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鈴木参考人 全漁協労議長の
鈴木義一でございます。
水産業、漁業あるいは漁業協同組合問題につきましては、日ごろ
先生方に何かと御
指導いただいておるということにつきまして、冒頭感謝の意を申し上げておきたいと思います。
私のきょう申し上げます
立場というものは、今度この
委員会にかけられている
法案というのは私
ども頭の悪い者から見るとわけがわからぬというふうに言わざるを得ない。いいものは早く通してくれ、いろいろ問題があるやつは後回しにしてくれ、こういう
立場であります。したがいまして、いま全
農協労連の
後藤委員長も言っておりますように、一番問題になっておりますのは、何といっても、現在
年金の
支給開始年齢五十五歳を六十歳にするという唐突な提案でありまして、この問題、それから
減額退職年金、こういうものについては大きなコンセンサスを得た後に実行すべきであるという
立場で、この部分については反対である。したがって、分離審議できないものかということを私としては申し上げたいと思います。その背景について、私は漁業協同組合に働いておりますので、そこら辺について問題を
先生方に御披露したいと思います。
現在、漁業は、二百海里問題、魚離れ、いま到来しております石油危機問題で相当困っております。その中で、全国には二千三百の漁業協同組合関係
団体があります。そこに三万一千人の
職員が働いておりますが、この人方の特徴というものは、先ほ
ども幾つか出てきましたが、
昭和五十二年度の
年金が出されております事業年報、並びに去年の三月に
全国農協中央会から出されております就業
状況実態調査ですか、こういうものを総合してみますと、次のようなことが言えるのではないだろうかというふうに思っております。
一つは、漁協
職員は総合
農協職員に比べて、規模零細な組合で働く者が多く、かつ中高
年齢者のウエートが相対的に大きい。また、女子
職員の比率も三〇%以上を数える。女子
職員の比率の地域格差も明瞭である。
二番目に、漁協系統
団体職員の労働条件を考える場合に、
農協に比べて採用方法で中途採用が多い事実に目を向ける必要がある。労使関係の近代化が縁故関係で阻害されている危険がある。
三番目に、学歴別
職員数を系統
団体別にとらえた場合、
単協段階で高校卒のウエートがすこぶる大きい。
四番目に、
職員の賃金水準には、初任給月額、標準給与月額とも明瞭に性別格差及び地域格差が見られる。
段階別格差もすこぶる大きい。系統
組織の望ましい系統性を働く者の
立場から確立するためには、この種の格差を
改善する必要があるのではないか。
五番目に、労務管理のあり方でありますが、おくれた側面が発見される。単位漁協で規程を制定しない
団体が、単位漁協総数で給与規程の場合三四・二%、就業規則が二一・三%、
退職給与規程が一一・四%、
定年制が四九・四%に達している。こういう労務管理の初歩的なおくれを
改善する努力が要求される。
六番目に、いまの問題と関連するわけですが、漁協
職員に休日が少なく、また労働時間が長い事実に目を向けるべきである。給与問題の
改善とかかわらせて労基法違反の危険のある労働時間、それに見合う手当、そして有給休暇
制度の
改善について、当面の対策を講じる必要がある。これにつきましては、
昭和五十年の十月に、後にも先にもこれが初めてなんですけれ
ども、水産庁が水産業協同組合
職員労働条件調査報告書というものを出しております。ここの中で労基法違反の事実が明らかにされておる。そしてその記述の中には、この漁協という職場は非常にミゼラブルな職場環境である、こういうことが報告されております。
そういう中で唯一の頼りは何であるかと申しますと、それは自分たちの老後保障、
農林年金への依存、期待であるわけであります。それだけに本
改正案については、各職場、
職域に働いている皆さんが大きな
関心を寄せておられる。
しかも、次に目を向けてみたいのは、この
農林年金が厚生
年金からなぜ分離、独立して今日ここに来たか、二十年に及んだか、この事実であります。私が知る限りにおきましては、少なくとも国公共済、市町村共済、私立学校共済などの例にならい、より充実した
年金制度を法制化することによって、
農林漁業団体職員の福利厚生を図るとともに、
団体事業の円滑な
運営に役立てようとしてつくられた独自の
年金制度である、こういうふうに私は聞いておりますし、そういうふうに
理解しております。
農林漁業団体の重要性にかんがみ、厚生
年金より分離、独立したというところを
先生方にもよく考えていただきたい。そして、そのときのねらい、目的というのは、国公共済に早く追いつき、その中で
年金というものを頭に置きながら一生懸命働こう、こういうことだったろうと思うのです。しかし、国公共済の水準に至ったのは、
昭和三十四年一月
段階ですでに自分たちが目指した水準というのは一年か二年ぐらいおくれておったと思います。そして大体形が整ったのが大体六年から十年ぐらいかかったのではないでしょうか。
