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1979-03-20 第87回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月二十日(火曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 加藤 六月君    理事 稲村 利幸君 理事 小泉純一郎君    理事 高鳥  修君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君 理事 山田 耻目君    理事 坂口  力君 理事 竹本 孫一君       愛知 和男君    池田 行彦君       江藤 隆美君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       鹿野 道彦君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    玉沢徳一郎君       本名  武君    森  美秀君       山崎武三郎君    山中 貞則君       伊藤  茂君    大島  弘君       沢田  広君    只松 祐治君       美濃 政市君    大久保直彦君       貝沼 次郎君    宮地 正介君       高橋 高望君    安田 純治君       中馬 弘毅君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 金子 一平君  出席政府委員         経済企画庁物価         局審議官    坂井 清志君         大蔵政務次官  林  義郎君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省証券局長 渡辺 豊樹君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         大蔵省国際金融         局次長     平尾 照夫君         国税庁次長   米山 武政君  委員外出席者         経済企画庁調整         局調整課長   赤羽 隆夫君         経済企画庁総合         経画局審議官  高橋 毅夫君         参  考  人         (日本銀行総裁森永貞一郎君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  松沢 卓二君         参  考  人         (社団法人公社         債引受協会会         長)      菊一 岩夫君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     越智 伊平君   佐野 嘉吉君     玉沢徳一郎君   原田  憲君     三塚  博君   村上 茂利君     鹿野 道彦君   伊藤  茂君     枝村 要作君   大島  弘君     島本 虎三君   永原  稔君     中馬 弘毅君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     宇野 宗佑君   鹿野 道彦君     村上 茂利君   玉沢徳一郎君     佐野 嘉吉君   三塚  博君     原田  憲君   枝村 要作君     伊藤  茂君   島本 虎三君     大島  弘君   中馬 弘毅君     永原  稔君     ――――――――――――― 三月十六日  パチンコ機に対する物品税率引き下げに関する  請願池端清一紹介)(第一八六九号)  同(辻英雄紹介)(第一八七〇号)  同(河本敏夫君外一名紹介)(第一八七一号)  同(永原稔紹介)(第一八七二号)  同(春日一幸紹介)(第一九七七号)  同外五十六件(森田欽二紹介)(第一九七八号)  一般消費税新設反対等に関する請願永末英  一君紹介)(第一八七三号)  一般消費税新設反対に関する請願池田克也  君紹介)(第一九四七号) 同月十九日  一般消費税新設反対に関する請願池端清一  君紹介)(第二〇二四号)  同(青山丘紹介)(第二〇六九号)  同(池田克也紹介)(第二一二四号)  同(矢山有作紹介)(第二一二五号)  パチンコ機に対する物品税率引き下げに関する  請願江藤隆美紹介)(第二〇二五号)  同外十八件(小林進紹介)(第二一二六号)  同外十九件(清水勇紹介)(第二一二七号)  同(下平正一紹介)(第二一二八号)  同(田畑政一郎紹介)(第二一二九号)  同(楯兼次郎紹介)(第二一三〇号)  同外二十四件(中村茂紹介)(第二一三一号)  同外十七件(原茂紹介)(第二一三二号)  同(水田稔紹介)(第二一三三号)  同外三十五件(横山利秋紹介)(第二一三四号)  同(渡部行雄紹介)(第二一三五号)  共済年金制度改悪反対等に関する請願枝村  要作紹介)(第二一二三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件 昭和五十四年度公債発行特例に関する法 律案内閣提出第一号)      ――――◇―――――
  2. 加藤六月

    加藤委員長 これより会議を開きます。  昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  ただいまより本案について参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席をいただきました参考人は、日本銀行総裁森永貞一郎君、全国銀行協会連合会会長松沢卓二君、公社債引受協会会長菊岩夫君の各位であります。  この際、参考人各位に一言申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本委員会におきましては、目下、昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案を審査いたしております。本案につきまして、参考人各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようにお願いいたします。  なお、御意見十分程度にお取りまとめいただき、その後委員からの質疑にお答え願うことといたしたいと存じます。  何とぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、まず最初に、森永参考人からお願い申し上げます。
  3. 森永貞一郎

    森永参考人 日本銀行森永でございます。  かねて当委員会には、日ごろ何かと御指導いただいておりまして、ありがとうございます。  御要請でございますので、関連して、わが国の最近の経済情勢につきまして、まず簡単に申し上げたいと存じます。  最近のわが国経済情勢を見ますと、景気の方は、内需中心に着実な上昇傾向をたどっております。すなわち、政府支出が高水準維持しておりますほかに、個人消費住宅投資設備投資も軒並み堅調に推移しており、さらに十――十二月のGNP速報によりますと、これまで減少傾向にありました在庫投資反転増加をいたしております。  私どもが先月実施いたしました主要企業短観によれば、内需の増勢を背景に、企業生産、売り上げは今後とも着実に増加していく見込みでございます。また設備投資につきましては、これまで電力その他非製造業中心でありましたのが、五十四年度計画におきましては、製造業投資にも動意がうかがわれるのでございます。企業収益の面でも、多くの業種で、五十三年度上期に引き続き、下期もかなり好調が見込まれる状況になっておりまして、五十四年度上期も引き続き増益が予想されておる次第でございます。こうした状況を反映しまして、企業業況判断が著しく好転するなど、企業マインドは一段と明るさを加えておるようでございます。  この間、国際収支面では、昨秋以降経常黒字の縮小が顕著に認められるようになっておりまして、一方、長期資本収支大幅赤字が続いておることなどから、年度初来で見ますと、基礎的収支総合収支とも赤字になっておるなど、調整の順調な進展が見受けられるのであります。  石油情勢などにいろいろと不確定要因はございますものの、私どもといたしましては、こうした経済現状から見まして、物価安定確保に努めていけば、今後とも景気の着実な上昇が期待され、それを通じて国際収支調整もさらに進展するものと考えておる次第でございます。  しかしながら、物価の面では、最近相当気がかりな動きが出てきておることが注目されます。消費者物価の方は、暖冬の影響が幸いしましてまだ落ちついておりますが、卸売物価騰勢を一段と強めておりまして、二月の上昇率前月比プラス〇・九%、年率では一一・四%に達しております。これで昨年十一月以降四カ月連続の上昇になったわけでございまして、この間の上昇率年率約七%もの高さとなっておるのであります。しかも物価上昇の中身を見ますと、基礎資材価格上昇が二次製品の価格に漸次波及する気配も見られるのであります。内外備品市況動向国内需給の引き締まりなどから推しまして、三月以降も卸売物価はかなりの騰勢を持続する可能性が強いと見込まれます。  私どもで調査いたしておりまする経済短期観測の結果を見ましても、先行き販売価格や仕入価格上昇を見込む企業がかなり増加してきておるのであります。今後物価先高感が強まってまいりますと、国債大量発行下インフレマインドが急速に広がるおそれもないとは言えない現状でございます。  この間、金融面では、緩和が一段と浸透し、景気を支援していく態勢は十二分に整っております。特にマネーサプライ水準上昇短期運用有価証券を含めた企業手元流動性のふくらみ、借り入れアベーラビリティーの高まりなどから見ますと、流動性は全体としてやや過剰とも感じられる状況になってきております。  私どもはこれまで、金融政策運営に当たり、緩和基調維持基本方針としてまいりましたが、以上のような情勢のもとで、今後の物価動向に特に留意しながら当面、警戒的な中立姿勢をもって金融政策運営を図ってまいりたいと考えております。  なお、先々週ワシントンで開かれましたIMF暫定委員会の際には、世界経済は目下のところ全体として改善傾向を示しつつございますものの、最近に至り、赤字国だけでなく、西ドイツ、スイス、日本といった黒字国におきましても、物価騰勢が強まっておることが問題として指摘されまして、インフレなき安定的拡大を目指した協調的な政策努力必要性につきまして、各国のコンセンサスが得られたのでございました。私みずからも、わが国経済インフレなき発展、インフレにだけは絶対してはいけないという決意を披瀝したような次第でございました。  最後に、目下当委員会において審議中の昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案、いわゆる特例法に関連して、国債大量発行に伴う問題につき若干申し上げたいと存じます。  第一は、率直に申しまして、大量国債消化が次第にむずかしくなってきておることでございます。この辺に対しましては、もとより奇手妙手はないのでございまして、公募入札方式拡充発行条件の一層の弾力化満期種類多様化促進などにつきまして、政府において一段と御努力願うようお願いしたいのでございます。  第二は、発行量の問題でございますが、円滑消化観点からも、またマネーサプライコントロールを適切に行っていく観点からも、そのときどきの状況に応じた調整が必要であると信じます。特に問題となりますのは、民間資金需要が台頭してきた際でございましょうが、そうした場合には、税の自然増収も出てくると思われますので、自然増収に見合って国債を減額する慣行をぜひとも確立していってもらいたいと思います。  第三に、民間経済活動が活発化してくる場合には、国債発行規模だけでなく、財政活動の大きさ自体をも弾力的に調整することが必要であると存じます。五十四年度につきましては、公共事業の執行が景気の推移に応じて適正なテンポで行われるよう御配慮をお願いしたいと存ずる次第でございます。  この法案そのものには賛成でございますが、付帯して意見を申し上げた次第でございます。
  4. 加藤六月

    加藤委員長 ありがとうございました。  次に、松沢参考人にお願いいたします。
  5. 松沢卓二

    松沢参考人 ただいま委員長から御指名をいただきました全国銀行協会連合会松沢でございます。  本日は、財政特例法案に関しまして私ども意見を述べるようにとのことでございますので、特例国債を含む国債問題一般につきまして、私の意見あるいは希望を概括的に申し述べさせていただきたいと存じます。  御高承のとおりわが国経済はいま、大きな構造変化を伴いながら、石油ショック後の混迷からの回復過程を緩やかながらも着実に前進をしておると申すことができます。  昭和五十一年以降の公共投資中心といたします積極的な有効需要政策効果は着実に浸透を続けまして、昨年後半以来、国内需要は底がたい動きを示しております。企業収益も次第に改善方向に向かい、石油ショック後五年にいたしましてようやく、民間経済は活力ある展開の契機をつかむに至ったのであります。  しかしながら反面、財政赤字を筆頭といたしまして、国際収支雇用面需給面など経済の各部門になお存在する不均衡は、一部に改善の兆しが出始めているものの、まだ完全に解決の目途がついたとは申しがたい状況でございます。これらの不均衡を解消し、わが国経済を円滑に安定成長軌道に移行させることは、中期的視野から見ましてもきわめて困難な課題でございまして、経済調整局面は今後もなお続くものと見ざるを得ないのでございます。  以上のように、わが国経済現状を見てまいりますと、財政金融政策に課せられました責任は引き続き大きなものがあろうかと存ずるのであります。  かかる観点から、ただいま当国会におきまして御審議中の五十四年度予算案につきましては、わが国経済課題を踏ま見て見ますと、歳出面合理化にいま一歩の感は残りますけれども、大変厳しい財政事情の中で一応努力の跡がうかがえる内容であろうかと存ずるのでございます。  すなわち、財政再建を指向いたしまして一般会計規模の抑制を図る一方、需要創出効果の高い公共事業費には重点的に資金配分を行われまして景気対策にも配慮を加えた点は、予算編成上の苦心が察せられるところでございます。あわせて、構造不況地域高齢者のための雇用対策拡充など、個別対策にも意を用いましたことは、まことに時宜を得た施策と考える次第でございます。  このように五十四年度予算案におきまして、財政健全化方向に一歩を踏み出したことはまことに結構なことと存ずるのでございますが、行政機構簡素化の不徹底など、なお支出の見直しの余地を残しておりまして、今後とも一層の財政改革の推進が望まれるところでございます。  さて、ただいま当委員会で御審議をされております昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案は、五十四年度予算と表裏一体をなし、これを財源的に裏づけるものでございますので、やむを得ない措置と考える次第でございます。  しかしながら、八兆五百五十億円という特例国債発行予定額は、前年度比実に六三・二%の大幅増加でございまして、かつ、建設国債発行予定額を上回るということでありまして、きわめて異例の事態と申さざるを得ないと思うのでございます。財政法四条に規定されております国債発行額の歯どめは、過去の苦い経験に基づくものでありまして、いわゆる赤字国債は当面の緊急的措置であって、可及的速やかに圧縮、解消を図る必要があるとの認識を新たにいたしたいと思うのでございます。  私どもといたしましては、いままで申し上げました状況を踏まえまして、国債の引き受けにも相応の努力をしてまいる所存でございますが、引き続く大量国債発行につきまして、国民経済的観点から二つの点を申し述べてみたいと存じます。  第一は、財政硬直化が懸念される点であります。  五十四年度予算案におきまして、国債費歳出の一〇%を上回り、国債発行増加額の実に九五%に達しております。財政硬直化の懸念がいよいよ現実のものとなってきていると認識をすべきでございましょう。財政がそのときどきの経済情勢に適切に対応し、景気調整機能を有効に発揮するためには、財政弾力性維持が何よりも必要でございます。行財政合理化効率化によります節度ある財政運営にぜひとも御留意をいただきたいと存ずるのでございます。  第二は、インフレーションについてでございますが、これは国債大量発行下でもマネーサプライコントロールが可能かどうかという問題でございます。  昨年後半来、マネーサプライは緩やかながら増加傾向にあることはすでに御高承のとおりでございます。現在の水準が直ちにインフレーションに結びつくことはないと存じますが、円相場の安定、石油価格上昇内需回復などの要因によりまして、インフレの問題が再燃する可能性が十分あることは否定できないところでございます。  今後、政府の期待しておられますとおり景気回復が定着化し、民間資金需要が強まってまいりますと、民間部門公共部門資金需要が相競合することは当然予想されるところでございます。このような状況のもとにおきましては、マネーサプライコントロールは非常にむずかしくなってまいりまして、インフレーションを表面化させるおそれが多分にあるということでございます。  かかる事態を回避し、物価の安定を図るためにも、強い決意をもって財政体質強化に努めることの重要性を重ねて御指摘いたしたいと思うのでございます。  最後に、私ども国債最大引受手といたしまして、若干のお願いを申し述べさせていただきたいと存じます。  その第一は、国債管理政策のビジョンを明確にし、その展開格段の御努力をお願いいたしたいということでございます。  この一年間、公募入札による中期国債の創設、十年債の発行条件弾力化など、画期的な政策展開があったことは十分に評価するのでございますけれども、この動きをさらに推し進めるために二点申し上げたいと存じます。  一つは、国債発行条件弾力化自由化を一層促進し、市場実勢を的確に反映した適正な発行条件とすることでございます。具体的には、競争入札の方法など金利機能を活用した発行制度をさらに拡充することであります。  二つは、流通市場の整備の問題でございます。国債大量発行が続き、市中国債残高が累増してまいりますと、何よりも市場での取引価格需給実勢を反映して決定されることが必要と存じます。これとともに、金融機関保有国債流動化を一層促進いたしまして、市場拡大を図ることが必要であり、それがまた大量の国債の円滑な消化促進する道であろうかと信ずるのでございます。  要望の第二は、国債最大引受手である私ども民間金融機関資金吸収力強化格段の御配慮をいただきたいということでございます。  今年度上期の全国銀行国債引受額預金増加額に占めます割合は実に五五%にも達しております。さらにこれに地方債政府保証債等を合わせますと、これは相当のパーセンテージに達しておるものと思われるのでございます。今後とも続くと予想されます国債大量発行に備え、金融機関資金吸収力の増強を図ることは、国債の円滑な引受消化にとって最も基本的な条件と思われるのでございます。  最後に、すでに申し述べましたとおり、わが国経済は、物価の安定と景気回復という相矛盾する政策課題を抱えた大変微妙な局面に立ち至っております。財政政策金融政策整合性を持った機動的、弾力的運営に万全を期していただきたいと切に希望をいたす次第でございます。  以上、いろいろ申し述べました点につきまして、今後その具体化を御指導いただきたいと存じます。  これをもちまして私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  6. 加藤六月

    加藤委員長 ありがとうございました。  次に、菊一参考人にお願いいたします。
  7. 菊一岩夫

    ○菊一参考人 ただいま委員長から御指名をいただきました公社債引受協会会長の菊一でございます。  本日は、昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案につきまして意見を申し述べるようにとのお話でございますので、証券界立場から若干の意見を申し上げ、御参考に供したいと存じます。  さて、最近の経済情勢を見ますと、生産や出荷の増大とか企業業績改善など、このところかなり明るい情勢を加えておりまして、景気は徐々にではありますが、着実に回復歩調をたどっているようにうかがわれます。  しかしながら他面におきまして、雇用問題はなお深刻であり、また、依然として苦境を脱することができないでいる構造不況業極も残されておりますなど、わが国経済がこのまま一直線に望ましい安定成長軌道を進むであろうと安易に楽観することも許されないように思われます。  このような情勢から申しまして、先般衆議院を通過いたしました昭和五十四年度予算案は、一方において、景気回復を一層確実なものとするよう配慮されておりますと同時に、他方では、経常経費の伸びを極力抑え、財政健全化にも努められておりまして、私どもといたしましても、現下の情勢に適合した妥当なものであると受けとめている次第でございます。  このような意味合いにおきまして、五十四年度予算に計上されておりますところの特例国債八兆五百五十億円を含めまして総額十五兆二千七百億円に上る国債発行につきましては、これもやむを得ないものと考えている次第でございます。したがいまして、この五十四年度公債発行特例に関する法律案ができるだけ速やかに成立し、年度を通じまして計画的に国債発行を行うことができるようになることを期待しているものでございます。  私ども証券界といたしましては、これまでも国債個人消化促進努力をしてまいりましたが、五十四年度におきましても引き続き、国債消化に鋭意取り組み、財政の円滑な運営にいささかなりともお役に立ちたいと念願をしているところでございます。  次に、私ども証券界が担当いたしております国債個人消化につきまして、最近の状況を申し上げますとともに、せっかくの機会でございますので、国債発行流通等の問題に関しまして二、三の所見を申し述べ、委員各位の御参考に供したいと存じます。  五十三年度中の国債市中公募額のうち、証券会社取扱額は二兆六千七百三十六億円、比率といたしましては二五・五%ということになりました。十年もの利付国債だけについて見ますと、証券会社取扱額は一兆七千八百六十億円でございまして、その比率は一九・四%でございます。ちなみに五十二年度におけるこの比率を見ますと、割引国債を含めた総額では二六・六%、十年もの利付国債だけでは二四・一%でございまして、史上最高でございましたこの前年度比較では本年度は若干の比率低下となっております。しかし五十三年度は、消化環境が著しく厳しくなったことを考えますと、取り扱い比率低下がよくこの程度にとどまったとの感を深くしている次第でございます。これは証券会社営業担当者が厳しい消化環境の中で国債個人消化に懸命の努力をいたした結果でございまして、この点御理解いただければ幸いと存じます。  次に、こうした厳しい状況下におきまして、五十三年度をさらに上回る国債消化していくためには、並み並みならぬ工夫と努力が一層強く要求されるように存じます。こうした観点から、若干の所見を申し述べさせていただきたいと存じます。  第一は、申すまでもないことでございますが、国債の円滑な消化のためには、国債発行条件を常に流通市場実勢に即したものとし、投資対象として魅力あるものとしておく必要があることでございます。  発行条件実勢を下回るようなことであっては個人消化が円滑に進まないことは、昨年後半以降の経験に如実に示されているところでございます。幸い三月債から発行条件の引き上げが実施せられ、事態はかなり改善を見たわけでございますが、今後におきましては、なお一層弾力的、機動的に流通市場実勢に即した改定が行われる必要があろうかと存じます。  第二は、投資家のニーズに合わせて国債の種類の多様化、短期化を図っていただきたいということでございます。  わが国におきましては、一般に個人投資家の短期債指向が強いことはよく言われているところでございますが、最近のように先行き不透明感が出てまいりますと、この傾向は一層強くなってまいります。市場全体としまして資金は豊富に存在しているわけでございますから、こうした投資家のニーズに合うよう国債の種類の多数化、短期化を図っていくならば、まだまだ順調に消化されていくものと確信をいたしております。  五十四年度は、三年もの利付国債発行額をふやすほか、新たに二年もの及び四年もの利付国債を導入し、これも入札方式で発行することが予定されておりますが、ただ、こうした入札方式による中期もの利付国債発行額は市中公募額全体の一九・六%にとどまっており、長期債依存の姿は依然として余り変わっていないと言わざるを得ないと思います。今後、情勢の推移に応じ、中期もの利付国債発行額を弾力的に拡大されることを当局において御検討くださるよう切にお願いをいたしたいと存じます。  第三に申し上げたいことは、国債管理政策の一環といたしまして、国債価格の乱高下を防止する趣旨から、たとえば資金運用部の買いオペといった市況対策を適時適切に講じていただきたいということであります。  人為的な国債価格支持政策をとるべきでないということはもとより当然のことでございますが、国債といえども市場で自由に売買される金融商品でございますから、たとえば本年二月から三月にかけての金利変動期の値下がりのように、需給関係や市場心理の状況いかんによりましてその価格が大幅に変動する可能性があることも否めないところでございます。こうした場合、国債市況の過度の変動を防ぐという趣旨で資金運用部のオペ等が行われるといったことは、国債に対する信用維持観点から見ましても適当な措置と申せましょう。その意味におきまして、このほど資金運用部により三千億円の買いオペが行われることになりましたことは、まことに時宜を得た措置であると考える次第であります。  最後に、国債流通市場につきまして触れさしていただきます。  御高承のとおり、公社債の流通市場は近年、急速な拡大を見ておりまして、昭和五十三年中の店頭売買高は百九十三兆円と、わが国GNPの額に匹敵する規模に達しております。このうち、国債の売買高は六十一兆円、シェアにしまして三一・九%、約三二%を占めまして、いまや名、実ともに国債わが国債券市場流通市場の中核となっております。それだけに、国債に対する国民の信頼を高めるため、流通市場の整備を図ることが一段と重要性を加えてきております。  このような観点から、証券界といたしましては、今般国債の取引所取引に大幅な改善を加え、取引所の価格公示機能を活用する見地から、公社債売買の大宗を占める大口取引のうち、可能なものの取引を取引所に移行させる方針を決定いたしまして、四月から実施することにいたしております。これによりまして、国債価格形成についての信頼性が一段と高まることが期待される次第でございます。  以上をもちまして、私の陳述を終わらせていただきます。ありがとう存じました。
  8. 加藤六月

    加藤委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は一応終わりました。     ―――――――――――――
  9. 加藤六月

    加藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  沢田広君。
  10. 沢田広

    ○沢田委員 お三人の参考人には、お忙しい中をおいでいただきまして、厚く御礼を申し上げます。また、それぞれの立場からの御説明をいただきまして、大いに参考にさしていただきました。  ただ、総じて一言だけ申し上げたいと思いますのは、景気なりそれぞれの分野についてお触れになられましたけれども、そのことによって国民生活がどうなるのかということについては一言も、まあ高齢化社会のことについてだけお触れになっただけであって、どうも国民生活の安定にどう寄与するのかということの点についてはお触れになられなかった。  経済の基本は完全雇用とインフレの防止である、当面その目標はそう設定してもいいと思うのであります。そういう意味において、これは折がありましたらお答えいただきたいと思うのでありますが、その意味におけるそれぞれの参考人立場から、国債消化というものが国民生活の安定、完全雇用、それからインフレの防止、そういう立場についてどう受けとめておられるのか、この点まずお伺いをしておきたいと思います。これは総裁から……。
  11. 森永貞一郎

    森永参考人 当面の経済政策の目標が雇用の安定とインフレの防止にあるということにつきましては、私も全く同感でございます。その意味で、昭和五十四年度予算に当たり、巨額の国債発行いたしまして景気を下支えする措置をとられたのも、時宜に適した措置であると存じます。  将来、長期にわたる問題としては、さらに福祉国家の建設などいろいろの問題がございますことは承知いたしておりまして、今後とも努力しなければならないと存じますが、当面の五十四年度予算につきましても、それらの点も考慮されておるようでございますし、当面の予算のあり方としてはまずまずの姿ではないかと思っておる次第でございます。  もう一つのインフレの防止、これはやはり国民生活の不安を除去するために絶対必要な前提条件であると思っておる次第でございまして、先ほども申し上げましたように、最近の物価動向等にもかんがみ、私どもといたしましては、今後の物価動向に周到に冷静に注目しながら、金融政策の面におきましても、いやしくもインフレの再燃を避けますよう、警戒的、中立的な立場で今後の施策運営に誤りなきを期しておる次第でございます。
  12. 沢田広

    ○沢田委員 私の質問は五十分ということで限定されておりますので、簡潔に、まあ舌足らずの点もあるかと思いますが、また答弁も簡潔にひとつお願いいたしたいと思います。  実は、いままでの御回答の中で、失業者の救済というものが、国債発行していく上においての施策はこれは政府の責任であるから、日銀の総裁から見れば、いわゆる国債発行によって完全雇用という目標とは、言うならば遊離しているといいますか、その問題は日銀としては特別考える該当項目ではない、こういうふうに御判断なさっておられるのかどうか、その点ひとつお答えをいただきたいと思います。
  13. 森永貞一郎

    森永参考人 完全雇用の達成は理想でございますが、いまの現状から一足飛びに完全雇用ということにはなかなかむずかしいわけでございまして、私どもといたしましても、雇用問題の重要性を十分認識しておるつもりではございますが、当面はやはりミクロ的に、増加する失業者に対してどう処理するかという問題の方も大変大事な問題なのでございまして、その意味で政府においてもいろいろ施策を講ぜられておるわけでございまして、私どもといたしましては、マクロ的に景気状況を下支えするという意味で従来金融政策の運用に当たってまいりましたが、景気の下支えをする意味では、現在の金融環境はすでに十分整っておると思っておる次第でございまして、決して雇用問題をないがしろにしておるつもりはございません。しかしながら、今後は物価の問題が大変大切になってまいりましたので、その意味で誤りなきを期したいという決意を申し上げておる次第でございます。
  14. 沢田広

    ○沢田委員 さっきガソリンの問題が理事会でも議論になっておりましたが、これはOPECの関係のようですが、来月から一リッター当たり十五円値上げがされる、六月にはまた十円上がるという内示がそれぞれスタンドには行っているようであります。いままでの状況では、これは日本経済経済指標から見まして、大体八十円台でほとんど変わっていないわけでありますね。まあ八万五百円、これは一キロリットル当たりであります。白灯油にいたしましてもあるいはC重油にしても、それほどの変動を見受けることはできないのであります。  卸売物価が上がっていく傾向として、一つには、日銀のマネーサプライの二けた台がずっと十カ月も続いてきている。言うならば過剰流動というような資金になって、増発率が高い。景気回復するためにということのみに重点が置かれて、その面の配慮というものが足らないためにこういう現象が起きてきたのではないかというのがあります。  ガソリンのことを挙げたのは、そのことに誘発されまして、これから運賃の値上げ、公共料金の値上げ、そういうようなものが行われてまいりますと、恐らくガソリンの値上げによる関連物資の値上がりというものも起きてくるということが予想にかたくないと思うのであります。そうしますと、これはいやおうなしにインフレヘの傾向ということが、言葉でどう言おうと言うまいと、必然的な傾向が生まれてくるのではないか。  それに対して日銀の総裁として、そういう状況はない、心配ありませんと国民の前に言えますか、それとも、そういう心配があるとするならば、これは何らかの方法をとらなければならないとおっしゃられますか、どちらですか、お答えいただきたいと思います。
  15. 森永貞一郎

    森永参考人 先ほど申し上げました卸売物価の騰貴の要因を分析しますと、目下のところ海外要因の方が少し多いようでございます。しかし最近になりまして、基礎資材から製品の方にやや値上げが及びそうな気配もございますので、先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては、今後の物価動向に非常に心配をいたしておる次第でございます。  その意味で、従来は景気支持の観点から、さらには景気物価両にらみというようなことで金融政策を運用してまいりましたが、ここへ参りますと、警戒的な中立型と申しますか、もうこれ以上過剰流動性をふやさないように、むしろ吸収するようにといったような面の配慮が必要になってきておるかと思う次第でございまして、そういう面で十分な配慮をしながら、インフレの再燃だけは絶対に避けなければならないというのが、私どもの任務であると心得ておる次第でございます。今後とも大いに努力をしてまいるつもりでございます。
  16. 沢田広

    ○沢田委員 まだ私の質問の同等にならないのでありますが、国民としては、これから国債が出回ってくることも後で質問するわけですが、現在の段階でもインフレヘの懸念というものが非常に強い。その強いという状況の中に、公共料金もガソリンもべらぼうに上がってくる。失業者の数は先月でも百二十何万というふうにふえる。そういう状況インフレヘの危険というものを抑える具体的な措置として、ある意味においては、引き締めるということか吸収するということかどうかわかりませんけれども、そういう措置をやはり考えなければならぬのじゃないか。それは逆に言えば、デフレ的な効果を示すということの危険性もあると思います。  とにかくインフレを抑えるということに最大限に目標を置くと仮定をすれば、ただ抽象的に何とかしましょうではなくて、具体的にはどういう方法とどういう方法で検討をされようとなさっておられるのか、その点ひとつ国民の前にお示しをいただきたい、こう思うのです。
  17. 森永貞一郎

    森永参考人 私は、まだ現状インフレーションに陥っているというふうには考えませんが、しかしごく最近のこの物価騰貴の傾向そのものには、懸念すべき点がたくさん含まれておるわけでございまして、もし先高見越し等から国内に買い急ぎなどの風潮が起こりますと、これは大変なことになるわけでございますので、この辺でやはりインフレは絶対起こさないという気持ちを政府も国民もまた私どもも持って、この事態に対処することが必要だと思っておる次第でございます。  それにつきましては、物に即したいろいろな面の対策も必要だと思います。石油ショック時代の貴重な経験も積んできておるわけでございますので、冷静にこの事態に国民も企業政府も対処されることがぜひとも必要であると存じますが、金融の面からも私ども、先ほど申し上げましたように、警戒的に中立的な姿勢で、もうこれ以上この流動性をふやさない、ないしは、だぶだぶになっておりまするところがあるといたしますれば、それを吸収するというような意味での中立的な姿勢で、今後の金融政策を運用してまいりたいと思っておる次第でございます。  金融政策の手段としては、公定歩合の引き上げ等の措置があるわけでございますが、その点につきましては、私どもいま公定歩合を引き上げるべき必要はない、当面そういう必要はないと思っておりますことを補足的に申し上げておきたいと思います。
  18. 沢田広

    ○沢田委員 昭和五十四年度民間設備投資計画は、日本経済新聞と日本銀行と日本開発銀行がそれぞれ見通しを立てられまして、これは、これまで示してはおりませんけれども、ごらんになっておられると思うのです。  その中で、大きく違ってきているというものを二つばかり挙げますと、建設、まあ不動産もそうでありますが、建設と不動産に対して、日本経済新聞とそれから開発銀行はおおむねのところを見ているのですが、日本銀行は、もし何なら参考までにお渡ししてもいいのですが、とにかく非常に少なく見ている。九百二十四億というふうに見ておりますし、片方は、日本経済新聞は二千二十七億と見ているわけであります。あるいは、日本開発銀行は千八百一億、こう見ておるわけであります。それから自動車関係についてもマイナスとして見て、これはマイナスは両方見ているのでありますが、開発銀行はプラスと見ておりますが、これは四千九百五十二億で最低であります。それから石油も、同じように千七百九十八億として、これは前年度対比一五%の増という形で見ているようであります。  これは備蓄その他のことを考えて設備投資計画というものを見ておられるのだろうと思うのでありますが、いまのインフレとの関連性を見ながら、日本銀行は五百三十三社の調査でありますけれども、この新聞の報道では「安定成長対応型」、こう書いてありますが、同時にまた「合理化・省力化に主眼」とも書いてあります。そういたしますと日本銀行としては、五十四年度設備投資計画、こういうものの大体の方向というものを、違っている分野だけでもいいですが、ひとつ簡単にお答えをいただければ幸いだと思います。――もし必要なら、これはお渡ししますが、ごらんになってください。
  19. 森永貞一郎

    森永参考人 私どもの調査は、年に四回ずつ短期経済観測という形で、約五百社余りの主要企業、それから約三千社の中堅、中小企業、その双方を対象としてアンケートを求めておるわけでございますが、ここにお示しがございましたのはその中の投資計画の部門でございまして、主要企業五百三十三社のものでございます。  対象の範囲が大分違いますので、違った結果が出てくるのは当然でございますが、私どもこの調査を見た感想として、昨年の同じ時期に調査いたしました際には、設備投資計画は前年比むしろマイナスでございました。それが本年は、企業の種類によっていろいろ違いますが、プラスの結果が出てきた。これはやはり減速経済に対応して収益基盤を確保しようという企業努力が功を上げつつある。その意味で企業も、日本経済の将来についてややコンフィデンスを回復してきて、その面から必要な設備投資、その中には増産のためのものもございましょうし、省力投資もございましょうし、合理化投資もございましょうが、そういう投資に意欲が向いてきた、そういう意味でアンケートの結果を評価しておるわけでございまして、冒頭に申し上げましたように、日本経済回復の基調を取り戻しつつあるという一つの理由は、設備投資動向の中にも見受けられるのでございます。  業種別にはいろいろな事情があるわけでございまして、開銀あるいは日本経済新聞との間のいろいろな違いも問題でございましょうが、余りしさいにはコメントする材料はいま持っておりませんが、全体としての評価はいま申し上げたようなことだと思っております。
  20. 沢田広

    ○沢田委員 では、国債の問題について日銀の総裁にお伺いしますが、日銀の政策委員会の開催は大体五十二年で九十三回、五十三年九十回ということでありまして、週大体二回開催されているようであります。この国債がいわゆる市中に出回りまして、買いオペを行わなければならないような事態という判断をする目印としては、大体どういう点を視点として行っておるのか、そのミニマム的なものについてお答えいただきたいと思います。
  21. 森永貞一郎

    森永参考人 私ども毎日、金融市場における資金の過不足をながめながら、その白その日に適合した金融調節の手段を講じておるわけでございます。その手段としては、貸し出しあるいはその回収、あるいは手形の買い入れまたは売り出し、そのほかにいまお話がございました債券の売り買いオペレーションということになるわけでございますが、債券のオペレーションということになりますと、やや長期的な資金供給になりますので、日常には起こってまいりません。年末とかその他資金繁忙時における措置として年二回ないし三回ぐらい、当面の場合には買いオペレーションでございますが、実行いたしておるわけでございます。  そのめどは、やはりそのときの不足する金融資金の調節ということでございまして、機械的な基準はございませんが、大体の気持ちを申し上げますと、日本経済が成長をしてまいる、それに伴って必要となってまいります成長のための通貨所要量の増大、その増大に見合ったものにとどめるのがいいのではないかという、漠然とはいたしておりますが、そういうことを考えまして、このところずっとオペレーションに臨んでおるわけでございます。  結果から申しますと、毎年毎年は必ずしもその年の銀行券の増発量に見合った結果にはなっておりませんけれども、長い期間で見ますと、大体日本経済の発展のために必要であった銀行券の増発量に見合うものにとどまっておるのが現状でございまして、そういう気持ちで当たっておるということを御理解いただきたいと思います。
  22. 沢田広

    ○沢田委員 総裁ばかりで恐縮でありますが、若干また時間をかりますが、結局都市銀行の国債の底だまりといいますか、その底だまりが大体どの程度になった場合にそれを行っていくつもりになっているのか。これも抽象的な表現にならざるを得ないと思うのですが、大体七十三兆円の預金高、たとえば現在で言えば。その中で、国債の銀行保有高、大体十一兆円程度でしょう。そうすると残りの六十兆円程度の中の預貸率を都市銀行として、八〇%か八二%かわかりませんが、その程度に見ますと、そういうところからも大体推察しまして、いわゆる底だまりというものの程度を考えた場合、これは銀行の経営実態というものもありますし、またそれぞれの個別の銀行の中身も違いますけれども、日銀が総じてながめてみて、銀行の保有高として底だまりはどの程度がまず限界になるんだ。七十三兆円の国民の預金がある、そのためにたくさんいろいろなことをやられているようでありますが、そうすると、この後で銀行の方にもお伺いするわけですけれども、日銀としてはその実態をどの程度に――これもまたミニマムとしてでありますが、それは総体に変数がたくさんありますから、これだけの変数で指標は出てこないと思います。こないと思いますが、大体底だまりの状況というもの、銀行は金融逼迫をするぞ、こう言っている。片一方はインフレの懸念もありますぞ、こう言っている。財政当局としては硬直化する、こういうことになっている。こういういろいろな問題があって、底だまりの状況を日銀はどの程度として押さえておられるのか、感覚的なものかもしれませんが、お答えいただきたいと思います。
  23. 森永貞一郎

    森永参考人 先ほども申し上げましたように、国債の買いオペレーションは、そのときどきにおける金融調節の手段として実施しておる。でも、どちらかと言えば、銀行券の増発が必要である、その所要量を長期的な意味を持つ買いオペで賄うくらいの気持ちでおるわけでございまして、その方からの配慮はいたしますが、金融機関の保有量がもうこのくらいになったからこれは多過ぎるとか、いやまだ持ってもらってもいいとかいうような、これは金融機関御自身が、やはり自分の経理内容その他いろいろな要素があると思いますが、そういう面をお考えになって自主的に判断されるべき問題であると存ずる次第でございまして、私どもはオペレーションに際しましては、そういう意味の配慮はいたしておりませんので、御質問に対してはむしろ銀行協会長の方にお願いしたいと思います。
  24. 沢田広

    ○沢田委員 では、関連して、あと銀行協会長の方にいまの問題も含めてお伺いしますが、昨年六・一%国債で九十八円五十銭が、九十四円くらいまでに非常に値下がりをした、そういう実績があるわけでありますが、要するにこれは、国の信用度といいますか国債の信用度というものの、需要供給という言葉であらわされておりますけれども、いずれにしても、いわゆるそのときの国民の信頼感というものが低くなれば、結果的にはそれだけ値崩れをする、こういうことの実績もあるわけであります。そういう意味において、六・一%国債の市況の変化というものと、いま私が日銀総裁の方に聞きました問題との関連についてはどのような考え方を持っておられるのか、その点ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  25. 松沢卓二

    松沢参考人 お答えいたします。  いまの御質問は非常にむずかしい御質問でございますが、現状を申し上げますと、いま国債は都市銀行の場合には、全体の預金の約一割が保有高になっております。つまり八兆円の預金ということになりますと約八千億円が底だまりと申しますか、保有の残高になっております。  問題は、銀行が抱いております八千億の国債がいついかなるときでも流動化し得ればよろしいわけでございまして、国債金融機関にとりましては、支払いの第一線準備といたしましては最優良の債券でございますから、問題は、それが適時適切に適正な価格市場で売却できれば、資金の過不足をみずからの責任において行い得るということではないかと存じます。  そういうことでよろしゅうございましょうか。
  26. 沢田広

    ○沢田委員 抽象的な問題ですから、これも明確にこうだと言えないところに悩みがあるのだろうと思うのであります。  総裁にもう一つだけですが、二年もの、三年もの、これの定率公募となっているものを実質公募という形に切りかえるということはどうか、その点に対する御意見がありましたら、お答えをいただきたいと思うのであります。
  27. 森永貞一郎

    森永参考人 資金の需給関係がやはりそのときどきの情勢で変化してまいりまして、現在はむしろ短期ものへの投資家の需要が多いわけでございますので、やはり短期債の方にシフトするのが当然の勢いだと思っております。それを昨年来入札公募ということで発行しておるわけでございますが、ということは、限られた相手先ではございますけれども、関係の深い人々を相手にしての入札でございますので、入札制の趣旨は十分達しておると思っております。今後もやはりそういうことで入札公募制の範囲をだんだん広げていくということが必要ではないかと思っておる次第でございます。
  28. 沢田広

    ○沢田委員 さらに、総裁は最近IMFの委員会に御出席になったようでありますが、アメリカの対日不均衡是正ということで課徴金問題までいま出てきているわけであります。ECはそれほど対外貿易は多くはありませんけれども、やはり同じように対日批判というものがきわめて強く出てきているわけです。そのことが、実態に対応しているのか、あるいは何となしに対日批判を言いたいのかわかりませんけれども、とにかくECとしての貿易収支の関係から見れば、そういう状況は私たち野党においても特別な現象だとは認めてはいないのであります。しかし、どうしてEC諸国から対日批判がそれほど大きく出てくるのか。あるいは外貨の持ち過ぎなりあるいは円高なりというようなことも、これは外貨を三百三十二億ドルいま持っておるわけでありますから、そういう意味においての批判は当然あるのだろうと思いますけれども、どういうふうに受け取られたのか、また、その受け取られ方によって日本経済が今後どうあることが望ましいのか、御意見があったら承りたいと存じます。
  29. 森永貞一郎

    森永参考人 昨歴年の日本の経常収支の黒字は百六十七億と、前年度より増加いたしましたのは事実でございますが、これは年の前半に多かったわけでございまして、年の半ば以後はだんだんに減ってきておるのが現実でございます。年の初めは、季節調整後で月平均二十億もの黒字もございましたけれども、後半には六億とか七億ぐらいに縮小しておるわけでございまして、外国におきましては、年の暮れあるいは年度の終わりの数字の積み上がりだけを見まして、まだ黒字の幅が大きいということを言う傾向がございまして、どうも最近の傾向についての認識が不十分なような気がいたします。現に一月は十四億ドルの赤字、二月は三億ドルの黒字でございまして、はっきり減少の傾向が見えておりますので、その辺のところをもっともっと外国によくわかってもらう必要があると思います。  今度の暫定委員会でも、日本の努力は評価するけれども、まだ水準が高いから黒字の縮小になお努力をしろということでございましたが、反面においては、黒字国とはいえ財政難を抱えておる日本のような場合には、そう性急に内需拡大、黒字幅の圧縮を求めても、それはかえってインフレを招くのみだという日本の立場に同情する議論もございましたことは印象的でございまして、現状についての認識はだんだんに高まってきておるのではないかと思います。それにもかかわらず、国会等において保護貿易的な動きが見られることは大変残念でございます。今後とも最近の実情についての認識、理解を深める努力をしなければならぬと思います。  ただ、私が感じますのに、黒字幅の数字そのものよりも、個々の品目についての進出の度合いが非常に強かったとか強いとか、そういうことについての反感が強いように見受けられるのでございまして、ミクロ的な問題の処理がここへ参りますと大変大切になってきておるのではないかというのが、私の感じでございます。
  30. 沢田広

