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1979-02-05 第87回国会 衆議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月五日(月曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 竹下  登君   理事 伊東 正義君 理事 小此木彦三郎君    理事 塩川正十郎君 理事 浜田 幸一君    理事 毛利 松平君 理事 大出  俊君    理事 藤田 高敏君 理事 近江巳記夫君    理事 河村  勝君      稻村佐近四郎君    奥野 誠亮君       海部 俊樹君    倉成  正君       櫻内 義雄君    笹山茂太郎君       砂田 重民君    田中 龍夫君       田中 正巳君    田村  元君       谷川 寛三君    玉沢徳一郎君       中川 一郎君    根本龍太郎君       羽田野忠文君    藤田 義光君       藤波 孝生君    松澤 雄藏君       森   清君    森  美秀君       安宅 常彦君    井上 普方君       石橋 政嗣君    稲葉 誠一君       岡田 利春君    川崎 寛治君       川俣健二郎君    兒玉 末男君       平林  剛君    安井 吉典君       坂井 弘一君    玉城 栄一君       広沢 直樹君    二見 伸明君       正木 良明君    大内 啓伍君       寺前  巖君    東中 光雄君       松本 善明君    安田 純治君       大原 一三君    菊池福治郎君       西岡 武夫君    山口 敏夫君  出席国務大臣         内閣総理大臣  大平 正芳君         法 務 大 臣 古井 喜實君         外 務 大 臣 園田  直君         大 蔵 大 臣 金子 一平君         文 部 大 臣 内藤誉三郎君         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         農林水産大臣  渡辺美智雄君         通商産業大臣  江崎 真澄君         運 輸 大 臣 森山 欽司君         郵 政 大 臣 白浜 仁吉君         労 働 大 臣 栗原 祐幸君         建 設 大 臣 渡海元三郎君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       澁谷 直藏君         国 務 大 臣         (内閣官房長官田中 六助君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      三原 朝雄君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      金井 元彦君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君         国 務 大 臣         (経済企画庁長 小坂徳三郎君         官)         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      金子 岩三君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 上村千一郎君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 中野 四郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         総理府統計局長 島村 史郎君         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公正取引委員会         事務局経済部長 伊従  寛君         警察庁刑事局保         安部長     塩飽 得郎君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁参事官  佐々 淳行君         防衛庁防衛局長 原   徹君         防衛庁装備局長 倉部 行雄君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         科学技術庁計画         局長      大澤 弘之君         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁大気保全         局長      山本 宜正君         国土庁長官官房         長       河野 正三君         国土庁計画・調         整局長     福島 量一君         国土庁土地局長 山岡 一男君         国土庁地方振興         局長      佐藤 順一君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君         法務省入国管理         局長      小杉 照夫君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省中近東ア         フリカ局長   千葉 一夫君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局外         務参事官    山田 中正君         大蔵大臣官房長 松下 康雄君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局長 長岡  實君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局長      宮崎 知雄君         文部大臣官房長 宮地 貫一君         文部省初等中等         教育局長    諸澤 正道君         文部省大学局長 佐野文一郎君         文部省社会教育         局長      望月哲太郎君         文部省体育局長 柳川 覺治君         文部省管理局長 三角 哲生君         文化庁次長   吉久 勝美君         厚生大臣官房長 大和田 潔君         厚生省公衆衛生         局長      田中 明夫君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁年金         保険部長    持永 和見君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省経済         局長      今村 宣夫君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省食品         流通局長    犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省貿易         局長      水野上晃章君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         通商産業省生活         産業局長    栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         中小企業庁長官 左近友三郎君         運輸省鉄道監督         局長      山上 孝史君         郵政省郵務局長 江上 貞利君         労働大臣官房長 関  英夫君         労働省職業安定         局長      細野  正君         労働省職業訓練         局長      石井 甲二君         建設大臣官房長 粟屋 敏信君         建設省計画局長 丸山 良仁君         建設省都市局長 小林 幸雄君         建設省道路局長 山根  孟君         建設省住宅局長 救仁郷 斉君         自治大臣官房長 石見 隆三君         自治省行政局公         務員部長    砂子田 隆君         自治省財政局長 森岡  敞君  委員外出席者         会計検査院長  知野 虎雄君         会計検査院事務         総局次長    東島 駿治君         参  考  人         (日本銀行総裁森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      三樹 秀夫君     ───────────── 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     森   清君   正示啓次郎君     谷川 寛三君   野呂 恭一君     森  美秀君   坊  秀男君     玉沢徳一郎君   矢野 絢也君     玉城 栄一君   塚本 三郎君     小平  忠君   不破 哲三君     東中 光雄君   正森 成二君     松本 善明君   山口 敏夫君     菊池福治郎君 同日  辞任         補欠選任   谷川 寛三君     正示啓次郎君   玉沢徳一郎君     坊  秀男君   森   清君     奥野 誠亮君   森  美秀君     野呂 恭一君   東中 光雄君     安田 純治君   松本 善明君     寺前  巖君   菊池福治郎君     西岡 武夫君 同日  辞任         補欠選任   西岡 武夫君     山口 敏夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和五十四年度一般会計予算  昭和五十四年度特別会計予算  昭和五十四年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 竹下登

    竹下委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度一般会計予算昭和五十四年度特別会計予算及び昭和五十四年度政府関係機関予算、以上三件を一括して議題とし、総括質疑を行います。平林剛君。
  3. 平林剛

    平林委員 きょう、私は財政経済、金融問題について質疑をしたいと思っております。  ただ、この質疑に入る前に二つの問題について総理大臣確認をしておきたいことがございますから、それをまずお尋ねをします。  私は、施政方針演説総理議会制民主主義に基づく政治の運営を語ったことに対しまして、非常に注目をしたわけであります。総理は、既成概念にとらわれた不毛の対立や、個人や集団の利害に固執した姿勢民主社会においては許されない。私はこれについては同感なんであります。また総理は、民主的ルールに従って謙虚に真実を語り、率直に当面する困難を訴える、厳しい現実に対する有効な対応策について、柔軟な姿勢でより広い国民的合意政治基本方針にされる、こう言明をされました。私は、きょうの質疑の中でその総理のお考えを実践に移してもらいたい、これを希望しておきたいと思うのです。  ただ、もう一つ審議の中でお互いに不毛な対立を避けるために何をしたらいいか、私は特に経済政策を論ずるわけでありますから、政府国会、あるいは政府と野党という間に共通した資料が少ないということを非常に残念に思っているのです。それを克服しなければ、何か見当違いの質問をしてみたり、すれ違いになってみたり、見解の相違になってしまうわけでありまして、幾ら議論を進めてもそこに合意というものが生まれてこないわけであります。  そこで、経済の見通しとか政策を判断するに当たって、その基礎とした資料だとかあるいは情報、私は政府国会側が共通した資料で論争してこそ議会政治の前進というのがあると思うのです。たとえ資料が同じであっても対応策に違いがあるのは、これは仕方がないです。  そこで、私は、官僚的な秘密主義というものを排して政府は積極的に資料提供に心がけるべきでないのか、まずその点について総理の御確認をいただきたいと思うのであります。
  4. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 論議を深めてコンセンサスに至るにつきましては、資料を踏まえてやらなければならぬ、その資料がちぐはぐであっては論議は実りを期待することができない、仰せのとおりでございます。私どもとしては、国会側行政府側にそういったそごがないように努めなければならぬと思います。そういうことを来さないために、政府として資料提供につきましてできるだけ国会側に協力してまいる、国会側政府に対して要求されてまいるということにつきまして、私どもは誠心誠意協力していくつもりでございます。
  5. 平林剛

    平林委員 しばしばいまの御確認に反したようなことがございますから、私は、そのときはいまのお言葉のとおりやるようにということをあなた自身かあるいは関係者から指示してもらう、そういうふうにしたいと思いますから、いまのお話確認をしておきたいと思います。  それからもう一つの問題は、航空機購入をめぐる疑惑問題についてでございますが、これはいずれ証人喚問を含む集中審議が行われると承知しておりますから、本格的な論議はその機会に譲る、こういうことにいたしまして、私は総理基本的姿勢だけをただしておきたいと思うのです。  実は、ロッキード事件が発生したときに私は日本社会党国会対策委員長をやっておりました。すべての資料の公開、証人喚問政府の特使の派遣、日米にまたがる疑獄の真相解明を迫ったことがございます。そのとき、当時の総理大臣三木さんでございまして、三木さんは、わが国民主主義の根幹にかかわる問題であるから政治生命をかけてその真相究明に当たると、こう約束をされたわけでございます。  これに対しまして、私は大平総理大臣態度を伺っておりますと、この問題の究明政治生命をかけるというような、その気風といいますか、そういうものを感ぜられないんですね。私は、一昨日の答弁の中でも、質疑の中で、もし不正があれば責任をとる、こういうふうに言明をされたと聞いておるのでありますけれども、しかし、今日までの総理並びに政府態度を見ると、疑惑解明予算審議は切り離してもらいたいということを主張してきておることや、それから施政方針演説でこう述べているのです。「外国航空機購入をめぐる疑惑国民の間に大きな論議を呼び起こしている」国民の間に大きな論議を起こしている、まるで政府とは関係なくて、国民の方で疑惑を持っているんだというニュアンスにとれるのですね。この総理大臣施政方針演説の原稿はだれが書いたか知りませんけれども、何か自分とは関係ないんだというようなニュアンスを感ぜられるのです。予算が成立すればもうわしは知らぬ、太平無事、こういうふうな態度を決め込むというのは私としては理解できない。この問題に関する心構えをひとつ総理から聞かしてもらいたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 政治生命をかけるということについてお尋ねでございますが、私の当面しておる問題には軽重、緩急いろいろ問題があります。私はすべてのことに政治生命をかけておるわけでございます。これは軽いからとか急がないからということで軽々にやるつもりはないのでございまして、すべての問題に真剣に対処しなければならぬことは当然の私の責任だと思っております。グラマン問題の究明ということもその一つでございまして、私が政治責任を持って対処しなければならぬことはもうあなたの御指摘をまつまでもなく当然のことだと私は考えております。
  7. 平林剛

    平林委員 ただ、今度の問題で、ロッキードのときもそうでしたけれども、私は非常に残念でならぬことがございます。どこかの記事で読んだんですけれども日本疑惑は海を越えてやってくる。それにつきまして私は非常に残念なことだと思うのですね。アメリカの方からやってきて、そして日本疑惑の問題が議論される。日本自体にその自浄作用といいますか、こうした問題の出発点がなくて、海を越えてやってくる。これは私は、政府もそうでしょうが、われわれ自体も非常に残念であり反省をしなければならぬ点だと思うのです。  ロッキード社の不正献金問題について、私はあのとき、表面化した疑惑徹底究明というのは非常に大事なことであるが、同時にその腐敗の根源にメスを入れて、制度的にも必要な対策検討して実践すること、これを政府に迫ったことがございます。当時社会党としては、たとえて言うと不正企業取引の停止の問題、あるいは国や地方団体の援助を受けている企業政治献金は禁止するということ、入札制度改善を図るということ、交際費課税を強化して交際費損金算入は原則として認めないようにすること、あるいは多国籍企業に対する合理的課税のための租税条約を締結すべきであるということ、日本輸出入銀行やあるいは開発銀行海外経済協力基金などの一定額以上の融資を受けている企業はこれを公開すること、これに伴いまして、財政投融資計画予算形式にして全体の国会議決対象にすること、いろいろなことを申し入れたことがございます。そのうち相当する問題の処理の進展を図られたものもあります。なお不十分なものもあります。  私は、そのときにもう一つ申し入れたことがございます。それは、国が直接購入する輸入の物資、資材、特に防衛関係のものについては、国の管理規制を強化するための機関を設けたらどうか、商社の仲介を通さない直接輸入をしたらどうか、代行業務のようなことを、特に航空機のような防衛庁関係のような問題については避けたらどうか、こういうことの申し入れを行ったわけであります。文書で出しました。一九七六年六月十七日です。時の総理大臣三木さんにあてて出した。これに対するところの回答がありまして、特に最後に私が指摘した問題については、外国メーカーとの直接取引によって輸入する場合には、相手国商慣習にふなれがあるから、いろいろ問題があることは承知しておるが、商社を通ずることについては、その取り扱いについて慎重にする、それを検討する、こういう文書回答をいただいたのであります。ところが、これが実行されていないのじゃないのか。大平内閣というのは同じ自民党の内閣で、そうしたことを引き継いでいく責任がございます。この点につきましてどう措置されたか、これを私は聞きたいのであります。もし十分な措置がなければ、今後どういうふうにしたらいいかというお考えがあればそれを承りたい、こう思います。
  8. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 五十一年の十一月十二日に閣議了解がございます。ロッキード事件再発防止策というものにつきまして閣議了解がなされまして、いろいろなことが取り上げられておりますが、そのうち、今日まで実施済みのものが三つございます。  それは、収賄罪法定刑の引き上げでございます。これは現在衆議院で継続、審議中と聞いております。二番目は日米犯罪人引渡し条約適用罪種の拡大でございます。これは八十四国会で成立いたしておると思います。三番目は多国籍企業行動適正化に関する指導の強化でございます。これは五十一年六月にOECDで採択されました多国籍企業行動指針関係団体に配布し、遵守方を指導することでございます。それは実行いたしました。  それから、検討中のものでございます。それは国連の多国籍企業委員会等における腐敗行為防止検討に積極的に参加するという問題、これはただいま検討をいたしておるところでございます。  今後検討しなければならぬものといたしまして、政治資金規制あり方とか選挙制度あり方とかいう問題がございまして、各党間の論議を踏まえて所要の改善を心がけなければならぬと考えております。  検討の結果、問題が多く、現状におきましては実行が大変困難であると認められるものが三つございます。  一つ周旋第三者収賄罪新設の問題、それから贈収賄罪国外犯規定新設、それから賄賂罪推定規定新設、この三つの問題につきましては、いろいろ検討しておりますけれども、現在実行が困難ではないかと見ておるわけでございます。検討中のもの、今後検討すべきものについては鋭意努力してまいるつもりでございます。  それから第二番目の問題といたしまして、国が物を購入する場合に商社を使うか使わないか、これは一つ制度の問題だと思うのでございます。この点につきましては、当面の問題は輸入飛行機の問題でございます。防衛庁の方でもその点につきましてはいろいろ工夫をいたしておると思いますので、その点は防衛庁の方からお聞き取りをいただきます。
  9. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  ただいま御審議をいただいておりますE2Cの問題につきましては、繰り返し申し上げておりますとおり、これはアメリカ政府日本防衛庁との間で直接契約いたしますものでございまして、本年の予算に計上いたしております十一億五千万円も、また総額の三百四十三億もすべて政府間の契約によるものでございます。したがいまして、この軍用航空機等の調達につきましては、今後できるだけこれを政府間の直接取引でやることが望ましいと思う次第でございますが、ただ、商社を活用することがより経済的、効率的であるものもございますので、一概に言えない面もございますが、できる限りこのFMS方式でやりたいと思っております。しかしまた、従来ともに防衛上の見地から、私どもは機種の選定に当たりましては、性能、経費等を十分専門的、技術的に検討いたしておりまして、商社の活動によって結論が左右されるようなことは一切なかったと思いますし、今後もその方針を貫く覚悟でございますが、それにつきましても誓約書をとるとかあるいは価格調査を強化するとかいたしまして、万遺漏なきを期しておる次第でございます。
  10. 平林剛

    平林委員 価格の問題というお話がありましたが、たとえ十億円の経費が節減されたとしても、それ以上に、わが国議会政治国民の間に政治の信頼を失うということはお金にかえがたい問題でありまして、私はそういう意味では、この制度改善ということは今後は厳重にやっていくという態度が必要であると考えておるわけであります。  そこでもう一つの問題は、日本にはアメリカにおけるSEC、アメリカ証券取引委員会のような機構がないのですね。これが一番いい理想的な形かというと、それは議論があると思います。しかし、アメリカでこの証券取引委員会のようなものはワシントンに本部があって、支部が十六もあり、その構成は千六百人というとてつもない大きい機構でありまして、もし翻訳して日本に置きかえれば、機構上から大蔵省証券局あたりになるのでしょう。とてもとてもそんな機能はありませんですね。証券取引委員会というのがあるけれども、それもとてもそういう役割りじゃございませんし、公正取引委員会とか会計検査院、こういう機関がもっと権限を強化して、不公正や疑惑が未然に防止される体制を整えるということは私は大事じゃないかと思うのです。  そこで、会計検査院長、おいでになっておると思いますが、こうした体制についていまどういうことを検討しておるか、必要があれば院法の改正を考えてもいいのじゃないか、こう思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  11. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  ただいま、院長、交通事故に遭いましてちょっとおくれておりますので、私から答弁させていただきます。  ただいま先生御指摘のアメリカのSECにつきましては、その組織、権限、その活動状況について必ずしも私どもつまびらかにしておりませんが、先生御存じのとおり、私ども会計検査院は、憲法の規定によりまして国の収入支出を中心に検査することになっておりまして、また、会計検査院法の規定によりまして、国から補助金等の財政援助を与えられたものに対する検査をすることになっております。したがいまして、SECのように純然たる民間の企業の会計経理そのものを検査するということは、なかなかわれわれとしてむずかしいわけでございまして、今後検査院の検査の権限等につきましてもただいま勉強中でございまして、できるだけ先生のおっしゃるように、また国民の要望に沿えるような幅広い検査もしていきたい、このように考えております。
  12. 平林剛

    平林委員 国会ではすでに二回、昨年と一昨年二回にわたりまして検査院の権限強化に関する決議を行っておるわけであります。国会の意思というものはもう決まっておるのです。政府関係金融機関とかあるいは各種公団に対する調査権を強化するというようなことについても、私は院法改正の手続を進めるべきだと思いますが、それについてはどうなっておりますか。
  13. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、衆参両院の決算委員会で御決議をいただきまして、私どももそれに沿って勉強しておりまして、現在内閣法制局との間で調整中でございまして、いま各省との連絡もとりながら検討中という状態でございます。
  14. 平林剛

    平林委員 総理、この点についてはあなたとしてはどういうお考えをとっておられますか。
  15. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 国の会計経理また国の会計経理に関係ある機関の会計処理の公正を期するために、現行の制度が不十分であるという点が明らかになりますれば、その改正はどうしても検討する必要があると思います。
  16. 平林剛

    平林委員 ところで、今回のグラマン、ダグラス等の疑惑をめぐりまして、会計検査院としては一体何ができるのか。たとえば防衛庁等の行う航空機等の購入契約については、当然会計検査院の調査対象になり得るわけです。今回の事件に関連をして何をしておるか、果たし得る役割りはあるか、これについて御見解を承りたい。
  17. 東島駿治

    ○東島会計検査院説明員 お答えいたします。  私どもも、ことし初めから新聞紙等にいろいろ報道されましたので、重大な関心を持ちまして、まず最初に私どものところに出てきております計算証明書、書類、そういうものを調べまして、先月の十六日から防衛庁その他に検査に行っておるところでございます。現在われわれとしましては、すでに検査が終わったものについてはもう一度、われわれの知らない事実が出てまいりましたので、そういうものを勘案しまして見直しをしている、また防衛庁のファントムとかF15につきましては、本年度の検査として十分検査をしていきたいと思っております。  ただ、新聞紙等で発表されておりますように、代理店契約に伴うコミッションとかそういうものの存在がこのたびまた新しく出てきたわけでございますが、そういうものにつきましては、私どもとしましても防衛庁、運輸省を通じまして、住友商事、日商岩井等に対しまして、その代理店契約書の内容その他を開示してもらうように、いまお願いしておるところでございます。
  18. 平林剛

    平林委員 見直しをしますという回答ですが、ファントム、F15、その部品の売り払い、購入についての検査、それから対潜哨戒機の購入、運輸省関係のガルフストリーム、これも含まれておるかどうか。
  19. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 事故のためにおそくなりましたことをおわび申し上げます。  ただいま途中で参りましたものですから、見直しの範囲ということでお答えしてよろしゅうございますか。(平林委員「ええ」と呼ぶ)  いま会計検査院がダグラス、グラマン関係で見直しをしようとしておりますものは、防衛庁関係につきましてはダグラスのRF4E、それからF4EJの航空機並びに部品がございます。それからグラマン関係ではS2F1、UF2の部品の購入でございます。  それから運輸省関係では、グラマン社関係のガルフストリーム、それからグラマンのUF2の部品の売却がございますけれども、これは五十三年度に売却をいたしておりますので、見直しというよりは五十三年度決算そのものでございます。  そういうことでよろしゅうございましょうか。
  20. 平林剛

    平林委員 会計検査院長、それでその検査結果が出るのはいつごろか。私はその検査の見直しを含めて、結果について国会に報告してもらいたいと思うのであります。大平さんは、こういうことは政治の信頼にかかわるものであるから、政府は事態を解明するために最善を尽くす、こう言っておるわけですから、知野さん、遠慮しないで現在検査中の件について、期限を切って恐縮でございますけれども、速やかに提出してもらいたい、少なくとも二月末までにはもらいたい、こう思っておりますが、いかがでしょうか。
  21. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 この見直しの結果でございますが、御承知のように私どもがぜひ見たいと思っております代理店契約にいたしましても、これは防衛庁及び運輸省にとりましても第三者契約でございまして、これの入手には相手方の協力といいますか、なかなかむずかしい問題がございます。  それから、私どもとしましては確認しなければならない点が多々ございまして、短期間に見直しが終わるというふうには実は考えておらないのでございますが、もし中間報告を求められましたならば、その段階におきまして可能な報告は申し上げたいと存じております。
  22. 平林剛

    平林委員 総理大臣は、資料提供についてもし怠るような官庁があったら、私から総理大臣に言って、どんどん督励すると約束してありますから、どんどんひとつやって中間報告をしてもらいたい。  次に、本題の物価問題について質疑に入ります。  総理施政方針演説におきまして、物価の安定は不断に堅持すべき目標であると述べております。そして最近の物価動向は円高の影響もあって安定裏に推移をしてきた、自分の政策がよろしきを得て安定したと言わないところは非常に大平さんの性格が出て正直でいいんじゃないかと思うのですけれども、今後は諸条件の変化や諸物価の動向を注意しながら安定基調の維持に万全を期する、こうございますね。ただ私は、総理がさらりと物価の影響等もあってこうなったということを読み上げておることに対しまして注意を喚起しておきたいのでありますがへこういう動向を維持し得た最大の理由は、円高の影響もございますが、企業の軽量経営、それからそれによって勤労者が仕事場からほうり出されたという厳しい現実ですね、それから政府の低金利政策企業の金利負担が軽くなって、それと引きかえに庶民のささやかな預貯金が物価上昇分を下回る預金金利で甘んじておる、こういう犠牲があることを忘れちゃいけないのじゃないかと思うのであります。  そこで伺いたいことは、昨年来の円高メリットです。円高の影響もあって景気が明るさを取り戻し、企業経営が落ちつきを得てきたと言うならば、その犠牲者といいますか、陰の協力者、そういうところに報いるものがなければならぬ。その一つとして、昨年来の円高メリットというのがあるわけですけれども、これを有効に物価政策に働かせてきたのだろうか。働かせてきた、こういうふうに思いますかどうか、総理大臣に承りたい。
  23. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。  円高差益の還元ということは、非常に多岐にわたった現在の流通工程その他を通ってまいりますし、また生産工程も通ってまいりますので、これを全額どの程度という把握もなかなか困難でございますが、できる限りの円高メリットの還元ということを政策の基本に置いて努力したことは事実でございます。
  24. 平林剛

    平林委員 五十二年度、五十三年度の円高差益の総額はどのくらいあるとつかんでいますか。
  25. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 この計算もなかなか厄介だと思いますが、きわめて単純に申し上げますと、当該年度のドル建て輸入額にその当該年度の円レートの上昇と申しますか、その額を掛けて試算をいたしましたが、五十二年度においては約二兆四千億円程度、五十三年度におきましては四兆六千億円程度と計算をしております。
  26. 平林剛

    平林委員 昨年のドルと円の交換比率をながめてみますと、五十三年の一月二百三十八円、四月の三日になりまして二百十八円、七月二十四日になって二百円すれすれになりまして、十月三十一日に百七十九円、現在は大体二百円というところでございましょうか。このいわゆる円高によるメリットは、数字で示せばいまお話にありました五十二年度二兆四千億円、五十三年度四兆六千億円、こういうことでありますが、なかなかこういう数字は、政府は積極的に国民に発表しないですね。  私は、昨年の八月、三菱銀行が産業関連表を使いまして当時の円高と、それから四十八年石油ショックのときの石油価格高騰の理論上物価の波及効果をそれぞれ算出したのを見たことがあるのでありますが、それによりますと、昭和五十一年十二月から五十三年六月までの円相場上昇、まだそれは二百円を割っているときじゃなかったのでありますけれども、物価引き下げの効果は卸売で五・四あったのじゃないか、消費者物価で二%はあったのじゃないか。ところが、実際の物価は、円高の一年六カ月間でながめてみますと、卸売物価は二二%しか下がっていない。消費者物価は逆に七・六%上昇した。その後円相場は二百円を割りまして百七十九円になったときもございますが、当時の計算から考えてみれば、もっと効果があったはずだと思うのですね。その円高メリットは一体どこへ行ってしまったのだろうか、こういうことになるわけですね。私は、円高差益を物価対策として効果的に生かすということにつきまして、今日までの政府態度国民が納得するような熱意があったとは言えないと思います。昨年も、電気、ガスの差益還元の論争のときもそうでしたけれども政府姿勢がへっぴり腰で、ときには企業の代弁者のような態度があった。電気、ガスの企業はともかくとして、民間の私企業のごときは自由経済企業の秘密、そういうことを盾にいたしまして、進んでこれを公表しない。そして企業の利益に取り込んでしまう。昨年の一月の福田総理大臣のときの施政方針演説の中でも、円高メリットを物価安定に生かすと演説をされましたけれども、実際は失望を与えたにすぎなかったわけでございます。  そこで、私はもう一度経済企画庁長官に伺いますが、実は、昭和四十八年の石油価格が高騰したとき、あれは原油価格が四倍ということになっていますが、実際の各産業関連表を使いますと、それは〇・一七%とか〇・〇五%とかと非常に低い影響しかなかったのにかかわらず、卸売物価は三〇・六%、消費者物価は二三・九%暴騰したわけですね。円高差益のことは、膨大な差益がありながらそれを隠し、はっきりした態度をとらず、そして物価を下げるということに対しては渋ちんである。渋ちんというのは余り下げないということですね。一たび原油価格の上昇があるというと便乗値上げ、狂乱物価。ことしもOPECの問題がございまして、石油価格の値上がりが伝えられておるわけですが、そうすると早速この値上げの問題が出てくるのですね。私は、こういう企業あり方というのはまだちっとも直っていないのじゃないのか、こう思うのであります。  そういう意味で、勝手過ぎる業界の動きに対して、これはどうするのだということを伺いたいと思うのです。
  27. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 先般のオイルショックの直後の暴騰した狂乱物価の際にも非常に痛感したことでありますが、やはり社会的な心理的な影響、特にあの当時は非常に金がだぶついていたというような状況の中で、これが非常にアクセルを踏まれてしまう、これはやや手おくれになったと私は判断いたしますが、そうしたことによる相乗効果であのような狂乱になったと思います。  現状におきましては、地合いといたしましては円高のメリットもあるし、また日本輸入はほとんどが原燃料でございますから、そうした意味において多少なりというよりも、先般の電力料金の引き下げやあるいは据え置きという措置、これらで還元をともかくスタートしておったということは、私は、それなりの政策的努力であったと思います。  それからもう一つは、現状におきましては、卸売物価が予定よりも相当程度下がっておる。昨年の五十二年度の計画の中期のときの予測が大体一・五%ぐらいマイナスというのが、現在二・六%ぐらいマイナスになっておりますから、こうしたことと一緒に、まだ日本経済全体がそうしたインフレ的な気構えになっておらないということも踏まえまして、先ほどあなたのおっしゃいましたように、OPECの値上げに便乗するような値上げについては、いまわれわれが厳に石油会社の方に自重を求めたいということ等をいたしておるとともに、たとえば通貨の流通量でございますが、これを十分監視しながら、その間に適宜適切な措置をとっていきたい。こうしたことは何も政府だけの問題ではございません。各党の皆さん、御心配いただいておりますことを感謝いたしておりますし、また同時に、経済界の方でもそうしたことを自発的に現在注意すべき事態として認識しているようでございますので、国民全体で物価安定に努力をするということは、過去の石油危機のときの体験を踏まえて状態は大変好転していると私は思います。
  28. 平林剛

    平林委員 この問題についても、経済企画庁とかあるいは通産省とか、それと業界との資料の詰めじゃなくて、国民に公開し、議会にも資料を明らかにして、そうして結論を決めていく、自重させるとかなんとか言ったって、密室の中でやっていたのではわかりませんから、私はそれで冒頭そうしたことについても議会と関係者国民に公開をして、こうした問題の結論をつけるべきだ、悪い言葉で言うとやみ取引はいけません、こういうことでありまして、これもまた総理のところへしりを持っていく場合がありますから、十分御指導をいただきたいと思います。  次に、地価の問題についてお尋ねします。  最近の地価騰貴は大変なものであります。最近、五十四年の一月三十一日に国土庁の土地鑑定委員会が地価の動向調査結果を発表しましたが、これによりますと、例年土地取引の少ない時期であるのに、土地価格の値上がりが大きい。五十三年一年間で五・一%も高くなった。これは前年の二倍以上に上る高騰であります。特に三大都市圏の住宅地の値上がりは、東京圏で八・七%ですが、東京自体をとらえると九・八、神奈川県が八・八、埼玉が八%、千葉七・四、名古屋圏でも八・二、こういうふうに特に都市の集中するところの宅地の値上がりが大きいのでありますが、この原因ですね、これをどういうふうに見ていますか。
  29. 中野四郎

    ○中野国務大臣 仰せのとおり、最近特定の地域の地価の上昇が非常にうわさされております。大変心配をしております。  元来、地価というのは生き物と同じで、供給と需要のバランスが崩れますと上がり下がりがそこにあらわれてくるものであります。最近の地価は、大都市の都心に近い住宅地で高くなっているのが特徴であります。これは宅地供給不足が主因でありまして、決して投機的なものがいまあらわれておるとは考えられないのでございます。したがって、現在におきましては、地価の安定を図るために国土利用計画法の明確、適確な運用をするとか、ないしは土地税制の抑制効果等によるものに力点を入れるとか、あるいは線引きを見直しまして、そうして計画的な宅地開発の推進を図る、ないしは土地税制の見直しをしましたり、そうして土地の供給促進策を講じなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  30. 平林剛

    平林委員 私は、いまのお話の基本が悪いと思います。土地の値上がりというのは土地そのものを商品化していくという傾向、ここに基本があるのでありまして、これを抑えない限り、幾つ例を挙げてもなかなかうまくいかぬと実は私は考えておるわけであります。そしていまお挙げになった理由、これを一々反駁したり議論をしておりますと時間をとられますから、私の指摘したいことは、この土地価格の値上がり傾向の中に、市中銀行の預金のだぶつき、あるいはこの国会に提出されておる長期譲渡所得税の緩和で仮需要が発生しているのではないかという疑問を提起したいと思っておるわけであります。税制の緩和で土地の提供が若干ふえるにいたしましても、そこに仮需要が出てきて、全般的に土地価格の高騰があっては何の役にも立たぬわけであります。これについてどういうふうに考えられますか、これは大蔵大臣に伺います。
  31. 金子一平

    金子(一)国務大臣 銀行の融資の状況を調べてみたのでございますが、全国の銀行の不動産業界に対する融資の現状は、昭和四十七、八年ころから比べるとずっと減っておりまして、貸し出し総額の中の五・九%程度、金額にいたしまして六兆七千九百億というような状況でございまして、特別いま仮需要があって銀行から貸し出しを受けている状況とは判断いたしておりません。また、そういう点には政府といたしましても慎重な態度をとっておりまして、平林さんも御承知のとおり、四十七、八年から毎年毎年のようにいろいろな銀行に対する通達を出しておるのでございますが、特に四十九年、五十年の土地関連融資の抑制に関する通達は今日でも生きておるのでございまして、土地取得に関連する融資についても、地価に与える影響にかんがみ、必要性に十分配慮した上で抑制的に扱ってほしいということで指導しておるような状況でございます。仮需要が起こるという懸念を私ども持っておりませんが、特にむしろ一時の土地ブームの後の処理に各事業会社が困っておるというのが現状ではないか、こんなふうに考えておる次第でございます。  それから、土地税制の緩和がいまの土地価格の高騰に拍車をかけているじゃないかという御指摘でございますが、これはむしろ今回提案いたしまして御審議をいただいております土地税制の緩和は、御承知のとおり大変厳しい条件がついております。国、地方団体に対する住宅団地の造成のための譲渡でございますとか、あるいはまた一定の面積以上の土地造成のための融資というふうに厳しい条件がついておりまするから、これによって急速に土地に対するブームが沸くということは私ども考えられない。むしろ必要なものをつくるために土地の高騰を抑える方面において役立つ、こういう判断をいたしておる次第でございます。
  32. 平林剛

    平林委員 大蔵大臣、いまあなたが挙げた全国銀行の不動産業に対する貸し出しの数字、六兆幾ら、こうお話しになったのですが、違っているのじゃないですか。五十三年九月の不動産業に対する貸し出しは八兆六千七百四十四億円ですよ。
  33. 徳田博美

