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1979-02-27 第87回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年二月二十七日(火曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 加藤 六月君    理事 稲村 利幸君 理事 高鳥  修君    理事 綿貫 民輔君 理事 佐藤 観樹君    理事 山田 耻目君 理事 竹本 孫一君       阿部 文男君    池田 行彦君       江藤 隆美君    小渕 恵三君       大村 襄治君    後藤田正晴君       佐野 嘉吉君    原田  憲君       村上 茂利君    森  美秀君       山崎武三郎君    山中 貞則君       伊藤  茂君    沢田  広君       只松 祐治君    美濃 政市君       村山 喜一君    貝沼 次郎君       坂口  力君    宮地 正介君       高橋 高望君    安田 純治君       西岡 武夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 金子 一平君  出席政府委員         大蔵政務次官  林  義郎君         大蔵大臣官房審         議官      伊豫田敏雄君         大蔵省主税局長 高橋  元君         大蔵省銀行局長 徳田 博美君         国税庁次長   米山 武政君         国税庁税部長 藤仲 貞一君  委員外出席者         経済企画庁総合         計画局審議官  高橋 毅夫君         国土庁土地局土         地政策課長   佐藤 和男君         厚生省医務局総         務課長     森  幸男君         通商産業省産業         政策局産業組織         政策室長    榎元 宏明君         通商産業省産業         政策局企業行動         課長      山下 正秀君         通商産業省基礎         産業局非鉄金属         課長      原木 雄介君         通商産業省基礎         産業局化学肥料         課長      沼倉 吉彦君         労働省職業安定         局業務指導課長 田淵 孝輔君         建設省計画局宅         地企画室長   木内 啓介君         建設省都市局都         市計画課長   高橋  進君         大蔵委員会調査         室長      葉林 勇樹君     ————————————— 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   村上 茂利君     椎名悦三郎君   坂口  力君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   椎名悦三郎君     村上 茂利君 同月二十三日  辞任         補欠選任   永原  稔君     西岡 武夫君 同日  辞任         補欠選任   西岡 武夫君     永原  稔君 同月二十七日  辞任         補欠選任   伊藤  茂君     平林  剛君   村山 喜一君     兒玉 末男君   貝沼 次郎君     坂井 弘一君   正木 良明君     坂口  力君   宮地 正介君     広沢 直樹君   安田 純治君     寺前  巖君   永原  稔君     西岡 武夫君 同日  辞任         補欠選任   兒玉 末男君     村山 喜一君   平林  剛君     伊藤  茂君   坂井 弘一君     貝沼 次郎君   坂口  力君     正木 良明君   広沢 直樹君     宮地 正介君   寺前  巖君     安田 純治君   西岡 武夫君     永原  稔君     ————————————— 二月二十六日  在日韓国人に対する金融機関の融資に関する請  願(稲垣実男紹介)(第一二四六号)  重度身体障害者使用自動車に対する自動車関係  諸税の非課税に関する請願外一件(河野洋平君  紹介)(第一二四七号)  パチンコ機に対する物品税率引き下げに関する  請願野口幸一紹介)(第一二四八号)  同(中井洽紹介)(第一二七二号)  同(宇野宗佑紹介)(第一三〇〇号)  同(小此木彦三郎紹介)(第一三〇一号)  同(小渕恵三紹介)(第一三〇二号)  同(加藤六月紹介)(第一三〇三号)  同(砂田重民紹介)(第一三〇四号)  同(田中伊三次君紹介)(第一三〇五号)  同(田中龍夫紹介)(第一三〇六号)  同(中曽根康弘紹介)(第一三〇七号)  同(武藤嘉文紹介)(第一三〇八号)  同(横山利秋紹介)(第一三〇九号)  同(安倍晋太郎紹介)(第一三二九号)  同(小川省吾紹介)(第一三三〇号)  同(永末英一紹介)(第一三三一号)  同(松澤雄藏紹介)(第一三三二号)  同(山下元利紹介)(第一三三三号)  同(受田新吉紹介)(第一三六八号)  同(奥野誠亮紹介)(第一三六九号)  同(大原一三紹介)(第一三八五号)  同(中村弘海紹介)(第一三八六号)  同外四件(原田憲紹介)(第一三八七号)  公立高校用地確保のため筑波移転跡地優先払  い下げ等に関する請願長谷川正三紹介)(第  一二四九号)  同(吉浦忠治紹介)(第一二七五号)  一般消費税新設反対及び給与所得控除等の引  き上げに関する請願枝村要作紹介)(第一二  六八号)  一般消費税新設反対等に関する請願加藤清二  君紹介)(第一二六九号)  同(草川昭三紹介)(第一三七〇号)  一般消費税新設反対等に関する請願島本虎  三君紹介)(第一二七〇号)  同(野村光雄紹介)(第一二七一号)  国民生活を守るため一般消費税新設反対等に  関する請願野口幸一紹介)(第一二七三号)  一般消費税新設反対に関する請願外二件(横  路孝弘紹介)(第一二七四号)  同外三件(成田知巳紹介)(第一三一〇号)  同(池田克也紹介)(第一三三四号)  同(小林政子紹介)(第一三三五号)  同(後藤茂紹介)(第一三八八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  租税特別措置法の一部を改正する法律案(内閣  提出第五号)      ————◇—————
  2. 加藤六月

    加藤委員長 これより会議を開きます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、ただいま議題となっております本案について、明二十八日午前十時、税制調査会会長小倉武一君、日本経済調査協議会総合委員河野一之君、税制経営研究所所長谷山治雄君の各位に参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 加藤六月

    加藤委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 加藤六月

    加藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安田純治君。
  5. 安田純治

    安田委員 前回に引き続きまして、同僚委員質問、いろいろございましたけれども、私も若干の点について御質問したいと思います。  まず、いわゆる産業転換投資促進税制といいますか、この問題について最初に伺いたいわけでございますけれども、いわゆる特定不況産業特安法に基づく設備処理施行状況事業転換見通しについて通産省に伺いたいのですが、まず概括的なところをひとつ御開示願いたいと思います。
  6. 榎元宏明

    ○榎元説明員 石油危機に伴い大幅な過剰設備を抱えるに至りました構造不況業種対策につきましては、昨年の五月、特定不況産業安定臨時措置法という形で法案の成立を見たわけでございますけれども、この法案に基づきます過剰設備処理につきましては、その後これまで十三業種特定不況業種ということで指定告示をされております。  具体的には、平電炉業それからアルミ製錬業、合繊、これはナイロン、ポリアクリルニトリル短繊維ポリエステル長繊維ポリエステル繊維、それから化学肥料、これはアンモニア製造業尿素製造業湿式燐酸製造業、そのほか紡績業、これは綿と梳毛でございます。それからフェロシリコン製造業、以上の十二業種通産省関係、それから造船業運輸省関係合計十三業種指定告示されております。そのうち、安定基本計画ということで、梳毛と綿を除きます十一業種がすでに過剰設備処理の体制に移ろう、こういうことでございます。
  7. 安田純治

    安田委員 そこで、いま挙げられました各業種について見ますと、皮肉なことに、特定不況産業安定臨時措置法に基づく実施措置がつくられて、税制でもいよいよ産業転換投資促進税制がつくられるという段階になって、逆にどうもこれらの措置を必要としないような経済状況があらわれてきつつあるのではないかというふうにも見られるわけであります。  通産大臣は、特安法指定業種設備を、廃棄方針から設備休止に重点を置く方針に変わったといいますか、そういう方針を示されたように新聞報道なんかでも出ておるわけであります。     〔委員長退席稲村(利)委員長代理着席〕 そうすると、指定業種当該設備廃棄と見合う転換設備の取得をこの税制は要件としているのであるから、この税制を必要とする条件は一般的にないのではないかというふうにも考えられると思いますが、いかがでしょうか。
  8. 榎元宏明

    ○榎元説明員 確かに先生御指摘のとおり、最近の景気回復に伴いまして、構造不況業種の一部の市況回復といった事態は見られるわけでございますけれども、この法律の眼目であります中長期的な観点から見た需給がどうなっているかという点についてながめてみますと、いずれの業種におきましてもそれぞれ過剰設備を抱えてまだまだ問題を残しておる、こういったところが実態でございまして、私ども短期的な側面から見ましたならば、これは市況とか需給とかそういったものを今後十分注視してまいらなければならないとは思っておりますけれども、長い目で見て日本経済全体の産業構造高度化という観点から、これらの業種におきます過剰設備処理等は進めてまいらなければならない、こういうふうに考えておるところでございます。
  9. 安田純治

    安田委員 短期的には私が指摘したような市況回復といいますか、そういうような状況があるとおっしゃるわけですね。特安法はなるほどこの必要性は長期にわたるということですが、この税制は二年間の適用期限だと思います。私が伺っているのは、この税制必要性を聞いておるので、疑問は残ると思いますが、いかがですか。
  10. 山下正秀

    山下説明員 御説明いたします。     〔稲村(利)委員長代理退席委員長着席〕  本税制は、構造不況業種及び構造改善を要する中小企業を対象といたしまして、構造不況業種以外の分野への設備投資について税制上のインセンティブを与えるという趣旨でございまして、構造不況業種につきましては、いま産業組織政策室長から申し上げましたとおり、過剰設備過剰雇用というものを抱えます中長期的な問題というのは現在も存在しておるということでございますので、こういう過剰設備過剰雇用に対処するために構造不況業種等が中長期的に見た産業構造転換をするための投資、これに政策的な優遇措置を与えるということの政策的な必要性はなお存在するというふうに考えております。
  11. 安田純治

    安田委員 そういう市況回復といいますか、これは短期的なことから見るとそうだけれども、中長期的に見れば過剰設備その他を抱え込んでおる、それは整理しなければならぬとおっしゃいますけれども、どうもそういう点で非常に不確定な要素があるんじゃないかと思いますが、それにしても、将来のことでありますから、そういう不確定なといいますか、市況回復その他がいろいろ考えられる。できるならその方が望ましいと思うのですね、設備廃棄してしまうよりは。できるならそうありたい。ただ、そうなるかどうかということになるとなかなか容易でないので、中長期に見れば過剰設備を抱えておるということになるのだろうけれども、本当は市況回復してフル操業できれば一番いいことなんですね、産業的に見れば、そうでしょう。  そこで、そういう状態にあるとすれば、なぜこの産業転換投資促進税制で、税額控除のように補助金に等しいものを大企業にくれてやる必要があるのかということが疑問になるわけであります。特別償却などのように初年度減税額を後年度でいわば取り戻せるといいますかそういう措置でなくて、なぜ税額控除でやる必要があるのか。しかも特定不況産業経営状態が改善されている中で、なぜそういう必要性があるのかを伺いたいと思うのです。
  12. 高橋元

    高橋(元)政府委員 先ほどからの御議論でございますが、今回御提案申し上げている租税特別措置法の四十二条の四でございますか産業転換設備投資促進税制、これにつきましては御指摘になりますように、構造不況業種に属する大企業だけでなくて、中小企業事業転換対策臨時措置法に定める業種、それから円高関連中小企業対策臨時措置法に定める業種合計二百ぐらいございますが、こういった業種に属する中小企業認定を受けた場合、また認定を受けておりませんでも当該業種に属しております場合に、当該業種から他の業種転換していくということを促進する意味を持っておるわけでございます。  最近の経済情勢でいま御指摘のように、一部に設備廃棄等措置を要しなくなってきておるというものも短期的にはあるかもしれませんけれども、やや長い目で見ますと、いまの経済で基本的に大きな問題はやはり構造転換を図っていくということにあろうかと思います。全体の総需要の水準を高めていって、それによって雇用または経済成長設備の稼働ということを図るのも一つ政策でございますけれども、より大きくは、不況業種と申しますかそういう構造的な不均衡というものをどうやって是正していくかということが当面の大きな課題で、これがまた雇用の増加につながっていくという意味を持っておると私どもは承知しております。  その一環として今回産業転換投資促進税制を御提案しておるわけで、その中で、特別償却にかえて二年間の措置として法人税額特別控除という政策手段を講じますのも、当面の構造政策が非常に重要である、それがやはり今後の日本経済と申しますか民生と申しますか、雇用というもの、につながっていくからである、そういう認識でございます。
  13. 安田純治

    安田委員 私が伺っているのは、特安法に基づく特定不況産業のことを伺っているのでありまして、中小企業の問題はまた別としまして、大体特安法に基づく特定不況産業、先ほど示されました十三業種の大部分はいわゆる大企業性の製品といいますか産業であるということで、その部分についていま伺っているわけですが、そこで、どうしてもやはり先ほど申し上げましたように、特別償却などのような制度ではなくて税額控除でやるというと、実質上補助金をくれてやるとほとんど等しいものであろうと思うのですが、いま言ったような大企業についてそういう必要性があるのかどうかということを、特にその部分に限って御質問しているわけであります。
  14. 高橋元

    高橋(元)政府委員 構造転換を図ってまいるということでございますので、これはだらだらと相当長い期間をかけてやっていくというのでは余り意味がないわけであります。最近の投資環境から、この税制の制定当時、やはり経済先行きが非常に芳しくない、また先行きについての見通しが透明でないということから、設備投資の繰り延べということを考えておるような傾向がかなりございまして、これは通商産業省から後ほど御答弁もあると思いますが、そういう状況から、構造不況業種以外に対して投資をしてまいりまして業種転換を図っていくとすれば、短期間を限って、それは税額控除でございますから普遍的に用いるのに相当政策手段と思いませんけれども、あえて昨年の設備投資促進税制と同じような税額控除制度を取り入れて、それによって短期間政策の実を上げたい、こういうことでございます。
  15. 安田純治

    安田委員 ところで、現在の景気状態を考えますと、特安法指定業種繊維について見ましても、大企業収益が好転している向きがありますけれども林紡績のように倒産した中堅企業もあるわけであります。そこで、特安法趣旨は言うまでもなく、現在不況でかつ今後ますます経営が悪くなっていく、こういう見通しであるからこそ転換しなければならないということになるのだろうと思うのですが、この税制利益がなければ実際に適用されるメリットはないという制度になると思います。そうすると、この制度適用を受けられるものは、現在でも利益があって黒字転換しても利益があるもの、あるいは現在は赤字であっても転換すれば利益が実際にあるという幸運な企業のみに税金を控除するわけですから適用になる。こういうことになると、そういう点での不公平といいますか不適切さといいますか、手当ての必要がないところがますます優遇されるといいますか、現在赤字でり転換しても黒字にならなかった場合、税金の面では何らメリットがないという点はどうでしょうか。
  16. 高橋元

    高橋(元)政府委員 産業転換設備投資促進税制につきましては、確かにただいまの御質問にもありましたように、法人税額から税額を控除するわけでございますから、したがいまして、赤字であって当期に納付すべき法人税額がないという場合にはこの規定は働きません。それは御指摘のとおりでございますが、赤字に悩んでおって構造不況業種以外に脱出していこうという業種の脱出の努力をプロモートするわけでございますから、したがいまして引き切れない金額、つまり赤字でありますればその全額が引き切れなくなるわけですが、翌期以降三年にわたってそれを控除することができるということにしておるわけであります。  それから、過大に引くのではないかという点につきましては、当該企業昭和五十三年五月十五日、つまり特安法施行日でございますが、その日を含む事業年度の直前の事業年度末に持っておりました構造不況業種部門に供用される設備の総額を限度としておりますから、幾つかの部門を兼営しておりまして、その一つ特定不況業種が含まれておるという場合に、残っております黒字部門投資が無用に将来の法人税額から引かれていくということはそれによって防止されておるというふうに私どもは考えております。
  17. 安田純治

    安田委員 三年間の繰り越しも認められるということではございますけれども、とにかくいま黒字会社転換するあるいは転換することによって黒字になる会社、これは直ちにメリットが受けられる。片方の赤字会社は、三年繰り越せば、最長六年間といいますか、このメリットは六年の間に黒字に転ずれば繰り越し赤字の方でもってメリットが出てくると言うのですが、その過程においてすでに企業間の格差がこうした税制措置が働いて拡大していくのじゃないかという心配が一つあります。その点御説明いただきたいことと、もう一つは、この税制によって新規参入が激しくなるということで過当競争を起こすおそれがないか。この場合には、現在も利益がなくて転換してみた、そうしたらこの促進税制によって新規参入がそういうことであったとなると、結局そこでもまたたたかれるということになって、現在の赤字企業はますます格差が開いて、いわゆるスクラップ・アンド・ビルドといいますか、スクラップされる方に誘導されていってしまうのではないか。それほどの効果があるかどうかわかりませんけれども、また、それほどの効果がないのだったらこの促進税制も余り効果がないと思うし、非常にパンチが効くものであれば、そういう格差がすごく開いちゃうのではないかという点、いかがかと思うのですが、どうですか。
  18. 高橋元

    高橋(元)政府委員 赤字会社構造不況業種以外に投資を行って業種転換をしていくということでございますから、一定の懐妊期間というのが当然あるわけでございましょう。懐妊期間の間にどしどし黒字が出てくるということであればそれはまた非常に結構なことでございますが、そうでない場合もあり得る。したがって御指摘のように、転換を図ってまいります初度においては十分企業利益が上がらないということがあって、それで税額控除規定が働きますのは、繰り越しの三年間の規定を使いましても相当先にならなければ引けないということかもしれません。しかしそれは、こういった設備投資税額控除特別税制がなければなお一層転換がおくれ、当該企業が将来に向かってより悪い企業環境の中に入っていくことでございますから、したがってこの設備投資促進税制効果というものはやはりそれなりにと申しますか、かなり十分働いているというふうに御認識願いたいと思うわけであります。
  19. 安田純治

    安田委員 それからそれにあわせて、これはむしろ山下さんの方に伺った方がいいかもしれませんけれども、「通産ジャーナル」なんかにあなたがお書きになっている中に、この「産業転換投資促進税制問題点考え方」という、多分あなたの論文だと思いますけれども、この中に、「本税制が新たな事業分野における新規参入を促進し、却って過当競争弊害を惹起するものではないかとする考え方」が論点として考えられる、それに対してあなたはいろいろそれに対する反論を述べられておりますが、いまの高橋さんのお答えは、私が言ったのは過当競争との関係も含めて伺ったのですが、そういう点でのお答えがちょっと抜けたように思うのです。むしろ山下さんにお伺いしたいのは、この論文の中で、「成長分野における供給能力の増大は、適切な経済運営を背景とし、かつ、十分な行政上の配慮の下に行われる限り過当競争等弊害は十分避けることができると考えられる。」このようにお書きになっていらっしゃいますが、この「十分な行政上の配慮」というのはどういうことをお考えになっていますか。
  20. 山下正秀

    山下説明員 御説明申し上げます。  構造不況業種に属する企業がどのような分野参入あるいは新しい分野を開拓していくであろうかということは、やはりそれぞれの企業が持っておりますいろいろな技術力販売力あるいはその人的な能力というものをそれぞれの企業の判断において十分に活用し得るような分野をその企業が選択し、事業計画を立てるということであろうかと思います。その際には当然、そのような能力を活用することによってその新しい分野収益を上げることができるというふうにその企業が判断する、そういう場合に新たな投資が行われるということであろうかと思います。そのような場合においてもなおかつ、行き先において過当競争が起こり、そこでまたしても赤字というような状態が一般的にあるようなそういう状態というのは、やはり経済全体が過剰雇用雇用失業問題を十分に吸収解消できるような需給状態、マクロのバランスというものに問題があるということになろうかと思いまして、そこは適切な経済運営がなされている限り、経済の各部門構造転換は進むにいたしましても、それぞれ成長分野衰退分野というものがおのずからあり、その成長分野への進出、転換によって、経済全体としてある部門での過剰雇用が吸収解消されていくというふうに判断されるわけでございます。そういう状況通産省は、産業政策の側からもよく産業状態を個別に観察して、その間にもし御指摘のようなおそれの生ずるような場合があるとする場合には、そういう事態に即して十分ケース・バイ・ケース行政指導をするという考え方をとっております。
  21. 安田純治

    安田委員 ところで、この安定基本計画あるいは共同行為の指示の中で、もちろん法律にもあるわけですけれども雇用確保の面とそれから関連企業経営の安定を配慮しなければならぬという項目がありますね。ただ、十三業種について全部伺うわけにはいきませんが、たとえばアルミ産業とかアンモニア産業安定基本計画の中で、そういう中小関連企業などの経営の安定に配慮するという点でどのような配慮ができるのか、あるいは転換するとしたらどういう転換が適当であるのかということについて、告示された、つまり基本計画を決められた通産省としてはどういう見解をお持ちですか。
  22. 原木雄介

    ○原木説明員 ただいまの御質問について具体的な点でお答え申し上げたいと思います。  まず、アルミについて申し上げたいと思うのでございますけれども、アルミニウムにつきましては、御存じのような大きな不況になっておったところでございますけれども、具体的にいまの設備等の関係で急激に全体が事業の転換を行うということは非常にむずかしいということでございまして、ある能力を生かしながら、事業の転換というよりも事業の多角化を図るという意味で、安定基本計画につきましては事業の多角化を図るというような表現にしてございます。  その一環といたしまして具体的に、一つの例でございますけれども、製錬業といいながら一つは、圧延業でもやっておりますようなビレットをつくるといったような自分の技術を生かした点がございますし、また、雇用の質の関係から非常にむずかしいところにつきましては、事業の多角化というよりもむしろ雇用の安定といったことから、時間をかけまして、関連大企業、上の親会社等の系列もございますけれども、そちらへの転換を図っていくといったようなこともやっております。したがいまして、雇用の問題等を含めまして今度の安定基本計画では、事業の転換の期限というものを来年の三月三十一日にいたしまして、雇用の安定、事業の多角化といったものについても十分な時間を与えるように配慮しているところでございます。
  23. 安田純治

    安田委員 しかし、一応雇用の安定あるいは関連企業経営の安定ということを配慮しなければならないというふうにしてあるわけですから、そういう場合に、個々の企業がどういう転換をするかとかということは個々の企業の活動に任せられるわけでしょうけれども、一応そういうことを計画を決め告示した通産省としては、こういうふうなパターンがあるんではないかというようなことはお考えになっていませんか。  たとえばアルミの場合でもいろいろあるのですが、私の知っている工場などでは、前から温排水を利用してコイを飼い始めたりいろいろなことをやっているわけですね。もちろんアルミ産業とコイを飼うのでは、ノーハウは使えないし従業員のあれも使えないとは思うのですが、いろいろなことを考えているわけです。これが事業として成り立つかどうかは別としましていろいろなことが考えられる、非常に多種多様なものがあると思うのですが、通産省としてはアルミ産業の場合、大体こんなふうに転換したらいいんじゃないかという何かないのですか。全く白紙で、ただ各企業が自分の経営能力で考えろというだけの話なんですか、どうなんですか。
  24. 原木雄介

    ○原木説明員 アルミの転換につきましては、やはり地域というものが非常に密接に関係してまいりまして、一概に一義的にパターンといったようなことは考えられないということでございます。したがいまして、私どもとしていろいろ業界を指導してまいりますにつきましては、各方面におけるそういった転換のパターンがあるぞということを指示しながら、各企業の従業員の質、特に雇用の年齢層といったこともありますので、そういったことを配慮しながらこういうパターンがあるということを指導する程度でございます。
  25. 安田純治

