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1979-05-31 第87回国会 衆議院 内閣委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月三十一日(木曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 藏内 修治君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 竹中 修一君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 新井 彬之君    理事 吉田 之久君       逢沢 英雄君    稲垣 実男君       宇野  亨君    越智 通雄君       関谷 勝嗣君    中馬 辰猪君       塚原 俊平君    福田  一君       藤尾 正行君    森  喜朗君       岡田 春夫君    栂野 泰二君       八百板 正君    山花 貞夫君       市川 雄一君    鈴切 康雄君       柴田 睦夫君    瀬長亀次郎君       中川 秀直君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      三原 朝雄君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山下 元利君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      茂串  俊君         内閣法制局第四         部長      工藤 敦夫君         総理府総務副長         官       住  栄作君         宮内庁次長   山本  悟君         防衛庁参事官  岡崎 久彦君         防衛庁衛生局長 野津  聖君         防衛施設庁長官 玉木 清司君         防衛施設庁施設         部長      多田 欣二君         防衛施設庁労務         部長      菊池  久君         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務大臣官房領         事移住部長   塚本 政雄君         外務省アジア局         長       柳谷 謙介君         外務省アジア局         次長      三宅 和助君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      賀陽 治憲君         外務省情報文化         局長      加賀美秀夫君  委員外出席者         議     員 岩垂寿喜男君         警察庁警備局外         事課長     鳴海 国博君         宮内庁長官官房         審議官     勝山  亮君         行政管理庁行政         管理局審議官  門田 英郎君         防衛施設庁施設         部連絡調整官  箭内慶次郎君         法務省刑事局刑         事課長     根來 泰周君         外務大臣官房審         議官      大鷹  正君         外務省情報文化         局文化事業部外         務参事官    平岡 千之君         文部省大学局大         学課長     瀧澤 博三君         厚生大臣官房国         際課長     金田 伸二君         通商産業省貿易         局輸出課長   松田 岩夫君         自治大臣官房参         事官      野村 誠一君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月三十日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     河本 敏夫君   関谷 勝嗣君     椎名悦三郎君   塚原 俊平君     長谷川四郎君 同日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     宇野  亨君   椎名悦三郎君     関谷 勝嗣君   長谷川四郎君     塚原 俊平君 同月三十一日  辞任         補欠選任   柴田 睦夫君     瀬長亀次郎君 同日  辞任         補欠選任   瀬長亀次郎君     柴田 睦夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国家公務員法の一部を改正する法律案上原康  助君外六名提出衆法第一九号)  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第  四三号)  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第四〇号)  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三四号)  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務  する外務公務員給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第四二号)      ――――◇―――――
  2. 藏内修治

    藏内委員長 これより会議を開きます。  上原康助君外六名提出国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案及び内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  順次趣旨説明を求めます。岩垂寿喜男君。     ―――――――――――――  国家公務員法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  3. 岩垂寿喜男

    岩垂議員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました国家公務員法の一部を改正する法律案に対する提案理由及びその概要を御説明申し上げます。  ロッキード事件に続いて生起した、今回のダグラス、グラマン等航空機輸入に伴う疑獄のみならず、戦後日本汚職事件の主要なもののいずれもが、保守政界、大企業中心とした財界、そして官界が三位一体となった構造汚職であることに対し、今日、国民の厳しい批判の眼が向けられております。この政・財・官が一体化した構造汚職こそ、日本を深部からむしばむ病根であると断言できるのであります。  中でも、高級官僚中心とした官界と大企業の黒い癒着は、官界からの天下り人事がその基盤となっております。それは単に、癒着だけでなく、汚職の要因になっており、さらに行政の本来の使命である公正さを欠く原因になってさえおります。ことに指摘されるべきは、離職前と関係のある大企業への天下りであります。  現在、国家公務員法百三条は、私企業からの隔離として、「職員は、離職後二年間は、営利企業地位で、その離職前五年間に在職していた人事院規則で定める国の機関と密接な関係にあるものにつくことを承諾し又はついてはならない。」と定めておりますが、「人事院承認を得た場合には、これを適用しない。」こととなっており、現実にはこの項を巧みに利用して天下り就職がなされているのであります。このような悪弊をなくし、現行法の不備を改正するのが本法案提出理由であります。  次に、改正点の主要な項目について申し上げます。  まず第一は、事務次官、局長等人事院規則で定める官職にある職員は前項を「離職後三年間、離職前五年間」とし、例外なく「規則に定める営利企業地位についてはならない。」とするものであります。  第二に、右の職員以下については「離職後三年間、離職前五年間」の禁止規定はありますが、承認を受けた場合は、就職は認められるものとしております。  以上が本法案の要旨であります。  本法案は、航空機等汚職防止に関する総合対策の一環として提出いたしました。そうでなくとも、行政上の綱紀を厳正にいたします重要な事項でありますから、何とぞ慎重な審議の上に速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 藏内修治

  5. 三原朝雄

    三原国務大臣 ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済情勢にかんがみ、恩給年額増額するとともに、戦没者等遺族傷病者及び老齢者処遇改善を図るほか、旧軍人等加算年恩給年額計算への算入要件緩和等措置を講じ、恩給受給者に対する処遇の一層の充実を図ろうとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  この法律案による措置の第一点は、恩給年額増額であります。  これは、昭和五十三年度における公務員給与改善基礎として、昭和五十四年四月から、恩給年額増額しようとするものであります。また、公務関係扶助料最低保障額傷病恩給基本年額等につき、同年六月からさらに特別の増額を行い、公務扶助料については遺族加算を含み年額九十九万円を保障することといたしております。  その第二点は、普通恩給等最低保障改善であります。  これは、昭和五十四年四月から、長期在職老齢者普通恩給最低保障額を六十四万七千円に引き上げる等、普通恩給及び普通扶助料最低保障額を引き上げるほか、同年六月から、六十歳以上の者または寡婦加算の対象となる子を有する妻に支給する普通扶助料最低保障額について特段の措置を講ずるとともに、さらに同年十月から、普通扶助料最低保障に係る年齢制限を廃止しようとするものであります。  その第三点は、寡婦加算及び遺族加算増額であります。  これは、普通扶助料を受ける妻に係る寡婦加算及び公務関係扶助料を受ける者に係る遺族加算の額を引き上げようとするものであります。  その第四点は、旧軍人等加算年年額計算への算入要件緩和であります。  これは、旧軍人等加算年普通恩給年額計算基礎在職年に算入する場合における年齢要件緩和し、六十歳以上六十五歳未満の者についてもこの算入措置を及ぼそうとするものであります。  その第五点は、介護を要する重症者に対する特別加給増額であります。  これは、第二項症以上の増加恩給または特例傷病恩給受給者に給する特別加給年額を十八万円に引き上げようとするものであります。  その第六点は、八十歳以上の高齢者に対する算出率特例措置改善であります。  これは、八十歳以上の者に給する普通恩給または扶助料については、その算出率特例措置における三百分の二に係る年数の上限である十三年を廃止しようとするものであります。  以上のほか、扶養加給増額短期在職の旧軍人等に対する仮定俸給改善、旧海軍特務士官及び准士官仮定俸給改善代用教員期間通算等所要改善を行うこととしております。  なお、以上の措置については、公務員給与改善に伴う恩給年額及び扶養加給増額並びに普通恩給最低保障額増額昭和五十四年四月から、その他の改善措置は同年六月から、ただし、普通扶助料最低保障に係る年齢制限の廃止、旧海軍特務士官及び准士官仮定俸給改善、旧軍人等加算年年額計算への算入要件緩和及び代用教員期間通算については同年十月から、それぞれ実施することといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  6. 藏内修治

  7. 山下元利

    山下国務大臣 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要について御説明いたします。  まず、防衛庁設置法の一部改正について御説明いたします。  これは、自衛官の定数を、海上自衛隊八百十四人、航空自衛隊三百二十五人、計千百三十九人増加するためのものであります。これらの増員は、海上自衛隊については、艦艇、航空機就役等に伴うものであり、航空自衛隊については、航空機就役等に伴うものであります。  次に、自衛隊法の一部改正について御説明いたします。  第一は、海上自衛隊潜水艦部隊の一元的な指揮運用を図るため、司令部及び潜水隊群その他の直轄部隊から成る潜水艦隊を新編して、これを自衛艦隊の編成に加えるものであります。  第二は、航空自衛隊補給機能を効果的に発揮させるため、各補給処業務統制を行う補給統制処を廃止し、これにかわるものとして、各補給処業務全般指揮監督を行う補給本部航空自衛隊機関として新編するものであります。  第三は、自衛隊予備勢力を確保するため、陸上自衛隊予備自衛官千人を増員するためのものであります。  以上、法律案提案理由及び内容概要を御説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  8. 藏内修治

    藏内委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  各案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ――――◇―――――
  9. 藏内修治

    藏内委員長 次に、外務省設置法の一部を改正する法律案及び在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小宮山重四郎君。
  10. 小宮山重四郎

    小宮山委員 厚生省が午前中何か会議があるということでございますので、厚生省から最初に御質問させていただきます。  これは外務省厚生省か十分わかりませんけれども海外勤務をしている人たちの一番関心事というのは何だというと、まず子弟の教育と、それから医療だろうと思います。そういう点について御質問申し上げますけれども、ある一部の商社などは、海外勤務者に対しては給与から保険等についての金額を控除していない。引いていない。しかし、その会社は千二百六十人ほどの方々海外で働いておるのですけれども留守家族方々は、その健康保険組合からいろいろな医療を受けるシステムになっている。ですから、その組合自身は相当の金を出費して、約三億のうち一億ほどその家族のために出費しているというのが現状のようであります。  そういう意味でも、いま十五万人の方々海外で働いている。これから日本経済を見ますと、十五万から少なくとも三十万以上の方々海外で働く。実を言いますと、医療施設教育施設がしっかりしておれば、もっともっと家族ともども一緒海外で働くことができるのであろうと思います。そういう意味でも、今後厚生省としてはそういう海外在勤者海外で働いている人たちのためにどのようなことを考えておるのか、厚生省自身何かいろいろな意見があれば聞かしていただきたいのであります。
  11. 金田伸二

    金田説明員 お答えいたします。  ただいま先生指摘のとおり、海外に在勤している邦人に対する医療をもっと充実強化してほしいという要望は、各方面から非常に強いわけでございまして、昨年来、海外に進出している企業で構成しております日本在外企業協会というところからも強い要望厚生大臣のところにも参っております。  私ども、昨年からこの問題の検討着手をいたしたわけでございますけれども、幸い今年度の予算におきまして若干の検討のための経費の計上をお認めいただきましたので、私どもといたしましては、この御要望にこたえるべく関係省庁の御協力もいただきながら、有識者の御意見をちょうだいしながら、近くこの検討着手をいたしたいというふうに考えているところでございます。先生の方のお話もいろいろございましたけれども、そういった御意見等も勘案しながら、これら海外勤務している邦人医療をどういう形で進めていったらいいか、今年度から検討してまいりたいというふうに考えております。
  12. 小宮山重四郎

    小宮山委員 検討すると言うだけで内容がちっともわからないのですけれども、それはそれで後でまたお話を聞くことといたしまして、とりあえずできることは何だということになると、たとえばイギリス日本口上書によって医師交換ができているはずであります。アフリカ諸国東南アジアでもそのようなことができれば、大使館あるいは医療センターのようなものができ得るはずであります。外務省も、ライ患者のために病院等等をつくっておりますけれども、それは一つのその国の貧しい人たちを助けるという意味もございますけれども、そのほかに、やはり海外で働いている、特にアフリカ、中近東、東南アジア中南米諸国にもそういうセンターがあればという感じがいたします。  アメリカのように医療施設が相当しっかりしている、イギリスのようにしっかりしているところは別といたしまして、そういうものを一部厚生省では反対して、その医師交換ができないという話を海外で聞いております。その辺については、今後そういう口上書交換して医師交換ができるように厚生省は考えておりますか。その辺のところを積極的にやるのか、あるいは医師会が反対だからできませんとかいうことなのか、フランクにお話しをいただきたいと思います。
  13. 金田伸二

    金田説明員 ただいま先生質問医師の免許の問題でございますけれども、現在のところ、先生指摘のとおり、イギリスとの間においては口上書交換をもって特例措置をいたしておりますけれども、いまのところ、ほかの国にこれを拡大するというような考え方は持っておりません。  それで先生指摘のとおり海外、特に開発途上国に働いている邦人に対する医療をどういう形でカバーしていくか、医師のライセンスの問題その他、なかなかむずかしい問題があるわけでございまして、そういう問題等も含めまして、関係省庁とも御相談しながら対策を進めてまいりたいという意味で先ほど申し上げたつもりでございます。
  14. 小宮山重四郎

    小宮山委員 ずいぶん形式的な御答弁ですが、金田国際課長、これは少なくとも海外大変人命にかかわる問題ですから、そういう答弁は大変残念と言わざるを得ない。いま国民の総医療費というのは相当の金額ですよ。海外へ行っている人がそういうことを受けられないということになれば大変な問題ですよ。あなたが会議があるから、私はいまここで答弁を求めませんけれども、それについては後でしっかりした御答弁をいただきたい。イギリス交換ができて、ほかの諸国とできないというようなことはないと思う。それは誠意が足らないからだと思う。そういうことは後で御答弁をいただくことといたしまして、厚生省に対しての質問は、これで終わります。  それから、昨年三月二十三日に、在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部改正についての附帯決議がついております。その中で、附帯決議の六項目、七項目に、「全日制高等学校の新設を含めた日本人学校の拡充、子女教育手当充実帰国子女教育制度改善教育施設の整備等総合的に海外子女教育対策を推進すること。」その次に、「帰国子女教育については、我が国の大学への入学につき、在外教育施設において取得した資格を認めるとともに、国語学力の一時的なおくれに対しては、その選考方法について適切な配慮を加えること。」ということが出ております。一年以上たった今日、文部省、これについてはどういうふうな形になっておりますか、お聞きしたいと思います。
  15. 瀧澤博三

    瀧澤説明員 帰国子女方々入学資格の問題につきましては、一般的な制度として、外国において十二年の学校教育を経たことが資格になっているわけでございますが、これだけではなくて、いろいろな実態に基づいて進学の道を開いていきたいということで先生方お話もいろいろ承ったわけでございます。  一つには、いま附帯決議にもございます在外日本人教育施設のうち、高等部につきましては、これを文部大臣が指定することによってその終了者大学入学資格を認めていこうということで昨年五月に制度改正をいたしまして、まず、イギリスのロンドンにあります英国立教学院高等部をこれによって指定いたしました。  それからもう一つ、いわゆる国際学校卒業者が、一般的に正規の学校という位置づけがないことによって大学入学資格がないという問題の道を切り開くために、御承知のように、スイスにあります国際バカロレア事務局が進めておりますいわゆるIBインターナショナルバカロレア資格という制度があるわけでございますが、これをわが国としても制度大学入学資格として認めていこうということで、これはごく最近、ことしの四月に制度改正をいたしまして、各大学に通知をしたところでございます。  資格の問題については以上でございますが、資格ができたことによって事柄が解決されるとは思っておりませんで、資格と同時に、実態的に各大学が行います入学試験方法の問題といたしまして、それぞれの帰国子女方々の実情が十分配慮されるように考えていかなければならないと思っております。この点につきましては、すでに各大学におきましていろいろ御検討にもなり、推薦入学方法をとっているところもございますし、選抜方法試験内容におきまして一般試験とは違う面接等をやり、さらに語学、日本語、外国語等中心とした試験をやるというような方法で工夫をしておられるところもあるわけでございますが、こういう方向につきましては、私どもとしても、さらにいろいろな機会に大学と話し合いを通じて趣旨が徹底し、さらに前進するように努力してまいりたいと思っております。
  16. 小宮山重四郎

    小宮山委員 佐野大学局長から国立私立大学へあてたのが四月二十五日でございます。これを討論したのは昨年でありまして、新聞記事に載っかったのも昨年の秋であります。入学試験が終わってからそういう通達、しかも文部省告示は一行しか書いていない。  では、海外日本人学生がこの四月に国立の中で何校、何名ぐらい入学許可されたか、ちょっとお答えいただきたい。
  17. 瀧澤博三

    瀧澤説明員 いま先生からの御指摘を受けました、昨年このことが附帯決議として問題になり、その後、今回通達が出されるまでの間、これはIB実態につきまして私ども専門家協力もいただきましてずいぶん検討してまいったわけで、最終的には設置審議会基準部会の御検討の結果、これを認めていこうということになったわけでございます。そういう手続を経ることによって、この指定が関係者に十分理解されるようにということで、その間の検討に十分な手だてをさせていただいた次第でございます。  お話しの、ことしの海外子女等入学の状況につきましては、全体の数は必ずしもつかんでおりません。特別な方法を実施しております大学についてある程度つかんでおりますところを申し上げますと、筑波大学、これは去年の八月に、いわゆる九月入学一般に言っておりますが、第二学期入学を実施いたしておるわけでございますが、九人が志願し、六人が入学しておられます。それから慶應義塾大学でございますが、これは五十四年度から特別の選考を実施しているわけでございますが、ことしの四月には五十二人が受験をされ、十二人が合格しておられます。それから国際基督教大学、これは前々からそういう海外とのつながりについて熱心に進めておられるわけですが、やはり九月入学を実施しておりまして、募集人員百五十名ということで相当の人数を受け入れておられるわけでございます。その他早稲田、上智、青山学院などほかにまだ幾つかございますが、それぞれ特別な入学試験をして受け入れておられますが、恐縮でございますが、いま手元に正確な数字を持っておりません。
  18. 小宮山重四郎

    小宮山委員 公立では筑波大学だけだと思います。あとは私立が皆やっているわけで、はっきり言いますと文部省の指導ではなくて、彼らが自主的にそういうことをやっているわけで、そういう意味では、官公立に積極的な入学受け入れ体制をすべきだ。  私の感じでは、筑波大学の方は、ある意味では実験的な、ある意味ではモルモット的な生徒の受け入れ方をしているのではないかという感じがいたします。留学生は受け入れているけれども、在外の日本人は受け入れない。しかも恵まれない施設の中で、あるいは高等学校、全日制はロンドンの立教学院だけであるということもございます。そういうようなことでも、ぜひ今後とも、この附帯決議に従って官公立でも受け入れるような体制を積極的にやっていただきたいと思っておりますし、来年の内閣委員会でいい返事が出るように期待いたしておきます。あと、いろいろなことを申し上げたいのですけれども、時間がございません。  ただ、先ほどの医療の問題で申し上げたい問題がございます。実を申しますと、外務省に聞いてみますと、あるいは海外で働いている方々に聞いてみますと、お医者さんがいない、ですから、子供が病気になったときにどこが痛いかということがなかなかつかみ得ない。特に御婦人方なども、そういう意味では非常に苦慮されている。それから常に病気になったときにどうしようというおそれを抱いて生活をされているのが現状のようであります。外務省も実を言うと、私自身、外務省方々から聞きますと、やはりお医者さんがなかなか得られない。昨年、内閣委員会で視察に行きましたアフリカのケニアでは巡回医師というような形でやっている。これは、ただただ健康相談程度のことであるだろうと思います。  ぜひこれは自治医大、各県が金を出して辺地医療をやられている。外務省もそういう金を出して、やはりある意味の辺地ということで、その大学卒業者を九年間辺地医療に従事させるような、それを外務省でも毎年何人かお雇いになって海外勤務をさせるようなシステムが考えられないだろうか。  あるいは国立では、防衛医大がございます。防衛医大でも、やはり毎年百人くらいの卒業者を出しております。これは防衛庁のみの仕事ではなくて、やはり海外在外公館の中で働いている方々医療に従事できるようなシステムにできないだろうか、そういうことを自治省と防衛庁にちょっとお伺いしたい。また外務省もそのことについて、そういうことができれば、在勤の方々も非常に安心して勤務ができるということになるのではないかということを感じますので、自治省、防衛庁、外務省と三省庁から御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  19. 野村誠一

    ○野村説明員 ただいまの御質問でございますが、自治医科大学がなぜ設立されたか、先生すでに先刻御存じのお話でございますけれども、一応念のためにもう一度申し上げさせていただきますと、とにかくわが国の農山漁村あるいは都市においても医師の不足というのが大分前から大きな問題になってきているわけです。特に僻地、そういった過疎地域と申しますか、そういう地域においては、大変いま深刻な問題になっているわけでございまして、そこで、地域医療に責任を持つ都道府県がこの問題をいつまでも放置するわけにいかない、地域住民の福祉のためにもこれは大変な問題であるということで、そういう医療に恵まれない過疎地域などにおきます医療確保を図るためにお互いに出資し合う、共同してこうした地域において医療に挺身する、しかも臨床の実力も十分ある、そういう医師を養成しようということで昭和四十七年に設立したわけでございます。  自治医科大学がそういう目的でつくられたということをひとつ御理解いただきたいということと、実は第一回の卒業生がやっと昨年出たばかりでございます。そしてしかも御存じのように、二年間研修医として研修をしている。まだ現在研修医の段階でございます。それで関係地方団体あるいは過疎地域の人たちは、一日も早く第一線で医療に従事してほしい、そういうことで待ち望んでいる、そういう状況でございますので、自治医科大学の学生を直ちにたとえば海外に派遣するというわけにはちょっといまの段階ではまいらぬというふうに考えております。あるいは将来の課題かもしれませんが、やはり地域医療の問題というのは非常に重要な問題でございますし、これから自治医大の卒業生を相当出していったとしても、まだまだ解決には長年月がかかるのではないか、そういうふうに考えておりますので、ひとつ御了承願いたいと思います。
  20. 野津聖

    ○野津政府委員 防衛医科大学校の御質問でございますが、御案内のとおり、おかげをもちまして今年度に第六期生が入りまして、来年の三月には第一期生四十名が卒業するという形になりまして、いろいろとその間御指導いただきましたことにつきまして、心からお礼申し上げたいと思います。  もうすでに設置のときから、先生御案内のとおり、現在の防衛庁におきます医官の低充足という非常に大変な事態を抱えているわけでございまして、いろいろ努力してまいりましても、現在でも充足率が二二%というふうな実態にあるわけでございます。これに対しまして恒常的な補充体制をとるということで、医師である幹部自衛官を養成するということになってまいったわけでございまして、その間いろいろと先生の御指導をいただいてまいったわけでございますけれども、現在の状況から見てまいりますと、やはり隊員の任務遂行に必要ないわゆる集団としての高い健康水準というふうなものを考えてまいりました場合に、いまの段階におきまして、ただいま申し上げましたように、明年第一期生が卒業するという実態でございますし、ちょっとこのような状況では直ちに防衛医科大学校卒業生によって、防衛庁におきます幹部自衛官である医官を充足するには相当な期間がかかるのではないかというふうな考え方を持っております。  ただ、将来の問題は別といたしまして、現在の段階は、防衛庁におきます医官の不足ということを目的としまして設置されましたところをまず詰めていかなければいけないというふうなことを考えておりますので、海外に派遣するということにつきましては無理ではないかというふうな実態がありますことを、ひとつ御了承いただきたいと思うわけでございます。
  21. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 在外公館の医務官制度充実につきましては、外務省としてもいろいろと苦心をいたしておるところでございまして、現在、医務官が駐在しております公館は十五カ国ございます。さらにふやしたいと考えております。また、現状におきましても、実はこの医務官の確保は大変むずかしゅうございまして、各方面の御協力を得て、やっと充足しておる次第でございます。  先生の御示唆がありましたように、自治医科大学あるいは防衛医科大学からの御協力が得られればありがたい次第でございますが、ただいま承りましたところによりましても、まだ御両者ともわが方に回す余裕はないというお話でございますが、将来の問題としてそういうこともわれわれの方も研究し、自治省あるいは防衛庁の方でも御研究願えればありがたいと思っております。
  22. 小宮山重四郎

    小宮山委員 もう時間が過ぎましたので、この辺で終わります。  日本には電電、逓信、専売、国鉄、警察とずいぶんいわゆる政府系の、と言ってはおかしいけれども、そういう病院が相当ございます。しかも、自治医大なんというのは大変な――医者というのはすぐ充足できません。そういうことで、外務省も国師を養成するように、また防衛庁あるいは自治医大あるいは官公立の医科大学私立の医科大学でそういう医師を養成するように今後とも努められればいろいろな意味でもできる。また、先ほど申し上げましたイギリス日本との医師交換というようなこともほかの国々、特に低開発国とはやるべきであろうと思います。  そういうふうなことで、これから相当数ふえてくる在外の日本人に対して、安心して海外で働けるようなこともぜひ考えなければいけない。その上に、さっき申し上げました附帯決議等についても十分意を払って、文部省等と十分、施設の狭隘な、また施設の弱い教育施設に対して、子弟が安心して海外で勉強できるようなシステムにしていただきたいと思っております。  以上で終わります。
  23. 藏内修治

    藏内委員長 岡田春夫君。
  24. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 きょうの私の質問は、主としてインドシナ情勢を中心にしてお伺いをしたいと思います。時間があれば北方領土の問題も伺いますので、それは時間の関係で考えてまいりたいと思います。  最初に、資料の要求をしたいのでありますが、この間、二十九日の八百板質問の中で、商社員を含めて民間人が外務公務員として現地に在勤して、帰国した場合には民間の現職に戻る、こういう意味答弁があったようであります。しかし、これは考えようによると、きわめて重要な問題です。外交活動というものを利用して商社活動をやる、こういうようにも受け取れかねないような答弁があったわけでありますので、この点について、私は、具体的に資料をいただきたいと思う。どういう任務で、どういう職種で、そして在外公館においてはどういう地位に置いて、どういうようになっているのか、これを在外公館別に資料として御提出をいただきたい。これは委員長を通じてお願いをいたしておきますが、外務省、よろしいですか。
  25. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 在外公館には、商社等から出向している者はございませんが、銀行その他から若干の方々の御協力をお願いしておることは事実でございます。これはあくまで外務公務員として勤務しておるわけでございます。その実態につきましては、資料を提出さしていただきます。
  26. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もう一つ在外公館に関する法律改正の中で、ドミニカほか二つの大使館、それから広州ほか二つの総領事館の設置、これが出ているわけですが、この場合、現在、相手国との交渉はもう進められているのですか、どうなんですか。
  27. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 今回設置いたします大使館、具体的に申しますと、大洋州のソロモン、それからツバル及びカリブ海にありますドミニカの三国に設置します大使館は、いずれも他の国に駐在いたします大使が兼轄するものでございまして、いわゆる兼館でございます。実館ではございません。この点につきましては、この国会の御承認を得た上で兼轄の手続をとりたいと考えております。  それから、総領事館は、いずれもこれは実際に開設するものでございます。具体的には、いま御指摘のありました中国の広州、米国のボストン及び西独のフランクフルトに設置するものでございますが、特に中国の広州につきましては、中国側と話し合いを進めておりまして、先方の了解を得ております。
  28. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いま御答弁のように、広州の場合には非公式に話し合いを進めて了解をとっている。その場合、中国の方は日本に総領事館を相互主義のたてまえで置くわけですが、これはどこになることになっているか、恐らく話は出ているはずでございますので、この点を伺いたい。
  29. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先生指摘のとおり、わが方が広州に総領事館を設置することに見合いまして、中国側もわが国に総領事館を設けたいという希望がございます。  具体的には、本年の四月に中国側は、北海道の札幌市に総領事館を設置したいということを申し越しております。現在、両国間で詳細につき協議中でございます。
  30. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 広州の方は、中国が了解した。中国の方が提案する札幌については、日本外務省としては異存がないと考えてもよろしいですか。
  31. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 わが国の方で中国の広州にもう一つ総領事館を設けることにいたしております関係上、中国がわが国の領土内にもう一つ総領事館をつくるということは、原則的には当然外務省としても受け入れるべきものと考えております。ただ、その設置場所あるいは規模その他については、今後さらに協議をいたしたいと考えておる次第でございます。
  32. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 こういう意味でしょう、山崎さん。広州の方は中国は了承したから、中国の方で言う札幌についても日本の方は当然異存がない、こういう意味ですね。
  33. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 端的に申しまして、札幌に中国の総領事館を設置することを、わが方が最終的にはまだ了承いたしておりません。ただ、中国側のそういう希望をも尊重しつつ、いま話し合いを進めている最中でございます。
  34. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 大体いつごろに相互に開設する予定ですか。
  35. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 わが国の方は、中国の広州に来年一月をめどにして開設する予定でございます。中国側の方は、いつになりますか、まだ話し合いを進めておりますので、いつということは、ちょっとはっきり申し上げかねます。
  36. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 広州に置く点は、中国は了解したのですか。
  37. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほど申し上げましたように、中国側は原則的に了承いたしております。
  38. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすれば、札幌の場合にも原則的に了承するという方向にいかざるを得ないんだと思いますが、こういう点はこの程度にしておきましょう。  インドシナの問題について、本論に入りたいと思います。  外務大臣は、アジアの一国たる日本という立場に立って、アジア外交を重視しておられる。そういうあらわれがUNCTAD総会に出席されるという点にもありますし、この内閣ではありませんが、前内閣のときにアジアを訪問された、こういうような点を見てもアジア外交を重視をしておられる。そこら辺の基本方針は、どういうところに基本理念としてのお考え方がおありなのか、まず、その点から外務大臣に伺いたいと思います。
  39. 園田直

    ○園田国務大臣 今年もサミットが終わりました直後、バリ島で外相会議がありますから、これに出席して相談することにいたしております。アジアの平和と安定そして繁栄、これに貢献することが日本の基本的な責任であると考えております。ASEAN諸国と相談をして、アジアの安定と繁栄に貢献するよう努力する覚悟でございます。
  40. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そういう努力をされるのに、設置法を見ると、アジア局次長を廃止されるというのは、一体どういうわけですか。
  41. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先生御承知のとおり、最近の厳しい情勢下におきまして、昨年末、中南米局を設置するに当たりまして機構の簡素化という見地から、幾つかの法律職あるいは政令職を廃止することになったわけでございますが、その一環としてアジア局次長を廃止するということを決めたわけでございます。  しかし、これはもちろん、アジア外交を軽視するということではございませんで、あくまで行政簡素化の見地から行うものでございまして、その次長の職は局長あるいは局の参事官あるいは課長によって分担してもらうことになっております。外務省としては、大変苦しいことは事実でございますが、政府全体の行政簡素化の大方針に協力する意味でこのことを決定いたした次第でございます。
  42. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 山崎さんが答えるとすればそういう、言い方なんだろうと思うのですが、そんなことならあなた、経済次長をやめたらいいじゃないか。アジア外交を重視するというのならば、アジア局の次長をやめないで、経済局の次長をやめた方がいいので、そこら辺大臣どうなんですか。
  43. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおりでございますけれども、先ほども申し上げましたいろんな点から考慮をして、省内でやむを得ずアジア局次長をやめることにしたわけでありますが、その点は十分考慮しまして、これを補って、アジア重視の点が外れないように努力していくつもりでございます。
  44. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 大臣、さっき伺っておこうと思ったのだがちょっと落としましたが、中国の札幌総領事館の問題です。交渉の点では、山崎さんはあの程度しか言えないと思うのです。やはり政治方針がないといけないのです。私は、札幌に置くべきだと思うのです、向こうの提案があれば。この点は、外務大臣として政治方針の上に立って、この点、ちょっと話がもとに戻りますけれども、大臣としての御意見を伺っておきたいと思うのです。
  45. 園田直

    ○園田国務大臣 これは、岡田先生御発言のとおり、相互主義になっておりますから、もちろん広州の方を相談をする場合には、向こうの方の要求というものに対してはこたえるべきことでございますから、事務的に一方が早く進んで一方がおくれておりますけれども、相互主義の原則によって処理すべきものであると考えております。
  46. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 また本論に戻ります。  アジア、特に東南アジアのASEAN諸国にとり言うまでもないのですが、当面の重要な関心事というのはカンボジア問題です。この点は、御承知のように、昨年の末発生したカンボジア問題に対して一月早々に国連の緊急安保理事会が招集された。日本を代表して安倍国連大使も発言をいたしました。私もそのテキストを外務省からいただいて拝見しましたが、その柱になっているのは、大体この三つだと思います。  第一の柱は、このカンボジアの情勢、この事態を深く憂慮するとともに、一月十三日のASEAN外相会議の共同声明を全面的に支持する、この点は安倍国連大使が明確に発言をいたしております。  第二の点は、このような情勢の起こりました原因はどういうところにあるか、こういう点について、日本の政府が国連大使を通じて態度を明確にしている、それが第二の柱ですが、文章のとおり読むと、この「事態が多くの国によって既に指摘されたように外国軍隊の深い関与の下に惹起されたと判断せざるを得ない」、カンボジア紛争の問題の根本的な原因がここにあるということを、日本側が正式に演説をしているわけです。これが第二の柱です。  第三の柱は、そういう情勢であるから、アジアの平和のためには、ここからその演説のそのままでありますが、「外国軍隊の即時全面撤退を求める」という要求を提起した。この三つが柱になっていると思います。  こういう提案が演説という形で行われたのでありますが、その後においても、事態の改善は一向に見られない。むしろ情勢は悪化していると言わざるを得ない。そこで、こういうような基本認識並びに外国軍隊の即時全面撤退、こういう要求、この点は、今日でも日本の態度として変わっていないと思いますが、外務大臣、いかがですか。
  47. 園田直

    ○園田国務大臣 安倍大使が表明いたしました御発言の三つの点は、大臣自身も委員会でしばしば表明しているところでありまして、今日も状況は必ずしもいい方には行っておりませんが、日本の立場は、いささかも変わりはございません。そのとおりでございます。
  48. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 日本が全面的に支持したASEAN外相の共同声明並びに安倍国連大使の演説、この両方の中にある「外国軍隊」というのは、具体的には一体どこなんです。具体的にはベトナムの軍隊を指しているというのは、いまやだれの目にも明らかです。これは新聞を見れば、みんなはっきりわかっている。そういう事実は、お認めになるわけですね。
  49. 園田直

    ○園田国務大臣 そのとおりでありまして、その点は、ベトナム政府に対しても、しばしば要請しているところでございます。
  50. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 とすると、今日、ベトナムの軍隊がカンボジアに駐とんしているということは、これは明らかにカンボジアの主権と独立と領土の保全を侵害していると見て間違いございませんね。
  51. 園田直

