○宮崎(勇)
政府委員 予算の参考としてお手元にお配りしてあります
昭和五十四年度の
経済見通しと経済
運営の
基本的態度について、その
概要を御
説明いたします。
まず、
昭和五十三年度のわが国経済について見ますと、年度前半におきましては、公共投資の大幅な
増加や物価の
安定等により、国内需要は底がたい動きを示しました。しかしながら、円高による輸出数量の低落等に加えて在庫調整が長引いたことにより、国内生産活動は必ずしも期待どおりに活発化しませんでした。
こうした情勢に対し、
政府は、ボン主要国首脳
会議におけるわが国の決意表明をも踏まえつつ、
昭和五十三年九月には
総額約二兆五千億円の公共投資等の追加等を
内容とする総合経済
対策を決定し、十月にはこのための
補正予算の成立を見ました。
これらの結果、
昭和五十三年度の国民総生産は二百十一兆八千億円程度、名目、実質の成長率はそれぞれ一〇・六%程度、六・〇%程度となる見込みであります。この実質成長率見込みは、
政府当初見通しの成長率を下回るものの、先進国中で最も高い成長率であります。また、物価面では、卸売物価は前年度比二・六%程度の下落、消費者物価は前年度比四・〇%程度の上昇になるものと見込まれます。国際収支面では、大幅な円高の影響もあって経常収支の黒字は二兆七千億円程度に縮小し、また、長期資本収支は海外投融資等の活発化により赤字幅が一層拡大し、基礎収支ではほぼ均衡ないし若干の赤字になるものと見込まれます。
このようなことから、
昭和五十三年度のわが国経済の特徴は、物価安定が続く中で、石油危機以降初めて内需を
中心にした
景気回復が進んだことにあると申せましょう。
しかしながら、依然問題も残されております。まず
雇用面では、全般的に
改善がおくれているほか、産業面でも構造不況業種、輸出型産地等における中小企業等に問題が残っております。また、国際収支面では、経常収支黒字幅の縮小基調が見られるものの、なお一層の縮小が期待されています。さらに、物価面でもこれまでのような円高の効果が見込まれないこと等により物価に影響が生ずることが考えられます。こうした中でわが国の
財政収支の不均衡も著しいものとなっています。
他方、世界経済は、主要先進国の経済政策上の協調的行動等によって安定化に向かう動きもありますが、個別に見るとインフレ、失業、国際収支等の面で問題を抱えている国もあり、また、原油価格の
引き上げ等もあって、今後も困難な情勢が続くことも予想されます。
こうした内外情勢を踏まえ、
昭和五十四年度の経済
運営の
基本的態度としては、四つの
重点があると考えております。
第一は、
景気の着実な
回復を図り、
雇用の安定を実現することであります。このため、
昭和五十三年度に引き続き、積極的な政策
運営を通じて民間経済の活力ある展開を可能ならしめる必要があります。
第二は、物価の安定を図ることであります。また、公共料金については、経営の合理化を進め受益者
負担を原則としつつ、物価の動向に
配慮し、厳正に取り扱うことといたす考えであります。
第三は、国際
経済社会における責任ある一員として、わが国経済の対外均衡の
回復を一層確実なものとし、自由貿易体制の維持強化を図るとともに国際協調の増進に努めることであります。
第四は、新しい経済
計画の初年度として、明確な展望のもとにわが国
経済社会の安定的な発展を図るための第一歩を踏み出すことであります。
現在考えられる内外環境の諸与件を前提に、このような経済
運営のもとにおいて想定される
昭和五十四年度経済の姿を示せば、おおむね次のとおりであり、
昭和五十四年度のわが国経済は内需を
中心として着実に
景気の
回復が進むものと期待されます。
国内需要の動向のうち、民間最終消費支出、民間設備投資、民間
住宅投資は、それぞれ九%程度、一〇%程度、二%程度の伸びが見込まれ、
政府支出は、前年度比一一%程度の
増加になるものと見込まれます。
鉱工業生産は前年度比六%程度の伸びになるものと見込まれます。
また、就業者数は、前年度比一・二%程度
増加するものと見込まれますが、労働力人口の
増加もあって失業者数には余り変化は見られないと見込まれます。
物価は、引き続き落ちついた動きを示し、卸売物価は前年度比一・六%程度の上昇、消費者物価は四・九%程度の上昇と見込まれます。
国際収支については、貿易収支の黒字は三兆二千億円程度、経常収支の黒字は一兆四千億円程度へといずれも顕著な減少を見せるものと見込まれます。また、基礎収支では、引き続き高水準の海外投融資等が予想されるため、かなりの程度の赤字となるものと見込まれます。
以上の結果、
昭和五十四年度の国民総生産は二百三十二兆円前後となり、名目の成長率は九・五%前後、実質の成長率は六・三%前後となるものと見込まれます。
なお、以上申し上げました国民総生産、国際収支等を初めとする見通しの諸数字につきましては、わが国経済は民間活動がその主体をなす市場経済であること、また、ことに国際環境の変化には予見しがたい要素が多いことにかんがみまして、ある程度の幅をもって考えられるべきであります。
以上、
昭和五十四年度の
経済見通しと経済
運営の
基本的態度につきまして御
説明申し上げた次第であります。