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小坂国務大臣 いま
野中委員の御
指摘になりました諸点は、確かにわれわれの
経済計画にとりましてはなかなか重要な問題を含んでおると思います。特に
OPECの
値上げが繰り上げられたという
事態は、われわれとしましては
十分物価に対する考慮、そしてまた
イランの
政治情勢の
変化は、われわれの
石油消費に関連した問題として慎重にこれを見、かつその
対策を講じていかなければなりません。
しかし、
物価の問題で特に申し上げたいことは、今回の
値上げについてでありますが、われわれは五十四年度の
計画の際に、年率約一〇%の
石油の
値上げをすでに織り込んでありまして、それに基づいて
卸売物価一・六%、
消費者物価四・九という数字を出しているわけであります。今回決まりましたのは、その
影響を考えますと、これらの
物価に対する
影響は〇・一%
程度の
押し上げ要因であるということ、また同時に、これのもたらす
経済成長への
影響というものは、きわめて微弱であるというふうに考えます。ただ問題は、今回の
OPECにおきまして、
プレミアムは各
供給国の自由な裁量に任せるということになっておりまして、この
プレミアムがどうなるかということがいまだ明確になっておりません。われわれとしましては、希望しないことでありますけれども、
プレミアムが
バレル当たり一ドル上がるとすることを試算してみたわけでありますが、一ドル一バレル
当たりプレミアムが上乗せされますと、
卸売物価に対しては〇・四、
消費者物価に対しては〇・二
程度の
押し上げ要因になるということと、
国際収支において約十六億ドルの支出が増加するということ、また
経済成長率に対して〇・一五%
程度の低下が見られるということ、このような試算を持っておりますが、まだこの
プレミアムの実現までに至っておらないわけでありますから、これらのことを一応考えましても、
現時点においては、この
程度であるならば
経済計画の見通しの改変をする必要は、いまのところないと考えておるわけであります。
それからまた、
円安ということが言われておりますが、御
参考までに申し上げたいことは、昨年の一月から十二月までの
日本の円の対
ドルレートを、月別の
算術平均を出しますと、二百十円になっております。
現状において確かに二百十三、四円が
円ドルレートでありますが、基本的に申し上げるならば、昨年一年間の
平均レート二百十円に対して、さほど大きな
円安にはなっておらないという事実も見逃してはならないと思うのであります。しかし現実に対しましては、昨年の大幅な
円高によりまして、約四兆円近い
円高利益が計上されておるであろうとわれわれは推定しておるわけでございまして、こうした
事態がなくなるということは、確かに
物価に対する
影響も相当あるというふうに考えなければなりません。しかし、われわれとしましては、これに対しまして特に二月の二十六日来、
政府の総機関を動員いたしまして、
物価対策に対する
総合的推進ということを閣議で決定して、全省庁を挙げて
物価担当官会議の活動によって、
便乗値上げ等に対しては、極力これを抑えるという方式をいまとっておりまして、四月五日には重ねて第二回のフォローアップをいたしておるわけであります。
私は、このような一面からすると、
物価の、特に
卸売物価の昨今の動静から見て、やや
物価高への火がついてきているという
警戒信号は十分わきまえておるわけでありますが、これに対して、
政府は
早目早目に、さらに
個別商品にまでわたって、いまこの
騰勢についてのチェックをしているところであります。同時にまた
土地対策あるいはまたその他につきましても、
金融面からのこれの
値上げ抑制等の
措置もとっておるところでございます。
同時にまた、もう
一つ申し上げたいことは、こうした海外的な
要因による
物価上昇というものが、
可能性として十分わかる
時点になってきておりますので、
物価対策に対しましては、特段の行政的な
配慮と
努力を求めなくてはならないと思っております。
同時にまた、もう
一つには、
日本の
工業生産水準がまだ
昭和四十六年
程度、つまり過去において最も低い
操業率の時代と、いまようやく肩を並べる
程度になったところでありまして、この面から見ますると、
生産余力についてはなお相当大幅なものが残っておる。同時にまた、この六年間のオイルショック以後の
不況を通じまして、
日本の
産業界には非常に大きな
コスト合理化と申しましょうか、あるいは
生産性の
向上等の各種の手段が蓄積されておるのでございまして、
物価対策には民間の
経済界の
方々の
協力もぜひ得て、単に
値上がりをたたいていくということだけでなしに、むしろ積極的に
生産性向上によって
コスト上昇を吸収してもらうということを、ぜひ図っていかなければならないと私は思うのであります。
もう
一つは、
石油に関連してでありますが、われわれはこの際、
日本の
石油の
消費量を縮減していくということ、つまり先般の三月一日、二日に行われました
IEAの決議に基づきまして、
日本の
石油消費量を五%節減するという方向を決定いたしております。概算でありますが、約千五百万キロリットルの
節約を図ろうということをやっておるわけでありまして、こうしたことに基づいて、
OPECのいわゆる
プレミアムをなるべく低く抑えるという
努力もいたしておるわけでございます。
いずれにいたしましても、そうしたことを現在やっておることに加えて、
先ほど御
指摘のございました
日米関係の
貿易の摩擦、これにつきましても、われわれは米国のみならず
西欧諸国に対しても、最も有力な対抗と申しますか、有力な方法として
内需を拡大して、
日本の
経済体質そのものを
輸出貿易体制を基準にしたものから、
内需拡大型に転換するということをいたすことによって、
経常収支の
黒字幅を縮減するということも、本年に入りましてから三カ月間引き続いて、相当な成果が上がっております。
そうしたようなことごとをいろいろと踏まえてみまして、
現時点において決定的な問題にはわれわれはまだ逢着しておらない。いまいろいろな
努力を積み重ねることによって、今日われわれが
国民に提示しております
経済計画は十分達成できるものと考えて、今後も
努力をいたしたいと思っております。