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伊賀参考人 日本地熱調査会の
専務理事をしております
伊賀でございます。
地熱資源に関しましては、従来、この
開発促進のための議員さん
たちによる
懇談会などもございましたし、そういう席上でたびたびお話し申し上げましたり、あるいは私の
意見を申し述べてきたわけでありますが、今日になりますとまた一段と
開発の
必要性を痛感するようになりました。
実は、
地熱資源を
産業方面といいますか、
発電に利用しようというような
考え方を起こしましたのは、もういまから七十年も前でありまして、一九〇四年に
イタリアで
地熱を利用して電灯をともしております。しかし、それから七十年の間、なかなか進まなかったのであります。
発電方面に今日のように
地熱を利用しようということで関心が持たれるようになりましたのは、
わが国では一九二六年であります。これは、当時
東京電燈の
研究所長をしておりました
太刀川平治博士が別府で実験したものでありますが、そのときすでに
イタリアではもう数千キロワットの
地熱発電をやっておりました。でありますから、特に新しいものではないのでありますが、しかし今日のような
エネルギー危機のときになってきますと、きょうにもあすにも
石油を
節約するための
対策が必要だということになってまいりまして、私個人の
考えばかりではございませんが、私はその
対策として、本当に手近にありますものは、いま
織田さんのお話しになりました
水力とそれから
地熱であろうと
考えておるのであります。ほかに
石油に代替する
エネルギー資源としまして、
太陽エネルギー、海洋の
エネルギー、風力などというようなものが言われてはおりますが、これはなかなかきょうあすすぐに役に立つというところまではまだ
技術が発達しておりません。ところが、
地熱におきましては、これは幸いといいますか、あるいはいろんな難問題が伴ってくるのでありますが、
日本はちょうど
地熱地帯の真上にありまして、地震も火山も一緒に恵まれておるわけであります。こういう
資源をどれくらい
開発できるであろうかということにつきましては、
さきに
産業技術審議会の中の
エネルギー特別部会で御
審議になりまして、このときは私
たちも後ろからお手伝いしたのでありますが、二〇〇〇年まで、今世紀の終わりまでには現在の
技術と現在の
方法をもって二千万キロワットは
開発できる、新
技術及び新
方法を合わせれば四千八百万キロワットは
開発できる。これはちょうどそのころの
日本の需要せられます
電気の一五%ぐらいに当たるであろう、こういう想定が
報告せられておりまして、今日も一般にそれがいろんな
方面で用いられておるのであります。
私は、いま申しました二千万キロワット、四千八百万キロワットというのは最小の
数字でありまして、もう少し大きいものが期待せられるのであると確信しております。といいますのは、ある
学者は、いや
日本の
包蔵地熱資源は一億をはるかに超すであろうというようなことを言っておるくらいでありまして、まあいつも私は、今日無尽蔵の
地熱資源を
わが国は持っておる、こう言っておるのでありますが、
開発の仕方によりましては、本当に無尽蔵の
資源を
開発することができると思うのであります。
しかし、これにつきましてはいろいろの
異論があります。
異論といいますか、あるいは反対があります。その一番初めに言われましたものは公害問題であります。
地熱を
開発するといろいろと公害が起きてくるではないか。たとえば九州の北部で
開発しました
地熱からは
砒素がたくさんに出てきたじゃないか。あるいは東北の八幡平で
開発しました
地熱からも
砒素が出てきました。それから、ガスからは
硫化水素が出てくるではないかというような問題がありましたが、これらの問題は、私は確信を持って今日の
技術で解決することができる問題だと思うのであります。
それからもう
一つは、
地熱発電はやってもいいが、余りに小型ではないかというような非難がございました。そうであります。今日
世界で一番大きい
地熱発電機を持っておるのは
アメリカでありますが、これはわずかに十一万キロであります。
日本で一番大きい
発電機は五万キロであります。
あとはみんな小さいのであります。しかし小さいからだめだというわけにはいかないのでありまして、小さいものをたくさんつくればいいのでありまして、十万キロの
発電所を百カ所つくれば一千万キロワットになるわけであります。
もう
一ついろいろと問題にせられますのは環境問題であります。環境問題を
考えます場合には、
二つに分けて
考えられておると思うのであります。
一つは、いま申しました公害問題、これは私は
技術的に解決できる問題であると思いますが、もう
一つは
景観の問題であります。この
景観の問題となりますと、これは私
たちの
考えと、そういう
方面を専門に
考えていらっしゃる
方々とはどうも線が交差いたしませんで、
平行線をたどっておるようであります。しかし、現在
わが国では、
数字で申しますと
地熱発電所が六カ所実際に運転しております。これはもう
需要家に
電力を供給しております。その
容量は、大体
設備容量が約十七万キロでありまして、認可せられております
容量が十五万二千六百キロワットということになっておりまして、いま
工事中のものが五万キロ、これは北海道でありますが、あります。
海外の事情を見ますと、現在までに
地熱を
開発して
