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1979-04-11 第87回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年四月十一日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 藏内 修治君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 竹中 修一君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 新井 彬之君 理事 吉田 之久君       逢沢 英雄君    石川 要三君       稲垣 実男君    中馬 辰猪君       福田  一君    藤尾 正行君       上田 卓三君    栂野 泰二君       八百板 正君    山花 貞夫君       鈴切 康雄君    柴田 睦夫君       中川 秀直君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      三原 朝雄君  出席政府委員         内閣官房内閣審         議室長内閣総         理大臣官房審議         室長      清水  汪君         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第二         部長      味村  治君         総理府総務副長         官       住  栄作君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         宮内庁次長   山本  悟君         沖繩開発庁総務         局長      亀谷 礼次君  委員外出席者         外務大臣官房外         務参事官    枝村 純郎君         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     上野 保之君         文化庁文化部芸         術課長     大谷 利治君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十一日  辞任         補欠選任   塚原 俊平君     石川 要三君 同日  辞任         補欠選任   石川 要三君     塚原 俊平君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  元号法案内閣提出第二号)      ――――◇―――――
  2. 藏内修治

    ○藏内委員長 これより会議を開きます。  元号法案を議題として審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栂野泰二君。
  3. 栂野泰二

    栂野委員 きのうの委員会質疑を聞いていまして、政府側答弁には多くの点で釈然としないことがございますので、そのあたりから質問させていただきたいと思います。  元号に関する世論調査のことが問題になりましたが、政府がやられた世論調査で最終のものはいつでございますか。
  4. 清水汪

    清水政府委員 昭和五十二年八月で実施をいたしました。
  5. 栂野泰二

    栂野委員 この当時は、政府はまだ法制化という腹を最終的に固めていない時期でございます。この調査法制化の可否も尋ねていない、こういうことでございますが、しかし、きのうも幾つか挙げられましたその後の世論調査、たとえば日本世論調査会調査は本年の三月十七日であります。毎日新聞は本年の三月十七日から三日間、こういうことでございまして、この法案提出は二月一日ですから、提出以後、政府としては、この法案出しても国民を拘束することはないということを強調してこられたわけですね。ですから、そのことは国民の間には相当浸透していると見ていいわけであります。それにもかかわらず、最近の調査が、元号存続賛成派は依然として多いけれども、しかし法制化には反対法制化によらない緩やかなやり方をというのが八割を占めているわけですね。こういう状況の中で、言ってみれば法制化反対世論が高まってきた。ですから、マスコミの論調も、全体としてはこの法制化には慎重でなければならぬという、こういうことになってきているわけでございます。ここら辺は一体どうお考えになっておりますか。
  6. 清水汪

    清水政府委員 お答えを申し上げます。  その点につきましては、あるいは御指摘のように、私どもとして国民に対する説明がまだ努力が足りなかったという御指摘であれば、反省をいたさなければならないと思います。ただ一言私ども立場で申し上げさせていただきますと、政府といたしまして法制化方針を決めて、その法案国会提出するというふうに方針を決めた後におきましては、その法案自体に対する賛否を政府みずからが一般的な世論調査の形で問うということは、いろいろ考えてはみましたけれども、従来からのいろいろのいきさつ等もございまして、そういうことはやはり自制した方がいいだろうというふうな判断も持ったわけでございます。むしろ国会における御審議をお願いするという立場をとったわけでございます。  それからまた、それにいたしましても、各種の機関におきまして活発な世論調査が行われたということにつきましては、一般国民の関心がそれだけ高いということを反映するということでございますので、その点は私どもとしても評価をいたすべきものと考えます。その調査結果の内容につきましては、昨日も若干の私ども立場からした受けとめ方ということにつきまして御説明を申し上げたわけでございますが、私どもとしては、第一点は、元号存続希望するという大多数の国民の意思というものをまず確認できているという点が言えるかと思います。問題はその存続を図る方法をどうするかという点についていろいろの意見の分かれている点があるように見受けられるわけでございますが、その点につきましては、どうしても事柄がなかなか的確に調査しにくいというような技術的な問題があろうかというふうに思います。そういうことでございますが、大筋としてはこの世論調査の結果というものを、存続希望するということと、その存続のためにははっきりしたルールが必要だというふうに受けとめておる意見が大半であるという点は評価をいたしたい、このように思うわけでございます。
  7. 栂野泰二

    栂野委員 存続希望するということと、その方法として法制化するということとは決定的に違うんだということは、きのうも再三議論になったわけです。その法制化に対して国民の多くが反対しているという。そこで長官は、この国会審議を通じて国民にさらに理解を願うのだ、こういうふうにおっしゃいますが、この国会審議を通じて国民世論動向法制化賛成の方に変わるかどうかというのは、一体どこで判断されますか。少なくとも過半数を超える国民法制化には反対というのが現状と見なければいかぬわけですね。調査の仕方が技術的にむずかしいとおっしゃるけれども、一体どこがむずかしいのか。なぜ、こういう状況が生じた以上、政府としても世論調査その他の方法ができないのか。当然政府としても世論調査をやる、そうすべきじゃないですか。
  8. 清水汪

    清水政府委員 大臣お答え申し上げます前に、私から補足させていただきたいと思いますが、ただいま御質疑の技術的にどういう点が問題があるかということでございますので、その点につきましては概略申し上げますと、元号存続した方がいいが、その方法としては、たとえば政令でもいいではないかという御意見があるわけでございますが、この点につきましては、現在の法制のもとにおきましては、法律に全く根拠がない場合、その場合におきまして、直接に政令というものをつくりまして何か事を決めるということはできないことになっているわけでございます。つまり、政令というのは、憲法を実施する、あるいはさらに一般法律を実施するため、あるいは法律の委任に基づく場合ということになってございますので、直接に、法律根拠なくして政令で事を最初から始めるという方法は、ちょっと実行できないのではないかというふうに解しているわけでございます。  それから、存続はするがその方法としては内閣告示という方法でもよいのではないかという御意見もあるわけでございます。この点につきましては、昨日も御答弁申し上げたわけでございますが、方法としてそれが不可能だということを申し上げたことはございませんですが、やはり国民存続希望している、その元号存続要望にこたえる方法といたしましては、内閣告示という方法内閣判断によって左右されるわけでございますので、その存続について安定するという保障がございません。つまり元号というものを存続させていくという場合におきまして、安定性あるいは明確性という点におきまして問題があるわけでございます。  それからもう一つ存続はした方がいいのだけれども、特に格別のことをしなくとも慣習的に使っていけばいいではないかという御意見もございます。その点につきましては、現在、昭和という元号現実に事実たる慣習として使われておるわけでございますから、その点につきましてはもう問題はないわけでございますけれども、さて、その次の元号、つまり一般アンケートでも、次の天皇あるいは天皇がかわった場合でもということで存続の問題を聞いておるわけで、それに対して大多数の方が存続希望している、そういう場合の存続の問題でございます。そういたしますと、昭和の次の元号を決めるということが必要になるわけですけれども、決めるということにつきましては現在慣習として何かルールがあるかということになりますと、定かではございません。そういうような点が技術的にはございますので、私どもといたしましては、しかし存続希望するということと、そのための何らかのルールが必要だという認識は皆さんが持っていらっしゃるという点を受けとめて、その方法としては、政府政府なりにどういう方法が最善であるかということを従来慎重に検討してきました結果、今回御提案申し上げている法案をお願いするということになったわけでございますので、この点を補足させていただきます。
  9. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  確かに御指摘のように、世論調査の結果というのを踏まえてまいりますると、一社が出されたものには六〇%近い法制化賛成もございます。その他は大体二〇%台であるということも、私ども承知をいたしておるわけでございます。そこで、もちろん御指摘なさいましたようにわれわれ法制化について慎重に検討をいたしました。そうした立場で、いま政府委員が申し上げましたように、存続を大多数の方が希望をしておられる、その国民方々の御意向の中に、世論調査によると法制化について過半数の方が賛成というアンケートの結果も出れば、そうでない二〇%台というようなアンケートも出る。そういうことを考えてまいりますと、結局、法制化についてやはり十分な御理解を願うとともに、政府が何ゆえに法制化するかということを明確にすべきであろう。そういう点で、先ほども申し上げておりますように、法制化することによって、国民存続希望されるその根拠と申しますか、よりどころを明確にして差し上げる責任が政府にはあるという立場で、ではその方法をどういう形でやるかと言えば、最も民主的な方法であろうと思いますから、国会の場において審議を賜るというような処置に出るべきであろう。  それから、法制化ということがどういう意味を持つかという点が非常に問題がありまして、先ほど申し上げておりますように、アンケートをする際のアンケート出し方によって、いろいろ変化もいたしてまいっておるわけでございまするから、そういうようなことを勘案してまいりますれば、国民方々使用上のことで義務的なことあるいは強制的なものは一切ございませんので、そういう事情を国会の場で皆さん方に申し上げ、そして国会の場で、主権者である国民を代表する国会において御決定を願うということが最も民主的な方法であり、なおまた存続希望される国民方々に、明確な元号制度的な一つの安定した体制をつくっていくことになるわけでございまするので、国民の期待にもこたえることになりはしないか、そういうようなことを考えて最終的に法制化に踏み切ったわけでございます。
  10. 栂野泰二

    栂野委員 これは中日新聞ですけれども、三月二十七日付、世論調査会調査出した日の新聞ですが、結論的にこういうふうに書いてあるのです。   ちなみに法制化賛成意見自民党支持層の三分の一、民社党支持層の四分の一程度で、元号法案賛成立場をとっている公明、新自由ク支持層でも二割に達しておらず、法案をゴリ押ししてまで成立させるような性質のものではない、というのが多くの国民の偽らざる心境  といえよう。こういうことなんです。  いまいろいろアンケートの技術的な問題を言われましたが、存続派が多いということについては、世論調査を盛んに持ち出されるのですね。法制化反対については、何だかアンケートによってはいろいろな回答が出てくるというふうな、そういう評価しないような言い方をなさっておられますが、これは余り手前勝手な考え方だと思います。私は結局、こういう各社世論調査が出ている以上は、政府がもう一回世論調査をおやりになるべきだと思う。ただし、やれば法制化反対という意見過半数を占めるおそれがある。そのことがこわいからおやりにならぬのじゃないか、こう思わざるを得ない。もしどうしても政府がおやりにならないというならば、やはりこれだけ各社がやってほぼ同じような、多少パーセンテージが違ったって同じ結果が出るのでありますから、ここのところは、この法案をごり押しするという態度をもう一回再検討すべきだと思いますが、この点、いかがですか。
  11. 真田秀夫

    真田政府委員 お答えを申し上げたいと思いますが、元号制度を今後とも将来にわたって存続するということと、それから法制化するかどうかということとはもちろん別問題でございます。と同時に、法制化するということと、それから法制化された制度のもとにおける元号使用を何らかの形で国民強制するかどうかということは、これまた明らかに別の問題でございます。御提案申し上げております法案は、御承知のとおり、将来にわたって元号という制度基礎法律で書いていただくというにとどまるものでありまして、使用の点については何ら触れているものではございません。  そこで、まず理論的に考えますと、将来にわたって元号制度存続希望する国民が非常に多いということは、現在の陛下が御存命中はもちろんのこと、将来御不幸がありまして崩御されまして次の陛下の時代になった場合でも、なお存続したいという意味合いにほかならないと解されるわけでございまして、そういう場合のことを考えますと、やはり制度として元号というものをはっきりしておくということが、その制度継続性なり安定性を保つ上においてぜひ必要であるということから法制化に実は踏み切ったわけでございまして、どうも法制化というとすぐに何か使用強制するのではないかというふうにお考えになる向きがあるのじゃないかという話も聞きますが、そういうものではないのであって、よく法案を御理解願えれば、これは国権の最高機関である国会が将来にわたる元号制度基礎を固めていただくという、ただそこまでのものでございますので、決して強制とか使用義務づけるとか、そういうものとは全く関係がございません。その点をよく御理解願いたいと思います。
  12. 栂野泰二

    栂野委員 いま審議室長も言われましたように、内閣告示という方法でもできるというのは、もう政府もお認めになっているわけです。だから、法制化することに反対だという国民の意識は、幾ら説明されても、この法案出し方なりその後の経過を見て、この法案に対する疑問が払拭し切れないところにあるのですよ。  これは七九年の一三月二十九日の朝日新聞ですが、「二十九字」という小さい記事がございますが、こういうことを言っています。   おそらく、史上最も字数の少ない法案だろう。その無類の“簡潔さ”に、こんどはかえってクビをかしげる人が多いのではないか。   「元号存続は、国民多数の世論」と政府はいう。しかし、だからといって国民法制化を是認しているとはいえまい。法制化ということになれば、元号使用強制も起こり得るし、国民主権憲法精神天皇制との関連で、世論が二つに割れることにもなる。   政府が作成した法案説明資料をみると「一般国民は、この法案により元号使用義務づけられるものではない」など、法律ができても現状あまり変化がないことを強調している。元号決定手続きについては、慎重に検討の上決めるともいっている。ではなぜ、こうした肝心な点を法案に盛りこまなかったのか。   もし政府が、国民元号支持を理由として、国民立場に立って法案をつくるというのなら、元号決定手続きや使い方について、将来に問題を残さぬようにしてしかるべきだろう。つまり将来、政府が自分に都合よく法律を解釈・運用することのないよう、しっかり明記しておかなければなるまい。 こういうことなんですね。これが恐らく良識ある国民の抱く疑問点だと思うのです。だから、こういう処置がないからごり押しの法制化には反対という意見が実は出てくるわけでございまして、いま言われたような答弁ではとても納得できません。  そこで、昨日も問題になりました国民には使用強制しないのだという点ですが、それならばなぜ法律の中に明記しないのか。そういう法律はたくさんあるはずです。きのうもそういう法律があるはずだから出してくれという岩垂委員の要求がございましたが、お出しになりませんでした。たくさんあるでしょう。いかがですか。
  13. 真田秀夫

    真田政府委員 新しい法律案が成立しました場合に、新しくできるであろう元号使用国民義務づけないということをどうして書かないのかという御質問のようでございますが、むしろ義務を課さないからこそ書く必要がないのであって、これはいまおっしゃいましたようにまことに簡潔な法案でございまして、少しも国民権利義務を拘束するということは入っておらない。これは条文上、案文上きわめて明瞭なことでございまして、少しも御心配になることはないというふうに確信しているわけでございます。
  14. 栂野泰二

    栂野委員 警察法とか警察官職務執行法破壊活動防止法あたりには、濫用してはならないという文言がありますね。それから年齢のとなえ方に関する法律というのがありますね。これを読みますと、第一項は「この法律施行の日以後、国民は、年齢を数え年によつて言い表わす従来のならわしを改めて、年齢計算に関する法律規定により算定した年数によつてこれを言い表わすのを常とするように心がけなければならない。」こう書いてある。満で言うように「心がけなければならない。」これは強制はしないという意味です。二項は、しかし国や地方公共団体機関は満でこれを言いあらわさなければならないと書いてある。国や地方公共団体には義務が課されて、国民には義務がないということをはっきり書いておるわけですね。こういう書き方が他の法律にあるじゃないですか。なぜそれができないのですか。やったらいいじゃないですか、国民がそれを心配しているのだから。
  15. 真田秀夫

    真田政府委員 年齢のとなえ方に関する法律をお引き合いにお出しになりましたが、今度の法案は、年齢のとなえ方に関する法律に書いているほどのことすら実は考えておらないというふうに御理解願いたいわけでございまして、今後元号ができれば、元号によって年をあらわすように心がけなければならないという程度義務といいますか、勧奨といいますか、そういうことすら考えておらないわけでございます。  したがいまして、年齢のとなえ方に関する法律のただいまお読みになりました条文に相当するような条項がないからといって、政府の方で何か将来国民に、使用について、なるべく用いるように心がけなさいということを言い出すのではないかというふうに御心配になる必要は毛頭ないと考えます。
  16. 栂野泰二

    栂野委員 現在でも事実上強制されているという実態がもうすでにあるわけですよ。その点はきのうも出ましたからもう繰り返しませんけれども、それが法律になればその傾向はさらに強まるだろうと国民が思うのはあたりまえです。  ことしの二月十三日の朝日新聞に、「家庭」という小さい欄がありますが、そこにこういうことが書いてあるのです。「「元号」と卒業」という題です。   「私たちは、卒業式当日に渡される私たち卒業証書の日付、生年月日には、元号使用せず、西暦使用されることを要望いたします」   横浜市にある神奈川県立希望ケ丘高校の三年生有志十一人が、一月末、こんな要望書学校長あて出した。学校側ではさっそく職員会議を開いて検討したが、結論が出ず、学校長が「この要望書は撤回してほしい」と回答した。有志十一人は話し合いの結果、これ以上のゴリ押しはせず、一応撤回することを了承した。   そのかわり、一、二年生に向けて“元号法制化”問題についての声明文を発表し、さらに文集を作ることを決めた。入試本番を前に、目下準備中とか。 こうなっているのですね。  長官、こういう場合、学校長のこの態度は一体どうなんですか。生徒要望を聞くべきではないのですか。いかがでしょう。
  17. 三原朝雄

    三原国務大臣 一つの出来事に対して私がいろいろ私見を申し上げることは適当でないかもしれません。私どもは、元号使用、そして西暦の併用を自由にいたしておるわけでございまするので、そのケースケースにおいて話し合いによって処置がなされることが適当であろう、そう考えておるところでございます。
  18. 栂野泰二

    栂野委員 強制しないと言うならば、国民希望に沿ってやったらいいわけです。この学校長は撤回してくれという態度に出た。学校長生徒でもこうでありますから、ましてや官庁の窓口国民の間では、しかも規則、通達みたいなものに年号が書き込んであるという状況のもとでは、事実上強制されるという危険性をどうしてもぬぐい去れない。  それから、きのうの御答弁ですと、国家機関使用強制されないのだ、地方公共団体は、これは人格が違うのだからもちろん強制されることはない、ただ、法律ができれば国家機関は当然のこととして使用することになる、こういう御趣旨ですね。この、国家機関地方公共団体強制はされないという点、これは確認してよろしいのかどうかということと、法律ができれば当然に使用されることになるというのはどういう意味ですか、お答え願いたいと思います。
  19. 清水汪

    清水政府委員 私から先に答弁させていただきますが、御指摘のとおりこの法案におきましては、義務づけたり拘束したりする規定を持っておりませんので、法律的にそうなるということはないわけでございます。ただ、国会による法律という形におきまして一つ制度が定められるということは、言いかえれば、国の機関はそういうものを使うということを予定しているといいますか、そういう趣旨はそこにくみ取れるわけでございます。  そういうことと同時に、御案内のとおり現在におきまして、国におきましてもあるいは地方公共団体におきましても、実際問題として公務は原則としては元号による年の表示方法をとっているわけでございます。このとっているという現実、この中にも、しかしながらそれによることが適当でない場合、逆に言いますれば西暦によることが合理的であるような場合におきましては、つまりたとえば国際関係処理とかそういう場合におきましては現実西暦を使っている、こういう状態がおのずからに定着をしていると思います。したがいまして、実際問題としてはそういう現在の定着している姿が今後とも続いていくというふうに想定をしておるわけでございまして、そういう意味におきまして今後とも原則的には元号による事務が行われていくということを申し上げているわけでございます。  それからなおつけ加えますと、よく問題になります窓口業務の問題におきましても、これはやはり公務の統一的なあるいは迅速な処理ということにつきまして、それなりに合理性があると思いますけれども、そういう面におきまして国民に御協力をいただくということを公務立場で申し上げている、こういうことでございますので、よろしく御理解を賜りたいと思います。
  20. 栂野泰二

    栂野委員 実際問題としてはあり得ないでしょうが、理論上は国家の機関元号使用しないということがあり得る。しかしその場合、何らの法律上の問題は起きない、地方公共団体の場合は将来は元号を使わないという自治体が出てくるかもしれないが、しかし、もちろんその場合も何ら法律上の問題は生じない、こういうことに承っておきます。  そこで今度は、国家機関公務員のお話が出ましたが、昨日の御答弁では、公務員が公式の場においてその元号使用しないということがあったからといって、これは元号使用義務づけられていないんだから法令遵守義務違反にはならない、したがって懲戒処分も受けないんだ、こういうことでございましたが、それでよろしゅうございますか。
  21. 真田秀夫

