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1979-02-21 第87回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月二十一日(水曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 佐藤  隆君    理事 今井  勇君 理事 江藤 隆美君    理事 羽田  孜君 理事 堀之内久男君    理事 山崎平八郎君 理事 島田 琢郎君    理事 馬場  昇君 理事 古川 雅司君    理事 稲富 稜人君       久野 忠治君    熊谷 義雄君       國場 幸昌君    玉沢徳一郎君       中村喜四郎君    平泉  渉君       森田 欽二君    小川 国彦君       角屋堅次郎君    柴田 健治君       新盛 辰雄君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    芳賀  貢君       日野 市朗君    松沢 俊昭君       武田 一夫君    野村 光雄君       吉浦 忠治君    神田  厚君       津川 武一君  出席国務大臣         農林水産大臣  渡辺美智雄君  出席政府委員         農林水産政務次         官       片岡 清一君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省経済         局長      今村 宣夫君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         農林水産技術会         議事務局長   堀川 春彦君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君  委員外出席者         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   津川 武一君     不破 哲三君 同日  理事江藤隆美君同日理事辞任につき、その補欠  として堀之内久男君が理事に当選した。     ————————————— 二月二十日  林業等振興資金融通暫定措置法案内閣提出第  三二号) 同月二十一日  肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第三九号)(予) 同日  昭和五十三年産予約限度超過米に関する請願  (下平正一君紹介)(第一二〇四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 佐藤隆

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲富稜人君
  3. 稲富稜人

    稲富委員 私は、農林水産大臣にまず冒頭にお尋ねいたしたいと思いますことは、農業の持つ使命というものは、単に国民食糧を供給するというそればかりでなく、農業並びに農民の持つ健全性がいかに国家形成の上において重大なる役目を有するものであるかということでございまして、これに対して大臣はいかようにお考えになっておりますか、承りたいと思います。
  4. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 まことにそのとおりでございます。
  5. 稲富稜人

    稲富委員 幸いに農林大臣もそれをお認めになったのでありますが、私がこのことを特に念を押して申し上げたいと思いまするゆえんは、農業健全性を保持することは、まず安心して農業経営ができる農業を確立することであり、農業経営者希望を持てる農村を築くことが必要であるのであります。  この事例といたしまして私はここに想起いたしますことは、戦前におけるわが国農村には小作制度というものがありました。その中において、小作人は、多数のその農民は、自分の耕作する土地ぐらいは自分のものにしたいというのがすなわち農民の、小作人悲願でございました。ところが、終戦農地解放が行われまして、農民は多年の自分たち悲願が達成せられたということによって農業に対する希望を非常に持つことができたのであります。よってこの農地解放というものがどういう結果をもたらしたかと申しますと、御承知のごとく、終戦わが国労働運動というものが急激に進みまして、階級的労働運動というものが非常に大きく組織されたことは御承知のとおりであります。あるいはゼネスト等におきまして国民にそういう脅威を与えたこともある。しかし、その場合に農民はこれに加担しなかった。こういうことは、農民農業に対する希望を持っておった、その健全性があったということから、農地解放というものは高くこれを評価しなければいけない、その結果が今日の日本を形成しているんだ、かようにわれわれは考えるわけであります。  でありまするがゆえに、私たちは、今後日本農政に携わる上におきましては、常に農民希望を持たせるという、このことをわれわれは片時でも忘れてはできないと思うのであります。単に食糧供給基地ばかりでなくして、農民健全性を保たせるということ、これが国家形成の上において非常に必要なことである。この点は、今回のこの大臣所信表明の中にも最後の締めくくりといたしまして、将来農民に対しては十分夢希望を持つような農業を形成するということを、農林大臣もこれは明らかに述べられておるのでございます。  しかしながら、ここで私たちが申し上げなくちゃいけないことは、そういうようなことは、これは言うことは非常にやすいけれども、これを実際に行うということは非常に困難であるのであります。現にわが国農業の実態を見まするときに、農民の多くは、日本農業は一体どうなるかという、農業経営当たりながら政府農政に対する不信感自分は不安を持ちながらひいては政府に対する不信感さえも持っておる者があるということをわれわれは忘れてはできないのであります。農政をつかさどる者は謙虚な気持ちでこれを受けて、そしてこれに対する対策を講ずることが最も必要であるということはもちろんでございます。  なぜしからば農民がそういうような農政に対する不信感さえも持つようになったかということは、いままでの日本農政というものが、長期見通しなくしてその場限りの思いつき農政を継続してきた、こういう結果である、こう申し上げましても言い過ぎではない、私はかように考えます。よって、私は、この際、大臣に対して、これに対するどういう御認識を持っていらっしゃるか、あるいは、それが事実であるとするならば、どういう反省をなさっておるか、その中においてどういう対処をしようとなさるのであるか、この点の、心組みをまず承りたいと思うのでございます。
  6. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 農民が安定をしておるということは日本社会の安定上からも非常に重要であるというように私は思うのであります。そこで、問題は、日本は零細な農家が多いわけですから、大量の産物をそこで生産をするということは非常にむずかしい。他方工業国家として多くの人が工業へ流れて高い水準生活が得られるということになれば、農家の人も農村から離れるということにならざるを得ない。それをなるべく離れないようにといっても、これも実際に土地を倍加するということは言うべくして簡単にできるものではない。ということになると、どうしてもそこで工夫が必要なわけであります。  日本には一億一千万からのしかも所得の高い市場があるわけでございますから、日本のこの領土から一億一千万の食糧を生み出すということは、ある意味では非常に夢と希望があるわけであります。しかしながら、農民一人当たりの面積が非常に小さいというところにギャップがあるのでございまして、そこをどういうふうに調整していくかということであります。農家としての高い水準を得るためには、価格をうんと上げてもらうか、それとも生産量をふやすか。生産量をふやすといっても、これもなかなか言うべくしてそんなにできるものじゃない。価格つり上げといっても、これも消費者の問題がありますから言うべくしてそんなにたくさんのつり上げということはかなりの抵抗がある。ということになると、一方において、農地を有効に利用する高度の生産農家というものがつくられなければならない。他方において、その土地はやはり有効に利用できない人が提供するということも考えられるわけであります。その場合に、土地を売って出ていくということは文字どおり無産階級になる危険性を包蔵しておるわけでありますから、そういうことは余り私勧めないのです。地主という言葉を使ってはいかがなものかと思いますが、土地提供者として、利用権提供者として兼業農家地主として残る、しかも、経営権所有権は持っておるが、その利用農作業からは解放される、しかも自分土地からは果実を得ることができる、他の収入も得られるというような、両方の並存した農村社会というものをこしらえるようなことにすれば、農村にとどまりながら土地も余り手放さないで中産階級として残れて、日本社会の安定のためにも役立つのじゃないのかなというような考えを持っておるわけであります。
  7. 稲富稜人

    稲富委員 もちろん、日本農業の非常なむずかしさということは私も否定するものではございません。ただ、日本農業がむずかしいということをいま大臣はお述べになりましたが、いままでも政府は、農業に対しては農民希望を持つような農業をやるんだと言うてきたのです。しかるに、これが実行されないがために農民政府に対する不信感さえ持っているという事実、これに対してどうお認めになっているか、こういうことを私はお聞きしているのです。また、そういう点をお認めになっているとするならば、どういう立場からこれに対して反省をしながらやっていくかということを、ひとつ大臣の率直な御意見を承りたい、かように私は考えてお尋ねしたわけでございます。
  8. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 農家戸数が減った、あるいは就労人口が減ったというようなことだけから、農政が全部間違っておったとは言えないと私は思うのです。ともかく、農業基本法当時の精神としては、生産性の高い農業というようなことで、むしろ農業就労人口がある程度減るということは国家近代化のシンボルみたく世界的にも言われておるわけであります。これも程度問題であって、明治時代は四〇%も五〇%もの就労人口があった。農業にそれだけ働けば、それじゃ高い農業生活農家生活が営めたかとなるとそうじゃない。いまは一〇%程度の就労人口になったけれども、農家所得は、農外所得を含めると、勤労者世帯より低かったものが勤労者世帯よりも上回るという状態に現在なったことは御承知のとおりであります。したがって、純農家として農業収入だけでやると、その場合も勤労者世帯よりも高い水準所得を得させたいと言っても、それは全部の農家にそういうわけにはいかない、これは土地の問題があるわけですから。しかしながら、土地が小さくとも、それを近代化することによって、そこから、農作業から解放されることによって別な副収入を得て、合わせてみたらば勤労者世帯よりも高い生活水準になっておるということであれば、私は決してそのことが農政上間違いであったとは思われないと思います。したがって、部分的にはやり足りない点やいろいろなことがございますが、全体として、いまから二十年前よりも農家所得水準というものがずっと上がって、勤労者に追いつけということでやってきたわけですから、それが追いついて、勤労者世帯よりもちょっとではあるが、農外収入を含めるとバランスがとれるようになったということは、大きな間違いだったというようには私は思っておらないわけでございます。
  9. 稲富稜人

    稲富委員 どうも私、最も遺憾に思いますことは、従来の日本のやりきたりました農政というものに対して、間違ってなかったんだとはっきり大臣はおっしゃる。いままでやってきた、日本のとりきたった農政の中には相当に足らざるものがあったということを率直に認めなくてはいけないと私は思う。それを認めた上において、われわれは将来の日本農政をどうするかということを考えることが正直なやり方だと私は思うのです。決していままでのは誤ってないんだということは一概に言い切れないと私は思う。  その例として、いま農業基本法の問題もおっしゃったので、私は大臣に聞くのでございますが、農業基本法が三十六年に制定された。その当時、政府は、この農業基本法こそは日本農業の憲法である、これによって日本農業というものを健全なものに立て直すんだというようなことを言った。農民も非常にこれに期待を持った。しかるに、この農業基本法が実際においては今日空文化しているという、この事実を大臣はお認めになるかどうかということをお尋ねしたいと思うのでございます。
  10. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、個別案件について間違いがなかったとは申しません。それはあっちこっち試行錯誤はたくさんあったろうと思います。しかし、全体とすればそんなに大きな間違いではないということを申し上げたわけでございます。  農業基本法でたとえば選択的拡大というようなことを言ってきましたが、全部の農家選択的拡大ができたかというとそれはできません。できませんけれども、酪農家にいたしましても、養豚家にいたしましても、規模拡大で一戸当たりの頭数がふえた。農家戸数は減ったけれども生産量はふえておるというようなのは、一つの現実の姿でございますし、ミカン農家にいたしましてもそれに近いようなことが言えるわけであります。  したがって、農業基本法がみんな間違いだったというように私は思いません。農業基本法が達成されたところもあるが、達成できないでおるところもあるというように考えておるわけであります。これは分けて考える必要がある。もしうまくいかなかったとすれば、どこのところがまずかったのかというようなことは率直に反省をして、たとえば大規模農家をこしらえるのだといっても土地流動化がうまくいかなかったじゃないか、全く私はそのとおりだと思うのです。こういうようなことは、なぜ土地流動化がうまくいかなかったのかという反省の上に立って、それはもっとやるべきことをなさらなければならないということを反省をしておるわけでございます。
  11. 稲富稜人

    稲富委員 大臣は、農業基本法というものは間違っていなかったのだとおっしゃいます。私たち農業基本法そのものが悪いとは言いません。しかしながら、農業基本法が示していることが実際に行われていないということだけは否定することはできないと思うのです。  御承知のごとく、農業基本法というものは、農民に義務づけたものが農業基本法ではなく、農業基本法というのはむしろ日本農政をつかさどる政府に義務づけたものが農業基本法であった、かように言っても差し支えないと私は考えます。  農業基本法の基本的な目的というものは、御承知のとおり、農業に従事する者と他の産業に従事する者との所得の均衡を図るということが第一。第二は、選択的拡大という名において将来伸びる農業として政府が指示したものは、畜産であり果樹園芸であった。第三には、自立経営農家というものを育成するということを政府は言った。  それじゃ、この三本の柱が果たして実行されているかどうかということを申し上げますると、恐らく大臣は、それは実行されているということは言われないだろうと私は思うのです。これはほとんど実行されていないのです。選択的拡大という名において、あるいは果樹園芸、いま例に挙げられましたミカン等は大いにやった。ところが、それを無計画に伸ばしたがために、逆に今度は、ミカン生産農家というものは生産過剰になって困るというような結果をもたらしたという事実。こういう点から申し上げますと、農業基本法というものが、法の精神そのものが悪かったとは言わないけれども、これがその法で示しますように実行されていないということだけは、私たちは率直に認めなくちゃいけないだろうと思うのです。  それで、私が、農業基本法が空文化している事実の上に立って、何がために農業基本法が空文化したかということを御認識なさるかということをお尋ねしているのはそこなんです。農林大臣農業基本法は不足じゃなかったとおっしゃるけれども、私はいま申しましたように、農業基本法で示したその三本の柱というものが実行されていないがために、農民はせっかく政府が鳴り物入りでやった農業基本法が実行されなかったことに対する非常な期待感を外された。ここに、農民農政に対して不信感を持つようになったことの一つの原因がある、かように私は考える。その点を私は申し上げているのであって、農業基本法において、その空文化しているという事実をお認めになるかどうかということをさらに念を押してお聞きしたいと思うのです。
  12. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は、農業基本法政府に義務づけたものだといっても、それはガイドラインを政府がつくっていく、それに対する助成をしていくというような義務づけはあったと思います。しかし、日本政府が直接生産を計画してそれを命令してやらせるという社会主義国ではないわけですから、自由主義国家でございますから、政府誘導政策をやっているにすぎないわけであります。その中で、選択的拡大という問題については私は満足ではなかったと思う。満足ではなかったと思いますが、しかし、特に畜産酪農等においては、北海道に示すがごとく、かなり大型化をしてきておる。養豚の場合もそうである、鶏の場合もそうであるということで、私は、こういうような面は、満足とは言えないけれども、あのときよりは飛躍的に選択的拡大というものが行われたということも率直に認めていいと思うのです。満点とは言いませんよ。  もう一つは、農家所得の増大の問題についても、それは兼業農家になったけれども、ともかく機械化が進んで稲刈りが早くできるようになって、そうして手数があいたために農家所得を得る時間的余剰労働力ができた。それは出かせぎとかなんとかと悪口を言われたかもしらないけれども、仕事が早く終われば、遊んでいる必要はないわけですから、別な仕事をしていいわけですから、そのために兼業化はしたが農家所得がふえたということも事実なんです。  ただ、問題は、専業農家所得が飛躍的に大きくならぬじゃないか、これは私は率直に認めているのです。専業農家土地集積というものがうまくいかなかった。この点で、大型規模農業というものが内地なんかではさっぱり進まない。したがって、専業農家でもうんと、五町歩も十町歩も持っている人はいいが、二、三町歩の人は兼業農家よりも所得が低いじゃないか。そこのところがだめじゃないかと言われると、この点は私は率直に認めていいと思うのです。なぜそうなったのかということ等にはメスを入れていかなければならぬということを申し上げておるのであって、農業基本法が全部だめだったというのではなくして、農業基本法の示す方向にかなりのところはいったけれども、いかない部分もあります、こういう点は率直に反省をしてこれから直していきたいということを申し上げておる次第でございます。
  13. 稲富稜人

    稲富委員 その点は、農業基本法が示すところへいかなかった部面もあった、いかなかった部面の方が多かったと私は思うのですよ。この点が大臣と私はいささか考え方が違う。ことに自立経営農家というものは最も農業基本法が主力を置いたことなんです。ところが、農業基本法ができまして第二種兼業農家の方がかえってふえているという現象。さらに、大臣は、農業基本法ができた後に農家経営はよくなった、農家収入は増大したとおっしゃる。農家収入農外所得によってよくなったことによって日本農業がよくなったということは、私は言えないと思うのです。農外所得によって農家所得がよくなったということは、決して農業の前進であると断定するわけにはいかないと私は思う。この点は、農政をつかさどる者としては反省をしなければいけない問題じゃないかと思う。それは、農家経営がよくなったということは悪いことではございますまい。しかし、これで農政が大丈夫だったということは言えないと思う。農政をつかさどる者は、その点に対しては、農家所得がよくなったとしながらも、農政がよくなったものである、こういうような反論をすることはできないんじゃないかと私は思う。  選択的拡大においても、もちろん社会主義国家じゃないから強制することはできないとおっしゃる。しかしながら、行政指導というものは当然政府がやらなくちゃいけないことなんだ。その行政指導をやりながら、政府は、選択的拡大に対するミカン奨励等をおやりになったことは事実なんです。現に、現地に行きまして、従来タケノコ竹林を開発しましてミカンをつくっている、その農家に行って私は言った。もうミカンをつくることはおやめなさい。ミカンは恐らく生産過剰になりますよ。タケノコはかえって、京都あたりタケノコの産地はだんだん住宅地になってくる、それでタケノコ竹林にしておいた方が農家所得は将来よくなるからやめなさいと言ったけれども、政府ミカンを奨励しておるから私たちはやはり竹林を開いてミカンをやりますと言って、これを聞かないでミカンをやった。ところが、数年足らずしてミカン生産過剰になった。タケノコの方が実際は収入がよくなっているというような事実がある。  こういう点を見るときに、行政指導をなさっておるけれども、この行政指導も決して強制じゃなかったかもしらない、強制をしたんじゃないんだから政府責任がないんだ、こうおっしゃるわけにはいかないだろうと私は思う。やはり政府行政指導をやるとするならば、責任を持つという考えを持たなければ、強制をしないと言ったんだ、それだからそれが悪くなったとき、たとえば農業基本法に沿わないような結果になったとしてもこれは政府責任ではないんだ、こういうように逃げるということは、私は余りにも農家に対して忠実じゃないと私は思う。行政指導が誤っておったならば、誤っておったのを率直に認めながら、その上に立って日本農政をどう今後は前向きに立て直していくかということを考えることが、農業に忠実なる農政をつかさどる者の考えでなければいけない、私はかように考えます。  その意味から、農業基本法が完全に実施されなかったということ、私は完全だとは言っておりませんけれども、これが一つの空文化しておる、農業基本法というものが実際に生きてない、こういう事情にあることだけは私は否定するわけにいかないと思う。あえて農林大臣は空文化したという言葉をおきらいになるかしらぬけれども、農業基本法が示しておるようなことが完全に行われていないということ、それだから何とか検討しなければいけないとおっしゃっているのだろうと思いますが、この点は私たちは十分考えながら今後の農政対策をやらなければいけないのじゃないかということを考えなければいけないと思うのであります。  その意味から、私は大臣のこれに対する率直な御意見を承っているわけでございますので、そういうつもりでひとつお答えを願いたいと思うのでございます。
  14. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私は空文化していると思ってないのです。思っておりませんが、完全にうまくいったとも思ってないのです。それは部分的にまだ非常に不満足の点もあるが、しかしうまくいっておる点もございます。それは確かに、農家が全部農業だけで高い所得を上げると言っても、土地の制約があるわけです。三反歩とか五反歩とかしか持ってない農家に何百万円の収入を上げろと言われましても、それは言うべくして不可能なんですよ。しかし、そういう農家はそれじゃ低くてもいいんだと私は言えないわけですから、それは兼業農家として、土地利用をうまくしながら、両方所得で他産業勤労者以上の所得が得られるようにする。しかし、それができたということは間違いだった、私はそういうように思わないのです。  ただ、いま言ったように、自立経営農家の育成が足らぬ、これは最も大きな目玉であるのに足らぬじゃないかと言われれば、これは率直に認めますと、私は最初からシャッポを脱いでおるわけです。それには、要するに土地の集積、専業農家にとにかく二十町歩、三十町歩という土地が集まってこなかった、これは事実なんですよ。ですから、そこに何か問題点があるのかというと、農振法をこしらえて利用権の集積について特別な方法も考えたけれども、なかなかうまくいってない。多少いってますよ。しかし、現在のように農地が財産化して莫大な金額の値打ちがあるということになると、人に貸すにしても、貸したら最後取られちゃうんじゃないかというような、途中で返してくれと言っても離作料を払わなければならないのじゃないかというような不安が実際問題として先立っておるわけですよ。ですから、そういうような点から専業農家にうまく土地利用権が集積されなかったという事実は率直に認めます。したがって、その一番おくれているような部分について強く反省をして、われわれとしては今後対策を講じていかなければなるまいというように考えておるわけです。ですから、余り食い違いはないんだと思いますね。
  15. 稲富稜人