    安田委員 ところが、これはたとえばアンモニア、尿素関係などですけれども、福島県のいわきに日本化成というのがありますが、これの関連企業との関係なんかを見ますと非常に複雑でございまして、関連企業経営の安定に配慮しつつ安定基本計画を実行しようとすると、どうしていいんだか非常にわからないと思うのですね。  たとえば日本化成などはその背景のうちに当たるのではないかというので、いわき市を挙げての大騒ぎになっているのです。まだ具体的に日本化成になるかどうかわかりませんけれども、どうもそうなるのじゃないかと言われているのですが、たとえばアンモニアと尿素をつくっているいわゆる西工場というのがありますが、ここからは堺化学というところにアンモニアと液化炭酸を送っている。あるいは新日本化学にスチームと温海水を送っている。あるいは小名浜製錬というところに水素を送っている。小名浜製錬から硫酸が東工場の化成肥料工場に来る。その化成肥料工場に、アンモニアと尿素をつくっている大型肥料工場、いわゆる西工場から尿素とアンモニアとスチームを送っている。非常に結びついているわけですね。まだまだ言えば限りないほどたくさんあるのですが、こうしたもので関連企業の安定を図りつつどういうふうに転換していくのかということになると、非常にむずかしいと思うのですよ。ですから、言葉が悪いけれども、お題目としては関連企業経営の安定を図りつつこういう基本計画に基づいてやりなさいと言っても、実際問題としては切り捨てだということになりはせぬかと思うのですが、いかがですか。
  26. 沼倉吉彦

    ○沼倉説明員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘がございました小名浜市にございます日本化成のアンモニア工場でございます。昨年の五月に産業構造審議会の化学工業部会が通産大臣に答申を行いまして、その中で、アンモニア製造業尿素製造業、それから燐酸製造業につきましてはそれぞれ約二割、四割、また二割というような設備処理を行う必要がある、設備が非常に過剰になっておるというようなことでございました。こういうような考え方が示されたものでございますから、三菱グループ、三菱化成、三菱商事、三菱銀行、それから日東化学、三菱油化というようなところがこの設備の問題につきましていろいろ検討を始めて、その小名浜の日本化成と鹿島の鹿島アンモニアとを合併して、五社合併で生産体制を再編成しようというのが新聞にも報道されたわけでありますが、そういう動き方になっておりました。  現在でもまだ検討をしておりまして、これらの関係企業自体におきましても、実はまだどういうふうにするのかというのが全然明らかになっておらない。それから先生おっしゃいましたように、これまで地元からもいろいろ御要望がございまして、おいでになりまして関連企業中小企業の話を私どもいろいろ伺っておりますけれども、それにどういうような形で問題が起きますか、申し上げれば、たとえば鹿島の問題の方で出るのか小名浜の方で出るのか、出るといたしましても、そこのところでどの部分でどれだけ出るのかというようなことが全然明らかになっていないということでございますから、当分の間は関係企業の方での大体の考え方のめどが明らかになるというところまでは見ておらぬといかぬというふうに考えておるわけでございます。ただ、関連企業についてのこういう問題は非常に重要な問題でございますので、お話をそれぞれ伺った都度関係企業の方には伝えまして、十分考慮をするように伝えてございます。
  27. 安田純治

    安田委員 私が小名浜の日本化成の問題について出したのは、ここが廃棄されることを望んでいるわけでもないし、私としてはこれは絶対承知できないところでありますが、そういうことを言っているのじゃなくて、このようにたとえばアンモニア、尿素の工場の設備廃棄したり何かする場合に、関連企業というのはものすごく複雑に絡み合っておりまして、関連企業の安定を配慮しつつなどということを言ってみても、実際問題としてはそんなにうまくいくかということの疑問として、いまちょうど工場の関連企業の配置図が手に入ったものですから例として伺ったのですよ。  だから、日本化成のいろいろな経過はともかくといたしまして、こういう複雑に絡み合った関連企業経営の安定をしながら安定基本計画を実行していくとすれば、結果的にはどうも切り捨てになってしまうのではないか。あるいは、先ほど挙げたアルミ製錬がコイなどを飼った場合に、関連企業は一体どうやって経営の安定をするのか、非常に複雑な問題になりますね。ですから、あの安定基本計画なり共同行為の指示なりに書かれている関連企業経営安定などというのは結局まくら言葉、法律や何かに決まっておるし、決議なんか、いろいろ商工委員会の審議の過程もあってまくら言葉に書いているのじゃないか、実行不可能ではないか、つまりは切り捨てになるのじゃないかという心配があるのですが、それはないというふうに確信をお持ちですか。
  28. 沼倉吉彦

    ○沼倉説明員 いまの関連企業の問題につきましては、構造改善事業を行いますときに、企業の方でそれぞれ自主的な判断に基づいて設備処理をするというときに、十分配慮しなければいけない事項といたしまして、雇用の問題と関連企業の問題があるわけでございます。たとえばいま先生御指摘の小名浜の日本化成の場合でも、確かに幾つかあるわけでございますが、それぞれの企業に対しましてのたとえば原料の供給、ユーティリティーの供給というような点について御指摘になっておられるかと存じますが、これについてどう処理されるのかあるいはどういうような配慮をするのか、これがまさにいま企業において検討されておるところでございまして、こういう点につきましての検討を十分やっていくというのが、この基本計画に申しますこれを十分配慮するということだと存じます。そういうことでございます。
  29. 安田純治

    安田委員 これから考えるというのでは大変心細い。基本計画が決まって、何万トン廃棄とかそれだけが先に決まってしまって、あらかじめ雇用関連企業経営の安定ということを配慮して決めなければならないのに廃棄の数だけ決まってしまっている。しかし、それがどう転換していって、どう関連企業の安定を図れるのかという問題はこれから知恵をしぼるというのじゃ、非常におかしな話だと思います。しかし、これだけやっておりますと時間がございませんので、こういう問題があるということを指摘すると同時に、この産業転換投資促進税制の創設につきましては、やはり政府の大企業本位の産業政策、優遇税制というものではないか、そういう疑問、後でまた時間があり機会があれば伺いますけれども、そういうことを指摘いたしまして、次の問題に移りたいと思います。  次に、土地税制についてでありますが、最近の地価の動きは警戒を要する動きであると思います。その原因の一つ金融機関による不動産融資の急増があると思いますが、最近の日銀の調査によれば、昨年十二月末の不動産融資残高は前年比一二・六%と高い伸びを示しておるようであります。これは全国銀行の総融資残高の六・七%で、約九兆円にも上る金額となっているようであります。大蔵省は二月に入って、金融機関の土地融資に関する要請といいますか、形はどういう形かわかりませんけれども、何か金融機関に対して物を申したようでありますが、その内容はどういうことか。四十七年から四十八年の土地投機の際に出された大蔵省の通達、つまり、土地関係融資の伸びを総貸し出しの伸び以下に抑制することなど具体的内容が決まった規制の通達を出されましたけれども、この通達と今回の、その形式はどういう形式かわかりませんけれども、物を申したものとの関係はどうなっておるのかということ、この点が一つです。  それから、土地の融資について、その土地の売買の性格が実需であるのかあるいは仮需要であるのかを区別しないと、転売、土地転がしを目的とした仮需要に対して規制ができないと思うのです。実態として仮需要も相当あるのではないかと思いますが、大蔵省はそれをつかんでいるかどうか、あるいはまた融資規制の方法として実需と仮需の区分はできないのか、この点を大蔵省に伺いたいと思います。
  30. 徳田博美

    ○徳田政府委員 先生御指摘金融機関の土地取得関連融資についての問題でございますが、金融機関の土地取得関連融資につきましては、四十七年以来三回にわたりまして通達を出しまして、土地投機を助長するような融資の自粛を要請してまいったわけでございます。  最近における土地取得関連融資の状況でございますが、先生御指摘のとおり、不動産業に対する融資だけをとってみますと、昭和五十三年十二月末における融資の伸び率は一二・六%でございまして、総貸し出しの伸び率九・七%をやや上回っておるわけであります。ただしかしながら御承知のように、昭和四十七年ごろはこの融資の伸びが六六%程度に達したわけでございまして、総貸し出しの伸びを四〇%も上回っていたわけでございます。そのときの状況に比較いたしますと、伸び率は上がってはおりますけれども、まだそのような状態には至っていないわけでございまして、御承知のとおり、個人の住宅向けの融資は年率二五%以上で伸びておるわけでございますから、こういうものを背景とした不動産業の正常な活動を支える範囲のものである、それが主体ではないかというふうに考えているわけでございます。しかしながら、最近における地価の動向等もございますので、予防的な措置といたしまして、土地投機を助長するような融資については今後ともさらに抑制を図るように各金融機関に注意することといたしまして、去る二月七日に各金融機関の団体の代表者を招いて要請をいたしまして、いままでにすでに三回の通達が出ているんだということを確認した上で、さらにそれを厳重に守るように指導したわけでございます。  融資の内容につきまして、いま申し上げたとおりでございまして、現在の土地の動きが実需に基づくものであるか投機に基づくものであるかにつきましては、必ずしも実態に当たっていないわけでございますけれども、全体の融資のマクロの動きで見ます限りは、いま申し上げましたようにまだ健全な活動を支えている面が多いのではないか、このように考えているわけでございます。なお、住宅宅地の健全な供給につきましての必要な資金については、今後とも円滑に行うように指導しております。
  31. 安田純治

    安田委員 そうすると、四十七、四十八年の通達はまだ生きておる、生きているのをいわば再確認したのが今度の要請だ、こういうふうに伺っていいのですね。
  32. 徳田博美

    ○徳田政府委員 通達に関する限りはそのとおりでございます。  なお、最近は土地融資に関する実態について報告をとっておりませんでしたので、今後は建設業と不動業に関する土地融資について四半期ごとに報告をとることに新たにいたしまして、実態をさらにフォローしてまいりたい、このように考えております。
  33. 安田純治

    安田委員 ところで、法人などの土地譲渡益重課税制度の一部緩和について伺いたいのですが、今回の改正で、造成宅地を建て売り業者に一括譲渡した場合などについて公募要件を緩和することになるわけですが、この改正の趣旨と目的は何かということを伺いたいと思います。
  34. 高橋元

    高橋(元)政府委員 土地重課の適用対象外になります宅地造成事業でございますが、千平方メートル以上のものでありますれば、開発許可とか、それがない場合には優良宅地の認定を受けて造成行為が行われるわけであります。第二に、適正価格で譲渡すること、公募販売すること、合計千平米以上の場合は三つの要件が課せられておったわけでございますが、公募販売するという要件につきましては、造成業者が建て売り業者にまとまった区画を一括譲渡する、それが重課の対象になって、土地プラス住宅という形で住宅及び宅地の供給が行われる際の隘路になっておるということから、緩和の要望があったわけでございます。  そういう点につきましていろいろ考えてみたわけでございますが、造成業者と建て売り業者それぞれに現在は適正価格要件というものが設けられておるわけですが、適正価格要件に五十三年度改正でなります前は適正利益率ということでございました。建て売り業者が相当期間内に優良住宅を建設して住宅供給に寄与するという保障がないと、単なる土地転がしになるという点も一つ問題だったわけでございますが、国土庁と建設省が都道府県知事の認定制度というものを設けるというお考えが出てまいりました。それによって、一つは適正利益率が二度働いて地価上昇を招くことがなくなって、適正価格要件の中で建て売り業者が売ります場合にも適正価格で売られるという保障ができてくる。それから、一括卸売の場合に土地転がしになるということも、いま申し上げました国土庁、建設省の都道府県知事の認定制度によってそういう弊害がなくなるということでございますので、今回公募要件を緩和するという措置をとったわけでございます。それが今回御提案しております租税特別措置法の六十三条の改正でございます。
  35. 安田純治

    安田委員 このように今回、公募要件を緩めるというか外すというか、宅造業者から建て売り業者に一括卸売をする場合は、将来公募するということは残っているわけですね。しかし、一括譲渡の段階では、それは一括譲渡だから公募はないけれども、外す、こういうことになったのは、何らかの状況の変化があったのではないかとも思われるのですが、この間どういう変化があったのか、国土庁または建設省に伺いたい。
  36. 佐藤和男

    佐藤説明員 いまほど御説明がありましたように、最近宅地造成事業者がみずからの造成しました宅地を一括卸売いたしまして、買いましたホームビルダーがそこにたとえばプレハブとか各種の自分のデザインをこらした建物を建てて、これを一般に公募で売るというような形の必要性が増加してまいりました。実例といたしましても、そういうホームビルダーの建て売りについての要望、かつ、それを素地としてデベロッパーから取得する必要性がだんだん増してまいりまして、実例の上でもある程度の件数に上ってまいりましたので、このような要望をいたしたわけでございます。
  37. 安田純治

    安田委員 ある程度の件数というのはどのくらいですか。
  38. 佐藤和男

    佐藤説明員 五十二年の実例では、私どもの調べた範囲では約千五百件程度の実例を区画数で見てございます。
  39. 安田純治

    安田委員 それは以前から見るとずっと増加したという傾向にあるのですか。
  40. 佐藤和男

    佐藤説明員 私どもの調査では、四十九年当時、法人重課制が始まりました時点では五百件程度のものが、五十二年では千五百件程度に増加してございます。
  41. 安田純治

    安田委員 そうすると、一括卸売をして、その後で建て売り業者が今度は需要者に売るときには、公募という条件はやはりあるわけですね。その建て売り業者がこの条件を守らなかった場合にはどうなりますか。
  42. 佐藤和男

    佐藤説明員 私どもはまず、デベロッパーがホームビルダーに土地を売ります場合の要件の一つといたしまて、国土利用計画法におきます届け出の許容面積、市街化区域では二千平米でございますが、その要件以上の取引に関するものと理解しております。したがいまして、まず国土利用計画法による事後的なフォローがなされてございます。もう一つは、省令等のことでございましょうが、そういうことについての都道府県知事の証明を予定してございます。
  43. 安田純治

    安田委員 宅建業者がこれを守らなかった場合にはいろいろな行政的な措置があるにしても、その場合に、一括卸売をした宅造業者の税金はどうなりますか。守らない場合に、それは宅建業者としてはいろいろ処分を受けたりするでしょう。しかし売るときに、売った後で公募することを条件として売った、そのために土地重課を逃がれたその不動産業者、土地業者の税金は、さかのぼっては何ともならぬのですか。
  44. 高橋元

    高橋(元)政府委員 その点をごくごく厳格にやりますと、たとえば今回長期譲渡の特例で優良住宅地の供給について税制上やりますように、本来優良な住宅地または優良な住宅という目的に供されなかった場合には税金が高くなるというような形に戻らなければならないわけでございますが、そこは造成業者が造成期間中特別土地保有税を免除してもらうために、先ほど国土庁、建設省からお話がありますように、事業の進め方、進めた事業の結果できます宅地の基準とそれを公募し販売していく場合の方法等について、都道府県知事に届け出て認定を受けているわけでございます。したがってそういう場合に、土地が売られていくということについては確実なわけでございます。確実なものについて、さらに取り返しのために非常にめんどうな手続を、譲渡者についてもそれからまた譲り受けを受けた者についても講じておくということが、必要であるとしてもそれはごくまれなケースでございましょうから、今回の場合は、行政指導によりましてといいますか、都道府県知事または建設省、国土庁の御監督というものに任せておくという考え方をとっております。
  45. 安田純治

    安田委員 それはごくまれなケースかどうかやってみなければわかりませんけれども、私どもとしては、どうも転売、土地転がしの促進をしかねないというふうに懸念されるわけでありまして、ぜひ歯どめが必要だと思いますけれども、いまおっしゃるようなことで歯どめになるかどうか非常に疑問に思う点がございます。しかし、この点だけつついていますと時間がございませんので、次に宅地の供給について伺います。  今度の税制緩和で宅地の供給が円滑になるであろうというふうに政策効果としては思われているのだろうと思うのですが、どの程度宅地供給が増加すると考えられるのか、この点建設省と大蔵省に伺いたいと思います。
  46. 佐藤和男

    佐藤説明員 今回の税制改正はいまのところ、先生御指摘のように、主として計画的な宅地開発のための素地の供給を促進するということにございます。今回税制改正が行われました結果の姿は先生御存じのように、現在の長期譲渡所得の四分の三課税の部分に関しまして、一部計画的な宅地開発の素地に関して所得税本則の二分の一の割合に戻すということでございます。したがいまして結果は、宅地供給の素地の一般的な譲渡額との関係では二〇%ないし二五%の税率になろうかと思いますが、その状態は、私どもが一応宅地供給の常識的な供給量と考えております四十九年ないし五十年の状態、素地の供給の場合の税額負担とほぼ同じでございまして、効果といたしましては四十九年当時の素地供給が期待できるというふうに考えております。
  47. 安田純治

    安田委員 この政策効果のはかり方が非常にむずかしいと思うのですが、税制の緩和によって土地の資産価値を高めることによってますます土地の手放しをむずかしくさせるのではないか、あるいはますます土地の細分化、切り売りを助長するだけではないか、優良宅地の供給につながる可能性は余り期待できないんじゃないかというような見方も成り立ち得ると思うのです。それよりもむしろ宅地の供給は、大企業が大量に保有する販売用土地を放出させることが先決だと思うのです。  昨年十一月発表されました建設省の不動産等実態調査結果報告によれば、不動産業者が保有している販売用土地は全国で約十六万ヘクタール、このうち三大都市圏には約四万ヘクタールあるようであります。ところが、これらの不動産業者の今後五年間の販売予定面積もここに書いてありますが、全国で約三万一千ヘクタール、三大都市圏では一万二千ヘクタールしか予定されておらないわけであります。また、これら不動産業者の保有土地の利用状況を見ますと、未使用、未着手土地面積が全国で十一万ヘクタール、保有土地面積のほとんどを占めておりますし、三大都市圏内だけでも二万九千ヘクタールとなっているわけです。こういう数字を見ますと、これら不動産業者が保有する土地のほとんどが未着手、未使用のままである。これらの不動産業者が大量に抱えている土地を早急に供給させる措置をとるべきである。この税制によって土地転がしやいろいろな問題を懸念されるものでありますから、こういう点でむしろ別な施策が必要ではないか、その方が有効ではないかと思うわけであります。国土利用計画法によれば、取得後三年たって本来の用途に充てられていない土地について遊休土地の指定を行って、勧告など必要な措置をすることができることになっておりますが、さきに述べた不動産業者の土地保有の実態からして、早急に同措置を講ずべきであると思いますが、国土庁にどうかと伺いたいと思います。  それからもう一つ国土庁に伺いますが、さらに大きな問題として、未着手、未利用土地を抱えていて当面供給をしない理由として、建設省の計画局で出されました報告によりますと、現状のまま他に転売するのが目的なので使用、着手しない、こういう理由を挙げているものが面積にして三万六千ヘクタール、未使用、未着手土地全体の三八%もあるという状況であります。こういう状況の中で税制を緩和して融資はどんどんやるということになると、大変なことになるのじゃないかという心配もあるわけでありまして、こういう点で国土庁にその点のお考えを伺いたい。その二つをお伺いしたい。
  48. 佐藤和男

    佐藤説明員 いまほど御質問がありました企業が販売の目的を持って保有している土地に関する調査でございます。これにつきましては、私ども国土庁の方で企業土地調査によりまして調べたものがございまして、これによりますと、宅地供給の素地として適切な市街化区域に保有している土地につきましては、五十一年度末現在で約九千ヘクタール、これは素地の面積でございますので、たとえばこれを良好な宅地にして供給します場合の面積はこれの六割程度になろうかと思いますが、こういう状態でございます。したがいまして、このような私どもの対象企業が民間の宅地供給の場合において供給義務、供給の責任を負うべき面積は、良好な宅地の状態にしたもので約二千ヘクタール程度と考えますので、たとえば先生御指摘のように、現在の素地を他の公共施設要件等を完全に無視して直ちに良好な宅地として出したといたしましても、二年、せいぜい三年もてばいいところという状態でございます。したがいまして、このような企業が市街化区域等に持っております土地について、昨年の法人重課制の改正等を含めてこれに対する促進措置を図ることは当然でございますが、やはり一定の宅地開発のための素地供給の円滑な促進が図られることが一つの要件でございますので、今回の税制改正の要望になったわけでございます。
  49. 安田純治

    安田委員 まあ土地税制ばかりやっていると時間がありませんので、この点についても、後に機会があったらなお質問を続けることにいたします。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  有価証券譲渡益課税の問題で若干お伺いしたいと思います。  たくさんお聞きしたいことがあるのですが、今回の改正でも原則非課税ということは相変わらず維持されておるようであります。当委員会における従来の質疑を伺っておりますと、これは捕捉が困難である、それをにわかに原則課税にすればかえって不公平が拡大するというような御答弁で終始しているように思うのです。しかも、原則非課税というのはずっとやるのじゃなくて、将来は原則課税にしていく方向であるというふうにも伺っておるわけであります。こうなりますと、捕捉が可能なのかどうか、どういう方法だったら捕捉が可能と考えるのか、これがはっきりせぬと原則課税に移行していくことが不可能になるわけですから、そういう点で、把握ができるかどうか、できるとしたらどういう方法だったらできるとお考えなのか、伺いたいと思います。
  50. 米山武政

    ○米山政府委員 有価証券の取引というのは御承知のように、非常に大量でございまして、これによる譲渡益に課税するためには、個々の取引の帰属がどうなっているか、あるいは取引にかかわる有価証券の取得価格を正確に把握する、こういう非常にむずかしいことがあるわけでございます。しかし実際問題としまして、現在個人で取引しているものの大多数が取得価格を明確にするような書類を保存してないわけでございますし、それから、納税者の自主的な申告を期待できないとか、それから職員が大量の取引を証券会社の帳簿について調べるということは非常にむずかしいわけでございます。しかも架空名義の取引もあるというような現状を考えますと、現在の有価証券の譲渡益を総合的に全体を把握するというのはわれわれとしては非常にむずかしい、こう思っておりますので、段階的に可能なものから入れるということ以外にしようがないのじゃないかというふうに考えております。現行法の課税対象につきましても正直のところ、課税の端緒を把握することが非常にむずかしいわけでございます。いままで提出された申告書とかいろいろな資料を分析して課税に努めている、こういうふうな状況でございまして、いますぐ課税対象を大幅に広げていくというのはなかなかむずかしくて、どうしたらいいかいま真剣に検討している状況でございます。
  51. 安田純治

    安田委員 どうしたらいいかというのは、従来の質疑答弁の中でそういうお答えがあったので、全くどうしていいかわからないのに段階的という言葉はおかしいではないか。いまの改正がワンステップだとすれば、ツーステップがあるのかというと、ツーステップがあるためには、全部はならなくても捕捉がそれだけ可能になる、そういう段階でツーステップが踏まれると思うのですよ。もっと捕捉が可能になれば、その対象を広げてまたスリーステップになるか、一挙に原則課税に持っていくか、いろいろあると思うのですが、段階的とおっしゃる、いまはワンステップだ。しかし、ツーステップが一遍に原則課税になるかあるいは少し対象を拡大するかわかりませんけれども、それには裏づけとして捕捉可能性がなければならない。その捕捉可能な方法について何らの知恵がないとすれば、どうしてワンステップだと言えるのか。オンリーワンじゃないのかということも言えるわけですが、どうですか。
  52. 高橋元

