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1979-04-10 第87回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年四月十日(火曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 野中 英二君 理事 武藤 嘉文君    理事 山下 徳夫君 理事 渡部 恒三君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 岡本 富夫君 理事 宮田 早苗君       越智 通雄君    鹿野 道彦君       始関 伊平君    島村 宜伸君       中西 啓介君    原田昇左右君       前田治一郎君    渡辺 秀央君       板川 正吾君    後藤  茂君       上坂  昇君    渋沢 利久君       清水  勇君    田口 一男君       中村 重光君    長田 武士君       玉城 栄一君    宮井 泰良君       工藤  晃君    大成 正雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂徳三郎君  出席政府委員         経済企画政務次         官       野田  毅君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁調整         局審議官    廣江 運弘君         経済企画庁総合         計画局長    喜多村治雄君         通商産業政務次         官       中島源太郎君         通商産業省通商         政策局次長   高橋  清君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       児玉 勝臣君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  武智 敏夫君         行政管理庁行政         管理局管理官  八木 俊道君         経済企画庁調整         局経済協力第二         課長      福士 昌寿君         外務大臣官房領         事移住部領事第         一課長     池田 右二君         外務省経済協力         局外務参事官  大鷹  弘君         外務省国際連合         局外務参事官  中村 泰三君         農林水産省経済         局国際部長   志村  純君         水産庁海洋漁業         部参事官    斉藤 達夫君         通商産業省通商         政策局経済協力         部長      小長 啓一君         通商産業省通商         政策局経済協力         部経済協力課長 野々内 隆君         参  考  人         (海外経済協力         基金総裁)   石原 周夫君         参  考  人         (海外経済協力         基金理事)   結城  茂君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 三月三十日  特定ガス消費機器設置工事の監督に関する法  律案内閣提出第四九号)(参議院送付) 同月二十八日  出版物再販制廃止反対に関する請願井上一  成君紹介)(第二三八三号)  同(多賀谷真稔紹介)(第二三八四号)  同(井上普方紹介)(第二四一五号)  同(池田克也紹介)(第二四一六号)  同(曽祢益紹介)(第二四一七号)  同(岩垂寿喜男紹介)(第二四六四号)  同外一件(久保等紹介)(第二四六五号)  同(上坂昇紹介)(第二四六六号)  同(佐野進紹介)(第二四六七号)  同外一件(島田琢郎紹介)(第二四六八号)  同外一件(新村勝雄紹介)(第二四六九号)  同(田口一男紹介)(第二四七〇号)  同(田畑政一郎紹介)(第二四七一号)  同(高沢寅男紹介)(第二四七二号)  同(広瀬秀吉紹介)(第二四七三号)  同外一件(古川喜一紹介)(第二四七四号)  同(山花貞夫紹介)(第二四七五号)  同(山本政弘紹介)(第二四七六号)  同(青山丘紹介)(第二五〇六号)  同(石橋政嗣君紹介)(第二五〇七号)  同外二件(大塚雄司紹介)(第二五〇八号)  同(春日一幸紹介)(第二五〇九号)  同(高橋高望紹介)(第二五一〇号)  同(玉置一弥紹介)(第二五一一号)  同(新村勝雄紹介)(第二五一二号)  同(中野寛成君紹介)(第二五一三号)  同(中村正雄紹介)(第二五一四号)  同(西田八郎紹介)(第二五一五号)  同(西村章三紹介)(第二五一六号)  同(古川喜一紹介)(第二五一七号)  同(山田耻目君紹介)(第二五一八号)  同(吉田之久君紹介)(第二五一九号)  同(渡辺三郎紹介)(第二五二〇号)  同(渡辺朗紹介)(第二五二一号) 四月三日  出版物再販制廃止反対に関する請願石田幸  四郎君紹介)(第二五六〇号)  同(石野久男紹介)(第二五六一号)  同(内海英男紹介)(第二五六二号)  同(枝村要作紹介)(第二五六三号)  同(小川仁一紹介)(第二五六四号)  同(栗林三郎紹介)(第二五六五号)  同外一件(島本虎三紹介)(第二五六六号)  同(清水勇紹介)(第二五六七号)  同外一件(楢崎弥之助紹介)(第二五六八号)  同(馬場猪太郎紹介)(第二五六九号)  同(日野市朗紹介)(第二五七〇号)  同(美濃政市紹介)(第二五七一号)  同(渡辺芳男紹介)(第二五七二号)  同(井上泉紹介)(第二六二七号)  同(池田克也紹介)(第二六二八号)  同(稲富稜人君紹介)(第二六二九号)  同(岡田春夫紹介)(第二六三〇号)  同(河村勝紹介)(第二六三一号)  同(久保等紹介)(第二六三二号)  同(小平忠紹介)(第二六三三号)  同(新村勝雄紹介)(第二六三四号)  同外七十七件(鈴木強紹介)(第二六三五号)  同(竹本孫一紹介)(第二六三六号)  同(只松祐治紹介)(第二六三七号)  同(中馬弘毅紹介)(第二六三八号)  同(塚田庄平紹介)(第二六三九号)  同(塚本三郎紹介)(第二六四〇号)  同(永末英一紹介)(第二六四一号)  同(原茂紹介)(第二六四二号)  同(古川喜一紹介)(第二六四三号)  同(宮田早苗紹介)(第二六四四号)  同(山花貞夫紹介)(第二六四五号)  同外一件(横山利秋紹介)(第二六四六号)  同(渡辺武三紹介)(第二六四七号)  同(受田新吉紹介)(第二六九八号)  同(大内啓伍紹介)(第二六九九号)  同(神田厚紹介)(第二七〇〇号)  同(小宮武喜紹介)(第二七〇一号)  同(曽祢益紹介)(第二七〇二号)  同(山本悌二郎紹介)(第二七〇三号)  同(米沢隆紹介)(第二七〇四号)  同(和田耕作紹介)(第二七〇五号) 同月四日  石岡アルコール工場現行体制存続に関する請  願(登坂重次郎紹介)(第二八五〇号)  出版物再販制廃止反対に関する請願伊賀定  盛君紹介)(第二八九四号)  同(池田克也紹介)(第二八九五号)  同(上原康助紹介)(第二八九六号)  同(久保等紹介)(第二八九七号)  同(兒玉末男紹介)(第二八九八号)  同外二件(新村勝雄紹介)(第二八九九号)  同(新盛辰雄紹介)(第二九〇〇号)  同(古川喜一紹介)(第二九〇一号)  同外一件(依田実紹介)(第二九〇二号)  同(米田東吾紹介)(第二九〇三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二十七日  中小企業振興対策強化に関する陳情書外一件  (第一七四号)  中小企業信用保険法に基づく普通保険限度額  引き上げに関する陳情書  (第一  七五号)  中小企業高度化資金助成制度改善に関する陳  情書  (第一七六号)  特定不況地域対策拡充強化に関する陳情書外  三件  (第一七七号)  窯業関係中小企業に対する緊急対策に関する陳  情書(第一七八号)  繊維産業振興対策に関する陳情書  (第一七九号)  大型店舗等進出規制のための法的措置に関す  る陳情書(第一八  〇号)  室蘭市を工業配置促進法に基づく誘導地域指  定に関する陳情書  (第一八一号)  工業地方分散政策拡充強化に関する陳情書  外二件  (第一八二号)  北海道の電力料金安定に関する陳情書  (第一八三号)  対外経済協力における技術協力拡充等に関する  陳情書  (第一八四号)  釜石鉱業所等合理化計画撤回に関する陳情書  (第一八五号)  合成洗剤の製造・販売規制に関する陳情書  (第一八六号)  は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  海外経済協力基金法の一部を改正する法律案  (内閣提出第三一号)      ――――◇―――――
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、海外経済協力基金総裁石原周夫君及び理事結城茂君を、本案審査参考人として御出席を願うことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 橋口隆

    橋口委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。
  4. 橋口隆

    橋口委員長 これより質疑に入ります。野中英二君。
  5. 野中英二

    野中委員 小坂経済企画庁長官にまず御質問申し上げたいと思っております。  世界的に人や情報の移動が大量に行われるようになり、また世界経済が発展を続けることによって、各国は政治面経済面文化面などで相互依存関係を年々強めてきております。そのような中で、特にわが国高度経済成長を遂げた結果、経済大国と評価されるようになって、今日では一定の国際的責任を果たしていかなければならない状況に置かれております。  今般、本委員会に提出された海外経済協力基金法改正案件は、まさにわが国が、その国際的責任を積極的に果たそうとする意図を、より明らかにするために提出されたものと私は理解しております。そこで本日は、この改正案をめぐってお伺いするわけですが、そこに触れる前に、経済協力が進められるときの背景といいますか、土台といいますか、これをどう形成しておくのか、つまり、当面の、あるいは中長期的なわが国経済社会をどのようなものにしようとしているのかについて、ぜひお伺いしなければなりません。  そこで、まず第一にお尋ねしたいのは、経済政策のあり方についての長官の考え方であります。  長官経済演説の中で、「政治の要諦は、真摯な努力をする人々が十分に報われる社会をつくることであります。物価雇用、所得など、今後の経済動向が、これらの人々の堅実な期待に反するものであってはなりません。安定した経済、人間味のある社会、心豊かな国民生活を確かなものとするために、政府は全力を尽くします。」と述べておられますけれども、いま少し詳しく、「真摯な努力をする人々が十分に報われる社会」を、経済政策を展開する中でどのようにつくり上げていかれようとしているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  6. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  私は、国民の真摯な努力にこたえるということの具体的な目標としまして、当面考えられることは、やはり失業の可及的速やかな解消だと考えます。現在は働こうという意思を持つ方、これは地域によって大変違いがございますが、三月時点における状態を見ますと、大体有効求人倍率で見ますと〇・六五くらいでございます。私は、本来まじめに働こうとして職を求める人が就職できるという情勢有効求人倍率にしますと一倍というところだと思います。やはりそうしたような、まず働く意思のある方が、働く場所が得られるというそうした社会一つの問題で、もう一つは、日本で現在職を持って、俸給生活をする人の数が大体五千五百万人ないし五千六百万人、昭和六十年ごろを考えます場合には、これが五千七百万人ぐらいにふえていかなければならぬ。こうした方々生活の一番基盤は、やはり物価の安定だと考えます。私は、この物価を安定していくということを、いろいろな困難がありましても、政治の最大の目標として追求していかなければいけない。したがいまして、先ほど申し上げました有効求人倍率の一倍程度目標にし、そしてまた物価の安定を図るという、見方によればやや二律背反的なことでありますが、結局このもとには、日本経済成長が大体六%程度成長を今後続けていくということが、基本的に重要な課題であると考えるわけであります。  もう一つは、そうしたことが煩わされることになる可能性が最も大きいのは、世界情勢の動乱でありまして、日本のような国におきましては、特に平和であってほしいということ、したがって、一つの内政的な問題としていま二つ掲げましたが、それに加えて、国際的に安全な世界をつくるということにわれわれが積極的に貢献するということが、私はきわめて重要な課題であると考えています。
  7. 野中英二

    野中委員 いま長官からの御意見をちょうだいしたわけでございますが、基本的にこの問題に私も賛成であります。しかし、内外の情勢というものが非常に厳しい環境にあるわけでございまして、このような環境の中で、いまこうした求人倍率の問題であるとか、物価問題であるとか、当面の経済運営についての基本的な姿勢というもの、態度というものをお伺いしたわけでありますけれども、昭和五十四年度の予算編成に当たりまして、経済成長率を六・三%、卸売物価指数一・六%増、消費者物価指数四・九%増、経常収支黒字幅七十五億ドル等の、五十四年度の経済の姿をまとめておられます。経済運営基本的課題として、「物価安定基調を維持しつつ、雇用改善を進め、対外均衡回復を一層確実なものとするとともに財政健全化の足がかりを確保する」とされておりますが、いま長官が言われたとおり、この問題については確認しているわけであります。  ところで、その後イラン情勢の変動あるいはエネルギー供給の不安、為替の円安傾向卸売物価騰勢日米経済関係悪化等、相当情勢変化があったと思われます。いわゆる五十四年度予算編成時とその後の対外情勢というものは、かくのごとく変わってきておりますけれども、経済運営基本的態度には変わりがあるのかどうか、この点をもう一度念のためにお聞きしておきたいと思います。
  8. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いま野中委員の御指摘になりました諸点は、確かにわれわれの経済計画にとりましてはなかなか重要な問題を含んでおると思います。特にOPEC値上げが繰り上げられたという事態は、われわれとしましては十分物価に対する考慮、そしてまたイラン政治情勢変化は、われわれの石油消費に関連した問題として慎重にこれを見、かつその対策を講じていかなければなりません。  しかし、物価の問題で特に申し上げたいことは、今回の値上げについてでありますが、われわれは五十四年度の計画の際に、年率約一〇%の石油値上げをすでに織り込んでありまして、それに基づいて卸売物価一・六%、消費者物価四・九という数字を出しているわけであります。今回決まりましたのは、その影響を考えますと、これらの物価に対する影響は〇・一%程度押し上げ要因であるということ、また同時に、これのもたらす経済成長への影響というものは、きわめて微弱であるというふうに考えます。ただ問題は、今回のOPECにおきまして、プレミアムは各供給国の自由な裁量に任せるということになっておりまして、このプレミアムがどうなるかということがいまだ明確になっておりません。われわれとしましては、希望しないことでありますけれども、プレミアムバレル当たり一ドル上がるとすることを試算してみたわけでありますが、一ドル一バレル当たりプレミアムが上乗せされますと、卸売物価に対しては〇・四、消費者物価に対しては〇・二程度押し上げ要因になるということと、国際収支において約十六億ドルの支出が増加するということ、また経済成長率に対して〇・一五%程度の低下が見られるということ、このような試算を持っておりますが、まだこのプレミアムの実現までに至っておらないわけでありますから、これらのことを一応考えましても、現時点においては、この程度であるならば経済計画の見通しの改変をする必要は、いまのところないと考えておるわけであります。  それからまた、円安ということが言われておりますが、御参考までに申し上げたいことは、昨年の一月から十二月までの日本の円の対ドルレートを、月別の算術平均を出しますと、二百十円になっております。現状において確かに二百十三、四円が円ドルレートでありますが、基本的に申し上げるならば、昨年一年間の平均レート二百十円に対して、さほど大きな円安にはなっておらないという事実も見逃してはならないと思うのであります。しかし現実に対しましては、昨年の大幅な円高によりまして、約四兆円近い円高利益が計上されておるであろうとわれわれは推定しておるわけでございまして、こうした事態がなくなるということは、確かに物価に対する影響も相当あるというふうに考えなければなりません。しかし、われわれとしましては、これに対しまして特に二月の二十六日来、政府の総機関を動員いたしまして、物価対策に対する総合的推進ということを閣議で決定して、全省庁を挙げて物価担当官会議の活動によって、便乗値上げ等に対しては、極力これを抑えるという方式をいまとっておりまして、四月五日には重ねて第二回のフォローアップをいたしておるわけであります。  私は、このような一面からすると、物価の、特に卸売物価の昨今の動静から見て、やや物価高への火がついてきているという警戒信号は十分わきまえておるわけでありますが、これに対して、政府早目早目に、さらに個別商品にまでわたって、いまこの騰勢についてのチェックをしているところであります。同時にまた土地対策あるいはまたその他につきましても、金融面からのこれの値上げ抑制等措置もとっておるところでございます。  同時にまた、もう一つ申し上げたいことは、こうした海外的な要因による物価上昇というものが、可能性として十分わかる時点になってきておりますので、物価対策に対しましては、特段の行政的な配慮努力を求めなくてはならないと思っております。  同時にまた、もう一つには、日本工業生産水準がまだ昭和四十六年程度、つまり過去において最も低い操業率の時代と、いまようやく肩を並べる程度になったところでありまして、この面から見ますると、生産余力についてはなお相当大幅なものが残っておる。同時にまた、この六年間のオイルショック以後の不況を通じまして、日本産業界には非常に大きなコスト合理化と申しましょうか、あるいは生産性向上等の各種の手段が蓄積されておるのでございまして、物価対策には民間の経済界方々協力もぜひ得て、単に値上がりをたたいていくということだけでなしに、むしろ積極的に生産性向上によってコスト上昇を吸収してもらうということを、ぜひ図っていかなければならないと私は思うのであります。  もう一つは、石油に関連してでありますが、われわれはこの際、日本石油消費量を縮減していくということ、つまり先般の三月一日、二日に行われましたIEAの決議に基づきまして、日本石油消費量を五%節減するという方向を決定いたしております。概算でありますが、約千五百万キロリットルの節約を図ろうということをやっておるわけでありまして、こうしたことに基づいて、OPECのいわゆるプレミアムをなるべく低く抑えるという努力もいたしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、そうしたことを現在やっておることに加えて、先ほど指摘のございました日米関係貿易の摩擦、これにつきましても、われわれは米国のみならず西欧諸国に対しても、最も有力な対抗と申しますか、有力な方法として内需を拡大して、日本経済体質そのもの輸出貿易体制を基準にしたものから、内需拡大型に転換するということをいたすことによって、経常収支黒字幅を縮減するということも、本年に入りましてから三カ月間引き続いて、相当な成果が上がっております。  そうしたようなことごとをいろいろと踏まえてみまして、現時点において決定的な問題にはわれわれはまだ逢着しておらない。いまいろいろな努力を積み重ねることによって、今日われわれが国民に提示しております経済計画は十分達成できるものと考えて、今後も努力をいたしたいと思っております。
  9. 野中英二

    野中委員 いまエネルギー問題について、特に石油の問題について、すでに一〇%の値上げ分は織り込んでいるのだというお話がございました。  ここで二、三詳しく聞いておきたいと思います。  その一つは、いまもIEAによって石油消費節約が決められております。また政府といたしましても五%の石油消費節約を決めているわけでありますが、この石油消費節約というものが、今後の経済動向悪影響を与えることがあるのかないのか、その点を明確にお尋ねしておきたいと思います。
  10. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 この五%節約案につきましては、特に暖冷房を中心にした節約が主体になりまして、通産当局におかれては、特に日本の全般の経済運営そのものに大きな悪影響を与えないということに、非常に深く配慮をされて決定されたものでございまして、そうした意味におきましては、この五%程度節約が、日本経済成長その他の経済運営に致命的な打撃を与えるものではないというふうにわれわれは考えております。
  11. 野中英二

    野中委員 先ほど長官は、エネルギー問題が物価にどうはね返ってくるかということについて触れられておりましたけれども、さらに詳しく、ここでもう一度念のために御質問しておきたいと思います。  卸売物価はすでに昨年十一月以降上昇を続けておりまして、石油価格は、すでに決まっているOPEC値上げ幅一四・五%を超えて値上げされると伝えられております。さらに最近の円安傾向、このことも、いま長官から説明がありましたけれども、この石油を初めとする輸入物価引き上げをもたらすものと思われますけれども、長官は、現在物価の先行きをどう見ておられるか、これにどう対処していくのか、これをもう一度詳しくお尋ねしておきたいと思います。
  12. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 現状時点は、やはり物価警戒水域であるということは認識しております。したがいまして、先ほどもちょっと触れましたが、政府としては、すでに物価担当官会議を二度にわたって開催をして、個々の商品にわたって、全省庁挙げて物価抑制に発動しておるところであります。また現状でもきわめて重要なことは、日本経済回復が一応軌道に乗りつつあるというふうに考えますが、これと物価抑制ということを、どのような形でうまく調整させるかということにつきましては、やはり大きな課題を持っておることも認識をいたしておるわけであります。  いずれにいたしましても、先ほど触れましたように、行政側といたしましては、物価便乗値上げということについては極力これの抑制に監視を続け、強力な手を打ちたいと考えておりますし、また金融面から見ての、特に地価値上がり等につきましても十分な配慮をいたすとともに、特に地価に対しましては、本日の経済閣僚会議におきましても国土庁長官から御意見が出されましたが、やはり東京、大阪と名古屋というような、大都市における線引き問題の見直し等、積極的にこれを展開することによって、大都市の宅地の値上がり等に対しての防遏策も進める等々いたす所存であります。  しかし、もう一つの問題は、日本経済界そのものが生産性を向上することによって、いわゆる海外要因からくる物価上昇を極力防遏するということに対して、国民的な合意と協力をお願いしていくということも考えておるわけでございまして、現時点におきましては、現在の物価のわれわれの目標を改定するという時点にまでは至っておらないという認識、また改定しなきゃならぬようにしてはならないという認識は、政府内部において十分固まって、努力をいたしておるところであります。
  13. 野中英二

    野中委員 長官経済政策一つの姿勢の中にある雇用問題でありますけれども、最近、失業率、有効求人倍率など、労働統計には若干の改善が見られておりますけれども、窓際族初め、中高年齢者の雇用不安を示す話題というものが非常に多いわけであります。特に造船など不況業種では、依然として人減らしが進んでおります。長官消費者へのことを考えた政治姿勢には賛成でありますが、全国にはたくさんの職のない人たちがいるわけでありまして、この人たちの救済についてはどのような考え方を持っているのか、お尋ねいたします。
  14. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま野中委員の仰せられましたように、全般的な数字は最近やや明るくなりつつあります。しかし、これが十分であるとはわれわれもちろん思っておりません。そしてまた、同時にこの失業の質の問題でありまして、一義的にわれわれは失業をしている人々の中で、家計の中心をなしている人たちの失業に対しては、特にこの問題について最も重大な関心を払っておるわけであります。特にこれが中高年齢者であるということも、今日の日本の失業問題を非常に深刻にしているわけでございます。  したがいまして、政府におきましては、今年度の予算においてお願いを申し上げているように、中高年齢者に対する雇い入れの場合の助成を大幅に引き上げるとか、あるいはまた、雇用保険受給者を雇い入れた場合に対する、事業主に対する賃金助成を新しくやるとか、あるいは定年延長した企業に対する助成措置を大幅にふやすとか、あるいは雇用保険制度の失業給付を改善しまして、四十五歳以上の離職者については、全国一律に六十日間の期限を延長するなど、個別雇用対策も大幅に拡充をして、現時点における中高年齢者離職対策というものについて、特段の配慮をいたしておるわけであります。
  15. 野中英二

    野中委員 ここで、さらに雇用問題についてお尋ねしておきますけれども、私どもは、一刻も早く、家計の責任者である方々が完全雇用されることの実現を期していかなきゃならぬと思っております。  そこで、いま策定中の新経済社会七カ年計画には、その辺のところをどう盛り込んでおられるのか。また、どのような考え方でこの計画を策定中なのでありますか、その辺をお尋ねしておきたいと思います。
  16. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 新経済社会七カ年計画における雇用問題の展望でございますが、われわれとしましては、昭和六十年度においてのいわゆる完全失業率を一・七%程度というふうに考えております。これを実数的に申し上げますと、約五千七百万人の就業労働力というものが実現をいたしまして、実数的な完全失業数を百万人程度に抑えたいというふうに考えておるわけであります。このことは、同時に、先ほども触れましたが、有効求人倍率を一倍という社会情勢を考えておるわけでございます。
  17. 野中英二

    野中委員 そこで、新経済計画には、計画期間中に財政面で特例公債に依存することからの脱却を図っていこうとしております。そのために、ある程度租税負担を増大させることはやむを得ないことといたしましても、基本的には民間の力を活用しなければ、この七カ年計画を実現させることは困難だと思っております。計画を策定中という事情はよくわかりますが、いま出ている公共事業費二百四十兆円という数字だけでは、なかなか国民計画の全体像を理解することが困難であろうと思います。  また、この計画の遂行に当たっては、民間の活力ある行動が最も重要な意味を持っていると思います。新計画では、民間の果たすべき役割りはどの程度だというふうに考えておられるのか、あるいは民間の果たすべき役割りはどの程度であると想定しているのか、これを明らかにしていただきたいと思っております。この民間の果たすべき役割りといいますか、これを数字的に明確にすることが、経済というものが生き物である以上、国民に夢を持たせ、活力を持たせてくることであろうと思うわけでありまして、長官は、思い切ってこの点には答弁を願いたいと思っております。
  18. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 野中委員のただいまの御指摘は、きわめてわれわれにとって重要な御指摘であり、また御示唆であると考えておりますが、私は、いまの日本経済自体がすでに二百三十兆円規模の大きな経済になりまして、これは、結局政府主導的ないろいろな役割りの範囲をすでに大きく超えたものであって、日本経済自体の運行そのものは、やはり民間の活力がその八〇%くらいを占めておるものと認識をいたしております。したがいまして、この七カ年計画におきまして、将来規模として、現在時点物価水準で考えましても、三百兆を超す日本のGNPになるわけでございますので、こうした中における民間の活動というものは、現在時点よりもさらに一段と拡大したものとして評価をしなければならないと思います。現在一応提示しておりますものは経済フレームについてでございまして、このフレームの中でも、われわれとしましては、できる限り民間の活力の発揮を妨げるようなものを取り除いていくということが、先ほど委員からお話のございました二百四十兆円投資の根幹になっているわけでございまして、こうしたことを基本にいたしながら、民間の設備投資あるいはまた民間の住宅投資等は、GNPの伸びよりもやや上回る形で基本的なフレームを考えているわけであります。  私は、こうしたフレームというものは、必ずしもこれが絶対不変のものであるとは考えておりません。もちろん日本国民の、非常に英知ありかつ活動力にあふれた国民性から考えますと、やはり民問の活力をわれわれが政治的には特に重視しているという姿勢が理解されるならば、恐らく民間の設備投資も、また住宅建設等も、さらに大きく伸びるものと期待をしておりまして、その反面といたしまして、政府の役割りと申しますか、財政投融資等による経済の維持ということについての役割りは、相対的に減少をするものだと考えております。  同時に、また、計画の中にも述べておりますように、いわゆる財政の赤字処理としての問題、穴埋めの問題、こうしたことも、民間の経済力の増大によってもたらされた税収の増加というようなもの、こうしたことによって、計画で述べてあるほどの大きなギャップの縮小も、必ずしも不可能なことではないと考えるわけでありまして、そうした具体的な内容等についての十分な審議を現在やっておるところでございまして、まだ具体的に申し上げることはできませんが、この経済計画のフレームのあり方そのものについての私の見解を申し上げますと、以上のとおりでございます。
  19. 野中英二

    野中委員 いまの長官の御答弁で、日本の中長期的な国内における経済運営の姿勢というものが理解できたわけでありますけれども、今日、国際社会の中で生きる日本、通商国家として生きる日本にとっては、各国の経済依存度というものあるいは経済の総合性というものでありましょうか、こういうものが非常に高まっておるわけであります。そこで、国際社会というものを見ずに計画をつくりますと、単に絵にかいたもちになりやすい、そういう危険性があるわけでございまして、そこで改めて長官は、わが国の対外経済政策についての基本的政策はどうあるべきであるというふうに考えておられるのか、御質問申し上げたいと思っております。
  20. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 日本経済は、現時点におきましても二百三十兆円規模でございまして、これはソビエトも中国も含めました全世界のGNPに対しての比率が、八分の一程度にまで拡大しているという現実でございます。将来これがどこまでまた比率が増大するかは、七カ年計画と中長期展望の中では、大体年率六%弱、六%程度成長でいくといたしますと、恐らくこの比率はさらに拡大するのではないかと私は予測いたします。したがいまして、こうした中においては、われわれは多量の原料を海外に依存せざるを得ない、そしてまた、その原料を加工することによって輸出をいたしていかなければならないけれども、こうした相互依存関係というものは、ますます日本にとっては重要なことになると思うのであります。したがって、われわれは受け身のいわゆる海外経済協力や援助というものからいまや離脱して、もっと積極的な海外経済協力、そしてまた、最も世界の平和の基盤になるところの経済の発展、世界経済の発展に積極的に協力するということが、政治理念として、また行政の理念として、きわめて重要であるという認識を持っておるわけであります。  もう一つは、日本が単に貿易だけによって立国をしていくというその基本は、多少の修正をいたしていく必要があると思いますが、日本経済体質そのもの内需中心の、内需を拡大することによる体形に、日本もようやく昨年末から入ってきたわけであります。こうしたことは、いままできわめて受け身の経済協力というものしかできなかったような考え方から、もっと前向きに経済協力なり海外援助というものをなし得る基盤が、日本経済体質そのものの中にすでに生まれてきたということをわれわれは認識をいたしておりまして、こうした傾向のもとに、今後はより積極的な展開を図りたいというふうに考えます。
  21. 野中英二