    稲富委員 大臣農業基本法を制定した時分に、政府はこの農業基本法を制定することによっていかにも農民期待に沿い得るような法律であるということを余りに誇大にも農民に周知させた、これで農民農業基本法に対する非常な期待を持った。ところが期待を持ったにもかかわらず、いま言われたようにその期待どおりにならなかった。ここに、農業基本法というのをつくったけれども空文化したじゃないかというのは、これを制定するときに政府農業基本法というものを余りにも大きく打ち出して期待を持たせ過ぎたという点に私は大きな原因があったということも忘れてはならないと思う。  さらに、この農業基本法が制定されてから政府反省しなければいけないことは、この農業基本法というものを非常に軽視したという点も私は否定することができないのじゃないかと思うのでございます。これを申し上げるならば、御承知のとおり、農業基本法の第六条でございますか、いわゆる農業白書というものを政府は出さなくてはいけないことになっている。ところが、農業白書というものは前年度のことを報告すると同時にその年に行わんとするものを国会に提出することになっておるわけです。義務づけられておる。ところが、農業基本法で決めておりまする農業白書というものを、いつでも国会の末期に提出される。かつて田中内閣のときに農業白書に対する質問をいたしたときに、これほど義務づけられたる農業白書を提出するに当たって、予算委員会が終わった後にこれを提出するということは、農業基本法で示している、その年に行わんとする施策というものを諮るという意味において非常に軽視した扱い方ではないかということを私は田中総理大臣に本会議で言ったことがあります。そのときに田中総理大臣も、来年度から早く提出するようにいたしますということをはっきり答弁なさいました。ところが、その後を見ましても、これは一つも早くなっていない。ことしもまだ出ていない。いつでも国会の終わりごろに提出されるということ。いま申しましたのは農業基本法第六条に規定されておる。これを国会の予算が終わった後に提出するということは、農業基本法を非常に軽視している。こういう点にも農業基本法というものが十分に生かされなかった原因があるのではないかということなんです。  さらに、一緒に申し上げますが、たとえば第十四条の問題。農業基本法の第十四条に、農産物の輸出の振興を図る問題がうたってあります。こういう問題に対しても、政府は農産物の輸入に対しては非常に御熱心であるけれども、輸出に対しては何ら取り組んでおられないというのがいままでの状態なんです。取り組んだとおっしゃるか知らぬけれども、実際は上がっていないということなんです。農業基本法が空文化していると言えるゆえんのものがそこにあると私は思う。  さらに、農業基本法の第十六条に、自立経営農家を育成するために農業経営の細分化を防止するということが書いてある。これに対しても何ら積極的な方策はとっていない。  各条挙げれば、どの条でも農業基本法の趣旨に沿うたようなことは一切行われていない。農業基本法は空文化しているのだということを言うのは、こういう条項から私は申し上げているわけです。単に観念的に私は申し上げているわけではございません。この点を大臣はどういうふうにお認めになるのか。空文化していないとするならば──この条文から見ましても、これが実行されていないということは明らかに空文化していると言っても言い過ぎではないのだ、私はこういうことを申し上げる。いささかお気に召さぬかもしれぬけれども、私がそういうことを申し上げるのはそこなんでございます。
  16. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 長期政権の担当者といたしましては、全体として空文化をしているというようには思っておらないのです。それは部分的におっしゃったようなところはあるということは私は認めておるわけです。特に六条の年次報告を早く出せということですが、これはいつも四月になってから出ておることは事実です。これは十二月までの統計をとっておるものですからなかなかまとまらないのだ、早くやろうとしても。一月や何かにはできるはずがない。そういうところに問題点がある。一年前のものだったらできますよ。直近のものを出すわけですから、どうしても三カ月やそこらかかってしまうという事務的な問題があるわけです。ですから、五十四年になって、五十二年のものはとっくに出ているわけですから、五十三年のものを出そうとするからなかなか出ないというところに問題があって、講ずべき施策というようなことは、予算案とか法律案とかというものは実際に出ておるわけですから、農業基本法で言わなくとも現実にそれぞれの、農水委員会では大体ことしはどういうことをやろうとしておるのかというようなことはおわかりになっているし、どういうことをやってきたのかということもおわかりになっている。できるだけ早く出すようにはいたしますが、二月に出しますとかなんとかというお約束はここでは──技術上、物理的に不可能であるということだけはお認めをいただきたいと思うわけでございます。  農地の零細化の問題という点等については、確かにいろいろな点がございます。ございますが、全体とすれば何点つけられるか。私とあなたと見方が違うけれども、七十五点ぐらいはつけられるのではないかと私は思っておるのです。甲の上というわけにはなかなかいかない。長い年月もかかることでもある。したがって、今後とも皆さんの御意見も十分聞きながら、どうすればこれが一番よくいくか。まず第一には、実際の個々の農家の方と政府の意思疎通がきちっと図られなければ、これはうまくいきっこないわけですから、そのために、私は就任以来、客観的な事実は一つなんだ、日本の経済の実情、財政の実情、いろいろなそういう実情等について、農家ばかりでなく、生産者の方と政府とが同じような認識を持てないものだろうか、そのために代表者の方々とはできるだけ頻繁に会って意思の疎通を図るようにすれば、おのずから方策は講じられるものだということを言ってきておるのはそういう意味であります。  したがって、今回農業諸団体が、今回の水田利用再編という問題についても、もう政府のやつは反対というのではなくて、もっとバックアップしょうということになったことは、事実認識において共通したような考えを持つようになったということで、私はこれはもう非常に高く評価をしておるのです。あらゆる問題でこういうように政府と同じような意見に──政府農業団体の意見と同じでなくたっていいのですよ。客観的な事実は一つなんですから、それについて見方がまるっきり正反対の見方ではうまくかみ合わない。したがって、大体似たような事実認識ができるようにすることが先決問題だということで、今後ともそういうような方針でやっていきたい、こう思っておるわけです。
  17. 稲富稜人

    稲富委員 私たち政府のやることに反対する意味で言おうと思っておりません。われわれは、やはり農民希望を与えるような日本農政を確立しなければいけない。それがためには過去の悪かったことは率直に反省して、反省の中から前向きになって日本農業をどういうふうに立て直すかということを考えなければいけないがゆえにこういうことを論じておるわけなんです。いままでのことが何も間違いなかったというなら、何も論ずることはないのです。私は、悪かったから今日のような不安を農民に与えるというこの事実だけは否定することができないと思う。  この農業基本法の問題で余り質問しますと、こればかりで時間をとられて、ほかを言うごとができないようになりますからこのくらいにしますが、ただ、大臣の言われました、農業基本法の第七条には、農業白書はその年にやらんとすることも国会に諮ることになっておるわけなんです。いつも提出されるものは前年度の報告と本年度に行わんとする施策が発表され、そうして本年度に行わんとする施策を国会に提出されるとするならば、予算編成の前にこれをやらなければ、予算が決まってしまってからではこの問題は論ずることも何もならぬということになる。こういう点から、農業白書というものは予算が決定する前にその年にやらんとする施策、方針を示すべきであるのじゃないかということを申し上げておる。技術上非常に困難であるとすれば、その年に行わんとするその報告といいますか抱負といいますか、そういうことは予算審議の途中にでも当然論議さるべきものでないか、かように私は考えますので、この点は大臣としましても将来十分考慮の中に入れて対処していただきたいということを申し上げたいと思うのでございます。  それで余り農業基本法でやっておると長くなりますから次に入りますが、大臣は昨日、私も実は中川前農林大臣と同じく総合農政派であります、こういうことを言われたのであります。過去数年間、わが国は一貫して総合農政というものを推進してこられました。先般の大臣所信表明の中にも、総合農政の推進ということを述べられております。  そこで、私はここで大臣に率直に承りたいと思う。あなたも総合農政派であるそうでございますから、一体政府が言われる総合農政とはいかなることを実行しようとなさるのか、この点をまず承りたいと思うのでございます。
  18. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一口で申し上げますと、本年度の農業予算に提出してあるようなことをやろうとしておるわけであります。
  19. 稲富稜人

    稲富委員 どうも変な答弁でございますが、それならあえて総合農政なんて言う必要はない。私は、総合農政というものは、すべての農業が均衡化されたような農政を確立することが総合農政であらなければいけないと思う。一方だけが、あるいは水田だけが進んでいくとかそういうことではなくて、あるいは米作農業も、あるいはその他の畜産業も、あるいは果樹も、すべての農業がともに均衡とれて前進するような農政を確立するということ、これが私は総合農政であらなければいけないと思うのでございます。その点は、ことしの予算に積んでおるようなことが総合農政だ、こうおっしゃると、何だか意味のないような、それじゃわざわざ総合農政なんて言う必要はないわけなんで、総合農政派であるし、総合農政だと言われる以上は、総合農政というものはどういうものであるかというその定義は当然下さなければいけないと思う。それにはすべての農業が均衡のとれた農政を確立する、これが総合農政の大きな使命であらなければいけない、私はこう考えますが、大臣はどうお考えになるか伺います。
  20. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 だから、私は、質問の時間がなくなっては申しわけないと思って、ことしの予算ということを言ったのであります。同じことなんですよ。ことしの予算では、要するに、農業日本国民の必要な食糧を確保するということを一番の目的にしているわけですから、余っているものをどんどんつくらせるということは困ることであって、やはり過剰なものを少なくし、不足しているものはふやすような工夫をし──ふやすと言ったって、余る方はうんと所得がふえる、足らない方は所得が低いというのでは、幾ら政府がかね太鼓たたいてみたところでやるはずないわけですからね。したがって、そういう方向にはてこ入れをして補助金も出しましょう、水田にとにかく大豆植えろと言ったって湿地帯でできないわけですから、したがってことしは二百三十億も金を出して排水事業を特別事業でやりましょう、一つの例ですね。そういうようなことをやったり、余っているものは消費拡大ということも大いにやろう、それから農産物といえども消費者があっての農産物なわけですから、消費の動向も謙虚にとらえて、むしろ先取りをしてそういうものに合わせて生産を誘導するような助成はやっていこうというようなことが予算の中に全部入っているわけですよ。ですから、私は、先生の言うようなことを時間が長くなるから簡単に言っただけであって、そのとおりのことが全部予算の中に入っているのだということを申し上げたような次第でございます。  それからもう一つは、農家の問題で、先ほど言ったように、十町歩持っている農家と一町歩しかない農家と同じ所得農業だけで上げるのですよ、それはやり方によってできなくないかもわからぬ。十町歩の人は水田だけつくるのだ、一町歩しかないところはイチゴとか反当三十万も三十五万もするようなものをつくっていく、たばこにしてもそうだ、やり方によってはできないこともないが、これはみんなそうできるわけじゃない。したがって、そういう土地の制約から、土地をフルに利用してもどうしても高い所得を上げられないという人には、その小さな土地にかかる労働時間数というものをうんと減らして、別な部門で——同じ農業でもいいですよ、園芸でもいいですよ、あるいはその他の別な産業でもいい、そういうところで所得を上げるようにして、そうして他産業と均衡のとれたような農家、そういうふうに所得の向上を図っていきましょうと全部総合的に考えて、農家所得についても総合的に所得を上げるようにしましょう、専業農家専業農家だけでやるな、総合的ないろいろな工夫をしながらその生産性を上げて、所得を上げるようにしましょうというようなことを全体としてみんな総合的に考えているから総合農政と言うのです。まだ説明が足らないのですよ。足らないけれども、一時間も説明するわけにもいかない、説明不足でございますが、ひとつそういうように御理解をいただきたいと存じます。
  21. 稲富稜人

    稲富委員 どうも大臣の言われる総合農政は、わかったようなわからぬような気がいたしますが、では総合農政を──これはあなたが言われたことではないので、数年前から政府は総合農政ということを言っている。総合農政ということを言いながら、農業というものは総合的にやられてない、一部に偏している。たとえば、従来はわが国農業というものは稲作中心の水田農業が中心だった。そうすると、盛んに干拓事業というものをやられた。土地造成をやって米の生産をやろうということで、干拓をやられた。しかも、その干拓たるや実に無計画な干拓である。あるいは八郎潟の干拓でもそうであり、あるいは福島潟干拓でもそうであり、あるいはもう干拓して入植する時分から米の生産調整をやらなければいけないような入植、あるいは福岡県におきまする椎田の干拓でもそうである。あるいは福岡県におきまする三池干拓のごときはどういうような無計画な干拓であったかというと、米はできたけれどもカドミウム米で食糧にならないような米をつくるような干拓事業をやって水田を干拓され光。こういうような無計画的な干拓事業というものを一方にやられたということなんだ。  そうすると、今度は米が過剰になってきた。米が過剰になってくるとにわかに、やれ米の生産調整をやらなければいけない、こうおっしゃる。今度農民は困りますよ。どうしていいかわからなくなってくる。米の生産調整をやるかと言っておると、今度、一方には同じ食糧である小麦というものはだんだん外国から輸入されて、輸入量というものは毎年ふえているという状態なんだ。昭和四十年は三百五十三万二千トンだったのが、五十二年は五百六十六万二千トンになっている。こういうように、一方には米の生産調整をやり減反政策もやりながら、一方においては同じ食糧である小麦の輸入というのはだんだん増大する。一体こういうことをなぜ政府はやるのだろうか、素朴な農民にもわからないのですよ。国際的ないろいろな事情があるとかなんとか言っても、農民にはわかりません。そういう点は、総合農政と言う以上は、もっとわかりやすいようなものをやらなければ、わからないような総合農政というものは言うばかりでいけないと私は思う。この点は論ずることよりも実行することなんですよ。  米が生産過剰になったからといって、政府は消費拡大だとおっしゃる。消費拡大には何をやるかというと、学校給食をやるという。もう前から言われているのだ。学校給食はどのくらい進んできたかということなんだ。  私は前に中川農林大臣にも言ったことがある。米の消費拡大のためにやるものは、学校給食も必要であるが、ひとつ酒税法をお改めになったらどうですか、御承知のとおり、酒税法第三条には、米と米こうじと水を発酵したものを清酒というということがちゃんと規定されている。ところが、ちょうど米の足らなかった時分に、他に含有物を入れてもいいという政令をつくった。それで今日の清酒というものはアルコールが入っている。もしもこの政令を削除いたしましたならば、酒米に対する米の消費量というものは五十万トンから六十万となる。これはかつて閣議においても、酒に対する米の消費拡大をやるということを言われて決まったことを承っております。農林大臣も私の質問に対しては、各般と十分検討いたしまして、これに対して実行するように努力をいたしますと言われたけれども、この日本酒において、米の消費拡大のために酒米を、三条にあります他に含有物を入れてもいいという政令を排除されたということを聞いてない。こういう点が言われることと実際が違っているのですよ。言うことは非常にりっぱなことを言われるけれども、実際においてはそれが実行されない、ここに農民の不満と不信感というものが出てくると私は思うのです。  それで私は、言葉はいいけれども、実際農民が、なるほど政府はわれわれの期待に反しないようなことをやってくれるのだ、こういう農民に対して希望感を持たせるような農政をしいてもらいたいと思う。それがためには、やはり悪かったことは悪かったと認めながら、ではそれをいかにして補っていくか、これを考えてやっていくことが本当に農政に忠実なゆえんであり農民希望に沿うゆえんである、また農民が政治に対して信頼感を持つゆえんでもある、かように考えます。この点は、私は政治をやる者がよほど考えなければいけない問題であると私は思う。これを単なる国会答弁だとかなんとかで片づけよと私は言っているのではございません。そういうようなことをやりながら、農民農政に対する信頼感を持つようにする、こういう農政を進めていくことが、日本農業を確立し、農民の持っております性格というものを生かして本当に国家としての重要なる役目を果たさせるために必要な条件である、私はかように考えておりますがゆえにこういう点を申しあげるわけでございます。  総合農政も結構でございますから、本当にすべての農業に目を配って、一局部だけではなくして、すべての農政というものを総合化していくんだ、そして日本農業を確立していくんだ、言うことは実行するんだ、こういうような考えで進んでいただきたい。  ところが、遺憾ながら、いままでの日本農政のやり方というものはこの大事なところが欠けているということが、最も農民の不信を買うゆえんであるということを私は申し上げているわけでございますので、その点をひとつ農林大臣の率直な御意見を承りたいと思うのでございます。
  22. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 私も余り率直過ぎてしょっちゅうしかられるわけでございますが、率直に申し上げまして、間違ったところは改めるに少しもはばかることなかれ、私はどんどん改めていいと思うのです。反省するところもたくさんございます。何といっても信頼関係ということが一番大事なことですから、政治家が、できもしないことを吹聴して、それで結局政治の不信を招くというようなことが一番困るわけです。したがって、私は、できないことはできません、できることはできます、そういうことを就任以来申し上げているわけであります。  先ほど御指摘のあったように、確かに八郎潟干拓を初め、そこで米をつくるつもりで始まった、ところが、これは十年、十五年とかかる仕事なわけです。そのうちに世の中が変わってしまったわけです、昭和三十五年以来急ピッチで。ともかく所得倍増計画を池田さんが打ち出して、十年間で月給を倍にします。大ぶろしきだと当時は言ったのですよ。ところが、十年たったら実質三・五倍になってしまったわけです。この点はしかられないわけですね。何でおれの月給をこんなに上げたんだろう、政府はふざけているという御議論は一つもない。しかし、そういうように急激に生活様態が変わったものですから、そこで大きな食変化、食べ物の変化が起きたということも事実なんです。それからもう一つは、裏作で小麦をつくるよりも、ほかに出かせぎに行った方がよっぽど得だというような農業の実情もあったことも事実なんです。そういう点で裏作としての小麦などが少なくなったということも間違いない。しかしながら、国家安全保障という観点から考えれば、非常に狭い土地の高度利用という点から考えれば、やはり裏作というものはもう一遍見直していかなければならぬということをわれわれは提唱しておるわけであります。  もう一つは、酒にアルコールを入れるからいけないのであって、ともかくアルコールを抜けばいいじゃないか、米を倍使うじゃないか。全くそのとおりなんですよ。ところが、これは言うべくしてできないのです。なぜできないかという問題が二つあります。  一つは嗜好の問題であります。結局いまの人たちはべたべたした酒は若い人ほど飲まない。これは食習慣なものですから。昔はこの酒はコクがあるなんて言って、杯が手にべたべたくっつくような酒が喜ばれた。いまは、さらっとした、甘口と辛口とありますけれども、本当にべたべたした酒なんかどこにもない、これも事実なんです。  それからもう一つの問題は値段なんです。なぜ酒がいままいってきたかと申し上げますと、一番の問題は値段が高いということですよ。昔は酒一本でビール何本と決まっていたわけです。ところがそのビールの数がだんだんふえてきてしまった、実際は。結局競争相手があるということなんです。日本酒に対する競争相手は一つはビールであります。これは毎年どんどん伸びているわけです。その次はウイスキーです。ウイスキーとビールの消費というものはどんどんふえてきて、ふえる原因は、一つは嗜好です。国民所得がふえた。一つは嗜好のあり方が変わったということもありますが、その次は値段なんです。問題は、毎年毎年米価が上がる、ストレートに酒屋がかぶるわけですから。もう十年間に二倍とか二倍半とかいうことになってしまう。酒の主原料はお米なんです。したがって値段がどんどん上がる。上がったからといって上積み上積みしていけば、やはり安い方のビールとか安い方のウイスキーとかに手が出る。ビールなんというのはばっと加速度的にふえてきてしまった。こういうような問題がありまして、米を倍使え、いまでさえも酒は原価が高くてビール会社に押しまくられているという状態の中で、米を倍使うことになったら、いまの酒代も何割増しという話になってしまう。そこで非常にむずかしい。  ただ、一部の例外として、とにかく銘柄酒とかなんとかうまいこと言って、これはアルコールの入らない酒でございますよという宣伝をすれば部分的にいろいろ売れるのじゃないか、そういうことについては米の割引をよけいやったらいいじゃないかとか、税金を少しまけたらいいじゃないかということは大いに議論をしておるところなんです。なかなか業界が飛びついてこないということも事実でございますが、研究課題として部分的にそういうことは言われる。アルコールをなくせば米を倍使うのですから、全体を米を倍使わせる。そのかわりべたべた酒になりますよ、コストも倍になりますよ、こういう問題があると消費拡大には必ずしもつながらないというむずかしい問題があることも御承知おき願いたいと存じます。
  23. 稲富稜人

