまはっきりさせたいのは、衆議院の社会労働委員会の七一年五月十日の附帯決議の中で、これは御存じだと思いますが、たとえば「中高年齢者等の年齢の範囲については、」さっき言った四十五歳とか六十五歳ですね、「雇用失業情勢の変動に応じ弾力的に運用できるよう配慮すること。」こうなっていますね。あるいは中央職業安定審議会の答申、七一年八月二十六日も、「中高年齢者等の年齢の範囲について」、今後雇用失業情勢の変動が予想され、また、特別の地域において問題が残るおそれが考えられるので、引き続き検討しなければいけないとある。このときに比べて、失業雇用情勢が非常に緩くなったというならまだいいのだけれども、一層厳しくなって、当時から弾力的に運用しろということさえやっていないのはまことに不可解だと思います。  そういうことで、こういう四十五歳からきっちり分けるというのでなしに、実際に中高年齢者でそれこそ雇用保険の給付も受けられない人、もう受け終わってしまった人も含めて、こういう援護措置が受けられるような何か弾力的な措置をとる必要があると思いますが、そのことについてだけ御見解を伺いたいと思います。
  43. 細野正

    ○細野政府委員 先生も御案内のように、年齢別の求人倍率をとってみますと、四十五歳を境にしまして、そこで画然と差がついているわけであります。こういう特別対策につきましては、やはりそういう画然と差のついているところで対策の区分をすべきじゃなかろうか、そういうことで、現時点におきまして四十五歳というのを変更するのは適当でないのじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  44. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) さっき私が挙げましたように、衆議院の社労の附帯決議で、変動に応じて配慮しろという附帯決議があるのですよ。それは国会無視ですよ。それから同時に、さっき言いましたように、中央職業安定審議会の答申、それでも弾力運用しろとあるわけです。これはちょっと大臣、答弁してください。
  45. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 中高年齢失業者の求職手帳というのはいま政府委員からも話しましたとおり特別な制度でございます。それなりの意義がございますが、その適用につきましては、私どもはこれができた由来というものをよくわきまえなければならないと思います。ただ、いまお話しのとおり、国会の方のいろいろ御決議がございますので、引き続き検討いたしたい、こう考えます。
  46. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 引き続き検討するということでありますが、それにあわせて、やはり中高年齢法の特定地域の指定や、それから特定地域開発就労事業についても、先ほどの公共事業でなぜ雇用がこのように吸収されないのかという問題に本当に真剣に対処するならば、この法律ができたときに比べてはるかに雇用失業情勢が著しく厳しくなっている今日の時点において、当時の委員会の附帯決議やいろいろな関係答申の中においてもこの問題でもろと弾力的にしろということが言われている、そういう経過も踏まえながら、この特開事業の実際の運用、いま凍結されているような状態を、積極的にもっと厳しい地域には拡大するということを含めて検討すべきだと思いますが、その点について、労働大臣、お答え願います。
  47. 細野正

    ○細野政府委員 御指摘の特開就につきましては、従来の経験に徴しましてもこれが再就職に結びつきにくいという非常に基本的な問題があるわけでありまして、そういう意味で私どもとしましては、先生も御案内の、今回予算の中でもって大幅に拡充しました中高年齢者雇用開発給付金その他の、民間を中心にその活力を生かして吸収をしていただく、そういう方向を重点に考えているわけでございます。そういう意味で、いまの特開就事業につきましても、いろいろな条件から見ましてなかなかその実施についてはむずかしい問題があるというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。
  48. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) そんなのだめですよ。これも、先ほど私が挙げました衆議院社会労働委員会の七一年五月十日の附帯決議で、この「特定地域開発就労事業については、雇用失業情勢に応じた弾力的な運用を図る」こうあるじゃないですか。あのときに比べて情勢が甘くなったのですか、緩くなったのですか。そうじゃないでしょう。厳しくなったわけでしょう。特定不況地域と言われるようなものが広がっている、そういうときに弾力的に運用する。これはちょっと労働大臣、はっきりやってください、これは国会の決議を無視することになりますから。
  49. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 先ほども申しましたとおり、問題がいろいろあるという現実があるのです。これをまず御認識いただきたい。しかし、国会の決議につきましては、その趣旨を体しまして引き続き検討を申し上げる、こういうことであります。
  50. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 国会の決議を無視するようなことは許されないし、これを体して弾力的運用をやるということで、これをどうしても推進させなければいけない、このように考えるわけであります。  さてそこで、私は次の問題に移りたいと思います。  やはり一つの問題としまして、これほど雇用問題が重大になっているときに、従来ある雇用関係する法律の制度さえ十分運用されていないということがいま明らかになったわけでありますが、このことに加えまして、大体雇用機会を計画的に拡大していくという、そういう計画がなかったのじゃないか、このことも私は強調したいわけであります。これまでの雇用対策法などは高度成長時代にできて、労働力不足が基調だという考え方に立って、せいぜい再就職の世話をするぐらいでありますが、計画的に雇用を拡大していくということがなかったわけであります。  この雇用拡大計画をどうしてもつくらなければいけないというのがわが党の主張でありますが、それはさておきまして、先ほどの不破書記局長質問のときに、減量経営をやる、そのときに非常にひどい労働強化を持ち込む、そしてまた長時間労働を持ち込む、こういう不当なやり方を抑えるならば、そのこと自体、これは労働者の生活と権利を守ることになると同時に、雇用をふやす道ではないかということを指摘しまして、そのとき労働大臣は、この問題、検討し、対処するという答弁でありましたから、いまここで繰り返すわけでありませんが、ここで私は、年次有給休暇問題に限って質問したいと思います。  すでに明らかにされましたように、七〇年に採択されましたILO年次有給休暇条約、これが一年勤続者に三労働週間を定めている。これに対して、日本は六日というので非常におくれているということが指摘されているわけであります。しかも問題は、このおくれている制度でありながらとり残しが大きい状態であります。住友銀行の調査によりましても、もし完全にとれたとするならば新たに九十九万人雇用がふえるだろうということは住友銀行調査も出しているところであります。  そもそも年次有給休暇は労働基準法に定められた労働者の権利であって、しかも、この労働基準法の労働条件の基準は最低のものとされている。この法律にある労働条件は最低条件だ、当然これを全部とるということが労働者の権利だということは明確になっております。イタリア憲法では、憲法の中で、休暇をとるということの規定と同時に、放棄することはできない、有給休暇をとることを放棄してはならないという権利さえ決まっているわけであります。このように、年次有給休暇、労働基準法に定まっているこういうものをとるということ自体が当然の権利だというふうにお考えになるのは当然だと思いますが、それについて御見解、伺いたいと思います。
  51. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 お答え申し上げます。  労働基準法三十九条では年次有給休暇の取得についての規定がございますが、これは労働者がその与えられた取得日数につきまして有給休暇の請求をすることができる、これは原則でございます。使用者は、特に事業の都合によりまして、都合が悪いときにはその時季を変更してくれということを要請することができる、こういうことになっておりますので、一般的には当然基準法で保障された権利、基準法に基づく取得日数につきましては基準法によって労働者に与えられた権利だというふうに考えます。
  52. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 私が一つ例を挙げたいのは、日産自動車の村山工場の例でありますが、ここでは有給休暇をとらない者に精勤賞を出す制度が行われております。とらない度合いに応じて金額が高くなって、物品が出されるわけであります。村山工場の場合は、夏休み八日間のうちにこれはもう三日の本人の有給休暇を入れてしまう、あと二日は日曜、あと二日が祝日振りかえ、あと一日が会社という具合ですから、三日間いやがおうでもとる制度になっておりますが、ともかく労働者は、少し勤続年数を持っておられる方は大体二十日ぐらいあるわけであります。  この村山工場におきましてこの一月にあった例、これは工務部のある職場としておきます。在籍者八十名中二十七名が表彰を受けておりますが、Aというのは有給休暇のとり方がゼロの人であります。Bというのが二日までの人であります。Cというのが四日までの人であります。こうして、有給休暇ゼロの人には大体一万五千円見当の品物が渡される。シチズンクォーツのデジタル時計だとか、そういうものが渡される。それから二日までのBという人は五千円見当のもの、電気かみそりだとか、そういうものが渡される。さらにCの人はコーヒーセットとか、大体三千円ぐらいのものが渡される。さっき認められましたように、有給休暇をとるということがそれこそ権利であるのに、この権利を行使することを――こういう物品で奨励するというこのこと自体、有給休暇をとる権利を妨げることになるのではないだろうか。これが一つの例であります。  もう一つ、これは同じ工場の第一製造部の第三組立課の例でありますが、労働者が休みをとろうとするときに、前の日、朝礼で、みんなの前に出て、私はこれこれの理由であした休ませていただきますと言う、そういうことをやらなければいけない。それで休んだ翌日、また朝礼で、昨日はどうも皆さんに御迷惑をかけた、こういうことを言わなければいけない。この職場ではこういうことがあるので九八・八%という著しい出勤率、異常な出勤率になっているわけであります。  このようなことは、労働者の最低の権利である有給休暇をとることを会社側が妨害しているようなこととしか言えないと思いますが、こういう事実があるとすればこれは許せないことだと思いますが、どうですか。
  53. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 ただいま先生指摘の事情は必ずしも実態をつまびらかにいたしませんが、一つには、労働基準法で最低限定められます取得権利を持つ日数に対しまして、大企業などでは労働協約あるいは就業規則によりまして、それを上回る取得日数を与えているということがむしろ一般的なようなことになっております。その限りにおいては、基準法との関係においてどうこう言うことはできないわけでございます。  そういうことでございますので、私ども、たとえばボーナスとかあるいは精皆勤手当というようなものについて、年次休暇を取得することが不利益を招くというようなことは、必ずしも労働基準法上の違反ということが直接言えるわけではございませんが、一般的には好ましいことではないというようなことを私ども指導しております。  それから、いまのような、前日には同僚に断り、翌日お礼を言うというようなことも、一般的に申しますと、職場の雰囲気として結局有給休暇をとりにくいということになっているという点では、もし実態がそうでありますれば、必ずしも好ましいものではないということは言えると思います。
  54. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 労働省は昨年六月二十三日、労働時間短縮の行政指導というのを出している。さっき言ったように、この法律の精神からいって当然の権利である。しかも、いまの雇用情勢からいって短縮の行政指導をやらなければいけないと言っている。そして、たとえば年次有給休暇取得が不利益を与えるような賃金の決め方をやってはいけないということを言っている。これは、日産自動車自身が七七年三月十八日付東京都労働委員会へ提出した上申書によりますと、昭和五十一年度の昇給に関する勤怠状況比較一覧表の中に、出勤率一〇〇%のものであってもこれは名目だ。有給休暇をとった分を怠けた分にして、実質九十何%という数を入れて、これ自体を賃金を決める基準にしているというのは、これはまさに通達そのものに著しく反するわけであります。  特に私はもう一度はっきり、これは労働大臣に伺いたいわけでありますが、こういう当然の権利をとることについて、何かもう非常にとりにくいような状態を会社がいろいろな形でつくるということ、これはいいことなんですか、悪いことですか。これは悪いことでしょう。ちょっと御答弁を願いたいと思います。
  55. 栗原祐幸

    ○栗原国務大臣 いいとか悪いとかということをここで申し上げるわけにはまいりませんが、労働省といたしましては、労働者の当然の権利を阻害するような行為については、これはよろしくない、こう言わざるを得ないわけです。  それからなお、労働省といたしましては、この時間短縮の問題につきましては、あれは、五十二年の十一月の中央労働基準審議会の建議もございますし、また両院の決議もございまして、その線に基づきまして行政指導をしっかりやれということでございますので、その線について徹底をしていきたい、こう考えております。
  56. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 企業側がその権利をとることを阻害するのは問題だ、それはさせてはならないと言うけれども、そういう通達などがあるにもかかわらずこういうことが現に起きているという問題があるわけであります。  それから、大企業の場合は基準よりもよけいあると言いますが、確かに日産の場合十四日から始まるという制度でありますが、現実にとれないということからすれば、幾らそういう制度があってもだめだということの方が大事であります。  なお、この村山工場について、いま行われている決まって一時間残業をやらせるようなやり方や、年次有給休暇もとれない、それをとれるようにするというようなことに改めるだけでも、いま生産部門にいる約四千人の労働者、これをほとんど一千人ふやすことができる、こういう試算もできる。つまり、労働条件を改善すること、当然の権利をとらせるということだけでも、まさに雇用をこれだけふやすということが出てくるわけであります。  こういうことを含めまして、私はこの雇用問題におきまして、どうしても雇用拡大計画をつくると同時に、この労働条件の改善や、大企業の社会的に不当な人減らし合理化、それに対してはきっちりと規制していく、こういうことを含めての総合的な対策、それから公共事業で本当に失業者が働けるような対策、公的就労事業の拡大、こういうものにつきまして私は強く要求すると同時に、時間の関係で次の一般消費税の問題に移っていきたいと思います。  初めに、五十四年度予算で国債依存度が四〇%になって、そうしてこの十五兆二千七百億円という大変な国債発行をやる問題や、五十一年度が三〇%、五十二年度が三四%、五十三年度が三八%、今度が事実上四〇%という、昭和初年の、昭和七年から昭和十年のあの水準をもっと超えたような進み方に行ってしまって、そして国債費が四兆円を超えた。これは、大蔵省が出されました収支試算によりまして増税路線を選んでも六十年度は十一兆円の国債費になりますね。実は六十年度以後が問題でありまして、大蔵省の予算委員会に提出した資料によりますと、その後特例債の償還額がずっとふえるということで、ざっと計算しますと、六十四年度ごろになりますと国債費が二十兆円を超えるような結果が出てくるわけであります。まことに恐ろしい破綻であります。  これで考えていただきたいのは、この四兆円という国債費、それがどんどん水ぶくれになって、この四兆円という財源がもしあるならば、それこそ一兆円減税、そしてまた昨年度の社会保障関係費を三割ざっと伸ばすということ、それをやってもなお一兆円ぐらいおつりが出るという、これほどいまの国債費が国民の福祉への重圧になっているわけであり、わが党はこれまで、こういう国債を乱発していって、国債費をふやしていって、予算を先取りしていくこと自体がまさにこれまでの政治の悪しき遺産だということを言ってきましたが、そういうことになったわけであります。  このほか、いま国債発行をめぐりまして、特に六・一%の国債の市況のどろ沼状態とかということを目の前にして、そして利子引き上げも現実の問題になって、それをめぐりましてまたインフレのおそれということが強まっているわけでありますので、ただ政府が今度五十四年度予算で財政収支がどうだと言う前に、こういうようにこれまでの政策が余りにも国債増発をやり過ぎてきた、そのことがこういうようないまの国債費の膨張を招いてしまったということを含めてやはり反省がなければいけないと思いますね。そうして、その反省の中には、たとえば昨年度七%成長をどうしてもしなければいかぬ、そのためには三割の国債の枠を超えてもいいんだという議論をいまの時点で考えてみて、よかったのかどうか、そういうことも含めて見解を伺いたいと思います。
  57. 金子一平

    金子(一)国務大臣 石油ショックの後で日本が大きな不況の波をかぶりまして、これは国民生活を安定させ景気を刺激するためにはやはりある程度の規模の予算を組まなければいかぬ、しかし税収が毎年毎年思ったように入ってこないということで公債に依存する政策をとってまいったわけでございますが、特に昨年から本年にかけての状況をごらんいただけばわかりますように、やはり経済構造が、これは日本だけじゃございませんで、世界全体を含めて、大きく経済成長の与件が変わってきた、構造変化が来たというふうなことで、なかなか思うような経済の伸びができなかったということでこういう多額の、大量の国債発行のやむなきに至ったということでございます。私どもといたしましては、幸いと、昨年からことしにかけての努力の結果、だんだんと経済の回復基調もはっきりしてまいりましたし、この機会にひとつ赤字公債脱却の道だけはしっかりと切り開いてまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  58. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) どうも過去の財政政策、大企業のための放漫財政とも言わなければならないのですが、それが招いたという点はいま述べられずに、ただ構造的変化ということへどうも転嫁して、これは世界的な構造的変化と言って外因に逃げるのはおかしいですね。これは過去の国債依存度をずっと六〇年代から七〇年代と追って各国比較してみれば、日本は高過ぎます、ベトナムで侵略戦争をやったアメリカよりも高かったのですから。こういう異常な財政をやってきたあげく、しかも、七%成長とかなんとか言って三〇%の枠を超えていいというような、そういう議論が行われてここまできたということを前提にして私は次の質問に入ります。  一般消費税の導入、このように国債の発行が大変になってきたので、これ以上増発路線がやれないからいよいよ一般消費税の導入だ、こういうことを政府は言っているわけであります。一般消費税の導入の問題というのはいろいろな角度から当然検討しなければいけない。物価へはどうだろうか、国民の暮らしにとって弱い者いじめになるのじゃないだろうか、中小企業者にとってどうだろうか、二千万以下は外すと言ったって、そういう中小業者は仕入れるものに税金がかかりますから、こういうものはどうだろうか、こういう問題が幾つもありますが、ともかく政府の立場というのは、どんなに悪い税金であっても財政再建のためにはこれ以外にないという立場で出されてきていると思いますが、財政再建というからには、五%税率で税収額が、たとえば五十四年度、五十五年度でどのくらいになるか、答弁願いたいと思います。
  59. 金子一平

    金子(一)国務大臣 五%の税率で大体三兆円前後になろうかと試算いたしております。私どもは、いま御指摘がございましたけれども、歳出の削減はできるだけやろう、あるいは歳入につきましてもいろいろな税を見直してみたのでございまするが、とても今日の大きな財政不足を賄うだけのものがほかにございません。まあやむを得ずひとつ一般消費税の導入を御検討いただきたい、こういうことをお願いしておる次第でございます。
  60. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) ではもう一度、五%の導入で物価への影響というのはどのくらいと考えていますか。
  61. 金子一平

    金子(一)国務大臣 大蔵省で専門家に試算をさせましたところでは大体二・五%、税率の半分程度というふうに結論が出ております。
  62. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) この二・五%がそれで済むかどうか、議論は一応ここで外しますが、一般消費税の性格からしまして、つまり、一般消費税というのは広く財貨サービスの消費一般に対して負担を求めるということですね。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 そうして、新税は企業税ではないということも言っております。それで、結局消費者にかけて負担させるのだということになりますと、こういう一般消費税の性格から、国、自治体も業者などから物品やサービスを買うときには担税者になるのではないかと思います。それはどうでしょうか。
  63. 金子一平

    金子(一)国務大臣 もちろん一定の非課税物品がございまするけれども、そういうものを外して、財貨サービスに一律五%なら五%をかけますると、国、地方も当然担税、税金を負担していただかなければいかぬ、こういうことになります。
  64. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) そうしますと、使途別で見ると、特に物件費や施設費、これは用地費は除いて、用地の取得にはかからない。それからこういうものに関してはかかるということになる。つまり五%税率なら五%経費がその分上がる、これはそのまま認めざるを得ないということになったわけでありますが、そうしますと、たとえばこれは地方自治体などへの補助金についても物件費や施設費などでの上昇を考えざるを得ないと思いますが、その辺はどうでしょうか。
  65. 金子一平

    金子(一)国務大臣 物件費のあるものについては、当然五%引き上げということでこれは考えなければいかぬという場合も相当出てくると思います。
  66. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) そうしますと、大体認めるということでありますが、これは厚生大臣にも伺いたいのですが、たとえば社会保険医療は非課税であっても薬代が上がりますね。それで薬価基準を上げたりしなければいけなくなるのじゃないのか、それに伴う国庫負担増なんか起こるのではないか、そういうことは厚生省としてはもうよく検討されているのですか。
  67. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 社会保険診療に用いる医薬品は、一般消費税がもし課される場合には確かに薬価基準にはね返る可能性はございます。ただ、まだ現在財政当局とこの問題を詰めておるわけではございませんけれども、厚生省自身としては、一般消費税に係る医薬品の取り扱いについては、今後財政当局との詰めの段階において非課税を要望するつもりでおります。
  68. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) まだ検討がほとんどやられてないということでありますが、ともかく社会保険医療それ自体はかけないとしても、薬代、これはメーカーから買うときには当然かかるというのがたてまえでこの税金が生まれてきたということはよく御存じだと思います。  さて、地方自治体への移譲はどのようにしてやるのか、どのくらいやるのか、この問題について。
  69. 金子一平

    金子(一)国務大臣 地方自治体にある程度配分しなければならないと考えておるのですが、まだ、五%なら五%のうちの何%を地方に移譲するか、最終的な結論は出ておりません。考え方としては、これは政府税調では、一般消費税の税額を課税標準にして都道府県に地方消費税として課税させるということを考えておりますが、残りの国で受けた分の何%かはやはり税源のなだらかな配分を、一地方に偏らないような配分をするために地方にも譲与しなければいかぬと思いますので、そこら辺の率をどうするかというのはこれからの検討問題と考えております。
  70. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) それもよく詰まってないようなお話でありますが、ともかく五%なら五%のうちの何%かが地方の一般消費税になり、そのほか交付税の形か譲与税の形で配分するという、大体それをお考えのことだと思いますが、さてこの一般消費税導入に伴いまして徴税吏員が何名増員が必要でありますか。経費はどのくらいふえますか。
  71. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これも御承知のとおり、まだ一般消費税の中身は最終的には決定しておりません段階でございますので、それに必要な国税職員がどうなるかというところまで検討はいっておりませんが、私どもの考え方といたしましては、課税徴収について、これは納税者の方もそうでございまするが、極力手間を省いて、今日すでに実施されております所得税、法人税とあわせて簡単に申告し納税していただけるような方向に持っていきたい。したがって、税務職員も余り増員しないでも済むようにということで考えておる次第でございます。
  72. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) これも余りまだはっきり固まってないけれども、ともかく余りふやさないようにという、ふやすことには間違いないというふうに承りましたが、ともかく以上のように税金五%で大体三兆円前後入ってくるだろうということに対しまして、経費の方が、やはり負担する部分が国や自治体が担税者になるがゆえにふえるという問題もあるわけですね。それからまた地方にも移譲しなければいけないということになってきますと、三兆円がそのまま財政バランスをよくする三兆円ではないということがはっきりしてくるわけでありますが、例の収支試算にはこれが織り込まれているかどうか、その点について伺いたいと思います。
  73. 長岡實

    ○長岡政府委員 財政収支試算が、五十九年度に特例公債の依存から脱却するために毎年度どの程度の税収の不足が計算されるかといったような数値をお示ししてございますけれども、その税がいかなる税目であって、それが歳出にどういう影響を与えるかということは計算に入れておりません。
  74. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) そうしますと、首相も五十五年度のできるだけ早い時期に実施すると言い、新経済社会七カ年計画の基本構想の中でも五十五年度に実施すると言って、それに整合性を持ったという断り書きがわざわざつきまして収支試算が出されたにもかかわらず、これが入ってないということが明らかになりますと、ますますこの収支試算そのものが一体何であるかということになってくるわけでありますが、そこで、私がお配りした資料をぜひ見ていただきたいわけであります。  一般消費税導入が国家財政に与える影響の試算を行ったわけであります。これで読みますと、歳入の方の三兆円、これは先ほどの大臣の御答弁と一致しておりますから問題がないと思います。地方への配分は、地方自治体の方からもいろいろ聞きたかったのですが、仮に三二%としまして、どういう形をとるにしろ九千六百億円は地方に行くということになります。  ところが歳出の方でいきますと、これは政府から出された資料で見まして、人件費の増加、この人件費の増加については私たちは二・五%で計算したのです。というのは、二・五%以上は物価の上昇が起きるということがありまして、そしてまた八十五国会の参議院の大蔵委員会で、渡辺武議員の質問に時の村山大蔵大臣が、一般消費税で物価が上がるなら当然賃上げの要素になり、それをわれわれは便乗だなんて言わない。民間が上がれば当然国家公務員の賃金というのもそういう生計費や民間賃金を参考にしなければいけないわけでありますから、一応二・五%として見たわけであります。あとここに説明してあるように、たとえば物件費や施設費、こういうものは五%上がるというのは、施設費はわざわざ用地費を省いた計算になっております。それからさらにコード五、コード六、コード九、これらにつきまして、コード五の補助費、委託費につきましても中を物件費や人件費、施設費に分け、コード六についても分け、そして徴税経費一千億円、これは大蔵省御不満かどうかわかりませんが、仮にこう見た場合には九千二百七十億円、それを省いても八千億円以上の経費増になるわけですね。  だから、三兆円税収があるとしても、実際に経費がこれだけふえるということになりますと、国の財政収支へ寄与する分というのはわずか三分の一の一兆円になってしまうのではないか。しかも、これはまた共産党がすでに発表した試算でありますが、地方自治体に三二%一般消費税が行ったときの経費増を同じように考えるときに、これは五十一年度決算ベースで計算しますと、都道府県ではかえってバランスが約二百七十八億円の赤字になる、市町村では七百五十七億円の赤字になるというように、地方に行った分もプラスにはならない。しかも、これにもし、いろいろな新聞その他調査が指摘しておりますように、不況が要因として働く、よく言われるデフレ要因として働く、それによって法人税の伸びが鈍る、所得税も鈍るということが加わって税収減が加わりますと、まさにこの一般消費税によって、国民にとってはとんでもない悪税が出てきた上に、これはどんなに悪税でも財政収支をよくするにはこれ以外にないから入れるのだというその前提も崩れてしまうわけになるのでありますが、政府はこういう問題についていままで検討されたことがあるかどうか、それを伺いたいと思います。
  75. 長岡實

    ○長岡政府委員 お答え申し上げます。  一般消費税を何%を前提として導入した場合に歳出面でどの程度の影響があるかという試算は、まだいたしておりません。工藤委員指摘のようにへ歳出の面では人件費、物件費等の影響を受ける部分が相当入っておることは事実でございます。特に年金のように物価スライドをするものもございますから、影響がないとは申しませんが、予算の編成は御承知のように行政需要をどれだけ伸ばすかという判断と、そのときその時点で歳入がどれだけ入ってくるかという判断とをにらみ合わせて予算を組むわけでございますから、一般消費税の導入による、しかも機械的に計算をいたしました人件費、物件費の上昇率だけが当然歳出の増加要因になるという直接的な関係はないと思います。  また、物価の上昇は初年度限りでございまして、二年度以降は影響がない、こういうことを申し上げておきます。
  76. 工藤晃

    工藤(晃)委員(共) 第一、こういう試算さえやってないということは、私、大変問題だと思うのですね。総理は今度の国会で何と言われましたか。一般消費税問題、国会の内外で論議を深めてくれ。深めるには深める前提として、いま言ったように、どういう影響がいろいろな各方面に及ぶかということがなければ深めようがないじゃないですか。政府自身、私がこうつくってきたものに対応するようなものをぜひつくってもらいたいものですよ。つくってみて一体どうなるのか。さっき一年きりと言いましたけれども、国や地方自治体が担税者であることは、来年度だけでなしに再来年度も担税者になる、その次も担税者になる。負担しなければいけないのだから、負担増というのは続くわけです。  そういうことでありますから、私が最後に要求したいのは、やはりこれに相当するような検討を行って、そしてもしわれわれと大体似たような結論が出るならば、何でこの一般消費税導入になるのかということを再検討すべきでありますし、それで一兆円くらいふやすならば、わが党が言っておりますような大企業、大資産家への優遇税制を根本的に改めると一兆、二兆出てきます。それからまた、E2Cはもとよりああいう軍事費の削減、こういうものをやればそのほかの不要不急の経費は幾らでも削れるのですから、なぜそういう方を選ばないでわざわざ国民にとっても苦しい、そして財政収支のバランスにとっても余りよくならない、そういうのを選ぼうとするのか。  時間も最後に来ましたので、この問題について総理見解をぜひ聞かしていただきたいと思います。
  77. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いま政府委員の申し上げましたように、歳入歳出全般をにらみながら財政効果というものを判断いたさなければなりませんので、数字につきましては一般消費税の内容が固まりました段階でまたいろいろ申し上げたいと思います。いま事務当局がやっておりますのは、消費税の内容につきまして、たとえば先ほど御指摘のありました中央、地方の税額の配分をどうするかとか、厄介な問題がまだ未調整のまま残っておるものですから、一日も早く結論を出して御検討いただきたい、かように考えております。
  78. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 一般消費税に関連いたしまして重要な問題を御提起いただきまして論議を深めていただいたわけでございまして、御指摘になりました点につきましては、政府といたしましても吟味いたしまして、また御審議をいただくようにいたしたいと思います。
  79. 竹下登

    竹下委員長 これにて工藤君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分より再開することとし、この際休憩いたします。     午前十一時四十五分休憩      ────◇─────     午後零時三十七分開議
  80. 竹下登

    竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。二見伸明君。
  81. 二見伸明

    ○二見委員 私は、きょうは最初に犯罪被害者補償についてお伺いをし、その次に外交問題、イランの石油情勢農業問題の順番にお尋ねをしたいと思います。  最初に、総理大臣に御感想を伺いたいわけでありますけれども、先日も大阪で十七歳の少女が刑務所に入りたいということでトイレで女性を刺殺したという事件がございました。いわゆるこうした行きずりの殺人事件というのは最近非常にふえてきておりますし、ちょっと古い例でいきますと、四十九年の八月には三菱重工の爆破事件でたくさんの方が殺傷されております。  法務省が昭和五十二年度に調べたところによりますと、暴力による故意犯によって死亡された方は千二百七十五名だそうでありますけれども、そのうち六百十二名の方が、いわば補償の請求のしようもない。犯人が死んでしまったり、あるいは逃亡してしまったり、犯人にそうした補償をするだけの能力がなかったり、このために被害者、そしてその遺族というのは非常な苦しみを受けているわけでありますし、その苦痛というのは、私は想像に絶するものがあるだろうと思います。そうしたどうしようもない、人の命というものは金銭にかえられるわけではありませんけれども、補償請求しようにもしようのないような事件に遭遇された人、またその遺族に対して、やはり政治が何らかの手を差し伸べるべきではないかと私は思うわけでありますけれども総理大臣としては御感想はいかがでございましょうか。
  82. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 御提起された問題は、事柄は政治の問題として大切な課題であると思います。私が承っているところによりますと、政府部内におきましてもその問題についての検討が行われておると承知いたしておりますが、さらに深く検討の必要があるものと思います。
  83. 二見伸明

    ○二見委員 犯罪被害者補償制度というのは、実は暴力犯罪事件に巻き込まれた被害者や死者の遺族に対して、国が犯人にかわって一定額を補償する制度でございまして、アメリカだとかイギリス、西ドイツ、スウェーデン、ニュージーランドなどですでに実施されております。しかし、日本ではまだ全く手をつけていない制度でございます。  実は昨年の八月十一日の衆議院の法務委員会で瀬戸山法務大臣が、「私としては、何とか次の通常国会にはこの制度の創設をする法律案を提案いたしたいと思っております。」こう答弁をされました。私も、今国会にはこれが出てくるのではないかと期待に胸をふくらませていたわけでありますけれども、今国会では全く音さたなしであります。この制度に対して、法務大臣は法律案として提案をしたいと言われた。そこまで言明されたその法律案が今国会には出てこない。一体これはどういうことになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  84. 古井喜實

    ○古井国務大臣 お尋ねの問題でありますが、いまその問題については、関係省庁の間で検討しておるという段階であります。  なお、その中心になって取りまとめに当たっておられるのは警察庁ということに話し合いの結果なっておりますので、われわれの方も仲間に入り、協力しておりますけれども、現在そういう状況であります。
  85. 二見伸明

    ○二見委員 国家公安委員長、これはどうなっておりましょうか。
  86. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 お答えいたします。  御指摘のように、この制度は欧米の先進国では多く実施されておるわけでございまして、私どもといたしましても、わが国においてもこのような制度を設けることは必要である、かように考えまして、法務省との間には特に緊密な連絡をとりながら現在法案の内容を詰めておるわけでございます。
  87. 二見伸明

    ○二見委員 この制度をつくるには、法務省と御協議されておるそうでありますけれども、さらに大蔵省あるいは自治省など関係省庁との連絡も密にしなければならないだろうと思います。警察庁としては、こうした各省と今後とも連携を密にして、早急に制度を創設できるように努力をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  88. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 本制度の実施には当然相当な資金が必要であるわけでございますから、その点で大蔵省、自治省、そういった関係省とも十分協議をして、できるだけ早く結論を出せるように最善の努力をいたします。
  89. 二見伸明

    ○二見委員 先ほど総理からも、深く検討すべき問題だというお話がございました。私も、この制度化の前には、財政問題であるとか人員増の問題であるとか、困難な問題があることは承知いたしております。しかし、補償制度がスタートしない限り突然の不幸に遭い、その上補償ももらえずに泣き寝入りの二重苦に悩む人は着実にふえていくわけでございまして、この制度の実現に対して今後ともより積極的に取り組んでいかれることを要望いたしたいと思います。  それでは、質問を変えまして外交問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  最初に、日ソ関係についてお尋ねをしたいわけでありますが、日ソ関係は経済、文化、教育などの交流を通じて着実に進展をしてきていると思います。にもかかわらず領土問題は解決済みとして、択捉、国後にソ連が軍事基地を建設している、これは私は非常に遺憾に思います。が、それはそれとして、総理大臣は総裁就任のときのインタビューで、本来ソ連の安全保障政策は非常に用心深い防衛的なものだと思う、ソ連外交は非常に手がたく、すぐれた外交を展開してきている、ソ連の外交防衛政策は好戦的なものとは考えていないと述べられておりますけれども総理のソ連観はいかがでございましょうか。
  90. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま御指摘のように、就任早々のところで申し上げた考えと変わりはありませんで、ソ連は北は北氷洋でございますけれども、南は多くの国とスロープ続きで国境を接しておる国でございます。過去の歴史から申しましても何回かの侵略を受けた経験を持っておる国でございまして、したがって国の防衛につきましては非常に神経質なまでに慎重で、用心深い国であるという感じを持っております。進んで他国を攻略するというようなことよりは、防衛に主眼を置いた外交防衛政策を展開している国ではないかというように私は受けとめております。
  91. 二見伸明

    ○二見委員 択捉、国後にソ連が軍事基地を建設いたしまして、伝えられるところによりますと、一個旅団程度のソ連地上軍が進駐している、あるいはレーダーサイトも新設されたという報道がなされておりますけれども、こうしたソ連の行為、行動というものを総理大臣はやはり防御的なものだという受けとめ方をされておりますか。どうでしょうか。
  92. 山下元利

    山下国務大臣 総理からお答えいただく前に、防衛庁としての見解を申し上げますが、各種の情報から判断いたしまして、昨年の夏以降択捉、国後両島地域にただいま御指摘のように旅団クラスと申しますか、ソ連軍の編成は日本と違うわけでございますけれども、数千名、大体旅団クラスというふうな兵力が配備されて基地も建設されているようでございますけれども、海空の兵力等についての増強は見られませんし、滑走路につきましても従前以上に拡大されているということも確認しておりません。それらを考えますならば、主として島嶼防衛的なものでないかと防衛庁は考えておる次第でございます。
  93. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、日本の防衛計画に変更の必要はないというふうに考えてよろしゅうございますか。
  94. 山下元利

    山下国務大臣 そのような動きにつきましては重大な関心を持ちましておさおさ、注視いたしておりますけれども、私どもは、いま持っております「防衛計画の大綱」の策定のときに考慮いたしましたわが国周辺の国際情勢の基本的枠組みを変更する程度の情勢の重要な変化とは、当面は考えておらない。したがいまして、現段階でこの「防衛計画の大綱」を見直す必要はないと思いますが、ただ十分注視してまいりたいと思っております。
  95. 二見伸明

    ○二見委員 外務大臣にお尋ねいたしますけれども、ソ連は昨年善隣条約草案を一方的に発表いたしました。この善隣条約草案については、去年の通常国会のこの予算委員会でも若干議論が出た問題でございますけれども、この草案に対して、日本政府は、まず領土問題を解決して平和条約を締結するのが先決だということで、これは検討を拒否してきた。たしかそのとき、外務大臣は見もしないで金庫に入れたのだという表現をされたように私は記憶いたしておりますけれども、しかし、昨年十二月二十一日の参議院の決算委員会では、たとえば今後本当に相談し合えば、平和条約と善隣友好条約と同時審議ということも考えられるし、いろいろ方法はある、こう答弁をされております。これは、善隣条約草案というか善隣条約に対しての考え方が変わったのかどうか、これはいかがでしょうか。
  96. 園田直

    ○園田国務大臣 考え方は変わっておりません。ただ、私がグロムイコ外務大臣に申しましたのは、日本のいろいろな問題に対する態度は、北方四島の返還という大前提がある。したがって、この領土問題について解決済みだという態度ではなくて、これを解決しようとする姿勢、あるいはまじめに話し合おうということであれば、あとの問題はいろいろ方法はあるではありませんか、この程度のことは申し上げてあります。ただ、ただいま出されております善隣友好条約の内容には賛成できません、こう言ったのであります。
  97. 二見伸明

    ○二見委員 そういたしますと、ソ連は領土問題は解決済みだというかたくなな姿勢をとっておりますけれども、その姿勢をやわらげて、領土問題は日ソ平和条約を締結するその交渉の段階で解決しようじゃないかというようなところまでソ連がおりてくるならば、善隣友好条約の交渉には入ることもできるというふうに、内容の賛否は別としまして、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  98. 園田直

    ○園田国務大臣 ソ連の方が領土問題について話し合うならばどうするという条件は出してはおりませんけれども、私は腹の中では、共通の利害問題もあるわけでありますし、平和条約その他の問題もあるわけでありますから、ソ連がそういう姿勢、態度を見せるならば話し合う糸口は出てくる、こう考えております。
  99. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、政府は、日中平和友好条約あるいは米中正常化、これは安保条約にかかわりなく締結できたというふうにお述べになっておりますけれども、それでは日ソ平和条約も安保条約にかかわりなく締結できるものなのかどうか、この点についてはどうでしょうか。
  100. 園田直