    真田政府委員 先ほど来繰り返し申し上げておりますように、今度の法案はきわめて簡潔な内容でございまして、使用については全然触れておりません。したがいまして、今度の法律案が仮に成立して公布、施行されましても、そのことから国家公務員が公務上作成する公文書の年の表示方法として元号を使わなければならないという効果が直ちに出てくるものではないというふうに考えております。
  22. 栂野泰二

    栂野委員 国家の機関なり地方公共団体元号使用するというふうに決めた場合、その場合でも国家公務員または地方公務員が元号使用しないということがあっても問題にならないのですね。確認させてください。
  23. 真田秀夫

    真田政府委員 先ほどお答えしましたのは、私非常に慎重に言葉を選んで御答弁を申し上げたつもりでございますが、この法律案が成立し、公布、施行されても、そのことから直ちに公務員の元号使用義務が出てくるものではないということを申し上げたのでございまして、これはしかし、地方公共団体なら地方公共団体が独自の意思として、地方公務員に対する服務規律として上司が命令を出せば、それはその命令に従わなければならないことは、これは元号の場合に限った話ではございません、元号であろうと元号でなかろうと、上司の職務上の命令には従わなければならないことは、これはもう当然でございます。
  24. 栂野泰二

    栂野委員 そこなんですよ、きのうの答弁ときょうの答弁とではもうそこが変わってくるのです。これは問題です。いま長官がおっしゃるのはどういう義務違反になるのですか、職務命令の遵守義務違反ということにでもなるのですか、いかがですか。
  25. 真田秀夫

    真田政府委員 公務関係の法令につきましては、国家公務員法にしろ地方公務員法にしろ、あるいは裁判所法第八十条による司法行政事務にしろ、それぞれ行政上の職務命令には従わなければならないということは当然でございますから、もし仮に内閣から内閣所属の各部局の職員に対して、公文書の年の表示については元号を用いなさいという職務上の命令が出れば、これは当然従わなければなりません、これは元号の場合に限った話ではございません。
  26. 栂野泰二

    栂野委員 元号の場合に限った話ではないとおっしゃいますが、一つの問題点は、元号に限って問題になる点があると私は思うのですよ。この元号問題というのは、思想あるいは良心の自由の問題に深くかかわってくるのです。ですから、公務員のそういう勤務関係を特別権力関係という考え方をとっても、その考えがとられている時代でさえも、すべての特別権力関係に例外なく入り込む基本権としてそういう信教の自由とか良心及び思想の自由が挙げられて、公務員はそういう基本的人権の自由は制限されないのだ、こういう考え方がありますね。だから上司がそういう元号使用しろという命令を出すとした場合に、この点から公務員は、もし自分が元号使用したくないというならば拒否できるのじゃありませんか。
  27. 真田秀夫

    真田政府委員 新しい元号制度ができました場合に、公務員に限っての話でございますが、その元号使用を上司がそれを公文書としては使いなさいという職務上の命令を出すことが思想、信条あるいは表現の自由を損なうことになるのではないかというような、そういう観点からの御質問だと存じますけれども、紀年方法、つまり年を表示する方法として元号を使うかあるいは西暦を使うかということは、なるほどこれは思想なり表現の問題と全然無縁だとは私も思いません。思いませんが、およそ公務員である者が公務上作成するいわゆる公文書の表現としては元号を用いなさいということは、これは先ほどもお触れになりましたように、公務員という特殊の身分関係基礎とする職務命令でございますので、それは直ちに憲法の二十一条に真っ向から違反するというふうには実は私たち考えておらないわけでございまして、それは最高裁判所の判例にも、そういった特に本人の希望によって公務関係あるいは司法上の関係に入った場合には、それは基本的人権といえどもある程度の制約は免れない、その制約があったからといって憲法違反だということにはならないという大法廷の判例もございます。御紹介しておきます。
  28. 栂野泰二

    栂野委員 きのうの答弁と全然違っていますので、この辺は質疑を留保いたします。もう一度やらしてください。  いずれにしても、政府のようなそういう見解をとりますと、元号法は何も強制がないんだと言ったって、まず国家機関なり地方公共団体の中で公務員が強制されることになるわけです。窓口ではそういう態度に出ざるを得ないのです。ぜひ協力してくださいと言わなければ懲戒処分になるということになるじゃありませんか。処分を受けたくなければ強い態度国民に協力を求めることになるのです。国民の方は、窓口公務員にそういう態度に出られたら、事実上元号使用強制されるという、こういうことになるじゃありませんか。ここのところが問題でございまして、少なくとも国民元号使用強制されないんだということを法文に明記をするか、ないしは、きのう出ましたが、不動文字を使ったようなものをやめるとか、そういう何らかの歯どめ措置がどうしても必要になってくる。そこをやらなければ、先ほど「二十九字」という新聞の小論を読み上げましたが、そういう疑問は国民の中から消えてこない。この点を含めて質問を留保しておきます。  それからきのう、回教暦で届け出をしたらこれを受け付けるのかという村田委員の御質問がありました。いや、それは困ります、それは変えていただきますと、こういうことでございましたね。それはどういう根拠で回教暦はだめだということになるのですか。
  29. 清水汪

    清水政府委員 私が昨日申し上げた点でございますが、私が申し上げましたのは、ごく常識的な意味におきまして、現在のわが国社会におきまして、年の表示方法としてみんなに共通に理解されているもの、それが基準になろう、こういうふうに思うわけでございまして、その意味におきまして、役所といたしましては元号ということで統一的に事務をいたしております。  一方、西暦につきましては、これはかなりの程度に普及をしておる、それが慣習的に通用しているということも、これも確かなことでございますので、ごく常識的な立場におきまして、現在役所が統一的な公務処理をするに際しましては、原則は元号でいたしますけれども西暦も場合によっては使うことは受理される、許容される、排斥されないということを申し上げているわけでございまして、その他のものにつきましては、それほどの社会通念と申しますか、年の表示の共通的な方法というふうには、慣習的に定着しているとは思われませんので、それは直していただきたいということを言うことになるというふうに申し上げたわけでございます。  それから、この機会に一つ私の立場で補足させていただきたいと思いますのは、先ほどの問題でございますが、われわれ公務員が公務に従事しておるわけでございますが、その場合に一番決定的なのは、たとえば公文書を発遣するときの日付を入れて、番号を入れて、大臣名なり局長名の名前を書き、判こを押したもので正式な公文書が作成されるわけでございますけれども、そこに従事いたします公務員個々の人間は、それは千差万別な人間がいるわけでございますけれども、それは公の機関公務の、たとえば文書なら文書の作成という現象としてそこに従事しておるということでございまして、私自身として考えてみましても、そのことにつきましては、これは全く公務という事務の現象であるというふうに感じておるわけでございますが、恐らく一般的にもそのような感じで受けとめられているのではなかろうかというふうに思うわけでございます。つけ加えさしていただきます。
  30. 栂野泰二

    栂野委員 回教暦で届け出なんということは、実際問題としてはないことだと思いますが、しかし理論上は、やはりどうしてもと言うならば、回教暦で届けられても、これは元号なり西暦に直して役所の方でやるしかないと私は思う。神武天皇暦で届けられても、やはり同じ問題が起こるんですね。黛敏郎さん、この人は作曲家ですね。元号法制化実現国民会議の有力メンバーですね。イデオローグでもあるわけですが、黛氏あたりは、元号がどうしてもだめだというのなら神武天皇暦の使用を提唱したいというようなことを言っているわけですね。  そこで、神武天皇暦についてお聞きしますが、神武天皇暦というのは、ほとんどもう使ってないんですけれども、一体現在これは法的根拠はあるものですか。
  31. 清水汪

    清水政府委員 私の立場からお答えを申し上げますが、神武天皇暦につきましては、明治五年の太政官布告によりまして、当時神武天皇即位を紀元とするという趣旨の紀年法が太政官布告の形で出されたという事実がございます。  ただ、その後それがどの程度に実際に社会におきまして用いられてきたかということにつきましては、必ずしも一義的なことは申せないと思いますし、ことに最近におきましては余り見かけないわけでございまして、現実の問題として考えますると、元号はもちろんのこと、西暦と比べましてもそれが一般的に紀年法として用いられているという状態まではとても認識されないんだろうと思います。
  32. 栂野泰二

    栂野委員 いま言われました明治五年の太政官布告の三百四十二号というんですか、これは現在効力があるんですか、ないんですか。
  33. 味村治

    ○味村政府委員 お答え申し上げます。  明治五年の太政官布告でございますが、当時は何分にも法律制度というものが完備していなかった関係もございまして、いまの私どもの見地から申し上げますと、解釈が非常にむずかしいわけでございます。それで、これを言葉どおり申し上げますと、「神武天皇御即位ヲ以テ紀元ト被定候」とこうなっているわけでございます。その部分が神武紀元の根拠ということに相なろうかと思うわけでございます。  そうしますと、これを言葉どおり読みますと、紀元というのは、国の初めということでございましょうから、神武天皇が御即位になった日が国の初めである、そういうふうに定めるということだけを決めているわけでございまして、これは、国の初めを定めた関係でそれから何年というふうに計算すれば国の初めから何年目ということで、言ってみれば年のあらわし方を示すことにはなるわけでございますが、この布告自体は別に年のあらわし方を定めたわけではございませんで、神武天皇の御即位の日をもって紀元とするんだということだけでございまして、別に年の表示方法としての効力を持っているというふうには考えられませんし、現在もそのような効力を持っているとは考えられません。
  34. 栂野泰二

    栂野委員 私は、この布告は神武天皇暦のやはり法的根拠になるんじゃなかろうかと考えているんですが、翌年の明治六年の一月九日の左院への垂問というのがありますが、これが神武天皇即位紀元二千五百三十三年、こういうことで神武天皇暦が使われ出して、結局この太政官布告の効力が現在残っているかどうかというのは憲法九十八条の問題、日本国憲法のもとで一体神武天皇暦を使うというふうな太政官布告が効力があるのかないのか、憲法に反するのかどうなのか、こういうことで結論が出るように思いますが、いかがですか。
  35. 味村治

    ○味村政府委員 この太政官布告の法律としての効力というものを云々いたしますのには、おっしゃいますように、新憲法下におきましては九十八条でございましたか、なおこれは旧憲法制定前の太政官布告でございますので、旧憲法下においてどのような効力を持っていたかということも論定しなければならないわけでございます。しかしながら、その前に、この太政官布告の意味、内容と申しますか、やはりそれを確定することが効力について論じます前に必要ではなかろうかというふうに思われるわけでございます。ところが、何分にも先ほど申し上げましたように、非常に言葉が簡明でございまして、当時の用語に従っておりますし、当時の法律意識というものがはっきりいたしませんので、そこら辺の意味、内容というものがなかなか私どもとしては確定できないわけでございます。したがいまして、現在ここで法律としての効力をなお持っているのかどうかということもにわかにお答え申し上げかねる状況でございます。
  36. 栂野泰二

    栂野委員 この太政官布告が効力ありとすれば、日本国憲法下ではこの効力は失われている、こう考えていいですか。
  37. 味村治

    ○味村政府委員 先ほど申し上げましたように、この太政官布告の意味、内容が明確でございません。つまりこれは国民に対する拘束力を持っているのかどうか、あるいはその他のいろいろな法的な効力を持っているのかどうかというようなこともはっきりいたしません。そのような段階におきまして、私といたしましては、現在のところで法律としての効力を持っているかどうかということは、なお検討する余地があるのではなかろうかと存じております。
  38. 栂野泰二

    栂野委員 つまり、こういう神武天皇暦などというものは、その効力少なくともありとすれば、日本国憲法下では日本国憲法の精神に反するもので、これは当然効力は失われなければいかぬ、私はこう思うのです。こういう神武天皇暦を推奨する人がいる、それがこの元号法制化の推進の主要メンバーだ、こういうところに実は問題点があるのだということを指摘しておきたいと思います。  次に進ませていただきます。  昨日、法制長官は、内閣告示方式と法律の違いについて、両者とも国民に対する強制力は持たないという点では同じだけれども法律にした方が日本国憲法趣旨により適合していて制度安定性においてすぐれている、こういう御答弁だったように思いますが、このとおりだったでしょうか。
  39. 真田秀夫

    真田政府委員 おおむねただいまおっしゃったとおりでございまして、現在、元号の正式の根拠になる法令上の根拠はございませんので、事実上の慣習として用いられておる、したがって、法律的な意味国民を拘束するというような効果はもちろん出てくるわけではございません。  また、今度の法案につきましては、これも昨日来また先ほど来繰り返し申し上げておりますように、国民を拘束するというような内容のものではございません。したがいまして、その点をとらえれば、これは現在事実上の慣習として用いられておる。それを受けて内閣の告示で決めるということも理論上は可能でございますが、だからと言って国民に対する法律上の拘束力が出てくるというわけでもございませんので、その意味で効果は同じである。ただ、その手段として内閣の告示でやるか、あるいは今度の法案のように法律でその制度根拠を決めていただいて、それを受けて政令で決めるという方法とこの二つが考えられますが、そのうちのどちらが憲法趣旨に合うかと言えば、それは、国権の最高機関である国会法律の形で可決されまして、そしてそれを受けて、憲法七十三条に言う法律を誠実に執行する政府政令を制定するという方が日本国憲法趣旨にも適合するであろう、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  40. 栂野泰二

    栂野委員 私は、そこのところがわからぬのです。何で元号法をつくるのが内閣告示でやるよりも日本国憲法趣旨に適合するのかですね。内閣告示というのは内閣限りのことですからね。法律国会で決まるんだから。  そこで、国民義務を課すようなことを決めるのならば内閣告示では困るので、政令では困るので法律でやってもらわなければならぬのですよ。そういう意味ならば法律にする方が日本国憲法により適合する、これはわかりますよ。しかし何も拘束しないのですから、何も拘束しない法律をつくることが何で日本国憲法に適合するのですか、それをお答えください。
  41. 真田秀夫

    真田政府委員 もう少し詳しく申し上げますと、元号制度存続することが憲法趣旨に合うのだということを申し上げているわけじゃないのでございまして、元号制度を今後とも存続するかどうかは政策問題でございまして、将来にわたって元号というものを残しておきたいという国民の八〇%近くの御希望がございますので、これをくみ上げて何らか制度化したいというそのことと、それを制度化するについて、内閣告示でやることと今回の法案のように国会の御可決を経て政令でやるのと、この両者の方法を比べれば、後の手段の方が憲法趣旨に合うどいうことを繰り返し申し上げているわけでございます。
  42. 栂野泰二

    栂野委員 どうも私には理解しにくいのですがね。法律にした方が安定性があるということはそのとおりですよ。内閣告示ならば内閣一代限りでどうなるかわからぬ。法律にしておけば、法律を廃止するには国会の議決が必要だということになりますから、これはそのとおりでしょうが、今回元号法を出されるに当たって政府は、元号存続希望国民の間に非常に強いのだ、国民生活の中で定着しているのだ、こういう前提に立っておられるわけです。そうだとすれば、国民存続を望む限りは内閣告示だって変わらないでしょう。次の内閣だって当然引き継ぐはずですよ。しかし、将来国民元号存続を望まなくなった場合のことも考えなきゃいかぬ。そうなりますと、内閣告示の方が変えやすい。法律があれば国民存続を望まなくなったときでも変えにくい、こういうことが起こってくるわけですね。ですから、いま政府法制化しようとするのは将来永きにわたって元号制度というものを変えにくくしておこう、ここのところじゃないですか。内閣告示でなくて法律にするのは元号を変えにくくする。これをより安定性があるという言葉で呼んでおられる。日本国憲法により適合するなんという問題じゃないじゃないですか。そうでしょう。
  43. 真田秀夫

    真田政府委員 将来もし国民元号制度存続希望しなくなった場合はどうするかというような、変えにくくしたいという政府の腹ではないかという御発言でございますが、この時点でそういう事態が起きるだろうというようなことは私たち考えておりません。私が申し上げたいのは、将来にわたって元号制度存続したいという希望を非常に多くの方が現在持っていらっしゃるというのはやはり重要なことでございまして、それを制度化するについて内閣告示限りでやるか、あるいは国会の可決された法律根拠を持たせて、それの執行として政令で決めるかというこの二つの方法を比べれば、後者の方が憲法趣旨に適合すると判断しているわけでございます。
  44. 栂野泰二

    栂野委員 長官、あなたが国民の意思をそういうふうにそんたくするのは不遜ですよ。存続を望んでいる国民だって、さっきから言っていますように、法制化を望んでいないのが多いでしょう。国民が多く望んでいるから法律にした方がいいという考え方は、すぐには出てこないのですよ。だから存続を望んでいる国民の多くの皆さんも、むしろもっと緩やかな方法でいいじゃないか、こう言っているわけですよ。それに沿うならば、いや、国民存続を望んでいるというその国民を本当に信頼するならば、何も将来永きにわたって安定する法律によらなければいかぬ――しかもそれは国民が望んでいないのですから。そういう方法政府がこだわる必要はないじゃないですか。いかがですか。先々が心配だからじゃないですか。
  45. 真田秀夫

    真田政府委員 繰り返して申し上げて恐縮でございますけれども、とにかく将来にわたって元号制度存続したいというのが国民の大多数の希望であるということをまず出発点にして実は考えているわけでございまして、それを制度化する、実現する手段として内閣告示か、あるいは国会のおつくりになった法律に基づくか、どちらがいいかということであれば、後者の方が憲法趣旨に合うということを素直に申し上げているわけでございまして、将来変えにくくしたいとかそういう作為を持って法案をつくっているわけでは毛頭ございません。
  46. 栂野泰二

    栂野委員 それでは全然説得力がないですよ。  ところで、この政令の問題ですが、政令というのは、一般的に、法律があって、その法律を施行する細目は政令にゆだねる、こういうものだと私は思っていたのですが、きのうのお話ですと、今度の政令は、元号を変えるようになった場合、それは大平という年号ができるか、三原という年号ができるか知りませんが、その元号を何々と定めるということと、それからその元号の効力発生時期がいつからかという、この二つのごく簡単な政令になるという、しかもこの政令もまさに改元が必要になった時期、天皇が亡くなられた後になる、何かそんな感じを受けましたが、こういうことでございますか。
  47. 清水汪

    清水政府委員 そういうことでございまして、要するに現在の昭和元号であるわけですが、これの次の元号をどういうふうにするかということだけを規定しておるわけでございますので、一番端的に言えば、いつ新しいものに改めるのかというまずそのいつ、あるいはどういう場合というそのことが一つ。それが順序が逆になりましたが、第二項がそれを示しているわけでございます。それからもう一つは、その新しい名称は政令の形で定めるということが一項になっているわけでございますが、私どもとして考えておりますことは、端的に新しい名前を政令の形で決めるということだけでございます。したがいまして両方合わせますれば、いつから新しいものに変わるということだけが予定されている政令の内容になるということでございます。
  48. 栂野泰二

    栂野委員 そうしますと、この政令というのは明治元年の太政官布告第一号と同じ改元の布告ですね。布告の形式を政令という形をとったというだけで、一般的に政令というものに対して国民が抱いている感じとは、私もそうだったのですが、これは全然違う。  そこで、三原長官はきのう新元号の制定の手順をお話しになりました。まず学識経験者に元号の候補名の案を作成させるところから総理の決定までお話しになりましたが、こういう手順こそまさしく政令で定められたらいかがなんですか。またこの元号法というのは、国民の大部分が元号存続を望んでいるということが前提になっているということをさっきから再三おっしゃっておりますが、そういう新しい元号ができたら、これを使用するのはもちろん国民ですよ。一体その国民意見がどこでどう入れられるのか。きのうのお話を聞いた手順の中では、国民意見を聞くというふうなことは全くないですね。ですから、そういう国民元号に関する意見の聴取をどうするのか、その手順、そういうものこそむしろ政令に盛り込まれるべきじゃないのか、私はこう思いますが、いかがでしょう。
  49. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  政令の中にそうした手順を盛るべきではないかというお尋ねでございますが、実は、私どものいまの考え方といたしましては、法律国会でお決めいただきますれば、それに基づいて、あとは政府の責任において慎重に対処いたしたい、そういうことでおるわけでありまして、そして政令の中身につきましては、先ほどるる意見を申し上げましたように、元号の名称と、いつから実施をしますというような、そういうことになるわけでございますが、そういうようなきわめて簡単なものであるということを申し上げてまいりました。その間の手続でございますが、手続は内閣の責任において諸般の手続をしたい。そして、しかしそれは何らかの方法国民皆さん方に知らせる必要もあろうということも考えておるわけでございます。  そこで、いま御指摘元号の候補名を公募するような、国民全体からくみ上げるような方法はどうかという御指摘でございます。私どもも、公募ということもその手続の検討を進めます段階で考えてまいりました。しかし、それは非常な、事務的な時間的な問題もございますし、法の趣旨ができるだけ速やかに決めたいという趣旨を持っておりますような関係上公募はなじまない、しかし、広く国民方々に御意見を聞く一つ考え方は持つべきであろうということで、学識経験者としておりますが、ただ専門的な学者先生だけにお尋ねをする、考案をしてもらうということだけでなくして、やはり広く文化人の方々、それから評論家の方々等、学識のある、良識のある方々にある程度の人員、これは若干名ときのうは申し上げておったのでございますが、それらの方々に候補名を選定をしていただく、その策定をしていただく、そういうことでおるわけでございまして、いま申されました、公募的な、そういう一つ趣旨、精神を踏まえていま申し上げましたような学識経験者、良識者の人選をいたしたい、そういうことで考えておるところでございますが、あくまでもいまのところでは最終的な段階になっておりませんので、そうした腹案のもとに進めてまいっておるということでございます。
  50. 栂野泰二

