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1979-05-29 第87回国会 衆議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年五月二十九日(火曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 森下 元晴君    理事 越智 伊平君 理事 竹内 黎一君    理事 戸井田三郎君 理事 向山 一人君    理事 村山 富市君 理事 森井 忠良君    理事 古寺  宏君       相沢 英之君    井上  裕君       石橋 一弥君    川田 正則君       斉藤滋与史君    戸沢 政方君       友納 武人君    葉梨 信行君       山口シヅエ君    湯川  宏君       安島 友義君    枝村 要作君       大島  弘君    大原  亨君       金子 みつ君    川本 敏美君       栗林 三郎君    島本 虎三君       矢山 有作君    草川 昭三君       谷口 是巨君   平石磨作太郎君       和田 耕作君    浦井  洋君       田中美智子君    工藤  晃君  出席国務大臣         労 働 大 臣 栗原 祐幸君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       加藤 隆司君         林野庁長官   藍原 義邦君         労働大臣官房審         議官      谷口 隆志君         労働省労政局長 桑原 敬一君         労働省労働基準         局長      岩崎 隆造君         労働省労働基準         局安全衛生部長 津澤 健一君         労働省職業訓練         局長      石井 甲二君  委員外出席者         議     員 村山 富市君         人事院事務総局         職員局補償課長 笹川 辰雄君         防衛庁防衛局運         用課長     児玉 良雄君         防衛庁人事教育         局人事第二課長 村田 直昭君         防衛庁人事教育         局人事第三課長 澤田 和彦君         防衛庁衛生局衛         生課長     戸田  陽君         厚生省医務局国         立病院課長   吉崎 正義君         林野庁林政部長 佐竹 五六君         林野庁林政部森         林組合課長   渡辺  武君         林野庁職員部福         利厚生課長   今井 秀壽君         林野庁業務部長 秋山 智英君         林野庁業務部業         務課長     田中 恒寿君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部施         設課長     岩橋 洋一君         労働大臣官房審         議官      細見  元君         労働省労働基準         局監督課長   小粥 義朗君         労働省労働基準         局補償課長   原  敏治君         労働省労働基準         局安全衛生部労         働衛生課長   林部  弘君         建設省計画局建         設業課長    蓮見 澄男君         自治省行政局給         与課長     石山  努君         日本国有鉄道職         員局保健課長  小山田虎丸君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団総裁)   川島 廣守君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団理事)   藤田 雅弘君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団理事)   大平 拓也君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ————————————— 委員の異動 五月二十九日  辞任         補欠選任   大原  亨君     大島  弘君   水田  稔君     栗林 三郎君 同日  辞任         補欠選任   大島  弘君     大原  亨君   栗林 三郎君     水田  稔君     ————————————— 五月二十四日  母子保健法の一部を改正する法律案柏原ヤス  君外一名提出参法第九号)(予)  児童福祉法の一部を改正する法律案柏原ヤス  君外一名提出参法第一〇号)(予) 同月二十八日  母性保障基本法案柄谷道一提出参法第一一  号)(予) 同日  療術の制度化に関する請願上田卓三紹介)  (第四四一一号)  健保改悪阻止医療保障制度改善等に関する  請願外五件(岡田哲児紹介)(第四四一二号)  同外四件(横山利秋紹介)(第四四一三号)  同(安島友義紹介)(第四五一一号)  同(安藤巖紹介)(第四五一二号)  同(荒木宏紹介)(第四五一三号)  同(浦井洋紹介)(第四五一四号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第四五一五号)  同(瀬崎博義紹介)(第四五一六号)  同外一件(瀬長亀次郎紹介)(第四五一七号)  同(田中美智子紹介)(第四五一八号)  同(竹内猛紹介)(第四五一九号)  同外一件(津川武一紹介)(第四五二〇号)  同外三件(馬場昇紹介)(第四五二一号)  同(東中光雄紹介)(第四五二二号)  同外三件(平林剛紹介)(第四五二三号)  同(不破哲三紹介)(第四五二四号)  同(正森成二君紹介)(第四五二五号)  同(三谷秀治紹介)(第四五二六号)  同(美濃政市紹介)(第四五二七号)  同外一件(村山喜一紹介)(第四五二八号)  同(安田純治紹介)(第四五二九号)  重度戦傷病者と家族の援護に関する請願(砂田  重民君紹介)(第四四一四号)  同(田中龍夫紹介)(第四四一五号)  同(小宮山重四郎紹介)(第四五〇六号)  同(田中伊三次君紹介)(第四五〇七号)  同(水平豊彦紹介)(第四五〇八号)  韓国出身戦犯刑死者遺骨送還に関する請願  (向山一人紹介)(第四四一六号)  不当解雇の規制及び雇用拡大対策確立等に関  する請願外一件(野口幸一紹介)(第四四六九  号)  老人医療費有料化反対等に関する請願安田  純治紹介)(第四四七〇号)  同(山原健二郎紹介)(第四四七一号)  医療保険制度及び建設国民健康保険組合改善  に関する請願池田克也紹介)(第四四七二号)  同(大出俊紹介)(第四四七三号)  同(沢田広紹介)(第四四七四号)  同(柴田睦夫紹介)(第四四七五号)  同(曽祢益紹介)(第四四七六号)  同(津川武一紹介)(第四四七七号)  同(山原健二郎紹介)(第四四七八号)  同(湯山勇紹介)(第四四七九号)  医療保険制度改善に関する請願柴田睦夫君紹  介)(第四四八〇号)  同外一件(安島友義紹介)(第四四八一号)  同(川本敏美紹介)(第四四八二号)  同(田中美智子紹介)(第四四八三号)  良い医療制度確立に関する請願安田純治君紹  介)(第四四八四号)  同(山原健二郎紹介)(第四四八五号)  同(湯山勇紹介)(第四四八六号)  医療保険制度改善措置に関する請願柴田睦夫  君紹介)(第四四八七号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (中村正雄紹介)(第四四八八号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対等に  関する請願荒木宏紹介)(第四四八九号)  同(川本敏美紹介)(第四四九〇号)  同(東中光雄紹介)(第四四九一号)  同(藤原ひろ子紹介)(第四四九二号)  同(正森成二君紹介)(第四四九三号)  同(三谷秀治紹介)(第四四九四号)  豊かな年金制度確立等に関する請願外二件(大  島弘紹介)(第四四九五号)  同(津川武一紹介)(第四四九六号)  同外二件(渡辺三郎紹介)(第四四九七号)  医療保険制度改善措置に関する請願大出俊  君紹介)(第四四九八号)  医療保険制度改悪反対医療福祉拡充に  関する請願馬場昇紹介)(第四四九九号)  同(平林剛紹介)(第四五〇〇号)  同(藤原ひろ子紹介)(第四五〇一号)  旧満州開拓青年義勇隊員処遇改善に関する請  願外一件(愛知和男紹介)(第四五〇二号)  医療保険制度拡充に関する請願津川武一君  紹介)(第四五〇三号)  医療保険制度改悪反対医療制度確立に関  する請願津川武一紹介)(第四五〇四号)  健康保険改善等に関する請願寺前巖紹介)  (第四五〇五号)  医療保険制度改悪反対医療福祉拡充等  に関する請願工藤晃君(共)紹介)(第四五〇九  号)  同(村山喜一紹介)(第四五一〇号)  医療保険制度改善に関する請願小林政子君  紹介)(第四五三〇号)  同(津川武一紹介)(第四五三一号)  同(寺前巖紹介)(第四五三二号)  同(平林剛紹介)(第四五三三号)  同(不破哲三紹介)(第四五三四号)  同(正森成二君紹介)(第四五三五号)  同(松本善明紹介)(第四五三六号)  同(安田純治紹介)(第四五三七号)  同(山原健二郎紹介)(第四五三八号)  各種年金に対する旧軍人の軍歴通算等に関する  請願森下元晴紹介)(第四五三九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  失業手当法案村山富市君外九名提出衆法第二  三号)  労働関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 森下元晴

    森下委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  この際、お諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本鉄道建設公団総裁川島廣守君、同理事藤田雅弘君及び同理事大平拓也君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森下元晴

    森下委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。
  4. 森下元晴

    森下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。栗林三郎君。
  5. 栗林三郎

    栗林委員 私は、去る三月二十日、上越新幹線の大清水トンネル工事現場火災事故によって、主として十六名の出かせぎ労働者死亡した事故に関して、その原因と今後の安全対策についてお尋ねいたしたいと存じます。  私は、質問に先立って、まず、亡くなられました十六名の被災者とその御遺族に対し、謹んで御冥福と弔意を表するものでございます。  さて、私は、去る三月一日の予算委員会第三分科会において、昨年十一月、宮城県白石市内国道改良工事現場において発生した山崩れによる七名の出かせぎ労働者死亡事故を取り上げて、安全対策についてただしてまいりました。それから四カ月後の三月二十日には、白石事故をはるかに上回る十六名の死亡者を出すという大惨事が発生したのであります。  余り遠い過去は別として、最近時における労働災害集団事故を取り上げてみるならば、昭和五十一年二月には、栃木大瀬橋潜函工事において六名の死亡災害がございます。同年五月には、山形県下の水路トンネル工事において九名が死亡しております。同年七月には、栃木真岡ゴルフ場造成工事土砂崩壊によって十二名の死亡。五十二年の六月には、大阪市内柳川建設の宿舎が焼けまして、この火災によって十二名の焼死者を出すという痛ましい事件が起きております。さらに、同年七月には、上越新幹線湯沢トンネル火災により、労働者三十六名が坑内に閉じ込められたという事故などがございます。その他大小の労働災害が少しも後を絶たない、むしろ多発状況でありまして、しかもこうした事故建設現場に集中している実情でございます。  労働省はかかる災害多発の現状を一体何と認識しておられるのか、真剣に安全対策を講じておられるのか、その真意と熱意を疑わざるを得ないのでございます。  また、昨年九月には中央労働基準審議会から「建設労働をめぐる安全衛生上の諸問題と対策の方向について」という建議大臣提出されておるはずであります。そこには、人間尊重と健康を優先とする数々の提言がなされてあるはずであります。この建議が果たして労働行政の中でいかに生かされておるのか、きわめて疑問に思わざるを得ないのであります。  建議の中でこう言っておるのであります。「これらの対策基本となるものは、いうまでもなく人間の安全と健康の確保を優先させる人命尊重理念である。この思想を建設業界にさらに徹底させるため、関係者はなお一層努力する必要がある」と、特に指摘してあるのでございます。そしてまた「職業安定行政建設業行政等施策と密接に関連するので、これらの機関とも十分連絡をとり、更に総合的に検討を加えることが望ましい。」とも言っておるのでございます。  大臣はこの理念を踏まえておるのか、この理念を踏まえ、建設省などと合同で安全対策検討されたことがありますか。私はまず、労働省安全対策に関する基本姿勢について、大臣の所信を伺っておきたいと存じます。
  6. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 ただいま御指摘のとおり、今度の事故は大変痛ましい事故でございまして、私ども犠牲者に対しまして心からお悔やみを申し上げたいと考えております。  いま御指摘のとおり、出かせぎ労働者方々、特に建設業に従事される方々が多いわけでございますけれども、そういう方々の安全を図るために私どもは私どもとしていろいろやってきたつもりでございますが、こういう結果になりましたことはまことに残念でたまりません。  いま御指摘のとおり、昨年九月の中基審建議にもいろいろ指摘をされております。私どもはこの指摘を踏まえまして、現在その具体策につきまして鋭意検討中でございます。
  7. 栗林三郎

    栗林委員 基準局長、御出席ですね。基準局長からも御答弁をお願いいたしたい。
  8. 津澤健一

    津澤政府委員 先生ただいま御指摘のように、私どもとしては一生懸命やっておるつもりではございましたが、まだ至らぬところがございまして、数々の大災害を出しておりますことはまことに申しわけなく遺憾に存じております。  私ども建議指摘されております事項を踏まえまして、五十四年度の予算要求におきましても、その中の重要な事項を一部先取りいたしまして具体的な対策にいたしておる部分もございますが、さらに法令の整備等を含めまして、鋭意検討中でございます。  なお、建設省等とは、私ども事務レベルで、建議の中にあらわれておりますような事柄について折々連絡をとっておりますほか、昨年からは、地方の段階におきましても、建設省との間に合意を見まして、建設省が発注する各種工事に対する安全対策について、私ども出先機関との間に連絡会議設置するなどの対策を進めておるところでございまして、なお一層努力をいたしたいと存じております。
  9. 栗林三郎

    栗林委員 建設省からは建設業課長さんが御出席ですね。建設省業者に対してどんな指導理念で対処しておられますか、お尋ねいたしたいと思います。
  10. 蓮見澄男

    蓮見説明員 建設省といたしましては、常々、労働安全の確保ということに対しまして、建設業界発注者の両方に対しまして指導しておるところでございます。にもかかわらず今回のような大きな事故が起きましたことに対しまして、非常に残念に考えております。  建設省では、建設業法に基づきまして、建設業者を指導監督する立場、それから公共工事を発注する立場、この二つ立場がございますが、この二つ立場を通じて、安全の確保ということについて常に留意しておるところでございます。  まずその一つとしましては、建設業界に対して、安全管理体制の強化、労務者に対する安全教育徹底というようなことを、数次の通達あるいは会合等における機会を通じましてその徹底に努めております。  それからその二といたしましては、公共工事を発注いたします際に、建設業者の労働安全の成績、労働安全の状況というものを考慮して建設業者を決める、発注するということをいたしております。御承知のように、公共工事を発注いたします際には資格審査ということを行うわけでございますが、その際に、建設業者労働災害状況といったものが考慮されることになっております。それから元請が下請を使う場合にも、同じように、下請業者労働安全確保状況を十分考慮して下請を選びなさいということを、業界に対する通達、あるいは昨年定めました「元請・下請関係合理化指導要綱」といったもので、注意を喚起しておるわけでございます。  それから第三といたしましては、実際の工事を施工いたします際に、労働安全に十分配慮して工期とか工法とか施工計画とか施工方法といったものを決めるように、これも常々業界あるいは発注者に指導しておるところでございまして、今年度におきましても、所管事業の執行について事務次官から通達をいたしまして、その旨をさらに徹底するようにいたしておるわけでございます。  今後とも、さらに安全の確保について留意してまいりたいと思います。
  11. 栗林三郎

    栗林委員 大清水トンネル事故原因は、まだ警察捜査が終わっておらないようであります。私も二回現場を見てまいりましたが、一番大事な出火発生現場を見ることができませんでした。しかし、今日では立ち入りは解除されたと聞いております。事件が発生してから三カ月にもなりますし、監督署側調査もかなり進んでおることと思いますので、この際、事故発生原因について簡潔に御報告をお願いいたしたいと思います。
  12. 津澤健一

    津澤政府委員 ただいま御指摘のように、現場に入りますのが大変危ない状態にございましたので、吹きつけ等によりましてそこの安全を確保しながら現場検証を進めることが、今月の一日から段階的に始まっておるところでございます。  ただ、御承知のようにこの災害は、ドリルジャンボ解体作業中にガス溶断を行っておりましたが、この火花が付近の可燃物に引火をして火災が発生したことに加えまして、設置されておりました消火器が適切に作動しなかったことなどによるものと思われますが、確定的なことにつきましては、私ども、現地では、警際と同時に現場検証を進めますとともに、関係者事情聴取に努めておるところでございまして、ただいまその原因の究明を懸命に行っておる途中でございます。
  13. 栗林三郎

    栗林委員 ただいまの報告の程度なら、私もちゃんと調査済みでございます。もう少し要領を得た、しかも詳しい報告が欲しいのでございます。  それでは、私の方からお尋ねしてまいりたいと思う。  ただいまも御報告がありましたが、ジャンボ削岩機解体作業中、溶断機から発した火花が、何物かはわからないが何か易燃性物質があった、油であるかあるいは木くずであるかわかりませんが、燃えやすい物があって、それに引火して大事に至ったということは間違いのない事実だと思うのでございます。  去る四月十日の運輸委員会における質問に対して、運輸大臣からはっきりそう答弁されておる。警察庁の捜査課長もそう答弁されておるのでございます。もはやこれは動かすべからざる事実ではございませんか。もっとはっきり御答弁できませんか。
  14. 津澤健一

    津澤政府委員 出火原因につきましては、ただいま先生指摘のように、私ども、これまでの事情聴取等から得ました結論といたしましては、ジャンボ機解体中に、そこにありましたジャンボ機駆動用の油、それからセントルを組むときに使いました矢板のおがくず、こういったものが多量に存在いたしまして、これに引火したということでございます。
  15. 栗林三郎

    栗林委員 だとすると、これは安全衛生規則の何条に触れるわけでございますか。二百七十九条ですか、二百八十五条ですか。どちらに抵触するわけですか。
  16. 津澤健一

    津澤政府委員 ただいまの関係条文は、労働安全衛生規則二百七十九条のいわゆる「危険物等がある場所における火気等使用禁止」の問題、さらには、二百八十九条の適切な消火器設置というところに関係があると考えております。
  17. 栗林三郎

    栗林委員 これは安全衛生規則違反はもう明瞭であろうと思います。  次に、脱出した労働者から聞きますと、消火器があったが、この消火器が何ら作動しなかった、何ら役立たなかった、こう言っておるのですが、この点はまだ判明しておりませんか。幾つかの消火器設置してあったようでございます。警察はすでに二十個ほど押収したと言っておりますから、消火器設置してあったように思われるのでありますが、これは粉末消火器でありまして、坑内は川のように水が流れており、湿気粉末が固まるおそれもあると思う。監督署消火器性能などの点検指導をしたことがあるでしょうか、お答え願います。
  18. 津澤健一

    津澤政府委員 消火器が有効に作動いたさなかったことにつきましてはいろいろの原因が考えられておりまして、ただいまその点を解明中でございますが、考えられますことは、空になったものが間違えて置かれたとか、あるいは詰めかえの際にボンベそのものが空であるものを置いたとか、あるいはまた御指摘のように、詰めかえ操作等の間違えによりまして湿気で内部が固まって出なくなったとか、いろいろなことが考えられますが、このどちらであるかという確定的なことにつきましては、現場消火器を入手した上、さらに事情聴取等で固めてまいるつもりでございます。
  19. 栗林三郎

    栗林委員 部長、私の質問をちゃんと聞いてから答えなさい。一体、監督署は、こういう粉末消火器性能などを実際に点検したことがありますか、と聞いておる。
  20. 津澤健一

    津澤政府委員 失礼いたしました。消火器設置については監督指導をいたしておりますが、手に取ってそのようなことをやったことは、まことに遺憾ながらございません。
  21. 栗林三郎

    栗林委員 出火当時坑内から前田事務所の方へ電話連絡があった。これは出火当時現場監督からの電話でございます。「いま出火した、火が出た、しかし消せると思う、しかし消火器のあるところがわからない、消火器のある場所を教えてくれ」こういう電話坑内から前田建設事務所へ入っておるのであります。これは前田建設職員が証言をしておる事実でございます。そうしますと、この消火器は、あったといたしましても出火した現場にはなかったのではないかと思われるし、また消火器があったといたしましても、その置き場所さえわからないようでは全く役に立たないんではないでしょうか。消火設備に関する衛生規則の方は何条に規定がありますか。二百八十九条ですか、二百九十一条ですか。
  22. 津澤健一

    津澤政府委員 消火器設置は二百八十九条でございます。
  23. 栗林三郎

    栗林委員 もう一遍お答え願います。はっきりわからないので、もう少しはっきりお答え願います。
  24. 津澤健一

    津澤政府委員 消火器設置につきましては、安全衛生規則二百八十九条で定めております。
  25. 栗林三郎

    栗林委員 二百九十一条は適用されませんか。
  26. 津澤健一

    津澤政府委員 二百九十一条は「火気使用場所火災防止」のことで「喫煙所、ストーブその他」、「その他」の中にはもちろんこれも入りますが、そういったことを中心に定めておるものでございまして、私どもといたしましては、違反の疑いのある条文としてはさきに申し上げた条文を考えております。
  27. 栗林三郎

    栗林委員 二百八十九条が適用される、こういうお答えでございます。二百九十一条を適用することは無理だと私も思いますが、二百八十九条にはこう書いてあります。予想される火災性状に適応する設備でなければならない、こういうように書かれておるのであります。これとても、わかるようなわからないような迷文でございます。予想される「火災性状に適応するもの」こう二百八十九条には書いてあるのであります。私は長大トンネルのような特殊な現場には、万一の火災に備えて、より明確に消防設備を具体的に明示すべきでないかと思っておるものでございます。二百八十九条だけでは、大清水トンネルのようなああいう特殊な現場消火設備には不適当な条文だと考えますが、いかがですか。
  28. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のとおり、大清水トンネルのような事故を見ますと、私どもの法令はなお不備なところが多いと考えております。したがいまして、御指摘のように二百八十九条だけではあのような災害防止にはなお不十分でございますので、その辺のところを含めて鋭意検討中でございます。
  29. 栗林三郎

    栗林委員 次に、この現場には警報設備がなかったということでございます。警報設備はなかったのですか。その事実関係をお答え願います。
  30. 津澤健一

    津澤政府委員 警報を伝えるそれ独自の設備はなかったようでありますが、警報を伝えることが可能な電話等の設備はあったようでございます。
  31. 栗林三郎

    栗林委員 警報設備現場にはなかった。しかし、設備がなくてもこれは違法にならないんではないでしょうか。というのは、警報設備に関する法律条文を私は発見することができなかった。見当たらない。安全衛生規則にはこの場合の現場に適応するような警報設備に関する規定はありませんね。いかがです。
  32. 津澤健一

    津澤政府委員 安全衛生規則におきましては、特定元方事業者が講ずべき措置ということで、六百四十二条に「警報の統一等」の義務が付されておりますが、警報設備そのものについての文言はございません。
  33. 栗林三郎

    栗林委員 この火災発生時、その削岩機切断作業をしておりました出火現場で働いていた労働者は十一名おります。その十一名中不幸にして三名は死亡、八名は辛うじて脱出しておる。ところが、そこから二百五十四メートル水上口の方へ離れた場所で働いていた者は十四名おります。その十四名中死亡者は何と十一名だ。逃げた者は三人しかおらない。出火現場の者は大半脱出した。二百五十メートルも離れたところで仕事していた労働者は大半死亡しておるのです。また四キロ離れた現場の丸山工務店の労働者に聞いてみれば、電話をかけても通じない、煙で目が痛くなった、鼻水が出てがまんができない、これは大変だと思って、辛うじて逃げたと語っております。この場合、警報設備があればあるいは被害を最小限度に防止することができたと思うのでございます。一昨年大阪の柳井建設宿舎火災の場合も、警報設備さえあれば十二名の死亡者を出さないで済んだのでございます。この警報設備に関する規定が安全衛生規則にないということは、きわめて遺憾でございます。ここにも法の不備、欠陥が暴露されておると思いますが、この点はいかがですか。
  34. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のとおり不備であることを私どもも認識いたしまして、そういった点をただいま鋭意検討中でございます。
  35. 栗林三郎

    栗林委員 次に、先ほども申し上げましたが、坑内からの電話は一回限りなんです。後は全く通信が不能になってしまった。事務所の方からかけても通じない、坑内の方からもかかってこない、前後ただ一回の通信でございます。私は、このようなむずかしい現場の安全を管理するためには、電話一本だけではきわめて不適切だと思うのでございます。不完全だと思うものでございます。万一に備えて第二、第三の予備線を考慮すべきではなかったでしょうか。これはひとつ公団側からお答え願いたいと思います。
  36. 川島廣守

