○谷本参考人 なぜ全廃を主張するかという
お尋ねでございますが、その第一点として強調さしていただきたいと思いますのは、現状凍結をどうとらえるかという問題があろうと思います。宅地並み
課税が実施されて以来三年ごとに現状凍結、現状凍結といった状態が続いてきておるわけでありますが、そうした結果になってきているのは、端的に申し上げて宅地並み
課税を拡大をしていきたいという力と宅地並み
課税はやめるべきだという反対の力、そういう力関係のバランスの中で決まった応急的な
措置なのではないかというぐあいに私は思います。でありますから、宅地並み
課税の現状凍結ということの中には、宅地並み
課税は漸次
廃止をしていきましょうという
考え方ではなしに、拡大をしていきたいという
考え方が大きく含まれたものでしかないというぐあいにとらえていくことが正しいのではないかと思います。そういう
立場で現状凍結問題をとらえるときに、私
どもは、この際全廃を要求せざるを得ないということになってくるわけであります。
私
どもが宅地並み
課税の全廃を主張している理由について、四、五点申し上げてみたいと思うのであります。
第一点として強調さしていただきたいと思いますのは、
日本の経済は御
承知のように輸出
中心の産業構造でございました。そういう産業構造がつくられる中で、太平洋に面した港湾施設の整った、そして優良農地などが多いところで、農地をつぶしながらこれに反対する者を悪者扱いをするという状態で進められてきたわけであります。その結果どういう状態が起こったか。一方で過疎の状態が起こる、そして他方で過密都市が形成されるというようなことになってまいりました。そうした過密都市、とりわけ三大都市圏がそうでありますが、その過密問題にさらに拍車をかけるために宅地並み
課税が実施されてくるというようなことになってきておるわけでありまして、してみるならば、そうした経済
政策のあり方のしりぬぐいを農民に行わせる、農民の犠牲でしりぬぐいを行うというのが宅地並み
課税なのではないかというぐあいに思います。そのしりぬぐいも、先ほど来申し上げておりますように、農民を犠牲にするだけではなしに、
自治体そして
地域住民の要求にもかなっていない、そういう形での市の都市づくりと言っていいものになっていくわけであります。したがって、私
どもが宅地並み
課税に反対するのは決して農民のエゴイズムだけではなしに、都市
住民の利益にもかなった
立場で私
どもは全廃を要求しているというのが強調申し上げたい第一点であります。
次に、第二点として申し上げたいのは、当面三大都市圏の限定実施という形での凍結だと言っても、これはやはり時代逆行なのではないかと思います。御
承知のように、三全総が出されておりますが、
政府の三全総の目玉になっているものは
地方定住圏
構想だとされております。このことは一体何を
意味するか。三大都市圏がすでに過密になってしまったということを
政府みずから告白したものではないかと思います。そうであるにもかかわらず、三大都市圏でいまなお宅地並み
課税の実施を継続していくというようなことは、そうした
政府の施策と比べてみても自己矛盾なのではないのかというようなことが言えるわけでありまして、私
どもはそうした点からも三大都市圏での宅地並み
課税は当然全廃すべきだということを申し上げたいのであります。
次に、第三点として挙げておきたいと思いますのは、宅地並み
課税は実施の面ですでに死に体化しているということであります。先ほ
ども申し上げましたように、宅地並み
課税は実施はされているが、多くの市町村は、税金は取るがまた農家に還元をするというような施策を行っておるわけであります。こうしたことは、宅地並み
課税は
政府は
法律はつくったが実施面では骨抜きされているということにほかなりません。戦後の
地方行政の中で、
政府が行いました施策がほぼ全面的に
自治体によって拒否されたあるいはまたそれがつくり変えられたとかいうような状態というのは、この宅地並み
課税が
最大なものだと言ってよいのではないかと思います。そうした現状からしてみても、宅地並み
課税は全廃すべきことではないのかというぐあいに
考えるわけであります。先ほ
ども申し上げましたように、三年ごとに現状凍結、現状凍結というようなことで来たわけであります。そういうぐあいに三年ごとに現状凍結、現状凍結を繰り返さざるを得なかったのはなぜなのか、ここのところをよく
考えていく必要があるのではないか。そしてまた、宅地並み
課税を継続をしていっても、実際には
自治体段階で骨抜きされるというのはこれまでと変わらないわけでありますから、そういう点から言っても宅地並み課
税制度はすでに死に体になっておるのであって、これを認知するのかしないのか、認知するとするならば全廃だというぐあいにいかなければならないのではないかと思います。
第四点として挙げておきたいと思いますのは、農民にとって宅地並み
課税というのは職業の自由も否定するような、大げさに言うならば憲法違反のような、そういうものではないのかという点がございます。したがって、農民といたしましては宅地並み
課税については絶対反対であるということであります。
以上の四つの点からしまして、私
どもは宅地並み
課税は全廃すべきである、このように主張しているわけであります。
なお、最後にもう
一つこれにつけ加えて申し上げておきたいと思いますのは、宅地並み
課税の全廃とあわせて、都市農業を振興させるための施策の充実を期すべきではないのかという点を申し添えておきたいのであります。
御案内のように、市街化区域の場合は農政の
対象から外されております。しかしながら、宅地並み
課税が問題になりましてから以降、三大都市圏について言うならば、
地域農業の
見直しが盛んになるようになったというような状態がございます。たとえば野菜についての価格保障
制度を
自治体がみずからの力で確立し、
拡充をしていくというような状態が生まれてきております。また、さらに進んだ市町村の場合でしたら、市町村が主体になって野菜の産直運動を行いながら、都市農業を見直すといったような活動も生まれてきております。またさらには、
地域的な特産物についての助成
政策を市独自が行う、あるいは府が行うといったような状態等々も生まれてきておるわけでありまして、そうした
自治体の都市農業を守るための施策充実、これに対応しても、国の
段階で市街化区域の農業をよくするための施策を講ずべきではないのかということを加えて申し上げたいと存じます。