○田中(敬)
政府委員 数字的、科学的な根拠というのはしかと決め手というものはございませんが、後ほど御
説明いたすことといたしまして、今回の
金利改定に当たりまして
考えましたことは、
一つは、市場実勢を尊重するというたてまえ、それから二つには、現下の経済
運営の基本方針に顧み、他の長期
金利に影響を与えないような形での
金利改定であるべきであろうということ、それからやはりこの
金利改定というものが
国民の
税負担に及ぼすいわゆる
財政負担への影響、それとまた、これも
一つの大きな背景でございますが、二番目に申し上げました現下の経済
運営の基本的方向を損わない、いわゆる内需を拡大し、景気の回復を促進していくということが要請されております国際環境、そういうものを頭に置きながら、一月、二月、実勢というものがどういうものであろうかということを追求したわけでございます。
大まかに申しますと、けさほ
ども御
説明申し上げましたとおりに、ある程度長期資金需給のバランス、
金利の底打ち感というもので何らかそこに実勢的に
金利が上がるあるいは上がってしまったという要因があるけれ
ども、それにさらに加速して余分なもの、すなわち
金利の先高感というものが付加されておる。その
金利の先高感というそういう心理的要因のものだけは、この改定に当たって外さなくてはならないという基本的な
考えで取り組んだわけでございます。
いろいろ算定方式がございますけれ
ども、いま店頭気配あるいは上場気配ということで一般に発表されております
国債の利回りと申しますものは、いわゆる日本式利回り計算法に基づきます。日本式利回り計算法と申しますのは、いわゆるクーポンレートを流通価格で除したものに、かつ、流通価格と
償還額、すなわち流通価格が九十五円であるとしますと、
償還は百円が保証されておるわけでございますから、その差額の五円というものが毎
年度均等に入ってくるという仮定計算をしたものを加えております。これが日本式利回り計算でございますので、この計算によりますと、オーバーバーあるいはアンダーパーの部分が非常に大きくなりますと、
金利というか表示される利回りが非常に高くあるいは低く過度に表示をされるという形の利回り計算法でございます。
これに対しまして、一般的に単純な投資家の
金利計算というものは直利方式という形で計算をいたします。これは流通価格が九十五円のもの、それに六・一%のクーポンレートがついておれば、九十五円投下したらそれが幾らの利回りで回るかということで、いわゆる六二%を九十五円で割るわけでございます。これが直利方式と申します。そういう計算
方法もございます。
今回とりました計算というのは、先ほど申しました日本式利回り計算法、現在表示されております計算とこの直利との間というものがほぼ妥当な利回り計算ではなかろうか。と申しますのは、そういう利回り計算をいたしております例といたしまして、戦前の日本の
国債の利回り計算もそのようにいたしておりましたが、現在欧米諸国で行われておりますいわゆる欧米式流通利回り計算法というのがございます。これは先ほど申し上げました直利あるいは日本式利回り計算法に、さらに年々二回で分括払いになっております利息を複利で運用するということを加えた計算
方法でございます。大体この計算
方法でございますと、直利と日本式利回り計算法の間のところへ利回り計算の数値がはまってまいります。
こういう三つの
金利をまず横に並べて比較をしてみる。それと同時に、一月、二月、
条件改定が叫ばれまして、この実勢を二カ月かかって見たわけでございますが、一月、二月の平均的なものにそれらの三種類の計算方式をとった場合どうなるか。あるいはまた、六・一%
国債というものが低クーポンなるがゆえに非常にいや気が差されまして極端な値下がり現象を起こしたわけでございますが、六・六%クーポンものあるいは八%クーポンもの、あるいは他の
国債以外の同種期間の債券の利回りというものの比較計算をしなくてはならないということで、いま三種の計算
方法を、
国債につきましては六・一、六・六、八%クーポンもの、現在市場にありますそういうものをいずれもとってまいりまして二カ月平均をとってみますと、乖離幅が大体〇・四ないし〇・五のところへ収斂されたわけでございますので、私
どもとしましては〇・四というのはそういう数値からとったわけでございます。
ただ、これに対しましては一部批判が出ていることも事実でございます。と申しますのは、流通利回りというものは直近時点、かつまた、いま
金利が、あるいは
国債の値段が日々下がっている
段階において、過去二カ月の平均をとったんでは、その時点における実勢ではないんではないか、先行きさらに価格が下がりそうな、
金利が上がりそうな、そういう時点で平均をとるという
問題点を御指摘される向きもございます。しかし、これはけさほど申し上げましたように、二月の十日前後から急速に先
高金利期待感という要因が入っておりますので、改定時、三月六日にシ団に提示をいたしました時点ではその心理的要因を外さなくてはならない。そういう
意味では私
どもは、過去一月、二月の平均値をとってそれを参考にした数値というのがやはりある程度実勢に近いものと言い得るということで、〇・四という数値を算定したわけでございます。