    栂野委員 何らかの方法国民にも知らせることを考えておる、こういうことでございましたが、それは、政令元号をこうするということを決める前に国民に知らせるということでございますか。そこら辺もう少し詳しく……。
  51. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたしますが、手続上の段階的な措置について、何らかの方法国民方々にやはりお知らせをする必要はなかろうかという考え方を申したわけでございます。
  52. 栂野泰二

    栂野委員 そうしますと、この学識経験者の委嘱から始まるわけですが、これはいつごろから考えておられますか。
  53. 三原朝雄

    三原国務大臣 法律国会において制定をしていただきますれば、早速具体的にそういう問題に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  54. 栂野泰二

    栂野委員 いまの長官のお話をお聞きしていましても、元号選定手続について、国民の側から言えば、肝心なところはどういうふうに進んでいてどういうところで何が決まったのか、これは大変わかりにくい。私は、この元号の問題を、何でそういういわばできるだけ密行的に、密室で行うようなことをしなければならないのか、もっとオープンにしたらいいんじゃないのかと思うのです。やっぱり政府には、元号天皇制に絡んでくる、天皇問題はタブーだ、そういう意識が根強く働いているんじゃないか、私はこう思わざるを得ないのです。そうでなければもっともっとこれはオープンにしたっていいんじゃありませんか。それは、改元というのは天皇の死に絡む。天皇であれ国民であれ、死を前提とするということは余り論議したくないというこの気持ちはわかりますよ。しかし、そのことじゃないですね。私が感ずるのは、天皇にかかわる問題はなるべく国民の前でオープンに論議したくない、すべきものではないという、こういう考え方があるのじゃなかろうか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  55. 三原朝雄

    三原国務大臣 全くそういう考え方はございません。たとえばこの元号を、先ほど法制長官も申し上げましたように、国会でひとつ法律を制定してもらおうというような具体的な事実をとらえていただきましても、なおまた、密室的なものでなくて、私もきのうも皆さん方に、こういう手続で政令施行までにはそういう手続もいたしたいと思っておりますということも皆さん方国会の場で申し上げておるところでございますので、そうした天皇関係を持っておるから密室で云々するというようなことは毛頭ございません。天皇とは関係なくそういう実施を進めておるわけでございますので、その点につきましては御理解を願いたいと思うのでございます。
  56. 栂野泰二

    栂野委員 それでは長官国民に何らかの形で知らせるのは手続上の措置とおっしゃいましたが、たとえば学識経験者の間で候補名が長官のところへ上がってきますね。そこで長官が整理されますね。上がってきた、私が整理したということだけなのか、どういう候補名が上がってどういう整理をしたというところまで国民にはお知らせになるわけですか。
  57. 清水汪

    清水政府委員 その問題につきましては、これは大変申し上げにくい点もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、どなたにお願いを申し上げたという個人のお名前の問題だと思いますけれども、その点につきましては、いずれかの機会にはもちろん新しい元号の制定過程を全部国民によくお話を申し上げることは当然でございますので、いずれかの時期においてはそういうことももちろん全部御報告をするという中に入ってくるべき問題だろうと思いますけれども、私考えますのは、事前の段階におきましてはなかなかそれは無理ではなかろうか。現在のわが国の一般的な例などから見ましても、大変に重要な大きな関心を持たれる問題でございまして、なかなか名前の出ました個人にとりましても大変な煩瑣な問題が起きるということもございますし、それからまた、先ほど大臣からお話し申し上げました点にも関連いたしますけれども、やはりいつお願いをするかということにつきましても慎重に考えなければならないという面も、事実問題としてはあろうかと思うわけでございまして、その辺を含めまして慎重に検討させていただきたいと思っております。結論的に申しますれば、制定課程全体につきましてはわかるようにいたしたい。したがいまして、お名前につきましても、適当な時期にはそれは公表するということも必要であろう、そういうふうに考えているわけでございます。
  58. 栂野泰二

    栂野委員 ですから、結局、予定される元号名どころか、元号名をいろいろ挙げてくることを委嘱された学識経験者の名前すらも、とにかくいつかの時期とおっしゃるけれども、簡単には発表しない。いろいろ煩瑣問題が、何がそんな問題が出てくるか私はわかりませんが、やはりそこら辺が問題でして、そんなものは当然にどなたにお願いしたかくらいはなぜ発表できないのか。ここら辺はとにかく再検討願いたいと思う。
  59. 三原朝雄

    三原国務大臣 元号というものは一つの特殊な重要な案件だと思うのでございますが、たとえば五名なり十名なりの学者あるいは良識の方々にお願いをして、その人選等も政府におきまして慎重に取り扱いをするわけでございますが、その方のところには、恐らくみんなも事前に、どういうものであろうかという関心を持っておられますので、それこそ大変な要請をなさると思うわけでございます。過去のそうした例等を考えましても、電話がひっきりなしにかかってくるとか、あるいはどういうことでやっておるかというようなことで、大変な事態になるであろうということも考えるわけでございます。またそういうような元号ということを考えましても、そういう点は恐らく学識経験者の方々は慎重にいろんな点で考案をしていただくと思うわけでございますが、それらの方々をそうした繁雑な事態に持っていくことは、われわれ自身として政府が責任を持って慎重にやるという立場から考えてまいりますれば、事前にそういうことを公表することは、決して秘密を守るとか云々ではなくて、国民に広く親しんでもらう元号でございますから、できれば先ほど申しましたように公募というような形も考えたくらいでございまするけれども、いろいろ検討を慎重に進めてまいりますれば、いま申し上げたような運び方、手続をすることが妥当ではないかというような結論に達したわけでございます。
  60. 栂野泰二

    栂野委員 ですから、学識経験者の方のところに電話があったり云々とおっしゃるならば、政府の方で、選定過程というのでしょうか、そういうことを途中でどんどん発表なさればそういう迷惑はかからないわけですし、それもおやりにならないという理由がどうしても、元号国民のためのものということよりもやはり天皇一個人に絡む、そこにひっかかっておられるという気が私はしてならないのです。これはこれで終わります。  そこで、きのうの質疑で、当初の政府案では、第一条は「皇位の継承があったときは、新たに元号を定め、一世の間、これを改めない。」とある。今回はこの「一世の間」というのがなくなった。この点についての答弁で、これも法制長官でしたか、裸で「一世」という言葉を出してもわかりにくい。それから二番目に、皇室典範に「三世」という言葉があるが、これは親族三親等という意味なんで、これと紛れるとぐあいが悪いのだ、こういう趣旨でしたね。こういうことでございますか。
  61. 真田秀夫

    真田政府委員 当初の案に、あるいは昭和二十一年に一応作成いたしました元号法案には「一世」という言葉は確かにございました。それを今回改めまして、「一世」という言葉を用いなくした理由は、ただいまおっしゃったとおりでございます。
  62. 栂野泰二

    栂野委員 先ほどから長官答弁を聞いていますが、長官も裁判官出身ですよ。それにしてはいかにもこじつけとしか考えられない。「一世の間」と言えば国民はみんなわかりますよ。皇室典範に「三世」という言葉があったから紛れるようなことがあるので、「一世の間」というのがなくなったのは、やはり一世一元という言葉の持つ問題性を避けたいという考慮から法案の文言が変わったのじゃありませんか。実質的には一世一元だということはきのうもお認めになった。よろいは変わらぬのですよ。衣を厚くしよう、こういうことでしかない。私はそう思わざるを得ない。ともあれ、元号問題というのは天皇制論議を避けて通るわけにいきません。それを避けよう避けようとなさっておる。その結果法文が不明確になっておると思うのです。  今度のこの法案ですと、「元号は、皇位の継承があった場合に限り改める。」こういう表現になった。これですと、元号を改めるのは皇位の継承があった場合に限るけれども、皇位の継承があったからといって必ずしも元号を改めなくともいいというふうに読めないこともないのです。当初の案ですと、これははっきりしておる。皇位の継承があったら必ず改めなければならない。それを「一世の間」変えてはならない。非常に明確ですね。ところが「一世の間」というのを除くためにいろいろ苦心してつくられたのでしょうが、私がいま言ったような読み方に読めないこともないようなものになってしまっておる。私はそう思うのです。  そこで、さらに法制長官は、明治憲法下の元号と現憲法が成立して以降の元号では、同じ昭和であってもこれは質的に違うのだという御答弁がございましたね。その違いとして、明治憲法時代は勅定だった、今度のは法律で決まるのだ、こういうことをおっしゃったのですが、これでは質的な違いにはならない。明治憲法下の元号と現憲法成立以降の元号とが質的に違うというのは一体どういう意味なのか、もう一度簡潔にお答え願いたい。
  63. 真田秀夫

    真田政府委員 明治憲法下、つまり旧皇室典範第十二条に基づいてつくられた元号も、それからきょう現在事実上の慣習として用いられている元号も、それから新法案が成立した後に新法案に基づいてつくられる元号も、それが年の表示方法であるという役割りは同じでございますが、旧憲法による元号と今日の元号とでは制定権者が違うという点で非常に本質的に違うものであるという趣旨を申し上げたつもりでございます。
  64. 栂野泰二

    栂野委員 制定権者が違うということはそのとおりですが、それが明治憲法下における元号の性格と現行憲法になってからの元号の性格というものに質的な相違を来しているじゃないですか。いかがですか。
  65. 真田秀夫

    真田政府委員 ともに紀年方法であるという点、つまり年を表示する基準になる呼び名であるという点、そういう役割りではまさしく同じでございますが、旧憲法下における元号は統治権の総攬者であられた天皇がお決めになったものである。それからきょう現在行われている元号は、昭和という元号については、法的根拠がなくて、事実上の慣習として紀年方法の一種として用いられているにすぎない。それから新法案における元号は、これはいまの憲法に基づく主権在民に基礎を置いて、国権の最高機関である国会がおつくりになった制度に基づいて政令で決める、そういう意味合いで非常に違うものである。ただ、紀年方法の一種であるという点では同じなのです。
  66. 栂野泰二

    栂野委員 紀年方式として、いわば実用的な機能は同じですよ。しかし、天皇が制定権者であったという明治憲法下の元号の政治的意味、その果たす役割りについてお聞きしているわけです。天皇が制定した元号だから、どういう性格なんだということをお聞きしているわけです。元号というのはただ年の数え方を天皇が決めたというだけのものですか。そうじゃないでしょう。
  67. 真田秀夫

    真田政府委員 とにかく旧憲法下における元号は、国の元首であり、かつ統治権の総攬者である天皇がお決めになったものであって、はっきり使用についての規定はございませんけれども、恐らくその趣旨は、朕が定めた元号だから国民よ使えよという御趣旨がその裏にはあったのだろうと思うのですね。ところが現在はそういう性格は持っておらない。ましていわんや、先ほど来申していますように、新法案に基づく元号国民に対してこれを用いよというようなことを、そういう使用についての強制力、命令、それに近いような性格、そういうものは持っていません。そういう点で性格上違うという意味でございます。
  68. 栂野泰二

    栂野委員 とにかく肝心なところを故意に避けて通られる。明治憲法下の元号は確かに天皇が制定権者であった。明治元年のいわゆる一世一元の布告、これは同時に天皇親政の出発時点でもあるわけでしょう。ですから、まさしく主権を持った天皇の象徴としての、シンボルとしての元号なんですよ。一世一元なんですよ。これはもうきのうも議論があったところだから、そう繰り返しませんけれども、だから現憲法が成立した時点で、もう質的にそこの性格が変わってきているでしょう。言ってみれば元号というのは紀年方式としての機能だけが残った。これはもぬけのからなんですね。中身はそのときにもうなくなっているわけです。私どもその中身を問題にしてきている。今日元号法を出されて、その背景には、そのもぬけのからになったものに新しい中身を入れようとされているのではないか、こういう危惧感があるわけです。だから、現行憲法成立以降は元号一つ根拠を象徴天皇制に持ってこられる、こういう議論がありますけれども、明治憲法と現行憲法の間では、天皇主権と国民主権ですから、これはもう全く百八十度違う、決定的な断絶があるわけですよ。何かその断絶をあたかも象徴天皇制が埋めるような考え方をしておられる向きがあるのですね。元号制の根拠を象徴天皇制に持ってくるというのはそういう発想ですよ。しかし、これは絶対に象徴天皇制が橋渡しできるはずがないのですね。やってはいけない。だから、象徴天皇制、またそれを根拠にして元号制を決めるというのは、きのうもお話がありましたけれども、結局象徴の上に象徴をつくって、できるだけ明治憲法下の主権天皇制に近づけよう、こういう思想につながってこざるを得ない。ここのところが問題なんですね。本当はそこのところを議論しなければいかぬのですよ。ところがどうしてもそこは避けて通られる。これじゃいつまでたっても議論はすれ違いですね。とにかく元号制というのは、新憲法以降もう抜けがらなんですからね。私はそう思っているのです。だから、言ってみれば、古い革袋にもう新しい酒の盛りようがないのです。  そこで、この法案の附則によりますと、二項に「昭和元号は、本則第一項の現定に基づき定められたものとする。」とありますね。本則の第一項は「元号は、政令で定める。」こういうことですね。これは一体どういう意味ですか。
  69. 真田秀夫

    真田政府委員 条文の解釈でございますので、私からお答えを申し上げたいと思いますが、本則の第一項は、ごらんのとおり「元号は、政令で定める。」こう書いてございます。ところで、昭和という元号昭和二十二年の五月三日以後法令上の根拠がなくなって、事実上の慣習として用いられているにすぎない。ところで、この附則二項が仮にないといたしますると、本則の第一項で、この法律の施行後、早速にもまた政令元号を定めなければならないということに相なります。しかし、それは皇位の継承があった場合に限って定めるという条文とも問題が生じます。そこで、附則第二項を置きまして、この法律の制定、施行と同時に、新たに政令を定めるまでもなく、現在事実上の慣習として用いられている昭和がこの新法案の第一項に基づく政令で定められたと同じ効果があるよということを明定した規定でございます。
  70. 栂野泰二

    栂野委員 そういう解釈が成り立つものですかね。先ほどのお話では、政令というのは、改元が必要になったぎりぎりのときにしか出されないわけでしょう。昭和元号も、その政令に基づき定められたものとすると言ったって、その政令はまだまだつくられないわけでしょう。だから、言いたいことは、この元号法案が成立したら昭和という元号もその法案に法的基礎を持つようになるんだ、こういうことでございましょう。違いますか。どうもこれは意味がわからない。何でこういう法形式になるのか。ほかに何か意味があるんじゃないかと思ってお聞きしたのですが、別に意味ありませんか。そんなことで、昭和という元号は、この法案が成立したら法的根拠を持つことになりますかな。
  71. 真田秀夫

    真田政府委員 附則第二項を設けました法律上の意味合いにつきましては先ほど申し上げたとおりでございまして、附則第二項によりまして、この法律の制定、施行後は本則の第二項の例外として、現在用いられている昭和元号が新元号法に基づいて定められたものと同じ効力があるということに相なるわけでございます。
  72. 栂野泰二

    栂野委員 昨日も外国の紀年方式例についての御答弁がありましたが、外国に、君主の在位年あるいは統治年、そういうものを公式文書あるいは公式の場合に使うところがあるようでありますが、日本の元号のように日常的に使っている例がございますか、西暦以外の紀年方式を。
  73. 清水汪

    清水政府委員 日常的に使っておるかどうかという点につきましては、たまたま私の乏しい経験で申し上げれば、私、かつてタイのバンコクに在勤していたことがございますけれども、あそこにおきましては、公にももちろん仏暦と、それから英語のようなもので公文書を書く場合には主として西暦の方を使っている。タイ語で書く場合には仏暦を使っておりますけれども一般市民におきましても、日常はタイ語で書いておりまして、そのような場合には仏暦が使われているという例は現に承知をいたしておるわけでございますが、その他の回教等の場合におきましても、国内的に自分の用語でやるような場合におきましては自分の元号を使うということは恐らく行われているだろうと思います。
  74. 栂野泰二

    栂野委員 何か、外務省の資料では、ないようだったのですが、あなたの生活体験だから、そのとおり承っておきましょう。  それから、諸外国では今回の法案のようにこういう紀年法を法制化したという例がありますか。
  75. 清水汪

    清水政府委員 この紀年法につきまして、特に法律のような形で制定をしておる例はないわけではございません。数は少ないわけでございますが、たとえばお隣の韓国等にもその例があるわけでございます。必ずしも多くはないと思います。
  76. 栂野泰二

    栂野委員 そういう紀年方式を法令化している国は、お隣の韓国だけじゃありませんか。しかもこの韓国は、公式には西暦使用を法定した、こういうことじゃないんでしょうか。
  77. 清水汪

    清水政府委員 ただいま韓国の例を申し上げましたから、その例から申し上げますと、大韓民国におきましては西暦を使っておるわけでございますが、このことを一九六一年十二月二日、法律第七百五十五号、年表示に関する法律ということで、そういうふうに規定をしておるわけでございます。  それから、たとえばイスラムの例で申しますと、トルコにおきましては西暦とイスラム暦を使っておるわけでございますが、一九二六年法律第六百九十八号、西暦の採用に関する法律、それから同時に、この法律によりましても、西暦と同時にイスラム暦の使用が認められている、こういう状態になっております。  それから、たとえばクウェートにおきましては、憲法第二条、国家の宗教は回教であり、回教法が立法の根源であるという規定がありまして、ただし、一九七六年三月七日の閣議決定により、公文書にはイスラム暦、西暦を併記するという取り扱いが定められている。  このような例があるわけでございます。
  78. 栂野泰二

    栂野委員 それから、きのう、外国の紀年方式についてお答えがございましたが、調査なさった、これは百四カ国ですか、そうでしたか。(清水政府委員「はい」と呼ぶ)この中で、これは全部西暦併用ですね。
  79. 清水汪

    清水政府委員 申し上げました百四カ国につきましては西暦を併用いたしております。  それからなお、先ほど申し上げました例はあれだけではございませんで、まだほかにも若干ございますが、主なものを申し上げたわけでございます。
  80. 栂野泰二

    栂野委員 外務省お見えいただいていますので、お尋ねしますけれども、第二次大戦以後、王制あるいは君主制を廃止して共和制に移行した国は幾つありますか。
  81. 枝村純郎

    ○枝村説明員 国の政治形態のことでございますので、一概には申し上げかねるわけでございますけれども、常識的に判断いたしまして数えてみました結果を申し上げますと、戦後君主制が存続しなくなった国の数というのは十八というふうに数えております。この中には、英連邦から脱退したことに伴いまして、象徴的に英国女王を君主としていただいておったものが、そうでなくなったという二カ国も含んでおります。
  82. 栂野泰二

    栂野委員 逆に第二次大戦後、共和制から王制に移行した国はどことどこでしょう。
  83. 枝村純郎

    ○枝村説明員 戦後君主制が復活あるいは新設したという国は二カ国でございまして、かつて王制をとっておってそれが共和制に移行し、またその他の政体をとっておったが、戦後王制が復活したのはスペインでございます。  それから最近新たに皇帝を名のって帝国を宣言した国が中央アフリカでございます。
  84. 栂野泰二

