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1979-04-10 第87回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年四月十日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 藏内 修治君   理事 唐沢俊二郎君 理事 小宮山重四郎君    理事 竹中 修一君 理事 村田敬次郎君    理事 岩垂寿喜男君 理事 上原 康助君    理事 新井 彬之君 理事 吉田 之久君       逢沢 英雄君    稲垣 実男君       宇野  亨君    越智 通雄君       関谷 勝嗣君    中馬 辰猪君       塚原 俊平君    福田  一君       藤尾 正行君    森  喜朗君       上田 卓三君    栂野 泰二君       八百板 正君    山花 貞夫君       市川 雄一君    鈴切 康雄君       柴田 睦夫君    中川 秀直君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      三原 朝雄君  出席政府委員         内閣官房長官 加藤 紘一君         内閣官房内閣審         議室長         兼内閣総理大臣         官房審議室長  清水  汪君         内閣法制局長官 真田 秀夫君         内閣法制局第二         部長      味村  治君         総理府総務副長         官       住  栄作君         内閣総理大臣官         房総務審議官  大濱 忠志君         宮内庁次長   山本  悟君         厚生省公衆衛生         局長      田中 明夫君         厚生省医務局長 佐分利輝彦君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         社会保険庁医療         保険部長    此村 友一君  委員外出席者         警察庁長官官房         企画審査官   森広 英一君         法務省民事局第         四課長     稲葉 威雄君         外務大臣官房領         事移住部旅券課         長       西方 正直君         大蔵省理財局国         有財産審査課長 安部  彪君         文部省初等中等         教育局教科書検         定課長     上野 保之君         文部省大学局医         学教育課長   五十嵐耕一君         厚生省保険局保         険課長     坂本 龍彦君         郵政省郵務局管         理課切手室長  山田 雅之君         郵政省郵務局業         務課長     桑野扶美雄君         労働省職業訓練         局訓練政策課長 守屋 孝一君         自治省行政局振         興課長     木村  仁君         内閣委員会調査         室長      長倉 司郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月九日  辞任         補欠選任   宇野  亨君     水平 豊彦君 同日  辞任         補欠選任   水平 豊彦君     宇野  亨君     ――――――――――――― 四月四日  中小企業省設置法案新井彬之君外二名提出、  衆法第七号) 三月二十三日  台湾残置私有財産補償に関する請願外九件(木  村武千代紹介)(第二一八七号)  同外八件(藤本孝雄紹介)(第二二五九号)  同外五件(受田新吉紹介)(第二三〇三号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二三〇四号)  同外三件(福永一臣紹介)(第二三〇五号)  同外二件(村山達雄紹介)(第二三〇六号)  元陸海軍従軍看護婦処遇に関する請願(石井  一君紹介)(第二二五六号)  同外二件(濱野清吾紹介)(第二二五七号)  遺族年金扶助料改善に関する請願野田毅  君紹介)(第二二五八号)  元号法制化反対に関する請願高沢寅男君紹  介)(第二三〇七号) 同月二十八日  台湾残置私有財産補償に関する請願外三件(辻  英雄紹介)(第二三五五号)  同外三件(愛野興一郎紹介)(第二四七七  号)  元号法制化反対に関する請願岩垂寿喜男君  紹介)(第二四四六号)  同(上原康助紹介)(第二四四七号)  同(岡田春夫紹介)(第二四四八号) 四月三日  有事立法及び日米共同作戦態勢強化反対に関  する請願工藤晃君(共)紹介)(第二五二三  号)  元陸海軍従軍看護婦処遇に関する請願逢沢  英雄紹介)(第二五七五号)  同(市川雄一紹介)(第二五七六号)  同(山花貞夫紹介)(第二五七七号)  元号法制化反対に関する請願外一件(土井た  か子君紹介)(第二五七八号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二五七九号)  同(不破哲三紹介)(第二六五二号) 同月四日  同和対策事業特別措置法の一部改正に伴う附帯  決議事項早期実現に関する請願井出一太郎  君紹介)(第二七〇八号)  同(小川平二紹介)(第二七〇九号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二七一〇号)  同(倉石忠雄紹介)(第二七一一号)  同(小坂善太郎紹介)(第二七一二号)  同(清水勇紹介)(第二七一三号)  同(下平正一紹介)(第二七一四号)  同(中島衛紹介)(第二七一五号)  同(中村茂紹介)(第二七一六号)  同(羽田孜紹介)(第二七一七号)  同(原茂紹介)(第二七一八号)  同(増田甲子七君紹介)(第二七一九号)  同(向山一人紹介)(第二七二〇号)  元陸海軍従軍看護婦処遇に関する請願外一件  (齋藤邦吉紹介)(第二八四九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十七日  恩給・共済年金改善に関する陳情書外二件  (第八一号)  元号法制化促進に関する陳情書外十七件  (第八二  号)  元号法制化反対に関する陳情書外一件  (第八三号)  北海道穂別町の寒冷級地引き上げに関する陳情  書(第八四  号)  青少年の健全育成に関する陳情書外一件  (第八五号)  国際児童年に関する陳情書外十三件  (第八六号)  同和対策事業補助基準改善等に関する陳情書  (第八七号)  有事立法制定促進に関する陳情書  (第八八号)  有事立法制定反対に関する陳情書外三件  (第八九号)  選挙管理委員叙勲制度に関する陳情書  (第九〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三五号)  元号法案内閣提出第二号)      ――――◇―――――
  2. 藏内修治

    ○藏内委員長 これより会議を開きます。  厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。上原康助君。
  3. 上原康助

    上原委員 厚生省設置法の一部改正案につきましてはすでに同僚委員の方からいろいろお尋ねがなされているわけですが、まだわれわれとして納得のいきかねる面あるいは疑問点どもございますので、重ねて厚生省並びに政府の御見解お尋ねをし、お聞かせを願って、この法案に対しての私たち考え方をより明確にしていきたいと思うのです。  そこでまず最初に、この種の設置法改正について法案提出あり方についてでございますが、この件はせんだっての委員会でも金子みつ先生栂野先生、さらに与党委員小宮山先生からもいろいろ御指摘がございました。それについて厚生大臣並びに官房長官の方からも政府の大筋のお考えなども表明をされておるわけであります。私どもも単年度でできない、二、三年ないし場合によっては四、五年も予算措置上必要とするということや、あるいはいろいろな事情で事前設置法改正そのもの内閣委員会なり国会相談をしてやるということは技術上の問題があるということは理解をしないわけでもございません。しかし、昭和四十九年から今日まで百十四億もの予算をかけてこの国立身体障害者リハビリテーションセンターが建設をされてきた、こういういきさつ等を考えますと、やはり現在のような法案提出あり方では困ると思うのですね。  したがって、このことについては今後何らかの改善策といいますか、次善の策というものを――もちろんこのことだけに限るわけじゃありませんが、厚生省は以前にも循環器センターの問題がありましたし、また総理府迎賓館設置問題等も実はあったわけです。私も内閣委員会は短い方ではありませんので、その都度政府としては申しわけありませんとか事前にこの趣旨について御報告をするなり何らかの善後措置を講ずるべきであるという御見解表明をしておきながら、今日までちっとも改善がされていないという経緯がありますので、ここらでこの問題について一定の方向づけをやっていただかないと、この法案取り扱いについてはなかなか合点がいきがたい面がございますので、改めてこの件についての官房長官、そして厚生大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  4. 加藤紘一

    加藤(紘)政府委員 お答え申し上げます。  各省庁から出されます設置法改正内閣委員会におきます審議権関係につきましては、御指摘のように先般金子先生、また栂野小宮山先生等からかなり強い御指摘を受けております。そして、われわれとしてもこの問題をどうしようかということでその後も検討を続けておるところでございます。  もちろん、一つ技術的な問題といたしまして、設置方向を決める、そして単年度でそれぞれ予算をつけてまいると申しましても、その設置を決めた段階で、そのときの財政状況からいつになったら最終的な予算が全部つき、そして組織定員等が決められるかという問題について、最初段階では不確定な要素があって、そこも含めての法律案として出し得ない、そういう問題も一つございます。しかしそうは言っても、やはりこの委員会で御審議願う段階では、もうすでに物理的に全部でき上がっている段階で、まさかその施設設置をこの委員会で認めないということもできないではないか、ということは実質的に審議権がないのではないかという御指摘も、十分に私たちも納得できるところでございます。  われわれとしては、上原先生の御指摘でございますけれども、毎年予算委員会に単年度で支出します当該施設予算につきましては出しておりまして、国会軽視というわけではないと考えておりますし、それぞれその予算の裏づけとなります施設の概況、計画進行状況につきましてお尋ねいただければ予算委員会ではその都度お答え申し上げているところでございますが、御承知のような内閣委員会審議権との問題は十分に残ろうかと思っております。  そこで、先般三月二十三日に栂野先生から御指摘いただきましたときにお答えいたしましたように、その後政府部内でも事務的にいま詰めております。そして一つの手といたしましては、単年度で一年度目、二年度目それぞれ予算がつきましたり、またある種の施設の大ざっぱな原案ができましたときに、内閣委員会の各先生方に個別にこういうような方向で進んでおりますということを御説明に参るという手もまた一つかというふうに考えております。  また、もう一つ方法といたしまして、政府部内のどこかの機関で、各省庁のこういう設置法絡みの問題、動きを全部統括的に集めまして、そしてある種の資料にいたしまして、内閣委員会先生方の方に御説明に参るという方法一つ解決方法かなということで、いま鋭意詰めておりますので、この問題は前向きに解決しようと考えておりますので、もうしばらくのお時間の猶予をいただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  5. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 これは先般も御指摘を受けましておわびを申し上げた点でありますが、私ども確かにスタート時においてそうした点への配慮が欠けておりましたということについては、本当に申しわけありません。  ただ、いま官房長官から御説明がありましたような問題点が、一方では確かにあるわけでありまして、施設をつくる方針を決定する、そして完成までの時間差、また予算でありますとか、組織定員等同時進行の形で作業が進められていく、これは当初の私ども計画どおりに査定がなされるかどうかというようなことにも関連をしてくるわけでありまして、法律案の形にして設置法改正といったような形で御審議を願うには、当初計画段階では、これがむずかしいことは間違いがないわけであります。  いま官房長官からも御説明を申し上げたような考え方を、幾つか政府の中でも全体として考えていただいておるわけでありますが、これは厚生省としても、当然これに対して今後の対応を考えなければならぬわけでありまして、いま政府全体としてのお話でございましたようなやり方もありましょう。また、厚生省独自の立場で申しますならば、将来においてそれが完成した場合には、設置法改正を必要とするようなものを計画をいたしました段階において、これはその計画概要段階でありますけれども、その計画概要内閣委員会の方に――これは委員会全体がよろしいのか、あるいは理事会に御報告をする方がよろしいのか、これは委員会の方でまた御相談をいただく点もありますけれども、そうしたところに御報告申し上げ、その御報告を申し上げたことに従って、計画進行途中において、各年次ごとにその進捗状況等を御報告を申し上げる。その過程において、また委員会としてのいろいろな御意見もちょうだいをする部分ちょうだいをし、最終の仕上げをいたしていく。その段階において設置法提出させていただき、御審議を願うといったような方法もあるのではないかということで、内々の検討をいたしております。  いずれにいたしましても、これで厚生省は前科二犯でありまして、同じ問題で余りしかられるのも、私どもも決してうれしいことではございません。それなりに工夫をしてまいりたい、そのように考えております。
  6. 上原康助

    上原委員 この件につきましては、もうすでに二、三回にわたって御指摘と御注文がありますので、これ以上深追いはしませんが、いずれにしましても、いま官房長官おっしゃるように、確かに、予算委員会なり予算審議過程においては、それぞれの年度予算が計上されておりますから国会軽視でない、これは理屈としてはそういう言い分もわからぬわけじゃないのです。しかし、予算委員会といっても、あんな膨大なものを、全部一々そういうものをチェックをしてやっているわけじゃないわけで、われわれがわかるのは、やはり設置法改正案が出て初めてああそういうことか、四、五年前からこういう計画があったのかとわかるわけで、そういうことについては社労委理事会なりあるいは内閣委理事会なり、委員方々にはやはりこういう計画でこういう方向で進んでいるんだという事前の御報告なりそれなりの御説明はあっていいと私は思うのです。  そこで、このままではいけないということにつきましては、もうせんだってから御答弁があるわけですから、鋭意目下検討中だということですので、これは国会全体の問題とも関連をすることなんで、議運の方とも場合によっては協議をしなければいかない点もあるいはあるかもしれませんが、少なくともこのことについて政府の何らかの統一見解と言うとちょっと大げさになるかもしれませんが、そういう御見解を明らかにするというお気持ちはあるわけですね。  そういうことで今後再びまた問題が繰り返される、蒸し返されるということはよもやないということで理解をしていいのか。政府の、やはり官房長官あたりが今後の取り扱いについてはぴしっとした見解を述べていただかないといかないと思うのです、この種の問題につきましては。そういうことは早目に明らかにしていただけますね。
  7. 加藤紘一

    加藤(紘)政府委員 この問題は累次御質問いただき、政府としても前向きに何らかの解決策を見出したいと答弁いたしておることでもございますので、また、三月二十三日以降私たち検討いたしておりますが、はっきりしたものをどういう形で、どの時点かということはいま申し上げられませんが、われわれのこの問題についての考え方をまとめまして御報告いたしてまいりたい、こういうふうに思います。
  8. 上原康助

    上原委員 じゃ、ぜひこの法案提出の時期あるいはその経過の説明といいますか、事前の処置についていま副長官から御答弁がありましたような趣旨で、できれば政府統一見解的なものを早急に明確にしていただくということでひとまずこのことにつきましてはけりをつけたいと思うのですが、厚生省の方もそれでよろしゅうございますね。
  9. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 厚生省としては決して異議ありません。むしろいま上原委員から統一見解というお話がありましたが、すでに統一見解段階は過ぎておって、具体的にどうしますという対策の方を内閣官房の方から御報告を申し上げることになろうか、そのように思っております。
  10. 上原康助

    上原委員 じゃ、官房長官ぜひそういうふうにしていただきたい。どうもありがとうございました。  次に、この法案の中身について、これまでも御指摘がありましたので、若干重複する面も出てくると思うのですが、確認をするという意味お尋ねをさしていただきたいと思うのです。  まず一つは、私も十分勉強したわけではございませんが、四十九年の七月に「国立リハビリテーションセンターマスタープランに関する研究報告書」というのが出されております。このときには名称としては国立リハビリテーションというふうになっておるわけですが、今回の法案国立身体障害者リハビリテーションというふうになっておる。この違いはどこにあるのか、明確にしていただきたいと思うのです。
  11. 山下眞臣

    山下政府委員 この計画を立てましたときに、身体障害者のためのリハビリテーション施設をつくるという考え方で進んできておることは当初から変わりがないわけでございます。当初、リハビリリハビリと言っておったわけでございますが、いよいよ法案作成段階で詰めますときに、やはりこの際、身体障害者対象にしてリハビリテーションを行う施設であるということを明確にするという意味におきまして、国立身体障害者リハビリテーションセンター、これが適当である、こういうことでこういう名前に決まったわけでございます。強いて申し上げますならば、いわば一般の疾病患者、病人と申しますか、そういう者だけを取り扱うようなリハビリ病院というようなものもございますし、この際、国立所沢でつくりますものにつきましては、身体障害者リハビリテーションセンターであるということを明確にするということでございます。
  12. 上原康助

    上原委員 それと、当初の計画といいますか、マスタープラン規模とは大分縮小された形になっておりますね。その点は後ほど触れます。  そういたしますと、身体障害者リハビリテーションとしたということは、身障者対象にするといういまの御答弁でこれはごもっともだと思うのですが、要するに端的に言いますと、このリハビリテーション運営というものは、身体障害者福祉法に基づいて運営をしていくのだ、それが対象だというふうに理解をしていいのかどうか、このことの明確な位置づけというもの、これが当初のマスタープランと、出されている法案に若干のそごがあるような感じがするわけですね。将来の運営というものがどうなって、どう変化していくのかという懸念ももちろんありますし、そこいらの点はどうなんですか。あくまで身障者福祉法に基づいた位置づけ運営をしていくということが明白なのかどうか、確認を求めておきたいと思うのです。
  13. 山下眞臣

    山下政府委員 今回所沢に設けられます国立身障リハビリセンターは、先生もう御承知だと思いますが、視力障害者、それから肢体不自由者、それから聾唖者、それに一年おくれますけれども内部障害者、この身体障害者を収容する、また更生訓練を行うという考え方になっておるわけでございます。その面からとらえまして、このリハビリセンター身体障害者福祉法上で失明者更生施設肢体不自由者更生施設聾唖者更生施設、さらに内部障害者更生施設、これの性格を保有する、身体障害者福祉法上のそういう施設に該当する、これは間違いのないところでございます。  ただ、それにとどまるかと申しますと、御承知のとおりに医療部門も設けます、病院も設けます。この病院におきまして、身体障害者手帳を所有いたします身体障害者の方が主要な対象になることはもちろんでございますけれども、まだ手帳保持までいかないけれども、現に身体障害の状態で早くリハビリに入った方がいいというような方も、身体障害者であられる限りは病院部門等では受け入れるということもいたすわけでございます。  それからさらに、四本柱と申しておりますけれども技術研究開発でございますとか、あるいは情報収集でございますとか、あるいは学院部門専門職員の養成というふうなことを行います。そういう部面につきましては、身体障害者福祉法上の更生施設としての性格を有すると同時に、それを超える部分も保有をいたしておるということが言える、かように存ずるわけでございます。
  14. 上原康助

    上原委員 御答弁の内容は私なりに理解をいたします。それは、あれだけの規模総合リハビリセンターですから、必ずしも手帳保持者とかあるいは身障福祉法に基づいただけを対象にしかねる、しかねるというよりもっと、おそれのある者ということでもあるのでしょうね。あるいは現に手帳保持まではいかないでも、早目リハビリを受けたいという人も対象にすることもあり得るということなんですが、じゃ、実際どこを主にしどこを従にするかという、区別という表現はよくないかもしれませんが、どうも身障福祉法に基づいた方々、あるいは重度身障者、そういう本来の対象になるべき人が従にされて、おそれのある人とか窓口がどんどん拡大をされていって、対象そのものが非常にぼけていくという運営の仕方に将来なりはしないのか。これじゃいけないと思うのです。ここいらの区別といいますか、基準の置きどころ、どこを重点にするかということは明確にしておいていただかないと、ややもすると、病院部門ができると、したがって対象者拡大をしていった方がいろいろな情報収集とかあるいは研究とか開発とかそういうのができるということでやると、本来の身体障害者リハビリテーションというものがぼけていく危険性はないのかどうか、ここ・が非常に不明確なんですね。この点はひとつ大臣の方からも明確な御答弁を求めておきたいのです。
  15. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 いま上原さんから御指摘がありましたような御心配は、あるいは関係者の中にもあるかもしれません。しかし、それは私どもとしては非常に残念な話でありまして、重点はあくまでも身体障害者方々であります。ですから、そういう意味運営についてもいまのような御注意を十分参考にしながら、あくまでも重点身体障害者ということを見失わないように努力をしてまいるつもりでございます。
  16. 上原康助

    上原委員 そこはぜひ十分な御配慮をいただきたいし、あくまでも身体障害者リハビリテーションセンターという名称がうたわれている以上、身障者福祉法に基づく対象運営ということを重点にする、ここは明確にしておいていただけますね。
  17. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 十分明確にいたしておきます。
  18. 上原康助

    上原委員 そこで、いまの点と若干関連いたしますが、先ほど申し上げましたように、四十九年に出されましたマスタープラン報告書を見ますと、当初は相当規模の大きいものになっているわけですが、これもせんだって御答弁がなされてはおりますけれども、その御答弁の中では、逐次そういう規模拡大に持っていくのだ、病院部門が完成するのと並行してやっていくということですが、どうなんですか。そこはどの程度の期間で当初のマスタープランに提示されておる、報告されておるような方向に持っていく御計画があるのか、この点ももう少しお考えを明確にしておいていただきたいと思うのです。
  19. 山下眞臣

    山下政府委員 四十一年の審議会答申、四十五年の審議会答申、さらにはただいま御指摘のございましたマスタープランあるいはリハビリ研究会、こういった一連の研究の基本的な考え方は、もう先生よく御承知のとおりに、国立でセンターをつくります場合には、総合的なリハビリテーションの実施と同時に、全国のモデルとして、また指導的地位を有するように、技術研究専門職員の養成あるいは情報収集、そういう点に重点を置いて考えろ、こういう考え方が流れてきておるわけでございます。私ども、現在明確に計画が固まっております姿も、おおむねその四本柱の考え方は、これを実現し、かつ具体化いたしておるもの、こういうふうに理解をいたしておるわけでございますが、先生が御指摘のとおりに、なおマスタープランで大規模計画をいたしましたものより小さい部分がございます。今後この四本柱の国立リハの具体的な年次計画というものがどこまで決まっておるのか、こういう趣旨の御質問かと思うわけでございます。きわめて明確には、毎年度年度予算におきましてその翌年度施設整備計画、それから定員、組織というものを決めていくわけでございますから、その段階ごとに確定をいたしていくわけでございますが、私どもが現在大まかな考え方として定めております概要をこの際御報告申し上げたいと思うわけでございます。  まず、総合的なリハビリテーションの実施部門でございます。これにつきましては、七月開所、直ちに、視力障害者、それから肢体不自由者、それから聾唖者、これにつきましては完全な実施に入りたい、かように考えております。もう一つ考えております、先ほどちょっと申し上げましたが、内部障害者、重複障害者の問題がございます。この百名の収容ということを考えておるわけでございますが、これは一年おくれまして五十五年度から実施をする、こういうことでございます。これが総合的なリハビリテーションの実施部門についての構想でございます。  それから第二の柱といたしまして、技術者の養成、研修という柱があるわけでございます。これについての具体的な計画ということでございますが、予算の中におきましても御説明申し上げましたように、五十四年度予算におきまして養成・研修棟、養成、研修をする専門の建物の実施計画の基本設計料が入っております。これは、私どもの心づもりといたしましては、五十四年度に実施設計をいたしまして、五十五年度と五十六年度の両年度で完成をいたす、こういう考えを持っておるわけでございます。したがいまして、五十七年度当初から完全実施になる、かように考えております。それまでの間の姿いかんということでございますれば、今年度移転をいたしまして、当面の養成につきましては、現在国立の聴力言語障害センターにおきまして聴能士、言語上の養成を二十名いたしております。これはそのまま引き継ぐということにいたしております。  まず、養成部門について申し上げますれば、当面五十四年度におきましては聴能士、言語上の養成を直ちに始めて引き継いでいくということでございますが、将来、五十六年度中に養成・研修棟が完成をいたしますその時点からの姿として私どもが考えておりますのは、聴能士、言語士につきましては、いま定員二十名でございますが、これを倍増いたしまして四十名にいたしたい。そのほかに養成を考えておりますのは理学療法士、それから作業療法士、それから義肢適合士、それからあんま、はり、きゅうの理療教官、先生でございます、こういったものにつきまして養成をいたしていきたい。完全実施になりました暁には、おおむね二百五十名程度の専門職員の養成に持っていきたい。五十七年度は、当面そういったものにつきましては百五名程度になりますが、五十八年、五十九年という段階を経ますと、二百五十名程度のいま申し上げた職種の専門職員の養成ということに持ってまいりたい。これが養成についての具体的な計画でございます。  もう一つ専門職員の養成に絡みまして研修という問題がございます。この研修につきましては、現在におきましても身体障害センターの方におきまして各種の職員の研修を実施をいたしておりますが、これはそのまま引き継ぎます。ただし、五十七年度に完全に発足いたします際には、これを人数の上、職種の上からも拡充をいたしたいと考えております。ちょっとお時間をとって恐縮でございますが、早口でその職種だけ申し上げてみますと、医師、理学療法士、作業療法士、義肢適合士、心理職能判定員、スポーツ指導員、自動車運転指導員、それから聴能士、言語士、理療教官、ケースワーカー、手話通訳者、それに看護婦、歩行訓練士、生活訓練士、こういったおおむね十四、五種類の職員につきましての研修をあのリハビリセンターにおいて行いたい、かように考えております。建物的には養成・研修棟が完全にできましたときが完全になるわけでございますが、現在の建物におきましても若干の研修等を行う余地は十分所有をいたしておるというふうに考えておるわけでございます。  それから第三番目の問題といたしましては、技術研究開発の問題でございます。まず建物面につきましては、すでに本館の横に義肢製作所は完成をいたしております。そのほかに別途研究所と申しますか研究棟を構内につくりたいと考えておるわけでございますが、これにつきましてはいま申し上げました養成・研修棟が完成いたしたその次に研究棟の建設をするという考え方を持っております。おおむねの考え方といたしましては、五十六年度ぐらいに設計料等の要求をいたしまして、五十七年から建設をしていくというふうなかっこうになろうかと思うわけでございます。  当面それまでの間は、現在保有いたしております義肢製作所なりあるいは本館部門で相当の余地を持っておりますので、その部門を活用しながら研究を実施していくわけでございますが、七月開所いたしました当初の研究項目といたしましては、現在おおむね三施設でそれぞれやっておりますものをまとめまして、現在より落ちないように、それをむしろ拡充するという考え方で、まず補装具製作所の研究業務、製作業務、それが一つございます。それから、現在聴力言語障害におきまして聴能、言語についての調査研究をいたしております。これをそのまま引き継ぐというのが第二でございます。第三といたしましては、視力障害者の方のためにあんま、はり、きゅうだけではなくて何か新しい職業はないかという新職業の開拓研究ということをいたしております。これを引き継いでやっていくというようなことを当面引き続き充実していきたいと思っておるわけでございます。五十七年度以降研究棟が完成をいたしました際には、そのころにはもちろん病院網も完成をいたしますので、その研究所を本格的に整備をいたしまして、医学的リハビリテーションの各分野の問題、補装具あるいは生活用具あるいは生活環境施設設備、こういった分野における研究の問題、それから職業的リハビリテーションの各分野に関する研究の問題、あるいは心理的、社会的分野における研究の問題それからさらにひいては障害の発生予防、そういうことについての研究というところまで取り組んでいきたいという構想を持っておるわけでございます。  最後に、情報、資料の収集業務、提供業務というのが重要な四番目の柱になっておるわけでございます。当面は組織機構の中で管理部の中に企画課という課を新設をいたします。この課におきまして、さしあたりは、移りましてからはまず図書の収集、購入ということから始まりまして、いずれ専門の情報のためのコンピューター室も、部屋はできております。しかしながらまだコンピューターは入っておりませんが、そういったコンピューターのソフトあるいはハード両面についての準備業務というようなことに直ちに着手をするということをいたすつもりにいたしておるわけでございます。当面、図書購入から始まっていくわけでございます。  将来の姿といたしましては、本格的に開始いたします業務といたしましては、おおむね五十六年度以降というように考えておるわけでございますが、それもちょっと時間をとって恐縮でございますが、まず収集といたしましては、図書のほかに文献でありますとか各種の義肢装具を一堂に集めてみるというようなことでありますとか、リハビリテーションの用具でございますとか、そういったもの、あるいは全国の身体障害者施設の状況の一覧、あるいは就職関係等の資料、こういった資料の収集をいたしたい。それから整理ということは、そういった資料の分類、集計、分析等をコンピューター等も使っていたしたい。さらに提供ということは、入りましてすぐの部屋でございますけれども、そういった義肢、文献等の展示、閲覧、貸し出しあるいは印刷配布といった業務にも取りかかっていきたい。完全な意味での情報部門の業務が一〇〇%動くようになりますのはおおむね五十六年度になるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。  ちょっとお時間をとって恐縮でございますが、現在考えております姿でございます。
  20. 上原康助

    上原委員 いま長々といろいろ御専門のお立場での御説明があったのですが、要するに、このマスタープラン報告書にも出されているいわゆる研修する職種及び定員、そういうものとの見合いでいろいろお述べになったと思うのですが、問題は、それだけの要員を、要するに入所者をリハビリしながらかつ研修する研修員といいますかを養成をしていくということになりますと、それに従事をしていくその人員の確保というのが大変だと思うのですね。十分な対策がなされるかどうか。入れ物だけつくって構想だけは描いたけれども、実際にいま御説明があったような方向でこれが運用されていくかどうかについては私たちは継続して関心を持っていきたいと思うのですね。したがって、それにかかる予算の問題もさることなんだが、人員の確保ということにもっと十分な配慮をしなければいけないのじゃないのか。情報収集にしても、図書、いろいろな資料、この管理運用をしていくにも、職員も現在は配置をされていないという状況、こういう点についてももっと、きょうは行管はお呼びしてありませんが、積極的な努力が必要じゃないのか。果たしていま局長お述べになったような方向でうまくいくかどうかという懸念をわれわれ持っていますので、その点もよく御配慮していただきたいと思います。  時間の都合もありますので、先に進みます。  そこで、いまの点とも関連はしてくるわけですが、具体的な問題について、今度移転との関係においてお尋ねしてみたいと思うのです。  現在の在京の三施設を統合して新しい所沢に移っていくわけですが、この移転に当たって現在の入所者の皆さんあるいはそこで働いておられる職員の皆さん、職員労働組合国立リハ対策会議から出されているいろいろな要求書というのがあるのですが、この中で、いま少しこういう関係者の要求、要望というものを十分尊重して、解決した上での移転でなければならないと思うのですね。これは余り双方が合意に達していない面があるのじゃないかという気がするわけです。  そこで、具体的にお尋ねいたしますが、移転後の臨床実習の確保というのは一体どうなっておるのか。これはせんだって私たちが杉並のセンターを訪ねたときにもいろいろ出されておりました。特に、この臨床実習生の皆さんの意向としては、新しい所沢に移転をした段階においては患者さんといいますか、実習をする人を果たして確保することができるのかどうかということについて大変懸念を持っておるわけですね。この点は一体どうなるのかということ。  二点目に、新しい施設の環境整備の問題、これはいま御説明もありましたように、継続して病院建設とかいろいろやっていく。この間行ったときも、まだ施設内の環境というのは道路にしても全然整備されていませんね。さらに、公園通りを横断する場合の安全対策ですね。身障者の皆さんに不安がないように通勤ができるのかどうかという問題、あるいは所沢駅周辺の安全対策というのはどうなるのか、こういうことについて十分な措置が――措置というより改善がなされないままに七月移転というものを強行するおつもりなのかどうか。この二点からまずお聞かせいただきたいと思うのです。
  21. 山下眞臣

    山下政府委員 まず実習の問題を申し上げます。  理療教育にとりまして、実習というのはきわめて重要であるということは、私どもも全く同様の考え方を持っておるわけでございます。新所沢におきましても、患者をとりまして実習をいたすわけでございますけれども、この問題を考えます場合に、所沢市の地元に鉄灸、あんま、マッサージ師会があるわけでございます。この方たちにとりましては現在患者を得て生活のあれにいたしておるわけでございますので、その業圏を荒らされるというか、業界を荒らされるということはきわめて困るという意見があるわけでございます。その辺との調整の問題がございます。私ども昨年来地元鐵灸師会とも話をいたしまして、おおむね鍼灸師会の方から合意といたしまして、所沢にリハセンターが移ってくることに反対はいたさない。現在東京視力におきまして平均いたしますと大体十七、八名程度の実習患者をとっておるわけでございますが、そういったものから照らし合わせまして、一日大体二十名程度の患者を実習対象としてとることについては了解をする。したがって、その場合、まずでき得れば、あそこには厚生省の宿舎のほか防衛大学の宿舎その他関係施設がたくさんございますので、そういったところの内部努力で患者を得るようにしてもらいたい。しかし、二十名に達しないような場合については、改めてその時点で地元鐵灸師会としてもセンター側と十分話し合いをする用意があるというところまで御了解を得ておるわけでございます。そういった前提で、新センターにおきましても実習に支障を来さないように万全の努力をいたしていきたいということを考えております。それが第一点でございます。  それから第二点は、交通安全並びに環境整備の問題でございます。確かに、この問題はきわめて重要でございます。それで先生にも現地をごらんいただいたところでございますが、まず交通安全対策の方から申し上げます。  新所沢駅につきましては、肢体不自由者の方で車いすの方の乗降に支障がないように、エレベーター、昇降機を付設するという方向で西武鉄道及び所沢市と話を進めておりまして、その計画を持っております。大体の見通しがついてきております。  それから、駅からリハセンターに至りますまでの道路、これにつきましては所沢市としても十分考えておりますし、私どもといたしましても、今度は障害者福祉都市にも指定いたしたいと思っておるわけでございますが、その道路の段差解消と申しますか、そういう意味の道路整備、それから盲人のための誘導ブロック、信号の設置、こういったものはもちろんいたす次第でございます。特に、ただいま先生から御指摘ございましたリハセンターの真ん前の公園通りという大きな広い通りがございます。現地で御指摘いただいたところでございますが、あのところの渡る装置でございます。もちろん信号をつけ、その信号につきましても、警察とあれしてある程度時間を長くするというような配慮も頼んでおるところでございますが、私ども現地を見まして、これに歩道橋を設置いたしたいということで、あの後直ちに市長にも私会いまして、お願いをいたして、詰めております。市側といたしましても、ぜひその方向でやりたいということで、歩道橋の設置ということがほぼ確定的に予定されておるわけでございます。しかしながら先生承知のとおり、あの公園前通りが現在はあそこで行きどまっております。いずれ開通するわけでございます。それまでの間は、当面ことしは行きどまったところを安全な歩道にいたしまして、開通までには必ず歩道橋を設置するということで進んでおる次第でございます。  それからなお、あのセンター内におきまして、御指摘のとおり病院建設が昨年度と今年度予算でやられます。その間の措置でございますけれども、防護壁を工事中はもちろん設けます。それから工事のためのトラック等車が出入りするものにつきましても、経路を指定いたしまして、一定のところだけしか通らないということで、入所者のために十分配慮をいたしたい。その他、門、さく、へい等の整備につきましては、もちろん入所までにいたしますし、植樹という問題があるわけであります。木を植えるという問題。これはどうしても適期というものがございますものですから、九月に植樹ということにならざるを得ないという感じでございますが、そういったことで、そういったものの整備には全力を尽くしてやっていきたい、大体のめどもついてきておる、こういう状態でございます。
  22. 上原康助