    ○園田国務大臣 わが日本は一貫して、他国に軍隊を侵攻させ、他国に軍隊を置くことには反対をしておるわけであります。
  52. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは主権の侵害ですね。
  53. 園田直

    ○園田国務大臣 当然、そういう意味から反対しているわけであります。
  54. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、現在カンボジアにベトナムが駐とんをしているというこの現状は、主権の侵害である、ベトナムの侵略である、こういうように見て間違いないのだと思うのですが、それでよろしいですね。
  55. 園田直

    ○園田国務大臣 他国に対する侵攻、軍隊を置くこと、軍の力によって問題を解決するということ、これに一貫して反対をしておるわけでありますが、その行動に対する判断は、日本政府はいままでやっていないところであります。
  56. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 若干これは担当局の方に伺いましょう。  現在のカンボジアの国名、日本政府は、公式呼称は何と言っていますか。
  57. 三宅和助

    ○三宅政府委員 お答えします。  先生はポル・ポト政権の方をお聞きになっていると思いますが、民主カンボジアと呼ばれております。
  58. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたの御答弁、ちょっと変なことを言いましたね。先生はポル・ポト政権のことを云々、これはどういうことですか、もう一度伺いたい、どういう意味ですか。
  59. 三宅和助

    ○三宅政府委員 日本がいま外交関係を持っておりますのはカンボジアでございまして、そのカンボジアが民主カンボジアと言われております。
  60. 園田直

    ○園田国務大臣 次長答弁の中にちょっと誤解を与えるようなことがありましたが、ポル・ポト政権をどうと言っているのじゃなくて、カンボジア国をいま言ったように呼んでいるということであります。
  61. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 三宅さん、あなた、それでいいのですね。何か二つの政権があって、両方どうするかということがあなたの念頭にあって言っているのですか、それならそれで伺いますよ。どちらでもいいですから、はっきりしてください。
  62. 三宅和助

    ○三宅政府委員 表現上、間違いましたが、そういうことじゃございませんので、日本側としてはカンボジアを民主カンボジアと称しております。
  63. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 三宅さん、はしなくもあなたの本意があらわれたのだと私は実は聞いたのだけれども日本は、昨年の九月三日に中国の大使が民主カンボジアの兼轄大使として日本側政府の手続も済んで、そしてプノンペンで信任状を提出をして、正常な外交関係があるのです。そういう状態がある限りにおいて、当然その後においても外交上の何らの変化はない、手続上の変化はない。とするならば、あなたがはしなくもおっしゃったように、いわゆるポル・ポト政権なるものがカンボジアを代表する正統政府であるということになりますね。その点はどうなのですか、はっきりしておいてください。
  64. 三宅和助

    ○三宅政府委員 そのとおりでございます。
  65. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは新聞報道ですが、五月の初旬に非同盟諸国の非公開の調整会議が国連内部で行われた。八十五カ国という非同盟諸国の中でベトナム、キューバ、その他六、七カ国を除いて残りのすべては、いわゆるポル・ポト政権を認める立場にあった。  こういう情勢から考えました場合に、国際的には、今日カンボジアの中にいろいろな紛争があろうとも、カンボジアを代表する正統政府は、三宅さん、あなたの言われるところのいわゆるポル・ポト政権である、これが国際的な今日の状態である、こういうように見て、間違いありませんね。
  66. 三宅和助

    ○三宅政府委員 そのとおりでございます。  現実に、いわゆるプノンペンにおける政権を承認しているのはわずか十五カ国でございます。先生のおっしゃるように、非同盟の大半はカンボジア政権を依然として支持しているという状況でございます。
  67. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは三宅さん、触れたい点かもしれないが、いわゆるヘン・サムリン「政権」というものですね、これは一体法的にどういうものなんですか。この点は、条約局長の方がお答えになるなら条約局長で結構です。たとえば、これは反徒団体であるのか、あるいはかいらい政権、国際法上かいらい政権という言葉が適当なのか、この辺は検討の余地がありますけれども、しかし、これは法的には、かいらい政権という言葉を使うことが適当かどうかということは別として、実態としては、先ほど園田外務大臣の言われたように、カンボジアの中にベトナムの権力、軍事力というものがあって、そのもとに結びついてヘン・サムリン「政権」なるものがあるわけですから、これはかいらい政権と言っても間違いないと思うのだが、法的にはこういう点、あるいは交戦団体という地位になるのか、これはいま日本の立場として法的にどのように理解しておられるのか、この点を伺いたいと思います。
  68. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 御質問趣旨は、交戦団体となるのか、あるいは反徒団体と観念されるべきものであるかという国際法上の問題でございますが、別にわが国は、現在プノンペンにおりますところのヘン・サムリンを承認することをいたしておりませんし、いわんや、まして交戦団体の承認もしておりません。あるいは若干国際法上、反徒団体の承認というのは少数説でございまして、反徒団体の承認というのがあるのかないのかよくわかりませんが、交戦団体の承認ということで一口にまとめますと、その承認も行っておりません。  したがって実際上、現在ポル・ポト政権に対して反乱を起こして、それがポル・ポト政権の支配しておりました地域から、全部ではございませんが、ある程度ポル・ポト勢力というものを排除いたしまして、プノンペンに現在国の一部分を支配するに至っている事実上の一つの勢力がそこにあるということしか申し上げられないだろうと思うのでございます。
  69. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 条約上はそういうことだろうと思いますが、とすれば、あなたの御答弁はローカル・デファクト・ガバメント、少なくともゼネナル・デファクト・ガバメントではない、ローカルな、日本語で言うならば地方的事実上の「政府」、そういうものであるというように理解してもよろしいですか。
  70. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 私もそのように解してよろしいのではないかと思います。つまりローカルであり、事実上そこに存在している一つの団体、エンティティー、それを政権と呼ぶかどうかは別といたしまして、そういうものがあるというふうに観念してよろしいのではないかと思います。もっとも、それにつきまして承認とかなんとかの問題は、もちろん生じておりませんが……。
  71. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そこら辺、これは外務省の態度を確認しておきませんと、最近の新聞などを見ると、ヘン・サムリンの方が新政府であって、何かポル・ポトはなくなってしまったのだというようなことを毎日書いているわけですよ。ある新聞などに至っては、ことさらに現地に特派員を出して、カンボジアにベトナムの軍隊がいるのは当然であるなんというようなことを、現地報告にある紙面の一面を使って報道までしておりますので、外務省の態度を明確にしておかないといけないのではないか。  先ほど御答弁のありましたように、日本政府としては、いわゆるポル・ポト政権は正統政府であって、ヘン・サムリンの「政府」というのはこれに対する反徒的な反乱軍、一地域を支配している、権力を行使しているという点ではそういう団体にすぎないのであって、私が先ほどから政権と申し上げたのは括弧つきで申し上げている。「政権」です。そういうものにすぎないのだということを明確にしておく必要があると思うのですが、この点重要ですから、外務大臣にもう一度これは確認をしておきたいと思います。
  72. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言のとおりであると私も考えております。  念のために申し上げておきますが、それは、わが国がポル・ポト政権の方と、現政府と関係がよいからとかという感情的なものではなくて、現実に判断をいたしまして、一方は都市を占拠しておりますが、その都市にはほとんど市民はいないなどという現状から見まして、国土の一部を占拠してはおるが、カンボジアを支配しているというふうには私は見ません。そこで、現実から判断をして、カンボジアという場合はポル・ポト政権であり、これが政府であるという考え方には変わりもありませんし、また、これを検討する余地もないと考えております。
  73. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 外務大臣、なかなか明快で、明確ですね。その線でお進みいただきたいと思うのです。  それでは一つ伺いますが、二月十八日に、ベトナムといわゆる反徒団体であるヘン・サムリンのグループとの間に平和協力条約なるものが結ばれていますね。これは反徒団体と結んだのですから、もちろんこれが条約などということは国際法の常識としては考えられない。しかし、その条約を結んだことによって、カンボジアにベトナムの軍隊が駐とんをしているという法的な裏づけにしようとしているようだが、この点については、条約局長にお伺いしますが、こういうことを論拠にしてベトナム軍隊が駐とんするということは、法的には合法と言えない。これは二国間というか、ベトナムと相手との間にどうであっても、国際法上こういうことは認められないと思うのだが、どうなのか。
  74. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  現実の問題との関連につきましては、アジア局の方から御答弁いただくといたしまして、国際法の問題といたします先生の御質問の前段の点につきましてお答え申し上げたいと思うわけでございます。  わが国とヘン・サムリンかぎ括弧つき政権でございますか、それとの関係は、先ほども屡次申し上げているとおりでございますが、ベトナムとヘン・サムリンとの関係は、ベトナムはヘン・サムリン政権を承認いたしまして、当然のことながらいわゆるポル・ポト政権に対する承認というのはその時点において消滅しているわけでございますので、ベトナムとカンボジア、つまりヘン・サムリン政権との間では、一つの国家間の条約になるのではないか。これは私ども日本の立場からいたしまして、それを是とするか非とするかという問題ではございませんで、承認している相互の国家間の条約であるというふうに観念すべきではないかと思うわけでございます。
  75. 三宅和助

    ○三宅政府委員 もう一つの点でございますが、第二条に、「あらゆる分野で必要な形態での相互支援を誠実に行うことを誓約する。双方は一方が要求するときは、いつでも誓約履行のために効果的措置をとる。」ということでございまして、確かに先生おっしゃるように、いわゆるベトナム軍の駐とんを正当化するためのものと推測されます。
  76. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 問題は、条約上の問題や、それからいまの御答弁を聞いておっても、ベトナムとヘン・サムリンの間の問題、しかし、これに対して日本がどう評価するかということについては御答弁もなかったし、この点がアジアの平和に関連するだけにきわめて重大なわけですよ。  条約局長の言われたように、ヘン・サムリンなる者が一地域におけるそういうものであるとするならば、日本の側から考えた場合に、それをベトナムが承認をしたというのは尚早の承認であると言わざるを得ないわけですよ、代表する正統の政府なんて認められないのですから。その「条約」なるものに、これも条約は括弧つきですが、その「条約」なるものに基づいて軍事力がカンボジアに駐とんをしているということを言うとするならば、そのことによってアジアの平和に非常に危険な情勢があらわれているということになると、日本の方は直接関係ないから、われわれは知りませんということでは済まないと思うのです。そういう点から言うと、この条約についての態度も、そういう観点から日本の政府が明確にするべき問題だと私は思うのだが、そこの点、外務大臣いかがですか。
  77. 園田直

    ○園田国務大臣 この問題は、条約局長が言っておりましたように、日本とカンボジアの関係から解釈すべきではなくて、利害関係のない立場から公平に判断すべきであると考えております。したがいまして、ベトナムがカンボジアの一部と協定をして、これは合法性があると主張し、自分の軍が駐留しているのはその協定に基づくものであるということはベトナムが説明しておるだけであって、その合法性をわれわれは認めるわけにはまいりません。認めないからこそ、軍の撤退、侵攻反対ということをしばしば言っているわけでございます。
  78. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 やはり外務大臣の方が明快ですわ。  ほかの問題に入ってまいります。ベトナムの経済援助について具体的に伺いますが、日越間の正常化に伴って協定を結んだようですが、その内容はどういうものですか、そして現在どういうように実施されていますか。それから、それはいわゆるアグリーメント、政府間協定なんですか、あるいは条約なんですか。そこら辺の点、ひとつ詳細にお答えいただきたいと思います。
  79. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 ベトナムとの間に現在実施されつつあります援助でございますけれども、無償と有償と二つございまして、まず有償、いわゆる円借款でございますが、これは昨年の七月七日に交換公文が取り交わされまして、百億円を限度とする商品借款を供与するということになっております。それから無償につきましては、昨年の四月二十八日に書簡交換が行われまして、四十億円の無償資金を供与するということになったわけでございます。  それで、その実施状況についてお尋ねでございますが、有償、無償とも、契約はすでにほとんど完了いたしておりまして、その実施状況につきましても、無償の分につきましては、九七%前後でございますから、ほぼ実施済み、それから有償の円借款の部分につきましても、半分以上、相当の部分がすでに実施済みという状況でございます。  それから、この取り決めの性格でございますが、これはほかの国の場合における取り決めと同様、交換公文をもって処理されました、いわゆる行政取り決めの範疇に入るものでございます。
  80. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 有償の円借款の場合はわかるとしても、無償の援助、これはやはり当然財政を伴うものであり、国民の権利義務に関するものですから、これは行政取り決めでこれを行うということは適当ではなかったのじゃないか。やはり国会の承認を必要とするものではないのか。有償の円借款の場合には別としても、無償の場合には国会の審議を得る必要があるのじゃないかと思うのですが、これはどうですか。たとえば交換公文という文書をとっておっても、国会の承認を必要とするものもありますから、この辺は、一体どうなんですか。
  81. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 昨年度のこの四十億円の無償資金協力につきましては、昨年度の予算に無償資金協力のための予算をお認めいただいておりまして、その枠の中で処理するということでございまして、世界じゅうの開発途上国、非常に多くの国に無償資金協力をやっているわけでございますけれども、その場合におきましても同様に処理させていただいている、つまり国会で御承認をいただきました予算の範囲内で処理しているということでございます。
  82. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは予算措置ですね。私の言っているのは、そういう協定それ自体の問題を言っているわけです。それを国会の承認を必要とするんじゃないのかということを私言っているのですね。その点は、そういう手続はおとりにはなっていらっしゃらないでしょう。それが一点。  もう一点は、そうすると去年の四月と七月ですか、無償、有償の、これはもうすでにほとんど完了している、その後のことはまだ考えておらない、こういうことですか。
  83. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 最初の御質問につきましては、これはベトナムに限りませず、いずれの国に対する無償援助におきましても、同様の交換公文を締結しておりまして、国会にお認めいただきました予算の範囲内で、これは行政権の権限ということで処理させていただいているということでございまして、これはベトナムに限りませず、すべての無償案件について同様に処理している次第でございます。  それから第二点につきましては、ただいまお話しのとおりでございまして、五十四年度の援助につきましては、まだ検討中という段階でございます。
  84. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 五十四年度というのは、いまの予算の中での問題ですか、新規の予算の手続を必要とするものですか、あるいは予算上すでに出ているのですか。
  85. 武藤利昭

    ○武藤政府委員 予算上は無償援助の総枠について御承認をいただいておりまして、それを各国別にどういうふうに配分するかという問題が残されているわけでございまして、その配分上ベトナムをどう取り扱うかということになるわけでございますが、その点につきましては、まだ本年度の無償資金協力の予算の配分についてはすべて完了していないということでございます。
  86. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この点、もう少し触れていろいろ伺いますが、もう一点。  私が聞いた限りでは、ベトナムで、昨年大きな水害があったりして大変でしたね。そういう立場から、人道的な意味において、日本の米を十五万トン緊急援助として輸出したい、こういう申し入れをしたのだが、ベトナム側がこれを拒否したという話を聞いていますが、これはどうですか。
  87. 三宅和助

    ○三宅政府委員 昨年の十二月、グエン・ズイ・チン外務大臣が参りまして、園田外務大臣に対しまして米の援助の要請があったわけでございます。そのときに十五万トンぐらい検討してみようかということになっておりまして、その後条件の話し合いをしておりましたところ、先方といたしましては、いろいろと条件に問題があったのかわかりませんが、その後、要らないという返事が参った次第でございます。
  88. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、日本の方からの緊急援助についても拒否している、条件の問題があるのかもしれないけれども。私は、実はもっと話をもとに戻すが、外務大臣にぜひ伺いたいのですが、やはりいまベトナムに経済援助をするのは適当ではないのじゃないか。特に五十四年度の援助の中のをこれから決めるということを局長が言っておりますが、そのときには、私はぜひやめてもらいたいと思うのです。  というのは、先ほどあなたがはっきり明快に御答弁をされましたように、カンボジアにおいて、ベトナム自身は主権の侵害をやって、侵略をやっている。侵略をやっている者に対して日本経済援助をするということになるならば、日本の国はその侵略に片棒を担いで手をかしているということになるじゃありませんか。やはりこれは、しかもあなたの方で国連で明快な態度を出されたように、アジアの平和のためには、カンボジアからベトナムの軍隊は即時全面的に撤退をしろという要求を出しているとするならば、そういう事態が明快になるまでは、経済援助というものはしばらく模様を見させていただきますと言うのが日本政府の態度だと思う。  そうでなければ、他の国から侵略の片棒を担いでいると言われても仕方がないことになるじゃありませんか。特にASEANの諸国と、今後友好関係を結ぼうとするならば、ASEANの国々自身がこういう疑惑を持つということの意味においても手控えるべきだというように私は思うし、そのことはまたアジアの平和のために役立つことになると思うのですよ。というのは、ベトナムの軍隊が駐とんしているときに、ベトナムの国内はいま経済的に非常に苦しい状態です。それに手をかしてやるというようなことでは、戦争の解決はますます長引いていくということにもなるからです。  そういう点では、アジアの平和のためには、経済援助についてはカンボジアの問題が解決するまではしばらく模様を見させていただきますと言うのが、日本政府としてとるべき態度だと思うのだが、これは外務大臣、いかがでございますか。
  89. 園田直

    ○園田国務大臣 ベトナムの援助については、ASEANの国々は、当初日本経済援助することによって、その経済援助が一つの力になってわれわれに脅威を与えるおそれがあるから慎重にやられたい、こういう意向があったわけであります。そこでASEANともよく相談をして、とは言うものの、やはりベトナムというのはアジアを構成している一つの国でありますから、これと話ができずに孤立をすることもまた一つの問題である。こういうことから、そういう点は慎重に考慮しながらということで、ASEANの納得を得て、五十三年度の援助はやったわけであります。  その後、こういう事件が起こったわけであります。そこで、ASEANまたはその他の関係諸国意見は、いま岡田先生がおっしゃったような意見もございますが、また一方においては、もっと大きな見地から見てベトナムを孤立させることに追い込むことはまた一つの懸念もある、日本だけがベトナムと話のできる数少ない国である、したがって、フィリピンの大統領あたりはいまのようなつながりがある方がいいのではないか、こういう声も出てきているところであります。中国あたりは真っ向から私に、これだけは反対だという強い要望がございます。そういうわけで五十四年度の問題は、いまの御意見等も踏まえつつ、ASEANの意向も聞きながら、十分検討していくつもりでございます。
  90. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 日本がどうして窓口になる必要があるのですか。日本の憲法からいっても、アジアの平和を希求するという立場からいっても、問題を早く解決するためには、ベトナムに経済援助をやるというような形では私は解決できないと思う。やはりここで断固たる態度をむしろ見せることによって、問題の解決の方向が出てくるのだ。私は、中国がどう言ったから、こう言ったからということで言っているのじゃありません。あくまでも日本の立場からそうすべきではないかということを、私は外務大臣に御意見を伺っているわけであって、やはりここではしばらく模様を見ましょうということをはっきりされることが必要じゃないかと思うのです。  新聞なんかを見ると、ソ連の基地ができた場合にははっきりやめますというようなことを外務大臣が言ったのか、だれが言ったのか知らぬけれども、そういうような話もあるようでございますが、私は、日本の今日の憲法のたてまえに立って、そして国連の中において平和外交を進めるという日本の立場から見て、やはりここでカンボジア問題が解決しない限りは、自分たちが、日本が主張しているその態度を認め、そういう状態にならない限りは、やはり援助はしばらく手控えたい、こうおっしゃるのが私は賢明なる園田外務大臣の態度だと思うのですが、どうですか、もう一度伺います。
  91. 園田直

    ○園田国務大臣 御発言の趣旨は十分わかるのでありますけれども、ここで断固たる態度をとったが平和に通ずる道か、あるいはまたこれを断固たる態度をとって、そして関係を断って、ある一方にベトナムを追い込むことがいいのか、ここは岡田先生と私の意見が少し違っているところでありますが、慎重に検討したいと考えます。
  92. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、どういう場合にはやらないということはおっしゃることができるのですか。
  93. 園田直

    ○園田国務大臣 もちろん経済援助は、人道的立場からではなくて、いろいろな考慮からするべきものではありまするけれども、どういう場合にはやるとか、どういう場合にはやらぬとかということを現職の外務大臣が申し上げることはお許しを願いたいと存じます。
  94. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 四月の二十六日に――二十六日というと、外務大臣は日本におられなかったですね。先ほどからいわゆるポル・ポト政権と言われている民主カンボジアの移動大使が日本に来たのです、ケット・チョンという人。そして外務省も訪問しているはずです。そのときに、民主カンボジアに対して医薬品と医療器械等を援助してもらいたい、こういう申し入れをしているわけです。国際赤十字社を通じて援助してもらいたい。正統政府である民主カンボジアですから、この援助は当然行われるべきだと思いますが、まず第一点は、そういう事実があったかどうか、三宅さん、どうです。
  95. 三宅和助

    ○三宅政府委員 そういう事実はございました。ただ、要請はそれほどの具体的な話ではございませんが、そういう一般的な希望を私たちは聞きました。
  96. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 要請は、具体的だったのでしょう。あなただったから、余りはっきり言わなかったのかもしれないね。こういう要請があった場合、外務大臣、どうですか、これは当然、正統政府ですから、援助をすべきものだと思います。ベトナムに対して援助して、これは返事ができないというのじゃ話になりません。
  97. 園田直

    ○園田国務大臣 私は、援助すべきものであると考えております。  なお、カンボジア政権に対しては、経済援助もなるべく早く具体的に申し出られよ、これに応ずる用意があるということは、私じかに申し上げているところであります。  なお、今日の状態で私が一番心配しておりますのは、カンボジアがああいう実情でありますから、あちらこちらに住民が移動をして、農業に耕作するという時間の余裕がないために食糧の逼迫が出てくるじゃないか、こういう情報がありますから、事務当局には、そういう要望があってからでは遅いから、その前に、要望があったら速やかに応じられるよう準備しておくべしということをしておるわけであります。ただ、現状の問題で、うまくやりませんと、こちらからどう送るのか、送った物が思わない方に取られるということもありますので、赤十字を使うか、あるいはいろいろ話し合いをやるか、そこのところを検討中でございます。
  98. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 大臣、いまの医療品と医療器械ですね、これは私たちの方で入手している限り、申し入れたけれども、いまだに日本政府の回答がない、こういう情報をわれわれは聞いているわけであります。これは四月二十六日ですから、もう一カ月前ですね。ですから、これに対して早急に善処をして、北京にも民主カンボジアの大使がいるわけですから、早急にこれに対する回答をしていただけますかどうですか、この点、ひとつ伺っておきます。
  99. 園田直

    ○園田国務大臣 かねてから心配しているところでありますが、申し入れてから一カ月もたっているということは、まことに申しわけありません。これに回答することではなくて、直ちにそれに応ずるような行動を早くやるように事務当局、同僚とも相談して進めたいと思います。
  100. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間が余りなくなってまいりましたので、ベトナム問題で、今度はソ連との関係を若干伺ってまいりたいと思います。  最近、新聞報道によると、ベトナムのダナン、カムラン、ハイフォン、こういうところにソ連の艦船の出入りが頻繁である、こういうことが報道されておりますが、事実はどうなっておりますか。それからソ連の艦船の種類、どういうものが入っているのか。それからその艦船はどういうところに所属しているのか、たとえばソ連の太平洋艦隊所属であるとかなんとかということになりますね。そこら辺の点をやや詳細にお答えいただきたいと思います。
  101. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 最初にお断り申し上げなければいけないことは、ベトナムのカムラン湾、ダナン地域と申しますのは、わが方の偵察能力の及ばない地域でございまして、諸般の情勢から判断しなければならないということでございます。また、情報がわが方が直接入手した情報でないものでございますから、情報を提供した筋の了承を得られないと、公の席では発表できない、そういうこともございますので、その点だけは御了承願いたいと思います。  それで、中越戦争が起こりまして以来、ソ連艦艇が大体南シナ海水域に通常十数隻遊よくしておりました。それが三月に入りましたころからダナン、カムラン湾等に入港しているという情報が多多ございました。これは諸般の情報を総合いたしまして、間違いないところと思います。  また、御質問は船舶だけでございましたけれども、偵察機も、対馬海峡を通過いたしました偵察機、これはいつも二機で飛ぶのでございますが、四月十一日と五月十六日と両日にわたってベトナムの飛行場に着陸したように考えられます。  それで船の種類でございますが、これはわが方といたしましては確認しておりません。ただ、一般的にわが方が申し上げられますことは、対馬海峡を通過いたしまして、南シナ海に南下した船、これは進入しております。これがインド洋の方に向かわないで、南シナ海あたりに遊よくしているということも大体推定されますし、それからインド洋から極東のウラジオあるいは極東のソ連海軍基地に帰投する途中の船、それが通常ならもっと早く帰投すべきところをしばらくあの辺に遊よくして、あるいは入港した、そういうふうなことも推定されます。  そういう根拠に基づきますと、当時南シナ海におりましたのは、一番大きな船から申しますと、クレスタ級の巡洋艦あるいはクリバック級の駆逐艦のようなものでございます。それで所属については、ソ連太平洋艦隊は、太平洋とインド洋両方責任を持っておりますので、全体といたしまして太平洋艦隊所属であると申し上げて、間違いないと思います。
  102. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いま艦船のことだけ伺ったつもりだが、飛行機の話が出たので、軍用機の関係ですね。いまちょっとお話のあったシベリアからずっと来ている、あるいは輸送機も来ているわけでしょう。そこら辺をもう少しお話をいただきたいのと、それからどういう空港に入っているのか、そこら辺も、もう少し伺いたいのです。
  103. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 ベトナム地域において活動しております、あるいは赴きましたソ連の航空機につきましては、輸送機はかなりの数が活動しているようでございますが、これはほとんど全部西回り、インド洋の方から来ております。主としてアントノフという輸送機でございまして、極東の方から参りましたのはTU95、これは爆撃機でございますけれども、これは改造いたしました電子偵察機、それが極東の方から向かっているようでございます。  着きました飛行場につきましては、私どもとして承知しておりますのは、わが方の管制地域を離れて南の方に向かった、また帰投するまでに相当の時日を要している、また西の方に向かった模様もないということでベトナム地域にいたと推定するほかないのでございますが、これは新聞等に、また各国政府からいろいろ情報が漏れておりまして、それでダナンに寄港したということが言われております。これはダナンにおける施設その他の一般的判断から申しまして、防衛庁としてそれは否定するものではございません。
  104. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いまの御答弁だけでは必ずしも明確ではないのですが、あなたは国際担当の参事官として新任されたそうですから、いろいろ情報もお取りになっていると思うから、もうちょっと伺いたいと思うのだけれども、それは港の場合、それから空港の場合相当頻繁に行われているのですか、どうなんですか。
  105. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 空港の場合から申しますと、偵察機の活動につきましては非常にはっきりしておりまして、偵察機の活動につきましては、対馬海峡を南下いたしまして帰ってくるまでこれは二遍でございます。それぞれ二週間前後ベトナム地区に着陸したというふうに推定しております。  輸送機につきましては、これはわが方としては直接確認しておりませんけれども、数はもっと多いようでございます。  それから艦船につきましては、三月初めから、特に中越戦争が終わってから現在に至るまででございますけれども、入港したという情報がかなり入っております。頻繁と申し上げていいかどうか、数字を申し上げませんと頻繁と言えるかどうかわかりませんけれども、随時使用しているという状況でございます。
  106. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 日米安保条約の中にも随時協議、随時使用なんという問題がありますね。ですから、こういうような点を見ていると、ベトナムにおける幾つかの港と幾つかの空港は事実上基地になっているのではないか、そういう軍事的な基地として使われているのではないか、こういう感じがするのですが、この点はいかがですか。
  107. 岡崎久彦

    ○岡崎政府委員 基地ということの定義につきましては、これは別に軍事的にはっきりした定義があるわけではございませんで、まず寄港、いわゆる薪炭の補給でございます。それから最終的には、ある国の軍隊の恒常的な根拠地として使用する。それに至る、たとえば、その間いろいろ通信施設を使うとか、あるいはある程度の修理能力を持つとか、それによって基地の態様も違うわけでございます。  ですから、どの段階で基地となったということは、防衛庁としては申し上げられませんけれども、ただ、いわゆる基地的使用でございます。基地的使用の態様によりまして、極東におけるソ連の軍事能力がその分だけは高くなる。その使用の態様に応じた能力は、哨戒能力、偵察能力あるいは局地介入能力でございます。これは意図とは別でございまして、能力でございますけれども、それが増強することにつきまして、防衛庁は事実に即しまして深い関心を有しているところでございます。
  108. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 どうもこれは大臣お聞きのように、事実上いろんな種類はあったり段階の差はあっても、軍事的なソ連からの援助というものはべトナムにそういう形で行われているし、また同時に、事実上そのために基地化されている、こういうように見ざるを得ないのですね。  そうすると、そこで一点、外務大臣に伺っておきたいのですが、ベトナムは侵略者であるという規定をされたわけです、主権の侵害と言ってもいいのですが。そういう国に対してソ連が軍事援助をしているということについて、まさにソ連はその侵略の片棒を担いでいると言わざるを得ないわけですね。こういう点については、外務大臣としてどういう御感想をお持ちになっているのか。  第二点は、事実上基地のようにして使われているこの状態、この点について外務大臣としての御感想を伺っておきたいと思います。
  109. 園田直

    ○園田国務大臣 第一は、言葉の問題でございますが、私は侵略という言葉は使っておりません。侵攻という言葉を使っておりまして、これは非常に微妙な立場だからそういう言葉を終始使って、侵略という言葉は使わないようにしているわけであります。  問題は、ソ連の艦艇または飛行機でありますけれども、カンボジアの模様から見てみますと、これは私より岡田先生の方が詳しいかと存じますが、第一に、カンボジアの中では、いろいろ日本の新聞で言われておりますけれども、現政権の行動は相当活発でありまして、主要道路というものは現政府が阻絶をしておる。それで、陸路で一部のものに対する輸送とかその他できない。そこで、ソ連の飛行機を使って空路輸送しているのが実情のようでございます。また現政権は現政権で、別の方向から補給あるいはその他をやっているようであります。  それから、偵察機がときどき行く、それから通信施設がある、こういうことは、これまた頻繁ではありませんけれども、これは利用しているのに違いない。港湾の基地かどうか、基地という定義は漠然としておりまして、はっきりわかっておりませんけれども、この前、ソ連の次官が来て事務レベルの協議をいたしました。そのときに新聞で、ソ連とベトナムは同盟条約を結んでおるんだから、基地に使うのはあたりまえだというような記事がちょっと出ました。  これは間違いでありまして、友好関係を結んでいる港湾に、ソ連の飛行機がときどき行ったり、船が、特に艦艇という言葉を使わずに船という言葉を使っておりますけれども、行くのは当然だという趣旨のことでございます。現在、見ておりますと、ダナン、カムラン湾にときどき艦艇が行っているようでありますけれども、これは事変当初、または事変中のような多数のものでなくて、せいぜい二杯か三杯のときが多いようであります。これは物資の補給をしておるのか、あるいは艦艇そのものを補給しているのかわかりませんけれども、長期にわたってこれを艦艇の基地にしているという状態ではまだない、このように考えておるわけであります。
  110. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 侵攻と侵略の問題についても、これは大臣が言われる限りは国際法的な基礎の上に立ってお話しされる必要があると思うのですよ。侵攻とおっしゃるのだが、侵攻というのは、国際法上の通念としてあるんですか。ないでしょう。主権あるいは独立の侵害という場合には、これはあなたは侵攻とおっしゃったって侵略ですよ。国連で侵略の定義などというものも決まっているわけでしょう。そうすれば、あなたのお言葉で侵攻とおっしゃっても、これは侵略ですよ。アグレッションですよ。国際法上、この点は明確にしておく必要があると思いますよ。侵略と言えばきついので、日本語というものは便利なもので、侵攻と言えば弱いんだというような、そういうものじゃないと思いますよ。ですから、やはり国連においても侵略の定義までしているぐらいですから、主権を侵害したとあなたの方ではっきりおっしゃったんですから、これはまさに侵略でありす。この点は明確にいたしておきたいと思います。  そこで、いまも御答弁の中であったのですが、日ソの事務協議ですか、そういう中でもお話があったようでございますが、バンコクにいるソ連大使、この人が、新聞報道によれば、ソ越友好協力条約に附属文書があって、その附属文書に基づいて軍用機並びに軍艦が出入国できるという法的な基礎があるんだということを記者会見で語っておりますね。こういう点について、これは大臣でなくても結構です。こういうソ連大使の発言について、これは事実なのかどうなのか。そういう附属文書があるのかないのか、そこら辺の点を伺っておきたいと思います。
  111. 三宅和助

    ○三宅政府委員 そういう情報は承知しておりますが、その事実はまだ確認されておりません。
  112. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 事務協議のときにその点は確認されてないのですか、どうなんですか。
  113. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 事務協議の内容につきましては、先方の強い要望もございまして、詳細にわたりますことはお許しをいただきとうございますが、その点につきましては、先方が申しました要旨は、一国が他国との話し合い及び合意に基づいて、その国の港その他に船舶の出入を行うことは当然のことである、このようなことでございまして、ただいま岡田委員のおっしゃいました、バンコクのソ連大使が申しました、そのような附属協定ないし秘密約束の有無については、こちらからただすこともいたしませんでしたし、先方も触れておりません。
  114. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これはなかなか重大な問題じゃありませんか。附属文書があるとするならば、第何条に基づいてある。日米安保条約の中でも、御承知のように第六条に基づいて行政協定ができている。これと同じように、この点を確かめられることは、むしろ外務大臣の間の交渉よりもそれこそ事務協議としてやるべき問題じゃないのですか。アジアの平和、ひいては日本の平和の問題ですもの。この点は、なぜお確かめにならなかったのか。この点を確かめなかった理由を伺いたい。
  115. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 先方は、ソ連の船舶の出入はソ越友好協力条約の条項及びその内容に基づくものであるということを申しまして、それとおぼしき条文を引用いたした事実がございます。
  116. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは何条ですか。
  117. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 内容につきまして正確に申し上げることは控えさせていただきますが、この条約には、まず前文に「社会主義の成果の強化と防衛について相互に援助することをその国際主義的義務とみなし、」ということがございます。  それから第四条の中に、「両締約国はあらゆる手段をつくし、社会主義国間の兄弟的関係、統一と連帯の一層の強化のために戦う」ということがございます。  それから第六条でございますが、「両締約国は、すべての重要な国際問題について協議をする」、それから「攻撃の脅威の対象となった場合には、かかる脅威を除去し、平和と安全のために適切な措置をとるため、協議を始めることとする。」このような条文に基づくような説明を概略いたしました。
  118. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 第六条ですね。大体この趣旨は――日米安保条約を例にして考えましょう。日米安保条約の文言それ自体の中に軍事的な言葉というのは全然ありませんね。しかし、実態的には、あれは軍事的な取り決め。だから、われわれはこれを軍事同盟だと言う。ソ越友好協力条約の文章を見ても、この言葉の中には軍事的な文言はない。実態的には、これは軍事的な取り決めである。第六条は明確になっている。とするならば、これはいわゆる有事の随時協議、それに基づく軍事的な連帯関係、同盟関係を結んでいるものだとわれわれは理解するが、どうですか。
  119. 三宅和助