    ○沢田委員 都市銀行の関係の方にお伺いしますが、都市銀行側では国債について、さらに〇・五からあるいはそれ以上発行条件を上げてほしい、こういうことを報道紙等を通じて伝え聞いておりました。今回〇・四%引き上げをされたようでありますが、このことでいわゆる都市銀行側においての引き受け条件については、相当な程度のものであるとお考えになっておられるのかどうか。  さらに、都市銀行十三行の預金増加額は、先ほどもちょっと触れられたようでございますが、五十二年度で七兆八百七十億、貸し出しの増加が四兆五千六百五十六億、国債だけで二兆七千四百億。これ以外に縁故債であるとか地方債であるとかを受けて、だからこれが国債超過である、こういう説明をされたのだと思うのでございます。結局この差額三兆円を超えてしまう、だから発行条件についてさらに何とか考慮してもらわなければ困る、そういうふうな意味に先ほどの趣旨を受け取ったのでありますが、その点はそういうふうに受け取ってよろしいのかどうかということが一つ。それから、さっき申し上げた引き上げについての見解を承りたいと思います。
  31. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  国債発行条件の問題は、実は公社債市場におきまして市場実勢というものが出てくるわけでございますから、その市場実勢に対しまして、国といえどもあるいは民間発行会社といえども市場に対してその実勢を尊重して発行するというのが原則ではないかと存じます。したがいまして、そういう趣旨で先般政府が〇・四%の国債の改定をいたしましたことは、それなりに非常に評価ができると存じます。  ただ私どもから申しますと、実は国債の値下がりは昨年の秋ごろから始まっておりまして、この国債の値下がりが実は一波が万波を呼びまして、民間の事業債もなかなか発行しにくくなる。つまり、国債は債券の中心的存在でございますので、国債の帰趨が不分明なままにペンディングの形で長く続きますと、市場に対して非常に悪い影響を与えるということが、実は先般のああいう状況で実績として出てまいりました。そこで私どもは、早く適時適切になるべくタイミングよく条件改定をしなければ、市場全体が問題を残すということを主張いたしておりました。この発行条件に対する考え方は、何も銀行の収益対策だけから申し上げておるのではございませんで、これだけの大量国債発行下におきまして、売れる国債を売るという本当の原則に立ち戻りまして、市場実勢に合った国債発行しておれば、国債が順便に消化が可能となりますし、これがいろいろな意味で金利の機能を活用するという大きな役割りを果たすことになります。そういう意味で、先般来シ団の代表として、その資格で申し上げておったわけでございます。  それからなお、この〇・四%につきましては、実勢は〇・八ぐらいの乖離でございましたが、〇・四%に決定をされましたいろいろな理由はそれなりに理解できることでございまして、たとえば国債の流通利回りを思い切って〇・八とかあるいは一%とかというふうに上げてしまいますと、これはやがて他の債券に影響を及ぼすことになりますし、それがやがて長期金利を引き上げるということにも相なりかねないのでございまして、そういう意味で〇・四という数字が決まったんだというふうに了解をいたしております。いまの時勢で長期金利を上げるということは何としても避けなければなりませんし、ようやく景気上昇過程に入りかかっておりますときに、国債条件改定が契機になりまして長期貸し出しが上昇してしまうということになりますと、景気に水を差すという結果に相なりますので、この点は政府も苦心をいたしまして、若干市場実勢とは必ずしもぴったりした改定ではございませんでしたけれども、それらの状況を判断して〇・四に決めたのではないかというふうに私どもは考えております。
  32. 沢田広

    ○沢田委員 結論的には、国債消化がちっとも無理なく消化できそう――無理なくと言うと言葉が適当じゃないかもわかりませんが、努力すれば可能である、この改定によってその道は開かれたというふうに受けとめてよろしいのですか。(松沢参考人「はい」と呼ぶ)返事されているようですから、それで……。  もう一つ申し上げますけれども、いまちょっと触れられたように、金利をもうけていくだけでは銀行経営はプラスになるわけではない、こういうことを言われましたけれども政府関係機関の百十八兆、残高十八兆のうち登録債が十六兆、地方債が十三兆のうちほとんどこれが十三兆、事業債が八兆のうち登録債が四兆、金融債が二十一兆のうち十兆、それから円建て外債が九千億のうち四千億、国債が三十五兆のところを二十九兆、九十八兆のうち七十三兆の登録債である。これについては、まるまる六分一厘、六分二厘が入っていくわけですね。これだけ見ると、これは相当な利益になると思われるのでありますが、その点についての見解はいかがでしょう。  それと同時に、もう一つは、本券で買われる国民の一般のものとの、不均衝とまでは言いませんが、バランスというものはどういうふうにお考えになっておられるでしょうか。
  33. 松沢卓二

    松沢参考人 ただいまの御質問は、実はいまの六・一とか六・二とかいういろいろの債券がございますが、現在の市場はみんな新発債と既発債とは価格の乖離が出ておりまして、現在の規定によりますと、経理基準によりまして、全部の債券を保有しております金融機関は評価損を計上しなければならないことに相なっております。ここではその数字をはっきり申し上げることはできませんけれども、恐らくこの三月末の決算におきまして全国の金融機関は、国債その他の債券のキャピタルロスが発生することによりまして、相当大幅な債券償却損を出すのではないかというふうに考えております。したがいまして、いまの先生のお話のように、六・一、六・二ということでこれが収益上非常にプラスになるということは、まず現在のところではないのではないかというふうに存ずるのでございます。  それから、一般の個人消化によりまして、証券会社が個人に国債を販売いたしますと、当然のことながら、それを保有いたしました個人の方々は、市場価格に比べましてやはり非常に不利な形で国債を保有するということになろうかと存じます。
  34. 沢田広

    ○沢田委員 時間の関係で、菊一参考人にお伺いいたします。  いままで日銀さんや都市銀行さんにお伺いをしてまいりましたが、一番国民に密着をしてというか、一番近い距離において国債消化されている分野に当たるんだろうと思うのであります。最近国債市況が下落をして、先ほど述べたような金額などもありますけれども、そのことが国債の一般消化についてどういう影響をもたらしているとお考えになっておられるのか。都市銀行は都市銀行、日銀は日銀でそれぞれの考えはいま述べられたのでありますが、一般的な公社債引き受けとしての立場からお答えをいただきたいと思います。
  35. 菊一岩夫

    ○菊一参考人 お答えいたします。  御高承のとおり、最近国債相場、またほかの債券が非常に下落をいたしております。この原因につきましては、世上いろいろなことが言われておりますが、基本的には、長期債の需給のバランスがここに来て大きく表面化したものである、こういうふうに考えております。  すでにこういう傾向があらわれ始めましたのが昨年の夏ごろからでした。金利の底打ち感が出てまいりまして、長期債投資が手控えられる傾向があらわれ、相場は軟弱基調に推移したわけでございますが、ことしに入りまして一段とまたその下げ足を速めました。これは、最近における景気回復ムードの高まりや、また卸売物価上昇などから、金融政策のかじ取りが変わってくるのではないかという不安感ないし先行き金利上昇というような不透明感が出てまいりましたことが、こういう原因ではないかと思います。こうした金利底打ち感から、主要な投資家筋が長期投資を手控えて、おしなべて模様ながめの買い見送りの姿勢をとられました反面、一部に長期低利債の売り急ぎが見られましたことなどの事情が重なりまして、相場の下落を加速したものと思います。  現状はこういうふうになっておりますが、金利の底入れ感のちょうど過渡期にあるということで、特にこれを個人消化の面から言いますと、一番金利の低いところの底打ち感が出ておるときに、長期の十年債をここで買うということは避けたいという空気が非常に出ておると思います。  今後の見通しでございますが、市況は御高承のとおり、三月から発行条件の改定が行われましたこと、また市況対策の実施に対する期待感もありまして、いまのところやや小康状態を保っております。ただ先日御当局では、資金運用部による国債の買いオペというものを発表されましたが、まことに時宜を得たものと存じておる次第でございます。  しかし、これだけで今後の国債市況というものが安定を取り戻したかどうか見通すことは、現状、まだただいま改定したばかりでございまして、これから四月の状況を見ながら問題を静観していきたいと思います。いまのところ、この見通しとしましてはなかなかむずかしい状況ではないか、かように考えております。
  36. 沢田広

    ○沢田委員 現在のところ十年もの、割引が売れない、短期ものでなければ売れなくなってきている。これはやはり一番最初述べたインフレヘの懸念、戦時国債のように、これで物価がうんと上がればこれは紙っぺらになっちまう、せめて利札ならば幾らでもそこで考えられるだろう、こういう国民的な感情というものがそれを物語っているものじゃないのかというふうに考えられるわけです。ですからいまおっしゃられたように、割引債はもうほとんど売れ行きがなくなっちまう、長期ものはこれまた値崩れをする、結果的に短期ものについていわゆる需要が多くなる。これは資金運用の面としての利益を考えながらも、そういう配慮が当然心理的に働いてきている。そのことがインフレヘの懸念というものをやはり内在しているんだというふうに理解していいのじゃないかと思うのであります。  ですから、いままでどうも御三人の方は政府の案をべたほめとは言いませんけれども、とにかくべたほめみたいに何でも結構ずくめのお話であって、私も第三者の方ですから、つい遠慮しいしい物を言っているつもりなんであります。そういうことでありますけれども、言うならば国民的な信頼感のない国債、こういう状況が生まれつつあるし、生まれていると私たちは考えるし、もっと加えて申し上げるならば、財政硬直化ということも言われておりましたが、国債の累積による残高がだんだんふえて、将来は百八十兆円にもなる、こう言われているくらいでありますから、まさに国債に対する信頼度、昔の軍隊の金券みたいなもので、最後には何か紙っぺらになってしまう、そういう不安感というものが、表にはまだ出てないかもしれないけれども、醸成されているということについて、これは一番民間の接触の多い菊一さんからひとつお答えをいただきまずけれども、われわれはそういう感覚を持っているわけです。これ以上赤字国債が出ていった場合には恐らくそういう形が生まれるのじゃなかろうか、その不安感をどうやったら除去できるのだろうか。政府に対しては、適当な財政運営ですと言っているけれども、われわれはちっとも適当だなどと思っていない、不適当な財政運営だと思っているわけですが、最後に、時間が迫ってまいりましたから、その点ぜひひとつお願いをいたしたいと思います。  それからもう一つは、銀行の窓口販売についていろいろと議論が闘わされております。これは両者それぞれ言い分があると思うのであります。銀行の窓口販売というものが果たしてこれからの国債消化の上においてメリットがあるのか、そしてまた国民の経済安定に対するメリットはあるのか、そういう点について、これは都市銀行の会長さんからもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  37. 松沢卓二

    松沢参考人 窓口販売についてお答えを申し上げます。  実は窓口販売はもうすでに御承知のように、証取法六十五条第一項によりまして、銀行は証券業務が禁止をされております。ただし、その第二項におきまして、公共債の場合にはその適用を除外するというふうに明定されておりまして、証取法六十五条に関する限りは、銀行は公共債に係る証券業務をやってよろしいという規定でございます。ところがもう一つ、銀行法という法律がございまして、銀行法の第五条によりますと、保護預かり等の付随業務が認められておりまして、これは一々個条書きにどういうものが付随業務であるかということを書いてございません。その理由は、いろいろな付随業務がたくさんございますので、これを羅列的に明示することを避けまして、一つの例示として保護預かり等の付随業務が認められるという規定になっております。  そこで、証取法六十五条では、証券業務は公共債に関する限りは扱えるとなっておりまして、銀行法の解釈では、国債等公共債の売買は付随業務であるという有力な解釈がございます。これに対しまして、公共債の有価証券業務といえども付随業務の中には入らないという解釈もございます。  そこで私どもは、法律解釈はむしろ政策当局の判断に任せたい。銀行法が昭和二年にできまして、五十何年も経過いたしておりますが、銀行の付随業務はそのときの社会情勢あるいはそのときの経済の客観情勢等によりまして、そのときの政策当局者が解釈いたしまして、あるときはこれを付随業務と認め、あるときはこれを付随業務と認めない方が適当であるという形で運営をされてきたのだと思うのでございます。  そこで私は、現在のような大量国債発行時代に、少しでも多く消化の多様化を図って安定的な消化促進するためには、銀行の窓口販売は有効な手段である。かつてのように国債発行量が非常に小さかった時代はいざ知らず、これは証券会社の力で十分に販売が可能でございますし、また現在、証券会社の長年の御努力によりまして国債を大衆になじませた功績は非常に大きいのでございます。が、それにもかかわりませず、全国の一万数千店舗の金融機関の窓口で健全な形でこの国債の窓口販売がもしできれば、これは安定層に消化の多様化を図るといういまの大量国債発行時代には一つの方法ではないか、こういうふうに考えまして、銀行といたしまして国債の窓口販売を主張したわけでございます。目下のところでは、政策当局の中におきましてもいろいろな意見がございまして、大蔵省としていまこの問題について一本の形で結論が出てない、こういう現状でございます。
  38. 菊一岩夫

    ○菊一参考人 お答えいたします。  最初に窓販の問題の方からまいりたいと思います。  国債の銀行窓口販売、これを一口に申しましても、新規発行債を銀行の窓口で売るといういわゆる販売窓口拡大の問題と、また既発債の売買業務への銀行の進出といういわゆるバンクディーラーの問題とが含まれているわけでございます。  証券界といたしましては、単に既得の業務分野を侵されるといういわゆる領域論からではなく、広く金融、資本両市場の健全な発達を期するという国民経済的見地から強い反対の立場をとっておるのでございます。  その理由につきまして、この大蔵委員会の場におきましても公式に申し上げてきております。したがって、重複するかもしれませんが、私なりの考え方を若干申し上げさせていただきたいと存じます。  その第一は、金融、証券の分離は、すでに過去長い歴史を持ちまして、わが国の金融秩序の中にかたく組み込まれたものであるということであります。私は法律につきましては専門的な知識を持つ者ではございませんが、大正五年の銀行条例の改正から昭和三年のこの銀行法の制定及び同法のもとにおける金融行政の方向は、銀行から証券業務の切り離し、銀行業務の専業化を推進するということではなかったかと存じます。そのような過程の中で、いわゆる証券業の大手四社が誕生してまいったわけでございます。まず大正九年に日興証券が日本興業銀行から分離しまして、同十四年には野村証券が大阪野村銀行から分離し、さらに昭和五年には後に山一証券となりました小池証券が小池銀行からそれぞれ分離されて証券会社として独立いたしました。さらに銀行法制定によりまして、藤本ビルブローカー銀行が証券業の兼営を行うことが認められなくなり、昭和八年には銀行業務を廃止、証券の方にということで、大和証券の前身であります藤本ビルブローカー証券が設立されたのであります。  銀行の国債窓口販売は、証券市場に重大な影響を及ぼすのみならず、こうした証券業分離の方向を基本的に改めることになるわけでありますから、証券取引審議会を初め、いろいろの場において十分な検討が行われることが必要かと存じます。  私がかねがね感じております第二の点は、国際の販売業務を行うことが、銀行の業務の性格から見ましていかがかという点であります。国債という有価証券の販売は、預貯金の吸収とは異なりまして、窓口の数さえ拡大すればいいというものではございません。習熟した営業マンによる積極的活動に期待しなければならないわけでございまして、店頭で受け身の販売をすることにとどまるのでは販路開拓は多くは期待できないと思います。  その点はおくといたしましても、私が最もおそれておりますのは、銀行の性格からいたしまして、国債が中途換金の際にも投資元本が保証されている商品であるとの誤解を生じはしないかという点であります。長期の市場国債を銀行にまで窓口を広げて、短期運用指向の強い大衆にまで消化するといたしました場合、キャピタルロスを生じたときに国債に対する不信感が生ずるのではないかとおそれるのであります。  最後に、いわゆるバンクディーラーの参入につきましては、公社債市場価格形成が混乱するおそれがあるという問題がございます。このほか私から申し上げたいのは、市場で取引される国債価格を支えるために、銀行の流通市場への参入ということを認めようというのであれば、証券会社のみならず、銀行に対しましてもそのような役割りを期待することは本来筋違いであるということでございます。  私どもは、買い方、売り方の異なる投資ニーズを調整して円滑な流通を図るという意味でのマーケットメーキングは、証券会社の本来の職務でありまして、十分その任を果たしていると考えます。しかし、市況の大勢に抗して長期債の利回りを一定水準維持するというために買い支えを行うということは、現在の市場規模からいいましても物理的に不可能であります。そのことは、市場に対し常に売り手となっている銀行ではなおさらのことであろうかと存じます。今日までバンクディーラーの問題を議論されるに当たりましては、ブローカー業務を補完する本来のディーラー業務の問題と、いわゆる価格支持の問題が混同されているきらいがあったわけでございます。この点をきちんと区別して考えますならば、証券会社のほかにバンクディーラーが必要であるという考え方は出てこないように思う次第であります。  長くなりましたですが、先ほどのインフレにはならないか、この問題につきましては、現在国債がこれだけ出ておりますが、総裁もおっしゃったように、いますぐ物価が上がっていき、インフレになるというような感じはございませんが、これが証券界から国債消化を通じてインフレにならないようにという意味におきましては、われわれの証券界が行っております個人消化という点につきましては、インフレ防止に一番役立つものではないか。国民の皆様に信頼される国債、魅力ある国債という点につきまして、いろんな市場実勢に合わした条件と期限その他多様化を図りながら投資家のニーズに合わしていきたい、かように考えております。
  39. 沢田広

    ○沢田委員 大変貴重な御意見を承りまして、ありがとうございました。  最後に、いま言われたそれぞれのセクトというものもあるでありましょうし、それぞれの立場があると思います。ただ総裁、公定歩合の引き上げは行わないといいながら、インフレの歯どめというものをどうやってとったらいいか。国民に安心感を与える措置をできるだけ早くとっていただきたい。われわれはインフレの危険性がもう身近に迫ってきているというふうに感じているわけであります。日銀さんでも、土地の騰貴があってはならぬときのう指示されたとかされなかったとかいう話もあるくらいであります。銀行はどんどん貸し出さなければ経営が逆ざやになってしまう、こういう気配もあるわけであります。いずれにしても国民生活のインフレに対する懸念というものをなくす最善の措置を講じていただくようお約束を願って、私の質問を終わりたいと思いますが、いかがでしょう。
  40. 森永貞一郎

    森永参考人 いろいろと御激励をいただきまして、ありがとうございました。  先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては、過去の苦いあるいは貴重な経験に徴しましても、インフレの再燃だけは絶対に避けなければならないと心に期している次第でありまして、今後の金融政策運営にいやしくも誤りなきを期したいと思っておる次第でございます。
  41. 沢田広

    ○沢田委員 ありがとうございました。
  42. 加藤六月

    加藤委員長 坂口力君。
  43. 坂口力

    ○坂口委員 三人の参考人の皆さん方には、大変お忙しい中をきょうはありがとうございます。  お三方の御意見をお伺いいたしまして共通いたしておりますのは、現在の景気動向につきまして、いろいろ表現の違いはございますけれども、しかし回復基調に乗りつつある、その過程にあるという御意見のように承ったわけでございます。あわせて、それに対して今度は、インフレ可能性というものに対しての危惧が述べられたわけでございます。  インフレのことについてお三方とも触れられたわけでございますけれども、しかしきょう問題になっております国債そのものがいかに原因となってインフレにかかわってくるかということについてはお触れにならなかった、むしろ一般的な形でのインフレということでお触れになったような気がするわけでございます。最後に菊一参考人は若干、発行条件等との絡みをお答えになっていただいたわけでございますけれども、しかし初めのお話ではなかったかと思うのであります。  まず最初に、基本的な問題を一、二森永参考人にお聞きをいたしまして本論に入らせていただきたいと思うわけでございますが、限られた時間でございますのでそう多くをお聞きすることはできませんけれども、まず最初にお聞きをしたいと思いますのは、いままで景気回復というと即物価上昇という形になりますし、今度はまた逆に、物価鎮静即不況という形が繰り返されてきたわけでございまして、これからこういったところを改革していかなければならないわけでございますけれども、いわゆる金融界の構造改革という言葉があるかどうかわかりませんが、その金融界の改革の中で、こういったいままでのパターンを破るためにはどうしたらいいというふうにお考えになっているかということを、まず一つ先にお聞きをしたい。  それから、時間がございませんので、続けてもう一つ森永参考人に御質問をしておきたいと思いますが、最近、今度は円高の方から円安へと若干シフトしているわけでございまして、円安ということについて日銀が今後どのように対応されるのか、いわゆるドル売り介入等を積極的に行われるのか。これは民間の過剰流動性の吸収ということにも大変かかわってくる問題でございまして、インフレにもかかわってくる問題ではないかというふうに思いますので、その辺のお考えもあわせてひとつお答えをいただきたい。  以上、二点をお願い申し上げます。
  44. 森永貞一郎

    森永参考人 高度成長時代には、好況すなわち物価騰貴、不況すなわち物価下落という激しい変動を繰り返してまいりましたことは御承知のとおりでございます。いま景気回復の過程にあるわけでございますが、昔のような高度成長はもう望めない環境にございますだけに、できるだけいまのようなじりじりと回復するような基調を息を長く持続させたいのがわれわれの念願でございまして、これは日本経済に携わっておる人々みんなの御意見だと思います。そのためには、やはりインフレの再燃だけは絶対に避けなければいけないということでございまして、物価が上がりますとせっかくの回復基調はかえってだめになる、この五年間非常に苦心いたしまして新しい環境に応ずる努力をみんなが一生懸命やってきたわけでございますが、その努力も水泡に帰するわけでございますので、この際としては、やはり物価を上げないということが景気回復の前提になるのではないかというふうに考えておる次第でございます。その意味で、今後の金融政策運営を警戒的中立姿勢で臨んでまいりたいと思っておる次第でございますが、公定歩合の引き上げは当面その必要はないというのが私の考えでございます。  次に、為替でございますが、御承知のように変動相場制でございますので、為替市場における需給関係、その裏には国民経済実勢があるわけでございますが、その需給関係によって為替が決まるのを、人為的にある一定に固定したりあるいはある方向に誘導したりするということは、これはできないわけでございますけれども、私どもといたしましては、やはりできるだけ為替相場が安定するようにということを何よりもこいねがっておる次第でございまして、いまは少しいろいろな事情が重なりまして円安の傾向に動いておるわけでございますが、大勢としてはやはり安定が最も望ましいと思っております。  そういうことで、この変動相場制下の為替相場につきましては、為替市場の決定にゆだねるのが本旨でございますけれども、もし投機的な要因などによりまして極端な円安、かつては円高の場面もございましたが、そういう場面に対しましては、やはり投機的な要因による変動をならす意味で介入も惜しんではならないわけでございまして、そのときどきの情勢に応じまして適切な態度を今後ともとってまいりたいと思っておる次第でございます。
  45. 坂口力

    ○坂口委員 いまのお話で、物価安定ということを第一義的に考えていきたいという表明でございますが、いまおっしゃいましたように、公定歩合の引き上げでありますとか、あるいはまた準備金でありますとか、あるいは窓口の行政上の御指導でありますとか、そういったことをいままでからも行われてまいりましたし、私ども危惧いたしますのは、いままでのそのパターンが何となくいつか来た道を上下するような気がするわけでございまして、新しい物価第一とした安定経済成長に乗せていくその過程の中で、何か新しい金融界における道というものが模索できないのであろうかということを、ちょっと日ごろから考えていたものでございますから、ついでと言っては大変失礼でございますけれども、お伺いさせていただければというふうに思ったわけでございます。時間もないことでございますので、これからの御答弁の中で、その辺のところもございますれば、さらにまたつけ加えていただければ大変ありがたいと思います。  もう一つ森永参考人にお聞きをしたいわけでございますが、インフレになっていない現在――いろいろ考え方がございますから、もうインフレだという方もございますし、またその過程にあるという方もございますし、いやまだ入ってないという方もございますし、いろいろ考え方はあろうかと思いますが、私どもインフレになりつつあるというふうに考えているわけでございますけれども、いま仮定の問題といたしまして、インフレになりましたとき、先ほども公定歩合のことにお触れになりましたけれども、公定歩合の引き上げということもこれは十分お考えになっていることだろうと思うわけであります。そのインフレになりましたときの公定歩合の引き上げとそれからいわゆる国債の問題と両方にらみました場合に、必ずしも双方ともよかれという調子にはいきにくい面もあるのではないかと思います。でありますから、インフレを抑えるという方を見ると、どうしても公定歩合引き上げをしなければならないし、その公定歩合の引き上げということが果たしてまた国債発行ということにどう影響していくのかということもあろうかと思います。その両面をにらんでどのようにお考えになるかを次にお聞きをしたいと思います。
  46. 森永貞一郎

    森永参考人 いまはまだ考えており、ませんので、仮定の事態ということになりますから、ごく一般的に申しますと、金利政策が変更されまして、公定歩合が上がりますれば、短期金利が一般的に高騰するわけでございますし、その影響は、そのときの経済情勢でございますとか、あるいは先行きの見通しとかによって、程度の差はございますが、やはり長期資金の需給にも影響してくることは免れ得ないと存ずるわけでございます。  私どもは、国債発行条件をそのときどきの金融情勢に応じて機動的に、弾力的に改定し、また期間等につきましても短期化を図るとか、あるいはそのときの金融市場情勢発行量そのものを調整していただくというような配慮が今後とも必要だと思いますが、もし長期金利が上がりまして、その金利負担が財政負担としてたえられないということに万一なりますようなことがございますれば、それはやはりその金融市場のメカニズムが効いてきているわけでございますので、国債発行量調整していただくというような必要が起こってくるのではないか。恐らくそういう場合には民間資金の競合があるわけでございますので、民間資金と公共資金との調整という意味でも、民間資金の方も調整が必要だと思いますけれども、公共資金の方でもそういう意味の調整が必要じゃないだろうか。  それからもう一つ申し上げますならば、そういう事態のときにおきましては、景気がよくなって自然増収がふえておる、そういう事態にそういうことが起こるわけでございますが、そういう場合には、自然増収の額に見合って国債発行量を減らしていただく、あるいは財政規模そのものもそのときどきの民間活動の状況に即して規模調整していただく、そういうことがやはり必要になってくるのではないかと思う次第でございます。  要するに、金利メカニズムを生かすということによって金融財政の適切な調整を図るということが、やはり正道であると信ずる次第でございまして、われわれとしてはそのような金利自由化弾力化方向に今後とも努力をしてまいりたいと思っておる次第であります。
  47. 坂口力

    ○坂口委員 国債の状態をいろいろ見てみました場合に、かなりそれが累積されてきていることは言わずもがなでございますが、いま問題にしておりますインフレ中心にして考えました場合に、M2の残高、前年比増加率というものを見ますと、国内信用の中で政府向けのものがほかのものよりもかなりなアップ率で最近年々歳々上がってきております。五十二年の九月には三・〇でございましたものが、昨年の五十三年の九月末では四・四というふうに一・四ばかり上がっておりまして、国債大量発行そのものがインフレというものに対してかなり結びついてくる可能性は十分にあるというふうに思うわけでございますが、その辺についてどういうふうな御意見をお持ちかということをお聞かせいただきたい。この質問は、菊一参考人もひとつできましたらお答えをいただきたいと思います。
  48. 森永貞一郎

    森永参考人 マネーサプライの増加要因の中での国債による増加が目立ってきておりますことは御指摘のとおりでございまして、五十四年度十五兆何がしの国債が出ますし、明年以降どうなりますか、やはりかなりな額の発行が続くわけでございますので、今後やはり財政面からのマネーサプライの増加の要因は、われわれといたしましても決して無視できない要因だと思います。また、今日では先ほど申し上げたように、少し景気がよくなりまして資金需要が出かけてはおりますけれども、一ころに比べればまだ低いわけでございますが、だんだん量気が回復しまして民間資金需要も大きく伸びてまいりましたので、公共資金と民間資金の間の調整をどうするかというのが、今後の金融政策上の非常に大きな問題になろうかと思うわけでございます。その間をうまくコントロールいたしまして、インフレにだけは絶対しないようにというのがわれわれに課せられた使命でございますので、今後の動向には十分気を使っていかなければならぬのが現状だと思っている次第であります。
  49. 菊一岩夫

    ○菊一参考人 ただいまインフレの問題が出ておりますが、証券界といたしましても、現在のところは余りその感じはしておりませんが、このインフレ防止につきましては、マネーサプライを増加させずにこの大量なあれを消化していくという点につきましては、これはわれわれがやっております国債個人消化という点に全力を挙げてやっていきたい、かように考えております。
  50. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、松沢参考人の方にお聞きをしたいと思います。  先ほども発行条件弾力化自由化ということを言われたわけでございます。日本の場合とアメリカの場合とを比較いたしましたときに、御承知のように、日本の場合に五年以上十年未満のものが約九割くらい占めているわけでございます。アメリカの場合には一二、三%というところにございます。逆に一年未満のものというのは日本では非常に少ないわけでございますけれども、アメリカの場合には約二割方ある。こういうふうに、日本とアメリカとを比較いたしましても、アメリカの場合には非常に多様化されているわけでございますが、それが現在日本にはないわけでございます。これは皆さん方からごらんになって、非常にできにくくするというものがあるのだろうかという御疑問を持たれるのではないかと思うのです。皆さん方はできるという立場にお立ちになっていると思います。私どももその立場に立っているわけでございますが、国際間のこういった比較等もあわせて皆さんの方からもう少し、このようにすれば多様化が進むのではないかと考えておみえになることがございましたら、ちょっとお触れを願いたいと思います。
  51. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  いまの国債の多様化の問題は、実は市場実勢尊重の問題と全く不可分のことでございまして、欧米におきましては、市場がきわめてタイトでなかなか国債が売りにくい場合には、少しでも市場になじませるために短いものを発行して、そして市場がもう少し好転してまいりますと、それが中期債あるいは長期債というふうに変わっていくというふうに私どもは見ております。現に最近、西ドイツにおきましてもアメリカにおきましても、インフレの傾向が非常に強い、金利が高いということがございまして、長期債は市場になじまないということで、主として中短期債が欧米におきましては発行されておるというふうに聞いております。日本の場合は、実は国際管理政策というものをしっかり確立していただきまして、そして長中短の国債市場実勢に合わせまして発行、される、同時に、発行者である政府の方は、借りかえ、償還に至ります長期計画を立てまして、その中で、こういう情勢のときには中期債を中心にいこう、こういうときには長期債を、こういうときには短期債をというふうに、管理政策の中から一定の方針のもとに多様化を図っていくことが一番望ましいということを、私は前から主張いたしております。  ただ、御承知のように、日本の国債発行のやり方は、少なくとも戦争中は一方的に割り当てておりましたし、戦後におきましてもその考え方がしばらく踏襲されておりまして、最近でこそ公募入札制度が生まれましたし、また政府も、これだけ大量に国債発行している以上は、金利のメカニズムの中に国債発行しなければいかぬということがだんだんわかってまいりまして、政府国債管理政策を確立して、国債の多様化をやろうということにだんだん踏み切ってきたのではないかと存じます。そこで五十四年度の場合には、すでにやっております三年ものの公募入札制のほかに、今度は二年もの、四年ものを実施することに決意をいたしまして、だんだんそういう方向に来ていると思います。  ただ、発行者の立場をおもんばかりますと、発行者の方から見ますと、余り中短期債にシフトしてしまいますと、やはり償還期限が早く参りますので、国債管理政策上も非常にやりにくい面が出てくるということがございまして、だんだんに国債管理政策を確立して、そういう市場との連動性を強くして、発行条件も含めまして多様化を進めていただきたいというのが私どもの考え方でありまして、これは工夫をすれば必ずできることだ、こういうふうに考えております。
  52. 坂口力

    ○坂口委員 最後に、もう一つお聞きしたいと思います。  先ほども窓口販売の話が出まして、私もお聞きしようと思ったのですけれども、余りにお二方が厳しい姿勢をとられたものですから、いささかお聞きしにくい感じがすわけでございますが、この大蔵委員会におきましても、窓口販売の問題は何度か議論をされてきたところでございまして、こういった問題も大局的な立場から何らかの合意が得られなければならない問題の一つではないかと思うわけでございます。やはりそれぞれのお立場もございますし、そのことは私どもも十分わかるわけでございますけれども、現在日本が直面いたしております大量国債消化ということを考えましたときに、それぞれの立場を超えて御理解をいただかなければならないこともあるのではないかというふうに思うわけでございまして、それぞれの方に改めてまたこの上覆いかぶさるようにしてお聞きするのは大変、心苦しいわけでありますけれども、その辺の何らかの合意を目指していく話し合いというものはやはりしていただかなければならないと思うわけでございます。森永参考人も仲裁の労をとっていただく立場でもないかとも思いますし、特別な立場でございますので発言していただくのもどうかと思いますが、しかし私どもはそういう感じを持っているわけでございますけれども、ひとつ仲裁の労をとっていただいて、最後に一言御意見をいただければと思います。
  53. 森永貞一郎

    森永参考人 私は、過去におきまして七年間証券界にみずからの身を置いておりましたし、いまは日本銀行におりますので、両方のお立場からの主張もよくわかるのでございますけれども、この点はお互いのお立場もさることながら、その立場を超えて、いかにすれば日本の公社債市場、特に流通市場が正常化し、一層発展していくかという高い見地から、今後とも一層緊密にと申しますか、両業界においてお話し合いを続けていただいて、願わくは両方が満足されるようなコンセンサスの得られるようないい結論が出ますようにひたすら希望している、そういう立場でございます。
  54. 坂口力

    ○坂口委員 それでは、時間も参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  55. 加藤六月

    加藤委員長 竹本孫一君。
  56. 竹本孫一

    ○竹本委員 参考人の皆さん御苦労さまでございます。  森永総裁からまず伺いますが、先ほど松沢参考人財政硬直化ということについて相当強く御発言があった。私はいまのインフレ問題は、先ほど来大分議論されましたけれども、これからのインフレの脅威に対して一審しっかりしなければならないものはだれかといえば、財政だと思うのです。財政がしっかりしないで金融にしりぬぐいをさせるようなばかなことばかりやっていては、日銀さんと金融界の皆さんも大変御苦労多いばかりで、しかも効果はない。そういう意味から私は、森永総裁の発言の中には、もう少し財政の節度を守れということについての厳しい注文があってしかるべきだ、それを聞けなかったのはむしろ残念に思うのです。  最近アメリカでは御承知のように、バランス・ザ・バジェット・ブームというて均衡予算論が非常に力強く盛り上がっておる。ケインズ経済学も、一方では非常に役割りを果たしましたけれども、最近ではいろいろ欠陥、その機能が十分に動かなくなっておることやら、いたずらに公債発行してただ物価だけ上げる、インフレだけ招くという役割りしかないといったような厳しい批判もある。それから日本では御承知のように、先ほども行政機構の改革の議論が出ましたけれども、あるいは補助金の問題にしてもあるいは三K赤字も、それぞれ合わせますと三兆円くらいありますね。これも大体後ろ向きだ。そういうものを切り捨てるというか、整理するというか、やり方は慎重でなければならぬと私は思いますけれども、そういう点について、とにかく日本の政治全体がいま厳しい反省をしなければならないし、特にインフレを防ぐという立場において、通貨価値の維持ということについて最大の責任を持っておられる日銀さんとしては、財政の節度――御承知のようにブキャナンですか、彼はいまの予算は無法状態である、財政はめちゃくちゃだということを言っておる。またある経済学者は、民主主義というものは組織化されたエゴである、エゴの集団が力を持って圧力をかけてくるので、それがどこへ行くかということは大変な問題だということを言っておる。これはわれわれ議会人の責任でもありますから、われわれも大いに反省しなければなりませんが、それが結果においては財政赤字あるいは無原則な膨張という形でいままで来ているわけですね。それが行き詰まって、先ほど来お話がありますように、国債費ばかり幾らでもふやして、しまいには利子を払うためにまた借金をしなければならぬというような危機的状況になっておると思うのですが、そういうことを含めて日銀当局としては、財政のあり方についてもう少し厳しい注文があってしかるべきだと思いますが、いかがですか。
  57. 森永貞一郎

    森永参考人 身内のことでございますので、冒頭の発言におきましてはことさらに控えた次第でございますが、私は、財政についての健全化の必要、その認識においては決して人後に落ちないつもりでございます。私自身、主計局長をいまから二十何年か前にやっておりまして、そのときにもやはりインフレの危機に際会しておったのでございますが、一兆円予算、私ども主計局の常識的な感覚をもっていたしますれば、前年度よりも減らした一兆円予算の編成を、これは不可能だとばかりにみんな考えておりましたのでございますけれども、これを省内外の皆さんの御激励、御支援によりまして何とかやった経験があるわけでございまして、私、大蔵省の先輩の一人といたしまして、内々大蔵省に対しましては常々、もう一度あの一兆円予算のときの気持ちを思い出してください。そのときと事情が大分変わっておりますので、そのときと同じようなわけにはまいりますまいが、歳出の削減についても不可能と思われるようなことでもやってのけ、また歳入の増強についてもいろいろ不人気になりましょうが、その辺のところは国民の皆さんにも御納得いただいて、とにかく中長期的に財政の再建を図ることの必要性を、釈迦に説法ではございますが、常々大蔵省の後輩諸君には申しておる次第でございまして、決して財政の再建を軽視しておるつもりは全然ございません。そのことを御理解いただきたいと思います。
  58. 竹本孫一

    ○竹本委員 この点は森永総裁の英知と勇断をひとつ期待をいたしておきます。  これと関連をしまして、御承知のように、銀行法の改正が具体的日程にいま上りつつあるわけですが、銀行法の改正というものはやがてまた日銀法の改正につながっていくべき問題だと思います。  そこで、結論だけですが、日銀法の改正というものをどのように総裁はいま考えておられるかということと、その際に、これは長年問題になっておりますが、私は、政党がしっかりしており議会が節度がはっきりしておるときは、これは政治が優位で日銀の政策のあり方、先ほど来問題になっておる公定歩合の引き上げ云々の問題についても、政治が優先するというのはぼくは当然だと思うのですね、政治ですから。しかし、いまのような政治のあり方で考えると、われわれの責任でもありますが、これに振り回されておると、金融というものはどこへ行くかわからない。これはやはんドイツにおいてもアメリカにおいても、中央銀行の親方は当局と政治家と厳しい論戦を常にやっておる。そういう事実から考えてみても、いまの政治のあり方を前提とするならば、日銀法改正といったような場合には、特にインフレの危機を考えなければならない段階においては、日銀の中立性というものの方にアクセントを置くべきだ、こう思いますが、その二つの点について結論だけ伺いたい。
  59. 森永貞一郎

    森永参考人 日銀法は何しろ戦時中の立法でございまして、いろいろと現在の時代にそぐわない点が多々ございまして、いずれはやはり改正の検討に着手しなければならないのではないかと私も思っております。金融制度調査会におきましては、いま銀行法の検討に全力を挙げておられるのでございますが、いつごろになりますか、私といたしましても、いずれは日銀法の現事態に即応した改正が必要になってくるものと考えております。しかしそれにつきましては、やはり相当の年月をかけて慎重に検討しなければならないわけでございまして、拙速は排しなければならないと思っている次第でございます。
  60. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一つ日銀総裁にお伺いしたいが、インフレの問題で先ほど来議論も出ておりましたが、M2ですね、通貨の供給量に一定の目標を置くということをわれわれは特に前から言っておるわけだけれども政府当局はなかなか賛成しなかった。しかし最近では、各国がそういうふうにM2については一つの目標を定めておる。日本でもそれを定めることがなぜ不可能かということを考えて、私はやはりそれは考えるべきだ、目標は設定すべきだと思うがどうかということと、それからあわせて、この前のインフレのときに日銀券が前年同月に比べて二十数%、三〇%近くふえましたね。あのときにぼくは佐々木日銀総裁に、この委員会において非常にやかましく文句を言ったことを覚えておりますが、いま大体M2は一二・三%前後ですね。ぼくはいろいろ考えてみて、この辺が大体いいところだ、こう思うのです。裏から言うと、一五%M2がふえるというようなことになればインフレヘの道で、黄色い信号が上がってくる、こういうふうに思えますが、M2のいまの状況ぐらいがある程度適当なところであって、これ以上ふやすということはインフレへ一歩接近することである、あるいは警戒をしなければならぬと私は思いますが、その意見について日銀総裁はどうお思いになるか、はっきり目標を示していただきたい。
  61. 森永貞一郎