    野中委員 私は、昨年南米をめぐってまいりましたけれども、発展途上国においては、国づくりのために、わが国経済協力を求める声は非常に高いものがあるわけでございます。  そこで、日本経済協力の姿勢というものをただしておきたいと思うわけでありますが、日本経済協力は近年飛躍的に充実しておりますけれども、援助の基本的理念が必ずしも明確でないところから、他の先進国及び発展途上国の双方から、ともすれば非常に誤解を受けやすい。日本の援助は、量的にも質的にも劣っているような感じがするわけであります。そこで、この日本型の国際協力の仕方、援助の仕方、こういうものをこの際明確にする必要があるんじゃないだろうか。第一にフランスやイギリス型などと言われるものがありますが、あるいはまたアメリカ型というような行き方、あるいは北欧型という、対外援助にはこういう三つの型があるわけでありますけれども、わが国は、対外援助の独自の哲学というものを確立すべき時期が来ているんじゃないだろうか、この辺をひとつ御答弁願いたいと思っております。
  22. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は、日本の海外協力あるいは援助というものに、日本型のものを打ち出すかどうかということについては、なお検討を要する面があると思います。今日までの海外経済協力の母体と申しますか、西欧先進国におきましては、やはりかつての植民地に対するいろいろな、長い歴史的なあるいは伝統的な方策もあるわけでございますから、こうしたことが経済協力なり対外援助なりの一つのパターンであるということも、私は否定はできないわけであります。  こうした意味におきまして、日本は今後どういう形の方向を打ち出すか。やはり発展途上国あるいは南北問題の解決ということに最も重点を置いていくのか、あるいはまた、むしろ中進国との経済関係の拡充に努力を向けるべきなのか、いろいろ私はあると思うのであります。また、経済協力という概念には入らないかもしれませんが、いわゆる先進国との関係においても、私は新しい方向を見出さなければならないというふうに思うのでございまして、そうしたことをいまこの時点で明確に申し上げることは、なかなかむずかしいと私は率直に申し上げざるを得ないのであります。  南北問題に対しましては、この五月にやりますUNCTADのマニラにおける会合の一つの成果を見なければならないと思います。こうしたような問題に対しましては、わが国としてはきわめて積極的に協力をしていくという基本的な姿勢を、確認はいたしておりますが、そうしたことの上に立って、さらに日本的な協力というものがどういうものであるか、またどうしたらいいのかということも、私はこれからの重要な検討課題であろうかと思うのであります。  また、中進国に対しての協力というものをどのような形で進めるべきか、これなども、すでに中進国が相当経済も強くなってきておりまして、こうした国々に対する施策というものも、またこれは新しい面からの、再検討を要する面も多々あるのではないかというふうに考えるわけでございます。  いずれにいたしましても、いまここで日本型という型にはまった経済援助あるいは協力というものが何であるかということについては、目下それらについて慎重に検討を続けておるということで、お答えにかえさせていただきたいと思います。
  23. 野中英二

    野中委員 私はもう一度念のために聞いておきたいのでありますが、日本の国際援助、経済協力の質の問題については、各国をめぐってきて大変反省をしているわけであります。今回のこの改正で援助条件を緩和することができるかどうか、この点については、調整局長にお尋ねをいたします。
  24. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  今後の経済協力につきましては、量的に拡充するというだけでなくて、御指摘のように、質的な面についても十分配慮しなければいけないということでございます。特に条件の中で、金利等が問題になるわけでございますけれども、現在まで、経済協力基金の場合をとりますと、原資が出資金と借入金とから成っているわけですが、その比率を一対一ということにしております。資金の調達コストは、資金運用部の借入金金利のおおむね半分の、大体三%程度でございます。しかし、今後経済協力を拡充するという過程で、基金の事業規模がだんだん大きくなってまいりますと、あわせて国際的な要請からも、援助条件のソフト化というものが要請されるわけで、金利の低下が進んでいくということになると思いますが、その場合には、資金調達コストと貸付金利利回りとの間に逆ざやが生ずるというような問題がございますけれども、そういう問題についても、基金としては政府の交付金を受けるということもできるわけでございますし、そういう比率の問題等と関係なく、援助条件の緩和を進めていきたいというふうに考えております。
  25. 野中英二

    野中委員 細かい質問にだんだんなってまいりますが、今度は外務省に聞いておきたいのですが、各国の経済協力について、資金供与がなされるまでに、非常に時間がかかり過ぎるという声を各国で聞くわけでございます。そこで、交換公文の処理が大変遅いのじゃないか、こういう見方がされているわけでございますが、なぜこれが各国に比べて大変時間がかかるのか、お聞きしておきたいと思います。
  26. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 お答え申し上げます。  交換公文の締結までに、日本の場合非常に時間がかかるというお話でございましたけれども、必ずしもそうではございません。五十二年度で見ますと、約束をいたしましてから交換公文を締結するまでには、大体二カ月から三カ月で済んでおります。もちろん例外的に非常に時間のかかっているケースもございます。五十三年度について申しますと、インドネシアとか韓国の場合でございます。こういう場合はえてして先方の国の行政事務の非能率とか、あるいは約束をしてから交換公文を結ぶまでに先方が国内手続、たとえば国会の承認手続が必要であるとか、そういうことがございまして、おくれる場合がございます。いずれにしましても、私どももできるだけ交換公文締結までの期間を縮めるよう努力いたしておりますと同時に、先方に対しても、できるだけこれを迅速化するように申し入れて、両々相まって、できるだけ早いところへ持っていこう、こう努力しておるところでございます。
  27. 野中英二

    野中委員 そうしてみますと、要するに、交換公文の提出されるまでの時間が非常にかかるということで、提出されてからは処理はスピーディーなんだ、こういうことで理解いたしておきますが、一つのものができ上がってくるまでに大変時間がかかるということは、先方の国の体制にあるんだ、こういうことで理解しておきましょう。  それでは一体、国際協力をしていくためのわが国として、その発展途上国に優秀なプロジェクトがあるかどうか、それを積極的に日本が見つけ出してやる、発掘してやる、こういうことが可能かどうか、これは野々内経済協力課長にお尋ねしておきます。
  28. 野々内隆

    ○野々内説明員 お答え申し上げます。  おっしゃいますとおり、いい援助をいたしますためには、よいプロジェクトを見つけるというのは非常に重要でございまして、従来向こうからの要請を受けてというのが中心でございましたが、今後はそれに限らずに、わが国から積極的にプロジェクトを発掘いたしますとか、あるいはコンサルティング企業を育成いたしますとか、あるいは世銀等との共同のファイナンスをいたしますとか、そういう形でよいプロジェクトを見つけて、積極的な経済協力ができるようにいたしたい、かように考えております。
  29. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 ただいまの野々内課長の御答弁に若干補足させていただきます。  先生御指摘のとおり、優良プロジェクトを日本側の方で発掘するということはまことに大事でございまして、私どもそれを考えまして、現在外務省は先方と協議いたしまして、私どもの方からたとえばアフリカの諸国に調査団を派遣して、そして優良プロジェクトの発掘をする、こういうことをやっております。今年度すでにアフリカの相当な数の国に三班に分けてそういうチームを派遣いたしまして、そして相当な効果を上げております。これが今後具体的な援助に結びつくことを期待しておるところでございます。
  30. 野中英二

    野中委員 こうしたことを私が質問しておくことは、借りられる体制にあるそういう国々は、各国が競って経済協力をする、しかもわれ先に貸し付けをしていこう、こういうような姿勢になるわけでございますけれども、それはどちらかというと中進国の中に多い。低開発国にはそれはなかなかわれ先に貸せるというようなものがないわけです。ですから、これはやはり先進国である日本として、プロジェクトを発掘してやるということも、これは経済協力一つであるというふうに考えておるわけであります。  さて、いま思想統一をいたしますと、いかにスピーディーに経済協力ができるかという質問を私はしていたわけでありますから、もう一つスピーディーにやる方法として、一定の枠を、この国にはこれだけ程度、この国にはこの程度というものを、あらかじめ枠を発展途上国に与えておくかどうか、与えられるのかどうか、これは外務省、答弁してください。
  31. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 ただいま野中先生御指摘の、一定の国に対してはある枠を設定して援助を行ってはどうかというお話、これは確かに一つの非常に効果のある方法だと思います。現在のところ、幾つかの国についてはそれを実行しております。たとえば、エジプトであるとかマレーシアあるいはインドネシア、こういう国々に対しましては、一年間にこのぐらいの借款の供与枠を出すから、その中でひとつおいおい具体的なプロジェクトを煮詰めていこうじゃないか、こういうアプローチをとっておるわけでございます。これからもこういうタイプのアプローチは少しずつふやしていきたい、私どもはそう考えておるわけでございます。
  32. 野中英二

    野中委員 わかりました。  そこで、もう一、二問細かい話をしておきたいと思いますが、日本経済協力というものがASEAN諸国等に、その昔はタイ国にというふうに、重点施行しているふうに見受けられる。その重点施行も大切でありますが、国際社会の中に生きる日本なのですから、外務省としては、この辺の分配をどう考えているのか、それは優秀なプロジェクトがないからできなかったとおっしゃられるのか、その辺、どうなのですか。
  33. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 今日までわが国経済協力がアジア中心であった。特にその中でもASEANに対する比重が非常に大きかったというのは事実でございます。  ただ、御指摘のとおり、わが国経済協力の地理的配分につきましては、もう少しこれを広めていきたいと考えております。たとえば、いま私どもが重点的にわが国経済協力をふやしていきたいと考えておりますのは、アフリカでございます。ところが、まさしく先生が御指摘のとおり、こういうところはえてしていいプロジェクトが見つからない、こういう事情がございます。そこで、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私どもの方から出かけていって、いろいろプロジェクトを発掘したい、こういうふうに考えている地域でございます。こういうふうにして、たとえばアフリカあるいは中東、そういうところに対する地域的な配分をふやしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  34. 野中英二

    野中委員 いまいみじくもアフリカに拡大をしていきたい、こういうことをおっしやられておりますけれども、プロジェクトがなかなか見つからないということ以外に、教育の面、語学の問題、これがここで一つ隘路になっておる。日本人というもの自体もどうも語学が不得意、向こうも日本語に対する興味がない、こういうことで、語学の教育上の問題もあるわけであります。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕  もう一つこの教育の問題で大切なことは、先方の技術的水準をどこまで上げてくるかという教育上の問題がある。それについて外務省はどうおやりになっていくのか、ひとつ大鷹さんの方からお聞きしてみましょう。
  35. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 ただいま野中先生からお話がございましたとおり、私どもの経済協力、ことにアフリカとかそういうところに対します経済協力の陸路の一つは、語学の点でございます。特にアフリカの場合には、英語国とフランス語圏とに分かれております。残念ながらわが国の場合、フランス語をよく話したりするそういう専門家の数が限られております。そこで、できるだけそういうところにも経済協力めあれを及ぼすように、いろいろな方法でフランス語のできる専門家の養成に現在努めております。たとえば、国際協力事業団、JAICAと申しておりますが、技術協力を対象にしておりますけれども、こういうところでフランス語による研修あるいは専門家派遣のためのいろいろな具体的な努力を積み重ねているところでございます。  それからもう一つの隘路は、まさに先生がおっしゃいましたとおり技術協力でございますコというのは、私どもが幾ら優良プロジェクトを見つけてそれに資金協力ができます場合でも、先方にこれを受け入れる技術的な基盤がないと、これが有効に生かされません。そこに技術協力の果たす非常に重要な役割りがあるわけでございます。そこで、専門家の派遣あるいは研修員の受け入れのほかに、私どもとしましては、いわゆるプロジェクトに結びついた技術協力というものを非常に重点的にやっております。これは、たとえば職業訓練所を現地につくりまして、そこで現地のそういう技術者あるいは工揚要員を養成する、こういう仕事をやっております。これが、これからもそういう非常におくれた発展途上国に対する経済協力の中の重要な一翼を担うものと認識しております。
  36. 野中英二

    野中委員 いま大鷹参事官からお話がありましたけれども、日本では、ハードの援助というものは、大変一生懸命おやりでございますけれども、ソフトの面がどうしても伴っていかない、非常に跛行的な海外援助だというふうに考えておるわけであります。こういう一つのケースはソフトとハードだけでなくて、また民間と政府べースにおいても跛行的に行なわれておるという、この点についてお尋ねをしておきたいのです。いわゆる政府ベースと民間べースの資金面、技術面での経済協力は、現状においては本当に歯車がかみ合っていない、私はこういうふうに思います。今後、政府ベースのものと民間ベースのものをどうかみ合わせていくか、この辺をお尋ねしておきたいのです。
  37. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 技術協力の面におきまして、政府ベースのものと民問べースのものと両方あるわけでございます。両方とも非常に大事な役割りを果たしております。この両者の間に若干跛行的な面があると先生の御指摘がございました。私どもといたしましても、これからもできるだけ両者の間の調和のある協力と申しますか、それを目指してできるだけやっていきたいと考えております。
  38. 野中英二

    野中委員 今度はちょっと話題を変えますけれども、わが国経済協力の中で、いまも私が触れましたけれども、ソフトの面がおくれているのだということの中で、コンサルタント業務なんです。これがアメリカや西ドイツに比べますと、比較にならないくらい大変劣っているわけです。この分野、いわゆるコンサルタント分野において、どのように育成していこうとするのか、そのことをお尋ねしておきたいのです。
  39. 小長啓一

    ○小長説明員 ただいま先生御指摘のように、コンサルティング企業の分野におきましては、日本は国際的に大変劣っておるのが現状でございます.したがいまして、今後はコンサルティング企業の育成強化ということにつきまして、引き続きまして通産省といたしましては努めてまいりたいと思っておるわけでございます。  たとえば、海外に対しますコンサルティング企業の調査団の派遣につきまして、これを積極的に助成をするというようなのも一っの方法でございますし、それからコンサルティング企業がまとまって調査を行う場合につきまして、これを助成をしていくというふうなことも考えてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  40. 野中英二

    野中委員 次に、もう一点お尋ねをしておきますけれども、私が南米をめぐったときに快い耳ざわりで聞いたことは、わが国の援助というのは資金がアンタイドしておる、こういうことですね。そこで、一体日本のこれからの海外援助というものは、この方向でずっと行くのだろうかどうか、これをお聞きしておきたいと思うのです。
  41. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 御指摘のように、これまで政府資金の援助によります援助約束をやりますときには、いろいろの国際的な場でアンタイであるということを原則としております。これはわが国経済協力の基本的な姿勢を示すという意味で、基本的な原則と考えております。ただ、具体的な案件につきましては、そのケースケースによって、諸般の事情によって当然考えられるわけでございます。
  42. 野中英二

    野中委員 それでは、いよいよ時間になりましたから、総くくりとして長官にお聞きして、私の質問を終わろうと思うのですが、経済協力の拡充については、長官がいままで述べられたように、今後わが国としても特段の努力を払い、飛躍的に拡大されるものと私は考えております。特に来月はアジアで初めてのUNCTAD総会が開催されますが、聞くところによりますと、総理が出席なさるようでございます。  今回政府開発援助予算を、財政事情が大変苦しい中にあっても大幅に拡大され、対GNP比率の〇・三一%といたしまして、南北各国にとっても十分評価されるような数字であろうと思います。このため、今回の基金法改正の骨子が、基金の借入限度額引き上げることにより、海外経済協力基金の活動に遺憾なきを期せられたということは、大変高く評価しなければならないというふうに思っております、しかしながら、この借入比率の増大に伴う資金コストのアップにより、貸し付け条件のソフト化を進める土で支障を来すようなこと示あっては、私は重大な問題だと思っております。  御承知のとおり、近年かなりの改善努力されておりまして、私が見るところによりますと、十分であるとはまだ言えませんけれども、それでも政府努力の跡はよく見えるわけであります。この基金法改正を行う中で、どのようにソフト化を進めていかれようとしているのか、そして経済協力をさらに長官に推進をしていっていただきたい、それが国際社会の中で生きる日本として当然のことなんだと私は思いますので、このソフト化をどう進めていかれるのか、最後にお尋ねし、そして国際協力に万遺漏なきようになさる長官の決意を聞きまして、私の質問を終わりたいと思います。
  43. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 野中委員から大変御理解のある御発言を賜りまして、非常にわれわれも意を強うするところでありますが、やはりソフト化を進めるということは、現時点においてきわめて重要な施策であると考えております。また差額恭出た場合には、政府からの交付金も受けられることでありますから.こうしたことを全部うまく組み合わせながら、御指摘のようなソフト化に向かって、われわれの対外経済協力というものを大幅に進めてまいりたいというふうに、観念をいたしておるところであります。
  44. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 後藤茂君。
  45. 後藤茂

    ○後藤委員 まず最初に、長官経済協力の基本的な理念についてお伺いをしておきたいと思うのですが、どうも日本経済協力というのは行き当たりばったりだという指摘がしばしば行われているわけです。私は、これからの日本経済協力というのは、緊急的な課題というものでもないし、あるいは国際的な一つの動きに触発されてやっていくのだという性格のものでもなくて、完全に政治経済、外交の中にビルトインされていかなければならない、日本が持っておる構造的な問題だと考えているわけですが、これからの質問に入る前に、長官から経済協力について、なぜ経済協力というものを進めていくのか、どのように基本的に考えたらいいのかお伺いをして、質問に入りたいと思います。
  46. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  いま後藤委員が仰せられたと同じような理念を私は持っているものでございまして、経済協力がいわゆる御都合主義であってはならないし、また断続的であってはならないと思うのであります。しかし、それは今日まで、そうした多くの方々の理性ある発言に対して、必ずしも政府施策が十分であったとは申せませんが、その一番大きな理由は、やはり日本の国内の経済体質や体制、そうしたものに煩わされている面が多々あったと思うのでございます。先ほど野中委員にお答え申し上げたとおり、初めて日本がいわゆる内需拡大型の経済体形にようやく移ったということは、今後はその国内の内需拡大という方向の中で、今後は経済協力というものをきわめて計画的に、また連続的にやっていける基盤ができたというふうに考えております。  同時にまた、その理念は当然経済協力によって、最も重要な世界全体の経済が、徐々にであってもバランスをとって発展をしていくということ、これは同時に国際的な摩擦を減少させることにきわめて有効である。また同時に、発展途上国等におきましては、国内のいろいろの諸問題が経済的なアンバランスによって生じている事態が多々ございます。こうしたものを未然に防ぐという意味での、いろいろな意味での世界的な平和維持ということに、日本が積極的にこれから役割りを果たすということは、政治理念といたしましても正しい方向ではないかと考えております。
  47. 後藤茂

    ○後藤委員 いま長官から基本的な考え方をお伺いしたわけですが、私も、これは外務省の方の菊地経済協力局長編となっておる、これをずっと読んでみたわけです。この中に、マクナマラ世銀総裁が国防長官当時の発言が出ているわけですが、私は、これは大変共鳴をする文章になっておりまして、先ほど長官も御答弁になっておりましたが、「援助が真の平和共存のためには不可欠の条件と言える。」ということになりますとここで防衛論議をするわけではございませんが、やはり総合的な国の安全保障というものを考えていく場合に、もっと予算的には、海外経済協力のための予算措置というもの、あるいは後でまた御質問申し上げてみたいのですけれども、そういった機構、体制をもっと充実していかなければならないのではないか。ただ経済大国ということだけが先走っておりまして、中身が非常に薄い、そのために国際的な摩擦が後を絶たないのではないか、かように考えております。海外経済協力のための今年度の予算は、必ずしも十分でなかったと私は思うのですけれども、これは要望として、さらに充実させていかなければならないのではないか。先ほど野中委員も言われておりましたように、これからのUNCTADあるいは東京サミット等に対応する対策としては、まだ不十分ではないかと私は考えるものですから、この点を一応指摘しておきたいと思うのです。  そこで、長官にお聞きしたいのですけれども、発展途上国と申しましても、産油国だとか、あるいは中進工業国だとか、さらには貧困というのですか、そういう発展途上国などに分極化していく傾向が見られるわけです。したがって、こうした傾向に対応するわが国の援助のあり方というものが、きめ細かく出されていかなければならないと考えているわけです。産油国のように、近代国家としての様相はまだ呈していませんけれども、大変な蓄積を持っておるところ、あるいは最近の韓国だとか台湾だとか、そういう中進工業国がたくさん出てきているわけですけれども、こういったところ、さらにはバングラデシュのようにどうにもならないところ、これはまた累積債務との関係で御質問申し上げてみたいわけですけれども、こういったところがあると思うのですね。こういうそれぞれに対してきめ細かい対策をどのように立てていくべきなのか、お伺いをしておきたいと思います。
  48. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 先生御指摘のように、海外協力につきましては、相手の国情その他を十分に見きわめた上で、それぞれ具体的に考えなければいけないというふうに考えております。開発途上国と申しましても、御指摘のように大変多様な国を含んでいるわけでございます。  まず産油国でございますが、これらの国の多くは非常に所得水準も高く、最近では資金の状況も豊かになっておりますので、こういう国との経済協力につきましては、民間企業ベースによる輸銀資金の活用ということが中心になるのではないかと考えております。ただ、大型の案件につきましては、政府ベースの協力もすでに若干あるわけでございますけれども、大型の案件については政府ベースも考えられるというふうに考えております。  それからシンガポールでありますとか、あるいはブラジルでありますとかメキシコでありますとか、そういったいわゆる中進国につきましては、工業化が進む相手側の事情に応じて、わが方の援助形態も変えていくべきだと考えております。したがって、政府ベースの援助の比重がだんだん低くなるということではございますが、ただ、相手国にもいろいろ社会的アンバランスの問題経済的なアンバランスの問題がございますので、それらの点については、なお政府ベースでの協力が必要という点がございます。  一番問題になりますのは、先生御指摘のように、大部分の開発途上国でございます石油を生産しない、そして所得水準が低くて、工業化も進んでいない国に対する援助でありまして、こういう国について、政府ベースでの援助を最も重点的に行わなければいけないというふうに考えておりますし、条件といたしましてもできるだけ緩和されたもの、有償資金の協力でもソフトな条件、それから無償資金協力を行う、こういうふうに、相手国の状況に応じて多様な援助をしていかなければいけない。従来ともそういう方針で進めてきているわけでございますが、今後とも一層相手方の変化に応じて対応していきたいと考えております。
  49. 後藤茂

    ○後藤委員 その問題と関連いたしまして、資金供与総額がGNP一%を達成していないということが指摘をされるわけです。それからグラントエレメントの面でも、DAC加盟国援助条件の勧告の一般目標である八四%から大分低いところにあり、借款の供与条件にいたしましても、他の加盟国と比べて非常に悪いと言われている。金利あるいは償還期間にいたしましても、どうしてわが国の場合は条件が悪いのか、これを解決していく方法をどのようにお考えになっているのか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  50. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 わが国の海外援助のGNPに対する比率が、国際的に目標としております比率にはまだ達しておらないということは事実でございますが、そのために、三年倍増という見通しを持って努力をしているところでありますし、この三年倍増につきましては、大体期限内に達成される見通しでございます。  さらに、それが達成された後も、引き続き海外協力を充実させていく方針でございますが、特に、いま御指摘の条件の緩和につきましても、DACの平均の条件と比べますと、わが国がまだ十分でないという点はございます。これには、海外協力の各国におけるいろいろな沿革がございまして、現在の状況だけでわが国の援助がおくれているというふうには、一概に言えないかと思いますけれども、わが国経済力も充実していることでございますし、海外協力の重要性から言って、この点について一層努力を進めたいというふうに考えております。
  51. 後藤茂

    ○後藤委員 一層の努力という中身がはっきりいたしませんので、なかなか納得はできにくいわけですけれども、ただ、今度の法改正でも、資本金の三倍の借り入れが行われている。そうすれば、これは当然コストが上がるわけですし、グラントエレメントの比率が下がってくるのではないだろうかと考えるわけですが、いま御答弁がございましたように、わが国はそういう条件を緩和していく、あるいはグラントエレメントの比率を上げていく努力をしていかなければならないのに、今度の法改正でそれに逆行していくことになりはしないかということと、それから、今度の法律の中には交付金の問題も一応あるわけです。いままでそれが発動されたことはないようですが、これについてどう考えているのか。  さらに、もし贈与相当分の比率が下がってくる場合に、今度の法改正で、別枠で無償援助を多くしていくような方法は考えられないのだろうか。本来、出資分をもっとふやしていくべきだと私は思うわけですけれども、今度の法改正ではそうなっていない。この辺についての考え方をお聞きしておきたいと思います。
  52. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 最初の点についてお答えいたします。  今後、わが国経済協力の金額が非常にふえてまいりますので、今回、海外経済協力基金法の改正をお願いして借入限度の引き上げを図るわけでございます。  一方、御指摘のように、国際的にもソフト化というようなことが要請されておりまして、こういう傾向ですと、だんだん資金調達のコストと貸し出し金利の逆ざやという現象が、理論的には起こり得るわけでございます。ただ、先生も御指摘になりましたように、基金法によりますと、交付金を受けることができるわけでございまして、もし逆ざやが生じたというような場合には、当然そういう手当てによって条件が悪くならないように措置したいと考えております。  いずれにしましても、借入限度の比率ということと関係なく、・経済協力の充実、つまり、量的にもふやすと同時に、条件もできるだけ緩和したいというふうに考えております。
  53. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 後藤先生の御質問の第二点についてお答え申し上げます。  わが国経済協力のグラントエレメントを全体として引き上げるためには、借款の条件緩和のほかに無償援助の比率をふやし、かつ技術協力の比率もふやすということが大事でございます。そこで、本年度の予算の策定に際しましては、この無償と技術協力の予算は外務省についておりますが、この部分につきましては別枠にいたしまして要求をさしていただきました。
  54. 後藤茂

    ○後藤委員 今度は五十二年度を一つの起点といたしまして、先ほどの御答弁では、三年倍増が達成見込みである、こういうようにお伺いをしたわけですけれども、三年間の倍増、これは対外的にも約束をしたことですから、当然達成されなければならない問題ですが、この後どういうように考えておられるのか。企画庁の方では、お聞きをいたしておりますと、新経済社会七カ年計画というのですか、これの構想は一月に明らかにされまして、五月中には構想全体を発表していきたいという作業が進んでいるようです。三年倍増の後、しかも、冒頭に長官が言われましたように、日本経済政治、外交の構造的な観点からいくと、経済協力というものは非常に大きなウエートを持っていくわけですから、当然新経済社会七カ年計画の中には、相当の重みを持ってビルトインされているんじゃないかと想像しているわけですけれども、その方向について、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  55. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 七カ年計画につきましては、いま肉づけの最中でございますが、もちろん基本的な方向としましては、世界でGNP比率〇・七という数字が出ております。そうしたものを追求するという姿勢をわれわれは続けてまいりたいと思うのでありまして、それが実現するためには、やはり日本経済成長そのものも、実質六%程度のものを確保していかなければいけないし、それらの時点の中で、六十年にはできるだけ世界水準にまで到達するという方向、あるいはまたそうでない考え方もございます。あるいは有償であるとか、ただいま御指摘の無償、技術援助というようなものを大幅にふやすという内容的な問題もあると思います。現在、それらをいろいろと煮詰めながら作業を続けているところでございます。基本的な方向といたしましては、経済協力日本政治経済、外交のきわめて重要な基本であるという認識は続けてまいっております。
  56. 後藤茂