    ○徳田政府委員 お答えいたします。  これは日銀の経済統計月報による数字でございますが、五十三月十一月末における不動産業向け貸し出しが六兆七千九百九十億円でございます。
  34. 平林剛

    平林委員 とにかく数字の食い違い、総理、かくのごときですよ。私どもの調べでは、全国銀行の不動産業に対する貸し出しは八兆六千七百四十四億円、持っておる融資残高の〇・〇六七、このほかに住宅ローンが最近ふえてきまして十兆八千八百八億円もあるのですよ。だから、大蔵省の資料、どこの資料だ、ここの資料だと言って、非常にすれ違うのですよ、議論にならぬのですよ。いつもそうなんだ。  そこで、私はその議論をしても仕方がないが、いまことしの土地価格が高騰してきた原因には、昨年法律で土地重課税の緩和と土地の保有税の緩和をやったでしょう。あのときに言われたことは、土地の不況説だとかあるいは土地の倒産だとか、開発業者が宅地開発意欲を減退させるからぜひこの緩和をやってくれという猛運動があって、結局あの法律を行ったわけですね。そのたたりがいま出ているのですよ。たたりだよ、これは。それから、土地価格の高騰とこれとは関係ないと言っていま税制改正について言われましたけれども、大蔵省自体が、こういうようなものをたとえ条件つきでも規制をしても仮需要が起きると反対したのは大蔵省じゃないですか。ここへ来ると反対のことを言われる。そんなのでは合意は得られないし、前進はないのですよ。とにかく、しばらく高値ながら土地価格が安定している傾向を崩したのは何かということを深刻に反省すべきだ。  それから、土地を買い占め、甘い汁を吸おうとした思惑が外れて、売れない土地を借金に残した連中が救いを求めるためにいろいろな税制改正を要求して、それが土地価格高騰という結果になっておる。これを許したのはだれか、深刻にこういう反省をしなければならぬと私は思うのであります。しかし、いまそれを批判しても始まらぬ。  今日、私は金融機関の土地融資の問題をちょっと取り上げたいと思うのです。昭和四十六年八月のニクソン・ショックのときに、土地価格は四十七年に三〇・九%上がった、四十八年は三二・四%上がった。忘れもしない、あの一ドル三百六十円が崩れて、そして私は当時本会議でもって、亡くなった愛知さんに食いついた。為替市場は開きっ放しにして四十日間もとうとうとドルが入ってくれば、一体これがどういうことになるのか。あのときは過剰流動性なんという言葉はなかったから、私は過剰流動性という言葉を使わなくて、これがどういう結果をもたらすかということを食いついたことがある。そのころは、その過剰流動性が、だぶついた資金が土地の投機に走って、そして土地の高騰が始まったのですよ。土地は買っておけば必ずもうかるからね、そういう打ち出の小づちだったから、金融機関も土地の担保があれば安心してどんどんお金を出した時代だったのです。そのときには猛烈に銀行からのお金の貸し出しがふえた。  例を申し上げますと、昭和四十三年のときには不動産業に対する貸し出しは一兆一千六百三十九億円ぐらいだったのが、いいですか、現在では八兆六千七百四十四億円で、八倍になっているわけです。住宅ローンのやつも、個人向けを別にして業者関係を入れれば相当の金額の貸し出しが銀行を通じて行われている。しかし、その後不況になりまして、土地が動かない資産になってしまった、銀行の環境も変わった、こういう状態であります。  そこで、私は聞きたいのですが、こうした土地の貸し出し金額に対して、うまい汁を吸おうと思ってやったやつが当てが外れた、そういう意味も含めて土地融資の焦げつきというのはどのくらいあるか、これをひとつ明らかにしてもらいたい。それから論争を進めたい。
  35. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生御指摘のとおり昭和四十七年、八年ごろの土地の高騰の背景には金融機関の融資があったわけでございまして、不動産業に対する貸し出しの増加額が四十七年度では六二%にも上っていたわけでございます。これが当局の規制によりまして四十八年度には一二%に落ちまして、五十三年の十一月末では一一・七%となっているわけでございます。  ただ、ただいま申し上げましたのは不動産業に対する貸し出しでございますから、土地と建物と両方を含んでいるわけでございます。企業が土地を取得いたします場合には、全体の資金繰りの中で取得いたしますので、金融機関の貸し出しとどれだけ結びついているかということを判定するのは非常にむずかしいわけでございますが、この点を昭和五十二年の三月末の時点で一応調査したことがございまして、これは不動産、建設、私鉄、百貨店・スーパー及び商社の五業種に対する土地関係融資のうち一プロジェクト当たりの融資残高が一億円以上のもの、これを洗い出したわけでございますが、この金額が当時におきまして三兆九千七百五十億でございまして、総貸し出しに対する比率は四%であったわけでございます。  これは特別の抜き出し調査でございますが、いずれにいたしましても、このような土地関係の融資が、先生御指摘のように土地の高騰の原因となりやすいわけでございますので、先ほど大臣から申し上げましたように、四十七年十一月に投機的な土地融資を助長するような行為を厳に抑制するように通達を出しまして、その後四十九年十二月、五十年三月と通達が再三出ているわけでございます。また、検査に当たりましても、土地関係の融資につきまして、特にこれを重点的に査定を行っているわけでございます。  ただ、この土地関係の融資が全体としてどの程度の焦げつきであるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、全体の融資の中でどれが土地に向かったかということを確定することはきわめて困難でございます。ただ、五十三年の前半におきまして検査を行った銀行におきます実情を聴取したところによりますと、土地関係の融資につきましては、一般の貸し出しに対しまして延滞あるいは滞っているあるいは欠損となる見込みのある比率が十倍近いものもある、このような内容になっております。
  36. 平林剛

    平林委員 御発言になったような資料は後でいいから出してもらいたいんですよ。ここでぺらぺらしゃべっても、私の調べた資料と食い違っていて論争にならぬ。共通した資料がなければこうした問題の解決はできないんですよ。  それで、特にいま銀行局からお話がありましたが、まだそれは業界筋も銀行側も実態調査しておりますけれども、それは正確でびた一文違わないなんという数字は出るはずもありません。しかし、いろいろの資料から推測をいたしますと、全国銀行が不動産業に貸してある金額は、先ほど申し上げた八兆六千七百四十四億円。これは全国銀行だけですから、金融機関全般になれば恐らくこの二倍になるんですよ。おおよそ二倍になると私は見ている。十五、六兆円になる。これは私が言うだけじゃなくて、銀行等の関連融資で、不動産業だけじゃなくて商社とか建設業界、こういうようなところでもいろいろな形式で借りておりますから、これは十兆円から十五兆円くらいあると見ていいと思います。それで、そのうち八〇%は当分開発見込みのない、商品化の見込みのない不良在庫だと言われている調査があるのです。住友不動産の安藤太郎という社長さんは、流動性を失った土地は価格にして三十兆円、うち十兆円は銀行の不良貸し付けだ、問題はこの不良債権が銀行経営にとってもどれほど重荷になり、日本の金融制度経済全般に影響を与えているかということを考えなければいけないと言っている。  総理大臣、後で国債の発行の問題を言いますけれども、こうしたことについてどうすべきかということを、何か閣議ではあなたもこういうことについて指示をなさったと言いますけれども、この銀行の問題で結構ですから、どうしたらいいとお考えでしょうか。大蔵省出身の総理大臣でありますから、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  37. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 都市周辺の土地の騰貴状況は、御指摘されたような傾向をたどっております。われわれといたしましては、物価政策を推進する上におきまして、この土地騰貴に対しまして無関心でおられないのでございます。したがって、これに対しましてどのように対応してまいるか。先ほど国土庁長官も仰せになりましたように、既存の法律、制度の厳正な運用に待たなければならぬことは当然でございますが、平林さんの御指摘のように、日々の銀行その他の融資状況、それから地価の現実の動きに対しましては注視を怠らないで、緊張した姿勢で行政に臨もうじゃないかという意味のことを閣議で話し合ったわけでございまして、そういった点につきましてはこれからも十分気をつけてまいるつもりでございます。  いま仰せになりましたような、いろいろな資料がかみ合わぬということでございますが、資料の出所等につきましては御提示をいただきまして、政府の方とよくかみ合わせていただいて、共通した資料の上で御論議を深めていただくようにお願いしたいと思います。
  38. 平林剛

    平林委員 私は神奈川県ですから山が多いのですよ。そうして山を縫って国道があるのですが、そこへ行くとよく交通標識が立ててありまして、石が落ちてくるから注意という標識があるのですよ。あれを見ると私はいつも思うのだ。注意しろと言うけれども、私らどうやって注意したらいいんだろう、あんな標識を立てる前に石が崩れてこないようにしておいてくれればいいのだ、その看板外したらいいじゃないかと言うのだけれども、注意、注意と言うのだよ。この世の中は注意だけじゃだめなんですよ。もとをどうするかということを考えてもらわなければいけないのですよ。  そこで、いま総理からも、こうした土地の高騰について注意を与えたと言われますから、十分やってもらいたいのですが、私、注文があるのです。  まず一つは、金融機関における土地融資の焦げつきの実態を調査してもらいたい。それで、土地関連の不良債権を十兆円と仮にすれば、通常に貸しておれば金利六%ですから六千億円の利益が出てくるのですよ。こういう状態が五年か六年続けばすぐ三兆円や四兆円銀行経営の経理は悪くなるに決まっているのですよ。一応金利を払っておれば、その金利分は積み重なって、今度それを宅地改造するとか分譲すれば、それは上乗せになるのだから、庶民は高い土地を買わなければいけないことになるのですよ。こういうジレンマを、こういうパターンを繰り返しておるところに一つの問題点がある。決して小さい金額じゃないのです。  世の中の人は、宅地並み課税をやれば直ちに土地が提供できるなんて実態を知らない架空論議をしている人がいますけれども、私、それは間違いだと思うのですよ。土地というものは、金融機関が焦げついている融資、それを金利の貸し増しなどをしたり、新たに融資をふやしたりなんかしなければ、たまらないから吐き出してくるんだ。そうすれば、土地の値下がりも政策として誘導できるのです。ところが、その肝心のところを押さえていないからだめなんです。新聞の論調を見ても、別の方面ばかり議論しているのです。私はこういう点から考えて、土地融資の焦げつきの実態をまず調査させてください。そして、土地の供給というのは、どうしても持ち切れなかった業者が吐き出して、そこから土地の価格を下の方に誘導できる政策実行可能なんです。したがって、私は土地の価格を凍結するというような決断をしてほしいと思うけれども、それは大平さんには無理かもわからない。しかし、いま提案をしたような行政を徹底させてもらいたいということを要求したいのです。総理大臣、いかがですか。
  39. 竹下登

    竹下委員長 まず、それでは徳田銀行局長
  40. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先ほどの不動産業に対する貸し出しの数字について申し上げます。(平林委員「それは後で詰めるから、時間がもったいないからいい」と呼ぶ)土地関係の融資につきましては、現在、御承知のとおり銀行の検査におきましてその都度検査をして延滞状況を調べているわけでございますが、全体は、時点的にずれますので、一定の時点における延滞状況を把握するのは非常に困難だ、このように考えております。
  41. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いま銀行局長が申しておりますように、なかなか実態を総合的に把握するのはむずかしいと思いまするけれども、大事な点でございますので、極力努力いたします。
  42. 平林剛

    平林委員 あっちは困難、こっちは努力。総裁は。
  43. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 ただいまの御指摘は私はまことに適切な御指摘だと思います。つまり、いまわれわれがよく議論しているのは、土地の融資が何%くらい伸びたかということが問題なんですが、その以前の状態、つまりトータルが御指摘のように九兆円になり、あるいはさらにいろいろなものを入れれば十数兆になるという御指摘、そのこと自体に対してどう対処するかというただいまのあなたからの御提案は、われわれはまともに受けとめてみたいというふうに考えております。
  44. 平林剛

    平林委員 ああ言っています。総理大臣はコンダクターだけじゃなくて、決断。
  45. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 事態を把握することは、事務当局も申しておるように大変むずかしい課題でございますが、いまわれわれの手に利用可能なデータをいろいろ集めまして、御趣旨のような実態の把握に努めまして、御報告をいたします。
  46. 平林剛

    平林委員 わかりました。  次に、最近の市況反騰の問題について取り上げたいと思います。特に、建築資材等の値上がりの問題を中心にお尋ねいたします。  これは政府の物価政策だけじゃありません。景気回復の柱にしている公共事業、それから国民の立場から見れば、住宅政策がどうなるだろうかということに関連をして、重大な関心のある問題でございますから、お尋ねをします。時間がないから問題をしぼってやります。  まず、建築資材の小棒ですね。これは昭和五十一年の一月ごろトン当たり五万一千円でありましたのが、現在トン当たり六万二千円。土木や造船向けの厚板はトン当たり九万円が九万六千円。銅、鉛、アルミ、非鉄金属は鉄鋼以上の上昇ぶりで、銅はトン当たり三十万円弱が三十五万円、鉛は十四万円が十六万八千円、アルミ地金は二十六万円から三十二万円。市況の反騰が始まっておりますけれども、この原因は何ですか。
  47. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 それぞれのものにつきましては、それぞれの理由はございますけれども、一応いま御指摘になりましたものを大別いたしますと、海外要因のものと国内的な要因と二つございますが、やはり海外要因からくるものに対しては、これはなかなか防ぎようがない面もございます。しかし、国内的な要因については、公共事業を非常にドライブをかけてやっておりますので、そうしたあおりもあるのと一緒に多少指摘されることは、過積み規制その他による思惑的上昇もあるというふうに聞いておりますが、現状におきましては、現在われわれが計画しております公共事業の推進にそれが非常に強烈なダメージを与えるほどのものになっておらないのでございますので、われわれとしましては、この段階でひとつ大いにこれ以上の上昇は食いとめたいということで、相談をいたしておるところでございます。
  48. 平林剛

    平林委員 私も一応調べてみたのですが、公共投資のてこ入れで資材の需要がふえたということが一つ。二つ目には、過積みトラックの問題がある。三つ目には、アメリカの鉄くずの値上がりで小棒が値上がりしている関係もある。しかし、これは穏やかな上がり方ですから、すぐにこんなに上がるという理由は余りないのじゃないかという分析をしています。それから中国やイラクなどの海外要因、注文が出てきているので、それに強気になっているというのもあると思います。  しかし、もう一つ忘れてならない問題点は、小棒の例で言いますと、最大の要因として、五十一年十一月から始めた数量カルテル、これが五十三年十二月まで続きましたね。それから五十二年八月から始まった価格カルテル、これが五十三年三月まで継続されましたね。それから独禁法のカルテルは五十二年九月まででありまして、その後は中小企業団体法によるカルテルが五十二年十月から五十三年十二月まで一年間続いておる。こういう影響がありはしないか。これについてはどう思います。
  49. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 カルテルによる価格安定ということは、これは当然そうした目的も一部にあってのカルテルでございますので、否定するわけにはまいりません。しかし、一応現状の中で、特に建設資材関係でカルテルが現在なお結成されているものはございませんので、またその他のものでも、独禁法に基づくものは八種類でございましたか、これも三月三十日でほとんど期限が参りますので、それ以後の問題につきましては、所管省ともよく相談いたしまして、いま御指摘のような不況カルテルが物価上昇を実態以上に引き上げるというような事態があるものにつきましては、厳重にそれを監視してまいりたいと思っております。
  50. 平林剛

    平林委員 合板についてちょっと聞きます。  これも昭和五十三年九月、去年の九月ごろまでは、大体一枚当たり八百九十円の価格だった。去年の暮れの十二月に千五十円になった。ことし一月二十一日現在で千三百四十円。わずか三カ月間で何と五〇・五%値上がりしている。石油ショックの昭和四十八年の便乗値上げ、狂乱物価のときは、一枚当たり千三百十八円だったわけでありますから、この値上がりは私はまさに暴騰だと言っていいと思うのですね。これは過積み規制じゃ説明できない。公共事業の伸展で需給がふえたのかなといっても、ちょっと納得しかねるのです。なぜかと言えば、住宅の発注なんというのはいまのところ百三十万か百四十万、むしろ落ちているときでありますからね。ですから理由がないのですよ。それで私は、じゃ木材の価格が上がっているかということを調べてみると、木材の価格は、その推移を見ても緩やかであります。これはどう見ても仮需要があると見ているのです。建築、建設の状況を見ても生産戸数は減っておるし、需給はそう逼迫していると考えられないから、これは仮需要である。合板を扱う商社は、シェアは総合商社が大体五六%ですね。それから中間の問屋、大手の建設会社、私はどこかに在庫の積み増しをやっておるところがあるとにらんでおるのですね。私、物価の特別委員長を昔やったことがあるから、何かこれわかるような気がするのです。商社だけ悪者にするつもりはありませんけれども、どこかにこういうことがある。これについてどうですか。どういうお考えを持っていますか。
  51. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 合板につきましては、確かに最近急激な値上がりをいたしております。昭和五十年を一〇〇とした場合に、それがいま二二〇、大体三年間に三割上がったわけです。ただ、一時急激に下がり過ぎたために、それから比べるといま御指摘のように一番の底値から五割上がった。三年間で見ると三割上がった。しかし、上がり方が激しいではないか、私もそう思います。したがいまして、これについてはつい最近、数日前、一月二十六日に約二十四万枚の合板を日本木材備蓄機構から三大都市の卸業者に対して緊急放出をいたしました。したがって、一月下旬、最近のごくこの数日間の状況は、価格は落ちついておるわけであります。  以上でございます。
  52. 平林剛

    平林委員 二十四万枚の放出をしたとしても、それは全般の需要から見ればスズメの涙ほどでございまして、それでちょっと落ちついたからといって安心できない状況がある。それを私は指摘しておきたいのですよ。  同時に、私がこれまでの質疑を通じて指摘をしたかったのは、不況カルテルの問題であります。総理大臣の演説の中に、政治国民生活への介入や国民政治への過度の期待は改めなければならないというくだりがございますね。非常に意味があると思います。不況で中小企業が集中的に倒産をしたり、地場産業が崩壊をしたり、社会不安につながる危機の回避には、政府政策的な配慮をし、金融機関も格別の配慮をするということは私は否定をしないのであります。これは認めている。しかし、危機回避とか不況克服という大合唱をバックにして、政策が自由な市場メカニズムに個別に、過剰に介入するということには限界があるのじゃないのか、慎むべきだと思うのですよ。政府が介入すべき不況対策にも限界があると私は思うのです。最近の不況カルテルの日常化やあるいは行政指導によるところの勧告操短、設備の廃棄、その中にはどうかなと思うようなものが含まれているのです。不況カルテルというのは一体なぜかといえば、その業界の危急存亡のときに三カ月とか一定の期間を限って、緊急避難的に許容し得る行為として国民が認めているのじゃないのか。それを鉄の小棒は五十一年十一月から二年三カ月もやっておるのです。合板はもう二年もカルテルをやっておるのですよ。長過ぎる。業界は期間が来ると、何度でも申請をして、いや、まだ不況で、まだだめでございますと言って、独占禁止法本来の自由競争を阻害して、消費者の利益を阻害しているのです。甘ったれるのもいいかげんにしろと私は言いたい。市況も回復して、そして不必要になったカルテルなんというのは速やかにやめるべきだ。  公正取引委員会委員長に来ていただいておりますが、こういう長い期間の不況カルテルについてどう思いますか。
  53. 橋口收

    ○橋口政府委員 現在実施中のカルテルにつきましては、経済企画庁長官からお答えがございましたが、正確に申し上げますと、現在は六品目でございまして、先ほど八品目とおっしゃいましたけれども、一月末で二つの品目が打ち切られておりますので、現在進行中のものが六品目でございます。  いま御指摘がございましたように、カルテルの長期化に対してどういうふうに対応するかという問題がございます。かつては不況カルテルの認可の期間を大体半年といたしておりましたが、昭和四十八年、四十九年の狂乱物価を背景とした行政体験から反省をいたしまして、現在は原則三カ月でいたしております。ただ三カ月たちまして、やはり依然として不況要件が解消されないという場合には、これを更新するという措置もとっておるわけでございまして、物によりましてはかなりの長期間継続するというものもございます。しかしながら、昭和四十九年から始まりました今次不況におきまして、ピーク時には九品目のカルテルがございましたが、だんだん整理をいたしてまいりまして、現在六品目でございまして、このうちわれわれが注目をいたしておりますのは、市況商品としての性格を持つ合成繊維と、それからアルミニウム地金でございまして、この二つにつきましては、需給の状況、それから価格の状況等につきましては従来から十分な監視をいたしてまいってきておりますが、今後ともさらに十分監視をいたしてまいりたいと思っております。  そのほかの外装用ライナー、中しん原紙、クラフト紙、染料等につきましては、これも十分注意をいたしておりますが、特に注目をいたしておりますのは合成繊維とアルミニウムでございます。
  54. 平林剛

    平林委員 公取が独禁法で認可しているカルテルは六業種であるけれども、しかし中小企業団体法で、公取委員会が協議をした後認めているいわゆる安定事業は十九業種もあるでしょう。初めは独禁法によるところの数量カルテル、あるいは設備の廃棄、アウトサイダーがあるからもう効果がないというので、今度は独禁法から中小企業団体法に移しかえて、通産大臣の行政指導で実質的なカルテルを認める、こういうカルテル体質というのは、独禁法のたてまえから言っても変則だし、それから資材の値上がりをかえって誘発するという傾向を生んでおる。物価問題に万全を期するという以上は、こういうふうに偏ってきたこのカルテルの問題、独禁法を拡大していくような傾向、こういうことに対してやはり厳然とした態度をもって臨まなければいかぬじゃないかと私は思うのですが、総理大臣、いかがですか。
  55. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのとおり私も心得ております。
  56. 平林剛

    平林委員 心得ておるならやっていただきたいですね。  公正取引委員会、いまのように、この問題については厳正にやっていくということを御言明いただきたいと私は思うのです。
  57. 橋口收

    ○橋口政府委員 独占禁止法の規定によりまして共同行為の例外を認めております法制を持ちます国は、日本とドイツでございまして、イギリス、フランスはカルテルに対してもっと寛容な態度をとっておるところでございます。絶対禁止がアメリカ、カナダ等でございます。したがいまして、私どもといたしましては、これはあくまでも競争政策の例外の措置でございますから、審査はいやが上にも厳重にいたしておるつもりでございますし、また御注意もございましたから、今後も一層厳重に審査をいたしたいと考えております。
  58. 平林剛

    平林委員 公取委員長にもう一つ。  今度はガラスの高騰の問題です。  ガラスの大手三社のうちセントラル硝子、日本板硝子は昨年十二月一三%の値上げを決めましたね。決めたけれども、五〇%のシェアを持つトップメーカーが旭硝子ですから、同調してくれなければ競争にならない。そこで、旭硝子がいきなりこれに同調してしまえば、同調値上げということで独禁法違反になるのですね。それでもことしの一月三十一日、旭硝子がたまりかねて一〇%の値上げを打ち出した。去年一三%打ち出したけれども、動きかねていたのが、大体この旭硝子がそろったものだから一〇%の値上げに踏み切る。これは私は、結局ことしの二月以降、旭硝子が打ち出した一〇%値上げの水準で取引されるということが確実だと見られておるわけでありますから、これは実質的な同調値上げじゃないのかと思うのであります。ガラス業界はカルテル違反の常習者ですから、公取委員長、いまのような態度でこれは臨みますね。
  59. 橋口收

    ○橋口政府委員 板ガラスの業界は、先生御指摘がございましたように最も集中度の高い業種でございまして、いわゆる独占的状態のガイドラインにも指定をされておる業種でございますし、また当然に同調的引き上げの報告徴収の対象になっている業界でもございます。  いまは当面の措置についてのお話でございますが、弱小メーカーが値上げの通告をいたしましても、首位業種の強大な会社の後援がないと、実質的には値上げの措置が実施されないというのがこういう形態における普通の姿であろうかと思います。そういう点で申しますと、法律の規定によりまして、三カ月以内に同一の価格あるいは類似の価格の引き上げを行った場合には、同調的引き上げの対象にし得るということになっておるわけでございますが、仮に価格引き上げの宣言をいたしましても、実際に価格値上げが末端まで浸透する時期と、それから追随いたしました大手の引き上げの時期とが三カ月以内に入っております場合には、当然にこれは同調的引き上げの報告の対象になるわけでございまして、私どもは宣言の時期と実施の時期というものは分けて考えておりません。実際に値上げが実施された時期が三月以内に入っておれば報告の対象になる、こういう考え方をとっております。ただ、その場合にも値上げの率あるいは額がおおよそ一〇%程度の場合が近似の価格ということでございますので、いまのお示しの事案がこれに入りますかどうか。さらにもう少し言わせていただきますと、こういう業種でございますからそういうことは万ないと思いますけれども、共同的な価格引き上げ行為を行うという可能性もあるわけでございまして、単に同調的な引き上げというだけではなくて、共同的な意思決定があるかもしれないということでもございますので、十分監視をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  60. 平林剛

    平林委員 これは、事はことしの経済の中で警戒すべきことは、財政の健全化も大事だが、物価の動向というのが非常に大事だということから、私は二、三の例を挙げて注意を喚起したわけです。なかんずく景気の方も無視できないので、公共事業の中で住宅政策を進める場合にも、幾らお金を投じてもその基礎資材が値上がりをしたら何の役にも立たない、しり抜けになる、そういうことを考えまして、これは深刻にひとつ考えて、そしていままでのしきたりとか慣行とかということだけでなくて、私は目を新たにして取り組んでもらいたいということを要望しておきたいと思うのです。  時間も迫ってきましたから、一般消費税と税制改革の方を申し上げます。  私どもは一般消費税の導入に反対です。もちろん財政が借金依存であっていいわけはございません。国債の増発がやがて財政の破綻になり、最終的には国民全般にそのツケが回ってきますよと政府を批判をして、その懸念を述べてきたのはむしろ私たちだったのですね。今日、財政の不健全とか財政の危機とかと言われているものは、私は政府の無計画な財政膨張、放漫な財政運営、七%成長にこだわって公共投資一本やりにきた態度、ここに出発していると思うのです。ですから、この財政の体質を根本的に改善をしなければ、財政の健全化といったってそれを達成することはできない。たとえ一般消費税が導入をされて国債減らしが行われても、この日本財政の体質の改革がなければ、それは一時的効果で終わる。一時的な効果で終わる。かえって財政が放漫化し、拡大化する、そして再び国債依存型に逆戻りする。私はそれが目に見えるような気がするのですね。そこで消費税の導入は認められない、こう言っておるわけです。単に私たちは反対のための反対を言っているのじゃない。われわれはその理由を挙げて政府に迫ってきたつもりです。そして一般消費税を導入しなくても、財政の改革と不公平の是正をやれば財政の再建は可能である、こういう具体的な提案もしてきたつもりでございます。  時間の制約がありますから質疑に入ります。  まず、いま重点になっておる消費税導入など、税負担の問題について総理は大いに議論してもらいたいと言うけれども、一般消費税の全貌はまだわからぬ。税調で検討しているそのものを議論をしてくれ、こう言うのですか。
  61. 金子一平

    金子(一)国務大臣 税調の答申に出ましたものの中身をただいま大蔵省事務当局が鋭意詰めております。その中身について、国会を初め各方面の御理解を得て五十五年度のなるべく早い時期に実施したい、こういうことでございまして、いま御議論をいただきたいと申しておりますのは、こういったものを導入しなければならない現状についてもひとつ御理解を賜りたい。平林先生がおっしゃるようないろいろな新税の導入等が議論されておりますけれども、それではもう財政がカバーできない現状であることだけはひとつ御理解賜りたい、こういうことでございます。
  62. 平林剛

    平林委員 私はこの税調の「今後の税制のあり方についての答申」は、財源不足の事態等を改善するために、仮に消費税を取り入れた場合にはこういう考え方があるということを示したにすぎないと思うのです。これは税調の考え方なんです。五十二年二月の一般消費税特別部会の報告、これは報告ですよ、答申じゃない。これはいろいろ免税点や税率や納付の仕方だとか細かいことは書いてありますが、よく読んでみると、こういうことの意見が大勢を占めたとか、こういう意見が提起をされたとか、意見が述べられたとか、考え方が述べられたとか、見解が示されたというようなことで、何も結論はついてないのですよ。私はこんな程度で大いに議論せいなんということはできないのじゃないかと思うのですよね。盛んに議論させておいて、そうしてその自分のペースにはまり込まさすというような作戦だとしか思えない。私は、税制調査会の報告なんということを盾にして、あたかもそれが既定事実のように国民に押しつけるという態度はよくない。政府責任がどういうところにあるかということをはっきりして、それで議論してくれというなら話はわかるが、報告だとか、その報告の中身も、そういうのが提起されたとか、考えられるとかということで何が議論できるのですか。
  63. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いま五十三年の二月とかいろいろお話ございましたけれども、税制調査会の答申は昨年の十二月に出ておりまして、それを受けて政府におきましても、五十五年度のなるべく早い時期に導入をしたいということで意思決定をいたしております。そこはひとつ御理解を賜りたいと思います。ただ、その中身の細かい点につきましては、これは関係方面との意見調整を十分しなければなりませんから、その中身を鋭意詰めて、実態はこうなんですよ、こういう点はこういうふうに片づけるのですよということで御理解を得ていきたい、いまその準備作業の段階であるということでございます。
  64. 平林剛

    平林委員 中身も決まらないで五十五年導入というのはずいぶん乱暴な話じゃないですか。税率が幾らになるのか、どういうものが免税になるのか、何にもわからないで導入だけ決めるなんというのは、これは逆さまですよ。私は非常に無責任態度だと思います。  大平さん、あなたは初めは消費税には消極的な態度だったのですね。やる場合でも、不公平税制とか経費の問題についてはなすべきことがたくさんある、それをやってからだ、総裁選挙の前だったから、福田さんと一味違ったところを出そう、一味も二味も違ったところを出そうといってお話になったかもしれません。しかし、われわれはそういう態度が伝えられていることを承知しておるわけであります。大平さんが総理大臣になってから、あなたの支持率が、福田さんのときは二〇%台だったのが一遍に四〇%にはね上がったのは何だと思いますか。あなたは何もしなかったときに支持率が高くなったのですよ。こういう総理大臣は珍しい。何かやって支持が上がったとか、何かへまをやって支持率が下がったという総理大臣はいたけれども、何にもしない総理大臣が支持率が一遍に上がったなんて、よっぽどありがたいと思わなければいけないですよ。それは、あなたが福田さんとは違った経済政策、少なくともいま国民に重大な関心を持たれておる一般消費税の問題について消極的であって、その前にやることがあるということをおっしゃったから、そういうことに対する期待感も、私はあなたを支持する国民がふえたと思うのですよ。それがもしなくなったら、これはもうおめでたい総理大臣というわけにいかないですよ。だんだんだんだん下がってくる。消費税を入れてごらんなさい。あなたは不支持率の方が高くなるおそれがある、そのくらい重要な問題であります。  そこで、私は、総理は少なくともこうした消費税に取り組む前に不公平税制の是正というものをやってもらいたい。もう時間がなくなってしまいましたから、法人税について私は申し上げますけれども、法人税については、なぜ若干でもいいから負担増加を求めるような措置をお考えにならぬのですか。富裕税についてもなぜおやりにならぬのですか。
  65. 金子一平

    金子(一)国務大臣 法人税、富裕税についてお答えいたしますが、法人税は、いま御承知のように、各事業会社がやっと息をつこうということで、減量経営に大変苦労しておる時期でございます。やはりそういう時期に多少でも増税するのはいかがか、いまその時期にあらずという感じがいたすのでございます。  それから富裕税は、これはもう専門の平林さん、百も御承知のことでございまするけれども、なかなか徴税技術的に、あるいはその評価の面において、課税対象の捕捉において厄介な問題がたくさんございまするから、そういった点について検討を重ねていただいておる段階だ、こういうふうに御理解いただきたいと思うのでございます。  それからもう一つ、不公平課税の是正をしっかりやれというお話、これは租税特別措置につきましては、三、四年前から毎年毎年相当程度の特別措置の圧縮削減をやってまいりましたが、明年度を控えての今度の税制改正におきましても、価格変動準備金、貸し倒れ準備金を初め、相当思い切った措置を講じております。交際費課税についても同様でございます。医師課税も、とにかく二十五年間手がつかなかったものについて相当の切り込みをしておる点は御評価いただきたいと思うのでございます。
  66. 平林剛