    稲富委員 この問題を議論しておりますと、まだずいぶん意見がありますけれども、時間が五分しかありませんからもう結論へ入るわけでございますが、問題は、米の生産過剰から起こってくる問題は、当然稲作の水田農業というものを転換しなければいけない時期に来ていると思うのです。それで、この稲作を転換するための対策というものをここで考えなくちゃいけないと私は思う。それがためには、いろいろあると思う。たとえば、今日構造改善事業をやられておる。これは水田改良、稲作を将来つくるということを主体としてやられておる。であるとするならば、将来これが畑作にかえるとするならば、構造改善事業のやり方というものも検討しなければできないじゃないか、こういうことを考えますので、ひとつこれに対する考え方を承りたいと思う。  さらに今度は、稲をつくらなくてほかの作物をつくるということになりますと、農産物というものは、その土地の土壌、風土に非常に影響されていいものができる、悪いものができるというように、影響をこうむるのでございますから、どの地方にはどういうものが適するのだということを、これは政府が早く検討して品種別にやらなくちゃいけないと私は思う。そうしなければ、ただ減反政策をやって米をつくるな、こうなりますと、何をつくっていいかということで迷う。一番手っ取り早いのは野菜をつくる。野菜をつくりますと、価格が暴落するから、もう市場に持っていく費用さえできないからそのままこれをすき返すという問題が起こってくるのです。こういうようなことに対しては政府が、あなたは社会主義国家じゃないから強制はできないとおっしゃるけれども、あえて強制しろと言わないが、強力なる行政指導の指導力は持ってもいいと私は思う。それで行政指導の名において、どの地方にはどういうものが適するんだということは政府が示してやる。しかも、これはやはり計画生産をやらなければ、何でもやたらにつくられるとまたミカンの二の舞を踏むようなことになるから、こういうことも含みながら、どの地方にはどういうものをつくるんだ、そして計画生産をやる、こういうことも当然政府としては考えなくちゃいけないと思いますから、こういうことに対してどういうようなお考えを持っていらっしゃるかということを承りたい。  時間がありませんから、最後にもう一つ承りたいことは、今日、総理大臣が田園都市構想というものを発表いたしております。どうも私たちは聞いてもわかりません。あなた、閣僚でございますから、総理大臣の言っている田園都市構想というものは内容をお知りになっているだろうと私は思う。それだから、その田園都市構想がどういうものであるか、これが日本農業に及ぼす結果はどういうことになるか、こういうことをひとつ農林大臣としての意見を承りたい、かように考えるわけでございます。
  24. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 簡潔に申し上げます。  稲転をやるという点について、構造改善事業というものについては従来と違った方法を考えなければいかぬ、これは十分に考えてやらせていただきます。  それから第二番目の適地適産の問題でございますが、これもかねてから農林省としては地域指標というものをこしらえまして地域分担ということを言ってきておるわけであります。したがって、生産調整の限度数量の割り当て等にいたしましても、一律に割り当てているのではなくて、国としてはともかくあるところは七%、あるところは三〇%というような減反面積を割り当てておるということも御承知のとおりでございます。しかしこれらも、米についてはぴちっとやりますが、直接取り扱っておらない果樹とかあるいは蔬菜とかいう問題については、政府はガイドラインはつくりますが、きちっとこれをやらせるという自信もない。むしろそういうようなものは、それぞれの地域の農業団体とか市場なんかの方がもっと詳しいというのが現実の姿なんです。したがって、これらについては地域の特性を生かしながらそれぞれの団体の自主的な判断によってやっていただく、われわれも持っておるところの統計数字や指導、助言についてはできるだけいたしたい、かように考えておるわけであります。  計画的な生産という問題についても、おおよそのガイドラインは持っておりますし、これとこれはどれくらい不足しておるか、幾らつくっても心配ないか、はっきりわかっておるものもありますから、そういうものはちゃんと明らかにして、これとこれは心配ありませんよ、小麦はもっとつくって大丈夫ですよ、大麦も心配ありませんよというようなことはちゃんと政府は言っておるわけであります。すべての作物についてどれを幾らつくれというようなことはなかなか申し上げにくいというのが現実でございます。  田園都市構想の問題につきましては、これは大平大臣が総裁選挙のときに言ったことでありまして、私は大平さんを担いでおったわけではないので、実はそいつは中身はよく知らないわけであります。総理自身も予算委員会において、実はこれは別にはっきりしたことを私も言ったわけじゃないんだ、要するに、要約して言えば、農村生産の場というだけでなくして民族の苗代でもあるし、そういう農村のいいところもちゃんとこれは残していかなければならぬというようなことを踏まえて、定住圏構想とかあるいは日本列島改造とかいろいろございましょうが、そういうようなものの中で、都市と農村との文化的な、所得的な均衡というものを保ちながら住みよい農村にするんだというような話なんですね、これは。でありますと、やはり役人の方は頭がいいですから、政権がだれになっても大丈夫だと思って出した予算であっても、大平内閣になれば、田園都市構想の一端の予算はこれでありますというようなことで、ちゃんと農林省はつくってしまうわけですよ、八月に概算要求が出たものが。しかし、大体総理もそんなふうだと言って肯定をしているわけですから、細かい詰めについてはこれから学者を集めてやるとか言っていますが、もう少しまとまったものができるのかもしれませんが、現段階においてはわれわれもその程度で総理の意をそんたくいたしまして、今回も、住みよい農村、明るい農村というようなことで、いろいろ自主的な農村の自主性というものを重んじながら、文化的な生活もできるように、あるいはコミュニケーションが地域社会でできるように、あるいは都市の人が親しんで農村に行けるような学童農園もつくれば観光農園もやろうというようなことなどをやっておるのでございまして、完全な説明ではございませんが、その程度で御了解を賜りたいと存じます。
  25. 稲富稜人

    稲富委員 いろいろ聞きたいことがたくさんありますけれども、時間が参りましたのでこの程度にしますが、要は、今後農政をつかさどられる、しかも日本農業の転換期に際する農林大臣でありますから、その職責の重大であることを考えて、農民期待に反しないような農政を確立していただくことを強く希望いたしまして、私の質問を終わります。
  26. 佐藤隆

  27. 津川武一

    津川委員 私はきょう、お米の流通、お米の質、食管などについて一つと、いわゆる減反などについて一つと、この二つの柱で大臣の所信を伺ってみたいと思います。  実はぎのりNHKの一〇二で、米のやみ流通、やみ相場、またやみで実際に取引している場面を見せられたわけであります。食糧庁長官もそこへちょっと顔を出してきたりして、しどろもどろのことを話しておるわけでありますが、このやみの米、自由米については後の機会にさらに私も事実に即してもっと尋ねてみたいと思いますが、大臣はやみ米に対してことしの三月の雑誌「地上」でこう言っております。「やみ米が流れるというが、だれが流しているのですか。政府は流していませんからね。政府米の払い下げを受けたものか生産者が流しているんです。食管制度を生産者自身ほんとうに守るというのなら、政府もその根幹は維持しましょうと言っているのだから、守っていきましょうよ。」こう「地上」の対談で申しております。また、二月十六日の衆議院の予算委員会でも同じようなことを言っているから、雑誌の記事でなく大臣考えだと思います。これは私は大変な発言だと思います。農民責任を転嫁するひどい発言だと思います。もう少し申し述べますが、できたならば取り消していただいた方が渡辺大臣の将来のためになるかと思っております。  たとえば、やみの一つの根源となっているものは、政府の米需給計画のうち農家消費などの量です。農家で食べるお米、農家消費など。五十三年、五十四年を例にとれば、農家の消費などを三百四十万トン見込んでおります。ところが、農家世帯の実際の消費量は二百四十万トン、ここに百万トンのお米が余ってくるわけです。五十三年の生産調整でも九十万トンばかり余ってきたわけです。これは政府も買い入れてくれない、自主流通米にも上らない。食管法で言うと、政府の定めるところによって農民政府に売り渡すと書いてあるのです。政府も買ってくれない、自主流通米からもはみ出る、農家で食べ切れない、どうしてくれるのかという問題なんです。この実態をつかんでこれをなくしようとすることは──減反ということはまた後で問題にします、政府はこれをなくするために生産調整をやろう、それはわかります。そのことではなくて、いまあるこの状態をどうしてくれるのかということと、農民が悪いと言っている渡辺さんの気持ち、農民が悪いとあなたは言っているのです。(渡辺国務大臣「悪いなんて言ってないよ」と呼ぶ)それじゃ、もう一回読んでみましょう、悪いか悪くないか。「生産者が流しているんです。食管制度を生産者自身ほんとうに守るというのなら、」こう言っているわけです。そこで、この発言に対して少し考え直す余地があるんじゃないかと思うのです。この二点をまずお尋ねいたします。
  28. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 言葉不足の点があるいはあるかもしれません。しかし、政府が流していない、これは事実ですね。しかし現実にやみ米がある。どこから出たんだ。そこがわかれば、やみと言わないのですよ。そこがわからないから、やみなんです、実際は。そこがわからない。したがって、これは縁故米の問題もあるでしょう、それから流通業者が政府の出した米を、売れ残った、そいつが流れている、こういう点も私はあると思います。したがって、農民が悪いというようなことのニュアンスではございませんので、その点をはっきりこの際申し上げます。もしそいつに、どうも雑誌や何かの記事がひっかかっているということであれば、いま言ったことが一番正解であるというように御了解をいただきたい。
  29. 津川武一

    津川委員 やみ米、自由米が出るのは農民が悪いのでないと大臣が言い切ったということを、それでは私も農民に伝えましょう。  そこで、現状をどうして把握するかという点ではいろいろな問題があるのです。百万トンないし三百万トンとも言われているこの自由米、このやみ米をこのままにしておくのかというのです。来年から生産調整をしてなるべく出ないようにする、これはわかった。そこで、いまのこの状態を調べてどうするという方針を出さないと、今度は食管が乱れる。この点、続けてお答え願います。
  30. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 結局、食管制度というのは配給統制の制度でございますから、不足時代にできた法律である、これも間違いない。しかし、そこへ持ってきて過剰の状態になった。ですから、本来は切符を全部出して、切符でなければ米は買えません、法律はそうなっているわけですよ。売り買いは切符で、切符を持ってこないやつに売った者は罰金とか懲役とかと、みんな書いてあるわけですから。しかし、幾ら法律がそうなっておっても、現実問題として米過剰の状態の中でそんなことはやれるわけもないし、やらせることもできませんよ。でありますから、やはりこの制度を守っていくためには過剰状態をなくすことが一番なんです。その過剰状態をなくすために、政府としては、多額の補助金も出して農家の御協力も得て、それでその生産調整をやっておるということは津川さんも御承知のとおりです。そうでしょう。
  31. 津川武一

    津川委員 それはわかったが、いまあるのをどうするかと聞いているのです。百万トンないし三百万トンある。そこで政府に大事な話を聞いていると、法律どおりやれないからおれはお手上げだ、こういうふうに聞こえるが、もう一つ問題は、丸紅がやみ取引して昭和五十三年九月十八日、水戸地方裁判所から有罪の判決を受けているのです。この判決のとき、米の過剰時代を迎えたからといって食管法は直ちに形骸化したと言うことはできない。米の過剰時代に適応する適切な措置ないし法的手当てをしなかったために国民に食管法軽視の機運を生じさせた、これが丸紅がやみをやった一つの土壌だ。国の食糧政策に不足があったから被告人の罪を少し免じてあげようじゃないか。国の責任もある、国はその責任を果たしてないという、これが判決なのです。だから、この判決にものっとって、あなたたちはこれから生産調整をやる、これはわかった。現在百万トンないし三百万トンもあるお米をどうするかと聞いているのです。重ねて答弁願います。
  32. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 いわゆるやみ米の源泉でございますが、これは全体需給として過剰なときに一番多く出るわけでございますが、通常の場合でございましても、御指摘ございましたように、農家の保有量の中の一部が自由米として販売をされる。なお販売以外の縁故米というのがかなり多いわけです。それからもう一つは、政府が売ったものが途中から自由米として消費地等に流れてくる、確かにそれがあるわけです。したがいまして、私どもは、現在あるものにつきましては生産団体がなるべく集荷努力をする。農家からやみに流さないようにするということが一つと、それから、私どもが売ったものが、特に産地で売ったものが途中から消費地へやみとして流れてくるということを抑えるためには、産地での売却量を産地における実需に合わせてできるだけ抑制していくということを一層強くやる必要があると思います。  それからもう一つは、これは将来の問題でございますが、価格なりあるいは売却の仕方についてきめ細かいやり方ができるような弾力性を少し持たせるということが、やみ流通というのはそういう点ではある意味ではきめ細かくやっている面がございますので、それをつぶすためにはそういうことについてもっと工夫しなければいけない。  それから、大量悪質なものについてはやはり取り締まりを強化する、これらの対策を総合的にやっていく必要があるというふうに思っております。
  33. 津川武一

    津川委員 やみのことはこの次の機会に委員会でもう一回やります。  そこで、現地で農協が集荷するときに一万三千円なんです。やみ業者が来ると一万四千円になるのです。これがやみに流れるのですよ。こんな実態をほったらかしておいたのではこれはだめです。したがって、そういう点での検討を具体化するように私は要求して、次に質問を進めていきます。  次は、うまい米をつくれば消費が伸びる、これは大臣が盛んに言っているのです。私もこれはそのとおりだと思うのです。うまい米はつくれば確かに売れる。だから、いま米過剰のときに余っている米をどうするかというときに、大臣はうまい米をつくらせるということで一辺倒になっているが、さて、十年前に比べていまの米はおいしくなっていると思いますか、私はおいしくなっていると思う。だが、消費は減っているのだな。米をおいしくして、消費が減っているのだ。ここの点で、大臣はうまい米をつくれば売れると言う。これはそうでしょうが、これだけではお米の消費拡大に役立たないと思う。もっと別なことをしなければならない。ここのところが何よりも大事になってまいりました。  もう一つには、大臣はこう言っているのだ。「農民は、自分はうまいものを食うが、お客にはまずいものを食わせるというわけですから、まずい米が出て米が売れない」、こう言っている。  私、宮城県のササニシキづくりの農民に聞いてみた。渡辺農林大臣こう言っているからこうだと言ったら、大変怒っているのです。私たちはうまい米を食べています、そしてうまい米を売っています。ときによると、売るためには、こっちでまずい米でもくず米でも無理してつくっていたのを食用にして、売るために一番いい米を出しているのに、農林大臣農民の実情を知らないのじゃないのか、もしくは農民消費者を離間しにかかっているのじゃないのか、津川さん、どっちか二つ聞いてくれと言うのです。こういうことなんです。  そこで、もう少し見てみると、食用の自主流通米、良質米の需給バランスの問題で、自主流通米の五十二年度の実績は百八十七万四千トン、五十三年度にとれる見込みが二百十六万八千トン、二十九万四千トン余ります。このうち一番うまいと言われているササニシキ、コシヒカリ、越路早生、五十二年実績百一万トン、五十三年見込み百四十四万六千トン、四十三万六千トン余るのですね。この中で、ササニシキ、コシヒカリ、越路早生が過剰米として、余り米として流通したもの、去年三万九千トン、ことし八万トン、四万一千トンばかり余るね。うまい米ならば売れると言ったが、一番うまい米がこのとおり流通の中で余っている。宮城県でも新潟県でもことしコシとササをどうして売るかということが一つの心配になってきているわけなんです。ここいらで、やはり問題は、新しい米を食わせるということや価格だとか流通機構だとかいうことであって、良質米をつくればいいと言って、こういったかっこうでいま問題なのは良質米の余るということなんです。こういうふうになってきたので、うまい米、まずい米ということより、もっと原因があるかと思いますが、この点をいまどんなふうに、実際上にコシとササ等が余る過程に対して、どう考えてどうなさるつもりか、お尋ねします。
  34. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 どうも津川さんのお話は、私がどこかで何かしゃべったのだろうけれども、前と後ろを切っちゃって、そこのところだけ持ってきていろいろ言われても困る。  私が言っているのは、こういうことを言っているわけです。それは、うまい米をつくった方が消費の拡大になるのですよ。あなたは、うまい米はふえているのに消費が減っているじゃないか。じゃ、うまい米をふやさなかったらこれは実際はもっと減っているわけです。うまい米をつくっても減るのだから、うまい米つくらなかったらもっと減るのですよ。ですから、私はうまい米をもっとつくった方がいいということを言っておる。  その次は、これは一般論を私言っているのではなくて、消費者の方にだって聞いてごらんなさい。農家へ行ったら米はおいしかった、配給で食った米はまずかった、こういうことを言うわけですよ。これは率直な話です。そうすると、やはり生産者の方はうまい米を食っているのだ。現実に私、知っている人もありますよ。それはコシヒカリは自家用で、コシヒカリはそんなにたくさんつくらぬから、一部供出にもするが別な多収穫米をたくさんつくるといううちもありますよ。全部じゃもちろんないでしょう。だけれども、やはり実際はうまい米はうまいのだ。生産者が食べたって、消費者が食べたって、だれが食べたって、うまい米はうまいのだから、そういうことを言おうとする一つの例として、適当であるかないかは知りませんが、そういうことを申し上げたこともあります、それは。ありますが、しかし、それは一つの例として、生産者が食べてもうまいものはうまいし、消費者が食べてもうまいものはうまい。架干しの米が一番うまいですよ、乾燥で。そんなことしかし、架干しのやつたくさんつくれといったって、とても手間がかかってできない。だから一部架干しのものをこしらえるということはあります。だからそういうことを私は言っただけであって、そう悪意を持って言ったわけじゃないということを御了解をいただきたいわけであります。  それから、やはりその乾燥の仕方とか、流通の問題、貯蔵、いろいろあるでしょう。せっかくいい米ができても、余り急激な火力乾燥なんかしたのではまずくなってしまう。しかし、いまはみんな早く出さなければならぬからやむを得ない。これはなかなか、これから工夫をして制度を直していかないと、一遍には直りませんが、将来はやはり、何といいますか、今ずり米というか玄米貯蔵というか、そういうようなことも私は検討していく必要があると思っております。  その他ササニシキ、コシヒカリの細かい関係については、食糧庁長官から答弁をさせます。
  35. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 御指摘ございましたように、五十三年産米はササとかコシとかいう良質米の生産が急激にふえました。政府がいろいろな奨励措置をしていることもございます。そのために、今年度の自主流通米の値決めも近く最終的に決まるわけでございますが、去年に比べて大体同じか若干下がっておるものもあるというような現状、それからまた、集荷を予定しております、集荷の大体のめどがついておりますササ、コシで、百二十万トンも全部自主流通米として売れるかどうかということについては、かなり苦労が多いと思います。私どもといたしましては、少し時期がおくれましても全部売却できるように、集荷団体に努力を要請をしており、また販売業者に対して協力方の要請をしておりますけれども、もし売れなければ一部Uターンで政府の買い入れ量に戻ってくるということもあり得ると思いますが、この問題は価格との兼ね合いの問題でございまして、価格が、これだけふえてまいりまして、前年から一切下がっちゃ困るということになりますと、流通業者としては、マクロで考えればそれはいい米が喜ばれることは間違いありませんけれども、やはり経済原則が働きますから、いいものでも生産量がふえれば価格が若干思わしくない面が出てくるという、価格との兼ね合い。ただ、政府の買い入れ価格よりははるかに有利であるということは間違いないわけでありますが、その辺は、今後工夫を要する問題だと思います。
  36. 津川武一

    津川委員 ササ、コシは新潟、宮城なんというのはUターンさせざるを得ないだろうし、してくれるだろうと言っている、いまの食糧庁長官、Uターンあり得ると言っているから、わかります。  そこで、大臣、やはり農民がうまいものを食べてまずいものを政府に売っているという、これは全体の空気の中からいっても、農民にとって好ましいことではないから、やはり正直にそういう意味でないということを言ってくださった方がいいと思います。  そこで、まずかったらもっと売れなかったろうと言う。確かにうまくて安ければ売れるのです。そこで、食管に自主流通米制度を導入したときには標準価格米の消費がぐんと減ったのです。政府がうまい米だと言って宣伝したからそっちへ行ったわけです。五十年、五十一年、五十二年には、標準価格米が回復しているのです。この事実は、やはりこれからの消費拡大に対して、政府は慎重に考えていかなければならぬ。要するに、ことしあたりは自主流通米をうまくしたから、いきなり古米でなく持ってきたから、したがってそれぞれのところの米をうまくしていくということがここのところで消費を拡大することなんです。  それで、東京の生活協同組合連合会が調査した。学校給食に米をやっているところ、お米の消費はふえていないのです。昼お米をやるものだから、今度は朝パンになってしまうのです。昼は米食わせるからというので、家庭で今度は朝食べていたお米がパンになっているのです。それで、結果はふえていない。また調査してみたら、学校と工場でお米の御飯を出してくれる給食施設があるところでは御飯を食べているのです。給食施設がなくて外食している人はそばを食べているのです。そういうことが私は大臣のやる仕事だと思う。全国の経営者を呼んでこういう形のものをやるやつを、大臣の口から出てくるのは、まずい米は売れないという一辺倒なんだよ。まずい米は売れないという一辺倒と思われる言葉なんだ。したがって、正直なところ、農民がまずい米を売ってうまい米を食べているという考え方、ひとつここで見解表明をしていただきます。
  37. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 一つのたとえ話で、私の地方では、自家用コシヒカリ、供出用何とかというたとえ話があるのですよ。そういうふうなたとえ話を私が使ったということがまずければ、それは訂正をいたします。いたしますが、やはりうまい米はうまいのです。まずい米はまずいのです。  ですから、私は、確かに給食とか何かでも、施設がなければそれはだめだと思います。したがって、学校給食等につきましても、給食施設等については助成もしたり、いろいろなことをしまして、それで米飯というものを奨励しているということをやっておるわけです。一般の事業場や何かにもそれは呼びかけたいとは思いますが、なかなかこれは政府の自由になるものじゃないし、呼びかける以上補助でも出すかという話になられても、なかなか工場の食堂まで補助を出すというわけにもいかない。いかないが、極力そういう点は呼びかけるようにしたい。  標準米が売れているということは、地方においては特にそうなんです。(津川委員「東京もそうなんです」と呼ぶ)東京は、売れてはいるけれども、シェアが非常に少なくて、一六%ぐらいなんですよ、標準米、標準米と言いますけれどもね、現実の姿というものは。しかも、これは家庭で買うものもありますけれども、かなりのものをやはり営業者が標準米を購入しているということも事実なんです。ただ、地方は、特に産地は、うまい米がたくさんありますから、ですからお米屋さんがやはりうまい米を出さなければみんな農家へ行って直接買ってきてしまうもの。だから、やはり産地のお米屋さんは大変ですよ、もうけも薄いしね。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕 しかし、うまいお米をそろえるようにうんと工夫もしている、変なまぜ方なんかしたらとても売れませんから。ですからそういう点もございます。大都会が問題なわけなんですから、したがって、政府は今回一食一円二銭の値上げをいたしましたが、新米の混入率等も八割に上げるというようなことをやりまして、そしてなるべく標準米についても食味をよくする、それからまぜ方についてもいろいろ研究するというようなことをやって、標準米も売れるように努力をしておるという次第でございます。
  38. 津川武一

