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1979-03-14 第87回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年三月十四日(水曜日)     午前九時四十七分開議  出席委員    委員長 加藤 六月君    理事 稲村 利幸君 理事 小泉純一郎君    理事 高鳥  修君 理事 綿貫 民輔君    理事 佐藤 観樹君    山田 耻目君    理事 坂口  力君       愛知 和男君    池田 行彦君       江藤 隆美君    小渕 恵三君       越智 伊平君    大村 襄治君       後藤田正晴君    佐野 嘉吉君       羽田  孜君    本名  武君       三塚  博君    村上 茂利君       山崎武三郎君    山中 貞則君       伊藤  茂君    池端 清一君       沢田  広君    只松 祐治君       美濃 政市君    村山 喜一君       貝沼 次郎君    宮地 正介君       永末 英一君    安田 純治君       中川 秀直君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 金子 一平君  出席政府委員         経済企画庁物価         局審議官    坂井 清志君         大蔵政務次官  林  義郎君         大蔵大臣官房審         議官      米里  恕君         大蔵省主計局次         長       吉野 良彦君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省理財局長 田中  敬君         大蔵省証券局長 渡辺 豊樹君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君  委員外出席者         大蔵省銀行局銀         行課長     平澤 貞昭君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 三月十四日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     越智 伊平君   小渕 恵三君     三塚  博君   森  美秀君     羽田  孜君   高橋 高望君     永末 英一君   永原  稔君     中川 秀直君 同日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     宇野 宗佑君   羽田  孜君     森  美秀君   三塚  博君     小渕 恵三君   永末 英一君     高橋 高望君   中川 秀直君     永原  稔君 同日  委員中村直君及び川口大助君が退職された。     ————————————— 三月十四日  次の議案の提出者川口大助議員退職につき  次のように訂正する。  法人税法の一部を改正する法律案村山喜一君  外八名提出、第八十回国会衆法第一五号)  土地増価税法案村山喜一君外八名提出、第八  十回国会衆法第一七号)  銀行法の一部を改正する法律案村山喜一君外  八名提出、第八十回国会衆法第四三号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案山田  耻目君外八名提出、第八十四回国会衆法第五  号)  所得税法の一部を改正する法律案山田耻目君  外八名提出、第八十四回国会衆法第一八号)  国税通則法の一部を改正する法律案山田耻目  君外八名提出、第八十四回国会衆法第一九号)     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  賠償等特殊債務処理特別会計法を廃止する法律  案(内閣提出第二六号)  国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第三六号)  昭和五十四年度公債発行特例に関する法  律案内閣提出第一号)      ————◇—————
  2. 加藤六月

    加藤委員長 これより会議を開きます。  賠償等特殊債務処理特別会計法を廃止する法律案及び国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  両案につきましては、昨十三日質疑を終了いたしております。  これより討論に入るのでありますが、討論申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、賠償等特殊債務処理特別会計法を廃止する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 加藤六月

    加藤委員長 起立総員。よって、本案原案のとおり可決いたしました。  次に、国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 加藤六月

    加藤委員長 起立総員。よって、本案原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  5. 加藤六月

    加藤委員長 ただいま議決いたしました国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び日本共産党革新共同を代表して小泉純一郎君外四名より、附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  この際、提出者より趣旨説明を求めます。小泉純一郎君。
  6. 小泉純一郎

    小泉委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表してその趣旨を簡単に御説明申し上げます。  今回の改正は、最近における国家公務員の旅行の実情等にかんがみ、旅費の定額の改定及び特別車両料金等支給対象者範囲縮小等を行うものであり、時宜に適した措置でありますが、この際政府は、次の諸点につきましてなお一層の努力を払い、公務が円滑に遂行されるよう配慮すべきであります。  以下、案文の朗読により趣旨説明にかえさせていただきます。     国家公務員等旅費に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、左記事項について措置すべきである。  一、公務員の出張中の公務災害の認定にあたつては、脳疾患心臓病等についても、検討すること。  一、宿泊料の甲地、乙地区分については、宿泊施設交通機関状況等を勘案して、検討すること。  一、日額旅費支給対象者支給条件支給方法等について、検討すること。  一、特別車両料金等支給対象者については、財政状況推移等を勘案して、その適正化に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  7. 加藤六月

    加藤委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  お諮りいたします。  本動議のごとく附帯決議を付するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 加藤六月

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。金子大蔵大臣
  9. 金子一平

    金子(一)国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては、御趣旨を体しまして十分検討いたしたいと存じます。     —————————————
  10. 加藤六月

    加藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 加藤六月

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  12. 加藤六月

    加藤委員長 次に、昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案議題といたします。  政府より提案理由説明を求めます。金子大蔵大臣
  13. 金子一平

    金子(一)国務大臣 ただいま議題となりました昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  昭和五十四年度予算編成に当たりましては、厳しい財政事情のもとで、経済情勢に適切に対応するとともに、できる限り財政健全化に努めることを基本とした次第であります。  まず、歳出面では、投資的経費について、国民生活充実の基盤となる社会資本の整備を促進するとともに、景気の着実な回復に資するよう、財源事情の許す範囲内でできる限りの規模を確保することとする一方、経常的経費については、その節減合理化に努め、緊要な施策に重点的に配意しつつも、全体として極力規模を抑制することといたしました。  歳入面では、揮発油税等の税率の引き上げを行うとともに、租税特別措置整理合理化等を一層強力に進めることといたしましたが、昭和五十三年度において五月分税収年度所属区分を変更したこととの関連もあって、租税及び印紙収入が前年度当初予算額同額程度しか見込まれず、歳出増加額のほぼ全額を公債の増発によらざるを得ない状況にあります。  このような財政事情にかんがみ、前年度に引き続き、昭和五十四年度においても、同年度特例措置として、財政法規定により発行する公債のほかに、特例公債発行によらざるを得ないと考えます。  このため、昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案提出する次第であります。  しかし、このような措置はあくまで特例的な措置であり、特例公債に依存する財政からできるだけ速やかに脱却することが財政運営の要諦であることは申すまでもありません。政府としては、引き続き、財政健全化を図るため全力を尽くす決意であります。  以下、この法律案内容について御説明申し上げます。  まず、昭和五十四年度一般会計歳出財源に充てるため、予算をもって国会議決を経た金額の範囲内で、特例公債発行することができることといたしております。  次に、租税収入実績等に従って、特例公債発行額調整を図るため、昭和五十五年六月三十日まで特例公債発行を行うことができることとし、あわせて、同年四月一日以後発行される特例公債に係る収入は、昭和五十四年度所属歳入とすることといたしております。  また、この法律規定に基づき、特例公債発行限度額について国会議決を経ようとするときは、その公債償還の計画を国会提出しなければならないこととしております。  なお、この法律に基づいて発行される公債については、償還のための起債は、行わないものとしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  14. 加藤六月

    加藤委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  15. 加藤六月

    加藤委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、ただいま議題となっております本案について、参考人出席を求め、その意見を聴取することとし、その日時及び人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 加藤六月

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  17. 加藤六月

    加藤委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。池端清一君。
  18. 池端清一

    池端委員 財政特例法質疑に入る前に一、二、法案の取り扱いの問題についてお尋ねをしたいと思うのであります。  さき大蔵省の御説明によりますと、税理士法の一部を改正する法律案については今後提出検討するということでございましたが、この改正案については今通常国会提出されるのかどうか、その辺の事情を承りたいと思います。
  19. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昭和三十九年に税制調査会の答申を受けまして税理士法改正法案を当委員会に御提出したわけでございますが、御審議の結果、四十年に廃案になって、そのまま今日に及んでおります。  税務行政現状からいたしますと、税務行政の第一線の運営が非常に公正、円滑に図られるということが何よりも必要でございまして、そのためには納税者方々はもちろん、税務行政にとりましてもまた税理士方々にとっても、実益があって客観的に改正に値する妥当な内容のものを盛った税理士法改正ということが必要であろうというふうに思うわけでございます。  そこで現在、いろいろな方面がございますが、税理士業界を初めとして関連の各専門業界、それから関係の各方面、御理解を得るようにいろいろ努力しておるわけでございますが、各方面の御理解が得られますならば、税理士法改正を行うという方向で検討を進めております。  ただその具体化に当たりましては、税理士業界内部の意思の統一ということが不可欠の条件でございますから、したがいまして、日税連を初めとする関係の団体との調整が必要というふうに思っております。現在その調整を鋭意進めておるところでございまして、調整がつき次第、法案の形で御提出することになると思いますが、現在のところ、その時期それからその内容等について、この席でお答えするまでに熟しておらないわけでございます。
  20. 池端清一

    池端委員 きょうは、その内容について議論するという考えは毛頭ないわけでありますが、この問題については、各界各方面から広範多岐意見が寄せられておりますので、十分大蔵省としてもこの問題について慎重に対処をしていただきたいということをお願いをしたいと思うのであります。  次に、これは提出検討するという法案ではございませんでしたが、本委員会でもこれまでいろいろ問題になってまいりました例のサラ金対策法案といいますか、法案の名前は貸金業法とかいろいろございますが、この問題については、どういうふうに対処されようとしているのか、その点をお尋ねをしたいと思います。
  21. 徳田博美

    徳田政府委員 お答えいたします。  サラ金問題につきましては、社会的に非常に大きな問題になっておりますし、幾多の被害者も出ているところでございますので、大蔵省としてはこれに対して厳しい規制を行っていきたい、こう考えているわけでございます。  ただ、この問題は御承知のとおり、単なる金融の問題だけではございませんで、いろいろ暴力による取り立てであるとか高金利規制であるとか、いわゆる社会秩序の維持に関することもございますので、関係する六省庁の間で話し合っているわけでございます。関係する六省庁の間のいろいろな話し合いにつきましては、今度の国会において何らかの形で立法措置が講じられ、規制が強化されるべきであるということについては意見が一致しているわけでございます。そういう意見の一致のもとにいま細かい点を詰めているわけでございますが、今後立法いたします場合には問題点は三つあると思うのでございまして、一つは、高金利規制の問題、それから一つは、現在は貸金業者届出制で事実上の野放しになっておりますが、これを登録制に切りかえる問題、それから三番目は、暴力による取り立てのような行為規制を行う問題、この三つの問題がございます。  このうちの二番目の登録の問題、あるいは行為規制の問題については、ほぼかなり成案を得ているわけでございますが、金利規制の問題につきましては、まだ若干いろいろ技術的な点で詰めが残っておりますので、その検討を急いでいるわけでございまして、今国会において何らかの形で提案が行われ、立法が行われることを期待しているわけでございます。
  22. 池端清一

    池端委員 それでは次に、一般消費税法案の問題についてお尋ねをいたします。  二月十五日の本会議におきまして、私はこの問題について反対の立場から総理並びに大蔵大臣の見解をただしたところでございます。その際総理は、「われわれも、いきなりこういう一般消費税のような大口歳入確保お願いする税制をすぐ御審議をいただこうとは思っていないのであります。歳出歳入を通じまして御理解をいただく十分の前提条件をつくり上げた上で、この問題についての御理解を得たいと考えておるわけでございまして、明年度までにそういう状況をつくり上げるべく、論議を深めていただきたいとお願いをいたしておる次第でございます。」こういうふうにお答えになっておるわけであります。  そこでまずお尋ねをしたいのは、現段階で、総理が言われたように、歳出歳入を通じて十分な前提条件がつくり上げられているというふうに御理解なさっているのかどうか、その点をまずお尋ねをしたいと思います。
  23. 林義郎

    ○林(義)政府委員 池端さんの本会議での御質疑は、私も注意深く聞いておりました。  基本的な考えとしては、税負担の一般的な引き上げというのは国民理解を求めなければならないことは当然のことでありますし、その前提として、歳出合理化税負担公正確保に従来にも増して厳しい態度で取り組み、政府みずからが財政健全化に取り組む決意と姿勢とを、具体的な事実をもって国民に示さなければならないことは当然のことだと考えております。  このために、歳出節減合理化につきましては、今年の予算におきましても種々の努力を払ったところでございます。また、税負担公正確保につきましても、格段努力を払っておりまして、先般当委員会で御審議いただきました租税特別措置法の中にもありますように、社会保険診療報酬制度の是正の問題、有価証券譲渡益課税の強化の問題、また、価格変動準備金段階的整理を初めとする諸般の整理合理化をしたわけでありますが、こうした形で政府としては精いっぱいの努力を傾けておるところでございます。  こうした意味で、国民各位の御理解と御協力を得てやるというのがわれわれの基本的な態度でございまして、今回済んだからということではありません。今後もそういった形で歳出内容効率化を推進していくことをやっていかなければならないだろう、こういうふうに考えておりますし、税制につきましても、負担公平確保の見地から、将来にわたりましても努力をしていかなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。そうしたことで、今後国民理解を求めながら、一般消費税を五十五年度のできるだけ早い時期に実現するようにいろいろな準備を進めているというのが現状でございます。
  24. 池端清一

    池端委員 そのお答えはいままでもしばしばお聞きをしていることでありまして、私はもっと具体的にお尋ねしているわけであります。総理は十分な前提条件がつくり上げられて初めてこの問題について対処したい、こういうふうに言われておるわけなんで、いま格段努力であるとか、精いっぱいの努力をしているということは言われました。現段階で果たして総理が言われておるような十分な前提条件が醸成されているというふうに御理解なさっているかどうか、端的にお尋ねをしておるわけです。
  25. 林義郎

    ○林(義)政府委員 端的にお答え申し上げます。  前提条件でございますから、いま申し上げましたようなことで、条件がだんだんやってきている。ただ、法案でございますし、私は大変な大法律だと思いますから、その方の準備もあるということも御理解をいただきたい、こういうふうに考えております。
  26. 池端清一

    池端委員 いま次官がいみじくも言われましたが、大変な法律のようですね。一般消費税という法案をつくるにしても、所得税法一つつくるようなかなり大がかりな大規模なものになるというようなことでございます。そういうことであれば私どもとしては、今日まだ本当に国民のコンセンサスを得られるような前提条件というものはきわめて不十分だ、こう思うわけであります。しかもいま言われたように膨大な法律ということであれば、少なくとも今度の通常国会には、この一般消費税法案提出されないもの、こういうふうに理解してよろしいかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  27. 林義郎

    ○林(義)政府委員 この国会に出すかどうかという御質問でございますが、いま申しましたように大変な大法律である、しかもいろいろな点で問題があり、先生のこの前の御指摘もありましたように、まだなかなか野党の御理解までいただいていない点もあるように思います。そうした意味で、やはり前広に法案内容につきまして政府考え方を示してやるということは、これまた必要なことだろうと思います。国民理解を求める意味におきましても、政府はこう考えているのだということの案を示しまして、それでいろいろ議論をしていただくことも一つ方法ではないか、こういうふうに考えておるわけでございまして、関係方面の御意見を承っていま内部詰めをやっているところでございますし、いつこれを提出するかということにつきましても、いろいろな方面意見調整や、さらには、先ほど申しましたような大法律でございますから、法制局でも相当に時間がかかる、こういうこともございます。そういったことでございまして、いまの段階では、この国会に出すとかどうとかいうことを申し上げることはちょっと控えさせていただきたい、こういうふうに考えております。
  28. 池端清一

    池端委員 再三総理答弁を引用して恐縮ではございますが、いきなりこういう大口歳入確保を図る税制についてすぐ審議をしてもらおうとは思っていない、十分な前提条件をつくり上げた上で理解を得たいと思っている、明年度までにそのような十分な前提条件をつくり上げたい、こう思っているのだ、こういう趣旨答弁でした。この答弁を素直に解釈するならば、今度の国会にいきなり法案提出するということはよもや考えておられないというふうに私ども理解をするわけであります。しかも、今度の国会の会期は五月二十日まででございます。御承知のように統一地方選挙もございますし、さらにまた、大蔵委員会に付託されている法案も、きょう二件上がりましたけれども、あとこの財特も含めて五本ある。さらに先ほどのお話では、税理士法の問題、あるいはサラ金問題等も予定されている。こういうことであるならば、物理的にもこの法案審議というものは不可能だというふうに私は判断をするわけなんですが、どうもいまの次官の話を聞いていると、奥歯に物がはさまって、はっきりしないのでありますよ。やはりこの問題は、非常に国民の関心の高い問題なんです。単に大蔵委員会のやりとりではなしに、もっと国民政府態度を明らかにするという立場から、国民に向かって物を言うという形で、国民はいま政府としてはどう考えておるのかということが一番聞きたいところなんですから、その辺もっと端的にお答えいただきたい、こう思うのです。
  29. 林義郎

    ○林(義)政府委員 池端さんのお話でございますが、財政がこれだけ大変なときである。当委員会におきましてもいろいろと御議論をいただいておるところで、将来にわたりましての財政危機を何とか解決するためには、やはり増税ということが必要であろう。その一つのあり方としまして、一般消費税というものをいろいろ考えておるわけでございまして、大蔵省当局といたしましては、できるだけ早い機会に当委員会でも御議論いただきたい、こういうふうな気持ちであることは御理解をいただけるんだろうと思います。その時期を、この国会に出すかどうかということにつきましては、まだまだいろいろの中で、政府部内でも調整をしていかなければならない点があるということで、私の方としては、できるだけ早くお願いをしたい、またそれが一つには国民の御理解をいただける一つ方法ではないだろうかというふうにも考えておるところでございます。
  30. 池端清一

    池端委員 これ以上お尋ねをしても、ガードが固くて余り物を言わないようでありますから、これ以上この問題に突っ込んで申し上げるということは差し控えたいと思いますけれども、少なくともやはりこの種問題は、小細工を弄してやるべき問題ではない、こう思うのですよ。そういう意味から、態度をはっきりとしてこれは国民の前に明らかにしていくべきだということを私は強く申し上げておきたいと思います。  次に、この財政特例法の問題でございますが、これまた私はさきの本会議国債消化の問題についてお尋ねをいたしました。その中で、五十四年度国債並びに地方債等公共債発行額は二十六兆円に及ぶ。今年度、五十三年度国債消化がいろいろ問題がある。そのさなかにまた二十六兆円ものこの公共債発行が予定されているということは、消化に大変な問題が出てくるのではないかという立場からお尋ねをしたのでありますが、新聞報道等によりますと、三月六日に十年もの国債表面金利を現行六・一%を六・五%、〇・四%引き上げるということをお決めになって、九日の国債発行世話人会で正式に決定した、こういうふうに聞いておるわけでございますが、この辺の事情について本委員会でも明らかにしていただきたいと思います。
  31. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 委員お話しになりましたように、大蔵省といたしましては、一月以降の国債相場の下落、公社債市場の一般的な値崩れに対応いたしまして、実勢を把握すべく一月、二月その行方を見守ってきたわけでございますが、ある程度の見きわめがつきましたので、三月六日に大蔵省の判断を引受シ団に示しまして、大蔵省としてはこの際、国債金利をクーポンレートで〇・四上げるということにしたいがどうかということでシ団と協議を開始いたしまして、協議の結果三月九日に、シ団の世話人会と申しまして、例月大蔵省と引受シ団で翌月の発行額並びに翌月の発行条件について適宜協議をしておりますが、その定例の世話人会におきまして協議が調いまして、〇・四%の引き上げと七千億円の三月国債発行ということがシ団との間で了承されたわけでございます。
  32. 池端清一

    池端委員 今回の〇・四%の金利引き上げによりまして、国債費の増加額というのは幾らになるのでしょう。
  33. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 〇・一%上がるといたしますと、来年の発行額が予定どおり十五兆二千七百億、かつ、来年の上期におきます発行額が十五兆二千七百億の六〇%という前提で計算をいたしますと、約百五十億円の利子負担増になります。  なぜそういうふうになりますかと申しますと御承知のように、国債の利払いは年二回支払うことになっております。五十四年度中に利払いの参ります五十四年度発行国債と申しますのは、五十四年度の上期に発行した分の半年分の利息にいうことになりますので、いま申し上げたような百五十億の金額になるわけでございます。
  34. 池端清一

    池端委員 五十四年度利子負担増は百五十億になる、こういうことでございますね。これはどういう扱いになるのでしょうか。もうすでに予算も衆議院段階では決まって、いま参議院で審議中でございますが、この国債費増加の扱いといいますか処理といいますか、その辺どういうふうにお考えになっておるのですか。
  35. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 ただいま申し上げましたように、〇・四の引き上げで百五十億円これだけとってみますと利払い費が増加いたすことになりますが、国債の利払いと申しますのは非常に多くの変動要因がございます。ただいま申し上げましたように、五十四年度におきましては上期六〇%の発行を予定して一応利払い費の計算がしてございますが、過去、上期に幾ら国債発行したかという実績を見ますと、過去四年の平均で見ますと、六〇%近くなっておりますが、五三%の年、五六%の年というふうにいろいろございます。金融の繁閑によりまして上期、下期の発行を仕分けるわけでございますので、そういう点で、上期に幾ら発行するかということによりまして支払い利息の変動要因が出てまいります。  支払い利息の変動要因といたしましては、いま申し上げました上、下の発行割合、それから金利の上下、この金利の上下も、ただいまは上がる場合でございますが、将来の金融動向を予測しまして下がることがないとも言い得ないという要因もございます。さらに大きな変動要因といたしましては、来年度国債は十五兆の発行のうち二兆七千億を公募入札によって発行いたすことにいたしております。予算の積算上は公募入札の二年、三年、四年債につきまして一応私どもで推計をして、これくらいの金利ならこれくらいという前提予算の中身はつくっておりますが、公募入札のことでございますので、この金利がどういうふうに変動するかもわからない要因がございます。  そういうことを考えてみますと、いま〇・四%の引き上げだけをとってみると、先ほどのような前提で百五十億国債の利払い費が増加するという一応の計算はできますけれども、これらの国債の利払い費が差し引きどれだけ不足をするのかあるいは余分が生じるのかということは、上期の発行を終わってみなくてはわからない。そしてこの最終利払い日が到達いたしますのは明年の二月でございます。明年の二月、最終利払い日が到達する際に初めて過不足がわかるわけでございますので、国債発行責任者といたしましては、その際国債整理基金の利払い費に不足が生じるか余分が生じるか、不足を生じた場合にはこれをどういうふうに予算措置をしていただくかということは、その段階財政当局、すなわち主計局と相談をさせていただきたい、このように考えております。
  36. 池端清一

    池端委員 いろいろの変動要因があるので、いまの答えは率直に言って、やりくりでやるのだ、こういうふうにも受け取れるわけです。ただ、変動要因ということでいま局長が言われた中に金利の上下ということがあったわけです。上下、一般的に言葉としてはわかりますけれども、上下の下ということが事実問題としてあるのでしょうか。そうでなくとも今度の金利引き上げでまだ不十分だというような声も強いわけです。そういう状況の中で、下がるという要因は事実上ないと私は思うのです。だから、言葉としては変動の要因がある、金利の上下の問題もある、こう言われますけれども、私は事実問題としてそういう状況が起きてこないと思うのです。ですから、百五十億円は何とかやりくりできる、こういうお話でございますけれども、私はそういうものではないのでないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  37. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 率直に申し上げまして、いまから一年間の金融情勢を予測いたしまして、下がる局面が全然ないという断言もできないと思います。しかし一般的には、こういう景気上昇局面に入っておりますので、委員が御指摘のような趨勢の方が強かろうというふうな感じはいたします。しかしながら、国債発行者といたしまして予算を編成いたします際に、予測し得る手段というものは的確なものは何もないわけでございますので、予算編成時におきましては、予算編成時におきますその際のアウトスタンディングな金利前提とせざるを得ない。しかもなおかつ、これだけの大量発行になりまして、市場実勢に応じて金利を弾力的に改定していくということがやはり国債の円滑な消化あるいは円滑な金融政策との整合性ということを考えますと、どうしてもそれが必要でございます。そういう意味におきましては、市場実勢に応じて弾力的に改定していくという余地というものは、年間絶えず国債発行者としては与えておいていただきませんと、たとえば予算で六・一という金利で決まっておるから、あえてこの低金利で一年間あるいはある時期の国債発行するということになりますと、かえって経済的な大きな混乱を起こしますので、私ども予算の編成技術といたしましては、予算編成時の金利によるけれども、後は金融情勢に応じて対応させていただき、最終的にそれが足りるか足りないかという二月を待って精算と申しますか、予算上どういう対応をするかをお決めいただく、こういうルールにしていただきたいというのが発行当事者のお願いでございまして、これを主計局、財政当局の方でどういうふうに受けとめられるかは主計局の方からお話をいただきたいと思います。
  38. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま理財局長からもお話ございましたように、この国債の利払い費でございますが、いろいろ不確定要因がございます。そこで、予算をつくります場合には、あくまでつくります時点での条件を基礎にいたしまして積算をせざるを得ないわけでございます。  そこで御質問の、万が一予算に不足を生じたらどうするのかというお尋ねかと思います。ただ、先ほども理財局長が申しましたように、全体としての利払い費は、たとえば五十四年度に予定をしております国債発行を上期と下期とに分けまして、どういう割合で発行できるかというようなことにも大きくかかっているわけでございます。そこで私どもといたしましては、すでに衆議院で御議決をいただきました予算範囲内で何とかやりくりをしていただきたい、こういうふうに思っているわけでございますけれども、もしどうしても最終的にこの予算で不足を生ずるというようなことになりますれば、これは仮定の話ではございますけれども、これはほかにもいわゆる義務的な経費につきまして年度間に不足を生ずるということは間々あるわけでございます。そのような例に従いまして予算措置をしなければならないか、かように考えております。
  39. 池端清一

    池端委員 予算編成時の金利でやるということ、これはもうわかるわけでありまして、それでやるのは当然だと思うのです。だから、予算で決まっているのだから後はもう絶対がんじがらめですよなんて、そういう教条主義的なことを私は申し上げようと思っているわけではないのですよ。ただ、いまたまたま予算審議のさなかでございます。しかも今度の金利改定は、昭和四十九年十月以来の改定で、言うなれば国債管理政策の一つの転換でもあるのではないか、こう思うのです。それだけ大きな問題でありますし、現に百五十億の支出増というのが見込まれているというのであれば、当然のことながら予算修正、予算の書きかえという措置をとるべきではないか。やりくりでできるなんてそんなに予算というのは甘いものなのかということを、私いま率直な疑問を感ずるわけなんです。もっとシビアなものだと思うのですよ。それなら堂々と予算書を書きかえて、こういう状況だから、これは必要なんだから同意を得たいということで国会にお出しになるのが筋ではなかろうか、こう思うのですが、この点どうでしょうか。
  40. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 確かに御指摘のように、この十年債の、かつまた、金利だけをつまかえて計算をいたしますと、理財局長申しましたように、約百五十億強の不足を生ずるという計算になるわけでございますが、繰り返しになりますけれども、利払い費はその他のもろもろの要因、上、下の発行割合なりあるいは公募債をどうするかといったような問題もかかわってまいるわけでございます。そしてまた上、下の発行割合、現在予算では上期に六〇%発行という予定をいたしておりますが、これが仮にたとえば一%違ってくるということになりますと、これも試算でございますが、約五十億円程度浮いてくるというようなこともございます。そういうこともございますので、もろもろの要因を合わせたところで、現在すでに御審議をいただきました予算範囲内で何とかやりくりがつく可能性はあるのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。そういう意味で、あえて予算をお直しをするという必要まではないのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  41. 池端清一

    池端委員 八日の参議院の予算委員会で、わが党の小柳委員のこの問題に対する質問に答えて大蔵大臣は、いま言われましたように、この程度であれば国債予算範囲でやりくりができると考えられる、しかし場合によっては、同予算の予備費からの支出を要請することになるだろう、こうおっしゃっているのですね。もう予備費の支出を要請するということまで一応予定しているというのであれば、私はやはり疑義が出てくるわけです。  憲法第八十七条、予備費については、これは「豫見し難い豫算の不足に充てるため、」予備費という制度が設けられているわけであります。この問題は、実は予見しがたいものではなくて予見できるものですね。だから、安易に予備費をもって充てるとかなんとかという性格のものではないのではないかというふうに思うのですが、この点はいかがですか。
  42. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 先般の御答弁で、予備費の問題について言及があった点でございますが、この問題は、いわば理詰めの問題といたしまして、政府としてはすでに御審議をいただいている予算範囲内で何とかやりくりをしたいと思ってはいるが、仮定の問題として万が一どうしても最終的に予算の不足を来すような場合には、しからばどういう方法があり得るかというような問題に対するお答えとして、その場合には予備費という方法もあり得るというふうに申し上げたのかと存じます。  そこで、法律的の問題でございますけれども、確かに先生おっしゃいますように、憲法あるいは財政法には「予見し難い予算の不足に充てるため、」というふうに書いてあるわけでございます。そこでその解釈の問題でございますが、予見しがたい予算の不足というのはどういう場合かということに相なるわけでございます。私どもといたしましては、そもそも事柄自体として予見しがたい場合はもちろんでございますけれども、事柄としてはあるいはその予算の不足を生じ得べしということが予見し得ましても、その予算の不足額自体が予見できない場合にも同様に、憲法あるいは財政法によります予備費の使用要件に該当するというふうに理解をしているわけでございます。  そこで、今回の国債費の不足でございますけれども、先ほど来るる御説明申し上げておりますように、最終的に予算が不足をするかどうか、これももろもろの要因にかかわってまいりますので現時点においては予測がつかない、まして、しからば仮に不足をするとして一体幾ら不足をするのかという点になりますと、全く私どもとしては予見をしがたい、こういうことでございますので、理論的にはどうしても最終的に予算の不足を生ずるといったような場合には、憲法あるいは財政法規定に従いまして予備費を使用することは許されているというふうに考えているわけでございます。
  43. 池端清一

