○菊一
参考人 お答えいたします。
最初に窓販の問題の方からまいりたいと思います。
国債の銀行窓口販売、これを一口に申しましても、新規
発行債を銀行の窓口で売るといういわゆる販売窓口
拡大の問題と、また既発債の売買業務への銀行の進出といういわゆるバンクディーラーの問題とが含まれているわけでございます。
証券界といたしましては、単に既得の業務分野を侵されるといういわゆる領域論からではなく、広く金融、資本両
市場の健全な発達を期するという国民
経済的見地から強い反対の
立場をとっておるのでございます。
その理由につきまして、この大蔵
委員会の場におきましても公式に申し上げてきております。したがって、重複するかもしれませんが、私なりの考え方を若干申し上げさせていただきたいと存じます。
その第一は、金融、証券の分離は、すでに過去長い歴史を持ちまして、
わが国の金融秩序の中にかたく組み込まれたものであるということであります。私は法律につきましては専門的な知識を持つ者ではございませんが、大正五年の銀行条例の改正から
昭和三年のこの銀行法の制定及び同法のもとにおける金融行政の
方向は、銀行から証券業務の切り離し、銀行業務の専業化を推進するということではなかったかと存じます。そのような過程の中で、いわゆる証券業の大手四社が誕生してまいったわけでございます。まず大正九年に日興証券が日本興業銀行から分離しまして、同十四年には野村証券が大阪野村銀行から分離し、さらに
昭和五年には後に山一証券となりました小池証券が小池銀行からそれぞれ分離されて
証券会社として独立いたしました。さらに銀行法制定によりまして、藤本ビルブローカー銀行が証券業の兼営を行うことが認められなくなり、
昭和八年には銀行業務を廃止、証券の方にということで、大和証券の前身であります藤本ビルブローカー証券が設立されたのであります。
銀行の
国債窓口販売は、証券
市場に重大な影響を及ぼすのみならず、こうした証券業分離の
方向を基本的に改めることになるわけでありますから、証券取引
審議会を初め、いろいろの場において十分な検討が行われることが必要かと存じます。
私がかねがね感じております第二の点は、国際の販売業務を行うことが、銀行の業務の性格から見ましていかがかという点であります。
国債という有価証券の販売は、預貯金の吸収とは異なりまして、窓口の数さえ
拡大すればいいというものではございません。習熟した営業マンによる積極的活動に期待しなければならないわけでございまして、店頭で受け身の販売をすることにとどまるのでは販路開拓は多くは期待できないと思います。
その点はおくといたしましても、私が最もおそれておりますのは、銀行の性格からいたしまして、
国債が中途換金の際にも
投資元本が保証されている商品であるとの誤解を生じはしないかという点であります。長期の
市場性
国債を銀行にまで窓口を広げて、短期運用指向の強い大衆にまで
消化するといたしました場合、キャピタルロスを生じたときに
国債に対する不信感が生ずるのではないかとおそれるのであります。
最後に、いわゆるバンクディーラーの参入につきましては、公社債
市場の
価格形成が混乱するおそれがあるという問題がございます。このほか私から申し上げたいのは、
市場で取引される
国債の
価格を支えるために、銀行の
流通市場への参入ということを認めようというのであれば、
証券会社のみならず、銀行に対しましてもそのような役割りを期待することは本来筋違いであるということでございます。
私
どもは、買い方、売り方の異なる
投資ニーズを
調整して円滑な流通を図るという意味でのマーケットメーキングは、
証券会社の本来の職務でありまして、十分その任を果たしていると考えます。しかし、市況の大勢に抗して長期債の利回りを一定
水準に
維持するというために買い支えを行うということは、現在の
市場規模からいいましても物理的に不可能であります。そのことは、
市場に対し常に売り手となっている銀行ではなおさらのことであろうかと存じます。今日までバンクディーラーの問題を議論されるに当たりましては、ブローカー業務を補完する本来のディーラー業務の問題と、いわゆる
価格支持の問題が混同されているきらいがあったわけでございます。この点をきちんと区別して考えますならば、
証券会社のほかにバンクディーラーが必要であるという考え方は出てこないように思う次第であります。
長くなりましたですが、先ほどの
インフレにはならないか、この問題につきましては、現在
国債がこれだけ出ておりますが、総裁もおっしゃったように、いますぐ
物価が上がっていき、
インフレになるというような感じはございませんが、これが
証券界から
国債の
消化を通じて
インフレにならないようにという意味におきましては、われわれの
証券界が行っております
個人消化という点につきましては、
インフレ防止に一番役立つものではないか。国民の皆様に信頼される
国債、魅力ある
国債という点につきまして、いろんな
市場実勢に合わした
条件と期限その他多様化を図りながら
投資家のニーズに合わしていきたい、かように考えております。