    ○園田国務大臣 外交すべてそうでありますが、ソ連に対しても主張すべきは主張し、前提は前提として明確にし、しかも冷静に粘り強くということがその基本であると考えております。ソ連に対して、私は日米安保条約を含む日米関係日本の基軸であるということは明確に言っておりますから、当然日米安保を基軸とする日本の地位というもの、その日本とソ連が交渉するということは明確にしておるところであります。今後も明確にする所存であります。
  101. 二見伸明

    ○二見委員 ちょっと細かい中身に入って申しわけありませんけれども、善隣友好条約草案を先ほど反対だと仰せになりましたけれども、三条、五条というのがありますね。三条というのは、ソビエト社会主義共和国連邦と日本国は、締約国の一方の安全に損害を与え得るいかなる行動のためにも自国の領土を使用させない義務を負う。第五条は、ソビエト社会主義共和国連邦と日本国は、国家指導者の会合と意見の交換により、並びに外交ルートを通じて、両国の利益にかかわる重要な国際問題についての定期的接触と協議を継続し拡大する。双方が平和の維持にとって危険であるとみなす事態が発生した場合あるいは平和が侵害された場合、情勢改善のためにとり得る措置について意見を交換するため、双方は直ちにお互いに接触する。この三条、五条については外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。これは安保との関係上好ましくないというふうにお考えになるか、それとも安保とは関係なく好ましくないとお考えになるか、この点についてはどうでしょうか。
  102. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 先方の提示いたしましたこの条約草案につきましては、外務大臣は、これは検討できないと、こういうお答えをして、ただ礼儀上持って帰ってこられた、こういう立場でございますので、この内容につきましては、私どもといたしましては考え方を述べたくない、差し控えさしていただきたい、こういうことでございます。
  103. 二見伸明

    ○二見委員 いずれにいたしましても、日中平和友好条約が締結され、日本の立場から考えても、やはりこれから日ソ関係というのは長い目で見て友好を持続していかなければならないだろうと思います。そうしたことを考えた場合、かつて日本からは田中総理大臣が訪ソされました、今度はソ連の首脳が日本に来てもいい番じゃないか。日本がソ連の首脳の訪日を要請し、日ソ間のいろいろな問題について、特に領土問題になると思いますけれども、忌憚のない意見を交換し合うということも私は非常に大切なことではないかと思いますけれども、外務省にそうしたお考えはございますか。
  104. 園田直

    ○園田国務大臣 日本側とソ連側の指導者の交流、忌憚のない会話は一番大事であると考えております。したがいまして、わが方は、ソ連の最高指導者またはこれに準ずる人の訪日を正式に招請をいたしておりまして、たびたびそれを催促をいたしております。  なお、外務大臣と私の定期協議会、平和条約を中心にした協議会は、今度はソ連が来る番でありますから、これもしばしば強く要請しているところでございます。
  105. 二見伸明

    ○二見委員 質問を変えたいと思います。  中越関係、中国とベトナムの関係が非常に緊迫、険悪になってきております。けさの報道によりますと、中国が制裁を開始したという新聞報道もございます。中越紛争が、このままの状態でいきますと、いつか、何らかの時点で爆発点に達するのじゃないかという危険性も私は感ずるわけでありますけれども政府は、現在のこの中越の紛争状態といいますか、この状態をどのように分析をされておられるか、お示しいただきたいと思います。
  106. 園田直

    ○園田国務大臣 なかなか現在の情勢で断定することは困難でありますし、また断定してもいけないとは存じますけれども、御承知のごとく、ベトナム側には、アジアの平和のためにという申し入れをしばしばやっておりますし、中国の方にも、この国境で紛争を起こしてアジアの平和を撹乱し、またASEANの国々から懸念を寄せられるような行動は慎んでもらいたいという、両方に申し入れをしております。  いまの情勢では、ややカンボジアの前政権の遊撃戦が活発になった気配もいたしますし、しかしまた一方ベトナムの方も、過度に兵力を展開をして補給には相当困難を感じておる。一方中国は、制裁制裁と言っておりますものの、本格的な、真面目なる攻撃がここに展開されることはないのではなかろうか、ベトナムに対する牽制の程度でいくのではなかろうか。かつまた、この背後にあるソ連の艦隊、アメリカの海軍、これらの動向は御承知のとおりでありますが、この背後の勢力もこの地域で正面から対決をしようということは避けておる。こういうことでありますので、重大な関心と懸念を持ちながらも、これをじっと見ておるところでありますが、いまのところは、突如として急激なことが起こることは可能性は少ない、こう判断しております。
  107. 二見伸明

    ○二見委員 この中越紛争を鎮静化するには、私は、根本的にはカンボジア問題が解決しなければこの問題はおさまらないのだろうと思います。では、カンボジア問題を解決する速効性のある対策はあるかということになりますと、非常にむずかしい。なかなか期待できないのが正直言って実情だろうと思います。この問題に関して私は、特に中ソ両国が局面打開のために全力を挙げてしかるべきだと思いますけれども、と言って日本も手をこまねいて見ているわけにはいかないし、何らか日本としても鎮静化の方向で打てるべき外交的な手があるのかどうか。日本としては、この点までは何とか紛争が鎮静化するためにお手伝いできるとか、そういうものはございますでしょうか。
  108. 園田直

    ○園田国務大臣 他国の紛争に対して日本は力をもってこれを解決することは考えもしないし、やってはならぬところであります。日本の持っておりまする政治力と経済力を振りしぼって、特にASEANの国々と歩調を合わせつつ、中越並びにカンボジアという国々に平和的な解決が、困難ではあってもできるように努力することが最善の方法であると考えております。
  109. 二見伸明

    ○二見委員 このインドシナ半島で最悪の事態が起こらないことを心から願っておりますし、絶対にあってはいけない。たとえば中越間で重大事態に陥るようなことがあっては絶対にならないと思いますし、そのために日本も含めて関係諸国は、ありとあらゆる全知全能をしぼって努力をすべきだと思いますけれども、ただ事態というのはこういうふうになるとわかりません。大丈夫だろうと思うけれどもわからないのが実情だと思います。  こういう質問があるいは適切かどうかわかりませんけれども、万が一あるいは万々が一重大事態に陥った場合に、日本としてはどうすべきなのか、そのときどういう態度をとるべきなのか、原則としてどうあるべきなのか、外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  110. 園田直

    ○園田国務大臣 万々一の事態が起きないように全力を尽くす所存でありますけれども、仮定の御質問にお答えすることは適当ではないと思いますけれども、万々一の場合があっても絶望することなく、既定の方針をもって平和的解決になるように最善を尽くすべきだと考えております。
  111. 二見伸明

    ○二見委員 それは万々が一の仮定の話で、仮定の問題に仮定の話をするのは本当に危険でもありますし、誤解も一受けますので差し控えるべきだと思いますけれども、いまの外務大臣の御答弁は、要するに、万々が一の場合にはあくまでも中立的立場をとりながら紛争解決に全力を挙げる、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  112. 園田直

    ○園田国務大臣 おっしゃるとおり、日本としてはあくまで平和的解決を願い、平和的方法、話し合いでやるようにやるべきであると考えております。
  113. 二見伸明

    ○二見委員 ところで、日本とアメリカとの関係について総理大臣にちょっとお尋ねしたいわけでありますけれども、特に私は、政治の最大の責務というのは、総理大臣も施政方針演説でおっしゃられたように、日本の平和と安全を確保することにあると思います。それはどうするかということについては、遺憾ながらわが党と政府との間には見解の違いがございます。わが党は等距離完全中立政策を基本方針として、日米安保条約は外交交渉を通じ日米両国の合意の上で廃棄をし、日米友好条約を締結すべきだ、こう考えております。しかし総理の方はあくまでも節度ある自衛力と日米安保を軸とするという方針であります。  ただ、総理の施政方針演説を読んで率直に感じたことは、総理は、節度ある自衛力と日米安保を軸としながらも、真の安全保障というのは防衛力のみでは足りないのだ、こう述べられているわけであります。私は、わが党の立場は差しおいて、百歩譲って政府の立場に立って考えた場合に、安保条約は手をつけない。その場合でも日本の今後の安全保障を考えた場合には、経済だとか貿易だとかエネルギーだとか、そうしたいわゆる非軍事的な相互安全保障の体制、日米間でそうした相互安全保障体制というものを模索していく必要があるのじゃないか。場合によってはそうした基本条約を締結する方向でこれから日米外交というものは考えていかなければならないのじゃないかと思いますけれども総理大臣としてはどういうお考えでしょうか。
  114. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日米安保条約自体も防衛的な面と経済協力の面とがございますことは御案内のとおりでございまして、広く日米間のパートナーシップを強めていこうという志向を持ったものだと私は思っております。  さらに、いま二見さんおっしゃるように、文化面におきましても学術の面におきましても、経済、政治ばかりでなく、あらゆる面におきまして、日米間の意思の疎通ばかりでなく、具体的な協力、輪を広げていくということはわが国の外交の一つの重要な任務だと考えております。
  115. 二見伸明

    ○二見委員 外務大臣は安保見直し論を主張されたことがございますけれども、外務大臣の安保見直し論というのはどういうことでしょうか。
  116. 園田直

    ○園田国務大臣 日米安保条約は、国際情勢の変化並びにアメリカの世界戦略等によって変化を逐次いたしております。  私が安保見直し論と言ったのは、見直しとは言っておりませんので、大きく二つに分けると、安保条約締結当初は、ややもすると米国は大陸に対する足がかりとして安保条約を考えておったような形跡がある。その後、日米安保条約というものは、その緊密な連絡のもとに、均衡による平和、抑止力による平和、平和の追求というように変わってきた、これが大きく変わったところである。しかし、いまこれをとかく言うと、日中友好条約その他によって米中日の体制などと言われるおそれがあるから、いますぐはないけれども、そういう意味において、この安保条約の運営等については十分話し合う必要がある、こういう趣旨のことを答えたものでございます。
  117. 二見伸明

    ○二見委員 それは外務大臣も、六〇年当時の国際環境といまと違うという前提で、安保条約そのものは条文は変わりありませんけれどもね。六〇年もいまも、あれがなくならない限り、あの条約というのは変わらないのだけれども、条約に基づいた安保体制というものはもう中身が、かつては冷戦構造の真っ最中ですから軍事的色彩が強かったけれども、いまの運用面で改めるというのはそうではなくて、軍事的色彩じゃなくて、むしろ別の面で安保体制そのものを、安保体制というものは実質的には変わってきたのだ、だから、変わったように運営をしていきたいというふうに私は大臣の話を理解したのですけれども、そういう理解の仕方でよろしいですか。
  118. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいまの御発言にはやや納得しかねるものが、理解しかねるものがございますが、あるいは同じことを考えているのかもわかりませんが、私が言いますのは、安保体制の目的が大きく変わってきた。そこで、均衡による平和ということでありまするから、日米の軍事力の提携ということはきちんとやるべきところはやはりやるべきである。しかし、それだけではなくて、総理がおっしゃいますように、各国との外交、政治、経済、こういうもの等すべてを総合的に日本の安全保障を考えるべきではあると考えております。
  119. 二見伸明

    ○二見委員 総理大臣、日米関係というのは、特に最近、貿易のインバランス等で摩擦が大きくなっております。私は、これは日米関係にとって決して好ましいものとは思いませんし、放置しておけば日米経済関係の摩擦が政治問題化するおそれもあるという報道もあるくらいであります。この日米経済関係を打開するために、総理大臣がしかるべき時期に訪米してはどうかと考えるわけで、訪米するというような報道も一部にありますけれども総理大臣としては、日米経済関係打開のためにアメリカへ行かれる意思はございますか。もし行かれるとすれば、大体いつごろがよろしいというふうに御判断されますか。
  120. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日米間は絶えず両国の首脳の間で意思の疎通を図っておく必要があると思います。とりわけ、いま御指摘のように、日米間には経済上の問題があるわけでございますので、首脳の間における意思の疎通は大変必要であると私も考えております。  それでは、私自身の訪米ということでございますが、ただいま国会中でもこれあり、いまの段階で具体的な検討は遂げておりませんので、申し上げるに至っておりませんけれども、日米の首脳間の意思疎通という必要性は痛切に感じております。
  121. 二見伸明

    ○二見委員 とにかく、日本が七%の経済成長が達成できなくなった段階で、たしかカーター大統領が日本に文句を言ってきましたね。抗議の親書か何か来ましたね。そういうことを考えますと、日米間で率直に話し合うことは、私は非常に大事なことだろうと思います。私は、総理大臣が、国会関係もございますから、きょうあすというわけにいきませんけれども、日米経済関係を打開するために、しかるべき時期に訪米をされてもよろしいのじゃないかと思いますが、重ねてお尋ねをしたいと思います。
  122. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日米間の理解を深めるために何でもしなければならぬ立場にあることは御指摘のとおりでございます。ただ、いまこういう時期でございますので、ただいまのところ、具体的にいつどうするというところまでは固まっておりません。
  123. 二見伸明

    ○二見委員 これは外務大臣になりますか、それとも防衛庁長官になるのかわかりませんけれども、いわゆるガイドライン、「日米防衛協力のための指針」について二、三お尋ねをしたいと思います。  これは昨年十一月二十八日の国防会議と閣議で了承されたものですけれども、この指針については、軍事面だけを優先させた日米協力の指針合意は、軍事大国にならないという日本の外交路線にふさわしくない、あるいはアジアの平和づくりに効果的な布石になるとも思われない、そういう批判があることは御存じだろうと思います。私は、この批判は政府も率直に受けとめなければならないし、銘記しなければならない批判だと思います。  そこで、まず伺いたいのでありますけれども、いまこの時点でどういうわけでこの指針に合意されたのだろう。それは防衛庁に伺えば、安保条約がある以上こういうものがあってしかるべきだったのだ、遅過ぎたのだという答えが返ってくるわけでありますけれども、しかし、アメリカの極東戦略がずっと変わってきたこの段階で、このガイドラインに合意されたというのはどこにあるのだろう。これはアメリカのプレゼンス維持のために、政府が米軍のプレゼンスの維持のために合意したのじゃないか、すなわち、日米共同作戦というシナリオの中にアメリカを一枚加えることによってプレゼンスを維持することができると判断したから、そこに最大のねらいがあってこのガイドラインに合意したのではないかと私は判断しているわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  124. 山下元利

    山下国務大臣 御指摘の「日米防衛協力のための指針」でございますが、御指摘のとおり、昨年の十一月に決定せられまして、それで、私は防衛庁長官に就任いたしまして、その指針につきまして手続を進めておるわけでございますが、まず私が申し上げたいことは、これはシビリアンコントロールに立ちまして防衛協力をいたすということが重要な点ではなかろうかと思うのでございます。日米間におきましては、現在わが国の防衛政策はあくまで日米安保体制を基軸といたしておりますが、しかし、緊急時におきますところのわが自衛隊と米軍との間の整合のとれた共同対処行動というものは研究していく必要がある。しかし、それはあくまでシビリアンコントロールのもとでなければならないという観点に立ちまして、私はこの指針を見ておるわけでございます。  したがいまして、いま申しましたように、シビリアンコントロールのもとにおいて米軍と自衛隊との整合のとれた共同対処行動を研究するわけでございます。それが目的でございます。したがいまして、いま仰せのとおり、米軍のプレゼンスを確保するということを目的とするものでないということは明白であると思う次第でございます。
  125. 二見伸明

    ○二見委員 これについては、防衛庁長官と私の間に見解の相違ということで恐らく平行線になると思います。このガイドラインのいろいろな細かい問題については、一般質問あるいは内閣委員会等で詰めたいと思いますけれども、しかし、若干今後の論議を深めるために伺っておきたいと思います。  まず、この指針ができたことによって、アメリカの極東戦略というのは変わるのか、あるいはいままでどおり変わらないのか、その点はどうでしなうか。
  126. 山下元利

    山下国務大臣 私は、日米安保条約と申しますのは、現在におきましても、アジアにおきますところの国際政治の基本的な枠組みでありまして、このことはアジアの平和と安全のために寄与していると考えるわけでございます。その中におきますところの共同対処行動を研究するに出るものでございまして、それが目的である、かように考えておる次第でございます。
  127. 二見伸明

    ○二見委員 私は、アメリカの戦略が変わるか変わらないかをお尋ねしたかったわけでありますけれども、では、もう一つさらに先へ進みます。  この指針の前提条件の中に、「この結論は、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではない。」と、こうあります。これもいわゆるシビリアンコントロールが働いているのだという御説明の一つの理由だろうと思いますけれども、それでこれは、この指針ができた、そして、その指針に基づいてこれからさらにいろいろなことが検討されるわけですね。検討された結果がいつの日かできてきたときに、そのできてきたものに対して、たとえば立法上の義務がないということは、一つの研究成果が出てきたけれども、それに基づいて、いまの法律ではどうもこの研究はまずい、だから新しく法律をつくらなければいけないということではないのだということですか。新しい法律をつくる必要があるかどうかは、そのときの政府が判断すればいいのであって、だから、新しい法律をつくる場合もあるし、つくらない場合もあるというふうに解釈するのか、あるいはそうじゃなくて、現在の法律の中で研究したのだから立法上の措置は全く必要がないのだというふうに解釈するのか、どちらで解釈するのでしょうか。それは予算についても同じことが言えると思います。
  128. 山下元利

    山下国務大臣 この指針を作成するに際しましては、現行法令を踏まえて作業を行うことをもって基本的姿勢といたしております。しかし、これはあくまで研究を進めていくわけでございますが、いまも御指摘がございましたように、この前提条件には「研究・協議の結論は、」「日米両国政府のそれぞれの判断に委ねられるものとする。この結論は、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではない。」ということが明確に書かれているわけでございます。したがいまして、万が一、ただいまのところ、先ほど申しましたように現行法令を踏まえて作業をしているのでございますけれども、具体的な研究の過程で現行法上実行不可能と認められるようなことが出ましても、それはあくまで日本側としてこれを実施するよう拘束されているわけでもなく、またこれを実施するために立法を義務づけられているわけでもない、この点は明確でございます。  また予算措置につきましても、ただいま申しましたように、指針の前提条件からも明らかなように、予算措置を義務づけられることはございません。あくまで日本の独自の判断でこれに対処するということでございます。
  129. 二見伸明

    ○二見委員 義務づけられていないことは私もわかるのですけれども、義務づけられていないということは、現在の法律の中で処置できるから義務づけてないのか。研究の結果によっては、日本政府の判断によって法改正あるいは新しい立法措置をしても構わない、義務づけないだけですから、しても構わないというふうに、これは解釈もできるわけです。新しくしなければならぬじゃなくて、しても構わないというふうにも読めるわけですけれども、その点はどうですか。
  130. 山下元利

    山下国務大臣 先ほど申しましたとおりに、これはあくまで現行法令を踏まえて作業を進めているわけでございますけれども、まだ研究はいま始まったばかりでございます。したがいまして、その過程におきましていろいろな問題点が出てくるかと思いますけれども、そうした問題が現行法では実行不可能と認められる場合が出てくるかもしれませんが、そのときどう対処するかは、そのときに判断いたします。しかし、われわれは立法を義務づけられているわけでもなく、実施を拘束されているわけでもないのでございます。その点はきわめてはっきりいたしておりますが、では、全然法律を改正する必要がないかということになりますと、必要がある場合が出ましても、それを立法するかどうかにつきましては、われわれの方で独自に判断すればいいと解釈しておるわけでございます。
  131. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、一つはっきりしたことは、現行法規内で研究はしているのだけれども、出てきた結果によっては政府の自主的な判断によって、これは現行法を改正するのはまずいから採用しないとか、あるいは現行法を改正しても採用しようとかというのは政府の判断にあるのだといふうに、いまの御答弁理解したわけでございますけれども、よろしゅうございますね。――そうしますと、その点はやはり今後問題になってくるだろうと思います。  それじゃ、もう一点お尋ねいたしますけれども、「日本に対する武力攻撃がなされるおそれのある場合」という項目がございますけれども、この「おそれのある場合」というのは自衛隊法七十六条の括弧書きの中の「おそれ」と同じなのかどうか。
  132. 原徹

    ○原政府委員 お答えいたします。  ガイドラインにおきます武力攻撃のおそれのある場合と申しますのは、その中で、ガイドラインでいろいろ準備作業をするということが書いてございます。たとえて申しますと、警戒監視を強めるというようなことも準備活動の一つでございます。そういうことでございますから、七十六条の防衛出動を下令するという場合は、非常に差し迫って客観的に日本が攻撃を受ける公算がきわめて大であるというときに防衛出動が下令になるわけでございますが、そういう準備をするということでございますから、それよりももっと広い概念でございます。言葉が同じなので、ちょっと紛らわしい点確かにございますけれども、ガイドラインの中身を読んでいただければ準備作業を必要とする。だから防衛出動の場合は武力攻撃のおそれがきわめて公算大、この場合はかなり大と、そのくらいの差があるというふうに考えております。
  133. 二見伸明

    ○二見委員 自衛隊法七十六条の場合には手続もきちんとしているわけです、この自衛隊法に対していろんな意見はあるとしても。しかし、ガイドラインの中での「おそれ」というのはそうではないということになりますと、このおそれというのは非常に心理的なものがあるでしょう。これを決定するのは一体だれなんだろう。おそれがある場合に、日米でもって具体的な行動に入る、準備行動1などの具体的な行動に入るわけですから、このおそれを決定するというのは私は非常に重大なことだと思います。これはシビリアンがやるのか制服がやるのか、現場が判断するのか、その手続はどうなっているのか、これはやはりないがしろにできない問題だと思いますけれども、どうですか。
  134. 原徹

    ○原政府委員 確かにその「おそれのある」ということの判断をだれがするかということ、これは私どもももちろん制服に任せるつもりは全くございません。もちろん、政府がそのおそれがあるというふうに判断したときにどうするかということを研究しておくということでございます。
  135. 二見伸明

    ○二見委員 その次に伺いますけれども、情報活動について、このガイドラインでは「自衛隊及び米軍は、保全に関しそれぞれ責任を負う。」こうあります。これは自衛隊が情報活動についてその保全に責任を負うわけですけれども、この責任を負うというのは現行自衛隊法内で行うのか、あるいは現行自衛隊法では保全が不完全なので、去年の夏さんざん議論になった機密保護立法まで考えるのか、この点どうでしょう。
  136. 原徹

    ○原政府委員 その点は現行の自衛隊法でやるつもりでございます。
  137. 二見伸明

    ○二見委員 防衛庁長官、いまの局長答弁を確認いたしますけれども、要するに防衛庁としては機密保護法あるいは機密保護立法というものは必要がないというふうに、いま私は受けとめたわけでありますけれども、そういうふうに判断してよろしゅうございますか。
  138. 山下元利

    山下国務大臣 ただいま政府委員が御答弁申し上げたとおりでございまして、防衛庁としては現在検討対象といたしておりません。
  139. 二見伸明

    ○二見委員 いずれにいたしましても、この近隣諸国というのは、日本の経済力がいつ軍事力に転化するかと非常に疑惑の目で見ているわけです。それだけにこの指針、ガイドラインに基づく今後の検討内容については、その検討の内容の大筋だとかあるいは問題点というものを逐次公表しながら国民に判断材料を与えていく、そうしたことが私は非常に大事だと思いますけれども防衛庁にはそうしたお考えはありますか。
  140. 山下元利

    山下国務大臣 実は、この指針に基づきます作業はいま始まったばかりでございまして、その内容は今後の作業にまたなければなりませんけれども、共同作戦計画の研究のようなものにつきましては、あるいは国の防衛上公表することは差し控えさせていただきたいと思う次第でございます。  しかし、いずれにいたしましても、この研究はこの指針に示されました基本的枠組みに従いまして、私が強調いたしましたとおりに、あくまでシビリアンコントロールのもとに私が責任を持って当たることになっておることはもう申すまでもないことでございますが、公表につきましては、ただいま申しましたところで御理解賜りたいと思う次第でございます。
  141. 二見伸明

    ○二見委員 この問題について最後に長官にお尋ねしますけれども、長官は就任直後の十二月十二日付のある新聞のインタビューで「私は当面はGNPの一%でやっていけると思う。ただ一%は決して永世不動ではなく、行く行くは検討もしなければならないだろうが……。」と述べておられますけれども、この点についての長官のお考えを伺いたいわけです。そして一%を超えるような事態というのはどういうことになるのか。というのは、ことしのアメリカの国防報告でも、日本はGNPの一%以内だけれども第九位の軍事力を持っているのだ、こういう国防報告がございますね。一%以内でも第九位なんですから、その一%を超えるようなことになると、日本のGNPは大きいですから相当な力になると思うのですよ。だから、一%を超えるというのはどういうことを想定されているのか、長官のお考えを伺いたいと思います。
  142. 山下元利

    山下国務大臣 私は、当面この国民総生産の一%以内で十分賄っていけると思っておる次第でございます。それは防衛計画大綱にも示されております、「そのときどきにおける経済財政事情等を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、」行うこととなっておるわけでございますが、ずっとこの経緯を見ましても、大体GNPの一%近くで推移いたしておりますので、これらを総合的に勘案いたしますと、この一%の範囲中で防衛力を整備することは可能であると考えております。ただ、当面と申しますのは何ら固定的な期限を予告するのでございませんで、もちろんこれは諸情勢の変化がもしあるとするならば、必要があると認められる場合には検討を行う余地はあるわけでございますけれども、私は当面はやっていける。しかも、一%を超える事態というのは、ただいま予測することは大変困難でございます。あくまで当面は一%以内でやっていける、かように考えている次第でございます。
  143. 二見伸明

    ○二見委員 次にイランの政変、イラン情勢とその日本への影響についてお尋ねをしたいと思います。時間が差し迫っておりますので、御答弁の方も端的にお願いしたいと思いますけれども政府は今度イラン新政権を承認されました。ただ私は、今度のイランに対する情勢の見通しが日本政府としてもかなり甘かったのではないかなと思うことがあります。それは、去年の九月に福田総理大臣が中東四国を訪問されました。九月七日には、ちょうど福田総理とパーレビ国王が会見を始めたころからイランではデモが始まりまして、夕方には数十万のデモになった。その日は日本とイランの間で経済協力についての共同コミュニケが発表されたのですけれども、その晩日本大使館で開かれた福田総理主催のレセプションには、向こうの主賓のシャリフエマミ首相以下ほとんどの閣僚は出席しなかったのです。というのは、それだけイラン情勢というのは非常に大変な状態にあったわけです。にもかかわらず、わが国としては、アメリカがシャーを全面支援しておりますので、こんなに早く王制がひっくり返るとは思わなかったのだろう。私は今度の政変を見ながら、中東に対する情勢分析というのは日本が独自により的確につかんでいかなければ、特に中東というのは非常に激しいところですから、アメリカの後ろからくっついていくような判断、外交姿勢であってはならないのじゃないかというふうに思います。  それはそれといたしまして、今度新政権が発足をした。しかし、依然としてかなり動揺があるようでありますけれども政府としてはいまの新政権の安定度といいますか、これをどういうふうに現在分析しておられますか。私は、新政権がもしこれでまたつぶれてしまうと、イランというのはもう収拾つかない状態になるだろうと思います。いずれにしても新政権が安定した状態になる、イランの情勢が安定してくれることを願っておりますけれども、しかし報道その他によりますと、依然としてかなりまだ流動的な面があるようでありますけれども、この新政権の安定度というのをどういうふうに見ているのか、それをお尋ねしたい。  と同時に、福田総理がちょうどイランががたがたしている最っ最中に向こうへ行って、しかもなおかつそういうデモがある、戒厳令がある真っただ中にいながら、イランの情勢についてきっちりした分析をしてこられなかったことは日本外交の一つの大きな失点だと思います。今後日本としてはイランにまたどういうようにおつき合いしていくのか、その点あわせてお答えいただきたいと思います。
  144. 園田直

    ○園田国務大臣 私は一月にイランを訪問いたしまして、帰りましてから約半年で総理のお供をしてイランを訪問したわけであります。一月に参りましたときには、イランの総理大臣以下、産油国にありがちな目の前のことだけではなくて、未来にわたる青写真を的確に書いてある、なかなかりっぱであると総理に感心をいたしました。しかし、その進め方が急激であるから、果たしてうまくいくかなという程度でありましたが、半年後には非常に変化いたしておりまして、その変化が王制の問題その他の問題、複雑に絡んできておりますので、これは並み並みならぬと判断をいたしておりました。今後とも十分注意をして、こういう流動的な地域には慎重に判断するようにいたします。  ただいまの新政権、流動的でありますから、ここで断定的には申し上げられませんけれども、発表された閣僚の名簿の中に宗教関係がいない。ほとんど能力のある、経験のある者が配置されておる。これはなかなか手がたいところであると見ております。次に、一番大事な大蔵大臣と国防大臣はまだ任命されておりません。国防大臣を任命されていないのは、新政権と軍部との話し合いが進んでいるのではなかろうか。そこで軍部との話し合いがつけば国防大臣が任命されるのではなかろうか。こういう諸種の点を見ますると、なかなか手がたく進められておると判断をいたします。ただし、いまの混乱ぶりというのはわれわれの想像以上でありまして、反政府同士が混乱を起こしたり、あるいはいままで非常に低い生活程度にあって不満を持っておった人々が兵器を持ったので、その兵器を放そうとしない。この現状の混乱の回復にどのように手を打たれるのか、この点は懸念のあるところであります。  なおまた、安定した後イランの経済再建、特に石油の問題をどのように持っていくのかというところでありますが、わが国としては承認をいたしまして、向こうの総理から、早速承認をいただき、丁重な祝いをいただいて感謝をする、今後プロジェクトの問題、それからイランの経済復興等の問題があるけれども、これについては特に日本の協力を期待する、こういうことでありまして、御承知のごとく、イランの国民は米国及びその他の国々には拒絶反応を示しておりますが、日本に対しては特別な期待を持っておられるようで、この点を逸せずうまくやらなければならぬと考えております。
  145. 二見伸明

    ○二見委員 イランは今後、いままでの親米路線からアラブ寄りの政策に転換するだろう、こう報道されております。私もそうだろうと思います。報道されているところによりますと、非同盟中立路線をとるのではないかと報道されています。そうすると、イランは親米から非同盟中立路線に転換するわけでありますけれども政府としてはこれについてどういうふうな評価をされるのか、それをお尋ねしたいことと、もう一つは、伝えられるところによりますと、イランはイスラエルには石油を売らぬそうですね。売らない。そうすると、イスラエルはたしかいままで七〇%くらいはイランの石油に依存してきたのです。イスラエルはイランから買えない分だけあちらこちら手を伸ばして石油の確保には努めているようでありますけれども、そうしたことが中東の将来にどういうような影響が出てくるのか。まさか中東紛争がまた起こるとは私、考えられませんし、あってはならぬと思いますけれども、そういうことについてはどういうふうな見通しをされておりますか、この二点、あわせてお尋ねします。
  146. 園田直

    ○園田国務大臣 まだ新しい政権は政策に関するものを一つも出しておりません。したがいまして、イスラエルを含む問題等についていま批判する段階ではありませんが、実は私も先生がおっしゃいましたように、当然非同盟中立主義をたどるであろうと推察をいたしております。
  147. 二見伸明

    ○二見委員 イランの問題は、わが国と現在直接的なかかわりになってくるのは石油の問題だと思います。そうして石油の問題は、石油の価格の問題とそれの物価に及ぼす影響、また量の確保の問題と二つに分かれるだろうと思います。  それでお尋ねしたいわけでありますけれども資源エネルギー庁にしてもあるいは通産省にしても、当面はともかく、次期需要期といいますからことしの十月以降になろうと思いますけれども、十月以降はかなり逼迫するのじゃないかという見通しを立てておられるようであります。  たとえば資源エネルギー庁では、世界の石油需給に重大な問題か生ずることが懸念されると一月三十一日の見解で述べておりますし、二月九日の通産省の見解でも、わが国の石油需給はさらに一段と厳しいものになるおそれもある、こう認識をされております。厳しくなるだろう、いまはともかく何とかなるけれども、半年後あるいはそれ以降は厳しくなるのではないかという判断をされていると思います。  そういう判断の前提に立ってお尋ねしたいわけでありますけれども、伝えられるところによりますと、アメリカは三月にパリで開くIEAの理事会で、加盟消費各国がお互いに自主的にそれぞれ主ないし五%の需要抑制をしようじゃないかという提案をすると報道されておりますし、すでにクーパー米国務次官、が訪米中の橋本通産審議官を通して、日本にその意向を伝えてきているということでありますけれども、三ないし五%をお互いに節約しようじゃないかというこうした提案に対して、わが国としてはどういうふうに対処されますか。
  148. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 日本としても、一月二十二日に省エネルギー・省資源対策推進会議を開いて、まず官庁、そうして会社、国民等に協力を求めたことはもう御承知のとおりであります。いま御指摘の、アメリカ政府の代表が私どもの橋本通商産業審議官に三ないし五%の節約をするという主張をしたいと言ったという話は、正式にはこちらの方へ伝わっておりません。アメリカがそういうアイデアを持っておるかどうか、その辺はせっかくいま関税交渉で橋本審議官参っておりまするので、実情などは的確に情報としてキャッチするようにということにしておりまするが、定かな主張ということで伝わってはおりません。
  149. 二見伸明

    ○二見委員 いずれにしてもIEAの理事会では石油の節約の話が焦点になるだろうと思います。確かに一月二十二日にエネルギーを節約しようじゃないかという話が日本で出たことは私も承知しておりますけれども、具体的にどうしようということではありません。たとえば三%節約しようとか五%節約しようとかという目標を持ったものではなくて、これは言うならば精神訓話的なものであります。しかしIEAの理事会では、やろうじゃないかとかなんとかというだけじゃなくて具体的に、お互いに二%とか三%とか節約しようじゃないかという具体的な話になってくるだろうと思います。その場合、日本としても精神訓話で逃げるわけにいかないと思います。そういう点は、やはり具体的な数字を示して日本も節約する方向に踏み切りますか。
  150. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 このことはそう簡単に結論づけるわけにはまいらないと思うのです。それは、もうしばしばここで繰り返しましたからくどい話は差し控えますが、景気をどう持続するか、雇用問題をどう安定させていくか、このこととの兼ね合いで通産省としても非常に苦心をしておるところであります。幸い一-三月には七千二百万キロリットル、昨年同期分の石油入手にどうやら明るいめどが立った。したがって、最盛期はこれで過ごしていくことができる。四月から十月までは比較的石油需要がスローダウンする時期でありますので、思うような積み増しはできないかもしれませんが、しかし節約の方向は日本の心がけとして、無資源国ですから当然なことでありまするから、適時その状況に応じて打ち出すことはいたしまするが、さしあたり大口需要を規制するとかそういったことについては、先ほども申し上げたような理由で当面慎重に推移を見守りながら規制措置は見送っていこう、こう言っておるのです。しかし、今後の情勢いかんによっては、これは四十八年の経験もあることですから、それなりの対応はいつでもできる体制にはあります、こういうこと、です。
  151. 二見伸明

    ○二見委員 確かにこれは非常にむずかしいですね。私もそう思います。将来需給が逼迫するのだから節約しようじゃないかというのは非常に単純、わかる話です。しかし、それが国内の景気に及ぼす影響も無視できないので実は私も大変だなという感じは持っているわけです。ですが、当面は大口規制はしない、備蓄を取り崩してでも大口需要家の石油供給削減は景気の観点からも避けたいという通産省の御見解のようでありますけれども、一方IEAの取り決めで、現在では七十日分の備蓄があればいいわけですね、しかし来年の一月一日から九十日分の備蓄をしなければならないことになります。三月のIEAの理事会では、九十日は厳しいから八十五日にしようじゃないかという話が出るかどうかわかりません。しかし当面は、来年の一月一日には九十日分の備蓄をしなければならぬということを考えますと、いつまでも大口規制はしないという態度はとりにくいのじゃないか、といって備蓄をやれというと高いスポットを買う。お互いどっちにしても矛盾があることなのですけれども、十月以降の需給状態というものを考える、それからさらに一月一日九十日分という備蓄の義務づけといいますかそれを考えた場合に、果たしていつまでも大口規制をしないで済むかというと、やはりちょっと厳しいのじゃないかなというふうに私は客観的に判断しているのですが、どうでしょう。
  152. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは非常に重要なところですが、私どもはいまは確信を持ってそういう方向でいかない、しかし国民的にはやはり節約の方向というものを大いに強調していく必要ありというふうに考えます。  それから、一月三十日にIEAの事務当局の非公式な打ち合わせがあったのです。このときも各国、十九カ国参加しておりまするが、主要な国々が集まりまして今度の対応はあわてないでおこうへ前にも詳しく申し述べておりますから繰り返しませんが、状況は前の石油ショックのときとは違う、だからなだらかに対応していこう、ここでまた石油ショックのようなあわて方をすれば、これはメジャーばかりに限らず石油関連業者を喜ばせるだけで、一般消費者である世界の国々というものは被害者の立場に立つ、あのときとは備蓄の度合いも根底から違っておるし、また緊急の場合のための備蓄だから情勢を的確にキャッチしながら緩やかに対応しよう、こういう一つの申し合わせがあるわけです。したがって、IEAの取り決めというものはエネルギー政策上お互いに厳守しなければなりませんが、実情に応じてまたその取り決めが変化し得るという可能性は決してないというふうには私ども思っておりません。
  153. 二見伸明