    上原委員 大体のめどがついたということは一歩前進かもしれませんが、しかし大体可能性があるということは、できないということにもつながるので、移転するまで、法案が通るまではそういう御答弁で何とかつくろって、あとはできませんでしたと言われても困るわけで、そういうことのないようにしていただきたいと思うのです。  そのほかにもいろいろあるわけですね。眼科医の導入問題とか、理療指導室の充実を図ることとか、社会適応訓練の充実を図ること、ボランティアの確保と養成を早急に図ること、それから教科専門制の確立とか八項目にわたる、これは現在の東京視力障害センターの入所者の皆さんから出されている要求項目ですね。こういう問題。特にこの中で、いまの点も一々聞いていますと、時間がありそうだったのですが、だんだん少なくなっていますのでなんですが、特にせんだってからいろいろ指摘がありました入所者の宿舎の問題ですね。これは私も見ましたが、どう考えてもあれじゃ困ると思うのです。この間の御答弁を聞いても、前向きに改善をしていくというお気持ちはさらさらないようで、これではいけないと思うのです。この点も何とか、まあ七月段階までにすぐできないにいたしましても、一応入所者が入って利用してもらって、後どうしても不便をかこっている、畳間にしなければいかぬというような問題が出た段階では、少々お金がかかっても、予算がかかっても改善をしていくというぐらいの姿勢がないと、あれじゃ合点がいかないのです。プライバシーの確保の問題もありますし、そこいらの点については御検討をするお考えさえもさらさらないのですか。やってみて、なおどうしても改善をしなければいけないという場合には、これは大臣やらなければいけないのじゃないですか。この点については改めて御見解を賜っておきたいと思うのです。
  23. 山下眞臣

    山下政府委員 実はあの後大臣をお連れいたしまして、大臣にもごらんをいただきました。大臣も御承知でございまして、実際に入居者の方が入られまして、こういう点を改善すべきだと思う点があれば努力をいたします、検討いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  24. 上原康助

    上原委員 その点については、じゃ大臣の方からもひとつ御所見を……。
  25. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 いろいろな問題点が先般来御指摘を受けまして、私も実は工事がここまででき上がってから、見るのは先般が初めてだったわけでありますが、設計図段階が現実のものになるとこういうものになるのかなという印象を持ちながら現地を見てまいりました。その中でいろいろな点が御指摘があったわけでありますけれども、そこまで工事が進んでおりますといきなりいじるということもできません。ただ、現実に中にお入りをいただいた上で、居住性の上から見て改善をしてほしいという声があれば、それはやはり改善に努めることは私は当然だと思っております。そういう趣旨で、とにかくそれでは入ってみていただいて、いままで関係者にも見ていただいて一応の御了解を得て進めてきたことではありますから、実際使ってみていただいて、問題が出てくればその都度御相談をしながら改善すべき点は改善していくようにということを私も申しております。
  26. 上原康助

    上原委員 それと、いまほかの点も指摘いたしましたが、項目だけ申し上げましたが、それについてもぜひ御配慮をいただきたいということと、この宿舎問題については入所者の皆さんかなり不安を持っておられるようですから、一応利用していただいて、その後にぜひ要望に沿うように特段の御努力をいただきたいと思うのです。  それといま一つは、職員団体の方から出されている点で職員宿舎の確保の問題と調整手当確保の問題ですね。これはほかの省庁とも関係するでありましょうが、この調整手当の問題については継続支給をぜひやるべきだという強い要望が出されておるわけで、すでに関係者の皆さんとも幾度かお話し合いを持って努力をするとかいう姿勢はお示しになっておられるようですが、この点についてどうお考えなのか、改めてお聞かせをいただきたいと思います。
  27. 山下眞臣

    山下政府委員 まず宿舎の問題につきましては、すでに世帯用四十四戸、独身用八戸を整備いたしております。五十四年度予算におきましても看宿等二十戸分等の予算を持っておるわけでございます。それらを活用いたしまして、十分職員の方がお困りにならぬようにいたしたいと思っております。厚生省全体の宿舎、あの辺に近いところもございますので、宿舎交換等も検討しながら御不便をかけないようにいたしたい、かように考えております。  調整手当の件につきましては、私どもといたしましても所沢の地域につきましては、お隣の八王子等とそう差はないものと考えますので、ぜひこれの実現に努力をいたしたい。当面、三年間は異動保障ということで従前の保障がございますので、その間のゆとりはあるわけでございますが、今年度からぜひひとつ、そういう方向大臣にも人事院に要望していただきたいということをけさも申し上げた次第でございまして、十分努力をいたしたいと考えます。
  28. 上原康助

    上原委員 それでは、努力するということですから、大臣からも一言お考えを聞かせていただきたいのです。確かに三年間は継続措置があるということで、私らもある程度そういったことにはかかわってきましたので、わからぬわけではありませんが、しかし、じゃ新しく所沢で採用される人はどうするかという問題が出てくるわけですよね、早目に話をつけておかぬと。そこでまたバランスが崩れるでしょう。こういう問題はすぐ出てくるわけで、先ほどのような遠大な構想を一つ一つ積み上げていくには職員も逐次ふやしていかなければいかぬでしょうし、こういう矛盾点があるわけで、これにめどをつけなければいかぬ。われわれも人事院とは努力をいたしますよ、この委員会の所管事項でもありますから。この点はひとつ、ぜひ継続支給ができるようにやっていただきたいということです。  それと最後に、この要望事項については締めて申し上げるのですが、要するに移転の時期については現在の機能を落とさないことが最低の条件である。同時に、移転の時期、七月と皆さん既成事実のようにおっしゃいますけれども、学年半ばで移転をするということ、年度半ばでやるということはどうも困る人々が多いわけですね、入所者なり生徒さんの方々には。したがって、先ほど申し上げた要求書あるいはいま職員団体から出されている幾つかの要求について、当事者同士で十分納得のいく上でないと移転は強行すべきでないと私は思うのですね。ここはわれわれ第三者でなくして、そういった方々から要望、陳情を受けておりますので、まだ双方が納得しかねる面あるいは疑問点というものがもっと詰められるものがあると思うのです。これからこのことについては法案の処理いかんにかかわらず、双方が納得のいく合意点を見出すように、その上で移転というものを円満にやっていく、これは前局長の御答弁、確約もあるわけですよ。また、いまの局長もそういう御答弁をしておられる。あらためてこのことについても、いま幾つか申し上げて指摘をしたことなどの取り扱いは、職員団体なり入所者の皆さんの意向を十分入れた、かつ双方の納得のいく合意の上で移転というものは開始をするということでないといかぬと思うのですが、先ほどの調整手当の継続支給の問題とあわせて、この点について大臣の方から御見解を聞いておきたいと思います。
  29. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 順番をひっくり返して恐縮でありますが、私ども七月を移転の時期と考えておりますけれども、それは何が何でも話し合いもしないでごり押しをするというつもりは決してないわけでありまして、むしろ今後ともに局長以下、関係者方々と十分な接触を保ち、これはやはり喜んで移っていただけるような状態をつくるように努力をいたします。  それから調整手当の問題、これは上原委員から、内閣委員会としても助けるという御発言をいただきまして、私どもとしては非常に感謝をいたします。私どもとしては人事院に対して当然申し入れなければならない一つの大きな問題点と考えておりますし、また人事院に対して申し入れをいたすつもりでありますので、どうぞ委員会の各位の御助力の方もよろしくお願いいたします。
  30. 上原康助

    上原委員 こっちも努力するけれども、そっちも努力してもらわなければいけないということなんだ。もう一遍それを答弁してください。
  31. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 こちらはもちろん努力をいたすわけでありまして、内閣委員会の御助力が得られるというので非常に心強く思っておりますので、よろしくとお願いをしておるわけであります。
  32. 上原康助

    上原委員 よし、これは大いに協力し合いましょう。  次に、リハセンターとの関係で、職業リハビリセンター設置というのもあるわけですね。労働省いらしていますね。簡単にお尋ねしますが、国立職業リハビリテーションセンター設置の根拠はどういうふうになっているのですか。
  33. 守屋孝一

    ○守屋説明員 これにつきましては、一つは雇用保険法で、ここに幾つかの保険事業がございます。この中に一つの設立根拠がございまして、この中の福祉事業でございます。もう一つは、労災保険法の中にやはり福祉事業がございまして、その中にもこの根拠になる部分がございます。したがいまして、職業センターにつきましては雇用保険及び労災保険の財源でもってこれをつくったわけでございまして、その総額は三十八億になっております。
  34. 上原康助

    上原委員 金の出どころはわかったわけですが、そうするとこれは労働省設置法でもない、私がお尋ねしているのは、政令事項で設置をしたわけですか。
  35. 守屋孝一

    ○守屋説明員 これはそれぞれの保険法に保険事業が行われるという規定がございまして、そこに法律上の根拠が置かれております。したがってこれは、それを受けては、細かい規定になりますと省令事項にさらに根拠を入れる部分もございますが、今回のように設置法をつつくという問題は労働省サイドでは出てまいらないわけでございます。
  36. 上原康助

    上原委員 それはちょっと疑問がありますので、その程度に聞いておきます。  そこで、これもずいぶんいろいろ問題があるなと思ったのですが、時間の都合もありますので、簡単にお尋ねさせていただきます。  一つは、確かに総合リハビリテーションセンターなので、職業訓練というのも大事なことでありますが、先ほどの福祉法に基づいた対象者をそういうふうにするのか、あるいは運営をどうしていくのかというものとも関連いたしますが、職業訓練をするに当たっては社会復帰可能という人々だけに限定をされても困ると思うのです。同時に、ここで職業リハの概要をちょっと見てみますと「実施対象者」ということで「労災病院国立リハビリテーションセンターの機能回復訓練終了者等のうち、労働市場への復帰の可能性が認められるものとする。」こういう一つ対象、一定の基準といいますか、を決めておられるわけですね。しかもまた一方では、訓練期間は「原則として一年以上二年以下」というふうになっている。確かに、職業訓練ですから、そうでなければいけない面もあろうかと思うのですが、要するに申し上げたい点は、社会復帰が可能だから職業訓練をやっていくのだ、しかもリハセンターで機能回復訓練終了後やるのだというふうにやると、先天性の身障者とかあるいは非常に重度の方々についての職業訓練リハがないがしろにされる、軽視をされる危険性、懸念はないのかどうか、そうあってはいかぬと思うのです。一年ないし二年以下でできないにしても、二年半かけて、あるいは三年すれば社会復帰ができる方もいるかもしれない。そういうことについてのお考えも聞いておかないとどうも形式上になって、いやこれはこうなんだ、これは該当しない、これは該当するというふうに、そこで非常に選別、区別されるような懸念がないのかどうか、このことについて両方のお考えをただしておきたいと思うのです。
  37. 山下眞臣

    山下政府委員 一緒に職業訓練するように至りましたのは、職業訓練リハがつくられましたのは、医療から職業まで一貫した総合ということで中央心身協等のサゼストもあって、ああなっているわけです。  私ども国立リハの方におきましては、いわば職能前訓練まで行うわけでございます。ただし、あんま、はり、きゅうという理療は、一種の職業教育であるわけでございます。その職業前訓練までを私どもいたしまして、職業の方は職業リハの方でやるわけでございます。  この場合、こちらの厚生省の方の機能訓練終了者ということでございますが、いろいろなパターンがあると思うのです。最初どもの方に入所して、これはすぐ職業リハの方に通所をさせて大丈夫だという方はそうされるし、私どもの方で生活訓練、機能訓練を受けてその上で職業リハに通うというパターンもあると思うのでございます。その場合、この国立職業リハに入所する者の判定は、私どもの方の身障リハと職業リハの専門家が合同判定会議を開きましてやっていくということになろうと思うのでございます。  その際、もちろん雇用につながる職業リハということでございますので、一定の限界はあろうかと思いますけれども、御指摘のような軽い者だけに限るということには決して考えておりませんで、普通職業訓練校は、伺いますと一年の修了課程だそうでございますが、特にあそこの場合は二年まで延ばしておるというような見地からいたしましても、重度の方でございましてもリハの可能性がある限りは当然対象にしていく、そういう心構えでやっていかなければならぬと私どもは考えておる次第でございます。
  38. 守屋孝一

    ○守屋説明員 いま厚生省から御説明あったとおり、労働省、厚生省一体となりましてこの制度の運営に当たっていきたいと思っております。
  39. 上原康助

    上原委員 ですから、労働省にお尋ねしておきますが、そういう選別というか、この運営概要に書いてあるようなことはあくまで原則であって、そこには融通性、弾力性があるわけですね。同時に、どういう方々を職業訓練していくかということについては、双方で何か協議会か委員会みたいなものがあるのですか。それと同時に、関係者、入所者の皆さんの自治会なり何かあるはずですから、そういう方々の自発的な意見というか提案というものも十分聞く御用意があるのかどうか、その点についても承っておきたいと思うのです。
  40. 守屋孝一

    ○守屋説明員 もちろんリハビリテーションセンター概要はあくまでも骨子でございますので、これが金科玉条であって、これから一歩もはみ出ないということではございませんで、ここを基本にして、あくまでも実態に合うように私ども運営を進めていきたいというふうに考えております。  もちろん職業訓練をいたします際には、その前にその方の持っておる適性であるとか能力とかいうことも判定いたしますし、また当然職業選択の自由もございますので、そういう面から御本人の意向も十分この中に反映させて、できるだけ御本人の希望に合うような訓練職種で社会に復帰できるように進めていきたいというふうに考えております。
  41. 上原康助

    上原委員 ぜひひとつそういうふうに、余り縦割りでしゃくし定規的にならないように、双方よく連携をとって進めていただきたいということを強く要望しておきます。  そこでいま一つ、大蔵省いらしていると思うのですが、現在の三施設の跡地の利用の問題ですね。この間、東京の視力障害センターをお伺いしたのですが、いろいろ御意見が出ておりました。また、いま一つ国立身体障害センター、さらに聴力言語障害センターですね、こういう三施設の跡利用について一体どういうふうにお考えになっているのかということ、これは特特会計で新しい所沢施設というものができたようですので、どうも大蔵省の方は現在の三施設早目に処分をして予算措置をやりたいというお考えがあるいはあるかもしらぬですが、どういうふうに跡利用を考えておられるのかということと、われわれがいろいろ聞いておりますことは、もともとこの三施設はそういった社会福祉関係施設として今日まで利用されてきたわけだから、たとえその土地を処分する、いろいろ跡利用を考えるにしてもその地域の要望を十分聞いてもらいたい、同時にまた、継続して社会福祉施設として活用されるように考慮をしてもらいたいという強い意見が出ているわけですが、この点については、大蔵省のお考え、厚生省はどういうふうに大蔵省に御意見なりを言っておられるのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  42. 安部彪

    ○安部説明員 御質問の跡地につきましては、移転経費を要しました特定国有財産整備特別会計の所属財産でございますけれども、現在までのところ、まだ具体的には地元から利用の要望を聞いておりません。今後処分するに際しましては、公共用優先という国有財産処分の基本方針にのっとりまして、国の利用計画等との調整を図りつつ、また地元の意見も聞いた上で対処してまいりたいと考えております。
  43. 山下眞臣

    山下政府委員 全く同様でございまして、ただいま御説明ございましたようなことで、特特会計に入っておるものですから大蔵省の御判断にまつわけでございますが、私どもといたしましても、地域の実情に即しまして御判断をいただければ大変いいと期待をいたしておる次第でございます。
  44. 上原康助

    上原委員 大蔵省の御答弁、一応理解できますが、そうしますと、特特会計でやっているんで、七月に何が何でも、後の土地の処分とかいろいろあるから早目に移ってもらわなければいかぬということじゃないわけですね、大蔵省としても。それが一つと、いま一つは、御答弁ありましたように、公共用施設とか、そういった地元の意向を十分尊重して跡利用というものは考えたい、地元から何らかの要望が出れば、そういうことも尊重した上でこの跡地の処分なり利用についてはやっていきたいというふうに受け取ってよろしゅうございますね。
  45. 安部彪

    ○安部説明員 跡地につきましては、国有地の有効利用という観点から慎重に検討して処分方法というものを考えてまいりたいと思っております。それから、地元の意向につきましては、十分検討した上で処分方法を考えてまいりたいと思っております。
  46. 上原康助

    上原委員 ちょっとひっかかるのですが、ひとつ十分御検討をしていただき、尊重をしていただきたいと思います。検討するだけじゃなくして、意向を入れる形で検討してもらわぬといかぬということを指摘しておきたいと思います。  時間があとわずかしかありませんので、最後になりますが、せっかく厚生大臣お見えですから、沖繩の医療問題について若干簡潔にお尋ねしますので、お答えをいただきたいと思うのです。法案につきましては、抜けた点もあったかと思うのですが、大体問題点についてお尋ねしたつもりであります。  そこで、文部省もいらしておると思うのですが、懸案の琉球大学の医学部設置がようやくめどをつけられて、今年十月に開設をして五十六年度から学生の入学がなされるやに聞いているのですが、これは、沖繩の医療事情というのがきわめて悪くて、全国平均の約二分の一という状況にあるということと、しかも地理的にも多くの離島を抱えているという特殊な事情、また、現に医療の確保がきわめて困難な状況に置かれている、こういう面で、医師確保対策として、復帰前からそうでしたが、現在も国費医学生制度あるいは自治医科大学への入学、派遣医の制度というものが措置されてきたわけですが、今度琉大医学部が設置されますと、こういうことについて中期あるいは長期の展望が開けたということで、私たちも大変喜ばしいことだと思うわけです。そこで、ただ懸念されることは、大変申し上げにくい点もあるのですが、せっかく医学部が設置をされても、果たして沖繩の学生が地元から入学できるかという、不安といいますか、せっかくできてもみんな本土から学生というものは行くのじゃないのか、学力の格差というのがまだまだある状況で、したがって、まるまるとは言えないにしても、地元優先の措置というものも、せっかくできたんだから一定程度考慮を払ってもいいのじゃないのかという父兄なり関係者の意向も強いわけです。この点については、決して甘えているとかそういうことじゃありませんが、やはり何らかの措置があっていいのじゃないかという感じは私も持つわけです。こういうことについて厚生省、文部省でひとつ御検討をいただけないのかということと、もう一つは、医学部が設置された場合は、先ほど申し上げました現在の国費医学生制度というものを廃止するのかということです。たしかいま医学の方に年間三十名程度ですかね、歯科大学の方に六名くらい特別措置で本土の各大学に入学さしていると思うのです。これは何か五十五年度で打ち切るというような話も聞いているのですが、医学部ができてもすぐお医者さんが養成されるということじゃないですから、当面そういった措置も継続してやっておく必要があるのじゃないかと思うのですが、まずこの二点について御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  47. 五十嵐耕一

    ○五十嵐説明員 お答えをさしていただきます。  琉球大学医学部を設置いたします目的の一つといたしまして、先生の御指摘のように、沖繩県の医師の確保並びに医療水準の向上を図るということはございます。その趣旨から、沖繩県の医療に貢献しようとする学生が多数入学いたしまして、地元に定着いたしまして地域医療の向上に資するようになることが望ましく、その観点から、地元沖繩県の学生が多数入学することが期待されるところでございます。しかし、つくりますのはあくまでも国立大学の医学部ということでございまして、この点につきましては無医大県解消ですでにつくっております十五の医科大学も同じでございますが、入学者選抜において特定地域の出身者を優先的に取り扱うということにつきましては、教育の機会均等の観点からいろいろ問題がございまして、この点についてはやはり慎重に対処しなくてはいけないということでございます。入学者選抜につきまして、地域医療に貢献できるようなそういう素質のある学生を選抜する、そういう工夫は大いにしていかなくてはいけないというふうに考えております。  それから、国費沖繩学生制度でございますが、これにつきましては、昭和四十五年十一月の第一次沖繩復帰対策要綱におきまして、その復帰要綱が決まりましたときの四十五年度の中学校の一年生が大学へ進学する五十一年度まで延長するということになりまして、県の教育界初め県当局といたしましても、本制度は五十二年度以降は学生受け入れを行わないものとして対応してきたところでございます。しかしながら、五十年十二月におきまして、沖繩県を初め地元の関係者から、琉球大学に医学部が設置されるまでの間、医歯学の分野に限り本制度を延長されたい旨の強い要請があったのでございます。そこで、先生の御指摘のございましたような沖繩県の医療事情等を考慮いたしまして、国立大学医歯学部の特別の協力を得まして医歯学の分野だけに限り再延長することとしたものでございます。今回、五十四年十月に琉球大学の医学部が創設され、五十六年四月に学生を受け入れることとなりましたので、当初予定どおり五十五年度採用者を最後といたしまして五十六年度以降の採用は行わないということでございます。ただ、これは入学でございますから卒業者はもう少し先になって出てくる、そういう意味で、入学、卒業につきましては連続して医師が出てくるというふうに考えております。  以上でございます。
  48. 上原康助

    上原委員 あなた、文部省の優等生答弁ではちょっと困るよ、それはわからぬわけじゃないけれども。もちろん、私がいまさっき申し上げたように、教育の機会均等の立場とか全国のあれから言うとそういうことでしょうが、この件については、そうしゃくし定規じゃなくしてある程度弾力性を持たれた運用というものも私はあっていいと思うのですね。そのことについてはぜひ御検討いただきたいと思うのです。  厚生大臣、きょうは時間がありませんから、私は沖繩の医療行政についてもっと聞きたかったのですが、約束もありますので、これ以上たくさんは触れませんが、いまの件は内閣全体の問題として文部省ともよく御相談をしていただきたい。私も何もよけいなことを言っているのじゃないのです。おっしゃることはよくわかる、文部省のお考えも当然だと思いますよ。それはわからぬわけじゃない。しかし、せっかくできたということについては、地域に対して何らかのメリットがないとこれだけの格差の是正というのはできませんよ。それも私はまた無理な理屈、理論じゃないと思う。論理じゃないと思う。そういうことについてひとつお考えを聞きたい。  さらに、沖繩の医療機関の整備がおくれている点。政府管掌の保険あるいは厚生年金なんかも非常に黒字になっているのですね。こういう面も、やはり医療機関が少ないから実際問題としては活用ができないでそういう状況になっている。  もう一つは、最近できた宜野湾病院進行性筋ジストロフィー患者の十八歳以上の入院の問題ですね。そういう全般的なことについてひとつ十分御配慮をいただきたいと思います。  今後、沖繩の医療行政について、格差の是正をどのように解消していかれようとするのか。きょうの法案との関連もありますが、心身障害者福祉施設の問題も非常におくれをとっている、こういうことの全体的なものあるいは大規模年金保養基地の設置問題等もやはり沖繩も対象にすべきじゃないかと思うのですね。  これらの問題等について、まとめてひとつ大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  49. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 非常に広範な御質問なので、言い落としましたら御指摘を願いたいと思います。  まず第一に、筋ジストロフィーの十八歳以上の方々のベッドは現在増設中でございます。補正予算で入りましたものを今増設中でありまして、近いうちにこれは完成するであろうと思います。から、先ほど琉球大学医学部の創設に伴っての問題、文部省からお答えがあったわけでありますが、私は、文部省当局とすればああいう御答弁をされる以外に方法もなかろうと思いますし、またやむを得ないト思うのですね。ただ、私ども実は無医大県解消という目標を立てましてからずっと各地に医科大学をつくってまいりまして、その傾向を見ておりますと、確かに最初の入学年次においては、全国から皆さん志望されて地元からほとんど入れないというケースが多々ございます。ただ、それが創設以来何年かいたしますと、いつの間にかやはり地域の方々が多く受験をされて、それぞれの地域からの入学者が圧倒的にふえるというのが現実の姿であります。たとえば一番初期にスタートをさせました旭川の医科大学あたり、もうそろそろ四五%から五〇%近くが地域の高等学校から進学をされている方々になっておるように思います。ですから、上原さん学力格差とかいろいろおっしゃったのですが、実は私は、沖繩県の高校生諸君にそんなに学力差があると決して思っておりませんので、当然近い将来においてやはり県内出身の方々が相当程度入ってこられるだろうということを期待いたしております。  それから、沖繩県内における医療情勢全体についての御指摘には、確かに上原さんの言われるような点があることは私も否定をいたしません。ただ、たちまちにして、この琉大の医学部の設置に伴って国立大学医学部の附属病院としての整備も当然行われるでありましょうし、こうした諸般の情勢というものが沖繩県内の医療情勢に相当大きく、しかも前進的な効果を果たしてくれるであろうと私どもは期待をいたしております。  いまのお話の中で一つだけ私がちょっと頭を抱えますのは、大規模年金保養基地をと言われたのでありますが、これは、沖繩県も当然対象として候補地選定は進められたわけでありますが、大規模年金保養基地構想をスタートいたしました当時と、オイルショック以降の経済情勢は一変をいたしまして、むしろ、当初計画をした大規模年金保養基地につきましても、当時見込んだほどの利用者があるかないかとか、地域における経済効果があるかないかとか、いろいろな問題が生じておりまして、私どももいまその整備に頭を抱えておる状況でございます。これは沖繩県ばかりではございませんが、新たに大規模年金保養基地を追加して建設するということは、いまの情勢からいきますときわめて手に余る問題でありまして、これは私もなかなか積極的な御答弁を申し上げにくい。実は私の県も大規模年金保養基地をつくれと言っておるのですけれども、これは幾ら自分の県でありましてもとうてい私どもが実施の自信がないという情勢にあることも御承知おきを願いたいと思います。
  50. 藏内修治

    ○藏内委員長 柴田睦夫君。
  51. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 最初法案関連してですが、国立リハビリセンター設置に当たって、関係者は、研究開発、職員養成、情報収集リハビリ病院を含む実施部門の充実、この四本柱に立った組織、機能の総合的整備と一貫したリハビリ対策の実施を求めているわけですが、これにどう対応するのかということ。それから、この種の施設の建設、整備については、事前計画を詳細に公表し、関係者の要望意見を積極的にくみ上げ、より充実したものにしていく必要があると思うのですが、この点についてどうするのか。簡潔にお答え願いたいと思います。
  52. 山下眞臣

    山下政府委員 国立身障リハビリセンターの建設につきましては、経過的には、四十一年の身障審答申、四十五年の身障審議会答申、それを受けましてリハビリ研究会、さらに四十九年のマスタープラン研究会、こういった各種の学識経験者の御意見を十分承りながら今日の構想をまとめてきたわけでございまして、いまお話ございました四本柱を重要な任務として発足をいたしておるわけでございます。その過程におきまして、そういった学識経験者の方々の御要望も十分承り、かつまた、非常に総合的に実施をする大きな施設でございますので、関係職員初め十分話し合いをいたしまして、その要望をくみ上げながらこの構想に対処してまいりたいと考えているわけでございます。  こういうものに対する対処の仕方といたしましては、ごく簡単に申し上げますれば、組織機構といたしまして総長のもとに管理部、更生訓練所、病院、それから養成、研修のための学院、それから研究所というような組織を発足させることにいたしております。あわせて、すぐ隣接地には労働省の職業リハビリセンターも設けられるということで、医療から職業までの一貫した総合リハビリテーションの体制が一応整ってきている、かように理解いたしておる次第でございます。
  53. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 国立リハビリセンターの建設整備計画は、大蔵省による大幅な減額査定などによって養成訓練、研究開発関係は一年間おくらされるということになっております。  国立リハビリセンターの当初計画は入所定員五百八十人、職員定員二百十三人で、県立神奈川県リハビリセンターの入所定員千三百二十五名、職員定員千七十九人と比べきわめて貧弱であって、その早急な拡充が切実な課題となっております。とりわけ養成訓練は地方自治体や民間施設から特に強い要望が出されているわけです。そこで、今後の整備計画の大要を明らかにしていただきたい。あわせて、養成訓練について、本年度千五百万円の基本設計料を計上しているのですが、養成、研修の職種、定員、年限、指導体制、実習場所、実習方法、面積、こういったものについての内容を明らかにしていただきたいと思います。
  54. 山下眞臣

    山下政府委員 当初は入所定員四百八十でございます。五十五年度から五百八十になるわけでございます。  お尋ねの養成・研修棟は、今年度千五百万の実施設計料が入っているわけでございますが、見込みといたしましては五十六年度中に完成をさせる予定でございます。  当面、聴能士、言語上という現在の職員養成を引き継ぎ、かつ各種の研修を引き継ぐわけでございますが、完全実施になります五十七年の姿につきまして研修計画等を申し上げさせていただきたいと思います。  まず聴能士、言語上につきましては定員二十名を四十名に、一学年四十名、二年でございますから八十名ということにふやしたいと考えております。それから理学療法士、作業療法士につきましてはそれぞれ一学年二十人、三学年でございますので六十人ずつで百二十名。それから義肢適合士、これにつきましては一学年十五人、三年年限で考えておりますので四十五人。それから理療教官につきましては、一年で大体教官養成ができると見ておりまして、十名。合計いたしまして、完成の暁には延べ二百五十五名という養成をいたしたいということを当面考えております。  研修につきましては、職種を申し上げますと、医師、理学療法士、作業療法士、義肢適合士、心理職能判定員、スポーツ指導員、自動車指導員、聴能士、言語上、理療教官、ケースワーカー、手話通訳者、看護婦、歩行訓練士、生活訓練士といったような職種につきまして、総数年間約千二百名弱の研修を実施いたしたい、かように考えているわけでございます。  養成・研修棟、ことし実施設計料が入りまして、予算も先週成立いたしましたものですから、これから詰めてまいりますので、その平米と申します点まではまだ今日の段階では確定をいたしておりません。  場所といたしましてはあの敷地内の一部の中に養成・研修棟を建設いたす、こういう予定にいたしておる次第でございます。
  55. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 定員問題について厚生大臣の御決意を伺いたいのです。  国の施設は他の施設と比べ、複雑な人事、会計などの国の法規に縛られて運営するために管理部門に多くの職員が必要であって、単純な比較はできないのですが、こうした要素を含めてみても、国立リハビリセンターの定員は他の施設と比較しても貧弱であると思うのです。たとえば神奈川県のリハビリセンターでは職員一人当たりの入所者は一・三人であるのに対し、国立リハビリセンターは二・七人となっております。盲学校と東京視力障害センターの教員一人当たりの生徒数は、盲学校が二・九三人であるのに対して東京視力障害センターは二十四人、約九倍にも達しているわけです。国立リハビリセンターの職員定員の増員に特段の努力を払うべきであると考えるのですが、この点についての大臣の決意をお聞きしたいと思います。
  56. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 私どもは、現在の三施設それぞれの職員定数とお比べをいただきますと、非常に厳しい定員事情の中でも厚生省として努力をしたということはお認めをいただけると思うのであります。ただ私どもは、これで十分であり、完全に満足できる状態に至っているとは思っておりません。ですから、もちろん今後ともに私どもは定員の増強、質的向上には努力をいたします。
  57. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 もう一つ、視力関係教官の定員問題ですが、視力関係で十五人授業をやると国会答弁をしていらっしゃるのですが、そのために必要な教官数を三十四名としていますけれども国立リハビリセンターの教官は三十名となっておって、教官が不足することは明らかだと思うのです。三十名の教官のうち二人が視力の他の教科、四人が聴力、言語関係ですから、全体としては十名の教官が不足することになる。十五名授業を速やかに実施するために教官の増員に特別の力を注ぐべきであると考えます。この点についての大臣のお考えをお聞きしたい。
  58. 山下眞臣

    山下政府委員 まだ定員の詳細な割り振りまでいっておりませんけれども、私どもの試算でございますと、当面生活訓練コースを別にいたしました理療コースを二百十人といたしまして、これを十五人クラスで編制いたします場合の必要教官数はおおむね二十九名程度になるのじゃないかと見ております。当面五十四年度におきましては、全体で十三クラスのうち十一クラス程度は十五人編制でやれるのではないか。あと二クラス程度は当面は十六人から二十人の間のクラス編制でやっておきまして、五十五年度からは完全に十五人クラス編制に移行するというようなもくろみを持っておるわけでございます。  現在、実数は、御指摘のとおり二十四名の教官ということでございますが、当然、発足に当たりましてこれの増員は若干いたして、そういった体制に持っていきたい、かように考えているわけでございます。
  59. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次に、国立光明寮の設置規制の改定についてですが、改正案は、設置目的から、視力障害者を保護し、その福祉、更生を図るという明文を削除しているのですが、今後改正規定の解釈、運用いかんによっては視力障害者に対する福祉、保護、更生のための施策が後退させられるおそれを感じるわけです。こうした事態は絶対あってはならないし、施策を後退させる意思は今後も絶対ないと厚生省としては明言されるのか、お伺いします。
  60. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 明言をいたします。
  61. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 法案は、去る一月十六日の行政の簡素、効率化についてという閣議了解に基づいて国立光明寮の位置についての規定を法律から省令に移管することとしております。この閣議了解は、地方支分部局や附属機関を整理すること、そしてそのためのてことして設置規物形式を政令以下に移管することとしておって、これは明らかに国会では審議できなくなる。理論的には行政機関法定主義の原則に逆行するというふうに考えるわけです。本改正案成立後、厚生省の考え一つ国立光明寮の統廃合が一方的に強行されるおそれがあるわけです。関係者がこの点について大きな不安と危惧を抱いている、そこから出てくるわけですが、本改正後、一方的に統廃合を強行することはあり得ないし、また絶対にしないと明言できるのかどうか、お答え願いたいと思います。
  62. 山下眞臣

