○竹下登君 ただいま議題となりました
昭和五十四年度
一般会計予算外二件につきまして、
予算委員会における
審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。
この
予算三件は、去る一月二十五日本
委員会に付託され、同月三十一日
政府から提案
理由の説明があり、翌二月一日より質疑に入り、公聴会、分科会を合わせて二十七日間
審議を行い、本七日討論、
採決をいたしたものであります。
まず、
予算の
規模について申し上げます。
一般会計の総額は、歳入歳出とも三十八兆六千一億円でありまして、五十三年度当初
予算額に対し、一二・六%の増加となっております。歳入
予算のうち、租税及び印紙収入は二十一兆四千八百七十億円であり、また、公債の発行額は、建設公債七兆二千百五十億円、特例公債八兆五百五十億円、合計十五兆二千七百億円を予定しており、公債依存度は三九・六%に達しております。特別会計は、その数が三十八であり、また、政村関係機関の数は十五であります。なお、財政投融資計画の
規模は十六兆八千三百二十七億円であり、五十三年度当初計画に比較して一三・一%の増加となっております。
次に、質疑について申し上げます。
質疑は、国政の全般にわたって行われたのでありますが、そのうち、主なものについて申し上げます。
第一に、経済の現状及び見通しについてであります。
まず、「石油ショック以来五年間に三十万件余りに及ぶ倒産があり、また、過去三年間、失業者は百二十万人の水準で推移しているが、
政府は今日の経済をどう認識しているのか」との趣旨の質疑があり、これに対して
政府から、「石油危機以後の産業構造の変革は相当に進んでおり、経済環境はようやく明るい方向を向き、消費、生産その他も緩慢な回復基調にあるが、失業問題が依然として深刻であるので、物価に対して十分配意しつつ、
雇用を拡大し、景気回復を軌道に乗せることが必要である」旨の答弁がありました。
次に、「五十三年度の経済成長について、昨年秋の補正
予算の
審議の際、七%の成長は無理だと
指摘したのに対し、
政府は、事業
規模二兆五千億円の補正
予算を組んだので、今後円高が進まない限り七%成長は達成できると主張したが、今回六%に改めるに至った
理由は何か。わが国の国際的な信用にも関すると思うがどうか」との趣旨の質疑に対し、「国内需要は年度後半にかけて上昇傾向にあり、予定どおり八%強の伸びが見込まれるが、激しい円高により、輸出が大幅に減少し、逆に輸入が増加したため、成長率全体としては六%程度になると推計している。したがって、数字的に七%は困難となったものの、わが国経済の内需拡大と対外均衡化に顕著な成果をおさめたものであり、
誠心誠意努力した結果、思うに任せなかったことは残念であるが、この間の事情は国の
内外によく説明し、漸次
理解を得つつある」旨の答弁がありました。
続いて、「五十四年度の経済見通しで六・三%の成長を見込んでいるが、各需要項目の伸び率を見ると、いずれも五十三年度を下回っており、ことに
政府資本支出の伸び率は五十三年度の半分である。いわゆるげたが三%あるにしても、これで果たして六・三%が達成できるのか」との趣旨の質疑に対し、「五十四年度は、内需が六ないし七%伸びると予想しているが、一月以降の経済動向を見ると民間活力の動意が感ぜられ、この傾向が続けば輸出入のバランスもさらに改善されるものと思われる。六・三彩程度の成長は、
雇用情勢を現在以上に悪化させないためにも必要であり、今後物価の動きに十分注意しながら、この成長率を
政策目標に掲げて努力してまいりたい」旨の答弁がありました。
第二に、財政の再建についてであります。
「
政府は、安上がりの
政府、財政の健全化を強調しているが、五十四年度
予算の経常部門の伸び率は、五十三年度の伸び率と比較して実質的には少しも圧縮されていないではないか。財政収支試算によると、五十九年度までに九兆一千百億円の大増税をすることになっている。増税は税金の種類によって、消費、設備投資等に及ぼす影響に差異があり、当然GNPも異なってくるが、いかなる税目を