    ○二見委員 経企庁長官にお尋ねしたいのですが、もしいまここで石油の大口規制ということをやりますと、景気にはどの程度の影響が出てきましょうか。これは節約の三とか五とかいうような数字が出ないと計算のしようもないでしょうけれども、かなり景気の足を引っ張るような結果になりましょうか。
  154. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 石油の量だけで経済成長そのものははかれないと思います。私は、もちろん現時点で節約を大いにやってもらわなくてはいけないと思うのです。また、イラン情勢について余り甘いことを考えることも非常に危険だと思います。しかし、特にわが国は石油資源そのものを持たないわけですから、こうした世界の、特に中近東の動きそのものに非常に敏感なのでありまして、したがいまして、その敏感なところがいろいろな混乱に連動することをわれわれは非常に恐れております等々の理由もございますので、私は現時点で、ただいま通産大臣からお答え申し上げたような数値、あるいはまた外務大臣が観測として述べられているような事態、こうしたものを考えます場合には、そのこと自体で、いまわれわれが目標を立ております諸元はそう大きく変動をしなくてもいけるのではないかと思っております。もちろんこれは手放しで楽観をしているわけじゃございません。そのときどきにそれぞれの手段を講じながら影響のなるべく少ないような方向に全力を挙げてみたいというふうに考えております。
  155. 二見伸明

    ○二見委員 ついでに経企庁長官にお尋ねしますけれども、量の問題ともう一つ価格の問題です。卸売物価が去年の十一月に〇・二%上がりましたね。十二月に〇・六四ですか、ことしの一月には〇・六%卸売物価が前月比で上がりました。一月の〇・六%というのは年率に直しますと七・四%、これは五十四年度の卸売物価政府見通し一・六%を大幅に上回るものです。もちろん一月も〇・六、二月も〇・六というわけにいかないのはわかりますけれども、一月の〇・六だけをとらえてみると、年率計算すると七・四になります。これはことし、五十四年度の政府見通し一・六を大幅に上回るものだと私は思います。しかも〇・六%卸売物価が上がった、その真っ最中にイランの政変が起こった。しかもその結果、石油の需給がかなり逼迫するだろうと予想され、一〇%程度のOPECの石油価格がさらに上がるだろう。もう値上げ通告してきたところもあるし、スポットは現実にワンバレル当たり四ないし六ドル上がっているわけです。そうしたことを考えると、私はもう物価は警戒水域に入ったんだというふうに認識いたしております。経企庁は物価動向についてはどういうお考えでしょうか。
  156. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 いま御指摘の諸点は決して間違ってないし、またそういう可能性はわれわれも十分考えております。ただ、われわれとしましては、今年度の現状が多少警戒水域だというお言葉は全くそのとおりだと思うので、先月来物価に対して個別的ではございますけれども、種々の対策をそれぞれの官庁において打ってもらっております。こうしたことは、余り物価に対する警戒心をまた国民に強く与え過ぎることもあって非常にむずかしいところがございます。しかし、きわめて慎重に物価対策をいま展開しておるところでございまして、もうしばらく推移を見てまた次の手を考えるか、あるいはこうした状態の中で進み得るか。私は一つだけ申し上げたいことは、五十三年度と申しますか、大体円高差益で四兆五、六千億あるわけでございますね。やはりこうしたものはすぐそのまま市場にはなかなかリターンできないものであって、それが倉庫から出て生産に移って、そして価格に実現してまいりますからタイムラグがある。そうしたようなことも過大評価してはなりませんが、一つの安定的な要因として前半は十分考えておるところです。
  157. 二見伸明

    ○二見委員 日銀総裁においでいただいておりますので一、二伺いたいと思います。  日銀総裁は七日の記者会見で、「さし当たり、これ以上金融を緩和することは避けたい。ただ物価問題が厳しくなってきているので、日銀としてはどちらかと言えば景気よりも物価に重点を置いた政策運営を考えていきたい」と記者会見で述べられたそうでありますけれども総裁は現在の物価動向、これはどういうふうにごらんになっているのか。私はこのままいくと、場合によれば秋以降インフレヘの懸念も出てくるのではないかと思いますけれども、そうしたインフレヘの懸念についてはどういうような判断をされておるか伺いたいと思います。
  158. 森永貞一郎

    ○森永参考人 先ほどお話もございましたように、十一月以後三カ月間の卸売物価の騰貴はやや異常なものがあるように感ぜられます。その原因を分析しますと、昨年中は一貫して物価の押し下げ要因として働きました円高が円安に転じ、いまは安定いたしておりますが、少なくとも物価押し下げ要因としては働かなくなったこと。それからもう一つば、海外の市況商品がこのところ堅調でございます。ロイター指数も一年前に比べまして八%ぐらい上がっております。もっともこの二、三日は少し落ちついておるようでございますが、そういう海外市況高をもろにかぶってきておること。それに加えるに、国内の市況商品につきましても需給関係がやや引き締まってまいりまして、市況商品がかなり広範囲に値上がりをしておるということ、そういうことがやはり卸売物価引き上げの要因として働いておるようでございます。今後それがどうなるのか、海外の市況等につきましてはにわかに予断もできませんですが、どちらかと言えば海外市況が堅調に推移するような景気回復の状態ではないかと思っておりますし、今後の物価情勢の推移につきましては、私ども警戒と申しますか、従来に比較して一段と慎重にその推移を見守り、そのときどきの情勢に即して適当な対策を金融政策上においても講じていくことが必要になってくるのではないかと思っております。幸い国内の景気の回復はまだ、まだら模様ではございますけれども、おしなべて申しますと、企業収益も回復し、底がたい回復の足取りをたどっておりますし、金融面ではその景気の着実な回復を支える緩和はもう十分行き渡っておると思います。むしろこれ以上加速いたしますと、今度は通貨面から物価に悪影響を与えるという心配も出てくると思いますので、私どもといたしましてはこれ以上緩和を加速しない、いま程度の緩和の程度を守るというのを基本姿勢として今後の事態に処していかなければならないと思っておる次第でございます。もちろん金融政策もそのときどきの情勢に即して機動的、弾力的に動かなければならぬことは当然でございますが、さしあたって当面といたしましては、これ以上緩和を加速しないということで処してまいろうと思っておる次第でございます。
  159. 二見伸明

    ○二見委員 あれですか、たとえば日銀は公定歩合だとか預金準備率の引き上げだとか窓口指導の強化だとか、そうしたいわゆる金融政策はどういう段階でおとりになりますか。またいわゆるこういう金融政策というのは、前の四十八年のときなどの経験からいきますと、いろいろなデータが全部出そろってから手を打ったので遅くなったという批判もございますね。だから企業の動向だとかある程度の材料でもって早目に、そして弱目といいますか、弱目の金融引き締めを打ち出すのがいいのじゃないか、その方がなだらかに、余りショックを与えないで景気がおさまっていくのじゃないかという意見もあるわけですけれども総裁としてはこの金融政策をどういうふうに運営されていきますか。
  160. 森永貞一郎

    ○森永参考人 当面はいまおっしゃられましたような措置を講ずることは考えておりません。しかし金融政策のあるべき姿といたしまして、情勢の推移をできるだけ早目にキャッチし、対策も予防的に早目早目にと心がけるべきものであると存じております。これは引き締め、緩和いずれの場合にも必要なことだと思っておりますが、当面はそこまでは考えておりません。
  161. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、当面というのは、現時点においてはまだ金融政策、たとえば金利の引き上げとかそういうことは必要ないと思うけれども、情勢の推移を見ながら早目早目に予防的な措置をこれからとっていくのだというふうに理解してよろしいですね。  それで、もう一点物価との関係でお尋ねしますけれども、国債の利回りの問題がありますね。応募者利回りが低く据え置かれておりますので、条件を変えなければ、国債を引き受けたけれどもその瞬間に損をするという問題がありまして、国債の条件を改定すべきだという議論があります。きのう参議院で大蔵大臣と日銀総裁は、国債の引き上げを示唆するような御答弁をされたそうでありますけれども、物価問題との関係で国債の金利といいますか、利回りのあり方については、どういうふうに日銀総裁はお考えになりますか。
  162. 森永貞一郎

    ○森永参考人 金利水準全体といたしましては、いまもまだ低下の方向をたどっておることは御承知のとおりでございます。十二月の時点では、金融機関の約定平均金利は五%台、短期は四%台ということに下がっておるわけでございまして、今後も、少し低下の勢いが鈍るかもしれませんが、まだ低下の方向を続けるのではないかと思っております。したがいまして、短期資金につきましては非常に緩和しておるわけですが、その間長期資金につきまして異変が起こっておる。特に、国債の発行条件が現行六分一厘何がしでございますが、市場利回りでは六分九厘前後というようなことで、市価が低落し利回りが上がっておるという状態が続いておるわけでございます。ただ、六分一厘ものについて特にその現象が激しいのでございまして、たとえば三カ月くらい前に発行されておりまする六分六厘ものとの間にも差がついておる。その他の投資物件との間にも差がついておる。ということは、どうも六分一厘ものの価格形成が少し異常な姿になっておるような感じがするわけでございまして、取引量も少ないわけでございますし、また思惑も働いておるというようなこともございましょうし、本当の実勢はどのくらいかということは、やはりもうしばらく市場の推移を見きわめなければ判断がつかないと思います。  私は、新規発行国債はやはり市場条件、市場の実勢に即して、この条件改定も機動的に、弾力的に行われるべきものと思いますが、それにはもう少し事態の推移を見なければならないと思っております。しかし、これは金利水準全体を上げるということではございません。長期金利の中でのアンバランスを是正するという方向で考えるべき問題だと思うわけでございまして、私は、長期金利につきましても、低下ないしは少なくとも上がらないようにという配慮がこの際としてはまだ必要な段階ではないかと思っておる次第でございます。
  163. 二見伸明

    ○二見委員 総理大臣、私はこれは総理大臣に御見解を承りたいわけでありますけれども、物価問題というのは、将来、われわれかなりシビアに考えていかなければならないだろうと思います。私たちは、公共料金の引き上げはやるべきではないという立場をとっておりますけれども政府は公共料金をいろいろと引き上げなさる方針であります。私たちの主張は別にしまして、政府は公共料金は引き上げるのだという立場をおとりになっているけれども、引き上げるにしてもこの物価の動向というのは真剣ににらまなければいけないのじゃないだろうか。公共料金の引き上げも、すでに決めたからという口上的なことじゃなくて、その時期だとか幅だとかというものは、私はもう一度再検討をしてもいいのではないかと思います。そうしなければ物価問題に、卸売物価そして消費者物価に拍車をかけてしまうおそれが非常にあると思います。私は公共料金の引き上げを撤回していただきたいと思いますけれども政府の立場に立ってもその時期、上げ幅、これはチェックしていただきたいし、再検討していただきたいと思います。経企庁長官
  164. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 公共料金の引き上げにつきましては、非常にわれわれも気を使っておるところでございまして、毎々御説明申し上げておるように、消費者米価の上げ幅の縮小とか、あるいはまた、それと同時に行うべきはずであった麦の消費者価格は据え置くということでバランスをとりましたり、あるいは国鉄の運賃引き上げについても四月一日を五月二十日まで延ばすということ、そしてまた、上げ幅そのものにつきましてもさらに運輸省において十分御検討いただくというような方向等々をきめ細かくやりまして、消費者物価への影響を極力少ないものにする努力をいたしておるわけでございます。
  165. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ことしの予算を編成する段階におきましては幸いに諸物価安定基調にございまして、その安定基調を維持してまいる、それに支障のない範囲において公共料金などの微調整も考えてまいったわけでございます。ところが予算編成後の状況を見ておりますと、御指摘の石油の問題が緊張を呼んできたようでございます。商品市況も活発になってきておりますので、こういう問題につきましてはよほど注意してかからなければならぬ。これも今後の推移を見ながら、いろいろな物価政策の運営につきましては十分用心深くやらなければならぬということは御指摘のとおりでございまして、私どももそういう点につきましては、公共料金を含めまして、細心、周到な配慮をいたさなければならぬと考えております。
  166. 二見伸明

    ○二見委員 大分時間が切迫してまいりましたので、次に、農業問題についてお尋ねをしたいと思います。  私は、きょうは農業問題を、主として食管問題、食管制度について農林大臣の御見解を承ってまいりますけれども、やはり食管問題というのは農業政策の基本にかかわることでございますので、最終的には総理大臣の御答弁をいただくことになると思います。いろいろな細かい話もありますので、どうかお聞きになっていただきたいと思います。  農林大臣に伺いますけれども、今度、農政のいままで指針となっていたいわゆる長期見通しを断念いたしまして、農林省では六十五年までの長期見通しを策定する方針を現在固めて、その作業に入っていると思います。これに関して実は農林大臣は、十二月九日の就任のときのインタビューで、「まあ、農業基本法も、農業振興、農地法など、農業近代化のために立ち遅れている法律は、一年ぐらいかけて実情に合ったものにしたいね。テンビン棒かついで、荷車引いていたときの農地法ではね……。」と、こうかなり大胆な御意見を述べているわけでありますけれども、農業基本法あるいは農地法の改正、見直しというものについては、農林大臣はお考えになっていますか。
  167. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御承知のとおり、農林業も国全体としては産業でございますから、産業である以上は当然そこで生産をされたものが消費者に好まれなければならない。消費者の立場というものは、これは非常に経済の動向によって変わってまいります。流行もあります。したがって、そういうことを考えると、長期見通しの問題につきましてもなかなか計画どおりにぴちんといかない。現に、昭和五十年につくった長期見通しでも、当時、豚肉は昭和六十年に一人当たり七・五キロぐらい食べるのじゃないか、ところがもうすでに五十二年に八・三キロも食べておる、一つの例ですが。卵にしても同じで、五キロぐらいと思ったのが六・五キロも現に食べておる。しかも過剰生産だ。これ以上本当に食べるかどうかというようなとは非常に問題があるわけです。したがって、需給見通し等も実態に合わせて改定をする作業の下準備、これはいたしております。  なお、基本法の問題でございますが、この基本法は高度経済成長のときにできた基本法であって、あのようなスピードでずっと続くものという前提があるわけですが、それが安定経済に入ってくるというようなことになれば、そのままでいいのかどうなのか、これも一つ問題があります。なお、総理の言った民族の苗代としての農村というような思想は、ちょっとあの中にないのです、合理主義だけであって。したがって、これらのところももう少し手心を加える必要があるいはあるのじゃないか。  農地法の問題も、あなたの御指摘のような問題がございまして、いろいろ問題がありますから、一遍ひとつおさらいをしてみよう、こういうことを申し上げたわけであります。
  168. 二見伸明

    ○二見委員 政府は二月一日から消費者米価を四・二%引き上げたわけであります。お米がだぶついて消費拡大が叫ばれている真っ最中になぜ引き上げたのか非常に疑問に思います。なぜ引き上げたのか、その理由を御説明いただきたい。  と同時に、政府は売買逆ざやを昭和五十五年度までにゼロにしたいという方針をいままでお持ちになっておりましたけれども、その方針は依然としていまでも変わらないのかどうか。この二点をあわせてお尋ねをしたいと思います。
  169. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 消費の拡大というような点からすれば、引き上げることはいかがなものかという当然な疑問がこれはあるわけです。しかしながら、一方、財政の問題もございまして、一食当たり十一円八十銭の補助金を出して政府は売り渡しておると同じようなかっこうになっております。非常に財政も苦しい。しかも一般国民は、生計費の中に占める米の割合は都市においては三%弱だ、生活費の中の米代というものは。したがって、その中で一食分について十一円の補助金を出しておるわけでありますが、そのうち一円二銭だけひとつ補助金を節約させていただきたい、そのかわり標準米の中身は一円以上においしくいたしましょう、こういうようなことで、両面を考えましてその改定をさせていただいた、こういうわけであります。  それから、御承知のとおり、いまこれから増税もしなければならぬというような騒ぎをしておるわけでございますが、政府の方も米を食べてもらうのに十一円も補助金を出しても、みんな補助金をもらっていると思う人は余りおりませんでしてね、もっと高いお米を喜んで食べているという実情もあるわけですから、こういう点も考えますと、やはり逆ざやの解消というものの計画は、これは結局逆ざや解消ということは補助金の整理みたいな話でございますので、財政事情、経済事情等も考えながら、無理のない形でそれは解消をしてまいりたい、かように考えております。
  170. 二見伸明

    ○二見委員 現在、売買逆ざやというのは六十キログラム当たり千八百六十円あるわけです。そうすると、既定方針どおり五十五年までに売買逆ざやをゼロにするということになりますと、たとえば生産者米価を据え置いたとしても二年間で千八百六十円の消費者米価を引き上げることになる。それが許されるのかどうか。もし生産者米価を上げればさらに消費者米価を上げるわけです。これは国民生活に重大な影響が出てくると私は思います。  農林大臣、これに関連してもう一点お尋ねをしますけれども、売買逆ざやがなくなった段階というのはどういうことになるかといいますと、末端価格、すなわち政府買い入れ価格とお米屋さんで買う消費者米価との間は、売買逆ざやがゼロになりますと、政府買い入れ価格よりも末端価格が二千円以上高くなる。そうすると、これは食管制度の根幹にかかわってくる問題ですよ。これは米審でもそうした答申が出ているはずです、審議の過程で。売買逆ざやがなくなった段階では食管制度は重大な影響を受けるというのは常識な話であります。あなたが、売買逆ざやをゼロにする、それは一面で国民生活から考えれば千八百六十円、米価を据え置いたとしても引き上げることになる。売買逆ざやがゼロになった段階では食管をいじるということになる。食管制度について私はここでたてまえの論議は余りしたいと思わないのです、根幹を維持するとか堅持だとか。だけれども、売買逆ざやをゼロにするというときは食管制度についても政府は何らかの対策を持って、制度を変えるとか手直しするとかそういうものがなければ、売買逆ざやゼロなんということはとうていできる相談ではないと思います。いかがですか。
  171. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 御承知のとおり、食管で逆ざやができたのは高度経済成長になってからなんです。戦時中から終戦後にかけては食管は大体自前――自前と言ってはしかられるかもしらぬが、損得なしということでやってきたのであって、売買逆ざやがなくなっても、食管制度は需給の均衡がとれておれば別にそう心配はない。ただいろいろ、あなたのおっしゃるように、売買逆ざやがなくなればやみ値が上がってくるからやみ流通がふえるでないかという問題があります。これはしかし、やみで売るのはだれが売るかという問題ですから、食管制度を守る上において、食管制度を守りたいと思う人がやみで売らなければやみはそんなに出てこない、こういうわけです。したがって、これらにつきましては、やはり生産者団体、流通業者の方等とも話し合いをしながら、どういうふうにうまく対応していくかということは今後の問題である、かように考えております。
  172. 二見伸明

    ○二見委員 もう一度別の点からお尋ねしますけれども、たとえば米価審議会では、生産者米価について引き下げを行うべきであるという厳しい意見が出てきた。あるいは、売買逆ざやの解消は両米価の価格体系の現状等から見て消費者米価を引き上げることによっても行うべきであると、こういう厳しい意見も出てきた。そうすると、私は農民の立場というのは非常に厳しい立場に追い込まれていると思います。政府としては、ことしの米価はどう考えますか、生産者米価は。
  173. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 ことしの生産者米価については、毎年のことでございますが、大体六月の末ごろにならなければ生産費調査が出てこない。したがって、その生産費調査の結果を見て、従来の計算方法がございますから、その計算方法に従って生産者米価を出す。いまここで私が上げるとか下げるとか言うことは適当ではありません、手続が決まっておりますから。また、予算の最中に農林大臣が上げるとか下げるとか言ったら、予算を直せなんという話にすぐなってくるものですから、それは申し上げられない、そういうことであります。
  174. 二見伸明

    ○二見委員 それは私もわかりますが、しかし、売買逆ざやがなくなった段階で農家が米をつくらなければ需給は均衡しているからいいんだと。これはある面でいけば農民に対する脅迫だと思いますよ。米価は去年もおととしも上げてない。ことしも恐らくかなり厳しいだろうと私は思います。そうすると、農家にしてみますと、おれたちは食管堅持堅持と言ったけれども、一体食管堅持のメリットというのはどこにあるんだろうという疑問だって出てくると思いますよ。  私は農林大臣に伺いますけれども、あなたは「過剰生産しないこと、これは早急に結論を出したい。痛いところに手を触れないわけにいかない。農業団体とも話し合うつもりなんですよ。どうなんだ、うまい方法があったら教えてくれとね。」と語っていた。私は、農林大臣は食管制度に  ついては一つの考え方を持っているのだろうと思います。ただ、いま農家に生産調整をお願いをしている。これが去年は三十九万、四十万ヘクタールのところを四十四万ヘクタールもやってくれた。ことしはさらに大幅の減反をお願いしているという現状で、あなたは農家によけいな誤解を与えたくないという考えがあって、食管制度についてはあなたは言いたくないのだろうと思うけれども、しかし、言わずにいて、農民に、根幹は維持するんだ、維持するんだと言葉の上で納得させておいて、しかし売買逆ざやが解消した段階に、そのときになって農家をだましたなんということがあると大変だと思いますよ。  私は、もう一つ重ねてお尋ねしますけれども、あなたは食管制度の現状というものをどういうふうに認識していらっしゃるのか。また、あなたは売買逆ざやを二年間で解消するとおっしゃった。ということは、生産者米価を抑えていたとしても、千八百六十円の売買逆ざやがあるのだから、二年間で、言うなら具体的にはことしの秋にももう一度消費者米価を上げる気があるかどうかお尋ねをしたいと思います。  そして、総理大臣には、この食管制度というものについて、農家は食管制度だけを頼りにいま米づくりに励んできたわけですね。転作対策もなく、いきなり食管に手をつけるなんということになると、これはかなり農民にとってもショックだろうと思います。現実的に食管というのは、正直言って私はもう骨抜きになっていると思うのですよ。全量買い入ればいま政府は半分しか買わないし、価格の問題でもかつての価格に対する考え方とは違うし、配給制度も消費者の目から見れば配給制度なんかないのも同じだ。売買逆ざやがなくなれば流通関係だって大分変わってくるということを考えれば、私は食管制度というのは、かつての食管制度といまの食管制度と、言葉は同じだけれども中身は変わってきていると思います。世の中には、食管制度というのは米の不足時代の制度なんだから過剰時代に適応できるように改めるべきだという意見だって出てきている。こういうことを考えた場合に、農家もみんなが納得できるような方策というものを私たちも本気になって考えなければいけないなと思うわけです。農林大臣そして最後に結論として総理大臣の御見解を承って、私は質問を終わりたいと思います。
  175. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 あなたがおっしゃるようなことが、有力な意見があることは事実なんです。事実なんですが、われわれとしては、ともかく食管制度というものによって農家の人も安心できる、それから米の暴騰、暴落もない、こういうような観点からこれを維持していこう、しかししょせんはこれは統制経済ですから、それは計画性がなければ続くわけがない。したがって、食管制度を維持するためにはやはり必要にして十分な米の生産という裏づけがなくては困るわけです。したがって、われわれは食管制度の根幹を守っていくということのために農業団体の御理解等も得て、農業団体の方もそういうようなことがわかっているから自発的に政府のものに協力しよう、もっとやろうというようなことも言っておられるわけなのです。ですから、その点はよくわれわれは話し合いをしながら、納得の上でいろんな対応策で現実に合ったものをつくってまいりたい、こう考えております。  売買逆ざやについては、一食十一円八十銭のコスト逆ざやのうち、大体一食五円三十八銭くらいの逆ざやがあったわけです。しかし、これを一挙になくすということはいまあなたのおっしゃったような問題が一つある。それから、物価に影響するというようなことのために、そのうち一円二銭だけを解消した。したがって、今後の物価の状況等も考えながらやっておくわけであって、ただいまのところ年内に再度上げるというようなことは目下考えておりません。
  176. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 食管制度自体の変化に応じて適切な改善を加えながら、この制度を通じまして生産者、消費者あるいは財政、もろもろの立場の調節を可能な限り図っていかなければならぬのじゃないかと考えています。
  177. 二見伸明

    ○二見委員 以上で終わります。
  178. 竹下登

    竹下委員長 これにて二見君の質疑は終了いたしました。  大内啓伍君。
  179. 大内啓伍

    ○大内委員 まず、東京先進国首脳会議についてお伺いいたします。  初めに、事務当局で結構でございますが、昨年の十二月二十二日に東京サミットの招待状を各国に送っているはずでありますが、現在までにどこどこが参加する、そういう返事をよこしているか、これをお知らせいただきたいと思います。
  180. 手島れい志

    ○手島政府委員 招待状を発送いたしました国全部から一応参加の通告が来ております。
  181. 大内啓伍

    ○大内委員 アメリカからの返事はどういう返事ですか。
  182. 園田直

    ○園田国務大臣 昨年十二月に総理から出された招請状に対するアメリカ大統領の返事は、次回のサミットで日本がホスト国を務めることを多とする、及び今後の問題は準備会等を通じて準備を進めていきたいという趣旨の返事でございます。
  183. 大内啓伍

    ○大内委員 カーター大統領は参加するという返事ですか。
  184. 園田直

    ○園田国務大臣 そのとおりでございます。
  185. 大内啓伍

    ○大内委員 昨年、カーター米大統領から親書が来たという話が間接的にいろいろな形で伝わっておりまして、ここでの一つの報道ではこういうことが流されているのですね。日本が大幅黒字を削減するため従来よりはるか強力な措置を講じなければ、六月に東京で開催される先進国首脳会議に出席できないかもしれない。これは実はニューヨーク・タイムズ等でも流された記事なのでありますが、これの真偽についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  186. 園田直

    ○園田国務大臣 外交慣例によって親書の内容を公にするわけにはまいりませんけれども、いまのような事実はございません。ニューヨーク・タイムズに流されたことも承知しております。米国の政府もそういうことはないと否定をしております。
  187. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、カーター大統領の欠席というような問題は論外といたしましても、アメリカが今日の日米貿易のインバランスというものに対して大変神経をとがらしている、あるいは非常に大きな問題にしているということは事実だろうと思うのですね。やはりこの問題を東京サミットに向けてできるだけ日本としても解決する努力を尽くす、これはやはりサミットを成功させる上でも非常に重要な要件だと思うのですね。過去の首脳会談におきましても、大体総理が訪米をいたしまして日米の首脳会議を先行さしておられましたね。  それは後で聞きますが、日米貿易の収支は、御案内のように昭和五十一年で五十四億ドル近い。――これは通産大臣かもしれません。五十二年ではこれが修正されて約八十億ドル、五十三年は何と百十六億ドル、こういう大変な増加に発展してきている。あの一九七一年から七二年にかけての日米貿易戦争というのは、御存じのように四十億ドルだったわけですね。そして八十億ドルに発展して、これが牛場対外経済担当相までつくらなければならないという事態にまで発展してきた。そして昨年は経常収支で大体六十億ドルに抑えます、私もこの点は予算委員会質問をいたしまして、そのようにはならぬ、そういううそは言わぬ方がいいということを申し上げて、結果論としてそうなったのでありますけれども、このような事態はきわめて深刻だと思うのですね。そこで政府としては安川代表を訪米さして、昨日は総理がその報告を聞いたという報道も伝わっております。ただ、幾ら説明いたしましても、百十六億ドルもの貿易収支の黒字が結果としてあるというこの事態では、なかなかアメリカは納得のしょうがないのじゃないか。  ここにジョーンズ報告というのがございますが、これはアメリカの下院の歳入委員会の日米経済関係タスクフォースの報告でございますが、これを見ますとこういうふうに結論づけています。「日米両国の経済において基本的変化が生じない限り、日米間の貿易危機は今後悪化せざるを得ない。」これがこのジョーンズ報告の結論になっています。ですから、やはりこの辺を日本としても相当考えなければならぬ。つまり、アメリカがいま日本に対して問題にしている一つは、言うまでもなく日本側の巨大な貿易黒字ですね。もう一つは、日本側の各種の貿易障害。この二つを一体日本はどうしてくれるのだ。これは、日本日本の立場がありますから、大いに日本の立場を主張すればいいのでありますが、それだけでは問題の解決にならない。この二点の改善について、これは日米経済の危機を打開する上で緊急の課題だと思いますけれども日本政府としてはどういう具体策をおとりになろうとしているか、この辺をまず伺いましょう。
  188. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 重大な御指摘だと思います。百十六億ドルのインバランス、しかもこれはアメリカの貿易赤字の半額に当たるわけですから、対日インバランスというものは常に議論にされるはずだというふうに自覚いたします。しかし、わが国としても御承知のように対米輸入ミッションを派遣したり、向こうから売り込みのための輸出ミッションを受け入れる、従来はジェトロというのは輸出の窓口でありましたが、それを輸入の窓口にもするというわけで、実は大変な努力をしておるわけです。幸いそういう効果が出てまいりまして、ことしの暦年度の三・四半期でございますが、対米輸入は全体で見て二八%増、四・四半期が四三%増、それからきわめて製品輸入が少な過ぎると言われましたその製品に至っては三・四半期が三〇%、それから四・四半期は前年比の五二%増。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 この顕著な数字が示しまするように、アメリカの貿易バランスもだんだん調整が効き目をあらわしてまいりました。  たとえば十月の場合ですと、これは前年比パーセンテージを簡単に申し上げますると二三・三、輸入の方は四一・八%の増、十一月は一五・五、ことしの一月などになりますると、一月というのは輸出の少ない月のせいもありましても前年比輸出は一%増、輸入に至っては四四・五%増というわけで、円高によるところの輸出のスローダウンというものもだんだん効いてきておりますし、わが国の内需が活発であるということが非常な製品輸入を初めとする対米輸入の上にも数字的にあらわれておる。このあたりは安川特派大使もよくよく説明してくれたと思いますし、それから現在、私ども通商産業審議官の橋本君をアメリカとの製品輸入の調整のために派米をしておるところでありまして、着々と成果を上げてまいりたい、誠意を持って当たりたいというふうに考えております。
  189. 大内啓伍

    ○大内委員 いま通産大臣御指摘のように、若干改善の兆しが見えています。ただ、にもかかわらずやはりアメリカはこのインバランスを非常に大きな問題にしているわけです。総理、安川代表の報告を聞かれて、この問題の重要性をさらに認識を深められたと思うのですが、この辺で何か手を打つ必要があるというふうにお考えでしょうか。
  190. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 安川君ばかりではございませんで、あらゆるレベル、あらゆる層の方々を煩わして日米間に理解の不足あるいは誤解というものがないようにしなければならぬという努力をやっておりまして、これは今後も続けてまいるつもりでございます。  それから、現実にそれではどういう措置をとるかということでございますが、今日までも関税その他の措置を次々にとってまいったわけでございます。さしあたってどういうことをやらなければならぬかという問題もないわけじゃございません。これは牛場氏も帰られたようでございますので、各方面の情報を集めまして政府部内で検討して対応を決めたいと思っておりますけれども、日米間は大変濃密な関係でございますし、広範な、スケールの大きい関係でございますので、不断に意思の疎通を図り、不断に措置するところがなければならぬわけでございまして、そういう努力は精力的に間断なくやってまいるつもりでございます。
  191. 大内啓伍

    ○大内委員 昨年、これはアメリカだけじゃありませんが、なるべく輸入をふやそうというので緊急輸入をやった。目標は四十億ドルであった。いま二十億ドル台に低迷して目標は達しなかったわけですが、五十四年度の緊急輸入はどのぐらいの規模を考えていますか。
  192. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 お示しのように、いままで成約のできたものは五十三年度の場合は二十億ドル、そして年度末までに通産省がいま交渉がほぼまとまったと見ておりますものが十億ドル程度に及ぶわけであります。来年度は二十億ドル程度の緊急輸入をしたいと考えております。
  193. 大内啓伍

    ○大内委員 いまアメリカは、このジョーンズ報告でも明らかなように、日本の市場開放について何らかのシンボリックな措置というものを求めていると思うのですね。その中の一つとして、たとえば政府調達コードについて電電公社等の公社、公団もその対象とすることということを強く要求してきている。これは言うまでもなく電電公社等による外国品調達の増大、その中にはいろいろなものがありましょうが、通信施設あるいはコンピューター関連品目。つい数日前この関係の業界が全紙に物すごい広告を出しまして、困ったという広告を出しておりました。といっても、大変困った問題なんですが、この辺はどうされますか。シンボリックな措置について何か具体的にお考えですか。
  194. 園田直

    ○園田国務大臣 日米間、緊密であればあるほどいろいろな利害問題は出てくるわけでありますが、御指摘のとおりでありまして、一つは黒字幅の圧縮の問題、これは非常に厳しいけれども逐次実績も上がっておりまするし、これがさらに圧縮をし定着するように努力したいと考えておりまするが、後の御発言の貿易障害については非常に厳しいものがございまして、この処理を誤るならば全般的な問題となり、個々の経済問題が政治問題に化するおそれがあるわけであります。また一方、私の方から言えば、サミット、東京ラウンド、逆算をいたしますると期間も限られておる。したがいまして、今後ありとあらゆる努力をしてこの問題は解決しなければならぬと考えておるところでございます。
  195. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いま橋本通商産業審議官が参っておりまして、いろいろな議論を展開しておりますが、そこの中にいま御指摘の電電公社の電気機器問題、コンピューターもありましょう、がございます。最初から電電公社としての安全性それから便利性、そういったものを損なうような輸入措置ということは私どももとうてい考えられないと思いますが、やはり外務大臣が指摘されるように非常に重要な問題でありまするので、ある程度の配慮はしなければならないのではないかというふうに考えております。
  196. 大内啓伍

    ○大内委員 これは外務大臣、通産大臣御指摘のように、一つの製品輸入をやるかどうかというような問題にとどまらず、日米関係の根本に触れる問題ですから、国内には国内の立場がありますけれども、広い視野に立って建設的な結論を出すように要望したいと思います。しかし、いまの含蓄ある答弁はなかなか重要だと受けとめました。  これは安川代表に対して申し上げるわけではないのですが、ストラウスSTR大使が最近こういうことをおっしゃっているという記事があるのですね、この精度のほどは必ずしも存じませんが。日本から何人かの使者が来るが、メッセンジャーボーイばかりだ、もっと政策決定の判断ができる人が来てほしい。恐らくアメリカにとっては現在の日米貿易のインバランス打開という問題はそのぐらい深刻で、かつ焦っているのですね。私も昨年夏会いましたけれども、本当に手を広げておりました。したがって、私が先ほど総理大臣にお伺いしたのも、そういう意味を含めてお伺いしたのです。東京サミットというものを目前にしながら、日米の経済関係の当面の問題を打開する努力について日本政府が誠意を尽くす。そのためには幾つか方法があると思うのですが、アメリカの中心人物ストラウス大使自身日本に招いて十分理解していただく、こういう方法が一つあると思うのですね。  それからもう一つは、総理大臣の訪米という問題もございますが、その前段階として外務大臣なり通産大臣が向こうへ行って、つまり政策決定者が行ってアメリカとの間に腹を割って話し合う、私はこれが日本外交だと思うのです。そういう具体的なプランは検討されておりますか。それとも検討される用意がありますか。
  197. 園田直

    ○園田国務大臣 先ほど申し上げたとおりで、非常に大きな問題であります。この問題が政治化しないように懸命の努力をいたしております。総理が訪米されるかどうかという御質問もありましたが、これはまだ検討しておりません。ただ、外務大臣としては、このような経済問題解決のために総理が初めておいでになることは日本国の最高指導者としては適当でない、その前にわれわれが何らか努力をして解決すべきである、こう考えております。ただいまの御意見は貴重な御意見として拝聴いたしておきます。
  198. 大内啓伍

    ○大内委員 いまの答弁の含蓄は、外相ないしは通産相の訪米というものを念頭に置いた御答弁だと思うのであります。先ほど総理の訪米の問題で御質問があった際に総理はこういうお答えをされているのですね。いまの段階で具体的にどうするというところまで固まっていない。実際にそのとおりだと思うのです。この問題はそう急には固まらない問題だと思うのですが、総理自身のお考えをお聞きしたいのですけれども、サミットという問題を前にして、サミット前に総理が訪米する必要性はあるというふうにお考えですか。いかがでしょう。
  199. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほど二見さんの御質問に答えましたように、日米間の首脳の話し合い、意思の疎通というのは大変大事だと思っていますし、いまのような経済問題が山積いたしておる段階におきまして特にその必要を痛感いたしております。そしてそのために、私にいたしましても、閣僚にいたしましても、どんなことでもいつでもしなければならぬ立場におることは申すまでもございません。その問題をわれわれいつも念頭に置いて考えておるわけでございますけれども、いまの段階におきましては、国会を持っておりまするので具体的に申し上げる段階でございませんということでございます。
  200. 大内啓伍

    ○大内委員 大変恐縮ですが、検討の対象にはなるのでしょう。
  201. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 毎日検討いたしております。
  202. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは、日米首脳会談はそのぐらいにいたしまして、次はイランの情勢及びそれに関連する石油問題についてお伺いをしたいと思います。  二月十一日にバクチアル首相辞任がありまして、ホメイニ師指導のバザルガン暫定政府というものの地位が一つ政府として固まっております。この情勢の見方については、先ほど外務大臣もいろいろ申し述べておられたのですが、確かにたくさんの不確定要素がございますね。したがって、これはなかなかむずかしいと思われますが、今後のイラン情勢をどう展望されているか。実はその情勢いかんというのは世界の石油情勢にストレートに響いてまいりますので、この辺を重ねてもう一回ちょっと確認をしておきたいのです。
  203. 園田直

    ○園田国務大臣 事実の経過は御承知でございますから省略をいたします。  いま現在混乱しておる国内の混乱をどう安定していくかということに一つの流動的な要素がありますが、他の面においては逐次安定の方向へ行くのではなかろうかと推察をいたしております。なお組閣その他手がたいところを見ますと、まず第一に考えるのは国内の経済再建、特に石油精製に対する問題を第一に考えられておるようであると考えます。そういう意味で重大な関心を持ちつつ見守っておるところでございます。
  204. 大内啓伍

