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1979-02-13 第87回国会 衆議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年一月八日(月曜日)委員長の指名で、 次のとおり小委員及び小委員長を選任した。  エネルギー・鉱物資源問題小委員       鹿野 道彦君    佐々木義武君       島村 宜伸君    楢橋  進君       野呂 恭一君    原田昇左右君       武藤 嘉文君    山下 徳夫君       渡部 恒三君    渡辺 秀央君       板川 正吾君    岡田 哲児君       後藤  茂君    上坂  昇君       清水  勇君    岡本 富夫君       玉城 栄一君    吉田 之久君       工藤  晃君    大成 正雄君  エネルギー・鉱物資源問題小委員長                 山下 徳夫君  流通問題小委員       小川 平二君    越智 通雄君       始関 伊平君    辻  英雄君       中西 啓介君    野中 英二君       前田治一郎君    松永  光君       武藤 嘉文君    山田 久就君       渋沢 利久君    田口 一男君       塚田 庄平君    中村 重光君       渡辺 三郎君    長田 武士君       宮井 泰良君    宮田 早苗君       荒木  宏君    大成 正雄君  流通問題小委員長       中村 重光君 ───────────────────── 昭和五十四年二月十三日(火曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 野中 英二君 理事 武藤 嘉文君    理事 山下 徳夫君 理事 渡部 恒三君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 岡本 富夫君 理事 宮田 早苗君       越智 通雄君    鹿野 道彦君       島村 宜伸君    中西 啓介君       原田昇左右君    前田治一郎君       松永  光君    渡辺 秀央君       板川 正吾君    後藤  茂君       渋沢 利久君    清水  勇君       長田 武士君    玉城 栄一君       宮井 泰良君    荒木  宏君       工藤  晃君    大成 正雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  江崎 真澄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂徳三郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     橋口  收君         公害等調整委員         会委員長    小澤 文雄君         経済企画政務次         官       野田  毅君         経済企画庁長官         官房長     山口 光秀君         経済企画庁長官         官房会計課長  及川 昭伍君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         経済企画庁物価         局長      藤井 直樹君         通商産業政務次         官       中島源太郎君         通商産業政務次         官       中西 一郎君         通商産業大臣官         房長      藤原 一郎君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省貿易         局長      水野上晃章君         通商産業省生活         産業局長    栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         中小企業庁長官 左近友三郎君  委員外出席者         外務省経済局国         際経済第一課長 木島 輝夫君         外務省経済協力         局外務参事官  西山 健彦君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ───────────── 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     矢野 絢也君 同月六日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     玉城 栄一君 同月八日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     二見 伸明君   大成 正雄君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   二見 伸明君     玉城 栄一君   山口 敏夫君     大成 正雄君 同月十日  辞任         補欠選任   大成 正雄君     山口 敏夫君 同日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     大成 正雄君 同月十三日  辞任         補欠選任   玉城 栄一君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     玉城 栄一君     ───────────── 一月十九日  北海道、九州、沖繩及び離島の書店の運賃一部負  担撤廃に関する請願土井たか子紹介)(第五  九号)  円高差益還元に関する請願安藤巖紹介)  (第二五二号)  同(荒木宏紹介)(第二五三号)  同(浦井洋紹介)(第二五四号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第二五五号)  同(小林政子紹介)(第二五六号)  同(柴田睦夫紹介)(第二五七号)  同(瀬崎博義紹介)(第二五八号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二五九号)  同(田中美智子紹介)(第二六〇号)  同(津川武一紹介)(第二六一号)  同(寺前巖紹介)(第二六二号)  同(東中光雄紹介)(第二六三号)  同(不破哲三紹介)(第二六四号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二六五号)  同(正森成二君紹介)(第二六六号)  同(松本善明紹介)(第二六七号)  同(三谷秀治紹介)(第二六八号)  同(安田純治紹介)(第二六九号)  同(山原健二郎紹介)(第二七〇号) 同月二十六日  円高差益還元に関する請願(有島重武君紹介)  (第二九三号)  同(市川雄一紹介)(第二九四号)  同(大野潔紹介)(第二九五号)  中小企業経営安定等に関する請願瀬野栄次  郎君紹介)(第三九一号) 二月一日  特許管理士法の制定に関する請願林義郎君紹  介)(第四五六号)  近永アルコール工場現行体制存続に関する請  願(毛利松平紹介)(第五三六号)  昭和軽金属株式会社喜多方工場存続に関する  請願渡部行雄紹介)(第五三七号)  円高差益還元に関する請願(竹入義勝君紹介)  (第五九六号) 同月五日  昭和軽金属株式会社喜多方工場存続に関する  請願伊東正義紹介)(第六九九号)  中小業者経営及び生活安定に関する請願外一  件(伏木和雄紹介)(第七七七号)  円高差益還元に関する請願和田一郎紹介)  (第七七八号)  同(中馬弘毅紹介)(第七七九号)  経営法学士法制化に関する請願玉沢徳一郎  君紹介)(第七八〇号) 同月八日  昭和軽金属株式会社喜多方工場存続に関する  請願亀岡高夫君紹介)(第八四一号)  円高差益還元に関する請願浅井美幸紹介)  (第八九七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件  鉱業一般公益との調整等に関する件      ────◇─────
  2. 橋口隆

    橋口委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件、私的独占禁止及び公正取引に関する件並びに鉱業一般公益との調整等に関する件について調査を進めます。  この際、通商産業大臣から、通商産業基本施策について所信を聴取いたします。江崎通商産業大臣
  3. 江崎真澄

    江崎国務大臣 第八十七回国会における商工委員会の御審議に先立ちまして、当面の通産行政に対する私の所信一端を申し述べます。  現在、わが国経済は、内外の激動する環境下にあって、多くの困難な問題を抱えております。  国内にありましては、長期にわたる不況から、国内需要拡大により緩やかながら景気回復の道を歩みつつありますが、雇用情勢等には依然として厳しいものがあり、景気回復を一層確実なものとすることが要請されております。  一方、国外においては、保護貿易主義の台頭、国際通貨体制不安定化等世界経済の枠組みと運営に不安かつのる中で 大きな経済力を有するに至ったわが国に対して、世界経済安定的発展により一層貢献するよう、国際収支均衡回復経済協力拡充等を初め、国際的な要請が高まってきております。  私は、こうした内外要請にこたえて、充実した国民生活実現のための基盤を形成するとともに、国際社会への貢献を目指しながら、均衡のとれた安定経済成長社会への移行を図るため、通商産業エネルギー等各般にわたり全力を投入して積極的に施策を進めてまいる所存であります。  わが国経済は、物価が安定的に推移する中で、引き続き官公需が順調に拡大し、また、個人消費設備投資等も着実に増加しております。このように、内需は堅調な伸びを示しておりますが、他面、大幅な円高による輸出数量減少等により、国民支出伸びは、かなりの程度減殺されております。このように、わが国経済は、全体として緩やかな景気回復基調にあるとはいえ、雇用問題、構造不況業種等は、依然として厳しい状況にあります。また、国際収支についても均衡回復への兆しを見せつつあるとはいえ、なお国際的にはその早急な均衡回復が強く期待されております。  このような内外要請にこたえるためには、物価の安定に配慮しつつ、積極的な財政支出確保し、内需拡大を図ることが不可欠であり、五十四年度においても、適確かつ積極的な経済運営確保に努めてまいる所存であります。  こうした財政支出民間経済活力ある展開と相まって、着実な景気回復が図られることを強く期待する次第であります。  また、構造不況業種につきましては、引き続き、業種の実情に即応した措置をきめ細かく講じてまいりたいと考えております。  さらに、繊維産業につきましては、知識集約化推進するとともに、アパレル産業振興を図るため、繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を提出いたしたいと考えておりますので、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  中小企業を取り巻く経済環境は、若干の明るさが見られるものの、大勢としては、いまなお厳しい状況にあります。中小企業が現在の困難を克服し、その活力創造力を発揮して健全な発展を遂げていくためには、従来にも増して中小企業対策拡充強化を図る必要があります。  このため、政府系中小企業金融機関による融資の拡充及び信用補完制度機能強化を図るとともに、下請中小企業に対する施策強化するなど、中小企業の立場に立った、きめ細かい対策を講じてまいりたいと考えております。  また、これらの対策に加え、中長期的展望に立って、中小企業活路開拓を積極的に推進するという観点から、指導事業充実組織化対策推進等を図るとともに、円高等の影響を受けている産地中小企業について、総合的な振興策を講ずることとしております。このため、産地中小企業対策臨時措置法案を提出することといたしておりますので、これまたよろしく御審議のほどお願いいたします。  さらに、零細な小規模企業のための経営改善普及事業等対策拡充を図るほか、中小小売商業サービス業振興対策充実にも努めてまいりたいと考えております。  世界経済相互依存関係から深まる中で、わが国に対して、世界経済安定的発展のため一層の役割りを果たすよう、強い期待が寄せられております。  こうした期待にこたえて、わが国としては、内需拡大による輸入拡大基本としながら緊急輸入推進市場開放為替管理自由化等を進めるとともに、東京ラウンド交渉を成功裏に終結させるため、あらゆる努力を払ってまいる所存であります。  本年は、東京において、アジアで初めての主要国首脳会議が開催される予定でありますが、世界経済安定的発展国際協調確保を図るため、有意義なものとなるよう、私としても全力を尽くしてまいりたいと考えます。  さらに、国際社会の当面する重要な課題一つである南北格差の是正のために、わが国としても積極的な対応が必要となっておりますが、本年五月に開催される予定の第五回国連貿易開発会議に対し、一層積極的な姿勢で臨むとともに、政府開発援助の三年間倍増等経済協力拡充に努め、また資源輸入国として、一次産品問題への積極的対応を行っていく所存であります。  なお、米国を初めとする先進諸国東南アジア諸国等との通商関係円滑化に努めるとともに、中国との経済関係の一層の発展を図るため、各般協力を行っていく必要があると考えます。  次にエネルギー政策についてでありまするが、エネルギー安定的供給確保が、わが国経済発展と、国民生活の向上を実現していくために不可欠であることは、改めて申し上げるまでもありません。最近のエネルギーをめぐる国際情勢は、きわめて流動的なものがありますが、エネルギー安定供給確保するため、今後とも内外にわたるエネルギー政策を積極的に展開してまいる所存であります。  石油対策については、産油国に対する経済協力を初めとする積極的な国際資源外交展開するとともに、石油自主開発、備蓄の増強を着実に推進することとしております。また、原子力、石炭、LNG等石油代替エネルギー積極的開発、導入、電源立地促進を図るほか、サンシャイン計画による新エネルギー技術開発を積極的に推進してまいる考えであります。  また、エネルギー需要面対策として、省エネルギー型産業構造への移行を目指しつつ、産業、民生、輸送の各部門の特性に応じた、実効性のある省エネルギー対策推進してまいる所存であります。このため、継続審査となっておりますエネルギーの使用の合理化に関する法律案について、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。  なお、イランをめぐる国際政治情勢複雑化等石油をめぐる最近の国際情勢はきわめて流動的なものがありますが、今後の情勢推移を見つつ適切に対処し、遺憾なきを期してまいりたいと考えます。  技術開発は、資源の乏しいわが国の将来の発展にとってきわめて重要な課題一つであります。このため、サンシャイン計画ムーンライト計画等を初め、技術開発積極的推進を図るとともに、次の世代を担うべき電子計算機産業航空機産業等次期先導産業について、引き続きその育成、強化を図ることとしております。  国民が安全で健康な生活を営むことができるよう、引き続き環境の保全、産業保安確保等を図るとともに、消費者行政の一層の推進を図ってまいる所存であります。  特に、ガス燃焼機器設置工事の欠陥による災害の防止に万全を期するため、所要の立法措置を講じてまいりたいと考えておりますので、これまたよろしく御審議のほどお願いいたします。  本年は、七〇年代最後の年であります。来るべき八〇年代のわが国経済のあるべき姿と、その実現のための内外の諸問題の整合性ある解決策を展望するため、八〇年代通商産業政策ビジョン策定作業を進めているところであります。  私は、こうした中長期的展望をも踏まえつつ、わが国経済の持つ潜在的成長力内外とも均衡のとれた形で最大限に発揮させるよう、通商産業政策展開し、難局の克服に全力を傾注してまいる所存であります。  委員皆様におかれましても、一層の御理解と御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
  4. 橋口隆

    橋口委員長 次に、経済企画庁長官から、経済計画及び総合調整について所信を聴取いたします。小坂経済企画庁長官
  5. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 おはようございます。ごあいさつを申し上げます。  わが国経済運営基本的なあり方につきましては、さきの経済演説において明らかにしたところでありますが、当委員会が開催されるに当たりまして、重ねて所信一端を申し述べたいと存じます。  最近の経済情勢を見ますと、物価が安定的に推移する中で、官公需が引き続き順調に拡大し、また、個人消費設備投資等も増加を続けるなど、内需は全体として堅調な動きを示しております。こうした動きを反映して、生産出荷は着実に増加しております。  また、企業収益かなり改善を示しております。  しかしながら、雇用情勢は依然厳しい状態が続いておりますし、国際収支の面においてさらに努力を払うことが国際的に期待される状態にあります。  このような経済情勢を踏まえ、昭和五十四年において当面する課題は、現下の落ちついた物価動向を今後とも維持するよう努力するとともに、景気回復雇用の安定を確実なものとすると同時に、対外協調の一層の推進を図ることであります。  五十四年度における課題の第一は、景気回復を図り、雇用の安定を実現することであります。このため、昨年度に引き続き、積極的な政策運営を通じて民間経済活力ある展開を可能ならしめる必要があります。そこで財政においてその健全化の足がかりを確保しつつ、国民生活充実に役立ち、かつ、需要創出効果の大きい公共事業等について、財政事情の許す範囲内でできる限りの規模を確保することといたしております。  このような政府の諸施策民間経済活力とが一体となり、五十四年度の経済は実質で六・三%程度の成長が見込まれます。  また、不況地域構造不況業種等の実態に即してきめ細かく対策を講ずるとともに、中高年齢者雇用開発給付金制度の抜本的な拡充など、中高年齢者あるいは生計中心者雇用環境改善に重点を置きつつ、雇用の安定のために格段の努力を払うことといたしております。  課題の第二は物価の安定であります。  最近の物価動向は、円高影響等から、消費者物価卸売物価ともに近年になく落ちついた推移を示しております。  しかしながら、今後の物価動向に目を転じますと、物価の安定に大きく寄与してきた円高影響が従前ほどには考えられなくなっており、また、OPECによる原油価格の引き上げに見られる海外物価動き等、十分注意していかなければならない情勢変化が生じております。  政府といたしましては、食料品などの生活必需物資安定供給確保と、その価格安定に積極的に取り組むとともに、商品市況、特に建設資材等価格動向を注視し、不況カルテル運用にも配意する必要があると存じます。また、公共料金の改定に当たっては、厳正にこれに対処いたします。さらには、通貨供給量動向にも注意を怠らないよう努めることとし、以上の四つを柱として、物価安定基調を引き続き維持するよう、全力を傾注してまいる所存であります。  第三に、わが国経済の国際的な比重の高まりに伴い、今後、国際協調の一層の推進を図ってまいらなければなりません。  まず、国際収支につきましては、わが国基礎収支はすでに均衡回復しており、また、経常収支も着実に均衡に向かいつつありますが、国際的にはさらに努力を払うことが期待されております。  そこで、政府は、内需振興により輸入拡大を期することとしており、あわせて、引き続き緊急輸入に努めるなど、輸入促進のために力を注ぐことといたしております。  次に、経済協力拡充に努めてまいります。  政府は、昨年来政府開発援助について、五十二年の援助実績を三年間で倍増することを目標とし、その対GNP比先進国水準にまで高めるよう努力いたしております。  ところで、わが国財政事情は、大量の国債発行のもとできわめて逼迫した状況にあります。このため、経済協力原資面での制約を緩和し、増大する資金需要に弾力的に対応し得るよう、海外経済協力基金法の一部改正を行うなど、経済協力資金面での基盤強化する必要があるものと考えております。  最後に、新しい経済計画について申し述べたいと存じます。  去る一月二十五日、政府昭和六十年度を最終年度とする新経済社会七カ年計画基本構想を取りまとめました。  この基本構想は、わが国経済中長期的課題として、物価の安定に配意しつつ、需給、雇用財政等当面の経済的不均衡改善を図るとともに、産業構造高度化田園都市づくり構想に向けての諸施策展開経済協力強化などを目指すこととしており、また、わが国経済的安全に資するための資源エネルギー安定供給確保中小企業の健全な発展のための施策充実科学技術振興などに力点を置くこととしております。  いずれにいたしましても、いまだ基本構想の段階でありますので、今後、最終案策定に向けて鋭意作業を進めてまいりたいと考えております。  以上、わが国経済が当面する課題とその取り組み方について申し述べました。今日、わが国経済を取り巻く環境には厳しいものがありますが、政府は、あらゆる努力を払い、国民各層期待に十分こたえる政策を行ってまいる決意であります。  本委員会皆様方の御理解と御支援を切にお願いする次第であります。
  6. 橋口隆

    橋口委員長 この際、新たに就任されました中島通商産業政務次官及び中西通商産業政務次官及び野田経済企画政務次官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。中島通商産業政務次官
  7. 中島源太郎

    中島(源)政府委員 お許しを得まして、ごあいさつ申し上げます。  このたび通商産業政務次官に就任をさせていただきました中島源太郎でございます。  内外諸問題の中でまことに微力でございますけれども、全力を挙げまして相務めさせていただきたいと存じておりますので、よろしく御指導のほどお願いを申し上げまして、ごあいさつとさせていただきます。よろしくお願いをいたします。(拍手
  8. 橋口隆

  9. 中西一郎

    中西政府委員 昨年十二月十二日通産政務次官を拝命いたしました中西一郎でございます。  ただいま通産大臣から所信表明もございましたが、大変重要なときに当たりまして重責を担うことに相なりました。皆さん方の御協力と御指導を得まして、力いっぱいの仕事をさせていただきたい、かような決意でおります。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手
  10. 橋口隆

  11. 野田毅

    野田政府委員 このたび経済企画政務次官を仰せつかりました野田毅でございます。  どうぞ、委員先生方のよろしき御指導お願い申し上げる次第でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。(拍手
  12. 橋口隆

    橋口委員長 次に、公正取引委員会委員長から、昭和五十三年における公正取引委員会業務の概要について説明を求めます。橋口公正取引委員会委員長
  13. 橋口收

    橋口政府委員 昭和五十三年における公正取引委員会業務について、その概略を御説明申し上げます。  昨年のわが国経済は、景気回復基調の中で、なお厳しい状況のもとに推移いたしましたが、公正取引委員会といたしましては、競争秩序の維持、促進を通じまして、わが国経済の健全な発展を図るべく、独占禁止政策の適正な運営に努めてまいったところであります。特に、昨年は、改正独占禁止法の本格的な施行の第一年目に当たりましたので、その円滑かつ適正な運用に意を注ぎました。また、減速経済下において、大きな比重を占めてきております流通分野の問題につきまして、積極的に取り組んでまいりました。  次に、昨年における独占禁止法運用状況でありますが、昭和五十三年中に審査いたしました独占禁止法違反被疑事件は九十七件、同年中に審査を終了した事件は四十三件であり、そのうち法に基づき勧告したものは十件でありました。これら十件のうち、七件は不公正な取引方法に係るもので占められました。また、法改正により新設されました課徴金の納付命令の対象となるものは二件であり、このうち一件につきまして、昨年内に総額五百七万円の課徴金の納付を命じました。  次に、認可、届け出受理等に関する業務でありますが、まず、合併、営業譲り受けにつきましては、昭和五十三年中にそれぞれ九百四十九件、五百九十五件、合わせて千五百四十四件の届け出があり、一昨年とほぼ同程度でありました。法改正により新設されました大規模会社の株式所有制限に係る認可及び承認業務につきましては、法第九条の二第一項第六号の規定に基づく認可を二件、同項第九号の規定に基づく承認を十三件行いました。  なお、大規模会社の株式所有制限規定の新設または金融会社の株式所有制限規定の強化改正によりまして、改正法施行後一年内に処分すべきものとされました株式は、すべて期間内に処分されていることが確認されております。  事業者団体につきましては、昭和五十三年中に成立届等二千百二十八件の届け出がなされておりますが、事業者団体の活動が競争制限に結びつきやすいところから、事業者団体に対して違反予防のための種々の指導を行うとともに、事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指導基準の作成を進めているところであります。  また、国際契約等につきましては、昭和五十三年中に五千二百十八件の届け出があり、改良技術に関する制限条項、競争品の取り扱い制限条項等を含む三百五十七件について、これを是正するよう指導いたしました。  なお、届け出の受理、指導とともに、円高差益還元問題の対策一つといたしまして、輸入総代理店の有する問題について調査、検討を行っております。  法改正により新設されました、独占的状態に対する措置に関する業務といたしましては、一昨年十一月に公表いたしましたガイドラインの別表掲載の事業分野について見直しを行い、その結果を昨年の十二月に公表いたしました。  また、価格の同調的引き上げにつきましては、一昨年十一月に公表いたしました運用基準の別表掲載の品目について見直しを行い、その結果を昨年の九月に公表いたしました。  なお、二輪自動車の五十三年一月から五月にかけての値上げについて、価格引き上げの理由の報告を求めました。  独占禁止法の適用除外関係では、まず、再販制度につきましては、再販指定商品数は漸減の傾向にありますが、残された再販商品につきましても、弊害が生ずることのないよう指導及び監視に努めております。また、出版物等の法定再販商品につきましても、流通の実態等について調査を進めております。  独占禁止法上の不況カルテルにつきましては、昭和五十三年中に、十三品目について実施されました。このうち五品目につきましては、市況の回復等により同年中に終了し、昭和五十三年末現在実施中のものは、八品目となっております。不況カルテルの認可に際しましては、法律の要件に照らし厳格に審査を行い、必要な程度を超えることがなく、かつ、一般消費者や関連事業者の利益を不当に害することがないよう留意しております。  なお、独占禁止法の適用除外を受けている共同行為の総計は、昭和五十三年末現在で五百九件となっておりますが、その大半は、中小企業関係のものであります。  次に、下請代金支払遅延等防止法の運用状況について申しますと、景気の先行き不安と一昨年来の円高傾向により、下請事業者への不当なしわ寄せが増加することか懸念されましたので、下請法の運用強化を図り、下請事業者の保護に努めてまいりました。  最後に、不当景品類及び不当表示防止法の運用状況について申しますと、昭和五十三年中に公正取引委員会が同法違反の疑いで取り上げました事件は、千五百二十九件でありまして、このうち排除命令を行いましたものは十七件、警告により是正させましたものは七百四十三件でありました。  また、都道府県の行いました違反事件の処理件数は、六千二百六十二件となっており、今後とも、都道府県との協力を一層推進してまいる所存であります。  公正競争規約につきましては、家庭電気製品の表示に関するもの等二件について認定し、昭和五十三年末現在における公正競争規約の総数は、六十九件となっております。  以上簡単でございますが、業務の概略について御説明申し上げました。今後ともよろしく御指導のほどお願いいたします。
  14. 橋口隆