    山下政府委員 光明寮設置法厚生省設置法に統合いたすという過程におきまして、位置を省令に落としておりますのは、ただいま御指摘ありました整理法の関係よりも、むしろ設置法におきましては、複数場所に設置される施設につきましては全部省令で決めるというのが通例になっておるわけでございます。そのスタイルに従っただけでございまして、御指摘の点とは趣旨をちょっと異にしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、省令にこれを落とすことが光明寮の統廃合を考えておるのではないかという点は、全くそういうことはございません。それはもう現在、全然考えておりませんので、明言を申し上げたいと思います。
  63. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次は、寮長の任命範囲の問題ですが、現行法は厚生教官または厚生事務官のうちから任命することになっておりますが、これに対して視力障害者関係職員は、一般事務の事務官の寮長は適切ではない、厚生教官または専門職の人から任命すべきであるという要望意見を出しております。ところが、法案は、寮長に関する規定を法律から省令に落として、厚生省の判断だけでできるようにしようとしておって、これもちょっと疑問があるわけです。今後、運用面で関係者の要望意見を尊重してやっていく考えがあるのかどうか、お答え願いたいと思います。
  64. 山下眞臣

    山下政府委員 実は、光明寮設置法は二十二年にできておるのでございます。厚生省設置法は、その後、身体障害者福祉法もその後にできておるわけでございます。そういう意味では、古い法律だものですから、スタイルがちょっと変わっておるのでございますけれども、こういった寮長の任命等はすべて設置法上、他の施設につきましても、法律で規定するということはいたしておらない、これは各省共通でございます。そういう意味で落としておるわけでございますけれども、もちろんこの寮長の人事異動につきまして適任者本位ということでいくことは当然でございます。事務官は一切だめというのも、むしろ事務官の中にも適任者がおることはあるわけでございまして、ひとつ十分慎重な人選をいたしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  65. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 次に、国立リハビリセンター設置、それから在京三施設の移転に対して、視力障害者関係職員が大きな不安と危惧を抱いている問題です。  これは、ほかの委員からも質問がありましたけれども、在京三施設に入所している視力障害者の人たちが、移転に伴う通所の安全対策の確立、はり、きゅう、あんまなどの臨床、実習体制の確立、眼科医の常駐などの要望意見を出していることは御承知のとおりですけれども、この要望意見に基づいて具体的な措置を講ずべきである、この点についてはいろいろこの国会答弁されておりますけれども、要は、これらの要望意見については、障害者の人たちとよく話し合って納得を得るようにすべきであると考えますが、その用意があるかどうかということをお伺いします。
  66. 山下眞臣

    山下政府委員 十分話し合いをいたしまして、納得の上で円満に移転をいたしたいと考えております。
  67. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それから、在京三施設の職員が、職員宿舎の完備、調整手当の確保、移転困難者の職場の確保、入所宿舎への専任職員配置の検討といった要望意見を出しております。これに対して厚生省は、よく話し合って納得が得られるような措置を講ずるようにしているという説明をしておりますけれども、また、この点についてもいろいろ答弁があるわけですけれども、要は、これらの要望意見についても関係職員と十分話し合って納得を得るようにすべきであると私は考えておりますが、この点についてもその用意があるかどうか、確認しておきたいと思います。
  68. 山下眞臣

    山下政府委員 御指摘の問題のうち、直ちに解決できるものと若干の時間を要するものといろいろあるわけでございますが、十分話し合いをいたしてまいりたいと考えております。
  69. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 移転困難者の問題ですが、もし移転困難者が出た場合、本人の希望を尊重して、当局の責任で職場を確保するということを確認しておきたいと思うのですが、いかがですか。
  70. 山下眞臣

    山下政府委員 身障リハセンターの構想を相当前から発表いたし、検討いたしておりますので、関係職員の方におかれましても相当程度の心構えはできておるものと思っております。しかしながら、職員のうちで特別の事情がございまして、移転することがきわめて困難だというような者につきましては、本人の意向をも十分聞きまして、配置がえ等、最善の策を考えてまいりたいと思います。
  71. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 移転の時期と方法についてですが、関係者が、移転に伴う一時入所停止などの事態を避けること、それから入所者の教育訓練に支障を来さないこと、こういったことを繰り返し要望していることは御承知のとおりです。厚生省としては、こうした当然の要望を体し、移転の時期や方法については遺漏なきょう万全を期すべきであるという考えですが、この点についてどのような考え、方針を持っておられるのか、お伺いいたします。
  72. 山下眞臣

    山下政府委員 まず、入所生の問題でございますが、視力障害センター及び聴力言語障害センターにつきましては、それぞれもうすでに五十四年度の入所者につきまして決定をいたしたわけでございます。身体障害者センターの方につきましては、随時入所、随時希望があったときに入れていくというやり方をいたしております。そのために、移転を控えました時期に、途中で医療の継続等の問題もございますので、若干控えぎみにいたしておるということは事実でございますが、開所と同時にこれは入所させるという措置を考えておる次第でございます。  移転時期につきましては、私どもといたしましては、やはり夏休みがある七月、八月、それで九月の新学期ということが最も望ましいと考えておるわけでございますけれども、今朝来御指摘もございますようなことで、いろいろ交通安全対策、実習問題その他の要望が出てきております。こういったものにつきましても、私ども万全の努力をいたしておるところでございまして、そういったところをよく御説明をいたし、十分納得をし合いまして、移転の運びに持っていきたい、かように考えておる次第でございます。
  73. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 移転の時期については、厚生省はことしの七-八月を予定しておられるのですが、これに対して関係者は、まだ施設が十分整備されていないということや、入所者の教育訓練上の支障、職員の子弟の転校などの支障を挙げて、強行移転をすべきじゃないとか、移転時期や方法については関係者とよく話し合って決めるべきであるという強い要望意見を出しております。移転の時期や方法については、入所者や職員の反対を押し切って強行するつもりはないという答弁をされているわけですけれども、あくまでも関係者と十分話し合って納得ずくでやるべきである。この点を間違いなくやってもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  最後に、これは大臣答弁をしていただきたいと思いますが、国立リハビリセンターの今後の整備については、事前に整備計画の詳細を明らかにし、関係者の要望意見を積極的に求め、より充実したものにしていってもらいたい。その際、障害者や職員の不安や危惧については、事前によく話し合って、納得ずくで進めるようにしていただきたい。この点についての大臣の御答弁を求めて、次に進みたいと思います。
  74. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 予算とか定員とかという部分につきましては、これは予算編成時に確定をするわけでありまして、そこまでを含めてかっちりとしたものをと言われますと、これは非常に困難になりますが、そのおおむねの計画その他については、当然関係方々には事前にお知らせをし、それについて御意見等があればそれも伺い、そうしたものを含めて最終的なまとめをするということは当然のことだろうと思いますから、そういう点は今後も努力をいたしましょう。
  75. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 法案関連はその程度にしておきまして、次に、人口急増地における保健所設置の問題で質問をしたいと思います。  最初に、大臣見解を伺いたいのですが、保健所法第一条で「保健所は、地方における公衆衛生の向上及び増進を図るため、都道府県又は政令で定める市が、これを設置する。」とされておりますが、ここで言う「公衆衛生の向上及び増進を図る」というのは憲法二十五条を受けたものであるという考え方に立っておられるのかどうかということが一つ。  もう一つは、現行の保健所法が昭和二十二年に制定されるわけですが、この法案の提案理由を見てみますと、   公衆衛生の向上及び増進をはかることは、新憲法第二十五条によりまして、社会福祉及び社会保障の向上並びに増進をはかるとともに、国の基本的義務とされた次第でありまして、これなくしては平和的文化国家の建設は、とうてい望みがたいと言わなければなりません。保健所は現在すでに全国に六百七十五箇所設置せられ、公衆衛生行政の第一線の実施機関となっておりまするが、新憲法の趣旨に副うためには、さらに中央及び地方の機構を整備するとともに、直接に国民に接触する保健所の機能の拡充強化をはからなければなりません。しかしながら現行保健所法では、十分その目的を達しがたい点があると認められますので、ここに新憲法に即応する保健所法案提出いたした次第でございます。 こう述べております。これも保健所法が憲法二十五条を受けたものであることを述べているわけですけれども、このように保健所の設置主体が都道府県または政令都市になっているとはいっても、保健所の整備、拡充強化は、国民の生存権、健康権、環境権にかかわる国の最優先すべき基本的施策であって、国はその第一義的責務を負っているものと思うのですけれども、この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  76. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 保健所法が憲法二十五条の精神を受けておることは御指摘のとおりであります。同時に、この保健所の設置の責任者は都道府県または政令市であります。
  77. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 それは精神の問題ですけれども、次に移ります。  それでは、現在の保健所の設置基準は法令上ではどのようになっておりますか。
  78. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 おおむね人口十万対一ということになっております。
  79. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 先日、公衆衛生局から資料として全国の保健所管内人口の高位順に一番から五十番までの保健所名を出していただきました。これによりますと、全国の三十位以内に千葉県内の保健所が千葉中央、船橋、柏、市川、松戸の五カ所、埼玉県内の保健所が川越、大宮、所沢、川口、埼玉中央の五カ所となっております。このように全国三十位以内に千葉、埼玉の人口急増地域の保健所が十カ所も含まれているわけです。特に千葉中央保健所は管内人口が七十二万を超えて全国第一位であります。二十七位の松戸でも三十八万を超えております。そこで、人口おおむね十万という基準は、これらの地域では全く空文化されておりますが、これについてはどのように考えていらっしゃるのですか。
  80. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 新しく保健所が全国に設置されるときにおきまして、おおむね人口十万に一つという考え方で保健所の全国的な設置を図ったわけでございますが、その後、社会経済情勢の変化によりまして、一保健所当たりの受け持ち人口がどの程度が適当であるかということにつきましては、専門家の方々の間にいろいろ意見がございまして、交通事情等のことを考えて、もう少し広域にした方がいいのではないか、あるいは保健所の業務内容のうち、対人保健サービスに関する点につきましては、さらに住民に密接させて行うように、きめ細かいサービスができるようにということで、支所あるいは市町村における活動に移していくというようないろいろな新しい考え方審議会においても出ておりますので、われわれといたしましては、新しい現状に即応した保健所のあり方につきまして現在検討しているところでございます。
  81. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 厚生省考え方を示すものとして、七七年の三月十日の衆議院社会労働委員会で佐分利前公衆衛生局長が「必ずしも大都市は十万に一カ所置く必要はない。」「二十五万から三十万くらいに一カ所あれば大都市はよろしいのではないか」という答弁があります。しかし、全県的に保健所管内の平均人口を計算してみても、千葉は十九カ所の平均が二十四万人、埼玉は二十五カ所の平均がやはり二十四万人となっておりますし、千葉中央の七十二万、川越の五十六万、大宮の五十万などは、いま述べた厚生省の考えからしても最低二カ所か一カ所を増設しなければならないことになりますが、この点についてはいかがですか。
  82. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 ただいま私の方から基本的な考え方について御説明申し上げたわけでございますけれども、当然、千葉あるいは埼玉のように人口が急増している地域につきましては保健所を増設する、あるいは支所をつくる、あるいは対人保健サービスを行う機関をつくるというようなことで対処していくべきであるという考え方に基づきまして、それら人口急増地域の保健所の増設につきまして、過去十年間に約三十カ所新設を認めているわけでございます。ただ、保健所の管内人口は、先生指摘のように七十万にも及ぶものから一万にも満たないというような大きな格差がございますので、過疎地域の保健所の統合を図る。それと一方におきまして、過密地域において保健所の新設あるいは支所の設置というようなことで努力してまいりたいと考えているわけでございます。
  83. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 全国の保健所総数は八百五十二カ所で、全国の人口約一億一千万人を見ると、全国平均では保健所一カ所当たりの管内人口は十三万人になります。これでもおおむね人口十万という基準を超えているわけですけれども厚生省には、この保健所総数八百五十二を絶対にふやさない、統廃合しなければ新設は絶対に認めない、こういう考え方があるのですか。
  84. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 先生おっしゃられたとおり、大体現在の八百五十三カ所でございますが、を人口で比較いたしますと、十数万ということになるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、保健所の設置につきましては単に管内人口だけではなくて、その地理的な条件であるとかあるいは管内の保健あるいは医療関係のいろいろな施設というようなことも考慮いたしまして適当な数の保健所を設けるべきであるという考え方に立っておるわけでございまして、大まかに言いますと全体の数は大体このぐらいでいいのではないか、ただ管内人口が極端に多いところと極端に少ないところがあるので、極端に少ないところについては整理統合を図ってまいるとともに、極端に多いところについては新設あるいは支所の設置を行いまして、住民に対する保健サービスが十分に行われるようにやってまいりたいと私どもは考えておるわけでございます。
  85. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 結局、整理統合をしなければ新しいものをつくることは認めない、そういう方針ではないのですか。
  86. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 別にそういうこと、そのままの形で申しているわけではございませんが、先ほど申し上げましたように基本的な考え方といたしましては、大体いまの数でいいのではないかということが一点と、保健所の管内の地理的条件あるいはその他の要件を考えて、必ずしも一律の人口である必要はないということでございますので、必要なところには設置あるいは支所を設置するということに考えております。
  87. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 まだちょっとあいまいですけれども、保健所の設置基準の人口おおむね十万というのが守られていないという問題ももちろんあるのですけれども、さらに問題なのは、この設置基準を盾に機械的に標準化しようとするために行われる統廃合の問題があるわけです。  たとえば千葉県では、県内の保健所一カ所当たりの平均管内人口でさえ二十四万人を超えているにもかかわらず、私が千葉県庁に行って聞きましたところ、管内人口が十万人を下回る保健所が数カ所あることを理由にして、統廃合しなければ新設は絶対に認めないという指導を受けているということでありました。しかし、管内人口が十万以下のようなところは逆に医療体制が悪くて、そのために住民の保健所への依存率がきわめて高いところが多いのであります。  たとえば千葉の松尾保健所は、管内六カ町村、人口六万数千のところでありますが、看護婦が一人もいない町村が三カ所、歯医者のいない町村が一カ所、小児科の専門医は全くいない、医師数、病院一般病床数、看護婦数、歯科医師数等の指標が県の平均を下回っておって、出生児千に対する死亡率も九・三と高いところであります。このように医療体制の悪いところであるために保健所の利用率が高く、たとえば結核の一般住民健診率が九六・八%、三歳児健診率が九〇・六%と非常に高いところであります。  また鴨川保健所も、管内人口が四万人強のところでありますが、三歳児健診率が九七・三%、新生児訪問指導率が八四・八%、妊産婦訪問指導率が九二・六%、低体重児の健診率が九六・九%、結核の住民一般健診率が七二%という数字が示しておりますように、保健所への依存率がきわめて高いところであります。  このようなところでは、住民の健康、医療にとって保健所が絶対に欠かせない存在になっているわけです。このようなところをも統廃合しなければ新設が絶対に認められないということでは非常に困るわけですけれども、この点についてはいかがですか。
  88. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 先ほど来私が申し上げておりますように、全国の保健所の数が全人口に比べて大体十数万ということで、大体このぐらいでいいのではないかということでございます。県ごとに見ますと当然のことながら人口が急増している県がございますし、また非常に減ってきている県もあるわけでございます。繰り返すようでございますが、私ども保健所の設置につきましては人口だけを考えているわけではございませんで、先生も御指摘のような管内の医療機関の分布あるいは地理的な条件というようなことを参考にしつつ、必要なところに設けていくという考えでございますので、全体的に非常にふえている県につきまして無理やりに統合しろというようなことを申して  いるわけではございません。     〔委員長退席、唐沢委員長代理着席〕
  89. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 厚生省から資料をいただきましたが、最近五、六年の間に保健所の統廃合は、広島、滋賀、徳島の三県でしか行われておりません。それで、先ほど千葉の例で申し上げたように、保健所は他の行政機関と違いまして、簡単に統廃合が進められるようなところでないことは以上の事実によっても明らかであります。  私は、さらに、厚生省が統廃合がうまく行われたと高く評価されております広島県の六町村と徳島県の一町に、保健所がなくなってどういう影響が出ているか、電話で問い合わせてみました。まず、統廃合された町村は、保健所まで通うのに車で最低三十分から最高二時間かかるというぐあいに不便になったということです。そのために、保健所発行の公的な健康診断をもらうときなどはどうしても直接足を運ばなければならないし、そういうことで大変困っているということ。それから水質検査などは、いままでは気軽に保健所に頼めたが、遠いところへ時間をかけて持っていくのがめんどうで、ほとんど依頼することがなくなってしまったということです。また、どの町役場でも共通しているのは、住民からの直接の苦情がふえ、特に野犬狩りに対する苦情が多く、町でおりをつくって犬を入れておいて、後で職員が一時間も二時間もかけて犬を保健所へ連れていかなければならない、そういうことで本当に困っているということです。  どの町も、統廃合された後は、旧保健所跡地に保健センターなどを設置して、そこに月に一、二回保健所から職員が派遣されてくる移動保健所などによってどうにか健康相談、健康診断などの最低限の対人保健サービスは行われているということでありますが、母子衛生や斃獣処理の許認可、悪臭の処理など従来保健所でやっていたことが、知事の権限委譲ということで徐々に町に押しつけられて、そのために職員が必要になっても事務費の補助金程度しか来ないということであります。     〔唐沢委員長代理退席、委員長着席〕 町役場の人が、保健所がなくなって初めてその存在がよくわかるはずですよ、こういうことを深刻に言っておりました。  ちょっと長くなりましたが、これこそ、厚生省がいま進めている保健所統廃合政策と市町村保健センター構想が本格的に実施されると、全国の町村がこのような事態になるのだということを象徴的に示すものであると思うのです。私は、保健所の統廃合政策は破綻していると言わざるを得ないと思うのですが、このようなことを承知の上で、厚生省は保健所の統廃合に関して、千葉県庁で言っておりましたように、新しいものをつくるときは一つなくさなくちゃならないという考え方を進めていくつもりかどうか、お伺いします。
  90. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 保健所及び市町村保健センターをあわせまして、われわれは、対人保健サービスはできるだけ地域住民に密接した場所に設置し、できるだけ頻度を多く、密度の高いサービスを行うのが望ましいという考え方に基づきまして、対人保健サービスを考えているわけでございます。  保健所の仕事といたしましては、精神衛生であるとか、あるいは伝染病の予防であるとかいうような疾病対策、それから食品衛生、環境衛生、公害等いわゆる環境衛生部門の仕事があるわけでございまして、これにつきましては、私どもといたしましては、やはり従来どおり保健所でやっていくのが望ましいのではないかというような考え方をとっておりますが、いずれにいたしましても保健所と市町村保健センターの業務の分担ということにつきまして、いま保健所の仕事の実態を調査しておるところでございまして、できるだけ早くその役割りを明確にいたしたいというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、ただいま申し上げましたような基本的な考え方に基づきまして、対人保健サービスはなるべく住民に近いところで行うのが望ましいということでございますが、これは何も保健所だけがそれをやるということではなくて、市町村の保健センターであるとか、あるいは母子福祉センターであるとか、あるいはその他の保健医療施設と連携をとりながら、住民に十分なサービスができるようにしてまいりたいということでございますので、全体といたしましてサービスが落ちることのないように、保健所の統廃合あるいは新設ということをやってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  91. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 私は、保健所は統廃合を進める方向ではなくて、逆に必要なところは新増設を行って、もっともっと拡充強化していくべきであるというように考えているわけです。  先日、管内人口全国第一位の千葉中央保健所と船橋保健所へ行って、保健所の実態を調べてきました。このように管内人口の多い保健所ではどういう事態になっているかと言いますと、たとえば三歳児健診については、千葉中央では対象児童が一万五千人もいて、とても全員を実際に診ることができないので、やむを得ず、全国でも一例がないと思うのですけれども、アンケート方式によるペーパーテストを行って対象者を数千人にしぼって、年二回に分けて二次健診を行うというような事態になっております。そのため、実際に医師、保健婦の診察、相談を受けた児童は全対象児童の二〇%、すなわち五人に一人しかないという状態であります。  船橋ではペーパーテストこそ行っていませんが、やはり対象児童が九千名もありますので、医師や保健婦がそれに対して少ないために、それにかかり切りになるわけにはいかないので、週一回にしぼって三時間ぐらいの間に百人から百五十人の健診を行っているという状態であります。  また一般健康診断も、受け付け人数が多いために、権威のあるべき保健所の健康診断に栄養士の診断が時間的に組み込めなくなるといったことなど、まさに単なる診断書発行業務になっているということであります。  理容、美容などの業者の監視、廃棄物の処理、屎尿浄化槽、公害関係など、最近環境部門の仕事が大幅にふえているにもかかわらず、職員の定員は、退職者がいても補充がないなど、減員または現状維持がやっとであるので、所長や次長は、事故が起きないからよいようなものの、辛うじてやっている状態で、食品や狂犬病などの事故が起きたらと心配で仕方がない、こういうふうに言っておりました。船橋で昨年コレラが発生したときには、平常業務を何名かに極力抑えてコレラ対策に集中させたそうであります。千葉中央では保健所の増設が、人口から考えてみましても最低あと二カ所、船橋では最低一カ所どうしても必要だと言っておりました。  私は千葉県に住んでおりますので千葉の例を具体的に申し上げましたけれども、埼玉県も人口急増地帯として問い合わせてみましたところ、同様な事態だそうであります。  そこで、大臣に御答弁願いたいのですが、いま私がずっと述べてまいりましたように、全国的にも保健所の統廃合政策は行き詰まっていると思うのです。まして千葉県や埼玉県では、県内で統廃合しろというようなことは全く非現実的で不可能なことであります。そこで、千葉、埼玉などの人口急増地域においては、統廃合が行われるまで新設を絶対認めないという画一的な指導というものではなくて、もしそういう指導をしているとすればこれは改めていただいて、必要なところには新設を認めるという考えを明らかにしてもらいたいと思うのです。千葉県あるいは埼玉県などから申請があったら、統廃合の条件をつけないで申請を認めていただきたい。このことをせひ約束していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  92. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 先ほどから局長が何度も申し上げておりますように、私どもは何も統廃合をしなければ新設を認めないなんて一回も言っておりません。ただ、全国的に見ればある程度の適正規模があるということを申し上げておるのでありまして、千葉県内で一つをつぶさなければ新設を認めないなどということは申し上げておりません。千葉県なり千葉市なり、御努力になっておつくりになることに対して私どもは異議を申し上げておりません。
  93. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これは成田の関係ですけれども、成田に保健所をつくりたいということで、成田空港ができて特別な事情があったわけですけれども、結局あそこでさえ佐倉の支所しかつくれなかったというような問題があるわけです。  それでは、さきに話が出ました市町村保健センターに関連する問題についてお聞きしたいと思います。  昨年十月に開かれた日本公衆衛生学会の総会シンポジウムで杉山地域保健課長が「市町村保健センター構想について」という題で講演されておりますが、その中で「市町村保健センターの性格は、保健所のような行政機関ではなく、保健婦等が中心になって行なう保健活動の拠点であり、健康づくりに関する諸活動を効率的に展開するための「場」としての機能をもつ利用施設という考え方である。」と述べておられます。また、保健所との関係については、「センター自体が事業主体になることはない。事業主体はあくまで市町村である。したがって、保健所との関係も市町村との関係と考えるのが適当である。」と述べられ、そのために「当然保健所と市町村との業務の分担の仕方が問題になってくるであろう。」と、こう述べておられます。  この中で明らかにされているのは、要するに、市町村保健センターは単なる対人保健サービスの場にすぎないということ、本質的には保健所、すなわち都道府県及び政令市と市町村との業務の分担が将来どのようになるのかという問題であるということであります。  私は、そこで、さきに言いました広島県の町の例のように、従来保健所でやっていたこと、保健所がやらなければならないことが、人的、財政的裏づけが何もなく市町村に移管されてくるという事態が現実に起こってきているわけでありますが、厚生省は一体保健所と市町村の業務の分担についてどのように考えているのか、ひとつ明確に答えていただきたいと思います。
  94. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 先ほどもちょっと申し上げたところでございますけれども、われわれの基本的考えといたしまして、対人保健サービスの業務、主として母子保健であるとか成人病の予防であるとかあるいは老人保健等、地域の住民の日常生活に密着いたしました、また頻度の非常に高いようないろいろな疾病あるいはその予防等についてのサービスにつきましては、できるだけ地域住民に近いところで行うということが望ましいということで、市町村において実施するのにふさわしい保健サービス業務ではないかというふうに考えておるわけでございます。  また、それでは保健所におきましてはどういうことをするかと申しますと、高度な技術とか設備を要するもの、あるいはいろいろな種類の医療関係者が一体となりましてチームワークで行っていく必要のあるような対人保健サービスに力点を置いてまいりたい。当然、保健所は市町村に比べて技術的にも高いわけでございますので、市町村への技術指導あるいは技術援助を行っていくということになろうかと存じます。  また、これら対人保健サービスのほかに、先ほども申し上げましたように、精神衛生であるとかあるいは伝染病等の疾病対策は当然保健所で行っていくべきものであろうと考えております。また食品衛生、環境衛生、公害等のいわゆる環境衛生部門も保健所で行っていくのが望ましいのではないかというふうに大きく考えておりますが、先ほども申し上げましたように、細かい点につきましては、現在保健所の用務をいろいろ分析いたしまして、さらに保健所と市町村の業務分担を明確にしてまいりたいというふうに努力しているところでございます。
  95. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 厚生省から資料をいただきましたように、対人保健サービスも法律的には知事が行うべきことと市町村長が行うべきことが個々の法律できちんと定められているわけです。たとえば三歳児健診を初めほとんどが知事が行う、すなわち保健所が行うことになっています。全国市長会や全国町村会の意見も聞いてみましたけれども、先ほどのような抽象的な考えを示されただけでは、法律的には市町村がやらなくてもよいことになっていることをやっても補助金を要求することもできない。保健所がどこまでやるのか、市町村がどこまでをやらなければならないのかを具体的に示してほしいという意見でありました。この点、住民に密着した保健サービスを要求されている市町村の立場というものを逆用いたしまして、なし崩し的に市町村移管という既成事実をつくって、後から法律あるいは条例を改正するというような意図があるのではないか、曲解すればそういうように思えるのですけれども、そういう考え方はないということを断言できますか。
  96. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 御指摘のように、母子保健に関するもの、健診業務と、現在法律によりまして都道府県が行うというふうにはっきりと規定されている保健サービス業務もあるわけでございます。ただ、終戦直後、保健所ができた当時と現在と比べまして、先ほど来申し上げておりますように、住民に対する保健サービスのあり方というものにつきまして、社会経済情勢の変化とも対応いたしましていろいろと違いが出てきているわけでございまして、乳幼児の健診につきましても、最近新たに導入されました一歳児半の健診につきましては、これは市町村の実施するものというふうになっておりまして、そこら辺、昔のものと新しいものとの間で若干基本的な考えの違いから制度上も違っている点もあらわれているというようなところもあるわけでございますが、先ほど来申し上げておりますように、現在都道府県、具体的には保健所でございますが、保健所で実施すべき対人保健サービスを含めたいろいろな業務、それから市町村がやることが望ましい対人保健サービスの内容等についていろいろ調査、検討しているところでございます。その結果を待ちまして、また専門家の方々の意見も十分聞きまして、必要があれば当然法律、規則等も改正いたしまして、住民に対する最も望ましいサービスができるような形にしてまいりたいというふうに考えております。
  97. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 もう一点。厚生省考え方によりますと、対人保健サービスは市町村、対物サービスは保健所でという考えのように聞こえるのですけれども、先ほどの日本公衆衛生学会の総会シンポジウムで、西三郎国立公衆衛生院衛生行政室長が「わが国の生活状態をみるに、環境問題は、健康とは不即不離の関係にあり、いわゆる対人保健と対物保健という分離は、住民要求にも対立するし、活動の総合性とも矛盾するものといえる。このため、一部の対人保健サービスの市町村移管は、住民尊重、住民自治の本旨にもとるものといえよう。」こう述べております。このように国の行政機関の側に立つ人が問題点指摘しているのですが、これについては、厚生省考え方はいかがですか。
  98. 田中明夫

    ○田中(明)政府委員 ただいまの西先生の御意見のうち前半の方はなるほどと思われる面もあるわけでございますが、その前半の現状分析に基づいてどうして後半のようなことが出てくるのかちょっと私としましては納得できない面があるわけでございます。保健サービスは、たとえ市町村が提供するということになりましても、当然保健所は技術のセンターといたしまして、先ほど申し上げましたように、高度な技術、設備を必要とするようなもの、あるいは多くの医療関係者を必要とするようなサービスについては保健所自身がやり、また市町村が実施する対人保健サービスについても技術的な援助、指導はやるというふうに当然なるものと考えておりますので、対人保健サービスの一部が市町村に移管されましても、決して保健所と市町村がばらばらになってそういうサービスを実施するという考え方に立っているわけではございませんで、密接な協力のもとにそれぞれの保健業務を住民に対しまして密度濃く、よりよいサービスを提供するという観点から実施していくのが望ましいというふうに考えているわけでございます。
  99. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 時間が参りましたので、最後ですが、人的、財政的裏づけのない対人保健サービスが市町村へ移管されるということは、憲法二十五条に基づきます「公衆衛生の向上及び増進」を図るという国の責任をあいまいにするものになってはならないと考えます。市町村保健センターの設置だけではなくて、すべての市町村に保健所あるいは支所をつくるというのが本来の方向であると思うのです。もちろん基準、それから現状があるわけですけれども、その点を考えてみましても、要するに保健所法の精神をあいまいにしてはならないということを保健所の現場へ行ってつくづくと感じてきたわけですけれども、この保健所法の精神を貫いていくということについての基本的な態度について、最後に大臣の御見解を承りたいと思います。
  100. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 保健所法の精神を貫いてまいるのは当然のことであります。ですから、先ほど千葉県の例をお出しになりましたが、柴田さんみずからがいま御指摘になりましたように、お考えがあれば、支所等をお設けいただけばそうした現状についても対応ができることだと私は考えております。
  101. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 終わります。
  102. 藏内修治

    ○藏内委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  103. 藏内修治

    ○藏内委員長 この際、柴田睦夫君から、本案に対し、修正案が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。柴田睦夫君。     ―――――――――――――  厚生省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  104. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 共産党・革新共同を代表して、厚生省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案の内容の概要と提案理由を説明します。  修正案の内容は次の二点であります。第一に、国立光明寮の設置目的として、現行の国立光明寮設置法に規定されている、視力障害者を「保護し、その更生と福祉を図る」との明文を加えること、第二に、国立光明寮の位置及び寮長についての現行法の規定を残すとともに、寮長の任命範囲の規定に所要の改定を加えること、以上二点であります。  次に、提案理由を申し上げます。  第一に、国立光明寮の設置目的に関する修正部分についてであります。  国立光明寮の設置規制を国立光明寮設置法から厚生省設置法へ移管することに反対するものではありませんが、改正案が、視力障害者を「保護し、その更正と福祉を図る」との現行規定を、視力障害者の「更正に必要な知識技能の付与及び訓練を行う」というように改変し、その設置目的を矮小化していることには賛成できません。法改正後、改正規定の解釈、運用いかんによっては、視力障害者に対する福祉、保護及び更正のための施策が後退させられるおそれがあります。本修正部分は、政府による恣意的な解釈、運用に歯どめをかけるために提案するものであります。  次に、第二の修正部分についてであります。  大平内閣は、去る一月十六日の行政の簡素、効率化についての閣議了解で、附属機関の整理の方針を新たに打ち出し、そのてことして、現行の附属機関などの設置規制形式を政令以下に移管することとしていますが、本改正案が、国立光明寮の位置及び寮長についての規定を法律から省令に移管するとしているのは、この方針に沿ったものであります。これは、国会審議権を奪い、行政機関法定主義の原則に逆行するものであります。本法案成立後、政府の判断一つで、国立光明寮の統廃合が強行されるおそれがあります。関係者は、この点に大きな不安と危惧を抱いています。本修正部分は、政府が一方的に統廃合ができないように歯どめをかけるために提案するものであります。  以上が修正案の内容の概要と提案理由であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  105. 藏内修治

    ○藏内委員長 これにて修正案についての趣旨説明は終わりました。  修正案について別に発言の申し出もありません。     ―――――――――――――
  106. 藏内修治

    ○藏内委員長 これより本案及びこれに対する修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出もありませんので、直ちに採決に入ります。  厚生省設置法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、柴田睦夫君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  107. 藏内修治

    ○藏内委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  108. 藏内修治

    ○藏内委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  109. 藏内修治

    ○藏内委員長 ただいま可決いたしました本案に対し、村田敬次郎君、上原康助君、新井彬之君、吉田之久君、柴田睦夫君及び中川秀直君から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。上原康助君。
  110. 上原康助