    ○大内委員 問題はイランの石油生産の回復の見通しということなんです。御案内のとおり、イランは大体日産で五百万バレルぐらい世界に輸出をしていた。これは世界の輸出全量の一七、八%に当たる。そういう意味では非常に重要なわけなんですが、実はきのうの夜のテヘラン放送ですけれども、重要なニュースを流しておるのですね。つまりイランとしてはこれからの石油輸出は革命前の十五分の一に削減する、こういう放送が入ってきております。これと相前後いたしまして、ワルトハイム国連事務総長は、今後の石油不足は避けられないだろう、こういう記者会見をつい先ほどやっているのですね。先ほど通産大臣は相当楽観的な――厳しい面を出しながら、これはいろいろな意味で動揺を与えたくないという政治的な御配慮だと思うのですけれども、しかし事態はそんな甘くないかもしれません。イランの石油生産の回復の見通しについてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  205. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いまお示しのイランの原油が世界の約二〇%近くを占めるというのは、どうも私どもの調べによりますると、世界の依存度は一二%程度、日本の依存度は一九%強……(大内委員「私の申し上げたのは輸出量です。依存度ではありません」と呼ぶ)それでイランの石油が――バザルガンという人は御承知のように国営石油公社の総裁をやった人ですね。ですから、石油問題ということには非常に通暁しておられる。そればかりか、イランの治安が回復されれば、イランの経済再建のためにはこの石油の輸出ということが非常に重要な要素になることはもう言うまでもありません。  そこで、昨晩の、いまお示しになった情報も一つの情報でありましょうが、私どもも多岐にわたる情報の的確性というものをいまどうとらえていくかということに非常な精力を費やしておるわけです。メジャーを含む石油販売業者などが当面の思惑を秘めていろんな情報を流す。たとえばサウジアラビアが日産一千万バレル以上緊急生産をしておってくれましたのが、また八百万バレルに戻った、それは実はうそであって、九百五十万バレル程度はやはりOPECの責任として、特にサウジは誠実に増産を継続するということで、後から修正されましたね。したがって、IEAにおきましても、やはりこの場面は冷静に対処していこう、こういうことで、的確な情報をどうつかむかということに各国とも神経を使っておるわけであります。私どもも、あまたある情報の中から、外務省及び現地におりまする商社等々の情報をとりまして、適切な判断を下し、また適切な措置を随時をとっていくようにしたいということに鋭意努めておる次第でございます。
  206. 大内啓伍

    ○大内委員 イランの国家収入の八〇%が石油輸出ですよね。昨年あたりでは、これが二百三十億ドルぐらいになっていますね。ですから、いかなる政権といえども石油は相当生産しなければならぬ、また輸出をしなければならぬ、こういう事態にあることは私も承知しているのです。ただ、それにいたしましても、これまで五百万バレルを世界に輸出してきたという体制は、これはなかなか回復できないですよ。よく見て三百万バレルいくかどうか、その近辺でしょう。ところが、革命という異常事態の中で、そういうきわめてノーマルな判断もなかなか生まれにくいという情勢がイランの中にあることも事実なんですね。そこが非常にむずかしいわけなんです。  そこで、加えて、最近ソ連の原油輸出がストップいたしましたね。つい先ほどですね。これはいままで百万から百四十万バレルですよ。これが二月からストップです。これもやはり相当影響力がプラスされるわけなんです。ですから、シェルを初めとするメジャー各社は、不可抗力条項というのを使いまして、御存じのとおり一斉に石油供給の削減通告をやってきている。現に、二月九日にはシェルは一五%の削減を発表した。具体的にそういう問題が出てきているのですね。ですから、もちろん通産大臣がおっしゃるように、十分慎重に、余りあわてないで、情勢を見ながら対応していく、これは私は非常に重要な姿勢だと思う。しかし、にもかかわらず、情勢は非常に厳しいということは、国民の皆さんにも、これはいろんな層がございますが、やはり常に訴えていくというのが政治のもう一つの任務だと思うのです。というのは、現実に、これは後で申し上げますけれども、これの長期化が起こった場合には大変な影響が出るわけなんですよ。ですから、イラン石油の生産回復というのは、イランの側にそういう情勢があるからまあまあ大丈夫だろうというような御判断じゃなくて、やはり相当厳しく見ていく必要がある。この辺いかがでしょう。重ねて御見解を承りたいのです。
  207. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 お示しの御意見は、私全く同感なんです。ただ、いつも申しておりますように、ここで買い急ぎがあったり買いだめがあったり、一方では売り惜しみが出てくるというようなことになりますと、何のために九十二日間も備蓄しておったか、この理由がきわめて効果が薄れてしまうわけです。したがって、情報を的確にキャッチすることに鋭意努力をしながら、一つの方針は示していく。しかし、国民全体には、もともと石油は全部海外に仰いでおるのですから節約をしてもらいたいということを再三訴えていく、これは大事なことだと思います。しかし、そのことによって景気にかげりを生じたり、あるいはまたにわかに物価をつり上げる、それが引き金になるというようなことは、これまた細心の配慮をしながら極力避けていきたいというのが通産省の立場でございます。
  208. 大内啓伍

    ○大内委員 それでは幾らか具体的に聞いてみましょう。  二月九日、江崎通産大臣と総理とが会談をやりまして、当面の石油供給の見通しについて見当をつけられましたね。一――三月は七千二百万キロリットルぐらいでしょう。一――三月は大丈夫だ、こういう発表をやられましたね。まあそんな見当なのかなとも思いますし、なお若干の不確定要素がありますね。これは事務当局で結構ですが、たとえば一――三月の船積みで確保確定したものは何万キロリットルですか。
  209. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 一――三月の船積みベースにつきましては、各社に調査した結果、おおむね六千八百万キロリットル程度は確保できるものと考えております。
  210. 大内啓伍

    ○大内委員 それは船積みで確保が確定した数字じゃないでしょう。見通しでしょう。きちっと言ってくださいよ、数字を。
  211. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 六千八百万キロリットルのうちで、内訳についてはただいま数字を持ち合わせておりませんが、六千八、百万キロリットル程度はおおむね確保の見通しが高いというふうに考えております。
  212. 大内啓伍

    ○大内委員 では私の方から数字を申し上げましょう。大体いまの段階で船積み確保が確定したのは四千八百二十五万キロリットルぐらい。だって、あなたのところの通産省では私に説明しているのですから、そんな水増ししちゃだめですよ。そうしますと、たとえば石油販売見込み、発電用石油の生だき、合わせて一――三月はどのぐらい必要なんですか。事務当局でいいですよ。
  213. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 いま資料を持ってきておりませんので、早速調べて御報告申し上げます。
  214. 大内啓伍

    ○大内委員 では私から数字を申し上げましょう。石油販売見込みが七千万キロリットルです。それから生だきが五百万キロリットル、総計一――三月で日本からの需要は七千五百万キロリットル。そして、いま向こうから船で石油を運んでくる、これは確かに日本へ来ると思われるのが、大体いま申し上げましたような数字で五千万そこそこ、これはまだ相当足りないですよ。それで一――三月は大丈夫だ、そして六千八百万キロリットルまでめどがついた。相当差があるじゃありませんか。だから、一――三月は大丈夫だということすらもまだはっきりしないでしょう。事務当局、どうですか、そんな無責任なことばかり言って。
  215. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 一――三月到着ベースでは七千二百万キロリットルは確実である。多分七千二百万と七千三百万の間になるというふうに考えております。もちろん、経済成長に伴う需要の増がございますので、七千二百万は前年同期の横すべりではございますが、もちろんそれで十分ということではございませんが、現下の情勢下においてはまあまあという数字であるということでございます。
  216. 大内啓伍

    ○大内委員 実はイランの石油輸出ストップにもかかわらず、日本が余りそういう石油パニックを引き起こさなかったのは、言うまでもなくサウジ以下の増産にあった。これは大体三百万バレルぐらい供給してくれる。ところが、一月のベースで、サウジが大体千二十から千五十ですよ。いままで八百五十万バレルのところを千台に高めてくれた。それからイラク、クウェート等が増産してくれた。その結果、全体で三百万バレルぐらい補ってくれたために実はイランの石油ストップというものを緩和できたわけですね。  ですから、サウジその他の諸国家のこれからの増産という問題は非常に重要なわけですね。ところが御存じのように、サウジは年平均日産八百五十万、これは崩してないわけなんですよ。ですから、いまのベースでいきますと、後では減らさなければならぬのです。ですから、現実には一月には千五十万バレルぐらいまで輸出をしてくれたけれども、二月にはこれを九百五十にまで落としてくる、あるいはさらに九百にも落とそう、こういう状況にある。それに加えて二月からは、さっき申し上、げたとおり、ソ連が原油の輸出ストップを百から百四十かけてきた。これはやはり重要なんですよ。  つまり私が申し上げようとしているのは、一――三月のわが国に供給される石油そのものについても、まだ一〇〇%安心できるような状態にない。特に三月以降については予断を許さないのですよ。ですからこれはなかなか、当面の石油供給の見通しというのは深刻なんですね。サウジのこれからの減産、ソ連の原油ストップ、この影響をどういうふうに通産大臣はごらんになっていますか、見通しも含めて。
  217. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 サウジの見通しはいまお示しになったとおりですが、ちょっと違うところは、やはり千五十万バレルぐらいは、九百五十ぐらいはここ当分続けようということで、相当確度の高い情報ということで私どもキャッチしておるわけであります。  今後長期的にどうするのか、これはやはり備蓄の取り崩しの問題も当然出てくると思います。ただ、いまエネルギー庁長官が申しましたように、まだこれ二月も半ばですから、一――三月と言えばこれは見通し分も含むわけですよ。ですから、困難なことはわかりまするが、エネルギー庁長官がそういいかげんなことを言っておるとは私思いません。何遍も詰めた上で実は私ども総理にも御協議、御説明申し上げたわけでありまして、大体七千二百万キロリットルは確実に入るということで、後はスローダウンする非需要期に入りまするので、この間に十月以降の最盛期にどれだけの積み増しができるか、これは全く予断を許さないわけでありまするが、一面の情報では、さっきお話がありましたように、イランの国際的な収入源というものは八〇%まで原油輸出に依存をしておるわけですから、三百五十万から四百万バレルくらいの日産は案外政局が落ちつけば、これは条件がありまするが、政局が落ちつけば比較的早いのではないか、こういう情報もあることを申し添えておきます。
  218. 大内啓伍

    ○大内委員 アメリカのシュレジンジャー・エネルギー庁長官は、二月十三日の議会証言で、これは恐らくごらんいただいていると思うのですが、イランの原油減産が六月まで続けば、七三年石油ショックと同じ規模の世界的な石油不足が生じる、こういうふうに非常に厳しい警告をしているわけなんです。  そこで問題は、これはわが国の場合なんですが、イランの石油減産がさらに四、五カ月続く、こういうことになりますと、やはり重大事態に入るわけですね。これは御記憶のとおり、一九七三年のあの石油ショックのときには、一バレル二・五ドルの石油が、七四年の春にはスポット買いで二十二ドルくらいまでいったのです。ですから、まず考えられることは、減産が続いて石油不安が続きますと、そういう思惑買い、スポット買い、その意味からの価格の急騰が起こる可能性がある。この点についてはどういう対策を講じますか。
  219. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 非常に用心深く対応いたしております。このスポット買いはやはり思惑を秘めて、特にメジャー筋が動いておるわけでありまするが、メジャー筋への依存度は日本では三%くらいですから、大局を動かすには至らない。それから先ほどのソ連も石油の輸出をストップしたしと、いろいろ条件の悪いことは私もよく知っております。しかし、七三年のあの石油危機と違う点は、北海油田、アラスカ油田、こういったものが、たとえば北海は日産百四十万バレル、アラスカは百二十万バレル生産をする。それから各国ともに、環境問題でなかなか思うに任せぬとは言いながら原子力発電等々、エネルギー源が多少とも多様化が推進されたということ、それから備蓄の度合いが違っておるということ。備蓄を一遍取り崩せば、供給がストップすれば取り返しがきくものではありませんね。けれどもそのための備蓄ですから、こういう日本のように、景気をどう持続させるかとか雇用の安定とか物価の安定とかということがことしの財政経済政策の大きな柱であるときには、やはり多少手をつけてでも、汗をかきながらでもがんばる必要があればがんばっていく。ただし国民に対しても、ぜひひとつ節約は求めなければならない。ところがこれが行き過ぎますと、前の経験に徴しますると、買いだめ、買いあさりをする。何のための備蓄か先ほども申し上げたようにわからなくなる。したがって、そのあたりをよくにらみながらこれから適切な対応をしていく必要が私どもにあるというふうに理解しております。
  220. 大内啓伍

    ○大内委員 OPECは昨年の十二月に、一四・五%の原油の値上げを通告してきた。ところが通産大臣、ちょっと聞いてもらいたいのです。昨日、フランス石油当局が発表したところによりますと、カタールそれからアブダビ、これはフランス石油に対して次のような通告をやってきているのです。つまり軽質油の価格について七・二%引き上げる、この結果、これらカタール、アブダビの石油は十五ドル十二セントにはね上がってきたのですよ。これは言うまでもなくOPECの一四・五%を上回るアップなんです。そしてこの状況は、私どもの推測では恐らくクウェート、イラクが追従値上げに入っていかざるを得ないのではないか。  それからカタール、アブダビの場合は、いままで契約した分についても、二月十五日にさかのぼって七・二%引き上げる。御存じのとおりOPECの値上げは一――三月五%ですからね、それを上回って二月十五日からいままでの契約についても値上げしますよ、こう言ってきている。それからサウジアラビアは、日産八百五十万バレルを上回る増産分についてはすでに一四・五%の値上げを実施している。こういうような状況からしますと、一四・五%のOPECの値上げというものは、今後さらにその上に上積みされてくるという傾向と行動が、現実に世界の石油メーカー、石油資本から起こってきておる。この一四・五%に対する見通し、これはもちろん上がるだろうなどということは通産大臣としては口が曲がっても言えないと思いますが、したがって、逆にこの一四・五%以内に抑えるためにはどういう行動が必要だ、どういう各国との話し合いが必要なのか。そのために具体的にどういうことを通産相としてはやろうとしているのか。これが政治です。お伺いいたします。
  221. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 アブダビ、カタールが、わが国の石油企業に対して、先ほどお示しのような要求をしたということは事実でございます。ただこれはサウジなどの反対でOPECの総会開催には至らなかった。したがって、クウェートにアブダビ、カタールが集まって値上げを決定した、これは事実でございます。  さて、そこで、値段のつり上げの問題は、スポット物も高くなって――何か私はさっき、スポット物を三%、こう言ったつもりでしたが、メジャーがと言ったそうですが、それはもう全くの言い違いですから訂正いたしておきますが、これは大局に影響のないスポット物ですが、これが石油の値上げの引き金にいつもなるのですね。したがって、それがまた影響しまして、イランの減産分でこういう周りの国々に値段つり上げの意向が出てきた。これも需給の原則から言えば、自由市場ということなれば、いたし方のないことだと思いますが、こういった問題については私どもやはり冷静に対処していきたいというふうに考えます。当面は、積み増しもあることですから、そういうものによりながら、冷静に今後の成り行きを見ながら対策する。いま政府として何か考えがあるかというお話は、きっと、こういうときに特使でも出すとか、あるいは具体的にどういう行動に出るかということを含めてのお尋ねであろうと思いまするが、それらを含めて今後よく情勢を判断しながら私ども対応をしていきたい。これはやはり重要なエネルギー源の外交でありまするから、実はけさからも質問が外れるたびに外務大臣と隣り合わせでございまするので、懇談をしておったということでありまして、いま具体的にどうするこうするという計画は申し上げる段階にありませんが、事の次第によっては、きわめて弾力的に、機を逸せず対応することの必要性はもとより痛感いたしておりまするが、冷静に対応いたしたいと思います。
  222. 大内啓伍

    ○大内委員 石油のために外務大臣と通産大臣は特に仲よくする必要がある。そこで、一四・五%のこの値上げによってアメリカ自身やはり相当影響を受けるわけですね。アメリカの国際収支悪化にはどのぐらい影響する、何ドル影響すると見ておられますか。――それでは、時間のむだですから……  いまアメリカの石油代金の支払いは大体四百五十億ドル前後ですね。そうでしょう。そして、イランに対する石油の依存度というのは、アメリカの場合は大体一〇・七%ぐらいなんです。したがって、大体一〇%影響するわけなんですよ。ですから、たとえば一四・五%上がりましても、単純計算だけでアメリカの国際収支悪化は四、五十億ドルに達しているのですよ。  これは、通産大臣、実は私がさっき東京サミットの問題でお伺いをした、日米貿易のインバランス是正という問題にストレートに響いてくるわけなんですよ。つまり、アメリカは日本のために国際収支がめちゃくちゃにされたと思っているところに、また片方から穴をあけられるわけです。その恨みはイランにいくのじゃなくて日本にくるのですよ。ですから私は、先ほど来、相当政治的に構えて対応する必要があるのではないかと言う意味もそこにありますし、また、そういう意味で園田外務大臣、通産大臣、真剣に受けとめられているということを了解いたしました。ですから、このOPECの石油値上げ自身、そしてこの動向自身が、日米関係にも響いてくるということだけはひとつ十分御理解をいただいて、インバランスの是正という問題について対応していただきたいのであります。  したがって、今後やはり日本としては相当備蓄の取り崩しをやらざるを得ないですね。いま官民合わせて九十二日、どのぐらいまで備蓄の取り崩しが可能だ、また、やらなければならない、その辺は、通産大臣、どういうふうにお考えですか。
  223. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 備蓄の取り崩しが物理的に可能な範囲でございますか、九十二日分のうち四十五日分くらいはランニングストックとして保持しなければなりませんので、その分の取り崩しは非常にむずかしいと思います。したがいまして、まあ四十七日程度は、取り崩そうと思えば、物理的には取り崩しが可能であるということでございます。
  224. 大内啓伍

    ○大内委員 法的にはどうですか。
  225. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 備蓄の水準につきましては、一つは国際的義務がございまして、これはIEAによる義務でございます。これによりますと、現在は七十日分の備蓄を持つことが必要でございます。なお、来年の一月一日からこれを九十日に引き上げることが必要でございます。  それから、日本の国内法といたしましては、現在八十日の備蓄を持つことが義務づけられておりますが、四月一日からはこれが八十五日に引き上がる、こういうことになるわけでございますが、一八十五日に引き上げましても、この義務の遂行は不可能であるというふうに考えておりますので、そこにつきましては義務免除といいますか、弾力的な対処をしなければならないのではないかというふうに考えております。
  226. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、八十五日という基準にこだわらないで、たとえばスポット買い防止のために備蓄取り崩し等は現実に即してやる、こういうことですか。通産大臣、どうです。
  227. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 民間の分をまず取り崩しをしていく、こういうことです。  それから、カーター大統領が石油節約を呼びかけた、そのとおりだと思います。  それから、さっきのシュレジンジャーが五%程度の節約をする、それじゃ具体的にどうするのかという反問に対して、具体的な、こういう策をとったという情報が入ってこないですね。一月三十日にIEAの事務レベルの会合がありましたときも、さっきから繰り返し申し上げておりますように、なだらかな対応ということで、ドイツにしましても、フランスにしましても、それぞれいま特段の措置はとっていない、まあ日本がいまとっておるような程度。アメリカの場合は、ハイウエーのスピード制限をしておりますが、特に顕著な対策はいまとられていないというのが私どもが入れておる情報でございます。
  228. 大内啓伍

    ○大内委員 一月二十二日総理府が省エネルギー対策について発表し、また二月九日にも通産省関係対策を発表されておりますね。この省エネルギー対策の見直しはやるつもりですか。
  229. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 今後の情勢の推移によりましてはいつでも適時適応の策をとる、どういうことでございます。
  230. 大内啓伍

    ○大内委員 日本の場合は、省エネルギー政策というのはわりあいにおくれているのですね。特に産業用が比重、か大きいですからね。ですから、これはアメリカのようなぐあいになかなかいかない、そこにむずかしさがあると思います。しかし、いま銀座四丁目へ行ってみますと、世界一のネオンサインが輝いていますよ。そこへ高級車がだあっと入って、お金をばらまくようにガソリンを使っていますよ。そして小さな紳士が出てきてバーの中に消えていく、こういう構図が日本にはまだあるのですね。ですから、もっと省エネルギーという問題を国民に徹底し、具体策を立てていく必要がある。先ほど大口需要の規制という問題も出ておりましたけれども、今後やはり省エネルギーの強化という問題について格段の対策を立てる必要があるということを厳しく申し上げておきたいと思うのです。  さてそこで、イラン情勢に関連いたしまして、例の三井グループのイランにおける石油化学投資問題、これについてちょっと伺いたいと思うのです。  これは御案内のとおり、三井グループがイランにおいて石油化学プラントの建設を手がけてまいりました。これに対しては政府借款を与えていますね。幾ら与えていますか。
  231. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 政府借款は二百八十八億でございます。
  232. 大内啓伍

    ○大内委員 昨年の九月には福田総理総理という立場でイランを訪問し、もちろん外務大臣もですが、そしてこのプロジェクトについては実施ができるよう日本政府としても協力するということを約束されましたね。外務大臣、どうですか、覚えていますか。
  233. 千葉一夫

    ○千葉政府委員 お答え申し上げます。  そのとおりでございます。
  234. 大内啓伍

    ○大内委員 つまり三井グループの石油化学プロジェクトについては、日本政府はこれに対して政府借款を与え、かつ総理大臣がこの事業の遂行に対して協力を約束している。その意味では非常に国策的な色彩を持っているわけなんですね。ところが御案内のとおりのイラン情勢で、これが大変困難な状況に入ってきている。私は三井グループの人から全然話は聞いておりません。会ってはおりません。誤解を生むといけません。しかし、これは非常に重要な問題です。現在、現地の情勢を調べてみますと、日本人は二千人以上働いていて、正確な数字ございますが、それで工事は大体八五%完成している。そして日本側の責任はほとんど一〇〇%果たしている。ところがもう断水、停電、物資不足、リヤルの通貨なし、金融機能麻痺、行政機関の機能麻痺、通関のストライキで資材不足もなかなか深刻な問題になってきている。もしこれが四月中旬までに問題が解決しない場合、つまり政情が安定化し日本との間の話し合いがきちっとしてこないと、これは手を上げてしまうというのですね。もし工事の凍結をやりますと、日本、イラン双方の金利負担は年間で四百億円に達するというのです。したがって、政府の行政指導はどういうふうにやっているのだと聞きましたら、それはイラン国営石油、あの石油会社とよく話し合って話を決めろ、通産省の人はそういうふうに言っているのですね。しかし、いま相手のイラン国営石油公社、NPCと言っておりますが、これのモストフィー総裁はロンドンで静養中で当事者能力がないですね。交渉しようとしたって相手がいないわけです。行政官庁もだれもいない。そして相手の公社の責任者も入院中で国内にはいない。もちろん、革命が起こりましたので帰れるかどうかもわからない。これでずるずる四月までいってしまいますと大変な事態が起こる。これは日本政府としても協力を約束した。これは今後の海外投資という問題全般にも絡む問題でありまして、ただ三井グループがどうだこうだという問題じゃありません。しかも、それは日本にとって資源確保という国策の問題が背景にある。この問題に対する政府の対応はどういうふうにされるつもりでしょうか。
  235. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 イランの政情不安をながめながら、バンダルシャプールの三井のイラン石油公社との合弁企業の行方を私どもも細心の注意を払って見ておったわけであります。したがって、三井側の意向も、この政局不安がいつまで続くにしても八〇%はこのプラントが完成しておる、したがってもう一息、だから自分たちは完成に向かって努力します。いや、せひひとつそういう意気込みでやってもらいたい、私も賛意を表したものであります。そのことが今度のホメイニ師によるバザルガン新首相などにも、日本人というのは非常に約束に忠実である、よその国々は国外退去をいち早くしていったが、日本は非常に誠実、忠実というような感じで評価されたものというふうに私は思います。  しかも、今朝の閣議で外務大臣から、このバザルガン新首相にわが和田大使が国家承認の報をもたらし懇談をいたしましたときに、自分はホメイニ師の命令によって南部の勤労者が働いてくれるように、職場につくようにという意味を含めて視察をしたが、実にバンダルシャプールの日本との石油化学プラントはみごとなものだ、ぜひこれは治安が回復し次第速やかに建設を進めたいという意向表明があったということを聞いて、本当に私内心ほっとし、また内心喜んでおるものであります。そうかといって、政局安定までにはまだ現実の問題として相当日数もかかりましょう。しかし、新しい首相がそういう方向を示してくれたことは、やはり日本企業及びこれに賛意をし、激励をしてくれました通産側のサゼスチョンというものが適切であったというふうに思いまして、実は一安堵しておるというのが現状でございます。
  236. 大内啓伍

    ○大内委員 この問題は、一民間の問題ではありませんので、今後政府としてもあらゆる面でこの事業を遂行されますように努力していただきたいと思うのです。  ただ、このイラン情勢は、これは石油について新しい内閣が、すべての石油事業については国有化するという方針をとる可能性が非常に強いわけなんですね。部分的には、ホメイニ師の側近はそのことを言明しているのですね。これについては何か対応策がございますか。国有化方針というのは、きょうのいろいろなニュースでも出てきておりますが、相当可能性が強いですよ。そうしますと、これはやはりいま通産相のおっしゃったことにかかわらず、根底からこの問題が崩れていく。そして、特にパーレビ政権時代の負債についてはキャンセルをする、場合によっては減額等の再交渉をやる、こういうことまで言ってきているのですね。これはきわめて重大だと思いますが、いかがでしょう。
  237. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 石油に関する国有化の御質問のところだけお答え申し上げます。  石油につきましてはすでに国有化されておりまして、NIOC、ナショナル・イラニアン・オイル・カンパニーが管理の全責任を持ってやっておったわけでございます。ただ、外国人技術者が必要でございましたので、オイル・サービス・カンパニーというところが外国人技術者を千何百名か雇い入れて、これに操業をさせておったという状況でございますが、今後この外国人技術者を一体どういうことにするのか、それから、NIOCが掘り出した油を、従来は七、八割程度コンソーシアムに売らせておったわけですが、このコンソーシアムを通ずる販売を停止するのかどうか、その辺のところはこれからの問題点であろうと思います。いずれにいたしましても、この石油に関する国有化の問題は、主としてコンソーシアム加盟のメジャーとイラン政府との間の交渉事であろうかと存じます。
  238. 大内啓伍

    ○大内委員 イランの周辺はわりあい回教徒が多いんですね。ですから、たとえばそうした石油国有化方針等々が周りに非常に大きく波及してくる。現に、ソ連のイラン国境に接しての回教徒は約四千万人ぐらいいるのじゃないか、こう言われておりまして、ソ連自身も相当――今度のイランの情勢の変化については、そういう回教徒がいろいろな意味で動いているということも聞いております。したがって、本当はそこの点も確かめたかったのですが、時間が余りありませんから割愛をいたしますけれども、その辺を十分これからお気をつけいただきたいと思うのです。  さてそこで、石油値上げ問題について。公取委員長お見えですね。二月二日、石油各社が石油製品の価格の値上げを発表いたしました。大体一四%近辺、上げ幅は大体三千五百円前後。ここで一つ奇異に感じますのは、OPECの一四・五%の値上げが発表され、それから間もなくして日石を中心にしてエッソ、大協石油あるいは共同石油、出光興産等々が、一斉に符牒を合わせたように一四%台の石油値上げを実施してきた。一九七三年のときにもそういう事態がありまして、なお現在係争中の問題がある。これは独禁法違反の疑いはありませんか。
  239. 橋口收

    ○橋口政府委員 石油元売り各社が最近石油製品の仕切り価格の引き上げを発表したことは承知をいたしております。独占禁止法上のいわゆる同調的値上げの報告の対象には市場構造要件から該当しないわけでございまして、問題といたしましては、この発表された価格が現実に実施されるかどうかという問題でございまして、現在の段階はまだ発表の段階というふうに承知をいたしておりますし、それから発表されました価格、引き上げの時期等につきましても必ずしも斉一的ではないように承知をいたしておりますので、実際の取引価格がどうなるかという事態を注視していきたいと思っております。  いまお話にもございましたように、石油元売り各社は現在東京高裁で訴訟中の身でございますし、それから昭和四十年代にはしばしばにわたってカルテル事件を起こしている業界でございますから、万に一つもそういうことはないというふうに思ってはおりますが、しかし、御指摘もございましたし、また今後の実勢価格の動向等にも注意しながら、独占禁止法違反の事実があるかどうかにつきましては十分注視をしてまいりたいと思っております。
  240. 大内啓伍

    ○大内委員 これは通産大臣、さっきから申し上げているとおり、今度のOPECの値上げが一――三月で五%ですね、価格にいたしまして十三ドル三三五、値上げ前は十二ドル七〇でございました。ところが今度の日石等の申請、通告というのですか、発表を見ますと、物によっては二月から一四%台引き上げる、一――二月の段階でOPECのベースは五%値上げのところへ持ってきて、一四%まで上げちゃうという、こういう発表が行われているわけなんですが、通産大臣は一時行政指導というような問題も言われまして、これはなかなか法的にはむずかしいし、またいままで行政指導という面がない。しかし、この上げ幅は何か便乗的な値上げではないか、こういう感じがいたしますが、この辺についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  241. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いかにもOPECの値上げ分を先取りしたような誤解を受けるたまたま数字の一致だということは言えると思いますが、それは円安の分とかあるいはかねて値段が安くなり過ぎた分の是正とか、説明はいろいろしております。しかし、私が申したのは、便乗値上げ的様相があればこれは行政指導もしなければならぬと、こういう意味を言ったわけであります。それかあらぬか、たまたま精製元売りの方が一四・五、六%上げるという要求をいたしますると、あの石油のスタンド、いわゆる販売業者からは、そんな高額な値上げが必要であろうかというわけで、販売業者の機関紙には大見出しで反対の見出しがあるのですね。ここらあたりに私は石油業界の複雑さというものの一面を見るような気がするんですね、恐らく親会社と子会社といいますか、販売会社とが意見が対立するなんて。これは、流通経路で値崩れするとかいろいろな問題があることは御承知のとおりでありますが、そういう調整も十分しないで、ただ安易な値上げを言うということはいかがであろうか、このあたりに私は重点を置いてあの当時の意見表明をしたわけであります。
  242. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、一四%前後の値上げについては大体妥当だとお考えですか。
  243. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは、先ほど公取委員長も話されたように、まず需要と供給の原則に従って、需要者側が果たしてその値幅をどうするのかという問題もあろうかと思います。その成り行きを検討しまして対策したいと思います。
  244. 大内啓伍

    ○大内委員 総理、以上石油問題がなかなか深刻であるという面での若干の質疑をお聞き取りいただいたわけなんですが、総理は、五十四年度六・三%の経済成長を達成したい、こういうふうにおっしゃられたのですが、その基礎は言うまでもなくエネルギー資源の確保、つまりエネルギー政策の確立という問題が非常に重要な課題なわけなんです。そして政府としては、かつて五十年にそれなりのエネルギー政策をつくったのですけれども、情勢の変化が激しかったためなんですが、実際には基礎数字がことごとく破綻して、今日はなお政府としての長期エネルギー政策を確立するに至っていない。これは、昨年私、福田総理と議論して、できるだけ速やかに長期エネルギー政策を確立したいという、その決意を聞いたのでありますが、経済七カ年計画をつくっても、あるいは経済のいろいろな数字、目標を立てても、その根本のエネルギー政策が確立していないというのでは画竜点睛を欠くと思うのです。というより国家の基本策が成り立たないと思うのです。しかもイラン情勢等、石油はきわめて流動的である。  そこで総理にぜひお願いしたいのは、前のあの総合エネルギー調査会の中間答申をただ基準にして政府のエネルギー政策を進めるというような、そういうやり方ではなくて、できるだけ早く政府としての長期エネルギー政策を確立するということが必要だと思うのです。そのことに対する総理のお考えと、問題は、その長期エネルギー政策を遂行するに当たって相当の資金が要るわけなんです。中間報告では、たとえば公的資金だけでも昭和六十年までに七兆円要る、こう言っているわけなんです。これは大蔵大臣も御存じだと思うのです。特にこれは大蔵大臣に関係があるのですが、大蔵省としては、たとえば原子力の研究開発等については相当の御配慮を加えているのですね。ですから、その予算の伸び率も一八%ぐらいの伸びを認めておられる。これは大変結構だと思うのです。      〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕  そこで問題は、昭和六十年にかけて公的資金の確保という問題が実はエネルギー政策の根本になってきている。この七兆円の公的資金確保について、これは大蔵大臣マターなんですが、やはり総理決断すべき問題なんです、資金が非常にないですから。先ほどのこととあわせて総理の御方針を伺いたいと思います。
  245. 金子一平

    金子(一)国務大臣 エネルギー対策の資金の調達の問題でございますが、民間資金の調達にまつことも多うございますし、同時に政府資金をどの程度、どういう方面の財源に求めるかということにつきましては、関係方面ともこれから十分詰めてまいりたい。現在石油税初めいろいろな石油財源に依存する税を使っておりまするけれども、これだけではとてもエネルギー対策に充てるに十分でございませんので、これはひとつ慎重に、十分に検討さしてもらいたい、こう考えております。
  246. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 御指摘のように、エネルギーの確保は成長の上からも物価政策の上からも基本的なことだと心得ております。そしてそれは長期にわたっての展望を踏まえてやらなければならぬということも仰せのとおりに心得ております。ただ、当面どのようにして、こういう不安定な状況の中で石油の供給を確保するかという問題、代替エネルギーをどのように開発確保して、これを補完していくかという問題、それから技術開発をどのように進めていくかという当面のエネルギー政策に、いまわれわれは最も力点を置いて対処いたしておるわけでございます。しかしこれと並行いたしまして、仰せのように、中長期の展望を持たなければならぬことは仰せのとおりでございまして、そういう問題意識を十分心得ながら当面の政策の処理に当たっていきたいと考えております。  公的資金の必要なことは申すまでもないわけでございますが、資金の確保につきましては、民間資金をどのようにして動員してまいるかという問題、公的資金にいたしましても従来の給源だけに頼るわけにもいかない問題のように思います。ことしはまた石油課税という方法も講じたわけでございますけれども、エネルギー政策が基本的な課題であるということでございますので、これに対する必要な資金は何としても確保しなければならぬわけでございまして、政策の力点は踏み外すことなく、資金の確保に全力を挙げて対処してまいるつもりでございます。
  247. 大内啓伍

    ○大内委員 関連いたしまして、いまの総理並びに大蔵大臣の御答弁はなかなか含蓄があるのですね。これから新しい財源を考えなければならぬということを政府が検討しているということなんですね。そういう意味で、含蓄あるものとして聞かせていただきました。これを余り詰めますと、またいろいろ問題が起こりましょう。  そこで一つだけ聞いておきたいのですが、たとえばエネルギー関係の諸税がございますね。これは五十三年度、今年度ので見ますと、大体二兆五千億円ぐらいあるのですよ。ところがこの税金は、御存じのとおり道路とかあるいは地方の一般財源等にも回されておりまして、エネルギー関係で使っているのは一五%だけなんですね。その結果、エネルギー財源が少ないという問題も起こっているわけなんですが、この配分については見直しをされるという御意思はあるのですか。
  248. 金子一平

    金子(一)国務大臣 道路財源に使っておるいまのガソリン税の使途を見直せという問題でございますけれども、これは自動車の利用者が受益者負担という意味において道路に還元しておる税金とお考えいただきたいと思うのですけれども、現在のガソリン税でも実は道路五カ年計画による道路財源に不足しておりまして、一般財源からつぎ込んでおるような状況でございますので、いまのガソリン税の使途はそれなりに私は意味があると思う、いますぐ見直すことはどうかというふうに考えております。
  249. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、先ほど総理並びに大蔵大臣がおっしゃった、たとえば需要者負担等の新しい財源というものを検討しないと、先ほどの公的資金確保、これはなかなかむずかしいと思いますが、その辺は、そうすると、検討されるということになりますな。
  250. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは民間資金の動員とあわせて、公的資金をどういうふうに調達するか、大変むずかしい問題でございますけれども、事の重要性にかんがみ、私どもも検討を重ねておる次第でございます。
  251. 大内啓伍

    ○大内委員 では、中国問題に移ります。  二月七日に大平総理大臣並びに中国の鄧小平副総理の会談が行われました。ここで鄧小平副総理は、ベトナム問題について重要なことをおっしゃいました。中国は慎重に対処しているが、ベトナムの今般の行動には制裁を加える必要がある。これは私ども新聞報道の限りで知っておるわけでありますが、そういうことを言ったということは事実でございますか。総理ですな。
  252. 園田直

    ○園田国務大臣 首悩者会談の内容をそのまま申し上げるわけにはまいりませんけれども、鄧小平副主席が会談の中において、中国は物を考える場合には実に深く考える、そして行動する場合には慎重にやると言いながらも、ベトナムに対しては何らかのこらしめをやらなければならぬという意味の発言をされました。これに対してわが方の総理は、前々からわが国は中国に対して、アジアの平和、ASEANの懸念、こういう考慮をして慎重に行動されるべきだという申し入れをしばしばやっておりますが、総理からも特に強く、中国は慎重に行動されるよう要請をされました。
  253. 大内啓伍

    ○大内委員 こらしめという言葉を使われましたが、新聞報道では制裁という言葉で理解をしております。この鄧小平副総理がおっしゃった制裁という言葉は、限定的な軍事措置を含むというものとして理解をされたのですか。
  254. 園田直

    ○園田国務大臣 そういう言葉はありませんが、前後の会談の内容からそういうことを含んでおるという理解をいたしました。
  255. 大内啓伍

    ○大内委員 先ほど園田外務大臣は、ベトナムに対する中国の軍事行動は、そう急速には起こらないのではないかという意味の御答弁をされました。ベトナムに対する中国の軍事行動の可能性、この場合は限定されたものという意味で申し上げておりますが、きょうあたりもいろいろなニュースが伝わってきておるわけですが、軍事行動の可能性というものについては、どういう分析を外務省としてされていますか。
  256. 園田直

    ○園田国務大臣 なかなか判断のむずかしいところでありますが、今日までの行動経緯を見ると、あの国境において中国が大規模な真面目なる攻撃をなさることはないのじゃないか、牽制の程度でやられるのじゃないかという推察をいたしております。
  257. 大内啓伍