    高橋(元)政府委員 中期の税制答申で、「有価証券譲渡益についても総合課税の対象とすることが望ましいが、有価証券取引を把握する体制が十分整備されないまま総合課税に移行する場合には、新しい不公平を招くおそれがある」、そういうことでございます。いまのお話は、それでは総合課税が可能になるようなというか、さらに段階的強化を進めていくことが可能なような執行の体制をどういうふうに考えていくかということでございます。  十八年ぶりに基本的な改正によって、課税取り入れ分というのが二項目、今回御審議をいただいております法案の中でふえるわけでございますから、そういった課税取り入れ分の執行状況、それから他の資産所得課税の適正化、そういうものとの絡みでありますから、そういうことの進展を見ながら、いま申しましたような中期答申の方向に従って広い視野からさらに検討していきたいというのが私どもの考えでございます。
  53. 安田純治

    安田委員 どうもそのお答えだけでは、これがワンステップで、次のツーステップはいつごろどうやって進むのかというのが一向わからないわけでございますが、その点は時間もありませんので、ただ、捕捉困難だから原則非課税ということになれば、競馬でもうけた場合もこれほど捕捉困難なものはないと思う。場合によってはそれで家でも建てて、どこから所得を得たか調べられたら、実はそれはばくちでもうけた、あるいは犯罪行為によってもうけたということもあるかもしれませんけれども、捕捉困難だから原則非課税と言えば、これはみんなそういうものは原則非課税にしなければならぬと思うのですよ。そうなっていないというところにどうも奇妙なところがあると思うのですが、これは機会があれば後でなお詳しく伺いたいと思います。  そのほかに、貸倒引当金の繰入率の問題とか医師課税の問題とかいろいろございますが、これは時間がございませんので、この点については次の機会に譲りますけれども、最後に、いよいよ三月十五日の確定申告の時期も近づいてきましたので、税務行政の問題について若干伺いたいわけです。  実は質問の中には、国税職員の健康問題などを予定したわけですが、時間がございませんので、いまの機会に伺っておきたいことを一点だけ伺いますけれども、実は外部講師によって教養講話がなされるという場合に、この内容がきわめてとんでもない内容であるということがございます。たとえば去年の十一月十六日に、税を知る週間というのがございまして、納税者団体と税務署の共催の一環として台東区役所の大会議室で行われたのに、大蔵財務協会の理事長の清野真氏、この大蔵財務協会自体が政府から補助金を受けている団体のようですが、この講演の内容の一部をちょっと申し上げますと、とんでもないことです。「税務署が一番民主的になっている。」まずこういうことですね。これは見方によっていろいろでしょうけれども、「あの国鉄の雲助集団を見なさい。職場規律が紊乱しているではないか。」そして「税負担は日本が軽い。」というようなことを言いまして、次にこれは聞き捨てならぬことが言われています。社会党の同僚議員もいますからぜひ聞いていただきたいのですが、「社会党は大企業に増税、庶民に福祉と言っているが、できっこない。弱者が正義など、ばかなことを言ってはいけない。いまの憲法をすばらしいと言うが、見習いたいとする外国は一つもない。社会党は何でも反対するだけの政党だ。」こういうことを言っている。大臣、よく聞いてくださいよ。「共産党は、いまはおとなしく、うまくやっているが、後がこわい。日本をどうしてだめにするかを考えている。民商に入っている人は、共産体制を望んでいるならよい。ただ、そうなったら店を閉めなくてはならない。」また「予算のうちむだ使いの一番は福祉だ。福祉はこじき根性を肥大化し、やがて国を滅ぼすもとだ。大英帝国も福祉でいまや滅亡寸前にある。」あるいは「スウェーデンはいまや福祉国家のなれの果てと世界の笑い物になっておる。福祉を充実すればするほど国は滅びていくことを早く知るべきだ。」さらに「補助金は徹底的に整理する必要がある。陸奥湾の漁民どもは、害もないのに補助金を取った。」こういうことを去年の十一月十六日、税を知る週間で言っている。これは税務署の共催ですよ。  いかに外部講師といえども、清野さんは前は大蔵の人だと思うのですけれども、こういうことを言っているのですね。これは一たん民間人になった以上は、不偏不党と言っても、民間人が勝手なことをしゃべったのだと言うかもしれないけれども、もうちょっとレベルの高い講師を選ぶべきではないか。社会党は何でも反対する政党だ、ばかを言っちゃいかぬとか、とんでもないことを言っておるわけです。     〔綿貫委員長代理退席委員長着席〕 調べてみますと、国税庁の直税部長もやった方ですね。それから大蔵省の造幣局長をやられて、財団法人の大蔵財務協会に天下った特権官僚だ。このような講話が妥当なものかどうか、その点いかがですか。
  54. 米山武政

    ○米山政府委員 いまのお話、初めてここでお聞きしたわけで、よく内容がわかりませんが、講師の選定については今後とも十分注意してまいりたいと思いますが、事実どういうことになっておるか、それからどういうふうに講師を選定しているか、もう少しその点も調べてみたいと思います。そんな状況で、いま初めてここでお聞きしたわけで、これに対して何ともお答え申しようがないわけでございます。
  55. 安田純治

    安田委員 時間が来ましたが、この点、前にもたびたび講師の不適当については言いました。税を知る週間に何で社会党や共産党の誹謗中傷を言う必要があるのか、全くもってのほかであると思います。それと同時に、そういうことだから、税務署が民主的だなんてまくら言葉に言ってみたって、何だということになりますので、税を知る週間としてもまことに不適切な言動ではないかということが一つです。  それから講師のレベルとしても、イギリスがどうとかこうとか、福祉は滅亡につながる、そういうことを言っておるという点でも不適当だと思いますし、たびたびいままでも指摘されておるところでありますので、よく御注意いただきたい。  しかも注意すべきことは、この税を知る週間に税務署の署員が、公務員が勤務中に、研修の一つですか、このありがたいお話を聞きに行けといって派遣されておるわけですよ。こういうことはまことにもってのほかである。大臣、そういう点について最後に、このいまの事件についてのお考えをお答えいただきたいと思います。
  56. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 よく内容を検討いたします。講師の選定その他に十分これからも注意してまいります。
  57. 安田純治

    安田委員 終わります。
  58. 加藤六月

    加藤委員長 坂口力君。
  59. 坂口力

    坂口委員 お昼から質問をさせていただく予定でございましたけれども、急に他の議員の都合で繰り上がりになりましたので、ひとつお許しをいただきたいと思います。  今回の租税特別措置法の改正案につきましては、いままで手がけられなかったところにある程度のメスを入れるということにつきましては、いままでよりも一歩前進した部分もあるというふうに考えております。しかしながら、中には賛同しがたいものも幾つかあるわけでございます。きょうは、その中の幾つかを申し上げておきたいと思うわけでございますが、また、反対をしないまでもより検討をしなければならない問題もあるわけでありまして、その点のことにつきましても触れておきたいと思うわけでございます。  一番最初に、総体的なことをひとつお聞きをしておきたいと思いますが、今回の租税特別措置法の改正案におきましては、ことし一般消費税の問題はまだ出ていないにもかかわらず、一般消費税の問題が非常にクローブアップされまして、そして一般消費税という言葉も出てきております。長期的あるいは中期的な税制を考えました場合に、もちろん増税ということも議題に上ることは私たちも承知をいたしております。しかし、中期あるいは長期的な展望で税制を考えましたときに、この増税問題だけではなしにもう一つ重要な柱として、いわゆる税の景気調整機能というものがあるのではないかと思うわけであります。この景気調整機能ということにつきましては、ことしこの租特だけではなしに十一本の税制改正が出ておりますけれども、その全体の中におきましても余り触れられていないわけでありまして、増税問題が議論されるならば、それと並行してこの景気調整機能ということについてももっと真剣に取り組まれるべき問題ではないかと思うわけでございます。そういった意味で、どういうふうにこの問題をお考えになっているか、総体的なことでございますけれども、ひとつ先に御質問しておきたいと思います。
  60. 高橋元

    高橋(元)政府委員 景気調整機能を税制にどういうふうに付与していくかということにつきましては、いわゆる景気調整税制の導入ということをめぐりましてここ数年非常に議論があったわけでございます。  それでいろいろな考え方がございまして、政府の税制調査会でもずいぶん長い間、もう十年近く御議論願っているわけですが、税制の主要な機能というものをどう考えるかということに帰着するのであろうと思います。税制の主要な機能は、これはもう釈迦に説法で大変恐縮でございますが、公共部門への資源の配分ということが基本であろうかと思います。公共部門にどれだけの機能を持たせ、国民の個人ないし法人の所得からどれだけをそれに寄与していただくかということがまさに税制の主要な機能そのものでございますから、そこが景気調整機能によってかえってぐらぐらさせられるのは非常に問題が多いのじゃないか。それから、減税は容易であるけれども増税はむずかしい。景気調整機能ということでありますならば、いわゆる上下対称性というのを確保していかなければならないわけでございますけれども、世界じゅうの財政、税制の実践の結果によりますと、やはり上下対称性というのを確保することは非常にむずかしいということも一つ問題であろうかと思います。  そういうことがございまして結局、いまのような財政状況のもとでは、財政の均衡を回復するということが当面の急務なんで、こういう財政の、不均衡を放置しておいて経済全体がよくなるということはないであろう。さらには、それがかえって将来に向かっての投資というものを弱め、それによって雇用回復というものをおくらせる、そういう認識から、中期答申でもそうでございますが、五十四年度税制改正答申の中にも、冒頭そういう議論がたくさん書いてございまして、景気調整機能について税制が議論するよりも、当面は財政の均衡回復、それを長期的な税制のあり方として進めていくべきではないかという認識となっておるわけでございます。
  61. 坂口力

    坂口委員 いまおっしゃいますように、当面の問題といたしましては、現状のアンバランスを回復することが先決問題であることは私も認めますけれども、しかし一方において増税の問題につきましては、ただ当面の問題ではなしに、中長期的展望の中で考えられているわけでありまして、そういうふうな意味からいきますと、やはり景気調整機能ということにつきましても、当面の問題は当面の問題として、そしてそれを回復してくる中長期的な展望の中では、やはりともに車の両輪として考えられていくべき問題ではないかと思うわけであります。したがいまして、その点をあえて御指摘を申し上げたわけであります。  今回の租税特別措置の改正案の中で若干関係があるかなと思うのは、投資促進税の問題が若干関係ありとするならばあると思うわけでありますけれども、私はこの問題にいたしましても、現在は設備投資というものが非常におくれておりますから、設備投資の促進という役目の議論がここに出てきているわけでございますけれども、逆に今度はまた景気が非常に進み過ぎた場合には、これまた逆の場合も起こってくるわけでありますので、こういう設備投資に対する特別措置というような問題は、悪いときにはそれを助けるけれども、今度はまた余りよくなり過ぎたときにはこれを抑えるという働きもなければならぬと思うわけであります。そういった意味で、今後検討をさらに加えていくべき問題の一つではなかろうかと考えておりますが、具体的な問題も含めてもう少しつけ加えていただくことがありましたら、ひとつこの際お話を承っておきたいと思います。後ほど大臣の方の御意見も承ります。
  62. 高橋元

    高橋(元)政府委員 本年御審議をお願いいたしております産業構造転換投資促進税制と申しますのは、昨年の投資税額控除にかえて講ずるわけでございます。  その考え方は、構造不況業種とかそれに伴う雇用の問題というものに総需要管理政策で対応するにはもう限界が来てしまった。それで、このまま従前のように経済全体を財政をもって刺激する、財政の諸般の政策手段の中で税制をそれに動員するということでは、今後長きにわたって日本経済なり日本国民生活に悪い影響がある。それが財政の破綻ということだけでございませんで、金利が非常に高騰するとか産業資金の供給の円滑を欠くという意味で金融市場にも混乱を及ぼし、それによって民間の経済、民間の雇用というものが非常に悪いポジションに追い込まれていくということから、ことしの税制改正の中では、先生から先ほど来お話のございますように、景気浮揚を図るために税制を手段として用いるという考え方ではないわけでございまして、産業構造転換投資促進税制は、構造不況業種、つまり業種間の不均衡、そういうことから起こってまいります雇用問題ということにどう対処していくかという構造問題としてあらわれているわけでございますから、したがいまして本年の租税特別措置の中でそういう意味では、経済が好況になりまして、それによって構造不況業種から他の部門への転換が円滑に行われる、または転換の必要量が減っていくということでありますれば、税制の利用が減るということであろうと思っておりますし、これによって経済全般を過度に刺激するということにはならないのじゃないかという考え方をもって御提案を申し上げ、御審議をいただいておるわけであります。
  63. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 ことしの特別措置を貫く一つ考え方は、やはり財政再建、このままでほうっておくわけにまいりません。財政の再建は、税だけの問題ではございません、歳出全般にメスを入れなきゃならぬことはもちろんでございまするけれども、それにいたしましても、税の面でできるだけ洗い直しをやってみたいということで、それを基本に考えております。しかし、坂口さんも御指摘のございましたように、やはり景気調整機能ということにつきましては十分これは配慮しなきゃいかぬことは当然でございます。特に、今日雇用の問題が大きくクローズアップしてまいっておりまするから、いたずらに経済界に不安動揺を与えることだけが、私は税制でそういうことになったんじゃこれは大変なことだというふうに考えておる次第でございます。  まあいまお取り上げになりました産業転換投資促進税制を今度新たに入れましたのも一つ考え方でございますが、同時に、各党からいろんな御提案がございました。たとえば法人税の税率をもう少し上げたらどうだとか、土地再評価税というのですか、法人がたくさんの遊休土地を持っておるからうんと高い再評価をやって税金を取ったらどうだとか、あるいは引当金、準備金について徹底的に洗い直せとかいうようないろんな御提案がございますが、やはり企業はそれなりに引当金、準備金等の現行税制を頭に描いて企業経営の運営をやっておるわけでございますから、あまり大きなショックを与えて経済が動かぬようになったのじゃこれは大変なことでございます。しかし、時勢にそぐわないものもありまするから、それは漸次締めるような方向で行こうというのが今回の特別措置考え方とお考えいただいたら結構でございます。
  64. 坂口力

    坂口委員 景気調整機能につきましても、それぞれまた考え方も恐らく異なるだろうと思います。このことにつきまして具体的な問題はさておき、そういう考え方をもう少し今後税制問題を考えます場合に煮詰めていく必要があるのではないかということを申し上げたわけでございます。  具体的な問題でございますが、今回租税特別措置法の改正案の中に出ておりますものの中で、いままで私どもが何度か指摘をしてまいりましたものもかなりございます。その中で前進しておるものもございますし、それから全然変わってないものもあるわけであります。前進しておる方は言わなくてもいいわけでございますので、変わってないものだけ申し上げておきたいと思います。  一つは、何回か私この委員会でやらせていただきました老齢者年金控除額の問題でございます。  これは三、四回この委員会でやらせていただきまして、去年の予算委員会に端を発しましてから前大蔵大臣にも三回ほど実は申しまして、主税局長にも何回か御答弁をいただきました。かなりエキサイトした場面もあったわけでございますけれども、さて、今回ふたをあけてみますと全然変わらずで、長い間ここで議論をしたことがうたかたのごとく消えているわけでございます。また、それが一年間延期されているのかと思いましたら、御丁寧に二年間延長をしていただいているわけでございまして、はなはだ不本意でございます。わが党に対する挑戦かなという感じさえ受けるわけでございまして、もう一度ここに改めて提案をし、そしてこういうふうになった経緯についてはやはり一言お聞きをしておく必要があると思いましたので、まず最初に申し上げるわけでありますけれども、しかしいままでと同じような答弁を聞いておりましても何にもならぬわけでありまして、前回のときにもいろいろお話を聞きましたが、この年金税について、もう税金を取るなというようなことを言っているわけではなくて、やむを得ないから控除額を引き上げるべきだ。昭和五十年にそのときの平均をとって決められたわけでありますから、それから貨幣価値も変わってきておりますので、もう五十四年には何としてもこれは変えるべきである。今年の十二月三十一日まで現状が続くわけでございますから、それからさらに二年ということになりますと五十六年いっぱい変わらないということになるわけでありまして、現状におきましても七十八万というのが大体百十万ぐらいの貨幣価値になっているはずでありますので、この点についてはぜひ改革を加えるべきだということを主張したわけであります。しかしながら、これは変えられなかったわけでありまして、その辺のところのお話を、時間の都合もありますので、ひとつ簡潔にお話をいただきたい。
  65. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昨年の春と秋と二回、坂口委員から老齢者年金特別控除制度についての御所見を承りまして、私どもといたしましても、政府の税制調査会に先生の御趣旨を御報告して御審議を願ったわけです。その際、私ども及び政府の税制調査会での御議論というものを御紹介いたしますと、老齢者が年金を受けておられます場合に、それから控除される金額というのは老齢者年金特別控除に限りませんので、たとえば給与所得控除もございましょうし、これは五十万以上ございます。それから配偶者控除、基礎控除、また御本人が老年者でございますから老年者控除というようなものも働いてまいるわけでございます。そうなりますと、老人配偶者がおありの場合には、これも昨年来申し上げておるわけですが、年金受給者の税金がかからないいわゆる課税最低限と申しますのは、二百三十万円になるわけでございます。  問題は、七十八万円をさらにふやすべきであるという御提案は、配偶者があって老年であられるところの年金受給者が二百三十万を超えて年金収入がおありの場合、または他の事業からの収入がおありの場合ということになります。それはやはり老齢者について、年金だけが所得であるという方についていろいろ担税力の減殺要因というものは考えるといたしましても、通常の給与所得者が夫婦で暮らしておられる場合は百十三万から税金を払っていただいておるわけで、そういうこととの関連から申しますと、上積みの所得がさらにおありの場合に働いていく老齢者年金控除を積み上げていくということは、やはり課税のバランスということから考えますといかがなものかという意見が非常に強うございます。  それからもう一つは、さらに将来にわたっての老齢者年金の受給者の数がふえてまいるということも一つ問題があるわけでございます。それはいますぐの議論ではないわけでございますけれども、そういう場合に年金についてどういうふうに負担をお願いをするか。これは給与所得でございますから、しかもその掛金は全額、掛けた場合の所得税から控除されているわけでございますから、そういう払う方、もらう方両方についての年金税制全体の広範な問題の一環ではございましょうけれども、当面課税のバランスということから考えますと、年金だけで所得を得ておられる方については二百三十万まで課税最低限が働くとすれば、まずまずこれによって税金を納めていただく必要はないので、他の事業所得、資産所得のおありの場合に、上積みの事業所得、資産所得の方の税負担を軽減するという形でしか働いてこないわけでございますから、したがいまして今回は、税制調査会でいろいろ御審議を願って二年間の租税特別措置の延長はいたしましたけれども、御提案のような七十八万円をさらに増額するということについては踏み切ることができなかったわけでございますので、御理解をいただければ幸いでございます。
  66. 坂口力

    坂口委員 これは理解できない。非常に長く説明していただくところは、大蔵省としてもそれだけ説明を要するほど心にひっかかるものがあるということだろうと思うわけでありまして、これは老年者の年金特別控除制度によって七十八万円までは非課税とされているわけでありますが、この控除額は御承知のとおり、昭和五十年の標準的な年金額を基準として設定されたものであります。五十年の標準的な年金額を基準にして、その当時の貨幣価値でこれは決定されたものでありますから、五十四年のしかもことしの末になるわけでありますから、さらにこれは現在とはまた変わるわけでありますけれども、その間、約四年間あるわけでありますから、これはかなりな情勢変化を来すことは事実であります。ですから、その辺のところをよくしんしゃくすれば、どうしてもここに改革を加えなければならないことは、理屈の上からいきましてもこれは当然でございます。  いまいろいろ数字を挙げられましたけれども、それは標準世帯で見るのか、あるいは夫婦で見るのか、一人で見るのか、それによりましていろいろ数字は変わってくるわけでありまして、大蔵省が一番説明するのに御都合のいい人数で、一番都合のいい数字を並べられましても、それはいただけないわけであります。これは厚生省等も、私が言いましたようなことにつきましては毎年主張しているところでありまして、私は、これは厚生省の主張の方が正しいと考えている一人でございます。しかし、ここでさらに答弁をいただきましても、大体同じような答弁であろうと思いますので、あえてきょうはもうこれ以上申しませんが、今後なおかつ検討を続けていただきたいということをお願いを申し上げておきたいと思います。  続きまして、身体障害者雇用問題につきまして触れておきたいと思います。  今回の税制改正の中におきましても、障害者を雇用する場合の機械等の割増償却というものを二年間延長するということが決められております。このことにつきましては、それなりに適切な措置であろうかと思いますけれども、身体障害者をたとえば会社の中で半数以上雇われるような企業があっちこっち出てきたわけでございますけれども、最近、そういうような会社がふえてこない、むしろ減ってきている現状にあるのではないかと私ども考えておるわけでございます。こういう非常に雇用が不安定で、そして失業者の多いときでありますから、身体障害者の皆さん方が特に働く場所がないことは、これはもう想像以上であろうと思うわけでございまして、そのことを考えますときに、特に身体障害者の方をあるパーセント以上お雇いになりますような企業に対しましては、もう少し何らかの措置をしてしかるべきではないかということでございまして、このことにつきましても、私、何度か指摘してきたところでございます。福田前総理が大蔵大臣をしておみえになるときでございましたか、今回のこの減価償却の問題に手をつけられまして、これで一遍二、三年様子を見たい、そしてこれによって効果が上がらなければ次のことを考えたい、こういう答弁をされたことを記憶いたしております。この償却制度ができましてから、ここで四、五年たつのではないかと思いますけれども、社会情勢もありますけれども、私はこれが身体障害者の雇用を助けるという意味では余り役立っていない、もう少し何らかの措置が必要なのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。  まず、労働省の方お越しいただいていると思いますので、現状の数字等ございましたら、先にお聞きをしておきたいと思います。
  67. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 先生御承知のとおり、身体障害者の雇用につきましては、民間企業においては一・五%の雇用率が義務づけられております。その達成状況を毎年六月一日現在で報告を求めております。それによりますと、昭和五十二年の六月一日現在では実際の雇用率は一・五%に対して一・〇九%でございまして、それが昨年の六月一日現在では一・一一%、若干ふえておりますが、ほぼ横ばいの状況で、現下の厳しい雇用失業情勢の中で私ども行政的に努力をいたしておりますが、なかなか雇用が伸びていないといったような状況にございます。
  68. 坂口力

    坂口委員 再度お聞きをしておきたいと思いますが、その程度につきましては身体障害者の中で等級別になっておりますか、それがもしもわかりましたら教えていただきたい。
  69. 田淵孝輔

    ○田淵説明員 障害等級一、二級は重度と申しておりますが、重度障害者については一人雇用すれば二人にカウントするというようなことで、重度障害者の雇用をより図るシステムにしておりますけれども、実際は重度の障害者の雇用は非常に困難な状況にございまして、数は比較的少のうございます。
  70. 坂口力