    上原委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブ各派共同提案に係る厚生省設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     厚生省設置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、国立身体障害者リハビリテーションセンターの開設にあたっては、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 所沢市への移転の時期ならびに移転については、在学中の訓練生の教育上不利にわたらぬよう十分配慮し、かつ、円満にこれを行うこと。  一 所沢市へ移転後の職員の処遇が不利にならないよう必要な措置を講ずること。  一 言語士、聴能士、歩行訓練士などの養成訓練、資格制度等について早急に検討を行い、実現に努めること。  一 研究開発、養成研修、情報収集病院などが十分な機能を発揮することができるよう、今後とも予算、人員の確保について特段の配慮を行うこと。  一 在京三センターの跡地については、地域住民の福祉の充実を考慮した運用を行うこと。   右決議する。  本案の趣旨につきましては、先般来の当委員会における質疑を通じて、すでに明らかになっておることと存じます。  よろしく御賛成くださいますよう、お願い申し上げます。
  111. 藏内修治

    ○藏内委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本動議に対し、別に発言の申し出もありませんので、これより採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  112. 藏内修治

    ○藏内委員長 起立総員。よって、村田敬次郎君外五名提出の動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。橋本厚生大臣
  113. 橋本龍太郎

    橋本国務大臣 ただいま、厚生省設置法の一部を改正する法律案につきまして、慎重な御審議の結果、御可決をいただきまして、本当にありがとうございました。  私といたしましても、本委員会における審議の内容を十分に尊重しまして、身体障害者対策の推進を初めとして、厚生省に与えられました職務の遂行に全力を尽くす所存であります。  また、ただいま御決定いただきました附帯決議の趣旨を尊重し、善処してまいりたいと考えております。(拍手)     ―――――――――――――
  114. 藏内修治

    ○藏内委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 藏内修治

    ○藏内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     〔報告書は附録に掲載〕
  116. 藏内修治

    ○藏内委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ――――◇―――――     午後二時三分開議
  117. 藏内修治

    ○藏内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  元号法案審査のため、来る十三日金曜日午後一時から、国学院大学教授坂本太郎君、青山学院大学教授小林孝輔君、駒澤大学教授林修三君、慶應義塾大学講師村上重良君及び筑波大学教授村松剛君に参考人として御出席を願い、御意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  118. 藏内修治

    ○藏内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  119. 藏内修治

    ○藏内委員長 元号法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小宮山重四郎君。
  120. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 元号について、まず非常に端的な御質問をいたします。  この元号の法律ができますと、一部では大変誤解して、強制されるがごとき考え方を持っておりますけれども、この法律が施行された場合の状況について、どういうふうな形になるのか、総務長官からちょっとお答え願いたいと思います。
  121. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  元号の法制化ということが済んだ場合に強制をするものではないかというお話でございますが、法制化しましても、使用状況等につきましては現状と何ら変わりません。法案の中にも強制するということはございませんし、将来政令を制定いたします場合にも、そういうことは毛頭考えておりません。義務化するとかあるいは強制化するとかいうようなことはございません。
  122. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 そうしますと、元号だけ法制化する。中には、元号を法制化したのだから、あと国歌、国旗についても法制化をすべきだという声もございます。  一つの例を申しますと、昭和三十三年、学習指導要領においても、国民の祝日などの場合に国旗を掲揚し、「君が代」を斉唱させることが望ましい。それからアンケートにおいても、国歌、国旗についての希望とか、取り扱うべきだという考え方が過半数、ほとんど八〇%を占めている。国歌の方はちょっと落ちますけれども、六〇%台の賛成が出ております。  現在、国歌、国旗については、どのような根拠によって決めておるのでしょうか。
  123. 真田秀夫

    ○真田政府委員 今回御提案申し上げてお願いしているのは元号のことでございます。ただいま国旗及び国歌についての現行の法制上の取り扱いはどうなっているのかという御質問でございますけれども、まず国歌について申しますと、「君が代」は国歌であるということを決めた法制はございません。いつか、私、当院の予算委員会でお答えしたことがあるように記憶しておりまするけれども、学習指導要領で「君が代」のことにお触れになっておるのは、実は文部大臣が「君が代」は国歌であるというふうにお決めになる権限があるわけではなくて、むしろ逆に、「君が代」が現在わが国の国歌であるという国民的習律がまずあって、それを受けて学習指導要領にお書きになったものであるというふうに解釈するわけでございます。  それから次は国旗でございますけれども、国旗につきましては、これは御承知かとも思いますけれども、遠く明治の三年でしたか、例の商船規則というのがございまして、その商船規則の中に、日本の国旗は日の丸であるということが書いてございます。申し上げるまでもなく、これは商船についての話でございまして、国旗一般について、日本の国旗は日の丸であるということを決めた法制が別にあるわけではございません。ただ、よく法令を精査いたしますと、たとえば商標法とかそういう法律の中には、国旗は商標としての登録は認められないというふうに書いてございます。ただ、その場合の国旗というのは何か、どういう様式であるかということを商標法自身が書いているわけではございません。これはやはり国民的な習律によっておのずから国旗の様式というものは決まっているというふうに思われるわけでございます。そのほか自衛隊法あたりにも国旗の話が出てくるのであると思いますけれども、ただいま申しましたように、およそ万般の法律関係において日本の国旗というのは日の丸であるということを書いた法制はございません。ただいま申しましたように、気のついたところでは商船規則とか商標法とか、あるいは自衛隊法もそうだったと思いますが、そういう個別の法律の中に国旗のことに触れた規定が見受けられるというのが現状でございます。
  124. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 それでは、明治三年の太政官布告によって国旗の寸法等が決まっておるのです。それから国歌においても明治二十六年に官報で布告しておるのでございますけれども、率直にお伺いいたします。  慣例として、オリンピックでも、日本の船舶でも外国の港へ入るときには国旗を上げて入ります。これは慣例であります。国旗とは何ぞやという問題が残りますけれども、総務長官、率直にお伺いしますけれども、現時点において総務長官あるいは政府として、国歌、国旗を制定する、あるいは内閣告示のようなもので決める御意思はございますか、どうですか。
  125. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  国歌並びに国旗の取り扱いについてのお尋ねでございますが、外国の例をとってまいりますと、憲法で決めておられるところ、あるいは閣議で決めておられ、あるいはまた慣習として使っておられる、そういうようなこともあり、国民の方々の中から国歌、国旗を制度的に確立する必要があるのではないかという意向のあることも承知をいたしておるのでございますが、現時点におきまして、政府としてこれを制度的に、あるいは法律によるか、何かそういうふうな内閣告示というようなことで、現在制度的に確立するというような考え方は持っておりません。
  126. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 ぐどいようですけれども、それは法律では決めないという、しかし閣議決定のようなことではあり得るかもしれないという意味ですか。もう一度お答え願いたい。
  127. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 現在時点においては特に申し上げるような、早急にそういうことを閣議その他において決定をするという意図を持っておりません。
  128. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員 最後に、希望だけ申し上げておきます。  総務長官は決めていないと言う。しかし、世界各国で憲法で国旗を決めている、あるいは法律で決めている。勅令で決めている国がほとんどであります。また国歌においては、慣例、慣行というのが相当数ございますけれども、大体政府決定、あるいは法律、憲法で決めているようであります。日本については慣行になるのだろうと思いますけれども、少なくとも閣議あるいは何らかの形で国旗等の決定をしていく、法律によらないでも何らかの形で決めておく必要があろうかと思いますので、それは私自身の要望として申し述べて、私の質問を終わらせていただきます。
  129. 藏内修治

    ○藏内委員長 村田敬次郎君。
  130. 村田敬次郎

    ○村田委員 私は、一昨年は総理府の総務副長官をしておりました。そして、元号問題についての世論調査等に携わったわけであります。昨年は党の内閣部会長といたしまして、元号法案についてのいろいろな関連を持っておりまして、現在は元号法制化実現国民会議の一人でございますし、今回元号法案が提案をされたことについて、いろいろな意味で非常に関連が深いわけでございます。したがいまして、私はこの元号法案について賛成の立場でございますけれども、諸般の角度から質問を展開をさせていただきたいと思っております。  まず、元号法案提出するに至った背景等についてでございますが、元号は御承知のように、わが国第三十六代孝徳天皇の西暦六四五年、大化の改新の際に大化という元号が立てられました。そして大化の後、白維と続いたわけでございますが、孝徳天皇の崩御によって、その後約五十年間元号がとぎれました。しかし、第四十二代文武天皇が西暦七〇一年に大宝という元号を立て、元号が復活をいたしまして、それ以来、現在まで千二百八十年間とぎれることなく続いておる、いわば非常にわが国の伝統に根差した文化的な所産であるというふうに考えております。  よく本などで紹介をされる、大変おもしろいお話一つ紹介を申し上げますが、「江戸太平の春もたけなわの明和九年」、これは一七七二年でございますが、「後桃園天皇即位の翌年のゆえをもって改元のことあり、十一月から年号は安永元年と改められた。」というのでございます。「この年正月、悪徳政治家として後世から評判のよくない田沼意次が、老中職に就任して権勢の頂点に立った。世にいわゆる田沼時代のはじまりである。偶然のこととはいいながら、いまを時めく田沼にとっては、安永の年号はまさにわが世の春をことほぐ天来の声と聞こえたにちがいない。」ということで改元のことを喜んだということでございますが、「何ごとをも茶化し、酒落のめす江戸市民が、さっそく巷にはやらせた落首を、狂歌師蜀山人として知られる幕臣大田南畝が、随筆「半日閑話」巻八に筆録している。年号は安く永くとかはれども諸色高くて今に明和九」、明和九年でございますから迷惑ということで、「明和九は霜月きりで辰の年もふ安永と餅を春こむ」という狂歌落首が非常にはやったと伝えられておりますが、この事例は、江戸時代でも元号というものが庶民の間に非常に普及をしておって、こういった狂歌、そういったものの対象になったというような非常におもしろい、「改元という国家行事に対する江戸の庶民の感覚、いや、むしろセンスであった。」ということで紹介をされておるわけでございます。  これは元号がいかに長く国民に親しまれておるかということでございますが、日本の生活に溶け込んだ、伝統文化とも言うべきこの元号を、今後とも国民全体で使用し、後世に伝えていくべきものと考えておるわけでございますが、まず、政府見解を三原長官からお伺いをしたいと思います。
  131. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  仰せのように、元号は、わが国におきましては約千三百年にわたります長い間国民の間で使用されたものであり、歴史的、文化的に非常な意義を持つものだと思うのでございますが、なお、国民の大多数の方々がその存続を希望なさっておるわけでございます。政府といたしましても、この元号を将来とも存続いたしたい、そういうことでおるわけでございます。
  132. 村田敬次郎

    ○村田委員 一部には、元号は国際化社会の現代にはふさわしくはない、世界に共通して通用する西暦に一本化すべきであるというような意見もあるようでございます。しかし私は、国にはそれぞれ独自の歴史や伝統があり、それが国民の精神的な一体性を確保する役割りを果たしているのでございますから、単純に、便利だからということで判断すべきことではないと考えておるわけでございます。  また、外国におきましても、西暦以外のものを用いている国がいろいろあるわけでございまして、たとえばイギリス、バチカン、インド、マレーシア、イスラエル、西暦以外の年を数える方法を用いている国がいろいろあると思います。これについての実情をひとつ御説明いただきたいと存じます。
  133. 清水汪

    清水政府委員 お答えをいたします。  外国におきまするいろいろの紀年の方法についての御質問だと存じますが、外務省の手によりまして外国の事情を調べました結果、現在手元でわかっておりますものについて申し上げますが、西暦だけを使っているという国が六十四カ国ということでございます。これは最初に申しますが、約百カ国ぐらいの調査が判明しておるわけでございます。それから、西暦とイスラム暦を使っている、この場合にはさらにそのほかにその国独自の暦を使っている場合があるわけでございますが、共通としまして西暦とイスラム暦を使っている国、それが二十二カ国、それから西暦と仏暦を使っている国、それが三カ国、それから西暦とイスラム暦と仏暦を使っている国、それが一カ国、それから西暦と政治暦と申しますか、そういうものを使っている国が八カ国、その他の表示がさらに六カ国というような実例になっております。
  134. 村田敬次郎

    ○村田委員 そのように諸外国によっても年号の数え方にはいろいろの表示の方式がある、そしてその中では西暦が言うなれば一番万国共通の数え方であろうということになるわけでございます。  ここで元号の存続を図っていく場合に、法律による方法と内閣告示による方法の二つの方法があると思います。その違いについて承りたいわけでございますが、佐藤功上智大学教授の意見では、   旧憲法下、元号は天皇が「勅定」すると定めていた旧皇室典範そのものは帝国議会の関与する「法律」ではなく皇室の自主法であり、しかも、憲法とならぶ効力をもつものであった。天皇主権の旧憲法下においては、まさにこのような法形式が元号の本質と重みにふさわしい形式であったのである。   国民主権の日本国憲法の下では、「勅定」すなわち「天皇の意思」に代わるものは「法律」すなわち「国民の意思」であることはいうまでもあるまい。すなわち、具体的にどのような名称元号を定めるかは、内閣がしかるべき学識者の機関の意見に基づいて決定し、政令で定めることとするとしても、その根拠は国民代表たる国会の制定する法律によって定めるべきば当然であろう。 こういうふうに述べておられるわけでございます。  政府におかれましても、かつて三木内閣の当時は、内閣告示による方法を当時の西村総理府総務長官が示唆をしておられた経緯もあり、その後、法律による方法を提案されたわけでありますが、こうした経緯も踏まえ、三原総務長官から、法律による方法と、そしてまた内閣告示による方法についての見解をお示しいただきたいと存じます。
  135. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 法制局長官からお答えいたします。
  136. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいま御指摘になりましたように、旧憲法のもとにおきましては、元号の根拠は旧皇室典範第十二条にあったわけでございまして、その条文は「践神ノ後元号ヲ建テ一世ノ間二再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制二従フ」、こうあったわけでございます。申し上げるまでもなく、その時代における天皇は国の元首であり、統治権を総擁するというふうに憲法に書いてあったわけでございまして、その統治権の総攪者である天皇が勅定されるのが元号であったわけでございます。いまの憲法になりましてからは天皇の御性格がすっかり変わりまして、日本国の主権は、これはもう申し上げるまでもなく国民にあるわけで、天皇は国事に関する行為のみを行う国の象徴である、そういうことでございまして、天皇が国政に関する事務に関与されてはいけませんということが憲法に書いてございます。したがいまして、現在の法制の憲法のもとにおいては、もちろん天皇がお決めになるというような性格のものとはほど遠いということに相なるわけでございます。  それから、いまの憲法のもとにおきまして、しからば元号を存続するとした場合にその方式はどうするかということで、かつては、なるほど、内閣告示でそういう手続をまず第一段階として決めておいて、そしていよいよ改元が必要になった場合に、あらかじめ決めておいた手続に従ってまた内閣告示で、第二段目と申しますか具体的な改元を行うという方式もどうであろうかというような考えが一時ありました。ただ、そのころは実はまだ確たる方式については、模索中であったというふうに考えられるわけなんで、その後いろいろな世論調査等を見ますと、国民の八〇%近くの者が、今後とも元号は存続して、あってほしいという願望を持っております。  そこで、元号制度を今後とも続けるということになりました場合に、しからばどういう方法でやるかというのが次の方法論に相なるわけでございますが、その場合に、内閣の告示でやるというのと、それからただいま御提案申し上げているような法案の形でやるのとでは、中身としましては、いずれも国民に対して強制をするものではないという点では変わりはございません。変わりはございませんが、その内閣告示で行います場合には、全くそのときどきの内閣が決めるということに相なるわけでございまして、それに比べれば、現在御提案申し上げているような法律にその根拠を置いて国権の最高機関である国会元号制度の基礎を定めていただく、これがやはり日本国憲法の趣旨にも適合するし、また元号制度を将来にわたって存続させるについての安定性といいますか、制度としての継続性といいますか、そういう点において非常に重みが違うというふうに考えるわけでございます。
  137. 村田敬次郎

    ○村田委員 私は、元号法制化を決意した政府の態度はりっぱであると思います。評価をしていいと思います。この法制化を決意した理由について、三原長官から伺います。
  138. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  先ほども申し上げましたように、千三百年に及びます間、国民がこれを使用し、また社会的にも定着をし、大多数の国民の方々がこの存続を希望しておられる、そうした事実にこたえて、いかにすべきかということでございます。いまも法制局長官が申されましたように、国民の方々がそうした存続を希望されておるが、さてそれではどういうルールによってやっていくかというルールがございません。多分何とかしてくれるであろうという、慣習などでいいではないかという御意見もあるわけでございますが、そういう点においては、何らかだれかが決めてくれるであろうという御期待があろうと思いますが、そういう一つのルール、基本的なルールを確立しておく必要があるということでございます。それは政府の責任であると思うわけでございます。したがって、そういうためには、だれがどういうときに決めるかという一つのルールを確立いたしておきたい、そして国民の御要請にこたえてその存続を確立しておきたいということで、今回の法制化を決意した次第でございます。
  139. 村田敬次郎

    ○村田委員 国民の大多数が元号を使用し、またその元号の存続を希望していることが元号法案を提案した理由であるということでございますが、国民の元号使用の状況及び元号存続に対する希望の実情、これは私もそれに参与したことがあるわけでございますが、政府は過去何回か世論調査を行っておるようでございます。ひとつ、その世論調査の結果をこの際お示しをいただきたい。
  140. 清水汪

    清水政府委員 総理府で行いました世論調査の結果について、ごく概略を申し上げます。  昭和三十六年、四十九年、五十一年、それから昭和五十二年、この四回行いました調査の結果でございまして、主な分け方といたしましては、一つは、年号を使っているかどうか、あるいは西暦を使っているかどうかという使用の現状でございます。この点につきましては、四回の調査を通じまして、主に元号あるいは年号ということで答えのありましたものが、少ないときで八二%、多いときが八九%にわたっております。主に西暦を使っているという答えは、多いときが四%、少ないときが三%でございます。それから、元号と西暦を半々に使っているというのが、多いときが一一%、少ないときが七%、残りは「その他」ということになっております。各回を通じまして、八割ないし九割の方が現に元号を使っているということになるわけでございます。  次に、第二のグループといたしましては「次の天皇の代になっても年号制度はあった方がよいと思うか、廃止した方がよいと思うか。」という質問でございます。これに対しましては、四回の調査を通じまして「あった方がよい」、あるいは「どちらかといえばあった方がよい」というのをくくりますと、少ないときは昭和三十六年が五九%でございまして、これはだんだんふえている傾向がありますが、大体あとの三回は七六%ないし八〇%ということになっております。それから「どちらかといえば廃止した方がよい」というのと「廃止した方がよい」という二つの選択肢に答えをされた方は、昭和三十六年の時点において六%でございまして、あと三回は五%または六%という結果になっております。あとは「どちらでもよい」という答えでございますが、これは少ないときは一一%、多いときは二七%というようなことで、その他「不明」というのが三、四%ある、こういう状況になっております。
  141. 村田敬次郎

    ○村田委員 次に、これは本会議でも出ましたし、いままでの質問でも出ておるのでございますが、全国の都道府県、市町村の元号法制化の決議の問題でございます。私は、この一番新しい数字を総理府にお願いしたわけでございますが、ことしの四月四日現在で、元号法制化実現国民会議の調査によれば、全国で千五百四十四の市町村が決議をしておる。そして、沖繩を除く四十六都道府県が決議を行っておる。それから、そのうち総理府で受領をした市町村の数は千二百十四ということでございますが、これは全国の市町村三千二百五十五の半数になんなんとしておる。これは相次いで陸続と議決をされる状況にあるのだろうと思うわけですが、こういった地方公共団体の決議の状況を見てみましても、元号法制化は当然のことだという感じがいたすわけでございます。「地方の時代」ということで、地方公共団体の重みというものはますます加わってくるのでございますから、こうした都道府県、市町村の議決の実績というものは尊重されなければいけないと思うのです。ところが法制化反対論者は、「元号の存続は望むが法制化するまでもない」と答えた者が六四・五%あるという新聞社の世論調査をよく引用するのでございますが、この世論調査についての判断はどうですか。  また、最近見ますと、いまの世論調査は読売新聞の五十三年七月実施のものだと思いますが、さらに時事通信、NHK、共同通信、東京新聞、毎日新聞等々、それぞれ世論調査をしておるわけでございます。それらの報道機関の世論調査についての政府の所見をこの際承っておきたいと思います。
  142. 清水汪

    清水政府委員 ただいま御指摘のとおり、昨年の夏に読売新聞社の行いました調査といたしましては、法制化に賛成であるというのが約一五%、それに対しまして、存続はした方がいいが法制化するほどのことはないという項目に回答をした方が六四・五%ということが示されております。  それで、その種の設問の仕方の流れといたしましては、その後も十二月に時事通信の行いました調査がございまして、この時点におきましては、法制化に賛成という方が約二四、五%にふえておると同時に、存続はした方がいいが法制化するほどのことはないという、ただいまとちょうど同じような第二番目の項目に回答を与えた方が四七、八%というような傾向を示しております。そしてその次に、年を越しまして、二月二日に政府が現在御審議をいただいております法案国会提出いたしました後、二、三の機関で調査を行ってございますが、その一つに、NHKが二月十日前後に行いました調査がございます。その調査におきましては、聞き方がきわめて簡明でございますが、法制化に賛成であるというのと反対であるというのがございまして、賛成であるという方が約五八%ということになっております。その後、さらに毎日新聞社あるいは東京新聞等にも世論調査の結果が出てございますが、それらにおきましては、法制化に賛成というところに回答した方が二〇%台ということになっておりまして、第二番目の項目といたしまして、これは大体は同じように思いますが、表現が多少違っておりまして、元号はあった方がいいけれども、その方法については、ある調査におきましては政令によるとか、あるいは内閣告示によるとか、あるいは慣習的に使っていけばいいというふうな分かれた聞き方をいたしておりまして、そこに約五〇%ないしはそれを多少上回るような回答が寄せられている、こういうのが各種機関におきまする回答の姿でございます。  これに対しまして、私ども多少感想として持ちますことは、一つは、昨年の夏の時点におきましては、政府といたしましては法制化の方針を正式には対外的にまだ発表いたしておりませんし、したがって、当然のことながら、総理府としまして法案の内容を外に示しているというようなことはございませんでした。むしろ、そのようなこともありまして、法制化になれば即一般国民にも使用が強制されることになるおそれがあるというふうな受けとめ方が多くされたのではなかろうかと推定するわけでございます。そのような状況のもとにおきまして、先ほど来申し上げましたような回答が寄せられたものではなかろうか。  ある意味でその点が言えるのは、その後におきまして、年末から今年に入りまして政府の方で法制化の方針を明らかにするとともに、その法案の内容も次第に明らかになりまして、つまり法制化されましても、一般国民に使用を義務づけたり、強制したりすることはおよそないということがだんだん理解されるようになって、そのことが世論調査にも少しずつ反映されているように思います。  もう一つつけ加えさせていただきますと、それにいたしましても、先ほども法制局長官、総務長官からもお話がございましたように、存続という国民の希望、これがまず実態だと思いますが、これをかなえる方法についてどういう方法があるか。アンケートによりますと、政令あるいは内閣告示あるいは慣習というような選択肢も場合によっては示されているわけでございますが、先ほど来の御説明でも御推測いただけると思いますが、方法といたしましては、それでは十分な方法ということばどうも言えないのではなかろうか、いろいろ不備な問題があるのではなかろうか。しかしながら、それは法技術的な側面の問題もございまして、簡単なアンケートでもって的確にそれをこなすことはなかなかむずかしい面があると思いまして、そこはやむを得ない事情があるのではないかと思いますけれども、その辺のところからただいまのところにあらわれました回答につきましては、私どもとしてはむしろ存続した方がよい、そうしてそのためには何らかのルールが必要だという御理解は大多数の方において持たれている、そのことが少なくともそこには示されているというふうに受けとめることができるかと思うわけでございまして、その方法自体につきましては、まさに国会で御審議をいただくのが最も妥当ではなかろうかというふうに感想を持つわけでございます。
  143. 村田敬次郎

    ○村田委員 国民の大多数が元号を使用しておる、そしてまた国民の大多数が元号存続に対する希望を持っておる。ただ、これを制度として定着させる場合に法制化をすべきかどうかということについては、各新聞社あるいは報道機関の世論調査等から見て、まだまだ国民にそのことが認識をされてないうらみがあるのではないか。したがって、その認識をされてない面をこういった国会審議を通じ――先ほど三原長官もお答えになりました、またいま清水室長も答えられましたが、元号を法制化したといって決して強制するものではない、そしてそれは非常に民主的な方法で制定が行われるんだということをひとつしっかり国会審議その他を通じて国民に知っていただくということが大事なんだということを認識をしておるというふうにただいまの答弁を承ったわけですが、三原長官もそういうふうにお感じでしょうか。
  144. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 御指摘のとおり、私もそうした方向で今後国会審議の場において政府の意向を伝え、国民の理解を得たいと考えておるところでございます。
  145. 村田敬次郎

    ○村田委員 ぜひひとつそのことをこれからの審議、そのための重要な審議でございますから、それを通じて明らかにしていくことが必要だと思います。  それから、宮内庁の山本次長に来ていただいておりますから、この際宮内庁の方に御質問をさせていただきたいと思います。  まず、きょうは皇太子殿下の御成婚二十周年でございますか、大変記念すべき日だというふうに承っておりますが、天皇、皇后両陛下の御近況はいかがでございますか。
  146. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 天皇陛下は現在きわめて御健康でいらっしゃいまして、非常に数多くの国事行為を初めといたしまして、このごろは特に外国からの国公賓等も多くなっておりますが、そういった国公賓の接遇を含めましてすべての行事等につきまして積極的な御意向を持って臨まれているというぐあいに拝察をいたしているところでございます。  また、皇后陛下は御案内のとおり五十一年の七月の下旬でございましたか、那須の御用邸におかれましてお腰を痛められたのでございましたが、その後御静養をお続けになりまして、経過はきわめて順調でほぼ回復されているというような御状況になっていると存じます。ただお年のことでございますから、再発というようなことにつきましては十分御注意をお願い申し上げているというようなところでございまして、ことしにおきましても新年の祝賀の儀あるいは国民の一般参賀、こういったところには皇后陛下もお出ましになるというようなことでございまして、総体に申し上げまして両陛下とも御健勝でいらっしゃるというように存じております。
  147. 村田敬次郎

    ○村田委員 元号に対する宮内庁の基本的な立場について御説明を願います。
  148. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 元号につきましてはこれまた御案内のとおり、旧皇室典範の十二条に「践昨ノ後元号ヲ建テ一世ノ間二再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制二従フ」という規定と、それから旧登極令の第二条に「天皇践昨ノ後ハ直二元号ヲ改ム」、こう規定されていたわけでございますが、こういった明治憲法下の場合におきましても、改元に関しますことはいわゆる宮務ではございませんで、国務といたしまして内閣が取り扱ってきたところでございます。明治から大正になり、大正から昭和になるところではいずれもそういうような取り扱いで参ったところでございまして、そういうような経過から申し上げましても元号に関することは国務として、現在で言えば総理府本府におきまして取り扱われるべきものでございまして、宮内庁の所掌事務ということにはならないと存じますので、宮内庁といたしまして格別の意見を述べる立場ではないというように存じているところでございます。  ただ、もちろん過去の先例等につきましては、いろいろと宮内庁としても資料その他持っておるわけでございますが、そういうものにつきましての総理府との密接な連絡あるいは資料の提供というようなことはいたしておるところでございますが、直接宮内庁といたしまして所掌事務として取り扱うべきものではない、したがって特段の御意見を申し上げる立場でない、こう存じておるところでございます。
  149. 村田敬次郎

    ○村田委員 現行の皇室典範に元号に関する規定が取り入れられなかった理由はどういうことでしょうか。
  150. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御案内のとおり、現在の皇室典範の本質は皇位の継承、摂政の設置といったような憲法で掲げられました皇室典範で規定すべき事項というのを中心にいたしまして皇室関係のことを規定いたしているものでございまして、元号は、先ほど申し上げましたように宮務というようなかっこうのものではなく、国家全般の問題として純然たる国務等に関する事項でございますので、皇室典範の規定事項とすることは性質上適当でない、こういうような判断が現在の皇室典範が制定されました際にございまして皇室典範からは元号関係の規定が除かれた、こういうように承知をいたしているところでございます。
  151. 村田敬次郎

    ○村田委員 森鴎外が「元号考」というのを大正六年、宮内省の帝室博物館総長兼図書頭に任官した後図書寮での業務の一つとして着手した仕事でございます。森鴎外は大変精緻な判断を持った方でありますから、この「元号考」という本につきましても、これは私が実は「世界」の四月号で見まして、早速現物を見せていただきたいということで宮内庁にお願いをいたしましたところ届けていただいたので、これを鴎外全集の中で見てみたわけです。日本の千三百年にわたる元号についてのいろいろな非常に深い考証をしておりまして大変感銘をしたわけでございますが、これは宮内省に職を奉じていたときの鴎外の著作であります。  その中で非常におもしろいと思いましたのは、たとえば明治、大正についての「元号考」の考証によりますと、これらはともに易経を出典にしておるということでございますが、鴎外の調査によれば明治はかつて十世紀の後言の時代に今日の雲南省に当たる地方に建国をされた大理国の年号の中にあったということです。また、大正は越といっても春秋時代のではなくて、十六世紀に明の属国であった越の年号にある。そういったことで先例があったということを鴎外は発見をしたわけでございます。  そういうようなことも含めていわゆる元号の一世一元制という問題が、鴎外もこれを非常に真剣に検討したということを知ったわけでございますが、この中で追号と元号との関係について、これは宮内庁にまずお伺いをいたしましょう。
  152. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 元号が追号となった例といたしましては明治、大正、この最近の二例はそのとおりになっているわけでございますが、天皇の贈り名と元号との関係につきましては、従前も制度上は元号が必ず天皇の追号となるというぐあいに決められていたわけではないわけでございます。明治憲法下におきましての元号につきましては旧登極令の第二条に勅定する旨が決められている、それから一方追号は皇室喪儀令というところの第二条に決められているというような、それぞれ皇室令といたしましても根拠が違う、こういうような形でございまして、必ずしも追号が元号に連動するというような制度には定められていなかった、かように思っておるところでございます。
  153. 村田敬次郎

    ○村田委員 それではこれから一世一元の問題に質問を進めたいと思います。  元号法案はその第二項で「元号は、皇位の継承があった場合に限り改める。」こう規定をしております。これは一世一元制を意味しておると思いますが、いかがですか。
  154. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  御指摘のように、一世一元制を意味したものでございます。
  155. 村田敬次郎

    ○村田委員 明治より前に一世一元の制がとられたことがありますか。
  156. 清水汪

    清水政府委員 お答えを申し上げます。  明治以前でございますと、平安の初期におきましては数代の天皇の代にわたりまして一世一元という制がとられていたように記憶をいたしております。
  157. 村田敬次郎

    ○村田委員 明治以降一世一元の制がとられた理由は、どういうことでしょうか。
  158. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましては、明治元年のといいますか、慶応四年九月八日の詔書並びに太政官布告でございますが、その布告の趣旨を読みますと、従前はいわゆる吉凶の象兆によりということでございますから、おめでたい徴候あるいは災いの徴候、そういう異変、吉凶の象兆のあったときに頻繁に改める、しばしば改元があったということでございますが、今後はその点の旧制を革易し、こうなっておりまして、古いならわしを改めて一代の間は一つ元号だけにするという趣旨を詔書の形で仰せ出されておりまして、その旨が当時の太政官布告の形によりまして一般に示されているというふうに承知いたしております。したがいまして、その時点において考えてみますと、一世の間にいろいろのことによっては変えないんだということでございまして、そのようなことはすでに江戸時代の学識者の間にも議論がされておったところでございます。また、すでにその当時におきましては、隣の中国におきましてそういうようなならわしがとられていたということもあったわけでございますけれども、主たる意味といたしましては、むしろ頻繁に変えることの不便さを解消したというところにその意味があったものと理解するわけでございます。
  159. 村田敬次郎

    ○村田委員 昨年、総理府案として報道されていたものを見てみますと、「一世の間」という表現があったのですね。一世一元を定めているのなら、なぜ「一世」という言葉を今回の法律案についてやめられたのですか。
  160. 真田秀夫

    ○真田政府委員 今回御提案申し上げております法律案の内容につきましては、先ほど来の政府側からの答弁のとおり実質は一世一元でございます。  最も近い例では、先ほども引用いたしましたが、旧皇室典範の第十二条に「一世」という言葉が出ております。ただ、この旧皇室典範の十二条をよく読みますと、「践祚ノ後元号ヲ建テ一世ノ間二再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制二従フ」、こうあるわけでございますので、しかもこの旧皇室典範の時代にはこれは天皇がお決めになるというたてまえでございますので、「践昨ノ後元号ヲ建テ一世ノ間二再ヒ改メサルコト」という条文から、おのずから「一世」というのはその新天皇の御在位中であるということが文言上明らかなんです。ところが、今度の御提案申し上げておるものの条文では、そういうふうに「践昨ノ後元号ヲ建テ」云々なんということがないわけでございますので、裸で「一世の間」と書いたのでははっきりしないということが一つございます。  それから、いまの皇室典範に「三世」という言葉が出てくる条文があるわけなんですが、その場合の「三世」というのは、われわれに適用のある民法流で言えば三親等ということなんで、それとよく似た文句を違った意味、内容で用いることは適当ではなかろうというような判断から、今回の案をつくりました際に「一世」という言葉を特に避けたというのが実情でございます。
  161. 村田敬次郎