    森永参考人 一年前に比べますと、M1では一三%、M2では一二%ぐらい、そのM2で一二%台がここ数カ月続いておるわけでございまして、将来を予測しますと、すぐにはこれが増加するような形勢ではないように見受けられますが、しかしそれだけでどうも安心できない事情がございますのは、一つは、企業の短期保有の有価証券の量がこのところ急速にふえておりまして、これは現先市場等に運用されておるわけでございますが、それだけすぐにもお金になるものが持たれておるわけでございます。それともう一つは、金融機関にいま比較的借りやすい、借り入れのアベーラビリティーが非常に高まっておりますので、企業の側でも手元資金をある程度抑えておるというようなこともあるのではないかと思うわけでございまして、そう考えますと、一二%だからというので決して安心しておれないような感じもするわけでございます。企業の手元についての報告などを見ましても、もう十分充足されておるというような報告が大部分でございまして、そういう点から考えましても、今後の金融政策運営に当たりましては、警戒的中立姿勢をとらなければならぬと思っておる次第でございます。  それで、M2を目標にしたらどうかという御意見でございますが、私どもも目標にすることについていろいろ検討をいたしております。目下のところ、M2がこのくらいでとどまればインフレは絶対避け得るというような実体経済との関係はいま少し検討を要する問題が残っておりますし、また諸外国におきましても、一たん目標を決めましたけれどもそれをやめたところもあるということで、いろいろ利害得失もあるようでございますので、その辺のところを十分見きわめながら、将来も目標を課することについてなお検討を続けてまいりたいと思っておる次第でございます。  しかし、目標にこそいたしておりませんけれども、月々のM2の動きには、目標にいたしました場合よりもむしろもっと詳しい分析、検討を続けて、M2の動きを注視している次第でございます。もちろんM2だけが絶対的な指標でございません。物価国際収支その他いろいろな指標がございますが、それらを総合的に、M2も従来より以上にその動きを重視しながら今後の施策運営に当たっていくつもりでございますので、御了承いただきたいと思います。
  62. 竹本孫一

    ○竹本委員 非常にインフレの危機的な状況でもありますので、しっかりした毅然たる態度で臨んでいただくように御要望申し上げておきます。  次に、松沢参考人に伺いますが、これは時間がございませんから結論だけで結構ですが、一つはクラウディングアウトの問題ですね。これは先ほど来いろいろ議論が出ましたが、私はこの段階になって、機械受注等から見ましても、鉱工業生産から見ましても、あるいはデフレギャップから考えましても、あるいは企業収益動きから見ても、相当設備投資その他の需要が出てくると思いますが、クラウディングアウトの心配はないかということが一つ。  それから二番目は、銀行法の改正と関連して競争原理の導入ということが非常に言われるのだけれども、先ほど来のお話で、インフレを招く貸し出し競争を銀行が自粛するということについてどういうふうなお考えを持っておられるか。また、そのことを銀行法の中にうたい込むべきかうたい込むべきでないか、それが第二点。  それから第三点は、これで終わりですけれども、先ほど資金の吸収力を拡大しなければならぬとおっしゃいましたけれども、それは具体的にはどういうことを考えておられるか。以上、三点だけお伺いします。結論だけで結構です。
  63. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  一番最初の問題でございますが、クラウディングアウトにつきましては、私は少なくとも夏以降におきましてクラウディングアウトの形が出てくる可能性があるというふうに判断いたしております。詳しく申し上げませんが、その理由は、すでに昨年の九月期、それからことしの三月期あるいはことしの九月期、そういう企業の業績の展望を見ておりますと、月を追うごとに業績が回復をいたしております。やがて在庫積み増し並びに設備につきまして資金需要が出てくる、こういうふうに見通しをしておるからにほかなりません。  それからもう一つは、今後改正が予想されます銀行法の中に貸し出し競争を抑制するような項目をつくる必要はないかというお話でございますが、この貸し出し競争というものは、これは自己弁護をするわけではございませんが、世界じゅうのどこの金融市場におきましても貸し出し競争というものは絶えず起こっております。そこで、貸し出し競争が起こることによりまして競争金利が働きまして、金利が下方弾力性を発揮することはもう御承知のとおりでございます。したがいまして、金融機関の貸し出しを通じます競争というものを法的にチェックするということではなしに、むしろ金融政策で資金のコントロールをする。さっきのお話じゃございませんが、マネーサプライコントロールを中央銀行の方で強くする、あるいは窓口規制等を通じまして資金の配分そのものをチェックする、こういうことになりますと、それぞれの金融機関はその範囲内で貸し出し競争を行うということになりますので、むしろ法的な規制よりは金融政策によってその規制を図るべきであるという考え方でございます。  それから、一番最後にお話が出ました問題でございますが、私が申し上げましたのは、実は国債の多様化ということを先ほどから申し上げております。国債もこれだけの大量発行時代だからどんどん多様化を図っていろいろな極細の国債発行すべきであるということを申し上げておりますが、同時に、これだけの大量国債を引き受ける金融機関側に対しましても、同じく貯蓄手段の多様化を図りまして、そしてこれに呼応して国債が順便に引き受け可能となるような環境整備を図る必要があるのではないかということが私の先ほど申し上げました内容でございまして、たとえばもっと具体的に申し上げますれば、やがて実現を見るであろうCDであるとか、あるいはさらに一般大衆向けの商品である複利預金であるとか、そういうようなものを、預金者のニーズに応じまして金融資産を多様化することによって国債に対する対応力をつけていきたい、こういうことでございます。
  64. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんから、菊一参考人に一口だけ質問をいたします。  先ほどのお話の中で、国債価格の乱高下を避けなければならぬし、場合によっては資金運用部資金を活用してと、こういうような御意見だったと思いますが、この間の乱高下の原因は一体何と考えておられるか。国債管理政策ではよく言われるように、量の問題もあるし、期間の問題もあるし、レートの問題もありますが、一体それらのどれが主たる原因であの乱高下というか国債価格の下落があったと考えておられるか。また一部には、証券界で催促をされたのだというような厳しい批判もありますが、それらをどういうふうに受けとめておられるか、その点だけお伺いをいたしたい。
  65. 菊一岩夫

    ○菊一参考人 最近のこの国債相場の乱高下の原因と申しますか、これは先ほどもちょっと申し上げましたように、いろいろの意見が言われておりますが、基本的には、ちょうど金利の底入れ感がここに出ます。実際はこれは昨年の九月ごろから出始めましたのですが、そこで、金利は上昇していくのではないか。長期的に見まして、長期債の需給のアンバランスが非常にここに表面化した。最近における景気回復ムードの高まりとか、また卸売物価のこういう上昇とかオイルの関係とか、こういうようなことで、やがては金利は底をつき、低金利がだんだん終わりに近づいてきたのではないか。今後は金利は多少上昇するのではないかという懸念が投資家の間に出てきましたものですから、ここに相当の売り物が浴びせられた。こういう過渡期にはとかくそういうことがあるわけですが、ようやく先般の条件改定によりまして、かなりの条件改定がここで済みましたので、ただいまのところは小康を得ております。  それから二審目に、発行条件の改定を催促するために証券が特に六分一顧国債の相場を売り崩したのじゃないか、こういうようなお話ですが、最近の景気回復ムードや物価上昇懸念などからいま申し上げましたように、先行き見通しにつきまして非常に不透明感が強まりましたために、主要な投資家筋が長期債の投資を賢い手控え、またおしなべて買い見送りの姿勢に徹した。長期低利の債券の売り急ぎが出ましたことが、そういうふうな相場の下落を一月から特にあれをした。私の方が発行条件の改定という点を催促するために相場をそういうふうにつくっていったということは、全くいわれのないことでございます。証券会社としましても相当の持ちを持っているわけですから、自分から自分の首を絞めるということはございません。
  66. 竹本孫一

    ○竹本委員 ありがとうございました。終わります。
  67. 加藤六月

    加藤委員長 安田純治君。
  68. 安田純治

    ○安田委員 参考人お三方、大分詳細に御意見をお述べいただきまして、ありがとうございます。  大分いろいろな問題点について述べられましたので、私の方で聞くことをある程度省略いたしますけれども、一つは、国債大量発行のもとでいわゆる消化難という事態が生じておりまして、三月債から国債金利の引き上げが行われ、また、市況対策ということで資金運用部資金による既発債三千億の買いというようなことがあったようでありますが、市況対策として日銀の買いオペや国債整理基金の資金による買い入れなども一部論議をされておるようです。いずれにしても、すでに国債は過剰に達しておって、このような市況対策には限界があるのではないか、こういう考え方もあると思うのですが、まず日銀総裁にこういう考え方について見解を承りたいと思います。
  69. 森永貞一郎

    森永参考人 先般行われました市況対策は、資金運用部の収益問題とも関連いたしておる次第でございまして、単に市価を維持するというような意味での市況対策であったかどうか、その辺は問題があると思います。それと同じようなことで、たとえば買いオペレーションをもっとふやして国債の市価の維持日本銀行努力したらどうかというような御意見も間々聞かれるのでございますが、私はそのようなことは絶対やってはいけないのではないかと思っております。金利のバランスを崩しますし、実勢がどうかということを見失うことにもなりますし、またマネーサプライの増加を通じましてインフレにつながっていくわけでございますので、漫然とそういう意味での市価維持のためのオペレーションは行うべきではないのではないか。金融市場の調節のために必要な最小限度にとどめるべきではないかと思っておる次第でございます。  要は、国債発行条件市場実勢に即して機動的、弾力的にそのときどきの情勢に応じて改定されるということが必要なわけでございまして、投資者側のニーズに応じて期間を短縮するということも必要でございましょうし、そういう実勢に即した国債発行ということを今後とも努力していくべき筋合いのものではないかと思っておる次第でございます。
  70. 安田純治

    ○安田委員 インフレ対策、国債大量発行の歯どめ策として、金利の自由化を実施すべしという論が盛んであります。しかしこの議論は、国債大量発行を是認したものでありまして、国債発行は第一義的には財政の内部事情から決定されるものでありますので、金利自由化が有効な歯どめ策とならないという考え方もあると思います。国債大量発行そのものがインフレを導くというふうに考えられないか。根本的な解決は、金利自由化ではなくて、国債発行そのものを縮減することであると思いますけれども、この点について三参考人のそれぞれの御意見を伺いたいと思います。
  71. 森永貞一郎

    森永参考人 当面十五兆何がしの国債、これは予算執行のためにどうしても必要なものでございまして、その消化には万全を期さなければならないと思いますが、国債発行が多過ぎるというようなことになりますと、どうしてもその消化がむずかしくなることは自明の理でございまして、私どもといたしましても、今後財政健全化を一日も早く成就していただき、国債発行量につきましても漸減する方針で臨んでいただきたいということをひたすらこいねがっておる次第でございます。なかなか一夜にしては成らないかもしれません、いろいろ努力が必要だと思いますが、ぜひともそういう努力を経て、財政健全化、その反面としての公債発行額の縮減が導かれますようにということをひたすらこいねがっております。
  72. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  国債大量発行そのものがインフレにつながる、その危険が非常にあるということは、私、先生の御意見と全く同感でございます。  戦争中はもちろんのこと、最近の非常な国債大量発行時代を迎えておりますので、その危険が非常に多いだけに私どもは心配をいたしております。ただ、国債をあらゆる手段を尽くしまして、先ほどから申し上げておりますように、国債管理政策を駆使いたしまして完全な民間消化を図ることが、いま与えられたわれわれの責任ではないか、かように感じております。
  73. 菊一岩夫

    ○菊一参考人 証券界の方からお答えします。  財政上多額のあれが出るということは確かにごもっともなあれで、われわれとしましても相当に心配をいたしておりますが、証券界といたしましては、財政健全化のため、インフレ防止という点につきましてなお一層の個人消化という点に重点を置いてやっておる次第でございます。
  74. 安田純治

    ○安田委員 長期国債の今回の引き上げに続いて、評判の悪い割国の条件改定も当然スケジュールに上ってくると思いますし、また来年度一兆七千億増発される中期国債、これは公募入札ですから、結果として金利はじり高に向かうのじゃないか。さらに、長期国債に端を発した利上げが公社債全般に波及していって、ひいてはコールや手形割引、最終的には、これはサミットの後になるでしょうが、公定歩合の引き上げへと連鎖反応をもたらす状況も十分予想されるのではないか。そうなれば、再び国債消化難という新たな事態になると思いますが、その辺、どんな見通しをお持ちですか、これも三参考人の方にそれぞれお伺いしたいと思います。
  75. 森永貞一郎

    森永参考人 当面公定歩合を引き上げる必要はないと思っております。サミット後にはそうなるだろうというお話でございましたが、私どもそういうつもりで申し上げておるわけじゃございません。当面公定歩合は上げなくてもいいのではないかと思っておる次第でございます。  一般論として考えますと、もし公定歩合を引き上げるような場合には、短期金利が上がりますし、その短期金利も長期金利に及んでくるわけでございますが、その場合、長期金利の実情に即して国債発行条件を決めるということが必要になってくるわけでございまして、もし金利が余り高くなり過ぎて金利負担が多いということになれば、国債発行にもブレーキがかかる、それがすなわち、金利のメカニズムではないかと思っておる次第でございます。そのときどきの情勢に即していろいろな問題を考えていく必要があると思っております。
  76. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  やはり金利が反騰ぎみであるということは、現在の経済情勢から言って否定できない方向であろうかと存じます。ただ、いつごろから金利が反騰するか、もちろん私どもわかりませんけれども、少なくとも一月、二月はまだ金利が下がっております。これが三月、四月、五月ごろから、金利が底を打ちまして反騰に転ずるのか、その辺がいま微妙な段階であるということをまず申し上げておきたいと思います。  しからば、そういう反騰の時期になりまして、先ほどもお話しのように、国債公募入札をやると相当高い金利が生まれやしないか、こういうことでございますが、そういう背景はどうかと申しますと、景気が着実に上昇しておるということでありましょうし、さらに個別企業の実態が非常に上向いて業績がよくなっておるということでございますから、当然のことながら国庫には自然増収という形で税収が上がってまいりますから、そういうときこそ財政は思い切って引っ込んでいただく、国債を大量に削減をしていただきまして、全体の調整を図っていただくことが先決ではないか、かように感じております。
  77. 菊一岩夫

    ○菊一参考人 仮に今後公定歩合が引き上げられるというような事態になった場合には、それはそのときの市場実勢に合わせて機動的に国債発行条件というものを改定していただくほかには、円滑な消化の方法というものはないと存じます。  一般的に申しまして、金利水準上昇するようなときは、景気回復が進みまして企業収益も好転していることが考えられますし、このような状況下におきまして、一方で税収が増加する、あるいはまた他方では景気刺激策の必要性が減るということが予想されますので、こういう事態になりますと、国債発行額の適時適切な減額措置というものが講ぜられるべきではないか、かように考えております。
  78. 安田純治

    ○安田委員 最後に、先ほど来銀行の国債の窓口販売の問題が出ましたので、ちょっと確かめるために伺っておきたいのですけれども、先ほど松沢参考人は、銀行法の解釈上、銀行業務といいますか、付随業務の中はある程度伸縮自在といいますか、政策担当側の解釈によっていろいろ変わってきたし、それでいいのではないかというような意味の御発言だったと思うのですが、きょうの日本経済新聞の報道によりますと、きのう全銀協が一般委員会でいろいろ検討した基本的な考え方をまとめたという中に、「国債の銀行窓口販売について「銀行法上の位置づけを明確にする」ことにより」云々、こういうふうに報道されておりますけれども、むしろ先ほどの松沢参考人のお話ですと、いまの程度で、伸縮自在といいますか、ある程度そういう政策担当側の解釈によって動いている方がいいというふうにお考えだとすれば、この銀行法改正の基本的な考え方の中で、「国債の銀行窓口販売について「銀行法上の位置づけを明確にする」こと」というこの新聞報道とちょっと矛盾するのじゃないかというふうに思いますが、その点いかがかということです。  それからもう一つは、これは菊一参考人がバンクディーラーの参入について大分詳細に述べられましたけれども、それについて、バンク側から何か一言おありになりますれば承りたい。それで終わります。
  79. 松沢卓二

    松沢参考人 お答え申し上げます。  先ほど私が、いまの日本の銀行法は保護預かりその他付随業務と、こういうふうに規定をしてございまして、銀行の付随業務の一例示として保護預かりと書いてあって、他の付随業務は行政解釈、こういうふうに申し上げましたが、それがいいということを申し上げたのではございません。現行法はそういうふうになっておる、それで過去においてもその付随業務についてはいろいろと解釈が行われて今日に来た、こういうことを申し上げたわけでございます。  いま新聞でお読みになりましたのは、実は全銀協がかねがね検討しております問題が新聞に漏れたのではないかと存じますけれども、それは実は、銀行の付随業務につきましては非常に意見が人によって異なりますので、この際銀行の業務範囲を明確にすべきである、たとえば窓販業務については銀行の付随業務なりやいなや、これをはっきりさしてほしいという明確化をむしろ要望することになっておりまして、余り行政指導の範囲が広くなることはむしろ時代に逆行しておる、やるべきことは法律で明定すべしというのが私どもの考え方でございます。  窓販につきましては、先ほどもちょっと意見を申し上げましたが、私は結論的には、発行者である政府国債管理政策上、窓販をやるべきことが国民経済的にいいかどうか判断してもう結論を出すべき時期である、かように感じておりまして、私自身の考え方は先ほど申し上げましたが、これは銀行界とか証券界とかの問題ではなくして、これだけの大量国債発行時代に、金融機関の窓口を通じて国債を販売して、そして消化の多様化を図る、しかもその後のアフターケアについては万全を期す、そういうようなことでやることがいいのか悪いのかを、もう少し大きな視野でもう決定していい時期ではないかと、かように感ずるものでございます。
  80. 安田純治

    ○安田委員 終わります。
  81. 加藤六月

    加藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ、御出席の上貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  本会議散会後直ちに再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十九分開議
  82. 加藤六月

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので順次これを許します。大島弘君。
  83. 大島弘

    大島委員 金子大臣が久しぶりに来ていらっしゃいますので、ぜひとも御質問したい点がございますが、ずっとおられるようですから順を追って質問して、特に大臣に答えていただきたいというときにお答えいただきたいと思います。  まず、この財特法案でございますけれども、最初にちょっと諸外国との比較を勉強したいのでございますけれども、諸外国、特にアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、この四カ国に限って申しますと、国債発行額とその依存度、これはどういうふうになっているか、御説明いただけましょうか。
  84. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 諸外国の公債発行額等についてのお尋ねでございますが、最近年度につきまして順次御説明申し上げます。  まずアメリカでございますが、一九八〇会計年度の、これは公債発行額と申しますよりはいわば財政収支じりとしての赤字額でございますが、これが二百九十億ドルでございます。それからイギリスが、これは一九七八会計年度でございますが、ポンド建てでございますが、八十六億三千二百万ポンドの財政赤字、それから西ドイツでございますが、これは一九七九会計年度でございます。三百十七億マルクの財政収支じりの赤になってございます。それからフランスは、これも西ドイツと同じく一九七九会計年度の数字でございますが、財政赤字が百三十三億フランの収支じりの赤字ということでございます。  そこで、その赤字がそれぞれのいわば歳出予算規模と対比いたしまして、私どもの場合で言いますと公債依存度と比較すべき数字でございますが、アメリカが五・五%、それからイギリスが一六・八%、西ドイツが一五・五%、フランスが二・九%というような数字に相なってございます。
  85. 大島弘

    大島委員 この五十四年度財特法案によってわが国の依存度は三九・六%、約四〇%だけれども、アメリカが五・五%、イギリスが一六・八%、西ドイツが一七・六%、フランスに至ってはわずかに二・九%の依存度であるという御説明を受けました。  続いて関連で聞きますが、世界的にオイルショックのときは公債は非常にふえておるわけですけれども、その後、そのオイルショック以後の各国の国債発行状況はどうなっておるかということです。
  86. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま手元にございますのは、各国とも大体最近時点からさかのぼりまして四年程度の数字が手元にございます。  アメリカで申しますと、まず一九七七年度でございますが、これはわかりやすく申し上げますと依存度が一一・二%、これがいわば決算と申しますか実績数字でございます。それから翌七八会計年度、これも実績でございますが、依存度が一〇・八%、翌七九会計年度、これはまだ実績が出ておりませんで、いわば改定後の見積もりということでございますが、依存度で七・六%、八〇年度は先ほど申しました五・五%という数字でございます。  それから次がイギリスでございますが、イギリスが一九七六会計年度、これが依存度にいたしまして一四・二%、これは実績でございます。翌七七年度、同じく実績でございますが一一・九%、それから一九七八会計年度は先ほど申しました一六・八%になってございます。  それから西ドイツでございますが、これも依存度で端的に申し上げますと、一九七六会計年度、実績でございますが一六・〇%、翌七七会計年度、これも実績でございますが一二・〇%、それから七八会計年度、これは暫定的な実績というふうに承知いたしておりますが一四・〇%、それから最近の七九会計年度が先ほど申しました一五・五%でございます。  それから次がフランスでございますが、フランスが一九七六会計年度、実績でございますが六・四%、七七会計年度、これが実はいわば補正予算、第三次補正後の数字として承知をいたしておりますのが弧・六%、それから七八会計年度、同じく第三次補正後でございますが、これが七・二%、最近の七九会計年度、これは当初予算の数字でございますが、先ほど申しました二・九%というような数字に相なってございます。
  87. 大島弘

    大島委員 オイルショック時は各国とも国債発行額は上がった、これはある程度やむを得ないことだと思うのですが、それ以降、いまの御説明にありますように、各国は総じて国債依存度が減少しているということであるにかかわらず、日本はまさに急増しているという、全く諸外国と逆の現象にあるということについてどう考えるかを大臣、お答えできればお答え願いたい。その理由ですね、なぜ日本だけが急増しているのか。
  88. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いろいろの見方があると思うのですけれども、一つは、日本が比較的石油ショック物価の安定に努力して成功しておるものですから、景気との関連もございますのは否定いたしませんけれども、日本で一番おくれておった公共投資とそれから社会福祉の増大のために財政規模をふくらましていった、それが赤字累積の一つの大きな原因になっていることは否定できないと思います。逆に言えば世界各国は、石油ショック後の混乱を家計と企業に分担させて、比較的身軽な姿勢で財政が歩いてきた、それを日本は、むしろ国がしょい込みまして、そして企業と家計を助けたというふうにも見られると思うのでございますが、そういうところあたりに根本的な原因があるのじゃなかろうかと私は理解いたしております。
  89. 大島弘

    大島委員 主計局次長、お答えください。
  90. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げたことに特につけ加えることはございませんけれども、やや重複になるかと存じますが事務的に申し上げますならば、いわゆるオイルショック以降、歳入の面におきましては、これはあに日本だけではございませんが、経済の落ち込みに伴いまして税収が著しく減退をいたしたわけでございます。反面、歳出面におきましては、やはりそういう経済の停滞に対処いたしまして、雇用の問題あるいは国際収支の問題、広くは景気の問題、そういった問題に対処いたしますためには、やはりある程度公共投資中心にいたしまして財政が積極的な役割りを果たして、経済を支えていくという役割りを果たすべきであるという認識政府はとったわけでございますが、そのために、歳入の方は、いわゆる経常歳入は落ち込み、あるいはその後もなかなかはかばかしく伸びない反面、歳出の面におきましては、公共事業中心にいたしまして相当の規模を確保していった。そのことの結果、その歳出、歳入の穴埋めをしますために公債発行が多額に上らざるを得なかった。その結果、あるいはこれは手前みそになるかもしれませんけれども、国際的に比較をいたしますならば、経済全体といたしましては、たとえば物価の問題にいたしましても、それから国際収支の問題にいたしましても、あるいはまた雇用の問題にいたしましても、それからマクロで言えばGNP全体にいたしましても、諸外国に比べますならば、比較的ではございますが、かなりすぐれたと申しますか、これはやや言い過ぎかもしれませんが、経済全体としては諸外国に比べてかなり順調な回復を遂げてきた。それは一つの、財政が異常な状態に陥りました反面に、財政が支えた経済のメリットがその辺にあらわれているのではないか、かように考えるわけでございます。
  91. 大島弘

    大島委員 しかし常識的に考えて、オイルショック後すべての主要国が公債発行を漸減している、日本だけはとにかく急増しているということの理由でございますけれども、いま御説明を承りましたが、私はそういうことじゃなくて、やはりこれらの主要国の節度ある財政政策によるものではなかろうかと思うわけでございます。と申しますのは、とにかくアダム・スミスやあるいはリカルドによって、公債とはいかにこわいものであるかということは、租税は収入を財源とするからこれはこわくない、しかし公債は既序の資本を財源とする、したがって資本の食いつぶし、これにまさるものはないという、そういうスミスやリカルドの教えを知っておったイギリスなればこそ、あるいはヨーロッパ諸国なればこそ、何を努めたかというと、やはり安上がりの政府と中立的な租税政策、この二つの柱をもってずっと財政政策を運用してきたからに違いないと私は思うわけです。これはオイルショック以後の数字にも明らかにあらわれているわけでございまして、やはり安上がりの政府と中立的な租税政策というのが彼らヨーロッパ並びにアメリカ諸国の租税財政政策の源泉、中心であったということは、これはいかなる財政学者によっても指摘されておるわけでございますけれども、そういう点についてどういうふうに大臣はお考えになられますでしょうか。
  92. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 先生の御指摘のとおり、健全なる財政ということは、これは財政のまず第一義かと私どもも心得ております。確かに諸外国におきましては、御指摘のようにオイルショック以降、歳入面におきましては増税も含めましていろいろな努力がなされておりますと同時に、歳出面におきましてももちろんのこと、かなり徹底した節減合理化努力が行われております。このような努力は先生御指摘のように、それぞれの財政当局に当たりますものが財政の健全性につきまして格段の意識を持って当たったということももちろんでございますけれども、やはりそういうことを可能ならしめたいろいろな国情なり経済的あるいは社会的な事情もまたあったと思うわけでございます。  もちろん私どもの場合におきましても、オイルショック以後、先ほど申しましたような財政運営をしてまいったわけでございますけれども、もちろん歳入面におきましても年々、その年々の状況に応じまして、これは税制の面も含めまして格段努力をしてきたつもりでございますし、それからまた歳出の面におきましても年々、その年々におきまして最大限の努力はしてまいったつもりでございます。しかしながらその結果といたしまして、先生御指摘のように、日本の歴史の中でもあるいは国際的に見ましても、異常な公債依存になっているわけでございますから、このような状態を今後とも漫然と続けていくというようなことは絶対に許されないことでございますので、これはまた後ほど御議論があろうかと思いますが、そういう意味におきましては、私どもはすでにお出しいたしております財政収支試算を一つの重要な手がかりにいたしまして、健全財政に向かってさらに一歩を進めていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。  それから、やや国情あるいは経済的、社会的事情という点につきまして触れたわけでございますが、たとえば諸外国の場合におきましては、これもしばしば言われることではございますが、社会資本の水準なりあるいは社会保障の水準がすでに数年前、歴史的に相当な水準に達している。それに対しまして日本の場合には、いわばまだ急成長の過程にあると言ってよろしいかと思いますが、社会資本の整備に対しますいわゆる行政需要といいますか財政的な需要、それからまた社会保障の充実に対します財政需要は、諸外国に比してきわめて旺盛な需要がある、こういうようなことも、一つの国情といいますか背景となっております事情の違いということもあろうかと思います。それにいたしましても、先日も竹本委員からも御指摘がございましたが、ともかく、ないお金はないわけでございますから、私どもこれから五十四年度、少なくとも相当な第一歩を進めたつもりでございますが、今後ともさらに一層力強く財政再建に向かって努力をしなければならない、かように考えております。
  93. 大島弘

    大島委員 いずれにしましても、昭和五十四年度一般会計予算は衆議院を、僅少の差でありますけれども通過したわけでありますから、これからどうすればいいか、またどうすべきかということについて、ちょっと話題を変えてお話ししたいと思うのです。  まず、国損消化の問題につきましてお伺いしたいと思うのですが、現在のような日本の状況のもとに、こういうふうな大量国債発行のもとあるいは巨額な累積国債状況のもとで、金利を自由化したりあるいは国債商品を多様化する、短期ものの比重がぐっとふえる、中期ものももっとふやすということをして国債消化を図れば、インフレなき国債消化ができるというこういう考え方もあることはあるわけですが、私はこの考え方につきまして、もはや今日のような病膏肓に入った日本の状況ではこういう原則は通用しないと思うわけですが、市中消化はすなわちインフレなき国債消化に通じないと思うのでございますけれども、まずその前提として、もし現在のように金利が固定化しておれば、国債発行は金融市場に非常な混乱あるいは消化不良を起こして、最終的には日銀の買いオペ、つまり追加信用となる。これに反して、金利を自由化すれば、市場に対して国債発行額が相当あっても、より高い金利水準でも消化は可能となる。したがって、金利を自由化して国債消化を図るべきだ、こういう意見についての見解、これが正しい議論かどうかということについて見解をお伺いしたいと思うわけです。
  94. 徳田博美

    ○徳田政府委員 金利の自由化というのは非常に重要な問題ではございますが、本来金利の自由化ということは何をねらうかと申しますと、金利機能をより適正に発押させることでございます。その場合の金利機能というのは、資金配分機能であるとかあるいは景気調整機能であるとか、そういうことが問題になるわけでございます。それで日本の場合に、いま金利自由化をもっと進めるべきではないかという議論があるわけでございますが、ただ日本の場合には御承知のように、間接金融と直接金融とを分けて考えた場合には、直接金融の分野はまだ相対的にウエートがかなり低いわけでございまして、間接金融の分野が非常に高いわけでございます。間接金融の分野につきましては、これは預金が主体になるわけでございますけれども、御承知のように郵便貯金の存在その他いろいろ制度面の制約がございまして、必ずしも資金需要が金利に素直に反映されるというような状態にはないわけでございます。したがいまして日本の場合には、金利の自由化を進めるにはまず直接金融市場から、それも比較的短期のものから進めるのが適当ではないかということが一般的に言われているわけでございます。  この場合に、国債の金利の自由化とどのように関連してまいるかでございますが、やはり金利を自由化してまいりますと、国債につきましては当然ながら、財政面のいろいろな制約もあるわけでございますし、それから現在、金利の自由化を受け入れるような基盤として直接金融市場が整備されているかどうかということになりますと、それは必ずしも日本の場合には直接金融市場が完全に育っていないわけでございます。今度は直接金融市場のうちのとりあえず短期金融市場について育成を図るために、金利を自由化した商品としてCDが導入されたことは先生御承知のとおりでございますが、将来、このようなものが有効に作用いたしまして短期金融市場が育成され、さらに直接金融市場全体が幅の広い、奥行きのあるものになるということには、かなりの時間がかかると考えられるわけでございまして、したがいまして当面は、金利の自由化ということと国債の円滑な消化ということは必ずしも結びつかないのではないか、このように考えております。
  95. 大島弘

    大島委員 銀行局長、もう一度ひとつ答弁をお願いしたいのだけれども、この場合に、いわゆる新発債、フローの場合と、それから既発債、つまりストックの場合、これがある。たとえばフローとしての新発債は、来年五十四年度予算で十五兆幾らですか、ところが来年度末でストックとしての既発債は数字上は約五十兆見込まれる。そうすると、国債発行量が多過ぎて資金需要が逼迫して金利が上がっていく、これは当然なことだと思う。しかもいま景気回復基調にあるような現在、五十四年度、あるいはどうなるかわかりませんけれども、一応民需も相当動いてき出したというふうな景気回復の基調のあるときにこういうふうな多額の国債発行をすると、当然資金需要が逼迫して金利が上がる。そうすると、新発債はより高い金利でないと発行できなくなる。他方、金融機関によって五十兆という膨大なストックの既発債がある。したがって、資金需要が出れば金融機関はこれをどうしても処分しなければならない。したがって既発債の価格は下落する。したがって、そういう国債価格の下落と金利上界を食いとめるための方法としては何があるかというと、ただ一つしかない。それは何かというと、日銀の買いオペだ、つまり追加信用だ、これをおいてない。したがって、現在のような病的な日本経済においての大量国債発行下においては、市中消化の原則を貫いてもインフレなき国債消化ということはあり得ないという説をなすものがあるし、また私もこの説はすこぶる正しいと思うのです。したがって、市中消化の原則を貫いたところで、この膨大な巨額な累積、ストック国債、あるいは新たに発行する巨額な国債、新発債、こういう二つを持っている日本としては、仮に市中消化の原則を貫いても必ずそこに来るのはインフレだ、インフレしか道はない、こういうふうに思うのでございますけれども、これに対してどう考えますか。この考え方は間違っていますか、間違ってないですか。
  96. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生御指摘のとおり、国債のフローとストックの面ではいろいろな問題が出てくるわけでございまして、フローの面につきましては、全体の五十四年度の資金の増加額の中での資金配分として国債が適当に消化できるのかどうか、それが企業資金需要を圧迫しないかどうかといういわゆるクラウディングアウトの問題がございます。それからストックの問題といたしましては、先生御指摘のとおり、今後国債価格の下落等がございますと、売却損の問題も出てまいりますし、それから金融機関の権威にとってより大きな問題としては評価損の問題等も出てくるわけでございます。ただこのような問題は、それぞれ別途の問題として、これはたとえば評価損につきましては、国債価格変動引当金というような問題もございますし、それからクラウディングアウトの問題につきましては、別途金融政策によってそのときそのときで対処するようなことは可能であるとわれわれ考えているわけでございます。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  先生御指摘の万一非常に市中消化ができなかった場合に日銀引き受けになるのではないかということでございますが、これは日銀のオペレーションと申しますのは、これも先生御承知のとおり、日本の経済全体の成長通貨の供給を目的といたしまして、そのときそのときの金融情勢に応じまして金融市場を適当に調整していくという観点から行われているわけでございまして、成長通貨の供給以上に日銀がオペレーションを行うということは考えられないわけでございます。もしこれをこういう考え方を変えまして、成長通貨の供給以上にオペレーションが行われれば、確かにその分はインフレマネーになるわけでございますが、現在日本銀行としてはそのような考えを持っておりませんので、この面からのインフレ要因はないもの、このように考えております。
  97. 大島弘

    大島委員 いまの御答弁は、二つの点においてちょっと私の質問と違います。成長通貨以上に買いオペをやる、いまのところやってないのですが、そうやらざるを得ないということを私は聞いているわけです。と申しますのは、先ほどのように、金融が逼迫してくるとどうしても既発の国債を処分する。すると、国債の下落を当然招く。他方、金利は上昇していく。したがってそういう場合に、国債の下落を防ぎ、かつ、金利の上昇を食いとめるためには、成長通貨以上の買いオペをしなくちゃならないんじゃないか、それ以外に何の方法があるかということを聞いている。
  98. 徳田博美

    ○徳田政府委員 国債価格につきましては、金融情勢によりましていろいろ変動するわけでございますが、ただしかしそのためには、国債管理政策上のいろいろな手が打たれることになると考えられるわけでございまして、国債価格維持のために日銀がオペレーションをするという考え方は日本銀行にはないわけでございます。
  99. 大島弘

    大島委員 私は、大量の国債発行というのは必然的に成長通貨以上に買いオペをやられる。その場合にハイパワードマネー、いわゆる日銀券、日銀の預かり金ですね、これがまず増加し、当然M2が増加していくということは、もうこれ以外に方法がないということを申し上げているわけなんで、それはいかぬとかなんとかいうことを指導してもそうせざるを得ないんじゃないか。将来の資金需要、金融逼迫というような面に直面してきた場合に、また、直面するでしょう、これだけ大量に国債発行されているんですから、当然資金の需要が出てくる、そうした場合に、成長通貨以上にハイパワードマネー、したがってそれに伴うM2、これの増加なくしてどういう方法があるかということなんです。  そこで、一つの提案なんですけれども、かつて公債依存度三〇%というものをつくったことがあります。この根拠はもうだれもわからないのですが、なぜ三〇%かという根拠はわからないのですけれども、私は私なりにそれは一つの歯どめとして、根拠はなくてもいいじゃないかと思っているわけです。それと同じようにマネーサプライの限界目標、そういうものを、国債依存度三〇%と同じように政府なり日銀なりがつくる必要があるんじゃなかろうかというふうに思うのですが、いかがなものでしょうか。
  100. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生御指摘のとおり、M2の増加額、つまりマネーサプライにつきまして一定の目標値を設定してはどうかという考え方は十分あり得るわけでございまして、実は欧米諸国では、アメリカ、西独、イギリスあるいはフランス等で目標値の設定を行っているところがあるわけでございます。そのような国ではいずれも、実質成長率と、それから許容し得る物価上昇率、それに通貨の回転率とを加えたものを目標としているわけでございます。  ただ、日本の場合にこのような目標値を設定するのが適当かどうかということでございますが、御承知のようにマネーサプライの増加要因には、単なる金融あるいは中央銀行の容易にコントロールできる面だけではございませんで、対政府信用の面、それから対外資産の面、それから民間金融機関市中に対する貸し出しの面とこの三つがあるわけでございまして、このうち、中央銀行が主としてコントロールできるものは民間金融機関の貸し出しが主体になるわけでございます。したがいまして、仮に目標値を設定いたしましても、十分にそれにふさわしいようにマネーサプライコントロールできるかどうかについては非常に疑義があるわけでございます。それからもう一つは、これも先生御承知のとおり、マネーサプライ経済成長率、実質成長率あるいは名目成長率との間に必ずしも一義的な関連は日本の場合にはないわけでございまして、したがいまして、マネーサプライを抑えるあるいは一応目標値を置くことによって、そのような経済の実体までそれがうまくふさわしい形に持っていくかどうかということにも疑問があるわけでございます。  このような点から、日本では当面は目標値を設定することは余り適当でないと考えているわけでございますが、しかしながら、マネーサプライ動向というのは非常に大事でございますので、先般来日本銀行におきましては、マネーサプライにつきまして一応の今後の推定値を出すことにしたわけでございまして、それを出すことによって一般の方々のマネーサプライに対する関心を高め、かたがた、そういうインフレその他に対する抑制に資するということを目途とする、このようにしているわけでございます。
  101. 大島弘

    大島委員 大量の国債発行並びに巨額な累積黒字の存在ということは、必ずやハイパワードマネーの増加となり、それがひいてはM2の増加となるということは、恐らくこれは必至の事実であろうと思いますので、私は三〇%の国債依存率の目標を定めたと同じように、十分なる根拠がなくても何かそういう歯どめをかけること自体が必要じゃなかろうかと思うのです。いま申し上げましたように、それは確かにむずかしい理論で正確な目標値というのを定める必要はないと思うのだけれども、ちょうど国債の三〇%と同じように、仮に漠然としてでもいいから、マネーサプライの目標額を定めるべきじゃないかと思うのですが、その点もう一度ひとつ答弁願いたいと思います。
  102. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先ほど申し上げましたように、マネーサプライの場合には、そのコントロールが意図的にできるかどうかということについて疑問があるということと、経済の実体とどこまで一義的な関係があるかということについても問題があるわけでございまして、日本の場合に仮に目標値という形でこれを打ち出しますと、その目標値が達成されなかったことについて、あるいは抑えられなかったことについてまたいろいろな問題が起こると、いろいろそれに伴うマイナス面も考えられるわけでございますので、日本の場合には先ほど申し上げましたように、日本銀行として一応の今後の予測値というものを発表することによって、いわば諸外国における目標値の設定にかえるような効果を期待したい、このように考えておるわけでございます。
  103. 大島弘

    大島委員 それが達成されなかった場合にはどういうことになるかというようなことならば、先ほどの国債依存度三〇%も同じことなのであって、ぜひともそういうふうな歯どめをかけることにつきまして何らかの方法をお考えになっていただきたいと思います。  それから、国債個人消化でちょっとお伺いしたいんですが、史上最高とよく言われますけれども、昨年の七月の三千二百八十四億という個人消化史上最高でした。しかるに、ことしの二月ではそれがわずか四百七十億、もう十分の一近く落ち込んでいるということ。それから利率ですが、十年利付国債で言うと、史上最高はたしか四十九年の八・四一四%であったのにかかわらず、最近は六・一八%と落ちてきている、最近ちょっと値上げしたようですけれども。こういう個人消化の額並びにこの金利の低下という点から考えてみた場合においても、国債発行というのがもう一つの限度に来ているというふうに感ずるんですが、そういうふうにお感じになりませんですか。
  104. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 御指摘のように、昨年夏前後、証券会社が引き受けました国債が三千億円に近い金額に達したことがございます。昭和五十二年以降の相次ぐ金利引き下げを見込んで、先行き金利低下ということで債券は飛ぶように売れたわけでございます。こういうのがずっと九月まで尾を引いたわけでございます。と同時に、昨年の夏、大量の証券会社引き受けの販売ができたというのは、当時の国際金融市場、為替市場のことを考えてみましても、円のスプレッドを期待しての投資というようなものもあったわけでございます。  証券会社が引き受けましたものの中の純粋の個人消化という金額につきましては、大島委員御承知のように、ある一定の最低限度は個人の国債の累積投資というところにはめられております。これが私ども承知しているのでは大体平均的に二百五十億ないし三百億程度は毎月ある。それ以外に、個人投資家がたとえばマル優を利用して買うというような安定保有層としての個人消化を期待しておるわけでございますが、去年の夏以降は、先行き金利が底を打ったということでキャピタルゲインの妙味がなくなったという点から、着実な貯蓄手段としての国債の保有というところしか恐らく証券会社としても販売層が獲得できなかったものと思われます。そういう意味におきましては、現在のような無気上昇局面、金利底打ち感の状況下においては、このことはある程度やむを得ないのであろうと思います。  私ども国債の一般的な消化といたしまして、安定保有層の開拓、これは個人であれ機関投資家であれ、これがやはり全体の国債発行量の一〇%程度は確保したいというふうに考えておりまして、従前それが確保されておりました。昭和五十二、五十三年度に出ました、二〇%以上の証券会社引き受けシェアがふえたということは、たまたま金融環境に恵まれたことでございまして、いまこれが若干低下したからと言って特に心配する必要はない。今後の金融情勢いかんに応じまして発行条件あるいは発行国債の種類の多様化ということで、ニーズに応じたような対応策を講じていけば、一〇%程度個人消化は十分可能であるというふうに考えております。
  105. 大島弘

    大島委員 不満足なお答えですけれども、時間もないのでちょっと話題を変えまして、これはぜひ大臣にお伺いしたいのですが、大臣はケインズ派ですか。
  106. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いや、前はケインズなかなかいいことを言うなと思っておりましたけれども、大分今日の時勢に合わなくなってまいりましたので、いま方向を模索している最中でございます。
  107. 大島弘