    橋口委員長 次に、公害等調整委員会委員長から、昭和五十二年度における鉱業等に係る土地利用の調整に関する事務の処理概要について説明を求めます。小澤公害等調整委員会委員長
  15. 小澤文雄

    ○小澤政府委員 ただいまから公害等調整委員会が昭和五十三年中に行いました鉱業、採石業または砂利採取業と、一般公益等との調整事務につきまして御説明申し上げます。  初めに、これらの事務の概要について御説明いたします。  第一は、鉱区禁止地域の指定に関する事務でありまして、各省大臣または都道府県知事の請求に基づき、聴聞会を開いて一般の意見を求め、利害関係人を審問した上、鉱物を掘採することが一般公益または農業、林業その他の産業と対比して適当でないと認めた地域を鉱区禁止地域として指定し、また、同様の手続によりその解除を行うものであります。その指定をした場合、当該地域内における鉱物の掘採が著しく公共の福祉に反すると認めるときは、既存の鉱業権についても、その取り消し等を通商産業局長に対し勧告いたします。  第二は、不服の裁定でありまして、鉱業法、採石法、森林法、農地法、海岸法、自然公園法、地すべり等防止法、河川法、砂利採取法、都市計画法、自然環境保全法及び都市緑地保全法に規定する特定の処分に対する不服については、鉱業、採石業または砂利採取業と、一般公益または農業、林業その他の産業との調整を図るため、行政不服審査及び行政事件訴訟の特例として、直接裁判所へ出訴することを許さず、もっぱら当委員会が公開審理等、準司法的な手続により不服の裁定を行います。当委員会の裁定または裁定申請却下の決定に対して不服のある場合には、当委員会を被告として、東京高等裁判所に訴えを提起することができることになっています。  第三は、土地収用法及び森林法上の事業認定や収用裁決等に関し、主務大臣か不服審査を行う場合には、あらかじめ当委員会の意見を聞かなければならないこととされており、これに対し回答を行う等の事務であります。  次に、昭和五十三年における当委員会の具体的な事務処理の概要を御説明申し上げます。  第一に、鉱区禁止地域の指定に関する事務でございますが、昭和五十三年中に当委員会で処理手続を進めましたものは二十五件でありました。そのうち十五件は前年から係属中のものであり、十件は昭和五十三年中に新たに請求のあったものであります。この二十五件を請求理由別に見ますと、ダム等の施設の保全に関するものが二十二件、環境保全に関するものが二件、鉄道施設の保全に関するものが一件となっており、請求者別に見ますと、農林水産大臣二件、運輸大臣一件、建設大臣十件、都道府県知事十二件となっております。これらについて、通商産業大臣等関係行政機関の意見聴取、聴聞会の開催、利害関係人の審問、現地調査等所定の手続をとるとともに、具体的に地形、地質、鉱床、一般公益各般の事情を詳細に検討する等審議を進め、三件について処理を完了いたしました。  第二に、不服の裁定でありますが、昭和五十三年中に当委員会に係属した事案は四件で、そのうち一件は前年から係属中のものであり、三件は昭和五十三年中に新たに申請があったものであります。これらの事案の内訳は、鉱業法の規定による通商産業局長の処分に対するもの二件、採石法の規定による知事の処分に対するもの一件、自然環境保全法の規定による環境庁長官の処分に対するもの一件でございます。これらのうち、一件については棄却の裁定をなし、残り三件は審理中であります。  第三に、土地収用法関係の意見でありますが、昭和五十三年中に当委員会で処理手続を進めましたものは二十四件で、そのうち十六件は前年から係属中のものであり、八件は昭和五十三年中に新たに建設大臣から意見を求めてきた事案であります。これらの事案の内訳は、道路河川関係十一件、都市開発関係十二件、鉄道建設関係一件となっており、これらは収用委員会の収用裁決を不服とするものが二十三件、事業認定処分に対する異議申し立て一件であります。これら二十四件のうち、十八件については回答済みでありますが、残り六件については審理中であります。  その他、採石法の規定による、通商産業局長の決定に対する承認に関する前年から係属中のもの一件について回答いたしました。  以上をもちまして、昭和五十三年中の事務処理の概要を申し述べた次第であります。  なお、公害等調整委員会設置法第十七条に定められております昭和五十三年の所掌事務処理状況の報告書は、会計年度で取りまとめまして、追って所定の手続を経てお手元にお届けいたしますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
  16. 橋口隆

    橋口委員長 以上をもちまして、両大臣の所信表明及び両委員長からの説明は終わりました。  なお、この際申し上げます。  昭和五十四年度通商産業省関係予算及び経済企画庁関係予算の説明につきましては、お手元に配付の資料で御了承願います。     ─────────────
  17. 橋口隆

    橋口委員長 質疑の申し出かありますので、順次これを許します。渡辺秀央君。
  18. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 ただいま通商産業大臣の当面の通商産業行政に対する所信をお聞きいたしましたし、並びに経済企画庁長官からわが国経済運営のあり方についてのお考えを拝聴いたしました。今日のわが国を取り巻く内外情勢の厳しい条件の中で、日夜国家国民のために御精励、御健闘されておられる両大臣に対しまして、心から敬意を表したいと思います。本当に御苦労さまに存じます。  両大臣への期待大なるものでありますが、昨今の国際政治の波をもろにかぶる国際経済環境は、そのままわが国経済の波でもあると思います。したがって、これまでの国内経済、国際経済の概念を分けて考えることもできなければ、経済運営も表裏一体の認識の中でとらえていかなければならないと思うのであります。  今日の情勢かくあると考えながら、さらに論を進めながら、中小企業対策の中の一つをとらえてみても、私は、国際経済動向を見ながら施策を施していかなければならない、ともすると仏つくって魂入れずという観になってしまうおそれも考えるのであります。国民の多様化されたニーズに対処して、はるか二十一世紀を展望し、政治がどう今日指導しなければならないか、きわめてむずかしいさまざまな問題が横たわっており、責任を持って一つずつ解決を迫られておる政治家の責任は、一段といままでより以上に重大な感がいたすのであります。このときに大平内閣の実力両大臣に御指導いただく機会を与えられまして、私はまことに光栄であります。できるだけたくさんな質問をさせていただきたいのでありますが、時間もかなり経過いたしておりまして、両大臣の指針をなるべくわかりやすくとらえさせていただきたいと思いますので、限られた時間内でもありますし、何とぞ要点を鮮明にお答え願えれば大変ありがたい次第であります。  まず最初に、最近の経済動向についてでありますが、わが国経済は、大臣もお述べになられましたごとく、輸出は減少基調でありながら国内需要は底がたい回復傾向にある、経済全般としてはいろいろの要因の中で、緩やかながらも拡大を続けているということだと思います。しかしながら、依然として御指摘のとおり構造不況業種問題も決して安心できない、むしろ基本的問題点を残していると思われる点もあることは否定できないはずであります。  このような中で、安定経済としての景気回復を図ることが第一義であるとの観点から、今年度予算編成がなされておると思いますし、しかも政府は、昨年一月に公表した五十三年度の経済見通しについては、実質GNP七%の成長率を見込んだにもかかわらず、昨年十二月の改定見通しで実質見込みを六%に下方修正いたしましたが、この要因は何かを経済企画庁長官にお伺いいたしたいと思いますし、このように下方修正した経済動向を踏まえて、通産大臣は現在の景気局面をどう認識し、どのように今後の経済運営を進めていくお考えかをお聞きいたしたいと思うのであります。  言うまでもなく、日本の輸入拡大あるいはドル減らしの実効が上がっていないと、アメリカのカーター大統領は昨年暮れに不満を申し入れてきたと一部の報道にもあり、サミットの出席も危険となってきたというような報道がなされておりまして、非常に憂慮いたしているものでありますか、その辺のお考えも含めてお答えいただければありがたいと思います。
  19. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  五十三年度の七%成長に対して、大体六%程度になるのではないかということを申したその大きな理由は、昨年の秋以降円高が非常に進んだこと御承知のとおり、そうした円高が大幅に進んだために、輸出が非常に減少いたしました。同時にまた、実質輸入が非常に多くなった。これは両方ともマイナス成長になるものでございます。それから、消費やあるいは設備投資の国内最終需要は、ほとんど予定と余り変わっておらないのでありますが、在庫投資が円高影響を受けまして非常におくれたということで、足を引っ張ったわけでございます。われわれの推計でございますが、国内需要だけは大体八%程度の成長になる。しかし、先ほど申し上げましたように、円高による貿易の関係のマイナス要因が働いて、六%と推定したわけでございます。
  20. 江崎真澄

    江崎国務大臣 日米の経済関係を順調な姿で持っていくことは、私どもの非常な責任だというふうに考えております。  今度の一%下方修正の問題は、いま経企長官から御説明があったとおりですが、これとても、アメリカ側と約束をいたしましたいわゆるドルの価格というものが、二百円割れという形で円高になったという、そして輸出量が極端に減ったことが一つですね。それからもう一つは、端的に言いますると、ストラウスさんの強い要請であった日本側の製品輸入、五十二年度二〇%を少なくとも四〇%近くまで伸ばせ。過剰流動性が言われましたピーク時には、製品輸入が三四%ぐらいまでいっておったことがありますね。その後、何でもできる日本でありまするし、四辺海に囲まれておるというような環境などから、非常に製品輸入が減ってまいりました。これが五十三年度の場合は、恐らく年度末には、どうでしょう、三〇%程度に近づくんじゃないでしょうか。これも日本の生産の足を引っ張るというような大きな理由であったと思います。しかも製品輸入のためには、いままで輸出の窓口であったジェトロを輸入の窓口も兼務させる、買い付けミッションを日本から派遣をする、またアメリカからは売りつけのためのミッションを心よく迎える、ワールド・インポート・マートを設立して、経済四団体か直接諸外国の製品の展示をして、買い付けに熱意を示す、こういったことをよく説明をすれば、私はアメリカ側の理解を得ることはできるのではないか、また、これは理解を得なければならぬというふうに思っております。  それで、先ほど渡辺さん御指摘のように、この場面にあって構造不況業種をどう救い上げていくのか、産地不況対策を具体的にどう進めるのか、これが私ども通産省にとって、来年度にかけてのやはり重要な問題であるというふうに思っております。  国際収支の黒字を減らすことなどにつきましては、臨時異例の措置でありまするが、来年度も緊急輸入というような対策をとってまいりたいというふうに考えております。
  21. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 後ほど、構造不況問題等も織りまぜて、また改めて御質問させていただきますが、もう一点、最近の新聞報道から、物価の上昇傾向が懸念されておるということで、二月八日の朝刊でありましたが、物価対策景気対策から急転換しなければならぬ、こういう報道がなされました。大変な、予算編成を終わって、いまその予算審議をやっている最中にこの報道がなされましたが、そのことについて、私はその真意と見通し、あるいは誤報であるのか、その辺のことをお聞きしたいと思うのですが、いずれにいたしましても、今日のこの公共事業投下や官公需の順調な拡大などによりながらも、比較的落ちついた推移物価の問題としては流されているとは思いますけれども、一つには円高影響によるところに、比較的物価を抑えてきた原因があると御指摘のとおりだったと思うのです。しかし、円高もここ二百円を割るというようなところで、比較的落ちつきを見せてもおりますし、あるいはまた、一方においてはOPECの原油価格の引き上げというような問題もあり、イランの情勢は落ちつく傾向に入ったとは思いますけれども、経済影響を考えると、やはり政策的にある程度物価問題ということを考えていかなければならないというのが、恐らく真意なのではないかというふうに考えさせられます。しかし、これとても一歩誤りますと、下手をするとスタグフレーションの再来というような心配を、一般国民に与える傾向にもなると思うのです。それらのことにつきまして、お考えを長官からお聞きしておきたいと思います。
  22. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 お答え申し上げます。  私、先ほども申し述べましたように、ことしの経済運営基本は、やはり物価の安定基調の中で日本の経済をさらに拡大していくということ。同時に、雇用問題が非常に重要な問題でございますので、この面から見ますと、やはり景気回復を相当進めていかなければいけないと思っておるわけでございます。  しかし、最近、ちょっと一部に見られるような思惑的な傾向もございますし、私は、物価騰貴で一番こわいのは、実態ではなしに心理的な影響だと思うのであります。われわれもオイルショックのときに非常に苦い体験をしておりますので、あの事態のようなことがあってはならないし、また、わが国の一番心理的な影響の強いのは石油でございます。特にイランの情勢もありますし、OPECの値上げもありますし、そうしたようなこと等から見まして、やはり国民に対して物価の安定ということ、また、経済界に対しては特に物価の安定ということがきわめて基本的な、重要なことだということを認識してもらうために、あのような発言をしたことは事実でございます。  でございますので、決してそれが物価政策一辺倒に政策運営を切りかえたというものではないのでございまして、私は、経済は生き物だと思っておりますので、そのときどきに、多少懸念が出たときにはそれを事前に防ぐなり、警告を発するというような政策を小まめにやりながら、いまわれわれの与えられております非常に困難な経済情勢の打開に努めてまいりたいと思っております。
  23. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いま長官から説明のあったとおりだと思います。  そこで、私ども通産省としては、やはり為替の安定を、これは相対的な問題ですが、図る、物価を抑えていく、これは大問題だと思いますね。景気を、回復路線をなだらかに続けさせる、一方では雇用の安定を図る、これは四つの大きな柱だというふうに思っております。  そこで、特に当省としては、公共事業関連資材については、省内の公共事業関連物資需給等対策本部をフルに活用してまいりたいと思っております。これはまた、大蔵大臣が公共事業等施行推進本部の本部長もいたしておりますね、これと呼応しまして、十分配慮したいと思います。  特に、生産財というのは需給両者において話し合いがなされますから、ある程度妥当な値段に落ちつきまするが、消費財は、消費者が一々反対をしたり議論をする場というものがありません。それだけに、消費財についてはモニター制度を活用したり、通産省が細かく配慮をすることによって物価の安定を図っていく。特に、学者などが、円高メリットの還元は五十四年度は少ないなんということを言いますね。私はあれはおかしい発言だと思うのです。円高メリットはなるほど物価の安定、特に消費者物価の安定には大きく影響してきたことは事実ですが、一体スミソニアン呼称方式で五一%も高くなったというのに、本当に五一%もいろいろな諸物資に円高メリットの還元がなされたでしょうか。昨年のことを考えてみても、下半期から円高メリットというものがだんだんじわじわと効き目が出てきたわけですね。そうすれば、五十四年度も引き続き私は相当程度還元されてしかるべきだ、行政指導として可能な範囲は的確に行政指導をしていかなければならぬというふうに考えておる一人でございます。
  24. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 大変頼もしい御発言でありがたいことだと思いますので、ぜひひとつ円高メリットに対する還元をお考え願いたいと思います。  次に、時間も大分経過いたしておりますので、大分いろいろお聞きしたいものですからひとつよろしくお願いを申し上げますが、個条的にまいります。  中小企業対策についてお伺いいたしたいと思います。政府はこれまで、長期の不況の中で、円高などによる大打撃を受けた中小企業、零細企業の苦境を、円高法、特定不況地域法などの処置で、救済の努力をしていただいてまいりましたが、これらの施策の利用状況は一体どうなっているか、あるいはまた実効はどのように上がっているか、簡単にひとつ御説明を願いたいと思います。
  25. 左近友三郎

    ○左近政府委員 御指摘の円高対策法につきましては、昨年の二月十四日から施行されましたが、昨年の十二月末までに同法に基づきます認定中小企業者が約三万六千三百人ぐらいに達しております。また、同法に基づきます対策のうちで、いわゆる円高対策融資につきましては、昨年の十二月末までの融資実績、これは中小企業三機関の合計でございますが、これが三千七百四十億円ということに上っておりまして、輸出関連中小企業経営安定に大きく貢献しているというふうに考えます。  それから特定不況地域中小企業対策臨時措置法につきましては、昨年十一月十八日から施行されまして、御案内のとおり三十地域の特定不況地域が指定されましたけれども、本年一月末までの同法に基づきます認定中小企業者は千二百十七人ございまして、緊急融資の昨年十二月末までの実績は八十四億ということでございますが、これは今後まだまだ大きくなると思いますので、適切に運用してまいりたいというふうに考えております。
  26. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 大変実績も上がっているようでありますが、私は、かねがね中小企業対策の中心は金融政策だと言ってまいっておるわけであります。大きな柱は金融問題あるいは金利政策、そういう観点から考えなければならないのではないかと思うのです。先ほど大臣の所信表明にもありましたように、中小企業金融はこれから拡充していかなければならないとおっしゃいましたが、今後とも質的、量的にも大いに改善する必要があると思うのであります。特に先ほど申し上げましたように、金利の問題あるいはそれにちなむ手続の問題等についてもっと簡素化して、そして利用度をさらに広めさせる、そんなふうにぜひ御努力を賜りたいと思います。  最近の企業の倒産件数などを拾ってみますと、やはり依然として非常に高い水準にあります。先日民間信用調査機関の発表によりますと、今年度の一月中の全国の企業倒産は千二十三件、負債総額は一千百五十九億五千八百万円となっている。しかしそれでも前年同月の水準よりも一〇・三%減っている。金額的には三三・七%下回っているということだそうでありますか、資本金別では一億円以上というのが一件だったということだそうであります。しかし一千万円未満が九百三十四件、全体の九一・三%を依然として占めているわけです。  こういう中小企業の現況を考えてみますと、いろいろな要因があろうと思うのでありますが、それはさておきまして、このような状況で、倒産防止対策をやはり一段と強化していかなければならないのではないか。一昨年国会において成立しました倒産防止共済制度ではどうも金額的にも不十分でありますし、もう少し改良、改善の余地がないものか。たとえば倒産防止特別保険というようなことが当初言われましたが、そういうことをこの段階で考えるべき時期に来ているのではないかという感じもいたしますが、それらについて中小企業庁長官のお考えもお聞きしておきたいと思います。
  27. 左近友三郎

