○中川(秀)
委員 ひとつぜひとも御努力を願いたいと思うわけです。
さらに、同じことの繰り返しになるかもしれませんが、やはり予算
委員会でお尋ねをしたときに、対外広報費のことを取り上げさせていただきました。つまり、民間の対外広告費、たとえばソニー六十一億円、松下電器七十億円という一年間の国外での広告費に対して、五十四年度予算の
日本の対外広報費が二十三億二千万円であるというこの数字の比較だけでも、大変わずかのものではないか、もっと本格的に取り上げていくべきではないか、こういうことを大蔵省にもお尋ねをさせていただいたわけですが、二十億ぐらいの予算が二十三億ぐらいにふえたからといって、先ほどの官房長の御
答弁のように、どうおっしゃったか正確には覚えておりませんけれ
ども、大変大幅に伸びておると言えるものかどうか。私は、とてもそんなレベルの議論はしたくないと思います。
たとえば、先進
諸国の対外広報費を調べてみますと、
アメリカは一年間に八百十二億円使っていますね。しかも、
日本の
海外広報総予算に匹敵する十九億一千万円を
日本一国だけに投入をしていますね。これはもちろん
海外広報予算として取り上げたわけですけれ
ども、
日本の実に約四十倍。ドイツが八十八億一千万円ですから、
日本の四倍。カナダが三十億六千万円で、大体
日本の五割以上多い。フランスが
日本とほぼ同額ぐらいでしょうか。
これは、いわゆる対外広報というものの
対策を外交の片手間ぐらいに考えてきたことを示していると言えると思うのです。これではやっていけないということもまた明らかになっているのではないかと思います。とりわけ、
日本の
海外広報、いわゆる公然活動としての情報アウトプット予算、これが約二十億から二十三億、情報収集したりする、どちらかと言えば非公然と言ったらおかしいかもしれませんが、そういうことの活動に使われる報償費予算、これは四十四億一千万円。
だから、対外広報は、この報償費の予算の約四五%、そのぐらいにしか満たないという事実は、
日本外交における情報活動というのが依然として、どちらかと言えば、非公然という表現が正しくなければ、報償費とかそういうような活動に重点が置かれている。ある
意味では、私は、これは近代的な体質とはちょっと言えないような気もするのです。議論はあるかもしれませんけれ
ども、先ほどの対外比較を考えてみましても、そういうような状態というものが必ずしも望ましい姿であるとは、とても思えないわけであります。
アメリカの対日批判は、アンフェアジャパンということで、大衆レベルに根を持っていると思います。このゆがめられたイメージというものは、私は
日本に関する根本的な情報不足というのが最大の原因だと思うのです。この点ではいろいろな識者の
方々の見解も一致しておるわけで、つまり
日本経済について多少知っている
アメリカ人ならば、
日本はフェアだということをある程度理解をしてくれる。しかし何も知らない
アメリカ人には、対日批判論をあおり立てるアンフェアジャパンという論議というか議論というものが耳に入りやすいということじゃないかと思うのです。
先ほど、
アメリカの
外国人代理人法の対象になっているいろいろなロビイストあるいは団体の
お話をいたしましたが、その
一つである日米貿易協議会というものの
理事長の、よく御存じのロバート・C・エンジェルさんという方がいらっしゃいますが、この方は大変
日本のことを御心配になっていて、こういうことを書いておられますね。
保護主義者が
日本を標的とするのは、
アメリカ人が
日本経済に関して持っている情報が驚くほど少ない、これが
一つ。この根本的な情報不足がアンフェアジャパンというゆがめられたイメージを広げている。そういうことを直すためには、この根本的な情報不足を解消するほかにないので、可能な限り多くの情報を提供していくことで次第に
国民の情報量を広げていくことが重要である、こういうことをおっしゃっているわけです。
パブリックインフォメーションという言葉は適切でないかもしれないが、何よりもやはり、単なるパブリックリレーションという短期的な対症療法ではなくて、可能な限り多くのインフォメーション、情報を相手の大衆レベルに提供していくのだ、それによってその
国民全般が持っているインフォメーションプール、それ全体の層を厚く広げていく、こういうことをねらいにしなければいけない、こういうことをおっしゃっているわけですね。これは私は、大変われわれにとって有益な
指摘だ、こう思うわけであります。
いささかおしゃべりばかりになるのでありますが、西ドイツの例を
一つ参考にさせていただきたいと思うのですけれ
ども、戦後、西独に対する国際的な感情というものは大変厳しいものがあったわけであります。これはもう御承知のところでありますけれ
ども、これに対して西ドイツは、連邦政府新聞情報庁という役所の任務の
一つに対外広報を
位置づけまして、目標として、西ドイツに対する先入観を解消し、西ドイツに関する客観的で実情に近いイメージをできる限り諸
外国に植えつけること、これが目標だ。もう明らかに
一つの大きな機構の中で対外広報というものをはっきり
位置づけて、その目標も、実情に近いイメージ、客観的な情報、こういうものを相手の
国民に植えつける、これが目的なんだ。大変直截な表現ですけれ
ども、その西ドイツの連邦政府新聞情報庁では、今日おおむねこの目標の達成に成功したという自負を抱いて隠さないようであります。これが、
アメリカに次ぐ巨費を対外広報に投入してきた西ドイツの姿であるわけであります。私は、この国際世論の中で
日本のいま置かれている立場というものは、いささか大げさかもしれないけれ
ども、戦後すぐのこの西ドイツの立場に似た厳しいものがあるような気がするのです。
そこでお尋ねをしたいわけですが、対外広報をこれまでのような
位置づけで、
外務省はこれからもおやりになろうとするのか、毎年、前年比で何%増というので大幅に伸びたなどと言っておられるのか、それとも、すっかりこの御認識を改めて、西ドイツ並みの本腰を入れた取り組みをしていくことにして、予算要求等でもその際の重点
項目にしていくというようなお考えはないのか、お尋ねをしたいと思うのです。先般の予算
委員会での御
答弁では、一挙に大幅な
増額はできませんけれ
ども、前年度比で約一一・三%の伸び、大変大幅な伸びになっておりますというような御
答弁でした。そのような御認識ではいけないのではないかという、そういう観点からお尋ねをしたいと思うわけであります。