    平林委員 余り評価できないのですよ。それは後でまた時間があったら言いますけれども……。  いまのお話でも、法人がやっと息をついていると言うけれども国民の方のことはちっとも言わないんだね。国民の方はちっとも息がついてないんですよ。これからおっかないものが来るとおびえているのですよ。あなたの視点はちょっと違っておる。大蔵大臣をやらない前のときのあなたの説の方がよっぽどよかった。  そこで、法人税について申し上げますが、これは昭和五十二年の税務統計から見た法人企業の実態で、国税庁の調査でありますから権威のあるものです。これによりますと、休業中、清算中の法人を除いた活動中の法人が百三十一万二千二百社ある。そこで利益を挙げた法人は約五〇%を超えておるわけでありますが、その益金処分の構成比を見ると、社内留保が三三・七%、社外流出が一八・一%、支払い配当が一二・八%、役員賞与が三・二%、法人税は三二・三%でありますが、この年にただいま申し上げた法人が上げた営業収入は四百四十二兆五千三百二十億円、ところが、人件費もあれば貸し倒れ引当金もあれば価格変動準備金もあれば退職引当金もあれば、いろいろな租税措置を利用いたしまして、所得金額は十四兆四千二百八十九億円に縮小してしまうのです。四百四十二兆円が十四兆円に減ってしまうのです。そうして法人税は何ぼかというと、四兆円しか払っておらぬのです。私は、個人所得から見て、いかに法人というものの所得率が低いかということは明らかだと思うのです。  いま私は医師優遇税制の問題を取り上げようと思ったのだが、時間がないから割愛をせざるを得ませんけれども、現在の法人の利潤と内部留保がきわめて大きくて、法人税は、実質的な内部留保だけが二十二兆円もあったのに対して四兆円しか税金を払っておらぬのですね。これが税制調査会の答申の文章になるとどういうふうに表現されるかというと、実効税率で比較をしてみると、わが国の水準は諸外国のそれと比べてやや低いと認められる、こんな表現に変わっちゃうのですよ。やや低いどころの騒ぎじゃないのです。それで、医師優遇税制はいま一番不公平税制のシンボルで挙げられておるけれども、それでも七二%を控除した残りの二八%のものに税がかかるのですよ。法人の場合には所得率わずか三・三%の状態でやっておるのですよ。だから社会党は、この際は、景気の明るさも幾らか増してきたし、いろいろな犠牲を押しつけて、そしてやや経理内容もよくなってきたのだし、第一、一般消費税なんというようなものを取り入れるような時期になったならば、まず優先順位としてはこれに手をつけるべきだ、これが私どもの主張で、たとえ困難があろうと、あるいはその金額がそんなにたくさんないとされても、私は、物の順序からいってまずこれに手をつけるべきだ、こういうふうに思うのですが、いかがですか。──私は大蔵大臣でなくて総理大臣にちょっと答えてもらいたいんだ。総理大臣、あなたはとってもいいことを言っているんだよ、大蔵大臣のときは。インフレーションは所得や資産の分配に大きな不公平を生み、国民生活と社会秩序を根底から崩す元凶である、相対的に優位にある人々に対しては税その他公的負担の増加にたえてもらうよう、社会的公正の確保のために鋭意努力を払っていきたい、こう言っておるのですよ。総理大臣になってもその初心を忘れないでもらいたい。
  67. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 一般消費税導入問題についてのお尋ねでございますが、私は総裁選挙のときといまと態度が変わっておるじゃないかと言うのですけれども、私そんな器用な男じゃございません。前々から、こういう大きな問題を取り上げるについては、歳入面ばかりでなく、歳出面につきましても洗い直しをやらなければ国民の納得を得られないだろうという態度は今日まで終始堅持いたしまして、予算の編成に当たりましてもそういう認識に立ちまして対処いたしておるつもりでございます。  それから第二に、社会党さんは反対であるということでございますが、野党第一党の社会党が反対であるようじゃなかなかこれはできないのです。少なくとも社会党は、賛成まではいけないかもしれぬけれども、まあ納得できるというところまで持っていかなければ、なかなかこういう大問題は私は実行できないと考えております。したがいまして、この一般消費税の問題のいま税制調査会で提示がございました内容の吟味はもとよりでございますけれども、歳入歳出全体についての御検討を広く深くいただきたいという立場でこの国会に臨んでおりますことは施政方針演説でも申し上げたとおりでございます。  それから第三の問題といたしまして、社会党さんが従来から新しい租税特別措置の検討問題、それから新しい税金、税制につきましてのお考えを私どももたびたび聞いております。それから、それについてもずいぶん大蔵委員会を中心にいたしまして御論議を申し上げたことでございます。その詳しいことはここで繰り返そうとはいたしませんけれども、この点につきましてもなお引き続き論議を深めてまいりたいと考えております。  それから法人税の問題でございますが、法人税に増収の余地があるじゃないか、順序としてそういうところに手を染めるべきじゃないかということでございます。先ほど大蔵大臣も申し上げましたように、いま法人税を取り上げるタイミングとして適切でないという判断は私も持っておるわけでございますけれども、大きな財政上の再建問題に取り組む今日でございます。御提案がございます問題につきましては、政府検討するにやぶさかでございません。
  68. 平林剛

    平林委員 一般消費税についてわれわれが反対であるということに対して、社会党に期待しておると言われましたが、消費税反対は私の方は国民から期待をされておるわけでありまして、あなたの期待にこたえるか国民の期待にこたえるかというのはおのずからはっきりしておるわけで、われわれは一般消費税の導入には反対である、その前になすべきことがある、こういうことを申し上げておきたいと思うのです。  もう時間がなくなりましたので、土地の増価税の問題につきましてもそうなんでありますが、社会党は、全法人の土地の値上がりによる含み資産を見ますと二百兆円を超えておるということもしばしば申し上げてまいりましたし、また、社会党の言い分だけじゃだめだというなら山一証券の経済研究所の試算によりましても、東京証券取引所の一部に上場しておる八百十二社の固定資産合計額は簿価で約四十五兆になる。これを時価で評価すると二・六倍の百十六兆円にはね上がってくる。土地だけを見るというとこういう状態でございまして、もし税率六%を掛けると四兆二千六百億円という巨額の税収が入ってくることになるわけであります。土地だけにかけるのはどうかという話があれば、これはほかの資産に対しましてもこの際再評価をすることによって相当の含み利益が表面化するわけでありまして、それに課税をすれば優に皆さんがお考えになっておる一般消費税を超える税収を確保することができる。これは私はきょう時間がありませんで、これ以上具体的な数字で議論をすることはできませんけれども、いずれまた改めてこの問題については議論をしたいと思います。  なお、本日予定し、通告をしてありました国債発行とインフレの問題は、とうとう予定の時間が来ましたので、これに触れることができませんで残念でございました。私が残念というよりも、せっかくお呼びをした日銀総裁、御迷惑をおかけしました。飛鳥田委員長のおはこで言えばごめんなさいということになるわけでありまして、しかし、いずれ機会を得ましてこの問題につきまして私ども論議を深めてまいりたいと思いますので、私の尽くし得なかったことは他の同僚議員にお願いすることにしまして、私の質問はこれで終わることにいたします。どうもありがとうございました。
  69. 竹下登

    竹下委員長 これにて平林君の質疑は終了いたしました。午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十六分休憩      ────◇─────     午後一時一分開議
  70. 竹下登

    竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西岡武夫君。
  71. 西岡武夫

    西岡委員 私は、新自由クラブを代表いたしまして、総理並びに関係閣僚に質問をさせていただきます。  質問をいたしますに先立ちまして、委員長に一言申し上げたいことがございます。  新自由クラブは、かねてから、国会審議あり方を改革すべきである、常任委員制度というものをもっと本格的に動かしていくためには、いまの予算委員会を中心とした国会審議あり方を改めるべきである、こういう考え方に基づいて具体的な改革の提言をしてきたところでございます。歴代の委員長のお手元で検討をするということが約束されて、今日まで何ら改革を見ていないわけでございますが、どうか、竹下委員長御在任中に、私どものこの提言について具体的な答えをぜひ出していただきたい。まず初めに、委員長に御要望を申し上げ、御所見を伺いたいと思うわけでございます。
  72. 竹下登

    竹下委員長 ただいまの西岡君の御提案の御趣旨は、委員長として十分承りました。
  73. 西岡武夫

    西岡委員 それでは、竹下委員長御在任中に、国会審議あり方、中でも予算委員会のこれまでの慣行に改革が加えられると私どもは期待をし、委員長の御手腕を期待して、本日は、具体的に私が質問をいたします大臣以外の大臣の御退席等を求めるということはあえていたしません。  まず初めに、総理にお伺いします。  けさのサンケイ新聞によりますと、国後にソ連の基地が存在をしているということが、具体的に写真撮影によって報道をされているわけでございます。この事実について、政府としてどのように御認識になり、現時点でどのような御感想、御意見をお持ちか、承りたい。
  74. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  国後島におきますソ連軍事基地等の概要につきましては先般来防衛庁が公表したところでございますが、ただいま御指摘の、本日の報道されました点について申し上げますと、国後島には従来から東沸飛行場及び古釜布飛行場は存在していると承知しておりますが、これは樺太、沿海州等からの連絡便等の中継基地として使用されている模様でございます。ただ、その滑走路の規模等の詳細については確認いたしておりません。建物等の設置状況については公表のとおりでございますが、その使用目的等の態様の詳細は確認しておりません。また、国後島の泊港の規模の詳細について、現段階で確認するに至っておりません。なお、レーダーが設置されていることは公表のとおりでございますが、その機能等の詳細は明らかではございません。  国後島におきます基地の態様等は以上のとおりでございますが、当該報道にもございますように、現在も雪中において土木作業が行われている模様でございます。防衛庁といたしましては、これらのことにつきまして冷静に注目いたしておる次第でございます。  以上でございます。
  75. 西岡武夫

    西岡委員 外務大臣にお尋ねをいたします。  わが国固有の領土に、少なくともこの写真で明らかにされておりますように非常に大きな滑走路、三千五百メートル級というふうに推定されているわけですけれども、このような基地が存在をしているということについて、具体的にどういう確認をなさろうとされているのか、政府の御方針を承りたい。
  76. 園田直

    ○園田国務大臣 北方四島、特に国後、択捉のソ連の配備の増強と申しますか、各方面の情報、防衛庁の情報等を総合判断をし、さらに検討を続けているところでございますが、いまのところ、兵力の増強及び飛行機の数がふえている点などは見られますけれども、格別にこちらが考えるほどの基地の強化は見えないところでございます。  しかし、この問題、二つありまして、一つは、その目的が何なのか。私は、これはソビエトの極東軍事力の増強という一連の方向で増強されたものであると考えております。したがいまして、これに対しては冷静にこれを見守る必要がありまして、米ソの関係の中で極東の兵力が増強される、その一環として、ソ連から言えば国境警備隊が増強された、それが直ちに日本の脅威であるとか、あるいは日本防衛に危険であるとかといって騒ぎ立てることなしに、冷静に見守る必要がある。  しかし、二番目には、いま御指摘のとおりに、北方四島はわが国の固有の領土でありますから、これに基地があり、兵力が増強されることは無関心であり得ませんので、早速わが外務省はソ連に対し申し入れをしたいと考えておったところでありますが、向こう側の都合でおくれたわけであります。そこで私は、あした鄧小平副主席が訪日されますので、鄧小平副主席が到着されてから申し入れをすればまた、共同歩調であるとか相談の上とか、痛くない腹を探られますので、鄧小平副主席がおいでになる前にやれということで、本日の十時半、ポリャンスキー大使に本庁に来てもらって申し入れをしたところであります。  その申し入れば、北方四島はわが国の固有の領土である、その固有の領土に基地を設け、兵力を増強されることは無関心であり得ないという、固有の領土であるという点から主に申し入れをしたところでございます。
  77. 西岡武夫

    西岡委員 政府は、この問題について毅然たる態度で対応されることを期待いたします。  次に、一昨日の民社党の塚本委員からの質問を通じて、古井法務大臣の御答弁がございました。この問題について、重ねて法務大臣にお尋ねをいたします。  塚本委員の質問に対して古井大臣は、金大中氏事件について、これは政治的な決着がついたことであるということは認めるけれども、どうも釈然としないということを感想としてお答えになったわけでございます。この釈然としないということは、私どももそのように感じているわけでございまして、その内容は、わが国の主権が侵された疑いがあるという意味において金大中氏事件は釈然としない、このように新自由クラブとしては考えているわけでございますが、古井法務大臣の釈然としないという意味は、わが国の主権が侵された疑いがあるという意味でおっしゃったのかどうか、重ねてお答えをいただきたいと思います。
  78. 古井喜實

    ○古井国務大臣 お答えをいたします。  私は、言葉の端々の問題ではなくて、朝鮮半島に平和と安定な状態が生まれることがわれわれ日本のためにも大変望ましいことだ、こういう考え方を一政治家として持っているのであります。幸いに、昨今は南の方にも北の方にも南北の融和、統一の機運が動いてきているかのように見える。それから、米中のああいう接近ということも、取り巻く環境としてそういう方向に事態が進むことに有益であろうと私は思って見ておるのであります。そういうことが根本にあるのであります。でありますから、きょう現実を飛び越えてどうこうとかいうのではありませんけれども、そういう情勢というものを腹に置いて、将来の問題について物を考えていかなければいけない、こういうことを言ったのが事の発端なのであります。  さっきのお話の具体問題ですけれども、何もまとめた発表をしたわけでも何でもない。新聞記者会見をしているときに、あれだこれだと言ったり、やったりとったり、その中の一部分を新聞が書いた。全部書いたんじゃないのですよ。端々を取り上げて書くということがあるんです。そこでああいう話になってしまったわけであります。  そこで、お尋ねの問題でありますけれどもお尋ねの問題は、とにかく当時日本政府がいろんな考慮から外交的、政治的に決着をつけた、こういう大きな事実があるんですから、この事実はわれわれ尊重していかなければならぬ、そういうものだと私は思っているのです。過去の問題についての当時の感想あるいは国民の中にある気持ちにいろいろなものがあるだろうと思うのです。あなたがおっしゃるように、私自身じゃなくて、国民の中にもあの問題については何か割り切れぬものがあると考えておる人も当時はあったはずです。われわれの耳にも入っておりますよ。そうでありますけれども、それをきょうどうこう言っておったんじゃない。主題をそれてしまって、言葉の中の端々を持ち上げて新聞が書く。それが何か中心問題みたいなことでありますが、過去の、当時のこととして、一政治家として、そういうことを言う者もあるし、私も当時はそういう感想を持っておったということを言っただけのことでありますから、そういうふうにきょうの具体問題をどうしようという問題ではありませんから、御了解願いたいと思うのであります。
  79. 西岡武夫

    西岡委員 どうも大臣の御答弁、すっきりしないわけでございまして、私どもも、日韓の関係というものはこれを緊密にしていかなければいけない、本当の日韓の緊密な交流関係というものをつくり上げていくためにも、国民の間に金大中氏事件が起こしたような疑惑というようなもの、こうしたものをやはりぬぐい去ることが、長い目で見て真の日韓の友好関係を築いていくゆえんである、このように考えているわけです。  私が特に古井大臣にお尋ねをいたしましたのは、少なくとも大平内閣の法務大臣というお立場で、この金大中氏事件について、どうもすっきりしないものを感じているということを国会の場でおっしゃったわけでございまして、これはやはり重大なことである。国民の多くがそう考えていることもあった、あの当時こうこうだったということではなくて、現に法務大臣のお立場において一昨日のような御発言があったということは、これは私どもにとっては聞き捨てにならないことであって、そのことを確認をしているわけでございます。それはどうなんですか。
  80. 古井喜實

    ○古井国務大臣 つまり、さっきも申しますように、この問題には感想もあったろうし、意見、議論もあっただろうが、政府としてはあのとおりに決着をつけたのですから、それはそうだ。当時割り切れぬ感じを持った者もあるだろうし、私も当時、直接かかわっていなかったけれども、そういう気持ちを持っておったということを申し上げた。それが本筋ですから、それはそういう意味に御了解願ったらよかろうと思います。
  81. 西岡武夫

    西岡委員 それでは大臣、いまはもう釈然としているということなんでしょうか。
  82. 古井喜實

    ○古井国務大臣 過去にどう感想を持っておったか、過去にさかのぼって釈然としてしまおうということはできるかどうか知りませんが、しかし、政治決着がついたということを尊重するというのをきょうの立場として申し上げているのですから、めいめい考えがあったって、決まりがついたらこれを尊重すべきだと私は思うのですよ。だれだって考えがあり、議論をしたあげく、処理したり決着をつけたりするものなんです。ですから、きょうの段階ではこの政治決着ということを尊重して考える、こういうことでありますから、そういうふうに御了解願いたいと思います。
  83. 西岡武夫

    西岡委員 どうも古井大臣の日ごろのいろいろな御発言からいたしますと歯切れの悪い御答弁で納得できませんが、時間の関係もございますから、この程度にこの問題はとどめます。ただ、金大中氏事件が、法務大臣もいみじくも一昨日の国会答弁でおっしゃったように、釈然としないものをいまだに秘めているということはここで確認をしておきたいと思います。  そこで、E2Cの導入問題について、まず総理お尋ねをいたします。  今回のE2Cの導入をめぐって起こった疑惑というものが、どれほど国民政治不信というものを拡大させているか、これは司法当局が真相をただしていくということの以前の問題として重大な問題であろうと思います。現時点において、このことについて総理大臣はどのような御感想、御意見をお持ちか、基本的なお考えをまず承りたいと思います。
  84. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 この問題につきまして疑惑が現に存在する、これは解明されなければならない。その解明は、政治の信頼にもかかわる大問題だと心得ております。
  85. 西岡武夫

    西岡委員 防衛庁長官お尋ねをいたします。  私たち新自由クラブといたしましては、ミグの事件の経験から、その国防的見地に立って、早期警戒機というものが必要であるという立場をとっております。この問題についての判断というものは、やはり防衛的な見地から専門的な判断というものを尊重すべきである、このように考えるわけであります。それでもどうしても納得できない点が一、二点ございます。  それは、なぜ防衛庁が、ミグの事件が発生するまでわが国の防空態勢というものを放置していたのか。もし、仮にミグの事件が起こっていなければE2Cの導入という問題に取り組まなかったのかどうか、ここのところがどうも納得できない第一点であります。  それからもう一つは、対空警戒網がわが国防衛態勢の中の非常に不足している大きな部分の一つである、脆弱な部分の一つであるということが言われているわけですけれども、そのことをほうっておいてF15の導入を先に決めた、このことは一体どういう根拠に基づいてそういう判断が行われたのか。どうも話が逆なのではないだろうかという感じがいたします。この点について明確なお答えをいただきたい。
  86. 山下元利

    山下国務大臣 お答え申し上げます。  防衛庁におきましては、ただいま御指摘もございましたが、早期警戒機は日本防衛上まことに大事なことである、このように早くから必要性を認識しておりまして、昭和四十年ごろからその検討を進めてまいった次第でございます。そのときに、これを国内開発でやるかという問題もございましたけれども、これはなかなか、いろいろな問題がございまして、多額の経費が必要であるというふうな事情もございまして、進んでおりましたのですが、昭和四十七年の国防会議議員懇談会におきまして専門家会議を置いて検討する、その中におきまして、専門家会議がいろいろ検討いたしたのでありますけれども、ちょうどアメリカにおきまして、このE2シリーズと申しますか、早期警戒機としてこの適当な機種につきましてわれわれも調査を進めてまいりましたところが、これをアメリカの方でもこちらの方にリリースしてもいいというふうなことがございましたので、私どもとしてはこれについて、アメリカのE2Cを導入する方向に進めてまいったわけでございますが、ちょうど昭和五十一年の十月に国防会議におきまして「防衛計画の大綱」を決定いたしました。それによりますと、私どもとしてはこの警戒飛行部隊一個飛行隊、これを編成することを決定されたわけでございますが、たまたまその前にミグ事件が起こったわけでございまして、一層その早期警戒機の導入の必要が痛感せられたわけでございまして、私どもは、いま申しましたような事情で、ミグの事件が発生するまで放置しておったわけではございません。日本防衛上欠陥のあるこの問題につきまして、早くから研究いたしまして、ようやくこの五十一年の「防衛計画の大綱」を決めまして、そしてこの導入を進めてまいったわけでございます。  なお、第二点の、このように対空警戒網が不足していることがわかっておるにかかわらず、そのF15を先に導入したかということでございますが、実は、この点について申しますと、すでに五十一年の「防衛計画の大綱」におきましてこの早期警戒機の導入の方向を決定いたしまして、私どもといたしましてはこの準備に着手いたしまして、五十二年にも米国に調査団を派遣しまして、そしてこのE2Cを導入することが適当であると判断したわけでございます。したがいまして、本来でございますならば、昭和五十三年度予算、本年度の予算においてF15と同時に導入さしていただけたらという手もございますけれども、しかし、バッジシステムとの連係をさらに調査する必要があるということで、昨年の五月に改めて調査団を派遣いたしまして、慎重を期したわけでございます。したがいまして、その調査の結果、E2Cとバッジシステムとの連接も十分に可能であるという結論を得ましたために、昨年の八月、最終的に早期警戒機の機種をE2Cとすると決めまして、本年の予算にこのように計上さしていただいた次第でございます。  以上でございます。
  87. 西岡武夫

    西岡委員 それではお尋ねをいたしますが、対空警戒網を完備するのを何年後と防衛庁としてはお考えなのかということが一点。  もう一つは、この問題だけではなくて、わが国防衛態勢全体とのかかわりでございますが、防衛費をGNPの一%以内に抑制するという閣議決定があるわけでございますが、この枠の中で、こうした日本防衛態勢の整備が一体可能と防衛庁としてはお考えなのかどうか、この点をお聞かせいただきたい。
  88. 山下元利

    山下国務大臣 E2Cの導入につきましては、再々お答え申し上げておりますとおり、本年御決定いただきまして、そしてアメリカ政府との間で話ができ上がりましても、これは大変飛行機の製作に時日を要する飛行機でございますので、五十七年に二機、五十八年に二機と、そしてようやく四機で一個哨戒点、ワンポイントが可能でございます。ところで、防衛庁といたしましては、昭和五十一年の先ほど申しました「防衛計画の大綱」では、この警戒飛行部隊一個飛行隊をお願いいたしておりますが、これは大体二個哨戒点を予定いたしておるわけでございます。もちろんこれは最終的には国防会議の議を経て、また国会の御審議を仰がなければなりませんけれども。したがいまして、このたびの予算では一個哨戒点四機をぜひともお願いいたしておる。そしてそのあとの四機につきましては、できるだけ早くまた国防会議の議を経て御審議を賜りたいと思っている次第でございますので、それが決定いたしませんことには最終的に何年と申し上げられませんけれども、この四機につきまして本年御決定いただきますならば、五十八年には一個哨戒点の整備は可能である。したがいまして、そのあとの四機につきましては、もし明年でもまた引き続き御審議賜るならば、それに引き続きいまと同じようなベースで進められる、このように思っている次第でございますが、しかし、この五十七年二機、五十八年二機ということは、これはアメリカにおきますところの生産状況とも関連いたしまして、本年にぜひとも御決定の上、政府間の話を進めさしていただきたい、このように思っている次第でございます。(西岡委員防衛費」と呼ぶ)  大変失礼いたしました。第二点の、現在の防衛関係費は国民総生産の一%以内というふうな閣議了解があることはもう申すまでもないところでございまして、実は昭和五十四年度予算につきましても、予想せられますところの国民総生産の〇・九%の防衛関係費でございます。その一%以内でございますが、私どもといたしましては、いま申しましたようなことをお願いいたしましてもこの一%以内の範囲内で十分やっていける、このように信じておる次第でございます。
  89. 西岡武夫

    西岡委員 私がお尋ねをいたしておりますのは、わが国の国防の態勢というものを整えていく、そのためにはどれだけの予算が必要であるか。何年後に、たとえば今度の早期警戒機の問題にいたしましても、何年までにこれを整えて、わが国防衛態勢の欠陥とも言うべき対空防空網を整備するのだという目標を定めて、それを整備していくためには予算がどれだけ要るんだというような論議の組み立てがまず必要だと思うわけでありまして、それがなされないで、あらかじめGNPの一%以内の枠の中でやる、これもどうも議論が逆転をしているということになるのではないか、この点を防衛庁としてはどうお考えなのかということをお尋ねしているわけでありまして、その枠の中でやれると信じております、そんな信じているか信じていないかという長官のそういう御見解ではなくて、防衛庁としてその点を本当に国民に向かってどう説明されるのか、これを承っているわけです。明快にお答えをいただきたい。
  90. 山下元利

    山下国務大臣 昭和五十一年におきますところの「防衛計画の大綱」については先ほど来申し上げているとおりでございまして、この「防衛計画の大綱」は、要するに限定的小規模な侵略に対処する、それにおきましてこの大綱を決めているわけでございますが、これにつきましては、われわれとしてもこの別表におきまして大体予定せられるところの規模を考えているわけでございまして、私どもとしてはこれを四次防の後お示しをして御理解をいただいているわけでございます。したがいまして、いまの「防衛計画の大綱」を実施していくにつきまして、御指摘の国民総生産の一%以内で進めるという了解があるわけでございまして、私どもは、もちろん質の高い自衛力を整備していく必要はございますけれども、それは国力、国情に応じた整備でございますから、いま申しましたような「防衛計画の大綱」によりますところの警戒飛行部隊等を整備していきましても、先ほどの閣議了解におきますところのGNPの一%以内で十分賄っていける、このように考えるわけでございます。
  91. 西岡武夫

    西岡委員 総理お尋ねをいたします。  初めに申し上げましたように、新自由クラブとしては早期警戒機の必要性というものを認めるという立場に立っております。しかし、この五十四年度の予算審議が行われている中で、疑惑は解消されるどころか深まる一方である、これは客観的な事実であろうと思います。政府として、予算審議の期間中に国民が納得できる疑惑の解明が行われないということになれば、少なくともE2Cの予算の執行を見合わせるという判断を下すのが妥当なのではないか、このように考えますが、総理、いかがでしょうか。
  92. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのような判断も理解できないわけじゃございません。ただ、事防衛に関しましては防衛当局が日夜責任を持って訓練にいそしんでおるわけでございますから、そしてそこには一番専門家がそろっておるわけでございます。したがいまして、まず防衛庁の判断を、よくよくのことでない限りは尊重していかなければならぬと私は考えておるわけでございます。したがって、このE2C機の必要性、それを今日アメリカ政府との契約を見送っていくことについて、これを防衛庁はどう考えるか、そのあたりはまず防衛庁の判断を求めましたところ、警戒機はいよいよ必要だと考えておるということ、そしてE2C機の導入につきましては相当念入りに検討を加えてきた経過がございますということ、そしてその経過には自分たちとしては不正はないものと確信しておるということで、これ以上これをさらに延ばすということは耐えられないことであるという判断でございました。でございますから、この判断は尊重すべきものと考え予算化に踏み切ったわけでございます。以後の責任は私が負います。
  93. 西岡武夫

    西岡委員 それでは、仮に予算が成立した後に今回の疑惑が明確になった場合に、総理としてはどのような措置とどのような責任をおとりになるということでしょうか。
  94. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 いま問題は解明が始まったばかりでございまして、当面私が考えておりますことは、解明を急がなければならぬということ、そしていささかも疑惑が残らぬような徹底した解明が望ましい、そのためにわれわれは努力をしなければならぬということでございまして、疑惑が万一明らかになるというようなことにつきまして、いま思いをめぐらす余地をまだ持っておりません。
  95. 西岡武夫

    西岡委員 このE2Cの問題につきましては予算委員会の集中審議等が予定 されておりますので、その場に議論はゆだねまして、次の問題に進ませていただきたいと思います。  大平総理は、これまでの国会の答弁を通じて財政再建の必要性を説かれて、そのために一般消費税を五十五年度に導入するということを理解してもらいたいということを再々強調をされておられます。私どもとしても、いま財政の再建という課題が最重要課題の一つである、このように考えます。しかし、過去数年間政府が行ってまいりました財政経済政策というものが後手後手に回って、しかも小出しであったということが今日の状況を生んだ原因の一つであるということもぜひお考えをいただきたい。新自由クラブとしてはこれまで、経済政策としての減税政策が景気を回復させる、この景気を回復させるということを通じて財政再建にも役立つという考えに基づいて、大幅な所得減税を提案してまいりました。しかし、経済政策としての減税政策というものはすでにその時期を失した、このように現在判断をいたしております。したがって、私ども財政再建に真っ正面から取り組むという方針を決定したわけであります。このことは、国民の皆様方に対しても、場合によっては与野党の立場を超えて税の負担増の必要性を主張しようということでもあるわけであります。  しかし、総理にぜひお聞きいただきたいのは、総理御自身も施政方針の中で述べておられるように、国民の皆さん方に税の負担増を求めていくという前提として、何よりもまず行政の簡素化、効率化が行われるべきである。さらに、これも総理の言われる公正な社会の建設ということとも関係のあることでありますが、税制の不公平が是正されることが大前提である、私ども新自由クラブもこのように考えるわけでございます。  そこで総理お尋ねをいたしますが、五十四年度の予算においてこうしたことを前提として考えた場合に、総理の言われるように、一般消費税を導入するという前提がこれで整ったんだと総理はお考えなのかどうか、これをまずお聞かせをいただきたい。
  96. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 財政再建の問題につきまして、新自由クラブとして真っ正面から取り組んでいただくということでございます。御決定を大変多といたしております。  私ども、いまの御質問にお答えする前に、前提として二つのことを西岡さんにも、これは重々お考えおき願っておることと思いますけれども、念のためにこの機会に申し上げておきたいのでございますが、一つ日本経済を公経済、私経済、私経済をさらに分けて企業経済、個人の経済と、仮にこう分けてみますと、今日、企業経済は大変苦心いたしましてやや収益状況も好転を見ているといえども、相当の企業がまだ赤字でございまして、この状態からどう脱出しようかということで苦心いたしておるようでございます。ところが公経済、中央地方の財政になりますと大変大きな赤字状況でございまして、全く危機的と言わなければならぬほどの状態になっておると思います。ところが個人経済におきましては、一応のバランスがとれておるし、相当高い貯蓄が行われておるし、一般の消費も堅調であるわけでございますから、比較的ノーマルな状態と言えるのじゃないかと思うのでございまして、一国の経済が健全であるかどうかという問題は、結局この三者がそれぞれバランスのとれた状態でなければならぬわけでございますが、いかにもいま不健全であるということはお認めいただけると思うのでございます。さればこそわれわれは、財政再建の問題を焦眉の国民的課題として御提起申し上げておるところでございます。  第二に、しからばそれは早く着手すべきであったではないかということでございますが、先般来本席を通じてお話しを申し上げておるとおり、石油ショック等がありまして、世界経済全体が大きな動揺の中に入ったわけでございまして、日本もこの状態にどう対応するか、そしてどう脱出するかという課題に直面いたしたわけでございます。そこで、とりあえず、個人経済の方に大きな影響を与えることなく、財政が当面波を全部かぶって、そして時間をかけてノーマルな状態に持っていくという選択をしたわけでございます。そういう選択がよかったか悪かったかはいろいろ御判断があろうかと思いますけれども政府は、ともかくそういう判断のもとでここ三、四年の財政経済政策を切り盛りしてきたわけでございます。そういう段階でようやく企業経済に明るさが見えてきました今日でございまするので、どうしてもこの財政再建ということが焦眉の問題になってきたということを前提としてお認めおき願いたいと思うのでございます。  これはしかし容易ならぬ大事業でございまするので、仰せのようによほどの用意がなければならぬわけでございまして、歳出歳入全般にわたりまして相当詳細に用意しなければならない再建の課題であろうと思うのでございまして、いきなり一般消費税というような問題を持ち出してまいりましてこれを認めてくれというようなことを私どもは申し上げておるわけではないのでありまして、歳入歳出を洗い直しながら、この問題について、一般消費税等を含む新たな歳入政策について御理解をいただこうという構えでございます。  しからば、この五十四年度の予算で歳入歳出を見直したが、それで前提条件が十分満たされておると見るかというお尋ねでございますが、私はそんなにうぬぼれておりません。精いっぱいやりましたけれども、きわめて不十分でございます。さればこそ、この委員会におきましても各党から手厳しい御批判をいただいておりまするわけでございます。  しかし、一口に歳入歳出を見直すといいましても、事柄は容易じゃございません。既往の慣行、制度を一遍根本的に見直すなんということは、これは容易ならぬ革命的なことでございますから、政府・与党といたしましてもよほどの用意がなければいかぬわけでございまして、この五十四年度の予算に当たりましてなし遂げたことというのは、そんなに多くのことをなし遂げたとは自負いたしていないのでございまして、これで決して満足はしていないのでございます。引き続きもっともっと検討を進めていかなければならぬ、見直しを進めていかなければならぬ、彫り深くやってまいらなければいかぬと考えておるわけでございまして、そういう努力と並行いたしまして、一般消費税等をめぐる新たな歳入源の確保という点について御理解と御協力を得る素地をつくっていこう、そのように考えております。
  97. 西岡武夫