    大島委員 その御認識があった方が非常に結構だと思います。  若いころのケインズは、たしかこんなことを言っておりましたですね。失業があれば国家財政でもって穴を掘れ、それで失業がなくなったらその穴をもう一遍埋めろ、こんなことをたしか一般理論ですかに書いておったような気がするのですが、そうすると、成長率さえ高まれば失業はなくなる、あるいは黒字幅が改定されるというようなお考えは果たして正しかったかどうか。成長率、去年は七%にこだわった、それにもかかわらず結論的には、十四万人の失業者の増加と六十億ドルの目標額の倍以上の黒字幅が存在していたということになりますと、成長率さえ高まれば失業がなくなったりあるいは黒字幅が改定できるという考え方は、全くナンセンスなことだと思うのでございますが、大臣のお考えと、あわせて経企庁のお考えを聞きたいと思う。
  108. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 景気が循環してこう動いておる時代には、私はケインズ流の考え方がまさしく適用されたと思うのでありまするけれども石油ショック後のような経済構造が変わってきました際には、もうそれはそのままいかないのじゃないか。景気が落ち込んだから財政でうんとてこ入れをしろと言っても、それはある程度動きます、現にここ数年間のてこ入れで今日の景気が持ち直してきておるわけですからそれは否定いたしませんけれども、ケインズの考えておったほどまともに動かなくなっておることは事実でございますし、ケインズは余り物価重視はしていなかったようでございまするけれども、今日需要がうんとふえたからと言って物価がどうということはないので、コストインフレも出てきておりますし、それから、総体の経済を上げることによって景気がよくなるということじゃなくて、一部景気の悪いところもできてくるというようなことでございますから、やはり前に申しましたような時代にはこれは適用されておったと思いますけれども、今日の時代はもう必ずしも理論どおりいかない時代になった。ひとつ新しい説をだれか、大島さんでも何とか考えて、こういう時代にふさわしい理論を形成してもらわなければいかぬなと私ども考えておる次第でございます。
  109. 大島弘

    大島委員 経企庁、ちょっと待ってください。  確かにケインズは物価を無視しておった、あるいは軽視しておった、これにつきましてはまた後ほど触れますが、昨年福田さんが、私は日本丸の船長だ、経済は私に任しておけ、七%だと言って、七%の達成ができないとこれでもかこれでもかといって国債発行して公共投資をどんどんやってしまった、その結果、先ほど言いましたように失業は増加し、国際収支もなかなか改善されないということで、この政策はやはり間違っておりました、私はそういうふうに思うわけで、いま大臣の御答弁を聞きましたから結論は結構でございますけれども……。  経済企画庁はどうですか、先ほどの質問ですが。
  110. 赤羽隆夫

    ○赤羽説明員 お答え申し上げます。  成長率が高くなれば失業も少なくなり、黒字幅も減るのではないか、こういうふうな御意見でございますけれども、私どもは基本的には、やはりそのような方向で考えております。ただし、ただいま大蔵大臣の御答弁もございましたように、現実というものはこう単純化されたロジックだけではいかない、こういうこともまた事実でございます。しかし、五十三年度という時点をとらえてみますと、少し失業者はふえたということは事実でございますけれども、これは要因分析が必要だと思います。  まず、成長率七%を目指してまいりましたけれども、現在のところで申しますと六%程度のものにならざるを得ないということは一方でございますが、他方、雇用の面で申しますと、当初五十五万人の就業者の増加をしよう、経済政策の一つの大きな目的は増大する労働力人口に対して雇用の機会を確保する、これは一般にはやはり成長率を高めるという形で実現されるわけでありますけれども、この五十五万人という見通しに対しまして、ことしの一月で見ますと実に百四万人ぐらい一年前に比べて増加をしております。ただ、この一月の数字は若干、統計的な問題があるかと思われますので、年度全体として私どもがいま実績を見込んでおりますところでは六十七万人の増加、すなわち当初五十五万人という見通しを立てておりましたけれども六十七万人、すなわち十二万人の余分の雇用機会をつくり出した、こういうことでございます。ただそれにもかかわらず、失業者が当初言っておったよりもふえたではないかという点につきましては、これは労働力人口が余分にふえてしまった。これはむしろ景気がある程度回復をし、就業の機会が出てきた、それならば私も働きたい。本来、景気が悪くて就業の機会がないときにはあきらめておられた方たちが労働市場に手を挙げてきた、こういうことがあるかと思われます。  それから、確かに六十億ドルという当初の経常収支の見通しというものは約百三十億ドル強ということで、かなり拡大をしてしまいましたけれども、これも中身を少し分析してみる必要があるのではないかと考えます。中身と申しますと、まず、輸出の面につきましてどういうことを外国に対して日本政府は言っていたのかと申しますと、五十三年度の輸出は数量ベースで見て五十二年度に比べて横ばいである、こういうふうに言っておりました。これが現在のところどれぐらいになるのかと申しますと、これは約六%から七%の減少ということでございます。それから輸入につきましては、外国に対して言っておりましたのは七%ぐらいの輸入数量の増加、ところがこれも現時点で実績見込みをはじいてみますと、九%強の輸入数量の増加ということでございます。したがって数量ベースで見ますと、当初外国の皆さんに対してわれわれはこういうことで努力をいたしますから期待していてください、こう申しましたその努力目標を大幅に上回って成果を上げておる、こういうことでございます。  それにもかかわらず、金額ベースでの経常の黒字が六十から百三十億ドルを上回る数字になりましたのは、ひとえに円高によりまして日本商品のドル価格が引き上げられた、この結果でございます。ですからむしろ高い値段で売った、これにつきましては、アメリカのインフレで高い値段が通ったということが大きいかと思われます。したがって、表面的には確かに目標の到達ができなかったということは御指摘のとおりでありますけれども、内容を分析してみますと、必ずしもそうではない。やはり成長率を高める努力をしたことがそれ相応の成果をもたらしている、こういうふうに認識されると思われます。
  111. 大島弘

    大島委員 大蔵大臣ですらこの理論をもう一度見直すと言っておられるのに、経済企画庁はあくまでも成長率至上主義をとっておるように聞こえるのですが、これはもう一度考え直す必要があるのじゃないですか。私が申し上げるのは、先ほどの国債依存率三〇%でも、あるいはマネーサプライの目標値でも、あるいは成長率でも、余りとらわれるなということを申し上げたいのです。それを余りとらわれるから外国からつつかれるということで、福田内閣のときは余りにもとらわれ過ぎた、私はそれを申し上げたいのです。
  112. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 私も理論と実際とが一致しないということを申し上げておるだけでございまして、昨今景気が大分持ち直してまいりましたのは、おととしからことしの初めにかけての財政の力が大いにあずかって力があると考えておる次第でございます。しかし私もいまのお話のような、経済成長の目標を掲げてそのために全精力を費やしてこういう施策をやりますよと外国に約束することは、これは国内経済情勢だけではなくて日本の場合は、特に外国の経済情勢にも左右されるところが多いのですから、政策としてそういうことはなるべくしない方がいいという気持ちでおることは事実でございますが、経企庁としては立場上、国民に政府の姿勢を示すというか、来年は政府の目標としてこれぐらいの経済成長はやりますよという一つの目標を示して、御安心いただくという意味において従来からもやってきておることでありますから、来年度は六・三%というあれを出しておるのですが、自由経済なんですからそれとギャップが出ることは私は当然だろうと思います。
  113. 大島弘

    大島委員 経済企画庁にお伺いしたいのですが、五十四年度の黒字幅の貿易収支あるいは経常収支それから総合収支、これの見込みを簡単に説明してください。
  114. 赤羽隆夫

    ○赤羽説明員 お答え申し上げます。  五十四年度国際収支関係の見通しでございますけれども、経常収支につきましては一兆四千億円の黒字ということでございます。これは百九十円というレートでドル換算をいたしますと七十五億ドル見当でございます。(大島委員「それは経常ですか」と呼ぶ)経常でございます。  それから貿易……(大島委員「貿易収支は結構ですから総合収支で」と呼ぶ)総合収支は実は、短期資本移動という非常に予測が困難な項目が含まれておりますので、これは総合収支という形では私ども予測をしてございません。出ておりますのは基礎収支のベースでございまして、基礎収支のベースで申しますと、これは六十五億ドルの赤字ということでございます。
  115. 大島弘

    大島委員 そうしますと大臣、いまのお話のように国際収支の黒字ですが、基礎収支では均衡するどころか赤字なんですね。なぜ諸外国あるいは国民に向かってそれを説明されないのですか。貿易や経常収支だけで何十億ドルといっても、基礎で結局均衡ないしは減少するわけですから、なぜそれを言明されないのですか。
  116. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 それは大変大事なことでございまして、私ども大島さんのおっしゃるように、経常収支はなるほど黒字が出るかもしれぬけれども、海外援助をやったり海外の直接投資をやって、結局基礎収支ではプラス・マイナスとんとんかあるいはマイナスになるのですよ、日本の経済構造からいっていますぐ収支とんとんという経常収支を期待するのは無理だ、日本は相当各国に期待されているんだから、もうかった金をどんどん海外援助に回すということで日本の国際責任を果たすようにしておるのですよということを、一生懸命に言っておるのですが、どうも基礎収支じゃなくて経常収支だけで端的に赤字か黒字かを言う国が多いようでございます。しかしわれわれはそういう点につきましては、できるだけの誤解を解く、また日本の立場を鮮明にするような努力をいたしております。
  117. 大島弘

    大島委員 どうもそういう点のPRが非常に貧弱なように思うのです。たとえば失業量でもそうだと思うのですよ。何十万人失業を救済するというようなことも必要ですけれども、それよりもたとえば第三次産業へ吸収するとか、あるいは付加価値の高い産業へ吸収するというふうな具体的な目標を国民なりその他にPRする。いまの黒字幅の問題だって、基礎では均衡するんだというようなことをもうちょっと積極的にPRするという姿勢が全然見受けられないと思いますので、今後の御参考にしていただきたいと思います。  続きまして、大量国債発行に対しまして、先ほど大臣がいみじくも言われましたように物価の問題について、まず経済企画庁にお伺いしたいのです。  大量国債発行物価の問題は、五十四年度政府経済運営の基本的態度に、「物価の安定を図る」と、こう抽象的に書いてあるわけですが、けさほども参考人の日銀総裁が言っていましたように、卸売物価は昨年十一月からどんどん上昇している、しかもそれが第二次製品に波及して、むしろ国内の産業のデフレ化傾向も見られる、こういうふうに言明しておったのですが、五十三年度末の卸売物価は対前年度比においてたしかマイナス二・三%ですね。これは私が先ほど言いましたように福田さんが、七%の成長と、それから物価がこれほど安定している国はないということを絶えず本会議で言ったことが印象的なんです。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕 この卸売物価の五十三年度末対前年度比マイナス二・三%、これは一体どういう要因なのか。このうちの国内要因はどうか、あるいは海外要因はどのくらいなのか、その要因の寄与度をひとつ説明してもらいたい。特に海外要因の場合には、契約要因と為替要因とがあるから、それを具体的に説明してもらいたい。
  118. 坂井清志

    ○坂井政府委員 いま先生マイナス二・三%とおっしゃいましたけれども、これは多分五十三年十二月の前年同月比、つまり五十二年十二月の卸売物価に対する上昇率をおっしゃったのだと理解いたします。これはまさにマイナス二・三%でございます。  これを御指示の要因別に分けてみますと、まず国内要因と海外要因に分けてみますと、国内要因の方はマイナス〇・九%でございます。一方、海外要因の方は同じくマイナス一・三%でございます。両方足すと二・二になりまして多少端数が合いませんが、これは計算上そういうことになります。  この海外要因の方をさらに、為替要因、例の円高関連のあれでございますが、為替要因と海外の価格要因とに分けてみますと、為替要因の方がマイナス三・〇%、それから海外価格要因、つまり海外で物の値段が上がっておる、そちらの方の要因はプラスでございまして、プラス一・七%、こういう結果になっております。
  119. 大島弘

    大島委員 そうしますと、昨年福田前総理が胸を張って、世界でこれほど卸売物価が落ちついている国はないと言ったのは、すこぶるおかしいのですね。ほとんどが海外要因、しかも為替要因だということになっておるわけなんですね。その点どうですか。
  120. 坂井清志

    ○坂井政府委員 昨年十月ころまで確かに非常に円高が大きく進行いたしまして、当時の政府認識といたしましても、物価安定の一番大きな要因、特に卸売物価の場合には円高が一番大きく作用をしておる、こういう認識をかなり強く持った上で物価安定ということを私ども申しておった、こう思います。もちろん国内の要因もいま申し上げましたように、昨年の十二月の前年同月比で見ますと依然としてマイナス〇・九%でございます。海外の為替要因の方が大きいことは御指摘のとおりでございます。
  121. 大島弘

    大島委員 次にCPI、消費者物価に移りたいと思います。  いまのように、卸売物価はもはやこういうふうな好運なことは五十四年度は望めない、これはますます確実であろうと思います、現に上がってきておるわけですから。のみならず、五十三年度のように円高差益の還元がない。約一兆八千億、一人当たり二万円、一世帯当たり八万円ですか、この円高差益の還元というのも望めない、こういう厳しい情勢がある。その前提の上に立って今度消費者物価を見ますと、五十三年度末は対前年度四%ですか、それから五十四年度の目標は四・九%だろうと思うのですが、まず公共料金の値上げがある。五十三年度には大手の私鉄と米価、それから、五十四年度には国鉄、たばこ、国立学校入学金、こういう値上げがある。さらにOPEC原油の価格、一〇%と言われていますが、これの値上げもある。さらにかてて加えて大量国債発行がある。もう縦から見ても横から見ても、四・九%というような消費者物価上昇というのはとても考えられない。  もう一度言いますよ。卸売物価は五十三年度のようなラッキーな要因はほぼない。円高差益還元というようなラッキーな要素もない。CPI、消費者物価について見ると、五十四年度は四・九%と言うけれども、公共料金の値上げがメジロ押しに迫ってくる。それからOPECの一〇%の値上げ、これはOPECが一〇%値上げとした場合、インフレに〇・六%ぐらい加算し、成長率から二・五%引く、大体こういうふうに考えてよろしいと思うのです。それからさらに春闘がある。春闘相場はどのくらいかわからないけれども、まあ五・九%あたり六%近くなるであろう。かてて加えて十五兆二千何がしかの大量国債発行がある。こういう状況で果たして四・九%というのが縦から見ても横から見ても可能であるかどうかということを一遍御説明願いたいが、その前に、公共料金の物価上昇消費者物価に及ぼす寄与度をまず説明してから、五十三年度の実績、並びに五十四年度の公共料金の値上げの浦賀者物価に対する寄与度、これを説明してください。それからあわせて四・九%というような目標が本当に可能と考えておるのかどうかということです。
  122. 坂井清志

    ○坂井政府委員 消費者物価、特にその中の公共料金をめぐります問題でございますが、五十四年度につきましては具体的に申し上げますと、予算関連の公共料金としていま御指摘の国鉄、健康保険、たばこ等がございますが、これらをひっくるめましてCPIへの影響を私ども一応〇・八%程度と見込んでおります。なおこの予算関連のほかに、電気、ガスの還元による割引措置が終了するとか、その他の民間、地方公共料金等の改定等もある程度見込みますと、先ほどの予算関連も含めまして公共料金全体として五十四年度は一・五%程度CPIを押し上げる、こういうふうに見通しをいたしております。  なお五十三年度につきましては、たとえば電気、ガスの料金割引等のいろいろラッキーな要因もございまして、これより若干低く、恐らく一%をやや下回るくらいのところにおさまるものと見通しております。
  123. 大島弘

    大島委員 いまの答弁に四・九%が可能かどうかという答弁が漏れておったので、大臣いかがですか。
  124. 坂井清志

    ○坂井政府委員 どうも大変失礼を申し上げました。  五十四年度につきましては、先ほど先生が御列挙になりました、円高の影響が少なくなること、あるいは原油価格上昇を初めとする海外の方から入ってまいります商品の上昇、さらに公共料金の関係、こういった状況が五十三年度に比べまして大分厳しくなってまいります。他方、消費者物価の段階で申しますと、最近サービス関係の料金のウエートがだんだん高くなってまいりまして、こちらの方が比較的落ちついておるという状況もございます。したがいまして、それらを全部織り込んで試算をいたしました結果四・九%、こういう見通しを得たわけでございまして、この中には当然OPECの関係も織り込んで計算をしております。四・九%の達成は、簡単にできることではございませんけれども、私ども鋭意努力いたしまして、また民間各方面の御努力も一層強く要請をしてまいり、何とか物価の安定、特にこの四・九%以内にとどめるという目標に向かって私ども格段努力をしてまいりたい、こう思っております。
  125. 大島弘

    大島委員 それは大変なことだと思うのですよ。五十四年度、CPIの上昇率四・九%とかに OPECの値上げを見込んでいるのですか。
  126. 坂井清志

    ○坂井政府委員 OPECの原油価格上昇、これは御存じのとおり、昨年十二月のOPECの総会で決まりましたのが、最終値上げ率で一四・五%、五十四年の平均で申しますと、それ以前の五十三年の数字に比べまして一〇%程度値上がりをするということで、私どもはこの影響は、卸売物価に対しては〇・七%程度の押し上げ要因消費者物価に対しては〇・三%程度の押し上げ要因になる、こういうふうに試算をして、それらを含めまして消費者物価で申しますと四・九%アップ、こういう見通しをいたしております。
  127. 大島弘

    大島委員 そうしますといまの答弁では、OPECの値上げのCPIの押し上げが〇・三%、それから公共料金の押し上げが一・五%、合わせて一・八%。四・九%から一・八%引くと、普通分の値上がり、特殊要因を見ない値上がりというのはわずか三・一%のCPIと見ているのですか。
  128. 坂井清志

    ○坂井政府委員 四・九%からおっしゃるとおり、公共料金の一・五、それとこの〇・三、一・八を引きますと、確かに三・一という差を得るわけでございます。この残りの分につきましては、私ども先ほどの経済運営の基本的態度等を決めます際に、マクロ的にいろいろと試算をいたしまして大体そういう結果を得て、それを全部合わせて四・九と見込んでおるわけでございます。
  129. 大島弘

    大島委員 大臣、いまお聞きのとおりの説明なんですが、四・九%のうち、特殊要因によるものが一・八%で、通常要因によるCPIの上昇率がわずか三二%。かてて加えて、いま説明はなかったけれども、十五兆何千億かの大量国債発行される、こういう状況につきまして、通常のCPIの押し上げ要因がわずか三・一%と常識的にはお考えになられますでしょうか。
  130. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 大変な努力が要ると思います。特に一番こわいのは、やはり石油製品関係の便乗値上げというような問題が出たら、これは大変なことになると思いますので、大島さんも御承知のとおり、物価対策会議等におきましても、この点について十分必要な対策を講ずるような打ち合わせをしておる状況でございます。  何と申しましても物価の安定が一番でございますので、幸いといま卸がすぐ消費者物価にはね返るところまで参っておりませんけれども、今後の動きにつきまして十分注意をしてまいりたいと思いますし、特に私どもの領域といたしましては、金融面から物価に飛び火しないように最善の努力を尽くしてまいりたいと考えております。
  131. 大島弘

    大島委員 それから大臣、先ほど言われましたように、確かにケインズはよき時代に生きて、またその限りにおいてはある程度その理論は正しかった。しかし、こういうふうなスタグフレーションといいますか構造的不況の非常に強い現在の世界経済、特に日本経済におきまして、将来仮に無気の回復があっても、そこである程度自然増が出てきてもなお赤字というのは必ずや残るであろう、それはもう政府長期債務あるいは赤字国債発行額の対GNPの比を見ても明らかだと思うのですが、そういう場合に果たして増税は可能かどうかということ。相当自然増が出てきてもやはり赤字は残る、なおかつ、増税をすることが可能かどうか。あわせて、一体いつになったら国債から離れて、民需中心に完全雇用と経済成長ができるのであろうかというふうな見通し、これは非常にむずかしいかもしれませんけれども、こういう構造的不況の現在におきまして果たしてできるのであろうかどうか。  果たして将来増税ができるのかどうかという問題、それから、財政主導型を離れて民需中心に完全雇用と経済成長が果たしていつの日にかできるのであろうかどうかということについての所見を、おわかりならばお聞かせいただきたいと思います。
  132. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 大変むずかしい問題でございます。増税による税負担を果たして物価上昇なしにできるかどうかという問題、これは一般消費税を導入いたしましたならば若干のはね返りが出ることは当然でございますが、各国ともとにかく一番大きな問題は、インフレに火がついたらそれこそ大変だということで今日までいろいろ努力をしてまいっており、また現に努力をしておる最中でございます。わが国といたしましても、いま御指摘のもろもろの点もございますから、やはり政府として一番重点を置いていかなければいかぬ問題は、いかにしてインフレ防止の責任を果たしていくかだろうと思います。そういう意味において、増税をやらぬで今日のままほっぽり出しにしておいたらそれでうまくいくかどうかということについては、大変私どもは危惧の念を抱かざるを得ないのでございます。できるだけのことは政府も国民も一体になってやっていただいて、それは国際的なあれもありますから、だんだんとスタグフレーションの局面では構造的な物価上昇というものは残るかもしれませんが、さらにより大きな次元においての問題を片づけていくということが大変大事なことであると私どもは考えておる次第でございます。
  133. 大島弘

    大島委員 その場合に、増税ができても、その増税は恐らく間接税しかできないであろうというふうに私は考えているわけでございます。これはまた世界各国、恐らく歴史の帰結だと思うのです。構造的不況の経済の中にこれほどの大量の国債発行して、もし仮に増税ができるとすれば、それは恐らく間接税しかないであろうということで、その辺は、賢明な大胆でございますから一般消費税あたりをお考えになっているのじゃなかろうか、これしか手がないということだろうと思うのです。これはきょうの議題ではございませんので……。  最後に、国債の償還計画ですが、一般会計予算書にはごく簡単に十五兆何千億かのものをいつ、昭和何十年度において幾ら返すという計画が出ております。これはしかしあくまでも算数的なことなので、この分でいきますと、恐らく昭和六十四年度あたりでは元利合計で約二十兆ぐらいの国債費が要る、いわゆる当然増経費が要るということですが、昭和六十四年度程度で二十兆の国債費が要るとなりますと、一般会計に占める国債費の割合は一体どのくらいですか。一割ですか、二割ですか、三割ですか。     〔委員長退席、稲村(利)委員長代理着席〕
  134. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 六十四、五年度におきます国債費についてのお尋ねでございますが、申し上げるまでもなく、六十四、五年度、これから十年先の問題でございますけれども、その時点におきます国債費がどの程度になるかということにつきましては当然のことながら、その時点におきます国債発行額をどう見るか、それからまた発行条件をどう考えるかといったような前提がございませんと、なかなかこれは計算ができないわけでございます。  そこで、私ども少なくとも六十年度までにつきましては、すでに御案内のとおり財政収支試算という形で、ともかくも六十年度の描かれる経済の姿と整合性を持ちながらある種の予算の姿を描きまして、そこまででの国債費を試算をしているわけでございますが、六十一年度以降につきましては、先ほど申し上げましたような経済全体の姿の中での歳出歳入の姿を描くことができないわけでございます。  そこで、せっかくのお尋ねでございますけれども、六十四、五年度に果たして元利償還含めまして国債費が幾ばくになるか、なかなか責任を持って計算することができませんし、したがいましてまた、その国債費一般会計規模の中でどの程度の割合を占めるかということにつきましても、的確なお答えを申し上げる材料がないというのが率直な状況でございます。
  135. 大島弘

    大島委員 どうですか、このままでいきますと、昭和六十四年度とか六十五年度とか言いませんけれども昭和六十年代には国債費の全歳出規模に占める割合は二割と見ていいですか。
  136. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 六十年度でございますが、六十年度までにつきましては、財政収支試算という形で、一般会計予算規模、それからそこにおきます国債費規模を一応試算をしてございます。そこで六十年度について申し上げますと、財政収支試算でお示しいたしてございます六十年度予算規模が、七十二兆一千六百億円という試算をしてございます。その場合の国債費でございますが、これが経常部門投資部門合わせましたところで十一兆七百億円という試算に相なっているわけでございます。したがいまして、その場合の一般会計予算規模の中に占めます国債費のウエートはおおむね一五%程度という計算に相なります。
  137. 大島弘

    大島委員 だから私の計算はほぼ間違ってないですね。大体六十年代では全歳出予算の二割を占めるということはほぼ間違いないと思います。まさに社会保障費より大きい国債になるわけです。これは大変なことだと思うのです。昭和六十年代の財政運営、果たしてやっていけますでしょうか。
  138. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 先生御指摘のとおり、私ども御提出申し上げました財政収支試算におきましても、五十五年度から五十九年度までの累積で、実は五十九年度までに特例公債から脱却をしようということにいたしますと、約九兆円のいわゆる増税が必要であるというような試算になっているわけでございます。その後、御指摘のように六十年代、つまり六十年度あるいは六十一年度以降、現在まで年々お願いしてございますいわゆる特例公債の償還も本格化してまいるわけでございます。その国債の元利償還に伴います財政負担、まことに容易ならぬものがあると私ども認識をしてございます。そのためにも私どもは、何としてでも五十九年度までに特例公債をゼロにして六十年度以降の元利償還に備えなければならないという考え方をしているわけでございます。その意味におきまして、この財政収支試算を手がかりにいたしまして、歳入面におきましても、増税を含めましていろいろ御理解をいただき実現をしていきたいと思っておりますし、それからまた歳出面におきましても当然のことながら、従来にも増して厳しい徹底的な節減合理化を年々積み重ねていかなければならない、かように考えております。
  139. 大島弘

    大島委員 最後に一点だけ、国債とはちょっと別の問題ですが、法人の超過累進税率。  私は過日の大蔵委員会において法人に超過累進税率、軽度の超過累進税率でも導入したらどうかということをお伺いしたわけですが、結論は否定的でしたが、過日、全国青色申告会総連合会専務理事という方が、一般消費税に反対する。この着色申告会というのは御承知のとおり、青色申告ができてずっと国税庁、国税局、税務署の協力団体の最たるものだったのですが、そこの専務理事が、一般消費税導入に反対すると言ったことは、これは表現はどうかと思いますが、まさに飼い犬に手をかまれたというような感じではなかろうかと思うのです。それはそれとして、そのときに同じくその専務理事が、法人税に軽い超過累進税率を適用したらどうか、それともう一つ、国税、地方税を通じて臨時付加税を導入したらどうかということ、恐らくかつての超過利得税のことだろうと思うのですが、こういう二つのことを提案されまして、全くわが党の政策そのものを言明されているようなんですね。これは大臣どういうふうにお考えになりますか、まず大臣、ちょっとその感触を聞かしてください。青色申告連合会の専務理事が話されたことです。
  140. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 こういう一般消費税というような大きな問題でございますから、その導入を控えていろいろな議論が出ることは当然だと思います。国会でも各党からいろいろの御提言をいただいておりますし、民間からもいろいろな御提言がございますのを、私どもといたしましては謙虚に耳を傾けて、実現の可否について検討をいたしておるのが現在の姿でございます。  法人税の累進課税の問題は、法人実体説をとればこれは当然のことだと思います。しかし世界各国の税制、いろいろやってみても、パナマとか中南米のごく限られた国において累進税を課税しておるだけでございまして、これはすぐ逃げられる道があるものですから、だからなかなか簡単にいかぬと思うのであります。  超過所得税をかけたらというようなお話も伺っておるのですが、日本の場合は、高度成長華やかなりしころ少し大幅の減税をやり過ぎまして、税負担で大体先進国の半分くらいのところまで減税してしまって、しかもこういう状況に陥って、なかなかそれがもとに戻せない。これはいますぐ直接税を倍にしろなんて、それは不可能なことであるということは私ども十分心得ておりますので、まあ消費について担税力をある程度認めて、その方でカバーする、補完課税をやっていくというようなのが、やり方としては一番いいやり方ではないかと考えておるのでございますけれども、各方面からのいろいろな御意見につきましては、私どもも十分ひとつ比較検討して、それはだめですよと頭ごなしにやる気持ちは毛頭ありません。  それから同時に、歳出面でございますけれども、それでは来年十五兆なんという国債発行して消化できるかなんというと、私はそれはもうとうてい不可能だと思います、ことし、新年度が限界だと思いますから。そのために、やはり思い切った歳出の削減をやっていかなければなりませんし、これには非常な勇気が要ることでございますし、国会の皆さんの御協力もいただかなければいかぬことでございますので、どうかひとつまた御協力をいただき、お知恵をかしていただくことをお願いしたいと思います。
  141. 大島弘

    大島委員 最後でございますけれども、なぜ私たちはこれほどきつく言うかといいますと、一般の中小企業法人は、一〇〇のもうけがあると、国税、地方税合わせて恐らく五六%か五七%ぐらいは税金に持っていかれると思います。しかし租税措置法によって、いわゆる隠れたる補助金によって優遇されている大企業、大法人、恐らくこれははっきりした資料は出ない、あるいは守秘義務があるかもしれませんが、仮にトヨタ自動車であっても東京海上であっても、これは私の想像ですけれども、実質税負担率は恐らく中小企業法人が負担する税率の半分以下であろう、私はそういうふうに考えておるわけです。また、そういうふうになるわけです。私は租税特別措置法について、これは悪法だということを何年も何年も申し上げておるわけなんですけれども、そういうふうに措置法によって隠れたる補助金をもらい、なおかつ、実質税負担率は一般の中小法人の半分ぐらいあるいはそれ以下で済んでいる、こういうことこそまさに不公平税制の最たるものだと私たちは言うのです。  のみならず、何も法人は擬制説にとらわれることはない。パナマしかやっていないかどうかもしれぬけれども、戦前の日本では一時期において超過累進税率をとった時代もある。それから企業が分割されるというようなことも、それは防止する方法は何らかできないはずはない。現在の同族会社の行為・計算の否認規定のような方法でできないことはない。それから、生活費の限界効用を等しくするから法人には適しないと言うのだけれども、あの財政学の大家の一橋大学の井藤半弥先生でも、法人実在説をとっても少しもおかしくないと。だから初めからこれは擬制説だということで、法人は擬制説でなくちゃならないのだという前提のもとで頭がこりこりになっていますから、言うならばわれわれの言うことと初めからかみ合わないのですね。  大臣は非常な税のベテランですから、その辺主税局を指導、叱咜激励して、もう一度考え直せ、こういうことほど不公平な税制はない、なぜ実在説をとれないのだということと、それから井藤半弥先生の本をよく読まさして一遍検討さしていただくことをお願いしまして、私の質問を終わります。
  142. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員長代理 佐藤観樹君。
  143. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 この委員会が通り、参議院も通りますと、八兆五百五十億円という大変膨大な国債がちまたにあふれるわけでありますけれども、その割りにはこの委員会というのはどうも余り熱気がなくて、大変けしからぬことだと思うのであります。このままでいきますと、どうもこの財特法も否決をされてしまうような自民党さん少ない人数構成ですけれども、せっかく勉強してきましたから少し質問をしたいと思います。  まず、前回の委員会で理財局長から、資金運用部の資金で既発債の買い入れを三千億円やるという御発表がありました。委員会運営者といたしましては、いま問題になっているときでございますから、そういう政府の発表したことについては、当委員会で表明をされましたことにつきましては是といたしますけれども、内容につきましては私は若干疑問を持っているわけであります。  確かに今度の措置というのは、長期債が供給過剰ぎみでありますし、その過剰感というのが非常に強いだけに、一応効果としてはプラスであろうと私は思うのです。しかし果たしてこれで、一連の景気回復という報道やらあるいは商品相場が非常に上昇しているというような動きからくるインフレ懸念が非常にあるわけでありますけれども、このインフレ懸念が台頭している状況を踏まえて金利の上昇不安から、果たして今度のような措置で、この市場の長期債が供給過剰であるというこの基本的な基調というのが変わり得るだろうかどうだろうかというのは、私は疑問を持っているわけであります。  それでまずお伺いをしたいのは、今度買い上げの対象になるのは第八回の利付国債、六・六国債であります。五十三年の一月から三月までの発行と聞いておるわけでありますけれども、いま市場で供給過剰感が非常に強いのは六・六ではなくてむしろ六・一なわけですね。こういう質問をすれば、いや六・一はまだ一年たっておりません、四月になりませんと一年たっておりませんので、買い上げの対象になりませんということになると思うのでありますけれども、少なくも市場の関係者の中では、買ってもらいたいのはむしろ六・六じゃなくて六・一なんだ、恐らく四月になれば六・一があるだろうという期待感が市場関係者にはあったわけです。これは理財局長に言わせれば、期待した方は勝手であると言われるかもしれませんが、市場の中にはそういった期待感がかなりあった。これが逆に三月の二十二日に入札をするわけですね。ということで逆に、ああこれでは六・一国債はこういった買い入れというのはないんだなということをむしろ暗示をしてしまって、そういった失望感というのがますます六・一国債の値崩れというのを助長してしまう効果というのになってしまったのじゃないだろうか。この現在というタイミングで六・六国債をやったことが、理財局長はよかったと言われるに決まっていると思いますが、六・一の買い入れが先に遠のいてしまったという失望感というのを市場に与えたことはむしろマイナスではなかったのだろうか。理財局長がここで発言されますと、直ちにいろいろな意味で市況に影響しますから、その辺のところは勘案をしての答弁で結構でございますけれども、六・六をやったということが果たしてどうだっただろうかということについては、どういうふうにお答えになりますか。
  144. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 この際、資金運用部の買い入れ玉といたしまして六・六を選定いたしました理由は、二つございます。一つは、現在市場に流通している最長期もの、長いものでは六・六の流通量が一番多いということでございます。  それから二つ目には、今回の買い入れというものが、市況の安定を期待する一方において、資金運用部資金の短期余裕資金の有利運用ということを目的といたしております。有利運用の目的から申しますと、各種クーポンの国債の運用利回りを見ます際に、先般も一度この席で御説明させていただいたと存じますが、欧米式利回り計算で見ますと実質の利回りが出てまいりますが、六・一と六・六を現時点で比べてみますと、六・六国債の方が相対的に利回りが高くなっております。六・一は昨十九日で六・八八九%、それから六・六は六・九一四%ということでございますので、効率的運用という意味においては六・六の方が望ましい、理由としてはこういう理由でございます。  それから佐藤委員が御指摘の、市場が期待しているのは六・一%ではなかったか、六・六をこの際手入れをしたことによってかえって六・一の失望感で、六・一の値崩れが生ずるのではないかというような趣旨のお尋ねがあったと存じますが、公社債市場は申すまでもなく、六・一も七%も八%も事業債もいろいろあって長期債市場は構成されているわけでございますので、その中に絶対量として三千億という資金を投入するということは、むしろ支える意味はあっても、それによって六・一が崩れるという懸念はないものと思っております。  それからもう一つ、六・一をと市場が期待しておるのに、この際なぜ六・六をということの理由はいま申し上げましたとおりでございますが、国債管理当局者としては市場に絶えず注意を払っておる。その際に、六・六が先ほど申し上げました理由で非常にいい対象であるという選定をした。しかも早期にその選定をしたという姿勢をお認めいただければ、今後の対応というものは市場はおのずから感じてくれるだろうと存じます。
  145. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 後の方で大変意味深なことを言われたのですが、それを深く追及いたしますと何かと市況にも影響してくることなので、そのことは深くは追及いたしませんが、いま六・六国債というのは、ちょっと正確に私も数字を見ていないところがあるのでありますけれども、買い上げの対象になる額というのはどのくらいあるのですか、二兆円くらいありますか。
  146. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 六・六%国債の全残高と申しますよりも、今回対象にいたしました第八回の六・六というのは、発行残高は一兆九千九百五十五億でございます。これが都市銀行あるいは証券引受分というふうに分かれるわけでございますが、後ほど数字が間違っておりましたら訂正させていただきますが、大体証券引受分が四千数百億、市中銀行で持っておるのが一兆三、四千億であったろうと記憶いたします。
  147. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 この第八回の分だけとりましても、ざっと私の調べたのでも約二兆ですね。これも時期は一年過ぎておりますから、市場に出てくる可能性というのは、予備軍のように待っているわけですね。そうなりますと、二兆に対して三千億という数字はどうだろうか、この点はいかがでございますか。
  148. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 これがどれだけ市場にオーバーフローという形で出てくるか、その数字のつかみ方でございまして、金融機関が保有しているものであっても、金融機関のポートフォリオ構成上これを持ちたいという希望も当然ございますし、それから証券会社が引き受けしたものでございましても、累積投資でございますとか、安定個人消化層に確実にはまっておるものがございますので、私どももいろいろ資料を分析いたしまして、たとえばこの時点では六・六国債というものは、三千億という買いを入れれば十分売りと対応できるというふうに判断をいたしております。  いろいろ私どもも四月、五月、六月、いまからむずかしい時期に、たとえば地方銀行が地方債を引き受けるに当たってどれくらいどういう種類のものを売るであろう、生損保はどういうビヘービアに出るであろう、それに対して余資機関である農中その他がどういう買いを入れるであろう、マクロ的にいろいろ私どもも分析させていただいております。なかなかこれは公表するわけにまいりませんですけれども、私どもは今回のこの三千億ということで、先生御指摘のように市中には二兆ございますけれども、三千億というものはある程度オーバーフローを吸収するには十分であろうというふうに考えております。
  149. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう一つ、いま非常にむずかしい市況になっているわけでありますけれども、昨年八月にやはり買いオペをやったわけでありますけれども、このときは御存じのように、むしろこれが値崩れを助長してしまった結果になっているわけですね。さっきも値段の話を申し上げましたけれども、昨年八月にやったときはいろいろ時期が悪くて、一つは、買いオペが恐らく市場関係者としては、これは予想でありますから、あるいは新聞報道等でありますから必ずしも正しいとは言えないのでしょうけれども、大体二千億されるのではないかというのが千五百億だったということ、これは買いオペ額が若干下回ったこと。それから、国債価格変動引当金が九月期に設けられるということで、その前にある程度銀行筋が売り急いでいこうというような要素が加わって、この結果はむしろ落札価格市場価格を下回ってしまった。これは買い取る方にしてみれば非常に都合がいいわけでありますけれども、これが一層相場の軟化を助長したという結論になっているわけですね。たとえば去年の八月五日は買いオペを発表した日ですね。この日が百二円九十五銭だったわけでありますけれども、買いオペが行われた八月十一日、このときの価格が百一円四十五銭です。それでこれが決定する前の市場価格というのは百二円二十銭あったわけです。七十五銭の差ができた。こういう落札価格になったということで、その後の相場がますます軟化の兆しになった、もちろん一時的に反転もありましたけれども。  そんなようなことで、いろいろな事情が加わって入札価格が意外に低かった。もちろんこのときも変則ダッチ方式でありますけれども、それがむしろ市場に悪い影響を与えた。今度もコンベンショナルな方式でするわけでありますから、買い手である皆さん方の方には大変都合はいいわけでありますけれども、また同じような、せっかく市況を安定させようとした意図が、いまの悪い市況の上にさらになるべく安い方から、コンベンショナル方式で買っていくという方式でやるがために、これは私もある程度買い手としては運用を考え、国民の金でありますから、資金運用部資金の金を使ってやるわけでありますから、その意味ではコンベンショナルをやること自体に反対しているわけじゃありませんけれども、いまのような昨年八月の例と比較をして、さらに市況が軟化をするというような危険はないのかどうなのか、その点についてはいかがでございましょう。
  150. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 お答えを申し上げる前に、昨年の夏から秋にかけましてのオペと申しますか市中買い入れの状況を申し上げますが、いま佐藤委員が御指摘になりました八月のは、いわゆる日銀の買いオペでございます。これは日銀がいわゆる市中価格支持と申しますか市況対策を主眼として行ったものでなくて、やはり通貨の供給量の調整という形で行ったオペでございます。その際は御指摘のように、オペ額が千五百億、これを入札にいたしましたために、確かに後の反省といたしましては、日銀のオペ額、入札額がロットとして小さかったためにこういう結果を起こしたのだという反省を私どもも持っております。  それから、ある意味で資金運用部資金の有利運用、並びにあわせて市況対策という形で行いました九月の運用部の三千億の買い入れというのがございましたが、この際は御承知のように、あの時期におきます一過性のいろいろの国債の値下がり要因を払拭いたしまして、相当国債の市況というのは戻して、それはそれなりに相当の成果があったというふうに私ども認識いたしております。  御指摘のように、今後かようなことをいたします場合には、その入れるロットというものも、市況の状況とあわせて絶えず十分念頭に入れて対処いたしたいと存じております。しかしながら、国債整理基金であれ資金運用部資金であれ、今後どういうふうなそういう市況への対応ができるかと申しますと、やはり整理基金、資金運用部資金にはおのずから原資の制限がございますので、これも長期的に見ながらやっていかなくてはならないという制約がございます。
  151. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次に、いま市況の話があったわけでありますけれども、どうも日本の国債発行というのは、実勢価格実勢金利を反映していないのではないかというのが、他の委員からもいろいろありましたし、後でも若干触れますけれども実勢金利、実勢価格というのが非常に問題になるわけですね。ところが実勢価格というのは言うまでもなく、取引所に上場している価格あるいは店頭の気配価格あるいは業者間の価格、BB取引ですね、三つあるわけでありますけれども、私もあれはおととしでございましたか、余りにも少額の国債価格の値づけがされているということは問題ではないかという指摘をして、それ以来東京証券取引所もいろいろと考えているようであります。  そこで、少しお伺いをしたいのは、これは証券局の担当になると思うのでありますけれども、従来百万から一千万まで取引所で商いをしてください、売買をしてください、これを取引所集中という言葉が正しいのかどうなのかはちょっと私、疑問があると思いますけれども、少なくとも百万から一千万までの額面についてはできる限り取引所で売買をしなさいということをしてきたわけでありますが、今度四月一日からは、一千万以上もなるべくということで、取引所で商いを行うようにということのようであります。一体これは、なるべくということだと私は聞いておるのでありますが、その点がどうなっているか。さらに証券局として、これは恐らく取引所の規則か何かでやっているんだと思うので、行政的に指導する権限があることなのかどうなのか。そしてもう一点は、非常にわずかな量しか取引所を通じてやってないわけですが、一体証券局としてはこの点についてどう考えていらっしゃるのか。とりわけ、いま公社債市場の中でも国債の率がおととしから昨年にかけてぐっと大きくなって、率としては一番大きくなっているわけですね。そういう中にあって、取引所での値づけといいますか、これを一体どういうふうにつけていこうとしているのか。  ただ私が若干わからないのは、東京証券取引所で百万から一千万というのは、まあ個人を対象にして、個人の国債保有者なり公社債保有者が一体どのくらいの値段だろうというのの一種参考的なものとして、こういった百万から一千万の価格を取引をするということだと思うのでありますが、それと、証券会社のような十億とか二十億とか、おのおのの会社の資金繰りのために出される公社債と、確かに額面なり率なり残存期間なりは一緒であっても、果たして本当にこれは一緒にしていいものなのかどうなのか、これは実は私も若干疑問を持たないわけではないのです。太平洋に小さな帆かけ船、それもササでつくったような帆かけ船を浮かべて、片方の証券会社なり法人事業の資金繰りのために出てくる十億単位の大きな公社債と、個人の百万から一千万までのものとを、いや、これは同じ額面であり、同じ残存期間であるからといって一緒にして値づけをするということが、果たして本当に公正な値づけだろうかなということも実は私、若干疑問を持つのです。その点も含めまして証券局としては、この点についてどういうふうに考えていらっしゃるか、お考えをお伺いしたいと思います。
  152. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 四月一日から東京証券取引所、それから大阪及び名古屋におきまして、国債の取引所取引の手法が改正になるわけでございますが、これは証券取引所は業務規程の改正で行います。業務規程は大蔵大臣の認可を要するものでございますから、こういう制度を改正するに当たって事前に証券局の方に取引所から相談もございましたし、私どもも必要に応じて意見を述べてまいりました。  国債の取引所取引でございますけれども、昨年の一年間における公社債の売買高は二百三兆円でございますが、その中で国債の売買のシェアは二九・八%と、以前に比べますとそのウエートが非常に高まってきたわけでございます。しかるに、その国債の売買高の中に占める取引所の売買高のウエートでございますが、これは五十三年で〇・二%ということでございます。以前はこの比率はもっと高かったのでございますが、国債発行高がふえ、売買高がふえるのに従いまして、取引所の売買高の占めるウエートは下がってきております。先生御存じのように、国債も公社債でございますから、公社債の取引というのはどうしても店頭取引の方がなじみやすいということは、わが国ばかりでなく西欧諸国を見ましてもそのとおりでございます。しかし、国債は取引所に全銘柄を上場しているわけでございますし、その点他の公社債とは違うわけでございます。  したがいまして、取引所取引というのをもう少しウエートを高めるということを取引所において検討いたしました結果、従来は先生御存じのように、百万円から一千万円までが市場集中であったわけでございますが、これを極力もっと大口のものも取引所に持ってこようということでございます。この大口の取引の売買を取引所で行うことによりまして、従来そういう取引が店頭で行われていた、あるいは先生御存じのいわゆるBB証券で売買が行われておりましたが、それが従来よりも価格形成の面で練れる面が出てくるんではなかろうかと考えておりますし、同時に、取引所で価格を公示するわけでございますから、投資家に対しましても価格の公示機能というのが一層高まるのではないかと思っております。  なお、先生御指摘の大口のものと小口のものとは一体どうなるのかということでございますが、今回大口取引の制度を導入するわけでございますが、取引所におきましては、大口売買取引と並びまして小口の売買取引も同時に取引所において行う。大口売買取引は午前と午後二回立ち会いをいたしますけれども、小口のものについては別途午後に一回立ち会いをする。     〔稲村(利)委員長代理退席、委員長着席〕 それは、額面の金額も注文の最低額も大口取引よりも少ない金額でやっておりますし、受け渡しも、大口の場合には一カ月未満というふうに考えておりますが、小口の場合には四日目には受け渡しをするということで、また価格の公表も、大口取引とは別に銘柄ごとに小口取引の価格やレート、売買高を公表することになっております。したがいまして、そういう意味では価格は二本立てになるわけでございますけれども、それは大口の売買と小口の売買という面での違いからそういうふうに考えているわけでございます。
  153. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次の質問に移る前に、大口、小口というのは一千万円で切るのですか、どこで切るのですか。
  154. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 小口と申しますのは百万から一千万円まででございまして、一千万円以上が大口ということになるわけでございます。
  155. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そうしますと、たとえば店頭の気配価格、これは大手証券会社十二社のあらかじめ決めた銘柄を店頭気配として発表しているというやり方をとっておりますね。そうしますと、業者間価格の日本相互証券でやっている方の価格というのはなくなり――完全になくなるかどうかはわかりませんが、だんだんと取引所の方に移行していき、そして店頭の気配価格自体はまだ残る。ところがいまの時点で実態を聞いてみますと、取引所の価格自体もむしろ、店頭の気配価格参考にしながら取引所の中で値づけがされているというふうに聞いているのですが、そうなりますと、量がもう少しふえてくればその辺のところは若干変わってくるのかもしれませんけれども、そのあたりはおたくの万としてはどういうふうに指導していこうとするのか。そして、株と違いますから必ずしも店頭の気配価格が全部なくなってしまうということにはならぬかと思いますけれども、最終的には取引所での価格というのに一本化していこう、そのスピードその他は別といたしまして最終的には取引所の価格に一本化していこう、こういうふうに考えられているのですか、それとも、店頭の気配価格というのは従来どおり残すということなんですか、そのあたりはどうなんですか。
  156. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 店頭気配の発表は、実際に行われた売買ではなくて気配価格であるということは先生御承知のとおりでございますし、また毎日発表しております。  それから日本相互証券の売買は、証券会社間の売買でございます。日本相互証券は先生御存じのように最初は、中小証券の場合には大手と違いまして、売買いたします場合になかなか相手が見つかりにくいということで、むしろ中小証券を中心とした証券会社の仲間同士の売買のためにできた会社でございますけれども、公社債の売買高がふえるに従いまして、中小ばかりではなく相互証券のような大手もその売買の中に入っておりますし、かつまた、当初よりも国債の売買高のウエートの方が高まってきたわけでございます。  先ほど御説明いたしました国債の取引所取引を大口売買について行うということになりますと、従来日本相互証券で行われておりました証券会社間の国債の売買のかなりな部分が取引所取引の方に移っていくことを期待しております。ただしかし、これは集中義務は課しておりませんから、全部が行くということではございませんけれども、かなりの部分が行くことを期待しておりますし、かつまた、日本相互証券の場合には本券がある場合の売買のみが行われていたわけでございますけれども、取引所取引の場合には登録債の売買も行われる予定でございますから、かなり売買高もふえようかと思います。  御質問の取引所取引が大口について行われるようになった場合に店頭気配の方はどうなるのであろうかという点でございますけれども、本来は国債は全部上場しておるわけでございますから、ほかの公社債とは違いまして、取引所取引で価格形成が行われれば店頭気配の方は要らないのではないかというふうな見方も当然あるわけでございます。しかしながら、四月一日にスタートいたしまして、今後どのように取引所取引が行われていくかということを見ながら、その気配の方も考えてまいりたいと思いますが、当分の間は気配発表は引き続き並行的に行われていくというふうに考えております。
  157. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう一点この点についてお伺いしたいのは、いま株式売買の総額が転換社債も含めましてざっと四十五兆、それから債券の店頭、市場における売買高が約百九十兆円というふうに聞いているのですけれども、こう比べてみますと、取引所の機能というのは株の売買、商いだけではなくて、債券の売買についてもかなりいろいろな形で整備をしていかなければならぬのじゃないか。ただし債券の場合には、銘柄とか期間とか利率とかいろいろな種類がありますから、なかなかやりにくいということも私もわからぬわけじゃないのですが、従来のように、取引所というのが株式の売買に非常に偏重していたというのが、このあたりで少し整備をしていかなければならぬのじゃないかというふうに思うのですが、その点についてはいかがでございますか。
  158. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、まさに証券取引所でございまして、株式取引所ではないわけでございます。しかし以前は、株式の売買高のウエートが圧倒的に高かったわけでございますが、先ほど先生御指摘のように、公社債の売買高が非常にふえております。しかしながら公社債の場合には、どうしても店頭売買の方になじみやすいという性格は持っておりますが、価格形成の円滑化あるいは価格の公示機能、それから売買におきます取引所で行います場合には取引所が売買管理を行うわけでございまして、そういう意味で、国債中心として取引所取引のウエートを増すことによりまして、ひいては他の公社債を、取引所売買ではなくてもその面の価格形成にもいい影響を及ぼすようになっていくのではなかろうか。そういう意味で今後とも、取引所における公社債の売買というものについて整備を図る方向で、取引所とも相談しながら検討を進めてまいりたいと考えております。
  159. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 三番目にCD発行の問題と現先市場への影響を中心にしながら若干お伺いしたいのでありますが、譲渡可能定期預金証書のCDにつきましては、余り当委員会でも実は論議をしていないのであります。というのは、余りそういうのを論議をする時間がなかったからであります。現先市場に対するあるいはその他の短期金融市場に対するいろいろな影響の問題に入る前に一度銀行局長から、大体私もわかっているつもりでありますので、その実施案の骨子について公式に発表願いたいと思うのであります。
  160. 徳田博美