    ○大内委員 急激に事が起こる可能性は少ない、その根拠はどういうことでしょう。
  258. 園田直

    ○園田国務大臣 急激に事が起こる可能性というのではなくて、大規模な戦闘と申しますか大規模な行動はあるのではなくて、牽制の程度で小規模な牽制が行われるのではなかろうかという推察でございます。
  259. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、私の個人的な言葉で使ったのじゃなくて、先ほどの園田外相の答弁を実は引用して申し上げたのです。そうしますと、小規模な軍事的な侵攻はあるという分析ですな。
  260. 園田直

    ○園田国務大臣 いろいろな情報を総合しますと、現に一個大隊またはそれ以上の部隊が、国境を越えたりいろいろな牽制行動をやっておるように承知しております。
  261. 大内啓伍

    ○大内委員 これはアメリカも非常に懸念をしておることは御案内のとおりでありまして、二月九日には公式の警告を発しております。米国は中国のベトナム攻撃を深刻に憂慮するであろうし、したがって中国が、ベトナムに侵攻しないようにという異例の警告を出しているわけですが、総理日本政府の最高責任者として、この点について中国に対してどういう要求をお持ちでございますか。
  262. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま外務大臣からも申し上げましたとおり、アジアの平和、安定のために中国が自重した行動をとられることを強く期待いたしております。
  263. 大内啓伍

    ○大内委員 若干限定的な小競り合い、侵攻等も見られるというような情報も出ている、それからアメリカ自身もいろいろな警告をし始めたという情勢を踏まえながら、日本としては改めて中国に何らかの呼びかけを行う用意がございますか。
  264. 園田直

    ○園田国務大臣 中国に対しては、一貫した態度で強く要請を続けるつもりでございます。
  265. 大内啓伍

    ○大内委員 昨年十一月に、ソ連、ベトナムの間で御存じのとおり友好協力条約が結ばれました。ここには有事の際の緊急協議という条項がございますが、限定的にせよ中国が何らかのベトナム侵攻を図った場合にはこの条約が発動されることになる、こういう見方をとっておりますか。
  266. 園田直

    ○園田国務大臣 両国間の条約が発動されるような事態にならないように、日本はベトナム、中国に努力をしておるところでございます。
  267. 大内啓伍

    ○大内委員 この問題は非常に重要でございますので、今後とも日本の方針が中国、ベトナム双方に伝わるように御努力をいただきたいと思います。  この鄧小平副総理との会談において大平総理と華主席の相互訪問について話し合われた、こういう報道が伝わっておりますが、これは具体的にどういうスケジュールで進展する可能性があるのか、この見通しについてお聞かせをいただきたいと思います。
  268. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私に対しまして訪中の招請がございました。私の方から、かねがね華国鋒主席の御訪日を日本としては申し入れてあるわけでございますが、それを強く希望いたしました。先方のお答えは、華主席の訪日は私の訪中が実現された後で考えさせてもらいたい、そういうお話はございました。
  269. 大内啓伍

    ○大内委員 大平総理としては訪中の御希望を近いうちに実現したい、そういうふうにお考えですか。
  270. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほど訪米のお話にも申し上げたように、ただいまのところ、国会中でもございまして、そういう具体的なことについて申し上げる自由を持っていません。しかし、日本政府責任者といたしまして、そういう問題は検討しておかなければならぬと考えております。
  271. 大内啓伍

    ○大内委員 ベトナムに対して例の援助の凍結という問題がありましたね。これは政府としては最終的な判断を避けているようですが、いまのところは凍結ですか、五十四年度分については。
  272. 園田直

    ○園田国務大臣 ベトナムに対する経済協力は二つあります。一つは一般的協力、もう一つは災害に関する緊急援助、お米の援助であります。  お米の援助については話がつきましたが、その後、条件その他具体的な相談はベトナムから申し出るようになっておりますが、ああいう騒動の関係か申し出がありません。したがって、そのままになっております。  あとの問題はすでに動いておりまするから、凍結はいたしておりません。五十四年度の分建ただいま予算の御審議を願っておるところでありますから、その結果にもよりますけれども、ベトナムには、ASEANの懸念、アジアの平和、民生の安定ということでわれわれは協力するのであるから、ベトナムがこれと反するような行動をなされば今後は慎重にやらざるを得ない、こういう通告をしておるところでございます。
  273. 大内啓伍

    ○大内委員 そうすると、向こう側の返答が出てくるまでは、それらの協力は事実上凍結ということになるのでしょうね。
  274. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの段階ではどちらとも申し上げられません。
  275. 大内啓伍

    ○大内委員 そうしますと、その援助協力を実行するための条件というのは、どういう形になれば整うというふうに見ているのですか。
  276. 園田直

    ○園田国務大臣 先ほど条件と言いましたのは、緊急援助のお米の問題のいろいろな具体的な向こうの申し入れでございまして、経済協力については話はすでについておるわけでございます。
  277. 大内啓伍

    ○大内委員 今度のベトナムのカンボジアヘの侵攻、これは政府としてはベトナムの侵略と見ていますか。
  278. 園田直

    ○園田国務大臣 国境を越えて他国へ他の国の軍隊が入ることは侵略であると考えます。ただしこれが覇権であるかどうかということは別といたしまして、少なくとも紛争を力によって解決しようとし、他国に軍隊を入れることには反対をいたしております。
  279. 大内啓伍

    ○大内委員 私は、覇権というベースで議論はしておりません。しかし、外務大臣はいま、ベトナムの今回の行動は侵略である、こういうふうに認められた。これは重要な発言だと思っております。そういう侵略国に対する経済協力を進めることをなお留保するのですか。
  280. 園田直

    ○園田国務大臣 このような行動をやめて、そしてアジアの平和と安定に協力し、ASEANの懸念がなくなるように努力をされたい、こういう申し入れをしております。
  281. 大内啓伍

    ○大内委員 たとえばスウェーデンの場合を見ますと、ベトナムがカンボジアに入った十万の軍隊というものを引き揚げない以上は援助はしないということをはっきり言っているのですね。いまの園田外務大臣のお話では、そういうようなことをやめればとか非常に抽象的でよくわからない。どういう条件が整ったら日本というのは喜んでベトナムを援助する、こういう状況になるのですか。つまり、ベトナムのいまカンボジアの中に入っている軍隊の引き揚げを日本政府としては要求しますか。
  282. 園田直

    ○園田国務大臣 要求をしておるところでございます。
  283. 大内啓伍

    ○大内委員 日本は、ベトナムに対する援助について援助国会議の開催というものを求めていますか。
  284. 園田直

    ○園田国務大臣 求めておりません。
  285. 大内啓伍

    ○大内委員 いま中国からベトナムに入ったのですが、また中国に戻ってまいりますと、時間がありませんので、大問題が幾つかございますが、一つは、通産大臣、例の長期貿易取り決めでございます。これは昨年河本通産大臣が参りまして、幾つか河本さんがおっしゃっているのですね。一つは、この種の民間貿易取り決めについては有効期間を五年間延長したらどうかということを言っておられますね。それからもう一つは、貿易の拡大を大幅にやったらどうか。御存じのとおり、昨年の二月の取り決めでは、往復で二百億ドル、一九八二年までという取り決めですね。そこで、三月には中国の経済関係の最高責任者の劉希文氏が来日されまして、この問題、詰められると思うのですね。通産大臣、政府としてはこの二百億ドルの長期貿易取り決めは、いまの実勢から言いますと、すでに大幅にこれを拡大しなければならないようなテンポが生まれてきているわけなんです。したがって、この有効期間の延長の問題と貿易の額の拡大、これについては、河本通産大臣が提起した方針に沿って劉希文氏の来日に対応されようとするのか。つまり、この長期貿易取り決めについては拡大する必要があると考えているかどうか、この辺をひとつお聞かせいただきたい。
  286. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 お話しのように往復二百億ドル、これを九月に参りました前通産大臣の河本さんが大幅に拡大しなければならぬということを言っております。したがって、劉希文氏が来れば、長期貿易取り決めの責任者であるわが方は稲山さん、稲山さんと劉希文氏の間で話し合いが行われる、通産省としてはそれをできるだけバックアップしよう、こういう態勢でございます。
  287. 大内啓伍

    ○大内委員 これは総理にぜひお伺いをしておきたいのです。私どもも昨年の十一月末に訪中をいたしまして、鄧小平副総理らと会談をいたしました。あの当時は壁新聞が大変盛んなときでございまして、例の天安門事件の再評価という問題が起こっていたわけなんです。中国が目指しておりますのは、言うまでもなく今世紀末までに四つの近代化を達成したい、そしてそれに対して、日本に対して全面的な協力を求めてきているというこういう加勢でございますね。大平総理は、この中国の四つの近代化の達成に対してはどういう立場で協力する方針ですか。
  288. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 隣邦でございまして、その目指しておる近代化計画の成功を私どもも期待いたしております。そして原則としてこの問題につきましては、日本といたしましても応分の協力をしなければならぬと考えております。ただ、具体的には中国自体の御計画の進みぐあいも見なければなりませんし、私どもが協力する場合のそれだけの手だても用意しなければなりませんので、具体的にどのような手順で協力をできるか、どの程度どういう条件で協力ができるかという問題は今後なお詰めていかなければならぬ問題だと存じております。
  289. 大内啓伍

    ○大内委員 福田総理は、三つの近代化には協力するけれども四つはしないと言ったのですけれども、四つの近代化には賛成ですか。
  290. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 中国の計画は中国自体が自主的に決められることでございまして、これに対しまして、われわれがどういうプロジェクトに対しましてどの程度、どういう条件で協力するかということにつきましては、日本日本の立場において自主的に判断すべきものと心得ております。
  291. 大内啓伍

    ○大内委員 これから日本が中国の抱えているたくさんの問題について協力をしていく場合に一番重要な問題は、大蔵大臣、やはり決済問題なんですね。これが各レベルで話し合われている。昨年末の段階でわが国から中国が輸入したプラント類、これは大体三十二億ドルに達しております。そして中国は御存じのとおり現金決済ですよ。中国の外貨準備は二十数億ドル程度、こういうふうに見られているわけなんです。したがって、当然わが国との貿易の拡大あるいはわが国からの各種の経済協力、これは決済問題という壁にぶち当たっていることは論をまちません。  そこで、これまで中国との間に話し合われてきたその種の問題は、一つはプラント輸出に対する輸銀融資の問題がありますね。もう一つは石油などの資源開発に対する輸銀融資の問題がありました。もう一つはユーロダラー、ユーロ資金を利用した民間銀行の協調融資。この三つが検討されてきたわけなんですが、この民間の協調融資については、最近中国との間にある程度話がまとまって、大体二十億ドルぐらいいこう、この二十二日に中国のその種の代表が来られるときに、大体十億ドルの借款については正式に合意しようというような話も進んでおるわけなんです。  そこで問題はなお手数料の問題、これは大蔵大臣の所管の問題にしてある、これが日中の間で対立しているわけなんです。こういう民間の協調融資、とりあえず十億ドルから二十億ドルの協調融資を実行するということに対して大蔵大臣はどういう態度をとるかということが一つ。  もう一つは、輸銀融資について、石油、石炭の開発資金の貸し付けについて日本政府は大体利息六%プラスアルファ、しかし円建て、規模としては二千億円程度、これは輸銀法の十八条八号ローンですが、こういうオファーをしていると聞いております。それは事実かどうか、これが二つ目。ただこの問題は、アメリカは、それは例のOECD等のガイドラインを破るものだという一つのクレームが出ているのですね。それからソ連あたりは、それは中国を利するだけだというようなあれが出ているのですが、その辺も考えながらこの問題についてどういう方針をとるか、これが二つ。  それから大平総理、この間鄧小平副総理との会談の中で、私ども政府借款については中国はどうするんだ、こういうことを申し上げたときに、鄧副総理は即座に、政府借款は考えたいのだ、こういうことをおっしゃっていたのです。これは鄧小平副総理の言葉でございますので、できれば大平総理のお言葉としてお返しをいただきたいのですが、中国が今後政府借款を要求してきた場合には、これは前向きに検討するのかどうか、この辺については、本来は大蔵省のマターなんですが、総理からお答えいただければありがたいのであります。  以上三点をお伺いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思っております。
  292. 金子一平

    金子(一)国務大臣 輸銀融資につきましては、やはりいろいろな条件がございまして、特に円建て融資が原則になっておりまするから、簡単にドル建てでというようなわけにまいらないかと思うのでございます。またOECDのガイドラインもいろいろございますので、これはやはり中国側によく理解をしてもらうということでいかざるを得ないと思うのであります。民間融資につきましてもいまいろいろ話を伺っておりまするけれども、極力中国を応援する立場で結論を得るように努力をしておる、こういうことを申し上げておきます。
  293. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政府借款という意味が政府機関、輸銀なり基金なりの信用供与という意味でございますならば、中国を除外する理由はないと考えております。(大内委員「輸銀以外の政府借款です」と呼ぶ)輸銀、基金以外、政府が直接借款を考えるということでございますが、これはただいままでのところ中国の方針としてそういうことは求めない方針であったようでございますし、われわれもそういうお話はまだ伺ったことはございませんで、その辺についてはまだお答えするだけの検討は遂げておりませんので、本日は御遠慮さしていただきたいと思います。
  294. 大内啓伍

    ○大内委員 ありがとうございました。
  295. 竹下登

    竹下委員長 これにて大内君の質疑は終了いたしました。  安井吉典君。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  296. 安井吉典

    ○安井委員 私もきょうの質問はイラン問題から始めようと思ったのですが、ずいぶんたくさんイラン問題の取り上げがありましたので、もう要らぬというわけではありませんが、一番後の順序に回して、まずきのうとおとといこの委員会証人喚問をいたしまして、グラマンやダグラス等の航空機問題について審議を重ねたその結果につきまして、大平総理、さらに検察、警察、国税庁あるいは公正取引委員会等の当局に伺っていきたいと思います。  きのうおとといの証人喚問は、私たちも日本国会の調査権の限界の中で精いっぱいやりましたけれども、力足らずして完全に問題点を明らかにしたということにはなっていないかもしれませんけれども、しかしいかにも幅があって、しかも深い、黒い問題があるのだなという、そういう疑惑だけははっきり浮き彫りにすることができた、私はそう思います。そういう中において、総理はこの場にはおられませんでしたけれども、新聞ももう一番大きな扱いですし、テレビもずっと中継したわけでありますが、それについていかなる御感想をお持ちか、それからまず伺います。
  297. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 まず国会が熱心に国政調査権を発動に相なって真相究明のために努力されておることに対して、深甚な敬意を表します。  それから政府側も、きのうおとついの証人喚問、参考人尋問につきましては重大な関心を持って聴取いたしたことと確信いたします。私は、このことが真相解明に貢献するように期待しております。
  298. 安井吉典

    ○安井委員 また後でいろいろ伺うことにいたします。  これは関係当局の方にお答えをいただきたいわけでありますけれども、きのうの喚問の中の郷裕弘証人、この人の証言の中で、マクダネル・ダグ ラス社のコンサルタント料十万ドル、五万ドル、五万ドルと二回に分けての受け渡しでありますが、その受け取りの場所とか成功報酬であるという点とか、こういうような点において、検察あるいは国税等の当局においてあの証言をお聞きになって関心をお持ちになり、御調査をする必要があると思うのですが、どうですか。
  299. 磯邊律男

    磯邊政府委員 郷裕弘氏並びにその関係する法人の税務の調査の問題につきましては、この問題が新聞紙上等で取り上げられましたときから関心を持って、いままでの申告の内容それからまた新聞紙上等で取り上げられた問題を今後の調査にどういうふうに反映していくかということに対しましては、重大な関心を持って見直しておるところであります。ただ何分にも、われわれの課税権の及ぶ範囲は、最も古くさかのぼりまして五年間の時効がございますので、それより前の問題についてはいかんともしがたい。しかし課税権の及ぶ範囲内におきましては、もし正当な申告がなされていなければそれを修正するということで、ただいま準備を進めております。
  300. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 すでに御承知のように、検察当局はSECの公開資料を基礎といたしまして種々所要の捜査をやっておるわけでございますが、その過程におきまして、国会におきます御審議の状況等も深い関心を払って見守っておるわけでございまして、そういう意味で、一昨日、昨日の証人喚問、これにつきましても深く関心を払っていたようでございます。間もなくSECの非公開資料もわが国に到着をいたしますので、それらの検討と相まって参考にさせていただくこととなると思います。
  301. 安井吉典

    ○安井委員 郷証人のきのうの証言の中では、SECの報告にある一万五千ドルとは別の一万五千ドルをゴルフやレディースクラブの立てかえ金として受けたという、そういう証言もあり、これが回り回って政治家の方に行くのではないかと思われるようなこともあるし、あるいはまた小切手の換金の仕方についても大変不明確な問題があるのではないかと思います。SECのものが来れば当然だと思いますけれども、きのうの段階でもこれらの問題については調査に値する問題だ、私はそう思うのですが、どうですか。
  302. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 いろいろ捜査に当たりまして時効の問題等もあるわけでございますが、先般来お答え申し上げておりますように、いろいろな事象の流れを追って吟味をすることによって真相というものがわかるわけでございますので、そういった意味で、十分検察としてもそういった点を念頭に置きながら検討しておると思います。
  303. 安井吉典

    ○安井委員 おとといの有森証人の場合でありますが、刑事訴追を免れるために証言ができません、こういうことでこの委員会も混乱したのは御承知のとおりであります。その際、大出委員の集中質問のときの伊藤局長の日経新聞の記事を見てそう思いました、こういう陳述があったわけであります。したがって、その辺はよくわからないのですけれども、伊藤局長の方において、有森証人が刑事訴追を恐れているという、そういう事態を引き起こすことについて思い当たることはないのでしょうか、ちょっと伺います。
  304. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 二月三日付の日経の記事のもとになりましたのは、その前日、二日におきます当委員会での大出委員からの御質問に対する私の応答のようでございます。これは速記録をごらんいただけばおわかりいただけますように、包括一罪という考え方があり得るのではないかという大出委員の御質問に対しまして、私は、いわゆるどろぼうとか横領の場合にはそういうことが言われることがあるけれども、一般的にはどんなものかということを申し上げました末に、御意見は十分傾聴しております、こう申しておるわけでございまして、私自身は、今回のようなケースに包括一罪の考え方が持ち込めるかどうかという点については何らお答えをしていないつもりでございます。
  305. 安井吉典

    ○安井委員 なおこの有森証人は、身の危険を感ずるといいますか、身の安全のためというようなことで非常におびえておられるような状態がございました。新聞によれば、身辺の保護を警察に頼んだとか、そういうような報道もあるわけでありますが、その辺の事情について警察庁当局からお話をいただきたいと思います。
  306. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 お答えいたします。  十五日の正午ごろに友人を通じまして成城の警察署に警戒方の依頼がございました。その理由は、本人宅に再三電話がかかってくる、そこで不安を感じておるということを聞いたことによりまして警戒が始まったわけでございます。
  307. 安井吉典

    ○安井委員 いまの段階では別段なことはありませんか。
  308. 小林朴

    ○小林(朴)政府委員 そういうことがございまして、本日正午ごろに署の方で本人に会いまして話を聞きましたところ、直ちに具体的な危険があるというようなことは認められないような状況でございました。本人がただ不安を感じておるというので念のために所要の警戒をするというようなことになっておるわけでございます。
  309. 安井吉典

    ○安井委員 この委員会責任の一端があるわけですから、ひとつ十分身辺の安全のために御手配を願いたいと思います。  それから、一昨日の植田社長証言についてでありますが、いわゆる五十五万ドルの使途不明金、この問題について私は何も知らないという証言があったわけであります。しかし、この人がアメリカにある日商岩井社長として五十五万ドルのうち八万ドル余りを寄付金ですか、そういうような名前で日商岩井アメリカ社が受け取ったということになっており、この人がそちらの方の社長でもあったわけですね。知らないとは言えないのではないかという感じがあるわけであります。これを隠していたということになれば、偽証ということにもなるのではないかと思うのですが、警察当局の御見解をお聞きします。
  310. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 確かに御指摘のような疑問が生ずる余地がないわけではないと思いますが、例の五十五万ドルの関係につきまして将来検察当局が再検討いたしまして吟味をしていくということになりますれば、その辺も明らかになるかと思いますが、現段階では何とも申し上げる材料はございません。
  311. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ公正取引委員会の方に伺いたいと思いますが、植田社長証言の中で、アラブやサウジ、中東全般について一九六九年に第一回の契約、その後毎年契約を更改してきた、しかしその都度提出はしないで、二月の三日に全部提出をしたというような証言がありました。それからカーン密約といわれているメモランダムでありますが、それを提出していないのは担当者のミスであったというようなことも言っておりますし、その解約についてはカーン氏から手紙が来ているということでもあります。それらについて公正取引委員会に届け出があったかどうか、そして日商岩井のあり方、カーン密約はもう影も形もない契約書、初めもなくて終わりもないというような形で処理されているわけでありますが、こういうようなものは公取としてどう処理されるのか。それからついでにもう一つ日商側国会にそれらのものをできれば提出をしたいという約束もあるわけであります。これにはやはり公取の方も御協力を願いたいと思うのですが、一括してひとつ御答弁いただきます。
  312. 橋口收

    ○橋口政府委員 正森委員にもお答えしたところでございますが、今回事件が発生いたしましてから、正式に文書で日商岩井に対しまして関連の契約書の提出を命ずるように措置をいたしたのでございます。いまお話がございましたように、日商岩井グラマン日商岩井とダグラス、それから日商岩井と中東関係契約書の提出は二月二日付で公正取引委員会に届け出がなされております。それからいわゆる密約と称されるグラマン関係日商岩井カーン氏との契約でございますが、これは二月二日の届け出書の中に、日商岩井から当該契約はすでに解約され、契約書を破棄したため、届け出の対象となるべき契約がないという説明書が提出をされております。  それから、提出されました契約について国会に提出ができないかというお尋ねでございますが、これは法律の規定によりまして開示権を与えられておりませんので、契約の提出については御容赦をいただきたいと思います。
  313. 安井吉典

    ○安井委員 その契約の提出があればもう少し事態の解明に役立つのではないかと思うのですが、それは後の問題に残します。  海部八郎証人の問題、大出委員が提示いたしましたいわゆる海部メモというのがあの二日間の証言の最も重大なポイントになったわけでありますが、この際、筆跡鑑定など検察、警察側はもっと関心を持つべきではないかと私は思うわけであります。おとといの海部証人のここで書いた宣誓書をちょっと見ましたけれども、ぶるぶる手がふるえて、どういう字になったのかと思っておりましたが、あのいわゆるメモですね、あの書体と素人の私の目でもよく似ているような感じがいたします。ですから、私どもこの委員会としても、そういう点をもっと明らかにした段階では再喚問を必要とするということになると思うので、その点はひとつ委員長にもお願いをしておきたいと思います。それからまた当局側も、何かこれは古いメモだというふうにこの間伊藤局長もお話があったわけでありますけれども、筆跡鑑定などは、国会の方もやるわけですけれども、それに任せないで、ぜひ御自分の方でも責任を持ってどんどんお進めになる、このことが一つの大きな決め手になるのではないかと思いますから、その点をひとつ伺います。
  314. 毛利松平

    ○毛利委員長代理 安井君の要請については理事会で検討いたします。
  315. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 いわゆる海部メモの問題につきましては、これまで申し上げてまいりましたとおり非常に古い時期のものであるということから、仮にそれが真実海部氏の手に成るものであるといたしましても、犯罪捜査という見地からはちょっと手のつけにくいものではないかというふうに検察当局も思っておったようでございますけれども、一昨日、昨日の証人喚問の状況にかんがみまして、事態の推移によりましては所要の措置をとらなければならぬこともあるのじゃないか、かように考えております。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕
  316. 安井吉典

    ○安井委員 ひとつ、一番大事な問題になる可能性を持っているのではないかと思いますので、そういう立場でお取り組みをいただきたいと思います。  それから、日商岩井の脱税の問題がこの間うち新聞にも大きく報道されましたが、国税庁から私がもらいました資料によりましても、とにかく、期によっては修正の方が少ない期も一期だけありますね、それを差し引きしても、この五年間に六十三億四千百万というような脱税が記録されていて、商社はたくさんあって日商岩井は六番目ですけれども、しかし脱税は群を抜いて最高であります。ですから、こういう日商岩井の不明朗な会計処理、ルーズさ、その使途不明金というのが政治工作資金等に向けられている可能性もあるわけであります。そういうようなものが腐敗の病根になっているのではないかとも私ども受けとめられるわけでありますが、税務当局の方はこれで一応の処理が終わったことになっているのかもしれませんけれども、もう少し検察当局もこれらの問題に関心を持っていただいた方がいいのではないかと思うのですが、どうでしょう。
  317. 伊藤榮樹

    ○伊藤(榮)政府委員 先般来たびたびお答えいたしておりますように、当初一応の吟味はしておりましたものの、国会における御審議経過等によっていろいろ問題点も煮詰まってきておるように思われるわけでございまして、その意味で検察当局といたしましても次第に関心の度合いを深めつつある、こういうことでございます。
  318. 安井吉典

    ○安井委員 もう一つ、腐敗を今後防止するという問題について、この前の審議の中で平林委員や稲葉委員等から、会計検査院の機構を改革してもっと充実をしていくという問題やら、それから、大蔵省の証券局を改革して昔の証券取引委員会のようなものに、つまり独立の行政機関にして、アメリカのSECが果たしているような、そういう仕事を十分に果たすような仕組みに変えたらどうかという川崎委員からの提案もございました。大分日がたっているわけでありますが、これらの問題について、その後の検討の結果をひとつこの際発表していただきたいと思います。
  319. 金子一平

    金子(一)国務大臣 これは先般も申し上げましたとおり、アメリカと制度、慣行も違いますし、ああいった特別の委員会をつくること自体がいいのかどうか。しかし、そういった特別のものをつくらぬとなかなかこういった問題に対処できないというような厄介な問題がございますので、まあひとつ真剣に、どういう方向で持っていったらいいか、総合的に取り組んでまいりたいと考えている最中でございます。
  320. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 お答えいたします。  ただいまのような不正防止のために会計検査院の機能を強化してはどうかという御意見でございますが、私どもは、純然たる民間企業の経理そのものを検査したり、その不正不当をただしたりする機能は、憲法が、国の収入支出の決算を検査すると規定しております会計検査院にはなじまないのじゃないかと考えております。
  321. 安井吉典

    ○安井委員 今度の会計検査院法の改正の運びはどういう中身です。
  322. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 院法改正の運びでございますが、手続的な面と内容的な面と二つありますので、それについて申し上げたいと思います。  さきの両院の決議に基づきまして現在院法の改正を検討しているわけでございますが、まず手続的に申しますと、会計検査院には法律案の提案権というのはございませんので、議員立法でお願いをするか、内閣提出法案としてお願いするかのどちらかしかございません。たまたま現在の会計検査院法が憲法付属の法律としまして提案されましたのが内閣提案であったという歴史的ないきさつがございまして、その後何回かの検査院法の改正は大体内閣提案になっておりますので、その前例と申しますか、それに従って、いま手続といいますか、お願いしようと考えておるところでございます。ただ、内閣提出法律案には提出期限があることでございまして、私ども提出期限が過ぎましたらそれで終わりというわけにはまいりませんので、そういう場合には議員立法でお願いをしたいというふうに考えております。  それから内容でございますが、内容につきましては、決議に参りますまでの間にいろいろ論議がございます。私どもはこの論議をまず十分に頭に入れることが第一。それから、法律を改正するということになりますと、会計検査院が国の決算を検査するという基本的な立場もありまするので、そういう調整も十分考えた上で出したいと考えておりまして、先日も内容につきましてはもうしばらくお待ちいただきたいと申し上げたのでございますが、いずれ提案をいたしましたならば十分に御検討を賜りたいと存じております。
  323. 安井吉典

    ○安井委員 今度の事件は、まだまだ真相がわからないところでありますけれども、やはりもう二度と起きないようなそういう仕組みを、国会ももちろんそうでありますけれども、行政機構の中で確立をしていく必要がある、そういう意味合いで二つの提起を私どもしているわけでありますので、きょうもそこですぐ結論というわけにはいかないにしても、これは大きな宿題として、ひとつ取り組んでいただきたい。もう会計検査院も、国の補助金やあるいはまた租税特別措置などというのもあるわけですが、そういうようなものはとことんまで追及ができるような仕組みや運営の仕方が必要だし、やはりSECのあり方を見れば、大蔵省のいまの証券局もっと何とかならぬかというその疑問に明確に答えていただきたいと思います。  それを含めて、大平総理にもう少し積極的な取り組みがあってもいいのではないかという感じを私たち受けるわけであります。腐敗に対してはもっと厳しい態度でいく、こういう姿勢を、こういういまの二つの制度的な改正をも含めて、そしてまた今度の問題への解明決意、それをもっと明確にしていただきたい。
  324. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 ロッキード事件の後を受けて内閣で決めました防止策は、われわれ受け継ぎまして、それの実現に努めておるところでございます。今回また不幸にいたしましてダグラスグラマン問題が出てまいりましたのでございまして、この真相究明経過を見まして、さらに考えなければならぬものにつきましては十分検討の上、進めていかなければならぬと考えております。
  325. 安井吉典

    ○安井委員 いまのところはそれぐらいしか伺えないのかもしれませんけれども、ひとつ、これは大平内閣の姿勢が試されるという問題であるし、しかし、そればかりじゃなしに、日本の政治そのものが問われている問題だ、そういう決意、お取り組みをいただきたいと思います。  そして特に私は、もうこれだけ、あの二日間で疑惑がありったけ出てきてしまって、まだ最終的なずばりがないけれども、これだけ疑惑のあるような問題の今度のE2Cの予算ですから、さきに私どもも主張して、一番最初国民の納得を得るような処理をすると、私たちが削除してくださいという主張に対して、そういうことで委員長がお取り組みをいただいているわけであります。もう今度の予算委員会も半ばまで来ているこの段階で、ひとつ今後理事会等の場で決着をつけていただきたい。もうこれだけ疑惑が出て、これを私どもの主張するような処理ができなければ国民の納得を受けるようなものにはならぬのではないかと思うのですが、委員長どうですか。
  326. 竹下登

    竹下委員長 私は委員会運営の責任は持っておりますが、私の決意につきましては、慣例上、理事会で相談した上で作文したものを読み上げるのが慣例になっておりますので、御意見はしかと承っておきます。
  327. 安井吉典

    ○安井委員 金子大蔵大臣の財政演説をこの間承ったわけですが、なかなか格調の高い内容を盛り込んでおられて、特に一九七〇年代はわが国の経済が高度成長から安定成長へ転換をする年だ、特に七〇年代の最後の年であることし、八〇年代へ向けての新しい進路を開くための年だということを規定しながら、この一年というものを意義づけておられるわけでありますが、この「七〇年代の最後の年」というところにアクセントをおつけになったお気持ちはどういうことですか。
  328. 金子一平

    金子(一)国務大臣 石油ショック以来、日本の経済をどう持っていくかという点で、財政問題を中心にいろいろ苦悩を続けてきたわけでございまするけれども、やはりもう高度成長の時代は去った、中成長への道を諸外国とともに歩かなければ日本の安定成長はあり得ないという、大体そういうところへ来たのじゃないかと思うのです。そういうことを前提にして、これからの日本の経済の基盤づくり、財政の再建ということを真剣に考えていかなければいかぬ、そういう気持ちを端的に表現いたしました。
  329. 安井吉典

    ○安井委員 園田外務大臣もやはり「一九七〇年代の最後の年」であるという点の強調が冒頭になされているわけでありますが、これも大体同じようなお気持ちですか。
  330. 園田直

    ○園田国務大臣 同様の御意見もありますが、九〇年代に向かっての準備の年であるという意向を含んでおります。
  331. 安井吉典

    ○安井委員 このお二人の演説の前に、実は大平総理大臣の施政方針演説の中で、今度の国会に元号法案を出す、こう言われているわけであります。おわかりになったかもしれませんが、元号法案を御提出になるその政府の大臣が、やはり西暦で物を十分考えていかなければいかぬというお気持ちを持っておられていて、なるほど元号もずいぶん普及しているかもしらぬが、西暦の方も普及しているなというお気持ちをお持ちではないかと思います。国際社会への適応ということを総理は幾度も言われておりますけれども、そういう意味合いがあるのではないかと私は思う。証人喚問日商岩井社長等にもここで話を聞いたら、「昭和」と言って後が出ないんですよ。そして言い直しました、千九百何年と。国際的な商業活動の中ではやはりそういうことにだんだんなってきているのではないかと思うし、さらにまた、いまのわれわれが一番心配しているこのグラマン汚職だって、あのハワイ会談もやはりみんな西暦で言うことになるわけで、国際犯罪がなくなってくれればいいのですけれども、西暦というものの位置づけも、私は毛ぎらいをされるほどのものではないということをまず申し上げておきたいわけであります。自由新報、自民党の機関紙も見ましたら、さすがにちゃんと「昭和五十四年」と、こう書いてありますね。なるほどなと思ったんですが、ところが、あそこに立山ノボルさんの漫画が出ています。その漫画は「七九年を斬る」と書いてあります。やはりそれぐらい思考様式というものがだんだんそういうことになってきつつあるそういう段階の問題だな、そう思いました。そしてまた、大蔵省もなにもみんないろいろ将来のことを語るわけですが、私は、大蔵大臣や外務大臣が未来を語るのに西暦を使うのは、ちっともおかしくないと思う。一世一代という考え方がある限り、昭和百年とか昭和二百年ということはいかにも不合理ですよ。だから、そうなればずっと一連番号で続いてくる西暦をどうしても使わなければいかぬし、未来を語るにはやはりそういう使い方であって、元号では未来は語れないという、そういう事実だけをはっきりさせておかなければならぬと私は思います。もっとも、年号も非常に便利ですね。便利なのは間違いないけれども、そして使いなれているものだから抵抗もありません。明治維新とか大正デモクラシーとか、昭和一けたとかいうのがありますし、また、明治三十八歳と自分をそう呼ばれる人は、これはどんなことがあっても元号をつくらなければいかぬということになるでしょうね。そうでないとこの人は困りますよ。しかし、その昔のことを考える場合も、私は歴史的な事実を年号で示す場合も楽なときもありますけれども、しかしそうでないときもあるわけです。これは三原長官が御担当だそうですが、ちょっと伺いますが、養和三年、それから延宝九年、大平元年、これを古い順に並べてください。
  332. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 せっかくのお尋ねですが、明治、大正、昭和以前の慶応ぐらいまでははっきりいたしておりますが、専門家がおりますれば、政府委員に説明させます。
  333. 安井吉典

    ○安井委員 結構です。これは専門家でもおわかりにならないわけですよ。みんなわからないんですよ。養和というのは私の調べた限りでは三年はなくて二年しかないのです。しかし、こう聞かれればわからないでしょう。延宝九年はそうですけれども大平元年というのはこれは日本の年号の歴史にはありません。強いて言えば去年の十二月かもしれません。ただ、これは一一八一年、一六七三年とこう言えば、これは順序ははっきりわかるわけですよ。だから元号は必ず便利だということにもならないという事実を私はひとつ立証したわけであります。  そこで、現行憲法では天皇は象徴ということになって、人民主権だし、天皇制というのはもう憲法の改正で消えてしまっているはずなんですけれども、一世一元ということになるとやはり天皇制と結びついてくる。したがって一世一元ということになると、こう言っては何ですけれども、いつお亡くなりになるかわからないものですから、その変わり目に大きな混乱が来るのは、あの大正の末、昭和の初めになった大正天皇のお亡くなりになったところで、一番困ったのはカレンダー屋、大損をしたわけですね、カレンダーというのは一年前につくるのですから。だから日本のカレンダーは世界的にも有名ですけれども日本のカレンダーはこの間調べてもらいましたら、八割は西暦で書いてあるそうです。危険を逃げるためにはやはりそうでなければできないのでしょうね。ですからそういう問題があるのではないかと思うし、もともとはこれは中国でできた仕組みを、専制君主が自分の統治権を人民に知らせるためにつくったものであって、日本に来てからはそんなものとは全く変わってしまったわけで、天皇がどんどん自分の一代のうち何度もお変えになっている。千三百年の間に二百五十もあるわけで、一世一代というのは関係ないわけですよ。日本の文化の中の伝統にあるところの年号というのは一世一代というのは関係ないわけですよ。あるのは明治になって、それも明治も、初めは慶応から明治天皇はお始めになったわけですからね。だから一世一代というのは大正しかないんですね。この長い間に二百五十近くもある。  いまの天皇は何代目の天皇か、御承知ですか、総理
  334. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 百二十四代でございますか……。
  335. 安井吉典