    池端委員 私は、必ずしもいまのお答えに全面的に同意いたしかねる点もございますが、時間の関係もございますので、次の問題に進ませていただきたいと思うのです。  かねてから国債の流通価格が発行価格を下回る、こういう現象が出て論議を呼んでおったところでございますが、去る三月の三日には、表面利率六・一%の十年ものの取引価格が九十四円十銭に暴落したということが報ぜられておるわけであります。こういう国債価格の暴落の背後には、金利引き上げを催促するという形の市場の思惑、こういうものも働いているのではないかという見方もあるようでありますし、一方、先般の谷村東京証券取引所理事長の記者会見では、いやそんなことはない、国債の流通価格というものは人為的に操作できるものではない、こういうような記者会見における発表等もあるわけなんですけれども国債の暴落、この辺の事情大蔵省としてはどういうふうにとらえ、理解をしておるのか、その点をお尋ねをしたいと思うのです。
  44. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 思惑とか催促相場というような言葉がいろいろ使われておりますが、谷村理事長が会見でおっしゃっておりましたように、証券会社自身が人為的にそういうことをやり得る余地というのは非常に少ない、私はむしろそれはないと思っております。  ただしかし、これだけ大きな値崩れを生じました原因というものを考えてみますと、やはり昨年の三月公定歩合が下がりまして、それ以降の経済がだんだん明るくなってくる、そういう意味金利の底打ち感が出てきた。そうしますと、先行き金利が高くなるであろう、この際長期のものに低金利で余裕資金あるいは投資資金を固定するということは投資家とすれば損だ、そういう意味では短いもので転がして運用した方がよろしいという、いわゆる短期への運用ニーズが高まってまいります。そこで出てまいりますのは、いわゆる長期資本市場あるいは長期資金の需給バランスが崩れてきた。このバランスの崩れというのが公社債の値下がりの大きな原因であったろうと思います。それに、五十四年度予算国債その他地方債を含めまして大量の公共債発行が予定されておるというその重圧感、これが加わってだんだん値崩れを生じてまいりました。そこまでは私はほぼ実勢的なものであろうというふうに判断をいたしておりますけれども、そこへもってまいりまして、二月の中旬と申しますか二月の十日前後から、政策当局者あるいは金融当局者の間で景気よりも物価というようなことがいろいろ言われるようになりまして、これが先行き金利高、政府、金融当局は金融政策として全面的な金利改定を行うのではないか、そういう心理を生んでまいりました。そういう先行き金利高感というものが、二月十日以降三月上旬にかけまして一層公社債の値崩れを促進した要因になっておると思います。  私どもは、先行き全面金利改定という問題につきましては、先ごろ日銀総裁がIMFの暫定委員会に行かれまして、ワシントンにおける記者会見一でも申されましたように、日銀当局としても当面、現在の金融緩和基調を変えるつもりはないと申されておりますし、大蔵大臣もそのように繰り返し最近申し上げております。その先行き金利高期待感というものが払拭されれば、そこでまたおのずから安定的なと申しますか、その余分のもの、いわゆるそういう思惑的、心理的要因というものが払拭されれば、それがまたおのずから実勢に近いものになるであろうというふうに考えておりますし、それからもう一つ、大きな値崩れを起こしました原因には、国債条件改定が必至であると言われながらも、条件改定の中身とかその実施時期というものが判然としないので、市場にそういう不安感と申しますかもたもたした感じが残っておった、これも一つ値崩れを大きくした原因であろうと思います。今回の改定によりまして、かつまた、今後当面金融政策の変更がないということを市場がはっきり認識していただければ、そこで適正な金利感というものを市場がつかんでいただけるだろうというふうに考えております。
  45. 池端清一

    池端委員 そうしますと、今回の〇・四%の改定幅というのは市場の実勢に見合ったもの、こういうふうに理解してよろしいですか。
  46. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 私どもはそのように考えております。一つお話でございますけれども、シ団と金利改定の交渉をいたします際に、当時市場実勢は〇・九、〇・八の乖離幅がある段階でわれわれは改定交渉をいたしたわけでございますけれども、引受シ団側、証券側から申し出のありましたのは〇・五という数字でございまして、市場実勢が〇・八、〇・九という指標が出ている段階におきましても〇・五程度の引き上げという要望をいただいたわけでございますので、市場関係者におきましても、実勢というものはそこに近いものであったという判断をされておったのだろうと思います。
  47. 池端清一

    池端委員 次に、五年もの割引国債金利につきましても、いろいろ報道等を見てみますと、四月発行分から引き上げられる見通し、こういうふうに伝えられておるわけでありますが、この辺の事情についてはどうでしょうか。
  48. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 御承知のように、いままでの制度でございますと割引国債は年四回、四月、八月、十一月、それからあともう一回、こういうことで、四月には割引国債発行を予定しているわけでございますが、これの改定をどうするかということはいま検討中でございまして、改定するかしないか、あるいはまた、改定するとしたらどの程度の幅にするかというのはまだ結論を得ておりません。
  49. 池端清一

    池端委員 国債の管理政策がきわめて不十分であるということは、かねてから指摘されてきたところであります。要は、国債をこれほど大量に発行するからこそ管理政策というものは大変になるわけでありまして、基本は国債発行しないこと、これに尽きるわけでありますが、そう言ってしまえば身もふたもない議論になってしまいますから、そのことを言うつもりはございませんけれども、やはり国債金利をできるだけ自由化する方向に持っていけば、これは金利負担がますます重くなって将来の財政負担を大変なものにする、一方、こういうふうに国債を低金利のままに抑えていたら、市場の流通価格はますます値下がりをして、日銀が市場で買い支えに出なければならなくなる、そうすればインフレという事態も心配される、こういう率直なところ二律背反の問題だと思うのですね。この二律背反をどのように調整をして、国債の大量発行時代のこの時代における管理政策というものを進めていくか、これがきわめて重大な問題だと私は思うわけでありますが、今後の国債管理政策の基本的な態度についてお尋ねをしたいと思います。
  50. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 国債の管理政策というものは一体基本的、哲学的にどういうことであるのかという問題は、私ども絶えず当面いたしておる問題でございますけれども、私はこれだけの大量発行下における国債の管理政策の要諦と申しますのは、国債発行消化、保有、流通、償還、各局面を通じまして、これがそのときの経済、金融にうまく整合性をもって、悪いインパクトがないように溶け込んでいく、そういうことが国債管理政策として絶えず考えなくてはならない問題だろうと思います。  国債管理政策につきましては、古い書物によりますと、国債費最小の原則、なるべく金利負担は少なくする、国債というものは国の債務である、すべての借金と同じように長く安い金利で安定的に資金調達をするというのが借金の要諦であろうと思いますけれども、しかしこの国債費最小の原則、財政負担最小の原則ということを国債管理政策の前面に出しますと、ただいま委員が御指摘になりましたような低金利政策、ひいてはそれから起こるインフレ懸念というものを招来いたしますので、そこはまず一応この際はおくといたしましても、しかしながら、やはり国債の利子負担というものは、私ども一般の税金で負担するわけでございますので、幾ら市場原則尊重と言っても、やはり歳出と申しますか税負担の軽減ということも考えなくてはなりません。その接点をどういうふうに持っていくのかが一番むずかしい問題だろうと思います。  特に私どもが今後国債管理政策として考えておりますのは、ただいま委員が御指摘のように、やはり何としても大量国債発行を抑えていく、発行額を圧縮するということが、これは国債管理当局者のみでなく、政府として、財政当局として国債発行額の圧縮を図るということがまず第一の要諦でございます。  それから、先ほど申しました消化、流通、償還、いろいろの局面を通じますけれども消化につきましても、市場実勢あるいは市中の資金ニーズに応じたような発行方法、いわゆる国債の種類の多様化、期限の多様化、発行方法、すなわちシ団引受方式と公募入札方式の組み合わせの問題。それから市場の問題につきましては、大量の国債が市中金融機関に保有されることに伴いまして、今後資金需要が出た場合に、これが市場に売り出される、それの受けざらとしての流通市場の整備という問題も取り組むべき問題でございましょうし、あるいはまた、国債というものが金融商品といたしまして市場において非常に商品性の高い、流通性の高い商品であるような工夫ということも、今後国債の管理政策として十分心していかなくてはならない問題だろうと思います。  それと同時に、今後の問題といたしましては償還という問題、先ほど申し上げましたけれども、二年、三年、四年という国債が公募入札で発行されることになりますけれども、これが満期が参りました場合に、その償還期が参りました場合におけるこれの借りかえ公募というものと新規債の発行あるいはその利払いとか、そういういろいろむずかしい要因が出てまいります。諸外国におきましても、こういう短期債を発行している国におきましてはいろいろ工夫をいたしておりますが、そういうことも今後の新しい国債管理政策として着眼していくべき問題だろうと思っております。
  51. 池端清一

    池端委員 私はまた再度二月十五日の本会議の問題に移るわけでありますが、この本会議で、わが国の財政再建を図るためには、税制財政支出両面にわたった大胆な財政改革を実現する以外にその方途を見出すことはできないということを述べまして、具体的にわが党が提案をいたしております土地増価税の問題と富裕税の問題を例に出して、こういった資産課税強化ということに大胆に踏み切るべきだということで大蔵大臣の見解を聞いたのでありますが、大蔵大臣は、こういった税によってはいまの赤字財政を賄うに足るだけの財源はとても生み出せないし、経常的な財源にはならないであろうということで、きわめて消極的な姿勢を示された、こういうふうに思っておるわけであります。まことに私は遺憾だ、こう思うのでありますが、この種問題、富裕税や土地増価税の問題、わが党も具体的にかねてから提案をしておるわけでありますが、この問題について本気に検討されているのかどうか、その検討現状をひとつお尋ねしたいと思うのです。
  52. 高橋元

    高橋(元)政府委員 富裕税でございますが、これは政府税制調査会でも中期税制答申の際に、相当詳しい検討をされた経緯がございます。いろいろ議論がございまして、所得税の補完税としてこの富裕税の新設について、所得の再分配と申しますか財産の再分配の観点からも積極的に考えるべきだという御意見もありましたし、それから、富裕税をやりますと執行上とてもその公平が期しがたいのではないかという点から消極的な御意見もございましたし、一般消費税の導入に関連してなお引き続いて執行面の問題を詰めていくべきだというようなそういう趣旨の御結論になりまして、昨年の秋やりました一般消費税についての検討の際にも政府税調で取り上げられて、現在もその方向で検討を進めておるわけでございます。  委員からお話のございました資産課税の充実ということにつきましては、私どももそういう方向で検討を進めなければならないというふうに考えておりまして、ただいま実施の方向について具体的な検討をしております利子配当所得の課税の充実ということも、その一環かというふうに存じます。  富裕税の問題でございますが、これはわが国の特性と申しますか、土地の財産価額が非常に大きい。御案内のように、アメリカの全体の土地の価額と日本の土地の価額とが等しいというような国民所得統計の結論も出ておりますし、土地が財産について課税をしていく場合に非常に大きな課税客体になるということを考えなければならないと思うわけでございます。  現在、相続税は相続財産四千万以上の方について納税をお願いしておりますが、その方々の相続財産の中身を見てみますと、大体七割ないし八割は土地でございます。社会党から御提案のありますような二億円以上の財産というものを考えてみますと、その内容は非常に土地が大きかろうということが言えるわけでございます。土地が非常に大きいと申しますのは、土地から生まれてまいる利回りというのはそれほど大きいものではございませんので、これに経常財産税をかけていくといたします際に、どうしてもその税率上の限界というものがあるのじゃないだろうかというようなことも、税制の問題としては一つあります。  それから、やや財産価額の大きい方について見ますと、今度は非上場株式の割合が非常に大きくなってまいります。非上場株式の問題というのは、これは評価の問題でございますから、会社財産の評価をどういう形でやるのか。毎年毎年経常的にやるわけでございますから、時々刻々収益の状態なり営業の状態なりを直ちに反映いたしますので、経常財産税としての有価証券の評価の問題というのは非常にむずかしかろうかという感じがいたすわけでございます。  土地を中心とした財産ということはどうしてもそうなりますので、そうしますと、いま固定資産税その他の財産保有課税がございますが、そういうものとの税体系上の位置づけをどう考えていくのかということも、これは税制上の問題であろうかと思います。  私ども決して消極的にばかり考えているわけではございませんのですが、富裕税が課税されるような高額資産家というものにつきまして、所得税で現在、所得二千万以上の方に対して財産負債明細書というものを毎年出していただくことにしておるわけですが、提出状況もよろしくございませんし、その記載内容も余り正確でないというようないきさつがございまして、高額資産家とその資産内容をつかまえていくということは非常にむずかしいわけでございます。  それから不表現財産。預貯金、これは比較的容易にわかるかもしれませんが、有価証券につきましてはさっきの評価の問題がございます。不表現財産が正確に把握できなければ税が不公平なものになっていくということがございますし、それから土地や上場されていない株式、その評価は非常に問題があろうかと思います。したがって、そういう理論上また執行上の問題というものが多々ございますので、現在それらの問題点についていろいろ部内でも、それから税制調査会でも検討をしていただいておるわけでございますが、そういう実現の可能性と一緒に、ほかの何らかの資産課税強化の方策、先ほど一例を申し上げましたけれども、フローとしての資産課税強化の方策というものについてもあわせて検討した上で結論を出してまいりたい、さようにいま考えて勉強いたしておる次第でございます。
  53. 池端清一

    池端委員 いま主税局長からお答えがありましたように、中期税制答申でもこの問題、税調は取り上げておるわけでありますが、この問題は、土地増価税の問題などとは違って、かなり消極的な意見はあったとは言いつつも、税調も前向きにこれは対処しようとしている問題だ、こういうふうに私はこの文面を読みながら実は理解をしておるわけであります。かつてわが国でも昭和二十六年から昭和二十八年、シャウプ勧告によって財産税制度が実施をされたという経緯もございますし、諸外国の実態を調べてみましても、スウェーデンやあるいは西ドイツ、ノルウェー、オランダ等でも実施をされている、イギリスでも導入の方向でこの問題いま動いているというふうにも聞いておるわけであります。  こういうことから考えてみましても、やはり今日、一連の不公平税制によって課税を免れた者に対する課税を強化する、こういう観点から、私はぜひともこれは導入をすべき制度ではないかというふうに考えるわけであります。そこで、大臣がおられませんので次官、ひとつこの問題について率直な見解をまたお尋ねをしたいと思います。
  54. 林義郎

    ○林(義)政府委員 富裕税及び土地増価税の問題でございますが、いま政府の方から御答弁いたしましたが、自民党の税制調査会でもずいぶん前からこの辺は議論を重ねておるところでございます。  いままでのところでは、先ほど主税局長から御答弁したようなことになっております。そういうことでございますが、やはり何か公正を期していかなければならないという御指摘も確かにあると思うのです。ただ、この公正をどうして確保するかというのは、租税特別措置法の御議論のときにもありましたように、税制そのものの問題もありますし、また税の執行の問題というのも私はあるのだろうと思います。そうした点からいろいろ考えていかなければならない問題だろうと思いますので、この辺は長期的に慎重に検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  55. 池端清一

    池端委員 ひとつこれは積極的に前向きに取り組んでいただきたいということを強く要望申し上げておきます。  次に、広告費課税の問題であります。これも五十年の税制調査会意見が出され、なお今後検討を続けると検討事項になっておるわけであります。年間の広告費の実績は大蔵省としては大体どのくらいになっているのか、もし御調査がありましたらひとつお示しをいただきたいと思うのです。
  56. 高橋元

    高橋(元)政府委員 広告費と申します際に二つ定義があるわけでございますが、企業が広告費を支出いたしますそのサイドで申し上げた方がよろしいかと思いますが、これにつきましては実のところ、政府の調査というのはございません。企業でやりました調査でございますが、五十二年分といたしまして一兆六千四百二十七億円ということになっております。交際費につきましての支出状況は御案内のように二兆四千九十一億円でございますから、大体三分の二になるわけでございますが、この関係は、交際費と広告宣伝費と比べました場合、毎年ほぼ等しいようでございます。
  57. 池端清一

    池端委員 五十二年度で広告費一兆六千億程度、そうしますと、現在では二兆円に及んでいるのではないかというふうに見込まれるわけであります。これに対してもわが党はかねてから一〇%の税率を課して広告費課税をすべきだということで、これでもざっと年間二千億円程度の増収が見込まれるわけでございます。この問題については、税制調査会で言っておりますけれども政府としてはいまどういう検討状況でしょうか。
  58. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先ほどのお答えの際にもちょっと申し上げましたけれども、広告の媒体の方に課税をするという考え方がございます。たとえば一般消費税をかけます場合に、広告サービスというものもそういう意味では当然、課税の対象になるわけでございます。いまの御提案は、企業の支出サイドで広告費についてこれを経費と見ずに課税をせよと、こういうお示しかと思います。  この考え方と申しますのは、一つは、交際費にかけておって広告費にかけていないということのバランスがどうかということ。もう一つは、過剰広告に目の余るものもある、したがって広告費に課税した方が、広告の自粛というのでございますかそういうことが行われるのではないか、こういうことだと思うのです。  それで、税制調査会でもいろいろ御議論をいただいたわけでございますが、交際費の場合には、これは交際費の支出の相手方というものがいわば個人的な受益を受けるわけでございます。そういうものについて、本来なら所得課税の対象になるものを、支出サイドで源泉的に法人税をかけてしまうという考え方があり得るわけでございます。したがって、交際費は企業としては正当な経費である、企業会計上の経費ではあるけれども、これを税制上否認して課税するという根拠があるわけでございますが、広告費の場合には、いろいろ議論ございますけれども、社用消費的なという意味の要素は少ないのではないか、これが広告費を交際費と同一視して経費否認をするという点についての理論上の難点であろうと思います。  それでもう一つ、広告の自粛を広告費課税によって達成できないかということでございますけれども、これは税制がそういう誘導ないし抑止の機能を営むべきものかどうかという問題が一つございまして、不当広告、過大広告等については現在公正取引委員会でいろいろお取り締まりを図っておられるわけで、そういった行政のサイドとしてつかまえるというのが本来第一ではないかというふうに考えることでございます。そういう点をいまいろいろ検討いたしておるわけでございますが、さきの中期答申の際にも御検討いただいたわけで、税制調査会にもお諮りしてなお引き続いて検討を進めておるということでございます。  一言申し上げますと、外国で広告媒体課税をしておる事例はございますが、広告費課税をしておるという事例というのは、私どもいろいろ調べましたけれども、現在のところまでないようでございます。
  59. 池端清一

    池端委員 一連の資産課税強化ということについては、ひとつ大胆に取り組んでいただきたいということを重ねてお願いを申し上げるわけであります。土地増価税の問題についてもいろいろお尋ねをしたいのでありますが、それはまた改めて議論することにいたしますが、今日、土地の含み資産、時価と簿価の差は、法人だけでも二百兆円に及んでいるというふうに言われております。したがってわが党としては、土地増価税という臨時財産課税というものを創設をして税制によって富の再配分を図るべきだ、こういうふうに考えておるわけであります。私どもの党の試算では、税率一五%といたしますれば約十五兆円の増収をこれは見込むことができます。それを五年間の均等分納ということになれば、年間三兆円の増収をこれは図ることができるわけであります。ですから、一般消費税だけにきゅうきゅうとして、それがオールマイティーかのようなそういう姿勢ではなしに、こういう資産課税強化という問題について、もっと熱意を持って謙虚に耳を傾けて検討を進めてもらいたいということを重ねてお願いをしておきたい、こう思うわけであります。  それでは次に、財政民主主義の観点から一、二の問題をお尋ねをしたいと思うのであります。  憲法九十一条では、「内閣は、國會及び國民に對し、定期に、少くとも毎年一回、國の財政状況について報告しなければならない。」こういう規定がございますが、これは今日、国会及び国民に対してどういう方法でもって行われているのか、それをまずお尋ねをしたいと思います。
  60. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 お尋ねの憲法九十一条に規定いたします国の財政状況についての報告でございますが、この憲法の規定を受けまして財政法にも四十六条に、内閣は、予算が成立したときは直ちに予算その他財政に関する一般の事項について報告すべしというような規定が置かれているわけでございますが、従来からこの規定に従いまして、財政につきましての財政法四十六条に基づきます国民への報告という形で、大体時期的には六月あるいは七月にかかっているかとも思いますけれども国会に御提出申し上げますと同時に、その内容全部につきまして官報に掲載をいたしまして、国民の皆様にもお読みいただけるようにというふうな手続をとらしていただいております。
  61. 池端清一

    池端委員 確かに官報によって国民の皆さんに読んでもらいたいということで出しているということはございます。しかしはっきり申し上げて、どれほど多くの人たちが実際に官報を手にし読むことができるか。政府は官報で告示すればこれはいいんだとおっしゃるかもしれないけれども、現実の問題として、官報でやっているからわが国の財政の実情は国民に周知徹底させているんだということにはこれはならないと思うのですね。国会に対しても、「昭和五十三年度第一・四半期予算使用の状況」、こういうようなもので、これは国会に対しては財政状況を明らかにしているということのようでありますが、こういう数字を羅列をして、国民の皆さん、はい読んでください、知ってくださいということではきわめて不十分だと私は思うのです。  わが国の今日の破局的とも言うべき財政、これを再建するためには、どうしても国民の皆さんに実情をよく知ってもらって、大胆に国民状況を明らかにして、その中から財政再建を図るべきだ。そのためには、どうしても財政の実態というものを、この間も具体的に提案したのでありますが、財政白書といったようなものにまとめて国民の前に明らかにするお考えはないかということをお尋ねしたのですけれども、これについてはどうですか。
  62. 林義郎

    ○林(義)政府委員 財政現状が破局的というお話がございましたが、破局的とまでは私ども考えておりません。大変むずかしい状況にあるということは御指摘のとおりだと思うのです。  そういった状況をやはり国民によくPRをしてやれという御趣旨も全くそのとおりでございますし、そのPRの方法として、果たしてそれでは財政白書というのがいいかどうか、私はこれは疑問に思っているのです。私どもは白書というのは、戦後に経済白書の第一回目がたしか片山内閣のときではなかったかと思うのですが、出ました。あの白書は、国民の中でも非常に読まれた白書だっただろうと思うのですが、その白書というのが最近は、海運白書とか何とか白書とか非常にたくさん出まして、しかも非常に厚くなっていて、なかなか読まれない白書ではないかという感じを正直に私は持っているのです。そうしたこともありますから、何か別の方法財政の危機状況をPRする方法はないか、さらに検討を続けたい、こういうふうに考えております。
  63. 池端清一

    池端委員 私もあえて仮称財政白書と申し上げたので、別に白書というタイトルをつけなければならないというものではないと思うのです。ただ、官報で告示をしているから国民に報告をしたことになるのですよ、これで憲法九十一条のあれをやっているのですよということでは、私は真の国民理解は得られない。したがって、財政現状とあるべき方向等について国民理解と協力、合意が得られるようなそういう状況を明らかにしていくべきだ、そのことについてひとつ前向きに検討してもらいたいと思うのです。
  64. 林義郎

    ○林(義)政府委員 先ほど来のお話は、憲法の規定に基づくところの国会報告というような話から出ましたものですから、そういった御答弁になったと思いますが、やはり財政状況を積極的に国民にPRするということは非常に大切なことでありますから、今後いろいろな方法考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
  65. 池端清一

    池端委員 次に、税制調査会それから財政制度審議会の構成並びに運営等についてお尋ねをしたいのでありますが、実は昨日、税制調査会委員の名簿と財政制度審議委員の名簿を資料としてお出しいただくようにお願いをいたしました。あわせて、その方々の年齢なり前歴といいますか前職、そういうものについてもひとつ知りたいのであわせて出してほしい、こういうふうに要求をしたのでありますが、名簿だけは出てまいりました。名前と現職は出てまいりましたけれども、年齢並びに前歴等については、プライバシーに関するのでこれは資料としては出すわけにいかぬ、こういうお話なんです。何でこのプライバシーの問題がそこに出てくるのか、私には全く合点がいかないわけであります。どうしてそういう前歴あるいは年齢等お出しすることができないのですか。
  66. 林義郎

    ○林(義)政府委員 池端さんの御質問、それは大変失礼なことだったと思いますが、年齢を出すというのはどうもプライバシーにかかわるかどうか私もよくわかりません。それから前歴というお話でございますが、前歴もどこの家、学校を出て云々と細かく書くというのもどうかと思いますが、あらまし大体どんなことをしておられたかというぐらいのお話でしたら私は出せると思いますので、そういった形で処理をいたしたい、こういうふうに思っております。
  67. 池端清一

    池端委員 私ども前歴、何年にお生まれになって、小学校はどこ、中学、大学はどこだ何々だ、こんなことをお尋ねしているわけじゃないのですよ。たとえば税制調査会委員に委嘱をされるということになれば、やはり現職と同時に、かつてどういうような仕事をなさって学識経験者だからふさわしいと思ってこれを任命というか委嘱されるわけでしょう。だから、本当にそれにふさわしい職にあったかどうかということで私なりにいろいろ調べたいと思いまして、簡単な前歴ということでお願いしたのですが、それもノー、拒絶反応で大蔵省の強い反撃と抵抗に遭ってついに出してもらえなかったので、私は非常に遺憾としているところなんです。  それでは私、お尋ねします。税制調査会委員名簿というのがありますが、ここに三十人の方がいらっしゃるわけであります。この委員の構成といいますか、主として旧大蔵省並びに農林省、自治省等の官僚OBの方々が何人いらっしゃるのか、ひとつお尋ねをしたいと思います。
  68. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いま三十名の委員の方にお願いいたしておりますが、何と申しますか、委嘱を申し上げる際の一応の考え方として、言論界の方が六人、それから財政学、経済学の学者の方五人、それから経済界、これは生産、流通、金融等々でございますが五名、地方公共団体の方が三名、労働界からお二人、消費者団体一人、あと有識者として八名でございます。  その中で、ただいまお尋ねの官歴のあった者はだれかということでございますが、大蔵省に奉職しておられた方が一人、農林省御出身の方が二人、自治省出身の方が一人、通産省出身の方が一人でございます。その他の方は団体の御出身の方でございます。
  69. 池端清一

    池端委員 財政制度審議会はどうですか。
  70. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 財政制度審議会は、委員の定数が二十五名でございますが、現在は欠員がございまして二十三名になっております。その二十三名の委員方々の中で、経歴として官僚と申しますか官界での経歴をお持ちの方を申し上げますと、直前の最終の公務員としての身分が大蔵省にございました方がお二人、それ以外に自治省がお一人、経済企画庁がお一人、厚生省がお一人、それからさらに内閣法制局がお一人、こういう構成に相なっております。
  71. 池端清一

    池端委員 やはり税制調査会なり財政制度審議会、これは内閣総理大臣ないしは大蔵大臣の諮問機関というのですか、非常に重要な審議会でございます。やはり広範な国民各層の声を聞く、意見を集約するという観点から考えてみますると、どうも委員会の構成が偏っているのではないか、こういうふうに思うわけであります。税制調査会三十人のうち、官界出身の方が五人もいらっしゃる。それに対して、たとえば労働界二人、農民、漁民団体、こういうような点も非常に不十分でございますし、ましていわんや女性の方が三人ということでは、本当に台所の声というものを反映するにはきわめて不十分だというふうに言わざるを得ない、こう思うのです。したがって、税調や財政制度審議会のあり方としては、もっと広範な各界各層からお選びになる、そして本当に国民の真の声が伝わってくるようなそういうあり方にしていくべきではないか、こういうふうに思うわけです。官界出身の方をたくさん擁しておりますと、非常に皆さん方は仕事としてはやりやすいかもしれないけれども、それでは本当の声を聞くことにはならないと思うのです。その点いかがですか。
  72. 林義郎

    ○林(義)政府委員 いま池端さんから官界の数が多過ぎるんではないかというお話がありましたが、税制調査会にいたしましても財政制度審議会にいたしましても、個別の話をするというところではありません。やはり大局的に見て財政全般をどうするとかというような話をするところでございますし、そういった点で、非常に識見の豊かな学識の高い方々お願いをしている、こういうことでございまして、何か御質問をちょっと聞いておりますと、私の誤解かもしれませんが、各界代表それぞれの利害代表と、こういうようにちょっと受け取れましたけれども、私はそういったものではないだろうと思うのです。やはり広い高い立場に立って御議論をいただく方々をというような形で人選を進めておるのでございますから、御指摘の点は、私も十分考えておりますけれども、いまのところはこういったメンバーで大体目的は達しているのではないか、こういうふうに考えております。
  73. 池端清一

    池端委員 目的は達しているというふうに自己満足されておるようでありますが、必ずしもそうではない、いろいろ多くの批判があるということを十分御承知おきいただきたい。しかも運営等についても、最近は大分改善されたようでありますが、たとえば税調に提出された資料等は、かつては持ち帰りは許されなかったというようなことで、帰って自宅で勉強するあれも与えないというような御批判等もありましたので、そういう運営等の問題についても十分配慮してもらいたいと思うのです。  そこで、最後になりましたが、実はこれは金子大蔵大臣がおられれば大臣に聞くのが一番適切なんですが、この間二月二十六日にテレビで放映されました「熱い嵐」という三時間長編番組、政務次官はごらんになりましたか。
  74. 林義郎

    ○林(義)政府委員 大変有名な番組でございましたが、残念ながら見ておりません。
  75. 池端清一

    池端委員 これは高橋是清の生涯をドラマ化されたものでございまして、これを見られた金子大蔵大臣は、高橋是清翁の「あの勇気を持ちたい」ということを「サンデー毎日」に手記を寄せられておるわけであります。「高橋さんは、国民から信頼されていた。」「蔵相になってみて、私も高橋さんのような勇気を持ちたいものだとつくづく思う。というのも、高橋さんが倒れた当時と今と、財政状況はよく似ているからだ。」「借金財政ということでは同じだ。しかし、どこかで蛮勇をふるって行財政を徹底的に見直して、早く財政を再建しなければいけない。そのためには、私も高橋さんのように国民に信頼されなければならない。」こういうふうに述べておられるわけであります。まさにその言やよしでございます。  私もかつて委員会で申し上げたのでありますが、わが国の国債発行の歴史というのは、この二・二六事件のように血で彩られた歴史を持っている、まあこれは一種の麻薬みたいなもので、このどろ沼にずるずると踏み入れてしまったら大変な状況になるのだ、したがってどこかで勇気をもって断ち切っていかなければだめだということを申し上げて、皆さんもその点については賛成で、だれも異論を差しはさむ方はないわけであります。しかし、そうやって賛成でありながら、年々この国債依存率が三九・六%、四割借金というような状況になってきている。みんなその立場は同じだ、こう言っていながら、しかし実際出てきた予算書を見るとそういう状況になっている。大変なことだと思うのです。ですから、本当に蛮勇をふるってこの問題に対処していかなければ、わが国財政は本当に果てしのないどろ沼に足を踏み入れることになると思うのですよ。そこで、多少精神論議になりますけれども、ひとつこの問題について林さんの見解を承っておきたいと思うのです。
  76. 林義郎

