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岡本参考人 私は、北海道富良野市で七ヘクタールの
水田経営に従事しながら、北海道十二万戸
農家の中で八万戸が加盟している
北海道農民連盟の
委員長をしております岡本でございます。
このたび、本
委員会で
米価問題集中
審議を行うに当たりまして、直接
生産農民の
意見の公述の機会を与えていただきましたことを厚くお礼申し上げます。
私は、今回
意見の公述を求められた全国農民総連盟の中央
委員でもありますので、全国農民総連盟を代表して、以下三点にわたりまして
意見を申し上げ、
委員諸賢の御高配を煩わしたいと思います。
第一点は、五十四年度
生産者米価決定についていま大きな焦点となっております
品質格差導入問題であります。
品質格差導入については、全国農民総連盟は、北海道から九州鹿児島県に至るまで加盟各県組織の総意で反対を決議し、
政府を初め各政党に対し
導入反対の要請をこれまで繰り返し行ってまいりました。
私は、北海道の
水田専業
農家の一人として、このような問題が論議の焦点であるかのような事態に対し強い憤りを抱くものであります。
米価問題の本質、そして
日本農業政策の現在ぶつかっている矛盾点を、枝葉末節に近い
品質格差導入問題にすりかえて、農民や
消費者の目をそらそうとすることは断じて許せないことであると思うのであります。
委員各位には御存じのとおり、農基法農政が開始された昭和三十六年ごろから数年間にわたりまして、
わが国の米の
需給は百万トンを超える供給不足となっておりました。最高時では百三十万トンの外米を輸入し、農林大臣は米の一割増産を提唱いたしました。当時北海道農民の
生産した米は、検査後すぐ貨車に積んで本州府県、大消費地に配送されておりました。百万トンを超える道産米が国民の
需要にこたえていたのであります。これは十数年前のことに限りません。石油ショック、世界
穀物事情が逼迫した昭和四十八年、九年にも、検査後の米をすぐ貨車輸送をしなければ配給操作に支障を生ずる事態であったことは、これはひとしく知られているところでございます。
全国的に主要な稲作
地域において国費による大型灌漑排水事業と造田が続けられました。四十五年、米の
生産調整後は、将来の低コスト米
生産のため、
水田の
基盤整備、大型化が奨励され、国費補助もありますが、多額な農民負担のもとに第二次構造
改善事業が進められたのであります。
水田の大型化、専業化、モデル稲作集団の推進が行われ、現在も実施中であります。この間に投じた多額の資金はほとんど借入金でありまして、
農業経営上厳しい負担となっております。減反
政策の強化によって各種事業等で購入をいたしました機械等の利用度は低下を余儀なくされておりまして、
生産コストは逆に高くなっているのが現状であります。
農林大臣や
食糧庁長官を初め農林水産省当局は、不足時代は量の確保が優先され、過剰傾向下においては
需要のある
良質米への誘導が必要だと言っております。そのために
品質格差を
導入しなければならないと力説をしておりますが、北海道、青森、西南暖地米に対する名指しの差別でありまして、私たち
生産者としては受け入れることのできないものであります。
御承知のように、米作農民はそれぞれの
地域で産米改良に努力をしており、特に北海道におきましては、
生産者はもとより、道あるいは
農協を挙げて
品種改良、産米改良に励んでおりまして、
品質格差の
導入はこの努力に水をかけることになります。まことに迷惑でありまして、遺憾にたえません。さきに申し上げましたように、減反で
生産コスト上昇を余儀なくされており、加えて
価格で差をつけるダブルパンチであって、農民は今後の営農に対して大きな不安と不満を持っておるわけであります。
北海道米は
品質が悪いとされておりますが、戦前から上川米を初め北空知、石狩、道南で
生産される米などは、本州の消費地で知られている優良米の
産地でもあります。北海道
農業の将来にとって、空知、上川、石狩、道南は、米の専業地帯として
わが国でも有数の米
生産地となる
地域であります。
現在作付されているのは全部奨励
品種でありまして、イシカリ、ゆうなみ、ほうりゅう、ユーカラ、マツマエ、巴まさり等六
品種で全
生産量の九〇%以上となっております。国が育種を行い奨励する
品種をつくって、なぜ
等級間格差以外に
品質格差、
地域格差を
導入しようとするのか、全く理解に苦しむことであります。
聞くところによりますと、五十三年
生産者米価決定の折に五十四
年産米から
品質格差制度の
導入について
政府と自民党で申し合わせがされており、その後
検討がされてきたとのことであります。