    ○左近政府委員 金融対策については御指摘のとおりでございますので、われわれとしても今後金融の円滑化、条件の適正化ということに努めてまいりたいと考えております。  それから倒産問題につきましては、御指摘のとおり昨年四月から倒産防止共済制度を発足させていただきました。これにつきましては、制度を創立する際にいろいろ検討いたしまして、御指摘のございました保険というような問題についてもいろいろ検討してみたわけでございますが、やはり保険については、保険事故率の想定等が非常にむずかしいというような点から、共済制度という形にいたしたわけでございます。これにつきましては、まだ一年足らずの運用の実績でございますが、この運用の実績を大体一年ぐらいになりましたならばよく検討いたしまして、今後制度の改善ということに努めてまいりたいと考えております。  なお、来年度は、それ以外に中小企業の倒産防止策といたしまして、倒産防止特別相談事業というものを新しくやるようにいたしまして、予算を御審議願っておるわけでございます。これは、全国の七十二の商工会議所に倒産防止特別相談室というものを設けまして、そこで倒産に瀕した中小企業の相談に乗りまして、できれば倒産を回避する、倒産が回避できない場合も、将来の再建を可能にするような形での、あっせん調停を含めた機関を創設してまいりたいというふうなことも考えておりますので、今後の中小企業の倒産対策——若干倒産件数も減少いたしましたが、今後まだまだ倒産の危険性があると思いますので、十分これに対する対策を進めていきたいというふうに考えております。
  28. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 倒産防止対策を進める段階で、いまのような相談制度というようなことを考えていただく、非常にありがたいことだと思うのですが、こういうのは構造不況業種というものが背景にある産地が依然としてやはり多いわけであります。そういう意味で、この構造不況業種の問題の解決というのは、川上の方は比較的いい段階に入っていますけれども、川下は依然として構造不況業種に指定された形の中で、まだまだ悶々と続いているという現況だと思うのです。大企業の川上はうまくいっているが、下の方がうまくいっていないという、その辺の御認識をぜひひとつ賜っておきたい。  そこで、構造不況業種の一部で、市況の回復が先ほどのお話のように見られつつあるのにちなんで、不況カルテルの打ち切りという問題も議論されているようでありますが、私は、元来不況カルテルというのは、比較的短期な対応処置として考えるものと思うのであります。構造不況業種に対する対策というのは、中期的な課題としてあるいは業種によっては長期的な問題点として、業界の構造改善を進めていくために行っているのであって、一時的に市況が回復したといってこの問題を中途半端に投げ出すことでなくて、引き続きこの不況カルテルに取り組んでいくべきだというふうに思うわけでありますが、通産省の考え、大臣のお考えをお聞きしておきたいと思うわけであります。小形棒鋼や合繊のカルテルの延長を認めないという方針のように若干聞いておりますけれども、いま申し上げたように、下のことも考えてひとつ御検討を賜りたいと思いますが、御見解を承りたいと思います。
  29. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは独禁法に定めておりまするように、需給の著しい不均衡、極端なコスト割れ、こういうことで品目指定をしておるわけでありまするが、相当程度業界全体として立ち直っておるものもあるわけですね。いま御指摘の小棒などについては十二月で切れてその以後様子を見ておる。これは実態を把握しながら、しさいに実情をキャッチしながら、さてこれは延長に踏み切るべきか、もうこのままでいいのかという検討課題になっておるわけです。今後といえども、いまここでこれは打ち切りましょう、これは継続しますなどという言い方はできませんが、よく実情を把握しまして、公取の方とも相談の上、実情に合う姿でそれぞれ対応をしていきたいというふうに考えております。
  30. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。  私は、繊維問題だけ一点ちょっととらえてみたいと思うのですが、いまの大臣の御答弁で大体結構なんでありますけれども、何といってもやはり国内繊維の圧迫は輸入から起こっているわけであります。生産過剰の問題はかなり整備されつつありますが、輸入規制をしてほしいという声は、各繊維産業のそれぞれの部門、業界にわたって非常に強い傾向にありますことは、大臣も御存じのとおりであります。自由貿易という立場に立ってやっているわが日本としては、この輸入規制をするということはむずかしいとは思うのでありますが、たとえば輸入規制ができなかったら、輸出の場合において、対米関係の中で繊維の関税が非常に高い、これぐらいのことは将来改善してやるというような、一方において出口を考えてやらないと、本当に日本の中小繊維産業というのは死滅していってしまうのではないかと思うのです。非常にむずかしい問題だろうと思いますけれども、もう東京ラウンドも大体頂点に来ておるわけですから、いまさらの感がしないでもありませんが、将来の問題としてひとつお考えおき願えたらありがたいことだと思うのです。そういうことをひとつお願いを申し上げておきまして、時間がなくなってまいりますので次の問題に入りたいと思います。  エネルギー政策についてお伺いをいたします。最近の中東をめぐる国際政治は、余りにも不安定な様相を呈しておりますが、特にイランの国情は、ここ一両日急速に収拾方向に向かっている様子であるとはいえ、憂慮すべき事態でありまして、エネルギーの大半を石油に依存し、しかもその大方の部分は中東に依存しておるわが国にとっては、これら中東をめぐる不安材料を考慮するとき、エネルギー安定供給確保を今後図っていくことは、なかなかむずかしい問題になってきているような感じがするのであります。もちろんわが国の長期的エネルギー政策の目標は、石油依存度を低下させていくことが重要な施策の柱ではあり、政府はこれらを推進するためにサンシャイン計画というのを推進しておられるわけでありますが、石油にかわるエネルギーの開発には、今日の時点ではまだまだ相当な年月が必要である、これは認めざるを得ない現状だと思うのです。したがって、当分の間は石油供給の安定確保こそが今日的エネルギー政策の中心的課題でありますか、国家として重大な責任を果たすのに、これらの問題意識の中で、エネルギー問題全般にわたって私は大臣のお考えあるいはエネルギー庁長官のお考えをお聞きしていきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  第一にイラン情勢であります。中東情勢を見て、今後のイランと中東情勢両方を踏まえまして、安定確保に不安がないか、この見通しであります。  第二点として、政府はいわゆる省エネルギー対策ということについてもっと真剣にかつ積極的に推進すべきではないかと思うのです。このイラン情勢というようなものの惹起された今日を一つの契機にしながら、もちろん一般生活に不安を与えるようなことであってはいけませんけれども、しかし余りにも四十八年以後からの、あののど元過ぎれば熱さを忘れるというような傾向がまた今日起こってきていることを考えますときに、これらを一つのバネに使いながら省エネルギー政策推進していくべきではないか。われわれとして、特に省エネルギー法案などの促進を図っていかなければならないと思いますが、大臣のこの省エネルギーの問題や、中東におけるエネルギー確保、この見通しについてお伺いをしておきたいと思います。
  31. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御指摘の点はもうきわめて重大な問題だというふうに思っております。昨年十二月からイランの原油供給は全面ストップをいたしました。わが国の一次エネルギーとして石油が占める数値は七〇%であります。その石油の八〇%を中近東地区から輸入しておることは御存じのとおりであります。あと二二%程度が、中国を含む、インドネシアその他アジア地域からの供給、こういうことになっております。イランはピーク時には三十数%輸入をいたしておりましたが、今回の場合はなるべく対象国を多くするという線に沿って、御承知のように一九%強の依存度、これが全面的にとまったわけですね。したがってこれは隣接諸国、サウジアラビア、イラクその他の国々の協力によって増産の積み増しをしてもらう、あるいは国内備蓄を取り崩すというような形で、今日に至っておることも御存じのとおりだと思います。しかし幸いなことに、前回の石油ショックにこりまして、その後皆さんの協力を得て鋭意備蓄を進めました結果、民間では八十五日弱、政府では七日間強、これだけの備蓄があるわけであります。その後OPEC諸国においても、やはり国際的責任を果たさなければならぬという非常に強い協力体制に立ってもらいまして、イランを除くOPEC諸国の協力があります。前の石油ショックの場合は、消費国対産油国の対立でありましたが、今度の場合はそういうことでもないということが言えるかと思います。しかし、イランからの原油の供給ということはここ当分は望めそうにありません。そこで、私どもも真剣にこのイランの先行き、中東情勢の分析、情報などを的確にキャッチすることに全力を挙げながら対応しておるというのが現況であります。  そこで、消費節約にどう対応しておるのか、これは御存じのようにもともと無資源国でありますから、エネルギー源を大切にするということは言うまでもないことです。したがって、一月二十二日に省エネルギー・省資源対策推進会議、これは総理府総務長官が主宰をしておりまするが、ここの議に供しまして、まず隗より始めろというか、役所が省エネルギー全力をもって取り組む、民間にも協力要請する、特に一般消費者に電気を初めとするエネルギー消費の節約を呼びかけた、これは御存じのとおりであります。いや少々なまぬるいではないかという世上の批判もないわけではありません。しかし、御承知のようにことしは何とか景気を持続して、雇用の安定を図っていきたいという経済政策としての第一義の目的もあるわけです。そこでさてどうするかというわけで、私どもも非常に苦慮しておるところでありますが、石油需要の最盛期一−三月──四月からは御承知のようにだんだん消費が微減いたしてきますが、最盛期であることしの一−三月は、七千二百万キロリットル確保できるという見通しを得たわけであります。七千二百万キロリットルというのは、昨年同期分と等量の数字になるわけです。全くやれやれというのが正直なところでありまして、大口の規制をしたり生産を損なうような形はとりたくないな、できるだけ節約の線は着実に進めなければならないが、あとはいわゆる本年の十月以降の最盛期にどう備蓄を進めていくかという問題が残るわけでありまするが、国民に、現在の情勢でいけば、幸い備蓄はできておるからこの取り崩しを含めて不自由のないようにする、大口需要者の使用制限であるとか数量規制であるとか、そういう手荒なことはしないかわりに、買いだめだとか買いあさりなどということは一切しないようにという、道義的協力を強く呼びかけておるというのが現況であります。  産業界においては、御存じのように石油が四倍にもなった、現時点では五倍以上になっておるということから、相当省エネルギー政策というものはそれぞれ進められておるのですね。ただ一般家庭消費というものが、あの四十八年の石油ショックのピーク時よりも四%近く伸びておる。したがって、むだなエネルギーは極力節約してもらうようにということを、今後といえども大きく呼びかけていきたい。同時に、われわれも汗をかきながら、何とか雇用問題を中心とする景気対策に支障を来さないような努力をしておるのでありまするから、企業その他においても、極力節減を図っていただきたいということを念願しておるわけであります。  非常に重要な問題ですから、ちょっと時間をかりて御説明をした次第でございます。
  32. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 ありがとうございました。  大変時間がなくなってしまいましたが、ちょっと大事なことだけ個条書き的にもう二、三問申し上げたいと思いますので、ひとつ要点よくお願いをいたします。  電源立地の問題であります。そうやって省エネルギーをやりながら、電源立地の問題は切り離すことのできない大きな問題でありますが、いろいろこの施策に対してのことを御質問しようと思ったのでありますけれども、中でも特に電源立地の交付金の特例延長ということを考えておられるかどうかということが一点。結論だけで結構です。  それからもう一つは、大事な環境アセスメント法案であります。現在環境庁と協議中と聞いておりますが、これこそ電源立地のおくれに拍車をかけるおそれがあると私は思うのであります。特にこの問題は、産業界全体にも重大な影響を与えるものでありまして、先ほど申されたように経済成長を一方において考えている、しかも国民生活へのエネルギー安定供給、これらを考えていくときに、電源立地に関係する環境アセスメント等は非常に重大な問題で、ぜひひとつ慎重にこれは御検討をしていただきたいということを御希望申し上げながら、大臣のお考えを一言お聞きしておきたい、こう思います。
  33. 江崎真澄

    江崎国務大臣 電源立地促進対策交付金、これは延長の気持ちがあるのかないのか、重要な御指摘だと思います。いま通産省としては、御承知のように電源の早期着工を促進するために、特に今後の電力需給の逼迫の回避を目的としてとった措置です。そして五十三年度末までに話をまとめ、五十四年度中に着工すれば出しましょう、こういうことで地元としては大変な努力をしてまいったところです。これを、いまこの段階で延ばしますなどというようなことになりますると大変不公平なことになります。ですから、現段階においてどう考えておるかとおっしゃるならば、私どもとしては五十三年度限りの措置とする方針であります、こういうふうにお答えするよりお答えの仕方はないように思います。  それから環境アセスメント法案、これは成案を得べく、それぞれ省庁間において話し合い中でありまするが、なかなか話し合いがつかない。これは私も実情については、たまたま先ごろまで自民党の政務調査会長をやっておりまして、いかに話し合いがむずかしいかという諸点についてはよくわきまえておるつもりであります。ただ、環境庁においては非常に熱意を持って進めておられまするので、今後とも鋭意調整に努力をする、こういうことだと思います。
  34. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 ありがとうございました。  時間がなくなってまいりました。経済協力について私いろいろお聞きしたいと思ったのです。中国との長期貿易取り決めとか、いろいろな問題についてお聞きしようと思って用意はいたしたのでありますが、最後に、ちょっと経済の、特に不況関係との関係もありますので外務省関係にお聞きしたいのであります。  経済開発等援助という問題があります。発展途上国に対する経済協力の中の無償援助という問題でありますが、これは経済協力でも非常に各国に喜ばれていることは御存じのとおりです。五十三年度、水産無償五十億、災害無償十億、文化無償三億、その他三百二十七億円となっておりまして、合計三百九十億円の予算が使われております。特にその他の項目での三百二十七億の中から百三十九億円は不況産品を使う無償援助ということになっておるわけでありますが、わが国不況産業に対して大いに功を奏したということで、一石二鳥を考えるものだと思います。  五十四年度予算は、水産無償が六十億円、災害無償十五億円、文化無償六億円、その他五百六十九億円と聞いております。合計六百五十億円でありますが、五十四年度の不況産品を使う無償援助は、昨年度の百三十九億円に比べて今年度どういうふうにふやしているか、どのくらいの計画を持っているか、その結論だけちょっとお聞きしておきたいと思います。
  35. 西山健彦

    ○西山説明員 来年度予算中いわゆる不況関連の資器材援助につきましては、あらかじめ特定の予算枠を設けるということはいたしてございません。今後被援助国側から、経済開発を進める上で必要な物資として具体的な要請がある場合には、関係省庁とも協議しつつ検討してまいることになろうかと存じます。
  36. 渡辺秀央

    渡辺(秀)委員 大変ありがとうございました。これをもって終わります。
  37. 橋口隆

    橋口委員長 午後一時四十分から委員会を再開することとし、この際暫時休憩いたします。     午前十一時五十一分休憩      ────◇─────     午後一時四十分開議
  38. 橋口隆

    橋口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。板川正吾君。
  39. 板川正吾

    板川委員 きょう午前、通産大臣、経企庁長官、公取委員長所信表明、報告がございました。それに関連しまして若干質問をいたしたいと思います。  まず、通産大臣にお伺いをいたしたいと思います。  通産大臣、この所信表明の中で、イラン問題について「イランをめぐる国際政治情勢複雑化等石油をめぐる最近の国際情勢はきわめて流動的なものがありますが、今後の情勢推移を見つつ適切に対処し、遺憾なきを期してまいりたい」、こういう所信の表明がございました。  御承知のように、イランの内紛は、一昨日ですか、軍部の中立宣言ということによって、急転直下して回教ホメイニ師派の勝利に終わったということが確定的のようであります。こういう現状に立って、今後イランの石油事情というのは、特にわが国に供給するイランの石油という問題について、政府はどのような見解をとっておられるのか。万全の対策をとっておられるというだけでは、簡にして要を得過ぎておって内容が国民の中にわかりませんから、どういう措置をとられようとするのか、この点について通産大臣の御意見を承りたいと思います。
  40. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御質問の点はきわめて重要な点だというふうに思います。  いまお話にありましたように、十一日になりまして一転軍が中立宣言を行った、そのために、事実上軍を基盤にしておりましたバクチアル政権は退陣の余儀なきに至る。今後の動向としては、バザルガン暫定政府首相が新政治体制の具体化を急ぐというふうに見られておるわけでありまするが、私ども、今度のイランの情勢、特に混乱の成り行きなどというものをしさいに注目し、特に的確な情報をキャッチすることに努力してまいったところであります。  午前中にもちょっとお答えをしましたように、わが国はイランに一九%程度石油輸入を依存いたしておるわけであります。これが年末には全面ストップになったというわけです。したがって、その後は近隣諸国の増産体制、そのための荷物の積み増し、積みかえ、ひいてはまた、こういった不時の場合に備えまして、民間、政府ともに計算しますと、幸い九十二日分という備蓄を持っておったということで、当面は買いあさりとか買いだめというようなことがない限り、需要規制をしなければならぬ事態ではありませんが、まだイランの政情の先行きというものは、不確定要素が余りにも多過ぎるわけであります。そこで、ちょうど先ごろ、一月三十日、IEAの非公式な事務段階の会議があったわけであります。わが方からも真野国際経済部長を派遣いたしまして、IEA加盟国の意見交換とともに、的確な情報把握に努めてまいったところでありまするが、結論的に申しますると、IEAの傘下の国々は、どうも前の石油ショックのときにはいささかあわて過ぎたきらいがある。そのために、メジャーとは申しませんが、いわゆる石油業者を中心に、不当な利益を占めさせるというような形があった。したがって、今度は情報を的確に交換しながら、もとより世界の一二%の供給圏であるイランの石油輸出全面ストップということは大変困った事態ではあるが、対応としては、なるべく各国とも緩やかな対応でとりあえずはいこうではないか、こういう申し合わせがあったと報告を受けております。  そこで、ちょうど昭和四十八年の石油危機との対比を簡単に申し上げますると、安定度が増しておると考えられる一つの要因としては、北海油田が開発された。それからアラスカの油田、これも日産百二十万バレルぐらいの油田が開発された。  それから第二点は、各国の備蓄水準が高まっておる。日本の場合は、あのときは五十九日の備蓄でしかあり得なかったのですが、今回は十二月末現在九十二日の備蓄がある。  それから第三点としては、IEA緊急融通制度の整備というものがある。しかもIEAそのものも、御承知のように、あの石油ショック後の新しい国際機関として、まあ前回の危機にこりてできた国際機関である。こういった国々が協力体制をとって今後に備えていこうという条件の違いがあります。  それから第四点としては、OPEC諸国の協力的な態度があるという点です。前回のときは、いわゆる産油国と消費者の側は、四倍の値上げという大変な値上げでありましたために、利害が相反して対立的な状況でありましたが、OPEC諸国としては、今度のイラン一国の政変、混乱によってOPECの信用を損なってはならないということで、サウジアラビアを初めそれぞれの隣接の国々が、生産の協力体制に立っておるという点は大きな違いだと思います。  それから、不安定要因はどうかという点におきましては、省エネルギーの余地がきわめて少なくなっておる。油が高くなって、もうそれぞれ生産業などにおいては相当節約が進められておって、いわゆる余地の減少といいましょうか。  それから第二点は、OPECの工業化計画のスローダウンに伴う石油供給増大意欲の減退の傾向にあるという点。  第三点は、イランの政治不安が他の湾岸諸国に影響しては困るというような点があろうかと思います。  そこで、そういったいろいろな違いはありまするが、もともとわが国は無資源国でありまして、石油の場合、そのほとんどを外国の輸入にゆだねておりまするので、政府におきましては、御承知のとおり、省エネルギー・省資源対策推進会議を開きまして、まず政府の節約、そしてそれぞれ生産会社等への節約を呼びかけ、特に、その後、電力の使用などが四%近くも伸びておりまする一般国民に、節約協調を大いに勧説しておるというのが現状でございます。
  41. 板川正吾

    板川委員 今回の場合には、前回と違って新油田の開発があったり、備蓄が前回より非常にふえておったり、IEAという融通機関もできておる。しかも前回はOPEC全体であったのに、今度はイラン一国である。いろいろな点でさほど心配はないというお話のようであります。私も今度のイラン石油の問題で、余り大げさな扱い方をすべきでないという見解でありますから、その点は同感であります。  ただ、イランの石油情勢を専門家の話を聞きますと、なかなかこれは容易ならざるものがあるんじゃないだろうか、こう言われております。それは、イランの石油というのは、あそこは非常に老朽化しておりまして、サウジなどは自噴をして出てくるのですが、あそこは大半は自噴ではない。とったガスを海底地層につぎ込んで、あるいは海水を圧力で注入をして、そして背斜構造の突端に追い上げていってそれをくみ上げる、これが大半なんだそうであります。自噴の場合はイラン人でも扱いはできるのですが、圧力を入れてガスが地層の中へ逃げない道をつくって、そしてそれをくみ上げるという技術はアメリカ人でないとできないんだ、こう言われておるのですね。そのアメリカ人が全体として総引き揚げをしておりますし、ホメイニ師の側近の伝えるところによれば、アメリカの力はかりない、外国人の力はかりない、こういうような言い方をやっておりますし、また二百万バレルから三百万、四割から半分程度まで自力で生産を上げればいいんだ、こういうような言い方も伝えられておるのですね。そうしますと、大体わが国の一九%、二〇%近くの半分は相当長期間にわたって石油が少なくなる、途絶する、イラン石油輸入が減る、こういうことも考えられてまいります。こういうことを考えますと、長期的な、一〇%内外石油輸入が減るものとしての対策を考えなくちゃいけないんじゃないか、こう思うのです。万全の対策があると言うだけではやや不安定でありますし、国民に実情を知らせて協力を求めるということが必要だろうと思うのですが、そういうイランの石油の長期的な減少というものを考えておられるのか、またそれに対するどのような考え方を持たれておるのか、伺いたいと思います。
  42. 江崎真澄

    江崎国務大臣 情勢の分析につきましては、いま板川さんがおっしゃるような模様を私どもも聞いております。自噴は六カ所くらいあるそうですが、イランの石油の生産というのは、いまおっしゃったような特殊技術を要する井戸が問題であるというふうに聞いております。  ただ、御承知のように、ことしの私ども通商産業を預かる者の課題としては、景気をどう持続するのか、そして国内的には雇用不安を解消して雇用をどう安定させるのか、これが政府政策展開としての大きな柱のうちの二つだというふうに思っておるわけであります。したがいまして、できるならば生産意欲をそぐような、いわゆる大口需要者の石油消費量を制限するとかいうようなことはしたくない、そういう考え方で、本当に可能なのかどうか、これはエネルギー庁においてしさいに検討、積み上げをいたしておるところでございます。そこでことしの一−三月の輸入量がどうなるかという点は、最需要期の輸入量でありますだけに非常に心配をし、その積算をしてみたわけであります。これは民間の輸入業者等々の情報を取り入れて積算した結果、午前中もちょっと申し上げましたが、七千二百万キロリットルの輸入は確実であるという見通しに立ちました。この七千二百万キロリットルは昨年同期と同じ量であります。もとより経済成長しました分だけ足りないことにはなりまするが、どうやら前年同期並みの確保はできた。この上は、大口消費者の削減などはしないかわりに、大口消費者は買いだめをしたり買い急ぎをしたりということは絶対しないように、これを強く通産省としては指導いたしておるわけであります。節約について協調を求めておることはもとよりでありまして、今後長期に及べば、特にことしの十月以降、また石油の最需要期に入りましたときにさてどうなるのかという問題が残されておりまするが、買い急ぎ、買いだめさえなければ当面はつないでいくことができる、しかし根底には節約ムードを国民の間に徹底することはもとより必要だというふうに考えておるものでございます。
  43. 板川正吾

    板川委員 私も当面はさして騒ぐことはないと思います。大体昭和四十八年のときに二億八千九百万トン入っておったのが、その後二億七千万トン台であり、二億七千五百万トンという程度のことでありますから、その間若干経済回復してきましても石油そのものは需要を拡大していなかったのです。ですから私は、今度のイラン問題は、ちょうど石油がだぶついておるときであったというのがわりあいに幸運だったと思うのですね。それから三月までが最需要期ですから、三月を越えれば需要期の山を越す、だから秋口までの間に何とか対策をとることは十分に可能だ、もしその間に不足すれば、備蓄の積み増しをやめるなり、あるいは最悪の場合は取り崩しをするということででも、ある程度の時間的余裕はかせげます、だからあわてないでください、こういうことだろうと思うのであります。IEAの協定によりますと、七%まで供給が減った場合には、それは自力で節約をして対応しなさい、それから一一%以上減った場合には、一〇%まではひとつ自力で、省エネルギー対策を講じなさい、それ以上はIEAの各国で融通し合う、こういうことが協定にあるだろうと思いますが、もしこの場合に日本が一〇%以上の削減という事態になり、そして一〇%までは節約をするとしても、それ以上のIEA諸国における融通を期待することができるのでしょうか。念のためにIEAの制度自体について質問いたしたいと思います。
  44. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 現在IEAにおきましては、IEAの緊急融通スキームを発動する段階ではないという判断を下しております。したがいまして、現在はそういう問題は起きてこないと思いますが、仮定の問題といたしまして、IEAが緊急融通スキームを発動する、そういう状態であると判断をした場合には、まず日本その他加盟国は、第一段階におきましては七%の節約をすることを要請されております。したがいまして、いまのままこのスキームを変えないといたしますと、七%節約しない場合には日本は緊急融通を受ける資格を失う、こういうことになるわけでございます。  それから備蓄に関しましては、現在備蓄義務量は七十日、七十日と申しますのは輸入一日分の七十倍ということでございます。それが現在の備蓄義務量でございます。それから次に、来年、一九八〇年の一月一日からはその備蓄義務量が九十日まで引き上げられることになっております。そこで、ことしはともかくといたしまして、仮に来年この緊急融通スキームの発動があるとした場合に、日本は七%節約をしていない、備蓄量は九十日に足りない、こういうことであるといたしますと、その緊急融通スキームを無条件では受けられないということになるはずでございます。そこでは、じゃどうしてくれるかということは、多分ネゴシエーションの問題になるだろうと思います。
  45. 板川正吾

