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上原委員 私は、
日本社会党を代表して、ただいま議題となりました
附属機関、
地方支分部局等に関する
規定の
整理等に関する
法律案に対して、反対の討論を行うものであります。
わが党は、従来から、
行政改革については、
関係者の意思を尊重して
行政機構を簡素化し、能率化して、国民の要請にこたえるべきであるとの立場を明らかにしてきました。
これまで自民党の歴代内閣は、
行政改革を重要な政策課題の
一つとして掲げながら、官僚等の強い抵抗等もあって、今日まで実効のある改革が行われておらない実情であります。
安定成長時代を迎え、
行政改革をめぐる情勢はまことに厳しく、今後一層徹底した改革が望まれるところであり、そのためには、中長期の見通しのもとに、
行政諸制度の抜本的な検討に基づいて改革が進められることが要請されていると言わなければなりません。
しかるに、本法案は、このような基本的な検討がなされないまま、単に、地方支分部局と
附属機関について、各
省庁ぱらぱらとなっている設置形式を統一し、法律事項となっているものを政令以下にゆだね、
政府の一方的な判断によって組織の改廃を行うことができるようにしようとするものであり、これが
行政改革を実効あるものとするための方途であるとの考えには、はなはだ疑問を感ぜざるを得ません。
言うまでもなく、
行政は国民のために存在しなければなりません。現在、
行政権は憲法により内閣に属することとされておりますが、その
行政をどのような組織機構によって行うべきかは、国民の代表である
国会の意思によって決定されることが民主主義の原則であると考えるのであります。このことについては、第一回
国会における労働省設置法及び第二回
国会における現行の国家
行政組織法の制定に際し、
国会の意思として明らかにされているところであります。
すなわち、部局等の設置を政令で行うことができることとしていた
政府原案を修正して法律によって設置すべきであるとしたのであります。その
理由としては、本
会議における
委員長報告では、「政令でやるという考えは、戦時中に勅令に委任したと同じ
考え方であり、これは新憲法の精神に違反するものである」として、「官僚的割拠主義から発生する官僚の阿房宮と言われる膨大なる機構の拡大を防止し、過去の宿弊を
国会の意思によって断固一掃せんとする意図に出たものである」と格調高く述べ、「部局の設置、所掌事務の範囲を法律事項とすることは、第一回
国会で確立した原則である」と述べているのであります。
このような経緯を省みず、
政府は、昭和四十六年から四十八年にかけて、三回にわたり部局等の設置を法律事項から政令事項に移すことを主なる
内容とする国家
行政組織法の全面的改正案を
国会に
提出したのでありますが、これは
国会の審議権を著しく制約するものである等の
理由から、一回の審議も行われないまま廃案となっているのであります。にもかかわらず、
政府は、今回また
附属機関、地方支分部局について、その設置形式を整序し、統一するとの名目のもとに、法律事項を政省令事項に移すこととして、本
法律案を提案しているのでありますが、これは、さきの国家
行政組織法全面改正案の地方版とも言うべきもので、
国会の審議権を著しく制約する意図を持つものと断ぜざるを得ません。また、国家
行政組織法制定時における
国会修正の意思に反するものであり、断じて認めることはできません。
行政機関の設置、廃止については、国民の代表である
国会の意思によって決定されるべきが民主主義の原則でなければならないと考えます。設置形式を整序するというのであれば、国民生活に密着したもの、国民の権利義務に
関係するものなどの機関は、原則として法律事項とすることの
観点から現行法制を検討し、現在、政省令事項であるものでも法律事項とするなどの
措置を講ずべきであります。
反対の第二の
理由は、
行政機構の設置を政令以下にゆだねた場合の膨張抑制の歯どめがなくなるおそれがあるということであります。
行政機構は常に自己増殖し、膨張する傾向があると言われており、そのため、
行政改革は古くて新しい問題であるとも言われているのであります。このような性格を有している機構の設置について、
政府の一方的な決定による政令で行おうとすることは、
省庁間の力
関係によって左右されるおそれが生ずるのではないかと考えます。それを防止するためにも、法律事項として
国会のコントロールが必要であります。
第三は、国民のサイドから見た場合、政令で定めることは不親切であるということであります。
国の
行政組織がどのような形で、どこに設置され、その所掌事務がどのようなものであるかを明確に理解するためには、一般国民が余り親しみのない官報で告示される政省令で決定するよりも、
国会で審議し、その
内容を明らかにして法律で定めることが、より妥当であると考えるものであります。
第四は、本案は
行政機関で働く公務員労働者に無用の不安、動揺を与えるということであります。
国家公務員法第七十八条第四号によれば、官制もしくは定員の改廃等により、廃職または過員を生じた場合は、職員の意に反して免職することができることとなっているのであります。現在、国家公務員の約九割の
方々が地方出先機関に勤務しているのでありますが、本案により、
政府の一方的な判断によって、政省令でいつでも地方出先機関等の改廃が行われ、その結果、廃職等により免職とされる場合が予想されるのであります。このような状態は、全体の奉仕者として、安んじて公務を遂行する責務を有している公務員労働者に、いたずらに不安を与えることになるのではないかと憂うるものであり、この点からも本
法律案に反対せざるを得ません。
内外の経済情勢が厳しい今日、
行政改革は単に法形式を整序するということで終わってはなりません。
政府は、国民の
行政改革を求める要請に正しくこたえ、実効のある改革を民主的に進めるよう強く求めて、私の反対の討論を終わります。(拍手)