    ○三宅政府委員 実はソ連がこの種の条約をいろいろな国と結んでおります。たとえばインドとかございますが、大体インド的なパターンでございまして、とるべき措置につき協議する、相互協議ということになっております。したがいまして、この条約自体がすぐ軍事同盟であるということには、われわれ解釈しておりません。無論今後の運用の仕方いかんによりまして、かなり問題が変わってきますが、この条約自体は決して軍事的な同盟関係そのものを目的としたものではないのではないかというのが、一応の解釈でございます。
  120. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたの理解だと、軍事的な問題は全然関係がない、こういうことですか。さっき宮澤さんの答弁では、軍事的な軍用機、軍艦、それはソ越条約に基づいて行われたとソ連は言っている、こう言うのですよ。軍事的な問題ではない、こうおっしゃるのですか。
  121. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 アジア局の答弁の前に、ちょっと私の答弁をもう一度申し上げますが、ソ連側の代表は、どの条文に基づいてソ連の船舶、航空機等が出入しておるということをはっきり申したわけではございませんで、条約に基づいて、条約国との合意によりソ連の船舶が港に出入しておる、こういうことでございまして、正確に第何条によって軍事的な行為が行われている、そういうふうに述べたわけではございません。
  122. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 外務省の条約に対する見解は、どうなんですか。
  123. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 この条約の文面を見ます限り、軍事的な用語と申しますか、そういうものは一切使われておりませんで、第六条も「協議を始めることとする。」ということの単なる約束にとどまっているわけでございまして、私は、その限りにおいてこれが直ちに軍事同盟条約ということは言えないというふうに思います。
  124. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、条約局長、読んでみましょうか。「平和と安全を保障する適切な効果的措置をとるため、」云々となっていますね。これは軍事的な問題を含むのでしょう、違うのですか。
  125. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 先ほどからの御質問、それから外務省側から答弁申し上げておるところを聞いておりますと、どうも私には軍事同盟条約という言葉の問題ではないかというように感じている次第でございます。  いろんな言い方があるのだろうと思いますけれども、「平和と安全を保障する」ために「適切な措置をとる」というのは、非常に通例の用語といたしましては、ここから直ちに軍事的なものが出てくるということはございませんけれども、しかし、ほかに意図を持って「平和と安全を保障する」というような言葉を使う場合もあり得ることでございまして、いずれにしても、この条約の運用がどうなっているかということを見きわめませんと、果たしてそれが直ちに軍事同盟条約であるか、それとも軍事のみならず、ほかのものも含むものであるか、あるいは軍事的な色彩というのは非常に薄いものであるかというようなことが直ちに文面だけでは申し上げられないのだろう、そう考える次第でございます。
  126. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 時間がないから進めてまいりますが、どうですか、条約局長、具体的な事例に云云とお話しになったが、このソ越友好協力条約と同じような条約をソ連は東欧諸国並びに中東その他の国々と結んでいますよ。この場合、同じ文言ですよ。たとえばアンゴラの場合、私、ここに持っていますが、アンゴラの場合にしても、モザンビークの場合にしても、イラクの場合にしても、同じ文言でソ連は軍事的な協力、監視をやっているじゃないか。そういう事実に基づいて私は言っている。  そういう事実の問題を、ここに単に文言上軍事的な云々と書いてないからこれは違うんだと言わんばかりの言い方では私は納得できない。具体的な事例があるからこそ、こう言っているのであって、そういう点については軍事的な――条約局長、そうでなければ、ソ連の艦船、軍用機が入っているという事実さえも問題になるじゃないか。そういう点はどうなんですか。これはむしろ外務大臣に伺っておきましょう、ここら辺は軍事的な意味できわめて重要ですから。
  127. 園田直

    ○園田国務大臣 大事なところであって政治的判断をやるべきときではありませんから、専門の条約局長から答弁をいたさせます。
  128. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 ソ連はベトナムと結んでおりますこの友好協力条約のようなパターンのものを多くの国と結んでいることは承知しておりますが、その一々にわたって私は条文に当たって見ているわけではございません。したがいまして、はっきりしたことはここでいま直ちに御答弁申し上げられないわけでございますけれども一つのパターンではなく、私の記憶によりますれば、これは誤っていたらば後で御訂正する余地を与えていただきたいのでございますけれども、多分、ただ単にこのベトナムとの条約の場合のように「協議を始める」というようなことではなく、より直接的に相互に援助するというようなことも規定した条約も一つのパターンとしてあるように記憶いたしております。やはり文章の規定の仕方によって判断させていただきたいと思うわけでございます。
  129. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、私も余りこれにこだわっていると、時間がないのですがね。  アンゴラの場合を読んでみましょう。第七条「平和に対する脅威、もしくは平和の攪乱という事態が生じた場合には、両締約国は発生した脅威の除去もしくは平和の回復のためその立場を一致させる目的で、遅滞なく相互に接触を開始する。」それからモザンビークも同様です。「遅滞なく相互に接触を開始する。」イラクの場合も「遅滞なく相互に接触を開始する。」これは第八条。  ですから、その文言上の問題だけで云々と言われましても、こういう条約に基づいて、アンゴラにはソ連の軍隊が駐とんする、モザンビークにもいる、イラクにもいるのですよ。だから、文言がそうだからということだけでは、これはあなた、条約局長らしくないやな、そんなことを言っているんでは。おわかりになった上でこの公式の速記録をとられることが問題だというのでそういうお答えなんでしょうが、私はそれでは納得できません。  そこで、ともかく、外務大臣、今度は政治的な問題として伺いましょう。  ベトナムにソ連がこのような軍事基地化なり軍事的な協力関係を結ぶ、こういうことはアジアの平和にとってどういう影響を及ぼすことになるか、好ましいことであるのかどうなのか、こういう点は明快にひとつ御答弁をいただいておきたいと思います。
  130. 園田直

    ○園田国務大臣 いま言われたような事態は、ASEANの国々には不安と脅威を与えておりまして、好ましき事態ではございません。したがいまして、ソ連の方にはベトナムをめぐる行動については慎重にされたいという要請をいたしております。
  131. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もう時間がないのでどんどん進めますが、五月二十九日のある新聞にキッシンジャーの会見があって、このキッシンジャーの会見というのは非常にわれわれとしては示唆に富んだ座談会だったと思うのですね。外務大臣もお読みになったと思うが、その中でキッシンジャーはこういうことを言っている。「ソ連がある国に駐留できるか否かが問題なのではない。問題なのは、ソ連の後押しであらゆる変化を決定できるという原則が確立されることだ。」これはキューバの軍隊を使ったソ連のやり方ですね。そういう点を含めて、ベトナムの軍隊を使ってソ連がやっている、こういうことについて問題なんだ、こういうことをキッシンジャーは明確に言い切っていますね。私は、このことは非常に重大な問題だと思う。園田さん、いかがですか。こういうソ連のやり方というものについてキッシンジャーがここまで明確に言っていますが、この点についての御見解を伺いたいと思います。
  132. 園田直

    ○園田国務大臣 キッシンジャー氏は、御承知のとおり、現職ではありませんし、私は現職であります。したがいまして、この事態をきめつけて発言することは、とかく問題があるとは存じますけれども、キッシンジャー氏と私は一時間ぐらい会談いたしまして、キッシンジャー氏の意見というものは十分貴重な意見として納得しつつ承ったということだけで、私のお答えにさせていただきたいと存じます。
  133. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ソ連の最近のアジアにおけるこういう動き、それから日本に対する北方領土問題を含めたいろいろな動き、こういう点から考えて、昨年あなたが大変御尽力をされた日中平和友好条約の規定の中にある覇権主義の問題というのが、もうあなたが苦労されたかいがあったと私は思うのです。こういう覇権主義的な行動に反対するというのは日本の基本的態度だ。ソ連のこのような動きというのは、キッシンジャーの言っている点もそうなのですが、まさに覇権主義に反対するという意味じゃありませんか。そういう点で、今日のソ連のとっている態度について非常な不信感を私は持っています。こういう覇権主義に対して反対しない限りは、アジアにおける平和もないし、日本の平和もないと思うのです。あなたのお考えをひとつ伺っておきたいと思います。
  134. 園田直

    ○園田国務大臣 アジア、特にASEANの国々に不安と脅威を与えるような行動は、どこの国であろうと、これはそういうことがないように希望し、期待するものであります。
  135. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 最後に、これはしり切れトンボになってしまって、もう時間がないからやめるのですが、さっき条約局長が言われた友好協力条約、こういう点は、実は私は一冊書いております。後で一冊お届けしますから、御研究ください。  そこで、園田外務大臣にひとつ伺っておきますが、去年一月にあなたが行かれたときに、モスクワで突然突きつけられた日ソ善隣協力条約、この善隣協力条約はその後発表されて、いろいろあれしていますが、その第五条にソ越条約第六条と同じ趣旨のものがある。条約局長から、必ずしもこれは軍事的なものではないという答弁はあったけれども、しかし、随時協議をしようということになっている。日ソ善隣協力条約を条文のとおり締結するとするならば、日本とソ連とが軍事的な何らかのつながりを持たなければならないということになるという点でも、私は反対なのです。  北方領土の問題については、善隣協力条約を結ぶならばこれは永久にたな上げになってしまうという意味でも反対なのですが、それだけではない、こういう軍事的な関連条項があるという点についても、善隣協力条約に賛成するわけにはまいらないと思うのですが、こういう点についての外務大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  136. 園田直

    ○園田国務大臣 いまソ連の方から表明しておりまする善隣協力条約の内容には反対であるということは、終始一貫してソ連の方にも申し述べております。
  137. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ですから、善隣協力条約と領土問題と並行審議をしたらどうかなどという意見が一部の議員の中からも出ていますが、私はこういうのはナンセンスだと思いますよ。善隣協力条約を結ぶ前提としては、領土問題を解決した後でなければだめだ、そういうのが恐らく外務省の基本方針だと思うのだが、領土問題解決後において善隣協力条約についてその内容を討議するというなら別ですけれども、並行してやろうというのはごまかしだと思う。こういう点についてもう一度見解を伺って、私は終わりにしたいと思うのです。
  138. 園田直

    ○園田国務大臣 未解決の問題、いわゆる北方領土の問題の解決がすべての前提であることは、これは明確にいたしております。それが前提であるならば、その後平和条約、善隣協力条約という相談に乗りましょう、ただし、いま出されておる善隣協力条約の内容については反対である、こう言っております。
  139. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それで、時間が超えましたから、これで終わりますけれども、最後に私、再度要望して終わっておきます。  先ほどあなたは侵攻とおっしゃったそうでありますが、カンボジアの侵攻が続いている今日の段階において、その侵攻を進めている本人であるベトナムに経済の援助を行うということは、他の国から見るとその侵攻に手をかしたということになる。私は、その侵攻という言葉は、あえて侵略という言葉を使います。国際法上、侵略というのは正式の使い方であります。その侵略の片棒を担ぐというような経済援助は、園田さんは賢明ですから恐らくなさらないと思うけれども、これは絶対にやっていただくことのないように。ほかから見るならば、園田さんどうですか、侵略者に対して片棒を担ぎ、正統政府である民主カンボジアから要請した援助についてはいまだに返事をしない、これは園田外交の本質は一体どこにあるのだという疑問を持たれますよ。この点、十分ひとつ御注意いただきたいことを強く要望して、私の質問を終わります。もし御意見があれば、伺っておきます。
  140. 藏内修治

    藏内委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時四十三分開議
  141. 藏内修治

    藏内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬長亀次郎君。
  142. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 今回の中南米局の設置で、外務省の情文局文化事業部、アジア局の次長及び大阪連絡事務所が廃止されることになるわけでありますが、私どもはこうした機械的な削減には反対であります。  そこでお聞きしますが、外務省大阪連絡事務所、これは一般国民とはどういうかかわり合いを持っているか。  次に、このような一般国民とかかわりのある機関を中南米局の見返りとして廃止することは問題であります。外務省は所長の長期出張や分室として存続させる意向を表明しておりますが、こうなりますと、今度は設置法上ない機能を公然と認めることになるわけであります。この経緯を見ても、外務省大阪連絡事務所は削除せず、法的にも実際的にも存続を図るべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  143. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 外務省大阪連絡事務所の主要な業務といたしましては、関西地区の府県庁、国の出先機関外国公館との連絡、それから国公賓等の接遇等のほかに、一般国民方々との関係では、外国への渡航者や本邦商社が外国公館等に提出する文書については証明事務を行っております。これはかなりの事務量を占めておる次第でございます。  こういう事務は、大阪及び関西方面におられる方々には非常に役立っておるものとわれわれは信じておる次第でございます。しかしながら、御高承のとおり、今回、中南米局を設置するに当たりまして、政府の基本方針である行政機構の簡素化の見地から大阪連絡事務所をその一環として廃止することにいたした次第でございます。しかしながら、関西方面の方々の利便もあり、またわれわれの国公賓の接遇という必要もございますので、本省からしかるべき者を随時出張させるとか、その他のどうしても必要な措置は講じてまいりたいと考えておる次第でございます。
  144. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に、外務大臣にお伺いいたします。  先日内閣委員会でも、大臣は対チリ外交を積極的に進める意向を表明しています。  まず最初に、外務大臣は、このチリのピノチェト政権をどのような政権であるとお考えであるかという問題。このピノチェト・チリ政権は、合法的に成立したアジェンデ政権をクーデターで打倒した軍事政権であります。さらに国連においても、ピノチェト政権は人権侵害で告発され、チリにおける人権抑圧非難の決議案が採択されて日本も賛成しております。人権抑圧のファシズム政権であります。幾ら権益の優先といっても、なぜこの時期にこうした軍事ファシズム政権と積極的な外交関係を推進するのか、きわめて不明確であります。このような国との積極的な外交関係の推進はやるべきではないと考えますが、外務大臣の御見解をお伺いします。
  145. 園田直

    ○園田国務大臣 私の答弁は、積極的にチリとの外交関係を転換する、経済外交を積極的に進める、こういう答弁ではございません。チリとはいままででも友好関係があるわけでありまして、経済その他の関係もあるわけでございます。チリの政権が人権問題でいまおっしゃいましたようなことがあることはよく承知をしておりますが、その後逐次改善の方に進んでおります。  もう一つは、ABC諸国と言われるぐらいに中南米ではブラジル、チリ、それからもう一つはアルゼンチン、これが三大国と言われておりまするので、向こうを訪問する際ここへお伺いをする、こういうことを述べまして、外交関係はいまと転換をするわけでもなければ、さらに積極的に進めるわけでもございません。
  146. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次は、安保条約、地位協定問題に関連して、最初に、現在沖繩はまるで占領支配当時の状態になっており、嘉手納空軍基地の爆音あるいは海兵隊の昼夜分かたぬ軍事演習、それから国道、県道を堂々と武装行軍をしている、この問題について大臣にお伺いします。  これは調査してから検討する問題ではすでにありません。このアメリカの軍事行動は、最初に十四日に行われています。これはキャンプ・ハンセンにおる海兵隊であります。国道三二九号線を堂堂と行軍をしております。これについてはすでに御承知だと思いますが、沖繩の新聞などによりますと、本当に完全に武装し、そして国道、いわゆる提供されている施設、区域の周辺ではないわけであります。国道をはみ出して堂々とやっているのです。私は、安保条約などには反対でありますが、たとえ安保条約を容認していても安保条約、特に六条、さらに地位協定でもこのようなことは許されない、私はそう考えております。  そこで具体的に申し上げますが、これは五月十八日午前二時三十分、深夜であります。行軍のルートはキャンプ・シュワブから国道三二九号、県道一〇八号、国道五十八号線、これが幾ら行軍したかというと約四十キロ行軍しております。行軍の形態は、道路の両側一列縦隊に行進している。それから前の方と最後尾におのおのジープ一台ずつ配置されている、いわゆる戦闘隊形の行軍であります。さらに参加部隊、これは武装した兵士五百から六百、所属はキャンプ・シュワブ第九連隊第三大隊、行軍の目的、これはコマンディングマーチ、出動態勢訓練の一環である。十八日に行われて、十九日に抗議に行った、名護市に対する説明が以上であり、発表したのはだれであったかというと、海兵隊コーリヤー少佐、これがやっております。県道、国道、これにはみ出して堂々と往復四十キロを行軍している。これは当然地位協定上、あるいは地位協定三条二項などというような路線権の問題、移動の問題などではありません。  さらにつけ加えますが、十八日、比嘉副知事が行って、余りに目に余るものだからさすがの自民党県政も放置するわけにいかぬということで、まさに無神経ではないかということをロビンソン司令官に言ったら、司令官いわく、最初に遺憾でありますということを表明しております。若い大将が歩行訓練とエネルギー節約のためにやったということをはっきり言っております。  すなわち、歩行訓練、エネルギー節約というのは、その前日発言した隊長が実は車の手配ができなかったからということを言った。これに対してガソリン、いわゆるエネルギー節約と、若い大将の指揮する徒歩訓練である、はっきり演習であるということを述べ、いま申し上げたようにコーリヤー少佐、これがいわゆる行軍した道順、その他形態まではっきり述べております。これは名護市の、いま申し上げました深夜でありますから非常に騒々しい。見たら、兵隊はほとんどが赤土にまみれている。あれをはかりましたが、往復四十キロありません。だから、ぐるぐるぐるぐる演習しながら、ついに国道に入ってキャンプ・シュワブに帰っている。こういうふうな国道、県道を武装行軍し、堂々と訓練し、演習していることは、一体地位協定で許されているのかどうか、これは許されません。この点について、明確に大臣の方で答えてください。
  147. 園田直

    ○園田国務大臣 沖繩で近ごろいろいろ事件が起こっていることはまことに遺憾であります。そのたびごとに抗議をし、将来に向かって注意しておりますが、まず事実関係、それから地位協定、それからまた日米合同委員会との関係もありますので、まず事務当局からお答えをさせて、その後で大臣から発言を許していただきたいと存じます。
  148. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 事務当局はおとといの内閣委員会で、事実関係を施設庁とも相談した上で調べてから答弁すると言っておりましたが、この問題はもう十四日に起こっている問題ですよ。そして十八日に起こっている。しかも、ロビンソン司令官もはっきり言っておる。さらにコーリヤー少佐もはっきり言っておる。一体、どういう観点で何を調べるのか、問題はそこにあります。堂々と国道と県道を、区域、施設ではありません。しかも路線権、イーズメントといったようなものを適用できるところでもありません。しかも、往復四十キロにわたって国道と県道を武装行軍している。これは許されるのか。東京のど真ん中で、横田基地あたりから国道を堂々とこういった訓練がされる場合に一体どういうふうになるのか、ここら辺の問題を含めて、大臣はすでに知っていると思うのですよ。知らなければうそです。あれほど沖繩県民がおびえておる。私が言うまでもありません。安保条約六条は、「日本国の安全に寄与し、」と書いてあります。これが日本国の安全に寄与しているのか、寄与しておりません。おびえ切っております。一体どうなるだろうか、大臣、答えてください。
  149. 園田直

    ○園田国務大臣 私が申し上げたのは、それが事実であるとかないとかという議論をしたいということではございません。それを今後どうやるか、それには事務的な問題と大臣としての政治的な判断と権限があるわけでありますから、まず事務当局の意見を聞かれて、それでだめだとおっしゃるなら、よせとおっしゃれば事務当局はやめさせますが、一応聞いていただきたいと存じます。
  150. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 簡単に述べてください。
  151. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 十八日に起こりました事実について、どうなっているのかという御提起がございました。私どもといたしましては、この問題を知りまして以来、アメリカ軍に対しまして、いまの現実に問題になった行動がいかなる目的、いかなる具体的な態様、詳細にどういうことであったのかという点をよく把握をいたしまして、その上で判断をいたしたいということで、時間がかかっておりますけれども、いまだ具体的な点を掌握してないわけでございます。したがいまして、大臣にもまだ御報告をしていないわけでございます。  ただ、一般的なことを申し上げれば、先日もお答え申し上げましたように、米軍は施設、区域を使用する権利を有し、また施設の間を移動する権利を有しておりますから、その一般的な枠の中での行動であれば当然に許容すべきものでありますし、その枠を外れるものであれば、これは行われるべきでないということになるわけでございまして、後はもう事実関係を具体的に掌握いたしまして、地位協定に照らして妥当であったかどうかということを詰めていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  152. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が申し上げますのは、十四日にやって、十八日にまた同じことをやっているんだな。この事実関係というのは、行けばすぐわかることなんですよ。しかも、海兵隊のコーリヤー少佐は、いま申し上げましたように、具体的に言っているんですよ、名護では。私が言いますのは、これは地位協定の、いまアメリカ局長ですか、おしゃった問題でないから、具体的に事実を申し上げているわけです。一体いつまで待てば、はっきり調査ができるのか。これは言い逃れにしかすぎないと私は考えます。十四日にやり、同じく国道、さらに十八日にまた繰り返し、十八日には深夜、どろんこになったような武装兵が、海兵隊が、実に大隊の名前も全部あきらかになっておる。六百人になんなんとする、これが一列縦隊に両方から歩いておる。まさに、いついかなる場合でも対処できるような進撃態勢であります。両方にジープ一台ずつ。こういうことが私にはわかるのに、なぜ外務省にはわからぬのか。問題はここなんです。  私は、具体的に説明しているのであって、抽象的に、国道にはみ出して、県道にはみ出して行軍する場合が違反か違反ではないかということを言っているのではありません。当の海兵隊のコーリヤーという少佐が、さらにロビンソン司令官がはっきり遺憾の意を表明し、その行軍は移動ではないんだ、全然、基地と基地との間に出たり入ったりする、これでもない。港湾から基地に行く移動でもない。まさに行軍である。問題の訓練である。エネルギー節約のため徒歩訓練をやっておる、こういったような司令官の口からすら出ておることについて、一体いまどういうふうな調査をどういうふうに進めておるのか。簡潔に、それではいつごろ結論が出るのか。結論が出なければ、大臣は答弁できないということになる。これはどういうふうなことになるか、大臣、ちょっとお考えを……。
  153. 園田直

    ○園田国務大臣 御質問趣旨はよくわかりますし、地域の方々が不安を持ったということも、私、よくわかります。ただ、ちょっと誤解があるような気がいたしますが、大臣としては、この基地問題というのは、基地地域の住民の方々協力的であり、そして基地としてやっていけるということが一番大事でありますから、地位協定に外れるか、外れぬかということよりも、地域の住民に不安を与えたか、脅威を与えたかということが第一の問題であります。そこで、深夜に完全武装した部隊が大声を上げながら歩いたということは、地域住民に不安を与え、脅威を与えたと考えておりまするから、このようなことがないようにまず注意を喚起はいたしました。しかし、今後このようなことがないことは、軍司令官の陳謝だけではできませんので、よく話し合ってみて、向こうは地位協定をどう理解しておるのか、どのような方法でやっているのか。こうなれば日米合同委員会等でも話をして、将来のことについてきちんとしなければならぬという関係から現地と話し合い、調査を進めている、こういうわけであります。いつごろできるかどうかは、事務当局から報告をささせます。
  154. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 大臣はいいことを言われました。まさにそのとおりです。地域住民が不安を感ずる。戦々恐々として、生活すらできないということになると、何の安保条約かということになりますね。これはやはり大臣の理解のとおりである。  ところで、私が申し上げましたように、まさに地域住民は、この基地があるために毎日不安な生活を続けている。これは、特に沖繩はことしになってから非常に激しいんですね。機銃掃射をやられる。おとといの二十九日には、キャンプ・ハンセン、シュワブの水源地に火事が起こっている。これもきょう報告がありました。こういったような状態の中で、いま申し上げるように、だれでもはっきりする国道、県道を堂々と行進している。これはアメリカに対してやめさせるとかという問題は、どういうふうにこれをやめさせるか。政治的決着をつけなければならない問題だと思いますが、たとえば調査の結果、事実こういうことがはっきりすれば、大臣としては、今後国道、県道を堂々と武装行軍をしない保証をどういうふうにとりつけられるか、これを大臣の口から言ってもらいたいと思います。
  155. 園田直

    ○園田国務大臣 私は答弁するだけで、質問者に対して注文をつける立場にはございませんけれども、希望を述べれば、大臣がうまいことを言ったがということでは、私は答弁する資格がないわけでありまして、私は過去、外務大臣就任以来、微力ではありますけれども委員会で約束したことは一つずつ実行しているわけであります。  そこで私が申し上げることは、確かにいまおっしゃるような事実は、私もそれが事実であると想像いたします。その事実を調査するものではなくて、それをどのように今後改めるかということは、口約束だけで、悪かったと言うだけでは、私としては信用できませんので、やはり向こうは地位協定をどうやっているのか、あるいは部隊の移動とはどういうふうに解釈しているのか。向こうが地位協定の枠内でやっているんだ、騒いだのは悪かったという程度であれば、今後もまたそれはあるわけでありますから、だとすれば、そういう今後起こるべきおそれのある問題は向こうともよく話し合い、相談をして、日米合同委員会で取り上げて、いま瀬長先生のおっしゃるようなことが一つずつ改善されるようにやっていくべきだ、こう考えて、答弁をしておるわけでございます。
  156. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後は、日米合同委員会あたりで取り上げて、堂々と日本国民が安全に通れなければならないような国道を、まるで封鎖するかっこうで両方からやってくる。しかも、これが実に往復四十キロも行われているということは、実は大臣に申し上げますが、沖繩が祖国復帰してからもう八年目ですが、初めてです。占領当時時代はありましたよ。復帰後、海兵隊が完全武装して、国道と県道を徒歩訓練、行軍をやったことは実に初めてなのです。初めてのものだから、一体復帰とは何だったのかという原点に返って、県民は考え直さなくてはいかぬのかなという不安に陥れられている。  したがいまして、これは特に大臣の方で、最後には、ただ単に陳謝してもらうとか、あるいはこれからないようにするとかということではなくて、ちゃんと日米合同委員会なら合同委員会で決着がつくように努力したいというふうに言われたので、この点は、それを私は了として、演習問題を終わりたいと思います。ぜひその方向に一日も早く事実をはっきり押さえて、いま言うような、国民が自由に通れる、県民が自由に通れる道路をふさいだり、これを提供された区域、施設として使うことのないように保障してほしいということを要望して、この点は終わります。  次に、これも安保条約の問題に関連いたしますが、去る五月十五日、インド洋北部のアラビア海で米空母ミッドウェーの艦載機がソ連機と衝突しそうになった事件でミッドウェーの動静がはからずも知れましたが、ミッドウェーが日本から中東周辺に出動したのはいつか。この点は当局でもよろしゅうございます。
  157. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 ミッドウェーがその海域に赴いていることがあるということは承知いたしておりますが、ただいまの件につきましては、詳細私心得ておりません。
  158. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 はからずもそういったソ連機とのニアミス関係が出なければ、公表もされないでミッドウェーの動向はわからなかった。米政府当局者がワシントンでこれを発表したのが二十三日です。ソ連機とニアミスをやったということで、五月十五日にインド洋北部のアラビア海でミッドウェーが作戦行動をとっておる、遊よくしているということがはからずもわかったわけなのです。だから、それは日本政府に対して何か通知があったのかなかったのか。通知しないでも堂々と横須賀から、母港から行くのかどうか、これを知りたかったので、いつですかと聞いておるわけなのです。
  159. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 安保条約上、米軍が出ていきますときに、その行く先の詳細について日本側に通報しなければならない義務、軍事的な行動についての義務というものはないわけでございまして、私どもは、特にそれを承知していないわけでございます。
  160. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうすると、ミッドウェーがアラビア海方面に遊よくしている、これは横須賀からいつ出たのか、こういった点については、米軍当局から外務省に何も知らせないで自由に出入りすることになるのですか。
  161. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 特に軍事行動の一々について私どもに通報する義務はないわけでございます。
  162. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは、一つお聞きしたいのは、日米安保条約に基づいて横須賀を母港としている米空母が中東まで出動する、これは安保条約の極東条項についてどういう関連を持つか、この点を明らかにしてください。
  163. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 おっしゃられるとおり、安保条約の定めるところは「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」米軍がわが基地を使用することができる、こういうことになっておりまして、わが国にありますところのわが国の施設、区域を用いておりますところの米軍は、全体として抑止力として極東の平和、安全に寄与しているわけでございます。ところで、そのような米軍が全体として極東における国際の平和及び安全に寄与している限りにおいて、たまたま個々の行動がいわゆる極東という範囲を超えることがあっても、それは安保条約上違法ということには相ならない。全体として米軍のわが国における存在は極東における国際の平和及び安全に寄与しているからであります。
  164. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうすると、極東の範囲を超えて中東、アラビア海にまで日本の区域、施設を提供された米軍は出動できるという解釈をしておられるのですか。
  165. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 日本の施設、区域を用いますところの米軍、ことにこの場合海軍がもっぱら中東地域の安全のためにのみ用いられるということになれば、これは当然に安保条約の予定しているところとは違ってくるだろうと思います。問題はそうではなくて、ミッドウェーを含む、日本におりますところの米海軍が極東の平和、安全に寄与していることは明らかでありまして、そのうちの艦がたまたまその外に出ていくことがあっても、それによって全体としての極東の平和、安全に対する寄与という事実が影響されるものではないと考えるわけでございます。
  166. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いままでの外務省の見解では、極東の範囲は、もちろん地理的には限定はできないにしても、フィリピン以北とかいう答弁がありましたね。もちろんいまの極東の安全、平和とかいう名目であれば、地理的な限界がなしにどんどん拡大する。いまの話では、極東の安全と平和のためであれば、中東に出動しても安保条約、地位協定をはみ出したものではない、その範囲であるという解釈ですか。
  167. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 この点は、安保条約の御審議をいただきました安保国会以来何度も御審議があるところでございますが、安保条約第六条におきますところの極東云々ということは、米軍の行動の範囲を限局したものではないのでありまして、米軍がわが国の施設、区域を用いる根本目的をそこに書いたわけでございます。極東の統一見解につきましても、これがそういう意味で用いられている。したがって、米軍の行動がいわゆる極東の中に限られるという意味ではないのだということは明らかにしているわけでございます。したがいまして、先ほど来申しておりますように、日本の施設、区域を使う米軍がいわゆる極東から一歩もはみ出してはいけないのだということにはならない。要は、米軍の施設、区域の使用が基本的に日本の安全のため、極東における国際の平和、安全に寄与するため用いられているかどうかということが問題になるわけでございます。
  168. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 その意味から言うと、アメリカ説明しますね、中東方面、インド洋方面にまで行っている、これは極東の平和と安全のためにやっているのだということを言えば、そのとおりですかということで、横須賀から出動して、いま申し上げましたアラビア海、中東方面にまで作戦行動をやる。これもアメリカが、実は極東の安全のためだと言えば、ああそうですなあということで理解されるということですか。
  169. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 先ほど来私が申し上げておることは、アラビアの方面に出ることが極東のためということを直接申し上げているつもりではないのでございまして、米軍の安保条約に基づくところの日本における施設、区域の使用が全体として極東における国際の平和及び安全に寄与するという態様で用いられているにおいては、その場合に一機一艦の行動がいわゆる極東というところからはみ出すということがあっても、それは条約の趣旨にはもとらないということを申し上げたわけでございます。
  170. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、はっきりアラビア海――ちゃんと行っているのですよ。そこにミッドウェーは行っているのですよ。しかも、あなた方に情報をやらないんだ。通知もしない。通知もしないで、いつの間にか横須賀にいたミッドウェーが中東方面に行って作戦行動をやる、こうなると一体どうなるのか。安保条約、地位協定、歯どめがない。これは大変な返答ですよ。  この際大臣、どう思われるのですか。特に私は限定しているのですよ、ミッドウェーがアラビア海方面に行っていると。たまたまそれがわかったのは、ソ連機との、やがてニアミスで一大事のことになっているという事件があってわかったことなんですね。大臣、いまの局長答弁でいいのですか。アラビア海に行くのですよ、中東に。
  171. 園田直