    ○安井委員 このクイズは耳打ちがあったから正解にはできません。  いずれにいたしましても、千三百年の間に二百五十号近くもあったという事実でこの問題は明らかではないかと思います。大正しかないですから。なるほど年号は古くからありますよ。古くからあるけれども、一世一代の年号というのは大正からなんですから。つまり明治政府が、いわゆる藩閥を背景にした体制をつくり上げるためにつくったのが憲法であり、その他のいろいろな仕組みであり年号でもあった、私はそう思うのです。こういうふうなさまざまな事情がある。ですからあわてて法律をつくって混乱を巻き起こすというようなことにすべきではないと思うわけでありますが、なぜ法律でいま決めなければならぬのですか、その点を伺います。
  336. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  いろいろ貴重な御意見を拝聴いたしましたが、実際、国民が元号を使用しております状況というのは、主として元号を国民が使用しておるのは約七九%から八〇%でございます、ここ数年のアンケート等をとってみますと。主として西暦を使っておられるのが約三%、それから両方を併用しておられるのが七%、その他が一%程度あるわけでございます。  大体そういうような状態でございまして、国民の日常生活の中に元号の使用というものは非常に親しまれておりまして、国民生活に定着をいたしておる。そして国民自身も元号の存続についてはぜひひとつ存続してほしいということでございます。そういうような実態を踏まえてこれにこたえていきたいということでございます。  なおまた、元号の問題をいま急に思い立たなくてもいいのではないかという御意見もよく拝聴するわけでございますが、このこと自体は、先ほど明治は慶応から始まったという御意見もありましたが、その以前にもこの元号問題等は盛んに論ぜられたこともあるわけでございます。一世一元の問題につきましても、以前からやはり論議をなされた事実も史籍の中にはあるわけでございますが、そういうことを私どもも検討して、諸般の情勢を考えてみまして、国民のそうした存続を希望される一つの実態、それからなお、都道府県も、沖繩を残しまして四十六都道府県が促進議決をなさった。議決のあり方等にもいろいろ御批判もあろうと思いますけれども、とにかくそうした状態でございますし、市町村もその後千数百に上る市町村が次々に促進議決をなさっておるというような実態でございます。そういう事実を踏まえて、決して無理をしようということでなくて、そうした事実の上に立って元号法制化をこの国会に法案を上程して御審議を願いたい、そういうところでございますので、ぜひひとつ御理解、御協力を賜りたいと思うのでございます。
  337. 安井吉典

    ○安井委員 私は、この二つの問題は、一つはどうしても法制化するということと、一世一元ということ、この二つの結びつきにおいてイデオロギーを元号の中に持ち込もうということだと言わざるを得ないわけであります。ですから、なぜ天皇制をここで議論するのかと言うけれども、天皇制のことをここで議論してくださいという形で出しておるわけじゃないですか、そうでしょう。一世一代ということと元号ということで結びつけて出すということは、これはイデオロギーの問題に入らざるを得ないわけですよ。そのことが、いままでたとえば告示でいいじゃないかとかなんとか言っていた、そういうものが一部の突き上げでだんだんエスカレートして、大平さんの方にかどうか知らぬけれども、今度の国会の劈頭に出して、ありとあらゆるものを犠牲にしてもこの法案を通すのだという姿勢になってきているわけですからね。だから、これはまさに平地に混乱を巻き起こす、そういうものだということを私は言っておかなければならないと思います。これは使い便利だとかなんとかという気楽な気持ちで考えればいいので、それを、イデオロギーを持ち込むからなのですよ。そのことが一世一代で、こういうことがイデオロギーの持ち込みだということにおいて問題があるのではないか。法制化しなければ、これは国会でこんな議論をしなくてもいいのだし、そういうことなのですよ。  それから、世論調査の中でそうだ、こう言われるけれども、しかし、私が一番最初にお聞きしたときに、大蔵大臣や外務大臣は、恐らく私が何のために聞いているのかよくおわかりにならなかったのじゃないかと思う。みんなそうですよ。カレンダーにみんな書いてあるのだから、みんな平気で使っているわけですよ。西暦が七%、そんなばかなことはないですよ。二十世紀だとか二十一世紀のためという、それも西暦じゃないですか。そういう形で知らないで使っているわけですから、そういうところまでみんなきちっと教えて世論調査をやってごらんなさい。それはもう両方使っている人が一番多いのじゃないかと私は思いますよ。ただ、一番の問題は、読売新聞や時事新報の調べの中では、世論調査でも使っているという人は多いのだけれども、法制化賛成ですかといったら、法制化するほどのことがないという人が六四・五%、法制化した方がよいという人は一五・一%しかないという数字が出ている。だから、世論調査だってやり方でどうでも出てくるわけですね。地方議会の賛成だって、これは日本じゅうの地方議会はほとんど九九%まで自民党の数が多いわけですから、自民党の方の命令でやれといったら、これはみんな賛成で来ますよ。地方議会のそれがあれなら、一般消費税の反対がいま続々と上がってきていますよ。これは自民党が賛成しなければ、地方議会は一般消費税の反対はできないですがね。いまどんどんやってきていますよ。地方議会がやったら、そのとおり一般消費税はあきらめるのですか。総理は社会党が反対したらあきらめる、こう言いましたがね。  私は外国の紀年制の扱いの問題等でもいろいろ調べてみたわけですが、国によって宗教の関係でいろいろなものを使っている国もありますね。しかし、どの国もみんな西暦というふうに併記しているようですね、総理府でおつくりになった資料を見ても。公式文書に西暦を一切使っていないという国はどことどこですか。
  338. 清水汪

    ○清水政府委員 恐縮でございます。いまちょっと手元でまだ見当たっておりませんので、後刻御報告いたします。
  339. 安井吉典

    ○安井委員 私はその書類をちゃんと見ましたよ。あなたは見ていないかもしらぬが、私は見ました。それを全部見て、全然使っていないのは日本ただ一つです。ほかの国は回教暦を使っているところもあるし、インド暦を使っている国もあるけれども、みんな二つ併記していますよ。全然何も書いてないのは日本だけ。しかし、もっとも外務省の文書は西暦で書いてあります。これはキリスト教だから何とかというけれども、中国はキリスト教でも何でもないでしょう。その中国がなぜ西暦を使っているのですか。どうですか、わかりますか。
  340. 清水汪

    ○清水政府委員 先ほどの御質問に対しましては、先生指摘のことと同じことになりますけれども、私どものこの調査資料として先生がお手元にお持ちのものは、各国の信任状の捧呈とか、そういうきわめて公式の場合における例でございますが、その点につきましては、わが国の場合でも、これは外務省の範囲に属しますけれども、相手国に提示する場合には当然西暦の表示も用いられているわけでございます。国際関係におきましては現在もそのように行われております。  それから、中国のことにつきましては、私ども乏しい知識の範囲におきましては公暦というように称されていると伺っておりますが、これはその前の中華民国のときには民国暦というものに改められて使われておったわけでございますが、その後におきまして、現在の中国においてはいわゆる西暦であるところの公暦に統一されたというふうに承知いたしております。
  341. 安井吉典

    ○安井委員 私の調べたところでは、公暦と言わないですよ。公元ですよ。そうじゃないですか。
  342. 清水汪

    ○清水政府委員 公元または公暦という両方の言い方があるというふうに伺っております。
  343. 安井吉典

    ○安井委員 これは数字は西暦なんですよ。しかし公元とか、――公暦というのもないわけじゃありませんけれども、普通は公元と言っておるようです。上は、つまり公という字はインターナショナルという意味なんだそうですね。世界的という意味で公という字をつけて、たとえばメートルにも中国は公という字をつけます。ですから、キリスト教のあれだからというが、日本はまず西暦ということで全く別なものにしてしまうわけですが、そうでなしに、公元という形で自分の国の中でもすんなり使っているというその知恵を私たちは学ばなければいかぬのじゃないか、そう思うわけであります。  そこで、元号法の内容についてでありますが、なぜ年号と言わないのですか。
  344. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  これは日本の法律用語の中では元号という法律用語で来ておりまして、年号と同意語でございますけれども、そういうことで元号というのを使っておるわけでございます。
  345. 安井吉典

    ○安井委員 私もそこの図書館にある字引で引いてみたら、新言海には「元号」というのはないですね。「年号」はある。広辞苑の「元号」というところを引いてみたら「年号」と書いてある。「年号」というところを引いたら「年につける称号」と書いてある。角川の国語辞典では、同じように「元号」というのは「年号」で、「年号」というのは「年につける称号」で、辞書をつくる人はみんな相談し合っているのでしょうかね、同じことが書いてある。ですから、ことさらにそういうふうな名前で押しつけてきて何か重々しさを加えようなどというところに大体おかしな姿勢があるのではないかと私は思います。  それからまた、一世一元という表現はありませんけれども、この中身は実質一世一元でしょう。
  346. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 皇位継承の場合に限るということでございますから、それを表に返すか裏返しをすれば、一世一元ということになると思います。
  347. 安井吉典

    ○安井委員 一世一元と書いてないから賛成したという党もありますけれども、中身はただ書いてないか書いてあるかだけの話で、同じだと思います。  それから、合意の政治というふうなことを総理も言われるわけでありますけれども、元号などというのは、これは国民の全体の知恵を寄せ合って、みんながいい年号をつくろうという気持ちの中でできるのが私は非常に大切だと思うのだけれども、しかし、この中身を読んでみたら、天皇が亡くなった瞬間につけるわけですね。そして、翌日から新しい年号になるわけですよ。どうして国民の合意を得るのですか。亡くなる前に国民から、近くそういうことになるかもしれぬからというので懸賞募集をしたり、世論調査をしたりする暇はないわけですよ。お亡くなりになったらもうすぐやらなければいけない。そういう中で国民の合意だなどというものになるわけはないですよ、これは。昔は天皇の威光を示すためのものだったわけですから、それは、新しく践祚されれば涙をぬぐわないうちに、新しいのはこうだということでお示しになった。天皇自身がお示しになった。今度はそうじゃないでしょう。政府がお決めになるわけでしょう。国会で選ばれたのが政府ですよ。その政府政府独自の中で決めるのは、国民の全体の合意を得たというものにならぬのじゃないか。そのことが一つ問題だと思います。  それから、国の機関は当然使う。どういうふうにその使い方をお決めになるおつもりですか。
  348. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  その前に一言申し上げたいことがございますが、私どもこの法案の審議をお願いするのにイデオロギーを持ち込むというような、そういうことは毛頭ございません。最もフランクな気持ちで国民の心情、願望、その実態を踏まえてこの法案を提出しておるということを御理解願いたいのでございます。  次には、国民の全体の意思、合意を云々ということでございますが、それは私ども今度の法律で、政令でお願いをいたしたい。そして国民の方方の気持ちが、元号というのが新しくなるのはいつであろうかということを国民の一人一人に聞いてみましても、天皇がお亡くなりになったときではなかろうか、大体そういう御理解はあるようでございます。そういうことでございまして、そういう時期になりますれば、政府において適当な、適切な一つ審議会と申しますか、そういうものをつくっておきまして、それにゆだねて、そこで候補名を決定していただく、そして、適切な方法で閣議において決定をするというようなことでございます。  最後にお尋ねの点は……。
  349. 安井吉典

    ○安井委員 国の機関はどうしても全部使うのかということ。
  350. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 それから国の機関につきましても、これも強制的なものではございませんけれども、最も民主的な国会において法律として御決定願いましたものにつきましては、国の機関は、行政府はもちろん、国家機関の裁判所でございますとか国会等はこれをお使いいただくことが適切である、私はそう受けとめておるわけでございます。
  351. 安井吉典

    ○安井委員 ですから、その最後のあれですけれども、大蔵大臣、外務大臣の施政方針演説にはもうこれからないわけですね、二十世紀とか二十一世紀というのは西暦の発想ですからね。そんなものまで、大臣の皆さんの発想の中で、国の行政機関の中でシャットアウトするというのはおかしいですよ。しかも施政方針演説は国の公的なあれじゃないですか。閣議で決めるんでしょう。
  352. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  一つには、西暦をお使いになろうとあるいは元号をお使いになりましょうと、その点は束縛もあるいは義務づけもいたしておりません。ただ公の機関につきましては、その点につきましては国家の法律で決めていただくわけでございますので、お使いになることが適切である、適当であると考えておりますが、しかし、演説等の中でそういうものが昭和でなければならぬとか、西暦をお使いになるのはどうかというようなこと、これは今日までお使いになったとおりに自由にお使いになるものと私は思っておるのでございます。そういう一切の義務づけも束縛もございません。
  353. 安井吉典

    ○安井委員 まず、総理大臣の演説は公的なものじゃないのですか。これはプライベートな演説をされているのですか、私たちみんな集められて。公的なものじゃないのですか。どうですか。
  354. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  総理大臣の演説は総理としての演説でございまするから、公的なものであり、権威のあるものと思いまするけれども、その文章の中におきまする言葉の中に私どもが言っておりまするような元号を使わなければならない、公的機関は必ず元号を使わなければならないというようなことは言っていない。使われることが当然であろうと言っておりますけれども、それを国民にわかりやすく、また意味を明確にするために西暦をお使いになることにつきまして、それまでこれを規制するというようなものではございません。
  355. 安井吉典

    ○安井委員 そうなると、それは非常におかしいことになりますよ。総理、そういうことになるわけですよ。つまり、法律で決めるということは、そして国の機関に使わせるということはそういうことにもなるわけで、そんな不合理を持ち込むということは私どもは真っ平だ。昔は簡単な意味の私年号やいろいろありましたよ。だから昭和二十年を平和元年、こう言ってもいいし、福祉元年もあったし、そういうふうなものは私どもは結構だと思いますけれども、しかし法律で強制をするという、しかも一世一代を強制するということになれば、これはもうイデオロギー論争をいどむということなんですから、私たちは非常に気楽なつもりで考えていたわけですけれども、そういうことになれば、やはり闘わなければならぬ、こういうことになるわけであります。ですから、総理、もう一度お考え直しができないのか。今度の国会で、いま無理してお進めになる必要はないんじゃないでしょうか。私は、むしろそういう無理してお通しになることが、これはことしが反動元年になる、そういうことを恐れています。どうですか。
  356. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国会に御提案申し上げてあるわけでございまして、各党の間にお話し合いをいただき、御審議もいただかなければならぬと考えております。
  357. 安井吉典

    ○安井委員 それではやはり問題になりますよ。後々私どもは明確に対決をしていかなければならないということだけひとつ申し上げておきたいと思います。  次に、地方の時代と言われるその中において、地方自治の問題についてまず総理のお考えを伺いたいわけであります。  中央直結というようなおかしな言葉がいままであったのに対して、総理も自治体は中央に隷属するというようなことをお考えになるわけはないし、自由民主党の新しい方針の中にも地域を重視するという考え方も盛られているようであります。したがって、自治を大切にし分権を強化する新しい方向づけがなされるべきだと思います。総理の言う田園都市づくりですか、こういうようなものもやはりその発想の一つではないかと私は思うのです。中央直結というような言葉はこの新しい時代において清算すべきではないかと思いますが、地方自治の問題についての総理のお考えをひとつこの際伺いたいと思います。
  358. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 地方自治は民主政治の大切な柱だと考えております。活力のある政治を具現してまいる上におきましては、それぞれの地域の自主性、個性を生かしながら施策を推進していかなければならぬと考えておりまして、私どももその趣旨を施政の基本に据えて、万般の施策に生かしていきたいと考えております。
  359. 安井吉典

    ○安井委員 国家機構というのは巨大で、国民の生活実態からやはり離れがちになってしまうわけであります。しかし、自治体の方は人間の現実的な生活がそこにある。そこで市民が生き生きとした生活空間をつくり上げていく、個性ある文化をつくっていく、これが地方の時代と言われているところで、われわれは国の政治の中にもそういうようなものを位置づけていかなければならないと思うわけです。そのためには、田園都市だとかなんとか、総理の施政方針演説を伺っておりましても非常にきれいな言葉がちりばめられております。しかし、言葉ではだめなんで、やはり行政権限を地方に国から譲っていく、地方の財源を思い切って強化をしていく、そういうようなものが明確にあらわれてこないと、いま総理がおっしゃったようなことが本当のものだということをだれも信じないわけですよ。ですから、ひとつ具体的なものをあらわしていただかなければならぬということを、要望を込めて総理のお考えを伺うことにしたいと思います。
  360. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私は田園都市構想を提示いたしておりますが、これはたびたび申し上げておりますように、いまやっております政策と矛盾する政策を打ち出そうとしているわけでは決してないのでありまして、いまやっております政策を考え直す場合の一つの政策理念というものを追求したいと存じまして、政府部内におきましても、またわが党内部におきましても、この理念、構想というものをいまみんなで議論をいたしておるところでございます。それは、今日のもろもろの政策を進めていく上におきまして考え直さなければいかぬ点はどこにあるかということをはっきり掌握したいからでございます。地域政策につきましても同様でございまして、私どもその中から是正していかなければならぬ道標をくみ取っていきたいと考えております。その結果、安井さんの言われるように、地方に行財政の権限を与えなければならぬというようなことになってまいりますならば、それはそのラインに沿って推進していかなければならぬと考えております。  したがって、いま具体的にこれをこうする、ああするということを提示しているわけじゃないのでありまして、長い間中央集権的にやってまいりました日本の政治でございましたし、戦後経営も残念ながらそうだったわけでございますけれども、ようやくそういうことを本格的に吟味し直す時期が来たのではないかということでそういう作業を始めておるわけでございまして、この作業が進みまして、問題がはっきりしてまいりますならば、その都度御審議をいただくようにいたしたいものと考えております。
  361. 安井吉典

    ○安井委員 地方行財政の問題をもう少しお聞きをしようと思っておりましたけれども、時間の関係もありますので、これらの問題は後にまた一般質問の機会がありますから、そこで詰めてもらいます。  一つだけ、地方財政の確立のためには、とにかくいまの借金だらけの財政状況ではもうどうしようもない、国の財政も借金を抱いた財政から、その後借金に抱かれた財政になって、いままさに借金と抱き合い心中をするような財政状況、これはもう地方自治体も同じですよ。それらへの具体的な対応を実はお聞きしようと思ったのですが、きょうはやめますが、大蔵省の方は財政収支試算をお出しですが、地方財政についても同じようなこういう試算、見通し、これをやはり国会の方にお出しいただいて、もっと突っ込んだ論議を私どもさせていただきたいと思うのですが、どうですか、自治大臣。
  362. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 お説のとおりに考えておりまして、現在作業を真剣に詰めております。今月いっぱいには国会に提案をしたいと考えております。
  363. 安井吉典

    ○安井委員 今月いっぱいになりますと、これは予算委員会終わりにいっちゃうのですがね。もっと早まりませんか。
  364. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 できるだけ早くという気持ちでいま一生懸命やっておるわけでございますが、やはり今月いっぱいくらいはかかるのではないかと考えております。
  365. 安井吉典

    ○安井委員 急いでください。  もう一つ、自治体消防の問題ですが、かつて警察機構の一部であったのが、いまは完全に独立したものとして発足しておりますが、しかし、まだ三十年、いまなお消防財政は貧弱で、常備消防、消防職員や消防機材の充実がおくれています。消防庁の定めた消防力基準にもひどく下回っているというような状況でありますだけに、地方交付税等の充実を初め、消防財源の充実強化をも一つと進めるべきではないか。  それからもう一つ、消防職員の団結権を政府はまだ認めていないのですが、ほかの国はもうどこだってみな同じように団結権を、警察官と違うわけですから、持たせています。ILO八十七号条約の違反だということは明らかですから、一日も早く地方公務員法の改正を急ぐべきではないか、こう思います。余り消防の問題はここで持ち込まれたことはないわけで、この問題だけ自治大臣からお答えをお願いしたいと思います。
  366. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 消防の質的な充実につきましては、御指摘のように、一つの基準を定めまして、その基準に接近するように、毎年努力を重ねておるのは御承知のとおりでございます。現在定めております基準に対して、現実はかなりの距離があるということは御指摘のとおりでございますが、私どもといたしましては、国庫補助金の増額あるいは交付税の増額等を通じて、最大の努力を傾けてこの基準を実現するように努力を重ねておるところでございます。  なお、消防の団結権につきましては、もう先生十分御承知のように長い論議のある点でございます。政府といたしましては、この点につきましては、よその国はいろいろな法令があるわけでござますが、わが国といたしましては、消防の任務、性格、その実態が警察にきわめて類似したものを持っておる、こういう観点に立ちまして、消防については団結権を認めない、こういう一貫した態度をとっておることは御承知のとおりでございます。各方面のいろいろな議論があるわけでございますので、引き続き検討を続けてまいりたいと考えております。
  367. 安井吉典

    ○安井委員 総理、消防の問題について総理見解を伺ったことはないのですが、この際、自治大臣のお考えもありますが、総理としてのお考えもお漏らしいただきたいと思います。
  368. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国の機関として特異な存在でございまして、民間の方々の全幅的な協力をいただいておる……(安井委員「国じゃない、自治体ですから」と呼ぶ)自治体の機関といたしまして、民間の方々からも自発的な御協力をちょうだいいたしておる特異な機関でございます。したがいまして、それに甘えることなく、国の方もこれに対しましてできるだけお手伝いをしなければならぬものでないかと私は考えております。
  369. 安井吉典

    ○安井委員 私は、ここで今日地方自治体が抱えている過密と過疎の典型的な問題を二つ挙げたいと思います。  第一は過疎の方で、国鉄のローカル線の問題であります。運輸政策審議会の小委員会の、国鉄経営危機打開のためローカル線五千キロを国鉄経済から分離せよという報告が出ているわけでありますが、これは関係地域の住民に非常に大きなショックとなっているようであります。鉄道が経済的なものとかバスヘの転換がむずかしいものとかを除いて、残り五千キロを全部バスに切りかえてしまえ、こういう乱暴なことで、また特にそのためには、第三セクターをつくって自治体や何かで勝手にやりなさい、こういうわけであります。全国町村会がいち早くこれに反論して、国鉄というものの公共性、地域住民への影響、それからまた、自治体で持てといったって、この深刻な地方財政でどうできるのかということでの鋭い反論が来ているわけであります。運輸大臣、これはまだ結論段階ではないのだそうでありますけれども、どうでしょうか。
  370. 森山欽司

    森山国務大臣 一昨年の暮れの国鉄再建の基本方針によりまして、これは衆議院運輸委員会の各党の方々の御相談の結果を反映した閣議了解事項でありますが、めどといたしまして、昭和五十年代に収支相償うようにする、五十五年度の予算から本格的にこれに取り組む、その方針は五十四年には固めなければならぬ、こういうことでございます。その一環としまして、国鉄、だけではどうにもならぬ問題がいろいろありますが、そのうちの一つが地方ローカル線の問題の処理、そういう問題についてめどをつけ、他方、国鉄の経営努力によって、あるいは労使の協力によっていまの国鉄を再建させる、そういう大きな――いま年間実質一兆二千億円ぐらいの赤字を呈しておるわけでございますから、この打開のための一環として、かねてからローカル線の処理について案が出ました。その案の中身についてはいま若干お話がございましたが、私どもといたしましてはこの答申の線に沿って検討していきたいということで、まだ最終的な結論は出しておりません。確かに中身につきましては、そう簡単な問題ではない、そういうふうに思っておりますから、きわめて安直に、答申を尊重してその実現、具体化を図るというふうには踏み切っておりませんけれども、しかし国鉄再建という見地からもこの問題は避けては通れない問題でございますから、安井委員の御心配の点も十分頭に入れながら今後処理してまいりたいと思っております。  答申の中身について必要があれば、事務方の方から説明をいたさせてもよろしゅうございます。
  371. 安井吉典

    ○安井委員 きょうは大まかな議論で結構ですから、事務当局のお話は結構ですが、このローカル線というのは、北海道と九州に多いようですね。しかし、どこの県にもかなりのものがリストアップされるらしく、国労が政府のいまの基準で計算を立ててリストアップしたのが新聞にも発表されておりましたけれども、もしもああなれば大変なことになるわけですね。自分のことが一番詳しくわかるわけですが、たとえば、北海道の第二区が私の選挙区ですが、この第二区というのは、一つの選挙区が面積からすれば四国四県と同じぐらいの広さがある、大平さんも四国ですけれども。それだけの広さがあるわけで、十線あります。ところが、いまのこれでいくと、十本の線が全部ローカル線になりますね。ぐあいによっては北海道の北の方は国鉄がみんななくなるかもしらぬ、これはそういうふうな中身にもなるわけです。しゃくし定規にこの間お出しになったものをそのままおやりになればね。ですから、国鉄というのは、国というのが上につくわけですから、貧乏な自治体に金を出させて――それはそうでしょう。ローカル線という名前がつくようなところにある自治体というのはみんな、どんどん人口が減って、貧乏な町に決まっていますよ。そういうところに持たせて国鉄の再建をしよう。国鉄の財政再建は非常に大切です。私どももこれは全力を挙げてやらなければいかぬけれども、貧乏な自治体だけに金を出させてそれをやらせようというのはいささかおかしいのではないかと思うわけです。特に自治体の財政の問題について自治省は、国鉄に自治体が地元負担金の措置をするということに対しては反対だし、そういうものには財政措置をしないというようなことを発表されています。このことは新幹線の問題についても同じことのようでありますけれども、自治大臣、もう一度この点お聞かせいただきたいと思います。
  372. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御承知のように、地方財政再建法によりまして地方公共団体は国鉄にそういった金を出さない、こういうことになっておるわけでございまして、特に現在地方財政が御案内のようなまことに窮迫した状況にあるわけでございます・から、新幹線についても、現在の状況で地方公共団体が公的な援助をするということは考えておりません。
  373. 安井吉典

    ○安井委員 そうなればいよいよもって自治体は金をくれないし、鉄道はひっぺがされるしということになって、それは踏んだりけったりというものではないでしょうか。ですから、この問題は影響が非常に大きいので、もう一度考え直しをしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  さっき田園都市というお話がありましたけれども、なるほど田園都市にはなったが、鉄道はなくなってしまった、こういうようなことではお笑いぐさになるのではないかと思います。もう一度、運輸大臣、どうですか、もう少し考え直すということを言明してください。
  374. 森山欽司

    森山国務大臣 今度の運政審小委員会の答申というのは、お客さんが非常に少なくて赤字が重なって成り立たぬ、こういう路線でありますが、そういう路線についてバス輸送とコスト比較をして、鉄道輸送の方がコストが安いというところはもちろん鉄道でやる、バス輸送よりも鉄道の方が安いときはもちろん鉄道でやる。それから、鉄道輸送の方がコストが高いけれども、バスにかえるのはむずかしいという場所があります。そういうところも鉄道でやる。その他の線については、国と国鉄の地方機関、関係都道府県等によって構成される地方協議会で一定期間内に、第三セクターでやるかあるいは民間の事業者に任せるか、そして鉄道輸送でそのままやるか、バス輸送に切りかえるかということを相談して、それによって鉄道輸送を続けるなり、バス輸送を続けるなりする。国鉄は第三セクターなり民間事業者に現在ある国鉄路線を無償で譲渡するあるいは貸し付けをする、そして第三セクター、民間業者は国鉄に対して列車の運行等の業務を委託することもできる、こういうような措置が講ぜられる場合には、新たに経営される鉄道事業等から生ずる欠損に対する補助、それから転換期における国からの転換補助金の交付というような公的な助成措置を講ずるようにしたらどうかという案でございます。  いま自治大臣のお話で、国鉄の仕事に金は出せぬ、それは確かにそのとおりです。しかし、これがいま申したように第三セクター等の仕事になった場合は国鉄の仕事ではございませんし、地方公共団体がぜひそうしたいということであれば、その程度のことはお認めいただいて事を進めなければいかぬのではないかと思っておりますが、なお、この件は自治省ともよく御相談をいたしたいと思っております。しかし、いま私が御説明いたしましたように、どうしてもこれで強行してやっていくということではなくて、いろいろ相談をして事を進めるということでございますから、それにいたしましても一つの答申が出ておりますので、この答申の線を十分に検討しまして実情に合うように処理をしてまいりたい、各方面とも相談をしたいということでございます。  ただ、いまのお話で、国鉄の労働組合がそういうのを発表して反対だなんということを言われるのは、国鉄の今日の実情から考えて、それを打開するために与野党御相談になった基本方針のもとに閣議了解をやって、その線でやっている仕事を、それを頭から反対をされているという行き方については、私は余り賛成できません。
  375. 安井吉典

    ○安井委員 労働組合が何と言おうと、地元の住民が反対しますよ。それは地域の住民が反対しますよ。総理、どうでしょう。これは大変な混乱のもとになると思いますよ。一応この機会に総理のお考えも伺います。
  376. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国鉄再建という問題、われわれが抱えておる大きな課題の一つでございます。安井さんの指摘される問題、地域の問題、自治体、地方住民の問題もたくさん確かにございますけれども、国鉄再建の問題もまた運輸大臣が仰せになるように回避できない課題でございますので、これをどのように推進してまいりますか、政府が手軽にこれをできるとは考えておりませんで、十分の話し合いを通じ、理解を得てやらなければならぬわけでございますので、そういった点、頭から問題にならぬということでなくて、ひとつ親身になって御相談に乗っていただきたいものと思います。
  377. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにしても、田園都市構想などというのはすっ飛んでしまう。そのことが一番大事な問題で、つまり、日本全体の国土の計画などは一体どうなるのかという、そういう大きな面から問題の解決を探っていく、そういう姿勢を特に望んでおきます。  そこで、いま私は過疎で過疎でどうしようもないところの話をしたわけですが、今度は人口が集まって集まって、そのことによってトラブルが絶えず、水道の水を引く引かないで市長さんが告訴をされたという、ちょうど両極端の、もう一つの極端の問題をこの機会に、これは地方自治の基本にわたる問題にも通ずると思いますので、取り上げてみたいと思います。  それは東京都の武蔵野市で、ここに私も行ってまいりましたけれども、緑の多い町で、昔、中島飛行機工場のあったところで、それがなくなった後人口が十年間に激増して、十一平方キロしかないところに十三万五千人も住んでいるわけですね。全国第五位の過密のところであります。不交付団体で、市税の収入は七〇%ぐらいだそうです。こういうところですから、住宅地帯で、国会議員がたくさんいて、現在でも武蔵野市に住んでいる国会議員は十二人だそうです。いまちょうど居眠りをしている金子蔵相も武蔵野にお住まいだそうですし、古井法務大臣も武蔵野だそうですね。文化人もたくさん住んでいる。  そこで、五十三年の十二月の五日に東京地検八王子支部が――後藤喜八郎市長が、ヤマキマンションというところから水道の工事申込書が出たのに、違法建築だということで給水を拒否した。これは水道法第十五条一項等の違反であるということが公訴事実であります。これは後藤市長が勝手にやった措置ではありません。宅地開発等指導要綱がこの町にあって、それでやっているわけですが、全国でこの宅地開発等指導要綱が恐ろしく広がっているわけですね。これはいま全国でどれぐらいの数になっているのか、これは建設大臣ですか、自治大臣ですか、発表してください。
  378. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 お答えいたします。  五十二年の十二月一日現在で八百八十五の市町村にできております。
  379. 安井吉典

    ○安井委員 そうですね、ずいぶんふえましたね。全国の八百八十五もの市町村が乱開発を防止するために、もう国の政治には待っていられないという形で、こういうようなもので対応しているわけであります。調べてみますと、昭和四十年代に入ってから――これは元号で言います。大都市近郊の人口が激増し始めて、無秩序な宅地開発が進み、道路とか学校とか水道等の施設が、住宅がふえるものですから、幾ら伸ばしてもどうしようもないということで、自治体財政はまいってしまう。結局それはもともとからいる市民の負担になっていくわけです。その上に高いマンションが建つことによって日陰になる住民から、太陽のシビルミニマムというべき日照権を確保したいという要求が出されて、各地でトラブルが起きる。マンションがどんどん建つのにその地域の住民がみんな集まって抗議行動をする。そういうような事態がしばしば起きて、もう自治体もその裁きに手をやいたわけですね。ところが、建築基準法を初め既存の法令ではもうどうしようもない。そういう中で、四十六年の十月に、武蔵野市では宅地開発等指導要綱がつくられ、住民の日照権確保等の要求にこたえて、無秩序な開発や建築等を抑止するという、そのための行政指導を行ってきているわけです。  その中身はそういうマンションを建てる場合には事前に公開をする、そういうことによって近隣の住民の同意を得なさいとか、道路などの一定の土地の負担をしてくださいとかという内容で、これに違反した者に対しての制裁がないわけですよ、自治体には権限がないわけですから。そこで、その場合には建築確認を留保しますとか、上下水道はつくりませんよとか、そういうふうな自治体の長が持っているありとあらゆる権限を総ざらいして、こういう制裁があるからぜひこの要綱どおりやってください、そういうことで決められているのがいわゆるこの要綱であります。  このことが大規模建設の際に都市の住環境の保全に大変役立ってきたということは間違いありません。そして、東京から大阪、全国にどんどん伸びて、先ほどの数字のように全国に広がっているわけで、乱開発を防いで、場合によっては流血の惨事にまで及ぶ事態さえあったわけです。それに対する自治体の対応であったわけです。もっとも、このことは住宅難にあえぐ人からすれば、新しい住宅がなかなか建たないわけですから、それへの拒否ということに通ずるわけであります。そういう問題はありますけれども、国の法律の不備を補いながら、住みよい町をつくろうという行政目標の達成のための市民合意の市民法というか、実質的な慣習法のような存在としてずっとやってきたのではないかと私は思います。  こういうふうな要綱行政に対して――これは欠陥もあります。いま申し上げましたような欠陥もないわけではないけれども、開発を秩序立ててきたメリットというのは私は大きいと思うのですが、これに対してどういうふうな指導や対処をしてきたのか、建設省それから自治省にも伺いたいと思います。
  380. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御指摘のように武蔵野市は一つの典型でございますが、いわゆる人口急増都市は急激な町づくりという変化が来ておるわけでございまして、これは放任すれば当然スプロール化する。それを一つの秩序を立てて町づくりを進めていくために、いま御指摘の要綱という形で市の考え方というものをまとめて、市民の協力を得て町づくりを整然と進めていく、現実の必要に迫られて発生したものでございまして、私はこの要綱行政というものは適切であり、かつまた必要であると評価をしております。ただし、今回の武蔵野市の事件のように、法治国でございますから、いかに適切であり必要であると申しましても、これは法令の限度を超えるということになりますると、当然これは問題が起きることはもう言うまでもございません。でありますから、あくまでもやはり要綱をつくるに当たっては法律の範囲内でという節度を守ることは、これはどうしても守っていただかなければならないと考えております。しかし、この問題は、御指摘のように全国非常に多方面にわたって現実にいろいろな問題が起きておるわけでございますから、一体現在の法体制のままでいいのかどうか、私どもは建設省とも十分協議をして検討を進めてまいりたいと考えております。
  381. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 指導要綱につきましては、いま自治大臣から言われたとおりでございますが、建設省といたしましては、少なくとも基幹的な公共施設、それが国庫補助制度あるいは補助率の人口急増地帯に対する引き上げ、そういった問題で、できるだけ自治体に財政負担がかからないようにこれを持っていくということの努力をいたしておるところでございます。  なお、このために特に昨年度からは住宅宅地関連公共施設整備促進のための制度を新たにつくりまして三百億、補正予算で五十億出しまして、特に三大都市圏においてこれを実施いたしておりますが、本年度はこれを倍額にいたしまして強力に推し進めてまいって、このような指導要綱を少なくとも自治体が感じないように持っていくまでに、つくる必要がないまでに持っていきたいと、このように考えております。
  382. 安井吉典

    ○安井委員 まあ自治大臣と建設大臣から御答弁があったわけでありますが、いま現実に市長が告訴されるというふうな事態に立ち至っているというその時点に立って、私たちはもっと真剣に考えていかなければならぬのではないかと思います。  いま自治大臣から、法治国家だからという御意見もございました。しかし、法治国家なら法治国家らしく、住民のほかの人に迷惑がかかってもそんなのを振り切ってやるというそういうようなことをしないように、住民全体が丸くいけるようなそういう法律や仕組みがきちっとあっていいはずですよ。それを政府国会は自治体のためにやってないわけですからね。つまり、ここでもう法治国家であるその重大な枠組みの一部をつくることに、これは建設でしょうね、建築基準法の関係ですから。そういうようなものを怠っているというところに私は問題があるのではないかと思います。ですから、水をとめたことがいいというようなことをだれも考えるわけではありませんけれども、そこまでいかざるを得なくなったということ、そのことが私は大事ではないかと思います。水をどうせとめるにしても、ちゃんと民主的な手続を踏んで何度も何度も話し合いをして、もうどうしようもなくなったからということでしょう恐らく。私どもが聞いた限りにおいてはそうであります。ですから、周辺の環境を規制して住みよい環境づくりをするというその内容と、行われた行政行為の問題性と、その均衡がどうとれているのかということ、私はその点がこの問題の考えるところであって、いわゆる緊急避難行為とか、そういうようなものに当たるものではないかと思うわけです。  そこで、いま建設大臣からいろいろこれからの対策についてお話がありましたけれども、いままで建設省としても、こういうような事態に対して、建築基準法のもっときめ細かな改正を行うことによって起きないような仕組みをちっともやってきてないということ、私はそこにも一つ大きな責任があるように思います。これからの対策もわかりますけれども、いままで十分にやってきてないということ、これにもう少し反省が必要じゃないかと思うのですが、渡海建設大臣、どうでしょう。
  383. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 本件はすでに訴訟になっておりますので、一般論として私先ほど答えさせていただいた次第でございますが、建築基準法、このために、大綱は建築基準法で決めておりますが、法に基づくところの委任した条例は各自治体によってやっていただいておる、そういった姿できめ細かく今後ともに運営をやってまいりたいと、このように考えております。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕
  384. 安井吉典