    津川委員 そこで、私たちも米の消費拡大、一緒にやりたいと思うし、学校給食大事なことなんだけれども、指導するときに、朝、飯を食べてきている生徒に昼学校給食で米をやって、そのために朝、パンになるようだったら、何にもならないからね。そこらあたり、具体的に学校給食をやるときに指導しないと、お米の消費拡大にならない。  そこで、ここまで話してくると、私は食管制度にかなり問題があると思うのです。法律どおり食管制度がやられているかどうかということになってくると、かなり疑問がある。大臣は食管制度を守ると言ってくれている。ありがとうございます。農協も食管の根幹を守るために減反をやると言っている。そこで、守る食管は、一体内容は何なのか、食管の根幹は何なのか、一つ一つ議論をするつもりであったけれども、大臣と私の話、少しかみ合うようになったので、そこのところを少し議論したいわけなんですがね。だから、ここで結論だけ申し上げていきますと、昭和四十五年五月十一日のこの委員会で、大臣は、これは倉石さんのときは一度目の農林政務次官のときでございましたでしょうか、食糧管理制度の場合の根幹ということに対して、「まず米の需給や価格を調整するため必要な米は政府生産者から直接買い入れる。第二は、その場合政府の買い入れ価格は食管法の規定に基づいて米の再生産を確保することを旨として政府が定める。再生産を確保することを旨として政府が値段を定めます。第三番目は、消費者に対しては必要な一定量の米の配給を確保する。つまり、消費者にお米の配給を確保するということが第三番目でありまして、第四番目は政府の米の売り渡しの価格は食管法の規定に基づいて消費者の家計の安定を旨として定める。まあ通常家計米価といわれるわけでありますが、その消費者の家計の安定を旨として定めます。第五番目が、米の輸出入は政府が規制をする。この五つのものが食管制度の根幹の内容である、こういうように農林省としては意見の統一をしておるわけであります。」こうあるわけですね。これを守るために農民も一生懸命かかって、これが破れるとまた大変なことになる、私もそう思うのです。農民国民期待はここなんですが、農林省、政府の方針はこれと変わりなく続けていると思います。その点をお尋ねいたします。
  39. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはいつごろ……。
  40. 津川武一

    津川委員 四十五年、政府が統一見解を出したときです。
  41. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大体似たような話かもしらぬけれども、われわれとしては、要するに、食管法第一条、これが私は骨幹だと思っているのです。「国民食糧ノ確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧ヲ管理シ其ノ需給及価格ノ調整並二配給ノ統制ヲ行フコトヲ目的トス」ということで決まっているわけですから、根幹とは何だと言ったらこういうことであって、そしてその中で、値段については買い入れの値段も決まっているわけでしょう、値段はこういうふうにして決めるんだと。生産事情とか、需給事情とか、経済事情とか、再生産の確保というようなもので値段も決めます。売り渡しについても家計米価というものも考えて決めます。食管の根幹というのはどういうのだと言ったら、大体いま私が言ったようなことなんですね。細かいことまでは言わない、根幹ですから。
  42. 津川武一

    津川委員 食糧庁長官、何か返事があるんですか。それは議事録でしょう。長官がいま届けたのは四十五年五月の議事録でしょう。大体それでいいと思いますか、もう一度。
  43. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 大体いま私が言ったことでいいのであります。
  44. 津川武一

    津川委員 じゃ、これは違うというわけですか。この後変化を見たというわけでありますか。
  45. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 比べてみればおわかりだと思います。
  46. 津川武一

    津川委員 これは非常に大事なことになりまして、きょう、ここでこれを全部やるとまた三倍ぐらいの時間がかかりますので、この次に、私が五項挙げたことに対して一つ一つ質問を繰り返していきますことを大臣に保留しておいて、次に進んでいきます。  その次は、えさ麦。これは買い入れ制限しておって、五十四年度に二万九千五百トン。ところが一方、外国からは四十九年に百十三万トン入れ、さらに五十三年、五十四年とたくさんふやしています。そして、これは輸入飼料勘定で外国からたくさん買ってきて安く売っているから一面ではよろしいのですが、農民にえさ麦をつけなさいと言ってつけたものを、買い入れを制限しておいて外国からこんなに入れるのはどうかという問題なんです。この点で農民は、一体どういうことなんだろう、えさ麦の転作をやらせないのかというのです。  もう一つの問題は、ビール麦は御承知のとおりで余っちゃっている。小麦、これは大丈夫かという問題です。いまのところ国内産の小麦は中小製粉業者のめんの材料になっている。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、中小製粉業者がこなし切れなくなって大手製粉業者に移っているが、大手製粉業者は、設備やいろいろな点でおいそれと簡単にいっていないのです。したがって、国内産小麦が、転作で増産、増産させたときに余る心配が出てきたわけです。そこで、ここいらの検討、余らせないための対策が必要だと思いますが、えさ麦と国内産麦の二点で答えていただきます。
  47. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 えさ麦はちょっと直接ではございませんが、食用の小麦につきましては、確かに国内の生産が、昨年は作付が急激にふえましたこともございますし、さらにまれに見る大豊作であったということのために、一部の地域で輸入の小麦に比べて品質が劣るとか、あるいは産地が分散しているために集荷経費が割り高になるとかいうような問題がございまして、とりにくいというような話がございましたけれども、私どもといたしましては、やはり麦の生産をふやしていくという大方針がございますから、それにのっとって実需者である製粉企業に全量引き取るということを強く指導しておるところでございまして、今後もそのような方向で進めていきたいというふうに思っております。
  48. 津川武一

    津川委員 えさ麦でなく国内産麦は、やはりぼくらは少なくとも国内で使う分だけは自給したいのです。その見通しはあると思うのです。そのときに製粉業者の関係でこれにストップかかるようなことがあってはいけないので、速やかに状態を検討して指導体制をつくるべきだと思うのです。これは大臣にお願いしていきたいと思います。  そこで、もう一つ、農林省が牛肉不足払い制度導入の方針を固め、検討に入ったと言われますが、事実かどうか、簡単に答えていただきたいと思うのです。私たちは自由化につながる不足払いはいけないと思っておりますので。
  49. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 関知いたしておりません。
  50. 津川武一

    津川委員 次は、転作でございます。どうしても私たちは、強制的な減反はいけない、農民の民主的な自主的な発意に基づいて進んで減反できるような体制をつくる、そうして減反に連れていく、こう考えているのです。したがって、いまの米が余っている現状を何とか打開しなきゃならぬと思って、私たちはそういう点でやる必要があると思います。  そこで、五十三年、転作はどうだったでございましょうかという問題なんです。農林水産省は、五十四年二月に「転作の現状とその推進の方向について」というものを出しております。そうしてこう言っております。国、都道府県、市町村、農業団体、農業関係機関の総力を挙げた取り組みと農業者の対策への理解によって、初年度としてはまずまず順調なスタートを切ったと思います。五十三年度の転作等は、上記のような成果を上げたと考えるが、他方では、農業者の取り組み方としても、なお、緊急避難的なものが一部にみられ、内容にも不安定な要素が少なくない実情だから何とかする、こう言っているわけでございます。この見方がいいかどうかという問題です。認識が正しくないと対策も正しく出てこないのです。  そこで、全国農業協同組合中央会がこの一月にやはりその検討をやっております。何と言っておるかというと、転作は行政の責任で実施すべきである、これが基本方針です。食管制度の堅持のためにわれわれも利用再編対策に取り組む、しかしながら再編対策の実施状況も、転作条件が未整備の状況のもとで残念ながらやられた、そのために多くは緊急的避難にとどまった、こう言っているわけなんです。政府は順調にまずまずいった、これはそうでしょう、面積からいくと。そして緊急避難的なものは一部だと言っている。全中は多くは大部分が緊急避難的だ、こう言っているわけです。やはり認識を変えてこういう人たち意見も聞いていただかなければならぬと思うのです。  もう一つ、ことし七九年の一月、青森県で減反を指導しておる農業改良普及所の県庁の職員が、県の普及事業協議会をつくって、千百二十戸の農家自分たちが足で歩いて聞き取り調査をやっております。これは専業農家三〇%、第一種兼業農家三〇%、そして第二種兼業農家三〇%、そして自分たちのような関係者が一〇%。この調査をやっているのですが、やるべきであるというのが六%、やるべきでないというのが三四%、進んで協力したという人が二一%、全然協力しなかったという人が一〇%、説得され仕方なくやったという人が六七・七%、こういうところなんです。割り当て面積がふえれば協力するというのが二四%、協力しないというのが七五%なんです。それであなたは出かせぎはどうだったかというと、水田利用再編対策の前は四一・四%、減反をやってから五八・六%、一七%ふえた。収入はどうか。減反でふえたというのは四・一%、減ったというのが六八・九%。この調査はマル・バツ式でどうかどうかと三つくらいやってそれにつけるのだから、私は必ずしも実態はつかんでないと思うところもあります。しかし、直接減反と取り組んだ改良普及所の職員が農民との聞き取りなのでかなり実態をつかまえていると思うのです。私は、そういう点で、政府は虚心坦懐になって農民たちと少しひざを交えて実態をやるべきだと思うのです。ときによるとサンプリング調査で、全国的な市町村の報告だとか農協の報告とかそういうものじゃなくして、サンプリングでやって実態を正しくつかまないと私は事が進まないと思うのです。こういう正しい実態をつかむ点で何らか考えてみないかということです。  その次、時間もあと五分と言ってきたから全部しゃべりますが、私はこの間岩手県の胆沢郡前沢の横道という部落に行ってきました。皆さん非常に喜んでおって、大豆が四百三キロ上げているのです。三百七十一キロ上げた人もある。平均して三百超しているんだな。すばらしいのです。どうしてこんなことになったかというと、初め町長が一生懸命言うものだからやってみた。どうせ荒らしづくりで状況を見ようと思ったら、豆が生えてきて枝がこう吹いて下に草が生えなくなって、これならやれるというので部落を挙げてやっているのです。この点で非常によくとれて、私もこういうところがみんな出てくれたならどんなにいいだろうと、原因をいろいろ聞いてみたのです。天候がよかったこと、水田に初めて植えたこと、いろいろなことがありましたけれども、皆さんが取り組んだ、本当にやる気になったということが結局こういうことになった第一の原因です。そこでどうしたかといったら、手植えなんです。手刈り。そして乾燥も自分たちが建ててしまだでやっている。もしこれが植える機械が、耕起する機械が、刈る機械があって、種が非常によく指導されて、技術の面が指導されて──これでつくった種はナンブシロメ。やってみたらかたくて短くて機械にかからないのです。そういう点で、本気になって取り組んでくれたならば私はいけると思うのです。したがって、今度このままでいいかというと、人手がよけいかかって非常に問題がある。私はこれを、具体的にこの部落が県と話をして、農林省もみこしを上げて具体的に指導してみて広めてくれたらいいと思うのです。この点が一つ。  第二番目には、大豆の試験研究でこの点の技術面、機械面、耕作面積を集める点で乾田化する点での問題と、シスト線虫の病虫害、こういう点をやらないと大豆の問題が進んでいかない、これが事例なんです。  それから今度はまずい事例。私の青森県南津軽郡の常盤村富柳というところなんです。四十五町歩全部やったんです。えらいものです。田は一枚もない。つくってないのです。それを全部去年は耕地整理をやって、耕地整理をやった後まだ分配もやらないでそこに麦をまいた、そして七月に麦を刈ってから後ソバを植える、こういうことなんですね。そこでソバが育っているかというと、まいてあれは皆無作になるのじゃないかという。ソバを植えてどうする。隣の浪岡というところで三千五百俵目指してソバを去年やって五十俵しか上がらないから、ここでやる気がないのだな。問題は緊急避難です。村長が来て、みんなで共同であんなところをやってくれれば一俵六百二十円出すし、村がよくなるのだから、これでやったわけです。さあやってみて、減反をやって、耕地整理をやって、麦をつくって、暗渠排水をやって、その後にソバをまいて、来年、再来年どうするかというと、田をつくるというのです。四十五町歩いまやっているけれども、この四十五町歩全部田がつぶれたらどうなるか、ここに農民の緊急避難面があるわけです。これはまだ分配も土地の配分も終わってないから、やはり具体的に指導して、どのくらいの生産を上げるか、配分してないちょうどいまだから、どこをどれだけ大豆にするのか、小麦にするのかという、営農指導等具体的にするならば問題が進むと思う。このままだとまた田に返る。だれも小麦をつくる腹がない。最高の減反奨励金をもらうためにこうなっているわけです。  したがって、現在の減反状況をどう見ているのかということと、この二つの事例に対する政府の具体的な指導方針を伺って、私の質問を終わります。
  51. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 お答え申し上げます。  最初先生が読み上げられましたのは「転作の現状とその推進の方向について」ということで、最近農林水産省の方で出した冊子のくだりだと思います。水田利用再編対策は五十三年度からやったわけでございますが、対策の初年度でもございますので、面積的には一一三%というのはこなしたわけでございますが、内容的には緊急避難的なものも相当見受けられるというふうに思います。ただ、その相当とか一部とかというのがどの程度のものであるかという広がりにつきましては十分把握はしておりませんが、相当そういうものも見受けられる、こういう認識に立っております。  したがいまして、五十四年度、第二年度目に入るわけでありますけれども、その際におきましては、この五十三年度の実態というものを踏まえて、さらに一層の転作の定着、それから推進、そういうものに取り組んでいきたい、こういうことでございます。
  52. 津川武一

    津川委員 二つの事例は……。
  53. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 一つは岩手県の前沢でございますけれども、この横道の部落でございますか、ここで大豆の転作をやられまして、平均的に言えば三百キロ、先ほど先生おっしゃいましたように非常に幅がありますけれども、平均的に言いましても三百キロの大豆の収穫があったということでございます。非常に積極的に意欲的に取り組んだ事例であろうということで、これは高く評価をいたしておるわけでございます。
  54. 津川武一

    津川委員 それは戦前の、手でやっているから、これを近代化するために援助することが必要だ。それから大豆の試験研究体制をどうやってどう進めるかということと、それからもう一つは富柳という青森県の……。
  55. 二瓶博

    ○二瓶政府委員 この前沢町横道部落につきましては、今後、病害虫の適期防除なりあるいは脱穀調製の機械化等、集団による共同作業のメリットを十分に生かしたやり方を行っていきたい、こういうふうに現地の方からは聞いております。  それから、病害虫の関係の方は、確かに昨年の場合大豆の病害虫としまして九州の方などにおきましてはハスモンヨトウというのも出ましたし、そのほかカメムシ、それから病害としては黒斑病というのもございました。紫斑病でございますかというのも出たケースもございますので、そういう大豆のいろいろな病害虫の面につきましては、さらに念を入れてこれの指導の方は十分やっていきたい、かように考えております。  以上かと思います。
  56. 堀川春彦

    ○堀川政府委員 試験研究の問題でございますが、大豆に関します試験研究、非常に広範でございますけれども、先生おっしゃるような病害虫の問題、排水の問題、その他たくさんございますので、私どもといたしましては、まず試験研究の体制の問題としては、農事試験場を、今度筑波に移転いたします畑作部を畑作研究センターというように改称します。そこに大豆の総合研究官を一人置きます。そのもとに大豆の研究室を新設いたします。そのほか中国の農業試験場、九州の農業試験場に大豆の研究体制を整備する。これは新規に人員を充足しましたりして研究に取りかかる。こういう体制整備をやるほか、畑虫害の研究室もいま申しました畑作研究センターに置くことにいたしておるわけでございます。  それから、五十四年度からおおむね十カ年を目途といたしまして、転換畑を主体といたします高度畑作技術の確立に関します研究を開始することにいたしておりまして、初年度予算五億五千四百万円でございます。この中におきまして、先ほどお話が出ております機械化の問題、機械作業あるいは作付体系の問題もこなしていくつもりでございますし、別途農蚕園芸局の方から機械化研究所に対します特別研究の助成というのをやっておりますが、この中でいま先生の御指摘になりました手刈り、手まき、こういうような問題を含めまして、特に収穫機でございますが、一千万円ぐらいの助成を機械化研究所に行いまして、いままでもずっと試験研究を続けてきておりますが、実用化できるような機械の開発を早急にやりたいということで進めておるわけでございます。
  57. 津川武一

