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1979-05-24 第87回国会 衆議院 内閣委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十四日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 藏内 修治君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 竹中 修一君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 新井 彬之君 理事 吉田 之久君       逢沢 英雄君    石橋 一弥君       稲垣 実男君    宇野  亨君       越智 通雄君    鹿野 道彦君       川田 正則君    中馬 辰猪君       塚原 俊平君    福田  一君       藤尾 正行君    水平 豊彦君       上田 卓三君    岡田 春夫君       八百板 正君    山花 貞夫君       市川 雄一君    鈴切 康雄君       柴田 睦夫君    中川 秀直君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      金井 元彦君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房管理室長   小野佐千夫君         青少年対策本部         次長      松浦泰次郎君         行政管理庁長官         官房審議官   中  庄二君         行政管理庁行政         管理局長    加地 夏雄君         行政管理庁行政         監察局長    佐倉  尚君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    文田 久雄君         内閣総理大臣官         房参事官    櫻井  溥君         内閣総理大臣官         房参事官    手塚 康夫君         警察庁長官官房         企画審査官   森広 英一君         警察庁交通局交         通指導課長   矢部 昭治君         警察庁交通局運         転免許課長   森田 雄二君         宮内庁長官官房         秘書課長    長門 保明君         北海道開発庁総         務課長     大橋  斉君         防衛庁長官官房         法制調査官   中門  弘君         科学技術庁長官         官房総務課長  谷口 光夫君         科学技術庁研究         調整局生活科学         技術課長    平野 拓也君         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 野辺 忠光君         国土庁長官官房         震災対策課長  城野 好樹君         法務大臣官房参         事官      藤岡  晋君         法務大臣官房調         査官      建持 忠雄君         法務省入国管理         局総務課長   関  栄次君         外務大臣官房書         記官      石垣 泰司君         外務省国際連合         局企画調整課長 小西 芳三君         大蔵大臣官房企         画官      高木 幸雄君         造幣局東京支局         長       高瀬 昌明君         文化庁文化財保         護部記念物課長 逸見 博昌君         厚生省医務局管         理課長     古川貞二郎君         厚生省社会局老         人福祉課長   大西 孝夫君         厚生省援護局業         務第一課長   森山喜久雄君         農林水産大臣官         房文書課長   高畑 三夫君         農林水産省農蚕         園芸局繭糸課長 松岡  将君         農林水産省食品         流通局企画課長 中島 圭一君         食糧庁長官官房         総務課長    宮崎 武幸君         水産庁漁港部計         画課長     福地 辰馬君         水産庁漁港部建         設課長     木村 茂雄君         通商産業大臣官         房参事官    弘津 匡啓君         通商産業省生活         産業局繊維検査         管理官     竹内 謙二君         通商産業省生活         産業局文化用品         課長      高瀬 和夫君         運輸大臣官房審         議官      西村 康雄君         運輸省船員局労         政課長     松木 洋三君         運輸省鉄道監督         局民営鉄道部監         理課長     中村  徹君         運輸省自動車局         業務部長    角田 達郎君         郵政大臣官房審         議室長     村田 一己君         労働省職業安定         局業務指導課長 田淵 孝輔君         建設大臣官房文         書課長     松原 青美君         建設省河川局防         災課長     瀬戸  充君         自治大臣官房企         画官      吉田 弘正君         自治省財政局地         方債課長    持永 堯民君         自治大学校副校         長       苫米地行三君         消防庁防災課長 山越 芳男君         日本国有鉄道旅         客局サービス課         長       猪俣 爲久君     ————————————— 委員の異動 五月二十三日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     金丸  信君   越智 通雄君     松野 頼三君   関谷 勝嗣君     倉石 忠雄君   塚原 俊平君     河本 敏夫君   森  喜朗君     椎名悦三郎君   山花 貞夫君     武部  文君 同日  辞任         補欠選任   金丸  信君     宇野  亨君   倉石 忠雄君     関谷 勝嗣君   河本 敏夫君     塚原 俊平君   椎名悦三郎君     森  喜朗君   松野 頼三君     越智 通雄君   武部  文君     山花 貞夫君 同月二十四日  辞任         補欠選任   関谷 勝嗣君     鹿野 道彦君   福田  一君     川田 正則君   増田甲子七君     水平 豊彦君   森  喜朗君     石橋 一弥君 同日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     森  喜朗君   鹿野 道彦君     関谷 勝嗣君   川田 正則君     福田  一君   水平 豊彦君     増田甲子七君     ————————————— 五月二十三日  国家公務員法の一部を改正する法律案上原康  助君外六名提出衆法第一九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  附属機関地方支分部局等に関する規定整理  等に関する法律案内閣提出第五〇号)  許可認可等整理に関する法律案内閣提出  第五一号)      ————◇—————
  2. 藏内修治

    ○藏内委員長 これより会議を開きます。  附属機関地方支分部局等に関する規定整理等に関する法律案及び許可認可等整理に関する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上田卓三君。
  3. 上田卓三

    上田委員 各省庁方々がお見えでございますので、せっかくでございますので以下御質問申し上げたい、このように思います。  まず、通産外務環境庁の方に御質問いたしますが、いわゆる野生動植物保護に関するワシントン条約は、現在世界の五十二カ国が参加しておりまして、わが国の加盟批准も時間の問題であろう、こういうふうに思います。野生動植物保護という条約趣旨そのものには全然異論はないわけでございますが、このワシントン条約批准されますと、国内の斃獣処理場あるいは爬虫類皮革処理場などの業者は深刻な打撃を受けることは間違いなかろう、このように考えるわけであります。  これら業者が、長年歴史的な伝統産業として、いわゆる同和産業として、きわめて劣悪な経済状態に置かれてきたことを無視して、政府条約批准の動きに出てきたということについては、私は若干問題があるのではなかろうか、こういうように思うわけであります。しかしながら、おくればせながら、政府がこれらの業者の要望を入れまして、去る四月十日に東京都内爬虫類皮革処理業界見学をしていただいたことは、この問題に対する政府の前向きの姿勢ということで評価したい、こういうように思うわけであります。そこで、まず、三省の方に率直なこの見学で得た感想というものを述べていただきたい、このように思います。
  4. 小西芳三

    小西説明員 お答えいたします。  外務省からも私とそれからもう一名担当の者がお招きを受けまして、実際に、一日にわたりまして十分、しかもいろいろなところを見学させていただきまして、条約を取り進めるに当たりまして考慮に入れるべき点ということで非常に参考になったわけでございます。  外務省経験と申しますか、私が一つ感じたことを率直に申しますと、外国では、皮革産業と申しますか革を扱うという産業について、これは欧米の文化、歴史のしからしむるところでございますけれども、これがきちんと確立された産業になっておる。それと比較しまして、日本皮革産業実態というのがこういうことになっているんだということを考えさせられた次第でございます。
  5. 高瀬和夫

    高瀬(和)説明員 文化用品課長でございますが、実は当日、私はほかの皮革に関する仕事がございまして、その見学会には参加しておりませんけれども、それまで過去二年間の間に当該地域についてもたびたび訪問の機会を持っておりますので、そういう経験を通じての印象を簡単に説明させていただきたいと思います。  当該地域におきまして各鞣製事業所がきわめて零細規模の工場であるということ、それからまた、都区内にありますから環境問題が特に厳しいはずでございますが、公害対策等も十分に進め得ないような実態であるというふうに痛感しておる次第でございます。ただ、この爬虫類のなめし事業所だけではなくて、ほかの牛、馬、豚その他の動物のなめし革事業所につきましても、やはり経済的な側面における同和対策を進めるという上ではきわめて重要な意味合いを持っておりますので、むしろこれから積極的に推進すべきである、いささかも後退させるような事態があってはいけない、そういったことは極力避けるべきであるという考えを持っております。
  6. 野辺忠光

    野辺説明員 環境庁鳥獣保護課長でございます。  先般十日の日に見学をさせていただいたわけでございますが、私ども野生鳥獣保護を進めていきます場合に、やはり農林業と直接関係のある場合が非常に多うございますが、今回の事例につきましても、やはりそういった関係をしておられる業界あるいは関係者皆さん方、そういった方々実態がどうであるかということを十分踏まえながら、環境行政といったものを進めなければならぬというふうに思っておりますが、そういう意味では、大変私ども得がたい経験をこの前さしていただきまして、実態等先ほどお話がございましたように、いろいろと私どもの知り得なかったようなことが身をもって若干でも体験できたということは、大変貴重であったと思っております。
  7. 上田卓三

    上田委員 いずれにしましても、実際目で見ていただいたように、また業者の方からもいろいろお話を聞いていただいたと思いますが、非常にこの業界零細企業であるということだけでなしに、やはり環境的に見ましても非常に劣悪な条件にあるということは、これは恐らく身をもって体験されて帰ってきたんじゃなかろうか、こういうように思っておるわけであります。今日絶滅のおそれのある野生動植物をこの国際的取り決めによって保護する、そして自然を保護し、人間環境を守るというワシントン条約そのものは私も異論はないし、その趣旨には全く賛成であるわけでございますが、また、自然保護という方向は今日国際的な大きな流れになっておるわけであります。  しかし、具体的にたとえばウミガメあるいはワニ、トカゲなどの皮革を輸入し、そして加工している斃獣処理業界爬虫類皮革処理業界は、歴史的に経済的な劣位に置かれておる、まさしく同和産業そのものである、こういうふうにわれわれは理解せざるを得ない。また、現地へ行かれてそのことの実感を味わっていただいたんじゃなかろうかと、こういうふうに思うわけであります。もし、このワシントン条約無条件批准されたならば、これらの業界原料の輸入の道を完全に断たれてしまって、致命的な打撃をこうむることになるわけでございますが、その点について一体どのように考えておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  8. 高瀬和夫

    高瀬(和)説明員 いま先生指摘の点でございますが、確かに、無条件批准をするということになれば、当該地域鞣製事業者に大きな影響が及ぶという可能性も否定できませんので、今後関係省庁とも協議をいたしまして、その対応を早急に決めるべく作業を進めたい、かように思っている次第でございます。  先ほどの先生の御指摘にもありますとおり、この爬虫類のなめし事業につきましては、その原材料の一〇〇%を海外からの供給に依存しております。したがいまして、このワシントン条約につきましての国際的な批判、日本に対する非難が高まりますと、批准するとしないにかかわらず原材料が入ってこなくなる、そういう事態も考えられるわけでございますが、そうなった場合には爬虫類のなめし事業そのもの存続が危うくなる、そういう可能性もございますので、そうならないようにするためにはどうしたらいいか、一つ留保というようなかっこうでの対応が考えられるかと思います。具体的にどういう形で留保するか、なお関係省庁と煮めてまいりたい、かように考えております。
  9. 上田卓三

    上田委員 外務省の方も一緒に答えていただきたい、こういうように思うわけでありますが、いわゆる同和対策審議会答申が出されまして十四年、そうして同和対策特別措置法が制定されて十年、去年の秋の臨時国会におきまして付帯条件がつきまして、本委員会で三年の延長ということになったこともすでに御承知のことだろう、こういうように思うわけであります。そういう状況にもかかわらず、このような差別的な経済実態を放置してきたところの国の責任は重大であろう、私はこういうように思うわけであります。私たちは、この業界のいわゆる近代化あるいは整備を機会あるごとに触れてきたし、また今後もその点について追及をしてまいりたい、このように思っておるわけであります。  そこで、このワシントン条約批准に当たっては、必ずこの業界及び部落解放運動との協議、そして同意を前提にしてぜひとも進めていただきたい、このように思うわけであります。このことは、同和対策特別措置法あるいは同和対策審議会答申でも、地区住民の自発的な運動との連携を十分にしないと行政効果が上がらない、こういうことも述べられておるとおりであります。特に、商業取引全面禁止とされている付表一類品目のうち、業界に特に関心のある品目無条件批准されますと、事業存続に重大な支障の生ずるおそれがある、そういうものについては留保の権利を行使していただきたい、このように思うわけであります。無条件批准すれば、社会的な混乱を招くということも留保理由として外国に十分通用するのではないか、私はこういうように考えておるわけでございますので、通産外務省考え方をお聞かせいただきたい、このように思います。
  10. 小西芳三

    小西説明員 私どもこの条約批准準備をずっとしてまいったわけでございますけれども、その間におきまして、日本関係業界問題点、これを考慮せずに国会条約を出すというようなことを考えたことは全くございません。当初法律等準備をやっておりましたけれども、最近におきまして、関係のある業界方々爬虫類のみならず、その他の関係団体ともずっと話をしておりまして、全部の方が納得していただく形で批准をする、そういうことでなければなかなか国会の御承認を得られないのじゃないかというふうに考えております。  留保につきましては、先生が御指摘の点は、私ども十分に考慮いたしまして考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。他方、やはり条約に入るに当たりまして、先生最初指摘のようにこれは多数の国が入っております。そこで日本留保する品目につきまして、対外的にこういう理由日本留保したのだということがはっきりしておって、それがほかの国からも、そういうことであるかというので納得してもらえるというような状況もこれまた考えなければいけないというふうに思っております。いずれにしましても、そういう両方の要請を取り入れまして、とにかく全部の関係者が納得できる形でまとめ上げたいというふうに考えております。
  11. 高瀬和夫

    高瀬(和)説明員 基本的には、ただいまの企画調整課長考え方と軌を一にしております。ただ、事業所管省といたしましては、やはり同和地区事業者に大きな混乱が生ずるということは避けなければならないというふうに考えておりますので、できるだけ前広に事業者あるいは関係者と相談してまいりたいというふうに考えております。
  12. 上田卓三

    上田委員 通産省の方、この業界がいわゆる同和地区の伝統的な産業という形でお認めになっておるというように思うのですが、やはりあのような劣悪な差別的な状況に置かれておるわけでありますから、過去、通産省部落解放という一つ観点に立って、そういう悪環境にあるところの業界育成のために放置してきたということですね。さらに、今度こういう形で無条件批准されると、本当に壊滅的な状況になるということでありますから、この条約批准について十分業者意見を聞いて犠牲のないような形に持っていくということもありますけれども、もともと置かれているその業界自身が非常に脆弱な状況でありますから、やはりこれの育成というのですか、業界指導というものについて、特に述べていただきたいと思うのです。
  13. 高瀬和夫

    高瀬(和)説明員 ただいま先生指摘の点でございますが、従来いろいろな経緯がございまして、各事業者とわれわれ行政に携わる者との間にかなりの距離があったことは事実でございます。幸い最近そういったみぞも大分狭まってまいっておりまして、かなり率直に話し合いが持てるという状況になってきております。したがいまして、これからのいろいろな対策を講ずるに当たりましては、十分事業者意見を聞きながら対応してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。  なお、各産地ごとに抱える問題、それぞれ異なっております。公害問題が一番大きな問題となっておる産地もございますし、また用水の問題が最大の問題であるというところもございます、あるいは原材料の手当てが一番大きな問題になっておる、そういうふうに各産地ごとに抱える問題あるいは必要とされる対策が異なっておりますので、そういった実態をよく踏まえながらこれからの施策を考えてまいりたい、かように考えております。
  14. 上田卓三

    上田委員 いずれにしましても、この条約批准し、そして条約加盟するということは当然のことであろう、こういうように思うわけですけれども、これらの業界原料あるいは製品の輸出入に際して必要な書類などがあるわけでございますが、条約に関連する法規定運用については、篤と業界と実情をよく話し合った上で納得のいく形で実施してもらいたい、こういうふうに思います。  また、ワシントン条約趣旨を積極的に生かすという意味から、品種によっては日本国内外での養殖事業にも取り組むとか、あるいは養殖不適品目については、各原産国での保護事業に対して日本として援助を行うなどの措置をぜひともとっていただきたい、こういうように思うのですが、その点について、最後にお聞かせいただきたいと思います。
  15. 高瀬和夫

    高瀬(和)説明員 ただいまの御指摘一つ加盟後の実施運用面での問題でございます。もう一つは、日本国内外における原材料確保のための諸施策、この二点でございますが、いずれも先ほど申し上げましたように混乱の極力生じない形で、しかも鞣製事業そのものは従来の形で存続させる、あるいはなお発展させるという観点から、事業者とも十分打ち合わせをし、また関係省庁とも相談して取り組んでまいりたい、かように考えております。
  16. 上田卓三

    上田委員 それでは次の質問に移りたいと思います。  旧陸海軍に従軍したいわゆる看護婦さんに対する補償についてお伺いしたいわけでありますけれども、その前に、今回、旧日赤救護看護婦さんに対する慰労金の支給が実現したわけでございますが、この問題は旧陸海軍従軍看護婦の補償問題と深く関係いたしておりますので、そういう意味でその点についてまず御質問申し上げたい、このように思います。  昨年八月の各党合意では、旧日赤救護看護婦さんの処遇については、恩給制度を準用して兵に準ずる扱いをすることになっていたわけでありますが、この準ずる扱いとはどういうことかということをまず説明していただきたい。  それから、今年度の予算でその処遇経費として八千七百四万八千円が計上されているわけでございますが、その処遇内容について具体的に説明していただきたい、このように思います。
  17. 小野佐千夫

    小野(佐)政府委員 お答えいたします。  まず最初に、恩給法に準じた措置が講ぜられているけれどもそれはどういうことか、こういう御質問だと思いますが、旧日赤救護看護婦処遇につきましては、戦地等勤務期間、それから戦後海外で抑留された期間に対しましては、旧軍人と同様の加算年を認めまして、その期間が兵たる旧軍人と同様に十二年以上となる方に対しまして、日本赤十字社が慰労給付金を支給することといたしております。額につきましても、兵たる旧軍人に支給されます普通恩給額等を考慮いたしまして、実勤務期間の長短に応じまして、十万円から三十万円までの額を支給することとなっております。  それから第二点の処遇内容についてでございますが、実勤務期間が三年から五年の方は十万円、六年から八年の方が十四万円、九年から十一年までが十八万円、十二年から十四年までの方が二十六万円、十五年から十七年までの方が二十八万円、十八年以上の方が三十万円ということに相なっております。
  18. 上田卓三

    上田委員 現在、国会提出されておりますところの恩給法改正法案によりますと、普通恩給最低保障額は、Aの六十五歳以上の者については実在職年数十二年以上六十四万七千円、それから九年以上十二年未満が四十八万五千三百円、九年未満が三十二万三千五百円、Bの六十五歳未満の者について実在職年数十二年以上が四十八万五千三百円、こういうふうになっているわけであります。  そこで、恩給制度を準用し、兵に準じた扱いをするという旧日赤看護婦の場合、いま御報告ありましたように、実在職年数十八年以上が三十万、それから十二年以上が二十六万円、そういう意味で、十八年以上については恩給法普通恩給最低保障額の約二分の一になっておるのではないか、十二年以上については三分の一になっておるわけでありまして、恩給制度を準用したにしてはこの金額の格差が大き過ぎるのではないか、このように思うわけでありまして、そういう意味で、旧日赤看護婦に対する慰労金の積算の根拠というものをはっきりと示していただきたい、このように思います。
  19. 小野佐千夫

    小野(佐)政府委員 お答えいたします。  先生もうすでに御案内のことと思いますが、旧日本赤十字社救護看護婦に対しまして今回支給しようといたします慰労給付金でございますが、これは戦時中に女性の身でありながら、旧日赤の赤紙召集によりまして、戦地等に赴かれて戦時衛生勤務に服されたというきわめて特殊事情等にかんがみまして、その御労苦に報いようという性格でお出しするものでございます。したがいまして、これによって生活の保障を図るという年金的な性格のものではございませんので、その点、御指摘のような、恩給法に準じてと言いながら、金額的に違うじゃないかというような点が出てまいっているのではないかというふうに考えております。
  20. 上田卓三

    上田委員 納得できないですね。同じように戦地に駆り出されて、そして弾丸の下をかいくぐって苦労された看護婦さんの方々を、それでは余りにも差別しておるのではないか、私はこういうように思うわけであります。同じ六十五歳以上でも、兵士なら十二年以上で六十四万七千円、看護婦なら十八年以上でも三十万円というのは話のつじつまが合わない、私はこういうふうに思うわけであります。恩給制度に準じるという以上、慰労金の額は今後もっと引き上げる必要があるのではないか、特に人事院勧告に合わせて恩給額も上がるのですから、旧日赤看護婦への慰労金も同様にスライドさせて引き上げるようにぜひともしてもらいたい、私はこういうように思います。  あわせて、慰労金を受け取る看護婦さんのいわゆる対象者数も、政府の方にちょっと聞いたわけでありますけれども、千百人くらいではないかというようなことを言われておるわけでありますけれども、実際はもっと多いのではないか。日本赤十字社の調査では、戦争中従軍看護婦に駆り出された人の数は約一万三千五百人で、そのうち今回の受給対象者となるのは三〇%、約四千人と見込んでいたようでございまして、今後この受給対象者の調査を強化して対象枠をぜひとも広げる必要がある、このように考えますが、どのようにお考えですか。
  21. 小野佐千夫

    小野(佐)政府委員 お答えいたします。  先ほど加算年を加えて十二年以上の方々に支給するというふうに申し上げましたが、その対象になられる方々は、日本赤十字社の調査によりますと約千二百名でございます。そのうち、今回支給いたしますのは五十五歳以上の方々でございまして、まだ五十五歳に達しておられない方が約百名おられるというわけで、五十四年度の対象者は約千百名ということを日赤から伺っております。  もう一点でございますが、日本赤十字社では、今回の慰労金支給に関しましては、年齢による特例の措置を講ずることは考えていないというふうに私ども聞いております。
  22. 上田卓三

    上田委員 まず前半の、なぜ日赤従軍看護婦さんが兵士と同じように、あるいはそれ以上に苦労されたかもわかりませんが、そういうにもかかわらず、二分の一あるいは三分の一以下の冷遇を受けているということ自身、私、理解できないわけでありまして、やはり一般の恩給制度というものに準ずるというなら、本当にそれは合わせてやっていただきたい、こういうふうに私は思うわけであります。また人数についても、私の調査と政府の資料といいますか、調査結果と大分違うようでございますが、いずれにいたしましても、日赤の方々とあるいは看護婦さんの代表の方と十分にその点について調整をしていただきたい、こういうように私は思いますが、その点についてどうでしょうか。
  23. 手塚康夫

    ○手塚説明員 先生ただいま御指摘ずっといただきましたように、確かに日赤救護員問題、当初は戦地で兵隊さんと同じような活躍をしたじゃないか、だから同じような処遇ということで恩給法を適用してくれという陳情、請願がございまして、まず恩給サイドから検討を始めたわけでございます。  ただ、恩給法というものは、きわめて身分法的なものでございまして、身分というもので実はぎちっと決まってきている。しかも、将来に向かってどんどん動いていく制度ではございませんで、過去の制度ということになるわけです。軍人恩給につきましても過去の約束を果たすということを主眼として今度改善措置も講じてきており、今回恩給法も提案しているところでございます。そういった点を踏まえまして、結局、日赤の救護看護婦さんの処遇についていろいろ検討した際も、恩給法を適用することは無理であるということが、きわめて当初から国会答弁を通じても明確に出されて、それ以外の処遇ということをいろいろ検討したわけでございます。  それで、翻って考えますと、日本赤十字社の救護員というのは、日本赤十字社が召集をかけて外地あるいは内地に派遣していたものでございます。当時は仮に、そこで戦死をされたり負傷されますと日赤の内部で処遇をしていたわけです。ただ、その際も年功給付というものは、日赤の救護員については日赤内部の規定でも、ございませんでした。それは、一つには日赤の救護員の方は原則として二年間ぐらい召集をかけて、それで勤務が解除されるということを踏まえていたんだと思います。ただ、さきの大戦の状況がきわめて特殊だったために、それが二年ではなくてきわめて長期間にわたる方が出てきた。そのために、翻ってそういった方々、戦地で特に長期間苦労された方方、これに日赤が慰労金を出す、それが国との関係で、国もそれなりの責任を負うべきではないかということで財政的にそれを補助する、こういうシステムにしたわけでございます。  したがって、確かに国会、各党専門家の方々をお集めになっての合意事項、これもわれわれ政府側として当然尊重もいたしましたが、軍人恩給にすべて準ずるということではなくて、やはりいま言ったような事情を踏まえて水準設定もしなければいけないのではないか。そういうことで、実は資格面ではかなり軍人恩給的な加算年を採用して人数を設定しております。ただ、給付水準になりますと、これはそういう年功給付はそもそも予定されていなかった。したがって、当時のたとえば兵隊さんの給与と看護婦さんの給与でいけばやはり相当差があるわけです。兵隊さんの給与というのは、後の恩給等も想定して低く定められていたという点も考えられるわけでございますが、それをいまになって改めて慰労金として出すわけですから、必ずしも一緒にそろえることはできないのではないか。  特に軍人恩給の場合には、老齢者に対する優遇措置ということで最低保障制度を持ち込んでおりますが、今度の日赤救護員の方々、いろいろ検討しまして、そうではなくて、戦地で苦労した年功的な給付ですね、それを見るということになりますと、恩給の場合も裸にしますと、大体今度日赤の看護婦さんに出した水準と同じになるのでございます。ただ、それに対して老齢者優遇措置で講じている最低保障等を適用しない、そういう判断に基づいてあの水準を設定したわけでございます。  それから人数の点も、ただいま申し上げましたように、資格面においてはかなりの程度軍人恩給を準用しておりますので、人数的にはいまよりふえるということは私ども想定しておりません。もしそういうことになるとすれば、むしろ一般の兵隊さんよりも有利な扱いになってしまうというふうに考えておりますので、普通の軍人恩給並みに計算して現在の千百ないし千二百名、これが妥当なところだ、そういうふうに考えております。
  24. 上田卓三

    上田委員 恩給制度を準用し、そして兵に準じた扱い、こう言っているんだから、この言葉をそのまま解釈して、私は旧日赤従軍看護婦さんに対する処遇を考えるべきだ、こういうことを申し上げておるわけですから、看護婦さんの方々についてもこれではひど過ぎるじゃないか、差別的じゃないかということをおっしゃっておられるわけでありますから、私は今後においてやはり給付額というものをぜひとも引き上げてもらいたい、こういうように申し上げておるわけでありますから、それでいいんだというような解釈じゃなしに、やはり検討してさらに引き上げていく、あるいは先ほど申し上げたようにスライドも考えていくという考え方をはっきりしていただきたい、私はこのように思うのです。
  25. 小野佐千夫