    ○園田国務大臣 この問題は、大臣が政治的判断で意見を申し述べることではなくて、やはり国際法あるいは条約、協定の趣旨から申し上げることでありまして、私から申し上げぬ方がいいと思いますが、いまの局長答弁というのは、基本的には、極東の地域の平和のために寄与して、そのために行動をしているのだが、時たまそういうことはある、動くこともあるだろう、こういう趣旨答弁だと聞いております。
  172. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま、極東の安全と平和に寄与する、日本の安全に寄与するということであれば、たまたまミッドウェーがアラビア海に行っても、それはまあいいんじゃないかといったような、実に大変な御答弁ですね。大臣、これは重大な答弁ですよ。私はこう思うのですね。これまでにベトナム戦争があった。たとえばベトナム戦争は、アメリカから言えば、在日米軍基地がなければベトナム戦争は遂行できなかったというほどまでに、相当の基地として使われたのですね。  最後に、もう一度お聞きしますが、沖繩に海兵隊がいますね、岩国にいますね、この海兵隊がたまたまあの中東方面、アフリカ、この方面に派遣されたということになれば、どうなるのですか。これは知らさないのですか、知らすのですか。
  173. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 日本におりますところの米軍が他の地域に派遣されていくということは、いわゆる安保条約上の観念といたしましては、日本から移動していくということでございます。したがいまして、これは米軍側が自由に行い得るところでございます。
  174. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いま私は非常に重大な発言だと思いますが、ベトナム戦のときは政府は詭弁を弄してベトナム、インドシナへの在日米軍の出動を許した、これは、極東の範囲はこうこうだ、ああだと言っていま答弁しているようなかっこうで。沖繩基地は、あの米軍のベトナム侵略の前線拠点にされて、長い間県民が苦しめられたことは、これは私、一番よく知っております。  いまの政府答弁は、ベトナム戦のときに安保の機能を遠く、極東の範囲をいままでよりも超えて、実際はベトナムまで含むんだということを言われていた。さらにこれを中東まで一挙に拡大しているわけです、たまたま。これは実に重大である。こういったような在日米軍の中東地域への軍事介入、この姿勢をそのまま許すならば、アメリカを批判する中東産油諸国日本との関係を悪化させるおそれが十分あります。私は、そういう意味からこの問題を重視して実は質問しておりますが、この意味で、大臣どう判断されるのか、お答え願いたいと思います。
  175. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 従来たびたび御論議になりましたのは、在日米軍が日本における施設、区域を用いて戦闘作戦行動に従事するという場合にどうなるか。これは、安保条約の第六条に基づくところの交換公文によりまして事前協議の対象になることは事実でございます。ただ、いわゆる戦闘作戦行動以外の場合が事前協議の対象にはならないこともまた事実でございまして、米軍がわが国からそのような移動をしていくということがわが国との事前協議の対象に係らしめられていないことは安保条約のたてまえでございますので、特にそれがどうこうということにはならないと思います。  先ほど来申し上げておりますように、安保条約第六条に言うところの「極東における国際の平和及び安全」ということは、基地の使用目的を書いたものでございまして、米軍の行動範囲をそこに書いたというものではないわけでございまして、この点は安保国会以来たびたびお答えを申し上げているとおりでございます。そこで、その米軍が全体として極東の平和、安全のために寄与しているのであれば、たまたまその一機一艦がそこからそれ以外のところで行動したからといって、それが安保条約に反するということにはならないということを申し上げている次第でございます。     〔委員長退席、唐沢委員長代理着席〕
  176. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、仮定の上に立ってあなたに質問しているのじゃないわけなんです。大臣に質問しているんじゃないのです。現実にミッドウェーが行っているのですよ、中東に、アラビア海に。これを全然知らぬわけでしょう。知らさなかった。区域、施設を提供しておる日本政府が知らないうちに、ミッドウェーが、あれは核空母ですよ、これがちゃんと軍事作戦に基づいて向こうに行っている。遊よくしている。ワシントン政府はそれを認めて発表している。  だから、私いま申し上げたのは、こういうふうな姿勢、これを許すならば、いわゆる中東地域への軍事介入を――日本政府の知らぬうちにミッドウェーがアラビア海まで行っておる。そうすると、アメリカを批判する中東産油諸国説明するまでもなくありますね、この産油諸国日本との関係も、これは憂慮せざるを得ないような関係になるわけでありますが、政治判断として、こういうふうな行動はやめさせるべきであると私は考えておりますが、大臣、いかがですか。
  177. 園田直

    ○園田国務大臣 軍事行動、作戦行動であれば、先ほど局長から申し上げるとおりでありますけれども、そうでない場合には、いままでの取り決めは、自由だということであります。たとえば、極東の地域というが、ミッドウェーがアメリカの沿岸におることもあるでしょうし、そういう航行することまで日本が規制はできない、こういう趣旨局長答弁しているものであると存じます。
  178. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 大臣、アメリカ局長と同じに逃げちゃいかぬですよ。何もアメリカ沿岸に行っているというふうなことじゃないのですよ。アラビア海に行っているのですよ、インド洋方面に。私は、はっきりこれを具体的に示しているのです。大臣それを御存じないわけだ、外務省は。ここに大きい根本的な問題があるから、この問題、出したのですよ。まさかと思ったのです、あなた方が知らぬということは。ちゃんとワシントンから情報があって、十五日に起こっていることですから、十四日あたり、いつ横須賀から出たかぐらいは知っておられると思ったのだが、案の定知らぬ。  私は、そんな答弁はまさか予想してなかったのですよ。ああそうですかということでこれはけりがつくなと思っていた。実は知らない。これは大変なことなんですよ。作戦行動をやろうが、あるいは作戦行動と無関係で向こうに行こうが、問題は、いま極東の範囲、そういった仮定に立っているのではなくて、現実に空母が遊よくして、しかも艦載機を飛ばして、ソ連機との間で一大事を起こしそうになったから発表されたんですよ。これは具体的な事実です。  ミッドウェーは、何もアメリカ沿岸を遊よくしているんじゃないのです。中東産油国、この中にはアメリカを批判している国もあります。そういうふうな情勢の中で、日本の横須賀を母港とするミッドウェーが堂々と中東方面まで乗り出していくという。そしていま申し上げましたように、艦載機を飛ばして作戦行動をやっておるということは、国際的に見て中東産油国との間の友好関係に傷を与えるんじゃないか。だから、日本政府としてこのようなことはやめてほしいという問題と、もしそういうことがある場合には、ミッドウェーは横須賀からどこへ行くんだということぐらいは事前に知るようにしないと、国民だけではなく、政府自体が知らないうちに重大事件が発生するということになりかねないでしょう。大臣、いかがですか。
  179. 園田直

    ○園田国務大臣 局長答弁しております趣旨のものは、米国の艦艇がインド洋またはその他で動いていることを知らないということではなくて、いま取り結んでおります日米両国間の各条約、協定、その他からして、アメリカは作戦行動の場合は事前協議をしなければならぬが、その他の場合には通告の義務はない。したがって、通告は受けなかった、こう言っているわけであります。
  180. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 局長さんは、ミッドウェーがアラビア海方面に行っても、いつ行ったのか知らないのですね。私の申し上げるのは、こういうふうなことであっちゃいかぬということなんですよ。どんなことをやられていても、それは極東の平和と安全に寄与する行動でございますという抽象的な解釈で、独立国と言われている日本の国政、これが運用できるかどうか、外交が運用できるのかどうか。局長は、知りませんとはっきり言ったのです。知っていたんですか。取り消しますか。この問題は非常に大事ですよ。
  181. 園田直

    ○園田国務大臣 先ほどお答えしたとおりでありまして、作戦行動と平時の場合の行動とは別個でありまして、飛行機を飛ばしたからといって、戦闘をやったとは受け取っておりません。現在の取り決めでは、通告の義務はない、こういうことであります。
  182. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうしますと、在日米軍がどういう行動をしようが、戦争に出撃しない限り通告の義務はないということですか。通告の義務がないなどということは、どこに書いてあるのですか。
  183. 園田直

    ○園田国務大臣 何をやってもいいというわけではなくて、作戦行動の場合には事前協議が必要である、そうでない場合には通告の義務がないということでありますので、通告の義務がないということはどこにも書いてないと存じます。通告の義務のあることだけが書いてあると存じます。
  184. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 だから、前言を取り消されるんでしょう。そうでしょう。そんなのはどこにも書いてないのです。このようないいかげんな答弁は――たとえば、ミッドウェーが何をするかわからぬでしょう。アメリカに行くかどうかもわからぬじゃないか、わかりますか。作戦行動であるのかないのかわからぬでしょう。それをあたかも作戦行動でないかのごとく、何の知らせもないのに解釈している。アメリカにかわって日本の外務大臣が答弁している。まるでアメリカの外務大臣みたいだ。そうじゃないですか。
  185. 園田直

    ○園田国務大臣 私は、米軍の行動を弁解をしたり、答弁しているわけではなくて、日本アメリカの間に結ばれたる条約、協定、その他のことを言っているわけでありまして、決してこれを弁解しているわけではありません。作戦行動と平時の場合と二つに分けて、作戦行動の場合には言うべきだ。その場合、アメリカがうそを言っていたらどうするか。こうなってきたら、二国間の条約、協定というものは、うそを言うかもわからぬという前提で決めたわけではございません。  また、義務がないということを書いてないとおっしゃいますが、何もなければ義務がないのが当然であって、通告の義務がある場合にのみ書くわけでありまして、通告の義務がないなんという条約はほとんど聞いたことがありません。
  186. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 あなた方がそう言ったから私は質問しただけであって、私が、通告の義務がありませんと言ったのじゃないですよ。あなた方が言ったんです。  さて、これ、大きい問題は、いまミッドウェーは向こうに行っていますね。行ったということは、私は五月二十三日のワシントンにおける発表、こういったものをもとにしてやりましたが、あれが作戦行動以外の普通の行動であるということ、わかりますか、わかりませんか。
  187. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 作戦行動とおっしゃいましたけれども、条約上は戦闘作戦行動というのが正確でございまして、戦闘作戦行動と申しますのは、文字どおり戦闘に入る行動でございます。俗に言うパチパチと申しますか、そのようなものであるわけでございまして、戦闘作戦行動そのものが行われたどうかということは、これは明瞭であろうと思います。
  188. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これはいまの陸軍の移動の問題も含めてですが、移動はよろしいとか言っても、軍の行動、集団行動は全部戦争を想定するんですよ。いざ実戦になる、これを想定して移動もすれば、軍事演習もする。移動だから許されるという解釈は成り立たぬですよ。いまの軍事常識では、軍隊の移動であれ演習であれ、全部戦争を想定している。戦争を想定しない軍事演習はありません、平時におけるのと準戦時における状態を問わず。移動にしても、全部軍事目的があるから移動するんですよ。だから、いまミッドウェー問題を具体的に出しましたが、これをいわゆる作戦行動でないというふうに言われたのは、どういう根拠に基づくものですか、おわかりですか。
  189. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 まず第一に、いまインド洋で戦争が行われているわけではないわけでございます。ミッドウェーがその水域にたまたま行くとしても、その水域の一般的な任務を行うということであるわけでありまして、日本の施設を出ていくときから、もう戦闘作戦行動が面接行われて、そして出ていくというような事態でないことは、常識的に明白であろうというふうに考えます。
  190. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまのは局長の想像でしょう。出ていくとき、多分そういった作戦行動をとっていなかっただろうという、あなたの主観的な考え方なんです。事実は、出ていった時期もわからぬでしょうが。また、アラビア海に行っていることもわからない。そういうわからない局長が、これは現在インド洋方面に戦闘行動がないから、作戦行動は行っていないと言ってみたところで、これは主観的な問題であって、アメリカから何ら通知も受けていないんでしょう。そういったような主観的な予想、想像に基づいて政府が無責任に答弁されるということ自体がこの安保条約の危険性を浮き彫りにしているのですよ。そうでないのですか。何が安保条約か。何が日本の安全に寄与するものであるか。何が極東の安全と平和に寄与するものであるか。これは寄与していない。まさに逆である。安保条約の危険性、日米軍事同盟の危険性が実に明らかに、鮮やかに出ているじゃないですか。
  191. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 先ほども大臣から御答弁がございましたように、およそ一国と条約を結ぶ場合に、相手がうそをつくという前提に基づいて条約はできておらないわけでございます。ましていわんや、軍事的な同盟国として軍事的な援助を求めるということでつくられている安保条約が、相手が本当はやっているのにそれを隠してそのことを知らせないというようなことで条約はつくられておらないわけでございます。したがいまして、日本の施設、区域を用いて米軍が戦闘作戦行動に直接発進するということになれば、条約上の事前協議の義務は当然に発動するわけでありまして、アメリカから当然に事前協議が行われるということになるわけであります。それがないからうそをついているだろうという疑問を私どもは持たないわけでございます。  それから先ほど私が知らなかったではないかという点を御提起になりましたが、私が申しましたのは、米側は施設、区域を出て特定の軍事行動に入る前にそのことを日本側に通知する法律的な義務はないということを申し上げたわけでございまして、私ども一般的にミッドウェーがあの場合にあの水域に行っているであろうということは承知はしているわけでございます。私が承知してないと申しましたのは、ニアミスのケースがあったとおっしゃられるので、私はそのことを承知していないということを申し上げたわけでございます。私が先ほど申し上げたかったポイントは、日本にどこどこに行きますということを通報してこなければならないという条約上、法律上の義務がアメリカにあるわけではないということを申し上げたわけで、その上で、現実に米側がどういうような具体的な、一般的な行動をとっているかということは、防衛施設庁及び私どもといたしましても、米側との一般的な連絡に基づきまして概要はそれぞれ心得ているつもりでございます。  ミッドウェーの場合にも、一般的に日本中心とした水域で通常行動しているわけでございますけれども、たまたま向こう側の航空母艦が故障を起こしたというようなことがあって、いまおっしゃられるような水域に出ていったものだというふうに私は理解いたしております。
  192. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 大臣、最後にこの問題でお伺いしたいのですが、たまたま行く場合にはいいとかというふうな安易な解釈をされると、日本国政府も一体どうなるのだろうか。日本国民は一体どうなるのだろうか。現に横須賀を母港としているミッドウェーがアラビア海へ行って、たまたま――これがたまたまなんですね。あなたの言うたまたまとは違うわけです。ニアミスをやる、それで結局発表せざるを得なくなって、ソ連も知っているものだから発表せざるを得なくなって、ワシントンが発表した。このことを御存じないわけなんです。  したがって、私大臣にお聞きしますが、本当に安保条約、たてまえは、いま言うように日本の安全に寄与する問題、極東の安全、平和に寄与する問題でしょう。そのためには相手国が何を一体やっているのかということを少なくとも外務省は御存じであるような状態をつくり上げて、日本国民が安全に平和に暮らせるような保証をぜひ、とりつけてもらいたい、私はそう思うのですが、一々法解釈上極東がどうの、たまたまはみ出したらどうのというふうな苦し紛れな答弁ではなくて、確固とした、この安保条約に基づくアメリカ軍の安保条約にすら違反するような、あの国道における行動にしろ、いまの問題にしろ、全部そうなんです。そういう場合に、本当に日本国民の安全を保障する。さらにアジアの平和、安全のために役立つのか役立たぬのか。これは役立っておらないということがいまの答弁で実に明確になったわけなんです。大臣、いかがですか、この問題。
  193. 園田直

    ○園田国務大臣 日本の安全保障は、日米安保条約及び地位協定を基軸としておるというわれわれの考え方と、日米安保条約は日本の安全を危険にするというあなたの考え方とは従来から対立をしているわけでありますから、この点は幾ら議論してもかみ合わない。沖繩の基地の問題等どう改善していくかなどという問題はかみ合う、こういうことでございます。
  194. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、かみ合わぬ、かみ合うという問題よりは、きょうわかったことは、極東の範囲をたまたま超えて出動しても日本政府としてはわれ関せずというふうなことだけわかったわけだ。たまたまアラビア海に行こうがどこに行こうがわれ関せず、これが明確になった。実に危険だと思うのです。私は時間の関係でそれを指摘いたしまして、次に移ります。  次は、沖繩の占領支配に関連する天皇のメッセージの問題であります。これは内閣委員会に共産党の柴田議員が要請、これに基づいてシーボルト、ケナンの文書がはからずも問題になっています。この問題について、とりわけ大臣の御答弁をいただきたいと思います。  まず、ケナンの問題から申し上げます。このケナンというのは、米国務省政策企画部の部長をやっているジョージ・F・ケナン。これがロベット国務次官あての「琉球諸島の処理」といったような命題で勧告したものであります。その中で、前文は読みません。もうすでにこの文書は英文で外務省から出されたのをここで翻訳したものであります。この中でこう述べておる。  「政策企画部は、」――いま申し上げました米国国務省政策企画部、この「政策企画部は、米国の南琉球支配の原則をうけいれる。しかし、当部は、戦略信託統治があらゆる点で、米国支配のもっとも満足しうる形態であるとする納得のいく証拠を見たことはない。政策企画部は、米国が沖繩ならびにその他の必要な島々にたいする軍事占領を、主権は日本が保持したままで、長期の租借――二十五年ないし五十年あるいはそれ以上――にもとづいて継続すべきであると、日本の天皇が提案していると伝えられていることに留意する。当部はこの方式を戦略信託統治の代案として検討するのが当然だと考える。」この点であります。  私は、この点につきまして、現実に天皇がみずからメッセージを出したか、その側近が出したか、これは問題としていません。問題は、天皇の名においてこれが出されており、しかも琉球諸島の統治形態について、二十五年ないし五十年あるいはそれ以上、主権は日本に残したままアメリカの占領支配を続けていいという天皇の意見、これについてその当時の外務大臣、吉田茂さんであります、これはどのような態度をとられたのか、これが一つ。  もう一つは、もしこのようなことがいま起こるならば、現憲法のもとで起こるならば、大臣、どのように措置をされるか。まさに、これは沖繩の長期にわたる軍事占領支配が天皇の提言に基づいて行われたという歴史の実に証言である。これについて天皇の戦争責任並びに主権、そしてその当時天皇は、余は大元帥陛下なるぞというふうな軍人勅諭までやった。しかも赤子と言われた。この赤子と言われておる日本国民百万をアメリカの占領支配に、二十五年ないし五十年あるいはそれ以上という提案をやっておる、まさに重大である。これに対して、大臣はどのようにお考えか、まず、お聞きしたいと思います。
  195. 園田直

    ○園田国務大臣 「世界」という雑誌の四月号に掲載されたことから引用しておっしゃっておるようでございます。この事実について外務省答弁することがいいかどうかは別といたしまして、調査の結果は、そういう事実や記録は全然ございません。また、私個人で判断いたしましても、そういうことに天皇がみずからの意見を発表されるようなことは絶対にあり得ない、こう考えております。
  196. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 では、これは認めますか。沖繩は、平和条約が発効したのが五二年四月二十八日、これは民族屈辱の日として沖繩県民は立ち上がった、そして天皇が提案した二十五年を待たずして祖国復帰を達成した。これは沖繩並びに全国的な局主勢力が一貫して血みどろな闘争の結果であった。しかも、その間に天皇が出されているような――平和条約三条はまさに天皇の提案どおりになっておる。しかも、沖繩の占領支配は実に民族屈辱の歴史であった。いまの基地は、この基地を強奪したわけだ。機関銃が使われる、ライフルが使われる、戦車が動員される、ブルドーザーがうなり出す、そして催涙ガスまで出た、こういった武力によって強奪されてつくり上げられたのが現在の沖繩米軍基地である。このもとでいかに沖繩県民が苦しんだか、筆舌に尽くし得ない民族屈辱のもとでこの占領支配を体験した。  いまこれは、事実関係は四月号の「世界」とか言っておりますが、この事実関係はもちろん四月号にも書かれております。筑波大学先生が書いておる。私が読み上げたのは外務省、あなた方から出されたものである。これが文書で残っているいないは別として、いま申し上げました天皇の提案と沖繩現地の支配体系がまさにぴたりと一致しているではありませんか。この歴史をゆがめるわけにはいきません。  さらに、私はこの点を指摘したいと思う。これはシーボルト、これがマーシャル国務長官あてのものでございます。大変なことが書かれているのです。これはトップシークレット、外交文書であっても非常に秘密である、こういうようなことまで書いてある。  「米国が沖繩その他の琉球諸島の軍事占領を続けるよう日本の天皇が希望していること、疑いもなく」ここなんです、「疑いもなく私利に大きくもとづいている希望が注目されましょう。」セルフインタレストと書いてある。私利私欲、身勝手、天皇がみずからの命、地位、これと引きかえに琉球の占領、はっきりこう書いてある。「米国が沖繩その他の琉球諸島の軍事占領を続けるよう日本の天皇が希望していること、」さらに「天皇は、長期租借による、これら諸島の米国軍事占領の継続をめざしています。その見解によれば、日本国民はそれによって米国に下心がないことを納得し、軍事目的のための米国による占領を歓迎するだろうということです。」これはシーボルトのマーシャルあての書簡です。さらに付録もつけられている。  この中でシーボルトは、日米外交の回想の中で、この人は親天皇、天皇を非常にあがめている人なんです。あの中に全部書いてありますが、こういったようなシーボルトすら、この天皇の提言は私利に基づいておるものである。つば吐きかけたような文章になっている。これは普通の外交文書ではあり得ないことでしょう。しかも、シークレットである。これが発表されたわけだ。これは事実日本政府のこういったような文書がないから問題にならぬというふうなことでは解決はできないでしょう。問題は天皇に関する問題なんだ。いかがですか、大臣。
  197. 園田直

    ○園田国務大臣 この文書は外務省が出した文書とおっしゃいますが、それはアメリカから取り寄せて翻訳をして外務省が出しただけであって、外務省が出した文書ではありません。  天皇の提案あるいは親書、メッセージ、そういうものの記録もないし、またそれを裏づけるようなものもないし、それが疑われるようなものも残っておりませんが、私は、かつてマッカーサー元帥と面接会って数時間話したことがあります。その際、マッカーサー元帥が私に言ったことをそのままお伝えをいたします。  マッカーサー元帥は、最初天皇と会見するときに、世界を震駭さした天皇という人物がいかなる人物かということで自分は興味を持って待っておった。玄関まで出迎えるなということであった。天皇はモーニングを着てきた。自分は軽装をもって会った。ところが、会ってみると、日本の天皇は小柄な男で、青白い貧弱な男であった。これが世界を震駭さした天皇かと思ったら、自分はこっけいに思った。それはそのまま天皇さんに私申し上げました。  そこで、一番最初に何を言うかと思ったら、第一に皇室の財産目録を全部出された。そうしてこの自分の財産を全部没収されてもよし、一部没収されてもいいが、日本国民が一人も食い物で飢えないように食糧の援助は頼むということが一つ。二番目には、戦争犯罪人の問題が起こるであろうが、もしそうであるならば、私の命令でやったことであるから、戦争犯罪人は私一人で結構である、こういうことを言われた。五尺数寸の小男、青白い貧弱な男と思っておったが、その途端に、歴史の上では聞いたことがあるが、目の前に見た本当の君主の姿、自分の生命と運命を国民と民族にかえて自分が死のうとするその姿を見て……(発言する者あり)いや、聞いてくださいよ。自分は天皇に対するあれが一変をした。だから、自分は下へおりていって最後は見送った、こう言っております。  こういう事実からしても、あなたがおっしゃるような、自分の生命が惜しいから沖繩とかえたなんという事実は絶対にあり得ないと私は断言をいたします。
  198. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 あなたが断言されても、それは主観的な問題で、大臣はいつもアメリカを信用しているわけでしょう。これはアメリカから取り寄せた文書だと言うんでしょう。これだけを信用しない。事天皇に関するものだからですか。ほかは全部信用するんでしょう。これはアメリカから取り寄せた。アメリカは情報の自由法に基づいてちゃんと公表しなくちゃいかぬことになっているんですね。これなんです。これは事実に反する、否定するなんということをはっきり自信を持って言えますか。
  199. 園田直

    ○園田国務大臣 いま文書の中で「私利」により、いわゆる自分の命が惜しいからと言われましたが、英文はみずからの利益、こうなっている。みずからの利益とは日本国家の利益、こういうふうに訳されるわけであります。天皇に親しみを持っている人間が言った、しかし、あの当時の情勢から天皇の意見であるということになればそれが通るということで使われたかもわからぬ、どういう事情かわからぬ。ただ、書いてあったからそれが事実だときめつけることは、私はそれは少し過早な断定であると考えます。
  200. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 天皇のメッセージに関するこのシーボルト文書、ケナン文書、これは事実に反する、信用できぬ、問題にならぬというふうに大臣は理解しておられますか。
  201. 園田直

    ○園田国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  202. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまシーボルトやケナン、これは本当に公表されていますからね。事実出したのかどうかこれを追及する必要があるのです。  なぜかというと、当時沖繩は天皇のこういった提言に基づいて、現にこれに書かれているとおりの形態になったのですよ、事実は。三条もそのとおり。平和条約三条によって、沖繩は戦略信託統治に置く、その提案をするまでアメリカが三権を全部握る、あるいはその一部を握る、これが三条。これがまさにいまシーボルトやケナンが書いているような琉球の処理についての骨幹をなしている。この事実は否定できないでしょう。これと符合一致するのですよ、どうなんですか。
  203. 園田直

    ○園田国務大臣 沖繩の方々が耐えがたい民族の屈辱と長い間の忘れることのできない苦痛をされたことはおっしゃるとおりであると思います。これはまさに沖繩の方々日本民族の屈辱と苦痛を濃縮をして受けられた、申しわけないことだと存じております。しかし、沖繩がこうなったのは天皇がこう言ったからだという考え方は、おおよそ公的なことを断定する考え方ではない、そのような考え方はあえて私のとらざるところであります。
  204. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私もそう言っているのじゃありません。沖繩がこういった状態になったのはサンフランシスコ体制にある。アメリカ帝国主義とそれに従属的に同盟する日本独占資本、これがそういった日米平和条約、安保条約、諸条約に基づいて安保体制をつくった、サンフランシスコ体制をつくった、だからといって天皇のいまの発言は何らそれに関連がないとは言わせません。私は、全部を天皇の責任に転嫁するのじゃないですよ。沖繩の占領支配が長く続いた、これはアメリカ帝国主義と日本独占資本のこういったような合意に基づいてあのサンフランシスコ体制はでき上がった、これはわれわれの主張であって、私がいま言っているのも、天皇は全責任を持っているのだということは言っておりません。  ただ、このシーボルトやケナンが述べたような外交文書上トップシークレットとなっているものが、この天皇の発言なるものが天皇自身が発言されたのか、あるいはそれを取り巻きがやったのかは別として、天皇の名において出されているこの内容が現実に沖繩の占領支配とぴたり一致する、これはとりもなおさず、これの真実性を語るものであるわけなんです。ただ主観的な大臣の意見では納得いかない。釈明が必要である。しかもこれは現在の憲法が施行された後のことであります。現在の憲法は国政に対する天皇の権限は全部否定しております。国事だけを十カ条行うことになっておる。  私は、これを申し上げたいのですが、この実態は、あなた方は事実でないとか信用できないとか言っておりますが、現実の占領支配の体系とこのシーボルトやケナンが出している琉球処分、処理の勧告とぴたり一致する、これは否定できません。いまの天皇とのかかわり合いから言えば、天皇はどういうことを行っても責任は問われませんか。
  205. 園田直

    ○園田国務大臣 一番進歩的な、しかも一番民主主義者を自認しておられる瀬長さんが、天皇が何をやっても責任を問われぬかなどという御質問をされることは私の理解に苦しむところであります。新憲法では当然でありますが、戦前の旧憲法時代、天皇絶対の時期でさえも天皇の発言、行動、こういうものは天皇個人の意思によって行われてないということは、歴史でよく御存じだと思います。私がそういうことはあり得ない、信用できないというのが主観であれば、あなたが天皇の提言なんとおっしゃるのも主観であって、これは五分五分であります。
  206. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 天皇の行為に対しては、どの機関が責任を負いますか。
  207. 勝山亮

    ○勝山説明員 天皇の行為に関しましては、宮内庁法第一条によりまして、天皇の国事に関する行為並びに皇室関係の国家事務に関することをつかさどっており、その範囲で宮内庁が責任を持っておる、こういうことになっております。
  208. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは大臣、現在の憲法の九十九条、これは御承知のように憲法尊重、擁護義務、まさに天皇が真っ先に書かれているわけですね。天皇の尊重、擁護の義務はどのように確かめられるのですか。
  209. 茂串俊

    ○茂串政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の憲法第九十九条には、天皇を含めましてこの憲法を遵守し擁護すべき義務が定められておるわけでございます。  そこで、先ほども宮内庁の方がちょっと触れましたように、まず、天皇の国事行為につきましては、憲法第三条によりまして内閣の助言と承認が必要であり、内閣がその責任を負うものとされておるわけでございます。そこで内閣がその責任におきまして憲法に反することのないように万全の配慮をしておることは御承知のとおりでございます。  それから国事に関する行為以外の天皇の御行動につきましても、直接には宮内庁が、最終的には内閣がその責任におきまして天皇の御行動が国政に影響を及ぼすことのないように万全の配慮を尽くしておるわけでございまして、この点から申しまして、天皇に憲法違反の言動が生ずるということはあり得ない仕組みなり体制ができておるわけでございます。  いずれにしましても、天皇が憲法に違反するような御行動をなさるということは、実際問題としては考えられないと考えております。
  210. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後にお尋ねいたしますが、現在、元号法制化の問題あるいは軍人勅諭が時代は変わったが現在でも忘れてはならない徳目であるとか言われたり、教育勅語が礼賛されたり、いわゆる主権在君への暗い、恐ろしい道が開かれつつある。そういう意味で、現在の天皇の問題について、少なくともこれは信用できぬとかというふうなことでは国民は承諾しません。これは明らかにしなければいけないわけなんです、政府の責任において。なぜかと言うと、疑惑が出てしまっておる。だれも知らなかった。ところが、天皇のこういったような提案に基づいて沖繩の占領支配、主権及び国民の一部が売り渡されるというようなことがもう起こっておるわけです。  したがいまして、私はこういう主権在民を否定して主権在君への道につながるいまの天皇問題、これは本当に究明しなければならない問題だと思う。この点について、マッカーサーともお会いになり、天皇とも親しく話ができる、その大臣が天皇に、果たしてこういったようなことがあったかどうか確める。これはシーボルトやケナンには確かめる必要はないと言っておるので、本人の天皇に確める問題だ、そうでなければこの釈明の責任は内閣が持たなければいかぬ。それで国民が納得いくように説明することこそ現時点において一番大切なことだと思うのだが、大臣、いかがですか。
  211. 園田直

    ○園田国務大臣 国国はなかなか納得しない、信用しないとおっしゃいますけれども、私の言うことを信用しない国民もおるかもわからぬが、あなたの言うことを信用しない国民もおるということはお考えを願いたい。私がここで答弁しておりまするのは、「世界」の四月号に載せられたその事実、資料、そういうものは米国にも照会をし、いろいろ調査をした結果お答えをしておるわけでありまして、天皇に私がこれを尋ねるという考えはございません。
  212. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 信用するかどうかという問題は、いま沖繩においてはとりわけ、この問題が出てから相当の人々が、えっ、こんなことがあったのか、もう疑問を持ちつつある。しかも、現在のようなあの激烈なる演習との関連性で、一体どうなるのだろうかということとの関連においてとらえているのですね。  さらに、いろいろ調べた結果そういうことはないんだと言われましたが、この問題だけは実に調ぺが早いんですね。シーボルトを調べたのか。ケナンを調べたのか。あの国道や県道における行軍、これについてはいまだに調べもつかぬのに、こういう問題となると、もう調べはつきましたと平気で言われる大臣の肝っ玉の太さというのかな、もうあきれ返って物が言えない。問題相手が天皇になると、最後はかあっとなるような体質というのかな。ケナンやシーボルト、これなんか問題にならぬ、行って調べる必要もないと言いながら、調べ尽くしてこういうふうな結論に達した、だから天皇に会う必要はないんだ。じゃ政府の責任はどうとるか、どう釈明するか。事実は、沖繩がああいうことになったのは、天皇の行為とシーボルトの書いている天皇の発言に基づくものではなくて、実はこうこういうことであったということをどう釈明されますか。
  213. 園田直

    ○園田国務大臣 天皇のことは調べが早いとおっしゃいますけれども、「世界」という雑誌に書かれたのはもう相当前であります。沖繩の道路の問題はなかなか調べがつかぬとおっしゃいますが、私はあなたの言われた事実を確認はしてないが、あなたのおっしゃることだから事実だろう、またその他の調査を見ても事実ということを前提に置いて、ただそれはどう改善していくかについてはたとえば二つあるでしょう。地位協定あるいは話し合いの中の枠外でやったとしても、沖繩地域住民に不安を与えたことであるならば日米合同委員会で話し合って少しずつ改善をしていかなければならぬ、もしこういったことであるならば、これはそれに従って厳重に米軍にやらなければならぬ、そのために調査をしている、こういう意味でありまして、事実の調査がわざと長引いているのじゃありません。これはひとつ御理解を願いたい。  なお、いまの「世界」に載せられた文章というものは米国にある一つの資料であって、いろいろ調べてみると、どう考えてみてもそういう事実はあり得ない、こういうことであります。
  214. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 あり得ないと考えるのは主観ですが、これは私、客観的なことを言っているのです。このシーボルト、ケナンの書簡にある天皇のメッセージというものの内容と、その当時から現在に至るまでの、きょうまでではないが、あの復帰するまでの状態は、まさにこの天皇の提案どおりの統治形態になっている、この事実は大臣、否定できないですよ。これを否定しようものなら大臣の資格なしだ。あの平和条約三条にも書かれているとおり、琉球処理という問題の天皇の提案と、現実に行われたあの屈辱的なアメリカの占領支配とぴたり一致するわけなんです。  時間がございませんので、私はもう一つ申し上げますが、寺崎という当時の通訳、その人と同じ時代に通訳をしていた奥村さんが大森実さんとのインタビューの中で、天皇のメッセージ、天皇のメモは私は発表するわけにいかないが、会見のメモは外務省の外交文書館に保存してある、ここで公表はできません、これは二十一年九月にマッカーサーとの会見の通訳をした奥村勝蔵という人ですが、この人が大森実とのインタビューで述べています。この会見メモが外務省の外交文書館にありますか、どうですか。はっきり奥村勝蔵さんが言っているわけです。     〔唐沢委員長代理退席、委員長着席〕
  215. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 天皇とマッカーサー司令官との会談に関しましては、外務省には何らの記録も保存されておりません。
  216. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 最後にお伺いしますが、これもあり得ないと言うかもしれぬが、あり得る場合どうなのか。  天皇が、たとえば広島原爆について、あのときはやむを得なかったという発言をされて、いろいろ騒がれた時分もあります。天皇の国政に対する権能は現憲法ではない、したがって、現憲法では国事の問題でもいわゆる助言と承認は、もちろん政府の責任になっている。ですから、政府はどこまでもこの問題を解明して、とりわけ沖繩県民のいま持っている疑惑、さらに国民の持っている疑惑を解明する、釈明する必要があると思いますが、これに対して大臣、どうお考えですか。
  217. 園田直

