○前田
説明員 お答えいたします。
ただいま
総裁が申しましたとおり、電電
公社は
政府の御方針にのっとって内外無差別の原則で物品の購入をいたしておりますが、その購入の形態が、入札では
電気通信事業の
運営に非常に困る、随意契約でぜひやらせていただきたいと言っております。この理由をいま簡単に申し上げます。
これは実はなかなか、少しお時間をいただきたいほどの問題なのでございますが、簡単に申し上げますと、六点ほどございますが、第一点といたしまして、これは別に外国が入ろうと入るまいと同じことでございますが、競争入札でいたしますといろいろな製造会社のつくりました種々の物がわれわれの
電話局なり何なりに混在する形になります。機器の統一ということができませんので、これの保守の作業、あるいはこれを設計したり
建設したりする作業という電電
公社の主たる
業務が著しく能率低下を来すことになります。これが
電気通信サービスのコストの上昇、それから
サービスの劣化ということにつながるという点が大変心配をいたしておるところでございます。
二番目といたしまして、それでは非常に厳重な仕様書をつくって、それに合わないものは一切買わないという非常に厳重な仕様書をつくって機器の統一化をしたらその問題は解けるではないかという御意見がございますが、確かにそういうことをいたしますればそういうことになるわけでございますが、実際問題といたしまして、そういう非常にコンパティビリティーのあるセットを、製造業者が違いましても自由にコンパティブルであるような統一化を行いますためには、非常に詳しい仕様書を必要とする。そういたしますと、その仕様書を通じて電電
公社がいままで蓄積してきましたノーハウあるいは
公社の
開発に
協力をしてきました製造会社が蓄積したノーハウというものが、それぞれ競争会社の方へ入札時点にただでみんな公開されてしまうという問題がありまして、こうなりますと、製造会社としても多大の費用と人をかけて技術
開発をやっていくという意欲を著しく失わせ、かつまた非常に不公平な取り扱いになると思っております。
それから三番目の問題点といたしましては、信頼度の
確保ということがございます。御承知のように、この
電気通信のシステムは、現在
全国に約五千万個ほどの
電話機がございますが、これらのものが伝送装置あるいは交換機というものを通じて全部がつながれておりまして、
全国を通じて一つのシステムになっております。一つの長距離
電話をかけますような場合に、それが経過していきます機械の数というのは大変多うございますので、一つ一つの機械に要求される信頼度というのは非常に高いものが要求されるわけでございます。これのためには、購入する時点で幾ら検査をしてみてもわかりませんで、どのような工場で、どんな工程を通って、どういう検査の仕方をしてその機械がつくられたかということを、詳しく工場の中を調べて初めてこの信頼度が
確保できるわけでございます。しかし、随意契約でやりますと、合格すれば買ってもらえるという保証がございますから、メーカーさんも喜んで会社の企業秘密に属しますそういう会社の内部を詳しく見せてくれるわけでございますが、競争入札ということになりますと、自分のところが落とせるか落とせないかわからないのに、どこか他国の人に工場のすみずみまで企業秘密、ノーハウを見せてしまうということは、世界的に常識としてこれはとうてい行い得ないことでございます。したがいまして、競争入札で買うということになりますと、しっかりした信頼度を保証するための工場
調査なしで買わなければならぬ。したがって、安かろう悪かろうという物が入ってくることをなかなか防止できないという問題がございます。
それから四番目の問題といたしましては、われわれの機械、物によって違いますが、二十年、三十年と使うものがたくさんございます。この間の
増設用品あるいは補修用の部品というものを二十年、三十年にわたって永続的に供給をしてもらわないと非常に
公社の
事業は困る。こういうものは、やはりちゃんとしたものを納めておればいつまでも買い続けてくれるという随意契約の体制で、初めてメーカーも何十年にわたって補修用部品の製造体制を細々と
維持するということができるわけでございますが、いつ買ってもらえるのかさっぱりわからないというような入札
制度のもとでは、こういうことの
確保が非常にむずかしいということになります。
それから五番目の点といたしまして、この
電気通信の機械はすべて特注品でございます。日本の
電気通信システム、ドイツの
電気通信システム、アメリカ、それぞれ設計思想も違いますし、その
内容が異なっております。でございますので、たとえば日本の中で電電
公社向きの機械を製造いたしますと、その買い手は電電
公社以外にないわけでございますので、もし落札に失敗しますと、その会社は
設備投資であるとかそのために要した人員であるとか、そういうものが全部遊んでしまうという危険がございます。すなわち、入札
制度の場合は、当然のことながら、先行きの受注というものが全く不安定であるわけでございますので、そういう
状況のもとでは製造会社は
計画的な生産ということができなくなりますので、逆にコストが非常に上がってしまう、あるいは会社にとりましては非常に経営が不安定になる、あるいは雇用が不安定になるという問題を生ずるわけでございます。これが
一般市販品の場合ですとちょうど逆でございまして、
一般市販品で買い手がどこにでもいるというようなものでしたら、これは競争入札の方が
一般的には購入形態としてよろしいかと思いますが、特注品、しかも
電気通信機器のようにその国の
電気通信主管庁だけしか買い手がいないというような非常な特注品の場合には、当然これは随意契約によりませんと
計画生産ができないという大変非能率なことになるわけでございます。
最後に、六番目として申し上げますのは、随意契約でございますと、非常に簡単な手続で契約が可能でございます。現に電電
公社は、平均しますといま一日百七十件ほどの契約をして、この大きな
建設勘定工事の
予算というものを執行させていただいておるわけでございますが、これがすべて国際入札ということになりますと、まず世界じゅうのいろいろなものに適当な方法で広告をする、それで一定期間の後に今度応札してきた会社の工場等の審査をする、これを世界じゅうにわたってやらなければならない。それから、入札してきたものの審査をやらなければならないといったような非常な要員と
経費、これは莫大な量に上ると思います。そういうことでコストが非常にかかるということのほかに、調達期間が非常に長くなるわけでございます。こういうものが欲しいと
考えてから実際に物が手に入りますまでの時間が非常に長くなります。現在後進国等で行われております国際入札、物によっても違いますが、ある程度のシステムになりますと、納期が大体三年から四年というのが常識でございますが、現在電電
公社は随意契約でやっておりますので、六カ月以内で調達が可能でございます。したがいまして、非常に弾力的な経営ができる。
需要がふえれば、それに応じてすぐ品物を発注してすぐ手に入るということになりますが、これが発注して手に入るまでに三年とか四年とかを要することになりますと、現在のような
年度予算という形態の上で弾力的な
建設予算の執行ということは非常に困難になってまいりまして、せっかくいま申し込めばすぐつくようになりました
公社の
サービスというものも逆戻りをしかねないという心配があるわけでございます。
大変時間をとりましたが、以上六点を簡単に御
説明申し上げたわけでございます。