    小野(佐)政府委員 先ほど来先生指摘のように、旧日赤の看護婦方々が第一線で兵隊さんと同じような危険な思いをされたという点につきましては、私ども十分理解しているつもりでございますが、今回の措置につきましては、先ほど来御説明申し上げておりますように、過去の御労苦に対するそういう特殊な事情に対する特別な配慮ということでこういう措置をさせていただいたわけでございますので、その点につきましても十分御理解いたたきたい、こういうふうに思うわけでございます。  なお、スライド制の問題についてのお尋ねでございますが、旧日赤の看護婦に対します慰労給付金の額の改定につきましては、日赤の意向並びにこの措置運用の今後の推移等を十分に見きわめながら慎重に検討をしてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  26. 上田卓三

    上田委員 この問題については別途取り上げていきたいと思います。  次に、本題に戻りますが、元陸海軍従軍看護婦処遇についてであります。旧日赤看護婦については、不十分ながら慰労金という形で補償が行われたわけでありますが、ところが同じ戦場で同じ苦労を味わったこの陸海軍の従軍看護婦についてはいまだに何の補償も行われず、全く差別的と言ってもいいような形に置かれておるわけでありますが、なぜこのようなことになっておるのか、その理由を明確にひとつお答えいただきたいと思います。
  27. 小野佐千夫

    小野(佐)政府委員 お答えいたします。  陸海軍看護婦に対しまして、日赤の救護看護婦に対する処遇と同様な措置を講ずるかどうかという点につきましては、昨年来検討も進めてまいっておるところでございますが、現段階までのところでは、いろいろむずかしい問題もあるところでございます。しかしながら、本国会におきまして、すでにこの問題につきまして三原総務長官が再度検討したいという旨の答弁をしておられるところでございます。厚生省によります実態把握の状況等を踏まえながら、総務長官の意を体しまして、関係省庁と十分連絡をとりながら慎重に検討を進めてまいりたい、このように考えているところでございます。
  28. 上田卓三

    上田委員 これまでの政府の答弁では、陸海軍看護婦さんに対する補償がされてない、こういう理由については二つほど述べられておるのではなかろうか。一つ日赤看護婦の場合には召集されて戦地に駆り出された、しかし陸海軍看護婦さんについては軍に雇用されていわゆる志願兵のような形で戦地に出ていっている、こういうことではないか。この点については総理府の角田参事官は、昨年の九月の読売新聞でこのように述べておるわけです。日赤看護婦の場合は国と直接の雇用関係がなかったのに召集、派遣された、陸海軍従軍看護婦は直接志願して雇用された人で、また法的に見ると、軍人と違って年金や恩給が支給されない雇用条件になっていた、こういうふうに述べておられるわけです。しかし、これは形式論もはなはだしいのではないか。確かに旧陸海軍看護婦は一応志願して従軍看護婦になったかもしれないが、これに従軍させられたのは、やはり本人の意思というよりも、特に上官の命令で戦地に赴いたことは明らかであろう、こういうふうに私は思うわけであります。  陸海軍看護婦は内地、戦地を問わず、軍隊の一員として軍規に服し、上官の指揮命令に反した場合には軍法で処罰されたわけでありまして、激戦地では兵隊と同じように戦場を駆け回り、そして戦争が終わった後も他の軍属が次々と送還されたのに、この人たちは軍人と同じく抑留の対象となったことを見ても明らかではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。こういう実態を踏まえれば、むしろ従軍看護婦は女性兵士と見ても差し支えないのではなかろうか、私はこのように思うわけであります。当然兵士と同様に国家補償がなされてしかるべきだ、こういうふうに考えておるわけでありますので、その点について先ほどちょっと御返事いただいたわけでありますけれども、再度その点についてはっきりとした考え方を述べていただきたい、このように思います。
  29. 小野佐千夫

    小野(佐)政府委員 日赤救護看護婦方々、それから陸海軍看護婦方々の雇用の態様等につきましては、先生ただいま御指摘のようないろいろな問題があろうかと存じます。陸海軍看護婦方々につきましては、その実態の面でまだ明らかでない点が多々あるように伺っておりますので、先ほども申し上げましたように、実態把握の状況を十分に踏まえた上で、関係各方面と十分連絡をとって慎重に検討を進めてまいりたい、このように考えておりますので、御理解いただきたいと思います。
  30. 上田卓三

    上田委員 さらに従軍看護婦の恩給、年金権につきましても、看護婦の場合、判任官以下の傭員という扱いから恩給のいわゆる対象外になっておるわけでありまして、また旧陸海軍の共済組合の規則を見ましても、看護婦は共済年金の受給資格から除外されておるわけであります。最初から老後の生活保障は度外視されるという制度的な欠陥の中に置かれておるだろう、こういうように思います。そういう意味でこの制度的欠陥を盾に従軍看護婦を放置するのではなく、政府の積極的な補償措置が必要とされておる、このように思うわけでありまして、その点についてもう一度見解を述べていただきたい、このように思います。
  31. 手塚康夫

    ○手塚説明員 制度的に大変複雑になっておりまして、私どももなかなか理解するのに困難な点もございます。  二点に分けて申しますと、私どもいろいろ制度を調べました。実態はわれわれではなかなかわかりません。これは担当省庁でないとわかりませんが、制度面はいろいろ古い資料で調べますと、陸海軍看護婦という方々につきましては陸軍病院ないしは海軍病院で採用、これが原則になっております。したがって、実は戦地勤務ということが本来的にはない形に制度としてはなっております。ただ、この辺いろいろ陳情も伺いまして、疑問に思いまして、厚生省に行って留守家族等名簿、それを調べさせていただきまして見当がつきましたのが、昭和十七年になりまして、太平洋戦争勃発とともに日本軍が大分南方に進出した、そこで病院をつくる際に、とても衛生兵などで賄えるものではないということで、急遽その際内地の陸軍病院から大量に派遣した。これがいわゆる白紙で、赤紙と同じじゃないか、そういう状況ができたのであろう、そういうふうに推察しております。ただ、それより前の満州あたりの陸軍病院になりますと、やはり大分事情は変わっていたのじゃないか、そういうふうに実は考えられるわけでございます。  それから陸海軍看護婦さんと日赤の救護員の看護婦さん、これは日赤救護員の場合も召集を受けて内地の陸軍病院に派遣されることは多々ありましたが、たとえばその期間扱い先生もいまおっしゃいましたように実は違っているのです。陸海軍看護婦さんの場合には、それは旧令共済の適用を受けております。それは現在でも条件によってですが、公務員にずっとなっている場合には共済制度に通算されております。民間に行っている場合には厚生年金に通算されている。ところが、同じ内地の陸軍病院で働いた日赤救護員の方方については、そういう扱いは実はされておりません。これはただ旧令共済が外地、外国に行った場合には適用を外すというような制度になっていたために、外国でのいわゆる戦場に近いところ、戦地での勤務期間がその面に反映されてない、そういうような制度の実は問題点もあって、今度のような問題が生じていると考えております。ただ、この点になりますと、実はわれわれも担当ではございませんでして、大蔵の旧令共済制度、そういった面をもう少し分析していかなければ最終的なお話はできないのですが、そういったもろもろの点を含めていろいろ検討していかなければいけないんじゃないか、そういうふうにわれわれは考えているところでございます。
  32. 上田卓三

    上田委員 もう一つ陸海軍の従軍看護婦さんに対して補償がなされていない、こういう理由のもう一つは、いわゆる従軍看護婦の証明資料がないということも言われておるわけでございまして、この証明資料が実際ないのかどうか、その点お伺いしたいということと、もう一つは、私がここで問題にしたいのは、旧陸海軍のもとで兵士同様に戦地に駆り出された看護婦さんの資料が十分に整備されておらずに、そのためにいまだに補償措置がとられていないということであるならば——日赤の方の場合は一応ちゃんとした資料が整備されて、わずかであるが慰労金という形で補償されている。ここの違いですね。この従軍看護婦の資料がそろっていないのは一体だれの責任か、まさしく政府の責任ではないのか、私はそのことを申し上げたいわけでありまして、そういう点で三十四年間も調査してこなかった政府の怠慢、責任は一体どうなるのかということでございまして、ぜひともいますぐにでも調査をしてもらいたい、私はこのように思うわけであります。  政府が調査を怠っている間もこの補償を求める方々、特に従軍看護婦の会というものをこしらえられて独自に調査を進め、苦労して会員を集めておられるわけでありまして、現在五百人ほどの会員になっておるようでございますが、政府がその気になれば、広報で流すとかあるいはテレビや新聞を利用するとかで、実際調査のやり方は幾らでもあるのではないか、私はこういうように思います。そのためにある程度の調査費を組んで積極的にやることが必要だ、私はこのように思うのですが、その点について御見解をお聞かせいただきたい、このように思います。
  33. 森山喜久雄

    ○森山説明員 ただいまの陸海軍看護婦さんの資料の件でございますけれども陸海軍看護婦さんにつきましては、もともと軍人の場合のような兵籍簿というような個人ごとの一貫した履歴資料というものがございませんで、軍人のように一律につかむわけにはいかなかったわけでございます。それから、もちろん、雇用しているわけでございますから、その時点では履歴に関するいろいろな資料はあったはずでございますけれども、年功年金というのはもともと恩給のような形でなかったものでございますから、終戦の混乱といったような状況で大分なくなっているわけでございます。まことに申しわけないと思うのでございますけれども実態はそういうことでございます。  ただ、厚生省の方に昭和二十年一月一日現在の外地におりました部隊の病院に所属しておられます方の名簿がございます。この中にもちろん陸軍病院、兵たん病院がございまして、この資料から私の方で作業して抽出いたしまして、現在五千七百四十一名の方につきましてはつかんでいるわけでございます。ただ、いま申し上げましたように、これは昭和二十年一月一日現在、外地にあった部隊に所属されているわけでございますので、それ以前に内地にお帰りになったというような方につきましては資料がないわけでございます。  それで、個々の全履歴をどういうふうにつかむかということになりますと、やはり御本人からそういう履歴を出していただいて、それにわが方のいろいろな資料をぶつけまして、それでやっても欠落する部分は出てくると思いますけれども、何とかある程度の姿はつかめるんじゃないかと考えております。もちろん、私どもといたしましても、総務長官がおっしゃいましたように再検討するということでございますので、今後また政府部内でいろいろ相談いたしまして、そういう実態の把握につきましてはいろいろな資料を調査いたしまして、できるだけ実態を明らかにしたいと考えております。
  34. 上田卓三

    上田委員 旧陸海軍の従軍看護婦の会というのが金子はるさんを会長にしてあるわけでして、こういう会の方々の協力を得て、先ほど申し上げましたように、テレビとかその他のマスコミ、広報などを使って大々的に調査をしてもらいたい、そのための調査費も組んでもらいたい、このように思いますので、再度その点について、そういう会の方々の協力をいただいて調査をしますということをお答えいただきたいと思うのです。
  35. 森山喜久雄

    ○森山説明員 私どもでこの会の方々からの資料もいただいております。これも私どもの資料とチェックいたしましてある程度わかっております。  いま先生の御指摘になりましたような調査の関係でございますけれども、これは今後各省と相談して、どういう方法でやるかというようなことはまた検討してまいりたいと思います。
  36. 上田卓三

    上田委員 いずれにしても、方法は別にして調査をすることは間違いないということですね。そういうことですね。——結構です。  次に、総理府の青少年対策本部の方にお聞かせをいただきたい、このように思います。  御承知のごとく、ことしは国際児童年の年であるわけでありまして、三年前の一九七六年に開かれました第三十一回の国連総会において本年を国際児童年にすることが決められたわけであります。その大きな理由として、本年が国連総会で児童の権利に関する宣言が採択されてからちょうど二十年目に当たるということからであります。したがって、児童年の趣旨、目的を考える上でこの権利宣言の内容を正しく理解することが必要ではないか、私はこのように思うわけであります。この前文には「人類は、児童に対し、最善のものを与える義務を負うものである」、このようにうたっておるわけであります。  また、児童年を決めた三十一回の国連総会ではこの目的を次のように明らかにしております。一つは「子供のための擁護、政策決定者と大衆の間で子供に特に必要なものについて自覚を高めるため、枠組を提供してゆく。」ということ、二番目には「子供のための計画は、各国、国際レベルで子供のために長期的及び短期的に持続的活動を達成するという考え方で、経済社会開発計画の不可分の一部とすべきだという事実認識を促す。」ということであります。その次に、三番目として「政府が各国、地域社会レベルで、子どものしあわせに持続的改善を提供し、最も弱い、特に不利な立場の集団の人々への特別の関心を払い、その努力を広げるよう求める。」このようにうたっておるわけであります。しかし、日本政府は、昨年六月二十日に開かれましたところの国際児童年事業推進会議における政府の説明の中では、「一 児童を擁護し、児童福祉のニーズに対する各方面の関心を高めること。二 児童のための計画が経済社会開発計画にとり不可欠の要素であるという認識を深めること。」こういうふうに、国連決議の一般的目的を高めるというよりも、逆に薄めるようなニュアンスになっておるわけでありますし、さらに三の要望については、一切触れようとしておらないわけでありまして、その後の推進会議の文書などを見ましても、この決議の三項目の重要な要望事項については何ら言及がないわけであります。政府として国際児童年の数々の取り組みを進める上で、この国連決議の中の第三項目の要望についてどのように理解し、具体的にどのように努力を広げるつもりなのか、その点について明らかにしていただきたい、このように思います。
  37. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、児童権利宣言が採択された二十周年を記念しまして、本年が、一月から十二月まででございますが、国際児童年ということになっておるわけでございます。それを受けまして、ユニセフが国連における中心機関としてこの推進に当たることになっておるのでございますが、ユニセフといたしましては、「開発途上国における児童に基礎的サービスを提供する活動に重点をおく」ということを一点申しております。それから「国際会議は開催しない」「具体的行事の実施については、各国の自主性を尊重し、ユニセフは、全体の調整を図る」というようなことになっております。  そのために、各国に対しまして政府、民間を含めた国際児童年に関する国内委員会の設立を呼びかけてまいったわけでございます。それを受けまして、先生指摘のような国際児童年事業推進会議というものが昨年の六月に設置されました。先ほど先生の御指摘のような国連の決議とかユニセフの方針等を受けまして、推進会議で推進方針というものを定めておる次第でございます。  その推進会議の推進方針におきましては、三つのことを重点事項として取り上げておるのでございます。一つは、子供の福祉の増進に関する啓発活動を行いまして、国民全体、関係機関全体がそれに対する理解を深めていくということは、先生の御指摘のとおりでございます。それから、それぞれの国における国内施策の充実ということから、日本におきましても、子供の福祉の増進のための国内施策を充実していく、それからもう一つは、国際協力についてもさらにこれを拡充していくという三点でございます。  先生のいま御質問ございました国連決議の第三項目でございますが、これにつきましては、国連の決議とかユニセフの方針等の全体の基調を踏まえて考えますと、いわゆる開発途上国における子供たちが栄養に欠ける、あるいは病気になっても医療も十分に受けられない、あるいは教育なども、義務教育の就学率も非常に低いというような子供もいるわけでございますが、そのような点を中心に意識して考えられておるものと考えている次第でございます。しかし、わが国におきましては、一般的にはいまの栄養、医療、教育などの基礎的サービスにつきましては、先生も御承知のとおり、かなり高い水準にあると考えられる次第でございます。  ただ、たとえば児童の自立心とか忍耐力、あるいは連帯意識などが日本の子供にはやや希薄なのではないか、非常に勉強などに多くの子供が努力しておるわけでございまして、全体とは言えないわけでございますが、そういう意識面の、なお何とか健全な青少年に育てるためにはその点をさらに重視していく必要があるのではないか。それから体力の面につきましても、体格はかなり大きくなっておるのでございますけれども、ひ弱さとかあるいは持久力の不足というようなことが指摘されておりまして、骨の非常に弱い子供がいるというようなことで非常に心配されておるわけでございます。それから最近、戦後三番目に高い水準に非行がなっておりますし、また自殺の問題等がございます。それから受験戦争などの問題、心身に障害のある児童等、広く恵まれない児童の問題がわが国にもあるわけでございまして、このような点が国内施策の面では政府、地方公共団体、民間等が協力しまして積極的に取り組んでいかなければならない課題である。そういうような方向で第三項目を理解しておる次第でございます。
  38. 上田卓三

    上田委員 啓蒙とか宣伝がそれだけに終わってよいというはずはないというように思うわけでありまして、いわゆるフェステバルや展覧会などの行事が単にお祭り騒ぎ的なものになってはならない、このように思っておるわけであります。  そこで、やはり大切なのは、この児童年を契機として具体的な国内施策の改善、充実へどう結びつけていくのかということではなかろうか、私はこういうように思うわけでありまして、ことしの場合はいま述べた、ここで言うているところの国内の弱い不利な立場の集団ですね。すなわち、わが国の場合を例にとれば、被差別部落の児童、あるいはアイヌ系国民の児童、あるいは在日韓国人の方の児童、あるいは障害児、交通遺児、原爆被爆者の児童、あるいは公害患者の児童、あるいは母子家庭とか生活保護世帯の児童等々に対する施策で何か見るべきものがないのかということを私は特に聞きたいわけでございます。その他各省にわたって、児童に関する施策の充実についてどういうように考えておるのかということでそれぞれ一度お聞かせいただきたいわけでありますが、時間の関係もありますので、これは後日ぜひともやらせていただきたいし、またできたら御報告願いたいというように思うわけであります。  特に八月、愛知県で開かれる国際児童年の集中的記念行事として、世界と日本の子供展についてお聞かせいただきたいわけでありますが、この準備状況並びにその展示内容について詳しくわかっておる範囲でお聞かせいただきたいということと、それからこの企画の中に、国内における被差別の、弱い立場の集団のそういう児童を中心とする権利の回復のためのじみちな粘り強い取り組みが成果を上げている例として、たとえば私が関係しております部落の子供会の活動とか、あるいは大阪などで副読本「にんげん」というものが無償配布されておるわけでありますが、そういうものとか、あるいは児童映画、あるいは解放教育運動の実践など、そういうものを紹介するコーナーを考えておるのか、考えていなかったらぜひとも考えていただきたい、このように思っておりますので、その点についてひとつお聞かせいただきたいと思います。
  39. 松浦泰次郎

    ○松浦(泰)政府委員 先生の御質問がございました愛知県における記念行事でございますが、その前に啓発活動につきましてちょっと御説明させていただきます。  先ほどの推進会議の推進方針の重要な事項の一つとしまして、啓発活動があるわけでございます。これはことしの一月から十二月までが児童年ということでございますが、昨年からスローガンを募集したりいろいろ努力しておりますし、本年も一月早々からユニセフ協会等による写真展等も開かれたり、いろいろやってまいっております。  それで、その啓発活動につきましては、年間三つの山を置いて考えていこうというのが推進会議の方針でございますが、一つは五月の子供の日前後に重点を置くということでございまして、全国の縦断キャンペーン啓発活動、それから中央子供の国というのが皇太子御成婚記念でできておりますけれども、そこにおきますいろいろな行事、それから各都道府県、民間団体等におきましてもかなりの盛り上がりがあったわけでございます。  もう一つは、いま御指摘のございました八月の行事でございますが、多くの子供たちにできるだけ見てもらいたいというようなことから、現在の状況でございますと、どうしても夏休みを利用してやらざるを得ないということがございまして、夏休みの愛知県の行事を一つの大きな山にする。それに対応しまして、各都道府県あるいは関係団体でも八月に行事を盛り上げていこうということがございます。  それからもう一つは、児童権利宣言が採択されました十一月の二十日前後にもう一つの山を持っていこうというようなことでございますが、これでは関係者の表彰なども考えていったらどうだろうかというような動きが出ておるところでございます。  それで、一番の山場に考えております愛知県の集中行事でございますが、これにつきましては、昨年の十二月一日に、財団法人国際児童年事業協会というものができまして、そこが取り組んでいくというようなことになっておりまして、現在、鋭意その準備が進められておるところでございます。  その主たる対応の姿勢でございますが、一つは、国際児童年でございますので、世界の子供を理解し、その問題を考えていく、それからもう一つは、日本の子供を理解し、その問題を考える、それから三番目が、児童権利宣言及び児童憲章等について理解を深め、大人も各人が何をなすべきかについて考えるというようなことを三本の大きな柱にいたしております。  それから、その具体的な内容といたしましては、そういういろいろな展示と、それから子供がせっかく集まるわけでございますので、子供のために役立つようないろいろな催し物ということが考えられているわけでございます。その展示につきましては、一つは愛ということ、子供に対する愛情、それからもう一つは、世界と日本の子供の置かれておるいろいろな客観的な環境状況、それから、次の世代を担う子供たちが希望とお互いの連帯を持って進んでいくというようなことをとらえた一つの展示館、それからもう一つは、親子の対話や子供自身あるいは社会連帯により、子供の幸せを進める契機とするような構想の展示館、それからもう一つは、地元中心になると思いますが、関係民間団体等が施設参加をしまして、児童年の趣旨に合った活動をしていこうというようなものが、主に仮設的なものでございますけれども、大きな展示館を設けてやるということになっております。  その中身でございますが、全体としましては、児童の問題を総体として理解する見地から行うということでございますし、それから、時間的制約があるというようなことがございますので、民間の実践活動の成果を展示するというところまでは現在は考えていないというように聞いております。いずれの展示館においても、恵まれない子供たちをめぐる問題を含めて、広く子供の問題を考える場にするというような趣旨でございます。  いま先生指摘のとおり、同和地区の子供たちの福祉の増進のために関係方々が非常に努力されておるわけでございますが、この点につきましては、現在私どもが聞いておる範囲では、具体的なものは入っていないというように聞いておる次第でございます。ただ、そういうような全体的な取り組みの状況でございますので、あるいはむずかしいかと思われるのでございますけれども先生の御趣旨は協会の方に伝えることにいたしたいと考えております。
  40. 上田卓三

    上田委員 時間がありませんので、別途具体的に話を詰めてまいりたい、このように思います。  いずれにしても、子供の権利という問題でございますので、児童年だからことしだけということじゃないわけでありまして、日本の国民の中でいろいろ権利を侵害されている方々がたくさんおられますけれども、その中で一番考えられなければならぬのは子供ではないか。将来の日本を担う子供をどうしていくのか、特にその中でもそういう社会的弱者、弱い立場にある家庭の子供の問題が大きな問題だろう、こういうように思いますので、その点ひとつ十分に留意してがんばっていただきたい、こういうように思うわけであります。  次に、労働省の方がお見えでございますので、労働、厚生と質問を続けたいと思います。  五年以上の構造不況という中で中小零細企業がばたばたと倒産する、あるいは中堅の大企業すらもそういう倒産なりあるいは人員整理を行うというようなことで、失業問題、雇用問題がいま非常に大きな政治の課題にもなっておるわけでありまして、そういう全般な問題を特に御質問するというよりも、やはり労働行政のあり方そのものに特にしぼってお聞かせいただきたい、こういうように思います。  現在の労働行政は、すべて国なりあるいは都道府県に権限が属しておる、こういうことでありまして、やはり雇用問題を中心とする地域の勤労市民のそういう要求は、どうしても直接市町村に向けられる場合が多いわけでございますし、同時に、地域のことについては一番よく知っている市町村がこの問題に対してどのように取り組んでいくのかということが非常に大事だろう。当然、職業安定所もあるわけでございますけれども、やはり地方公共団体の役割りというものも強化しなければならない、こういうように思うわけでありまして、そういう点で労働行政の財源を含むいわゆる権限の市町村への大幅な委譲を行うことが非常に大事ではないか、こういうように考えるわけでございますが、その点について政府の見解をお聞かせいただきたい、このように思います。
  41. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、最近の厳しい雇用失業情勢のもとにおきましては、地域的に失業の問題を解決するために市町村の役割りが非常に大きくなっておりますし、また、高齢者でございますとか身体障害者等につきましては、やはり地域社会の中でいろいろな就労の場を見つけるといったようなことが重要視されてきているわけでございます。  しかしながら、職業紹介の業務そのものは、現在、国が一元的に行うというたてまえになっておりまして、このたてまえは雇用保険の関係とか、あるいは全国的な問題も含めまして、一元的にやるというたてまえはとるべきだと思いますが、できるだけ市町村と職安との密接な連携を深めるとか、あるいは職業の相談とか、そういうものについて労働省でも高齢者職業相談室といったようなものを市町村に設けてもらっておりますが、そういうものを広げていくというような形で密接な連携をとっていきたい、こういうように思っておりますし、市町村等と地域の雇用対策連絡会議を設けるなど、いろいろ連携対策を今後とも強めていきたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  42. 上田卓三

    上田委員 市町村でも労政課などを設けて対策を練っているのですが、やはり国との連携というのが非常に弱いんではなかろうかということと、市町村に対してもっと権限を委譲していくということで、ひとつ具体的に検討を願いたい、こういうように思います。  次に、具体的な問題になるわけでございますけれども、先般私の方から質問主意書を出させていただきまして、そこでも若干お答えいただいておるわけでございますが、不十分でございますので、この場をかりましてさらに詰めた形で御質問申し上げたい、このように思います。  私の地元の東大阪市に雇用開発センターができたわけでありまして、このセンターは地域の雇用情勢と住民要求、とりわけ中高年齢者等の切実な要求に基づいてつくられたわけでありまして、そういう意味で、むしろ国なり府の施策、そしてそれを具体的に実施すべき職安機能の不十分さが自治体をして独自の取り組みを開始せしめたものである、こう言わざるを得ない、こういうように思うわけであります。政府は従来の施策の弱さとそういう制度上の欠陥を率直に認めて、東大阪市の独自の努力に対して積極的に援助を行うべきだ、私はこのように考えるわけでございます。具体的には中高年の開発給付金及び雇用奨励金制度の適用を弾力的にして、この施策の目的、趣旨に全くかなった、そういう雇用開発センターにぜひとも支給してもらいたい、私はこういうように思うわけでございます。  また、障害者雇用促進法に基づく雇用率の未達成企業、とりわけ東大阪市内の企業からの納付金をこの雇用開発センターの財源として繰り込む手だてをぜひとも講じていただきたい、このように思うわけでございますが、質問主意書の時期はまだこの開発センターができてなかった時点でございますし、十分労働省もこの実態について把握がなかったようでございますが、もうすでにそういう点については篤とお調べいただいたことだというように思いますので、この開発センターに対してのいま申し上げた具体的な援助について明確な御答弁をお願いしたい、このように思います。
  43. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 お尋ねの東大阪市雇用開発センターにつきましては、本年の四月から事業を開始したようでございますが、余り詳細なことは必ずしも存じ上げておりませんけれども、登録制度をとって、そこに登録されておる中高年であるとか、身体障害者あるいは寡婦あるいは同和関係方々を登録しておいて、就労の場を与えるという仕組みになっておると承知しております。  それで、お尋ねのこの団体に対して雇用奨励金であるとか中高年の雇用開発給付金であるとか、そういう給付ができないか、給付をすることによって団体を助成することができないかという御質問趣旨でございますが、私どもとしてはその団体が一つ事業主として雇用関係を結んでおって、働く方々との間に雇用関係が存在し、その方方が常用の就職をなさっている、常用的な雇用関係が続いておるという場合でございましたら、新たに雇い入れる場合は雇用奨励金あるいは雇用開発給付金が要件にさえ合致すれば出せる、こういうふうに考えております。ただ、実態につきましては、常用雇用と言えるかどうかという問題あるいは雇用関係と言えるかどうかといった問題、そういうことについては個々具体的に、現地の職業安定機関の方で判断いたしまして適切に対処いたしたい、かように考えるわけでございます。  身体障害者の雇用納付金制度に基づく助成措置につきましても、一応そういう事業主から納付金を集めて、新たに身体障害者を雇用する事業主へ給付する仕組みになっておりますので、やはり雇用関係ということが一応前提になっておりますので、雇用関係と見られるかどうかということが助成できるかどうかの決め手になる、現在の制度ではそういうことになっております。できるだけ適切に対処したいと思っております。
  44. 上田卓三