品質格差導入によって差をつけられるのは北海道、青森と西南暖地の早場米であります。減額Iは青森と西南暖地でありまして、対象数量は昨年の実績で三十七万トン。減額IIは北海道でありまして、
生産数量は七十三万トンになるわけであります。減額Iは六十キロ当たり二百円と言われており、そしてまた、
生産者の手取りが少なくなる金額は十二億円を超えます。減額IIの北海道は六十キロ当たり六百円安く買い入れされるわけでありまして、この総額は七十三億円、合わせて八十五億円
程度になると思います。
最近、大臣を初め農林水産省当局は、現状では
食管制度を守り切れない、これを避けるために考えたのが
品質格差の制度である、北海道農民にも協力をしてもらいたいと言っているのであります。北海道は
水田面積の三五%に及ぶ減反の傾斜配分をされており、さらに
品質格差を制度として
導入することは断じて容認することはできません。
いま申し上げましたように、
食管制度を守るためにこの
品質格差の
導入がどの
程度役に立つのか、われわれには理解のされるような説明は一つもされておりません。
政策というものはそういうものではないと思うのであります。
食管制度を守るためには、
生産者全体と
政府、国民が一体となって行わなければならないものだと思います。減反目標の配分に際しても
食管を守るためにと強調し、
品質格差についても
食管制度を守るために協力をしてもらいたいと言っておるのでありますが、昭和四十五年から減反
政策が強行されておりますが、この十年間
政府が示した目標面積はほとんど達成をしておるわけでございまして、現在の米過剰の状態は農民の
責任でないと断言できるものであります。
以上申し上げました理由を十分御理解いただきまして、五十四年度産米から
品質格差を
導入しようとしているこの
政府の
政策に対して、
委員各位の皆様方のお力添えをいただきながら、この
導入を撤回させるように強力に働きかけていただきたいと思うのであります。
第二点は
米価であります。
生産者米価の算定は
生産費所得補償方式で行われているのでありますが、私たち
生産者として理解に苦しむのは、毎年算定に当たっていろいろと理由をつけてその
内容を変えていることであります。五十三年度
生産者米価算定に際しては
必要量生産費方式と称して
生産者米価を安く抑える算定を行っているのであります。物価、労賃は年々上昇をしており、さらに減反によるコスト上昇もありまして、
生産費調査による
基礎を正確に生かし、さらに
経営努力が反映される
生産者米価でなければならないと思うのであります。
北海道農民連盟で農林水産省の統計
調査資料に基づきまして試算したことしの
米価は一俵一万九千六百三十二円であります。また上川地方の青年が
生産費調査の集計をもって算出した
価格は六十キログラム当たり二万二千九百五十一円となっております。
私たち農民組織は、全国農民の
統一要求の
立場から、全中
要求価格である六十キロ一万九千三百八十二円以上として実現に努力をしてまいりました。
生産者米価は再
生産を補償し、そして農民の労賃を確保するものであります。したがって、
生産の
実態を無視した
必要量生産費方式などは
生産者としては
納得のできないものでありまして、本年度の
生産者米価算定に当たっては絶対に使わないよう強く要望をする次第であります。
さらに、本年度は各種公共料金が引き上げられておりまして、さらに石油の
価格が大福に上昇される見通しが強くなってまいりました。このことは
経営経費に大きく影響することは必至でありますので、
要求価格六十キロ一万九千三百八十二円以上はぜひ実現をしなければならない最低の
要求価格だと思っておりますので、この点深く御理解の上、よろしく御協力をいただきたいと思います。
また、第三点としては、
わが国の食糧
政策について簡単に申し上げてみたいと思います。
現在、米を初め乳製品、ミカン等が過剰であるとされておりますが、長期的には世界食糧
生産は逼迫すると言われております。四十八年、四十九年の
穀物価格の暴騰がありましたが、本年も
穀物価格が騰勢の一途をたどっておるわけでございまして、このような中で
わが国の食糧
政策は、今後
自給度の向上を
中心にして安定的な
農業生産が続けられることを
基本にしたものでなければならないと思うわけでございます。現在のように、毎年のように変わるネコの目農政ではわれわれ農民は安んじて
経営を続けいてくことはできないわけでございまして、
国民食糧確保は
わが国にとって重要な
政策の一環であると思うわけでございまして、この点につきましても、
委員各位の絶大なる御協力をいただきながら、今後とも
わが国の食糧
自給度の向上のために努力ができる
対策を強力に進めていただくよう強く申し上げまして、私の
意見を終わらしていただきます。(拍手)