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1979-05-09 第87回国会 衆議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月九日(水曜日)     午前十時十三分開議  出席委員    委員長 佐藤 文生君    理事 青木 正久君 理事 鳩山 邦夫君    理事 濱野 清吾君 理事 山崎武三郎君    理事 西宮  弘君 理事 横山 利秋君    理事 沖本 泰幸君       二階堂 進君    三池  信君       稲葉 誠一君    下平 正一君       武藤 山治君    飯田 忠雄君       長谷雄幸久君    阿部 昭吾君  出席国務大臣         法 務 大 臣 古井 喜實君  出席政府委員         法務政務次官  最上  進君         法務大臣官房長 前田  宏君         法務大臣官房審         議官      水原 敏博君         法務省刑事局長 伊藤 榮樹君  委員外出席者         国税庁税部所         得税課長    小野 博義君         法務委員会調査         室長      清水 達雄君     ————————————— 委員の異動 五月九日  辞任         補欠選任   小林 正巳君     加地  和君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 佐藤文生

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  裁判所の司法行政法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西宮弘君。
  3. 西宮弘

    西宮委員 私は、いま問題になっておりますいわゆる航空機汚職といいますか、この問題に関連をしてちょっとお尋ねをいたします。  各政党間で証人喚問をしよう、証人としていま話題の人を呼ぼう、こういうことで議論をされておるようでありますが、その際に自民党筋からは、そういう政治家取り調べを受けたとか参考人として事情聴取をされたとか、そういうようなことは全然わからない、全然そんなことは聞いてない、したがって、その時点でそういう問題を論ずるのはおかしいではないか、こういうことを述べられておるというふうに、私はマスコミで聞いておるわけでありますが、現状は全くそのとおりなんでしょうか。全然わからない、そういうことは皆目わからない、そういう状況でしょうか。大臣でも局長でも結構です。
  4. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 現在捜査が進んでおりまして、海部氏の勾留満期まで残すところあと一週間ばかりあるわけです。鋭意捜査をしておるわけです。  捜査過程におきまして、必要に応じていろいろな方から事情を聞いたりしておるわけでございますけれども何分捜査内容に関することでございますので、捜査過程でどういう方を調べたとかあるいはどういう方においでいただいて事情を聞いたとか、こういうことは申し上げることを控えさせていただいておる、かような状況でございます。
  5. 西宮弘

    西宮委員 いろいろな人を調べておるという話でありますが、その中に政治家はありますか。
  6. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 必要に応じていろいろな方から事情を聞いておりますので、その中に政治家がおられるかもしれませんし、おられないかもしれない、こういうことでございます。
  7. 西宮弘

    西宮委員 私は、そういう答弁ははなはだ不満なんです。なぜなら、捜査の途中でそういう名前を公表しない、その考え方はわかりますけれども、しかし現実に行われていることは、たとえば私がしばしば指摘をしてきた冤罪ではないかという問題ですね。  ああいう問題などは、全部、怪しいという人をいわゆる見込み捜査なりそういうところで警察に連れてくれば、その瞬間に有力容疑者捕らわるというようなことで大々的に新聞に出るじゃありませんか。そういうことをしておって、いまの、政治家が入っているのか入ってないのか知らないけれども、そういう問題についてだけそういうことを言うというのはおかしいと思うのです。
  8. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 特定の人に対しまして、裁判官の発する令状を得て強制捜査に着手をいたしたり、あるいは裁判官令状によりまして強制的な捜索、差押えを実施いたしましたような場合には、事柄の性質上、マスコミに対して一定の限度で公表するという取り扱いをいたしておるわけでございますが、それ以外の、任意の御協力をいただいていろいろ事情を述べていただけますような方につきましては一切公表しない、こういう扱いを従来からしておるわけでございます。
  9. 西宮弘

    西宮委員 時間がありませんから、私はいま一々申し上げませんけれども、私がたびたび指摘をしてきた問題のごときは、ちょっと警察に来てくれというようなことで引っ張っていかれて、いわゆる任意同行でしょうね、そういう形で引っ張っていかれて、それから取り調べが開始される、あるいはその途中で別件逮捕されるというようなことが行われてきているわけだけれども、それらはほとんど全部その段階でもう堂々と新聞に出る、あるいは警察の前にマスコミが待ち構えて、みんなが写真を撮るというような状況が、私が指摘をしたのは古い時代でありますから、そういう点があったかもしれないけれども、ごく最近の例などを見ても、今月の初めですけれども、千葉県で起こった少女殺しの捜査なんというのも強引に逮捕した。逮捕だから、それは発表してもいいというあなたのいまの説明になるかもしれませんけれども、全然人が違うというので、こんなふうな大きな記事が出ている。それは全然間違いだ、こういうことになったら、それは逮捕という形式はとっているかもしれないけれども、仮にその人の人権というような問題になったら、これは鶴田武夫さんという人だけれども、この青年の人権についてはもう全然無視されていると言って少しも差し支えないじゃないですか。そういうことが一方において頻々と行われておって、そしてこういう問題についてだけいまのようなガードをかたくするという点は、少なくとも一般国民はとうてい納得できないと思うのですね。  私、もう少しお尋ねをしたいと思うのだけれども、それではどういう条件になったらば発表しますか。
  10. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまの御質問に先立っていろいろ御指摘でございましたが、たとえば警察におきます捜査過程において、ときに御指摘のような問題が起きるようでございます。私どもも実は苦々しく思っておるところでございまして、いかなる場合でも、被疑者でありましてもその名誉、人権は十分に守られなければならないというふうに考えるわけでございます。  さて、ただいまのお尋ねでございますが、仮にいろいろな人から事情を聞いておるといたしまして、これらの人たちから事情を聞いておりますのは、現在捜査を進めております一連の被疑事実の関係参考人としてお話を聞いておるわけでございまして、それらの方々のお話のうちの相当部分は、将来公判の段階において利用されることになろうと思います。そういたしますれば、当然公開法廷でそれらの内容は明らかになる、このことだけは申し上げられると思うのでございます。
  11. 西宮弘

    西宮委員 参考人として調べられて、しかも時効にかかっているというようなことになると、公開法廷でも出てこないという可能性があると思うのだけれども、その心配はないですか。
  12. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 現在、海部氏の勾留事実をめぐりまして、海部メモに関する諸問題それからマクダネル・ダグラス社からの二百三十八万ドルをめぐる諸問題、これを偽証被疑事実あるいはすでに起訴しました山岡らに関します私文書偽造との関連におきまして、証拠の収集、事実の確定に努めておるわけでございまして、いろいろな人からお話を聞いておるといたしますれば、いずれもその当該海部偽証あるいは私文書偽造の事実の立証上必要であるという観点から調べておるわけでございまして、恐らく公判廷で明らかにする段取りになろうと思います。
  13. 西宮弘

    西宮委員 海部氏の問題については、この十五日に一応結末がつくと言われているわけですね。そうなったら、その段階で少なくとも参考人としてだれを呼んだという程度のことは発表できると思うのだが、それはどうですか。
  14. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 参考人としてどなたをお呼びしたかというようなことは、とうてい発表する限りではないと思います。  しかしながら、今回の事件と申しますのは、昨年暮れからのSECの最初の資料の公表から端を発しまして、非常に国民の注目を引きあるいは関心を呼んでおる、いわゆる疑惑と言われる諸問題でございます。それらの諸問題を検察としてはすべて網羅的に吟味して、その中で犯罪の探知できたものについて捜査を展開するということでやってまいったわけでございますが、さて、一応の捜査が終結しあるいは終結に近づきました場合に、国民に対する関係で、これらの諸問題に対して検察がどんな感触を得ておるのかというようなことをお話しするのが相当ではないかという声も一部にあるわけでございます。  それらの点も踏まえまして、もうこの十五日、海部氏の勾留満期のころまでには、検察国民に対する何らかの対応ぶりについての考え方もまとめなければならない、かように考えておるわけでございます。しかしながら、何分先ほど申しましたように、なお一週間を残しておりまして事実確定段階でございますので、やがてそういうことについても真剣に検討して結論を出さなければならぬ、かように思っております。
  15. 西宮弘

    西宮委員 それでは、海部処置が決定する十五日、その前後、あるいは前は無理かもしれませんけれども、その時点検察側捜査の経過についてある程度発表する、そういうふうにわれわれ期待してよろしいですね。
  16. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 まだそういうふうに決めたわけではございませんが、そういう必要性という観点も十分これから検討しなければならぬ、かように考えております。
  17. 西宮弘

    西宮委員 私は、もしこの時効という問題がなかったならば、つまり時効にかからなかったならば、恐らくその時点で問題の人物は正式に逮捕される。したがって、その時点では堂々と逮捕として発表するということに当然なりましょうけれども、そういうことになりかねない状況だと思うのですよ。それを時効で妨げられてしまったというのはまことに残念なんだけれども、そういうことを考えてみると、私は古い昔のことをやはり思い返してみないわけにいかないのです。  つまり、いわゆる怪文書が横行したという時代ですね。飛行機に関連してはもうしばしば怪文書が出ているわけですよ。われわれ国会議員全員に配ってきたのでも、佐藤三選には反対だ、その中にたとえば松野代議士がこれこれだというようなことを書き込んだ文書が配られている。あるいは昭和四十七年ごろには「泥沼にはまり込んだエアバス選定」とか、その次の年には「策士窪田専務の引退」とか、五十一年には「ドキュメンタリーレポート」とか、こういうものがどんどん送られてくるわけですよ。それから例の海部メモについても、すでにその当時国会で論議をされておるわけですから、もしそうであったならば、当然それについて関心を払うべきだと思うのだが、捜査当局としては、その当時に全く関心を持たなかったのですか。
  18. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 何らかの前提を頭に置かれましての御質問でございまして、大変お答えしにくいわけでございますが、検察としては、従来か・ら航空機の問題については関心を払ってまいったわけでございます。  たとえば、マスコミ等で一時報道されたこともございますが、FX問題について、第一次FX時代に若干の内偵を試みたり、いろいろなことがあるわけでございます。いずれにしましても、今回アメリカの発表を契機として捜査をした結果だんだん判明してきたようなことにつきましては、遺憾ながら当時の状況といいますか、検察の力というものもあるいはあったのかもしれませんけれども、発見できなかったというのが実情でございます。
  19. 西宮弘