    上田委員 具体的な問題でございますので、東大阪市も市を挙げてこの問題に御協力いただいておりますので、別途この問題について御相談をさせていただいて、具体的に最善の御協力を——御協力というよりも国が当然率先してやらなければならない事業ではないか、こういうように考えておりますので、その点ひとつ含んでいただきたい、このように思います。  次に、福祉対策の強化は国民の強い要望であるわけでありますが、その中でもいわゆるホームヘルパーの制度、この制度の充実に対する期待は大変大きいのではないか、このように考えるわけでありまして、昨年九月の調査によっても、たとえば大阪府下でいわゆる寝たきり老人は、老人見舞金の支給に該当する方々だけでも七千八百八十六人おられるわけでありまして、重度障害者給付を支給されている人は一万七千八百八十九人という実態があるわけであります。これを現行ホームヘルパーの数と単純に比較いたしますと、寝たきり老人四十七人にヘルパー一人、重度障害児の場合二百六十三人にヘルパー一人、こういう比率になってくるわけであります。  この実態自身ヘルパーの増員をもって対策すべき必要を十分に指し示すものであるとは思いますが、果たしてヘルパー一人当たりの対象人員がその事業内容からして、大体何人ぐらいであれば満足できると厚生省の方では考えておるのか、少なくとも現状について満足しているのかどうか、恐らくしておらないと思いますけれども、その点についてお答えいただきたい。また十分でないとするならば、目標に向かって増員の計画はどのようになっておるのか、ヘルパーの不足の一つの原因となっているいわゆる自治体負担の軽減のために、ヘルパーへのこういう給与についての国庫補助をさらに引き上げる用意が果たしてできておるのかどうか、そういう点について厚生省の方からお聞かせいただきたい、このように思います。
  45. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えいたします。  まず、現在の老人ホームヘルパー制度及び心身障害児ないし身体障害者のヘルパーを含めて一元的に運用しておりますけれども、特に御指摘のありましたうちの老人ホームヘルパーについてお答えいたしたいと思います。  私どもが現在進めております増員計画は、すべての寝たきり老人という考え方ではございませんで、ひとり暮らし老人、それから介護者がいる寝たきり老人であっても、その介護が十分行き届かない家庭でかつ低所得者である、そういう経済的要件を課しまして、非常に制限された形で現在増員を図っております。  ただ御指摘のように、そもそもそういう低所得者階層だけを対象にしていいのかどうかという基本的な議論は各方面からいただいておりますし、将来の方向といたしまして、むしろそういう所得がある程度ある階層であってもヘルパーを必要とする階層があるではないか、そういう方向へ対象を拡大することも考えるべきではないかという御指摘もありますし、ただ、その場合には現在すべて無料で行っておりますこのサービスに、あるいは一部有料化ということを導入しなければならないかどうか、そういう問題もございますので、結論を出すには軽々な結論は出せない、かように考えておりますが、方向といたしまして、現在のホームヘルパーの数で必ずしも私ども十分であるかどうかという点については断言いたしかねる点がございます。  御指摘のように、大阪府の場合も確かに寝たきり老人の数は非常に多うございますし、そういうものをカバーする意味でどの程度いれば老人ホームヘルパーは十分か、こういう御質問でございますけれども、これはほかの国の例をとりましても、必ずしもその辺は客観的にこの程度いれば十分という数字はなかなか見つけがたい面もございますし、したがって、一つは対象を一定の低所得階層に限るのかどうか、あるいはその有料制度を導入してなお対象を広げるかどうかというところの判断で、その必要なホームヘルパーの数もまた変わってこようかと思いますし、現在の制度で進めております低所得階層ということで切った場合には、現在の時点での考え方ではあと千ないし二千名の増員があれば一応カバーできるのではなかろうか、かように私どもは考えております。しかし、先ほど申しましたように、対象をある程度広げるかどうかという点を考慮いたしますと、なお再検討の余地があろうかと思います。  それから、国庫補助をもう少し引き上げて増員を図るべきではないか、こういうお話でございますが、御承知のように、私どもも、従来より、ホームヘルパー制度と申しますのは在宅福祉対策の中核的制度であると考えておりまして、鋭意その増員及びヘルパーの待遇改善に努めてまいったつもりでございますが、今後ともそういう方向で、逐次その増員に努めてまいりたい、かように考えております。  ただ、その増員に当たりまして、若干補助単価の問題のほかに、私どもとして考慮に入れなければならない要素といたしましては、その関係団体の間で、でき得ればやはり市町村の常勤職員として位置づけるべきではないかという非常に強い主張がございますが、もし、そういう場合には、その市町村の、一方で定数抑制の方針でありますとか、一般的な財政の窮状というようなものがございまして、必ずしも自由に増員ができるという状況ではなくなってきておるということではないか、かように私ども考えております。  いずれにいたしましても、このヘルパー制度というものの重要性にかんがみまして、今後とも国庫補助の引き上げを含めまして、鋭意拡充に努めたい、かように私ども考えております。
  46. 上田卓三

    上田委員 いずれにしても、現在の状態が改善を要するということは言うまでもない。また、ヘルパーの増員についても増員していただくということであったとしても、一定の望ましい基準に達するには、やはりそれ自身果たしてどこまでめどが立つのかという問題もあると思うのです。  そこで、寝たきり老人とか障害児の家族とか、あるいはとりわけ主婦、お母さんですね、母親が実際は介護にかかりきりになっているという場合が多いわけでありまして、そのために働きに出ることはできない。そして、そういう中で一層重い経済的負担を受けることになっておるわけであります。そういう寝たきり老人とか障害児があるために経済的負担がきつい、にもかかわらず働きに出られない、こういうようなことになっておるわけでございまして、そういう点で、やはり福祉行政が本来保障すべき人々のそういう介護を結果的にその家族に押しつけるような形になっていると言ってもいいのではないか、こういうふうに私は思うわけであります。そのことによって家庭生活を著しく破壊している、困難に陥れているという悪循環を断ち切るためにも、ヘルパーの増員の計画的な実施に当たって、この家族自身の介護を社会的に位置づけてやはり保障していくというのですか、つまり、家族ヘルパーというのですか、そういうような考え方でホームヘルパーというのは考えていくことも一つ考え方ではないか、こういうように思いますので、いわゆる家族をヘルパーとして優先的に採用することが必要である、そういうように私は思うわけであります。その点についての見解をお聞かせいただきたい、このように思います。
  47. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えいたします。  私ども、非常にユニークな興味深い御提案と思うわけでございますが、ただ、一つ大きな問題がございますのは、現行の民法の扶養義務との関係もございまして、自分の親を介護する、その行為に対してヘルパーとしての報酬の対象とすべきかどうかという点は、単に福祉云々という制度を離れまして、国の制度全体にわたる大きな問題を含んでいるように思います。  それからもう一つ、私どもとしましては、従来から関係団体の強い要望もございまして、ホームヘルパーは常勤職員とすべきであるという方向で指導してまいっております。そういう意味で、もし家庭の主婦を仮にそういう形でヘルパーとして採用する場合には、一方で自宅で自分の親を介護する傍らということになって、どうしても非常勤化という形にならざるを得ないと思いますが、その辺で関係団体とのまた意見の調整といいますか、コンセンサスを得ることが必要であろうかと思います。  ただ、いずれにいたしましても、一つのおもしろい方向づけであろうと思いますし、事実私ども、現在内部的に今後のホームヘルパー制度のあり方ということで鋭意検討は進めておりますので、そういう過程で一つの参考とさせていただきたい、かように考えます。
  48. 上田卓三

    上田委員 検討していただくということですので、それは子供が親を扶養する義務があることは事実ですけれども、しかし、現実にやはりそういうことで二重、三重の負担になっているということ、あるいはヘルパーの制度自身が増員の問題も含めて不十分であるということで、こういう案をどうかということで申し上げましたので、ぜひともひとつ前向きにこれは御検討いただきたい、このように思います。  次に、先ほど申し上げた東大阪の雇用開発センターの設立の経過とかあるいは現状はさきに述べたわけですが、その中で家庭奉仕員制度を活用して、雇用機会の創出と住民福祉の向上を結びつけて行ったらどうだ、こういう要望が出ておるわけであります。障害児、あるいは障害児だけじゃございません。大人の方もそうでございますけれども、あるいは寝たきり老人を抱え、そして介護と就労の両立を希望する人々が多くおられるわけでありまして、このセンターへの登録をそういう形で申請をしてきておるわけであります。そういう点で、家庭奉仕員制度の運営主体について、同センターのそういう趣旨というものを十分に理解して、センターへの委嘱ですね、そういうものを行うべきだと思うのですが、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  49. 大西孝夫

    ○大西説明員 お答えいたします。  先生指摘の大阪のセンターについてでございますが、まずその前に、私ども従来からホームヘルパー制度の実施主体といたしまして市町村、それから委託によって社会福祉協議会がやっているというのが常態でございますけれども、この委託につきまして、必ずしも社会福祉協議会でなければならないという運営はいたしておりません。その地域の実情に詳しく、社会福祉事業の推進に理解と実績のある団体であれば委託して構わないという考え方をとっております。  ただ現時点では、センターにつきましての業務内容でありますとか詳しい仕組み等、まだ私ども伺っておりませんし、委託先として適格かどうかという結論を出すことはちょっとまだできませんが、もし東大阪市がそういうセンターに委託して行いたいということであれば、私ども十分委託先として適当かどうかという点を判断させていただきまして前向きに考えたい、かように考えております。  ただ、その点でつけ加えておきたいことは、先ほども申しましたように、一部関係団体は、やはりあくまで市町村の業務としてやるべきである、委託は望ましくない、こういう強い主張を従来からしておられますので、そういう団体との調整という問題が残ろうかと、かように思いますが、その点を除きますれば、その委託先ということに限って問題を申しますと別に問題はなかろうか、私はかように考えております。
  50. 上田卓三

    上田委員 この問題につきましても、先ほどと同じように具体的に詰めた形で別途話をさせていただきたいと思います。  次に、文化庁の方お見えでございますので、埋蔵文化財の問題につきまして御質問させていただきます。  私は、前にも委員会文化庁の方に御質問を申し上げたのでございますが、私の地元大阪、特に羽曳野市、藤井寺市、この二つの市は日本でも埋蔵文化財の多い地域で知られておるわけであります。文化財の保護は重要な問題でございまして、羽曳野、藤井寺両市では、文化財が多過ぎて文化保護事業がなかなかついていけずに、住民の利益がかえって損なわれるという問題が生じておるわけであります。  文化保護法では、文化財の包蔵地での住宅建築や道路建設などに際して、工事の六十日以前に届け出をして文化庁の許可を仰ぐよう決められておるわけであります。しかし、藤井寺市で年間三百五十件から四百件、羽曳野市で年間二百件もの発掘届が出ておるわけでありまして、この許可がおりるまでの日数が六十日をはるかに超える、ひどい場合には届け出から通知までの期間が半年以上もかかって、実際工事を開始するのに一年も二年もかかる、こういう事態が起こっておるわけであります。このことが、思うように住宅の改築もできないといった住民の生活に深刻な影響を与えておるわけでありまして、文化庁の方もそのことについては篤と御存じのことだろうと思うわけであります。昨年九月の文化庁通達によって、立ち会いについては大阪府の独自の判断で進めてもよいということになって、処理日数がやや短縮されたとはいうものの、実際には処理日数六十日という規定はほとんど守られていないというのが事実ではないかと思います。  たとえば藤井寺市の昨年度の届け出件数は三百九十三件、そのうち届け出から通知に要した日数が六十日を切ったのはたったの六十二件、一五%にすぎない。それも通知までの期間であって、実際に立ち会いあるいは試掘等の工事に規定どおりかかれたのは皆無と言ってもいいような状況にあるわけであります。そういうことで、文化庁はこのような事態をどう考えておるのか。埋蔵文化財包蔵地における土木工事等の処理日数を大幅に短縮する必要があると思いますが、どのようにこれを処理されようとしているのか、まずその点についてお伺いしたいと思います。
  51. 逸見博昌

    ○逸見説明員 御説明いたします。  埋蔵文化財包蔵地におきます土木工事等の届け出に関します処理日数は、埋蔵文化財包蔵地の価値、それから当該土木工事計画と埋蔵文化保護との調整の進みぐあい、そういったものによりまして差異がございますけれども、いま先生指摘のとおり、手続の処理の遅延、そういったことによりまして住民に御迷惑をかけることだけは絶対に避けたいという基本的態度で臨んでおるつもりでございます。  ただ、現時点といいますか、少なくとも五十三年度いっぱいまでは大変遅くて、御指摘のとおりのような事態であったわけでございますが、いま申しましたように、手続の処理をできるだけ早くするという観点から、文化庁といたしましては——届け出の件数自体は年々大変ふえております。たとえば端的に申しましても、五十三年度には七千九十一件でございますが、五十二年度は五千六百八十五件ですから、千四、五百件近くの増を見ておる、こういった状況の中で対処しておるわけでございます。  ただ、具体的には、私ども三つの観点からこれの迅速化ということで努力をしたつもりでございまして、第一点でございますが、昭和五十三年の末からは、先ほど先生指摘のとおり、土木工事等の実施に際して、専門職員の立ち会い等簡易な事柄で済むようなものにつきましては、その指示を都道府県教育委員会の段階で行って、文化庁には事後の報告でよいという処理を行いました。これによりまして、たとえば都道府県全体でながめますと、全国の平均では半数近くを占めるものが都道府県限りで処理できるという状況でございますし、大阪府の場合には半数以上が都道府県限りで処理できる。これが第一点の改善でございます。第二点でございますが、文化庁の私ども記念物課そのものに昭和五十三年度から一名、埋蔵文化財担当官を増員して、事務処理の迅速化を図っております。もう一点は、自治省に強く要望いたしまして、昭和五十四年度からでございますが、都道府県に対する普通交付税の単位費用の積算基礎上で吏員が一名増員されておりまして、地方公共団体の体制の充実を図る。この三つの点をあわせて進めておるということでございます。  このようなことから、最近といいますか、昭和五十四年三月、四月の二カ月で例をとりますと、その間にありました届け出、この所要日数は、都道府県教育委員会発送の日から文化庁から指示の発送の文書を出す日までの間につきまして、平均して昨年の末は五十一日かかっておりましたが、約二週間少々短縮をいたしまして、現在、平均三十五日ということで手続の迅速化に努めておるところでございます。今後とも一層この方向に沿って努力を続けてまいりたいと考えております。
  52. 上田卓三

    上田委員 工事にかかるまで長い間待たされる、それだけじゃなしに、調査の結果文化財が出てくる可能性があると判断された場合、いわゆる原因者負担の原則でその発掘調査費用まで負担させられるということが問題をさらに深刻化させておるのではないか、こういうように私は思うわけでありまして、市域の三〇%か四〇%が文化財の包蔵地であり、文化財が特別に、先ほど申し上げましたように羽曳野、藤井寺に集中している。それは、文化財なのですから、決して羽曳野と藤井寺市の責任ではないわけです。また市民の責任でもない。そういう意味で、文化財というのは全国民の共通の財産であるわけですから、このように特別に文化財が集中している地域については、やはりそれなりの特別の対策が立てられてしかるべきだ、このように私は思うのです。文化財が埋蔵しているというのは、全国至るところにあると言えばあるかもわかりませんけれども、そういう集中したところがあるわけですから、そういうところに対して特別の対策を立てるということはぜひとも必要だ、こういうように私は思うわけであります。  その一つとして、たとえば現在個人住宅のみに適用されているところの発掘調査費の公費負担を一定規模以下の営業用建物についても適用できないかという問題であります。私たちが調べたところでは、藤井寺市で、届け出五十件のうち三十四件が個人住宅用で、その平均面積は八十一平米、残り十六件が営業用で、平均面積が四百平米となっておるわけであります。しかし、営業用のうちガレージなどの大規模なものを除くと、平均は二百平米程度でございます。二百平米ぐらいの面積であれば公費負担でもやっていけるのではないか、こういうように思うわけでありますが、この点について文化庁の考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  53. 逸見博昌

    ○逸見説明員 現在の制度のもとでは、発掘調査経費は原因となりました土木工事等の事業者に負担を求めるといったことで進めておりますが、ただ、その判断自体は、現在事業の規模、性格、事業者能力等個々の事案について地方公共団体が判断をして最終的には決めることになっております。この場合の判断基準は、いま先生御提案のように、工事規模等で全国一律に基準を定めることは、原因者の経費負担を平等に適用できるという点では大変有益な制度の一つであろうと考えております。  ただ、事業の目的とか事業の性格、たとえば営利であるか非営利を目的とするものであるかどうか、事業が公的な性格か私的な性格を持つものであるかどうか、あるいは事業者の負担能力はどうであるか、そういった点についての要素を全く考慮しないで、特定の客観的な基準だけで運用してよいものであるかどうか、また、仮にその基準を定めるという場合に、たとえばその規模、面積、先生いま具体に二百平米ということで御提案いただきましたが、それが本当にどの地方公共団体にも共通に正しい基準として適用できるかどうか、大変検討を要する問題があるので、私どもいま大変貴重な御意見だと思いますので、御示唆の趣旨に沿いまして、各地方公共団体における実態も詳細に把握した上、検討を加えてまいりたいと考えております。
  54. 上田卓三

    上田委員 これは深刻な問題ですので、ぜひとも早く解決できるように検討し、早く結論を出していただきたいと思います。  埋蔵文化財の問題が地域の住民にとってこれほど深刻な問題になっている根本的な原因については、文化庁の姿勢といいますか、国の責任ということにもなるわけですけれども、同時に、地方自治体における埋蔵文化財に対する調査とか保護体制がきわめて弱いという状況もあるわけであります。  大阪府の調査専門技師は十八人いるわけですが、そのうち十人が羽曳野と藤井寺を含む南河内地区に集中しているわけでありまして、それでもいま言いましたように処理日数が六十日間を大幅に上回る状況にあるわけでありまして、地元の市町村としては独自に調査専門技師を置いて文化財の調査、保護体制を整えたいという要望を持っていることは持っているわけですけれども、財政的事情などもあってちゅうちょしているのが現状ではなかろうか。かといって、そのような専門技師がアルバイトなどのそういう不安定雇用で確保できるわけでもなかろうと思うわけでありまして、ここはひとつ、地方公共団体における埋蔵文化財調査体制、保護体制を充実させるためには、国として財政的措置を講ずることが一番大事なことではないかと私は思います。特に埋蔵文化財が集中的に存在している地域について特別の措置をぜひとも講じていただきたいと思うわけであります。  大阪へ来ていただいたら本当にわかりますが、いま河内平野は大阪の中央環状線、外環状線、それから近畿自動車道とかいろいろな形で整備されつつあるのですけれども、事大和川から南へ一歩入ったら、埋蔵文化財の問題で、道路一本つけるにしても一軒の家を建てるにしても、下排水の問題も含めて全部この問題が詰まってしまって、一面そういう歴史と伝統のある古い町ということになるのかどうかわかりませんけれども、実際地域の発展を阻害しているのは埋蔵文化財の問題がネックになっているわけであります。そういう点で、いま私が申し上げましたような特別な配慮、措置をぜひともお願い申し上げたいと思います。その点について明確にお答えをいただきたい、このように思います。
  55. 逸見博昌

    ○逸見説明員 地方公共団体におきます埋蔵文化財調査体制、これを充実するためには、私ども現在地方交付税の改善措置につきまして毎年度自治省に強く要望申し上げておるわけでございます。そして近年次のような措置の実現を見ておるということでございます。  まず第一点でございますが、普通交付税におきます地方公共団体職員の人件費にかかる単位費用の積算根拠といたしまして、たとえば都道府県につきましては、昭和四十九年度から五十四年度に課長一人を含みます四名の増員、市町村分については昭和四十九年度から五十四年度にかけまして課長一人を含みます三名の増員が行われております。  それから二番目でございますが、埋蔵文化財に関します特別な財政需要、これに対する特別交付税といたしまして、昭和五十三年度からでございますが、各地方公共団体におきます発掘届け出等件数に対しまして、交付される交付税額の積算単価につきまして大幅な増額が図られております。  こういった地方交付税におきます改善措置に伴いまして、私ども現在把握しておりますところでは、地方公共団体におきましても、埋蔵文化財担当職員は着々と伸びてまいっておるようでございます。昭和五十三年度当初は千四百三十五名でございましたが、これは昭和五十年度に比較いたしますと五百三十七名の増になっております。昭和五十四年度にはさらに二百四十名の増、これが現在のところ見込まれております。そういったことで私どもこの埋蔵文化財の発掘調査体制、地方におきますこの強化のためには何よりも地方交付税の増を自治省に大変強く毎年お願いをしておるわけでございますが、今後ともこの姿勢を崩さず、ぜひこの体制の強化について努力を続けてまいりたいと思っておるところでございます。
  56. 上田卓三

    上田委員 時間の関係もありますし、いずれにしても、南河内の発展の阻害の一つの大きなネックになっておりますから、ぜひともこの改善方を国の責任でひとつやってもらいたい。また具体的な問題については、別途詰めてお話しさせていただきたいと思います。文化財の問題については、その程度で終わっておきたいと思います。  国鉄の方、運輸省の方お見えでございますので、まず最初に、国鉄の駅名の表示についてお尋ねしたいと思います。  国鉄は、その再建に当たって真剣に考えなければならないのは、一つは本当に国民に愛される国鉄として、広範な理解と協力を求めることではないか、こういうふうに思うわけであります。明治時代の国鉄は、国民にとっては唯一の交通機関でありましたし、当時の鉄道省は広範な国民が安心して利用できるようにそれなりの配慮を行ってきたと思うわけであります。  その一つが駅名のひらがな表示の原則であります。これは一応各プラットホームの駅名表示には現在も踏襲されておるはずでありまして、大阪駅には「おおさか」とひらがなで大きく書かれて、その下に漢字とローマ字が小さく併用されておるわけであります。恐らくこれは大阪だけじゃなしに、全国の各国鉄の駅においてはひらがなが大きく書かれておって、その下に漢字とローマ字が小さく出ている、こういうことになっておると思うのです。後でいろいろ質問したいのですけれども、一応これらの表示を決めている鉄道掲示基準、規定というものは一体どうなっておるのか、まず、その点についてお聞かせ願いたいし、プラットホームだけのものではなしに、運賃表が果たしてどうなっているのか、あるいは行き先表示等はどうなっているのか、そういう現状についてお答えいただきたい、このように思います。
  57. 猪俣爲久

    ○猪俣説明員 お答え申し上げます。  国鉄といたしまして、旅客の皆様方にいろいろな情報を提供しなければならぬ場面、ケースがたくさんあるわけでございます。その基本的な考え方といたしまして、聴覚あるいは視覚、最近は身体障害者あるいは盲人の方々のために、触覚を利用するようないろんな情報の伝達手段というのを開発してまいっておるわけでございますけれども、いま先生の御指摘の視覚によりますところのいろんな御案内、表示につきましては、ひらがな、漢字それからかたかなというこの三者を使い分けておるわけでございます。  その基本的な考え方でございますけれども、ひらがなは、表音文字といたしましてきわめて平易な利点がございますので、それをベースにいたしますが、若干その欠点もあるわけでございます。と申しますのは、かなり字数がふえます。それから、たくさんございました場合の認識速度が漢字に比べて遅いという欠点がございますので、最近は漢字もかなり使っておりまして、それぞれの長所、短所ございますけれども、それぞれの状況に一番ふさわしい字体を用いるというふうなことで対処しておる状況でございます。
  58. 上田卓三

    上田委員 漢字とひらがな、私はどちらかにせよと言っているのではなしに、現実に明治以来、全国の各駅のプラットホームには、ひらがなを大きく、そして漢字とローマ字を小さくという形になっておるわけですね。やはり字を知らない人、義務教育を終了していない人たちが果たして何人おるというふうにあなた方は理解しておるのかという問題に私はなってくると思うのです。だから、たとえばただ一人であっても、一人のためにそんなことをするのかということになるのですけれども、私は費用は一緒だと思うのです。だから、だれが見ても——漢字も書けばいいのですから、当然外国人のためにはローマ字も使ってあるのですから、どれかにせいと言っているのではないのです。漢字を読めない人もおるのだし、特に駅は地名などとよく似て、たとえばぼくが北海道へ行く、九州へ行くといった場合に、どう読むのかなというような駅の名前もあるわけです。だから、私は、ちゃんとだれでもが正しく読めるような状況にすべきではないか、こういうように思っておるわけです。  特に、新幹線はその最たるものですね。新幹線の駅は完全にひらがながなくなったですね。プラットホーム、私、全部これを写真に撮ってきて調べてきているのです。この写真は大阪の地下鉄ですけれども、ひらがなは全然なしです。天王寺という字を知らぬ人間はおらへんだろうということになるかもわかりませんけれども、私は、やはりそういうような考え方に立つべきではない、こういうように思いますし、特に、切符売り場ですが、いまはもう皆自動販売機みたいになってしまっているから、年いったおばあちゃんが、たとえば天王寺へ行く切符を買おうと思ったって、どのようになっているのやらわからぬというので、うろうろせなければならぬというような状況がありますし、確かに切符を売る窓口もあるのだから、そこへ行って天王寺と言って買えばいいということにもなるのかもわかりません。しかしながら、駅によってはこの窓口での切符売りは時間制限をして、いつ行っても売ってくれるというような状況になっていない場合が多いわけです。  だから、私は、どれが便利がいいとか悪いという問題ではなしに、だれでも、日本語のわからない人はローマ字でわかるし、漢字でわかる人は漢字で理解するし、それが一番わかりやすいということ、それは確かにひらがなよりも、漢字を知っている人は字数が多いよりも少ないことの方がぱっと頭に入るということにもなりますけれども、その点、いまの答弁はなっていない。だから、明治時代のそういういい伝統というものは踏襲すべきではなかったか、こういうふうに思いますので、私は、その点についていまの答弁は納得できませんので、はっきりとお答えをいただきたい、このように思います。
  59. 猪俣爲久