    ○村田委員 いま真田法制局長官が言われたとおりであるとすれば、「一世の間」という言葉は避けたけれども、実質は一世一元であって何ら変わるものではない、こういうことですね。
  162. 真田秀夫

    ○真田政府委員 それはお手元に御提案申し上げております法案自体の文言からおのずから明らかでございまして、「元号は、皇位の継承があった場合に限り改める。」と第二項がございますので、実質は一世ということでございます。
  163. 村田敬次郎

    ○村田委員 一世一元の元号は国民主権を定めた憲法の理念に反すると主張する者が一部におります。日本国憲法を見てみますと、公布文の中に「昭和二十一年十一月三日」という元号が入っておりまして、非常にそのことが印象づけられるわけでございますが、憲法第一条には、「天皇は、日本國の象徴であり日本國民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本國民の総意に基く。」と規定をされておりまして、この天皇の御一代に一つ元号を使用することとしても憲法の定める主権在民の精神に反することはないと私は考えております。  元内閣法制局長官の林修三氏がこのことに触れておりまして、元号法案と憲法との関係の問題について、   憲法上、天皇は日本園および日本国民統合の象徴なのであるから、天皇の在位と一つ元号を結びつけるということは、天皇の象徴的性格にもつともふさわしいことであって、それが憲法の趣旨に反するという議論は、どう考えても理解できない。   こんどの法案には、天皇の地位に変化を与える点は何もないのであり、憲法の趣旨に反するという論の出る余地は、まったくないものと思われる。 こういうふうに林修三さんは述べておりますが、この意見について政府の御見解を承っておきたいと思います。
  164. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいま御引用になりました林元法制局長官の御意見と私は全く同じでございます。憲法の第一条に、主権の存する日本国民の総意に基づいて、天皇は日本国及び日本国民統合の象徴であると書いてあるわけでございますので、その改元の時期として、皇位の継承があった場合に限るというふうにして、結果において一世一元ということの内容を盛り込んでも決して憲法の趣旨に反しない。のみならず、こういう法案を書いたからといって天皇の地位が昔の元首であられたときの旧憲法時代の、つまり統治権の総攪者としての天皇の地位に変革を来すというようなものでは毛頭ないというふうに確信している次第でございます。
  165. 村田敬次郎

    ○村田委員 私もそう思います。したがって一世一元の元号、そしてこの法律案は新憲法の定めておる象徴天皇制とマッチする、非常に調和するものと理論的にも考えていい、こういうことですね。
  166. 真田秀夫

    ○真田政府委員 改元は一体どういう事態が起きた場合に行うかというのは一つの政策問題だろうと思うのです。昔は、先ほども議室長から触れましたように吉兆、祥瑞ですね、おめでたいことがあったとか、あるいは天皇がかわられたとかあるいは国家に対して非常に重要な事件が起きたという場合にしばしば改元が行われていて、私の手元の記録によりますと、一代の天皇の間に九回、九つの元号が用いられている。つまり八回改元が行われたという事例もございます。しかし、そういう頻繁な改元ということになりますと、どうも日本国民が現在抱いている元号制度のイメージとかなり違ったものになると思います。  それからまた、別の改元の事由といたしまして、たとえば三十年目とか五十年目とか一定の期間を限って改元をしてはどうかという御意見があることも承知しておりまするが、それも現在日本の国民が抱いている元号のイメージとかなり違ったものになると思われます。ましていわんや明治以来もう百年の間一世一元ということになじんでおります。また憲法施行後もすでに三十年間、つまり現在の陛下が御在位中は昭和という元号を用いるのだということが定着しておると考えられますので、あれやこれやを考えあわせて、結局一世一元というのが最も現状に適した改元の方法であると信じてこの法案を立案したわけでございます。
  167. 村田敬次郎

    ○村田委員 明治憲法、そして新憲法、そのもとにおいて元号制度というものが制度として続いた時代、そして終戦によってとぎれた時代、しかし、事実たる慣習として現在は使われておるということでありますが、この一世一元の法制化は明治憲法下における元号制度の復活であるとか明治憲法への逆行という、これもためにする意見だと私は思うのでありますが、明治憲法下における元号とこの元号法案による元号とは性格を異にするものと私は考えております。この点について真田法制局長官の御意見をひとつ承っておきたい。
  168. 真田秀夫

    ○真田政府委員 御指摘のとおり、旧憲法下における元号と今日事実たる慣習として用いられ、またただいま御審議中の法案によって定められる元号とは本質的に違っております。  前者は、天皇が旧皇室典範等に基づいてお決めになったものであり、今日の元号は主権の存する国民が法律の規定に基づいて政府の責任で政令の形で定めるというものでございまして、これは明らかに性格が違うと考えております。
  169. 村田敬次郎

    ○村田委員 そこで、参議院の専門員をやっておられた佐藤忠雄さんという、これも専門家の方でございますが、この方が、一世一元制の法制化について非常にユニークな意見を述べておられる。   元号制定権限は、古来、内外の慣例としてその国の主権者、統治権者が保持していたのであるが、日本の新憲法では、 先ほど法制局長官もお触れになりましたが、第四条の規定によって、天皇は憲法に定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しないということになっておりますね。そして、また同じく日本国憲法の  第七条で天皇の国事行為が限定され、その中に、元号制定のことが掲記されていない以上、元号制定は天皇の権限ではなくなっている。   すなわち、一般行政権の作用として内閣総理大臣の権限になっているのである。ということは、ほんらい君主なり、統治権者が制定すべき性質のものを、内閣総理大臣が制定するという元号史上画期的事柄を法律は明確化することになる と考えられるわけでございます。そのことを佐藤忠雄氏は触れておるのでございますが、そういった意味で、新憲法下の元号法というのは非常にはっきりと違った法制的な意味を持っておると思いますが、いかがでしょう。
  170. 真田秀夫

    ○真田政府委員 元号性格が旧帝国憲法時代に比べてすでに変わっているということは、実は今日のこの法案によって変わるのではなくて、昭和二十二年五月三日の新憲法、現在の憲法の施行によって性格がすでに変わっておると理解しております。  なお、ただいま御発言の中に、現在の制度のもとにおける元号内閣総理大臣が決めるのだというふうに私お聞きしたのですが、これは正確には行政権の属する内閣が決めるというふうにおっしゃる方が正確なのではなかろうかと考える次第でございます。
  171. 村田敬次郎

    ○村田委員 よくわかります。したがって、この法律でそのルールを決めて、そして内閣がこれを決めるのだ、こういうことでいいですね。
  172. 真田秀夫

    ○真田政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  173. 村田敬次郎

    ○村田委員 したがって新憲法のたてまえ上は、元号は内閣の助言に基づいて天皇が制定することはできないということですね。
  174. 真田秀夫

    ○真田政府委員 天皇は日本国憲法に従って国事に関する行為のみをお行いになるわけでございますので、新しい元号法案による元号は、内閣の責任で定めるものでございます。
  175. 村田敬次郎

    ○村田委員 法案についてなお質疑を進めます。  「皇位の継承があった場合」とございますが、皇位の継承はどういう事由で行われるのか、またいつ行われるのですか。
  176. 真田秀夫

    ○真田政府委員 直接の条文といたしましては、現在の皇室典範の第四条に「天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。」という規定がございます。この条文が直接の根拠規定であろうと思います。
  177. 村田敬次郎

    ○村田委員 「皇位の継承があった場合に限り」元号を改めるという表現でございますが、いつ改めるのでございますか。これの時期を法文上明確にすることはできませんか。
  178. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  この法案のもとで新しい元号を選定するに当たりましては、事情の許す限り速やかに定めることが法の趣旨と考えております。同時に、政府には国民のためによい元号を選定しなければならぬという責任があるわけでございまするから、そういう点を慎重に留意をいたしまして決めてまいりたいと思っておるわけでございます。  そうした観点から、まず何人かの学識経験者と申しますか、そうした方々一つの案をお願いを申し上げる、そうして考案された中から内閣の責任において慎重にこれを決定いたしたい、そういうことでおるわけでございます。
  179. 村田敬次郎

    ○村田委員 大変大事な問題にだんだんかかってまいりました。慎重に質疑を進めたいと思いますが、元号の案を出してもらう学識経験者、いま三原長官がお述べになった学識経験者にはどのような人を考えておられますか。そして何人くらいと考えておられますか。あるいはそれらの方々の名前を発表されますか。
  180. 清水汪

    清水政府委員 ただいま総務長官の申し上げました学識経験者でございますが、これは事柄の性質上当然に専門の学者というような方がすぐ念頭に浮かぶわけでございます。もちろんそういう学者の方にお知恵をおかりすることが必要と思っておりますが、しかしながら、いろいろの御意見を伺っておりますと、やはりそういう者だけに偏らない方がいいのではないかというふうなお話をよく承っております。したがいまして、そういういわゆる専門の学者だけには偏らないように、広い視野から適当な適任の方をお願いしたい、すべきであろうというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。  それからまた、何人ぐらいかという御質問でございますが、この点につきましては、ただいま申し上げましたようなどういう方にお願いを申し上げるかということとの関連もございますので、現在のところで具体的にお答え申し上げるだけの用意がない点を御了解いただきたいわけでございますが、そう少数でもあれでございますし、しかし余り多くということもいま申しましたような観点からちょっと適当ではないのじゃないか、若干名というふうにただいまのところわれわれとしては考えているわけでございます。  それからまた、その名前を公表するのかどうかという御意見でございますけれども、その点につきましては、今後の問題といたしまして研究をさせていただきたいと思います。と申しますのは、具体的な運びを想定いたしました場合に、かなり慎重な配慮を払わなければならない要素が幾つかあるように思いますので、今後十分慎重に検討をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。
  181. 村田敬次郎

    ○村田委員 その学識経験者のグループは審議会なんですか、それとも審議会ではないのですか。
  182. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 現在のところ、審議会という考え方は持っておりません。御承知のように、審議会は法律に基づいて設置するものでございます。なおまた、これが招集等につきましては、先ほど法の趣旨等から皇位継承があった場合になるべく速やかに制定をいたしたいというような考え方もございまして、いままでの審議会方式はなじまないという考え方のもとに進んでおるところでございます。
  183. 村田敬次郎

    ○村田委員 やはり法律問答でございますが、即時に改元を行うとした場合に一体新元号はいつから効力を持ち得るかという問題なんですね。恐らぐ政令によって定められるのですから、施行の時期というのは政令で定められることになるのでしょう。これは政令の公布された時点だ。その政令の公布時点というのは、「その法令を掲載した官報が印刷局から全国の各官報販売所に発送をされてこれを一般希望者がいずれかの官報販売所または印刷局官報課において閲覧し、または購読しようとすればそれをなし得た最初の時点」という最高裁の判例があるようですが、そういうことなんですか。
  184. 真田秀夫

    ○真田政府委員 この法案が成立しました暁におきましては、この条文のとおり政令で新しい元号が定められます。したがいまして、いつからその新元号が効力を持つことになるかということは、当該政令で決めることに相なります。で、仮にその政令で何月何日というふうに書けば、当該定められた日が新元号の施行の効力を持つ日になりますし、公布の日から定めるということであれば、ただいまおっしゃいましたような最高裁判所の判例の趣旨に従って、官報が官報販売所なり印刷局の当該場所に掲載されて国民が見ようと思えば見れるという状態に初めてなった時点、その時点に公布の効力が出る、そういうふうに考えております。
  185. 村田敬次郎

    ○村田委員 これはやはり従来の法制と非常に違う点なんですね。大正から昭和への改元の際には、天皇の崩御の時点を境として一日が二つの元号に分かれたわけです。そうですね。で、次に改元がある場合には、天皇の崩御の時点を境にして二つに分かれるということでなく、いま法制局長官のおっしゃったような政令の定めるところによることになるわけですね。
  186. 清水汪

    清水政府委員 御指摘のとおり、今後におきましてこの法案のもとで新しい元号が定められる場合には、政令によるわけでございまして、政令につきましては、ただいま法制局長官からお話のございましたように、一定の効力のあらわれ方というものが決まっております。したがいまして、それによるわけでございます。  したがいまして、具体的な場合にどうするかという意味の御質問だろうと思いますが、その点につきましては、現時点で申し上げられることは、まず第一点は、この法案趣旨といたしまして、事情の許す限り速やかに改元を行うというまず基本の趣旨がございますので、その趣旨を踏まえますとともに、先ほど総務長官お話にございましたように、よいものを選ぶという意味での慎重な配慮が必要である。それから、さらにもう一つつけ加えさせていただきますと、その改元に伴ういろいろ実務の、社会と申しますか国民生活、そういった面におきまする影響という問題もやはりございますので、その点にも慎重な考慮を払いまして、具体的ないつから新しい元号にするかということを決定すべきものであろうというふうに現在のところ考えておるわけでございます。
  187. 村田敬次郎

    ○村田委員 元号使用の便、不便を考えた場合に、新元号は皇位継承のあった年の翌年の一月一日から使うこととした方がよいという意見があるわけです。そういう御意見を私ども承っておるわけでございます。踰年改元という問題ですね。この点について政府はどう考えておられますか。
  188. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  御指摘のように、踰年改元という御意見のあることもよく承知をいたしておるわけでございます。先ほどから申し上げておりますように、皇位の継承があった場合にはできるだけ速やかに元号制定をいたしたいという方針でわれわれおるわけでございますが、実際の場合にいつから改元するかということについては、先ほども清水君が申し上げましたように、皇位継承の時刻でございまするとか、国民の感情、改元に伴う国民生活への影響等、各般の事情を考慮いたしまして、踰年というようなことはいまのところ考えておりません。そういういろいろな御意見を参考にいたしまして、慎重に決定をいたしたい、現在のところはそういう考えでおるわけでございます。
  189. 村田敬次郎

    ○村田委員 そうすると、これは非常に大事なことですから確認をしておきますが、政府としては、踰年改元ではなく、御即位の事態が起これば一日も早く改元をするということで事務を進めていきたい、そういうことですね。
  190. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 率直に申し上げまして、法の趣旨が、皇位の継承があった場合にはできるだけ速やかに改元をいたしたいという趣旨を踏まえておりますので、やはりその時刻、たとえば具体的に、率直に申しますと、その年の十二月の末とかいうときでございますれば、そういうものをまた一つの参考意見として踏まえていかねばならぬと思いまするけれども、いま申し上げましたように速やかにするという法の趣旨を踏まえて、そして国民の生活の問題あるいはいろいろな国民感情の問題等、そういう点を十分踏まえ、また国会におきまする審議過程等のそうした御意見等を踏まえて慎重に決めてまいるべきであろう、そう考えておるところでございます。
  191. 村田敬次郎

    ○村田委員 改元に伴う影響についてでございますが、改元をされた場合、元号の切りかえのためにある程度各方面に影響が出るということが考えられます。たとえばカレンダー、日記帳などの印刷物、それから雑誌など出版物の発行の日付など、改元後も旧元号で印刷されたものが出回ることとならざるを得ないと思うのですが、このような問題について政府の一般的な見解を承っておきたいと思います。
  192. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 御指摘のとおり、国民生活に定着をいたしておりまするし影響するところも多いということは想像いたしておるわけでございますが、しかし、大正から昭和の時期にもたとえば印刷物あるいは雑誌等におきまして大正十六年というようなことが印刷されたままこれが使用されたというようなことも承知をいたしておるわけでございます。しかし、旧元号による表示がなされておるものがそういうことであるわけでございますが、その年次の表示というようなものは、それがために発行の時期がわからなくなるというようなものではなくして、したがって国民の良識、英知等によって私は処理されていくものであろうと思っておるところでございますが、しかし、いろいろ国民の生活等に影響を及ぼさないようにいろいろな点から事前に対処する処置は私どもにおきましても現在検討を進めておるところでございます。
  193. 村田敬次郎

    ○村田委員 元号名の決定に関する事務は政府のどの部局が担当するのですか。
  194. 清水汪

    清水政府委員 ただいまの御質問は、元号名を決める役所としての事務はどこが所掌するかという御趣旨のように承りましたが、それは現在の総理府設置法のもとにおきまして、大臣官房審議室でその事務を所管するというふうに考えております。
  195. 村田敬次郎

    ○村田委員 総理府設置法の第六条に「大臣官房の事務」というのがあって、「大臣官房においては、総理府の所管行政に関し、左の事務をつかさどる。」その十五号で「他の行政機関の所掌に属しない事務についてこれを調査し、企画し、及び立案すること。」という条文がある。それから総理府本府組織令の第五条に、いま清水議室長のお答えになった審議室の所掌事務があって、「審議室においては、次の事務(交通安全対策室、広報室、老人対策室及び同和対策室の所掌に属するものを除く。)をつかさどる。一 各行政機関の事務の連絡に関すること。二 他の行政機関の所掌に属しない事務のうち行政施策に関するものを調査し、企画し、及び立案すること。」この根拠規定だと考えていいのですか。
  196. 清水汪

    清水政府委員 御指摘のとおりでございます。
  197. 村田敬次郎

    ○村田委員 元号名の選考の基準でございますが、どのような基準で選考するお考えですか。これは大事なことですから、大臣からお答えいただきたいと思うのですが……。
  198. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほど申しましたように、文化人あるいは評論家の方々等から、できるだけそういう幅広く学識経験者の方に御依頼をしようと思いますが、それらの方々によって出ました元号の候補名というようなものを提出を願って、総理府総務長官において一応それらの学識経験者から候補名を策定願いました経過を拝承し、これを一応整理をいたしまして、いまは全くの構想でございますが、次いで総理府を中心にする三長官がここでまたそれを整理をいたしまして、次いで国会の衆参の正副議長さん等にもお諮りをし、なお次いで閣僚の懇談会にこれをお諮りをし、まだいまのところ一候補名というようなことにするか二にするか、そういう点ははっきりしておりませんけれども、最終的に閣議で決定を願う、そういうような構想でおるところでございます。
  199. 村田敬次郎

    ○村田委員 その際に選考の基準で、わが国における元号の歴史だとか国民のために定められるとかいうようなことから考えて、たとえば書きやすいとか読みやすいとか使いやすいとか出典があるとか、そういうような基準についてはどうですか。
  200. 清水汪

    清水政府委員 ただいま御質問の基準ということでございますが、これは先般の衆議院の本会議におきまして総務長官からも若干お答えを申し上げたところでございますが、選考のいわゆる基準というようなものを政府の側が非常に何かかちっとした形で決めて、その決めたものを先般来申し上げておりますお願いをする学識経験者の方に政府の方からお示しをしてどうこうする、そういうような運び方がいいのかどうかという点が実はいま私どもの内部におきましても検討中でございまして、先般の本会議におきまするお答えにおきましては、それが必要かどうか、必ずしも必要とは考えておりませんがというふうにお答え申し上げているところでございますが、ただ、それにいたしましても、その後ただいま総務長官からお話のありましたような選考が行われていくことも含めて考えました場合には、やはりわが国におきまする元号のいままでのあり方というようなところから見ましても、おのずから元号についてこういうものだというふうに万人が認めるようなところというのは出てくるであろうというふうに想定いたすわけでございまして、そういう意味におきまして申し上げさせていただければ、いま先生のおっしゃいましたように、やはり広く使うものでございますので、まず読みやすい、書きやすいあるいは使いやすい、それにまた加えまして、元号として使っていく上でよい意味を持っている名称であることというようなことはこれは衆目の一致するところであろうというふうに思うわけでございます。なおつけ加えれば、これは当然のことではございますが、従前に元号として使われたことのないものであることというようなことは、これは当然のこととして要求されることだろうと存じておるわけでございます。
  201. 村田敬次郎

    ○村田委員 わが国の元号というのはいままで幾つあったのですか。  それからまた、同じ元号が二回以上用いられたことがありますか。
  202. 清水汪

    清水政府委員 わが国におきましては、大化以来二百四十六というふうに数えるのが定説のように承知をいたしております。  もちろん、同じ元号が二度使われたということはわが国においてはございません。
  203. 村田敬次郎

    ○村田委員 北朝、南朝の元号というのは、その中でどういう計算をしておりますか。
  204. 清水汪

    清水政府委員 失礼申し上げました。  御指摘の北朝、南朝の元号両方を合計いたしまして二百四十六というふうに申し上げているわけでございます。
  205. 村田敬次郎

    ○村田委員 歴史上一つ元号の続いた平均年数、それから、現在までに最も長く続いた元号、それから最も短かった元号名称、そして年数、そういうものについてひとつお答えください。
  206. 清水汪

    清水政府委員 元号の平均は約五年ちょっとということでございます。大化元年が西暦で六四五年でございますが、それから昭和五十四年までの千三百三十四年ということで、二百四十六ということで計算をいたしますと、そういうことになるわけでございます。約五・三年ということでございます。  それから、一番長く続いた元号は、ということでございますと、現在用いられておりまする昭和がすでに一番長いということでございます。また、一番短かった元号は、鎌倉時代の暦仁、「れきにん」または「りゃくにん」と呼ばれますが、これが二カ月ということでございます。
  207. 村田敬次郎

    ○村田委員 元号の出典はどういうものから出ていますか。  それから、元号に使用されている漢字はどのようなものが多いか、二字より多い漢字を用いた元号の例があるか、使用した漢字に制約があるか、そういったことについてお答え願います。
  208. 清水汪

    清水政府委員 元号のいわゆる出典といたしましては、従来の例でございますと、中国の四書五経というものが主として出典として使われているわけでございます。  それから、元号にはどういう字が用いられているかということでございますが、これは計算いたしますと、全部でいままで七十一文字が用いられております。と申しますことは、同じ字がかなり多く用いられているわけでございまして、その一番多い例を申し上げますと、永久の永という字でございますが、これが頻度といたしましては二十九回用いられております。その次に多いのは元号の元という字でございまして、これが二十七回というようなことになっております。  それから、大部分元号は漢字名二字でございますけれども、奈良時代におきまして、四字の元号がございます。天平感宝、天平勝宝、天平宝字、天平神護、神護景雲というこの五つが四字でございますが、それ以外の元号はすべて漢字二文字ということでございます。  それから、使用する漢字について何か制約があるかという御質問でございますが、その点は特にはいままでのところ制度的な意味の制約というようなものはなかったかと思いますが、よい字を選ぶというような選考過程におきましていろいろ練られたということがあったように言われております。
  209. 村田敬次郎

    ○村田委員 この法律案によりますと、改元事由というものは天皇の崩御という事態一つでございます。ところが、いままでの元号の歴史で見ると、改元事由というのはいろいろあったということが実は森鴎外の「元号考」にも記されておりますし、いろいろ読むのでございますが、この改元事由にはどういうものがあるか、お答えを願いたいと思います。
  210. 清水汪

    清水政府委員 改元事由といたしましては、まず第一は、代始め改元ということでございます。  これは、先ほども申しましたことに関係しておりますけれども、ごくわずかの例外を除きましては、百二十四代の今上陛下までの間で、元号の歴史が始まって以来、代始め改元が行われているわけであります。わずかの例外はございます。  それから、次には、吉凶の象兆によりまして改元があるわけでございますので、祥瑞改元、これはおめでたい現象のあったときに改元されたということで、これは主として元号の歴史の中では早い初期の時代に多かったように思います。  それから次に、災異改元と言われておりますが、これはよくない方の事象でございますが、その災異のあったときに改元をするということがございます。  それから、もう一つのグループといたしましては、辛酉あるいは甲子の改元と言われておりまして、これは辛酉あるいは甲子と申しますのは、十干十二支の方から来ているその言葉でございますが、そのような説、この根拠になります、識緯説と言われておるようでございますが、その説に基づきまして、辛酉の年あるいは甲子の年に改元をするという例が、やはりこれもかなりあったというふうに記録されております。
  211. 村田敬次郎

    ○村田委員 その意味で、私が最初に御紹介した事例、明和九年という、一七七二年でございますが、それが安永元年に改められた。これは天皇の御即位によるもので、いわゆる代始め改元に当たるものだと思います。  それで、これからは、改元事由というのは、そういうことで法律ではっきり明定をされたわけでございますが、いま室長のお述べになった改元事由というものを、多い事例を調べてみますと、災異による改元が百十一、代始め改元が七十一、それから革年改元が三十五、いわゆる辛酉革命、甲子革令というやつですね。それから祥瑞改元が十三、未詳十六というような改元事由になっておるようです。したがって、改元の事由が明治以降は天皇の崩御という事態によって即位が行われる、それによって改元をされるということに統一をされるようでございます。  それから今度は、幾つか具体的な例について、対応策を聞きたいのでございますが、まず、法律の条文や附則などに将来の日付が書かれているものは、すべて改正しなければならないかどうか。
  212. 清水汪

    清水政府委員 法令におきまして、たとえば大正十六年一月から何々を支給するあるいは何々に変えるというような規定が当時もあったわけでございますが、そのような場合におきましても、それは特定の年月あるいは年月日を指しているという点におきましては共通に理解されているというふうに、そういう見解のもとに、それは当然に読みかえられて通用するという見解のもとに、特別そこをすぐ改めるということなしに有効なものとして取り扱われているわけでございます。
  213. 村田敬次郎

    ○村田委員 それから、政令や省令で定められている様式で、昭和の文字が入っているものは、政令や省令を改正しないと使用できなくなるかどうか。
  214. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましても、結論といたしましては、特にすぐに改正する必要はないというふうに政府としては考えております。  その理由は、昭和というふうに、様式の中に不動文字で昭和年月日というふうに示してあるものがあるわけでございますが、それはそこに特定の日付を書くということを様式ひな形として指定しているという意味でございますし、そこに昭和と示してありますのは、元号によってその表示をしていくということを示しているというふうに解しまして、改元があっても、その省令その他のものの様式自体の中をすぐに改正しなくても差し支えない。ただ、そのような点につきましては、将来にわたりましていつまでもそのような形式が、形骸がいわば残っておりますことは、必ずしも適当とも思われませんので、適当な機会があれば、そういうものを適宜まとめて整理をしていくというようなことは、事務としては出てくるであろうというふうに想定をいたしているわけでございます。
  215. 村田敬次郎

    ○村田委員 政令、省令等は改正をする必要がないといたしましても、役所の窓口に備えつけてある昭和の文字が印刷してある用紙類はそのままでは困るでしょう。この点はどのように対処されますか。
  216. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましては御指摘のとおり、改元になりますればそのままで使うわけにはまいりませんので、これは御協力をいただく問題でございますけれども、新しいものの印刷ができるまでの間は便宜従前のものの該当のところを手書きで直して、あるいは消したあと応急的な判のようなもので訂正をする等の方法で、便宜対応をしていただくことが必要だろうというふうに考えております。
  217. 村田敬次郎

    ○村田委員 今度は民法上の問題ですが、手形、小切手などの振出日または支払い期日などは旧元号で表示をされていても当然効力に影響ないと思いますが、この点どうでしょう。また、改元後にうっかりして旧元号により振出日を書いた場合に、その効力はどうなりますか。
  218. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましても、ただいままで申し上げたことと同じ考え方でございまして、特定の年月日を指しているという点につきましては疑問がございませんので、効力には格別の影響はないというふうに解しておるわけでございます。
  219. 村田敬次郎

    ○村田委員 改元という事態は頻繁に起こることではない、またその影響はひとしく全国民が受けるものでありますから、国民の一人一人が良識を発揮して適宜対処していくというものであると思うのですが、その点大きな混乱が生じたり一部の人たちだけに負担が偏ったりすることは好ましいことではないと思うので、政府としては当然その点に万全の注意を払っていただかなければならぬと思います。大臣、これについて政府の所見をお伺いしておきたいと思います。
  220. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  御指摘のように、改元を実施いたしますれば各種の国民生活あるいは諸手続、届け出等にいろいろ問題が起こることは承知をいたしております。したがって、国民生活あるいは国民の利益享受というようなものに悪影響が及ばないように、どういう事態でそういうものが発生するであろうかというようなことをただいま細かく検討して、それに対処する準備をいたしておるところでございます。
  221. 村田敬次郎

    ○村田委員 ぜひそういった問題は政府で十分に配慮をしていただきたいと思います。  それから、これは一番重要な問題の一つでありますが、国民が最も知りたいことは、元号の使用のことについてだろうと思います。元号法案には元号の使用に関する規定はありません。これは当然のことだと思いますが、元号は法律により強制されるから使うというような性質のものじゃない。国民がみずから使用すべきものであると思うのです。もちろん、使用に関する規定がないからといって元号を使用しないということでも困るわけでありますが、国や地方公共団体は現在元号をどのように使用しているのか、また元号法成立後はどのようになるのか、現在の使用の方式と元号法制定後が変わるのか、これは大きなポイントだと思います。これをお答えいただきたいと思います。
  222. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  御指摘のように、元号使用の便、不便を考えた場合にいろいろ問題が予想されるわけでございます。  そこで、皇位の継承があった場合は先ほど申しましたように、事情の許す限り速やかに改元をすることが法の趣旨でございますが、実際の場合にはいつから改元するかについて、皇位継承の時刻、国民感情、改元に伴う国民生活への影響等、各般の事情を十分考慮してやらねばならぬという、御指摘のとおりでございます。そういう御指摘の点を踏まえながら慎重に対処してまいる所存でございます。
  223. 村田敬次郎

    ○村田委員 したがって、現在の状態と法制定後と、使われる状態においては何ら変わらないというふうに考えていいんですね。
  224. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 現状と法制定後、何ら変わるところはございません。
  225. 村田敬次郎

    ○村田委員 法律ができたから地方公共団体や国やその他の法人等にその使用を強制するという事態は全くないのだ、そんな心配は全くないのだ、こういうことですね。
  226. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  そのとおりでございます。全くございません。
  227. 村田敬次郎

    ○村田委員 元号の法制化に反対している人の多くは、法制化をすると元号の使用が義務づけられて西暦の使用が禁止されると考えているような人も一部にあると聞いております。この点については全くそうでないということがいままでの御答弁においてはっきりしていると思いますが、この点、大事な問題でございますから、ひとつもう一回確認をしておきます。
  228. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどから何回も御指摘がございましたが、この法案は一般国民に元号の使用を義務づけるものでは絶対ございません。したがって、今後とも元号と西暦とは併用をやっていかれるものと思うわけでございます。
  229. 村田敬次郎

    ○村田委員 国民の一番身近なものとして、出生届などがあります。これは元号で書かなければならないのか、西暦でも受理されますか。
  230. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  国の機関として事務の統一的な体制から考えますれば、できるだけ元号を使用願いたいと考えておるわけでございますけれども、しかし西暦でお出しになりましてもそれは受理いたします。これは現在もそのとおりやっておるわけでございまして、変わりはございません。
  231. 村田敬次郎

    ○村田委員 先ほど清水議室長が答えたような回教暦とか仏教暦とか、そういうので出した人があったら受理されますか。
  232. 清水汪

    清水政府委員 わが国におきましては、一般の年の表示の方法という意味の合意と申しますか慣習といたしましては、回教暦あるいは仏教暦というものが一般に用いられているというふうには言えないのだろうと思います。したがいまして、公務を統一的、円滑、迅速に処理するという立場からはそれはちょっと書き直していただかなければならないだろうというふうに考えております。
  233. 村田敬次郎

    ○村田委員 学校教育との関連で伺っておきます。  教科用図書検定基準実施細則というのがありまして、学校教育においては、西暦により年を表示することが広く行われております。今後、国民が次第に西暦を使うことになじんでいくということが考えられますか。その点どうでしょう。
  234. 清水汪

    清水政府委員 学校の教科書の問題につきましては、元号、西暦を併用していくという基本的な考え方のもとに教科書の検定その他の教育行政上の事務が行われておるように承知をいたしておるわけでございますが、さらにただいまの御質問の意味について考えますと、元号の使用あるいはいわゆる西暦の使用、そうしたものは恐らく単に学校教育の場だけではなくて、国民の生活一般を通じましておのずからに使い分けが進んでいくというものであろう、そういう御趣旨の御指摘であろうと理解するわけでございまして、そのような意味におきましては、御指摘のとおり両方が常識的に使い分けが行われていくということは今後とも進んでいくものであろうというふうに想像するわけでございます。
  235. 村田敬次郎

    ○村田委員 ふだん使用しているのは年号か西暦かという総理府の調査で、年齢別に区分してあったと思うのですね。年齢別に区分した場合に、高年齢にいくほど元号を使っておって若い年齢にいくほど西暦が多いというようなことがありますか、どうですか。
  236. 清水汪

    清水政府委員 大勢といたしましては、やはり若い年齢の方が元号を使う割合がどちらかと言うと少ない、西暦を使う割合が多少多いという傾向はあるように思いますが、具体的にその点を数字で申し上げますと、これは昭和五十二年八月の、最新の総理府広報室の調査の結果でございます。  ふだん使用しているのは年号か西暦かという設問でございますが、主に年号を使っているという回答の年齢別内訳を申し上げますと、二十歳から二十四歳までの方は七六・一%、二十五歳から二十九歳までが八三・九%、三十歳から三十四歳が八五・五%、三十五歳-三十九歳の方は八九・二%、四十歳から四十四歳九一・二%、四十五歳から四十九歳は九〇・八%、五十歳から五十四歳九一・一%、五十五歳から五十九歳九三・三%、六十歳から六十九歳九二・九%、七十歳以上は九四・八%ということで、一番少なくても七六%というところからだんだんと上がってきているという結果があらわれております。
  237. 村田敬次郎