    ○後藤委員 いまの点でお伺いしておきたいのですが、六十年に国際的な水準、この場合のパーセンテージは、一応は明らかにされましょうか。さらに、無償、有償、技術援助、いろいろな援助があるわけですけれども、この中身についても、努力目標という数字なりあるいは比率なりというものが出されていくんでしょうか。
  57. 喜多村治雄

    ○喜多村政府委員 ただいま長官から御説明いたしましたけれども、六十年までにどの程度やるかという数字を明示するということは非常に困難でございますが、国際目標の〇・七%に、できるだけ近づけていく努力をするという程度になろうかと思っております。
  58. 後藤茂

    ○後藤委員 いまお聞きしたのは、五月にアジアで初めてマニラでUNCTADの第五回総会が開かれるわけですし、今度は総理も出席をされるということですから、そういたしますと、これは重要な議題といいますか、論議の対象になると思いますので、三年倍増程度だけでは済まないんじゃないだろうか。それからさらに続く東京サミットということを考えてみますと、いま御答弁がありました程度で、果たして了解が得られるのかどうかということを実は心配をするものですから、お聞きをしたわけです。  それと関連いたしましてちょっとお伺いしておきたいんですが、一九七六年のナイロビ総会で決議された一次産品総合計画というんですか、これに対して、どうもわが国は消極的な姿勢をとり続けてきているように、実は思えてならないわけです。長官が冒頭基本的な理念を申されましたけれども、その基本的な理念に立てば、当然開発途上国等の提案であるとか、要求であるとか、特に一次産品等に対しての態度というものは、もっと積極的に、明確に進めていかなければならないんじゃないかと考えるわけなんです。特に共通基金交渉等についても、これまでの交渉経過なり政府態度を見ておりますと、大変消極的なんですね。一体この共通基金交渉等についてどう考えているのか。これはマニラにおけるUNCTADの第五回総会で明確に出さなければならない段階になるのかどうか、私はよくわかりませんけれども、いずれにしても日本としての一応の考え方というものは、もう明らかにしていかなければならない段階に追い込まれているんではないか、ということよりも、むしろもっと積極的に各先進国の後を継いで、そして開発途上国等の要求が非常に強いから、まあこの辺でというような姿勢ではなくて、この問題については積極的に取り組んでいくべきじゃないかという考え方を私は持っておりますので、お聞きをしてみたいんですが、大平総理も行かれるということですから、会議の状況を聞きながら、後ろにくっついて判断をしていくということにはならぬだろうと思いますので、長官いかがでしょうか。
  59. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 共通基金につきましては、決して消極的ではございません。また、この場で、きわめて積極的であると申し上げるわけにもいかないと思うんですが、決して消極的に、人の後ろに回るような考えで現在まで進んでいるわけじゃございませんので、それは誤解をお解き願いたいと思います。  それから、三年倍増につきましては、これは日本が最も顕著に、今年度予算でも意思表示をしているところでございまして、ODAの三年倍増は必ず達成できる見通しをすでに持って、固めておりますから、この点につきましても、UNCTADの会議においても、相当に評価を受けるのではないかと思っておるわけです。その後の問題につきましては、現在外務省筋からの報告によりますと、先進諸国間では三年倍増以後の問題については、どうするかということを協議中であるようでございますので、われわれといたしましては、基本的な姿勢としては今後続けていかなくてはなりませんが、国際的な問題としましては、やはり先進諸国との協議の中で、もちろんわれわれ積極的に行動するということを前提にして、それにフォローしていくのがいいのではないかと現在思っております。
  60. 後藤茂

    ○後藤委員 もし差し支えなければお聞きをいたしたいのですが、この共通基金の枠というのですか、ファンドの総額は、議論の中でどのぐらいを想定しているのか。そしてまた、もしわが国がこれに拠出をしていく場合はどの程度が考えられているのか、お伺いをしたい。
  61. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 いまお話しの共通基金は、昭和五十一年のUNCTADの会議で取り上げられたということで、その後開発途上国、それから先進国で鋭意詰めてきているわけでございますが、このほど大筋について一応の合意ができておりまして、これを一つのたたき台にして内容を固めるということになっております。  それで、今回の、このほどできました合意の内容は、大ざっぱに申しますと、共通基金への政府の直接の拠出の金額は、緩衝在庫融資を行ういわゆる第一の窓に対しては四億ドルの拠出、それから、第二の窓と申しますか、研究開発、生産性向上その他のための措置に対する融資は大体三億五千万ドルの拠出で、合計七億五千万ドルということになっております。それについて、わが国といたしましてもできるだけ応分の協力をするということにしておりますが、細かい金額等については、これから詰めるという段階でございます。
  62. 後藤茂

    ○後藤委員 もう一つお聞きしておきますが、これは一度に拠出ではないのでしょう。いまの七億五千万ドル程度というのは、一遍に拠出ですか。
  63. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 順次でございます。一度ではございません。
  64. 後藤茂

    ○後藤委員 国際的には大体何年ぐらいで行われるのでしょうか。
  65. 福士昌寿

    ○福士説明員 御説明申し上げます。  窓が二つございまして、第一の窓の四億ドルにつきましては、各国の割り当てを今後交渉いたしまして決めていくという形になっております。決まった暁におきましても、現金で出す部分と、オンコールと申しまして、要求があったら出す部分、それからあるいは、デフォルトを起こすようなケースはないと思いますが、そういう場合に出すものというふうに分かれておりまして、四億ドルの中身といたしましては、キャッシュで一億五千万ドル、それからオンコール、要求されたら払うのが一億五千万ドル、それからコーラブルが一億ドル、そうなっております。
  66. 後藤茂

    ○後藤委員 いまの七億五千万ドルというと、大分大きな金額ですけれども、やはり商品協定なりバッファーストック等は、これからどうしても取り組んでいかなければならない課題ですから、先ほども答弁で、この共通基金の拠出等については、もちろんまだ相当論議を深めていかなければならぬのですが、積極的に取り組むという御答弁をいただいたわけです。ただどうも、きょうは大蔵省お見えになっていらっしゃらないようですが、大蔵省の方は、こういった問題について大変渋っているようですから、基金の事業規模等を考えてみましても、執行率が、いま総裁お見えになっていらっしゃいますけれども、執行率は八〇から八五ぐらいでしょうか。そういたしますと、相当程度の残高勘定が出てくるわけですし、いろいろな操作で、最初からもうそういうことを当て込むというのは予算執行上大変おかしいと思うのですが、私はこの問題については相当積極的に政府としては取り組んでいけるのではないかと思いますので、総裁、私がいま御指摘申し上げたようなことも考えられるのか、られないのか、お伺いをしたいと思います。
  67. 石原周夫

    石原参考人 お答えを申し上げます。  いまお尋ねのございました共通基金の問題につきましては、ただいま政府側からお答えがございましたような状況でございますので、私どもでどういたすかということを申し上げる段階ではございませんけれども、これに類似したと申しますか、すずにつきましての緩衝在庫の問題がございまして、昨年二十六億二千五百万円の金を国際すず理事会に拠出をいたしておるわけであります。これは当然日本政府にかわって拠出をいたしておるわけであります。  お話の中にございました執行率は、五十三年度、この三月に過ぎました年度の実績におきまして八七・五%ということに相なっております。
  68. 後藤茂

    ○後藤委員 もう一つ総裁にお伺いをしておきたいのですけれども、先ほどの御答弁をずっと聞いておりましても、三年倍増から、あるいはこれからの七カ年計画の中にも、資金的な面では、もちろん条件も努力をするということですけれども、資金的な面においては相当上げられてくるというように判断ができるわけですけれども、ただ、発展途上国に関する知識とかあるいはコミュニケーション等が大変不足しているのではないだろうか、後でまたお伺いをしたいと思いますけれども、人材等も大変不足しているように思うわけです。それが援助執行能力をこれから割きはしないだろうかという心配も実はいたしております。そういうことで、今度の法改正では副総裁がふえるわけですけれども、もちろん副総裁をふやさなければならない必要性は、提案理由の説明の中ではお聞きをいたしておりますが、もっとこのスタッフが必要なのではないかというように考えるわけですが、現在の基金のスタッフで十分消化ができるのだというようにお考えでございましょうか。
  69. 石原周夫

    石原参考人 基金の職員につきましては、五十三年度の末をもっての数字が百九十九名ということに相なっております。後藤委員からお話のございましたように、人員の増加というものにつきましては、政府及び政府機関を通じまして、非常に厳しい態度をもって臨んでおられるわけでありまして、私どもの方も当然その枠に入るわけでありますが、五十二年、五十三年と、三年倍増の問題が始まりましてからは、毎年、全体の人数の一割には達しませんけれども、ほかの機関に比べれば相当高い割合での増員を認めていただいておると思っております。  三年倍増の二年目になったわけでありますが、今日まで、ふえる事務で非常に忙しい思いをいたしてはおりますけれども、今後におきましても引き続き、非常に厳しい中ではありますが、人員の増加をできるだけ認めていただきたいというふうに考えておるわけであります。
  70. 後藤茂

    ○後藤委員 外務省にちょっとお伺いしたいのですが、やはりこの三年倍増との関連で、さらにこれから海外経済協力を強めていこうとすると、当然在外公館のスタッフが、単に人数が多ければ結構ということではないと思うのです。こういう情報化社会ですけれども、文化から民俗、習慣等に至るまで、豊富な知識を持っておる人材というものが必要だと思うのですけれども、いまの在外公館のスタッフ等で消化が可能なのかどうか。先ほど野中委員の御質問の中でも、どうも手続的に長期にわたる、あるいは繁雑だというようなことがあるとすれば、よけいこういった人材の対応策というものが私は必要だろうと思うのです。そういう意味で、現状と、それからこれからの将来に向かってどのようにお考えになっているか、お伺いしたいと思います。
  71. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 外務省の在外におきます経済協力担当官の仕事は非常に多岐でございます。と申しますのは、駐在しております国の経済情勢の分析から、さらにいろいろな具体的なプロジェクトの発掘、それから援助の手続、いろいろな複雑な手続がございますけれども、それの担当をいたしますし、さらに、決まりまして実施に移されますプロジェクトのフォローアップ、こういうことも担当しております。それで、わが国経済協力の幅が広くなりますと、当然在外の経済協力の担当官の数もふやさなければならないわけでございます。  そこで私ども外務省といたしましては、人員の面に限りましては、この経済協力担当官の充実というものを重点事項の一つにしております。来年度は全世界で十二名の専任経済協力担当官の増加を認めていただいております。これで全体として約七十名の専任の経済協力担当官が生まれるわけでございます。もっとも、専任の経済協力担当官だけではあれでございますので、いろいろな仕事をやりながら、同時に経済協力もやっていくという人たちも養成しております。たとえばアフリカとかそういうところの、数の少ない大使館では、いろいろな仕事を担当しなくてはいけないわけですけれども、そういう人たちにも経済協力のことをよくわかって、またハンドルしてもらえるように、いろいろ教育をしているわけでございます。  そこで、こういう人員的な問題のほかに、質的なあれに関しましては、たとえばそういう担当の人たちが赴任する前に、十分に経済協力について教育をし、情報も提供してやりますと同時に、赴任後も、たとえば担当官会議の開催とかあるいは東京からの担当者の派遣とか、いろいろなあれを通じまして、新しい情勢について常に彼らに十分な情報を提供しておく、こういうかっこうで、質的にもこういう人たちの教育に力を入れていきたいと思っておるわけでございます。
  72. 後藤茂

    ○後藤委員 いまの人材の問題と関連いたしまして、どうもわが国海外経済協力に対する対応策というのは、先ほど長官は積極的にという、必ずしも消極的ではないというように御答弁になりましたけれども、やはりわが国はどう考えているということを積極的に明確にどうも出してなくて、国際機関なりあるいはそれぞれの対援助国等が提案してくるのをいいとか悪いとか、是非を論じているきらいがあるのじゃないだろうか。そのことは、先ほど私が御指摘をいたしましたように、やはり情報不足あるいは人材不足ということじゃないかと思うのです。EC諸国の中でも、イギリスとかあるいはフランス等は、かつては宗主国ですから、それぞれの対象国を全くよく承知をしておる顧問団なりあるいは人材が豊富に配置されている。わが国の場合は、それが大変閉鎖的で、国際的感覚も少ない者が非常に多い。そういう中でこれからの経済協力を大胆に推し進めていこうとする場合、やはり意欲は大きくても、消化が非常にむずかしいのじゃないだろうかという気がしてならないのです。総合研究開発機構、NIRAの事典で、「日本課題」というものを、おもしろいものですからずっと読んでおったのですけれども、その中で、情報戦略の問題に触れているところがありまして、情報不足のまま希望的観測をしてはならない、それから目標設定のために情報分析力をつける必要がある、それから感情的世論を過熱してはならない、四番目として、ランダムかつ集中豪雨的情報収集、伝達をしてはならないというようなことがある。このことは、裏返していけば、やはり国際的視野に立った人材というものが、まず一つは豊富に養成されていかなければならないわけです。それが不十分ではないか。それからもう一つは、アジ研だとかあるいは企画庁の経済研究所、さらには先ほど例に挙げましたNIRA等もあるわけですけれども、海外の国際的な情報の分析あるいはプロジェクト等をどう発掘していくか、見つけていくかというようなことについても、その人材がやはり足りない。長官、こういう人材の育成、あるいは諸外国に見られるような研究機関の充実強化というものが並行していかないと、七カ年計画で幾ら目標数値を高くしたとしても、消化できないのじゃないかという気が私はいたします。  そういう意味で、こういった人材あるいは人材の養成策、それからそういった調査研究、情報収集機関等についてどう考えているかをひとつ……。
  73. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいまNIRAの報告の中の一部を御引用いただきましたが、私は全くそのとおりだと思うのであります。私は、率直に申し上げると、海外経済協力ということが今日までは一つの飾り言葉であって、それ自体が日本の今後の平和、安全、いわゆる安全保障にとってきわめて重要な位置づけだという認識が、少なくとも今日まで余り多くなかったということ、したがってこれに関連する省庁も、また関連する人たちも、見方によればよけいなことをしているというような感覚があったのではないかと私は思うのであります。しかし、先般来ODAの三年倍増というような一つのプログラムも決定され、また日本自体も、今日の世界情勢の中での、世界的な平和の維持ということに対する必要性、またそれが日本にとってのきわめて重要な安全の確保というふうに、だんだんと考えが固まってきておりまして、政府もその先頭に立って、経済協力をきわめて重視するという姿勢になってきておりますので、従来と同じようなスタッフであり、同じような能力でありましても、それを、ドライブをかけて前進させるという意欲が非常に違ってきておりますから、私は、そういう面で今後大変な大きな改善がなされるというふうに期待をいたしております。もちろん、御指摘のように、いろいろな機関をさらに強化するとか、あるいは担当人員も増加するということもまた必要なことであると思いますが、政治の基本的な姿勢が、経済協力を推進するという方向に固まったというそのこと自体が、今後は相当にいい方向、積極的な方向として変化を示すのではないかと、私は期待をいたしておるわけでございます。
  74. 後藤茂

    ○後藤委員 投資の問題についてお伺いをしてみたいのですけれども、最近投資が余りうまくいっていないというようなことも聞くわけです。それは、投資リスクの問題がつきまとうのではないかと思うのですね。最近でもイラン政治変動等から、特に発展途上国というところはいろいろな問題を抱えておるだけに、この投資リスクの問題については真剣に対応していかなければならぬじゃないかと考えるわけです。  特にカントリーリスクの問題につきましてどのようにお考えになっているのか。現在投資リスクに対しては保険だけでしょうか。投資保証協定等が、お聞きするところによると、何かエジプトとの間に一件ある、こういうふうに聞いているわけですけれども、アメリカ等においては百十四件あるいは西ドイツにおいても四十四件というようにお聞きをいたしております。これからの投資リスクに対しては、単に保険だけではなくて、その国との投資保証協定等も結んでいかなければならない。もちろんその政府が、オーソリティーが継続してない場合にそんなものをつくっておってもということもあるでしょうけれども、しかし私は、この経済協力というものを緊密にコミットしていけば、その上に立っての協定というものがあるということは、投資活動についても比較的よく進んでいくのじゃないだろうか、かように考えているものですけれども、そういう投資保証協定等にこれからは積極的に取り組んでいくという姿勢をお持ちかどうか、お伺いしたい。
  75. 小長啓一

    ○小長説明員 先生御指摘のように、民間投資を積極化することは、経済協力一つの柱といたしまして大変重要なことと考えております。そのため、具体的に、いま先生の御指摘になりましたカントリーリスクを回避する問題に関しましては、私どもといたしましては、たとえばアジア経済研究所の本年度予算の中で、カントリーリスク問題に関するある種の調査費をつけておりまして、そういう面の勉強をしてまいりたいというふうに考えております。  それから、カントリーリスクを具体的に軽減するための措置といたしまして、海外投資保険のほかに、海外投資等損失準備金というような税制措置もあるわけでございますけれども、先生御指摘のいわゆる投資保証協定の問題でございますが、これは一般的には締結を進めていくことは必要であるというふうには考えますけれども、わが国が、なぜエジプトだけにしか投資保証協定がないかということにつきましては、諸外国との比較におきましては幾つかの理由があるわけでございます。と申しますのは、投資保証協定を一般的に定義をいたしますと、二つの態様がございます。一つは、いわゆる通商航海条約等で規定をいたします、実体的な投資保証の措置を盛り込む内容と、一つは国が代位弁済をいたしました際の求償権を先方に求めるという場合の、技術的な規定を内容といたします投資保証協定と、二つの態様があるわけでございます。  日本の場合、投資保険につきましては、国が求償権を持った場合、代位弁済をする場合の求償措置につきましての特別な規定はしておりませんので、投資保険をかけるための前提といたしまして、投資保証協定を必要とはしてないわけでございます。したがいまして、日本の場合には、そういう技術的な投資保証協定の意味というのは余りないわけでございまして、実体的な投資保証協定が必要かどうかという点につきましても、私どもの考えといたしましては、大多数の国とは通商航海条約的な実体的な規定もあるわけでございますので、個別の国との関係におきまして、投資保証協定の必要があるかどうかということを、具体的に判断していくべきではないかというふうに考えておるわけでございます。
  76. 後藤茂

    ○後藤委員 時間が大分経過してまいりましたので簡単にお答えをいただきたいと思うのですが、一つは、民間の海外経済協力の問題です。これは非常にたくさんの問題を抱えていると私は思うのです。特にいわゆるブーメラン現象ということも一つでしょうが、民間の場合は、どうしても利潤動機で投資活動なり海外進出をしていくわけですから、その民間の海外進出ということと、それから国内における産業調整の問題が当然起こってくるわけです。現に繊維等にいたしましても、この前も私久留米に行って、ゴム底ぐつの調査をしてきたのですけれども、あらゆる分野で起こってきている。通産省等にお聞きいたしますと、これからは垂直分業じゃなくて水平分業に入っていかなければならぬ、あるいは高付加価値の産業分野に入っていかなければならぬ、言うことは言うのですけれども、こういった民間の海外進出といわゆる経済協力、それから国内の産業調整問題。  私は、かつて日本が軽工業から、先進国という言葉では言われてなかったでしょうけれども、経済大国に進出していった、それと同じ方向が現象としてはあるだろうと思うのですね。たとえばはだ着等については、繊維の分野でもその道を中進国というのですか、後進国に譲っていかなければならぬというところに、わが国は、経済大国としてはやはり迫られてくるだろうと思うのです。そういう場合にやはり産業調整の問題が当然出てくる。民間の海外進出に対して、計画的に政府が処理をしようあるいは介入していけるということはちょっとむずかしいと思うのですけれども、わが国の産業調整との関連でこの民間の海外進出の問題をどうとらえたらいいのか、ひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。
  77. 小長啓一

    ○小長説明員 先生御指摘のように、中進国の追い上げ問題というのはまさに現実の問題であるわけでございまして、比較優位を失いつつある産業にとって、産業調整の対応というのは非常に切実な問題であると思います。しかし、先生まさに御指摘のように、わが国が先進国へのキャッチアップの過程において、全く逆の立場にあったということを考えますと、こういう追い上げ問題に関しましては、まさに世界経済の発展に伴って必然的に生じてくる問題である、わが国にとっては避けて通れない道と考えなければいかぬというふうに思うわけでございます。そういう意味では、経済協力とその産業調整の問題に対しましても、私どもは、むしろ積極的にこれを受けとめていく方向で考えていくべきではないかというふうに思うわけでございまして、基本的にはわが国産業の高付加価値化、技術集約化といったような、産業構造、貿易構造のより一層の高度化ということで対処していくべきではないかというふうに考えております。
  78. 後藤茂

    ○後藤委員 もう一点。投資活動。経済協力が行われていく場合に、外務省の方の報告書を見ましても、通産省の方の報告書を見ましても、どの国にどのようにやったとか、総額幾らだとか、金額あるいは条件なり、そういう内容等についてはずっと報告されているわけです。しかし私は、そうきれいごとばかりではないんじゃないかと思うのですね。わが国経済協力という名目、あるいは民間の海外進出、経済進出等の中で、摩擦も起こってきている問題もあるでしょうし、あるいは権力との癒着の問題もあるでしょうし、あるいは効果が大変大きかった面もあるし、また効果よりも、その国民の、住民の生活にとって、果たしてプラスであったのかどうかという問題もあるだろうと思うのですね。そういった報告がオフィシャルな形では出されていない。これは報告書をずっと読みましても、そういうことはほとんど書かれていない。私は原文は読んでいないのですけれども、ジャーナルの七七年の号をちょっと見ていたのですけれども、これにはAMPOという英文の季刊誌が、「アジアの自由貿易地域工業化」の問題特集をしている中で、いかにその現地資本と癒着をして、そしてひどいことが行われてきているかというようなこともあるわけです。こういった経済協力の追跡調査というのは、相手国があるわけですから、当然内政干渉になっていくのでむずかしいとは思います。思いますが、この経済協力のメリット・デメリット等についても、ある程度オープンにしていくべきではないだろうかというように考えるわけです。これは、基本的な考え方を長官にお伺いしておきたいと思います。
  79. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 経済協力のメリット・デメリットということは、国民にとりましても非常に私は重大な関心事だと思うのです。しかし、それがなかなか十分にはわからないようになっている仕組みは、やはり今後は、国民総生産の非常に大きな部分が、海外経済協力という形で使われていくわけでありますから、私はこのメリット・デメリットというものが、ある程度明確に国民に認識されるような方向をとるべきではないかと思うのです。事がやや外交になりますと、きわめて秘密主義になるのはいずれの国でもそうだと思いますが、しかしそのせいか、またあるいはわれわれが外国に参りましたときに、特に発展途上国に参りましたときに、先進国からの援助は汚いのだということばかりを聞かされるのではやりきれないわけであります。それがどうして汚いのかということ等も、やはり責任官庁であるわれわれとしましては十分今後はよくとらえまして、その実態について究明をするという方向をとっていくことが、結局また国民全体の理解を深めるゆえんではないかというふうに思います。
  80. 後藤茂

    ○後藤委員 この点については時間がございませんので、経済侵略だとかあるいは新たな植民地支配だとかということも言われるわけですけれども、そういった問題がないように、特にこういった追跡調査と言ったら語弊がありますけれども、ただ手続の点は大変慎重であり、厳しいが、その後はもう知らぬ顔ということではないことが、政府の施策として考えられていかなければならぬと思う。  それから、累積債務の問題についてもお聞きしたがったのですが、ちょっと要望として私申し上げてみたい。もし御答弁いただければ結構ですけれども、この累積債務のうちで、特にLLDC諸国というのですか、あるいはMSAC諸国というのですか、こういう極貧国あるいは石油ショックでも大変になったような地域は、同じ累積債務でもそんなに多額じゃないですね、これを見てみますと。LLDC諸国でも二・一%ぐらい、これは  一九七五年の統計といいますか、数字で見ますと。それからMSAC諸国でも一四・二%、合わせて一六・二%くらいだ、こう言われるのですけれども、こういうところは私は貸し付け条件、援助条件というものにこだわらないで、やはり先進国として、経済大国としての社会保障――社会保障という言葉が果たしていいのかどうか、としての処理というものを考えていかざるを得ないものではないかというように考えているわけですが、これは、後で答弁がいただければ御答弁いただきたいと思います。  最後に、先ほどから私お聞きいたしておりますが、私の使うのも用語が不明確になっているのは、実は外務省の方は開発途上国、通産省の方は発展途上国、長官の御答弁は発展途上国を使っていらっしゃる。外務省のこの文書は開発途上国ですけれども、外務省のどなたですかは発展途上国というのを使われている。だから私もいま御質問の中で両方使っていたのではないかと思うのですが、政府の文書ですから、やはり用語は統一をしておいていただきたいと思うのです。  それと同じように、大変高邁な理念をお持ちになって長官は御説明いただいたわけですけれども、海外経済協力基金が経企庁で、国際協力事業団が外務省で、海外貿易開発協会が通産で、海外漁業協力財団が農林、輸銀はもちろん大蔵ということはわかるのですけれども、こういうことだと、たしか日経の二月十七日でひやかされたように、「対外援助お役所的調整」「六つの誓い、八方満足」というので、小坂経済企画庁長官が何だか六つの誓いを皆さん方に言われたとかということもあるのですが、この二つ、どっちがどうだかわからぬような報告書に対して大変大きな予算を使っている。こういった機構の問題ももうそろそろ強力な対応策を考えていかなければならぬじゃないだろうか。アメリカ等には対外援助法がありますし、国際開発庁、イギリスでは海外開発庁、西ドイツでは経済協力省というようなものがある。こういう対応策がなぜとられていかないか。まさに官庁のセクショナリズムというものがもろにここに出てきているのではないだろうか。これからますますこういうプロジェクトに対応していくものが大きくなる、金額の処理というものも大きくなっていく。基金の方だって私は大変だろうと思うのですね、各省庁いろいろな窓口を持っておかなければならぬということになりますと。したがって、こういった機構についても、経済協力行政、経済協力外交等の大枠で協力できるような、これはきょうあすの問題ということじゃないにしても、将来、長官どうでしょうかね、それは考えていかなければならない段階に私は来ていると思うのです。  それから、総理府お見えになっていると思いますので、ちょっとお伺いしたいのですが、先ほどの産業調整との関係でも一応指摘したわけですけれども、当然この産業調整をしていけば雇用問題が深刻になるわけです。ところが、総理府にあります対外経済協力審議会、このメンバーを見ますと、一番雇用の問題で深刻に考えていかなければならない労働界の代表が入っていない。いままではこれであるいは処理ができたのかわかりませんけれども、これからは一番深刻な問題は、やはり雇用の問題になってくるだろうと思いますね。当然私は、労働代表というものがこの中に加えられなければいかぬだろうと思うのです。  それと、最後に長官、最初は対外経済協力閣僚懇談会があって、それから閣僚協議会になって、そのうちに一九七七年には廃止された。廃止して適宜に協議をされているのでしょうけれども、これが、ある方がいいのか、ない方がいいのかということの判断ではなくて、長官海外経済協力の調整官庁の責任者としておやりになっている立場で、非常に各省庁にわたる分野が多くなってきているときに、こういった閣僚協議会というものがなくなっているのは不便なのか、いやそうでないのか、以上の点をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  81. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 多少私の所掌分野以外の御質問もございますが、一応まとめてお答えさせていただきたいと思います。  第一点は、対外経済協力に関して、一元的な機構をつくったらどうかというお考えでございますが、私は原則的には結構ではないかと思うのであります。しかし、現実的に見ますと、委員の御主張には十分お答えできないと思いますが、足のない総合官庁をつくってはならぬということであります。やはりそれぞれに足を持って、具体的な事態を把握する組織がない総合官庁というものは、むしろ非常に混乱を招くのではないかと思いまして、結局こうした事態は、今後のいわゆる援助倍増等を含めまして、実践の中から必要になってきた場合に、だんだんと官庁機構の改編にまで進むというのが自然ではなかろうかと私は思っております。  それから労働側委員の参加ということでございますが、現実にそうしたことを考えた方がいい時期が、時期的にあるいは来るのではないかという予測を持っておりますが、現時点におきましては、必ずしもブーメラン現象等によって、日本の産業そのものが非常にインジュリーを受けているということもないわけでございます。特にまた、日本は中進国に対して輸出の方がはるかに多いのでありまして、OECDあたりの調査によっても、われわれは非常にがっくりするような点もあるわけでございますが、将来にわたりまして、いわゆる日本の産業構造まで変革をして、それによって失業が増大するというような事態、またその予測がきわめて明確に想定される場合には、私らは、いま委員の仰せられた方向での委員の任命ということも、十分考えていってしかるべきではないかと考えております。
  82. 後藤茂