    川島参考人 お答えを申し上げます前に、発注者といたしまして、十六名というとうとい犠牲者を出しましたことについて心からおわびを申し上げたいと存じます。  ただいま先生のお尋ねでございますが、労働省側からもお答えがございましたように、連絡手段といたしましては電話しかなかったわけでございます。開通いたしますまでには、発破を使いますので警戒用のサイレン等を準備しておるわけでございますが、不幸なことに、開通いたしてしまいましたものですから、いま申しましたようなサイレンも全然なかったというのが事実でございます。お尋ねのように、もしサイレンその他視聴覚に訴えるような警報装置が準備してございますれば、犠牲は少なくて済んだであろう、かように考える次第でございます。
  37. 栗林三郎

    栗林委員 次に、避難訓練についてお尋ねしたいと思います。  火災発生時点でいま少しく適切な避難命令等が現場長から出れば、このような惨事には至らなかったと思われます。聞くところによりますと、このジャンボ切断作業は、下請渡辺組が前田建設から三百六十万円で請け負った仕事と聞いております。下請としては、出火による損害を考えて、人命よりもまず消火にのみ気をとられたのではないかと思うのであります。したがって、労働者への避難命令が非常に出しおくれたのではないかとも推測されておるのであります。  湯沢トンネル事故発生後、基準局長から「トンネル工事等における坑内火災の防止について」という局長通達が出されておりますが、この通達の中に避難訓練が明示されております。果たして前田建設では実際の避難訓練、消火器を使っての実際の避難訓練を実施しておったのかどうか、私どもの調べでは実施しておらなかったという調べになっておりますが、この事実関係はいかがですか。労働省側からお答え願います。
  38. 津澤健一

    津澤政府委員 その点も含めてただいま調査中でございますが、ただいままでの事情聴取等で得られた結果からいたしますと、御指摘のようなことが言えるように考えております。
  39. 栗林三郎

    栗林委員 この事件の最終結論はまだ判明しませんが、前田建設工業の重大な過失はすでに明瞭であります。過失致死は免れないと私は思っておりますが、この際、当時の大清水トンネル現場の安全指導体制がどうであったか、若干お尋ねしてみたいと思います。  この大清水ではすでに十三人の犠牲者が出ておる。上越新幹線全体では着工以来何と五十人という大量の犠牲者が出ておると言われておるのであります。それにもかかわらず、少しもこの現場安全対策は実績が上がっておらない。そして一昨年、五十二年の七月には湯沢トンネル火災事故が発生しておるのであります。三十六人の労働者が七時間も坑内に閉じ込められた、幸い人命は助かったが、こうした事故の教訓などは少しも生かされてはいないではありませんか。湯沢トンネル火災は、ガス溶接器から発した火花が付近の可燃物に引火して大事に至ったものであります。今回の大清水の火災と全く同じケースではありませんか。  私の手元には、先ほども申し上げましたように、湯沢トンネル事故発生後に基準局長から「トンネル工事等における坑内火災の防止について」という通達が出されておるのであります。しかし局長、こうした一片の通達文書だけで、現場の安全管理が全うできるものと考えておられるのですか。湯沢トンネル事故及び五十人の犠牲者を出したこれらの事故の教訓などをいかに安全行政に生かし、いかに努力をしてきたか、局長の御答弁をお願いいたしたい。
  40. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のように、湯沢トンネル事故の後、私ども関係業界等に通達を出して、その際とるべき対策を示したわけでございますが、これと同時に、私どもの労働基準監督機関にも通達をいたしまして、監督指導にこれを生かせるように通達したわけでございます。  労働省におきましては、かねがね労働災害防止の最重点に建設業を挙げておりまして、一生懸命にやっておるつもりではございましたが、御指摘のようにきめ細かな点につきましてなお欠けるところがあったことを、重々反省をいたしております。  今後、この通達の述べ足りない部分をさらに補いますとともに、今後の監督指導に手落ちのないように一層努力をいたしたいと思っております。
  41. 栗林三郎

    栗林委員 こういうような過去の事故や、それから湯沢トンネル事故などの経験が少しも生かされておらないという証拠を私はひとつお示しいたしましょう。  せっかく出された局長通達の中に、湯沢トンネル事故を教訓とするということであれば、火災防止に関する指示があってよいはずでございますが、火災に関する事項はこの局長通達にはどこにもないではありませんか。  第二の点は、湯沢トンネル事故にかんがみれば、いざというときには警報によって知らせなければならないことは当然であります。この警報設備については、行政指導、局長通達の中には一つも書かれておらないではありませんか。それですから、これらの事故の経験が一つも生かされておらないと、私は具体的に指摘しておるものでございます。  公団側にお尋ねしたい。湯沢トンネル事故後、局長通達と同時に公団側からも安全に関する重大な指示を与えられたと聞いております。私の手元にはその文書がございますが、公団側としてとられてきた安全対策について簡単に御報告をお願いいたしたい。
  42. 川島廣守

    川島参考人 お話しにございました五十二年七月の湯沢の事故は、同じ上越トンネルでの経験でございまして、早速に労働省局長通達をちょうだいいたしましたので、それをベースにいたしまして、全国の支社長会議をまず開きまして、それから担当の工事部長会議を開き、いまお話しのございましたような局長通達並びに過去の数多くの教訓をこの中に取り入れまして、会議を主催したわけでございます。  また加えまして、新潟の新幹線建設局長の名前で、お手元に先生お持ちのようでございますが、詳細にわたっての通達を出しますと同時に、安全会議を直ちに開きまして、関係機関の御指導を仰ぎながら、安全総点検というようなものを五十二年、五十三年におおむね十二回程度各種会議を持ちまして、趣旨の徹底を図ってまいったつもりでございます。  しかしながら、御指摘のように残念ながら事故が起こってしまったわけでございますが、今後は、いまの先生のお話しの中にございましたようなことも取り入れまして、まず施設の面で設備改善を図りますと同時に、何と申しましてもこの施設を使います人の問題でございますから、特にその教育と訓練の徹底に力を入れてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  43. 栗林三郎

    栗林委員 発注者側においても現場の安全管理に深く配慮され、それぞれの対策を講ぜられたその努力を私は多とするものでございます。しかし、一片の文書や会議だけで現場の安全管理が全うできるものではございませんね。最も大事なことは業者が果たしてこれを実行するかどうか。随時、点検パトロールを強化して実施させるような具体的な指導がなくては、現場の安全を確立することはできないと思うのであります。こういう意味では、公団側のせっかくの努力ではありますが、画竜点睛を欠くのうらみが残るのでございます。公団側の文書の中には火災に関する注意指示はございます。けれども、警報に関することは一日もございませんね。警報に関する事項は一つもない。重ねて申し上げるようだが、これでは湯沢トンネル事故の教訓が少しも行政の上に、安全管理の上に生かされておらないと指摘されても、弁解することができないと思うのであります。安全管理の措置には行き過ぎはございません。今後はより積極的に安全対策を指導され、現場の安全と労働者の命を守っていただきたい。公団側の安全に関する所信を伺っておきたいと思います。
  44. 川島廣守

    川島参考人 大変に貴重な御意見でございますので、今後私ども、内容につきましてその具体化に努めてまいりたいと思っております。  先生には再度現地をごらんいただいたわけでございますので、四月までに、現場でございます大清水トンネルの保登野沢工区につきましては、非常サイレンあるいは非常電話その他の設備を一切終わったわけでございまして、加えて、四月三日に教育避難訓練を行いました。続いて、四月二十四日の日に安全総点検を実施いたしまして、細部にわたりましての改善の結果の点検確認をしたわけでございます。  今後は、いま御指摘のございましたような線に沿いまして、公団を含め関係機関の御指導を受けながら、事故の再発防止のために邁進してまいる考えでございます。
  45. 栗林三郎

    栗林委員 もう一つ、川島総裁にお尋ねしたい。  大清水トンネル事故原因をただしてまいりましたが、前田建設工業の責任はきわめて重大であります。この過失はもはや動かすべからざる事実でございます。  第一に、法規則を完全に無視した違反行為、これは断じて許すことができないと思う。第二には、不満足であっても局長通達が出ておる。この通達も完全に無視されておるではありませんか。第三には、公団側からも重大な指示をされておる。その指示も、安全管理に関する会議事項ども全くほごにされておるではありませんか。  前田建設工業には、もはや人命の尊重と現場の安全に関する一片の良心も、能力も認めることができないのであります。かかる前田建設工業に対し、今後も公団側では発注を続けるつもりですか。公団側では、業者が不都合なことを犯した場合、いままでは長くて五カ月、大体二カ月の指名停止といいますか資格停止をしておるようでございますが、この前田工業に対してはどのような措置をとられようとしておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  46. 川島廣守

    川島参考人 ただいまお尋ねの中にもございましたように、事柄の真相あるいは事故の真の原因につきましては、捜査関係機関の手によってやがて近いうちに明らかになるだろうと思います。したがって、いま申しましたような諸事情が明確になりました後で、今後の問題について厳しく考えてまいりたいと考えておりますが、三月二十三日付をもちまして、元請でございます前田建設工業に対しましては、公団の全工事につきまして、工事請負資格確認書の効力を停止いたしております。したがって、今後さまざまな事情が明らかになるにつれまして今後についての措置を考えてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  47. 栗林三郎

    栗林委員 前田工業には田中倫治さんという方が重役をしておられます。この田中倫治常務取締役はかつて鉄建公団、あなた方の公団の理事、東京支社長であったと聞いておりますが、間違いございませんか。
  48. 川島廣守

    川島参考人 お話しのとおりでございます。
  49. 栗林三郎

    栗林委員 こういう関係があるといたしましても、どうか世論から、こういう元高級官僚と癒着しておるというような批判を招かれないように、ひとつ厳格な公正な処置をとっていただきたいことを要望申し上げる次第でございます。  さて、時間がなくなりましたが、安全対策確立のためには法令、規則の改正も必要であります。監督行政の強化も取り上げられなければなりません。しかし、もう一つ大事な条件があります。それは事業者の安全に関する自覚でございましょう。法令、通達、指示、会議などを無視するような違反業者、過失致死に問われるような悪質な業者は一掃しなければならないのではないでしょうか。そのためには許可の取り消し、業務の停止あるいは公共事業の発注停止などを含む厳しい行政措置をとる必要があろうと存じます。労働大臣関係各省庁とも合議され、このような行政措置を考慮すべきであろうと思いますが、労働大臣の所信をお聞かせ願いたいと存じます。
  50. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 先刻からいろいろ適切な御指摘を私も承っておりまして、本当に安全につきましては心してやらなければならないと考えております。私の所管する省庁だけでなく、各省庁にまたがる問題でございますので、各省庁とよく話し合いを詰めたいと思いますが、適切な処置をとりたいと考えております。
  51. 栗林三郎

    栗林委員 遺族補償についてお尋ねしたいと思います。  川島総裁は、過ぐる四月十日の国会で、遺族補償については公団側としてもできるだけ指導をしてよい結果を見るようにいたしたい、指導するという御答弁をされておられるのであります。したがいまして、公団側はこの遺族補償に関してどのような指導をされ、どのような補償内容になっておりますか、お答え願いたい。
  52. 川島廣守

    川島参考人 このたびの災害にお遭いになられた十六名の方々は、一名の方を除きましてはいずれも一家の柱として働いておられた方々でございまして、残されました御遺族の苦衷、精神的な苦痛あるいはまた経済的な意味での将来の不安、これは想像に余りあるものがございます。したがいまして、私から元請の前田の社長に対しまして、いま申しましたような内容を含めまして、御遺族の方々に経済的な不安が残ったりあるいは精神的な苦痛が今後も続くようなことのないように、ひとつ十分に御遺族の方々と話し合って、円満な補償についての話し合いをするようにというふうな指導をいたしたわけでございます。  今日までのところ、社の方から私の方への連絡では、十六名の全員の御遺族の方々と十分な話し合いをした結果、補償のことについては円満に合意を見た、こういうふうな報告を受けている次第でございます。
  53. 栗林三郎

    栗林委員 時間がなくなりましたのではしょって申し上げますが、私は、事件事件としてその責任は明らかにしなければならないが、せめて遺族に対する補償に関しては、後日問題を残さないようりっぱな解決をしてくれることを念願しておるものであります。  申し上げるまでもなく、故意または不当に他人の権利を侵害したときはその損害の賠償の責めに任ずる、これは民法七百九条の定めでございます。また七百十一条には家族の慰謝料の定めもございます。しかし、多くの出かせぎ労働者や遺族の方々は、この賠償請求の権利を知らないのであります。この法律を知らないのであります。そこで業者は、恩恵で贈呈するような巧みな交渉をやっておるのが通例でございます。二千三百万とか二千八百万とかという情報は流れておりますが、どんな態度で話し合いをしておるのか、その金額はどう算定されるのか。  私は、参考までに一例を申し上げます。昭和五十一年二月の栃木大瀬橋で六人の潜函労働者死亡した事件、これは大林組ですが、大林組では、世論の厳しさ、監視もありまして、まず遺族代表と交渉、これは各個交渉ではなくて、遺族代表全員を集めて交渉をいたしました。立会人として山形県庁の西村山地方事務所長がこれに加わっておるのであります。そしてまず権利義務を明確にした。次に算定方法としては、第一に新ホフマン方式によることとし、第二にその基礎日額は過去三カ月間の平均賃金とする、第三には慰謝料をこれに加える、この条件で合意して算出されたもので、三十歳の者で約三千万円の補償を算出、支給されておるのであります。大林組の遺族対策はまことに適切であったと思うのであります。  今回の事故で亡くなった岩手県の谷地武志さんの場合は、この方式で計算しますと四千万円を超える補償額になるのでございます。情報によりますと、遺族の中から不満が出て、複数の人たちが委任状を添えて再交渉するかもしれないと伝えられておるのであります。この際、公団側は、もう一遍前田建設にただされてよく指導され、後遺症が残らないようなりっぱな遺族補償を指導していただきたいと思いますが、公団にお答えをもう一遍願いたいと思います。
  54. 川島廣守

    川島参考人 ただいまのお話でございますが、補償の額の内容その他につきましては実は承知をいたしておらないのでございますが、いま先生が例として挙げられましたようなことは、これは大変にりっぱな先例でございますので、今回の前田と遺族との間の補償の話し合いは、いま申されましたような事柄が基準となって話されたというふうに承っておるわけでございます。しかし、御遺族との間に円満な話がついたという報告ではございますが、いまお尋ねがございましたように、いろいろな事情によってまた新しいいろいろな話があるようでございますれば、会社側としては当然、御遺族の方々のお話しについて十分耳を傾けますように、重ねて指導してまいりたいと考える次第でございます。
  55. 栗林三郎

    栗林委員 終わります。
  56. 森下元晴

    森下委員長 次に、川本敏美君。
  57. 川本敏美

    川本委員 時間が大変制約されておりますので、私は要点だけ簡単に質問をしていきたいと思いますので、答弁もひとつ要点だけ簡略に、明快にいただきたいと思うわけです。  それで、きょうは振動病の問題について林野庁と労働省に御質問をしたいと思うわけですが、林野庁は長官お見えですか。——来てない。きょうは振動病に対して、私だけの質問じゃなしに、あと矢山委員あるいは島本委員からも質問をする予定なんです。そういう中で、きょうはどんなことがあっても林野庁長官に出てもらいたい、こう強く要請をしておいたわけですけれども林野庁長官が来ないということでは、振動病対策について林野庁が本当に全力を挙げて取り組むという姿勢でおるのかどうか疑わしいと思うわけです。振動病について林野庁は一体どう考えておるのか。まず林政部長、お答えいただきたい。
  58. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 林野庁といたしまして、この振動障害対策は、民有林行政及び国有林の事業の運営管理を通じまして、最大の課題であるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、一種の職業病でございますので、すでに労働省の方で基本的な枠組みができております。しかしながら、林業の特殊性から見てなかなかそれに乗りにくい面があるわけでございまして、それに乗せるように全力を挙げてまいったわけでございまして、一応形式的な体制はほほ整いつつあるわけでございますが、さらに、欠けている点等があれば実態に即して検討を進めてまいる所存であるわけでございます。
  59. 川本敏美

    川本委員 林野庁長官がきょうは出てこれないということは、私は全く議会軽視だと思うわけです。きょうは時間がありませんので、私はこのまま質問を続けますけれども、あとの矢山委員や島本委員質問のときには長官に出てもらうように、これは強く要望しておきたいと思うのです。  それで、まず最初にお聞きしたいのですけれども、いわゆる白ろう病という振動病患者の発生状況は最近はどうなっておるのか。四十八年以降の年度別の認定患者数について、国有林と民有林に分けて、国有林は林野庁から、民有林については労働省から御答弁いただきたいと思う。
  60. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 国有林についてお答えいたします。  四十八年認定者の数が四百三十九人、四十九年七百八十八人、五十年四百八人、五十一年二百一人、五十二年百九十五人、五十三年八十七人、五十三年度末累計で三千四百六十名、かような数字になっております。
  61. 津澤健一

    津澤政府委員 民有林におきます振動障害の業務上認定者の数は、各年度末におきまする労災保険受給者の数をもって申し上げますと、昭和四十八年度末が三百九十三人、四十九年度が四百二十四人、五十年度末が九百一人、五十一年度末が千四百四十八人、五十二年度末が二千七百五十七人となっておりまして、年度別の新規認定者の数について見ますと、これは四十九年度以降でございますが、継続的に調査、把握をいたしておりますけれども、これは四十九年度が二百四十一人、昭和五十年度五百五十六人、五十一年度が八百九十九人、五十二年度が千三百四十八人となっております。
  62. 川本敏美

    川本委員 ただいまの報告では、国有林の方では五十年をピークにして、一応発生状況はだんだん減少の方向に向かっておると思うわけです。四十九年が七百八十八人、それ以後減少の方向に向かってきておる。ところが民有林の場合は、ただいまの答弁では、逆に年を追ってだんだんとふえてきておる。  民有林の場合は、五十三年度末で認定患者は大体何名くらいになりますか。
  63. 津澤健一

    津澤政府委員 まだ集計が終わっておりませんので何とも申しかねるのでございますが、四十八年から五十二年までの傾向を申し上げました角度から類推いたしまして、あるいはふえるかもしれないという感じでございます。
  64. 川本敏美

    川本委員 それでは、簡単に御答弁いただきたいと思うのです。  国有林は大体減少の傾向をたどっておると思うのですが、それはどういう理由で、今後は大体どういう推移をするという予測をしておられるのか。あるいは民有林については逆に毎年激増してきておる。大体私の推測では、もうことしは民有林では四千を超えておるのじゃなかろうかと思うわけです。そうすると、民有林、国有林合わせると七千名を超える認定患者数になる。全部健診が終われば一万人を超える。こんな職業病は、戦後そんなにたくさんないと思うのです。ところが、その激増する振動病の対策というものがまことにお粗末ではないかと私は思うわけです。  そこで、民有林の方についてはこのように毎年激増してくる傾向は、何が理由でそうなっておるのか。これに対して労働省は、今後どのような展望を持っておるのかということを、あわせて答弁いただきたいと思うのです。
  65. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 国有林につきましては、かねてから振動機械操作時間の規制の徹底、特殊健康診断の充実等、予防対策を講じてまいったわけでございます。今後さらに、振動の少ない機械の開発あるいは代替機械の開発導入、それから振動機械を使用しない他作業との組み合わせ等、予防措置をさらに推進することを考えておりますので、新たな認定者の発生は今後も減少するというふうに見込んでおるわけでございます。
  66. 津澤健一

    津澤政府委員 民有林におきまする振動障害の発生の累計は国有林に比べて少ないのでありますが、認定患者の数は、先ほど申し上げましたように年々増加している状況でございます。これは過去におきまして、民有林では、事業者に防止対策が十分周知されていなかったということ、健康診断の実施が国有林に比べましておくれたことなどによるものと考えておりまして、これらの対策をさらに強化したいと考えております。
  67. 川本敏美

    川本委員 それでは、この問題については後ほど触れるとして、チェーンソーの問題について私は聞きたいと思う。  振動病の発生原因がチェーンソーにあることはもう論をまたない。だから林野庁では、その使用時間とかいろいろな規制について、全林野の労働組合と協定をしながらそれを実施してきたために、だんだん減少の方向に向かってきておる。民有林についてはその対策が十分徹底していないために、今日だんだん激増してきておるということ。そのチェーンソーの構造規格とかあるいは安全衛生規則に基づく特別教育の実施が、一九七七年の秋より措置されているわけですね。特にその特別教育の実施によって、使用されているチェーンソーの台数とかあるいは使用者数というものが把握できたのじゃないかと私は思うのですけれども、どのようになっていますか。労働省から。
  68. 津澤健一

    津澤政府委員 チェーンソーを使用いたします労働者の数につきましては、ただいま御指摘のように、林野庁の補助事業によります特別教育が五十二年度から行われておりまして、これによって把握が可能であり、聞き及ぶところによりますと、その受講者数は、一人親方なども含めまして昭和五十二年が一万九千六百七十一人、昭和五十三年が三万七百三十七人でございます。  また労働省におきましても、五十三年の十月一日以降特別の教育を義務づけたところでございまして、これにつきましてはまだ全体の集計段階に至っておりませんが、こういったことで把握が可能と考えております。
  69. 川本敏美

    川本委員 どうも、いまの答弁では、チェーンソーというものの実情がまだ把握できてないのじゃないかと思うわけです。三G以上のチェーンソーは、現在全国で何台ぐらい使用されていますか。これは林野庁ですか、労働省ですか。
  70. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 お答えいたします。  五十三年三月末現在で、私ども、主要な林業県十県程度につきまして、抽出でチェーンソーの保有機種の調査をいたしたわけでございます。それによりますと、推定の数字でございますが、大体六〇%ぐらいが三G以下ということになっているのではないかというふうになっております。
  71. 津澤健一

    津澤政府委員 民有林につきましては、まことに遺憾ながら、現在のところ全体の把握ができておりません。一部一斉監督を実施した事業場などにつきましては把握が進んでおりますが、今後とも努力いたしたいと思っております。
  72. 川本敏美

    川本委員 私は、振動病撲滅に対する林野庁や労働省のそういう姿勢が、今日振動病患者の激増を来している原因だと思うわけです。  この間、五月十一、十二の二日間、私どもは、島本委員を団長にして和歌山県へ調査団として行ってまいりましたが、時間がないので実態を簡単に報告しますと、驚くべき、恐るべき実態が私たちには理解できたわけです。大臣、よう聞いておいてください。和歌山の龍神村というところに行きますと、この村は御承知のように村民が全部で五千人程度、世帯数にすると千五百足らずですが、そこに山林労働者が全部で五百一人いるのです。その五百一人いる山林労働者の中で、区分がAといういわゆる異常なしという人はたった一人しかいない。あとは全部所見があるわけです。そうして九一%の労働者が振動病にかかっておる、こういう実態があるわけです。  また龍神村は、一九七八年度一年間、去年一年間の村の財政負担だけを見ても、実にこの白ろう病対策のために四百十万円という金を支出をして、健診をやったり、健診の道具を買ったり、あるいはその健診のための補助員を出したり、いろいろな措置をしておるわけですけれども、県や国はこれに対して何ら援助の手も差し伸べていないわけです。  驚くべきことは、和歌山労基局の報告ですけれども労働省委託の林業巡回健診実施状況報告の中で、同じ和歌山県の古座川町というところは、おととしの一九七七年に受診者数が四十人で、そして全員管理C、いわゆる要入院というような結果が出ておる。一人もいい者がいない、四十人が全員管理Cだ、こういうような状態なんです。  さらに、国立白浜温泉病院の院長さんにも会って話を聞きましたが、この院長さんの話では、国有林の労働者は診察、健診をしても大体軽度の人が多い、ところが民有林の人は手のっけられないような重度の患者が大半だ、こういうふうに言っておられるわけです。私どもは、こういう状態をなぜ放置をしておくのか、これはもうふんまんにたえないわけです。  私は奈良県選出ですけれども、奈良県の状況を見ましても年々増加をしてきて、現在、管理Bと管理Cの患者数はすでに二千人を超えておる実情にあります。四十八年からこの健診が始まっておるわけですけれども、昨年の一九七八年にはBが百六十人、Cが百六十三人、四百五十四人の健診者の中で三百二十三名という患者が発見されておる。こういう実情を今日まで放置してきた労働省や林野庁の責任というものは、まことに大変なことだと私は思うのです。  労働省や林野庁では振動障害予防対策について通達や規則を出しておりますね。一回使用時間十分とか、一日の使用時間二時間以内、こういうチェーンソー操作の制限を指導しております。さらにそのほかにも、あの通達では、いわゆる暖炉とか休憩小屋とかあるいは手袋とか耳栓などの保護具とか施設、こういうことについての支給あるいは施設の設置を事業主に指導しておるはずです。その実態はどうなっていますか。
  73. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 ただいま御指摘の点につきましては、五十一年二月九日付で、林野庁長官名をもちまして、作業上の注意といたしまして、雨の中の作業等、作業者の体を冷やすことは努めて避けるとか、その他、暖かい服を着用せよとか、そのような指導をしておるところでございます。
  74. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のような予防に関する事柄につきましては、従来から個別指導あるいは集団指導でいろいろやってまいっておるわけでございますが、五十三年度におきましては十月から十二月にかけまして一斉監督をやったわけでございまして、その中から拾って申し上げますと、一日当たりの平均的なチェーンソー操業時間が二時間未満であった事業場は、一斉監督を実施した事業場の中の四二・三%でございました。それから、チェーンソー作業従事者のうちで一次健診を受けた者の割合は七〇・八%でございました。それから、御指摘のございました休憩小屋を設置している事業場は六〇・一%であります。さらに、防振・防寒手袋を全員が着用している事業場は五三・五%でございました。  以上、簡単でございますが……。
  75. 川本敏美