    津川委員 富柳の状態、政府答弁できないようだから、後で文書で、指導して点検して私に報告してくださることを要求して終わります。
  58. 佐藤隆

    佐藤委員長 松沢俊昭君。
  59. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 きのうから同僚の議員の皆さんが質問しておられまして、大臣の答弁も聞いておりました。なかなかたくましい答弁もございますので、また実力大臣としてこれから農政のために大いに期待できる点もあるように考えられます。しかし、また一面、われわれ農村から出ているところの、農村の実態をつぶさに見てきている立場としましてはまだまだ理解がいかぬ面もあるわけでございまして、そういう点につきまして御質問を申し上げたいと思います。  まず第一点といたしましては、米の生産調整の問題であります。この問題につきましては、いまも御質問がございましたように、緊急避難的な転作というものも大分あったのじゃないか、こういうような御意見も出ております。  私も農村を回ってみましてそういう感じを非常に強く持っているわけでありまして、農林省の方からもらいましたところの資料を見ましても一一三%の達成率、これは数字上からいきますと、確かに一〇〇%割り当てしたのに一一三%達成したのですが、いま米が過剰である、この芝も否定できないわけでありますし、これにつきまして政府の方といたしましても大変苦慮しておられる。われわれもまた大変苦慮しておるわけなんであります。ですから、この問題をどう解決つけるかという手法の問題につきましてはいろいろあると思いますけれども、政府の方では減反でやっていこう、こういうお考えであるわけであります。  そこで、面積のパーセントは出ておりますけれども、その結果、えさがどうなったとか、豆がどうなったとか、なたねがどうなったとかというような作目の成績、そういうものは全然出てないわけなんでありまして、そういう点から、私も農村を回ってみまして、ある農協の生産調整をやって、そして米の減収、どの程度あったのかという、これは五、六百ぐらいの農協でありますが、四千二百万程度米の収入が減りました。転作をやって奨励金を幾らもらったかということになりましたところが千八百万円もらっている。だから、米の面におきましては差し引き二千万以上のマイナスということになっているわけであります。そこで、そのことによって、転作をやったわけでありますから、転作作目の成績は一体どうであったか、こういうことを聞きましたところが、その成績というのは非常に悪いということです。見るべき収入というのは余り期待できない、こういう状態であるわけです。  私はコシヒカリの新潟県の出身でございまして、去年から中川農林大臣ともいろいろ話し合いしたわけでありますけれども、北海道は三〇%もやっているんだ、ところが新潟県は五・九%なんだから、それは十分考慮してやっているんだ、こういうお話があったわけであります。しかし、五・九%であろうとも、転作条件のないところに転作面積の割り当てをするということはおかしいんじゃないか、こういうことでいろいろ議論をやったわけです。結果といたしまして、やはり転作条件がなかったために、たとえばたんぼにソバを植えた農家へ行きました。ところが、あれは山の荒れ地のところでつくればいっぱいできると思いますけれども、何しろ肥沃なたんぼを畑に切りかえてやったところが、花だけ咲いたけれども実はならず、こういう状態であった。  それから大豆、これをやったというところを聞きましたところが、これは新聞にも投書が出ました。それは三種混合ですね。とにかく、わせ、なかて、おく、これが全部まざった種、これじゃ収穫にならぬじゃないか、こういう批判もあったわけであります。  それから、これは農林省の方から出してもらったわけでありますけれども、えさですね、えさのうち青刈り稲というのがどのくらいになっているのかという調査であります。それによりますと十一万六千九百ヘクタール、そのうち青刈り稲が一万三千九百九十九ヘクタール、こうなっているわけであります。その中に新潟の場合を見ますと、二千三百六十四ヘクタール、そのうち千七百五ヘクタール、これが青刈りであるわけなんです。  こういうようなことを考えていきますと、減反というものは面積の上からするならば成功したように思われますけれども、しかし成果からいたしますと、所得の面からいたしますと必ずしもこれは成功していないじゃないか、こういうものをことしもやっていこうということになりますとこれは大変な問題があるのじゃないか、こんなぐあいに実は考えるわけであります。そういう点、大臣はどのようにお考えになっているかということが一つであります。  それからもう一つの問題は、これからやるに当たって農協の方も生産調整、さらに自主的に一〇%上乗せをさせる、これは現状の認識の面において一致したんだ、こういうさっきのお話がございましたけれども、しかし必ずしも農協の幹部がそう言ったからといって農家政府が現状認識は一致したということにはならないのじゃないか、こう思うわけなんであります。その点、農協がこう言ったから、だから一致したんだ、こういう結論の出し方というのは早計なんじゃないか、こんなぐあいに考えますので、その点大臣はどうお考えになっておるか、まず御質問申し上げたいと思います。
  60. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 転作の効果ということでございますが、これは御指摘のように、数量の面から言えば私は成功したと思います。しかし、あなたの言うように、それでは農家所得という点ではどうなんだというお話になりますと、これは人によっても違いますし、米をつくるよりもはるかに得だという農家もあります。われわれの知っている限りでも、たとえば酪農家などは七万円もらって牛のえさをつくれるということを非常に喜んでいる人が圧倒的に多い、これも事実であります。それから、小麦などをこしらえて、集団でやって、米八俵とるよりも小麦六俵とった方がよけいもうかったといって喜んで報告されていることもあります。かと思えば、いまお話しのように、ソバ等を植えてみた、ところがうまくいかなかった。大豆もやったけれども、成功した例もあるが失敗した例もある、これはまちまちだと私は思います。  全体的に申し上げますと、大体転作による稲作所得の減少額というのは大体三千三百億くらいであります。それについて転作奨励補助金が二千六百億円くらいということでございまして、あとそのほかに収入を上げたものがありますから、細かい計算はまだできておりませんが、大体とんとんくらいにはいっているのじゃないか。個別的に見ても農林省の生産調査を見ましても、十アール当たり米の場合は平均五百十二キロということで結局九万一千二百六十六円の所得、ところが小麦の場合は平均二百九十一キロですから、これは五俵弱くらいでも大体七万円の奨励金をもらうと十アール当たり所得が九万二千六百五十二円という平均が出ておりますので、これも大体五俵くらいで米並みくらいにはいっているのじゃないか。それから、大豆の場合は百九十五キロ、これはちょっと少ないのでございますが、少なくともこれは十アール当たりが大体三万八百二十八円くらいの生産調査所得でありますから、七万円でざっと約十万円ということで、平均をすると、大豆の場合は全体的には失敗したよりもよかったものの方がやや多いのじゃないかというような気がします。  個別、部分的な問題、地域的な問題になりますと、あなたのおっしゃったような例もいろいろあろうか、こう考えておるわけでございます。しかしながら、ともかくうまくいかなかったところもあるのだからもう転作なんかやめちゃったらいいじゃないかというようには、なかなか短絡的にはそうは結びつかないので、そういうように失敗しないように、いろいろな土地条件の整備を図ったり助成をしたり、技術指導その他、種もみの関係等も、おくてとわせと一緒にまじったようなものをまかされたって困るわけですから、そういうようなところできめ細かい指導を今後やって転作が定着をするようにしなければならぬ。そうでなければ、これは補助金がなくなったらすぐもとに戻るに決まっているわけですから、それじゃ本当に一時避難していたけれどもまたもとに戻っちゃったというようなことになっても困るから、転作作物が米よりも有利になるというようなことについて政府としては極力力を入れていきたい。そして、米についてはやはり良質な米が主力をなす。何と言ったって、米はコシヒカリだけではございませんけれども、私のところなんかもコシヒカリが圧倒的に多いのです。しかし、実際の値段から言うと、新潟県とやはり差が一俵千円ついてしまう、これは現実です。現実ですが、同じ米をつくるにしてもそういうように実力のあるところはやはり実力を発揮できるようにする必要がある、こう考えております。  それから、現状認識の問題で、農協がそういうような申し合わせをしたから、それだけで全部じゃないよ、私もそう思いますよ。全部じゃないと思う。思いますが、われわれとしては一戸一戸の農家と全部話をするということは言うべくして不可能なことであって、農協というものは生産者の代表としてわれわれは扱っておるわけでございますから、大体そういうようなところで大多数の、完全一致というわけにはいかないまでも大方の意見が反映されるものというふうに考えておるわけでございまして、今後ともいろいろと話し合いをしてお互いに、まあ立場も違いますから完全に一致というわけにもいかぬでしょうけれども、しかし客観的な事実は一つしかないのでございますから、それをどういうふうに見ていくかということについての認識の一致についての勉強会なりあるいは話し合いというものは継続をしてやってまいりたい。  いずれにしても、政府考えていることと大半の農家考えている現状認識がまるっきり違ったのではこれはうまくいくはずはないわけでありますから、米作と言っても大きな基幹産業になっていることは間違いないのであって、こういうものを守っていく点、どうすればいいのかというようなことなどについては今後とも意見の一致を見るように努力をしていきたい、かように考えております。
  61. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 確かに農業の土産のバランスというものを日本全体で考えていかなければならない、私も考えておきます。ですけれども去年、生産調整をやる場合、いろいろここでも議論したわけでありますけれども、農林省が五十年の三月三十一日に全国的に調査をいたしまして、それで水田のうち田畑輪換用の可能な面積というのは幾らであるか、こういう御調査をされたわけです。だから、可能な面積のあるところはこれはできる。しかし、可能な面積のないところはできない。そこで、全体的に見ますと、確かにあります。たとえば、新潟県なんかの場合におきましても五万九千五百三十六ヘクタールはあるのだ、こういうことであります。したがって、それを割り当てられたところの五・九%ですから、要するにそれをやれないという理屈はないじゃないか。これは上の方から見た場合にはそうなるのですよ。上の方からですよ。農林省の方から県を見た場合に、五万以下の面積しかやっていないのじゃないか、だからおまえさんのところ、やれないという話はないんだ、無理な押しつけを農林省はやっているわけじゃないんだ、これは確かに言えると思うのですよ。だけれども、今度は町村別に入りますと、まるっきり転作可能水田面積がないというところがあるわけですよ。あるところもありますね。たとえば、私の町なんかの場合におきましては、東の方は三五〇%もやっている。ところが、西の方はほとんどやれないからやらない。要するに、こういうばらつきが出てくるわけであります。やはり一つの町村でもそういうばらつきが出てくる。ましてや全県的に見ますとばらつきがあるわけです。そのばらつきのところにいろんな基準をつくって県の方で割り当てするわけでありますけれども、おまえのところは隣と比較した場合においては、面積の上においては不足なんだと県は言うのですよ。だけれども、現実にはそういう場所は全然ありませんよ、こういうことで、それが結果といたしましては青刈り稲というのが大変ふえたということです。そして、青刈り稲の実態を見ますと、各農家は契約書に判こを押し、役場の方に届ける、こうなっているわけですね。ところが、酪農やっているところの農家にみんな契約書に判こを押してくれということですね。判こをもらって、そしてそれを届けたわけなんです。そして、町の方はどうかといいますと、町の方では青刈り稲をえさにするんだというふうにして実は認めているわけですね。  だけれども、結果としてそれがえさになったかどうかという問題なんであります。そうすると、私も調べましたけれども、ほとんどえさになっていないのですよ。刈り捨てなんですね。こういうもったいない話というのはないんじゃないか。  それからもう一つ、私は聞いたのですよ。刈り捨てていいというふうに町村長は認めたのかどうか。確認しなければならぬということになっているんじゃないですか、えさにしたかしないか確認していく、こうなっているのじゃないか。ところが、町村長は何でもいいから刈ってくれというのですよ。上の方の指示なんだから何でもいいから刈ってくれ、刈れば七万円くれるからとにかく刈ってくれ、こういう話なんだ。それから、町村長にいろいろ聞いてみるのですよ。聞いてみると、確かにそれは無理なことはわかる。無理なことはわかるけれども、これは私は反対だとなりますと、そうすると、いろいろの補助金が今度来なくなるのではないか。だから、補助金をもらわなければならぬというところの立場からいくならば、これはやはり反対というわけにはいかないんじゃないですか、こういう話なんですね。現実にある部落に行きましたところが、農道にガードレールをつけてもらいたい。ところが、おまえのところは生産調整に協力していないから、何百万でもないのですけれども、何十万くらいですが、ガードレールはつけてやるわけにはいかない、こういう制裁措置があるために本当のことが言えないという状態になっているというのが今日の減反の実態なんじゃないかと私は思うのですよ。さっきも津川さんの方からも、いろいろ調査の資料が出されましたけれども、これではやはり農林省と農民が呼吸の合ったところの農政ということにはならぬじゃないか。やはり無理なものは無理なんだ。しかし、やれるところはひとつ協力してやってくれないか、こういう気持ちに大臣からなってもらわぬとこれはやはりなかなかうまくいかぬのじゃないか。しかも、そういう無理なことをやっているとするならば、やがては奨励金が打ち切られたところの段階に、またもとに戻るということになるんじゃないか。定着をさせるということであるならば、そういう要するに立地条件はどうなっているのだということをちゃんとお調べになって、そこまでわれわれ農林省としては言っているんじゃないというようなことを明確にしてもらいたい、こういうぐあいに考えるわけでありますが、その点は、どうでしょうか。
  62. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 御承知のとおり、最初は昭和四十五年にこれはスタートしたわけなんです。私が政務次官で責任者としてやったわけですから、そのときはもう緊急避難一本であって、休耕制度というものを認めてと、いずれにしても過剰累積は困るということでやって、一応需給のバランスがとれたのです。とれたのですが、それがまたここ数年来過剰累積というような形になってしまったわけです。これはまた食管制度に重大な影響を及ぼすし、農政の全体から見ても困るということで、今回はそういうような一時避難というものでなくて、将来も定着をするような水田利用再編成対策だということでやったわけです。でありますから、適地適産というようなことも十分配慮をして、先ほどもお話があったように、新潟県は米地帯であるし、うまい米もとれるし、しかも湿地帯のあるところも多いというようなことも勘案しまして、北海道が三十何%なら新潟県は五・九%というように、かなり差をつけましてそれらの転作面積の配分はやってはいるんですよ。ところが、やはり県の中でも町村によってはまるっきりむずかしいところもあるでしょう。町村の中でも部落によってはむずかしいところとむずかしくないところとあるでしょう。それはそれぞれの実情をよく知っておるところの市町村長、府県知事さんが実情に即してやっていただきたいということをお願いを申し上げてきたわけでございます。  ところが、村全部が全然転作できないというようなところがどれぐらいあるのか私よくわかりません。そういうようなところでも世間でみんなやっていることでもあるし、みんなでこれは守っていかなければならない制度だというようなことから、あるいはレンコンを入れるとか、コイを飼うとかドジョウを入れるとか養魚をやるとか、そういうところも私の方にもございます。それはそれぞれの地域に応じて米の生産過剰をなくそうということでやっておるわけですから、これはもう地域ごとにひとつお願いをしたいということを言っておるわけであります。大きな目的でやっておるので、本当に個別具体的な問題になると、部分的にはいま言ったようなところも私はないというふうには思いません。あるかもわかりません。あるかもわかりませんが、それに対しましては補助金も出しておることでもございますので、やはりおれだけはやらないんだ、ほかの人だけ全部やれと言われましても、それじゃ農民の中でぎくしゃくが起きますから、地域によっては共補償をやって、おれのところは人手の関係あるいは機械の関係その他でできない、あなたのところでうちの分まで持ってくれるなら一反歩当たり幾ら出しますよというようなことでやっているところもあるようです、きわめて現実的に。ですから、そこはお互い同士の助け合い運動みたいなものでもございますので、それぞれの実情に応じて所期の目的が達成するようにお願いをしたい。転作が定着するようにわれわれとしても今後ともいろいろな助成措置を講じてまいりたい、こう考えております。
  63. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 だから、私はそのできるところをやるなと言っておるわけじゃないのであって、できないところを農林省は無理してやらせているんではないのだということが末端の方に浸透していないという面が私はあると思うのですね。農林省の考え方というのは、やれないところに、条件のないところにやれなんということを言っているのじゃないんだ、そういう点を県に対して指示をしてもらいたいと思うのですよ。それからもう一つは、できないところにやらなかったから補助金は出さないよなんというような、そんなこそくなやり方を国の方では考えていないんだ、こういうことも明確に下の方に流してもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  64. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 市町村長なり府県知事がこの生産調整についていろいろな行政事務をやっておるということは、自治法における本来の産業振興に関する業務としておやりになっておることでございますから、それぞれのお考えによってどういうふうにやるか、ともかくある程度の公平確保の措置もやらなければ全体としての所期の目的を達しないというようなこともいろいろあって、それぞれの自治体ですから、やはり読んで字のごとしであって、それぞれの自治体の実情に合った方法をおやりになっておることでございますので、その内容について農林省としてはあれをやっちゃいかぬ、これをやっちゃいかぬということについて、その基本的なものはありますよ、ありますけれども、どこの部落はやらせなさい、どこの部落はやらせなくたっていいというようなことは私どもは申し上げる立場にはないわけです。
  65. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 私はどの部落とかどの町村とかということを言っているわけではないのです。いま大臣が言われたとおり、自治体ということなんでありますから、本来的に言うならば、これは機関委任事務でも何でもないわけですよ。だから、できないのはそれを返上しても差し支えないわけです、自治体の方としては。これは政府がやるわけですからね。だけれども、政府は県という自治体にお願いをし、県という自治体は市町村にお願いをしてやっているわけでしょう。お願いの筋というのは無理なところをやらせるということじゃないんだ、条件のないところをやらせるのではないんだ、あるいはまたそのことによって報復手段というものをかけるというようなことまでわれわれは考えているのではないんだ、そういう二つのものをきちんと、自治体に頼んでおられるわけだから、お願いしておられるわけだから、無理のない範囲においてやってもらいたい、こういう通達を出してもらわぬと、強権によって農民を抑えつけている、こういうふうに農民は受け取るわけです。現に町村長自体がそうですよ。私が回りましたところが、生産調整の事務補助費ですか、大体二十六万から三十五、六万ぐらいですね、これは国から県を通じてもらっているのです。ところが、この書類の処理というものが非常にむずかしいというのですよ。それで、ある村長は、これは一体どうしてくれるんだ、しようがないからパートを頼んでも、だめだ。それから、部落に生産調整をお願いするにしても、そういう計画書をつくるということに対して毎晩の集会だというのです。それで、三回ぐらい座談会に回ったというのです。小さい村ですけれども、事務処理をやっていくというのに、どうしてもしようがないから役場の職員を一人採用した。そういうものを全部勘定してみると九百万円ぐらいかかっていますよと言う。二十六万しかもらわぬのに九百万円もかけなければならぬ。この市町村の持ち出しというものを一体どうしてくれるんですかということで、私は何も政府機関でもありませんけれども、われわれに食いついてくるわけですね。もっともここは一〇〇%達成ですけれどもね。  そういうことで町村長自体がこの問題については大変に困っておられるわけなんです。そういう点はやはり考えてもらって、今度事務の補助というものをもうちょっと増すとかいうお話でございますけれども、これは十分考えてもらわなければなりませんし、われわれは無理なことは考えていないんだ、ただ米は要するに需給事情というものが大変余るような状態に入っているわけで、それで何とかしなければならぬということで御協力を願っているんだ、こういう趣旨の通達は出してもらっても一向差し支えないんじゃないですか。それとも強権によってやるんだ、渡辺大臣考え方であれば、これは出せない、こうなるわけです。どうでしょうか。
  66. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 たとえば新潟県が五・九%の転作率だ、北海道が三〇%だ。北海道だってこれは言い分があるわけですよ。何で新潟県が五・九で、北海道が何で三〇なんだという議論も裏返しをすれば私はあると思うのですよ。ところが、一番米作地帯というものがこの食管制度によって安心していることも事実なんですよ。だから、おれのところは全然やらないでいいんだ、ほかだけみんなやらせろと言ってもこれはなかなかむずかしいのですよ。しかし、政府としては極力それなりに立地条件やいろいろなものも考えて、新潟県などは少なくなっておるわけですよ。また、何が、どこが困難だといっても絶対的な基準のつくりようがないわけですよ。それは湿地帯であってもレンコンをつくれるところもあるし、コイを飼えるところもあるし、それからドジョウを飼えるところもあるわけですから。ですから、絶対にできないのだというふうなこともなかなかないということで、それは自治体の町村長なり県知事が、こっちの部落は全部やりたいからみんなやって割り当て量を一〇〇%こなしていればこっちの部落はやらなくたっていいというふうに決めてもそれは結構ですし、しかし、こっちの部落全部やらせるといっても多少はともかくおつき合いしてくれなければ不平不満が多くなってしまって村の中がもたない、それは公正確保という町村長の立場からして困るということになれば、何かやってくれという話も出るかもしらぬ。場所によって千差万別なんです。したがって、私が無理なことはするななんて通達を出すと、それによってかえって混乱なんかが起きる場合もあるわけですから、それは地方の実情によってやっていただくということが一番いい、こう思っておるわけです。
  67. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 ただ、これは強権によってやるのでなかったら、五・九%、それが悪いとかどうとか言っているわけじゃないのだから、その範囲のものをやるにしても、私たちは五・九をお願いしている、しているけれども、条件のないところまでやれとか、やらなかったから補助金を打ち切るとか、そんな考え方は毛頭ございませんというぐらいのことを、通達ができなかったならばこの場ではっきり言ってもらいたいと思うのですよ。
  68. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 だから、それはそれぞれの自治体の実情に応じて適正なことをそれぞれお考えになってやってもらって結構なんですよ。
  69. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それじゃ、補助金を打ち切るというようなことは、これはどういうことですか。ちゃちなガードレールの二十万か三十万のものまでも打ち切るなんというこそくな手段はやはりやらせるべきじゃないのじゃないですか。
  70. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それはそれぞれどんなことをやっているのか知りませんけれども、府県、市町村で公正確保の措置として一番いいと思うことをおやりになっているんだと思います。ですから私は、その自治体のことで余りそれ以上容喙はしたくない、こう思っています。
  71. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 それでは今度は、これはあなたのところへ福島潟の小熊新一郎さんという人が上申書という形で手紙を出しておられるはずなんですね。  御承知のように、福島潟というのは十三本の川があそこへ流れ込んでおりまして、越後平野の最も低いところのくぼ地、そして海抜マイナス六十センチ、こういう状態のところであります。干拓が始まったのが四十一年です。これはもちろん米をつくることを前提にして干拓をやったのです。この干拓地には溢流堤という、要するに堤防があるのです。これはあふれ流れる堤防ということになりますから、洪水時におきましては遊水地の役割りを果たさせる、こういう条件で干拓が行われてきたわけです。  それで、あなたのところへ手紙が届いていると思いますけれども、この人は七十四歳、奥さんが七十一歳、それから長男の妻が三十三歳、孫が小学校の六年生、四年生、一年生、こういう家族構成、こういうことであります。この人はもうここで八代目になる。そして、潟の外の方で農耕をやっておられまして、それから潟は、新井郷川漁業協同組合というものがございまして、そこで魚をとったりなんかしておられまして、それで生活をやってこられたわけです。それで、この人はその当時四百五十名の漁業協同組合の組合長の役割りをやってこられまして、漁業協同組合の立場からするならば、干拓に強く反対するものがあった。しかし、その当時、町内の責任者もやっておられたというような関係で、市役所へしょっちゅう行ったり来たりしておった。どうにもこうにも建設道路の用地というものが確保できないということで、農林省側でも大変困って、市役所の方に頼まれた。要するに、何とかしてくれということで、その世話役をさせられたわけですね。ところが、どうしても反対者が出たということで、仕方なしに八反四畝を提供して建設道路の建設に協力したわけなんです。  ところが、八反四畝を出してしまうということになりますと、非常に耕作反別が不足になってしまったわけです。そこで、せがれさんは、農業だけではとてもできないということで土木工事に従事をされました。ところが、四十六年十一月二十五日、このせがれさんは災害復旧工事に従事をしておりまして、それで不幸にも事故で即死をしたわけなんです。二十六歳なんです。子供三人あったわけです。大変だということになったわけでありますけれども、しかし、このおじいちゃんは、やがてこの干拓地が干拓されれば配分も受けられるわけなんだから、そうなれば何とかできるんだということで嫁を激励しながら今日まで来られた。  ところが、生産調整というのが始まりまして、結果といたしましては米をつくるな、こういう話になった。しかし、私としてはもともと米をつくるために、そのためにこそ八反四畝も提供したんだ。しかも、そのためにせがれまで失ってしまったんじゃないか。いまさら米をつくるなと言われてもしようがないじゃないかということで、イの一番で、干拓が完了するとトラクターを自分で買って一人で農耕をされたという、そういう経過があるわけなんです。  私は、そこで聞きたいわけなんでありますが、いろいろな紆余曲折がございまして、結果といたしましては三分の一程度はしようがない話じゃないかというようなことで、そこへ稲を植えさせることに話はついたわけなんです。ところが、その植えさせるところの区分けがつけられているわけだけれども、その外にこの小熊さんのたんぼがある。そこを耕した、これはけしからぬということで、いまこの土地の取り上げを県の方ではやろうとして、この人を被告人といたしまして告訴しているわけなんです。  こういう考えで見まするならば大変な問題があるわけでありまするが、私は冒頭に申し上げましたように、条件のないところに米以外のものをつくれと言ってもこれはなかなかむずかしいんだ。この場合におきましては農林省を信用しておったわけですね。とにかく建設に協力してくれということで、反対があるにもかかわらず、そして最後に、要するに自分のたんぼを八反四畝も出して建設道路に協力したわけでしょう。それは米をつくりたい一念でやったわけなんです。そのことによって農業経営が非常に縮小されて、せがれさんを土工に出して命を取り上げられてしまった。そして、ようやく干拓したというのに今度被告人にされるということは、これは一体どういうことなんだ。これは国営干拓地なんであります。これはやはり大臣としては十分お考えになってこの問題を決着をつけさせるように努力してもらわなければならぬじゃないか、私はそう思うわけなんです。問題は、正直者にばかを見せるな、こういうお話がございますけれども、こういうものこそ正直者にばかを見せるところの典型的な例じゃないかと思うのです。農林省は、いままで米の足りないときは米をつくれと言う。そして、供出をしなかったら強権発動。今度米が余るからといって、条件のないところでも転作をやれ、こういうやり方のために農民が大変不信を抱くことになると思うのです。  大臣農村のことをよくおわかりでありますから、この際、こういう問題はやはりよくないのだからということで、これに対するところの処理をしていただきたい、こういうぐあいにお願いするわけなんでございますが、どうでしょうか。
  72. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 個別案件については私はよく存じませんけれども、事務当局から答弁をさせます。ただ、一般論といたしましては、そのようなケースは全国各地にあるのです。国営事業が始まって、それが十年とか十五年とか長い年月かかるわけですから、スタートのころは米不足時代に実施設計をやって、計画して、建設が始まった。ところが、昭和四十五年になってああいうことで転作をやる。農林省は予算をつけない。ダムつくって何するのだということで、私の地域にもあるのですよ。いまたんぼつくるためにダムをつくったのに、今度はダムを途中でやめられたんじゃ困るわけですよ。したがって、今度は田畑輪換でなくて畑地灌漑だというようなことで、そのかわり面積はもっとふやす、最初と違うじゃないかという議論がいろいろあるわけですが、それは長い時間工事がかかったり何かする関係上、世の中がそのうち変わってしまったということは事実なんです。したがって、そういう面があることは間違いありませんが、しかし全体としてもそういうふうに変わってきたわけですから、別な方法を、何か生きる道を考えなければならぬということで、恐らくその工事も一札入っておるのじゃないかと思います、よく知らぬけれども。私のところなんか入っておるわけですから。事業を継続するためには計画変更をいたします、したがって予算をつけてください。みんな同意に基づいて計画変更をやっておるわけですから、大多数の土地改良参加者はそれに調印しておるというようなことで、中には反対ということも何%かあるでしょうが、みんなでそういうふうなことで工事を進めてきたわけですから、その点も御考慮いただかなければならぬ、こう思っております。
  73. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 この問題は、いずれ御本人も大臣のところへ来ると思いますので、なおお話を聞きまして対処をしてもらいたい、こう思っておるわけです。  時間がございませんから、さっきの食管の問題、それから米消費拡大の問題、私は米が過剰になる一番大きな原因というのは、米と小麦、穀類の中では競合するのですよ。小麦というのは、さっきの質問にもございましたように、どんどんふえてきておるわけなんでありますから、勢い米というのが過剰になっていく。これはだれが見てもわかると思うのです。もちろん嗜好の変化もある。これは十分理解ができるわけでありますけれども、しかし穀類全体が食生活の変化によって、ただ米だけでなしに、小麦なんかにしましても消費は減少しておるというふうに私は見ておるわけなんです。  そこで問題は、さっき酒の話が出ましたが、それは嗜好と、もう一つ価格の問題だ、こういうお話でございます。  昭和十八年に三条の政令が変わってアルコール添加をやっても差し支えない、こうなったわけですが、大臣の酒に対する認識は大間違いだと思うのです。ねばねばするというのでしょう。ねばねばするというのは、別に米でつくったからねばねばするんじゃありませんよ。委員長佐藤さんと私の地元に越乃寒梅という日本一いい酒がございますけれども、この酒は余りアルコール添加をやっていません。さらさらしていますよ。東の横綱と言われるんです。だから、そういう点では、ねばねばしているなんというのは大間違いなんでありまして、米でつくったやつは確かにうまいのです。そして、やはり相当のそれなりの技術というものも持っていなければならぬわけでございます。  そこで問題は、要するに、どうしてアルコール添加を変えることができないのかということです。やはりさっき言われましたように、原価が高くなる、こういうことだと私は思うのです。そこで、原価が高くなるというのも、いろいろ調べてみますと、確かに酒屋さんにとってはそんな高いところの材料というのは使いたくない、こうお考えになるのは当然だと思うのです。酒の一級、特級なんて書かれているところに成分の内容というのが出ておりますけれども、これによりますと、米、こうじ、それから醸造用アルコール、醸造用糖類、こう書かれているわけです。その糖類というのはきわめて安いのです。それは一キロ百五、六十円で手に入るんじゃないですか。アルコールもこれまたうんと安いので、リッターで二十円足らずじゃないですか。そういうものをまぜて、そうして酒だとして売る。これは確かに酒屋さんは米と変えるわけにはいかぬということになるじゃないですか。しかもそのアルコール、糖類というもののほとんどが外国から入ってきているわけなんです。だから、いま日本農業の危機だと言われるんだけれども、その危機だと言われるところの最大の原因というのは、酒に混入するところのそういうアルコール、ブドウ糖までが全部外国物だということなんです。これが要するに日本の酒を本当の酒にさせないところの原因ということになっているのじゃないですか。その辺をやはりもう一度検討してもらう必要というのがあるのじゃないか、こう思うわけでありますが、大臣はどうお考えになっているか。  それからもう一つ、食管の問題につきまして御質問申し上げます。  さっきの質問では、食管の根幹というのは、食糧管理法の第一条を読み上げられまして、そしてこれが根幹なんだ、こういうお話でございます。でありますけれども、価格の面をちゃんとあれすることになっているでしょう、「価格ノ調整並二配給ノ統制ヲ行フ」となっているのです。  価格というのは一体幾つありますか。政府価格というのが一つあります。それから自主流通米、価格というよりもこれは相場ですね。それから超過米、それから、さっき問題になっておりましたところのやみ米ということになるんじゃないですか。これは四つありますよ。この調整を図っておられるのですか。図っておられないと思うのです。だから、四つの調整を図っているのであれば、やみ米の価格までも調整を図っているということになるわけであって、これはおかしいと私は思うのですよ。それから、消費者価格、その問題につきましても、いま農協の方で一万五千円ぐらいで集荷しているのが、私も追跡調査してみましたけれども、大体都会の消費地では、白米にして十キロ四千五百円くらいしていますから、玄米に直しますと、一万五千円ぐらいで出したのが二万五千円ぐらいになっているのじゃないですか。こういう状態になっております。いままでは三千円ですか、消費者の指導価格が四・二%上がったわけですからね。だけれども、その指導価格どおりに買っているところの消費者がいるかということになりますと、聞いてみますと、ほとんど買っていないという実績も出てきているわけなんであります。そうなりますと、一ころわれわれの言っていたところの、食管を守るとか、食管の根幹だとか、こういうものとは異質のものになりつつあるのじゃないか、現実は。この現実をどういうふうにしていまの食管のところに戻していくかという努力がこれからのわれわれの大きな仕事なんじゃないか。政府の方としても、そういう面に対するところの検討というのはどういうふうにして行われておるのか、そういう点をひとつ御答弁を願いたいと思います。  それから、在庫がふえるというのは大変困った問題でありますが、しかし、ふえるわけなんですね。たとえば新潟県で百十二の市町村があります。粟島という島がありまして、これはほとんど米は出していないわけですから、実際上は百十一ということになる。ことし新潟県で、そのうちの四十九カ町村が限度数量を余したのです。ペナルティーがどうとかこうとかということでおどかされましたけれども、ペナルティーの一番問題点というのは、限度数量を減らされるかどうかという問題だったわけです。ところが、現実は四十九カ町村が限度数量を余してしまっているという状態です。だとすると、不作であったからという県あたりの話でありますけれども、不作だということになりますと、県内の反収ベストテン、それを見ましたところが、ほとんど限度数量を余したところの町村というのは、そのベストテンの中に入っているのです。だから、他の町村と比較して作はよかったということになるわけでしょう。にもかかわらず、限度数量は余すという現象が出ている。これは一体どういうことなんだろうかということなんです。そういうような状態ということは、結果的には在庫米をだんだんふやしていくということになるのじゃないですか。そうすると、これに対するところの対策をどうするかという問題が一つあるはずなんであります。そういう点は一体どうお考えになっているか。  それから、時間がありませんから皆質問しますけれども、たとえば逆ざや解消五カ年計画ということで、ことしは三年目ですか、そういうことで、この前の米価審議会で四・二%、二月一日から上げるということを政府が決められましたね。この逆ざやを全面的に解消してしまった場合、一体食管というのはどうなるのだろうか。食管を守るということになれば、やはり逆ざやというのはあってもやむを得ないのじゃないかと私は思うのです。ところが、それをみんな一緒にしてしまうということになれば、どこへ売ろうと同じだということになりますから、ますます食管の混乱ということを引き起こすことになるのじゃないか、こういう点はどうお考えになっているか。  それから最後に、農地法の問題も聞きたいのですが、もう時間がありませんからやめますが、これは当然渡辺大臣考えておられると思います。大平総理大臣も言っておられますけれども、防衛力というものは必ずしも軍事力だけではないのだ、やはりいろんな食糧の問題なんかも含めましたところの総合的な防衛力、こう言っておられるわけなんであります。私もやはりそのとおりだと思うのです。  そこで、防衛庁の方で分析したもの、これを見られましたか。これは昭和五十一年九月一日、「食糧輸入量に関する研究」、海上幕僚監部防衛部防衛課分析班、こういう班で分析したわけでありますけれども、それによりますと、沿洋漁業が現在の五〇%減、原油輸入が現在の五〇%減、そして食糧の輸入が五〇%減になった場合においては千百九十九カロリーという状態になる。ところが、昭和二十三年のあの食糧難時代のカロリーは千八百五十五だ、だから終戦直後よりもっと悪くなる。だから、これはやはり十分対処して考えていかなければいかぬじゃないか、こういう分析が行われているわけなんであります。  そういうことになりますと、いまの食糧の自給率、特に穀類の場合におきましては三七%と言われておるわけでありまするが、先進国の中でこんなに低いところの自給率は日本だけであります。ですから、この自給率を高めていく必要があるのじゃないか。とりわけ最近の国際情勢、大変厳しい状態に入っているわけなんであります。そういう中で日本の民族、日本国家を守るという立場に立って考えるならば、これは何とかしてもらわなければならないし、また考えていかなければならないし、食糧を供給するところの農林水産省としては、とりわけこの問題は十分考えていかなければならぬのじゃないか。そこで、考えるとするならば、それはどういうふうにして、いつごろまでにこういうふうにしていくという計画を立てられるのか、その点を明確にしてもらいたい。  以上であります。
  74. 佐藤隆