    板川委員 来年の一月までに九十日を備蓄する、それを九十日にしないで取り崩す。ことしは積み増しは五日分ですね。とりあえずそれをやめるということは、IEAの了解なしにできるのですか。
  46. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、現在の備蓄義務量は七十日でございますので、したがいましていま日本が公団備蓄含めれば九十二日分、民間備蓄だけでございますと八十四、五日分、これを取り崩すということは、ことしにおいてはIEAの義務に何ら違反することはございません。ただ将来の見通しで、それじゃいま取り崩して、来年九十日にいきなり持っていけるのかどうかというところに若干問題が残っておるということでございます。しかし、IEAはそれをだめだと言うようなポジションにはございません。
  47. 板川正吾

    板川委員 イランの石油問題の将来を考える場合に、バザルガン新首相はかつてイラン石油公社の初代の総裁だった方だそうですから石油理解は持っておられるのじゃないだろうかというのが唯一の明るい材料だという感じがいたします。確かに流動的で今後どうなるかわかりませんが、その辺に多少の明るさを期待できるんじゃないか、こう思います。  次に通産大臣に伺いますが、通産大臣、二月二日の記者会見で、石油業界の便乗値上げはけしからぬ、値上げ幅の圧縮を行政指導する、こういうような発表がありました。その後、夕刊なんかを見ますと、エネルギー庁の首脳がそれを打ち消すというようなことが出ておるのですが、この記者会見の発表の趣旨、それから大臣の発表を長官が打ち消すというのはいかがなものかなと思いますが、一体この間の事情はどういうことでありますか。
  48. 江崎真澄

    江崎国務大臣 実はあの私が意見表明をいたしましたのにつきましては、たまたまここにおられる小坂経済企画庁長官が閣議で、最近石油の値上げを求める声がある、一方では都会地周辺、特に大都市周辺の土地が値上がりをしつつある、物価対策は本年経済運営上の重要な柱であるから、十分関係閣僚は注意を願いたい、こういう話でございました。石油会社が御承知のように一四・五%内外の値上げを通産省に要請してきておるわけでありまするが、これはまあたまたまOPECの値上げの、複式計算による最終の数字に符節を合わせるわけですが、とりあえずは五%アップ、それから、御承知のようにアメリカの努力もありまして、ここへ来て円安になったというようなことで、その円安現象によるひずみ、それから先ごろ来、さっき話がありましたように、石油がだぶついておるためにいささか油価が下がり過ぎたということで、一四・五%内外のアップを要請しておるということは私もよく知っておりましたが、これは当然経済担当閣僚として、物価対策という面から見れば、かりそめにも便乗値上げと考えられるような値上げはよくない。したがって、不当な点があれば当然行政的にも黙ってはおれないという意味のことを記者会見で申したわけであります。その後、エネルギー庁長官が会見をいたしまして、何か新聞では私と意見が違っておるような記事になったわけでありまするが、私はそうとは思わないので、要するに、エネルギー庁長官は、自由企業でありまするから、値上げを要請しても、たとえば製鉄業者であるとかその他の大口需要者が、妥当なものでなければこれには応じないであろう、まず需給のそれぞれの立場において調整をされ、そしてそこにまた便乗値上げとおぼしきものがあれば、その時点で通産省当局としては指導に出ることもあり得るが、それまでは需給それぞれ両者の立場で話し合いが行われるということが望ましい、要するにこれは経済的な一つの手続、原則について説明をしたものというふうに考えております。  私はやはり物価が、こういうことが引き金になって──石油の値上げというものはいろいろなところへ波及いたしますから、石油業者というものも、十分自分たちが扱っておる商品というものが公益事業面にも影響したり、日本の生産にも大きく影響するということをよく考えながら、値上げなどについては相談をすべきものであるということを、経済担当の閣僚として率直に意見を述べた。この考え方はいまも私変わりはございません。通産省側はその手続、段階を述べた、こういうふうに理解いたしておるわけでございます。
  49. 板川正吾

    板川委員 石油の価格については最近一月から五%、これは原油価格ですが、八百円ばかり上がっております。それから四月にはそれがさらに六百円ほど上がります。六月からガソリン税が二五%上がりますと、これまた一万七百円ほど上がります。また円レートが十円安くなりますと今度は八百円価格が上がります。高くなれば八百円下がる。こういうことになるわけでありますが、いずれにしましても一五%近く値上げするというならば、これはいつか計算しましたら一万三千円見当ですから、一五%値上がりというのはちょっと高過ぎる感じがするわけです。そういう点であるいは先取り値上げのおそれもあったわけでありますから、そういう点ではひとつ、原則的には自由価格かもしれませんが、物価等の面で考慮して適正な措置をとってもらいたい、こう思います。  それから、今度のイラン石油の問題でアラビア石油の増産が非常な大きな寄与をしておったと思うのです。たとえばアラビア石油は年間二億八千万キロリットルの生産能力を持っておりますが、イランの約半分ちょっと、五五%ほどであります。これが五十二年には八百万トン。二千万トンは実は掘らないで海底にそのまま置いてきているわけであります。五十三年は千二百万トンですから、やはり生産能力の四割くらいしか生産をしていない。しかし、このイラン石油が騒ぐようになりましたならば、十−十二月の三月間の一日平均は二千八百万トンベース、フル生産をやりました。     〔委員長退席、山下(徳)委員長代理着席〕 また、この一−三月は二千六百万トンベースで、アラビア石油の増産というものが、イラン石油不安に対する非常に大きな一つ役割りを果たしておったと思うのです。アラビア石油では設備投資をすればさらに増産できるけれども、しかし増産したら今度はイランがおさまった、もうおまえのところは重質油だから要らぬということになってしまっては、設備投資をすることができない、こういう考えにあるようであります。イランの石油問題が、この分で行くと長期的にいままでの五百万BDのような数旦里でなくて、半減されるということになりますと、このアラビア石油の増産体制というのも私は必要だろうと思うのです。それにはこの国内民族資本が投じて海外で開発した油を、国内で優先取引するような体制をつくらなければいけないと私は思うのです。これはしばしばこの委員会でも私主張してきたのでありますが、ひとつ大臣、就任早々でありますから、この安定的な国内引き取り体制、こういうものについてぜひ今後御検討願いたいということを要望いたします。  このイラン石油問題は、結論としては日本だけで対策をとるわけにいかない、したがって、IEAの諸国とも相談をし、足並みをそろえて、そして万全な策をとるということであろうと思います。本格的な対策は、時間的余裕があるから慎重にやっていきたい、こういうことだろうと思いますので、その辺を期待して、その後の状況を見ていきたいと思います。  次に、石油と同じに、イランのバンダルシャプールに、三井グループが石油化学会社をイランの石油化学会社と共同で、エチレン年産三十万トン、工場がすでに八〇%以上完成し、これに要する資金が五千五百億円からさらに一千億円を加えて六千五百億円も投じてある。それでもなおかつ足らぬということらしいのでありますが、このプロジェクトの計画は一体どうなるのだろうか。この点について、大臣のお考えを承りたいと思います。
  50. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは私も就任以来重要な問題ということで、絶えず注目しておるわけでございます。イランの政治情勢というものは、先ほど来のように依然としてまだ流動的要素が解消したわけではありません。しかし、御指摘の件につきましては、あくまでも工事の完成を目指して関係者が努力しておる。今朝、外務大臣の報告によりましても、在留邦人、この計画に従事しておる者を含めて二千九百余名は安全が保たれておるということが言われております。しかもホメイニ師が、イランの石油化学プラントというものはイランを利するものである、大切にしなければならぬということを語っておられるということを聞いております。それからまた、あのあわや内戦かと思われましたときにも、体制、反体制派の争いに、大使館筋を巻き込んではならないという言明をされたことなども私ども評価しておるわけでありますが、今後とも情勢推移を慎重に見守って、当局者がいま意思を変えていないこの体制が守られることを念願しておるものであります。
  51. 板川正吾

    板川委員 このイランの石油化学は、あの高い夜空にぼうぼう燃しておったガスを、石油化学として利用したい、こういう着想から生まれたのですね。その当時は三億トンという生産量があったのですが、それが半減するということになると、ある意味ではそういうガスも少なくなるのじゃないかなという感じがいたします。まあ、これが稼働し、採算ベースに乗るのはなかなか容易でない感じがしないでもありません。  ところで、この三井の首脳が、新聞報道によりますと、どうもこの膨大なプロジェクトに投資をして、そしてうまくいかなかった場合には、三井物産は第二の安宅産業になるのじゃないかなんて騒がれたからかもしれませんけれども、このプロジェクトが失敗しても、三井としてはわずか百億か百六十億の損害で間に合うのだ、なぜかというと、海外投資保険に入っておるから九割は国の方でそれを心配してくれるから、こっちは余り損はしないのだ、こういうような言い方が新聞にあった。あるいは海外投資保険に入っておれば、これは国の保険ですから、そういう契約であれば国が補償せざるを得ないと思います。しかし、損しても百億か百六十億で大した金額ではない、心配ないんだという言い方は、当事者としてはなはだ不謹慎な言い方じゃないか、私こう思いますが、大臣、いかがですか。
  52. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私どもも三井関係の当事者が百億程度で済むので心配は要らぬと言ったかどうか、その点については確たる情報を持っておりません。まあこういうときにはいろいろな話が乱れ飛ぶわけですから、恐らくあれだけの大投資をした会社がそれほど安易について物を言っておるとは思いませんが、もし本当だとすれば、それはおっしゃるように言葉としては言い過ぎではないか。それよりも三井関係者から通産省側に伝わってまいります情報としては、もう八〇%程度プラントはでき上がっておる、したがって政治情勢は不明確であるが、やはり工事の完成を目指して関係者はあくまで努力をする、この態度に変わりはありませんという、むしろ進取な、前向きの情報が入ってきておるわけであります。したがいまして、御指摘の保険事故に至るような事態になるというふうには私どももいまの段階では考えておりません。今後の情勢推移を慎重に見守ってまいりたいというふうに思います。  それで、万一保険事故が発生するような事態が生じた。それはやはりそのとき対応するということですが、これは保険事業でありますから、約款の定めるところに従いまして損失を補てんするということになると思います。しかし、これも具体的支払い額というものがどうなるか、当該事故の形、それから事故と損失との因果関係、損失の程度、こういったものを調査しませんと、いまからそれがどの程度どうなるか、百億で済むのか済まないのかなど、軽々な議論は差し控えたいというふうに考えます。
  53. 板川正吾

    板川委員 次に、経企庁長官にお伺いをいたします。  まず物価の問題についてお伺いをいたしますが、昨年は構造不況や予想外の円高によって、卸売物価が二・六%と予想よりもマイナスになりました。低位に物価が安定してまいりました。ことしは、円高による利益というものがなさそうでありますし、物価対策というのが最近の情勢から見て重要な課題になってきたという感じがいたします。  予算では、卸売物価が前年比一・六%程度今度は上昇するだろうと見ておりますが、最近の市況商品の動きを見ますと、わずか四カ月間で一三%も値上がりをしております。昭和四十五年を一〇〇としまして、石油ショックのとき、四十九年九月が一五八、ことしの二月七日が一五七というところですから、ちょうど石油ショックの最高のときぐらい市況商品というのは値上がりをしております。さらにことしは赤字国債の大量発行、地価の上昇気配、円高の鎮静化、公共料金の一斉値上げ、企業の手持ち流動性の増加、こういう点から、物価の値上がりが懸念をされるわけでありますが、大臣としてこういう状況の中で、物価対策というものについてどういうふうに基本的な考え方を持っておられるか、お伺いをいたします。
  54. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 ただいま御指摘のようないろいろなファクターをわれわれも非常に重要なことだと考えております。  しかし、今年度はわれわれの経済運営計画で、先ほど申し上げましたように、失業を二・三%程度、横ばいのところで抑えたいということ、それからもう一つは企業の経済活動をもっと活発にしたい、もう一つはやはり対外調整もしなければいけない等々考えました場合に、この中でどれに一番プライオリティーをつけるかということ以上に、私は最近の物価の安定ということがさらに重要なことだと考えております。経済は生き物でございますから、それぞれの局面でいろいろと現象的に動いていくと私は思うのでありますが、先般来私が非常に関心を持っておりますのは、OPECの値上げ、またイランの情勢、さらにまた土地が東京区部で少し上がり始めているというようなこと、また建設資材等もなかなか勢いがついてきているというようなことから、むしろそうした面から見ての思惑が起こってはならないということで、警戒体制を呼びかけたというわけでございます。お尋ねのように物価を抑えるということは非常に重要な課題でありますが、それだけではないので、ほかに同時に二つないし三つの問題を解決しなければならないということも考えておるわけでございます。
  55. 板川正吾

    板川委員 大臣、私が伺っておるのは、こういう物価の値上がり的な空気があって、最近の卸売物価、市況物価などを見ますと非常に上昇しているものですから、政府がこの予算で約束をいたしました五十四年度一・六%程度の値上がりでおさまるのか、またぜひこの程度までで抑えたいと思う、こういうことなのか、その辺の感触が実は聞きたいのであります。
  56. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 われわれの計画でぜひ今年は走っていきたいという決意でございます。
  57. 板川正吾

    板川委員 卸売物価の上昇は、私はとても一・六%でおさまりそうもない感じがするのですが、ただ卸売物価が上昇しますと、今度は消費者物価にも影響を与えてまいります。消費者物価は、五十四年度は前年より四・九%値上がりするだろう、こういう指標を経企庁は持っておられるわけでありますが、公共料金の値上がりというのをどのくらい見ておるかという予算委員会の質問に対して、大臣は大体一・五%程度の公共料金の値上がりで、物価上昇率はその程度と見ている、こう  いうような答弁があったと思うのでありますが、この一・五%程度値上がりするということについて、この上昇率の内容、これは大臣でなくてもいいです、物価担当者で結構ですから、事務当局でもいいですから、どのような公共料金がどう上がって一・五%程度になるのか、説明をしていただきたい。
  58. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 お答え申し上げます。  公共料金の中には、予算に織り込んだようなものにつきましては、私どもとしては事前に正確な数字を把握することができるわけでございます。しかし、民間の事業によります公共料金とか、地方団体によりますものにつきましては、物によりましては申請があって、それから査定をして決まっていくというものもありますし、一部地方公共料金等につきましては、地方団体限りのものもございますので、積算をして申し上げるということがなかなか困難なものがございます。  そこで、一・五%程度と申し上げますときに、予算関連で見ておりますもの、診察料とか国鉄運賃、米価、たばこというようなものにつきましては、これはわかるわけでございます。これについて〇・八%程度と見ております。それからその他につきましては、電気代、ガス代についての五十三年度下期の割引が終了いたしますので、その関係が年度平均で見ますと〇・一%ございます。それからその他のものにつきましては、先ほど申し上げましたように積算いたしかねますので、従来の傾向等から見た一応の目安を置きまして、〇・六程度ということにいたしまして、合計一・五%程度というのを、五十四年度の公共料金の見通しについての一つの目安としているわけでございます。
  59. 板川正吾

    板川委員 社会党で、昭和五十年の産業連関表をもとに試算したのがあるのです。政府のもこれと同じ産業連関表から試算されたと思うのですけれども、どうも内容が少し開き過ぎる。つじつまを合わせているのではないかという感じがするわけであります。たとえば米の場合には〇・一、国鉄も〇・一、健保料の値上がりが法律どおりということになりますと〇・三、たばこの値上がりが二〇%ですか、これが〇・三七、政府の資料では〇・三とか書いてありますが、これを合計いたしますと〇・八七、それに電気、ガスの値引きが四月から中止になりますから、もとの値段に上がりますと、これが〇・一八ということを社会党の試算では出しておるわけであります。そうしますと、さっき一%程度と言ったのが一・七という形になります。そのほか、私鉄の値上げが申請どおり許可されるとしますと〇・〇八、さらにタクシー代、バス代、ガソリン代、こういうものの値上げ等を見ますと、これが直接影響する分が一・六七になります。それで、一月から五%、四月からさらに三・幾つ%上がりますOPECの石油値上げ、これはもう完全実施されるわけでありますが、この値上げを〇・六一と社会党は試算している。ところが政府の方は、これは〇・三、こういうふうに勘定しているらしいのですが、この直接的な物価の値上がりと、この値上がりによって間接的に影響を受ける値上がりとを比較いたしますと、社会党の場合に二・七九、政府は間接的影響というのを考慮しないで一・五、こういうふうになってまいるわけでありますね。その辺に、同じ指数を口にしても、政府の指数とわれわれの方で試算する数字が大変違います。この点はまことに残念だと思うのですが、時間がありませんから先へ進みます。  政府は、五十三年度の消費者物価上昇率を平均四%、こういうふうに見ておるわけです。平均四%と見ておりますが、十二月までの実績は、すでに前年比上昇率というのははっきりしておりますから、四%という結論を出してあるならば、十二月以降一、二、三、この三カ月間で一体物価が幾ら上がれば平均四%になるのか。これはまあ一、二、三はそれぞれ若干違いますけれども、同じ値上がり率としますと、三月の値上がり率は、昭和五十年を一〇〇として物価指数がどのくらい上がるのだろうか。一、二、三の平均は、時間がないですから、めんどうくさいから言いますが、四・九というわけであります。四・九といいますと、三月の消費者物価の指数が一二七・一になり、それで来年一年間物価が上がらないとしても、すでに二・四%のげたができてしまうのですね。二・四%のげたを履いてしまうと、四・九といいますと、四・九から二・四を引きますと二・五%の値上がり余裕しかない。社会党の試算によると、すでに値上がり分だけ、公共料金、間接的な影響力を加えますと二・七九ということになって、どうも四・九%の消費者物価の値上がりというのは、とても守れそうもない感じがいたします。これは政府が五十三年度四%の値上がりということを前提に置いての話でありますが、来年度四・九%消費者物価の値上がりを守れるかどうか、この辺の感触を承りたい。
  60. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 ただいま御指摘になりましたように、年度平均四・〇%ということで五十三年度を見ました場合に、ただいまの状況で三月末が一二七・一という数字をお示しになりましたが、大体その辺じゃなかろうかと思います。  ただ、実際にはこの見通しを立てました時点では、十月、十一月の物価状況が明らかになっていた、それを前提にしてやったわけでありますが、その後、季節商品について異常に恵まれた状況にございまして、そちらの面で物価の方の上昇率がかなり低くなってきております。そういうことでございますので、ただいま出ております十二月の全国の物価とか一月の東京物価から見ますと、このまま三月まで推移いたしますれば、前年度比四・〇%といいますのは、これを少し下回るのではないか。したがって、おっしゃいましたげたにつきましても相当下回るというふうに私ども考えております。  それから、五十四年度の四・九%の問題は、物価は全体として経済の諸活動ということと密接に関連いたすものでございますので、経済見通しの一環として、各経済要素その他と整合性をとりつつ計算しているわけでございますが、そういうことで見ましたときには、生産とか雇用、さらには輸入物価、円レート、それから雇用者所得、そういうコスト面と、それから需要面としましては生産とか消費という需要の動向等を織り込みましてやっているわけでございまして、現在の段階では、円レートにつきましては当時見ましたときに比べまして多少円安になっておりますけれども、私どもは百九十円レートで見たわけでございます。それからOPECの値上げ等につきましては、一四・五%というのをそのまま織り込んでおります。  そういう上昇要因を織り込んで算定をいたしておるわけでございまして、物価環境についていろいろ変化がございますので、物価安定対策の面でそういうものに十分対応しながら、その達成に努めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  61. 板川正吾

    板川委員 五十四年度の物価を低位におさめてもらいたいということ、少なくともこの約束は四・九の消費者物価の範囲でおさめてもらいたい、こういう気持ちで言っておりますから、今後の動向を見てまいりたいと思います。  次に、主要経済指標を見まして実は感じるのですが、これはどういうことなのでしょうか。五十二年度から五十三年度の経済成長率が、七%を予想したのですけれども、七%になりそうもない。二兆五千億の追加投資を臨時国会で行ってみても、その結果として五十二年度対五十三年度の成長率は六%である。ことしは、その六%に対しまして六・三%である。ですから、実質的には五十三年度よりも五十四年度は〇・三%とにかく成長率を高めている、こういうことになるわけですね。  ところが、この主要経済指標を見ましても、民間最終消費支出が、五十二年度、五十三年度の比率が一〇九・六、五十三年度から五十四年度が一〇九・三で、〇・三%マイナスであります。それから民間住宅も一一二・六から一一一・二、これは一・四%のマイナスであります。民間企業設備もこれまた〇・七%マイナス、政府支出も六・五%マイナス。民間最終消費は全体の五七%を占め、政府支出は二〇・六%を占めておる。この民間在庫のところを除いて、四つのポイントで九八・七を占めているというのですね。この九八・七を占めているところが、いずれも五十二年度、三年度の伸び率よりも五十三、四が減っておるのに、〇・三%ことし伸びるということはどういう理屈なんでしょうか。この辺、ちょっとわかりませんので、伺います。
  62. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、名目の成長率をとりますと、五十三年度が一〇・六%、五十四年度が九・五%で、伸び率としては下がっております。それから実質の成長率は、逆に、五十三年度の六%から五十四年度六・三%と若干伸び率が上がっております。他方で卸売物価消費者物価ともに、先ほど議論がありましたように五十四年度は若干上がっているわけでございます。  それで、どうして実質の成長率がむしろ伸び率としては五十四年度上がるかということでございますが、国内需要だけをとりますと、名目の成長率が五十三年度一一・三から五十四年度一〇・二に下がりまして、物価が上がっておりますから、したがいまして実質の国内需要も八・二%という五十三年度の見通しから、五十四年度六・六%と──六・六%と申しますとGNPの伸びよりは高いわけですけれども、五十三年度に比べると伸び率が低くなるわけでございます。したがって、その差異はもっぱら海外経常余剰ということになるわけでございます。海外経常余剰のうち、輸出はGNPのプラスの項目でございますけれども、輸入が御存じのように控除項目でございます。したがいまして、五十三年度の場合には輸入のデフレーターと申しますか、輸入価格が非常に下がりまして、そのために実質の成長率を非常に足を引っ張るという形になっております。同じような傾向は五十四年度も続くわけですけれども、五十四年度は一応一ドル百九十円という前提にしておりますので、下がり方がそれほどではない。むしろデフレーターとしてとりますと、五十四年度は五%輸入が上がるという形になっておりまして、そのことが総合デフレーターが五十三年度の四・四から五十四年度は三に下がるというかっこうになっております。  実質と名目の伸び率の逆転というのはもっぱら海外経常余剰の点でございまして、その大部分の原因は一ドル百九十円と仮定しているということから生じております。
  63. 板川正吾