    ○猪俣説明員 御指摘の点で、二点ほどございましたけれども一つは、自動販売機の切符売り場の件でございますが、実は自動販売機は比較的最近に開発された機器でございまして、十年前ぐらいからかなり大量に投入が始まっておるものでございます。実はこの自動販売機の運賃の御案内につきましては、駅の建屋の構造その他がそういうものの開発を予測しておりませんでしたもので、その設置なりあるいは御案内の仕方全般につきまして、われわれ非常に問題点があるというふうに認識しておるわけでございます。  その中で、現在券売機の上に運賃表を出しておりますが、先生指摘のように漢字と運賃が主体でございます。確かにお話しのようなひらがな程度しかお読みになれないという方々がかなり利用者の中にいらっしゃるという点についてのわれわれの認識と申しましょうか、配慮というものが不足しておったということについては、実は最近に至りまして、この券売機の問題、いろいろございますけれども、その中の一つとして深く反省しておるわけでございます。  今後の取り組みでございますけれども、駅の構造の問題、いろいろございますので、これは一律に対処するというふうな形ではございませんので、やはり実態を踏まえまして、それぞれの駅の状況がございますから、何らかの形で改善の努力というものをしてまいるべくいま調査しておる状況でございます。  それからもう一つ、新幹線の駅名板のお話でございますけれども、新幹線の駅というのは在来線と違いまして数が少のうございます。いわゆる主要駅に限られておりまして、難読駅というものもございませんし、三十九年に開業いたしましたときに、現在の漢字とローマ字の併用に踏み切っておるわけであります。この辺も、先生の御指摘もあるわけでございますが、今後検討してまいりたいというふうに考えております。
  60. 上田卓三

    上田委員 これは以前に私の方から国鉄当局に、こういう点は改善してもらいたいということを申し上げてあったわけで、特に五月二十日以後、運賃の値上げということで新しく運賃表などを含めてつくりかえるという状況の中で、私はこういういいチャンスをなぜ逃がしたのかということで非常に憤慨しているのです。残念だと思っているのです。  いまお答えのように、具体的にどういう形でやっていくかということは、具体論の問題があるとは思いますけれども、私はいずれにしても、いまあなた方が認めておるように、その必要性を痛感するならば、直ちに全国一斉に——その問題についてどの程度の費用が要るのかわかりませんが、私は大した費用じゃなかろう、国鉄自身がPRしているいろいろの宣伝経費から見たらほんのわずかと見てもいいのではないかと私は思いますし、特に義務教育未終了者、これが全国で何人おるのかということを文部省の諸澤初中局長に質問したときに、つかんでないのだという話があって、非常に怠慢ではないか、全国に夜間中学があり、あるいは識字学校があったりして本当にみんな苦労しておるではないか、こういう点を申し上げたわけでございますが、NHKが調査したところによると約二百万人おるという数字を示しておるわけです。NHKが調査されて二百万だと言うのだから、私はほぼそれは正確ではないか、こういうように思っておるわけです。  国自身が、文部省あたりがそれを把握してないというところが私は非常に残念でありますが、そういうことになれば、こういう方々が文字を知らぬということだけで電車に乗って出かけることも、外出ぎらいというのですか、そういうものにもつながってくるのではないか、こういうように思うわけでありまして、私のもとへ何とかあれを改善してもらえぬかということで熱心に言ってこられる方もあるわけでございまして、それは私だけではなかろう、こういうように思っておるわけであります。  私は、認識の違いだ、たとえ一人でもという極端なことを申し上げましたが、国鉄当局は、字の知らぬ人はいない、いま日本は教育水準では世界のトップクラスだ、いわんや新幹線にひらがなを振っていたら外国人が見てもかっこう悪い、そんなしようもないプライドを持っておるのではないかという気がしておったわけであります。また、そういうことを言う国鉄職員も現実におったということでありまして、そういうことのないようにぜひともやっていただきたい。新幹線のホーム、それだけではなしに、一般の自動販売機、出札口あるいは切符そのものにもその点はひとつ明らかにしていただきたい、こういうように思っておりますので、その点について特にもう一度、そういう観点から新たに決意を述べていただきたい、このように思います。
  61. 猪俣爲久

    ○猪俣説明員 先生の御意見を参考にいたしまして、サービス改善のいろいろな施策にいまから検討に入るわけでございますが、その中で貴重な御意見として参考にさせていただきます。
  62. 上田卓三

    上田委員 運輸省の方に、それに関連してお聞かせいただきたいのですが、公共輸送機関全体について言えることでありますが、私鉄、それから地下鉄、バス、船舶、飛行機などの各ターミナルの料金あるいは駅名の表示はどうなっておるのかということで、確かに一定の基準なしに、ばらばらで思いつくままのやり方になっておるのではないかと思いますので、その点について運輸省の方の見解、現状はどうなっているか、どのように今後しようとしているのか、その点についてお聞かせいただきたい、このように思います。
  63. 中村徹

    ○中村説明員 私鉄、地下鉄の関係について答弁させていただきます。  私鉄、地下鉄の駅名表示につきましては、ひらがな併記あるいはひらがな表示を行っているものがかなり多くなってはおりますけれども先生、先ほど大阪の市営地下鉄について御指摘があったように、たとえば大阪市につきましても六十一駅のうち三十四駅だけがひらがな併記になっておるという現状でございます。  こういう駅名表示あるいは運賃料金表の表示をひらがなでやるべきか漢字でやるべきかということについては、行政的に規制があるわけではございませんので、各事業者の判断において現在行っておるわけでございますが、本日御指摘のような事柄も踏まえまして今後十分検討してまいりたい、このように考えております。
  64. 上田卓三

    上田委員 検討やなしに改善するのですな。
  65. 中村徹

    ○中村説明員 改善する方向で検討してまいりたいということでございます。
  66. 上田卓三

    上田委員 一応、駅名のひらがな併記についてはその程度にしておきたいと思います。  次に、運輸省の自動車局の方、お見えだと思いますので、お伺いします。  ハイヤーあるいはタクシーの都市交通に占める比重は、いま非常に大きいものがあるのではないか、こう思います。車の置き場もないような大都市の市街あるいはバスの最終の後などは、旅客輸送は大きくハイタクに依存しているのが実態ではなかろうかと思うわけであります。確かに自家用車に比べて輸送効率でははるかにすぐれているタクシー、ハイヤーなど、公共輸送機関として明確な位置づけを与えて、バスや地下鉄とともに、これなしには現在の陸運行政のテーマでありますところの、自家用乗用車交通の総量の抑制あるいは公共輸送機関の優先、充実による効率的交通体系の実現はむずかしい、こういうように思うわけであります。  いずれにいたしましても、タクシーを公共輸送機関として明確に位置づけておられるのかどうか。確かにタクシー料金などは許可制度というような形でそういう立場からはされておるのですが、それじゃハイタクは公共輸送機関的な扱いを実際受けているのか。規制の方は確かに受けているのですが、そういう待遇というのですか、措置ということになってきたら皆無に近いのではないか、私はこういうふうに考えますので、その点について、まず最初にお聞かせ願いたい、このように思います。
  67. 角田達郎

    ○角田説明員 お答えいたします。  タクシーにつきましては、鉄道やバスが都市内の大量の定形輸送を担っているのに対しまして、そういうものによりがたい需要に対しましてドア・ツー・ドアでサービスを提供する。このような意味におきまして、鉄道やバスとともに、それを補完する公共的な輸送の担い手というふうに考えて、私ども行政をやっております。したがいまして、補助金とかそういうような財政上の措置は、特にいまのところ私どもとしてはとっておりませんけれども、税制面等におきましては、自家用車に比べて有利な施策をとっておる、こういうようなことでございます。
  68. 上田卓三

    上田委員 運輸省の方々の中には、やはりハイタクというものはちょっとぜいたくや、鉄道、国鉄も私鉄もあるし、バスもあるじゃないか、そういうものを利用するべきだ。だからハイタクについては、かえって料金をある程度引き上げることによってぜいたくなものにしておいた方が、バスに乗る人もふえるのではないかというような考え方があるのじゃないか、私はこういうように思うのです。  確かに、そのことによってバスやあるいは電車に乗る人もあるかもわからぬが、逆にそういうハイタクの料金が高い、年々上がっていくというような状況の中から、やはりマイカー族がふえているのですね。だから、マイカー族というのか、自家用の総量をある程度抑制していこうと、もしか考えるならば、ハイタクを安く国民に提供することによって、自家用というものをある程度抑制していくことが可能ではないかというように私は思っているのですね。だから、公共機関のバスなどを利用させるために、タクシーの料金というものを別扱いするというよりも、今日ではもうハイタクというものは、国民にとっては欠かせない大衆的な乗り物になっている、そういう意味では全く公共性があるというようにわれわれ考えざるを得ないと思うのです。  そういう点で、いまのお答えのように、公共輸送機関としての位置づけがある、こうおっしゃっておるわけでございますが、それじゃ具体的にハイタクに対してどういうような国の援助があるのかということを言うと、もう皆無に等しい。特に私が問題にしたいのは、たとえばバス、それからトラック、こういうのは非課税ですね。これはそういう輸送機関というような形で非課税になっておるわけですけれども、たとえば物品税、軽油引取税、事業所税などが課税されておるわけでありまして、重量税なども加算しますと、合計九種類もの税金がハイタクにかけられておるということでありまして、大阪のタクシー協会の計算によると、一台当たり年間納税額は、LPガス使用車両の場合で二十九万三百五十四円、ガソリン使用の場合は四十八万六千四百四十三円にもなっておるということですね。  そういう点で、バス、トラックの場合は非課税でありながら、ハイタクの場合は九種類も、あれでもかこれでもかというような形で課税対象になって、一台当たりの年間の納税額がいま言ったような額になっている。     〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 これがやはり私はタクシー料金にはね返っていく大きな原因にもなっておるというように思うわけでありまして、そういう点で、やはり公共的性格を持つというように認めるならば、私は直ちにバス、トラック並みの非課税にすることによって、ある程度公共輸送機関としての位置づけ、あるいは国民に愛されるというのですか、本当に手足になって安く利用できる、そういうタクシーにすべきであるというように思いますが、その点について見解を明らかにしていただきたい、このように思います。
  69. 角田達郎

    ○角田説明員 自動車、特に営業車にかかります税金につきましては、バスであるとか、バスにつきましても、乗合バス、貸し切りバス、それからトラック、タクシー、こういうものに対しまして、自家用車に比べて、いろいろな税制面での優遇措置がされておりますけれども、必ずしも営業車ということで一律に優遇されているということではございませんで、やはりその間に軽重といいますか、特に税制面で、重量税なら重量税につきましてバスの方を優遇するとか、トラックの方を優遇するとか、その辺の高低が若干ございます。  しかし、タクシーにつきましても、重量税等につきましては自家用車よりも優遇されておりますし、それから、先ほど先生おっしゃいました事業所税につきましても、これはタクシー事業全般ではございませんが、ある一定の両数以下のタクシー事業につきましては非課税にしておるというようなことで、大蔵省あるいは自治省等の税務当局に対しまして、私ども税制改正の都度いろいろなお願いをして、タクシーの公共的な使命を十分果たせるように従来からいろいろ努力しているところでございまして、先生がいまおっしゃいましたような点を踏まえまして今後とも努力してまいりたい、かように考えております。     〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  70. 上田卓三

    上田委員 だから、バスとかトラックに比べて非課税の対象になっておらないということは、そういう意味では不当であるということですか。それで改善しようということですか。その点、どうなんですか。そういうように差があってあたりまえだというような考え方なのか。どういう意味で検討するのか、ひとつ中身について聞かせていただきたいと思います。
  71. 角田達郎

    ○角田説明員 やはりそれぞれの事業ごとにやっております使命なり事業環境といいますか、そういうものが違いますから、すべて一律にタクシーをバス——バスといいましても、たとえばバスの中でも、都市バスと地方バスではいろいろな経営環境が違います。したがいまして、都市バスに対しましては、国としても補助金等のいろいろな財政上の助成をしておりませんが、地方バスにつきましては、年々お客さんが減っておりますので、運賃値上げあるいは企業の合理化等だけではカバーできませんから、地方公共団体と国とで補助金を出して路線を維持しておる。  こういうようなことで、同じ乗合バスにつきましても経営環境の差がありますので、それぞれの助成の程度なり内容なりは変わってくるわけでございます。したがいまして、タクシーとたとえばトラックとかバスとかいう事業と比較いたしましても、まだタクシーの方は、適切な運賃値上げをしてまいりますれば、経営上そうお困りになるというような状態では現在ないと私ども考えておりますので、その点を踏まえていろいろな面で措置をしていくということでございます。
  72. 上田卓三

    上田委員 いずれにしましてもタクシー業界というもの、私も大企業の場合は知りませんけれども、三十台とか五十台とかあるいは百台とか、こういう中小企業が多いのですね。大阪でも百八十社ありますけれども、本当にそういうクラスが会社数で言うと大体七割にも八割にもなっておる。全体の台数から言うならば、大企業の数社で、ある程度半分以上押さえているということはあるにしても。そういう中小零細企業業界方々意見を聞いておったら、確かに世間では何かこう料金を値上げしてもうけているように思われているが、実際はタクシーそのものでは採算がとれない、どうやらやってきているのは、日銭というのですか、日々料金が入ってくるということで、タクシーが副業になっておるのじゃないかというようなところもあるようですけれども、別な方法で、ある程度タクシーの部門に対してカバーしていく、こういうような状況にあるように聞いております。  特に、そういう中でハイタク労働者に対してそういう過酷な労働条件になっておる、神風タクシーというようなことも一時言われたわけでございますけれども、本当に公共的な輸送機関、国鉄にしても私鉄にしても、そのほかいろいろありますけれども、実際、国民が日々一番便利よく使っているところのハイタクの状況が全く差別的に放置されておる。業界もそうだし、またそこに働いておる労働者の生活は非常に圧迫されておるのじゃないか。そういうことから、交通事故の問題もありましょうし、またスピード違反とかそういういろいろな形の問題が生じてきている。ちょっとスピードオーバーすると、すぐつかまってしまう。あるいは子供が飛び出してきて、後ろが追突してくるというようなことで一気に免停を食らってしまう。そうして、車をおりてしまいますと、もう給料も十万円ぐらいしか、下車勤務という形で十万円以下の生活になってしまって大変な状況になっておるわけであります。  そういうことを踏んまえて、早急にトラック、バス並みの非課税にし、それだけではなしに、業界に対して、運転者の待遇改善も含めて抜本的なそういう対策を立てないと、タクシーの公共性というものをあなた方が、言っているにもかかわらず、現実はそうなっていないということになるわけでありますから、その点について特に力を入れてもらいたい、私は、こういうふうに思います。  それと、一般消費税の導入については、わが党あるいは各党においても反対されておるわけでございまして、自民党の中でも相当異論がある、反対であるという方々もあるようでございます。時期の問題もあるかもわかりませんが、いずれにしてもわれわれは反対であるわけでありますが、特にタクシー業界からは運輸省に対して、一般消費税の導入からはハイタク業界は除外してくれということを強く言われておるようでございますし、そういう点について、運輸省が大蔵に対してどういう態度で臨んでおるのか。われわれは、一般消費税そのものの導入について反対でございますが、特にこのタクシー業界での導入に対して、運輸省が一体どう考えておるのかということについてお聞かせをいただけたら非常にありがたい、このように思います。
  73. 角田達郎

    ○角田説明員 一般消費税の問題でございますが、御承知のように、昨年の十二月に政府の税調で一般消費税につきましての答申が出されております。したがいまして、私どももこの一般消費税かバスとかトラックあるいはタクシー、こういう事業に具体的にどういうような影響を及ぼすか、この辺の分析、検討を現在鋭意やっておるわけでございますが、いずれにしましてもバスとかタクシー、こういう事業は労働集約産業でございまして、消費税から受ける重圧がほかの産業に比べて非常に大きいように思います。  それから、特にタクシーについて言いますと、個人タクシーというような零細なタクシーがございまして、売上高が非常に少ない分野もございますので、そういうところと大手の法人タクシーや何かとの調整をどうするか、運輸関係事業につきましては、いろいろそういうような問題がございますので、その辺の問題を十分踏まえて今後善処していきたい、かように考えております。
  74. 上田卓三

    上田委員 時間も来たようでございますので、この点については、また別途の機会にさしていただきたい、このように思います。  あと、警察庁の方も来ていただいて、いわゆる優秀プロドライバーの育成の点とか、あるいは国鉄の方には大阪の外環状線の促進方等について質問を用意しておったのですけれども、時間が来ておりますし、具体的に高木総裁が、これは他を差しおいてもということでやってくれておるようでございますし、特に大阪は岸新知事が実現いたしまして、大変熱心にこの問題に取り組んでいただいておる、府市一体でまた関係各市とも協議してやっていただいておりますので、そういう点で国鉄当局、運輸省においても十分この実現方に努力していただくようにお願い申し上げまして、一応私の質問をこれで終わりたい、このように思います。
  75. 藏内修治

    ○藏内委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時六分休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  76. 藏内修治

    ○藏内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岩垂寿喜男君。
  77. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうもテレビのゴールデンタイムにかかってしまって、皆さんも聞きたいと思うのだけれども、時間を拘束して恐縮でございます。実は、私も見たいのですが、同じ時間になってしまったわけですが……。  冗談はさておいて、これまでは、各省設置法の一部を改正する法律案という形で私ども内閣委員会で議論をする、その機会を通して各省での配置あるいは統廃合などについて、もちろん事務所の問題まで含めて、いろいろな形で民意が反映されるシステムが担保されているわけでございます。ところが、これからはそのチャンスが失われるということにならざるを得ません。附属機関や地方支分部局の設置や整理統合というのが法律事項から外されることになるということについて、紋切り型に言えば国会の審議権の侵害だというふうに私どもとらえざるを得ないのでございます。この点をこれからどう担保していくのかということを、私はこの際、大臣からしっかり承っておきたいという感じが実はするのであります。  なぜかといいますと、いまは行政管理庁が窓口になって、こうやっていますが、法律が通ると、今度はそれぞれの問題になっていくわけです。それぞれの運用について、それぞれの省の法律の扱いについてどのような積み上げといいましょうか、担保といいましょうか、国会審議権を侵害するものでないという担保をすべきものについていままで御努力を願っているのか、その点についてしっかりひとつ御答弁を煩わしたいと思うのです。
  78. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまの御心配の点でありますけれども、御承知のように、いま地方支分部局というようなものを総計いたしますと約二万五千にも及ぶ、こう言われております。その中で法律で決まっておるものが現在約六百、その六百の中で三百というものは残して、あとの三百についてこれの整理をしよう。その整理と申しますのは、現在の決まりが各省によりまして区々になっております。ある省は法律で決め、ある省は省令で決めておる。これは事の軽重によりましてそろえた方が適切なのじゃないか、こういう考えに基づいてこれが発想されておるわけでございます。そこで、比較的軽易と思われるものは省令に持っていく、こういうことで、それは横並びに並べてみると、大体同じようなものが横並びになっておるというふうな考え方でできております。  そこで、しかし、そういうものについてもやはり問題のあるものは出てくるじゃないかということになるわけでございますが、それが一体どういうところでチェックできるのだということになるわけでございますけれども一つは、私ども行政管理庁は、この省令のものといえども、全部これは合い議を受けてここでチェックをすることになっております。  しかし、それじゃ一体民意を直接反映する面においてどうかという問題が大きく残るわけでございますが、この点は国政調査権に基づきまして、国会の方におかれまして、あるいは地方でいろいろお耳に入ったようなことについて、これを問題として論議をされるということはできるわけでございますので、現在でも、その非常に数多くの二万幾らというものの中についても法律でないものはそれだけあるのでございますけれども、それらについてもお取り上げいただいて、ここで御論議をいただくというケースも多々あるわけでございますので、私どもはそういう問題のあるものにつきましては、できるだけよく検討をして妥当な結論を得るようにいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  79. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私どもも率直なところ、これが法律事項かなと思うようなこともないわけではありません。ただ、去年の営林署の統廃合の問題について、地元の人たちあるいは自治体あるいは関係の労働組合なんかからかなり切実な要望が出されて、そのことをめぐって本委員会でもかなり長時間にわたってやりとりが行われております。現場に行けば行くほどそれらの実態がよくわかるわけであります。  先ほどの第一問と同じような意味ですけれども、そういう地域社会の利害みたいなものがたくさん出てくるということは十分予想されるわけですから、これから行政管理庁がそういう住民の意思というものを尊重する、そして政省令で勝手にやっていくことのないようにこれから努めていくということを、この法案の審議に当たって、大臣からきちんと議事録の中にとどめておきたい、そういう不安を私は解消したいという感じがしますので、言わずもがなかもしれませんけれども、念には念を入れて質問を申し上げておきたいと思います。
  80. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまの点につきましては、これはできるだけ民意を尊重すると申しますか、そういうことについては努めてまいりたいと存じます。  ただ、非常に小さいもので、性質上それは統廃合していいものだというものにつきましても、地方にとりましては、それをなくされることはやはり非常に困るという問題もあります。これらにつきましては、地方に反対があればもうやらないんだということでは、恐らく整理統合というようなことは不可能になりますので、その辺のところは、その妥当性というものの判断、また地域住民の納得を得るだけの努力をするというふうなこと、いろいろな面を総合してこの目的を達するようにいたしたい、かように考えておりますので、民意を無視して、決まったからすぐばっさりだ、こんなような考えは決して持っておりません。
  81. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 念を押して大変恐縮ですが、地域に、あるいは関係の労働者と言っていいかどうかわかりませんけれども、組合などから反対がある場合には行政管理庁として、それは各省の問題だという始末の仕方でなしに、やはり慎重に対応する、そして理解が得られるように努力をする、これをもう一遍お答えをいただきたいと思います。
  82. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまの点につきましては、いまお話しのように、私どもといたしましても、十分その辺は委曲を尽くした処理をするようにいたしたい、こう考えております。
  83. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 わりあいに国民生活に密着した行政組織の面があるわけです。それを、一方的にとあえて私は言いませんけれども、統廃合をするということによって、行政サービスが低下されはしないかという懸念というのは現実にあるわけでございます。こういう問題は、やはり懸念は懸念としてきちんとしておかなければなりません。  ですから、この懸念について長官に、ぜひこの際、そういうことのないようにということを含めて御答弁を煩わしておきたい。くどいようですけれども、私としては、この法律が成立をする可能性の強い条件のもとで、ちゃんと担保すべきさまざまの手だてというものを申し上げておりますので、その点は御理解の上で御答弁をいただきたいと思います。
  84. 金井元彦

    ○金井国務大臣 その点につきましては、十分配慮をいたしたいと存じます。
  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この法律に関連をして、実はそこに働いている労働組合の諸君なんかの御意見を私どもなりに聞いてみますと、配転を含めての労働条件の切り下げといいましょうか、そういう問題を非常に心配をいたしております。それは何が何でも既得権だという議論では、あるいはないだろうと私は思うのですけれども、しかし、少なくとも労働条件の切り下げ、引き下げというふうなことを一方的に押しつけるというのは正しくない。昨今の民主社会において労使の関係の安定というものを考えなければならぬときに、そういう問題についてかなり神経質であってほしいものだ、こう思うのですが、管理庁の手を離れてしまうと、各省の組合と当局、こうなっていくわけです。  やはりこの機会ですから、当該の労働組合と当局といいましょうか、それから同時に、管理庁も含めて、ややこしい問題かもしれませんけれども、事前協議などを含めて、あえて含めてと申します、そういう不安あるいは不満が解消できるような、そういう誠意といいましょうか努力といいましょうか、そこのところをお約束いただけますでしょうか。
  86. 金井元彦