先生方のおかげですけれ
ども、そこまでかかったのではないだろうか。
改善には相当手間取って、そして改悪するというときはすぐやるというのはちょっと問題じゃないか。ここら辺を
先生方にも篤とお考えいただきたい。
特に、ここら辺で問題になってくるのは、やはり
農林漁業団体というものは大きな国家の基本政策に基づいて役割り分担を担っていると思うのです。そういう意味合いでは、何回もこの
委員会でもあるいは参議院の
委員会でも決議されておりますが、附帯決議の中で、給与などの
実態把握並びに待遇
改善、こういう問題について政府あるいは各
団体とも努力をしてきたのかどうか。私はそれがなかったのではないかというふうに思います。ですから、いまも実際
退職年金をいただくというときは他の共済とは大きな違い——一番低いのではないでしょうか。そういうふうな
実態にあるということです。
そういうことで考えてみますと、やはり私
どもとしましては、農林漁業という基本政策との絡みでこの問題を考えていくべきではないかということと、それから労働条件等の
基盤をやはり見て、それが国家
公務員の水準に近づく、近づけたというふうな見通しを立てて、いま言った
年齢の
引き上げだとか、それから
減額退職年金というのを考えるべきではないかというふうに考えるわけであります。漁協の
実態から見ましても、確かに高齢層が多くて中途採用というのが多いのですが、これは人事のあるいは労務
雇用の一つの大きなローテーションというふうな形になっておりまして、それが労務管理の一つの目安になっているということを考えてみますと、やはりいまかけられている案件については、いいところは早く、まずい、コンセンサスが得られてないというところについては慎重に審議をするという必要がありはしないかというふうに思うわけです。
それから、
財源問題について、これは私
ども率直に言って厳しいというのは、
吉田理事長の言をまつまでもなくわかっております。しかし、私
ども、国庫
負担について見ますと、
先生方の御努力によって当初一五%が現在一八%、
財源調整一・八二を加えますと一九・八二に前進したということについては、それなりの評価をするわけですけれ
ども、私
どもは
農林年金中央共闘
会議に結集している統一要求の
立場では三〇%というところを求めているものから見ると、もう少し努力してほしいと考えています。
しかし、さらにここで問題になってくるのは、厚生
年金から
農林年金に移る際に
財源不足があって、それをそのまま抱え込んできている。それが初期債務として千分の十四・六五ある。ここら辺は、国もしくは
団体が片がわりせい。本
委員会を通じて役所なりあるいは
団体の方に積極的にアドバイスしていただけば非常にありがたいんではないだろうか、こういうふうに思っているわけです。
いずれにせよ、私
どもがいま考えているのは、むずかしい問題は慎重に
対応してほしいということでありますし、それからもう一つ、先ほど
後藤委員長も言いましたが、
掛金の
負担割合について現在
法律でもって折半ということになっております。しかし、事実は春闘を積み重ねる中で七、三、すなわち労働者側は三、使用者側は七という
負担の区分変更がなされております。しかし、これについては
法律を盾にとってだめだというふうな
団体経営者もありますし、さらにせっかく七、三というところに気持ちを持っておっても、会計処理上の問題等があって、そこら辺が
法律で約束されてくるとありがたいんだがなというふうなことも出ておりますので、今後の検討課題として七、三の
負担割合変更、それをぜひとも考えていただけばありがたいと思います。
最後に、先ほど
吉田理事長はやむを得ないということで、
団体側はOKしたということを言われておりましたけれ
ども、私が所属する全漁連労働組合は、七九春闘の協定において、
年金の
改善についてこういうふうな協定をしております。「とくに、今国会へ上程されている
改正法案については、会は慎重に
対応する。」会というのは全漁連ですが、そういうふうに言っているわけです。彼らも論議の中でわかってきたということであります。そういうことを言いますと、何だおかしいことを約束したなということになってくるかと思いますが、私は言いたいことを言わしてもらうと、
団体というのは、政府から補助金を幾らかもらったりしているということになってくると、そっちの方にも顔を向ける、いわゆる内と外の顔を区分けしているんではなかろうかというふうに思うわけであります。そういうふうなことを考えてみますと、この協定書は本音で言っていると思いますので、本
委員会において慎重に御審議をして、いいものは早く通していただきたいし、ちょっと問題のあるものはコンセンサスづくりを十分して慎重審議をしていただきたいということを申し上げまして、私の御
意見発表を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。(
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