    板川委員 わかりました。  もう一点、政府は予算で雇用者所得の伸び率をどの程度に見ておりますかということと、五十四年度の雇用者一人平均の前年よりの伸び率をどの程度に見ておられるのか。これは事務当局で結構です。
  64. 宮崎勇

    ○宮崎(勇)政府委員 お答えいたします。  雇用者所得の総額でございますが、五十三年度が百十兆円、五十四年度が百十七兆七千億円で、伸び率は五十三年度、五十四年度とも七%でございます。雇用者数を五十三年度一%の伸び、同じく五十四年度一%の伸びと見ておりますので、一人当たり所得で見ますと五十三年度、五十四年度ともに大体六%程度でございます。
  65. 板川正吾

    板川委員 経企庁、終わります。  次に、時間の関係もありますから公取委員長にお伺いをいたします。  私の第一の質問は、改正独禁法です。改正独禁法が施行されて一年を経過しておるわけであります。この一年間改正独禁法を運営してきた結果、公取としてどのような見解をお持ちであろうか。改正独禁法の評価すべき点あるいはなお足りなかった点、あるいは将来こういう方向に独禁法の運用を考えていく、強化していこう、こういうような点があろうと思いますので、改正独禁法運用一年間、これはもちろん完全な評価をすべき段階ではないと思いますけれども、一年後の所感というものはどういうふうにお持ちであろうか、お伺いをいたします。
  66. 橋口收

    橋口政府委員 一昨年の改正独禁法は、三十年に一度と言われる強化の方角での改正でございまして、いまお話がございましたように、十二月二日に施行になりましてからようやく一年有余を経過したわけでございまして、まだ最終的な評価を下すという時期には立ち至ってないように考えておりますが、国際的にも高い評価を受けた改正法でございますから、この一年間順調な、また適正な施行のために、最善の努力を加えてまいったところでございます。  一年間を顧みての評価なり感想ということでございますが、結論から申し上げますと、おおむね順調に改正法は施行されつつあるという評価をいたしておるところでございまして、この改正法律に対する一般の理解や認識も、漸次深まってまいってきておりまして、一例を申し上げますと、違法カルテルの件数というものも減ってきております。また従来は、これは推測でございますが、あるいはテーブルの下で握手をしていたのではないかと思われるような件数につきましても、正式に不況カルテルの申請をするというような、業界のサイドからのビヘービアというものが具体的にあらわれてきております。  やや個別の点につきまして申し上げますと、カルテルに対する課徴金の制度でございますが、これは業務報告でも申し上げましたように、すでに五百万円程度の課徴金を追徴いたしておりますし、また現在計算をいたしておりますのでは、業界で数億円になる課徴金が、近く納付命令を出すような段取りになってきております。同時にまた、先ほど申し上げましたように、カルテルに対して課徴金制度があるという認識が深まってまいっておりますので、いわゆる価格カルテルの件数というものは減少してきておりますので、いわゆる抑止力の効果というものはかなり上がっているのではないかというふうに考えております。  それから独占的状態に対する措置の制度でございますが、これも法律規定の要件に該当しないように、企業のサイドでの賢明な行動というものがあらわれておるようでありまして、そうは申しましても私どもは法律をお預かりする立場でございますから、産業調査という新たな機構を設けまして、現在監視の体制をとっておるわけでございまして、必要な資料、データ等の徴求にも民間に御協力いただいておるところでございます。  それから価格の同調的引き上げに関する報告徴収の制度でございますが、先ほどの業務報告で申し上げましたように、二輪車につきまして値上げの理由等につきまして報告を徴求いたしておりますし、その他いろいろ同調的値上げの対象業種になっております業種につきまして値上げの動きが出ておりますが、これにつきましてもいわゆる牽制的な効果というものはかなり出ているような、そういう所感を持っております。  それから最後の点でございますが、いわゆる大規模会社の株式保有総額の制限制度でございますが、これも業務報告で申し上げましたように、一年間で減少すべき株式の総数につきましては、法律の規定内に入っておりますが、それ以外にも総合商社の株式の取得等の状況を達観いたしますと、やはり総額制限の制度の効果というものが出ておるように感じられるところでございまして、冒頭にも申し上げましたように、まだ全体としての評価をするにはいささか早いという感じはいたしますが、少なくともこの一年に関する限りは、順調かつ適正な施行が行われておりますし、また改正法の効果に対する評価というものも、国際的に見ても高いものがあるということにつきまして、確信を持っておるところでございます。
  67. 板川正吾

    板川委員 独禁法を改正された主要な点、課徴金の問題などはカルテルの抑止力として非常な効果を果たしつつあります、また同調的値上げについても報告を求めておる、商社などの株式の総量規制も比較的順調に行われております、金融機関の株式保有制限もこれまた行われておって、概して短期の間の所感だけれども、改正独禁法は非常な効果をあらわしておると思う、あるいは最近における物価が比較的安定しているのもある意味では改正独禁法の大きな役割りが果たされたからだろう、こういうふうに考えるわけでありますが、その後企業集団による株式の相互持ち合い制度の問題については、これは独禁法改正の際に決議した附帯決議に、その点について今後の問題として調査研究を進めてほしい、こういうことになっておると思いますが、その後この企業集団の株式の相互持ち合いによる一つの規制、相互規制といいますか、こういう問題に対してはどのような調査を進めておられますか。
  68. 橋口收

    橋口政府委員 株式の相互持ち合いの問題につきましては、いまお話がございましたように、改正法律の国会における審議の際に、附帯決議で将来課題としてちょうだいをいたしておるところでございまして、過去二回にわたりまして商社につきましては実態の調査をしたことがございますが、第三回の調査といたしまして、現在は六大企業集団の実態の調査というものを実施いたしておるわけでございまして、その中にはいろんな項目が入っておりますが、六大企業集団の中の、相互の株式の持ち合い制度につきましても、あるいは制度なり現状につきましても調査をいたしておるところでございまして、この結果は大体六月か七月ごろには明らかになるというふうに考えております。相互持ち合いの制度が乱用されますときは、御指摘のように企業間の支配または市場支配力が強くなるという問題がございますので、まず実態をよく調査いたしまして、それから措置を考えたいというふうに思っておるところでございます。  また親子会社の関係の株の持ち合いにつきましては、法制審議会の商法部会で御検討いただいておるようなことも承知いたしておりますが、しかしそれはそれといたしまして、企業集団の中の株の持ち合いがあるいは弊害を伴うかもしれない、そういう問題意識のもとに、現在実態の調査を進めておるところでございます。
  69. 板川正吾

    板川委員 次に、公取委員長に最近問題となっております著作物の再販問題についてお伺いをしたいと思います。  昨年の十月十二日の新聞報道によりますと、公取委員長は記者会見で、「小売店に定価を守らせる再販売価格維持制度を全廃する方向で検討を始めたことを明らかにした。当面、書籍とレコードの取引状況を対象に再販制度の弊害を調べた上で、最終的には独占禁止法改正をめざす考えである。」真偽はともかく、こういうようなことが当時発表をされまして、関係業界に、それぞれ意味は違うかもしれませんが、大きな反響を呼んでおるわけであります。  この書籍など著作物は、御承知のように独禁法二十四条の二によって法定再販となっております。この再販売価格維持契約制度が制定された根拠というのは、私どもは都会でも辺地でも同じ価格で本なり新聞なり、こういうものが買える。そのことはこの日本の国の文化の均等な発展に寄与するだろう。新聞やあるいは書籍が地区地区によって価格が違うというと、ある意味では都会が非常に有利になり、辺地が高い価格で買わざるを得ないということになるおそれがある、こういうことで、文化の均等な発展を期するという意味で再販制度というのが設けられたと思います。しかし、法律は、御承知のようにこれが一般消費者の利益を不当に害するおそれがある場合はこの限りでない、こういう規定もあることも承知をいたしておりますが、最近公取が著作物の再販制度を廃止するということ、この真意をひとつ公取委員長にお伺いをいたしたい、こう思います。
  70. 橋口收

    橋口政府委員 現下における独禁政策の重点として私どもが考えておりますのは、先ほど来申し上げております改正独禁法の施行を正しく行うということが第一点でございますし、それから第二点としまして、非製造業の分野が日本の産業構造の中で大きなウエートを占めてきておりますので、長期構造的な産業構造の変化を踏まえて、製造業の分野と非製造業の分野に対する独占禁止政策の適用について同じウエートでこれを扱う、非製造業の分野に対する行政の重点指向と申しますか、そういう考え方が第二点でございまして、第三点は国際化に対応するという問題でございます。  いまお話がございました書籍その他の出版物の問題でございますが、これは広い意味では製造業でございますか、しかし御指摘の中にございましたように文化財の製造業でございまして、したがって、いわゆる普通の消耗品とか商品の製造とは性格を異にしておる、そういう点に着目いたしまして、昭和二十八年に法定再販という制度が著作物に認められたというふうに理解をいたしておるところでございます。しかしながら、法定再販の制度ができましてから四分の一世紀を経過いたしまして、その間社会、経済、文化の状況等にも非常に大きな変化が生じてきておりますし、また出版物の製造、流通、販売につきまして、当該事業者あるいは関連事業者、一般消費者からいろいろな苦情が公取にも寄せられておるところでございまして、この二十五年間の変化と法定再販というものをどういうふうに突き合わして考える必要があるかということにつきまして、検討をいたしておるところでございまして、大衆社会の出現に伴いまして、いわゆる書籍というものも雑誌のウエートが高まり、大衆文化は同時に使い捨て文化と言われておりますように、かつての書籍と違ったような販売の形態も生じてきております。たとえば、薬局とかスーパーとかで一部の雑誌が売られているような状況もございますし、また量販店のシステムと同じように、量販店としての書籍の小売業というものも進出いたしてきております。なぜそういうふうになってきておるかということを総合的に考えますと、やはり出版物の製造、流通、小売のすべての分野につきまして全く問題がないわけではない、こういう認識を持っておるわけでありまして、したがって、非製造業の分野の中でも最大の課題であります流通問題の一環として、出版物の問題をとらえて検討いたしておるところでございまして、真意いかんということでございますが、少なくとも法定再販に関する限り、公正取引委員会がこれを廃止するという方針を決めたこともございませんし、しかし同時に、法定再販の制度は未来永劫これを維持するというふうに方針を決めたこともございません。目下のところ白紙で、まず出版物の製造、販売、小売の実態を調査したいということで、モニターについて調査等もすでに行っておりますが、さらに広範にそれぞれ出版物の版元、取次、小売店にもアンケート調査を実施をしたいというように考えておるわけでございまして、いま何らかの方針を確立してそのために施策を行う、そういう段取りはとっておりません。  それから、先ほど去年の十月の新聞報道についてお話がございましたが、その点を多少御説明申し上げますと、一般に書籍の小売業界に誤解がございまして、法定再販であるということで、末端の書籍の価格はこれを値引きすることが独占禁止法禁止されているというような誤解があるわけでございます。これは先生よく御承知のように、版元なり取次業者と小売店との間の契約でございまして、その三者の間では再販価格維持契約を結んでも差し支えないということでありまして、しかしその結んだ小売業者が、出版元とかあるいは取次との関係等がございますけれども、消費者に対する関係におきまして値引きをすることを、独占禁止法禁止はいたしておらないわけでありますから、そういうことについての蒙を開くという意味で言ったわけでございまして、それが大変大きく取り上げられたわけでございますが、事を始めるに当たりましての、言葉が適当かどうかわかりませんが、私たちは照明弾を打ち上げたわけであります。相手方の地形、地物を知る必要もございますし、また照明弾の上げ方が適当であったかどうかわかりませんが、同時にこちらの姿というものも余りにも鮮明に浮かび出たということで、多少の反省はいたしておりますが、しかし基本的には、方針を決めて施策を進めるというような態度をとっておるところではございません。
  71. 板川正吾

    板川委員 照明弾の輝きが余り強過ぎてびっくりした人もあるんだろうと思うのですが、公取委員長は、いま再販制度を廃止するとかそういう決定をしたという意味ではない、しかし問題があるように思われるので内情についてなお調査をし、検討したいということのようでありますが、その限りにおいてはその新聞の報道はやや行き過ぎた表現になっておった、真意を必ずしもあらわしてなかったというように思われますが、この出版物の流通問題で問題だと思われるところ、どういう点が問題だと指摘すべきところなんでしょうか。
  72. 橋口收

    橋口政府委員 まだ正式にアンケート調査をいたしておりませんから断定的なことは申し上げにくいのでございますが、私どもが断片的に承知いたしておりますところを申し上げますと、たとえば版元のサイドで申しますと、出版をしたいと思いましても、取次で扱ってもらえないということになりますと、実際上出版ができないということがあるわけでございまして、百社ほど取次店があるようでございますが、実際に上位二社が七〇%近くの占拠率を持っておるわけでございますから、したがって、上位二社の取り次ぎをしてもらえない以上は、現実に本が出せないという流通寡占の問題があるようでございます。  それから、そういう流通形態と関連をいたすのかと思いますが、たとえば版元と取次との間の取引条件、決済条件が、大出版社と中小出版社との間で違うということが伝えられております。これもよく調べてみないとわからないところでございますが、仮にそういうことがあるとしますと、強者の経済的地位の乱用行為があるのではないかという問題があるのではないかというふうに思っております。  それから小売の関係でございますが、小売の関係は一般消費者からしばしば苦情が来ておるところでございますが、先生よく御承知のように、いまの小売店というのはいわばショーウインドーでございまして、単にあるスペースに本を並べるという事業にすぎないというふうに申し上げても過言ではないわけでございまして、一般消費者が欲しい本を書店に求めましても一向に手に入らない、しかも書店に相談に行っても相談に乗ってくれないというような問題があるわけでございます。そうなりますと、いわゆる量販店としての資本力のあるものが小売業界を制覇するという問題もあるわけでございまして、したがって、いま概要を申し上げたのでございますが、出版それから流通、小売、すべての点において過去二十数年間の時間の経過というものが、ある種の批判をしているのではないかというふうに思うわけでございまして、そのもとにはいわゆる日本の特殊な制度としての委託販売という制度がございます。本来委託販売というものは、試作品とか見本とか、そういうものについて委託販売という制度が活用されるにもかかわらず、事出版物に関してはすべてが委託販売という制度でありまして、委託販売は、言いかえますと全部製造業者が責任を持つという制度であります。そういう制度が法定再販と表裏をなして、いわゆる返本の問題、返本率も逐年上がってきております。返本されたものが、全部とは申しませんが、裁断され、処分される。そこに資源の浪費があるという指摘もございます。  それやこれやいろいろ問題があるわけでございますから、どこに一番問題があるかと言われて、ここだということではなくて、すべてに問題があるのではないか、こういう考え方を持っておるところでございます。
  73. 板川正吾

    板川委員 流通の段階で流通寡占と言われる日販、東販ですか、これ二社が八〇%を取次店として独占をしておって、この中で一つの流通寡占的な弊害が生じているかもしらぬ、あるいは返本などによって資源が浪費をされておるおそれもあるかもしらぬ。いずれにしましてもそういう問題意識を持ちながら十分調査をし、そして調査をした結果必要な措置をとりたい、こういうことのようでありますが、再販問題は、前回の独禁法の改正の場合にも比較的論議がなかった。その前に化粧品の再販問題がありまして一段落をした後であったものですから、その後の再販問題について当委員会でも余り問題意識を持ってなかったわけであります。法律改正ということになれば、当委員会における問題の意識、取り上げ、そういう中から機が熟してやるべきであって、突然照明弾的にアドバルーンを上げてみるということを公取委員長がやったものですから、公取委員長の意図を飛び越えて驚いておるところもあるんだろうと思います。ましてこの法律改正ということになれば、当委員会で十分論議を尽くし、そういう中で自然に、現在の流通機構を改正すべき点があれば改正し、しかしそれでもだめだという場合に法改正ということになるだろう、こう思います。そういう前段の手続を省略して直ちに法改正、こういうふうなアドバルーンが上がったために、実は非常な誤解と混乱が関係業界にあるだろうと思います。  出版物の流通問題では、これは私、素人流の考えですが、一たん返本されたものを、大変な数を裁断をし、ごみにしておるそうでありますから、それをいわば第二流通市場といいますか、たとえばデパートの安売り市場みたいに、一たん返本されたものは特売場みたいな、本屋のすみのコーナーに置いて、これは特売の本だということで安く売るという方法などもあってもいいんじゃないだろうか。とにかく法改正の前にいろいろ改善すべきものを改善し、しかしそれでも一般消費者の利益を害するということが明らかになった上で法改正という段階になるだろう、こう思いますので、この点ひとつ今後の課題として、われわれも勉強していきたいと思いますが、最後に公取委員長から一言御意見を承りたい。
  74. 橋口收

    橋口政府委員 現行法制の範囲内でも改善、是正すべき余地が全くないかと申しますと、そうではないわけでございまして、板川先生がおっしゃいましたように、一般消費者の利益を不当に害する場合はもちろんいけないわけでございますが、そのほかに取次の段階で、再販契約をする場合にはメーカー、つまり版元の意思に反してはいけないという規定があるわけでございます。ところが現状を見ますと、これも断定的なことは申し上げられませんが、取次に対して出版元が取り次ぎを依頼する場合には、再販契約をしなければ取り次ぎをしてもらえないということでありまして、版元によりましては、自分は再販制度によらないで値引きしても差し支えない形態で本を出版したいと思いましても、現実問題では取次のところでそれが再販制度に組み込まれてしまうという問題もございます。したがいまして、いまおっしゃいましたように、そういう取次との間に出版元の意に反して再販契約が締結されております場合には、これは法律違反の問題が生じてまいるわけでございますし、またそういう制度がございますと、実際に返本されたものを安売りしたいと思っても安売りはできない。したがって、諸外国のように第二市場が日本では育たない仕組みになっておるわけでございます。よく御承知のように、諸外国も、かつては書籍について再販制度をやっておりましたスウェーデンも廃止をいたしておりますし、日本と同じような制度を持っておるのは西独と日本ぐらいということでございます。それ以外の国におきましては、大体において安売りの制度あるいは第二市場の制度が生まれてきておるわけでございますし、また安売りの市場と申しましても恒常的な市場ではなくて、ある一定期間安売りをするというような制度もイギリスとかアメリカにはあるようでございます。したがいまして、消費者ができるだけ安い本を、いっでも欲するときに入手できるような制度にしたいというのが私の念願でございまして、日本のように新本屋か古本屋しかない、その二種類しかないという制度は、やはり消費者の期待には十分こたえていないのではないかと思うわけでございまして、当面の措置といたしましては、法律の運用の問題として相当程度のことができるのではないか。それを試みた上で、どうしても法定再販が支障になるということであれば、そのとき法律改正お願いするということでございまして、一定の時間を切るとか、方針を決めて施策推進するというような性格のものではない。とりあえずは法律の運用で相当程度の改善ができるのではないか、こういう考え方のもとに施策を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございまして、いわゆる第二市場的なものの生まれることは心から熱望しておるところでございます。
  75. 板川正吾

    板川委員 終わります。
  76. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 岡本富夫君。
  77. 岡本富夫

    岡本委員 最初に私が経済企画庁長官、それから通産大臣にお聞きしたいのは、この六月に予定されておるところの東京サミットへの腹構えについて、お聞きをいたしたいと思うのです。  そこで、昨年ボンにおけるところの先進国会議でいろいろ約束を日本がしてきたけれども、結局それができなかったということで、アメリカの方から日本に対して非常に厳しい批判があるというようなことでありますが、これについていま情報はどうなっておるのか、ひとつお聞きしたいと思うのです。
  78. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 サミットの問題は、三月に各国との間で種々議題その他について打ち合わせをいたしますが、通産大臣からお答え申し上げた方が適切だと思います。
  79. 江崎真澄

    江崎国務大臣 サミットは、御承知のように世界経済の安定的拡大のために、主要国の首脳が胸襟を開いて語り合う国際協調の場であります。したがって、私ども主催国としては、その成功に多大の期待を寄せておるところであります。  今度開かれる東京大会のテーマでありまするが、これは前回のボン・サミットでも議題になりましたいわゆる五項目、経済成長エネルギーの問題、貿易、南北問題、それから国際通貨の今後の問題等々、いずれも現在の世界経済の主要な問題であります。したがって、これらは同じように東京サミットにおいても議論されるであろうというふうに思います。それから、特にイランの情勢が長期化する傾向にありますることから、五月にはIEAの閣僚理事会が予定されておりまするので、その結果を踏まえて東京サミットにおいてもこれらについての議論が展開されるであろう。先ほどお示しになりました、わが国が実質経済成長率を下方修正したという問題につきましては、サミット開会までにやはりアメリカ側とは特に緊密な連携を保って、これは外交段階なりあるいは経済担当大臣間なりで詳細に説明をすれば、十分理解を得るものではなかろうかというふうに思っておるところであります。  東京サミットを何とかして成功裡に開くことができるように、今後とも積極的に努力をしてまいるつもりでございます。
  80. 岡本富夫

    岡本委員 われわれも東京サミットの成功については期待をいたしておるわけですけれども、新聞情報によると、五十三年度の日米貿易のバランスが約束したようになっていないということで、非常に厳しい見方によっておるという、何かカーター大統領から特別の親書が来ておるのじゃないかというような報道もあるわけですけれども、これは外務省どうですか。
  81. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 質問者にちょっと御了解得たいのですが、あなたのきょうの質問の予定については、外務省からは中近東アフリカ局長を呼んであるので、いまのあなたの御質問は……
  82. 岡本富夫

    岡本委員 結構です。
  83. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 それじゃ、通産大臣から。
  84. 江崎真澄