    ○林(義)政府委員 高橋さんは私も大変尊敬している大政治家でございますし、高橋財政というのはわが国の財政史に残るりっぱな業績だったと思うのです。最初の昭和の不況期に、やはり国債を出して対策を立てようというのが、なかなかその縮減ができない、こういうふうな形で、凶弾に倒れる、こういうことでございまして、これはわれわれ政治家として本当に学ぶべき、また先人として本当に尊敬すべきことだと私は思うのです。そうしたことをかみしめながら、このむずかしい時代に私としても勇気を持って立ち向かっていかなければならない、こう思いますし、池端さんの大変な御指摘を心から感謝申し上げます。
  77. 池端清一

    池端委員 終わります。
  78. 加藤六月

    加藤委員長 高鳥修君。
  79. 高鳥修

    ○高鳥委員 私は、ただいまの特例公債法案関連をいたしまして、幾つかの点について政府の所信をただしたいと存じます。  最初に、ただいま池端委員から財政は破局的な状況にあるのではないか、こういう御指摘に対しまして、破局的とは申しませんが非常にむずかしい、厳しい状態にある、こういうお話であったわけであります。事実そのとおりだと思います。この間から大蔵大臣は、財政演説の中では、今日の財政収支の状況を構造的な赤字であるという指摘をいたしまして、また、当委員会における所信表明におきましても、財政再建がいまや最も緊要な課題である、このことは何人も否定し得ないであろう、このように申しておられるわけであります。  大蔵省は、今回の五十四年度予算編成の前の段階で、主計局長が先頭になりまして各省に対して空前の財政危機PRをおやりになったわけであります。ところが、予算原案を示された段階あるいは復活折衝の段階においては、初めのPRが非常に厳しかった割りにはかなり予算がついたねというのが一般の感じであったのではないだろうか。そういうことからいたしまして今日、財政危機に対する緊迫感がいささか薄れてきたのではないか、このようなことを私は心配するものであります。  特に坊さんが大蔵大臣のとき——その前の大平大蔵大臣のときに私は政務次官として務めたわけでありますが、特に坊さんが大蔵大臣のときには、公債依存度三〇%ラインは死守したい、これを超えることはまさに歯どめがきかなくなるということで、三〇%ラインというものを非常に重視されたわけであります。もっともいまから考えてみますと、三九・六%というような公債発行する、こういう事態になるとするならば、あの段階でもう少し積極的な財政運営をしてもよかったのではないかなと、今日になってみればそのように考えるわけでありますし、事実坊さん自身が私にぼやかれたわけでありますが、自分がやめたら途端に大蔵省は財布のふところを広げちゃって、村山さんにはどんどん使わせて、こんなことになるのならおれももう少し使いたかったというような、これはぼやきでありますが、そういうことをお聞かせいただいたこともあるわけであります。  いま高橋蔵相のことについてお触れがありましたが、高橋蔵相は非常にすぐれた財政家であったことはだれしも認めるところであります。高橋蔵相は、当時の不況克服ということから公債発行して、これの日銀引き受けをやるという非常に大胆な、事によったら財政の破局につながりかねないことをあえてやられたわけでありますが、決して緊縮財政だけをやったわけではない、非常な積極財政をもって不況克服に取り組まれたことは、これまた人の知るところであります。しかも、日銀引き受けをやる場合には非常なインフレになるおそれがあるということを十分承知しながらも、当時の不況克服のためにはやむを得ない、そうして不況がやや回復してきた段階において方向転換をされた、そのことと軍事費の膨張というものがつながって、二・二六事件において非業な最期を遂げられたという非常に残念な結果になったわけであります。  そこで、今回の予算並びに特例債の発行に関しまして特に注目すべきことは、公債の依存率が三九・六%に達したのみではなくて、十五兆二千七百億に達する公債のうち、四条公債が七兆二千百億、特例公債が八兆五百億と、その構成比を——従来は四条公債の方が多かったわけであります。五十三年度も、税収の年度所属区分を変え得なかったとすれば逆転ということになるわけでありますが、金額的にはほぼ五分五分でありますけれども、今回はその構成比が大幅に逆転しておるということであります。一方、財政制度審議会は、五十三年十二月二十七日の建議におきまして、ただいまもいろいろお触れになりましたが、経常の歳出は経常の歳入によって賄うという財政の原点に立ち戻って、この際財政再建の足がかりを確保する決意を固めることを求めておるわけであります。  これは本来なら大蔵大臣に伺うところでありますが、大蔵省当局としては今日の事態を踏まえてどのように考えておられるか、その点をまず第一にお伺いいたしたいと思います。
  80. 林義郎

    ○林(義)政府委員 敬愛する高鳥先生の御質問でありますし、党の財政部会長をやっておられまして、政務次官も務められましたし、大変な御専門家でありますから、私のような浅学非才の者があえてお答えすることもないと思うのでありますが、先ほどお話がありました中で、若干私の考え方を申し上げさせていただきたいと思うのです。  一つは、大蔵省が非常にPRしてPRが効き過ぎたけれども予算原案なり復活折衝は皆ついてしまった、こういうふうなお話がございましたが、実は私はそうは思っていないので、大変厳しい、特に経常経費につきましては大変厳しい予算を組んだと私は思うのです。ただ、各省またいろいろな方面の御理解をいただいて復活折衝も円滑に済んだ、こういうふうに思うわけでございまして、何かこれでPRを落としてよろしいなどというふうには私は考えておりませんし、御指摘のように大変大きな国債を抱えている財政でありますし、またこれからの償還その他の問題を考えるとそら恐ろしいような気のする財政でございます。そうしたことを踏まえながらこれからの財政運営をやっていかなければならないし、そういった意味におきまして、これからも各方面の十分な御理解と御協力をお願いしたい、こうも思っておるわけでございます。  次に、財政の中で四条公債特例公債との比率が逆転したではないか、こういうふうなお話がございました。まさにそれは今回が初めてでございまして、この辺も大変憂慮すべき事態だろうと私は思うのです。ただ、高鳥先生が政務次官をやっておられました当時は三〇%を限度としてやろう、こういうふうなお話でございました。しかし、その後における状況からいたしますと、ちょうど円高というか、私は第二のドルショックだと思いますが、そうしたような事態がやってきたわけでございまして、急激な国内の変化をもたらすわけにもいかない、また一方では、内需の拡大を図ってこれに対策をしていかなければならないというようなことで三九・六%というような形になっております。そういった点を考えますと、これも残念ながらやむを得なかった措置だろう、こう思うのであります。  最後の問題といたしまして、財政制度審議会での建議の問題にお触れになりましたけれども、やはりこの問題につきましては、歳出面におきまして各種経費の節約、合理化に努め、経常的経費の伸び率を例年に比べて相当低いものにとどめた。それから歳入面におきましても、租税特別措置等の是正を図り、またお願いをいたしておりますところの一般消費税の五十五年度における早期導入、また受益者負担適正化というような点につきまして、いろいろな努力を重ねてきているところでございます。それは理想論を申しますといろいろな点があるだろうと思います。御議論のあるところだと思いますが、この五十四年度予算及び今回の特例公債の問題につきましては、財政健全化に第一歩を踏み出す予算である、こういうふうに考えておりますし、今後とも引き続き財政が健全になるように格段の御協力を心からお願い申し上げる次第でございます。
  81. 高鳥修

    ○高鳥委員 昭和五十三年度補正を行う際にも、財政として景気対策に対するおつき合いはもう限度いっぱいでございますという悲鳴をしばしば上げてきたところでありますが、にもかかわらず五十四年度予算は、相当に大幅な公債発行してまである程度はやらなければならぬ、こういう状態になったわけであります。  そこで、私は特に指摘をしておきたいことは、四条公債イコール建設公債なんだから、これはある程度出しても資産が残るからいいだろうという、どうも安易なところに最近はいってしまっているのではないだろうか。かつては四条公債すらも発行することに非常にちゅうちょをしたこともありますし、かつまた、四条公債の比率はせいぜい半分程度であって、あとは一般財源からの持ち出しというときもあったわけでございます。それから見ますと、もちろん非常に厳しい財政のさなかでありますからやむを得ない措置であるとは考えますけれども昭和五十四年度から財政収支試算によれば昭和五十九年度まで、投資部門充当は三百億のみでありまして、あとは投資部門における税収三・五%の伸びではじいて、その他についてはほとんど四条公債である。たとえば昭和六十年度における投資部門の合計は十五兆七千八百億でありますが、そのうち、四条公債の充当は十三兆である。ほとんど一般財源の持ち出しはない。そのとき六十年度においては、特例公債発行しないでも済むようになるという前提のもとに六千五百億の一般財源を充当する、こういう形になっておるわけでありますが、そういうふうな四条公債依存型ということ自体についても問題があるのみならず、六十年度から特例公債の返済が始まる、こういうことであります。  六十年度は二兆九百五億、翌年の六十一年度は三兆四千七百三十二億、あるいは中間で返済する短期債があるかもしれませんので数字が若干違うかもしれませんが、発行額をそのまま振り当ててまいりますと、六十二年度は四兆五千三百三十三億、六十三年度は約四兆九千四百億、六十四年度は今年度の分でありますが、一千百億は五十九年度に返済するとして、七兆九千四百五十億と非常に増大をしていくわけでありまして、このような大幅な特例公債を返済する財源というものは恐らく見出すにきわめて至難ではないだろうか。現在はこの特例公債というのは借りかえをしない、現金で返済をしますということになっているわけでございますが、そういたしますと、再び構造的赤字に転落をするということになることは必至ではないかと思うわけであります。したがいまして予算委員会においては、六十一年から六十七年までの収支見通しについて質疑が交わされたようでありますが、少なくとも六十五年ぐらいまでの収支については一体どのように考えておるのかという点について、御説明お願いしたいと思います。
  82. 林義郎

    ○林(義)政府委員 財政収支試算で出しましたものは、中期経済計画という形で出しておりますものをもとにいたしまして試算をしたものでございます。  いまのお話の六十年度以降につきましては出しておりませんが、そのときの状況がどうなるかというのは、これまた大変むずかしいことでございまして、そこまで計算がなかなかよくできないというのが実情でございます。  いま先生の御指摘ありましたのは、いまもう五十四年でございますから、六十四年まではちょうど十年の償還という形でどのくらいになる、こういうお話でございますが、それが一体そのときの財政規模においてまたどのくらいの財政規模になるだろうか、またその中でどのくらい国債費として償還に充てるだろうかというのは、いまの段階ではなかなかできません。できませんが、さらにこの方策につきましてはいろいろと考えてみなければならない点があるだろうと思います。ただ御指摘のように、特例公債は全額現金償還ということでございますし、負担の平準化を考慮しながら、それは大変長く出ることもよく承知しておりますから、さらにそれができますように、私どもの方としても精いっぱいの努力を傾ける決意でございます。
  83. 高鳥修

    ○高鳥委員 精いっぱいの努力をしなければならないことは当然でありますが、数字の面から言うとこれはきわめてむずかしい状況にあるということは、だれが見てもわかるところであります。  財政収支試算表につきまして若干お尋ねをいたしますので、どうぞ一番詳しい方からお答えいただけば結構であります。  まず経常収支部門を見ますと、社会保障移転支出、年平均の伸び率一〇・九%ということになっておるわけでありますが、これは大蔵省がつくった数字ではない、六十年度におけるあるべき姿を経済企画庁がまとめたものから引いてきたんだ、こういうことに説明されるのだろうと思いますけれども、中身を見ますと、社会保障移転支出の内訳の七七・五%は社会保障関係費でありまして、この数字を大きく動かす、少なくとも削るということは非常にむずかしいと思います。恩給関係費は一六・四%でありまして、これもまた計算をしていけば出る数字でありまして、恐らく大した変動はないであろう。そういたしますと、これ自体を動かすということは非常にむずかしい数字になっておるわけであります。  国債費が一八・三%ということでありますが、これまた国債費については全く正確に計算のできることだろうと思いまして、現在の利率に大きな変動がなければ、あるいは恐らくこれから将来においては若干の利上げが予想されるとすれば、この数字が低くなるということはほとんど考えられないであろうということになってくるわけであります。  投資部門における問題につきましては先ほど申し上げましたが、一般財源からの持ち出しがほとんどない、大部分が公債依存であり特定財源であるということになりますと、この点もふえても減っても余り変わらない、こういうことになってくるかと思うのであります。  そういたしますと問題は、これだけの歳出をどうしても賄う税収を得なければ国家財政は成り立たぬ、こういうことになっていくのではないだろうか。したがって、経済企画庁が新経済社会七カ年計画の基本構想、昭和五十四年一月二十五日閣議了解、こういうもので決めた数字から引っ張っておりますとはいうものの、出る方については大して違わないのではないだろうか。そうなりますと、この税収というものはどうしてもかなり確保しないと、前が合わない数字になってくるのではないかというふうに私は読むわけであります。  そこで、昭和六十年度における五十四兆一千五百億の一般財政収入、それから投資部門における収入二兆円、これだけの税収を得るとするならば、資料にございますように、その際の国民所得に対する租税負担率は二六カ二分の一%、二六・五%程度であるということであります。現在の数値が一九・六%でありますから、七%の上乗せをする、こういう租税負担率になると思うのであります。  まず第一に、この二六カ二分の一%という数字、これは閣議了解でありますから、閣議了解ということは少なくとも大蔵大臣も出た上での閣議了解だと思うのであります。経済企画庁が決めたのだからその数字を単純に引っ張ってきましたというような役所の機構ではないと私は思うので、この数字について大蔵省はどのように考えているかということをまず承りたいと思います。
  84. 高橋元

    高橋(元)政府委員 ただいまお述べになりましたように、二六・五%の六十年度における租税負担率と申しますのは、そのほかの新経済社会七カ年計画に掲げられている民間、政府歳入歳出全体についての数字と整合性を保って決められておる。したがって、社会保障支出の伸び率、それから政府消費の伸び率、政府投資の伸び率、それらのものと租税負担率とは同時決定的に決められておるわけでございます。その二六・五%の税負担のもとで計画期間中の最適の成長が達成されるという考え方に立っておるわけでございますから、これにつきましては、経済企画庁が持っております他部門モデルのシミュレーションの結果ではございますけれども、私どもも政策的なインテンションとしても整合的であるという考え方で、閣議全体として了解がされたということでございます。
  85. 高鳥修

    ○高鳥委員 ただいま主税局長からお述べになりましたように、大蔵省としても全然関知しない数字ではないということでありますから、そういたしますと、それが整合性があるということになれば、それに到達する手段、方法というものもおのずから考えていかなくてはならないわけであります。  昭和六十年度までには一人当たりの可処分所得も大幅に増大をいたしますから、現在のアメリカの数字で見ますと、昭和五十二年度におきましてはアメリカの租税負担率は二八・九、イギリスが三七・三、西ドイツ三二・三、フランス三〇という負担率に比べまして、日本は一九・二と非常に低い数字になっておるわけであります。大幅に国民所得が増大するもとにおいては、二六カ二分の一の租税負担率というものは決して困難ではない、他の諸国に比べて至難ではないと考えられますが、しかしながら、現在の租税負担率から見れば相当な上昇であるということは明らかであります。そこで、そこに至る手段、方法などについて一体大蔵省はどのような考えを持っておるのか、もう少し具体的にお述べをいただきたいと思います。
  86. 林義郎

    ○林(義)政府委員 いま御指摘のございました一九・六%から二六・五%へ上げていかなければならない、こういうふうなことでございまして、一つには、お願いしておりますところの一般消費税、まずこれを何とかお願いをしたい。それからあといろいろなことを考えていかなければならない。どうするかというのはこれからの経済情勢、社会情勢を見ながらやっていくよりしようがないのだろう。先生も党の大変有力な方でございますから、ぜひいいお知恵を出していただいて、また御協力のほどを心からお願いをしたいと思っております。
  87. 高鳥修

    ○高鳥委員 租税負担率だけではなくて、「わが国と主要各国の最近五年間の公債発行額、長期政府債務残高のGNP及び財政規模に占める割合」という表がありますが、それによりましても、日本の五十四年度の収支帳じりは六・六、長期政府債務残高が一八一・六というのが予算段階における数字であります。アメリカの同じ収支じりが二・四で、一三五・四、あるいはイギリスがあれだけ財政状態が悪いと言われておりながら、収支じりで四・五で長期政府債務残高で一三八・五、西ドイツは非常によくて一・九で八二・四、フランスが一・三で一四・八というような数字が出ておりますが、これら公債、長期政府債務のGNP、財政規模に占める比較、あるいは先ほど述べました租税負担率の比較、このようなものを出してみますと、日本は最低の租税負担で現在最悪の財政状態にある、こういうふうに理解していいと思うのでありますが、いかがですか。
  88. 林義郎

    ○林(義)政府委員 ちょっと数字を手元に持っておりませんので、恐縮でございますが、私の知っておることを申し上げます。  主要国に比べましてわが国の公債依存度は非常に高いということは言えると思います。長期政府債務残高の対GNP比率も、いままではアメリカ、イギリスなどというのは非常に高かったのですが、日本も非常に急速な勢いでこれが高まりつつある、こういうことでございますし、租税負担率は主要国に比して著しく低いということでございます。そういったふうに私は考えております。
  89. 高鳥修

    ○高鳥委員 そこでいま、昭和六十年度におきまして租税負担率二六カ二分の一、そこに到達する方法については、今後さらにいろいろと検討をしていかなくてはならぬし、その中に一般消費税の導入というような問題も含めて考えていかなければならないというお話がございました。  予算委員会におきまして、二月三日に公明党の矢野委員から、特にこの租税収入の伸びの問題などについていろいろと御質問がなされておりまして、それに対して主税局長からは、六十年度の五十四兆一千五百億という税収は経済計画から引っ張ってきたものでありまして、そこに至ることについてはまだ詰まっておりませんというような趣旨の御答弁がなされておるわけでありますが、いま具体的に一般消費税というものが俎上に上って、しかも昭和五十五年度早期に導入をしたい。それから平年度で言うならば、あれは五十三年のレベルでしたか、約三兆円ということになるであろう。年率五%とすれば、一%につき六千億で、五%ならおよそ三兆円という額になるではないだろうか、このような御説明を前に承っておるわけであります。その三%なる数字を——投資部門における税収というのはほぼ一定でありますから、試算表の中の参考としてお出しになったケースAでもケースBでもこの方は変わらないわけでありますから、そういうことになりますと、一般消費税が最も影響のあるところは経常部門における収入ということになってくるだろうと思うのであります。その経常部門における三兆円の収入を当てはめまして、租税弾性値一・二が一般消費税にも仮に及ぶ、こう仮定をいたしましていろいろと私自身も計算をしてみたわけでありますが、幾ら計算をしてもなかなかこの数字に合っていくようにはならないわけであります。  そこで、説明を具体的に承りますと、昭和五十四年から五十九年までの税収の伸びは一八・二%で計算をしておる。そして昭和五十九年から六十年は、特例公債が解消されたということの前提に立って、要するに一般的な税収の伸び、経済成長を一〇・四としてそれに一・二の租税弾性値を掛けて一二・四八イコール約一二・五という数字をもって計算をした、こういうことであります。  しかしながら、いまの経常部門の収入だけで伸び率を計算してみますと、昭和五十五年の伸び率は一九・六、五十六年が一九・四、五十七年が一九・三、五十八年が一九・二、もし私のミニ電子そろばんに間違いがなければ、そのような伸び率になるわけであります。それは投資部門における三・五という低い伸び率のものを除外をいたしますから、したがって当然伸び率は高くなる、こういう計算だろうと思うのであります。  さらに、財政収支試算表の二ページから三ページにかけまして、「歳入については、それぞれ次のように想定した。」としまして、五十五年ないし五十九年の税収についてはいま申し上げました一八・四で伸びる、六十年度の税収については租税弾性値云々と、こうございまして、「なお、このような想定のもとでの各年度の税収額と、前年度の税収額が名目にGNPに対して弾性値一・二で伸びるとした場合の税収額との差額は次のとおりである。」ということで、そこに九兆一千百億の合計差額というものを書いてあるわけであります。  単純に考えますと、GNPに対して租税弾性値を掛けて、経済成長率と租税弾性値を掛けたものとの差額がこれだけかと、こういうふうに理解をしたのですが、そうして計算をしてもなかなかそろばんが合わないので、なお聞いてみますと、五十五年に一兆二千六百億増収を図って、それをべースにした上でもう一回租税弾性値、伸び率を掛けたものでいって一兆五千億足りなくて、それを織り込んでまた計算をしたのが一兆七千七百億足りない、こういう計算になるということなんですが、そのような理解で間違いありませんか。
  90. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いまお示しのありました経常部門税収、それから投資部門税収の各年の伸び率は仰せのとおりであります。  それで、九兆一千一百億というものを算出いたしました際の考え方は、これは国税としまして税目を一切立てませんで一本として見ておりますから、各年度において一兆二千六百億から二兆四千八百億に至る、いわば現行の税制、それからそれぞれの年度において税制と一八・四%で期待される税収との差額を新しい税制によって埋めたといたしまして、すべて同じ性質を持ったものとして租税弾性値一・二で成長率を掛けて伸ばしておるわけでございますから、高鳥委員からお話のあったような計算過程でございます。
  91. 高鳥修

    ○高鳥委員 わかりました。  そういたしますと、先ほどちょっと私の収支試算表を上げておいたんですがね。これは非常にショッキングな収支試算なので、あるいはこういうものでは困りますという話になるのかもしれませんが、あえてこれだけいまの財政が破局的であるということの証左として私は申し上げたいと思うのであります。  それはお手元に表を差し上げてあるので、ごらんいただけばわかると思いますが、五十四年の税収が、いまのお話のように十九兆八千六百億である、五十五年は二十三兆七千五百億必要である、伸び率は一九・六%である、これはさっき私が申し上げた数字であります。試算表の参考のAの額というのが、経済成長と租税弾性値を掛けたもので出した数字、つまり二十二兆四千九百億という数字でありまして、最初の年度は確かにそこの表にありますように一兆二千六百億が足りない、こういう数字になるわけであります。  そこで私は、一般消費税というものが今後導入されるといたしまして、これは早期導入ということでありますから、早期ということは四月か六月かということだろうと思うのであります。法案が成立をいたしまして半年以上たったら早期とは私は言わないと思うのです。仮に六月にそれを導入したといたしまして、一般消費税三兆円はいわゆる政府、国庫収入になるものとそれから地方消費税とを含む、こういうことになっておるわけであります。地方消費税につきましては、これは配分の仕方がいろいろあると思うのでありますけれども、仮にいまの地方交付税等の実情から考えてみまして、三兆円を二兆対一兆と分けるといたします。半々というわけにもいくまいし、国が二兆で地方が一兆だ、こういう分け方を仮にいたしたといたします。まず余り無理のない数字ではないかと思うのであります。それに十二分の十カ月を掛けますと、一兆六千六百億の収入があるということになります。ところが、先ほどの不足額が一兆二千六百億ありますから、その場合には四千億余るという計算になります。しかしながら、その四千億余る計算は、もしそのような歳入余剰が出るならば特例公債を減額しなければならない、あるいはまた、仮に六月実施というものがおくれて十月なり何なりになるとすれば、そのような余剰はなくなる、したがってこの分は見れない数字である、こういうことになるわけであります。仮にいまのものをそのまま翌年に持ち越しまして計算をいたしますと、税収の所要額が二十八兆三千六百億、伸び率一九・四%。ところが先ほどの二兆円が平年度化されて前年算入されたものが引かれるわけでありますから、二兆と普通の税収伸び率一一二・四八を掛けまして、そこから前年算入分の一兆六千六百億を引きますと、残りは五千八百九十六億しかない、こういう勘定になりまして、その年の財源不足額が五十六年度はこの表によれば一兆七千七百億でありますから、したがって、その年にはすでに五%の一般消費税を導入し、これを二対一の割合で分けた場合には、五十六年度においてすでに一兆一千八百四億の赤字になる、こういう数字になるわけでありまして、翌年また同じ手法で計算をいたしますと、翌年の不足額が二兆一千億で、前年度のものを持ち越しますから、五十七年度において三兆二千八百四億足りない。つまりこの計算でまいりますと、五十七年度においては、一般消費税をもう一回五%アップをしてもなおかつ恐らく不足が出るであろう。そして五十八年から五十九年の財源手当てはさてどうするかねということになると、(「また五%」と呼ぶ者あり)これはいままた五%とおっしゃいましたが、どうも両方賄うにはまた五%上げても足りない数字になるのではないだろうか。つまり、それほどの財政危機にあるということを私は言いたいわけでございますが、いまのような考え方についてどのようにお考えになりますか。
  92. 高橋元

    高橋(元)政府委員 数字の問題でございますから、私からまずお答えさせていただきたいと思いますが、この各年度の九兆一千一百億に対応いたします増収期待額と申しますか、増税必要額と申しますか、そういうことは、すべて一九兆八千六百億に投資部門の税収を加えたものが毎年一・二で伸びてまいる、そういう場合の自然増収額と期待税収額との差額でございますから、したがいまして先ほど申し上げたことと同じことになりますが、そこは、どういう税目がどれだけの規模で何月に入るという具体性を持っていないわけでございます。したがいまして、五十五年度に平年度ベースでいまお示しのありました二兆円という大きさの税制改正ができたという仮定で申し上げますと、それは五十六年度以降の増税所要額がその分だけ減ってまいるということになります。そこは各年次割りといたしましてはそういうことになると思います。ただし五十六年度以降にも、表に掲げてありますような増税必要額が残るわけでございますから、そこを五年間にわたってどういう税目でどういうタイミングで埋めていくかということがやはり問題としては残ってまいる。そこでいまお示しのありましたように、私どもの計算で申し上げますと、全体として一・二の国税の弾性値が保たれたとして、そういう前提で申し上げておるわけですが、五カ年間にわたって合計九兆一千一百億という新規の税制の導入が必要であるという計算をお示ししておるわけでございます。そういう意味で、いまお話しのございましたように、非常に深刻な財政状態にあるということであろうと考えております。
  93. 高鳥修

    ○高鳥委員 財政状態の現状につきましては、大蔵省はもっと真剣に国民理解を求められて、そしてしからばどうあるべきかということについて、まさにもっと積極的に論議を深めていく必要がある、このように思います。  一般消費税のことにつきましては後ほどまた重ねて伺うことにいたしまして、租税弾性値一・二というのは、いわば過去の経緯にかんがみて推定で計算をした。いろいろ計量モデル等があるのだろうと思いますが、その内容についていま細かく承る時間的な余裕がありませんので、それはやめにいたしまして、最近の景気動向についてどのように考えるかということについて若干承りたいと思うわけであります。  私の手元にあります五十三年十二月の日銀政策委月報によりますと、十月から十二月の生産、出荷は、前期をかなり上回る伸びを示している。それから商品市況は続伸商状で、卸売物価は二カ月連続の上昇となったということが書かれておるわけであります。  さらに、三月九日の日銀発表の二月の卸売物価指数は、対五十年比で一〇四・八で、前月よりも〇・九%の上昇になった。この上げ幅は五十一年七月と並ぶ二年七カ月ぶりの高水準で、年率に直せば一一・四%になる。〇・九%のうちでその主要な要因は海外である。海外市況の高騰、円安ドル高による加速というようなことがその主たる原因である、このように指摘をいたしておるわけであります。  また、五十三年十二月の全国銀行の貸し出しは、月中で三兆七千十三億円であって、前年が二兆五千二百七十億円でありますから、前年を五割方上回る増加を示しておる。それから五十三年中の貸し出しは四十七年に続く大幅増加である。特に地銀は既往最大の増加であり、都銀も四十七年に次ぐ増加を記録をしておる、このようなことが日銀の月報に指摘をされておるのであります。  さらに日銀券、マネーサプライ等の状態を見ますと、前年に比べてさま変わりの状態にあります。五十二年の七月から九月が平残前年同期比で日銀券が九一、それに対して五十三年同期が九九。あるいは、五十二年十月ないし十二月の七九に対して五十三年十月ないし十二月が一一四。以下、M1、M1、M2、M3と、こう比べてみますと、M3は別といたしまして、M1が五十二年が六二、六三に対して五十三年が二六、一一二、M1が八四、七六に対して一〇九、一一八、それからM2が一一一、一〇七に対して一二一、一二二と、いずれも増加傾向にあるわけであります。このような数字から見まして、まあインフレの懸念ということも当然ございますが、今年度の経済成長というのは一体どうなるのか、また税収がかなりふえていると思うわけでありますが、その税収の見通しというようなものについてどのように考えておるかということを承りたいと思います。
  94. 林義郎

    ○林(義)政府委員 高鳥先生からお話しになりました数字、私も手元には持っておりませんが、先生の御指摘ですから間違いない数字だろうと御信頼申し上げます。  私は、一般的には景気は着実に回復へ向かってきておる、こういうふうに判断しております。ただ心配なのは、御指摘になりましたように、海外諸要因によるところの卸売物価の高騰というのがいまのところ大きな問題ではないか。景気は着実に回復しますけれども、物価の動向について見ていかなければならない、いわば両にらみの形でこれからの経済運営というものを図っていくべきものではないかと思います。  それから税の収入がどうなっているか、こういうお話でございますが、税の収入もしたがいまして、実は私が大蔵省に政務次官で就任しましたときに一番最初に聞いたのは、税の収入が非常にむずかしくなるのではないかという話だったのですが、そのときよりは少しは上向いてきておる、こういうふうな私は受け方をしております。  詳しい数字につきましては事務当局の方から御答弁申し上げます。
  95. 高橋元