考えているのか。また、財政再建のために幾ら増税をしても、歳出の厳しい洗い直しがなければ公債を減らすことは不可能であろう。したがって、増税計画には、
政策判断を含む具体的な財政計画を立てる必要があるが、
政府は、これを策定する用意はあるか」との趣旨の質疑がありました。
これに対して
政府から、「五十四年度
予算において歳出の見直しを精いっぱいやったが、これで十分だとは思わない。
一般経常部門の歳出については、福祉、文教関係等で相当大幅に伸ばしたものもあり、それだけに、節減できるものは節減したことになる。財政収支試算は、「新経済社会七ヵ年計画の基本構想」に基づいて六十年度の経済を想定し、五十九年度には特例公債から脱却することとし、その間の財政収支を機械的に計算したもので、増税について特定の税目を予定しておらず、その具体的内容は、
情勢の変化に応じて
考えることとしている。財政計画については、目下財政制度
審議会で検討中であるが、関連事項が多く、結論の出る時期は明らかでない。しかし、
一般消費税を導入する際には、歳出削減等を含めた見通しを提示したい」旨の答弁がありました。
第三に、税制改正及び
一般消費税導入についてであります。
「
一般消費税について
国民の
合意を得るためには、
不公平税制の是正が前提条件であるが、今回の医師優遇税制の改正は、税制調査会の五十年答申よりも後退しているではないか。また、税制調査会は、法人税負担の増加、富裕税の新設についても述べているが、なぜ実行しようとしないのか。大幅増税のために
一般消費税の導入を
考えているが、わが国の租税体系について、直接税中心から間接税に重点を移そうとしているのか。
政府は、
一般消費税について議論を進めてほしいと言うが、その内容はどうか。特に、地方への配分はどうする
考えか。
一般消費税による物価上昇のため、国の人件費、物件費も影響を受け、徴税経費をあわせ
考えると歳出の増加が大きく、予定どおりの歳入増は期待できないのではないか」との趣旨の質疑がありました。
これに対して
政府から、「医師税制については、二十五年
ぶりに是正をし、かなり前進したので、しばらくこれで行い、社会
情勢の推移に応じて改めるべきものは改める。法人税は、今般、価格変動準備金、貸し倒れ引当金、交際費について相当思い切った措置をし、今後も見直しを進めるが、税率の変更については、現在は時期が適当でなく、富裕税については、徴税技術上の問題が多い。しかも、両税とも多額の税収は期待できないし、また、税源の涵養の点も念頭に置く必要がある。わが国の税制は直接税に偏っており、今後、安定成長
時代の財政の基盤強化のためにも、直間比率を半々程度にする方がよく、また、所得差による課税の公平と同時に、消費量による課税の公平をも
考えるべきである。
政府としては、
一般消費税を五十五年度の早い時期に導入することを
決定しているが、内容の詳細については現在
意見調整中であり、地方への配分についても最終的結論を得ていない。徴税方法については、極力手間を省く方向で検討しているが、歳出面への影響は案が固まり次第計算する。なお、
一般消費税による物価の上昇は初年度限りである」旨の答弁がありました。
第四に、物価問題についてであります。
野党の委員諸君は、五十二年度及び五十三年度は円高差益があり、これが物価引き下げの効果を及ぼしたが、五十四年度にはこの円高メリットが期待できないこと、OPECが今年末までに一四・五%の原油値上げを
決定し、各石油会社は早速製品価格の引き上げを発表していること、消費者米価がすでに引き上げられ、国鉄運賃、たばこ、医療費等の
公共料金、ガソリン税などの引き上げが予定されていること、建築資材等の値上がりから卸売物価が急騰に転じ、一月の上昇率は年率七%以上にも達していること、独占禁止法または中小企業団体法による
不況カルテルが過度に長期化した傾向があり、今後も必要以上に継続されるおそれがあること、国債の大量発行に伴いマネーサプライの増加する危険が大きいこと、三大都市圏の宅地価格が五十三年一年間で一〇%近く高騰したことなどの
理由により、物価の騰貴は必至であり、五十四年度の消費者物価上昇率を