    江崎国務大臣 現在日米両国間に特に貿易上の不均衡がある、対日不満がアメリカ側において非常に強い、これは私どももよく伝え聞いております。特にいま安川特使がアメリカに参っておりまするので、外務省には刻々連絡があるようでありまするが、この帰国を待ちましてアメリカ側の情勢を詳細キャッチしますと同時に、われわれとしては誠意を持って対応をしなければならぬというふうに考えます。  これまでわが国としては、アメリカを初めとする諸外国と協調しながら、世界経済の安定的拡大に何とかして資そうということで、内需拡大に努めてまいりました。御承知のようにことしの下方修正の問題も、これは午前中もちょっと触れましたが、言ってみれば、ストラウス・牛場会談において、ドルの価格は当然安定的に継続しなければならぬというにもかかわらずドルが安くなり、たとえば去年の七月のごときは二百円を割り、九月には百八十円を割るといったような異常な円高を現出した。これによって貿易はスローダウンしたわけでありまするが、わが国全体の景気にはかげりを見せた。それから、ストラウスさんが日本側に対して特に要求をされた製品輸入の増高、五十二年度の場合製品輸入は約二〇%程度と言われておったのでありまするが、これが恐らくことしの年度末には三〇%近くなるのではなかろうか。先ごろわれわれ日本側からは買い付けミッションをアメリカに出すとか、あるいは輸出の窓口であったジェトロを輸入の窓口にもするとか、経済四団体が、御承知のとおり池袋の近傍のビルに、ワールド・インポート・マートという輸入の窓口を、わが国経済界の努力によって施設するとか、あるいは向こう側からの売り込みミッションを迎えるとか、重ね重ねの輸入努力、こういったことはよく説明をすれば、アメリカ側の理解を得ることもできるのではなかろうかというふうに私は考えております。  特に対米輸入の一九七八年、すなわち五十三年度の四半期ごとの対前年同期の増加率を見ますると、第三・四半期においては二八%増、第四・四半期においては四三%増です。わけてもこのうちで製品輸入のみに限ってこれを比較してみますると、第三・四半期には三〇%増、第四・四半期には五二%増という大変な伸びを示しておるわけであります。しかもこの内需を喚起するためには、御承知のように五十三年度の場合は三七・六%というような大幅な公債に依存をしながら内需喚起を図り、またこれら製品輸入を消化するというような挙にも出ておるわけでありまして、十分話し合いをすれば、アメリカ側においても理解されるものというふうに期待するものであります。
  85. 岡本富夫

    岡本委員 そこで、一番問題は五十三年七月のボンにおける約束、ここで七%成長というものを約束しておるわけですね。これは前に福田さんは約束したのではないと言ったけれども、河本通産大臣は約束したのだというような答弁が出ておりました。これはどっちなのですか。約束したのですか、しなかったのですか。
  86. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは各国とも約束といいますか、一つの国際間のターゲット、努力目標としてこの程度はひとつやりましょう、こういうわけですから、積極的な約束というほどの意味はありませんが、国としての国際間の目標明示である以上、それにできるだけ近づけるということは当然の責務だというふうに思います。しかし、あらゆる努力を重ねてきて、しかも先ほど申し上げましたように下方修正しなければならぬ理由というものが、これはアメリカとの間の、たとえばIMF体制の基軸通貨であるドルの権威を守ってもらうということが、アメリカ側へのわが国要請であり、これはアメリカ側も引き受けておってくれたところであります。それが一転、早くも七月ごろから二百円割れというような不当な円高を誘ったことであったり、あるいはまたアメリカ側の期待にこたえて製品輸入という努力であったり、そういうことがデフレ効果をもたらして、わが国の生産の足を引っ張ったということなどなどということになれば、この努力についてはアメリカを初め諸外国も評価してくれるのではないか、その実情をよく理解されるように訴えることが大切なことだ、その一環として安川さんが特派大使の形で現在アメリカを訪問しておるというわけであります。この理解を得るためには、なお今後とも努力を重ねる必要があろうというふうに私思います。
  87. 岡本富夫

    岡本委員 そこで、報道によると、福田前総理に特使に行ってもらう、それから江崎通産大臣、小坂経企庁長官にも特使に行ってもらうというような報道が出ておるわけですか、お二人の腹構えはいかがですか。
  88. 江崎真澄

    江崎国務大臣 実は私もまだ新聞で見た程度でございまして、正式の議には上っておりません。しかし、いまもお答えいたしましたように、安川特派大使が戻ってまいりました状況いかんによっては、これは外務大臣を初め、われわれ経済担当閣僚が出かけて、理解を求むるということもあり得るかというふうに思いますが、現在ではまだ具体的な話題には上っておりません。
  89. 岡本富夫

    岡本委員 小坂さんも同じですね。
  90. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 対米関係は、大変にむずかしい問題が山のようにあると思います。特にアメリカ側では個別的な商品についての日本の関税のあり方とか輸入態度とか、そうしたような問題について相当突っ込んだ意見を持っておるようでありますし、もう一つは、アメリカの議会側が、日本の今日までのいろいろな努力に対しての評価をまだ十分してくれないと申しましょうか、理解か足りないような面もあるように聞いております。したがいまして、こうした問題全般を踏まえて、この問題につきましては、われわれ経済関係閣僚で慎重に話し合いをしながら対応策を進めたい、そのように考えております。
  91. 岡本富夫

    岡本委員 そこで、安川特使ですかの話を総合すると、カーター大統領は出席しないのじゃないかというような、非常に厳しい見方があるわけですね。それについて、東京ラウンドの終結といいますか、この約束が日米間でまだ合意に達していない、ここに問題が一つあるのではないか、こういうように考えられるのです。  これは事務当局でも結構ですが、東京ラウンドにおける日米合意になお未解決の問題があったのですが、この問題について、どこまで進み、どうなっておるのか、報告してもらいたい。
  92. 宮本四郎

    ○宮本(四)政府委員 ただいまお尋ねの東京ラウンドの状況でございますが、御案内のように東京ラウンドは、アメリカと日本とEC、この三つの国がお互いに相談をして、実質的な話し合いをつけるために討議中であるわけでございます。昨年の暮れに、十二月でございますが、日本とアメリカとの間では大体の話がつきまして、その後精力的にアメリカとEC、それから日本とECということでお互いの話をつけようといたしましたが、今日時点におきましてまだ決着がついておりません。これは御案内のように関税の問題と、それから関税以外の、コード類と私ども言っておりますが、規約でございます。ガットが新しくつくるところの規約でございますが、これをめぐりまして幾つかの争点がある。関税は別といたしまして、規約の中で一番大きな問題はいわゆるセーフガードコードというものでございます。いままでガット十九条で、無差別に輸入国が自国の産業保護のために輸入障壁を設けることができるわけでございますが、今回EC側が特に強く主張いたしておりますのは相手の国を差別いたしまして、特定の国に対してそういう輸入障壁を設けることができるようにしたい、こういう考えでございまして、これはなかなかの大ごとでございまして、日本は当然いろいろ言い分がございますし、アメリカの方もございまして、なかなか話がむずかしくなって、まとまっておらぬわけでございます。精力的にこれらの問題を詰めまして、三月、場合によりましては四月には何とか妥結に持ち込みたい、現在一生懸命努力中でございます。
  93. 岡本富夫

    岡本委員 そこで、昨年のボンのサミット会議におけるところの共同宣言、先ほど通産大臣からお聞きすると、大体同じような、それにプラス・イランの問題ということになりますけれども、そうすると、日本としても五十四年度も輸出自主措置といいますか、自粛措置といいますか、こういうものをとるということなのか。  またもう一点は、大体横ばい、すなわち輸出が十九兆円で輸入が七%増で十六兆一千億円というぐらいになりますと、経常収支が七十五億ドルの黒字、そういうことになりますと、その中で、五十三年も緊急輸入物資をやりましたけれども、五十四年もそういった緊急なものをやるのか、大体二十億ドルくらいだろうと思うのですが、その中身は大体どういうものを考えていらっしゃるのか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  94. 江崎真澄

    江崎国務大臣 緊急輸入というのはもともと臨時異例の措置でありまするが、五十四年度も引き続きやらなければならないであろう、大体二十億ドル程度のものをいま予定いたしております。中身は、濃縮ウランの手当て、それから航空機のリース、非鉄金属の購入、こういったものに充てられるわけであります。  五十三年度の場合は四十億ドルを気構えまして、十二月末で二十億ドル程度はすでに成約を得ておりますが、その後の推移で、大体年度内にはあと十億ドル程度は緊急輸入が可能であろうと言われておる次第であります。  もし詳しいことが必要であれば、事務当局からお答えさせます。
  95. 岡本富夫

    岡本委員 そこで、私はこの前まで科学の委員長をやっておったのですが、濃縮ウランの輸入の問題ですが、これだけ電力会社が、何といいますか、原子力のいまの設備はずいぶんおくれておるわけですが、こういうことで、それだけの輸入品を必要とするのか、あるいはまた拒否するのではないか、こういうことも考えられるのですよ。この点は自信がございますか。
  96. 江崎真澄

    江崎国務大臣 電力会社は従来とも非常に協力的でありまして、通産省としてもその協力は多としておるわけであります。濃縮ウランの買い入れについても、もちろんこれは輸銀手当てなどなどしなければなりませんが、大体確実なものを積算の基礎に置いて、これは内閣で経済閣僚、大蔵、経企長官なども立ち会いの上で了解もしておる数字でありますので、これが否定されるということは万ないというふうに思っておりまするが、もとよりこれは今後のために用意をする物資でありまするので、われわれ担当者としては粘り強く要請をして、実現を図るという責任は当然あるというふうに考えております。
  97. 岡本富夫

    岡本委員 そこで、この東京サミットに日本の味方といいますか、豪州あたりが来ると非常に味方になるのではないかということですが、これの参加をしてもらう方が日本に対しては有利ではないか、こう考えるのですが、通産大臣はどういうように考えますか、またそういう提案をなさる考えはありませんか。
  98. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いっときこれは話題になったようでありまするが、これは日本が要望したからといって、先進国首脳会議に集まる諸国の理解がなければ実現しない問題でありまするので、今後とも外交ルートにおいて必要に応じてそういう要請をすることはあろうかと思いまするが、現段階ではなかなかむずかしかろうというふうに聞いておるところであります。
  99. 岡本富夫

    岡本委員 話があっちこっち飛びましてあれですが、そこで大体日本は資源がありませんから、資源を買ってきて、ここで加工して輸出していくというような、加工貿易国ですから、経常収支が黒字になるというのは当然であるけれども、これをいかに還元するかということが問題であります。  そこで、新聞のあれを見ますと、経常収支では相当な、これはどの新聞でしたか、五十三年度で経常収支が二兆七千億ですか、貿易収支が四兆三千億、それから輸出が十九兆三千億、輸入が十五兆、長期資本収支、これが三兆円ですか、この中で経済協力、それからもう一つ大事なのが海外投資だと思うのです。今後、やはり日本がこういった経常収支ではなかなか赤字にならないけれども、基礎収支では何とか赤字にして、話をつけようというような考えでおるのではないかと思うのですが、海外投資をやはり積極的にやっていかなければならないのではないか、私はこういうように考えるのですが、通産省の考え方はいかがですか。
  100. 江崎真澄

    江崎国務大臣 海外投資をどう拡充するか、これはやはり非常に大事な点でありまして、今後とも海外投資をする、そして海外の雇用にもわが国が貢献をするということは非常に望ましいことであるというふうに思います。ぜひ進めたいと考えております。
  101. 岡本富夫

    岡本委員 ところが、日本の海外投資について、一つは先ほど話がありましたイランの情勢がありますけれども、このイラン情勢は後でもう一度聞くことにいたしまして、私たちが当委員会で輸出保険、こういうものを審議したことがありましたけれども、輸出保険が、あれは二十六年でしたかにできまして、その後、五十年でしたか、若干改正をしておるわけです。今度、三井グループがイランにおいて石油化学のプロジェクトの海外投資をしておるわけですが、この輸出保険の発動をすると、いま輸出保険法の準備金が一千億円余りですね、これが全部なくなってしまう。どんどんなくなってしまうのではないかということも言われておりますけれども、それはそれとして、この輸出保険が当時と違いまして現代の日本では貧弱である、こういうような声が出ておるわけですが、このことについて通産省はどういうように考えておるのか、ひとつお聞きしたい。
  102. 江崎真澄

    江崎国務大臣 イランの問題は、まだ輸出保険をどうするかという段階ではない。むしろ八〇%プラントを完成というか、八〇%工事が進捗したプラントを、ぜひ完成させたいという熱意で進めておる。その誠意をイラン側の新しい政権周辺も評価しておるがごとき情報がわが国に入ってきておる、大変結構なことだと思います。  そこで、この輸出保険をどう今後運営していくかという問題は、政府としても輸出保険法の改正を逐次行ってきております。最近では昭和四十九年に為替変動保険、昭和五十二年には輸出保証保険、あのボンド保険を創設したことは御承知のとおりであります。したがって、今後も輸出保険についての保険利用者の要望、それから対外取引の実態の変化、こういったものに即応して、必要があるというふうに考えられる場合には、適宜措置をとっていくということが望ましいと考えます。
  103. 岡本富夫

    岡本委員 ちょうどいまイランが体制が変わって、そうして若干共産主義国に移行するんではないかとも言われておりますけれども、そうすると、その国に収用されてしまうわけですね。これを人呼んで「しのびよる収用」、こう言うわけですが、徐々に、少しずつ少しずつ収用されてしまう。これに対する保険かいまの海外の投資には掛けられなくなっておるわけですね。そういう保険はないわけです。こういう改正が必要ではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  104. 江崎真澄

    江崎国務大臣 イランの場合は、私どもはいま収用されるというふうには考えておりません。これは、今朝閣議において外務大臣が私どもへ報告されたことによりましても、君は何国人か、他の国の名称は差し控えますが、そういう誰何が警備員からある、そういう場合に、日本人であると言うと比較的緩やかな応対をしてくれるという報告を受けておる。このことは、新しい政権ができてもやはり石油化学プラントというものはイランを潤すものである、大切なプラントであるという評価に立っておることではなかろうか、こういう報告でありました。これは一つの明るい情報として私どもも聞いたところでありまして、われわれとしては、誠心誠意先方と共同して、イランにおける例の三井化学プラントを完成させる努力を今後とも続けていくことが、わが国企業としてもとるべき態度であろうというふうに考えております。
  105. 岡本富夫

    岡本委員 イランの問題はいままだ未知数でありますから、まあその例を挙げただけでありますが、そのほかの国、すなわち発展途上国において、これは名前を挙げては余りよくないのですが、ナイジェリア、こういう一つの姿を見ますと、出資率をどんどん少なくさせていく、それから役員の構成も。それで最後には経営権もと、こういうように徐々にせっかく海外投資をしたものが向こうの国に収用されてしまう。こういった場合の輸出保険は保険の掛けようがいまないのですよ。したがって、そういうところに投資をしようという意欲が非常に少ない。ここに現在の一つの盲点というか欠点といいますか、先ほど通産大臣はその情勢に合わして輸出保険も改正していきたい、こういうことでありますが、この点、事務当局でだれかわかっておる人があれば答弁してもらいたい。
  106. 水野上晃章

    ○水野上政府委員 ただいま先生のお話は、いわゆる「しのびよる収用」といいますか、公権力をあからさまに用いないで、関税を上げましたり、あるいは役員の派遣をいろいろ変えましたり、あるいは原材料手当て等で陰でいろいろなことをした結果、知らぬ間に経営権が移る、あるいは役員構成が変わるというふうなことに関してのお話であろうかと思うわけでございますが、まず公権力によらない場合に、これが企業が当然負担すべきリスクであるのか、あるいは保険でカバーすべきリスクであるのか、その付近いろいろとむずかしい問題がございまして、私どもただいまいろいろ勉強しておる最中でございますけれども、必要があれば、また輸出保険制度の改正なり運用なりということを、今後将来に向かって検討してまいりたいと思っておるところでございます。
  107. 岡本富夫

    岡本委員 もう一点、改正を必要とするのが債務保証に対する保険です。日本から海外に進出した、そして合弁でやった会社がどこか銀行から借り入れをする、そういう場合、当然この保証は、親企業である国内の企業に対して債務保証を言ってくるわけですね。万一というときには払わなければならぬことになる。したがって、これもやはり進出企業の海外投資をするための大きなガンになっておるということですから、こういった債務保証に対する保険を掛ける、こういう制度もひとつ考えてもらいたいわけですが、これはいかがですか。
  108. 水野上晃章

    ○水野上政府委員 御指摘のとおり、ただいまの保険制度では、長期の貸し付けをいたしました場合には海外投資保険というのは掛かることになっておりますけれども、保証につきましては掛かる形になっておりません。したがいまして、これにつきましても現在どういう形で保証を客観的に確認をいたしまして、そういうことを国の保険で見ることが妥当かどうかということについて検討しておるところでございます。
  109. 岡本富夫

    岡本委員 それで、国の保険で、現在の保険じゃなくして、それに対しての保険料を掛けるわけですからね。それに対して保険料を掛げる、こういうことですから、保険料を掛けることができるような、そういうふうに改正すればいいわけですから、ひとつその点も要望いたしておきます。  なお、いまあなたのお話がありました、長期貸し出しに対する保険を掛けることができるようになっておりますけれども、仮に十年間の保険を掛けてあった、ところが三年目に事件が起きた、その場合、あとの七年間の分の金利をあなたの方が引くようになっておるのですね、これは。そうなっておりませんか、約款は。これは一遍ひとつ説明を願いたいと思うのです。保険約款の四条、二十条一項と二項ですね。これをひとつ……。
  110. 水野上晃章

    ○水野上政府委員 ただいまお話しの、長期にわたりまして回収することになっておりました投資あるいは融資のお金が、たとえば先ほど御指摘ございました三年目で事故になりました場合には、普通でございますと当然そのデューデート、残りの七年間の支払い日の参りましたときに、その実損に応じて支払っていくというのがたてまえでございます。したがいまして、それを先にさかのぼりまして三年目に全額払うといたしますと、それに見合って金利分を差し引くということになっておるわけでございます。
  111. 岡本富夫

    岡本委員 普通大体保険を掛けますと、事故があるとその保険はその場で、十年間なら十年間の約束がありましても、その分は先に保険料を払っておるわけですから、事故があったらその掛けた保険料に応じて十億円なら十億円の保険が返ってくる、これが普通でありまして、あなたの、あとの七年間の金利を差し引いてしまうというこの点がどうも納得がいかないわけですよ。
  112. 水野上晃章

    ○水野上政府委員 ただいまのお話は、たとえば先ほどのお話でございますと、十年間にわたりまして元本と利子を均等に、たとえば一億ドルなら一億ドルずつ、その中にはもちろん利子も入っておるわけでございますけれども、それを当初の予定どおり、デューデートが参りました日々に毎年払ってまいるのでございましたら、元本、利子そろえまして実損に見合って払っていくということでございます。ところが、先ほどの御指摘のように、三年目に前払いをするわけでございますので、その場合には当然利子分は差し引くことになろうかと思います。
  113. 岡本富夫

    岡本委員 十年の契約、要するに十年という契約をした場合ですね、十年の間の保険のその間に事故があったら払いますと、それ以上はだめですからね、そういうことになっておるんじゃないですか、これは。
  114. 水野上晃章

    ○水野上政府委員 保険事故といいますのは、当初期待をいたしました収入あるいは受け取り額に比べまして、それが入ってこないということに対する事故でございます。したがいまして、当初の予定が、十年間にわたりまして毎年均等に元利を返すということでございましたら、その毎年の均等支払い日に、実損に応じた割合だけの保険金をもらっていくということで十分であろうかと思います。
  115. 岡本富夫

    岡本委員 どうもぼくは、これは後でもう一遍ひとつ詳しく説明を願いたいと思うのです。たとえば十億円なら十億円分の保険を掛けて、それで十年間の約束だったけれども三年目に事故があったら、これはもうその保険金は七年間の利子を引かずにもらうのがあたりまえだと私は思うのですがね。これはまた後でひとつ詳しくお聞きしたいと思います。  そこで、時間がありませんから、もう一つ、保険の認定審査会、この認定するところの審査一つの課でやっているわけですね、あなたの方の保険何課というのですか。大体認定をするのは、一つの第三者機関といいますか、そういったものがあって、払う方といただく方との中間に入って、これならこれが正しいんだというようにして認定していくのが普通なんです。ところが、通産大臣が長になっておるのか知りませんが、このメンバーの中に保険を掛ける方のメンバーが入っていない。ただ国の一方的な考え方によって、それでもうあなたのところはこれだけだと握ってしまう。この点がどうも私は納得ができない。大臣この点についてどうお考えになりますか。
  116. 江崎真澄

    江崎国務大臣 ちょっと事務的にお答えをさせたいと思います。
  117. 水野上晃章

    ○水野上政府委員 普通の代金保険でございますと、もちろん金額がはっきりしておりますから、それが受け取れないということで額がはっきりしておるわけでございますが、普通輸出保険等になりますと、実際に実損が幾らあるかということを査定をする必要がございます。それで、先ほど先生がおっしゃいました査定委員会のようなものが必要なわけでございますけれども、その査定委員会には、実際にそういう機械をつくっておる専門家の方を任命しておりまして、ですから、受益者の方が必ずしも入っておるという形にはなっていない場合もあろうかと思います。
  118. 岡本富夫

    岡本委員 どうもこの法律をつくったときの精神、あるいは私たちが前に審議したときの精神は、海外投資をする企業に対して保証してあげるんだというような、若干天下り的な、こういう考えの保険のようであったと思うのです。あなたの方へ聞きましても、そこまで国が見る必要はありませんよと。どうもいまのお答えと若干そのニュアンスが違う。私は、その当時とはずいぶん状況が変わってきておると思うのです。ですから、そういった海外投資をしようとする企業が安心してどんどん投資をして、そして日本と諸外国とがうまくいくという起爆剤にもなるわけですから、こういった面を考えますと、その前のニュアンスとずいぶん変わってこなければならぬ。その点をひとつお考えをいただいて、先ほどから二点、三点、私指摘いたしましたけれども、この輸出保険の改正をひとつ早急に検討していただいて、海外投資の促進ができるように、そしていつまでたっても東京サミット、こういうようなことで、日本があらゆる面から締められておるというようなことのないようにしなければならぬ、こういうように考えるのですが、通産大臣、いかがですか。
  119. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御指摘の点は重要な問題だというふうに私も思います。現在海外投資を国としても奨励をしよう、こういう立場に立っておりますね。そこで企業がリスクをしようというだけでは、企業としてももともとが営利事業ですから、なかなか海外進出がしにくい。その国の政局の安定度はいろいろな情報で判断するわけでありましょうが、ただ政府機関が物を言うということは外交上もいろいろむずかしいですね。そんなことから、アメリカなどでは、その国の政治の安定度だとか経済の実勢であるとか、そういったものを民間の研究機関が十分検討をして、投資家のために相談に乗っておるということを聞いておるわけでありまするが、わが国としても今後そういった研究が民間単位で相当広くなされることは望ましいことだと私思うのです。そしてまた、これに伴って企業の海外進出を奨励していく以上は、実情に合った形にこれらの保証制度、保険制度が対応しなければなりません。御趣旨を参考としながら、今後検討をしてまいりたいというふうに考えます。
  120. 岡本富夫