    高橋(元)政府委員 景気の動向についての判断は後ほど官房から御答弁があると思いますが、税収についてのお尋ねでございます。  一月末税収というのが判明いたしておりますが、年度初来一月末まで十五兆一千八百五十八億円収納済みでございまして、これは予算に対する進捗割合が七九・四%ということに相なります。昨年が七八・四でございましたから、昨年の決算進捗割合を一ポイント上回っております。年度初来非常に税収の不調が続いてまいったことはただいま政務次官からもお話があったわけでございますが、十二月末税収で若干上回りまして、今度一ポイント上に参りました。  これから先の見込みでございますが、一ポイントアップと申し上げましたけれども、その中でも源泉所得税はダウンをいたしております。これは雇用者数の伸びが思うように伸びてない、それから給与の伸びが比較的低い、利子の引き下げの影響が出ておる、そういうようなことで源泉所得税は予算税収を確実に下回ると思います。申告の方は、これから三月十五日までやっていただく確定申告次第でございますが、還付の状況なり土地の譲渡所得なり、これまたよくわからない要素が多い。法人が好調でございまして、全体といたしますと、二十一兆四千五百億、これは二十一兆一千五百億に補正で減りましたが、その税収予算を上回る公算というのがあると思いますが、先ほど申し上げましたように、まだほかの税目で相当大きなもので予測のつかないものがございますから、どの程度上回ることになるか、これは大ざっぱな感じしか申し上げられませんけれども、その大ざっぱな感じといたしましても上回るのではないかという程度で、どの程度の額かということを申し上げるだけの自信がまだいま持てません状態でございます。
  96. 高鳥修

    ○高鳥委員 ただいまお話しのように、所得税では一・三%程度でありますが、特に法人税では一九・五%という大幅な進捗率比で伸びを示しておるわけであります。そういうことからいたしまして、景気はかなり着実に回復しつつあり、まず法人税が先行して、その後源泉分なり個人所得税なりの伸びにつながっていくのではないだろうか、このように考えるのであります。     〔委員長退席、小泉委員長代理着席〕 そういうことからいたしますと、租税弾性値一・二どころではなくて、私は一・四ないし一・六ぐらいまで、あるいは今後減量経営というようなものも相当物を言っておりますから、ここしばらくはもし景気が順調に回復をすれば、かなり利益が出てくるのではないだろうか、また利益が出てこなければ困るわけであります。そこでいま、まだ今後どの程度上回るかは見通しが立っておらないということでありますが、いずれにいたしましても、二十一兆五千億という補正後の税収見込み額を上回るであろうことは確実だと私は思うのであります。  昨年までは戻し減税などにつきましていろいろと配慮をしなければならない点がありましたが、今年はそういうこともないのでありますから、少なくとも税収が上がった分については、四、五月におきまして特例公債五十三年度分を減額をするということは可能ではなかろうか、このように私は考えますし、まずやはり特例公債の減額に財政余剰が出た場合には充てるべきではないだろうか。さらにまた、財政法第六条第一項の規定では、当該剰余金の二分の一を下らない金額を国債整理基金特別会計に繰り入れるということにいたしておりますが、一方で多量の公債発行しながら、しかも特例公債発行しながら、他方で基金繰り入れをやるというのはどうもおかしな話でありまして、まずは特例公債の減額ということに最大重点を置いて処理すべきではないかと考えるのでありますが、その点はいかがですか。
  97. 林義郎

    ○林(義)政府委員 いまのお話、税の伸びが相当にあるのではないか、これはなかなか見通しがまだはっきり立てられない状況でございまして、確たることを申し上げられない状況でございます。ただそういったことで、もしもそういうふうに税が大いに伸びたならば特例公債を減額すべきではないか、こういうふうなことは確かに一つの御意見だと思うのです。ただ剰余金の繰り入れば現在、減債制度の主要な要素でありまして、償還財源を確保するということの重要性を考えますと、財政法特例のかかる問題でもありますし、剰余金繰り入れを停止するには慎重かつ十分な検討が必要だろう、こういうふうに考えております。  従来から政府といたしましては、公債償還財源は、定率の繰り入れ、第二番目に余剰金の繰り入れ、三番目におきまして必要に応じて予算措置で繰り入れるという、三本柱によって確保する方針をしておりまして、いままでもそういうふうな形で国会に御説明をし、また御了解をいただいておるところでございます。今後もそういった基本的な方針に基づきまして適時適切に処理をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  98. 高鳥修

    ○高鳥委員 公債消化の問題に関しまして私の意見は一応、質問の要旨の形でそれぞれに差し上げてございますので、時間の関係もございまして割愛をいたしますが、恐らく今後民間の資金需要というものが景気の回復に伴ってだんだん高まっていくということになれば、日銀としては資金の供給に応ぜざるを得ない。そういうことになれば、相当の買いオペをやらざるを得ないだろう。そこへ輸入原材料の高騰、円安、各種公共料金のアップ、さらにまた、きょうも新聞に出ておりますが、外国のメジャーが日本に対して、特に民族系石油資本に対して原油の供給を大幅に削減をし、さらに停止をするというようなことまで出ておる。このような事態を踏まえますと、インフレヘの加速ということが最も懸念されるところであります。その辺についてどのような見解を持っておられるかということが一つ。  さらに、恐らく公債全体のシ団での引き受け可能額は十一兆程度ではないだろうか、せいぜいいっても十二兆。一部を資金運用部資金で引き受けるということにはいたしておるようでありますが、いずれにいたしましても、国債消化というのは容易なことではない、そういう事態にあると思うのでありますが、それに対してどのように対処をされるかということだけを承っておきたいと思います。
  99. 林義郎

    ○林(義)政府委員 景気が回復をしてくる、しかも先ほど御議論がございましたように、海外物価の値上がりがある、きょうの新聞を見ると、エクソンが石油の供給削減をするなどという非常にむずかしい状況になってきているので、値上がりするのではないか、インフレの懸念はないか、こういうことでございますが、私は石油の状況は世界的にいって、そうめちゃくちゃなひどいことにまだいまの段階ではならないのではないか。問題は、イランあるいはサウジアラビア、こういうようなところの問題だろうと思いますが、その辺の減をいたしましても、この前石油の国際的な機関で節約をやっていこう、五%の節約をやろう、こういうことで決めたわけでございますので、そうしたことをやり、また相当な備蓄も各国持っておるわけでございますから、そうひどい、かつての石油ショックのときのような値上がりにはならないというふうに考えております。ただ、これは決して安心してよろしいというわけではございませんので、これからもいろいろな施策を講じながら、物価の安定、経済の安定に努めてまいらなければならない点だろうと思います。  それからもう一つは、民間の資金需要が出てまいりまして、十一兆ないし十二兆ぐらいしか国債を引き受ける余裕がないではないかということでございますが、御指摘のとおり、景気の上昇場面にやってまいりますと民間資金需要が出てくることも当然のことでありますし、金融部門におけるところの余裕金増加というものは大体見通されるところでございますから、それから民間部門が相当ふえてくれば政府の方が減る、こういうことでございますが、やはりそういった金融情勢を見ながら国債発行をやっていかなければ、また財政の方としてもやれない、こういう状況でございます。私は、なかなかむずかしい財政運営であり、金融の運営だろう、その辺をこれからもよろしくやって、物価を安定し、経済を着実な安定成長の軌道に乗せることがいまわれわれに与えられたところの使命だろうというふうに考えております。
  100. 高鳥修

    ○高鳥委員 事態は大変むずかしいことはまさに同感でありまして、いま申し上げたとおりであります。どうぞひとつ、通産省御出身でもあり、また経済企画政務次官もおやりになって、経済問題には明るい林政務次官でありますから、大蔵大臣を助けて一生懸命がんばっていただきたいと思います。  時間の許す範囲内で一般消費税について若干承りたいと存じます。  いま申し上げましたように、一般消費税はいかに財政収支試算ないし今後の財政再建に大きな関係があるかということは明らかなんでありますが、五十五年から実施する。これは政府税調においては五十五年の年初を予想した、つまり、五十四年度末から実施するということを予想した答申であったと思うわけであります。これを受けて政府の方は、五十五年度中に実現できるよう諸般の準備を進めるという閣議決定をしておるわけでありまして、いまどのような準備をしておるかという、先ほどの池端委員のどのように考えるかという質問に対しては、いろいろとやっておりますということであったわけであります。そのいろいろの中身なんですが、一般消費税大綱というのが政府税調答申の中に含まれておるわけであります。その中に示された考え方をほぼそのまま具体化する方針であるかどうかということについて承りたいわけであります。  手元に大蔵財務協会が出しました「一般消費税の仕組み」というパンフレットがあります。これはいわばダイジェスト版でありまして、もうちょっと厚いので、もっと詳しく書いたものもありますが、中身はほぼ同じである。これは大蔵財務協会が書いたということになっておりますが、一問一答を含めまして大蔵省のしかるべき人たちがかなりおやりになったことは間違いのないことであります。そういうことからいたしまして、たとえば五%の単一税率である、地方消費税を含む、これは、財政収支試算の中に一般消費税を取り入れればその他の事項がふえないのはおかしいではないかという予算委員会の質問がありましたが、一般消費税を初めから地方消費税として地方で取るとすれば国の財政計画には入らない、そういうことになるだろうと思うのであります。その辺の主税局長の答弁をずっと読んでみましたが、きわめて明快でないので、そこは明快にされる方がいいのではないだろうか。都道府県税だということになりますと恐らく自治省が、おれの方で配分を手加減する権限を少しよこせ、都道府県で取りっぱなしは困るよというようなことを考えているのだろうと思います。そこら辺を危惧して、あるいは未調整であるから、主税局長の答弁がすっきりしない、こういうところになるのだろうと思いますが、少なくとも税調答申の書き方は、地方消費税である、都道府県税であるという書き方をしておるわけでありますから、その辺についてどうされるのか。  それから、年間売上高二千万円以下の小規模零細事業者の除外並びに同四千万円以下の事業者の限界控除制度、簡易課税方式、食料品の非課税といったような問題を取り上げておるわけでありますが、その辺についてはいま申し上げましたように、ほぼ税調答申のとおりに実現するという方向でやっておられるかどうかということを承りたいと思います。
  101. 高橋元

    高橋(元)政府委員 税調の答申における大綱、これは一般消費税の骨組みでございます。その中で、単一税率であるということは、昨年の夏の段階から、執行上、それからインボイスを用いませんという日本の一般消費税の仕組みというものに照らしまして、これは必ず単一税率である。その税率いかんにつきましては、暮れの大綱において五%という形で示されております。その五%のうちに、国税たる一般消費税の額を課税標準として都道府県が課する地方消費税を含むということになっております。この点は、十二月までの段階では自治省と折衝中でございましたので、はっきり申し上げておりませんでしたが、五%の内枠として国税と府県税とが一般消費税を分けるという考え方に固まっております。  あとは、零細事業者の除外の範囲を年間売上高二千万円以下とする、限界控除制度ないし簡易課税方式の適用を四千万円以下とする、食料品につきましては非課税とする、これらは大筋でございますから、現在これに基づきまして細目を関係各省なり関係の団体と協議をいたしておる段階でございます。  たとえば食料品につきましては、口に入るものの前に生きている動物がどうなるかとか、動物のえさはどうであるかとか、植物の肥料はどうであるかとか、食料品は非課税と申しましても法文の形で具体化してまいりますにはいろいろ詰めが必要でございますから、そういう大枠の範囲で具体的な折衝をいたしておりますし、地方消費税と国税の税率をそれぞれ五%の中でどう決めるかということにつきましても、地方財政と国の財政両方見渡して目下自治省と折衝いたしておるというようなことで、先ほど御質問のございました大綱に示された考え方はほぼそのまま具体化する方針かということでございますと、政府といたしましては税調答申の大綱に沿ってその具体化を図っておる、具体的な詰めを急いでおる、こういう段階でございます。
  102. 高鳥修

    ○高鳥委員 ただいまお述べになりましたように、家畜やそのえさまで非課税にするかどうかというような問題等々いろいろ問題が残っておることは承知いたしておりますが、このパンフレットによれば、すでに「問」「答」というような式でもうかなり準備ができておりますよということが明らかに示されておるわけであります。とするならば、これは要するに税調答申であるという形をとっておりまして、まだ政府のものではありませんよという隠れみのに隠れておるわけでありますが、ここで速やかに政府のものをおつくりになるべきである、そしてたとえ試案であっても、政府一般消費税法案要綱試案というような形で速やかに国民の前に明らかにさるべきであります。  いまほどずっと一連の財政状態について私がお話を申し上げ、指摘をしてまいりましたことにかんがみましても、どうしても新しい財源を求めざるを得ない、あるいは法人税の増徴とか富裕税とか広告税とか、いろいろな方法はまださらに考えられるといたしましても、一般消費税も導入せざるを得ないのではないか、こういう結論になってくるわけであります。しかも率直に申しますと、来年の通常国会は参議院の一般選挙があります。そういたしますと、おのずから期限も切られておるわけでありますから、早い機会にということは、今国会に出すぐらいの意気込みでないと恐らく間に合わないのではないだろうか。そのためには、一般消費税というものがなぜ必要かということについての国民全体に対するなお一層の理解を深めることが必要である。これは与党の理解だけではなくて野党側に対しても十分な理解を求める必要があると私は思うのであります。  特に一般消費税、付加価値税を導入している国は、大蔵の資料によりますれば八十四カ国に上る。社会党政権下の国においても普通に一般消費税を行っておるという状態でありますし、共産圏においてはむしろ間接税が主流である。そういうふうな状態を踏まえて、一般消費税というものはそれだけの国で行っている以上は、決してそんなにばかに悪い税でもないのではないかというふうに考えますので、速やかに善処あらんことを申し上げまして終わります。どうも御苦労さんでした。
  103. 小泉純一郎

    小泉委員長代理 午後一時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  104. 加藤六月

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和五十四年度公債発行特例に関する法律案質疑を続行いたします。伊藤茂君。
  105. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 最初に中期の経済計画、財政計画についてお伺いしたいと思います。何しろ膨大な借金をするわけですから、先の展望がなければいかぬと思います。また再建計画についての見通しをどう国民の前に示していくのかということが非常に大事ではないかと思います。  最初に、昨年、一昨年のこの法律議論の中でも、こういうものを早く固めなければならぬという答弁をいただいているわけですが、その後鋭意努力をされてどのような成果が生まれておりますか。
  106. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 財政計画についてのお尋ねでございますが、御指摘のように、昨年も財政計画を早くつくる必要があるという国会方面の御指摘もございました。そこで私どもといたしましては、昨年の九月でございますが、財政制度審議会の中に財政計画の問題を特に取り扱っていただく財政計画等特別部会という部会をつくっていただきまして、その部会では早速その中にいわば研究グループとでも申すべき小委員会をつくっていただきまして、自来精力的に審議をしていただいているわけでございます。  しからば、現在までどんな審議状況にあるかということでございますが、財政計画をつくります場合にどういう問題点があるかという問題点は現在まで大方出そろいまして、かつまた、幾つか議論になります論点があるわけでございますけれども、その大きな論点につきましては、関係委員方々の大方の御意見を一通りお示しいただいた、こういうのが現在の段階でございます。これからもこの審議会、特に特別部会でさらに論点の整理をしていただきまして、場合によりましては審議会としての御結論をできるだけ早くいただくというふうなことで、今後とも精力的に審議を進めていただきたいと考えております。  それからまた、審議会だけではございませんで、事務当局の方でも、財政制度審議会におきます審議状況を片一方で十分にらみながら、事務当局は事務当局としてのいろいろな勉強は引き続きやっている、こういうのがおおよその状況でございます。
  107. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう何年間も一生懸命勉強いたしておりますというふうに伺っているわけですが、片一方では毎年数字を並べた財政収支試算が出てくる。それから財政制度審議会などでの研究は続いている。財政審のいろいろな作業をやっていただいていますと聞きますと、大蔵省の方は何か他人事みたいな、意地悪を言うわけじゃありませんが、そういう感じに聞こえるわけです。私は少なくとも今年あたりはそれらについて骨格でも、政府としてはこうしていきたいのだ、またこういう計画をつくっていきたいのだというふうなことを出されるのが当然だと思うのです。  諸外国の例を見ても、これは私が言うまでもありませんが、たとえば西ドイツの場合、経済安定成長法など大変ユニークな方式だと思います。またそれに基づいて毎年、五年先のところまで見通しを出している。もちろん経済変動の著しい状況ですから、毎年ローリングで見直していく、これは当然のことだと思います。それからノルウェーの場合とかカナダの場合とか、若干仕組みは違いますけれども、それぞれきちんとした予測プログラムを立てて、先の見通しを立てながら今年の経済を論ずるということだと思うのです。ですから、勉強中という御答弁は結構ですけれども、各国のいろいろなモデルなども見ながら、確実にいつごろ少なくともこういう骨格のものはつくってやっていきたいという、財政当局の責任としてその辺どうお考えになっておりますか。
  108. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 御指摘のように、財政制度審議会で御審議をいただきます過程におきましても、もちろん諸外国の例等も十分に参考にしながら御審議をしていただいておりますし、それから私ども事務当局も、先輩諸国の事例、あるいはまたそれらの具体的なつくり方、それからまた、つくります場合のバックになっておりますいろいろな会計制度の仕組み、あるいは財政計画というものに対するそれぞれの国の国民理解の仕方、そういったような問題についてまでいろいろ勉強はさせていただいているわけでございますが、何分にもこの財政計画の問題は申し上げるまでもなく、非常に広範かつ多岐にわたる問題を内蔵いたしております。  先ほどおおむね大きな論点については委員方々意見が出そろったというふうに申し上げたわけでございますが、その大きな論点といたしまして、たとえば財政計画というものをつくります場合に、いわゆる覊絆力と申しますか、そういう覊絆力を持ったものをつくった方がいいのかどうか。あるいはまた、わが国の場合でございますと、いろいろな形で経済計画というものが策定されておるわけでございますけれども、この経済計画と財政計画との間の調整を一体どのように考えていったらいいか。さらに、実務的になりますと、財政計画ということになりますと恐らく、諸外国の例に照らしましても、現在お示しいたしております財政収支試算のようないわばマクロ的な計算ではなくて、およそ各年度ごとの、それからまた精密さの多寡はございましょうが、各経費につきまして個別の積み上げ計算をするというようなことに相なろうかと思いますけれども、そういった各経費ごとの、また各年度ごとの推計の仕方を一体どうするのかというような技術的な問題もございます。  そういう複雑かつ広い問題がございますので、私ども一生懸命やっているわけでございますけれども、ただいまのところいつまでに、そしてまたどのような形のものを自信を持ってつくることができるということを申し上げられる状況にないことを御理解いただきたいと存じます。
  109. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いつまでにということはわからぬということですから、その事実は認識しておきたいと思いますが、いろいろな問題点の整理が済んだところだという指摘がございました。その問題点の中には、たとえば現在の予算の単年度主義という問題、諸外国の場合にも国によってもいろいろ制度が違いますから、どこの国と似たようなところまで日本でつくるのが適当かというようなこともあると思いますが、そういうものを議論していけば当然、現在の財政法のたてまえにも関連してくる問題も出ると思います。現在でも純然たる単年度とは違った状況は、国債状況からいいましても、あるいは今度のE2Cの債務負担行為とかの状況から見ましてもその他から見ましても、非常に変化が生まれているというようなことなんですが、そういうところまで含めて問題点に挙げられておりますか。
  110. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 財政計画と財政法関係の問題でございますけれども、これはもちろん申し上げるまでもなく、財政計画としていかなる効果を持つものあるいはまたいかなる内容を持つものをつくるかによりまして違ってまいるわけでございますけれども、少なくとも諸外国の例を私ども勉強いたしますと、財政計画と申しましてもこれはあくまで予算それ自体ではなくて、したがいまして、国会あるいは議会に御提出いたします場合にも、予算とは別に国会の御議決をいただくということではなくて、各単年度予算審議をしていただきます場合のいわば重要な参考資料といったような意味で議会に提出している例が多うございます。  そこで私どもといたしましては、もちろんこれから財政計画の内容詰めてまいるわけでございますが、いまのところ、財政計画を策定するということが直ちに予算のいわゆる単年度主義あるいは年度独立の原則に抵触をするというようなことには必ずしもならない、またそのような意味におきまして、そのことが直ちに財政法改正を必要とするということに結論づけられるというようなものとは考えていないわけでございます。
  111. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いずれにしろいつできるかわからぬということです。午前中からも話題になった一般消費税なんかに関連をして、税制あるいは財政の将来について国民の関心は非常に高まっている。私どももしょっちゅういろんな場で説明をしなければならないということですから、それらの場合には、政府の方ではまだ計画はわからないということを説明をしながら、私どもは私どもの中期政策を説明していきたいと思います。  次に、償還計画に関連をして二つだけお伺いしたいのです。  そのうちの一つは、現在の国債整理基金特別会計法、それから定率減債制度ということなんですが、きょうも参考条文で出されておりますが、国債整理基金特別会計法、明治三十九年法律第六号、かたかなの明治時代の法律によっていまやっております。そして百分の一・六という方式がとられているわけですが、これは理解として、現在、建設国債特例債、赤字国債を含めまして大量に発行をされている。これは明治の時代からそのまま引き継いであったわけではないので、特に最近のこの高度成長政策枠組みの財政というのか、そういうふうな中で顕著に生まれてきて、しかもいま非常に大変な事態に陥っているということは言うまでもないわけであります。ところが償還の方は、明治三十九年の法律をもってずっと適用している。古い、新しいだけではなくて、現実的な問題ですね、現実問題としてやはりいろいろな問題があるんではないだろうかという気がいたします。  基本的には、先ほど財政計画の見通しはいつまでということは立たないと言われましたが、中長期の見通しの中で、明治三十九年のこの法律に基づいてやることが適当なのかどうかという疑問も当然出るところでありますし、あるいはまた後ほどお伺いしますが、国債の多様化ということが言われてまいりました。五種類ですか、いろんな形での国債発行されるということになってまいります。そういう状態になるわけなんで、やはり十年ものは十年もの、五年ものは五年もの、それぞれの償還に見合う償還財源づくりの計画ということも必要だと思いますし、いろいろな意味で何か基本的にこの辺を検討し直してみるということも必要なのではないかという気がいたしますが、いかがでございましょう。
  112. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 御指摘のように、現在の国債整理基金特別会計法は明治三十九年に制定をされた法律でございまして、かたかなの法律になってございます。ただ、この特別会計法は先生も御承知のとおりでございますが、昭和四十年度以来国債管理政策、国債発行を本格的に始めるという時点で財政制度審議会にもたしか一年余にわたりまして、公債発行に伴う償還の仕組みを一体どうするかという問題につきまして御審議を煩わしまして、その結果をも踏まえまして改正お願いをいたしまして、たしか四十三年であったかと思いますけれども改正法が成立をしているということでございます。そこで先ほど御指摘ございました百分の一・六の定率繰り入れという仕組みも、実はその改正の際に入った仕組みであるわけでございます。  その後、五十年度補正予算以来、確かに国債整理基金特別会計法をつくりましたときには予期しておりませんでしたいわゆる特例公債発行せざるを得なくなったわけでございます。そこで、この特例公債との関係で現在の国債整理基金特別会計法の仕組みを一体どう考えたらいいかという点も、これまたその前後に財政制度審議会にもお諮りをいたしまして御議論をいただいたわけでございますが、そのときの財政制度審議会のいわば御結論は、特例公債というのはあくまでいわば臨時特例的なものであろう。そこで現在の国債整理基金特別会計法が予定をいたしております公債償還財源の積み立ての制度についてはこれを変更するまでもあるまい。やはり定率繰り入れ、あるいは財政法に基づきます剰余金繰り入れ、あるいはまた必要に応じて行います予算の繰れ入れ、こういういわば三本柱の総合的な減債制度によって十分に対応できるし、また対処すべきではないかというのが、当時の財政制度審議会の御結論であったわけでございます。  そこで、私どもは自来、特例公債発行がその後年々続かざるを得ない結果になっているわけでございますけれども考え方といたしましては、昨年度もまた今国会におきましても申し上げておりますように、現在の総合的な減債制度によって対処をしていきたい。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕 そうして一刻も早く、まず臨時異例でございますこの特例公債から脱却することこそが先決問題である、そういうような態度をとっているわけでございます。
  113. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いずれにしろ予算委員会でも問題になったところですが、この償還見通し、それから償還財源の見通しの問題、それからそもそもその法的な経過などを見ますと、さっき申し上げました市場実態から見ても国債の多様化を図らなければならない。いま進行いたしているわけですが、新しい条件ができてくる。何か一遍見通しの問題として、現在の制度そのものを洗い直して考えてみることが必要なのではないかという気がいたします。  関連して、この国債整理基金の内容の問題ですが、どういうふうに運用してどうこれを活用していくのか。前の予算委員会でもこれらと起債の量に関係をして議論があったようにも記憶いたしておりますが、それらの運用実態、今日時点で概要どうなっているのかということが一つ。  それから要望なんですが、少なくとも国会提出をされる予算書には、これが非常に国民の関心の高いジャンルになるわけですから、基金の残高とか運用実績とか償還の実績とか将来見通しとか、そういうものを含めた参考文書といいますか、よくわかるようなそういう資料などが国会に出されるようにすべきではないだろうかという気もいたします。私ども委員会でもそういう点は、資料もいただいて綿密に議論をする必要があるのではないかという気がいたしますが、いかがでしょうか。
  114. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 国債整理基金のいわば運用その他の実態でございますが、確かに国債整理基金特別会計の予算それ自体、これは他の特別会計と同様に歳出予算歳入予算という形になってございますので、歳出歳入予算だけではなかなかこの基金の実態が直ちにはわかりにくい、こういう姿になってございます。そこで国会方面での御論議あるいは御指摘もございまして、実は昭和五十四年度、今年の予算書におきましては、国債整理基金特別会計予算予算書とは別でございますが、あの一冊の予算書の中に参考といたしまして、いわば国債整理基金の償還額、それから財源となります繰入額、そしてまた差し引きいたしまして年度末にどのくらいの償還財源がたまるのかといった姿がわかるような参考表を添付することにいたしたわけでございます。またそのほか、財政法第二十八条に基づきます参考書類というものを財政法に従いまして国会に御提出いたしてございますが、その財政法二十八条による参考書類の中にも、国債整理基金特別会計において取り扱っております国債の年次別の償還額等ある程度詳細な資料が添付されているわけでございまして、私どもといたしましては、それらの資料によりまして御理解がいただけるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  115. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 予算の御参考に供するための資料の整備につきましては、いま吉野次長が申したとおりでございますが、国債整理基金の運用の状況を簡単に御説明申し上げさせていただきたいと思います。  予算の参考表にも出ておりますように、昭和五十四年度末では国債整理基金の基金残高が一兆九千六百億程度になることが予定されております。本年度末では一兆三千九百五十億程度でございます。  国債整理基金ができまして、国債の大量発行と申しますか、昭和四十一年から本格的に国債発行を始めましてから、国債整理基金が今日までどのような償還あるいは借換債の発行をしたかということでございますが、これにつきましては、四十一年から今日まで満期の到来いたしました償還を要すべき国債の満期額が三兆三千五百億程度ございましたが、このうち現金償還をいたしましたのが三千九百十八億、これは積み立てられた基金から現金償還をいたしたわけでございます。残余のものは、国債整理基金におきまして借換債を発行いたしまして償還に充てたわけでございます。これが二兆九千六百三十九億ということになっております。このように三千九百十八億の満期到来額に対します現金償還をいたしましたほか、昭和四十年度特例といたしまして二千億赤字公債発行したことがございますが、これはやはりこの整理基金から二千億現金で償還いたしております。  現在、国債整理基金の運用といたしましては、このように一兆円を超します残高がございますので、これを政府短期証券あるいは日銀が持っております長期国債を余資の運用として買い入れる、あるいはまた国債の市況対策といたしまして市中から買うというようなことでこの余裕の基金を運用いたしておるわけでございますが、昨年度末の実績で、今日までこういう一兆円余りの基金残高の平均運用利回りというのは約四・六%くらいというふうになっております。この運用益というものは当然、国債整理基金の残高の方に年々積み増していく、こういう運用をいたしております。
  116. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 概括の説明は聞きましたが、さきに申し上げたことと含めて、現在の状況に合った制度、あるいは国民理解をいただく努力というものをさらに進めることが必要ではないかと思います。  次に、国債関連をした予算の二部門制といいますか、経常部門には赤字国債、投資部門には建設国債という形での考え方が昨年来非常に特徴的に、私の感じでは余りにもシェーマティックに出されているということではないだろうかという気がいたします。財政制度審議会建議を見ましても、五十四年度予算関連をした答申では、「経常部門の歳出については、緊要な施策に重点的に配意しつつ、既定経費の全てについて徹底した見直しを行い、」というふうなことで、あるいはそれに対照的に投資部門の方については、「公共事業費等の歳出については、経済情勢との関連に配慮し、財源事情の許す範囲内で、できる限りの規模を確保する必要がある。」五十四年度予算関連をした答申はまだ表現がおとなしい方で、境の表現は非常に象徴的な言葉遣いで表現をされていたということだと思います。  私は一つ考え方ではあると思いますが、ただ、非常にシェーマティックにそこを区分けをするといろいろな問題が起きてくるのではないだろうか。言うならば、買う対象が物的な資産であるかないかということで非常に違ってくる。しかしこの経常部門の方には、医療とか社会保障、教育、あるいは公務員の人件費とかいろいろな問題が含まれてまいります。それから投資部門の方にしても、いまのような公共事業のあり方でいいのかということは私どもは再三申し上げているわけであります。そういう関連の問題と、それからたとえば教育なんかにしても、先生方の人件費の方は経常部門である、学校を建てる建物の方はどちらに入るのかわかりませんが、いろいろ物はたくさんつくる、あるいは鉄とコンクリートのかたまりのいろいろな施設はつくらなければならぬ。つくる方とそれから経常部門に関係をする言うならば命と健康に関する部分、そういうことから見て、財政制度審議会の昨年、ことしの表現のように、非常にシェーマティックに二部門対比をして方向を立てるということは一体いかがなものだろうかという気もするわけでありますが、その辺のお考え方を伺いたいと思います。
  117. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 投資部門と経常部門と二つの部門に分割をして予算の姿を見る、あるいはまた予算編成に当たりましてこの二つの部門に分割をして考え方を練っていく、こういう姿勢を御指摘のように、五十二年度予算編成以来とってまいったわけでございますが、この考え方は一つには、投資部門はいわゆる財政法そのものによって認められております四条公債によって賄われる部門、それからまた経常部門の方は、財政法ではない、現在御審議をいただいております特例公債法によって初めて許される臨時特例的なる公債によって賄われる部門、そういうふうに分けているわけでございますが、それは単に財源が四条公債であるかあるいは特例公債であるかという財源面からのアプローチだけではございませんで、投資部門の経費は、その性質から申しましてよく御承知のように、いわゆる公共事業あるいは社会福祉、文教その他のもろもろの施設関係の経費が入っているわけでございますが、この種のいわゆる社会資本の整備にかかわります経費は、確かに考え方といたしましては中長期的な社会資本の整備の目標をにらみながら、年々予算化すべきものでは当然あるわけでございますけれども、しかし短期的には、やはり財政の景気調整機能という観点からいたしまして、景気の動向に応じましてある程度弾力的に伸縮すべき部門あるいは伸縮することが比較的容易なる部門、そういう考え方もございます。それに対しまして経常部門の方は先生御指摘のように、内容は、教育について申しますれば学校の先生の給与でございますとか、あるいはまた社会保障に関するもろもろの施策がその中に入っているわけでございまして、これは投資部門に属します経費とは違いまして、やはり短期的な景気の動向に応じてそう簡単に伸縮、弾力的に伸ばしたり縮めたりすべき性格のものでもない、そういうような経費の性格にも着目をして、二つの部門分割という試みをしているわけでございます。  いずれにいたしましても、私ども特にこの二つの部門に分割をしているやはり最大のねらいは、現在年々万やむを得ざる結果ではございますが、財政法ではお認めいただいておりません特例公債によらざるを得ない現在の財政運営を一刻も早く立て直しまして、この特例公債から一日も早く脱却をすることが現在の財政に課せられた使命である。そういう観点からいたしますれば、公債といたしましてはこの特例公債によらざるを得ない経常部門というものを投資部門と分割をいたしまして、鮮明に財政内容関係者の方々にも御理解をいただき、また、われわれ予算編成に当たりまして、特例公債によらざるを得ない経常部門というものについて特段の注意、それから特段の歳出節減の努力を払っていかなければならない。そういう観点も含めまして、この二部門分割というものは、そういう意味におきましてかなり意義のあるやり方ではないだろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
  118. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 いまの答弁にもあったように、赤字国債をいかにしてゼロにするかということは至上命令であるということですね。それから、現在の経常部門を赤字国債、投資部門を建設国債ということも妥当な考え方であろうということなわけですが、私は新経済社会七カ年計画、これらを読みましても、公共事業二百四十兆というのが出ています。それから、いろいろと国民の命と健康を守る部面についてもこのような増が必要であろうとは書いてありますが、大きな印象は、午前中もお話がありました、税を含めた負担増のウエートが非常に大きいということになってまいります。ですから私は、いまの考え方でいきますと、赤字国債をゼロにすることを至上命令である、すなわち経常部門を徹底的に締めなければならない、それすなわち、医療、社会保障あるいは教育、公務員の人件費その他ですね、これらの方を締めていく、あるいはそれぞれ受益者負担の原則であるという考え方の方が非常にふくらんでいく。この二、三年の経過で見るように、では、公共事業のあり方はどうなのかということになれば、何か大きな物をつくるという方に、そこに橋を三本かけるとか新幹線を延ばすとかいう方向にウエートがいく。こういう考え方がこれから中長期にわたって行われた場合に、一体財政なりあるいは経済政策としてこれで適当なんだろうかという問題意識はやはり出てくるのではないだろうか。極端に言ったら、老齢福祉年金の一万八千円、二万円ということもあるわけですが、寝たきり老人のまくら元で道路の工事を盛大にやっているというふうな社会状況みたいなイメージになってくるのではないだろうか。ですから、余りにも財政審の建議の表現のように、非常にシェーマティックにそこを分けて考えるという運用というのは、非常に問題があるのではないかというふうに私は考えるわけですが、どうでしょう。
  119. 林義郎