    ○徳田政府委員 CDでございますが、これは譲渡性預金という名前をいまつけておりますけれども、この導入につきましては、昨年金融制度調査会におきまして検討を行いました結果、十二月には具体案が固められまして、十二月二十七日の金融制度調査会の総会におきまして、今後この具体案に基づいて導入の準備を進めていくことが了承されたわけでございまして、これを受けまして現有、CD導入のための事務的な準備を進めているわけでございます。  その骨子でございますが、金融制度調査会で了承されました具体案といたしましては、譲渡方式は指名債権譲渡方式とする、金利は原則として自由とする、期間は一年未満で、当面は六カ月以内とする、最低発行額は当面三ないし五億円とする、それから発行限度につきましては、自己資本の一定割合等の基準により限度を設定する、これが骨子になっております。
  161. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこで、短期金融市場の問題に入る前に少しお伺いしておきたいのでありますけれども、いま御説明があった中で、発行者が金融機関になっているわけでありますけれども、広義の自己資本の二五%まで認めるということのようでありますけれども、これは一挙に二五%ということではないと思うのですね。一体どのくらいの期間をかけて二五%まで最終的に発行を許すということなのでしょうか。
  162. 徳田博美

    ○徳田政府委員 一応自己資本等を基準とするということになっておりますが、その基準を何%にするかということはまだ決めておりません。先生御指摘のように二〇とか二五のような線に落ちつくと思いますが、いずれにいたしましても、金融秩序に対しまして急激な影響を与えないように、発行につきましては、その点先生御指摘のようなことを踏まえましてなだらかにするように配慮してまいりたい、このように考えております。
  163. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 新聞その他で伝えられているのは二五%ということで、何か四半期ごとに数字を出すということのように報道されておるものですから、私も若干心配をいたしますのは、後の問題と関連をいたしまして、急激に二五%までということになると、これはいろいろな影響が出てくるだろうということを非常に心配しているものですから、その辺のところは、私も基本的には金利の弾力化を推し進める、あるいは短期市場を育成をするという観点から言って、CDそのものに反対をするわけではありませんけれども、後から質問しますようにいろいろな余波がこれで出てきますので、その余波をなるべく少なくしなければならぬと思いますので、いまの質問をしたわけであります。  それから、一体このCDというのは、将来は有価証券として非常に流通性を高め、そして譲渡するときには、いま御説明にはありませんでしたけれども、非常に幅広い範囲の金融機関に扱わせるということが伝えられているわけでありますけれども、その際に、最終的には有価証券として証券会社も入れてやるというところまで銀行局としては考えていらっしゃるのか、あるいはあくまで報道されるような金融機関だけに限っていくというやり方なのか、その点についてはいかがですか。
  164. 徳田博美

    ○徳田政府委員 CDの具体案につきましては先ほど申し上げましたように、金融秩序に急激な影響を与えないようにという配慮から、欧米の型に比べましては若干制約された形で発行される予定になっております。したがいまして、現在は預金という形をとっているわけでございまして、譲渡につきましても指名債権譲渡方式をとっているわけでございますが、ただ将来につきましては、CD実施後の実態を踏まえ、あるいは金融市場の整備等の状況を考えまして、流通性その他の面におきましてさらに改善を加えていくことを考えているわけでございまして、金融制度調査会におきましても、将来は法的手当てをして持参人払い式等の形をとることが望ましいというように言われているわけでございます。このような段階になりますと、将来は証券会社が取り扱う可能性も出てくる、このように考えております。
  165. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 当面はその流通を取り扱う機関については、金融機関と短資会社あるいは銀行の関連会社等ぐらいに限っておいて、その市場の育成度合いを見ながらということのようでありますけれども、もう一つお伺いをしておきたいのは、金利の自由化の問題、弾力化の問題です。これは最初発行するときには恐らく、買い手とのネゴシェーションになると思うのでありますけれども、その後の金利については全く自由、こう理解しておいてよろしいですか。
  166. 徳田博美

    ○徳田政府委員 このCDにつきましては、そのときどきの短期金融市場実勢を反映した自由な金一利にするということが考えられておりまして、先般も臨時金利調整法の規定に従いまして日銀政策委員会に対しまして、今回創設される予定のこのCD、つまり譲渡性預金について、金利の最高限度の適用外にするというような発議をしたわけでございます。このCD、譲渡性預金が実際に実施される場合には、先生御指摘のように、金融機関とこのCDを購入する側との自由なネゴによりまして金利が決まるわけでございまして、その後譲渡が行われるようになれば、その間におきまして金融市場について金利の実勢の変動があれば、その変動に即した金利で譲渡が行われる、このようなことになると思います。
  167. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もうちょっと中に入りますけれども、いま現先の三カ月ものが大体利率が五%弱ぐらい、手形レートが四・五%ぐらい、三カ月の定期が二・五%になっているわけですね。そうすると、このCDを発行した場合に流通する率、あるいは最初発行するときに買い取るというのですか、その率というのは、常識的に考えて恐らく三カ月の定期よりは当然高くなければならぬだろうし、手形レートなりあるいは現先の三カ月ものとほぼ肩が並ぶぐらいに原則的になるのではないだろうかというふうに理解をしておいてよろしいですか。
  168. 徳田博美

    ○徳田政府委員 このCDが、実施された場合の金利については、いまからどの程度のものということを推測するのは非常にむずかしいわけでございますが、恐らく先生御指摘のように、現先市場なり手形市場の金利を踏まえた形で金利の裁定が行われるのではないか、このように考えております。
  169. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 それともう一つ、これは金融界に与える影響の問題なんでありますが、片面では、金融制度調査会で今後のあるべき金融制度といいますか、それを討議なさっているわけでありますが、このCDの発行によって、やはり力の強い都銀、とりわけ事業法人に大変関係の深い都銀が一番資金吸収力があるのではないだろうか。しかも口数が三億円から五億円というのが一つの単位ということになりますと、ますます都銀に資金力が集まるのじゃないか。とりわけ、たとえば先ほど申しました広義の意味の資本金の何%ということである程度発行限度額を限るということになりますれば、ますます発行限度額の大きいのは都銀ということになって、そういった意味で、いま確かに都銀なり長銀なり相互、信用金庫、信用組合、いろいろ並び方には問題がありますし、それゆえに金融制度調査会の中でもいろいろ検討なさっているわけでありますけれども、CDの発行を認めることによって力関係と申しますか、資金吸収力が都銀に偏る。逆に言えば、地銀なり相銀なりがまたそういった、これを制度と言えるかどうかわかりませんけれども、事実上の制度的な枠の中にはめられていってしまって、弱者と言うのが正しいかどうかわかりませんけれども、金融界の力関係の中で、都銀が強者で地銀、相銀等が弱者になる、こういうことを促進することになるんではないだろうかという懸念は当然起こってくるわけです。その点については、銀行局長はどういうふうにお考えでございますか。
  170. 徳田博美

    ○徳田政府委員 CDをめぐって金融制度調査会でいろいろ御論議をいただいたわけでございますが、その過程におきましても、先生御指摘のような問題点が取り上げられたわけでございまして、先ほどから申し上げておりますように、金融秩序に急激な影響を与えないようにということの配慮、特に中小金融機関その他の専門機関に対する配慮も十分に検討するということが行われたわけでございます。  その結果といたしまして先ほど申し上げましたように、発行限度につきましては、金融機関の自己資本を基準といたしまして一定の限度を設けたわけでございます。それから、最小の発行単位を三億円ないし五億円とすることにいたしましたのもむしろ、中小金融機関あるいは地方銀行等の要望を入れてこのような線が出てきたわけでございます。それから譲渡性預金は、一般の預金勘定の中には含めて計上しないことにいたしまして、別枠にいたしました。したがいまして、これによって預金集めの過当競争の対象になるおそれもなくなっているわけでございます。このような点でいろいろ配慮をしておりますので、先生御懸念のような点は、この配慮をすることによって十分カバーできるもの、このように考えております。  したがいましてそういう意味で、地銀や中小金融機関から都銀に資金がシフトして、これらの金融機関の円滑な金融活動が損なわれるというような懸念はないものと考えております。それから中小金融機関につきましてはむしろCDは、取り手ではなくて資金の出し手として、いろいろそういう方面で利用されることも考えられるわけでございます。
  171. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 実は、専門の銀行局長でありますが、若干疑問が残らぬわけではないので、日本の金融機関の場合には、やはり預金量というものが大きなウエートを持っているわけでありますから、その意味では、確かに出し手としてのメリットもあるでしょう。あると思いますけれども、やはりそれだって、ある程度預金を吸収する力を持たぬことには出し手にもなり得ないわけで、その意味では、やはり事業法人と非常に関係の深い都銀の方が有利じゃないだろうかというふうに思うわけでありますけれども、その問題はきょうの本質的論議ではないのでこれ以上先へ進めません。  さらに、これは広義の資本金の何%かによって、その率によってどのくらいの市場が当初できるだろうかというのは変わってくるわけでありますけれども、たとえば資本金の二〇%なり二五%なりの満額発行したという状況下において、現先市場が一番影響をこうむると思うのでありますが、一体現先市場からどのくらいの資金がこのCD市場に移るだろうか。常識的に考えられるのは、いまたとえば五十四年の一月末で現先の売買残高を見てみますと、自己現先が二兆七千五百四十七億円、委託現先が一兆四千八百六十六億円という数字が出ておりますから、この委託現先の一兆四千八百六十六億のうちの何割かが、出し手である事業法人がCD市場へ移っていくんではないだろうか、こう考えるのでありますけれども、ざっと一兆くらいですか、こう考えておいてよろしいのですか。
  172. 徳田博美

    ○徳田政府委員 このCDの発行規模でございますが、仮に自己資本の二〇ないし二五%として考えますと、先生御指摘のとおり大体一兆円前後になろうかと考えられます。現在、コール市場、手形市場、現先市場合わせて大体十四兆円程度でございますから、その一割弱程度規模になるわけでございます。  ただ、現先市場との関係から申しますと、先ほど申し上げましたようにCDにつきましては、一定の基準によりまして発行限度を設けることによりまして、短期金融市場に急激な影響を及ぼすことのないように一応配慮しているわけでございます。  また確かに現先市場との関係では、事業法人が現先市場で運用している資金がCDにシフトして現先市場への影響が出るということは、予想されないわけではございませんけれども、ただ今回導入されるCDは、先ほど申し上げましたように指名債権譲渡方式をとっておるということもございますし、それから現先市場の資金は大体期間一カ月前後のものが少なくないわけでございますけれども、CDの場合には恐らく三カ月ないし六カ月ということが考えられますので、一般にCDの期間よりも現先市場の期間の方が短いわけでございますから、そういう面から考えましても、その影響は当面かなり限られたものになるのではないかと思います。いずれにいたしましても、CDの発行によりまして現先市場に急激な影響を与えることのないよう十分指導してまいりたい、このように考えております。
  173. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 そこが一番問題だと思うのでありますけれども、いまの現先市場というのはいわば自然発生的に、一つは証券会社のディーラーファイナンスとして出てきたものもありましょうし、あるいは日本の場合には国債あるいは債券が非常に長いというので、とてもそんなものは長くて持てないから現先市場で転がしてきたというところがあるわけで、その意味では、短期債がないのを現先市場の中で転がし転がしして補完をして、一つの現先市場がかなりこの二、三年に急激にふくれ上がってきたというところがあると思うのですね。そういったことや、あるいは着地取引という形で季節性の資金をなるべくうまくならしてやってきた、調整をしてきた、それで相場をつくってきたというように、それなりに現先市場が持ってきた要素というのは、短期金融市場に占める位置づけ、意義というのはあったんではないかと思うのであります。  それが今度ざっと、話を簡単にして一兆円ほどの主に法人企業からの資金がCDに流れるということになりますと、当然国債の方はますますいろいろな形であふれてくる。ところが現先市場に出てくる資金量というのは、約四兆円くらいの現先市場から一兆円の現金がCD市場へ行くということでありますから、その意味ではますます国債の値崩れを助長させる結果になりはしないか。私が一番最初に、一体どのくらいで一兆円くらいのCD市場をつくるおつもりなのかというのをお伺いしたのはそのためでありまして、その点について、現先市場の監督者というのは恐らく証券局長になるのでありましょうから、CD市場ができることによるそういった影響、恐らく四兆円近い現先市場から出し手としての一兆円ばかりの資金がCD市場に移行するということについて、せっかくある程度ここまで、まさに現先ほど金利の弾力化がなされているところはないと私は思うのです。ただ、若干問題があることは私も知っておりますが、そういった意味では、ここから資金がCD市場に流れることは、証券局長の立場としてはどういうふうに考えていらっしゃるのか。  あわせて理財局長は、いまそういった意味で、現先市場という場を通じて短期の少ないのを長期をごまかしごまかし、つなぎつなぎして、買ったり売ったりして何とか補っているのが現先市場になるわけでありますけれども、その意味では、そこに流れてくる資金がそれだけ少なくなるということは、玉であるところの国債はますますふえてくる、しかし資金の方はそれだけ入ってこないということになれば、ますます国債の方が値崩れを起こす可能性というのは強くなってくるわけですね。その点について理財局長としては、このCD市場というものをどういうふうに理解をしていらっしゃるか、おのおのの立場からお伺いをしたいと思います。
  174. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 現先売買につきましては先生御指摘のように、これは自然発生的に生まれたものでございますが、これが自然発生的に生まれたという背景には、日本にはいわゆる欧米のような短期債市場がないというふうに言われておりますが、それがあったかと思うわけでございます。したがいまして、欧米並みのCDというものが生まれました場合には、本来これも欧米におきましても、短期金融市場における金融商品でございますから、当然それはそれなりの存在意義があろうかと思いますし、かつまた、自然発生的に生まれました現先売買の存在意義というものもこれによって全く否定されるということではないと思います。  問題は先生御指摘は、資金の移動があるではないかということかと思いますけれども、先ほど銀行局長の答弁もありましたように、現先売買の場合には、証券会社の自己現先と委託現先がございますが、自己現先の場合には、七割以上が一カ月以内と非常に短期なものでございます。それから、委託現先もほぼ三カ月以内、ほとんど大部分が三カ月以内で、一カ月以内もかなり多いというふうな現状になっておりますので、そういう期限の差の問題があろうかと思いますし、かつまた、これは厳密な計算をすることはなかなかむずかしいことかと思いますけれども、当然これは預金からのシフトということもあるわけでございまして、私どもとしましては、金融商品としてのCDと現先売買というのが両々相まって日本の短期債市場、短期金融市場というものがさらに整備されていく、これは商品の多い方が整備されていく背景になるわけでございますから、そういうことが望ましいのではないかと考えております。
  175. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 国債管理の立場から申しますと、金融市場というものが長期市場、短期市場がそれぞれお互いに有機的な関連を持ちつつも、独立して発達していくことが望ましいと考えております。と申しますのは、国債というものが長期を主体とするものでございますので、これが安定的に推移するというためには、一時的な資金需給等金融の変動というものが短期金融市場で吸収されることが望ましい、そういう観点に立ちますと、このCDの導入というものはそういう意味で、新たな短期金融市場の発展、育成に役立つことということで、大局的な限りにおいては賛成でございます。  それともう一つ、現先市場から御指摘のように、たとえば一兆円資金がCD市場に入った場合ということでございますが、これはやはり国債を引き受ける大宗というものが金融機関でございますので、金融機関がそれだけの資金吸収力を持ってくれるということは、シ団引受方式ということを前提としています限りにおいては、それもむしろプラスに働くのではないか。  そこで問題になりますのは、証券会社がいわゆるディーラーファイナンスといたしまして現先市場を使っているという点に着目いたしますと、その限りにおいては、若干問題があろうと思いますけれども、私はこの問題は、先ほども御指摘になりましたように、年間二百兆近くの公社債が売買される市場というものを考えますと、今後そういう公社債市場のディーラー機能というものをどういうふうに探し求めていくか、あるいはディーラーファイナンスというものをどういう方法でやるかという方向で検討すべき問題だと思っております。
  176. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 もう一点お伺いしていきたいのは、いま理財局長がまさに言われた問題で、証券会社のディーラーファイナンスをどういうふうにしていくか、これは証券局の担当だと思うのでありますが、この点についてはCDの発行と関係をして証券局長としては、たとえば証券金融を枠をもう少しふやすとかなんとかそういうような政策を考えていらっしゃいますか。
  177. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 現在、証券会社はコールを取ることができません。したがいまして、在庫のファイナンスとしましては自己現先がかなり大きな役割りを果たしているというのは、御指摘のとおりでございますが、現在、日本証券金融会社からの融資というのもかなり重要なウエートを占めつつございます。  なお、日証金におきましても、さらにそのパイプを太くしていくということを日銀当局とも相談しながら検討しているところでございますし、かつまた、その登録債が担保になるシステム、これは今回税制改正によりまして日証金も指定金融機関の中に入るということになりますと、そういう点の円滑化も図れるということになるわけでございまして、そういうサイドでさらに日証金、日銀とも相談しながら、そういうパイプを太くしていくという方向で検討を進めてまいりたいと思っております。
  178. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 次に、大量国債発行になってからすでに四年たつわけでありますけれども、これからの国債発行のあり方というのを、すでにこれだけ残高がふえた時点でもう一度振り返ってみなければいかぬのじゃないだろうか。ちょうど日銀も「調査月報」の中で、「欧米主要国の財政赤字と資金調達について」という大変いいレポートを出しているわけでありますので、それを参考にしながら、今後の国債発行のあり方というのはもう少しいろいろな点で考えてみなければいかぬのじゃないだろうか。何かいままではとにかく精いっぱい走ってきただけで、まだまだ残念ながらこの五年間かなり大量の国債発行されることを前提とするならば、もう少し他国の状況を頭に入れながらいろいろと検討してみる必要があるんじゃないだろうか、こういうふうに思いまして考えてみたわけでありますけれども、この日銀のレポートを読みましても、アメリカ、イギリス、西ドイツ等、どうも日本ほど消化にそんなに苦しんでいないという感じがしてならないわけであります。  そこで、それは金利をどういうふうに決めるかというような問題もいろいろありましょうけれども、ここでやっていますとまた水かけ論争になりますのでそれは別といたしましても、何と言っても一番重要なことは、市場実勢に吸収できるだけの利回りをつけていくということなんでしょうし、いまの議論自体がちょうど、まず発行が幾らで、これをどういうふうに吸収させようかという議論になってしまって、本来ならば、いまの市場の中でどれくらい国債が吸収できるであろうから予算もこれぐらいしか組めないんではないかという議論が本当の順序なわけですね。それが逆転をしているということは私も百も承知で、なおかつ、いろいろな問題点を考えてみるわけでありますけれども、一つは、確かに日本の場合には、公社債市場が未整備であったために、なるべく公社債市場を育成をしようという方針できました。それ自体は、日本の金融のあり方の中でそれなりに意義を持ったと思うのでありますけれども、それにいたしましても日本の場合には、市場国債が少し多過ぎないだろうか。確かにイギリスなんかは、貯蓄国債を除けば市場性でありますから、その意味では、イギリスと形は非常に似ているわけでありますけれども、たとえばアメリカなんかを比べてみますと、市場性が六三・五、非市場性が三六・五、西ドイツが市場性が四一・五、非市場性が五八・五ということになっているわけですね。日本の場合にはとりわけ、この四年間に非常に急激にふくれ上がっただけに、これを全部消化をしろといっても消化し切らないというのが現状ではないかと思うのです。  そういう意味で、これからは少し非市場性という国債も考え方の基本としては考えてみなければいけないんではないだろうか。これから全部市場国債だといっても、これは全く消化不良で値崩れを起こす非常に大きな原因になっていくと思うのであります。この点について大臣にお考えがあれば結構でございますし、なければ、担当の理財局長はどういうふうに考えていらっしゃるか、お考えをお伺いしたいと思います。
  179. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 佐藤さんおっしゃるとおり、もう明後年度財政運営でそう大量の国債発行できるとは私も考えておりません。これからよほど考えて、切り詰めて財政運営をやっていかなければいかぬと思います。  それにいたしましても、今後仮にある程度国債発行しなければいかぬというような場合に、どういう方策をとっていくか。各国それぞれお国ぶりを発揮していろいろなやり方をとっておることは、佐藤さん御指摘のとおりでございます。たとえばドイツでも債務証書で借りるし、アメリカでも同じようなことをやっておるようでありますが、それが御用金みたいなことになっては困りますけれども、やはり何か工夫が必要だということで鋭意模索をいたしておる最中でございます。まだ結論を得るに至っておりません。
  180. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 御指摘のように、アメリカ、ドイツでは相当非市場性の国債発行されております わが国の公社債市場が昨今の市況に見られるように、非常に大量の国債で長期資金の需給バランスが崩れておる、これのインパクトを緩和する意味におきましては、非市場性の国債というものは今後の国債消化策としてわれわれも十分検討していくべき問題だと考えております。  非市場性の国債を考えます場合に考えられるのは、諸外国でもございますが、一つは債務証書、私募債形式の発行、もう一つは貯蓄国債でございますが、貯蓄国債につきましては従来、大蔵委員会でも御説明しましたようになかなか問題があって、私どもももう検討がある意味では行き詰まったという感じでございますが、債務証書借り入れあるいは私募債形式による発行方式というものは、債務者たる発行者にとっても債権者たる貸し出し人にとってもそれぞれ大きなメリットがあり、かつ、公社債市場にインパクトを与えないで円滑な消化が期し得る有効な手段であらうと思いますので、検討を進めてまいりたいと存じます。しかしその場合に、わが国のいまの金融秩序、金融構造、そういうものがこれにどういうふうに作用してくるか、検討すべき課題もたくさんございますが、私どももいままでも検討しておりますが、今後も引き続いて検討してまいりたいと思います。
  181. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 前半の御答弁は是といたしまして、後半の債務証書の問題でありますけれども、これが昨年、どこから出たのかわかりませんが、少しうわさをされたころに、新聞で見る限りでありますが、本人に確かめたわけではないですが、直ちに全銀協が債務証書方式は反対であるという声を出したようであります。これは従来の国債発行でもそうでありますけれども、まさに大臣もあらかじめ、御用金調達方式ということはいけませんがということを答弁の中に入れられているわけであります。どうも日本の金融のあり方自体が、戦後の金利の弾力化というのを余り考慮に入れてこなかったという、その辺の反省がいまいろいろな形でなされているわけでありますが、銀行局長、どうなんですか、いまだってある意味では事実上、シ団を通じて国債を、まあ銀行側に言わせれば引き受けさせられているわけでありますから、何もそれが国債であるかあるいは債務証書という形になるかは、形が違うだけであると言えばそれまででありますけれども、ただ問題は、一体これは金利をどうしていくかという問題だと思うのです。  銀行局長の立場から、この西ドイツのやっている債務証書方式というのはどういうふうに考えていらっしゃるのか。金利さえある程度差損を出さぬような形になればそれでも構いませんよということなのか、その辺は銀行局長としてはいかがお考えでございますか。とりわけ私が思うのは、債務証書方式というのは西ドイツではすでに四二%ぐらいまで、大変率が高いのですね。これでうまくいっているようでありますので、日本でも何らかの形で考えていかなければいけないんじゃないか。ただし現実にはいまの場合には、クラウディングアウトの問題等あり、なかなかむずかしいと思いますが、銀行局長の立場として、この西ドイツのやっている債務証書方式というのはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  182. 徳田博美

    ○徳田政府委員 債務証書方式につきましては、国債管理政策の一環としてそのようなものが打ち出されるのであれば、金融機関の社会的公共性という見地から、これは正面から受けとめて検討すべきものかと思います。  ただ、まだ問題が具体化しておりませんので、銀行局としての立場からの検討について申し上げるのは差し控えさせていただきますが、ただ金利とかあるいは流通性とか、そのような点などいろいろの角度から検討してみる必要があるんじゃないか、このように考えております。
  183. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 一番問題になるのは、やはり金利でしょうね。それで、私も皆さん方の御意見をお伺いしたいのでありますが、いずれにしろ、財政収支試算だって五年しか見れないのに、十年先まで金利を決めろということ自体が無理ではないかと私は思うのです。ですからいまなんか特に、底打ち感が強いだけに十年国債はみんながいやな顔をするという状況だと思うのです。  そこで一つ参考になるのは、変動金利制というものを考えてみたらどうか。たとえばイギリスではすでに三回、七七年の五月、七月、それから七九年の一月と発行して、しかもそれは長いものじゃなくて四年半、五年、四年三カ月という、まあ日本流に言えば中期ですね、中期のものでも変動利付国債というものを発行している。四億ポンドずつでありますが、発行している。いろいろ背景が違う点もありますから、ただ単純に比べるというわけにいかぬという点もわからぬわけではありませんが、いずれにしろ、もう少し非市場性のものを考えていく。しかも、それが十年債だということになりますと、いまから金利を固定するというのは、これは一体だれが自信を持って金利をつけられるのだということになると思うのです。じゃ一体これは何を節目に金利を変えるか、公定歩合かあるいはその他の、項目にするかということになりますと、またまた議論があると思いますけれども、いずれにしろ、十年も固定をした金利、大体いま公定歩合が三・五、それから四十八年が八%ぐらいのときもあったわけですね。これだけ幅があるものを、これから八%まで上がるときは、あってはならぬと思いますけれども、それをいまの時点で十年間これですよと言っても、やはりこれは非市場性にするならば無理であろうと思うのであります。  これはどなたにお答えをいただくのが一番いいのかわかりませんけれども、その点でやはり変動金利というのも少し考えてみるに値するのではないだろうか。それと債務証書方式なるものとをうまく組み合わせて、日本独自の国による借り入れというのが行われるならば、それなりに日本の大蔵省というのもなかなか知恵者がおるということになるのではないだろうかと思うのでありますが、大臣、いかがですか。
  184. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 変動金利制につきましては、金融当局の方からも御意見があろうと思います。住宅ローンその他いろいろな問題がございますので、変動金利制の採用ということは、ユーロダラー債あるいはイギリス等で変動金利の債券が発行されることは承知いたしておりますが、財政立場から申しますと、やはり長期で安定的な財政資金を取得するという意味からは、将来金利負担がどうなるかわからないという、予測できない財政負担を負うような国の債務というのはまだいかがかという抵抗感を感ぜざるを得ないわけでございます。しかしながら、今後の金融情勢の変動あるいはそれに対応してさらに大量国債発行ということになれば、検討課題であろうと思いますが、現状におきましては私自身は否定的な立場でございます。
  185. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 理財局長もことしの七月になれば恐らくかわられるでしょうから、そうかたくなにならずに、どうも大蔵省というのは対応が遅いですから、いろいろ真剣に検討してもらいたいと思うのであります。  それと、若干お伺いしておきたいのは、日本には大変残存期間の長いものが非常に多いということはもう申すまでもないことでありますが、去年私だけが言ったから別にそうなったわけじゃないでしょうけれども、ことしの十五兆幾らの中で公募入札で二兆七千億、四年利付が五千億、三年利付が一兆七千億、二年利付が五千億と短期のものがふえたわけですね。それは是とするわけでありますけれども、これは国会の審議ともいろいろ絡んでくるでありましょうけれども、たとえばいま市況がこういうふうに六・一国債で非常に悪いときに、先に短期のものを出して少し長期のものは待つとか、何かそういう発行上の運営というのができるのではないだろうか。ただし私が冒頭にあれしたように、意外にこれが悪い結果に出ますと、またまた逆に六・一国債の値崩れを起こすということもないわけではないでしょうけれども、いずれにしろ、今度二兆七千億も二年、三年、四年ものが出るわけでありますから、こちらを早目に発行するということもいまの市況と勘案をしてやり得る措置ではないだろうかというふうに思うのでありますが、その点についてはいかがですか。
  186. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 市況がこういうときに短いものを早目にという御意見でございますが、何せ公募入札というのは昨年一兆円やっと始めたばかりでございまして、入札の問題と申しますのは、先ほども佐藤委員が御指摘になりましたように、たとえば買い入れる場合であってもロットの大小によってずいぶん影響が違います。二兆七千億を早期にということになりまして、大量のロットでこれを入札いたしますと予想外の結果が出る危険性もございます。そういう意味におきまして私どもは、入札につきましては相当慎重な態度でありたい。やはり当初発行計画で示しましたような、長期債というものを計画的に発行することとして、その補完として中期国債の入札をまぜていくという基本姿勢は崩したくないと思っておりますが、金融情勢いかんによりまして将来、年度後半、たとえばそういう時期におきまして十年国債というものの消化に問題があるということになりますれば、その際においてどういう対応をするか検討させていただきたい。一応私どもは昨年の例にならって長期債とあわせて中期債、今回の二兆七千という問題でございますが、長期債の一カ月の発行額につきましても、そのときどきの金融情勢を見ながら中期債とあわせて発行する、一応そういう姿勢で出発させていただきたいと思っております。
  187. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 あと二点だけお伺いをして終わりますが、一つは、各委員からもお話がございましたけれども、いずれにしろ、このように国民総生産の伸び率よりも予算規模の伸び率をこれほど大きくしていくということは、私は無理だと思うのであります。これは吉野生計局次長が他の委員への御説明の中で、そんなことを言ったって日本は社会資本が非常に立ちおくれております、ですからそちらをなるべくやってというお話がありました。われわれも社会資本がが立ちおくれていることは否定をしませんし、それに金を使う、とりわけ国民生活に非常に関係の深い下水道なり何なりを重点的にやっていくということは否定をしないわけであります。しかし、それも全体が大きくならないのにそこだけやろうといっても、これは無理だと思うのです。あくまでやはりそういったものの充実というのは、GNPの伸び率というのは一つの経済活動の果実であって、その果実の中で一体それをどこに向けていこうかと言えば、いま社会資本がおくれているわけでありますから、そこに向けていこうというのはいいと思いますけれども、おくれているからといって、それを国民総生産の伸び率よりはるかに大きなものをそこに向けていくということ自体私は無理だと思うのです。  大島委員からも話がありましたようにその意味では、何らかの形で財政の節度、財政の限度というものをやはり設ける必要があるのではないだろうか。これは何の計数をとったらいいかというのは非常にむずかしいことだと思いますけれども、確かにたとえばGNP、国民総生産に占める財政規模というのは、一九七六年が一四・二、七七年が一五・二、七八年が補正後でありますが一六・二、七九年が一六・六と若干上がってきておりますが、一四、五、六%。この数字自体は、たとえばイギリスの七五年が三四・七、七六年が三一・七、七七年が三一・二という数字に比べれば、財政需要はGNPに対してはまだ少ない。少ないというか、イギリスに比べればの話ですよ。西ドイツが大体一四%台ですからね。それに比べれば少ないけれども、しかし長期の債務残高とこの財政規模というものを比べますと、これは長期債務残高が非常に大きい。この数字自体は他の諸国にもどこにもない。西ドイツはその割合が七七年が八二・四ぐらいでありますから、日本は七九年が一八一・六ということでありますから、そういった一意味では、過去の発行がいかに大変であったかということがわかるわけでありますけれども、いずれにしろ私は、何の指標を使うのが一番いいかわかりませんけれども、先ほど大島委員から話があったように、何らかの形ですでに歯どめの数字をどこかでつくっていかなければいかぬだろう。それは少なくも経済成長の伸び率よりもはるかに大きく財政規模をふくらますということは無理ではないかと思うのであります。やはり国民総生産の伸び率と財政規模の伸び率というのは少なくもパラレルであるべきではないだろうか、財政当局もそういうふうにすべきではないだろうか。  とりわけ大臣の見解もお伺いしていきたいのでありますが、私が先ほど挙げました日本銀行調査局の「調査月報」では、アメリカにしろ西ドイツにしろ、大体余りにも財政に依存をするということはもう無理ではないか。この表現をかりれば、「財政政策による景気支持への過度の期待が、企業の自己責任意識の弛緩や企業体質の脆弱化を招来し、また社会福祉の充実、例えば失業保険給付の拡大が、むしろ勤労意欲を失わせ労働の質の低下を招くといった点が、最近各国で論議されるようになってきている。」というレポートが出ているわけですね。後半の部分については、日本は大変社会保障がいろいろな面でおくれているという点がありますから、まだいろいろ若干あるにしろ、いずれにしろ、財政規模をGNPの伸び率よりもはるかに大きくするというのはもうそろそろ限度ではないか、限度にしなければいかぬのじゃないかというふうに私は思うのですが、その点はどういうふうに考えていらっしゃるか、まず大臣のお考えをお伺いして、若干補足的にその点について主計局次長のお考えをお伺いしたいと思うのです。  それから最後にもう一点は、大臣にお伺いをしますが、けさの日経新聞に同友会がインフレの警告の話をしておりまして、大変な危機感を持っているわけで、ある程度は日銀に似通ったところがあるわけでありますけれども、その中で、たとえば金融については、公定歩合の引き上げは別といたしましても、窓口規制をしろとか、あるいはマネーサプライも目標値を決めて調整しろとか、一番重要なことは、予算の執行も、いままでは前倒し経営を非常にやってきたわけですね、ところが、いまやこれだけのインフレの心配を考えてみると、前倒しよりもむしろ後へそらした方がいいんではないかとまで言っているんですね。こういった発言について、大臣としてはどういうふうに考えられ、そして予算の執行ということになりますと、これは大臣の非常に重要な責任でありますので、その点については、いや、まだそこまですることないんではないだろうか、五十三年どおりのやり方でいいんではないだろうかというふうに考えていらっしゃるのか、若干そういう懸念を持っていらっしゃるのか、その点について伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  188. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 財政の節度についての御指摘、私もそのとおりに思うのです。ここ数カ年は特殊異例の経済情勢でございましたから、財政が相当大きな負担をしょい込んで景気回復のための努力をしてきたのでございますけれども、こんな情勢はもう続けるわけにまいりません。国はもちろんでございますが、企業も家計も地方団体もそれぞれお互いに一汗かいてもらう、そういう努力をしていただかなければいかぬ時期に来ているんではないかと思うのです。  その基準をどうするか、これはなかなかむずかしい問題でございますが、あなたのおっしゃるように、国民の経済の成長率の範囲内にとどめるということも一つの考え方かと思います。逆に言えば私は、国債の売れ行きと税の入りぐあいが一つの大きなブレーキになるんじゃなかろうかと思うのです。  それから第二点の問題でございますが、同友会の提言は私も読んで、わが意を得たりという感じがいたしました。これは大変厳しい見方をしていただいておりますけれども、私ども財政の実際に当たって、同友会の方々、勇気を持ってああいうことを言っていただいたことを高く評価いたしております。  金融引き締め等につきましては、日銀総裁から本朝お話があったようでございますから、あえて触れません。金融政策をこの際いま大きく転換して公定歩合を引き上げる時期ではまだないと私は考えておりますけれども、それにしても、窓口規制その他相当締めていかなければいかぬ時期だろうと考えます。  それで私の方の問題として、財政執行に当たっての公共事業の執行方針をどうするかという点につきましては、今年度みたいな前倒しをやる時期ではない、年を通じてなだらかに執行をするのがやり方としては一番いいんじゃなかろうか。ただ、これは経済状況を見ながら執行するわけでございますから、新年度に入ってどういう景気状況になるか、そこら辺を十分考えながら適切なる対応策を講じてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  189. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 予算の伸び率と成長率との関係でございますが、ほかの委員の方に申し上げたときにあるいは言葉が足りなかったのかとも存じますけれども、私自身は予算の伸び率が経済の成長率を上回ってもいいとかあるいは上回った方がいいとか、実はそういう意味で申し上げたつもりではないわけでございます。ただ、経済成長率と予算の伸び率との関係で、佐藤先生は成長率との関係で何らか一定のたが、枠みたいなものを考えるべきではないかという御指摘でございますが、申し上げるまでもなく、予算あるいは財政といいますのは、国民経済全体の中で、そのときどきの経済の中で財政が果たすべき役割りあるいはまたその財政を支える財源、端的に申し上げますれば租税負担ということになろうかと思いますが、租税負担につきましての考え方、それらの問題の中で総合的に考えられるべき問題かと思います、長期的に考えまして。それからまた短期的に考えます場合も、これまた申し上げるまでもなく、財政は資源配分機能だけではなくて、やはり景気調整機能というものも一つの重要な機能として持っているわけでございますので、そういう意味におきまして、一律的に成長率との関係で機械的にたがをはめるということは果たしていかがなものであろうか、こういう考え方でございます。  それからもう一つ補足させていただきたいと存じますが、確かに先生御指摘のように、GNPに対する比率で申しますと、わが国の場合は公債発行額、つまり公債依存度も、それからまた長期債務の残高のGNPに対します比率におきましても、先進国に比べましてかなり高い。長期債務残高につきましては、いままで低かったわけでございますが、最近に至りまして先進国に劣らぬ高さになってきたということは確かに事実でございます。しかし同時に、これも先生御指摘でございましたが、国民経済に占める財政のウエートはやはりまだ小さいということがございます。その二つをつなぎ合わせてみますと、そこになぜそうなっているかと言いますと、それは、財政のスケールは小さいが借金は大きいということを意味しているのではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。
  190. 佐藤観樹