    岡本委員 この問題について、要するに海外投資の活動の推進、これについてはUNCTAD、すなわち国連貿易開発会議ですね、ここの懸案事項にもなっておるわけです。これは外務省、答えられませんか。言ってなかったですか。──来ていますね。二国間の投資保証協定について、日本と諸外国で、わかっておればひとつここで報告してもらいたい。
  121. 木島輝夫

    ○木島説明員 お答え申し上げます。  海外直接投資に関する二国間の協定につきましては、先生御案内のとおり、一般的には通商航海条約というものがございますが、これにおきましてはきわめて規定が一般的なものでございますので、近年における投資の増加にかんがみまして、その保護を充実するために、二国間の別途の協定をつくりたいということで考えておりましたところ、一昨年になりますか、五十二年一月エジプトとの間におきまして投資保護協定というものが最初にできた次第でございます。本協定は昨年一月発効に至ったわけでございます。  現在のところそれが一件でございますが、今後各国からの希望あるいはわが国からの希望等を勘案いたしまして、必要に応じ、またその意義が認められた場合に、積極的に締結方推進してまいりたいというふうに考えております。
  122. 岡本富夫

    岡本委員 通産大臣、この問題は経済協力あるいはまたエネルギーの需要の確保、こういった面から非常に大切な問題になっているのです。私の方の調べによりますと、米国は、これは軍事問題もありますけれども百十四カ国オランダで十六カ国、西独が四十四カ国、スイスが二十七カ国、フランスが十カ国、イギリスが六カ国日本はいまお話があったように、エジプトたった一カ国、こういうような海外投資に対する日本の国の姿勢がこういうことになっている。こういうところもしっかり力を入れて、隘路になったところを是正し、同時に国の姿勢として、せっかくUNCTADの契約もあるわけです。懸案事項になっておるわけですから、時間もありませんからひとつ推進を約束してもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  123. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはやはり誠意を持ってやらなければならぬというふうに思っております。しかし、相手国の事情もありましてはかばかしく協力体制がとれないというような場面もありまするが、たとえばサウジアラビアの石油化学計画などにつきましては、先ごろ、ちょうど一月、日本側の調査会社が、多くの関連企業の参加を待って設立されるというような顕著な例もあります。隣のイランではいま御存じのような政局不安がある中でも、サウジアラビアは別であるといったような感じで、新たに意欲的に企業進出が見られるというようなこともあるわけでありまして、今後とも相手国と緊密な連絡をとりながら、期待にこたえていくようにしたいと思います。
  124. 岡本富夫

    岡本委員 いま御指摘のサウジアラビアについては、四十八年に三木特使が行き、私のなにによりますと、当時の中曽根通産大臣、これも四十八年に、それから河本通産大臣が五十一年に、そうした各国に出ていって約束もし、そういう海外投資ができる基盤をつくっているわけですよ。だからできている。そうでないところはできないというのは、そういった基盤づくりに国が協力してやらない、ここに問題があるということを指摘をいたしておきます。  時間がありませんから、ここで問題がころんと変わるわけですけれども、きょうは大臣の所信表明に対するあれですから……。  この中に環境保全に留意をするということが書かれておりますけれども、環境アセスメント──私は環境公害委員会におりましたのですが、どうも通産省が隘路になっておってなかなか法制化できないというような意見もあったわけです。通産大臣環境アセスメント法案に対する御意見あるいはまた積極的な意見をひとつここでお聞きしておきたい。
  125. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはいま、環境庁が各省庁との間で成案を得るべく調整を進めておるというわけであります。環境影響評価の重要性につきましては、私ども通産省としても十分に認識しております。これは電源立地等に関して、環境影響評価をすでに実施しておるということに見ても明らかであります。環境影響評価の円滑な実施を図るために当面必要なことは、事業の特性に応じたアセスメント手法の確立を図っていくことが、まず何よりも大切であるというふうに考えます。それからまた、地元住民の理解協力を得る手続についても、従来の経験を積み重ねて、わが国の実情に適した方式を求めることが結論として大切ではないか。こういった観点から、目下各関係省庁との間に鋭意調整が進められておるという段階であります。私どももこの調整に応じておるというのが現状でございます。
  126. 岡本富夫

    岡本委員 通産大臣、それは書いてもろうたやつを読んでいるわけですが、これは二年越しの懸案なんです。先国会、先々国会、環境庁が出そうとしても──建設省も若干反対しておったわけてすがね。企業誘致したりいろんなことをやるためにはどうしても環境影響評価をやらなければならなくなってきておる。それについては各所でやっておるわけですが、その手法については各地方自治体でも困っているわけです、法制化になってないために。ですから、これをやったために企業誘致がおくれるとかあるいは電源立地ができないとか、そういう時代とはもう違うわけです。したがって、ひとつ実力ある通産大臣江崎さんのときに、やはり法制化に踏み切っていただきたい。もう少し前向きな発言をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  127. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは誠意を持って各省庁とも調整をしておるわけですが、なかなかやはりいろいろネックがございまして、私も各省庁間の話し合いの間に、たまたま政府与党の政務調査会長ということで何度も立たされました。時間もありませんので一々詳しく申し上げませんが、全くむずかしい面も残されておるわけであります。なお鋭意調整を進めたいと思います。
  128. 岡本富夫

    岡本委員 約束の時間が参りましたから、厚生省来ておりますけれども、時間がありませんからこの次にまたお聞きいたします。  それから最後に、中小企業の金融問題について、これは五十三年二月の予算委員会のときに当時の河本通産大臣が、公定歩合が下がってきたわけですから、その前に契約をした中小企業金融公庫あるいは政府融資の金利についても当然下げてまいります、こういうように答弁され、また当時の村山大蔵大臣は、窓口でよく相談をしてもらいたいというような答弁もあるわけです。  ところが、私が調べたところによりますと、中小企業金融公庫の窓口へ行きますと、本店からそういう指示が入っておりませんのでそういうわけにいきませんという答えが出てきておるわけです。したがって、国会で答弁するのと地元の窓口と違うわけですね。五十年の四月十六日から公定歩合が八・五になったのが、五十二年の三月十二日から六%になり、あるいはまた最後には三・五%になっておる現在の公定歩合なんですが、これはひとつ指示をはっきりしてもらいたいと思うのです。せっかく国会で答弁をしてもらっても、結局窓口へ行けば本店から指示が来ておりませんからそういうことには応じられません、こういうことになっておるわけですが、この点ひとつ調査して指示をしていただけるかどうか、これを最後に承って終わりたいと思います。
  129. 江崎真澄

    江崎国務大臣 この点は一昨年の十一月一日から中小企業不況対策の一環として、不況業種に属する赤字中小企業者を対象にして、政府系の中小企業金融三機関の既往貸出金利を引き下げた、これはもう御存じのとおりだと思います。これは予算委員会でも問題になったところですね。これは年八・一%まで引き下げる。これによって最も高金利の九・四%ものの引き下げ幅は一・三%ということになった。これの適用件数は三万五千八百件にも上るわけです。残高で約二千八百二十七億円に達しておる。要するに不況業種に属する赤字中小企業者に限定をしておるわけですね。ここが問題の点であろうと思いまするが、これは不況対策としては行えますが、御承知のように、政府関係金融機関の貸し付けというものは、資金運用部からの確定金利による長期借り入れ、要するに長期借り入れというものは、一応この高い金利でも何とか企業としてペイするであろうという見通しに立って、借り主の方は借りておるわけであります。しかも黒字企業まで国家の財政負担で金利軽減するということは、一体公平の原則から言ってどういうことになるだろうか。これはいろいろ問題があると思います。それから原資そのものが、御承知のように非常に高い金利の原資を貸しておるなどなどという点から、御要請の点は、不況業種に属してしかも赤字の出ておる企業を対象にした、まあ現在の場面としては精いっぱいの努力をしておるのではないかというふうに私も考えまするが、こういう点はいかがでございましょう、御了解を得たいと思います。
  130. 岡本富夫

    岡本委員 通産大臣、ちょっとあなたの方で若干考え違いがあるんではないかと思うのです。と申しますのは、五十年四月十六日以後の八・五%時代の公定歩合、これは公定歩合が下がった。そのために、五十二年ごろに借りる、貸し付けを依頼する、そういうのは金利が安い、これは不況業種、まあ不況業種といっても、好況なところは余り借りませんよ、そんなものは。そういうところは同じ業種でありながら安いんです。ところが前に契約してあるから高い。だから少なくともそこまで下げてもらいたいというのです。この金利負担だけでもいま大変な状態だ。そのために、そこまで下げていただけませんかと言うと、そういうのは全然窓口の方に本店から言うてきておりませんから話になりません、こういうことになっておるんです。いま不況業種云々と言いましたけれども、不況業種はもっと安いんですよ、金利は。その点はひとつ、新しく契約すると安い、前のものだから高い、こうなっておるんです。前のものもいまの新しい金利にしてもらえませんか、こう言うておるわけです。この点もう一つよく検討していただいて、ひとつ実質的な指導を要求いたしまして、きょうは終わります。
  131. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 宮田早苗君。
  132. 宮田早苗

    宮田委員 私は、政府基本的な経済運営姿勢について若干の質問をいたします。  政府は、さきに「五十四年度の経済見通しと経済運営基本的態度」を閣議決定をされたわけです。それは実質成長率が六・三%。これを達成するための新年度の予算が提案されておるわけでありますが、ここに来てイランの政変という国際情勢の変化というよりは、端的に言えばエネルギー情勢の大変化が生じようとしているわけであります。この変化は五十四年度の経済運営影響を与えるだけでなく、政府作業を進めておられます新経済社会七カ年計画をも根底から揺さぶりかねない問題であると思います。これまでの質疑でも、この問題がいろいろな角度から取り上げられたわけでございますが、私はここで経済企画庁長官に、イラン情勢の変化がわが国経済にどのような影響を与えるのか、あるいは今後これに対しましてどう対応していかれるのか、まずその辺をお伺いいたします。
  133. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 いま宮田さんのおっしゃいましたイラン情勢の変化というのは、確かに軽視できない大きな変化であると私は思います。そしてまた、特にいま成立した新しい政権がどのような安定度を持っているかということ、またそれに関連したソ連、アメリカ等の強大国がどのようにアプローチしていくかということ、私は非常にその辺の複雑な読みが必要なときだと思っておりますが、われわれはそうした変化を十分踏まえながら、慎重に今後の成り行きを見ながら対策を進めてまいりたいと思っております。ただ御指摘のように、これが一挙に日本のエネルギーに対しての強烈なインパクトになるか、それは考えれば無限大にそういうことはあり得ると思いますが、しかし通産省及び日本の業界の方々の努力によって、少なくとも一−三月は、先ほども通産大臣が仰せられたように、七千二百万キロリットルの原油の手配がすでに完了しているということ、これは昨年同期に比して同額であるということでございますので、これから問題は四−六以降の情勢であろう。われわれはこの三月時点まで事態の推移を克明に追い、かつまた事態を冷静に判断をしていくということを進めてまいりたいと思っておりますが、当面この時点で今年度の六・三%の実質成長を放棄するということはできないし、またこれの実現するような努力を全面的にひとつやってまいらないといけない、そのように考えております。
  134. 宮田早苗

    宮田委員 エネルギー政策については後ほどもう少しお伺いいたしますが、小坂長官の時間の都合もございますので、先に進ませていただきます。  わが国は、石油ショック以後の長期不況の打開策として、需給ギャップに悩みます民間主導から、財政主導型に移行して数年を経過したわけでございますが、この積極財政が民間企業の生命力を蘇生させ、また雇用の面でどれだけの効果があったのかということを分析してみると、かなりの疑問があるわけであります。大平内閣誕生後就任されました江崎通産大臣小坂経済企画庁長官は、ともに民間経済に精通された方でございますので、この積極財政、つまり三〇%以上を国債に依存する公共投資中心型の予算が、民間企業の活力回復にどれだけ寄与したと考えていらっしゃるか、率直な感想を両大臣にお伺いをいたします。
  135. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 私もこの時点において、民間主導と申しますか、民間のエネルギーが少し出てきたことを大変喜んでおるものでございます。しかしそのまた基礎は、やはり非常な財政上の無理をしても、五十二年、五十三年度異常なほどの国債発行を基礎にした積極財政が、ようやくここで少し効き目が出てきた。しかし、そのかわり、逆に御承知のような非常な財政の苦しい状態が参っておるわけでございまして、それが同時に一方においては物価の押し上げということにもなってくるんじゃないか等々考えております。しかし、いまわれわれの手元にございます就業率だとか、あるいは企業の収益性とか、あるいは生産状態とか、それは昨年に比べればことしは異常なまでに改善をされてきておると思いますが、こうしたことは、やはり経済は生き物でございますから、公共事業だけがこのような事態をもたらしたとも言い切れない面もあると思います。しかし、私は一応公共事業、積極財政というものが、今日まで果たした役割りを評価してまいりたいと思っております。
  136. 江崎真澄

    江崎国務大臣 公共事業拡大の直接的な効果は何かというわけでありまするが、建設資材の関連産業の生産というものは増加して、軌道に乗っておることは御承知のとおりだろうと思います。特にセメントであるとか小形棒鋼、これは過去の累積赤字千五百億くらいのことは言われておりまするが、いまはもう完全にペイする業種になりました。それから建設機械、トラックを含んだ自動車、木材等の業種で非常に業績の向上が目立っております。そのほか、わが省所管で言いますると、電力投資の拡大に伴いまして、重電機であるとか電線、ケーブル等の業種もおかげで好調に推移いたしております。そういった形で着実な景気回復路線をたどっておる。これはまさに公共事業推進の大きなメリットであるというふうに理解いたしております。
  137. 宮田早苗

    宮田委員 私は、公共投資による景気回復がどれだけ雇用効果をもたらしたかについては、非常に重要な問題ではございますが、別の機会に譲るといたしまして、公共投資関連企業への波及効果、いわゆる公共投資の生産誘発度について、経済企画庁長官のお考えを伺いたいのでございます。  経企庁の出されております経済白書のような官製の答弁でないものを期待するわけでございますが、五十二年度の公共投資は白書が指摘しておりますように、関連企業段階は在庫調整のために体質改善まで至っていないのが実情だ、こう思うのです。さて五十三年度はどうなっておるかということ、個々の企業の減量経営によります業績の向上ということ、いまも江崎通産大臣おっしゃいましたけれども、全部じゃない、私は一部じゃないかと思っておりますが、公共投資が民間企業にどれだけの活力を与えることになっているのか、この活力の問題についてお答え願いたい。
  138. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 公共投資によって大いに激励を受ける直接的な部門と、非常に間接的な部門と、私は特にこの一、二年ははっきり分かれておったと思います。そうした意味において、私は民間育ちでございますので客観的に申し上げますと、公共投資に非常に依存するということになりますと、民間は大体寝て待てという形になる。今年度のように、もうこれがぎりぎりいっぱいのものだということになりますると、それじゃといって動き出してきている。非常に単純な言い方かもしれませんが、民間の活力というものは、余り政府がいろいろと先に立ってついてこいというようなことをやりましても、現代の高度に発達しました社会においてはそれほどの効果はない。ただ安心感として、また、政府が何もやらぬじゃないかという政治的な意見に対応しての効果はあるのかもしれませんが、実態的には一時しのぎのことで、それが二年間やれたということ、またことしの五十四年度もそれをさらにもう一年続けられるということは、非常にこれは幸せなことであったと思うのでありますが、民間活力は、これからいよいよ本格的に自分の責任で自分の足で歩くという形の中から、雇用の創出面から始まって、また物価の安定その他にも自主的な対応を示してくれることを私は期待しております。
  139. 宮田早苗

    宮田委員 小坂長官は用事があるようでございますから、もう一問だけで結構でございます。  例の新経済社会七カ年計画基本構想についてでございます。この中に、「先行きに対する不透明感を払拭し、民間経済活力ある展開を図ることが、新しい安定的な成長軌道へ我が国経済移行させるために不可欠の条件である」というふうになっておるわけであります。この基本構想の中で言われておりますが、この安定的な成長軌道、成長率としてこの七カ年間平均どの程度をお考えになっておりますか。できれば、当初、後半、毎年でも結構でございますが、そういう関係について、いまお考えになっておりますならば発表をしていただきたい、こう思います。
  140. 小坂徳三郎

    小坂国務大臣 七カ年計画基本構想におきましては、宮田委員がいま仰せられたようなことを考えておらないのでありまして、大体七年後の昭和六十年度の時点というものを想定しております。したがいまして、各年別の成長率をその中に出さないで、むしろ毎年の経済計画の中でそれを決めていくということ、また先ほど御指摘ございましたが、世界情勢の変化は日本にとりましては非常に大きな影響を持っておりますので、そうしたことも勘案しつつ毎年計画の中で方向を決め、程度を決めてまいりたい、そのように考えております。
  141. 宮田早苗

    宮田委員 要望しておきますが、この七カ年計画に対しまして、民間の期待というのが非常に大きいのじゃないかと思います。そういう意味から、この構想に対する肉づけ、政策の面で格段の御配慮をお願いいたしまして、いろいろ用事があるようでございますから結構でございます。どうもありがとうございました。  ただいまの質問に関連をいたしまして、通産大臣にお伺いをしておきたいことがございますのは、このような緊急時に最も大切なのは、過去の経験を生かすこと、つまり、あの石油パニックのような二の舞を演じないよう、国民を危険な方向に走らせない方策を示すことだ、こう思います。かと言って、石油や電気の供給は大丈夫ですよと言うだけでは納得できる性格のものではないと思います。長期的に見て、現在の生活水準を維持しようとすれば、エネルギー不足時代が到来することは間違いないのでございますから、当面の供給はどうする、中、長期的にはこういう情勢だから、産業界や国民の皆さんにはエネルギー節約をこういう形でやってください、このような呼びかけも必要だと思うのでありますが、インフレ政策を踏まえて通産大臣の長期の需給見通しを中心にしたエネルギー政策産業政策への取り組み、非常に漠然とした言い方ですけれども、その点についてのお考えをお伺いしたい、こう思います。
  142. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は、無資源国の日本ですから、エネルギーを節約するという原則、これはあくまで国民皆さんに徹底をしなければならぬと思っております。ただ私、ここで繰り返し申し上げることは差し控えますが、一点申し上げるならば、一−三月が七千二百万キロリットル、昨年同期の入手ができることが確実になった。これを喜びの原因にして大口削減などはしないということで、一般節約はしかし願いたいという程度では鈍過ぎるのではないか、弱過ぎるのじゃないかというような意味を含めて御質問だと思いますが、御承知のように、ことしはどうしても実質経済成長率を六・三%に近づけ、景気回復路線を維持したい、そして雇用を安定させたい。御承知のように、五十二年とは確かに構造不況業種を除けば好況感がはだに感ずるほど様子が変わったにもかかわらず、完全失業者の数が十月も十一月も十七万あるいは十五万というふうにふえておるということ、これは一面では減量経営がなされて、企業体質が改善されたとはいいながら、首を切られた者の立場からすれば、これは容易ならぬ社会問題ですね。こういうことを繰り返さないようにいくためには、先ほど、前の質問者の御意見にもありましたように、どうしてこの経済情勢を持続していくかということは度外視できないと思うのです。国民一般消費の伸びを何%に見るかとか、どの程度にするかという議論も大切ですが、この油をしっかり確保して、安定供給が持続的になされるように、しかもまた、これが不当な値上がりを来さないように、あらゆる努力をこの点に集中すること、これはもう宮田さんの御指摘と私どもも全く同感なんです。ですから、景気持続という点とエネルギー節約というこのあんばいをどこで調整するか、これは私に課せられた大変な大問題であるというふうに認識をしまして、このイランの情勢の行方というものを、全く神に祈るような気持ちで実際は毎日見ておるというのが実情であります。  まあ幸いなことに、OPEC諸国の増産体制というものが続き、何とか世界の依存度一二%のこのイランの石油をカバーしてくれるように、しかし、これはカバーと言いましても限度があると思います。全体量から言えば四、五%だというふうに聞かされておるところであります。そうすると、やはり絶対量は足りない。ならば、それをどうするのか。そのための備蓄でありますから、まあことしのところは大口需要者の需要を削減したりというようなことはしないで、節約にまって対応をしていこう。これは内心は相当苦しいところがありますが、景気を持続し、雇用の安定に資する、この大方針を貫いていくためには、やはりそういう姿勢でいくことが適切ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  143. 宮田早苗

    宮田委員 次に、通産大臣は、さきの予算委員会等で、円高差益還元を徹底すべきだとの趣旨の発言をしておられたわけです。この問題についてお伺いするわけですが、この発言の際、この年度末で終了いたします電気料金、ガス料金の差益還元の継続ということが念頭にあったかどうかは存じませんが、OPECの値上げ、ドル高傾向のもとに、さらには今回のイラン政変と、石油、ガスを取り巻く諸情勢は以前にも増して非常に厳しいものがあるわけでございまして、現在の見通しで電気、ガス料金の五十四年度中の据え置きに自信をお持ちであるかどうか、大臣の所見をお伺いをいたします。
  144. 江崎真澄