    ○後藤委員 累積債務の問題……。
  83. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 累積債務につきましては、いわゆる後発開発途上国、いま先生のおっしゃいましたLLDCでございますね、こういう国につきましては、その年度に到来する元本、金利、そのすべてを合わせたものに相当する無償援助を、キャッシュで行うという制度を私どもは行っております。  それから、いわゆるMSACでございますね、石油危機によって一番影響を受けた国、こういう国につきましては、そこまでいかないで、金利について、昔の金利はかなり高かったですから、それを最近の金利にさや寄せしてあげる、その差額の分を無償で供与する、こういう制度でございます。この補正予算を先般いただきまして、これを実施しておりますし、本年度も同じ方針で予算要求をさせていただいております。このやり方は、国連のUNCTADの決議等の中身と合致したものでございます。
  84. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 午後二時から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時六分開議
  85. 橋口隆

    橋口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中村重光君。
  86. 中村重光

    中村(重)委員 基金法が改正されると業務量が増大をしてくるし、機構だとか、その他内容の強化といった方向に進むだろうと思うのですが、その点に対する考え方はどうなんですか。
  87. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 今度の基金法改正は、やはりわれわれの政策目標としての海外経済協力あるいは援助を拡大していくという方向を実現するためでございまして、基金法改正によりまして、人員の方もさることながら、原資面から、一般会計の制約をなるべく受けないような形で、潤沢な資金を運営したいというところが基本の考えになっております。
  88. 中村重光

    中村(重)委員 基金は経済企画庁の所管にはなっているんだが、実はこの法律を制定をするとき、私はわが方の主査をやって、ずいぶん各省から要請を強く受けた。こんなことでは実際動けないんじゃないかということで、将来の運営ということをずいぶん問題視してきたのですが、これに対しては、経企庁が窓口であるのだけれども、どこまでの権限を経企庁は持っておるのですか。長官は経企庁においでになって、頭を突っ込んでみて、これじゃいけないな、改めなければならぬなというようにお考えになっておる点はありませんか。
  89. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 まだ就任してから日も浅いわけでございますが、しかし私は、現状のような運営、組織面でも、先ほどから申し上げておるように、海外経済協力ということが非常に重要な日本の政策であるとともに、日本の一種の安全保障にもつながるというような考え方で、今後これを大いに伸ばしていくということを政治的に決断をしておるわけでございますから、多少それがなわ張りの中で埋没するということがいままであったかもしれませんが、私は、今後は一つの大きな国の施策として、また、同時に協力をしてもらうそれぞれの部局においても、意味を十分理解してやっていただけるようになってきたというふうに考えておりますが、いまの時点でこれの機構その他を考えるという必要はないのではないか。よほどまたいろいろな問題が出れば別でございましょうが、現時点においては現状の機構で、この問題を実質的に前進をさせればいいのではないかというふうに考えております。
  90. 中村重光

    中村(重)委員 行管も出席をしているようですから、具体的な問題としてひとつ長官もお聞きを願う。  いま長官が言われたように、問題がなければいいわけですが、私は、問題がある、こういうことではいけないんだという考え方の上に立ってこれからお尋ねをしてみますから、後でまた改めて、いま大臣がお答えになった点に触れて私の考え方を申し上げる、こういうことにしたいと思います。  ずばりお尋ねをいたしますが、今回の改正で、昭和五十三年を含めてだろうと思いますが、借款とか無償、技術協力と、それぞれの分野で積極的な推進が可能という説明を、資料を見るとなされているようですが、具体的にどう推進をしていこうとするのですか。これは局長から。
  91. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 わが国にとって海外経済協力というのが非常に重要であるということは、いまさら申し上げる必要がないと思いますが、御案内のように、政府としましては三年倍増ということで、経済協力の拡充を図っているわけでございます。経済協力の中で、政府開発援助というのが一番中心になるわけですけれども、海外経済協力基金は大体その半分を受け持っている政府援助機関でございます。それで、事業規模が最近非常に拡充しておりまして、五十一年度の実績千五百三億円から、五十三年度には二千七百三十九億円、五十四年度には三千七百億円というふうに、大変拡大をしているわけでございます。それで、そういう資金的な要請にこたえるために、今回基金法の改正をお願いしているわけでございますけれども、その第一が、従来の原資であります借り入れと資本金、この比率を引き上げるということによって、資金的に拡充の余地を広げるということと、それとあわせて、そういう事業量の拡大に応じまして効率的にこの援助を遂行するために、体制の整備ということをお願いしているわけでございます。
  92. 中村重光

    中村(重)委員 おっしゃることはわかるんですよ。わかるのですが、従来の実績がどうなのかということをお考えにならないと、私は説得力がないように思うんですよ。円借款をふやすというのだけれども、いまでも三割ぐらい余っているのでしょう。計画と、また、決算面でGNPに占める比率だって、〇・三一というのが実際は〇・二みたいなかっこうになっているんですね。いまは現に金があるのだから、その金を十分に活用していく。それをやらないでおいて、ただふやせふやせと言ったってしょうがない、こう言いたいんだね。法律を改正をしてその借款をもっとふやして、それから事業もいろいろ強化していこうとするのだったら、問題点は何か、どこがよくないのか、その点にメスを入れずして、ただ金額さえふやしていけばよろしいと言ったって、われわれにそれを納得しろと言ったって、説得力がないわけなんだ。盲点は何か、何がそうさせているのか、その点はどうなんです。
  93. 廣江運弘

    廣江政府委員 お答えいたします。  先生のおっしゃいますのは、予算ではたくさん  つけておるけれども、実際にODAとしてディスバースされるのが少ないようでは困るじゃないかという御趣旨の御質問かと思います。ODAが国際社会で、DACの場でカウントされますときには、実際にはディスバースではかります。したがいまして、いま御指摘になりましたように、五十二年で申しますとGNP比〇・二一となっているではないか、それが五十二年度の予算ではGNP比〇・三〇組み、そして五十四年度は政府経済見通しを基盤にいたしますと、〇・三一になっているではないか、したがって、まずそのディスバースを促進すればODAはふえるではないかという御趣旨の御質問かと思いますが、その御質問の御趣旨のとおりだと思います。そういう意味では、ODAの中の約半分を占めております経済協力基金につきましては、ディスバースの促進に大いに努めておりますし、現に大体五十三年度の見込みでは、五十二年度が約七四%の消化率であったものが、一躍八八%というふうに伸びておるわけでございまして、その点、ディスバースの促進に大いに努めていると思います。実際、このディスバースといいますのは、国内の事業とも違いまして、相手方が外国でもございますし、その事業の進捗に応じてディスバースされるわけでございますので、一概に予算のとおり、そのままで一〇〇%というわけにはまいりませんけれども、実際、いま数字で申し上げましたとおり、逐次非常に大幅にディスバースの促進を図っているわけでございます。  そして、それは基金のディスバースについて申し上げましたが、そのほか、一般的にディスバースの促進につきましては、手続の問題あるいは相手方に対してわれわれの方からお手伝いをするというような形でのディスバースの促進と、いろいろ努めておるわけでございます。     〔委員長退席、渡部(恒)委員長代理着席〕 基金法の改正は、そうしたディスバースを促進していき、かつ事業予算自体もふやしていかないと、三年倍増といった目標を達成できないものでございますから、お願いしておるわけでございます。
  94. 中村重光

    中村(重)委員 経済協力の実施体制と予算の仕組みというのが非常に複雑なんだな。種類が多いから、質問と答弁と一やはりあなた方は専門家だから、それで仕事をやって生活をしておられるのだが、われわれは、やはり経済協力というと、政府ベースがどうだ、民間ベースがどうだ、さあ借款だとかいわゆる贈与であるとか、そういうことを頭に置いて議論をせざるを得ないんだね。長官、そんな複雑であることは、問題点の一つでもあるんですよ。これは関係省庁は十省庁ですからね。それはもうすんなりと長官が私にお答えになったようなことには進まない仕組みになっているんだ。もっとあなたは頭を突っ込んでみてもらわなければならない。それから、経済企画庁が基金の主管省なんだから、もう少し物が言えるように、にらみがきけるように、そういうような体制を強化するということを、あなたはがっちりと頭に置いておって問題を見詰めていかないと、いや、うまくいっているんだ、これよりこれを伸ばしていけばいいんだというような甘い考え方では、それは、私はあなたに期待をしているから注文するのだけれども、問題は余りにも多いということだけはひとつ申し上げておくのです。  それから、いまお答えがあったことでも、GNPからいって、今度は〇・一二%にするということを言っておられるし、それから政府の公約をした三年倍増というのも、一年ぐらい繰り上げて早くできるようになるのだと言っている。ところが、われわれは数字を見ると、どうかな、こう思うんだな。対GNP比で見ると、五十年は〇・二三%、五十一年は〇・二〇ですよ。五十二年は〇・二一なんだ。こういうように五十年より下がっているんですよ。数字は間違いないと私は思うんですよ。こういったようなことで、これは今度法律案を改正すれば大丈夫ですとこう言われても、いわゆる問題点をえぐり出して、そして本当に説明のとおりにいままでいかなかった点はどうなのか、これからどうするのだ、これからこういうことだからいけるのだという説得力のある説明をしてもらわないと、われわれはそうかなというようには感じられないと思うのです。  そこで、今度は五十三年度に〇・三一%が確保されるというように御説明になっているのだから、では具体的にどう進めていってこれが確保されるという見通しをお立てになるのか、そこらも含めてひとつ聞かせていただけませんか。
  95. 廣江運弘

    廣江政府委員 GNP比で申しますときには、四十八年は〇・二五となっておりますし、四十九年も〇・二五、五十年が〇・二三、そして先ほど指摘のように、五十一年が〇・二〇ということになります。多少分母の方の動きも響くものでございますから、その点はお含みをいただかなければいけないと思います。  さて、絶対額はどうかといいますと、絶対額は大体コンスタントにはふえてきておりますが、いま先生御指摘になりました年は、残念ながら多少落ち込んでおります。これはきわめて例外的な年であったと思います。実際、日本のODAは、そういう意味で量ではかなりふえていると思いますが、GNP比で見ましたときには、御指摘のような点は否めないと思います。それは、先ほどもお答えいたしましたように、政府開発援助自体は、相手国の進捗状況に応じて出すという点が基本的にはございますので、どうしてもそういうものの影響を受けやすいわけでございますが、実際、基金に例をとりまして申し上げますと、手続の面、それからこちらから出向きましてそういう点の指導をするという面、あるいは向こうから人を呼びまして手続的なゼミナールもし、かつ日本の国情にも触れていただくという広範囲な政府開発援助といいますか、援助、協力というものを進めておるわけでございます。  いずれにいたしましても、そうした点は、政府の体制も含めまして、かつ執行機関の体制とあわせまして、この辺の政府開発援助の実際の支出をふやしていく、実行を早めてかつ拡充していくという方向に、ますます努めなければいけないと思います。
  96. 中村重光

    中村(重)委員 それはあなたが言われるように金額では三位だ。ただしGNPでは十四位だ。金はふえているのです。ところが、いま私が指摘したときは、非常に落ち込んだときであったのだと言う。何のために落ち込まなければいけなかったのか。日本の高度成長の時代はぐっと伸びてきた、力はあった、またいろいろな国際公約もやってきた。特に落ち込んだのだ、落ち込まなければどうにもならなかったという事情はないじゃないかと言うのです。それから、世界の平均で見たって〇・三一から〇・三五でしょう。どうして日本だけがこんなにいろいろな経済力があり、世界に公約ばかりやっておいて、そして実際はそれがこう薬張りに終わってしまって、中身は何にもない、そういうことでしょう。いまのあなたのお答えだって説得力は少しもない。しかし、いま見たところ、時間の制限がされているようだから、その先に進めなければしょうがないけれども。
  97. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 ただいま政府開発援助とGNP比率の問題についてお話がございました。確かに日本はDAC十七カ国のうちの十四位でございます。ただし、確かに五十一年度はいろいろな事情で落ち込みはございましたが、これは発展途上国側の方でいろいろな手違いがあってディスバースできなかった、わりと大きな案件があったということも背景にあるわけですけれども、その後〇・二〇から一昨年は〇・一二に上がっております。さらに私どもは、これから政府開発援助の対GNP比を高めたいということで努力いたしております。そこで、見通しといたしましては、これから上昇の方向をたどるのじゃないかと考えております。  なお、日本だけがなぜそんなにGNP比率が悪いのかというお話でございますけれども、一つ要因は、日本のGNPの伸び率がほかの先進国よりもかなり高いということがございます。したがって、この伸び率に合うだけの経済協力のふやし方ではパーセンテージは改善しない、こういう事情もあったわけでございます。
  98. 中村重光

    中村(重)委員 いまのあなたの前段は、それは確かに日本のGNPは伸びているが、それに予算が伴っていない。ところが、後段は説明にならないのだよ。なぜかと言えば、〇・三一という目標を立ててやっているのだね。ところが、決算になったら〇・二〇になっているのだ。そんなことでは後段は答弁にならない。もういいです。事実は事実だから、数字はお認めになったわけだから。  そこで、援助の方法なのだけれども、円とドル建てということになってくると差があるわけだ。三十五億ドルということになってくると七千億円ということになるのだね。円とドル建てということになってくると、そこで違ってくるのだが、日本の主張、それから日本に対する先進国を含めた関係国の主張、これは円建て、ドル建てということについて必ずしも意見が一致していないのだが、日本は今後何でいこうとしていますか。日本の考え方で合意が得られるのかどうか。
  99. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 先ほど先生から、予算比率では〇・三一だけれども、実績比率ではもっと低いじゃないか、こういう御指摘がございましたが、これはいろいろな事情がございます。と申しますのは、先ほど先生が御言及になりました対ドル円高の問題でございますね、これが一つ要因でございます。つまり予算を編成した当時に考えておりましたドルの換算率よりも、実績の段階で円高になっておりますと、たとえばわが国政府開発援助の約三〇%を占める国際機関への拠出払い込みは、ドルで行われているのですが、結果的には当初予定した円の額より少ない額で済むわけであります。そういうことでございまして、それが一つでございますね。  それからもう一つ日本の援助は、大体第四・四半期に実績が非常に上がる傾向がございます。ところで、年率で日本政府開発援助が何%だった、〇・二一であるとか〇・二〇であるというときには暦年を使っております。したがってこの差が〇・三一と〇・二一の差の要因一つになっているわけでございます。
  100. 中村重光

    中村(重)委員 弁解は弁解としてなさっていいのだけれども、あなたがいま言われたような弁解そのものも、日本に対する不信感、経済協力に対する不信感の高まってくる一つでもあるのです。いわゆる円建てかドル建てかという問題等も含めてね。それから、相手国の都合はどうだこうだと言う。自分の方の責任は感じないで相手国にばかり責任をすべて押しつけていくというきらいがあるんだな。だからそういったことも問題の一つだということになるのです。  そこで、これからの日本政府開発援助の特徴ということで、どういうことが挙げられますか。きょうは農林省からもお見えですし、通産省その他からもお見えですから、特徴としてどういうものが考えられるか。強く日本に要請されているものがあるわけだから、その点どうですか。
  101. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  わが国海外経済協力の特徴というのはいろいろな点で挙げることができるかと思います。  まず、一九七七年の実績についてどういう形態の援助が多かったかということでございますが、七七年全体で五十五億ドルの援助の中で、半分強の約三十億ドルが政府資金、半分弱の二十五億ドルが民間資金である、こういうのが一つの特徴でありまして、政府資金はさらに大きく分けまして、輸銀による輸出信用等が約半分、ODA、政府開発援助が約半分、十四億ドル、こういうような形になっております。  それで、政府開発援助、ODAの中では、借款、無償及び技術協力、世銀等国際機関に対する出資等から成りまして、五十四年度の予算ベースで見ますと、借款が約半分、無償及び技術協力が二割弱、それから国際機関に対する出資等が三割、こういうような形になっております。  それから、そのODAの中で大きな役割りを果たしております基金だけについて見ますと、昭和四十七年以降大変伸びておりまして、五十三年十二月末の融資承諾の累計は、実行額ベースで一兆三百九十億円となっておりまして、対象国は年々増加をしております。昭和五十三年十二月で四十カ国に及んでおります。  業種別にこれを見ますと、商品借款が二五%程度、電力が二一・八%、運輸が二一%、鉱工業が一四・八%等となっておりますが、最近では社会的サービスの関連も徐々にふえているわけでございます。  それから、地域別の特徴といたしましては、アジアが全体の八五%近くということで、大半を占めておりますが、最近ではアフリカ、中南米、中東等、それぞれその地域の特性に応じてふえております。
  102. 中村重光

    中村(重)委員 大臣、いまお聞きのとおりです。まだ後で、これからということについては農林省その他からお答えをいただくのですが、現在の経済援助の特徴として、日本は二国間の政府貸し付け、特に円借款というのが非常に大きいということが一つ挙げられるのですね。それから、いま具体的に御説明になったことでもおわかりになるでしょうが、対象が経済基盤の整備、運輸、通信、交通といったような、それらの援助が非常に大きいのです。それからいま一つは、これもいまお答えになった、対象地域がアジア地域が中心になっているということです。これでいいのかどうかということを考えなければならないのですね。  いまのようなことでいくと、結局それは贈与というのが非常に少なくなって、借款というのがふえるという形に勢いなるわけです。それは、何もかにも被援助国の言うとおりということにはまいらないだろうと思う。まいらないだろうけれども、やはり日本が国際的な信用というものを高めていくということから考えていくならば、大臣は、経常収支中心ということではなくて、基礎収支という方向へと、これから大いに国際場裏で物を言っていこうということなんだから、その点は私は反対ではないのだけれども、前回の委員会で、大臣の姿勢、考え方として、いわゆる経済協力ということを相当重点を置いていかなければならぬというお答えもあったわけなんです。     〔渡部(恒)委員長代理退席、委員長着席〕 それで、基礎収支といったようなことに重点を置いてこれから物を言っていくならば、相手国を説得できるもの、経済協力のあり方、そういうことも、いわゆる経済基盤中心ということになってくると、贈与よりも借款というものにウエートが置かれていくんだ、そういうことではなくて、やはり病院であるとかあるいは教育であるとか、そういう社会環境をよくするということ、そういったことに漸次ウエートをかえていくということでないと、日本の国際信用は高まらない。だから、大臣がこれから大いに物を言っていこうということについても、相手国に対する説得力ということにはつながってこないと私は思う。それらの点に対して今後どう対処していこうとお考えになるのか。
  103. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 中村委員のいま御指摘の点は、非常に重要なポイントだと考えます。  現状におきましては、五十年度においても相変わらず借款が全体の五〇%で、いま御指摘のように、民生にきわめて直接的であり、かつ援助をされた方が喜ぶと思われる無償あるいは技術協力、これは二〇%であります。また世銀その他に対する出資が全体の三〇%ぐらい、大体そんなような割り振りで今年度の予算は考えておるわけでありますが、これから日本の対外的な協力ということが多くの国々から理解されるためには、やはりこの組み合わせ方を変えていくことも必要だろうというふうに思っております。ただ、それはやみくもに変えるわけにもいかないわけでございましょうから、日本の現在の援助を行う国々が、経済的にテークオフをするということについての基礎的なものに対する援助ということは、勢いこれは借款になるという御指摘のとおりでもあると思いますし、その辺のところを十分踏まえまして、今後の運営につきましては、さらに一段と検討を加えてまいりたいというふうに思います。
  104. 中村重光

    中村(重)委員 経済基盤の整備に重点を置くということが、これはまたアジア地域に限るという地域的な関係も出てくる。だからアフリカのような貧困国に対する援助ということも相当私は強めていく必要がある、こう思うのです。その点はどうお考えになりますか。
  105. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 御指摘のとおりだと思います。
  106. 中村重光

    中村(重)委員 それから、中進国に対する経済協力のあり方、これらの国とわが国との、いわゆる中進国ですから、そうなってくると産業調整ということが必要になってくるだろうと私は思うのです。それに対する政府の考え方はどうなんですか。
  107. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 中進国がだんだんとテークオフをいたしまして、結局一種のブーメラン現象というようなものが起こるということはもちろん踏まえながら、中進国に対しての対策を進めるべきでございましょう。  ただ今日まで、実はOECDあたりの調査を見ますと、日本は中進国に対する輸出と輸入のバランスが、米国やあるいは西欧諸国とは著しく違っておりまして、やはり援助の内容そのものも重要であるかとも思いますが、やはり中進国からの輸入を増大していくということ、これは、私は、日本の国内産業にとっては非常に大きな試練を要求するものだと思いますけれども、しかし、金額だけを多くを競うよりも、また実際面において、中進国からの日本の輸入のマーケットを広げていくということにおいて、中進国と日本貿易バランスをやはりもう少し改善していくという努力が、日本にとって、現状においては必要なんではないかというふうにも考えております。
  108. 中村重光

    中村(重)委員 中国に対しての経済協力の推進ということをどうお考えになるか。中国は、何というのでしょうか、プライドと申しますか、非常に高い国でもあるわけですから、反応というものはどうだろうと思うのですが、いかがですか。
  109. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 世間的に見れば、日本が中国に対して異常な関心を示しているというふうに諸外国は受け取っていると思いますが、私、多くの方にお目にかかっておりませんが、つい最近、劉希文氏が私の事務所に来てくれまして、お目にかかったのでありますが、全くこれは単純なる表敬訪問でありまして、内容的なことは一切触れなかった。また近日中に中国の軽工業担当の大臣が来られるそうでありますが、その方にお目にかかったときに一体どんなお話が出るか、外務省あるいは通産省においては、中国側がいろいろな意思表示をされておるようでありますが、私のところでは、まだそのような意思表示は全くないものですから、基本的に中国に対する経済協力とかあるいは援助とか、いろいろのことをわれわれは頭の中で考えておりますが、具体的にこれをどうするということは、まだ相手方の意向が全くわかりませんから、いまは触れ得ないというふうにお答えするしかないと思います。
  110. 中村重光

    中村(重)委員 理解ができるのです。できるのですが、こっちもいろいろ議論しておくことは差し支えないだろうと思うのです。中国側の要請があれば日本としては借款を供与する用意があるのかどうか、その点いかがですか。
  111. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 基金法の精神に基づけば、先方からもしも希望があるならば、それに対して基金法の発動を考えても差し支えないという見解でございます。
  112. 中村重光

    中村(重)委員 それから、エジプトに対するわが国の援助分担金の要請というのがあるのだろうと思うのですが、この点についてはどう対応するつもりですか。
  113. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 先般、エジプトの副首相が来られまして、そのときに非常に膨大なエジプトの経済開発のプログラムの御説明がございました。これはハードなものからソフトなものまで含めまして、全体として百億ドル程度になるというお話でございました。先方は、日本と西独とアメリカで、その三分の一ずつを負担してもらいたいというような御要望があったわけであります。われわれとしましては、エジプトとの経済協力を進めることは、一面日本の中近東に対する世界的な責務の一端であるという認識は持っておりますが、現実にこの三十億ドル程度のものを、いまここですぐ何らかの形で実施するあるいはしないということについては、なおよく先方の意向も重ねて聞いて、対処するのがいいのではないかと思います。  ただ、私は、これは私見でございますけれども、中近東対策の一環として、あるいは日本のアラブ諸国に対する一つ経済外交のスタンスといたしまして、エジプトに対する経済援助を行うということは、大変意味のあることであると思いますが、やはり根本的に日本とエジプトとの間で一種の経済協力というような、大きな両者の間の合意というものをまず取りつけて、その一つの内容として、経済協力を秩序立てて行っていくというような考え方の方が、個々の問題を取り上げてその解決を図ることよりも、能率的ではないかというふうなことを考えておりまして、先方にはそのことを申したわけでございます。その後、それに対する返事その他はまだ来ておりませんけれども、エジプトに対する経済協力というものに対しての重要性は、十分われわれとしては認識をしておるつもりであります。
  114. 中村重光

    中村(重)委員 農林水産省からそれぞれお見えになっておられるようですが、近年の援助分野、それに対して食糧問題というのが、最近協力という面で相当注目されているし、農業開発という意味で、要請も強くなっているというように伺っているわけです。それからもう一点は、経済水域二百海里ということからいたしまして、この水産関係に対する経済協力の拡大ということが、最近の特徴として浮かび上がってきているのではないかと思うわけですが、これに対してどうお考えになるのか。いわゆる国内の自給率を高めていくという点、そのことは、飼料等についても省力栽培ということをやって、できるだけ外国から輸入をしないで、国内飼料というものを生産をしていかなければならぬということになるわけですが、これらの点について、そうした関係国の要請に、国内的な関係等の関連でどう対処しようとお考えになっていらっしゃるのかという点を聞きたいと思うのです。  それから援助に対しても、いわゆる食糧援助というものがある。米はだぶついている。米の援助ということをやっても、韓国なんかかつては米を援助したら米で返ってきた。これではどうにもしようがないわけだから、返ってこないようなことで、米の現物援助というようなこと。日本の米は、日本人の嗜好とその相手国、被援助国とは必ずしも同じではないというようなことも伺ってはいるのですが、それらの関係等も含めてそれぞれお聞かせいただきたい。
  115. 志村純