政府の見通し四・九%以内におさめることは困難であるとし、
政府の対策をただしました。
これに対し
政府から、「
予算編成の段階では物価は安定基調にあったため、この基調を維持する上に支障を及ぼさない範囲内で
公共料金の微調整を図った。この消費者物価に対する影響は、予想されるものすべてを含め一・五%程度と予測しており、明年度四・九%程度の物価上昇見込みの中に織り込んである。しかし、その後、原油の値上がり等の海外要因に加えて、公共事業の集中消化、過積み規制その他の思惑もあって、昨年末以来、卸売物価が異常なほどに上昇し、物価はいわば警戒水域に入っている。今後の物価
政策は、物価を
政府見通しの程度に抑えるため、
公共料金を含め細心周到な配慮をもって進める。なお、石油製品の値上げについては、石油会社に対し強く自重を求めた。
不況カルテルは、本来例外的な措置であるので、継続の場合は従来から厳しく審査してきたが、今後は不当に長期化しないよう一層厳重に審査する。マネーサプライの動向については、十分に監視し、
状況に応じて適時適切な措置をとる。最近の大都市
住宅地の価格上昇は、宅地供給の不足が主因で、投機的なものとは思われず、土地の供給促進策を強力に講ずる必要がある」旨の答弁がありました。
第五に、
雇用対策についてであります。
「「新経済社会七ヵ年計画の基本構想」においては、六十年度の失業率一・七%程度を目標としているが、これでは五十年代前期経済計画の目標値一・三彩から大幅に後退するばかりでなく、現在の二・三彩と比較してもそれほど改善されることにはならず、完全
雇用の達成とは言いがたいと思うがどうか。中高年齢者についての
雇用開発給付金制度の大幅拡充は一歩前進ではあるが、公共事業など従来の
政策の延長だけでは
雇用拡大は期しがたい。よって、地域地域の潜在的需要を掘り起こし、
雇用を開拓するために、中央及び地方に
雇用創出機構を設け、
政府、地方公共団体並びに民間労使が一体となって問題に取り組むことが必要ではないか。現在、高齢化社会へと早い速度で移行しつつあるにもかかわらず、定年制の延長が思うように普及しないばかりでなく、減量経営に便乗して中高年齢者の大量解雇を進める企業もあるが、この際、定年延長、年齢差別禁止等の立法措置を講ずる
考えはないか。高年齢者の
雇用が法定率に満たない大企業が多いが、
雇用率向上のため適切な措置をとるべきではないか。また、労働時間の短縮により
雇用の拡大を図るため、週休二日制の完全実施等を促進する措置を講ずべきではないか」との趣旨の質疑がありました。
これに対し
政府から、「六十年度には失業者は百万人、失業率一・七彩になると想定しておる。これは、今後の六%弱の成長率、労働力の増加、就業構造の変化を踏まえ、労働需給の均衡、すなわち有効求人倍率一倍程度を目指すものであるが、失業者数をなるべく圧縮するよう努力したい。
雇用の創出は、
政府だけでは解決できず、関係方面の衆知を集める必要がある。民間の活力を利用する点からも、
雇用創出機構の趣旨には同感であり、今般、
雇用問題
政策会議等を設けるのも同じ目的からであるが、その具体策については、今後慎重に検討を進めたい。定年延長については、わが国の年功序列賃金等の慣行が障害となっており、現段階では、延長の方向に行政指導を強めていくが、
各党間の話し合いを踏まえ
誠意をもって検討し、適切に対処する。高年齢者の
雇用率を高めるため指導を強化しているが、身体障害者の
雇用の場合と同様の措置をするには問題がある。週休二日制の実施は、それぞれの企業の事情もあり、また、銀行法の改正問題とも関係するので、直ちには行えないが、前向きに検討を進める」旨の答弁がありました。
第六に、外国航空機購入
予算問題についてであります。
先ごろ公表された米国証券
取引委員会のダグラス社及びグラマン社についての報告の中に、わが国への航空機販売に関する記述があり、一方、五十四年度の防衛庁
予算には、早期警戒機E2C四機分の購入経費及び国庫債務負担行為の総額が計上されているため、
予算審議の冒頭から、各委員より本問題に関連ある幾多の事項について質疑が行われました。