    川本委員 耳栓のことは触れなかったけれども、実は、この間私どもが和歌山へ行ったときに、和歌山労働基準局からこういう一覧表をいただいてきました。これは昨年度和歌山労働基準局が実施をしたいわゆる監督状況報告です。これによると、いわゆる監督事業所は四十一事業所だと言うわけです。四十一事業所全部監督に行ったのかと聞いたら、基準局長の答弁では「とても野を越え山を越え、山まで行くだけの人はおりません。だから私どもは、ここでは事業所と書いてあるけれども、これは店社です。」「それなら四十一の店社を監督したわけだな。」「そのとおりです。」「店社で監督をして、事業所へ行かずに、そんなもの実態把握できるのか」と言ったら「これは店社で記入してもらって調査しただけで、現地へは行っていないからわからぬ」と言うわけです。それでも、チェーンソーの一日当たりの操作時間は二時間未満というのが三二%、二時間以上三時間未満というのが三七%、三時間以上というのが三一%、そういう状態にあるということを報告しておられる。  まして、私どもが龍神で聞きますと、森林組合の組合長さんが、「作業班の班員に対して手袋とか耳栓とかの保護具を支給しておるか」と私どもが言ったら「そんなものは支給していない」こう言うわけです。全国で森林組合が、自分のところの労務班に対してまでも支給していないと言うのですから、この手袋とか耳栓を支給せいという通達を出したから、その通達が一〇〇%守られておるという考え方は根本的に間違いだと思うわけです。  一体、林野庁も労働省も、山林労働の置かれておる実態が実態だから、これは振動病というものは絶滅できないという考え方で、この対策を講じておるのかどうかということについて、私どもは非常に不信感を持っておるわけです。龍神で、労働者の人が来まして「チェーンソーを一日二時間、一回十分以上使わないで仕事をするようにしたらどうか」という私どもの意見に対して「そんなことをしておったら、事業主から弁当を持って帰れと言われる」こう言ったのですよ。「そんなことをしていたら、私ら、弁当を持って帰れと親方に言われる」と言うわけですよ。そんな実態を今日まで放置してきた責任は一体だれにあるかということ。振動撲滅ということは一口に言いますけれども、そうすると私はここではっきりお聞きしたいのは、振動病の予防についてはどこそこの責任です、健診についてはどこそこの責任です、治療についてはどこそこの責任です、この三つの、予防と健診と治療、これについての責任は一体どこの役所にあるわけですか。
  76. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 すでに、振動病について問題になりましたのが三十年代の末期だったと承知しております。それ以来いまだにこういう御指摘を受けるのは大変恥ずかしいことではございますが、ただいまの御指摘について申し上げますと、この枠組みにつきましては、やはり一応労働省の方で、その労働安全衛生の保障についてのいろいろな御配慮はいただくことになっており、そのための制度的な整備もなされているのだろうと思います。  しかしながら、林業労働につきましては、先生もよく御承知のように雇用形態その他がさまざまでございまして、現在の枠組みをそのまま適用したのではなかなか動かない面があるわけでございます。そのような点が今日までこのような事態を招いた一つの大きな原因になっておりまして、その点につきましては、私どもの指導も非常に足りない点があったということも深く反省しているわけでございます。  要は、全体の予防、治療、健診についての基本的な枠組みについては、これはやはり労働省の方で制度的な整備もなされているわけでございますのでやっていただく。しかしながら、それをそのまま適用したのでは林業の場合には動かない面がいろいろ多い、その点については私どもが民有林行政の一環として取り組んでいかなければならない、かように考えているわけでございます。
  77. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま林野庁の方からお話しがありましたが、労働安全衛生対策全般については、労働安全衛生法その他の労働法に基づいて私どもが、予防、治療あるいは健康診断、それから業者に対する指導ということも全般的な責任を負っているわけでございまして、その点については林業労働者についても例外ではございません。  ただ、この問題については、行政官庁としての林野庁というものがございますので、これと密接な連携をとりながら、かつ地方の都道府県とも連携をとりながら、私ども施策を進めているところでございます。
  78. 川本敏美

    川本委員 そうすると、いま局長は、答弁で、予防、健診、治療の行政責任は、振動病に関しては全部労働省に責任があると明確に言われました。ただ、林業の特殊性にかんがみて林野庁とも協議をしてやっていかなければいかぬ、そういう趣旨で、林野庁あるいは労働省基準局長あるいは厚生省医務局長ですか、三省庁の連合通達が出された原因はそこら辺にあると思いますけれども、あくまでもその通達の実施監督に当たっては労働省がやるのだということですね。もう一度答弁をいただきたい。     〔委員長退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
  79. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 基本的にはそういうことでございます。
  80. 川本敏美

    川本委員 それなら聞きますが、林業労働者の雇用の実態について、労働省なり林野庁でも把握できておるのかということです。  林業労働者の雇用の形態は、たとえて言うと終身雇用という雇用の仕方もあるだろうし、常用という年間雇用制というのもあるだろうし、あるいは日雇いで日給制というものもあるだろうし、あるいは賃金についても月給とか日給とか請負とか出来高払い制とか、あるいは労働時間はどうなっておるのか、こういう実態について把握できておりますか。
  81. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 林業労働の実態についてはなかなかっかみにくい側面もございますが、これを総括的にとらえましたものとしては、総理府の労働力調査があるわけでございます。  それによりますと、五十三年で労働者業者総数は二十万で、さらにそれを地位別に分けますと、自営業主四万人、家族従事者が二万人、雇用者十三万人のうち常用が八万人、臨時五万人、かようなことになっておるわけでございます。  ただ、これはやや蛇足になるかもしれませんが、形式上は雇用形態をとっておりながら実態上は請負に近い、あるいは年間というふうにさまざまなものがあって、事業者に対して仕事を持ってくるその形態が、ある場合には雇用であり、ある場合には請負というふうに、非常に複雑な形態にあるのが実態でございますが、一応総括的に数量的にとらえたものとしては、いま申し上げたようなことでございます。
  82. 津澤健一

    津澤政府委員 雇用の実態については、私ども先ほど申し上げました一斉監督によって把握をいたしておりますのが一つ。  それから二番目としては、林業労働者職種別賃金調査を毎年実施いたしており、これによって職種、通勤、山泊地区別及び賃金形態別の労働者数、職種及び年齢、階級別平均稼働率及び労働者数、職種、通勤、山泊地区、年齢、階級別労働者数などについて把握いたしております。  それから三番目は、林業労働災害防止協会に委託して実施したチェーンソー作業者の生活実態調査から、雇用の形態を把握いたしております。  さらにチェーンソー作業者の実態については、五十四年度に林野庁が都道府県に対して助成措置を講じておられると聞いておりまして、その実態把握について林野庁と連携をしてまいりたいと考えております。
  83. 川本敏美

    川本委員 どうも、先ほどからの話では、チェーンソーの実態把握あるいは振動病患者の実態把握、林業労働者の雇用の実態把握、そういうものがほとんど正確につかまれていないと思う。戦争でも、昔から戦略で言うでしょう。敵を知りおのれの力を知って初めて正しい戦略、戦術が生まれるのです。現在の振動病に対して、政府は林業労働の実態もわからぬ。そしてさらに、労働省がその監視、監督をやるとしても、指導をやるとしても、野を越え山を越えて行くだけの人がおらぬ。はっきりそう言うておるのですから、局長は。行ったって仕事をしているかしていないかわからぬ、そんなところへは行けません、こう言っておるわけです。そういう実態の中で、一体どうして振動病を撲滅しようという計画を持っておるのか、私は疑わしいと思うわけです。  昭和四十八年ですか、十月十八日基発第五百九十七号という通達で、雇い入れの際に健診をやる、あるいは六カ月以内にもう一度健診をやる、そういうことを事業主にやらせるという通達を出しておるわけです。ところが、和歌山へ行って調査しますと、和歌山県では四年間かかって一通りの健診がやっとで、とても一年に二回という健診は、やる能力もなければ力もないと言っておる。この通達は、出しておきさえすればそれで実施しなくともいいのですか。どうでしょう、それで労働省としては責任を免れておるのですか。
  84. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 もちろん、私ども通達を出した以上はそれが遵守されることが肝心でございます。私どもも、一般的には、労働基準監督官あるいは安全衛生専門官によって監督指導を行うことをたてまえとするわけでございますが、何と申しましても、民有林の場合には、その事業場が点在するあるいはまた労働者が転々とするというような、いろいろ複雑な実態がございます。したがって、その把握並びにそれに手の届くような監督指導ができていないという点は、工場労働等と違いまして、ハンディキャップがあると認めざるを得ないのでございます。  ただ、これについては、事業主が積極的にこれに関与していただかなければならぬということで、林業災害防止協会ができておりまして、そういった指導、それからこれには安全パトロール要員が全国に配置されておりまして、こういった民間の自主的な指導、そういうものの手もかりまして趣旨の徹底を期していきたい。  また健康診断につきましても、中小企業を対象とします健康診断機関等の育成を図りながら、健康診断の徹底を期してまいりたい。  このように、施策としては行っているところでございます。
  85. 川本敏美

    川本委員 それなら局長、お聞きしますが、安全パトロールの人が来ても、和歌山の調査のときに言っておるのは「実際はチェーンソーを四時間も五時間も使っておっても、事業主が労働者に二時間以内だと答弁せいと言うから、私らは二時間以内だと答弁しています。」そうなると、労働省の統計では二時間以内と上がってくるわけですね。私は、民間の安全パトロールにはそういう一つの限界があると思う。  さらに健診の問題ですけれども、健診は、法律上は事業主の責任において検査を受けさせることになっているのでしょう。それでは、本人のその健診を受けに行く日の日当はだれが払うのですか。あるいはその旅費は受診料も含めてだれが負担するんですか。これは労働省、どう考えておるか。
  86. 津澤健一

    津澤政府委員 事業主が負担することと相なっています。
  87. 川本敏美

    川本委員 現実には事業主は負担していないと思うのです。いわゆる日々雇い入れだとかあるいは転々と事業場を変わっていくという場合に、いままであっちこっち事業場を渡り歩いて十年間チェーンソーを使ってきた人が、たまたま伐木の仕事があったから三月前から私のところへ来てもらった。そこで健診が来たから私のところで健診に行ってもらうとした場合に、いままで十年間に使用してきた人の負担なしに、たまたまそのときに使用しておった事業主が健診のときの日当も払わなければならぬのはおかしいということで、今日なかなか払ってもらえない、健診の受診費すら払ってもらえない、そういう実情にあると私は思うのです。そして、振動病は健診を受けた日が認定の日になるのでしょう。だから、実際は過去のチェーンソー操作によって振動病にかかりながら、たまたま健診を受けたときに事業主であった人が認定のときの事業主になる。そうすると、後の休業補償の問題だとかいろいろな問題で関連が起こってくるから、私はとうていそんな責任は負えないということで、健診をできるだけ回避しようというような動きが事業主から出てくるのは当然なんです。  いま労働省から事業主負担だということを明確に答弁いただきましたから、今後はそのようにきっちりと事業主に負担させるように、労働省もしっかり監督してもらいたいと思います。  労働大臣、先ほど来の質疑応答を聞いていただいて、私は振動病撲滅にかける労働省や林野庁の意欲というものが本当にないと思うわけです。極言をすれば、いまの状態であれば、年月がたてば自然に三G以下のチェーンソーにみんな変わってしまうだろう、三G以下のチェーンソーになったら、もう時間規制とか操作規制とか保護具とか、いろいろのことをやかましく言わなくても振動病は自然に減少していくのじゃなかろうか、そういうような安易な気持ちが心の奥底にあって、今日対処しているのではないかという疑いを私は持っておるわけです。その点労働大臣は、今日の振動病撲滅にかける責任は労働省にあるということを先ほど明確に言っておられるのですが、これは撲滅のために全力を挙げてやりますか。
  88. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 先ほどからいろいろ聞いておりまして、実態がある程度私の頭の中にも入りつつあるわけでございます。  この問題は、その働く地域が山村であるというようなこと、それからいま一つには、国有林と民有林ではおのずからこの白ろう病に対する認識が、国有林が早くて民有林がおくれたというようなこともございまして、御指摘のようなことがいろいろ言われるのではないかと思います。  労働省が総括的な責任を負うということになっておりますけれども、私の感じでは、ただ単に、観念的に総括的な責任があるというだけでは済まされない。また、これを徹底的にやると申しましても、ただいま申しましたような山村の環境、実態等々踏まえまして、よほどわれわれが力を入れると同時に、関係者の御協力をいただかなければならないと思っています。  そのためには、これは私ちょっと考えたのですけれども、一体森林組合というのはあるのかないのか、あるいは森林の連合会というのはあるのかないのか、一体そういうものがあってそれがどう機能しているのか。もう森林に関係する関係者の人たちの御協力もいただいていきませんと、ただ単に通達を出すとか、労働省がその元締めでございますというようなことだけではいけないと思いますので、御指摘の点についてはわれわれとして反省すべき点は反省をしていきたいと思いますけれども関係各省、特に林野庁等と連絡をとりまして、実態の把握と今後の具体的な推進について協議を進めてまいりたいと考えております。
  89. 川本敏美

    川本委員 これは基準局長で結構ですが、先ほど来の答弁、またいま労働大臣にも答弁をいただいたけれども、どうも納得がいかぬわけです。現在の行政指導、通達行政だけで振動病が撲滅できるのかどうか。私は、そういう指導行政については一つの限界があるのではないか、もっといわゆる強制力のある立法措置を講じなければ振動病撲滅はできないのではないか、こういうことを考えるのですけれども局長、それはどうですか。
  90. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いまずっと御指摘の、チェーンソー使用の白ろう病の問題でございますが、最近振動工具を使う関係では建設業その他の分野にも非常に広がっておりまして、こういったことについて総括的に一つの立法措置によって規制をするということになりますと、いろいろな面での専門的な関係の問題を詰めていかなければならぬと思って、現在、専門家によりましていろいろの側面からの問題の検討をしていただいているところでございます。  そういうことで、チェーンソーにつきましては、とりあえず工具に対する基準とかあるいは診療についての指針のようなものを行政指導の形で進めてまいっておるわけですが、今後そういった実態等も十分認識し、かつ専門家の検討等も待ちながら、検討を進めてまいりたいと思います。
  91. 川本敏美

    川本委員 一九七七年十一月二十四日に、林野庁、労働省、厚生省の三省庁通達で「林業における振動障害に係る特殊健康診断・治療実施体制の整備について」という通達が出されて、林業振動障害健診治療推進会議というものを各関係都道府県で設置させるようになっておる。ところが、この通達の内容が、民間林業労働者の労働組合である全山労などの労働者代表とか、患者の代表をこの推進会議の構成員に加えるということが通達上出ていないために、和歌山では現実に、加えよと言うのに加えないというような問題が起こっておるわけです。  一九七五年十月二十日、基発第六百十号「チェーンソーの取り扱い業務に係る健康管理の推進について」という通達の中で「関係労働者の理解と協力のもとに」云々ということで、労働組合または労働者代表の協力をもらわなければいかぬということを明確にこの通達の中で書いておるわけです。だから、少なくとも労働組合もしくは労働者、患者の代表を構成員とするように、通達を改めて出し直すべき必要があると私は思うのですけれども、それについてはどうですか。
  92. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま御指摘の林業振動障害健診治療推進会議は、中央レベルにおきましては労働省、厚生省、林野庁の三省庁の局長、長官で構成しておるわけでございます。そして、この会議はまた、地域レベルにおきましては、労働省出先機関である労働基準局ないし厚生あるいは林野行政は地方は都道府県になりますか、こういうところでまた三者の連絡会議を持っておるところでございます。  ただ、この会議は、目的自体が地域における振動障害の健診、治療の実施体制の整備ということを目的としておりまして、その地域の関係行政機関あるいは関係林業団体等が協力いたしまして、その責任において体制整備を図ろうということが主体でございます。したがいまして、先生指摘のような、この会議自体に労働者の代表を当然に参加させるということを予定しているものではございません。  ただ、それぞれの地域の実情に応じそういった必要等もあるというようなお話も伺っております。近い機会にまた中央レベルでの三省庁の連絡会議も開かれることですし、そういった面で検討いたしますとともに、私どもの行政施策の方針を労使に徹底するための具体的な施策というものは講じてまいりたい、このように考えております。
  93. 川本敏美

    川本委員 この間、和歌山へ行きましたときに、この問題についていろいろ論議がなされたのですが、その中で特に、和歌山では振動病対策会議と言うのですが、これに労働者代表が入れられていない。そこで対策会議は、和歌山県における「振動障害の健診・治療体制のあり方」というものを発表して、そして今後の対策を進めようとしているわけですけれども、その中で、健診の結果については当面判定審査会というものが判定をするというようなことが書かれてあったわけです。  新聞は、ここに持っておるのですが、ことしの五月四日の和歌山版の朝日新聞の報道によると「県、和歌山労基局、県医師会、県森林組合連合会などで組織している県振動病対策会議は、山林労働者多発している振動病について県下全体で統一した判定を下せるように、専門医らによる判定審査会を五十四年度中に設けることを決めた。県内の振動病健診受診者は事実上、すべて審査会を通じて症状が判定され、他府県には例のない組織となる。判定はそのまま労災認定の資料にもなることから、対策会議は、これで判定のばらつきをめぐるトラブルはなくなり、多くの医師が健診に当たれるようになる」こういう発表をしたということが出ておるわけです。私は、この問題については、これはちょっとおかしいのではないかと思っておるわけです。  この間、和歌山県でこの問題についていろいろ話をしましたところ、「判定審査会というのは改めて健診結果検討委員会にします」というような答弁を和歌山県側から出されておるわけですけれども、当初の予定はあくまでもこういう判定審査をやろうという意図であったことは間違いないと思うのです。その点について、労働省、この判定審査会あるいは健診結果検討委員会という問題、お医者さんの内部でお互いに研修し合って、理解のできないところをその検討委員会に問い合わせをするというような問題なら理解できるとしても、この新聞報道のとおりにここが判定をするとか、症状固定したときもこの判定委員会が決定をするとかいうようなことは行き過ぎではないかと思うのですが、それについてひとつ意見を聞きたい。
  94. 細見元

    ○細見説明員 ただいまお尋ねのございました判定審査会につきましては、現在のところ設置されたとは聞いておりません。先生お話しのように、結果を検討する委員会設置したいという方向で現在お話が進んでおるようでございまして、当初御心配のような、健康診断の健診結果の判定についてすべてを決定するとかあるいは労災保険の給付の認定の問題について関与するとか、そういう方向では進んでないように私どもとしては承知いたしております。
  95. 川本敏美

    川本委員 時間がないので私はこれで終わりますが、今日まで労働省や林野庁の振動病、特に民間林業における振動病撲滅にかけての行政の態度というものは、全く理解に苦しむところです。ひとつ強力な立法措置を講じて、急速に撲滅できるように全力を挙げてもらいますように要望して、私の質問を終わります。
  96. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、枝村要作君。
  97. 枝村要作

    ○枝村委員 私の持ち時間は三十分ですから、そのつもりで答弁してください。  労働大臣、あした五月三十日、政府関係の特殊法人の労働組合協議会、略称で政労協と言いますが、これが半日のストライキを決行するようになっているんですが、御存じですか。
  98. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 承知をしております。
  99. 枝村要作

    ○枝村委員 御承知のことと思いますが、この闘争目標は賃金要求です。オリンピックセンターの問題もありますが、主としていま言いました賃金要求のためのストライキでありますが、その根幹は、きょう私が質問しようとしております、今日の内示体制を打破してそして自主交渉権を確立しよう、こういう基本的な要求がこの中にあるわけなんです。私がきょう質問するので大臣も勉強されたと思いますけれども、これは七年間にわたっていろいろとそのための動きが続いてまいっておる問題でありますから、できるならば栗原労働大臣になってから、あなたは御理解があるんですから、この問題に対して積極的な解決の方向に努力していただきたいと思っておりますので、そういう意味で、私は、時間は少のうございますけれども、若干の質問をいたしたいと思います。  いま、ストライキがあることを知っているとお答えになりました。これは労基法に認められた争議権によって行われるのですから合法である、これは言うまでもない。その合法的なストライキを政労協傘下の労働組合がやるわけでありますが、ことしの賃金要求も三月から始まって各組合ごとに当局と交渉しております。ところがあすのストライキは、各単産の当局に対する要求行動ではなくして、政府に対する要求の統一行動として行われるのでありますから、そういうこともひとつ御認識をしていただきたいと思います。  特にこの問題は、ストライキ権があるにもかかわらず自主交渉権を確立せねばならぬというためにストをやるのですから、やはりそれなりの切迫した考え方が労働者の中にはあると同時に、いわゆる労働三権が認められておる労働組合がなぜそうせねばならぬのかという問題について、労働省は、いままでも真剣に考えていただいてはおるのでありましょうけれども、しかし本当に、本気になってやってもらわねばならぬと思います。労働省はそういう権利を守る立場にあるのですから、いろいろ政府部内で各方面の折衝もありましょうが、やってもらわねばならぬと思います。  ただ、ここで私は一言言っておきたいのは、この政労協は組織が小さいので、ストライキをやっても余り世間を騒がせない、こういう甘い考え方でおったとしたら大変なことだと思うのです。そういう意味でひとつ本腰を入れてもらいたいと思うのであります。  私ども考えてみまするに、ストライキ権がある政労協のこの春の賃金要求がまだ未解決だということは、私ちょっと不思議でならぬのです。同じ法人格を持つ公労協などは、ストライキ権は剥奪されておりまして非常に制約がある。それでも御承知のように、ここですら春闘で賃上げが確定しているにもかかわらず、スト権のある政労協はいまだに放置されておる。ということは、私は大変不思議な、同時に、どんな事情があろうとも問題だと思っております。ですから大きな意味で言えば、このような不自然な賃金の確定方式、こういう時期にほかの組合はほとんど解決しておるにもかかわらず、ここは未解決であるというこの不自然な状態を、労働大臣は大きな意味でどのように考えておるか、これをまず第一に質問しておきたいと思います。
  100. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 ちょっと事務的な補足を前もってやりたいと思います。  御承知のように、政府関係の特殊法人の賃金改定は、長い慣行で国家公務員の給与に準拠して決めるということになっております。恐らくこれは、この特殊法人の仕事の公共性なり職員の地位の特殊性なりというようなところから来ておるのではないか。そういった意味で、春闘の時期に結果的には一緒になってない、こういうことになっておろうかと思います。そういった長い間の一つの慣行と申しますか、よるべき基準というものはそういうところにあるので、結果的にそうなっているということでやむを得ないのではないかと思っております。  ただ、ストライキの中で労使の紛争が長引きいろいろな混乱が起こるということは、私どもとしても好ましくないので、賃金改定に伴うこういった紛争が早期に解決されることが望ましいということで、労働省労働省なりにいろいろとこれまでも努力してきているつもりでございます。  たとえば内示の時期は、昔は国家公務員の給与に関する法律が決まったときに内示するとかいうことでしたが、そういうようなことではやはり問題であるということで、これを早めるとか、あるいはその内示の仕方についても、余り細かくやることはやはり好ましくないのではないか。初任給等については最近はもう内示をしないということになっておりますけれども、そういったような方向で、労使関係がスムーズにいくような形で問題がおさまるように、労働省の当然の役割りとして努力をしてきたつもりでございますが、今後も努力をしてまいりたいと思っております。
  101. 枝村要作