    西宮委員 国税庁お尋ねをいたしますが、脱税については三年あるいは五年、つまり時効と同じような制度があるわけですね。  したがって、そういう点では刑事事件と全く同じようだと思うのだけれども、どうですか、いま私が言ったようなことがかつて昭和四十年代に続々として起こったわけですが、それに関連して調査をしましたか、あるいはもっと簡単に、今回の問題について国税庁としては調査をしているか。
  20. 小野博義

    小野説明員 お答え申し上げます。  今回の事件関連しまして、いろいろなことが報道されているということは承知しておるわけでございますけれども、その事実関係等につきましては、何分にも古いことでもございますし、国税当局としては、現在のところ承知していないといったような状況でございます。なお、事実関係が明らかになりまして課税処理をすべきものがあれば、適正に処理することは当然でございますけれども、ただいま先生からも御指摘がございましたように、何分にも古い時期のことのようでございますので、除斥期間という制約があることを御承知おきいただきたいと存じます。
  21. 西宮弘

    西宮委員 もう一遍聞きますが、要するにいまの問題について、ああいう金の流れがすでに新聞等では堂々と報道されているわけですよ。それについて、その事実関係国税当局として調査をしているか。それはどうですか。
  22. 小野博義

    小野説明員 私ども所管ではございませんが、法人税関係では、いろいろ調査をしているやに聞き及んでおります。
  23. 西宮弘

    西宮委員 私は、それは当然に調査をすべきで、あなたの所管ではないかもしれないけれども、これはぜひその点を関係の方に伝えて対処をしてもらいたいと思うのだけれども徴税当局としては調査をするのはあたりまえだ、そしてそれが明確になった時点で、いま話のように事実は明らかになったけれども時効でだめだというのならば、本来もし時効がなかったならば取れる金がこの程度だというようなことは公表すべきだと思うのだか、どうですか。
  24. 小野博義

    小野説明員 お答え申し上げます。  除斥期間を経過いたした時期のものにつきましては、私どもとしては課税権がないわけでございますし、当然のことながら調査する権限もないわけでございます。また一般的に個別の課税事実に関しましては、所得税法あるいは法人税法によりまして守秘義務が課されておりますので、個別案件内容については、一般に公表することはいかがかと思われます。
  25. 西宮弘

    西宮委員 守秘義務というのは常にあなた方が使う言葉だけれども、こういう大問題で国民疑惑を呼んでいるという問題については十分に調査をして、その調査結果を発表すべきだと私は思うのですよ。それは、たとえば前のロッキードの問題で田中角榮氏は四億六千万の追徴金を課せられたわけですね。恐らく今度の場合でもそれに近いものが、そういう金が入っているのだから、その所得税という立場になると、恐らくそれと同じようなことが当然問題になるべきだと思う。そうなったら、要するにさっきの刑事事件として捜査当局がその当時に十分に関心を持たなかったというところに、今日時効という問題に妨げられておるという結果になっておる。  それと、税務当局というのは、絶えず何かそういう問題がないかというので目をさらのようにして探しているのじゃないですか、中小企業等の場合は。ウの目タカの目で探している。それを、こういう問題が堂々と怪文書等で大っぴらになっているのに全然目もくれないで、いまになってはもう時効だから手がつけられませんというようなことでは、国民に対して申しわけが立たないと思うのだ。どうですか。
  26. 小野博義

    小野説明員 お答え申し上げます。   一般論として申し上げますと、国税当局といたしましては、毎年提出されました申告書と、国税部内に収集しております資料情報等を総合検討して、適正な処理をすることとしておるわけでございます。
  27. 西宮弘

    西宮委員 全く問題にならないのだけれども、第一、時効の問題も、政府が提案したのも審議されないでおる現状で、われわれはまことに不満なんです。たとえば自民党に所属しておられる田中伊三次さんにしても、単純収賄罪は五年、受託収賄罪は十年にすべきだということを言っているわけです。堂々とそういう意見マスコミに開陳をしておるわけです。あるいは私どもは、こういう収賄罪というのは期限を定めない、むしろそうすべきだと痛切に感ずるわけですが、これは刑事事件についても税金の問題についても同様だと思う。  しかし、そういう議論をしておったのでは時間がありませんから、一つだけ大臣に伺いますが、東京新聞に載っております記者とのインタビューです。七日に法務省で行ったインタビューですが、その中で第一に大臣が挙げているのは、政治には金がかかるのだ、国民にも考えてもらわなければならぬ、こういうことを言っておられる。これは、国民にも考えてもらわなければならぬというのはどういう趣旨ですか。
  28. 古井喜實

    古井国務大臣 多分そのようなことを私は言ったと思うのでありますが、つまり、このような事件再発を防止しよう、将来起こらぬようにしようというのには、どうしたらいいかという問題があるわけですね。  そこで、なぜこういうことが起こるのだということをいろいろ考えますと、企業方面にも、もうけなければいかぬ、それはわかります。企業はそういうものですから。けれども、もうけのためなら何をやってもいい、モラルのミニマムも全然ないものかというようなことも考えさせられる面があるわけです。それから一方、政治家の方も、選挙区のことのみならず頼まれれば世話をやいてやらなければならぬ、こういう立場もあるわけですけれども、しかし、世話をやく上に金をもらってもいいというか、金をもらうということが実際問題起こってくるのでは困ったものだ。政治の方でなぜ金を欲しがるのだ。また、金を持っておれば政治の上で強い、こういう現実がなぜ起こっているのだ。それだから金を欲しがるのですね。選挙じゃないか。また、親分になれば子分の選挙世話もやかなければならぬから、またそこから起こって金だ。だんだん考えてみると、やはり根源があるような気がするのですね。そこを考えないで、しっぽだけやかましく言ったって、私、こういうことの再発をなくすことができるだろうか、本当にそう思うのですよ。  だから、それには政治家が真っ先に考えろと私は言うのです。けれども、それだけではだめだ、企業考えてもらわなければいかぬし、それから有権者国民の方も、選挙国民がやるのですから、一緒になって総がかり考えてみるということをしなければ、根本的に再発防止ができないのじゃないかと私は思うのです。間違っておるかどうか知りませんよ。そこで、これはみんなで考えようじゃありませんか、これは間違っておると言われれば意見の相違ですが、私はそういう気がするので、そういう意味のことを申し上げたと思います。
  29. 西宮弘

    西宮委員 国民全体で大きな問題として考えるということには私も異議はありませんけれども、いかにも大臣の言っておられるのが、政治には金がかかる、したがって国民全体で国民にも考えてもらわなければならぬと言うと、何となく国民責任を転嫁したようなことになってしまう。そういう気持ちがあるのじゃないか。私はその点を恐れているわけですよ。つまり、いま問題になっているのは、国民全体の中に政治に金がかかるということを許している、そういうあれがあるかもしれないけれども、しかし、いま具体的に問題になっているような事件は、そういう国民政治家に対する甘さですね、そういうことから起こっているというよりは、はるかにその特定の人間のモラルの問題というか、そういう問題だと思うのですよ。  政治に金がかかるかかると言われるのだけれども、ここに持ってきたのは松野頼三さんがお書きになった「議員生活二十五年」という本です。これを見ると、金の問題でいろいろ大学教授対談をしているのだけれども、その中には「有権者が知っているのだ。カネは麻薬みたいなもので、一回目はよくても結局身を滅ぼすことになる。」こう言って、年間一人千円ぐらいのカンパをもらえばそれでいいのだというようなことを、その大学教授との間で対談を交わしているわけです。その千円というのは、いまの相場にしたら一万円くらいになるかもしれませんけれども、一年間にその程度の金があればやれるのだということを言っているので、私は、松野さんなどもそういう意味では大変つつましいやり方選挙等でもやっているのだと想像されるのですがね。やり方によってはそういうこともりっぱにできるので、私は、それを国民の側に責任を転嫁するというような考え方はとうてい許されないと思う。  その議論をしておってもしょうがありませんから……。ただ、もう一つだけ大臣お尋ねしたいのだけれども大臣はこれが決まったら早速中国に行くということを言っておられるようですが、これは聞きようによると、もう先が見えたのだ、もう大したことはないのだから、こういうことで恐らく国民に対して、あるいはまた現に捜査に当たっている捜査官等士気にもかなり影響するのじゃないか。もう大臣は早々にして中国へ行ってしまうのだ、そういうことになると、いま一生懸命これから——たとえ十五日に海部処置が決まっても、それから先ずいぶんいろいろな問題が具体的には続いていくと思うのですよ、捜査を必要とするような問題が。そういうのにずいぶん士気が阻喪されるのじゃないかと思うのですけれども、どうなんですか。この問題に取り組んでいる法務大臣の、何というか、意気込みというか、そういう点で私はどうも少し物足りないのじゃないかという感じがするのですが、どうですか。
  30. 古井喜實

    古井国務大臣 そういうことを書いたりする新聞もあるのですけれども、そう気を回して、この捜査を大抵で打ち切って、あるいはけりをつけてと、そんなふうに考えるなんというのは私は思いもつかぬことで、用事が済み事情が許し、差し支えないようになったらということを言っているのでして、逆さまなことをこしらえ上げたり、そういう物の見方はお互いにすべきではないと私は思うのですよ。私だって、そんなおかしなことを考えはしませんよ、大事な仕事を持っているのに、ほうって行くとか、そのためさっさと片をつけて行くとか。そういうことは、私はつまらぬ新聞記事だと思っております。
  31. 西宮弘

