○
橋本国務大臣 ただいま議題となりました
健康保険法等の一部を
改正する
法律案について、その提案の理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
医療保険制度の基本的改革は、かねてから重要な課題となっているところでありますが、
医療保険をめぐる諸情勢は、近年厳しさを加えております。
かつてのような高度経済成長が期待できない情勢のもとにおいては、人口構成の老齢化や
医療の高度化等により
医療費の伸びが賃金の伸びを大幅に上回る状況が続くものと
考えられます。また、
医療費問題のみならず、救急
医療などの
医療体制の整備、老人
医療の
確保、
医薬品副作用被害の
救済等、早急に
解決を図るべき諸問題が山積しており、一昨年の健康保険
改正法案の
国会審議の際、これらの諸課題の
解決に取り組むことをお約束いたしたわけでございます。
したがいまして、
医療保険制度の基本的改革に当たりましては、
医療保険制度のみにとどまらず、
医療制度、
薬事制度、健康管理
対策等、関連各分野においても逐次
改善を図ってまいる
考えでありますが、今回は、今後に予測される社会経済情勢に即応して
医療保険制度の健全な発展とその合理化を図るため、その第一段階として、健康保険制度と船員保険制度について必要な
改正を行おうとするものであります。
今回の
改正に当たりましては、
給付の平等、負担の公平、物と技術との分離、家計の高額な負担の解消、
医療費
審査の
改善の三
原則を柱として、これらの基本的
考え方を盛り込んで
改正法案を策定した次第であります。
以下、この
法律案の
内容について概略を御説明申し上げます。
まず、健康保険法の
改正について申し上げます。
第一は、
医療給付に関する
改正でありますが、被保険者と被扶養者との
医療給付の格差を是正して、同一水準の
給付を
確保することを基本とし、このため
患者負担を適正なものとするとともに、高額療養費の
支給等により、真に
医療費負担による家計の破綻を防止しようとするものであります。
患者負担につきましては、初診時の負担を千円とし、投薬・注射に係る薬剤または歯科材料に要する費用の二分の一を新たに負担願うこととしております。ただし、高価かつ長期間連続して投与される薬剤や、検査・麻酔に使用される薬剤は、負担の対象としないこととしております。さらに、入院の場合には一日につき給食料に相当する額を負担していただくこととしております。
これらの
患者負担の額が著しく高額となったときは、高額療養費を
支給することとしており、
患者負担の限度額は、現行被扶養者に対する高額療養費制度では月額三万九千円となっておりますが、今回は、その約半分の月額二万円程度にする予定であります。
また、療養費の
支給要件を緩和し保険
医療機関または保険薬局以外の
医療機関等で療養を受けた場合であってもやむを得ない場合には、療養費を
支給することとしております。
第二は、分娩費等の
給付に関する
改正でありますが、分娩費等の最低保障額や配偶者分娩費等の額を実情に即して改定できるものとするため、政令で定めることといたしております。
第三は、保険料に関する
改正でありますが、保険料負担の公平を図るため、賞与等についても保険料を徴収することとし、賞与等の支払いを受けた月においては、その月の保険料額は、標準報酬月額と賞与等の額を合算した額に保険料率を乗じて算定することとしております。
なお、保険料徴収の対象となる賞与等の額は、その月に受ける賞与等の額につき、各被保険者の標準報酬月額の二倍に相当する額を限度とすることとしております。
次に、給与の実態に即して標準報酬等級の上限を調整できることとするため、上限に該当する被保険者の割合が百分の三を超えた場合には、社会保険
審議会の
意見を聴いて政令をもって上限を改定できることとしております。
また、
政府管掌健康保険の保険料率は、厚生
大臣が社会保険
審議会の議を経て千分の八十を超えない
範囲内において定めることができることとしております。健康保険組合の保険料率も同じく千分の八十を超えない
範囲内において決定するものといたしております。
第四は、国庫補助に関する
改正でありますが、
政府管掌健康保険についての保険料率の調整に連動した国庫補助率の調整
規定を廃止し、国庫補助率は、主要な保険
給付に要する費用の現行の千分の百六十四から千分の二百の
範囲内において政令で定めることといたしております。
第五は、財政調整についてであります。今後、全被用者
医療保険間において財政調整
措置を講ずることとしておりますが、その
措置が講じられるまでの間、健康保険組合間の財政を調整するため、健康保険組合連合会は、政令の定めるところにより健康保険組合からの拠出をもって一定の健康保険組合に対し、交付金の交付
事業を行うこととするものであります。
第六は、保険
医療機関等の登録・指定等に関する
改正でありますが、個人開業医については保険医の登録があった場合、保険
医療機関の指定があったものとみなすものとして手続の簡素化を図る
規定、保険
医療機関等の指定を拒否できる
事由を法定する
規定、未払いの一部負担金について、保険者が保険
医療機関等の請求により徴収処分をすることができるものとする
規定を設けることとしております。
その他、
給付の平等を図る見地から健康保険組合の附加
給付を規制する
規定を設けるほか、海外にある被保険者等に対する保険
給付の
実施と保険料の徴収を行うための
規定その他の
規定の整備を行うこととしております。
次に、船員保険法の
改正について申し上げます。
船員保険の疾病部門につきましても
医療給付、分娩費等の
給付などについてさきに述べました健康保険の
改正に準じて所要の
改正を行うものであります。
次に、社会保険診療報酬支払
基金法の
改正について申し上げます。
社会保険診療報酬支払
基金における
審査について再
審査に関する
規定を整備するものであります。
なお、この法律の
実施時期につきましては、公布の日から起算して一年を超えない
範囲において政令で定める日から施行することとしております。
以上が、この
法律案の提案の理由及び
内容の概要であります。何とぞ慎重に御
審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。