    ○枝村委員 多くのことを申し上げませんが、そういう十年前からの一つの動きに対して、一九七二年の五月三十日に政府見解というものが出されました。その当時は私どもを含めて非常に期待をしておったのでありますが、今日の情勢の中ではむしろ期待を裏切られて、政府見解なるものがあるために、その結論が出ないために、今日の賃金交渉そのものが手かせ足かせにされておることになっておりまして、きわめて残念であります。ですから、本委員会でも私を初め多くの同僚がこの問題についてしばしば質問を行っておりまして、双方とも努力を重ねるように要請しておるのでありますが、どうにもならぬ。  三月の段階で政労協が理事者側当局に公開質問を出しておりますが、その回答の中でも、この問題は早く結論を出していただかなければならぬと、使用者側も考えておるのであります。いろいろ事情は私ども知っておりますが、大体その責任は一体どこにあるのか、これなどをちょっとただしておきたいと思います。この問題についてどういう考え方を持っておるのか、この点について、一言お答えをお願いしておきたいと思います。
  102. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 五月三十日見解についてのこれまでの私どもの取り組みでございますけれども、お話しのように七年間かかってきています。この間、私ども事情の説明やら意見の開陳等を受けながらお話を承ってきておりますが、それだけに非常にむずかしい問題があるということを私どもも認めざるを得ないわけでございます。  結局、先ほども申し上げましたように、労働三法の適用のある特殊法人にどういった原理原則で労使関係を組み立てていくかということでございますが、関係各省もいろいろございまして、いまだに結論を見出しておりません。  今後の取り進め方といたしましては、特殊法人を取り巻く諸条件がいろいろとございますし、また変わりつつもございます。そういった情勢を十分踏まえながら、また関係者、特に労使のお考えをよく聞きながら適切な時期に適切な答えを出していきたい、したがって、現在検討中であるということでございます。
  103. 枝村要作

    ○枝村委員 私はこれ以上追及はいたしませんが、少なくとも結論というものが出されるならば、それは労働組合が納得できるようなものでなければならぬと思っております。労働省の判断では、今日の段階では諸種の事情でそういかないようなことであるから、早期に結論を出すことをためらっておるというふうに受け取られるわけであります。いずれにいたしましても、私どもは、これが早く解決できるような主張は下げようとはいたしませんので、そのつもりでいまから努力をしていただきたいと思います。  そこで、時間が許す限り相談があるのです。それはそれとして努力をしていただかなければならぬが、だから結論が出るまで漫然とほうっておくということであっては、労使関係立場からして私はよくないと思っております。桑原局長は、そのためにいままでいろいろの形で相談をしたり交渉をしたりしてきて努力はしたと言っておられる、確かにそのとおりだと思う。しかし、この際一つ御相談を申し上げたいのは、自主交渉権が侵されている最大のものが内示であることは言うまでもありません。きょうはその問題は触れないのでありますが、内示という一つの制度があるにしても、それは一つの手続の問題であって、基本的には労働三権をこれによって侵してはならぬ、こういう冷厳なる鉄則、法則がある。これはいままでの答弁の中でもそのとおりだという答弁をしております。大蔵省自身もそのような回答をしておりますが、しかしこういう内示制度がありますからどうにもなりません、いままでの慣行だと言っておるのです。しかし、いま言ったように冷厳たる法則、鉄則があることは忘れていただきたくないということと、そうしてその上に立った現実の問題処理としてどうしたらいいか、こういうことでやはり話の筋は通していってもらわねばならぬと思っております。しかも、現実の諸問題については使用者も労働者も十分承知しておるのです。承知しておる中でどうしたらいいか、このようなことでなければ前進、解決の道は閉ざされてしまうと思います。  そこで第一の相談は、政労協と政法連、使用者側の団体ですが、これはいまでもいろいろ交渉はしておりますけれども、まだまだ不十分であると思います。ですから、この二つの団体がお互いによく交渉ができるようにその機能を拡大する、そうしてそのためのいろいろな整備をちゃんとする、こういうふうなことを考えたらどうかと思うのです。桑原局長が言いましたように、五・三〇以降政法連が大分変わってきておることは事実なんですね、政府がそういう方向になっただけに。ですから、不十分であるけれども、政労協といろいろと交渉してまいりまして、いわゆる初任給の問題やあるいは年金還元融資の問題あるいは定年制、退職金、こういうことでも話し合いがせられてきて、漸次実質的な交渉ができるようになっておるのです。これは大変よいことだと私は思っております。ですから平和裏に団体交渉で物事が解決していくように、労働省がさらに一歩二歩、それ以上に前進するような指導の方法を、どういう形があるか知りませんけれども、考えてもらったらどうだろうか、このように考えておるのですけれども、何かそのための具体的ないい方式、方法というものをお考えになっておるかどうか。その点をちょっと聞かせていただきまして、できるならば、この委員会で相談して方向を決めさせていただければ、大変いいことだと思っております。いかがですか。
  104. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 いまお話しのように、政法連と政労協との間で、賃金のみならず定年制の問題とか年金の問題とか初任給の問題について、積極的にお話し合いをされる傾向が出てきておること、そういった意味で、労使関係が円滑にいっているということで私どももきわめて評価をいたしております。  いまの御提案のあれは、そういったような形で何か仕組まれないかということでございますが、私どもも、二つの団体の中で当事者能力を持って問題の解決に接近できないかどうかということを寄り寄り研究をしております。  ただ問題は、政法連という組織が連絡協議機関でございまして、これがどういう組織として位置づけられるのが一番いいかという、団体の性格の問題が一つございますし、組合は組合なりにまた問題があろうかと思いますけれども、その辺またよく関係当事者のお考えを承ってまいりたい。もちろん、またこれに関連した各公団、公庫、事業団等がございますので、その辺のいろいろな御事情もくみ取っていかなければなりませんし、関係各省もございますので、せっかくの御提案でございますので、私どもも十分研究をさせていただきたい、こういうふうに思います。
  105. 枝村要作

    ○枝村委員 それ以上の答弁を求めても無理でありましょうが、しかし、そのことに労働省がひとつ本腰を入れてやっていただきたいと思いますし、労働者もそれを非常に期待しております。  ですから、一挙にすぐということの要求は今日の段階では少し弱めても、そのために力を入れていただくことを要望しておるようであります。  二番目には、こういう努力がどんどん積み重ねられていきますと、そこから、みずから自主的な給与問題についても交渉の糸口が持ててくるのではなかろうかと思うのです。  私は、給与の問題については、これは公務員準拠だということでありますし、また内示という制度がありますから、それはそれなりに一つの理解はしておりますけれども、しかし問題は、私は政府の決断にあると思うのです。  それはなぜかといいますと、今度の七九春闘でも、公労協の賃金を決める場合には民間に準拠するという、その民間の最大なる対象が私鉄でありました。ところが、いろいろ交渉の中で、私鉄が決まらぬ前に公労協の賃金が決まる。これは公労協当局ではないんですね、むしろ政府がそういうふうにさせようとしたので、しかし、その背後にはストライキという大きな力があったことは事実なんです。しかし私の言うのは、大きなストライキを打って世間を騒がしていくからそういうこともやらなければならなかった、こういう言い逃れはしていただきたくないので、大きかろうが小さかろうがそういうことでなくして、本当に政府が、労使の関係を円満にし、三権がちゃんと確立されておるそういう労働組合に対しては、実際には交渉権が否認されるような状態に置かさないためにも、大蔵省も含めて政府・労働省が、自主交渉権というものは確立するんだ、おやりなさい、こういう態度一つによって、この政労協とあなた方の関係のいままでの紛争はおさまると思うのです。  ただ問題は、公務員等の準拠や何かは別にいたしましても、それは一定のところまで公務員のが出されぬとどうにもならぬという枠はあるでしょう。しかし、自主交渉権はそれとは別だと私は思います。だから、具体的に予算化するまでの問題という賃金、給与の協定はできないかもしれませんけれども、ことしはこれぐらいのところという一つの大枠の中で自主交渉ができるような、そして実際に決めるときには改めて予算措置もありましょうから、そのときはそのときのものとして何らかの形で取り扱う、こういうことはできないものかどうかということなんですね。初めから、内示があるから給与の問題については交渉そのものをしてはならぬという姿勢をのけられればいいんだと思うのですが、その次の次の話になってくるんですけれども、やり方によっては幾らでも私はできると思うのですけれども、いかがなものですか。
  106. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 いまのお話は、労働省限りでお答えするのはなかなかむずかしい問題がございます。お話しのように交渉権を大事にするという意味において、内示がないから交渉しないという形では、それは望ましい状況ではないと思います。交渉は積極的にやるべきだと思います。  ただ、いまお話しのように暫定的なふわっとしたものでまずやっていて、二段階目に決定というのは、なかなかいまの予算制度あるいは内示制度の中では非常にむずかしいんではないだろうか、こういうふうに思いますが、いずれにいたしましても、そういう交渉権というものを大事にするという考え方で当然臨まなければならない、こういうふうに思います。
  107. 枝村要作

    ○枝村委員 ですから、交渉権があるんです、しかもストライキ権もあるんですから、そういう組合に対していまの政府の態度は、少なくとも、交渉権の中の給与に関する部分については内示という制度があるからこれはしてはならぬ、こういうきつい態度なんです。それを理由に公団側もそういう交渉そのものを拒んでいくということですから、極端に言えば、給与であろうが何であろうが交渉をやることだけはやりなさい、こういう態度にならぬものかどうか。いまは全然交渉権否認でしょう、いまの態度は。  この問題を質問いたしましたときには、何ぼ言っても結論は同じだからということで、労働省はお逃げになっておるようでありますが、それを一歩進めて、とにかく給与の問題もおやりなさい、しかし最終的には予算の問題もありますしということで、お互いにそれは知っているのですから、承知の上で交渉ができるようにすることによって、自主交渉権というものは——賃金問題というものは、交渉権があったって自分の満足するようにいかぬ場合は妥協する場合もあるのですから、そういうやり方ができぬものかということなんです。私は、だから、別に内示とかいうような手続の問題を優先して法そのものを曲げるような、そういうことを大蔵省は平然とやるかもしれませんが、労働省がそれを許しでおってはいかぬと思う。そういう意味で言っているのです。  それともう一つは、そういう交渉を積み重ねながらも、決裂すれば中労委という第三者機関があるのですから、それに持っていくというこういうことをやればいいのですけれども、これも双方が合意して中労委へ持っていく、あるいは煮詰めた結果でないと中労委も受け付けぬということに今日なっているのです。その障害も、政府・大蔵省が中労委に持っていってはならぬという態度を持っているところに一つの原因があるのです。  労働省としてやるべき仕事は、金の問題はあなたのところに一つも関係はありませんけれども、手続やらそういう法制度のもとのいろいろな指導はできるはずなんです。その辺を考えたらどうかというのが私の質問になるわけなんですけれども、お答えできればお答えください。
  108. 桑原敬一

    ○桑原政府委員 私ども立場は、お話しのように、労使が賃金問題を含めまして労働条件について積極的にお話し合いをされるような環境あるいは条件、そういったものを整備し、またでき得れば、いろいろとそういう指導をしていくということの役割りがあることは当然存じておりますけれども、特殊法人という一つの公共性なり特殊な地位というようなことから、いろいろな制約、条件があるわけでございますから、その中でも、私どもは、それなりに関係省と十分連絡をとって、少しでも労使関係の話し合いがスムーズにいくように、いろいろと努力はしているつもりでございますが、御要望の線に沿って労働省としての役割りをさらに拡大していきたい、こういうふうに思います。
  109. 枝村要作

    ○枝村委員 まあ、じっくり相談できぬ持ち時間ですからどうにもなりませんが、政労協に所属する労働者方々は本当にまじめに物を考えているのです。自主交渉権の問題もいろいろいま障害があってできませんけれども、しかし彼らは、こういう困難な問題に労使が溶け込んで話し合いをしていくことがむしろ労使の間の信頼感をつなぐことになる、こういうふうにまじめに考えていらっしゃるのです。いまの状態で置きますと、それこそ当事者側は親方日の丸です。全くそのとおりでして、上が決めるのだからおれは知らぬと言う。こういうことでは正常な労使関係は保たれぬですよ。そういう意味からも、労働省はその立場に立って、いまの問題解決のために力を入れるべきだ、こういうふうに思うのですが、最後に、労働大臣の決意のほどを伺いたいと思います。
  110. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私もいろいろ御質問を聞いておりまして、労働三権があって、しかもなかなか思うようにいかない。基本的には公団、事業団というようなものが、いわゆる国の事業といいますか、国の最前線の事業と言ってもいいような仕事をやっておるというところに、問題があると思うのです。そういう基本的な性格なり基本的な実態の中に、なかなか現実的に割り切れないところがあると思います。その点は十分御認識の上で御質問いただいていることも、いまのお話しでわかりました。  しかし、せっかくの両当事者の討議の幅を広げていく、そういうことは必要なことでございますので、今後私どもも工夫をこらすように、いろいろと考えてみたいと考えております。
  111. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 次に、矢山有作君。
  112. 矢山有作

    ○矢山委員 先ほど川本委員から、振動病の予防措置の問題でいろいろ御質問がありました。その部分といささか重複するようなきらいもするわけでありますが、私の方は私なりに、ひとつ皆さんの御見解を伺いたいと思うのです。  先ほど川本委員の方からも指摘がありましたように、振動病の発生をとどめていくためには単なる行政指導だけではだめなのじゃないか。これまでも再三再四にわたって通達も出されておりますし、そしてまた、国会での議論も、通達、指導だけではだめだという議論がなされておったところでありまして、したがって私どもは、何としてもこの壁を破っていくためには法的な規制措置を考えざるを得ない、こういうふうに考えておるところであります。  ところが、法的規制措置については、先ほどの基準局長のお話を聞きますと、いろいろ検討しなければならぬ技術的な問題等もこれあり、いろいろ検討しておるのだということなのですが、それだけの御答弁では一体どこがどうなっておるのか、また検討と言いながら、どういう点でどういうふうな手続によって検討しておるのかというのは、われわれには一向にわからぬわけですから、まずその辺を明らかにしていただきたいと思います。
  113. 津澤健一

    津澤政府委員 法制化を進めるに当たりましては、振動障害というのが多様な症状を呈します、いわゆる症候群とも言うべき病状を呈するものでございますので、その臨床医学的な範囲などについては医学的にまだ未解明の分野がたくさんございまして、専門家の間でもコンセンサスが得られていない状況でございます。こうした面の研究をさらに積み重ねなければならない点が一点でございます。  また、チェーンソーによります振動の量、反応関係と申しますが、どのくらいの振動があった場合にどのくらい人体反応があるかというようなことにつきましても、さらに究明する必要がございます。  さらに、このような暴露限界などを定めるに当たりましては、振動の量的な把握方法を検討する必要があるわけでございますが、これはただいま専門家に委託して検討をいただいておりますが、近く報告がなされる予定でございます。
  114. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは一つ二つ、特に御答弁とわれわれの認識の違う点を申し上げたいと思うのですが、たとえば一日二時間以内というチェーンソーの実施状況についてなのですが、これは五十一年の二月ですか、集中的な抽出調査をやったら、二時間未満というのが四二・三%であったという先ほどの御報告でしたね。ところが、これは先ほど川本委員指摘されたように、この数字に対して私どもは全然信用できない。あなた方は信用しているのかどうか。たとえば、御存じのように全国山林労働組合というのがありますが、そこで七八年の二月に調査をしておるのを見ると、調査結果で、一日二時間以内の規制をやっておるのは〇・九%です。それから二時間から三時間が二・〇%、三時間から四時間の使用が四・四%、四時間から五時間の使用が七・九%、五時間から六時間の使用が一五・九%、六時間から七時間の使用が二三・五%、七時間から八時間の使用が一五・〇%、八時間以上の使用というのが一九・九%、したがって、一日六時間以上チェーンソーを使わされておるのが五八・四%という実態が出ておるわけです。こういう実態をあなた方は真剣に考えておられるのかどうか。  私は、こういうそごが出てくる最大の原因は、監督指導をやっておるのだと言われておるけれども監督指導はすべて予告によってやっておるわけです。予告するから、もう監督指導を受ける対象者の方では準備してかかっている。しかも、先ほど御指摘があったように、こういうことを聞かれたらこういうふうに答弁しなさいよという事前教育まで徹底してやられておる。したがって「二時間以内の規制が守られておりますか」と聞かれたときには、労働者の方は「二時間以内、そうなっています」こう言うのです。そういう実態があるということを御存じでしょうか。
  115. 津澤健一

    津澤政府委員 先ほど申し上げました一斉監督は、五十三年の十月から十二月にかけてのものでございました。  私どもも、現場に入りますためには、どこに現場があるかということを把握いたさなければなりませんし、確かに、そういう段階では御指摘のようなことがあろうかと思いますが、私どもの監督の結果、把握した数字が、二時間未満であった事業場が四二・三という数字が出ておりますので、すべてが口裏を合わせたということばかりではないと考えております。  ただ、御指摘のような問題は、林業の労働の実態からして、私ども監督いたしますについても大変困難な問題を含んでおりますので、そういった点さらに留意して、今後の実態を把握いたしたいと思っております。
  116. 矢山有作

    ○矢山委員 一つは、これは困難困難では済まされぬ問題なんです。それから、四二・三%が正しいものであろうというような認識をお持ちのようですが、それは、現在の民有林における振動病の発生の状況をあなた方は先ほど言われたでしょう、その状況から照らし合わせてみたら、二時間以内の規制が四二・三%も実行されておるということが信用できますか。こういう統計資料というものは、全般の背景というものものを考慮しながら、果たしてどれだけの真実性があるのかということを考えなければいけないですよ。それをきわめてずさんな調査をしておいて、しかも予告調査をやって、しかもそれについて労働者に対して事前教育するなんということも、これはもう何と言ってもわかり切った話なんですよ。「二時間以内でやっているかと聞かれたら二時間以内だと答えなさい」そのくらいなことは皆教えるのだ。そういうことがあるということを考えながら、あなた方が調査したデータを、いまの振動病の発生の状況と照らし合わせて判断しなさい、そうしてその上で、あくまでも行政指導というものに固執するなら、それを徹底化するということを考えなければいけないのです。むずかしい、むずかしいじゃ済まない、人の命と健康にかかわるのですから。  それで、林野庁の方はどうなんですか。たとえば国有林事業の実行に係る民間事業については、これは林野庁は当然その実態がどうあるかということを承知していなければならぬはずなんですよ。その点どうですか。
  117. 田中恒寿

    田中説明員 お答えいたします。  国有林におきます素材生産を民間の事業体に請け負わせるいわゆる素材生産の請負でございますけれども、こういう場合の労働安全衛生確保と申しますのは、非常に重要な問題だというふうにわれわれも認識をいたしておりまして、五十一年の八月に長官通達を出しまして、現在指導の徹底を図っておるところでございます。  現在、数量的な形での遵守状況がどうであるかということにつきましてはまだ把握をいたしておりませんけれども、私ども、契約条項にそういう労働安全衛生に関します諸通達、諸法令を遵守するように定めてございますので、さらにその遵守方につきましての指導の徹底をいたしたいということで、大体まず三つぐらい私ども考えておるわけでございます。  まず、非常に山間僻地に散在した作業所でございますので、大体どういうところでわれわれの請負事業が行われておりますか、そういうことにつきまして、年度間の計画につきまして労働基準監督署に御連絡をする、あるいはまた、実際に工事が発注になりましたときに、どういう業者がどこで仕事を始めたという御連絡をする、あるいはまた、その業者がこの振動障害問題につきましては大体どういう認識でおるというふうな、いろいろな情報等をきめ細かく連絡をいたしたい。  さらに今度は、立木処分の場合についてでございますけれども、これは所有権が移るわけではございますけれども、この場合も、私ども簡単なパンフレット等も用意いたしておりまして、契約の際にはそういうことを考えておるわけでございます。
  118. 矢山有作

    ○矢山委員 林野庁がやってきていることは皆承知しております。ただ問題は、林野庁が国有林野事業の実行に関係して民間の請負をやらしておる事業体に対して、そういう指導が徹底させられておるのかおらぬのかということが問題なんです。  そこで、林野庁は、国有林野に関係のある民間事業者の中で振動病の発生が非常に少なくなってきた、あるいは減少しつつあると認識しているのですか、それともふえつつあると認識しているのですか、どっちですか。簡単に答えてください。
  119. 田中恒寿

    田中説明員 民間の振動障害罹病者の発生状況は、民有林労働者一本で統計が出ておると思いますので、それが国有林の請負に出たものか、あるいは純然たる民有林労働にのみ従事したものなのかの区別は、いささかつきにくいんではないかと思いますけれども、やはり国有林で仕事をいたします際は、ほかの民有林で仕事をされる場合よりは、私どもの指導もございますし、わりに厳しい措置を要求しておりますので、数量的にどうということはちょっと私も申し上げかねますが。で、民有林につきましても、だんだんそういう規制の徹底は図られておる、大方の労働者の皆さんも、時間規制の重要性についてはずいぶんと認識をされておる方が多いというふうに認識をいたしております。
  120. 矢山有作

    ○矢山委員 そのくらいな答弁だろうと思っておった。というのは、民有林でどういう発生状況なのか、国有林に関係する請負部分でどうなのか、それすらつかめてないんだよ。つかめてないから、純粋の民有林で発生しておる振動病の状況と国有林に係る請負の関係の民間業者で発生しておる振動病の状況と、それを区別してつかむことすらできていないということをいまは証明した。だから、その国有林に係る請負の中で減っておるとも言えないしふえておるとも言えない。事ほどさように、林野庁というのは通達行政のしっ放しということを証明したわけです。その点で私どもは深く反省を求めたい。  そこで、あなたはいま盛んに請負業者の問題を出されたから、長官も見えたというから、その問題について聞きたいのです。  御承知のように五十一年八月三十一日に「国有林野事業の実行に係る民間事業における労働安全衛生確保対策の推進について」この通達が出ておりますね。その記の3のところで「請負契約における契約事項としての取扱いについて」という項で「製品生産事業又は造林事業の請負契約に当たっては、当該請負契約書に「請負者は、事業の実行に当たっては、労働安全衛生に関する諸法令及び諸通達に示す指導事項を遵守しなければならない」旨の労働安全衛生管理に関する条項を明記するものとする。」こうなっておるわけです。  そこで、まず第一にお伺いしたいのは、この請負契約を結ぶときに、この諸法令や諸通達を守らせるということを前提にして請負価額が決定されておるのかおらないのか、この一点であります。
  121. 田中恒寿

