○工藤(晃)
委員(共)
総理に伺いますが、
日本共産党の
経済協力についての立場というのは、大きく言えば新国際
経済秩序を目指すということがあります。もちろんこの新国際
経済秩序を目指すということは、
発展途上国、非同盟諸国が進めてきた、大国支配中心の旧国際
経済秩序を直して、どの民族も平等、公平の新しい
経済秩序に移るという
方向でありますが、同時に、それだけにとどまらず、
日本を含めて発達した資本主義国
相互間の
経済主権も守られるようにすべきであるという内容を特に言っております。さらに
経済協力の問題については、われわれの
日本共産党の五原則というのを出しております。これは後で申し上げることです。
そういうことを前提に置きまして、これまでの
経済協力のあり方について一、二点伺いたいわけであります。
先ほども
経済協力にいろいろねじれがあったということを言われました。これは非常に興味深い
指摘だと思いました。しかし、このねじれとは何かということをもう少し深刻に検討すべきではないかということを言いたいのであります。
幾つかの面がありますが、その
一つの問題は、戦後の
日本の
経済協力というのは、日米安保条約ができて、改定され、日米
経済協力というのを進められた、その
一つの枠組みの中で推進されてきた。それで、いつも背後にアメリカのアジア戦略というものがあって、それへの
日本政府の
協力要請がありまして、その関連であるねじれがっくり出されたのではないか、こういうふうに見るわけであります。
これを証明するものは幾つもありますが、五十二
年度の
経済協力基金の直接借款を見ますと、韓国、フィリピン、タイ、そしてインドネシア、四カ国だけで六二・五%と著しい集中が見られます。そしてこの四カ国集中ということも、
年度別、国別承諾
実績で見ますと、韓国は六六年からずっとふえてきますし、インドネシアは六八年からずっとふえてきます。フィリピンは七一年から、タイはその前の六九年であります。そして、以上集中四カ国はそうでありますが、南ベトナムに対しましては、七二年から七四年にかけて、そして七五年の四月に南ベトナムが解放勢力によって解放された直前まで
日本政府が
援助を行う、こういう
関係もあったわけであります。
いま私は、特に、韓国は六六年からとかいろいろ年代を申し上げましたが、これは歴史的にどういうことがたどれるであろうか。
経済協力基金ができたのは日米安保条約改定を受けてでありますが、特にその後、非常に劇的に
日本の
政府の
援助が進むのは、六四年、六五年、六六年であります。そうして六四年について言いますと、トンキン湾事件がありまして、アメリカは北爆を始める。その前後に、これは六四年五月、時のエマーソン駐日米臨時代理大使のころでありますが、そのとき、いわゆる対南ベトナム
援助要請をそのときの大平外相にされて、その後実施が進みます。それからまた、六四年の九月のことになりますが、ウィリアム・P・バンディー米国務次官補が来まして、そこで特に日韓正常化が極東の平和のために必要だということで非常に促進され、そしてそれから急速に進み、日韓
経済協力が始まるわけであります。それから劇的だと言った六五年は、四月にジョンソン米大統領がジョンズホプキンズ大学でジョンズホプキンズ方式なるものを打ち出して、その筋書き、シナリオに沿って生まれたのが御存じのようにアジア開発銀行でありますが、同時にそのころから急激に
援助が始まったというのが、先ほどの韓国などの例であります。
そして、インドネシアについて言いますと、決定的だったのは例の九・三〇事件の後にアメリカのかつての国防長官であるマクナマラ氏が世銀総裁になりまして、これは六八年六月
日本に参りまして、ともかく
日本はインドネシアに対してわずか一億一千万ドルの
援助で、東南アジアの安定と平和が買えると思っているのかというきつい言葉を吐いたり、あの当時の情勢がそのまま進めばインドネシアは完全に赤化していた、その時点において西側寄りの政権をつくろうと思えば数百億ドルあるいは数千億ドルの
資金を必要としただろう、一億一千万ドルは微々たるものである、こういうことを言われたというのが、当時
政府筋の話を聞いた人の、ある講演の議事録から私は見たことを覚えているわけであります。
こうしてインドネシアも始まる。そしてまた後は、ニクソン戦略のベトナム化ということで、特に東南アジア、フィリピン、タイ、そこらへの
援助が急速に広がるわけです。
以上が、四カ国に集中しているとか、そういうことでありますが、
総理がせっかくねじれがあって、これから
援助が本格的だと言われた以上、そういう戦後のアメリカのアジア戦略の中に
相当どっぷりつかり込んできたような形での
援助のやり方についても、ここらで
日本として反省し、検討しということをやらないと、これから量的にふやそうとしても、それが結局アジア諸民族から、本当の
意味での新国際
経済秩序の前進にならないという批判を浴びる
原因になるのではないだろうか。その点について、首相は歴史の人でもありますし、それぞれ大事な場面におられたわけでありますから、その問題につきまして御意見を伺いたいと思います。