    ○園田国務大臣 天皇が記者会見か何かの際に質問をされて、戦争中で戦をやっておったのだから仕方がなかったという意味のことを言われたという話は私も承っております。いま取り上げられた問題は、記録その他を調査しても全然ないし、かつまた、そんな自由に提言とか提案とかあるいはメッセージを送られる立場にはなかったこと、これだけでもはっきりしていると思います。
  218. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 もう時間が参りましたので、きょうの質問はやめますが、この質問はまだ憲法とのかかわり合い、現実に調査した結果だと言いますが、私にはそれは納得できないわけなんです。こういった現実に行われている問題と天皇のメッセージ問題は実にぴったり一致しております。さらに文書がない、ある、こういったような問題もあります。こういった問題で内閣の果たすべき役割りの問題、こういった問題などについて質問を保留して、きょうはこれで終わりたいと思います。
  219. 藏内修治

    藏内委員長 栂野泰二君。
  220. 栂野泰二

    ○栂野委員 きょうはおしまいが大分遅くなるようですので、私も早く終わるように御協力をしまして、なるべく一時間以内に質問を終わりたいと思いますので、ひとつ簡潔に御答弁いただきたいと思います。それから、おとといもきょうも私、出席が悪くてあるいは重複するような質問をするかもしれませんが、ひとつその点はお許しいただきたいと思います。  中南米局の復活ですが、これは外務省ではかなり前から大きな問題にしておられました。中南米外交を積極的にやられるというのは大変結構なことでございます。そのために中南米局をつくるということが中南米諸国から見ても重視してくれている、こういうことで格上げされるといいますか、プレスティージを高めるというのですか、そういう意味のあることはわかるのですが、しかし、それ以上に一体どういうメリットがあるのか、私にはどうもすっきりしない点があるのでございます。  そこで、現在中南米関係はどういう機構で行われているのか、私が聞いたところによりますと、大臣官房に中南米担当の審議官がおられる、それからアメリカ局長の下に担当の参事官がおられる、それから中南米一課と二課がある、こういうことでございますが、今度、中南米局ができますと局長が新しくできるわけですね。それから審議官というのはなくなるのでしょうか、恐らくなくなるだろうと思いますね。そうしますと、一体それ以外に機構的にどこが違うのか。人員も何か全く違わないという話を聞きます。予算も別に変わらないということを聞くのですが、そうなんでしょうか。
  221. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 中南米局が設置されますれば、中南米局長のもとに参事官が一名及び中南米一課と中南米二課が置かれることになっております。現在もうすでに参事官及び中南米第一課及び第二課はございます。その点は何ら変わらないわけでございまして、官房審議官が一名廃止されまして局長が置かれるわけでございます。  ただ、これを実現するに当たりまして、行政機構簡素化の見地から、外務省といたしましては文化事業部それからアジア局次長及び大阪連絡事務所を廃止することにいたした次第でございます。予算的には何ら変わりはございません。
  222. 栂野泰二

    ○栂野委員 そこで、結局審議官が、言ってみれば局長になられるというだけですね。いまの審議官がなられるかどうか知りませんが、別に変わらないような気がするのですね。つまり、これから強力な中南米外交を推進しようという意味で中南米局の新設が必要だというふうに言われているのですが、その点は、何もいまのままでも変わらないのじゃないでしょうか。どうなんでしょうか。
  223. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 中南米の重要性につきましては、先生も十分御認識いただいていることと存じますが、改めてちょっと申し上げますと、中南米にはすでに二十九の独立国がありまして、近年独自の政治体制の確立等、経済社会開発のための努力を通じて政治的、経済的にもその国際的影響力は非常に大きくなってきております。また、特に中南米諸国は、北米地域とは歴史的、文化的に国情を異にしておりまして、相互連帯意識が強く、国際的にも一つの独自のグループを形成しておるわけでございます。  そこで、わが国といたしましても、おのずから北米地域に対するものとは違った外交施策を行う必要があるわけでございます。現在は、中南米地域はアメリカ局長が所管しておるわけでございますが、アメリカ局長は米国及びカナダに対する施策その他で忙殺されておりまして、中南米地域については十分目が届かないといううらみがございます。そこでわれわれとしましても責任体制を確立するという必要性から、この中南米局の設置はどうしても必要であるというふうに考えたわけでございます。また、実際問題といたしましても、中南米諸国から見れば、日本は中南米を重視しておると言うけれども、局一つつくってないじゃないかと言われれば、われわれとしては返す言葉がない次第でございまして、外務省がこの中南米地域を重視し、ますますその施策を強力に推進していくために、何としても中南米局をつくる必要があったわけでございます。  ただ、行政簡素化が叫ばれておる今日でございますので、われわれとしてはきわめてモデストに局長一名の新設にとどめ、しかも先ほど申し上げましたような機構の簡素化をいたしまして、また予算的にも人員的にも何らの増加を来すことなく、この中南米局の設置を実現させたいと考えた次第でございます。
  224. 栂野泰二

    ○栂野委員 形の上では、結局審議官局長に変わるというだけで、さてそこで局ができたその代償措置といいますか、そのために情文局の文化事業部、アジア局次長、大阪連絡事務所をなくす、こういうことになったわけですね。それは外務省がその不必要性を認めてなくされるのじゃなくて、言ってみれば、行管の方がうんと言ってくれないから何とかかっこうをつけなければいかぬということでこうなったんだろうと私は思います。つまり、中南米局ができて予算も変わらない、人員も変わらない、ただ局長ができて審議官がなくなるというだけなら、この代償措置も要らないような気がしてならないのです。  そこで、文化事業部はなくなっても仕事はいままでどおりやるんだ、こうおっしゃっていますね。なくなるのは何がなくなるかと言えば、部長という名前の人がなくなるだけですね。アジア局次長もなくなる。次長というのは何をなさっていたか知りませんが、これがどうしても必要なポストならなくすわけにはいかないということになるはずなんだけれども次長をなくせば局長がその仕事をおやりになるのか、審議官か参事官がおやりになるのか、何とかなるからおやりになったのでしょう。だから結局、部長がなくなり、次長という名前がなくなる。大阪連絡事務所は、人員なり機構そのものがなくなるのですから、具体的に違ってきますか、これはどうなんでしょうか、簡単で結構です。
  225. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 文化事業部は廃止いたしますが、もちろん国際文化交流の事業は、さらに強力に推進してまいる所存でございまして、これは情報文化局長が直轄することになります。その点において従来どおりでございます。  それから、アジア局次長をなくすことは、正直言ってわれわれも大変、アジア外交重視の見地からも痛いわけでございますが、この点は、局長及び局の参事官あるいは課長が、次長のやっております仕事を加重して分担することになるかと思います。  大阪事務所に関しましては、これは現実にいろいろな仕事がございます。関西地区の府県庁あるいは国の出先機関あるいは外国公館との連絡、あるいは国公賓は大抵関西に参りますので、その接遇等の問題がございます。さらに、一般方々との関係では、外国へ渡航される方や本邦の商社が外国公館等に提出される文書についての証明事務等がございます。したがいまして、この事務がゼロというわけにはまいりませんので、本省のしかるべき者が随時出張する等の措置によってこれらの事務を実際上何とか処理してまいりたいと思います。ただ、これは事務所が廃止されることでもございますので、人間についても減員を図る所存でございます。
  226. 園田直

    ○園田国務大臣 ちょっと私から発言をお許しいただきたいと思います。  事務当局は必ずしも先生の御質問にまともに答えてないと存じます。先生がおっしゃることは、予算も変わらぬ、人間も変わらぬ、名前が変わるだけじゃないか、それから他のことについては、なくしたというのはごまかしじゃないか、こういう二つの点だと思います。私は、先生の御指摘は、まさに当たっておると言わざるを得ません。  ただ、中南米局の必要性と、それから中南米諸国からそのたびごとに強い要請がございます。もう一つは、これに反対する意見が強かったわけであります。反対する意見が、予算、人員は今年は変わらぬが、それを足場にして逐次強化拡大していくのではないか、これもまた私たちの本心をついておるところであると考えております。  それからまた、次長とか大阪事務所の問題で、ごまかしじゃないか、こういう点も、答弁すれば弁解になるだけでありますが、この必要性というのはますます大になってきておるわけでありまして、これは中南米局をつくりたい一心のために出てきた矛盾でございます。
  227. 栂野泰二

    ○栂野委員 そこで、行管、来ていただいていますね。――こういう、言ってみれば員数合わせ、つまりどうしても中南米局をつくることが必要ならばつくったらいいんだし、それから文化事業部やらアジア局次長やら大阪連絡事務所はなくしてもいいものなら前になくせばいいわけでしょう。何だか員数合わせがやられていますね。一体、こういう員数合わせ、わからぬじゃないですよ、しなければいかぬという原則というのですか、これが私どもから言えば、行政機構というのは必要なものはどうしても必要なんだし、不要なものはあくまで不要なんです。  ですから、不要なものはどんどん減らしていく、必要なものは場合によってはふやさなければいかぬかもしれません。その基準は国民のニーズなわけです。けれどもこういうやり方を見ていると、そういう国民のニーズが問題ではなくて、官庁のなわ張りといいますか、官庁内部の官僚的事情に左右されていると思うのです。言ってみれば、こんなことはくだらぬなという気がしてならないのですが、行管庁その辺どうなんでしょうか。
  228. 門田英郎

    ○門田説明員 御説明申し上げます。  すでに御案内のことかと存じますけれども行政部内の機構の問題、行政機構というものは、極力簡素で、かつ効率的なものでなければならないという要請は、当然のことでございます。このために、政府といたしましては、従来から既存の行政機構の簡素、効率化に努めてまいったところでございます。一方、年々の予算編成の過程におきましても、行政機構の膨張というものを厳に抑制をするという方針を堅持してまいったところでございます。  特に中央省庁の局あるいは部というものにつきましては、これは行政機構のかなめ、中核でございます。先ほどもお話がございましたけれども、各般の行政運営の基礎となる関係から、ややもいたしますと局の新設というものが、その下部機構の拡大であるとか定員の拡大、その他の行政諸経費の増大ということを招きがちであるというおそれは確かにあるわけでございまして、こういった見地から、政府といたしましては、部や局を設置する場合には機構膨張抑制という基本原則を厳しく取り扱わせていただきまして、部局スクラップという原則の上に立って、年々の予算査定を行わせていただいているということでございます。よろしく御了解をお願いいたします。
  229. 栂野泰二

    ○栂野委員 結局、こうでもしなければ、ふえるときは何ぼでも要求が出るけれども、減らすことができないということなんでしょうけれども、いま私が申し上げましたような原則で、とにかく不要なものはばっさばっさ切るという確固たる原則をひとつ行管の方でつくっていただきたいものだと思います。国民の目から見ますと、こういうことをやられますと、それでは廃止になる方は、もともとなくても何とかなるものではなかったかなという感じしか残ってこないですから。  そこで、この設置法成立をおみやげに外務大臣は、八月に中南米諸国を歴訪されるようであります。八月という話でございますが、私、これも大変結構だと思いますけれども、問題はチリを訪問されるという点でございます。この点も何人か御質問なさったようで重複して恐縮でございますけれども、私、委員会へ出ていませんでしたから正確ではございませんが、外務大臣がチリを訪問される、それからピノチェト大統領を日本に招かれる、それは国賓として招かれるわけですか、それで時期はいつごろと、もうお約束済みでございましょうか、その点をお答えいただきたいと思います。
  230. 園田直

    ○園田国務大臣 私がチリを訪問することは、まだ正式な決定ではありませんが、事務当局で検討しておりますから、これは間違いのないところであります。  大統領の訪日は、どのようにしてお迎えするか、あるいは何月ごろにするか、まだ決まっておりません。
  231. 栂野泰二

    ○栂野委員 決まってないということはまことに幸いだと思うので、それでは御質問いたします。  いまのピノチェト政権というのは、周知のとおり七三年の九月に軍事クーデターでできた軍事政権でございます。チリというのは、経済的には開発途上国だけれども、政治的には先進国だと言われた国で、南米にしては珍しく民主主義が発達した国だ、こういう評価を受けていたと私どもは理解しているわけであります。アジェンデ政権も選挙で選ばれて、合法的にできた左翼革新政権、世界的に大変注目されておりました。私どももその行方を注目していたわけでありますけれども、残念ながら血なまぐさい軍事クーデターで倒された。その倒したのがピノチェト政権であります。そういう点からまず第一に問題でありますが、政権の誕生の経緯だけではなくて、その直後から行われた物すごい血の弾圧ですね、それがしかも長く続いているという点でも、これはきわめて遺憾な状況を現出しているわけであります。  そこで、国連でもこういった人権侵害について、翌年の七四年から非難決議が行われているわけでありますが、圧倒的多数で賛成国が多い。日本も、一つ棄権があるようですが、そのほかは全部賛成してきております。そこで昨年の決議ですけれども、要旨は、アドホック・ワーキング・グループの報告により明らかになった、チリにおいて引き続き行われている人権侵害に深い怒りを表明し、チリ政権に対し緊急事態の解除、非人道的取り扱いの即時終結、行方不明者の捜査等を要請するという、こういう趣旨が書かれておりますが、簡潔に、これはどういう実情をとらえたものか、御説明ください。
  232. 大鷹正

    ○大鷹説明員 まず、チリの人権問題でございますけれども先生いまおっしゃいましたように、七三年のクーデターによって現在の政権ができました当初、政治犯の恣意的な逮捕、勾留、拷問等基本的人権の侵害が行われたとして一時強い国際非難の的となりました。おっしゃいましたように国連でも決議が採択されてまいりました。  しかし、最近では、政治犯の大量釈放を始めまして、国連人権問題調査団の受け入れ、さらには秘密警察の解体に代表される漸進的な民主化政策の推進等を通じ、同国の人権問題には相当程度の改善が見られると思っております。昨年の総会におきますチリの人権問題の決議案の中でも、調査団が行きました結果として、確かに問題は残っているけれども、相当な改善が行われたということが書いてございます。
  233. 栂野泰二

    ○栂野委員 政治犯の大量釈放があったようですが、一方では釈放して、一方ではまた逮捕される人が出てくる。政治活動を理由にして逮捕された、それがどこへ行ったかわからない、行方不明者というのはそういう人たちじゃないのですか。
  234. 大鷹正

    ○大鷹説明員 先生おっしゃいましたように、逮捕された人の中で行方不明の者がいるというようなこともあるようでございます。しかし同時に、昨年の決議の中では、七八年度には政治犯の逮捕というようなことはなかったようだというようなことも書いてございます。
  235. 栂野泰二

    ○栂野委員 私の聞く範囲では、この人権問題の現状はそう変わっていない。だからことしも、国連総会はいつになりますか知りませんが、このままですと、またことしも、五回目ですか、引き続き同じような決議案が出て、可決される可能性があるんじゃありませんか。その見通しはいかがですか。
  236. 大鷹正

    ○大鷹説明員 先生おっしゃいましたように、ことしも決議案が出てくる可能性はあると思います。しかし、この数年来決議案のトーンが大分緩和されてきておりますので、ことしの総会においてそれが出る場合でも、緩和されたものが出るのではないかと思っております。
  237. 栂野泰二

    ○栂野委員 これも御説明いただきたいのですが、あのクーデターのときに最大の野党だったキリスト教民主党、その右派が実はひそかにピノチェト政権派に協力していた、こういう事実が後でわかった、こう言われていますね。そこで、キリスト教民主党の左派は早くから非合法とされたけれども、右派の方はつい最近までは合法政党として認められていた。人民連合は、もちろんクーデター以後は一切非合法という状態ですね。  ところが、七七年の三月からこのキリスト教民主党の右派も、いまのピノチェト軍事政権が民政移管について一向にそれをしようとしないという、そういうことで早く民政移管しろという要求を掲げた、それがげきりんに触れて、キリスト教民主党の右派も非合法化されてしまった。そこでこのキリスト教民主党の右派は、やむを得ず、民主主義回復国民運動というのですか、そういう組織を結成して、すでに亡命中の左翼人民連合勢力、ここと提携をしていまのピノチェト軍事政権、これは独裁政権ですね、これを打倒するために一緒にやろうじゃないかと、こういうことになっているというふうに書いたものを私は続んでいるのですが、その辺はいかがですか。
  238. 大鷹正

    ○大鷹説明員 いま先生が言われましたようなことについては、必ずしも私つまびらかにしておりません。しかし、現在の軍事政権も、行く行くは民政移管ということも考えておりまして、私どもの理解しておるところでは、今年中ぐらいには憲法の草案もまとめたいという考えのように理解しております。
  239. 栂野泰二

    ○栂野委員 これは比較的チリに好意的な論文というか、報道というか、それを見ても、とてもじゃないけれども、ことし中とか来年に軍事政権から民政に移管するなんという期待は持てそうにないですね、これは。  それからこの軍事政権の内部ですが、レイというのですかリーというのですか、いろいろ書いてあるのですが、リー軍司令官、この人はピノチェト政権のナンバーツーと言われる実力者だと、こう言われているそうですが、七七年の十月に韓国を訪れた際に日本に立ち奇ったとか聞いていますが、そのレイ空軍司令ですね、片腕あるいはナンバーツーと言われたその人も、いまおっしゃったように民政復帰と言いながらまた今度はやめたようなことを言う、そこでこのレイ軍司令も民政復帰を早くすべきじゃないか、こういう意見を出した、それを理由に解任された、だから軍事政権の内部もいまはかなり動揺がある、こういうふうに私も続んでいるのですが、その辺の実情はいかがですか。
  240. 大鷹正

    ○大鷹説明員 先生非常にお詳しいのですが、私実は、リーさんがどういうことであったのか、まだ承知しておりません。  ただ、私どもが最近見ている限りでは、現在の政権が特にひび割れが生まれているとか不安定になっているというような印象は持っておりません。
  241. 栂野泰二

    ○栂野委員 私は、どうもその辺は大変評価が甘いような気がしてならないのです。つまり人権侵害状況というのも、それは五年たつわけですから、いまは多少鎮静化しているのでしょう。しかし、国連決議が昨年まで繰り返されているという状況があるように、同じような問題が引き続き残っている。しかも、キリスト教民主党のような協力政党まで非合法化されてくるという状況がある。軍事政権内部も、いま言ったのはどうも間違いないようですが、不安定になっている、こういう状況がある。  一方、一昨日の質問にも出たようですが、アメリカとの関係も、アジェンデ政権の外務大臣がアメリカで暗殺された、それを指令したのはピノチェト政権下の秘密警察の長官だった、そこでアメリカは結局引き渡しを求めた、チリ側は拒否したという、こういうことで一時アメリカ側は大使を引き揚げたのですか、そういうことで大変冷たい関係になっている。経済援助もいまは打ち切り中じゃないでしょうか。CIAがあのクーデターにかんだと言われているわけですが、そのアメリカとの関係すらも大変悪い状況になっている。ましてヨーロッパの先進諸国との関係は一切途絶状態と見ていいのじゃないでしょうか。少なくとも、この国連の非難決議に賛成した諸国との関係は冷たい関係だと見ていいだろうと思います。  具体的にお聞きしますが、このピノチェト大統領というのは、クーデター以後五年間国外に出たことはないのじゃありませんか、招かれて出たことはないのじゃありませんか。
  242. 大鷹正

    ○大鷹説明員 そのように理解しております。
  243. 栂野泰二

    ○栂野委員 国連の非難決議に加わった国の外務大臣が正式にチリを訪問されたという例がありますか。
  244. 大鷹正

    ○大鷹説明員 どの国の外務大臣がチリを最近訪問したか、私いま手元に資料を持っておりませんので、調べてまたお答えいたしたいと思います。ただ、外務大臣レベルの交流はあるのではないかと私は想像いたします。
  245. 栂野泰二

    ○栂野委員 それは早急に調べていただきたい。どこの国がそういう親善関係を持っているのか、これは重大な問題です。  ことし国連に再び昨年同様のチリの人権侵害非難の決議案が出される可能性があるといま審議官おっしゃいましたが、もしそうなったら、わが国はどういう態度をおとりになりますか。
  246. 大鷹正

    ○大鷹説明員 やはり、決議案が出てきた段階でその文案をよく検討して、その上でわが方の態度を決めるということになろうと思いますので、現在、こういう態度をとるだろうということはちょっと申し上げかねます。
  247. 栂野泰二

    ○栂野委員 まあ答弁としてはそういう答弁になろうかと思います。しかし、今回外務大臣がチリを正式に訪問されるということはもう確定的、こういうことでございますね。  それから、向こうの大統領を招待されるかどうか決まっていないということですが、もしこれが、国連決議の前に国賓として招待などということになれば、同じような決議が出たら、日本は一体どういう態度をとりますか。きわめてむずかしい状況になるのじゃありませんか。
  248. 大鷹正

    ○大鷹説明員 先ほど大臣から御答弁になりましたように、ピノチェト大統領訪日のことは現在検討中で、その時期等は全く決まっておりません。
  249. 栂野泰二

    ○栂野委員 これはうわさですが、当初は、チリには訪問の予定がなかったのが入れられたと私は聞いているのですが、後から入ったかどうかは別にしまして、やはりこのチリ訪問というのは、私としては取りやめにしていただきたいと思っております。いまのような段階でどうしてもチリとの関係を深めなきゃならぬという理由は一体どこにございますか。私は、経済的な関係、特に漁業関係だ、こういうふうに聞いておりますが、いかがですか。
  250. 大鷹正

    ○大鷹説明員 確かにチリは中南米における日本の貿易の相手国としては非常に大きい国の一つでございます。それから、南米で申しますと、アルゼンチン、ブラジルと並んでやはりABCの一つとして大国の一つというふうに見られるわけでございます。  日本とチリとの貿易は、今後とも伸びていくと思われます。というのは、チリは御承知のとおり、日本の必要としている資源をたくさん持っておりますし、また、日本から必要な機械、技術等を入れたいという立場をとって、いわば両国の関係は補完関係にあるというふうに言えるからでございます。  それから漁業でございますけれども、チリはペルーに次ぐ中南米第二の漁業国ということで、特にチリ南部の海域はこれからの非常に有望な漁業の宝庫と言われております。すでに日本の漁業会社もチリに進出しておりますけれども、今後とも漁業を通ずる両国間の関係は、緊密化していくものと私どもは思っております。
  251. 栂野泰二

    ○栂野委員 時間の関係もありますので、ちょっと質問を急ぎます。  私が外務省からいただいた資料によりますと、五十三年の七月から十一月にかけて日本水産、三井物産、日魯漁業、日魯工業、大洋漁業、これで三つの漁業関係の現地法人ができておるようですね。チリは二百海里、これは漁業水域じゃなくて二百海里領海をしいている。だから、二百海里漁業水域ならばある程度の交渉の余地があるのでしょうが、二百海里全部領海だから一切向こう様のおっしゃるとおり、こういう状況の中で、現地法人ならば魚をとらせてやろう、どうもそういうことでできたようなんです。したがって、この三つの企業は優先的に魚をとらせてもらう、こういうことになるのでしょう。こういう状況から見れば、チリと特に緊密な関係を結んだ方がいいということになりましょうが、それは大変なメリットがあるのでしょう。  しかし、そういうメリットと、いま国際的に人権問題その他で非難を受けている国とあえて日本が突っ走って特別の関係を持つということになれば、むしろ日本が国際的に批判されるという立場になる。私はこれは大変なデメリットだと思うのですが、そこら辺を考えれば、チリに対する外務大臣の正式訪問、まして相手国のピノチェト大統領を招待するなどということは、おっしゃるようにもう少し状況がよくなれば別でしょうけれども、現段階では決して好ましいことではないと私は考えているところでございますが、外務大臣、御所見はいかがでしょうか。
  252. 園田直

    ○園田国務大臣 チリとは政権は別にして、チリの国民日本国民との間は非常な歴史がありまして、非常に親日的な国民であります。  第一には、政権が軍事クーデターをやった政権である、これも確かにおっしゃるとおりであります。この点は、日本も考えなければならぬ。だがまた、軍事クーデターをやった政権であっても、国民の支持を得て成立している国と交際している国は幾らでもございます。ただ、その後政権ができた後、多量の逮捕者を出したり、あるいは血なまぐさいことがいっぱいあったり、あるいは反対者を弾圧したり、いろんな事件がございます。その後政治犯の釈放であるとか、あるいは民政移管への準備だとか、あるいは選挙による労働組合の幹部の選出であるとか、民間人も内閣に出るとか、逐次改善の方向へは向いておりますけれども、まだ世間が納得するような方向には向いてないわけであります。  したがいまして、問題はチリとは、その他の貿易、地下資源等もありまして、いままでそういう政権でありますが、貿易外交関係は進んでおるわけでございます。米国とのように日本との間に特別な問題がございません。しかし、日本の外交方針として人権がどこの国でも守られ、そしてまた民主的な方向へ進むということは、おっしゃるとおり大変な問題でありまして、問題は貿易関係はいままでどおり続けるわけでありまして、特別飛躍的になるわけではない。  私が訪問する印象と、それからいま検討中の大統領の訪問ということがあるわけでありまして、委員会においても、いま先生のおっしゃるような御批判や注意が非常にあったわけであります。だからといって、いま検討中の計画をどうこうと言うわけではありませんけれども委員方々の御意見、近隣関係諸国等の動向等もよく聞きまして、さらに慎重に検討いたします。
  253. 栂野泰二

    ○栂野委員 必要最小限度の外交関係が保たれるのは、いかなる政権であれ、五年もたっておるわけでありますから、その点は何も問題ないわけですが、大転換と言われるような外交展開をなさるのは、いま御発言ありましたように、ぜひ慎重に御検討いただきたいと思います。  質問を変えたいと思います。防衛分担金と地位協定の関係にしぼってお聞きします。時間も余りありませんから、簡潔にお答え願いたいのです。  防衛分担金の問題、金丸前防衛庁長官、思いやり論で盛んにぶちまくられたわけでありますが、山下長官にかわって少しおさまるかと思ったら、どうやらそれに輪をかけたように、毎週、とにかく増額するのだ、ふやすのだというような報道が行われているわけであります。何かオフセット協定ですか、あるいはポンカスというのでしょうかね。そういう西独方式を持ち込むような報道もなされている状況でございますが、そういう全般的な問題はきょうは取り上げませんけれども地位協定との関係で、五十四年度の予算でまず労務費の関係ですが、格差給、語学手当、この二つの退職金へのはね返り分の一部を日本側が負担する、こういうことになったわけです。  しかし、五十三年度には福利、厚生、それだけは賃金には当たらないということでそうなった。今度は、いま申し上げたようなものが新しく加わった。私は格差給なんというのはどう考えても――五十三年度の議論になったときです。福利関係費は別だけれどもというあの議論の際から言えば、格差給は賃金に間違いないです。それは入れないということだったが、今回これが入ってきた。入れられる根拠、地位協定の関係説明していただけませんか。
  254. 玉木清司

    ○玉木政府委員 五十三年度に福利関係費を、そして五十四年度には公務員の給与水準を上回る分を負担するという過程をとってきたのは先生指摘のとおりでありますが、なぜ、これを負担できるかということにつきまして、防衛施設庁として理解しております限りでは、御承知のように地位協定二十四条一項に、在日米軍を維持するために必要な経費は米国側の負担とするという条項がございまして、これが基準になっておるわけでございますが、同じく十二条第四項に、労務を調達する場合には日本政府当局の援助によって行うというふうにも定められております。  長い歴史の過程で、在日米軍は財政的な余裕もあり、また、日本の長い社会環境の中で過ぎました時代には、これを米軍が全部負担しておったわけでございますが、今回、政府がこのような労務費及び施設費につきまして新しい政策を執行することになりました関係は、一にかかって最近の社会経済情勢の中におきまして、在日米軍が財政的な負担に大変苦しんでいるという状況を見ながら、地位協定の枠の中でなすべきものはなさなければならないという立場で検討した結果、生まれた政策でございます。  なぜこれが負担できるように考えたか、その筋道をということになりますと、維持に要する経費は日本政府の負担であるというふうに定められております。さて、その維持に要する経費の中の労務費及び労務関係費について見てみますと、維持というのは、米軍がここで部隊を維持していくわけでございますから、必要なものは購入してまいりますが、購入する場合にも通常の水準において労働力の調達をするのが維持のノーマルな姿であろう。しかし十二条四項で、労働関係におきましては長いいきさつがございまして決められました賃金の高い水準がございます。  その水準の差がなぜ起こってくるかと申しますならば、これは日本政府と従業員との間の取り決めによりまして、使用者たる米軍とはかかわりなく決めていく賃金の水準でございますので、その水準と通常調達すべき労務の水準との差額、こういうものは、維持に要する経費は米軍の負担であるという規定はありましても、米軍側に当然の義務があるとまでは言えない筋合いのものではなかろうか。加えて、そのような一般環境の中で、地位協定を実効あらしめるためにはこれを日本政府側が負担するのが当然であるというふうに理解をして、この予算を計上しておる次第でございます。
  255. 栂野泰二

    ○栂野委員 玉木長官、全然それは説明にならぬのですよ。  地位協定の十二条の四項、「現地の労務に対する合衆国軍隊及び第十五条に定める諸機関の需要は、日本国の当局の援助を得て充足される。」というのは、本来の趣旨は、米軍が直接だれか探してきて雇用すればいいんだけれどもなかなかむずかしいから、そういう労務の需要がある場合には日本当局がめんどうを見てあげる、こういう趣旨が四項本来の趣旨。米軍が雇用する場合に日本国法令に定められた労働条件、これ以下では困りますよ、これは守っていただきますよということを定めたのが五項、私はこう読むのです。  だから、四項からいきますと、本来日本政府は米軍と日本の労務者との雇用関係についてはあっせんというか世話をするということだけだったと思う。大体雇用主と使用主が別だというふうなことは、これは異例なことですからね。本来ならば雇った人が使うという形が考えられたと思うのです。しかし、いろいろ事情があった結果、雇用は日本政府、防衛施設庁長官、使用は米軍、こういうことになった。  しかし、それはともあれ、少なくとも、そういうことで米軍とのかかわりなく決まるんだとおっしゃいますけれども、これはつまり交渉相手が日本政府になっている、こういうことを言われるのでしょうが、そこで決まったものは米軍が払う、こういうことでしょう。責任を持って労務者に払うべきものは米軍が払うという趣旨は貫かれているわけですよ。だから実際言うと、五十三年度に出てきました福利関係の費用でも、これは本来なら米軍が払うものだと私は思うのですよ。  ただ、ぎりぎりああいう解釈もとれるかなということでしょう。まして今回のように、日本の公務員水準、これまでは米軍に負担してもらうけれども、それから上のものは日本側が負担するなどということは地位協定の解釈上全く出てこないじゃないですか。だから拡大解釈にも限度がありまして、地位協定の趣旨、それから書いてある文言の客観的意味を越えてまで拡大解釈などということはすべきじゃないですよ。そこで賄えなければ別個の方策をすればいいのであって、いまのような説明じゃ私は納得できない。公務員賃金まではアメリカ軍にやってもらうけれども、それから出たものは日本がやってもいい、やらなければいかぬ、それが地位協定から出てきますか。
  256. 玉木清司

    ○玉木政府委員 ちょっと砕けた表現を許していただきますと、たとえば経費が欠乏してまいりましたならば、同じ業務をしなくてはならない場合でも、やはり使用者あるいはそれを必要とする者は安い経費で賄える程度の品質の低い労働力で賄ってでもやりたい、そういうふうな意思を持つことは当然だと思います。大変砕けたお話をして恐縮でございますが、もしそういうふうな場合に、米側の意思でそれを実施されますと、日本一般社会環境の中にあります労働力の需給関係から申しまして、あるいは長くかかって確立されてきた日本の労働者の地位というものから申しまして、しかく簡単に対応できない問題でございます。それをあえて対応しようといたしますならば、労使の関係に大変大きな問題を投げかけますので、われわれとすれば、十二条四項で日本政府の援助によって充足するのだというところは、日本の労働関係をよく踏まえまして、それを損なわせないように米側につけた大変大きな条件であるというふうに理解しておるところでございます。  したがいまして、その規定によって、賃金につきましても防衛施設庁長官が生計費その他を勘案して定めるというふうに公務員法の特例法で定められたという経緯があるわけでございます。したがいましてわれわれの理解といたしましては、維持に要する経費と一口に規定はございますが、維持に要する経費の本質について深く各省と研究をいたしまして、現時点におきます雇用の関係、特に米軍の財政逼迫と駐留軍労務者の現在の地位その他の関係、これらを勘案いたしまして、今度のような判断をとったわけでございます。
  257. 栂野泰二

    ○栂野委員 おっしゃるように、いままでどおり全部米軍ということになれば、結局しわ寄せは現実に駐留軍労務者に来る、何とかしなければならぬという、それは私わかりますよ。だからと言って、地位協定が存在する以上、長官のようなおっしゃり方だと、政治的解釈ですよ。やはり枠内とおっしゃるのならば法律的解釈の限度がありまして、その限度を越えたら、何のために地位協定があるか、わからないですよ。歯どめがなくなってくる。  だから、余り小手先でそういう拡大解釈、そんなことを言えば、後ほどちょっと施設の関係も聞きますが、結局両方についても無限に、そのうちに退職金も全部日本で持ってくれという要求が出てくるのじゃないですか。アメリカには退職金などという制度はないのだ、こういうことになってくる。いま日本の公務員のベースだとおっしゃっているのですよ。しかし、あなたのような解釈をすれば、退職金もというふうな要求が出た場合に理論的に断れないじゃないですか。そこの歯どめを一体どう考えておられるのか。処置の仕方はいろいろあると思います。しかし、少なくとも地位協定の解釈は、幾ら拡大解釈をしようと限界がある。その限界を越えてもらっては絶対にいけない、こう考えます。  もうきょうは、時間がありませんし、これは一日、二日で済む議論じゃありませんから、いずれこの点は、後に回します。  そこで、施設の関係もお聞きしておきますが、今年度は家族の住宅新築四百二十戸、老朽隊舎改築七棟、老朽貯油施設改築二基、サイレンサー二基、こういうことになっていますね。この問題では、沖繩国会のときの楢崎議員の質問で大平答弁がありますね。そこまでは借り上げ料と補償料ということだった。ところが、その時点で代替というのが出てきましたね。大平答弁が出てきた。新築を含まない程度ですかな、そういう言葉ですな。ちょっと時間ないから読みませんが。  今度は、この予算に至りましては住宅の改修、新築はもう代替という概念からははるかに遠い新築になる。しかも肝油施設、石油タンクですか、それからサイレンサーなんということになりますと、これはもう全く飛躍した考え方になるわけですね。それを地位協定の枠内で、地位協定の解釈上これができる、こういうことになりますか。  外務省見解が出ておりますが、これもいままでの国会質疑を見ますと、昨年の四月十一日の読売新聞に外務省見解要旨というのが書かれている。結局、これは内部文書で国会に提出できないけれども、書いてあることはこのとおりだからそれを読んでくれ、そういうことのようですがね。この外務省見解要旨は、何でわれわれにはもらえぬのですか。まず、それをお聞きしたい。今日時点でまだ提出できませんか。
  258. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 ただいま御指摘の文書は、先ほどお話のありました大平答弁なるものが予算委員会で四十八年でしたか行われまして、その後、三沢とか岩国の施設の改築を行う必要があったわけでございますが、その現実の事務を処理するに際してどのように大平答弁を実施していくかという点についての参考といたしまして、外務省で内部的につくった文書ということで、全く部内の参考資料ということでつくりましたものですから、御提出するのを御猶予いただきたい。  ただ、先生もいまお話がありましたように、当時の新聞に出ておりましたものは、その文書の内容をその新聞の記事で十分お読み取りいただけるほどに記事が書かれておる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  259. 栂野泰二