    西宮委員 もう時間がなくなりましたので終りにいたしますが、この事件はうっかりすると、要するに一企業体である日商岩井の会計経理の乱脈というような程度の問題に終わってしまうおそれがあると思うのですね。私は、そういうことで幕が引かれるというようなことになったら、これはもう国民政治に対する不信、国民疑惑、こういうものは実に深刻だと思うのです。ぜひこの問題はそういうことのないように、いままで取り調べを受けている人が延べ十二人おるそうでありますが、これは全部民間人ですね。法務大臣がいまここで簡単に答えられないかもしれないけれども、そういうことに終わってしまわないためには、終わらせないためには、どうしてもその政治家責任を明らかにするということが絶対に必要だと私は思うのです。  前のロッキードの問題のときに、数名のいわゆる灰色高官というのが、形は秘密会という形だったでしょうけれども、とにかく公表された。あのときのいわゆる灰色高官と称された方などは、金額の単位で言うと百万の単位だったわけですよ。今度のはまさにけた外れじゃないですか。にもかかわらず、それが全然うやむやに終わってしまって、政治家は全然らち外だ、こういうことになってしまって、結局問題は一企業体会計経理の不始末というようなことに終わってしまう可能性が多分にあると思う。どうですか大臣、それだけ伺って終わりにします。
  32. 古井喜實

    古井国務大臣 私は、気持ちは基本的に、いまあなたがお考えになっておるようなことと一つも距離はないというような感じがしております。もともと、皆さんもそうだろうし、国民が明らかにしてもらいたいと言っているのは、三年以内だ、七年以内だのの中の事実を調べてくれと言っているのじゃないと私は思うのですよ。十年前のことだろうが何だろうが、全体として納得がいかぬことがあるのじゃないか、ここをはっきりしてくれと、これがその気持ちだろうと思うのです。  ところが、検察にしてもあるいは国税当局にしても、検察立場、たてまえ、税金の立場、たてまえというものには、それなりの原則があるのですね。時効になるとか、それなりのことがあるのですね。これには枠があるのですね。もともと、これは求めているものにこたえるものじゃないのです。求めておるものにこたえられるような、そういうことにはなっていないのですよ。食い違いが起こるのですよ。そこですから、それじゃだれがそういうことを、枠にこだわらないで真相を究明するかということになったら、どこがやるのですか、そういう根本問題に来るように思えてならぬのです。  そこで、お気に入らなんだかもしらぬけれども、国権の最高機関であり国政調査権を持っておる国会立場には三年だ、五年だ、十年だという枠も区切りもあるのじゃなし、国民が、つまり政治的に問題にしていることにはこたえられるという立場にあるのだろうから、おやりになるべきだし、やっていただいたらどうですか、私はそういう意味で言っているのです。役割りを持っておって原則に縛られておるものにみんなこたえろ、求めておるものにこたえろと言われるところに、これはどうしても無理があると思うが、どんなものでしょうか。何でも犯罪の方から来い、それは枠があるのですよ。税金の方も枠があるのですよ。そこをよく考えていただいて、根本的に考え方が違うというよりも、そういう面があるということも考えていただきたいということでございます。
  33. 西宮弘

    西宮委員 だから国会で調べなさい、国会で調べようとすれば、そういう問題は何も聞いてないから手がつけられませんというのが自民党の御返事なんですよ。それじゃ全くどうしようもないじゃないか。いま大臣は、そういうことは国会でよろしく調べるべきだ。だからやろうと思えば、そういうことば全然聞いていませんからやれません。そうなったらお互い責任のなすり合いで、これはいつまでたっても解決しないじゃないですか。  だから私は、さっき刑事局長が言われた、十五日にめどがついたら、その経過について発表したいということを検討しているというお話だったので、それに大きく期待をして、その際に、いま大臣の言われた五年前、十年前の問題もその中で国民の納得が得られるようにぜひ配慮をしてもらいたい、こういうことを注文をして終わりにしたいと思います。ぜひよろしくお願いします。
  34. 佐藤文生

    佐藤委員長 稲葉誠一君。
  35. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私は、航空機の疑惑捜査は非常にむずかしい捜査だと初めから思っていたわけです。それにもかかわらずといいますか、非常によく地検の特捜部がやったというふうに思って、その苦労には感謝をするわけですが、二、三聞きたいのは、たとえばいわゆる海部メモというものについて、一体海部自身が自分がつくったんだということを、これは認めたわけですか。
  36. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 被疑者の供述内容そのものを申し上げるわけにいきませんけれども、私の得ております感触としては、だれも疑う人はなくなっておるのじゃないかと思います。
  37. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、なぜそういうふうなものを——ちょっと質問を変えましょう。  あなたは、その中で事実と違う点があるということをこの前も言っていますね。どういう点が事実と違っておるわけですか。たとえば岸さんに関連する部分ですか。
  38. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 これは予算委員会とか航空機特別委員会で大出委員から御指摘のあった点でございまして、海部メモ、二通ありますけれども、そのいずれも一部真実と異なる記載があるように私は思うが、どうか、というお尋ねを大出さんからいただきまして、私もそのように思いましたので、私も同感ですというふうなお答えをしたわけでございます。これは、現在捜査がだんだん終結に近づいておりまして、海部氏の偽証の容疑の内容でございますから、はっきり確定すると思いますけれども、大体私の感じましたようなのが真相のように、現在捜査の結果で認められておるようでございます。  ただ、いまお尋ねのどの部分がどうかということになりますと、もう少し確定をした上で、これは告発事件ですから、多分最終的に公訴を提起することになると思いますが、そのときの訴因の確定段階できちんと整理をしなければならぬ、こういうふうに思っております。
  39. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、ここに福田という名前が出ていますね。これは一体だれなんです、架空の人物なんですか。どういうふうにとったの。
  40. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 どうもだんだん細部のお尋ねで恐縮しているわけですけれども、恐らく、二つありますメモの一つの中にたしか松野、福田というようなことが書いてあったと思うのですが、私の直感では、どうもその二つの名前は真実と違うのじゃないかというような気がしております。真実と違うということになると、架空の人物でありますから、どの福田、この福田ということもなくなってしまうというような感じをちょっと受けておるわけでございます。
  41. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、なぜ海部氏がそういう事実と違うようなメモをつくったのかということ、それが事実と違うのなら、自分でつくったのだということをこの前の予算委員会でも認めればよかったのじゃないですか。別にそれを自分は知らぬとかいうことを言う必要はなかったのじゃないの。
  42. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部氏の当時の心境は私にわかろうはずもありませんが、要するに、一枚一枚のメモに書いてあることが全部でたらめであれば、いまお尋ねのような観点もあろうかと思いますけれども、一部うそで一部本当のところがあるというようなことではなかろうかと思います。
  43. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、なぜ海部氏がこういう二通のメモを書いたかということは当然捜査の重点になってきておる、こういうわけですね。  これはあたりまえな話で、だからそれについても何らかの形、これが、二百三十七万ドルですかこれに関連して出てくる、あるいはそれとは全く関係なしに出てきておるということなんですか。どういうあなたの感触——あなたは非常に感触が豊かな人だから、その感触を聞くのだけれども、それはどうなんです。
  44. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 一部真実が記載され、一部真実でないことが記載されておるということになりますと、当然どうしてそんなことをしたのだろうかということが問題になるわけでして、その辺を現在、海部氏に対する取り調べを含めまして、いろいろな観点から客観的な証拠も集めながら詰めておるところでございます。  なお、海部氏の偽証勾留事実になっておりますのは、海部メモの点と二百三十八万ドルの点ですけれども、私の見るところ、両方の問題は全く別の問題であって、海部メモと二百三十八万ドルが関連を持つというふうには考えておりません。
  45. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、よくわかりませんが、政治家を呼んだとか呼ばないとかいう話ですね、これは私は余り大きく取り扱うことはおかしいと思うのですよ、参考人として呼ばれることは幾らでもあるわけですから。それは二百三十八万ドルの方の関係で、片一方は架空の人物だと言うんだから、こっちの方で呼んだということにだんだん推理はいくわけでしょう、これは大人の推理ということになるね。あなたは笑っているから、それは認めるわけでしょう。どうですか。
  46. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 海部メモの問題、それから二百三十八万ドルの問題いずれも偽証の重要な被疑事実でありますから、それぞれに必要な参考人あるいは必要な証拠の収集、こういうことを鋭意やっておるはずでございまして、場合によっては両方に関する知識をお持ちの方もおられますでしょうし、片一方しか関連のない方もおられるのじゃないかと思います。
  47. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 きのうの読売新聞を見ると「岸信介秘書 中村長芳」この人が「有難く拝受」というので名刺を書いて金を受け取っておる。これは島田さんの資料の中から出てきた、こう言うのですが、家宅捜索のときに出てこなかったのか、だれかに預けておったのか、よくわかりませんけれども、いずれにいたしましても、この名刺は本当に中村という人が書いたのかどうか、あるいは「有難く拝受」というのはどういう意味なのか、なぜ島田資料の中にそれがあったのか、それが家宅捜索のときに出てこなかったのか出てきたのかとか、それから第三者に預けたとすれば、一体だれが第三者で、どういう理由で預けたのか、また預かったのかとか、こういう問題は当然非常に大きな捜査上の問題になる、こう思うのですが、この点については検察当局としてはどうなんですか。すでに調べておられるのか、これから調べるのか、重大な関心を持って対処するというのか、どういうことになりますか。
  48. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 読売新聞記事に出ましたこの島田氏の隠されたるメモ類というものにつきまして、検察がどういうふうな考え方を持ち、どういうふうに対処しようとしているかにつきましては、実はまだ報告を受けておらないわけでございます。  しかしながら、新聞で拝見いたしました限りでは、それらのものは改めて検察当局として入手する必要はないようなものではないか、言葉は悪いのですが、大体間に合っている範囲に属するもののように思っております。
  49. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 その間に合っている範囲に属しておるということは、裏を返しますと、あなたの方としても言いづらいでしょうけれども、中村長芳、この人を何らかの形で事情聴取をしてすでに済んでおる、こういうふうな理解の仕方でいいのでしょうね。これはそういうことになるな。
  50. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 捜査過程でどういう方を参考人としてお呼びをしたか、事情を聞いたかという点については、明らかにするのを御容赦いただきたいと思います。
  51. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 明らかにするのは御容赦いただきたいと言うけれども、私の言うことについては否定はしない、こういうことでしょう。
  52. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほどお答えいたしましたような意味において、ただいまのお尋ねに対しては肯定もできませんし否定もできないのが私の立場でございます。
  53. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 肯定できない立場はわかる。それは説明があったからわかった。否定できない立場というのは説明がないわけだけれども、間に合っていると言うのだから、これはもう調べたのでしょうね。あんまり聞くと悪いかな。  いろいろな問題があるのですが、時間の関係もあるから。  結局、やっておる中で、この公訴時効の期間がもっと長かったらな、こういうふうに第一線の検事は思われたのじゃないでしょうか。
  54. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 第一線検事がどういう感想を持ったか、まだ報告を受けておりません。
  55. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そんなこと法務省に報告するわけないもの、あたりまえの話だよ。あなたの考え方としても、自分がやっておるとすれば公訴の時効がもっと長かったらな、こういうふうに思うでしょう。あたりまえの話じゃないの。そういう点について残念に思ったんじゃないですか。答えはまあいいですよ。  そこで大臣に聞きたいのですが、あなたの答弁は少し長いから、短く要領よくきちっとやってくださいよ、時間がかかってしょうがないから。申しわけないけれども、時間が制限されているものだから、長くしゃべっていいときにはしゃべってもいいのですが。  そこで大臣、あなたがこの事件について総理大臣に、大平さんにいままで報告したことはあるんですか。
  56. 古井喜實