    ○志村説明員 食糧援助の問題等含めまして、農林省の援助の考え方についての御質問がございましたので、お答えいたしたいと思います。  まず最近、援助分野の中で、食糧増産援助、農業協力の問題が非常に重要視されてまいりましたことは、御指摘のとおりでございます。これは相手国側が工業優先に一時傾いておったところを、最近はやはり基礎的なところからということで、農業問題を重視してきているということのあらわれだと考えております。そういった動きに対しては、わが国農林省といたしましてもできるだけの協力をしていくべきだ、このように考えております。  そこで、ただいま最初に御指摘のありましたわが国の自給率との関係でございますが、率直に申しましてわが国の自給率の維持、向上ということから言えば、わが国内でできるものをさらに増産していくということでなければ、自給率の維持、向上ができないわけでございますが、これはわが国の各種の資源の制約から限度がございます。そこで、わが国内でできないものについては、これを海外から安定的に輸入しなければならない、こういう問題になってくるわけでございます。そういう意味で、わが国の農林水産物の輸入を安定的に確保するという努力、これはそういうことで今後とも進めていかなければならぬと思っておりますが、そういった輸入ソースの確保という面で、発展途上国の食糧増産援助にわれわれが協力して、それがどの程度、どのように役に立つかという問題との絡みになってまいると思います。率直に申しまして、発展途上国の食糧増産援助につきましては、現在はすでにこれを相手につくってもらって、相手国の需給事情にかかわりなしにわが国へ持ってくるような略奪的な方法、そういう方法は許されないと思っております。ですから、相手国の食糧増産をまず第一に考えまして、そこで相手国の不足が解決され、さらにそういった国に輸出余力ができてまいりますれば、それでわが国がそういうものを必要とする場合には、そういったものを輸入いたしまして、相手国への農業協力を通してわが国の輸入ソースを安定的に確保していく、そういう大きな考え方で進めていかなければならないだろう、このように考えております。  次に、食糧援助にわが国の米を使うという問題でございますが、基本的にはわが国のような工業国の場合は、相手国の援助、相手国の農業生産を、いろいろ自助努力を助けるという形でいくのが本筋であろうかと思いますが、現に、経過的に食糧が不足している国が幾つもあることも事実でございます。また、当面の日本農業の問題といたしまして、米が余っておるというのも事実でございますので、相手国の需要がある場合には、もちろんこれは御指摘のように、日本米がそういった国の嗜好に合っているかどうかという問題もございますので、押しつけはできませんが、日本米でも結構であるということで需要がある場合には、現在の余剰食糧の範囲内で、これを相手国に援助していくという方法もとらざるを得ないだろう、このように考えております。  御承知のように、日本米は非常に生産費が高くついておりますので、これを国際価格で相手方に援助していく場合にはかなりの財政負担を必要とします。現在、他の委員会で食管特別会計法の一部改正法案について御審議いただきまして、わが国の米を相手国の要請に応じまして援助していくことについて、財政的な裏づけができましたので、今後何年間かにわたりまして、計画的に米を相手国に援助してまいりたい、このように考えております。過去に一時現物贈与の形がございましたけれども、いま考えておりますのは、そういう形でなくて、援助することを考えておりますので、韓国のようなケースは今後は出てこないであろう、このように考えております。
  116. 斉藤達夫

    ○斉藤説明員 水産分野の協力問題についてお答えいたしたいと思います。  御指摘のように、本格的な二百海里時代に入りまして、多くの国が二百海里内の資源はわがものと考えるようになりました。そこで、ほとんどすべての沿岸国におきまして、自国の沿岸漁業の振興ということに非常に熱意を燃やしておるわけでございます。他方、わが国の漁業といたしましては、そういう新しく引かれた二百海里の中で、安定的な操業を続ける、それから水産物たん白の供給確保を図るという見地から、先方の漁業を育てながら、こちらも魚をとらしてもらうという体制をとらざるを得ないし、それが今後日本漁業を維持していく道だと考えております。  このような見地から、漁業協力につきましては、いままで以上に積極的にやっていきたいというふうに考えておるわけでございますけれども、漁業分野の協力要請の特徴といたしましては、非常に複雑ないろいろな種類の要求が出てくる。たとえば沖合いの資源を調査してほしいとか、あるいは、日本の技術は世界に冠たるものがあるわけでございますけれども、いままでにない技術を、日本の専門家を現地に派遣して指導してほしいとか、あるいはまた非常な後進地域の場合には、とるだけではなくて、島から島へ、あるいは奥地へ魚を運ぶようなチェーンを整備してほしいとか、いろいろな形のものがございます。対応の仕方としましても、経済協力として対応しなければいけない分野、技術協力として対応していかなければいけない分野、あるいは政府ベースで対応しなければいけない分野、あるいは民間ベースの方がはるかに効率よくいく分野等々ございます。これらを有機的に組み合わせて、積極的に推進してまいりたいと考えております。
  117. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますので、私は、わが国経済協力の姿勢について、大臣に、冒頭ちょっとそれを申し上げたのですけれども、具体的な問題として後で私の感じていることを申し上げて、これからどう改めていくのかということについて見解も伺いたいし、それから行政管理庁もお見えですから、お答えをいただきたいと思うのです。  日本の場合、余りにもなわ張りが強過ぎるということですね。そして関係省庁というのが余りにも広過ぎる。それから非常に形式主義だということですね。調査、調査、調査という。調査の方に金がかかる。調査に行くと相手の国は接待をしなければならない。エチオピアの医療援助の場合がそうなんです。もう悲鳴を上げたんです。お断りだということなんです。そういったような具体的な事実もあるわけなんだ。だから、私は関係省庁の調整ということも必要だろうが、窓口の整理もこの際――基金法の制定のときもそうだった。こっちを主管省にしてくれ、こっちをやってくれというので、いろいろいがみ合った結果が経済企画庁になったわけなんだ。それでまた、たとえば通産省であるとかそれぞれの省には何かかっこうをつけたわけです。具体的に記憶もありますけれども、私は触れません、わかり切っていることだから。それがずっと尾を引いている。根本的にこれを改めていくのでないと相手は不信感を持つ。世銀とかアジ銀とかは、それはもう人も多い。多いけれども親切なんです。日本の場合は形式主義で、図面がどうだとか書類が不備だとかすぐ突っ返す。それらのことで相手の国に日本に対する不信感というものが非常に高まってきている。この前も申し上げましたが、国連の非常任理事国に日本が当選し得ずして、バングラデシュに負けた。その不信感のあらわれ、日本というものは自分たちの国の利益を代弁してくれる国じゃないということで、ああいう結果が生まれてきたと私は思う。根本的にこれらの点を改めていくということでないといけない。それから目先の利益に余りとらわれ過ぎる。長い目で見ると利益につながってくるわけだ。目先の利益にとらわれて、そして援助にしても経済基盤の整備なんというようなことを中心にして、社会福祉、社会施設面というのはなおざりにしていく。しかも借款に対してはいろいろな黒い霧が結びついてくるということ。相手の国も喜んでくれないものを、今度は多額の、現在円建てにして七千億ということにもなるわけだ。まあドル建てと円建てでは違いますが、七千億にもなっている。そうすると、相当大きい金額になる。もっとこれを増大をしていくということになる。  国内においてはどうだ。農業の場合あるいは零細な漁民の場合、零細な中小企業、そういった人たちはああもしてほしい、こうもしてほしいと祈るような気持ちだ。社会福祉も、振替所得にしても、その他社会福祉の国際的な比率からしましても、日本は非常に低い。それだけ国民にサービスが行われていない。こうした状態におけるところの海外経済協力、贈与にしても借款にしてもそうなんですが、相手の国が喜んでくれるならば、それは国民も満たされる。相手の国は喜んでいない、不信感がある。そうして国民はほったらかされている。国民は不信感というものをさらに強めてくる。これでは経済援助に対する国民のコンセンサスも得られないというように私は考える。抜本的に姿勢を変えていくということでなければいけないというように思うのですが、大臣はどうお考えになるのか、お聞かせをいただきたい。
  118. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま種々御指摘をいただきました。私も、そういう問題につきましては、われわれが非常に労多くして功少ないよりも、むしろ効果がマイナスであるという事態もあるやに聞き及んだこともございますが、いまやはりそうした問題に対処しまして、政府内部も非常に反省をしているところであります。  特に、能率的に物事を進めることと、責任体制を確立するということが全く違った部門のものでなくて、むしろそれが一体化して、初めて本当の責任を遂行することになるんだというような考え方で、政府内部、各省庁、今度のこれからの海外経済協力というものに対しての、新しい目と感覚を持って対処をしていただいておるというふうに思うものでございます。機構等にすぐ手をかける前に、やはり経済協力というものの本当の意味と、その重要さというものが、政府内部、そしてまた政治の中で再認識されるという事態の中で、事態改善が必ず図られるというふうにいま私は思っております。  しかし、御指摘の諸点につきましては、改めてわれわれとしまして、調整官庁としては十分配慮し、そういう事態の起こっておるかいないか、また起こりそうであるかどうか等々につきましても、十分委員の御指摘を踏まえて今後は行動してまいりたいと思っております。
  119. 中村重光

    中村(重)委員 行政管理庁八木管理官もお見えですが、日本経済協力、いま申し上げたように、繰り返して申し上げませんが、各省ばらばら、縦割り行政である。それが実にうまくいかない。指摘をいたしましたようなもろもろの弊害が生じてきている。ところが、行政管理庁がこれらのことについて勧告をなさったのかどうか、私は承知していないわけなんですが、どの程度の関心をお持ちになっていらっしゃるのですか。
  120. 八木俊道

    ○八木説明員 ただいま先生御指摘なされましたとおり、最近の行政は、社会経済のいろんな面に広がってきております関係で、多数の省庁にまたがる問題が大変ふえていることは事実でございまして、私ども行政管理庁といたしましては、政府全体の機構、行政組織を管理する立場から、これらの問題につきまして常々関心を持っているわけでございますが、経済協力につきましては、先ほど大臣からも御答弁のございましたとおりでございまして、これは大変重要な、しかしながら多数の省庁にまたがるむずかしい問題でございます。  御承知のとおり、経済政策全般の関係につきましては経済企画庁、外交政策の面からは外務省、財政金融の面からは大蔵省、通商政策全体の見地からは通産省、その他多数の省庁にまたがっております。これらの基本的な仕組みにつきまして抜本的な改編を行うということは、これはまたなかなか大変な問題ではございますけれども、当面の問題といたしましては、現状の組織、体制のもとにおきまして、極力関係省庁間の連携を改善していっていただく、場合によりましては高度なレベルにおきます協議等も含めまして、連携の改善を図っていっていただくということによりまして、政策効果を十二分に上げていっていただくということではなかろうかと思っているわけでございます。  しかしながら、大変重要な問題でございますので、政府全体の機構を管理する立場といたしまして、今後十分研究を進めてまいりたいというふうに考えます。
  121. 中村重光

    中村(重)委員 私が指摘したようなこと、まだいろんな問題があるのかないのか。大臣ですからそういうお答えをせざるを得ないんだろうと思うのですが、私もこうして取り上げる以上は、いま初めて取り上げたんじゃありません。何回も経済援助のあり方について、縦割り行政の弊害ということを指摘して、もっと各省の連携をうまくやって、そして効果を上げていくということにしなければならぬということを言ってきましたが、資料等で私も調べてみている点もあるんです。たとえばインドネシアの農地の開発も、調査が百回ある。三井物産が五千町歩の開発に二十億円以上の金をかけておる。目的はついに達成できなかった。先ほど申し上げた貧乏国のエチオピアに医療協力を一千万円するのに、調査費が一千万円かかった。数字に若干の違いはあるかもしれませんが、一つの例として指摘できるのではないでしょうか。それからインドネシアの農地開発の関連でミツモロ生産をやろうとした。ところが、これは何に使うのかと聞かれ、日本は飼料に使うと言ったら、とんでもない、インドネシアでは一斗が五人分の食糧になります、そんなことはお断りだといったようなことがあったということを私は伺っているわけですが、いずれにしても調査が多い。多いということは調査で金を使う。一つの事業に三回以上の調査というのは常識になっている。それだけ調査をするのだから大変親切なのかというと、さっき申し上げたようにきわめて不親切、形式主義というようなことであるわけです。  この点について重ねてお答えはいただきませんが、この移住事業団の問題も同じようなことが言えるのではないでしょうか。いまは合併をして、国際協力事業団ということになっているのですが、いま移住というのはどのくらいですかね。二百から三百ぐらいではないかと私思うのですが、この国際協力事業団に移住の業務に携わっている人が四百五十名と言いますが、そうすると、移住事業団のときの六〇%は実は人件費だった。国際協力事業団になってどうなっているかは私はわかりませんが、いずれにいたしましても、大変むだというのか、いろいろ改善しなければならぬ点が多数あるように思われる。これはひとつ大臣も意欲的にこの問題に対処していく。いま行管がお答えになりましたけれども、行管もやはりもっと真剣に対処していくということでないといけない。  それから技術協力という問題も同じような問題点があるわけです。ところが、私どもが外国に行きましても、技術協力日本ぐらい不親切な国はない、こう言っていますよ。ですから、技術協力に対しても、人材の養成にいたしましても、ただ技術だけではなくて、人間的に本当に相手国の国民と気持ちが通じ合う、そういったようなことを、言葉は言うまでもありません、いろいろ意欲的におやりにならなければならぬ点が多いだろうと私は思う。これらの点に対して、ひとつどうお考えになっておられるのか伺っておきたい。
  122. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 基金法の改正に際しまして、ただいま委員から仰せられました諸点は非常に重要なことだと思います。特に、援助と申しましても、相手国には各国が援助をしている国が多いのでありますから、当然そこには援助のコストというものも非常に重要な意味があると思うわけでありまして、結局内容がいい援助をするためにも、われわれの方のコストが安く上がっていなければならないということを考えますと、ますます効率的な援助体制というものを行い、かつまた、その調査等につきましても不必要なものはできるだけ省き、さらにまた、そうした実態を当庁においても十分チェックをしていくということで、効率的な援助を行い、いわゆる開発援助についての三年間倍増のプログラムを実りあるものにしてまいりたいというふうに考えます。
  123. 中村重光

    中村(重)委員 時間が来たようですから、まだお尋ねをしなければならぬ点がたくさんございますから、保留をいたしまして、一応きょうはこれで終わります。
  124. 橋口隆

    橋口委員長 長田武士君。
  125. 長田武士

    ○長田委員 私は初めに、海外経済協力基金法の一部を改正する法律案に入る前に緊急課題といたしまして二、三質問をいたします。  まず、原子力発電事故問題についてお尋ねいたします。  去る三月二十八日、アメリカのペンシルベニア州スリーマイルアイランド原子力発電所二号炉の故障による放射能大量漏洩事故は、周辺住民を恐怖のどん底に陥れ、アメリカはもとより、世界各国に大きな衝撃を与えたことは御承知のとおりであります。この事故発生以来、米原子力関係者等の努力によりまして水素ガス等の抜き取りに成功し、一応、水素ガスによる爆発または水素ガスの充満により、炉心の冷却が妨げられることによる、炉心のメルトダウンという最悪の事態は避けられたようでありますが、起きるはずがないと言われた事故がまさに起こる寸前にまで至ったという事の重大性を、われわれは深刻に受けとめなければならないと思っております。  そこで、まずお伺いしたいのでありますけれども、二次冷却の水質を浄化するフィルター装置が故障して、二台の主ポンプが動かなくなったとき、当然動くべき補助ポンプが動かなくなったのであります。その理由は、二台ある補助ポンプを、定期点検の際バルブを閉めたまま、開くのを忘れたという人為的なミスと報道されております。ミスはもちろんよくないことでありますけれども、人のすることであり、これはむしろ人為的なミスがあったとしても安全側に作動する、いわゆるフェールセーフの思想で原子炉が運転できるとか警報が鳴るとかしなければならないのではないかと思っております。この点について、わが国の加圧水型原子炉ではどのようになっておるのか、お尋ねいたします。
  126. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 お答えいたします。  日本の加圧水型原子炉の補助給水ポンプの起動の問題でございますが、ただいま先生おっしゃいましたように、人為的ミスで出口弁が閉められておるという場合におきましても、電磁弁は、電動ポンプが起動いたしますと自動的にその電磁弁は開いて水が出るというかっこうになっておりまして、たとえ人が過って閉めたといたしましても、そういう補完的な処置によりまして、送水することができるという施設になってございます。
  127. 長田武士

    ○長田委員 実は今回の事故の問題で、当然人為的に閉められたままであった。しかし、現実においてはそれが作動してないのですね。日本の場合はそれは絶対だと言えますか。
  128. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 緊急の場合に補助給水ポンプの弁がどうなっておるかということにつきましては、これはコントロールルームでその弁の開閉の様子がわかるようになっております。そういう意味で、直ちにそれを手動で開くということも可能でございます。また、日本の場合には原子炉を臨界にいたします前に、非常用の補助給水ポンプの弁が開になっておるということを確認した後、それからまた、ポンプがいつでも起動できるという状態に置いた後に臨界にするというふうにしておりますので、運転中そういう給水ポンプがとまってしまうとかいうようなことは、現在の保安規定の上ではあり得ないことだと思っております。
  129. 長田武士

    ○長田委員 次に、こうした核燃料によって汚染された一次系冷却水が故障で開きっ放しになった圧力逃し弁から漏れ出し、格納容器の底にあふれたわけでありますけれども、その汚染水を、人為的か自動的か定かでないのでありますけれども、補助建屋にくみ出し、そこから外部環境に放射能が漏れたということなんですね。このように高レベルに汚染されました水を、簡単に外部の環境につながっている補助建屋にくみ出すことができること自体、危険きわまりないんじゃないかと私は考えるのです。この点について、わが国の原子力発電所はどのようになっておるのか。今回のような事故の際にも安全に対応できるのかどうなのか、その点どうでしょうか。
  130. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 格納容器にたまります水につきましては、通常ですと、下にありますタンクから補助建屋のタンクの方に送水されまして、廃棄物処理が行われるということになっておりますが、一たんこのような緊急事態になりました場合には、緊急事態の指令のもとに、格納容器と外部とをつなぎますすべての弁が閉鎖される、その後に緊急冷却装置が作動するというふうに、日本の場合なっております。ところが、B&W製の発電所のものを、いまのところわずかな資料でございますけれども、見たところでは、その隔離というのが相当時間がたってから行う、または手動で行う、そういうようなことがありまして、相当時間がたってから隔離を行ったのではないかと思います。したがいまして、その格納容器の下にありますポンプが、あるレベルになりますと自動起動いたしまして、補助建屋の方に送水する、そういう作業をしてしまった。日本の場合ですと、緊急事態にはすべてのポンプがとまりますし、スイッチを押しましても動きません。そういうことで、格納容器の中にすべて閉じ込めるということにしておりますので、まずああいうような問題は、日本の場合には起こり得ないのではないか、こう思っております。
  131. 長田武士

    ○長田委員 たまたま先月二十七日、営業運転に入りました福井県の大飯一号を除いて、同型炉が全部定期点検中と聞いておるわけでありますが、この際、今回の事故を踏まえて徹底的に点検すべきだと私は考えるわけであります。  なお、このほかの原子力発電所についても、順次とめて総点検を実施すべきだと私は考えますが、その点どうでしょうか。
  132. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 今回の事故の重要性にかんがみまして、これまでの情報に基づき、直ちに長官から各電力会社に対しまして、保安管理体制、それから運転管理体制を中心に再点検するように指示しております。また向こうの事故の内容を吟味いたしますと、設備そのものが全く不良であったということよりは、保守点検の問題にどうも問題があったらしいという情報を得ておりますので、とりあえずは保守管理体制の再点検、それから運転員の訓練ということを重点に、ただいまその見直しをしておる状況でございまして、発電所をとめて特に調べるという必要性はいまのところないかと思っております。
  133. 長田武士

    ○長田委員 私が申し上げているのは、起こるべくして起きた、こういうようなアメリカの状況を考えた場合、日本の原子炉の見直しというのは、安全確保のためにもどうしても必要だろうと思うのですね。ただアメリカの事件であるというような感覚ですと、えらい事態になり得るのじゃないかと私は思うのです。やはり備えあれば憂えなしです。そういう問題について、日本は完璧であるというようなことも、総点検の中から証明されるのではないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
  134. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 今度の事故に際しましても非常に冷静に、かつ本当の情報と申しますか、実際の原因はどこにあるかということについて、非常に真剣にわれわれとしても受けとめて分析しておるわけでございます。そういう意味で的確にかつ迅速な対策ということをわれわれとしても考えておりまして、PWRの七基がいまとまっておりますので、それに対しての点検ももちろんやっておりますけれども、大飯の現在運転中のものにつきましても、これは運転中でもいろいろ試験、点検ができますので、その試験についておのおのやっております。たとえば補助給水ポンプの起動試験、そういうものが実際に起動するかどうかの試験をやらせましたり、シークェンステストを行わせるとか、それからECCSの起動試験、これも全部十五分間ずつ動かしまして、実際に起動することをチェックさせる。そういうようなことで、現在動いているものは、いままでの情報の範囲内で行われるいろいろな問題については十分対応できる、そういうことの自信のもとに運転を継続させているわけでございます。
  135. 長田武士

    ○長田委員 定期点検はやっておるわけでありますけれども、この期間を短縮しろというような電力会社等の要請もあるようですね。この点は、三カ月間というのは短縮しないという方針のようでありますけれども、それは間違いありませんか。
  136. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 一部新聞におきまして定検期間三カ月を短縮する、短縮する目的でいろいろ検討するかのように思われているわけでございますけれども、定検をどのように行うべきかということの発想は、これは行政効率化という観点から、今後原子力発電所がどんどんふえてまいりますが、検査官の数とか設備とかいうものがなかなかふえるわけにはいかないと思いますので、そういう点につきましての検討会をしよう、こう思っておったわけでございます。それと、ちょうど燃料の節約をするという話とが結びつけられて、新聞に載ったわけでございますけれども、油の節約のために定期点検を短くするというようなことは一切考えておりません。
  137. 長田武士

    ○長田委員 今回の事件につきましては、不幸中の幸いというか、最悪の事態は避けられたわけであります。住民の避難という事態は現地でも起こっておりまして、相当混乱もしたようであります。したがって、万一の事故の発生に備えて、発電所内の対策はもとより、地域住民の避難、救護、救援などの総合的な対策の体制というのは日本でも必要かなという感じを私は持つのですが、その点、どうでしょうか。
  138. 児玉勝臣

    ○児玉(勝)政府委員 万一事故が発生した場合には、電力会社から直ちに国及び地方公共団体に連絡するとともに、事故を最小限に食いとめるため、保安規定及び運転要領に基づき、必要な対策に全力を挙げるということが当面の問題であります。また、放射性物質の大量放出のように、事故が外部に影響を及ぼすおそれがある場合には、災害対策基本法で定めるところによりまして、必要な応急対策がとられることになっておりますが、地方公共団体はその地域防災計画にのっとりまして、住民の迅速な避難等の措置を講ずることとなっております。また関係省庁においてもそれぞれ防災業務計画に基づき、相協力してこれら地方公共団体に対し、必要な助言、指導、専門家の派遣等の措置を講ずるようになっておるわけでございます。  しかしながら、先生が御心配になっていらっしゃることは、そういうような防災体制が本当にうまく機能するのかどうかということであろうかと思います。そういう点につきましては、今度の米国の事故の実態を十分に把握いたしまして、そういうことを教訓として、わが国としてさらに有効な防災体制をつくるために、関係省庁とも十分相談していきたい、こう考えております。
  139. 長田武士

    ○長田委員 次に、原油価格の値上げに伴う問題について二、三お尋ねいたします。  去る三月二十七日、OPECは四月より原油価格を平均九・〇五%値上げすることを決定いたしました。これによって原油価格が昨年末比一四・五%と、大幅な値上げとなったわけでございます。  そこで、この原油価格の値上げわが国経済にどのような影響を及ぼすか、種々取りざたされておるわけでございますが、私が一番懸念しておりますことは、政府が決定をいたしました五十四年度末までの電力、ガス料金の据え置きの問題であります。ここで政府に確認しておきたいのでありますが、この政府方針である五十四年度末までの電力、ガス料金の据え置きはこうした状況で貫けると考えておるのかどうか、その方針は変わりないのかどうか、この点をお尋ねします。
  140. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 電力料金につきましては、できるだけ長期に安定させなければいけないというのを基本方針として考えておりますので、この前差益を還元する際におきましても、そのことは政府の方針として言明をいたしておるところでございます。したがいまして、今回OPEC値上げが、去年のアブダビ総会において予定されたよりも、さらに大幅の値上げになるということは明らかになりましたけれども、それからまた、最近の円安傾向等もございまして、電気事業及びガス事業の収支状況はかなり厳しくなりつつあるわけでございますけれども、しかしながら、北海道電力を除く八電力及び三つの大手ガス会社の料金につきましては、現在すでに発表されたもので値上げを行うというようなことは考えておりませんが、今後どういうことが起こるかということはよくわかりませんので、今後の事態をよく注視しながら、長期安定という方針でいきたいというふうに考えております。
  141. 長田武士

    ○長田委員 OPECは、六月に総会を開催する予定と伺っておりますが、この段階で原油価格の追加値上げがなされたといたしましても、五十四年度中は電力、ガス料金は政府決定どおり据え置くつもりなのかどうか、この点はどうですか。
  142. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 六月の総会でどういうふうな価格決定が行われるかということは、現在全く予測不可能でございます。そこで非常に大幅な値上げが行われるというようなことであれば、電気料金、ガス料金についてもその段階で考えなければならないかと思いますが、いまのところ一体大幅なのか小幅なのか、あるいは値上げなどはないのかわからない段階では、現時点におきまして確たる方針は申し上げかねるところでございます。
  143. 長田武士

    ○長田委員 天谷長官円高差益のときに私も質問いたしまして、完璧な円高差益の還元というのは、ある程度OPEC値上げということも予想されて全体的な還元はできない、こういう答弁をしましたね。そういうことになりますと、私は五十四年度の方針として、政府としては強い態度で臨むのはあたりまえじゃないかと思いますが、どうでしようか。
  144. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 値上げが常識的な範囲内におさまっている場合には、五十四年度も料金据え置きということは可能であろうと思います。しかしながら、前回の石油危機のときにありましたように、石油価格がたとえば四倍になっても一体据え置けるのかというと、それはできないと思いますね。それならば一体どのくらいの値上がりならば据え置けるのか、どのぐらい以上になればできないのかということは、やはり六月の価格決定を見なければ、いまの段階でちょっと申し上げかねるのではないかと思います。
  145. 長田武士

    ○長田委員 四倍も値上がりするなんというのは常識がないのですよ、そんなのは。そんなのは非常識なんです。ですから私は、今度の六月のOPECの総会においても、そんなに非常識な値上げを決めるということは考えられない。そういう意味で私がエネ庁に申し上げたい点は、円高差益のときに、そういうことも含まれておるということを私に答弁しておる、そういう点で、六月になってみなければわからないみたいなことを言わないで、強力にそういう方向でまいりますと言えませんか。
  146. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 今回の値上げも、年間を通じて一四・五%という、昨年のアブダビ総会のときにかなり意外な値上げであるというような見方もあったわけでございます。それが第四・四半期のものが第二・四半期に繰り上がったほか、サーチャージが一ドルないし四ドル積み上がる、これが実際どの程度積み上げられるのか、もう少し状況を見なければわからないと思いますけれども、こういうようなかなり意外な面もありますけれども、そういう従来の経緯にかんがみ、料金安定に努めていきたいと思うところであります。  六月につきましては、非常識なことはないという先生のあれでございましたけれども、OPECがどういう決定をするかということは、私どもの常識ではなかなか判断し切れない面もございますので、そのときの情勢を見て判断したいというふうに思います。
  147. 長田武士