    栂野委員 その二つの国がなぜ王制に移行し、あるいは復活したか、簡単でいいですが、事情を述べてください。
  85. 枝村純郎

    ○枝村説明員 スペインにつきましては、これは御承知のように共和制が一九三一年来とられておったわけでございますけれども、その後内戦を経まして、フランコ総統による統治が行われていたわけでございます。その後フランコ統治下におきましても、フランコ総統が亡くなった後の継承の問題というのがいろいろな形で議論されておりまして、すでにフランコの存命中からスペインは王国ということを憲法でも定めておりましたし、その間に、しからばそういう王国の国王になるべき人はだれであるか、どういう形でこれを決めていくかというようなことがございまして、結局フランコの死後フアン・カルロス一世が国王に即位したということでございます。  中央アフリカにつきましては、御承知のようにジャン・ベデル・ボカサという人は大統領でございまして、いわば国家の統治権を一身に集めて統治しておったわけでございますが、一九七六年に至りまして、皇帝というものが自分の地位をより的確に示すものであるという判断によって、皇帝ということをみずから名のり、帝国ということを宣布した、こういうことでございます。
  86. 栂野泰二

    栂野委員 中央アフリカというのは小さな国で、ボカサ大統領は皇帝になったときにも新聞で大分騒がれましたが、何だか一千万ドルもするような金の馬車をつくったとか、ちょっとおかしな人なんですね。スペインは結局はフランコ独裁からいずれ共和制に移るであろう、民主主義国家に移るであろう、その過渡的形態として政情の混乱を防ぐという、言ってみれば妥協の産物です。ですからこの二つも非常に例外的で、世界の大勢というのはやはり君主制が崩壊している。こういうことだろうと思うのです。三原長官、そういう世界歴史の大勢は、絶対権力を持っておれ、あるいはイギリス型であれ日本型であれ、ともかく君主制と名のつくものはなくなっていく傾向にある、こういう傾向はお認めになりませんか。
  87. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたしますが、そうした将来の見通しについて明確なお答えをするだけの見通しを私は持っておりませんので、お許しを願いたいと思います。
  88. 栂野泰二

    栂野委員 時間がなくなりましたので、お聞きしたいこともあったのですが、最後に一言聞いておきたいのですけれども、公式制度連絡調査会議では、この元号だけではなくて、国歌、国旗あるいは国葬などを調査審議することになっておりますが、きのうもちょっとお触れになりましたけれども、国歌についてはどういう審議状況ですか。
  89. 清水汪

    清水政府委員 国歌につきましては、公式制度連絡調査会議昭和三十六年にスタートいたしましてからは、元母問題を初めといたしまして一通りの議論が行われました。しかしそれは主として初期のころでございまして、その後四十年代半ば以降におきましては、その問題につきましては余り議論をいたしておりません。考え方といたしましては、現実におおむね国歌あるいは国旗について合意があると認められる状態であるので、この事態を見守るということで、それ以上の議論をいたしておりません。元号につきましては、ごく最近におきましては、昨日も申しましたように、いろいろと公式、非公式の機会を重ねまして検討を進めてきたところでございます。
  90. 栂野泰二

    栂野委員 最近自民党筋の一部に、元号が片づいたら次は「君が代」だ、その後は靖国だという、この種の発言があったやに聞いているのですが、政府としては、「君が代」の国歌化について君が代法案といいますか、そういうふうなものを出すおつもりがあるのか。靖国神社法案あるいは表敬法案、そういうものを考えているのかいないのか、この際、明確に伺っておきたいと思います。
  91. 清水汪

    清水政府委員 ただいま申しましたように、たとえば国歌につきましては「君が代」が国歌であるという認識につきましては、おおむね事実上のコンセンサスがあるような状態に認められるというふうに考えておるわけでございますが、現在におきましては、そういう状態を見守るという考え方でおるわけでございまして、この調査会議におきまして、特に現在それを議題として検討しているという――それをと申しますのは、恐らくいまの御質問の趣旨がそれの法制化という御趣旨の御質問であろうと思いますが、そういう点については検討議題といたしておらないわけでございます。  それからなお、靖国神社の問題につきましては、昨日も申し上げましたように、これは私どもの事務を扱っております公式制度調査会議検討するのになじむのかどうかという点が問題としてもあるように私は思いますし、現実にもいまのこの調査会議検討の対象にいたしておるということはございません。
  92. 栂野泰二

    栂野委員 終わります。
  93. 藏内修治

    ○藏内委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時開議
  94. 藏内修治

    ○藏内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  元号法案を議題とし、質疑を続行いたします。鈴切康雄君。
  95. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、公明党を代表いたしまして、今回政府から提案されました元号法案について若干御質問を申し上げます。  元号については、いままでいろいろの場所で、いろいろの角度から論議が繰り返されて、確かにその存続については賛成だというのが八〇%いるわけでありますけれども、しかし、存続の内容について法制化をやるということになりますと、これまた意見が分かれるということから、国民から非常に多くの意見が寄せられているのは事実であります。私も、この元号法案につきましてわが党の態度を決めるにつきましては、国民の皆様方からいろいろと御意見をちょうだいをいたしました。しかし、やはりかなり広範囲にそれぞれの考え方があるということがわかりましたが、私ども公明党といたしましては基本的には元号存続賛成である、そして法制化については単純な法制化を進めるということで今日来たわけでございますので、そういう意味については世論の動向等も十分に配慮しながら、またその中にはかなり手厳しい国民判断というのもございますので、そういう点をこの国会の場所において論議をするということは非常に好ましいことである。そういう意味において、反対方々の御意見について、政府はどういうふうに考えておるかということもあわせながら、わが党の考え方もまた申し述べたい、このように思うわけであります。  そういう中において、今回政府提出元号法案が出されたわけでありますけれども、それについて元号法案に対してはどういう御認識を持っておられるか、また元号法案提出された意図についてはどのようにお考えになっておられるか、その点をまずお聞きをしてから質問に入りたいと思います。
  96. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えを申し上げます。  元号は、御承知のように国民の日常生活におきましては長年使用されてまいっておりますし、広く国民の中に定着をしておる。そして、いま御指摘もございましたように、それらの国民の大多数の方が存続希望しておられるということは事実でございますが、いま御指摘がございましたように、さて法制化することが適当かどうかというようなことにつきましても、いろいろ意見の分かれておることも承知をいたしておるのでございますけれども政府といたしましては、いま申し上げましたような国民存続希望されるそうした事実を踏まえまして、存続希望しておられるその事実を考えてみますと、それ自体どういう形で存続をしていくか、だれがやられるか、いつの時点にどういう場合にやられるかというようなことがなかなか明確になっておりません。  そこで、そういうことを考えてまいりますと、政府といたしましては、その根基と申しますか、基礎を明確に安定した立場国民の要請にこたえるべきであろう、それには民主的な国会の場において、法律によって元号についてその基礎を明確にしていくことが政府としての責任であろうということで、今回法案国会提出をし、御審議を願っておるという事情でございます。
  97. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 元号を辞典で調べてみますと、これは年号のことというふうになっておりますね。年号とは年につける称号と、そのようになっておりますけれども、いわゆる元号というのは、どういう目的を持った年号なんでしょうか。
  98. 清水汪

    清水政府委員 ただいまお尋ねの各種の辞典等におきましても、年号と元号とは全く同義に解説されておるわけでございます。そういうこともございますし、また現実国民の間で元号という言葉も年号という言葉も同じようになじんで使われているということは言えるかと思います。したがいまして、特にその二つの間に格別に違いがあるというふうには現在の時点では申し上げることは特にないわけでございますが、あえて申し上げれば、ある時点において名称が変わる、変わった時点が元年ということで起算点になっていくというようなものでございますので、そういう意味により近いと言えば、元号という言葉の方が近いという感じも、それは言葉の感じとしてはあるように思いますけれども、現在の時点で申し上げられることは、むしろ各種の辞典でも全く同義に解説されているということでございます。私どもとしては、現実元号という言葉が実際にも国民の間でなじんで使われているということから、その言葉を使わせていただいたわけでございます。
  99. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、元号というのは広義に解しても狭義に解してもやはりこれは全く同じだというふうに解釈できましょうか。
  100. 真田秀夫

    真田政府委員 お答えを申し上げたいと存じますが、ただいま審議室長から答弁がありましたように、本来的には、年号といい元号といい、年の表示の仕方、つまり紀年方式の一つでございますが、年号の方は単純にその年を表示するという感覚が主になっているというふうに考えるわけなんで、その年号を幾つか区切りをつけて、古くは大化、白薙、朱鳥というふうに区切りをつけまして、それから新しくは明治、大正、昭和というふうにある区切りをつけていく。その区切りをつけたその期間の始まりが、その区切りの名前の第一年であるというふうな扱いになる、そういう区切りの初年度であるという点に重点を置いて名前をつければ、まあ元号という言葉になじむような感じがいたします。本来的には、先ほど申しましたように、元号といい年号といい、そんなに違うものではないと思いますけれども、あえて区別をつければ、ただいま申し上げましたような、その区切りに重点を置いて呼び名をつけた場合に、元号という言葉の方がぴったりくるという感じがいたします。
  101. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昭和五十二年の九月に、内閣総理大臣官房広報室から世論調査が出ておりますね。これはどういうことの世論調査ですか。
  102. 清水汪

    清水政府委員 御指摘調査におきましては、年号という言葉を使用いたしております。その場合におきましても、格別に年号、元号ということの違った意味を特に意識して、そちらの言葉を特に選んだということはなかったように私は記憶をいたしております。したがいまして、今回法律案を策定する場合におきまして、その辺につきましては種々検討はいたしましたけれども、ただいま申しましたように、元号という言葉の方がより適当であろうということで元号の方を使ったものでございます。
  103. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この世論調査のタイトルをごらんになりますとわかりますけれども、「元号に関する世論調査」になっているのですね。これはタイトルですよ。国民の皆様方の方にいろいろと資料をお配りをして、そして皆さん方がお調べになったのは実は年号なんですよね。年号の使用状況なんです。年号でよければ、それじゃなぜここに年号に関する世論調査としないのですか。国民には年号として出しておいて、そして集まってきたものに対しては「元号に関する世論調査」とするのはどういうわけなんですか。
  104. 清水汪

    清水政府委員 その点は特に他意はないと申し上げたいわけでございまして、その後におきまする一般世論調査等におきましても、両方の言葉が現に使われておるわけでございますし、私どもとしては、すでにその時点から両者の間に特に違いがないということでおったわけでございまして、格別の意図はございません。
  105. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはり国民方々に対してこのようにして世論調査出して、それも年号に対する調査であるというふうなことで調べられたら、なぜ年号に関する世論調査とし、それで今回出してこられた法案だって年号法案いうふうにならないのですか。これは明らかに世論操作をしたのじゃないかというふうに――私ども先ほどちょっとこれを見ておりましても、これは元号に関する世論調査ということになって、中を見ますと、全部年号、年号になっていますね。全部年号ですよ。これは非常に問題があるんじゃないかと思うのです。総務長官、こういうやり方は今後政府としておやりになるのは適当であるかどうか。年号で世論調査されたんなら、やはり年号に関する世論調査にならなくちゃいけないでしょう。それが元号にいつの間にか変わってしまっている。こういうやり方は果たしていいかどうか、こういうことをやって政府世論をそちらの方向に向けてきたというふうに言われてもしようがないと私は思うのですが、その点についてはどうなんでしょうか。
  106. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  いま御指摘の点につきまして、率直に、私も終始一貫元号法案まで制定しておれば元号で記名をしておった方がよかったな。しかし、いま政府委員からお答えをいたしましたように何の他意もございませんということは私は事実であろう、こう思います。御了承願いたいと思うのでございます。
  107. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総務長官がそうおっしゃるんだから、それを信用いたしますけれども、しかしこういうふうな世論調査は、国民に向けて世論調査をした以上は、その集約されてきたものも正直にやはり世論調査として載せなければいけない。それがいつの間にか元号に対する世論調査になってしまって元号法案という形になってしまったのは、私はいま文句の一つもつけたいなと思って質問をしたようなわけなんです。  次にお伺いしますけれども、明治憲法元号について天皇決定し、一世一元制を採用してきております。今回の法案元号決定者は政府というふうになっておりますけれども、実際に中身を見てみますと、一世一元だということはだれでもわかるし、またそれが踏襲されておる。ここが元号天皇制関係から、現行憲法の主権在民の基本理念になじまないという批判が出る理由ともなっておるわけでありますけれども政府考えている元号法案と主権在民との関係はどのように判断をされているか、それについてお伺いします。
  108. 真田秀夫

    真田政府委員 政府考えております、ただいま御審議の対象になっております元号法案の中で申しております元号は、無論、現在の日本国憲法の大原則である主権在民、つまり元号決定権は国会の御委任に基づいて政府が定めるという基本的考えでございますが、その元号をどういう場合に改める、つまり改元をするかという点につきましては、これは申し上げるまでもなく、旧憲法の時代に戻るというのではなくて、現在、日本の国民の多くの方々が持っていらっしゃる元号についてのイメージ、それは天皇の御在位中に一世一代の元号を用いるのだというイメージがあるわけなんで、それを忠実に制度化するというのが本意でございまして、無論、天皇の性格が旧憲法と現在の憲法との間において非常な違いがあるということは百も承知でございまして、それと混同するようなつもりは毛頭ございません。
  109. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 当初政府考えておられました中には、たしか一世一元という文言が考えられておったわけでございますけれども、今回は、「元号は、皇位の継承があった場合に限り改める。」というような表現に変わったのですけれども、これは何か御意図があるのでしょうか。それとも、表現が変わったというのはそれなりの理由があるのでしょうか。
  110. 真田秀夫

    真田政府委員 昨日来、数回お答えしているつもりでございますが、確かに当初の案には「一世」という表現が用いられておりましたが、それは今回の法案審議いたしました際に、条文技術的な理由から変えたわけでございまして、実質はまさしく一世一元でございます。一世という言葉を避けた、用いなくした理由といたしましては、再々申し上げておりますように、旧皇室典範第十二条には「践祚ノ後元号ヲ建テ一世ノ間ニ再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制ニ従フ」、こうありましたわけで、こういう条文でございますと、「一世ノ間」というのは践祚をなさった新天皇の御一世の間というふうにおのずから読めるわけでございますけれども、今度の法案のように、ただ裸でといいますか、とにかく皇位の継承があったときには新たに「元号は、政令で定める。」と書いているだけでございますので、ここらで仮に「一世」とやりましてもはなはだ意味が不明になってしまうというのが一つと、それからもう一つは、現在の皇室典範に皇族の範囲を決める条文がございましてここに王とか女王とかいろいろ皇族の方の範囲が書いてあるわけなんでございますが、その中に「三世」という表現がございます。それは旧皇室典範にありましたような「一世ノ間」という場合の「一世」とは非常に意味が違った言葉でございますので、それとの混同といいますか、条文的な区別を明らかにするという意味合いも込めまして、「一世」という表現を用いないことにしたわけでございます。
  111. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 元号制度存続の理由といたしまして、政府は、「元号は、国民の日常生活において長年使用され広く国民の間に定着してきており、かつ大多数の国民がその存続希望している」というふうに言われておりますけれども、それはいかなる根拠によるものであるか、政府がそういうふうに御判断なされました根拠についてはどうお考えでしょうか。
  112. 清水汪

    清水政府委員 お答え申し上げます。  その点につきましては、先ほど御指摘をいただきました総理府の行いました世論調査、これが昭和三十六年から昭和五十二年までにわたりまして四回行われておりますが、その調査におきましても、昭和の次の元号について、あった方がいいかあるいはなくなった方がいいかというようなことを聞いておるわけでございますが、その回答といたしましては、各回を通じまして約八割の方々が、元号存続すべきであるあるいはあった方がよいという回答をなさっていらっしゃるわけでございます。  それからまた、最近におきましては、各地方公共団体の議会におきましても、元号存続あるいは法制化の促進の要望を決議しておられるというような事実があるわけでございまして、そのようなことが大多数の国民存続希望しているということの根拠と申しますか背景であろうと考えております。
  113. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 各公共団体の議会あたり法制化賛成とかあるいは元号賛成というようなことがいろいろ決議されておるわけでありますけれども、単純に元号賛成だというような内容で賛成をされたのは幾つあるのか、また元号法制化しなさいということで決議をされたのは何カ所であるのか、その点の御調査はできておりましょうか。
  114. 清水汪

    清水政府委員 その点でございますが、都道府県におきましては、沖繩県を除きます四十六都道府県におきまして決議をしておるという状態でございます。全部は私どもの手元にまだ到着はしておりませんけれども、大半は到着いたしております。それから市町村の議会におきましては、私どもの手元にただいままでに到着しておりますものは約千百五十ぐらいでございますが、他の情報によれば、もう少し多くの公共団体におきまして決議が行われているというふうに伺っております。  そして、その内容でございますが、これはまず第一に、どの決議におきましても法制化要望しているという点におきましては、まず例外がなかったかと承知をいたしております。
  115. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる元号賛成ということで法制化ということの決議である、こういうふうに判断していいのですか。それとも、元号については存続賛成である、しかし法制化までは決議をしているかどうかということについては疑問であるという点もないとは限らないと私は思いますが、その点についてはどうなんでしょうか。
  116. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましては、例外なく法制化を早くしてほしいという法制化促進の要望の決議であるということが申し上げられると思います。
  117. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 元号は、わが国の歴史上国民と非常になじみの深いものでありますけれども、その元号の精神と意義は必ずしも一定でなくして、時代の変遷に伴って変わってきているように私は思うわけであります。これに対して政府としては、いままでずっと元号が続いてきた中にあって、大別するとどういうふうな変遷が行われてきたのか、また国民的な意識はどういうふうに変わってきたのか、その点についてちょっと……。
  118. 清水汪

    清水政府委員 ただいまのお尋ねにつきましては、いろいろの見方もできるかと思いますが、私どもとしてとらえておりますことは、元号を歴史的に見ますと、昨日多少御質問がありましたことにも関係いたしますが、一番当初の元号というものは中国から取り入れたというものになるわけでございますが、その辺の歴史的起源につきましてはいろいろ歴史学者の考え方というものがあろうかと思いますが、それを別にいたしますと、わが国で大化以来元号が始まり、大宝以来一貫して継続してきておりますけれども、この点につきましては、明治より前の時代において考えますと、当初はやはり支配者である天皇がみずから定めると同時に、そのことが天皇の支配者としての地位を示しているというような役割りもあわせ持っていたというようなことが歴史的にも認識できるのではないかと思います。しかしながら、その後におきましては、御案内のとおり政治的にいろいろの変遷があったわけでございまして、その間におきましては、そういう変遷の過程を通じまして、元号が持っておりますもう一つの側面と申しますか、むしろ実際の機能の面と申しますか、つまりある特定の年月日を表示する、その年の表示の役割りを持つという面におきまして、むしろこれは当初から一貫して続いておるわけでございまして、主としてそちらの面が現実的な意味を持っていたということが言えるかと思います。現在におきまして私どもがとらえております元号というものも、そういう元号が日本国民のあるいは日本の社会におきまして共通の年の表示方法であるということで長年存在を続けてきた、そういうことを通じまして国民の間にある意味では同一の社会あるいは同一の文化に帰属するというようないわば一体感のようなものも心理的に醸成されてきたと思いますけれども、そういう面は現在においてもあるのではないか。いずれにいたしましても、現実にいま考えられております元号といたしましては、もっぱら年の表示の方法というところでその意義をとらえることができる、かように存ずる次第でございます。
  119. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昭和五十三年七月の読売新聞の全国世論調査の結果によりますと、何らかの形で元号存続賛成している人の中でも、法制化をするほどのことはないという回答は六四・五%、法制化をした方がよいという回答が一五%、それから過日毎日新聞においても、たしか法制化をする必要はないというように言われている国民世論の動向を政府としてはどのように受けとめておられましょうか。
  120. 清水汪