    ○林(義)政府委員 いま御指摘がございました投資部門と経常部門と分けて、こういうことでございますが、考え方といたしまして、経常部門というのは景気の変動によって左右することはなかなかむずかしい。一方、景気対策ということでは建設国債、四条国債というのは、その調達された財源によりまして消費されたものが資産として残る。そしてその資産によって国民全体の利益を充実することができ、回り回って国民経済にも役に立つ、こういったものが四条公債の対象になるということでわれわれ選んでいるわけであります。  先生御指摘のように、病人のまくら元でがちゃんがちゃんやられるなどというようなことになりますと、それも果たしてどうかというような問題がありますが、私はむしろその問題は建設事業その他の実行の問題だろうと思うのです。そうした意味で、何でもいい、どんな公共事業でも建設国債であればというわけにはいかないので、やはり国民経済全体をながめた上で望ましい資産形成というものが必要だろう、こう思っているのです。そこが、そういったものをやるということによりまして景気変動に対する財政の役割りを果たしていくというのがやはり四条公債の公共事業の役割りだろう、こういうふうに思っているものでございます。  そうした意味で、何か先生御指摘のように特例公債だからこれは非常に制限する、四条公債だから無制限などということは考えておらないわけでございまして、そこにはおのずからなる限度というものはやはりあるのだろう、こういうふうに考えております。
  120. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私が言いますのは、いまの大蔵省財政運営の教科書は、国債を減らさなければならない、財政再建が必要である、したがって一般消費税を中心にした増税をお願いします、それから、財政再建、国債を減少させるにつきましてはやはり二部門制という、こういう発想の教科書になるわけですね。私が申し上げているのは、非常にそこをシェーマティックに、財政審の建議をいいますと、言葉遣いから非常に対照的な言葉遣いになっています。そういう考え方で出てくるわけですし、それから行政についても、非常に民主的で効率的な体制をつくらなくちゃならぬ、私もそのとおりだと思います。しかし、チープガバメントがいいか悪いかというふうなことだけではなくて、やはり国民の命と健康に関係をする、あるいは教育に関係をする非常に重要な分野ですから、余りにもシェーマティックにそこを区分した表現をして押しつけるのではなくて、全体の国民生活を向上させていく、国民生活を守っていく総合的な視野から考えるという視点が必要ではないだろうか。皆さん方の説明でも財政審の建議を見ましても、そういう視点というのは非常に薄いというか、言葉にしてもほとんど見られない。それで経常部門これこれ、きつく締めなくちゃならぬ、投資部門は経済の情勢に見合って大規模にやってもいいような表現になってくるというわけであります。総合的な視野が必要であろう。大蔵省のいまの教科書はそういうことであるようですが、私ども学校で習った、ずっと覚えている財政の教科書によれば、財政の機能は何か、あるいは財政の目標は何かといえば、第一には所得再配分の機能とか、二つ目には資源配分の調整機能とか経済の安定化とか適切な成長の維持とかということが財政の機能であるということで私どもも習ってきたわけですけれども、ずいぶん変わった教科書になったものだなあという気がするわけです。  ですから、去年の財政審の建議というものはそこを非常に対照的に、非常にきつい言葉遣いで書いてありましたので、私は大変気になるのですが、教科書論争をするわけではありませんが、やはりそういう総合的な視野から考える視点というものが大事であろうと思うのです。
  121. 林義郎

    ○林(義)政府委員 いま先生から御指摘のありました財政学の教科書のお話はそのとおりだろうと思うのです。ただ、最近というか、財政を運用をしていくときに当たりまして、財政の持っているところの景気対策的な要素というものもやはり考えなくちゃいけない。特に昨年の予算を組むときには臨時異例の予算、こういうふうな形でございましたので、あるいはそういうふうな受け取り方を先生はされているのかと思いますが、基本的にはやはり総合的に考えていく、その総合的に考えていく中で、分けるならばこういうことであろうと私の方は考えているわけでございます。
  122. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 それでは、次に移ります。  午前中話題のございました国債の管理運営政策、または国債発行条件の改定などもございましたが、さらに、関係して二、三伺いたいと思います。  一つは、十年もの国債を〇・四%引き上げる、その財源措置その他お話がございましたが、ひとつ伺いたいのは、この〇・四ということの根拠です。先ほど理財局長の方から、シ団との話し合いの経過とか、それから市場実勢に大体合うと思うとかいうふうなお話もございましたが、その辺は重要な政策決定ですから、談合によって決めましたということでももちろんないだろうと思います。これから十五兆二千七百億という大きな国債をどう消化できるのかという責任を持ちながら判断をされたということだろうと思いますが、その判断の科学的なというのか具体的な根拠、その辺をもうちょっと詳しく御説明を願いたい。
  123. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 数字的、科学的な根拠というのはしかと決め手というものはございませんが、後ほど御説明いたすことといたしまして、今回の金利改定に当たりまして考えましたことは、一つは、市場実勢を尊重するというたてまえ、それから二つには、現下の経済運営の基本方針に顧み、他の長期金利に影響を与えないような形での金利改定であるべきであろうということ、それからやはりこの金利改定というものが国民税負担に及ぼすいわゆる財政負担への影響、それとまた、これも一つの大きな背景でございますが、二番目に申し上げました現下の経済運営の基本的方向を損わない、いわゆる内需を拡大し、景気の回復を促進していくということが要請されております国際環境、そういうものを頭に置きながら、一月、二月、実勢というものがどういうものであろうかということを追求したわけでございます。  大まかに申しますと、けさほども説明申し上げましたとおりに、ある程度長期資金需給のバランス、金利の底打ち感というもので何らかそこに実勢的に金利が上がるあるいは上がってしまったという要因があるけれども、それにさらに加速して余分なもの、すなわち金利の先高感というものが付加されておる。その金利の先高感というそういう心理的要因のものだけは、この改定に当たって外さなくてはならないという基本的な考えで取り組んだわけでございます。  いろいろ算定方式がございますけれども、いま店頭気配あるいは上場気配ということで一般に発表されております国債の利回りと申しますものは、いわゆる日本式利回り計算法に基づきます。日本式利回り計算法と申しますのは、いわゆるクーポンレートを流通価格で除したものに、かつ、流通価格と償還額、すなわち流通価格が九十五円であるとしますと、償還は百円が保証されておるわけでございますから、その差額の五円というものが毎年度均等に入ってくるという仮定計算をしたものを加えております。これが日本式利回り計算でございますので、この計算によりますと、オーバーバーあるいはアンダーパーの部分が非常に大きくなりますと、金利というか表示される利回りが非常に高くあるいは低く過度に表示をされるという形の利回り計算法でございます。  これに対しまして、一般的に単純な投資家の金利計算というものは直利方式という形で計算をいたします。これは流通価格が九十五円のもの、それに六・一%のクーポンレートがついておれば、九十五円投下したらそれが幾らの利回りで回るかということで、いわゆる六二%を九十五円で割るわけでございます。これが直利方式と申します。そういう計算方法もございます。  今回とりました計算というのは、先ほど申しました日本式利回り計算法、現在表示されております計算とこの直利との間というものがほぼ妥当な利回り計算ではなかろうか。と申しますのは、そういう利回り計算をいたしております例といたしまして、戦前の日本の国債の利回り計算もそのようにいたしておりましたが、現在欧米諸国で行われておりますいわゆる欧米式流通利回り計算法というのがございます。これは先ほど申し上げました直利あるいは日本式利回り計算法に、さらに年々二回で分括払いになっております利息を複利で運用するということを加えた計算方法でございます。大体この計算方法でございますと、直利と日本式利回り計算法の間のところへ利回り計算の数値がはまってまいります。  こういう三つの金利をまず横に並べて比較をしてみる。それと同時に、一月、二月、条件改定が叫ばれまして、この実勢を二カ月かかって見たわけでございますが、一月、二月の平均的なものにそれらの三種類の計算方式をとった場合どうなるか。あるいはまた、六・一%国債というものが低クーポンなるがゆえに非常にいや気が差されまして極端な値下がり現象を起こしたわけでございますが、六・六%クーポンものあるいは八%クーポンもの、あるいは他の国債以外の同種期間の債券の利回りというものの比較計算をしなくてはならないということで、いま三種の計算方法を、国債につきましては六・一、六・六、八%クーポンもの、現在市場にありますそういうものをいずれもとってまいりまして二カ月平均をとってみますと、乖離幅が大体〇・四ないし〇・五のところへ収斂されたわけでございますので、私どもとしましては〇・四というのはそういう数値からとったわけでございます。  ただ、これに対しましては一部批判が出ていることも事実でございます。と申しますのは、流通利回りというものは直近時点、かつまた、いま金利が、あるいは国債の値段が日々下がっている段階において、過去二カ月の平均をとったんでは、その時点における実勢ではないんではないか、先行きさらに価格が下がりそうな、金利が上がりそうな、そういう時点で平均をとるという問題点を御指摘される向きもございます。しかし、これはけさほど申し上げましたように、二月の十日前後から急速に先高金利期待感という要因が入っておりますので、改定時、三月六日にシ団に提示をいたしました時点ではその心理的要因を外さなくてはならない。そういう意味では私どもは、過去一月、二月の平均値をとってそれを参考にした数値というのがやはりある程度実勢に近いものと言い得るということで、〇・四という数値を算定したわけでございます。
  124. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 今度の条件改定というのは、いまお伺いしたような具体的ないろいろな判断その他も必要であったでしょう。それと同時に、国債の管理運営政策全体からしますと、一つの曲り角というのか転換というのか、そういうふうな象徴としての意味合いを持っているんではないのだろうか。要するに、いままで続いてきた御用金的思想と言われたものから、午前中も言われておりましたが、市場実勢をきちんと踏まえたものでなければ、量も大量であるし、それから今日の経済状況のもとで安定した消化はできない、そういうことが特徴的にあらわれているということではないだろうかという気がいたします。  私は、国債大量発行の歯どめという観点から申し上げたいのですが、従来から三〇%ラインであるとかどうとか、いろいろ政府の皆さんからは政策的な視点から、何%を超えてはならぬというふうに思いますので努力をしているとかという御説明がございましたが、その歯どめは実際に歯どめの役割りを果たしていないということで、三九・六%というところまで来ているということだと思います。何かやはり実効のある歯どめというものが必要ではないだろうか。先ほど申し上げましたような国民理解を得る、あるいは国会の論議などでもきちんと責任を踏まえた中長期の計画ということも、私もそれは一つだと思います。それから、国債発行を市場実勢に合わさざるを得ない、いろいろな意味金利払いその他国債費のウエートが高まってくる、国庫の負担がふえてくるということは事実です。ただ、諸外国の例を見ましても、五〇年代のアメリカのいわゆるアコードその他以来、やはり勝手に借金をふやすことはできない、それをやれば大変手痛い負担をしょわなくてはならぬというふうな、いわゆる市場メカニズムの構造に対応する中で歯どめをかけていく、あるいはまたそれが実際に歯どめの効果になったというふうなところも、一つの国際的な経験であろうと思うのです。政府の方を全然信用しないからその方というわけではありませんけれども、そういう意味で、歯どめという意味での一つのメカニズムとして、市場実勢に合わした形で発行、運用などを考えなければならないということが非常に明確になったという認識、今度の事態はそういう認識ではないだろうかと思うわけでありますが、いかがでしょう。
  125. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 市場実勢を尊重しないような発行を行った場合には、と申しますことは、利払い費の負担百億、千億というものを惜しむ余りに低金利での国債発行を遂行すれば、それはかえって国民経済に大きな破綻をもたらし、国民の生活、福祉にもインフレという経過を通じて大変な損害を与える、百億、千億というような財源に固執すべきような問題ではない、そういう意味におきまして、市場実勢尊重という発行は非常に大事だろうと思います。  今回の利上げも、先ほど来申し上げましたように、長期資金需給のバランスが崩れた、あるいはまた先行き大量国債発行という圧迫要因というようなものがございますので、こういう市場で円滑に消化されるかどうかということ、あるいは、それが過度の財政負担を招くか招かないかという観点から見ましても、市場実勢尊重の国債発行というものは、今後おのずから国債発行の歯どめとして作用してまいるということになろうと思います。そういう意味におきましても極力、一日も早く大量国債発行から脱却したいというのが私ども考えでございます。
  126. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういう視点から申しますと、私も何も国債費がふえてもいいというふうな気持ちはもちろんございません。こういう国債の臨時異例という言葉が年じゅう続いていくような状態にどう歯どめをかけるのか。厳しい、苦しい思いをしても歯どめをかけて、そして国民の御協力をいただきながら財政再建をしなければならない。そういう視点から考えますと、いま理財局長も言われましたような認識、そういうものを、これからの運用の中でも、従来の硬直発行型というのではなくて、やはり市場実勢に対応した対応というものを考えていかなければならない。そういう問題がさらにいろいろと出てくるのではないだろうか、またそれに柔軟、機敏に対応していかなければならないということではないだろうかという気がいたします。  この〇・四%引き上げ関連をしても一部の方からは、この引き上げ幅が小さ過ぎるので消化難は続くであろうとか、あるいはいまの相場には証券会社の思惑が働いているとか、いろいろさまざまな意見があるようです。それは現実の取引に関係することという意味で、市場の中ではそういうことは当然起こることだろうと思いますが、長期に見て、いま理財局長が言われたような市場実勢に対応しなければ大きな混乱を起こすということから言えば、まだ幾つか起こってくるのではないだろうか。たとえばこの一、二年来公募入札制を拡大するという努力をされているわけですが、そういうものを十年国債にも導入をする時期に来ているのではないかという意見も、いろいろ本や評論なんかを読みますとあるようです。あるいはまた多様化ということで、五種類の国債発行の多様化ということが図られております。これらのことも、もっと長期の十年ものを縮小して五年以下のものの枠をふやすべきではないかという意見もあるようです。あるいはまたその他いろいろな意見があるわけですが、私はさっき申し上げたような、厳しい思いをしてもとにかく国の方は厳しい負担になるからこれはもうやれない、やつちやいかぬというふうなメカニズムがこれからもいろいろと予想されるというふうなことではないかと思うわけでありまして、そういう意味で、ことしの予算案に関連をして言われている十五兆二千七百億円の消化の枠組みですね、これらのことを、いまの計画でいいのか、あるいは情勢に見合ってそれぞれの消化の枠、あるいは公募制を拡大する問題、そういうようなことも考えていかなければならないということがあるのかどうか、いかがでしょう。
  127. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 私ども昭和五十四年度の十五兆二千七百億の国債消化につきましては、再三申し上げておるとおり、昨年停止しておりました運用部の引き受けを新たに一兆五千億を起こし、かつ、昨年度一兆円の中期債の公募入札発行であったものを二兆七千億にふやすということで、十年の長期債の公債消化市場に与えるインパクトをなるべく緩和した形で発行したいということで、現在そのような発行消化計画を持っておるわけでございます。  いろいろ各方面から御説がございまして、この際、長期資金のニーズがないんだから、十年債で発行する予定のものを中期債に移してはどうかというような御意見も承っておりますし、あるいはまた十年債自身を公募にしたらという御意見も承っております。これにつきましては、まず二兆七千億円の中期債をさらにふやす、十年債から若干こちらへ持っていってインパクトをさらに緩和して市場のニーズに合った国債にするという御意見につきましては、私どもは一応現在のところでは、当初の計画二兆七千億の公募の形でやってまいりたいと思っておりますけれども、先行きの金融情勢というものは現在では何とも予断を許さない問題でございますので、今後の金融情勢いかんによってはさようなことも当然検討の対象にしなくてはならないかと思っております。  ただ、そういう意味消化の面から申しますれば、二年、三年、四年債という中期債を導入することは一つの手法ではございますけれども、これが将来にわたって長期安定的な財政資金の調達手段として適当であるかどうかということになりますと、いろいろ問題があろうかと存じます。二年、三年、四年先にこれらの満期が到来いたしました際に、当然借りかえ負担というものが出てくるわけでございます。米国におきましても、かつて長期債中心であったものが、大量の債券発行ということから、債券の期間の短縮が図られた時期がございましたが、いまはまた逆に、この期間の短縮を図って非常にそういう財政資金というものが短いものになって、その借りかえ事務あるいは借りかえ負担、そういうことからむしろもう少し長期安定的にした方がいいのではないかというような動きがあることも事実でございます。私どもは、五十四年度消化の問題もさることながら、将来のそういうことを考えました場合に、いたずらに期間の短いものを多くするということもいかがと考えておりますので、そういうことをすべて勘案しながらやってまいりたいと思っております。  それから、十年国債を公募入札にしたら、市場実勢尊重ということで、非常に経済評論家向きの御意見がございますけれども、私どもは公募入札というものが円滑に行われるためには、それについての各種の基盤、環境が整っておる必要があると考えております。すなわち、入札に応じます各種金融機関や機関投資家が発達して、入札に対して積極的に参加していただけるということが公募入札のための必須条件でございまして、そういう意味の広く深い流通市場あるいは発券市場というものが発達しておることが条件でございます。中期国債につきましては現在、日本の金融機関が調達している資金というものが定期預金等を中心として非常に短いものでございますし、また資金ニーズがこういう経済情勢のもとでございますから短いものへ向いているということで、公募入札というものが非常に円滑に今日まで行われてきております。しかしながら、発行量の多い十年債というものをこういうふうにいたしました際に、現在の金融構造や公社債市場の状況から見まして、中期債の公募入札のような成熟した条件、環境が整っておらないと、かえってこういう十年債の公募というものは金融資本市場に混乱を招くのではないかというふうに考えておりますので、私どもは市場実勢を尊重しながら、十年国債発行というものはやはり現在の手段方式で続けてまいりたい、そしてその補完的な手段といたしまして、必要に応じ中期債の発行量の調節をしてまいりたいというふうに考えております。
  128. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 各国とも国債の管理運営関連をして非常に心配をしているのは、財政インフレの危険性をなくするということだろうと思います。また、そういう視点から先ほどまでお伺いをいたしましたが、国債発行条件あるいは運用、これらの方式についても、諸外国の場合、欧米の場合には日本よりも非常に柔軟、弾力的な措置がとられている現実であろうというふうに考えるわけです。国民生活にとって一番大きな問題は、税の問題と国債の大量発行によってインフレを招くということに対する警戒、心配、その二つが一番大きな国民の関心であろうというふうに思います。いずれにしましても、いままでの歴代政府の政策によりましてこれだけ大変なことになってしまったというわけでありますから、この現実の中から一体どうより改善をしていくのかという視点の問題意識になろうと思います。  まず一つ、インフレあるいは財政インフレをいかにして防止するのかという問題ですが、私は基本的には、量が余りにも大き過ぎるので、幾らうまくやっても完全な歯どめというものはないという現実だろうというふうな気がいたしますけれども、そんなことを言ったらしようがないので、やはりインフレを起こさないような現実の対応を懸命に努力をしなければならないということであろうと思います。そういう意味合いの前提として、マネーサプライの増加が警戒信号の状況であるということが、これは日銀の方からも繰り返し指摘をされているという状態です。このマネーサプライの増加と大量国債発行、この寄与度といいますか、どういう割合をもってマネーサプライに影響を与えているのか。いわばそのM2の増加と国債発行、それから金融機関の保有状況、これらのことをどういうふうに掌握されておりますか。
  129. 徳田博美

    徳田政府委員 マネーサプライと国債との関連でございますが、マネーサプライ、これは主としてM2という形であらわれるわけでございますけれども、御承知のとおり、国債とマネーサプライとの関連につきましては、国債を銀行が引き受けた場合に直ちにマネーサプライがふえるということではございませんで、国債を銀行が引き受けた場合のかわり金を政府が支出して初めてそれがマネーサプライの増加につながるわけでございます。したがいまして、マネーサプライと国債の増加との間はいま申し上げたような間接的な関連になるわけでございますけれども、ただ、これを結果的にとらえまして全体のマネーフローという形で見ますと、一応国債とマネーサプライの増加との結果的な関係が出てくるわけでございます。  そういう形で数字を見てまいりますと、金融機関の国債保有の増加額のマネーサプライの伸びに対する寄与度、このマネーサプライの伸びはM2の末残前年比で、本年の一月では一二・一%の増加になっているわけでございますが、それに対しまして国債の保有分の増加額の寄与度は約五%ということになっているわけでございます。ほかに金融機関の民間に対する貸し出し等もマネーサプライに対する増加要因となっているわけでございまして、ただこの五%という数字は、数年前はこれは二%、三%という数字でございましたので、最近はこのマネーサプライに対する結果的な寄与度というのが非常に上がってきているということは言えると思います。
  130. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 御承知のとおり、いま卸売物価の高騰、上昇状況ということが非常に懸念をされております。それがまた消費者物価にどう影響してくるのか、石油の問題も含めて経済運営上非常に警戒すべき大きな動きだということになっている。またそういう中で大量の国債発行とマネーサプライとの関係ということがベースとして非常に大きな問題となっている。いまも御説明がありましたように、しばらく前はまだ二%そこらの国債発行がM2に影響する比率と言われておりました。いま四%台から五%になってきているというふうな状況です。そういう卸売物価から消費者物価への転嫁がどうなるのか、あるいは油の問題、そういう意味での物価動向の心配と、それから国債の大量発行に伴う心配といろいろなものが重なって、政府見通しの四・九%五十四年度消費者物価上昇という範囲にはとてもおさまらぬだろうというのが大方の最近の各分野の人が見ているところではないかということになっているわけですが、全体のことは別にしてそういう状況の中で、特に今日そういう段階の中で特段にこういう配慮なりあるいはこういう努力をしていかなければならないという問題意識はどういうふうにお考えでしょうか。
  131. 林義郎

    ○林(義)政府委員 大変むずかしい御質問で、特段に何を配慮するかということでございますが、私は経済全体の運営として考えていかなければならないのはインフレーションの問題だ、物価の安定こそが一番大きく考えていかなければならないことだろうと思うのです。幸いにいたしまして経済は相当上向きの傾向を兆しております。企業収益その他もわりとよくなってきているということが盛んに報道されておりますが、心配しておりますのは、石油その他の海外物価の動向、これがやはり心配していかなければなりませんし、これがあって、それが火種になりましてざあっといくというのは、過剰流動性と申しますか、そういった形の資金がふらついてきてインフレーション的な様相をもたらすという点を私たちは一番考えておかなければならないのだろうと思うのです。  大量の国債発行ということでどうだという話でございますが、私はいままでのところでは、これが火種になって大変な悪性インフレになるというふうには見ておりませんし、日銀当局、金融当局も細心の注意を払いながらこの問題に対処していかなければならない、こういうふうに考えております。
  132. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 もう一つは増税の問題であります。  まず一つ伺いたいのですが、財政収支試算によれば新規の増税のトータルは五十九年度まで九兆一千百億円、これは毎年度の新規の増税額のトータルが九兆一千百億円ということになるわけだと思います。これから五十九年度まで新経済社会七カ年計画の基本構想の数字から言いましても、増税負担増の総額としてはこれの何倍かというトータルになるであろうというふうに思います。私どもの方で計算をしてみましたら、毎年度の新規増税の合計が九兆一千百億円である。これから五十九年度までの増税分の総額は二十五兆から二十八兆ぐらいの総額になるんではないかというふうに計算をいたしておるわけですが、そういう計算をなさったことがありますか。
  133. 高橋元

    高橋(元)政府委員 財政収支試算では、五十五年度に一兆二千六百億、五十六年度に一兆五千億、五十七年度に一兆七千七百億、五十八年度二兆一千億、五十九年度二兆四千八百億、合計五カ年間に九兆一千百億円の現行税制以外の税制の導入が必要ではないかということを試算いたしておるわけでございます。  これをいわば三角形に積み上げますと幾らになるかということでございますが、その点は実は計算をいたしておりません。たとえば税制改正の効果といいますのは、税制が導入されまして以来、その段階では廃止されるまでは永続されるわけでございますから、そういう意味で一税制改正そのもののインパクトというのはその年に働くわけで、それ以後は税負担率として国民経済に影響を及ぼすものだというふうに考えます。変な話を申し上げるようで恐縮でございますが、ある年度にといいますか、戦後ずっと減税をしてまいりましたが、その減税の累積額がいま何兆円になっておるかということを三十年間計算をすることの持ちます意味合いと、五カ年間でございますから確かに税負担増といたしますと一九・六から二六・五になるわけでございます。それが幾らかということではありましょうけれども、それを全部積分をいたしましてどのくらいの面積になるかということになりますと、計算は簡単でございますが、そういうことの政策的な意味合いということはいかがなものかなというふうに思うわけでございますが、御了承いただければありがたいと思います。
  134. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 主税局長のそういう逃げ方の方がいかがなものかなと思うわけでありまして、私、はやはり新経済社会七カ年計画の基本構想、それからその中に出されている負担七ポイント増、いろいろ発表された新聞評論とか雑誌等の評論は皆そうですけれども、とにかく言葉では豊かな家庭とか何がどうとかいっぱい書いてありますが、大体みんなが関心を持って見出しにつけて見ているのは負担増の方の問題ですね。ですから、いままでの減税と対比をして考えるという時代ではないだろう、これからは非常に厳しい時代なんだ。それで、与党の同僚議員の午前中の質問にありましたように、そういう事態を国民の前に明々白々に示すということが必要ではないか、私もその点は同感なんです、方角づけは違いますけれども。そういう実態を明らかにする意味で言ったので、これは余り意味がないではなくて、単純な計算ですから、経企庁の数字からいっても七ポイント増、それから五十九年度予算規模想定、それからいった数字、それから先ほど読み上げました毎年度新規増税の計画、それら全体を合わして九兆一千百億円、それの累計、大体二十八兆ぐらいになるんじゃないですか。感じでどうですか主税局長、すぐわかるでしょう。
  135. 高橋元