    西岡委員 総理が御指摘のように、確かに行政改革等これまでの定着してきたいろいろな習慣や制度政策というものを抜本的に改めるということは、言うべくしてそう簡単なことではない。私どももそのように考えます。しかし、政権を担当されたお立場で、一般消費税の導入という、新しい、シャウプ税制以来の大改革をやろうということをお考えになっておられるわけでありますか一ら、これに並行してといってもよほど思い切った改革をやっていただかなければ、国民の皆さん方が納得できない、こういうふうに私ども考えます。  そこで、お手元に資料をお配りをいたしました。これは、一つは、総理施政方針演説の中で、行政の簡素化、効率化というもの、あるいは制度や慣行というものを不断に見直して行政機構や定員の抑制と合理化を進めなければいけないという、施政方針演説の一部を抜粋したコピーであります。もう一つは、これは新聞にも連載されましたものでございますので、あえて引用をさせていただいたのですが、総理が「私の履歴書」という書物の中で、「大臣と役人」という項目の中で行政改革についての総理のお考えを述べておられるわけです。これは公にされているものでございますから、あえて引用をさせていただいたわけですが、その中で主なものだけを抜粋して読ませていただきますと、「行政機構の改革は、歴代内閣にとっておきまりの公約になってきた。ところがそれに手を染めて見るべき実効を収め得た内閣は、未だかつてなかった。一体、これはどうしたことであろうか。」と述べられまして、大臣が「役所の権限や予算、さらにはその定員を増やすことによって、「政治力のある大臣」として高い評価を受けたいという野心をもつとしても、少しも不思議はないはずである。」とこのように述べられ、「だから、私の大臣に対する提言はこうである。もともと公務員制度や行政機構にまつわる大きい改革意図などは、お持ちにならない方が無難である。その改革意図をふり回すなどということは、なおさら危険であるということである。ご自身に危険であるばかりではなく、大きくいってお国のために無益であればまだしも、有害である場合が少なくないのだということである。」ということを、これは新聞にも出たわけでございますが、述べておられる。こういうお考えと、いま総理が取り組もうとしておられる施政方針で述べられた行政改革に取り組まれる姿勢と、一体どう関連づけて私どもは解釈したらいいのでしょうか。
  98. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 これは昭和三十一年に私の書いた随筆でございますが、私は、行政機構の改革、それから行政費の節減というようなことがいかにむずかしいものであるかということを身にしみて痛感しておりましたし、いまもそう考えております。そこで、これと取り組むのはもっとじみちに取り組んでいかなければいけない、大上段に振りかざしてできるものではないのでありまして、行政府の諸君は、ここにも大ぜいおりますけれども、みんな生涯をその役所にゆだねておる方方でございまして、名誉、浮沈を、運命をかけておるわけでございますから、非常に真剣でございます。したがって、政治家が軽々に改革なんかに乗り出して、これは勝負がつくはずはございません。役人の方が強いのです。でございますけれども、そういうことも十分頭の上に置きまして、しかも実効を上げる行政改革を考えなければいかぬわけでございまして、歴代の政府はその中でどういうことをやってきたかというと、たびたび申し上げましたように、まず、機構は膨張を抑制しなければいかぬじゃないか、強い膨張の要請があるけれども、それは抑え込まなければいかぬじゃないか。定員は各部局ともふやしてくれ、ふやしてくれと言うけれども、それはむしろふやさないように減らしていくべきじゃないか。そういう対処の仕方が私は一番じみちな接近の方法だと考えておったと思うのでございまして、歴代の自民党内閣はそういう意味におきまして、皆さんから余り評価を受けませんけれども、相当な事績を上げてきたと考えておるわけでありまして、私の内閣もこの方針は堅持していきたいと考えておりまして、いま私は華々しい行政改革というようなものにまだ手を染めるつもりはないのであります。
  99. 西岡武夫

    西岡委員 総理施政方針演説で述べられたことといまの御答弁とは、どうもしっくりこないというのが私の率直な感想でございます。それはなぜかと言えば、一般消費税の導入という大変な改革、ある意味では税制全体の改革に及ぶことを総理はお考えになっておられる。それを前提として私は申し上げているわけでありまして、総理の御指摘のとおりに、確かに行政改革というのは、そう言うべくして簡単な事柄ではない、私どももそのように承知をいたしております。だからこそ、これまで数回の国会を通じて、私どもが行政改革に積極的に取り組んでいく資格を持つためには、これは政党の問題ですけれども国会議員がみずからの定数を削減するという決意を持って初めて大胆な行政改革が可能であろう、新自由クラブはこれに取り組む決意でありますということを表明し、そして福田総理にもお尋ねをしたわけです。自民党総裁としての福田総裁のお考えはどうですかということも、いま申し上げたような意味においてお尋ねをしたわけでありまして、総理いかがでしょうか、自民党の総裁というお立場で、国会議員の定数を削減するという大胆な改革をみずから行うことによって行政改革に取り組むべき時期が来ている、困難だけにそういうことをやらなければできないのだというふうにお考えにならないでしょうか。
  100. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 先ほど申しましたように、行政機構の改革ということは大変むずかしい問題であるということでございますが、しかし、いま財政再建を考える場合におきまして、どんなにむずかしくてもやらなければならぬ問題である、そういう国民的課題であるということでございます。  そこで、先般公明党の矢野書記長の御質問がありまして、行政費の節減の問題につきまして、質疑を通じての大変手厳しい鞭撻をちょうだいいたしたのでありまして、これは非常に私は多としたわけであります。本来国会が、政府予算のつけ方が少ないということに比較的御注文が多くて、これはむだがあるじゃないか、これを直さなければいかぬじゃないかという点についての御注文が比較的少なかった中で、そういう御提言をちょうだいいたしたことは、われわれにとりましても非常に勇気づけられることでございました。きょう西岡さんからそういうお話を伺いまして、さらに勇気づけられるわけでございまして、国会におきましてまずこの問題が取り上げられて、国会の大きな政治力というものを背景にいたしまして、私どもがこの困難な問題に立ち向かうことができますように、ひとつお力添えをいただけますれば非常に幸いでございます。  その場合に、行政府は行政府といたしまして大変問題でございますが、立法府自体がまず自粛することから始めなければならぬという問題提言は、私にとりましては、西岡さん御自身非常に勇気のある御提言であると敬意を表します。各党の間におきまして、そういった機運が漸次固まってまいりますことを期待いたしまするし、自由民主党、ただいま第一党の大きな責任を持っておるわけでございますから、そういう方向にわが党といたしましても積極的に努力するところがなければならぬものと考えます。
  101. 西岡武夫

    西岡委員 総理のいまの御答弁、具体的に立法府の立場でも、与党として国会議員の定数の削減という問題にも取り組むというふうにお答えいただいたというふうに理解をいたします。  そこで、一般消費税の導入を並行してやる、一遍には行政改革ということは言うべくしてできるものではないというお話でございますが、余りにも一般消費税を導入するだけの前提が整っていな過ぎるのではないか。行政の改革、不公平税制の是正等がもっと本格的に行われた段階でなければ、一般消費税の導入などということを考えるべきではないのではないか、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  102. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 仰せのとおりでございまして、さればこそそのために、ことしも財政再建をめぐる諸問題につきまして論議を深めていただきたいということでございまするし、先ほども私申しましたように、五十四年度の予算でわれわれが達成し得たものはきわめてまだわずかなものである、これから鋭意本格的にこの問題に立ち向かわなければならぬわけでございまして、そういう努力の積み重ねと並行いたしまして、一般消費税を含む新たな歳入政策についての御理解と御努力を賜るように鋭意努力していきたいと考えております。
  103. 西岡武夫

    西岡委員 総理は、私どもの河野代表の衆議院本会議における質問に対して、河野さんは少し性急過ぎる、私が政権を担当してからまだ一カ月しか経過していないと言われたわけであります。しかし、総理にぜひお考えをいただきたいのは、総理は幸運にも、政権を担当されてわずか一カ月の間に一年間の大平政治を決定する予算編成を行うことができたわけでありますから、これは性急というよりは、この一年間の大平政治というものを具体化するチャンスを、わずか一カ月の間に持つことができたというふうに、ぜひお考えをいただきたいと思うのです。  そこで、不公平税制の問題、具体的な問題に移るわけでございますが、この不公平税制の代表的存在であるいわゆる医師税制の是正の問題であります。これに取り組んだと総理はおっしゃっているわけですけれども、今回の政府の案というものは全く骨抜きであって、これを是正の第一歩であると評価することはできない。少なくとも政府の税制調査会が出した五十年答申による是正をまず行って、そうしてさらにこれを全廃するという時期を明示するということが必要であると思うのです。  大平内閣は、たしか初閣議の場において、各大臣が所管事項を離れて、大いに国務大臣としての議論をやろうということを話し合われたというふうに聞いているわけであります。非常に結構なことであろうと思います。  そこで、渡辺国務大臣にお尋ねをいたします。大臣は、今回の医師税制のいわゆる是正と言われている、私どもから言わせると骨抜きであるところの案をどのように評価されるか、骨抜きとはお考えにならないかどうか、私の意見についてどのように渡辺国務大臣はお考えか、お考えをお聞かせいただきたい。
  104. 渡辺美智雄

    ○渡辺国務大臣 国務大臣としてお答えをいたします。  私は、この間もお話しいたしましたように、これは非常な前進である、したがって、まあ合格点はつけられるのではないであろうか。その理由は、もちろん私の主張どおりではありません。ありませんが、世間では、渡辺のように医師税制に対して過激な男でも二千万円までは残してもいい、こう言ったのだから、五千万円まで置いたっていいじゃないかという人も当然あるわけです。そこで結局、渡辺さえ二千万円まで認めたのならば、普通の人は三千万円まで認めたっていいじゃないか、それが二千五百万円になったわけでございますから、そういう点については私の主張に近かったということで、私は、満点とは言えないがまあ仕方のないところではないか、かように思っておるわけであります。
  105. 西岡武夫

    西岡委員 医師税制の是正に果敢に取り組んでいるとされていた渡辺さんがいまのような御答弁をされるとは、私は夢にも思わなかったわけでございまして、これはやはり骨抜き以外の何物でもないと私は言わざるを得ません。  これは、一般消費税の導入ということを背景として国民全体が非常に大きな関心を持っているわけでございまして、いつまでにこれを全廃するか、少なくともその時期を明示すべきではないのか。私どもも、医師の皆さん方が人命を預かるという崇高な社会的な使命を持っておられる、大変な御苦労をいただいているということについては高くこれを評価いたしております。また、今回のこの医師税制の是正という問題をめぐって、現行の診療報酬のあり方、保険制度の問題とも深くかかわっているということももちろん承知をしているわけであります。しかし、税の大きな改革をしょう、財政が大変な危機の状態にあるという中で、一般消費税の導入が論議の対象になっているということを考えれば、やはり不公平税制の是正の代表的なものである医師優遇税制は本格的に是正されなければいけない、こういう考えを持つわけであります。  大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、これはどういう段取りで全廃の方向に持っていこうとされておられるのか、この点を伺いたい。
  106. 金子一平

    金子(一)国務大臣 西岡さん、これは非常に甘くした、政府税調より相当後退したような御印象で議論を進めていらっしゃいまするけれども、実際は相当厳しい案だと私は思っているのです。政府税調と今度の政府案との控除額の差額は、四千万円以上の収入金の者で百九十万円くらいの差だけでございまして、今日、全国九万六千人の個人開業医があると思いますが、一人当たりの所得税がふえる計算を申しますと、大体百万円くらいになるわけでございます。細かい数字はまた政府委員から申し上げさせてもよろしいのでございまするけれども、そういうことで、必ずしもおっしゃるように骨抜き案だとは私は考えておりません。  それで、とにかく二十五年間この制度が続いたのでございまするから、この際控除額を一気かせいにゼロにしろというような行き方は、これは現実問題としてできるわけではございません。やはり全国の開業医のそれぞれの夜間の診療あるいは休日の診療というような公共性も相当見てやらなければいけませんし、そういったことをあわせ考えて、今度御提案いたしておりまするような五段階の案にいたしたわけでございますので、当分の間ということでこの制度を進めてまいりたい。今後の改正をいつやるかというようなことはまだ時期的には考えておりません。
  107. 西岡武夫

    西岡委員 それでは、政府としては今回出されたこの五段階による是正案というものを当分続けていかれるお考えというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  108. 金子一平

    金子(一)国務大臣 当分の間このままで進めたい、かように考えております。
  109. 西岡武夫

    西岡委員 会計検査院においでをいただいておるわけでございますが、会計検査院昭和五十一年度決算の検査報告によりますと、医師の実際経費の率は平均で五二%となる、そうしてこれによって計算をされた、これは調査した数は全部ではないわけですけれども、減税額を計算すると平均で七百万円になる、これと特例を受けている医師の数を推計して掛け合わせると、減税額は四千六百九十億円になるという報告を出しておられるわけでありますが、それに間違いはございませんか。確認だけさせていただきます。
  110. 知野虎雄

    ○知野会計検査院長 七二%の経費率を適用した医師のうちで所得が一千万円以上の者千六百九十六名につきまして試算をいたしましたら、所得税の軽減額が一人七百万円になるということを申したわけでございます。
  111. 西岡武夫

    西岡委員 もちろん推計で非常に大ざっぱな数字だということでございましょうけれども政府が出しておられますこれは、予算委員会における五十三年度の資料でございますけれども、医師税制によって減税されている、減収になっている分は二千二百六十億円というふうに出ております。いまの会計検査院の数字とは非常に差があるわけでありますが、この点、大蔵大臣、どう解釈したらよろしいのでしょうか。
  112. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 いまお話のございましたように、五十三年度の租税特別措置による減収額の見込み額というものにつきまして私ども国会にもお出しをいたしました資料によりますと、二千二百六十億円という減収でございます。この減収額の計算というのは、実は一人ごとにやらなければならないわけでございますが、現在七二%の課税の特例の適用を受けております医療保健業の方方につきまして平均の所得を出しまして、その平均の所得に、この特例によって軽減されているであろうと推定される所得を乗せてみるわけでございます。そこで、所得税でございますから累進率がやられますので、累進の上積み税額と現在掛けております税率との差、それを推計によって合計いたしますと二千二百六十億円になるわけでございます。平均の医療保健業の方々の収入金額が多い、したがって所得金額も多い、特例の額が多いということになりますと、多い部分だけを取り出して足しますと、累進構造でございますから、当然一人当たりの軽減額というのは大きく出てまいりますから、全体の医業十万人の方々について計算をいたしますと、私どもの申し上げておりますように二千二百六十億円という推計になるわけでございます。
  113. 西岡武夫

    西岡委員 それでは大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、今回の税制改正によっての増収の見込み額が初年度七百三十億、平年度でこれを千億というふうに見込んでおられます。この具体的な数字で増収額を見込んでおられる以上、所得階層別の医師の数というものが正確に出ているはずだと思いますが、資料を御提出をいただけますでしょうか。
  114. 高橋元

    ○高橋(元)政府委員 社会保険診療報酬の収入階層別の医業の分布でございますが、現在所得税の申告書等によりまして推計精査中でございます。大体のところで申し上げますと、五千万円以上の収入のあります医療保健業の方々の割合は四分の一程度でございます。三千万円に満たない方々が二分の一であろうと思います。その残りの四分の一の方が三千万と五千万の間だということを申し上げますが、細かい数字は現在精査を進めておりますので、整い次第御提出をいたします。
  115. 西岡武夫

    西岡委員 私どもは、以上問題を指摘をいたしましたように、今回の政府の改正案では納得できない、これを少なくとも五十年の政府税調の答申の線まで前進させて医師税制の全廃の時期を明示すべきである、このように考えます。この医師税制の問題だけではなくて租税特別措置法全体の見直しが必要であるというふうに考えるわけでありますが、たとえば利子配当分離課税について昨年の通常国会におきまして村山大蔵大臣は、これは五十五年度までの時限で定められている法律がございますので、五十六年度以降廃止する方向で検討しているという答弁がございました。そこで大蔵大臣、この利子配当分離課税については現時点ではどのようにこれを取り扱われるか、お答えをいただきたい。
  116. 金子一平

    金子(一)国務大臣 利子配当分離課税につきましては、ただいま西岡さんからお話のございましたように五十五年で期限切れになりますから、次の通常国会には総合課税について御提案申し上げられるつもりで、いま鋭意政府税調と大蔵当局で作業を詰めておる段階であるということを申し上げておきます。
  117. 西岡武夫

    西岡委員 一般消費税の導入の問題を大いに国会論議をしてもらいたいということを政府がおっしゃっているわけですけれども、この一般消費税の導入ということを前提とした論議をする前に、もう一つ基本的な論議が欠けているという感じがいたします。  それは、わが国の税制はシャウプ税制、シャウプ勧告による税制以来、直接税を主体としたものになってきております。これは五十四年度の予算で申しますと、税収のうち直接税は六七・三%、間接税が三二・七%というふうな比率になっているわけでございますが、これからのわが国の税制を一体直接税を主体とすべきなのか、間接税を主体とすべきなのかという論議が、まだ本格的に行われていないと思うのです。これが一般消費税の導入という論議の前にまずなされるべきではないのか。この点、大蔵大臣どうお考えですか。
  118. 金子一平

    金子(一)国務大臣 大変大事な点を西岡さんに御指摘いただいたわけでございまするけれども、高度成長時代と中成長に入った今日とでは、税制のあり方をもう一度見直さないと財政を支える基盤が弱くなるのじゃないかという感じがいたしておるのでございます。私は、高度成長時代には所得税、法人税中心で結構賄えましたけれども、今日のような時代に入りますと少なくとも直間の比率は五〇、五〇くらいが理想的ではなかろうか。現に三%、三・五%の経済成長をやっておるECの各国は、フランスが間接税七割、直接税三割、その他の国で大体五、五くらいで財政を賄っているような現状、これが一番はっきりした実証になると思うのでございますが、そういうことでもう一度税制をいま見直す時期に来ておる。そういう意味において一般消費税、まあ日本にはなじみの少ない消費税でございまするけれども、この際ひとつ御検討いただきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  119. 西岡武夫

    西岡委員 一般消費税の導入の前に私がお尋ねをしておりますのは、税のあり方、税制のあり方として、直接税を主体とするものから間接税に重点を移していくのだ、そうあるべきなのかどうなのか。本来税収というものは直接税を主体とすべきなのではないかという意見もあるわけでありまして、その点の論議が欠落しているのではないかということを私はお尋ねをしているわけで、その点はどうお考えですか。
  120. 金子一平

    金子(一)国務大臣 累進課税による所得税は非常に公平な税制であることは申すまでもございません。しかし、だんだんと所得差というものが小さくなり、伸び方が小さくなってきておるのでございますから、所得の捕捉による課税の公正を考えると同時に、今度は別の面から、それはもちろんやらなければいかぬことでございますけれども、消費の大きさによる課税の公正というものもあわせ考えてしかるべきではないかというのが間接税の議論であろうと私は思います。
  121. 西岡武夫

    西岡委員 私どもとしては、いま申し上げたような視点から今国会を通じて税のあり方の基本の論議を深めていかなければいけない、その上で一般消費税の導入という問題が論議の対象に初めてなり得る、このように認識をいたしております。  そこで行政改革の問題で、これはやはり具体的に、たとえば機構を削減するという場合でも、建設省と国土庁という二つの役所があるというようなことが一体いいのだろうか、あるいは科学技術の振興という問題を考えたときに、この科学技術の振興といろいろな諸施策、学術の基本的な研究という問題とのかかわりから言えば、これを独立させておくということが果たしていいのか、いろいろな視点があると思います。それからまた外郭団体、公団、公社等の問題についても、もうそろそろ本格的にこれらの整理統合ということを考えていかなければいけないのではないか。そういう時期が来ていると私どもは認識をいたしております。  たとえば一つの例を挙げてみますと、道路公団でございますけれども日本道路公団あるいは首都圏の道路公団、阪神の道路公団というふうにこれが分かれている。こうしたものも統合の対象になり得るのではないか。先ほど総理は、役所の機構というものをいじるのはなかなか大変なことだ、定員を抑制していくということだけでも大変だということを指摘されたわけですけれども、確かに国家公務員については、抑制の効果がこれまでに削減というところまでは十分にはいっておりませんけれども、抑制の努力はしてこられていると思います。ところがその反面、外側の公社、公団等においては人員が拡大をしているというような実態もあるわけでありまして、こうした問題について行管庁の長官はどのようにお考えなのか、いま具体的に例を挙げた道路公団等の問題についての御所見を承りたいと思います。
  122. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいま御指摘になりました公団の中で、道路公団と阪神道路公団、首都圏道路公団、これの統合についてどう考えるかというお話でございますが、この中で首都圏道路公団と阪神道路公団は、これは自治体が参加をしておりまして、そうしてまた局地的な高速道路を扱っておる。なおまた、特に地方との関連が非常に深くて、いろんな面において地方の協力を得なければならぬというふうな、やや性質の異なったものがございますので、この三つを一つにするという点につきましては、これはよほど検討を加えていかなければならぬのではないか、かようにただいまのところでは考えておる次第でございます。  なお、公団、特殊法人につきまして、相当人数なんかが増しているのじゃないかという御指摘がございました。若干増しておりますけれども、特殊法人の数はここのところ十一、二年の間にはその数は増しておりません。むしろ二つばかり減っておるというふうな状況でございます。しかし、特殊法人の人員の抑制等につきましては、これは国家公務員と同様な考え方をもってやっていくという方針になっておりますが、いま少しくこれについてはもっと掘り下げてやっていかなければならぬというふうな考えを持っておる次第でございます。
  123. 中野四郎

    ○中野国務大臣 国土庁の問題が出ましたので一言。  中央省庁の統合の問題については無論お答えする立場ではございません。しかし、国土庁は国土行政全般にわたる総合的な企画調整官庁として着実にその機能を果たしてきたところであります。個別の事業実施官庁である建設省との統合を行うことは、国土政策を一体的に推進する立場から適当ではないと考えておる次第であります。
  124. 西岡武夫

    西岡委員 やはり行政改革というものは、よほどの思い切った決断を行わなければこれはなかなかできないことでありまして、そのことは先ほど来るる申し上げたところで、国民の皆さん方に税の負担増を求めるということを大平内閣としては述べておられるわけでありますから、個々のこうした具体的な例、いま私が申し上げたのは一つの例でしかございません。日本住宅公団と宅地開発公団というようなものも、これは二つあるというのは一体どうなんだろうかなというような、こうした問題はたくさん存在をしているわけでありまして、その一つの例として申し上げたわけで、どうか総理としても、こうした問題に果敢にお取り組みをいただきたいと要望を申し上げる次第でございます。そうでなければ、私どもはもちろん一般消費税の導入には反対という立場をとるわけでございまして、大平総理の行政改革、不公平税制の是正にかける御努力を私どもとしては見守りたい、このように考えるわけでございます。  次に、雇用の問題について、時間の関係もございますので一点だけお答えをお願いいたします。  わが国の中長期の重要な課題の一つは、高齢化社会における雇用問題であるというふうに認識をいたしております。今後、雇用問題というのは、教育制度全体とのかかわりの中でも当然これは位置づけられなければならない、このように考えております。しかし、当面の問題として中高年齢層を中心とした働く場を確保していくのだという、雇用創出という問題が緊急の課題である、このように考えるわけでありまして、昨四日に政策推進労組会議が発表をされております離職者の追跡調査によりますと、調査の対象七百八十六人の平均年齢五十一歳、この半数の人が再就職ができないでいる。就職できた人でも、離職時よりも月約五万円も賃金がダウンしているというような調査の結果も出ているわけでございます。  そこで、総理お尋ねをいたしますが、さきに同盟が提唱をされました雇用創出機構の創設についてでございます。この内容をかいつまんで申しますと、政府と民間の出資によって、政府、労働組合、経営者の三者から成る新しい機関をつくって、新しい分野での雇用の開拓を行う、そこでつくり出された事業については中高年齢労働者を七〇%以上雇用するということを条件にして民間にその経営はゆだねる、政府は中高年労働者の賃金の三分の一を助成する等という内容になっているわけであります。  この同盟の提案については、第一に、これまでの雇用対策は失業の予防、失業者の生活保障というようなことが中心であったわけでありますけれども政府も五十四年度の予算においてはかなり充実した施策を盛り込んでおられますが、雇用の場をつくり出すという意味で積極的な意義をこの同盟の提案は持っているということが第一点であります。第二点は、民間の活力を中心とした、いわゆる官僚主導型でない雇用創出の機関をつくりたいという点は評価できるのではないか。第三点として、こうした新しい機関をつくることによって政労使の三者がこれに参加をするということになるわけでありますから、これからの日本の社会のあり方一つとして大きな課題の一つでもあります働く方々の参加という問題について、その是非を含めた新しい視点での試みの場となるのではないか。こういうような点から、私どもは同盟のこの具体的な提案を注目をし、一定の評価を下しているわけであります。  総理、この具体的な同盟の提案について、これを受けとめて御検討になるお考えはないかどうか、これは総理からお答えをいただきたいと思います。
  125. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 政府の雇用対策につきまして、一定の評価をいただいたことは感謝をいたします。  いまの雇用創出の同盟の発案あるいは政策労組等の発案につきましては、私どもも十分その意見をいま承っております。いまお話のございましたとおり、民間の活力を利用するという点についてはわれわれも非常にいい案だと思います。また、雇用創出という機構をつくるということもユニークなものでございますが、ただ、私どもは前々から申し上げておりますとおり、雇用問題は政府だけでできない。したがって、民間の方々の英知を集めてやりたいという観点から、今度も政府予算案の中で雇用問題政策会議なるものを提唱しております。これは、総理大臣が各界の方々にお集まりいただきまして、雇用政策について積極的な御意見を承り、それをもとにしてやっていこうということでございます。ですから、同盟の提出されている案とわれわれの考えている案とは、趣旨においては全く同感でございます。ただ、機構をつくる、その機構をつくるというところが非常に問題でございまして、どういう機構をつくってどういうことをするのか、ここら辺はよほど考えてやりませんと屋上屋を重ねるようなことになってもいかぬのではないか、つくること自体に意義があるのではなくて、つくって何をするか、内容の方をもう少し詰めてみたいというような観点から、この問題についてはいま積極的に検討しているところでございます。
  126. 西岡武夫

    西岡委員 この問題について政府として積極的にいま検討して、前向きにこれに取り組みたいという御答弁と理解をいたします。雇用問題については多くの問題がございますけれども、次の新自由クラブの質問の時間にさらに重ねて質問をすることにいたしまして、次の問題に移らせていただきます。  総理は、施政方針演説の冒頭においてその時代認識を述べられて、現代を文化の時代の到来というふうに規定をされたわけであります。そうして、あらゆる施策の基本理念に文化の重視、人間性の回復を据える方針を明らかにされたわけでありますが、総理の文化の重視というお考えの、もう少し具体的なお考えというものをぜひ初めに承っておきたいと思います。
  127. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 わが国が将来にわたりまして発展を続け、活力に富んだ公正な社会を築いていくためには、経済的な豊かさばかりでなく、文化重視の観点から精神的な内面の充実に配慮していかなければならないと思います。広く教育、学術、文化、芸術等の振興を図ることが重要であると考えます。そういう意味で、五十四年度予算につきましてもそれなりの努力をいたしたわけでございますが、今後もさらにそこに力点を置いた施策を重視していきたいと考えております。
  128. 西岡武夫

    西岡委員 総理が教育、文化、学術、芸術を尊重していくという姿勢を示されたこと、新自由クラブとしては全く同感でございまして、賛意を表します。しかし、それを具体化するのは、総理もいまおっしゃったように予算の問題でございまして、大平内閣が教育、文化にどれだけの力を入れているかということは、まさに予算の額によっても示されなければいけない、このように考えます。ところが残念なことに、ここ数年来、政府が取り組んでこられた文部省、文化庁等の予算、これは全体の予算の中で年々比率が低下してきている。大平総理の組まれた予算案においても五十三年度より五十四年度は、ごくわずかでございますけれども、さらに比重は低下してきている。文化庁の予算で申しますと、全体の予算の千分の一ぐらいしか文化庁の予算は組まれていない。もちろん、これを一遍に二倍も三倍もにするというのはなかなか困難だということなんでしょうけれども、しかしそれぐらいのことをやらなければ、文化の時代の到来であるということを具体的に政治の場で裏づけていく、そういう御認識を裏づけていくということにはならないのではないか。そういう意味では、私どもとしてはまことに予算の内容には不満でございますが、この点の総理の御見解を承りたいと思います。
  129. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 予算の増額ということ、これはやはり経済力が伸びまして、その果実を財政が受けて、それを予算化していくというところから始まるわけでございますけれども、御案内のように経済成長減速時代に入りまして、それから同時に、経済の運営に関連して、公害でございますとか社会の解体現象でございますとか、もろもろの問題が出てまいりましたので、そういった問題をどのような手法で処理するかという場合に、私は、どうしても文化重視の考え方でいかなければならない、すなわち、言いかえれば、予算がふえるということだけでできないわけでございますので、そうでない面を文化の重視で埋めていかなければならない、またわずかの予算も文化、哲学で生かしていかなければならぬという意味で、必ずしも西岡さんの言われる予算の金額と比例的に文化重視の政策が出ていないかもしれませんけれども、そこはそういう考え方で編成いたしておる、今後も努力をするということで御理解を賜りたいと思います。
  130. 西岡武夫

    西岡委員 私も財政の危機ということを初めに申し上げたわけでございますから、いたずらに予算の金額を重ねればいいということを申し上げているわけではありません。そこで、教育、文化の関係予算が非常に限られた財源の中でどれだけの比重を占めているかという率で申し上げているわけでございます。この点は総理の正しい御認識をいただきたい。総理が文化の時代の到来と言われるにしては、重点が教育、文化の方にどうも予算としては移っていないということを指摘をしているわけでございまして、御理解をいただきたいと思います。  教育の重要性について、これはもうだれも否定するものではないわけでありますが、最近非常に少年の犯罪というものがふえてきている。これをどうとらえるかということは、教育のあり方、これは学校のみならず家庭、社会全体の問題として私どもは真剣に取り組まなければいけない問題であると考えております。  数字で申しますと、十四歳から二十歳未満のいわゆる少年の主要な刑法犯についての傾向をたどってみますと、戦後いままでに二回少年犯罪というものが増加した時期がございました。これは昭和二十六年と昭和三十九年、この二つのピークがあったわけでございます。そのときに主要刑法犯の少年の人数は、昭和二十六年の時点で千人当たり十二・一人、昭和三十九年の第二のピーク時で千人当たり十二名となっておりました。ところが、ここ数年来、第三のピーク時を形成するという方向で数字が示されておりまして、とうとう五十三年、これはきわめて新しい数字でございますが、千人当たり十三・六人という数字を示したわけであります。これはもちろん戦後最高ということになります。しかもその年齢の構成を見てみますと、十五歳が全体の二三・九%、十六歳が二二%、十四歳が二〇%、約でございますが、こういうふうに十四、十五、十六というところに少年犯罪が激増しているという傾向が出てきております。この問題は非常に多くの原因があるわけでございますから、一元的にこれをとらえることは不可能だと思います。しかし、わが国の将来、まさに青少年の双肩にかかっているわけでありまして、こういうきわめて遺憾な傾向というものを政治が放置すべきではない。もっと真剣にこれを受けとめなければいけないのではないか。  私どもは、昨年、一昨年、通常国会を通じてたびたび指摘をしてまいっておりますのは、一つの原因として、現在の学校の六・三・三・四という単線型の学校制度にも多くの問題があるのではないかということを指摘してまいりました。特に十五歳は学年で申しますと、中学校の三年でございます。十五歳前後の少年の犯罪というものが激増しているということと学校制度とは、これは直接的に結びつくものでないにしても、間接的にはきわめて因果関係の深いものがあるのではないだろうか。そういう点からも、戦後三十年ちょうど新しい学制がスタートいたしまして経過した今日、そろそろ私どもは未来に向かって、その未来を開拓できる教育の諸制度を完備すべきではないか、そういう時期が来ているのではないかということをしばしば提案をし、政府の見解をただしてきたところでございます。  中教審も、昭和四十六年に答申を出して、現在の六・三・三・四の学校制度を改革すべきである、これは当時「先導的試行」という言葉も使って、手をつけてみるべきであるという答申を出しているわけでありますが、その後文部省としては何らこれに具体的に取り組んでおられていない。これでは、一体学校教育全体を新しい時代の中でどう位置づけようとするのか、文部省、政府の教育についての姿勢が根本的に私は疑われる、疑わざるを得ないと思うわけであります。これは、きのうきょう起こった問題ではないわけでありまして、こうした問題にやはり政府が的確な方針というものを国民に向かって示すべき時期が来ているのではないか。学校制度全体について手をつけるお考えが全くないのかどうか、文部大臣の基本的なお考え方だけ簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  131. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 ただいまの西岡さんの御質問でございますが、私は六・三制によってわが国の教育が非常に普及したことはお認めいただけると思うのです。特に中学校までが義務制になり、高等学校がいま九三%、大学は四割も進学するようになったこの事実はお認めいただきたいと思うのですが、いまいろいろ問題が起きていることは私もよく承知しております。特に非行少年の多いことは、私ども本当に心を暗くしているものでございますが、これについて、お話のように中教審でも先導的試行をやったわけですから、教育の改善について努力を文部省としては何もしてないわけじゃなくて、いまの教育内容がむずかし過ぎる、いわゆる落ちこぼれができるのも無理もないというので、教育内容を精選して基礎的、基本的なものをしっかり教えよう、そして人間性豊かな教育をしようというので、せっかく去年小、中、高の教育課程の大改正をいたしました。私はこの改正で思い切って教育の前進を図りたいと思って、やはりいまお話しのように日本には資源がないのですから、教育、学術、文化、これは大事にしなければならぬと思っておりますので、そういう意味で六・三制の根本に触れることはいましばらく待っていただいて、教育課程の改正を行ったからこれで思い切ってやっていきたいと思っておりますから、しばらくお待ちいただきたいと思います。
  132. 西岡武夫