    清水政府委員 その点でございますが、たびたび御質問をいただいているわけでございますが、昨年の夏の新聞調査の段階におきましては、まだ政府といたしましても法制化という方針を決めておりませんでしたし、したがいまして、法律になった場合にどういう内容のものになるかということはもちろん一般的には理解がなかったわけでございます。と同時に、やはりその時点におきましても、法律制度を定めるということになれば即一般国民にも強制されることになるのではないかというような受けとめ方も事実上あったのではないかというふうに推定するわけでございますが、そうした状況の中で昨年の七月の調査があり、その場合の回答といたしまして、ただいま御指摘のようなことがあったわけでございますが、その後政府方針が明らかになり、かつ法制化をいたしましても決して一般国民使用を法的に義務づけたり強制したりするものではないということが明らかになるにつれまして、一般的には理解が深まってきたように私どもとしては考えております。しかしながら、ただいま御指摘のもう一つの一番最新時点における世論調査におきましても、形の上で法制化賛成であるという回答はおおむね二〇%ちょっとということになっております。そうして第二番目に多いのは、元号はあった方がいいが、その存続方法についてはということで、内閣告示でもいいのではないかとか、あるいは慣習的に使っていくということでもよいのではないかというようなところに、合計いたしまして約五〇%、ややそれを上回るほどの回答があったように承知をいたしておるわけでございますが、その点につきましては、私ども立場からすれば、もう少しその辺について政府自身の説明の努力が足りなかった点は反省いたさなければならないと思います。  しかし、なかなかその点の表現に技術的なむずかしい面もあるのではないかという点を申し上げたいわけでございまして、たとえば存続をする場合におきましても、内閣告示という方法でやるということは、やり方としてはもちろんできないわけではございませんですけれども存続安定性という面からまいりまして、あるいは明確に法律基礎を置いてやるということに比べれば、その明確性の点におきまして、いずれにいたしましてもやや十分でない点があるということが問題として言えるわけでございます。それから、この慣習的にという問題でございますが、簡単に申しますと、現在昭和という元号慣習的に存在をしますから、これで問題はないわけでございますけれども、この昭和の次ということになりますと、一体だれがそれを決めるのかというルールは実は現在はっきりないわけでございます。つまり、このままでいけばその点がはっきりしないことになるわけでございますので、存続希望するけれども慣習的にというふうなことにはなかなかうまくまいらないという点が実はあるわけでございます。  そのようなことを含めて考えますと、やはり存続希望するというのが一番実態的な国民の意思であると受けとめますと、問題はその先の新しいものをつくるときのルールをはっきりしておくことが必要になるということで、いずれにしましても、いまのアンケート調査におきましても次のルールが必要であるという認識においては、広範囲な方がそれを認識しておられるということは受けとめることができるわけでございまして、あとは、政府といたしましてはその国民要望に沿うためにはどうすればよろしいかということにおきまして、政府の責任で法案提出させていただいた、こういうようなことになるわけでございます。
  121. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法律で決めれば、安定化、明確化という点については、確かにそれはより明確になり安定するということはわかるわけでありますけれども政府がお考えになっておりました時点においても、たとえばかって西村尚治総務長官、この方が、元号使用を将来にわたって存続さしていくという方法としても内閣の告示方式でよいのじゃないか、こういうように言われた時代もあるわけですね。ですから、そういうことから考えて、途中で法制化というふうに変わった、その踏み切られた経緯というものは何かの形であるわけでしょうから、その点の経緯はどういうふうに変わってきたのか、そして今回法制化というふうになられた背景、理由についてはどうなんでしょうか。
  122. 清水汪

    清水政府委員 その点でございますが、いまお挙げになりました西村元総務長官の時代におきまして、そういう総務長官としてのお考えを述べられたということはございます。私どもといたしましては、それはそのときの諸般の情勢のもとにおいて元号存続を図る最小限の方法ということで、考え方としてそういう方法考えられるということをメンションされたものと思うわけでございますが、そのときも含めまして、政府といたしましては、元号存続方法をどういうふうにしたらよろしいかということについては絶えず検討を続けていたわけでございます。その後の国会における各総務長官の御答弁におきまして、その辺のお考えがにじみ出ているというふうに私は申し上げられると思いますけれども、いずれにいたしましても慎重に検討をいたしてきまして、その間におきまして世論の動向と申しますか、あるいは地方公共団体の議会の決議の動きというようなものも総合的に勘案いたしまして、法制化という結論に到達をしたということでございます。
  123. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は現在、昭和使用については国民慣習にすぎないのだ、それから、これは事実たる慣習というふうに言われておりますけれども、その根拠となるものはいかなるものをもってそういうふうにおっしゃっているのでしょうか。
  124. 清水汪

    清水政府委員 事実たる慣習ということでございまして、つまり、昭和何年何月何日というふうに記載をすれば、それがある特定の期日あるいは日にちを指すものであるという認識におきましては、これはおよそ疑義なくわが国社会において定着をしているというふうに申し上げられると思います。その状態におきまして、昭和という元号が事実たる慣習であるというふうに言われている、そういうことだろうと思います。
  125. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦前においては、元号の法的根拠は、明治元年の九月八日の詔書、行政官布告第一号、旧皇室典範、登極令等でありますが、これらの諸法令は、新憲法の施行に伴い廃止されたと考えてよいのか、あるいは行政官布告は正式には改廃されていないため依然として効力を有しているという解釈もありますけれども、この点については、政府はどういうふうにお考えになっていましょうか。
  126. 真田秀夫

    真田政府委員 順序を立てて申し上げますと、明治元年九月八日、行政官布告、その中に「自今 御一代一号ニ被定候」という文句がございます。これはもう一つさかのぼって申しますと、同じ年に一世一元の詔書が出ているわけでございまして、御質問の、明治元年の行政官布告の効力は一体どうなったのかという点の御指摘だろうと思いますが、その点に関しましては、私たちといたしましては、それは明治二十二年、旧皇室典範第十二条ができましたときに、実はその明治元年の行政官布告は旧皇室典範十二条の中に取り入れられてしまった、そういうふうに解釈しております。そして、その明治元年の行政官布告を取り込んだ明治二十二年の旧皇室典範第十二条は、現在の憲法の施行、つまり昭和二十二年五月三日をもって効力を失ったというふうに考えておる次第でございます。
  127. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 明治元年のいわゆる行政官布告及び詔書は、現在も法規的に生きているのではないかということがしばしば問題とされておりますね。しかも、現に権威ある法令集的なものにも一応布告として載っているということもありますけれども、それに対してはどうお考えでしょうか。
  128. 真田秀夫

    真田政府委員 権威のある法令集のようなものに載っているのかどうか、私つまびらかでございませんけれども、何せ旧憲法時代、つまり旧皇室典範第十二条で決められておりました元号制度は、現在の日本国憲法による主権在民の制度とは相入れないというふうに考えられます。したがいまして、先ほど申しました昭和二十二年の五月の三日に失効して、現在の皇室典範にはその点が取り入れられませんでしたので、別途、元号法案なるものを実は用意しまして、国会に御提出しようかという段階まで参りましたが、また当時の特殊な事情によりまして、それもかないませんで、廃案になった。それでその後は法的な根拠が失われまして、そして再々申しておりますように、事実上の慣習として三十年間の長きにわたって国民の間に違和なく定着して用いられておる、それが現状であるというふうに考えておるわけでございます。
  129. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昭和三十六年の七月二十八日の閣議決定で公式制度連絡調査会議総理府総務長官の主宰のもとに構成されましたが、どういう問題が検討の対象となってきたか、またいままでどういう調査審議をされてきたのか、また結論が出たのはどういう項目で、元号制度についてはどういう結論になられましたか、その点について御説明願います。
  130. 清水汪

    清水政府委員 お答えを申し上げます。  この公式制度連絡調査会議は、いまだ制度化または法制化されていない元号その他の事項について調査審議するため設けるということで随時開催するという趣旨になっております。そういたしまして、昭和三十六年から活動を開始いたしまして、全体としては四十年代の初めまでかなり活発に調査審議をいたしました。その中におきまして、たとえば天皇の国事行為の臨時代行に関する法律というものが三十年代において制定されておるわけでございますが、それもこの調査会議一つの結論に基づいて行われたものでございます。  そのほか、国葬あるいは国賓に関するような問題につきましては、おおむね現在までに行われているようなやり方というものが適当であろうというふうに一応の考え方の整理をいたしております。それからまた、国歌・国旗というような問題も議論をされておりますけれども、この問題につきましては、現実に国歌あるいは国旗につきましては日の丸が国旗である、あるいは「君が代」が国歌であるという認識が定着をしているというふうに認められるということで、特にこれについてこれ以上格別のことをするという意見は出ておりません。それから元号につきましては、当初からの議題であったわけでございまして、これはごく最近におきまして頻繁に公式あるいは非公式の会合を重ねてまいりました。そうして最終的には、今回お願いを申し上げておりますような法制化という結論に達しているわけでございます。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、公式制度連絡調査会議が三十六年の七月二十八日に閣議決定されてから今日まで、この問題をずっと取り上げてきて、そして政府は今回元号法案を出されたのは、かなりその公式制度連絡調査会議の内容を踏まえてそれに踏み切った、そういう方向になった、こういうように判断していいのでしょうか。それとも、もう少し政府はいろいろの世論調査をした上において、そういうものとあわせ考えて今回の結果になったのか、どういうことでしょうか。
  132. 清水汪

    清水政府委員 先生のおっしゃいましたお言葉をかりれば、あわせ考え一つの結論を出したというふうに申し上げた方がよろしいかと思います。
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど法的根拠がなくなった元号、そして事実たる慣習として存在している元号というものが、現在そのままの使用を続けていった場合、将来はどういうふうな形になるというふうにお思いになっておられましょうか。
  134. 真田秀夫

    真田政府委員 お尋ねの点につきましては、現在事実上の慣習として行われている昭和という元号についての国民の意識、つまり慣習の中身、それをどう見るかによって若干お答えが変わってくるんだろうと思うのですが、私たち考えているところでは、現在の国民の意識、つまり事実上の慣習としては、現在の天皇が御在位中は昭和という元号を用いるという意識だろうと思うのです。  そういうものだとして、それを前提にして考えますと、もし将来天皇の崩御ということが仮にございました場合には、もう元号制度はそこでなくなってしまって、西暦ということになりますか、それはそのときになってみないと的確なことはわかりませんけれども、少なくともただいま申しましたような内容の国民の意識だ、それが事実上の慣習であるという前提に立てば元号という制度はなくなってしまう、そういうふうに考えざるを得ない、こう思う次第でございます。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 現行の皇室典範では、元号に関して何ら規定を設けていませんが、規定されなかった理由というのは、どういうことなんでしょうか。
  136. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 現在の皇室典範で決めております事項は、御案内のとおり皇位の継承でございますとか、摂政の設置等、憲法によりまして皇室典範で決めるということが規定をされておりますような事項を中心にいたしたものでございまして、元号は皇室だけでどうこうするというような問題ではなく、国家全般の問題といたしまして純然たる国務に関する事項として扱われてきたわけでございます。そういうようなことでございますので、皇室典範の規定事項とすることは、皇室典範といたしましての性質上適当でないというような判断から、現在の皇室典範には取り入れられなかったというように承知をいたしているところでございます。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 皇室典範の第四条には、「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」こう決められておりますね。今回の元号法案は、「元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。」こういうふうになっておりますね。としますと、元号と皇位継承とは全く関係がないということではないと思うわけでありますが、直ちに連動するという物の考え方でしょうか。皇室典範第四条「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」とありますね。それから今回出てきました元号法案は、「元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。」こうありますね。そうしますと、これは全く関係がないということではない、こう私は思います。とにかく崩じたときには元号を改めるということになるわけですから当然ですけれども、しかし元号と皇位の継承と直ちに連動するという物の考え方というふうにとらえてよいのかどうか、それは切り離して考えるべきであるのかどうか、その点についてはどうなるのでしょうか。
  138. 真田秀夫

    真田政府委員 日本国憲法の第二条に「皇位は、世襲のものであつて、國會の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。」こうありまして、この規定を受けて、ただいまお読みになりました皇室典範第四条に「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」こういう規定なっているわけでございまして、今回の法案の中で「皇位の継承があった場合」はという言葉を使いましたのは、むしろ憲法の第二条の皇位の継承という言葉をそのまま持ってきたというのが実情でございます。皇位の継承は「皇室典範の定めるところにより、」とありますから、直接的には皇室典範の第四条が働く場合にいまの改元が行われるわけでございますが、ただ、おっしゃいましたように、直接皇位の継承と、観念上といいますか考え方として元号とすぐ結びつけたというものではむしろなくて、元号制度について国民が持っているイメージ、それはやはり日本国憲法のもとにおける象徴たる天皇の御在位中に関連せしめて元号を定めていくんだという事実たる慣習を踏まえまして、このような条文の仕方にしたわけでございます。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 同じく皇室典範に、摂政については、「天皇が、精神若しくは身体の重患又は重大な事故により、国事に関する行為をみずからすることができないときは、皇室会議の議により、摂政を置く。」こうありますね。その中の「重大な事故により、」というその「重大な事故」というのはどういうことを基準にしているのでしょうか。摂政を置くについて、「重大な事故により、」ということなんですけれども、当然、こういう文言が入ってきたということは、何かのことを想定されて書かれているわけでしょうから、そのことについての判断基準について、やはり教えていただかないとわかりませんね。
  140. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 摂政の設置につきまして、ただいま先生がお読みになりましたような規定の中に「重大な事故」の場合が入っていることはそのとおりでございますが、この「重大な事故」というのは、結局、国事に関する行為を天皇みずからがすることができない程度の故障ということになってくるわけでございます。  どんなことが想定されるかということは、非常に希有のことでございまして、なかなか具体に申し上げにくいのでございますが、同じような御質問が前にあったときがございまして、そのときに当時の宮内庁長官が申し上げました答えを引かしていただきますれば、たとえば天皇の失踪とか生死の不明、いい例ではございませんが、そのとき言われましたのは、たとえば戦時中に捕虜になるというような場合が考えられるがというようなことを当時の宮内庁長官お答えを申している例がございまして、具体の例としては、もちろんいまだかってないわけでございますので、きわめて希有の例としてそういうような御答弁を申し上げたということを申し上げておきたいと思います。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戸籍法施行規則三十三条に基づく附録第六号の戸籍のひな形で、昭和という元号を明示しておりますが、ここで昭和元号を明示した理由は何に基づくのでしょうか。
  142. 清水汪

    清水政府委員 戸籍法の問題でございますが、戸籍の記載につきまして元号を使わなければならないというように戸籍法上で規定をしていることはございません。ただ、附録のひな形、これが施行規則の三十三条に基づくひな形でございますが、そのひな形におきましては、戸籍簿の記載の統一を図るというような観点から、現実に多く用  いられている、つまり先ほど来申し上げております定着しているところの元号という方をひな形として示しているということでございますので、ひな形の中に元号を用いております根拠ということになりますれば、むしろそれは現実の事実たる慣習として定着しているということがその根拠になるというふうに申し上げられると思います。  そういうようなことでございますので、そのひな形にそういうことが書いてある意味といいますのは、まず第一には、そこに特定の年月日を書いてもらう必要があるという意味で、そこに書くことを意味しているということがあるわけでございますけれども、したがいまして、逆に言いますれば、これもしばしば問題になるわけでございますが、どうしても元号の方で書くのは困るというような方がおられる場合はどうなるかということで申し上げれば、それは元号でなくて西暦でお書きいただいても、それは有効に受理されるということになるわけでございます。しかしながら、申し上げたいことは、公務の統一的な処理と申しますか、そのことにはそれなりの合理性があるというふうに考えているわけでございますので、その点に対する国民の御協力を前提にいたしまして元号で書いていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 今回の法律は非常に短い法文になっておるわけでありますけれども、その元号法案の第一項に「元号は、政令で定める。」というふうにありますが、どのような手続、そして方法をとられるお考えでしょうか。
  144. 清水汪

    清水政府委員 御指摘のとおり法律はきわめて簡潔でございますが、具体的に政令でもって新しい元号名を定めるわけでございますので、その場合の手続につきましては、いろいろと慎重に検討をいたしております。  ただいま申し上げられることを申し上げますと、政府といたしましては、やはりまず何名かの学識経験者の方に新しい元号名としてふさわしいと考えられるその候補案をお出しいただくように委嘱をすることになろうと思います。そのような学識経験者といたしましてはどういう方を考えるかということでございますが、これはまず第一には、当然のことと思いますが、言葉あるいは歴史のそういう専門的な学識者の方ということが考えられるわけでございますが、しかし、そういういわゆる専門の学者だけには偏らないようにした方がいいだろうというふうに考えておりまして、もう少し広い視野に立ちまして、いわゆる文化人あるいは言論人というような方々にも候補名の御考案をお願いをした方がいいだろうというふうに考えておるわけでございます。  そういうふうにいたしましてお願いをいたしました方々から御提出をいただきました候補名、これはかなりの数になるだろうと思いますけれども、その中からあとは選定していくことにつきましては内閣の責任でこれを進めるわけでございますが、多少細かく申し上げますと、この元号問題の所管の国務大臣、現在で申し上げれば総理府総務長官でございますけれども、この総務長官の手元におきまして、たくさん出てきたものの中からある程度の整理をしていくということが必要であると思います。もちろん、その整理をするに際しましては、御提案いただいた方々からそれぞれの意味合いなりその理由なりというものをよく拝承をするということが必要でございますが、そのようにして整理をいたしていくことがまず第一段階だと思います。  その次に、そのように整理をされたものを今度は内閣が最終的に決定するまでの過程におきましては、やはり幾つかのステップを踏むことが望ましいのではなかろうかというふうに考えておりまして、この点につきましては総務長官から昨日もお話を申し上げたわけでございますが、総務長官を含めましてやはり少数の閣僚によりまして、さらにその整理されたものの中からいわば本命と申しますか、そういうもの、それからそれに準ずるようなものというふうに少数のものに審議をしてしぼっていくということが必要であろうと思います。そういうふうにいたしましたものにつきまして、これは現在総務長官が腹案ということでお考え中の一端をお話しになられたという意味合いでございますけれども国民の代表者というような意味で、まだこれはお諮りはしてないわけでございますが、衆参の議長あるいは剛議長の方にも、そのものについての御意見を承るというようなステップも考えられるのではないか。そういうふうな過程を積み重ねました後に閣議で決めるわけでございますが、これも慎重を期しまして、場合によりましては全閣僚の懇談会で十分時間をかけて審議をする、そういうようなことと、それから正式に閣議で決めるというような慎重なステップのとり方が望ましいのではなかろうか。  以上のことは、昨日来総務長官が現時点において抱いておられます腹案としての構想というような意味合いで御披露申し上げたことでございます。そういうふうにして、最終的には閣議で決定されたものが政令の形で公布されるということになるわけでございます。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府はいま、元号内閣の責任で決めるけれども、しかるべき専門の学者に原案をつくる材料の調査あるいは検討をお願いする必要もあろうというふうに言われたわけでありますが、これは諮問をするのですか、それとも委嘱をするのでしょうか。
  146. 清水汪

    清水政府委員 強いて言葉で言えば委嘱をする、つまりお考え出していただく、案を出していただくという意味の委嘱をするということであろうと思います。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 専門の学者あるいは文化人というふうに言われておりますけれども、専門と言っても実際にはかなり広い分野があるわけです。しかし、あえて政府がお考えになっている専門の学識経験者あるいは文化人というのは、どういう範囲で、構想としては大体何名ぐらいを予定をされていましょうか。
  148. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  まだはっきりと何名ということは考えておりませんけれども、若干名ということでいままでは答弁してまいりましたけれども、大体五名から十名の間ぐらいではないかというような考えでおるところでございます。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私はなぜ申し上げたいかと申しますと、実は専門家とか学識経験者あるいは文化人とかいっても、五名から十名ぐらいのごくわずかな方から委嘱をして出していただくということは、本来はやはり国民の統合としての象徴たるいわゆる天皇、しかも民主政治を根幹とする現憲法の中にあって、国民皆さん方が決めるという形にした方がよりベターだと私は思うのです、その点については。本当にわずかの方々にこっそりと出していただいて、そしてそれをどこでごらんになるか、なるべく人のいないところでごらんになって、そしてお集めになって、だんだん決められていくというようなそういうやり方、私は、これは本当は民主政治の中にあっては非常に恥部ではないかというように実は思うのです。そういう意味において、やはり国民皆さん方が喜んで元号を決めるという、そういう体質にしていかなければならぬわけであります。また、それは私の個人的な意見も申し上げますけれども、私はそう思っているのです。  そこで、いま五人から十人ぐらいというふうに言われておるわけでありますが、委嘱をする主体者は総理ですか、それとも総務長官なんでしょうか。それから、こういうものについて閣議決定か閣議了解か、そういうことをされるのか、あるいは委嘱をする人の名前は、もうその委嘱される人だけが知っておる問題なのか、その点はどうなんでしょうか。
  150. 清水汪