    ○安井委員 最近非常に若返った建設大臣ですけれども、いまの御答弁は私はもっと生き生きしたものにしてほしいと、希望を言いたいわけであります。  とにかく建設省で、なるほど建築基準法の不備が指摘されて日影の規制を盛り込んだ改正をやったということも私どもは知っております。それも全国のこのような広がってきた開発規制、市町村だけが苦労してやっているもの、それが背景になってやっとこすっとこ腰を上げたというのがあの改正であったと思います。しかしそれでも現実にはきちっとした対応ができていないわけで、まだいまのような問題が起きているわけです。ですから、国はもちろん大枠の対策をさらにきめ細かくつくっていかなければいけない、そしてその上において自治体が、これまた住民の参加を得ながら、住民とともに問題を解決するというような気持ちで対応していくというのが私は基本だと思います。それは全くそのとおりだと思いますけれども、それなら私はもう少し自治体に権限を与えるべきだと思うのです。水道をとめなくたっていいような権限をひとつ与えるべきじゃないでしょうか。そういうことで、もしも乱開発があれば市長がその権限を行使して、こんなものは絶対させませんよという、そういう権威づけをするということが大切だし、それからもう一つは、先ほど渡海大臣が言われましたような財政的な裏づけで、もう少し苦労をしなくても済むようなそういう仕組みをつくってあげるべきではないかと思います。  つまり行政的な権限を自治体に与えることと、それからもう一つは財政的な裏づけをするということと、これはもうさっきの過疎の場合と問題は基本的には同じなんですよ。その点についてどうでしょう、これは自治省も、それから建設省もともに伺いたいと思います。
  385. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 財政的な裏づけ、これに対しましては、今後ともに努力を続けてまいりたいと思います。  ただし、建築基準法の件でございますが、権限を移譲せいという意味、大枠は建築基準法で決めてもよいが、細かいことは自治体に権限を移譲せいという御議論でございましたら、建築基準法というものは国民の財産権を制限する問題でございますので、基本的なものはやはり法律でもって決められ、そのかわりに、その法に基づくところの条例でやっていただくということで、一般的に私は、各自治体に権限を認めさすということは行政上の混乱を生むし、直ちに同意しかねると思いますので、検討させていただきたいと思います。
  386. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 自治体に権限とそれから財政の手当てをすべきだという御意見には、基本的には全く賛成であります。それで、御案内のように、この人口急増都市に対しましては、現在におきましても補助金のかさ上げ、さらにはまた特別交付税ででき得る限りの手当てはしておるわけでございまして、今後とも努力を重ねてまいりたいと考えております。
  387. 安井吉典

    ○安井委員 重ねて申し上げておきたいと思いますけれども、この武蔵野市の場合、私の調べた限りでは、このヤマキマンションという建設業者は、市内で七カ所ものマンションを建てて、五カ所で住民との間で問題を起こしているわけです。しかし、そのほかの人はみんな話し合いがついてうまくおさまっているわけですよ。マンションも建っているのですよ。建っているけれども、おさまっているわけですよ。中にはやはりこういうような人もいるわけです。しかし、その人に対して自治体の長は何も権限がないわけですから、こんなようなことがやっと細々とできる措置でしかあり得ないわけであります。ですから私は、いまお二人ともお約束をいただいたわけですけれども、行政的なあるいは財政的な強化をしていくということ、これはきょうはもう具体的な問題を詰めるゆとりはありませんから、それぞれの委員会やその他でお話し合いを願いたいと思うのですけれども、それをひとつ基本として取り組んでいただきたいと思います。  そして、自治大臣に、これは自治体の中で新しい行政需要がどんどんできてきている、そういう場合に、みずからの自治立法権、これを発動してどんどん活用していくということは自治体の使命ではないかと思うのですが、これはそのとおりでしょう。
  388. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 御質問の限りではそのとおりだと考えております。ただ、先ほど来から御論議のありましたこの件について、先ほど建設大臣からも答弁がありましたように、事は財産権に関する、それをどう規制するか、こういう問題でございますので、それが条例の権能と法律との関連がいまどうなるのか、これは相当やはり各方面からしさいに吟味をしないと、軽々しく結論は出ない問題だと考えております。
  389. 安井吉典

    ○安井委員 しかし、基本的にはそういうことじゃないのですか、憲法の精神からいっても。
  390. 澁谷直藏

    ○澁谷国務大臣 いろいろな事態が次から次と起きてくるわけでございますから、そういった事態にそれぞれの地域の自治体が対処するために、本来与えられておる条例制定権というものを活用して対処するというのは当然のことだと考えております。
  391. 安井吉典

    ○安井委員 そしてこの問題はさっきの過疎の問題と絡めて、全国的な国土計画が全く機能していないという事実の中で明らかにしていかなければならないのではないかと私は思います。鉄道が引っぱがされるかもしれないという地域があるかと思えば、住宅過密の地域、そういうひしめきの中で、そこでの基本的な人権がそういう都市の中では侵されているのではないか。みんな快適に住める町をつくろうと総理大臣は演説をされるけれども、実際は大都市の中ではそんなことになっておらぬじゃないか。そして一方ではお百姓さんが自分の仕事をやめて、田畑を売って町へ出ていかなければいけないという。  総理大臣は、演説でも、農村は民族の苗代だと言った。これはまさにそのとおりだけれども、苗代というのは苗をつくって、そしてほかの畑へ植えるわけです。農村の中で、山村の中でいい子供たちが育っていけば、それはみんな苗は大都市の方に植えられていってしまうのです。私は、民族の苗代という言葉をこの間演説で聞きながら、むなしくなった。そういう事態をそのままにして、民族の苗代という言葉をお使いになっていながら、いまだにお気づきにならないというところが問題ではないかと私は思います。  やはり全体的な国土計画をがっちり全国にわたって張りめぐらして、これはきょうはそっちに置いてありますけれども、社会党の中期経済計画の中でそれらの手法は私どもはっきり出しております。もう時間がありませんから申し上げませんけれども、そういうような主張を私たちは現実にしているわけですが、ひとつその全国的な計画をがっちりつくり上げていく、そういう中で住みよい都市、それからみんなの生き生きとした生活が営めるような農村、それをつくり上げていくというところが基本ではないかと私は思います。そしてそういうような事態が全くできないでいて、一人の市長を罪にして何になるのかということだと思います。一人の市長を罪にすれば、それで都市問題が片づくのかということですよ。そこを原点にして、この問題をもう一度考え直してもらう必要があると思います。先ほども総理から、全国的な開発を進める手法やあるいは構想等についてお話がありましたけれども、過密と過疎と二つ並んだこの段階において、もう一度伺いたいと思います。
  392. 中野四郎

    ○中野国務大臣 過密過疎問題は国土利用の不均衡をもたらしておることは御承知のとおりでありまして、御指摘のように、その解決は国土計画の最重要課題の一つであると考えております。したがって、第三次全国総合開発計画においては、大都市への人口、産業の集中を抑えまして、一方地方の振興を図るために、定住構想を基本として魅力ある地域社会づくりの推進をすることにしております。このため、政府一体となりまして同構想を推進する体制を整備しております。施策の充実強化に努めてまいる所存でございます。
  393. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 おおむね国土庁長官が申し上げたとおりでございます。
  394. 安井吉典

    ○安井委員 お話があったとおりには違いないけれども、もう少し熱意を持って取り組んでいただくべきだということをひとつ最後に申し上げておきます。  そこで、あと残った問題が幾つかあるわけでありますけれども、昨年十一月二十七日に日米安全保障協議委員会で「日米防衛協力のための指針」がつくられているわけです。この問題をちょっと伺っておきたいと思うのです。  この指針をずっと読んでみますと、これはもう自衛隊と米軍と両方の制服が集まって、勝手な相談をすると言えば言い過ぎかもしれませんけれども、どんどんひとり歩きをしてしまうのではないかという心配を持つわけであります。十二月十五日に、山下長官は幕僚長に対して、日米の共同作戦計画の作業開始のサインをお出しになったそうでありますが、制服独走になるのではないかという私の心配に、まずしっかりお答え願いたいと思います。
  395. 山下元利

    山下国務大臣 御指摘のとおり、昨年十二月十五日に、私はこの「日米防衛協力のための指針」の作業開始の指示をいたしました。いま、これは制服の間で勝手な相談をしてひとり歩きをするのではないかというふうな御懸念が表明せられたわけでございますけれども、私がこの作業開始を指示をいたしましたときに、日米防衛協力についていろいろ共同研究をすることは大事なことであると思いましたが、それを制服の方でひとり歩きしないで、シビリアンコントロールによってこれを進めていくことは非常に大事なポイントであると思いまして、私はその方針をもってまいる覚悟でございますし、またその運営につきましては時々内局の方に連絡があることになっておりますし、私もこれにつきましては十分目を通して、シビリアンコントロールに徹してまいりたいと思っておる次第でございます。
  396. 安井吉典

    ○安井委員 時間の関係で深入りをするゆとりはありませんけれども、これを読んでみますと、両軍が共同で作戦をやるわけですね。作戦の計画を立てる。しかし作戦はそれぞれの法制の中でやる。日本は守る方だし、攻めていくのはアメリカだ、こういうふうになっております。しかし作戦ということになると、それは攻撃もどこどこを攻めるというアメリカの戦略があるわけでしょう。自衛隊もその中で一緒に相談をする。核をどこで使うかということもあるいはその相談の中にあるかもしれない。それも自衛隊が一緒になって制服組が相談をする。共同の作戦の計画だけは、核まで含んで一応立てられてしまう。もちろんその中で実行に移すときには、それぞれの憲法の枠内でやるのでしょうけれども。私はそういう作戦の計画を一緒にやるというところまで制服組に勝手にさせていくというあり方が、それはもちろん日本の自衛隊は自衛隊としての制約の中でやるでしょうけれども、しかしアメリカの方は何もないわけですから、フリーハンドですから、勝手にどんどん計画を立てて、こちらの方がそれに引き込まれてしまう。つまりアメリカ主導型の、アメリカの軍事戦略の一隅の中にはっきり組み込まれてしまう、そういうことを非常に恐れるわけであります。どうですか。
  397. 山下元利

    山下国務大臣 この指針は、あくまで日米安保体制を有効にするために、その円滑な、効果的な運用を図るために共同研究をしてまいるのでございまして、これにつきましては、前提条件にもございますとおりに、それぞれの国においての判断にゆだねられるとなっておるわけでございます。また、これはあくまで各級レベルにおきますところの研究でございますが、それは時々私どもとしてはこれを見ておりまして、また判断の結果決めることは、政府のシビリアンコントロールの原則のもとにおいてやってまいるわけでございますので、ただいま御指摘のように、ひとり歩きしていくということのないように努めたいと思う次第でございます。
  398. 安井吉典

    ○安井委員 このことが東南アジアやあるいはソ連等に刺激になっているというような事実も、私は否めないのではないかと思います。ソ連の国後、択捉に対する軍事基地化の問題だって、やはりこういう協力態勢で、さあゴーサインを出したという山下長官、そういうようなことで津軽海峡で空軍の演習が自衛隊とともに行われる、そういうのをじゃんじゃんやれば、向こうだってそれならおれの方も、こうなる。東南アジアは日本が恐ろしいもののように思われてくる。そのことによって、すぐに向こうがいろいろな行動を起こすということにはならぬかもしらぬが、向こうが行動を起こすための口実になるわけですよ。私はその点が恐ろしいと思う。ソ連との関係においても、この間うちからいろいろな問題か起きて、決議までしたわけですけれども、こちらの方が向こうを刺激するようなことはやはりやらないということ。そういうような意味においては、私は、このガイドラインというのが非常に危険なもののように映るわけであります。その辺どうでしょう。
  399. 山下元利

    山下国務大臣 日米安保条約はずっと存在しておったわけでございまして、いままでこれにつきましての自衛隊と米軍との間の共同研究がはっきりしていなかった。それをシビリアンコントロールのもとにおいてこのガイドラインを決めたわけでございます。しかも、これはあくまで日米安保条約の効果的な運用のために資するものでございまして、いずれかのどこかの国を対象にしたものではさらにございません。私どもは、その運用についてはそのように考えておる次第でございまして、無用な誤解を招かないように、十分シビリアンコントロールの原則に徹してまいりたいと思っておる次第でございます。
  400. 安井吉典

    ○安井委員 ずいぶんたくさん問題があるのですが、もう一つだけ伺っておきたいのは、情報の保全に関しそれぞれ責任を負うという規定がありますね。アメリカ側の方は情報がしっかり守られるような、秘密が保護できるような仕組みを持っているわけですよ。こっちは自衛隊法やそれからMSAの法律がありますね。それぐらいであるが、一般的な機密保護法というのはありません。しかし私は、こういうようなことで共同作戦にどんどん入り込んでいったら、アメリカの方から機密保護法をつくってください、こういうことになりはせぬのか。この次に有事立法の問題をお聞きいたしますけれども、そういう有事立法を日米の話し合いの中から引きずり出されてしまいはしないか。どうですか。
  401. 山下元利

    山下国務大臣 お答えいたします。  保全につきましては、ただいま御指摘のとおり、自衛隊法によって十分であると考えておる次第であります。  以上でございます。
  402. 安井吉典

    ○安井委員 私は、これはやはり歯どめが十分じゃないと思いますよ。このままやっておけば、シビリアンコントロールと口では言うけれども、そのための体制は何ができているのか。安保条約の体制の中で、両方の合同で、共同で作戦をするということの約束になっているものができていないから今度つくったのだ、こう言われるが、しかし一方シビリアンコントロールを強めるためのわれわれの中の体制が何もできていないじゃないですか。勝手にこっちばかりひとり歩きをしてしまう、私はそのことを恐れるわけで、きょうは幾つか、そんなことはありません、そんなことはありませんと、私の問題提起に対して長官はノーと言ってくれました。私はそれは一つの歯どめだと思う。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 だから、それは本当に守らないようなら、偽証罪とは言いませんが、これは十分責任をとってもらわなければならぬわけでありますが、いずれにしても何らかの意味の明確な歯どめというものがなければ、私はどうも心配だ。この辺は長官はもういいです、あなたから大分聞いたから。総理からひとつお聞きいたします。
  403. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 この点は、安保条約運営につきましては安保協議委員会というのがございまして、それのコントロールのもとに、このガイドラインによる日米協力があるわけでございまして、初めから大きな歯どめをちゃんとつけてあるわけでございまして、そのフレームから出られないようにちゃんといたしてあるつもりでございます。当然なことといたしまして、非核三原則その他日本の体制が守っておるルールというものにつきましては、安保条約の運営全体がそれを踏まえてやっておるわけでございまして、そのごく一部の協力のルールをつくろうというわけでございますので、私は、安井さん大変御心配でいろいろ御注意いただくことはありがたいと思いますけれども、御心配の点はないようにいたしてあるつもりでございます。
  404. 安井吉典

    ○安井委員 私どもは日米安保条約そのものに反対でありますけれども、少なくもこういう段階の歯どめをがっちりかけるようなことでなければ大変だということ、いま総理からお話がありましたけれども、それでは不十分だと思います。ぜひさらにしっかりした決意を別な機会に伺うことにいたしたいと思います。  もう一つ、時間の配分で残り少なになってしまったわけでありますが、有事立法の件ですね。大平さんは総裁候補であったときから、防衛論議はもっと広い視野に立って展開すべきであり、いまの自衛隊法で有事に対応できると思うから、研究はするがとおっしゃったのかもしらぬが、有事立法は不要だ、新聞の見出しは有事立法は不要というふうな言い方で書かれていたのを私は――ここにも新聞の切り抜きがあります。福田前首相とは一味違ったお考えをお持ちな方だなと、そう思っていました。いまもそのとおりですか。
  405. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 新聞の報道は厳密に言って正確じゃございません。私が申し上げておりますのは、自衛隊はもともと有事のために存在するものである、したがって、自衛隊法というのはもともと有事立法であると思います。そして、現行の有事立法である自衛隊法というのは、よく検討してみると、一応あらゆる場合に対応できる有事立法になっておると考えております。しかしながら、もし不備な点がございますならば、これを検討しなければならぬと思うわけでございまして、不備な点があるかないか、もしありとすれば、どこが不備な点であるかというような点につきましては、防衛庁において検討いたしておることと思うのでありまして、私が申し上げておるのは、研究は不要であるというのは乱暴じゃないかと思うのでございまして、どの立法でも、不備があればそれを検討して正していくというのは当然の責任でございまして、そういう意味で防衛庁の方で検討しておると聞いておりまして、これは当然のことではないかと思っております。
  406. 安井吉典

    ○安井委員 昨年の九月の二十一日に国会のいろいろな論議の中で、防衛庁が有事立法研究と奇襲対処の見解について統一見解をお出しになりました。これは長官がかわってもそのままなのですか。そして、この中に「今回の研究の成果は、ある程度まとまり次第、適時適切に国民の前に明らかにし、そのコンセンサスを得たいと考えている。」ということが書かれており、金丸防衛庁長官は、中間報告をしたいと思います、こういう言い方をたしかしていたと思うのですが、それについてはどうですか。
  407. 山下元利

    山下国務大臣 御指摘のございました昨年九月の統一見解に基づきまして、ただいま総理から御答弁になりましたが、この有事法制について不断に研究をいたしておるわけでございますが、この昨年の統一見解に基づいて研究することについては現在も変わりがございません。  なお、その研究の成果は適時適切に国民の前に明らかにするつもりではございますけれども、研究は時間をかけて慎重に行っておりますので、まとまるまでにまだ相当期間を要すると思いますので、現在のところまだその報告できる状況にはございませんけれども、進め方いかんによりましては、なるべく早く報告したいとは思っておる次第でございます。
  408. 安井吉典

    ○安井委員 福田さんはタカで大平さんはハトだというふうに、みんなそう思っているわけですよ。だから、人によっては大平さんになってよかったなと――これは福田派の人がいたら悪いが、そういう声もありました。しかし、この有事立法の問題に関する限り、福田さんの時代と大平さんになってからと、この統一見解も同じだし、何も変わってないのですかね。有事立法に対する取り組みやその他においては全く同じなんだ、継続しているんだ、そう受けとめていいのですか。
  409. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 私もきわめてあたりまえのことを申し上げておるわけでございまして、それをどのように評価されるかは人の自由でございます。
  410. 安井吉典

    ○安井委員 やはり私どもは、有事立法の研究そのものが新しく有事を生み出すことになる、現に、研究する、しないと言いますけれども日本には昔、有事立法はみんなあるわけですよ。かつてのあの大戦争の中で、もう国家総動員法を初め八十本も百本も有事立法があるわけです。あれは全部戦争のための法律だったわけです。これはいま六法全書にない。しかし、あるわけですからね、あのかたかな書きのものをひらがな書きに書き直せば、法制局長官もおられますけれども、それでもういいのですから、私どもがそういう立場にあるということから、私は有事立法の問題、その研究とかなんとか言われている問題を考えていかなければいけないと思うのです。いつでも、われわれは前のものがあるのだから、戦争をしようと思えば全部あるわけですよ。要するに、あくまでも平和憲法を守って、そういうようなことには一切入り込まない、のめり込まない、戦争にはのめり込まないというそういう政府の姿勢、平和憲法をしっかり守るという、そういう政府をわれわれはつくっていかなければいけない。いまの政府にもそれをぜひ守ってもらわなければいけない。私はそういうことではないかと思うわけです。もう一度その決意を伺います。
  411. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 平和憲法を守っていくということにおきましては、安井先生に劣るものではございません。  それから、いまの自衛隊法も一つの立法でございますし、社会、経済情勢も変わってまいるということでございまして、もし不備な点があればこれを検討していくということは当然のことだろうと思うので、それを検討していけないということは私にはわからないのであります。それで、検討いたしまして、国会の判断を求めることがあるかもしれませんし、それは国会が御判断いただけばいいわけでございますが、検討しちゃいけないというのは、私は少し乱暴じゃないかと思うのです。これは間違っているのでしょうか。
  412. 安井吉典

    ○安井委員 反問がありましたけれども、私も憲法は大事だと思うが、私以上に憲法を守っていただけるという、その総理一つの言葉のところだけをしっかりお聞きしておきます。  それからもう一つ、米軍駐留費の分担の問題があるわけですが、これはいま川俣健二郎委員の例の健保の問題、あれをこれから最後の段階で詰めていただくことになっておりますので、これはもう省略して別な機会に譲りますけれども、日米安保条約というのは、一方が基地を提供して、軍隊の運用は全部アメリカがやるというのにかかわらず、最近は何でもかんでもアメリカの言うがままになってこちらの負担をふやしていって、かつてこの委員会で私ども、あの当時は楢崎君が社会党にいたころなんですけれども、岩国と三沢のあの隊舎の改築の問題を取り上げて、ここはストップになってしまって、最後に大平メモというのが出て、そのことで国会が、予算委員会が幕を閉めた、そういうこともあるのですけれども、そんな大平メモなんかどこかへ行ってしまって、隊舎の改築どころか沖繩の嘉手納基地のサイレンサー、あの飛行機の消音装置なんですけれども、そんなものまでに負担をどんどん出す。NATOの分担を平等に分けるというのと日米安保条約は違うのですから、その精神がおかしくなってきているという問題は非常に重大ではないかと私は思います。これは、どこまでもそんな負担を広げていってもいいのか、いまのままでいったら飛行場の建設まで日本がやらなければいけなくなりますよ。もう、そうなったら安保条約も地位協定も何もないわけですね。これはもう全くとんでもないことになるわけであります。やはりきちっとした見解を、この前は大平見解で、それももう踏みにじられてしまったけれども、もう一度また大平見解ということに、お立場は違いますけれどもね。とめどなくそういうような負担を増していくというふうな、そういうことではこれはもう大変だと思うのですよ。その点だけひとつ伺わせてください。
  413. 山下元利

    山下国務大臣 御指摘の問題につきましては、米軍の駐留を円滑にするために、地位協定の範囲内で、この施設経費あるいは労務費につきまして負担をいたしておるものでございまして、これはまた雇用の安定にも関連すると思う次第でございます。  なお、歯どめの問題につきましては、私どもは、この労務費につきましては、ただいま御審議願っていることによりまして、これでもうこれ以上のことはない、歯どめがかかっておると思う次第でございますが、施設につきましてもそれぞれの場合に十分審議してまいりますので、地位協定上問題はないと思いますが、十分その御趣旨を体してまいりたいと思う次第でございます。
  414. 安井吉典

    ○安井委員 駐留軍の労働者を人質にとって安保を変質させようなどという、そういういいかげんなあり方というものをきちっとやめてもらわなければいかぬと私ば思いますよ。安保の本質論というものを議論するにはちょっと時間がないから、これは別な機会に譲りますけれども、そのことははっきり申し上げておきたいと思います。  そこで、この前川俣委員が、健保法の扱いの問題について、後ほど総理見解を伺うということにしたまま保留されておりますので、私の残りの時間と、それから川俣君に特にお与えいただきました時間と合わせて、これからその問題について、まず総理見解から伺います。
  415. 竹下登

    竹下委員長 この際、関連質疑の申し出がありますので、これを許します。川俣健二郎君。
  416. 川俣健二郎

    ○川俣委員 安井委員の残り時間と、それからきょうの理事会委員長初め理事の皆さん方の工面していただいた時間で、この前の保留の質問をしたいと思うのです。  まず、質問に入る前に、政府の方で私が聞きたいことに対する問題を整理して作文してきたようですから、その作文をちょっと読んでいただきたいと思います。できれば大平総理大臣から述べていただきたいと思います。
  417. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 齋藤自民党幹事長と武見日本医師会長の間で、政府管掌健康保険と組合管掌健康保険との負担、給付の不公平是正について合意がなされたことは承知しております。  この問題は党レベルの問題であり、きわめて重要な問題を含んでおりますので、今後党内において検討されることになっております。したがって、現時点においてはその内容、手順等が明らかでありませんが、いずれにしても党の案がまとまった段階で、政府と党の間で十分な話し合いをしたいと考えております。政府としては、現在提案中の健康保険法等の一部改正法案及び昭和五十四年度予算を速やかに御審議いただき、可決成立させていただくようお願いする次第です。
  418. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いま総理が担当大臣からもらった作文をお読みになって、それをずっと、おつむのいい方ですから、一、二、三の関連を私はこれから伺っていきたいと思うのです。  そこで、この前、合意事項と予算審議関係についてという項目ですが、私の言わんとするのは、合意事項とこの予算との関係ですから、そこをどうか予算審議の運営とか態度とかいうのじゃなくて、この予算責任のある団体との約束をどうするのかという、そこをひとつ……。というのは、これはどうしても私は案ずるのは、いま医療問題というのは、保険組合あるいは健保の全体の体制の財政問題との関係で地方は非常に苦しんでおるわけです。先ほど安井委員が地方財政の問題を言っておりましたが、いまほとんど地方財政ではこの国民保険税のピンチで苦しんでおる。しかし私は、医療問題というのはお医者さんの意見を考えないでは解決しないと思います。この医師の意見を無視したのではできない。そこで、私は制度論として、国会の運営としてそういった問題でどうもこの絡みが合わない。というのは、この前に皆さんも、私の聞き違いかどうか知りませんが、大平総理は、党内の問題は私に任してくださいと、大変丁重におっしゃられたのだが、自民党の内部のことはとやかく言わないでくださいというようにおっしゃっている。そこで、合意事項ということを幹事長から総裁として聞いていないというように私は受け取った。これは誤解だったかもしれませんけれどもね。そこで私は後でよく聞いていただきたいということで、いまのような答弁になったのだが、いまの予算委員会に提案されている予算というのは政府が提案しておるわけですから、それに基づいて予算が組まれておるわけです。  ところが合意メモというのは、いま政府が提案して審議していただきたいという健保の改正案とは全然違ったものを合意してきたわけです。これはわかってくれると思います。ただ、なるほどこの前専門の橋本厚生大臣は、一のいわゆるプライマリーケアという表現で、これはいまの予算で消化できるんだから、医師会の方と約束したことをこの予算で消化できる。これは私も理解できます。これは私もわかります。ところが二つは、いまの組合健保の方が黒字だから、政管健保の方は赤字だから、この黒字をこちらの赤字の方に流せ。というのは、組合健保という健保組合の存在は認めるんだが、集まったお金は厚生省によこしなさい。そうすると、政管健保のお金とプールしてこれから支払うのだということになると、組合主義を貫いておる根幹に触れる問題ですよ、私はこう伺った。そうしたら橋本厚生大臣は、二番目は、そう強く修正案が出てこないだろう、だから一しか消化できないだろう、たとえ自民党の方から修正案が出てきても、それは恐らく二番目は提案してこないだろうから、この予算案とは矛盾しないのだということで答弁があったのですよ。ところが――いや、そうですよ。議事録を田中さんよく読んでみてください。  そこで、時間がありませんから、私が伺いたいのは、一体今回の政府が提案しておるものが前々国会からなぜ宙づりになったかということを考えてみてください。いままで継続審議、継続審議と三拝九拝して継続にして、議院運営委員会で宙づりになっている、この法案、改正案、これがなぜいままで滞っているかといったら、やはり合意メモというものの精神が生かされなければならないので、これはまずとっておいてください。そうしますと、私らが考えるのには、この合意メモに従った修正案が出てくるだろうなと私は素直に思うわけです。この点なんですよ。これはどうなんですか。
  419. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いま川俣委員から御質問がありましたが、多少私の前回申し上げました答弁を独自に御解釈になっておられるところがあります。正確に私はこの前申し上げた部分をもう一度申し上げたいと思います。  「政府管掌健康保険と組合管掌健康保険の間の給付の公平、負担の公平、すなわち社会的公正の確保という項目につきましては、自由民主党の方で御論議を始められたとは伺っておりますが、結論が出たとは私どもは伺っておりません。」「川俣さんの御質問でありますけれども、その予算を云云しなければならないような結果でまとまるとは私は信じておりません。」このように申し上げております。また、「現在御提案を申し上げております健康保険法の改正案の中におきましても、将来においてこれは共済等も含む幅広い総合調整を行うまでの間、組合管掌健康保険の中における財政調整を実施するという形でありまして、方向は私は違っておらない、そのように理解をいたしております。」「自由民主党の方でそういうふうな作業が始められているとは聞いておりますけれども、その内容が固まったとは聞いておりません。それが固まりました時点において、当然それは私ども十分に御相談はいたします。」そのようにこの前もお答えを申し上げております。そして、(川俣委員「ちょっと余り長いから」と呼ぶ)ただ正確に私は前回の発言を確認をさせていただいたわけであります。ですから、私どもとしては、現在提案をいたしております健康保険法をぜひ御審議をいただき、早期可決を願いたいと繰り返しお願いをしている次第であります。
  420. 川俣健二郎

    ○川俣委員 そういう理屈では通らない問題があるのでしょう。責任のある団体と責任のある政党、この幹事長と会長が約束してきた。それだったら、党の方で、私も持っていますから、そう私の言い方はひん曲げて解釈しておりませんよ。「自由民主党の方で御論議を始められたとは伺っておりますが」党というと、いかにも私は政府として干渉していないように思われる。ところが、きょうたまたま医師会のニュースで、この合意メモを交わしたときに橋本厚生大臣が立ち会っている、こういうニュースなんです。私らはわからないですよ、それは真相はわからないですから。そうなると、いいですか、橋本厚生大臣が野にあるというか、大臣でないときに橋本私案が出たわけです。自分がいま厚生大臣になったら、宙づりの方は、私はこれ一つですと、こういうので、だから予算審議をやってくれとこうなっている。そうしますと、これから検討するというのだから、では検討した結果どうなるのだろうと私は質問したくなるでしょう。どうです。
  421. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私はその日本医師会のニュースをまだ見ておりませんのでわかりませんが、確かに最終の段階において私が同席をした時間がございます。そうしてその時点で……(発言する者あり)ちょっとお聞きいただきたいのです。その時点で、幹事長また日本医師会長いずれに対しましても、私は「政府管掌健康保険と組合管掌健康保険の間の給付の公平、負担の公平、すなわち社会的公正の確保」という部分につきましては、これは私は責任を持てませんよとはっきり申し上げております。両方の方々に申し上げております。
  422. 川俣健二郎

    ○川俣委員 いまのは政府が干渉してないと言えるかということと、もう一つ総裁であり総理である大平さん、これは聞いてみてくださいよ。自民党の幹事長が行ってやったことだから自民党内部のことですと、この前に大平総理が言われた。ある新聞では開き直りという文句を使っておる。だけれども、いまの政府の厚生大臣が最も尊重しなければならないであろう医師会、自民党の政府の御都合で、最も尊重しなければならない医師会の会長に、この合意するときに――合意してしまったのですから。合意してしまったものを、厚生大臣は私は知らない、無理、だということで通せるかということだよ。そうでしょう。できないと思うんだよ。厚生大臣どうです。その辺もう少し……  それから、いつ出すのかということです。来年出すのか。自民党の修正案で出そうとするのか。
  423. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 自由民主党の方の作業がいつどうなるか、私はこれはお答えをする立場にございません。  また、正式にいま申し上げましたとおりに、私は自由民主党の幹事長に対しましても、日本医師会長に対しましても、その財政調整というものを内容に含む社会的公正の確保という、これについては責任は持てませんとはっきり申し上げております。
  424. 安井吉典

    ○安井委員 総理にまず伺いたいのは、この前私の質問に対して、齋藤幹事長から聞いてないと言うから、それではお聞きになってくるまで待ちましょうというのがきょうなんですよ。なぜこの前聞いてないとおっしゃったのですか。そこではもう聞きましたと書いてある。  それからもう一つは厚生大臣、厚生大臣の方は、昨年十二月末、自民党は医師会との七二%の例の税金の問題に関して、医師会をなだめるために取引として健保法の改正を約束をしたという、そういう中において、健保法の改正案の国会提出は認める、そういうことを党議で決めた。しかし、その内容については承認したものではない。提案は認めるけれども、その中身は党は承認しないのですよ。そうしてその討議の中には、根本さん、田中正巳さん、小沢さん、橋本さん――橋本さんもそのときいたんじゃないですか。社会保障制度審議会の中でも記録に残っているし、おられたんじゃないですか。だから、法案は提案は認めるけれども中身は認めないのだよ、そういう形で、あなたもおられて、そういう中でお決めになっていて、国会に出てきて、ここでは原案を通してください、こうおっしゃっている。だから総理もこの間――総理のは何かいろいろあったのかもしらぬけれども、厚生大臣のそれはちょっと困るな。どうですか。
  425. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 前回も同じことをお答えを申し上げたわけでありますが、確かに、昨年の通常国会に健康保険法改正案が提出をされました時点においては、党内で承認が得られないままに国会に提出をしたという経緯はございます。ただし、私は、五十四年度の予算編成に対して、現在国会に提案をされております継続審議中のこの健康保険法案を、改正案をベースにして予算編成をするということで党の承認をとり、その後、先日も申し上げましたように、党の、関係の各正式機関の承認を得て現在予算を提出をしているわけであります。その過程において部会等の御了承もいただいたと私は考えております。
  426. 川俣健二郎

    ○川俣委員 私は中身に入りたいんだけれども、入る前に委員長、私は、厚生大臣は、政府としてあんな合意メモなんか従えるか、こういうようにおっしゃるんだよ。果たしてできますか。客観的にできるわけがないですよ。おたくの党の幹事長が行って合意したことを、あんなのを厚生大臣として認められるかと口では言うけれども、みんなには通じないよ。そうじゃないか。そうでしょう。総理大臣、そこですよ。総理総裁との立場の、総理大臣がどうそれを解釈しているか。
  427. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほどお尋ねがございました幹事長と医師会長の合意事項を聞いていないと私が申し上げたのは、こういう意味でございます。お二人の話し合いで、両保険の負担、給付の不公平是正について合意がなされたことは承知しておりますけれども、その具体的な内容、今後の進め方等の細部については聞いてないというのが正確なのでございまして、そのように御了解をいただきたいと思います。そして、その後自由民主党の中でこの問題がどのような議論をされておりますか、どのように進められておるかにつきましては、まだ私聞いておりません。
  428. 川俣健二郎

    ○川俣委員 この問題はもう少し深めたいのですけれども委員長理事会等でひとつ検討していただきたいので、私の質問はこれで留保させていただきます。
  429. 竹下登

    竹下委員長 これにて安井君、川俣君の質疑は、保留分を除き終了いたしました。  扱いにつきましては、理事会で一応の合意を見ましたが、さらに確認の上、政府側に伝えます。
  430. 川俣健二郎