    ○佐藤(観)委員 私も財政の役割りを、否定するわけではないのでありますけれども、余りにも財政に依存し過ぎるそのことについては、何らかの枠をはめつつ考えていかなければならぬではないだろうかというふうに言ったつもりでありますが、その点についてはいろいろと議論があるところでありますので、また後日に改めまして、きょうの質問を終わらせていただきます。
  191. 加藤六月

  192. 貝沼次郎

    貝沼委員 大体問題点はいままでの質疑の中でほとんど出たように私は思っております。しかし党の立場もありますので、だいぶダブると思いますが、何点かお尋ねをしてまいりたいと思います。  国債大量発行はいまさら言うまでもないわけでありますが、これはたくさんの問題を含んでおるわけでありまして、一つは、国債費の増大による財政硬直化を来す、それから財政支出の膨張、放漫化を引き起こすという問題、それから赤字国債は世代間における負担の不公平を招来するのではないか、それからインフレーションになる危惧があるのではないか、これは先ほどから何回も言われております。われわれは赤字国債発行することは、オール・オア・ナッシングで頭からだめだときめつけておるわけではありません。しかしながらこのような問題を考えると、その発行規模には決して安易であってはならない、こういうふうに思うわけであります。そこにはいろんな面からの最大努力がなされた上で、この発行額というものは決められていかなければならないのではないか。当然のこととして財政計画の提出、これはいままで求めてきているわけでありますが、いまだに出ていないようであります。これは私ども強く求めておるわけでありますけれども、この点についてどうしてこれが出せないのか、また、いままで述べたことに対して大臣はどのようにお考えなのか、この点について伺っておきたいと思います。
  193. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 財政計画の問題でございますが、御指摘のように、非常に大量の公債に依存するいわば危機的な財政現状を考えますと、やはり中期的あるいは長期的な展望に立って年々の財政運営をやっていく必要性がますます高まっているわけでございます。そういう観点からいたしますと、具体的な内容は別といたしまして、中期的あるいは長期的な展望を示す一つの手がかりといたしまして、財政計画と呼ばれるべきものを持つ必要性はつとに指摘をされておられましたし、私ども認識をしているわけでございます。そこで昨年の九月に御案内のように、財政制度審議会の中にこの財政計画の問題を中心に検討していただきますための財政計画等特別部会というものを特におつくりいただきまして、それ以来、その中にさらにまた専門的な小委員会と申しますか研究グループもつくっていただきまして、精力的に検討していただいているわけでございます。  そこで、現在まで財政制度審議会のその部会で御審議をいただきました結果、おおむね財政計画にまつわります大きな論点と申しますか問題点につきましてはほぼ出そろいまして、また、それらのそれぞれの問題点につきまして委員の皆様方の御意見も一通りお示しをいただいた、こんな状況になっているわけでございます。そこでこれからも私ども財政制度審議会の事務的な補佐をさしていただきます事務当局といたしましても、引き続き一生懸命勉強してまいるわけでございますが、財政制度審議会にもさらに一生懸命、精力的に御審議をいただきまして、できるだけ早く御結論をいただきたいというふうに願っているわけでございます。  ただ、ただいま先出御指摘の、しからばどうしてそんなに時間がかかるのか、どうしてもっと早くできないのかという点がお尋ねのポイントかと存じますが、これは先ほど申しました財政制度審議会での御審議の過程でも出た問題点でございますが、何分にもわが国におきましては初めての試みでございます。そこで、たとえば財政計画と一口に言いましても、一体その性格についてどのようなものとして考えるか、あるいは果たして法律的な根拠を伴うものとして考えるべきかどうか、あるいはまた、いろいろな経済計画、端的に申しますれば経済企画庁の方でおつくりになりますような長期的な経済計画との関係を一体どう調整していったらいいかというような問題のほかに、具体的な推計上の問題、つまり財政計画ということになりますと、現在国会の方にお示ししておりますようないわば非常にマクロ的、ある意味で機械的な財政収支試算というような形ではなくて、年度別に、それからまた事項別にある程度の積み上げ計算をしたものということに恐らくなるのではないかと思うわけでございますが、それをたとえば五年なり三年にわたって一体いかなる方法で積み上げをし、推計をしていくのかというような技術的な問題もございます。問題は非常に広うございまして、財政制度審議会にも先ほど申しましたように、精力的に御審議をいただいておるわけでございますが、いまだになかなか御結論はいただくに至っていない、こういう状況でございます。いずれにいたしましても、私ども必要性は十分に認識しているわけでございますから、できるだけ早く審議会の方でも御結論をいただき、それを踏まえて私どもも結論を出したいと思っておるわけでございます。  なお、御参考まででございますが、すでに米国あるいはドイツ、英国におきましては、それぞれ態様は少しずつ違いますけれども財政計画というものを持っているわけでございますが、それらの国々におきましても、財政計画をつくろうということを言い出しましてから財政計画ということで公式に公表するという段階になるまでは、大体十年ぐらいの年月を要していたという事実がございます。何も私ども、だからこれから十年かかるということを申し上げるつもりはないわけでございますが、どこの国におきましてもその程度の年月がかかるぐらいのかなり大がかりな作業であったということを、参考までに申し上げさしていただきたいと存じます。
  194. 貝沼次郎

    貝沼委員 アメリカは十年かかっても、日本の官僚は優秀でありますから、ひとつ早くできるようにお願いしておきます。  それから、予算修正の要求のときに私どもはその財源として、政府の案のほかに不公平税制の是正という面で、たとえば利子配当所得の課税強化――五十四年度ベース、初年度ベースですね、これらをずっと計算をして、給与所得控除の頭打ち復活とかあるいは有価証券取引税の強化であるとか、退職給与引当金の縮小、価格変動準備金の縮小、金融保険業の貸倒引当金の縮小等、合計五千四百五十八億円というようなものを提案したわけであります。しかし、このことは受け入れられなかったわけでありますけれども政府案ではたとえば揮発油税の引き上げ、初年度ベースで二千三上百二十億円とか、所得税の増収分が五千九百八十億円、それからたばこ定価の値上げ二千二百億円というふうなものを合計してみますと、大衆増税と言われるものになると思いますが、これが一兆五百億円で、不公平税制の是正額、計算してざっと二千二十億円、これを大きく上回っておるわけです。これではまだまだ努力が足りないのじゃなかったか。  そこで私どもは福祉社会トータルプランという計画をつくりまして、そこで不公平税制の是正及び税制改正として、利子配当所得の総合課税、それから給与所得控除の頭打ち復活、法人関係租税特別措置の改廃、有価証券取引税の強化、医師の課税の特例の廃止、交際費課税の強化、退職給与引当金の縮小、法人税の税率引き上げ、これは二〇%見ておりますが、それから株式譲渡益の総合課税、配当控除制度の廃止、受取配当の益金不算入制度の廃止、それから支払配当軽課税率の廃止など、税制改正によって名目成長一一%を前提として五十七年度までに約二兆六千億円、五十四年度ベースでは約二兆円の税収を計算しておるわけであります。ですから、こういうさまざまな工夫をすれば、この大量国債もそれほど出さなくてもいいかもしれませんし、あるいは国民の納得を得る上にも非常に大切であったのではないか、こういうふうに私は考えるわけでありまして、そういう点から考えると、政府はまだまだ工夫不足ではなかったか、もっと努力してよかったのではないか、こういうふうに思うわけでありますので、この点について大臣のお考えを伺っておきたいと思います。  それからもう一点これとあわせまして、こういう特例公債発行に対して適正な発行限度というものがあるのかないのかということですね。いやそんなことは、考えること自体がもう意味ないのだということなのか、それとも、あることはあるが考え方においてこうだとかいう点があれば、説明願いたいと思います。
  195. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 担当の局長からそれぞれ詳しく御説明を申し上げさせますけれども、いま御指摘のありました各種の税制改正問題につきましては、私どもとしても、これはことしだけではございませんで、従来からいろいろな角度から検討を続けてまいっておりまするけれども、来年度の税制改正として取り上げるのはまだ時期尚早ということで見送った次第でございます。その詳細あるいは理由につきましては、主税局長から答弁をさせます。  それからもう一つ、国債発行限度でございますが、これも、三割だからいかぬとか二割だからいかぬというあれはないかもしれませんけれども、私はおのずから発行限度というものが一つのブレーキになろうと思いますし、それから売れ行きが鈍るとか消化がなかなか困難になる、金利を上げなければいかぬということになると、それは一つの大きなブレーキと考えておりますから、何割がいいということではなくて、それは経済情勢いかんということと財政規模との関連においておのずからそこに限度がある、それ以上の公債発行は慎まなければいかぬというふうに考えておる次第でございます。これもまた数字的には理財局長から御答弁させます。
  196. 高橋元

    高橋(元)政府委員 現行税制の範囲でいろいろ増収を図る余地がまだあるではないかという御指摘かと思います。これはもちろん現行税制の範囲で極力増収を図っていくために、たとえば政府の税制調査会におきましても相当時間をかけて検討いたしまして、中期税制の答申の中にもいろいろな項目が出ておるわけでございます。  たとえばいまお話のございました利子配当所得でございますが、これにつきましては、現在の税制が終わります五十五年いっぱいまでは現行の税制でまいるといたしまして、それ以後は利子配当所得の総合課税の実現のために、その実施のそれを担保する執行上の工夫というものをいま勉強いたしております。これは現在の税制が終わります五十六年以降、つまり五十五年度の税制改正においてこの点のお答えが出てまいると思いますし、そういう線で是正を図ってまいりたいというふうに思います。  それから、企業関係の租税特別措置でございますけれども、これは現在約二千億足らずでございます。これにつきましても、ことし三十項目について整理改廃をいたしました。それで今後とも企業関係の租税特別措置につきまして、政策税制ということではございますけれども、従来よりは一層負担の公平ということに重きを置いてこれの見直しを引き続き行ってまいりたいというふうに思います。  それから、法人税率の問題、これも中期答申の中にもありましたし、この委員会でもたびたび大臣から、また私からお答え申し上げておりますように、各国の法人税率に比べまして、実効税率においてまだ若干日本の法人税率が低いということは事実でございます。これも経済政策ないし社会情勢全般を見渡しまして、できるだけ適当な機会をとらえて法人税率についても見直しを行ってまいる必要があるというふうに存じております。  その余のお示しのございました、医師税制と申しますか社会保険診療報酬課税の特例の是正、それから交際費、株式の譲渡益の総合課税、価格変動準備金、金融保険業の貸倒引当金、これらにつきましては、すでに昨年または本年の税制改正でいろいろな制度改正を行っております。これはむしろ実施と申しますか執行の問題との関連もございますので、にわかに全体を強化するということはなかなかむずかしい問題もございますけれども、段階的にそれぞれ課税の強化を行ってまいりたいというふうに考えております。引当金につきましても、かなりいろいろな問題はあるわけでございますが、引当金繰入率の実情に合わせた見直しということに常時注意をしてまいりたいというふうに思います。  ただ、なかなかむずかしいと思いますのは、受取配当の益金不算入とかそれから配当控除の問題、こういう法人、個人間のいわゆる二重課税の調整の問題というものにつきましては、企業課税全般に与える影響、また国際的な資本移動に与える影響等も考えまして、なお私ども現在、これからも税制調査会において企業課税のあり方について十分な御検討をいただいていくということが必要であるというふうに考えております。  そのほかいろいろお話がございました項目につきまして、今後とも既存税制の範囲内で増収を図ってまいる、それとあわせて税制の負担の公平ということに配意してまいる、これは当然のことでございますから、なお一層の努力を重ねたいというふうに考えます。
  197. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 お尋ねが、特例公債についての適正なる発行限度は何かということであったかと存じますが、端的に特例公債について申し上げますならば、これはゼロであるべきものというふうに私どもは考えております。まず法律的に申しましても、財政法が一般的に認めておりますのはいわゆる建設公債でございまして、特例公債につきましては、現に御審議をいただいておりますように、あくまで臨時特例的なものとして年々特別の立法措置をお願いをしてお許しをいただいているものでございます。そういう意味におきましても、特例公債につきましては本来はゼロであるべきものであるというふうに考えております。ただ御承知のように、いわゆる石油ショック以来大量の特例公債に依存せざるを得ない状況に現になっているわけでありますが、先ほど申しましたように、本来特例公債は、とりわけ経済的にも不健全なものでございますので、これは一刻も早くゼロにすべきもの、特例債から脱却をすべきであるというふうに考えております。  そこで、これは企画庁の方でおつくりになりました新経済社会七カ年計画の基本構想におきましても、この計画期間中もできるだけ速やかな時期に特例公債から脱却すべきであるということを一つの経済運営の方針としてお示しにもなってございます。そこですでに御提出申し上げております財政収支試算におきましても、五十九年度には特例公債をゼロにするというある意味での一つの目標を立てまして財政収支試算をつくっているわけでございますが、そういう先ほど来の基本的な考え方に立ちまして、私どもはこの財政収支試算を手がかりにいたしまして、歳入面それから歳出面におきまして国民の皆様の御理解をいただきながら、五十九年度には何とかして特例債から脱却をしたいというふうに考えているわけでございます。
  198. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、話は変わりますが、十年もの長期国債の表面金利が三月発行分から年〇・四%引き上げられた、この引き上げによって民間の五年もの利付金融債を上回る逆転現象が起こった、このことについて三点ばかり伺っておきたいと思います。  一点は、この引き上げと同時に政府保証債、地方債、事業債も〇・四%引き上げられるため、国債との力関係は変わらないが、問題は、最近の債券市場では比較的人気が高く、金利が据え置きとなっている金融債のシェアに食い込むかどうかという問題でありますが、この点どう考えておられるか。  それからもう一点は、証券会社の見方なんですけれども、現在の市場実勢から見て満足できるものではない、その市場実勢は、新しい金利水準の落ちつき先の見きわめがつかず、買いが極端に減ったことや、過度のインフレ懸念による心理的な不安の結果だ、また基本的には長期債の供給過多である、こう言っておるわけですが、この見方に対してどのようにお考えなのかという点が二点目であります。  三点目は、これも何回も話に出ておりますが、要するにいま景気がようやく頭をもたげてきた、その企業設備投資意欲に水をぶっかけることになるのではないか、ひいては、これは意図せざる金融引き締めとなって景気の足を引っ張ることになりはしないかという意見があるわけであります。この三つの意見に対して所見を伺いたいと思います。
  199. 徳田博美

    ○徳田政府委員 私から第一番目と第三番目の御質問についてお答え申し上げたいと思います。  最近の市場におきましては、短中期の利回りと長期の利回りの利差がかなり大きくなっているわけでございます。したがいまして、このような金融状況のもとでは、五年ものの金融債と十年ものの国債との条件について、その位置関係が変わるということはこれはやむを得ないこと、このように考えております。  このような状況でございますので、今回の国債の利回りの引き上げによりましても、金融債の売れ行きに大きな影響があるということは当面考えられないわけでございます。したがいまして、金融債の条件を上げるというような動きもないわけでございます。  第三番目の御質問の長期プライムレートの動きでございますが、これはやはり金融債あるいは貸付信託の利回りが上がれば長期プライムも上げざるを得ないわけでありますが、当面は金融債の条件に変化がないわけでございますので、長期プライムも変化がない、このように考えております。
  200. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 〇・四%の改定幅では十分ではないのではないかという一部の御意見でございますけれども、私どもは今回の改定に際しまして、実勢というのは一体何で見たらいいのだろうかと大変苦労したわけでございます。確かに昨年三月公定歩合が引き下げられまして以降、ある程度小康状態は保っておりましたが、漸次金利の底打ち感というものが浸透してまいりました。と同時に、景気の先行きの明るさというものが見えてまいりました。そこへ大量の国債発行ということが続いてまいりました。さらに、五十四年度予算を編成いたしました結果、十五兆を超す大量の国債がまた発行されるという情勢になってまいりました。これらを総合勘案いたしますと、金利の底打ち感、それから長期大量国債発行の、言葉は適当でないかもしれませんが、重圧感と申しますかそういうものから、長期資金需給のバランスが崩れたことは事実でございまして、その崩れた限りにおいてはそれは実勢だろうと思います。しかし、それを数値でとった場合に、それが〇・四%であるのかというのは非常に判定のしにくい問題でございます。  ここ二月ぐらいに入りまして、当時〇・四ないし〇・五の乖離幅であったものが、また改めて市場が〇・八、〇・九というふうに乖離幅を急速に広げてまいりました。これはやはり金利底打ち感から今度はさらに一歩進んで金利先高感というものが生まれてきた。この金利先高感と先行き金利高という心理的要因というものが、公社債市場需給バランスと申しますか、市況を一層悪い方に加速をさせた原因だろうと思います。私どもといたしましては、政府、日銀とも現段階においては近い将来、全面的金利改定は行わないのだという政策態度を堅持いたしておりますし、これを堅持しようと思っておりますので、その加速された分だけは余分であろう、そういう意味では〇・四程度のものが恐らく実勢であろうということで、今回の改定幅を〇・四に踏み切ったわけでございます。  〇・四改定しました以降も一部市場筋あるいは投資家筋には、貝沼委員が御指摘のように、まだまだ先行きインフレあるいは金利高、あるいは資金需要が出てくるということから、全く心理的要因は払拭されておらない、不十分であるという声があることも十分承知いたしておりますけれども、しかしながら日本の経済情勢を考えます場合に、さらに内需の振興を行っていかなくてはならない、国際的にもそれが要請されておるということでございますので、そこは私は、投資家なり市場関係者が日本の置かれた立場、そういうものを十分御理解をいただいて、先行金利高というそういう要因は払拭していただきまして、発行者もあるいは市場関係者もお互い協力して、いまのこの〇・四の改定幅というもので市場を安定さしていきたい、またそういうふうな御協力を願いたいというのが真情でございます。
  201. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 国債条件が引き上げられたに伴いまして、事業債の条件改定が行われております。これに関連いたしまして、たとえば三月の事業債につきまして、伝えられている希望額が一千五百億余りあったのが、実際に発行されましたのが七百六十億でございますので、これは条件改定が企業の事業債の発行意欲に何か影響を与えているのではないか、あるいはそれが設備投資の意欲にも影響を与えるのじゃないかというふうに言われる向きもあるわけでございますが、報道されております希望額と申しますのは、これはアンダーライターが四半期ごとにアンケートで企業から希望をとっておるものでございまして、これは今回に限らず、たとえば一つの例を挙げますと昨年の九月、これはこういうふうなことが言われない時代でございますけれども希望額が二千百億余りございまして、実際の起債実績は千百十億であったわけでございます。現実に三月の場合にも、当初アンケートでは希望していなかったところが三社ばかり実際に増額したりあるいは発行しているところもあるわけでございまして、実際にその当月三月において発行希望していた会社の起債の需要というものは十分満たしているというふうに私どもは理解しております。
  202. 貝沼次郎

    貝沼委員 だんだん時間がたってまいりましたので、金利の自由化の問題でちょっとお尋ねしておきたいと思います。  端的に言って大蔵省あるいは政府は、金利の自由化というものを将来進めていくという確固たる姿勢に立っておるのかどうか、その上に立って弾力化というのはどういう位置づけがなされるのか、この点についての説明を求めたいと思います。
  203. 徳田博美

    ○徳田政府委員 金利の自由化というのは大変重要なことでございますが、ただ金利を自由化することは、金利機能をより適正に発揮するということが本来の目的でございまして、金利の資金配分機能あるいは金利の景気調整機能をどのようにしたら一番適正に発揮できるかという観点から金利の自由化が取り上げられるべきものと考えられるわけでございます。  これにつきましては、先生御指摘の金利の弾力化と絡みまして、先般金融制度調査会におきまして中間取りまとめが出ているわけでございます。これによりますと、「金利機能の活用の方法としては、金利規制の撤廃による金利の自由化も考えられるが、規制を一挙に解除することはその過程において大きな混乱を生じさせることに十分留意する必要があろう。従って、当面、金利機能の活用の方法としては、必要な規制を残しつつも金利水準ができるだけ資金の需給に即応して変動するよう、金利弾力化の推進を図るべきであろう。」このような取りまとめが行われているわけでございます。金利を自由化する場合に、金利自由化によって金利機能をより発揮できる部面と必ずしもそうでない部面とがあるわけでございます。と申しますのは、直接金融と間接金融の二つの金融の分野があるわけでございますが、日本の場合、間接金融の分野におきましては、郵便貯金制度その他制度的ないろいろな制約もございまして、必ずしも資金の需給に即して金利水準が決まるような仕組みになっていないわけでございます。したがいまして、まず資本市場、直接金融の分野から金利の自由化が進められるのが望ましいと考えているわけでございます。その点につきましては先生御承知のとおり、日銀のオペレーションにおける国債の入札であるとか、あるいはコールレートの自由化であるとか、あるいは近く予定されております金利の自由化されたCDの発行であるとか、そういう面から金利の自由化が実際に始まっているわけでございます。それ以外の長期資本市場あるいは間接金融の分野におきましては、金利自由化の前段階として金利の弾力化ということで、金利の規制を残しながら、頻繁に景気情勢に応じあるいは資金の需給に応じて金利の規制を変化していくということが当面の方向ではないか、このように考えているわけでございます。
  204. 貝沼次郎

    貝沼委員 そこで、金融制度調査会の答申に沿っていま大蔵省が銀行法の改正に着手しておる、こういうふうに聞いておりますが、この改正の中に金利の自由化というものをどういうふうに盛り込もうとお考えになっておられるのか。それからまた銀行法の改正の検討と関連して、いままでもいろいろと問題を指摘された日銀法の改正、これも考えるのか考えないのか、この点について伺っておきたいと思います。
  205. 徳田博美

    ○徳田政府委員 金利の自由化と銀行法の改正との関係でございますが、金利の自由化の問題と銀行法とは必ずしも結びついていないわけでございます。当然普通銀行のあり方ということで、より広い見地から法律以外のものも含めていま御審議を願っているわけでございます。したがって、普通銀行のあり方として御答申をいただく場合には、やはり金利の自由化という方向をさらに促進するという意味で、先ほど申し上げましたようなCDの導入であるとか、あるいは金利の弾力化を進めるという意味で新種預金の導入であるとか、そういう御答申をいただけるものと考えております。そういう形で金融制度調査会においては、金利の自由化なり弾力化が取り上げられるのではないか、このように考えているわけでございます。  それから日銀法の改正との関連でございますが、昭和五十年五月十四日に金融制度調査会に対しまして大蔵大臣から諮問が行われまして、その文書は、「経済金融情勢の推移にかんがみ、銀行に関する銀行法その他の法令及び制度に関し改善すべき事項並びにこれらに関連する事項について、貴調査会の意見を求めます。」こういう文書でございまして、これらに関連する事項の中には日銀法の改正も含まれる、このように考えているわけでございます。  しかしながら日銀法の改正につきましては、現行の日銀法で政策遂行上現在、特に支障となる問題は生じていないわけでございますし、また日銀法の改正は、わが国経済金融のあり方と深く関連をするきわめて重要な事項でございますので、日銀法の検討につきましては慎重に配慮する必要があると思っております。現在御承知のとおり、銀行法の改正を含む普通銀行のあり方について御審議をいただいておるわけでございますが、今後日銀法についてどのように取り上げて御審議いただくかについては、さらに金融制度調査会の会長並びに委員の皆様方の御意見を伺って慎重に検討してまいりたい、このように考えております。
  206. 貝沼次郎

    貝沼委員 その次は、時間がだんだんなくなってきていますから進みますが、通貨供給の問題であります。  最近、M2ベースの通貨供給量の増大が問題になっておりまして、先ほどもずいぶん議論が出ておったところであります。確かにその中身を見ますと、政府向け信用に基づく増加が最近は目立ってきておるわけであります。そこで、国債引き受けによる政府向け信用の拡大は日銀の金融政策のらち外にあるわけですけれども、これを大蔵省はどういうふうに見てどう対処されようとなさるのか、マクロ的なことですけれども意見を伺っておきたいと思います。
  207. 徳田博美

    ○徳田政府委員 まず、マネーサプライの見地について申し上げますが、先生御指摘のとおり、最近マネーサプライ、M2の増加は一二%程度になっているわけでございます。たとえば五十四年の一月で申せば、対政府信用の部分は、そのうち四・八%に上っているわけでございます。ただ国債発行によるマネーサプライ、M2の増加は、国債発行することによって直ちに増加するわけではないわけでございまして、国債発行によりますかわり金を政府支出して初めてそこでM2の増加につながるわけでございます。この意味では、この部分については日本銀行による金融政策が必ずしも全面的にコントロールできるものではないわけでございまして、この点についてはやはり国債管理政策による面も多いわけであります。
  208. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで、市中金融機関から民間企業向け貸し出しが鎮静している現状ではさして問題はないわけでありますが、今後景気回復に伴って民間資金需要が盛り上がってきた場合、市中金融機関がこれに貸し応ずるため、大量に保有している国債を売り進む局面が考えられる、これは先ほどもずいぶん問題になっておったところでありますが、その際、流通市場での国債の値崩れを防ぐという目的で日銀がこれを買い支える、言葉は悪いかもしれませんが、買いオペをやる、そうすると当然通貨の増発につながってくるわけであります。  ちなみに、五十四年度経済見通し、名目GNP成長率九・五%、そうしますと、それからハイパワードマネー残高が十六兆円弱と言われておりますから、その九・五%は一兆五千億円程度となるわけでありますが、これを大幅に上回ってまいりますと増発になってくる。そういう場合は当然、景気がよくなってくるわけでありますので、歳入の方もふえてくると私は思うわけでありますが、もしそういうふうなことが年度途中においてでも起こってきた場合、たとえ年度の途中であっても国債発行量を減額修正するくらいの腹構えが必要ではないか、ぜひそうやっていただきたいというのが実は午前中の参考人の方の御意見にもありました。したがって大蔵省としては、こういうことについてどう考えられるのか、伺っておきたいと思います。
  209. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 五十四年度について申し上げますと、現に五十四年度予算はまだ国会で御審議をいただいている最中でございますし、五十四年度が始まっていないわけでございます。したがいまして、これはあるいは主税局の方からお答え申し上げるのが適当かとも存じますが、税収につきましても私どもといたしましては、この御審議いただいております五十四年度予算どおりの見積もりを現にしているわけでございます。でございますから、仮に自然増収が出たらどうなるのかというお尋ねでございますが、私どもはいま御審議いただいております五十四年度予算に比べまして、大幅な自然増収が出るというような見込みを現に持っていないということをあらかじめお答えさしていただきたいと存じます。  そこで、仮定の問題といたしまして、理論的には当然自然増収もあり得ますし、逆にまた自然減収ということも理論的にはあり得るわけでございます。そういう仮定の問題としてお答えさせていただきますならば、もしも自然増収が出ました場合には私どもといたしましては、先ほど来るる申し上げておりますけれども、できるだけ早く特例公債から脱却をいたしたいというのを財政運営の基本としているわけでございますから、基本的にはそういう方向で対処をすべきものと考えております。
  210. 貝沼次郎

    貝沼委員 それからもう一つは、インフレの懸念の問題であります。インフレ要因として考えられるものは、先ほどからもずいぶん議論が出ておりますから私は一々申し上げませんけれども、要するにそういう一般的なインフレ要因、それに加わって大量の国債発行、こういうことでインフレ懸念が非常に強まってきております。ある学者などは、もう財政インフレは必至であるとさえ言っております。ただ時間の問題だと言っておる人もおるわけでありますが、要するに政府としては、インフレは非常に懸念が強いと感じておられるのか、まあ大丈夫だろうと感じておられるのか、その辺の感触はいかがなんでしょうか。
  211. 米里恕

    ○米里政府委員 先生御指摘のように、物価の問題がいま大きな問題になっております。御承知のように、消費者物価は非常に鎮静化いたしておりますが、卸売物価が昨年の十一月あたりを境にしまして逐次上昇気配にございまして、本日の午後、三月の上旬の卸売物価の数字が発表になったはずでございますが、前旬比〇・四%アップというような数字になっております。ただこの卸売物価上昇は、大部分の原因は海外要因でございまして、御承知の為替レートの問題及び海外商品市況の高騰といったようなことが、私どもの分析によりますと大体七割ぐらいの要因を占めておる次第でございます。現在のところは、まだ二月現在で前年比三角の〇・九%、水準としてはそういう状況でございますけれども、トレンドとしてかなり上昇の足が速いということを懸念せざるを得ないかと思います。  一方、景気の方は、どうやら逐次着実な上昇軌道に向かっておるということでございますが、まだこれも必ずしも一〇〇%安心するには至らないということで、当面景気上昇を定着させることと同時に、物価問題にも多大の関心を持って、両にらみという形で政府としては施策を行ってまいるというのが基本的な考え方でございます。  御承知のように、去る二月二十六日に各省の物価担当官会議がございまして、そこで八項目ばかり政府としての基本的な対策を決めたわけでございますが、その中には、いわゆる生活関連物資の安定的な供給の確保といったような個別政策とあわせまして、マクロ的な通貨供給量についても十分監視の目を光らせていくといったようなことを基本といたしまして、今後物価問題に十分関心を払いながら政策を進めてまいるというのが基本的な考え方でございます。
  212. 貝沼次郎

    貝沼委員 大臣、インフレ問題は非常に重大な問題でありまして、これは何が何でも食いとめなければなりません、もし起こるとすればですね。起こってからではもう遅いと思います。大臣はどういう決意でおられますか。
  213. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 国民の皆さんの関心も私どもの関心も、インフレだけは起こしちゃいかぬぞということであろうと思います。そういう意味で私どもは、いますぐインフレに日本が突入するというような心配はないと確信しておりますけれども物価動きその他いろいろな指標には警戒を要するものはあります。特にOPECの値上げがこれからどう国民生活に響いてくるかというような点につきましては、十分警戒を要しますので、財政、金融の執行に当たっては機敏にこれに対応する措置を講じてまいりたいと考えておる次第でございます。
  214. 貝沼次郎

    貝沼委員 その次の問題は、M2の目標を設定せよという話なんですけれども、これもずいぶん出てまいりましたから、くどくど申し上げません。要するに私は、設定する方がよりベターだと考えておるわけであります。アメリカ、英国、西ドイツあるいはEC関係、いろいろ試行錯誤があるようでありますけれども、何もそれを絶対視するわけではありませんが、いろいろな指標とともにこれを見ていくというのは非常に大事なことではないか、これは主張をしておきたいと思います。  それからその場合、どうも政府の方はそれをいま設定しなければならないということにはならないようでありますけれども、これをいま設定してはまずいという現出は何かあるのでしょうか。
  215. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先ほど大胆から申し上げましたように、当面の経済金融情勢のもとでは、特に物価等に配意しながらマネーサプライ動きには注目していく必要があるわけでございます。このような観点から日本銀行においては、昨年の七月以降、マネーサプライ見通しを立てて公表しているわけでございますが、これに対してさらに、マネーサプライの目標自体を設定してはどうかという御質問かと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、マネーサプライ物価なりあるいは経済の実態との関係というのは、日本の場合には必ずしも一義的な関係がないわけでございます。そういう意味で、マネーサプライを目標値として設定すること自体が非常にむずかしさがあるわけでございます。それからまたいま申し上げましたように、物価、実体経済と一義的な関係がない場合に、目標値を立ててそれをひたすら守っていくということ自体にもどれほど大きな意味があるかどうかという問題もございます。それから、マネーサプライ要因につきましては、先ほど先生も御指摘のようにいろいろな要因があるわけでございまして、必ずしも中央銀行の金融政策のみをもっては左右できない面があるわけでございます。  このような各点を考えますと日本の場合には、マネーサプライにつきまして目標値という確固たるものを設定するよりも、見通しというものを打ち出すことによりまして国民全体の関心をマネーサプライに向け、それによって経済運営についていろいろな配慮を行っていく方が、日本の経済、金融の実態に即するのではないか、このように考えておるわけでございます。
  216. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから今度は、流通市場の整備の問題でありますが、午前中の参考人の方の御意見でも、整備はしなければならない、特に銀行窓口の販売についてはいままでさんざん議論をし尽くされておるから、大蔵省が英断をふるってここで結論を出す時期に来ておるのではないかという御意見がありました。  そこで大蔵省は、これに結論を出す考えはあるのかないのか、あるとすればどういう方向で出そうとなさるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  217. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 さんざん議論をし尽くされたからもう結論の段階だという御意見があったようでありますが、さんざん議論はいたしておりますが、まだし尽くしておらないわけでございます。そういう意味におきまして私どもは、まだまだ各方面いろいろな議論が混迷いたしておりますので、さらにもう少し検討さしていただきたい。結論は出したいと思っております。
  218. 貝沼次郎

    貝沼委員 それでは、二月の二十二日の衆議院予算委員会で田中理財局長は、来年度証券会社の引き受けシェアは下がってもよい、こう発言したようであります。これは証券会社以外にも国債売買業務を新たに認める意味ではないかととられておるわけでありますけれども、この真意を伺っておきたいと思います。
  219. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 私が予算委員会でお話し申し上げましたときは、当時平林委員が、新聞に証券会社のシェアが五十四年度においては一七%程度に下がるのではないかという記事が出ておったが、証券会社のシェアはもうすでに決定されたのかという御質問に対してお答えしたわけでございます。私が申し上げようと思いました趣旨は以下のようでございます。  御承知のように、証券会社の引き受けシェアというものは決まっておりません。毎月毎月シ団と協議をいたしまして、本月五千億国債発行するということになりますと、そのときの公社債市場、金融情勢等を見まして、千億円なら自分の方で販売能力があるから、五千億のうち千億を証券会社が引き受けるということで、シ団の中の証分団と金融機関との間で協議が整います。そういうことが毎月毎月繰り返されて、一年たってみれば、シ団引受枠の証券会社のシェアが結果的に一〇%であった、あるいはかつては六%にしか及ばなかった、昨年、一昨年のような債券市場の好況のときには二三%、二四%になった、証券会社のシェアというものはそういう性質のものでございます。  そこで私が申し上げましたのは、しかしながら、証券会社のシェアがいたずらに高いということが公社債、特に国債消化のために望ましいわけではない。たとえば証券会社で販売をしていただく先というものは、安定的に長期に保有していただける個人でありますとか機関投資家、こういう安定保有層に売っていただきたいというのが趣旨でございまして、非常に不安定なところへこれが販売されますと、アフターマーケットにおきましてそれが戻ってきた場合に市場の撹乱要因になるおそれがございます。そういう意味におきましては、安定保有層に消化していただくということでシェアが下がるのはやむを得ない。いたずらにシェアを大きくして不安定なところへ拡販をしていただくよりも、安定保有層に消化していただく方が望ましい。そのため結果的にシェアが下がるのはやむを得ないことであるという趣旨のことを申し上げたわけでございます。証券会社のかわりに別の人が個人消化その他ということで乗り出してきて、証券のシェアを下げるというようなことを考えたお話ではなかったわけでございますし、現在もそのとおりでございます。
  220. 貝沼次郎

    貝沼委員 時間がなくなってまいりましたので、まとめてお伺いいたします。  一つは、個人投資家などは、機関投資家、大口投資家が入手しているような店頭市場の情報を容易には入手できないのが現状である。このような情報量の違いを改善するために、できる限り店頭市場に関する情報を個人投資家など一般に公開することが必要ではないかと考える人がおるわけでありますが、これについての見解を承っておきたい、これが第一点であります。  第二点は、将来展望に立ったときの話でありますが、事業債あるいは公募地方債、外国債などについての格づけを行う権威ある民間格付機関が必要ではないかという点であります。現在は試みとして一つあるようでありますけれども、そういうものを育てようとされるのか、別に民間につくった方がいいという考えなのか、あるいは格づけなどというのは日本の場合は要らないという考えなのか、その辺のところを伺っておきたいと思います。  第三番目といたしましては、これだけ国債が大量になってきますと、従来の割当方式による国債の引き受けがすでに限界に来ておる。ちなみに諸外国と国債保有の現状を比較してみると、わが国の場合は他国に比べ、金融機関保有残高のウエートが非常に高い反面、個人、企業等の保育が低いわけですね。個人、企業その他のパーセントを見ますと、日本の場合はたしか一四・八ぐらい、それに比べてアメリカが四七%とか、西ドイツが六三%とか、イギリスが六九・八%とか非常に高いわけであります。そういう点から考えて、シ団引受方式の見直しをする必要があるのではないかという意見がありますが、これについての見解を承っておきたいと思います。  もう一点は、午前中の参考人の方の御意見で、夏以降にでもクラウディングアウトが起こるのではないかという御意見がありました。これについて大蔵省はどのように考えておられるか、その点を聞いて終わりといたします。
  221. 渡辺豊樹