    高橋(元)政府委員 まあいろいろ計算をいたしてみますが、いまお示しのような数字の見当かと存じます。
  136. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 それから午前中に、そういう中での増税の問題、そしてまたそれの柱となるであろう一般消費税の問題ということについての話題がございました。  私は、税金を支払う国民の側に立って考えてみたいと思うのです。そういう立場から考えますと、これから毎年いろんな新しい税収の方途を検討し、考えるということがあるでしょう。またわが党の池端さんが言われたように、公平原則に徹したいろんな新しい税制も大胆に考えていただきたいという気がいたします。しかしいまの政府の対応からすれば、やはり一般消費税が一番大きな骨組みとして提起をされている。恐らく九兆一千百億円ということについても、その相当な部分というよりも大部分が一般消費税が対象になるというふうなことではないだろうかというふうに思うわけであります。これは消費者に転嫁されるわけですから、消費者の側からいたしますと非常に大きな問題であろうと思いますし、あるいはまた財政にかかわる、また経済にかかわる、議員としても非常に大きな問題であろうと思います。けさの日本経済新聞を見ましても、大きな見出しで、「一般消費税 頭痛い自民議員 反対陳情相次ぐ」で、選挙近く非常に困っているというような大きな記事が載っておりましたが、私は現実だろうと思うのですね。  そういう面から、支払い側から考えてみますと、午前中もお話がありましたが、五%税率で五十三年度ペースですか二兆八千億、大体三兆円ぐらい。年度途中でこれが八月か十月ということになれば申告の時期その他の関係で額はがくんと減ってくる、月割り計算ということには全然ならぬ状態になるだろうというふうなことで、五十五年度の一兆二千六百億というはじいた数字も非常に大変なことだろうというふうに思うわけであります。そういう支払い側から考えてみますとどういう形でいつどうなるのか。私どもは反対ですから違うわけですが、しかし政府の言うとおりにやっていくという場合に、この九兆一千百億円の新規増税、この大部分が一般消費税で賄われるということを計算いたしますと、途中は細かく言うことは省きまして、どうしても五十九年度には一二%台ぐらいの一般消費税の税率がなければ、その他のことを勘案してもこういう計画は成り立たないということではないだろうか。何ぼほかの税収その他を考えてみても、いまの中期税制の答申の方から言えば二けたの一般消費税ということになるのではないだろうか。政策的に皆さん方がそれをおやりになれるかどうかということではなくて、皆さん方が国会へお出しになったこの財政収支試算と中期税制一般消費税という観点から言えばそうならざるを得ないのではないかというふうに思いますが、いかがですか。
  137. 高橋元

    高橋(元)政府委員 今後五カ年間にわたります増収といいますか新規税制に期待する額九兆一千百億円というものを、いかなる税目をもっていかなるタイミングで埋めていかざるを得ないのか、国民にそれだけの負担お願いせざるを得ないのかということにつきましては、いま具体的な考え方というものはないわけでございます。それは、国税全体としまして五十四年度現在の税収二十一兆四千八百七十億というものが弾性値一・二で各年ふえていく、それから先ほど申し上げました各年の増税期待額というものが現実の税制となってこれまた全体として一・二の弾性値で伸びてまいる、そういうことを想定して、六十年度国民所得に対して国税、地方税合わせて二六カ二分の一という税負担率になる、こういうことでやっておるわけでございます。税収は経済のいわば子供でございますから、経済が各年どういうふうに発展していくのか、その中で国民所得の各コンポーネントがどういうふうに動くのか、それに対してどういう税負担お願いするのがいいのか、所得の階層別分布がどう推移するのか、それに合わせて各年度税制というものを具体的に構想して、租税法律主義はもちろんのことでございますからこれまた国会の御審議を得て、増税を必要とするならばお願いをするわけでございまして、いまの段階で、これから二六カ二分の一まで税負担率を上げるためにかくかくの税制をかくかくの年度に導入するのだというような計画を私どもとしてはつくり得ないわけでございます。したがいまして、いま仰せのありましたような一般消費税五%で現在時点で三兆円の税収という物差しで全部はかったら何%になるかという御質問でございますが、いまそれにお答えする用意がないと申し上げたいと思います。御了承いただきたいと思います。
  138. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 私は、そういう御答弁がございましたが、頭の中か腹の中では、こういうこともあるのかなとかこういうことにならざるを得ないのではないかなというふうなことを担当の責任の皆さんとしていろいろとお考えになっている、また、大変だなと思いながらお考えになっているというふうなことではないかと思います。  何も反論するわけではありませんけれども、たとえば中期税制から一般消費税のプラン、中期税制の中に多様なメニューがいろいろと用意をされて、こういうことも検討しなくちゃならぬ、こういうことも検討しなくちゃならぬ、いろいろなことが多面的に検討されて、そしてそれらのことをこれから五十九年度までいろいろと消化をしていく、あるいはこれができるかできないかを細かく検討していきたいというのならばまだ話はわかるのです。そうではなくて、大蔵省主税局の優秀な皆さんが実際上、事務局というよりもヘゲモニーをお持ちになっていると言われる税調が、その出されている内容が太い筋で中期税制一般消費税ということを言っているわけですから、恐らくこれは主計局の方ですか、五十九年度までのこういう試算を単純に数字を並べたのだと言われますけれども、はじいてみる中でも主計局の方はそれを見ながら、これは一般消費税をやればということが大筋になっているけれども、当面五%でスタートと言われておりますが、将来見通し、将来といってもこれから五年ぐらいのうちに、大変なことだということは当然お考えになるということではないかと思います。ですから抽象的に、いろいろなことを考えなければならぬ、それから多様なことも判断をしなければならぬのでいますぐ言えませんと言うことはわかるのですが、次官、いかがですか、その辺は正直にひとつ。
  139. 林義郎

    ○林(義)政府委員 けさほど高鳥議員からもお話がありましたし、いま先生が御指摘のように、九兆何千億などというような税収を上げるということは大変なことでございます。先生御指摘のように、一般消費税の率を一二%にするとかというふうなかっこうで簡単に片づくようなものでもないのだろうと思うのです。それは単に計算すればそうなるかもしれませんが、それにはやはりそのときの社会情勢、経済情勢というものを考えてやっていかなければならないわけでございますから、われわれも、こういった非常に深刻な財政状態である、この状態に対してこれからいろいろ知恵をしぼって対処していかなければ本当に財政の再建というのはできない、こういうふうに思っておるのです。そうした意味で、いますぐにどうしましょうとかこうしましょうと言うことができないということを先ほど事務当局が御答弁したということで御理解をいただきたい、こう思います。
  140. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 時間ですから最後にもう一つだけ。  いまの一般消費税負担の計算のことなんですが、たしか前の委員会で標準世帯一世帯当たり五万三千円とか何かそんな数字を聞いたような記憶があるのです。     〔綿貫委員長代理退席、委員長着席〕 前の当委員会で、たしか税調会長もいらっしゃったときでしたか、五%税率の場合の税収見通しはどうかという議論がたしかございまして、そのときに、五十三年度ベースで二兆八千億でしたか、課税物資、非課税物資、それから免税になる企業ラインの問題全部含めてそんなふうなお話があったというふうに記憶いたしております。大体三兆円ぐらいの税収が見込まれる。最終的には国民負担、消費者負担になる。単純平均でいっても国民は一億一千万ですね。そうすると、割り算をすれば二万四、五千円、標準世帯三・七ぐらいにしても十万円に近い負担になる、八万円から十万円の間ぐらいの負担になるというふうなことを思うわけです。私ども社会党の方でも、この一般消費税が五%税率で導入された場合どのように国民負担関係をしてくるのか、相当多くの品目を挙げ、それぞれの影響度合いを計算し、相当詳細な検討をいたしまして、五十三年度ベースで一世帯当たり年八万三千二百九十二円というふうな計算をしてみているわけです。何か五万円ちょっとというのは、計算の方法もちょっとわからぬし、それから意図的に非常に低く見積もっているのではないだろうかというふうな気もするわけでありますが、その点を最後に伺って、時間がおしまいですから、詳細なその問題の議論はまた別にいたしたいと思います。
  141. 高橋元

    高橋(元)政府委員 たしか前々回の委員会の際だったと思いますが、五十一年の「家計調査年報」をもとにして推計いたしますと、勤労者一世帯平均の一般消費税負担額は、未確定の要素もありますが、推定を加えると五万七千円となるということを申し上げました。  それは、五十一年の人口五万人以上の都市勤労者世帯の家計調査による支出額を細かく分析いたしまして、現在消費税のかかっているもの、たとえば物品税課税物品でございますとか酒でございますとかたばこでございますとか、それらにつきましては一%当たり四千三百億という税収であるということを私どもが申し上げました。この四千三百億という数字をつくりましたときと同じような前提を置きまして調整したものといたし、それから課税品、非課税品の区分にいたしましても、やはりその節に構想しておりましたような区分に従いまして想定をいたしまして、課税品には五%、非課税品には六十部門の産業連関表を使いました非課税品へのインパクトというものを考えまして、両方を乗じて得ますと、月の合計の負担額が約四千八百円となります。それの十二倍で五万七千円程度というふうに申し上げたわけでございます。  なおちなみに、世帯の平均の実収入は三百十二万円でございます。これは五十一年でございますから、五十二、五十三という社会党でなさいました試算と突き合わせるためには、さらにその後の「家計調査年報」を分析しなければなりませんので、現在その作業をいたしておりますが、ざっと消費支出の伸びだけ税負担が伸びたといたしますと、五十三年全国全世帯について社会党で試算しておられます八万三千二百九十二円に当たります数字が、私がいま申し上げた五万七千円から延長いたしますと六万九千円程度ということになります。
  142. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 時間ですから、その延長の議論はまた別にいたします。
  143. 加藤六月

    加藤委員長 宮地正介君。
  144. 宮地正介

    ○宮地委員 財政特例法案の審議に当たりまして私は初めに、財政収支試算の五十四年度ベースとの関係について少しお伺いしてまいりたいと思います。  先ほど来からもお話が出ておりましたが、この財政収支試算によりますと、昭和五十九年度特例公債の依存度をゼロにするということになっております。しかしながら、この五十九年度公債残高が百二十九兆六千億円、こうなっておるわけでございます。これは四条公債特例公債が含まれておりますが、その区分の額をお示しいただきたいと思います。
  145. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 財政収支試算でお示ししてございます五十九年度公債残高、御指摘のように百二十九兆六千億円でございます。その内訳でございますが、四条債等が八十四兆二千億円、それから特例公債法に基づいてお願いをいたしております特例公債が四十五兆四千億円、合わせて百二十九兆六千億円ということでございます。
  146. 宮地正介

    ○宮地委員 この特例公債四十五兆四千五百億円については起債によらないで現金償還、こうなるわけでございますが、これについてはどういう御計画をお持ちになっておりますか、伺いたいと思います。
  147. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 ただいま先生御指摘のとおり、特例公債につきましては、現在御審議をいただいております五十四年度特例公債法にも明記してございますように、償還のための借りかえはいたさないということでございます。そこでたとえばいまお示しの、五十九年度末になお四十五兆四千億円の特例債の残高があるではないか、それをいかにして償還をしていくのかということでございますが、これは特例債を発行いたしまして以来繰り返し御説明申し上げ、御了承いただいていると存じますが、私どもといたしましては、現在の国債整理基金特別会計法あるいは財政法に従いまして、総合的な減債制度というものを持っているわけでございますが、この総合的減債制度によって償還に遺憾なきを期していきたい。さらに申し上げますれば、この総合的減債制度はいわゆる三本の柱によってつくられているわけでございますが、第一点はいわゆる定率の繰り入れでございます。前年度首の国債の残高の百分の一・六に相当する金額を毎年度それぞれ国債償還財源に充てますために一般会計から国債整理基金特別会計へ繰り入れているわけでございますが、このいわゆる百分の一・六の定率の繰り入れ。それから二番目には、これは財政法でございますが、剰余金が生じました場合には財政法上は、その二分の一を下らざる金額を公債償還財源として積み立てるべしということに相なっているわけでございますが、特例公債発行下におきましては、もしも剰余金が出ました場合には、財政法に言う二分の一と言わずその全額を公債償還財源として充てていきたいということを政府の方針として申し上げているわけでございます。もちろん特例公債発行している状況のもとでございますから、剰余金に多くを期待することはなかなかできないものでございますけれども、もしも剰余金が幾ばくかでも出ました場合には、その全額を公債償還財源に充ててこれを積み立てていきたい、これが第二点でございます。それから第三点といたしましては、これは国債整理基金特別会計法の方でございますが、必要に応じまして予算繰り入れをいたして償還に遺憾なきを期していく。このいわゆる三本柱によりまして、借りかえをいたさずに満期に現金で償還をいたすということが政府の一貫した方針でございます。
  148. 宮地正介

    ○宮地委員 その償還につきまして、結局いま政府としては、六十一年度以降についてはいわゆる経済見通しが非常にわかりにくい、そういうことで、現時点においてはなかなかつかみにくい、こういう判断をしているようでございますが、この点についてはもう少し突っ込んで具体的に検討をする用意、これはございますでしょうか。
  149. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 六十一年度以降の問題でございますが、今国会におきましても予算委員会等におきまして何回かその点の御論議もあったわけでございます。その節にも政府側からお答え申し上げておりますとおり、何分にも六十一年度以降の具体的な償還財源をどうするかというような問題になりますと、その六十一年度以降におきます財政、なかんずく一般会計の姿を想定をしないわけにはまいらないわけでございます。申し上げるまでもなく財政それから予算は、経済の中の予算であり、財政であるわけでございます。そこで、六十年度までにつきましては御案内のように、閣議了解をいただきました新経済社会七カ年計画の基本構想というのがございまして、それに従いまして、たとえば社会保障の水準でございますとかあるいは社会資本の整備の水準でございますとか、これは歳出の面でございますが、六十年度の水準としての一つ財政上の指標が得られるわけでございます。それからまた歳入の面につきましては、先ほど来御議論がございますように、国民所得に対する租税負担率ということでこれもある種の財政の姿を描く手がかりがあるわけでございます。そこで六十年度までにつきましては、御提出いたしておりますような財政収支試算ということで、これも非常にマクロ的なものではございますが、ある程度の姿が描かれているわけでございますが、御指摘の六十一年度以降ということになりますと、その予算の姿を描く前提となります経済そのもの、たとえばGNPが六十一年度以降一体どんな姿、どんな推移で動いていくのか、あるいはまたそのときどきにおきます歳入、税収をどういうふうに考えていったらいいのか、いろいろむずかしい問題が数多くございまして、私どもとしてはそれらの計算の前提になります経済の諸指標につきまして描くことが非常にむずかしい、そういうわけでございますので、具体的に六十一年度以降の一般会計ベースでの償還の所要額といったようなものはなかなかお示しができないということでございますので、御了承いただきたいと存じます。
  150. 宮地正介

    ○宮地委員 結論的には、六十一年度以降は具体的計画はわからないということでございます。  そこで、今回の財政収支試算によりますと、この公債発行につきましては、国債費については現行の発行条件に基づいて試算されているわけでございまして、すでにこのたび発行条件引き上げられたという条件の変更が行われたわけであります。こういう点を見てまいりましたとき、現実的にはいまお話しの五十九年度におきましても、百二十九兆六千億円の公債残高はさらに上回るもの、こう予想されるわけであります。午前中のお話を伺っておりますと、〇・一%の引き上げで大体百五十億円、このたび〇・四ですから大体六百億円ぐらいの持ち出しがあるようであります。今後さらにこの発行条件というものが、後ほどまたいろいろお伺いいたしますが、再引き上げの動きなどもあるというふうに伺っておりますが、こういう発行条件の改定に伴いまして、財政収支試算というものも当然変わってくるわけでございます。今年度においてはすでに出ておるわけでありますが、たとえば来年度にその改定に伴った新財政収支試算の提出、こういうものも当然検討されるのではないかと思いますが、この点についてはどういうふうに考えていますか。
  151. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 午前中も御議論がございましたが、国債金利はまさしくそのときどきの金融市場等の動向によりまして機動的に上下する性質のものでございます。今回提出いたしております財政収支試算におきましては、この財政収支試算を作成いたします時点におきます国債発行条件、これによって計算をいたしているわけでございますが、あくまでこれは六十年度という五年先の展望を踏まえましたマクロ的な計算でございますので、国債発行条件が変更された都度一々財政収支試算を手直しをするというところまでは考えていないわけでございます。もちろんたとえば来年、五十五年度予算編成との関連で五十五年度予算ベースの財政収支試算を改めてお出しいたします場合は、その時点におきます国債発行条件によりまして国債費等も計算をいたすことは当然かと存じております。
  152. 宮地正介

    ○宮地委員 財政収支試算の前提条件が新経済社会七カ年計画の基本構想にあるわけでございまして、その中からGNPの伸びだとか、そのほかたとえば先ほども主税局長お話しになっておりますが、税収弾性値一・二というような見方をしております。基本ベースはそこにあって、当然国債費については発行条件は現行の条件ということでつくられたわけでありまして、先ほどの弾性値についても〇・八ぐらいの実勢から見れば少し問題があるのじゃないか、こういうことは前の大蔵委員会でも私、指摘したところでありますが、いずれにしても、基本条件のベースが変化をした段階においては、やはり謙虚に財政収支試算の見直しというものは国民にわかりやすくきちっとしていくべきではないか。本年の一月二十五日の閣議了解でこの新経済社会七カ年計画の基本構想が得られたわけで、そのときの条件が新たな経済環境の変化によって変更された場合には、当然閣議了解をとって財政収支試算の見直しを予算編成前に出していく、これはもうあたりまえのことでありまして、そのようになった場合はというような発言は非常に問題であろうと私は思う。この点について政務次官からはっきりと答弁しておいていただきたいと思います。
  153. 林義郎

    ○林(義)政府委員 宮地さんの御指摘よくわかるのです。ただ、財政収支試算というものを出しておりますのは、新しい経済計画の枠の中でまさに試算をしたならばこうなるであろうということで出しておるわけでございまして、そのときの状況で、たとえば国債金利が変わるとかなんとかという形のものを一々やりますと、これまた国債金利が将来上がるかもしれないし下がるかもしれない、いろいろなことがございますから、そういった形で大ざっぱなところの数字としてはこうなるであろうということをお示ししたということで御理解をいただきたいと思います。もちろん変えることにやぶさかでありませんけれども、そういったことではなくて、大づかみなところではこうであろうということでお話をしているのでございます。
  154. 宮地正介

    ○宮地委員 そういう大ざっぱなものというと、国民は余り期待しない方がいいし、逆に言えば、五十九年度に赤字公債を整理するものも余り当てにならないというような判断に立たざるを得なくなるので、その点は十分に謙虚に、条件が変更すれば変更に伴った基本が変わるわけですから、手直しはすべきである、こういうふうに私は主張しておきたいと思います。  さらに、今回の財政収支試算の歳入面を見ましても、先ほど来主税局長からお話がございましたように、五十五年度から五十九年度までに約九兆一千百億円の増税になる、また租税負担率も今年度の一九・六%から二六・五%に引き上げられる計算になっておる、こういうことでございます。この九兆一千億の中身、われわれはやはり一般消費税ということを考えているのではないかというふうに思うわけでございますが、この点主税局長、中身をどういうふうに御検討されているか、伺っておきたいと思います。
  155. 高橋元

    高橋(元)政府委員 九兆一千百億円を五カ年間現行税制以外の税制によって税収を得ませんと、二六カ二分の一%という租税負担率にならないわけでございます。それがまた、歳出のサイドの抑制とあわせまして財政の不均衡から脱出するためのいわば数字的な要件でございます。そういう意味で九兆一千百億円は、年次により、現実に新しい税制を導入する年次が動きますとまた全体の数字も変わってくるかと思いますが、現在時点で定率でつなぎました曲線から判断いたしますとそういう数字になるということでございます。  ただ税というのは全体として、これはもう申し上げるまでもないことでございますが、日本の現状で申しますと二十数項目から成ります税体系でございます。税体系の中で一つの税目だけを大きくしていくということは、税体系全体としていびつになっていくということであろうかと思います。間接税である一般消費税、現時点では五十五年度にぜひ導入が実現できるようにということを私ども念頭に置いて準備を進めており、また国民の皆様方の御理解を得るように努めているところでございます。今後の、仮に増税所要額という言葉で呼ばせていただきますと、増税所要額を全部一般消費税によって埋めていく場合に、税体系としてうまくワークしないのではないかという問題もあろうかと思います。先ほどもほかの委員の御質問にお答え申しておりましたように、現時点では国税全体として五カ年間を通じて九兆一千百億円の新規の税制というものが必要であるということで、それをどういう税目でどう埋めていくかということになりますと、国民負担お願いすることでございますから、負担をされる国民の側のいろいろな御事情もありましょうし、経済が生み出す毎年の生産がどういう形に推移していくかということも関係ございますし、税負担の階層別の帰着ということも当然問題になるわけでございますから、具体的な税制にどう落としていくかということは、年々の経済社会情勢なり国民のニーズというものにこたえて現実に構想をする以外にはないのではないかというのが現時点の考えでございます。
  156. 宮地正介

    ○宮地委員 この財政収支試算の策定をする時期においての主税局当局の認識は、一般消費税の導入を考えていたのかどうか、その点を伺いたいと思う。
  157. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昨年の暮れに税制調査会から、国税、地方税合わせて五%の一般消費税の税率で導入することが必要であるという答申をいただきました。現在、そういう一般消費税の細目について詰めをして、先ほども申し上げたことでございますが、できるだけ早い時期に導入をさせていただきたいと私ども考えております。そういう意味で、五%の一般消費税の導入をできるだけ早い機会にということは申し上げられますが、それが九兆一千百億全体がそうであるかということになりますと、私どもはいまの時点ではそういう判断を持っておらないというか、そこまで判断できない立場にあるわけでございます。
  158. 宮地正介

    ○宮地委員 九兆一千百億全体というよりも、この策定の時期にその認識を主税局当局が持っていたかどうか、そこを結論だけ言ってください。
  159. 高橋元

    高橋(元)政府委員 新経済社会七カ年計画の基本構想の中にも、五十五年度一般消費税を導入するように準備を進めるという文言が入っております。ですから、財政収支試算の基礎になっております七カ年の青写真の中にも一般消費税の早期の導入という考え方が入っておるわけでございます。私どもは、その新経済社会七カ年計画の基本構想よりも前に、税制改正要綱をもって五十五年度一般消費税の導入を実現するように諸般の準備を進めるという閣議の決定をいただいております。したがいましていまの宮地委員の御質問が、考えておったかというと、確かに考えておりましたが、その大きさが五%以上どのくらいになるかということについては、いまの段階では考えを持っておりません。
  160. 宮地正介

    ○宮地委員 すでにその認識をこの策定の中に持っていた、ただし五%以上についてはまだ定かでない。しかし、これは子供でもわかることでございまして、最後は九兆一千百億円という増税の大枠がわかっておって、導入は五十五年度で五%。それじゃ五%の場合には、試算によれば大体税収見積もりが二兆五千億、こうなるわけですね。そうなりますと、その額の中から、年度で割っても、現在の税制改正で、ではその枠を超えるだけの税収見積もりのあるそういう税制改正ができるのかというと、なかなかこれは厳しいのが率直なところであろうと思います。となりますと、五%をスタートとして将来的には二けたに持っていくというものがすでに基本路線の中にある、こう国民理解せざるを得ない。その点について主税局長としては、現段階では定かではない。しかし、当然の帰結としてそういうふうになることは明白ではないか、こう思うわけでございますが、その点いかがでしょう。
  161. 高橋元

    高橋(元)政府委員 繰り返して申し上げるようで恐縮でございますが、一般消費税が間接税としてどのくらいの大きさで、全体の二六・五%の税負担になった場合に国税の税体系全体としてどの程度の大きさになるものか、またなることが可能なものか、なって差し支えないものかということは別途の判断だと思います。ですから現在の段階で私どもは、一昨年の税制調査会の中期答申の線で、結局これだけ大きな構造的不均衡を税収をもって歳出の節減を伴いながら埋めていくということであれば、所得税か一般消費税かいずれかの選択しかないであろう。しかし所得税について、中小所得者と申しますか、比較的低所得の方についてもやはり税負担率の引き上げお願いする、税率または課税最低限のいずれかによってお願いするということには現実にかなりの無理があろう。したがって当面は一般消費税の導入ということが避けられない問題だということで、私ども一般消費税と申し上げておるわけでございます。将来にわたる税体系、それから税負担の階層別帰着をどう考えるかということは、今後のそういう点を踏まえての検討課題である、大変繰り返して恐縮でございますが、そう考えております。
  162. 宮地正介

    ○宮地委員 まあこの点については、また別の機会に論議をさせていただきたい。  いずれにいたしましても、一般消費税の導入をすることに対しましては、やはり大きなデメリットというのがあるわけでございまして、私たちは特に物価の面あるいは国民生活に与える影響など考えましたときに、これはもう慎重過ぎるくらい慎重に対応しなくてはならない、こう考えているわけであります。デフレ効果といいますか、経済的にもそういうものが働く。ですから皆さんの方が、二兆五千億程度の増収見積もりを見ても、実際にはデフレ的な効果に働いてしまうと、法人税などの落ち込みなどによって、果たしてそのくらいの見積もりに沿った税収があるかという疑問も出てくるわけであります。そういう点をきめ細かく積算してまいりますと、非常にまだまだ主税当局が考えているような甘い税収の見積もりというのはできないのではないか、こういうふうにも別の観点から見ますと考えられるわけでありまして、大平総理もこの問題については、国民との対話の中から合意にできるだけの努力をして対応していきたい、こう申しているわけでございますので、どうか財政エゴに陥ったようなやり方だけは慎んでいただきたいと強く要望をしておきたい、このように思うわけであります。  そこで次に、国債発行条件引き上げの問題について少し触れてまいりたい、こういうふうに考えるわけであります。  午前中からも同僚委員から何回か御質問されておりましたが、三月発行分から国債金利が〇・四%引き上げになった。現段階ではまだ掌握し切れていない面も多々あるのではないかと思いますが、その後流通市場において引き上げ後どういうような変化が見られているか、まず実態を御説明いただきたいと思います。
  163. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 国債条件変更を決定いたしましたのが三月九日でございます。その後その決定を受けました日以降、市場の実勢はわりあい回復をいたしておりまして、改定の話がまだ表に出ておりませんでした三月二日のころから比べますと、現在の価格はわりあい高騰いたしてまいりまして、三月九日に九十四円三十銭であったものが、六・一%国債でございますが、三月十四日は九十四円八十銭と、利回りにいたしまして〇・〇九ぐらい回復をいたしております。六・六%国債につきましても、三月九日に九十七円六十銭が九十八円五銭と、四十五銭の回復、利回りにいたしましても相当大幅な回復をいたしております。  国債につきましてもそうでございますが、他の債券をちなみに見てまいりますと、五年ものの利付金融債が改定前相当大幅な乖離でございまして、三月九日現在で六・二%の利付金融債が九十八円九十銭、利回り六・五〇〇ということでございましたが、三月十四日には価格九十九円七十五銭、利回り六・二六七とほぼ発行条件と同じような水準に近まるまで回復をいたしております。かように一般的に改定決定後、公社債市場はそれを好感してくれまして、わりあい回復基調を早めております。
  164. 宮地正介

    ○宮地委員 特に応募利回りと流通利回りとのいわゆる乖離差ですね、この問題が、引き上げ前は〇・八から大体一・〇くらいの乖離があった。その後いまのお話によりますと、流通利回りが〇・ ○九くらい回復をした。この乖離差はその後どういうふうになってきたか、状況説明いただきたいと思います。
  165. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 条件改定を決定いたします前の乖離を見ます指標と申しますものは、市中の流通利回りと条件改定前の利回りを比べております。そういう意味におきましては〇・八、〇・九というような乖離幅でございました。それが九日に改定をいたしました以降は、新たな改定条件との乖離幅をいま比較をするようにいたしております。新たな改定条件によります乖離幅の比較を見ますと、昨十三日現在で六・一%国債につきまして〇・四三一の乖離がございます。
  166. 宮地正介