    ○栂野委員 ですから、これを読みますと、時間がありませんから簡単に言いますが、「代替の対象となる施設」というのは、単に兵舎、倉庫など建物だけではなく、滑走路、エプロン、タクシーウエー、飛行場施設あるいは施設、区域内の道路、下水道施設、ここまでも広がっていますね。それから「代替の範囲」というのも「例えば、飛行場施設の返還を受けて兵舎施設を提供する場合のように機能的に全く異なるものを提供することも、それが安保条約の目的に照らし、返還によって損なわれる提供目的が、代替提供により補てんされる限り認められるべきであろう」。とにかくこんなことは、代替という観念とはもう全然かけ離れていますね。  代替というのは、建物が古くなったから、そのかわりに似たようなものをつくってあげます、これが普通でしょう。だけれども、これは機能的に異なる、飛行場施設のかわりに今度は兵舎みたいなものを建ててもそれも構わないのだ、それは安保条約の目的に照らして判断すればいいのだ、こうなりますと、地位協定の解釈ではなくて、これはこれで、あるけれども、安保条約の目的に照らして別に問題なければ、この条文に書かれている言葉の意味などははるかに飛び越えても構わないのだ、私はこういうふうにしか読めないのですがね。あくまでやはり地位協定の解釈という立場をとられるのですか。
  260. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 先ほど申しましたように、そのときの文書は、これは何分にも相当前の文書でございますが、当時大平答弁で答えましたところの代替の範囲を超えないという場合の「代替」というものをどう考えるべきであろうかという点につきまして執務参考用としていろいろな研究をやった、検討をやったことを書いたわけでございます。  ところで、今回の予算に計上いたしておりますものは、これはあるいは施設庁からお答えいただいた方が適当かと思いますけれども、たとえば三沢飛行場の隊舎の改築とか岩国の飛行場のやはり隊舎の改築とか横田の飛行場の隊舎の改築、それから庵崎の貯油所の貯油タンクの改築、これらはいずれも、もともとそこにありましたもの、古くなって使用にたえなくなったものを壊しましてそれと同じ性質のものをつくるということで、いま先生指摘のような何年か前の昔の文書の解釈によって何か処理をしたということではなくて、ことしのものは、まさにそのいまありますものの使用にたえないものを取り壊しましてそれと同じ性質のものをそこにつくっておる、こういう状況になっておるわけでございます。
  261. 栂野泰二

    ○栂野委員 そうしますと、この読売新聞に出ている外務省見解というのは、内部文書で外には出せないが、考え方はこういう考え方をとるのだというふうに私は受け取っていたのですが、そうじゃなくて、外務省見解要旨、これは別にいま外務省の固まった考え方としてとるわけではない、こういうことでよろしいですか。
  262. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 先ほど申しましたように、当時の執務参考のたたき台としてつくった文書が、何の理由か、大変後になりまして、必ずしもその時代に適切な環境とは言えない状況で新聞に出たということでございまして、いま私どもが考えておりますものは、まさにいま申しましたように、そこにあるものの使用にたえないものを壊して新しいものをつくる、こういう形でやっているわけでございます。
  263. 栂野泰二

    ○栂野委員 じゃ一つだけ例を挙げて、サイレンサーですね、これはいままでないですね。新しくつくるのでしょう。このサイレンサーが日本側で負担できる根拠、この地位協定に沿って法的に説明してください。
  264. 玉木清司

    ○玉木政府委員 法的根拠と申しますと、地位協定二条で日本国がこれを提供し、その経費は二十四条二項の規定によって日本側が負担するということでございます。サイレンサーの御指摘がございましたが、政府の地位協定の解釈に関します態度は終始一貫しておりまして、地位協定成立以後におきましてもこういう周辺住民にいわゆる公害を与えるものを防除してそれを使わして、周辺の環境を整備するために提供した施設はすでに相当数ございます。
  265. 栂野泰二

    ○栂野委員 この法的根拠としては地位協定の二条一項(a)号、こういうことですね。しかしこれはこういうことじゃありませんか。提供する「「施設及び区域」には、当該施設及び区域の運営に必要な現存の設備、備品及び定着物を含む。」と書いてありますね。「現存の」というのはどうお読みになるのですか、エクジスティングというこれは。だから、その区域を提供したときに、現にそこにあった設備はそのままつけてあげますよという、こういうことじゃないんですか。どうしてこれが、二条一項(a)号が新しく今年度予算でサイレンサーをつくるという根拠になりますか、それを説明してください。
  266. 玉木清司

    ○玉木政府委員 御指摘の第二パラグラフは、提供特にそこに現存のものがあれば、それを含んでやるぞということが規定されてありますが、第一パラグラフにおきまして、日本側が施設を提供するという規定があるわけでございます。二十四条二項で、また、それは日本国の負担において行うということが定められておるわけでございます。
  267. 栂野泰二

    ○栂野委員 だから、第一パラグラフにある「施設及び区域」の定義を第二パラグラフでしているじゃないですか。その定義には「現存の」と書いてある。現に、提供したときにあった設備は「施設及び区域」に含まれるんだ、こういうことでしょう。
  268. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 いま御提起の定着物の問題は、これは提供時にその当該施設、区域の建物その他にくっついておりますところの動産的なものについて言っているわけでございます。  ところで、問題は、いま先生の御質問の点は、恐らく別の問題であろうかと思うのでありますけれども、私どもは当時からたびたび申し上げておるわけでございますが、既存の施設、区域の中に新しく建物その他の工作物を提供するということも、これは地位協定上、追加の施設、区域の提供ということで、あり得ることである、地位協定上はすべて新規に提供することだけが想定されているのではなくて、既存の施設、区域の中に追加的な提供を行うということはあり得るのですということを御説明申し上げているわけでございます。  そこで、大平答弁と申します当時の答弁は、リロケーションとか老朽施設の改修、改築との関連で、既存の施設、区域について追加的な施設、区域の提供を行う場合の運用面の指針を述べたもの、私どもはこういうふうに考えておりまして、あらゆる施設の提供について述べたものではない。したがいまして、その大平答弁で言うところの代替の範囲を超えないというのは、代替関係のある場合に、その代替されるものの規模その他を超えないで新しいものをつくっていく、そういう運用上の指針を述べたものであるわけで、他方、既存の施設、区域の中に新しい工作物をつくることは、地位協定上考えられるところである、合法的なところであるというふうに考えているわけでございます。
  269. 栂野泰二

    ○栂野委員 そこなんですよ。それがどうしてこの地位協定の解釈から出てくるのか。素直に読むと、それはもう絶対出てこないですよ、これは。もう時間がありませんから、これはまた後に回しますが、私はごく端的にこう考えているんですよ。  安保条約の核心というのは五条と六条。五条で日本が武力攻撃を受けたら、その場合はアメリカに助けてもらう。一方、六条は、その五条のためだけではなくて、極東の安全のために、これはアメリカの軍事戦略ですな、そのためにアメリカの基地を日本に置くという。だから、五条と六条が言ってみれば見合っていると私は考えているのです。だから、そういう意味では、何もこの安保条約は片務的ではなくて、五条では日本メリットだけれども、六条はアメリカ・メリット、こういうことじゃないのですか。そこで、そういう六条によって、基地の提供義務が日本にある。それは端的に言えば、無償で基地を提供いたしましょう、この提供する施設、区域は、とにかく土地なんですよね。その土地を提供するときに、現に存在した施設、これはそのままつけてあげましょう、ただこれだけじゃありませんか。それ以外は、米軍を維持する、あるいは基地を維持する経費は一切米軍が持つんだ、こういうことだったはずです。  だから、それが長いこと、ずっとそういうことで行われてきたわけでしょう。だから、労務費は全部アメリカ軍が持っていた。それからその施設関係ですね、これは借り上げ料と補償料に限られていた。それが日米の経済関係が違った、軍事情勢が違った、そういうふうな情勢の中から、防衛分担金を日本がたくさん負担しなければいかぬという状況が来たので、何十年、揺るぎない解釈として存在していたものを、いろいろに手を加えて拡大解釈をなさろうとする。それが、いま申し上げましたが、この地位協定の本来の趣旨なり書かれている言葉の概念を飛び越えているので、ここが問題なのです。どうしてそういう拡大解釈ができるのか。これはどう考えてみましても、たとえば第二条には「現存の」と書いてありますね。それから第三条の一項は、「合衆国は、施設及び区域内において、それらの設定、運営、警護及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」ここに「設定」という言葉がありますが、これはアメリカ軍が一切、そういう施設、区域内における設備その他が設定できるんだ、ただ日本はそれに協力してくださいよ、こういうことがある。第四条を見ますと、返す場合に、合衆国は「提供された時の状態に回復し、又はその回復の代りに日本国に補償する義務を負わない。」この「提供された時」というのは、一番先に土地を基本にした施設、区域を提供された、そうとしか読めないのじゃないですか。  いま局長のおっしゃることを聞きますと、たとえばサイレンサーですな、こういうものは今年度で予算を立てたわけですから、ことしか来年か知りませんが、設置しますね。そうすると、提供されたときの状態に回復する義務を負わない、こういうふうに読めとおっしゃるのでしょうけれども、これはそういうふうには読めませんよ。それで、今度は第四条の二項から言えば、逆に日本アメリカ軍が施設を提供してから後、いろいろな改良を加えたり建物をつくったりする。だから返してもらうときに、アメリカがその建物を建てた、工作物をつくったから、おまえ得するから金をよこせ、そういう義務はこれは負わないということですな。どう読んでみても、いま、サイレンサーまで地位協定の解釈で日本側がやれるのだ、こういうことは出てこない。そういう小手先を弄しないで、どうしても防衛分担金をふやさなければいかぬ、しかし、地位協定の解釈上はもうだめなんだ、だからこれは別個の対応が必要だというならば、それはそれでわかる、いわれは別としましてね。そこで私どもと議論していただけばいいのでありますが、こういう拡大解釈をされますと、地位協定が何のために存在するかわからない。歯どめがなくなる。私どもはここのところが納得できないのであります。  何だか、一時間以内というお約束をしたのだけれども、少し過ぎましたので、いずれ後日に議論を譲りたいと思います。
  270. 藏内修治

    藏内委員長 中川秀直君。
  271. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 外交案件等の、いろいろな現実に起きておりますことにつきましてもお尋ねをしたいことがたくさんございますが、それはまた別の機会もあると存じますので、きょうは提案をされております外務省設置法の一部を改正する法律案並びに在外公館関係法律案、これに関連をする問題にしぼりまして若干のお尋ねをさせていただきたいと思っております。  まず、外務省設置法改正案でありますが、これは中南米局を新たに設置をし、アメリカ局を北米局に改める、大臣官房調査部を大臣官房調査企画部に改める、並びに中南米局設置に伴って、情報文化局の文化事業部、アジア局次長及び外務省大阪連絡事務所を廃止する、こういうような内容になっておるわけでありますけれども、いろいろな経過、経緯も私なりによく承知をしているつもりであります。  そこで、この中南米局の新設に対して、それに見合う他の局の削減が行われていないわけですけれども、従来の行政改革の基本方針である、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドの原則というもの、それに照らしまして、やはり議論がどうしても残るところがあるのではないかという気がするわけであります。先ほどお話ししたような、文化事業部や大阪連絡事務所あるいはアジア局次長、あるいは後に政令改正でなされるであろうかと思われる中南米担当官房審議官、こういったものの廃止で中南米局の新設に見合うだけの削減というぐあいに行政管理庁の方は考えておるのかどうか、まず、それをお伺いしたいと思います。
  272. 門田英郎

    ○門田説明員 御説明申し上げます。  先生に申し上げるのはもうなんなのでございますけれども、御案内のとおり行政機構といいますものは、極力簡素で、かつ効率的でなければならない、こういう考え方に立ちまして、政府は、既存の行政機構というものにつきまして、累次の行政改革計画というものを通じましてできる限り機構の簡素、効率化というものに努めてまいった次第でございます。かたがた、毎年の予算編成過程におきましても、これまで行政機構の膨張を抑制するという基本原則を堅持してまいったわけでございます。その中で、特に中央省庁の局あるいは部というものについては、それが行政の中核である、かつ行政運営の中核であるということから、政府といたしましては、先ほど申し上げました基本原則と、スクラップ・アンド・ビルドの基本原則というものを厳に実施してまいりたいという考え方を持ってまいったところでございまして、その点は先生指摘のとおりでございます。  御質問の第二点にわたるかと存じますが、昭和五十四年度におきまして、中南米地域の重要性ということにかんがみまして、外交政策上の必要ということがございますので、外務省中南米局というものの新設を特に認められた次第でございます。その身がわりと申しますか、スクラップという形で、先生ただいま御質問のございました部長あるいは局次長級の四つのポストを廃止するということにした次第でございます。これによりまして、行政機構の膨張というものを抑制するという政府の基本姿勢、これは実質的に貫かれたものではないかというふうに考えている次第でございます。  なお、今後、このスクラップ・アンド・ビルドの原則をどうするのかということについてでございますけれども、これは、ことしの一月十六日、閣議了解で了解をちょうだいいたしました方針といたしまして、「部局等の機構の膨張は厳に抑制することとし、行政需要の変化に伴う機構の改編に当たっては、既存機構の合理的再編成によるものとする。」という姿勢をとっております。今後ともスクラップ・アンド・ビルドの基本原則というものは堅持してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  273. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 先週でございましたか、委員会でも申し上げましたが、私どもは何も行政需要があるのにそれに対応することをしなくていいなどということを言っているわけではない。しかし、やらなくていい仕事も出てくるわけですから、やはり行政の総量というか、そういうものはどの程度であるか、どこまでが役所の役割りであって、どこから先は民間の役割りであるか、そういうものはやはりきちっと把握をして、目標を持ってやっていかなければいけない。いまそういう哲学がない、対症療法だけではいけない、こういうことを申し上げているわけです。そういうことから言うと、方向はあくまで、スクラップ・アンド・ビルドどころではなくて、スクラップ・アンド・スクラップ・アンド・ビルドぐらいでないと、本当は方向性が出てこない。心づもりですがね、姿勢論としてはそうだと思うのです。  それがただいまのような御答弁であるわけなんですけれども、それではあえてさらにもう一点お伺いいたしますけれども、この中南米局新設に当たりまして、五十四年の一月十一日に、外務大臣、官房長官、大蔵大臣、行政管理庁長官、自民党三役の間で一つの合意事項がありますね。その最後の項目に、「外務省の全機構を可及的速やかに見直すこととし、その際、一局削減を検討する。」という合意がなされたとされているのですが、おれは外務省としてはどのようなスケジュールでお進めになるのか、具体的にお答えをいただければと思うわけであります。     〔委員長退席、村田委員長代理着席〕
  274. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 外務省といたしましては、変転の目まぐるしい国際情勢に迅速かつ適切に対応して日本の国益を守るというために、この外交実施体制あるいは外務省の機構につきましては、常時見直していく必要があると考えております。また、それを実施してきております。  しかし、今回、本年一月十一日の党三役及び関係閣僚との間の了解もございましたので、さらに実質的に機構の見直しを行いたいと考えておりまして、本年三月、実はそのための作業グループを発足させて、目下鋭意検討中でございます。
  275. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 その合意事項には「その際、一局削減を検討する。」という項目が入っているようですが、これはそういう方向でその作業グループはお進みになっていらっしゃるわけですか、お尋ねをいたします。
  276. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 一局削減が可能であるかどうか、われわれとしてはまだ見通しを立て得ない次第でございますが、いずれにいたしましても、機構の全面的な見直しをやっていることは事実でございます。
  277. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 私もあえて局の数がどうのこうのということにこだわるわけではないのですが、あえて言わせていただきますと、ともすればやはり局というものができると定員もふえてまいる。現実に、大体外務省の局の定員は小さな局でも五十人弱ぐらいですね。中近東アフリカ局で四十九人ですか、今度スクラップされる方の文化事業部は定員十九、外務省の大阪連絡事務所が四、こうなっているわけですね。そうすると、局を削減しないということになると、やはりどうしても定員の問題にも絡んでくる点が出てくるのではないか。全般トータルしまして、やはり守るべき原則はなるべく守りながら再編成をしていくという方向であっていただきたい、私自身はそう思うわけであります。あえてそれ以上は申し上げません。御努力をお願いしたいと存じます。  そこで、今度は廃止される対象のことをちょっとお話をしたいと思うのです。中南米局の設置のかわりに幾つか既存のものが廃止されたわけです。先ほど申し上げました。そのうち文化事業部についてお尋ねをしたいのです。  文化事業部については、外務省組織令の四十条にいろいろと所掌事務が定められていますけれども、それぞれ拝見をいたしますと、文化交流のために欠かせない重要な仕事と考えられるわけであります。文化交流の現状につきましては大変な問題がある。ぜひ今後、発展的な方向で検討していただきたいと思っておりまして、ことしの二月二十二日の予算委員会でも、私はその点について取り上げさしていただきました。そして現状が大変問題であるところに加えて、さらに国際化に伴って今後文化交流の重要性はますます増大する一方ですので、早急に手を打っていく必要に迫られていると考えているわけであります。  今度、文化事業部が廃止されるということで、いささかその点に関して疑問を感ずるわけですけれども、文化事業部を廃止して文化交流を今後進めていく上で大きな支障はないのでしょうか。行政改革といっても、何でも減らしていけばいいというものではないということを先ほど申し上げましたが、時代の要請に合った行政機構の再編こそが求められているとするならば、この文化事業部の廃止が文化交流の後退につながるとすれば、これは逆行と言わざるを得ないわけでありまして、この点についての御見解並びにその文化事業部の廃止に伴って所掌事務を今後どのようになさっていくのか、お尋ねをさしていただきたいと思います。
  278. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 今回、文化事業部を廃止することになったわけでございますが、これは具体的に申しますと、文化事業部長を廃止するわけでございまして、現在その文化事業部長の下におります参事官及び文化一課及び二課はそのまま存続させるわけでございます。この参事官及び二つの課は情報文化局に、もともとは広い意味では情報文化局に属しているわけでございますが、その情報文化局に吸収されまして、情報文化局長が文字どおり情報文化局長として文化交流事業を直轄するわけでございます。これは行政簡素化の政府の大方針に従って局長がみずからこれを掌握するという体制でやってまいるわけでございまして、われわれとしましては、文化外交はますます強力に推進してまいりたいと考えております。  なお、外務省の文化交流関係の予算は、年々増大をいたしており、今後とも、これには力を入れていきたいと考えております。
  279. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 私も機構上の問題は、ただいま御答弁がありましたように、よく理解をしておるつもりなんですが、ただ、これは大臣にひとつぜひともお聞き取りを願いたいのですけれども、これからのわが国の国益ということを考え、そしてまた現状を考えた場合に、いまの文化交流あるいは情報収集とでも言いましょうか、そういうものの現状がこのままでいいとはとても考えられない。私どもは前々から、これは大平総理も最近おっしゃっているようでありますが、総合安全保障ということをしょっちゅう言っておりまして、その中にはいろいろな狭義の防衛費もありましょうが、備蓄や資源開発、大型プロジェクト、政府開発援助、文化交流、結局これは六つの柱に尽きる、こう思っているのです。その大きな柱が文化交流だ、こう思っておるわけであります。  ある識者が言っておりますことをちょっと申し上げるわけでありますけれども日本ほど外国の情報を積極的に入手するのに熱心な国もないけれども、また同時に、自国を外国に理解させることに消極的な国もまた少ない。エコノミックアニマルや低賃金国といった対日イメージを払拭するためにも、日本研究者の増加あるいは日本のすぐれた文化、伝統、そういう著作、いろいろなものについての紹介、こういう努力を通じて外国人に日本の正確な理解を促し、相互理解を深める必要がある。また正しい自己イメージをみずから持つことが必要である。単に古い文化、伝統だけではありません。もちろん現代文化や学問、特に社会科学というものについての交流も積極的にやらなければいけない、こう言っておるわけでありますが、大臣、ちょっと一つの統計を申し上げます。  もう大臣のお目にもとまっていると思うのでありますが、これは文化庁の統計であります。昭和五十年に日本の文芸品が翻訳をされて外国から得た収入はわずかに千三百万円です。それに対して外国に支払った翻訳料は、百倍に当たる十二億七千八百万円。また同時に、同年日本にやってきた外国人の音楽、舞踊、演劇の国内公演は三百三十二件であったのに対して、日本人の芸術家の海外公演は四十八件であります。いずれも文化庁の文化行政統計資料でありますけれども、書籍の輸出入についても、輸入百七十二億円、輸出五十七億円、雑誌の輸出入になると、英国からの雑誌の輸入は十三億円、輸出はわずか三百五十五万円、フランスからの輸入は五億四千万円、輸出は何とたったの十二万三千円、西ドイツからの輸入は十四億円に対して、輸出は四百六十五万円、こうなっておるわけであります。  明らかに、私たちは西欧諸国の思想、風俗、技術あるいはファッションも含めまして、そういった文化あるいは時事問題、こういう情報に向けて非常に強く関心を持っておるわけでありますが、相手側は大変無関心である、そう言わざるを得ない。文化の輸入には非常に熱心であるけれども、輸出には全くいままで努力が足らなかったと言わざるを得ないと思うのです。そういうことをいろいろ考えてみますと、機構上の問題はわかるのだけれども、文化事業部を対象にしたという姿勢そのものが、先ほどの官房長の御答弁だけではどうも納得し得ないような気がしてならない。何かちょっと向きが違うのではないかという気がしてならないわけでありますが、大臣、御見解はいかがでございましょうか。
  280. 園田直

    ○園田国務大臣 御指摘のとおりでありまして、外交を効果的に進めていく上には、経済を初め、いろいろ問題があるわけでありますが、経済その他の外交活動が進んだからといって文化はついてまいりません。ところが学問、芸術、伝統芸術あるいは大衆芸術というものを含めた文化交流を進めていきますと、何もしないで経済というものは進んでまいります。  かつまた、これから先は、国の政府と政府との外交関係というものだけでは非常に弱くなってまいりまして、国民国民の心の交流、こうなってくると、どうしても文化交流が大事になるぞということではなくて、もう時代が変わってきて、文化交流が一番先頭に立つべきものであるということは御指摘のとおりであります。文化交流の仕方にも問題はございまするけれども、これに対する費用それから心構え、こういう点は、いまおしかりを受けたことは反省しながら承らなければならぬと思います。  中南米局というものが外務省にとっては数年来の念願でありまして、もう数年前からいまの文化部、それから大阪事務所などという話題が出ておった惰性もありますが、確かにこの点はいまとなってみると、どうやってこれを取り返しをするか、どうやって時勢と逆行するような機構になったものを時勢に沿うようにするか、大いに考え、努力をしなければならぬことだと考えております。
  281. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 ただいまの大臣の御答弁で、もういろいろお尋ねする必要もないような気もいたしますが、せっかく時間をちょうだいしておりますので、私ども意見を申し上げるという意味で、さらに前へ進ませていただきたいと思うわけであります。  国益にのっとった外交という立場に立ってみますと、そういった意味での理解を求める努力、より自国を知ってもらう努力、特に好意的なイメージの創出とか、あるいは否定的なイメージの修正というものを求めた努力が何よりも大事だと思うのです。  先ほどの議論につながらないかもしれませんけれども、ちなみに、さきの予算委員会で、私はこういうことをお尋ねいたしました。日本政府のアメリカにおける調査活動あるいは議会工作などに現地の業者への依頼が少なくない、こういうようなことをお尋ねしたわけであります。西欧先進国の大使館は、そういったロビイストや諸団体に仕事を依頼しているということが全くないわけであります。ところが、日本はかなりの件数で、一九七七年の司法省届け出によりましても、十七団体に九十万ドル、二億円、先進諸国では日本が――もちろんよそはやっていないわけでありますけれども、中進国と比べても大変多いという実態があるわけでありますが、これは予算委員会でお尋ねをしたわけであります。  そのときに外務省から、整理をしながら一番効率的な現地人の使い方を考えていきたいという御答弁がありました。西欧先進国のようにできるだけ自前でやれるようにしていきながら、当面は効率的に現地人を利用していきたいということは、私はよく理解できるのです。その点、その後外務省としてどのような御努力をなさっているのか、お伺いをしたいと思います。  それからもう一点、ワシントンの外国代理人について書いたラッセル・ハウという人の「権力の行商人」という本がありますが、これによりますと、日本外交官が西欧諸国の在米外交官より勤務期間の点でもずっと短くなっていることを業者依存の原因の一つに挙げているわけです。これについては、日本の報道機関の特派員電にも同様の指摘がされて久しいわけですからよくうなずけるわけですけれども、実情はどういうふうになっているのでしょうか。また、勤務期間を長期化するための困難はどこかにあるのか、あるいはその長期化をしていくための方策というものを今後おとりになろうとするお考えがあるのか、ちょっとお尋ねをしておきたい、このように思います。
  282. 中島敏次郎

    ○中島(敏)政府委員 まず、前段の点につきまして、私からお答え申し上げさせていただきます。  先生指摘のように、春の予算委員会でこの問題について先生から御提起がございました。本題に入ります前に一つお断りさせていただきたいと思いますのは、私ども調べてみますところ、大使館が現地での調査活動を行うのに、わが方といたしましても、現地のコンサルタントだとか法律事務所とか、そういうようなところと契約を結んで補助的な作業をいろいろやらせているわけでございますが、いまのお話で、よその国はやっていない、日本だけがという御指摘でございましたけれども、実はよその方もあるようでございまして、(中川(秀)委員「先進国でです」と呼ぶ)はい。先進国、たとえばイギリスにいたしましても、あるいはフランス、イタリア、カナダ、オーストラリアにいたしましてもあるようでございます。  もちろん数からいきますと、御指摘のように日本が非常に多いわけではございますけれども、それぞれ金額にいたしましても相当の金額をつぎ込んでいるやに見受けられます。これはある意味アメリカという国、まあほかの国でも同様でございますけれども、ことにアメリカ日本というような非常に関係の密接なところ、かつ、その関係が広範多岐にわたっているというところでは、その大使館の調査活動、PR活動だけではとうていあらゆる階層をカバーすることができないものでありますから、どうしても現地人の知識と経験を適宜活用するということを考えざるを得ないわけでございまして、この点は御理解をいただきたいと願う次第でございます。  ただ、それが野方図に数ばかりふやせばよろしいというようなことであってはならないことは、先生の御指摘のとおりでございまして、あのときにも私お答え申しましたように、常に効率的な現地人の使用ということを考えながらやっていかなければいかぬということで、私どもの心がけといたしましては、そういう気持ちでやっておる次第でございます。  ただ、それでは数字をもって具体的にどういう成果があったかという御指摘になりますと、先ほど申しましたように、何分にも広範多岐な階層に対して非常に緊密な関係を持っております日米関係でありますし、ことに最近のように、保護主義の台頭を何とかして抑え込まねばならないというような関係もありまして、私どもといたしましては、大使館の人間だけでなくて、その手足をできる限り効率的に使ってやっていかなければいかぬということで、数字の上で抜本的な整理ということはなかなかむずかしいのが現実でございます。  しかし、先生の御指摘もございましたので、たとえばそのPRコンサルタントを使用いたします場合に、借り上げ方式と申しますか、契約をしてべったり何年間使うというような形で多額の金を使うことは、経費の節約上考えものであるという考え方もあります。そこで私どもといたしましては、広報活動をやる場合に、各事業ごとに契約を結んで、各事業の単位でその仕事をやらせるというようなこともできる限りやることを考えまして、少しでも冗費の節約に努め、しかしその効率を落とさないということでやっていきたいと考えておるわけでございます。  人員の点につきましては、官房長からお答え申し上げます。
  283. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先生から御指摘がありましたとおり、在外の勤務につきましては、一つの任地にできる限り長く滞在させることがその任国の国情をより深く理解でき、また、より広く活動できるという意味において望ましいということは、われわれも痛感しておるところでございます。そこで、特に必要なポスト、特に専門職員につきましては、一任地に四年あるいは五年といった長期間在勤せしめる措置も一部講じておるわけでございます。  ただ、人事管理上の問題といたしまして、在外公館の所在地の中には不健康地も非常に多うございます。現実には、全在外公館の半分は不健康地にあるわけでございます。このようなポストに配置されております職員につきましては、健康管理の上からも、四年、五年とその任地にとどまらせることはちょっと問題がございますので、こういう職員につきましては、適当な期間経過後には健康地に転勤させるということも考慮せざるを得ないわけでございます。  その結果、多くの場合におきまして、一任地の勤務期間が平均二年あるいは三年というふうにせざるを得ない場合が多いわけでございまして、この点はわれわれとしても非常に頭の痛い問題でございます。しかしながら、今後は、在外の勤務環境の改善に努めまして、また定員の拡充をお願いして、在勤期間の問題については、さらに工夫をしてまいりたいと考えております。
  284. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 ひとつぜひとも御努力を願いたいと思うわけです。  さらに、同じことの繰り返しになるかもしれませんが、やはり予算委員会でお尋ねをしたときに、対外広報費のことを取り上げさせていただきました。つまり、民間の対外広告費、たとえばソニー六十一億円、松下電器七十億円という一年間の国外での広告費に対して、五十四年度予算の日本の対外広報費が二十三億二千万円であるというこの数字の比較だけでも、大変わずかのものではないか、もっと本格的に取り上げていくべきではないか、こういうことを大蔵省にもお尋ねをさせていただいたわけですが、二十億ぐらいの予算が二十三億ぐらいにふえたからといって、先ほどの官房長の御答弁のように、どうおっしゃったか正確には覚えておりませんけれども、大変大幅に伸びておると言えるものかどうか。私は、とてもそんなレベルの議論はしたくないと思います。  たとえば、先進諸国の対外広報費を調べてみますと、アメリカは一年間に八百十二億円使っていますね。しかも、日本海外広報総予算に匹敵する十九億一千万円を日本一国だけに投入をしていますね。これはもちろん海外広報予算として取り上げたわけですけれども日本の実に約四十倍。ドイツが八十八億一千万円ですから、日本の四倍。カナダが三十億六千万円で、大体日本の五割以上多い。フランスが日本とほぼ同額ぐらいでしょうか。  これは、いわゆる対外広報というものの対策を外交の片手間ぐらいに考えてきたことを示していると言えると思うのです。これではやっていけないということもまた明らかになっているのではないかと思います。とりわけ、日本海外広報、いわゆる公然活動としての情報アウトプット予算、これが約二十億から二十三億、情報収集したりする、どちらかと言えば非公然と言ったらおかしいかもしれませんが、そういうことの活動に使われる報償費予算、これは四十四億一千万円。  だから、対外広報は、この報償費の予算の約四五%、そのぐらいにしか満たないという事実は、日本外交における情報活動というのが依然として、どちらかと言えば、非公然という表現が正しくなければ、報償費とかそういうような活動に重点が置かれている。ある意味では、私は、これは近代的な体質とはちょっと言えないような気もするのです。議論はあるかもしれませんけれども、先ほどの対外比較を考えてみましても、そういうような状態というものが必ずしも望ましい姿であるとは、とても思えないわけであります。  アメリカの対日批判は、アンフェアジャパンということで、大衆レベルに根を持っていると思います。このゆがめられたイメージというものは、私は日本に関する根本的な情報不足というのが最大の原因だと思うのです。この点ではいろいろな識者の方々の見解も一致しておるわけで、つまり日本経済について多少知っているアメリカ人ならば、日本はフェアだということをある程度理解をしてくれる。しかし何も知らないアメリカ人には、対日批判論をあおり立てるアンフェアジャパンという論議というか議論というものが耳に入りやすいということじゃないかと思うのです。  先ほど、アメリカ外国人代理人法の対象になっているいろいろなロビイストあるいは団体のお話をいたしましたが、その一つである日米貿易協議会というものの理事長の、よく御存じのロバート・C・エンジェルさんという方がいらっしゃいますが、この方は大変日本のことを御心配になっていて、こういうことを書いておられますね。  保護主義者が日本を標的とするのは、アメリカ人が日本経済に関して持っている情報が驚くほど少ない、これが一つ。この根本的な情報不足がアンフェアジャパンというゆがめられたイメージを広げている。そういうことを直すためには、この根本的な情報不足を解消するほかにないので、可能な限り多くの情報を提供していくことで次第に国民の情報量を広げていくことが重要である、こういうことをおっしゃっているわけです。  パブリックインフォメーションという言葉は適切でないかもしれないが、何よりもやはり、単なるパブリックリレーションという短期的な対症療法ではなくて、可能な限り多くのインフォメーション、情報を相手の大衆レベルに提供していくのだ、それによってその国民全般が持っているインフォメーションプール、それ全体の層を厚く広げていく、こういうことをねらいにしなければいけない、こういうことをおっしゃっているわけですね。これは私は、大変われわれにとって有益な指摘だ、こう思うわけであります。  いささかおしゃべりばかりになるのでありますが、西ドイツの例を一つ参考にさせていただきたいと思うのですけれども、戦後、西独に対する国際的な感情というものは大変厳しいものがあったわけであります。これはもう御承知のところでありますけれども、これに対して西ドイツは、連邦政府新聞情報庁という役所の任務の一つに対外広報を位置づけまして、目標として、西ドイツに対する先入観を解消し、西ドイツに関する客観的で実情に近いイメージをできる限り諸外国に植えつけること、これが目標だ。もう明らかに一つの大きな機構の中で対外広報というものをはっきり位置づけて、その目標も、実情に近いイメージ、客観的な情報、こういうものを相手の国民に植えつける、これが目的なんだ。大変直截な表現ですけれども、その西ドイツの連邦政府新聞情報庁では、今日おおむねこの目標の達成に成功したという自負を抱いて隠さないようであります。これが、アメリカに次ぐ巨費を対外広報に投入してきた西ドイツの姿であるわけであります。私は、この国際世論の中で日本のいま置かれている立場というものは、いささか大げさかもしれないけれども、戦後すぐのこの西ドイツの立場に似た厳しいものがあるような気がするのです。  そこでお尋ねをしたいわけですが、対外広報をこれまでのような位置づけで、外務省はこれからもおやりになろうとするのか、毎年、前年比で何%増というので大幅に伸びたなどと言っておられるのか、それとも、すっかりこの御認識を改めて、西ドイツ並みの本腰を入れた取り組みをしていくことにして、予算要求等でもその際の重点項目にしていくというようなお考えはないのか、お尋ねをしたいと思うのです。先般の予算委員会での御答弁では、一挙に大幅な増額はできませんけれども、前年度比で約一一・三%の伸び、大変大幅な伸びになっておりますというような御答弁でした。そのような御認識ではいけないのではないかという、そういう観点からお尋ねをしたいと思うわけであります。
  285. 園田直