    ○金井国務大臣 働いておる者にとりまして、身分の問題あるいは勤労条件の問題というものが非常に切実な問題であることは、おっしゃるとおりでございます。私どもは、それを一方的にどうこうというような考えは持っておらないのでございます。したがいまして、これらにつきましては、やはり十分な理解のもとにやってまいるという手法をもってまいりたい、かように考えております。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 念には念を押すようなかっこうでちょっと恐縮なのでございますけれども、やはり見る人によりますと、この法律が発効して、法律事項から外されてしまうと、政府、各省がばっさばっさと整理統合を行う懸念を感じる人々もいるわけでございます。たとえば設置場所にしても、あっちからこっちへ動かすことも今度は勝手にできるのじゃないか。あるいは統合でも同じです。そこのところが、やはり一番最初質問に戻っていくのですけれども、その心配を余りむげにそんな懸念はないと言うわけにもいきません。  そこで、もともとこの法律は機動的、弾力的に行政組織を編成するというたてまえから提案理由の説明を承っておりますが、この法律の目的といいましょうか、趣旨から逸脱することのないような努力というものを、私各論に入りませんけれども、総論部分で押さえておきたいというふうに思いまして伺うわけですが、この法律の審議の中でもう一遍御公約を願いたいと思います。
  88. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまの点は、これはもう十分考慮してまいりたい、こう考えております。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 同僚議員も何回か各方面から質問をしていますから各論には入りませんで、許認可の関連で質問をいたしたいと思います。  昭和五十二年の十二月に閣議決定された「許認可等整理合理化」の計画がどのように進んでいるかということについて御答弁をいただきたいと思います。
  90. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 一昨年の十二月に閣議決定されました「行政改革の推進について」、この中で許認可等につきまして千二百四十事項を整理合理化するというふうに決められております。  この中で法律に関係する事項が百七十事項ございまして、これにつきましては、第八十四回の通常国会において成立しました許可認可等整理に関する法律等により、すでに百五十事項済んでおります。あと政省令の関係でございますけれども、これがその残りの千七十事項ございますが、これについても各省がそれぞれに所要の措置を講じておりまして、現在、そのうち九百八十事項が措置済みになっております。合わせまして千百三十事項がすでに措置済みになっております。これで措置率は大体九〇%というふうになっております。  現在のところ、そういう状況でございます。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 五十二年の十二月の閣議決定では「五十三年度末までに整理合理化を行う。」というふうになっていたそうでございますが、現時点でまだいま御答弁をいただいたような未措置事項が残っている理由をお答えをいただきたいと思います。
  92. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 先生お話しの「五十三年度末までに」というのがまだ残っている理由でございますが、まず第一番目に、法律の改正が必要な事項で今国会に、現在法律改正をお願いしておりまして、この法律改正後でなければ、その政令等が改正できないというようなものがございます。二番目に、各省庁と私どもの間でいろいろ協議を重ねているわけでございますが、その協議が調っていないものが若干ございます。  こういう状況でございまして、法律改正を要する事項については、ただいま御審議をいただいております許可認可等整理に関する法律案の成立によって、その他の事項についても、各省庁間の協議によって次第に措置されるというふうに見込まれております。今後とも、その推進に努力していきたいと考えております。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 「若干」とおっしゃいました。省庁間の調整が済んでいないというその若干というのは、どのくらいの数になっておりますか。
  94. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 パターンによって、いろいろございますけれども、概括で申しますれば、約二十事項というふうに考えております。
  95. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 念のために伺っておきますが、各省庁間の問題について言えば、どこが一番多いですか。
  96. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 現在、措置の済んでいないのが多いところは、運輸省、通産省等でございますけれども、これもいろいろなパターンがございます。たとえば路線または工事方法書の記載事項の変更の許認可、これ等につきましては、運輸省及び建設省の共管事項になっておりまして、その両省の間で、権限移譲の問題で意見が分かれておりまして、まだ協議中、検討中というようなのがその例でございますけれども、そういったパターンが多うございます。
  97. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまの、運輸省と協議が調わないというのは、市民生活にかなり密接な関係があるのです。これは、早く調整してまとめてもらいたいという感じがします。その点は、どんなタイムテーブルで考えられますか。相手のあることですから、予定で結構です。
  98. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 その前に、ちょっと私、言い間違えましたが、通産省は全部、一〇〇%措置済みでございます。大変失礼申し上げました。  いまのタイムテーブル、今後のスケジュールの話でございますけれども、私ども許可、認可の整理合理化を進める際に、いろいろなやり方をしておりますけれども、たとえば昔の臨調の意見、あるいは行政監理委員会意見、あるいは知事会等の意見、その他各種の団体からも意見が寄せられます。そういうものを考え、また各省庁が総点検をしていただくといったような行政改革計画に盛り込むようなやり方、そういう機会をとらえてやってきているわけでございますが、今後も、いま申し上げましたようなやり方で、機会をとらえて速やかにやっていくというふうに考えております。
  99. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今度の法律の内容を見ますと、わりあい軽微という言葉が妥当であるかどうかは別ですが、共管事項にしぼられているという感じがするわけですが、もっと思い切って許認可等整理を行うべきではないかという見解に立つわけですが、その点についての御答弁をいただきたいと思います。
  100. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 許認可等整理に関する法律案、こういう一括整理法案を御提出して国会で御審議いただくのは、過去九回提出して御審議いただいております。その審議の中におきまして、各施策の重要な基本的な制度あるいは政策、こういうものに触れるものは一括整理法案に盛ることが必ずしも適当ではないのじゃないか、それぞれの施策の中で議論すべきである、こういう御意見もございまして、それでこの法律案の中には、一括して盛り込み得るような事務手続と申しますか、そういった面に限るように配慮しているわけでございます。  でございまして、先生指摘のように、やや軽微なものが多いというような印象を免れないわけでございますけれども、それでもやはり、国民の負担の軽減なり、行政事務の簡素化なりということには資するわけでございますので、そういう観点から、そういう効果を期待して、この法律案をお願いしているというわけでございます。
  101. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私も実は余り詳しくないのですけれども、いまやっている政府の許認可等整理というのは個別案件、しかも、各省庁のいわば許認可というものを抜き打ち的にという言葉がいいかどうか知りませんが、やっているという感じなんです。それで、さっき大臣も「横並び」という言葉を言われましたけれども、各省庁の許認可などの横断的な見直しといいましょうか、あるいは規制方法の整備をやらないといけないと思うのです。役所と言ったら紙と判こということが連想されるように、補助金の書類などとあわせて、これらの問題が大きな問題だということも、私も地方行政委員をやっていたものですから感じます。  そんな意味で、この際思い切って、非常に大きなランクでまとめて、そして整理統合というか、それをやっていくというお気持ちがあるかどうか、これをまず承りたいのですが、その前に、そういう問題について行政管理庁は検討なさるおつもりがあるかどうか。その場合に——場合に、場合にが続いて申しわけないのですが、たとえば営業の問題あるいは個人的な身分の規制、資格問題などについて、大きく分けてみて、法律が幾つあって、種類が幾つあるかというようなことを、大臣でなくて結構ですから、まず最初に教えていただきたいと思うのです。
  102. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 横並びの問題でございますけれども、パターン別にわれわれいろいろ検討はしているわけでございます。  先生お話の、特定営業の規制に関するもの、私どものつかまえているのでは約百三十法律に関係があるのじゃないか。業種にして三百業種程度であろうと考えております。次に、個人の身分資格の規制に関するもの、これの法律数が約百法律程度ではないか。それで種類は三百種類ぐらいではないか。そのほかございますけれども、いまの二つの点では、そのくらいの見当になるのではないかと考えております。
  103. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまみたいな形で、ジャンル別に分けてみると、何項目くらいに非常に大きく分けられますか。
  104. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 これは検討中ではっきりしたことは申せませんけれども、私どもがいま脅えているのは、大きく分けますと五種類ぐらいを検討の対象にしております。
  105. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その中身を言ってください。
  106. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 いまの、二つ申し上げました特定営業の規制に関するものとか、あるいは個人の身分資格の規制に関するものとか、あるいは団体活動の規制等に関するもの、あるいは給付助成に関するものというような種類のものでございます。
  107. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 許認可というのは、できたらやはりそういう全体を見直さなければだめなんです。百三十も法律がばらばらになっていて、種類が三百ある。それがみんなばらばらになっている。ここのところを思い切って横断的に見直して、そうして「横並び」という言葉がお好きなんですから、横並びに対応していくということが必要だと思うのです。これは、大臣は知事を経験なさっていらっしゃるわけですから、この点一番わかると思うのです。この点を研究して、実行する方向で決断すべきである。これは非常に大きな問題なんです。この点について、大臣の前向きな御答弁を煩わしたいと思います。
  108. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまお話のような考えに基づく調査を継続していたしております。  ただ、いままでのところでは法規をもとにしての調査でございますが、やはりこれは実態調査をやってみないと、ただ紙の上だけでどうこうということはやはりできない点がございます。これをやるにはかなりの時間を要するわけでございまして、それらを積み重ねまして、ひとつ大きく考えてみたらどうか、かように考えておる次第でございます。何分にもこれはちょっと手間と時間を要する問題でございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。
  109. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その点で、知事御経験の大臣ですから、申し上げるのですけれども、できれば、地方分権の時代でございますから、国と地方の仕分けみたいなものもぜひ調査をしていただければ、非常に時宜に適している、情勢にマッチしている、私はこういう感じがするのです。  けさの新聞などを拝見しますと、自由民主党の田園都市構想何とか委員会というのがまとめたいろいろな案を拝見いたしました。私ども、これは全体として賛成だというわけにいきません。しかし、かなり積極的に、首都圏ですけれども、たとえば地方債などの許可をもう必要としない形で自治体に任せていくというようなことだとか、運輸だとか交通だとか、そういう問題についても、その地域の実態に合わせてやっていくことが必要じゃないか。これは日本行政機構、つまり国と地方の事務の分配という上で避けて通ることのできない問題だろうと私は思うのです。  ですから、いま大変むずかしい御注文を申し上げて恐縮ですが、そういう全体的な見直しとあわせて、できれば国と地方のそういう事務の再配分というものを意味しながら、しかも行政実態にマッチした、そしていま国民が求めている分権と自治という課題にこたえていく、こういう問題点についても調査の対象に加えていただきたい、こういうことを要請したいと思うのですが、大臣、その点はどうですか。
  110. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまの御指摘は、非常に重要なポイントだと考えます。私どもも、私どもと言うよりも私個人ということになるかもしれませんけれども、これは、あり方としてそういう方向に向かって大きく展開をするということが必要であると私は考えております。いままでそういう考え方に基づく提案と申しますか、そういうものはもうずいぶんたくさん出ておるわけなんでございます。しかしながら、これがなかなか実行に移されないで、答申というようなものがたびたび繰り返されておるという現状でございますが、しかし、それではもうぼつぼつ済まなくなる時代に来ているのではないか、そういうことをもあわせ考えまして、私は、やはり方向づけをすべき時期に非常に近づいておる、こういう考え方を持っております。
  111. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 「地方の時代」と言われている昨今でございますし、私も、実は地方制度調査会の委員をやっておりまして、何遍答申してもさっぱりらちが明かぬという状態が余りにも長過ぎます。そして、地方自治体の皆さんが全国知事会やその他の機会を通していろいろ物を言っているのですけれども、どうにもなりません。したがって、行政管理庁が許認可の問題の大幅な見直し、そしてある意味で、大きく分けてそれを束ねていく、そして住民に対して、あるいは役所の中でもそうですから、もっと便利なようにしていくという御努力をあわせお願いをしたいものだ。  ぜひひとつ、国と地方の事務配分、これは口出しすべきでないと言われるかもしらぬけれども、こういう検討を進めていくことが、各省庁の全体の調整と、同時に、言ってしまえば、地方制度調査会なんというのは、あるいは知事会でもそうですけれども自治省だけが窓口でございまして、なかなかそれも大変だというわけですから、非常に大きな網で見直していく、こういうことをぜひ要請をしておきたいと思うのですが、もう一遍御答弁をいただきたいと思う。
  112. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまの問題でございますが、各省とも自己所管の仕事について非常に熱心であり、責任感が強いわけなんでございます。それは非常によくわかります。結局は、そういうものをある程度地方にやらせるということになりますと、これは信頼の問題になる、こう思うのであります。したがって、受ける側の地方公共団体というものがやはり信頼に値するだけの仕組みなり態度なりが同時に必要になってまいる、私どもは、そういうことをあわせ考えながらそういう方向へ向かって進むべきである、かように考えております。
  113. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣御存じのとおり、広島県を初めとして全国の都道府県で、県の仕事を市町村に移管をしていく、そういう許認可事務などというものをできるだけ身近な市民の生活のところへ近づけていく、この努力が高い評価を受けているわけです。いろいろな見方はございますけれども、私は、時代の要請にこたえるものだということを否定するつもりはございません。その意味で、そういう際ですから、また、県の仕事のややこしいものを国から県に来ても、ややこしい形のままで市町村へということになると、大変迷惑な面も一面で出るわけです。複雑さといいですね。そういう意味では、できるだけ——簡単にはいかないでしょうけれども、そういう点を配慮して、そして住民あるいは市民、最も身近なところで始末が完結するように、そういう御努力をこの際ぜひ賜りたい、こんなことを要請をしておきたいと思います。  一番最後になりますが、許認可の整理というのはこれからもやっていくわけですけれども、今後どのような形でやるか。いまお話をちょっと伺いましたけれども、この際、答弁を煩わしておきたいと思います。
  114. 佐倉尚

    ○佐倉政府委員 先生お話の、今後許認可についての整理合理化、これをどのようにやっていくかというお話でございますが、これは数も多うございますし、間断なく努力を続けていくということはぜひ必要だろうと思います。先ほどちょっと触れましたけれども、臨時行政調査会あるいは行政監理委員会あるいは全国知事会、地方制度調査会、その他経済団体等からもかなりいろいろな許認可についての御意見をいただいております。そういうものをその都度検討し、考え、そして各省庁にまた検討を依頼し、われわれと協議して、またその行政改革計画についてはその都度各省に総点検を依頼するというような方法、これを組み合わせて、不断の努力でやっていくよりしようがないのじゃないかというふうに考えております。  現在のところ、許認可の問題につきましては、要らなくなったものあるいは簡素化の規制の緩和等ができるもの、そういうものを整理する方向でやっておりますが、それを今後も、いま申し上げたような方法で続けていくというふうに考えております。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 蛇足ですが、臨時行政調査会の名前がたくさん出てくるものですから、あえて申し上げておきます。  一番最初に、太田薫さん、総評議長のときにメンバーになったわけです。メンバーになる際、いろいろ議論がございました。私も、素人ながら若干お手伝いをさしていただいたこともございますけれども、いわゆる人員整理といいましょうか、そういうところへ何か追い込んでいくような形でないことをいわば担保にして、それを条件にしてメンバーに入ってきたような経過もございますので、この点は言うまでもございませんけれども、念には念を入れて御答弁を願っておきたいと思うのです。臨調の最初趣旨、それは生かし続ける、その面について……。
  116. 金井元彦

    ○金井国務大臣 行政改革あるいは行政整理をやる際に、必ずそれにくっついてまいりますのが、ただいまの人の問題でございます。したがいまして、これをいかにうまくやるかということは、やはり人の適当な配置と申しますか、措置と申しますか、そういうことをいかにうまくやるかということとうらはらになっているように思うのであります。  もともと、この整理といいますか改革をいたします趣旨が、別に人を整理するとかなんとかということを目的とするのではなくして、できるだけ簡素にして効率的なものにして、本当の国民の負担を少なくする、いろいろな面における負担を少なくする、こういうことでなかろうかと思いますので、当初臨調においてその点を強調されたということは、やはりこれをやるための無用な摩擦というものはしたくない、こういうことがあった、かように思うのでございます。したがいまして、私どもは、やはりこれは国民全体の立場から見るということを基本にいたしまして、その間できるだけ摩擦、犠牲というものを少なくして円滑な処理をしていくという点に特に留意をしていきたい、かように考えております。
  117. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この法案と直接関係がないことで——直接関係がないと言っても、あるのです。実は、防災センターやら何やらの問題がございますので、建設省関係もございますから、大変恐縮ですが、地震の問題を少し集中的に伺っておきたいと思います。  実は、昨日ですか、各新聞の神奈川版などに非常に大きく、大地震問題に対する県民の意識調査がございます。これは県民三千人を対象にして昨年の九月に実施をいたしたわけですが、非常に県民の関心が強くなっておりまして、これは、直下型地震で川崎あるいは三浦半島の活断層、あるいは伊豆沖、東海というふうなことで、指定地域の議論が出てきたことを含めてそういう関心が高まっているんだろうと思うのですが、非常に私一つの勉強をさせられる結論が実は出ているのです。反省をしなければならぬことを含めて感じさせられるわけですが、短い文章ですので、少しまとめて読んでみます。  「近い将来、県内に大地震が起きそうな気がする」と回答したのは過半数の五四・七%。それがしかも、川崎のようなところ、つまり直下型地震の問題のあったところでは四五%、わりと高いわけです。中でも五十六歳以上の高齢者が七〇%だ。  そして「発生した場合を考えて家族で相談したことがあるか」という質問に対しては、「ある」と答えたのが、四十四年の調査では五七・九%だけれども、今度は七七%にはね上がっている。そういう意味では、「ある」という人たちが非常にふえているということと、それからいろいろなことを対策として考えなければならぬということで、家族で話し合っているということがあらわれています。  もし「大地震が起きたら何が心配か」と聞いたら、火災、家屋の倒壊、水不足が上位の三位を占めている。川崎などでは石油コンビナートの事故というものが三分の一以上の人の心配の対象になっているということでございます。  それから避難先については、五一・八%の人が「市町村による指定避難場所に行く」というふうに回答しているわけでありまして、ある意味では、その指定避難場所というものの重要性を示しているように思われてなりません。  非常におもしろいのですけれども、例の大規模地震対策特別措置法の予知情報に関連して言いますと、予知を出す時期や内容などについては、パニックを起こす心配というようなことで、あの法案の審議の過程でもいろいろ議論がございました。しかし、その調査によると、「はずれることがあっても出すべきだ」というのが何と八五%になっていまして、私も実はこれはちょっとびっくりしたのです。総理府の調査は、たしか五十三年十月で六〇%だったと記憶していますが、それよりもかなり高くなっている。  いろいろ自治会単位に、あるいは町内会単位に自主防災組織をつくっている、これが、市の指導もありますけれども、五六%の人がそういうものに参加をするということを表明しているというふうに、簡単に申し上げましたけれども、非常に関心が強まっています。特に予知情報について、こういう形で反響、反応があるというのは、ちょっと私にとっては意外でございました。  そこで国土庁に伺いたいと思いますが、例の東海大地震に備えての地震防災対策強化地域というものの指定が出されております。専門委員会でまとめられたわけでございますが、この中で問題点は、地域指定をする場合に、マグニチュード八による震度六以上の烈震が起きて、木造建物などに著しい被害を生ずる点を基準にして線引きをする、こうなっているわけであります。実は、これでは問題は片づかないのであります。この答申の中で今後の検討課題にはなっていますけれども、問題は、二次災害といいましょうか、火災や水害あるいはコンビナートの事故など、人口の密集地域に大きな被害が、実はここから外れたところでも起こるという懸念が非常にあるわけであります。  具体的な例を言いますと、大変これは申しわけないのですけれども、この指定が出て、神奈川県では八市十一町ですか、県がその枠の中に入る市町村を集めて相談をしたわけです。肝心な横浜や川崎は、実はその会議に招集されないわけですよ。地震が起きても、川崎だけは境があるから、あるいは横浜は市の境があるから、そこからこっちへは入れませんというわけにはいかないわけであります。同時に揺れる。同時に、いま心配のように、コンビナートだとか人口密集地域というものの被害、二次災害というものを含めて被害が非常に大きいということを考えなければなりません。したがって、線引きをやった後、そういう被害予想というものを前提にした第二次の線引きとでもいいましょうか、そのことをお考えになっていらっしゃるかどうか、国土庁、御答弁を煩わしたいと思います。
  118. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明申し上げます。  大規模地震対策特別措置法によります防災強化地域の指定に関してのお尋ねでございますが、現在中央防災会議の十五人の地震学者等を中心といたしました専門委員会で検討をしていただいた結果を、中央防災会議が報告として受け取ったという段階でございます。  実は、本日、総理大臣の名前で各都道府県知事に法律の規定に従いまして意見をお伺いする文書を発送した段階でございます。今後、都道府県知事さんの方から関係の市町村長さんの意見をお伺いし、その結果をまとめられて、都道府県知事さんの意見の申し出があるものと思っております。その際に、できるだけ地元の市町村長さんの意見、また都道府県知事さんの意見をしんしゃくいたしまして最終的に線引きが行われる、こういうことになろうかと思っております。  先生いま御指摘になりました、その周辺部でございますが、実は初めての試みと申しますか、一つの震源域を駿河湾の地域に設定をいたしまして、そこでマグニチュード八程度の地震が起こりました場合に、周りの地面がどのぐらい揺れるか、津波がどのぐらい発生するかということで、そのもの自体としてかなり安全率と申しますか、地震として起こる現象は一つでございますけれども、この場合、あの場合という、いろいろ割れ始めの方向でございますとか、その力の広がり方というようなものをかなり安全率を見て報告書はでき上がっているというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。  そのほかに、初めての経験でございますために、自然斜面の崩壊、地すべりと申しますか、それから新潟地震の場合にございましたような砂質土におきますクイックサンドといいますか流砂現象という現象がございます。それから長周期の波、たとえば二秒とか三秒に一回揺れるような、そういう非常に長周期の波というようなものに対する大規模構造物の横倒、どういう揺れ方をするか、それによってどういう危険が生ずるかというこの三点につきましては、実は中心層の地層の資料と申しますか、地表の資料以外にもう少しその途中を通ってくる深いところの地質の地震波の伝わり方という勉強資料が足りないということでございまして、この資料の収集と並行いたしまして、いま述べました三点については検討をさらに進めさせてほしい、こういうことになってございまして、その結果、さらに新たな危険性というものが周りに認定されるという事態になりますれば、強化地域の指定そのものをさらに広げるというような可能性もあるものというふうに考えております。
  119. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま、私はよくわからないのですが大変むずかしいお話をなさったわけですが、常識的に考えて川崎だとか横浜、まあ神奈川県は全県指定を要請することになろうと思いますけれども、やはりそういう人口密集地域の危険度というものを常識的に国土庁も恐らくお考えになっていらっしゃると思うのです。その意味では二次指定というか追加指定というか、そういう可能性について十分考慮しているというふうに理解してよろしゅうございますか。
  120. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明いたします。  いま申しましたように、一般的な地震動の強さという面で言いますと、専門委員会で示されました点のところがリミットではないかというふうに考えます。ただ特殊の現象、たとえば川崎のコンビナート地帯でございますとか、そういうようなところは埋め立て地で、しかも砂質土で占められている、そこに巨大な構造物があるというようなところにつきましては、さらに勉強を続けて検討をしたい、こういうことでございまして、一般的に人口の集中でございますとかということにつきましては、むしろソフトの体制の整備ということで対応をすべき話ではなかろうかというふうに私どもは理解をいたしておるわけでございます。
  121. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 この指定の前提としての被害想定というのは、どうなっていますか。
  122. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明を申し上げます。  実は災害対策基本法という法律がありまして、それに基づきます防災計画と申しますのは、各都道府県、市町村ごとに、地域ごとにつくるという形になってございまして、たとえば今回の指定のような場合には、一般的に地盤の状況と震源域からの距離によりまして相当の被害が一般的に予想されるという想定をいたしたわけでございまして、そこのところの建物自体が何%壊れる、またそれによって死者、負傷者がどの程度出るという、そういうブレークダウンをした計画は今後基本計画、強化計画、応急計画というような具体の計画の中で明らかにすべきもの、またそれに必要な資料を提供し、議論をして、想定をしたいというふうに考えておる次第でございます。
  123. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 被害想定を前提にしないでこういうものが出てくるということがちょっとわからないのですけれども、それは地方自治体がつくってそれを集めていくという議論だけでは、私は済まないと思うのですよ。だから、その点は国土庁としてもやはり検討すべきである、そういうふうに私は思います。これはこの大規模地震の法案の御審議のときにもやりとりをいたしたことでありますけれども、その点はぜひ御考慮を願いたい。  それから、川崎の直下型の地震の可能性というのは全くなくなったというふうに考えていいのですか。あるいはもう一つは、最近三浦半島の活断層、別に相模トラフだけではなくて、個別のいわば直下型ということも含めた危険というものに対する調査が行われましたけれども、これらについて国土庁はどんな見解を持っていらっしゃるか、承りたいと思います。
  124. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明を申し上げます。  川崎の直下型地震につきましては、あれ以来いろいろな原因等が言われて、地下水のくみ上げ規制によるものではないかという説が相当有力になってきつつある段階ではあろうというふうに理解をしておりますが、それとまだ断定するわけにはまいらないということでラドン、それから地盤の実際の測量、地下水等の調査は現在継続をされている。現在の段階ではやや白がかってはきたものの、最終的に白と断定しかねている段階ではないかというふうに理解をいたしております。  また次の三浦の断層、これはもうあの地域は昔からたくさんの断層がございまして、それ自体がいつ動き出すかと申しますか、それは地震が起こるかということでございますけれども、大規模な地震がその断層によって生ずるという証拠は直接まだ見つかってはいない段階というふうに理解をいたしておる次第でございます。
  125. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま指定地域といいましょうか、地震防災対策強化の地域の指定が行われるわけでありますが、対策強化と言っても、結局はこういうものが発表されますと、これはえらいことだ、何とかしなければいかぬという意味では、避難路や避難場所やあるいは道路の安全が確保されるのかどうか、道路周辺の両側に老朽家屋があって崩れてこやしないか、さらには建造物の耐震化など、川崎で言えば防災者団体、これは挙げれば山ほどあるわけであります。だけれども、問題は、そういう対策がとられつつあるのだということを前提にしないと不安ばかり増すことになってしまうのじゃないか。私なぜ一番最初に、世論調査の結果を読み上げたかというと、やはりその辺に非常に不安があるわけであります。私は大規模地震の法案のときに、どうも一階のあるところに三階、四階の建物を二階をつくらないで建てているような感じがしてならないというように、大変比喩的な物の言い方で失礼だったのですが、申し上げたことがございます。  そこで、いま私が申し上げたような一つ一つの事柄全部と言っても、なかなか大変ですが、どんなふうに国土庁はお考えになっていらっしゃるか。それから建設省もお見えのようでございますから再度質問をいたしません、予告をしてございますから、それらの問題について御答弁を煩わしたい。それから自治省からもお越しをいただいておりますので、自治省についても、ぜひひとつ親一切に御答弁をいただきたいものだと思います。
  126. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明を申し上げます。  ただいま先生指摘のように、強化地域に指定されたところをどう防災的に強化するかという問題はあるわけでございます。そのうち何から重点的に取り上げるかといいますか、全部のものを一斉にやります、こう言ってみても、公共団体の財政能力また執行能力、国自体の財政能力、執行能力からしまして、やはりできるものはこれだけだ、またその次の段階ではここまでレベルを上げるというようなことを国民にはっきりさせるという点が重要ではなかろうかというふうに思います。つまり優先順位をつけて、効果がすぐあらわれるもの、そしてわりあいに早くできるものから着手し、完成をしていくというプログラムが必要になってくるのではないかと思います。  実は、法律の中では避難地、避難路、消防用施設、通信施設、避難用のものについては最優先的に各強化計画の中で取り上げ、これは各省とも強く要請をいたしておるところでございますが、おおむね五年以内にできるものは全力を挙げてやるという仕組みを考えているわけでございます。  ただ、そう言ったって、それだけやればそれで済むかという問題は当然あるわけでございまして、避難路を整備してもその避難路の周辺の住宅を不燃化しないとだめじゃないかとか、いろいろな関連の問題が出てきて、それを言い出すと全部になってしまうわけでございますけれども、それらのものにつきましては、地域の防災計画としてやれるものはできるだけ取り上げていく。たとえば建物の不燃建築化の問題でございますとか、老朽の建物の耐震診断、またその改修でございますとか、そういうようなものはできるものから取り上げて、やはりほかの地域とは違うという意味での施設の強化には努めていくべきではないかということで、各省とも御相談をいたしておるところでございます。
  127. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ちょっと御答弁の前に、いま答弁がありましたけれども、公共事業費の振り分けでめんどうを見ろ、地方自治体でやりなさいというわけにはなかなかいかぬわけですね。だから、これは建設省いかんの質問になりますけれども、これは知事会からも陳情が出ておりまして、補助率の引き上げやらそういう条件を配慮した地震防災緊急整備事業ということで特定をいたしまして、もちろんプライオリティーの問題はあろうと思いますけれども、そこにやはり重点的な対応を迫られているというふうに考えますので、建設省、それらのことを配慮して御答弁を煩わしたいと思います。
  128. 瀬戸充