    ○宮地委員 六・一%国債でいまなお〇・四三一の乖離があるというところにやはりまだ問題が残っているのではないかという感じがするわけでございますが、先ほど来もお話がありましたが、もっとこの市場の実勢を尊重すべきではなかったか、こういう批判も現実にあるわけでございまして、この乖離差が現在は回復基調にあるという御報告でございますが、さらに今後の国債の大量発行に伴いましてこの〇・四三一が逆に拡大をしていく、〇・五、〇・六また〇・八などに戻る可能性もないとは私は思えないわけでございます。今後この乖離差が再び一・〇などぐらいに逆減少した場合、再引き上げの可能性、また検討する用意があるのか、この点について伺っておきたいと思います。
  167. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 お答え申し上げます前に、若干先ほどの数字を整理して申し上げたいと存じますが、新しい六・五%クーポン、発行価格九十九円五十銭という新条件との乖離幅につきましての状況を見てみますと、本月九日、条件改定を決定いたしました際に、六・一%国債につきましては〇・五九一の乖離差があったわけでございますが、それが日を経るに従いまして漸次回復をしてまいりまして、昨日現在では〇・四三ということで、この新発行条件と比較する限りにおきましては〇・一六〇くらい回復をいたしておるわけでございます。  私どもはこういう条件がある程度確定したということ、あるいはしばしば金融当局、政府当局においても言明しておりますように、当面金利改定、全面改定ということは行わないんだということが投資家なり一般市場関係者に周知されれば、その面からもさらに市況は安定してくるということを期待しておりまして、この乖離幅はさらに日を追うに従いまして漸次まだ縮小していくというふうに私ども考えております。そういう意味におきまして、将来一層乖離幅が一%近く、非常に大きくなった場合にどうするかという御質問でございますけれども、私どもはそういうことがないことを希望しておりますし、確信もいたしたいわけでございますが、金融情勢のことでございますから、あるいはこの夏以降、秋以降、冬というような時点にどういう事態が起こるかわかりません。しかしそういう事態、委員が御設問のような事態が生じました場合には、やはり流通市場の実勢ということであれば、国債発行というものは市場実勢に応ずべきものというふうに考えますので、その時点において適切な対応をいたしたいと思っております。
  168. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに、こういう金利引き上げ金利自由化への一つの潮流に入ったのではないか、こういう見方をしている学者また専門家もおるわけでございますが、この点についてどういう理解をしておるのかが一点。  それから、五十四年度においても国債発行十五兆二千七百億の中におきまして、二兆七千億が中期債であり、現実にはまだ長期の十年ものが十二兆三千五百億というようになっているわけであります。しかしこの長期の十年ものも、昔は国の発行するものであるからという保証つきといいますか安全つきといいますか、こういうことで、どうも御用金思想というのがあったようでありますけれども、そろそろもうそういう点もやはり改めるべきではないか、こういう声も強くなっているわけでございます。そこで、いま局長からもお話しございましたが、この十二兆三千五百億円の長期十年もの、場合によっては、最近どうも信用といいますか人気が落ちてきているという中で、むしろ国民のニーズとしては中短期債をもっとふやすべきではないか、本年も二兆七千億では少し少ないのじゃないか、もっと十二兆三千五百億の長期十年ものの取り崩しをして中短期債に切りかえていくべきではないか、こういう声もあるわけでございますが、この点についてもあわせて、どういうふうに御検討といいますか理解をしているか伺っておきたいと思います。
  169. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 金利自由化の問題につきましては、後ほど銀行局長がお答えすると存じますが、いまの長期債を中短期債に振りかえるべきではないかという御意見でございますけれども、いま委員御指摘の十二兆数千億の十年債のうち、一兆五千億は運用部で引き受けることにいたしておりますので、市中に消化お願いするのは約十一兆円弱だという御認識をいただきたいと存じます。この十一兆円弱の十年ものというものがいまの長期債市場の現況から見て資金ニーズに合わない、よってこれを中短期のニーズがあるからそれに移せという御議論でございますけれども、けさほどもお答え申し上げましたように、私どもは一応五十四年度消化計画とすれば、当初計画どおりの発行をいたしたいと考えております。しかしながら金融情勢のことでございますので、後々どういう変化があるか。本当に十年債の消化というものが金融情勢上もう不可能に近いというような条件に当面いたしましたならば、その際検討させていただきたいと存じますが、一応現在では二兆七千億の中期債という方針を堅持してまいる所存でございます。  と申しますのは、けさほども申し上げましたように、二年、三年、四年という中期債を発行いたしますと、二年、三年、四年、それの満期が到来いたしました際の借りかえの問題でございますとか償還の問題でございますとかいろいろむずかしい問題が出てまいります。そういう意味では、先々のことを考えますればやはり長く安定的な資金調達手段の方が財政には望ましいわけでございますので、そういう長いもので消化し得るものならいたしたいと考えております。しかしそれに固執するばかりでは金融市場に悪い影響を及ぼしますので、そのときの情勢に応じましてよく考えさせていただきたいと存じます。
  170. 徳田博美

    徳田政府委員 金利自由化との関連で申し上げますが、金利自由化は御承知のとおり、金利機能、つまり金利による景気調節機能であるとかあるいは資金配分機能をより有効に発揮するために、その一つの方途として金利自由化ということが取り上げられているわけでございまして、これは非常に大事なことでございます。ただしかし、日本の金融の現状から申しまして、間接金融市場、つまり預金を主体とする市場におきましては、いろいろな障害もございます。また郵便貯金の存在もございまして、制度的な問題もございまして、必ずしも資金の需給が金利に直ちに反映し得るような状態にはなっていないわけでございます。そういう意味で、金利の自由化あるいは弾力化というのはむしろ、直接金融市場からまず入っていくことが日本の場合には適当ではないか、こう思うわけでございまして、こういう面におきまして、すでにいろいろ自由化あるいは弾力化が進んでいるわけでございます。  御承知のとおり、短期の国債の入札制であるとか、あるいはコールの金利の自由化であるとか、あるいは近く導入を予定されておりますCDの金利自由化とか、そういうことが行われているわけでございますが、そういうものの一環として、国債金利が市場の実勢に従って弾力的に動くという方向に進むということは、金利の自由化、弾力化を一歩進めたものとして非常に意味があるのではないか、このように考えております。
  171. 宮地正介

    ○宮地委員 長期の国債消化をさらに努力するためには、公社債流通市場の整備、これを進めていかなくてはならないと思います。  そこで、証券業界あるいは銀行業界でいろいろ利害が対立しているようでありますけれども、新発の国債の銀行窓口の販売、また既発の国債の売買を銀行取り扱いにするといった態様もこれは検討に値するのではないか、この点についてが一つ。     〔委員長退席、稲村(利)委員長代理着席〕  もう一つは、長期債偏重という国民の批判、これは私は率直に受けとめて是正していく勇断というものも必要ではないか、こう思うわけでございますが、この二点について大蔵省はどのように考えておられるか、伺っておきたいと思います。
  172. 徳田博美

    徳田政府委員 国債の銀行における窓口の販売の問題につきましては、国債管理政策から見ましてどのような方途をとることが望ましいかということから判断すべきものと考えておりまして、これは金融制度調査会あるいは証券取引審議会等においていまいろいろ議論が行われているところでございまして、その議論にまってまたいろいろ検討を進めたい、このように考えております。
  173. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 長期債偏重、あるいはまた関係者の中期債の要望というものは私どももよく承っております。市場の実勢を見ながら十分その辺の御意見も参考にしてまいりたいと思っております。いずれにいたしましても本年度は、昨年一兆円の公募を二兆七千億というふうにふやさせていただきましたので、この四月以降始まります公募というものがどういうふうに円滑に行われていくか、まず、相当量の公募、二兆七千億と申しますと平均的にも月々二千億から二千五百億の公募が必要なわけでございますので、本年度の公募状況を見ながらいろいろ検討させていただきたいと思っております。
  174. 宮地正介

    ○宮地委員 いずれにいたしましても、国民から見て魅力のある国債、また市中消化をできるだけ促進できる国債ということも、やはり配慮していかなくてはならない段階に来ているのではないか、かっこうのいいことだけを言っておいて、実際は売れないで、それが逆に買いオペをあおり、財政インフレになるようなことがあっては決してならない、こういうふうに私は思うわけであります。  そこで、金融機関による六・一%国債の売却規制がちょうど一年たちまして、この四月から外れるようになるわけであります。マスコミなどで伝え聞くところによりますと、すでに大手の生命保険の会社においてはいわゆる約定ということで、すでに約定をしておいて受け渡しは四月以降という、いわゆる先物売りというようなやり方で売却が始まっている、こういうようなことが言われておりますが、この点についてまず大蔵省はどのように掌握をされておるのか、この点を伺っておきたい。  また最近御存じのように、商品市況が大変活発になって高騰しておりますし、イラン政変の影響で石油問題も非常に供給が不安定、また卸売物価の高騰など、五十四年度経済運営の中で物価についてもすでに経企庁長官も警戒水域に入った、こういうような発言をしている折、このような大手生保などの売却が始まっているとしますと、これは今後大きなインフレに火をつける結果にならないか、こういう懸念もあるわけでございますが、この点についてもあわせて伺っておきたいと思います。
  175. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 私も委員が御指摘になりました、四月に受け渡しということで一部金融機関が六・一国債の売り予約と申しますか売り約定をしておるという記事を、公社債の専門誌でつい最近拝見をいたしております。まだ残念ながら実態がどういうふうになっているか、そこは掌握いたしておりません。いずれにいたしましても、シ団加入の金融機関につきましては、当初引受手数料というものをお払いしている関係上、マーケット維持のためにせめて一年間は安定的に保有をしていただきたいという希望を私どもは持っておりまして、ある意味でこれを要請してまいったわけでございます。その期間がこの四月一日から、六・一%国債につきましては昨年四月に初めて出したわけでございますから、その一年が解除になるということでございます。一部の金融機関、特に私が予想いたしますのは、四月、五月は地方銀行にとりましては大量の地方債の引き受けという要請が行われるわけでございますので、一部地方銀行につきましてはそういう意味の資金繰りから、六・一%国債の売りが出るのではないかというふうに予測はいたしておりますが、都市銀行その他の金融機関につきましては、別にその動きがあるということは聞いておりません。特に六・一%国債を大量に保有する金融機関自体がそれを市場に売って値崩れを起こすということは、みずから評価損あるいは売却損を大きくする問題でございますので、金融機関の経営ビヘービアといたしましても、そういう大量の売りは出てこないのではないかというふうに私は考えております。  それから、これが売られた場合に、いろいろインフレマネーの供給になるのではないか、物価高騰の原因になるのではないかというような御質問でございましたけれども、売られた場合に、市場がそれを受け入れるだけの力を持っておれば、これは別に日銀から金融を供給されて、そのファイナンスによって売られたものを引き取るわけではございませんので、市場がそれだけの受けざらとして作用すれば、直接的にはそういう影響はないものと思っております。
  176. 宮地正介

    ○宮地委員 それから、国債の円滑な消化を阻害している一つの要因として、高度成長期における金融制度のもとにおきまして、先ほどもお話しいたしましたが、長期債に偏った発行、これをやはり続けておりますと、引き上げ前にいろいろ問題になりました国債価格の下落、こういった問題が起きてくるわけでございまして、これを防止するとなりますと、考えられることは、一つは日銀による国債の買い支え、これをやりますとマネーサプライを増加させインフレ要因となる。今回第二の方法として国債発行利回りを引き上げた、この問題につきましても、やはり設備投資を圧迫したりあるいは円建て外債を圧迫するといった問題もありまして、非常にこの二つの問題にはいろいろ論議が分かれようかと思います。そういう意味で、やはりインフレをあおる、あるいはクラウディングアウトを引き起こす、こういった問題になるわけでございまして、いずれにしても非常に高い代償になる、こういう問題もあるわけでございまして、こういう点については、どういう理解のもとにいわゆる国債消化の円滑化という問題に大蔵省として取り組んでおられるのか、この点を少し説明いただきたいと思います。
  177. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 御指摘のように、国債発行がインフレとどういう形で結びつくかということは、実体経済面とそれから金融的側面と両方あろうと思います。国債の大量発行というものが実物経済面に反映して需給ギャップを起こす場合、これは実体経済面の側面でございますけれども、金融面的側面から申しますと、国債発行が御指摘のとおりにマネーサプライの増加を招いてインフレ要因になる、こういうことでございます。  しからば、国債発行がマネーサプライの増加に結びつく経路というものがどういう経路があるか分析をいたしてみますと、五つ六つあろうかと思います。一つは、国債の大量発行が市中消化の限界に参りまして、それを無理に消化するために日銀が過大な信用供与をする場合、これはインフレマネーの増加になります。二つ目は、国債の大量発行金利水準の上昇を招いてくる。しかしながら、これが財政負担の軽減という観点から無理な低金利政策をとるという場合にも、マネーサプライの増加を招くおそれがございます。三番目には、国債の大量発行というものがクラウディングアウトを起こす。そのクラウディングアウトを起こさせないために金融緩和政策をそこでとる。これもやはりマネーサプライの増加につながります。それから、国債発行をいたしまして、保有金融機関、国債の保有者が価格が低落した場合に評価損が発生する。この評価損発生を防ぐために国債の価格支持政策を行う。特にその価格支持政策というものが日銀の買いオペ等で行われる場合には、やはりこれはマネーサプライの増加、インフレマネーにつながる問題でございます。それから直接的には、国債発行が市中消化の限度に来て日銀引き受けになってしまう、これはあってはならないことでございますが、そういうようないろいろの経路が国債とマネーサプライの増、インフレという形に結ぶ道であろうと思います。  そこで、これを防ぐための方策というのは何よりも、大量の国債発行というものをできるだけ圧縮するということが第一義だろうと思います。それから現実に必要悪としまして、ある程度の国債の大量発行を余儀なくされるということでございますと、これの円滑な市中消化を図らなくてはならない。円滑な市中消化を図るということは、今朝来しばしば各委員から御指摘をいただいておりますように、発行条件の弾力的な改定でございますとか、そういう意味で、適切な経済金融政策によってマネーサプライの増加を防いでいくということ、それから先ほど委員からも御指摘いただきましたように、円滑な消化のための多様化でございますとか、あるいは個人とか機関投資家等の安定消化層の拡大発掘に努めてまいるとか、あるいはまた流通市場を整備して、あふれ出る公債というものを市場でよく受けとめてもらうような市場整備の問題、そういうような対策があろうかと思います。私どもはそういうことで、冒頭に御説明しましたいろいろの経路、それ自体を断ち切ることをまず考えたいと思いますが、その前提のためには、弾力的な条件改定、円滑な市中消化、安定保有層の拡大、市場整備ということに留意をしていかなくてはならないと思っております。
  178. 宮地正介

    ○宮地委員 そういう意味で、特に国債残高の急増と国債管理政策、これは非常に重要な課題でございまして、先ほど理財局長は欧米各国の例を出して、最近は欧米各国でも短中期債の発行を重点的にやり、見直し論が出ておる、こういうお話がございましたが、私はこの国債残高の急増の実態から見たときに、わが国は逆にアメリカのような本格的な国債管理政策の導入というものがいま必要ではないか、こういうふうに理解しているわけでございます。特に本格的な国債管理政策というのは、中央銀行が市中に残存する国債の満期構成を調整することにより一国の流動性をコントロールする、こうなっておるわけでございまして、わが国においては、こういうアメリカ型の国債管理政策というものをむしろ参考にしていくべきではないか、こういうふうに私は考えるわけでございますが、局長としてはどういうお考えをお持ちですか。
  179. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 市中に保有され、残存いたしております国債を中心といたします各種債券、公共債というものの残存期間が非常に長いものに偏っておるということは、円滑な金融政策を行う上におきましても、またそれを保有いたします金融機関あるいは事業法人等にとりましても、経営上の問題を残す大きな問題だろうと思います。日本の場合ですと、残存期間が八年以上というものがほとんど九割を占めておりますが、諸外国、特にアメリカやイギリス等におきましては、残存期間五年未満のもののほうがむしろ多いという構成になっております。日本がなぜこんな長い残存期間構成になったかと申しますと、ここ昭和五十年から一挙に大量の国債発行したということで、それから経過年数はまだ二年、三年しかたっておりませんので、おのずから残存期間の大きいものができたわけでございます。  昭和四十一年から発行しました国債の残存期間構成を見ますと、年々平均的に発行されておりますれば、たとえばことし十五兆発行いたしましても、九年先には残存期間一年になるわけで、平準化するわけでございますが、この大量国債の急激な発行ということが残存期間構成を崩しております。それを是正する手段ということから考えますと、中期債を補充していくということが一つの御指摘の方法だろうと思います。私ども国債消化面ということから考えまして中期債というものを採用いたしましたと同時に、こういう残存期間構成という点にも着目いたしまして、昨年から中期債の公募措置というのをとったわけでございます。  それともう一つは、先ほど中央銀行の金融調節のためにもというお話でございましたが、オペレーションツイストによって、短いものを市中に出して市中から長いものを吸い上げて、残存期間構成を変更するという手段があろうかと存じます。残念ながら日本におきましては、国債の年限を七年から十年に変えたという三年間のブランクがございますために、いま残存期間が二年、一年の短い手持ちの債券がないということで、そういう意味で、国債の相互によるオペレーションツイストが行い得ない現状であるということを申し添えておきます。
  180. 宮地正介

    ○宮地委員 中期債というものを前向きに検討すべきではないかという局長の答弁をいただいて、私もそのとおりだと思います。特にアメリカでは、市中に保有される国債の四六%が大体一年未満の短期債である。わが国はそれに比較いたしますと、わずか二%弱、こういう実態になっているわけでありまして、私は短中期債の国債の市中における保有というものはもっと高めていくべきではないか。また国民も、魅力ある国の国債ですから、安心して買うことができるという面で、そういう意味の市場の実勢ももっとよく掌握をし、対応していくべきではないか、こういうふうに私は思うわけであります。  また先ほど、短期国債が今後たくさん発行されていくと、結局財政的に非常に回転が厳しくなるというお話でありますけれども、むしろ短期国債発行していくことが逆に長期国債の価格を安定化する働きもあると私は思うわけであります。その点について、現在のように金融機関に保有される国債が余り長期債に偏っておりますと、金融機関は、短期的な資金需給の変動に対しても長期国債を市中に売却せざるを得ない、このために長期国債の価格が短期的な要因で変動することになる、こういう問題も生じてくるわけであります。でありますから、短期国債が市中に保有されておれば、その役割りを短期国債が担うことになりまして、長期国債の価格の変動は防ぐことができる、こういった国債価格の、特に長期国債の価格の安定に寄与する、こういう立場を私は理解しているわけでございますが、この点について最後にお伺いをしておきたいと思います。
  181. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 日本におきます長期債価格の変動というものが非常に大きく、金融の一時的繁閑の度合いによって左右されております。これは諸外国に例のないほど大きく左右されております。これはなぜかと申しますと、日本の公社債市場あるいは金融市場におきまして、長期市場と短期市場が分離しておらない、かつ、長期の債券というものをみんな短期の資金で持っておるということでございまして、御説のように長期債の安定のためには、一時的な金融の繁閑を調整するために十分にして完全な短期金融市場というものが発達しておれば、長期債の安定は図り得る、またそれによって図るべきだ、それは委員の御指摘のとおりと、私は全くそういうふうに思っております。  そういう意味におきまして、本日の新聞にも報道されておりましたが、短期金融市場の育成という意味におきまして、手形の建て値制の廃止でございますとか、あるいは手形、コールについての金利の自由化、弾力化、あるいは今回のCDの金利の自由化というようなものが進んでおりますので、漸次それによって短期金融市場が育成されていくということを期待いたしたいと思っております。
  182. 稲村利幸

    ○稲村(利)委員長 代理安田純治君。
  183. 安田純治

    ○安田委員 けさからいろいろ同僚委員が質問をされておりまして、私の聞く部門についても重複することもあるかもしれませんけれども、確認の意味で若干重複する質問もお許しいただきたいと思います。  まず、財政再建のいわば手がかりといいますか、目途を立てるというような意味でありましょうか、大蔵省が昨年二月に昭和五十三年度ベースの財政収支試算を国会提出されました。ことしも一月三十一日に五十四年度ベースの財政収支試算を国会提出されたわけでありますけれども、二つの財政収支試算を比べてみますと、おかしなことに、五十三年度ベースの財政収支試算ではあちこちに書かれておった「増税額」という文言が、五十四年度ベースの財政収支試算では全く姿を消しておるわけであります。たとえば五十三年度ペースの財政収支試算の中のケースCでは、「増税規模は累計で十兆三千三百億円となる。」という説明がございまして、表の方の脚注にもはっきり「増税額」という記載があって、各年度の増税額が表として示されておったようでありますが、五十四年度ベースの財政収支試算を見ますと、そのような記載は見当たらないようであります。それでは一体政府は今後どのくらいの増税を見込んでいるのかわからないわけでして、なぜ昨年の財政収支試算のように増税額についてはっきりした表示をしなかったのか、まず伺いたいと思います。
  184. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昨年の財政収支試算は、ケースを五つに分けまして、その中のケースのC、通称「増税依存型」、ケースのD「増税巾圧縮型」、ケースのE「大巾歳出削減・増税併用型」、三つのケースにつきまして表の下に「増税額」という欄がございました。それは御指摘のとおりでございます。  本年お出ししております財政収支試算では、実は後ろに計算の根拠を書いた部分がございますが、そこの欄で申しますと2の(3)の(イ)というところがございます。ここに「このような想定のもとでの各年度の税収額と、前年度の税収額が名目GNPに対して弾性値一・二で伸びるとした場合の税収額との差額は次のとおりである。」としまして、一兆二千六百億から二兆四千八百億まで各年度の税収の差額というのが書いてございます。その合計が九兆一千一百億でありまして、それが昨年の各ケースにつきましての欄外にございました「増税額」と内容的には同じものでございます。
  185. 安田純治

    ○安田委員 前の委員の質問に対しても、九兆一千百億というのがギャップであるといいますか差額であるということで、これがいわば「増税額」というのに当たるのだという御説明でしたけれども、そうしますと、この九兆一千百億円というのはどういう内容になるのか、御説明願いたいと思います。
  186. 高橋元

    高橋(元)政府委員 その資料でごらんいただけばありがたいと思いますが、五十五年度から五十九年度の税収につきましては、各年度等率、すなわち一八・四%で伸びるという計算でございます。なぜそうなりますかと申し上げますと、六十年度の税収につきましては、新経済社会七カ年計画の基本構想による二六・五%という税負担率を国税、地方税に分けまして、国税のその想定される税負担率から、つまりマクロの経済計画との整合性をもって国税の額を出しまして、それから弾性値一・二で、成長率一〇・四でございましたかで伸びるものとして逆算をいたしまして、五十九年度の税収を出しております。それを、六十年度以降特例債の償還が非常に多く始まりますので、五十九年度をもって特例債を脱却いたしたいという前提で、増税が必要でありますのは五十九年度までに全部国民負担お願いするという計算でそうやったわけでございます。五十九年度の税収から逆に五十五年度までつなげますと、等率一八・四%という伸びになる。そういうふうにして出しました各年のいわば所要税収額と、それから五十四年度に現存しております税制及び五十五年度以降その表に書いてございますような増税を加えまして、それが全体として成長率に対して弾性値一・二ということで伸びるという計算をいたしましたその差額が、そこのただいま申し上げた九兆一千一百億になるわけでございます。
  187. 安田純治

    ○安田委員 いまの主税局長のお答えは、何か国民に対して大蔵省側が増税額の過少申告をしているのではないかというような感じがしないわけではないのです。私の方の読み違いかもしれませんけれども、増税という言葉の概念の問題かもしれませんが、非常に単純に考えますと、増税額というならば、まず現行法で五十五年度から五十九年度の税収額を出して、この税収では不足する税収額を増税額として表示するのが正しいのではないかというふうにも考えますけれども、具体的には、標準型の税収からケースAまたはBの税収を引いた二十八兆二千六百億ですか、この税収が本当の増税額になるのではないか。     〔稲村(利)委員長代理退席、委員長着席〕 そうでないと国民としては非常にわかりにくい。増税の概念が、五十五年度になると、五十四年度に新規増税になった部分は今度は現行税制になって、確かにそういう理屈になるんだろうと思うのですが、現行の税制前提として一体どのくらい今後負担が大きくなるのかという目安として見る場合には、どうもこういうやり方だと不親切といいますか、過少申告になるのではないかと思いますが、いかがですか。
  188. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昨年ケースのC、D、E、三つにつきまして増税額をお示し申し上げたわけですが、その場合の増税額という脚注がついておりますその中身の十兆三千三百億円その他三つのケースの計算方法は、全く本年も同じことをやっておるわけでございます。  税及び税を負担していただく国民所得、いずれも年概念でございますから、一カ年間または一年度間に生産される純生産物が国民所得でございますし、それから税も一年度間に収納いたします税収でございます。税制というのは、各年度国民所得の中でどれだけが制度的に国家に帰属するかということを書いておるわけでございます。したがいまして、現行の税制をもってまず五十五年度に一兆二千六百億だけ足りないから、それを五十五年度税制改正の形でお願いをするという想定を一応計算上いたしまして、五十五年度に実施せられたる税制に対してさらに、ちょっといま持ち合わせませんが、一兆数千億の増税をお願いしなければならなくなるであろう、こういうふうに繰り返していく、そういう形で税制改正というのは行われるものであろうと思います。  現行の税負担、たとえば一九・六%がそのまま続いた場合に、六十年度に想定されています二六・五%の間でどのくらい差があるかということになりますと、これまた、現行の税制が弾性値一で必ず伸びるべきだという想定を置くことになりますとそれも現実的ではなかろうと思います。
  189. 安田純治

    ○安田委員 確かに主税局長がおっしゃるような一つの表示の仕方といいますか、従来各年度税制改正でもやられているような一つ方法だとは思いますけれども、しかし現在、現行法は昭和五十三年度税制以外にはないわけでございますから、まず何よりも先に現行法で五十四年度から五十九年度の税収はどうなるかという、この税収額を基準として増税額を表示しなければならないのじゃないか。国民にとってもその方がわかりやすいのではないか。その上でなおかつ大蔵省の表示のように、毎年度の新規増税額をまた別に示して、そういう考え方もあると思いますが、これは二つにした方がわかりやすいのではないかと思うのですが、いかがですか。
  190. 高橋元

    高橋(元)政府委員 お言葉でございますが、いずれがわかりやすいかということは別といたしまして、税制は制度の問題でございますから、各年度に現在またはその時点その時点で持っております税制で達成されない税収がどれだけあるか、それを新しい制度としての税制でどう国民負担お願いするかということが眼目であろうかと思うわけでございます。したがいまして、租税負担率を一定にしておくとか、五十三年度、五十四年度改正を織り込ましていただいておりますが、五十三年度現在の税制が今後永遠に続くというふうに考えるのもいかがなものかというふうに私どもは思って、先ほどお答えを申し上げておった次第でございます。
  191. 安田純治

    ○安田委員 そうすると端的に言えば、この財政収支試算によって国民が実際に現行税制をベースにしてずっと考えた場合に多く負担する税額というのは、約二十八兆円ということに計算していいのですか、あるいは大蔵省の九兆一千百億円、どうなんですか。
  192. 高橋元

    高橋(元)政府委員 何年間の問題として考えるかということがまず基本にあると思うのでございますが、先ほどの繰り返しになりますけれども税負担及び税負担をしていただく国民の所得というのは各年度をもって計算をいたすわけでございますから、それを相当期間つなげていけばそれは非常に大きくなりますけれども、それは制度の問題としては何年間に——そうしますと結局、ただいま二十一兆五千億円負担お願いしている、それが何年間か繰り返されるということで、百数十兆という金目になりましょう。しかし、それが国民負担お願いいたします基礎になります国民所得は、これまた千何百兆という数字になりますので、したがいまして、各年度改正の問題というふうに御了承いただきたいと思います。
  193. 安田純治

    ○安田委員 この問題ばかり言っているわけにはいきませんので、今度は公債の元利の償還について伺いたいと思います。  二月八日に大蔵省予算委員会に「特例公債償還について」という資料をお出しになりましたけれども、その内容説明していただきたいと思います。
  194. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 御指摘の二月に予算委員会に御提出申し上げました資料でございますが、この資料はお手元にお持ちかと存じますが、本文とそれから二枚の参考資料と二つの部分から成っているわけでございます。  それで本文の方でございますが、「特例公債償還について」ということで一、二と二点記載してございます。これは大蔵省といたしまして、特例公債発行以来種々国会でございました御議論も踏まえまして、特例公債償還につきましての大蔵省としてのいわば公式の考え方を資料としてまとめて提出をさせていただいた、こういうものでございます。  内容は、第一点といたしましては、特例公債償還が問題であるわけでございますが、償還を支障なく行うためには、やはりまず何よりも特例債の発行そのものを最小限にとどめ、かつまた、できるだけ早く特例公債依存の財政から脱却することが先決問題だ、このため最善の努力を尽す決意であるという決意表明でございます。なお、なお書きがございますが、こういった考え方からいたしましても、特例公債から脱却するまでの間は、特例公債償還のために特別の償還財源としての財源の積み増しをすることは考えていないということでございます。  それから第二点でございますが、第二点は、さはさりながら、特例公債依存から脱却した後におきましても、すでに発行いたしました特例公債償還のために非常な財源が要るのではないか、そのために一体どうするつもりかという問題に対するいわば大蔵省としての回答でございますが、そこにございますように、「特例公債を円滑に全額現金償還するため」には、やはり何らかの予算繰り入れが必要であろう、必要であろうが、その予算繰り入れの仕方につきましては、今後各年度負担の平準化を考慮しながら具体的な方策の検討を続けまして、特例公債から脱却した後直ちに実施に移せるように努力をいたしたいという考え方を示したものでございます。  それが本文でございますが、その次に参考資料が二枚ございます。表題にございますように、いずれも「国債整理基金の資金繰り状況についての仮定計算」でございます。一枚目がその一、二枚目がその2でございますが、括弧書きがございますように、その1の方は、先ほど本文の方で申し上げましたようなあらかじめ負担の平準化のための予算繰り入れ等を仮に行わないとした場合には一体どうなるのかという仮定の計算、それからその2の二枚目の方は、あらかじめ負担平準化のための予算繰り入れ等を行う場合、この二つのケースに分けてございます。  ただ、ここで特にお断り申し上げておきたいと存じますのは、この参考資料の方は、その1にせよあるいはその2にせよ、いずれも実は参考資料でございまして、と申しますのは、その参考資料にございますように、そこには財政収支試算でお示ししてございます六十年度までの計数だけではなくて、六十一年度以降の国債償還額なりあるいは借換債の収入なり、いろいろな計数が書かれているわけでございます。実は私どもは、午前中も御論議がございましたが、六十一年度以降のたとえば要償還額につきましては、やはり六十一年度以降の国債発行額等が前提になりませんと計算ができないわけでございます。  そこで六十年度までは、新経済社会七カ年計画の基本構想という財政収支試算をつくります手がかりになります資料があるわけでございますが、六十一年度以降につきましては、そういう財政あるいは予算の姿を描きます前提になります経済につきましてのいろいろな指標がないものでございますから、六十一年度以降の計数はなかなかお出しできないという立場であったわけでございます。正直申しますと、予算委員会の場で一委員から、ともかく単純な前提、たとえばこれは自分が前提として言ってみるけれども公債発行額財政収支試算で描かれた六十年度発行額をともかく基礎にして、あとはまあ非常に簡単で乱暴かもしれぬが、毎年度一〇%発行額が伸びるのだ、そういう仮定でも置いて計算をしてみたらどうだ、そういう仮定でもいいから計算をして出してみてくれないかというふうな強いお話もございまして、そこで私どもといたしましては、くどいようでございますが、六十一年度以降の経済あるいは財政全体の姿との関係は全く捨象するといいますか忘れまして、単純な計算をして出した、こういう性格のものでございます。
  195. 安田純治