    坂口委員 障害者もいろいろでございまして、特に重度の方々についてはなかなか雇用の機会のないのが現状であろうと思います。  それで私どもは、身体障害者を半数以上お雇いになっておりますような経営者の皆さん方ともよくお話をするわけでございますけれども、やはり現状において、この競争の激しい中で障害者の皆さん方を半数以上雇用をして、そして経営的に成り立たせていくのは非常に困難を伴う、こういう経済状況下で、経営努力を一生懸命やっているけれども、しかしそれにも限度がある、なかなかむずかしい、われわれのいわゆるボランティア精神だけでは支え切れないものがある、こういうお話を再三伺うわけでございます。しかし、そういうふうに現在おやりいただいております皆さん方は、そういうむずかしい経済状況の中にあるにもかかわらず、なおかつ一生懸命御努力をいただいているわけでありまして、そのことに対して私どもは心から敬意を表するわけでございますが、しかしさりとて、そういう皆さん方が自主的におやりをいただいているからといってそれだけに頼って知らないふりをしているわけにはいかない。やはり政治の場におきましても、この身体障害者の雇用対策について考え、そしてまた、現在努力をしていただいておる経営者の皆さん方に対してもある程度報いる必要があるのではないかというふうに、私はいままで主張してきたわけでございます。そういうふうな意味で私は、まあいろいろ方法はあると思うのですが、これは大蔵省の方ももう一度検討をするときに来ているのではないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  71. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いまお示しの事柄につきまして私ども、障害者の雇用を促進していくという政策目的は非常に重視をいたしておるわけであります。そこで四十八年にこの身体障害者を多数雇用する企業の割増償却の制度を設定いたしまして、その後現在に至るまで、これにつきまして雇用割合が当初三〇%でありましたものを五十一年に二〇%に下げたわけでございます。したがって、身障者を二割以上雇われた方には割増償却の適用があるということにいたしております。それから割増償却の割合も、現在四分の一でございますが、五十三年に建物三分の一ということにいたしまして、割増償却のメリットを大きくしておるわけでございます。  そういうことで、税制上はかなりあれをいたしておるつもりでございますが、この制度は、身体障害者を多数お雇いになる場合には、工場のレイアウトとか、それから身体障害者の方でも安全に御使用になれる機械の設置とか改良とか、そういうことにかかり増しの設備投資が必要でありましょう、その設備投資を割増し償却によって軽減をしてまいるという制度でございますから、したがいまして、身体障害者を雇用される場合、さらに特定重度障害者をたくさん雇っていかれるという場合にどういう財政上の助成をいたすかというと、それはいま坂口委員お示しのようなケースにつきましては、恐らく歳出の問題であろうかというふうに考えるわけであります。本年の予算で特定重度身体障害者等雇用管理助成金というものが新設されまして、年額百二十万円、二年間事業主に対して助成金を支給するということで、特定重度障害者の方の五千人の雇用増というのを見込んでおるわけでございます。  二割以上身体障害者を雇用される場合には、割増償却が四分の一であり、建物三分の一でございますが、五割になればさらにそれがふえていくというような、税制上いろいろ対応していくのも御提案の一つのお考えとは思いますけれども、私どもは全体の身体障害者対策として税制を活用いたしますのは、租税特別措置を非常に整理しております状況の中でむしろ、四十八年以来この制度を拡充してきておるわけでございますから、これはこれとして継続してその成り行きを見守っていくということであろうかと思います。今回導入されました歳出面の措置というものとあわせて、身体障害者の雇用問題に対してさらに将来の展望を持ちたいというふうに考えておる次第でございます。
  72. 坂口力

    坂口委員 そういういろいろの処置のあることはよく存じておりますけれども、現在の処置がかなり前向きのものであるかどうか、そしてまたこれで足りている状況であるかどうかということについての評価、これは分かれるところでございます。現実問題といたしまして、労働省からも先ほど数字が発表になりましたけれども、少なくともパーセントを有意に上げる状況にはなっていない。これはこの税制だけが関係しているわけではなくて、いろいろもろもろの状況がありますから、この税制だけに雇用のパーセントをかこつけるのはこれは酷ではございますけれども、なかなか現在までの減価償却ぐらいでは十分に機能しないのではないかというふうな気がするわけでございます。したがいまして、四十八年当時に比べますと若干前進はいたしておりますけれども、この減価償却だけでは限度があるというふうに思います。  身体障害者を雇用いたしますときに、そして最初に企業を開始いたしますときには、やはり機械器具等も一つ一つその人々に合った形でつくらなければなりませんしいたしますから、設備投資というような面におきましても、普通と違いまして非常に金がかかるわけであります。また、全体の工場の設備その他を見ましても、身体障害者に合うようにいろいろ工夫をしなければなりませんから、そこに金がかかることもこれは道理でありまして、そのために減価償却ということが役立つことは私も認めますけれども、それだけではなしに、いわゆる企業の生産なら生産が軌道に乗った後においても、なおかつ生産高その他におきましては、ノーマルな人を雇っておりますのとはかなりな差が出ることは事実でございます。その辺のところをやっていこうと思いますと、身体障害者に非常に酷な給料を支給することによってその会社が生き抜くのか、それとも経営者がかなり負担をするか、二つに一つしかないわけであります。  現在、身体障害者に対する報酬を見ましても、非常に厳しい情勢にあるわけでございまして、その辺のところを考えますと、普通の企業経営におきましてももう少し何らかの方法が必要ではないか。したがいまして私は前に、たとえば法人税その他について何か考えられないかということを申しましたら大蔵省の方は、そういうことは税制上なじまない、こうおっしゃるわけであります。なじむのがどういうことなのか、なじまないのがどういうことなのか、私もよくわかりません。わかりませんが、なじむ、なじまないの問題ではなしに、少なくとも今後早急に検討課題に入れていくべき性質のことではないか、こういうふうに思いますが、大臣、御答弁をいただきたいと思います。
  73. 高橋元

    高橋(元)政府委員 大臣から御答弁のあります前に一言申し上げさせていただきますが、この割増償却の制度というのは、それぞれの企業が身体障害者をお雇いになってどういう初度投資をなさるか、それによってかなりメリットが変わってくるわけでございます。私の手元に数例ございますけれども、その中で拝見いたしておりましても、ある企業では、本来納付されるべき法人税額が九十三万円であるべきところ、四十八万円軽減になっておるというようなケースもございます。このケースは、お示しのように従業員総数の過半を身体障害者によっておられるという場合であります。こういう場合には、割増償却としてはかなりこれは効果を発揮しておるわけでございます。  企業規模が大きくなりますほどこういった軽減法人税額の割合が下がってまいる、これはもうやむを得ないことだと思いますが、かかり増しの経費について、さらに実際にかかっていく経費以上に経費を見てやれとか、それから本来収入があるものを、収入の一部を引いて所得から控除していくようにというような、坂口委員のお示しのことをせんじ詰めますとそういう税制上のテクニックになろうと思いますけれども、これはたびたび前任者、前々任者等からお答えを申し上げておると思いますけれども、そういう場合に収入をさらに減額し、経費をふやしてやるというようなことを税制でやるにはこれは限度がございます。そこで先ほど申し上げましたような、歳出面で雇用助成金ということで新しい制度が導入されたわけでございますから、財政上身体障害者の雇用対策というのを進めてまいるとしましても、その手段につきましてこれ以上税制で——私どもは十分毎年毎年特別措置の内容等につきまして、効果のあるものはふやし、効果のないものは減らしていくということで検討いたすわけでございますから、その一環として毎年検討の対象になることではもちろんございますけれども、一般的にいまお示しのような方法で対応することには、かなり困難な事情があるということをお答え申し上げておきたいと思います。
  74. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いま主税局長から申し上げたとおりでございまするけれども、身体障害者の雇用率がなかなか伸びないじゃないかという問題、これは私どもも重大な関心を持っております。ことしはそういうような意味から、特に財政的な措置も講じたわけでございます。まあ税だけで全部この問題を片づけるわけにいかぬことは、これは御承知のとおりでございます。特に身障者の職業訓練の問題やら職場内部におけるマネージの問題やら、いろいろな面からこの問題の改善を図っていかなければいかぬので、その総合的な一環として税制についてもこれからも十分見直しをいたしまするけれども、ことしのところはひとつこれで御勘弁いただきたいということでございまして、この問題につきましては、主税局長申し上げているとおり、常に見直しは進めてまいりたい。財政措置をある程度大幅にふやしました点だけでも、まあ政府のこの問題に対する取り組み方をひとつ御理解いただきたいと考える次第でございます。
  75. 坂口力

    坂口委員 それじゃ大臣、ことしもう一年この現状を見ていただいて、そしてなおかつ身体障害者の雇用が伸びないということになるならば、来年においては根本的に見直すということを約束なさいますか。
  76. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 いや問題は、伸びない原因が那辺にあるか、それは税制だけじゃないと私は思うのです。そこら辺もあわせて総合的にひとつ検討さしていただきたい、こういうふうに申し上げいるわけでございます。
  77. 坂口力

    坂口委員 よくわかっております。税制だけでないことは私もよくわかっておりますが、税制も含めてひとつ御検討をいただきたいと思います。  さてそれでは次に進ませていただきますが、社会保険診療報酬課税の問題につきましては、すでに私の方の同僚議員の貝沼君からも御質問をさせていただいたところでございますが、今回ここに改正案が示されました。この改正案につきまして、私の考えておりますことを二、三申し上げまして、そしてまた大蔵省の今後の御意見というものも聞かせていただきたいと思うわけでございます。  この社会保険診療報酬課税の問題は不公平税制の最たるものであるという発言が、大蔵省からもいままで出ておったわけでありまして、大蔵省がそういうふうな形でお取り組みになったこともよく存じておりますが、しかしその中で、私いつも不思議に思いますことは、この必要経費率というものについて大蔵省が余り確たる資料をお持ちになっていなかったことでございます。このことにつきましては、以前にも私質問をさせていただいたことがございますけれども、今回予算委員会におきまして、内科の場合必要経費率五二%、そして外科系統で五五%、産婦人科で六〇%という数字が示されまして、非常にアバウトな数字が示されたわけでございます。これだけ騒がれた問題でございますし、また今後さらに改正を加えていかなければならないわけでありますが、そのためには、やはり基礎的な資料だけはきちっと整えておかないと、さらに議論が煮詰まらない問題ではないかと思うわけでございます。     〔委員長退席、綿貫委員長代理着席〕  そういうふうな意味で、必要経費についての調査がいままでなぜもう少しはっきりできなかったのかということについてお伺いをしたいわけでありますが、これは大体、会計検査院等の調査もあるのでこれで十分だというふうにお考えになったためか、あるいは必要だとは思っていたけれども余裕がなかったのか、それとも医師会の協力が得られなかったからできなかったのか、いろいろあると思いますが、その辺はいかがでございますか。
  78. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いろいろの理由があるわけでございますけれども、私ども課税資料というのは、毎年税務の執行上得られる資料があるわけでございます。その中で経費率等も、それは私ども判定できる限りで把握して、連年それを見ておるわけでございますが、それをなぜ御公表申し上げられないかという点につきましてひとつお断り申し上げておきますと、白色申告、青色申告を通じて七二%の概算経費率が法定されておるものでございますから、したがいまして、実際にどれだけ経費がかかったかということの御申告がない、そのケースがほとんどと申しますか過半でございます。そうなりますと必然的に、青色申告者について経費の明細の記帳がある方について、それは私どもは集計ができますので、私どもそれを見ておるわけでございますが、経費の明細がなくて白色申告をしておられるという場合にはそれじゃどうだろうかということになりますと、これはもうそもそもわからないだろうと思います。いまの課税サイドからはわからない。そこで、いろいろ推定を重ねて調査の精度を上げるように私ども工夫をいたしておりまして、それによって課税資料から必要経費率が大体、会計検査院でこれは千六百何件でございますか、五十一年の申告によって社会保険診療報酬一千万円以上であってかつ青色の方ということでお集めになった、その結果が五二%でございますが、私どもがいま申し上げたようなことで課税資料からある程度の推定を加えまして、できるだけ客観的に必要経費率を把握しております結果とそれはほぼ一致をいたしております。そこで私どもは、五二%というものをもって経費率の平均であるというお答えをいたしておるわけでございます。  今後とも、お示しもございますし、診療報酬の課税制度についていろいろ勉強をもちろんいたしていかなければならないわけでございますから、そういう面で必要経費の内容及びそれの収入との関連について、さらに検討を深めていきたいというふうに考えております。
  79. 坂口力

    坂口委員 明らかに資料を出していただけないと、さらにそこにいろいろの疑惑も絡むわけでございまして、必要経費率のその数字が発表されるのであるならば、それの裏づけなるものはやはりある程度お示しをいただく必要があるのではないかと思うわけでございます。会計検査院の資料につきましては、社会党の佐藤議員から前にこの委員会におきましていろいろの指摘がございまして、その非常に不備な点も指摘をされたわけでございますが、ああいうふうな資料が一方にございますと、統計上変え得ないのではないかというような議論にもなり得るわけでございまして、もう少し統計上変え得る資料が大蔵省にあるのならば、やはりその平均数値だけを示さずに、その根拠なるものも同じに明示すべきではないか、こういうふうに思うわけでございます。  皆には示さないけれどもわれわれは持っているといういま御発言でございますが、前にここでお聞きしましたときには、会計検査院の数値がある、そして国税庁の方は私が聞きましたらないということであったわけでありますけれども国税庁がないものは私どももない、こういうお話でございましたけれども、きょうは、いやそうではなくて、われわれはやはり持っている、こういう発言でございますが、もしも大蔵省がその辺の数字をお持ちになっていて、そしてその平均値だけをお示しになっているというのであるならば、やはりその裏づけなるものについてはある程度明らかにしていただく必要があるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  それで、いま御指摘になりましたように白色の場合にはなかなか出にくい場面もあろうかと思いますが、しかし問題になっておりますのは白色のところであるわけでございますので、これも全国にアトランダムにピックアップをいたしまして調べようと思えば調べ得ることでありますので、その辺のところも、もしもあるのならばわれわれにお示しをいただきたいと思うわけでございます。  いま私が申し上げましたのは必要経費についてでございますが、この医療につきましては、私もう一つ標準経費という考え方があるというふうに思っております。これは税制はどうしても公平でなければならないことはもう言うまでもございません。税制の公平は最も必要なことでございますけれども、しかし、それによって医療水準が低下することがあってもまた困るわけでありまして、この税制の公平と医療水準の維持という二つの目的が達せられなければならない問題ではないかというふうに考えております。そういう意味で、税制の公平と医療水準を維持するということを考えました場合に、たとえば今回五二%という数字が出ましたので五二%を一応例にとりますと、五二%の必要経費であるということでそこに税制が施行される。そういたしますと、どういたしましても必要経費は五二%以内でおさめようという働きがそこに起こるであろうと思うわけでございます。しばらくいたしますと、必要経費はたとえば四八%なら四八%ぐらいであるというまた平均が出てくる可能性がございます。そうしますとまた、その四八%よりもさらに低い必要経費でやっていこうという働きが医療機関の中に起こることは否定できないと思います。そうしますと、この必要経費とそして現実とが悪循環を繰り返すということになる可能性もございまして、これが普通の会社でございますと、それで経営効果が成り立っておればいいわけでございますけれども、しかしながら、医療の場合には経営効果ではなくて、もう一つ医療効果がそこに要求されるわけでございます。この医療効果とそして必要経費の関係をどう見るかということは、今後のこの税制を考えていく上で非常に重要な点ではないかというふうに私は考えております。そういうふうな意味で私はきょう、平均必要経費というものに加えて、少なくとも最低限これくらいはなければならないという最低の必要経費、あるいは標準必要経費というふうに申し上げてもいいと思いますが、そういうものの考え方もやはりなければならないのではないかということを指摘をしたいわけでございます。  たとえば一例を申し上げますと、注射器及び注射針がございます。昔でございますと、この注射器や注射針は、毎日それを洗いまして、そしてまた煮沸消毒をいたしまして翌日また使う、針が切れなくなったら次にかえる、こういうことを繰り返していたわけでございますけれども、最近のように肝炎等の原因を探っていきますときに、そういう一人の人の体の中に刺したあるいは血液を抜いた、そういう注射器でもってまたほかの人の体にそれを刺すということは、いかに煮沸をいたしましても消毒をいたしましてもそのビールスは死なないということになっておりまして、これはやはり一人一人使い捨ての注射器または注射針を使うべきだということになってきておることはもう御承知のとおりでございます。しかしながらそれをやらずに、いままでと同じように注射器や注射針をそのまま使いましても、これはやっていけないことはないわけでございまして、必要経費を少なく済まそうと思いますと、いままでと同じように注射器や注射針を消毒をいたしまして何日間も何回も使うということにした方が、これは必要経費はうんと安くつくわけでございます、これは一例でございますけれども。しかしそういうことをやっておりますと、これは医療の水準というものをかなり下げるわけでございまして、そのことによって多くの血清肝炎その他の肝炎患者をつくるということになりかねないという一面がございます。  でありますから、必要経費というものは、現在の必要経費がこうであるからそれでよかれというわけにはいかないのではないか。もし必要経費を非常に下げている医療機関があるといたしましたら、その医療機関についてはやはりその必要経費を上げてもらうようにしなければならない、そのことを医療機関にお願いをしなければならないということになるのではないかと思うわけであります。私はよくわかりませんけれども、たとえば平均の必要経費としては五二%である、しかし、いろいろ厚生省その他医療機関等で検討して、内科なら内科で一日五十人なら五十人の外来患者があるところの必要経費というものを計算したら、たとえば看護婦さんなら看護婦さんを何人置かなければならないとか、あるいは薬代にはこれだけ使わなければならないとか、あるいは光熱費はこれだけとかいろいろ積み重ねて、やはり必要な最低限というものを考えたらやはり六二%なら六二%は要るということになるのであるならば、私は五二%で税制を行うということよりも、その低い人についてはやはり医療機関に必要経費を上げてもらうことを行わないといけないのではないか。そのときにこの必要経費というものから、いわゆる税制の公平とそして医療水準をある程度維持するということの双方がそこに達成されるのではないか、こういうふうに私は思うわけでございます。これは私の考え方でございますけれども、このことについて、厚生省の方にもお越しをいただいておりますので、何か御意見があれば承りたいと思いますし、大臣からもお伺いをしたいと思います。
  80. 森幸男

    ○森説明員 厚生省でございますが、いま先生の必要なあるいは標準的な経費というような考え方で適正な医療を確保していこうというような御指摘というのは、私どもにとりましても非常に有益な御意見として今後いろいろ勉強させていただきたいと思っておりますが、ただ、この必要経費ということを考えます場合に、実際の医療内容のほかにいろいろな要件、たとえばそこの医療機関の建物だとか設備の償却状況だとか、あるいは要員の年齢構成だとか、あるいは医薬品の購入姿勢であるとか、そういうようなことでいろいろな影響が出てくるものではないだろうか。ですからその意味では、経費だけで医療内容の是非について判断をする、あるいは指導するということには困難があるのではないかというふうに考えておりますけれども、この辺はまた私どもさらに検討させていただきたいと思います。
  81. 高橋元

    高橋(元)政府委員 お答えに入ります前に、先ほど税務統計から把握しているような必要経費についてできるだけ資料を整備して当委員会にお示しするようにというお話がございました。私どもできるだけ御期待にこたえるようにしたいと思いますが、ただ、先ほどもお断り申し上げましたように、これは青色申告者の抽出調査でございます。特例の適用を受けておる方、受けておられない方、両方含んでおりますので、そういう意味ではサンプルの誤差というのがあるわけでございます。母集団よりは、どちらかと言えば経費の内容がはっきりしているだけに、ある程度経費率が低く示されておるのかもしれませんという感じがいたします。そこで私どもは、いろいろ推定について技術的な改良を加えて今日に至っておるわけですが、当委員会にいままでお示ししなかったについては、これが税務から見た医療の実態だというふうに即断されますと、やはり九万何千のお医者さんでございますから、その中のサンプルの数からして、しかもそのサンプル誤差が明らかにあるということを考えてやっておるわけでございますから、誤解を生じてもということで、さらに検討を進めさせていただいてできるだけ世の中の誤解を招かない形でお示しを申し上げるように努力したいと思います。  それから、ただいまお話のありました五二%という実態に近い概算経費率を使った場合に、それによって医療の内容、水準が下がってしまうのではないかということでございますが、白色で七二%を使っておられる方、それから青色で実額経費をやっておられる方、経費の内容はいろいろ違うと思いますけれども、医療の内容、水準についてどの程度の差がありますのか、私ども厚生省の方からいろいろお話を伺ってやっていきたいとは思いますが、私ども素人なりに考えますと、お医者さんが医の倫理に従って診医療活動を行っておる限り、そこに余り大きな医療水準の差というものがないのではないかなというような考え方を持っております。  税務でございますから、いま仰せのようなことでございますと、標準的な実額経費率もしくは平均的な概算実額経費率というものを決めて、それに若干のアローアンスを付すべきだというお考えかとも思いますけれども、そこはなかなかむずかしいのじゃないかと思います。社会保険の診療報酬の収入金額の多い階層については、非常に経費が高くなってまいりまして、これは個人開業医の場合でございますけれども、やはり青色の実額課税と七二%の租税特別措置法二十六条の特例の適用を受けないという方がかなりおありのようでございます。したがって、五二%に抑えたらさらに全部が四八に下げ、四八に下げたら四六に下げと、そういうアキレスとカメのような形でどんどん医療の中身が下がっていくというような懸念をというよりはむしろ、五千万円以上の社会保険収入のある方については青色の実額課税の方に移っていかれるのではないか、またそういうことを期待しておるわけでございます。これは医療の内容の問題でございますし、事柄は生命、身体の安全に関することでございますから、さらに責任の厚生省ともいろいろ細かい御相談はしたいと思いますけれども、私ども考え方にいたしますれば、五千万以上という相当の規模であり、相当の人手も期待しても差し支えないというような方については、五二%という概算経費がもし妥当でないならば、青色申告で実額に移っていかれるということを制度の基本に考えておるわけでございます。
  82. 坂口力

    坂口委員 私は、お断りをしておきたいと思いますが、たとえば五二%がいけないとかあるいは六二%がいけないとかというようなことを申し上げているわけではないのでありまして、基本的な物の考え方について言っているわけでございます。私自身も現状がどうなのかというその数字を持ち合わせているわけではございませんで、大蔵省のお示しにならぬものが私どもにあるはずがまたないわけでありますので、そのことについて私はいま触れているわけではなくて、基本的な物の考え方についていま申し上げたわけでございます。  厚生省の方も、その物の考え方に立って今後いろいろ検討をしていただきたいと思うわけでございます。厚生省が御指摘になりますように、医療の水準というのは必要経費あるいは必要経費率だけで決定されるものでないことは私もよくわかります。がしかし、これも重要な要件の一つではないかと思うわけでございまして、医療内容というのは複雑でございますからそう簡単なものではないことは私もわかりますけれども、しかし必要経費をどれだけかけているかということは、医療水準の中の一つの大きな柱になるべき問題ではないかというふうに思うわけでございます。そういった意味でひとつ検討をしていただきたいと思います。  大臣も、非常に新しい角度からの議論でもございますので、ここで即答をしていただくのもはなはだむずかしい面もあるかとも思いますけれども、しかし医療の本質を考えましたときに、税制の公平とその水準の双方を維持しなければならない問題でございますので、今後大蔵省におきましても、そういう物の見方も取り入れてひとつ検討をしていただきたいということを申し上げたいと思うわけでございます。何かございましたらひとつ……。
  83. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 坂口さんの御指摘の医療の水準をちゃんと維持するように配慮しなければいかぬぞという御指摘、全くそのとおりに思います。  五千万以上のような方は大体標準の五二%での概算経費率でいいと思うのでございますけれども、それでもこれじゃとてもかなわぬという方は、いまも主税局長も言っておりますように、青色をやっておる方も相当多いようでございます。それは青色でぜひおやりくださいというように国税庁、大蔵省の立場としてもこれから推進してまいりたいと考えております。  それから五千万円未満と申しますか、そういうような方々に対しましては、前々から申しておりますように、医療の公共性というか、それはあなたのおっしゃるような問題も含めて、ある程度特別の控除を認めなければとてもやっていけない。とにかくいまの水準だけは維持してくださいよという意味においての特別控除を含めてこの制度をつくった、こういうふうにお考えいただいて結構だと思います。
  84. 坂口力