    古井国務大臣 報告したこともあるし、しないこともあります。
  57. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 しないことがあると言ったって、しないことがあるかと聞いているのじゃないのです。報告したことはある。どうして総理大臣に報告したわけですか。
  58. 古井喜實

    古井国務大臣 これは政治的にだれしも関心を持っておる問題でありましょう、一般の人も。それから政治的な一つの問題でもありますから、必要なことがあればあたりまえのことです。
  59. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それから今後、十五日に海部偽証か何かのあれが終わる、こうなると、その結果については、総理に全体としての捜査状況というものはきっと報告されるわけでしょう。  それが一つと、そのときに、これこれという政治家がこういう点について事情聴取を受けた、こういうことも当然含んで総理には報告するというふうに常識的にも考えられるわけですが、そういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  60. 古井喜實

    古井国務大臣 簡単にやりますが、必要と思うことだけ報告するので、いまどうということは言えません。
  61. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 あなたの答弁は長過ぎると言ったのはまずかったな。今度はちょっと短過ぎちゃった。訂正いたしますから、今度は遠慮なく言いたいこと言ってください。  そこで、いま政治的な大きな問題だ、関心のある問題だ、こういうふうにあなたは言われているわけです。そうすると、こういう政治家がこういう件で呼ばれたということは当然、これは刑事局長の方から聞きましょう、刑事局長の方から大臣には報告しますか。
  62. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 法務行政の最高責任者でいらっしゃいますから、一般の世間が関心を持ちますようなことは、事後になるべく早い機会に御報告をいたしております。
  63. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 報告をいたしますというのは、これからするという意味ですか、いままでも一般国民政治的に非常に大きな関心を持っていることについては大臣に報告している、こういうことですか。
  64. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 捜査の細かい部分についてはお任せ願っておりますが、たとえば海部氏が逮捕されたとか、そういう、新聞で言えば一面のトップに出るようなことがございますれば、その都度御報告を申し上げております。今後もそういたしたいと思います。
  65. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、ある政治家事情聴取を受けたということも新聞の一面トップに出ましたね。だからそのことについても大臣には報告している、三段論法みたいにずっといくと、そういうふうになる。まあそういうことでしょう。
  66. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 大体の検察の方の手順が終わりますと、私も大体終わったということで報告を聞きますので、そういたしましたら速やかに大臣に御報告いたします。
  67. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それはわかったのだけれども、いまぼくの言ったことについては、別にあなたとしてはことさらに否定するわけにはいかない、こういうふうに承ってよろしいでしょう。
  68. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 たとえば政治家取り調べ新聞記事のことに関連して仰せでありますから、それに即して申し上げますと、新聞に出まして、私が立場上、直ちに検察当局に真偽を確かめました。その関係の報告を受けましたけれども、その段階ではまだ大臣に申し上げる段階ではないというふうに判断をいたしまして、おいおい御報告申し上げようと思っておるところでございます。
  69. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 だけれども、この前の大臣インタビューなんかでは、まるで、ある政治家事情聴取されたのを当然知っておられるようなインタビューのように聞いたのですけれどもね。それはこういう状況でお聞きしたのだけれども、それはもちろん事件にはならないということについては、大臣に報告されているわけじゃないのですか。それは政党政治にとっても大きな問題でしょう。ただ、そういうことを報告したかしなかったかということについては言うのを勘弁してくれ、こういうことならば私はそれでいいですよ。
  70. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 新聞記事にありましたような、そういう特定政治家を何回か調べたというような報告は大臣にいたしておりませんでした。したがって大臣インタビューで仰せになったということについては、大臣の直観的な御判断ではないかというふうに考えておりました。
  71. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それから大臣にお聞きしたいのですけれども、これは長く答弁してくださって結構です、もうさっきのは訂正しますから、ぼくの失礼をおわびしますから、ゆっくりゆっくり答弁してください。  あなたの考え政治家の道義的責任ということ、これはどういうようなのを指して言われるというか、あなた自身がお考えになっていらっしゃるわけですか。
  72. 古井喜實

    古井国務大臣 政治的、道義的責任という観念はどういうことかということについては、私もそれは自分の考えはあるかもしれぬけれども、そのうち国会の方で観念をはっきりされることもあるかと思いますので、余り先走ってよけいなことを申し上げるのをきょうは差し控えたいと思います。
  73. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そうすると、国会がそれを決めれば、それを行政府としては尊重する、これはあたりまえのことですが、ということになるわけですね。
  74. 古井喜實

    古井国務大臣 あたりまえのことはあたりまえ、あたりまえでないことはあたりまえでないということにいたします。
  75. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それでは個別的にお尋ねをするわけですが、職務権限があって金をもらった、ただ時効にかかっておる、こういうふうな場合については、これは政治家の場合道義的な責任がある、こういうふうにあたた自身はお考えでしょうか。
  76. 古井喜實

    古井国務大臣 私の方は道義的責任を追及する仕事をしておりませんので、だから余り具体的に見解をきょう申し上げることは差し控えさせておいていただきたいと思います。
  77. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私はあなたのお考えをお聞きしているので、差し控えさせてくれというのは、あなたの方は追及してないからということですか。それも一つの理由ではありますね。だけれども、あなた自身が一つの判断を持っておられるということも、これも一つの当然の事実だ、こう私は思うのです。  そうすると、今度は逆に、金はもらったけれども職務権限がない、こういう場合についても、これは常識的に一つの道義的な責任がある、こういうふうに考えてよろしいでしょうか、どうでしょうか。
  78. 古井喜實

    古井国務大臣 繰り返すこともないですけれども、私の方の職務は犯罪になるかならぬか、つまりこの法律問題を究明したりはっきりすることでありますので、職務の関係から言うと道義的責任はいかなるものであるかということは、これは別個の、職務と関係のない、個人というか政治家としての見解の問題になると思いますので、ですから職務的な立場では申し上げることはこちらの方が差し控えておきたいと思います。
  79. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 しかし国民が、全体として納得のいくようにはっきりしてくれという意思が非常に強いというふうなこと、それは国民がそういう気持ちであるということは国会によって代表されるわけですから、国会がそういうようなことの意思表示をすれば、当然法務省当局はそれに従うということ、それもあたりまえですね。そういうふうにお考えになりませんか。
  80. 古井喜實