    江崎国務大臣 一般消費財を初めとする各諸物資に本当に円高メリットが還元されておるであろうか。ある程度の還元がなされたことは、これはもう物価推移を見ても明らかなところであります。しかし、本当に国民に、消費者に全部還元されたかと言えば、これはやはり疑問が多い。いまこの数字を経企庁にもはじいてもらうように依頼をしておるところでありますが、特に円高メリットの還元は、昨年の場合下半期から顕著でしたね。しかし、上半期、ちょうど二百四十円がらみで始まって、これが二百円割れに円が高騰するという場面では、模様ながめの傾向があったことは否定できないと思うのです。そうすると、ことしの上半期にも円高メリットの還元というものは、行政指導の仕方によっては、また国民世論のおもむくところによっては相当還元される可能性があるのではないか、これが私が予算委員会で申し上げた趣旨であります。  そこで、後段の電力料金の据え置きは可能かという点については、電力業界等の全面的な協力を得なければこれは達成できない話でありますが、OPECの値上げ、そしてまた、今後買いだめとか買いあさりなどなどする必要がないということを政府がしばしば言っておるにもかかわらず、そういうことが起こりますと、不当に石油価格を値上げしなければならないというようなことも出てまいりましょう。それからまた、当面の手当てをするために業者が買いあさっておりまする、スポット物という石油の国際価格が上がっておることに見ましても、大騒ぎをすればやはり人気的に上がらざるを得ない。したがって、私としてはそういうことがないように、そういう思惑も秘めながら、先ほど、石油業界の値上げに対しては、不適当であればわれわれ通産省としても物を言わなければならぬかというような意見を述べたわけであります。したがって、現在エネルギー庁で把握しておりまするような数字でこの場面をしのいでいくことができれば、五十四年度は電力業界の協力によって、差益の還元はできませんが、電気料金を据え置くことは何とかひとつ努力をしてもらいたいものだというふうに考えております。
  145. 宮田早苗

    宮田委員 エネルギー庁長官にお伺いいたしますが、新年度予算で、政府石油需給適正化法を根拠に、緊急時の石油配給切符の印刷費が約七億円計上されておるわけであります。先ほどもちょっと申し上げましたように、このような措置によって国民にいたずらな危機感をあおることは、私ども何としても避けたい、避けなければならぬと思いますが、正確な情報を提供する意味からも、エネルギー庁長官に、どういう事態に直面したとき、どういう方法でやられるのか等を、外国の事例も含めて御説明をしていただきたいと思います。
  146. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 前回の石油危機が起こりましたときに、国内石油需給が非常に混乱をいたしました苦い経験があるわけでございます。前回は幸いにいたしまして、危機は非常に短期間で終了してしまったわけでございます。しかし、今後長い将来を考えてみまして、危機的状態に陥らないで済むという保証はあり得ないと思います。したがいまして、われわれとしては、やはり一たん緩急ある場合に備えるという体制は必要であると考えておるわけでございます。ちょうど自衛隊が、侵略がなければいいわけでございますけれども、やはりあるとすれば、侵略に備えるために準備をしておかなければならないようなことと同じでございまして、われわれとしては危機がないことを願っておりますけれども、しかし、危機が来た場合に何にも備えがないということでははなはぜ困ったことである。諸外国の例を見てみますと、イギリス、フランス、ドイツ等におきましては、いずれも一たん緩急ある場合に備えて配給切符を準備しておるというような状況でございます。日本の場合におきましては、この前の石油危機に際しまして石油需給適正化法ができたわけでございますけれども、この需給適正化法の十二条に基づきまして、配給割り当て制というものか一応想定されているわけでございます。しかしながら、実際には配給割り当てをする場合に必要な配給切符の準備は、いままでしなかったわけでございますけれども、やはりエネルギー庁といたしましては、一たん緩急ある場合の備えを何にもしないのは無責任であると考えまして、これまで五十二、五十三両年度にわたりまして、エネルギー庁長官の私的諮問機関として、緊急時対策研究委員会委員長は日本エネルギー経済研究所長の生田豊朗氏でありますが、この委員会で二年間にわたりまして対策を検討をしてきたわけでございます。その結果、民生用石油製品の配給割り当てについては、やはり切符による配給制が妥当であるというふうな結論を得たわけでございます。それで、たまたまイラン危機の深刻化というような問題もございまして、五十四年度予算では強く大蔵省に要請をいたしまして、この予算を認めていただいたわけでございます。したがいまして、予算が成立し次第、われわれとしては切符を印刷したいというふうに考えております。しかし、これは自衛隊の貯蔵しておる実弾と同じことでございまして、よほどのことでない限りぶっ放すつもりはないわけでございます。先ほど来大臣がるる御説明になっておりますように、備蓄その他、あるいは七千二百万キロリットルの油の確保ができた等々のことを考えまして、近い将来にこういう配給切符を使うということは、われわれは考えておりません。しかしながら、イランの情勢いかん、あるいは中東の情勢、これはわれわれの予期しない発展をする可能性もはらんでいるわけでございますから、石油の日本に対する供給が大幅にカットされてしまうというような事態が起こる、あるいは何らかの理由によって非常に強いパニックが起こってしまうというような場合には、こういう制度を発動するもやむを得ないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  147. 宮田早苗

    宮田委員 できるだけということでなしに、ぶっ放さないような、使わないような配慮をお願いをしておきます。  イラン問題はいま少し推移を見守っていく以外にないと思いますが、ペルシャ湾岸の諸国の今後の動向次第では、わが国輸入量、さらには価格の面で大変な変化が起きることも十分に予想されるわけであります。価格の高騰は当然量の減少となり、西欧諸国に比べて備蓄量の少ないわが国対応を真剣に考えなければならぬ、こう思います。  そこで、IEA、国際エネルギー機関の国際間の緊急融通システムに関して二、三伺いたいのでありますが、最近の世界のエネルギー事情から、IEAの対わが国への対応はどう変化をしておるものか、その点をまずお聞かせ願いたいと思います。
  148. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 IEAにおきましては、イラン危機が深刻化して以後、情勢を厳しくウォッチしておるということでございます。従来は、IEAは加盟国から四半期ごとに報告をとっておりましたが、現在は、これを毎月ごとの報告に切りかえて、監視体制を強めておるということであります。しかし、IEAの判断といたしましては、現在がこのIEAの緊急融通制度の発動を必要とするような緊急事態であるとは判断いたしておりません。少なくともことしの前半におきましてはそういうような必要はないであろうというのが、IEAのいまのところの、公式じゃありませんが、非公式の判断であります。で、ことしの十月以降の需要期にどうなるかということは、一つの心配の種であります。それまでにイランの危機が解決せず、イランの輸出が少しも再開されないというようなことでありますと、ことしの下期一体どういう判断をするかということは、かなり問題のあるところであると思いますけれども、現段階におきましては、IEAは危機とは判断していないということであります。  次に、IEAの加盟国に対する備蓄の要請でございますが、現在IEAの備蓄義務量は輸入の七十日分ということになっておりますので、日本はこの義務量をはるかに上回っておる、二十日ほど上回っておるという状態になっておるわけでございます。他方、来年の一月一日からこの七十日の義務量は九十日に引き上げられることになっております。そういたしますと、それじゃ来年の一月一日現在で日本は義務量を達成し得るかどうかということにつきましては、かなり問題があるところであると思います。これは現在のような市場の状況でありますと、日本政府が備蓄のためにスポットマーケットに買いに出るということは、スポット価格を暴騰させますし、IEAとしても加盟国政府がそういうやり方をとるのは果たして好ましいと考えるかどうか、きわめて問題のあるところであるというふうに考えます。したがいまして、この問題につきましては、要するにこれから来年の一月一日までの備蓄の仕方につきましては、今後IEAにおいて検討すべき事項ではなかろうかというふうに考えております。来月早々にはIEAの理事会もあることでございますし、IEAというのは、何と申しますか、そうかた苦しい会合ではなくて、加盟国がお互いに相談しながらポリシーを決めていくという場所であると考えておりますので、われわれとしてはそこでよく情報を交換し、加盟国のおのおのの状況をよく判断いたしまして、適切な措置がとられる、それに協調して行動していきたいというふうに考えております。
  149. 宮田早苗

    宮田委員 最悪の事態は想像したくありませんが、日本がピンチになったり外国の協力を仰ぐ場合でも、日本国内の条件が問題にされると思う。いま御答弁にございましたように、備蓄量の問題もそうかもしれません。省エネルギー体制の確立、これは当面何か理事会が来月とおっしゃいましたが、その中でも当然問題になるのじゃないかと思いますが、IEAが日本に強く迫って、そういうことで出てくると思いますので、石炭火力への移行、こういう問題、それとか、いろいろな条件整備をしておかねばならぬ、こう思うわけですが、エネルギー庁としての対応策、具体的にそういう問題についてどういうふうな対処の仕方をなさるのか、お聞きします。
  150. 天谷直弘

    ○天谷政府委員 石炭火力につきましては、現在、昭和五十二年度でございますが、四百四十万キロワットの能力がございます。これを、電気事業審議会のベースでございますと、昭和六十年度には九百八十万キロワットまでふやしていきたい。それから、個別の電力会社の施設計画によりますと、六十年度で石炭火力は千二十万キロワットまで伸ばしたい、こういうような計画になっておるわけでございます。  こういうふうに石炭火力のウエートを伸ばしていくということは、今後の石油供給の不安定性ということを考えますと、非常に必要な政策であるというふうに考えております。石炭火力を伸ばしていくこと自体が、日本のエネルギー供給の安定性をふやすと同時に、言うまでもなく日本の石炭産業に対するサポートということにもなるわけでございますので、この点も大いに考えなければならないと思っております。ただし、国内産の石炭だけでこの火力に必要な一般炭需要を全部賄うということは困難であると考えられますので、われわれとしましては輸入炭の手当てということも考える必要がある。幸いにして日本の周辺の環太平洋地域、中国、オーストラリア、インドあるいはカナダ、米国、ブラジル等には非常に豊富な石炭の賦存がありますので、こういうものの活用を図るということは、これはもう日本のエネルギー供給基盤の安定化に役立つと考えられますので、そういう方面の努力もしなければいけないと考えております。
  151. 宮田早苗

    宮田委員 次に、一月二十五日の閣議決定によります「五十四年度の経済見通しと経済運営基本的態度」、これについてお伺いをいたします。  基本課題の第一に、「我が国経済を新しい安定した成長軌道に移行させる」ため、「物価の安定基調を維持しつつ、雇用改善を進め、対外均衡回復を一層確実なものとする」、こうなっております。  この態度についてお伺いするわけでございますが、わが国経済を安定した成長軌道に移行させるため、その中心が、民間産業に重点が置かれているわけであります。また予算委員会の中でもよく言われておるところですが、この五年来の不況、しかも構造不況という状況の中で、今日ようやく、残念ですけれども減量経営を余儀なくされて、その中でどうやら採算ベースに乗せることができたわけでございます。これは全部の企業じゃないわけでございまして、まだまだ減量経営を実施いたしましても採算ベースに乗せられない企業か非常にたくさんあるわけでございます。さっきも経済企画庁長官が民間の活力もだんだん出てきた、こうおっしゃいました。もちろん以前と比較するとそうと思いますけれども、この活力というのはあくまでも減量経営という状態の中での採算ベース、活力ということでございまして、本来の活力じゃないんじゃないかというふうに私ども見るわけでございます。そういう面について果たして活力期待できるか、もし一〇〇%の活力が出ておるということになると、今日のような雇用問題というのは起きてこないんじゃないか、こう思うのですが、私は本来の活力じゃない、そういう問題について大臣、活力ということについてどのようなお考えをお持ちか、その点をお聞きいたします。
  152. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は、いま御指摘の、産業活力というものはやはりある程度出てきたという論者なんです。それは御承知のように企業の決算を見ましても、五十二年の場合は全企業の四〇%くらいが赤字であった。ところが、この九月期の決算におきましては相当黒字企業が増加いたしましたね。年度末決算においては、まあほとんどと言っていいくらい、構造不況業種、特定不況業種は、これはさておきまして、そうでない企業というものの経理内容は確かによくなってきた。これは円高メリットも私はあったと思います。それから、政府がここ両三年来取り続けてまいりました財政主導型の国内需要喚起、景気刺激策、こういったものも確かに効いてきたと思います。そのことが一般消費にもあらわれまして、物価の安定とともに、一般国民消費というものが非常に伸びておる。一月などにおきましても瞬間風速で見ると、GNP比九%くらいの成長を遂げておるということが言われることを見ても、これが一つのあらわれであろうというふうに思います。  一般企業も、なるほどおっしゃるように全体が明るくなったというのにはまだ遠いものがありまするが、ちょうど一般消費というものが、耐久消費財の買いかえ期がきて、預貯金をおろして自動車を買った、あるいはテレビを買うというのが五十三年からこの五十四年にかけての足取りであるというならば、やはり一般企業におきましても、もうここらあたりで設備を更新しなければ、先進諸国家間の合理的な、特に知識集約型と言われる産業、生産品によって生き残ることがむずかしい。しかも一方、公債がなかなかはかばかしくさばけない、これは私、やり方はいろいろあろうかと思いまするが、そういう議論はしばらく別として、とにかくもう〇・五%くらいは金利が下がるのではないかというのが昨年しきりにささやかれた期待でありましたが、まあ金利も、このあたりでは低金利政策も一応底打ち感がある、だとするならば、このあたりで、まあペイする、企業ならば設備の更新をしよう、こういう意欲が企業の間に出てきたことは私は事実だと思うのです。     〔山下(徳)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ、先行き石油の心配は要りませんが、さっき話がありましたように、準備をするということと実行するということは、これはもう全く違っておりまするから、私からも繰り返し申し上げておきたいと思いまするが、石油が何とかここで暴騰をしたりとかあるいは供給削減をしなければならないような事態が起こらないということならば、私は相当順調な伸び期待していいのではないか。今度の六・三%の経済企画庁の積算基礎も、製造業においては五十三年度は二%の伸長をめどとしておりました。今度、五十四年度の場合はたしか八%成長を積算基礎に置いておるというふうに記憶いたしておりますが、私はその程度のことは順調に推移すればいけるのではないか。ようやく明るみが出てきた。何とか油の事情が、穏やかな供給体制が続けられるような状況が続くことを、本当に神に祈るような気持ちで期待すると申し上げておりますのはその点でございます。
  153. 宮田早苗

    宮田委員 大臣のおっしゃることについて否定するという気持ちは毛頭ございません。そういう業種もだんだん出てきたというふうに思いますが、何しろ非常に長い間の不況でございまして、企業経営は根の深いものがたくさんまだ残っておるんだということなんです。それに対しまする政府の積極的な政策運営ということに大きな期待をそれぞれがしておるというふうに思います。今日考えられております政府施策というのは、また企業自体が取り組んでおります対策といいますのは、当面の対策が重点に置かれてのことだ、こう思いまして、要は根本的な対策、構造的な対策が特に重要だ、こう思うわけでございますが、この点について、総体的なものということよりは二、三産業別に例を挙げて、当局でも結構でございますがおっしゃっていただきたい。たとえば非鉄金属とか繊維とか、造船はここ関係ないわけでございますけれども、そういう問題について何かありましたら御説明願いたい、こう思います。
  154. 栗原昭平

    ○栗原政府委員 繊維について申し上げますが、繊維は御承知のように合成繊維あるいは紡績等、川上の段階のものと、それから川中の織布段階のもの等々がございますが、私ども構造対策として考えておりますのは、一つは設備の処理、廃棄の問題でございます。御承知のようにオイルショック以来数年にわたりまして内需が非常に低迷しておりました。またさらに後進国の追い上げ等もございましたし、円高による輸出減あるいは輸入増というような問題がございまして、繊維の各段階におきまして、かなり過剰な設備というものを抱えるに至ったことは御承知のとおりでございますが、これらに対しまして、一つは、中小企業につきましては、振興事業団の長期無利子の資金を利用いたしまして、設備の共同廃棄というものをやっております。これは川中段階中心に、かなり多くの設備の処理を行っておりまして、おおむね二割に近いようなラインで共同廃棄をいたしております。紡績段階につきましても、中小紡につきましては同様の措置で設備処理を行っております。さらに昨年の五月でございましたか、成立いたしました特定不況産業安定臨時措置法に基づきます設備の処理につきましても、合成繊維はすでにことしの一月の段階で設備処理の実行段階に入っております。さらに梳毛紡績につきましても同様、現在審議会で安定基本計画策定中でございまして、間もなく実行段階に入るというようなことで、構造対策としては一つは設備の処理がございます。  さらにもう一つ、前向きの段階の構造改善ということも必要であろうということでございまして、実は今国会に提案を申し上げる予定にしております繊維の構造改善法の改正延長の問題、これは繊維の知識集約化という観点からの構造改善を目指すものでございます。そういった両面からの構造改善を心がけておるという状況でございます。
  155. 宮田早苗

    宮田委員 何しろ雇用問題というのが深刻なときでございますだけに、政府のおっしゃることについてまだまだというふうな気持ちをぬぐい切れないわけでございますが、それはそれといたしまして、国際収支の黒字減らしのための輸入の安定的拡大を図らなければならない、このように考えられておるわけであります。このことは、わが国企業の安定成長について、相矛盾するのじゃないかと思うのですよ。輸入拡大を図るのと、それからわが国企業の安定的な成長を図るのと、大変矛盾をするのじゃないかと思いますが、この点はどうですか。
  156. 江崎真澄

    江崎国務大臣 おっしゃる点は私もよく理解ができます。ただ、そういう甘えが残念ながら国際収支の黒字のあり方、それから日本の経済実力というような点から申しまして、だんだん国際的に通用しなくなってきたというならば、やはり日本としても知識集約型の、国際競争力にたえるような新しい製品開拓ということもしていかなければならないと思います。  それからまた、もう一つは、いまの製品輸入が二〇%から三〇%近く五十三年度は伸びた。五十四年度も同じような対応を迫られるだろうと思います。先進国首脳会議に集まる諸国の製品輸入の平均値を見て私驚いたのですが、大体五四%ぐらいなんですね。このことがなぜかということを研究するのはそう手間暇かからなかった。それはEC諸国というのが、競合体制から協調体制へと、水平分業というものを各国が行いまして、半製品という形で製品輸入にカウントをされておる。日本の場合は四辺海でありまするために、それからまた周辺諸国に同じような製品を生産する国がないというようなことから、何もかも日本で原材料を輸入して加工をしなければならぬという特殊な事情、これなどは国際的にはある程度話せばわかる問題だというふうに私は思います。  しかしいま御指摘のように、製品輸入を増高させればさせるほど国内生産は落ちる。言うならば、やはり比較的単純な製品は輸入に依存するが、高度なものは日本で生産をして、これを輸出に向けるといったような、こんなところにも構造改善の必要が迫られておるわけでありまして、たとえば今度中小企業の面においても、いままでの後追い的な、構造不況業種などに対する救済の手を差し伸ばすということを一歩も二歩も進めて、産地中小企業対策臨時措置法といったようなものを気構え、いずれまた御審議に供しようとしておるのもその一つのあらわれでありまして、今後やはり知識集約型の高度な製品を創出するように努力をしていかなければならぬわが国産業である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  157. 宮田早苗

    宮田委員 物価問題についてお伺いいたします。  経済企画庁の方から、卸売物価一・六%、消費者物価四・九%ということなんですが、これは経済企画庁に私はお尋ねするわけじゃないのですよ。やはりこれが成功するかどうかというのは通産省の政策いかんにかかっておる、こう思いますので、通産省の方にお伺いするわけでございますが、まず卸売物価の一・六%の問題についてです。いままでもいろいろ質疑をいたしましたように、原油価格とかあるいはまた主要物資の騰勢ということがだんだんに強まりつつあるわけでございまして、最近の卸売物価の指数というのが上げ基調になっておるわけでございますが、こういう状態のときに、果たして一・六%という一つの目標の中に入れることができるかどうかという疑問を、今日早くも持つわけでございますが、この点についての見通しはどうですか。
  158. 藤井直樹

    ○藤井(直)政府委員 卸売物価消費者物価の見通しにつきましては、物価自体独立して決めることはなかなか困難でございます。したがいまして、経済見通しの中で、たとえばコスト要因でございますと、生産、雇用雇用者所得、それから海外物価、円レート、そういうようなものをとります。それから需給要因として生産消費等の需要動向がございますが、そういうものを全部整合的に取り上げまして、そして物価の見通しを出しているわけでございます。  そこで、いま御指摘の、卸売物価につきましては一・六%という数字が出てきておるわけでございますが、これはいまの経済見通しに出ておりますような前提に基づいて考えますれば、この見通しというものが全体の経済の姿と整合性がとれているというふうに思うわけでございます。ただ、現実に海外物価等の動きになりますと、かなり予測が困難な面がございますが、そういう海外物価がこれからどう動くかというようなことによりまして、その数字については多少の変動があることはやむを得ないかと思っております。
  159. 宮田早苗

    宮田委員 消費者物価についてちょっとお伺いをいたします。  わが国におきましては、極端と言っていいほどの赤字国債が発行されておるわけでありまして、それともう一つ、最近の物価問題ということを考えますと、どうも四・九%ということに不安を感じざるを得ないわけでございます。特に赤字国債の発行によって、四十七年当時に起きました過剰流動性といいますか、そういう傾向がだんだん顕著になりつつあるのではないかというふうにも思われるわけでございます。こういう問題について、手は打たれておると思いますが、何らかの措置を早く打っていただかないと、四・九%どころか、インフレという傾向になりかねないおそれすらあるのではないかと思いますが、その点について大臣の決意のほどをひとつ。
  160. 江崎真澄

    江崎国務大臣 物価を抑えていく問題は、ことしの政府としての大きな柱の一つだということを、私は先ほど来申し上げてきたところであります。ただ、インフレの心配はない。なぜかと言うならば、まだ相当需給ギャップがございます。したがって、供給不足の品物については十分配意をしながら、生産余力はあるわけですから、生産をプッシュするという行政指導は可能なわけであります。したがって、公債の行方いかんというわけでありまするが、これなどもまあ一つの見方でありますが、ことしのGNPは二百三十一兆円であります。公債残が今度の十六兆円を入れまして五十八兆円ということになりまするが、これをGNPで割りますと約二五%程度ですね。そういう点から言いますると、GNP比三〇%以上を公債が占めておるアメリカの財政よりは、日本の場合、公債依存政策をとってまいりましたが、まあまあだということは言えると思います。しかし油断はなりませんので、十分物価動向に配慮をしながら、需給ギャップもありますることですから、通産省としては今後の需給をひとつよくながめていきたいというふうに考えます。
  161. 宮田早苗

    宮田委員 最後に大臣に要望しておきたいことがございますのは、雇用問題についてでございます。労働省の方も非常に熱心に取り組んでおられるようですが、働く場をつくるのは通産省でないとできないわけでございますから、幾ら労働省がいい計画を出され、いい方向を出されましても、通産省の立場に期待をするというのが非常に大きいわけでございますので、そういう問題について特段の御配慮ということを特にお願いをいたしまして終わります。どうもありがとうございました。
  162. 橋口隆

    橋口委員長 次回は、明十四日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十六分散会