    西岡委員 私が申し上げているのは、いまわが国は非常に社会全体が変化の時期を迎えていると思います。その中で、まさに総理は文化の時代の到来ということを言われたわけでありまして、教育の制度も、いままでのような学校教育を中心とした教育制度では社会の要請にこたえることにはなっていない。人間の寿命が戦後三十年ばかりの間に二十五歳も延びた。その中で、一体国民一人一人がどのような生涯設計をするのかということがこれからの非常に大きな問題になってきている。そうした中で、国民一人一人の能力、多様な個性というものをどのように開発していくかということが教育の制度全体に課せられた大きな役割りであろう。そのように考えるときに、いままでのような形での閉鎖的な学校制度の体系では、総理の言われる文化の時代には対応できないのではないかという意味で、六・三・三・四の学校制度の改革も私どもは提案をしているわけでありまして、いまの文部大臣の御答弁ではどうも私どもには理解できない、納得できないところでございます。  そこで、先般日教組の愼委員長が一月の二十六日、二十五日の日でしたか、日教組の教育研究全国集会において、御自分たちが違法なストライキを乱発されて、そのことが子供たちにどんなに悪影響を及ぼしているかということも全くたな上げして、父母も考えてもらいたい、教育の再考を求めるというようなあいさつを愼枝委員長はされておられるわけでありますが、もちろん家庭における教育という問題も私どもが真剣に考えなければいけない課題であり、しかし愼枝委員長の指摘ではあるけれども、日教組自体が今日までに社会の秩序というものを教師みずからが破壊するというようなことをすることによって、子供たちにどれだけの悪影響を与えてきたか、はかり知れないものがある。こうした問題について、文部大臣はどのようにお考えなのか。  またそのことと関連して、教師の資質を向上させるということがこれからのわが国の教育にとっては残された重大な課題の一つであると思いますが、教員の養成、教員の資質を向上するという意味から、教員免許法の改正という問題も取り組まなければいけない時期が来ていると私は考えます。この点について文部大臣の御所見を承りたい。
  133. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 ただいまの西岡さんの、先般行われた日教組の研究集会をどう思うかというお尋ねでございますが、私も、あの教師の自主編成と言ってみたりあるいは倫理綱領を持ち出したりして、まことに遺憾に思っておるのでございます。やはり教育というものは、教師みずからが反省して、そして子供たちを育てるということが私は根本だと思うので、親の責任だけでなくて、一番大事なのは教師みずからの責任だと思う。家庭も大事だし社会も大事ですけれども、教師みずからが反省して、そしてりっぱな教育をするように心がけてほしいと思います。  いまお話しの教員についてどう思うかというお話でございますが、いまの文部省としても教員養成は一番大事な問題なので、戦後開放制になりましたので、その原則は文部省も尊重しておりますけれども、特に教員養成について先生方が自主的な研修をする予算を文部省でも組むとか、あるいは海外に旅行するとか、教育研究団体の研究とか、そういう面で積極的に助成をしているのでございます。  特に教員については、四十九年から資格検定制度を拡充する、それから昭和五十三年度からは御承知のとおり新教育大学を置きましたので、ここで、大学院において先生の研修を強化していく、こういうような措置でやっております。  それからいま免許状の制度が出ましたが、五十四年度からは実習問題、教員実習、これは非常にむずかしい問題ですが、この問題に取り組んで、制度を含めて改善に努力したい。その他、お話しの教員免許状の種類とか、あるいは資格の基準とかいろいろ問題がございますが、これはもう少し検討させていただきたいと思っています。
  134. 西岡武夫

    西岡委員 教員免許法の改正に文部省として取り組むお考えはないかどうかということをお尋ねしているのです。
  135. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 いま免許法の改善お話が出ましたが、少なくとも教育実習についてはいまの教育実習では困りますので、制度を含めて改善する覚悟で五十四年度から着手する意向でございます。
  136. 西岡武夫

    西岡委員 大臣の答弁はお答えになっていないわけでございまして、教師の資質を向上するという制度的な基本は、養成の制度の問題と教員の免許のあり方の問題、最近の教員免許というのは、相当の数の方々が教員免許をいとも簡単に取られるという状況になっているわけであって、国民全体の高学歴化が進んでいっているという中で、教員の資質というものがいまの教員免許法のもとでは確保され得ないと考えているわけです。この問題にやはり文部省が真剣に取り組んでいただきたいということを強く要望をいたします。総理もどうかこの問題についての御認識を持っていただきたいと思うわけでございます。  それからもう一点、教育の問題について文部省の考え方、また総理のお考えを承りたいと思います。  大学の紛争が全国を揺るがしてからちょうど十年経過したわけでございますが、その間一体わが国の大学、特に国立大学がどのように改革されたか、私は、ほとんど見るべき改革はない、一、二の例を除いて日本の大学が改革されたとは考えておりません。それのみならず、先日も塚本民社党書記長のお話にもございましたように、東大等に見られる不法な行為が横行している。これが残念ながら大学の実態であると思います。このことをいつまで政府は放置されるのか。現在の大学は、特に国立大学についてはその管理運営について制度が完備されていない。教育公務員特例法という法律の中で非常に便宜的に読みかえ規定というものを設けて、大学の管理運営の責任というものが、仮の姿で教授会がこれに当たるという形だけをとっていて、わが国の学校教育の制度の中で大学の管理運営の責任の所在が完備されていないというところに、特に国立大学における乱脈の原因があると思っております。  ここに一つ資料がございますが、これは東京大学の三鷹寮あるいはその他の大学の寮とか構内がどんなに乱脈になっているか。これはゲバ棒とかこうしたものが──総理、これは東大の三鷹寮ですが、ちょっとごらんいただきたい。こうした状態が全く放置されている。こうしたことについて、文部大臣どうお考えでしょうか。
  137. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 いま西岡さんからお話しのように、国立大学の現状については私どもも非常に心配しておるのでありまして、先般、お話しのように臨時措置法が制定され、すでにその後、あの当時は十二大学、二十九学部で問題が起きておりましたが、最近は大分鎮静化しまして、六大学、十何学部になったのであります。その点は前進しましたけれどもお話しのようにまだ十分に整備されておりません。これは私も非常に遺憾に思っておるのでございますが、今後、大学当局と話し合って改善に努力をいたしたいと思っております。
  138. 西岡武夫

    西岡委員 大臣にお尋ねをいたしておりますのは、現在の制度の不備、大学の管理運営について新しい制度考える必要があるのではないかということをお尋ねしておるわけです。これについて御答弁をいただきたい。
  139. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、確かに問題があることは私どももよく承知しておりますが、できるだけ大学の自主的改革によって改善できれば一番望ましいと思っております。しばらくその推移を見させていただきたいと思います。
  140. 西岡武夫

    西岡委員 総理、教育の制度の改革というものは、そう一朝一夕にしてできるものではない。そのことは事実であろうと思います。大学紛争の問題にいたしましても、これが起こってからすでに十年たっておるわけです。そのときのいろいろな問題の反省というものは当然関係者の間でも行われて、問題点も指摘されておるわけでありますが、十年たってなおこれが改善されないということであれば、やはり政治が教育の諸制度について責任を負うということが当然ではないだろうか。そうしたことを一つ一つ処理していくということがまさに基本的に求められている、このように考えますが、総理いかがでしょうか。
  141. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 御主張されておることはよく理解できますが、この十年間の大学管理の状況を見ておりますと、はかばかしい改善の徴候が見えないことは非常に残念でございます。しかし、ようやく最近になりまして、東京大学等におきましても、大学当局が問題を自主的に取り上げていく傾向が出てまいりましたのでございまして、私ども、大学当局が自治管理を新しい方向にやっていただくことを期待いたしますし、そういう方向で大学当局を指導していきたいと思います。したがって、制度の改革の問題も問題としてありましょうけれども、現行制度で精いっぱいやってみた上でのことにさせていただきたいと思うのでございまして、先ほど文部大臣がおっしゃいましたとおり、しばらく努力の経過を見させていただきたいと思います。
  142. 西岡武夫

    西岡委員 大原委員から関連質問がございますので、私の質問は以上で終わらせていただきますが、総理が言われた時代認識としての文化の時代の到来、これにふさわしい具体的な対応というものをぜひやっていただきたい。これは言葉ではなくて、実行していただきたいと思います。大平総理の文化の時代、文化を重視していくという基本的な政治姿勢に新自由クラブは全面的に賛成でございますので、どうかこれを具体的な施策として強力に推進をしていただくということを強く要望をいたしまして、あと同僚の大原委員からの関連質問に譲りたいと思います。
  143. 竹下登

    竹下委員長 この際、関連質疑の申し出があります。西岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大原一三君。
  144. 大原一三

    ○大原(一)委員 私は、主として経済問題についてお伺いしたがったのでありますけれども、時間がありませんので……。  新経済社会七カ年計画基本構想、これをざっと読みますと、いままでと非常に違ったタッチで書かれている部分があるわけであります。いまそれを簡単に読んでみますと、八ページでございますが、「構造変化の過程にある世界経済の先行きは、引き続き流動的であり、国内においても経済の各分野で、現在なお不均衡が存在し、また、厳しい構造変化を迫られている状況下では、適切な内需の拡大を図る各般の政策努力を行う必要はあるが、それだけでは問題の解決を図ることは困難な情勢であって、より長期的な視野に立った構造政策の推進が必要」であるということが指摘されてあります。これはいままでの長期計画の中にも恐らくなかった表現でありまして、これを書かれたあるいは審議されたどなたでも結構ですが、構造政策なるものの定義をここで御説明いただきたいと思います。
  145. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 お答えいたします。  ただいま構造政策という文字が出ましたが、私どもの書いております構造政策は、経済の枠組みを変えていくことを意図して政策を行うということではなくて、構造の変化が進みます中で、それに対応する政策ということで書かれておる次第でございます。
  146. 大原一三

    ○大原(一)委員 どうもその説明は、後の文とのくだりで実はつながらないわけであります。たとえば九ページでは「長期的な視野に立って構造対策に配慮した多面的な内容を持つ新たな政策体系の樹立が必要」であると書いてあります。したがって、いまの御説明はこの文章とつながらない。「新たな政策体系」とは一体何ぞやということをお聞きしたいのでございますが、これを御説明ください。
  147. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 言葉が足りませんでしたかもしれませんが、構造の変化が推移いたします中で、従来の政策体系ではこれに対応できないものが多い。これに対して新しい政策体系を用意して対応する、こういう意味でございます。
  148. 大原一三

    ○大原(一)委員 総論的にはその程度になると思うのでありますが、この長期計画は大平総理の演説といろいろの部分でマッチしている、このまま取り入れている、ないしは大平構想がそっくりここに取り入れられていると見られる節がたくさんあるわけであります。  そこで、この長期計画においては「経済各部門の不均衡の是正」、これを第一点にとらえ、第二番目が「産業構造の転換」、それから第三番目が「新しい日本型福祉社会の実現」ということをスローガンに置いて政策手法の転換を図っていきたい。  それじゃ、その政策手法の転換の中身は一体何であるかといってずっと見ていきますと、完全雇用が後半において実現されるということを一つの目標に置いております。それから六十年度の完全失業率を一・七%程度以下とするという目標が置かれております。社会保障については、社会保障の体系的な整備を進める。体系的な整備を進めつつ、現在の社会保障負担を九%から一一%ぐらいに引き上げる。それから省エネルギー政策をとっていかなければならない。さらに都市の再開発により土地利用を高度化して、生活環境の改善を図る。その次に出てまいりますのは、為替管理の自由化、国際金融の円滑化、円の国際化を進める。その次に出てまいりますのが、生産性が高く強い体質の農業を実現する。それから、これは財政手法とも関連しますが、民間資金の活用を図るための方途を検討する。さらに財政支出につきましては、ただいま幹事長が言いましたように、効率化を進める。最後に、一般消費税を五十五年度から実現できるように導入したいということ。それから金利機能の弾力化、自由化。一番最後に、既存の政策手段のみでは対応し得ない場合も予想される、このため新たな政策手段の展開を図る必要があるということを、もう一度最後のくだりで強調しているわけであります。  企画庁長官、お聞きしますけれども、これは新しい政策体系といい、新しい政策手法といい、私、読んでみましても全く何のことやらわからないわけであります。時間がありましたら、経済各分野につきまして一々その政策手法を御質問申し上げたかったのでありますが、時間がございませんので、いずれ後日の総括質問に譲るといたしまして、その点について長官の御意見を承りたいと思います。
  149. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 お答え申し上げます。  いまあなたがずっとお読み上げになりましたのがいわゆる目標でございまして、われわれといたしましては、この目標の中で各省それぞれにおいて政策の具体化を図ろうということでございまして、これはまだ多少時間がかかるかもしれません。ことしの秋ぐらいまでと言いたいところでございますが、五カ月ぐらいの間になるべくそれをまとめて、さらにそれを皆様の御批判をいただきたいというふうに考えております。  それから、ただ一つ申し上げたいことは、この七カ年という計画は、大体日本経済を世界情勢にうまくマッチさせてソフトランディングさせたいということでありまして、したがいまして、非常に短兵急な日本経済社会の改革ではないのであって、これを緩やかなカーブの中で持っていこうということが基本的な発想になっておりますので、一言申し添えておきます。
  150. 大原一三

    ○大原(一)委員 経済各分野について、いろいろ構想の転換を私の考えも申し上げ、御要請を申し上げたかったのでありますが、時間がありませんので、一点だけ申し上げたいと思います。  たとえば、いままでの財政手法でございますけれども、これはすぐに増税という考え方へ移っていっていると私はこれを読みます。たとえばいま幹事長が指摘しました行政機構の簡素化の問題につきましても、細かい問題はいろいろ提言されていますけれども、大きな行政機構の改革、目ぼしいものはまずない。そこで財政が非常に困ってきた、これからはやはり行政経費の節約を当然一方でやりながら、消費税導入によって増税を図らなければならないという考え方でございます。  そこで、私は、いま日本経済をざっと見回しますと、非常にたくさんな不完全雇用が介在していると思うのです。  それは、第一番目は失業でございます。したがって、機械も遊んでいるわけでございます。機械の問題はちょっと種類が違いますが、人が遊んでいる。  それから第二番目は、貯蓄が遊んでおります。大蔵省は、金が困りました、お金がございませんとおっしゃっているけれども、民間は貯蓄超過経済と言われる。  さらにまた一方、外的不均衡、対外不均衡という形で三百億ドルのドルがだんだんたまっていく。恐らく今年度の経常収支の黒字は百四、五十億ドルを上回る、百六十億ドルにいく可能性もあると思います。そういう形で外貨はきわめてたくさんだまっていく。そういう形もやはり一つの不完全雇用経済ではないかと思うのです。  もう一方は国土の問題でございます。東京は御承知のとおり日本の面積の〇・七%、そこへ公共投資の一二%を注入しておるという。先日もどなたかおっしゃいましたけれども、投資の限界効率というものは大都市によって非常に阻害されているということです。大平構想にありますところのいわゆる田園都市構想。これからの経済というものはやはりローカリズムの時代、地方分散の時代だと私は思うのです。そういう過密と過疎のアンバランス、これも私はきわめて大きな不完全雇用状態ではないかと思うのです。  そういった状況の中で一番しっかりしなければならぬ財政が借金財政でもう首が回らない、しかも経済は貯蓄超過経済であるということになりますと、財政手法の新しい転換しかないと私は思います。それはどういうことかといいますと、そこに貯蓄があるのですから、いままでの財政の手法ですと、元本から調達するという仕組みになっております。元本調達構造と申しますのは、国債は一〇〇%民間資金を借りて、それに利子を払って事業をやるわけであります。さらにまた財投資金になりますと、郵便貯金、これも国債と同じことでありまして、元本から調達して、それを回してお金を使おうとするから財政が行き詰まってしまうわけなんです。  そこで、思い切って民間に移譲できるものは移譲し、さらにまた、国が資金の誘導政策によって民間資金を活用できる手法があれば、そういう手法を使ったらどうであろうか。そういうことになりますと、利子補給制度によって民間資金を誘導していくという財政の新しい展開が一つ考え方ではないかと私は思うのであります。大蔵大臣、いかがでございますか。
  151. 金子一平

    金子(一)国務大臣 大原さんの言われるように、従来の財政手法ではなかなか事がうまく運ばない時代になってきた、新しい考え方を何か取り入れるべきじゃないかという点では、いまの利子補給なんか大いに教えられる点がありますが、なおいろいろな問題、何点かございますので、十分詰めてこれからのむずかしい時代に対処してまいりたいと考える次第でございます。
  152. 大原一三

    ○大原(一)委員 利子補給のシステムにも私、二つあると思うのです。  まず第一は、一般会計で現在支出しているものを民間資金に肩がわりできないかという手法であります。これは民間セクターから財政セクターへ持ち込んで民間へ持っていくシステムでありますから、この方法によりまして、現に、現在五十四年度予算では四兆六千億というものを導入しておるのです。十七項目でございますけれども、よく調べてみますと十七ないし十八項目につきまして、四兆数千億の民間資金を活用するために六百億円ぐらいの利子補給制度をやっていらっしゃるわけです。昨年度はそれよりもっと少ない規模でございますが、多少そういう手法の展開が図られているということでございます。  時間がございませんので申し上げますが、第二番目は、現在の百十一の政府関係機関の資金でございます。これは比較的長期であれば採算ベースに合う資金でございますから、これについてはほとんど一〇〇%利子補給制度が可能な仕組みになっておる。その際一%の利子補給でございますと、一億でもって百億の調達ができるわけでございます。二%の利子補給ですと、二億でもって百億の調達が可能であります。三%の利子補給でしたら、三億でもって百億の調達が可能なんです。そういう仕組みを積極的に導入し、そしてむだな現在の政府関係機関を削っていくということは、あわせて総理の言われる民間経済の活力を生かす手法にも通じていくのではないかと私は思うのですね。  先ほど、話がいろいろ絡み合いますけれども、行政機構の簡素化とおっしゃっております。確かに四十三年から国家公務員については定員の削減をずっとやってまいりました。約一万三千人減らして約一万二千人増員、ネットでもって正確には八千人の減になっております。ところが一方政府関係機関におきましてはざる抜けになっているのですね。一般会計で削った分が政府関係機関で大きな増員になっておるのです。行政管理庁にお聞きしますと、政府関係機関の定員削減は行政管理庁の責任じゃなくて、どうも大蔵省の仕事であるというような御説明があるわけでありますが、実は四十四年から現在まで、政府関係機関におきましては五万人の増員が行われておるのですよ。一般会計では七千人、一般会計と特別会計では八千人の減が立っておりますけれども、これはあくまでも見せかけの減であって、政府関係機関で五万人ふえておるのですね。こういう形で、現在の定員削減というものはしり抜けになっておる、かご抜けになっておる。私は、これは全体として定員削減をやるべきであると思うのです。そういう意味で、政府関係機関の仕事をできるだけ民間に移譲するということ。さらにまた行き詰まった国の財政を新たな手法でもって──しかもそこへ不完全雇用があって、お金が山ほどたまっておるものを使えない、使おうとすれば三九%の壁を破る、四〇%にも国債がふえていくというようなことは、やはり新しい角度から導入されていく手法が必要ではなかろうか。  いまこれはちなみに財政について申し上げたわけでございますけれども、その他各般の部分について私は同じことが言えると思います。農林大臣にもいずれお聞きしたいのでありますけれども、たとえば農政については、農地政策というのは現在まるきりないのです。あるとおっしゃいますが、たとえばあなたの土地をこっちへ三年貸してくれれば一万円上げます、六年以上なら二万円上げます、これは私は構造政策ではないと思います。さらにまた企業については独占禁止法が死んでしまっておる。この独占禁止法をもっと活発に生かす手法はないものかどうか、その辺も掘り詰めて考えてみたいと思うのでありますが、時間がございませんので……。  財政にすべてのしわ寄せがいって、不完全雇用である、いろいろの問題が十分に活用できない、だから財政よしっかりしてくれ。しっかりしてくれですが、残る道は増税しかございません。と言えば、これはまた有効需要を削っていく。そういう意味で、いまの財政手法というのは私は八方手詰まり状態だと思うのです。それを打開する手法として一つの提案を申し上げたわけでございますが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  153. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いま御指摘の点は大変大事な問題でございまするから、総合的な角度からもう一度私どもも真剣に見直し、取り組んでまいりたいと考えます。
  154. 大原一三

    ○大原(一)委員 総理大臣、ただいま申し上げたこれは大変唐突で、時間がないものですから恐縮でありますが、いままでの仕組み、流れの上でずっといろいろの経済手法を幾ら動かしてみても、なかなか効果が上がらない。先ほども申し上げましたが、東京では地下鉄が一メートル二千七百万円であります。百メートルで二十七億円。ところが日本のモデル町村の一年間の予算というのは二十億から三十億の間でありますね。東京の地下鉄の百メートル分にもならないのです。これこそ限界投資効率が死んでしまうわけでありますね。そういったいわゆる新しい手法の展開ということを経済の各分野でこれから検討していかなければならぬと思うのですが、短兵急でおわかりにならなかったかもしれませんが、そういった手法の新しい開拓について総理大臣の御意見を承りたいと思います。
  155. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 財政再建という大きな課題には在来の手法でもって乗り切れないほど、あなた御指摘のように問題は大きいと思います。在来の手法で何とか乗りこなせる程度であればともかく、そういう程度でないことは御指摘のとおりでございまして、手法の上においても斬新なものをわれわれは開発していかなければならぬのじゃないかと思います。あなたのきょう御指摘になりました、御提言になりましたことは大変示唆的でございまして、われわれといたしましても十分検討さしていただきます。
  156. 大原一三

    ○大原(一)委員 時間がございませんので、いずれ後日の機会に譲りまして、きょういろいろ質問事項を各大臣の方へお寄せしてありますけれども、さらにまた公取委員長、お呼び立てしてどうも申しわけございませんでした。いずれ後の機会に御質問をさせていただきたいと思います。  これで質問を終わります。
  157. 竹下登

    竹下委員長 これにて西岡君、大原君の質疑は終了いたしました。  次に、石橋政嗣君
  158. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 きょうは外交、防衛問題、特に外交問題に焦点を合わせて質問をいたしたいと思うわけですが、その前にちょっと総理政治姿勢について一点だけお尋ねといいますか、ただしておきたいと思います。  総理就任以来再三にわたって私ども耳にしておるわけですが、自分はリーダーというよりはコンダクターに徹したいんだ、こういうことを言っておられるわけです。あなたのお人柄からいきますとぴったりという感じで、耳ざわりは非常によく受け取られておるのですが、率直に申し上げて、私は一国の総理大臣としてそれでいいのだろうかという疑問を持っておるわけであります。一党の総裁、与党の総裁、特に総理大臣ともなりますと、それだけではいけないのではないか。どうしても洞察力とそれに基づいた勇気ある決断、そういうものが要求されてくるんじゃないか。そういう決断する勇気を持った人をわれわれはリーダーと言っておるわけで、そういう定義によりますと、あなたのコンダクター、コンダクターと盛んにおっしゃるのは、どうも逃げの姿勢、場合によっては責任の放棄、責任逃れというふうに受け取られかねないわけであります。  あなたの政治姿勢というものは、日本の運命なり日本国民の運命というものに深いかかわりを持っておるわけでございますから、私はぜひこの点を最初にはっきりさしていただきたい、このように考えます。
  159. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 リーダーということがいま求められておるのではないかということでございますが、私はかねがね申し上げておりますように、日本民族というのはそれ自体相当活力のある民族でございまして、この民族の活力の活発な展開を保障していくような政治日本においては実際的な政治ではないかと考えておるわけでございまして、どちらかというとコンダクターとしての手法が適当ではなかろうかというように考えております。現に日本の歴史を見ましても、リーダーというような意味の指導者は余り出てこなかったことは石橋さんも御案内のとおりでございます。しかし、コンダクターであるから決断を回避するということであってはいけないので、勇気を置き忘れてはならないことは当然でございまして、決断すべきときは決断しなければならないことは十分心得ておるつもりです。
  160. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 同じ決断をすると申しましても、盛んにコンダクターを強調しておられる点から判断しますと、どうもあなたの場合の決断は、足して二で割る方式、それはまだいい方で、もっと悪く言いますと、大きな声、強い力に引きずられた形の決断ということになりかねないのじゃないか。現に、総裁就任以来の一連の人事を見ましても、あるいはいま問題になっておりますE2Cの予算化の問題にいたしましても、あるいは元号問題や医師優遇税制の是正の問題にいたしましても、あなたは決断したとおっしゃるかもしれませんが、私から見ると、こういうのを本当の決断というのだろうか、流れに身を任せているだけにすぎないのじゃないか、強いもの、大きな声のものに従ったということにすぎないのじゃないかという気がしてしようがないのですよ。コンダクター、コンダクターとおっしゃると、どうしてもそんな感じが私にはつきまといます。  特に、先ほど西岡さんの質問にお答えになっておるのを聞いておりまして、私その意をさらに深くしたのです。私も日本の官僚の優秀さは認めます。世界に冠たるものです。力の強いことも認めます。ところが、あなたはそれを是認して、それでいいのだという考えですね。これは政治家の発想じゃないですよ。依然として官僚の発想ですよ。どうして、この優秀ではあるが力の強い官僚を説得しようと何しようと引っ張っていくか、これが政治家の姿勢じゃないのですか。強いからどうにもならない、手を入れられない、行政機構改革もできない、これは私は少なくとも政治家の姿勢とは思いません。困難だと思いますよ。なまやさしいことだとは私も思いません。しかし、それを越えてやる。政治家は弱いのだ、大臣はだめなのだ、そんなことじゃだめですよ。弱ければどうして大臣を強くする。しょっちゅう首をかえるようなことをしなければいいのです。腰かけにしなければいいじゃないですか。それが私は政治家の発想だと思います。さっきのやりとりを聞いておっても、私はどうも不安になるわけですよ。  ここに典型的、対照的な例がありますから、ちょっと読んでみます。どなたの所信表明演説か、思い出してください。「七〇年代の政治には、強力なリーダーシップが求められております。新しい時代には新しい政治が必要であります。政治家は、国民にテーマを示して具体的な目標を明らかにし、期限を示して政策の実現に全力を傾けるべきであります。」これは所信表明演説です。だれのかわかりますか。そんな昔のじゃありませんよ。あなたの親友の田中さんです。できたかできないかは別として、総理・総裁、政治家としての心構えとして、私はこちらの方を支持せざるを得ない。そうじゃないでしょうか。いかがです。
  161. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 問題はどのようにして国民の幸せのために事をなすかということでございます。演説とか文章の問題ではないと思います。したがって、それをどういう手法で実現していくかということは、顔が違うようにみんな違うわけなんでございます。でございますから、私は私流にやっていこうと思って、私はそう無理してやろうとは思わないのであります。私は、私のようなやり方でやっていくのが正しい、実効が上がる政治の手法でないかと考えておるわけでございます。官僚制度の問題にいたしましても、それを十分踏まえた上でわれわれは周到な対応をしなければならぬということをいたしておるわけでございまして、これだから仕方がないからほっておけなんて一つも言うてないわけでございますので、そのあたりは石橋さんもよく御承知のことと拝察します。
  162. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 率直に私申し上げたわけですけれども、これからの政局、特に国際政局というものは非常にむずかしいと私は思うのです。総理大臣に相当やはり主体性、自主性を持って引っ張っていっていただかないことには、非常に危険なことになるのじゃないかという懸念も持っているわけです。これはいまからの質問の中で徐々に解明していきたいと思いますが、それだけに多少心もとない感じもいたしましたので最初にお尋ねをしたわけですが、決断するときにはするんだということでございますから、ぜひそうあっていただきたい。流れに身を任せるというような形では、それは自分の体質に合っている、一番いいでしょう、体質に合った形でやるのは。しかし、それではどうにもならない時期にいま直面しているのじゃないか、特に国際政局という面では。国内ではそれである程度いけるかもしれません。レールが敷かれておりますし、自己保身というようなことからいけば一番無難かもしれません。しかし、特に私がいまからお尋ねしようとする国際政局を乗り切っていくという段階で、それだけではどうも心もとないという感じがございましたので、冒頭念を押したわけでございます。私、いつも声が大きくなってしまいますので、きょうはひとつ最後まで低い声でやりたいと思いますから、途中で大きな声にならないように、ひとつ誠意ある御答弁をお願いしておきたいと思います。  本論に入るわけですが、日中平和友好条約の締結、それに続く今回の米中の国交正常化、非常に歓迎すべきことだと私は思います。言うまでもないことでございますけれども、私が歓迎いたしますのは、これらの動きに連動するかのように米ソ間の戦略兵器制限交渉にも若干進展が見られるようですし、南北朝鮮の間でも話し合いが再開される兆しが見られるというように、これが契機になって緊張緩和、平和共存体制の確立に一歩前進しそうだという面から実は評価するわけでございまして、新たな同盟結成といったものを評価するものではない。これは当然のことであります。したがって、これからの私の質問も、この先さらに世界の平和、なかんずくアジアの平和、その中での日本の安全を確保するためにわれわれは一体何をしなければならないのか、何をしてはいけないのか、それを見きわめるという目的をしっかと持って質問してみたいというふうに考えておるわけであります。  率直に申し上げまして、私最初に、日中平和友好条約の締結を喜び、米中の国交正常化を歓迎すると申し上げたわけでございますが、いまちょっと例示しましたようなプラス面も確かに見えますが、未来をバラ色に描いておるわけではございません。それどころか、緊張緩和の一層の前進、真の平和を願えばこそ、逆に厳しく現実を見ようとしているくらいでございます。たとえば現在の中国ブームとも言っていいような日中の友好ムード、大歓迎でございますけれども、これは一時的なものではないと言い切れるのだろうか。悔を千載に残すようなことはないのだろうか。いまちょっと静かになりましたから、この冷えた目でもう一度見詰め直してみたい、そういう気が率直に言ってするのです。  なぜ私がそのような懸念を持つかと言いますと、第一は、私たちが日中平和友好条約の締結に求めた最大のものは、非常に長い間にわたって中国へ侵略をいたしました、これを心から反省して、二度と同じ過ちを繰り返しませんという誓いをする、そしてその裏づけとしてのあかしをこの条約の中できちっと確立する、実はそういうものであったわけなんです。ところが結果的には全く逆に、どうもよくない、私に言わせれば自主性のない日本外交の体質をそのまま温存する形になっておる、また軍事的膨張の契機をもたらす形になっておるのじゃないか、全く私たちが予想したこととは違った方向に行きよるのじゃなかろうか、そういうようなとらえ方をするから懸念を持つのです。  それから二番目に挙げたい点は、余りにも現実的な利益の追求に傾斜しているのじゃないか。いま私たちの目の前で展開されております姿を見ますと、どうも日中の国交回復、友好運動に努力しなかったどころか、逆に妨害をしたと思われるような人たちが、そろばん片手に、このごろは電卓片手にと言うのですか、いそいそと忙しげに往来をしている。それがやけに目につく。これは全く私ども考えたものとは違うわけですね。  それからいま一つ、要するに中国側にそうせざるを得ない条件があったのでしょう。すなわち、四つの近代化、これを促進するために日本経済力といいますか生産力というものを十分にかりたい、そういう気持ちがあったからかもしれませんけれども、迷惑をこうむった側としてはちょっと譲り過ぎているのじゃなかろうか、これでいいのだろうかという懸念が三つ目にあるのですよ。中国側がいいと言っているのだからいいじゃないか、私はそう思わないのです。私は、そういう方には西ドイツのかつての大統領ハイネマンの言葉を思い出していただきたいと思うくらいです。われわれが忘れないということが相手方に忘れてもらう唯一の方法だ。私はもう至言だと、いつも肝に銘じております。中国側がいいと言っているのだからいいじゃないか、日本に得になることなら、これではいきません。少なくとも恒久的な平和、友好というものの確立は私は期待できないと思う。  このことと、どうもこの条約にふさわしくない期限十年ということと全く無関係と言い切れるのか。私はそう思うのですよ。未来永劫仲よくやっていきましょうという条約ですね。そういう条約に期限が十年ついた。私はどうもおかしいと思う。園田外務大臣はこれに対して、一応十年間は間違いなくやろうということでございますという答弁を外務委員会でしておられる。これがいけないのですよ。信頼関係ないじゃないですか。  総理、私がいま挙げましたこの懸念、その根拠として例示もいたしました。全く荒唐無稽ですか。そんな心配はない、大丈夫とお考えですか、最初にお尋ねをしておきます。
  163. 園田直

    ○園田国務大臣 日中平和友好条約、これに続く米中正常化、これについてわれわれが注意をし努力をしなければならぬ点は、この二つの問題が平和の追求に向かっててこになるか、あるいは米ソの対決を強化するか、この点が分かれ道だと私は考えております。したがいまして、日中平和友好条約、これに続く米中正常化がアジア及び世界の平和追求のてこになるように今後とも注意し、努力をしなければならぬことは、立場は違いますが、私は石橋さんと同じでございます。  なお、日中関係一つの反省の上に立っておるか。これは一九七二年の国交正常化の際出された共同声明の中に、日本の国は戦争及びこれについて与えた損害に対する深い反省を表明しているところであります。しかし問題は、共同声明あるいは友好条約にどのような文言を使うかということではなくて、今後そういう意識のもとに日中友好関係を進めていくということがきわめて大事であると考えております。
  164. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 具体的にそういうことに役立つだろうかというのは、質問に入ってからお尋ねしようと思っているのですが、その前に、前段として私なりの感想を申し上げたわけなんです。だから、外務大臣にお答え願うのでしたら、十年間という期限はそぐわないのじゃないですかということだけお答え願えればいいのですよ。  あとは総理大臣に、あなたは共同声明のときの外務大臣でもあるのですから、私がいま述べました意見について、あるいは物の見方、考え方についての御感想を最初にちょっとお伺いしておこう、こういうことです。
  165. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日中共同声明、日中国交正常化は、二つの面を持っておったと思います。一つは、日中間の暗い過去の清算でございます。一つは、新しい日中関係の建設でございます。  暗い過去の清算といたしましては、戦争終結の問題、賠償処理の問題、領土問題、そういった問題を通じまして、日中両国の見解が表明されて、暗い過去はページを閉じて、新しい建設に向かおうじゃないかという誓いが立てられたのでございます。われわれは、この暗い過去があったことを忘れようとしても忘れられるものではございません。一片の共同声明を出したことによって、そのことの決着が、全部きれいさっぱりついたというほど単純に考えておるつもりはないのでありまして、暗い過去は過去としてあったわけでございます。それに対する深甚な反省の上に立たなければ、新しい日中関係の建設は実ってまいらないこと、これもまた承知いたしておるつもりでございます。  第二の新しい日中関係の建設は、あなたが仰せのように、ひとり日中両国の友好関係ばかりではなく、アジアの平和と安定に寄与するものでなければならぬと考えておるわけでございまして、日中両国に絡まる問題が今後いろいろ起こってくるでございましょうし、また、アジアの地域にはいろいろな問題が起きてくるかもしれませんけれども、これに対しまして、どういう態度、どういう原則で対処してまいるか、どういう精神で対処してまいるかということが日中平和友好条約に盛られておると思うのでございます。この経緯を踏まえて、日中平和友好条約とその運営につきましては、十分周到な配慮を加えていかなければならないものと考えております。
  166. 園田直