    ○川俣委員 ありがとうございました。
  431. 竹下登

    竹下委員長 次に、去る二月五日に保留いたしました石橋政嗣君の質疑を行います。石橋政嗣君
  432. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは、先日に引き続きまして質問を継続させていただきたいと思います。  五日の日にも私がどういう目的で質問しておるかということは申し上げたわけですが、もう一度きょう改めて最初に申し上げておきたいと思うのです。  私どもは、日中平和友好条約の締結、引き続く米中の国交正常化を歓迎しておるわけでございますが、それは真に日中の友好に役立つ、アジアの平和と緊張緩和に寄与し、日本の平和と安全にも有益だ、そう確信したからでございます。しかし、率直に申し上げまして、現実の姿は時がたつにつれて、少なくとも私の思い描いた理想の方向には必ずしも向いていない。  そこで第一に、本当に日中の恒久的な平和友好と信頼関係を確立する上で役に立っているのだろうか、第二に、いわゆる大国のパワーゲームに組み込まれる危険、そういう心配は絶対にないのだろうか、この二つをまずきわめて、もしそういう懸念があるとすれば、いまのうちに手を打たなければいけない、これからわれわれはどうしたらいいのだろう、こういう手だてをも考えていきたい、こういう目的で実は質問をいたしておるわけです。  そこで、質問の方法といたしましても、できるだけ議論をかみ合わせたい、そういう考えの上に立ちまして、条約というものを中心に据えて、いま申し上げたような目的に沿った質問をしてみたいというのが私の気持ちでございます。  そこで、まず第一は、本当に日中の平和友好と信頼の基礎は固まったのか、この点に関してでございますけれども、どうも何かあいまいな点が残るような気がしてならないのです。肝心なことを詰めないで、何かはれものにさわるように、そっとしておこう、そっとしておこうというような態度が私にはかいま見える。一体そんなことで本当の信頼が両国の間に生まれるのだろうか、育つのだろうか、そういう懸念があるということを申し上げたいのです。それが外交だ、そんなことをおっしゃらないでください。私はそんなものであってはいけないと思います。こんな調子では必ず将来において問題を起こすのじゃないか。だから、もし何かしら私の懸念というものが事実であるとするならば、そういう危険な芽は、将来に禍根を残さないようにするためには、覆い隠すのではなくて、早いうちに摘み取る努力をする、私はその方が大切だ、そういう気持ちでお尋ねをいたしますので、率直なお答えを願いたいと思うのです。本当に心配がない、私の単なる杞憂だというならば幸いです。だから、お互いに一致点を求め合う、そういう観点で私もやりたいわけですから、ぜひ御協力を願いたい。最初に申し上げておきたいと思います。  そこで、この間は最初から十分なお答えがいただけなかったわけですから、蒸し返しはいたしません。私が御質問いたしましたのは、日本と中国との間の講和条約、平和条約というものは一体どうなっているのか、どの時点で戦争は終結したのか、法律的に御説明願いたい、こう質問したのに対しまして、日本政府の立場においては一九五二年八月五日に発効した日華平和条約、この時点で日本と中国との戦争は終わった、しかし中華人民共和国はそれを認めない。そこで、やむを得ず一九七二年九月二十九日の日中共同声明で政治的に話し合いをして、そしてこの共同声明の時点から戦争終結という扱いになっているのだ、こういう答弁だったのですね。私、非常に心配なんですよ。法律的に確定してないから、こんな問題が、外務大臣の答弁を読んでみましたら、超法規なんて言っているのですね。超法規的な措置で済むのだろうか。しかし、これをやっておりますとまた貴重な時間が何ぼでも減ってしまうので、一応、私は納得できませんけれども、それでいくのだろうか、次に移って、そういうことで通るのだろうかというふうに話を進めてみたいと思うのですよ。  そこで、日本政府の主張する、日本と中国との間の戦争状態というものは台湾政府との間で日華平和条約で終わっている、あれが講和条約である、こういうのをそのまま一応とります、納得するというのじゃなくて。ところが、この条約は共同声明発効の段階で無効になっているのですね。大平さん外務大臣でしたが、外務大臣の何か談話が発表されまして、任務は終わったとかなんとか言っておられるようなんですが、現実にこれは無効になっているのですね。この点から確かめます。
  433. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 二月五日の当委員会におきまして石橋先生より御質疑のありました日中両国間の戦争状態終了の問題に関する政府の考え方につきましては、その際にも御答弁申し上げておりますが、ここに論点を整理して改めて御説明すれば、次のとおりでございます。  日中間の戦争状態につきましては、法的な見地からは日華平和条約により終了したというのが政府の一貫した考えであります。ただ、日中国交正常化に際しては、かかるわが国の法的立場と中国側の法的立場の相違があり、日中国交正常化という大目的のために、双方の本件に関する基本的立場に関連する困難な法的問題を克服するために、共同声明の発出をもってこの戦争状態の終結の問題を最終的に解決した次第であります。したがって、日中間に戦争状態が終了していることについて、共同声明発出後、日中双方の立場は完全に一致しているのであります。  わが国は昭和二十七年当時、中国を代表する合法政府が中華民国政府であるという立場に立って、日華平和条約により、中国という国家との戦争状態を終了させたものであり、戦争状態の終了のように国家と国家との関係を律する事項は、同条約の適用地域に関する交換公文によって地域的限定は受けないという点についても、従来政府が御説明しているところでございます。これに対して、日台間の民間航空とか通商関係のような事項につきましては、この交換公文によって地域的限定を受けていた次第であります。日華平和条約は日中国交正常化の結果としてその存続の意義を失い、終了しましたが、同条約第一条による戦争状態の終了という処分的効果に影響を与えるものではありません。  なお、共同声明は政治的にはきわめて重要な意味を持つものでありますが、法的合意を構成する文書ではなく、憲法に言う条約ではないので、これの発出につき国会の承認を求めないこととした次第であります。もっとも、この日中共同声明につきましては、事柄の重要性にかんがみ、その内容について、その後国会において十分御議論いただいているところでございます。  以上でございます。
  434. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日中両国の戦争状態終了の問題に関する政府の考え方はいま申し述べたとおりでございますが、日中国交正常化への道がまことに長く、困難なものでありましたことは、当時の外務大臣である私の口から改めて申し上げるまでもなく、日中国交正常化に長年真剣な努力を払ってこられた石橋委員自身すでに十分御承知のとおりでございます。  かかる困難を克服いたしまして日中国交正常化という大目的を達成し、もって両国間の暗い過去を清算するとともに、新しい日中関係の建設へと進むため、日本関係者と、亡き周恩来首相を初めとする中国側関係者とが、ともに考えに考えた末ようやく到達いたしましたのが、共同声明の発出をもってこの問題を最終的に解決するということであったのであります。  日中共同声明発出以来六年有余を経た現在、こうして得られた解決が新しい日中関係の建設のますます強固な礎となっておる事実に照らしましても、戦争状態の終結の問題のかかる解決の意義は十分御理解いただけるものと考えます。
  435. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私がお尋ねしましたポイントは、日華平和条約は日中共同声明発出の段階で無効になっておるのでございますね。それに対して、そうだという回答があったわけでございます。そこで私が心配する問題が出てくるわけなのですが、仮に戦争の終結については、当時中華民国が中国を代表して日本との間で確認し合った、だからいいということにいたしましても、平和条約というのは御承知のとおり大体主たる構成要素四つあるわけです。戦争の終結、それから債権債務、賠償、領土の確定、四つあるわけです。一歩譲って戦争の終結は国と国、代表が違っても国と国の間でもう一回やったのだからもういいと言うとしましても、あとの三つ、これはどうなるのでしょう。有効なんですか、無効なんですか。債権債務、賠償、領土条項、これをお伺いしたいと思います。
  436. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 戦争終結の問題が日中共同声明によって終結いたしましたと同様に、戦後処理のすべての問題が、あの日中共同声明によって最終的に解決しておる、こういうふうに考えている次第でございます。
  437. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 いま後ろから声が出ましたけれども、どういう根拠によるものでございますか。たとえば、債権債務については日華平和条約にはあるのです。しかし、共同声明にはございません。逆に、賠償の方は日華平和条約の方にはないのですが、共同声明の方にはございます。それから、肝心の領土の問題については後でゆっくり入りますけれども、これは一応総理、外務大臣、どちらでも結構です、領土は最終的に確定しておる、法的にも間違いなしとおっしゃるのですか。
  438. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 お尋ねは、領土の問題は片づいているか、こういうことと理解いたしますが、領土の問題につきましては、わが国の立場といたしましてはサンフランシスコ平和条約によりまして台湾に対するあらゆる権利、権原、請求権を放棄した。そしてそれが日華平和条約によっても確認されておる、こういう立場でございます。もちろん、日華平和条約をその当初から有効なものというふうに認め得ないというのが中国側の当時の立場であったわけでございますけれども、いずれにせよ、法的なそういう意見の相違の問題を含めて、両国間の不正常な関係が正常化の日中共同宣言によって解決せられた、こういうことでございます。
  439. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 一つずつ片づけていきましょう。  まずそれでは債権債務、日華平和条約で台湾及び膨湖島についてはお互いこれはもう確認した、片づいた。共同声明では全然これは出てきませんね。これはどうなるのですか。
  440. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたと同じように、債権債務とおっしゃられるのは、恐らく戦争から生ずる請求権の問題を御提起かと思いますが、請求権の問題につきましては、サンフランシスコ平和条約によって、わが国は戦争から生じた請求権を放棄いたしておりまして、これが日華平和条約によっても引き継がれておる、こういうことでございます。  その後の法律構成につきましては、先ほど来御説明しておるとおりでございます。
  441. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 日華平和条約の第三条のことを私は言っているのですよ。
  442. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 日華平和条約第三条は、いわゆるサンフランシスコ平和条約四条にもありますような、戦争後日本から分離された地域における施政当局との間の請求権の処理の問題であろうと思います。それが日華平和条約においても第三条で同じような規定が置かれておるわけでございますが、この三条に基づきますところの台湾及び膨湖島における中華民国の当局なるもの、その施政権、この請求権の取り決めを処理する相手方であるところの施政当局そのものとのわが国の法的関係が消滅いたしておりますので、そのままになっておる、こういうことでございます。
  443. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 これは日華平和条約が無効になったというのですね。ところが共同声明がその後引き継ぐはずなのですけれども、全然共同声明には触れてないので、どうなるのかと確認しているわけですよ。あなた、サンフランシスコ平和条約、平和条約とあんまりそれ言わぬ方がいいですよ。後で困りますよ。サンフランシスコ平和条約は、台湾であれどこであれ、中国を代表した者は署名してないのですからね。
  444. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 先ほども申し上げましたように、台湾の施政当局との特別取り決めによって処理されるのが第三条の趣旨でございますが、その肝心の台湾の施政当局とわが国との法的関係が切れてしまっておるということで、その特別取り決めを締結し得ない状態になっておる、こういうことでございます。ただしそのことは、その個々の請求権自体の法的な地位に影響が及んでいるということではない、こういうことでございます。
  445. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 だから、この項目に挙げられた部分は中華人民共和国との間ではどうなるのですか。みんな片づいた片づいたと言うから聞いているのですよ。取り決めの主題となるこの点なんかどうなるのですか、そういう「特別取極の主題」となる……。
  446. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 この第三条はごらんのとおり「日本国及びその国民の財産で台湾及び澎湖諸島にあるもの」それから「日本国及びその国民の請求権で台湾及び澎湖諸島における中華民国の当局及びそこの住民に対するものの処理」及びそれに相対するものというものが主題になっておるわけでございますが、いま申し上げました……(石橋(正)委員「本土の方を聞いているのですよ、中国の方をいま話しているのですから、中国と日本関係を。あなたたちはそれを全部台湾で片づけようというのでしょう」と呼ぶ)これはあくまでも台湾にありますところの日本国及び日本国民の財産の処理の問題でございます。(石橋(正)委員「本国の方はどうですか」と呼ぶ)本国にあるものではございません。(石橋(正)委員「だから、今度本国の方はどうなるのですか」と呼ぶ)本国にあるものの財産並びに請求権の処理につきましては、サンフランシスコ平和条約によりまして、わが国はこの戦争から生じた請求権を放棄しておる、そういう事態が続いておるということでございます。
  447. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうすると、サンフランシスコ平和条約で片づいているものは、改めて二国間で、条約、協定がなくたっていいんだということなのですね。それはほかのことでも言い抜けしないでしょうね。ほかのときに今度言いかえるようなことはないでしょうね。
  448. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 たびたびで恐縮でございますが、サンフランシスコ平和条約十九条によってわが国は「戦争から生じ、又は戦争状態が存在したためにとられた行動から生じた連合国及びその国民に対する日本国及びその国民のすべての請求権を放棄し、」云々ということになっておりまして、この条項は中国に関しても適用があるということになっておりますので、それによってその法的な処理はすでに済んでおるということでございます。
  449. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それは記憶にとどめておきます、後の議論のときに。  それでは二番目の賠償についてはどうなるのですか。これは日華平和条約では規定が全然ないのですが、共同声明には出てくるのですけれども
  450. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 御承知のように、サンフランシスコ平和条約第十四条の(a)の1の規定によって、連合国は、日本国民の生産物、役務による賠償を受ける権利があるわけでございますが、これを日華平和条約によりまして、その当時の中華民国がその役務賠償の権利を放棄したということで、わが国の立場といたしましては、この賠償請求権の問題はそれで処理がなされておるというのが考え方でございます。もちろん、それが先ほど来の御議論にありましたように、中華人民共和国側がそのような処理を認めるかどうかという別の法的な意見の対立の問題があったわけでございますが、その法律的な意見の不一致の問題も含めて、不正常な関係が日中共同声明によって解決された、こういう関係になるわけでございます。
  451. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは日ソ共同宣言なんというのはもう屋上屋だ、本来ならば、日ソ共同宣言の場合はあの賠償放棄なんというのは要らなかったのだということですか。
  452. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 日ソ共同宣言には、先生御承知のように賠償請求権、それから請求権放棄の条項があるわけでございます。もちろんソ連の場合には、いわゆる分裂国家ではございませんので、全くストレートに日本とソ連との間で戦争から生ずる請求権の処理があの共同宣言によってなされた、こういう形になるわけでございます。
  453. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それでは領土問題に入りますが、日華平和条約の領土条項は、サンフランシスコ平和条約のそれと全く同じだと思いますが、そうですが。
  454. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 同じくサンフランシスコ平和条約第二条によりまして、台湾、澎湖島に対するわが国のあらゆる権利、権原、請求権を放棄いたしまして、それが日華平和条約の第二条においても同じようにそれらの権利の放棄が承認される、こういう形になっております。
  455. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それだけではないでしょう。
  456. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 それだけではないと申しますと……。
  457. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 放棄したのは台湾と澎湖諸島だけですか。
  458. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 新南群島、西沙群島に対するすべての権利、権原、請求権という形になっております。
  459. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 大切なことを抜かさないでくださいよ。サンフラシスコ平和条約と日華平和条約では、台湾及び澎湖諸島、それから新南群島、西沙群島、これのすべての権利、権原を放棄しているわけですね。間違いないでしょうね、あなたは忘れておったけれども
  460. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 おっしゃられるとおりでございます。  ただしサンフランシスコ平和条約におきましても、第二条の(f)によって、「新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」ということがあります。それを全部受けているわけでございます。
  461. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 あなたが抜かしたから私が言ったんですよ。そうでしょう。それではそこで、尖閣諸島についてはどちらにおいても放棄の部分に触れていませんね。だから放棄してないのだという解釈を政府としてはとっているわけですね。
  462. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 尖閣諸島はわが国の放棄の対象とは全くなっておりません。むしろ桑港条約第三条の対象地域ということでございます。
  463. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうすると、日中共同声明においてはどうしてこのサンフランシスコ平和条約及び日華平和条約の内容と同じものにしなかったのですか。共同声明になったら、今度は抽象的なポツダム宣言第八項にぽっと戻っているじゃないですか。どこを放棄するのかはっきりしないようなところに戻っちゃっているじゃないですか。これはどういうことですか。これは中国が領土を確定しておらぬということを間接的に表現したのではなかろうかという疑問を私は持ったのですが、領土条項が確定しているのだったら、サンフランシスコ平和条約、日華平和条約と同じ文言が出てきていいはずなのですけれども、日中共同声明ではポツダム宣言第八項に留意するということになっちゃって、ポツダム宣言第八項には新南群島もなければ西沙群島もない、そういう抽象的ないわば原点にぽっと戻っちゃったのはどういうわけですか。私は中国の意図をここに見るような気がするのですよ。日本政府は、日華平和条約で片づいた片づいたと言う。そしてさっきから、サンフランシスコ平和条約、これも中国は認めておる、認めておると言う。しかし中国の方はおっとどっこい認めていませんぞ。だからその意思表示として、全く違うポツダム宣言第八項に日本政府は留意するという、放棄という形が出てこないものを持ってきたのじゃないですか。
  464. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 お答え申し上げます。  サンフランシスコ平和条約の第二条によりまして、先ほど来挙げられております諸島、台湾及び澎湖島、新南群島、西沙群島、それらに対する権利、権原、請求権が放棄されているわけでございます。したがいまして放棄は処分的な効果を発揮するわけで、その際にすでにわが国は放棄いたしておるというのが厳然たる法律的事実でございます。したがいまして、そのすでに放棄したものを改めて何か別途処理するということはあり得ないわけでございます。
  465. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そういう詭弁を使っちゃいけないですよ。日ソの関係を思い出してくださいよ。樺太も千島列島も放棄したんですよ、サンフランシスコ平和条約で。しかし、放棄はしたけれども、どの範囲をどこに渡すというような約束はしておらぬということでまだ継続になっているのですよ、共同宣言で。領土が確定した段階で日ソの平和条約を結ぼうということになっているじゃないですか。放棄したということは、私が言うように、日華平和条約とサンフランシスコ平和条約では、台湾及び澎湖諸島、新南群島及び西沙群島、これのすべての権利、権原及び請求権は放棄しているのです。サンフランシスコ平和条約でも、そしてそのまま同じ文言で日華平和条約は放棄を確認しているのです。ところが、日中共同声明になりましたらポツダム宣言になってきたのですね。ポツダム宣言第八項というのは「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」となっているのですよ。ここに出てくるカイロ宣言というのは、「満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国が中国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ」とあるんですよ。あなた、専門家、だから、私が読んで聞かせなくてもわかると思いますが、台湾、澎湖島というのはカイロ宣言にもポツダム宣言にも出てくるのです。ところが、その他の諸小島というものはわれらが別に決定する、われらというのは戦勝国、連合国です。その問題が残っているわけですよ。それをサンフランシスコ平和条約と日華平和条約では、新南群島及び西沙群島とかちっと固めたんだと私は思っていたのです。今度の共同声明でもそのとおり書けば問題ないのですよ。それを何でまだ「吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」というポツダム宣言に戻ったのだろうか。これが日華平和条約なりサンフランシスコ平和条約と同じように、台湾及び澎湖諸島、新南群島及び西沙群島と書いてあれば私は疑問を持たないのです。まだ決まらぬ段階のポツダムに持っていったから私は心配しているんですよ。それを日本ものんだということになると、まだ領土は片づいておらぬぞということをのんだということになりかねないのじゃないか、紛争の種を残すのじゃないかという心配を私がするのはおかしいですか。
  466. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、台湾及び澎湖島に対するわが国のあらゆる権原はサンフランシスコ平和条約によって放棄せられたわけでございます。その場合に、それがだれのために放棄せられたかということがサンフラシスコ平和条約では決め得なかった。したがって、その台湾及び澎湖島の帰属先が法律的に未定であった、サンフランシスコの平和条約では未定であったというところからその問題が発生するわけで、いわゆる台湾の地位がどうなのだという問題かその後ずっとあったわけでございます。  そこで中国は、台湾は中国の一部であるという立場を堅持いたしておって、わが国は日中の正常化の共同声明で、その台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中国側の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する、こういうことを書いたわけでございます。したがいまして、放棄という処分的な一回の放棄によって確定されているという問題と、それからその放棄されたものがどこに帰属するのかという問題と、二つの別個の問題があるわけで、後の方の問題の処理について日中の共同声明が触れているわけでございます。もちろんわが国はサンフランシスコ平和条約によってあらゆる権利、権原、請求権を放棄いたしましたから、それらの島がどこに帰属するかということについての独自の認定を行う権利を持っておらないわけでございます。発言権がないわけでございます。したがいまして、中国側の立場を理解し、尊重し、ポツダム宣言八項に基づいて中国に返還されるべきものであるというふうに考えているというわが国の考え方、立場をこの共同声明で明らかにした、こういう関係になるわけでございます。
  467. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 もう条約論は総理も外務大臣もわかったと思いますからね、ひとつ責任を持ってお答え願いたいと思うのです。  私の疑問をもう一度申し上げます。日中共同声明で領土条項というのはポツダム宣言に留意と、こういうようになっておるのですね。ポツダム宣言というのは、さっきも読みましたが、「カイロ宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」とあるのです。連合軍が決める。日本の領土として残るのはどこどこと連合軍が決める、放棄するところと領有を続けるところとね。その決めるのはどこだろうか。私はサンフランシスコ平和条約、ここで連合軍が集まって決めた。そこで放棄されたのは、第二条(b)項の「台湾及び膨湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」それから第二条(f)項の「新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。」ここで放棄する範囲が連合軍によって決まった。放棄しなかったところは日本のものと決まった。それを日華平和条約でも、あなたたちがおっしゃる中国を代表する中華民国がサンフランシスコ条約と同じ条項をこの日華平和条約で規定しているわけですから、異議ありませんと。放棄するものは台湾及び澎湖諸島、新南群島及び西沙群島、異議ありませんと言って話がついた。日華平和条約で領土を確定しておった、私はそう思います。だから、日中の共同声明でも確定するというならば、何でこのとおりにならぬのだろうか。台湾及び澎湖諸島の放棄、新南群島及び西沙群島の放棄となぜいかなかったのか。それなら確定、領土も確定と自信持てますよ。わざわざ、連合軍が決める前におれたちが決めるのだというところに戻っちゃったということに不審を持つのは当然じゃないですか。そして、園田さんも何度も言っておるでしょう。尖閣諸島に触れるたびにはらはらした、はらはらしたと。確定しているならはらはらすることはないはずですよ。この文言からいっても外務大臣の答弁からいっても、本当は確定してないのじゃなかろうか。この不審が当然と思われませんか、総理。確定しているなら何でサンフランシスコ平和条約なり日華平和条約なりと同じものにしないのですか、この二つは両方一緒なんですから。それなら確定、安心なんですよ。それが、連合国が決める以前のポツダム宣言が出てくれば心配するでしょう。それにはらはらする、はらはらするということを思い合わせるといよいよ心配ですよ。日本人はみんな決まったと思っておりますよ。尖閣諸島は日本のものだと思っていますよ。それが、いや、本当はあのとき詰まっていなかったのだなんて、どういうようなことになりますか。いまの日ソの関係見てくださいよ。領土問題というものがどんなに恐ろしい要素になるかということを私は心配するのですよ。片づいたように言えば言うほど、何年かの後、そんなことはなかったなんということになったらえらいことになりますよ。ソ連が不法に千島列島を占拠していることによってどれだけ日本国民感情を逆なでしているか、このことを思い合わせたら私の心配はわかるはずですよ。そんなことやって本当の日中の恒久的な友好信頼というものが持続できるのだろうか、確立するのだろうか。いまごまかしておきさえすればいいという問題じゃないのじゃないだろうかという心配の上で言っているのです。しかも共同声明の文言がそうなっちゃっていますからね。どうなんでしょう。こういうことだから、結局いつの日にかに中国の方から改めて、領土問題も片づいてないことだし、平和条約を結ぼうじゃないかなんて言われるのじゃなかろうか。そのときに、そんなものは済んでいるからだめだなんて言って日本が断われますか。私は戦勝国とか戦敗国とかいうような言葉を絶対使いたくないけれども、われわれは迷惑かけた方の国ですよ。断われますか、向こうからそんな提起がなされてきたときに。断われませんよ。そのときの日本国民の感情を考えてみてください。いま玉虫色で何とか卵を抱えていくようなかっこうで押し渡っていける問題じゃないですよ。私は本当に心配でずっと入っていっていろいろ気がついてきたのですよ。  何が一番心配の種になったかというと、この間申し上げたように、期限十年なんです。未来永劫仲よくしていこうという条約に全くそぐわない十一年という期限がついているということが心配で、いろいろ勉強始めたのですよ。何か原因があるはずだ。そうしたらいろいろ気がついてきた。その気がついた第一の問題がこれなんですよ。ポツダム宣言となりますと、これはまだ未確定なんです。われらが決定する日本に属する諸小島はどこどこか。本州、北海道、九州、四国以外に日本に属するものはどこどこか、おれたちが決める。もうサンフランシスコ平和条約で連合軍が決めてくれた。それで、中国を代表するとあなたたちが言う――私は中国を台湾が代表するなんというのはいまだに納得しませんけれども、あなたたちが言う台湾政府が中国を代表して異議ありません、サンフランシスコ平和条約のとおり確認いたしますとやってくれた。だから一切何のわだかまりもございません、一切の懸案は片づきましたと総理おっしゃるが、そうだろうか。それなら、何で日華平和条約でサンフランシスコ平和条約を確認してくれているのに、共同声明では確認してくれないのです。なぜまだ未決定の条文にさかのぼってしまったのか、どうなんです。
  468. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 先ほど来たびたび御説明していることでございますけれども、まず第一点として、台湾及び澎湖島はサンフランシスコ平和条約の第二条によるところのわが国の放棄地域でございます。先生のお挙げになっておられます尖閣諸島の問題は、サンフランシスコ第三条の方のアメリカに施政の権利を渡した地域の中に含まれている地域でございます。したがいまして、わが国がそもそも放棄した地域とは関係がないわけでございます。その尖閣諸島は沖繩の一部として、アメリカの施政権が終了するとともに沖繩の返還協定によりましてわが国の施政のもとに戻っておる、こういうのが尖閣の地位でございます。それから他方、放棄しましたところの台湾及び澎湖島につきましては、これは先ほど来申し上げておりますように、サンフランシスコ平和条約の第二条で、わが国の放棄は最終的に確定いたしておるわけでございます。ただその際に、サンフランシスコの連合国がその放棄された台湾及び澎湖島の帰属先を決定することができずに、その帰属先を明示しないでただ日本から放棄だけをさせておいた、こういうことから、それがどこに行ってしまうのかという問題があって、その問題については、わが国はすべての権利、権原、請求権を放棄しましたから、独自の認定を行う立場にもなく、何ら発言権がなくなっているわけでございます。しかしながら、その点につきまして中華人民共和国は、これが中国の一部であるという立場をとっておりますので、その立場をわが国の政府理解し、尊重し、そしてポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する、こういうことを言ったわけでございます。  ポツダム宣言の問題は、確かに先生のおっしゃられるように「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」こういうことになっておりまして、「吾等ノ決定スル諸小島」というのが、まさに桑港平和条約で決定されたところであるわけでございます。日中共同宣言で言いましたところの「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」ということは、このポツダム宣言第八項にありますように「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」と書いてありまして、カイロ宣言では「台湾及澎湖島ノ如キ日本国ガ中国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ」、こうなっておりますので、わが国は台湾の法的な地位を云々する立場にはありませんけれども、このカイロ宣言の趣旨に従って台湾及び澎湖島が中国に返還せらるべきものであるというふうに考えているということを共同声明で明らかにしたわけでございます。
  469. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 また一問で終わっちゃうのですよ、こんな時間かせぎをされたら。どうしてお役人に任せるのですか。私の言っていることがわからないですか。
  470. 園田直

    ○園田国務大臣 お答えをする前に、石橋委員からこの質問をなされ、問題を提起された真意の御発言がありました。その石橋委員発言された気持ちは十分理解できます。石橋委員は、年来日中問題には努力をされ、非常に系統深く勉強され、折に触れて発言をしておられます。その御発言は私は終始まじめに聞いております。今度出された提起も、終始私はじっと勉強させていただいておるわけであります。  石橋委員のおっしゃること、私の率直な意見を言えば、共同声明であったから国会にかけなかった。そのかわり田中総理国会の冒頭にこの問題を報告をして、その後政府は誠心誠意説明し、また国会で議論があったところであります。  しかしながら、正直に言うと、私のいまの率直な個人の気持ちは、これを声明としないで、両国で話し合って何とか国会にかける道はなかったかなという気持ちが率直であります。いま言われたことはすべて私は懸念があるところであると思います。しかし、現状としてはすでに両国が、その法的な食い違いあるいはその他の問題を、日本だけでやったわけではなくて、相談をして、国際外交場の中でそれぞれ意図を発露し、現実の問題としてはこのように動いてきたわけでありまするので、こういう経緯と現実の問題から、石橋委員の御理解を得れば幸甚だと存じます。
  471. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 少しかみ合ってきましたから、私もちょっと進めたいと思うのです。懸念があるとおっしゃいましたから、いいんです。本当に心配ですよ、どう考えても。日華平和条約、サンフランシスコ平和条約で放棄した部分というものに触れていないということが、私は、逆に領土問題は解決していないんだぞという間接的な表現じゃなかろうかという懸念を持って実はお尋ねしたわけです。そこで、もうその方はいまちょっとかみ合いましたから、これもおきます。  さっきちょっと触れました、改めて何らかの形で条約を結ぼうというような提起が、この問題に限定するといろいろ問題がありましょうから、ほかの問題にも関連して、本来平和条約の中で処理すべきものと私どもが考えているものについて、法的に処理しようという提起がいつの日にかなされる可能性は全くないと考えていいでしょうか、中国の方からですよ。
  472. 園田直

    ○園田国務大臣 日中友好条約が締結されたことによって、私はこれで万全であるとは考えておりません。特に、いまあなたのもろもろの提起された問題については、今後日中が国交を深めていく上で、絶えず注意をしながら、絶えず何らかの方法を考えなければならぬと考えておりますが、いまの段階で私は、こちらから平和条約を締結するとか、中国からそのようなことを言う懸念はないと考えております。
  473. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 もし万一、中国側からそういうものが持ち出された場合に断ることはできないですね、ちょっと。その点はどうですか。
  474. 園田直

    ○園田国務大臣 御承知のごとく、この会談の詳細明確なる議事録は両国で保管しているところであります。これは両国でお互いに確認し合っているところであります。したがいまして、そういうことから、そのような事態には、これをてこにして、日中友好条約締結当初の原点に返って、われわれはこれに対して対応の策を講ぜなければならぬと考えるものであります。
  475. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃまた、もう時間がなくなってきましたから、もう一つ進めます。  私が一番最初に疑問を持った十年ですね。ここのところですが、日中平和友好条約の各条文で期限十年となじむ条項がどうしても見当たらないのですよ。何かございますか。それが一つ。  それから、日中共同声明の中の後半の部分、六の前段、六の後段、七、九、これが条約化されているのですね。そして、前半分の方が日中平和友好条約の中に織り込まれていない。これは一体どうしてだろうか。日中共同声明では弱いから条約化した、だとするならば、ほとんど全部やるべきじゃなかったのか。一番期限十年となじまない部分だけ条約化している。ここで私は疑問を持ったのですよ。どこかなじむ条項がございますか、この期限十年と。
  476. 園田直

    ○園田国務大臣 十年という年限を両国は期限とはとっておりませんので、まず十年間これを実施をして、そして一方が一年前に予告をすればという予告条項をつけて、その予告がなければそのまま続く、こういうことになっておるわけでありますが、この点については、先般鄧小平副主席が訪日したときに、国会でこういう質問をされて困っておる、自分自身もこれには返答しにくい、はっきりしてくれということをちゃんと言いました。鄧小平副主席は、これは十年というのはとりあえずやったことであって、十年たったらそのまままた十年、また十年ということで、子々孫々、未来永劫だという返答をとっております。こういうことでは弱いことかもわかりませんが、そのように、いま石橋委員の提起された諸問題については絶えず細心の注意を払いながら、これを会議録に写し、あるいはその他の問題につけて日中が真に結ばれていくように努力し、注意をしなければならぬと考えております。
  477. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は、この点で今度はどういう疑問を持ったかといいますと――期限十年をですよ。やはり覇権条項と関係があるのじゃないかなという気がしたのです。そこで覇権行為、覇権条項については、日中の間で完全に意思の統一が図られていると明言できますか。中国の意図がどうあろうと、日本政府の解釈どおりに運用するのでございます、そんなことはできないはずですがね、どうなんです。
  478. 園田直

    ○園田国務大臣 覇権問題に対する解釈、これは一に一番大事なことは、今後日本外交が自主的に、中国と共同行動であるとか共同謀議であるとか、こういうことは一切退けて、正しいことを正しくやるということを貫くことから始まると思いますが、この点、覇権については明瞭に私は後に誤解のないように発言しておりまするし、中国もこの点は了承しているところであります。
  479. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃ、もう少し端的に私は申し上げます。  日本政府は、第四条が入ったから心配要らぬ、心配要らぬ、日本政府の解釈でいくのだ、いくのだ、こういう説明を私たちにしています。日本国民にしています。しかし、中国が覇権と言う場合にはどういう意図を持っているか。全然日本政府の解釈とは別です。一番わかりやすいのは、私ここに持ってまいりました。どれが一番いいだろうかと思ったのですが、前に外務大臣をやっておられた木村俊夫さんの世界二月号に書いておられるもの、これが一番いいのじゃないかと思って持ってきたのですが、  そこに記されている反覇権条項というのは、一般的な普遍原則である覇権主義に反対ということからは、明らかに離れています。第二条の反覇権は、中国からいえば固有名詞になっている。すなわちソ連敵視の代名詞ですから、その点からすれば、私自身はこれをそのまま明文化することについては、当初から懸念を持っていました。もちろん、日中両国が、アジアその他の地域において覇権を求めないということは、立派なプリンシプルです。しかし、第三国の覇権に反対することまで言及することは、二国間条約になじまないのではないか。 こういうふうに木村さんが世界の二月号で言っておられるのですね。これは否定できないと思うのですよ。日本政府がどうあろうと中国の覇権主義というものに追随する解釈は木村さんのおっしゃるとおりだろうと思うのです。  そこで、日中平和友好条約。大丈夫、大丈夫、中国がどうあろうと日本は踏み間違わないよ、反ソなんか行かないよと言ったら、誠実に条約を守っとらぬ、何だ日本政府はということになりはしないか。今度は私はそういう心配をしてきた。それを十年目に点検する。本当に誠実に日中平和友好条約を日本が実行したか、実践したか、約束したとおりやったか、その点検をする。その点検の必要な期間というものを十年間と切ったのじゃなかろうかという心配が出てきたのですね。あり得るでしょう。日本政府の解釈でいくのでしたら、わざわざ私は条約をつくる必要があったのかなという――木村さんの解釈にどうも私も引かれるのですよ。だから、十年の解釈というものが結局そういうことになるとすれば、これはえらいこっちゃな。大丈夫だ大丈夫だとおっしゃるけれども、大丈夫じゃないんじゃないかなという心配がここでまた起きてきたのです。いかがですか。
  480. 園田直

    ○園田国務大臣 非常に明晰な石橋議員の分析というものは非常に細かくなるわけでありますが、この点について私は明確に発言もし、自信を持っておるところであります。覇権に反対という普遍的なことには同意をしたが、その覇権はどのような行為を覇権と考えるのか、あるいはこの覇権にどのような反対をするのか、これは全く独自の立場で、中国と日本はこれを相談をしたり共同行動するものではない、この点は明確に言っておりますから、この点は注意はしなければならぬが、安心の方が多いと私は思っております。
  481. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃ、これもこのまま多少かみ合ったことにして、次に移りましょう。  現実の問題に引き直してみるとよりわかりやすいと思うのです。さっき第二に私が心配ですと申し上げた。日中の平和友好条約もできたことだし、米中の国交正常化も実現したことだし、これでアジアは少し安定の方向に向いてくれるんじゃなかろうかと思ったら、あにはからんやインドシナ半島を中心に大変険悪な雲行きを示してきた。われわれの考えたものとは全く逆だ。  そこで、これは読売の論説委員の方が書いたものを私ちょっと読んでみたいと思うのです。「まず八月の日中条約に見合うものとして、十一月三日にソ連とベトナムが軍事的色彩の濃厚な友好協力条約に調印した。これに対抗するような形で、米中両国は予想外に早く国交正常化に踏み切り、十二月十六日にそれを発表した。この米中正常化への巻き返しとして、プノンペン占領とポル・ポト政権打倒の軍事作戦が早められた。」こういう分析をしておられるのですね。日中が平和友好条約を締結した。そこで、対抗するようにソ連がべトナムと友好協力条約を調印した。そこで、米中の国交正常化もテンポが早まった。それからベトナムがプノンペン占領をやっておる。これに対して今度は中国がいま国境でベトナムとの間にトラブルを起こしておる。ずっと連鎖反応的に連鎖した形で悪い方へ、悪い方へ行ってしまっておる。えらいこっちゃな、私たちが考えたものとはてんで逆の方向に行ってしまった、こういう分析もできると私は思うのですよ、現実そういうものが起きておるのですから。  そこで、さっきの質問を私聞いておりましたら、外務大臣はベトナムがカンボジアに侵略行為とはっきりとおっしゃいました。侵略行為と覇権行為とは同じなんですか、違うのですか。何か覇権行為じゃないみたいなことをおっしゃっていましたがね。従来の慣用語である侵略ならわりと勇気を持って、外務大臣、侵略行為けしからぬ、こうおっしゃったけれども、それじゃ覇権行為なんですかと言うと何かもやもやとするのですね。こんな条約をつくったばっかりに、いろんなことを考えてもやもやとしなければならぬことになっちゃったんじゃないですか。いままでの慣用語ならばぽんと使えるものを、侵略行為けしからぬと言えるものを、覇権行為ですかと言われるともう何かもやもやしちゃう、この条約があるばっかりに。従来の言葉で足りたのじゃないかと私思うのですよ。だから、やはりこれはこの条約で言う覇権行為になるのじゃなかろうか。大きな覇権とか小さな覇権とか言いますからね。中国の側から言えば、なるんじゃないでしょうか。それに対して日本政府が、あれは侵略であるけれども覇権じゃないなんと言うと、どうもこの条約が実践されておらぬなんということになりかねないんじゃないか、こういう心配も出てくる。  それからもう一つ。今度は中国が制裁制裁と言う。中国が国境を侵して――きょうの毎日新聞の社説を見ましても、出ていってやっておるそうです、ここに書いてありますけれどもね。これは何になるのですか。制裁だから侵略行為でもないし、覇権行為でもないということになるのですか。とにかくこれはややこしくなりますね。どうなんですか。
  482. 園田直

    ○園田国務大臣 私にいただきました御忠告は率直にちょうだいをして、侵略という言葉は私が使い過ぎであったと謝ります。私はいままで、力をもってベトナムが紛争を解決しようとすること、及び国連理事会における大多数の国は、ベトナムの非常な影響によってこの事件が起こっておる、こういう言葉を使い続けてきたわけでありますが、つい侵略という言葉を使ったのは適切ではなかった、これをお許し願いたいと思います。  逆に私に対する推測でありますが、日中友好条約に縛られてどうこうということは思い過ごしでありまして、ベトナムに対する日本の態度こそ、中国と友好条約を結んだが、自分の自主性をはっきり示したものだ。私は中国にはっきり申しました。あなた方はベトナムを敵と呼んでいるが、われわれは敵だとは考えない、ただアジアに紛争を起こしたくない、こういう一点でやっているのだ、こういうふうに申しました。
  483. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 時間がなくなって幾らも質問できないわけですけれども、やむを得更せんからポイントだけぽんぽんとお尋ねしたいと思うのです。  一つは、台湾問題が片づいてよかったな、これで少なくとも国際的には緊張ではなくて緩和の方向に行くだろう、こう思ったわけです。ところがインドシナの方は逆に激化している。緊張どころかもう火を噴いている。確かに台湾なり朝鮮の方はやや安定していますね。  そこで台湾条項なんですよ。最初は土井さんが質問したときには、前向きにいい答弁をしたのですね。もうこれで日本と中国の間でもすべて台湾問題片づいたし、米中の間でも片づいたし、台湾条項はもうなきに等しゅうございます、破棄と同じですとおっしゃったのに、後でまたまだなくなっていない、そんなばかなことありますか。どうなんですか、それは。
  484. 園田直

    ○園田国務大臣 衆議院における委員会それから参議院における委員会の議事録を見ていただければよくわかることでありますが、私が発言したのは、米中正常化、それから中国の台湾に対する態度の変更、こういうことによって台湾地域周辺における武力紛争というのはほとんどなくなった――ほとんどという言葉は特に力説をいたしております。したがって、それから来て安保条約の極東条項というものがどうなるかという御質問でありますけれども、これは第一に、米中が、台湾をめぐる問題が一番大きな問題でありましたから、この台湾の取り扱いについてどのような協議をしているかということを両国に聞かなければなりません。なおまた次には、一年間は米台条約が続くわけでありますから、一年間問題ないわけでありますが、その後台湾条項というのは、安保条約を中心にして日本と米国が相談したものでありまするから、米国と相談をし、その意向も聞かなければなりません、こういう答弁をいたしております。しかし、その相談するというのは、すぐアメリカへ行って相談するとか、二、三カ月に行って相談するとかということではなくて、やはり現在の状況から権衡というものを壊さないように、米中が台湾をどう扱うのか、こういうことも慎重に見守りながら、時間をゆっくりかけて相談しなければならぬ、こういう趣旨でございます。
  485. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私はそうはとらなかったのです。結局、米華、アメリカと台湾との相互防衛条約が国交断絶後も一年続くということになったものだから変わってきたのじゃないかと見ているのですよ。そうじゃないのですか。私は第一、国交がない、もう中国は一つ、中華人民共和国だけという立場にアメリカは立ちながら、台湾との相互防衛条約が一年間残るという、これもちょっと理解できないのですけれどもね。そんなことがあるのだろうか。しかし、それがあるというものだから、あなたはことしいっぱいは台湾条項も消滅しないと、こうきたのじゃないですか。この関係はないのですか。
  486. 園田直

    ○園田国務大臣 そうではございません。当初の答弁でも、米台条約破棄は一年後だということをはっきり私の口から答弁してございます。
  487. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 委員長、時間が来ましたので、残念ながらこれで終わります。
  488. 竹下登

    竹下委員長 これにて石橋君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑は終了いたしました。  次回は、明十七日午前十時より開会することとし、一般質疑を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後八時二分散会