    佐藤委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  75. 佐藤隆

    佐藤委員長 速記を起こしてください。  この際、午後五時十分より再開することとし、暫時休憩いたします。     午後三時五十二分休憩      ————◇—————     午後五時十三分開議
  76. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  先刻の松沢君の質疑に対する答弁を求めます。渡辺農林水産大臣
  77. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほどの松沢委員の質問に対し、答弁申し上げます。  一つは、アルコールと酒という話でございますが、私がアルコールを抜いたお酒はべたべたして嗜好に合わなくなった。これは欄漫か何かのことしか私は知らなかったもので、認識不足で、新潟県にはべたべたしないお酒があるということを聞かされまして、これはやり方によってそういうものもできるということをよく認識を新たにしたわけでございます。しかしながら一番の問題は、何といっても価格の問題でございまして、私は、佐藤委員長も、実は何とかそういうふうなものに対して国の持っておるお米でいいようなものを主食の値段で売れないかということが一つ。それから、大蔵省に酒税を何か下げられないかというようなことも、実は政府としてではありませんが、党としてはいろいろといままでかけ合ってきておるいきさつもございます。ございますが、大変いろいろな面でむずかしく、進展を見てないわけでございますが、これらについては一つのアイデアでもございますし、何といっても酒屋さんは六十万トンも消費する大量の上得意でございますから、この酒屋がつぶれるようなことは、実際困るわけです。しかし、酒が余り高くなって売れなくなってつぶれるのでも、これも困る。そこらのところがどこらがいいことか、ひとつさらに検討を続けてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  それから、食管の根幹のお話があったわけでございますが、この根幹の堅持ということにつきましては、これは先ほども私、答弁を申し上げましたが、食管法第一条に言っているのが根幹である。しかしながら、生産者米価の買い入れ価格についてもあの中で書いてありまして、需給事情、経済事情、それから再生産というようなものを勘案をして決めるというようなことも私は根幹の中の一つであろう、こう思うわけであります。なお、消費者は家計米価というようなことも言っておりますが、それらも大体みんな同じような物の考え方ではないか、こう思っておるわけでございます。しかしながら、このように逆ざやを解消をしていったときには本当に流通がむちゃくちゃになるんじゃないか、これは実は大変論争のあるところでありまして、与党、政府の間においてもいろいろとこれは論争の実はあったところであります。しかしながら、食管の中では管理経費のようなものも当然持たれておるわけでございますから、かなりのまだ経費負担があるわけであって、過剰累積にさえなっておらなければ、私は流通面のむちゃくちゃな乱れというものについては、食管を守ろうという人がみんなで注意をしていけば何とかなるのではないかというように考えておるわけであります。しかしながら、きわめて専門的な問題もございますし、ことに生産地の米屋、小売屋ですね、生産地の小売屋さんは、逆ざやがあるから結局いいのだけれども、逆ざやが完全になくなった場合に、政府から小売屋さんが買わないで生産者から直接買ってくるのじゃないかというようなことを心配する向きもなくはありません。したがって、逆ざや解消後の食管のあり方はどういうふうにあった方がいいかというようなことも含めて、これは勉強をしなければいかぬ。われわれとしては、五年間という先の問題でございますから、一遍にそれらをなくすという考えはもちろん持っておらないわけであります。しかし、その先についてはやはり食管を、根幹を守りながらやっていくためにはどういうふうにしたらいいのかというようなことの勉強もしていきたい、こう考えておるわけでございます。  なお、在庫の問題で、新潟県の場合は四十九の町村が限度数量を余したということでございますが、新潟県全体からいたしますと、そう余ってはおらないわけであります。どこかで調整をしておるものと考えられます。  それから、自給率の問題、防衛庁が一時提案をいたしました食糧の安全確保と日本の安全保障というような問題で、カロリー計算等を出して、石油が半分とまった場合とか、輸入食糧がとまった場合とかというようないろいろな試算を出してあるわけであります。これはどこまでも試算でございまして、食糧がとまった場合よりも石油がとまった場合の方が事は重大だというふうに私は実は思っております。食糧も石油もとまらないようにすることが国としては外交の面からも一番大事なことでありますから、内閣を挙げて、もちろんそういうことをやっておるわけでございます。しかしながら、最悪の事態は、どこでどうなるかわからぬということも当然考えなければならないことでありまして、したがって、私どもといたしましては、でき得る限り国内で生産できるものは国内で生産をさせるような工夫をこらしておるところでございます。  また、米等についての備蓄ということにつきましても、このような過剰生産ぎみではございますが、やはりそういうような状態であっても、普通の商業ベースのローテーション用としてのお米は大体百万トンあればいいというのが専門家の意見でございますが、その倍の二百万トンぐらいを備蓄的物の考え方で持っていよう、こういうふうに思っておるわけであります。  このことも非常に問題があるのでありまして、備蓄と言うからには、当然その米は捨てるのではなくて食べてもらうということになりますが、過剰ぎみになりますと、古い米よりも新しい米を食わせろという声の方が優先をいたしますから、仮に百万トン持っておっても、それは備蓄というんだったら食べてもらうわけですが、最初から過剰ぎみなんだから新米を食わせろということになれば、持った米が困るという問題で、これはどういうふうにするか。食糧以外のもので処置しなければならぬということになると、これも備蓄と言えるのかどうかわかりません。しかし、いずれにいたしましても、安全保障という観点から、そういうような矛盾をも冒して二百万トンだけはともかく持っていようという考えを持っておるわけであります。  小麦につきましても二・六カ月分を現在も持っておりますし、万一の場合に備えてそれらの準備だけはおさおさ怠りなくやっているつもりでございます。  以上、不足のところがあれば事務当局から答弁をさせます。
  78. 松沢俊昭

    ○松沢(俊)委員 もう時間が来ておりますので、これでやめますけれども、やはり防衛力というのは軍事力だけではございませんのですから、そういう点で、農林省の方でも参事官ですかが、個人的に、その場合どうするかという処方せんのようなものを出しておられます。しかし、それはやはり個人的なものですから、政府としてもそういう不測の事態に備えるところの計画を当然立てておくべきじゃないかと思いますので、その点御検討いただきたいということを希望いたしまして、終わります。      ————◇—————
  79. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事江藤隆美君より、理事辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの江藤隆美君の理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 御異議なしと認めます。  よって、堀之内久男君を指名いたします。      ————◇—————
  82. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 農林水産業基本施策について、質疑を続行いたします。小川国彦君。
  83. 小川国彦