    ○長田委員 長官が四倍だなんて言うから私は言ったのですよ、四倍になった場合なんて言うから。  それから、原油価格の値上げに伴いまして、石油製品などの便乗値上げが非常に顕著であります。これに対しまして、政府は監視体制を強化をしておるということでありますけれども、具体的にどのように実施をされておるのか、簡単に御説明ください。
  148. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 石油精製会社から値上げの動きにつきましては逐一報告を受けておりますし、それから末端の製品価格の動向につきましては、地方通産局等を動員いたしまして、その動きを逐一把握するように努めているところでございます。
  149. 長田武士

    ○長田委員 政府は、現在IEAの決定に従いまして五%の石油節約を実施しておるわけでありますが、通産省が四月五日に発表いたしました原子力発電の定期検査状況によりますと、加圧水型に異常が発見され、原子力発電五基が稼働しない状態で、夏場における電力供給が心配されておるわけであります。こうした状況を乗り切るためには石油火力発電所の稼働率向上を図るなど、今回の事故をきっかけに、石油火力への依存度をふやさざるを得なくなる、そういうふうに私は考えているわけであります。     〔委員長退席、渡部(恒)委員長代理着席〕 そうしますと、これが原因となって、政府が実施しておりますところの石油五%節約の足を引っ張る可能性が出てくるんじゃないかと思いますが、この点どうでしょうか。
  150. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 現在定期検査をしておる炉の中で、ピンの故障その他の事故が発見されておりまして、これの補修に一体どれくらい日にちがかかるかということは、いま作業中でございまして、必ずしもはっきりしたことは申し上げられません。ただ、定期検査の期間が延びるであろうということは確かに御指摘のとおりでございます。  それからなお、定期検査が延びますと、今度は定期検査の終了日から次の定期検査を始める期間の起算を始めますので、したがいまして、今回の定期検査が長引けば、下期の定期検査が来年度にずれ込むということになりますので、定期検査が延びた分まるまる原子力発電量が低下して、その分が石油火力発電に移り変わってしまうということでは必ずしもないわけでございます。しかしながら、定期検査あるいは補修期間が長引きますならば、原子力発電に期待しておった分が減りまして、その穴埋めをするためには石油火力への負担がかかるということは、確かに御指摘のとおりでございまして、私どもも、その辺は少し目算が狂ったといいますか、苦慮しておるところでございますが、その分だけほかの冷暖房その他のいろいろな節約項目、これをできるだけ徹底して実施することによりまして、五%の目標の達成に努力を続けたいというふうに考えております。
  151. 長田武士

    ○長田委員 イラン政変を機に、OPEC諸国による石油価格の再値上げの動きが見られるなど、国際石油情勢は非常に逼迫しておると思うのです。こうした動きに対応して、東京サミットでは、先進国間でエネルギー節約や長期的な代替エネルギーの開発プログラム等について、話し合いを行うべきものと考えるわけでありますが、この点、政府はどのように考えておるのか。  また、わが国は東京サミットの開催国であり、世界の主要先進国では最も資源小国という実情にあります。したがって、こうしたエネルギー事情にあるわが国といたしましては、開催国としての立場からも、積極的な提案を行っていくべきであると考えるのですが、この点もあわせて御答弁願いたいと思います。
  152. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 申し上げるまでもなく、このサミットは各国首脳が胸襟を開いていろいろな天下の問題を議論されるということでございますので、私が、サミットが始まるはるか前に、サミットでこういうことが話されるであろうということを申し上げるような、あんまりそういう立場にはないわけでございます。しかし、先生御指摘のとおり、世界石油及びエネルギー情勢から考えまして、今回のサミットの中でエネルギー問題が取り上げられるわけでございますが、その中におきまして、この前IEAで合意されたところの五%の節約を、各国がさらに徹底して行うというようなことの重要性は、もちろん強調されるのではないかと想像いたします。  それからまた、代替エネルギーの開発、これも現在世界経済、なかんずく日本経済は中東の石油に非常に大きく依存しておる、そこで中東の政治あるいは経済情勢が不安定になれば、それがたちまち世界経済あるいは日本経済の安定に響くということは非常に困った状態でございますから、こういう弱点をカバーするためには、代替エネルギーの開発ということが緊急の要務であることは明らかであろうと存じます。各国とも代替エネルギーの開発には努力をいたしておるところでございますけれども、各国が個別ばらばらにやるよりも、協調してやった方がさらに効果が上がるというような分野も多々あると考えられますので、東京サミットにおきましては、そういう協力可能性を探求するというようなことも非常に必要なことではないかと考えております。
  153. 長田武士

    ○長田委員 次に、ただいま議題となっております海外経済協力基金法の一部を改正する法律案に対してお尋ねをいたします。  わが国は、昨年七月のボン・サミット等の場において、三年間で政府開発援助を倍増するなどの経済協力の拡大について、国際的公約を表明いたしたわけでありますが、その後の実施状況についてはどのように対処されたのかお尋ねをいたします。
  154. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  三年倍増でございますが、いつから何を基準にして倍増するかという問題が最初にございます。一応暦年ベース、ディスバースベースで、ドル表示ということで、国際的にわかりやすい基準をとっておるわけでございます。基準年次は昭和五十二暦年でございまして、このときの援助実績が十四億二千四百万ドル、したがいまして、これを三年間で倍増ということになりますと、昭和五十五年に二十八億四千八百万ドルということでございまして、あの当時は、あわせて対GNP比率を高めていく、そういう形で海外協力を充実するということを国際的に公約したわけでございます。その後、昭和五十三年度の予算においてODA予算が六千三百五十四億円、対GNP比で〇・三%であったわけですが、さらに昭和五十四年度の予算におきましては、ODA関係の事業費予算の規模を七千二百十七億円、対GNP比で〇・三一%としております。  それで、その三年間倍増の第一次年目であります五十三年度の実績につきましては、DACへ提出するというようなこともありまして目下集計中でございまして、大体六月ごろに結果が判明するというふうに考えております。ただ、五十三年度におきます予算の伸び、それから進捗率が非常に高まっておりますし、また円高影響等もありまして、実際にはかなり進んでいるというふうに推定されます。したがいまして、三年倍増の目標は、五十五年までに確実に達成できるのではないかというふうに考えております。  なお、このODA、政府開発援助の半分近くを占めます海外経済協力基金につきましては、執行率の高まり等によりまして、実績が五十二暦年に比べまして五十三年度は大体二・二倍ということで、倍増のペースで十分に進んでいるところでございます。
  155. 長田武士

    ○長田委員 今回の基金法の改正の趣旨は円借款の拡大を図るもの、それを目的とされておると私考えております。具体的にはどの程度の拡大をするのかということが問題であろうと私は思っておるのです。  そこで、政府開発援助の国際目標は対GNP比で〇・七%であることを勘案してまいりますと、三年間で倍増を達成した八〇年代以降についても、引き続き政府開発援助充実の努力を行う必要があるのじゃないか、私はそういうふうに考えますが、その方針は変わりませんか。
  156. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 海外経済協力の重要性にかんがみまして、現在三年間倍増ということでやっているわけでございますが、その三年倍増につきましては、ただいま御報告申し上げましたようにほぼ達成が確実でございますけれども、その後におきましてもこの重要性にかんがみまして充実を図っていきたい。国際的な目標は、御指摘のようにGNPに対して〇・七%でございますが、わが国の対GNP比率は現在まだ低うございますので、とりあえず先進国平均並みに到達するということを当面の目標として充実させていくというふうに考えております。
  157. 長田武士

    ○長田委員 今回の改正による借入金等の限度額の三倍までの引き上げ、これが実現した場合、当然基金の資金コストが上昇するわけであります。その結果、基金における採算が悪化して、理論的には金利の逆ざや現象が起きるのじゃないかと私は思うのですね。こうした事態に対しまして、交付金制度が昭和四十年の基金法の改正で規定されておるわけであります。ところが、こうした交付金制度があるにもかかわらず、基金の収支状況から見てまいりますと、まだ一度も実績にあらわれていないというのが実態であります。  そこで、今回の改正による借入金等の増大に伴う資金コストの上昇に対しては、借入金等の金利を補てんするなどの処置によって、交付金制度を積極的に活用し、資金コストの制約によって、基金の円借款の供与条件緩和が妨げられることのないよう配慮することが必要であります。これによって、質、量ともに充実した借款供与を実施することが必要であると私は考えるのでありますが、政府はこれにどう対処されるのか、お尋ねをいたします。
  158. 廣江運弘

    廣江政府委員 お尋ねのように、現在の法律の一対一でございますと、大体六分強でございまして、そしてそれは二分の一でございますし、貸し出しが大体三分強でございますので、大体とんとんということになりましょうか。ただ、それでも管理費も要りますし、さらに先生の御指摘のように、貸し付け条件のソフト化を図っていきます場合には、現行法におきましても交付金の規定が必要になってくるわけでございますし、そういう趣旨を踏まえまして昭和四十年の改正で交付金の規定が入れられております。今回一対三にいたしまして、借入限度額をふやして弾力化を図りますと、原資といいますか、資金コストはより一層高くなってまいりますし、一方、国際的要請等もあり、援助条件のソフト化ということを図っていきます場合には、御指摘のように逆ざやという現象が起こってまいります。ただ、五十四年度につきましては、いろいろ計算をいたしましても、貸し倒れ準備金等も所定の額、所定といいますか必要と考えられます額よりも多少多目にとりましてもなお余裕があるものですから、交付金の規定を入れておりませんが、将来におきましては、そういう交付金の規定を活用しなければいけない事態がやってくるものと思います。  御指摘のように、その資金の原資は原資といたしまして、一対三ということで拡大をしていただきまして十分に備えるとともに、また、貸し付け条件のソフト化につきましては、別途の要請といたしまして大いに進めていかなければいけない、かように思っております。その際には交付金が現実に生きてくる、こういうふうになろうかと思います。
  159. 長田武士

    ○長田委員 わが国における円借款の条件は、諸外国と比較いたしましても必ずしもよくないという実情なんですね。一昨年にわが国が約束をいたしました政府開発援助のグラントエレメントは、前年の七四・九%から七〇・二%へと低下しておるわけであります。これは、昨年の二月にグラントエレメント八六%という援助条件勧告が採択されておりますが、これに及ばないばかりか、DAC加盟十七カ国中第十六位の実績でしかないわけであります。したがって、今後とも借款条件の緩和あるいは援助条件の標準化等を進めるとともに、贈与の比率を拡大することにより、グラントエレメントの向上に努めていくべきであると考えております。また、その際、無償資金協力については、発展途上国の実情に応じて、内容の多様化等についても検討する必要があると考えるわけであります。今後政府はこうした点についてどのように配慮をしていかれるのか、この点をお尋ねいたします。
  160. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 グラントエレメントが一昨々年の七四%が一昨年七〇%に下がりましたのは、借款の比重がふえたからであります。一昨々年は非常に不況で、開発途上国の方でもなかなか借款の方のデマンドが少なかったものですから、グラントエレメントの比率が高かったのですが、一昨年は七〇%になっております。  そこで、全体として日本政府開発援助のグラントエレメントを高めるために、まず第一の方法は、借款の条件のソフト化でございます。いまたびたびいろいろな方々から御答弁がございましたが、その点でございます。第二に、日本政府開発援助の中で無償技術協力、それから国際機関への拠出、これをふやすことです。技術協力も国際機関への拠出も、これはいずれもグラントエレメントは一〇〇%でございます。したがって、こういう総合的な努力を積み重ねて、全体としての日本のグラントエレメントを改善したい、こう考えておるわけでございます。  それから次に、無償援助の多様化についてただいま先生から御指摘ございましたが、政府といたしましてもこの点は十分に留意いたしております。最近わが国の無償援助の対象は医療、保健、教育、住宅、研究、農業、水産、栄養、環境改善、交通、運輸と非常に多岐にわたっております。これからも無償援助の多様化という傾向は続くだろうと考えております。
  161. 長田武士

    ○長田委員 わが国の借款は、従来から東南アジア中心に行われてまいったわけでありますが、今後は中南米、アフリカ等の国々に対しても、友好を深めるために援助を拡大すべきであると考えます。これに対して政府はどのように考えていらっしゃいますか。
  162. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 主体はやはりASEANと思いますが、御指摘のように、中南米あるいは中近東方面にも、今後は拡大をしていくという方向を考えつつあるところでございます。
  163. 長田武士

    ○長田委員 次に、技術協力についてお伺いしたいのでありますが、発展途上国の経済社会の開発を着実かつ円滑に進めるためには、資金面での協力と並んで、技術面での協力が不可決であると私は考えておるわけであります。  技術協力は、発展途上国における開発の推進力である人的資源の開発や、技術水準の向上に重要な役割りを果たすとともに、これは資金協力の効率を高めるものであると考えられるわけですね。しかも、技術協力には人と人との交流あるいは文化の交流を通じ、わが国と発展途上国との間を精神的なきずなで結ぶというすぐれた特性があるわけであります。  そこで、政府の開発援助に占める技術協力の割合を見ますと、一九七七年は一〇・四%であり、六〇年代以来増加しているものの、DAC加盟国平均の二〇・九%に比べると、依然として低い水準にとどまっておる状況でございます。このような状況では、わが国の技術協力は量的にも質的にも十分とは言えず、今後の技術協力を飛躍的に拡大する必要があると考えておりますが、この点はいかがでしょうか。
  164. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 ただいま先生御指摘のように、技術協力が十分にいきませんと資金協力が本当に効果を上げないということは、私ども全く同じ認識を持っております。特に、私どもの経済協力は、発展途上国の自助努力を助けるわけでございますから、たとえば、経済インフラにいたしましても何にいたしましても、資金協力を通じてでき上がりましたらば、現地の人々が自分でそれを運営していかなければならないわけでございます。そういう人たちを養成するということはどうしても大事でございまして、また同時に、先生がおっしゃいましたとおり、こういう技術協力は、文化交流と相まって、人と人の交流、心と心の触れ合いの場を提供してくれます。その意味でも私どもは技術協力を重視しているわけでございます。したがいまして、これから技術協力の分野の拡充、充実をやっていきたいと思っております。  御指摘のとおり、わが国の技術協力の比重はわずか一〇%で、DAC全体の平均の半分でございます。これから徐々にいろいろな方法を通じまして、少しでも比重を高めたいと念願しているところでございます。
  165. 長田武士

    ○長田委員 次にお尋ねしたいのでありますが、今回、イランでの政変に見られるような事態に備えて、七三年のオイルショックに見られた教訓を生かすために、中東産油国に対しては経済協力を通じて友好関係をさらに深め、資源の確保に努力すべきだったのではないかと私は考えているわけであります。オイルショック以後において、わが国はこれらの中東産油国に対してどのような経済協力を行ってきたのか、国別にひとつ御答弁願いたいと思っております。
  166. 小長啓一

    ○小長説明員 お答え申し上げます。  まず、シリアに対しましては、七三年の十二月に三木特使が来訪されました際に、混合借款の約束をしております。内容はプロジェクト援助ということでございまして、金額は九千万ドルということになっております。現在、適用対象につきましては検討中となっております。  それからイラクにつきましては、七四年の一月、中曽根大臣が訪イされました際、それから七六年一月、河本大臣が訪イされました際に、それぞれ借款を含めました混合借款の約束ができております。第一回目は二千九百八十億円、第二回目は二千九百四十億円ということでございますが、具体的には現在、化学肥料工場及び火力発電所のプロジェクトにつきまして、一部ディスバースが行われておりますが、残りの金額につきましては、今後LPGプロジェクト、その他北部ガス開発プロジェクト等につきまして適用するということで、合意を見ておるようなことでございます。  それからサウジアラビアにつきましては、七三年一月、三木特使が訪サされ、七六年一月、河本通産大臣が訪サされました際に、石油化学のプロジェクトについての合意ができております。本件につきましては、ことしの一月、日本側の調査会社が設立をされまして、今後日本、サウジアラビア共同して調査を行う段取りになっております。
  167. 長田武士

    ○長田委員 いま実施状況についてお尋ねしたわけでありますけれども、オイルショック以来すでに六年を迎えておるわけでありますが、依然として思うように進展してないように思っております。  そこで、具体的な問題についてお尋ねしたいのでありますが、イランにおいて三井グループが進めておりますわが国最大の海外プロジェクトである石油化学コンビナート建設計画が、昨年十月以来、イランの政情不安が激化して、この計画の工事が中断しておるわけであります。いつ工事が始まるかというような、前途が危ぶまれておるわけでありますが、これによって世界各国からの関心を集め、企業の海外進出や経済協力のあり方にも大きな影響を与えておるわけでありますが、その後イランの政情は、新政権によって一応安定しつつあると言われております。  そこで、工事の再開から操業というスケジュールが予想されますが、参加各会社の意見といたしましては、工事再開から操業に至るまで、もはや民間だけでは運営できないのじゃないか、政府援助が必要であるという声が出ているようであります。政府は、このような大型経済協力プロジェクトである石油化学コンビナートの計画をどのように把握し、またどのように対応されるのか、その点についてお尋ねをいたします。
  168. 小長啓一

    ○小長説明員 お答え申し上げます。  本プロジェクトは、日本イラン経済協力の最重要な案件とわれわれは理解しております。発足当初より二百八十八億円の円借款を供与いたしましたり、輸銀資金の供与等もいたしまして、積極的な支援措置を講じてきたところでございます。  現在先生御指摘のように、イランの政変の影響等によりまして、建設工事は一時中止、われわれは小休止と称しておるわけでございますが、三カ月程度の小休止のやむなきに至っておるわけでございますが、日本側の投資企業でございます三井グループは、本計画を継続する方針を確認しておるわけでございますし、イラン政府の最高首脳もその方針を確認しておるわけでございますので、できるだけ早期に工事を再開したいと、われわれとしても希望しておるわけでございます。政府といたしましては、本プロジェクトの重要性にかんがみまして、具体的な支援策について三井グループ等から要請がございましたら、これを積極的に検討してまいりたいというふうに考えております。
  169. 長田武士

    ○長田委員 長官、お尋ねしたいのですけれども、私は資源のない日本の場合、どうしても資源供給安定という面について、そういう意味では資源保有国に対する経済協力を抜本的に拡充いたしまして、その安定を図るべきだとこの際強く長官に要望するのですけれども、その点いかがでしょうか。
  170. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 経済協力そのものが、やはり日本国民経済にとってプラスであるということは最も望ましいことでございますが、また余りそれが露骨に出ることもいかがかというふうに思います。しかし、一応われわれといたしましては、そうしたただいま委員の仰せられたような方向も決して無にしておるわけではございませんので、多方面にわたって効率のよい援助というものを、今後積極的に展開してまいりたい、そのように思うわけです。
  171. 長田武士

    ○長田委員 次に、対中国経済協力について若干質問したいと思っております。  わが国と中国における経済関係は、七二年の日中国交正常化以降において日中貿易が順調に拡大しておる中で、昨年二月、日中両国の長期貿易協議委員会の間で、七八年から八五年までの八年間で往復二百億ドル前後の貿易を行うよう、日中長期貿易取り決めが締結されたわけであります。この日中長期貿易取り決めによって、今後、日中問の貿易を中心とする経済関係は、一層緊密化することが予想されております。こうした中で、問題は、大規模な貿易のための金融決済をどうするかということでないかと私は思うのですね。そこで、政府は今後対中国に対する資金協力については、どのような方針で臨まれるのか、お尋ねいたします。
  172. 高橋清

    高橋(清)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、本件は非常に重要な問題でございますので、私どもは、どういう方法でもって中国に対しまして資金協力ができ得るかという方法につきまして検討した結果、現在四つほどの方法を考えております。第一は、輸出入銀行によりますプラント輸出に対します延べ払い金融、第二は、輸出入銀行の資金を使います石油石炭開発金融、それから第三は、市中銀行のいわゆるシンジケートローンでございまして、第四は、経済協力基金によります援助資金でございます。  ただいま御説明申し上げました第二及び第三の、すなわち輸出入銀行によります石油石炭開発金融と、市中銀行によりますパンクローンにつきましては、それぞれ現在当事者が中国側と交渉中でございますので、私どもはいわばその進捗状況を慎重に見守っております。また、今後中国は、いわゆる現金が底をつきまして、わが国といたしましても延べ払い方式によって協力する必要がございますが、これにつきましても現在当事者間で交渉が行われておりますので、日中問、当事者間の交渉を私どもは慎重に見守り、また日中経済協力を推進するという立場から、可能な限り所要の協力をいたしたいと考えております。  また、さらに経済協力基金によります援助につきましては、いまのところ中国側の具体的な意向が明らかでございませんが、今後具体的な要請があれば、どのような形でわが国として協力できるか、慎重に検討していきたいと考えておるわけでございます。  以上でございます。
  173. 長田武士

    ○長田委員 昨年二月締結いたしました日中長期貿易取り決めと、中国の本格化した四つの近代化計画により、昨年から本年一月までに成約いたしましたプラントなどによる中国の対日輸入仮契約額は、七千五百億円まで達しておるわけであります。こうした中で、わが国からの約四千二百億円分に及ぶプラント輸入について、中国側より突然契約発効の保留を通告してきた問題があります。この背景には、決済方法が問題となっているものと思われるわけであります。先ほど対中資金協力の方法について伺ったわけでありますが、海外経済協力基金による円借款を供与することについて、政府はどのように対応していく方針なのか、この点をお尋ねいたします。
  174. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 基金法の運用の原則に基づきまして、中国に対する援助を行っても構わないという解釈でございます。ただ、中国側からのそうした具体的な要求、希望をわれわれはまだ耳にしておりませんので、こちらから強いてその問題について先方には申し出ておらないわけでありますが、先方から希望があれば、それに対応してわれわれも動き得るということでございます。
  175. 長田武士

    ○長田委員 それでは最後にお尋ねしたいのでありますけれども、今回の改正案には、基金の機構改革といたしまして、副総裁一名を新設することになっておるわけであります。現在、世論といたしまして、官僚の特殊法人への天下りや、高額の退職金を取って法人役員を転々とする、いわゆる渡り鳥官僚に対して国民の強い反発があります。国会でも再三論議されておるところでありますが、大平総理も、安上がりの政府、チープガバメントを強調しているわけでありますが、こうした状況の中での今回の海外経済協力基金の副総裁設置は、国民世論を無視し、また大平内閣の公約にも逆行するものと思われるわけでありますが、この点については、経企庁長官、いかがでしょうか。
  176. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 経済協力基金の活動がこのところ非常に活発であるということ、しかも三年倍増等々のいろいろな活動が、今後ますます拡大をしてまいります。こうした国との関係における活動というものは、常に総裁あるいは総裁代行と申しましょうか、代表的な者が行って先方と交渉し、あるいは調印をするならわしになっておりますが、現状におきましては、総裁一人ではいかにも手が回りかねる問題がたくさんございます。やはり代表権を持った副総裁がもう一名おりまして、交互に海外に出、あるいは日本でそれを迎えるということが、より基金の運用には効率的なことになるというふうに考えて、今回副総裁の増員をお願いしているわけでございまして、これは決して渡り鳥をつくるためではないということをぜひ御理解賜りたいと思います。
  177. 長田武士

    ○長田委員 それでは具体的に数字を挙げてお尋ねいたします。  いわゆる特殊法人と呼ばれております法人は現在百十二法人あります。そのうち、総裁制を持つ法人は二十七法人あるのですね。また、二十七法人の中で、副総裁を置く法人は二十二法人で、残りの五法人は副総裁を実は置いておりません。ちなみに、副総裁を置く二十二法人は、最低で職員数は二百八名、常勤の役員数八名の規模となっておるわけであります。一方、副総裁を置かない五法人を見ますと、最高で職員数は七百名、常勤の役員数は六名となっております。ところが、海外経済協力基金は、職員数百八十名、常勤の役員数は五名なんですね。非常勤の役員数一名の、計六名であります。こうした状況を見て明らかなように、役員が非常勤を含めて六名、職員が二百名に満たない法人に、副総裁を置いている例は全くないわけであります。  このような異例な措置を何でとるのかというところに私たちは非常に疑問を持ちますし、今回海外経済協力基金に副総裁を設置するということになりますれば、行政管理庁がこれを審査したとは思いますけれども、そこら、ちょっと私たち納得ができないのであります。この点どうでしょうか。
  178. 武智敏夫

    ○武智説明員 お答えいたします。  まず、具体的な内容に入る前に、行政管理庁といたしましての、特殊法人の役員の定数増についての一般的な考え方について、御説明いたしたいと思います。  先生御指摘のように、現在の厳しい社会情勢あるいは財政状況等にかんがみまして、われわれといたしましては、厳しく抑制する方針のもとに査定を行っているところでございます。具体的に五十四年度予算との関連で申し上げますと、現在御審議いただいております海外経済協力基金のほかに、日本原子力船開発事業団、公害防止事業団、林業信用基金、石油公団など、五特殊法人から理事ないし監事の定数増加の要求があったわけでございますけれども、実際に最終的に認めたのは、現在御審議願っておりますこの海外経済協力基金のみでございます。  そこで、行政管理庁として、なぜこの海外経済協力基金について副総裁等を認めたかということでございますが、一つは、先ほど来御議論願っておりますように、経済協力の問題が現在のわが国にとって非常に重要な問題になってきておるということがまず一つでございます。それから基金の事業、三十六年度から始まっておるわけでございますが、その後飛躍的に伸びてまいっておりますし、せんだってのボンのサミットにおける三年倍増の実現に当たりまして、今後とも飛躍的に拡大が見込まれております。具体的な数字については、たとえば三十七年度、これは総裁一人、理事四名、監事一名という現在の執行体制になったのが三十七年度でございますが、そのときの事業実績が九億円でございます。それが五十一年度には千五百三億円、百六十七倍になっております。それからたとえば五十四年度予定、これはまだ見込みでございますが、三千七百億円というようなことで、非常に大きく伸びております。  それから三番目といたしましては、基金の事業規模でございますが、世界銀行よりは小さいとは申しますものの、アメリカなり西ドイツなり、あるいはアジア開銀なり欧州開発銀行と比べましても非常に大きい。そういう意味で、基金の占める国際的なポジションが非常に大きいものがあるということでございます。  それから、四番目には、基金の業務の特質でございますけれども、被援助国政府ですとか、あるいは世界銀行なりアジア開銀等といったような、国際的な金融機関との折衝、協調といったような、対外的性格がきわめて強いことでございます。したがって、そういう非常にむずかしい業務であるというような特質を持っておろうかと思っております。したがいまして、そういうような事情のもとで、総裁もいらっしゃっておりますけれども、総裁の海外出張等について調べてみましても非常にたくさんあって、業務が忙しいというようなことになっておりますし、今後の重要性から見ましても、ますます多忙になろうというように考えております。  そういったようなもろもろの情勢を総合的に勘案いたしますと同時に、日本輸出入銀行ですとか、あるいは国際協力事業団といったような類似の性格を持つ特殊法人との均衡も参酌いたしまして、今回の副総裁を認めたものでございます。  したがいまして、行政管理庁といたしましては、非常に厳しい査定方針のもとで臨んだわけでございますが、いま言ったような事情にございまして、非常に現在重要なる経済協力を円滑にやっていくための、必要最小限のものであるというふうに理解して認めたものでございます。
  179. 長田武士