    ○瀬戸説明員 お答え申し上げます。  御質問で建設省関係のものは、避難地、避難路及び緊急輸送を確保するための必要な道路及び石油コンビナートの緩衝地帯等でありますけれども、これらにつきましては、地震防災強化計画におきましてその整備強化を定めるということになっておりまして、これに従いまして強化計画の具体化の段階で事業量それから所要経費等を勘案いたしまして、関係省庁と十分検討してまいりたいと考えているわけでございます。結局、予算配分におきまして最大限の努力をいたしまして、補助率等の問題につきましてはいろいろの問題がございますので、慎重に検討させていただきたい、こういうことでございます。
  129. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうも慎重にというのは何もやらないということもありまして、毎度の国会答弁みたいに、前向きに検討しますということは検討しないということだというふうに私は教わったことがありますけれども、そうでなくて、私がいま言ったのは、知事会から出ている防災緊急整備事業という形でやらないと、公共事業を振り分けてやっていくという形では何もできないじゃないかという地域の声があるわけですから、補助率の引き上げという問題は、当然建設省が積極的に問題提起をして、そして各省庁の調整を、もちろんあなたのところで全部やるわけではないけれども、あなたのところの所管に関して言えば、そのぐらいの決意はぜひ承っておきたいということであります。御答弁をもう一遍煩わしたいと思います。
  130. 瀬戸充

    ○瀬戸説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおりでございますが、ひとつ前向きに各省庁と——一生懸命に努力をしてまいりたいと思います。よろしくお願いします。
  131. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 課長さんにそう言ってもなんですけれども、やはり建設省の非常に大きな仕事だろうと思います。だから、地域の指定があるわけですから、それに見合って省内で補助率の引き上げということについて問題提起をしてほしい、こういう要望を正確に受けとめていただきたいと思います。よろしいですか。
  132. 瀬戸充

    ○瀬戸説明員 わかりました。帰りまして、よく、いろいろ相談いたしたいと思います。
  133. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 自治省いらっしゃいますか。——これは消防庁の問題も含めてですが、いまの地方債その他のいろいろなことがあるでしょうから、自治省から先に御答弁願います。
  134. 持永堯民

    ○持永説明員 先ほど国土庁の方からもお答えがございましたように、施設整備にいたしましても、すべてのものを一遍にやるということはとてもできないわけでございまして、いずれにせよ順次計画的にやっていくことになろうかと思います。  それにしても相当な経費がかかるということになろうかと思います。これについては、御承知のように、指定がされました後、強化計画がつくられまして、その中で事業量、事業費等がはっきりしてまいるわけでございますので、その段階で関係省庁とも十分相談してまいりたいと思っておりますが、基本的には、せっかく計画に盛り込まれた事業が円滑に実施できるようにという考え方で、関係省庁とも十分協議をしていきたいと思っております。  それから国庫補助がついたにいたしましても、地方団体の負担の問題が当然出てまいりますので、これにつきましては、御承知のようにほとんどのものはいわゆる投資的経費でございますから、地方債を活用するということになろうと思います。したがって、地方債の措置については、十分配慮してまいりたいと思っております。
  135. 山越芳男

    ○山越説明員 お答え申し上げます。  消防庁といたしましては、昭和四十七年度に大震火災対策施設に対します国庫補助制度を創設いたしまして、その整備促進を図ってまいったところでございます。特に大規模地震対策特別措置法の施行を契機といたしまして、昭和五十四年度予算において地震防災対策強化地域における防災施設、たとえば耐震性貯水槽とか可搬式動力ポンプ等でございますが、こういうものに対する補助制度を創設したところでございまして、今後ともさらにその整備が促進せられますよう努力をいたしてまいりたいと思います。
  136. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまの消防庁の答弁のほかに、私資料をいただいて、不十分ながらもそれなりに精いっぱいやっているという感じがするのですね。つまり、消防庁の場合は直接的な影響だから、これは急いでやらなければならぬという配慮を政府全体としても認めたのだろうと思うのです。願わくは、消防庁も貯水槽その他あるいは食糧の貯蔵庫等に対する補助率の引き上げなどについて、もっと積極的に取り組んでいただきたい。これはよろしいですね。
  137. 山越芳男

    ○山越説明員 お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたように耐震性貯水槽とか可搬式ポンプについては本年度補助率を上げたわけでございまして、そういう線に沿いまして今後ともさらにその制度の拡充に努力をしてまいりたいと思います。
  138. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最後に、これは国土庁になるのですか、基本計画だとか、防災本部の設置条例の準則だとか、あるいは応急計画などの手引きみたいなものが間に合っていませんね。これはいつやるのですか。
  139. 城野好樹

    ○城野説明員 御説明を申し上げます。  法律の規定どおりに読みますと、地震防災対策強化地域が指定されたら、その指定地域の実情に即して基本計画、強化計画、応急計画を策定をしなさいというかっこうになっておるわけでございますが、御指摘のように指定が非常に間近になってきますと、そろってない、こういう話になりますので、実は昨年の十月から、指定専門委員会とは別にまた学識経験者を中央防災会議の専門委員に任命をいたしまして、基本計画作成のための専門委員会というものをもって検討をしております。  したがいまして、基本計画につきましては、たとえば非常にきれいごとを書いても、実際には間に合わないということになれば困りますので、各省とも御相談をいたし、百点ではないかもしれないけれども、できるだけ実施し得る体制につきまして現在検討中で、地域指定より若干おくれるかと思いますが、そういう基本計画の基本方針を定めたいと思っておるわけでございます。  その基本計画を受けまして、各公共団体、各省庁、それから指定公共機関と申しまして国鉄、電電公社、道路公団、日赤というところも同じような強化計画をつくっていただく。応急計画につきましては、地域指定が行われましてから六カ月以内に応急計画をつくって都道府県知事に届け出ることと定めてございます。したがいまして、全体がそろいますのは、そういう意味におきましては、たとえば六月の半ばに地域指定が行われるといたしますと十二月、年末には全部のものが出そろうというかっこうになろうかと考えておる次第でございます。
  140. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 科学技術庁、時間が来てしまいまして、平野さんから予知の問題をちょっと伺おうと思ったのですが、申しわけありませんが、割愛をさせていただくことをお許しをいただきたいと思います。  大臣、最後にお願いをしますが、大臣も長いこと県知事をやっておられてよくわかると思うのですが、線引きが行われますと、どうなっているのだ、どうしてくれるのだという住民の声が、特に地方自治体に強く向けられるわけですよ。ところが、いまお聞きいただいたように、御経験のように、補助率にしてもあるいは予算の枠にしてもあるいはその他の対策にかかわるさまざまな事柄は、どっちかと言えば、地方自治体がやるにしても、それを保障する具体的な財源的な、制度的な裏づけが十分でない、したがっていらいらが高ずるばかりなんですよ。そういう点では早く、同時にその懸念をできるだけなくすことができるように、こういうことが起こっても大丈夫だよ、まあ全部大丈夫だというわけにいきませんけれども、最悪の事態は避けることができるよ、そういう説得力を持ち得る対応をしていくことが政治の責任ではないかと私は感じます。  大地震の問題は、社会的な問題になっておりまして、先ほどの世論調査の結果にあらわれているように、市民が非常に大きな関心を持ってきている。しかも、それぞれが対応しなければならぬという意味では、それぞれ準備をしている。たとえばこの世論調査の中でも、起こったときのことを考えて、食糧だとか水だとかあるいは電池だとか薬だとか、そういうものをすぐ持ち出せるようにしているとか、大変切実な、同時に住民自身が自衛する体制をつくらざるを得ない。それも大事でしょう。しかし、それを全体として守っていくような体制を考えなければなりません。その点を急ぐように、そして十分な対応をしていくようにあなたからも閣議の中でぜひ問題提起をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  141. 金井元彦

    ○金井国務大臣 お話のように、住民側の不安をできるだけ除いていくという姿勢が必要であろう、こう考える次第であります。  ただ、私見を加えますと、本当に実効のある、そしてそのときに動けるようなものをつくらなければ、いかにりっぱなものをつくりましても、いよいよのときにそうそうはできないというふうなことで、あちこちに穴があくようなことでは困ると思いますので、そういう実際面をよほどよく考慮しながら対策を考えるべきでなかろうか、私はこういう感じを持っております。
  142. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。
  143. 藏内修治

    ○藏内委員長 中川秀直君。
  144. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 私どもは毎国会行政改革について私どもなりの主張を盛り込みながらいつもお尋ねしているわけでございますが、今国会では、当委員会行政改革の議論をさせていただくのは初めてでございますので、行政改革全般について、大臣、いささかの演説になるかもしれませんが、私どもの考えを申し述べさせていただき、大平内閣金井長官の御見解をぜひともお伺いをしたいと思うのであります。  まず、現内閣の行政改革に対する基本姿勢からであります。  福田内閣以降の行政改革を簡単に振り返ってみますと、次のようなことが言えるのではないかと思うのです。つまり、当時経済基調の変化がはっきりしてきておりましたから、財政負担を軽減する必要が生じまして、それとの関連で行政改革ということが言われたと思うのであります。私ども新自由クラブとしましては、行政改革が必要なのはそれだけの理由ではないと思っているのであります。しかし、ともかくそういう理由で前内閣は行政改革に取り組んだわけであります。ですから、福田内閣のときの行政改革には対症療法的なものが多かったような気がいたします。基本的な課題は、おおむね残されてしまったというのが一般的な評価のようでございます。新聞論調等の要約をしてみましたが、大体そのような批判あるいは評価が結論であった、そのように思うわけです。  それから、では今後行政改革はどういうものでなければいけないかという学者や識者のいろいろな方の発言を読み取りますと、おおむね次のようなことが指摘をされています。つまり、これまでのところでは、行政サイドでできるところについてはまあまあ、ある程度よくやってきた、しかし、これから先の問題はやはり政治の問題であり、政治家のリーダーシップを発揮していかなければならない、そういう時期に来ているのだ。つまり、対症療法を超えて、より基本的、長期的な行政改革がなされなければならないけれども、それには行政側の努力を超えた政治のリーダーシップが必要であろうということでございます。  私も、大体これは妥当なところかと思うわけですけれども行政改革がそういう段階に来ておるときに、大平内閣にバトンタッチをされ、金井長官になられた。行政改革の推進に強力な政治的リーダーシップが求められているときですから、大平内閣のもとで何としても推進をしていただかなければ困ると思っているわけでありますが、これまでの総理の発言なんかを聞いておりますと、どうも大変消極的なような気がしてならないのです。「一利を興すは、一害を除くにしかず」というような立場で、減らすよりはふやさない、そういうところに重点を置いているように伺っておるわけですけれども、また同時に、そういう考え方のために行政改革という名前もいろいろあちこちから姿を消しまして、最近ではもっぱら行政の簡素、効率化というような言葉が使われているのです。これがもし現内閣の行政改革に対する真意だとすると、大変私は問題だと思います。  新聞論調も大変厳しいようでございまして、たとえば「できないことを掲げて、いらぬエネルギーやカネを使うより、まずできるものから手をつけるという大平流の現実主義が顔をのぞかせたともいえるが、それでは少しさびしすぎる」、これはサンケイ新聞ですが、閣議決定に対しても毎日新聞は、一月の十八日ですけれども、「総じて、大平内閣初の行政改革構想は手固さだけが先に立つ、消極、漸進策である。着実に実現させることは必要だが、勇断に欠ける点も指摘せざるを得ない。阻害要因ばかりが多い行政改革という難題を前進させるのは、政治のリーダーシップしかないからである。」そのほか、これも毎日新聞三月十一日、「大平内閣の行政改革に取り組む姿勢が後退をつづけている。」「福田内閣時代から大きく後退して、行政改革の文字が消え」、先ほどお話ししたように、「「行政の簡素・効率化の方針」に模様がえした。」これがおおむねの新聞論調です。私は、サンケイ新聞なんかが書いておりますように、「最近、民間企業が行ってきた減量経営はそんな甘いものではない。」その新聞論調にも書いてありますけれども、まさしくこの批判は当たっているわけでありまして、内閣がそのような消極姿勢では何も進まないままいたずらに時を過ごすことになってしまうのではないかという懸念を持つわけであります。  そこで、お尋ねをしたいわけですけれども、大平内閣として、金井長官として、このような批判あるいは論調が行われているということを踏まえて、どのような基本姿勢で行政改革に臨もうとされているのか。たとえば私ども、いまから二年に二カ月くらい前だったと思いますが、現在の行政管理庁と内閣の法制局、総理府人事局を統合して、総理直属の行政改革本部あるいは行政改革庁を新設しなさい、それで強力な常設機関を設けて行政改革に当たっていただきたいという具体的な提言をしておるわけであります。それは前にも御答弁があったわけでありますが、改めてそういう提言を踏まえて長官の御見解を伺っておきたいと思うわけであります。
  145. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまいろいろな新聞論調等も引用しながら行政改革に対する大平内閣の姿勢についてお尋ねがあったわけでございますが、私ども考え方としては、福田内閣のときと別に後退はしておらないという考え方で進んでおるのでありますけれども、世間がそう見ないということなれば、やはりそれはそうでない行き方ということを努力すべきでないか、かようには考えておるような次第であります。  ただ、新自由クラブからもかねがね御提言がありまして、考え方についてはずいぶんいろいろあるわけでございますけれども、それをいかに実行に移すかという点が私どもは大事な点だろう、かように考えておる次第でございまして、その方法論をもあわせながら進むべきでなかろうかというふうに考えておるような次第であります。
  146. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 長官、福田内閣のときと基本的には姿勢は変わっていないという御答弁でございますが、冒頭お話をしましたように、福田内閣のときの行政改革も、評価としては批判的というか、余り高くないわけですね。それはつまり質的に、構造的に高度成長から安定成長に変わった、そういう時代が変化しているのに行政改革はどう対応するかという中で、対症療法じゃなくて、より基本的な、制度的な問題を含めて、中期あるいは長期に検討しなければいけない、そして方向が出たらもう政治の決断で、行政のテクノクラートだけでは不可能なことまで手をつけていかなければいけない、そういう評価、批判が福田内閣の行革にはあるわけですね。  しかし、大平内閣の場合は、それよりも対症療法の部分でも行政改革という言葉がだんだん、だんだん回数が減って、行政の簡素、効率化などということになってしまう。これではやはり国民の期待はしぼむ一方ですね。この辺のことを新聞論調なんかがとらまえて言っているのだと思うのです。ですから、これについていまの御答弁だけではちょっと、しぼんだ期待をもう一回ふくらますわけにはいかないような気がするのです。いかがでございましょうか。
  147. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ちょっと御趣旨をはかりかねるわけでありますけれども、私ども考え方は、福田内閣の行政改革、これを再確認いたしまして、それになお若干のものをつけ加えた、それを閣議了解という形で打ち出したということであります。  ただ、たびたびお話がありますように、新聞なんかの受け取り方というものはそれが消極化したという受け取り方をされておるということのようでありますので、私どもはさような印象を与えておることについては、やはり考えなければいけないことだということを申し上げている次第であります。
  148. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 どういう方向でお考えをいただけるのか。新聞論調がそう出ておるということに対して、そういう批判を受けておることについて、どういう方向でそれじゃ考えなければいけないのか、長官のお考えがもしございましたら、お伺いをさせていただければと思います。
  149. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ここですぐ申し上げる具体的なものというのは、やはりもう少し検討を加えた上でないと……。まあ行政改革は、いつも触れ出しは大きいけれども、いざ実行となりますと、なかなかそれがそのとおりにいっていない。これはもう行政管理庁ができてからと申しますか、あるいはまた臨調がああいう、私はかなり画期的な答申を出したと思うのですが、その画期的な答申に基づいて、今度はそれを実行に移すということになってみると、それが答申のどの程度を満たしたかということになりますと、まことに効果は余り大きくなかったという過去の経緯がございますので、私どもが方向を打ち出し、あるいは相当なことをやろうとすれば、それだけのやはり準備あるいは根回しといいますか、そういうものがなければ、いたずらにこれをすぐ表明するということは慎まなければならぬのじゃなかろうか。  福田内閣の、これは若干表現が適当かどうかわかりませんけれども、まあ総ざらい的な行政改革というふうな閣議決定がありまして、しかもそれをいよいよ実行ということになりますと、そうはかばかしくはいかなかったということを考えますと、私は、やはりそういう点を考慮しながらやっていかなければいかぬのじゃないか、かような感じを持っております。
  150. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 いましばらくちょっと一方的な演説になるかもしれませんが、大事な問題ですから、お許しをいただきたいと思います。  私どもは、先ほどちょっと不正確でしたが、五十二年の六月に行財政改革に関する第一次提案というのを行っているのですが、その中で、政府が早急に実効ある改革に着手することを強く要望したわけでございます。しかし、今日に至るもわれわれが想定をしているような発想とレベルにおいての改革というものについて政府の積極的なお取り組みは実はなかったわけでございます。私は、行政改革というのは、まさに大胆に目標を定めまして、政治の責任でこれを断行しなければならないものだと思うわけであります。  いまの行政改革がこのように国民の側から見て停滞をしているような印象を受ける、どうしてそういうふうになっているのかということをよく考えてみますと、なぜ行政改革がなされなければならないかということについての認識が、これは政治を含めまして全体に非常に不鮮明ですね。目標やそういう認識が不明確、不鮮明だから、私は行政改革そのものが停滞しているような印象を国民が受けているのではないかという気がするのです。  行政改革の必要性と目標が不明確ですと、改革案を出しましても、ちょっと反対がありますと、引っ込めてしまう。大平内閣のように余り大きな約束はしないで、できるところから手をつけようという奇妙な現実主義にもなってしまうと思うのです。ですから、なぜ行政改革がなされなければならないかについて突っ込んで検討していく中で合意を形成していくという努力をしなければいけない、こんなふうに思うわけであります。  私たちは、かねてより行政改革の積極推進を要望しているわけでありますけれども、それは大胆な行政改革がなければやはり活力ある自由社会というのはないと思うのです。与党の自民党も確かに自由社会を守るというスローガンを掲げておりますけれども、言葉だけでなくて、その内実を確認していかなければならないわけで、現実には肥大化した行政の中で停滞した社会あるいは制度になっているような気がしてならないわけであります。  つまり、そういう今日的な状況の中で、活力ある自由社会を形成していくには、政府はどのような役割りを果たしたらいいのかという点について洗い直しを行い、新しく社会システムというものを再構成していく、こういう考え方が必要なわけで、そういう中で行政改革を位置づけていかなければならないと考えているわけであります。  政府の果たすべき役割りについては、その適正化を求めて常に検討を加えていかなければならないはずで、これを怠ってきた現在、かなり大胆な行政改革が必要になってしまった、単なる対症療法では国民からちっとも印象、インパクトを持って受け入れられない、こういうことになっているような気がするわけであります。  もし、そうでなくとも、政府の果たすべき役割りが現在と質的に変わる必要がないと考えているのだったら、行政改革なんかする必要はありません。やればかえって害を生むだけでありましょう。また、財政的に苦しくなってきたから行政改革をするという認識であるならば、それに応じて微調整だけしていればいいので、行政改革なんという言葉を使う必要は本来ないということになってしまう。しかし、現在の日本の経済社会はもうそういう状況にはない、政府の果たすべき役割りを全面的に検討し直さなければならなくなっている、こう私どもは思っているわけであります。このことについての御見解。  私ども第一次提案のときに、基本的に市場メカニズムや家族のケア、近隣社会のボランティア等の活動によって充足できるもの等々は、もう民間に渡しなさい、行政がそこまで抱え込んでいてはだめだ、そういう判断基準、物差しをつくりなさい、そうして行政総量というものを見直して、それ以上超えたものに対してはもうどんどん民間に譲っていく、それはまさに現在の行政管理庁というような発想、機構ではできないから、法制局や人事局も含めて行政改革庁というような権限を持った役所でその総量規制を考えなさい、こういう提案をしたわけでありますが、そういう発想がないと、やはり対症療法でずっと終わって、行政改革の名にも値しないような単なる微調整だけずっと続けていく、それで停滞をしつつある経済社会を打開することができない、こういうことになろうかと思うわけでありまして、長官、そういう発想がどこかないと、発想そのものが停滞をしていたのでは作業も停滞をするのが当然なんで、私ども意見に対しまして御見解がありましたら、お伺いをさせていただきたいと思います。
  151. 金井元彦

    ○金井国務大臣 行政改革についての哲学的裏づけといいますか、さような御趣旨かとも伺うわけでありますけれども、私は、ただいまお話しになりましたことの大筋は賛成でございます。やはり活力ある社会あるいはまた民主社会におきまして、自己責任というものをもとにしたところのあり方が基本に考えらるべきである、私はかように思っておりますので、いろいろ表現の仕方はあろうかと思いますけれども、考えの基本がいまお話しになりましたことにつきましては、私はおおむね賛意を表する次第であります。
  152. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 さらに、その点もう少し触れさせていただきますと、経済における政府の役割りというものももう戦後三十年たって明らかに再検討されなければならないところに来ていると思いますよ。これまで日本経済は自由主義経済といいながら、本来市場のメカニズムにゆだねるべき部分まで政府によるさまざまな介入や統制が及んでいるわけであります。たとえば産業政策の分野での日本株式会社とまで言われる過剰な行政指導、あるいは金融市場での金利や店舗等に対する行政的な規制、こんなものがどうして必要なんですか。あるいは国内農業保護のための輸入制限策あるいは国家貿易制度、そういうものがそれらの範疇に入ると思うのです。そして、政府によるさまざまな補助金が自由な価格メカニズムによる調整さえ阻害してきていると思います。  しかし、日本経済が欧米の水準に達した現在は、昔ながらの行政の介入はむしろ民間のバイタリティーを損なうように作用してきていると思うわけで、その辺の変化をとらえず、昔できた業法に基づいて、業界の監督のために中央官庁が幾つもの課を設けていますね。そういう点は、もう全面的に検討し直さなければいけない、このように思うわけであります。  私は、長官は基本的には御賛同いただけるということでございますけれども、一行政機構の中からそういう議論だけを何かやっていることも承知をいたしておりますけれども、どこかでそれについてしっかりとした検討をして、まず内閣がそういう認識と目標を持たないとできやしない、ただそれは認識だけに終わってしまう、決断を持たなければそれはできない、こう思うのです。行政と民間の役割り分担の明確化あるいは割り振りということ、公的部門と私的部門の間の役割り分担の適正化、そういうものがどうしても必要なのでありまして、この点をひとつ本気で考えていただかなければいけない、こう思っておるわけであります。  そこで具体的にお尋ねをいたしますが、行政の守備範囲や行政総量の見直し、これを私どもが言いましてから、これはいつできたのですか、二年来行ってきているということでありますが、行政管理基本問題研究会、座長辻清明さん、行政管理庁顧問ですか、これが検討を加えているというわけでありますけれども、近く報告書をまとめられるそうですね。これはどういう方向でまとめ、そしてどういう形でこれを生かされるのですか。これは単に通り一遍の研究会で終えてしまうのならば私も最初から余り期待をいたしません。しかし、それなりに位置づけて今後政府行政改革の基本方針をつくるぐらいの意気込みでやっておる、また、そういう意味で大臣もこれを生かすんだという御決意ならば、それなりに私も期待をし、また応援をさせていただきたい、こう思うのでありますけれども、いかがでございますか、内容、方向、そして位置づけをお伺いしたいと思います。
  153. 加地夏雄

    ○加地政府委員 私ども行政管理庁といたしましては、先ほど来先生から非常に示唆に富む御意見もございましたけれども、目先、当面行政改革をどのように進めるか、こういった問題だけではございませんで、もっと中長期的な展望に立ちまして、行政管理のあり方とかあるいは行政改革の基本的な方向をどうするか、こういった問題につきましても、常々関心を持っておるわけであります。  いま御指摘のように、実は一昨年の六月にそういう目的で行政管理基本問題研究会というのを発足を願いまして、二年近く御審議をいただいておるわけであります。そこで取り上げていただいている問題は、いままさに先生指摘のように、大きな問題といたしまして、行政の守備範囲と申しましょうか、いわゆる政府公共部門が受け持つべき分野、あるいは民間が果たすべき役割り、こういった問題とかあるいはそういう政府事業の担当主体のあり方、こういった問題、もちろんほかにもいろいろございますけれども、こういった問題を中心に行政学あるいは財政学、経営学、そういった専門の先生方を中心に御審議をいただいてまいっておるわけであります。二年近い御審議の結果、ほぼその御議論の結論がそろそろまとまる段階に来ておりまして、恐らくこの夏ごろには一つ意見として御提出をいただけるのではなかろうか、このように考えております。  内容につきましては、御承知のように、もともと当面の行政改革の具体的な問題に直接に触れるという問題ではございませんで、中期的あるいは長期的な展望に立った問題でございますし、また委員構成から見ましても、いわゆる学問的、理論的と申しますか、そういった面も非常に多々ございます。しかしながら、私どもも、やはり中期あるいは長期的に行政改革を考えていく場合には、そういった御意見も十分取り入れていくべき性質の問題であろう、こういうふうに考えておりますし、この夏そういった研究会の報告が出てくることを大変期待をしておる、こういう状況でございます。
  154. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 大臣、いまの政府委員の加地さんのお話をお開きになって、恐らく研究会の方向も大臣のことですから、御承知だと思いますけれども、すぐこれといった具体策が出るのではないにしろ、一つの理念、方向、目標というものをつくろうという作業でありますから、それを単なる一行政管理庁内部の研究案みたいなものだけに終わらしてほしくはないと思いますが、いかがでございますか。
  155. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまの研究は、お話しのように、基本的な考え方の問題でありますので、これは何も行政管理庁だけがどうこうという問題ではない、かように考えております。したがいまして、これはやはり内閣全体としてそれを生かすにはどうしたらいいかという考え方に立って進めなければならぬ、かように考えております。
  156. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 わかりました。ひとつぜひともお願いをいたします。  自治省にちょっとお伺いをいたしますが、先般五月の二十日に「田園都市構想と地方分権の推進」という文書をお出しになりましたですね。自治省お越しでございますか。——これを読みまして、私どもは、国と地方自治体の間での役割り分担についても第一次提言でははっきり申し上げておるわけでありますが、この自治省のおつくりになった「田園都市構想と地方分権の推進」という文書を読ませていただきまして、大変私は注目をさせていただいておるわけであります。  いわく、国、地方を通ずる行財政制度の見直しを行います、集権から分権、画一化から多様化へ、統制から自主へと行財政体質の改善を図るというような方向が大変すっきり出ておるわけでありますね。その点では大いに共感をする点が多いわけで、ぜひ積極的に推進をしていただきたい。もちろん自治省だけでできることではありませんが、少なくとも地方自治体、地方自治の立場に立っての政府全体に対するこういった姿勢での発言を、あるいは作業を大いに進めていただきたい、このように思うわけでありますけれども、これを、単なる作文ではどうにもならないので、今後どうやって具体的に生かされるのですか、どうやってお進めになるのですか。
  157. 吉田弘正

