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大平内閣総理大臣 財政再建の問題につきまして、新自由クラブとして真っ正面から取り組んでいただくということでございます。御決定を大変多といたしております。
私
ども、いまの御質問にお答えする前に、前提として二つのことを
西岡さんにも、これは重々お
考えおき願っておることと思いますけれ
ども、念のためにこの機会に申し上げておきたいのでございますが、
一つは
日本の
経済を公
経済、私
経済、私
経済をさらに分けて
企業の
経済、個人の
経済と、仮にこう分けてみますと、今日、
企業経済は大変苦心いたしましてやや収益状況も好転を見ているといえ
ども、相当の
企業がまだ赤字でございまして、この状態からどう脱出しようかということで苦心いたしておるようでございます。ところが公
経済、中央地方の
財政になりますと大変大きな赤字状況でございまして、全く危機的と言わなければならぬほどの状態になっておると思います。ところが個人
経済におきましては、一応のバランスがとれておるし、相当高い貯蓄が行われておるし、一般の消費も堅調であるわけでございますから、比較的ノーマルな状態と言えるのじゃないかと思うのでございまして、一国の
経済が健全であるかどうかという問題は、結局この三者がそれぞれバランスのとれた状態でなければならぬわけでございますが、いかにもいま不健全であるということはお認めいただけると思うのでございます。さればこそわれわれは、
財政再建の問題を焦眉の
国民的課題として御提起申し上げておるところでございます。
第二に、しからばそれは早く着手すべきであったではないかということでございますが、先般来本席を通じて
お話しを申し上げておるとおり、石油ショック等がありまして、世界
経済全体が大きな動揺の中に入ったわけでございまして、
日本もこの状態にどう対応するか、そしてどう脱出するかという課題に直面いたしたわけでございます。そこで、とりあえず、個人
経済の方に大きな影響を与えることなく、
財政が当面波を全部かぶって、そして時間をかけてノーマルな状態に持っていくという選択をしたわけでございます。そういう選択がよかったか悪かったかはいろいろ御判断があろうかと思いますけれ
ども、
政府は、ともかくそういう判断のもとでここ三、四年の
財政経済政策を切り盛りしてきたわけでございます。そういう段階でようやく
企業の
経済に明るさが見えてきました今日でございまするので、どうしてもこの
財政再建ということが焦眉の問題になってきたということを前提としてお認めおき願いたいと思うのでございます。
これはしかし容易ならぬ大事業でございまするので、仰せのようによほどの用意がなければならぬわけでございまして、歳出歳入全般にわたりまして相当詳細に用意しなければならない再建の課題であろうと思うのでございまして、いきなり一般消費税というような問題を持ち出してまいりましてこれを認めてくれというようなことを私
どもは申し上げておるわけではないのでありまして、歳入歳出を洗い直しながら、この問題について、一般消費税等を含む新たな歳入
政策について御理解をいただこうという構えでございます。
しからば、この五十四年度の
予算で歳入歳出を見直したが、それで前提条件が十分満たされておると見るかという
お尋ねでございますが、私はそんなにうぬぼれておりません。精いっぱいやりましたけれ
ども、きわめて不十分でございます。さればこそ、この
委員会におきましても各党から手厳しい御批判をいただいておりまするわけでございます。
しかし、一口に歳入歳出を見直すといいましても、事柄は容易じゃございません。既往の慣行、
制度を一遍根本的に見直すなんということは、これは容易ならぬ革命的なことでございますから、
政府・与党といたしましてもよほどの用意がなければいかぬわけでございまして、この五十四年度の
予算に当たりましてなし遂げたことというのは、そんなに多くのことをなし遂げたとは自負いたしていないのでございまして、これで決して満足はしていないのでございます。引き続きもっともっと
検討を進めていかなければならぬ、見直しを進めていかなければならぬ、彫り深くやってまいらなければいかぬと
考えておるわけでございまして、そういう努力と並行いたしまして、一般消費税等をめぐる新たな歳入源の確保という点について御理解と御協力を得る素地をつくっていこう、そのように
考えております。