    田中説明員 お答えいたします。  請負契約の予定価額の積算に当たりましては、当然に二時間規制を十分に盛り込みまして、さらには、チェンソー等につきましても、労働省の告示いたします規格に合致したものの損料等を見込むということによりまして、労働安全衛生関係のそういう公正な基準が守られるように考えて予定価額を積算いたしております。
  122. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで次にお聞きしたいのは、この通達の中を見てもそういうふうなことに触れておりますが、おっしゃるように一般論としては、労働安全衛生に関する諸法令、諸通達に基づく監督指導は、基本的には労働基準監督機関が行うということは当然だ、こういうふうに私は思います。ところが問題は、この問題について請負契約書にこの件が明確に盛り込まれたわけです。そうすると、それを履行確保する責任というのは、契約当事者としての林野庁にあるというのは当然ではありませんか。この点はどうなんですか。
  123. 田中恒寿

    田中説明員 お話しのとおり、契約の条項を守らせるための指導は私どもの責任でございます。
  124. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、まず一つは、労働省に聞きたいのですが、この通達に基づいて、労働基準監督機関の方から、国有林野事業の遂行に国有林野と請負契約を結んで事業をやっておる民間事業者に対して、その労働安全衛生確保に関して勧告指導を行ったにもかかわらず、改善されないということをつかんで、それを林野庁に連絡をしたという件が、いままでにただの一件でもございますか。
  125. 津澤健一

    津澤政府委員 ただいままでのところ、そのようなことがなされたという報告を受けておりません。
  126. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、林野庁の方で、基本的にはこの諸法令や諸通達を遵守させるための責任は労働基準監督機関にあるんだ、こう言いながら、契約当事者として、先ほど指摘したように、あなた方は労働省からただの一回もそういったことについての通知を受けておらぬわけですよ。そうすると、あなた方はすべてこの契約条項が守られておるというふうに考えておるのですか。
  127. 田中恒寿

    田中説明員 お答えします。  ただいま、再三の指摘にもかかわらず是正されないような例というふうなお話しでございましたが、そういう時間規制について不十分な点があるというふうな指摘をいただきましたそういう連絡は、三件ばかり私どももいただいております。その結果、是正をされておるという例は三件ばかりございます。  一般に申しまして、そういう時間規制が守られないということがございますことは、まことに遺憾なこともございまして、私どももそういうことがないような指導を徹底いたしたいと思っておりますが、私どものそういう指導なり調査によりましてもやはり思わしくない、そういう守られないという実態がございました場合、あるいは労働基準監督署の御調査の際にそういう具体的な例がある、これはその態様あるいは内容にももちろんよるわけでございますけれども、そういうふうなことがありました場合には、これらの事業体につきまして、今後契約の相手方とするかどうかということにつきましても慎重な検討を加えて、適切に対処をしてまいりたいというふうに考えております。
  128. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、これは大分食い違いがある。労働省の方は、ただいまの答弁で言うと、労働基準監督機関から、労働安全衛生確保に関して指導勧告を行ったのにもかかわらず改善されていないということで、林野庁にその連絡をした件はありません、こう言っておるわけです。ところが林野庁の方は、三回ばかりその連絡を受けた、こう言っているわけです。一体これはどうなんですか。林野庁は三回ばかりこの連絡を受けたと言うし、労働省の方は請負契約に関してただの一遍も林野庁に残念ながら連絡したことはない、こう言っている。これはどういう食い違いなんですか。あとがあるから簡単に言ってください。
  129. 田中恒寿

    田中説明員 そういう勧告あるいは指導を労働省でなさいましても是正されないという例はございません。是正された例を私ども三件ばかり承知しておるということであります。
  130. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、労働省から連絡があったものについてはすべてあなた方の方では是正されました、こう言っているわけですか。そこは違うんじゃないの。労働省連絡をするのは、勧告はしたけれども是正をなおしないからということで、あなた方の方へ連絡が行くことになっているんだ。それを「そういう例は私どもにありません」こう言っているわけです。あなた方は連絡があって是正された例が三件ある、こう言っているのです。つまり、こちらは連絡自体を何もしていないと言っているのですよ。そこはどうなんですか。いいかげんな答弁では困るのですよ。
  131. 田中恒寿

    田中説明員 お答えします。  そういう是正されない例は非常に悪質だと思いますけれども、そういうふうなものとしてその通達に基づく御連絡、通知をいただいたことはない。ただ、そういう、これは情報連絡になると思いますけれども、どこそこの業者については時間規制の守り方についていささか問題があるとか、記録等が不備であるというような御指摘をいただいた、その連絡が私どもの方に参りまして、その後それは是正されておるという例を三件ばかり、私どもは把握しておるわけでございます。
  132. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、林野庁としては、みずからこの契約条項を守らせるための指導監督というものは積極的にはやっておらないのですか。これが一つ。  それから、そういう事例があったとして、是正するときにどういう措置で是正をさせたのですか。ただ単に、そんなことじゃいけませんぞ、こう言っただけなんですか。それとも、契約条項の一つの部分になっておるわけですから、その契約条項に対する不履行ということでそれ相応な措置をされたのか。その点はどうなんですか。
  133. 田中恒寿

    田中説明員 お答えいたします。  今回私が挙げました三つの例は、第一回のそういう指導を労働基準監督署からいただいたということで、その内容等も営林署には参っておるわけでございます。私どもも同じ林業事業体と申しますか同種の仕事をしておる事業体でございますので、その内容等を勘案いたしまして事業者に是正方、守らせるような指導をいたしまして、その結果、基準監督署の御指導と相まちましてそういう事態は是正されておるというふうに理解しておるわけでございます。
  134. 矢山有作

    ○矢山委員 こんなこんにゃく問答をしておってもしようがないのですが、私どもが現地調査をやったところでは、第一、業者の方がはっきり言うのですよ。「請負契約の中にチェーンソーの規制を含んだような形で契約金額は決定されておりませんよ。もし何だったら、林野庁があえて、請負契約の中に、こうした遵守事項を守るということを前提にして請負金額が決まっておるとおっしゃるのなら、証人に出てもよい」と言っているわけです。これは一番の大問題ですよ。諸法令を守れということを契約条項に入れておりながら、そのことを加味した請負契約の価額になっていないとするなら、これは大問題だ。  それから第二点は、そういう契約条項を入れておるのなら、これは当然監督機関にも責任があるかもしれぬが、これを履行させなければならぬ責任はみずから契約主体になった林野庁にある、契約当事者として。これは法律のあたりまえの理屈でしょう。そうした場合に、もしそれを履行してなかったということが連絡をされてはっきりわかってきたのなら、それ相応な措置をとるべきじゃないのですか。  あなた方に言わせると、ちゃんと契約条項に入れたそのことを踏まえて、契約金額にちゃんとそれを加味して計算してあると言うのだから、そうすればその部分だけは、そういう違反があるなら返戻させるべきじゃないですか。返させるべきじゃないですか。そのくらいのことはできるはずなんですよ。  なぜかと言うと、契約金額を決めるときに諸通達を守れ、チェーンソーは一日二時間以上使ってはならぬということでそろばんをはじいて算出したのだから、それが守られてないとするなら、その部分の金額は何ぼになるかということは、そろばんをはじいたあなた方が一番よくわかっているのだから、その部分だけは返させるというのがあたりまえでしょう。  長官、これはどうなんです。
  135. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま業務課長の方から御説明したとおりでございまして、請負につきましては確かに、その請負の算定の根拠といたしまして、それぞれ決められました規制で、一応チェーンソーで伐倒したときには大体どのくらいになるかということで、算出根拠としては持っておりますけれども、契約としては総合的な完成を、たとえば何立米をどこまで伐採していつまでに出すようにという総体的な契約になっておりますので、その内容の個々の問題について、いま先生が御指摘になられましたような違約金だとか返納というようなことが考えられるというふうには、われわれは考えておりません。
  136. 矢山有作

    ○矢山委員 それでは、こんなことを麗々しく契約条項の中になぜ入れるのですか。意味ないじゃないですか。こんなものを契約条項に入れて、おまけに御丁寧に、その契約条項が遵守されるように請負金額までそろばんをはじいておるのですよ。どの木を切ってどうなったこうなった、そんな細かいことを言っているのじゃないです。全体の請負契約をやるときに通達を守れ、一日二時間以上チェーンソーを使ってはならぬという規制にあわせて、金額を算出したのでしょう。そうすると、その条項が守られぬときにどれだけのものがあるのかということは、あなた方が計算したのだからはっきりわかっているのじゃないですか。一本の木を切ってどうとかこうとか、そんなことを話しているのじゃないですよ。  そうしたら、契約条項を守らぬというならそれに相応する、つまり請負金額ならその分を上乗せをしておるのでしょうから、その上乗せ部分だけは明確なんだから、それだけは返させるのがあたりまえでしょう。それを返させないで、御丁寧に通達を出して、そしてその通達に書いたものをわざわざ契約条項に入れて、いかにも厳正、適正に行政が推進されておるような印象を与えつつ、その実はしり抜けだというのは、これは不信義きわまる話じゃないですか。どうなんです。
  137. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほど申し上げましたように、契約のあり方といたしましては、私ども先ほど申し上げましたような考え方で対応いたしております。  ただ、林業を行います場合に、当然労働省等で決められましたいろいろな安全対策災害防止その他の問題については遵守すべき問題でございますし、そういう観点から、契約の中にそういう条項を入れまして、また契約金額を算定する場合のあり方としても、そういう作業をした場合の計算によりまして契約の金額をはじき出しておるわけでございますが、契約総体の問題とすれば、やはり最終的に幾らのものをいつまでに出すという形になっておりまして、その中で事業を実行していただけば、われわれとしてはそれは契約が履行されたというふうに解釈しております。  ただ、個々の問題といたしまして、労働の安全その他については十分、そういう契約の中で履行されているかどうかについての指導監督と申しますか、そういうものについては、労働省あるいは基準監督署十分連絡をとりながら、適切に指導していかなければいけないというふうに考えております。
  138. 矢山有作

    ○矢山委員 そうすると、私が一番恐れるのは、こういう契約条項を入れて請負契約を結んで、いかにも厳正、適正、公正に行政を推進するのだという姿勢を示しながら、その実績においては一遍もこういう条項が生かされて発動されたことはない。しかも、この契約条項を生かすためにどうするのだという国会の問答を聞いておると、それに対して何らの方法もない。わざわざ上積みをしてやった金を、その部分について、契約を履行されなくても返せとも言わぬ、そのままやっておくのだ。こういう国会における問答が、これはあすの日にはすぐ外にわかる。そうすると、国有林野で下請をやっている業者の方は、幾ら違反をしたってこれは一片の通達だ、こんなのは違反をしても、契約金額の中からその部分を返せと言われることはないのだ、そういうことで、安心をして違反を繰り返しますよ。そういうことの責任はあなたはどうするのですか。  少なくとも、そういう違反があるときには、自分たちが上乗せをして算出した部分は返させるというぐらいのことは言わなければ、何の役に立つのですか、こんなことをやって。こんなことをやっておって何の役に立つのですか。これは全く、みずからこういう通達を出して、ああこれで何とかなるだろうという、ただの自己満足じゃないですか。通達を実効あらしめようというなら、国会における答弁ぐらいは、あなた方きちんとした答弁をしたらどうなんですか。「守られぬときには上乗せ部分は返させます。次回からの契約の相手方から必ず落とします」そのくらいのことが言えないのですか。それを言わずにおいて、この通達を出して、国有林で仕事をしておる民間の業者通達を守らせようといったって、守りませんよ、彼らは。どうなんですか。
  139. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほども申し上げましたように、契約としては、私どもは全体の完成という形で契約を考えておりますので、いま先生が御指摘になりましたような形では考えておりませんが、ただ、個々の仕事のあり方として、決められました法規あるいは契約の中に書いてございますことのそういう履行状況、そういうものについては、今後とも十分指導監督はしていかなければいけないと考えております。
  140. 矢山有作

    ○矢山委員 あなた方はあくまでもそれで突っ張るのだから、今後の推移を見ておきましょう。それで全然実効が挙がらなかったときには、長官はもちろんですが、きょう来ておられる方には責任をとってもらいますよ。そんないいかげんなことで済まそうなんというところじゃないんだから、国会は。あなた方はいつも、答弁のときにいいかげんなことを言っておけばそれで済むと思っているんだろう。もしこれをやらせる自信がないなら、契約条項の中から外してしまいなさい。その方がもっとすっきりする。入れた以上はそれを守らせるための最大限の努力をする。やれやれと言って聞かなければ契約金を一部返させる、次期から契約をさせない、それをはっきりしなさい。それができなくて、何が振動病発生を予防するんだなんて林野庁は言えますか。どうするのですか。ただ契約全体として約束した木が切り出されればそれでいいんだ、そんなばかな話はないですよ。
  141. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 先ほども申し上げましたように、私ども、当然事業を実行していく場合に労働安全衛生規則その他については守らなければいけない問題でもございますし、また契約条項にもうたってございますから、その辺の指導監督については今後とも十分徹底を図るように努力してまいりますし、また、御指摘になりましたような守らない者はどうするかということでございますが、われわれとしても、非常に悪質な者については、その辺は十分今後のあり方についてそれなりの対応は考えてまいりたいと思っています。(発言する者あり)
  142. 矢山有作

    ○矢山委員 違反の中に良質と悪質とあるそうだから、これはまさに珍答弁だな。  それからもう一つ、この問題で関連して聞いておきたいのですが、労働安全衛生管理に関する条項の契約書への明記は、製品生産事業または造林事業の請負契約に当たってのみ行われるようになっておるようです。立木販売契約には適用されないようでありますが、なぜ立木販売契約にはこの条項を適用しなくていいのですか。請負契約にだけ適用すると、ここのところを区別したのはどういう理由ですか。
  143. 田中恒寿

    田中説明員 立木販売におきましては、製品生産の請負とは異なりまして、一たん立木の所有権が買い受け人に移るわけでございます。今度はその買い受け人がさらに第三者に伐出させることもできるわけでありまして、その先の仕事の仕方についてまで私どもが契約に盛り込むということは、なかなかなじみにくい問題ではないかというふうに考えております。  しかしながら、林業労働全体としては振動障害問題は非常に重要でございますので、立木の売買契約に当たりましても、一般的なこの種の遵守事項等につきましては、印刷物を手交する、話をする等の方法によりまして、その遵守方は慫慂しているわけでございます。
  144. 矢山有作

    ○矢山委員 立木の払い下げを受けた当事者からその次に移るか移らぬかは、それは関係ないことでしょう、林野庁には。林野庁には関係ないでしょう。林野庁は立木販売契約をした相手方を対象にしておるのだから、だから同じように、チェーンソーによる振動障害を少しでも防止しようというのなら、何も立木販売の相手方の業者をこれから除く必要はないのですよ。そこから先は、払い下げを受けた業者とその次の業者との関係ですよ。林野庁との関係においては、あくまでも林野庁が立木の販売をやったその相手方に対して、これを守らせる規制を入れるのがなぜおかしいのですか。おかしいことはないでしょう。それを払い下げようとする場合、それが第三者に渡っていくか渡っていかぬか、それは関係ないことです。しかしながら、チェーンソーの振動障害を防止するという面では、一般的には、その仕事に従事している全般に対しての指導監督は要りますよ。あたりまえの話だ。あたりまえの話だけれども、立木販売契約からこれだけを除く理由はないというのです、第三者に転売されるからということを予想して。どうなんですか。
  145. 田中恒寿

    田中説明員 転売と申し上げたのではございませんで、買い受けた業者が今度伐出につきまして、自分がそういう伐出部門を持っている場合もございましょうし、あるいは、そういう素材生産を専門とする業者に今後の伐出を請け負わせるというようなことが大体多いわけでございまして、私どもの生産請負とは大分態様が違うものであるというふうに考えております。
  146. 矢山有作

    ○矢山委員 そういう考え方はおかしいんじゃないですか。払い下げを受けた相手方が下請にその伐出をやらせようとやらせまいと——下請に伐出をやらせるとしても、やはりチェーンソーの規制というのは、振動病予防上守らせなければならぬ規制なんでしょう。規制だとするなら、その人が他人を頼んできて下請で伐出をやらせようと何をしようと、契約の相手方に対しては、これはやはり請負契約と同じようにちゃんとしたらどうなんですか。私はそれができないほどの法的な根拠はないと思いますよ。
  147. 田中恒寿

    田中説明員 再々申し上げるようでございますけれども、国有林としては、一たんそういう木材業者に売り渡しいたしまして、所有権が移っているわけでございます。それだから、何も煮ても焼いてもして食ってもいいというようなことは毛頭ございませんので、それは公正な労働基準で仕事をやるように、その辺の慫慂と申しますか勧めは、指導は私ども十分やるけれども、その売買契約に当たりましてそこまで加えるということは、なかなかなじみがたい問題ではないかというふうに考えているわけでございます。
  148. 矢山有作

    ○矢山委員 私は、林野庁の答弁にはきわめて不満だし、幾多問題をまだもっと詰めていきたいのですが、時間がありませんから、これはまた農水委なり何なりでやらしてもらいます。  そこで、もう一つだけお聞きしておきたいのは、この議論をすることができなくて、チェーンソーの一日二時間規制の問題だけでとまってしまったんですけれども、そのチェーンソーの二時間規制の問題、あるいは連続十分間以上使わしてはいけないとか、あるいは健康診断の問題、あるいは特別教育の問題、いろいろずっとたくさんの通達が出されておりますが、それが実際に履行されておるかどうかというのを見ると、ほとんど守られてないのです、現地へ行ってみても、それから直接全山労の調査報告を見ても。そうすると、これを守らせるためにはやはり法的な規制が要る。  そこで、私は、もしあなた方がおっしゃるように検討しなければならぬ課題があるなら、それは検討を続けながら早く結論を得るとして、そういう検討をしなくても直ちに法的規制に持っていけるものもたくさんあるはずです。たとえば特別教育の問題は、チェーンソーに対する特別教育というものを最近安全衛生規則の中に入れられたでしょう。そういうふうに直ちに実現可能のものもあるはずですから、こういったものについては早急に立法化を考えたらいいんじゃないですか。どうなんでしょう。
  149. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま先生指摘のとおり、従来からもチェーンソーの構造規格あるいは特別教育というような問題については法令化しているものがございます。私ども、その余のものにつきましても、非常にむずかしいものにつきましてはまた専門家等のいろいろと検討もいただかなければなりませんが、行政指導の中ですでに法制化することになじむようなものにつきましては、段階的に、先生の御指摘のとおりなことで、法制化できるものを順次進めていくという方策も十分検討してまいりたいと思っております。
  150. 矢山有作

    ○矢山委員 そこでもう一つ、例の高知県の宿毛市の宮本政秋さんという人の労災認定、これの現状、大体この間お聞かせいただきましたが、これは急がないと死亡された人の遺族というのは生活上大変なんです。だからぜひその認定を急いでいただきたいということと、それからもう一つ、私どもがぜひこの際申し上げておきたいのは、私は全身解剖をやった方の解剖所見も見ました。それから治療された医師の死亡診断書も全部見たわけです。これは全く一致しているということは皆さんも御承知でしょう。そうすれば、これの結論を出すときには、直接全身解剖をやった医者の方なりあるいは主治医の方の意見もきわめて尊重しなければならぬ問題だと思うのですが、その辺の取り扱い、そうした人たちの意見というものは無視して、そして現在審査を頼んでおる方々の結論だけで出すというんじゃないでしょうね。どうなんでしょう。
  151. 原敏治

    ○原説明員 ただいま先生指摘の高知の宮本さんの死因につきましては、主治医の診断は脳梗塞ということになっております。振動障害が直接、振動の影響を受ける部位を越えまして他の臓器に及ぶかどうかということに関しましては、まだ医学的な定説が確立していない段階でございますので、私ども、専門医の先生方にお集まりいただいて検討をいただいておるわけでございます。その検討の際には、先ほど先生指摘の解剖所見あるいは主治医の先生の所見、それから細かいデータまですべて提供いたしまして、検討を詳細に、慎重にしていただいておるところでございます。
  152. 矢山有作

    ○矢山委員 そこで、私が一つ心配するのは、専門医の方に委託して審査をしておるとおっしゃるのだけれども、その人たちは審査専門で、専従でやっておるわけじゃないですから、自分たちの仕事の合い間に暇を見つけて恐らく御協力をいただいておるのだろうと思うのです。そうなると、必然的に考えられるのは非常に日にちがかかるという問題が一つある。そんなことになると、いま言いましたように遺族は大変なんだから、この点ひとつ御顧慮いただきたいのと、それから、もし異なった結論が出るような場合は、やはり全身解剖までやってその上での解剖所見なり、あるいは主治医の死亡診断書なりその他、細かいデータが出されておるわけですから、それは、私は、一方的に委託をした先生方がそれに沿うような認定を出せばいいけれども、相反する場合は、やはり十分なディスカッションをして結論を出してもらわぬと、現実に全身解剖をやった人の意見、あるいは現実に長年治療を続けてきた医者の意見を無視する形で出されたのでは大変だ、こういうことで、そういう人たちの意見も聴取をしてもらえますか、こう言っているわけです。
  153. 原敏治

    ○原説明員 この件につきましては、先ほど申しましたように、専門医の方々に慎重に検討をいただいておるところでございます。しかも、内容につきましては逐一、いただいた資料を専門医の先生に見せて検討していただいておるわけでございます。  結論は、医学的に見て公平な立場から結論が導かれてくると私ども期待しております。また、そうなろうかと思います。そういう段階になりましたならば、あるいは主治医の先生方の見解も、それを基礎にしてお考えができるのではないかと思いますが、そういう専門的な結論が出てこようかと思っております。
  154. 矢山有作

    ○矢山委員 はっきりせぬような、なまくら答弁ですが、労働大臣、振動病の問題というのはきわめて深刻な事態になっていることは、けさ方来の論議を聞いて御承知のとおりだと思うのです。そのためには、やはりできるところから予防措置を完全にやっていくということが私は急務だと思うので、きわめてむずかしい技術的な問題は問題として検討すると百歩譲って考えても、やれる部分はどしどしやっていく。  それから、現実の問題として労働基準監督行政を見ておると、いまの仕事量に比べて出先というのは、こういったものの監督指導には大変な人員不足です。過大な仕事を押しつけておいてそれがやれないような形にしておくというのは、これは行政上の大変な問題だと思うので、そういう点の改善に努力をしてもらいたいということ。  それから、最後に申し上げましたいまの宮本さんの認定についても、ひとついろいろ御事情を聞かれて適切な措置をしていただきたい。  こういうことを申し上げておきますので、御見解を承って、終わりにしたいと思います。
  155. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 白ろう病の問題については、朝来からいろいろ聞きまして、非常に深刻な状態であるというふうに私も認識をいたしました。そして、政府委員からもお答えをいたしましたが、法律で規制をするためには、客観的に見て法律で規制することが妥当であるというものからやるわけでございますから、法律で義務づけることが必要なものはやっていく。それから、できないものについては行政指導をこれは徹底しなければならぬ。しかし、法的に規制をしようともあるいは行政指導でいこうとも、この問題については、関係者が法律を守るとか行政指導に従うという全体的なムードが、雰囲気が非常に欠けていると思うのです。法律をつくればそれでいくとか、行政指導ではだめだというのではなしに、法律をつくってもそれを守るのだ、行政指導にも従うのだ、そういうムードが出ていないところに大きな問題がある。だから、私は、先ほども申し上げたとおり、森林組合というものは一体何をされておるのか、あるいは連合会というのはどうなっているのか、関係の人たちがそれぞれいままでのやり方について反省をして、そして、お互いに協力し合ってこの問題について取り組んでいくという姿勢が必要ではないかと考えております。  それから、宮本さんの問題につきましては、よく政府委員の方から事情を聞きまして、適切な措置をとりたいと思います。
  156. 矢山有作