    吉田説明員 田園都市構想に即しまして、国土のそれぞれの地域に特性ある地域社会をつくっていくということのためには、地方公共団体が主体になりまして、その創意とイニシアチブのもとに施策が展開されねばならないというふうに考えているわけでございまして、そのための行財政基盤の確立がぜひ必要であるというふうに考えているわけでございます。  私どもといたしましては、第十七次地方制度調査会が五十二年の九月から発足いたしておりまして、現在新しい時代のもとにおける行政の役割りでございますとか、国と地方の機能分担のあり方響について、目下鋭意審議が重ねられているところでございますので、この答申が本年九月には出る予定になっておりますので、この答申を得まして、その趣旨の実現を図りまして、一層の地方自治の進展を図ってまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  158. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 だから、答申がこの文書の方向で出たとしたら——出てほしいですよね。出たとしたら、それを具体的に、そういう答申が得られたら、自治省としてはどういうふうに進めるのですか。具体的に国と地方自治体の役割り分担あるいは行政事務の再配分、財源の配分、いろいろあるでしょう。具体的にどういうふうなかっこうで進める計画なのか、お考えがあるならばちょっとお聞きをしておきたいというお尋ねをしたわけでございます。
  159. 吉田弘正

    吉田説明員 目下地方制度調査会で審議中でございますので、この答申が出ました段階で、それぞれ、国と地方の非常に基本的な関係でございますから、なかなか自治省だけというわけにはまいりませんが、各省庁ともそれぞれ協議いたしまして、これを進めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  160. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 ぜひそういう方向で努力をしていただきたいと思います。  総論はその程度にいたしますが、いささか総論が長くなりましたけれども、これは大事な問題でございますので、お許しをいただきたいと思います。  附属機関地方支分部局等に関する規定整理等に関する法律案、これについてお尋ねをいたします。  第一に、この法律案によりまして、いろいろな附属機関、地方支分部局の機構の改廃について機動的、弾力的に各省庁によって行う、そういうねらいがこの法案にはあるわけでありますけれども、しかし逆に言いますと、規定の緩和によって行政府の意のままにお手盛りの機構がふえるおそれも出てくると思うのです。これに対する歯どめが問題になると思いますが、第一に、府県単位機関で現行は法律事項で改正後政令移管されるものが五つありますね。地方行政監察局、地方法務局、保護観察所、地方公安調査局、婦人少年室。法律案として国会でチェックできなくなれば、これらの機関の膨張抑制はどうされるのですか。
  161. 加地夏雄

    ○加地政府委員 先生の御指摘は、現在法律事項になっているものを今回の改正のような形で政省令に落としていった場合に、いわゆる行政機構全体の膨張抑制、こういった観点からはむしろ問題であって、具体的な歯どめをどう考えているか、こういうことであろうかと思いますが、一般的に申し上げますと、法令上の規制形式がどうあるかということは、直接にはこの膨張そのものの問題とは関係はないのではないかというふうに私ども考えております。  現実に行政機構の膨張を抑制していくということは、政府なり行政管理庁といたしまして機構の膨張抑制を堅持する、こういう一つの方針が重要でございまして、過去数年間の例をごらんいただきましても、そういった政府の膨張抑制の精神というものは現実に行政機構の膨張を相当抑えてきておるわけであります。その意味におきまして、今回お願いしている改正案におきましては、それを機動的、弾力的に新しい社会情勢なり経済情勢に対応して再編をしていく一つの基盤整備をしたい、こういうねらいでございまして、あくまでも重要なことは、機構膨張抑制というのは、やはり政府全体の方針として貫いていく問題ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  162. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 私は、法律上の理屈をお尋ねしているわけで、御趣旨はよくわかります。また、現実にそうされていることもよくわかる。地方自治法百五十六条で、新設に関しては国会で承認を得なければならないという規定がございますね。しかし、新設という形をとらないで、既存の機関を再編するようなかっこうで実質的にふえてしまったということだって法律的にはあり得ますね。そこが懸念をされるのでございます。そういう膨張をそれじゃ具体的に法律的に、あるいは行政管理庁としてどういうふうに抑えようとされるか、その点をお尋ねをしておるわけであります。
  163. 加地夏雄

    ○加地政府委員 地方自治法百五十六条の新設チェックの問題を別にいたしまして、今回お願いしておる法律案では、御承知のように大部分の出先機関あるいは附属機関におきましては、すでに政省令移管になっておるわけでありまして、一部の、現在法律上の規制を受けておるものを全体の整合をするために政省令に落としていただくということでありまして、そういった法令形式の変更の問題と全体の膨張抑制を考えますと、一つには先ほど申し上げましたように政府全体のそういう方針の問題もありましょうし、仮にこういった改正を行うことによって機構の膨張が行われるというふうなことがありますれば、これは当然、国民世論全体の御批判もございましょうし、直接的にはいろんな場を通じまして、国会においてもいろいろそういった御論議をいただくわけでありまして、そういう意味におきましては、私ども今回の改正案が直接機構膨張の歯どめを失う形になってしまうという懸念は持っておりません。むしろ従来どおり膨張抑制を堅持して、そういう改革を推進していくべきである、こういうふうに考えておるわけであります。
  164. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 どうも私のお尋ねと御答弁の間に、私の言い方が悪いのかもしれませんが、すれ違いがあるような気がいたしますけれども、そうじゃなくて、たとえばもう一つのこの法律案内容でブロック機関の内部組織、部ですね、この設置を今度は政令で定めるようにするわけですね。国税局、陸運局、地方建設局等、十五種類の機関が法律から政令に移管をされますね。国会の審議権はなくなるわけですよ。それで統一的にそういう整理が、ある意味ではスピーディーにできるようになる。各方面に了解をとらなくていい。本音を言えば、そういう点だってあるでしょう。それができるようになる、それは評価するわけです。  しかし、膨張抑制は政府の方針で抑制しているんだから大丈夫ですよとおっしゃいますが、私は、すでにずいぶん前からお尋ねしたことが何回もありますが、役所の官やあるいは室や何やらがこの何年間でこのくらいふえましたよと具体的にお尋ねしたことも何回もあるのです。膨張抑制しても膨張した部分だってあるのです。これはもちろん仕事がふえたのだからしようがない部分だってありますよ。しかしそう言いながら、仕事がふえたのだからと言って膨張してしまったことだって現実にあるのです。  だから、相当の決意を持ってやらないと、政令に移しましたから、これはむしろ行政改革の推進になるんですという御趣旨もわかるけれども、政令に移したがために膨張抑制の歯どめというものを行政管理庁自身が相当覚悟してかからないと、こんなに仕事があってこうだからどうしても要るんですと言っても、いやそういうわけにはいかないという、スクラップ・アンド・ビルドがもうスクラップ・アンド・スクラップ・アンド・ビルドぐらいに考えていかないと、結果的にはふえてしまうということだってあり得るわけで、そういう具体的なチェックというものをこれからどうやっていくのか、どういう御方針でどういう決意でいるのか、これをお伺いしているわけです。おわかりいただけますか。
  165. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまの御懸念でありますけれども、政令あるいは省令に移しましても、すべて行政管理庁はこれを合い議を受けます。したがいまして、行政管理庁としてはもうその点でチェックは十分する、こういうことでございますが、さらに国会として国政調査権に基づいて、省令、政令で決めるものでもこれはもう幾らでも御批判あるいは御論議いただけるわけでございますので、もし問題を含んだものがあれば、これは十分御論議いただきたい。現に非常に数多くのものが政令、省令になっておりまして、その中の法律で残っておるものの一部を今回軽重の度に応じて整理をしよう、こういう趣旨であることを御理解いただきたいと思います。
  166. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 ただいま長官のおっしゃられたような御決意で臨んでいただければそれでいいわけで、新自由クラブといたしましても、簡素で効率的な政府の実現のために行政改革の積極的な推進を主張しておるわけでありますから、この法案に関してもこれが附属機関整理合理化に寄与するものであれば評価するわけなんです。しかし、そこで問題になるのは、附属機関等の規定を緩和することが整理合理化の推進のための保証や担保になるかどうか、これについてやはり議論をしておかなければいけない、こういうことで言っているわけなんです。  たとえば昭和五十二年十二月二十三日の閣議決定では府県単位の地方支分部局について、行管庁の地方監察局三カ所、郵政省地方郵政監察局支局二カ所、大蔵省財務部二カ所、うち一カ所については実施の期日が明記されておりませんけれども、その廃止が決められていたわけですね。これは法律事項扱いであった行政管理庁のものが、実績を言いますと、昨年の七月に三カ所全部廃止されたわけです。ところが省令扱いで手続上は容易にできるはずであった大蔵省のものは、ことし一月になって、ようやく一カ所廃止されたにすぎないわけです。郵政省のものは省令で昨年七月に二カ所全部廃止されていますが、大蔵省のものは閣議決定されても、そういうふうに簡単になったはずにもかかわらず、まだ一カ所しか廃止されていない。  こういう例がありますと、政省令化しても必ずしも法律事項よりも早く機動的、弾力的に整理合理化される担保、保証はないということになってしまうわけなんで、その点はどうなんだろうかと、こう考えておるわけであります。これについて何か大蔵省関係で御答弁があればお尋ねしておきたいと思います。
  167. 高木幸雄

    ○高木説明員 お答え申し上げます。  先生からただいま御指摘ございましたように、五十二年十二月二十三日に閣議決定されました財務局関係分は、財務部につきまして一財務部を廃止するほか、さらに一財務部を廃止するということになっておりまして、ことしの一月に、先生指摘のとおり小樽財務部を廃止いたしました。残る一財務部につきましては、現在、大臣官房地方課におきまして各財務部の業務の実態等を慎重に検討した上で具体的に決めたいというふうに考えております。
  168. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 申し上げておきますが、閣議決定されたのは五十二年の十二月二十三日、いま五十四年ですからもう一年半もたっておるわけですね。政省令化してもそんなに時間がかかってしまっておるのですよ。そんなことは相当の決意でやらないとできないのです。幾ら今度の法律案のように簡単にいたしましても、実例があるわけです。そこをひとつ十分お含みいただいて臨んでいただかなければ困る。  具体的に附属機関整理合理化についてお尋ねをいたしますが、五十四年一月十六日の閣議了解で挙げられたもののうち、ぜひ早急に進めていただきたいものがあります。五十二年十二月に決められたものがまだできてないのですから、五十四年一月十六日の閣議了解で挙げたものをいまから挙げますけれども、また三年後にまだできてないじゃないかという議論をするのはかなわぬですよ。閣議で了解してやろうということが、そんなに時間がかかるようではいけませんね。そう思うのです。  まず、引き続き大蔵省、別段大蔵省ばかりかたきに思っているわけではありませんが、「造幣局出張所及び印刷局出張所の適正配置について検討する。」というふうにあります。これはどうですか、どんなスケジュールでやるのですか。いまさっきの例のように時間かかるようじゃだめですよ。
  169. 高瀬昌明

    高瀬(昌)説明員 お答え申します。  造幣局における出張所は、現在一カ所でございまして熊本にございます。九州地域は、全国的に見まして貴金属関係業者が比較的多うございまして、貴金属製品の品位証明とか、鉱物類の分析試験など、そういうような業務に対する需要が相当ございまして、同出張所は、これら需要に対応いたしまして機能を果たして、地場産業の取引の安定とか、ひいては消費者保護という点で役立っておるわけでございます。  しかしながら、閣議了解の趣旨もございますので、今後とも配置人員とか業務内容、そういうものを含めまして配置方につきまして検討していきたい、そういうふうに考えております。
  170. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 御答弁に当たりまして一つお願いがあるのですが、どんな組織でも目的や必要性はあるのですよ。目的や必要性のない組織が、なお国家行政機構の中にあるはずがない。やはり設置目的というのはあるのです。だけれども、全体の行政改革の中でここらはスクラップしましょうという議論をしているわけなんで、そういう御説明は要りませんから、閣議了解まで行われた、そういうものについては、なお具体的に努力するということではなくて、いつまでにやりますというくらいのそんな意気込みで臨んでいただきたいと私は思うわけで、そういう御答弁をいただきたいと思います。——大蔵省、時間がありませんから結構です。  農林水産省関係で、「生糸検査所の定員の計画的な縮減及び内部組織の合理化を図る。」とありますけれども、時代の変化とともにその役割りが大きく変わってきている。生糸検査所の整理合理化はどうやってお進めになるのですか。
  171. 松岡将

    ○松岡説明員 お答え申し上げます。  生糸検査所につきましては、従来からも定員の削減に努めてまいりまして、五十四年度におきましても三十五人の定員削減というのを行った次第でございます。しかしながら、申されましたような最近におきます諸般の状況に照らしますと、やはり検査量と検査人員のアンバランスがあることは否めない事実だろうということで、先ほども先生指摘のようなことになったわけでございますが、現在、定員の計画的な縮減、それから内部組織の合理化を図るという線に沿いまして、研修の活用によります職員の適応性の向上あるいは行政需要の伸びる部門におきます受け入れ体制の整備、そういった面につきまして検討を進めておりまして、計画的な定員の縮減を行うべく、人員の縮減でございますとか、縮減の規模でございますとか、あるいは配置転換の方途等につきまして、現在鋭意検討を進めている段階でございます。
  172. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 同じような御答弁ならそれは閣議了解を読めばいいので、とにかく具体的にいつごろまでにやるという御答弁がなければ、もう御答弁に立っていただかなくて結構でございます。鋭意具体的に進めるのはあたりまえのことでございますから、結構でございます。  通産省関係、「繊維製品検査所の支所、出張所の整理に引き続き、定員の縮減等を行う。」これはいつまでにおやりになるのですか。そういう具体的なことをおっしゃっていただかないなら御答弁は要りません。鋭意努力する、検討しておるというなら結構でございますよ。ありますか。
  173. 竹内謙二

    ○竹内説明員 繊維製品検査所につきましては、昭和五十四年一月十六日の閣議了解等の考え方にのっとりまして支所、出張所の整理を行っております。すでに桐生繊維製品検査所の足利支所及び神戸繊維製品検査所の加古川出張所の廃止を行ったところでございます。  また、今後繊維製品に関する消費者保護の要請の増大等に対応しつつ輸出検査の合理化等を図るために、検査部門の定員の約一〇%程度を五カ年間に縮減したいと進めているところでございます。
  174. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 なるほど、もうすでにやっておれば、どうしても答弁なさりたいわけでございまして、大変結構なことでございます。  運輸省、「海員学校については、昭和五十四年度に、船員の需給動向等を勘案の上、組織の再編整理の問題を含め、その在り方を検討する。」とあります。これは閣議了解です。現在十三カ所ある海員学校で、入学者数が低下して二〇%ぐらいになっている学校もあると聞いておりますが、大幅に再編整理できると考えているのですか、いかがですか。
  175. 松木洋三

    ○松木説明員 お答え申し上げます。  御指摘のように閣議了解におきまして、五十四年度に船員の需給動向等を勘案の上に、組織の再編整理の問題を含めてあり方の検討をする、こういうことになっておるわけでございます。御指摘のように、入学率が非常に低下しておる等の問題もございますが、一方で船員の教育を取り巻く環境は、たとえば昨年採択されました船員の訓練、資格証明及び当直維持の基準に関す国際条約というものの批准のための教育制度の再検討というような大きな問題も抱えておりまして、こういった問題を全般的に見直す必要があると私どもは考えておりまして、すでに昨年の九月来、私どもの諮問機関であります海上安全船員教育審議会の場において調査審議が進められております。閣議了解の線に沿いまして五十四年度内に結論を得るべく、いま検討を進めていただいておるところでございます。
  176. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 最後に、昭和五十二年十二月二十三日の「行政改革の推進について」という閣議決定に関して、農林水産省に、食糧事務所についてお尋ねをいたします。  閣議決定では、食糧事務所の出張所を三年以内に全廃することと、支所の一割を整理統合することを決めているわけですが、その進捗状況を調べてみますと、出張所については、五十三年度までに四百四十カ所がすでに廃止をされ、五十四年度に二百三十七カ所、五十五年十二月二十三日、つまり閣議決定の「三年間以内」ということですが、この十二月二十三日までに五十五カ所を廃止する計画である、こう伺っておるわけで、これは実行できるなという感じがするわけです。ところが、支所の一割削減、これは五十三年度までに十三カ所、五十四年度、今年度は二カ所の廃止の御計画のようですね。そうすると、当初約四十カ所の削減計画を立てていたので、残りは二十五カ所、それを五十五年の四月から十二月二十三日までにやるということになるのですよ。今年度二カ所くらいのベースで、最後の年に二十五カ所、半数以上やるなどという、そんな計画が本当にできるのですか。自信があるのですか。いかがですか。
  177. 宮崎武幸

    ○宮崎説明員 お答えいたします。  出張所につきましては、ただいまお話がございましたように、おおむね五十四年度で終了する予定でございます。支所につきましては、先ほどの約一割の削減というのは、これは実は何年以内でということはまだはっきり決めておりませんでした。その決めました時点で、約四十程度のものを削減しよう、こういう計画でございます。現在のところ、先ほど先生指摘のとおりの実施状況でございまして、残りさらに二十くらいのものをいま予定しておりますが、これは、はっきり申し上げまして、五十四年度いっぱいではとてもできないという感じでございます。というのは、出張所を廃止いたしまして、その人間を支所に引き上げて吸収しておるわけでございますが、そういう状況でございます。それをさらにどこかに回していくわけでございますので、とりあえず私どもとしましては、まず一番下の出張所の全廃を先に手がけまして、それと並行的に、あるいはその次に支所というふうな考えを持っておりますので、五十四年度中には、残念ながら一割の削減という目標は達成はむずかしいというふうに考えております。
  178. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 確かに、詳しく読めば時期は三年以内とは書いていない。ただ、文章の続きを見ますと、おかしい文章ですね、これは。食糧事務所の出張所を三年以内に全廃すること、支所についても一割を整理統合を行うこと。おっしゃるとおり、確かにこれは、三年以内は係っていない文脈です。しかし、一般の理解は、食糧事務所の出張所を三年以内に全廃するのだから、支所一割というのも三年以内だろう、こう受け取りました。そう書いた新聞だってあるのです。一般的にはそう受け取ったのです。ところが、やってみたらなかなかむずかしいから、とても三年以内ではできません、こういうお話になってきている。  食糧事務所の主要業務である米穀検査は、昭和五十三年から等級区分が簡素化されましたが、そういうことを考えてみると、閣議決定以上の機構縮小が考えられてもいいと思う。これは、私だって選挙を抱えている身ですから、こういうことを言えば田舎からうるさく言ってくることだってあるのですよ。だけれども、そういうことを越えて、やらなければならないことをやるのだということで言っているのですから、本気で考えなければいけない問題だと思うのです。そういう機構縮小が考えられてもいいと思うのですけれども、その点はいかがか。  それからもう一つ、これは昨年当委員会にかかった法案でそうなったのですけれども、五十三年四月から、食品流通改善巡回点検事業を実施する、こういうことで食糧事務所の業務が一つ加わりましたが、どうしても欠かせない業務か、私はそのときから疑問を持っていたわけです。しかし、それはそれといたしましても、食糧庁では、食品流通改善推進員を今後さらに拡大をしていく方針で、そういう予算要求をしているようですね。——予算要求ではなく予算措置ですか。当時、推進員対象者は全国で八百人ということですが、五十四年度予算では三百三十五人さらに拡大をする。これらの業務は、従来関係機関への行政指導で済ませたり、あるいは各業界が自主的に実施していたのを、食糧事務所の職員が行うことになったために、むしろ行政改革に逆行する措置だという声だって一部には出ております。何か逆行するような印象を受けるわけです。一方で米の等級区分が簡素化されているのに、なかなかそういう整理が進まない、そして、食糧検査員の振りかえの食品流通改善推進員はさらに拡大をしていく。どうも、行政の簡素化が求められている現状をどのように理解されているのか、理解に苦しむところがあるのですが、いかがなんですか。
  179. 宮崎武幸

    ○宮崎説明員 米の検査の簡素化につきまして、私の方からお答えいたします。  御指摘のように、昨年度の産米から検査の等級区分を改めまして、一等から五等まで、五段階でありましたのを一から三まで三段階に簡素化いたしたわけであります。しかしながら、等級区分は簡素化いたしましたが、検査自体はやるわけでございますので、これが直に大きな人員の削減というふうなものにはなかなかつながらないわけであります。もちろん事務的な簡素化にはなりますけれども、必ずしも大きくない。そこで、私どもとしましては、それも含めまして、検査自体の改善合理化という措置は従来からとっておりますが、御案内のように、私どもの検査員の人数が大体四分の一削減してきておりまして、相当な人数が減っておりますので、検査自体の合理化を大いに進めなくちゃいけない段階になっております。  そういうことで、毎個検査から抽出検査への転換を図るということで、抽出検査の実施を推進する、あるいは検査の場所を減らす、検査場所の整理統合も、約四分の一程度減らしたわけでございます。あるいは検査をスピーディに終わらせるために、生産者の組織いわゆる受検組合と申しますか、そういうものの組織化を図るとか、あるいは生産者団体に検査協力をお願いするとか、そういう形をとりまして、できるだけ検査を円滑かつスピーディーに終わらせる、それによって人間の削減の方に対応したい、こういうふうに考えておるわけであります。こういった検査業務の改善合理化につきましては、ただいま申し上げましたが、今後ともそういう方向で進めていく方針でございます。  もう一点につきましては、担当の食品流通局の課長からお願いいたします。
  180. 中島圭一

    ○中島説明員 食糧事務所の実施しております食品流通改善巡回点検事業についてでございますが、御案内のとおり、昨年度から実施に入ったわけでございまして、この事業につきましては、最近におきまして、消費者から、食料品に対します価格の安定、流通の円滑化あるいは品質の維持向上あるいは表示の適正化等につきまして、関心なり要請が非常に高まっておるというような情勢がございます。このような情勢に対処いたしまして、きめの細かい食品行政を展開するという観点から実施しているものでございます。  五十三年度に実施いたしました主要な事業は、一つは食品工場あるいは食品小売店等を巡回いたしまして、JAS法によります品質の表示基準あるいは指導通達でやっております食料品の製造流通基準等の遵守状況の点検、また、全国の食品工場とか卸売業者、小売店等を巡回いたしまして、生鮮食品とか加工食品等の毎月の生産量、仕入れ量、価格等の動向等の見通しを把握いたしまして、食料品の需給調整対策あるいは物価対策の基礎資料とするというものでございます。  また、年末年始等の価格高騰時におきまして、小売店等の価格あるいは需給の動向を把握する、また、畜産振興事業団が放出しております輸入牛肉につきまして、標準食肉販売店等におきます小売目安価格の遵守状況とか部位別の表示をやっておるかどうかというようなものの点検、あるいは貨物輸送機関のストライキあるいは災害等の事態におきまして、生鮮食料品の需給等に関する情報を把握いたしまして、これを関係機関に連絡伝達する、あるいは所要の協議を行う、こういう仕事をやっておるわけでございます。今後もこのような仕事は必要であると考えておりまして、今後とも継続して実施していく考えでございます。
  181. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 御趣旨はよくわかるのですけれども行政管理庁、この点についてどうなのですか。食品流通改善指導員というかっこうで、閣議決定で食糧事務所の整理統合、定員の削減をやっていくのだという一方で、そういう別の仕事が加わって、むしろ増員という措置がとられる。行政管理庁としてこれにどういう意見を言ったのですか。
  182. 加地夏雄

    ○加地政府委員 食糧事務所のあり方の基本的な問題を別にいたしまして、今日まで食糧事務所に対する合理化を進めてまいっておるわけであります。御案内のように、四十二年から過去十二年間に二万八千人を現在二万人弱、約八千人近くの削減をやってまいったわけであります。そういう合理化を進めてまいっておりますけれども、一方、現在の食管法のもとにおきます食糧検査を前提にいたしますならば、そういった合理化をやりながら、やはり新しい流通関係の業務をやる場合に、それは新規の増員という形ではございませんけれども、その削減を進めると同時に、さらにその上に加えて振りかえという措置でそういった業務の担当をやらしておる、こういうことでございまして、全体としては食糧事務所は約八千人近い減員を見ておるということでございます。
  183. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 時間がありませんから、その問題はまた別の機会に議論させていただきます。私は、どうしても納得のいかない部分もございます。案外行政管理庁の本質が問われる問題かとも思うので、これはまた別途議論させていただきます。  いま持ち時間を大体二分ぐらい過ぎたところでありますが、もう一本の法律が、答弁が長いから全然進んでいない。一点か二点だけお尋ねいたします。  許認可に関する法案でありますけれども、この法案で五十二年十二月二十三日の閣議決定「行政改革の推進について」による計画事項は、ほぼ一〇〇%の実施率になりますね。しかし、三十九年九月の臨調答申並びに四十九年十一月六日の行政監理委員会指摘事項についての実施率は、昨年末現在で六九%と六〇%というぐあいに、進捗状況に非常に低い点が見受けられていて問題があると思うのです。特に行政監理委員会指摘事項のものが一番低いわけですけれども、これについて各省庁別に統計をとってみますと、これは前国会委員会でもそういうワーストテンというものをやってみたことがあるのですが、一向に改まっていない点が多いわけです。  たとえば行政監理委員会指摘事項に対して未措置のものが占める割合を算出してみますと、整理状況に関するワーストテンというものが出てくるわけですが、その第一は、十四事項指摘されて十一事項残っている法務省で、七八%が未措置。まずこの法務省からお伺いいたしますが、どういうものが残っているかは私の手元にありますから、それについての御答弁は結構でございます。もうたくさんありますね。そのたくさんあるうちで、かつて七十五国会提出した整理法案で、外人登録法に関連した四事項を整理するようにしたけれども国会で削除された、それでできないままになっている、そんな御答弁も予想されるわけです。しかし、当時の国会では一括整理法に入っていたから削除されたのであって、別途単独法で行うようにということだったのじゃないですか。それがなぜこんなに放置されているのですか。行政監理委員会と言えば大臣もお加わりになっている一つの公的機関、それが十四事項指摘をされて、あれからもう四年、大方五年近くたって、なお七八%が未措置。怠慢ではないですか。いかがですか。
  184. 藤岡晋