    ○小川(国)委員 農林大臣に質問させていただきたいと思いますが、あいにく私、予算委員会で空港問題の質疑の時間とこちらと、同じ時間にかち合ってしまいまして、同僚議員に大変御迷惑をおかけしましたことを最初におわびを申し上げさせていただきます。  私は、昭和五十四年度の食糧管理勘定の問題に触れていってみたいと思うのですが、ことしの国内産の管理勘定で約七千六億円、麦のあれで五百五十一億円というマイナスがあり、輸入食糧の管理勘定で八百八十八億円の黒字がありますが、合計で六千六百六十九億円というマイナスがあるわけです。五十二年度から繰り越しの三百八十億円を加えましても、やはり六千三百四十億円という赤字である。毎年このような赤字を繰り返している食管会計につきましては、国鉄や健保と並んで、食管のあり方というものに対していろいろな面から検討を加えなければならないのじゃないか、こういうことが指摘されているわけですが、私は、その中の卑近な一例として米の袋として使われております麻袋の購入の問題について質問をいたしたいと思うわけです。  麻袋の政府の買い入れ価格の推移を見ますと、昭和五十二年が、輸入価格が二百二十円でありましたものが、五十三年には二百十八円、五十四年には二百円を予定されていると言いますが、国産価格の場合には、昭和五十二年に三百十八円、五十三年には三百三十円、五十四年には三百三十五円を予定されているということでございますが、この数字はこのように理解してよろしゅうございますか。
  84. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 そのとおりでございます。
  85. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この麻袋は、いずれも六十キロ入りの麻袋の値段というふうに聞いておりますが、この使用状況を私の調査したところでは、五十三年の推定で約二千百九十万袋といいますか、それから国産が七百九十万袋、これが大体五十三年の実績ということでございますが、数字はこのように理解してよろしゅうございますか。
  86. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいまの数字は、自主流通米を入れた数字でございます。
  87. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうしますと、国産の麻袋を全部輸入に切りかえた場合、国産は輸入よりも一袋で百三十五円高いわけです。これをいまおっしゃった七百九十万袋の国産数で掛けますと、十億六千六百五十万円になるわけです。ですから、端的に申し上げますと、麻袋を全部輸入に切りかえれば、食管会計で直ちに十億円を上回る赤字が解消されるわけなんです。こういう対策はとれないものか。
  88. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 いま言われました十億余の節約ができるではないかというお話でございますが、これは食管の赤字ということになりますと、政府が買い入れるものだけでございますので、ラウンドで申し上げて恐縮ですが、約八億円の節約になるということになります。自主流通米を含めて十億円ということになるわけでございますので、政府が買い入れるものだけについて言えば八億円、それが食管特別会計に直接影響をするということでございます。  そこでお尋ねの、いずれにしても国産の麻袋と輸入の麻袋と両方使っておって、輸入麻袋の方が安いからこれに漸次切りかえるとか一気に切りかえるというようなことができないかというお尋ねでございますが、現在麻袋の製品の輸入は、タイとかインドあるいは中国から行っておるわけでございますが、これらの国は先進国と違いまして、それぞれ必要な場合に確実に手当てができるかどうかについては不安が残ります。国内生産というのは農産物の生産自体によりまして国内の使用量がかなり動きます。そういうこともございまして、輸出余力にも不安が残りますので、全面的にこれらの輸入麻袋に依存するということにつきましては、わが国でいざという場合に確実に入らない場合もあり得るということでございますので、問題が残るというように思います。  それからまた、もう一つの問題点は、国産麻袋の製造業者は長年にわたりまして米麦用の麻袋の製造を行ってきておるわけでございますが、現在でも製造設備を備えて多数の従業員、これは下請を含めまして、多数の従業員を雇って仕事をしておるわけでございますので、それらの点を考えますれば、一気に切りかえるということは雇用問題としてもいろいろ問題がございます。  ただ、私どもといたしましては、財政負担の軽減ということも確かに考えなければいけませんので、国産麻袋の買い入れ限定数量というのを毎年決めておりますが、これを漸減さしております。また、メーカー自体も他の、じゅうたんその他に転換をしておりまして、国産の麻袋は減らす方向で努力をいたしております。それらを考えまして、漸次減らしていく方向には努力をしたいと思うのでありますが、ただいま申し上げましたような困難な事情もありますので、実情に応じて措置をしてまいりたいと思っております。
  89. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いまの長官の答弁はちょっと合点がいかないのですが、万一の場合のために国産をつくっているというお話なんですけれども、私から言うまでもなく、麻袋あり、紙袋あり、樹脂袋あり、国内で袋は十分できるわけなんです。ですから、あえて万一のために高い国内産を買っていく必要はないんじゃないかというふうに思うのですが、基本的には、麻袋の国内産をやめれば食管会計で十億、もうすぐ赤字をそれだけなくすことができる、そういうところにやはり食糧庁は思いをいたさなければならないんじゃないかというふうに私は思うのです。  それで、どうしても解せないのは、輸入価格が二百二十円から二百十八円、二百円と、この三年間毎年値下がりをしてきているわけです。それなのに国産が三百十八円から三百三十円になり、三百三十五円というふうに、ただでさえ高い国内産が、輸入の二百円に比べれば、三百三十五円ですから百三十五円も高いわけです。高いところへもってきて毎年値上げをしてきている。これはどうしても解せないわけですね。高い麻袋であるところに、それをまた国内産を値上げしている。この値上げの根拠というのは一体どういうわけなんでしょうか。  それから、輸入が下がっているのに国内産が上がっているというのは一体どういうわけなんですか。
  90. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 国産麻袋は、原料のジュートをタイ、バングラデシュ等から輸入をいたしまして、それを紡績し、それから織って袋にしてという工程を経て製造されるわけでございますが、価格の積算に当たっては、原材料であるジュートの価格の低下は、いまの国内産の三百三十五円の中には約五%ぐらい低下をするというふうに最近の低下傾向は織り込んでおります。ただ、加工経費につきましては、賃金のアップ、これは五・九%ぐらい、それから卸売物価の低下は、これはマイナス一・四%ぐらいを織り込んでおります。それから、流通販売経費がかかるわけでございますが、これにつきましては、運賃が約六・五%上がる、それから保管料が四・八%というような引き上げ要因もございますし、反面、金利の低下がかなりございます。これらを織り込みまして、五十三年産の三百三十円に対しまして、いまの見込みでは、五十四年産につきましては三百三十五円予定をしておるわけでございます。五十四年産が最終的に正式に決定いたしますのは、これは米価と同時に決めるわけでございますが、メーカーが大体どの程度になるかというめどをつけて製造をするということも必要でございますので、現在の見込みとして三百三十五円ということを言っておるわけでございます。
  91. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私は、これはどうしても非常に不思議だと思うのですね。国内産にしても、原料は全部輸入でございますから、当然、輸入品が値下がれば原料も値下がりしていいわけなんですね。しかも、さっき言ったような輸入価格の実態を見ますと、輸入品というのは、さっき長官がお答えになったように、私が調べたところではタイから五〇%、インド、中国から大体二五%ずつ入ってきているわけです。それでこのタイでも、またインドしかりですが、最近はこれらの諸国でも人件費は上がってきているというのですね。ところが、人件費は上がってきているというのに輸入価格は二十円も下がっているわけなんです。しかも輸入品は、あのりっぱな、米を六十キロ入れる麻袋が二百円で入ってくる。しかも、その二百円の中には輸入関税ですかも入っているし、それから船の運賃も入っているし、向こうとこちらの陸上運賃も入っているし、原価を言うと、麻袋は一袋百円を割っているだろう。ちょうど、日本で言えばたばこ一箱にもならないぐらいの安い値段でタイもインドも中国も生産をしている。一体労働者の賃金はどこにあるかと思うような、百円を切った値段で現物はつくられているというのですね。ところが日本では、人件費が上がっているからということで、人件費を、加工経費を百九十円も見ているわけです。人件費だけで見れば、日本はタイやインドや中国の三倍もの人件費なんです。こんなに三倍も人件費が違うとはどうしても思えないのですよ。しかも、その百円を切っているもとの値段の中に材料費もあるわけですからね。そうすると、ざっと四倍ぐらいの人件費にもなってくるんじゃないか。それは不況もあるし、中小企業の育成もあるでしょうが、しかし輸入品がこんなにずっと下がってきているのに国内産をこんなに上げて高く買っているというのは、会計上どうもおかしいのではないかというふうに思うのですね。皆さんの方で、輸入品がこういう形ででき上がってきているのに国産価格を上げていくというのは、とう見ても割り切れないのですよ。  それで、もう一つ言うならば、その輸入をやっているところもつくっているところも、これは同じ会社なんですよ。麻袋の国産の取り扱いというのを調べてみましたら、小泉製麻というのが二八%、それから帝国産業というのが四〇%、大日繊維工業が二五%、日本製麻が七%、これは国産品をつくっている四社ですが、このうち、帝国産業というのは上場一部にのって株価三百四十二円という会社ですし、日本製麻は上場二部にのって株価二百六十九円という会社なんです。企業としても非常に安定しているのです。しかもこの四社が、小泉製麻にしろ、帝国産業にしろ、大日繊維工業にしろ、日本製麻にしろ、全部輸入を取り扱っているわけなんです。ですから、中小企業の保護育成ということもあるでしょうが、国の政策に協力をさせるためには、この四社は国産をやって、しかも輸入をやっているわけなんですから、その輸入がこんなに値下がりしてきているんだから、輸入が値下がりしてきているのに国産の方を上げるわけにいかぬ、こうやられるのが常識だと私は思うのですよ。これは余りにも過保護ではないか、こういうふうに思うのですね。  ですから、原価をちょっと出してもらいたいと思うのですよ。国産麻袋の原価と輸入麻袋の原価というのは一体どういうふうになっているのか。それから、いま言ったように、輸入をやっている会社も国産をやっている会社も全く同じこの四社だという状況の中で、この四社に輸入で全部やらせるならば、本来的には十億節約できるはずですよ。仮に、長官おっしゃるように半分国産を認めてやったにしても、半分切れば五億節約できるはずですよ。それは、不況の中で企業を守るのも大事だけれども、国民の貴重な税金を、さっき言ったように七千億近い赤字を出している食管の中で、五億なり節減できる、この十億という金は大きいと私は思うのですよね。一般の企業なら企業努力というものがあるのに食糧庁にはそういう努力はないのかというふうに、この数字を見ていると、その姿勢を疑わざるを得ないのです。しかも、ことしまた五円上げているのでしょう。五円上げた根拠というのがわからないですよ。この不況の中で人件費が上がっているところはないですよ。しかも、材料費は下がっているんですから。さっき言ったように、輸入国から見ると四倍もの人件費になる計算になるのですね。  この点、どういうふうにお考えになりますか。
  92. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 国産麻袋につきましては、先ほど申し上げましたような理由で、全部やめるというわけにはまいらないということで考えておりますし、また、下請を含めましてかなりの雇用を使っておりますので、減らすといたしましても、漸減していくという配慮が必要ではないかというように思っております。毎年、買い入れ限度数量といいますか、限度というものを決めておりますけれども、これは減らすようにしておりますので、御趣旨のような方向には進めていきたいというふうに思っております。  なお、賃金が非常に上がっておるじゃないかという点でございますが、先ほど申し上げました賃金のアップ五・九というのは、昨年の春闘のアップ率を見込んでおる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  93. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この五円を値上げしたという価格決定は、食糧庁の中ではどういうふうに検討をされて、最終的にはだれがこの五円値上げを認めたのか。何か聞くところによると、麻袋価格というのは食糧庁の企画課で米価と一緒に決定されるというのですが、五円値上げの決定というのは一体だれによって企画されて、だれによって決定されたか、最終決定の責任者はだれかということですけれども。
  94. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 これは通常の事務と同じでございまして、担当は企画課なりあるいは買入課が直接の担当でございまして、毎年米価の際に最終的に決めるわけでございますけれども、需要が集中しますので、いまから製造を始めなければいけないという業者の立場もございますので、今年度の見込みを例年予算編成時に内定をするわけでございますが、この段階ではもちろん食糧庁の方で決めますので、私ども責任を持っておりますし、なお、その過程におきましては財政当局とも協議をして決めておるわけでございます。
  95. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると、この最終決定は、通常のベースというと、これは企画課でこの内容を検討して、管理部に上げて、それから食糧庁の次長、長官、こういうふうに決めてきて、最終的には長官が決裁をするのですね。
  96. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 そのとおりでございます。
  97. 小川国彦

    ○小川(国)委員 その過程の中で、こういうふうに輸入品が下がってきているのに国産品を上げざるを得ないというような根拠ですね。さっきおっしゃられた人件費が、加工経費が五・九%とか流通経費が六・五%とかいって上げているのですが、仮に五円上げたにしましても、七百九十万袋ですから八百万袋と見れば四千万円ですよね。五円上げたことによって四千万円ことしはまたよけいに食管会計から金が出るわけですよ。なぜ五円の値上げを抑えることができなかったかというんです。輸入品がこれだけ安いのです。百三十五円も値段が違う中で、しかも同じ会社がやっているわけですよ。国民のために税金を節約しなければならぬという立場に立つならば、去年からことし五円上げなければならぬという理由は私は見当たらないと思うのですよ。食管会計でことしまた一兆円も出してこれだけのあれをするし、第三次の問題がまた起こるかどうかというおそれがあるときに、こういうふうに食管会計の通常会計の中で値上げせざるを得ない理由というのは合点がいかないのですね。これは内部で、国産を上げていくデータを出してもらいたいと思いますね。原材料は五円下がって、加工経費が九円上がっているのですね。それから、流通販売経費が一円上がっているのですよ。これは輸入品の労賃を勘案して考えてはみなかったのですか。タイや中国の労働者には百円切ったような値段でつくらしておいて、日本の国産でつくるのは三百三十五円もで、こんな百三十五円も高いものでやっていてこれを不思議に思わないのですか。
  98. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 労賃は、直接輸出国の労賃とわが国の労賃を対比して決めておるわけではございませんが、輸入価格の中には相手国の労賃も当然織り込まれて決まってくるわけでございますので、私どもとしましてはもちろん向こうの労賃の事情等も一般的には調べますけれども、直接何倍だから高いとか低いとかいうようなことをやっておるわけではございません。タイなりあるいはバングラデシュとかインドとかいう国の労賃は、恐らくそれはわが国の場合に比べれば著しく低いだろうというふうには思っております。  なお、先ほど申し上げましたように、国内の加工経費あるいは流通販売経費は上がっておりますけれども、原材料価格自体は下げておるわけでございまして、これは円高による低下分も織り込まれて見込んでおるわけでございます。
  99. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私が言っているのは、国内産の織物の原材料は幾らか、それから輸入品の織物の原材料は幾らか、それから国内産、輸入品のそれぞれ加工料は幾らか、燃料費は幾らか、こういう積算をしていけばおのずから結論は出ると思うのですよ。こんなふうに上げていかざるを得ないという状況はないのですよ。そういう対比はやっていますか。国内産の織物の原材料はそれぞれ幾らか、それから加工料は幾らか、燃料費は幾らか、こういう対比を輸入品と国内産でそれぞれちゃんとやっておりますか。
  100. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 それぞれ積み上げをやっておるわけでございまして、国産品の原材料費というのはジュートの輸入価格でございますから、あとの加工経費、流通販売経費はもちろん国内の経費でございますけれども、原材料費というのは、ジュートは輸入するわけでございますから、これは輸入品の価格、その中に先ほど言いましたように相手国の労賃等も、積み出しのための経費とか輸送経費とか、そういうものは全部入っておるわけでございます。
  101. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私が言っておりますのは、国産だけじゃなくて、輸入品の場合ももちろんジュートの単価があって、それから加工があって、それから燃料費があっていくわけですよ。だから、輸入品の二百円という値段はどういうふうにしてでき上がっているのか、それから、こちらの三百三十五円というものはどうしてでき上がっているのか、お互いの一つ一つの原材料なり加工費なり光熱費なりを対比してきちっといけばどこに無理があるかわかると思うのですよ。これはひとつ資料で出してくださいませんか。そういう資料がおありになるのでしょう。
  102. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 輸入製品の輸入価格、輸入麻袋の価格は、もちろん製品の輸入価格、これには輸出国におきます原料費と、それから加工経費、流通経費、その中にはもちろん労賃も入っておるわけでございます。それらを最近の傾向を見まして、円高ということも考えまして最近のレートで見まして百四十四円が百二十円に下がるというような見込みを立てておるわけでございまして、あとは輸入されました製品価格のほかに、港湾の諸経費なり仕分け工場の経費や国内の流通販売経費、そういうものが加わりまして二百円ということでございます。それぞれ積み上げはやっておるわけでございます。
  103. 小川国彦

    ○小川(国)委員 輸入品の場合は、ともかく二百円のうち輸入諸経費を除けば百円を切っているというのですよ。八十円ぐらいかもしれないというのですよ。それと三百三十五円の間に、いま言ったジュートの原料費を除いたにしても、片方が八十円で片方が三百円とすれば、そこのところに問題点はおのずからわかるんじゃないか。そういうことを皆さんの方できちっと検討すればこの値上げが妥当かどうか、適正かどうかという判断が食糧庁の中で出てこなければならないと思うのです。そういう検討はされているのかということを聞いているのです。
  104. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 いまの輸入品につきましては、確かに八十円ぐらい輸入価格に上乗せが行われまして国内価格が二百円になっておりますし、それから国産品につきましては原材料費、これは輸入原材料の価格でございますが、それに国内の加工経費と流通販売経費だけ足しますと二百四十四円ということになりまして、八十円と二百四十四円と、確かに国産品の場合の方が高くなっておりますけれども、これは先ほど言いましたように原材料からの加工でございますし、製品の輸入したものについての国内での諸経費につきましてはそういう加工過程はないわけでございますので、せいぜい仕分け工場での仕分けの関係の経費とあとは港湾諸経費とか、あと流通関係ということでございますので、その間の違いがあるというのは当然だと思いますが、経費の中身が違うわけでございますから直ちに対比はできないと思いますが、私どもといたしましてはそれぞれ積み上げ計算の上、算出をしておるということでございます。
  105. 小川国彦

    ○小川(国)委員 この八十円と二百四十四円のこの三年間の中身、この数字の仕分け、これは資料でお出し願えますか。
  106. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 提出できます。
  107. 小川国彦

    ○小川(国)委員 それからもう一つ、いま原料のジュートは輸入している、こういうお話なんですけれども、私ども聞くところによりますと、私も現物見て知っておりますが、麻袋の国産には真ん中に赤筋が二本入っているわけですね。しかし、輸入品には赤筋が一本、こういうことになっているわけですね。それから、わきの糸でたしかメーカーがわかる。輸入品、国産品、それぞれの糸の色でメーカーがわかる。ともかく国産と輸入の仕分けは、真ん中に赤筋が二本入っているか一本入っているかで国産か輸入かが判別できるようになっているわけなんですね。  ところが一つの疑念は、国産品が果たして国内で全部つくられているのかどうか、疑えばですよ。だって、たとえば八十円で中国なりインドなりタイでできるものを日本では三百三十五円しているのですから、それをそのまま半製品を持ってきて、ジュートを輸入してジュートからやるのではなくて、もう布になったやつを持ってきて、それを日本で両端だけミシンをかければ、これは製品になるわけです。ですから、材料を輸入しているのか、あるいは疑念としてあるのは原反を輸入している場合もあるのじゃないか。そうすると、これはいま言った三百三十五円なんてものではなくて、取扱者がきわめて不当な利益を得ているのではないかという疑いが持たれるわけなんです。  ですから、そういう点から言うならば、食糧庁は、輸入品は半製品が輸入されていない、こう言い得るようなきちんとしたチェックはしておられるのかどうか。
  108. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 製品輸入したものにつきましては、あるいは国内で生産されたものもそうでございますが、穀物検定協会という検定機関がございまして、これが一枚ずつ全部検査をしておるということでございますので、輸入品が国産品ということで流通するということはまずないと思いますし、そのようなうわさも私ども寡聞にしてまだ聞いたことはないわけでございます。  それから、半製品で入ってそれが簡単な加工過程を経て最終製品になっているような例はないか、チェックの仕組みはどうなっているのかということですが、私ども製造工場に対しまして毎月一回立ち入り検査をやっておりますので、そのような点のないようにチェックはしておるつもりでございます。
  109. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いま穀物検定協会ということをおっしゃられたのですが、これはいわば国内の波打ち際で検査をなさる機関なんです。しかし、海外でやはり検査をする機関というのがあるはずです。食糧庁は暗黙のうちに海外でもこれを検査をするということを指導しておられると思うのですが、そういう海外と国内と、二段におけるチェックというのは行われておりますか。
  110. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 海外貨物検定協会というのがございまして、これが輸出国におきまして検定をいたしております。したがって、二重の検定、国内におきましては穀物検定協会、それから輸出国におきましては海外貨物検定協会というので二重の検査をしておるわけでございます。
  111. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうしますと、タイなりインドなり中国なりから、海外貨物検定協会の検査された輸入品の数字ですね。それから、日本の穀物検定協会ですか、穀検、ここのそれぞれチェックした数字の照合というのはきちんとやっておられますか。
  112. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 穀物検定協会が両者をチェックしておることになっております。
  113. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いや、穀物検定協会は食糧庁ではないのですよ。委託を受けた検査機関なんですね。その委託を受けた検査機関が二つをやっていると言っても、これは検査にならないわけです。やはり海外の検査は海外の検査、国内の検査は国内の検査、その両方食糧庁がチェックして初めてそういう疑いはないということが言えるわけなんですが、その両方を一方に任せてあったのでは、これは検定をしていることにならないと思うのですがね。
  114. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 国産品につきましても穀物検定協会がチェックいたしておりますので、全体の流通量の中で輸入品が幾らということはわかるわけでございます。輸入品につきましても穀物検定協会が全部チェックするということでございますので、いま言いましたようなチェックの方法で、半製品が入ってくるということは防止できるのではないかというふうに思います。
  115. 小川国彦

    ○小川(国)委員 そうすると結論として、食糧庁としては確認をしていない、こういうことになりますね。
  116. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 穀検をしてやらしておるということでございます。
  117. 小川国彦

