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岡垣最高裁判所長官代理者 最初の二つの問題、一括したような形になりますけれ
ども、前科というか
一つの罪を犯して、そういう事実があって判決があった。その
法律的な効力といいますか、それに基づいていろいろな、たとえば一定の
犯罪を犯して一定の刑に処された者は一定の資格を失うという場合に、そういう効力がどこまであるか、そういう問題と、しかし、ただ事実としてそういうことがあった、そういうことがあったから、彼の性格はどうであろうかということを認定する場合の訴訟法上の効果と申しますか、それは別でございます。
したがいまして、たとえば執行猶予の言い渡し期間が経過いたしまして、刑の言い渡しがその効力がなくなったといたしましても、それはいま申し上げました、たとえばある復権に関するような
意味で刑の言い渡しの効力がなくなるということはございましょうが、事実上あったということはあったわけでありまして、その点では、やはり量刑などに考慮されるということになるわけでございます。
それから、判決に首席
検察官の名前を書きながら、弁護人の名前を書かないのはどうかという点に入りますと、これは形式的な
お答えをすれば、刑事訴訟
規則に、判決の要件にはこれこれを書けと書いてあるから、そうだというだけのことになってしまうわけでありますけれ
ども、それでは、なぜそうなのかということになりますと、これは
民事訴訟の場合と比べてみなければ違いは出ないのではないかと考えております。
と申しますのは、民事
事件の場合にも、やはり
法律上は訴訟代理人の記載ということは要件とされておりません。したがって、よく
民事訴訟に原告だれそれ、右訴訟代理人何のだれ兵衛、こう書きますが、本当は、あれは訴訟法上要求されているのは法定代理人だけでありまして、訴訟代理人は書かなくてもいいわけでありますけれ
ども書く。
なぜかと申しますと、恐らくは民事の場合には、法廷へ出てきて訴訟をする人というのは、原告本人、被告本人というのはほとんどありません。実際に出てきて訴訟行為をやっているのは訴訟代理人である、そういう実態が
一つあると思いますが、まず一番
法律上の問題としては、民事の場合には、判決の言い渡しを受けた後、確定するのは、その判決の送達を受けた後ということで計算されるわけであります。その判決の送達は、どうやってやるかと申しますと、大体、右訴訟代理人弁護士と書いてある弁護士さんの住所に送達するということになっております。
ところが、刑事の場合には、被告人がいなければ判決の宣告はしないのが原則でありまして、目の前で宣告する。その宣告した日から控訴期間というものは経過していくわけでありますから、確定もそういう
意味で実態が違うということから着目して、当事者だけを書くという形になっているのではなかろうかというのが私の考えでございます。