    ○長田委員 長官、順序といたしまして、やはりいきなり副総裁をつくらないで、理事を一名ふやしたらどうなんでしょうか。仕事量が多いとか対外的に非常に繁多であるとか、意味はよくわかります。重大な仕事であるということもよく理解できます。そういう意味で、副総裁よりも強力な理事を一人置くとか、そういう方法がとられてしかるべきだと思います。そうしませんと、他の五法人が副総裁をつくってほしいということになると、あそこもつくったんじゃないかということになりまして、行政改革どころではなくなってしまうのです。そういう意味で、副総裁のいないところに門戸を開くみたいな形になりはしないか、その点お尋ねして終わりたいと思っております。
  180. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま行管の方から御説明申し上げたとおりでございまして、われわれも副総裁を置くということについては、まず一義的にはこの仕事がきわめて国際的に、しかも、トップの国々のトップの人々との交渉ということが最も重要な業務であるということでございます。したがいまして、現在総裁一名で、きわめて多忙な日程でありますし、代理者がおらないために、往々にして折衝がおくれるという事態もございましたし、また今後はさらにわれわれの活動範囲が拡大いたしますから、そうしたことによって業務が停滞することも非常に残念なことであるということ、これが第一点でございます。  しかし、われわれの要求に対しまして、現在大平内閣のとっております行政の簡素化という線というものをやはり重視いたしまして、この点につきましては、行政管理庁において、独自の考え方からこの新設につきまして十分検討していただきまして、結論として、ただいま行管の方から御報告を申し上げたようなことで、許可が出たわけでございまして、われわれといたしましては、こうした配慮は、やはりわれわれがいま世界的になすべき多くの仕事の中で、最も重要な海外に対する経済協力ということを円滑かつ迅速に処理をし、そして、日本の対外信用をさらに拡大していきたいというようなことであるわけでございまして、ぜひともこの点につきまして、委員の御理解を賜りたいと思うのでございます。
  181. 長田武士

    ○長田委員 以上で終わります。
  182. 渡部恒三

    ○渡部(恒)委員長代理 田口一男君。
  183. 田口一男

    田口委員 第一番に長官にお伺いしたいのですが、午前中のそれぞれの質問の中にも、経済協力の基本理念ということについて、二、三お尋ねがあったわけですけれども、私は、そういう面でもう一遍実はお尋ねをしたいわけであります。  平たい言葉で言うならば、経済協力は相当な国費を使って、それから民間企業の進出も含めて、トータルで言えば相当な金目のものを出しておるにもかかわらず、海外からの日本の信用といいますか、それは芳しくない。かつて石もて追われるごとき状態まで起こった。これは結局経済協力というものに対するわが国の基本的な考え方が、相手国はもちろんのこと、税金を納めておる国民に対しても十分納得が得られていないんじゃないか。もちろん一〇〇%賛成ということは望むべくもないにしても、相手国からも、内外ともに批判をこうむるということは、やはり基本理念が欠けておるのではないか、こういう気がするわけです。いろいろな資料なんかを見てみますと、たとえば一九五〇年代の後半にアメリカは一つの方針を打ち出しておる。アメリカ型と言っておるのですけれども、さらにまた一九六九年にはカナダのピアソン報告というふうに、持てる者が貧しき者を援助するのが当然だといったような一つの理念、それからいま多少は違うと思うのですが、一九六〇年代の初めごろには、当時生きていた周恩来首相の、中国の対外援助に関する八原則というふうに、その国にとってある程度納得をすべきものを宣明をしておるわけですね。ところがわが国の場合には、そういった形で経済協力についてはどうも明確でないのではないか。たとえば七三年ごろに言われたように、いま経済協力にある程度誠意を見せておかないと世界の国から袋だたきに遭う。そういう申しわけ、仕方がないからやるんだというふうなことが強く出ているような気がするわけです。そういう点について、まず長官経済協力基本理念について、ここでひとつびしっとする必要があるのではないかと思いますので、お聞かせいただきたいと思います。
  184. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 特に日本の場合、経済協力というものを行うということは、今日までの問にはややよけいなことだという感覚が、官民ともにあるような時代があったと思います。それはやはり日本自身の経済成長とか、あるいは国民生活の安定とかいうことが非常に急がれている、そういう面から見て、よその人にやるくらいなら自分のところをやったらいいじゃないかというような考え方であったと思うのであります。しかし日本経済も二百兆を超すような巨大な規模になってまいりまして、この一挙手一投足が全世界経済に、あるいは全世界の国々のいろいろな面で、政治、軍事――軍事は別といたしましても、政治経済面に及ぼす影響というものは非常に大きいということを、日本人自身もだんだん理解してきている。同時にまた、日本が現在のような大規模な経済構造を持ち、大規模な経済活動を行うためには、それ相応の世界に対する役割りというものをみずから実践することによって、将来のまた自分らの安定、安全、あるいは経済的な安全保障も得られるという理解が国民の問に高まってきたのが最近だと私は思うのであります。  そうした考え方を触発する幾多の事例が、昨今世界じゅうにいろいろな面で起こっております。理念の上では南北問題の解決ということは、最も哲学的であり、かつ理想的な問題のとらえ方でございますけれども、そうしたことが政治の実体あるいは国民生活の中で理解を得るのには、やや説得力の乏しいものがあったように思うわけでございますが、ようやく日本自体の経済構造も内需中心の経済体質に変わりつつあります。そうしたことによって、貿易だけで食べていくのだということ以上に、国内の内需の拡大によって日本成長していくという一つのパターンが生まれてきたのをきっかけに、やはりわれわれはそうした余力を、さらに海外の南北問題の解決のために積極的に展開していくということが、世界史的に見ても非常に重要な役割りであるという認識、特に政治がそれに気づき、そしてそのための努力協力を、単にお題目ということでなしに、実践的な面を通じて日本の安全のためにも、また世界の平和のためにもなすべきである、ようやくそうした理念に到達したのが昨今ではないかと思うわけでございます。  やはりこうした日本政治理念の高揚ということは、きわめて意味のあることでございまして、そうした方向の中で、今後経済協力を通じて、日本政治の重要な一環としてそれを伸ばしていくということは、理念としましても、また実践行動としましても間違いのない方向だというふうに考え、今後われわれはそれを追求していくということを申し上げておきたいと思うわけでございます。
  185. 田口一男

    田口委員 いまのお話のように、そういう基本理念に基づいてやっていく、私はそれで異論がございません。ただ、もっと強く打ち出すべきであるという、欲を言いたいだけでございます。  そういった長官の考え方から敷衍をすれば、今度の提案説明の中にもちょっと触れておりますが、ボン・サミットで南北問題の話が出て、後でも質問したいと思うのですが、結局実績を二倍にする。ところが近く、再来月行われる東京サミットの場合にも、南北問題が一つの重要な議題になるであろう。しかしここで南北問題を南北問題一般ではなくて、特にわが国の場合にはアジアの一角に位し、しかもその周辺に多くの発展途上国を抱えておるという特殊な条件があるわけですから、さっきも言ったように、南北問題はやらなきゃいけませんなということでやるのではなくて、アジアの発展途上国に対して日本がどういう経済援助をやっていかなければならぬのか。その場合に、幸か不幸かといいますか、相手の国がわが国と比べて大変条件の違いがある。言語が違う、宗教が違う、それから人口増加が爆発的である。いろいろな不安定な要素といいますか、あるわけですね。そういったアジアの一角を日本が占めておるという特殊条件と、そのアジアの発展途上国の国別に見るいろいろな条件の違い、そういったところに対してわが国がどういう援助をやっていったらいいのか。援助という言葉はちょっとなんですけれども、余り押しつけがましいやり方をすると、一時騒がれたように新植民地主義という批判があるだろうし、と言って、また向こうの方の途上国のナショナリズムというものを余り刺激をしても困るし、大変むずかしいと思うのですが、さっき長官のおっしゃったような基本理念に基づいて、しかも南北問題一般ではなく、アジアに対する具体的な経済協力というもののあり方はどうなのか。これは一言ではむずかしいと思うのですが、その辺のところも基本理念を明らかにする上において、どうしても避けて通ることができないのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょう。
  186. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いささか私の御答弁が生煮えだとお考えかもしれませんが、一応私の考え方だけを述べさせていただきたいと思うのであります。  一つには、やはり日本がアジアの諸国の経済的自立を助ける、経済的な成長を助けるということがいままでの一番大きなメーンテーマになっておる。つまり経済成長するならば、その国の国民が豊かになるであろうという発想でありますが、私は、やはり今日までのやり方で多少の批判のあるのは、そうした経済協力や援助というものが実は相手国の国民の目にはよくわからない、また、はだ身ではよく感じられないというところにあったのではないかと思うのであります。経済援助の場合に、つまりハードウエアの部面だけが強調される場合には、それは確かに効率的であるかもしれませんが、しかし私は、アジアの場合を考えた場合のみならず、全世界的にそうでございますが、やはりもっとソフトな面について、われわれは協力体制をもっと展開していくべきだというふうにいま思っておるわけであります。したがって、日本が余り学校であるとか病気だとかあるいは生活上の問題とか、そうした問題についてことさらに目立った協力をしなかったということが、いま反省されている点ではないでしょうか。そうした面について、われわれはもっときめ細かく、国民生活の足元にわれわれの配慮なり協力というものが届いて、それがそれらの国々の国民から見てよく理解できるというようなプロジェクトを、特にいま選んで先行さすべき段階ではないかと思うのでございます。  そのような考え方で、これからの援助の体制は、やはり目に見えて、はだで感じられる援助を主体にしなければならぬ。そのためにはそれらの国々の国民のニーズというものを正確に把握しなければならない。そのためには、やはりそうしたニーズを把握し得るような機構と人材をそれらの国に多く、あるいはわれわれの組織の中に多く入れなければならない。それができない場合には、それらの地域に親しい友人をたくさん持つような、あるいはまたいろいろな関係でしげしげと行かれるような方々の体験や、あるいはその地域で感じたいろいろな問題について、率直にわれわれがお話を承って、それを行政のベースに乗せていくというやり方、われわれは、そのような方向を今後はとるのが最も援助を効果的に、しかもせっかくの努力が内外ともに評価されないということではまことに残念なことでございますから、そのような努力をして、内外の経済協力に対する評価をひとつもう一回ここでとり直す。そのことによって日本世界的な大きな役割りを果たしているんだということを、また日本人の方々にもよく理解してもらうというようなことが施策の中心になるべきであろうというふうに考え、また、今後はそのような方向を特に強調してまいりたいというふうに思っております。
  187. 田口一男

    田口委員 そういうお考えに対して、いまから申し上げる質問はぐっと落ちるのですが、落ちるという言い方はおかしいのですが、いまのこの不況、そこで私どもが中小企業の方々やそれから職場を去った中高年労働者と話をすると、この経済協力をこういうたとえでひやかすのですね。金持ちの道楽じゃないかと言うのです。これはそういう批判がある。  というのは、経済援助、これは政府開発援助だけじゃなくて、日本の企業が海外に進出をするということもあって、幾多の成功した例もある。たとえば台湾、韓国のような場合。それが、向こうの国がどんどん経済が発達して、言うところの発展途上国の追い上げという状態ができてくる。そのことによって、先般本委員会でも審議がありました繊維関係などについては、海外からの輸入のために、日本の繊維関係業者があっぷあっぷする。これははっきり言って仕方のないことなのか。長い目で見て、日本の繁栄のために、アジアの平和のために、こういう状態が起こっても仕方のないことなのかという、大変割り切りがたい質問、疑問が残るわけですね。これは政府開発援助そのものがはね返ってきたという意味じゃなくて、それが一つの下敷きになって企業が進出をする、トータルとして向こうが伸びてくる、追い上げてくる、こちらが失業者が出る。ですから最近他の先進国から、日本は失業を輸出するという批判がありますけれども、こういった問題は、むしろ失業を輸入しておることになりはしないか、こういう不満は長官もおわかりいただけると思うのです。そういう点は、いま言ったようにいたし方のないこととして、その摩擦をできるだけ少なくするということしか方法がないのか、それとも、かつて言われたように、共存共栄といったようなことで、何か他に方法がないのか。私ども地元でそういう質問を受けると、余りけしかけますと国粋主義のようなことになってしまいます。これは仕方がないのだと言うと、何だ、てめえの国籍どとだということを言われますので困った問題なんですが、一体どうでしょうね、これは。
  188. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私は、やはりアメリカが過去において非常に体験して、日本の繊維に押しまくられて、アメリカの国会が日本の繊維に対して非常に強烈な反論を行った時代がございました。いまちょうど日本が十年くらい前のアメリカの状態、中進国から追い上げられているという現場もあると思いますが、私は、これは世界じゅうが一つの進歩の過程においてはやむを得ないことじゃないかと実は思うのです。しかし、その当事者にとってはこれは大変重大なことであると思いますが、私は一つの理念として、やはり共存共栄ということより、競争的共存共栄ということが、一つの先進国として、これだけの経済大国になった日本としては、国民によく理解をしていただくように努力していくべき問題ではないかと思うのでございます。単なる共存共栄ということよりも、そこにはやはり一種の競争があって、そしてその競争の中からさらにいいものが生まれてくるなりあるいは新たなる発展があるなり、われわれが一番期待しますことは、競争的共存共栄ということで平和が訪れることが一番大事なことだと思うのでございまして、われわれは、一種の平和に対する代償を払うというような意味でも、こうした中進国あるいは後進国の追い上げということに対して、ややブロードマインドにこれに対処していくということが非常に大事なのではなかろうかと思うのでございます。
  189. 田口一男

    田口委員 いまの問題に関連して、通産と外務の方に見えたらお聞きをしたいのですが、開発途上国の日本経済協力に対するいろいろな要望が、先ほどの質問の中にも出ておりましたけれども、はっきり言ったら、もっとこの枠をふやしてくれ、援助の条件を緩和してくれということに尽きるだろうと思うのです。それはそれとして私ども十分理解ができます。また、それにこたえるべく努力をしなければならないということもわかるのですが、円借款の話が出ておりましたけれども、わが国の場合に、政府援助は借款が中心になって、贈与が少ないという批判があります。これは、いろいろなフランスや西ドイツに比べて、相手国との従来のつき合いが違いますから、かつての旧植民地というふうなこともありますから、これは一概に言えないと思うのですが、ただ、私はここで問題にしたいのは、円借款をやった場合に、円で貸して円で返してもらうときに、最近ちょっともたついてはおりますけれども、円高傾向が今後もずっと続くものとすれば、借りた方は大変重荷になりますね。そういうことについて、特別なスペシャルアクションといったようなことが考えられないか、これは向こうの立場に立って。  ところが、今度はわが国の立場に立って言うと、円借款で従来は日本から金を貸して、そして日本の物で調達をする、こういう、向こうからいったらひもつきというふうな表現があったのですが、それを取っ払ってくれ。そうなってくると、かつてあったように、日本の企業が外国の企業と競争入札をした場合に、円高の状態で負けてしまう、こういう例が多いわけです。それをさっきの長官の競争的共存共栄ということであきらめなければならないのか。そういう点で通産省の考えと外務省の考え、一般アンタイイングというものが向こうの方で要求があるらしいのですが、それを御説ごもっともという考えなのか、そこのところを通産と外務の考えを聞かしてほしいわけです。
  190. 小長啓一

    ○小長説明員 アンタイの問題につきましてお答え申し上げます。  わが国は、国際収支対策等の観点から、七七年の十二月、二国間援助について一般アンタイドを基本原則として実施していくということを決定いたしまして、円借款につきましては、昨年度からこの実施に取り組んでいることは御承知のとおりでございます。     〔渡部(恒)委員長代理退席、山下(徳)委     員長代理着席〕 しかしながら、先生御指摘のように、内外の経済事情を踏まえまして、雇用面、国内産業等に及ぼす影響等を慎重に考慮しつつ実施する必要があるというのは、まさに御指摘のとおりでございまして、今後とも十分それらの点を踏まえました上で、私どもは外務省を初め関係各省と折衝してまいりたいというふうに考えております。
  191. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 御質問の二つ、三つの点についてお答え申し上げます。  まず第一に、日本の援助のグラントエレメントが西独とかそういうところに比べて少し低いのじゃないか、こういうあれがございましたけれども、実はそういうほかの国には伝統的に非常に有利な条件がございまして、そしてそれがよくなっているわけです。たとえば、二、三の例を挙げますと、アメリカは戦後小麦が非常に余っているわけです。余剰小麦がたくさんだぶついておりました。それをアメリカ政府が買い付けて、無償で全世界の開発途上国にばらまいた、こういうわけです。これは現在もPL四八〇と称して、アメリカの援助の相当な部分を占めているわけでございます。それから、もう一つ例をフランスにとりますと、フランスの場合には、旧植民地のみならず現在属領と彼らが称しておるものに対する支出、これもDACの統計上、援助とみなされておるわけでございます。したがってODA、しかもこれはほとんど無償でございますから、フランスの先生であるとか官僚であるとか、そういう人たちの月給等になっておるわけですから、したがって、そういう面でフランスの場合も非常に有利な条件があったというわけでございます。さらに、先生がお話しになったとおり、オランダとかそういうところは旧植民地に対する罪悪感もあって、国の世論が援助に対して非常に強硬である。つまりうんと援助をやれ、こういうあれがございます。こういう特殊な事情がいろいろあったということをこの際お耳に入れておきたいと思います。  それから第二に、円高に伴って円で返す国がだんだんつらくなるのじゃないか、こういうお話でございますが、私どもその問題はよく承知しておりますが、現在UNCTADで取り決められましたいわゆる累積債務に対する救済措置、この決議にのっとりまして、いわゆる後発途上国、LLDCと言っておりますけれども、こういう国につきましては、元本、金利合わせたものに相当するものを無償で出す。それからいわゆるMSACと言っておりますが、石油危機で一番影響を受けた国、これはインド、パキスタンとかそういう国が入るわけでございますけれども、これにつきましては金利をある程度まけてあげて、その差額を無償で穴埋めしてあげる、こういう措置をとっているわけでございます。  最後に一般アンタイでございますが、ただいま小長経済協力部長から御答弁がございましたとおり、五十三年度から私どもは一般アンタイを基本方針といたしております。つまり日本が供与いたしました借款の額で、発展途上国は日本のみならず、開発途上国、先進国、どこからでも買ってもいい、こういう制度を導入しておるわけでございます。これはもともとは開発途上国自身の強い要請に基づいて、これにこたえたものであります。つまり開発途上国といたしましては、借りたお金で一番安い、一番質のいいところから買い付けたい、こういう強い希望を持っておるわけでございます。そこで、一応そういうことを基本原則にいたしましてやっているわけでありますけれども、今後ともこの方針を続けていきたいと思っております。  なお、今年度の借款のいわゆる意図表明額、全部で約四千四百億円でございますけれども、約半分が一般アンタイの対象になっております。
  192. 田口一男

    田口委員 いや、割り切れぬという気持ちは率直に申し上げますけれども、いま外務省のお考えを聞いて、借款、無償の割合がフランスや西ドイツに比べて低いから、もっとふやすべきであるという言い方は、私はしません。確かにおっしゃったように、フランスは旧植民地、属領、そういった下地があるわけですからね。いろいろなやりくりでそれが八四・八とか、日本が三七であるのに向こうは八四だ、その数字をもってわが国の場合は低いじゃないか、そう短兵急な批判はしません。ただ、そういった事情があることを考慮に入れて言うならば、いま一般アンタイの場合ですね、借りた国の立場に立って言うならば、それを有効に使うためには安いもの、そういうことはわかります。ところが、日本の場合に、いまの雇用状況で、通産から答弁があったように、西ドイツやその他の国に競争入札で負ける、これはどうも割り切れぬじゃないかと思うのですね。したがって、その辺のところは、おれのところはおまえのところに金を貸すのだから、日本の物を買ってもらわなければ困る、日本で調達してもらわなければ困るなんという高飛車なことは外交上問題でしょうけれども、日本の国内のことも向こうにわかってもらう、そういう方法がいま必要なんじゃないか。だから、必要な輸出、必要な輸入と言ったのはそういう意味があるわけですね。こちらは援助をしておる、開発援助だ何だかんだやっているのですけれども、そのことがむしろ、短絡的な物の言い方になるのですが、いまのわが国の失業情勢に輪をかけるようなことになりはしないのかという不満が残る。それはさっき言った、長い目で経済協力という理念はわかるにしても。ですから、向こうの言い分も十分のみ込みながら、それをどうこなしていくかということをやってもらわないと、外面如菩薩内面如夜叉というような状態になってくるのじゃないかという懸念が残るわけですね。ですから、私としては、無償の比率が低いからけしからぬ、もっとふやせなんと言うのじゃなしに、後の方が気になるわけです。その点もう一遍。
  193. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 先生の御懸念はよくわかります。そこで、昨年度は約半分が意図表明の段階で一般アンタイ化されたと申しましたけれども、私どもとしても一挙にこれを一〇〇%一般アンタイ化しようということを考えておるわけではございません。これから一般アンタイ化の方針を進めるに当たりましては、もちろん通産省、経済企画庁、大蔵省、その他関係省庁の方々とよく意見を突き合わせまして、そして方針を決めていきたいと思っております。  なお、先生に一言、ぜひ御承知おきいただきたいのは、たとえ、ただいま申し上げましたように、借款を供与するときに一般アンタイ化ということで先方にあれいたしまして、また、先方がそれに乗って国際入札をいたしましても、果たしてどれだけが本当にほかの先進国のメーカーに落札されるのか、その辺の統計がまだわかっておりません。五十三年度からこの新制度を導入いたしましたので、その結果の集計はもう少し先になると思いますが、その結果も私どもとしては参考にしたいと思っております。
  194. 田口一男

    田口委員 先へ進みますが、金の面ではなくて、経済協力で人を派遣する技術協力。そこで一つだけこれは何としても解決をしてもらいたい問題があるのですが、ある例を申し上げます。  畜産の技術者が、かつてイラクへ経済協力の問題で派遣をされました。ところが、その畜産技術者がたまたま地方公務員であって、地方公務員を退職して行かなければならぬ。そして三年ぐらいおったのですが、向こうにおった期間は、ある程度こちらの給与よりいいことは事実。それが何かの事情で日本に帰りましたが、復職できないのですね。これは畜産関係の技術者だけかと思ったら、お医者さんの場合にもそういう例が間々あるようです。したがって、向こうに骨を埋めるという方は別として、いずれ戻ってくるのでしょうから、そういった身分上の扱いということについてはっきりすれば、もっと行き手がふえるのじゃないかという気がするのですが、その辺、これはどこが所管ですか。やはり企画庁ですか。
  195. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 お答え申し上げます。国家公務員が国際協力事業団の専門家として派遣されます場合には、国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇等に関する法律に基づきまして派遣されております。そこで、派遣期間中も職員としての身分を保有しておりますし、派遣期間が満了したときには職務に復帰する旨はっきり規定されておりますので、復職について問題は生じないはずと承知しております。  さらに、地方公務員を派遣する際にも、現に保有する身分のまま、職務専念義務を免除いたしますか、休職か出張の形で派遣しておりますので、派遣期間が終了した時点で復帰しておりますし、いわゆる復職できないという問題は生じないはずであると考えておるわけでございます。
  196. 田口一男

    田口委員 地方公務員でそういう例が、具体的には名前を挙げませんけれども、畜産技師で三重ではあるのですよ。戻ってきたけれども、やめて行ったんだからもう定数がありません。だから、これは一遍調査をしていただきたいと思います。  最後に、副総裁一名を置くということに関連してなんですが、私は副総裁を置くのはけしからぬとかどうということは、短兵急には言いません。ただ、通産省が出した「経済協力の現、状と問題点」のうちの三百十一ページからありますが、「経済協力関係機関」、これを見ますと、大変紛らわしいというか、似たような名前がちょいちょい出てくるのですね。こういう機関ができたいきさつは、私はそれなりに理解ができます。昭和三十六年にこういった法律ができて、そしてやってみたら、いろいろな点で壁にぶつかった。だから、コンサルタントの関係はつくらなければならないじゃないかとか、技術者の関係については一つの協会をつくろうといったことで、気がついてみたら十二も十三も似たような機関ができてしまった。ここのところをさっきの行政管理庁の先の質問者に対するお答えを聞いておりますと、確かにこの基金は額からいっても大変なウエートを占めるから副総裁一名を認めたんだ、その説明を了としても、余りにも似た機関が多過ぎはしないのか。これは名前を挙げて、この団体の方にちょっと不勉強と言われるかもしれませんけれども、たとえば社団法人で海外コンサルティング企業協会というのがあるのですね。ところが、いま言ったのは通産省、建設省関係ですが、同じようなことで海外運輸コンサルタンツ協会、これは運輸省が金を出しておる。これなんかずっと事業内容を見てみますと、確かに運輸ということが一方にはついているけれども、一方はそれがついてない。まあどっちかをつぶせという意味じゃありませんけれども、こういった例であるとか、それから国際協力技術研修財団というのが外務省の関係の財団法人としてあります。ところが、通産省の関係財団法人として、海外技術者研修協会というのがありますね。これは、国際と海外が抜けてしまったら中身は同じじゃないか。そういったものをもっと効率的に経済協力をやっていくならば、副総裁なんか必要ないとかどうとかいう議論の前に私が言いたいことは、この中身をもう一遍見直して、強力な機関に合併をするか、不必要なものはその場合切ってしまうか、こういったことの方が、副総裁一人を置くということよりも本当の説得力を持つのじゃないか、私はこう思うのですが、どうでしょうか。
  197. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 田口委員のただいまの御指摘は、まことに重要な御指摘だと思います。特に経済協力等につきましては、日本のあらゆる機関がそれぞれ相当善意を持って、日本がこれから経済協力あるいは技術協力をしなくてはならないのだとみんなが思っておる。したがって、そういう熱意がいろいろな部面で同じような組織体になってあらわれ、しかもそれをコントロールする場所が、御承知のように現在日本の行政は縦割りでありますから、その縦割りにくっついているというようなことであると私は思うのでございます。これを統合して強力な一つの機関にまとめるとかなんとかする前に、いまの御指摘を、われわれ自体としても早速並べて、よく調査をしてみたいと思うのです。そして、それぞれのファンクションをそれぞれに機能として生かしていったって構わないと私は思うので、それらのおのおのの個別の動きが全体として統合されて、情報になって、政府経済協力活動に大いに役立ってくれればいいわけでございますから、組織体というよりも、まず機能体としてそれらの組織がどれほど動き、どのような関連において各省に連絡し、それが経済協力全般の推進にどのように役立っているかという実態調査などもさせていただいて、ただいま委員の御指摘の問題について、今後の課題としてお答えさせていただきたいと思っています。
  198. 田口一男