    清水政府委員 ただいまお尋ねの点は、要するに元号名を決めていく手続の問題でございまして、私どもとしては、当然のことながら、このような重要な事務の運び方につきましては、適当な形でこれをはっきりしておくことが当然であろうと思いますし、それからまた、やはりそれは適当な形で外部に対しましても説明をしていくということは必要であろうと思っております。ただ、その内容あるいは、たとえばいまお尋ねの委嘱をするのは総理の名前でするのか、あるいは総務長官の名前でするのかというような問題、これはもう少し検討をさせていただきたいと思っておるわけでございますし、あるいはそのような全体の手続というものを決めるのは決めるといたしましても、それを決めたときの形式が、たとえば閣議決定というような形式を考えているのかどうかというお尋ねでございますが、その点につきましても、私どもとしては御意見趣旨も踏まえさしていただきまして、適当な方法検討させていただきたい、このように考えているわけでございます。  それからもう一つ、ただいまお尋ねの学識経験者の名前を公表するのかどうかということでございますけれども、この点につきましては、けさほど総務長官からちょっと御説明があったわけでございますが、いずれにいたしましても、全体の制定経過というものは国民の前に明らかになることが望ましいと思いますので、そのような方法については今後研究をいたしたいと思っておりますけれども、その途中のといいますか、したがいまして、事前の段階とかそういうところで個々のお名前を公表することにつきましては、これはいろいろ考えなければならない問題があるような気が現在のところいたしておるわけでございますので、この点はちょっとむずかしいのではなかろうかというふうに存じております。
  151. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総務長官、いまの答弁を聞いておってあなたわかりましたか。適当なときにはっきりしなくちゃならない、適当なときに外部にわかるようにしなくちゃならない、適当なときに、適当なときにと言ったんでは、それはさっぱりわからない。少なくとも政令にゆだねられるという以上は、かなりその中身をはっきりしていただかないと、実際には国民はよくわからないわけですよ。これはそういう事柄の性質とか、そういうことだけでもうベールに包んでしまって、秘密、秘密でいくというようなやり方、これでは全くわからないわけですよ。総務長官、もう少しはっきり輪郭をあらわしてくださいよ。その上において論戦しましょうよ。
  152. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  私ども諸般の準備、勉強をさしていただいておるときでございまして、その際には、公募方式をとるということも一つ方法ではないか、そういうことを考えたこともあるわけでございますが、しかし、いろいろなことと関連をして総合的に判断をした上で、先ほど政府委員答弁したような順序になるでありましょうということを申し上げましたが、しかし、私どもはここで法律を可決をしていただきますれば、その時点ごろから具体的にこういうような段階を踏んで、たとえば学識経験者の方々を何名ぐらい、これも先ほど申しましたように、公募ということまで考えてきたぐらいでございますから、やはり国民皆さん方の御意見を広く代表しておるなという人選になろうかと思います。  そういうことで人数が決まり、これらの方々という人選が決まろうと思いまするが、とにかく人選をいつごろまでにどういたします、その人選が終われば、その方々に候補名の策定を御依頼をいたします、その数はおおむね何個ぐらいのものをお願いしようと思っております、それを今度は、いただいたものをどういうところで、まあ委嘱の問題もありましたが、委嘱はだれがするかということがある、それからそれの策定は大体の一つの区切りでお願いをすると思いますから、できた時点ぐらいにはどういう形でそれを、総務長官が主管長官でございますので受け取って、そこでどういうメンバーで整理をするか、そしてそれを整理をしたものを次にはどういうような機関にかけていくか。先ほどもお話がございましたが、政府が責任を持ってやると申しておりますけれども、立法機関に全く連絡をとらずにやるものかやらないものか、しかし、これはやはり問題である、そこで国会に御連絡をするとすればどういう形にするのかというような問題でございますとか、それから、あるいは閣僚に一挙にかけずに、閣僚にかける前に、先ほど三長官というようなことも申し上げたのでございまするが、総理にも御相談をしながらそうした三長官である程度の整理をすべきではないか。そうしてそれを閣僚懇談会にかけて、最終的に閣議決定というような段階を踏まざるを得ない。  そういうことで、法案が制定されます時点で、間髪を入れず、そういうような一つの手続上の段階をずっと整理をいたしまして、そしてそのことは国民方々にどういう方法でお知らせするか、そういうこともやるべきである。そして、最終的に、中身は幾つ出ました、この内容は何でございますとか、どれらの方々に御委嘱をして出ましたとかいうようなことは、いずれ政令が出て公示されました後においては、国民皆さん方にそれをくまなくお知らせをする、そういうことも必要である。こういう元号が制定されましたというようなことがすべて終わった後に具体的に広く国民方々に発表をする、公示をする。しかし、その前のこういう方々にやりますという手続上の問題等は事前に国民方々には知っていただく、そういうような処置もすべきである。そういうことをただいま詰めてまいって勉強いたしておりまするが、最終的には法案が制定をされて後には具体的にそういうものに取り組んでまいるというような準備をいたしておる現段階でございます。
  153. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま総務長官がおっしゃった中に、結局は元号を決めて発表する時期をどうするかという問題だというふうにおっしゃいましたけれども、結局は皇位継承があった後ということになるわけでして、そこに非常に元号が民主的でない、それをかなり政府の方も民主的努力をされながらいろいろ考えてこられたことは、私はこれは評価しないものではないわけですけれども、常に天皇百年の後のことを考え元号という問題が実際にはいつもいつも出てくるわけですね。だから、これはまさしく元号が出るときには天皇がかなり御病気だとかあるいはお年を召されたとかいう時点にやはりそういう問題が出てくるわけですね。  これは私の私見になるわけですけれども、お年を召したあるいは病気になられてもう必要に迫られたときに、そういうような手順でやらなくちゃならないというところに問題があるのじゃないか。だから、むしろ天皇が皇位につかれてから十年たった、もうそのときには天皇としては皇位にあられて十年の経過を経られた。そのときにそういう皇位も含めて象徴天皇としてお祝いを申し上げながら次の元号を決めちゃうのですよ。国民から公募するのです。公募して、そしてそれをまた十年たったら見直しをする。また十年たったら見直しをする。その時代、時代によって国民の生活様式とか考え方というものは変わってくるわけですよ。そういう元気なときに、そこで次の元号を決めてしまえば問題ないわけであって、その次に十年たったときにはもう自動的に公募で皆さん方からそれぞれいい案をお出しになるわけですから、それを政府としては取り上げるという、やはりそういうユニークな方法だって、ぼくは考えられないわけはないと思うのですよ。  常に政府考えているのは、もうお年を召した、病気になられた、こういうことを言われると縁起が悪い、御不敬に当たる、こういうことが常に先行するから密室ですべてを処理をしていかなくちゃならない、こういう形にならざるを得ない。これは象徴天皇という国民のシンボル、すなわち国民統合のシンボルである立場から言うなら、私はそうあってしかるべきではないかと思うのですね。そういう点について、総務長官、私非常にユニークな考え方を持っているのですけれども、お考え方はいかがでしょうか。
  154. 三原朝雄

    三原国務大臣 御指摘、大要三点ぐらいだったと思いますが、一つは民主的な運営をするということで公募的な考え方も一つ考えられるではないか。それから、これはいままで鈴切先生からも御意見を承ってまいる間にございましたが、踰年的なことでどうだというような御意見もございました。あるいは過去におきましては五十年くらい区切ってやれないかとかいろんな意見もございました。いままた十年ぐらいではどうだというような御意見も出てまいっておるわけでございまして、そういうような点を十分ひとつ踏まえながら最終的には進めてまいりたいと思うわけでございまするけれども、ただ、ここでそれではそういう意見を入れるのかということになりましてもなかなか困難な事情でございます。しかし、いま御指摘なり貴重な御意見としてお述べいただきましたようなことは、十分ひとつ将来の貴重な参考意見として考えてまいりたいと思っておるわけでございます。  ただ、申し上げにくい点がございますのは、元号を何年か置きましてやる場合に、すぐまた次の元号というようなことがあってはなりませんけれども、そういう重なるようなことに相なっても相済まぬというような非常に申し上げにくい心配もいたしておるわけでございます。諸般の情勢を踏まえながら、いま貴重な御意見として承って、将来の参考にさしていただこうと思う次第でございます。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いよいよ法案がこうやって審議をされていきますれば通過するだろうと私は思っておりますけれども、しかし、そういうことから考えますと、この法案が通過したときにもうこれは手続も進めなくちゃならない、そういう時期に来ているかどうか、その判断はどうなんでしょうか。もう手続をしなくちゃならぬわけですね。もう法案が通ると同時に手続をする、そういう時期に入ってきているんだ、こうお考えになっているのか。手続だけは決めておいてしばらくほっておこう、そうおっしゃっているのか、その点はどうでしょうか。
  156. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたしますが、私の浅い国会議員としての生活の中で、法案ができて事前に政令もこういう準備をいたしておりますというようなことを申し上げて準備をしてまいる場合もあるわけでございますが、今回の場合は法案皆さん方の御審議が議了いたしまして制定をされますれば、速やかに政令なり諸般の手続、準備を具体的にひとつ決定をしてまいりたい、そういうことでおるわけでございます。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 学識経験者の案を何らかの形でとって、そしてそれを閣僚の中で総務長官を中心にして内閣官房長官法制長官とかそういう方が会ってお話しになられて、きのうのお話だと衆参両議長にも一応こういう案をお示しになる。そして最終的には総理大臣だ、こういうことですね。こういうことであるとするならば、その都度その都度整理されて何らかの意見が付せられて総理大臣のところにいくのか。総理大臣がぱっと見てこちらと決めてしまうのか。その点はかなり審議の過程というものを尊重して総理大臣はこの最終的な案に対しての判断をされるのか。最終的には幾つぐらい一応お出しになられて、そして総理大臣がそれに対しての意見を付してきたものに対して判断をされるのですか。その点はどうなんでしょうか。
  158. 三原朝雄

    三原国務大臣 最終的に裁断を下す総理大臣に対しましては、中間の報告もいたしますし、全体的な経過は知っていただき、各方面の御意見等もこういうことでございましたということを報告申し上げて、最終的な決断を下していただくように考えておるところでございます。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 総理大臣が最終的な判断をされるわけでありますけれども、今日こうやって元号法案国民の目の前で審議をしているわけですね。となりますと、政府は閣議決定を最終的にするわけですけれども国会にはどういうふうな御報告の仕方をするのですか。ただ、衆議院と参議院の議長の御意見を聞いただけで、そのままで終わってしまうのか。少なくとも、こうやって一生懸命国会でも御協力申し上げているのですから、国民皆さん方に対して何らか国会で報告する必要性はあるんじゃないかと私は思うのですが、その時期とかお考えはどうなんでしょうか。
  160. 清水汪

    清水政府委員 御意見は十分踏まえまして、私どもといたしましても、ただいまの過程におきましては、衆参両院議長、副議長を、私どもから申し上げるのも僭越かもしれませんが、代表ということで御意見を承らしていただくというステップは考えるわけでございますけれども、全体といたしまして、制定された元号、それからその経過全体につきましては国会の方にも御報告をすることが筋として望ましい問題であろうというふうに考えておるわけでございます。  それから、もう一つつけ加えさせていただきますと、ただいま申しましたのは制定があった場合のことでございますが、もう一つ、その前の問題といたしましては、この法律が制定された場合には、ただいま大臣から申し上げましたように、段取りの問題、つまり手続というものをきちっと決めまして、その決めたところに従って委嘱をするなら委嘱をするという行動を行うわけでございますが、まずその手続を全体として決めたことにつきまして、適当な機会には、チャンスがあれば御説明と申しますか、御報告申し上げるということもできるかと思います。
  161. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、総務長官もその手続はこの法案が通れば急いでやらなければならぬというお話ですが、目途としては大体どれくらいおかけになって手続の方法をお考えになるのか、また、委嘱からある程度最終的な決断が出るまでは大体どれくらいの目安をお考えになっているのでしょうか。
  162. 清水汪

    清水政府委員 法案を成立させていたださましたらできるだけ早く取り組みたい。もちろん取り組むという前に、現在もうすでにいろいろ御意見を踏まえさせていただきまして検討を続けているところでございますが、正式に法案が成立し次第きちっとした手続を定めるという仕事に取り組みたいと思います。  それからまた、その手続の最初のステップといたしまして、委嘱をするという方の選任と申しますか、選定につきましても直ちに取りかかるようにした方がいいのではなかろうかというふうに考えております。
  163. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 直ちに行ったがいいだろう、それから手続はすぐにやりましょうなんと言ったって、ちっともめどがない。少なくとも、これは大体何カ月ぐらいかかる、これは最終的には何カ月ぐらいかかるということぐらいは、およそ政府がこれだけの法案出してこられて全く頭にないとするならば、よほど無能な官吏ですよ。総務長官どうですか。
  164. 三原朝雄

    三原国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたが、できるだけ速やかにかかりますとともに終了させたいということでおるわけでございますが、何日ぐらいということをいま申し上げることは御遠慮させていただきたいと思っております。
  165. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 改元方式について先ほどちょっとお触れになったわけでありますが、国民の生活の利便とか合理性から考え、新しい元号は皇位の継承のあった翌年の一月一日、私どもの党の考え方は非常にユニークであると同時に、これは国民皆さん方からいろいろ御意見もちょうだいして、一応私どもとしては考えた改元方式なんですが、そういう考え方についてどういうふうにお考えになっておられるのか。それからまた、過去においてはどのような改元方式がとられてきたのか。あるいはまた明治の改元と大正、昭和の改元の違いはどうなっておるのか。いろいろ改元のされ方があるわけで、これは政府が今後お考えになることだと私思うのですけれども、事の性質上速やかにとおっしゃっているわけですね。速やかにとおっしゃっているわけですけれども、たとえば、速やかだというならば、直ちに、御崩御になったその日からということになるわけですね。しかし、これは非常に国民的な感情にそぐわない。総務長官、喜びと悲しみとを一緒に表現せよといって、できますか。同時に悲しみと喜びを表現するということができるとするならば、これは人間ではありませんよ。考えてみますと、そういう非常に無理なことを改元方式に用いようというのは国民生活の中になじんでいない。  ちなみに、いま国民的な常識として考えることは、たとえば亡くなられたというと、必ずといっていいくらい正月の前に、おたくにもずいぶんお手紙が来ると思いますけれども、喪中につきまして年始のごあいさつを遠慮させてもらいたいという、一年間はわれわれ国民生活の中においても必ずそういうことをするんじゃないですか。まして国民の象徴である天皇が、もしそういう万が一のことがあった場合において、やはり私ども国民の一人として、亡くなられたことに対して悲しみを感ずるわけであります。とするならば、年が改まって、そこで改元をしていくというのが非常に――私どもは、この考え方は国民方々からいろいろお聞きして、今回これを提案しているわけなんですが、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  166. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  先ほどから申し上げておりますように、皇位の継承があった場合には、できるだけ速やかに元号の制定をいたしたいという趣旨は踏まえてまいりたいと思うのでございますが、いま御指摘のように、国民の感情あるいは国民の生活に及ぼす影響もございますし、そうした点等を十分慎重に配慮しながら措置すべきであるぞと言われる御意見につきましては、貴重な御意見として承ってまいっておるところでございますし、こういう点を踏まえてまいりたいと思うのでございます。ただ皇位継承の時期等を判断いたしまして、本当に申しわけないことを申すようでございますが、お許しを願ってと思いますのは、十二月の末日そういうことがあって、一月一日というおめでたい日にできるのであろうかどうかという一つ国民的な心情、感情とともに、制度的にとらえていただくというような点も必要であろうと思いますから、そういうようなことを貴重な意見として参考にさせていただいて、最終的には政府の責任において決めさせていただくべきではなかろうか、そういう判断もいたしておるわけでございます。
  167. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは政府がお決めになるわけですけれども、私は言いたいことは言っておきましょう。  とにかく、たとえば大正十五年――私は大正十五年六月二十八日なんです。そうしますと、大正は十五年の十二月二十五日、それで昭和元年になった。そこで、考えることは、昭和元年と本当に呼べる人、ぼくなんかすぐ大正、大正と言うんですけれども、わずか七日の間に生まれた方、全く昭和元年であったというその日にちの方は何人ぐらいいますか。また、大正十五年に生まれた方は、相対的に何人いるんですか。また、亡くなられた方は何人ですか。これは調査されていますか。
  168. 清水汪

    清水政府委員 恐縮でございますが、具体的な人数はただいま手もとにございませんので、追って調査をさしていただきます。
  169. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはりそういうことまで全部調査をした上において結論が出てくる問題であって、私ども申し上げたいことは、わずか七日の間に生まれた方、それから七日間に亡くなられた方、これは一年の間のごく一部分なんですよね。だから、なかなか昭和元年だという人は出てこない。大正十五年と、それからすぐに今度は昭和の二年という形になってしまう。となると、あのときには、当然、大正というものはその日その年に喪に服して、昭和元年というのは次の年の一月一日にやればよかったんじゃないか。これは非常に説得のある国民の声だと私は思うのですね。そういうことを考えて、いずれにしても亡くなられたんだということになれば、国民の感情としては、はあということで悲しみを一にすることは同じなんですから、また改元をすると相当混乱があると私は思うのです。いろいろ書く物についても、昭和と書いてあるものをいきなり消さなくちゃならない、あるいは刷り直さなくちゃならないという時間的なロスがあるわけです。皇位の継承があったときは改元をするというのですから、改元をするというのは、一月一日からおやりになるならおやりになるという形にしてもいいし、その間にいろいろの書類を整理さしたり、次の一月一日からはこういう元号になりますよということで、不思議でも何でもない。これは非常に説得ある意見だから、ひとつそういうことで総務長官、御努力してください。いかがでしょう。
  170. 三原朝雄

    三原国務大臣 皇位継承の時刻あるいは国民の感情あるいはいま申されました国民の生活に及ぼす影響等、貴重な御意見の御指摘がございましたが、先ほど申し上げましたように、十分参考にして最終的な結論を出したいと思います。
  171. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 元号と追号の問題ですが、明治以後において、元号天皇の追号とされてきたわけでありますけれども元号天皇の追号の関係については、法的にはどうなっておるんでしょうか。私は、元号と追号というのは切り離して考えるべきではないだろうかと思うのですけれども、その点についてはどうでしょうか。
  172. 真田秀夫

    真田政府委員 おっしゃいますように、元号制度と追号の制度とは別のものだと考えております。むしろ端的に申し上げますと、亡くなられた陛下の御追号をどう決めるかということは、実は皇室の、つまり内廷の事務であろうと考えております。ですから、元号がそのまま当然に追号として、亡くなられた陛下をお呼び奉るというようなことに制度上なるものではないというふうに考えております。
  173. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、明治とそれから大正は元号と追号とが一緒の形になったわけですが、これは慣習がある、慣習的にたまたまそうなったんだというふうに判断していいのか、あるいはまた、先ほどの皇室事項だということになりますと、これは天皇の権限で追号というものは決められるのかどうか、この点どうでしょうか。
  174. 真田秀夫

    真田政府委員 明治、大正の際の例と、私が先ほど申し上げましたのとは、これは明らかに基礎が違うわけでございまして、私が申し上げましたのは、いまの憲法になってからの元号と追号との関係を申し上げたわけでございます。明治、大正のときには、元号を定められるのも追号を定められるのも、元号の場合は天皇であり、追号の場合は次の、つまり天皇であろうと思いますけれども、いずれも皇室が中心になってお決めになった次第でございまして、そういう意味で、現在の制度のもとにおける元号と追号との関係とは趣が違うというふうに考えておる次第でございます。
  175. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、いまの憲法の中においては、追号というのはどういう地位にあるのですか。皇室事項という関係になるんでしょうか。これについてはだれが追号を決める権限を持って  いるんでしょうか。
  176. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 追号につきましては、現在は法令がないというような状況になっていると存じます。したがいまして、過去の法令、法規等を参考にいたしまして定められてくるというようなことになると思うわけでございますが、過去の例は御案内のとおり、新帝が勅定をされた、こういうことでございまして、その旨が宮内大臣内閣総大臣が連署して告示された、こういうことでございます。  こういったような過去の例というのを十分考えながら、今後いろいろと研究を続けていかなければならない事項と思っておるわけでございます。ただいま、どういうかっこうでどうなるということを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じます。
  177. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 元号法が制定された場合の使用運用についてお伺いしたいわけでありますが、元号使用については、公的機関、いわゆる行政、司法、国会の各機関地方公共団体に当然に及ぶだろうというふうな御見解をとっておりますが、国民と公的機関との関連においては、その使用については協力を求めるけれども強制はしないんだというふうに言われております。その点、特に行政、司法、国会あるいは地方公共団体に、この法律ができた場合においては、当然その場所においては影響が及ぶということになれば、国家公務員とかあるいは地方公務員とか、そういうふうなところに勤められている方々は、当然この法律に基づいて拘束されるか拘束されないかという問題が出てくるわけですが、その点はどういうようにお考えでしょうか。
  178. 真田秀夫