    古井国務大臣 何か含みでもあってお尋ねになっておるのかどうか、ただ一般論の学問をやっておられるのかわかりませんが、国会の見解というものはだれしも尊重すべきものだという基本的な点は、議論の余地も何もないじゃありませんですか。どうですか、何か議論の余地があるのですか、何かあなたの含みでもあるのですか。
  81. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 私の方が聞いているので、あなたから聞かれるのも何か筋が違う。しかし、往年の古井さんらしい闘志があらわれてきたような感じがするね。  それで、そうすると刑訴の四十七条にいう公益というのは何かということですね。これは刑事局長の方に聞きましょうか、公益。国政調査権との関係においてこの公益というものは考えるべきだと。これはどこの教科書、たとえばコメンタール、「注釈刑法」、小野さんの書いたコメンタールにもそういうふうに出ておりますね。その公益というのは、そういうような理解の仕方でよろしいでしょうか。
  82. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 捜査内容を秘密にすべきであるという刑事訴訟法の大原則と、それからこれを明らかにすべきであるという他の必要性、これをよく勘案した上で公にするかどうかを決すべきであるという趣旨が、四十七条本文及びただし書きによって明らかにされておるわけでございまして、その場合の公益というものの代表的な例として、国会の国政調査権というものが沿革的にも学説の上でもそのように理解されていると思います。ですから、他の必要性に比べて、国会の国政調査権に基づく必要性という場合には、捜査記録の保管者としては、他の場合に比較してなお一段と重きを置いて判断すべきであろう、こういうことに考えております。
  83. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 それから、この事件が十五日で一応起訴が終わる。そうすると、冒頭陳述は海部さんの偽証関連をして、いまの二百三十八万ドルかな、この使途その他の工作に関して、それはいままでの捜査状況から見て、当然冒頭陳述の中に出てくるというふうに考えてよろしいでしょうか。
  84. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 冒頭陳述は公訴を維持します検察官の判断でつくるわけでございまして、私がとやかく言うわけにいきませんけれども、もし私が当該公訴を維持する検察官であったといたしますれば、御指摘のような点はある程度詳述することになろうと思います。
  85. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 これは、起訴状は簡単に書きますからね。  そうすると、その冒陳の中に、いま新聞紙上などをにぎわしておる政治家の人の名前が出てくる可能性というものはなきにしもあらず、こういうことで、それについては否定するわけにもいかぬ。肯定するわけにもいかぬけれども、否定するわけにも、ここではいかぬ、こういうことでしょうか。
  86. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 新聞記事内容の真否については、肯定するわけにも否定するわけにもいきませんが、もし新聞記事のようなことがあったといたしますれば、当然冒頭陳述では明らかにしなければならぬと思います。
  87. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 そこで、いままで、前の西宮さんもちょっとお聞きになりましたが、国民は、あなた方は非常によくやってくれたと思っているんですね。ぼくも、これは非常にむずかしい事件だと思うんですよ。ロッキードよりこの方がむずかしい。前の前の事件だし、物証もなかなかない事件でむずかしい事件だと思うのですが、この二つの事件ロッキードなりグラマン、ダグラスの事件がアメリカから火をつけられて発足してきて、日本へ飛び火して、それから初めて日本の検察当局が動いてきた、こういう経過になるわけですね。そのことについて、国民は何か非常に残念がっておるわけですね。  私は、いままでもそういうふうな調べるチャンスがあったのではないかと思うのです。たとえば恩田、山辺、小名、この人の例のあれがありますね。海原氏や村上信二郎氏の告発事件、これは海原氏の関係で警視庁に告発した事件ですけれども、そこで、これは恐らく特捜が引き取ってやったと思うのです。そのときに、あれだけの印刷物が出て、非常に良質な紙だったそうですが、出ておるのだから、あの金の出所は一体どこからかということが、あの飛行機の競争から見れば、海原氏の地位から言っても当然考えられたはずだと思うのです。それについて、どうしてそこまでの調べがいかなかったのだろうということを国民も不思議に思うわけですね。  そういうふうな点について何か調べようとしたのだけれども、何かいろいろな事情で調べられなかったという説も漏れ聞くのですが、今度、いまになってくると、小名や何かの百万円の領収証や何かが出てきているということが伝えられていますね。それは時効に入っちゃった事件で、すでにもう執行猶予になって済んじゃった事件ですけれども、そういうような点なんか考えると、特捜部は一生懸命やったのだろうけれども、アメリカから火がついて初めてこちらがやって、自分の方から自主的にやれなかったのだ、こういうことが考えられてくる。非常に残念に思うのですが、これに対する所感もあると思うのですがね、何か水を差すようで悪いのですけれども。  と同時に、今後こういうような事件がまた続発してくる可能性があるのではないのでしょうか。たとえば、この前山辺君がロッキード事件証人で調べられましたね。あのときに、若狭は公判廷で何と言っていますか。自分たちよりも多くの金を五島昇がばらまいたということをはっきり言っているでしょう。それは山辺君の証言の中にも出てきていますね。こういうことから見れば、これは東亜国内航空のオーナーですか、ああいう関係からの捜査というものも当然考えられていいはずじゃないのですか。それから地検の特捜部で俵谷君がいたときに、ある人を呼んで、児玉の件について、何とかして児玉をあれしたいと言っていますね。ところが、俵谷君が転勤したのでそのままになってしまったというようなこともあるわけです。これはいろいろあるわけだ。  いずれにしても、今後自分たちの力で問題を解決するということについて、一体どういうふうにしていったらいいかということ、それからいまの山辺君の証言の中に出てきた五島昇の件、これは一体どうなっているのですか。
  88. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 確かに、ロッキード事件に次いで今回の事件もアメリカにおけるアクションが発端になったわけでして、調べてみると、相当古い時期の話になってくる。こういうことになりますと、御指摘のように、検察当局は何をしておったかという御批判は受けざるを得ないと思うのでございます。  私自身、いろいろ考えてみまして、捜査当局が一定の大きな事件捜査に着手をし、これを成し遂げるかどうかという点につきましては、やはり力と決断という二つの要素が要ると思うのでございます。検察なら検察の、特に特捜部の力というものを常に充実させておかなければならないと思います。それからそれにも増して、一定の相当大規模になると思われる事件に着手します場合には、指揮官の決断が要ると思います。  そういう意味におきまして、ロッキード事件も今回の事件も、決断をせざるを得ないようなモメントが外国から発生したということによって、当然のこととして捜査をしたわけでございますが、御指摘にございましたように、今後こういったケースがまた続発してはいけませんので、検察としては力を蓄えますとともに、やはり外からばかりでなく国内からも端緒を得て、端緒を得ましたら直ちに決断をする、こういう体制で臨んでいくことによりまして、今後国内捜査でまずもってかような事件の芽を発見するというふうに努めるべきであろう、かように思います。
  89. 稲葉誠一

    ○稲葉(誠)委員 終わります。
  90. 佐藤文生

    佐藤委員長 沖本泰幸君。
  91. 沖本泰幸

    ○沖本委員 御質問がばらばらになるかもわかりませんし、重複するかもわかりませんが、よろしくお願いしたいと思います。  これも少しひっかかるわけなんですけれども、刑事局長は、海部メモ関連して、岸信介氏の事情聴取は対象外であるような示唆があったわけでございますけれども、これについて、その真意はどの辺にあったか、お答えいただきたいと思います。
  92. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 前回横山委員の御質問に対しまして、海部メモの記載には真実と異なる部分も一部あるやに見受けられる、それで、その真実に合致しない部分において名前が出てきたような人、こういう人については、あるいは取り調べる必要がないのではないかという趣旨のことを申し上げたわけですが、それは一般論として申し上げたわけでございまして、ただいま御指摘の人物についてはメモに名前が出ておるわけでございまして、その部分が真実と異なるというふうにお答えしたつもりもないわけでして、私としては、お尋ねの人物を調べますとか調べませんとかいうふうに申し上げるわけにいきませんけれども、調べる必要がないというふうにお答えした範囲には含まれない方だというふうな程度で御了解をいただきたいと思うわけでございます。
  93. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そうしますと、先ほど、稲葉先生の御質問のいわゆる読売の記事にあります中村秘書の関係についてのお答えがありましたけれども、この件もやはり同趣旨と考えてよろしいのでしょうか。
  94. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 いまの海部メモに関しまして、そこに出ております岸という方のことについて先ほど申し上げましたけれども、中村長芳氏につきまして、この方は調べますとか調べましたとか調べませんとか、ここで申し上げるわけにいきませんけれども、全く関心の外に置いてよろしいという人ではなかろうと思います。
  95. 沖本泰幸

    ○沖本委員 証人喚問の中で有森氏が、過去において自分の良心に恥ずべき内容がいろいろ含まれておるし、それは自分が刑事上の訴追を受ける可能性があるので、答えを差し控えさせてほしいという答弁が国会の証言の中にしばしば出てきておるわけで、そのことがほとんど証言拒否という形につながってきたわけです。  その内容からいままでの過程、経過を見ていくと、海部メモとのつながりなり捜査段階の中身と非常にかかわり合いが深かったような感触を受けるわけですけれども、有森氏について、その関連した問題で本人の行為なり何なり、いろいろなことについて、事情聴取なりお調べになったかどうか。その辺はいかがなんですか。
  96. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 有森氏に関しましては、予算委員会から証言拒絶罪で告発がなされましたので、被疑者として何回も調べているようでございます。  その結果、有森氏の証言拒絶の理由とされたところが本当にそうであったのか、あるいはほかのことに理由があったのに、そういう理由に仮託して拒絶されたのかというふうな点もだんだん明らかになっておるようでございまして、海部氏の偽証の問題と、特に海部メモの問題と有森氏の証言拒絶の関係とは密接に関連をいたしておりますので、まだはっきりした方針を聞いておりませんけれども、恐らく検察としては、海部氏の処分のころに有森氏の処分についても決めるのではなかろうか、かように考えております。
  97. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これも先ほどの御質問にも関連しているわけですが、時効や職務権限の壁によって収賄容疑の追及を免れる人が政治家で三人前後おるだろうということが新聞記事に出ておるわけです。  そこで、これは具体的にはどういう捜査段階の決着がついていくのか、この辺についてお答えいただけたら非常にいいのではないかと思うのですけれども……。
  98. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいま御指摘新聞記事灰色高官は三人前後というようなことを書いております記事を探してみましたら、五月五日の朝日新聞のようでございまして、中身を見ると「東京地検特捜部は、」「いわゆる「灰色高官」を三人前後に絞った模様である。」というようなことが書いてありまして、どういう御感触でこういう記事をお書きになったのか、はなはだ当惑しております。  灰色高官を三人にしぼるというようなことは、捜査過程ではまことにあり得べかざることでございまして、先ほども他の委員の御質問に対してお答えいたしましたように、要するに目下のところは、海部氏の偽証の容疑事実、特に海部メモの問題、それから二百三十八万ドル問題をめぐりまして、これらの経緯を詳細明らかにするために、必要な知識を持っておられる方できるだけ多くの方に来ていただいたりして事情を承っておるわけでございまして、そういう知識をお持ちの方ということになりますれば、これは一般論でありますが、政治関係をお持ちの方もそうでない方も、別にこれを区別する理由はございませんので、いろいろお尋ねしておるわけでございます。  ただ、この新聞記事にございます「灰色高官」というような言葉は、これも大臣も仰せになっておりますが、検察にはない概念でございまして、そういう意味で、灰色高官を何人ぐらい調べたかというようなお尋ねになりますと、全く概念が違う世界の話になりますので、お答えはできないわけでございますが、捜査の手順としてはいま言ったようなことでやっておるわけでございます。
  99. 沖本泰幸

