○
田中参考人 ただいま御指名いただきました
東京執行官室労働組合の書記長をやっております
田中でございます。
本日は、
参議院に引き続き、
委員の皆様の御協力により、本
委員会に
参考人として
意見陳述の機会を与えていただき、深く感謝いたしております。
私は、東京を初め全国の
執行官室に働く職員の声を代表し、職員の実態と新法に伴う今後の執行機関のあり方について申し上げたいと思います。
私どもは、
参議院で職員の実態について発言してまいりました。詳しくは同
委員会の議事録をごらんいただければ幸いかと思いますが、また、
委員の皆様にお渡ししました
昭和五十一年五月二十日付の「
東京地裁広報」にも、これは東京の本庁のことでありますが、「
執行官室の横顔」というタイトルで、当時の実態を詳細に紹介しております。全国の
執行官室の
状況について、昨年十月及び本年、
参議院法務委員会以後、職員についてアンケートをとりました。三月のアンケートは集計中で、
委員の皆様には資料として
提出することができませんが、すでに三十通余り集計されております。時間が許せば、この点も紹介していきたいと思っております。
これから申し上げますことは、東京の場合が中心になりますが、全国的にも共通する
内容も多分にありますので、その点を御参酌していただきたいと思います。
昭和四十一年の
執行官法の
施行によって、
執行官は特別職の公務員として、身分、地位について官職の位置づけがより明確になり、職務
内容も公務の性格を一層強めてまいりました。同時に、監督指導も強化され、
裁判所当局との連携も密になってまいりました。しかし、
制度問題については、将来俸給制の
執行官を目指しつつも、全面的に着手することが困難であるということで、職員については附帯決議を採決するにとどまりました。その結果、
現行手数料制を残し、事務員を雇用するということも現状の執務体制上認めることとなり、当時の代理者は臨時職務代行者として残り、以後代理
制度は廃止されたのであります。
今回の
民事執行法により
法律は大きく進歩しましたが、
制度問題については具体的な着手もないまま、また附帯決議も実施されず今日に至っております。十三年を経過して、職員の年齢も高齢化しております。私ども東京の場合、組合がありますので、
執行官と労使関係を結んでおります。したがって、職員の賃金を初め、さまざまな労働条件を改善してまいりました。また、円滑な事務処理、附帯決議の自力的実現などについても努力してまいりました。これらは、
執行官法
施行以後、公務の性格を強めてきたことから、職員もその性格と職務の責任を認識し、取り組まれたものです。
執行官提要、書記官研修用教材など書物の配付、正月四、五、六を利用しての講義、執行現場への同行、各職場への配置がえによる知識と経験の修得、執務処理の円滑化を図る事務協議や職員
会議が進められてきました。しかし、これらの事柄も手数料収入が増収となってきた時期に可能ならしめたもので、東京の一
執行官室だけのことでは限界があると思います。
次に、執行事務、賃貸借取り調べ及び
不動産競売手続、送達事務など、各職務について申し上げたいと思います。
最初に、執行事務関係では、執行現場に臨場する外勤
執行官十三名と臨時職務代行者が一名おります。内勤事務には
執行官二名、職員十一名及び臨時職員五名が職務に携わっております。
執行官が執行するための準備段階としての執行書類の受付、
執行記録の作成、完結
記録の処理等円滑な執行手続のための事務をしております。また、事件の問い合わせや苦情などが電話で殺到し、事件関係人と直接に接しております。これらの職務はすべて公務であり、私どもも公務員として見られているのであります。
次に、新法では現況調査となる賃貸借取り調べについて話したいと思います。
この職務には、
執行官と臨時職務代行者三名が当たっております。事件当事者や利害関係人にも公務員としての立場で接し、そのため職務も円滑に処理されていると言えます。新法によれば、調査活動や報告書作成にかなりの時間を要すると思います。
不動産競売の前段としての現況調査活動がおくれるならば、
競売の迅速性ということにも影響を及ぼすという懸念さえ感じておる次第です。
最後に、送達事務関係について申し上げます。
送達事務関係では、警視庁や警察署、拘置所等の書類送達に携わっている職員もやはり公務員として見られ、これによって円滑な送達ができると言って過言ではありません。新法では、送達事務が依然として
執行官の職務として残ることになっております。
参議院では、
参考人として
執行官から、送達事務を
執行官の職務から外してほしい旨の発言がありました。しかし、実際には現在でも、
裁判所職員による郵便送達が不可能な場合また困難な書類は、
執行官送達として回ってきております。現場検証や証拠保全、債権
差押えなど緊急送達もあります。件数の多少にかかわらず、重要な職務として存在するのであります。
執行官から通常送達書類を外していくという立場から、都内二十三区のうち、現在二十区が廃止され、年内には残り三区も廃止するという方向が出されております。しかしながら当局は、警視庁あるいは警察署等に対する刑事関係の書類送達だけは残していこうという方針を持っているようです。結局、送達事務は残るわけで、これに関与する職員の処遇、体制など、どのように考えられているのか不安を持つものであります。
以上の職務
内容は、いずれも公務以外の何物でもありません。公務員でない私
たちが、これらの職務に携わってさまざまなことに対処するとき、その精神的苦痛ははかり知れないものがあります。今回の
民事執行法は、職務
範囲を広げ、
執行官の
権限の強化等、
執行官の地位と職務を裏づけるように改善されてきていると理解しております。当然、
執行官に雇用されている職員も職務上の責任が強まります。しかし、職員の地位、身分は依然として不安定なままに置かれているということは、職務の性格と責任から、いままで以上の精神的苦痛と疑問を抱かないわけにいきません。
執行官室の経済的基盤の
大半は、
不動産競売による手数料です。社会情勢によって左右される不安定な手数料収入によって一喜一憂する
状況であります。このような状態で、法を生かした職務が執行機関として十分機能なし得るか疑問を持つものであります。書記官から
執行官になった者は恩給と手数料収入があり、収入面でのメリットもあると当局は指摘しております。しかし、職員については何もありません。手数料収入と
執行官の差配によって、賃金を初めとする労働条件が左右されるのであります。
これらの問題を
解決するには、
制度改正が必要であると思います。このことによって、
執行官と職員の身分の安定、地位の向上が図られることになり、法を生かした執行機関になり得ると考える次第です。
また、
制度改正が実現できない間にでも、次の点について御努力願いたいと思うのであります。一、職員の研修、教育を
制度化すること、二、受付事務を初め各事務を
裁判所に取り込んでいき、職員を公務員にすること、三、送達事務、賃貸借取り調べに関与する職員を送達官あるいは調査官として公務員にすること、四、
執行官登用へは、無資格者にも臨時職務代行者等の資格を与え、機会均等にして門戸を広げること、五、以上の点について、長期勤続者については四等級に準ずるように賃金や処遇を改善するよう、全国的にも指導していただくこと、以上五点にわたり要望いたしたいと思います。
私ども考えてみまするに、
昭和四十一年当時から当局によってこのようなことが具体的に進められておれは、将来への明るい希望を持ったでありましょう。高齢化のまま今日に至り、社会情勢も反映して、一層不安を感じておる次第であります。
最高裁当局は、
執行官一人当たりに事務員一名という
状況が全国的平均ということで、大都市の特殊性を無視しようとしているようです。このことは、欠員不補充の
理由にされることになっても、職員の処遇の改善には何ら利益をもたらすものではありません。今回の
民事執行法案施行を契機に、早急に公務員化への具体的方策を講ずることを重ねて要望をし、私の発言を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。