    ○渡辺(豊)政府委員 御質問の最初の二点についてお答え申し上げます。  第一は、個人投資家のために流通市場における情報入手をもっと容易にすべきではないかという御指摘でございます。現在三十銘柄について毎日店頭気配を発表しておりますけれども、個人投資家のことを配慮いたしまして週に一回、これは五十二年十一月からでございますが、クーポンレート、あるいはあと期限がどのくらい残っているか、あるいは債券の種類別に百三十銘柄を選んで、主として一千万円以下の個人投資層のために情勢を公開しております。しかしながら、御指摘の点についてはさらに御趣旨を体しながら、個人投資家に対して店頭市場の情報を公開するにはどうすればいいか、より一層勉強してまいりたいと思っております。  第二点の格付機関でございますけれどもわが国には御指摘のような格付機関は現存しておりません。先般、証券取引審議会の基本問題委員会で、わが国の望ましい公社債市場のあり方について勉強を願いましたときにも、発行者あるいはアンダーライター、投資家とも全く別な存在であるそういう格付機関ができることが望ましい、それが日本の公社債市場の整備発展のために必要であるという御意見が出されたわけでございます。     〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕 しかしながら格付機関が確立しておりますのは、先生御存じのようにアメリカでございますが、アメリカではスタンダード・アンド・プアーズ、ムーディーズという三社がございます。これもすでに五十年の歴史を持っておるわけでございまして、純粋の民間機関でございます。やはり格付機関ができる以上は、純粋の民間機関としてそういうものが生まれることが望ましいわけでございまして、先生が先ほど言われましたのは、たしか日経新聞で試験的に格づけしているということをおっしゃったのだと思いますけれども、新聞社がやるのが適当かどうかという意見もございますが、ああいうような試験的な格づけということも誘因になりまして、民間におきましてそういう機関が生まれることを私どもも望んでおるわけでございます。ただ、これはアメリカの歴史を見ましても、実績の積み重ね等が必要でございますから、ある程度の時間を要するものではないかと考えております。
  222. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 御指摘のように、わが国金融機関国債保有高が諸外国のそれと比べて高い現状にあることは、そのとおりでございます。これは何と申しましても、わが国の金融市場の資金の流れが金融機関を通じて流れているいわゆる間接金融主体の金融構造でございますし、私の感じでは九割の資金が金融機関を通じて流れていると思います。そういう実情でございますので、金融機関に相当程度国債を持っていただいて、そこに残高がふえるというのはやむを得ないと思っております。かつまた、金融機関が保有する資金と申しますのは、やはり個人等の預貯金を源泉としておりますので、金融機関が保有するということ自体は市中消化の原則に反することでもないという限りにおいては、是認はできると思います。  しかしながら先ほど来いろいろ御議論がありまして、クラウディングアウトとか、市中金融機関に保有残高がふえるそのストック対策というような問題とか、いろいろ問題が出てまいることは事実でございますので、シ団引受方式、金融機関に相当部分が入っていくという方式は維持しながらも、これを補完する方法といたしまして、資金運用部資金による引き受けの拡大でございますとか、あるいは中短期債の公募入札方式ということで、シ団引受方式と併用しながらうまく組み合わせてやっていきたいというふうに考えております。
  223. 徳田博美

    ○徳田政府委員 クラウディングアウトの問題でございますが、当面御承知のように、企業経済活動はいま一つ盛り上がりがないわけでございまして、資金需要にも余り力強いものがいまのところ見受けられないわけでございます。今後仮に秋以降経済活動が活発になるとしても、大企業資金需要はいまのところかなり自己資金もございますので、金融機関に対する借り入れとなってあらわれるかどうかについては若干疑問もございまして、五十四年度における国債消化はおおむね順調に行われるのではないか、このように考えているわけでございます。ただしかし、今後景気局面によりましては、資金需要の大幅な盛り上がりがございまして、国債発行との調整を必要とするような場面が全く生じないとも言い切れないわけでございますけれども、そのような場合には金融政策、特に窓口指導等によりまして資金需要をなだらかなものにいたしまして、極力資金需給面調整を行ってまいりますとともに、国債管理政策に対しましても十分な配慮が行われることを期待してまいりたい、このように考えております。
  224. 貝沼次郎

    貝沼委員 終わります。
  225. 小泉純一郎

    ○小泉委員長代理 坂口力君。
  226. 坂口力

    ○坂口委員 いままで同僚の官地、貝沼両議員からいろいろ御質問をさせていただきまして、あらあらこれで内容は終わったかと思います。一つだけ聞いて終わりにさせていただきたいと私は思います。  この国債の問題につきましては、これを発行しなければならないよって来る理由につきましては、いろいろわれわれも反対をしなければならないところがございます。しかし、現時点におきましてこの国債発行ということを考えましたときに、それはやむを得ざる措置であるというふうに考えているわけでございます。ただ、もう少し国債の周辺に輪を広げて考えましたときに、その財源の使い方あるいはまた返還の仕方、発行条件等々、これらの問題に問題を広げて考えましたときに、やはりわれわれと考え方を異にする面がある、こういうのがわれわれの認識でございます。  いろいろ質問が出ましたが、その中で、発行条件につきましてだけ一つお聞きをして終わりにしたいと私、思うわけでございます。  この国債の多様化の問題、これは幾度か出ましたけれども、六十年度を展望して、そして大体中期債の発行を約四割にするという案が大蔵省から出ているやに聞いておりますが、それはございますか。もう少し詳しく申しますと、昭和六十年度に十年国債を約六一%まで下げていくという案、これはございますか。
  227. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 財政収支試算を御提出いたしました際に、年々の国債発行予定額が出ております。それが建設債と特例債とに分かれております。本年度におきましては、建設債のうちに中短期ものがあるわけでございます。特例債につきましてはそれをいたしておりません。それで、今後の財政収支試算に出ます特例公債と建設公債に分けまして、建設公債が本年度と同じような割合で中期債を出していくといたしますと、片方特例債の方は減ってまいりますので、結果的に四〇%近いものが中期債になるという、これは一応の試算でございまして、そういう前提を置いただけの試算でございますので、私どもは当時、そのころの金融情勢は予測できませんので、このようになるということは予測はいたしておりません。金融情勢に応じて応用的にやってまいりたいと思っております。
  228. 坂口力

    ○坂口委員 この多様化の問題がいろいろ議論されまして、すでに現実問題として多様化されてきていることは私たちも認めるわけでございます。特に二年ものでございますとかあるいは四年ものの話もすでに議論になったところでございます。ただ全体の中の、額で見ますと、五十三年度も大体十一兆円の中で約十兆円が十年ものでございまして、五十四年の場合にも、先ほども議論が出ておりましたが、二兆七千億でございますか以外は、大体十年ものということになるのだろうと思います。そういたしますと、五年ものあり、三年ものあり、そしてまた四年、二年というふうに並んではまいりましたけれども、しかし額から申しますと、十年ものが主な部分を占めて、他の部分が種類はたくさんあるけれども、しかしその額はきわめて小さな額である、こういう内容になっていると思うわけでございます。  そのいろいろの種類ができるということも、これは選択の幅を広げるわけでございますから結構なことでございますけれども、しかしその額が余り小さいということであるならば、これはまたそこに問題がありはしないか。ただ、これは一般国民の間がどう受け取るかということによっても違ってくるわけでございますから、いかにこの額をふやしてもらっても、それに対する応募者が非常に少ないということであれば、これは何もならないわけでございますけれども、昨年もたしか三年債でございましたか、二倍ぐらいの応募がございますしいたしますので、そういったものを出してもらえば、かなり応募もまたふえるのではないかというふうに思うわけでございます。それでその辺のところを今後、種類だけではなしに量そのものをいかに拡大をしていくかということについて、先ほどあれは決してきちっとした計画ではないという話でございますけれども、何らかの展望をお持ちであれば、それをひとつお話をいただきたい。  ついでにもう一つ述べておきたいと思いますが、高度経済成長のときには巨額の設備投資も要ったわけでございますしいたしますので、先ほども議論がございましたけれども、金利体系というのは、政府の統制下と言うと皆さん方の方はおきらいになるかもしれませんけれども、そういった一つのルートに乗せられていたことだけは事実でございます。でありますから、国債、金融債、プライムレート、事業債とこう並べましたときに、だんだんと私が申しました後ほど高く、初めの方が低いという形になっていただろうと思います。ところが実際にたとえば金融債と国債を比較いたしますと、公社債市場実勢におきましては、金融債の方が低くて国債の方が商いという逆の形もまた存在したわけでございます。  こういった中で、さらに多様化をということをわれわれ言ってきたわけでありますけれども、しかし、実際問題としてそれができにくいと皆さん方がお考えになりますその背景には、やはり五年ものでありますとたとえば利付金融債でありますとか、あるいは三年ものの利付金融債でありますとか、あるいはまた一年ものの銀行定期預金でありますとか、そういったほかの金融機関の商品との競合、このことが大きな一つの障害になっているのではないかと思うわけでございます。この辺のところをどう乗り越えていくかということが、多様化されていくかいかないかの今後の分かれ道になるのではないかという気がするわけでございます。それで、この辺のところをどう今後改めていかれるのか、あるいはまたやむを得ずこのままでいかれるのか、その辺のところをひとつお聞きをしたいと思うわけでございます。
  229. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 まず、中期債の量の拡大の問題でございますが、やはり財政当局といたしますれば、財政資金の調達手段でございますので、長期で安定的に調達し得るような資金が一番望ましいということで、でき得るならば市場が許すならば、長期安定ということで長いもので出していきたいという悲願がございます。そういう意味におきまして、中期国債を導入いたしました当初におきましては、この長期十年債というものを安定的に発行消化していくために、余りにもそれが大量であるとすれば市場に対するインパクトが大きいので、そのインパクトを緩和し、十年債を円滑に消化する補完手段として中期債の手法を用いたというのが実情でございます。  しかし、いまや事情が変わってまいりまして、市場情勢が御承知のとおりのような情勢で、長期がきらわれ、中短期のものに資金のニーズがあるという現状でございますので、今回二、三、四年というものを設け、この量を拡大したのは、そういう市場実勢にも対応するという趣旨が今度新たに入ってまいっております。しかしながら、これをいたずらに拡大いたしますということは、借りかえの問題、借りかえ時における金融情勢が読めない、あるいは償還負担の問題というようなものがいろいろございますので、私どもは冒頭申し上げましたように、やはり長期なものを主眼にしていきたいというふうに考えておりますが、しかし、これはあくまで市場とか金融情勢に左右される問題でございますので、ニーズというものがそういう中短期のものにしか向かないという情勢になるとすれば、私どもは今後それを拡大していくということはやぶさかではございません。来年度二兆七千億の計画でございますが、一応私どももまだ一兆円の公募入札経験しか持っておりません。これが、二兆七千億の公募入札ということを行いました際に市場にどういう反応が出るか、まだ私どもも確信を持っておりませんので、実験的にこれをやりながら、将来の金融情勢を見て対応してまいりたいと思っております。  それから種類の多様化で、たとえば五年というものの競合商品があるがどうかということでございますが、実は昨年、三年の中期債を設定します際にも、御承知のように三年の利付金融債がございまして、競合商品として一部非常に反対があったわけでございます。二年債を行おうと思えば二年定期預金と競合する、いろいろ各種金融機関の資金吸収手段、商品と競合するということで大変な反対、いわゆる総論賛成、各論反対という立場にぶつかったわけでございますが、ここ半年、一年の経験を経まして、関係各方面に大方の御理解が得られたというふうに感じております。  と申しますのは、金融機関の責任者からも、国債の種類を多様化しろ、これを拡大しろという御要望が出ておるということは、その辺の御理解が得られ、かつ、従来自己の立場を余りにも強烈に主張されておったことがだんだん緩和されて、御協力がいただける状況になりつつあるのではないかというふうに思っております。端的に五年とか一年とかいうもの――一年というものは、私ども財政資金の問題として若干疑問を持っておりますのでいま考えておりませんが、たとえば五年というものにつきましても、一挙に反対を押し切ってやるというには問題がございますので、いまのような御理解が進んでいる情勢の中で、私どもにその必要性があった場合には、お話し合いの上で、話がつけばそういう商品もつくってみたいというふうに考えております。
  230. 坂口力

    ○坂口委員 きょうも午前中、参考人のお話がいろいろございましたけれども、各参考人からもやはりその辺の話が出まして、できる限り多様化をというお話が出たわけでございます。きょうは短な時間で、本当に総論的なことしかお聞かせをいただけなかったものですから、私どもも特に銀行協会の会長さんあたりに細かくお聞きすることはできなかったのですが、銀行協会の会長さんあたりからもその辺の話が出ておりますのは、いま御指摘のありましたようなところで合意ができつつあるのかもしれません。ただ全体の中で、金融機関の引受額が日本の場合に非常に多いということも指摘のあったところでございまして、そういう多様化とあわせて、この負担の非常に大きいのを若干落としてほしいということも含まれていたのではないかというふうに思うわけでございます。  その辺のところが総合的にどう進むかということではないかというふうに思いますが、いずれにいたしましても、この金融制度が現状のままでいきました場合に、長期国債だけに偏っておりますと、先ほども指摘がございましたが、いわゆる長期国債の下落の問題がまた起こってくる可能性もございます。日銀による国債の買い支えということになりますと、これも先ほど議論のありましたように、マネーサプライとのかかわりが出てまいりまして、インフレとのかかわりがまた出てくる。今度は国債発行利回りを引き上げるということになれば、いわゆるクラウディングアウトの問題が出てくる。どちらにしても余りおもしろくない現象がつきまとってくるわけでございますので、この辺のところは今後の中で非常に重要な点ではなかろうかということを私たちも痛切に感じるわけでございます。そういう意味で、この多様化の問題は慎重に進めていただきたいと思いますし、誤りなきを期していただきたいと思うわけでございます。  そのことを一つだけお願いをしたかったわけでございますが、それにあわせて、けさ三人の参考人の方が言われました共通点は、景気回復基調にある、もう一つインフレの問題を皆さんが指摘になったわけでありますが、けさのインフレの問題の指摘は、全体的な意味でのインフレの指摘でありまして、国債の増発ということとかかわってのインフレということは言われませんでした。しかし、こちらからの質問において、その辺のところはどうですかという問いかけもしたわけでございますけれども、その辺も含めて懸念を抱いておみえになるようでございました。しかしこういう場でございますので、あえて割愛されたのかもしれませんし、そこまでは申されませんでした。  その点、私は最後にひとつ大臣にお聞きをしておきたいと思いますが、貝沼君も先ほど聞きましたとおり、インフレに対する認識がどの程度大臣におありになるか。現在すでにインフレの段階に入っているという認識もあれば、まだまだその段階ではないという認識もございますし、いろいろでございますが、私どもはかなり危険水域に達しているという気持ちがしてならないわけでございます。きょうの森永さんのお話等にもその一端が出ているのではないかというふうに思うわけでございまして、その辺のお気持ちをひとつお聞かせをいただきたいのと、それから、このインフレが現実問題として進んでまいりましたときに、国債発行なるものにも非常に影響を与えてくるわけでございまして、それを一体どのように乗り切っていかれるのかということを最後にお聞きをしておきたいと思います。
  231. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いま御指摘のインフレに対する認識をどう考えているかということですが、私は、いま直ちにインフレに突入するような危険状況にあるとは考えておりません。ただ、先ほど来いろいろな角度から論じられましたように、卸売物価が円の下落のために上がり出したとか、あるいは地価が一部上昇し始めたとか、特にOPECの値上がりの影響がどういう形であらわれてくるか。それから金融面では、マネーサプライ状況が依然一二%台を割らないで引き続いておるというような、ある程度警戒を要すべき徴候が最近あらわれてきておる。これが今後どういうふうに発展するかという点について、われわれといたしましても十分警戒をしていかなければならぬと考えております。  特に明年度におきましては、御承知のとおりの大量国債発行いたしますから、恐らくそう簡単に消化できぬだろうなんということになりますとこれは大変なことでございます。そういう意味で財政当局としては、国債消化につきましては万全を期してやっていこうということで、いろいろ細かい配慮をやりつつおるような状況でございますが、何と申しましても、警戒信号が出だしましてからいろいろ手を打つのでは遅うございますので、財政運営、金融の政策の執行の面において機敏に予防的な措置をとっていくということが一番大事でございまして、もうインフレになってからどうするというようなことじゃなくて、その前の手をしっかりと打っていくつもりでおることを申し上げておきたいと思います。
  232. 坂口力

    ○坂口委員 最後に一つだけ。  景気回復インフレ抑制かという問題がございまして、はなはだその点では選択のむずかしい、かじ取りのむずかしい局面ではないかと思いますが、大臣はそのどちらにウエートをより置いておやりになるおつもりでございますか。
  233. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 大変むずかしい御質問でございます。景気回復も大事でございますが、最近ややこれは回復して、ひとり歩きまではできぬかもしれませんが、相当の好況感がみなぎってきているところですから、ここら辺でぼちぼち物価についても十分な配慮をしていかなければいかぬ、両にらみよりはやや物価の方にウエートをかけなければいかぬ時期かなという感じがいたしておるのでございます。それは特に石油資源国でない日本でございますために、最近円が下落してまいっておりますが、この影響がこれからどの程度出てくるか、そこら辺の見きわめをいたしながらやっていかなければいかぬ問題でございますので、われわれも大変苦悩しておる最中であることを申し上げます。
  234. 坂口力

    ○坂口委員 これでわが党の質問を終わらせていただきます。
  235. 小泉純一郎

    ○小泉委員長代理 高橋高望君。
  236. 高橋高望

    高橋委員 すでに同僚先輩議員がいろいろとお尋ねもし、またお答えもいただいた後でございますが、どうぞひとつ、重複を懸念いたしますけれども、お答えをいただきたいと思っております。  私はちょっと話題を変えまして、関係主要閣僚として重要なお役を果たされるであろう金子大蔵大臣のこの六月末の東京サミットヘの御準備の状況等について、いろいろ伺ってみたいと思います。  本来これは総理のお気持ちがずいぶんと大きかろうかとは思いますけれども、関係の部署が私の判断では、いろいろ持って回ったけれども、結局はどうも景気と貿易の問題に来そうだというように思いますので、そういう点でひとつお尋ねをさせていただきたいと思っております。  まず、私どもがいまこのサミットに対して期待もし、また関心を持っている度合いというものが、大分薄れてきているんじゃないかという懸念がいたします。それは、第一回のランブイエ以来今日に至るまで、その時点時点でいろいろと主要な議題はあったかと思います。ある場合には通貨の問題もございましたでしょう、あるいは貿易の問題もありましたでしょう。いずれにいたしましても、このところサミット自体が、当初提唱され、そして実施されたころと、大分いろいろな意味での影響力が変わってきているように思うのですが、まず大臣、この辺についてはどのようなとらえ方をしていらっしゃいますか。
  237. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 過去四回の場合と違いまして最近は、国際経済的にあるいは政治的にいろいろな問題はありますけれども、この際急いでこの問題を片づけなければいかぬという問題意識は比較的薄れてきておると思います。世界の黒字国赤字国調整をどうするかとか、そういう問題は依然ございますけれども、為替レートの問題もかつてのときのようなことはございませんし、そういう意味でむしろ会議の主要目的は、これからの世界経済の円滑な運営を図るために、関係首脳が一堂に会して相互理解を深め、今後の相互の協調を図ろうというところに重点を置いていくような会議になった、ある程度会議の性格は多少変わってきたのじゃないかというふうに私どもも意識いたしておる次第でございます。     〔小泉委員長代理退席、委員長着席〕  しかし何といっても、あの関係各国の首脳が一党に会して、特にこのアジアで開かれるのは今回が最初のことでございますし、主催国としてこの会合を成功裏にひとつおさめたいものと思って、鋭意努力しなければいかぬと考えておりますが、まだこれは御承知のとおり議題が決まっていないのです。かつてのボンのサミットでは、たとえば経済成長とかインフレとか雇用の問題、あるいは貿易の問題、エネルギーの問題、南北問題、通貨政策の問題等が取り上げられましたけれども、どういう問題になるか、あるいはいま申し述べましたような中の幾つかを取り上げるか、そこら辺につきましては、せっかく関係国の間でいま下打ち合わせが行われておる際でございまして、正式に決定するのはぎりぎりのところでないかと考えております。
  238. 高橋高望

    高橋委員 そこで、フランスのジスカールデスタンが提唱した、グアドループで行われたいわばサミットの、何と言うのでございましょう、サミットという言葉を使ってはいけないのかもしれませんが、いわゆる欧米先進工業国の四カ国の会談というものと日本の立場というものに対しては、どのようにこの辺理解をなさっていらっしゃいますか。
  239. 平尾照夫

    ○平尾政府委員 いま先生御指摘のグアドループの会談でございますが、これは米国あるいは西欧の安全保障問題、あるいは政治問題を中心にいたしまして、当面の国際政治情勢について意見の交換が行われたというぐあいにわれわれは承知をしております。  他方、先進国首脳会議の方は、これは先ほど大臣がお答えを申し上げました、現在の世界の経済が深く相互依存の状態にあるという認識のもとに、世界経済の問題を解決するためには主要各国の緊密な協力が必要である、こういう認識で首脳間で相互理解を深める、あるいは経済の各分野にわたって相互協力の方策について探求をするというような性格のものであろうかと思います。したがいまして、グアドループの会談と来るべき東京サミットは基本的に性格が違っておりますし、相互には関係がないというぐあいにわれわれは了解しておりますし、恐らく参加の他の国々もそのような感じでおる、こういうぐあいに思います。
  240. 高橋高望

    高橋委員 御専門の分野での分析ですから尊重すべきかと思いますけれども、現在、経済問題等のいろいろな考え方なしに国防問題等々が討議されるはずがないのですね、私たちはそのようにとらえているわけですから、逆に言えば、グアドループ会談でわれわれの国がオミットされたというふうに私はとっているのです。  そこで御専門の立場で伺いたいことは、いま御一説明のような判り切り方だけで果たして現在の国際会議に臨まれる姿勢として十分なものかどう一か、もう一度ひとつ御見解を承りたいと思います。
  241. 平尾照夫

    ○平尾政府委員 先ほど申し上げましたように、グアドループの会談では、特に西欧の安全保障問題あるいは政治問題が中心になっているわけであります。他方、サミット、先進国首脳会議経済問題が中心でございます。経済と政治は、先生御指摘のようにお互いに関係がございましょう。しかし、経済問題に限って申し上げますならば、先ほど申し上げましたようにいまの世界経済は、南北の問題も、それから貿易の問題も、あるいは通貨の問題も、さらにはマクロの経済の問題も相互に依存関係が深い。したがって首脳会議は、回を重ねまして今度で五回になるわけでありますが、それぞれの経済情勢の進展に合わせて先進国首脳が腹蔵なく経済的な方策を探り合うために話し合いをするということで、グアドループの会談とはそれほどの関係がないように思います。
  242. 高橋高望

    高橋委員 今日はそのように承っておきます。  そこで先ほど大臣が、私がお尋ね申し上げる前にいみじくも、今回の六月の会談にはまだ主要なテーマあるいはそれぞれの議題等々が定まってないというお話でございますけれども、すでに二十二、二十三日から準備会談が始まる、それには当然のことながらわれわれの国としてのいろいろの準備があろうかと私は思うのです。  いま私たちが考えている範囲内では、まず国際インフレ等に対して日本が言える資格があるかどうかという問題が一つ外国から言われるだろうと思うのです。はっきり言えば、国際的なインフレを言う前に、日本は自分のところの黒字自体をどう考えているんだというようなことを言われそうだ。それからこの間南北問題を、一つの国の将来というか差し迫った問題として、われわれの民社党としては会議を持ちましたが、これは率直に言って、重要性はわかっても、それぞれの国が同じような関心を持つかといったら私はなかなか持たないと思う。それからまた通貨の問題に関して言えば、昨年末のドル防衛で、ドルがいま小康状態にあるのではないかと私は判断いたします。では、エネルギーかと言えば、エネルギーはIEAがあるわけですから、しかも五%削減ということを言い出しておるわけですから、テーマはない。いろいろつぶしていきますと、先ほどもちょっと申し上げたと思いますが、結局はどうも景気と貿易の問題に入ってくるのではないか、このように私たちは判断しておりますけれども、大臣はこの判断はいかがでございますか。
  243. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いま景気と貿易というよりも、最近のアメリカの物の考え方は、七%成長とか六%成長ということに必ずしもこだわるべきでない。当面の問題としてお互いの赤字国黒字国調整をどうやっていくか。これは日米関係だけではございません、特にこういう状況になりますと、保護主義的な雲行きが、これはアメリカはもちろんでございますが、ECでもそうでございます。そういうことを通じて、もう少し中長期的な見方でお互いに協力し合う方向に行こうじゃないかというような傾向にだんだんなってきているというふうに私は判断しております。だから、余り成長がどうだというようなことはこだわらないと思いますが、私どもといたしましては、通貨の問題その他に関連いたしましても、アメリカのインフレ対策が非常に効果を発揮いたして今日ドルが世界的に小康状態に達しておりますが、そういった点、やはり各国ともインフレについて十分これから留意していく必要があるぞということは強調していかなければならないと考えております。  エネルギー等につきましては、やはり一つの大きな世界的問題でございまするから、先般国際会議で節約についての基準を決めたばかりでございますけれども、これは産油国、消費国それぞれ大きな影響のあるところでございますから、今後の石油エネルギー資源の見通し等についても、十分私どもは考えていかなければいかぬと思っておる次第でございます。そういったいろいろな問題について、専門家がぼつぼつ準備に走り回り出したという段階でございまして、それでは正式テーマとして何を取り上げるかというところまではまだ行っていない段階でございます。
  244. 高橋高望

    高橋委員 大臣、そこで私たちの国としては、黒字国で集中攻撃を受けたくないという立場に立てばどうしても、ずるいわけではありませんけれども、中長期の立場に立っての議論をしたくなるわけですね。ところが私は、アメリカの議会等々の動きから見まして、必ずしもこうした中長期の日本の取り上げ方に応じて、それで行こうというふうにはどうも受け取れない。むしろ差し迫っている議員さんの立場を含めまして、貿易の不均衡の解消というようなことを取り上げて東京サミットに臨んでくるのではないか。ですからわれわれは極端に言えば、さわられたくないところへ入り込まれてしまうというような感じがするのですけれども、この辺については、私の見方は少しひがみが多過ぎますか。
  245. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 東京サミットの問題じゃなくて、総理が今度訪米いたしますが、東京サミットを開く前の前提としての日米間の懸案をどうさばくかということが、いま高橋さんのお取り上げになった問題だと思います。それはそのとおりで、私どもとしてはできるだけひとつ手を握って、いままでの緊密な体制を続けられるように努力していかなければいかぬと思っておりますが、そういう意味において、たとえば日本の黒字も最近は、石油の値段の引き上げによっていつまた相当部分が吹っ飛ぶかわからない情勢でございます。先ほども申し上げたところでございますが、経常収支、貿易収支だけで事を論ずべきではなくて、海外援助を国際的責任の大きな柱と心得ておる日本としては、やはり基礎収支でバランスを判断すべきであるというようないろいろな立場の主張がございますから、それはそれで私どもは、議論すべきものは大いに議論して、とりあえず日米関係の諸問題は片づけたいと考えておる次第でございます。
  246. 高橋高望

    高橋委員 これは東京サミットヘの期待といいましょうか、あるいは起こり得るであろう事態に対しての認識の違いがあるのかもしれませんけれども、私は何か東京サミット自体がかつてのような影響力が余りなくなっているという立場に立つと、どうも短期的な問題で各国が臨んでくるように思われてなりませんので、大臣が現在お考えの線で進めば大変結構なんですけれども、どうかひとつその辺については、相手の特殊な事情等も十分御勘案だと思いますが、ひとつ御準備をお願い申し上げたいと思います。一つの例として、たとえばついおとといでございますか、アメリカの前大統領のフォードさんなんかは、多分にこういう問題に対しては現在のアメリカ政府とは違った見解をお持ちのようにも私は読めるので、こういう点を考えてひとつせっかくの御努力をお願い申し上げたいと思っております。  それでは続いて、細かなことになりますが、五十四年度八兆五百五十億の特例公債発行なさろうとするその前提として、五十三年度のこのところの税収の見込み等について御説明いただけますか。
  247. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ただいま一月末の税収まで判明いたしております。  それによりますと補正後の予算額、これは五月税収取り込み前でございますが、十九兆四千三百六十億という予算額でございますが、これに対しまして七九・四%まで収納済みになっております。昨年の同期の進捗割合が七八・四でございましたから、昨年よりは一ポイントばかり高いということでございます。  これから先どうなるかということでございますけれども、税目別にかなりむらがございまして、源泉所得税は前年よりも二・五ポイントぐらい収納がおくれております。これはベースアップが低かったということ、それから利子配当課税が、五十二年に五%税率が上がりましたが、ことしはその効果がなくなってしまいますので、それと利子率の引き下げが響いてまいりまして、この辺は余りさえないわけであります。  一方では、申告所得税が前年に比べて一応四ポイントばかり高くなっております、これは三月に終わりました確定申得を集計してみませんと果たして入っているのかどうかわかりませんのと、土地の譲渡所得が相当大きく影響するものでございますから、申告所得税がこのような一月末の進捗割合のまま年度全体としての税収になるかということはいま予側がつきにくいわけでございます。  好調なのは法人税でございます。昨年の十月まではなはだ不振であったわけでございますけれども、その後前年の進捗割合をかなり上回った状況にきております。このまま推移いたしますと法人税につきましては、予算額を上回ることが期待できるのだろうと思います。  しかしそのほかの税目でも、物品税が自動車の出荷が非常に多いことに支えられて好調でありますとか、有価証券取引税が証券市場の盛況を反映して予算税収を相当上回っておるというものもございます。一般にGNPの動き全般を反映するとよく言われております印紙税あたりは意外と低調でございます。  いろいろでこぼこのことを申し上げましたが、二月以降五月まであと四カ月税収が残っております。そこで、いまの段階で十二月決算から三月決算までの法人税収、土地譲渡、それから今後の源泉所得税がどう推移するか、まだなかなか計数的にはつかめないわけでございますけれども、ざっとした感じでまことに恐れ入りますが、いまのようにいろいろな税目が入りまじっておりますが、全体として二十一兆一千五百億という補正後予算額を上回るというふうに考えております。ただ、どのくらい上回るかということになりますと、いまの段階でなかなか正確な数字を申し上げかねるということでございます。
  248. 高橋高望

    高橋委員 個別のいろいろの税目等のでこぼこがあることもまたよくわかりますが、私たちの立場で現在お尋ねしたいことは、大ざっぱな感じとしてはどうも税収が伸びが見込めそうだ、こういうふうに私いま御説明を承りました。  そこで、その立場に立ちましたときに、五十四年度の税収増の数値を、五十三年度についてたしか八・二%きり見ていらっしゃらない。この八・二%という数字は何か少し少な過ぎるのじゃないか、このように私は感じるのですが、いかがでございましょうか。
  249. 高橋元

    高橋(元)政府委員 五十四年度の現行法税収、つまりいま審議をお願いいたしております税制改正がない場合の現行法の税収でございますが、これが二十一兆四百六十億で、前年に比べて八・三%の伸びというふうに見積もられております。しかしながら、そのほかに本年度はいろいろな部面で増税措置をお願いいたしておりまして、それが成立いたしますとあと四千四百十億という増収が入ってまいります。合計いたしまして、予算に計上いたしました税収が二十一兆四千八百七十億でございますが、これは五十三年度の特別減税を戻しました十九兆四千三百六十億に対しまして一〇・六%の伸びとなっております。  これが控え目に過ぎるのではないかというお尋ねのように承りましたけれども、私ども実は税収の見積もりをいたします際には、五十四年度経済見通しとの整合性を図っておるわけでございまして、名目成長率にいたしましても、鉱工業生産の伸びにいたしましても、卸売物価の伸びにいたしましても、消費者物価指数にいたしましても、一人当たりの雇用者所得にいたしましても、雇用者指数にいたしましても、すべて予算の際に提出をいたしました経済企画庁の策定いたしました五十四年度経済見通しに乗っかって推計いたしております。したがいまして、経済見通し自体がそれを上回って伸びるという要因がございませんと、なかなかいまの段階で五十四年度の税収が予算を上回るということを申し上げるような判断の材料がないと思うわけでございます。  大体五月までが五十三年度の税収になります。実際に五十四年度の税収が始まりますのは六月でございますが、その実績が判明いたしますのは八月ということに相なります。もう少し様子を見ないとわかりませんけれども、五十四年度経済見通しを現在の段階で変更する理由は、全く私どもとしてはそういう判断の材料を持ち合わせていないわけでございます。したがいまして、一般会計分の税収につきましても、ほぼと申しますか、五十四年度の歳入見積もりどおり入るということ以外のお答えをいたすのは大変むずかしいと思います。
  250. 高橋高望

    高橋委員 私は、大蔵省というお役所の性質上、また俗に言う金庫番という性質上渋くいろいろお考えになることはわかるのですけれども、いま片方で増税のキャンペーンに近いようないろいろな運動をなさっていらっしゃる。そしてまたいろいろの新税構想もお持ちだ。そうなったとき、八兆五百五十億という特例公債をできるだけ少ない数字で国民にお見せした方が正直じゃないか。この段階で、仮にそれが圧倒的に高い数字じゃないにしても、特例公債の額を最初からこれだけ必要なんだといって増税キャンペーンに使われるようなことは、私はちょっと細工が多過ぎるのじゃないかなと思うのです。  そこでお尋ねしたかったことは、どうも弾性値を依然として一・二に見ていらっしゃる計算からいきましても、五十四年度の税収の伸び率は一一・四%になるはずだと私は思っているのですけれども、この辺については主税局長、いかがでありますか。
  251. 高橋元

    高橋(元)政府委員 財政収支試算において弾性値を一・二と見ておりますのは、いわば長期の弾性値をとっているわけでございます。長期の弾性値を今後七年間にわたる推計の基礎にとりましたのは、五十年以降と申しますか石油ショック以降、租税の弾性値は一または一を下回る年が続いてきておるわけですが、石油ショック以前の高度成長期の弾性値は一・四ぐらいでございました。景気局面に応じて、また税目の組み合わせによりまして弾性値というのはかなり動くものでございますから、各年の税収の見積もりがそれぞれの年において一・二になるということはとうてい考えられません。  いまもお話がございましたように、五十四年度の税収の弾性値は、決算額は判明いたしませんが、予算額どおりの税収があったといたしますと〇・八ぐらいでございますけれども、これは申し上げておりますように、五十三年度、五十二年度に金利低下がございましたですね、そうしますと、預金の利子がかなり大幅に減ります。したがいまして、源泉所得税の税収はダウンするわけでございます。それによる分が相当大きく入っておりますほか、雇用の伸び、賃金の伸びその他を見込みますと、それらがかつてのようであったということを考えますと、ほぼ一に近い弾性値であろうかというふうに思いまして、決して税収を過小に見せるというようなつもりはございませんで、私どもの判断で申し上げて恐縮ですが、十五兆二千七百億というような公債発行額それ自身非常に大きいというふうに思いますので、できるだけ公債に依存する程度を減らしたい、そのために税制改正による増収も、現在の局面でできるだけ織り込ませていただいたわけでありますし、税収の実績につきましても、五十三年の末の時点で可能な限りに見積もったというのが実態でございます。御理解をいただきたいと思います。
  252. 高橋高望

    高橋委員 一軒の家でも、つましくいろいろやっていて、最後にいってお金が出てくるというのはありがたいことかもしれませんから、ある意味ではそれは一つのやり方かもしれませんけれども、どうぞひとつ、できるだけ実態に近い数字を努力して出していただいて、努力目標が、何だへそくりがあったかというような印象を残さないようにしていただきたいので、この辺については、ひとつなお一層御専門を発揮していただくようにお願い申し上げたいと思います。  それでは、国債発行問題でちょっと伺っておくのですが、すでに数多くの同僚議員がお尋ねをしていると思いますが、これも何年もの等とおっしゃらないで、大ざっぱなお答えで結構でございます。  五十三年度国債発行消化状況というものについては、どのように御理解をなさっていらっしゃいますか。
  253. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 本年度の二月までに証券会社の引き受け一兆七千三百三十億を含みまして、シ団消化は八兆八千億円進んでおります。あと中期債が約一兆円公募入札消化されまして、割引国債が額面で約二千九百億消化されております。  振り返って、消化状況というお話でございますけれども、昨年三月に公定歩合が引き下げられたわけでございますが、それまでは、先行き公定歩合、金利が下がるであろうということで、債券市場は非常に活況を呈しまして順調な消化が進んでまいり、それが五十三年の四月に受け継がれてまいりました。夏までは、まさにその順調さで進んでいったわけでございますけれども、夏ごろからいろんな一過性の要因がございました。たとえば円建て外債ラッシュがあったとかで、若干夏ごろから個人消化部門にかげりが見えた時期がございます。しかしながら、一過性の原因が過ぎまして十月ごろからは、まだまだ市中における実勢価格発行価格に乖離が生じることもなく、順調に進んでまいりました。秋が深まりましてから、だんだん金利底打ち感というものが浸透してまいりましたが、売れ残りということは現実にはございませんでした。シ団消化は当然、シ団で引き受けてくれますので問題はございませんが、証券会社が引き受けたものにつきまして、結局募残が残って証券会社が抱えなくてはならないという状況はなしに五十四年に入ったわけでございます。  五十四年に入りまして、六・一%国債が初めて上場される。上場された価格が、九十七円というような価格がつく。金利の底打ち感がそこに出てきたということと、あわせて、五十四年度予算が編成されまして、五十四年度においても十五兆を超える国債発行が予定されるというようなことが周知されますと、やはり金利の底打ち感で長いものをいやがる心理、しかもそこに大量の国債が引き続いて発行されるということで、長期資金需給のバランスが崩れてまいりまして、一月以降個人消化というもの、いわゆる証券会社が販売いたします消化につきましては、非常にむずかしい局面を迎えてまいりました。しかしながら、引受シ団の協力と証券会社の販売努力によりまして、二月までは少なくとも募残なしで計画額は消化されてきたということでございまして、この三月も、シ団で四千億円、運用部で三千億円、七千億の消化を予定いたしておりますが、現在募集中でございますけれども、ほぼ順調に行っておるように聞いております。  そういたしますと、今年度国債としまして出納整理期間に残したものは、六千百億円ばかり残っております。これは、三月の国債発行額を幾らに決めるかの段階で、運用部引受分三千億を含みまして一兆三千億残っておりまして、私どもの考えでは、やはり余分な国債を出すようなことがあっては、金利のついた金でございますし、税収の見通し、一般会計の不用というようなものが見当がつかない、かつ、五月分の税収二兆円という法人税を大きく取り込んだそれがどういうふうに税収見積もり上振れるかわからないということでございますので、一兆三千億残っておりますうち、安全を見て大体半分程度、七千億を三月の発行ということにいたしまして、六千億がいまだ未消化で残っております。
  254. 高橋高望

    高橋委員 御判断としては、ほぼ順調に消化できたというふうに御判断なさっていらっしゃるようです。  ところで、ちょっと見方を違えてなんですけれども、ここのところ六・一%ものの値段が大分下がってきている。九十五円を割ったような場合もあるようですけれども、これらの原因等についてはどのように把握をしていらっしゃるのですか。
  255. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 ただいまも触れましたように、一つには、金利の底打ち感というのが一番大きい原因だろうと思います。先行き金利が下降するということはない、キャピタルロスが生じるかもしれないというような金利の底打ちの感じが一般的に市場に広がったこと。そこで余裕資金というものが皆短期の方向へ指向していった。長期資金市場から資金が脱落していった。にもかかわらず、大量の長期債が発行される。そういう意味での長期資金需給のアンバランスというものが基本的な原因であろうと思います。そういう意味では、実勢というものがある程度乖離をしたということはやむを得ませんし、市場実勢のある部分というのは、まさに実勢であったろうと思います。  しかしながらこの二月に入りまして、六・一%クーポンの国債中心といたしまして、市場の流通価格が急速にまた下落してまいりました。これは金利の底打ち感というだけでなくて、金利の先高期待感と申しますか、そういうものがそれに追い打ちをかけたということで、一層下落に加速をしたと思います。そこの部分を果たして実勢と見て対応すべきかどうかというのは、大変むずかしい問題でございまして、やはり政府、日銀といたしましては、いまの景気局面でさらに一層の内需の振興、回復を図る国際的な公約と申しますか、国際的な経済環境で日本が置かれたあれもあるということで、当面全面的な金利改定は考えておらないわけでございまして、こういう当面全面的な金利改定がないということを市場が十分認識していただければ、今回改定をした〇・四%程度のところがある意味で実勢の実態ではなかろうかというふうに判断をいたしております。
  256. 高橋高望

    高橋委員 これはもう何遍も申し上げますが、同僚議員からいろいろと多様化等々の問題についてもお話が出たのですけれども、いまのお話をずっと承っておりますと、どうしてもここで新しい国債のあり方ということを考えないと、基本的に絶えず何か不安感が伴う。それはまた持っている方にもそうだ。そういう点で、これは一つの案ですけれども、いろいろと御批判はあろうと思いますが、貯蓄国債みたいなものを準備なさるお気持ちはおありじゃないのでございましょうか。
  257. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 先ほども佐藤委員から御指摘をいただいたわけでございますが、市場がそういう状況であるとすれば、非市場性の債券というものを工夫してはどうかという御指摘をいただいております。その際の非市場性債券と申しますのは、私募債あるいは債務証書借り入れ方式というものがありますと同時に、やはり貯蓄国債というのも一つの検討対象であろうと思います。  しかしながら、貯蓄国債というものを一体どういうふうに定義するかでございますけれども、貯蓄国債というものは、やはり個人の貯蓄資金を吸収する手段として何か有利な貯蓄手段を考える、その手だてというものは一般的に次のように認識されております。一つは、貯蓄国債というものは買えるのは個人だけである。それから買い入れ限度額がある、ある一定金額以上はだめだ。そのかわり税制面あるいは発行条件面で非常に優遇する、他の貯蓄手段よりもすぐれた貯蓄手段を提供するということでございます。しかしながら、国債でございますけれども、この場合に譲渡性は禁止されるというのが一般的に貯蓄国債の範疇、譲渡性が禁止されますかわりに買い取り制度というものを設けるのが一般の例でございます。  そういたしますと、いまこういうものを日本でどういう設計図でつくってみるかと考えますと、行き当たるのは定額貯金でございます。まさにいま申し上げたとおりのものが日本国においては定額貯金という形で提供されております。そういたしますと、設けましても、これは定額貯金との振りかえが起こるだけであるという問題になろうと思います。また別途、買い取り制度ということを設けるといたしますと、金利上昇局面になりました際に、本年度三千億発行予定している、昨年三千億発行した、買い取り期間が来た、そうすると金利上昇局面ですと、昨年発行してせっかく吸収した三千億の財政資金というものが全部買い取り制度によって持っていってしまわれる。そういたしますと、本年度発行予定額以上の返還資金というものが必要になって、安定的な財政資金の調達手段となり得ないというような問題点も持っております。しかしながら、非市場性の国債、債務証書であれ私募債であれこういう貯蓄国債的なものであれ、今後の市場に対応して検討は続けるべき問題だと思っております。
  258. 高橋高望