    ○矢山委員 終わります。
  157. 竹内黎一

    竹内(黎)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十八分休憩      ————◇—————     午後二時十七分開議
  158. 森下元晴

    森下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  村山富市君外九名提出失業手当法案を議題とし、提出者から提案理由の説明を聴取いたします。村山富市君。
  159. 村山富市

    村山(富)議員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました失業手当法案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  近年、失業者が増加をしたまま、短時間の求職活動では再就職がきわめて困難となっております。新規の求職者にとっても、就職の門は狭くなっております。季節労働者や日雇労働者の就業も、ますます不安定で困難になってっております。  しかも最近の特徴的なことは、景気回復の局面に入っても、雇用情勢はほとんど改善されず、有効求人倍率は依然として低いままであるという実態であります。  雇用保険法に基づく求職者給付等を受ける資格のある者も、給付期間が多少延長された程度では、再就職のできない人が多くなっております。  労働の意思と能力を持つこのような失業者に生活保護費を支給して、辛うじて生命をつなぐという考え方は間違いであります。労働の能力と意思を持つ者に対しては、労働力の再生産費が保障されねばならないからです。  憲法第二十七条は、すべての国民に勤労の権利を保障しております。したがって、勤労の確保されない人々に対しては、国が責任を持って、本法案のような手当を支給するのは当然のことであると言わねばなりません。  社会党は、このような状況にかんがみ、この法律案を提案する次第であります。  次に、この法律案の内容について御説明申し上げます。  第一は、この法律の目的であります。  この法律は、雇用保険等と相まって、失業者に対し、失業手当の支給及び就職指導の実施等の措置を講ずることにより、失業者の生活の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進して、その職業の安定を図り、もって労働者福祉の増進に資することを目的といたしております。  第二は、適用される「失業者」の定義についてであります。  この法律において「失業者」とは労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業につくことができない状態にある者を言い、その職業が著しく不安定であるためこれと同様の状態にあると認められる者も含むことといたしておりますが、そのような者であって、雇用保険法第十条第二項の求職者給付その他、法律もしくは条例の規定によるこれに相当する給付または炭鉱離職者臨時措置法の就職促進手当その他、法律の規定によるこれに相当する給付の支給を受けている者以外の者を言うものといたしております。  第三は、受給資格の認定についてであります。  公共職業安定所長は、六十歳未満の失業者であって、公共職業安定所に安定した職業につくことを希望して三月以上求職の申し込みをしている者の申請に基づき、受給資格の認定を行うものといたしております。  第四は、就職指導の実施についてであります。  認定受給資格者は、定期的に、公共職業安定所に出頭し、労働大臣が定める基準に従い、公共職業安定所が行うその者が、安定した職業につくことを促進するために必要な職業指導を受けなければならないことといたしております。  第五は、失業手当の日額についてであります。  認定受給資格者であって、安定した職業に引き続き六月以上従事した後の、その職業から離職した者については、賃金日額に応じて、その六割から八割の失業手当の日額を定め、ただし、最低二千円を保障し、最高は三千円で頭打ちとするものといたしております。安定した前職を持たない受給資格者についての失業手当の日額は、一律二千円とするものといたしております。  第六は、調整についてであります。認定受給資格者が、雇用保険法の規定による特例一時金もしくは日雇労働求職者給付または健康保険法の規定による傷病手当金、労働災害補償保険法の規定による休業補償給付その他、これらに相当する給付を受けている場合には、その間は失業手当を支給しないものといたしております。  第七は、支給の制限についてであります。  認定受給資格者が、正当な理由がなく公共職業安定所の紹介する職業につくことを拒んだり、または、正当な理由がなく求職活動に関する公共職業安定所長の指示に従わなかったときは、一月間は失業手当を支給しないものといたしております。これを再度繰り返した場合には、受給資格の認定は効力を失うものといたしております。  第八は、施行期日についてであります。  この法律は、一九八〇年四月一日から施行するものといたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして、御説明申し上げました。  この法律案は、失業者の、したがってあすはわが身のこととなり得る勤労国民全体の切実なる要望であることを考慮され、御審議の上、速やかに御可決されんことを切望いたします。  終わります。
  160. 森下元晴

    森下委員長 これにて、提案理由の説明は終了いたしました。      ————◇—————
  161. 森下元晴

    森下委員長 次に、労働関係基本施策に関する件について質疑を続行いたします。大島弘君。
  162. 大島弘

    大島委員 けさほど、同僚議員から振動病に関して、和歌山県の実態調査を踏まえていろいろ質問が出されたわけでございますけれども、それに関しまして、きわめて時間は短いのでございますけれども、若干お伺いいたしまして、振動病撲滅を何とかして実現してもらいたいと思っております。  大臣もあるいは労働省の幹部の方も、恐らくは振動病の実態というのは御存じないと思う。見たこともないと思う。しかし、いかに悲惨であるかということは、和歌山県の龍神村で、五百一人のうちで健康な者は一人だということ。しかも、俗に白ろう病と言われている、まさに字のとおりの病気なんです。  二年ほど前に私が行ったときには、明らかに振動病に冒されている山林労働者は、私が「あんたは病気だからやめて病院に行け」と言っても「もし私が病院に行けば親方から首を切られる、だれが私の息子を高校に行かしてくれるんだ」と言って、私を恨むような、何とかしてくれというような瞬間のまなざしを見まして以来、私はこの問題に政治生命をかけておるわけであります。私は大蔵委員会に所属しておりますけれども、事振動病に関しましては、当委員会にできるだけ出席さしていただきまして、政府の姿勢をただしていきたいと存じているわけでございます。  それからけさほど、用語の問題でございますけれども、基準局の局長でしたか部長でございましたか、答弁の中で「白ろう病」という言葉を使われたのですが、これははなはだ正確な言葉ではなく、やはり「振動病」である。特に現地へ行きますと「白ろう病」と言われることに非常に抵抗を感じているので、今後はこの言葉を厳重に慎んでいただきたい。あくまでも「振動病」と言うことにしていただきたい。  それからもう一つ、これは後ほど出てきますが、私が以下白ろう病専門病院と言う意味は、正確には労災委託病床による振動病患者のリハビリテーションセンターのことですけれども、長い名前だから簡単に専門病院ということにして質問を続けますから、あらかじめ御承知いただきたいと思います。  けさほど労働省から資料をいただきました。各都道府県別の年度別、恐らくこれは地方労働基準局別にもなると思うんですが、振動病患者の新規認定者数、それから要治療者数という二つの資料をいただきました。五十三年度ができておりませんが、五十三年度ができましたら、全社労委員にこの資料を配っていただくことを要求いたしたいと思います。  これで見てみますと、北海道を除いては、和歌山県が激増していることは明らかでございます。高知県も相当おるんですけれども、和歌山県と高知県だけが飛び離れて出ているということでございます。  なお、お断りしたいんですけれども、私は和歌山の選出でございますけれども、この問題は、何も地域代弁じゃございません。たまたま私は和歌山県の選出であり、かつ、この前社会党の調査団が和歌山県へ入ったという一つの具体的事例を踏まえて言うわけでございます。あくまでも国政レベルとしての論議なんで、たまたま和歌山県の実態を引くことが多いかと思いますが、その点はひとつ誤解のないようにしていただきたい。  労働基準局長は、年に数回、全国の労働基準局長会議を開催されていると思うんだけれども、こういう数字について、なぜ和歌山県あるいは高知県がこれほど多いとか、そういう実態について論議されたことがありますか。また、なければ、なぜ和歌山県にこれほど振動病患者が多いのか、その原因を説明してもらいたい。
  163. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私ども、全国の労働基準局長を集めた会議は数度いたしております。それは、そのときどきの労働基準行政の運営の方針、あるいはそれぞれの行政の推進の実績等を検討して、また、新たにそういった方針に基づいてさらに監督指導をしていくというようなことでいたすわけでございますが、いま先生の御指摘の点について直接、振動障害の患者についての全国的な数字、あるいは都道府県ごとの数字の実態に基づきましての議論、検討ということをいたした事実は、残念ながらございません。  ただ、先生いま御指摘の和歌山あるいは高知について振動障害の患者が非常に多いという点につきましては、私の認識では、午前中にもお話がございましたが、振動障害は、いままでのところ、チェーンソーの使用による林業労働者の罹災患者が圧倒的に多いわけでございますが、国有林の労働者の振動障害の対策につきましてこれは相当早く手をつけられた、そして民間の労働者の健康診断あるいはそれによる発見というものがややおくれまして、現在非常に数字的に発見患者が多くなってきているという実態でございますが、高知とか和歌山は民間の民有林の占める割合が大きく、したがって民間の林業労働者が、ほかにもございましょうが、他府県に比べて多いということから、そういう数字が出てきているものと認識いたします。
  164. 大島弘

    大島委員 いろいろ理由はありますけれども、いずれにしてもこのまま放置することは、私も和歌山県から選出された以上、このままでは済まされないと私は思うわけです。  それで、この前社会党調査団が入りましたが、けさほどから同僚議員からも話がありましたように、県の行政あるいは労働省の行政、地方労働基準局長の行政、こういうのが非常におくれているということも、私は非常に大きな原因じゃなかろうかという感じがするわけでございます。  特に、けさほどの質問の重複になりますけれども、和歌山県で判定審査会を今度設ける。これは医師会あるいは行政代表あるいは業界代表、こういうベースで進められて近く設置されようとしている。しかし、現在和歌山県では、労災は収入が年間二億で支払いが七億という、非常に収支が悪化している労災保険状況に、かてて加えて、こういう委員でやられますと、どうしても振動病患者の切り捨てというふうな結果になるおそれが多分にある。ついては、私は、これは何とかしてもらいたい。——たとえば一つの例としまして、古座川町では事業主が、これは審査会の決定だからと言って、その患者の理由を拒否したという事例もあります。また、新宮労働基準監督署では、もうこの審査会で判定づけられてそれを点数化している、この点数まで達しなければだめだというようなそういう制度もしかれている。こういう判定審査会が、いまのところ設置されていませんが、近く設置されるおそれがある。ここにどうしても公益代表あるいは労働者代表というのを加えてもらわないとこれは困るということで、ひとつこれに対して県の行政をどういうふうに指導するのか。もうできてしまえばいま言ったようなことになるので、できない前に、ひとついつごろどういう態度で県を指導するのか、それを教えていただきたいと思います。
  165. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のことにつきましては、和歌山県における「振動障害の健診・治療体制のあり方」という報告書の中にも述べられておる判定審査会の件だと承知いたしております。  これは和歌山県が独自に設置する予定のものでございまして、労働省といたしましては、チェーンソーによる振動障害につきましての特殊健康診断の結果の判定につきましては、当判定審査会の設置の有無にかかわりませず、従来どおり健診を実施した医師が総合的に判断することとしており、特には問題はないと考えております。
  166. 大島弘

    大島委員 いまの答弁はちょっとわかりにくいんだけれども、いつごろ和歌山県庁に対してこういう通達を出してくれるのかということです。けさ、あなたでしたか、川本委員質問に答えたでしょう。それを聞いているのですよ。労働側委員なりあるいは公益委員なりをこれに加えるようにという、和歌山県庁を指導する考えがあるのか。あるとすれば、いつごろあるのかということを聞いているのです。
  167. 津澤健一

    津澤政府委員 けさほど局長が御答弁申し上げましたのは、三省庁による会議のことでございまして、その中に労働者代表の意見を聞くようにすることにつきましては、中央レベルでの話し合いをいたしまして、その結果をそれぞれ反映いたすようにしたいと思っております。  先ほど申し上げましたことは、県が設けます判定審査会に対する私どもの態度でございまして、これは、それにかかわらず従前どおり、医師が総合的に判断することとしておる、こういう意味でございます。
  168. 大島弘

    大島委員 大臣にお伺いしたいのですが、先ほど言いましたように、非常に悲惨な患者が数多くおる。これは和歌山県だけでなくて、高知県初め全国の山林県では大変数が多い。しかも、たとえば医者からもう軽作業をしてもよろしいと判定をされても、なお、そういう軽作業がないから、再びチェーンソーを握らなくちゃならないというのが実態なんです。これは私たちは、この前の和歌山県の調査でつくづくわかったわけです。それが、自分がチェーンソーを離したらだれが自分の息子を高校へやってくれるのか、という切実な労働者の訴えなんです。したがって、そういう軽労働者の場をつくる何らかの施策、たとえばいま高年齢者を雇い入れたときは政府は企業に対して補助をするというような制度があるんです。もし振動病患者を雇い入れた場合には、そういうふうに政府において、そういう企業なりあるいは事業主に対して特別立法をもってこれを補助する考えがあるのかどうか。私はこの考えはきわめて正当なものだと思うのです。大臣の所見を伺いたいと思う。
  169. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私も朝からいろいろ御意見を聞いておりまして、振動病というものの実態が少しずつわかってきたような感じがいたします。したがいまして、振動病に悩んでいる方々で、しかも職場がない、そういう方々の職場をどういうふうにして確保するかというのは非常に重大な問題だと思います。  ただ、この振動病の起こる大きな原因は、やはり業務上のものが多いでしょうから、第一義的には事業主あるいは事業主の団体等森林関係者方々、そういった方々に積極的にどうしてもらうかという気持ちを起こしてもらうことが必要じゃないかと思います。ただ、それだけでカバーできるかと言うと、それだけでカバーできない。したがって、基準局とか職業安定所とか、あるいは県とか市町村とか、そういったものがよく連絡をとりまして、そういう雇用の場の創出ができるようにいろいろと検討を加えなければならないと思っております。  ただ、これをいまの段階で直ちに法制化するとかなんとかということについては、ただいまは考えておりません。
  170. 大島弘

    大島委員 高齢者を雇い入れた企業に補助する、もちろん高齢者の方々も大事だが、もっと切実なのは振動病患者だと私は思う。そういうような患者のために、これはもうぜひとも特別立法化していただきたいということを重ねて要求したいと私は思っております。  それから、同じく労働基準局長に伺いたいのですが、この前の龍神村の村長はこういうことを言っておった。「山で起きた病気は山で治したい」私は非常に名文句だと思う。われわれの山で発生した病気はわれわれの山で治したい、こういう村長の熱烈なる意見、また地元村民の熱烈なる意見もあるんだけれども、たまたまその地域が交通の非常に不便なところで、したがって、そこに先ほど私が申しました専門病院を仮に持っていくにしても、非常に不適格の地である。こういうような状況の場合に、その村に対して何らか器械の貸与とかその他の便法といいますか、救済手段を与えるような方法は現在の予算上あるのですか、ちょっとそれをお伺いしたいのです。
  171. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 現在、私ども昭和五十三年二月から、労災保険の事業といたしまして、振動障害の健診治療機器を貸与する制度を予算措置で発足させたわけでございます。ただ、現在私どもが考えておりますその貸与の対象となります医療機関は、地方公共団体が設置する医療機関その他の公的な医療機関ということにいたしておるわけでございまして、私ども、いま先生指摘の和歌山県の龍神村でそのような該当する医療機関がありますれば、もちろんその医療機器の貸与の対象になるものと考えますが、その辺のところがどうなっておりますか、実態を調べまして、またそういう場合に、県段階においてそれぞれ地域でどのようなネットワークをつくっていくかということとの関連において、私ども検討はさせていただきたいと思っております。
  172. 大島弘

    大島委員 ひとつぜひとも「山で起こった病気は山で治したい」という村長の切なる希望をかなえてやっていただきたい、私はそう思うわけです。  厚生省の国立病院課長にお伺いしたいのですが、和歌山県の白浜国立病院に五十四年度予算において若干の振動病対策予算がついているのですが、その内容を説明してください。
  173. 吉崎正義

    ○吉崎説明員 国立白浜温泉病院におきましては、県等の要請に基づきまして振動病の治療を担当しておるわけでございますけれども、御指摘のございました昭和五十四年におきまして設置しようとしておりますものは、振動病クリニックというものでございまして、振動病に対する診断・治療の機能をさらに強化しよう、こういう目的のものでございます。担当の医師主任を一名置きまして、その下に非常勤の医師、看護婦各一名を配置いたしまして専門的な業務を担当させる、こういうことでございます。  予算的には、病院経営費の中で昭和五十四年度はおよそ二千四百万円予定しておるのでございますけれども、このほかにも、昨年度におきましてすでにサーモグラフィー等の整備を行ったところでございます。
  174. 大島弘

    大島委員 過日、この白浜国立病院を社会党調査団が調査して、その院長に聞いたところ、せいぜい年間五十人くらいしか診る能力はない、こう言っているわけです。年間五十人。和歌山県は現在認定患者だけでも六百三十七人おります。いわんや潜在患者を含めますと大変な数字になるのですが、したがって、その白浜国立病院でつけられた予算というのは、要するに県当局等はこれでもって白ろう病対策は万全、万全と言っては少し語弊がありますが、ここをセンターにするというふうに考えているようなんですが、国立病院に振動病センターをつくるということはそもそもおかしいことだし、厚生省としては、そういうわずかな予算でもってこれを振動病センターとして考えておるわけですか。
  175. 吉崎正義

    ○吉崎説明員 厚生省国立病院といたしましては、労働省、林野庁と相協力いたしまして、振動病に積極的に参加をするという構えでおるわけでございますけれども、国立病院の性格上、広く国民一般を対象とするものでございまして、白浜温泉病院の場合にも、リューマチでございますとか脳卒中でございますとか、そういう病気もあわせて担当いたしております。したがいまして、お尋ねにございました和歌山県における振動病のセンターとするのは適当ではない。いまのところそういう考えはございません。  なお、白浜温泉病院は、現在百三十五床で運営いたしております比較的小さな病院でございまして、入院患者は、大体その一割前後が現状では限度かと考えております。
  176. 大島弘

    大島委員 そのとおりだと思います。そういうことで、国立病院長が言うように、年間五十何人しか診られないというものをセンターと考えるのがそもそも間違いなんです。ところが、そういうふうな認識をほとんどの人が和歌山県では持っておるわけでございますから、私は国政の場においてはっきり認識の転換を求めたい。  それならばセンターとは何かと言いますと、それは私が先ほど申しました白ろう病センター、振動病専門病院のことでございますけれども、これは現在和歌山県にはまだ設置されておりませんが、全国で何カ所くらい設置されているのか。またその収支状況はどうなのか。簡単に、個別的でなくていいですから、概略的にひとつ基準局長から説明を求めたいと思います。
  177. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 労災保険の事業として設置しております労災病院の関係でよろしゅうございましょうか。
  178. 大島弘

    大島委員 病院じゃないのですよ。労災特別会計の委託病床による振動病患者のリハビリテーションセンター、具体的に言えば、奈良県の大淀町に五十三年度につくったような、ああいうセンターを言うのです。
  179. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 振動病の治療のための専門の関係でもって委託病棟をやっておりますのは、北海道の洞爺温泉のところに建てておりますものと、それから今度開院になりました奈良県の大淀町の委託病棟でございます。ただ、そのほかの病院あるいは委託病棟につきましても、一定の診断・治療のための機器、施設等を整えているものはございます。
  180. 大島弘

    大島委員 基準局長、ここにおもしろい、大事な統計があるのですが、あなたの方でも統計を持っておられるかもしれませんが、北海道で患者が約千三百八十名あるわけです。この中で労災病院に入院している者はわずか五名、国立病院に入院している者はわずか一名、それから北大の登別分院ですかに二十四名という、こんな数字なんですね。つまり、こういう労災病院とか国立病院ではとても救い切れないということなんで、そういうセンターをつくればやはり患者は通院してくるというのが鉄則なんです。  そこで改めてお伺いしたいのですが、そういう労災専門病院の設置は労働福祉事業団でやっておられるのだろうけれども、どういう基準であるならば一番望ましいわけですか。たとえば患者が多いところその他いろいろ条件がありますが、特に望ましいと思われるような基準はどういうふうに算定していますか。
  181. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私ども現在考えております一つの労災委託病棟の設置の内的な基準と申しますか、そういうものは、要請がありました場合に、まず当該地域に患者数が多いこと、それから、当該地域の医療機関が既存のものでは手薄で十分な治療体制が整っていないこと、それから第三には、運営を担当する、委託を受ける方の病院側の受け入れ体制が万全であること、というような事情を勘案いたしまして、検討をして、その設置を決める、こういうやり方でございます。
  182. 大島弘

    大島委員 それでは、最後に大臣に、締めくくりといたしまして特にお伺いしたいのだけれども、あなたは労働省の最高責任者としてこのことだけはぜひともひとつお願いしたいと思うのです。  いまのように、たとえば労災病院にしましても、器具の貸与にしましても、いわゆる患者を救うということになりますと、自民党の方々はどうしても消極的になる。少なくとも積極的じゃない。金にもならない、票にもならないとなるとこれはあたりまえのことだと思うのです。しかし、この問題は金や票の問題じゃないと思う。人命にかかわる問題なんだ。そういう立場にある者の救済を、一政治家によってそれが実現できるかということです。その場合に何が一番本当に効力的かといいますと、やはり行政面において、たとえば地域の労働基準局長がもうちょっと積極的になる。専門病院の誘致にしろ、器械器具の貸与にしろ、もうちょっと積極的になってしかるべきだろうと思う。いまや和歌山県においては、ついにがまんし切れずに、この振動病の救済措置について一万人の署名運動が起こっているわけです。その認識をよく持っていただきたい。私ども、今後労働省には折衝することは多々あると思いますけれども、ひとつこのことだけは——いまや一万人の署名運動が起こっているわけです。しかも、保守王国に支えられて、そういうものはやっても金にもならない、票にもならないというのが現状なんです。私一人でやるのでは限界があるわけです。こういう場合に、やはり国の行政機関、特に地元の労働関係機関がむしろ積極的になって、先ほど申しましたように、基準局の会議におきましても数字ばかり検討するんじゃなくて、もっと積極的に、それが血のある行政だと私は思うのです。それを特に、地元和歌山だけでなくて、全国の労働基準局長にひとつそのことを厳重に申し入れてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  大臣いかがですか、いまの所見に関して。
  183. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私、いままでも答弁の中に申し上げてまいりましたけれども、振動病の問題は、全体としてこれに対して関心を深めさせる、そういう努力に欠けておったと思うのです。全体として振動病というのは大変なことなんだぞ、何とかしなければならぬぞという気持ちになりませんと、法律をつくりましてもあるいは行政指導をするといってもなかなか実効が上がらない。ですから、そういう雰囲気をつくるために、先ほど申しましたとおり、関係機関関係の団体とよく相談をして実効の上がるようにいたしたいと思います。  労働省の基準監督局に関する限りは、私から、国会のこの論議を踏まえてしかるべき指示をいたしたい、こう考えております。
  184. 大島弘

    大島委員 「山で起こった病気は山で治す」という村長の言葉、あるいは「私がチェーンソーを握らなければだれが私の息子を高校にやってくれるのか」という労働者の言葉をよくひとつ認識していただきたいということを申しまして、振動病の質問はこれで打ち切りますが、最後に一つだけ、林野特別会計につきましてお伺いしたいと思います。  御存じのとおり、特別会計で米、国鉄、健保を三Kと言いますが、これは私だけの発案かもしれませんが、今度国有林野も、あわせて四Kと仮に呼ぶとするならば、国有林野特別会計の赤字というのといわゆる三Kの赤字というのとは、本質的に同じなのかどうかということを私は財政当局に伺いたいと思うのです。  たとえば国有林野特別会計はずっと黒字だったのですが、昭和五十六年に初めて二百二十五億の赤を出した。その後、石油ショックの反動によってまた黒字に転換して、五十年度になってまた三百億の赤、五十一年度で四百四十八億の赤、五十二年度で八百十六億の赤、五十三年度決算におきましては恐らく一千億の赤が出るだろうと言われておるのですが、これはいわゆる国鉄あるいは健保のような構造的な赤字と認識しているのか、それとも木材の需給状況の低迷によってこういう赤字が出たというふうに一時的なものと認識しているのか、財政当局の意見をひとつ聞かしてもらいたいと思うのです。
  185. 加藤隆司