発電しております国が、
わが国を含めまして八カ国あるのであります。国の名前を言ってみますと、
イタリア、
アメリカ、ニュージーランド、メキシコ、エルサルバドル、フィリピン、それにソ連、これで七つになりますか、これに
日本を加えて八カ国あるわけであります。その総
容量はやはりまだ非常に少ないのでありまして、
わが国を合わせて約百五十万キロワットしかありません。しかし
各国ともにいま非常に力を入れておるのでありまして、
工事中の
発電所が、
容量にいたしまして百三十五万キロもあります。
工事をしております
発電機の数及び
開発を
決定しまして、そして機械を発注しました数が二十四個あるのでありますが、ここでちょっとつけ加えて申し上げますと、この二十四個の
発電機のうち二個だけはいま
アメリカでつくっておりますが、
あとの二十二個は全部
日本からの
輸出品でありまして、そして据えつけ中のもの及び工場で製作中のものであります。
地熱発電の
一つの利点と言うとおかしいのでありますが、
エネルギー問題を離れて
わが国の
製造工業にこんなに貢献しておるわけであります。
そういうふうに数えてきますと、
地熱発電をやらないことがおかしいのでありますが、どうして今日まで
わが国では
地熱発電の進歩が見られないのであろうかということを私
たちいろいろと検討しておるのでありますが、これには三つ、四つの理由を数え上げることができると思うのであります。
その第一は、やはり何といいましても
地熱資源に対する基礎的な
資料が非常に乏しいということであります。
水力は、現在、
わが国で二千二、三百万キロワット
発電所がありますが、これだけの
発電所をつくるために、
政府は、明治の末年から
昭和の三十年代に至りますまで、約五十年間にわたって非常にお金をかけて、膨大な
水力調査をしております。その
調査報告は膨大なものができておりまして、それを基礎にして今日の
水力発電所が
開発せられたのであります。ところが、
地熱におきましては、
政府でいろいろと
調査をお始めになってはおりますし、また、すでに十年以上の
調査結果も出てはおりますが、
考えてみますと、
水力に比べましてまことに細々とした
調査でありますし、特に
水力と違って地の下の目に見えないところの
調査でありますから、これは困難なことは当然であります。したがいまして、今日、
開発しようと思いますときに、本当の頼りになる
資料がないのでありまして、この仕事こそぜひ国家が、
政府ができるだけの費用を投じて、できるだけ早く
資料をつくり上げていただきたい、こういうふうに私は
考えておる次第であります。そのために、ひとつ国会におかれましても、できるだけ多額の
調査費用を予算に計上していただきたいと思っております。
第二の問題は、現在実際に
開発の手をつけたいのであるが、手がつけられないその理由の
一つは、
わが国の
地熱地帯が四分の三くらいは国立公園の中にありまして、国立公園の中は一切手がつけられない、これは
調査さえもなかなか認められないのであります。無論、
調査しますときには穴を掘ったりあるいは電線を引いたりしなければなりませんから、一時的には
景観を害することもあるとは思いますが、しかし、現在のところでは非常に困難である。
もう
一つは、
地熱に対する統一した法律と申しますか、監督あるいは指導の法律がございませんので、各省庁間を駆けめぐって手続しなければ、なかなか
調査にも手がつけられないという点であります。こういう問題はわれわれ民間人が幾ら騒いでも容易に改善せられないのでありまして、どうか国として大局的な立場から、
エネルギー問題と公園問題とはどうあるべきかという御検討をお願いいたしたいと思っております。
第三には資金の問題でありまして、これは
アメリカなどの実情を見、あるいはニュージーランドなどの実情を見ますと、資金のために
開発になかなか手がつけられないということは、
わが国ほど困難を感じておらないようであります。というのは、
アメリカなどでは成功払いといいますか、そういうような助成制度がありますし、国は民間の研究
調査に対しても非常に多額の、
日本で予算に組まれております金額とはけた違いの金額を民間に与えております。
ちなみに申し上げますと、いま
世界で
地熱開発をしたいと
考えておる国が二十数カ国私
たちのところに情報が集まっておるのでありますが、そのうちで
開発を民間だけに任しておる国は
アメリカと
日本だけであります。しかし
アメリカは、いま申しますように非常に力強い
政府の助成をしておりますが、
日本ではまだそういう助成が行われておりません。私はぜひ何かの形で
開発の助成、これは金融の問題もありますし、あるいは純粋な助成の問題もあると思いますが、お願いいたしたいと思っておる次第であります。
今日、私
たちは
石油を
節約しなければならない、いま使っておるものの五%はぜひというような要請を受けておりまして、私
たちはどうしてもやらなければならないとは思いますが、しかし
地熱発電では、百万キロワットの
地熱発電ができるとしますと二百万キロリットルの年間の油に相当する
発電をすることができます。ですから、仮にここ十年二十年の間に一千万キロワットの
地熱発電所ができるとしますならば、二千万キロリットルの油の輸入を抑えることができるのであります。
そういう意味におきましても、私はぜひとも一般の
方々、特に国会の
方々の御協力を得てこの
開発事業に尽くしていきたいと
考えておる次第でございます。どうもありがとうございました。