    高橋委員 最後に、これは主計局長の御担当かと思いますけれども、ちょっと伺っておきたいのです。  全然話題は違いまして、よく赤字財政とか財政破綻とかこういう言葉を使って増税キャンペーンをなさる。ところが専門の方は別にして一般の方は、財政破綻だとかあるいは財政がパンクしたといったって、別に生活にどうも直接関係ないじゃないかと。ですから一部の専門の方だけに話題になっていても、一般の方がそのことに対して理解もなければ、したがって国の方針に対しての協力もないというようなことが、私はずいぶんとあるんじゃないかと思うのですね。  ここで最後のお尋ねになるのですが、やはりいろいろお考えになって増税をお取り上げなさろうとしている。その前提というかやむを得ざる事情としての赤字財政とか財政破綻というものに対しては、もっとわかりやすい、一般の国民の方がわかるようなPRの仕方というのはお考えがあってしかるべきじゃないか、そういう御展開の方法があってしかるべきじゃないかと思いますが、この辺についてはどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  259. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 先生御指摘のとおり、財政は結局は国民経済に非常な影響を持っておりまして、端的に申しますと、たとえば物価の問題でございますとか雇用の問題でございますとか、実は回り回って国民生活と申しますか一般の経済生活、社会生活に非常に大きな影響を持つものでございます。ところが財政赤字それ自体は、言ってみますと非常に即物的でない、かなり抽象的な目に見えないものであるだけに、同時に非常にわかりにくい性質も持っているわけでございます。御指摘のように、私ども従来もそうでございましたが、特に最近のように特例公債に大量に依存をしなければならないような状況になりましてから、一段と財政の置かれております現状につきまして、国民の皆様方に何とかひとつできるだけ御理解をいただきたいという気持ちで、いろいろな機会をつかまえまして私どもなりにそれなりの努力はしてまいったつもりでございます。もちろん御指摘のように、私どももなかなか知恵が回りかねる点もございます。努力の至らない点もございますが、これからもいろいろな手段方法につきましても工夫をこらしまして、もっと国民の皆様方に現在の財政の窮状というものをよく御理解いただけるように一層努力をしていかなければならない、かように考えております。もし何か私どもに気がつきません名案でもございましたら、またお教えいただければ非常にありがたいと存じております。
  260. 高橋高望

    高橋委員 終わります。ありがとうございました。
  261. 加藤六月

    加藤委員長 安田純治君。
  262. 安田純治

    ○安田委員 先日の質問で私は国債の償還につきまして、さきに予算委員会に出されました元金償還の資料とは別に、昭和六十一年度から赤字公債の元本を償還し終わる六十九年までの特例公債と建設公債の両方の利子が毎年度幾らになるかという資料要求をしておきましたが、どういう数字になりましたでしょうか。
  263. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 お答えを申し上げます。  前回の当大蔵委員会におきまして安田委員からお示しがございました六十一年度以降の国債の利払い費をも含めました国債費の計数についてでございます。あのときにもお断り申し上げたわけでございますが、六十一年度以降の予算の前提になります経済状況、これがなかなか描きにくいということもございまして、私ども財政当局として、経済との関係をともかく捨象いたしまして全く単純に機械的に試算をいたしました数字がございます。それを申し上げます。くどいようでございますが、前提といたしましては、先般予算委員会に御提出申し上げました「国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算」というものと同じ前提を置きまして、たとえば六十一年度以降の新発の国債発行額につきましては、単純に年それぞれ一〇%ずつ伸びるというような仮定でございます。それからまた、国債の利息その他の発行条件につきましても、この仮定計算あるいは財政収支試算をつくりましたときと全く同じ条件というような仮定を置いてございます。  そういうような仮定で計算をいたしますと、年度別に申し上げますと、まず六十一年度でございますが、利払い費が八兆九千億円でございます。同時に、予算委員会に御提出申し上げましたいわば元本の償還財源に当たるべき定率繰り入れ、それから予算繰り入れ、それぞれ計数をお示ししてあるわけでございますが、この定率繰り入れと予算繰り入れとに必要な金額として試算されました数値、これを合わせますと、六十一年度が十二兆七千二百億円というぐあいになるわけでございます。以下、同様に申し上げます。六十二年度が利払い費が九兆四千億円、定率繰り入れ、予算繰り入れ合わせましたところで十四兆二千百億円。それから六十三年度が利払い費が十兆三千億円、それから繰り入れ分を加えましたところが十六兆三千三百億円。六十四年度、利払い費が十兆七千億円、定率繰り入れ、予算繰り入れを合わせましたところで十八兆七千三百億円。六十五年度、利払い費が十一兆四千億円、繰入分を含めまして二十兆百億円。六十六年度が利払い費十二兆二千億円、繰入分を合わせまして十九兆五千億円。六十七年度、利払い費十三兆一千億円、償還費の繰り入れを合わせまして二十兆八千九百億円。六十八年度、利払い費十四兆二千億円、繰り入れを合わせまして二十兆二千八百億円。六十九年度が利払い費十五兆六千億円、繰り入れを合わせまして十九兆二千七百億円という試算に相なってございます。
  264. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと六十一年度から六十九年度まで、一応仮定計算でございますけれども、いろいろな前提条件を仮定いたしましての計算ですが、利払いだけで合計百五兆八千億ということになるようですね。さきに出された元本償還の資料では、同じ九年間に定率繰り入れの合計が二十五兆五千億、予算繰り入れ、剰余金繰り入れで約三十一兆円、合計五十一兆五千億円、こういうふうに見込まれていると思うのです。利払いは元金償還の二倍以上の百五兆八千億、こういうふうに仮定計算ですけれども達することになる。元利合計で百五十七兆三千億がこの六十一年から六十九年までの間に国民の負担としてのしかかってくることになるわけで、いまのいろいろな仮定の前提を置いた計算だとそうなりますね。間違いないですね。
  265. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま御指摘の足し算をした答えを実は私ただいま持っておりませんが、概算いたしますと御指摘のとおりかと存じます。
  266. 安田純治

    ○安田委員 六十一年度以降の財政がどうなるかは、確かに経済計画や見通しがはっきりしておりません。どうしても仮定計算ということになるのですが、しかしその仮定計算といっても全くの架空の計算ではなくて一応の根拠がある。したがって、これはいま申し上げましたが、非常に巨額な元利償還がのしかかってくるということは当然予想できる事態だと思います。  さきの元金償還分と利払い費を各年度合計すると、各年度国債費が算出できるはずになると思いますが、六十一年度以降各年度国債費はどういうことになるでしょうか。
  267. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 お答え申し上げます。  先ほどの前提を置きまして利払い費を計算いたしました結果を合わせました国債費でございますが、六十一年度が十二兆七千二百億円、六十二年度十四兆二千百億円、六十三年度十六兆三千三百億円、六十四年度十八兆七千三百億円、六十五年度二十兆百億円、六十六年度十九兆五千億円、六十七年度二十兆八千九百億円、六十八年度二十兆二千八百億円、六十九年度十九兆二千七百億円という計算に相なってございます。
  268. 安田純治

    ○安田委員 私が試算したところとちょっと数字が幾らか前後するようでございますが、大体そういうようなことになると思います。  そうしますとずっと見てまいりますと、もちろんこれもまた予算規模や何か一応仮定しての話ですが、財政収支試算と同じように一一%毎年度予算規模が伸びるというような仮定でずっと計算をしてみますと、大変なことになって、昭和六十四年度ごろには一〇〇%国債費は超えるのではないか、つまり公債金収入に占める国債費の割合ですね、というような計算になるようであります。数字があなたのおっしゃるのと私のと少し違いますけれども、一〇〇%超すような事態になるのではないか。公債金収入の全部をつぎ込んでも足りない、こういう驚くべき事態も生まれることが必ずしも荒唐無稽の計算ではないというふうに思うわけです。そうしますと、財政収支試算のとおり進んだとしても、このままで行きますと六十年代の半ばに再び新たな財政危機を招来することになってしまう。  そこで大臣にお伺いしたいのですが、この六十年代の財政は利払い費を含めて考えると、いま申し上げましたような破局的なことになることはいまから十分予想されるわけであります。こういう予想される状態に対してどういう御感想をお持ちか、このような事態を引き起こさないためにどんな方途が考えられるか、伺いたいと思います。
  269. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 大臣からお答えいただきます前に、事務的に御説明をさせていただきたいと存じますが、御指摘のとおり、先ほど申し上げましたような仮定での計算によりますれば、若干先生お持ちの数字とそごがございますが、たとえば六十四あるいは六十五年度ごろにおきましては、公債金収入の金額とそれからその年度のいわば国債費の金額がほぼ近いというような計算になるわけでございます。申し上げるまでもなく、くどいようでございますが、公債金収入がこのとおりになるとか、あるいはまた国債費がこのとおりになるとかいう計算ではないわけでございますけれども、いずれにいたしましてもこのような単純な試算をかいてみましても、六十一年度以降の国債費の負担が相当巨額なものになり、これが財政の圧迫要因になるであろうことは想像にかたくないところは、まさしく御指摘のとおりかと存じます。  そこでお尋ねは、そういう事態に備えてどう対処するつもりかということでございますが、これも先般予算委員会に御提出申し上げました資料の本文にあるわけでございますけれども、このような特例公債、なかんずく特例公債に伴う後年度の負担を考えますと、やはりまず何としてでも第一の先決問題は、一刻も早く大量公債依存、なかんずく特例公債から脱却することである。そこで私どもは、財政収支試算でもお示ししてございますように、五十九年度までには特例公債から脱却をしたい、そういう試算を手がかりにして今後財政運営をしていきたいということが第一点でございます。  それにいたしましても、なお六十一年度以降の国債の償還財源をどうするつもりかということであろうかと思います。この点につきましても、予算委員会に御提出申し上げました資料にもございますが、特例公債につきましては全額、満期に現金償還をするという基本方針をとっているわけでございますが、そのための国債整理基金の資金残高が枯渇をする可能性があるわけでございますので、いずれにせよ何らかの予算繰り入れが別途必要になるであろう。その予算繰り入れの仕方につきましては、「負担の平準化を考慮しつつ、その具体的方策について検討を続け、特例公債脱却後直ちにこれを実施に移せるよう努力することとしたい。」ということが大蔵省としての考え方でございます。
  270. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 ほうっておけば大変な事態になるわけでございまして、その対策として、これはきわめて単純な方策しかないわけでありまして、財政の圧縮、余分に国債を出さないこと、歳入をしっかり見直すこと、もうこのオーソドックスな方法による以外にこの問題にメスを入れる道はほかにないと私は考えております。
  271. 安田純治

    ○安田委員 ところで、一月二十五日に発表された政府の新経済社会七カ年計画の基本構想の「計画期間における経済運営の基本方向」の一というところに、「経済部門の不均衡の是正」というところがございますが、税負担水準の適正化、財政収支改善を行うとして、計画期間を二つに分けまして、五十六年ごろまでの前半で一回やって、後半でもう一回やるという趣旨の記載がありますけれども、これはどういう意味か企画庁の方で御説明いただければありがたいと思います。
  272. 高橋毅夫

    高橋説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘になりました新経済社会七カ年計画の基本構想におきましては、先生御承知のような財政現状を踏まえまして、計画期間中に財政収支の改善を進めるということが、経済並びに財政の今後の運営にとりましてきわめて重要な課題であるというふうな認識に立っているわけでございます。そのような認識に立ちまして、財政収支の改善に当たりましては、財政支出合理化を図りますとともに、不足いたします財源につきましては、計画期間中に国民所得に対する租税の負担率を五十三年度の一九・六%から六十年度の二六カ二分の一%程度に引き上げるということを見込んでいるわけでございます。  ただその間におきまして、いま御指摘の計画期間の前半と後半に分けた叙述があるわけでございますけれども、これの趣旨は、計画期間中にわが国経済を安定した成長軌道に乗せていくという基本課題から考えまして、民間経済の活力あるいは民間経済の自律的な回復力がどのように展開していくかという見通しに関連いたしまして、前半はまだやや弱いんではないか、後半の方がやや強くなってくるんではないかという考え方から分けているわけでございますけれども財政収支改善につきましての計画期間内における取り組み方につきましては、ただいま先生が御指摘になりましたような叙述の中で、収支を改善していくということを基本的なねらいにしているわけでございまして、その具体的な中身につきましては、そのときどきのわが国の社会経済情勢の変化、あるいはそのときどきの財政収支の状況等を踏まえながら、そのときどきに具体的に決められていくべきもの、かように承知いたしております。
  273. 安田純治

    ○安田委員 確かに計画の基本構想の十ページには、「昭和五十六年度頃までの計画期間前半においては、」ということになって、「税について、負担の公平を確保しつつ、負担水準の適正化を行い、」云々、「計画期間の後半においては、」また物価の安定への政策的要請が一層強まってくる、これに対処して、「財政はさらに負担の適正化を図り、」こういうような言い方で、二回負担の適正化を図る、前半と後半と分けておりますね。  そこでお伺いしたいのですが、来年度からは六十年度までの計画期間七カ年を、五十四年度から五十六年度までの三年間の前半、五十七年度から六十年度までの四年間の後半部分に分ける、前半でまず増税をする、そして五十七年度からの後半でさらに次の大幅増税をやるという、こういう意味にもとれるのですが、もちろんこれは社会保障負担増にも当てはまることだろうと思うのですが、そういう意味にとってよろしいでしょうか。
  274. 高橋毅夫

    高橋説明員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、計画期間内におけるたとえば財政収支改善につきましての具体的な施策の進め方につきましては、そのときどきの社会経済情勢の変化あるいは財政状況を踏まえて、そのときどきに決めていくべきものというふうに承知いたしております。  先生御承知のように、経済計画と申しますのは政策運営の大筋を示すものでございまして、その具体的な個別の政策内容につきましては、計画において特に具体的にこれを決めるというものではないというふうに承知いたしております。
  275. 安田純治

    ○安田委員 しかし、とにかく負担の増というか適正化を図るということですから、負担の適正化となれば、税か公共料金その他の負担、あるいは社会福祉などこういうものの負担と、それ以外にはちょっと考えられないんで、いずれにしろそういうふうに負担を、前半、後半の二つに分けて適正化を図るという言葉ですが、こういうことをこの構想は言っておると思うのです。  そこで、税負担率の問題をその面から見てみますと、七カ年の間に税負担率を五十三年度の一九・六%から六十年度には二六・五%に六・九%引き上げる、それから社会保障食掛を九%から一一%に二%引き上げる、こういうことになりますね、これを見ますと。それぞれ前半では幾ら、後半では幾ら引き上げるのかという点についてはいかがですか。
  276. 高橋毅夫

    高橋説明員 お答え申し上げます。  前半、後半に分けまして具体的な数値は決めておりません。
  277. 安田純治

    ○安田委員 それはいま基本構想だから言えないんだろうと思いますけれども、正式の経済計画にはちゃんと織り込むつもりであるかどうかということが一つ。それから、六・九%の税負担増の中身を企画庁としてはどんなものを考えているのか、これをもっと具体的にして正式の経済計画に織り込むつもりなのかどうかということをお聞きいたします。
  278. 高橋毅夫

    高橋説明員 お答え申し上げます。  ただいま本案に向けまして、基本構想をさらに詰めまして検討中でございます。なお、本案策定までにおきましては、関係の各省とも十分相談申し上げまして、先生の御指摘の点等も念頭に置きつつ検討を進めさしていただきたいと思っております。
  279. 安田純治

    ○安田委員 いままでの質疑の中で出てきましたように、ずっと基本構想なんか見ておりますと、五十五年度から一般消費税の導入を五%でやるという話が出ておるわけですが、これが私に言わせればいわば前半の大増税の一段階ではないか。そして五十七年度からの後半には、一般消費税の税率引き上げをもって第二段階の大増税をやるということにどうも受け取れるように思いますが、企画庁としてはどうですか。
  280. 高橋毅夫

    高橋説明員 お答え申し上げます。  基本構想の数値につきましては、まだいまの段階ではきわめてラフなものでございますけれども、税負担の問題に関連いたしましては、五十三年度時点の直間比率をおおねむ横ばいということで、全体の六十年度の負担率二六カ二分の一という数字が一応出ているわけでございますけれども、その中身につきましては、いま申し上げたこと以外には特に特定いたしておりません。
  281. 安田純治

    ○安田委員 ぜひ大臣に伺いたいのですが、いま企画庁の方はそういうふうに答弁されておりますけれども財政収支試算の中身、それから基本構想の中身、いま仮定計算の上でですけれども国債費公債金収入に占める割合、こうしたものをずっと総合的に見てみますと、どうもこういうような結論が出てくるんじゃないかというふうに思うわけです。  というのは、昨年十二月の税調で、一般消費税特別部会審議経過報告の三ページにあるようですが、税率のことが述べられておって、税率は導入時は五%が適当、そして財政収支の均衡回復するためには最終的には一〇%程度まで引き上げることが必要である、こういう意見があったというふうに出ておるわけであります。そういうことといまの財政収支試算あるいは国債費の計算等いろいろ照らし合わせてみますと、計画の後半、五十七年度には五%の税率を一〇%に引き上げるという計画にどう見ても入り込んでいく、こういうふうに受けとめるのが常識だと思うが、そうではないんでしょうか。もしそうだとすれば、初めは処女のごとく終わりは脱兎のごとしということで、五%からそろそろ入ってきて結局一〇%、まあそれ以上になるかどうかわかりませんけれども、単に一般消費税どうこうと言うのじゃなくて、この財政収支試算、いろいろなことを見るとどうしても足りないですね。前のこの委員会でも宮地委員だったですかが質問されておりましたけれども、どうも勘定が合わぬのじゃないか、よほど税金をどこかで上げなければ、この九兆一千百億でしたかの増税の幅、一般消費税五%の計算でいくとどうも勘定が合わぬのじゃないかという質問がありましたけれども、ぜひその点お伺いしたい。
  282. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 とりあえず一般消費税の税率をどうするかという問題、いま政府部内において検討中でございますけれども、恐らく一般に言われているように五%ぐらいが適当じゃないかということで結論が出ると思います。  しかし、それは仮に五十五年度に導入した場合のことでございまして、あと計画の後半なり最終年度あたりにどうするかというようなことは、いま予測できる段階でもございませんし、前もこの委員会でも申し上げたかと思いますが、九兆何千億かというあの歳入の増をどういう税とどういう税を組み合わせて埋めていくかというようなことは、これはその年その年で経済情勢も変わってまいりますし、いまから予測できる段階ではないわけでございまして、専門家がおりますから、その専門的な立場での御答弁は主税局からまた申し上げることにいたしますけれども、私自身の気持ちとしては、とりあえず五%でやっていって、あとは私は最終相当ぶった切るつもりでおるのですよ。歳入もまた相当広げなければいけないし、そこら辺のことは、これから経済の実際に即して、財政の実際に当たって検討していかなければいかぬと考えておる次第でございます。
  283. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ただいま導入時の税率を五%として、それ以後一〇%まで上げたらどうだという意見が税制調査会の中にあったということでございますが、この審議経過をお読みいただけば明らかなように、税率水準はおおむね五%程度をめどとして定めることが適当であるという意見が大勢を占めておったわけでございます。もちろん税制調査会でございますから、さまざまな委員からさまざまな御意見が出ることは事実で、その中には、財政収支の均衡回復するためには最終的に一〇%程度まで引き上げることが必要であるとの意見も提起されたということでございますから、決してこれが税制調査会としてのまとまった意見ではないわけでございます。
  284. 安田純治

    ○安田委員 その税調の審議経過を拝見しておりまして、確かにおっしゃるとおりなんですが、そういう意見もあったというその意見の方が、財政収支試算やいまの国債の元利償還の金額、いろいろ照らし合わせてみますと、どうもこういうところに落ちついていくことになるのではないか。そういう意見がただ一つあったというのじゃなくて、そのほかのいまの赤字国債の償還の問題やなんかいろいろ計算してみますと、どうも勘定が足りなくなって、五%から一〇%ぐらいまで引き上げるということにならざるを得ないんじゃないか、そういうふうに読めるんじゃないかと思うわけです。  大臣もとりあえず五%とおっしゃって、五%でずっといくとは決して断言されないわけでして、とりあえずということは非常に含みがありまして、ぼくらから言わせると、まさに前半、後半に分けた基本構想の中で、とりあえずが前半で、その次が後半だということになるのじゃないか、数字の上ではどうもそういうふうに読めると思うのです。ただ大臣はまさか、いや一〇%にしますともおっしゃれないでしょうけれども、とりあえず五%、五%絶対動かさないということは断言されないわけでありますから、計算から見ると、初めは処女のごとく終わりは脱兎のごとしというのをわれわれとして非常に危惧するわけであります。  ところで、時間が来ましたのでこの際大臣に、一般消費税の導入問題について政治的見解を一言伺っておきたいと思います。  現在始まっております地方選、それに今秋予定の衆議院選や来年の参議院選など国民の審判を問う政治の季節に突入していると思うわけであります。一般消費税をめぐって最近、中小商工業団体の反対運動の高まりの中で、政府・与党内部でもさまざまな動きがあるように承っておるわけであります。中小商工業団体から与党の議員に一般消費税反対の陳情申し入れが殺到しているということで、一番やっかいなのは請願書の取り扱いだという。新聞の報道によりますと、十三日の党役員会で対策を協議して、一応預かっておくことにするということでございますし、日本商工会議所でも一般消費税問題特別委員会が初会合を開きまして、全員反対だという意見が出されておる。それで十五日の日商会員総会でも齋藤幹事長が、取り扱いを慎重にと含みのある発言をされておる。いろいろございます。それから十五日、自民党の税調正副会長会議一般消費税の取り扱いを協議して、明確な方針を打ち出さずに、地方選挙中は一時凍結だというような新聞報道も出されておりまして、与党内でも大分トーンダウンしたような報道もあるわけであります。  大臣としてこのような動きをどう認識をお持ちかということ、それから、こういう非常に広範な国民の反対運動がございますので、この運動を無視してあくまで五十五年度実施をあきらめないつもりなのかどうか、この辺をお答えいただきたいと思います。
  285. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いろいろな面でまだ御理解が十分行き届きませんで反対をされておる向きがあることは、重々承知いたしておりますけれどもるる申し上げておるような財政現状でございます。一刻もこの状況を放置するわけにはまいりません。したがいまして、私どもとしては全力を挙げて、中身が詰まり次第、皆様の御理解、御協力をいただけるように最善の努力をしてまいりたい。消費税の導入をあきらめるというような気持ちは毛頭ございませんので、どうか安田さんの方でも全力を挙げて御協力いただきますようにお願いを申し上げます。  それから、法案の提出がおくれておりますのは、全くの事務的な進行状況がおくれております関係でございまして、私どもは中途半端なもので皆様の御判断を仰ぐよりはある程度細かい中身を詰めて、こういうことでやるのですから御心配要りませんよというものを練りに練って御審議をお願いしたい、こういう気持ちでやっておるものですから、さらに細かい詰めを事務当局でやっておっておくれておるというふうに御了承賜りたいと思います。
  286. 安田純治

    ○安田委員 国民の御理解がまだ得られていないというお話ですが、むしろ逆に、国民が理解すればするほどだんだん反対の声が大きくなってくる、こういう実情ではないでしょうか。十五日の日本商工会議所の問題や中小商工業団体のいろいろな申し入れが最近殺到しているということを見ますと、最初に一般消費税導入の騒ぎがあったよりはだんだんそういう声が大きくなって、与党の最も大きな票田だと言われている商工団体の中で火がついたというふうにわれわれは受け取っておるわけでして、こういう税金はぜひ考え直していただきたいというふうに最後に強くお願いをしておきたいわけであります。  実は、租特の審議のときに総理大臣に私が質問をやりましたときに大平さんは、一般消費税導入の前提条件としての不公平税制是正、すべてうまくいったというふうにうぬぼれてはいないという答弁がございました。それは裏から言いますと、まだ一般消費税導入の前提条件が整っておらぬということを総理大臣はこの委員会で言われたと思うのでありまして、その点、そういうことでございますので、ひとつぜひ考え直していただきたいと思いますが、最後にその点、御答弁をお願いしたいと思います。
  287. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 それは前提が全部整っておるとは私どもも決してうぬぼれてはおりませんが、これはことしだけでなくて来年も、来年から実施することなんですから来年の歳入歳出予算の編成におきましても、さらにきめ細かい対策をやって、皆様の御納得がいけるように持っていく、こういうつもりでおります。
  288. 安田純治

    ○安田委員 終わります。
  289. 加藤六月

    加藤委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  290. 加藤六月

    加藤委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。愛知和男君。
  291. 愛知和男

    ○愛知委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案に賛成の意見を述べるものであります。  わが国経済は、ようやく石油危機の後遺症から脱し、安定した成長への道を着実に歩むに至っておりますが、他面、雇用情勢は、いまだ厳しいものがあり、また、国際収支は、その黒字幅のなお一層の縮小が国際的にも期待されているところであります。  こうした中にあって、政府においては、国民生活の安定と経済の適切な成長を図るため、積極的な財政運営を行ってこられました。最近の経済動向を見るにつけても、この財政運営が時宜にかなったものであったと考えますが、その反面、財政収支の不均衡は、ここ数年拡大の一途をたどってまいりました。  このような状況にかんがみ、政府においては、厳しい財政事情のもとでわが国経済を取り巻く内外情勢に適切に対応するとともに、できる限り財政健全化に努めることを基本として、昭和五十四年度予算を編成し、国会に提出しているところであります。  この昭和五十四年度予算については、その歳出面において、まず投資的経費については、国民生活充実の基盤となる社会資本の整備を促進するとともに、景気の着実な回復に資するよう、財源事情の許す範囲内でできる限りの規模を確保することとし、また、経常的経費については、その節減合理化に努め、緊要な施策に重点的に配意しつつも、全体として極力規模を抑制することとされております。  私は、この予算が、着実な景気回復、雇用の拡大等に資するものであるとともに、財政健全化の第一歩を踏み出すものであることを確信するものであります。  他方、この予算の歳入面に目を転じますと、揮発油税等の税率の引き上げを行うとともに、租税特別措置の整理合理化等を一層強力に進められているものの、昭和五十三年度において、五月分税収の年度所属区分を変更したこととの関連もあって、租税及び印紙収入が前年度当初予算額と同額程度しか見込まれず、このため、歳出増加額のほぼ全額を公債の増発によらざるを得ない状況にあります。  このような財政事情にかんがみ、政府においては、昭和五十四年度予算においても、引き続き特例公債発行によらざるを得ないとしておりますが、私もまた、まことにやむを得ないものと考えるものであり、賛成の意を表するものであります。  もとより、このような措置はあくまで特例的な措置であって、特例公債に依存する財政からできるだけ速やかに脱却することが国民的課題であることは、申すまでもありません。そのため、立法府も行政府も一体となって努力をしなければならないことを、この際、私は改めて強調したいと思います。政府においても今後、従来以上に財政収支の改善に全力を尽くされるよう強く要請するものであります。  本法律案におきましては、まず、特例公債発行が、五十四年度の租税収入の動向等にかんがみ、適正な行財政水準維持し、もって国民生活と経済の安定に資するために行われるものである旨が明らかにされております。また、特例公債発行額は予算で定める旨の規定その他所要の規定が設けられております。これらの規定は、従来からの特例公債法と基本的に同様の内容となっておりますが、いずれも事柄の性格に即した適切な立法であると考えます。  以上、私は、昭和五十四年度における特例公債発行が真に必要にしてやむを得ないものであると考えますとともに、わが国財政ができる限り早くこのような特例措置を必要としない状態に復帰できるよう関係者の協力を要請して、本法律案の賛成討論を終わります。(拍手)
  292. 加藤六月

    加藤委員長 大島弘君。
  293. 大島弘

    大島委員 私は、ただいま議題となりました昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案につき、日本社会党を代表いたしまして、反対の意見を申し上げるものであります。  昭和五十四年度一般会計予算歳出規模約三十八兆余りのうち、国債発行額は約十五兆余り、その依存度は約四〇%であって、まさに国債を抱えた財政ではなく、国債に抱えられた財政であり、しかも本法案による赤字国債八兆五百五十億円は、四条国債七兆二千百五十億円よりもはるかに多いのであります。  オイルショック時は各国とも世界的に公債発行がふえておりますが、それ以降各国は節度ある財政政策によりそれが漸減しており、この十五兆二千七百億という大量国債はドル換算で約八百億ドル、まさにイギリス、アメリカ、フランス、西ドイツの国債発行合計額六百八十億ドルをはるかに上回るものであります。  私は以下、このような大量の国債発行わが国財政経済に及ぼす問題点を指摘して、反対の理由を明らかにするものであります。  まず第一に、大量の国債発行財政健全化、民主化に反し、後世の国民にはかり知れない負担を課することとなるのであります。  つまり公債は租税の前取りであり、その負担が一般国民及びその子孫に及ぶものであります。しかもその償還財源は、往々にして一般消費税のごとく安易な間接税に頼ることが多いことは歴史の示すところであり、これが勤労大衆や中小企業の重圧となることは明らかであります。  のみならず、このまま推移すれば、昭和六十年代には国債費歳出予算の二割に達することはほぼ確実であり、財政硬直化を生じ、政策経費が極力縮減されて、財政がその機能を萎縮してしまうことを恐れるのであります。  第二に、国債大量発行インフレの関係であります。  国債発行は、その大部分が金融機関によって消化されるので、結局日銀による買いオペ、すなわちマネーサプライの増加、ひいてはインフレの危険を必然的に含むものであります。このことは、昭和五年、世界恐慌の勃発により深刻な事態に直面した日本資本主義が、この恐慌から逃れるためにとった、赤字国債による積極財政の帰結が、結局戦亀、敗戦、そうしてあの激しいインフレであり、それゆえにこそ戦後、二度とこの誤りを繰り返さないように赤字公債を禁止したのが、財政法四条、五条なのであります。  今回のこの法案は、三十年前の歴史の教訓を忘れ、再び昭和初期の積極財政に復帰するものというべきでありましょう。  第三に、大量の国債発行民間金融に及ぼす影響であります。  国債個人消化状況は、国家に対する信頼のあらわれであるのに、その発行価格実勢価格との間に乖離が生じ、その市中消化もきわめて困難で、結局国債の大半は市中金融機関が保有せざるを得なくなり、これがいわゆるクラウディングアウトとなって民間金融、特に中小企業金融や庶民金融を圧迫することとなるのであります。  スミスやリカルドによって、公債は資本の蓄積を阻害し、子孫にもはかりがたき負担を残すという教えを知ったイギリスは、賢明にも安価な政府と中立的租税政策によって、その公債発行額を絶対的にも相対的にも減少させてきたのであります。逆に日本では、赤字国債によってまで高価な政府の樹立を試み、いささかもそれから脱皮しようとしないのみならず、その償還財源として、不公平な大衆課税の典型である一般消費税をもってこれに充てようとしているのであります。  政府は、オイルショック以降も節度ある財政政策を捨て、安易な赤字公債をもってする放漫財政の結果が今日の構造的不況をもたらした責任を反省し、いまとなって国民に何をなすべきかを問う前に、まずみずから何をなすべきかを国民に示すのが正論であることを申し添えまして、反対の討論といたします。(拍手)
  294. 加藤六月

    加藤委員長 坂口力君。
  295. 坂口力

    ○坂口委員 私は、公明党・国民会議を代表して、ただいま議題となりました昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案について、反対の態度を表明し、討論を行うものであります。  まず私は、いわゆる赤字国債発行に対する基本的態度について述べます。  私は、財政現状から見て、赤字国債発行を頭から否定したり、単純に罪悪祝するものではありません。特に、現下のように財政経済がともに不均衡状態にある場合は、国民生活に優先しながら不均衡回復を図る観点から、節度を持って赤字国債発行運営、管理等を行うことはやむを得ない点もあると考えるものであります。  しかし、われわれがさきに述べた基本的認識に立つとしても、なおかつ、政府赤字国債発行については多くの問題点が残っていると考えるものであります。  その問題点について、以下、要約して述べたいと思います。  第一は、本法案による赤字国債発行額は予算の議決をもって決定されるものとなっておりますが、政府予算案は、われわれが予算審議の過程で指摘したように、当面の重要課題である景気回復財政再建、国民生活の防衛等から見て、いずれも不十分と言わざるを得ないのであります。  この点についてわれわれは、予算委員会で、経済安定成長の定着及び国民生活の防衛、向上の観点から、政府予算案に対し、雇用対策強化、年金の増額、住宅、社会福祉対策の充実、減税、不公平税制の是正等を内容とする組み替え動議を提出していることからも明らかであります。  第二は、赤字国債発行をできる限り抑制するための前提となる不公平税制の是正及び行政改革、歳出の節約が、表面的な措置で済まされていることであります。  税制改正について、政府が長年の懸案であった社会保険診療報酬課税の特例の是正、交際費課税の強化価格変動準備金の縮小等租税特別措置の整理合理化、貸倒引当金の繰入率の引き下げなどについてある程度措置をされたことは、これらがわれわれの要求でもあったことから一応の評価をするものであります。しかし、その内容は、まだまだ満足すべきものではありません。  また、利子配当所得の分離課税を初め、法人税の各種引当金、法人擬制説の児直しなど多くの不公平税制が残されており、不十分と言わざるを得ないのであります。  さらに政府は、行政改革についても、それが国民の強い要望であるにもかかわらず、単に経常経費の伸びを抑制したことで事足れりとし、各種補助金、特殊法人等を初め、制度改革についてはその姿勢さえ見えないのが実情であります。  第三は、政府は、公債管理政策の整備について積極的とは言えない面があります。  大量の国債発行インフレ民間資金需要の圧迫、財政硬直化を招く危険性があることは、かねてより指摘しているところであります。  こうした国債発行に件う弊害を未然に防ぐため、国債種類の多様化、公開入札発行の徹底、公社債市場自由化など公債管理政策の確立は急務であります。  これに対処する政府の施策は、国債種類の多様化と公開入札で従来からの発行ものに二年ものと四年ものを加えてはいますものの、昭和五十四年度国債発行予定額赤字国債八兆五百億円を含め、十五兆二千七百億円にもなっているのに対し、その一七・七%の二兆七千億円にすぎません。  確かに従来のように全額シ団の引き受け、長期債から比べますと進展とは言えるかもしれませんが、その実体は御用金調達方式であり、まだ国債管理政策が整備されたとは言いがたいものであります。  第四は、政府が当面する赤字財政から脱却する方途を明確にしていないことであります。  政府は、財政再建について、大蔵省提出の財政収支試算に見られるがごとく、単に一般消費税の導入など大増税を画策するのみで、経済計画との整合性を初め、歳出、歳入の具体策などを織り込んだ中期財政計画を提出しようとはしておりません。  また、政府財政再建は、財政均衡回復のみを目的としたもので、その後の赤字国債の償還計画等については触れていないのであります。  こうした政府財政政策とその運営の姿勢は、長期的視点から見るならば、引き続く大増税など経済や国民生活に犠牲を強要することになりかねないのであります。  私は、以上申し述べました理由から、政府のいわゆる赤字国債発行に対する態度は、総合的な立場で見ると安易な一面が見られ、それを認めるいわゆる財政特例法案については反対せざるを得ないのであります。  以上をもちまして、私の討論を終わります。(拍手)
  296. 加藤六月

    加藤委員長 安田純治君。
  297. 安田純治

    ○安田委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案に反対の討論を行います。  第一に、本法案が今日の財政破局をさらに拡大する点であります。  今日の財政危機の原因は、政府が一貫してとり続けてきた大企業本位の税財政政策にあることは、もはや周知の事実であります。しかるに政府は、依然としてその根源にメスを入れないばかりか、適正な是正策さえ示さず、大量の国債発行を続け、財政危機をますます深刻化させているのであります。  本法案は、一般会計予算の三九・六%と戦前の異常な時期を上回る史上空前の依存度となる十五兆二千七百億円の公債発行を保障しております。政府みずからが定めた歯どめをも三たび踏みにじり、諸外国に例を見ないこのような大量国債発行を恒常化し、財政の破局的事態をさらに激しくする本法案は、断じて容認できないのであります。  第二は、本法案が一般消費税を初めとする国民への大増税への道を進める点であります。  国債の連続大量発行のもとで累積残高は一段と増大し、来年度末で五十九兆円、昭和六十年度で百四十兆円が予定されておりますが、政府はこの償還をすべて国民に負担させようとしております。  政府は、財政再建の重要なポイントであり、また不況を除去する不公平税制の抜本的是正、大企業、大資産家向けの特権的優遇税制の適正化への努力を十分に進めることなく、有無を言わせぬ国民への大増税、最悪の大衆課税である一般消費税の早期導入の方向に進もうとしております。本法案は、それに道を開くものであり、とうてい承服できないのであります。  第三は、福祉予算など国民向け支出を圧迫する点であります。  来年度国債費は、前年度比二六・一%で四兆円を上回り、社会保障関係費の半分以上に達し、予算の一割以上が国民生活にも経済の発展にも何ら役立たない非生産支出として先取りされているのであります。  今後、国債費の急膨張が政府予算二分割方式と相まって国民生活擁護のための支出を圧迫することは明らかであります。いまこそE2Cなど軍事費支出や大企業向けの不要不急経費を削って国民生活の防衛に回すべきであります。  第四に、本法案が民間資金を圧迫し、財政インフレの危機を一層強める点であります。  昨年夏以降、そして最近の新規発行の困難な事態の発生は、まさに政府国債大量発行政策の破綻を示したものにほかなりません。  国債を含めた公共債残高は、来年度末で百十六兆円、実に国民総生産の約半分にも達し、これが国民経済の撹乱要因として迫ってきております。  しかるに政府は、新規国債で約十四兆円、公共債全体で二十兆円以上を来年度市中消化しようとしておりますが、これが民間金融市場を圧迫することは必至であります。現に兆候を示している事業債の減額など民間資金需要への圧迫は、景気の好転があれば日銀の関与を不可避とするインフレ直結の金融政策への移行の危険をはらむものであることは、火を見るより明らかであります。  以上述べたように、本法案は、どんな理由をつけようとも絶対に容認できないものであります。  いま必要なのは、今日の構造的不況、さらに財政危機をもたらした大企業本位の経済財政政策を国民本位に切りかえるとともに、大量の赤字国債増発政策をやめ、税財政の改革を進めて、国民生活の擁護と財政再建への第一歩を踏み出すことであります。  以上、本法案に反対の態度を表明し、討論を終わります。
  298. 加藤六月

    加藤委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  299. 加藤六月

    加藤委員長 これより採決に入ります。  昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  300. 加藤六月

    加藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     ―――――――――――――
  301. 加藤六月

    加藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブを代表して、池田行彦君外四名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。池田行彦君。
  302. 池田行彦

    池田(行)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、提案の趣旨を御説明申し上げます。  わが国財政は、五十年度以降、国民生活の安定と経済回復を図るため、公共投資を積極的に拡大するなど、最大限の努力を払ってきておりますが、その結果、最近の経済情勢は、全体として緩やかながらも、ようやく着実な拡大傾向を続けているものと見られるに至っております。  しかしながら、この間、財政収支の不均衡は異常に拡大し、五十三年度末における公債残高は四十三兆円余に上り、そのうち、特例公債の残高が十五兆円を超えようとしているのであります。  さらに、五十四年度予算におきましては、四条公債発行額を上回る八兆五百五十億円に及ぶ多額の特例公債発行を余儀なくされており、公債依存度も三九・六%という異常な水準に達しております。  本附帯決議案は、このような状況に顧み、厳しい財政事情のもとではありますが、できる限り財政健全化を推進することが緊要な課題であるとの考え方から、国債大量発行に伴う財政金融政策上の諸施策の改善、見直し等について、引き続き努力を重ねられるよう、政府に強く要請するものでありまして、案文の朗読によって内容の説明にかえさせていただきます。     昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について十分配慮すべきである。  一 速やかに健全財政回復するため、財政収支の改善に全力をつくすとともに、極力国債発行額を圧縮し、できる限り早期に特例公債依存の財政から脱却するよう努めること。  二 国債は将来の国民の負担となるので、償還財源の確保に努め、償還に支障のないようにすること。また、財政支出に当たっては不要不急経費を削減するとともに、補助金行政を洗い直すなど、抜本的な行財政改革を進めること。  三 財源対策としては、負担の公平化に一層努力し、大胆な税制改革を行い、中長期にわたる基本的展望に基づいて見直しを行うこと。  四 国債発行地方債発行並びに民間資金需要を圧迫することのないよう十分留意すること。  五 国債個人消化を一層促進するとともに、国債発行形態の多様化・発行条件弾力化、公社債市場の整備拡充等、国債管理政策の確立に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  303. 加藤六月

    加藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく附帯決議を付するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  304. 加藤六月

    加藤委員長 起立多数。よって、本動議のごとく附帯決議を付するに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。金子大蔵大臣。
  305. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って十分配慮をいたしたいと存じます。     ―――――――――――――
  306. 加藤六月

    加藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  307. 加藤六月

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  308. 加藤六月

    加藤委員長 次回は、来る四月十一日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時六分散会