    ○安田委員 なるほど「計算の前提」の中にはそういうことがいろいろ書いてございますけれども、先ほど同僚の伊藤委員の方からの質問に対して理財局長が、運用利回りが四・六%だというふうにおっしゃったように思うのですが、この表を見ると四・九%となっているようですが、いかがでしょうか。
  196. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 大変申しわけないことをいたしております。先ほど私が四・六%と申し上げましたのは、私の間違いでございまして、あの際政府委員席で指摘を受けまして、後ほどこの会議が終わりましたら伊藤委員の御了承を得まして、速記録を変えさせていただこうということを考えております。
  197. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、運用利回りの実績というのは、この資料の中の「計算の前提」と書かれているこの四・九%と承ってよろしいのですか。四・九を四・六と言い誤ったのか、全く別なのか、その点どうですか。
  198. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 昨年十二月末までの実績利回りが四九でございますので、先ほど私が間違えて四・九を四。六と申し上げたわけでございます。
  199. 安田純治

    ○安田委員 この「特例公債償還について」というのと付属されている資料ですけれども、これは、赤字国債の元本を全部償還し終わる昭和六十九年度までにどれだけ一般会計からの繰り入れ、つまり国民の税金負担がかかるかという計算の一つの資料だと思いますけれども、しかしこれではどうも片手落ちではないかというふうに思うわけで、元利償還でなければならないわけですから、公債の利子はどうなるのか。昭和六十一年度から六十九年度の間、特例公債と建設公債の利子は結局支払わなければならないわけですから、国民はこの時期に再び財政危機が来るのではないか、こういう心配もするわけでして、国民は再び増税を要求されるのではないかなという不安を持たざるを得ないわけであります。  そこで、二月八日に提出されました資料とは別に、昭和六十一年度から六十九年度までの特例公債、建設公債の両方の利息が毎年度幾らになるか。これは発行条件なんかいろいろ未確定なファクターがありますので、確かに参考資料につけられましたような仮定という計算の前提でしか出せないと思うのですが、それにしても予算委員会でだれか委員が、仮に一〇%とすればということで、それで出されたということですから、一応国民考える手がかりといたしましてでも、何か利息の方が毎年度幾らになるかを計算したものを提出すべきだと思いますが、どうでしょうか。
  200. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 もともとこの表の性格にも絡むわけでございますが、御論議の焦点が、実は国債償還をどうするのか、償還財源を一体大蔵省はどうするつもりだという点に主として論議の焦点があったわけでございます。そこで先ほどの本文の方も、もっぱら償還の問題についての考え方を述べさせていただいておりますが、そういう御論議の経緯からいたしまして、この表はもっぱら償還財源という点に着目をいたしまして、要償還額が柱になってできているわけでございます。  御指摘のようにもちろん国債費は、償還費のみならず利払い費がまた一つの大きな要素になるわけでございますが、ただいま御指摘のような、しからば六十一年度以降の利払い費は一体どうなるのかということでございますが、これも繰り返しになりまして大変恐縮でございますが、これはやはり六十一年度以降の公債発行額なりあるいはその時点におきます国債発行条件、何らかの前提を置かなければ、仮定計算とはいえ仮定計算そのものもできないということでございますので、その辺の事情をどうぞ御了承いただきたいと存ずるわけでございます。
  201. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、元本の償還についてのこの資料ですね、これも資料を見ますと、先ほどから言われていますように「計算の前提」がいろいろな仮定が入っての計算でございます。したがって、はっきりそう表示していただければ国民はわかるわけですから、そういう「計算の前提」としての仮定のファクターを幾つか想定してはっきり書かれればそれなりにわかると思うので、やはり国民がこのままずっと行ったら一体どうなるのか、利息の支払いは一体どんなになるのだということをわかるために、そういう仮定のことはわかります、発行条件なんかがそれぞれ違いましょうから。しかし、こうこうした場合はという仮定で、幾つかのパターンで数字が全く出せないものではなかろうと思いますけれども、出せませんですか、絶対不可能ですか。
  202. 吉野良彦

    ○吉野政府委員 御指摘のような全く単純な仮定を置いた場合に利払い費がどうなるか計算をすることは、物理的には可能でございます。ある大胆な前提を置きまして計算をいたしまして、別途御説明の機会を得たいと存じます。
  203. 安田純治

    ○安田委員 ぜひその辺は、われわれが考える手がかりとしても、わかりやすいようによく計算をしてお示しをいただきたいというふうに思います。  先ほど来お話があったように、国債の大量発行がかつてない危機的な事態にあることは、もう言うまでもないと思います。特例国債の八兆五百五十億円、四条国債の七兆二千百五十億円、合計で十五兆二千七百億円、実に三九・六%の依存率といいますか、こういうことになるわけで、さらに地方債七兆四千十億円などを加えた公共債全体では大変な額になる。五十四年度発行予定額全体では二十五兆八千七百九十九億円、GNPに占める比率からいってもべらぼうな額を発行するわけですが、その消化の見通しなどはどうなりますか。
  204. 林義郎

    ○林(義)政府委員 安田委員御指摘のような大変な国債発行するわけでございますし、発行する以上はやはり買っていただくところがなければしようがない、これは当然のことなんですが、われわれの方としましてもいろいろなことを考えてやらなければならない。新しく資金運用部資金の引き受けで一兆五千億を賄うとか、国債発行条件の多角化というか多段階化と申しますか、五年もののほか二年、三年、四年ものを出すといった形でやろうというふうなことを考えておりますし、それからまた、先ほど来お話がありましたような発行条件の改定というようなこともございますし、全体で申しますならば、普通の形で金融が動いていくならば何とかことしは消化することはお願いできるだろうというふうに考えております。
  205. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 大要は政務次官が御説明したとおりでございますが、御指摘のように明年度約二十六兆近い公共債発行されます。公共債のうち、国債あるいは地方債等につきまして運用部あるいは公営企業金融公庫が引き受けますものが五兆五千億、そういたしますと市中で引き受けていただくものが約二十兆くらいになります。  それで、来年の総合資金需給をまず考えてみますと、と申しますのは、市中で引き受ける場合に、金融機関が引き受けるもの、あるいは証券会社が引き受けるもの、あるいは事業法人等が引き受けるものがございますが、昭和五十四年度に一体どれくらい金融部門に資金が流入して、それがどれくらい貸し出しに回り、どれくらいがこのような公共債あるいは公共債以外の社債とか株式に向かうかというのを試算いたしてみますと、これを一応われわれは金融部門の総合資金需給の試算という形で呼んでおりますけれども、本年度の昨年十二月末までの実績で金融部門におきます預金の増加額というのが大体一三%台でございます。五十四年度におきましてもおおむねその程度の預金増があるであろうという仮定をいたします。そのほか、資金流入につきましては、興長銀が金融債を発行いたしますとか、あるいは日銀のオペによって資金が流入するとかいろいろございます。そういうことを勘案いたしますと来年は、現在の金融情勢がそのまま推移して続くと仮定すれば、金融部門に約三十六兆六千億円程度の資金流入がある。  これが流出でどういうふうになるかと申しますと、民間の貸し出しがまず大口でございますけれども、本年度、やはり昨年の十二月末までの貸し出し実績が対前年度比九%で伸びております。一応これも九%で伸びるという前提をとります。そういたしますと貸し出しが約十九兆八千億。あるいは、民間部門でございますから株式や社債の取得、こういうものが二兆五千億程度。そういたしますと民間部門への流出が二十二兆三千億。それから今度は公共債の引き受けでございますが、市中で引き受けられるものが二十兆と申しましたけれども、いわゆるここの総合資金需給に上がってまいります金融部門、これは農協、信金までは入っておりますけれども、郵便貯金だとかそういうものを外しております。そこで引き受けられる金額というものは、二十六兆のうち十五兆八千億円程度というふうに算定をすることができます。十五兆八千億新規債を引き受けますけれども、そのほか、かつて引き受けて保有したものの償還というようなものがございますので、その面からの資金流入もございますので、ネットの公共債の市中金融機関が引き受けますものというのは十四兆三千億円ぐらいになる。こういたしますと、民間の貸し出し等が二十二兆余、一般の公共債の引き受けが十四兆余ということで大体資金の流入と見合うということで、そういう面では、総合資金需給の面から見れば、これは単に一応の計算でございますけれども、来年二十六兆の公共債消化し得る余地がある、ただし、これは現在の金融情勢はそのまま続くという前提での計算でございます。
  206. 安田純治

    ○安田委員 一応総合資金需給額その他から見て  のお話ございましたけれども昭和五十三年度、今年度国債の当初分十兆九千八百五十億円の発行に際してもやはりいろいろお考えになって、消化できるということで、何とか大丈夫だということでやったはずです。そういう旨の御答弁もあったと思うのですね。ところが、昨年夏には市場利回りの上昇で消化難が表面化してまいりまして、発行予定額を縮減せざるを得なくなった。さらに補正による追加については、三千億円の資金運用部の買い取りをやらなければどうにもならないという事態になった。ですから、確かにいま理財局長がおっしゃるような見通しの計算は計算上成り立つのかもしれないけれども、それなら今年度五十三年度国債も全く見通しなく発行したわけじゃないと思うのですが、これが消化難に陥ったというのはどういうわけでありましょうか。何とかなるという考えはきわめて甘いのではないかというふうに思いますけれども、どうですか。この消化難という事実をどのように考えておるか、お伺いしたいと思います。
  207. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 本年度につきましてもこのような総合資金需給、もうぼつぼつ実績ベースに近いものが出るわけでございまして、私どもはある意味消化のめどがついたと思っております。しかしながら御指摘のように、昨年の夏以降公社債金利が高騰いたしまして、いろいろいわゆる条件改定を行わざるを得ないような状況に変わってまいりました。これは別に民間の資金需要が出たからということではございませんで、けさほど来御説明いたしておりますように、金利の底打ち感ということから長期資本市場に向いてくる金が少なくなった。皆さんお金を持っておられる方、いわゆる機関投資家であれ余資機関であれあるいは金融機関であれ、経営の安定、先行きを考えて、短いもので余資を運用しようという意向が非常に強くなったために、そういう意味で、長期資金市場に需給のアンバランスが出て消化について困難を来したということでございまして、全体の総合資金需給から見れば、やはり計画した枠の中におさまったと思います。御指摘のようにそういう意味で、長期債の発行というものがいまのような金融情勢の中では非常にむずかしいということでございます。そのあらわれとしまして今回の条件改定もあったわけでございます。そういうことでございますので、今後の金融情勢の推移いかんで、私どもは注意深くそれを見ながらいろいろの対応策を考えてまいりたいと思っております。
  208. 安田純治

    ○安田委員 確かに国債の引き受け消化を促進するためにこれまでにいろいろ努力をしておられるわけであります。先ほど申し上げました資金運用部による買い取りや今年度からの手数料の引き上げもやはりその一環だとは思います。そしてまたこの三月からの長期国債金利の〇・四%の引き上げ、これはまさにそういう意味では切り札的な措置だったのではないかと思いますが、いかがですか。
  209. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 国債を円滑に消化し、かつ、各種金融部門あるいは資金の流れに特別の阻害要因を起こさないで円滑に消化するというためには、やはり市中の実勢というものを尊重する必要があると思います。今回の条件改定というものは、私は別にそれが決め手というふうには意識しておりませんが、やはり弾力的な条件改定による円滑な消化手段として採用したというふうに御認識をいただきたいと存じます。
  210. 安田純治

    ○安田委員 国債金利を六・一%から六・五%に引き上げる、この六・五%で今後ずっといくとすれば、五十四年度金利負担はその分だけふえると思いますが、一体どれくらいふえますか。
  211. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 五十三年度の三月、四千億の長期債を発行いたしましたので、その分の金利負担がかかってまいるわけでございますが、来年度予定いたしております十年長期債につきまして計算いたしますと、増加額は約百五十五億円でございます。これは初年度分ということでございます。
  212. 安田純治

    ○安田委員 平年度化するとどのくらいになりますか。
  213. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 長期債分について平年度化いたしますと、約五百億円でございます。しかしながら私どもは、二兆七千億の中期債の発行を予定いたしておりますので、この金利がどうなるかわかりませんけれども、もしそれもわれわれが予定しているものより〇・四%上がるということになりますと、恐らくその分で百億、計六百億ぐらいだろうと思います。
  214. 安田純治

    ○安田委員 結局六百億円くらいになるかもしらぬ、それだけ財政負担をふやすわけでして、年間六百億というと、育英事業の六百六十億円にほぼ見合ったほどの大きなものでございます。これは大変な問題だと思います。しかも、それでも年度間に消化できないというようなことになれば、この次はどんなウルトラCをやるか、さらに金利引き上げることになりますかどうか、その点いかがでしょうか。
  215. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 金融情勢がどうなるかわかりませんので、ここでそういう場合の仮定のお答えは控えたいと存じますが、私どもとしましては、いろいろの金融政策を駆使いたしまして、少なくとも現在、民間に資金需要が出ておらない、かつ緩やかな景気回復を持続していくというためには、やはり現在の金融緩和基調を維持していくべきであると考えておりますので、各種の工夫をこらして、現行の条件でずっと円滑な消化ができるよう、まずそちらへの努力をいたしたいと思っております。
  216. 安田純治

    ○安田委員 逆に引き下げることは近い将来の問題として考えられますか。すでに証券業界などからは、市場実勢を尊重するというのならもっと引き上げろという声が上がっているようですけれども、どうですか。
  217. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 現在の金融情勢がこのまま続くとすれば、私は現状のままでいいだろうと思います。  けさほどもお話しいたしましたように、今回の条件改定に際しまして、証券業界あるいは引受シ団の方から実勢に合った改定をしてくれという要望を受けておりますが、要望された側の実勢というのは〇・五%程度というお話であったというふうに聞いておりますので、さしあたりいまこれを改定するつもりもございません。  将来下げることがあるかということでございますが、これはまだちょっと金融情勢が読めませんので、何とも申し上げかねると存じます。
  218. 安田純治

    ○安田委員 市場実勢ということですけれども、現在金融全体としては緩和基調で低くなっているわけだと思います。その中で長期国債金利を〇・四%引き上げるということは、非常に大きな、まさに異例の措置だというふうに考えるわけです。今国会大蔵大臣財政演説でも、当面の金融政策の運営に当たりましては、現在の緩和基調を維持することを基本とするというようなお話があったわけでございますが、それとの関係ではどうでしょうか。
  219. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 大臣も申しておりますように、現在の金融緩和基調を維持するという点につきましては、私ども今回の条件改定で最も配慮したところでございます。そういう意味におきまして、いわゆる金国逆転と言われておりますけれども、従来国債金利が五年利付金融債よりも低かったのを、今回は市場実勢に合わせて国債金利引き上げた。それから利付金融債については、それほど市場実勢というものが上がっておらない。この利付金融債を改定いたしますと、いまの金利体系からいたしますと、長期プライムレートへ連動するという形を呼びますので、今回はその措置を避けた。現に利付金融債につきましては、これを改定するというお話も承っておりませんし、現行の長期プライムあるいは短期プライムが維持されると考えておりますので、大臣が申しましたように、金融の基調は現状を維持するという方向を貫き得るものと考えております。
  220. 安田純治

    ○安田委員 昨年の夏以来、国債消化難ということの現象があらわれておるわけです。ところで、昨年の十月十三日の当委員会での田中理財局長さんの答弁を見ますと、「国債の新規発行条件を改定いたしますと、おのずから関連いたします地方債でございますとか政保債でございますとか、ひいてはプライムレートにまで影響する問題でございますので、これは長期金利を高くして現在の経済政策に逆行するという形になりますので、その点についてはあくまで慎重に推移をながめてまいりたいと思っております。」という御答弁が昨年十月十三日にあったわけです。それは、すでに夏に国債消化難という現象があらわれた、そういう背景を前提にしてこういうお答えがあったと思います。その後今日の状態になっておるわけですが、これは事態が変わったということになるわけですか。
  221. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 私どもは昨年十月、そういうお答えをいたしました時点の市場をながめておりまして、国債に連動して利付金融債その他というものの市場実勢というものが金利高騰を招くというようなことでありますと、国債条件改定というものは利付金融債の改定にも及び、長期プライムレートにも及ぶ、それは経済運営の方向に反するからということを申し上げたわけでございますけれども、その後の市場の実勢、特にこの一月以降急速に国債金利が上昇してまいりました反面におきまして、金融債についてはそれが見られなかったわけでございます。しからば、国債というものの円滑な消化のためには市場実勢の尊重が大事である、いまの段階であれば金融債に手をつけないで済む、よって長期プライムレートも変更しないで乗り切り得るという確信が持てましたので、今回の措置をとったわけでございます。昨年十月、私がその答弁をいたしました段階におきましては、その辺の確信が持ち得なかったので、金融債、そして長期プライムへ連動するのではないかという心配を申し上げたわけでございます。
  222. 安田純治

    ○安田委員 しかし、事業債も追随する形になっているのではないでしょうか。
  223. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 事業債は、今回の改定によりましてほぼ国債引き上げ幅と同じように〇・四%程度引き上げられたと聞いております。そういう意味におきましては、民間設備投資に使われる事業債金利は上がったことは事実でございます。
  224. 安田純治

    ○安田委員 ですから最初、慎重に推移を見守るとおっしゃった昨年の十月十三日の御答弁、これを見ますと、やはり事業債も追随している状態から見ると、先ほどの御答弁のようなわけにはまいらないように思いますが、いかがですか。
  225. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 企業の資金調達手段としまして、間接調達と直接調達がございます。事業債というのはその直接調達手段でございますが、間接調達手段として銀行からの長期借り入れという道もあるわけでございまして、そちらの方はむしろ実際に七・一というプライムレートがありながらも、実勢の約定平均貸出金利というものは低下をいたしておりますので、そちらの方では阻害要因は起きておらない。ただ、事業債という形のものだけがこういうふうになったということで、設備投資を行われる事業会社に若干の金利負担増が来たということは認めざるを得ないと思います。
  226. 安田純治

    ○安田委員 そうしますと、金融緩和基調を維持していくということとの関係で見ますと、どういうことになりますか。
  227. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 私はやはり長期プライムレートが変更されない限りは金融緩和基調は維持されておると思います。事業債による発行手段もそれから長期借り入れ手段もいろいろあるわけでございまして、事業債が、本日新聞に報道されておりますように、事業債の金利引き上げられたために発行会社においてそれを削減して、むしろ銀行からの借り入れで資金需要を賄うという道を選ばれたというふうにも報道されておりますので、私は基本的にこれによって金融緩和基調が崩れたということでなくて、一応そういう債券形式の長いもの、債券形式のものと申しますのは、これはなぜそういうふうに金利が上がるかと申しますと、やはりキャピタルロスがあるとかいろいろ通常の銀行借り入れと違う点がございますので、市場に受け入れられるためにはある程度の条件改定はやむを得なかったということでございますので、総体を通じて、今回の事業債が引き上げられたからといって、金融緩和基調が崩れたというふうには認識をいたしておりません。
  228. 安田純治

    ○安田委員 全体の影響はさしたるものではないというふうにお考えなのかもしれませんけれども、私は、今度の〇・四%の引き上げによってどういう現象が生ずるかということをいろいろ疑念を持つわけであります。すでに発行されてきた六・一国債がその反動でまたしても不人気を買うのではないか。一年たてばすぐさま日銀への売りとして動くのではないか。またその不人気が国債発行にも大きく響いて、一層の金利引き上げや資金運用部引き受けなど、各方面に影響をもたらすのではないかというような心配をするわけですけれども、その点はいかがでしょうか。
  229. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 金融機関の資金ポジションの是正のため、手持ち債券を放してそれを流動化するということは絶えず行われることでございます。手持ち債券を放します場合にいかなる債券を放すかということは、金融機関にとりましては、先ほども宮地委員の御議論にございましたように、残存期間構成その他いろいろ考えてやられることでございますけれども、この際、六・一%国債というものを放すという機関があると思いますけれども、しかしながらやはり金融機関にとりましても、手元の余裕資金の運用の玉とすれば、六・一%国債というものは資金コストから見ましても十分ペイするものでございますし、単にいや気がして六・一%国債を手放す、そういうビヘービアにはならないというふうに感じております。
  230. 安田純治

    ○安田委員 ところで、いろいろ今回の金利引き上げについて御説明があったわけですけれども、その〇・四%引き上げに踏み切った真の原因といいますか、これはいろいろ考えられるわけですが、いわゆる都銀などのシンジケート団、シ団の要求があったからではないかというふうに考えられないこともないのですが、いかがでしょうか。これは時間がありませんので、幾つかそういう点を述べてみたいと思うのですが、これは要求も要求、貸し主さんからの強い要求があったわけですから、だから低金利の実態にもかかわらず、昨今の若干の金利の動きを口実に、言葉を悪く言えば口実に、いわば実勢金利とは関係なしに、消化促進のために引き上げた、ひとえに貸し主であるシ団の要求に沿った措置だ、こういうふうにも見えるのではないかというふうに思いますけれども、どうでしょうか。
  231. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 国債発行責任者あるいは発行当局、管理政策の責任者といたしますれば、けさほど来、国債金利と金融情勢、インフレとの関係等について申し上げておりますとおりに、やはり実勢を尊重してやるということが一番大事なことだと考えております。そういう意味におきまして私どもはこの一月以来、国債金利が暴騰を始めた段階でこれは改定しなくてはならないと自発的に考えておりました。しかしその実勢というものが、単に市場の指標に出ておるものが実勢であるかどうかということを確実に把握するために、二カ月の期間を私どもいただきまして検討してきたわけでございまして、別に引受シ団、証券界その他からの圧力と申しますか要望にこたえてやったということではないわけでございます。
  232. 安田純治

    ○安田委員 六分一厘では引き受けられないというような話もあったのではないですか。
  233. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 毎月国債発行いたします場合には、引受シ団と世話人会というのを開きまして、引き受けについての協議をいたします。その際に、昨年の十二月ごろから市場の実勢が発行利回りと乖離をした現象が大きく見えてまいりましたので、その都度、引受シ団からは実勢尊重の要望がございました。数字的には上がっておりませんでしたが、そういう要望があったことは事実でございます。私どももその要望を受けまして、市場実勢をよくながめて、しかるべきときに措置をしようというふうな応対で今日まで来たわけでございます。
  234. 安田純治

    ○安田委員 国債発行額、したがってシ団引受額も政府予算案確定のときに決まっていたわけだと思います。それは後から追いかけるようにして〇・四%も引き上げたのは、何か事前にシ団側と取り決めでもしていたのではないかというふうにも勘ぐられるわけですが、そういうことはございませんか。
  235. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 絶対にございません。
  236. 安田純治

    ○安田委員 さらに伺いますけれども、銀行の経営は苦しい苦しいと言っていますけれども、どうなっているでしょうかね。むしろ総利回りでは好転しているのではないかというふうに思いますけれども、どうですか。
  237. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 銀行局長がおりませんので、的確なお答えにならないと存じますが、私どもは銀行経営というのは悪化はしておらない、わりあい好調であるというふうに聞いております。
  238. 平澤貞昭

    ○平澤説明員 お答えいたします。  いま理財局長がお話しいたしましたように、そう悪くはない現状でございますけれども、よくもない現状でございます。
  239. 安田純治

    ○安田委員 まあ悪くないというお答えがありました、それほどよくもないというお答えですけれども。悪くないというにもかかわらず、銀行の側が金利引き上げを要求しておるとすれば、どうも政府の借り主としての弱みで唯々諾々とそれをのんだのではないかというような気もしないわけではございません。そういう点で、先ほどいろいろ理財局長から〇・四%の算出の根拠について、さきに質問した委員に対してお答えがありましたけれども、どうもシ団の要求に屈したのではないかというようないろいろな推察もまた可能じゃないかというふうに思います。結局銀行は、総利回りではそれほど悪くなっていない。しかし、またしても銀行に利益をもたらすような金利引き上げ政府の意向で独断実行して、財政の破綻を強めて国民負担を増大させる、こういう結果になるのではないかということで、その点についてのお考えを伺いたいのが一つ。  それから、ついでに聞いておきますが、この六・五%が続けば六・一%のときよりも都銀が多く受けている金利は平年度化すればどのくらいになるか、計算できるかどうかということを伺いたいと思います。
  240. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 私ども条件を改定いたしましたのは、別に銀行からの圧力や銀行を利するためにやったわけではないわけでございます。たとえば証券会社が個人に国債を売ります。発行価格九十九円五十銭で売るわけでございますが、それを受け取った個人が、一年たってあるいは半年たって、あるいは極端なことを言いますれば、一週間たったときに換価したいというときに、実勢との乖離がございますと、九十九円五十銭で買ったものが九十四円五十銭でしか売れないとこれはおかしなことでございますので、やはりそういう個人投資家も含めまして、金融商品としての商品性を高める、国債の信頼を得るという意味での改定でございますので、別に金融機関の経理その他を勘案したわけではございません。  それから二番目の御質問の都銀への利子増加額につきましては、五十四年度引き上げ、今回の引き上げに伴います都銀の受け取り利子がどれくらいふえるかということにつきましては、これもいろいろ前提の計算がございます。発行しました金額を幾ら証券会社が引き受けて市中に売り、残余をシ団が引き受け、その引き受けた中で一定のシェアで都銀が引き受けるわけでございますが、去年十二月あるいは一月ぐらいまでの実績ベースの都銀シェアで計算してみますと、都銀に対する利子の増加額は約百七十億円ぐらいというふうになろうかと思います。これは平年度ベースということでございます。
  241. 安田純治

    ○安田委員 だんだん時間が迫ってまいりましたので、シ団の側からいろいろな要求が出されていると新聞に報道されていますが、このシ団の要求といいますか要望といいますか、どんなものが一体政府に対して出されているのか、それについて政府としてどのように対応するおつもりなのか、このことを伺っておきたいと思います。
  242. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 シ団の要望として一番大きいのは、国債発行量を減らしてくれ、引受額を減らしてくれ、こういうことが一番大きい、いつも言われることでございます。次には、条件の弾力化を機動的にやってほしい、あるいは多様化をしてほしいというような要望でございます。
  243. 安田純治

    ○安田委員 それだけですか。
  244. 田中敬

    ○田中(敬)政府委員 ちょっと思いつきませんが——一つございました。失礼いたしました。いま一年間流動化、売却を自粛していただいておりますけれども、シ団側にとっては、これは売却制限だと申しておりますけれども、売却制限を解除してほしいというのも要望の一つに従前からございます。いまそれを非常に強く言われているというわけではございませんが、私が二年間この仕事をやっておりまして、いろいろ受けた要望というものは大体そんなところだったろうという感じがいたします。(安田委員「それに対する政府考え方」と呼ぶ)私どもはその要望に対しまして、国債発行額の圧縮につきましては、もうなるべくそうやりたい。特に国債発行責任者とすれば、もう百億でも千億でもとにかく減らせるだけ減らしたいというふうに考えております。  それから条件の弾力化につきましては、今回の改定にも見られますように、市場実勢を見まして、それに私どもなりの対応をしたつもりでございます。  それから多様化につきましても、これはいまの条件の弾力化あるいは期間の多様化というものも、別にシ団の要望ということだけでございませんで、円滑な国債管理政策上必要なことでございますので、多様化も進めてまいりましたし、今後も進めてまいりたいというふうに考えております。  それから、売却制限解除の問題でございますけれども、これはやはり当初引き受ける際に引受シ団に対しては、引受責任というものがございますので手数料を支払っております。そういうものを、言葉は悪うございますけれども、食い逃げされるというようなことは心外でございますので、やはりある一定期間は保有していただいて、市場の安定に寄与していただきたいということで、これは現在認めるつもりはございません。
  245. 安田純治

    ○安田委員 最後に、私どもは事あるごとに国債発行を厳に抑えるように主張して政府に要求してまいったところであります。ところが政府は、歳入歳出両面での十分な見直しを行っていないばかりか、依然として従来と変わりない税財政政策をとり続けているので、これでは毎年毎年財政収支試算を書きかえなければならないのも当然だというふうになります。  先般の本会議質問で私の質問に答えて大蔵大臣は、国債は全部消化する、こういう御答弁がありました。しかし、その前提としての税収の動き、財政支出の削減を図って、その分国債を縮減するとの考え財政運営に当たる、こういうことをぜひ考えていただきたいと思いますがどうかということと、私どもが主張したように、税制における大企業、大資産家向けの不公平な優遇税制を厳しく見直しまして、雇用の確保、福祉の充足、それから国民向け公共事業の促進などで国民の購買力を引き上げて景気の回復を進める、そして財政再建に向けての第一歩を明確にする財政運営を進めることが必要だと思うけれども、これはどうかという点でお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  246. 林義郎

    ○林(義)政府委員 財政が大変なときでございますし、いまいろいろと御議論のありました国債発行の問題にいたしましても、私たちの方もできるだけ国債発行が少なくなるようにという形で努力をしているところでございます。  そのためには、やはり歳出合理化を図っていかなければならないし、また不公平税制の是正その他の税制上の措置をやっていかなければならない、これは私たちの方も一生懸命考えていまやっているところでございます。そうした意味で本当に国民の安定した生活ができるような、また安定成長の軌道に乗るような経済体制をこれからとつていくためには、財政の再建こそ本当に一番だろう、こういうふうに考えておりまして一生懸命努力していることをぜひ御理解いただきたい、これをお願いしたいと思います。
  247. 安田純治

    ○安田委員 終わります。
  248. 加藤六月

    加藤委員長 次回は、来る十六日金曜日午前九時四十五分理事会、午前九時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会      ————◇—————