    坂口委員 一人法人の問題は先日もこの委員会でお話が出まして、今後もまた議論もあるようでございますが、簡単にだけ私も触れておきたいと思いますが、やはり個人の所得というものとそれから医療経営というものと分離して考えるということは重要なことではなかろうかと思います。そういう意味で、いわゆる医療の法人化の問題が多くいままでも議論をされてまいりましたし、予算委員会等でも取り上げられているようでございます。一人法人というのは、しかしそうは言いますもののなかなか改正されてきていないわけでございまして、この辺の一人法人がなぜむずかしいのかということについて、厚生省の方がお考えになっていることを概略簡潔で結構でございますからひとつお答えをいただきたいと思います。
  85. 森幸男

    ○森説明員 いま先生御指摘の一人法人の問題でございますが、先生御承知のように現在の医療法におきましては、病院または医師もしくは歯科医師が常時三人以上いる診療所について医療法人の道を開いておるわけでございます。これはこういうような制度になっておりますのは、病院等の開設のためにいろいろ必要な資金を集めるということを容易にするという目的でこの医療法人制度が創設されたという経緯にかんがみましても、小規模な診療所の場合には法人化の必要性というものが必ずしもそう強いものではないのではないかというような背景もございまして、法人化というのは今日まで一人法人については認められていなかったというようなことでございます。
  86. 坂口力

    坂口委員 いま述べていただいたような理由だけならば、一人法人の認められないという理由は非常に希薄であって、私はこれはもう少し前向きに検討されてしかるべき問題ではないかと思います。もっとほかに重要な、これに対してそれではいけないのだという意見があるのならばこれはまた話は別になりますけれども、いま御指摘いただいたようなことだけがその主な理由であるのならば、私は一人法人制というものについてもより検討をしてもらわなければならない問題ではないかと思います。この一人法人制が問題になりましたときに、それはそれなりに、相続税の問題でございますとかいろいろな問題がまた問題になることも事実でございますけれども、そういうそこから派生します問題はさておきまして、やはり医療というものはもう少し公的な内容でございますから、それにふさわしい内容に整えていく必要がありはしないかという意味指摘をしているわけでございます。  この法人問題につきましては、一人法人の問題と、それからすでに医療法人になっておりますところの医療法人の相続税の問題と、これは常に繰り返されてきている問題でございますが、私は今後のこの医療と税制のあり方、この双方から見まして、これらの問題もひとつひっくるめて一遍考え直して検討するときに来ているのではないか。たとえば病院の場合に、同じ診療を行い同じ医療を行っておりましても、医療法人と特別医療法人とは税率も違いますし、また公的な機関と私立の機関とがあるわけでございます。しかしながら、そのやります内容につきましては全く同じことがそこに要求されるわけでありますし、また同じでなければぐあいが悪いわけであります。その辺のところにつきましても今後検討を加えないと、医療の中にひずみを固定化させる結果になるのではないかと思いますが、その辺のことについて大臣の所信を伺って、最後にしたいと思います。
  87. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いま医療に対する課税の方法といたしましては、開業医の場合でございますけれども、医業を営んでおられる方が個人であるか法人であるかということに従いまして、個人であれば所得税の課税、法人であれば法人税の課税をお願いしておるわけでございますが、中には、個人で特別措置法でいいますところのみなし法人課税を選択される方が若干ございます。しかし法人の場合に、医療法人の現行の医療法の規定をどうするかという問題がございましても、基礎法で法人と認められれば、これは法人税の課税をしていくということになるわけでございますが、その場合に、四〇%課税をする医療法人の系統と二三%課税をする特定医療法人の系統、さらに公益法人の医療保健業で二三%課税をする場合、その三つの場合がございます。  その場合に、二三%課税の公益法人とほぼ同じ内容の、たとえば、医療の診療費が低額であるとか、企業支配が及ばないとか、残余財産が出資者に戻ってこないとか、それから一定以上の経営規模といいますか医療保健の規模を備えておるとか、そういう方について特別措置法上特定医療法人制度を設けております。これは同じことをやっておるではないかとおっしゃれば同じ医療内容ということになるのかもしれませんけれども、医療費が低額であり、かつ現在の医業経営について出資者の支配が及ばず、それから相当程度以上の規模を備え、残余財産についても全くもとの出資者に戻ってこない、こういう非常に厳格な要件を付して公益法人に類似した課税をしておるわけでございますから、そこは公益法人課税と営利法人課税と二本立てで法人税制ができている以上、特定医療法人に全部の医療法人を持っていってしまうということはできないのではないかと思います。  先ほど来お示しのありますように、税制は所得に対して公平にかかるべきものだということを基本としながら、税制によって医療の内容が悪い方に乱されることのないようにというお示しでございます。私どももさように考えて今回特別措置法の改正を御提案申し上げておるわけでございますが、今後ともいろいろ勉強はしていかなければならないとは思いますけれども、基本にありますのは、やはり税の公平をどうやって確保していくかということでございますし、それに医業に関する特殊分野の問題でありますだけに、医業の運営が公益に従って行われるということをどういうふうに取り合わせたらいいかという工夫の問題であろうと思います。そういう観点から、今後とも社会経済の実態に即して勉強していきたいと考える次第でございます。
  88. 坂口力

    坂口委員 大臣に御答弁いただきます前にもう一言だけ申し上げておきたいと思いますが、医療法人に対する税制の問題につきましては、これも私、大分前になりますけれども、この大蔵委員会でやらせていただいたことがございます。ちょうどきょうお見えになります森議員が政務次官でありましたときにこの問題を取り上げまして、大蔵省の方でもいろいろ御検討いただいた経緯があるわけでございまして、税制の側からも見ますと、いま主税局長が御答弁になりましたようなことも一面から言えるわけでございますけれども、医療の側から見ました場合には、その規模等につきましても、特別医療法人だから特に大きいとか医療法人だから小さいとか、あるいはその内容について、特別医療法人だから特に充実しているとかあるいはしていないとかいうようなことは、いまのところなくなっているわけであります。その内容たるや全く差がないというのが現状ではないかと私は思います。なおかつ、そこに、その医療法人あるいは特別医療法人ができる法的な根拠によって、あるいはそのよって立ついろいろの条件だけによってそういう差をつくるということは、現実の医療の側から見ればやはりひずみをつくることになりはしないか、こういうふうに私は思うわけでございます。そのことをあえてもう一言つけ加えまして、終わりにしたいと思います。
  89. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 坂口さんが先ほど来御指摘の点は、大変古くてしかも解決のむずかしい問題と私どもも考えておるのでございます。ほったらかしにしておるわけではございませんけれども、主税局長先ほど来申しておりますように、大変厄介な問題でございまして、特に一人法人の問題は、実体法と申しますか基本法と申しますか、一人法人の医療法人化を認めるかどうかというその上に乗っかってこっちは課税をしなければいかぬ問題でございますので、前々から厚生省ともいろいろ議論をしておるような問題でございますが、解散した場合の財産の帰属がどうなるか、やはりこれは考えなければいかぬ問題でございますが、そういった問題もあわせてこれからも十分研究だけはさせていただきたいと考えます。
  90. 坂口力

    坂口委員 ありがとうございました。
  91. 綿貫民輔

    ○綿貫委員長代理 午後二時三十分に再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十七分休憩      ————◇—————     午後二時五十五分開議
  92. 加藤六月

    加藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き質疑を続行いたします。伊藤茂君。
  93. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 きょうも朝から御苦労さまでございます。大臣もお疲れだと思いますが、済みません。最初に大臣にちょっと大所高所のお話をお伺いしたいのです。  いままでの審議にございましたように、財政危機、一般消費税また税の不公平是正がどうか、国民世論はかつてないほど税に対する感覚が強まっているというときだと思います。ただしかし、税と国民と申しますか、税金と国民の意識といいますか、そういうものを考えますと、日本の場合には、典型的な市民民主革命というのがなかったせいですか、やはり明治以来、取る者と取られる者という構造は基本的に変わっていないというのが今日の状況ではないだろうか。やはり一つは、明治の租税制度から始まった歴史がそういうことにさせたのだろうと思いますし、ただこのままでいきますと、国民が社会のために、また自分の住んでいる地域のためにどう貢献をしていくのか、あるいは自分の支払った税金で社会がどうなっていくのか、あるいは自分の子供が安心して生きていけるのかという感覚を持たないで、取る取られるという形の税の意識というのは私は非常に大きな問題だと思います。そういう中での増税問題、いろいろな意味で私は政治のあり方として考えなければならない点が多いんじゃないだろうかという気が非常にいたします。  そういう面からいって、一般消費税の問題を見ましても、取る取られるという感覚の構造、そういう中で議論をされているということではないだろうか。税と国民、あるいは国民の参加、あるいは国民の意見を広く聞いてそういうことについての理解を求めていく、国民的な合意のもとに今後の税を執行していく、まあ税と民主主義と申しましょうか、そういう視点でのいままでとは違った、いままでのシステム以上に一つの何か新しい努力をしなければいけない。それがなければ、税に対する感覚も、あるいはまた財政危機に対する理解も生まれないということではないだろうかという気がいたします。特に大増税計画を担当する大臣として、いろいろとお考えになることも多いのじゃないかというふうに思いますが、その辺をどう考えて改革をしていくのかということをまず最初に所見をお聞かせください。
  94. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 伊藤さんのおっしゃるとおり、明治の維新というのは一種の革命ではございましたけれども、むしろ何というか、本当の意味の民主主義になりましたのは戦後のことでありまするけれども、それがおっつけられた民主主義でありましたために、自分の責任で自分のことをやらなければいかぬのだという物の考え方日本では戦後三十数年になったけれども育っておりません。地方は国に万事おんぶすればいいじゃないかという気持ち、国全体としてはどこかの国におんぶすれば何とかやってくれるだろうというきわめて安易な考え方で戦後長い間推移してまいりましたから、税につきましても全く同様の考え方が残っておると思うのでありまして、できれば安いにこしたことはない、しかし仕事はひとつお上でやってくれよ、この考え方が続く限りは、私は本当の意味での日本の民主主義はなかなか育たないと考えております。そういう意味で、恐らく最近ほどこの増税論議というものがやかましく取り上げられておる時代はないと思うのです。私はこれは一つの大きな前進だと思うのでございます。  たとえて申し上げますならば、これから一番問題になってきます福祉の問題でございますけれども、高福祉は求めるけれども負担はいやだよという意見はもう許されないとことんの時代まで来ておるわけでございまして、私どもも、新年度税制改正だけじゃございませんで、予算編成に当たりましては、極力中身をさらけ出して、こういう状態になっておりますよ、みんなでひとつ考えてくださいよ、私どももこれはどういう方向で片づけなければいかぬと考えておりますよということで、素材も提供しながら御意見を承り、何とかそれをまとめていきたいということで、いろいろな改正案をいま出しておるような次第でございます。
  95. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 大臣も非常に真剣にお考えになっているということはわかりましたが、そういう気持ちをどう具体化をしていくのかということだと思うのです。そういうようなことを考えますと、大臣を初め大蔵省の皆さん本当に有能な方々がそろっていらっしゃるわけですけれども、山の高いところから市民に向かって、説教と言っては大変失礼ですが、説明をするという姿勢ではなくて、やはり何か国民諸階層、国民とともに考えて山を登るといいますか、そういうみたいなあり方が具体的に国民の目に映ってくるというふうなことが大胆に必要なんではないだろうかという気がいたします。そうでないと、税と国民という意識は全然変わらない。これは国家として民主的でも近代的でもない形のままひずみがたまってしまうということになりかねないということではないだろうか。  そういう意味で言いますと、たとえば税調にしろ財政制度審議会にしろ、それぞれの活動がなされておりますが、税調の小倉さんはりっぱな方ですし、財政審の方はどうも日経連の会長が主にやっているということで私はいつも大分ひっかかるのですが、それはそれとして、従来のシステムのままやっていくというだけではなくて、ひとつここで国民に姿勢を示すというよりも、やはり国民みんなの参加で財政なり税を考えていくというふうなことを具体的になされる必要があるのではなかろうか。たとえば今国会が終わった後、また昨年と同じような形で税調の皆さんが一生懸命、大蔵省の皆さんがつくったシナリオの上と言っては失礼かもしれませんが、それの上に立って一般消費税の具体化の作業を進めていくというだけでは、そういうパターンの延長ではだめなんじゃないかというふうな気がいたします。ですから、システム全体について新しい発想を、しかもこの時期に具体化をするということが必要ではないかというふうに思いますが、先ほどのお気持ちの延長線でいかがでございましょう。
  96. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 御提言、これも十分尊重しながら、そういう線で何とかPRしてまいりたいと考えております。とにかく私どもとしましては、比較的いままで使う方に重点が置かれて国会審議されてきましたのが、今回は予算の歳出から歳入の問題から全面的にひとつ見直そうじゃないかという気持ちで各党がいろいろ御議論を賜り、貴重な御提言をいただいていることに対しまして、深く敬意をあらわし、また十分それぞれの皆さんの御意見を尊重しながらこれからやってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  97. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 続いて大臣だけに申し上げて恐縮ですが、率直に言って、新内閣になって今度の予算編成あるいは税問題、この経過を見ておりますと何かもう一つ、気持ちはあってもそういう具体化の方法が非常におくれているんじゃないかという気がいたします。たとえば私も衆議院で伯仲時代というときに国会に出させていただいて勉強さしていただいておりますが、特にそういう中で一昨年の修正があり、あのときには政府の方も与党の方も、予算編成の前段階には野党あるいはいろいろな代表の方々のお話を聞いて、またそういう議論などした上でやっていくんだというようなことの話がございました。去年は形ばかりということだったわけですが、何かそういうようなのがことしに入ってむしろ一歩後退しているんじゃないかという気がするわけです。それは、また今度の予算編成にしてもお役所のペースで進んでおるんではないかというような評論もなされております。私は、やはりそういう経過ではなくて、税問題、予算編成全部含めて前向きの改革の努力を示されるということが必要ではないかということを感ずるところです。一般論ですから御回答はもう結構です。  それで、議題に関連をいたしまして御質問させていただきたいと思いますが、その前にひとつ、いままで二、三話題にもなったようですが、この不公平税制の是正ということに関連をいたしまして、これは革新勢力だけではなくてさまざまなところからいろいろな議論が起こっている。私はそれ自体非常にいいことだと思います。ただ一つ関心を持ちましたのは、御承知の日本経済調査協議会、日経調ですか、「これからの税制と租税負担のあり方」というふうなレポートを出されております。明日また参考人でも来ていただくようですが、いろいろ細かい具体的な中身は別にして、財界の側あるいは経済界の側からも、この高度成長から低成長に移った経済条件の中で、税制はどうあるべきなのかあるいはまたこれからの税制の基本的な姿勢というものをどう考えるべきなのかということから始まっていろいろな議論の提言がなされております。その中で私、財界の方々から見てこういう提言が出ているんだなと思ってちょっと感銘深く読んだんですが、いわゆる河野委員会協力者氏名というなのを見ますと、新日鉄とか山一証券とか日本鋼管の会長さんとか、トップクラスの財界の指導的な方々がいらっしゃるわけですが、その内容を読んでみますと、非常に率直にまた大胆に今日の経済条件の中で税に対する態度の改革というものが求められているということが提起されております。  たとえばこの租税特別措置関係の面でも、法人税に関する当面の課題の中でこの租税特別措置の整理合理化が重要である。そしてまた、内部留保の充実、企業体質の強化、技術の振興などがその代表的な例であるけれども、それらは明らかに企業税制上優遇する結果となってきている。これからのことを考えた場合に大胆に見直しをする必要があるんじゃないか。経済社会環境が変化をすれば、当然に既存のものは再検討される必要がある。資本蓄積、内部留保の充実といったこれまで重視された政策目標のために税制を活用する時代から変わってきている。したがって、これらの目標に関連する各種の準備金とか特別償却制度などは廃止もしくは縮小すべきであるというふうな見解、それから医師優遇税制などにいたしましても、政府の方ではようやくここまでという気持ちが非常に強いようですが、速やかにその特例を撤廃する方向に踏み出すべきであるというふうなこととか、財界の立場からもそういう考え方を出されて非常に興味深く拝見をいたしました。  そういう面を考えますと、いま提案をされている今度の租税特別措置関係する問題、若干の改善は前と比較をしてあるわけですが、これらをさらに抜本的にやっていくというふうなことが、単に労働組合とか野党だけではなくて、財界の方からも強く出されている、時代の要請とされているというようなことではないだろうかというふうに思うわけでありますが、それらについての御所見をお伺いしたい。
  98. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 伊藤さんは若干の改正というか前進とおっしゃいますけれども、いままでのあれに比べれば相当の前進で、本当に改革の第一歩のメスを入れた、こういうふうに御理解いただきたいのです。何せ初年度ですから十分手が回らなかったことがある点は十分認めますけれども、今後ひとつ蛮勇をふるって財政再建のために全力を尽くしてまいりたい、かように考えております。
  99. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 それでは、提案されている内容の中で、今回取り上げられているものの中で二、三お伺いをしたいと思います。  一つは、特別償却関係をする問題であります。  今回幾つかの問題について特別償却の改廃といいますか取り扱いがなされております。それで、その中の主要な問題について、総括といいますか、いままでどういう貢献をしてきたのか、あるいは今回廃止することがどういう意味を持つのかというふうなことをお伺いをしたいわけであります。特に、たとえば民生関連設備特別償却とか、あるいは工場立地法に基づく認定を受けて云々というものとか、中小企業近代化促進法に基づく承認を受けて合併した場合の清算所得に係る課税の特例とかございます。何か聞くところによりますと、これらについても該当例が余りない、またほとんど利用例がなかったというようなことも御説明の中で伺うわけでありますが、そういう実態なども含め、あるいはまた通産省から持ち込まれる場合が多いんだと思いますが、こういうものをつくってきたことを含め、今回改廃をするものについて振り返ってどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  100. 高橋元

    高橋(元)政府委員 五十三年末、つまり御審議をお願いいたしております今度の特別措置法による改正をいたします前の現行の特別償却というのは、制度として四十本ございました。四十本の中で、五十四年度に期限が到来いたしますものが十八、期限のついていないものが八つ、期限の未到来のものが十四というのが、企業関係の特別措置の中の特別償却でございます。  期限の到来いたします十八のものについて厳格な検討を加えた結果、十四について見直しをいたしました。それから、期限のないものについて一件見直しをいたしましたほか、期限未到来のものの四件についても修正をしたということでございまして、全体として四十件の中で十九件見直しをいたしたというのが、ただいま御提案申し上げておる今度の特別措置の中の特別償却の整理合理化の概況でございます。  それで、考え方がどうかという御質問でございますが、これは五十一年以降、毎度申し上げておることの繰り返しになって恐縮でございますが、五十二、五十三年と適用期限の到来するものについて中心として見直しを行ってまいりましたが、政策目的と税制の基本的原則との調和を図るに際して従来以上に課税の公平を重視する、個々の措置の実態に即して今後とも一層その整理合理化に努めるべきである、こういう基本的な考え方で対象設備について個別に見直しを行ったわけでございます。  お示しのように、民生関連設備特別償却、これは初年度五分の一であったわけでございますが、これを廃止する、それから工場立地法による事業転換施設の償却の特例、これにつきましても廃止をいたすということで御審議をお願いいたしておるわけでございますが、民生関連設備は、生産性向上のための合理化設備としてかなり長い間、昔の合理化機械以来認めてまいったわけでございますが、たとえばプレハブ住宅にいたしましても、それから乳製品製造業にいたしましても卸、小売にいたしましても、対象となっております民生関連設備の機械その他の設備でございますが、いずれもかなり普及をしてまいりまして、特別償却によってその設備の取得を奨励するというような意味が非常に薄くなったということでございますので、たとえばプレハブの中で木製枠パネル連続製造装置とか鋼材自動加工装置、鋼製枠パネル連続製造装置、コンクリートパネル製造装置、それからいまスーパー等で主として使われております販売時点情報管理装置、こういったものを残しまして、これは二年間の経過措置で残しまして廃止をいたすということにしたわけでございます。  それから工場立地法に基づく特別償却は、適用事例がないということでございまして、ないものを削っても幽霊の足を切っただけではないかというような御趣旨かと思いますけれども、その適用事例がないということ自身が使命を果たし終えたということでございますので、これは実際に産業行政をやっておられる原局にいたしますと、やはりそういう特別償却制度があった方が国としては特別の配慮をしておる、その意思のあかしとして置いておいてほしいというようなお考えもあったわけでございますけれども、やはりこの際これは廃止するということにいたしたわけでございます。
  101. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 細かいことで、利用例がほとんどあるいは余りなかったというふうなことで言うわけではありませんが、やはりある意味では、今日の租税特別措置関係するさまざまの優遇制度の一面もあらわれているということではないだろうかというふうに思うわけでありまして、大臣も言われましたが、さらに大胆なメスを加えていくということをそれにつけても感ずるわけであります。ぜひそうお願いしたいと思います。  それから次に、価格変動準備金の改正についてお伺いしたいと思いますが、五年あるいは十年にわたってこれを廃止をしていくというわけであります。また、価格変動の著しいものそれからその他のものと幾つかに分かれているわけでありまして、段階的整理をするというわけでありますが、ちょっと一つ、変動の著しいものを十年、その他のものを五年、この十年と五年というのはどういう科学的な根拠といいますか理由を持っているのか。五年なんというのは一つのめどだと思いますが、十年になれば十年一昔というふうに、今日の時代で非常に大きな変化をなすということでありますし、どうせやるのならば、これらのものももっと早くできないのかということも含めて、この十年、五年という決め方ですね、どういうことですか。
  102. 高橋元