    ○沖本委員 この灰色高官というのは、ロッキードのときに灰色という名称がついて飛び出してきたようなことになるわけでして、いわゆる時効や職務権限というもので、金を受け取ったことはわかっているけれども、それが現実に起訴できる状況でない、時効にかかっておるとかあるいは外れてしまうとか、起訴に持っていってもとうてい成立しないような内容であるとかいうような、灰色からそれぞれが外れていって、しかしその金を受け取ったことは事実であるというようなことが、この前の大きな議論の課題になったわけです。  そういうところからいきますと、少なくともお一人の方は四億五千万であるとか五億であるとかいう金銭授受があった。それは犯罪になるならないにしても、そういう人の名前も出てきておるということになりますし、もうあと一週間ぐらいで終結を見ていくという段階であり、またこの事件捜査に当たっても捜査宣言、非常に強い決意で捜査に当たられたスタートというものもありますし、だんだん終局の状況に現在向かっておることだろうと推測できるわけですけれども、その段階にあって、果たしてこれは真実事件が立件できるかできないかというところにかかわる問題にはなりますけれども国民的な考え方、この事件の大きな内容、そういうものから見ていって、ただ民間の人だけが何か起訴されてしまって、いろいろ大騒ぎしたけれども、究極的には小さい内容で終わってしまうということになってくると、これは国民に対する影響というのは非常に大きなものが残ってくるし、その残ったものについての、かかわり合いのあった人に対する道義的な責任なり、あるいは政治家の場合は政治的な責任を問われなければならないということがかかわってくるわけです。それが先ほどの御議論の中にありました、いわゆる四十七条の公益上という問題に絡んできてということになってくるわけで、この辺は十分御検討していただいて、国民の信託に十分こたえていただくだけの決意をお持ちになり、行動をおとりいただきたいと考えるわけです。  そういう角度から問題を考えていきまして、現在の段階で、果たして政治家が含まれた中で起訴される人が出てくるのか、民間だけの人で起訴が終わってしまうのだろうか、その辺はどうなんでしょうか。
  100. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 現在まだ捜査を継続しておるわけでございまして、この十五日に海部氏の勾留満期が参りましても、そこですぱっと捜査が終わってしまうわけではございませんので、将来のこともございますから何とも申し上げかねるわけでございますが、今日ただいまの時点で起訴に熟しておる政治家というような方がおるのかというお尋ねをいただきますとすれば、それはございません、こういう段階でございます。
  101. 沖本泰幸

    ○沖本委員 そういたしますと、結果的には民間の日商岩井に関連した人たちだけが恐らく起訴に追い込まれるであろう、こう予測に足りる。あとは結局国会証人喚問なり何なりの形で、漏れた人たちに対するあるいは関連のあったと考えられる政治家人たちに対しての責任をある程度明らかにするということしか残された道はないということになってくるわけですけれども、その場合には、どれだけの人が関連があったのかということは一番重要なことであり、自民党の方でも今日の段階で、捜査が終わるまでは証人喚問に応じられないというようなお答えが返ってきたりしておるような状況なんです。  そういうところから言って、いまの刑事局長のお答えからいくと、とうていいまのところ、好む好まないというような問題ではなしに、恐らく捜査過程の中で何人かの政治家らしき名前が浮かび上がってきたけれども、これは全然犯罪につながらないままに消えてしまうという予測の方が大きいということになると、その分だけを国会国民の前に責任を果たしていくということになれば、証人喚問ということになっていくわけでありますけれども、そういう点についてはやはり灰色高官の公表という形をとってもいいわけですけれども、四十七条の公益上の問題国会からの要求があればそういうことに対していずれはこたえる、あるいはこたえる時期があるだろう、こたえられるだろうというような形でのお答えは得られないものでしょうか。
  102. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまの問題は大所高所に立って判断をすべき問題を含んでおりますので、あるいは大臣からお答えがあるのかと思いますが、私ども事務当局の立場としましては、国会の国政調査権の行使に対しましては最大限の敬意を払い、御協力を申し上げるべきだというふうに考えておるわけでございます。  ただその場合に、大臣もしばしば仰せになっておりますように、一方に関係者の人権とか名誉という問題がございますので、その兼ね合いをどういうふうに考えるか、これは一つには国会でお決めいただきます政治的、道義的責任のある者というものの定義にも関連いたしますでしょうし、それからまたそれをお求めになります場でございますとか、いろいろなことが関連いたしますので、現段階でにわかに仮定的な条件のもとにお答えするのは適当でないというふうに考えるわけでございます。  顧みてみましても、ロッキード事件のとき、たとえばロッキード売り込みに関して、金は受け取ったけれども職務権限がない方と、あるいは職務権限はあって金は受け取ったけれども時効になっている方と、こういうような比較的明確な定義がございまして、当時の状況としてこれに御協力を申し上げたという経緯もあるわけでございまして、将来今後の問題として、もう少し具体的な状況になりました場合に、またそれなりに真剣に考えさせていただきたいと思っておるわけでございます。
  103. 沖本泰幸

    ○沖本委員 いまの点につきまして、先ほども話が出ましたけれども田中伊三次元法務大臣は、灰色高官の公表は捜査当局に権限がないとかやらないとかというのはわけがわからぬ、普通起訴しない者は被疑者名を公表しないというのは一般論としてはわかるけれども、刑訴法四十七条には公益上の必要がある場合はこの限りではないという例外規定がある、この公益というのは、国民灰色高官を公表せよと要求している世論、それ以上の大きな公益はない、こういうような御意見を述べていらっしゃるわけですけれども、現法務大臣はこの点に関してどういうふうにお考えになりますか。  またこの点について、法務大臣にはいざというときには命じて報告せしめ、発表するというような権限もあるわけですし、そういう点に絡んで大臣のぎりぎりの権限の中から、現在のこの大きな問題に対して大臣政治的な責任という段階でどうおとらえになるか、その辺をお聞かせいただきたいのです。
  104. 古井喜實

    古井国務大臣 法律の条文の文言の解釈というものはいろいろに解釈できるし、するものでありまして、そういう法律条文論からこの問題を考えていいのかどうか。また簡単に言えとおっしゃるかもしれませんが、簡単に言えない話だから簡単に言わないのであって、国民の方から言えば、時効だとか職務権限だとか、そんなことはわからぬだろうと思うのですよ。この一連の出来事に対して国民がどう見ておるか、何を疑問にし、何を解明してもらいたいと思っているかということが問題だろう。これは政治論だと思うのですね。  そこで政治論として考えますときに、これに対してどうこたえるかということは、国会の方でも非常にお考えになっているところだろうと思います。われわれ政治立場考えますと、ここに大きな問題があるわけですね。  そこで、われわれが始終苦慮しますのは、検察の方が調べたり国税当局が調べたりしたことはありますけれども、それにはそれなりの立場があり、枠があり、原則があってやっておることでして、その求めているものにこたえられる自由というか枠のない立場でないのです。そこでぴったりかみ合わぬところがあるのですよ。検察の方の関係から申しますと、申すまでもないですけれども、明らかに犯罪にも何にもならぬ、もうわかり切っておる、こういう事実に対しては検察の方は突っ込んで調べてやっておるような余力もなければ、また犯罪以外の道義的な、政治的な問題を検察が出しゃばって全部調べるというようなことをやるべきでもないのですね。そんなことをしましたら検察ファッショです。そこに枠があるのです。枠があるのですから、こっちの方の材料でみんな満足してもらおう、しようということを仮にお考えになれば、これは非常に無理が起こると思うのですよ。われわれも協力したいと思うけれども、こっちに全部こたえられるような回答をしろとおっしゃるのは、非常にぴったりせぬところが正直あるのです。そういう立場なんですね。  ですから、この政治問題に対処するのにどうしたらいいものかということになってくると思うのでございます。そこで、国会の方でよく考えていただいて、これに対処する仕方としてこうあるべきだという立場から、われわれの方に要求されることは要求されるなり、よく御検討の上でしていただくということをまずわれわれは望んでおるのです。  それに対して、われわれがどう対応できるか。世論にこたえなければならぬ、また国会のお考えというものにもこたえなければならぬというようなことを重要に考えながら、どう対処できるかをそこで考えたいものだ。はなからこの問題にこたえなくていい、そんなことを考えているわけじゃありませんが、そういうわけでありますから、そういう段取り、順序で物を詰めていっていただいたらどんなものだろう。まあ抽象的でありますけれども……。
  105. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣はしばしば、法の立場があって、その立場を守っていかなければならぬというお話をされるわけですけれども、以前にロッキード事件の最中に、資料を公表するかしないかということで、この法務委員会でも相当な論争があったわけです。その論争の中で四十七条というのがいろいろな角度から議論されたわけです。過去にそういうことがありまして、しからば過去に法務大臣が強権発動をしたこともあるじゃないかという話も飛び出してきたりしたこともあるわけです。  ですから、いわゆる司法の秘密を守り、法の秩序を守っていく一番大事なところもわかるわけですし、三権分立の立場もわかるわけですけれども、さりとて、国民の知る権利の前にどれだけ問題を明らかにして、国民の正義感におこたえできるかどうかということも重要な役割りであり、その衝に大臣もお立ちになっておるという点をお考えいただいて、その辺からのお答えも飛び出してくるような角度で、もう間もなく終結に向かうわけですから、御検討をいただいておきたいと思います。  時間が来ましたので、これで終わります。
  106. 佐藤文生

