○西宮
委員 審議会で審議をされる案件でありますから、ぜひその審議会に、私が申し上げていることを
事務局である民事局を通して強く反映してもらいたいことを
希望しながら、申し上げているわけです。
大臣にもう一遍申しますけれ
ども、土台になっておるのは、従来当用漢字と言われたものですよ。これからは常用漢字です。これは法律で決めていないのですよ。内閣の告示で出しておる。しかし、告示で出しただけで、実際には、もう法律同様に強い心理的な強制力を持って、これが
普及しているわけです。ですから私は、戸籍法の第五十条の第一項の常用平易な文字を用いなさいという規定だけで十分だと思う。
いま申し上げたのは、私は、それも少し僣越だということを言ったのだけれ
ども、大きく譲って、法律で書くのだというならば、私は、それで十分だ、それを実行するかしないかは
国民の良識に任せる、こういうことでいいと思うのです。そのことをぜひ
大臣、そういういわゆる土台をなしている当用漢字の
関係と関連づけて
考えていただきたいということをお願いしておきます。
私は、実際に使われている文字、名前の文字、ちょっと検討してみたのです。この前、
自分の西宮弘という名前を例に挙げて申し上げたので、大変僣越だったなと思って
考えてみたのです。
渡辺三男という、これはその道の専門家ですが、この人の書いた書物によると、名前の条件は、第一は識別性、第二は平明であること、三番目には詩美豊かであること、詩情豊かであること、こういう三つを挙げているわけですね。私は、まさにそのとおりだと思うのであります。
そこで、まず
古井喜實法務大臣を例にすると、東京の電話帳には
古井という名前は八十四名あります。しかし、
喜實という方は二人だけ。これは御
本人なのかどうかよくわかりませんが、一人は京橋の片倉ビルにある弁護士の
古井喜實、もう一人は葛飾区の堀切にある
古井喜實、これは全く字も同じてすが、これは御
本人てすか、葛飾、堀切。——違いますか。そうですか。それじゃ東京には、御
本人でない
古井喜實が二人おるわけです。私は、この名前などは実にすばらしい、詩美豊かな名前だと、つくづく
考えるわけですね。ことに上の姓と名前のコンビネーションがまことにいい。「フルイヨシミ」つまり、古い友情を大切にしよう、こういう東洋の道徳に一致するわけですね。まことにすばらしいと思うのです。
香川
民事局長、これは恐らく「ヤスカズ」(保一)さんとでも読むのだろうと思いますが、これは新宿の住吉町に一人おられますが、御
本人てすか。——そうですが、それじゃお一人しかいない。ただ、香川という姓は二百八十八名あります。
漢字はとにかくとして、今度は読み方がむずかしいという人がたくさんあるわけですが、法曹
関係等でわれわれの近い範囲を拾ってみると、最高検察庁におられた平山「ヒイズ」(禾)、これは速記の方には後で私が
説明します。それから警視総監の中原「タダシ」(〓)、有名な弁護士の正木「ヒロシ」(昊)、会計検査院長の白木「ヤスノブ」(康追)、こういう人は、とてもこれは読めないのですな。絶対に読めないですね。なぜこういうむずかしい読ませ方をするのか。
伊藤刑事
局長は大変いい名前でありますが、ただし読み方は、これは伊藤「シゲキ」(
榮樹)と読ませるのですね。これも普通われわれの知識ではとても読めない。ですから、何かけさの
新聞の囲みによると、この次全国区から出るのじゃないかという話が載っておりましたけれ
ども、恐らく伊藤「シゲキ」(
榮樹)と読ませたのではとても当選できないと思いますね。
考えてもらいたいと思う。
次は
佐藤文生さん。これは
佐藤なんという姓は全くほうきで掃いても掃き切れないほどあるわけですよ。しかし、恐らくこれは「フミオ」と
お父さんは読ませるつもりだったのだろうと思いますが、選挙用に「ブンセイ」になったのだろうと思うけれ
ども、幸いにしてその数多い
佐藤の中で「ブンセイ」も「フミオ」も一人もいないのです、電話帳にですよ。だから、こういう名前をつけたことによって明瞭に識別性がある。ほかの人と区別がつかないということのない、こういう名前であることを発見して、われわれのごく身近におられる方々は、まあまあおおむね合格、いい名前だ。渡辺三男教授の言っております三要素を備えているのではないかというようなことを
感じました。
その程度にいたしまして、時間が参りましたから終わりにいたしますが、ぜひ
大臣、繰り返して申しますが、やはり国が国家の権力をもって介入するという点は、これはよほど厳重に
考えてもらわないと大変な間違いを犯す。さっき申し上げたように、恐らく、人名漢字にああいう法律で制限をするというようなことをつくったのは、終戦直後の占領下にあっての特殊の環境の
もとで、ああいうことになってしまったのだろうと思います。ですから、今度審議会で検討される際に、ぜひいま私が申し上げたようなことを大いに参考にしていただいて、審議会に反映してもらいたいということを重ねてお願いいたします。