    ○村田委員 奥平康弘東大教授、これは憲法の先生でありますが、この人が書いておられるものを見ますと、法学セミナーの増刊の中で、学生についての世論調査をしたのです。「大学生の天皇観」というアンケート調査でございますが、この調査の中で元号制度について「次の天皇の代になっても、昭和とか大正というような元号制度はあった方がよいと思いますか。それとも廃止した方がよいと思いますか」という質問に対して、学生の二八%は「あった方がよい」、同じく二八%が「どちらかといえばあった方がよい」、両方合わせると五六%だと。逆に「どちらかといえば廃止した方がよい」というのと「廃止した方がよい」という「ふたつを足した元号廃止派は約三〇%をしめるにすぎない。要するに元号制度は、学生諸君のあいだでも存続を支持する割合が高く、廃止論は存外に不人気だ」ということが指摘をされております。これは学生さんでございますから、学生さんの場合は比較的改革的な思考が強くて、共産党のようなことを言っている学生が多いのでございますけれども、その学生さんですら元号支持論が非常に多い。おもしろいことです。したがって、   元号制度はこんなにもつよく国民に支持されている以上、政府は内閣告示などのような裏道をとおらずに、正々堂々、国民代表機関たる国会にはかって、これに法律上の基礎を与えるべく努力すべきであろう。その方が「一世一元」にこめられた尊皇思想に忠実なことはまちがいない。 こういうように奥平教授が結論をつけているのでございます。こういった世論調査その他の調査を読んでみますると、まさに元号という問題についての国民の思考、国民の考え方、それは非常に堅実な、歴史的なものを踏まえておるということを私どもは感ずるわけです。その意味では非常に力強い印象を持つわけでございます。  だんだん時間も迫ってまいりましたから、この辺で結論的な考え方に私入っていきたいと思っております。  元号法案審議について、いままで出ました官報その他大体目を通させていただきました。たとえば本会議における討論というようなものも読ませていただきましたし、委員会におけるいろいろな質疑も一応目を通させていただいたのでありますが、野党の一部の討論の中に、   万人に共通な悠久の歴史の流れを、生物体である君主の在位期間によって区切るというところに、元号制本来の致命的欠陥があるのであります。天皇の寿命によって時間が分断され、いつ変わるかもわからず、また日本でしか通用しないような元号は、年の数え方という観点からすると最低なものであります。だからこそ世界じゅうから消え去り、日本にだけ残っているのであります。 という強調された部分がありました。これは恐らくアクセントを特につけられたのだと思いますが、この発言の中には、元号法の、私どもがいままで述べてきたような歴史的な沿革も御理解をいただけなければ、元号に対する一億一千万の国民の愛着というものも理解しない、言うなれば大変なアナクロニズムというのですか、歴史と現実を踏まえない議論、不毛の議論が残っておるというふうに私は感じたわけでございます。  いろいろな意見がたくさんございまして、学者の意見、その他ジャーナリストの方の意見、いろいろ読んでみました。がしかし、これらをことごとく紹介することは不可能でありますから、私が多くを読んだ中で、特に二つのアクセントのある議論が元号法、元号あり方というものについて私は非常に典型的なものだろうと思うので、この際、最後にそれを紹介して、三原長官の御所見を承りたいと思います。  一つは、武田清子さんという国際基督教大学教授の書かれた「元号問題を考える」という、これは朝日に二日続きで連載されたものでございます。大変骨のあるりっぱな論文だと思います。この論文全部を紹介することはできませんが、その筋だけを申し上げますと、   国民の間に元号問題をめぐる論議の高まる中で、政府は既に同法案国会提出しており、元号法制化の問題は、今国会一つの対決課題となってきている。   ところで、新憲法下の「元号問題」ということは、最近になって、急に論議の的になってきたかのようであるが、実は、これは初めてのことではない。一九五〇(昭和二十五)年二月には、「元号廃止」の法案(「年の名称に関する法律案」)が用意され、今にも国会提出されるか――という状況にあった。ということを書いておりまして、昭和二十五年、一九五〇年から二十九年を経て逆の法案が登場したのだということを、武田教授は紹介をしておる。   二十九年の時の流れを距てて、「元号」に関して全く逆の法案が用意されるという現象は、日本人の何を物語るかを私共に考えさせる。何年かの時の流れを距てて、同一のものに対して全く反対の考え方が出てくるのは必ずしも元号問題に限らない。   国民思想(思潮)が国際主義、あるいは、合理主義的思想にむかって開かれている時期と、日本の特殊思想に固執して閉じた伝統主義に向かう時期とが、時計の振り子のように反復を繰り返してきたように思える。「世界暦」と「天皇暦」元号のことを天皇暦と規定しているのですね。   との間を二十九年の時の流れを距てて一つの極から他の極へゆれている元号問題も、こうした反復の一つの典型的事例のように思える。国民の運命を未来にむかってきり開いてゆくための信頼出来る羅針盤なしに時の風向きのままに流されてゆく舟のような心もとなさを覚える。  普遍的価値を見定めて、そこに特殊的価値を位置づけてゆく上に、共通の超越的な拠(よ)り所が国民思想のふところに不在のように思えるのである。これが元号問題を考える基礎なのですね。そしてさらにそれが具体論としては元号法制化慎重論になっていくわけでございますが、「伝統文化の持つ特殊性」、つまり日本の伝統「と人類的な国際社会に意義をもつ普遍性との緊張関係を、新しい歴史形成のためにどのように創造的に展開させてゆくかということばこのあたりで根本的に考えあうべき国民的課題なのではなかろうか。年の数え方における“天皇暦”(元号)と“世界暦”(西暦)との問題は、その応用問題の一つである。」こういうふうに言っているのですね。そして最後に、「「天皇暦」(元号)の法制化は、この普遍概念の不在の自覚、あるいは、それの探求への関心において深刻に考えなければならない問題である。」と武田教授は述べております。そして「第一に、今日の日本国民にとってのアイデンティティ」、同一性でございます、同一性「の一つの拠り所は日本国憲法をささえる“精神”にあると思うのであるが、「天皇暦」の法制化は、その精神に“くつわ”をはめるものとならないかということが問題である。第二に、年号に限らず、時間、距離、重さ、容積、広さ等を測定する単位は出来るだけ世界共通のものが良い。歴史も日本史を世界史の中に位置づけて考えることが大切である。」「“天皇暦”を伝統的慣習として併用する自由は保持すればよい。」しかし、「普遍性と特殊性との間の生産的な対話には充分に時間をかける必要があると思うからである。」こういうふうに言いまして、元号法の制定について非常に慎重な態度を持っておられる。私はそれなりにこれは慎重論のいわば非常に典型的な書き方であると思いまして、実は大変論理の展開が精緻であると思って感心をしたのでございますが、ただこの武田教授の考え方も、いわゆる世界的なもの、世界国家であるとか、コスモポリタンであるとか、そういうものに対する学者の純粋なあこがれというものが元号制に対して結論的には非常に否定的な見解になったのであって、本当は武田さん自身の心の中にも脈々と打つ日本人の血というものがあり、本来は日本の歴史、そういったものの上で恐らく元号を大いに参照しなければならない、そういったことがあるのではないかというふうに私は感じました。  その反面、もう一つ元号賛成論で非常にこれはすぐれておると思うものをここで御紹介をしたいと思います。おもしろいことでありますけれども、たとえば新聞でも西暦年号とそれから元号とを併記している新聞が多い。赤旗におきましても西暦を書き、そして括弧の中に昭和年月日を書いておるのでありまして、この点共産党のドラスチックな考えでない点に、私はこの点だけは敬意を表するのでございますが、「正論」の方の賛成論の一つを最後に紹介をしたいと思います。  それは「元号法案について考える」という勝田吉太郎京大教授の考え方でございます。この人はこういうことを言っています。   およそわれわれが抱く時間観念には、数種のものがある。第一は物理的時間である。大学入試が午前九時にはじまり午後四時に終わるという時のそれだ。だが、受験生にとってこの数時間はあっという間に流れ去る。他方、試験監督者にとっては、実に長く退屈な時間と実感される。これが第二の心理的時間観念である。何本もタバコに火をつけ、いらいらしながら恋人を待つ男が感じる時間もそれである。第三に、時間の流れがはたと停止して“永遠の今”が現前するといった実存的ないし形而上的ともいえる時間がある、と哲学者は説く。なおこの他に、国民が一つの運命共同体として受けとめ、体験する歴史的時間の流れがあるはずだ、と私は思うのだ。 そして「日本民族の“顔”となる時間」というものを勝田教授は力説するわけであります。   「国民とは、日日なされる人民投票である」と言ったのは、前世紀フランスの思想家ルナンであったが、国家を形成し、それを支える国民とは決して自然的な存在ではない。そこで国を作りそれを担っていくことの意味合いを、毎日とはいわないまでも折にふれて確認し合い、決意を新たにする特別の日が必要となる。そういう意味で、どんな国民でも「建国の日」や「革命記念日」をもっている。日本のように古い国は、建国の日の証言をいわば“超記憶的な”歴史の物語のうちに見出そうとする。そうした民族共同体に固有の時間の流れの記憶のなかに、元号というものも錨をおろしているのではないか。 大変これは雄澤な自覚だと私は思います。   「明治の気骨」、「大正教養人」、「昭和一ケタ生まれ」などといえば、各時代相と一緒に実に豊富なイメージが湧く。西暦は、こういう国民史の具体的個性を切り捨ててしまう、だからして西暦一本では、特殊国民的な追体験をなすこが困難になる。西暦には、民族特有の体臭がない。無臭で、無機的で、“顔のない”時間の流れとは、物理的時間の属性である。 こういうふうに言っておりまして、そして  わが国は、憲法上、英国と同じく「王冠を頂いたデモクラシー」だ と勝田教授は解しておる。   元号法を考える場合、国民統合の象徴としての天皇が、わが国の政治文化の構造のなかで一種の安定剤となって機能していることの意味について、お互いに静かに考えてみたいものである。 こういうふうに結んでおるわけでございますが、私はこの元号法案というのは、非常に事務的に総理も、また三原長官も御説明をされておりまして、それはそれなりに大変正しい態度だと思いますが、私が最後にこの二つの論文を提起をいたしましてその考え方を聞きたいという気持ちは、恐らく三原長官はよくわかっていただけると思います。この二つの考え方についての三原長官の人間としてのお考え方をお示しいただきたいと思います。
  238. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  二人の学者先生の論文の御指摘がございまして、これを長官は個人的にどう思うかということでございますが、私、両氏の御意見を読ましていただきました。武田先生の「普遍性と特殊性」あるいは勝田先生の民族固有の文化と申しますか、そうした問題について、感銘深く読ましていただいたのでございますが、学者先生を批判するだけの能力はありませんけれども、お二方の御意見、私は元号法案国会に提案をして御審議を願う主管大臣といたしまして、十分参考にさしていただいて今後対処してまいりたい、そういう受けとめ方でおるところでございます。
  239. 村田敬次郎

    ○村田委員 真田法制局長官は大変きょうはお体がお悪かったのに長時間おつき合いをいただいて恐縮しておりますが、長官とは実はまだいろいろ質疑をしたかったのでございますが、時間の関係でそれができません。いままで申してまいりました一世一元制の問題や、この新しい法律案についての私が展開をいたしてまいりました意見につきまして、特に最後に触れた二つの論文について、もし所見があれば教えていただけませんか。
  240. 真田秀夫

    ○真田政府委員 非常に高邁な御意見をお聞かせいただきまして、私も非常に参考になると感じた次第でございます。  特に普遍性と個別性との調和の問題、あるいはもっぱらコスモポリタン的な考えのみでは、やはり日本人としての個性が薄まってしまうというような点などは非常に参考になったわけでございまして、今後ともなお国会の御審議を通しましてこの法案が成立した暁においては、この法案趣旨を全うするように私たちも精いっぱいの努力をしたいと思っております。
  241. 村田敬次郎

    ○村田委員 時間がやってまいりました。なおいろいろお伺いしたいこともございますが、きょうはこの程度で終わりたいと思います。  ひとつこの国会における審議を通じまして国民の方々が本当にこの元号法についての御認識を深めていただき、しかも野党もきわめて協調的な態度で出席をしていただいておるわけでございますが、ぜひ社会党、共産党を含めて全会一致でこの法律が通過することを希望いたしまして、きょうの質疑を終わります。
  242. 藏内修治

    ○藏内委員長 岩垂寿喜男君。
  243. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最初に、私は元号の歴史について確かめておきたい問題点が幾つかございますので、そこから入らしていただきたいと思います。  そもそも元号の起源というのは、古代中国の前漢の文帝、景帝の時代であって、武帝の時代になって建元元年と称したのが始まりだということを本で読みましたけれども政府もそのような共通の認識に立っていらっしゃるかどうか、お尋ねをしておきたいと思います。
  244. 清水汪

    清水政府委員 御指摘のとおり、私どもも、元号というものの歴史的な起源といたしましては、漢の武帝の時代に始まるという説を承知いたしているわけでございます。
  245. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 滝川政次郎博士は、「元号を生んだものは、漢民族に固有なる天命思想である」ということを指摘をしておられますけれども承知しておられますか。
  246. 清水汪

    清水政府委員 滝川先生の著書の中でそのようなことが指摘されているということは承知をいたしております。  ただ、その点につきましては、その漢民族におけるその当時の思想であり、それがまたその当時の元号の背景にあったというふうに先生が述べておられるものと理解をしておるわけでございます。
  247. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 天命思想というのは、古代社会に共通ないわゆる皇帝神権説の一種であります。「天命を受けた中国の皇帝は、地上すなわち空間を支配すると同時に、時間をも支配するものである、」と言われています。この点について、政府承知をしておられるかどうか、承っておきたいと思います。
  248. 清水汪

    清水政府委員 当時の元号のいわば思想的な面を滝川先生がそのように研究をしておられるという問題であろうと思いますけれども、そういう点につきましては、私どもも同じ著書によりまして勉強させていただいております。
  249. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 勉強させていただいているというのは、そのように理解をした、あるいはすることができると、あなた自身の見解を承っておきたいと思います。     〔委員長退席、唐沢委員長代理着席〕
  250. 清水汪

    清水政府委員 繰り返しでございますが、私個人といたしましては、滝川教授を批判するだけの能力はございませんので、それはそのまま素直に理解をいたしたいと思っております。
  251. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 日本で元号が採用されたのは、西暦六四五年、大化という年号が初めて制定されたものだと言われていますが、それはいわゆる中国の元号の歴史を学んだものだということを、史実として理解しておられますか。
  252. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましては、仰せの面があると思います。つまり孝徳天皇の大化ということでございます。たとえば推古天皇の聖徳太子の時代から遣隋使というものの派遣がございましたように、すでにその前の時代から、わが国におきましては、大陸の新しい文物を取り入れようという意欲が非常に旺盛であったということは、ささやかな歴史の知識におきましても記憶いたしているわけでございますので、そうした背景の中で、やはり一つの改新のときの考え方としてそういうものが採用されたということであったように理解いたすわけでございます。
  253. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 日本の年号は、いま室長がおっしゃったように、いわゆる外来の文化あるいは他民族、他の国家から学び取ったものということはあなたの御答弁の中でも明白でございますが、したがって、日本固有のものではないということについて、御答弁をいただけますか。
  254. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましては、決してお言葉を返すわけではございませんけれども、やはり私ども古い歴史の時代の理解といたしましては、みずからの固有のものもあり、また同時にその間におきまして外来のものを摂取したということも多々あったかと思います。しかしながら、同時にわが国の歴史を、と申しましても、これは私見ということでお許しをいただきたいのでございますけれども、わが国の歴史におきましては、各種の洋の東西の文物を摂取して、それをやはり日本的といいますか、みずからのものとして消化をして、それをまた発展をさせてきた、大きく言えばそのような歴史の過程をたどってきた、そうした中にやはり元号というのも一つ位置づけることもできるのではなかろうかというふうにも思うわけでございまして、先生のおっしゃいましたこともよく理解できますると同時に、ただいまのようなことも言えるのではないかというふうに存ずるわけでございます。
  255. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私の聞いているのは、年号というものが日本に導入された経過、そしてそれが中国から渡ってきたものであるという事実、そのことを言っているのです。その後それが日本の土壌にどうなじんだかなじまないかということは伺っていないのであります。日本もそれまでの間に時を刻むいろんな表現というか、やり方というものがございました。しかし、こういう形で年号を採用したのは、少なくとも中国のそうしたものであるということはあなたもお認め願えると思うのです。その点はいかがですか。
  256. 清水汪

    清水政府委員 そのように存ずる次第でございます。
  257. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そしてさらに伺っておきたいことは、七〇一年の大宝の元号以来、一八六八年、いわゆる明治の元号制定までは天皇の在位期間と元号とは無関係で決められてきたということについては、これはもう事実でございますから、そのようにお認めになりますか。
  258. 清水汪

    清水政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまの御質問の無関係という点がちょっと問題かと思いますが、文武天皇から明治の直前までの時代におきましては、天皇の在位の期間と一致をしたというような例はきわめて少ない。これは、先ほどもちょっと申し上げましたが、平安時代の初期におきまして、数代の場合にそういうことがおおむね一致していたというケースがあるわけでございます。それ以外は在位期間と一つ元号とが一致をしたということはまずなかったものと思うわけでございますが、同時にもう一つ補足させていただければ、在位がかわると申しますか、皇位の継承が行われるということに伴っての改元ということは、原則的にはずっと行われてきたということもあったわけでございます。
  259. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私の言っているのは、在位期間と元号との関係を聞いているわけで、いま室長答弁の前の方で理解をします。  年号というのは、中国の儒教で古典とされている書物の中の、さっきあなたもお答えになっていらっしゃいましたけれども、おめでたい文字を用いて組み合わせてつくられたものだ、昭和という年号も、中国の古典の中の尚書とか書経とか言われる書物から選ばれたものだというふうに言われていますが、そのとおりですか。
  260. 清水汪

    清水政府委員 そのとおりでございます。
  261. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そのとおりだとしますと、これは必ずしもという言葉をつけますが、日本の伝統文化とは言いがたい面もございますね。
  262. 清水汪

    清水政府委員 この伝統文化という言葉がよく元号問題の場合に用いられておりますけれども、それは幾つかの意味で言われているように思います。  一つは、やはり日本におきまする年の表示方法ということで千三百年の歴史を有していた、そういうものがわれわれ日本国民の間に定着をしてきている、これが一つの文化と呼ぶのにふさわしい現象ということがあろうかと思います。ただいま先生の御指摘になりましたのは、その元号の、具体的にはその漢字によってあらわされる名称の問題ということでございますが、この点につきましては、単に元号だけではなくて、わが国におきましては広く漢字文化圏に属するということでございますので、わが国の日本語と現在申しておりましても、これがあらわす場合には漢字が使われておるということでございますので、やはり中国の漢字文化がわが国に吸収をされたということの一環の現象であろうというふうに思うわけでございます。
  263. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私が言ったのは、あなたのその答弁を予想しながら、必ずしも伝統文化とは言えない部分がある。つまり、元号というのは日本の誇ることのできる伝統文化だ、こう言っているわけです。しかし、たとえばいまの名前の選び方、取り方、そしてそれが中国のさまざまな古典の中から言葉として引っ張り出されている。それがいろいろな解釈を持つにしても、やはり外来の文化というか、結果的にそういうウエートの方が強いのですよ。私は、実はそこのところを申し上げておきたかったわけですが、そこのところでやりとりをしている時間はございません。  一世一元の年号制度というのは、明治維新以後に決められたものであることは、私が申し上げるまでもないわけですけれども、一世一元というのは、その当時の状況で結構ですが、天皇制と不可分に結びついている、つまり特定の天皇との一体性を強調するために、言葉をかえて言えば天皇制イデオロギーの強化の手段になっていたという事実は、歴史の事実としてお認めになりますか。
  264. 清水汪

    清水政府委員 大変むずかしい御質問でございますが、旧憲法のもとにおきまして一世一元ということが皇室典範で制度化されてきた歴史は御案内のとおりでございますが、その当時において考えますれば、元号がどうと言う前に、明治憲法下におきます天皇の地位というものが、先ほども法制局長官から御説明のございましたように、統治権の総撹者という地位であったという問題が根元にあったものと思うわけでございます。現在の問題として私どもが御提案を申し上げております法律でいう場合の一世一元の元号というのは、法律は一世一元と書いてないわけでございますが、これはわが国におきます年の表示方法の問題としてそれが伝統的に定着をしており……
  265. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私はそれを聞いているのではないのです。前段の方だけを聞いただけなんです。現在のことを聞くのはまた後ほど聞くし、またお答えをいただくチャンスはつくります。私の言っているのは、明治維新以後に決められてきた一世一元というものが、いわゆる天皇制イデオロギーの強化の手段として使われてきた、そういう性格を持っていたということをお認めになりますかと言ったわけです。あなたは、いま、当時の総撹者としての天皇の地位から見てそういう性格を持っていたということを否定をしませんでした。それだけで結構なんです。  一世一元の元号というのは、慶応から約百年の歴史ですね。これは日本人の長い長い歴史の中から考えてみると、決して長い伝統に裏づけられたものではない、むしろ短い時間だというふうに私は言いたいわけです。一世一元制というのは、大日本帝国憲法、いまあなたがおっしゃった、その「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」という規定を前提にして、前提と言って悪ければ、それを根本の命題として、元号を制定する権利を天皇が確保する、そして元号を君主権の表示であるということをいわば法的に確認したものだ。つまり一世一元というのは天皇の統治支配のシンボルだ、すぐれて政治的な意味を持っていたというふうに、私はさっきの質問をこういうふうに言いかえてみると、あなたもお認めにならざるを得ないと思うのですが、お認めになりますか。
  266. 清水汪

    清水政府委員 先生のおっしゃいます趣旨は私としてもよく理解できるように思います。したがいまして、明治憲法下におきます天皇の地位、それからその憲法と並ぶ皇室典範のもとでありましたところのその元号というものの性格と申しますか、両者の関係先生の御指摘のように理解をするということも理解できるところでございます。
  267. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 一世一元制の元号というのは主権者天皇の治世をあらわすものであることば明白であります。したがって、主権者ではなくて象徴にすぎなくなった天皇の世代に元号をそのまま用いるということは、どう考えたって私は現行憲法にそぐわない、こういうふうに思いますが、その辺はあなた方はどういうふうに御答弁をなさっていらっしゃるのですか。
  268. 清水汪

    清水政府委員 先ほど申し上げましたことに実は一つ補足させていただきたい点があるわけでございますが、明治以降の一世一元スタートは、慶応四年九月八日、それが改元の日でございますから、明治元年九月八日でございますが、その当時に出ましたいわゆる行政官布告、この中にそのときのことが出てくるわけでございます。これは先ほど御答弁申し上げたことと若干重なりますが、それまでは頻繁に改元があった、そういう旧制を今後は改めて、自分がいま決めた後は、自分の間は元号を再び改めないというふうに明治天皇がお決めになったということがあったわけでございまして、その点がその後におきまして一世一元になったことのスタートの点でございますので、その旧制を改めるというところにもそれなり意味があったものと受けとめておるわけでございます。  それから今度の御提案申し上げております元号法案につきましての問題でございますが、これは先般の本会議趣旨説明の御答弁の中で申し上げたことと同じことを繰り返すことになりますけれども政府といたしましては紀年法の一つであるこの元号、これが現に現行憲法のもとにおきましても三十年以上にわたって定着をいたしております。そして、かつ、その元号というものについては大多数の国民が将来にわたってその存続を希望しているということも各種の調査等を通じまして明らかでございます。そしてその国民が元号というものに対して抱いているイメージ、これもおおむねのイメージといたしましては、昭和なら昭和で言えば、これは今上陛下の御在世中において使われるものというふうに認識をしておるのが一般であろうと思うわけでございます。そういうような元号というものの現に定着しておる現状を踏まえ、かつ、その存続の願望を尊重するといいますか、そういたしますと、そのためには昭和の次の元号についてどうするかという、その手続についてのルールが必要になってくる。そういうような観点から、少なくとも御提案申し上げているだけのことは国会の法律という形でお決めをいただきたいというふうに考えておるわけでございまして、したがいまして憲法が明治憲法から現行憲法にかわり、天皇の地位が変わったということは、もちろんよくわきまえておるつもりでございますが、その現在の憲法の姿といま政府として御提案申し上げている元号法案とは、全く相矛盾するような点はないというふうに考えているわけでございます。
  269. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 象徴天皇というものの意味を避けよう避けようとなさっていらっしゃる。それは無理なんです。先ほどから私が、明治維新以来の一世一元というものが持っている、あるいはそれにまつわりついていると言っていい一世一元の元号が持っている性格、つまりそれは天皇の御世ですよ。天皇の時代の一つのシンボルですよ、あるいは天皇の権威の象徴ですよ。つまり、その当時は主権者天皇制と結びついて元号を法制化したわけですね。いまあなたがおっしゃったように象徴にすぎない天皇なんです。その天皇の一世あるいは天皇の御世、その時代そのままにいま法律でつくったから、時代が変わっていくが中身も変わりましたよ、こういう議論にならないのですよ。天皇制がいままで日本の国民に及ぼしてきたさまざまな被害や影響、それが持っている機能というものを無視してそこだけ捨ててしまって、こういう形でつくりますからそのときとは違います、こういう議論にはならぬのです。どう考えても象徴にすぎない天皇というものをできるだけ主権者天皇の方向に近づけていこう、こういうねらいが露骨に出ているのです。  たとえば、元号法制化実現国民会議の議長石田和外さんが、象徴の意味をどうとるかという問いに対して、「元首という地位だと考えるべきだ」、こう言っているんですね。そればかりではない。たとえば、この元号法案のいわば推進をしてきた神社本庁や生長の家のリーダーたちが何と言っているかというと、これは一つの本にあらわされている。政教研究室編の「天皇・神道・憲法」という本なんですが、「明治元年の一代一元の制度は、天皇の存在と、日本国の公事から国民の私事に至る一切の歴史を結びつけるものでありわが国風として極めて好ましい制度である。この制度は明確なる成文法の形を以って定立されることが望ましい」、これが神社本庁の根本主張です。その他そういう例を挙げれば山ほどある。そしてそれが要するに象徴天皇を可能な限り主権者天皇の方向へ近づけていこうという作用がある。それを受けて皆さん方は元号法制化というところへ踏み切ってきたわけです。その経過と実際的な背景というものを無視して、いや昔の天皇といまの天皇と違います、それからいわば紀年法でございまして、なじんでいるから大丈夫です、これじゃ通用しないのです。ここのところもう一遍お答えください。
  270. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 さっきから政府委員がお答えをいたしておりますように、全く対立した意見だと思うわけでございます。  私どもは、あくまでも新憲法下における天皇の地位、そして天皇の機能、そういうものは憲法第一章によって明確に規定をされておるわけでございます。政府といたしましては、その憲法の第一章全般にわたります天皇のお立場なり機能を厳守しながら、この元号法制化と取り組んでおるわけでございます。したがいまして、いま御指摘のあるような旧憲法時代においての天皇と元号関係と新憲法下におきまして今日私どもが提案をしております元号との関係については、考え方も、また事実の上におきましても明確にそれを分離して処置してまいりたい。将来の制定していただいた法の運用につきましても、法がいま御指摘されるような方向にいかないように処置してまいる責任もあるわけでございます。そういう点も心得ながら、私どもはこの元号法制化と取り組んでおるわけでございます。したがって、過去においてそうであったし、天皇が現在存在しておられるということであなた方は一切そうでないということを指摘されますけれども、私どもは、現在の天皇の地位とその権限というようなものは新憲法制定と同時に整理をしてかかるべきものだと考えておるわけでございます。その点の御理解は賜りたいと思うのでございます。
  271. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 三原長官は石田和外さんのいまの御発言あるいは神社本庁の根本主張というようなものは、明らかに否定なさいますか。天皇は元首ではございませんね。
  272. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 石田和外先生初め、いま御指摘のような御意見のあることも承知いたしております。しかし、天皇は旧憲法下においての天皇の地位あるいは権限はお持ちにならないということをはっきりわきまえて対処してまいっておるところでございます。
  273. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そこのところはいままでの憲法制定の過程の議論をかなり踏まえて、実は議論をしていかなければならぬのです。それは、いままで国民の象徴は天皇である、天皇制の象徴は元号だ、こういう考え方を立てて実は私ども一つの論争というか態度をとってきているわけです。これは間違いだと思うのです。元号というのは主権者天皇の象徴にはなり得ても象徴天皇の象徴にはなり得ないということをここで少し論争をしたいのですけれども、これをやっていますと時間がかかってしまいますから、それぞれ分担をしてやりますけれども、象徴天皇の持っているさまざまな制約条項、それが持っているそのことをだんだん昔の主権者天皇の方向へ持っていこうという作用がある。そういう方向と非常に深くかかわり合ってこの問題が出てきておりますので、後ほどこの問題はもう一遍論争をしてみたいものだと思います。  ちょっと方向を変えてお尋ねしますが、一八六八年の行政官布告というのは、政府見解によれば現行憲法施行とともに失効しているというふうになっています。そのとおりですか。
  274. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  そのとおりでございます。
  275. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうすると、おたくの想定問答集に書いてある、旧皇室典範においてこの布告を吸収する形でその第十二条の規定が一世一元の制を定めていることなどの経過から見て云々となっています。これは違いますね。
  276. 味村治

    ○味村政府委員 旧行政官布告は、旧皇室典範の十二条と同じ趣旨を規定しているものでございますが、旧皇室典範の制定によりまして、旧行政官布告はその皇室典範十二条に吸収されたというふうに解釈いたしております。したがいまして、現在におきましては行政官布告はその効力を有しておりません。
  277. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 吸収されたと言われますけれども、吸収されたというのは、私も少し法律をかじったこともあるのですが、そういう言葉遣いというのは法律用語にございますか。
  278. 味村治

    ○味村政府委員 どうもまことに比喩的な言葉を申し上げて失礼いたしましたが、要するに旧皇室典範におきまして旧行政官布告と同じ趣旨のことを規定することによりまして旧行政官布告は効力を失ったということでございます。
  279. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ところが旧皇室典範には行政官布告が矛盾しているかあるいはまた明文で、要するにこれは廃止するということを決めない限りはそうならないという議論もございますね。その点についてはどうですか。
  280. 味村治

    ○味村政府委員 そういう議論も確かにございます。しかしながら、私どもといたしましては、ただいま申し上げましたように、同じ趣旨を後の皇・室典範という、言ってみますれば当時の旧帝国憲法のもとにおきまして憲法と並びます皇室典範と一いう形で規定いたしましたことによりまして、旧行政官布告は効力を失ったというように解釈をいたしております。
  281. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それが旧皇室典範に引き継がれて新憲法のところまで来たわけですね。そこで三原総務長官の御答弁がいま出るわけでしょう。
  282. 味村治

    ○味村政府委員 そのとおりでございまして、旧皇室典範が新憲法の施行の前日に廃止されました。したがいまして、元号制定の根拠は失われたということに相なっております。
  283. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 なぜ新しい憲法で皇室典範というものが失われたかといえば、行政官布告が定めるようないわゆる一世一元制というものが象徴天皇制の憲法と矛盾するからなんですよ。だから消えたんですよ。憲法のいろいろないきさつの中でそこで消えたわけですよ。それを今度は新しい法律を持ち出してきて、それはちょっとかっこうが違いますから、これはもう象徴天皇制になじんでいます、国民にもなじんでいます、したがって、という論理にはどうしても矛盾があるんです。超えがたい矛盾があるんです。その点はやりとりをしていると時間がかかってしまいますので、またゆっくり後でやります。  次に、元号の現状認識についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  政府は、元号を使用しているのは事実たる慣習だ、こう言っていますね。それならば西暦も慣習とお認めになりますか。
  284. 清水汪

    清水政府委員 おっしゃいますように、西暦も慣習的に使われているというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  285. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうしますと、両方とも同じだということを御確認願えますね。
  286. 清水汪

    清水政府委員 年の表示方法といたしまして、結果として現在のわが国においては併用の状態にあるということでございますが、ただお言葉を返すようで恐縮ですが、「同じ」と御指摘意味がちょっとどう理解すべきかあれでございますけれども、慣習として使われておるという点におきましては大体似た状態にあるというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  287. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 現在、元号の記入を強制されていると思いますか、いないと思いますか。
  288. 清水汪

    清水政府委員 現在は、ただいまもちょうど申しましたように、事実たる慣習として元号が使われているわけでございますので、それはたとえばある一つの現象をとった場合でもそれなりに定着をしているという一つの姿でもあろうと思いますので、格別に強制というようなことがあるというふうには考えておりません。
  289. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それならば、役所などで、各省お見えになっていただいておりますから後でお尋ねしますが、なぜ明治、大正、昭和といろいろな書類の中に印刷をされているんですか。不動文字のことです。これは事実上の強制ですよ。つまり、印刷されていて、そしてそれは、それに従って数字を当てはめざるを得ないという仕組みになっているわけです。この点はどのようにお考えになりますか。
  290. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましてはぜひ一言御理解を賜るようにお願いを申し上げたいと実は思っておるわけでございますが、国民の間にそういう形でなじんで使われているというその実態がむしろ反映されているということが事実たる慣習として使われている状態であろうというふうに思うわけでございますので、そのような表示によって実際上使い分けているという状態は、格別に強制というふうな概念で御理解をいただかないで、そういう慣習であるというふうにお受けとめをいただきたいと思うわけでございます。
  291. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 一般論でいただかないようにと言っても、強制されているというふうに思う人がいたとしたら、事実は強制されているのですよ。これは一般論で答えることはできないのです。個人個人の気持ちの問題にかかわることなんです。現実にその個人個人にとってみれば強制されているという理由になるわけです。  これを刷り込んでいる根拠というのはあるのですか。明らかにしてください。
  292. 清水汪