    真田政府委員 ただいま御審議をお願いしております元号法案には、使用のことは何ら書いてございません。したがいまして、厳密に申しますと、この法律ができたからといって直ちに国家公務員、地方公務員等が新しい元号、つまり政令で定められた元号を用いなければならないという法律上の義務が生ずるものではないと考えております。  ただ、国家公務員法の九十八条だと思いますが、地方公務員法にも同じような規定がございますが、公務員は、法令または職務上の上司の命令には従わなければならないという義務を負っておりまするので、したがいまして、もし上司が、公務上の必要から、国家公務員なり地方公務員に対して公務上の文書なり書類なりには新しい元号を用いなさいという職務上の命令を出せば、これは従わなければならないことになるのは当然でございます。ただ、地方公共団体につきましては、これは国の法律ができたからといって当然地方公務員に及ぶものではございません。先ほど申しましたと同じような理屈によって、もしその地方公共団体で、公共団体の恐らく長になるんだろうと思いますが、首長さんが職務上の命令として新しい元号使用を命令すれば、職務上の命令として拘束を受けるということに相なろうかと思います。裁判所の職員につきましても、司法行政事務の一種として大体似たようなことになろうかと思います。
  179. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、この法案については使用上の罰則規定もなければまた義務規定もないんだ、だから、それにおいては国家公務員が違反をしたからといって、その法律に基づいて処罰されることはないけれども、しかし、国家公務員法とか、そういう一つ法律の観点からいくならば、上の方からそれを書きなさいというふうになっている場合においては、これは従わざるを得ない、それに反する場合には罰則、懲戒、そういうこともやはり一つは問題になるだろう。しかし、これは最終的にはやはり裁判になるのじゃないですか。
  180. 真田秀夫

    真田政府委員 大体おっしゃるとおりの筋書きでございまして、先ほど申しましたように、職務上の命令として新しい元号使用公務員に命じた場合には、それに従わなければなりません。それは、この法律があるから法律に従うというのではなくて、職務上の命令に従わなければならないという、そういう理由から服務上の義務が出てくるわけでございます。したがいまして、もし公務員がその職務上の義務に違反すれば、これは懲戒事由になりますので、しかるべき情状に応じて、戒告になりますかどれかわかりませんが、何らかの処分は受けることになろうと思います。その場合に、公務員が不服があれば、もちろんそれはしかるべき筋道を通して、人事院を経るなりあるいは人事委員会を経るなりして、最後には裁判所に行政訴訟を起こすことはもちろんできると思います。その場合に、裁判所がそういう職務上の命令が合理性がないというようなことを仮に判断すれば、それは原処分の取り消しということになることも理論上は考えられるわけでございます。
  181. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 元号使用国民強制されない、いままでと何ら変わりはないと言われておりますけれども、教科書の検定における改善意見などの例がありますけれども、実態はどうなっておりましょうか。
  182. 清水汪

    清水政府委員 文部省からお答えする方が適当かと思いますが、私の方からお答えを申し上げますと、教科書の問題につきましては、文部行政と申しますか、教育行政という立場におきまして文部省が検定基準を定めていると承知いたしております。その検定基準におきましては、元条と西暦を併用するということを前提にしてできているというふうに承知をいたしております。なお、この法律が成立をいたしました後におきましても、その点を特に変えるというお考えは持っていないように承知をいたしておりますので、あとは実際にどういうような教科書がつくられるかという実情に係ってくる問題だろうと思います。
  183. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 協力要請の限度なんですけれども、公的機関窓口業務との関連においては、元号使用については協力を求めるというふうに言われております。しかし、それを拒否した場合、役所に提出する書類及び申請書の中に西暦しか書かなかった場合、どのように処理されますか。
  184. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましては、公務立場におきましては、国民に対しまして、公務の統一的な処理というような立場から、こちら側が元号でやっている場合には、元号による表示を使っていただくように、その点まさに協力を要請する立場にあるわけでございますが、それとどうしても意見が違うという方が西暦でお書きになるということがありましても、それはそれで有効に受理をされていくものと考えております。もちろん役所の方におきましては、それに基づきましてたとえば帳簿に記入をし、整理をしていくというようなその内部の事務につきましては、これはやはり元号の方で整理をしていくということになろうかと思います。
  185. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その場合、本人の自筆を必要とする個所に書き込みを拒否した場合、後に問題は残らないかという問題があるわけですね。あるいは権利義務に関連して、その後に裁判が行われたときに、自筆でなかったために不利とかまたは問題を起こすということはないのか。あるいは、たとえば昭和というものが書いてあって、それを西暦ということで書きかえた場合、そういう問題が権利義務に影響することはないのか、そういう点について、これは予測されるいろいろの心配事でありますけれども、そういう点はないのかどうか、ひとつその点。
  186. 真田秀夫

    真田政府委員 ただいまの御質問は、国民私人間の契約の中身についてのことでございますか。
  187. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それはそうでなしに、元号を書いて公的機関に出すということになるわけですから、そこで拒否をする、拒否をしたときに、そちら様の方であるいは元号によって処理をするという形になりますね。それは元号処理したということはその人にわからないかもわからないけれども、裁判所でたとえば何らかの方法で証拠を出したときに、これは私が書いたんじゃないというような形になるのか、あるいは元号で書いたものを消して西暦出したとか、いろいろの形が出てくるわけですね。そういう場合、そういうおそれは全くないのかどうかということです。
  188. 真田秀夫

    真田政府委員 大抵の場合は、そこの窓口で、届け出に来られた方に御協力をお願いすればお直しになっていただけるのだろうとは思いますけれども、もしどうしてもいやだとおっしゃれば、これは運用の問題でございますので、私がどうすべきだということを申し上げる立場ではございませんけれども、場合によっては、届け出はそのままにしておいて、そして役所の中に持っている公簿、原簿は元号で書くというようなことも考えられます。そういった場合に、じゃ届け出書と役所の手持ちの原簿とは表示が違うじゃないかというようなことが仮に裁判上の問題になったというようなことを考えました場合に一体どうなるかということになりますが、それはやはり裁判所が合理的に判断をいたしまして、それは指折り数えれば同じだとか、指折り数えなくたって当然同じ特定の日をあらわしているものだという判断がつく場合には、これは別に問題なく処理されることになるだろうと考える次第でございます。
  189. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それに関連して、沖繩は非常に長い間アメリカの施政権下に置かれておりましたけれども西暦使用が当時盛んに行われておりましたね。ですから、現在の沖繩の元号西暦使用状況はどうなっているのか、そして、今日元号法案が通過した後の沖繩における元号使用の見通しはどうお考えになっているのか。それからまた、政府元号法案通過後、沖繩に対して何らかそれなりの要請をするのか。その点についてはどうなのでございましょうか。
  190. 清水汪

    清水政府委員 沖繩におきましては、復帰後は公的機関におきましては原則として元号によって事務を統一的に行っております。一般の市民の生活におきましても、西暦とともに元号もかなり定着をしつつあるように伺っております。  この法案ができました場合においてはどうなるかということでございますが、この点につきましては、私どもといたしましては何か格別のことをする必要があるというふうには考えておりませんで、今後とも現在と同様に県民の方々には自然に使い分けていただくことになるだろうと思っております。
  191. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は時間が四時一分までですので、もうそろそろ最後にしたいと思います。  西暦との併用についてですけれども元号についてはその使用を全く強制しない、このように言われているわけでありますが、西暦併用を妨げないということを明確に、何らかの形で明らかにする必要があるだろう。なぜ法案の中にそういう問題が書いてないかということも言われているわけでありますけれども、これは使用上の問題だということになろうかと思いますが、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  192. 真田秀夫

    真田政府委員 ただいま鈴切委員がおっしゃいましたように、本法案はまさしく元号という制度決定の手順を決めているものでございまして、使用に関しては何ら触れておりません。もし、その元号使用を何らかの意味強制したり、あるいはその使用すべきことについて国家機関なり公共団体が介入するというようなことを考えれば、それは条文として書く必要がございますけれども、むしろ私たちの本心は、当然併用を妨げないのだというふうに考えておりますので、そういう条文をわざわざ置く必要はないというふうな判断のもとに立ってこの法案の起草をした次第でございます。
  193. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 約二時間にわたっていろいろ論議を申し上げました。わが党は先ほど申し上げたとおり、元号存続賛成でございますし、それから法制化についても賛成という立場をとっております。しかし、国民の多くの中にはやはりいろいろお考えがございまして、この国会審議の場所において政府考え方は明確にお答えをしていただかなければならないので、そういう意味においてはむしろ反対立場のようなことからもお聞きを申し上げました。また、公明党の主張する点についても政府の方としてはよくおわかりになったと思いますので、どうかその点について最後に総務長官、私ども申し上げたことも十分に考慮に入れながら、広く国民の総意のもとに今後元号というものは民主的な方向で決められるということをひとつ要望しているわけでありますが、一言だけ御決意を伺って、質問を終わります。
  194. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  公明党を代表しての鈴切委員の貴重な御意見、十分聞かせていただきましたので、ひとつこれを参考にさせていただいて最終的な処理決定に役立てたいと思っておりまして、心から感謝申し上げます。
  195. 藏内修治

    ○藏内委員長 吉田之久君。
  196. 吉田之久

    ○吉田委員 私は、民社党を代表いたしまして、この元号法案に対して若干の御質問を行いたいと思います。  初めに、私たち民社党は、この元号法制化賛成であります。ただ、この元号法案そのものの今日までの提出の経過の中で、私どもの党の先輩であります受田新吉代議士が、総務長官がかわられるたびに絶えずこの問題をいろいろと問いただしてこられました。     〔委員長退席、竹中委員長代理着席〕 ようやくいま元号法案審議が進められることになりまして、その点では、われわれとしても、受田先生の信念ときょうまでのその御努力に対して、一党員としてまことに敬意を表している次第でございます。ただ、私どもがこの元号法案賛成いたします最大の理由は、決して国粋的な考え方あるいは復古調的な考え方に根差すものではございませんで、われわれは、この問題を今日の国民生活とにらみ合わせてのまことに現実的な問題としてとらえて、その立場から賛成しているということなのでございます。したがって、きょうまで賛成反対の各委員からうんちくを傾けられたいろいろな御質問がありましたけれども、そしてまた、古い歴史の源流を訪ねての論議あるいは古い暗い歴史にいろいろ懸念を持っての御意見、それはそれなりに拝聴いたしておりますけれども、もっと現実的な立場からこの問題をいろいろ御質問申し上げたい、こう考える次第でございます。  先ほど来、質問に対する答弁の中でも種々申し述べられましたけれども天皇がだんだんお年を召してこられる、天皇といえども人間でいらっしゃいますから、必ずいつかお亡くなりになる日が来る、その後この昭和に続く元号、年号というものがなくなるかもしれないのだ、言うならばいまの昭和に対しては何の法的根拠もないのだ、こういうことをいま国民に言いますと、多くの国民は、それは大変だ、それじゃその後、子供ができたって孫ができたって、年の勘定も直ちにできぬではないか、すぐに西暦に切りかえる、非常に異質なものとの対応の中でどうも困惑せざるを得ない、したがって、ぜひ何らかの形でその後の問題をはっきりしてほしい、こういう答えが返ってくるわけであります。これは恐らく今日日本に生きている大部分の国民の常識だと思います。したがって、その常識に対応しながらこれからの制度を決めていかなければならない。だとするならば、きょうまでこの重要な問題、しかも戦後三十四年間、いろいろ山積する重要な問題が放置されております。この元号問題というのはそういう意味でまさにタイムリミットに来ている問題だと思います。にもかかわらず、歴代の政府はこの問題に対してきわめてその日暮らし的と申しますか、大変な政治問題になりかねないので避けて通ると申しますか、非常にその責任感の希薄さを間々見せつけてこられたような気がするわけでありまして、私どもは大変残念に思っておりますけれども、まず、総務長官は今日までのこの政府の対応の仕方に対して十分であったとお考えかどうか、お伺いをいたす次第でございます。
  197. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  今日まで元号問題につきましては、政府もこれを等閑視してまいったということではございません。そうした元号問題については、新憲法制定以来、政府関係省庁におきましてはそれなりの取り組み、検討をしてまいったと思うのでございます。したがって、今日まで政府がこれを等閑視してまいったというようには私は見ておりませんけれども、やはりいつの時点にこの問題をこうした法律として国会に御審議を願うかというような決断を下す時期がたまたま現在に立ち至った。政治の流れの中では絶えず努力はしてまいりましたが、その政治の流れから見て、現在時点において決断をし、国会審議をお願いするということに相なったものと私は受けとめておるわけでございます。
  198. 吉田之久

    ○吉田委員 いろいろ検討しながらも決断の時期が今日に至ったということでございますけれども、それは裏返しに申しますと、大変優柔不断であったということになると思います。特に、きょうまでの国会のいろいろなこの問題の論議の中でも、場合によれば内閣告示でも事足りるのではないかというようなことを答えてこられた時代があるわけでありますし、それが今日この問題に及んで大変いろいろ反論を起こす一つの論拠になっております。言うならば、政府みずからそうした種をまいてきておったではないかと思うわけでございますけれども、いかがでございますか。
  199. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  御指摘の点、そうした過去の経過的な事実として私は率直に受けとめざるを得ぬと思います。しかし、それも法案国会に提案をするというところまでの決断でない、やはり検討の時期であったということでお許しを願い、御理解を願いたいと思うのでございます。
  200. 吉田之久

    ○吉田委員 今度のこの元号法案審議をめぐりまして、この際元号と訣別して、むしろ西暦一本にする方がよほど明快ではないか、またそれが進歩と言えるのではないか、あるいはそれがきわめて合理性を持つものであり、国際性を持つものではないか、こういう意見が確かにあるわけでございます。また、理論的にもそれは大いに一つ成り立つ御意見であると私たちは思っております。しかしながら、われわれ人間社会におきまして理論と現実とが著しい食い違いを見せる、その違いというものがまさに浮き彫りにされておる、そういう象徴的な代表的な問題としてこの元号というものをとらえることができると私は思うのです。確かに理論的には西暦一本の方がいろいろな面できわめて合理的であるかもしれないけれども、しかし、それに対して大衆はいささかも共鳴しない。むしろ圧倒的な多数が元号存続希望している。私は、そこにやはり民族の個性というものがあると思いますし、また、歴史的風土と申しますか、習慣の重みと申しますか、そういうものがにじみ出ているように思うわけなのです。  しかし、この元号法制化をして今後とも昭和の後に続く元号というものをきちんと制定していく場合、特に先ほど鈴切委員からも御質問がありましたけれども、沖繩の方々の特殊事情というものを十分配慮しながらこれを適用していかないと、沖繩の人たちには二転、三転する年の呼び方について混乱が生じてくる、あるいは大変いろいろな悩みや苦労ができてくるのではないかと私は思うわけでございます。  具体的な例を申しますと、私もついこの間沖繩へ参ったわけでありますが、そのとき、かつて本院の議員をしておられた安里積千代先生に会いました。それから、空港から演説会場まで一緒に車に乗りました。われわれの話というのはとかくそういうことになるものでございますが、先生の衆議院の当選は何年と何年でしたね、こう聞きましたら、一九七〇年と七二年だよ、ただし沖繩が日本に復帰する前、私は日本人だから選挙権はなくとも被選挙権があるはずだということで、一人沖繩から立候補したのは一九六五年だったよ、昭和で言えば何年かなと言って笑っておられ、首をかしげておられたわけであります。私は、ここに、あの戦後アメリカの施政権下に置かれて二十数年間を経た沖繩の生活習慣の本土と違う大きな変化、それはある面では強いられた変化であったかもしれませんけれども、現に起きておる変化、本土との違い、そういうものを現に確認せざるを得ないわけであります。  同時に、われわれの側から言うと、自分がいつ立候補をしたか、当選したか、落選したかというのは、昭和で数えてこそばっぱっとまざまざとよみがえってくるわけでありますが、それを西暦で言ってみろと言われれば、これはむしろ大変なことでございます。したがって、同じ日本の国民の中に生まれてからこの方、ずっと元号ばかりで年を呼んできた大部分の国民と、それからいまや二十数年間アメリカの支配下にあって完全に西暦になり切ってしまわれた沖繩の県民の人たち、こういう二つの違いのある中で、今後元号をきちんと日本の一つ制度として決めていこうとするからには、沖繩に対しては、先ほど御答弁がありましていまや定着しているというお話ではございますけれども、私は直ちにそうだとは思わないわけであります。特に若い人たちはもはやほとんど生活様式が西暦で数えられるように完全になじんでおられるのではないか。だといたしますと、沖繩の県民の方々もいろいろと公文書等でもちろん御協力なさることとは思いますけれども、特に教育面でいろいろと一層の配慮がなされなければならないのではないかと思うわけでございますが、この辺で総務長官や文部省のお考えを聞きたいと思います。
  201. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  いま、非常に思いやりのある沖繩県民に対する貴重な御意見として承りました。  全くほかのことでございますけれども、交通方法変更に伴います問題等でも、私ども非常に貴重な一つの経験をし、沖繩県民の方に苦労をかけておる現状も私痛感をいたしておるものでございますし、今日の元号におきましても、政府といたしまして沖繩県にお願いをいたしておりますのは、元号昭和四十七年の復帰以来はお使い願いたいというような協力を願い、公的な機関におきましてはそれを実施していただいております。なおまた、一般の県民の方々にもそうした点で元号の御使用をお願いいたしておると思いますけれども、いま御指摘のように西暦と併用していただくことにつきましては、これは他の府県と同様な事情でございますが、しかし現在のところ、確かに長い間西暦を使っておられますので、そういうような実態のあることも承知をいたしております。したがって、いま御指摘のように十分そうしたことを配慮しながら、官庁事務、窓口業務等におきましては特段の配慮をして、元号法制化の後におきましては処置してまいらねばならぬという御指摘については、十分それを踏まえて対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  202. 上野保之

    ○上野説明員 まず最初にお断りさせていただきたいのですが、私は教科書検定の関係で、沖繩のそういう教育全般についてお答えする立場にちょっとございませんので、教科書検定というような立場から一応答えさせていただけたらと思います。  現在、教科書の検定に当たりまして、元号関係について申し上げますと、一般的に教科書の表記、表現というのはそれぞれの教科の目標なり内容に適した形で記述されておる必要があるわけでございます。そういう意味で、まずそれぞれの著者の判断によりましていろいろ記述されてきておるわけでございますが、ただ、日本の歴史の年代表記についてだけは、教科書上一応検定基準の実施細則によりまして、重要なものには元号西暦を併記することというような取り扱いをさせていただいております。それ以外につきましては、ほかの教科につきましては、先ほど申し上げましたように、それぞれの教科に適した形でそれぞれ著者の御判断で記述していただいておるというのが現状でございます。
  203. 吉田之久

    ○吉田委員 それではちょっと文部省の方に聞きますが、社会とか歴史の教科書でございますね。いまもお話ありましたように、重要なものについては併記する、これは当然のことだと思いますが、西暦を先に書いて括弧元号で書く教科書と、逆に元号で書いて括弧西暦で書く教科書と、その辺は著者の自由によってなされているようでございますけれども、今後、元号というものがきちんと法律で決まってくる、現在使われている昭和という元号使用の裏づけもかなり変わって安定したものになるということになりますと、今後の教科書のそういう年代のあらわし方でございますけれども、何か変化があるでしょうか、あるいは文部省として何らかの指導をなさる御意思はありますか。いかがですか。
  204. 上野保之