    ○園田国務大臣 私にお聞きになった期限の問題でありますが、これは御承知のとおり、慣例によって交通の経過は申し上げられませんので、どちらから言い出してどうなったかということは申し上げられませんけれども、少なくとも両国の合意と信頼の上にできた期限でございまして、両方とも、そのとき言った言葉は、子々孫々という言葉を使っております。
  167. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 これは中国側から言い出したと私は理解しているのです。だから、本当に信頼と友好の上に立ってできた条約だろうかという疑問を、この期限がついたということ、しかも中国側から提起されたということで私は非常に強く印象づけられておりますということを申し上げて本論に入りたいと思うのです。そこの根拠が、なぜそういうことになったのかというのが、いまからの問題のやりとりの中で浮き彫りにされてくると私は思うのです。  第一にお尋ねいたしたいのは、日本と中華人民共和国との間で、なぜ講和条約、平和条約が締結されなかったのですか。こんな大切なことをうやむやにしておいて、本当に日中の友好が確立するとお思いですか。そんな不自然なことは許されませんよ。いまは友好ブームで何とかごまかせるかもしれませんけれども、特に私が冒頭指摘したようなことが根底にありとするならば、後々大変な問題を引き起こしますよ。なぜ平和条約、講和条約を締結なさらないのです。これをお尋ねいたします。
  168. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 この点は、さきの条約審議国会の際にも種々御論議があった点と承知しておりますけれども、法律的に見ますると、日本と中国との間の戦争状態は日華平和条約によって終了したというのがわが国の立場でございまして、日中の国交正常化に際しては、わが国としては、この日華平和条約を最初から無効とする中国側の主張を認めることはできないという基本的立場を中国側に十分交渉の過程で繰り返し説明したところでございまして、その上で、日中国交正常化という大目的のために、日中双方の基本的な立場に関連する困難な法律問題を克服しようという種々の試みが長い交渉の過程でいろいろ行われました結果、先般の共同声明という文言に一致した次第でございまして、そういう意味におきまして、日中間の戦争状態の終結の問題は共同声明によって最終的に解決したというのが政府が従来からとっている解釈でございます。
  169. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私も、衆参を通じて委員会の速記録は全部読みましたよ。役人に答弁さしておく問題でないのですよ。重大性を痛感してください。名前は問いません。条約であれ、協定であれ、宣言であれ、いま御指摘の共同声明であれ、何でもいいですよ。少なくとも平和条約、講和条約というならば、国会の承認を得て、批准書が交換されなくちゃならないのです。法律的に決着がつかないのですよ。そんなことをお役人はわかっておるにもかかわらず、何とかごまかして通っている。不自然でしようがないから私はお聞きしているのです。この共同声明は国会の承認を得てないじゃないですか。批准書の交換も行ってないじゃないですか。法的に戦争終結という規定はありませんよ。日華条約で戦争は終結したとしておりますが、中華人民共和国は承認していまいじゃないですか。当時国同士で意見の一致を見ないで、法的に戦争は終結しますか。宣言とか講和とかというものをそんなお手軽に考えておられるのですか。お役人に答弁さして済む問題ではないと私は思います。いままでが不十分ならば、これからでもやらなくちゃならない、責任のある問題だ、私はこう思いますが、総理、いかがです。
  170. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日中共同声明は、先ほども申し上げましたように、日中間の暗い過去の清算という点につきまして提起された問題はみな日中両国の間で完全な了解に達して解決をいたしておるわけでございます。それから、今後の日中間に生起することあるべきいろいろな問題についての処理の基本の原則は、平和友好条約という形で今後交渉して締結することに努力しよう、こういう約束をいたしたのが共同声明でございまして、そして、その前提として一番大事なことは、中国に二つの政権があったわけでございますけれども、このいずれの政権が中国を本当に代表するものであるかどうかという点が問題でございまして、わが政府におきましては、中華民国を正統政府として認めて、従来やってまいりましたけれども、この共同声明を通じまして、北京政府を正統政府として、そこと外交関係を結ぶということにいたしたわけでございまして、その政府との間に、完全に諸問題について了解が得られたわけでございます。それが条約であろうと、声明であろうと、両国の間の外交関係が両国の完全な了解のもとに成立した以上は、これで私は、必要にして十分な条件が充足されたものと判断をいたしております。
  171. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私、今度、米中の共同声明を読んでみてはっきり気がついたのですが、同じ表現なんですよ、結局米中の共同声明と日中の共同声明と。私から改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、不正常な状態が終了した、そして中国における唯一の政府として中華人民共和国政府を承認する、これは講和条約でもなければ、戦争終結の確認でもなければ、何でもない。いわゆる国家の承認です。行政権の範囲の中でやっておられます。アメリカはそれでいいでしょう。日本がそれで済みますか。共同声明の時点で片づいた片づいたとおっしゃいますけれども日本と中国の関係で、承認ということで済みますか。絶対に必要です、講和。これがなければ、それじゃ日本と中華人民共和国との間には戦争状態はなかったんだ、こういう解釈になる。いまは、それで、さっきから申し上げているように友好ムードといいますか、ブームでごまかせるかもしれないが、何年か先、早ければ一年後でも、問題にならないという保証がどこにありますか。私は、国会議員の構成メンバーとして許せませんよ、こんなことをごまかされたんでは。日ソの共同宣言、ごらんなさい。国会の承認を得て、批准書を交換しておりますけれども、平和条約を改めて締結しようということになっています。これは、いまからずっと各論に入っていけば当然出てくるわけですが、領土問題が片づかないからですね。中国だけはごまかしていこう、そんなことで、ソ連であろうとどこであろうと、国際的に通用しますか。それよりも、国民に対して義理が済みますか、こんな大切なことをごまかして。だめですよ。日華平和条約で終わり、相手は認めてないじゃないですか。私は、これは前から議論しているのです。昭和四十六年の一月二十九日にも、この席で、当時の外務大臣とやりとりしているのです、愛知さんと。愛知さんははっきりと、中華人民共和国政府は、日華条約そのものを認めないという立場でございます、法的には戦争状態が続いているのだという見解をとっております、はっきり言っております。あたりまえですよ。わかっております。日華平和条約で法的にはけりがついておる。あれが平和条約だというなら、中華人民共和国は認めたのですか。認めないなら、両当事国の間で、法的に戦争終結の時期が全く違うなんというナンセンスなことが許されますかと申し上げている。明確にひとつ答えていただかないと、これはごまかしのきく問題じゃないですよ。お役人の問題じゃないです。
  172. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 日ソ共同宣言との関係の御指摘がございましたが、これは、従来の答弁の繰り返しだという仰せになるかと思いますけれども、御質問がありましたので、もう一度申し上げさせていただきます。  日ソ共同宣言の方は、請求権の相互放棄等の、内容的に法律的な合意を構成する文書でございまして、したがって、いわゆる条約として国会の承認、批准手続を経て発効したものと理解しておるわけでございます。  他方、日中間におきましては、先ほど申しましたようなことで、日中共同声明によって両国間の法律上の立場が克服されて、日中国交正常化という大きな目的が達成されたというのが過去の経過でございまして、この共同声明によって、日中間の戦後処理の問題が最終的に解決されたというのが政府の立場でございまして、この点については、交渉の過程を経まして、日中間に見解の相違はない状況でございます。したがいまして、日中間に戦後処理のための平和条約ないし講和条約を締結する必要はないと考えており、かつ、日中共同声明は国会の承認を要する事項を含んでいないので、国会の承認をとらなかったというのが、従来から政府がとっている態度でございます。
  173. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 もう一度申し上げますけれども、あなたたちが過去の委員会でどんなごまかし答弁をしているか、私は全部読んでおります。むだな時間を使わないでください。総理大臣、私は重要な問題を提起していることはお気づきだと思いますよ。これは政治的に、なあなあで済む問題じゃございません。どうしてもけりをつけておかなければならない、私たちにも国会議員として責任がある。そんなに、役人に言わせなければならぬほどむずかしい問題じゃないんじゃないんですか。聞いているどなただってわかる問題じゃないですか。日中共同声明の時点で、法律的に戦争の終結、すなわち、講和は成立しているとおっしゃるが、そんなことないですよ。国会の承認も得ていませんし、批准書の交換もしておりません。そう言われると、いや、日本政府の立場としては、日華平和条約締結の時期をもって戦争は終結し、講和は成立しているという主張でございます、こう言うのです。それじゃ中華人民共和国もそれを承認しておるのですか。向こうが承認していなければ講和にもならない。そうじゃないですか。法的に戦争終結の時期が当事国同士の間でこんなに食い違う、そんなばかなことがどうしてございます。委員長、これは委員長が措置してください、問題の大切なこともおわかりだと思いますから。
  174. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日中共同声明には、正確に文章を記憶しておりませんけれども、要するに、一九七二年の九月二十九日をもちまして、日中両国には戦争状態はないということを両国は確認したわけでございます。仰せのように、日華平和条約という条約によりまして戦後経営をやってまいりました過去はございます。この日華平和条約につきまして、北京政府がクレームをつけておりましたことも承知いたしております。そういう過去はございますけれども、今日、一九七二年九月二十九日現在の状態は、両方とも完全に、日中両国には戦争状態はないということを確認し合ったのが一九七二年の九月の共同声明であると承知いたしておるわけでございまして、私は、それで十分であると思います。
  175. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 共同声明では、「この共同声明が発出される日に終了する。」とあるんですよ、この共同声明が発出する日に。それまでにないと言っていないですよ。それまでに戦争状態がないと言っていませんよ。ところが、この共同声明は、国会の承認も得ていないし、批准書の交換も行っていないじゃないですか。そして、よくよく読んでみると、これは「承認」、いわゆる行政権の範囲で措置したのじゃないかと思わせるような文面になっている、講和じゃなくて。政府による相手政府の承認、そういう手続で終わらしているのじゃないかという疑問を私は持ったのです。それでなかったら、これは成り立たないですよ。だから、それならそれで、一体講和条約というものは、日本と中国との戦争終結の講和条約というのはどれなのかと、問題を提起せざるを得ない。日本政府は、日華平和条約の時点でございます、それじゃ中国はそれを認めたのでございますか。すなわち、昭和二十七年、一九五二年の八月五日に日本と中国の戦争状態は完全に法的に終結している、未来永劫問題はありません、それなら問題ありません。後で矛盾がいろいろ出てきますけれどもね。そこまで入れないのです、そこがはっきりしないと。
  176. 柳谷謙介

    ○柳谷政府委員 先ほど御提起がありましたように、法律的に見まして、日本の側から法律的に見ますと、日本国と中国との間の戦争状態は日華平和条約第一条によって終了した、こういう立場でございます。これに対して中華人民共和国は、この日本の立場を認めることはできないという立場をずっととっておりまして、それゆえに、日本国と中華人民共和国との間には不正常な状態がその後もずっと続いていたわけでございます。この不正常な状態を解決するための努力がいろいろ行われました結果、日中共同声明におきまして、双方の法律的立場というものに十分な配慮を払いながら、これを克服するための工夫として、共同声明というものに到達いたしまして、この第一項でそれまでの不正常な状態、それまでずっと続いておりました不正常な状態は、御指摘のとおり、この共同声明が発出せられた日に終了するということが確認された、そういう経緯でございます。
  177. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私も国民の負託にこたえるために一生懸命勉強して、真実追求のために準備もしているのです。何ですか、この態度は。まじめにおやりになったらどうですか。私の質問がおかしいですか。非常に大切な問題であることはお気づきのはずですよ。委員長もわかるでしょう。四十分ですよ、もう。ここを認めぬとはっきり結論が出ないで、後の質問ができないじゃないですか、どちらに立つのか。処置してください。
  178. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 何か大変政府の答弁がふまじめなようなことをおっしゃいますけれども、とんでもない話でございまして、私ども誠実に日本政府の立場をあなたに御報告しておるわけでございまして、どこか欠陥がございますならば御指摘をいただきたいと思います。
  179. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それじゃ、法律的に日本と中国の戦争終結、これは昭和二十七年、すなわち一九五二年八月五日、間違いないですね。中華人民共和国もそれに同意している。間違いないですね。
  180. 園田直

    ○園田国務大臣 それは間違いないところであって、将来、戦争状態が終結していないということを中国側から言い出すおそれはございません。
  181. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうすると、また新たな問題が出てくるのですね。共同声明の時点で、大平さん、外務大臣は、日華平和条約は終了したという通告をしていますね。この方はどうなるのですか。中国の方も、台湾の方もすぐに反応してきていますが、これは今度は共同声明のときになくなっちゃったのですか。唯一、法的に確認した日華平和条約は、今度は共同声明の時点でなくなっちゃった、そうですか。
  182. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 共同声明をもちまして、中華人民共和国政府を外交権の相手といたしまして承認することになりましたことでございます。中国を代表する正統政府として北京政府を認めることになったわけでございます。そのことの結果といたしまして、日華平和条約はここで任務を終了したという宣言をいたしたわけでございます。
  183. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 両国の戦争状態を終了させた唯一の条約がなくなっちゃうというのは、どういうことなんですか。私にはわかりませんよ。私だけじゃなくて、だれにもわからないのじゃないですか。法的に戦争終結、講和発効、これは一九五二年八月五日の日華平和条約である、これだけです、いま外務大臣の答弁で残ったのは。ところが、それは共同声明の時点になったら、任務を終わったから終了、なくなっちゃった。かわるべき法律はないですよ。おかしいのじゃないですか。平和条約を破棄するとか終了通告、言葉はどうあろうと、大変な問題じゃないですか、本来。一つの中国をこの共同声明の時点までは台湾が代表しておったという全くおかしな議論、そこまでいかないうちに、私はその問題を提起せざるを得ません。それもおかしいのですよ、また次にやりますけれども。  結局、一九七二年の九月二十九日までは、日本と中国との関係においては、全中国を代表するものは台湾政府であった。こんなことを中国が認めるだろうかと私はいまだに思うが、園田さんは認めると言う。認めるというならば、今度は七二年の九月二十九日にその肝心の唯一の平和条約を破棄。任務終了。なくなっちゃった。平和条約の破棄とか終了とかいうのがどんな重大な意味を持っていますか。私は寡聞にして余り多くの例を知りません。ベルサイユ条約の破棄なんかやったらどういう事態になったか。そんな簡単な問題ですか、これが。どうなんです。
  184. 真田秀夫

    ○真田政府委員 石橋委員に申し上げますが、日本が戦争をいたしましたのは、相手は中国でございます。中国という国は一つなんでございまして、したがいまして、たとえば降伏文書を見ますと、降伏文書に署名をしておるのは中華民国代表の徐永昌さんでございます。でありまするから、日華平和条約によって中国という国と日本との間の戦争状態は終了しております。  しかし、その後情勢が変わりまして、中華人民共和国との間の共同声明によってその後の不正常な状態が正常化する、そこでそれに伴いまして日本国は中華人民共和国政府を承認する、これはいかにも行政府限りでやっているじゃないかとおっしゃいますが、国家承認とかあるいは政府承認は、これは通例行政府の仕事としてやっております。  それから、その共同声明が出ました結果、それに伴う随伴的な効果として、日華条約はその基礎がなくなって消滅したというかっこうになっておりまするが、しかし、さればといって、中国という国との間の戦争状態がまたそこで復活するというような、そういうことは毛頭だれも考えておらないということを申し上げておきます。
  185. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 たくさん次々と矛盾が発展していくのですよ。だから、一つずつけりをつけてください。  総理大臣に、それじゃひとっこれはけりをつけていきましょう。日本と中国との間で戦争が終結したのは一九五二年八月五日の日華平和条約によるのである、法的にその時点で戦争は終結した、この点については日本、中華人民共和国の間で、両当事国の間で意思の疎通が図られている、完全に意見の一致を見ている、間違いないですね、総理
  186. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 共同声明で御理解をいただきたいのでございますが、戦争終結がいつの時点であるかという点について、共同声明は書いてございません。それは九月二十九日の現在、日本と中国との間には戦争状態はないということを双方が確認し合ったという姿において共同声明は発出されたわけでございます。日華平和条約におきまして戦争終結がなされた、賠償その他の取り決めがなされたということは事実でございます。しかし、それにつきまして、そのことを中華人民共和国政府が認めておるかというと、認めておられるわけではございません。しかし、中国は一つであるという立場におきましてどういう処理をするかということがわれわれの任務であったわけでございまして、共同声明にうたわれておるようなことにおいて両国が完全に了解し合ったということでございます。
  187. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 認めてないのですよ、中華人民共和国は。それは日本政府の主張にすぎないのですよ。日華平和条約締結の時期をもって日本と中国との間の戦争状態は終結した、すなわち講和は成立している、これは日本政府の意見にすぎないのです。中華人民共和国は、それはわかった、オーケー、そういう解釈をとってない。総理大臣はっきり認めました。こんなおかしな話ございますか。それじゃこの先、将来にわたって、いずれかの日に正式に法的に措置をとらなければならぬということになるのです。両方の一致する時期で戦争終結、法律的に戦争終結、すなわち講和、時期を確定する必要があるのですよ。こんな大切なことをあいまいにしてあとの問題質問できません。
  188. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 中華人民共和国政府がそれを認めておると私は申し上げていないわけでございまして、われわれの見解は、日華平和条約を軸といたしまして戦後の日中関係の経営に当たってまいりましたことは事実でございます。けれども、その事実を中華人民共和国政府は認めるお立場になかったということでございます。そこで、戦争終結の時点はいつかということが確かに大きな問題になったわけでございますけれども、双方十分協議いたしました結果、共同声明に盛られたようなところで了解に達したということでございます。それ以上のものではありません。
  189. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 共同声明は行政府の承認規定なんです。講和じゃありません。表現も、「不正常な状態が終了する」です。これは米中の今度の共同声明と全く同じ文言です。これは戦争終結ということではございません。そんなことよりも、国会の承認もなければ批准書の交換もないのです。そんな平和条約、講和条約どこにありますか。講和の時期が当事国の間で一致しない。いつ戦争が終結したのか法律的に確定しない。そんなばかな話はありません。そんな状態のまま、私は質問しようにもできません。
  190. 竹下登

    竹下委員長 法制局長官、再度御答弁を願います。
  191. 真田秀夫

    ○真田政府委員 先ほども申しましたように、日本が戦争した相手は中国という国でございます。これは中国は一つでございまして、中国が二つなどということは口が曲がっても言えるものではございません。中国という国と戦争したわけでございまして、したがいまして、先ほども申しましたように、日本が戦争に負けまして降伏文書を作成しましたときも、相手方としては、中華民国代表として先ほどの徐永昌さんが署名していらっしゃるわけでございます。したがいまして、昭和二十七年の八月五日に効力が出ました日華条約によって日本と中国との間の戦争状態は終結した、これは明文で書いてあるわけでございまして、そのとおり、その時点で終結したとわれわれは考えております。  それで、中華人民共和国との間のいわゆる日中共同声明においては、その後も続いておった不正常な状態が終結したということが書いてあるわけでございまして、戦争終結は八月五日であるというふうにわれわれは考えております。
  192. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 詭弁はいいかげんにしなさいよ。それでは、この日華平和条約は中国大陸に主権が及ぶと書いてありますか。日華平和条約を読んでごらんなさい。あなた、法律家でしょう。台湾にしか施政は及んでおらぬ。当時、両国の間で、台湾政府との間で、その点は議事録それから交換書簡によって確認されているじゃないですか。大陸に及ばぬ。いまもまだ完全に一つじゃないですよ、中国は法的には。そんな詭弁で切り抜けようなんという問題じゃないと私は言っているのです。やっつけるとか、そんな問題じゃないですよ。こんな大切な問題をごまかして通れないと言っているのです。訴えているのです。委員長、しっかり処理してくださいよ、そんな時間かせぎしないで。
  193. 真田秀夫

    ○真田政府委員 日華平和条約の効力の及ぶ範囲といいますか、適用範囲につきましては、かねがね国会でも御論議になりまして、その際、地域が問題になるような規定、たとえば通商航海に関するような規定は、それは交換交文の規定によりまして適用区域はいわゆる台湾に限定されておる。しかし、戦争の終了とかいうような国対国の問題は、これは交換公文と関係なく、日華条約によって戦争は終了しているのだという答弁を繰り返し政府の方ではやっております。
  194. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 やっておりません。私はここに持っています。速記録を写してきています。
  195. 竹下登

    竹下委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  196. 竹下登

    竹下委員長 それでは速記をつけて。  大平内閣総理大臣
  197. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 日中共同声明に関連いたしまして、石橋委員から若干の疑点が指摘されたわけでございます。  私ども政府としては、日中共同声明は領土の得喪でございますとか賠償でございますとか、そういう関係がございませんので、行政権の範囲で処理できるものという判断で処理いたしたわけでございまして、これには間違いはないものと確信をいたしております。しかしながら、きょうの御論議を通じまして御発言がございましたから、石橋委員の御発言を政府側におきましてよく検討、吟味させていただきまして、次の機会に政府の見解を御報告することにさせていただきます。
  198. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 いまの発言の中にも、私、間違いがあるのじゃないかと思うのですが、共同声明の中に賠償事項、賠償放棄の規定はあるわけですよ。まあ、わかりましたから留保します。次の機会にやらせていただきます。
  199. 竹下登

    竹下委員長 これにて石橋君の質疑は、保留分を除いて一応終了いたしました。  次に、正木良明君。
  200. 正木良明

    ○正木委員 相当たくさん御質問申し上げることがございまして、時間が非常に制限されておりますので、ごくごく簡明に御質問申し上げますので、どうかひとつ答弁の方も簡潔にお願いをしたいと思います。  まず、外務大臣に外交問題の当面する課題を若干御質問を申し上げたいと思います。  一つは、新時代に向かいまして、朝鮮半島統一問題は揺れ動こうといたしております。政府といたしましても、一月十九日の朴大統領提案、二十三日の朝鮮民主主義人民共和国の祖国統一戦線の提案、こういう点について両者のやりとりが続いておるわけでございますが、これをどう評価しているのか、これがまず一点です。  第二点は、この対話の兆しに対しまして、アメリカ、中国、ソ連はどういうふうに受けとめ、どのように対処をしようとしているのか、それを政府はどのように分析しているかでございます。  まず、この二点についてお伺いをしたいと思います。
  201. 園田直

    ○園田国務大臣 朝鮮半島の南北対話の問題は、南北からしばしば声明を出しております。本日は、韓国側からこれに対する見解を発表したことは御承知のとおりであります。しかしながら、南北の言い分は本質的にまだ大きな隔たりがあるわけであります。隔たりはありますが、いままでと違って、敏感に両方から言い分を逐次反応していることは歓迎すべきことであると考えます。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 こういう点から考えまして、南北対話ということが大きく出てまいりましたけれども、いま直ちに動くとは考えられませんけれども、南北対話ということは、これはわれわれが平素から言っておりまする朝鮮半島においては南北が平和的に話し合って統一をわれわれは望む、こういうことでありますから、こういうことに基づき、あるいは関係諸国とあるいは南北両国に対する対話の環境づくりをすることに努力をしたいと考えております。
  202. 正木良明

    ○正木委員 三国の分析、わかりましたか。
  203. 園田直

    ○園田国務大臣 ソ連の方は詳しくわかりませんが、米国の方は御承知のとおりに、この南北対話の顕在化に大きな関心を払いつつも、両方の均衡を損なわないようにその話し合いができることを期待しておるようでございます。
  204. 正木良明

    ○正木委員 中国、どうですか。──では、中国の方は、この後、中国に関する質問がございますから……。  その南北対話の兆しという問題について、新聞の報ずるところによりますと、韓国政府は韓国と中国の関係、これを改善するために、二月六日、明日でございますが、鄧小平副主席が来日いたしますが、この鄧小平副主席に韓国側の意向を伝えるように韓国政府から依頼してきたということが伝えられております。これは、訪日中の韓国民主共和党の文亨泰氏が二十九日、大平首相との会見の際に述べ、これはもちろん一月二十九日でございますが、また、一月三十一日には園田外相に会ってその旨を伝えたということであります。この問題について御説明をいただきたいと思います。  それから第二点でございますが、わが国政府は朝鮮問題を解決するために中韓対話、米朝対話を仲介し、これは中国と韓国、米国と北朝鮮でございますが、対話を仲介しあっせんする立場に立つべきであるというふうに私ども考えますが、その決意はありますか。  第三点、政府の外交方針は、対話の再開の必要性を認めながらも、国際環境づくりに協力し努力をするとしか述べておりませんが、朝鮮半島の民族の悲願である統一の促進に対するわが国のなすべきことは何か。  第四点、それによってまず考えられることは、分裂国家の一方に偏った外交政策は改める、そういう時期に来ていると思いますが、どうであるか。朝鮮民主主義人民共和国に対し、一歩でも半歩でも前進する政策考えるべきであると思うが、どうか。たとえば記者交換というようなものを考えるべきときに来ているのではないかと思うのですが、この四点と、先ほどの三国の分析の中の中国のを、あわせて御答弁をいただきたいと思います。
  205. 園田直

    ○園田国務大臣 中国と韓国の関係については、昨年八月北京に参りましたときに、私から鄧小平副主席にその旨を話したことがございます。鄧小平氏からは何の返事もございません。ただ聞かれただけであります。今般、また韓国の与野党、与党の議員、野党の議員が来られて、でき得れば鄧小平副主席が来日をされた際に韓国と中国の間の仲介をやってほしいという希望があります。私、それに対して、話はするけれども、多分早急に返答は得られないと思っておる、しかし努力はいたします、こういう趣旨のことを言っております。  わが国としては、南北統一、対話の環境づくりのために、関係諸国、中国、米国その他の国々に対話がうまく進みますよう努力することは当然ではありますが、また一方、分裂国家の一方に味方してはいかぬというお説ではございますけれどもわが国としては日米安保体制を基軸として、その基軸の上に抑止力による平和を考えておるわけでありますから、やはり南と北の均衡を損なわないよう、両方の状態なり全般的な状況を見きわめつつ、そういう舞台づくりに努力をする所存でございます。
  206. 正木良明

    ○正木委員 北朝鮮との記者交換なんということはお考えになりますか。
  207. 園田直

    ○園田国務大臣 北朝鮮との記者、まだその話は出ておりませんので、検討はいたしておりません。
  208. 正木良明

    ○正木委員 まあできることからぽつぽつ始めていくことが必要なのではないかと思っておりますので、御検討いただきたいと思います。  次に、安保条約の問題に関してでございますが、第二次世界大戦の東西の冷戦構造から、本年一月一日に米中の正常化が実現いたしました。これで大きく世界構造が変わったと言っても過言でないと思いますが、ということになると、日米安保体制は、六〇年安保条約締結当時と大きく変化したと見るべきではないかというふうに思うわけでございます。この点についてどうお考えになるかということが一点。  もう一点は、いまちょっと問題になっておりますが、日中平和友好条約、米中国交正常化は安保条約にかかわりなく達成した、このように政府が答弁をいたしております。しかし、日米安保体制、特にアメリカの方の戦略戦術体制は大きく変化したものと見るべきだと思いますが、いかがであるか、この二点、まずお答えいただきたいと思います。
  209. 園田直

    ○園田国務大臣 日米の安保体制は世界の冷戦構造から抑止力による平和共存の方向へ逐次進みつつありますから、そういう意味においては日米の話し合い、運営等についてはいろいろあると思いますけれども、日中友好条約締結、続く米中正常化によって大きく変化したとは考えておりません。かかわりなくと言うより、むしろ日中友好条約締結の際に、中国は日米安保条約を了承し、かつまた、日中の関係よりも日本にとっては米国の関係が大事であるということを了解したところであります。かつまた、米中正常化においても、米国は、米中正常化以降、あくまでも米国にとっては日本が中国よりも大事であるということを発表しております。こういう意味から、日米安保条約の枠組みの中に日中友好条約、米中正常化を進められ得た、こういうことから、かかわりなく進んだ、こういうことでありまして、このことによって安全保障についての米国の考え方は大きく変化はしてない、ただ、日中国交、米中正常化あるいはその他のアジアの情勢の変化によって若干の地域の問題はありますけれども、基本的には、いまのところは何とか平和であるが、それは平和に対する脅威が当面潜在化している、こういうことであって、米国としてもアジアの安全保障には従来どおり関心があるばかりでなく、今度の国防報告を見ても、昨年よりもアジアに重点を置いていることは御承知のとおりであります。したがいまして、この潜在化しつつあるものを顕在化させないための日米安保体制は今後とも維持していくという考え方でありますので、戦略その他について大きく変化はない、このように解釈いたしております。
  210. 正木良明

    ○正木委員 そうはおっしゃいますが、安保条約の解釈上は別として、安保体制上極東の範囲の中に台湾地域は含まなくなった、このように外務大臣はすでに答弁なさっておりますが、そのように考えてまいりますと、アメリカは安保条約の運営上、戦略上、この米中正常化という問題も新しい段階に入った状況の中で、台湾地域を含めなくてもよいという立場に立ったと解せられるのでありますが、この辺はどうですか。
  211. 園田直

    ○園田国務大臣 私の答弁の中で米中正常化、日中友好条約ということによって、極東の範囲に台湾が入らなくなったという答弁はしてございません。これは速記録を点検をお願いしたいと存じます。私が答弁しましたことは、このことによって台湾地域に武力紛争の起こる可能性はほとんどなくなった、したがって台湾地域をどうするかということは、台湾を中心にして米中が話し合いを進めておるから、両方の意見も聞いてみなければならぬし、ここ一年間は無条件に続くわけでありますが、そのことについても米国とよく相談をしなければならぬ、こういう意味のことを答えているわけであります。
  212. 正木良明

    ○正木委員 そこで申し上げたように、米中の正常化が行われたといういまの時点で、まだアメリカとはそういうことについての検討はなさっていないというのですか。
  213. 園田直

    ○園田国務大臣 アメリカとの相談でありますが、向こう一年間は米国と台湾の条約があるわけでありますから、これは全然関係ございません。その後どうなるか、こういうことについてはアメリカの意向も聞き、われわれの意向も言わなければならぬわけでありますが、これはまだまだ早急に相談すべきことではなくて、時間をかけてやるべきことであると思います。  この台湾地域についての私の見解を申し上げると、第一に、日中国交正常化、米中正常化が安保条約にかかわりなく達成されたと同様に、これによって直ちに台湾と極東の範囲の問題が生じるとは考えておりません。  第二に、台湾をめぐる国際情勢の変化及び今般の米中正常化により、台湾に対する武力攻撃の可能性はなくなったとは観測しておりません。ほとんどなくなった、こう考えております。  第三に、米台条約はあと一年続くことであります。  第四に、極東という範囲の考え方というのは、基本的には米国と日本との話し合いによってできたことでございまするので、これは一方的に日本がどうこう言うべき筋合いのものではないと考えまするものの、その後、米国は、米中正常化以後といえども台湾の平和と安定に重大な関心があると、こう言っております。私も、台湾地域の平和と安定ということは、これは関心があるし、中国も大事にされるべきであるという意見を中国に申し上げているところであります。
  214. 正木良明

    ○正木委員 確かに米台条約は一年間残るわけでありますから、その点の側面から見るとそういうことが言えるかもわかりませんけれども、少なくとも従来の関係から言えば中国は極東の範囲の中に入ってないわけですからね。そうすると、中国の統治下にあるということを認めたという──これは日本はもちろん一九七二年にそのことは認めたし、今度はまたアメリカがそれを認めたわけでありますから、これを、台湾地域というものを極東の範囲に入れておくということが、今度は中国の方から見ると、これは実に変わった──変わったというよりも、非常に刺激的な問題となってくるわけだと思うのです。そういうことで、私は、いまそういうことについてははっきりしたことは言えないというお考えのようでございますけれども、少なくともそういう点は前向きにもうすでに検討を始め、そうしてアメリカとの間で話し合いが必要であるというなら、それは明確にしておく必要があると思うのですが、いかがですか。
  215. 園田直

    ○園田国務大臣 十分時間をかけてアメリカとも相談をし、検討をすべき問題であると考えます。
  216. 正木良明

    ○正木委員 あとベトナム、カンボジアへの経済援助の問題でございますが、ちょっと時間がありませんので、余り詳しく申し上げられません。そこで重要な問題を項目的に申し上げますので、その点をできるだけ簡明にお答えいただきたいと思います。  インドシナ情勢は非常に混迷をいたしておりますし、これは、事実上ポル・ポト政権はカンボジアにおいて崩壊したと見るべきでありましょう。そういう状況の中で、政府はインドシナ情勢というものをどういうふうに分析しているか、今後の対ベトナム、対カンボジア政策について従来と変更があるのかどうか、さらに、アジアの平和と安定、これとインドシナ紛争の収拾ということは非常に重要な関連があるし、また、日本が担うべき役割りもあると思うのでありますが、どのような外交努力をしようとしておるのか、また、ベトナム政府についてはすでに何らかの働きかけをしたのかどうか。  次に、援助の問題でございますが、これもずっと詳しく申し上げると切りがございませんが、昨年の十二月にベトナムのグエン・ズイ・チン外相の訪日の際に、外務大臣は、ベトナムへの経済援助を今年度並みの無償四十億円、有償供与が百億円と約束されました。これについては代表質問等を通じてお答えになって、慎重な態度ということでございますが、この点について現時点におけるところのお考えをお聞かせいただきたいと思います。  さらに、ベトナムへの経済援助の問題について、五十二年度分のベトナム社会主義共和国への経済援助の実施状況と残余分の実施の見通し、先ほど申し上げた五十四年度分としての約束した援助額、再検討の必要性というのはおっしゃいましたが、それはどういう意味なのか、これだけまず答えてもらいましょう。あと少し残りますが、それは後ほどにしましょう。
  217. 園田直