    清水政府委員 ちょっといまよく聞き取れませんでしたが、明治、大正、昭和というような不動文字をそのように刷り込んでいる根拠、その点でございますれば、それはむしろ、先ほども申しましたように、そういう表示方法というのが慣習的に定着しているということの上に立ちまして――御指摘のは公務の方、役所の窓口の問題ということだと思いますけれども、公務の方におきましては、そういう慣習の上に立って元号で統一的といいますか、一元的に事務を運営することにこれも慣習的にしておるわけでございますが、そのような慣習のもとで公務の円滑な処理に御協力をいただいているという姿にはなろうかと思います。そのような御協力ということでございまして、これはあえて強制というふうに考えるべきものではないだろうというふうに存じておるわけでございます。
  293. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 実は、それは無理があるのだよ。あなたが強制されているとは思わないと言ったって、それを書かされている立場で、これはこれしかないな、ここに数字を入れなければしようがないな、やはりこういうふうに決まっているのだなと思うようになるわけです。しかも根拠はないのですね。慣習と言うが、だれが判断するのですか。だれの判断でこういうものが生まれてくるのですか。そしてその恣意によって特定の窓口なら窓口、役所なら役所の窓口で、だれか決めたものがだんだん長く使われてきて慣習になって、結果的にやはり人々に対する強制――みんながみんなとは言いませんよ、強制というふうに受け取らざるを得ない、そういう人たちがいることは現実ですよ。  そこで、大変お忙しいところをたくさんお見えになっていただいておりますから簡単にお伺いいたしますが、自治省おられますか。――住民基本台帳はいまどんなふうになっていますか、いまのその年号の表示について。そして、それはどんな法律的な根拠でそこに導かれているか教えてください。
  294. 木村仁

    ○木村説明員 お答えいたします。  住民基本台帳法及び同法施行令では、元号を使う旨の規定はございません。自治省の通達によります運営要領によって書式の例示がございまして、その例示には慣行に従って元号を使用いたしておりますが、これは団体の事務でございますので、各団体において自主的な判断によって元号を使用しているものと解釈をいたしております。
  295. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そのカタログはだれがつくるのですか。
  296. 木村仁

    ○木村説明員 届け出の方式につきましては、政令で定めるところにより「書面でしなければならない。」ということになっておりまして、政令には、届け出の方式は「法の規定による届出は、届出人の住所及び届出の年月日が記載され、並びに届出人が署名し、又は印を押した書面でしなければならない。」これだけが法律及び政令に定める要件でございます。ただ、こういうものの運営の方針として自治省が示したものには様式の例示がございまして、これは自治省で定めました例示でございます。この例示によって各地方団体でお決めになっておやりになっております。したがって、書式そのものはいろいろバラエティーがあると思いますが、多分ほとんどの団体で元号は使っているものと考えております。
  297. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 自治省が決められたカタログに元号が出ているわけでしょう。それを見習っているわけでしょう、各団体ばらばらと言いながら、現実には。で、ほとんどのところが使っているわけですね。
  298. 木村仁

    ○木村説明員 そのように承知しております。
  299. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 では、実態だけお伺いしたいと思います。法務省おられますか。――印鑑証明、婚姻届、出生届の関係というのは自治省じゃなくて法務省だそうでございますから、その点は一体どうなっているか。現状と、そしてどんなものがいまの不動文字を含めて使われているか、そしてその根拠とその運用の実態を明らかにしてください。
  300. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 私どものところでは法人の代表者の印鑑の提出関係を取り扱っているわけでございますが、印鑑届の様式につきましては、提出年月日及び提出者の生年月日を書くようには法令上定められておりますけれども、それをどういう方式でやるかということについては全く定めておりません。そして、その様式につきましては、省令におきまして様式を定めておりますが、それにも単に年月日と記載してあるだけでございまして、それを元号で表示するか、あるいは西暦で表示するかということについては、全く取り扱いを定めておりません。しかし、現実には多くの場合元号提出、記載しているのが通例のようでございます。
  301. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 法務省のそのいまの印鑑証明だとか婚姻届だとか出生届だとかいう様式の中には、いわゆる不動文字ですね、年月日に明治、大正、昭和というのは入っていませんね。
  302. 稲葉威雄

    ○稲葉説明員 届け出の用紙は最近までは法務省で作成しておりませんで、市販で各自が自由につくって持ってくる、その様式に定まったものを持ってくるということになっておりまして、そこでは多くの場合元号で使用されてきたわけでございますが、最近、一、二年前からその印鑑提出の用紙を法務省で作成して無料で申請人に交付するという取り扱いになりました。その際にはそういう慣習を考慮いたしまして、生年月日については全く白紙でございますが、提出年月日につきましては昭和という文字だけを印刷するという扱いにしております。
  303. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それじゃ郵政省、お伺いします。  受取払い返信用はがきがございますね。これには昭和何年何月と書いてございますね。それからもう一つ、切手などについてぜひ実態を明らかにしていただきたいと思います。
  304. 桑野扶美雄

    ○桑野説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御質問は、料金受取人払いの郵便物の差し出し有効期間につきまして封筒またははがきの表面に表示する年号だと思いますが、これは郵便規則に掲げております例にならって表示することにしておりまして、この例によりますと、昭和何年何月何日となっております。ただ、これは例でございますので、これを西暦で表示されてもちっとも構わないわけでございます。(岩垂委員「切手は」と呼ぶ)
  305. 山田雅之

    ○山田説明員 郵便切手の発行した年を表示することにつきましては、法的にもあるいは国際的な取り決め等でも何ら定めはございません。  郵便切手を大別いたしますと、私ども専門的に普通切手と特殊切手と二つに分けているわけでございますけれども、普通切手につきましては御承知のように発行した年を表示してはおりません。特殊切手の中でも特に記念行事等、発行年を表示した方がふさわしいというものにつきましては発行年を表示しております。過去の表示方法を見てみますと、元号によるものあるいは西暦によるものあるいは両方を併記しているものと、さまざまでございます。これは昭和二十一、二年ごろまでの年表示のあるものを見ますと、元号を使用しております。最近では表示されているものの多くは西暦でございます。ただ、社会的慣習といいますか、そういう点から昭和何年という表示をしたものの方がなじむというものにつきましては、元号による表示とかあるいは元号と西暦の両方を併記するというものもございます。  以上でございます。
  306. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 余り長い時間おとめしてはいけませんから、厚生省、健康保険などの取り扱いの書式について承りたいと思います。
  307. 坂本龍彦

    ○坂本説明員 健康保険関係の各種届書でございますとか証明書等相当多数ございますが、これは健康保険法施行規則で様式を定めておりまして、その様式の中に元号が使用されているものもございます。大体、大部分提出の年月日でございますとかあるいは期限といったような点で昭和何年何月何日とこう書き込むようになっておるわけでございますが、生年月日などにつきましては明治、大正と書いて丸をつける、こういうものもございます。それから、中には単に年月日としてございまして、その前に何もついていない、こういう様式もございます。  以上でございます。
  308. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最後に警察庁、盗難届を初めとする届け出の様式はどうなっていますか。
  309. 森広英一

    森広説明員 お答えします。  盗難届につきましては、犯罪捜査規範と申しまして国家公安委員会規則で様式を定めておりますが、届け出年月日につきましては昭和という元号が入っております。  そのほかの関係につきまして、たとえば道路交通法の関係では道路交通法の施行規則、これは総理府令でございますが、いろいろな届け出あるいは許可申請等の様式を定めておりますが、ほぼ昭和という元号が入っております。  風俗関係につきましては、国の法令で直接定めることをしないで都道府県の条例に委任をしておりますけれども、その条例あるいは条例の委任に基づく都道府県の公安委員会規則におきまして、元号を入れているもの、いないもの、それぞれ県によって分かれております。  以上でございます。
  310. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ありがとうございました。いま、まだあるのですけれども関係省庁の実態をお尋ねをいたしました。  事実上、各省庁とも昭和あるいは書類によっては明治、大正、昭和と不動文字が全部入っているのです。長官、こうなっている様式を事実上、役所がそういうものでなければいけないという形で書式を決めてやっているわけでしょう。これは単に協力じゃないのですよ。協力の面もありますよ。だけれども、協力でないもの、つまり、それが整っていなければ書式として受け付けないということだってあり得るわけです。これを強制でないと言えますか。     〔唐沢委員長代理退席、委員長着席〕
  311. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  在来、行政事務というのは統一的な期待要素があるわけでございます。そういう点で国民の間に定着をし、存続を希望される元号というものを御使用になる。しかし、これ自体もまた、御意見がございましたように明治、昭和を入れなくて、ただ単に年月日で記載してあるものもあるという御意見がございました。また手続上これを訂正して西暦でお書きになりましても、受理しないというようなことはございません。そういうことでございますから、自由な併用を認めておるわけでございまして、決して強制をする体制ではございませんので、御理解を願いたいと思います。
  312. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 だって、たとえば規則によって決まって、書式が指導されて、あるいは規則に基づいて書式がそれを使う人のところへ届いて、その規則を守らなかったらだめじゃないですか。それは受け付けない。それは受け付けるところもあるでしょうよ。だけれども、そういう面でいま私全部聞いたでしょう、長官、お聞きになったでしょう、いま現実に規則で決まっているものを、あるいは省令で決まっているものを、政令で決まっているものを書かなかったら、これはいけませんよと言われるに決まっているじゃないですか。現実にそれは強制なんですよ。私はそのことを言いたいのです。現実にそういう面があるのです。
  313. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほども申し上げましたように、行政事務は統一的な整理上そうした一つの形式をたっとばなければならぬ面がある、私はそう思うわけであります。したがって、各省庁における取り扱いの規則と申しますか、そういうものでそういうことを決めておるわけでございますが、しかしこれを国民に強制する、それがたとえば西暦で書かれたものが無効であるとか受付けないとかいうような処置は、併用をいたしております今日においてはございません。その点につきましては、またそういうことがあってはならぬと私どもは思っておるわけでございますので、将来そういうものがあるということでございますれば、そういうことのないように指導をいたしたいと思うわけでございます。したがって、あくまでも協力をお願いをするという立場である。その解釈によって、受け取り方によって、それが強制であると言われるならばそういう御意見も成り立つかもしれませんけれども、私は、それは強制的なものではない、併用をしたいし、行政事務の統一的な様式を必要といたしますので協力をお願いをするという立場でやっていただいておると思うのでございます。
  314. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 長官、それは詭弁なんですよ。それはいま省庁の中でそういうところはあるですよ。だけれども、省令やら何とか規則やらということで決まっていて、書式があるわけですよ。現実にこれはだめですよと言われているのです。現実にそういう実態があるのですよ。そういう場合には、それは協力をお願いするということになるのですか。事実上強制になっているのですよ。これはだめですよ、書式と違いますよ、これはそうなっていますからいけませんと、突っ返されるケースがあるのですよ。あったときはそれは強制と言えないのですか。長官はお偉い方だから、下々と言っては悪いが、現場のことを御存じない。だけれども強制しているはずはないはずだということと、強制してないということとは距離があるのですよ。ここは何分にも時間が余りないものですから、私はこれ以上言いませんけれども、実態があるということだけ明らかにしておきたいと思うのです。  それで、想定問答集によりますと、国や地方自治体など公の機関は使用を義務づけられるかという質問がここにあって、それに対して、国の機関は当然に原則として元号を使用することになると考える、また地方公共団体においても国と歩調を合わせて元号を使用することが期待される、こうなっていますね。このとおりですか。
  315. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  元号の使用について、これを大多数の国民が使用されておるし、そしてまた存続を希望されておるという事実を踏まえて、これを将来において残していこうということを考えていくことは国民に対する政府の責任でございますから、そういう点において、最も民主的な機関である国会の場において法案提出し、これを議決願うことをいまお願いをいたしておるわけでございまするから、そういうことでございますれば、国会において御決定を願いました法律につきましては、国の公の機関としては当然これを使用してもらえるものだ、そういう期待を持つわけでございます。そういう意味でいま御指摘のような点を私どもは申し上げておるわけでございます。
  316. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 地方自治体を国の機関と同じように考えられますか。地方自治体は、憲法や地方自治法というものをひもとくまでもなく、別の法人格ですよ。それば使用することを期待するということですか、その部分は。
  317. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  先ほどから何回も申し上げておりますように、行政の事務というのはやはり統一的な様式によって処理されることがいままでの行政事務の処理上望ましいことであると私は思うわけでございます。したがって、先ほど申しましたように国の公の機関は当然、国会でお決めいただきます法律でございますので、法律として制定願いますればそういうことでやってくれると思うのでございますが、地方公共団体は人格が別である、そのとおりでございます。しかし、いま申し上げましたように、中央から地方への行政事務の関連というものはございますし、地方公共団体においてもひとつ御協力を願いたい、そういう考え方でおるわけでございます。
  318. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 元号にするか西暦にするかということは、ある意味では人の思想、信条の自由にかかわる問題なんですよ。その思想、信条にかかわる問題を、法律をつくったから従いなさい、そうなるから反対だと私は言っているのですよ。だけれども、つくったから従いなさい。それは三原長官の言葉を信じましょう。そうしたら、地方自治体は別です、別だけれども、私たちはそうなることを期待しておる。その媒介になるのは行政事務というものがある意味で統一性を保たなければいけない。それじゃま参りいまのお役所の仕組みからいけば中央官庁以下右へならえですよ。地方自治体も結局そうなっていくのですよ。ますます思想、信条というか、自分に内在する、気持ちの中にあるものを表現するものが狭められてくるのです。さっき言ったように強制されるという実態があるのです。ここらはもう一遍お調べを願いたいと私は思うのです。つまりいつの間にか解釈がだんだん拡大をしてくるわけです。だから、国民に対して強制しないという言葉があったとしても、どうも拡大解釈をするんじゃないか、あるいはひとり歩きをするんじゃないかという懸念が、私たちの危惧だけではないと私は思うのです。ここにいろいろな問題があるのです。  そこで、あなたがいまおっしゃったように法律だから行政機関など公的な機関は当然元号の使用を拘束されるということになれば、国民は公的な関係においては元号を使わなければならない。したがって、元号の使用は国民に対しても法的拘束力を持つことになる、こういう解釈が成り立ちますね。
  319. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  国民の九〇%までの方々が存続を希望しておられる、使用をしておられ、なじんでおられる元号でございます。その事実にこたえていきたいというのが政府の責任であると思うのでございます。したがって、私は、これを国の法律で、特に民主的な国会の場においてお決めいただいたものでございまするので、国の公的な機関は当然使ってくれると思うのでございます。  なお、地方公共団体におきましても、国民を対象にして行政事務をやっておられるわけでございまするので、その九〇%までが存続を希望される方でございまするので、私は、協力していただけるものだ、そう期待をいたしておるところでございます。
  320. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 漏れ承るところによると、長官は、どうも元号というのは必ずしも法制化じゃなくて内閣告示でもいいじゃないかみたいな考え方がおありになったらしいのですけれども、それは事実かどうかは別として、どうもちょっと長官らしくない御答弁なんですよ。つまり九〇%が元号法制化というものに賛成しているのじゃないのですよ。それと存続を希望しているということとの間には距離があるのです。だから、長官も一生懸命に勉強して、こういうふうにしなければいけないと思ってやっているのだろうけれども、実態問題としてこれはやはりちょっと無理がございますね。  それではお尋ねしますが、国家機関や地方公共団体が元号使用の義務を負うとすれば、それを具体的にやる機関というのは仕事を担当する公務員ですね、公務員というものが職務上の義務を負うわけです。これはもう長官もお認めいただけると思う。一般行政職の公務員というのは法令に従う義務を負っていますね、国公法の九十八条一項、地公法の三十二条。また、この義務に違反した場合には懲戒処分、これも国公法八十二条、地公法二十九条で受けることになっている。つまり、元号法自体には罰則はなくても、国公法、地公法によって懲戒罰を受けるということもあり得ると思うのですが、それはないと言えますか。
  321. 味村治

    ○味村政府委員 先ほどから総務長官がるる申し上げていらっしゃることは、この元号法案には使用についての規定はございません。使用について拘束をするという規定はないわけでございます。したがいまして、それは、一般国民について申し上げますれば現在と同じ自由であるということでございます。そして、国の機関は当然これを使用することになるであろうということは、現在国の機関は元号を使用しているわけでございまして、その状態が仮に元号法が成立いたしました場合にも続くであろうということをおっしゃっていられますし、さらには、元号法という国会でお決めになった法律ができるということになればその重みというのがございますので、恐らく国の機関も当然使うであろうということをおっしゃっているのであろうと存じます。  御質問の、国家公務員は法令遵守義務がございます。しかし、元号法にはこの元号を使えということは一言も書いてないわけでございますから、元号法が仮に成立いたしました場合におきましても、国家公務員が元号を使わない、公式の場において元号を使わなかったからといって、それだけで直ちに職務上の義務違反になることもございませんし、懲戒の対象になることもございません。
  322. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは本当にないですね。あなたの答弁を確実に私は承っておきます。
  323. 味村治

    ○味村政府委員 ただいま申し上げましたとおりでございます。
  324. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 国の機関がやるのだから地方自治体もやることを期待する、それは行政事務の統一化のためだ。これは何といいましょうか、非常にあいまいなんですね。長官自身そうお考えになっていらっしゃるでしょう。やはり明確な線を引くことが私は必要ではないだろうかと思うのです。その点についてはお考えになったことがありますか。
  325. 清水汪

    清水政府委員 直接お答え申し上げるとすれば、考えておりませんと申し上げるだけでございます。つまり私どもといたしましては、現在において事実上の慣習として、国、地方を通じまして公務の表示方法といたしましては原則的に元号を使っている、元号による表示方法によっているという状態でございますので、そのことが今後においても格別に支障を招くとかあるいは特に不合理だというような事態が起きない限りは続いていくのが自然であろうというふうにまず考えている、そういうことでございますので、特にいまのようなその間に何か改めて違いを考えるかというような御質問であれば、それはちょっと考えてはおりませんということを申し上げるわけでございます。
  326. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そういうことであれば、自然の流れだとおっしゃるならば、明治、大正、昭和というような印刷をおやめになるおつもりはないですか。自然の流れでもってきちんとやったらどうですか。
  327. 清水汪

    清水政府委員 現在なじまれ、定着しておるわけでございますので、私どもといたしましてはこの状態が続いていくのが一番合理的でもあり、自然であるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、逆に申しますれば、現在におきましても、たとえば国際条約のようなそういう国際関係の問題あるいは特に西暦の方の表示でやる方が非常に合理的だというようなものにつきましては、現にそのようなものが使われている、そういう状態があるわけでございます。そういう現在の総合的な状態、これが前提になって今後もそういう使い分けでいく、こういうことを申し上げているわけでございます。
  328. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 どうも期待をされたり、しても困るという立場、両方の線ですから、これは平行線ですね。  政府元号使用というのを強制しないとおっしゃっているのだから、あるいはいままでどおりだとさっきも村田さんの質問におっしゃっておられたけれども、それをどういう形かで裏打ちをするというつもりはないですか。
  329. 清水汪

    清水政府委員 裏打ちという御質問の意味はどういうことかあれでございますが、私どもとしては、元号法案を成立させていただいた段階におきましても、改めて格別に何か指示を出すとかというようなことは特には必要がないものと現在のところ考えております。
  330. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 本来なら法律の中に義務づけはしないということを誓いておかしくないのです。ほかにそういう法律はあるのです。そういう法律を知っていますか。
  331. 清水汪

    清水政府委員 私の方から答弁をさせていただきますが、特にどういう法律にどういうことがあるかということはちょっと別といたしましても、元号の問題につきましては従来から、たとえば旧皇室典範の例をとりましても、使用の問題につきまして特に使えというような規定自体はなかったわけでございます。  いずれにいたしましても、元号というものの性格、つまり年の表示方法というようなものの性格からいたしまして、法律をもってこれを強制する、つまりもっと具体的に言えば、それを使わなければ罰するというような法的な強制をすることにはやはりなじまないものであるということが従前からの一つ考え方であったと思うわけでございます。当然に今日におきましてもその考え方を持っているわけでございますので、この法律につきましては、もともとそういう認識を前提にして考えておりますので、たとえば解釈の仕方の指標としてその義務づけと解釈してはならないというような規定を特に入れる必要はないものと考えておりまして、そのようなことをいたしていないわけでございます。
  332. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 旧皇室典範になかったから新しい法律にも要らないという物の発想がおかしいのですよ。旧皇室典範というのはわれわれにとってどんな位置を占めていたか、とりわけ新しい憲法にとってどういう位置を占めていたかということは明確なんですね。それを何か旧皇室典範になかったから今度も要りません、こういう発想が問題なんです。だから、そこのところを直してもらわぬことには、私がさっきから一生懸命言っていたことですが、やはりあなた方がもう頭が戻ってしまっていることを意味するのですよ。どうなんですか、その辺は。
  333. 清水汪

    清水政府委員 ただいま多少舌足らずなことを申し上げまして、どうも失礼を申し上げましたが、私どもとして申し上げたい趣旨は、現に戦後におきましても三十年以上にわたって定着をしている、そういう元号の定着の姿、元号というものがそういうものであるということを踏まえての立法をお願い申し上げておるということでございますので、先ほども申しましたように、義務づけるものではない、たとえばそういう規定が必要だというふうな考え方はとっていないということでございます。
  334. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 自治省、郵政省、厚生省――外務省、聞かなかったので恐縮ですが、警察庁、法務省、大変長い時間お待たせいたしまして、済みませんでした。どうぞお引き取りください。忙しいところ済みませんでした。  文部省はおられますね。――教科書の検定の過程で、現実にたとえば元号の押しつけというか、元号というものを優先させるというか、あるいはそれを特別に記入させるとか、そういういきさつがあったことは御存じですか。
  335. 上野保之

    ○上野説明員 いまの御質問は、強制する事実があったのかないのかという御質問だと思いますが、これはもちろん内容によるわけでございますが、必要に応じて元号記述を強制している場合がございます。
  336. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 「必要に応じて」というのはどういうことですか。「必要に応じて」というのは、だれが判断して必要なんですか。
  337. 上野保之

    ○上野説明員 これは教科書検定のやり方といいますか、それを一応概略御説明する必要があるかと思いますが、現在、教科書記述の中で日本史の関係だけにつきましては教科用図書検定基準の細則におきまして、日本の紀年については重要なものには年号及び西暦を併記することというような規定を設けておりまして、それに基づきまして、記述部分で、これは非常に重要で当然元号も併記されるべきだという場合には併記していただきたいということをお願いしております。
  338. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 強制することもあるとさっきおっしゃったから、お願いじゃないんです、強制なんですよ。  そうすると、元号が法制化されまして、元号使用の率がだんだん高まってくることになるんだろうと思うのですが、そういう場合に、元号を用いない教科書というのは不合格ですか。
  339. 上野保之

    ○上野説明員 一般的に教科書の記述というのは、それぞれの教科の目標なり内容に適切な形で記述されておればよろしいわけでございます。ただ、日本史の関係の場合には、歴史上重要な年代につきましては、当然元号も学習していただかなければやはり歴史の学習目的に合致しないと考えられますものですから、そういう点で欠落しておりますれば、書いていただきたいということをお願いすることになろうかと思います。
  340. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは歴史だけですか。
  341. 上野保之

    ○上野説明員 先ほど申し上げました検定基準の実施細則の関係で、歴史ともう一つ、申し落としましたが国語科書写、これは実は習字でございますが、国語科書写に関しましては、実はそれぞれの作品の中で中国の年代とか日本の年代といいますか、元号が出てきますものですから、それにつきまして西暦を併記していただきたいというようなことを同じ実施細則で規定させていただいております。
  342. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 たとえば社会科とか日本史の教科書の中で修正意見あるいは改善意見というふうなことがあるそうですが、そういうことは相当行われておりますか。
  343. 上野保之

    ○上野説明員 お答えいたします。  もちろんこれは非常に重要なものが欠けておる場合、併記されていない場合といいますか、そういう場合に意見をつけさせていただいているわけでございまして、その意見の中でも、先ほど先生おっしゃられましたような修正意見、これは一応強制意見でございます。そのほかに参考としまして、学習上こういうのには当然併記しておいた方が非常に便利じゃないでしょうか、学習効果上非常に有益じゃないですかという意味で、これは改善意見と私ども申しておりますが、そういう希望意見を申し上げさせていただいている例はございます。
  344. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 教科書の執筆者というのは、いわばその人が持っている学問の自由あるいは教育の自由を根底として、つまり表現の自由に属するわけですけれども、その立場から教科書を書くわけですね。元号の使用をある意味で強制されるわけですよ。その判断を文部省がやるわけですよ。一方的にやるわけですよ。それに従わなければ不合格です。そういう点でも、教科書の執筆者のいわば学問の自由とかあるいは教育の自由に対する制約をもたらすことになってしまうわけですね。こういうことは文部省はお考えになったことありますか。
  345. 上野保之

    ○上野説明員 これはあくまでも日本史の関係の学習でございますので、その点、そういうものが学習上どうしても必要でございますれば、そういうことになろうかと思います。
  346. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま文部省の方がお答えになったように、結局元号の使用というのは国民に対して、つまり執筆者という一国民に対して法的拘束力を持つ結果があらわれるわけですね。これはお認めになりますか、清水さん。
  347. 味村治

    ○味村政府委員 ただいま文部省の方からの説明を伺っておりましたが、要するに教育目的のために元号を教えるということが必要な場合には元号を書いてもらうということでございまして、これは教科書というものの性格上やむを得ないことでございますし、仮にその限りにおきまして著者の表現の自由というものが若干制約されるといたしましても、それは教科書という性格から、それの合理的な制約ということで、決して問題はないものと考えます。
  348. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 おかしいですよ。つまり、検定を受けた、従わなかったからペケにされた。被害を受けるわけですよ。そういう制度が一方的に文部省の見解の中で、教育上必要だからこうしなさいと強制されるわけですね。それがあなた、問題がないと思いますという答弁は、法制局としてはどう考えたってそれはおかしいよ。どうしてもおかしくないと思いますか。
  349. 味村治

    ○味村政府委員 もちろん教科書の目的を逸脱するような形で強制、そういうようなことが行われるとすればこれは憲法の問題になると思いますが、教科書を使って学生生徒に歴史を教える、そのために元号を記述することが必要だという限りにおいて教科書に書いていただくようにするということは憲法上問題はない、このように考えます。
  350. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最近聞くところによると、そのいわゆる強制というものがだんだん多くなっているのです。私は、こういう実態がやがてもうちょっと強い法的拘束力というふうな意味のところにまでつながっていく可能性というものを指摘しておきたいと思います。  だんだん時間がたってきますから、今度は元号についての実際上の問題点を少しお尋ねしたいと思います。文部省、結構です。  元号というのは平均すれば五年ぐらいで変わっているわけですね。昭和のように長く続いた例はないということをさっきも御答弁なさっておられた。有名な物理学者である田中館愛橘博士が御存命中の一九五〇年に、「私のように九十三年も生きているものは齢を数えるだけでも、安政、万延、文久、元治、慶応、明治、大正、昭和など八つの世代をいちいち顧みなければならない。西暦を用いていればこんな苦労はないのに……。」と語っておられたそうであります。まさに元号は大変不便である。世界じゅうで日本だけがなぜ一世一元で大変不便な年号を決めなければならないのか、私はどうしても理解に苦しむのであります。不便さがあると思われますか、ないと思いますか。
  351. 清水汪

    清水政府委員 この問題につきましても、先般たしか御質疑があったかと思いますが、不便、便利の問題をどういうふうに受けとめるかということは一つ考え方の問題があろうかと思います。実際問題といたしましては、途中で変わるということに伴いまして、そこにある種の不便があるというふうに受けとめる方がいらっしゃるということは、これは否定すべきことではないと思います。ただ、元号につきましては、元号全体として、先ほど来申し上げておりますように、大多数の国民がこれになじみ、使っておる、かつその存続を希望しているという実態がございます。そのこともあわせまして、政府としては法案を御提出申し上げているということでございます。
  352. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 不便か不便でないかと聞いたわけですが、率直に答えてほしいのですけれども。  天皇という一人の人間の死によって中断する紀年法、これが国民に要らざる混乱あるいは不便というものを強いていくことは明らかです。元号をやめたら混乱が起こるという方がおられますけれども、改元したらもっと混乱しますよ。たとえばここに、大阪朝日新聞の一九一二年の改元のときのことが書いてある。ちょっと読んでみます。  改元の影響 今上陛下践昨と共に大正と改元あるべく治定ありたるにつき直間接に各方面に及ぼす影響少からずこの元号改称御公布と同時に一分時の猶予なく直に改正せざるべからざるは日本全国幾千箇所に及ぶ一、二、三等郵便局の消印その他諸役所の消印、収入印は更なり全国新聞紙面の年号及び各官公衙、銀行、会社、商店等の用紙類に将来の便宜を思ひて、明治の年号を刷入したる分は悉く不用に期すべく殊に銀行会社等の株券及び証券等の貴重なる貯蔵用の不用に期するものに至りては全国に亘りその数予想外の多額に登るべく当分は之らの刷り直しの為印刷業者は忙殺さるべし尚大阪郵便局に於ては逓信省よりの電命着次第一切の郵便消印面の年号を大正と改むることに決し居れりと という文章がございます。私は、改元ということがもたらしてくるであろう、それによってもうかる商売もあるでしょう。率直なところ、それを期待している人もいるかもしれません。それがもたらす影響というのは非常に大きいし、ここに書いてあるように大きな混乱を避けることはできない。その点をどのようにお考えになって、こういう議論をなさっていらっしゃるのか、この際承っておきたいと思います。
  353. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 改元時において、いま御指摘のあったような御意見のあったことも承っておるわけでございます。しかし、一面、千三百年の長きにわたりまして、国民がこれを使用し、また、社会的に定着をし、また、存続を希望される、そういう事実を踏まえて私ども今度の元号法案を出しておるわけでございます。しかし、いま御指摘のように、改元の際には影響する国民の生活あるいは国民の感情、いろいろなものがあるということも私ども考えておるわけでございます。これらのものをいかに少なくしていくかというような点につきましても、つぶさに検討を進めて、なるべくそういう混乱あるいは国民に対する不利益等を与えないように、最終的にはそういうものに対しましての対処をしてまいりたいということで準備を進めておるところでございます。
  354. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 率直に申し上げて、戦中、戦前派はその教育や社会生活を通して、明治、大正、昭和という年号になじんできたことは事実であります。私もその一人です。だから、それが慣習として国民の間に定着していると言われることもわからないではありません。しかし、今日のように、地球が狭くなったと表現されるような国際化社会の中で、私どもの時代感覚で将来の子供や孫たちにまで、大変不便で、混乱を引き起こしかねない元号を強制をする、あるいは強制しかねない法律を制定するということについて、長官は政治家としておそれといいましょうか、責任をお感じになったことはございますか。
  355. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えをいたします。  この点につきましては、見解を多少異にいたすわけでございまして、将来に向かって生存をされる若い人に迷感を及ぼすということだけを私は考えておりません。先ほどからるる申し上げましたように、長い間わが国の歴史的な、あるいは文化的な一つ元号である、年の表示であるとも受けとめておるわけでございまして、しかも、国民の九〇%までが存続を期待しておられる、そういうことを考えてまいりますれば、いま御指摘のようないろいろな不便さが伴い、あるいは国民生活に不利な影響を与えるというようなことも考えながら、それをできるだけ除去しながら、国民の御要請、要するに存続の御要請をどう処理していくか、それは政府の責任であると思うのでございます。  したがいまして、そういうことを考えてまいりますれば、一つのルールをつくって、国民の方々元号の存続は希望される、しかし、その元号の存続にどういう形でおこたえするかということになりますれば、法律によって国会の場において御審議を願って、そうして期待にこたえたいということでやっておるわけでございまするので、将来の世代に生きる方々に対しましても十分このことは御理解願える、そう考えておるのでございます。そしてまた、それらの方々がどうしても不便であるという時期には、私はこれは鄧小平が言った言葉をかりるわけでございますけれども、将来の国民の英知あるいは良識がそういう時点に立ってまた考えていただけるものだということを期待をいたしておるわけでございます。
  356. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま長官は、九〇%の国民の皆さんがその存続を希望していらっしゃると言われました。また、今日までの歴代の総理大臣答弁を見ても、国民世論の動向というものを尊重して、あるいは見定めてという言葉を使ってこられました。事実これまで世論調査で元号の存続を望む者の比率が高かったことは認めます。しかし、そこでは法制化してまでという設問が行われてないし、まして一世一元という立場に立って調査したデータというのは必ずしも多くないように私は思うのです。しかし、元号法案国会提出された後に行われた世論調査の結果は、たとえば毎日新聞、これは四月二日付ですが、「法制化して存続」というのは二一%にすぎない。ちなみに「内閣告示で」が一一%、「現在のように慣習として」というのが四四%、「皇室の私的なもの」というのが一二%となっています。また、法制化によって、国民は「ある程度強制される」という人々を含めて六〇%が「強制される」というふうに受けとめているのであります。さらに、元号法案を「この国会で成立させる」が二五%、この国会で結論を出すより「もっと時間をかける」が五一%、「この国会で廃案にする」が一四%というふうになっています。さらに、三月の二十九日付東京新聞では、法制化に「賛成」が二〇・一%、「反対」が四二%、「どちらでもよい」が三四%で、法制化には反対である意見が多くなっています。ほかに読売新聞や共同通信やいろいろな新聞を御紹介する必要はないと思います。また、全国紙がほとんど元号法制化に批判的な社説まで掲げておられます。これが世論の動向でなくて何でしょうか。こういう問題点総理府はこの法案審議するに及んで御考慮なさったことがございますか、お尋ねをしておきたいと思います。
  357. 清水汪