    ○加藤(隆)政府委員 ただいま先生がおっしゃいました数字でございますが、最近そういう収支の赤が続いておるわけでございます。五十四年末の累積赤字が千八百四十七億と見込まれております。御指摘のように最近一千億ずつぐらいふえるような傾向が続いておる。こういうような傾向にかんがみまして、昨年七月に改善特別措置法というのができたわけでございますが、この法律をつくりまして、この法律に基づく計画をつくる際に、林政審議会その他でいろいろ原因を分析されております。  第一点は、御指摘のように木材市況の低迷が挙げられております。ただ、四十五年以降では五十一年が一番木材の価格が高かったわけでございますが、このときの指数が一七二でございますが、昨年の暮れころから木材市況はまた高騰を始めておりまして、本年四月の指数では一七九・二というふうに変わってはおります。  そのほかの理由として挙げられておりますのは、事業規模の縮減傾向という問題がございます。これは四十八年に千六百万立米の伐採量があったわけでございますが、五十四年度の予算では千五百万立米、さらにこの特別措置法によります長期見通しによりますと、六十二年には千三百万立米くらいに落ちてしまう。なぜこういうふうに事業規模が落ちるであろうか。一つは、いままで皆伐というので全部切っていたのを、択伐というような方法が行われるようになってきておるという点と、木を植えた後、手ごろの木が減りまして幼い木がふえてきたというような理由がこの背後にはあります。  それから三番目に挙げておりますのは、生産性を上回る賃金の上昇、管理部門の能率化、効率化というのがおくれておる。この三点が挙げられておるわけでございます。  三Kの他の国鉄、食管、医療費というような問題とどこが違うかということでございますが、大体、いずれの特別会計におきましても四十年代に入る前はそこそこに収支が均衡しておったわけでございますが、いずれの会計、公社におきましても四十年代に入って急速に赤字がふえていった。その背後には共通するものがあるわけでございますが、それは三十年代の非常に生産性の高い産業部門の生産性向上に見合う賃金上昇、これに対して、これらの企業体なり特別会計はその生産する財貨サービスがどうしてもついていかれない。ただ、その当時に賃金の平準化というようなことで賃金上昇が行われたという段階があったわけでございます。それで、いずれにつきましてもそれぞれ対策がとられて、好転の兆しが見えていたところにオイルショックが起こって、財貨サービスの相対価格が非常に変動したというような問題がございます。  また、食管なり国鉄なり医療費については、それぞれそれ以外の特殊の要因がございます。たとえば国鉄の場合で申しますと、独占度の低下というような問題がかなり手痛く響いております。それから食管におきましては需給の不均衡というような問題。米生産そのものの生産性は上がっておるのですが、農作物全体の需給のアンバラというような問題が加わっておるわけです。内外からのインパクトを農業は非常に受けております。医療費の問題については人口の老齢化、高度医療の普及というような特殊要因が加わっております。  ただ、この三つと国有林とどこが違うかという場合に、そのそれぞれの赤字要因の中のどういう特殊要因に着眼するかということで、基本的にはコストと価格との関係で、コスト要因として生産性を上回るコストが合理化できないというような問題、あるいは需要面からのダメージを食らう、ただいま御指摘の価格などは需要面でございますが、そういうような問題があろうかと思います。
  186. 大島弘

    大島委員 私の質問とはちょっと違う答弁のように思うのだけれども、私が言うのは、要するに、いま国有林特別会計が赤字だからそれで機構減らしをせよとかあるいは人減らしをせよと言うのはおかしいということを申し上げている。これはもうほとんど、そういう構造的なものじゃなくて一時的なものだということ、特に国鉄や米と違って、国有林の事業は間違ったら百年たっても返らないのですよ、木を植えてから。恐らく五十年、百年たっても返らぬ、もし方針が間違ったらですね。私が申し上げたいのは、現実に赤字だから人減らしをやれ、機構を統合しろ、そういうような認識を持ってやられてはとてもたまらない。日本の山は今後どうなるかということを私は申し上げたい。そのことをひとつ特に認識していただいておいてもらいたい。答弁は結構ですけれども、三Kとは違うんだということ、これをひとつ十分認識を持ってやっていただきたいと思います。  終わります。
  187. 森下元晴

    森下委員長 次に、島本虎三君。
  188. 島本虎三

    ○島本委員 大臣も、せっかくきょうはこの振動病についての認識を深くされておりますが、私も今回、五月十一日から十二日、二日間にかけまして、和歌山県一帯の振動病の調査に行ってまいりました。  この実態調査の中で、私も意外に思ったんです。それは大臣、この点なんです。  国の振動病に対するこういうような施策徹底しているのかどうか。そして、県の行政機関の認識や取り組み、そして使用者の意識、こういうようなものも十分なのかどうか。せっかく温泉地帯でありますけれども、リハビリテーションにこれが利用されているのかどうか。法令の改正がございましてそれぞれ指示も、政令によるところのきちっとした規則の変更も行われたりしているのでありますけれども、しかしその施策は十分かどうか。この四点にわたって調査してみたのであります。しかし、やはりその中で、いろいろといま大島議員も申されましたけれども、一つの村で、従事している人のうちただ一人の人が健康体、九一%の人がいわゆる罹病者であるというようなこの実態、驚いたのであります。一体何をしていたんだ。その間にちゃんと法律があるのです。規則があるのです。規程はもちろん通達も行われているのであります。しかしながら、そういうふうな実態を目の当たりに見てまいりました。これは林野庁等も含めて労働省も、法令だけが空踊りしているのじゃないだろうか。実態と一致しないように、法令だけがただ単に空踊りしている状態なんじゃなかったか、こういうように思ってまいった次第なんであります。  いま大臣の方からいろいろ意見が出され、労働省も今後決意を新たにして指示も徹底させるようでございますけれども、法令が少なくとも空踊りする、こういうようなことであってはいけないと思うのであります。また、こういうことがあってはならないことを皆さんにこれから一つ一つ陳述しながら聞いてまいりたい、こう思うのでありますけれども、まず大臣、初めにこれに対する取り組む姿勢というものが大事だと思うのであります。  いままではいままで、きょう以後は新たなんでありますから、この振動病に対しての認識の浅さ、そして、これがいまや部分疾患じゃなく全身障害であるというふうにだんだん変わってきており、そのためにもうすでに夫婦別れや、それによって悲惨な状態によるところの自殺者も出ておるという実態から、一日も放棄できないのであります。認識を新たにして、今度だけはこれに対して、百年河清を待つようなつもりじゃなくて、今度こそはっきり、画竜点睛を欠くようなことがあってはならない、この決意でやってもらいたい、こう思っているのでありますが、まず皆さん、局長以下官僚が来ておりますから、この前に、大臣の決意を表明しておいてもらいたいのであります。
  189. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 たびたび申し上げるとおり、私も振動病の実態についてわかってきたような感じがします。しかし問題は、この振動病の課題について全体として、まだ大変だ、非常に深刻だという認識が足らない、お説のとおりであります。ですから、関係者とよく話し合いまして、問題の重要性を世論的にもクローズアップするということが大きな課題ではないか。  それと、労働省としてやるべきことにつきましては、私からしかるべく処置をいたしたい、こう考えております。
  190. 島本虎三

    ○島本委員 がっしり今後やってもらわなければならない、こういうように思うわけでありますが、先ほど川本委員からいろいろ質問がございましたけれども、この通達や規程、規則は守られているのかどうか、一日二時間のチェーンソーの使用規制はどうなっているのだ、こういうようなことをいろいろ聞きましたが、答弁がきちっとありました。二時間以内四二%である、休憩所六〇%である、耳栓であるとか防振具をつけておるのが五三・五%である、いろいろこういうような数字があったようでありますが、これは間違いございませんか。
  191. 津澤健一

    津澤政府委員 先ほど御説明申し上げました数字は、五十三年度の十月から十二月にわたりまして、私どもが一斉監督を行いましたその数字を労働省において集計いたした結果でございまして、私どもとしては間違いないと信じております。
  192. 島本虎三

    ○島本委員 何年何月から何月までですか、もう一回きちっと。聞こえない。
  193. 津澤健一

    津澤政府委員 五十三年十月から十二月でございます。
  194. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、いま言ったのは、年間でもない、二カ月間の平均なんですね。聞いた人の方はこれは一年の累計じゃないかと思っている。しかし言っているのは、たった二カ月なんですね。     〔委員長退席、越智(伊)委員長代理着席〕  そうすると、一年というのは数字にはないのですか。  それから、二時間以内の規制は四二%というのはわかりましたが、一回十分以内ということになっていますが、十分以内のこの規程どおりにやっている数字はどういうように出ておりますか。
  195. 林部弘

    ○林部説明員 昨年の十月から十二月までの三カ月間に行いました監督の際の数字で申し上げますと、一連続十分以内という問題につきまして、全員がそのように行っているという数字といたしましては、私どもが把握いたしました事業場は六百事業場ほどでございますが、その六百事業場の中では、約六七%のところが一連続十分ということについて配慮しているという数字になっております。
  196. 島本虎三

    ○島本委員 男なのですから、きちっと最後まで、語尾は明確に発言してください。どうも最後がわからない。  そうすると、十月も含んで十二月までですか。十、十一、十二と三カ月間で、それ以外のやつの計数は全然ないということですか。
  197. 林部弘

    ○林部説明員 昨年の十月、十一月、十二月の三カ月間に、重点的に一斉監督を行った際の数字について申し上げたわけでございます。
  198. 島本虎三

    ○島本委員 信憑性がありますか。それによって全部の患者、全部の状態がそうであるというふうに見てもよろしゅうございますか。
  199. 林部弘

    ○林部説明員 私ども一番最前線の行政を担当しておるのは監督署でございますが、その監督署が一斉にこの三カ月間に行いました数字として、私どもの方に上がってまいりましたものを集計いたしました数字が、こういう数字であるというふうに申し上げているわけでございます。
  200. 島本虎三

    ○島本委員 それ以外の月は、十、十一、十二月に全部これが集中されたように、他の月も同様だということ、こういうように考えておられるのかどうか。  それから、どこの調査で、だれが調査したのですか。
  201. 林部弘

    ○林部説明員 先ほど申しましたように、三カ月間が重点的に調査監督を行った時期でございますので、当然それは監督官が担当いたしました結果を中央の方へ報告してくる、そういう形になるわけでございます。
  202. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、これなのです。三カ月間と言っても、それは一年にならぬですよ、三カ月間じゃ。まして、私どもがわざわざ行って調査したところによりますと二時間以内の規制を四二%がやっていると鼻高々と言っているが、林産県として日本でも有数だと打り紙がつけられている和歌山県、そこにはりっぱな和歌山労働基準監督局があるのです。その局の調べでは、一日のチェーンソーの使用規制が二時間以内だというものは三分の一程度です。二時間から三時間にわたるものがまた三分の一、三時間以上ずっと勤務をやっているのが三分の一あるというのです。これじゃ振動病になるのはあたりまえじゃありませんか。二時間以内が四二%あるから大丈夫だと言わんばかりですが、現地へ行ってみたら、二時間以内が三分の一で、二時間から三時間までの間が三分の一で、三時間以上勤務時間内までが三分の一、これが和歌山県の実態ですよ。何という資料は空回りするのですか。こういうようなことをやらしていたら、当然白ろう病というか、振動病というか、全身障害になるのはあたりまえじゃありませんか。それを何か数字でごまかしている。まことにこの点は遺憾であります。  そして、この事業所については現地では監督官が直接調べたのですか。委託して調べさせているのですか。その点はデータの信憑性にもよりますが、いかがですか。今度はもううそを言ってはだめですよ。裏づけ資料があるのですよ。
  203. 津澤健一

    津澤政府委員 事業所の監督指導は監督官みずからがやることと相なっておりまして、さようにやられたものと私どもは考えております。
  204. 島本虎三

    ○島本委員 じゃ、それでやって十分なだけに、この事業所の数なんかも把握しているのですか。そのつもりですか。その把握した調査、それで完全なのですか。
  205. 津澤健一

    津澤政府委員 一斉監督を実施いたしました限りにおいては完全であると考えておりますが、先ほど来御指摘のように、全国なべてこれをそのとおりイコールに考えられるかどうかということにつきましては、なおさらに各種の方法で調査をいたさなければ、明確に申し上げられないと考えております。
  206. 島本虎三

    ○島本委員 明確に申し上げられないような資料でしょう。和歌山県でも五十三年度に調査をいたしましたよ。この調査は、対象はどこで、何カ所、だれをやったのかと聞いたら、これは店社をやったというのであります。それは四十一事業所です。林災防に加盟している事業所が六百四あるのです。現場事業所は一千四百五十あるのです。そのうち四十一だけやって、これで完全に把握できますか。これが完全なデータですか。  大臣、こういう状態ですよ。基準行政は人が足りないのですか。いま大臣が熱心に、今後気を新たにしてこの振動病の根源を絶つ、これと取っ組むのだと言っておりますけれども、データがこういうようなデータで出てくるような状態で、信頼できますか。調べたのが店社四十一です。林災防に加入しているのが六百四、現場の事業所が一千四百五十、たった四十一しかやっておらないところのこの実態、これで完全に把握できますか。大臣どうでしょう。
  207. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 一つには、十分であるか精いっぱいやっているかということだと思うのであります。いまのは、われわれの方の出先の諸君は精いっぱいやっていてくれる、私はこういうように信じております。しかし、それで十分かというと、十分でないことは御指摘のとおりだと思うのです。  しかし、それではそれをどうするかという問題になりますから、これは事業主もそれから関係者もみんなこれに対して意を用いて、どうしたら振動病にならぬで済むか、振動病にかかったらどう治療するか、そういったことについてこれから英知を集めなければならぬというところに問題があるだろうと思うのです。これは労働省だけでやれと言ってもやれるものではないと思うのです。  ただ大事なことは、労働省はベストを尽くしているかどうか、ベストを尽くしても足らない分はどうするのだ、そういうように二つに分けて考えるべきで、後の分につきましては、関係の省庁とよく相談をして、また関係の団体ともよく相談をし、問題の所在を明らかにすると同時に、協力をして対策を考える、こういうことじゃないかと思います。
  208. 島本虎三

    ○島本委員 それで大臣、各地方局の問題があるのです。私が言っているのは、大臣に、現地を調査して監督行政、労働行政の点から、よりよいものを求めながら、こうしなければならないのじゃないかということを進言したいのです。いま言ったのは、監督官の足を引っ張るのじゃないのです。そういうような方法でなければ調査もできない、資料も出せないような脆弱な定員体制だということなのです。したがって労働基準監督機関でもそれから林業労働災害防止協会ですか、林災防の活動なんかも全く不十分なのであります。その不十分な中にこういうようないわば振動病が発生しているのでありますから、これはもっと、監督機関の要員削減などというものは、これに対しては大きい問題点があるのじゃないかと思われる点があります。したがって、十分やれと言ってもやれないのです。やれないのを、本省の方からやれ、やれと押し込めてやっているのです。これは一人で何カ所歩けると思いますか。歩けないから、林災防を頼むのでしょう。頼むそこが不十分な体制ですから、出てくるのはほんの一部分のデータだ。そういうようなことで、実態も把握できない。把握ができないままに、対策は十分だということは当然に言えないから、十分やってくれと言っても、無理な面がここにあるんじゃありませんか。したがって、振動病の激増に何ら具体的に対応していないというのを残念がってきたんです。それは和歌山です。和歌山を見て、日本有数の林産県である和歌山県がこうなら、他は推して知るべしじゃございませんか。  こういうような状態で、大臣、まだまだこれでも監督行政の人を減らすのですか。いまのような、行政管理庁のまだまだ人を減らすような命令で何ほかずつ減らしていって、これまた振動病を絶滅させられるのですか。この辺は監督機関はもっともっと重要視しなければならない問題であり、いまこそ定員なんかの問題でももう少しきちっとやらないと、下部機関はやれません、動けません。大臣も一回行って、下部のこの実態を把握した方がいいと思うのであります。  この振動病に対しての対処をもっと考えるならば、監督機関がいまあっても法令が空踊りしているような状態ですから、こんなことのないように実効の挙がるようにきちっとやるべきです。私はあえてこれを強く要請したいのでありますが、大臣、決意はよろしゅうございますか。
  209. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 御激励の言葉として、しかと受けとめます。
  210. 島本虎三

    ○島本委員 しかと受けとめられた後で、お伺いするのでありますけれども、今後は振動病の絶滅を期するために森林関係者の協力を得たいということ、反省すべき点は反省して実態の把握をするということ、撲滅のために全力を挙げるということ、これは前の質問者に対する大臣の御答弁であります。私は、これは意欲のある答弁だ、こう思って聞いております。なお、ここにいる皆さんの部下やそれから林野庁や厚生省の皆さんも、同様な立場でこれを聞いておられると思います。そうすると、振動病そのもの、この責任はどういうふうに配分されておりますか。それは労働省であるという、漠然とした規範を聞いているのじゃありません。はっきりとこれの撲滅のために全力を挙げるというならば、一つ一つが責任と監督を強化した上に立って適確な施策をしなければならない、実施をしなければならないということになります。少なくとも予防の点、健診の点、治療の点、この三つはきちっとやらなければならないのでありますが、三つ一緒に労働省、いかにこれは責任があるからと言っても、できるはずはありません。  いまこの予防はどちらが担当しておられますか。
  211. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 労働安全の面からは、もちろんこれは労働省の所管になりますが、私ども、これは民有林行政、将来の林業労働者確保するためにも、民有林行政の根本問題にもつながる問題だというふうに理解しております。そのような見地から、予防につきましては、たとえば作業仕組みの改善、これは単に伐木造材だけではなくて、造林と組み合わせるとかいろいろな仕事のやり方を改善するというような研究を積みまして、このことについて関係団体等の指導をいたしておるところでございます。  さらにまた、それ以外に、チェーンソーを取り扱う技術者に対する……(島本委員「時間です。そんなことを聞いているのじゃない。予防はどこでやるのだ。林野庁でやると言えばそれでいい」と呼ぶ)林野庁でございます。
  212. 島本虎三

    ○島本委員 答弁の仕方を習っておきなさい。——健診はどちらでやることになりますか。
  213. 佐竹五六

    ○佐竹説明員 直接雇用関係のないいわゆる一人親方につきましては、林野庁で補助金をとって実施するように、林災防等に依頼しております。
  214. 島本虎三

    ○島本委員 そうすると、治療はどの省庁でおやりになっていますか。
  215. 津澤健一

    津澤政府委員 先ほど来御指摘がございました予防などとともに、その仕組みについては労働省は責任がございますが、これを実施するに当たりましては、それぞれの省庁が関係いたしますので、三省庁の連緒会議を設けてやっておるところでございます。
  216. 島本虎三

    ○島本委員 責任は労働省だけれども、何と言うのですか、ちょっとわからないのですが、もう一回聞かしてくださいませんか。これは大事なんです。予防、健診、治療、この三つを労働省にやれといったってできないことなんですから、それぞれ各省庁のこれに対する規範を聞いているのです。
  217. 津澤健一

    津澤政府委員 ただいま申し上げました趣旨は、全体の仕組みについて、予防から治療までのことについて労働省がかんでおりますが、それぞれの、たとえば健診につきましては事業者の責任でございますから、関係の方面がそれぞれの指導をそれぞれの立場で展開しなければならないわけでございまして、そういう意味から、三省庁連絡会議において治療の体制を推進したいと考えておるわけでございます。
  218. 島本虎三

    ○島本委員 どうも、私はやっぱり大臣でないとわからないです。考えているのはみんな考えているのですが、これをいざやるようになったらそれぞればらばらになってしょうがないから、責任と実施官庁がどこなんだかきちっとしておいて、それを総括してやらせるような官庁がどこなのかわかっていれば、話が通ずるじゃありませんか。国有林であって林野庁に所属する従業員である場合には、それはわかっていますよ。ところがいわゆる一般の予防、総体的な予防、健診、治療、こういうようなものに対して全面的に労働省が責任を持っておやりになるのですか。やるならば病院はどういうふうになっていますか。予防に対するそれはどうなっていますか。それから健診は全面的にやっていないのでありますけれども、これなんかもおかしい。大臣がいま一生懸命やると言う、そのしりからどんどんおかしくなるのです。それはそれぞれおやりになっているからじゃありませんか。それぞれそういうような立場でこの点を考えているからじゃありませんか。
  219. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 ただいま林野庁並びに私ども安全衛生部長から御答弁申し上げましたが、労働安全衛生法に基づきます指導監督、そういうものの責任は、施行責任は労働省にあるわけでございますが、それに基づいて実際に予防措置をとる、あるいは健康診断をするということになりますと、これはそれぞれ、たとえば健康診断は事業主が労働安全衛生法でやらなければならないことが義務づけられている。その健康診断を、実際に大きな事業所では、一般の工場労働等については、その事業所自体の健康診断機関で行うわけですが、そうでないものにつきましては、健康診断機関等に委託をしてやるというようなことになっておりますし、それから私ども関係官庁、たとえばいまの林野労働者につきましては林野庁が、林野行政の担当の官庁といたしまして、その観点からの指導監督というものは当然やらなければならない、そしておやりになっているということがあろうと思います。  それから、治療につきましては、これは当然職業性疾病の治療についての給付、診療費その他、休業補償等の給付につきましては、労災保険がやるわけでございます。この労災保険法の所掌は労働省がいたしておりますが、具体的な治療行為を提供する病院あるいは診療所というものは、労災施設としても行っておりますが、そのほかの病院施設あるいはまた民間の事業所によりましてはみずから運営する施設というようなところでやっているということでございまして、その法令上の責任の所在ないしそれを実際に実行している具体的な施設、それはやはりそれぞれ、その施設の面から言いますといろいろ多様なことになってまいりまして、画一的にどの官庁が一律に責任を負っているというようなことではないことは、先生の御指摘のとおりでございます。
  220. 島本虎三

    ○島本委員 同じ温泉地帯であってお湯に恵まれて環境がいい、さてその白浜国立病院、ここで十分それをやれるか。大島委員が言ったとおりです、さっぱり機能していない。それならば営林署、林野庁に勤めておられる人も、やっぱりこれは振動病になっておられる人も、最近は少なくなっていますが依然としてある。林野庁には専属の病院というものがございますか。あったら数を知らしてください。
  221. 今井秀壽

    ○今井説明員 お答え申し上げます。  林野庁には専属の病院が二つございます。青森と秋田にそれぞれ一つずつございます。
  222. 島本虎三

    ○島本委員 病院が二つですか。それとも診療所ですか、医務室ですか。ここは社会労働委員会です。その辺の区別をはっきり御報告願います。
  223. 今井秀壽

    ○今井説明員 それは営林病院でございます。
  224. 島本虎三

    ○島本委員 それはどこにあって、その正式の名前を教えてください。病院名です。
  225. 今井秀壽

    ○今井説明員 秋田の二ツ井にございます秋田営林病院並びに青森にございます青森営林病院でございます。
  226. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。これは私はいままで診療所、こういうふうに認識しておりましたが、病院というふうになっているわけですね。ここは振動病施設、こういうようなものとして全面的に機能しておりますか。
  227. 今井秀壽

    ○今井説明員 ここにはそれぞれ入院のためのベッドがございまして、温熱療法その他可能な施設がございます。そのほか各地に、国有林が既設の病院等に併設ベッドをお願いいたしまして、温熱療法等を実施している個所もございます。
  228. 島本虎三