また、本問題に関して、二月十四、十五の両日、合計四人の証人から証言を求めたのであります。
質疑のうち、E2Cに関する主なものを申し上げますと、「早期警戒機については、十年以上前から検討されており、一たん国産化の方向に決した後、突如白紙還元されるなどの経過をたどり、グラマン社のE2Cの導入に
決定したものであるが、本年契約したところで納入されるのは三年後以降であるのに、いかなる
理由で五十四年度
予算に購入経費を計上する必要があるのか。E2Cがわが国の防衛上必要であるとしても、四機では一哨戒点分にすぎず、防衛に万全を期するには無
意味であり、むだではないか。航空機の売り込みをめぐる問題が提起されている際、E2Cを購入することは
国民の
疑惑を一層深め、
政治不信を招くことになるので、この購入経費は削除または凍結すべきではないか」というものであります。
これに対して
政府から、「
昭和五十一年の防衛計画の大綱で警戒飛行部隊一個飛行隊の設置が
決定しているが、いまだ整備されておらず、防衛上の欠陥になっている。E2Cはむしろその導入が遅きに失しており、製造に相当の日数を要するものであるからこれ以上おくらすことはできない。防衛庁としては、今回の四機に引き続き、さらに一哨戒点分四機を国防
会議の議を経た上で提案したいと
考えている。機種の選定については、技術的、専門的に検討した結果、純防衛的見地からE2Cに
決定したもので、その間に何らの不正は存在しないし、また、購入は
政府間契約のFMS方式で行うため、商社の介在する余地はない。
政府としては、
疑惑の解明は解明として厳正に取り組み、
国会の調査にも法令の範囲内で
最大限の協力をするので、
予算は
予算としてぜひ認めてほしい」旨の答弁があったのであります。
その後、本問題については、
与野党間で協議が重ねられた結果、
合意に達し、これに基づき、去る五日の
委員会において、大平
内閣総理大臣から、「
政府は、防衛関係
予算のうち、E2C購入に係る歳出
予算十六億七千三百万円及び国庫債務負担行為三百六十三億八千万円については、
予算委員会の
審議の
状況を踏まえ、慎重かつ公正な執行に配慮し、その執行については、衆議院
議長の判断を十分に尊重する」旨の発言がありました。
なお、去る二月十四日証人として出頭した有森國雄君が正当な
理由がなく証言を拒んだものと認め、三月五日同君を告発することに
決定いたしました。
以上のほか、元号問題、日米間の貿易収支、中越紛争、イラン
情勢、国後、択捉両島におけるソ連軍事基地建設、国債管理
政策、定年と
年金支給開始年齢との連結、エネルギーの安定供給確保及び消費節約、農業基本法等農業
政策の見直し、国鉄再建、電電公社の資材調達、地方行財政、田園都市構想、その他国政の各般にわたって熱心な質疑が行われましたが、詳細は
会議録により御承知いただきたいと存じます。
本日、質疑終了後、
日本社会党から、また、
公明党・
国民会議及び
民社党から両党共同提案により、さらに、日本共産党・革新共同から、それぞれ
昭和五十四年度
予算三件につき撤回のうえ
編成替えを求めるの
動議が
提出され、趣旨説明が行われました。
次いで、
予算三件及び三
動議を一括して討論に付しましたるところ、
自由民主党は、
政府原案に
賛成、三
動議に
反対、
日本社会党は、同党
提出の
動議に
賛成、
政府原案及び他党
提出の
動議に
反対、
公明党・
国民会議及び
民社党は、いずれも両党共同
提出の
動議に
賛成、
政府原案及び他党
提出の
動議に
反対、日本共産党・革新共同は、同党
提出の
動議に
賛成、
政府原案及び他党
提出の
動議に
反対、新自由クラブは、
政府原案及び三
動議に
反対の討論を行いました。
引き続き、
採決を行いましたところ、三
動議はいずれも
否決され、次いで
昭和五十四年度
予算三件は、
賛成者少数をもっていずれも
否決すべきものと決しました。
以上、御報告申し上げます。(
拍手)
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