    佐藤委員長 横山利秋君。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 ロッキード汚職からダグラス、グラマン汚職をながめてみまして、私はつくづくこういうことを痛感するのですが、その私の感じに対しまして御意見を伺いたいと思います。  これは職務権限が問題になっています。しかし職務権限以上に本人の政治的影響力、たとえば総理大臣である、たとえば党の派閥の領袖である、閣内で枢要な地位を得ている実力者である、党の中できわめて重要な地位にある人である、そういう政治的影響力が機種決定やその他政策決定に大きな力を持っておる。法律上の狭い職務権限よりも、その方が政治を動かしておる。そしてその人に贈賄が行われる。それが汚職の実態ではないかということを考えますが、刑事局長はどうお考えになりますか。
  108. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私どもの分野では刑罰法令に触れないのは汚職と申しませんけれども一般国民の目から見てけしからぬというようなものが、現実問題として刑罰法令に触れない場合があるということも事実でございます。  そういう意味で、検察当局が捜査をいたすわけでございますが、検察捜査に当たって使うことができます武器は法律だけでございます。したがって、お決めになっております法律の枠内ですべて仕事をしておるということでございまして、ときに個人的な感情として、もしこういう法律があれば、これは犯罪になるのだがというようなことを思うことがないわけではございません。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 その点について、法務大臣にお伺いしたい。  法務大臣は従来、職務権限、時効、自分の見解ということをおっしゃっておられる。しかしながら、いま刑事局長が言うように、国民の不満、疑惑は単に職務権限や時効でなくて、実にそういう政治的影響力のある人が、その影響力を行使して職務権限のある人にそれをやらせる、日本の政治の実態の中において、総理大臣がこう言う、あるいは党の実力者がこう言う、こういう場合には実態としてそれに従わざるを得ない、そういうのが日本政治の実態ではないのか。それに目をそらして汚職の粛正は実際はできないのではないか。あなたは閣僚の一人として、また政治家として、どうお考えになりますか。
  110. 古井喜實

    古井国務大臣 政治論としては大いに傾聴すべきお説だと思います。それが法律論としてきょうの現行法令で罪になるとかならぬとかというのはまた一つの問題ですから、政治論としての議論議論として、これはりっぱな御議論のように思いますので、ずっと展開されたら大変有益ではないか、そういうふうに思います。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 有益では済まされないのであります。私が分析をした今日の日本の汚職の実態を、実はそうなんだ、職務権限よりも政治的影響力による汚職がその根源だ、諸悪の根源だ、そうあなたが本当にお考えになるならば、それを除去する方法がまたなければならぬ。たとえば私どもが提案しておるあっせん第三者収賄罪、まさにそれは刑法改正案の草案の中にもあることであり、かつてロッキード閣僚協が決めたことでもあり、それかいまこそ実行をさるべきではないかと思うのでありますが、法務大臣はどうお考えでありますか。
  112. 古井喜實

    古井国務大臣 そこで再発防止論にお入りになった。現行法というよりも、改正論というか次の再発防止論にお入りになっているように私は感じますが、その問題はその問題として、それのみならずいろいろ論議すべき点があると思いますので、これはひっくるめて全体的に、その点のみならず再発防止の問題として大いに検討してみたいものだと思います。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 二百三十八万ドルは四十五年までに大半が松野氏に贈られたという疑いである。疑いですよ。問題の焦点はそういうところにあるらしい。ところが四十八年以降に、ダグラス社から事務所経費で日商岩井に二百三十八万ドル支払われたのである。つまり、四十五年までに日商岩井は自分の金を使って赤字にしておいて、四十八年以降その穴埋めをしてもらった、こういう疑いであると、いままでのあなた方の御意見新聞報道では見受けられるのですが、どうですか。
  114. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 二百三十八万ドルの関係については逐次検察が明らかにしつつあるところでございまして、それが全部はっきりいたしますと海部氏の偽証処理に熟することになるわけでございまして、まだ途中でありますけれども、どうやらうかがえるのは、二百三十八万ドルが入ってき始めた時点から後は入る一方でございまして、実はその前に問題があって、それの穴埋めのような意味相当強かった、こういうことでございます。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 私の言うことと大体同様と考えます。  そこで疑問が生じますのは、二百三十八万ドルという大金が日商岩井なりしかるべきところから松野頼三氏を通じて政治家に流れた疑いがある、それだけの多額の金を先に自分のところから立てかえて、三年も過ぎてから穴埋めをしてもらったという理屈がどうにも私にはわからぬのであります。私は理屈がおかしいと思っているわけです。四十五年までに大半が松野氏及びその他に流れた疑いである、正確に言うと大半が流れた疑いである、そういうふうに考えていいのじゃないですか。
  116. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ただいまのお尋ねの中から固有名詞を全部取り去れば、おおむねそのとおりかと思います。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。では固有名詞にあまり拘泥しません。  四十五年までに大半が流れたということを非常に慎重に私は言っているのですが、四十五年以降も流れている疑いがある、そう考えていいのでしょうね。
  118. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほどのお尋ねにありましたように、大半がそれまでに流れておる、こういうことでございます。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。同様だと思います。  それじゃ逆に、ダグラス社から事務所経費名目で日商岩井に二百三十八万ドル支払われたというのだが、四十八年以前にも同様の金が流れているのではないですか。二百三十八万ドルと限定をしてもいいですし、その穴埋め経費が、事務所経費という名目が定まったのは四十八年。けれども、四十八年以前にもダグラス社から日商岩井に流れておるという想定を私はしておるのでありますが、いかがですか。
  120. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 ちょっと細部について私、手元に資料もありませんし、記憶からちょっと薄れておる点もございますが、いまお尋ねに対するお答えとしては、ノーということになるのじゃないかと思います。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 私がそういうことを言おうとしております焦点は時効の問題であります。多額な金を流すために先に使ってしまって、三年も四年もたってからダグラス社から穴埋めしてもらった、そんなばかな理屈がどこにあるかと言いたいのであります。それが百万か二百万の金ならともかく、二百三十八万ドルをおれが先に立てかえて贈賄に使ったから、三年も四年もたって穴埋めをしてくれ、そんな理屈が一体世の中に通るか。これは並行して行われた。贈賄が先かもしらぬけれども、穴埋めもある程度並行して行われたに違いないと私は判断している。  そうだといたしますと、大半が四十五年までに贈賄が行われたというのですが、四十五年以降も行われておると見るべきである。仮に四十六年も四十七年もとなりますならば、桂法収賄罪七年の時効はまだ成立していない、そう考えますが、いかがですか。
  122. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 大変失礼でございますけれども、独自の推理をされて、それを前提としてのお尋ねでございますので、何ともお答えいたしかねます。
  123. 横山利秋

    ○横山委員 けれども、私はあなたと詰めてきたのですよ。四十五年までに大半が、特定個人の名前は避けるけれどもという話でありますが、その後も続いておるとするならば、四十七年まで続いておるとするならば、七年の時効はまだ成立しないと考えてもいいのではないかという法律論です、独自の推理ではありません。
  124. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 一般論として、法律論として申し上げますれば、不正の請託があって、それの報酬として公務員に対して金が贈られるというようなことになりますれば、お尋ねのように七年前まで時効期間がさかのぼるわけでございますが、私自身、この三百二十八万ドルというものをめぐって、公務員に対して賄賂のようなものが流れたというようなことは一切まだ申し上げておらないわけでございまして、したがって、一般論としての法律論を展開してお答えをするには、前提として生々しい事実を提起されましてお尋ねいただいておりますので、実際の事実と抽象論としての法律論とが混同されますと大変困ることになりますので、先ほど来お答えが非常にむずかしい、お答えいたしかねるというようなことを申し上げておるのでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  125. 横山利秋

    ○横山委員 観点を変えて、先ほどから否先般からあなた方は、海部メモが一部は間違いである、一部は真相である、そして海部氏がみずから書いたと推定するということをおっしゃっておるわけであります。それが国民にはちっともわからぬのであります。なぜ間違いなのか。一部は間違いと言う根拠は一体何なのか。それが先ほど冒頭に、あなたがきのうの私の質問に対して、誤解を訂正するような趣旨で、新聞が書いたように私は言った覚えはない、つまり、岸、福田を取り調べないと言った覚えはないとおっしゃいました。けれども、きのう私は新聞記事を見て、そういうふうにとられても仕方がない伊藤さんの答弁だったなというふうに思いましたよ。  そこで、私が聞きたいのは、ひとつ国民にわかりやすく、どこが間違いであるか、なぜそれが間違いであるか、説明してください。     〔委員長退席、青木委員長代理着席〕
  126. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 これはしばしば申し上げておりますように、現在海部氏の勾留事実となっておる事実に関することでございまして、その点の最終的の詰めをいまやっておるわけでございます。その詰めが終わりますと、処理に熟することになる。仮に公判請求ということになりますれば、公判ではその辺は一切明らかにせざるを得ませんので、明らかになると思いますけれども、現在まだ捜査の結了を見ておりません段階で、そういう細かい点について明確にするということは御容赦いただきたいと思います。
  127. 横山利秋

    ○横山委員 それならば、私はわからないと思いますのは、なぜ海部メモの一部は間違いであるということを何回も何回もおっしゃるのでありましようか。それを言う理由が私にはわからないのであります。暗に国民が想像しておること、きのうの私の質問に対してきょうやや訂正ぎみのこと、つまり一部が間違いであるということは、岸、福田に影響はないということを暗示しておるというふうに国民は受け取ったわけですよ。  それが違うなら違う、なぜ間違いである、どうして間違いである、その理由は何かということを、あなたは明白になさる責任がある。あなた自身が一部は間違いであるということを何回も言っておる。なぜそれを言わなければならぬのか、なぜそういう政治的判断をしたような言い方をしなければならぬのか、私にはわからない。
  128. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 私が一部真実に合致しない部分があるという趣旨のお答えをいたしますのは、そうではないかというお尋ねがありますので、正直にそうですというふうに言ってきたのが経緯でございます。  そもそもの発端は、大出委員の御質問から始まっておりまして、私は一部に真実でないところがあるというふうに思っておるがどうかとおっしゃいますので、私もそう思っておりますということから始まりまして、いろいろお尋ねがありますから、それに対して申し上げられる範囲で、かつ、うそを申し上げないつもりで申し上げておるわけでございます。かつて、これは大出委員も仰せになったのじゃないかと思いますが、一枚のメモに松野、福田というお二人の名前がセットで出ている部分があります。これは真実ではないのじゃないかというような感触を大出委員もお持ちのようでございましたが、その限りにおいて私も同じような感触を持っておる、こういうことでございます。
  129. 横山利秋