    ○園田国務大臣 まず、ベトナムから申し上げます。  ベトナムの経済援助は、御承知のとおり、一般の民生安定、すなわちアジアの平和と安定のために行う援助と、それから災害のため血緊急援助と二つ、五十三年度分がございます。この五十三年度分についてはすでに契約も済み実動しているわけでありますが、その進捗の経過については、後刻事務当局から説明をいたさせます。  ベトナムについては、経済援助の話し合いのときに私は念を押し、細部にわたって、アジアの平和と安定のためにわれわれは応分の経済援助をするのであるから、アジアの平和を撹乱するような行動は慎んでもらいたい、特にASEANの国々は、当初から、ベトナムに経済援助をやれば、軍事援助は除くといっても実質的にはそれが軍事上の援助になるから、十分慎重にされたいという申し入れを正式にASEANの国々から受けた。したがって、ASEANの国々には理解を求めつつやったことであるから、ベトナムがアジアの平和を撹乱するというような立場になればこの経済援助はなかなかやりにくくなるからと、こういうことはこの前の外相会談のときに話してございます。  今度の事件が起こってから、ベトナムとカンボジアの言い分は真っ向から対立しております。しかし、国連安保理事会等における大多数の国は、今度の事件がベトナムの深甚なる影響によって起こったということは認めておるわけでありますから、わが方は、大使を通じて、ASEANの国々は非常に不安と懸念を感じておる。特に先般総理並びにベトナムの要人がASEANを訪問し、アジアの平和に対する諸問題について話し合いをやった直後であるから非常な懸念を持っている。ASEANの国々に懸念を与えないような努力をされたい。なお、今後の経済援助については、われわれは、今後のベトナムの動きによって、アジアの平和を妨害するということであれば慎重にならざるを得ないという警告を発した段階で、まだ凍結をしたわけではございません。  なお、中国からもいろいろな話がございまするが、わが方は中国に対しては、こういうわけであるから、アジアの平和について、中国とベトナムの国境で行われる行動は自重をお願いしたい、こういうことを申し入れてございます。  いずれにいたしましても、中国はベトナムを敵と呼んでおりますが、わが方はまだベトナムを敵とは考えておりません。ただ、アジアの平和のためにできるだけASEANの国々が理解をする行動をしてもらいたい、こういうことを申し入れているわけであります。ベトナムと話のできる国は少数であります。その少数のわが国は、あくまでベトナムと話のできる関係は現在のところ切りたくない、こういうのが私の気持ちであります。  カンボジアについては、ポル・ポト政権がどのようになるのか。一方、救国統一戦線は兵力が五千から一万と言われておりますが、実際は戦争をやる軍隊としての能力はまだまだないようであります。その後、一方遊撃戦はいよいよ組織、連絡がつきまして、補給、情報収集の拠点となってゲリラ戦が展開されておるようでありますが、カンボジアの将来については、いまなお公式の場所で見通しを言うほど的確な判断は持っておりません。カンボジアに対しても、同様、アジアの平和にカンボジアが寄与するような方向に進むならばわれわれ応分の協力はしたいということで、あくまでアジアの平和と安定ということに重点を置いてやっていきたいと考えております。
  218. 正木良明

    ○正木委員 これは言葉どおりやっていただくことが一番大事だと思うのです。いまもちょっととお話の中にございましたが、一月の十六日に中国の符浩大使が外務大臣に、カンボジアの問題についてカンボジア闘争を支援してほしいということで、そういう点はいまお話を承りました。片方では、ソ連は、もし仮にベトナムに対する日本経済援助を凍結したり停止したりするというと、これはいわゆる反覇権条項に基づく日中両国の共同行動日本が踏み切ったと解釈するのだというふうなことが言われておりますし、同様のことがソ連の在京大使館あたりからも出ているようでございます。いやおうなしに日本がベトナムをめぐる、カンボジアをめぐるいわゆるインドシナ情勢の混迷によって中ソ対立のパワーゲームの中に引きずり込まれるということにならざるを得ないわけですね。こういう点は、非常に重大な日本外交の岐路に立つときでございますので、この点はひとつ慎重にやってもらいたいと思うし、その点について御決意があったら承りたい。  さらにまた、あす鄧小平副首相がお見えになりますが、そのときに何らかの話し合いをそういう中でおやりになるのかどうか、この点二つだけをお答えください。
  219. 園田直

    ○園田国務大臣 日本が両国の紛争に巻き込まれないように、これは当然おっしゃるとおりでありますから、十分決意をかたくしてやるつもりであります。  ソ連からベトナムに対する援助を凍結するならば云々ということは、正式の申し入れ、抗議等はございません。内々でどこからか出たようでありますから、私も内々に、日本政府並びに外務大臣は、いいことだと思っておっても、人から指図をされたらやりたくなくなる、干渉がましいことは言わぬでほしいということを冗談に紛らわして、向こうも内々でありますから、こちらも内々に話しているところでございます。  鄧小平副首相がおいでになったら、総理からも、私からも、いま申し上げたアジアの平和という観点からいろいろ話し合いをしたいと考えております。
  220. 正木良明

    ○正木委員 それじゃ、ちょっと問題が多過ぎますので、次へ移ります。  これは国土庁の問題になると思いますが、けさ平林さんに国土庁長官は地価対策のことについてお答えになりましたね。確かに地価の上昇は非常にピッチを速めておりまして、われわれの調査によりますと、むしろ国土庁が調査なさった値上がりよりもそれの倍ぐらいの値上がりがすでに行われておるというふうに言われておるわけでございます。大平総理大臣のことをこんなところで言っていいのかどうかわかりませんが、一番わかりやすいので言いますと、東京都世田谷区の大平総理の地価の評価額は一億九千万円です。千百五十五平方メートル。これは国民に公表されたものですね。これは国土庁の基準価格なんです。だから決して間違ったものじゃないのですよ。しかし不動産屋に言わせますと、実際の価格は三億五千万と評価するのです。実勢と国土庁の評価、地価の基準価格というのはそれくらい大きな開きがある。大平さんお住まいになっているところは非常にいいところで、一等地でしょうからその差が激しいのかもわかりませんが、事ほどさように非常に大きな差があります。  ということは、けさも四項目にわたって地価対策をお述べになったわけですね。宅地供給を抑止しているような税制は改正しなければいかぬ、国土利用計画法を適正に運用していくのだ、また、土地の譲渡所得の問題等の緩和をしていくのだ、もう一つ何かおっしゃいましたね。実はそういう内容なんです。いまこそ地価対策というものを厳密に、しかも敏速にやっていかなければいかぬときだと思うのですが、この四つ項目的にお述べになった内容を具体的に言うと、どういうことになりますか。
  221. 中野四郎

    ○中野国務大臣 平林議員に御説明申し上げたときに、第一番は都心寄りの地価が最近高騰を伝えられておる。三大圏におきまして住宅地の上昇率が高いのは、第一番は最近交通体系が非常に整備をされてきたことであります。それから第二番は、公共事業の進捗等によりまして住宅地としての効用が非常に増大してまいりました。これが……(正木委員「上昇の理由は大体わかりますから、対策です。ちょっと時間がありませんので」と呼ぶ)それでは内容的に申し上げますと、一つは国土利用計画法の適確な運用をする。土地税制等によって抑制効果をより効果的に活動させて、そうして暴騰を抑える。一つは、都市計画法の線引きを見直すと先ほど申し上げたのであります。それからもう一つは、計画的な宅地開発の推進をやろう。もう一つは、土地税制の所要のいわゆる手直しです、個人の長期譲渡のうちの優良住宅等を出した人に対しまして適当なる措置をしょう、こういうようなことを先ほど申し上げた四点のうちに御説明申し上げた次第です。
  222. 正木良明

    ○正木委員 いや、その内容です。では、一つずつ聞きましょう。  まず第一に、地価を安定させるために税制を考えるというのですが、今度やった税制は、実は個人の長期譲渡所得の緩和なんですね。これで地価が安定し、なおかつ宅地供給がふえるとお考えですか。
  223. 金子一平

    金子(一)国務大臣 宅地供給が行き詰まっておることは御承知のとおりでございます。これはどういう対策をとるか。むしろ全般的に網をかぶせて、土地の保有がむずかしいようなかっこうにして吐き出させるかどうかという議論もいろいろございます。しかし、特に首都圏を初め三大都市圏における宅地の供給をこのままほっておきましたら、それこそミニ開発ばかりふえるだけでございますので、優良宅地の供給につながるものだけは、現在の課税制度に穴をあけて本則に戻す程度のことをしたら、ある程度効果が上がるのじゃなかろうか。それでもだめだという考え方と、それからそれをやれば何とか宅地供給につながるという見方と、二つございました。私どももいろいろ議論しました末、これはひとつ優良宅地のものに限ってやってみようじゃないかということで、御承知のような改正案を提出いたした次第でございます。したがいまして、その分については土地価格の高騰をある程度抑えられると確信いたしております。
  224. 正木良明

    ○正木委員 私は、こういうことをやったから宅地が出てくるとは毛頭考えてないのです。ですから、二説あった方の反対の方に回るのかもわかりませんが。しかし一面、いままで二千万円で制限されておったのが、四千万円になるわけですが、二千万円の切り売りが四千万円の切り売りになるから、それはある程度ふえてくるでしょう。しかし大臣、そういう面で宅地供給を円滑にしていこう、ある程度ふやしていこうとするなら、この法律は、この緩和は時限にしないとだめですよ。二年ないし三年のうちに宅地を供給したものについてはこれぐらいの優遇策を講じましょうということにしない限り、この地価の強含みのときに優遇措置が加えられて、今度はあぐらをかくのです。いつでも優遇措置が受けられるといったら宅地供給が出てくるわけがありません。これはやはりどうしても期限をつけなければいかぬと思いますが、どうですか。
  225. 金子一平

    金子(一)国務大臣 いまの土地税制の制度は、制度全体として五十五年までの暫定的な取り扱いになっております。本則自体もそういうふうになっておりますから、その時期に至ってさらに全体を見直すことになりますが、どうするかはこれからの問題として、期限は一応ほっておいても五十五年ということになるわけです。それから逆に売り惜しみが出ては困りますから、仮に四月施行なら四月施行ということで五十四年の一月一日にさかのぼって施行いたします、だから早く売ったって四月以降になったって同じですよというようなことでいろいろ細かい配慮を加えておる、こういうことでございます。
  226. 正木良明

    ○正木委員 いや、それは私も知っておるのです。ただ、税法の関係の優遇措置というのは大部分がやはり延長されるということが多いものですから、それは延長しないのだということを明確に言うと、これは私は、明らかに売り惜しみではなくてむしろ売り急ぎが出てくる可能性の方が強いだろうというふうに考えます。しかし、これだけでは実際は土地の供給政策としては無理なんです。 もう一つ、やりたいことがぼくもあるのですけれども、これはちょっとうちの党の政策で反対しているからできぬのだが、例の宅地並み課税の問題はやはりあわせてやるべきだというふうに考えますけれども、これはこれなりにいろいろマイナス面が伴っております。だから、この法律だけでただ野放しということではなくて、期限を延長しないということを明確に言明しないとだめだと私は思うのです。  それともう一つ、国土利用計画法の問題がございますが、国土利用計画法の問題で宅地供給ないしは地価の安定に効果があるというのは、御承知のように国土利用計画法ではいわゆる規制区域の指定ということができるわけですね。国土利用計画法をつくるのに私も参画をいたしましたが、そのときに、地価が暴騰ないしは暴騰含みのときに、もうすでに都道府県知事はこれに規制を加えることができるわけです。規制の網がかかってしまいますと、この取引が全部知事の認可を得なければならぬわけです。ところがいままでその動きというのは、私がキャッチした情報では出ていないようなんですが、これは長官どうですか、都道府県知事が不当に渋るというようなことになると、内閣総理大臣はこれを指示することができるということになっているのですが、この点お考えになっていますか。
  227. 中野四郎

    ○中野国務大臣 お説のとおりでありまして、厳しい規制制度が諸先生のおかげでできております。しかし、これはあくまでも伝家の宝刀でありまして、でき得るだけ宅地が供給されるような道を開くとすれば、一面にはそういう厳しい規制を持ちながら、一面にはやはり出しよいような緩和策をとっていく、緩急よろしきを得るということがこの住宅宅地の供給に重要な要素を持つのではなかろうか、かように考えまして、規制の段階までは相当考慮を要する必要があるのではなかろうか。無論必要とあれば直ちにこれを発動せしめる措置をとることにやぶさかではございません。
  228. 正木良明

    ○正木委員 大体、長官、いまはまだ暴騰の含みでないというお考えのようですけれども、これは発動するといったらどの程度になったら発動しようというお考えですか。これは知事の権限ですけれどもね、知事がやらないときは総理大臣がやらなければいけないわけですから。その点どうですか、大体基準をお考えになっていますか。
  229. 中野四郎

    ○中野国務大臣 それでは事務当局から……。
  230. 山岡一男

    ○山岡政府委員 別段どういう時期にということははっきり決めた基準はございません。ただ国土法によりますと、今後五年間にそういうふうな急騰もしくはそういうふうなおそれがあるところで、五年間に整備をするためにどうしても発動しなければならないところであって、かつおそれがある、かつ適正価格をオーバーする取引が行われるというような場合というふうに二つの要件が書いてございます。そのうちの要件の一つといたしまして、今後もし規制区域を指定いたしました際に値上がりを認める限度がございます。それはやはり消費者物価等を中心といたしまして、それを超えるものにつきましては高い方だという判断をしろというふうに政令にはなっております。したがいまして、一つの判断基準には消費者物価等の関係が法律上は政令として書かれておりますけれども、もう一つの大きな柱でございます五年間以内にそういうふうなおそれがあるところで問題がある場合という別な判断が入ることになっております。その判断が知事さんの判断で一番重要な判断になろうかと思っております。
  231. 正木良明

    ○正木委員 東京都区部でも公式の国土庁の調査でも七・七%ですからね。これは先ほど申し上げたように実勢価格ならこの倍だと言われているわけなんですから、これはもう消費者物価の上昇率を超えていることは明らかなんで、これはやはり早急に検討の対象にしなければいかぬ問題だと思うのですよ。こういうものは心理的なものが非常に大きいわけですから、やるぞと言えば出てくるかもしれないのだ。私もそれは出てくるとはちょっと断言できませんけれども、そういう点ではひとつよほど機敏な行動を開始するようにしていただきたいと私は思います。  そこで、幾つか述べられた中の線引きの変更ですね。要するに市街化区域と市街化調整区域の線引きを変えて、市街化調整区域を市街化区域に入れるということでしょう。市街化区域を市街化調整区域に変更して調整区域をふやすなんということじゃないでしょう。この点はどのようにお考えになっておりますか。
  232. 中野四郎

    ○中野国務大臣 この線引きを見直して、できるだけ調整区域を市街化区域の中に入れて住宅の用に供するということは大事なことだと思うのです。それで、現時点では二百八十カ所あります中で、すでに線引きの見直しをしたものが百四あるわけなんです。しかし、これは各地方の自治体の意思が多分に反映しておりまするので、今後においてもやはりこの線引きの見直しということはぜひ推進いたしたい、かように私は考えております。
  233. 正木良明

    ○正木委員 実は地方自治体は線引きの見直しに非常に消極的なんです。積極的でありません。消極的な理由は何かと言えば、全部金なんです。急激な人口増を望まないということ、それは行政のコストが非常に高くなっているからです。それと同時に、そのために関連の公共施設を建設しなければいかぬということです。関連の公共施設を建設するに当たっては、超過負担があり、ないしは地方財政を圧迫する要素が多分にあるということで、これは地方自治体に線引きの見直しなんと言ったって絶対しませんよ、人間はふえない方がいいと思っているのですから。ですから、これはやはり実情に沿って考えていかなければならぬので、この点については、むしろ三大都市圏の中でもいわゆる宅地が不足しているところは実はこの線引きを見直すことが大事なんだけれども、線引きを見直すことについては地元の地方自治体が反対であるということになっているのです。  ですから、宅地供給の四つの項目の中に、線引きの見直しなんというものを重要な項目で入れておくこと自体が私は大きな間違いじゃないかと思っているのです。その点ではやはり地方自治体の意思というものを無視しないで、むしろ線引きを見直すときには、地方自治体が最もこわがっておる人口がふえる、人口がふえて行政コストが高くなる、人口がどんどんふえてくる、それに対して公共施設の建設に大変な出費がある、こういう問題を解決するということを前提にしない限り、私は線引きの見直しというものは成功しないだろうと思いますから、この点はよく考えておいてください。  そこで、これはかつて参議院でも質問があったそうでございますが、設備の共同廃棄事業というのがあるのですね。実は私の近くはいわゆる中小というよりも小零細企業の繊維の多いところです。通産大臣の地元もそうであろうと思います。これが設備の共同廃棄事業ということに取り組んでいるのですが、通産省の調べでもパーセンテージとしては優秀な方ではありません。実はこういう小企業が転換しようとしても転換できない条件があるのです。それは何かというと、この小規模の繊維工場、要するに綿織物の工場が多いのですが、市街化調整区域なんです。市街化調整区域であるがゆえに融資を受けるためにその土地は担保に入らないのです、転換しようと思っても。そうしてその土地を売ろうとしても売れないのです。そして市街化調整区域ですから、きわめて狭い範囲で許された施設を建設しない限り建築許可はおりないのです。こういう点で実際問題として私の調べによりますと、相当困っています。  ちょっと例を挙げてみますと、これは大阪府の和泉市ですが、綿スフの織物業、従業員が十二名だ。これが五十二年八月に工場を閉鎖しました。将来性がないので、工場を売却して退職金を払おうとしたけれども、それが売れない、こういう問題があります。五十一年十二月大阪の泉南市ですが、これも紡績が工場閉鎖、従業員六十名、これは資金繰りが非常に困難になってストップされて工場閉鎖になったわけです。遊休不動産が約五百八十坪あったのですが、売却して資金回転をしようと思ったけれども、調整区域で売却できなくて結局つぶれた。それで工場閉鎖、全員解雇に至ったが、工場及び遊休不動産の売却が進まなくて、退職金の支払いが一年半も支払われない状態だ。この退職金の支払いが実は社長が自宅を売ってつくった金です。だからいまだに売れない。それと同じようなのが幾つも例としてあるのです。したがって、この市街化調整区域の中に工場を持っておる小企業、しかもこれは事業転換を迫られている。これは繊維だけではありません。ほかにもあるだろうと私は思うのですが、そこまで私は調査いたしておりませんが、そういう問題で、実は建設省の計画局だと思いますが、市街化調整区域内にある事業転換を必要とする工場敷地であるとかなんとかに、これを市街化区域並みに売買ないしは抵当物件に入れられるように何らかの特例措置を講じられないかということですが、どうですか。
  234. 丸山良仁

    ○丸山政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま先生からお話のありましたように、泉州地区で転廃業したいと言っている業者は百二十一業者ございます。そのうち調整区域内の業者が四十二業者でございます。そのうち大阪府の方に具体的に話の出てまいっておるのが四件ございまして、その一件につきましては工場を倉庫に使いたい、こういうことでございまして、これは都市計画法上認められる範囲に入っておるものでございますから、話がついております。ところが、残りの三件は、工場をやめまして住宅地にして団地開発をいたしたい、こういう希望でございますものですから、調整区域の趣旨といたしまして、これはなかなか困難ではないか。したがいまして、工場を工場にするとか、工場用地を農地にするとか、あるいは工場用地にその近くの住民の方々のための売店をつくるとか、そういうものであれば都市計画法上許可ができるわけでございますが、法律で厳重に規定されておるものでございますから、いまの先生の御趣旨に沿うようにすべてを解決するのはなかなか困難ではないかと考えているわけでございます。
  235. 正木良明

    ○正木委員 いや、それは困難だからいままでこうなってきたので、いままでのままならこの困難さがずっと続くだろうと思うのですが、通産大臣、あなたは繊維に御理解のある地域にお住みになっているのであれだと思いますが、繊維だけに限らず、こういう事業転換を必要とする構造不況産業、特に小企業の問題がずいぶんたくさんあるだろうと思うのですね。それが事業転換のために市街化調整区域であるがゆえの問題点、これがボトルネックになっているという問題があるわけなんですが、これはいますぐ返事をしろと言いませんが、こういう点を調査して、何らかの特例措置を講じる方向で進んでいくということについて、ひとつ通産大臣、建設大臣と相談してやっていただくというわけにいきませんか。
  236. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 繊維の不況はもう六年越しでございます。いま正木さんが言われる点は、全く何とか解決しなければならぬ問題ですね。大体が設備を廃棄しなければならぬというようなことは、もう臨時異例の措置に出ておるわけですからね。したがって、いまも建設省、国土庁と相談をしておるわけですが、計画局長の返事にありましたような形よりもっと前進させなければならぬ。ただ、住宅として、大マンションの経営とか、そういうことになりますると、これはやはり自治体としてはアフターケアの問題もありましょう、周辺整備の問題もありましょう、いろいろ問題は多いと思いまするが、御趣旨の存する点はよくわかりまするので、よく両省と相談をいたしまして、明るい結論が速やかに得られるように、私どもの立場としては今後とも推進してまいりたいと思います。
  237. 中野四郎

    ○中野国務大臣 線引き見直しの点は、私は非常に重要視しておるのです。したがって、これが推進に最善の力を入れるつもりでおります。御了承をいただきたいと思います。
  238. 正木良明

    ○正木委員 それで、最後に残ったのがいわゆる優良宅地の開発をやっていきたいということですね。この優良宅地の開発の問題は、税制の問題もあろうと思いますけれども、実は地方自治体が民間デベロッパー、いわゆる開発業者に対して開発の負担金を課するわけですね。これはこの前の予算委員会のときにも申し上げたわけでございますが、要するに、学校であるとか保健所であるとか、いわゆる公共サービスの施設というものをつくるための予算を民間デベロッパーに負担させるわけです。これは条例でやるわけなんですがね。これはこれなりに自治体としても無理からぬところがあろうと思うのですけれども、実際問題として、これは別な見方をすると税の二重負担じゃないかというふうに私は考えるのです。本来、どこにでも住めるというのが日本国憲法のありがたさでありまして、どこに住んだっていいわけだ、どこに家を建てたっていいわけです、法律の規制がないところなら。そこに住んでおる、子供が学校へ通う、そのために学校が足りなくなれば学校を建てる。これは地方公共団体ないしは国の責任でやるわけなんですが、そのためにそこに住んでいる人は住民税を納め、固定資産税を納めているわけなんです。ところが、実際は、民間デベロッパーに対してその開発の資金を六〇%も七〇%も課するものですから、民間デベロッパーは、宅地を開発するのに自分が自腹を切ってそれを負担するわけは毛頭ないわけで、これは結局、最終消費者であるところの、いわゆる宅地の分譲を受けた人ないしは家を建てた人にかぶさってくるわけです。それだけ値段が上がるということです。そういうものをすでに分担金として、要するに土地代に含め、家の代金に含めて取られて、なおかつそこに住んで税金を取られるのじゃ、これはぼくは二重取りだと思う。  そういう意味で、われわれがやかましく言ったものですから、ある程度整備費というものをだんだんふやしてくれております。これは非常に結構なことなんだが、ちょっと足りません。ことし六百億ですね。ことし六百億の予算をつけたんだが、これの使途制限があるのです。これは非常に問題でございまして、これはやはりどうしてもこの範囲をふやしてもらわなければいけないだろうと私は思うわけです。少なくとも上水道であるとか小中学校であるとか公共交通、こういうものもやはり対象にしてもらうというようなわけにはいかないのだろうか。現在、建設省所管の道路、河川、下水道、公園に限定していますね。この対象の範囲を広げるというわけにはいかないのですか。これはどっちなのかな。建設大臣か大蔵大臣のどっちかだな。
  239. 山岡一男

    ○山岡政府委員 現在建設省に計上されております、ことし要求しております六百億につきましては、河川、道路、上水道、公園等、建設省所管の事業に限られておるのはそのとおりでございます。ただ、関係省の間で考えております一つの点といたしまして、国土庁に事業調整費がございます。事業調整費の中で、そういう宅地開発関連のものにつきまして、医療施設、学校施設等につきまして今後道を開くということは確約ができております。  ただし本年度につきましては、実際上の実行はございませんでした。なぜかと申しますと、各省所管のものが相当しっかりついたということが一点、それからやはりまず河川、道路等の整備が先立ちまして、一、二年おくれてそういうようなものが出てくるというのが現状でございますので、来年国土庁の要求いたしております百四十一億、事業調整費でございますが、その中で必要なものにつきましてはそういうことができるような道を開くということでございます。
  240. 正木良明

    ○正木委員 これをやっているとまた時間食うのでかえましょう。  ところで建設大臣、ちょっと道路に金使い過ぎと違いますか。ことしの予算、一兆九千億ですよ。しかも、経済企画庁長官、返事してもらわぬでいいですけれども、今度の新経済社会七カ年計画、この中で昭和六十年、二百四十兆ですね。いわゆる公共事業の累積が二百四十兆。これもでかいことはでかいが、これは五十三年価格ですからね。これは実際その当時の時価計算にすると大変な額になるでしょう。五十三年価格で二百四十兆。ところが、この中で道路が四十六兆ですよ。構成比からいって一九・二%、約二〇%は道路です。環境衛生が一四%、その他がひっくるめて一六%、そのほかは、これはゴルフじゃないけど全部シングルです。二けたというのはこれだけです。  どうして道路にこれだけ銭を使わなきゃいかぬのかと不思議でしようがない。それは確かに、こういう質問をいたしますと、法律でガソリン税だとか石油ガス税なんというものは道路整備五カ年計画の中へほうり込まなければいかぬのだというふうに決まっているから、そうだとおっしゃるかわからぬけれども、しかし、ちょっと使い過ぎだと思いますよ。これは何回かこの予算委員会で、私だけではなくて各党からこの要求が出てきております。ほかの国民生活関連公共事業の方へ分けてやることはできぬのかという話が出ておりますけれども、いままでそれが実現したためしがない。建設大臣、せめて自動車が原因で起こったいろいろな問題については、銭を使うてやるというわけにいきませんか。  たとえば、これは全国的にあるのですが、特に大都市が多いのですが、自動車が道路を通るための騒音、振動、排気ガスで小学校や中学校を移さなくてはいかぬ、移築をしなくてはいかぬ、防音工事をしなくてはいかぬ、こういうのがずいぶんあるんですよ。ところが、これは単なる文教施設予算、いわゆる文部省の予算で賄われておって、ここからは金が出てないのです。自動車から取った税金だから自動車が使う道路へ還元するのだ。それはそれで理屈があるとしたら、少なくとも自動車が起こしておるところのいろいろな影響について、金の要る問題には使うてやるというわけにいかぬのかいな。どうですか。
  241. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 まず第一点の道路費の問題でございますが、道路は国土の均衡ある発展、豊かな地域社会の建設、流通の合理化等に寄与する基礎的な施設と考えております。その状態から申しましたなれば、整備状況はまだまだ不十分でありまして、緊急に整備すべき多くの点が残っておりますので、私は、道路整備予算決して多過ぎるものではない、こう考えております。(「官僚答弁だ」と呼ぶ者あり)いや、官僚ではございません。  しかし、正木さんのおっしゃることもごもっともでございますので、本年度予算におきましても、構成割合にいたしまして、社会資本に出る下水、公園等にはできる限りの増加をいたしまして、均衡あるようにいたしております。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 本来、建設行政におきましては、道路、治水、下水道、公園等、それぞれ均衡ある五カ年計画をつくりまして、おくれておる社会資本の整備に努めておりますので、御了承賜りたいと存じます。  なお、いまの自動車公害による校舎の移転等は原因者負担の考えに立ってやってはどうかということでございますが、自動車交通による学校の騒音、振動に対する対策としては、道路の新設あるいは改築を行う場合には、公共事業の施行に伴うところの公共補償基準要綱に基づいて、道路予算によって防音工事等の対策を行っておるところでございます。いまおっしゃいましたのは、改築とかなんとかこの基準に当てはまらない分でございましょうが、それには文部省の学校整備に対する基準等もまたつくられておりますので、関係当局とも連絡の上、万遺憾なきを期してまいりたい、このように考えております。
  242. 正木良明

    ○正木委員 それはあきまへんわ。そんないわゆるおためごかしじゃだめなんです。  文部大臣、あなたのところの応援をしているのだから、どう思う。ぼくはあなたのところの応援を一生懸命やっているんですよ。
  243. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 いま文部省では、五十四年度予算におきましては、公立学校では二十四億円を国から補助していただいております。また、私学につきましては七億円、私学振興財団に融資をいただいております。それで間に合わせているということでございます。
  244. 正木良明

    ○正木委員 ちょっと力の入れがいのない話ですな。  建設大臣、確かに治水であるとか治山予算についても、それぞれの年次計画に基づいて予算を配分しておる、こうおっしゃった。それはわかります。ただ、あなたもいみじくもおっしゃったが、原因者負担の原則というのがこの世の中にありまして、たとえば私鉄を高架にするといったら、そこの地方自治体が全部持たなくてはいけませんね、その金。なぜかと言ったら、上げろと言ったのが市だから、要するに原因をつくったのがそこだから、おまえのところで持てということになる。世の中にはいわゆる原因者負担の原則というのがあるのです。ですから、新設する道路について、それを立ち退かすとかなんとかということについて金は出しているけれども、しかし、既設の道路に、どんどん自動車が大型化してきて、そのために過積みの制限までしたんでしょう。そうしてその振動によってもう授業ができない、その騒音によって授業ができない、その排気ガスによって運動場で遊べないというような学校を移すのです。これはだれが悪いのですか。これは自動車じゃないか。自動車によって生まれてくるそういう出費については、学校を移したりなんかするというようなものについては、この道路予算の中から削って出してやったらどうですかと言っているのです。それを文部大臣、私は言うてますのや。あなたのところはもう十分ですなんて言うてもろうたら、どうもならぬわけや。やりたいのはたくさんありますけれども、金がないからできませんと言うてもらわぬとどうもならぬ。それはまあよろしい。  同時に、いいですか、総理、一回聞いてくださいよ。  いま内藤文部大臣がいみじくもおっしゃったけれども、私学については融資だけですよ。私学振興財団からの融資だけ。融資は予算に組んでいますと言うけれども、融資ということは、金を貸して取り戻すのだから、助成したんじゃないですよ。文部省からも金をもらってないのです。これぐらいのことは、これだけ大きな予算をがっぽり取り込んだこの道路、何とかしてやったらどうですか。これは当然だと思うが、どうですか総理、話を聞いて、常識的に考えて。
  245. 山根孟

    ○山根政府委員 お答え申し上げます。  これまでも道路の新改築の場合にはやってきたのでございますが、ただいまの御指摘は、既存の道路について、車両の大型化等のためにそれが可能であるか、こういう御指摘だと考えます。これにつきましては、現在必要のある場合には、個々それぞれの場合によって大変違っておりますので、それに応じて将来検討してまいりたい、かように考えております。
  246. 正木良明

    ○正木委員 道路局長検討すると言っておりますが、どうですか。
  247. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 御趣旨を体しましてよく検討をいたします。
  248. 正木良明

    ○正木委員 こういうのを、大阪では「のれんにもたれて麩かむ」と言いますのや。  それでは、いよいよ労働大臣、ひとつよろしくお願いいたします。  雇用問題は非常に深刻なんですね。このことはもう各大臣いずれもお認めになっていらっしゃることでございます。したがって、そのことについてはあえて強調はいたしませんが、小坂長官、七カ年計画で、この間の年度がぱあっとすっ飛んでしまって、完全失業率が昭和六十年一・七%というふうにお示しになっているのですが、まさかそんな計算ができるわけのものじゃなくて、何か積み上げて、余りこれは世間に知らさぬ方がいいというので出してないんだろうと思うのですが、長官のお考えでは、完全失業率が昭和五十四年から六十年までの推移というのはどういうようにお考えになっていますか。
  249. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 御指摘のように、この失業問題は非常に私はむずかしい問題だと思っております。したがいまして、希望的な観測は幾らでも述べられるのですが、しかし、われわれはこの中期展望の中で、ともかく六十年度には一・七以下ということを目標に定めてはおるのです。いま御質問のその中間はどうなのだと、こういうことでありますが、私は、六%弱の経済成長をやってまいります過程の中で、来年度は二・三%の横ばいパーセントでございますが、その数年の間に二%をだんだん割り込んでいくような趨勢をぜひつくりたい。それから後は一・七%以下というところを目指していくような方向を、われわれとしては一応想定しております。単純な計算でありますが、就業者の数を見ますと、現状より二百四十万人ぐらいふえなければならぬわけですから、これが一挙に計画的に年々きれいにさばかれるということもちょっと言いづらいものでありますから、そのなだらかなカーブの中で二百四十万人の消化ということを目標にしております。
  250. 正木良明