    ○園田国務大臣 日本は軍備がないわけでありまして、力のない日本が急変する世界情勢に対応していくのには、情報を広く、しかも早くつかむということが大事であります。残念ながら、現在の情報というのは、外務省が全力を挙げることと、幸い各国との連絡がいま緊密でありまして、各国から情報提供を受けておりますが、それで辛うじてやっているわけであります。  事務当局、同僚の諸君の答弁するのを黙って聞いておりまして、何か委員の方が質問された場合に、それは新聞では見ましたが、確認しておりませんなどということを平気で言っておりますが、それは新聞に出るほどのことも外務省はつかんでないということであり、かつまた、新聞に出たら早速それを確認するという意欲がない、こういうことで、情報、それから特に広報については近ごろだんだんわかってきまして、米国初め各国から日本はなぜ自分のやったこと、自分のすることをもっと主張しないのかと相手から言われるほどでありまして、これは結論から言えば人間と金でありますけれども、それ以上にまた考えることもあるのじゃなかろうか。  たとえばでありますが、いま外務省で情報、広報をやっております。内閣では御承知のとおりに、内閣官房に調査室というのがありまして、これで海外情報その他を集め、広報をやっているわけであります。これはもともと、正直に言うと反共情報を集めるのでつくられたのでありますが、その後、逐次国会で修正をされて、いま情報を集め、広報をやることになっている。総理府にもまた広報関係があって、テレビや週刊誌に「総理府提供」という広告が出ているわけでありますが、どうもこういうところにも同じ目的のものをちょびちょびと分けて、そしてどれも一本になってない。  これを思い切ってまとめて、場合によってはなわ張り争いをしないで、文化庁あたりまでも一緒にして、文化交流、広報、情報収集というものをつくって、総理大臣の直轄にするか、外務省の外局にするかにしてやることも研究し、やってみなければならぬことじゃないか、いろいろ考えるわけでありますが、その貧弱さというものは考えると胸をつくほど貧弱だ、よく外務省の同僚諸君はこれでやっている、私はこう思うわけであります。
  286. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 大臣の御認識は、私も全く同感でありますが、先ほどちょっと触れました西独の自己評価といいますか、戦後新聞情報庁をつくって、西独に対する対外イメージというものを改善しようといってつくったその役所が、みずからどう自己評価をしているかということを申し上げました。正確にちょっと言ってみますと、西独のイメージの根本からの改善が、単に政治、広報活動というようなものだけでなし遂げられたものだとは言えない。事実対西独イメージの変化は西独の政策、中でも外交政策に負うところが大きい。これはもう当然のことであります。  しかし、意思の疎通と理解を目指し、わき目を振ることなく、首尾一貫して続けられた情報政策と広報活動が西独のイメージ向上を持続的に促進し、一部地域では初めてイメージ改善の可能性を切り開いたことに何ら疑問の余地はない、こうまで言えるような西独という政府と、ただいまの大臣の御認識、これはやはり真剣に考えなければならぬ問題だな、わが国益の上から考えなければならぬ問題だなとしみじみ思うわけであります。  私も、いろいろ訪米をしました折などに議論をいたしますが、失業率の問題一つをとりましても、結局は日本の文化の説明までしなければいけない。企業内失業がずいぶんいるんだ。それは終身雇用で、さかのぼれば武士道の二君に仕えずという文化も底辺にあるかもしれない。あなたの国のようにすぐレイオフで、あしたから来なくていいよという失業と、そうでない失業とは意味が全然違うのだということまで説明をする、その底辺の深さというものが、実は先ほど大臣がお触れになったように、もっと日本の自己主張をなぜしないかというそういうゾーン、いままであらわれていないゾーンに入っていると思うのです。  私は、何も西ドイツ並みの広報省をつくりなさいというわけではありませんが、まさしく大臣がおっしゃったように、内閣調査室、総理府広報室あるいは外務省のいまのセクションというものが、何らかのかっこうで有機的に、あるいは場合によっては一本化されて、各省の持つ情報あるいは広報というようなものが一つの政府として機動的に外へ出ていくというようなことがきわめて必要であろうかと思うわけであります。情報収集というのは、昔のスパイやエスピオナージなどのような非公然活動でやっているのではなくて、九五%、九六%までは公開情報の分析から始まる、これはCIAであれ、どこであれそうだと言われております。  そういう能力を向上させていかなければ、これからの外交もこれからの国益もその基盤を失うことがあるのではないかということを心配するわけでありまして、ただいまの大臣の御答弁の方向で、外務大臣経験者がそういう一つの機構の中心に座られて、各省に機動的な連絡をとるというような体制、これはわが国益にとって非常に新しい時代を切り開いていくのではないかという気がするわけであります。ひとつそういう方向でぜひとも御努力を願いたい、このように思うわけであります。  これに関連して、少し角度をかえて具体的にお尋ねしたいと思いますが、外務省の情文局が主管局となっております国際交流基金であります。昭和四十七年の十月二日に財団法人国際文化振興会を吸収合併して設置をされております。事業の目的は、「わが国に対する諸外国の理解を深め、国際相互理解を増進するとともに、国際友好親善を促進するため、国際文化交流事業を効率的に行ない、」こういうことになっておるわけであります。  大変意義のある事業かと思うわけでありますが、外国に長く滞在をされた方からお伺いをいたしますと、どうも国際交流基金のたてまえといいますか、設置目的あるいは趣旨というものから現状を判断いたしますと、そのあり方にいろいろな問題があって、その目的を十分に達せないでいるということのようであります。設置されて六年半にもなりますので、私はぜひ内部で総点検をしていただきたいと思いますが、ここでは二点ほどお尋ねをしたいと思うのです。  まず、法案審議されたときの議事録を読みますと、百億円でスタートするけれども、数年で一千億円くらいの基金にしたいと当時の外務大臣の福田さんが述べておられるわけであります。四十七年三月の外務委員会でそのようにおっしゃっておられるわけでありますが、現実は、政府出資が五十四年度に五十億追加されて四百五十億円、民間出資約六百万円と合わせて四百五十億六百万円、こうなっているのです。数年というのをどれくらいの期間と考えられたのかわかりませんが、六年を経た現在で半分にもなっていないわけですが、これは一体どういうことなんでしょうか。具体的にお尋ねして恐縮ですが、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  287. 平岡千之

    ○平岡説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、国際交流基金の資本金は、七年たちました現在、四百五十億でございまして、まだまだこれでは足りない、いつかなるべく早く千億円には達すべきものだと考えておるわけでございます。私ども、この千億円構想を達成するためには、かなり民間の資本の集まることを期待したことも事実でございますけれども、これが所期の効果を上げませず、他方において民間からの資金は出資という形では御指摘のように六百万円ほどの少額でございますけれども、寄付金の形ではかなり来ているわけでございます。寄付金には、用途指定をしておる寄付金と一般的自由に基金が使える寄付金がございますけれども、これが五十三年度末で四十六億円を超えております。これもまた基金から諸事業に出資されているわけでございます。  今後ともこういうような寄付金、形を問わず民間からの資本もなるべく多く吸い上げるように努力していきたいと思いますし、政府からの事業、政府からの出資の増大に努めますし、また、ほかの出資の仕方も検討している最中でございます。
  288. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 民間からの出資金がいま六百十万円ですか、法案審議の際には民間の出資金、寄付金をかなり集める、寄付金四十六億は多いとお考えになるのかどうかは見解が分かれますけれども、政府が四百五十億出して数年で一千億にしようというその期待、希望の中には、五百億ぐらい出せば民間からも寄付も出資もかなり集まるのではないかという御趣旨があったと思うのです。しかし、それが寄付を入れても余り出資が少ないから、結局四十六億にとどまっておる。  しかも、出資金六百十万円というのはどういうことだろうか。果たして努力と言えるようなことをしたのかどうかと思うわけですけれども、その努力にもかかわらず、仮に努力をされたとして六百十万円、寄付金が四十六億円になっているのでしたら、そのことをどう分析されるのか。何が原因で出資金や寄付金が集まらないのか。逆に言うならば、なぜ民間は寄付金を出し渋っているのか。これをどう考えているのか、お伺いをしたいのです。それが明確になれば、その阻害要因を取り除くためにこれからどういうふうにしようではないかということが出てくると思うのです。その分析をお伺いしたい。
  289. 平岡千之

    ○平岡説明員 私どもの考えによりますれば、出資の形のお金が六百十万しか集まらなかった最大の理由はやはり税にあると思います。  御案内のとおり、出資でございますので、出資者としてはその出資者としての債権が手元に残るわけでございまして、したがって、これは税法上も損金算入は極度に困難であろう。私は、税については素人でございますが、そのように原理的な困難があると考えております。他方、寄付金は全く損金勘定ができるわけでございまして、そこに大きな違いがあると考えております。  今後の方向といたしましても出しいい形、出資が困難であれば出しいい形に、ことに寄付金については、特定の使途を決めている寄付はかなりございますけれども、今後は特定の使途を決めておらない一般的な寄付なども拡大すべく努力いたしますし、基金を督励いたしてまいりたいと思います。
  290. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 大臣、きょうはそれが言いたくてここまでずるずるやってきたのですが、ぜひひとつお聞き取りをいただきたい。  私は二月二十二日の予算委員会で一つ提案をしたのです。それは、対外広報のための、海外広報活動のみを目的とした非課税法人ぐらいつくったらどうだとか、あるいは交流基金の中にそういう部門を設けたらどうか、そういうものをつくって、民間のお金を活用して、たとえばテレビの媒体、番組を買い取って対外広報を徹底的にやる。対日理解を深めるためにそういうことをやる、これは本当の急務だ、こういうことを御提案をした、御答弁は、テレビ番組の交流、テレビチームの派遣、招待などテレビの利用に努力をする、時間帯買い上げというようなことはかなり費用がかさみますので、むしろ番組の交流とかそういうことをやる、そんなレベルだから、先ほどるるお話をしたような問題が起こっているわけです。  もうトップ・ツー・トップの意思疎通だけではだめです。大衆デモクラシーの社会の中にあって、何といっても有力な武器はテレビでございます。あるニューヨーク駐在の銀行マンが、日本がテレビ番組で話題になるのはボルネオ、ニューギニア以下だ、こう嘆いておりました。ことしの二月の話であります。私は、そういうことを考えてみましても、ぜひ考えてもらいたい。対外広報について国としてきちんとした戦略を立てて、その戦略の下で統一的な広報活動をしていくことが必要なんであります。それから同時に、それを抜きにしては民間の海外での経済活動も大きく支障を来しているわけであります。そういう認識もかなり広まっております。ですから、惰性的なことでお茶を濁さずに、先に進んでいかなければいけない。説得の対象を一般大衆まで広げる、そういうことをしないと行き詰まると私は思います。  そういう意味で、テレビという媒体を中核に位置づけて、対日理解を深めるために広報活動を徹底的にやっていく、こういう非課税の民間資金の活用、これは外務省一省だけでは考えられない、大蔵省とやらなければいけない問題ですが、ぜひ取り上げて考えていただきたい。私は、国際交流基金のいまの姿以上に、そういう形ならば民間のエネルギーの動員は、かなり切実なだけに可能であろうかと思うのです。そういう方向で政府のイニシアチブをとっていただきたい、こういうふうに思っておるわけですが、大臣の御見解をお伺いをしたい。
  291. 園田直

    ○園田国務大臣 いまの御意見は非常に貴重な意見だと思って拝聴いたしておりました。何とかしてそういうものをつくり立てて活用していくということでなければ、いまの財政事情で予算をちびちび上げるという程度では、時勢の動きの方が早くて、ついていく方がだんだん差が広がるというようなことになると思います。  御意見は非常に貴重でありますが、さてこれを実際やるとなると、いろいろ困難な問題もあるし、むずかしいとは存じますが、何とか突破口を開かなければ、日本の広報活動、情報活動は単にテレビに出る――総理府等で苦労しておられますけれども、「総理府提供」と書いてあると、その途端に、見ている方は何だ政府の宣伝か、この程度では、海外広報もそうでありますが、国内の国民に対する広報が――私は、ドイツの外務大臣に、ドイツと日本の外交方針、それから米ソ対立の中でどうやって平和を求めていくかという点については似ておるし、いささかも劣っていないと思う。ただ、ドイツの方は、ブレジネフ書記長がドイツに来ても、あるいは東独に対しても一時は非常な対立、激論があったが、いまやドイツでは政府がそういうものをやると、国民が平和を求めて、一緒に国民の大多数が同じ国益を考えている。日本ではそれがばらばらであって、この点が非常に劣っているということを、私、ドイツの外務大臣に残念ながら自白をしたことがありますが、いまの御意見も入れまして、何とかここで知恵をしぼり、お力もかりたいと考えております。
  292. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 終わりますが、まさしく大臣のおっしゃるとおりで、国内に対しても、私も同じ認識であります。同時にまた、対外への説得の対象を一般大衆に広げるという努力。たとえば、ニューヨークでは十三チャンネルというのがありますが、一切コマーシャルなしで、あらかた二十四時間近い放送をずっと続けていますね。こういう番組に、日本というものは実はこういう国なんだということ、非常に単純な話ですが、なぜ女性がきれいかということでもいいです。そういう茶の間の話題になるような活動というものが求められるようにぜひしてほしい、こんなふうに思うわけでございます。  きょうは大変有益なやりとりをさしていただきましたが、そういう方向で大臣の一層の御努力をお願い申し上げまして、質問を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  293. 村田敬次郎

    ○村田委員長代理 山花貞夫君。
  294. 山花貞夫

    ○山花委員 時間の枠もありますので、項目をしぼってお伺いをしたいと思いますけれども、まず冒頭、現内閣の外交政策の基本につき、若干お伺いいたしたいと思います。  実は、昨年のことでありますけれども、外務大臣が国連の軍縮総会に出席されまして、日本政府を代表し、一般討論の演説をされました。大変関心を持って伺ったわけでありますが、総論的には今日の憲法九条を掲げながら、「人類の先覚者としての誇り高き憲法の精神に立脚して、わが国は、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないことをその基本政策の一つとし、国際協調をその外交政策の前提としております。」と、外交の基本について明らかにされました。  そして、こうした立場でのまとめ的な意見といたしまして、大臣の発言は以下のとおりであります。「私は、ここに、日本政府、国民を代表して、わが国が核兵器について自ら非核三原則を堅持していることをあらためて宣明するとともに核兵器が二度と使われないよう、そしてこの地上からあらゆる核兵器を廃絶せしめるよう、核兵器国が格段の努力を行うことを強く要請致します。」以上であります。  なお、その後、幾つかの主要な問題についてのわが国の考え方を明らかにいたしまして、私が拝聴したところでは、まず第一に「核兵器の廃絶を目標とした核軍縮の促進」、第二に「適切な条件の整っている地域に非核武装地帯を設置すること」、さらに「爆発用核分裂性物質の生産停止」の問題、「大量破壊兵器である化学兵器の禁止」の問題、そして最後に、通常兵器をも含めての、いわゆる武器輸出の問題に触れられたわけであります。  さて、国連軍縮総会において、こうしたわが国の憲法の体制を掲げての外交の基本を明らかにされた後、大平政権が誕生いたしまして、大平政権における総合安全保障政策というものが打ち出されました。この総合安全保障政策につきまして、私どもがこれまで拝見した資料では、なお具体的な構想について検討中の部分も残されているというように受けとめているわけでありますが、昨年の国連軍縮総会において大臣が明らかにした外交政策の基本について、現内閣における総合安全保障政策ではその変更があったのではないか、こういう心配をする部分が実はあるわけであります。この点につきまして、そういう事実があるのかないのか、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  295. 園田直

    ○園田国務大臣 私が国連総会、国連軍縮総会等で宣明いたしました外交方針は、現内閣でもそのまま一貫して続けております。大平内閣ができましてから、安全保障というものを総合安全保障というふうに言葉が出てまいりましたのは、単に軍事力の強化だけでは国が守れない、安全は日本の国が関係諸国に貢献をする、お互いに国自体がなければならぬという存在になるという、政治、経済、すべてを含めて初めて安全保障ができるという意味でありますから、軍事を強化するとか、あるいは軍事大国になるとかいうことではなくて、むしろ軍事力だけに依存しておっては国は守れぬ、それよりも大事なのは他の部分である、こういう主張でありますから、いささかも変更はないと考えております。
  296. 山花貞夫

    ○山花委員 総合安全保障政策についての基本的な枠組みでありますけれども、大平総理がこれまで発言したものによりますと、「わが国は、平和戦略を基本とした総合安全保障体制を整え、その安全を確保しなければならない。すなわち、現在の集団安全保障体制――日米安保条約と節度ある質の高い自衛力の組み合わせ――を堅持しつつ、これを補完するものとして、経済教育・文化等各般にわたる内政の充実をはかるとともに、経済協力、文化外交等必要な外交努力を強化して、総合的にわが国の安全をはかろうとするものである。」このようにされているわけであります。  この全体の枠組みについて、いま指摘いたしました政策発表の内容からいたしますと、基本は安保条約と質の高い自衛力の組み合わせ。この質の問題につきましては、また機会を改めて詳しく伺いたいと思いますけれども、これをあくまでも基本としつつ、その他総合的な内政充実及び外交努力については補完的なという、こうした書かれ方をしておるわけでありますけれども中心は何といっても軍事である、そして内政、外交はそれを「補完するものとして」という位置づけではなかろうか、ここに軍事優先の思想というものが出てきてしまっているのではなかろうか。実は、その他における議論を振り返りましても、その点について、そうではないという御説明もありますけれども、この補完的作用としてという位置づけからいたしますと、全体の枠組みとしてはやはり軍事優先ではなかろうか、こういう気がしてならないわけであります。この点について御説明をいただきたいと思います。
  297. 園田直

    ○園田国務大臣 非常に明晰な、しかも鋭い追及をされたわけでありまして、感心しながら御質問を承っておりました。この問題は、安全保障の問題を議論する場合の総理の発言でありまして、政治経済全般のことを言っていることではございません。あくまで平和外交であるというならばやはり外交政治が大事であって、そして軍事というものが万能ではないということがおっしゃるとおり基本でなければならぬ。  ただ、防衛力を云々する場合に、いままで防衛力というと軍事だけ言われておったので、そうではないという説明がいまの総理の説明でありまして、その点がいま追及をされた場面でありますが、われわれは防衛だけ考えた場合にはそういう発言になりますけれども、政治全般から基本を言えばあくまで政治、外交が優先であって、そして軍事力というのは防衛のための最小限の、しかも必要な防衛力だ、このように考えております。
  298. 山花貞夫

    ○山花委員 実はこうした総合安全保障体制についての政策が明らかにされました後、過日大平総理とカーター大統領との会談が行われました。共同声明の「安全保障関係」のところを拝見いたしますと、今日の両国の安保関係が大変強化、有益になっているということについて、「日米防衛協力のための指針」あるいは日本による防衛装備の米国からの調達の増大、その他防衛分担金問題などを挙げながら、結論的に総理の方から「日本は、効果的に運用される米国との安全保障体制を防衛政策の基調として維持しつつ、日本の自衛力の質的改善のため今後とも努力するものである」、こういう発言がされておるわけであります。  実はさまざまな最近の、昨年の国会以来議論があります自衛隊の新しい装備、この質の問題についてもわれわれは大変大きな問題として指摘し続けてきたわけでありますけれども、同時に、先ほど私が国連軍縮総会における大臣の発言の中で大変関心を持っておりました核の問題について、私は今日の軍事情勢のもとにおきましては、行き着くところ核武装問題というものが議論になるのではなかろうか、そういう不安を持っているものでもあるわけでありますけれども、そんな観点で、実は国連軍縮総会における大臣の明らかにした日本外交あるいは安全保障政策の基本が変更ないかとお伺いしたわけであります。  時間の関係がありますので、問題点をしぼってお伺いしたいと思うのですけれども、その中で一つだけ、幾つかありますけれども、特にお伺いしておきたいと思いましたことは、実はこの総合安全保障政策につきましても、あるいは環太平洋構想につきましても、具体的にこれからどのような政策というものが打ち出されて、それが実現されようとしているのかということについてわれわれが知る機会が非常に少ないわけでありますけれども、そういう観点から大臣の軍縮総会における発言の中でも同じように、では一体、それはわが国の具体的な政策としてどのようにこれから打ち出されていくのだろうかということについてお伺いしたい点が幾つかあるわけであります。  そのうちの一つの問題。実はわが党もこの問題について大変関心を持ち、わが国における平和保障政策の一つの重要な問題点として考えているところでもあるわけですが、非核武装地帯の設置につきまして国連軍縮総会で主要な問題として大臣が触れておられるわけであります。先ほど指摘いたしました幾つかの問題点の中の一つでありますけれども、「適切な条件の整っている地域に非核武装地帯を設置することは、核拡散防止の観点からも、有益であると考える」とされまして、これに関連した意見を出されておるわけでありますが、この「非核武装地帯を設置する」ということにつきまして、先ほど今日まで基本政策に変更ないというふうにおっしゃいましたので、一歩進んでお伺いしたいと思うわけでありますが、この点についての具体的な構想というものをお持ちなのでしょうか。もし、あるとするならば、その点について、どんな地域にどんな内容の非核武装地帯というものを構想されるのか、あるいはそれを国際的にどのように今後訴えていこうとされているのか、その場合の日本の外交の位置づけ、それが一体どうなるのか、この点について御説明いただければと思います。
  299. 園田直

    ○園田国務大臣 先ほど安全保障の中で一つ落としましたが、発言の中にありましたように、日本の安全保障というのが日米安保条約を基軸とする。これは私は各所で主張しているところでありまして、抑止力の平和を維持する今日においては、これはやむを得ざることであって、これが基軸であることは、私たちと先生方とは若干の相違があるわけでございます。  さて、いまの非核武装地帯の設置でありますが、これはいま言われたとおりでありまして、これを念願としつつ、一歩一歩努力をしているわけであります。  具体的に申し上げますと、第一に、非核地帯設置が現実的なものとなるためには、次の諸点が満たされる必要があると考えております。その第一は、核兵器国を含む関係諸国のすべての同意があること。特に非核域内諸国のイニシアチブを基礎とすること。次には、当該地域のみならず、世界全体の平和と安全に悪影響を及ばさないこと。次には、査察、検証を含む適切な必要保障措置を行うこと。次には、公海における航行の自由を含む国際法の諸原則に合致したものである。こういうことが大体いま考えていることでして、こういう条件が満たされて、そして一歩一歩、この地帯が設置されることを念願をし、努力をしておるわけであります。  今次の国連総会においては、南アジア非核兵器地帯の決議、アフリカの非核化決議、中東非核兵器地帯の決議及びラテン・アメリカ核禁止の追加議定書等、逐次こっちの方向に進んでいることは喜ばしいことでありまして、私は当面、関係の深いASEANの国々にこういう相談を逐次しむけているところでございます。
  300. 山花貞夫

    ○山花委員 実は非核地帯構想につきましては、われわれは野党の場合でありますけれども、具体的な政策としてこの問題を掲げながら、一例を挙げますと、昨年十一月ですが、バンクーバーにおきまして社会主義インターの大会が開かれました。政権党もここに参加したわけですが、その中でわれわれとしてはオーストラリア労働党、ニュージーランド労働党と、インターにおける全体の基調というものに勇気づけられながら三党間で核兵器の開発、拡散、所有及び使用に反対するため共同して努力していこう、こういう共同声明を作成いたしました。具体的な地域を設定して具体的な目標も明らかにし、ということで、これは野党の立場での一つの努力の方向ということでありますけれども、いま大臣は、現実に非核地帯構想を進めるための条件を四点ほどお話しになりましたけれども、これは従来から大変、まさにむずかしい条件としてなかなか解決できないところであると思います。  しかし、政権をお持ちの政府の努力の方向といたしましては、そうした四つの問題点、指摘されましたような問題があるとしても、これは問題のとらえ方と立場の違いがありましても、今日の核の問題ということを考えた場合には、政権党も野党もそれぞれの立場で、それぞれの方向で具体的な前進をかち取っていかなければならないのではなかろうか。非核地帯構想についての国連軍縮総会におけるいわば総括的な大臣の意見表明、そのことにつきまして、なお私どもとしては、立場は違ってもひとつ努力をしていただきたいということにつきまして、問題点として強調しておきたいと思います。  同時に、時間の関係がありますので、もう一つだけ伺っておきたいと思うのですけれども、この総会におきまして、いわゆる兵器の移動の問題について、今日、第三世界に対する武器輸出問題など大変困難な、不安な要因が、しかもそれが、一年一年と条件が悪くなっているのではないかという気すらするわけであります。この問題につきましても、日本の立場から兵器輸出について自粛をしているという現状に触れまして、平和のための一つの方向が打ち出されているわけであります。  実は、先ほど基本的な政策については変わっていないという国連軍縮総会以来のお考えについて伺ったわけですが、武器輸出問題につきましては、特に昨年、一昨年、不況の中で財界その他各方面から、こんなに不況なんだからひとつ武器輸出の従来のいわゆる三原則を緩和してもらわないと日本経済を立て直すことがむずかしいのではないか、こういう意見もかなり出たわけであります。かつてのいわゆる武器輸出についての政府の政策につきましても変更されることがなく、今日なお堅持しているところである、こういうように伺ってよろしいでしょうか。この点についてお話を伺いたいと思います。
  301. 園田直

    ○園田国務大臣 私自身も、財界の一部の方から兵器生産についての御意見を承ったことがあります。そのたびごとに反対をしてまいりました。この点はいささかも変わっておりません。  もう一つ一般兵器の移動の禁止で、抽象的に考えると、核兵器の方がむずかしくて一般兵器の方は簡単なような気がいたしますが、実際問題としては、一般兵器の移動ということをとめることが非常にむずかしい。というのは、それぞれの国が脅威にさらされた場合には、兵器の援助その他を望むわけでありまして、この点が非常にむずかしいのではないか、こう考えております。
  302. 山花貞夫

    ○山花委員 兵器の輸出問題につきましては、国会における議論でも、古くは昭和四十二年ごろのいわゆる三原則についての佐藤総理の答弁から始まりまして、最終的な政府の統一見解といたしましては、五十一年二月二十七日の三木総理の発言が、これが大変整理された形で統一見解として出されているわけでありますけれども、この考え方を今日維持されていると、確認ですけれども、そのように理解してよろしいでしょうか。
  303. 園田直

    ○園田国務大臣 そのとおりでございます。ただいま御審議を願っておりまする為替の改正においても、その方針は堅持されているはずであります。
  304. 山花貞夫

    ○山花委員 実はそうした経過の中で昨年一つ事件が起こりました。かのフィリピンに対する手投げ弾の輸出事件であります。  通産省にお伺いしたいと思うのですけれども、この事件について告発をした経過まで、事件の概要はどうであったか、通産省としてどのように事件を把握したか、この点について御説明をいただきたいと思います。     〔村田委員長代理退席、委員長着席〕
  305. 松田岩夫

    ○松田説明員 フィリピン向け手りゅう弾用部品輸出問題につきましては、通産省におきまして鋭意調査を進めました結果、フジ・インダストリアル株式会社が昭和五十一年春ごろ、コンポーネントパーツ、ヒューズなる貨物をフィリピン国に向けて輸出したことを推定させる事実が判明しました。さらに、そのコンポーネントパーツ、ヒューズなる貨物は、外国為替及び外国貿易管理法第四十八条に基づきまして、通産大臣の承認を必要とする手りゅう弾用信管の部分品であることを思量させる事実が明らかとなりました。  他方、このフジ・インダストリアル株式会社が当該貨物の輸出に際しまして通商産業大臣の承認を得た事実はなく、したがって、フジ・インダストリアル株式会社は、外国為替及び外国貿易管理法第四十八条の規定に基づきまする承認を要するというのに違反した疑いがあると思量いたしまして、通産省といたしましては、先ほど来外務大臣から御答弁がございましたように、武器輸出につきましては、厳然とした態度をもって臨むべきであるという判断のもとに、フジ・インダストリアル株式会社の告発に踏み切ったものでございます。  告発の内容は、ただいま申しましたところで明らかと思いますが、フジ・インダストリアル株式会社の行為は外国為替及び外国貿易管理法違反となる疑いがあるというものでございます。  なお、告発の結果、捜査当局による捜査、起訴、裁判の司法手続を経まして、昭和五十四年三月十六日東京地方裁判所において判決の宣告があり、フジ・インダストリアル株式会社に対し、罰金八百万円、社長でございました金沢和男に対し懲役一年六カ月、執行猶予三年の刑が三月三十一日確定してございます。
  306. 山花貞夫

    ○山花委員 いまの事件ですけれども、輸出をした会社の社長が、当時新聞報道などによりますと、大体こういうことは大商社はみんなやっていることである、ただ、隠し方がうまいのだ、こういうことを言ったりしたわけでありますけれども、武器輸出関係についての通産省の輸出承認との関連もあると思いますが、その実態、品物が武器であるかどうであるかということについて判断していく、承認の前提としてのそういう調査、これはどういう体制になっているんでしょうか。隠し方がうまければすいすいと通ってしまうというようなことでは、これは大変だと思うわけですけれども、この点について、通産省の今日の体制がどうなっているかをちょっと御説明いただきたいと思います。
  307. 松田岩夫

    ○松田説明員 先ほど申し上げましたように、外国為替及び外国貿易管理法を受けました輸出貿易管理令別表に、武器に当たる品目が列挙されておりますが、こういったものを輸出する場合には通産大臣の承認を要するということになっております。  実際に、私どもがいままで了知する限りでは、この手続を無視し、あるいはただいま先生お話ですと、わからないまま武器が出ていっておるのではないかというお話でございますが、私どもの知る限りでは、そういった事実は了知いたしておりません。  で、それがどのようにチェックされるのかということでございまするが、御案内のように、すべて貨物は税関を通過いたします。その段階で最終的には担保されておるというふうに考えております。
  308. 山花貞夫

    ○山花委員 きょうはこの問題について通産省の関係は、およそ以上の点で終わり、また機会を改めて若干お伺いしたい点もあるわけですけれども、法務省に、この事件の経過につきまして、最近判決があって確定したということのようでありますので、その概要についてお話をいただきたいと思います。
  309. 根來泰周

    根來説明員 ただいま通産省の方から答弁がありましたように、通産省の方から警視庁の防犯部生活課に告発がありまして、警視庁の方から身柄つきでこの事件が東京地方検察庁に送致になりまして、五十三年九月二十一日に送致を受けて、五十三年十月十一日に東京地裁に公訴を提起したという経緯になっております。  その結果、判決は先ほど通産省の方から答弁がありましたように、五十四年三月十六日に会社に対して罰金八百万円、代表取締役に対して懲役一年六月、三年間執行猶予の判決がありまして、三月三十一日に確定しております。
  310. 山花貞夫

    ○山花委員 内容といたしましては、外国為替及び外国貿易管理法七十三条ほか輸出貿易管理令一条一項一号以下などに該当したということだと思いますけれども、一体どのぐらいの品物についてこれが裁判の対象となっていたのか、内訳と数量についてつけ加えて御説明をいただきたいと思います。
  311. 根來泰周

    根來説明員 判決書によりますと、昭和五十年十一月十三日ごろにフィリピン共和国の方と契約いたしまして、その契約の履行として昭和五十一年三月二十二日ごろから同年六月三日ごろまでの間、三回にわたって横浜港ほか一カ所からマニラ市ほか一カ所に向けて手りゅう弾信管の部品、合計八十九万七千二百九十五個を輸出した。その際に、通商産業大臣の承認を受けなかったというのが判決の事実でございます。
  312. 山花貞夫