    高橋(元)政府委員 価格変動準備金は、制度の創設以来、企業会計サイドからも、これは利益留保性の準備金ということであって、本来ならば特定引当金として立てることが適当でないんじゃないかという御指摘があったところでございます。私どもといたしましても、たな卸しの評価方法というものを徐々に改善を加えながら、こういった価格変動準備金というものを支障なく整理していきたいという考え方で多年臨んできておりまして、二十七年以来の長い間に価格変動準備金の積立率を、一〇%から現行の二%または五%まで引き下げてまいったということでございますが、最近のような税制についての見直しの中で、やはりこれは廃止をする、段階的に整理をいたすということにいたしたいということでいろいろ折衝をいたしたわけでございます。  これがたな卸し資産の評価方法と密接に関連を持った制度であるということは、先ほども申し上げたところでございますが、そういう点との関連でかなり多くの企業で価格変動準備金の引き当てをやっておられまして、五十二年で大体八千億残高があったわけでございます。これにつきまして、原則五年間という形で段階的な整理をいたすという方針を立てましたが、ただ価格変動の著しい物品、これは主として国際相場のある輸出入商品、原材料というものが多いわけでございますが、これにつきましては、価格変動準備金の段階的整理に基づいて短期間にこれを整理いたしますということでありますと、非常に企業経営上の問題も出てまいる、事業の運営にも支障を来すというようなこともございますので、五%のものにつきましては十年ということにいたしたわけでございます。  十年、五年でなくても、たとえば全体五年でもできないことはないではないかという御指摘でございますけれども産業行政当局ともいろいろ折衝いたした結果、ただいま御提案しておる形で、激変の緩和ということも含めて五年、十年という整理期間を設けたわけで、この整理期間は相応のものであろうという考え方を持っておることを申し上げておきたいと思います。
  103. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 実態に即してといいますか、そういうことで一応定着してきた制度でもありというようなことも含めて、実態に即して五年あるいは十年ということであろうと思います。ただ、変動の著しいもの、輸入品、輸入基礎物資、これはたとえば原油の問題にいたしましてもその他にいたしましても、国際価格の問題ですから国内でコントロールするというものではない。そういたしますと、これから先も五年後、十年後、現在と非常に情勢が変わるのか変わらぬのかというのはまことに不確定なものだと思うのですね。そもそもそういうことではないだろうか。そういうことを考えますと、先ほど説明がありましたように、たな卸し評価の問題ともかかわり合ってくるということでありますが、十年ということについても長い期間ですから、これからの過程の中で社会的に公正と思われるような方向で、途中ででもさらに検討されていくというふうなお考えはございますか。
  104. 高橋元

    高橋(元)政府委員 法律をもちまして毎年〇・四%または〇・三%ずつ引当率、繰入率を削減していくということをお願いいたしております。今後五年または十年にわたってのただいま御審議をいただいております繰入率をお決めいただくわけでございますが、その間、企業側の諸種の理由、また税制上の諸種の理由、そういうものに基づきまして、それはまた段階的整理の進め方について非常に広い意味で検討を加えていくということは当然であろうかと思います。
  105. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 次に、今回も取り上げているわけですが、貸倒引当金の関係で、これも税調の答申にも繰入率の引き下げの合理化を図るべきであるという方向に沿って、金融保険の場合、他の法人の場合、検討されているようです。ただ、前から金融保険業の場合、貸倒率とそれから現実の引当金との実態関係ということで、この租税特別措置に関する法律が出るたびに議論になってきたというわけであります。そして千分の五まで引き下げる、積み増しをしないで千分の五になるように是正をしていくということで、また自民党税調の答申を見ますと、二年後に経過を見て考えるということでしたかになっておるようですが、現実に引当金と貸し倒れ損失との実態という面から見ますと、依然として指摘をされておるという問題ではないだろうかと思います。二年後の見直しも結構ですが、あすでは遅過ぎるという言葉がありますから、何かその辺、これからどういう視点で考えられていくのか、いかがでしょうか。
  106. 高橋元

    高橋(元)政府委員 引当金でございますから、これは債権の回収不能の見込みというものをどういうふうに合理的にやって、それに応じて繰入率を認めていくかということであろうと思います。こういう引当金制度につきましては、常時実態に合わせて繰入率の見直しをやっていくべきだというのが、五十二年の中期答申以来の考え方でございます。  ただいま御質問のございました金融保険業の貸倒引当金の繰入率でございますが、これは四十七年に千分の十五から千分の十二に下げまして以来、さらに十に下げ、八に下げ、五に下げ、こういうことで現在に及んでおりまして、現在の〇・五%という繰入率はまだ農協、信連という段階では経過措置中でありますし、沖繩の金融機関についてもまだ〇・八%とか〇・八五%という経過的な率が続いているわけでございます。  一方で貸し倒れの実績でございますが、金融保険業につきましては、私どもが昨年東京国税局管内の納税者についてサンプル調査をいたしましたところですと、〇・一%程度の貸し倒れ損失が発生しております。五十二年の上期でございましたかそのころでございますと、金融保険業の貸し倒れ損の発生率は〇・三%くらいであった時期もございます。これは景況によって貸し倒れ損失の発生の割合というのは上下いたすわけでございますが、金融保険業について〇・一%程度の貸し倒れ発生率で貸倒引当金の法定繰入率が〇・五%であるといたしますと、その倍率は五倍でございますけれども、これは今回他の業種について改正をお願いいたしております改正後の法定繰入率と貸し倒れの実際発生額との割合をとりますと、大体三倍ないし六倍ということで、金融保険業が現況において特に高い繰入率を持っているというふうにも思いませんけれども、五十二年以来の繰入率を見直していくべきであるという御方針に従いまして、今後さらに検討を加えていきたいというふうに考えておる次第であります。
  107. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 同じく引当金で、退職給与引当金のことをお伺いしたいと思います。  これもずいぶんいろいろな議論がなされてまいりましたし、恐らく現在では利用されているトータルが六兆円ぐらいになるのじゃないか、また企業によって当然違いますけれども企業によっては十五倍、二十五倍というふうな積み立てとかと言われておるものもあるわけですが、利用割合から見ますとまあ十倍ぐらいというふうなことも言われているわけでありますが、私は、貸倒引当金の場合と同じ論理というよりも一つお伺いしたいのは、純理論的に考えて、こういう制度のあり方というものを一遍考えてみてもいいのじゃないだろうか。現実にいつ、どう適用できるかという問題はあると思いますが、諸外国の例などを見ながら純理論的に考えてみたら、当然ながら一つは、この引当金の積立率においての問題というものがあると思います。引当金の利用額と利用割合との関係から見た率の問題が一つあると思います。それから二つ目には、積み立て制度自体の問題ですね。企業の内部保留という形よりは、理論的に考えてみましたら、外部に積み立てて、企業に大きな問題があった場合でも安定したファンドとして存在をするということが合理的であろう。理論的にはそうなるのじゃないか。また三つ目には、その運用の面でも、労使あるいは政府の行政指導を含めた視点というものがあって、公正に運用されていくということが鉄則であるということになるわけですが、現状の論争はいままで毎国会これに関係してあるわけですが、一遍制度そのものをひとつ理論的な面から見て、こういう発想があり得るのではないか、あるいは妥当ではないかというふうに思いますし、その辺の発想が一つあってもいいのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  108. 高橋元

    高橋(元)政府委員 退職給与の支払い額と退職給与引当金の残高との割合ということを取り上げてみますと、五十二年で退職給与の年間支払い総額が一兆七千億でございます。これに対して退職給与引当金の残高が五兆六千六百億でございまして、その比率は三・三倍ということになっております。  この退職給与引当金というものは申し上げるまでもなく、企業雇用いたしました際に退職給与規程というものを設けておくわけであります。この退職給与規程に従って、退職時に任意退職という形で支払うべき退職金の総額というものを算定をいたしまして、その中で、当期の雇用に起因する部分というものを将来債務として引き当てる、そういうことでございます。給料を払うと同じような意味で、将来払うべき退職給与の額というものを損金に立て、負債として経理をする、そういう性質のものでございます。これは三十九年に特定預金と切り離されました際に、従来は特定預金というものを持っておって、ある意味ではそれを限度という形でつくったわけでございますが、ある意味では支払い財源というものとリンクさせる考え方をとっておりましたのを、三十九年の当時の税制調査会でもいろいろ御審議を願ったわけですが、これは支払い財源の準備金ではないという形で、将来の退職給与の支払いの債務といいますか、その費用性というものを当期の利益から差し引いておく、そういう形のものであるという定義が下っております。  これの引当率をどのくらいにするかということにつきまして、たしか四十三年であったかと思いますが、企業会計審議会で退職給与引当金の概念についてというのですか、非常に長い意見書を出しておられます。われわれは意見書第二、こう言っておりますが、その中で、退職給与引当金をどういう形で引当率を決めるべきかということについて三つの理論を出しておられまして、それは一つは、将来支給額を予測して、その予測の当期に対応する部分を引き当てるべきだという考え方、それからその支給倍率加味方式というのでありますか、期末の要支給額計上方式というものと、さらには現価方式という三つのあれを出しておられます。三十一年に制度改正がありました後の税法上の退職給与引当金の損金算入と申しますのは、当期末に全部の従業員がやめたとした場合に任意退職の退職給与一時金として払われるべき金額を合計いたしまして、それを今後の利子率で割り引いて二分の一として繰り入れることとしたわけでございます。したがって、ある意味で言えば現価方式というものがそこに入っております。こういう形で退職給与引当金について、将来それが払われるものであるから、現在の益金から控除されるものとしては年金現価しか見ないという意味では、引当率としてはかなり三十一年に改善をされておるものであろうというふうに私どもは考えておるわけであります。  問題は、この退職給与引当金が先ほど申し上げましたように、退職給与の支払い財源の準備金でない。これは中小企業退職金共済事業団というような組織を使いますとか、また適格年金とかそういうものを使いますと、その場合には外部拠出になりまして、企業は明らかに損金になるわけでございますが、一方で退職者のために共通のファンドというものから退職給与の支払いができる。それに対して、引当金をとっても退職給与資金というものが別にキープされているわけではございませんので、退職給与引当金をとっている企業が実際に倒れた場合、左前になった場合に退職給与がうまく払えない、そういう問題があるではないかという点に移ってくると思うのです。その点につきましては、実は退職給与引当金の固有の性格と申しますよりは、退職給与の支払い財源をどうやって確保するかという新しい制度の問題であろうかというふうに考えます。五十一年に賃金支払い確保法というものが国会で御議決になって成立になったわけでございますが、その際にも、未払い給与または退職金の支払い財源をどうやって確保するかという問題があったわけでございます。その点につきまして、これをその一定割合、たとえば四分の一を外部に拠出して、それによって一朝事があった場合には退職金の支払いを円滑に行わせるということを全部の企業に強制することはどうかという問題として議論がなされたようでございますが、退職給与の支払いの状況、その確実さの状況、それから、そういう資金を外部に出してしまった場合左前の会社がなおさら左前になるのではないかという問題、それから、そういう外部拠出の制度を設けますと、退職金の支給額そのものがむしろちびられてしまうといいますか、そういうことに関する労働側の懸念というものがありまして、制度化に及ばなかったというふうに承知しておりますが、今後とも退職給与引当金のあり方について私どもは勉強しなければならないと思っております。  繰入率につきましては、先ほどの三十一年の二分の一にカットしたということによって私どもは、企業会計と税務との調整が図られておるというふうに思っておりますが、たとえば外部拠出の制度を取り入れて退職給与引当金によって退職給与の支払いを確保するということが現実的かつ可能であるかどうか、その場合の制度をどうしたらいいかということについて、労働当局とも勉強をいたしていきたいというふうに思っておるわけであります。
  109. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私はこの問題については、額がどうとか、それから内部留保に使われてどうとかという議論はいままでずいぶんなされてまいりましたから、やはりこういう話題となる問題について理論的にあり方を一遍考えてみる。そこからスタートをして、企業会計上の問題もあると思いますが、名前のとおりにやはり雇用問題との関係で労働者の立場を守るということが基本精神のはずですから、それではその立場を守るために、そもそも理論的にこういう方法があり得るのではないかということを一遍現実論とは別にお考えいただいて、そこから現実をながめてみる、そういう改革の方向があるのではないだろうかということで申し上げましたが、労働省ともいろいろ勉強したいということでございますから、一遍いままでの論議の経過を離れて、そういう制度として正当なあり方といいますか理論的な視点ということから考えていただきたい。特に雇用問題が非常に重要な段階、雇用確保の問題もありますし、それからどうしても離れるという人の問題もあるという中ですから、現実にも切実な問題としてそういう勉強をぜひお願いしたいと思います。  次に、土地税制の問題について幾つか御質問さしていただきたいと思います。  実は私は個人的なことを申し上げて恐縮ですが、東急の田園都市線の沿線に住んでおりまして、大平首相が田園都市構想というものを出されました。名前が同じだからというわけではありませんけれども、特に急速に開発が進み、新しい市民がどんどんふえていくという場所に住んで、たくさん問題は山積をしているということで、いろいろと地元の問題も多いというわけであります。そういうことですから、何かほのかな期待として新総理大臣の田園都市構想、田園都市線沿線なんというのは一つのモデルケースとして、いろいろ新しい施策がなされるのではないかというふうなことも思ったわけですが、現実には御案内のとおりその内容、実態、計画というものははっきりしたものに至っていないということで、知恵者が集まって勉強しているというふうな状況のようです。  そういう気持ちを持ちながら土地の問題というものを考えてみますと、たとえば近くを歩いて話を聞きましても、いままで坪四十万だったところがこの一年間のうちに六十万になったとか、決して不思議な状況といいますか特殊なケースじゃなくて、あちこちにそういうものがありふれた形であるのだ、それで家を建てる業者の方々も困るし、買う人はもちろん困るしというふうな話も大分聞かされます。そういうことで、今度の税制改正の意味とかそれからその効果とか、いろいろと勉強させていただくわけですが、聞けば聞くほど何か明るい見通しが立たない、どうしたらいいんだろうかということを自問自答させられるような面が非常に多いというわけであります。そういうことでまず一つは、今回の提案に至る経過をお伺いしたいと思うのです。  昨年夏以来この土地税制の問題については、建設省、国土庁の側と大蔵省の側と活発な御議論があったようです。大臣は、いま大蔵大臣になられておりますが、その当時は自民党の税調の責任者ということで、一番よく御存じの経過であろうというふうに思うわけです。その経過を読んでみますと、国土庁、建設省の側から土地税制の緩和について強い要望があった、またそれに対して大蔵省は強い反論を展開したというわけでありまして、私どもは現物を読んでおりませんが、報道されたものや何かで見ますと、昨年秋に自民党の税調の皆さんには「土地税制について」という資料を配付をする、また政府税調の方でも昨年の十一月末の段階で資料提出をいたしまして、建設省、国土庁の見解に真っ向から反論しているというわけであります。その柱は何かということを読んでみますと、一つは、土地税制を緩和してもそれが安い宅地供給につながらない、逆に地価上昇の引き命になったという批判を招くおそれがある、地価がやや強含みに転じている折からでもあり、そういう問題意識。それから、五十五年までの時限措置である、そういう現時点における土地税制がつくられた意義をやはり忘れてはならぬということですね。それから、現行の土地税制が土地供給の阻害要因となっているとは思えないとか、税制を変えても宅地供給はふえないとか、あるいはまた、現行の税制で言うところの負担は一般の事業所得者の税負担と比べてみても特に不適当な水準であるとは思えないというふうなことが何点か述べられているようです。  私、昨年の夏から秋の段階でその報道や資料を読ませていただきまして、やはりさすが大蔵省だ、明快な分析に基づいた論旨を展開されている、なかなかりっぱなものだというふうに感じていたわけですが、今日提案をされてまいりました内容は、評論でもむちがなくなってあめだけだというふうなことが言われておりますが、その辺の経過、特に地価急騰という中で、これがまたインフレの引き金になるのじゃないかとか、あるいはまた市民にとっても非常に関心が高いという状態になっております。特にその中で、恐縮ですが、当時自民党税調の責任者でもございましたし、いまは大臣としてこの法案を提案されているということから振り返って、どういう御感想なり見解をお持ちでしょうか。
  110. 高橋元

    高橋(元)政府委員 いま御質問にもございました昨年の夏以来の経緯でございますが、後ほど大臣からお答えもありましょうが、まずその事実の問題を御説明申し上げていきたいと思います。  土地に関する税制が五十年から五十五年まで現在のいわば一種の重課制度になっておるわけでございますが、その基本と申しますのは、土地というものは普通の私有財産とは性格がやや違うのではないか、その土地の値上がりによる譲渡利益というものの中には、社会全体の恩恵と申しますか、いわば一種の開発利益のようなものが入っているのではないか、したがって、それに対しては税負担の求め方としてややシビアな考え方が必要ではないかということであったかと思います。それはまたもう一つ前に、四十五年から五十年まで適用になっておりました比例税に対する一種の反省があったのだろうと思います。一〇%、一五%、二〇%と二年おきに比例税率を上げていきまして、それによって宅地の供給の促進を求めるというのが四十五年から五十年まで適用のあった税制の基本的な考えであります。これは宅地供給税制としてはいろいろ御批判はありましょうけれども、宅地供給という面だけを取り出してみますと私はかなり成功した税制であったかと思います。しかしその反面で、土地成金が続出をいたす、しかもそのせっかく流動化した土地が実需に結びつかずにどこか途中で法人の保有土地になってしまう、そういうきらいがある、それでは土地がせっかく地主から離れて、かえって社会的な公正を図るという面からの批判をより多く受けるということになるのではないか、そういう反省を受けて現行の土地税制というのができておるわけであります。  しかしながら、この五十年から五十五年まで適用になります現行の土地税制には、五十五年までという期限がありまするために、期限がだんだん迫ってまいりまして五十三年、五十四年となりますと、もう一年待っておればこれは二分の一の所得税法の本則であるいはいくのじゃないかというような期待もまた逆に生まれてきて、何となく土地の流動化が速度が悪くなってきた、そういう批判があります。それがまた地価にも響いてくるわけでありますので、したがって建設省、国土庁その他からは、少なくとも政策的に必要な土地の流動化というものを図ってくれないかというようなお話があったのは事実であります。  私ども土地税制を改定いたします際に、基本的な視点というものが二つあるであろう。一つには、地価の上昇に悪い影響をもたらさないということ、もう一つは、宅地の供給がふえていくということであると思います。その二つの要件を満たしますためには、仮需要に対して行われる供給を優遇するというようなことがあってはいけない。それは結局、安い宅地の供給ということにつながらずに、かえって地価を上げてしまって、しかも宅地の供給が十分にならないということでありますから、それは避けなければならない。そうなりますと、土地税制の基本的な考え方として短期譲渡所得については重課する、この考え方はぜひ守る必要がある。それから、税制調査会の答申の中にも書いてあるわけでございますが、土地の税金を軽くすることによって土地の資産価値というものが上がってしまう、それが土地の保有を助長するおそれがある、こういうことに対する一つ配慮ということも必要であります。そこで、一般的にすべての土地の取引について、現行の二千万円まで二〇%比例、二千万円超四分の三総合累進という制度を緩和することは、現行の土地税制考え方として適当と思われない。そこまで緩和をしてしまいますと、先ほど申し上げた二つの観点からして、せっかくの改正案がプラスの方向に結びつかないおそれがあるのではないかということで、税制調査会でも御議論をいただきましたし、その席にもたしか建設省、国土庁という所管官庁においでをいただいて、御所見をお述べいただいて御議論願うという場面もあったかと思います。  そういうことで、いろいろ折衝を重ねました結果、一般的には土地の移動について税制を緩和はいたしませんが、特定に政策的な重要性が高いと思われる公的な土地の供給、それから、計画的なといいましょうか、優良な宅地または優良な住宅の供給につながる土地の譲渡について今回御提案を申し上げておりますのは、四千万円まで二〇%比例にして、それから先を二分の一の総合課税にするという案に落ちついたわけであります。これは決して私どもが昨年の夏以来申し上げておった基本的な考え方を乱すものというふうに考えておりませんし、真に必要な土地について、現行の税制の基本的な枠組みを維持しながら、その供給の促進を図るという政策目的に役立つものというふうに信じておる次第であります。
  111. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 これは伊藤さん百も御承知のとおり、いまある意味において一番大きな社会問題は、宅地の提供をどうしてふやすか、住宅政策をどうやっていくかということだろうと思うのでありますが、この点につきまして毎年毎年実は議論を繰り返してきたわけでございます。  それで、私が税制調査会長として言っておりましたことは、税の面で実害を伴わないで宅地の供給に資する道があれば、これはいかようにでも政策税制として宅地供給に奉仕しなければいかぬけれども、今日の宅地問題の隘路になっておるのは税だけじゃなかろう、やはり土地規制その他いろいろな隘路があるので、税だけ先走ってやったらかえっておかしなことになりやせぬかという心配を実は毎年繰り返してやってきておったわけです。それでことしの税制改正に当たっていろいろな議論がありましたが、大別して、今日では都市周辺の宅地はもう希少価値になってきちゃったんだから、株で言えば優良株になっておるんだから、そう簡単に持ち主は手放さないぞ、税制を緩和しても意味はないぞという有力なる議論が一つございました。同時にまた一面においては、現実に即してやはり相当の規模の宅地を売りたくても、たとえば働き主を失った遺族、未亡人が持っておっても、税金相当額を取られてしまうのだから、これを何とかしてくれ、でなければ簡単に売れませんよという人も相当多い。いろいろな議論がありましたけれども、その二つの調整をどうするかということでございます。  いま主税局長が申しておりまするように、基本的な現在の土地重課の枠組みを残しながら、優良宅地の提供あるいは公的土地の提供につながるものだけ厳しい条件をつけてやってみたらどうだ、こういうことで実は穴をあけたわけでございまして、私どもとしましては、これは国土庁、建設省にもいろいろ御相談申し上げたのですが、それじゃ幾ら増加することができるかという見通しは困難でありまするけれども、しかし少なくともある程度というか相当程度の増加は期待できるんじゃなかろうかというのが関係省の意見でございます。  それでこの土地税制に関連して、市街化調整地域にも網をかぶせて、固定資産税を上げて吐き出させるような方策を講ずべきだというような議論もございました。しかし現在、市街化区域で何年か同じような制度をやってみましたけれども、農地とか緑地ということで実は相当部分が、税金を上げてもらったけれども、各市町村が持ち主に上がった税金の分は返すというような制度をとっておるものですから、実際において網を広げることによってどれだけの効果が期待できるかということが大変むずかしいという問題もございまして、これはことしは見送ることにいたしたような次第でございます。  今後も私どもといたしましては、農業振興地域の問題も含めていろいろな面から、税だけじゃなくて宅地提供につながるような施策については真剣に検討してまいりたいと考えておる次第でございます。
  112. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 昨年夏以来の経過はこれだけにしておきます、過去のことを論じてもしようがありませんから。ただ、去年の夏以降の建設省、国土庁の税制緩和の要望に対する大蔵省側の意見というのは、私はいろいろな意味で賛成する方向で、さすが大蔵省というふうに思いました。いま主税局長の御説明を伺いまして、また別の意味でさすが大蔵省と思っているところですが、また大臣が、前のあめとむちの経過の中ではいろいろ立場上御苦労された経過だと思いますから、楽しい思い出なのか苦々しく思っているのか、その辺はこちらで勝手に推測をすることにしておきたいと思います。  いずれにしても、土地問題とか地価に対する関心が非常に強いという中で、政策の方向づけについてはいろいろな角度からの賛否の御議論があるのは私は当然だと思います。ただ筋の通ったというか、政府は政府としてあるいは大蔵省は大蔵省として筋の通った筋道といいますか政策の推進というのがいかがなものかというのが私の率直に持つ感じでございます。それは私だけではなくて、税調の方からもずいぶん言われているようであります。いま言葉では大臣の言われたことと同じでありますが、税調の答申の方でも、基本的な枠組みは動かすべきではない、優良宅地の供給、公的な土地取得、その促進に資するために限定的な基準を設け、部分的ものにとどめるというふうなことになっていたと思います。また、これは金子さんにというわけではありませんけれども、昨年暮れ押し詰まった段階で税調会長が答申を出されたときにも、「税の緩和で宅地供給がふえるという最終的な方向を決められた」これは新聞には「自民党の」と書いてありましたが、「見方にはかなり疑問がある。地主や不動産業界の救済だけに終わるおそれもある。何かごり押しするような」だれがというところは省いておきますが、「ごり押しするような現在のやり方はまことに遺憾である。」という記者会見をなさっているというようなことでありまして、非常に現下の大きな問題ですから、やはりフェアな筋の通った展開ということ、ひとつ経過を振り返ってみて今後に対応していただきたいということでございます。  それからさらに、土地税制と土地問題に関連をして若干の問題ですが、一つは予算委員会で、この土地関係の金融引き締めと申しますか、金融の問題で大分御議論がございまして、その後一、二の対策が政府の方でもとられているというふうに伺っているわけであります。ただその内容を見ますと、確かに昭和四十六年、七年、八年とあの当時の過剰流動性がもたらした土地投機というときには、非常に時期がおくれまして、土地投機が一巡した後でいろいろと大蔵省側の通達が出されるとか監督がなされるというようなことであったと思います。今度はやはり各方面みんなが苦い経験としてあれを振り返っているわけですから、あのときと比べればテンポを速く対応されるということになっているんだというふうに私は思いますが、その中身がどうだろうかということで、一つは、銀行局の方から出されているようですが、口頭で何か自粛の要望をなさったようです。この前の三回出されたときのように、いわゆる書面による通達という形ではないというふうに伺っているわけでありますが、その辺姿勢として一体どうなんだろうかという問題。それから、四半期ごとに報告書を求めてということになっているわけですが、その辺、報告書をとって一体どの程度に対応されるのだろうかという問題。  つけ加えてちょっと申し上げておきますが、これは週刊朝日ですか、週刊誌を読んでおりましたら、「不気味な動きを見せる地価」というふうな記事の中で、大蔵省側の金融引き締めについて、これは住友不動産の社長さんですか、「不動産業者が採算見通しを持って銀行に行き、銀行が納得すれば、カネを貸しますよ。それをどうやって抑えられますか。大蔵省が報告書を出せというなら、いくらでも出したらいいんだ。投機資金の自粛要請はせいぜい心理的なものでしょうな。」とか、それから「全く効果がないというのは言い過ぎで、やらないよりましという程度でしょうか。」とかいうようなことを言われております。私は一つの例ですから、全体がそう受けとめているのかなということもあると思いますし、それから、いろいろ融資を受ける側も融資をする側も、やはり社会的責任をきちんと持たれた対応をなさっていくというのが経済界としても当然のことであろうというふうに思いますが、何かそういうことを読んで、口頭による自粛要請という形だったそうですが、その辺の姿勢というのは一体どうだろうか、どういう姿勢できちんと対応なされるのかということをひとつ感じます。その辺はどうお考えになりますかということが一つ。  それから、最近は相当企業で業績がよくなって、銀行離れというふうな傾向も強まっているわけでありますけれども金融機関だけではなくて、たとえば前科のございます電鉄の関係とかあるいは大きな商社とかというものを含めたそういう面での追加の措置といいますか規制というもの、対策をお考えになるつもりがあるかどうかということが二つ目。  それからもう一つ、金融に関係をいたしまして、何か大蔵省サイドの方でもいろいろ発言をされているものを新聞や雑誌で読みますと、地価が急騰する原因は金融が原因だ、また金融が重要な一つの原因になっているというのはもう実態に合わないのじゃないか。いま貸し出しがふえている、たしか一〇%以上になったと思いますが、それも土地を買うということよりもマンションとか一戸建ての住宅の建築費とかいうのがむしろ中心だ。ですから、一面では規制をする対外的な構えをとりながら、中身としてはそういう御理解をなさっているというようなことも伺うわけであります。その辺はいかがでしょう。
  113. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 第一点のいまの口頭での警告というか、それはおかしいじゃないかという御指摘でございますが、実は四十七年以来数回にわたって通達を出しております。その通達は今日でもなお生きておるわけです。したがいまして、関係者を銀行局長が集めて、あの通達は生きておるんだぞ、もう一度思い出してくれよ、特にこういう際だから十分仮需要による貸し出しは差し控えてほしい、こういう指示というか、それをいたしたわけでございまして、それに重ねて、従来貸し出しの報告書をとっておりませんでしたものですから、四半期ごとの報告をとって今後の動きを見ていきたい、こういうことでございます。  それで、けさほども話がございましたけれども、不動産業向けの貸し出しは前年に比べて一二・六%ぐらいふえておりまするけれども昭和四十七、八年のあのブームのときに比べるとこれはそう大きなものではございませんで、私どもは今日、土地に対する仮需要が相当大きく出ておるとは実は判断していないのでございます。ただ、あなたのいまおっしゃっておるように、事業会社の余裕資金が株式市場に流れて短期の運用をやっておりまして、それが株の値上げにつながっておるわけでございますが、そういったものが、まあこれは簡単にないと私は思うのですが、いま事業会社と不動産会社とを問わず相当の焦げつきの土地を持っておるわけですから、しかも土地規制が厳しい今日、そう簡単に土地をどこでもかしこでも買い込むということはないと思うのですけれども、やはりそこら辺のことは十分政府として打つべき手だけは打っておかなくてはいかぬということで、いまのような手配をした次第でございます。  第二点の電鉄会社その他が沿線の土地開拓のために投資を始めておるんじゃないかという点は、あるいはそういうことがあるかもしれません。これは必ずしも仮需要というわけにはいかないのでございまして、私どもは、低廉で安定的な優良な宅地供給に結びつけば、これむしろ大きなプラスではないかと考えておる次第でございます。  大体そんな考え方を実はいまとっておる次第でございますが、なお、きょうは建設省からも来ておりますから、建設省からも答弁をさせます。
  114. 木内啓介