    ○正木委員 これも民間の調査機関だとなかなかこうは言わないのです。しかし、われわれのトータルプランではそれを言っておるから、それは間違っておるとちょっと言えぬのですけれども、しかし、その間におけるところのやはり具体的な雇用創出というものを精力的に、しかも計画的にやっていかない限り、このことは不可能だろうと私は思うわけであります。  そこで、これがちょっとこの前の五十年代前期経済計画と数字が違ってきているわけですね。まあ、あれは破綻したから廃棄して新しい計画をつくったんだと言えばそれっきりでありますが、あの当時やはり一・三%にする、これが完全雇用の形態であると言っていたんですが、小坂長官、この六十年一・七%は完全雇用の姿であるというふうにお思いになっていらっしゃいますか。
  251. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 完全雇用が一体どれくらいかという算定はいろいろ意見が分かれていると私は思います。五十年前期というあの計画では、経済成長六%強で計算しておりましたが、私らは現状で推計する限りにおいては、やはり六%弱でいかざるを得ないのじゃないか、もちろん高ければ高いほどいいと思いますが。そうしたようなことから、大体一・七程度のところが、完全とは申せませんが一応需給バランスがとれた形というふうに考えさせてもらっておるわけでございます。
  252. 正木良明

    ○正木委員 それは私の聞き方がちょっと悪かったかもわかりません。しかし、やはり超をつける人がありますね。いわゆる昭和四十六、七年ごろ、高度成長の真っ盛り、超完全雇用というふうな言い方をしますが、そのときは、やはり一・三%よりも下ですよ。ですから、あの状況を完全雇用というふうに考えると、一・七%はいささか高い率であるというふうにしか考えられません。しかし、これは議論してもなかなか終着点には来ないでしょう。ただ、完全雇用というふうな状態であるかどうかは判断できないという意味のことでございますので、一応了承しておきましょう。  そこで、中高年齢者、四十五歳から六十歳ですが、昭和六十年には労働人口の四〇%を占めるということが言われておりますね。こうなってまいりますと、中高年者の需要創出というものが非常に重要な問題になってくるんです。中高年の問題については、今度は労働省が力を入れて、新しい助成金であるとか給付を始めようといたしております。私は、そんなものをつくったから直ちに効果があるとは思ってないのです。よほどこれにも努力をしなければいかぬと思うのです。  そこで、こういう新しい雇用創出であるとか、雇用政策、雇用をつくり出していく、そして失業者をできるだけ出さないようにしていく、これは非常に重要な政策だと私は思うのですが、今度新しく雇用問題政策会議というのをつくりますね。それから長期展望のための調査研究会、これも新設ですね。ところが、いままでに雇用審議会であるとか、中期労働政策懇談会であるとか、雇用政策調査研究会であるとかというのが残っている。これは使命が終わったのもあるのかもわかりませんが、いままでのはどうしますか。
  253. 小坂徳三郎

    ○小坂国務大臣 労働省で現在、いま御指摘のような新しい組織を考えておられると思います。企画庁といたしましては、特に一番雇用の吸収力があると思われるところで行政的にまだ余り力の入っていないところ、つまり三次産業でございます。三次産業と申しましょうかあるいは四次産業と申しましょうか、こうした部門に行政的な光を当てることが従来は他の部面でいろいろとなされておりましたが、今回われわれは、この第三次ないし第四次部門というものに雇用の吸収力、その可能性あるいは雇用創出効果と申しますか、こうしたものを各省と連絡の中で、新しく企画庁としては前向きに取り組んでまいりたいと思って、そうした方向を一方で立てながら、先ほど御指摘の新しい雇用問題の受け皿と申しましょうか、行政的な受け皿と連動して努力をしてみたい、そのように思っております。
  254. 正木良明

    ○正木委員 こういうのは、総理大臣の説によると、予算の多寡で働きが決まるものじゃないということになるのでありましょうが、お粗末な予算ですね。それで実際活動ができるんですかね。この点がやはり非常に心配なんです。雇用問題政策会議の開催、これは予算二百万ですね、これで何か雇用問題が全部解決するような話をときどきなさるけれども。雇用発展職種開発研究委員会、これは五十三年からありますが、三千五百万、第三次産業雇用実態調査七百万、長期展望のための調査研究会四百万、これだけで五十四年度四千八百万円です。その大部分が雇用発展職種開発研究委員会の方に取られてしまっていますが、これでは実際には仕事はできないのではないかというふうな気がしますが、それはそれとしてがんばってください。  ただ参考のために申し上げておきますが、日本の国というのは、何かやるというときのリサーチの予算というものはほとんどつかぬところです。実は雇用問題などというのはリサーチが非常に大事でありまして、アメリカあたりは予算の四分の一はそのリサーチのために使うのです。ところが雇用対策費一兆七千三百四十七億円のうち四千八百万円ですから、これは計算のしようがないくらいです。それをうちの政審がまじめに計算したら〇・〇〇二八%になったが、お粗末なものです。  そこで、いろいろ計画があるけれども、私は雇用はあると思うのです。一回、総理、これを見てください。二冊あるから一冊……。これは「日刊アルバイトニュース」というものです。驚くなかれ日刊ですよ。これは同じ広告が二日続いて出るのです、これだけ人間が足らぬというておる。週刊、月刊、皆、求人するところは──総理大臣、これは私聞いてみたら、この小さいものが二日間載せてもらうのに三万円です。この長いのが六万円、これは二十一万円。この本に二日載せてもらうだけですよ。毎日駅や何かに出ているわけです。これだけあるのです。これだけあるのに何で失業者が多いのですか。これが問題です。アルバイトニュースですが、アルバイトばかりじゃないのです。それは「正社員特集」と書いてある。だから、よほど根本的に考えなければいけません。  一つは、これはアメリカの職業ガイドのブックです。毎年一回ずつ出るのです。この中では、それは親切なものです。労働需給の実態というものはこれで一目でわかるのです。どういうところに人を求めている仕事がたくさんあるか、そこは給料は幾らです、交通費はこういうふうな条件で出ます、年齢制限はありません、これが日本にはないのです。私はこんなことで、よう職業訓練なんというえらそうなことを言うなと思いますよ。職業安定所にぼくが失業者で行って、職業訓練を受けて私は再就職したいのですが、どの職業訓練を受けたら一番就職しやすいですかと言ったら、安定所はわかりませんよ。こういうものはできぬのと違うのです。あるのです。確かにアメリカ企業別組合ではなくて職業別の組合ですから、調査がしやすいということもありましょうけれども、やろうと思えばできるのです。こういう問題をいま言った審議会か何かでやろうったって、これはお話になりませんわな。やれませんわな。ですから、いま何が一番足りないのか。この統計はあるんです。この統計は実は労働省にはなくて総理府にあるのです。それは五年ごとに行われる国勢調査でややその傾向が見られるだけなんです。だから、本当を言えば、こういうものをつくろうという気持ちになって、これは総理大臣以下そういう気持ちになってもらわなくちゃならぬのですよ。つくろうという気持ちになって、その組織をつくり、やり始めるとするならば、来年国勢調査ですから、絶対チャンスなんです。ですから、調査項目を労働省の専門家の意見を入れて、調査項目の中にそれをインプットしていくという考え方で国勢調査をやってみるという気持ち、三原さん、ありませんか。
  255. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 いま御指摘のように、わが国の労働需給のリサーチが不十分であるという点につきましては、貴重な意見として拝聴いたしておったところでございます。いま御指摘のように、統計局におきましては、産業別、職業別の就業者の状況調べ等はやっておるわけでございます。  そこでいまの御意見、非常に雇用関係政策遂行の重要な段階でございますので、ちょうど来年の十月が国勢調査で、関係省庁いま鋭意その内容、方法等について検討を加えておる段階でございますので、ただいまの御指摘の点につきましては、十分これから労働省とも相談をいたしましてお役に立つような調査を進めてまいりたい、そう考えております。
  256. 正木良明

    ○正木委員 労働大臣、それとともに、あなたのところはいままでりっぱな仕事をなさっているんです。いまちょっと持っていますが、昭和三十七年の失業者帰趨調査というものです。これはいまやっていませんね。
  257. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 帰趨調査はかつてやりましたけれども、その後やらなかったのですが、ことしはこの帰趨調査をやらなくてはならぬということで、四千万円の予算をつけました。
  258. 正木良明

    ○正木委員 五十四年度からまた再開するそうで、それは結構なことだと思います。だから、そういう単発なものでなくて、これが抜すい、ダイジェストの和訳したものでありますけれども、ごらんになるとよくわかると思いますが実に親切です。ですから、こういうことは単に失業者向けのものだけではなくて、私は文部省の方も関係あると思いますよ、これからどんな職業に進んでいけばいいのか、そういう見通しも全部入っているわけですから。そうすると、学生の進路という問題についても大いに参考になるんです。これは一〇〇%ぴたりと当たるかどうかわかりませんけれども、少なくとも何をしようか、何を目指していこうかということ、このごろそんなことは何もわからぬから、何でも普通科の高等学校へ行って、何でも構わぬから大学へ入ったらいいという人ばかりでしょう。ですから、そういう点も大きく教育の問題にも、教育の進路という問題にもこれは大きな助けになるガイドブックなんです。これは相当な予算がかかるでしょうから、いますぐやれと言ったって大変でしょうけれども、少なくともそういう統計資料、労働需給のリサーチというものについてはよほど本腰を入れてやっていただきたいと思うのです。どうですか。
  259. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 御指摘のとおりでございます。景気はいいときばかりでございません。景気は悪くなるときもある。要するに経済は動いておりますから、いつでも先行的に指標が出せるような体制をとるべきだと思います。御趣旨を体して善処いたしたいと思います。
  260. 正木良明

    ○正木委員 善処してもらうことは結構なんですけれども、ぜひこれをやっていただきたいと思います。  ここでは時間がありませんので余り詳しいことは言えませんけれども、職業訓練を受けるに際してもどういう方向がいいのか、これからの進路を決める学生にとってもどういう方向へ進んでいくのがいいのか、こういうことがよほどきちんと考えられていかなければならないだろうと思うのです。これはやはり労働大臣一人ではできないので、総理大臣、どうですか。
  261. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 労働省を初めといたしまして関係当局を督励いたしまして、御趣旨に沿うように努力いたします。
  262. 正木良明

    ○正木委員 おおきに、おおきに。  そこで、ちょっと中高年の問題に入りたいのです。私は別に浪花節で言うわけじゃありませんけれども、いつもこう思っているのです。個人個人、一人一人幸不幸だとか、運がいいとか悪いとか、これはあります。これは逃れがたいものです、それは賢いやつもいればあほうなやつもいるのだから。しかし、世代ごと不幸な世代というのがあるのです。大体ぼくより上の方です。ぼくは大正十四年ですけれども、大体ぼくより上の中高年というのは不幸な時代。ぼくは昭和六年、満州事変が始まったときが小学校一年生です。シナ事変が始まったのが、シナ事変なんて言っていいのか、日中戦争というのか、それが昭和十二年で、卒業です。だから昭和二十年が二十歳です。それで平和がめぐってきた。しかし、ぼくはずっと子供の時分から戦争のやりっ放しです。いわば灰色の青春です。そうして終戦になった、平和がめぐってきた、焼け野が原。復興のために一番働き手になったのはぼくより年上の人たちです、食う物も食わぬと。そうでしょう。それで一生懸命働いて結婚した、子供もつくった。子は嫁に行くようになった、嫁をとるようになった。その間に日本の国は価値観が変化してしまって、親孝行なんという言葉は死語になったのです。親の恩なんといったってえっえっと言う。  この間、ぼくの住んでいる堺で教育委員会の人に聞いた話がある。大阪では雄のことを「おん」と言うんですよ、雌のことを「めん」と言います。これをわかってないとこの話わからないけれども、学校の先生が、親の恩知ってるかと言うたら、はいと手を挙げる。何やと聞いたら、お父さんのことです。なに、お母さんは。親の「めん」です、と言うたという。  そのくらい恩という言葉がもう死語になっている。それだから、家つき、カーつき、ババ抜きや。それで不況がやってきたら一番先に首切られて、景気が立ち直っても一番最後にしか再就職できないというのが中高年です。これは全く世代ごと不幸な世代と言わざるを得ない。幸いに国会議員は、選挙はあっても定年ないからいいようなものの、定年があったら、私来年定年ですわ。だからそういうことから考えると、この中高年問題というのは、竹入委員長が代表質問のときに、いまや中高年は弱者でありますと言ったが、本当にそうやと思うわ。だから、この問題は相当深刻に考えてもらわなければいきまへんで。実際問題として、この中高年対策についてはたくさん給付金をつけてくださる。ところが労働大臣、一年か一年半でしょう。仮にあの給付金があるから中高年を雇ってもらったって、その一年か一年半以後どうなるかということが非常に心配ですよね。同時に、さっきこれを見せましたけれども、何ぼでも仕事はあると私は言いましたが、何ぼでも仕事があるというのは正確じゃないのです。全部年齢制限があるのです。いわゆる中高年の就職者というのはこの中ではもうほとんどないのです。何歳まで、何歳まで、何歳まで……。そうすると、やはり中高年を雇うところに対して助成金を出して、中高年を雇うということについて非常に努力をしてもらうというのはありがたいことではあるけれども、同時に、一つは失業した人の問題もあるが、失業させないことも必要なのです。  そこでわれわれは、年齢差別禁止法案というものを近く国会へ提出しようと思っております、民社党と相談してやらにゃいかぬけれども。これは、去年の参議院の選挙の真っ最中にこの要綱を発表いたしました。これは成案を得ましたので出しますが、六十五歳をめどとして六十歳まで年齢差別を禁止するという法律をつくる。もうこれは、法律をつくらぬとあかんわ。あなた、行政指導と言ったけれども、行政指導で効果ありますか、どうですか。
  263. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 中高年齢層についての厳しさというものの認識は私も同感でございます、私も中高年齢層の一人でございますから。これを救うために年齢制限という法律でやるかどうかということにつきましては、私ども、まだその点についてそこまで踏み切るべきものかどうか。というのは、中高年齢の一番大きな問題というのは、やはり定年の問題だろうと思うのですね、定年が五十五歳が六十歳になる、こうなりますれば、そこで中高年齢層はずっと救われるわけですからね。定年延長をどうしたらいいか、その定年延長をするためには、ネックはどこかと考えてみますと、御案内のとおり、年功序列的な賃金体系でございます。ですから、そこら辺を直していかなければならない。その点について、いままでの行政が万全であったかどうか。いろいろ業種別の定年延長推進会議等やっておりますが、これが果たして十分であったかどうか、あるいはもっときめ細かく、業種別でなくて企業別にそういう調査をすべきじゃないか、あるいは昨年の九月から財団法人の高年齢者雇用開発協会というようなものをつくっておりまして、そういうところでも高年齢者の雇用についていろいろ考えてもらう、こういうことをやっておりますので、ここのところは法律で規定どうこうというよりも、もう少し行政で詰めるところを詰めてみようというのが私ども考え方でございまして、いま直ちに法律ということは考えていないということを御了承いただきたいと思います。
  264. 正木良明

    ○正木委員 ところが、行政指導というやつはなかなか効果上げませんで、たとえば中高年の雇用義務というか、これがありますね、六%ですか。六%中高年を雇わなきゃいかぬ、これは特に大企業で未達成が多いわけですが、これも行政指導でやっているわけですね。ところが行政指導だとなかなか言うこと聞かぬ。  そこで大平総理大臣、総裁選挙の最中にええこと言うてくれているのですよ、あなた。この中高年問題で課徴金を取れということをね。中高年齢者の雇用率達成について大企業で特に未達成率が高い、六%の未達成企業に対して課徴金を課すことがよいのではないかという見解をお述べになっているのですが、これはお述べになりましたか。お述べになったとするならば、いまどうお考えになっていますか。
  265. 大平正芳

    大平内閣総理大臣 それなりの意気込みで当たらなければならない課題だと心得て申したことでございます。よく検討します。
  266. 正木良明

    ○正木委員 検討するということは、課徴金を課するというような厳しい手段もとらざるを得ない状況が来るかもわからぬ、こういう意味ですか。
  267. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 総理から私ども検討事項として、高年齢者の雇用率を高めるということでいろいろ方法をとれないものかどうか、たとえば義務化して課徴金を取るとか、そういうようなことはどうなんだということで検討を命ぜられております。ただ、率直に申し上げまして、先ほども申したとおり、いわゆる、なぜこれが達成できないかというのを見ますと、中小企業は皆達成しているんです。御案内のとおり、大企業が達成できないのです。大企業が達成できないのはなぜかというと、年功序列的な賃金体系というところに帰するわけです。したがいまして、この問題をどうするかということで、行政指導じゃ非常にぬるいじゃないかというお話でございますが、先ほど来申し上げましたとおり、われわれのいままでの行政指導が果たして万全を期しておったかどうか、さらに工夫すべきものがないかということで、いま鋭意検討中でございます。
  268. 正木良明

    ○正木委員 実は、政策推進労組会議というのが離職者の追跡調査というのをやって、その報告書がまとまったんですが、ごらんになりましたですか。まだごらんになってませんか。(栗原国務大臣「いただきました」と呼ぶ)そうですか。これはなかなかよくできているんです。しかし、政策推進労組会議でございますから、大体大手の労働組合でございますので、小零細企業の離職者の分は入っておりませんけれども、大体ここで出てくる問題は、離職した人の平均年齢が五十一歳、家族構成が大体三・四人という平均が出ていますね。生活費、要するに毎日毎日の生活は、それじゃ失職した後何で食べているか、本人の賃金が四七・七%。本人の賃金というのは、再就職した人ですね。雇用保険で生活している人が四一・九%、平均月十四万円。退職金の取り崩しが二四・八%。奥さんの収入で食べている人が二六%。やめた人は、勤続年数が平均二十五年です。それで、そのやめた理由は希望退職が一番多くて七一・八、工場閉鎖が一〇・八、倒産五・二%、こういう状況がこの中で報告されているんです。ところが、問題は、再就職をするのに、職安を通じて再就職のできた人はたった一〇%なんです。そのほかは、親戚の紹介だとか、知人の紹介だとか、新聞だとか、こんなニュースだとか、そういうところを利用して再就職した人がほとんどなんです。  ここで問題は、職業安定所がこういう状況であるということについて、職業安定所に対する非難も実は幾つか出ているわけなんですけれども、まじめにやっている諸君も多いわけですから、一概にそれを非難しようと思いませんが、よほど気をつけてやってもらいたいと思うんです。職安の窓口の印象、「親身になって応対してくれ感謝している」一七・八%、「事務的・形式的な応対が目立ち、つめたい感じをうけた」が二七%、「失業者の立場を考えるというよりは、職安の考えを一方的に押しつける感じ」が一一・七%。そのほか、「特段これといった感じはうけなかった」とか「その他」なんですが、ここで出てくる、職安を通じて一〇%というのは、実はパーセントとしては多うございまして、私どもが調べたデータによりますと約四%ですね。それくらい実は職安からの紹介というものがなかなかうまくいっていないわけなんです。うまくいっていないのは、確かに職安だけの問題ではなくて、手続が非常にめんどうなのもありましょうけれども、やっぱり求人の方も、そういう意味では非常に問題があるわけですし、また、職安が紹介してくれた先というものが非常に小規模であったり、労働条件が悪かったりというのもあり得るわけなんですね。だから、一概に非難はできないわけでありますけれども、そういう中でやはりこの職安行政というものについてもある程度考えてもらわなければいかぬわけであります。先ほどの四%は私が間違っていました。一般が七・三%で中高年が五・五%です、職安を通じての就職は。こういう点ですね。実は職安の方も困るんだろうと思うのです。それがやはりさっきの話に戻って、労働需給の情報というものを実際に的確に握っていないからなんですね。ですから、そういう点については求人の申し込みがある、また求職の申し込みがある、まあ結婚相談所みたいなもので、じゃここに行ってみますか、どうでしたかというような感じになってしまうんで、これはやはり全体の労働需給というものを把握し、そうして、これはあなたの場合には職業再訓練が必要なんだからこの方向へ再訓練をお受けになったらどうですか、そうするとここに給料のいい就職口がありますよというようなことが指示できるわけなんで、こういう点で先ほどの問題をきちんとやってもらえるようにしたいと同時に、この職安行政というものを、いろいろ実情はありましょうが、これは労働大臣、どういうふうにお考えになっていますか。
  269. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 先に政策推進労組からのそのデータでございますが、私のところに見えられた方も言っておりましたけれども、これは特定な調査をしたので必ずしもこの数値が当たっていると思わない、むしろ違っているところもあるだろうという謙虚なお話もございました。しかし全体的に申し上げまして、二割職安などというあだ名もあるくらい、職安を利用するというのは一般的に常識的には少ないような感じを与えていることは事実でございます。  私も就任早々、まだ現地を多く見ているわけじゃございませんけれども、現地に行ってみますと、私の見た限りでは職安の諸君はよくやっていてくれると思います。ただ何といっても人数が足らないという感じがいたします。そこで今度は、五十四年度の予算で五百人の相談員というものを設置することをお認めいただくということでいま提案をしておりますけれども、そのほかに、これはただ単に職安だけでなしに、各都道府県の労働行政、それで当面は応援を願って職安の機能充実を図っていかなければならぬ。そしていま御指摘のあったようないろいろの御批判をなくすように努力をすべきだろう、こう考えております。
  270. 正木良明

    ○正木委員 まあひとつやってください。  それで、実は今度大幅に給付金等がふえたり条件が緩和されたりして、その意味では非常に結構だと私は思うのですけれども、中高年齢者雇用開発給付金、これは五十三年度から始まりましたが、五十四年度は三百五十九億円、こういうふうに出てきておりますね。そこで、これもちょっと問題があるわけなのですが、消化の問題があるのですね。これはずいぶんお金を残しているわけですね。中高年齢者雇用開発給付金の場合、これは出ていますが、五十三年度、これは四月から十月の分ですが、予算が二十九億八千万で、十三億二千万使って、達成率が四四・三%。そうすると五五・七%は使い残しですね。こういうのがずいぶんあるわけですね。定年延長奨励金、これは計算がまだ出ていないと言っておりましたが、わかりません。ところが五十一年度では八%しか使っていないし、五十二年度では五・六%しか使っていない。継続雇用奨励金は五十一年度は一二・六%しか使っていないし、五十二年度は五〇・三%しか使っていない。雇用調整給付金も去年七・九%しか使っていませんね。高年齢者雇用奨励金も五十一年度二五%、五十二年度は三四・一%しか使っていません。このように予算をずいぶん使い残しているわけです。これはいろいろ理由があるだろうと思いますけれども、幾つかの理由の中に、手続が非常にめんどうだということ、これがあるわけなんです。  実はこれも私の地元の話なんですけれども、綿織物の小規模の工場が、やはり労働条件がなかなか合わないのだろうと私は思うのですが、職安から紹介されてくる人は一〇〇%と言っていいくらい断られるのだそうです。どうしようもないので本人たちが駆り集めにいくわけです。どうしてもこれは高年齢者のおじさんとかおばさんとかというのを集めてくる。だからもうベトナムから難民が働きにきてくれるのならそれでも受けましょうというくらい人が欲しいのだけれども、実際にはなかなかいない。ところがこういうのは職安を通じておりませんから、いま言っている中高年齢者雇用開発給付金は支給されないわけです。  だからこういう場合、あなた、野呂さんの質問に対して消化されるように弾力的運用を図りたいとおっしゃったけれども、これなんか事後承認で開発給付金をやるというような方法は考えられませんか。
  271. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 全体的に雇用安定事業なりあるいは雇用改善事業の予算が消化されていないということは御指摘のとおりでございます。その理由は、景気の停滞によりまして企業の雇用調整の態様が変わってきておるということが一つございます。あるいはいま御指摘のとおり手続がむずかしいとか、あるいはPRが足らないとか、場合によっては金額に魅力がないという点があったと思うのです。そこで今度はそういう点を踏まえまして、中高年齢層の雇用開発給付金については魅力ある金額、定年延長の給付金につきましても魅力あるといいますか由、大幅な改善をするということでございます。ただ、いまお説の事後処理としてそういうものを認めるかどうかという問題につきましては、ここでそのようにするということはいささか言いかねますけれども、御趣旨はよくわかりますので、弾力的な中には本当にこれが消化されるような具体的な方途を考えたい、こう考えております。
  272. 正木良明

    ○正木委員 だから、消化の問題をそれと直接結びつけようという気持ちで申し上げているわけではないのですけれども、実際問題としてこれは職業安定所のできないことを使用者はみずからやっているわけです。安定所から回ってくる人で働く人がいやだったらこれはしようがないわけですから、だからそういう努力というものについても、しかも経営の基盤が非常に不安定な人たちですから、そういう者にこそこの助成金というものを与えていくことが必要なのではないかというふうに考えておりますので、これはひとつ前向きに検討していただきたいと思います。──うなずいていらっしゃいますから大丈夫だろうと思うのです。  そこで、一言だけ申し上げておきます。  労働大臣、ちょっと聞いてくれますか。いろいいろ雇用対策で立法していただいて、いろいろな制度をつくってもらった、これは専門家に言わせますと大変らしいな。政府や地方自治体の行う各種の助成金や給付金は、いまでは百種類を超えているというのです。これらの諸制度の仕組みだとか、助成給付の要件を十分に理解できないほどふえているそうです。実はこんなことを言っているのは、高梨昌さんという信州大学の教授で、中央職業安定審議会の公益委員として参画した人ですが、そのことを専門にやっている私でもわかりませんと言うのです。すぐ答えられない。だから、制度の有効性を基準にして各種の助成金や給付金をもっと効率的に統廃合できないか。それと二番目は、これらの助成金や給付金の適用条件をできるだけ緩和して、交付申請手続の簡素化をしてもらいたい、こういうことを提言なさっているわけですけれども、私もなるほどだと思うのです。だから、一応これもひとつ検討をしていただくわけにいきませんか。
  273. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私も正直、いろいろ調べてみまして、非常に項目が多い、しかも実効が必ずしも上がっていない、そういったものについてもう少し整理して効果的なものにならぬかどうかという考え方を持っておりますので、今後引き続き検討いたしたいと考えております。
  274. 正木良明

    ○正木委員 検討検討と答弁のあったやつは、またある時期が来たら確認しますから、まじめにやってくださいね。この後、雇用創出問題をやりたいわけなんですが、一つだけ聞いておきましょう。これは文部大臣、実はこの七カ年計画の中でも言われているわけでありますが、教育だとか医療だとか福祉だとかというところに新しい雇用の発生というものを期待していらっしゃる。もし仮に義務教育諸学校の一教室の定員を減らすということ、四十人制というのが言われているわけでありますが、そうして学校の先生をふやしていく、これは私は結構だと思うのですけれども、いま採用に年齢制限がありますね。この採用の年齢制限というものはある程度緩和できませんか。要するに中年の、教員の資格を持っているけれども教員にならないで企業へ就職して、そしていま失業している人が大分いるのです。ですからこういう民間の苦労をしてきた人が学校の先生に返り咲いてくるということ、返り咲きというのは一回やっていたんだけれども、これは返り咲きとは言わないかもしれない、新しく就職してくる。私はこれが一万人出てきたら、こう言ったら社会党の先生方にしかられるかもわからぬけれども、日教組、変わりますよ。そういう新しい血液を入れるべきだと思うのですよ。教育大学とか学芸大学とかずっと温室──温室とは言わぬけれども、その中ですぐ先生になってそのままずっと先生を続けているのでしょう。余り世間のことを知りませんわ。したがって、やはり世間の苦労をした人たちがそういう中へまじってくるということで、私は大いに変わってくるだろうと思うのですね。こういう年齢制限を緩和するという考え方はありませんか。定員をふやすと同時に年齢制限を緩和するということ。
  275. 内藤誉三郎

    ○内藤国務大臣 学校で一番大事なのは先生なんですが、やはり優秀な人材をとって新陳代謝ができるようにするためには、どうしても学校の年齢構成を適正にしなければならぬですよ。そういう意味で、どうしても私はある程度やはり年齢制限をとって採用するということは、これはやむを得ないのじゃないかと思うので、ひとつその点はお許しいただきたいと思います。
  276. 正木良明

    ○正木委員 私はあなたを応援しているつもりだけれども、全然その応援を拒否するなあ。しかし、これからの雇用創出という問題については、これを真剣に考えない限り雇用創出はできませんよ、本当に。そんな若い先生ばかりを入れているというようなことだけでは問題は解決しませんよ。特に中高年の問題は解決しませんよ。それは優秀なの、いるのだから。これは、いま私、数字をもらっているから数字で言えばいいけれども、それは専門職だったって優秀な人がいるのですから。それが首になっておるのだから、そういう中からやはり中学校、高等学校の先生を、これは必要だと思うがなあ。しかし、あなかがその気ないのだったら、しようないわ。  通産大臣、この日中貿易というものが非常に大きなウエートを占めてくるのですが、これも時間がありませんから簡単にやりますけれども、私の言いたいことは、この中国貿易に対して大手の話は山ほどある。ところが中小企業が参入する余地というものはきわめて少ないのです。これはいろいろと理由があるでしょう。いろいろ理由はあると思いますが、この中小企業が参入できるような方途、これはもう公式的な見解から言うと、中小企業であろうと何であろうと、もう国交回復ができて条約もできたのだから、自由です。たてまえは自由なんだけれども、実は自由に新規参入できないのですが、これ、何か方法を考えていらっしゃいますか。
  277. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 まだ、中国の場合、入国管理の問題が必ずしも自由というわけにまいりませんね。それから貿易政策が、やはり窓口があって、必ずしもこれも自由ではありません。したがって、中小企業対策をどう展開するかということは、今後、これはきわめて重要な御指摘だと思います。したがって、現在あります国貿促であるとか、日中経済協会であるとか、そういった機関とよく連絡をとりながら、中小企業にも恩恵といいますか、機会均等の形で進出の余地が与えられるような努力を続けていく、これをひとつ積み重ねていくことだというふうに考えております。
  278. 正木良明

    ○正木委員 そこで、いまもお名前が出ましたから申し上げますけれども、国貿促ですね。私は日中関係政府間では不正常な状況の中で、政経分離で経済的な交流をするために、国貿促が果たしてきた日中間のパイプ役の功績というのは、これは偉大なものがあると思うのです。偉大なものであるとするのですが、この国貿促もその時分とは大分様子が変わってきまして、昔はもう中小企業の友好商社が多かったわけですが、このごろそうではなくて、大手がどんどん入ってくるそうです。しかもそれは資本金と売上高に一定割合を掛けた会費をとっているものだから、資本金の大きい大手の方が会費は多いものだから、やはりどうしても主導権を握ってしまう。そういう状況があるということを聞きました。中国側の方にも、私は制約があるだろうと思うのです。たとえば広州の見本市であるとか、そのほかの小さな見本市にしたって、ホテルが足りないからだれでも入れるわけにいかないから、国貿促で向こうへ行く人をしぼるとか何とかという条件はあると思うのですけれども。ところが、やはりこの中で、バーターの問題もあるのかもわかりませんが、相当輸入に独占的な契約をしておる場合がある。ところが、中国側は決して独占的に窓口をしぼるというようなことを望んでいるのではなくて、むしろ幾つかあって競争してもらえるという方がありがたいという考え方が中国側にあるようなんですね。実はこのことを直ちに、その国貿促の功績を考えて、公取に手入れをしてくれとか何とかいう気持ちは私はありませんけれども、しかしそういうふうにぎゅっと国貿促という一つの団体がそういう参入を阻むことをやり、ある種のものについては独占契約を許すというような状況があるということが、公正な取引というものに触れるのか触れないのか。長い間待ってもらって済みません、公取委員長
  279. 橋口收

    ○橋口政府委員 日本国際貿易促進協会でございますが、これは事業者団体としての届け出は行われておりまして、規約その他で見ます限り格別不都合な点はないようでございますけれども、いまお話がございましたような事業をやる実態につきましてよく承知いたしておりませんので、立入検査とかそういう意味ではなくて、基礎的な事情の調査をいたしてみたいというふうに考えております。
  280. 正木良明

    ○正木委員 これで終わります。  これは、ちょっと業者の名前を言うとはばかりがあるかもわかりませんからあえて言いません。たとえばハルサメだとか、マオタイだとか紹興酒だとか中国産の酒だとか、天津甘栗だとか、漆だとか、キリ材ですね、たんすに使うキリ材だとか、各種のかん詰めだとか、こういうものがどうも独占的な契約の対象になっているようなのであります。なかなか制約条件が、いわゆる資本主義国を相手の商売でありませんからいろいろあると思いますけれども、できるだけこの新規参入ができるような状況というものについて、ひとつお考えをいただきたいと思うのです。だから、まあ総理というほどのことないからおいておきましょうか。通産大臣。
  281. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 御指摘のように国貿促の功績というものは偉大なものがありますが、それがまた一面からいうと一つの既得権みたいな感じになって弊害の一面もなくないと思います。それはいままで会費を出し合ってというか、分担金を出し合って運営されてきたというために、分担金を多額に負担する業種、業態については便宜を図るが、その能力の薄いものは排除する、かりそめにもそういう傾向が今後とも続くとすれば、これはやはり調整されなければなりませんですね。御趣旨の存する点はよくわかりまするので、ひとつ今後とも中小企業が機会を得ることができるように通産省としては十分努力してまいりたいと思います。
  282. 正木良明

    ○正木委員 どうもありがとうございました。
  283. 竹下登

    竹下委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  次回は、明六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十二分散会