    ○横山委員 私もそのそばにおりましたから、大出委員がそういう質問をしたことは知っています。けれども、大出委員がどういう気持ち質問したかという点については、また別の次元だと思わなければなりません。また、むしろあなたが私ども質問について、言えることと言えないこととある、一部は間違いであるということについてしばしば断言をされた。そのことは大出委員が言ったから言ったんだ、それでは済まないのであります。  だから、少なくとも責任ある立場として、一部が間違いであると言うならば、その間違いはどういう意味なのか、どうして間違いなのか、それは暗に岸、福田は関係ないというようにとられたことについて、どういうふうに責任をとるか、その点はこの際明らかにしてもらいたいと思う。
  130. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 先ほどから岸、福田というふうにセットでおっしゃいますけれども、私そういう言葉を用いてお答えしたことは一切ございません。速記録をよくごらんいただければ……(横山委員「そういうふうにわれわれにとられるような」と呼ぶ)そういう新聞が報道しましたようにとられるはずがない答えをしております。よく速記録をごらんいただきたいと思います。  なお、どこが正しくて、どこが客観的事実と間違っておるかということは、いずれ公判で詳細明らかになると思います。
  131. 横山利秋

    ○横山委員 余りくどく言うのもなんでございますけれども法務大臣、私の言っていることに伊藤刑事局長はお答えがないのですが、一部は間違いであるという一部というのは、本当に間違いならば間違いの個所を明らかにすべきである、どこが間違っておるかという点について明らかにすべきであると言っておることについて、岸、福田と言ったことはないとおっしゃりながら、大出委員が岸、福田の名前を提起しての話に対して同意をされたような……(「松野だよ」と呼ぶ者あり)ああ、松野だ。同意をされたような雰囲気がある。  そう考えますと、これはもう一度大臣に聞きますけれども、一部の間違いというのはどういうことなのかということを政府としても明らかにすることくらいは、間違いだったんだから、これがシロとか事実に相違するというなら、この際明らかにしてもいいのじゃないのでしょうか。どうですか、大臣
  132. 古井喜實

    古井国務大臣 具体のことについては、私が申し上げることはそれだけの知識もありませんが、いずれ捜査が終結するとなれば、その辺もはっきり最後的に確定するのですから、明らかになると思うのです。きょうの段階で間違いの部分というのはどこだというふうに最後的なことを言えと言われるのは、少し時期がまだ熟していないのじゃないか、私はその点はそう思います。
  133. 横山利秋

    ○横山委員 これは意見の相違で、政府が固執せられる理由が私には大変わからないのであります。  いまお手元へ配付をいたしました私ども社会党の「航空機等の汚職防止に関する対策要綱」実は、私が党の責任者で、全文私が整理をいたしたものであります。きのう大臣から、ぼつぼつ対策要綱に乗り出したいというお話がございました。きょうはまた伊藤刑事局長から、先ほど稲葉委員質問に答えて、検察の力と決断、充実をしたいというお話がございました。私は、いまもなおかつ真相究明に努力をしているわけでありますが、鉄は熱いうちに打てという言葉があるし、それから今日までの法務省及び最高裁の努力を高く評価するものでありますが、その過程において、どうあらなければならないかという問題の浮かび上がりかまだ不十分である、それはロッキード汚職のときに比べて、今日はまことに政府も与党も熱意がないということを痛感をしておるわけであります。  きょうこの対策要綱すべてについて、膨大なものでございますから御説明をいたす時間はございませんが、不日具体的な問題について私も提案をいたしたいと思いますが、大臣からはきのうお話を伺いましたから、改めて伊藤刑事局長に、少なくともこのグラマン、ダグラス航空機汚職関連をして一体今後どうあらなければならないか、日本の政界粛正のためにも現行法でこのままいっていいのか、あなたの言う力と決断を充実することだけであっていいのか、これからどんなことが検察陣としても法務省としても検討をすべき問題点として考えられるのか、そういう点は恐らく血みどろの捜査の中で浮かび上がってきたのだろうと思うのであります。  その点についてひとつ、大臣の御判断はきのう伺いましたから、具体的に刑事局長としてのロッキードからグラマン、ダグラスに至ります一連の問題の中から、一体どういうことがこれからの検討対象になりそうか、意見を言ってもらいたい。
  134. 伊藤榮樹

    伊藤(榮)政府委員 立法問題その他の問題は後で申し上げるといたしまして、やはり一番当面やらなければならないのは検察がその力を十分蓄えなければならぬということであろうと思います。そのために、たとえば具体的な問題といたしましては、私かつて非常に嘆いたことがあるのでございますが、たとえば東京地検特捜部の検事の在任期間が一時一年半を割るような状況になりかかったことがございますが、その後だんだん是正して、じっくり腰を落ちつけて、力をみがきながら目を八方に配るというような体制にだんだんなりつつあるように思うわけでございます。非常に卑近なことでございますが、そういうことがまずもって頭へ浮かぶわけでございます。  それから、今回の事件についてはまだ反省の時期ではございませんが、ロッキード事件を顧みてみまして、やはり検察として痛感されましたのは、広く世界各国、その中でもわが国企業その他と関係を持ちます各国との不断の連携、それらの捜査当局などとの不断の連携が非常に必要であろう、また予算の面でも、たとえば従来は検察官が捜査のために外国へ出張する費目がないというような状況、これ一事で象徴されておるような状況があったわけでございますが、その後努力いたしまして検察外国旅費というものの立目も見ておりますし、また先刻御承知の国際犯罪対策室というようなものもつくらせていただきました。また検事を関係各国へ平素から派遣をしまして密接な連絡を保たせるというような措置もだんだんやってきておるわけでございます。それと、これは私が申し上げられる範囲には必ずしも属さないわけですが、検察の幹部と申します者が常に国民立場に立った決断を発揮できるような姿勢でいるということ、これも非常に重要なことであろうと思います。  さて、そこで現行法の問題でございますが、先ほども質問の中にございましたし、また社会党の御提案の中にも周旋第三者収賄罪の新設を急いではどうかということも出ておるわけでございますが、実は周旋第三者収賄罪の構成要件を見てみますと、不正の請託ということが要件になっておりまして、世の中、話が大きいことになればなるほど不正か不正でないかわからない事柄に関してお金が動くということが多いわけでございまして、この構成要件では余り働くようにも思わないのでございます。  さりとて一つ考え方として、公選公務員等がその地位を利用して、不正であろうがなかろうが、あっせんをするというようなことに関して金をもらうと収賄罪になるというような一つの構成要件を考えてみますと、これはいわゆる取り締まる側にとっては大変便利な法律になるわけでして、その運用の結果、国民から喝采を受けるようなことが起こり得るかもしれないと思うわけでございます。  ところが、一応試しに自分で書いてながめてみますと、これでやりますと、およそ議員と言われますような方の陳情活動がほとんど取り締まりの対象になってしまうのではないかというような疑念もわいたりいたしまして、結局刑罰法規というのはつくりようによりましてはもろ刃の剣のようなことになってまいりますので、今後、古井大臣もおっしゃっておりますように、適当な時期以降におきまして、再発防止ということが真剣に政府全体で考えられるようになると思うわけでございます。その際には、ただいま拝見いたしております社会党の御案も十分参考にさせていただくことになると思いますが、その過程で、ただいま私がちょっと口走りましたような問題につきましても、両面から慎重に詰めていく必要があろう、かように考えておる状況でございます。
  135. 横山利秋

    ○横山委員 大臣、いまごらんになっておると思うのでありますが、いまの周旋第三者収賄罪、これは御指摘のように、何でもかでもあっせんして金をもらったらいかぬということには私も多少疑問がございまして、私の原案にはやはり不正という文字が入っておるわけであります。確かに伊藤刑事局長の言うように、何が不正であるか否かという点については議論の余地はあるけれども、しかし刑法の中にも「不正」というように他法にもございますし、これは不正を行わしめるというふうに詰めてもらった方が常識的ではないかと私は思う。  これは別といたしまして、私もロッキードからずっと今日まで法務の世界におりまして、法務の世界だけではとてもこの問題は解決しない。だから全体的な構図を描いてみて、ごらんのような各面にわたります要綱を作成をしてみたわけであります。もうすでに三、四の法律案の準備を完了したわけでありますが、今後もさらに努力をしなければなりませんが、これはある意味では政府が決意をしなければ、とても実現するものではありません。政府ロッキードの閣僚協のときにとった態度はみごとであったけれども、竜頭蛇尾で、初め脱兎のごとく終わり処女のごとし、全然実行がされずに終わってしまったわけであります。法律案としてはたしか本法務委員会で一つ何かつくったぐらいのことであります。  したがいまして、この際、古井法務大臣が閣議の中においても党の中においても再発防止に大きな努力をしてもらいたい、私どものこの要綱もぜひ素材にして、十分実のある成果をしてもらいたいと思いますが、御決意のほどを伺いたいと思います。
  136. 古井喜實

    古井国務大臣 毎々基本的なお考えは伺っておりますが、再発防止に非常に御熱意を持っておいでになる点には敬意を表しますし、また社会党の党内をいろいろおまとめになっておるこの努力にも敬意を表しております。御意見は十分参考にもしたいと思っております。  よけいなことを言ってしかられてしまうかもしれませんが、いま政権交代のない日本の政治情勢のもとにおいては、汚職防止というような問題については、野党というものの立場が非常に重要であるわけですね。西ドイツの国会の制度などを見ても、その辺に考慮を払われているような気がするのであります。この辺も、われわれも大いにそういう心持ちを持って考えなければいかぬと思っている点でもありますし、一層ひとつ、よい知恵を出していただいて、いい防止策が生まれますように御尽力をお願いいたします。
  137. 横山利秋

    ○横山委員 終わります。
  138. 青木正久

    ○青木委員長代理 次回は、明後十一日金曜日午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十一分散会