    ○木内説明員 大蔵省からも大臣から御答弁がございましたように、最近確かに全国銀行の貸出残高はじわじわ増加傾向にございまして、十一月で対前年度比一一・七%ぐらいの伸びになっておるかと思います。ただ、四十五年とか四十七年ころ、たとえば対前年度比の五〇ないし七〇%伸びていたというのに比べれば、まだそういった感じはございませんけれども、大蔵省もそういうことで予防的な対応をしておりますので、建設省としましても、私どもも何社かの業者を呼びまして、現実にどういう動きがあるかというふうな調査をいたしてみたところでございますけれども、大手のデベロッパーがいまのところ中心でございますが、この大手の企業の土地買収と申しますのは大体ずっと落ちてまいりまして、五十年、五十一年ぐらいまではほとんど新たな買収というのはなされておりませんでしたけれども、最近やや新たな意味の土地買収が出てきているという感じでございます。それにつきましていろいろ詳しく聞いてみますと、これは決して投機的という形ではなくて、主として市街化区域内に現実に開発プランを持った開発というふうなものが目につくわけでございます。  そういうことで、現実には大手のデベロッパーを中心のような投機はないかと思いますけれども、なお、中小を含めまして今後につきましては、十分にいろいろ事情を聞いたりしまして対応を考えてまいりたいと考えておるわけでございます。
  115. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 いま大臣の方から、土地の仮需要は生まれていない、投機は起こっていないというようなことだと思いますが、現象はともかく地価上昇、まあ確かに供給不足、需給関係ということも大きな要因であることは言うまでもないと思います。ただ、大きな意味で見てみますと、政府の方が、今度の予算を見ましても昨年の予算でも、住宅関連というものを大きな柱にして景気対策を考える。言うならば、政府が大きな需要をつけてマンションとか持ち家政策とか建設を高めていく。別の面から見れば、むしろ景気対策という面からこの土地、住宅を考えるというふうな状況が強いのではないだろうか。そういうものがむしろベースになって税制、あるいは市街化農地の税制の問題からいわゆる線引きを見直したりいろいろなことが言われているわけでありますが、むしろそういう景気対策を主にした観点から土地、住宅について政府が需要をつけていくというようなことが、長い目で見てみるとベースになって今日の諸問題があらわれてくるという側面もあるのではないだろうか。私は総合的な観点からそういうものを冷静に振り返ってみて考えないと、個別の対策だけではどうしようもありませんから、そういう視点も感ずるわけでありますが、その辺はどう思いますか。
  116. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 先ほどちょっと答弁が漏れましたけれども、最近特に市街地の周辺での土地がじわりじわり上がっております一つの原因は、やはりマンション建設なんかに最近大分重点が置かれてきたことがあると思うのです。それも一つの原因だと思うのです。ただ、私ども長い目でこれからの日本の住宅政策を考えていく場合に、郊外なら一戸建てで構いませんけれども、都会地とその周辺はむしろどんどん上に伸ばすマンション、高層住宅を重点に考えていかなければいかぬと思うのですよ。そこら辺の高層を建てるのが、いま過渡期なものですから、きょうは建設省来ておりませんけれども、はっきりと打ち出してないかもしれませんけれども、私どもの気持ちとしては、やはり東京都の都内、その周辺はもうこれからどんどんマンションの時代だぞ、高層住宅の時代だぞというような気持ちを持っております。そうでなければ土地問題は解決しませんからね。あるいは、いろいろなユーティリティーというか、交通、通信、上下水道の問題も解決しませんので、そこら辺のことをやはり住宅担当の政府の立案に当たっては十分考慮しながら、しかしいま御指摘のように、土地の値段との調整をどう図っていくかも考えながらやっていかなければいかぬ、大変むずかしい問題だと考えております。  以上でございます。
  117. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 具体的にちょっと今回の土地税制の改正に関連して伺いたいのですが、昨年の土地税制についての議論、提案の中身は今度の場合とは性格がもちろん違っていたわけですが、あのときも、さっき主税局長からお話があったと同じように、基本は動かさない、優良宅地の供給にプラスする、貢献するということにしぼって部分的な手直しでやるということでございました。今度も同じようなお話になっていると思います。それでは、土地の問題ですから、その年にいきなり効果が出るというものでもないと思いますけれども、何か昨年そういう御説明があって、現実にどういう効果があらわれたのか、あらわれつつあるのか。  それから、今年の場合、実態として税金が安くなれば売るという部分もあると私は思います。しかし、地価が高含みだから、いますぐお金が要らないから、むしろ持っていて、税金が安くなっても売らないという分野もあると思います。どちらの方に大きなウエートがあるのか。私も世論調査をしたわけではありませんから、現実問題としては正確にはわかりません。しかし、後者の方のウエートも今日の地価強含みの状況では大きいんじゃないだろうかというふうに私は思います。その辺を、たとえば住宅公団が世論調査をして、税金が安くなれば売ってもいいという比率が何十%あったとかいうような数字もあるようですけれども、やはり冷静に判断をして見通しなりなんなり考えていく、またそういう科学的な見通しをベースにして提案なり御説明もいただくというふうなことが必要ではないだろうかというふうに思いまして、その辺伺いましても、科学的な見通しというところまでいかないようですし、また税制からだけで全体の判断はむずかしいということでもあろうかと思いますが、昨年、ことし、その効果といいますか、どういうふうな大体のお考え方を持っているのか。  それからもう一つ、私は今度の緩和の現実の効果というのは、二千万円まで、あるいは五千万円まで、一億、それ以上とか区切ってみますと、金額が大きい売買——売買じゃない、売る方ですね、その譲渡の方が税金が安くなる比率が高くなるというふうになるわけですね。この辺は一体どういうことなんだろうかという気がするわけですが、その辺御説明をお願いしたい。
  118. 佐藤和男

    佐藤説明員 まず、先生のお尋ねの本年度から実施になりました法人重課改正の効果の問題でございますが、これは昨年の四月一日以降の施行でございまして、直ちにその数量的な把握をすることは非常に困難でありまして、私どもでわずかにわかりますのは、国土利用計画法の届け出の事案、ないしは千平米以上の事案に関しまして都道府県知事が届け出審査をいたしてございますが、その事案に関しましては、昨年の四月から年末までに各都道府県で審査を了しました千平米以上の事案が約三百件程度参っておりまして、そういう数字は、当初私どもが考えました通年にしまして約千件程度この事案が出るであろうと考えた計数と、経過措置を含みますと同じような数字じゃないかというふうに考えておりまして、非常に短期で効果を数量的に申し上げるのは困難でございますが、ある程度の効果は期待どおり出ているのではないかと思います。  それから第二点の、各論者のおっしゃいます地価が現在のように強含みの状態になったときに果たして土地が出てくるんであろうかということ、これは土地売却者のビヘービアにかかわることでございますが、従来の例から申しますと、四十七、八年のように、これは相当異常でございますが、地価高騰の場合に非常に土地取引件数が伸びた事例がございます。その後四十九年、五十年とたとえば年間九・数%地価下落ないしはゼロ%程度の地価変動をした際にも、五十年では相当程度土地取引が伸びてございます。その後五十一、五十二年は、地価は一般的に安定的でございますが、相当土地取引が縮小しているというようなことからしますと、一般的に私どもは地価の変動よりは、特に最近ではこれに対する税率等の効果の方が直截ではないかというふうに考えておりまして、今回のような特定の目的に限って一部税率を緩和していただくことは、相当当該目的に関しての土地譲渡に関しては効果があるものというふうに考えております。
  119. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私は、いろいろと問題と思われるところを多々並べてお伺いするという気持ちでありませんが、何かこの問題に関連をして非常にたくさんの問題点がいろいろなところから指摘をされている。現実はいい方向に向かっていないという状況が残念ながらあるわけです。それで、きょう新聞を見ましたら、物価対策についての総合対策を出されている。その中にも土地、地価の問題ということも含まれているようでして、先ほどお話のあった金融監督の問題とか、あるいは線引きの見直しの問題とか、供給面からとか、いろいろ出されているようです。ただ土地の問題というのは、非常に大事であると同時に、現実にはまさに多元方程式なんですね、いろいろなものが全部絡まってくる。たとえば線引きといえば自治体の財政の問題その他の問題にもなってまいりますし、みんな絡まってくるということだと思うのです。  そうなってまいりますと、昨年のように建設省、国土庁と大蔵省の論争も結構でございますけれども、何か総合的な、しかもいままでの国土法その他から始まった全体のプランの上に立ったもう一つ進んだ総合対策をどう立てるのかということが政府に求められているということではないだろうか。ですからこの税制だけからとってみても、それだけではどうにもならぬということなものですから、そういう意味でお伺いしたいのは、一つは大臣に、土地を担当する大臣であるかどうかは別にいたしまして、やはり閣僚として、そういう総合プランをできるだけ各界の意見を聞いて的確につくる、それで四十六年、四十七年のあの当時のようなことは絶対させませんよという安心感を市民にも業界にも持たせるようなことが必要ではないだろうかということが一つ。  それから時間がありませんからもう一つ、国土庁、建設省どちらになるか知りませんが、お見えになっておるようですから簡単にお答え願いたいのですが、ミニ開発の問題が非常に大きな話題になっている。こういう状態がこの間新聞にも、東京、大阪、京都その他数字が出ておりましたが、家の六割もミニミニという状態になってくる、これは現実の一つの表現ですわね。建設省の方とか国土庁の方で、どちらか知りませんが、規制をさらに研究していくというふうなお考えもあるようですが、やはりこれも多元方程式の総合的ないい政策が必要であろう。一つは自治体の、特に私ども横浜なんかでやってまいりましたが、開発要綱行政、問題になっておりますが、これらに対してもっと積極的な法的な裏づけを持つということもあると思いますし、それから規制の強化だけではなくて、現在の法体系よりももうちょっと細かくといいますか、下にまでおりた利用計画というものがどうできるのかという問題もあると思いますし、それから望ましい方向へのさまざまな政策的な誘導という視点も必要ということだと思います。ですから、中身の御説明は結構ですが、そういういま焦点となって上っておるミニ開発、社会現象に対してもそういう角度からぜひ総合的な対策を考える、いまは長期的に見て望ましい方向でありませんから、そういう対応をしていただくようにお願いしたいと思います。その辺の対応を積極的にやるお考えがあるかどうかということだけお答えください。
  120. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 お尋ねの第一点の問題、これは土地政策、国土庁の所管でございますけれども、国務大臣として関係省庁と十分連絡をとって、必要な対策をこれからしっかり真剣に講じてまいるつもりでございます。
  121. 高橋進

    高橋(進)説明員 ミニ開発につきまして、特に総合的な観点から建設省でもこれから対策を講ずるように検討を進めておるところでございます。
  122. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 最後に一問だけ済みません。  一般消費税の後のスケジュールといいますか、皆さん方がお考えになっていることなんですが、本会議答弁その他の中では、この国会には出す状況ではありません、また、準備ができて審議ができる状態になれば提出をいたしますということで、秋の臨時国会かというふうなことが言われておるわけでありますが、いま現実問題として、その辺はっきりした話ですね、どういうスケジュールをお考えになっているのか、これが一つ。  それから法案関係ですが、いろいろ聞きますと、何月何日とか何%とかいうことを抜きにして、法制局と話をして大体骨格はでき上がっていると言う。大体法案をつくってというめどですね。その辺がどんな状況でお考えになっているのか。  それから、さまざまの複雑な議論がありますから、これから議論しなければならないことでしょうけれども、恐らく五十五年度中には実施という、政府も大臣も言われていることですから、今度の通常国会でも終わりましたら、また従来の税調のパターンとか従来の行政側のパターンで細部のいろいろな計画をつくられていく、いままでの御発言を伺いますとそういうことじゃないかと思いますが、その辺どういうお考えをお持ちでしょうか。
  123. 高橋元

    高橋(元)政府委員 昨年暮れの税制調査会から一般消費税の大綱をお示しいただきました。これは、九月の特別部会の際にブランクになっておりました税率ないし小規模事業者の除外の範囲ということにつきましても、それぞれ五%、二千万円という形でお示しがありましたし、さらに地方のいわゆる外形標準課税の問題につきましても、地方消費税という形で五%の中で国と地方で税源の配分をやるということについてもお決めになっておるわけでございます。  今後政府の中で、こういう大綱に即しまして具体的な税の要綱というものを定めていくわけでございますが、それにつきましては、たとえば非課税品の範囲をどうするか、たとえば既存の消費税との調整をどうするか、たとえば仕入れ控除について、原則的な考えに対してもう少し実施可能な簡略な方法というのはないのかというようなことでございまして、この点につきましては現在、関係各省なり関係のそのほかの民間の方々の御意見を伺いながら検討を進めておる、できるだけ早い機会に法律案の形でまとめたいという考えであります。  法律案ということになりますと法制局の御審査も要るわけでございますが、現在予算関連法案に引き続いて予算関連でない法案の御審査を法制局で進めておられますので、そちらとの兼ね合いもございますから、現段階でその作業がいつ終わるかということは確たることは申し上げる段階ではないと思いますが、いずれにしましても私ども事務方といたしましては、成案を得次第できるだけ早い機会に国会で御審議を願いたいという考えは変わっておりません。ただ具体的なスケジュールについては、今後部内で十分検討してまいりたいと思いますし、大臣の御指揮を得て政府部内全体として検討してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  なお冒頭にもお示しがありました、国民に対して財政危機の現状を訴え、さらに、新しい税制の導入の必然性についての御理解を願うための努力というものを払うべきだ、それに新しい工夫をこらすべきだ、その点はまことにお示しのとおり私どもも考えておりまして、あらゆる機会をとらえて、私どもの考えております財政の健全化についての御認識を国民にぜひ持っていただきたいということで、努力を続けてまいりたいと考えております。
  124. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 これで終わります。
  125. 加藤六月

  126. 西岡武夫

    西岡委員 租税特別措置法の一部改正について質問をするわけでございますが、まず初めに冒頭に、大臣の租税特別措置法についての基本的な御認識について承りたいと思います。  それは、本来この種の特別措置というものは、税の体系の中で原則としてはこれをなくするということが望ましい、しかし、それぞれそのときどきの政策的な目標を持った特別措置というものはあり得るわけでございますから、これは時限を切って時限立法でその政策の目的を達するまで、まさに特別の措置として、異例の措置としてこれを行うべきである、このように考えるわけです。大臣の御所見を伺います。
  127. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 西岡さんのおっしゃるとおり、やはり政治を進める上において、税を場合によれば利用しなければいかぬこともありますから、それを特別措置という形にするかどうかは別といたしまして、政策遂行の一つの手段として税を利用すること自体は私は妨げないと思うのでございます。ただそれは、ほかの政策をおっぽり出しておいて租税だけでやれというと、やはりいろいろなひずみも生ずることは当然でございますし、また、そうしてできた政策税制が既得権化し、あるいはもう効用を果たしたにもかかわらずいつまでも残されるようなことがあってはいけませんので、私どもは常時いろいろな政策税制について、果たして今日的な意義があるかどうか、必要かどうかについて見直さなければいかぬと思っております。今日までも過去数年間ずっと見直し続けてきて、ことしも社会保険診療報酬に対する税制やらその他幾つかの問題についての御審議をお願いしている次第でございます。
  128. 西岡武夫

    西岡委員 私どもも、現在の財政の状況というものが非常に緊迫した状態にある、どの財政の再建というものが緊急の課題であるというふうに認識をしているわけでございます。そういう状況のもとで政府が一般消費税の導入ということを明言をしておられる。しかし、一般消費税の導入という問題は、わが国の戦後の税体系を大きく変える大変な変革をやるわけでありますから、一般消費税の導入を必要とするそういう財政の状態であるということを前提として、これまでの税体系をまず根本的に改める、見直していくということが必要になってくる、同時に一方においては、行政改革、歳出の削減というような問題についても大胆に取り組まなければいけない、こうしたことがいまの財政に課せられた大きな課題であろう、このように考えるわけでございます。  ところが、今度の租税特別措置法の一部改正の内容も、少なくとも一般消費税を導入するんだという政府の認識にしてはいきさか手ぬるいのではないだろうか、この程度をもって国民に増税を訴えていくということはこれはできない、その前提ができたとはとうてい考えられないと私は考えるわけでありますが、大臣は今度のこの御提案で、国民の皆さん方が納得されるであろう、医師税制の問題にしても、不公平税制の代表的なものとして、これによる減収額が幾らであるかという金額の問題を超えた問題として国民の注目を浴びている課題でありますが、こうしたものがこの程度で十分であるとお考えでしょうか、いかがですか。
  129. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 一般消費税の導入に五十五年度から踏み切らざるを得ないということで、いろいろな面、税制だけでなくて歳出全般についても手をつけましたけれども、それは不十分のそしりを免れないことは十分承知いたしております。これはこれからまたしっかりやっていかなければいかぬと思っておるわけでございますが、税制面でも従来の整理に比べれば、ことしは相当思い切ったところまでいっておると私は評価いたしておるのでございまして、たとえばお医者様の課税にいたしましても、不十分だぞと御指摘いただきますことは甘受いたしまするけれども、とにかく四半世紀にわたって手がつけられなかった税制を実額に近いところで整理できたというのは、非常に大きな進歩じゃなかろうかと私は考えておるわけでございます。
  130. 西岡武夫