    清水政府委員 ただいま御指摘の世論調査の問題につきましては、私どももかねがね留意をいたしております。その点で私どもとしてこの際申し上げたい点といたしましては、一つは、次の天皇の代になっても元号はあった方がよいかどうか、そういう聞き方がいわゆる存続についての問いでございますけれども、そういう問いに対しまして八割ないしそれを上回るような賛成の答えがある、このことが各種の調査を通じまして一様に指摘できるという点が一つでございます。  その次に、ただいま先生の御指摘のとおり、手続と申しますか、その存続の方法につきまして各種のアンケートが行われておりまして、その選択肢の、つまり設問の仕方につきましては、調査によりまして多少ずつニュアンスの違いがございますが、おおむねの聞き方といたしましては、最初には法制化に賛成であるかというふうに聞いておりまして、これは当然でございますが、それに対する答えは、最近において一つ、約六〇%という調査結果のものがございましたが、そのほかは多くは二〇%台というのがおっしゃいますとおりでございます。  その次の選択肢といたしまして、元号はあった方がよいがその方法としては、というところでこれが分かれてくるわけでございまして、ただいま最後に例示されました調査におきましては、内閣告示でやるとかあるいは慣習に任せるという答えがそこに設けられております。そこで私どもとしましては、実はかねがね総理府自身でどうしてそういうような点の調査をしないのかという御質問にも直面いたしてきたわけでございますが、その点につきましては、いろいろ検討いたしました結果、なかなか設問の仕方がむずかしい点があるわけでございまして、そういうことで私どもとしてはいたさなかったわけです。  たとえば、ただいまの調査の一例について若干申し上げますと、「内閣告示で」という点につきましては、先ほど来ここでも御答弁のございましたように、その方法は安定して存続を図る方法といたしましては、やはり難点があるということになるわけでございますし、それから、たとえば慣習として続いていけばよいということでございますが、昭和の次の元号ということで問題が提起されているわけでございます。その問題として考えますると、昭和の次の元号をいざ決めなければならないときに、だれがどういうふうに決めるかということにつきましては、これは慣習でルールが決まっているという状態ではございませんので、その点についてはまさに政府として、その点から今回の法案を御提出申し上げているようなわけでございます。この調査の仕方というものが技術的になかなかむずかしいので、やむを得ない面があることはよく承知いたしておるわけでございますが、そのような点もあるということをあわせて御考慮をいただければありがたいというふうに思うわけでございます。
  358. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 人の世論調査にけちつけて自分のところはやらないで、そして自分のところのたとえば法制化に賛成か反対かというようなことはやらないで、そして八〇%が賛成でございまして、したがってこの法律をつくりますというのじゃ、率直に申し上げてこっちの方も短絡ですよ。そういうやり方ではやはり誘導尋問だと言われている要素さえある――私はあえてそれは言わぬけれども、言われてもしようがないじゃないですか。あっちの方がまるっきり誘導尋問の選択肢でこっちの方は正しいんだという論理の立て方というのは、政府とあるいはマスコミとの関係という立場から見たら、よほど政府は慎重を期さなければいかぬですよ。にもかかわらず、マスコミの方がインチキで私の方はというふうな話は、まことにどうもこれはへんてこな話であります。  それでは伺うけれども、内閣告示による元号制定は、内閣がかわった場合などにほごにされるおそれもあるから、元号の権威、安定性にかかわる、つまり内閣告示では権威、安定性にかかわるというような御意見があって法制化になったのですか、その点をちょっとお尋ねをしておきたいと思う。
  359. 清水汪

    清水政府委員 ただいまはどうも表現が適切でなかった点がありました点はお許しをいただきたいと思います。決して第三者の調査につきまして調査に批判を加えるという趣旨で申し上げたわけではございませんので、御了解を賜りたいと思います。  そこで、内閣の告示という方式、これにつきましては、従前、政府といたしましてもある時期におきまして、政府全体という公式な立場ではなくて、総務長官が御自分のお考えとして、内閣告示という方法もその当時の情勢のもとでは考えられる方法であるという趣旨の御答弁を申し上げたということは記憶をいたしております。現在申し上げておりますことは、そのような方法であれば、やはり御指摘のように、内閣の考えによりましてその存続ということが左右されることになる可能性が――これは理屈としてでございますが、可能性があるということになりますので、その点で存続を期待する国民の願望に沿うという面から言いましてやはり問題があると申しますか、十分ではないというふうに考えるわけでございます。
  360. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いま室長は、総務長官個人が答えたことはある、しかし、内閣全体で表明したことはないと言っていますけれども、三木内閣の当時に自民党の源田参議院議員の質問主意書に対する答弁書がありますよ。これは答弁書ですから内閣全体ですよ。それは「元号制度は、新憲法実施後、法令上の根拠を失ったが、「事実たる慣習」として広く国民の間に定着している。もし、元号の使用を国民に強制しようとするのであれば、法律を必要とすることは当然であるが、」――いいですか。「広く国民の間に定着している。もし、元号の使用を国民に強制しようとするのであれば、法律を必要とすることは当然であるが、そうでなければ必ずしも法律によることを必要としないものと考えられる。」こう書いているのですよ。これは何ですか、内閣の答弁じゃないですか。
  361. 味村治

    ○味村政府委員 おっしゃるとおりの御趣旨答弁書があると存じます。しかし、その趣旨は、元号を強制的に使用させようとすれば法律が必要だということが書いてあるわけでございますが、当時としてはまだ元号の法制化をするか、あるいは内閣告示で行うかということは確定した段階ではございませんで、一つの議論としてそのようなことが書かれているわけでございます。要するに法律によらなければ国民に対する強制はできないわけでございますから、元号を国民に対して使ってくださいということを強制するには法律によらなければならないのだというごく一般論をそこで書いてあるわけでございまして、それに対しまして内閣告示でやりました場合には、これは国民に対する強制力は持ち得ない、これはもう内閣告示の効力から当然そうなんだというごく一般論を言っておるわけでございます。  今回の元号法案は、先ほどからたびたび申し上げておりますように、国民に対して使用を強制するという性質のものでは決してございません。前回の質問主意書における法律でなければ元号の使用を強制できないということは、強制ということに法律が必要だということの一般論を申し述べたものであると存じます。
  362. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 なぜ三百代言みたいなことを言うのです。強制するなら法律が要ると言う。じゃ、強制しないというなら法律は要らないじゃないか。これも説ですよ。
  363. 味村治

    ○味村政府委員 この点は、先ほど法制局長官も申し述べましたが、内閣告示による場合と法律による場合とでどのように違うのか、どちらがすぐれているのかということになりますと、内閣告示でございますれば内閣が決めることでございますから、そのときどきの内閣の方針によって変わるわけでございます。法律になりますれば、国民の代表であります国会でお決めになりました法律に基づきまして元号を決めるということになりますので、制度として安定しておりますし、さらに明確になっている。そういう点から、法律にする方が適当であるということで今度の元号法案の御提案を申し上げているわけでございます。
  364. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 あなたと議論していると何か本当に三百代言で、まともな法律論議になっていないですよ、そういう言い方をしては失礼だけれども。それはいまのような適用範囲の問題について、内閣告示と法律とでは違う。法律は強制する場合には必要だ、強制しないのだから法律は要らないじゃないかと私は聞いているのです。それを言っているのですよ。それを答えてください。
  365. 味村治

    ○味村政府委員 おっしゃるとおり、強制をしない以上は法律は要らないのではないかということは考えられるわけでございます。つまり、内閣告示でやることも一つ方法として、かつて国会で総務長官が御答弁になったことがございます。しかし、内閣告示でやる方法と法律をつくっていただく方法とこの両方を比較いたしますれば、法律をつくるという方が制度の明確性、安定性においてすぐれているという見地から今回の法案を御提案申し上げたわけでございます。
  366. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ここに「元号問題」という本がございますけれども、非常におもしろく書いてあるので紹介をしておきたいと私は思うのです。  元号を存続する立場の太郎君と反対だという花子さんという人がしゃべっているやりとりなんです。花子さんがこう言っているのですね。「たとえば、世界の名作といわれる源氏物語は、一条天皇の寛弘五、六年の作といわれているけど、何世紀のものかはわからない。これが十一世紀だということになれば西欧文化との比較も容易にできるわ。とにかく便利だからというだけでなく、広い世界観に立って物事を考えるという意味でも西暦が最も合理的だと思うわ。」さらに別のところでは「私たちは歴史の専門家ではないのだから、一人よがりの日本の元号で歴史を学んだのでは、それが一体世界史のいつごろの出来ごとなのか見当さえつかないわ。たとえば、ノーベル賞は一九五二年にはじまったが、その年に日本ではどんなことがあったのか、すぐ思い出せる人は少ないんじゃないかしら。」  私は、このやりとりの中で、太郎君よりも花子さんの方がはるかにすぐれた、しかも国際社会における日本人の立場ということを説得力を持った言葉として述べている、こういうふうに思うのです。私は、そういう点でもこの元号問題はいろいろ問題がある、こういうことを言わざるを得ないのであります。そういう具体的なこの元号法が持ってくるであろうさまざまな弊害といいましょうかあるいはマイナス面といいましょうか、そういう問題は国民の前にもっと積極的に明らかにしていかなければならない事柄ではないだろうかと私は思うわけでございます。  時間がだんだんと迫ってきましたから急ぎますが、私ども元号法制化実現国民会議というものがこの元号問題の推進母体であるととらえております。その推進母体は、たとえば神社本庁、神道政治連盟、生長の家などの宗教団体、郷友連、自衛隊隊友会など旧軍人、自衛隊関係の団体、さらには遺族会、それに加えて右翼的な政治活動をやっている諸団体、これが建国記念の日制定に続いて靖国神社の国家護持の運動に結びつき、それが英霊にこたえる会をつくって、天皇や首相の公式参拝の実現を目指している人々と共通だということに注目せざるを得ないのであります。そこでは、元号存続のたくらみが戦後民主主義を形骸化する、先ほどから私が何遍か申し上げましたように、天皇の政治的な利用を図ること、そしてさらに国防思想といいましょうか防衛思想とでもいいましょうか、の強化普及を図るということと盾の両面をなしているということを指摘をせざるを得ません。このような運動が自民党の総裁公選をめぐっての票田と結びついて福田前総理の決断となり、その結果がいま大平内閣に引き継がれて、三原総務長官に御苦労を願うということになっていると言わざるを得ないのであります。こうした団体の意思が将来にわたって日本の国民を拘束するということはたまったものじゃないと私は思うのです。  私はここに、実は、元号法制化に大変御熱心であった稻村前総務長官がまだ総務長官の在任中に、「理想世界」という生長の家の雑誌に、森田さんという生長の家の青年会の会長とやりとりをしている文章を見て、これは総務長官のときに気がついていたらなあと思ったくらいですけれども、これはいろいろ問題がある発言をしておられます。  たとえば、「憲法でも天皇は象徴として認められているんですから。その日本の柱を、象徴を立てる。そのためには、命をかけてもこの元号の問題に対処すべきであるということを、その内奏で陛下にお目にかかったときから特に思ったわけです。」彼の意識の中にはまさに天皇と元号がそのとおりに結びついているわけでございます。  長い文章ですから細かくは言いませんけれども、総務長官在任中です。この中で「建国記念日は政府が「主催」するのが当り前ですよ。誰に遠慮することもない。」稻村さんです。そして「建国記念日は政府が主催して、「天皇陛下万歳」をするのが当り前だ。」という言葉を述べておられる。この点について、いまの総務長官はこういうお考えに立つのか立たないのか、この問題についてどのようなお考えを持っていらっしゃるか、承っておきたいと思います。
  367. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 お答えいたします。  一部の団体においていろいろな意見があったという御指摘、稻村前長官が個人的に意見を述べておられること、それらのことも一応承知をいたしております。しかし政府といたしましては、そうした個人的な意見を踏まえて法制化に踏み切ったわけではございません。先ほどるる申し上げておりますように、九〇%近い国民の方々が存続を希望しておられる。しかし存続ということを政府として責任を持って果たしてまいるためにはどういう方法をとればいいのかということでございます。  そうした点を考えてまいりますと、結論的に、いまそうした国民の現実を踏まえて、政府といたしましては法制化をして国会の場で法案審議を願って、そしてお決め願うことが最も買主的なやり方であろうということでおるわけでございます。決して稻村前長官の御意見あるいは一部の団体の御意見をそのまま踏まえてやっておるわけではございません。しかし、それらの意見について私がここで批判をすることは避けさせていただきたい、こう考えておるところでございます。
  368. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 稻村さんは、「それは、役人におさえられていたんじゃないですか。事なかれ主義のお役人などはだいたい反対なんですから。こういう問題にはもっと大臣としての決断、政治決断が必要です。われわれは政党から来たんですからね、役人と同じことをやっておったんでは、政党から来た意義はなくなってしまう。いざという時に、大騒ぎになって、国会運営がマヒしてしまって、閣僚辞任――そうなるのも、これも閣僚だ、無事平穏に長くやるのも閣僚だ、と私はこういう判断をしてですよ、当り前のことをやっているだけなんです。冒険じゃない、当り前のことです。誰かがやらなければならない、当り前のことを、私の時代にやっておく、というだけのことなんです。」稻村長官が在任中に元号法制化は決まったのです。政府の方針は決まったのであります。この点は、いま三原新総務長官は、稻村君の意見にこだわるものではない、こう言っていらっしゃるけれども、事実は一連の関連を持って今日その法案が出されているということを否定することはできないと思うのであります。  だから私は尋ねたいのは、批判ではなしに、「建国記念日は政府が主催して、「天皇陛下万歳」をするのが当り前だ。」というお考えに立つか立たないか、それが一点。  引き続いて、その後の方にこう書いてある。「靖国神社の参拝でもそうでしょ。私は内閣委員会でやられた、ね。そのときに、「私は長い間、過ぐる大戦に参加しておった、その時の合言葉は“おい、靖国で会おう”というのが合言葉であった。そのわれわれの戦友をなぐさめ、冥福を祈るために、私は戦後、ただの一回も欠かさず、雨の日も風の日も、八月十五日というこの日は靖国神社の参拝を欠かしたことはない。それが、何が悪いんだ」と言ったら、みんなポカンと口をあけたきり……それで終り。」これ実は私が質問したのです。こんな答弁やってないのです、あの人。毎年行っていると答えたのは安倍官房長官なんです。まあほらもほどほどにと思うのですが。その後「靖国神社というのは、国家護持するのが当り前の、まん中なんですよ。」こう言っているのです。  この二つについていまの総務長官はどのようなお考えを持っていらっしゃるのか、お尋ねをしておきたいと思います。私はどのようにお考えになっているかということだけ承っておきたいのです。
  369. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、個人の意見についてとやかくは申し上げません。私は、政府といたしましては、あくまでも現憲法の条章にたがわない立場で一切を処理してまいりたい、そういうことでおるわけでございます。
  370. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 稻村さんがそう言ったから、あなたにその意見の解釈をあるいは批判をと言っているのじゃないのです。総務長官は、公式制度の問題についての担当大臣です。これらの問題について、そうお考えになっていらっしゃるのか、いらっしゃらないのか、あなたの言う憲法論は、憲法の立場はこういうこととなじむのか、なじまないのか、あなたの解釈を聞いているのです。政治的な信条を聞いているのです。
  371. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 あくまでもその時点に立って憲法の条章を踏まえて対処してまいる、それが私の考え方であり、姿勢でございます。
  372. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 いまあなたの仕事を通して、建国記念日というのは政府が主催するというようなことはお考えになっていらっしゃいませんね。
  373. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 建国記念日というのも国会でお決め願った記念日でございます。憲法制定の記念日もそうでございますから、この取り扱いについて国としてどうすべきであろうかということについては、いま総理府におきまする検討一つの問題である、私はそう考えておりまするが、いまのところ、建国記念日だけをとらえて、これを政府でやるとかいうようなことを方針を決めておるところではございません。ただ、国会で制定を願いましたそういう憲法記念日であるとかあるいは建国記念日であるとか、そういうような記念日に対して国としてどうすべきかという一つの問題が残っておるということで、これから対処してまいらねばならぬ事項である、そう考えておるところでございます。
  374. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私の聞いているのは、長官はいまお仕事を通してというふうにもしあえて言って悪ければ、個人的にこういう御見解に立つか立たないかということを実は承っているわけです。長官が個人的にとこう言っても、なかなか長官の肩書きと切り離れて論ずることはできないのかもしれませんが、前の長官がこういうことを長官在任中に言っていらっしゃる。とすると、それがその後の経過の中で政府の、あるいは総理府の動きとしてあるのかな、あるいは引き続いてそういう形のものを考えて何か知恵をしぼっていらっしゃるのかなというふうに私としては想像せざるを得ない。  そこで、たとえばいまの政府が主催するとか、「靖国神社というのは、国家護持するのが当り前の、まん中なんです」というような考え方に、いまの総理府総務長官はお立ちになっていらっしゃるのかいないのかということを私は聞いているのです。これは率直にお答えいただきたいと思うのです。これは長官のお答えの仕方によって、私どもどう受けとめたらいいのか。かねてから人柄の三原、国対委員長の時代からだそうでございますので、私ども漏れ承っておりますから、個人的にまさかそんな見解をおとりになることはないと思うが、もう一遍御答弁を煩わしたいと思います。
  375. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 きわめて重要な案件だと私は思っております。したがって、このこと自体は私が軽々に個人的な意見をこういう席で申し上げることを差し控えさせていただきたいと思いますが、私はあくまでも新憲法の条章を踏まえてそのときに十分慎重に取り扱うべきだ、そういう考え方でおるわけでございます。したがって、私はこの祝祭日の取り扱いについては慎重に対処いたしたいという考え方に立っておるということだけを御回答申し上げて、お許しを願いたいと思うのでございます。
  376. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは、公式制度連絡調査会議でこれらの問題点というのは議論の対象になっているかなっていないか、これだけお尋ねしておきます。
  377. 清水汪

    清水政府委員 公式制度連絡調査会議におきましては、現時点におきましては、ただいま先生の御指摘のような問題は議論の対象になっておりません。
  378. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それでは、公式制度連絡調査会議というのは、元号法制化とのかかわりはどんな形であったのか、あるいはいま公式制度連絡調査会議は何をやっていらっしゃるか、そのことだけ御答弁をいただきたいと思います。
  379. 清水汪

    清水政府委員 調査会議は、最近におきましては余り活発な活動はいたしてまいりませんでした。これは三十六年に閣議決定でスタートをしましてからしばらくの間、四十年代の初頭まではかなり頻繁に議論がありまして、その間におきましては、たとえば天皇の国事行為の代行に関する法律をつくるとかあるいは国葬の問題、国賓の待遇の問題、それからもちろんその間元号の問題、そういうことの議論はもちろんございましたが、最近におきましては、議論いたしましたのはもう元号ということが主でございまして、これにつきましてはここ数年の間にも随時に会合をいたしまして、公式なものはきわめて少ないわけでございますが、非公式な会合を重ねてきたということでございます。現在におきましては、元号につきましては今回こういう御提案という形をとっておりますので、その余の問題につきまして議論をいたしていないということを先ほど申し上げたわけでございます。ただ、公式制度調査会議の当初設定されました目的から言いますれば、問題が全部終わったということではないだろうと思います。調査会議の事務局を担当しております私の立場といたしましては、調査会議が終わったというふうにはもちろん考えておらないわけでございますけれども、現在におきましては議論をしていない、対象として特に取り上げていないということを申し上げているわけでございます。
  380. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 そうだとすると、その種の問題というのはこの公式制度調査会議で議論をなさる形になるわけですか。それになじむわけですか。
  381. 清水汪

    清水政府委員 調査会議は総務長官が議長でございますので、私から申し上げますのは私限りの責任での答弁ということでお許しをいただきたいと思いますが、ただいま御指摘の中で建国記念日の問題と靖国神社の問題がございましたけれども、少なくとも後者の問題につきましては、すぐ公式制度調査会議で議論するような性格のものかどうか、私としては必ずしもそうも思わないのでございますが、事実としては調査会議として現在そういうことを検討対象にしてないということを申し上げているわけでございます。
  382. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私はさっき稻村さんのやりとりを全体として拝見をして、大変なことを考えていた総務長官なんだなといまごろ思うわけです。まあやっておられるときからいろいろな意味で、あの人の人柄なり考え方なり発言というのはそれなりにいろいろな問題を起こす人だなと思っておりましたけれども、それにしてもこれはもう大変なことです。現職の総務長官の時代ですからね。いまになってみると、おやめになるころだったからしゃべったのかもしれませんけれども、それはそれとして大変な事柄だろうと私は思うのであります。こういう考え方が実際は元号問題についてもさまざまな反対論者に対する、あるいは反対の運動に対するいわゆる右翼的な政治活動をしておる人たちの妨害といいましょうか、問題を起こしているのです。  これはもう長官も新聞でごらんになったと思うのですけれども、キリスト教の団体の人たちがビラを配って、元号法制化反対で街頭宣伝をしている最中に四台の車が襲いかかってきて、そしてプラカードや「元号法制化反対」と書いた横断幕をやっていたところへ殴り込んできたとか、あるいは昨年の五月二十七日に、放水、発煙筒で歴史学研究会に妨害に来るとか、また東京都知事選挙の最終盤で太田薫候補がああいう形で妨害をされた、そういう動き、そういう右翼の跳梁というものが非常に大きくなってきているという事態について、長官はこういうやり方というものをどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  383. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 御指摘のそうした事態に対しましては、まことに遺憾なことであると考えております。先ほどからるる申し上げておりますように、いま政府元号法案制定を企図して、法案を提案をいたしております私どもといたしましては、そうした一連の考え方を踏まえてやっておるわけではございません。その点はひとつ御理解を願いたいと思うのでございます。
  384. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 宮内庁お見えになっていらっしゃいますか。  天皇が崩御された後即位までの間、大正天皇の例を見ると大変複雑でしかもたくさんの儀式があるわけですが、それらの検討をなさったことがあるかどうか、その点をまずお尋ねをしておきたいと思います。
  385. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 天皇が崩御になりましてからの諸行事、御指摘のとおりに従来の例で申し上げますと旧皇室喪儀令なりあるいは旧登極令なりにいろいろと各種の儀式の名称が書いてあるわけでございます。大きく分けますと、賎称の関係、御喪儀の関係、あるいは即位及び大嘗祭の関係、こういうようなことになろうかと思いますが、御喪儀なりあるいは御即位なりというようなことになりますと三十近くの儀式が書いてある、こういうようなことになっているのは御指摘のとおりでございます。  私どもといたしましては、こういった過去の旧令を考慮に置きながら、これからどうあるべきかということにつきましては慎重な検討を加えているところでございます。御案内のとおり皇室典範の第二十五条におきましては「天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う。」それから二十四条には「皇位の継承があったときは、即位の礼を行う。」こういったようなことはそれぞれ規定があるわけでございますが、その具体的の内容というようなものについては何ら規定がされてない、こういうような現在の状況になっているわけでございます。規定のございます大喪の礼あるいは即位の礼が天皇の国事行為として行われるということについては法律の規定があるわけでございますので、疑問はないわけでございますが、具体的にその内容、どれだけのものが入ってくるのか、現在の日本国憲法との関係においていろいろ検討しなければならないことでございますので、目下鋭意研究を進めているという段階でございまして、どの部分をどうというような具体的の判定といいますか決定というようなところまでは、まだ私どもとしても達していないというような状況でございます。
  386. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 少なくとも、たとえば新天皇の即位の際に天皇を神格化する儀式である大嘗祭というふうなものを国の行事として行うなどということはお考えになっていらっしゃらないと思いますが、あえてお尋ねをしておきたいことは、特定の宗教に偏ったというか、あるいは宗教的なものはやらない、また憲法上からもやれるものではない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  387. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 宮内庁といたしましては、ただいま申し上げましたように、いま慎重に研究いたしておる段階でございまして、どれをどうということまでは申し上げる段階ではないわけでございますが、もちろん、ただいま御指摘のございましたように、日本国憲法のもとにおいてある一定のものは国事行為として行われるというようなことであるわけでございますので、それはそれなりにおのずと範囲が決まってくるというようなことになろうと存じますけれども、現在どれがどうというようなことをちょっと申し上げる段階ではないというように思っておるところでございます。
  388. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 私はこんなことを本当は聞きたくないのですよ。しかし、これまで歴代内閣が元号を後回しにしてきたというのは、天皇の崩御に触れざるを得ない点に理由があったわけです。元号法案が出てきたわけですから、このタブーは破ったわけです。元号法案は急ぐという必要があるとすれば、それだけではなしに他の全体的な面についても整備する必要があるという理屈になるわけであります。  一つだけもう一遍お尋ねをしますが、公的な行事は特定の宗教的なものとしてはやらないというふうに確かめてよろしゅうございますか。
  389. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御案内のとおり、現在の日本国憲法におきましての祭政分離ということは十分踏まえた上で検討することは当然のことでございまして、それが具体に行われます際に憲法違反というようなことがないようにしなければならないことは御指摘のとおりでございまして、先生の御意見も十分承っておきたいと存じます。
  390. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 御陵を多摩に設けるというようなこともあらかじめ御検討をなさっていらっしゃるようですが、その点の事実関係をお答えをいただきたいと思います。
  391. 山本悟

    ○山本(悟)政府委員 御陵に関して具体的にどこをどうというようなことにつきまして検討をいたしておるわけではないわけでございますが、これまた旧来の皇室令で申し上げますと、旧皇室陵墓令におきましては、「将来ノ陵墓ヲ営建スヘキ地域ハ東京府及之二隣接スル県二在ル御料地内二就キ之ヲ勅定ス」というような規定がございました。それから、もちろん例外もできるわけでございまして、「前条ノ陵墓地以外ノ土地二陵又ハ墓ヲ営建スルハ別段ノ勅旨二由ル」というような規定があったわけでございますが、考え方といたしまして、多摩といいますか、武蔵陵墓地、多摩御陵のあるところでございますが、武蔵陵墓地の中に大正天皇及び貞明皇后の陵がある、こういうかっこうになっておるわけでございまして、万一必要というような場合にはそれが一つ考え方のもとになるというようなことは申せるかとも存じますけれども、まだ現在の段階におきまして具体的にどこをどう、あるいはどういうかっこうでというようなところまで申し上げられる段階ではないと存じております。
  392. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 官内庁、結構です。  もう時間も来ていますから最後に伺いますが、「元号は、政令で定める。」という政令に委任をしている部分があるわけですが、これは名称だけではなしに、元号決定の手続あるいは方式を含めて政令にゆだねることになっているんですか。その点、ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。
  393. 清水汪

    清水政府委員 その点につきましては、「元号は、政令で定める。」という法律の規定でございますので、それをそのまま受けまして、新しい元号の名前と、それからそれはいつから行われるかといいますか、つまりいつ改元が効力を持つかという二点につきまして規定するものがその政令の内容になるというふうに私どもは考えております。したがいまして、お尋ねのたとえばその政令で元号名を決定していく場合のその手続のようなものをさらに別の政令で決めるのかというような御趣旨の御質問かと思いますけれども、そのようなことは現在のところ考えておりません。  もちろんその「政令で定める。」ということは最終的には閣議決定というところで決まるわけでございますが、中身である新しい元号名をいいものを選ぶという趣旨に沿ってどういうふうに運ぶかという問題についてはいろいろ考えていないわけではございません。その点につきましては、すでに総務長官からも申し上げたことがございますけれども、学識経験者のお知恵をおかりしたいということでございますが、その辺の運び方につきましては、私どもとしても、事務の段取りと申しますか、事務の処理のルールというものとしては、法案を成立させていただいた後、なるべく早くそういうことの段取りにかかりたいというふうには考えておりますけれども、そういうものは特に政令という形を予定はしておりません。
  394. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 法律が決まった後それをどうやってやっていくかという部分を含めてこの法案は問われているわけですから、その手続とかあるいは方法などについて、いまお考えになっている部分がございましたら、長官答弁を煩わしたいと思います。
  395. 三原朝雄

    ○三原国務大臣 法案の御審議が終了いたしまして法案が成立いたしますれば、それに基づいて政令制定までのいろいろな手続が必要であるわけでございます。まず、この候補名を選定をしなければならぬ。それには学識経験者にお願いをいたそうと思いますが、それは学者先生の専門家ということだけでなく、他の場においても御意見がございましたが、広く文化人であるとかあるいは評論家の方とか、そういう広く国民を代表するような方々にお願いを申し上げていきたい。しかし、多数をお願いするわけにはいきませんので、若干の方々にそういう幅の広い立場で人選を、学識経験者を選ばしていただこう。  それらの方々の人選が終わりますれば、そこでひとつ候補名の選定、この考案を願って、その考案が出てまいりますれば、それを慎重に政府においては処置をいたしまして、最終的には閣議において決定をし、政令によってこれを処置してまいるというようなことを考えておりますが、そこで具体的にどういうあれをするかいまのところまだ詰めてまいっておりませんけれども、たとえば学識経験者の人選でございますとか、それらの方々に対しまするこういうような期待、希望というか、今日までの状態等も勘案しまして、どういうところからお選び願うかというようなことを御相談したりするのでございましょうが、そうしてある考案をしていただきました候補名が出てまいりましたものをまず総理府においてひとつ整理をし、その際には各学識経験者から候補名を決定賜りましたいろいろな御意見等を拝聴して、それらの御意見とともに候補名を整理をしてまいるということ。  それからいまのところ考えておりますのは、総理府を中心にする三長官ぐらいで、そこでまた検討をさせていただく。そしてそれをある程度どういう形で整理をしてまいるかという問題もございますけれども、それを経て今度は国会に、法案を決定を願いました国会の正副議長さんあたりに御相談をせねばなるまいかなという一つ考え方を持っておるわけでございます。それが終わりますればひとつ閣僚全員の懇談会にかける、最終的に閣議決定というようなところにいくべきかなというようなことを、慎重な検討過程を踏まねばなりませんので、そういう点をいま法案が上がりますれば検討を早速やってまいらねばならぬということで、いま全くこれは私のまだ腹案的なものでございまするけれども、なるべく民主的に決定をすべきであろうということでございますので、そういう点を考慮してまいらねばならぬかなというようなことを考えてまいっておるところでございます。
  396. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう時間が来ていますから締めますが、村田委員がさっき一番最後に引例をいたしましたから私も引例をさせていただきたいと思うのです。後ろに座っている味村さんの先輩ですが、元法制局長官の佐藤達夫氏の論稿集の中でこういうことを書かれていることを申し上げておきたいと思うのです。  新憲法が実施されてまもないころ、一部に西暦採用論が唱えられ、それに関連して、いま、“昭和”という元号の法的根拠が問題になったことがある。  じつは、従前、元号の根拠とされていた旧皇室典範第一二条の「践昨ノ後元号ヲ建テ一世ノ間二再ヒ改メサルコト明治元年ノ定制二従フ」という条文が、新憲法実施とともに消滅してしまったために、そういう問題がおこったのだが、当時、ある人からこの元号のことをたずねられて、「旧典範の条文にかわる法律は制定されていない。」と答えたところ、「それはたいへんだ。それじゃ、もう“昭和”の元号は使えないのじゃないか。」と反問された。それで、わたしは、「元号の使用を強制するのならば、法律の根拠が必要であろうが、役所や民間で自主的に使うぶんには問題はない。」と説明したのだが、相手の人は、まだそれでも釈然としない表情だった。  これに似た問題として、日の丸の法的性格についても、同じような疑問を投げられた経験があるが、しかし、この種のことを気にしていたら際限のないことで、たとえば、日本の中央政府の所在地をきめた法令はないし、ふだん、われわれがなじんでいる日曜から土曜までの曜日についても法令の定めはないのだから、これについても、問題はとりとめもなく発展してゆくであろう。  さきにあげた元号についての質疑応答などは、たまたま、わたしがそういうケースにぶつかったから、話のたねに紹介しただけのことで、だれもがそういう疑念をもっているとはいえないけれども、ちかごろのように法治主義の思想が普及してくると、一種のはきちがえとして、およそ準拠すべき法令なしにものごとが行なわれることは、すべて違法・無効であるかのように錯覚したり、そこまでいかないにしても、諸事百般、法令できめておかないと気がすまないというような気分に陥りかねない。事  実、いろいろな機会にそういった徴候に接する  ことが少なくないのである。この佐藤さんの言葉が今日の元号問題について言い得ている、まさに当てはまっているというふうに私は考えるわけであります。ですから、世論調査の動向もございますし、慎重に審議をすること、そして、できれば国民の中でもう一遍大きな討論といいましょうか、検討といいましょうか、時間をかけて、国民的なコンセンサスを導いていくということが非常に必要だというのが圧倒的な国民の世論であるというふうに私は思いますので、その点をぜひ御配慮願いたい。これは委員長にも申し上げておきたいものだと思います。  それから最後に、一九五〇年三月の参議院文部委員会の公聴会の経過の細かい資料があると思いますから、いただきたいと思います。その資料要求だけを申し上げておきたいと思います。委員長、その資料要求をお願いいたします。  以上で終わります。
  397. 藏内修治

    ○藏内委員長 次回は、明十一日水曜日午前十時理事会、十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十一分散会      ――――◇―――――