    ○小川(国)委員 間接的に検定をしているということですね。だから、これはさっきおっしゃったように、長官がそういうことはない。私もあっては困る、こういうふうに思いますが、現実には食糧庁としては言い切れないわけですよ。いわば穀物検定協会に任せて、海外検査もそこから先に委託をしているわけですから、そこで数字は合ってますという報告を受ければ、食糧庁はそれを信ずる以外にないわけなんです。これでは私は、半製品を輸入してないということは食糧庁として断言できないと思うのですよ。だから、そういうところにやはり疑惑が持たれているわけです。輸入製品を持ってきて、悪い推測ですが、当たっては困る推測ですけれども、輸入製品を持ってきて国産だと売れば、さっき言ったように中小企業の育成どころか、ぬれ手でアワのような利益を企業が受ける、こういうことになってしまうわけです。そういうずさんな検定では、私の言った疑念、疑惑というものは解明されないと思うのですよ。これは念のために、穀物検定協会が検定した数量と、それから委託した海外検定協会ですか、その検定した数字を食糧庁は確認してないのじゃないかと私は思うのですがね。  ですからその点では、私はこの麻袋の輸入については非常に疑惑を持たれやすいというのはそういう点にあるのではないかというふうに思うわけなんです。もちろんいままでの問題として、この検定の数量についてもう一遍きちっと確認をしてもらいたいと思うのですが、これは食糧庁としておやりになれますか。
  118. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 いまのような疑惑があるということは、私も初めて聞きました。御指摘のようなことがあってはならないことでございますので、私どもの方でも十分確認をし、監督をしてみたいと思います。
  119. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私がいろいろな風評で聞いた中では、いま申し上げたような輸入品がきわめて安くなってきている状況の中で国産品が上がっているという中には、食糧庁の幹部と、あるいはまた ○Bか知りませんけれども、こういう業界との癒着が非常にあるのじゃないか、うわさですがね。ある人がやめ際に五円上げていったといううわさまで流れてきているわけです。こういうことが流れるということは、私はやはり食管行政のあり方に国民が疑惑を持つのじゃないか。  それからもう一つ私は、一体これらの四社は輸入でどれだけ利益を上げ、それから国産でどれだけ利益を上げているかというのを調べたいと思って、各社の有価証券報告書をとって調べたわけなんです。そうしたら、輸入をし、かつ国産をしている会社の役員の方にやはり現職の自民党の国会議員の方が役員になっているのですね。こういうことは、大臣の場合は、これは渡辺大臣もそうですが、大臣に就任した場合は国と取引のあるいろいろな関係会社の役員というのはおやめになるというのが政治道義の常識になっているわけですね。それからまた、地方自治法で言うならば、地方議会議員はこういう都道府県と請負関係にある、取引関係にある会社の役員というのは、議員になったときに辞職をするようになっているのです。残念ながら国会議員の場合は、大臣の道義的な措置を除いては直ちにやめるという規定はないのです。規定はないけれども、道義上考えてみて、しかも、こういうふうな疑惑を持たれて、国産が上がっていっている。そういう国産の会社の役員に国会議員が名を連ねているというのはよくないというように思うのです。  いずれにしましても、私はこういうふうな業界の行き方に対して、あるいはまた食糧庁の行政のあり方に対して、渡辺大臣として、この辺はもう少し食管会計を国民に向いた食管会計という形に、明朗な食管会計にしていくためには、こういういろいろな輸入の検査のずさんさ、あるいは価格決定の不明朗なうわさが流れるということ、こういうようなことを許しておいてはならないのではないか、こういうように私は思うのですが、大臣は就任早々でございますけれども、このいまの論議の経過をお聞きになって、大臣としてこの食糧庁の行政のあり方を今後の措置として一体どういうふうにお考えになるか、その点をひとつ。
  120. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 そういうお話になると私もとんとわからないので、本当に申しわけないわけでございますが、確かにあなたがおっしゃったように、昭和五十年度では約三千万枚弱の国産麻袋があった。輸入はゼロだった。五十一年から大体七、三というように分けて、国内三割、輸入七割、五十二も五十三も数量は二千万枚ぐらい減っておりますが、そういうように分けたものと思います。したがって、確かに国産を扱っておった人は、それだけならばそれはえらい打撃を受けたでしょう。輸入の方は全然ゼロのものが急激にふえたわけですから、それはプラスになったでしょう。たまたまあなたがおっしゃるように同じ業者が両方どれぐらいの比率でやっておったのか、そこのところの問題もございますから、一概に私はどうとも申し上げられませんが、まあ国産の業者の問題も、一遍に急激なことは、何十年もつき合っておってなかなかできなかったという点もあると私は思いますよ。あると思いますが、いずれにせよ何十億円か、三十億円か四十億円か知りませんが、それぐらいの買い物をしているわけですから、その中で、国民の金を使って買うわけですから、不合理なものがあることはこれは改めなければいかぬと私は思います。いま初めて聞いた話なので、詳しいことを申し上げられないのは残念ですが、一遍私の方で、食管ばかりでなくて全体の問題について、そういうような購入とかいろいろなものがあるでしょうが、調べてみたい、こう思います。それで適切な措置を講じるつもりであります。
  121. 小川国彦

    ○小川(国)委員 いま大臣が国産の長い経過もあった、こういうふうにおっしゃられたのですが、さっき申し上げたように、国産品をつくっている四社が即輸入品を取り扱っているわけですね。国産品が減退して数が減ってきても輸入品の取り扱い数量がふえておるわけなんです。ですから、若干マージンの相違や移動はあっても、どちらか流れはあるわけで、利幅は減っていっても一方でまた利益が上げられるわけですね。さっき長官は、これはだんだんとできるだけ輸入にかえていくことが望ましいというような発言をなすったのですが、さっき申し上げたように、国産を半減すればそれだけで五億浮くわけでございます。全部やめれば十億になるわけです。ですから、渡辺大臣は大胆な思い切った発想をされる大臣ですから、この点にもずばっとひとつ内容にもメスを入れて、そうして、これに対する明快な措置なり回答が出されるように私は期待をしたいわけなんですが、大臣にそういう取り組みの決意をひとつ聞かせていただきたい。
  122. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 実情をよく調べて、明快な答えを出します。
  123. 小川国彦

    ○小川(国)委員 次に、過剰米対策の問題に入っていきたいというふうに思うわけでございますが、食糧庁の方針では五年間で四百八十万トンということで工業用、輸出用、飼料用の中にやっていくわけですが、私どもはこの中でまず輸出用の百万トンというのはちょっと見通しが暗いのじゃないか。韓国にしてもフィリピンにしても米の輸出国になっていますし、それからまた四十三年から四十九年までのわが国からの輸出実績で、三百八万九千トンのうち、韓国向けが百三十九万三千トン、フィリピン向けが二十一万四千トンというふうに出ているほか、その他の国々も米はもう余ってきているという状況の中で、これは簡潔に答弁いただきたいのですが、百万トンはどういう国にどの程度ずつ輸出される見通しを持っておられるか、その国名とそれからトン数ですね、これを。
  124. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 具体的に国別に見通しを立てているわけではございません。前回は三百数十万トンの輸出をやったわけでございますが、前回の処理の場合にもやったわけでございますが、今回は環境は確かに前回よりは厳しくなっております。各国とも自給率を達成したところがかなり出てきておりますし、特にことしは、昨年産米が世界的に最高の水準でございましたので、輸出先を探すのはなかなか苦労が多いと思いますが、ただ東南アジアを中心といたしました米の生産は年によってかなり振れがございます。豊作のときばかりではございませんので、二十万トン程度のものは──全部で百万トン、五カ年間でございますので、一年間に直しますと平均二十万トンでございます。これは無償援助ということも含めまして、努力をすれば決して達成がとても不可能だという数字ではないというふうに思っております。
  125. 小川国彦

    ○小川(国)委員 数量はあっても国もわからずということでは、これは非常に厳しいというふうに思うのです。  もう一つ、えさ用の問題ですけれども、処分価格が二万二千九百円に対して紅がら染めの処分経費が二万六千百円ということになると、一トン当たり三千二百円損をするわけです。ゼロならまだしも、もう三千二百円もよけいに支出をしなければならないということは、赤字の上にまた赤字を上塗りするようで、これは言葉は悪いですが、放棄して捨ててしまった方がゼロで済むのじゃないかというふうに思うのですが、この辺はもう少し知恵がなかったものかというふうに思うのですけれども。
  126. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 確かに、えさに過剰米の処分をいたしますと一番損失が大きいわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、国内原料用にまずできるだけ充てていく。次いで輸出用に充てる。どうしても処分の用途が見つからない場合に飼料用に回すというような優先順位で考えていきたいと思います。ただいまおっしゃいました処分経費は保管料も入っておりますので、海に捨てたらどうかという極端な議論をなさる方がございますが、海の真ん中へ持っていって捨てた場合の経費とを比べますと、いま飼料価格は極端に下がっておりますけれども、いつもこう安いとは限らないと思いますけれども、いまの価格で見ましても、やはり海中投棄するよりは損は少なくて済むのではないかというように思っております。
  127. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私はこれは大臣にお伺いしたいんですが、そう言っては何ですが、どうも今度の処理方針の中で、もう少し思い切って大胆な発想というのが渡辺農林水産大臣のもとで生まれてこなかったのか。こう言っては何ですが、そういう従来の官僚的な手法というか考え方でいっていると、これはまた第三次処理というような問題が起こるおそれもある。  これは大臣にひとつ提言なんですけれども、従来から言われているアルコール添加を廃止すると、いま六十万トン酒米を使っているところへプラス四十万トンの拡大になるじゃないか、アルコールを全部やめて全部米の酒にしたら。アルコールを白米一トンに百二十リットル添加してつくった一級酒は、一升、一・八リットル千四百五十五円、純米酒は千八百二十五円ということで、私は新潟県の幻の銘酒といわれる越乃寒梅という会社に電話をかけて聞いたら、一升で三百七十円しか高くないと言うんですね。そうすると、これはいま言ったようにトン当たり三千二百円も損失を出してマイナス処分をするえさ用のことを考えたら、思い切って酒造組合にでも払い下げる。しかも、酒造組合の方では希望は六十キロ三千五百円くらいの米ならアルコールにかわって使えるということを言ったり陳情したりしているようなんですね。ですから私は、ゼロになったり捨てたり、あるいはまた損失を考えたりするならば、思い切ってアルコールから純米酒、全部米の酒に転換するというようなことを、これは大臣のお考えとしておやりになれないか、どうかです。
  128. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 できることならば私もそう思いますが、いままで聞いたところでは、古米、古々米はどうも喜ばない。特に酒屋は新米を使っておるわけです。ですから、いま処分する話のやつは古々米、古々々々米みたいな話ですから、そいつは酒にはなかなか回らない。新米は今度は需給をきちっと押さえていくわけですから、余らないようにする。ですから、そこらのところにむずかしい問題があります。ありますが、そういうように工業用で、古々米で結構です、酒につくりますというようなことがありますれば、御相談に応じます。
  129. 小川国彦

    ○小川(国)委員 これは大臣、私にむずかしい注文を出しているようなんですが、古米とか古々米が酒に使えるとは私も思ってないわけなんです。やはりそれは大臣言われるように、新米でなければうまい酒にならない、こういうことなんですが、私が心配しているのは、もう一回米が余るような事態が起こるんじゃないか。それを考えたら思い切って新米の方を酒の方に回して、この際は一応国民ががまんをする。古米から古々米にしても、これもやはり大臣の英断で思い切って値段を下げる。これは物価値上げに反対している消費者に、大臣の思い切った大胆な発想だといって歓迎されるように古米、古々米を思い切って値引いて出す。新米は、これは酒飲みにサービスするようで、大臣はお酒飲むかどうかわかりませんが、酒飲まない私としても不本意ですけれども、この際、総体的な処理としてはそういうことも考えなければならないのじゃないかと思うのですが、この点について今度の処理の三方針、三つの用途というのはどうももう少し頭をひねる必要があるのじゃないかというような感じがするので、大臣にも一ひねりも二ひねりもお願いして、こういうこともお考えになってみていただけないか。
  130. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 先ほど言ったように、損得の話をしては申しわけないのだけれども、生産調整を補助金をやって農転で別なものをつくらせる、こういうことをいまやっているわけですね。ですから、それがうまくいけば余らないわけですから、新米を酒屋に回してしまったら国民に古米を食わせる話になっちゃってこれもだめということですが、仮によけいにできた場合、生産調整をやらなくてもその分酒屋が引き取るという場合、政府の支出はどっちが安いか、これも研究をしてみなければちょっとここでは申し上げられない。しかし、なかなかむずかしい問題があると思いますよ。素人の、と言ってはしかられますが、ちょっと思いつきのようなわけにはなかなかいかないのじゃないか。しかし、いずれ小川さんの研究の成果があれば私もお知恵を拝借しますから、何もこの席でなくとも、いい話があったならば国のためになることは私は喜んでお聞きしますし、よいということになれば実行させますから、この時間のないときでなくて、時間をたっぷりとってひとつゆっくり教えてもらいたい、かように思います。
  131. 小川国彦

    ○小川(国)委員 私も一生懸命知恵をしぼりまして、いろいろな酒造屋さんを回ったり酒造組合の御意見を聞いたり、それから「世界の酒」「日本の酒」というんですか、坂口謹一郎という東大の名誉教授で醸造の権威にもお伺いして話を聞いたんですが、それもいい案だ。日本の酒の第一人者が、全部米にするのもいい案だ、それで、いまアルコールになじんだという人も多いけれども、この秋とれた米で仕込んで、夏いっぱい貯蔵を十分やって、秋になって出せばアルコール添加と同じような味になると言うんです。だから、これはやり方によってはできる。ただ問題は、そのときの酒屋さんに払い下げる米の値段が安くないと大変だ、こういうことのようでございますので、この点はまた大臣ととっくりともども研究させていただきたい。食糧庁でもひとつぜひ取り組んでいただきたいと思うのです。  それからその次に、これも新大臣に、私は過大な期待をするわけではないんですが、そう言っては失礼ですが、青嵐会で勇名をはせている大臣なんで、大胆にもう一つやっていただきたいと思うのです。学校給食の問題なんですが、大臣、ことしは六割引き、それから新規実施には七割引きの米を供給された。これは大変な御努力だったというふうに思うのですが、もう一歩進んで、義務教育費の全額国庫負担、こういう考え方からいけば、いまの世界の趨勢を見ますと、学校給食を無料化する傾向というものが先進国の中でかなり出てきているわけなんです。アメリカの場合には、一九三八年に農業法が制定されて余剰農産物を学校給食に無償で供給するということが規定されているわけなんです。これは各州でこれを受けてひとつ取り組んでもらいたい。それからスウェーデンでは、施設費は国庫負担、その他の経費は地方当局が負担、こういうことでやはり全額国庫負担の方向になっているんです。それからイタリアも、学校援助法人というのがありまして、経費は全額これが負担する。イギリスも、施設設備費は地方教育当局負担で、その他の経費は地方教育当局と生徒の保護者が負担、こういうことになっておりまして、またそのうち、給食費支払い免除学生というので、小学校、中学校、特殊学校で八十五万人が給食費の支払いを免除されている。  こういうような世界の趨勢から見ますと、この次には思い切って学校給食に使用する米は全額国庫負担、こういうような方向を思い切って出せないものか。学校給食全部に米飯を取り入れた場合には、数値として二十五万トンくらいですか米の消費の拡大ができる、こういうふうに承っておるのですが、その点を含めてひとつ御見解を承りたい。
  132. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 それは学校給食でどんどん使ってもらう場合は値引きをして出します。ただ、全額ただにするかどうかということはこれは大問題がありまして、それじゃ小麦のパンの方は有料で米のときだけ無料かという問題も一つあるでしょう。しかし私の方は、米は小麦より高い、高いから食べないということが一つあるわけですから、施設その他で手数もかかるというのでやってないということもあって、せいぜい全額無料といっても五〇%値引きになればいい方だとみんな思っておったわけですよ、実際は。それをちゃんと初めて、週一回以上のものは七割、それ以外は六割ということは、これは大蔵省もよく泣いてくれた、なんて言っちゃ語弊がありますが、よく御理解いただいたと思っております。文部省などもびっくりしまして、農林省の言っておるのはうそじゃないかと最初余り本気にしなかった。しかしそれは、実際にそういうことをまずやったわけでございますから、続けざまに来年すぐただにしろと言われましても、ちょっとやはり様子を少し見さしてもらう。学校給食を私は必ず週二回というものは五十六年までにそこまで持っていくと言って、文部省も協力するというのですから、これはそういうことでとりあえず見ていていただきたい。スウェーデンとかイタリアの話は私は知りませんが、地方団体との関係もございますし、いろいろありますから、農林省だけでは、米の話はできますが、学校給食こうしろ、ああしろということは私の所管じゃないので、全体のことは申し上げられません。米の問題については一緒になって消費拡大をやるということでは合意しておりますから、しばらくひとつ見守っていただきたい。
  133. 小川国彦

    ○小川(国)委員 めずらしく大臣、気が弱いところを見せて、ことしあれだけやったんですから、六〇%やったんですから、来年一〇〇%目指すというのはこれは当然あれだと思うのですが、もう一つ、完全米飯学校給食に必要とする経費四百七十八億円というのですが、これ半額国庫補助で考えますと二百三十九億円、それで、ことしの文部省の学校給食予算が大体ほぼ同額というふうに考えますと、これは予算的にも何とか措置が考えられるのじゃないかと思うのです。  もう一つ、いま静岡県の豊岡村というところで弁当持参方式といって、村が弁当箱を買いまして、そして弁当にそれぞれの家庭が御飯を炊いてつくってくる。これが青森、兵庫、岡山、福井、静岡というところで実施されていて、弁当をつくってくることになると親も一緒に御飯を炊くのですから、弁当を持っていった分と親も食べる、こういうことになって、この豊岡村では五十三年に十三トン米の消費量がふえて、父兄の分を入れると十四・五トン、村全体で二十七・八トン消費量がふえたというのですね。だから、全国の小中学校で週二回弁当持参をやらせたならば三十万トン、週五日なら百万トンふえる計算というのが成り立つというのですね。食糧庁の数字ですと、せいぜい二十六万トンと学校の米飯給食で言っていらっしゃるのですが、こういうふうに、何も学校給食施設に全部五百億もの金をつぎ込まなくても、こういう村の実験なり県の実験のように、各家庭が親子一緒に御飯炊いて御飯の弁当を持っていき、また親も同時に御飯を食べるということになると、食糧庁の計算している二十六万トンじゃなくて、親子ぐるみで五日間やれば百万トンになるという推定なり数字も出てくるわけなんで、これはやはりいろんな工夫を考えなければならないと思いますが、こういうことも含めて学校米飯給食というものをいろんな形で徹底させて、米の消費量を上げていくということを考えなければならないと思うのです。これは一村のことでありますけれども、やはりその発想においてとるべきもの、見るべきものがあるなら、しかも、こういう各県が実施してきている実態を見るなら、やはり食糧庁もこういう方向を思い切って打ち出していくべきじゃないかというふうに考えるのですが、その点のひとつ御見解を……。
  134. 渡辺美智雄

    渡辺国務大臣 その豊岡村の藤森村長さんと私は別懇なんですよ。その話はさんざん聞かされまして、非常に結構なアイデアだと思いまして、それに対して補助金やったらどうだという話も実は予算の前に交渉はしたのです。これに対しまして文部省は賛成しないわけですよ。その理由は、要するに村じゅうみんな弁当持ってくればいいけれども、ちょっと町場の入ったようなところだと弁当持ってこないというのですよ。中には欠食児童ができたり、お金を百円もらってきてどこかで買い食いをするとかそういうようなことで、完全給食というときに子供がみんなばらばらになっちゃったのでは困る、文部省としてはそういう立場だという説明を私は受けました。ですから、それに対する米の補助金をやられるのは困りますとか、完全給食ぶちこわしにかかるというような反論もございまして、今回はあきらめたのです。なるほどそれは、そういうふうな本当に純農村だとみんな持ってくるかもしれぬが、半分サラリーマン地帯なんかが入ると、お父さんもお母さんも御飯食べないでパンで出かけてしまう。特に子供のためだけに弁当つくるとなるとめんどうくさがって、現実の姿として十人に二人とか三人とかというのが百円持ってきてそこらに行ってパンを買って食うとか、そういうことは子供の教育上非常にまずいというのですね。それもなるほど言われてみればそうだなという気もしまして、私もごり押しするのは実はやめたのです。私も一時あなたと同じ考えを持って交渉させたのですよ。しかし、なるほど向こうの言うのももっともだし、ごり押しばかりが能じゃないからということで、ことしは御遠慮を申し上げた。また、弁当にして持ってくるのは大変なんですよ。冬は暖飯器が要るし、夏は今度はすえないようにしなければならぬというようなことで、やはり同じ条件にしなければならぬから、そういうところで非常に施設もかかる。それよりもやはりまとめて米を炊いて、そこで配った方がいいじゃないかというような点から、それに補助金か何か出すのはやめたのです。しかし、そういうふうなことを現にやっている町村に対して、これは米の補助金はいかないわけです。いかないけれども、それだけ一生懸命に町村長さんが消費拡大のためにやってくださっておるわけですから、これには何かひとつごほうびなんと言うとまた怒られてしまうけれども、農林省としても何かひとつお報いをしたいと思っておるわけでございます。
  135. 小川国彦

    ○小川(国)委員 終わります。
  136. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時二十九分散会