    ○山花委員 私ども資料をいただいているものによりますと、トータルは八十九万七千二百九十五個ということでありますけれども、一番最初の輸出ですが、レバー五万八千八百個、安全リングが四万八千百十九個、安全ピン十万三千個、撃針つき撃鉄七万七千個、ヒンジピン六万九千五百個、撃鉄バネ十万個、計四十五万六千四百十九個。第二回目、韓国に輸出したものが雷管押さえ一万一千個、信管本体一万一千個、起爆筒一万一千個、合計三万三千個。第三回の輸出によりますと、これはマニラあてでありますけれども、レバーが四万二千七百二十六個、安全リング六万七百個、安全ピン九万九千個、撃針つき撃鉄二万五千個、ヒンジピン三万五千百個、信管本体九万五十個、雷管押さえ五万五千三百個、この合計が四十万七千八百七十六個、こういう内容のようでありますけれども、こうした部品につきましては、確かに手りゅう弾の部品ということかもしれませんが、手りゅう弾の部品本体、特に信管の本体等もあるわけでありますから、これはいわゆる武器そのものに当たるのではなかろうか、こういうように考えているわけであります。  当時、捜査当局におきましても単なる為替管理令などの関係だけではなく、武器等製造法違反になるのではなかろうか、こういうことで捜査が進んでいるということが報道されていたわけですが、この点について一点だけ法制局にお伺いしたいと思うのですが、武器の概念あるいは定義ということになりますが、武器等製造法における武器の概念、武器等製造法施行令における武器の概念、この点についてどのようにお考えか、見解をお伺いしておきたいと思います。
  313. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  武器等製造法におきましては、第二条におきまして武器の定義を定めております。これによりますと、武器等製造法におきます武器は、「銃砲」でありますとか「銃砲弾」あるいは「爆発物」というものがもちろん載っているわけでございますが、それ以外に「もっぱら」これらの「物に使用される部品であって、政令で定めるもの」というのが同じように掲げられているわけでございます。  そこで、この二条の一項を受けまして武器等製造法の施行令におきまして、その三条におきまして「爆発物の部品であって、左に掲げるもの」という規定がございます。この中に「火薬類が入っていない信管」というものはございますが、大体武器等製造法におきます立て方は、こういうことになっております。
  314. 山花貞夫

    ○山花委員 法と施行令について御説明いただきましたけれども、武器等製造法施行規則にもこの点についてあるのではないかと思いますが、つけ加えて法制局の見解をお伺いできればと思います。
  315. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 ただいま武器等製造法の施行規則についてお尋ねがございましたが、武器等製造法の施行規則におきましては、第二条におきまして武器の種類というのを掲げてございます。ただ、これは武器の種類ということで掲げてございまして、その中に、たとえば手りゅう弾、爆発物の部品というふうなものはございますが、法律及び政令の定義をさらに詳しくしたというふうなものではございません。むしろ武器の種類を類別した、こういうふうな形になっております。
  316. 山花貞夫

    ○山花委員 実は私は、今度の輸出の品物について武器そのものに当たるのではなかろうか、特に施行令における爆発物の部品であって、本体まるごとではなくて部品でもよろしい、信管、火薬類が入っていないものについても武器である、こういうように定義していることになるのではなかろうか、こう思ってお伺いしたわけですが、そことの関連で施行規則について伺いますと、これは武器の種類である、こういう御説明でありました。  しかし、それは法と施行令を受けた施行規則ということではないでしょうか。先ほど御説明いただきました施行令第三条の第三号イというところ、これについてだけの分類ということではもちろんないと思いますけれども、全体としては法と施行令、これを受けての規則であって、武器の種類をここに種類別に明細をもって明らかにしている、武器とは全く別のものである、法と施行令とは別のものであるということではないと思いますけれども、この点、いかがでしょうか。
  317. 工藤敦夫

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま施行規則法律、政令を受けたものであるという御指摘がございましたが、施行規則はもちろん法律、政令の委任を受けましてここにつくられているわけでございます。先ほど申し上げましたように、施行規則の第二条におきます「武器等の種類」、これはいわば武器等製造法におきまして三条以下で「製造の許可」という条項がございますが、この製造の許可をおろします際のいわば区分と申しますか、こういう区分で許可を受けていく、こういうことでございまして、法律、政令と省令の関係については、まさしく委任を受けたものということが申し上げられますが、先ほどのお答えの繰り返しになりますが、「武器等の種類」のいわば区分を定めたもの、こういうことで考えております。
  318. 山花貞夫

    ○山花委員 一応法制局の御見解を承ったわけですが、その説明によりましても、実は施行令による部品でも武器である、こういう概念に当たるのではなかろうかとわれわれは考えるわけであります。そういたしますと、実はこれの取り扱いにつきまして武器そのものではなかった、こういうことで通産省の取り扱いがなされたということに対してどうしてもわれわれ若干の疑問も出るわけですが、実はこのケースにつきましては、過日判決の宣告があり、確定したということではあるようですが、なお、私どもも調査不十分の点がありますので、通産省に対してこの点につきましては、改めて次の機会に私どもの主張についてお伺いさせていただきたい。時間の関係もありますので、以上で通産省の関係は終わりまして、次の質問に移りたいと思います。  残る時間の中で一つだけお伺いしておきたいと思うのですけれども、いわゆる多摩弾薬庫の問題について、これは関東周辺の米軍基地につきましては、いわゆる関東計画に基づきまして横田集中ということで手続が進んでいます。関東計画は一たん終了して、その跡地の問題が大蔵省特財の三分割案を中心として、これに反対するわれわれの立場との議論と、現場段階における若干の問題が依然として残っているわけですが、いま申し上げました多摩の弾薬庫につきましては、関東計画から外されまして、実は地元の皆さんに言わせますと、全く返還の見込みが明らかでない、不満であるという声が大変強いわけであります。多摩の弾薬庫、現状どうなっているのかということを、この施設の大きさ、設備などを含めて若干施設庁の方から御説明をいただきたいと思います。
  319. 箭内慶次郎

    ○箭内説明員 本施設は、昭和十四年に旧陸軍の多摩火工製造所として設置されたものでございまして、昭和二十一年に米軍により接収され、弾薬庫として使用されたものであります。その後昭和四十二年に弾薬の貯蔵が中止されまして、昭和四十四年昭島住宅地区の返還に関連しまして、同地区に所在していたゴルフ場を代替として本地区へ移設したものであります。現在は、多摩サービス補助施設という名称になっております。本施設は、米軍人軍属等の良好な勤務状態をつくり出すために福利厚生施設として使用されております。  その規模でございますが、総面積が約二百万平方メートルでございまして、その約半分の百万平方メートルがゴルフ場地区であります。残りの約九十八万平方メートルが野外練成地区というふうになって使用されております。
  320. 山花貞夫

    ○山花委員 いま約二百万平米の多摩弾薬庫跡地につきまして、半分はゴルフ場、半分は野外練成地区であると御説明いただいたわけですが、使用の実態でありますけれども、実は大変広大な東京周辺にある土地ではあるわけですが、ほとんど使われていないのではないか。ゴルフ場につきましても米軍に対するサービス、福祉施設ということでありますけれども日本人もこれを使っている様子も見られるし、しかも、広々としたところがどうも使用の形態が少ない。あるいは野外練成場というように伺いましたけれども、一体これはどういうふうに使っているのでしょうか。これもほとんど使ってないのじゃなかろうか。いま野鳥の楽園になっているというのがわれわれの見たところであるわけですけれども、この広大な土地をほとんど使っていないのであるならば、地元に返還してもらってよろしいのではなかろうか。  こんな広大な土地を米軍のこうしたゴルフ場などに提供しているという例は、ほかには、日本じゅうどこにも全くないのではないでしょうか。なぜ多摩だけが、そういう意味では、この地元だけが割りを食っているのか、こういう気がしてならないわけですけれども、いまたとえばゴルフ場あるいは野外練成場として現に使っておられるということであるとするならば、その使用の頻度と申しましょうか、一体どのくらい使われているのか、そんな必要が今日一体米軍のためにあるのかどうか、こういう観点から若干の御説明をさらにつけ加えてお願いしたいと思います。
  321. 箭内慶次郎

    ○箭内説明員 ただいま申し上げました、まずゴルフ場地区でございますが、この使用状況は、関東地区に所在します空軍関係中心としまして、米軍が相当頻繁に使っております。昭和五十三年の実績で申しますと、一日当たり約百八十名前後が使っておるというふうに承知しております。  それから残りのいわゆる野外練成地区でございますが、ここはキャンプとかあるいは集会というふうな目的で十分に利用されておるという状況でございまして、五十三年における利用人員は約二万六千名というふうに承知しております。
  322. 山花貞夫

    ○山花委員 二万六千名という御説明でしたけれども、もしこれが解放されたとすれば、これに十倍する人々がこの地域を利用できるのではなかろうか。十分使っておられるというお話ではありましたけれども、なお広大な土地が十分とは言えない使用のされ方をしているのではなかろうか、こういう気がしてならないわけであります。この多摩弾薬庫につきましては、サービス施設として使用されている現状の中で、この返還の見通しというものは一体どうなっているのでしょうか。この問題について、これは施設庁の知っている範囲でまずお答えいただきまして、あと外務省関係でこの点についての交渉の経過がありましたならば、どなたか担当の方に御説明をいただきたいと思いますけれども、施設庁の方からその点についてどう把握しておられるか、お話をいただきたいと思います。
  323. 箭内慶次郎

    ○箭内説明員 多摩サービス補助施設につきましては、従来から地元の皆様からたび重なる返還方の要望がございましたので、防衛施設庁といたしましては、施設特別委員会におきまして、非公式に米軍の本施設の返還についての考え方を打診したことがございます。米軍といたしましては、本施設の有効利用を今後も継続していきたいという趣旨でございまして、返還に対する考え方はきわめて否定的でございます。したがいまして、現在のところ、本施設が返還されるという見通しはきわめて困難ではないかというふうに考えております。
  324. 山花貞夫

    ○山花委員 いま非公式に打診をされたというお話がありましたけれども、それは一体いつごろの話でしょうか。この時期によりましては、大分事情も変わってきているのではなかろうかというように思うわけですけれども、どうでしょうか。
  325. 箭内慶次郎

    ○箭内説明員 案は米軍との話の模様でございますが、この地元の要望につきましては、大分前からございましたので、防衛施設庁といたしましても大分前から米軍の方と交渉しているわけでございます。昭和五十一年の十二月、それから五十四年の二月、非公式に打診をしたわけでございますが、その後も地元からまた要望がございましたので、ことしの五月それぞれ施設委員会の場を通じまして米側に非公式に意向を打診しているところでございます。
  326. 山花貞夫

    ○山花委員 ことしの五月ということのようですけれども、もし五月のときに米側の対応の仕方、先ほどのお答えはなかなか困難である、こういうことだったのですけれども、なおそうした地元の要望あるいは必要性についての強調ということがあれば交渉をしていただけるかどうか。これは五月にやったということであるとするならば、時期その他の適切な選定ということも当然必要だと思いますけれども、そういう問題について御努力いただけるかどうか、この点をひとつお伺いしておきたいと思います。  そうした適切な時期、それなりの必要性に応じて、ぜひわれわれとしては交渉も継続していただきたい、全く交渉放棄ということではなく継続していただきたい、こういう希望を持っているわけであります。そういう立場から、以上の点についてお伺いしておきたいと思います。
  327. 箭内慶次郎

    ○箭内説明員 米軍に対する交渉といいますか意向打診といいますか、これを引き続き継続してくれというお話でございますが、私どもこれまで何回かやっておるわけでございますが、見通しとしては非常にむずかしいという事情でございますので、その点は御理解いただきたいと思うわけでございますが、ただいまの御趣旨は十分承っておきます。
  328. 山花貞夫

    ○山花委員 最後に一つだけお伺いしておきたいと思うのですけれども、先ほどのお話で、地元の要望もどれあり、こういうようにこれまでの地元の要望について把握していただいているということは伺いましたけれども、その他、国の跡地利用についての何らかの要望、たとえば防衛庁が使いたいという話もあるかもしれませんし、その他の国の機関が使いたいということもあるかもしれませんし、そういうことについて何か施設庁の方で把握されているということがありますでしょうか。あるかないか、その点についてお伺いしておきたいと思います。
  329. 箭内慶次郎

    ○箭内説明員 多摩サービス補助施設の返還につきましては、先ほどから御説明しておるとおりでございまして、したがいまして返還後にどのようになるかということにつきましては、私どもとしてはまだ承知しておりません。
  330. 山花貞夫

    ○山花委員 返還後にといって返還が実現できれば一番望ましいわけでありますけれども、なかなかむずかしいというお話についても伺いました。時間の関係もありますので私は以上で終わりたいと思いますけれども、なお現地につきまして、私どもも現状を外務省を通じて、中も拝見できるそうでありますので、よく把握した上で、改めてこの問題についていろいろお願いをしてまいりたいというように考えます。  以上で私の質問を終わらせていただきます。
  331. 藏内修治

  332. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 遅くまでおつき合いをいただいていますので三十分で終わりたいと思いますが、第一点は東京サミット、第二点は金大中事件、このことにしぼって質問をいたしたいと思います。  東京サミットの一番のポイントは何かということを、外務大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  333. 園田直

    ○園田国務大臣 東京サミットもいよいよ迫ったわけでありまして、準備委員会も一回、二回と終了をいたしております。私が今般、ヨーロッパを訪問しましたのもこの下準備でございます。御承知のごとく、東京サミットは世界経済不況打開のために先進国がどのように協力をするかということでやってきているわけであります。したがいまして、まだ議題は決定はいたしませんが、今回のサミットというのは先進国六カ国、ECの委員長を入れました七人の代表が、ボンのサミットに引き続いて、経済問題、通貨問題、こういう問題ありましょうけれども、特に重要視されてきておるのはエネルギー問題であります。  それからもう一つは、われわれが特に努力をしなければならぬのは、初めてアジアの地域、東京でこういう会が開かれるわけでありますし、UNCTADの総会その他もありますし、南北問題だけは何とかしてこれは大きく取り上げてもらいたい、これについては若干の食い違いもありますけれども日本が特に力を注いでこれを押し出さなければならぬと考えております。
  334. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 重点であるエネルギー危機に対する合意というものが、今度のサミットの中で行われなければならないと思いますが、これに対する外務大臣の見解、所信を伺いたいと思います。
  335. 園田直

    ○園田国務大臣 その御発言のとおりであると考えます。したがいまして、エネルギー問題をどのように取り上げるかということは今後準備委員会で詰めるわけでありますけれども、私が大体判断をしてまいりますると、第一はエネルギー問題に対する参加者の認識の一致、いわゆる中東問題の情勢、それからアメリカのスリーマイル原発事故、これによって安全性に疑念を持って世界各国でこの開発が停滞をしている、こういうこと等を考えると、一九八〇年後半にエネルギー危機が伝えられておったのが二、三年早まるのではなかろうかという認識が大体の認識になると存じます。  さて、これに対する対応策というものは、一つはエネルギーの節約、それから二つ目には代替エネルギー、特に石炭液化その他の利用、三番目が安全性を確認しつつ原子力開発をどのように進めていくかという三つの問題にしぼられるのではなかろうかと存じますが、それ以上具体的な名案があるかどうか。かつまた、このエネルギー問題は、私のIEA総会に出た所感を申し上げますると、消費国だけが団結をして、そして産油国に何か団体交渉みたいなことで果たしてうまくいくのだろうか。これは産油国と消費国の対決という姿ではなくて、両方が一緒になって、そしてこれに南北問題も絡めて、開発途上国の資源開発等も入れて、みんなが一緒になって世界経済をどうやっていくかという、全部が参加する場所というものを何とかして考えなければならぬのじゃないかと私個人は考えている次第でございます。
  336. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 IEAの総会で述べられた産油国と消費国との協調をという立場というものは私は非常に重要な立場だと思います。ただ、アメリカのカーター外交がそれといささか違った傾向を示しているというふうにも承っておるわけでありますが、その点についての調整への自信といいましょうか確信といいましょうか、IEAなどの機会でも恐らく調整をなさったと思いますが、それをもう少しお聞かせをいただきたいと思います。
  337. 園田直

    ○園田国務大臣 ちょっといま聞き逃しましたが、最後の言葉を恐れ入りますがもう一度。
  338. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 このエネルギー危機に対応する問題についてアメリカの立場と若干食い違いが出てくるだろうと思うのです。それらについて外務大臣が産油国と消費国の協調をIEAで演説をされましたが、それらについてサミットがどのようなまとまりをつくることができるのか、その確信と見通しを承っておきたいと思います。
  339. 園田直

    ○園田国務大臣 いまこの見通しについて確信を持って申し上げる段階ではございません。ただ、私がIEA総会に出て、一つ懸念を持ったことがございます。と申しますことは、IEAでは九十日の備蓄をやるということになっておるわけでありますが、その備蓄をやるために各国が買いあさりをやると、逆に価格の引き上げを起こすことになる。それから石油の量については、消費国の節約だけではなくて、産油国と一緒になって、産油国の側に立てば世界で大事な石油エネルギーをどう長く産油国が持ち続けるか、消費国はこれを節約していくか、と同時に、産油国には産油国の悩みがあるはずでありますから、石油が限界に来た場合、その先の産油国の国づくりはどうやるのか、こういうことも一緒に相談をしなければならぬのじゃないか。  もう一つは価格の問題で、現職の大臣でありますから、なかなか言いにくいところでありますが、価格の問題で一番大きな力があり、動きをするのはメジャーだと思うのでありますが、総会においても雑談においてもこの点が全然出されなかったということは非常に私の懸念であり、しかも、一国を疑うわけではありませんけれども、自分の国がまずスポット買いをどんどんしてでも安心だというところへもってきて、その先おまえたちは、とこうやられる心配があってはならぬと石油のない国の外務大臣としては、これは私の心配でございまして、そうだというわけではございません。
  340. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 率直な御答弁をいただいたわけですが、いまのスポットの状況、価格の問題など全く憂慮すべき状態だろうと思うのです。ですから、産油国と消費国が一緒になっていろいろな議論をして、それぞれの立場を主張し合いながら、完全なコンセンサスを得られるかどうかは別として、そういうテーブルをつくるという外務大臣の御決意というものをぜひ推進を願いたい、こんなふうに私は思うわけでございます。  それからもう一つは南北問題でございますが、マニラで開催中の第五回UNCTAD総会の、いわばいまから予想される統一要求が恐らくはサミットに対してぶつけられている、こういうふうに思うわけでございますが、いまの南北問題を重視したいという外務大臣の御決意の中で、それを具体的にどのように、アジアで初めて開かれるサミットの機会を得て、ホストである日本の政府がどのような立場で対応していかれるのか、この点をぜひ決意を承っておきたいと思います。
  341. 園田直

    ○園田国務大臣 南北問題がきわめて重要であることはみんな演説はするわけでありますが、その具体的な態度になりますと、米国、西独、差がありまして、非常に慎重なところがあるような気がいたします。幸いにUNCTAD総会においては、日本とASEANが協力をしてそしてボンのサミットで獲得をしたコモンファンド、これについては一応の合意を見たわけでありますが、第二の窓の拠出金で非常に心配をいたしておったわけであります。幸い一昨夜わが日本の調停がまとまりまして、途上国も先進国も意見が合意をして早急にこれをやるということに決まったから、この点は安心でありますが、問題は、南北問題は助ける者と助けられる者という過去の段階は過ぎ去ったと存じます。  具体的に言うと、開発途上国というものは、アルーシャ宣言によって国際経済の新秩序をつくろうというのがこの意見であります。ただし、これを実現するについては三つくらい分かれておるわけでありまして、一つずつかち取っていこうというASEANのグループと、急進的なアフリカのグループと、さらに東欧諸国と三つのグループに分かれているところがなかなかやりにくいところであります。私は、アルーシャ宣言、国際経済の新秩序、これに対しては十分理解を示すものであって、そこで開発途上国の側に立ってこれを一挙にやるということは絶対にできませんので、一つずつでも現実に獲得をして、あの人たちが考える方向に持っていきたい。  また、先進国から言えば、世界経済の不況というものは、先進国が引っ張っていこうという機関車説では解決はできない段階になってきた。これはどうしても石油と同じように南北が一緒になって、そしてお互いに世界経済の不況打開のために先進国はどういう役割りをやるか、開発途上国はどういう役割りをやるか、その役割りをやる開発途上国にはわれわれはどのように協力をするか、こういう考え方に変わらなければならぬと思い、こういう点を踏まえつつ、南北問題はわが日本がイニシアチブをとらなければなかなかうまくまいらぬと存じますので、そういう方向で努力をする準備をいたしております。
  342. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 サミットのことを先進資本主義国のだんな衆の集まりみたいな考え方も現実にあるわけであります。私どもも、その面もなきにしもあらずだと言わざるを得ません。そういう点では、ぜひひとつ南北問題、発展途上国問題などについて文字どおり日本がその仲介的なというか積極的な役割りを果たしていただきたいものだ、こんなふうに要請をしておきたいと思います。  それから、各国分担方式をやめることや、あるいは八〇年代を展望した中長期的な問題に取り組むというような準備の段階における話し合いというものは、日本提案しているのだろうと思いますが、これは国際的な、つまりサミット参加国の了解はおおむねついているというふうに理解してよろしゅうございますか。
  343. 園田直

    ○園田国務大臣 大体私が下準備をして回りまして各国共通の意見は、やはり目の前のことだけではなくて、中期、長期の展望に立ってやらなければならぬということはみんなの意見のようであります。  さて、その中期、長期の展望でありますけれども、これを細々と具体的に決められるものかどうか。そうすると、一つの基本的な方針を確立をして、そして世界経済の変化に応じて逐次これを修正をしていくという準備が要るのではなかろうか。これは特に英国のサッチャー総理の意見は非常に強うございます。私もこのサッチャー首相の意見にはやや傾いている方でございまして、サミットが終わった後も何か続けて真剣に努力をする方法がなければならぬのじゃないか。  もう一つは、このサミットが、先生御承知のとおりに、最初は反共というか反ソというか、そういう印象を与えてはならぬという特にヨーロッパグループの意見によって、経済問題に限る、こういうことになってきておりますけれども、たとえばエネルギー問題をやるにしましても、中東問題の討議をしないでエネルギー問題が解決できるのか。こうなってくると、このサミットが政治問題を重点にするということはあり得ないし、あってはならぬと思いますけれども経済問題解決のためにこれが政治問題の討議にも移るという可能性及び意見は、ほとんど各国共通した意見でございます。
  344. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま大臣おっしゃったように、一種の反共同盟的なものとして機能することについては、私どももいささか危惧を持たざるを得ません。そういう点でも、このサミット自身が持っている最初からの印象というものを、日本において世界の平和を確立していくための機会としてぜひひとつ生かしていただきたいものだ。私がそういうことを言うのは、ちょっと激励になってしまうのかもしれませんけれども、率直に私は申し上げたいと思うのです。  それから、これで大体一巡ですね。またこれからやるのですか。それは一体どういうことになるのですか。
  345. 園田直

    ○園田国務大臣 この前、ボンのサミットの終わったときに、次の開催地は日本に決めよう、そして共同宣言に書こう、こう言ったらフランスの大統領が、みんなの意見は、次は東京だという意見は一致をしている、しかし、ここで共同宣言で決めて書くことは形式化するおそれがある、反対だ、しかし東京でやるということはみんな一致した意見だ、こう言ったらキャラバン総理が、わが英国は制度化することは賛成でありますなどというような一場面もありまして、東京は無事でありましたが、さて東京のサミットが終わった後どこでやるか、どういうふうにやるかということについては若干議論があるのではなかろうかと、これもよくおわかりでありましょうから、それ以上は申し上げることは勘弁してください。
  346. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ちょっと金大中の問題に入るわけですが、主権侵害というのは国際社会において最も大きな犯罪であります。金大中事件をめぐる疑惑は、まさにこの重大犯罪にかかわっているわけでありまして、国民がこの事件の真相をKCIAの犯罪であると判断をしているのは、もはや常識であります。  外務大臣、これはもう率直にお伺いしますが、この問題をそのままにしておいて国民の納得が得られると思うかどうか、あるいは日本外交の国際的な信頼というものをかち取れるかどうか。何とかしなければいかぬと思うのです、このままでは。それについてこの際率直な、私は細かいことは言いません、率直な見解を承っておきたいと思います。
  347. 園田直

    ○園田国務大臣 率直に言えとおっしゃいますから、私も率直に、後でおしかりを受けるかもわかりませんが、申し上げるつもりであります。  事の経過は、もう御承知でありますから申し上げませんが、すでに金東雲氏の指紋、これを日本の警察は検出をし、この嫌疑濃厚であるという割り出しまでしたわけであります。そういう段階で、大局的見地からということで政治決着をつけたわけであります。したがいまして、この政治決着を見直すということは、これはその政治決着のときの前提条件、四つありますが、そのうちの一つ、捜査はこのまま続ける、そして公権勾留の裏づけとなる新しい証拠が出てきたら見直すこともあり得る、こういうことになっておるわけでありますが、いまの伝聞証拠といいますか、あの公電のみでは、なかなかそこまでまいらぬ、しかしおっしゃるとおりに国民の納得、それから正直に言って、こういう問題で、今度の事件が公電の問題が終わっても、また次に何が出てくるかわからぬという不安を私個人は持っているわけでありまして、何とかいい知恵はないものかというのが私の偽らざる心境でございます。
  348. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私は、公電が公表された背景についていまここで改めて問おうとは思いませんが、外務省には遺憾である、あるいは手違いであるというふうなことを言ってきたそうでありますが、必ずしもどうもそうでない経過がある。共同通信、読売新聞の発表の手順などを見てみますと、政府の立場の照会があった後また発表しているわけでありますから、必ずしもそうは思わないのですが、それはそれとして韓国側が否定していることを理由として事態をあいまいにするということだけは、いかに言ってもおかしな話であろう。言ってしまえば、犯罪を犯した人間が自白をしない限り、幾ら証拠がたくさんあってもそれは犯罪にならないみたいな議論になってしまうわけでありままして、これはちょっとどう考えたって国民の常識に合わない、それからこういう犯罪に対する扱いにそぐわない、こんなふうに思うのです。カーター大統領も日本にお見えになるわけですが、やはりこれは避けて通れませんね。その点いかがですか。  それから同時に、外務大臣はアメリカの国務長官と話し合う用意があるかどうか、この点をしかと御答弁願いたいと思うのです。向こうから出てきた資料でございます。向こうの責任ある立場から遺憾の意の表明があったとすれば、そのことを避けて通るわけにはいかない思うのです。
  349. 園田直

    ○園田国務大臣 米国からは早速電報、文書をもって謝罪をしてきましたし、直接にもまた、米国の代表する人が正式に事務上のミスであって迷惑をかけたという謝罪がありまして、私は、これに対して、いやそれは気にしていない、ミスはどこでもあるものである、また隠しておることはいつかは出てくるものだ、こういう返事をしておきました。
  350. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣、ミスはどこにもあるというのが問題なんですよ。つまりミスだ、ミスで公表した、そのことをけしからぬと言う以前に、それが持っている背景について、一体アメリカはどういう判断なんだということをやはり聞かなければ、遺憾でございますと言いましたから結構でございますというわけにはいかぬですよ、大臣それは。ですから、私はやはり人権外交を主張なさっていらっしゃるカーター大統領と大平総理の会談の中でどういう扱いをなさるかどうかは別としても、大臣がアメリカの国務長官、国務省の文書でございますから、どうなんだということをお尋ねになる、その話題になさるということだけは、私は要求したいと思うのです。それについての御答弁を煩わしたいと思います。
  351. 園田直

    ○園田国務大臣 先生のおっしゃることは、私にはわかる気がいたしますけれども、現職の大臣であり、マスコミの方がメモを持って目を光らせているところでありますから、なかなか返答はむずかしいわけでありますが、先生のおっしゃることはよくわかり、よく拝聴いたしました。
  352. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ぜひそうしてもらいたいものだと思うのです。それからきのう衆議院の外務委員会で金大中事件について、日本の照会に対する韓国政府の回答が来ていたわけですが、アジア局長から報告されたそうでございますけれども、これで日本政府は満足なさいますか、端的にお答えをいただきたいと思うのです。
  353. 園田直

    ○園田国務大臣 満足しておりませんから、依然として新しい資料あるいは照会、真相究明のための努力は続けるつもりでございます。
  354. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 警察庁にお越し願っておりますので伺いたいと思うのですが、金東雲が犯人の一人であると断定した捜査当局は、このスナイダー報告をどうお考えになっていらっしゃいますか。
  355. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 警察といたしましては、今回の米国務省文書につきまして、これが捜査の進展に役立つ新たな手がかりが得られるものかどうかということで非常に重い関心を持ちまして、逐次外務省から御提供願っております資料に目をさらしておるところでございます。また、現地捜査本部にももちろん回付いたしまして、現場においても検討を行っておる。  しかし、現在御承知のごとく、外務省におかれましてこれの全体的な検討と事実関係の調査を行っておられるという段階でございますので、その結果を見ながら、捜査上の観点から検討を加えてまいるというふうに考えておるのがただいまでございますが、とりあえずいま御指摘のスナイダー公電というものを文章的に拝見した限りで申し上げますと、それは捜査の進展に役立つ新たな手がかりといったものは含まれておらないというふうに、とりあえずは考えておるわけでございます。
  356. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これまでの捜査の経過というのを、この際明らかにしていただきたいと思うのです。そして同時に、中間報告というのは、お考えになっていらっしゃるのですか、いらっしゃらないのですか。
  357. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 これまでの捜査の経過は、大分長いことになるわけでございますが、事件発生以来、警視庁に金大中氏逮捕監禁略取事件特別捜査本部というものを設置いたしまして、現在もなお約二十名の捜査体制を維持して捜査を続行しておるということでございまして、この過程におきまして、すでに御案内かとは存じますが、被疑者金東雲、当時韓国の大使館の一等書記官でございました、この人物を目撃証人あるいは指紋というもので重要容疑者ということで断定をいたしております。また、犯行に使われました車、非常にたくさんの車の中からこれまた非常なる努力を払いまして、それが当時、横浜の韓国の領事館の方に勤めておりました劉永福氏という副領事の方の所有に係るものであるということを割り出しております。  しかしながら、率直に申しまして、努力にもかかわりませず一応現場における犯人と申しますか容疑者は六人と考えられるわけでございますが、他の五名については目下継続捜査中ということ、あるいはこれが御案内のごとく、金大中氏が数日後に韓国で発見されるに至るわけでございまして、国外に移送をされたということでございますれば、ここに連行行為というものがありまして、そのルートというものを解明せねばならぬということでございまして、こういった面につきましても、鋭意捜査を続行しているということでございます。  また、中間報告ということについてのお尋ねでございますが、これにつきましては、いま現在、るる御説明申し上げましたとおり、まだ捜査を続行しておるという段階でございます。そういうことから、捜査の中途においてその捜査のプロセスを公開するということは、今後の捜査の進展に非常なる悪影響を及ぼすというおそれもございます。とは申しましても、これまでも国会におきまして、先生方の御質問のある場合には、この捜査の進展に悪影響を与えないということ、あるいはすでにもう確定して動かない事実といったもの、そういったことについては可能なる限りの御答弁を申し上げておるというのが現状でございます。御理解願います。
  358. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間がありませんから、簡単に言いますが、国務省から新聞社が提供を拒否された百一種の資料があるわけでございますが、これについて捜査当局は関心がないかどうか。今回のスナイダーあるいはハビブ報告に関係している、つまりアメリカ関係者から事情を聞くことについて何か制約があるかどうか、この際、承っておきたいと思います。
  359. 鳴海国博

    ○鳴海説明員 第一の点につきましては、外務省の方の御調査ということと絡むかと思いますが、警察、捜査当局の立場で申しますと、そこに一体どういう内容のものが含まれておるか、いろいろ想像されておる面もあるわけでございますが、もし可能であるならば、これは米政府のお考えにもよりましょうけれども、もし、わが政府の方に御提供いただける機会があれば、ぜひ私どもも見させていただきたい、かように考えておるわけでございます。  それから、アメリカ関係者についての事情聴取といったような問題でございますが、これまた、現在外務省の方でそういった問題も含めまして、せっかく御調査中というふうに承っております。私どもとしましては、その御調査の結果を踏まえまして、捜査上の必要性といった観点から、どういうことが考えられるか、どういうことが必要であるかということで早急に具体的に詰めまして、外務省とも御相談し、対処してまいりたい、かように考えております。
  360. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま捜査当局も関心があるということを示されています。見たいでしょう。そうしないと、アメリカの方は隠している文書があって、実態は実は氷山の一角だったという形ではこれは始末がつかぬと思いますので、この辺は、アメリカの資料を、できるだけ日本の捜査当局がその捜査の上で役立てることができるように便宜を図るための外交交渉をぜひ外務大臣に求めたいと思いますが、いかがでございますか。
  361. 園田直

    ○園田国務大臣 関係捜査当局とも十分相談をいたしまして、努力をいたします。
  362. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間が来ましたから、終わります。
  363. 藏内修治

    藏内委員長 これにて両法律案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  364. 藏内修治

    藏内委員長 この際、在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対し、竹中修一君から修正案が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。竹中修一君。     ―――――――――――――  在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  365. 竹中修一

    ○竹中委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案では、子女教育手当に関する改正規定、領事館の総領事館への昇格に関する改正規定及び在外公館の新設等に伴う在勤基本手当の基準額の設定に関する改正規定は、昭和五十四年四月一日から施行することといたしておるのでありますが、すでにその日が経過しておりますので、これを公布の白から施行し、子女教育手当に関する改正規定は、本年四月一日から適用することに改めるものであります。  よろしく御賛成くださるようお願い申し上げます。
  366. 藏内修治

    藏内委員長 これにて修正案についての趣旨説明は終わりました。  修正案について別に発言の申し出もありません。     ―――――――――――――
  367. 藏内修治

    藏内委員長 これより外務省設置法の一部を改正する法律案並びに在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出もありませんので、順次採決いたします。  まず、外務省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  368. 藏内修治

    藏内委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、竹中修一君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  369. 藏内修治

    藏内委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  370. 藏内修治

    藏内委員長 起立総員。よって、本案は、竹中修一君提出の修正案のごとく修正議決すべきものと決しました。  この際、外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。園田外務大臣。
  371. 園田直

    ○園田国務大臣 ただいま外務省設置法の一部を改正する法律案及び在外公館名称及び位置並びに在外公館勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、慎重に御審議の結果、可決いただきまして、まことにありがとうございました。長時間、本日も遅くまで御審議を願ったことを感激をいたしております。  なお、両法案の御審議の過程におきまして、外交活動の基盤強化につき深い御理解と配慮を示されたことに対し御礼を申し上げるとともに、私といたしましては、本委員会における審議の過程で委員各位から賜りました御意見を十分に尊重いたしまして、適切に対処してまいりたいと考えております。  まことにありがとうございました。(拍手)
  372. 藏内修治

    藏内委員長 なお、ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  373. 藏内修治

    藏内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  374. 藏内修治

    藏内委員長 次回は、来る六月五日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時六分散会      ――――◇―――――