    西岡委員 大臣の話でございますけれども、私は、この程度で一般消費税の導入に踏み切るなどということはとてもできない、このように考えているわけです。  そこで、具体的な問題に移る前に重ねて大臣の御所見を承りたいのですが、租税特別措置法という法律は、本来ならばまずこれは原則としては全廃されるべきである、そして新たに政策的に、これは税によってその政策目標を達成することが望ましいと考えられる問題を新たに洗い出して、これを時限立法で新しい視点に立って立法化していくということをやるべきであって、既得権益化してしまっている租税特別措置法そのものを一たんなくしてしまう、廃止してしまうということが、原則としては正しい姿ではないかと私は思うわけですが、その点はいかがでしょう、重ねてお願いいたします。
  131. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 理論的にはそういう考え方もあると思います。しかし、われわれは現実政治家であり、政権担当の政党に所属いたしております。企業も個人も今日の租税特別措置法において、たとえば引当金、準備金その他もろもろの政策があってこういうことになるという計算をしながら、企業経営を行っておる人が多いのですから、それを全廃しますよ、新規まき直しですよというようなことは、こういう経済の非常に先行き見通しがむずかしいいわば一種の混乱期にやるわけにはまいりません。したがって、漸を追って現実に即した改正をやっていくというのが私どものとるべき方策ではなかろうかということで、ことしも三十項目について廃止ないし見直しをやっておりますが、昨年も一昨年も同様のことをやっているということでございまして、もちろんこれで私ども満足しているわけではございません、あなたの方からもいろいろな問題についての御指摘をいただいております。それはそれで来るべき年にはまたひとつしっかり見直しをやっていきたい、こういうふうに考えております。
  132. 西岡武夫

    西岡委員 いま大臣は経済界のことを言われたわけでございますが、実は先ごろ、財界の調査機関である日本経済調査協議会、これは大手企業二百十社ばかりが参加して、その会費で運営されている機関だそうですが、ここが租税特別措置法、これを根本的に廃止してしまうべきであるというような具体的な提言を行っているわけです。その中で、「資本蓄積、内部留保の充実といったこれまで重視された政策目標のために、税制を活用するのは明らかに時代おくれである。」というふうにこの財界の調査機関自体が指摘をしているわけです。経済界、財界の中からもこういう意見が出てきているということについて、大臣はどのような御感想をお持ちですか。
  133. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 各党からもいろいろな御提言を歳入歳出の全般にわたって今回はいただいております。これは私はここ数年いまだかつてなかったことではないかと思うのです。それだけやはり真剣に今日の財政の姿を直視されて、こういう手を打つべきであるという真剣な御議論をいただいておるわけでございますが、経済界でもこういう意見が出てまいりましたのは、恐らくここ半年か三月そこそこじゃないでしょうか、私はこういう意見がもっと強く出ることを歓迎いたしておる次第でございます。われわれも各党あるいは各界の意見を十分に考えながら、今後の財政の立て直しに取り組んでまいりたいと考えておる次第でございます。
  134. 西岡武夫

    西岡委員 私が日本経済調査協議会の提言をあえて引用いたしましたのは、大臣が実際の経済の動き、企業というものを考えたときに、現実政治家としてはそう一遍に何でもかんでもやってしまうことはできないんだというようなことを言われたわけで、その大臣のおっしゃる、現実に経済に直面をしている、日々の経済活動を行っている企業の皆様方からも、このような抜本的に手直しすべきだという意見が出てきている、それを、一般消費税の導入というようなことを一方で具体的に進めようとしておられる政府が、まだこの程度の手直ししかできないでいるというのはおかしいではないですか、この機会に租税特別措置法を一たん全廃するというようなぐらいの大胆な改革を行うべきではないか、なぜそういうお考えが出てこないのだろうか。これはあくまでも来年度からどうも一般消費税の導入を政府としてはお考えのようでありますから、そういうことを前提として考えれば、当然いま私が申し上げたようなことは政府がお考えになるべきことではないのかという意味を申し上げているわけです。基本的な問題でございますから、もう一度御所見を伺いたい。
  135. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 租税特別措置を含めて税制全般についてどういうふうに持っていくかということは、常時考えております。ときには蛮勇をふるってやらなければいかぬこともこれから多かろうと思うのです。しかしことしは、とにかく予算編成の最中に飛び込んだばかりでございますから、まあここまで行けたことをもって私としてはある程度やったなというような気持ちでおるのですが、ひとつこれからも御鞭撻をいただきながら、しっかりといま仰せのようなことで取り組んでまいりたいと考えております。
  136. 西岡武夫

    西岡委員 それでは具体的な問題に入りますが、いわゆる医師税制の問題について、今度初めてこれに手をつけたんだということを言われたわけですが、その内容が政府の税調の五十年答申から後退をしているということと、今回の政府の案は年限が切られていないというところに根本的な問題があると思います。  五十年答申の際も政府税調は、これを手直しの第一段階としてこの程度のことはやらなければいけないということを指摘をしていたわけでございますから、やはりいわゆる医師税制というものは全廃の方向で取り組むべき課題である、このように認識をいたしております。これについての大臣の御所見と、年限を切らなかったことについての御説明をいただきたい。
  137. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 五二%の概算経費率を法定いたしました。これは五十年の政府税調の言っておるとおりでございます。大蔵省もそれに近い数字を持っておって、これはきわめて適正な率だと思うのでございますが、五千万円以上のものについてこれを適用し、それから、四千万円以上のものについては政府税調の答申と同じであります。それ未満のものについて、少しきめ細かく一段階ふやして概算経費率の調整をやったという点が違うのでございますけれども、これはいつも言っていることでございますが、都市と農村とを問わず日夜国民の医療に非常に献身的に努力していただいているお医者様の特性と申しますか、そういうものを考慮いたしました特別控除の率でございますので、それと概算経費率を組み合わせてこれができたというふうに御理解をいただきたいのでございます。  それから、なぜ期限を切らなかったかということでございますが、これは、この御提案申し上げている程度の概算経費率ならばまずまずの経費率でありまして、来年、再来年すぐ変更する必要もないと思いますし、当分の間ということで御提案申し上げたということでございます。
  138. 西岡武夫

    西岡委員 それでは、いわゆる医師税制については将来にわたってもこれを全廃するという考えはないということでしょうか。
  139. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 この制度で概算経費率がきつ過ぎて困るという方は、青色申告でやっていただけば青色申告も利用できることになっておりまするから、私は、困る方はそれを御利用なさったらいいと思うのでございます。本来的に言えばあなたのおっしゃるように、法定の概算経費率なんというものはなしにして一々申告させてやったらいいという御意見かもしれませんけれども、お医者様の実態を見ていると、あの忙しい仕事に従事しておられるので、便利さから言えば法定概算経費率みたいなものを決めて御申告いただいた方が便利だということで、この制度をこれからも適用しようということで考えておる次第でございます。しかし将来、未来永劫にわたって変えないかというと、私どもはそんなことを言っているわけではございませんで、必要な時期が来れば、今日御提案申し上げているこの経費率が実勢にそぐわないようなことになれば、またそれはそのときで議論していただいていいのじゃないかと思うのでございまするが、それが何年先かはいまから予定して議論するわけにもまいりませんし、当分の間これでいって十分だ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  140. 西岡武夫

    西岡委員 私どもは、今回の是正というものが全くの骨抜きである、このように考えているわけです。すでに何回か各委員会指摘をされておりますように、会計検査院の五十一年度の報告の中でも科目別の経費率というものが示されているわけで、科目を離れて一律の法定経費率を当てはめるということには問題がある。内科とか外科とか整形外科、それぞれの専門の分野によって経費率は相当動く。それからもう一つは、収入規模による実際の経費率の差は、大臣のおっしゃるほどにはそんなに差はないので、差は小さいということも指摘をされているわけで、そういう点から言いますと、今度の政府の提案の改正というものは、改正の名に値しない、是正の名に値しないと言わざるを得ないわけで、租税特別措置、税の不公平な部分というものをできるだけなくしていくということがこれからの大きな課題であるということを考えるときに、その最大の課題である医師税制にこの程度しか手をつけられないということは、国民の税に対する公平感というものがなかなか回復しないと私どもは考えているわけで、その点について大臣はどのようにお考えか、お聞かせをいただきたい。
  141. 高橋元

    高橋(元)政府委員 確かに経費率の実態は、診療科目別、収入規模別、またその雇っておられる医者や看護婦さんの数ということによりまして経営形態別にもばらつきがあるというのは事実のようでございます。私どもが課税資料からいろいろ判定いたしておりますところでもそういうことが把握できますし、会計検査院の五十一年の課税状況についての五十二年の検査報告でもさような結果が出ておるわけでございます。  一つ考え方は、さように実際経費率が異なるとすれば、類型別に細かに法定するということがいいのじゃないか、そういう考え方があると思いますが、先ほど来大臣からもお答え申し上げておる五十年の政府税調の答申の基礎になっております四十九年の社会保険診療報酬課税の是正に関する答申というものの中では、そういう考え方をとっていないわけであります。平均でございますから、平均の実績概算経費率が五二といたしますと、それより高いものもあれば低いものもあるだろう。しかし、単一の診療科目のお医者さんもございますれば、複数の診療科目のお医者さんもございますわけで、そうしますと、診療科目別といってもどこまで区別するか。また自由診療の割合もそれぞれ違っていると思います。それを法定の細かい概算経費率というものを設けてやっていくということが実際的かどうか、そういうこともございますので、四十九年の社会保険診療報酬是正答申では、概括的に一本で決めるという考え方がいいんではないかということであります。  それから、診療報酬の収入規模別に経費の差がないはずである、これは、私どももいろいろやってみますと、非常に診療報酬が少ない方、またはかなり診療報酬の多い方、両端において経費率が高くなっているという状況がわかります。したがって、通常の診療報酬の水準であれば経費率はほぼ比例的であるというのが実態でございます。それに対して、五千万円以下の収入階層について経費率を高めているというのはおかしいではないかという御指摘かと思いますが、この点は先ほど大臣から申し上げておりますように、五千万円未満の収入階層部分につきましては、中小の保険医の公共性ということに対する配慮に基づく特別控除であるという観念を持っておりますので、それが中小規模のつまりスケールメリットに恵まれないお医者さん方が経費が高いということを反映しておるものではないわけであります。
  142. 西岡武夫

    西岡委員 それでは、少し具体的な数字でお尋ねをいたしますが、この政府の今度の改正案によります五千万円の収入の場合には、五二%の控除率ということになっておりますけれども、実際の控除率は何%になりますか、計算すれば。五二%ではないと考えますが、いかがですか。
  143. 高橋元

    高橋(元)政府委員 二千五百万円、三千万円、四千万円と、実際の経費率よりも高い特例経費を認めておりますので、したがいまして平年分で申し上げますと、五千万円の方に適用される経費率は六六・八でございます。
  144. 西岡武夫

    西岡委員 大臣、計算するとそうなるわけですね。五二%ではないのです、六六・八%になるわけです。これが一億の収入がある方の場合には、いまの計算でいきますと五九・四%というふうになる。ですから、収入が高くなればなるほど控除の絶対額というのは相当の金額が控除されるということになるわけで、いまの四千万円から五千万、六千万くらいのところが控除率から言えば非常に高くなっていく、そういうふうな数字になるわけです。ですから、政府の今回の是正と言われるものが実はそれほどの是正ではない。どうですか、大臣。
  145. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 それは五十年の政府税調の案でも五〇%になっておったわけです。多少刻みが変わってきましたけれども、下の方の収入金に対しては七二の法定経費率が適用になるからいまのような計算になることは当然です。しかもその分は、公共性ということで特別の控除を認めることにいたしておる、こういうわけでございます。
  146. 西岡武夫

    西岡委員 大臣がよって立つ基本的なお考えと、私が申し上げている基本的な認識というものが違っているわけですから、まあ大臣はこういう特例措置が存在する必要があるというお立場にどうも立っておられるようなんで、そこが基本的に食い違っておるわけですけれども、このいわゆる医師税制というものがスタートいたしました昭和二十九年当時の社会保険診療報酬についての一点単価というものが低いところで定められていた、そういうようなところから社会保険を主たる収入とする医師の所得が非常に低い、これを埋め合わせるというような意味もいわゆる医師税制というものは持っていた。ところが、その後の経緯をずっと見てみますと、昭和二十九年から今日までのところをずっととってみますと、昭和二十九年を一として、昭和五十二年の給与所得者の場合には、昭和二十九年から五十二年までの間に所得が大体十倍ぐらいになっている、ところが医療保健業の収入というものは二十八・五倍くらいになっておる、これだけの差がついてきている。こういうような背景を考えれば、昭和二十九年の当時にスタートをしたいわゆる医師税制の持っていた意味というものは大きく変わってきているのだ。これについては大臣はどう御認識になりますか。
  147. 高橋元

    高橋(元)政府委員 大臣からお答えのあります前に、その点につきましての従来の検討の経緯を申し上げておきたいと思います。  いまお示しになりましたように、二十九年に現行の課税特例が議員立法によってできたわけでございますが、その際のこの規定の設けられた趣旨は、医者に一定の所得水準を保障するために単価を補てんする役割りを持って出発したということにあったかと思います。しかしその後、医業を営まれる方と一般の給与所得者または事業所得者、それぞれ所得の伸び方が違ってまいったことは事実でございますから、そうなってまいりますと、四十九年当時の時点でございますが、むしろ各種の観点からの社会保険医に対する特別の配慮という意味が変質してきた、この七二%のいままでの租税特別措置法二十六条の意味というものがそういうふうに変質してきたということ、そうなりますと、七二%という必要経費率一本の定め方ではこのような考え方が明確な形であらわされない、むしろ必要経費率が甘過ぎるのではないかという批判の対象になってしまっておる、社会保険医の特殊な地位に対して何らかの配慮をするのであれば、そういう趣旨のものとして必要経費率とは別個に認識するということが必要ではないか、そういうことによって課税上の特例措置の持っている意味というものが社会保険医に対する積極的な社会的評価を反映するものになっていくべきである、これが税制調査会の四十九年当時における認識であります。  そういう特別控除を考えてまいります場合に、先ほど大臣からお答えもありますように、大都市から僻地に至るまで広く地域医療を担当して日夜住民の健康維持に努めておる中小規模の診療所に重点的に措置する、そういう形の特別控除に限定する、五千万を超えるような社会保険診療報酬については実額概算経費率というものによることにする、その組み合わせによることが常識的だ、そういうことが、ただいま西岡委員からお話のありました社会保険診療報酬についての税制調査会の五十年案、それによっておりますところの今回御提案しております改正案の中で、社会保険医の公共性に対する特別の配慮と申し上げている部分に対する思想的な基盤ということであると思います。
  148. 西岡武夫

    西岡委員 どうも納得できない御説明なんですが、いま御引用になりました税制調査会の五十年度の答申には、審議の過程において、現行の特例と同じ七二%の控除率が残されており、この点に不満を感ずるとの意見が強く主張されたが、当調査会としては、この際は長年の懸案となっていた特例是正の第一歩を踏み出すことを最優先に考えるべきであり、そうした観点からこの案を答申したんだというふうなことが付記されているわけで、こういうことを考えますと、五十年の答申自体が多くの問題を抱えていたということを調査会自身の答申の中に述べられているわけでありまして、これは大臣の御認識というのは間違っているのではないか、私はこう思うわけです。  先ほどから繰り返し申し上げますように、政府が一般消費税の導入ということに踏み切らざるを得ないというふうに判断をされている財政の状態である。それを考えれば、この医師税制にこの程度しか手をつけ切らないでいて、しかも年限も切らずに、他のいわゆる不公平な税制と言われている各種の特例の税制というものを整理するということは不可能なのではないか。それが不可能であるとすれば、国民の皆さん方に一般消費税の導入ということを説得するのにはこれはとても迫力に欠けるのではないか、このように考えるわけです。大臣いかがでしょう。
  149. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 五十年の答申の審議の過程におきましては、これはいろいろな意見があることは当然でございまするけれども、答申の物の考え方として、先ほど来私ども申し上げましたような実際の経費率とそれから特別控除を組み合わせた制度をとるべきだという考え方をとり、四千万円以上のものについてそれが実現しておるわけでございまして、西岡さんも御承知のとおり、それこそ夜間、休日診療もあり、集団健診も引き受け、学校医も引き受けさせられ、またそれ相応の給与にも恵まれていない、あるいは救急医療等もやらされておるのが実態でございまして、これは診療のレベルが落ちるなんということになったらそれこそ社会的な大きな問題になる。そういったものに対する特別の控除を認めておるわけでございますから、私はこの程度はしかるべきではないかと考えるわけでございます。むしろお医者様の中では、これはとてもかなわぬのだ。とにかく最近は診療も進んでまいりましたから、いろいろな特殊の高価な診療機械を入れておりまするけれども、これは概算経費率を使っておる間は償却できないんですから、そういったものの償却を含めてやらざるを得ないでしょうし、青色申告の方が有利だという人もあるくらいでございますから、私は、非常に骨抜きの甘い案だというのはいかがかと思うのでございます。きわめて現実に即した適正な案と私どもは考えて提出いたしておる次第でございます。現実問題として、十万人がこの七二の概算経費率をいままで適用対象としてきたが、従来より重くなるお医者様が半分あるとして、一人二百万の税負担増を現実にしょうわけでございまするから、決して甘い負担とは私ども考えておりません。
  150. 西岡武夫

    西岡委員 大臣がいま、青色申告の方がいいというお医者さんも出てきているということをまさにおっしゃったわけで、それならこういう特例措置というのはなくしちゃったらいいんじゃないですか。
  151. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 そういうことができる人はそれをおやりになるのでしょうけれども、やっぱり診療の方が忙しくて、カード書くのに手を追われちゃってとてもそんな暇ありませんよというお医者様が現実にたくさんあることも事実でございます。やはり現実に即してこういう制度を認めて、まあ多少の誤差はあるけれども、手を省いて簡便にやった方がいいとおっしゃる方は、この概算経費率をお使いください、こういうことでございます。
  152. 西岡武夫

    西岡委員 大臣、私どもがあえてこの医師税制の問題を取り上げておりますのは、税の公平感というものを回復しなければいけない、そのためには、まだまだ多くの取り上げるべきことがあるわけです。資産所得の総合化という問題もあるわけでして、こうした問題に取り組んでいくためにも、医師税制についてはこれを是正していく。全廃の方向で——もちろん段階的にある程度の期間を置く必要があろうかと思います。これは診療報酬の問題にも多くの問題が残されておりますし、保険制度自体にも多くの問題があることは私どもも十分認識をしているわけでございますから、それとの関連の中で一定の期間は必要であろう。しかしいずれ全廃の方向でこれを進めていくべきである。そうしなければ、一般消費税の導入という、全体の国民に負担を求めていくという新しい税の導入などということはとてもできるものではない。いわば政府の立場に立ってといいましょうか、そういう立場からこういう御質問を申し上げているわけでございまして、大臣の先ほどからの紋切り型の答弁ではどうも納得ができない。いかがですか。
  153. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 西岡さんのおっしゃること、よくわかるのです。とにかくシャウプ税制以来、直接税中心で今日まで高度成長の上にあぐらをかいてやってきた日本の財政経済を大きく切りかえようということで、今度一般消費税というものが取り上げられることになったんですが、まあそういったことからすれば、この際、歳入歳出の全般にわたって見直しをなぜやらぬかとおっしゃる気持ちはよくわかるのです。私どもも極力そういう方向で進まなければいかぬ、そのために必要なときは蛮勇をふるうべきだと考えておりますが、とにかく一遍に何もかも短期間にやっちまえよというわけにいかぬものですから、一つずつ着実に漸を追って問題を片づけてほぐしていこう、こういうことをいまやっているようなことでございまして、五十五年度一般消費税を導入するということになれば、またそのときはいろいろな面で新しい提案を申し上げ、御審議をいただき、御協力をいただかなければならぬと思っておりますので、ひとつどうぞよろしく……。
  154. 西岡武夫

    西岡委員 大臣のいまのお話は、こういうことでございますか。五十五年度一般消費税の導入を具体的に考えるということになれば、医師税制も含めていわゆる不公平税制等についても、さらにその是正を前進させるという案をあわせて提案するという意味でおっしゃったわけですか。
  155. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 そこまでは言ってないんです、西岡さん。これは先ほど来繰り返し申し上げておりますように、この案で私どもは適正な、世間ではいろいろなことを言う人もありますけれども、適正な概算経費率だろう、当分の間はこれでやってまいります、しかし、検討が十分済んでいないいろいろなほかの問題もありますから、それは歳入歳出両面にわたって必要なものはどんどん見直しをやって御審議をいただきますと、こういう意味でございます。
  156. 西岡武夫

    西岡委員 どうも大臣の御答弁は納得ができません。こういうことでは、またその程度のお考えでは、五十五年度に政府がお考えになっている一般消費税の導入というわけにはいかないのではないか、国民が納得しないと私は思います。新自由クラブとしても、このような状況で、しかもその他の行政改革、歳出の削減、不要不急の経費の見直し等がまた一方においてもほとんど進んでいないということとあわせて考えると、現状で一般消費税の導入には反対せざるを得ない。しかし財政の状況というものは、これまでも国会でたびたび議論をされてきておりますように、そう簡単に行政改革、歳出の削減、そうしたことで財政危機を乗り切るということにはなかなかいかないのではないかという実態を考えるときに、やはりいまるる申し上げてきたように、税の公正というものを確保するというために思い切った大手術をすべきではないかということを、先ほどから医師税制を例にとってお話をしているわけです。  利子配当分離課税の問題にしても、まあ五十六年から見直しをするということになっているわけですけれども、しかし少額貯蓄の非課税というような措置についても、先ほど例に挙げました日本経済調査協議会の提案の中にも、こうしたものもこの際はあわせて廃止をして、そして一定限度の元本についての利子に対する税額を所得税から控除して還付する方式でこれにかわる措置としたらいいのではないかというような具体的な提案等もあっております。そういうようなことで、租税特別措置というものは原則としてこれは全廃するんだというのがだんだん世論になってきている。そういうことを考えると、医師税制をこの程度しか手を加えないで、しかも他の特別の措置にはかなり年限、時限が記されているものがあるわけですけれども、年限すらも切らない。ということは、いつ見直すかということについてもその姿勢も示さないということでは、大臣、これは納得がいかないのではないですか。くどいようですが、重ねて御答弁いただきたいのです。
  157. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 御意見はよくわかります。わかりますが、私どもとしては、二年たったら三年たったらということで期限を切ってやるほどの暫定的な制度であるとは考えてないわけでございまして、必要なときがあればそれはそのときにまた検討すべきでございまするけれども、時限的にこれを考える必要はない、こういうことでございます。
  158. 西岡武夫

    西岡委員 大臣、言っていることはよくわかります、理解できますと言われるのが一番困るわけですね。理解できないということで御反論になるならば議論が成り立つわけですけれども、おっしゃることはごもっともです、しかしいたしませんというのでは全く話にならないわけでして、それはやはり年限くらいは切る、具体的に申しますと、三年なら三年、そこで全廃をするのか手直しをするのか考えるというぐらいのことは、当然いままでのいわゆる医師税制をめぐる論議の経緯からいっても、それくらいのことをやるべきではないんですか、いかがですか。
  159. 金子一平

    ○金子(一)国務大臣 その気持ちはありません。
  160. 西岡武夫

    西岡委員 これ以上前進した答弁を期待できないようでございますので、他の租税特別措置についても、医師税制にこの程度しか手をつけ切らないのでは、とても根本的な見直しはできないと私どもは考えているわけで、それだけにこの問題に特に的をしぼって大臣の御所見を承ったわけですけれども、とてもこういういまの大臣の御答弁のようなことでは財政の再建はおぼつかないのではないかという感想を申し上げまして、私の質問を終わります。
  161. 加藤六月

    加藤委員長 次回は、明二十八日水曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会