    ○藤岡説明員 お答えをいたします。  七十五国会で、当委員会で御審議をいただきました許認可整理法案の中に御指摘外国人登録法の一部改正案が盛り込まれておりましたものが、御案内のような経緯でいわゆる議員修正で削除されまして、その削除されました部分は、許認可整理法という枠組みの中ではなくて、別個単独の立法で検討すべきではないか、こういう国会からの御指摘を受けたわけでございます。ただ、そのときの許認可整理法案の中に盛り込まれておりました改正の内容は、文字どおり整理という性格のものだけであったわけでございますが、七十五国会の当委員会における御指摘は、そういう整理レベルだけではなくて、そもそも外国人登録制度の中には、制度の基本にかかわるような問題点もあれこれあるのではなかろうか。したがって、それら全体を踏まえまして全面的な見直しをして、結論として改正の必要があるということであるならば、そういう全面見直しの作業を踏まえたものとして、単独立法の形でたとえば法務委員会に出すように検討してはどうか、こういう御指摘を受けたと承知しておるわけでございます。  もとより、整理法案の内容となっておりました登録法の一部改正部分は行政監理委員会の勧告を受けておるわけでございますので、それも実現しなければならないし、それから、いま申しましたように、登録制度の基本にわたる事項についての見直しの結果を踏まえたものをあわせて基本的に改正を要するという結論になれば、さようなものとしての法案を出すということで、おしかりを受けるかもしれませんが、鋭意検討を続けてまいったわけでございます。ただ、いろいろな非常に複雑な事情がございまして、今日まだ最終結論を得ていないということは遺憾に存じておる次第でございます。
  185. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 よくおわかりのようでございますから、あえてさらにくどくどしくは申しませんが、閣議決定から大方四年、七十五国会からでももう大分期間がたっておるわけです。国会がしかるとかなんとかではなくて、国民がしかっておるわけです。余りずるずるとやらないでお進めをいただきたいと思います。前のときも法務省がワーストワンだった。指摘事項に対して未措置のものが相当あるというのが一番悪いトップだったのです。順位はそう変わっていないのです。  第二位は自治省で、六事項指摘されて四つ残っている。六六%が未措置。これも順位は変わっておりません。何が残っているかもよくわかっておりますが、これについては時間がありませんから結構でございます。  公正取引委員会が悪い方から一番目で、指摘事項が五、未措置が三。公取の場合は「消費者保護行政の一環として、住民に密着した現地機関が処理することが効果的である」、そういう事項であるので、「道府県知事の権限を指定都市の長に委譲することを検討する。」こういう内容がこの三事項の中に盛り込まれていたようでありますが、これもぜひ急いでもらいたいですね。御事情はあるのかもしれませんが、慕情があることは最初からわかって指摘しておるわけでありますから、急いでいただかなければいけないと思います。  ポイントだけしぼってまいりますけれども、悪い方から四番目の運輸省は、十四事項指摘をされて八事項残っていますね。未措置が五七%、そのうちの五つの事項はいずれも水難救護法、これに関連するものですね。この法律は明治三十二年制定。改善意見は、「法律制定以来かなりの年月を経過し、遭難船舶の救護の実態にそぐわなくなっているなど、立法当時とは状況が変化しているので、海上保安庁、都道府県警察、市町村等の役割を明確にするため、水難救護法の整備を図る。」こういうふうになっていたはずですね。  それが指摘をされて、五年たってまだ何の整備も行われていない。これは御答弁があったらお伺いをしたいと思います。
  186. 西村康雄

    ○西村説明員 水難救護法につきましては、ただいま御指摘がありましたように、法律といたしましては、明治三十二年で非常に古い法律でございます。水難救護法は、水難救護、遭難船舶の救護に関する部分と、それから漂流物件、沈没品の取り扱いに関する部分から成っておりまして、そのうち行政監理委員会から御指摘がありましたのは、遭難船舶の救護の部分でございます。  それで、どのような問題点があるかと申しますと、現実に遭難船舶の救護につきましては、水難救護法では、市町村長が第一次的にこれに当たるということになっております。しかし実際は、御承知のように、海上保安庁がこれを全国的に行っておりますし、さらに、それを補佐するものとして、水難救済会、これは民間の機関でございますが、これが各地に船舶を備えてやっております。そしてさらに、そのほかは、漁船が、仲間の船が遭難いたしますと出動いたします。あるいは付近の航行船舶、商船等が救助に赴いています。  それで、実際の遭難船舶の救助の主体の問題につきましては、実際に遭難船舶を救護する救護主体を強化する、実際には海上保安庁の救助力を強化していくということが現実の問題になっているわけです。したがって、では法制上はどんな問題があるかと申しますと、この法律は、市町村長が現実に救助活動をしたときに初めて適用になる法律でございます。したがいまして、水難救護法が、現在市町村長が実際には救助していない実情でございますので、実は眠っている、全く働いていないということで、実は水難救護法があることで現実に不都合が生じているという部分はございません。  では、法制上本当に問題になるのは何かと申しますと、商船なり漁船が自主的に救助をいたします、この場合に、救助費用が現実には補償されない、こういう点が問題になるわけです。実際の自主的な船舶による救助というのは、非常に大きな部分を占めておりますので、それを促進するためには、この補償問題というのを実際に合理的な解決をしなければいかぬということになっています。  ところで、一方では船員法という法律がありまして、これは、船舶を救助するのは、海のお互いの義務として無償で救助するというたてまえを船員法は貫いておりますし、これは国際的な慣行でもあります。しかし、この原則を余りにもやっていると現実的ではないということで、実際には、どうやったら救助費用を補償するかということ。運輸省といたしましては、すでにかつて海上保安審議会に諮問いたしまして、その結果、救助を受ける船と救助をする側の船とがみんな同じような海難を受ける危険性があるので、ひとつ共済的な基金制度をつくりたいということで、関係方面に提案いたしまして、かなり努力をしてまいりました。しかし、これにつきましては、具体的な負担区分だとか費用をどのようにして算定するかとか、非常にむずかしい問題がございます。それで、ついに運輸省から出しました案につきましては、関係方面の御同意が得られないで今日に至っております。  実はこのような運輸省の試みは、行政監理委員会から御指摘を受ける前に行ったものですが、このような点については、ではどういうのが具体的にいいのかということを今日御指摘以後も引き続き検討しているわけですが、非常にむずかしい問題で、外国の制度も私ども参考にさせてはいただいておるのですが、外国では依然として自主的な救助というのが主体になっております。そういう点で、どうやって海難救助体制を合理的なものに近代化していくかということについては、私ども一生懸命研究はしておりますが、何せ非常にむずかしい問題ですし、また一方、現実に水難救護法が働いていない、そして働いていなくてもその面では不都合が生じていないということなので、直ちに水難救護法をどうこう改正するということよりは、本当にこれから合理的な救護体制をみんなで確立するという方向で検討させていただきたい、真剣にそのように思っております。引き続き検討させていただきたいと思います。
  187. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 御説明の御趣旨はよくわかるのでございますけれども、現実に働いていない、だけれども不都合はない、将来この商船の水難救護のその費用の共済、そういうようなことも考えて検討しておる、これは前にもそんなことを伺ったような気がするのですけれども、いずれにしても、要らない法律や要らない規定ならばこれは削除したらいいですよ。そのような規定があるために、また行政として対応しておかなければならない組織も必要かもしれないし、あるいは市町村やその他に対してそういうことにおいてのある程度の負担というか、そういうものを、これは精神的かもしれませんよ、いろいろあるかもしれない。なくていいものならばそれは削除すべきだと思いますね。いずれにしても、明治三十二年からの法律を五年前に早急に整備しなさいと言われて、いまの御説明、わかるのですけれども、もっとやはり急いで結論を出すという、どこかで踏み切りも必要なんじゃないでしょうか。余りずるずるしていると、行政監理委員会指摘そのものが、どうせできないことを指摘しているのだというふうに受け取られかねないものもあるんじゃないでしょうか。もっと真剣に考えていただきたいと思うのです。  同じようなことは、悪い方から五番目の大蔵省についても言えるのでありまして、大蔵省の場合は十八事項指摘をされて未措置が九事項、未措置率は五〇%でありますけれども、この指摘事項のうちの何項目か、七項目ぐらいは、いずれも外国政府の不動産に関する権利の取得に関する政令あるいは外国人の財産取得に関する政令に関するもので、改善意見は、「昭和五十年五月に予定されている不動産業の一〇〇パーセント自由化後の土地問題の推移を見きわめた上で、廃止を含め制度全体を検討する。」とあるわけですね。これあたりでも、その後の情勢変化もあったかもしれませんが、指摘をされて、そういうまた変化を受けて何ら改善をされないままでいるということははなはだ問題であろうかと思うわけであります。  以上、まだまだ、たとえば全国知事会の臨時行財政基本問題研究会が四十九年、五十年、五十二年、五十三年の四回にわたって許認可事務に関する改善意見をまとめているのですけれども、こういうことについてもお尋ねをしたかったのですが、時間がないのでやめます。しかし、それについては具体的な各告別の、農林水産省とかあるいは通産省とかございますので、これはちょっと後でメモをお渡ししておきますので、これについての御見解やあるいは今後どうされようとしているのかについてお答えをいただきたい、こう思うのです。  それから同時に、自治省も先ほどのりっぱな文書がございましたが、知事会がそういうふうな改善意見をまとめたことについて、自治省がもっと応援しなければいけないじゃないですか。こういう文書だけいいのをつくって、今後やりますと言ったって、全然いままで応援してないじゃないですか。もっともっと応援しなければいけないと思いますよ、お立場から言うのであるならば。そういうことも感ずるわけでございます。  さてそこで、長官、以上触れましたように、附属機関、地方支分部局に関する法案にいたしましても、単に政省令化したから行政の簡素、効率化に資するものである、そんなものではない。実例も現実にはあった。そんなものをしても全然行われていない例がある。それについては行政管理庁として、いやそれ以上に政府として、内閣として相当の決意を持たなければ、単にいじっただけでそうなるものでもないということも申し上げたわけでございます。  また、許認可等整理にいたしましても、これで五十二年の閣議決定の項目千二百四十事項については一〇〇%実現するわけですが、これから先どうするのか。行政監理委員会指摘事項は六〇%しか達成されていない。なお達成されない問題点が各省別に当たればいろいろなことをおっしゃるわけでありますけれども、どこかで踏み切りをしないと、いままでの発想でこれは行政が抱えておかなければならない範囲なのだと考えていたのでは、たとえば先ほどの共済制度をつくろうとか、そういうことまでやらなければいけないだなんて考えていたのではなかなか進まないということを冒頭お話ししましたように、行政改革の発想そのものを新しく練り上げていく、再検討していくという中で考えていかないと許認可整理もこれがもう壁でさらにそこから先はありませんとか進みませんとかいうことになりかねない。行政監理委員会指摘でさえ各省別に言いますと未措置のものが多いところは八割近く、少ないところでも二割くらいあるわけであります。そういうことを考えてみましても、政府としての努力というか新しい発想をもっての決断といいますかリーダーシップ、それが相当強く求められていると思うわけであります。  真剣な議論として、いささか時間をオーバーいたしましたが申し上げたわけでありまして、これに対する長官の御見解、御決意をお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思っております。
  188. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいまお話しの中には二つ問題があろうかと思います。一つは、政府の姿勢の問題、いま一つは個々の実行の問題だろう、かように思うのでございまして、前者につきましては私どもはこの時勢にかんがみ、またさらに中長期的に見た考え、両者を組み合わせまして姿勢の問題をひとつ打ち出すように努力をいたしたい。  なおまた、個々の実行の問題につきましては、これはなお一層これを推進すると同時に、次々に新しいものがつけ加わってまいりますし、また時勢に応じて変わっていくものもございます。また、まだ手をつけるべき報告事項等の問題もたくさんございますので、それらは絶えず進めてまいるようにいたしたいと考えております。
  189. 中川秀直

    ○中川(秀)委員 答弁をお願いした各省の方におわびを申し上げておきますが、時間がなくなりましてお尋ねができなかったことをお許しをいただきたいと思います。後でメモをお渡ししますので、それについてはまたお答えをちょうだいしたいと思います。  どうもありがとうございました。
  190. 藏内修治

    ○藏内委員長 これにて両法律案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  191. 藏内修治

    ○藏内委員長 これより附属機関地方支分部局等に関する規定整理等に関する法律案を討論に付します。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。竹中修一君。
  192. 竹中修一

    ○竹中委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました附属機関地方支分部局等に関する規定整理等に関する法律案に対し、賛成の討論を行うものであります。  わが国の行政は、これまで経済の高度成長に支えられて、中央、地方を通じて膨張の趨勢をたどってきたのであります。しかしながら、最近におけるわが国を取り巻く内外の情勢はまことに厳しいものがあり、国、地方の財政も困難な情勢にあります。国の財政においては、昭和五十四年度には、約四割を公債に依存するに至っており、これを健全化するため財政支出の合理化が緊急の課題となっているのであります。すでに、民間部門においては、厳しい経済情勢に適応するため、懸命の合理化努力が払われておりますが、行政においても、より一層の簡素化、効率化が進められる必要があると考えるのであります。  申し上げるまでもなく、行政は国民のために存在するものでなければならず、その組織は、国民が行政に求めるところに対応した柔軟かつ弾力的なものでなければなりません。  本法律案は、この要請に対応するため、附属機関、地方支分部局について、現在、各省庁設置法においてまちまちとなっている法令形式を整序し、統一することによって、全体としてバランスのとれた行政組織編成を形づくろうとするものであり、統一に当たり、機関の設置に関する基本は引き続き国会の審議事項としつつ、細目的な事項は政府の機動的決定にゆだねることにより行政需要の変化に即応した行政機構の合理的再編成の基盤を整備しようとするものであります。  わが自由民主党は、行政の簡素化、効率化を一層推進するために、本法律案に賛意を表するものであります。今後、これにより行政機構が今まで以上に整然とした姿に整えられ、時代の変化に即応した機構の再編成が促進されることを期待するものであります。  私は、将来にわたってわが国の産業経済の発展と安定した国民生活の基盤を形成するための効果的な行政機構を整備するとともに、思い切って冗費を節約し、行政の効率化を図るために、政府は今後とも行政改革の着実な実施に一層の努力を払われることを要望して、賛成の討論を終わります。(拍手)
  193. 藏内修治

    ○藏内委員長 上原康助君。
  194. 上原康助

    上原委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました附属機関地方支分部局等に関する規定整理等に関する法律案に対して、反対の討論を行うものであります。  わが党は、従来から、行政改革については、関係者の意思を尊重して行政機構を簡素化し、能率化して、国民の要請にこたえるべきであるとの立場を明らかにしてきました。  これまで自民党の歴代内閣は、行政改革を重要な政策課題の一つとして掲げながら、官僚等の強い抵抗等もあって、今日まで実効のある改革が行われておらない実情であります。  安定成長時代を迎え、行政改革をめぐる情勢はまことに厳しく、今後一層徹底した改革が望まれるところであり、そのためには、中長期の見通しのもとに、行政諸制度の抜本的な検討に基づいて改革が進められることが要請されていると言わなければなりません。  しかるに、本法案は、このような基本的な検討がなされないまま、単に、地方支分部局と附属機関について、各省庁ぱらぱらとなっている設置形式を統一し、法律事項となっているものを政令以下にゆだね、政府の一方的な判断によって組織の改廃を行うことができるようにしようとするものであり、これが行政改革を実効あるものとするための方途であるとの考えには、はなはだ疑問を感ぜざるを得ません。  言うまでもなく、行政は国民のために存在しなければなりません。現在、行政権は憲法により内閣に属することとされておりますが、その行政をどのような組織機構によって行うべきかは、国民の代表である国会の意思によって決定されることが民主主義の原則であると考えるのであります。このことについては、第一回国会における労働省設置法及び第二回国会における現行の国家行政組織法の制定に際し、国会の意思として明らかにされているところであります。  すなわち、部局等の設置を政令で行うことができることとしていた政府原案を修正して法律によって設置すべきであるとしたのであります。その理由としては、本会議における委員長報告では、「政令でやるという考えは、戦時中に勅令に委任したと同じ考え方であり、これは新憲法の精神に違反するものである」として、「官僚的割拠主義から発生する官僚の阿房宮と言われる膨大なる機構の拡大を防止し、過去の宿弊を国会の意思によって断固一掃せんとする意図に出たものである」と格調高く述べ、「部局の設置、所掌事務の範囲を法律事項とすることは、第一回国会で確立した原則である」と述べているのであります。  このような経緯を省みず、政府は、昭和四十六年から四十八年にかけて、三回にわたり部局等の設置を法律事項から政令事項に移すことを主なる内容とする国家行政組織法の全面的改正案を国会提出したのでありますが、これは国会の審議権を著しく制約するものである等の理由から、一回の審議も行われないまま廃案となっているのであります。にもかかわらず、政府は、今回また附属機関、地方支分部局について、その設置形式を整序し、統一するとの名目のもとに、法律事項を政省令事項に移すこととして、本法律案を提案しているのでありますが、これは、さきの国家行政組織法全面改正案の地方版とも言うべきもので、国会の審議権を著しく制約する意図を持つものと断ぜざるを得ません。また、国家行政組織法制定時における国会修正の意思に反するものであり、断じて認めることはできません。  行政機関の設置、廃止については、国民の代表である国会の意思によって決定されるべきが民主主義の原則でなければならないと考えます。設置形式を整序するというのであれば、国民生活に密着したもの、国民の権利義務に関係するものなどの機関は、原則として法律事項とすることの観点から現行法制を検討し、現在、政省令事項であるものでも法律事項とするなどの措置を講ずべきであります。  反対の第二の理由は、行政機構の設置を政令以下にゆだねた場合の膨張抑制の歯どめがなくなるおそれがあるということであります。  行政機構は常に自己増殖し、膨張する傾向があると言われており、そのため、行政改革は古くて新しい問題であるとも言われているのであります。このような性格を有している機構の設置について、政府の一方的な決定による政令で行おうとすることは、省庁間の力関係によって左右されるおそれが生ずるのではないかと考えます。それを防止するためにも、法律事項として国会のコントロールが必要であります。  第三は、国民のサイドから見た場合、政令で定めることは不親切であるということであります。  国の行政組織がどのような形で、どこに設置され、その所掌事務がどのようなものであるかを明確に理解するためには、一般国民が余り親しみのない官報で告示される政省令で決定するよりも、国会で審議し、その内容を明らかにして法律で定めることが、より妥当であると考えるものであります。  第四は、本案は行政機関で働く公務員労働者に無用の不安、動揺を与えるということであります。  国家公務員法第七十八条第四号によれば、官制もしくは定員の改廃等により、廃職または過員を生じた場合は、職員の意に反して免職することができることとなっているのであります。現在、国家公務員の約九割の方々が地方出先機関に勤務しているのでありますが、本案により、政府の一方的な判断によって、政省令でいつでも地方出先機関等の改廃が行われ、その結果、廃職等により免職とされる場合が予想されるのであります。このような状態は、全体の奉仕者として、安んじて公務を遂行する責務を有している公務員労働者に、いたずらに不安を与えることになるのではないかと憂うるものであり、この点からも本法律案に反対せざるを得ません。  内外の経済情勢が厳しい今日、行政改革は単に法形式を整序するということで終わってはなりません。政府は、国民の行政改革を求める要請に正しくこたえ、実効のある改革を民主的に進めるよう強く求めて、私の反対の討論を終わります。(拍手)
  195. 藏内修治

    ○藏内委員長 柴田睦夫君。
  196. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、附属機関地方支分部局等に関する規定整理等に関する法律案に反対の討論を行います。  自民党大平内閣は、福田前内閣の行政改革方針を受け継ぎ、国民生活に直結する地方支分部局、すなわち国の地方出先機関の整理統合を進めるとともに、新たに附属機関等の縮小統合の方針を明らかにしました。この整理統合される附属機関には、国立病院や国立療養所など、国民生活に直結するものも数少なくなく、国民への行政サービスの低下につながるものであります。こうした附属機関、地方出先機関の整理統合をねらいに出されたのが今回の法案であります。  今回の法案は、第一に、行政機関の設置規制を政省令以下の命令に移管し、内閣の判断だけで行政機関の再編成ができるようにするものであり、主権在民の憲法のもとで、原則として行政機関は法律によって定めるという、行政民主主義に逆行するものであります。  国家行政組織法は、国の行政機関を、中央行政機関と地方支分部局及び附属機関に大別し、その設置などについては法律で定めると明確に規定しており、これは行政組織法の制定時に、戦前のような行政府による専制的な規制を排除し、行政機関の設置及び統廃合を立法府の統制のもとに置くとの趣旨で、衆参両院の修正によって設けられたものであります。そしてまた、これらの原則が各省庁設置法にも貫かれるべきことは当然のことであります。  政府行政管理庁は、今回の法案は、規制形式のばらつきを是正し、規制形式を統一するものであることを口実に、法律事項を政令以下に移管しようとしています。設置形式のばらつきの是正を口にするなら、国家行政組織法の立法趣旨に基づき、立法府による規制を強化する方向で是正することこそ必要であり、国家行政組織法の立法趣旨を無視する法案を提出する根拠にはならないのであります。  第二に、今回の法案は、行政機構の反動的再編を目指す大平内閣の行政改革計画の中心的な柱をなすものであり、国民生活に奉仕する諸機関の整理統廃合を推進するてこになるものであります。  大平内閣は、一千カ所に及ぶ地方出先機関の整理統合とともに、六省庁十二機関の附属機関整理統合を進めています。これらの中には、地方法務局、営林局署、職業安定所など、国民生活に奉仕するものがほとんどであり、国民への行政サービスの低下は避けられず、地方自治体からも反対の意思が表明されているものも数多くあります。今回の法律案は、国会の議決を必要とすることなく、内閣の判断で行政機関の整理統合ができるようにして、これらの諸機関の整理統廃合を容易にすることをねらうものであります。  第三には、今回の法案は、政府・防衛庁が目指している戦時立法の一環をなすものであることを指摘せざるを得ません。  政府・防衛庁は、有事立法研究に当たって、一九六三年の三矢作戦研究を参考にすることを明らかにしました。この三矢作戦研究は、政府機関の臨戦化のための法令整備として、最高防衛指導機構の確立、国家総動員法施策実施のための機構整備、非常時行政簡素化をテーマに掲げ、国防国家づくりの最大の眼目を内閣総理大臣の権限強化に置いています。  今回の法案が、立法府による行政権の規制を排除し、内閣にその権限を集中することを志向している点は、これら一連の動きと符合するものであります。防衛庁の機構と定員の圧倒的部分が附属機関に集中しており、この法案が、現在法律で定められている自衛隊の部隊の編成や、方面総監部、師団司令部などをことごとく政令以下に移管し、内閣総理大臣の大権を強化し、戦時即応態勢づくりを容易に進める危険な策謀の突破口になりかねないことは、きわめて重大であります。  以上のように、本法案は、主権在民の憲法のもとで確立された行政民主主義に逆行し、行政機関の整理統廃合を国会のコントロールから外し、国防国家機構づくりの突破口とするねらいを持つものであり、この法案を断じて容認できないことを表明して、反対の討論といたします。
  197. 藏内修治

    ○藏内委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  198. 藏内修治

    ○藏内委員長 これより附属機関地方支分部局等に関する規定整理等に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  199. 藏内修治

    ○藏内委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  200. 藏内修治

    ○藏内委員長 次に、許可認可等整理に関する法律案に対し、柴田睦夫君から修正案が提出されておりますので、提出者から趣旨の説明を求めます。柴田睦夫君。     —————————————  許可認可等整理に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  201. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 日本共産党・革新共同を代表して、許可認可等整理に関する法律案に対する修正案の内容の概要と提案理由を説明いたします。  修正案の内容の第一は、へい獣処理場等に関する法律の一部改正の部分を全文削除すること、第二は、航空法の一部改正の部分を同じく全文削除すること、の二点であります。  次に、提案理由を申し上げます。  第一に、へい獣処理等に関する法律の一部改正は、斃獣取扱場等の施設及び区域の変更の許可を届け出に変えようとするものでありますが、周知のように斃獣取扱場等は、悪臭公害などで住民に大きな影響を与えるおそれのあるものであり、これらの設備の拡大等については、慎重に行われることが望ましいのは言うまでもありません。ところが、改正案のように届け出にするとなれば、設備の拡大を容易にし、業界の過当競争状態を促進するとともに、悪臭公害等で住民へも迷惑をかけるおそれがあるとの問題点指摘する声が業界関係者からも出されております。  このような点から、現行どおり許可制により、行政機関がきちんと規制を行うべきであり、改正の必要は全くないと考えますので、この部分の全文削除を提案いたします。  第二の航空法の一部改正は、操縦士等が技能証明等を縛る場合の年齢、飛行経歴などの受験資格を緩和するものでありますが、操縦士、航空士、航空機関士については安全性の点から現行どおり申請時までに決められた年齢、飛行経歴等を有して受験するのが望ましく、たとえば規定の飛行時間を確保することによって練度を一定の段階に高めてから受験に臨むという現行制度の方が安全性を考慮する上でも合理的であると考えるものであります。  また、これらの改正についての要求は、関係者及び関係団体からは全く出されておらず、機長養成問題を抱えている日本航空当局が労務管理政策上、このような改正を政府に求めていたことが日航当局の文書からも明らかであり、このような背景をも持つ今回の改正には、単純に同意することはできないのであります。  したがいまして、この部分の改正についても改正を行う必要はないと考え、全文の削除を提案いたします。  以上が修正案の内容の概要と提案理由であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  202. 藏内修治

    ○藏内委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。  修正案について別に発言の申し出もありません。     —————————————
  203. 藏内修治

    ○藏内委員長 これより本案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  許可認可等整理に関する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、柴田睦夫君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  204. 藏内修治

    ○藏内委員長 起立少数。よって、柴田睦夫君提出の修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  205. 藏内修治

    ○藏内委員長 起立総員 よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  この際、行政管理庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。金井行政管理庁長官
  206. 金井元彦

    ○金井国務大臣 ただいま附属機関地方支分部局等に関する規定整理等に関する法律案及び許可認可等整理に関する法律案の両法律案を可決いただきまして、まことにありがとうございました。  御審議の間に承りました貴重な御意見を体し、一層の行政の改革、合理化に努めてまいる所存であります。今後ともよろしくお願いを申し上げます。(拍手)
  207. 藏内修治

    ○藏内委員長 なお、ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 藏内修治

    ○藏内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  209. 藏内修治

    ○藏内委員長 次回は、来る二十九日火曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四分散会      ————◇—————