    ○上野説明員 教科書の記述がそういうわけで教科ごとにそれぞれの目標なり内容で記述されておるわけでございますから、特に今後御質問の点等について取り扱いを変えるとかいうようなことは全く考えておりません。
  205. 吉田之久

    ○吉田委員 長官にお願いがございますけれども、沖繩の場合、ある意味西暦を使っておられる先進県でもあると私は思うのです。これから日本の国民におきましては、元号をきちんとそれぞれ必要なところでは使用したりなじんだりしながら、一方、国際人として西暦というものもどんどんなじんでいかなければならない、こういう立場にあると思います。したがって、せっかく西暦になじまれた沖繩の歴史を尊重しながら、かつ元号というものを若い人たちにも十分に理解していただく、その辺の両面の配慮でございますね。逆行いたしまして何でも元号に復帰してもらおうというふうな言い方ではなしに、大変むずかしい注文でございますけれども、何かその辺のところを十分大事にしていくべきではないかというふうに思うわけでございますが、その点は総務長官も御同感だと思いますが、いかがですか。
  206. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  全く同感でございます。そうした温かい配慮が必要であろう。貴重な御意見を承りまして、特に感銘をいたしておるところでございます。
  207. 吉田之久

    ○吉田委員 それから今度もう一度文部省の方にお伺いいたしますが、たとえば国立博物館とかあるいは国立美術館でいろいろ絵画とか彫刻とかを展示される場合、それが過去の人の場合、芸術作品の作者の生存年月日等が当然下に書き込まれるはずでございますが、この辺はいままでは西暦でお書きですか、明治、大正とかそういうことでお書きでしょうか。今後はどうなさるお気持ちでございますか。
  208. 大谷利治

    ○大谷説明員 国が主催いたしております展覧会のような場合、作者の生存年月日、それから経歴、作品の制作年月等につきましては、現在までのところ元号西暦を併記するという形で大体行ってきておりますので、今後も同様の取り扱いをしていくということになると考えております。
  209. 吉田之久

    ○吉田委員 そこで私の考えを申し述べますと、私は、元号国民にとっての最大の意義というのは、いわゆる明治、大正、昭和、そして次に、たとえば栄光とか英知元年とか、何かそういうふうに続いていく、リンクしていくというところに最大の意味がある。そして現在生きている日本人にとって、その辺の年代の変化、それがその人のそういう元号と年によって生き生きとわかる、感覚的にわかる、こういうところに最大の意味と、そして愛着があると思うのですね。したがって、元号法制化されましてからも、非常に遠い昔の、たとえば元禄時代の絵だとかあるいはもっと昔の絵だとか、そういうものを全部元号を併用しなければならないかどうかという点で私も少し疑問を感ずるわけなんです。ということは、遠い年代をはかる尺度はやはりもはや西暦にはかなわないと申しますか、西暦できちんと数えていくことの方がはるかに国際的な世界的な整合性を持つ。そういう時代であるにもかかわらず、元号が制定されたがゆえに、そういうもう遠き昔の忘れかけておる、いまやほとんど現代人の生活にとっては大して意味を持たない昔の元号というものを全部掘り出して記憶させたり、一々書いていかなければならないものかどうかという点で私も疑問を感ずる次第なんですが、その辺で文部省と総務長官のお考え方を聞きたいと思うのです。
  210. 大谷利治

    ○大谷説明員 先ほど若干御説明を漏らしたかと思いますけれども、いま先生のお話のように、古い時代のものにつきましては、現在展示をいたしておりますときも、年代と時代区分、鎌倉であるとか平安であるとか、そういった時代区分で表示をいたしております。これは美術品、芸術品をごらんになる観覧者の便といったような観点からそういったものを併記をして展示をしている、そういうことでまいっておりますので、今後ともそういう形で展示をしていくということになろうと考えております。
  211. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  元号使用義務づけをいたしておりません。そこで西暦併用をやっていただいて結構でございますという態度でおるわけでございますので、そのときの使用の目的、利用される方の目的とかあるいは用途等によりまして、私は自由な選択をやっていただいて結構なものだと思いますので、先生の御指摘の点につきましては、そういう方向で進んでまいるであろうと思っておるところでございます。
  212. 吉田之久

    ○吉田委員 お二人のお答えでよく理解できましたし、もはや言わずもがなのことでございますけれども元号がきちんと制定されたことによって、遠い過去の非常にきちんと一世一元になっていないころの元号というものに歴史上異常なほどの焦点を当てて、それをテストに出したり受験生に無理に覚えさせるというふうなことは、まずはあり得ないことだと思いますけれども、そういうことにならないように、これは責任ある方々の御配慮をお願いしたい。決して元号というものはそういう意味で制定されたのではなくして、いまから次の世代に続いていく、そういう人たちの年号の呼び方、それを最も現実的に合わしていこう、そこに混乱をなくしよう、こういう趣旨だと私は思いますので、これは御希望を申し上げておく次第でございます。  次に、宮内庁の方にお聞きしたいのでございますが、昔の元号というものは四書五経の中から漢字を選んで意味を持たせた。またその決定に当たっては、お公家さんが何人か集まって難陳の儀というのをなさって、いろいろいまで言う討論のようなものをなさってお決めになったというふうに聞いております。明治、大正、昭和という三つの年号はやはりそういう古き伝統と申しますか、儀式と申しますか、そういう四書五経の中から同じような形式で選ばれたものかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  213. 清水汪

    清水政府委員 私の方から答弁をさせていただきますが、御指摘のとおり、明治、大正、昭和という三つの元号につきましては、その出典と申しますか、それはいずれも中国のいまお挙げになりましたような古典のいずれかによっているというふうに理解をいたしております。  それで従前の元号はおおむねそういう範囲から選択をされてきたということは、歴史的にも言われておるわけでございますが、ただ、今回政府として御提案を申し上げておりますこの元号法案のもとで今後の、将来の元号を選んでいくという場合に、その関係がどうかということでございますけれども、この点につきましては、その手続として申し上げておりますところの学識経験者に元号としてふさわしい候補名を御考案いただくことを考えておるわけでございまして、したがいまして、その方々がどういうような根拠なり典拠なりからふさわしいものをお考えになるかということは、お願いをした方々の御判断の問題かと存ずるわけでございまして、私ども立場から、今後におきましても、たとえば従前と同じような範囲の古典に限るべきものであるとかというようなこだわった考え方はとらない方がいいのではないかというふうに考えております。
  214. 吉田之久

    ○吉田委員 まさにそのとおりだと思うのであります。私たち元号の遠い歴史はそれなりに一つ元号の源流として尊重はしたいと思いますけれども、これから向こうに向かって年代あるいは年の呼び名を決めていくことでございますから、そういう点では古いものに余りこだわらないで、むしろ変化しつつある現代の本当に日本人が今後もなじめる、そういう字の中から選んでいく、そしてまた、そこに何となく感ずるイメージと申しますか、そういう人気のある、なじみやすい、愛しやすい、そういう元号というものを選び出していく、こういうことが非常に大事だと思うのです。  そこで、私からも申し上げたいのでございますが、さきの鈴切委員や他の委員方々からもいろいろ御意見がありましたけれども、この元号の決め方につきましては、この際思い切って近代的な手法を用いられるべきではないか、あるいはできるだけ民主的な方法を取り入れられるべきではないか、私はそういうふうに考えます。間違っても秘密裏に閉鎖的に事を決めるということは、現代から未来にかけてのこれからの日本人には大変なじまないことだと思います。  そこで、私の提案でございますけれども、学識経験者の選定でありますけれども、先ほどの長官お答えでは、まずは五名から十名程度というふうに一応長官の頭の中ではお考えになっているやに聞きましたけれども、私はそういう少数の方々によってだけ選ぶべき問題であるかどうか。もっと衆知を集めてもいいのではないか。場合によれば、どれほどの数になるか知りませんけれども、日本じゅうの文学博士全部に、ひとついい名前があれば連絡してほしいという通知を出されるのも一法ではないか。あるいは先ほど来、国会の衆参両院の議長にも相談してということでございましたけれども、私は、衆参両院の全国会議員に、これは匿名で大いに結構だと思いますが、一人一つだけ、ふさわしい元号の呼び名を参考までに出してくれないかという方法もあると思うのです。あるいは全国の知事ぐらいには、全部の知事に適当な、素材として考えがあれば新しい元号の呼び名を出してほしい、こういう協力の求め方もあると思うのです。国民投票にするとか国民に公募するといっても、これはかなり大変なことでございますけれども、私は、いま申しましたような範囲であるならば、決してそんなに混乱が起こるわけでもなし、また時間的にもそれほどの期日を必要とするとも思わないわけなんです。  ただし、一挙に質問して申しわけありませんが、仮に陛下がお元気なとき、あるいはだんだん御病気が進んできたとき、そういう事態の中でそういう多くの方々に参加していただき、そしてできるだけ民主的に、できるだけ近代的に、かつ公開しながら新しい元号を選定する作業をやるということは、やっぱり人間社会でございますから、いかに天皇でおられましても、少しお互いに気を使わなければならない問題だというふうに思うわけでございます。  そこで、私の考えといたしましては、天皇が亡くなられて次の天皇が即位される、その日から一両日に次の元号を決めなければならぬということにも必ずしもこだわる必要はないと思うのでありまして、できれば三カ月ぐらいの期間を置いて、あるいは少なくとも一カ月ぐらいの期間を置いて、その間にいま申しましたような手続をとりながら、できるだけ衆知を集め、良識を結集していくという方法は、決しておかしいことではないと思うのです。  それからいま一つは、いまの元号でやや不便であります点は、さっきも鈴切さんからお触れになりましたように、元号が変わり目でラップしていくことでありまして、したがって、通算する場合に非常に厄介でございます。私の場合なんかでも、大正十五年十二月四日生まれでございますから、生まれて何にも意識のない間に年を越してすぐに昭和二年になっておりました。大正生まれでありながら、昭和五十四年で満は五十二歳だというわけですから、聞いている方が不思議な顔をするわけでありまして、一々説明も大変でございますが、そういう現象が起きてくるわけでございます。  したがって、元号というものを将来に向かって近代的に存続させていくためには、いわゆる踰年方式と申しますか、そういうものをこの際思い切って採用なさってもいいのではないか。もっと詰めて申しますと、その年の、前の天皇の在位の日数と新しい天皇の在位される日数の多い方をとる。そしてそれまでの、前の天皇の分が在位中たとえば数カ月あったとしても、それは後日新しい元号に読みかえるというふうなことがあっても決しておかしいことだとは思いませんし、また、前の天皇が十月、十一月ごろまで御在位であるとするならば、次の天皇におかわりになってからもその翌年、しかもその間にいま申しましたような数カ月の余裕期間を置いて、国民の十分な参加と納得を求めながら新しい年号を決めて、そしてその翌年はその元号から出発する。それは後で読みかえればいいわけでございますから、必ずしも一月一日でなくともいいと思うのです。そういうふうにいたしますと、元号それ自身が持つ近代性と申しますか、いろいろな計算にも非常に間に合ってくるわけでありまして、そういうことをこの際思い切って新しく出発されることは、現時点の国民生活にも大変歓迎される一つ方法ではないかというふうに思うわけでございます。  それからいま一つのお願いは、やはりこういう時代でございますから、みんな若者たちも、非常に煩瑣なむずかしい字、それがよしんば当用漢字であっても、そういうものに非常に煩わしさを感じている一般的な傾向にございます。したがって、元号をお決めになる場合、選ばれるその字というものはできるだけみんながなじめるような、煩瑣でない、そういう文字であってほしいと思うのです。慶応とか宝暦とか、こんな元号に似たような元号が生まれますと、これからの日本人は、これは書くだけでも厄介だ、やはりそんなものではということで大変な拒絶反応が自然に起こってきたり、せっかくよかれかしと思って存続した元号が大変中途半端なものになったりするおそれがあると思うのでございます。  何やかや一度に申しましたけれども、それは多少関連のあることでございますので、いま申しました諸点につきまして長官から、あるいは関係者の方々から御答弁をいただきたいと思うのです。
  215. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えをいたします。  いろいろな御意見がございましたが、一応整理をいたしますと、元号の選定の手続についてお話がございました。特に近代化ということを考えていけ、あるいは民主化という立場を尊重せよ、ついては公開的であってほしいというようなことでございまして、非常に貴重な御意見として拝聴をいたしておるところでございます。  なおまた、候補名を策定願う人選等については、五名とか十名とかいうことに余り限定せずに、もう少し幅を広げてみてはどうか。衆参の国会において、正副議長というようなところばかりでなく、現国会議員ぐらいには、あるいは各県知事ぐらいに候補名を選定してもらうというようなことも考えてみることが民主的あるいは公開的であるし、また幅広く国民の意思を聞くということにもなりはしないか、国民からなじまれるものになりはしないかという御意見でございましたし、また、元号がオーバーラップすることがあるということについて、みずからの生年月日等も申されまして、そういうことは避けていくべきではないかと自分は思う、長期的な尺度で見るとどうも不適当な感じがするぞ、注意をすべきであろう。また候補名については、よい候補名、なじめる候補名、平易なものであってほしいというような貴重な御意見がございました。いずれも貴重な御意見として拝聴いたしましたし、今後のこうした手続、また最終的な選定等について参考にさせていただきたいと考えておるところでございます。
  216. 吉田之久

    ○吉田委員 長官、私が特に申し上げたいのは、率直に申しまして、国民は確かに明治、大正、昭和に続く元号がなければ困る。その元号というのは、われわれ日本の国民生活にとってもはや捨て去ることのできないものである。それは五十年、百年、二百年先は知りませんが、当面われわれとしてはなくてはならない年号なのだという気持ちがあるわけなんですね。しかし、同時に、何か古い、押しつけられるものだというような感じも現に一部分はあるわけです。私は、そういう点で元号というものが本当に国民に愛されて、みんながなじんで、おれたちが使っている日本の元号なんだという気持ちの高まりを存続させていくということは、大変大事なことだと思うのです。  そういう点では、いつぞや福田前総理が奈良へ見えましたときに私もちょっと同席いたしまして、国民投票をしたらどうですかとそのときの総理に申しましたら、確かにいいと思う、しかし非常にあわただしい決定期間にそういうことはできないしなあというお話でございました。私は何も国民投票とか広く国民に応募させるという意味ではなしに、しかるべき方々から一定の期間に名案をどんどん出してもらおうということなんです。子供の名前をつけるのでもわれわれはなかなか苦労するのでございまして、まして国家的な年号の呼び方、元号を決めるということは、これは考えればなかなかむずかしいことだと思います。しかも、一たん決めれば長期にわたって使われなければなりませんし、また歴史的な一つの区切り、節になるわけでありますから、そういたしますと、できるだけ数多くの方々意見の中から選んだのだということで、みんなが直接、間接に参加したのだという意識を国民が持つことは非常に進歩的なことだと私は思うのです。  もとより、しかるべき学識経験者が数名でお決めになっても、恐らく、決まる名前は一つでございますから、かなり的確な、選ばれた名前が出てくるだろうとは思いますけれども、その選ぶ過程において数名の方が密室で審議をこらされたのではなくして、もちろんそういう方々がまじっても結構ですが、国民各界各層を代表する人たち出し合った中から慎重審議されて一つが選ばれたのだということになりますと、国民の感じ方がずいぶん違うと思うのでございますね。  ですから、そういう点で新しい選考方式、そしてまた総務長官自身がその選ばれる担当者になられるか、あるいはその次の総務長官がなられるのかわかりませんが、ともかく新しいイメージが国民の中からわいてくるような非常に工夫した元号が次々と伝えられていく、そういう新しい出発にしていただきたいというのが私どもの強い念願でございます。重ねて、ただ承りましたと言うのも承るしか方法がないと思いますけれども、何かそういう考え方が私は正しいと思うのですが、長官はいかがお考えでございますか。
  217. 三原朝雄

    三原国務大臣 お答えいたします。  非常に貴重な御意見として拝聴をいたしましたし、今後の諸般の準備について大いに参考にさせていただきたいと思います。
  218. 吉田之久

    ○吉田委員 と同時に、そういう方法をおとりになるとするならば、いわゆる踰年方式といいますか、ラップさせないで長い方を取ることによって、余裕期間を置かなければそれができないと思うわけでございますし、オーバーラップしないように改めていくこともこれから大変合理的なことだと思いますので、その辺は特に今後の政府自身で御検討を進められるときの一つ考え方としてお考えいただきたいと思うわけでございます。  それから、追号の問題、贈り名の問題についても、先ほど鈴切さんから御質問がありましたけれどもお答えを聞いておりまして、結局いまは何の根拠もない、したがってこのままでいけば昭和天皇という呼び名になるのか、全然別なお名前になるのか、それさえも何ともわからないということのようでございます。  私は、象徴天皇というものがわが国に存在し、そしてこういう元号国民生活の中でなじんで国民相互間の年齢の呼び方とか出生年月日の呼び方とかいろいろな面で非常に愛用されていくということになりますと、元号がそのまま天皇に贈られるということは天皇御自身においても決して拒絶なさることはあり得ないと思いますし、また、歴史的な流れの中で元号はこうだった、そのときの天皇の名前はこうだったというようなことで非常に複雑に展開していきますと、それはかえってわが国の歴史の流れを難解なものにするばかりだと思うわけでございます。したがって、私はこの問題につきましても、決してそれが天皇制を強化することにも何らならない問題だと思いますし、ひとつ政府におかれましては一刻も早く研究して何らかのきちんとした方針をお出しになる、またそれに基づくいろいろな手続を踏まれることを急がれなければならないと思うのです。一つ一つが場当たり的にせっぱ詰まってから答えを出すということではもはや許されないと思うのです。これほど高度に発達した、これほどの近代国家がいまごろこういう重要な諸問題についてもほとんど何も決まっていない、もっと小さい問題でもことごとく法律に書き込まれている近代的な法治国家にあって、こういう問題に多くの欠落点があるという点は、私は非常に残念だと思うわけであります。その点、長官はいかがお考えでございますか。
  219. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 元号と追号が法令的に直接関連するものではないという点は、御指摘のとおり私どもさように存じておるわけでございまして、明治憲法下におきましても、同じく皇室令関係からいきましてもそれぞれ二本立てということで、その点は現在もたてまえは変わっていないと存ずるわけでございます。そういうような状況のもとにおきまして、追号についての法令は現在ないということでございますので、過去の例といったことを参考にしながら必要な場合には決定をしていかなければならないということになるわけでございます。そういう点から考えてまいりますと、明治、大正という二つの近き先例というようなことの状況も踏まえました上で、新しき状況のもとにおいて考えていくというようなことになってまいることであろうと思います。  ただ、論理的には二つのものは別でございますので、必ずこういうかっこうに連動するものということではございませんけれども、そういう過去の経緯ということも十分考えて研究を進めているというところでございます。まあ事が事でございますから、いま直ちにどうこうというような方針だとかなんとかいうものがあるわけではございませんけれども、その点は十分踏まえた上で考えてまいりたいと思っているところでございます。
  220. 吉田之久

    ○吉田委員 最後に、私の考えでは、国民生活の中の様式というものは、理屈ではなかなか変わらない面と変わる面ともちろん両方がある。たとえば次元は違いますけれども、尺貫法の場合でもそうでありまして、距離なんかはほとんどメートル法で、みんなその方がよくわかるようになりました。     〔竹中委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、広さの点でございますね、何平方メートルとか何アールと言ったってなかなかなじみませんで、結局坪とか何反とか何町歩とかいうのが依然として生活の中にきちんと根づいているわけなんですね。これは畳の数から勘定が合うわけでございますし、家の構造が何間何間ということで多く建っているわけであります。  そういうふうに、すべての国民生活は現実にあるものと整合性を求めながら一つの習慣、制度というものが成り立っておると考えるわけでございまして、そういう点で、元号が今後も存続することは、大部分の日本国民がきわめて歓迎するところだろうと私は思います。しかし、先ほども申しましたように、それは古き物の単なる継続ではなくして、むしろ賢明な日本人が西暦元号とを巧みに併用しながら生活の知恵を出していく、そういう点でむしろ非常に新しい出発だと思うわけであります。  そういうなじまれる元号が早急に法制化され、しかもそれがいろいろ新しい知恵の限りを生かして、総務長官を中心としてきわめて現代的な出発をされますように心から期待いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  221. 藏内修治

    ○藏内委員長 次回は、来る十三日金曜日正午理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十八分散会