    田口委員 その問題にこだわるのじゃないのですけれども、たとえば今度、来年は援助を倍増する、十四億ドルを二十八億ドルにする。GNPの何%ということは言いませんけれども、その金をふやす中身の問題について言うと、いま言ったようないろいろな機関、そこで働いておる人の人件費とは言いませんけれども、経済協力関係する原稿を書く、論文を発表する、調査に行った出張旅費、そういった国内で使用した分までこの二十八億ドルの中に入るのじゃないかという懸念まであるのですね。愚問かもしれませんよ。団体がたくさんある。そこに経済協力の何かの調査の依頼をした、論文を依頼した、どこかへ行ってくれという出張旅費、そんなものまで二十八億ドルの中に全部トータルでなっておるのだ、こういう懸念があるのです。それはないのですか。私は、何でもまとめて大きくすれば効率がいいとは、そう簡単に物を言いませんけれども、さっきちょっと例に出したように、余りにもよく似たようなものが多い。今度は逆に向こうの立場になって考えてみる必要があると思うのですね。何かを依頼しようと思ったって、これは外務省が窓口でしょうけれども、これは運輸の何とかコンサルタント、こちらは通産ですなと、こういうふうに仕分けるのですか。相手の国に対してだって、行政効率からいったってむだが多いでしょう。したがって、私は機構改革だ何だかんだというふうに大上段に振りかぶるわけじゃないのですが、国連開発十年と言われた一九六〇年代から、第三次の開発十年を迎えようとするいま、もう一遍中身を見渡して、効率のよい関係機関というものに整理統合するということも必要ではないのかということで申し上げておるのです。これに対するお答えをいただいて終わりたいと思うのですが、私はむやみやたらにこれをむだだと特定の名前は言いません。ただ紛らわしいものがだんだん積み重なってきて、もうかれこれ三十年になろうとしておるのですから、整理統合して再発足してもいいのじゃないかという気持ちです。そこのところをお間違えのないように受け取って、もう一遍お答えいただきたいと思うのです。
  199. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 田口委員のただいまの御提言は非常にありがたい御提言だと思います。われわれといたしましては、組織体そのものの数よりも、それらが有機的に、かつ能率的に動くということが最も大事なことだと考えまして、それがいろいろな意味で固定化し、動きが鈍いというような問題については、それぞれの各官庁からよくその実態を調べてもらって、機動的に運営できるような方向に指導してもらいたいと考えておるわけでございます。  それから、先ほどのわれわれの対外経済協力、 ODAの中に、国内のいろいろな経費が入っておるのじゃないかということでございますが、これは全く入っておらぬわけでございますので、御理解いただきたいと思っております。
  200. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 宮田早苗君。
  201. 宮田早苗

    宮田委員 海外経済協力基金法の一部改正案審議に当たりまして、わが国の対外援助施策に関して、いろいろな角度から質問をしてみたいと思います。  わが国の対外援助の基本的な考え方は、当面政府開発援助を五十三暦年から五十五暦年までの三年間に二倍にふやす、三年倍増計画にあると思うのですが、経済企画庁の資料によりますと、五十三年度の予算消化率、つまり援助実行率が好転しているという望ましい傾向と思います。一年でも早く目標を達成すべきでございますが、三年倍増計画を達成しても、わが国の対外援助は、他の先進国に比べてまだ低水準にあると思います。加えて、アメリカ等の黒字減らしの要求の圧力はますます強くなっておりまして、夏の東京首脳会議でも、南北問題ということで、この援助問題が主要なテーマの一つになることでしょうが、八〇年以降におきます政府開発援助拡充策について、長官のお考えをまずお示しいただきたいと思います。
  202. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 三年倍増計画達成後の対外経済協力につきましては、私は、まだ明確なその後の方針を具体的に定めておりません。また、閣内においてもまだそうしたことは決まっておらないわけでございますが、基本的に申し上げれば、いわゆる先進国並みの水準にまで到達するということを、最終の目標に掲げてまいりたいということが一つ。もう一つは、基本的に、現在ようやく日本の政策の中で、経済協力ということがきわめて重要な役割りを果たすという認識、こうした問題につきましてはこれを緩めることなく、さらに幅広い政策シリーズの中で大切に拡大をしていくということを進めてまいりたい、そのように考えておるわけであります。
  203. 宮田早苗

    宮田委員 対外援助問題は、エネルギー資源問題を抜きにしては考えられない側面を持っておると思います。再び原油価格の高騰時代を迎えて、石油に代替するエース格の原子力発電も、アメリカにおきます事故で前途に暗い影を落としているわけですが、石油が有限の資源であることから、産油国、国際石油資本が、国際経済の戦略物資としてこれまで以上に利用しかねない情勢となってまいったと思います。中国やメキシコ等、新たな産油国に対するアプローチ、さらに原子力政策等について長官の御意見を承りたいと思います。
  204. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 宮田委員の仰せられるとおりであると思うのです。それで、私たちといたしましても、中国あるいはメキシコ、そうした国々に対して、先方の要請があれば、われわれは喜んで経済協力の前進を図ってまいりたいというふうに考えております。
  205. 宮田早苗

    宮田委員 通産省にお伺いいたしますが、ただいま長官にもお伺いいたしましたが、わが国の原子力発電の将来に暗雲を投げかけてまいりましたアメリカの事故の問題について、通産省としての対応の仕方を御説明願いたい。
  206. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 アメリカで起こりました事故につきましては、やはり何と申しましても事故の原因を正確に、客観的に、詳細に把握するということが一番大切であるというふうに思っております。これまでに入手し得た情報の範囲内で、一応それをベースにいたしまして、暫定的に原子力安全委員会の方では、日本ではこういう事故はほとんど起こる可能性はないというふうな判断をしておられますわけで、この見解は尊重しなければいかぬと思っておりますが、しかし、やはりわれわれとしましては、最終的にはこの事故の原因を詳細に検討して、参考になるものは参考にしなければいけない、こういうふうに思っております。  しかしながら、現在いわば一種の火事場でございまして、そういう情報をきちんと手に入れるのはまだむずかしい段階でございますが、そうかといいまして、詳細な情報が入るまで何もしないというのはいけませんので、通産省といたしましては、各発電所に対しまして総点検、再点検をやるように、保安規定であるとか運転要領であるとかいうものにつきまして、もう一度よく再点検するようにということを厳重に申し渡してありまして、それに基づく報告がきょうくらい来ておりますから、この報告もよく集めて検討をいたしたい、こういうふうに考えております。
  207. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 ちょっと質問者に申し上げておきますが、きょうは法案に対する質疑ですから、一般質問的なものはひとつ簡略に。
  208. 宮田早苗

    宮田委員 はい、わかっています。  もう一つ、これに関係ございますけれども、電力業界が原因究明のために調査団を派遣するということになっておるわけですが、政府レベルでも、この問題について早急に具体的な行動に移られたらどうかと思うのですが、そういう点はどうですか。
  209. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 原子力安全委員会からは、すでに内田安全委員がアメリカに行っておられますし、それから科技庁からも担当官が一名アメリカに派遣されておりますし、通産省も安全審査班長をすでにアメリカに派遣をいたしておりまして、いま情報収集に努めておるところであります。
  210. 宮田早苗

    宮田委員 政府ベースによります技術協力は、総合開発計画調査事業に始まって、開発調査事業、さらには開発協力事業、このように進捗していくわけでございますが、この三段階の各協力事業で、民間企業の専門家がどのようにかかわっているのか、つまり、相手国の国家開発計画策定というスタートの時点から、わが国を含めて先進国のコンサルタント企業が参画しているのでございますが、このコンサルタント企業のほか、実施計画を策定する最終段階での民間企業からの専門家の派遣はどうしているかについて、まずお伺いいたします。
  211. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 発展途上国の開発協力事業につきましては、大まかに言いまして、事前調査の段階と、それから本格的な調査の段階とございます。いずれも政府がミッションを派遣してやっておりますが、その中に民間の方も参加いただいております。非常に重要な役割りを果たしていただいております。
  212. 宮田早苗

    宮田委員 発展途上国の総合開発計画調査事業は、いわば国の産業基盤整備事業計画の策定と見てもいいのじゃないか、こう思います。これを請け負うわが国のコンサルタント企業の受注能力といいますか、実力のほどはどうなのかということを一応お聞きしたいと思います。
  213. 小長啓一

    ○小長説明員 率直に申しまして、わが国のコンサルティング企業の受注能力は、国際的水準と比べまして非常に人的にも、また技術的にも劣っておるというのが現状でございます。
  214. 宮田早苗

    宮田委員 わが国の技術協力が、東南アジア中心の時代から、中東、アフリカ、さらには中南米へと拡大するにつれて、民間企業の活躍の場もますます広くなっておるわけですが、折しも日商岩井商法で明らかにされつつありますように、国家開発計画着手あるいは企業化といった段階で、民間の強引、不明朗な商法がまかり通りかねない。われわれも政府、民間ベースでの国際協力をますます拡大すべきだという考えに同調するものでございますけれども、不正な取引防止のためのルールづくりも必要だと思うのですが、関係省庁のこれに対するお考えを聞かしていただきたいと思います。
  215. 小長啓一

    ○小長説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、開発途上国の開発プロジェクトの大型化、総合化に伴いまして、プロジェクト参加に伴うリスクが増大し、また大量の資金が必要になってきておるという状況は御指摘のとおりでございます。したがいまして、これに対応いたします政府施策も積極的に進める必要があるわけでございまして、通産省といたしましては、コンサルティング企業に対しまして、従来から、情報収集機能の強化、人材養成等を目的とした諸事業に対しまして助成を行うとともに、各種調査への積極的活用の点についても留意しておるところでございます。  最後に先生御指摘の点につきましては、私どもは、商社間のある種の過当競争を防止するための行政指導を、今後とも強化してまいりたいと思っております。  それから、在外企業が海外におきますビヘービアを秩序正しくするためにという意味では、これは数年前からコード・オブ・ビヘービアということで、指導を進めておるところでございます。
  216. 宮田早苗

    宮田委員 ただいまの質問について、総裁のお考えをひとつお聞きしたいと思います。
  217. 石原周夫

    石原参考人 ただいま通産省から御答弁がありましたような趣旨で私ども考えておるわけでありますが、私どもの方といたしましては、調査の関係におきましてコンサルタント、あるいはコンサルタント以外の民間会社の場合もございますけれども、最近におきまして、中近東、アフリカ、アジアもございますが、そういうところを中心にいたしまして、水資源の関係、電気通信の関係あるいはダムの関係というような調査企業に対します融資を、年々、数億のオーダーでありますが、調査ローンという形でやっておるわけであります。
  218. 宮田早苗

    宮田委員 政府ベースの技術協力に関しましてお伺いするわけですが、政府ベースといえども、実際の担い手となります人材は、民間企業が有している場合が多いと思うわけです。発展途上国で働いたこれら有能な枝術者の体験を聞いてみますと、労働条件は過酷であり、現地におきましても国内同様大企業、下請という図式があったり、あるいは子弟の教育上の悩みがあったりということで、大変な労苦を強いられているのが実態のようでございます。このような実態を政府はどう認識して、民間の活力をさらに有効に活用するために、どのような施策をお考えになっておるか、この点もお伺いいたします。
  219. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 政府ベースでの専門家派遣に際しましては、専門家の福祉厚生と申しますか、それには私どもとしてはできるだけの配慮をいたしております。たとえば専門家の派遣に際しましては、待遇、労働条件等、基本的なその受け入れ条件につきましては、相手国との国際約束をもって取り決めております。したがって、たとえばどこの場所でどのくらいの時間働いて、また住宅等の供与があるかとか、そういう具体的なことは、そういう国際取り決めではっきりさしておるわけでございます。  それから、滞在中における災害補償につきましては、労働者災害補償保険法であるとか、共済制度等の適用によって、補償措置を行っております。  さらに、健康管理巡回指導チームの派遣であるとか、健康管理休暇制度等の導入によりまして、専門家の健康の維持管理につきましては、特に配慮いたしております。  さらに、ただいま宮田先生が御指摘になりました教育問題でございますけれども、専門家に対しましては、子弟教育のための特別な手当を支給しております。さらに、全世界の在外日本人のために、いろいろ日本人学校の建設等をやっておりますが、この点に関しましては領事移住部の領事課長から答弁してもらいます。
  220. 池田右二

    池田説明員 先生ただいまおっしゃいました在留邦人の教育問題というものは、われわれとしましても非常に重要な問題だと最近とみに感じておりまして、外務省といたしましても文部省と協力いたしまして、在留邦人の保護、福利の増進という観点から、各地域の在留邦人が一体となって設立する日本人学校、それから補習授業校というのがございますが、この施設面及び人的面での援助を行っておる次第でございます。現在その数は、全日制の学校が五十四年度で六十二校になります。それから補習授業校が六十九校、こういう状況でございます。今後とも、この面は重要な領事事務といたしまして、力を入れていきたいと考えております。
  221. 宮田早苗

    宮田委員 もう一遍教育の問題について質問をさしていただくわけですが、この子弟教育の関係について、小さなチームで行く場合には教育係的な人を連れていかなければならぬ、こういうことになっておるわけでありますから、これは所管は違いますけれども、経企庁、通産省また基金関係方々は非常に切実な問題でございますだけに、そういうことについては文部省の方に強力に、そういう問題については対処してほしいぐらいな要求といいますか、要求だけでなしに、実現をさせるような配慮というのが特に必要じゃないかと思います。  もう一つ、これに関連して考えなければなりませんのは、長官に特にお願いするわけですけれども、帰ってから転入する場合に大変な問題でございまして、これはこの問題に限らず、外務省の大使、いろいろな外交官の方々本当にお困りのようでございまして、これは文部省はどうかしているのではないかと思うのです。国のためにそこまでがんばっておりながら、子供を連れて帰ったところが入る学校がないのです。そういう点についてはぜひ大臣骨を折っていただいて、もうストレートで帰ったところの学校に入れてやるというぐらいな気持ちになってもらわぬと、これは将来大変な問題になると思うのです。お互いに子を持つ親として、そういう気持ちになると思うのですが、大臣の決意のほどをひとつお願いします。
  222. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私からお答えするのが適当かどうか存じませんけれども、きわめて重要な問題だと思います。  われわれは、政治の重点を海外経済協力に置く、これは確かに理念的に間違っておらぬのでありますが、それをやってくれるのは現地第一線で働く方々である。その方々が帰国したときに、先ほども他の委員から御意見ございましたが、一回行ってしまうと、帰ってくるとポストがないというような、非常にいやな思いをしなければならないというようなこと、ただいまの学校の問題、いずれも経済協力を非常に重要な政策として断行するならば、やはりそれに従事して努力をしてくれた方々の問題は、国内の受け入れ体制としても、御指摘のとおりやはり十分配慮すべきことであって、通り一遍の万全を期しておりますというような答弁では、これはとても経済協力そのものも国内に定着をしないのではないかとさえ思います。大変いい御注意と御意見を賜りましたので、われわれとしましては、可能な限りその方向で努力をしてみたいと思います。
  223. 宮田早苗

    宮田委員 次に、発展途上国の対外債務の返済問題に関して若干質問をいたしますが、発展途上国の対外公的債務残高は、六〇年代以降急激に増加をして、南北問題の主要なテーマになっておると思います。百近い発展途上国の対外公的債務残高の推移と、再び全世界に大きな影響を及ぼそうとしております石油産出国の原油価格引き上げは、石油資源のない途上国に新たな債務返済問題を惹起させようとしているわけでございますが、その見通しも含めて御答弁をお願いをいたします。
  224. 廣江運弘

    廣江政府委員 発展途上国の累積債務残高の推移を申し上げます。  これはDACの統計でございますが、昭和四十五年に七百四十一億円、四十六年八百四十六億円、四十七年九百五十二億円、四十八年、千百四十四億円、四十九年、千三百九十九億円、五十年、千七百五十三億円、五十一年、二千百二十二億円、五十二年、二千四百四十億円でございます。  債務残高の伸びは、石油ショック前の四十七年までが大体一三、四%の、一〇%台で推移したわけでございますが、石油ショック後は一挙に二〇%台の伸びを示しているわけでございます。しかしまた、五十二年には再び一五%台とやや落ちつきを取り戻しているというのが実情かと思います。  このOPEC値上げが、今後どのような影響を持つかということにつきましては、にわかに予想はできないのでございますが、先ほどの過去の経緯から、その辺のごそんたくを願いたいところだと思います。
  225. 宮田早苗

    宮田委員 ところで、わが国の対外有償協力で、政府機関あるいは民間輸出企業が、回収不能となっております対外債権はどの程度に達しておりますか、その点もお伺いいたします。
  226. 廣江運弘

    廣江政府委員 最初にひとつお断りいたしますが、単位を円と申しましたが、億ドルでございますので、謹んで訂正いたします。  なお、いまの御質問でございますが、わが国の対外有償協力によります対外債権というふうにしてお答えさせていただきたいと思います。  昭和五十三年三月末で次のようになっております。単位は今度は円でございます。LLDC十一カ国で七百七十億円、MSAC諸国九カ国でございますが、四千四百七十億円、その他の諸国は三十一カ国ございますが、九千三百四十二億円、合わせまして一兆四千五百八十二億円でございます。
  227. 宮田早苗

    宮田委員 発展途上国の債務救済措置は、いまや南北問題の主要テーマになっていることは当然じゃないかと思いますが、わが国が実施しております返済繰り延べ、再融資の実績、これはどうなっておりますか。
  228. 廣江運弘

    廣江政府委員 これらの債権につきまして、わが国が行いました返済の繰り延べ、再融資の実績は、四十年が再融資が百七十六億円、返済繰り延べはございません。四十一年は返済繰り延べが九億円、再融資が四十八億円でございます。四十二年は繰り延べが二十二億円、再融資が百六十四億円、四十三年は返済繰り延べが六十一億円、再融資が二十五億円でございます。四十四年は返済繰り延べが七十億円、再融資が二十三億円でございます。四十五年は返済繰り延べが九十一億円、再融資はございません。四十六年は返済繰り延べが三百五十一億円、再融資が六十一億円でございます。四十七年は返済繰り延べだけでございますが、百十六億円、四十八年は百八十二億円の返済繰り延べでございます。同じく四十九年は返済繰り延べが百五十億円となっております。五十年以降、返済繰り延べのみで申し上げますが、五十年が五百五十三億円、五十一年が二百八十六億円、五十二年が三十五億円、五十三年が十七億円でございまして、いままでのところを合わせますと、返済繰り延べが千九百四十三億円、再融資が四百九十七億円でございます。
  229. 宮田早苗

    宮田委員 国際的に見ていわゆる返済猶予措置は多いのですか、少ないのですか、これは比較の問題ですが。
  230. 廣江運弘

    廣江政府委員 せっかくのお尋ねでございますが、国際比較につきましては、他の先進諸国のデータが不十分で、よく入っておりませんが、私どもの考えでは、外務省も含めまして、国際的に見まして、従来までやってきたことは遜色のない措置をとってきたものだと思っております。
  231. 宮田早苗

    宮田委員 原油価格の高騰という世界経済の新しい環境を踏まえて、政府は、この債務返済問題を中心に討議いたします五月の第五回国連貿易開発会議総会にどのような方針で臨まれるのか。聞きますと、総理も出席という報道もございますが、この基本的な考え方をお示し願いたい、こう思います。
  232. 中村泰三

    中村説明員 五月にマニラでUNCTAD総会が開かれます。総理もこの会議出席して、南北問題に取り組むわが国の積極的姿勢を表明したいというお考えのように承知しておりまして、事務当局といたしましてはその方向で検討しております。  なお、UNCTADファイブの会議は、一九八 ○年代の南北問題を展望する重要な政治的な会議だというふうに承知しておりまして、私どもといたしましては、南北問題に取り組む日本の積極的な姿勢を表明し、この会議を実りのある会議にしたいというふうに考えております。具体的な発言その他につきましては、目下事務当局におきまして鋭意検討中でございます。
  233. 宮田早苗

    宮田委員 わが国の海外に対しまする技術協力、とりわけ専門技術者の派遣が先進諸国に比較して少ないことが指摘されておりますので、その点についてお伺いするわけですが、海外派遣の隘路は、技術力そのものや言語の障害等が挙げられておるわけです。そのための専門家養成が緊急を要するとして、幾つかの施策も講じられておるわけでございますが、国際協力事業団の海外技術協力センター設置などは、もっともっと拡充すべきだと思うのです。現在、日本国内で、事業団や海外技術者研修協会が、発展途上国からの研修生をかなり受け入れておるわけですが、この施策も必要不可欠のものでございまして、素材産業の育成を目指すASEAN諸国等の要請を満たすためには、むしろ海外の拠点に恒常的な事業団の出先機関を設けた方が、経費的にもメリットがあるという見方もあるわけでございまして、協力基金の駐在員事務所といった基金だけの組織拡充だけではなしに、将来に向けて大局的な施策を展開する必要があるのじゃないか、こう思うのですが、その点はどうですか。
  234. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 ただいま宮田先生から御指摘のございました海外技術協力センターの問題でございますけれども、私どももこういうものが非常に有効なものであると考えまして力を入れております。  現実にアジアについて申しますと、インドネシアとかマレーシア、こういうところに、たとえばインドネシアについて言いますと、スラウェシ工業技術訓練センターであるとか、マレーシアでは金属鉱業技術センター、こういうものを設けております。さらに中東、アフリカにつきましても、イラク、ナイジェリア、こういうところにやはり訓練センターのようなものをつくりまして、現地で先方の中堅技術者のトレーニングをやっております。  なお、国際協力事業団自身の出店と申しますか、そういうものをつくってはどうか、こういうお話でございますが、それにつきましては少しずつ海外技術協力事業団の海外駐在員の数をふやしております。そのほかに、青年海外協力隊の代表も地域ごとに少しずつ駐在を拡充していきたい、こう考えております。
  235. 宮田早苗

    宮田委員 次に、中国への直接借款について質問いたします。  中国は、従来の政策を転換をして、外国からの政府借款を受け入れる方向になったわけなんですが、政府として、中国からそのような要請があっておるかどうか、もし今後あればどうそれに対処なさるおつもりか、その点をまずお聞きいたします。
  236. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 中国側からまだ私らのところには具体的に借款の申し出はございません。しかし、基金法の法律解釈では、もしも要求があれば、それに対してわれわれは発動できるという考えでおります。
  237. 宮田早苗

    宮田委員 次に、世銀との提携について、経企庁、それから基金総裁の方にお伺いいたしますが、基金は、借款を行う援助実施機関としては、世界銀行に次ぐ事業規模を持っておりますが、世界銀行との連携はどう進められるものか、この点をまずお聞きいたします。
  238. 石原周夫

    石原参考人 世界銀行との間には四十七年以来毎年定期協議、コンサルテーションというわけでありますが、情報交換をいたしてきているわけであります。当然これの議題の中心になりますのは、いま宮田委員御指摘の世銀との協調融資という問題でございます。今日まで協調融資をいたしました案件の数が十一件、千四百六十九億という額でございます。対象国はアジア、近東でありますが、最近におきまして世界銀行側も非常に協調融資に積極的でありまするので、私どもの方も政府と御相談をしながら、協調融資案件を進めていっているわけでありまして、案件にいたしましても、あるいは金額にいたしましても、もっと密接な形での協調融資というものが進むような形になっておるわけであります。
  239. 宮田早苗

    宮田委員 経企庁の方、よろしいですか。
  240. 大鷹弘

    ○大鷹説明員 世銀との協調融資につきましては、ただいま石原総裁の御発言がございましたけれども、石原総裁は大変御熱心でございます。そこで、政府の方にもぜひこれを進めるようにという強いお勧めがかねてからございます。そこで、私どもといたしましてもこれを前向きに取り組みたいと考えておりまして、今年度はさらにこの範囲を広げていきたい、こういうことで、現在関係省庁の方々と御相談しているところでございます。
  241. 宮田早苗

    宮田委員 協調融資に関連するわけですが、この秋に世銀本部のございますワシントンに、基金の事務所を設置する方針というふうに言われておるわけでございますが、それは協調融資を進めるために置かれるものかどうか、ちょっとお聞きします。
  242. 石原周夫

    石原参考人 ただいま御指摘のありましたように、あるいは外務省の大鷹参事官からもお話がございましたように、協調融資を進めていくという方針でございまするので、それに従いましていろいろ事前事後、協議の必要もございます。したがいまして、ワシントンに事務所をつくりたいということでございますが、同時にまた、世銀は、債権国会議その他の開発途上国に対しまする融資の相談の一つの核のようになっている状態でもございます。したがいまして、広い意味での情報交換、進みぐあい、世銀において見ておりまする状況、そういうようなことにつきましての十分な連絡をいたしたい。また同時に、ワシントンは、全米開発銀行の本店所在地でもございまして、世銀のような形での協調融資の形には行っておりませんでございますが、私どもの方で、開発途上国の、主として中南米でありますが、中南米の開発途上国に対します融資で、両方が一つのプロジェクトに融資をいたしておるというようなケースもございまするので、今後におきましては、そういう問題もだんだん出てまいるかというふうに考えておるわけであります。
  243. 宮田早苗

    宮田委員 発展途上国の工業化に伴って、わが国の産業調整問題が、東京サミットを頂点に高まる情勢にある、こう思うのですが、政府の対応策をお聞かせ願いたいと思います。
  244. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 産業調整と申しますか、日本の産業構造問題、もちろんこれはいつの世代でも問題があると私は思うのでございますが、特に海外経済協力の発展というようなことのみならず、現在われわれが直面しております経常収支の黒字問題いろいろな問題を踏まえましても、この問題はやはり今後相当長期にわたって、日本経済構造並びに基本的なあり方についての改善がなされていかなければならないと思うのであります。しかし、これは短兵急にはできるものではございません。したがって、時間のかかるということをそれぞれの国々にも理解してもらわなくてはいけないし、また、その理解をしてもらうために、われわれとしては多少のフィーを払う必要もあると思うわけでございます。いずれにいたしましても、産業構造問題は、そのきっかけは、やはり昨年からことしにかけて、日本経済運営の中で内需がようやく主体を占めてきた。貿易だけの問題でなしに、内需の拡大がようやく緒についたというこのことは、今後の施策にとってはきわめて重要なモメントでございまして、こうした線をさらに大きく生かしていくということが一つ対策の一環であると考えております。
  245. 宮田早苗

    宮田委員 最後に御質問いたしますのは、副総裁の新設についてでございます。  行政の簡素化をしようというときでございますだけに、副総裁がなぜ必要かということを具体的にひとつお示し願いたいということと、それから、特殊法人の中で副総裁または副理事長がいるところといないところがあるわけでございます。そういう意味から、どういう基準で決めていかれるのかということ、こういう点についてひとつ御説明を願って、私の質問を終わりたいと思います。
  246. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 副総裁設置につきましての基本的な考え方を申し上げて御理解を賜りたい。さらにまた、そうした問題についての政府内部における行管庁の見解もお聞き取り願いたいと思うのでございますが、私、やはり昨今協力基金の活動が非常に拡大したということ、また、われわれはこの拡大した協力基金の活動を一つ日本の顔として、今後は世界的な経済外交というものを展開していくというふうに考えております。しかし、この政府所管の基金の行動というものは、常に相手国においては政府の相当の地位の人間でありますし、ある場合には非常に高い地位の人もあるわけでございまして、こうした話し合いとか調印には、わが方からは必ず代表者である総裁が出向くということが慣例になっております。しかし、昨今のように調印件数が多くなりますと、総裁の日本におる時間あるいは外国におる時間、一国に費やす時間等が非常に制約を受けているのも事実でございます。われわれはこうしたことを考えますときに、その代理者としての地位を持つ副総裁を置きまして、総裁、副総裁のコンビネーションの中で事務処理の円滑化を図り、しかも、外交的に礼を失しない程度の交渉を行うということがきわめて適切だし、また必要であるという認識に立っておるものでございます。  私どもは、こうした基金運営面からの必要性について、先ほども申し上げたわけでございますが、この問題につきましては、大平内閣のいわゆる行政簡素化との関連において、公正に取り扱ってもらわなくてはならぬということで、政府内部におきまして、行管庁においていろいろと調べていただいて、結局了解を得たわけでございます。必要ならば行管庁の者からその審議の経過等について御報告を申し上げまして、委員の御理解を賜りたいと思っております。
  247. 山下徳夫

    ○山下(徳)委員長代理 次回は、明十一日水曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十二分散会