    ○島本委員 大臣、これなんですね。白浜の国立病院、温泉があってきちっとしていますが、そこでは林野庁関係職員の人は全部入れてない。全部出してやっているわけです。何でそういうふうにするのかな、こう思っていたら、やはり青森病院、秋田病院、こういうようなのがあって、それぞれりっぱな病院で入院施設もあるということであります。これは後ほどベッド数が何ぼかを聞きますが、はっきり私の方へ資料として持ってきてもらいたい、こう思います。いろいろな総合的な調査をするために必要であります。  これだけに携わっておったら肝心な時間がもうなくなりつつありますので、これは余韻を残しながら、次の方へ進ませていただくのでありますが、この立木の請負事業関係対策のことになるわけでありますけれども「国有林野事業の実行に係る民間事業における労働安全衛生確保対策の推進について」ということで、林野庁長官から五十一年八月三十一日に通達が出ておるのであります。この通達が出ておって、これはきちっと守られている、こういうようなことでありましたけれども、これはやはりそういうようなことできちっと守られておりますか。
  229. 田中恒寿

    田中説明員 お答えいたします。  私ども、国有林内での請負事業をやっております請負業者に対しましては、機会あるごとにこの問題につきましては指導をいたしておりますし、私ども現場におきましては、ほぼこういうことにつきましては守られておるものというふうに考えてございます。
  230. 島本虎三

    ○島本委員 勧告指導、これは何回ぐらい行いましたか。
  231. 田中恒寿

    田中説明員 これにつきましては、大体そういう請負業者の団体を年に何度というふうに、全部決まっているわけでもございませんが、年度初めには必ず集めまして、その年度の仕事の計画とか、この振動障害問題に対します最近の情勢とか、そういうことについてのいろいろの指導趣旨の徹底を図るとか、いろいろな機会をとらえてやりますので、あるいは現場に出張いたしました際に触れることもあろうかと思いまして、回数等は数字的に押さえてはございません。
  232. 島本虎三

    ○島本委員 労働省では、山林の労働現場を一年に一回全部監督できますか。和歌山ではできないということを了解しておりますけれども、これは完全にできますか。
  233. 津澤健一

    津澤政府委員 御指摘のように、完全にはできないのが現状でございます。
  234. 島本虎三

    ○島本委員 やはり労働省の方では監督が十分できておらない。そうすると、勧告を受けて実行しないものは相手にしないんだといっても、一年に一回も回れない、これでは不可能じゃありませんか。ですから、チェーンソーを一日二時間以上は使うなと言っても、果たして使っていませんか。「使わないでは仕事になりません」これが林災防の答弁なんです。一年に一回も回れない、ましてそういうような規制は不可能な状態のもとに、監督行政なんかできませんし、勧告なんかできるわけがないじゃありませんか。通達だけ空回りしているでしょう。どうもこの問題はおかしいと思っているのでありますけれども、今後については、振動病対策、この実施計画の提出業者に命じて、この提出のない者には契約しない、これをはっきり林野庁ではやれますか。
  235. 田中恒寿

    田中説明員 各請負業者の、振動障害対策をどのように計画し、どのように事業実行途上で守っていくかということにつきましては、私どももこれは把握し、適切な指導をしなければならないと思っております。それぞれ現地の事情が大分違いますが、どういう方法で把握をし……
  236. 島本虎三

    ○島本委員 答弁になっていない。一つ一つ具体的に言っているのです。いいですか。振動病対策の実施計画の提出業者に命じて、この提出のない者には契約をしないということを約束できるか。そのほかのことを聞いているのではないのです。
  237. 田中恒寿

    田中説明員 実施計画の提出は求めたいと思っております。当然それは守らせたいと思っておりますし……
  238. 島本虎三

    ○島本委員 契約しないということができますか。
  239. 田中恒寿

    田中説明員 当局のそういう要請に対して従わないような業者に対しては、それ相応のしかるべき措置を考えるのは当然と思います。
  240. 島本虎三

    ○島本委員 実施計画の推進状況、これを国有林の職員に定期的に点検報告をさせることと、報告の内容によってはみずから指導する。必要な場合には監督署連絡し指導勧告を要請する。監督署自体は全部一年に一回も回れないということはわかっているのですから、林野庁自身でそういうような徹底した態度をとるべきではないか。こういうように思いますが、この点いかがですか。
  241. 田中恒寿

    田中説明員 振動障害対策の充実のために、私どもは、必要な契約条項を守らせるための必要な指導を徹底いたしたいと思っております。
  242. 島本虎三

    ○島本委員 そこで最後に、契約の相手方としての選定に当たって、安全対策を推進した者が逆に、正直者がばかをみるようなことがないように厳重に審査すべきだ、よろしゅうございますか。
  243. 田中恒寿

    田中説明員 それはごもっともなお話だと存じます。私どもも、多数の振動障害者を出した深刻な経験をした事業体でございますので、そういう点につきましては十分配慮いたしたいと思っております。
  244. 島本虎三

    ○島本委員 では次に、Aの資格で仕事をしていた人が、チェーンソーから離れる場合にはBになりますね。そうすると賃金が下がります。そして軽作業をする。おかしいからもう一回検査してもらったらCだ。治療せいと言われる。そうすると資格はCクラスになる。そうすると、低いその賃金がもとになって今度は休業補償が支払われることになるわけでありますから、そうなると、これはチェーンソー作業従事者の平均賃金、こういうようなものに対して、悪くなった人が休めば賃金が下がってしまって低い補償しか受けられない、こういうようなことが固定化してしまっているわけです。この場合には、チェーンソーの作業従事中の平均賃金を基礎に休業補償を支給できるように、制度をもう一回見直す必要があるんじゃないかと思いますが、これは抜本改正のためにぜひ必要だと思います。この点はいかがですか。
  245. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま御指摘の労災保険の給付は、労災によりまして失った稼得をてん補するという趣旨でございますから、可能な限り療養直前の賃金水準に準拠すべきだ、こういうたてまえで、労働基準法の平均賃金を基礎として算定しているわけでございます。  ただ、いま御指摘のようなことと関連いたしますが、昭和五十二年の法改正では、私傷病によって休業した期間について、その期間を除外して平均賃金額を算定するような改善を行っております。  一般的に申しますと、労災保険の保険給付は請求を待って行われることになっておりますから、御指摘のような問題は、労働者が迅速に適正な給付請求をするということによってある程度防げるものとは考えられますけれども、なお保険給付に適正な稼得を反映するということのためにどのような対応が可能であるか、実態に即してできるだけ給付が行われるようにどのような対応が可能かということについては、今後慎重に検討してまいりたいと考えております。
  246. 島本虎三

    ○島本委員 質問が下手なものですから時間が足りなくなって申しわけないのでありますが、これは労働省そして労働大臣として、せっかく振動病を治療した、そして重症が軽症になった、そして治療によって症状が軽減して軽労働に従事することができるようになった、こうなった場合は、いまの山の中には軽労働に従事する仕事がないのであります。それがあの林産県と言われる和歌山県の実態だったんであります。そうすると、ようやくのことで軽労働になっても、軽労働の中に入ったならば一般の人は雇わないから、再び今度またチェーンソーを持たざるを得ないような状態に追い込められるわけだ、そしてチェーンソーを持つとまた入院せざるを得ないようになるわけであります。生活のために働くその場所がない。すなわち、これはもう、軽労働に従事できるようになった人には、軽労働に従って働けるような場所の提供、そういうような場所も十分考えて、今後やはり指導すべきじゃないかと思うのでありますが、労働省、この点はやはり考えてやらないといけない大きい問題点だと思うのでありますが、この点に対していかかでしょう。——局長より、大臣の方がいいんじゃないか。
  247. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いまお話しのような、そういった軽労働ならば就業できるであろうというような認定を受けた者について、その機会を与えるということにつきましては、私ども先生指摘のとおりのことでございますので、労働基準監督機関並びに職業安定機関が密接な連携をとりますとともに、関係業者団体その他、関係官庁等との連携を密にいたしまして、できる限りそのような就労機会の積極的な提供ということに配慮いたしてまいりたい、こう考えております。
  248. 島本虎三

    ○島本委員 私の質問はこれで終わるわけであります。しかし大臣、ここにいま言ったようにして、民間林業における振動病の絶滅及び雇用確保に関する問題の要請、一万人と言われ、二万人とも言われるこの人たちについて、いま和歌山県の問題を取り上げましたが、同時に、長野県の山林労働者の方からこれだけの陳情書、要請書、これが届いているのであります。労働大臣あてであります。これを大臣に届けますから、十分これを見て、そして対処だけはひとつ確実に行ってもらいたい、このことを要請申し上げまして、最後に大臣の決意を聞いて、私は終わる次第であります。
  249. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 よく御意見を拝聴いたしました。できる限りのことをいたしたい、こう考えております。
  250. 島本虎三

    ○島本委員 ありがとうございました。(拍手)
  251. 越智伊平

    ○越智(伊)委員長代理 次に、草川昭三君。
  252. 草川昭三

    ○草川委員 公明党・国民会議の草川昭三でございます。  きょう私は、労働災害の最近の傾向について、いわゆる労働省管轄の民間あるいはまた公務員の災害、公務災害と言われるもの等々を少しお伺いをしたい、こう思います。  まず最初に、労働省の方にお伺いをいたしますが、労働災害とは労働者が業務に起因をして受ける生命あるいは身体への損害、こういうことだと思いますけれども、このような労働災害の最近の傾向をまずお伺いをしたいわけでございます。  まず、年間の交通事故による死傷者とそれから労働災害による死傷者との比べ方が果たして適当かどうかは別といたしまして、私ども一般的には交通災害の方が多いんじゃないか、こう思っておるわけでございますけれども、ひとつその点の統計をお伺いしたいと思います。
  253. 津澤健一

    津澤政府委員 最近の労働災害状況を見ますと、昭和五十年までは全体として減少の傾向にございましたが、五十一年以降増加の傾向に転じておりまして、五十三年におきまする休業八日以上の死傷者数は三十四万九千四百人と相なったわけでございます。また、いわゆる不休災害も含みます労災保険の新規受給者の数を見ますと、これは昭和五十三年におきましては約百十五万人と推計をいたしております。  これに対しまして御指摘の交通事故でございますが、私どもと若干物差しが違うかとは存じますけれども、五十三年におきまする道路交通事故による死傷者の数は六十万二千八百九十九人と伺っております。  また、労働災害による死亡者でございますが、これも五十一年ごろからやや減少傾向にかげりが見えてまいりまして、昭和五十三年には三千三百二十六人と、前年に比べまして二十四名増加と相なっております。  このような災害は、業種で見ますと、何と申しましても製造業並びに建設業がその大部分、約三分の二を占めておるわけでありますが、五十三年度には特に建設業での災害の増加が目立っております。  また、製造業の中での企業の規模別を見ますと、百人から二百九十九人規模の中小企業での死傷発生率が、千人以上の規模の事業所の発生率に比べまして約五倍となっております。  また、大清水の事故に見られますような一時に多数の死傷者を伴う重大災害も、このところ増加の傾向にございます。
  254. 草川昭三

    ○草川委員 いま交通事故労働災害との比較の質問をしたわけでございますけれども、私は、たまたま私の判断で交通事故の方が多いんじゃないだろうか、こういう質問をしたわけでございますが、死傷者数は交通事故の方が六十万、労働災害による方が百万を超えるというお話しでございますから、やはり労働災害の方が災害としては数が多く、しかも内容的に非常に問題があるわけですよ。特に仕事をしていて災害を起こすわけでありますから、対策がそれなりに重要だと思うわけでありますし、この死亡の方も、交通事故はずっと一万を割ってまいりまして少なくなってきておるわけでございますが、労働災害の方は依然として、昭和三十六年でございますか、その当時の数字に比べれば、六千七百人が三千三百人くらいに半分に減ってきておりますから、傾向としてはいいわけですが、いまも部長からお話しがございましたように、重大災害というものがふえてきているというところに私は非常に問題があると思うわけであります。  災害の発生の産業別の推移でございますが、いま建設業というお話しも少し出たわけでございますが、一番多いのは建設業であることは間違いがないのかどうかということですね。  それから二番目に、常識的にも私は製造業がその次に来ると思うのですが、建設業とか製造業を合わせますと全事故のどの程度の内容になるのか。あるいはもう一つ、その災害の発生の度合いの大きいのがどういうような工事内容、たとえばトンネルだとかあるいはまた公共事業だとか、一般の家屋を建設するような問題だとかというような内容別、これは余り労働統計には出てこないと思うのですけれども、概念的な意味での内容がわかれば答弁をしていただきたい、こう思います。
  255. 津澤健一

    津澤政府委員 ただいま先生指摘のように、産業別に見ました場合に最も多いのが建設業、次が製造業と相なっておりまして、この二つを合わせますと全災害の三分の二ということになります。特に建設業は、死傷者全体で全災害の約三分の一であるというばかりでなく、その死亡者数に至りましては、全災害のおよそ半分になんなんとする割合を占めております。  また、建設業におきましては、最近公共事業の大幅な増加等もございまして、この方面、特に土木工事からの災害多発が目立っておりますが、いわゆる大災害を発生いたしますケースといたしましては、トンネル工事でございますとか、大規模なのり面の切り取り工事でございますとか、橋梁建設工事でございますとか、こういったところで発生を見ておりますが、何と申しましても、公共工事等で全国各地でたくさんの工事が行われております関係上、公共土木工事からの死傷者数も相当な数に上っております。  さらに、建築業の中では、いわゆる木造建築の災害が大変多くなってまいっておりまして、全建設業災害の三分の一の死傷者を出しておる現状にございます。
  256. 草川昭三

    ○草川委員 従来の災害の発生の態様というのが、いまの答弁を聞いておりましても少し変わってきておるのではないか、こう思います。それなりの対策が必要になると思うのです。  ここで、実は、公務員の方のいわゆる公務災害の態様というものを人事院の方にお伺いしたいと思いますけれども、いわゆる公務員の災害死亡災害の推移だとかというものについて、これは労働省のような度数率というようなものはないと思うのですけれども、何か一つの基準があれば、公務災害の発生とその態様について簡単にお聞かせ願います。
  257. 笹川辰雄

    ○笹川説明員 国家公務員災害補償法の適用を受けます職員は現在百十四万でございますけれども昭和五十二年で申し上げますと、百十四万のうち公務災害として認定いたしました災害の件数は約一万五千六百でございます。この数につきましては、過去五年間で見ますとほぼ同様な数で推移しております。  なお、人事院といたしまして、人事院規則の定めるところに基づきまして、勤務場所で発生いたしました災害のうちで一日以上の休業を要しました場合につきまして、毎年報告を求めておるわけでございますが、これは労働基準法適用職員は除いておりますが、これらの職員につきましての職員総数に対します比率は、過去七、八年間下降の一途をたどっております。昭和五十一年で申し上げますと、千人当たり一・九四という比率になってまいります。  さらに、死亡者数でございますけれども、ただいま申し上げました年間約一万五千六百の災害のうち、死亡につきましては、昭和五十二年度で申し上げますと五十三件でございます。これも過去数年ほぼ同様の数字でございます。  なお、労働不能状態の障害を残しました者につきましては、昭和五十年度で十件でございます。また、労働能力を半分以上喪失した状態について申し上げますと二十四件、こういう状態になってございます。
  258. 草川昭三

    ○草川委員 これがいまの公務災害報告でございますが、そのほかに三公社五現業というのですか、三公社の職員あるいは五現業種の災害というものは、一体どこでどういうように統計をされておるのかということを知りたいわけでございますが、これは労働省としてはつかんでおみえにならぬわけですね。  きょう国鉄においで願ったわけでございますが、国鉄は現業関係で非常に多岐にわたる職種を抱えておみえになるわけでございますが、国鉄の方はいわゆる業務上災害というのはどういう傾向にあるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  259. 小山田虎丸

    ○小山田説明員 国鉄の方から申し上げます。  国鉄の災害傾向は、十年くらい前は全部位のけがというのが千件を超しておりましたけれども、五十一年、五十二年、五十三年とだんだん減りまして、現在けがの総数としましては八百四十二件ございます。いまの強度率あるいは度数率というものでございますが、強度率は昨年五十三年度で〇・一二、度数率が一・〇〇というようになっております。  なお、死亡について申し上げますと、そのうちで、十年前は五十三名くらいでしたが、五十一年が二十一名、五十二年が十八名、五十三年が八名というようになっております。  死亡の減った原因としましては、私どものところでは列車に触れて死ぬという例の触車事故というのが非常に多かったわけでございますけれども、それが非常に減りまして、十年前は三十五件くらいあったのが、昨年は三件、こういうことでございます。
  260. 草川昭三

    ○草川委員 国鉄の方はそれで結構でございますが、私がいまわざわざ国鉄の方にお願いをしましたのは、そのほかに電電もあるでしょうし、穴を掘ったり架線をやるような、そういう労働災害の比較的大きい業界もあるわけでございますが、一般的に、労働災害の最近の傾向というものをどういうように分析をし解説をしていくのか、あるいは国の予算で公共投資が非常に多くなってまいりますと、その公共投資に比例して労働災害というものがどういうような移行になっておるのか、いろいろなことを調べたいわけです。  労働省の方にいろいろとお話をお伺いいたしましても、結局業務上の災害というものを日本全体でなかなか把握できぬわけです、いわゆる縦割り行政ということになるわけですから。しかし、少なくとも、労働災害という面については労働省はそれなりの研究機関も持ってみえるわけでありますし、災害を防ぐという意味でそれなりの研究もなされてみえるわけです。片一方に、国鉄のようにトンネルを掘る、あるいは電電のように架線を張っていく、あるいは共同溝でそこへ配管、配線をしていくという場合、いろいろな災害があるわけでありますけれども、そういうものを全体的に、全国的に統一をして把握をするというものがないということに気がついていくわけです。  さらに、三公社五現業以外にも特別職というのがあるわけでありますし、また後ほど防衛庁の職員のことについてはお伺いするわけでありますが、たとえば裁判所の職員で公務災害になる場合もあるわけですし、いろいろな統計を見ましても、いまの災害度数率なんかでも、公害等調整委員会というような職員数わずか四十人のところですけれども、ここでは度数率一〇という、これは特異なケースだと思うのですが、そういう事故もあるわけです。二けた台の度数率があります。あるいは強度数からいっても〇・三八という数字が出ておるわけであります。あるいは大蔵省でも度数率〇・五一、こういう数字があるわけですね。農林省でも〇・七二という度数率。あるいは運輸省等、これは運輸省全体のことになりますけれども、一・四四という度数率。建設省なんかでも一・六一。これは交通事故等もあると思いますし、内容は一々分析いたしませんけれども、これだけばらつきがあるわけでありますから、労働省として、現業関係等を含めて労働災害全体を早急に把握できるような体制がとれないのかどうか、その点についてどうでしょう。
  261. 津澤健一

    津澤政府委員 先ほど来申し上げておりますのは私どもの労災保険の関係の数字ではございますが、私ども安全衛生法の規定によりまして、三公社五現業につきましては、現場で発生いたしました死傷について死傷病報告というものをちょうだいすることになっておりまして、この面から若干の把握ができるわけでございます。  しかし、御指摘のように小さな災害を含め、全体としての動向を国全体でまとめるということは確かに重要でございまして、いろいろな意味で、労働災害全体についてやっております労働省といたしましては、今後とも関係の諸機関連絡をとりまして、実態の把握が第一でございますが、それを含め、さらに災害防止対策等についてもいろいろお話し合いをしてまいりたいと思っております。  ただ、一つの例を申し上げますと、たとえば電電が発注なさいます工事についての安全につきましては、実は私自身がその対策委員会委員を拝命しておりまして、いろいろ御協議を申し上げる場がございまして、それなりの成果を上げておるものと考えております。
  262. 草川昭三

    ○草川委員 人事院の規則なんかを見ておりますと「災害等の報告」、人事院規則第三十五条というのがあるわけですけれども職員死亡した場合あるいは同一原因で三人以上の負傷になった場合、火災、ボイラーの破裂等の事故で重大なものについて「各省各庁の長は、毎年六月末日までに、勤務場所における前年の四月一日に始まる年度の職員災害の発生状況等について人事院に報告しなければならない。」ですから、人事院に集まってくるのは一年おくれで集まってくるわけですよね。それは統計数字だからそれでいいというのですけれども、重大災害の中身に質的な変化が始まってきておるというような報告がいま安全衛生部長の方からも言われておるわけですよ。だとするならば、一年おくれのこういうような災害等の報告ということはもういまの時代に合わないのじゃないかと思うのです。これは人事院規則ですから、労働省は関知せずと言えば言えぬことはないわけですけれども、事は労働災害ですから、三公社五現業の方もどういうような報告程度になっておるか私はわかりませんけれども、いまの災害というのは、いろいろなモデルケースを持ってきて、そしてZD運動とかいろいろな運動をしながら原因追求をして、労働省のあの雑誌「月刊安全」だとか、あるいは「安全衛生」というものの中身に出て、全国の事業所に配られていくわけですから、そういう意味では、これだけ大きな予算をつけて公共投資が始まっている時代の中で、労働省労働災害の把握の範囲を少し広げてもらいたい。これは縦割り行政に関係なく、遠慮なしに実態というものをつかんでいただきたいと思うわけであります。これは強く要望しておきます。大臣、何かいまのことについて見解を述べてください。
  263. 津澤健一

    津澤政府委員 先生指摘のとおりでございまして、そのように努力いたしたいと考えます。
  264. 草川昭三

    ○草川委員 では次に、災害のことに触れまして、実は労災保険というのは無過失責任のために、いわゆる慰謝料だとかそういうものに対する対象になっていないわけですよね。休業補償でも実際は八〇%の補償で、あとは労使関係の中で付加給付が出る場合があるわけでございますけれども、そういうようなことで、最近、被災者あるいは遺族が企業を相手取って損害賠償の請求をするケースが非常にふえてきております。急速にそのケースがふえてきておるわけでございますけれども、一体どういうような傾向にあるのか、これも少し説明を願いたいと思います。
  265. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 私ども手元にある資料といたしましては、最高裁判所の事務総局が調べたものでございますが、それは当該年の十二月三十一日現在、第一審係属事件として報告のあった件数でございますけれども、国や地方公共団体での労働災害も含めまして、昭和五十一年が千百十六件、昭和五十二年が千百八十件、こういう数字になっておりまして、その一件当たりの請求金額がどういうことになっておるかということは、ちょっと把握できないでおります。
  266. 草川昭三

    ○草川委員 私どもも具体的な判例というのも「ジュリスト」ですか、いろいろな労働法規の本なんかから拾ってきたわけでございますが、いまおっしゃられたように、倍近く損害賠償の請求がふえてきておる。これは一体どういう理由かというようなこと等もお聞きしたいと思うのですが、きょうは余り時間がございませんので触れませんけれども、損害賠償の請求金額の中で、判例では六千万とか五千万の非常に高額な判決がおりておる場合があります。この判決の中で、これは特に自動車損害賠償保障との関係等もございまして、死亡事故で二千万を超しておるのが三一%にも上っております。あるいは負傷事故でも一千万を超す判決というものが一一%にも及んでおるわけでございまして、これは現在の労災保険が非常に不備だということに結果としてはならぬのだろうか。あるいはこういうことを心配しまして、各企業はいわゆる団体生命保険というものを掛けている。いわゆる上乗せをする。そして死亡事故について一件一千万とか、二口掛けて二千万というものを遺族に上乗せする。こういう例が非常に多いんですよ。これは、現在長く続いておる労災保険というものに対する基本的な、私はもう、現在の社会に合わない状況というものが生まれてきておるんではないだろうか。だから、一方では民事訴訟が始まるあるいは企業側は上乗せ保険というものを掛けてくる。私は、労働省としてのこの問題に対する見解をお聞かせ願いたいわけでありますけれども、少しこれは問題があるような気がするんですが、行政上の不備だということに相ならぬのかどうか。どうでしょう、その点について。
  267. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 いま御指摘の問題は、労災保険によりましててん補できる限度がどういうことになろうかという基本の問題に絡むわけでございますが、私ども、労災保険制度自体といたしましては、もう数度の改正、改善を経まして、現時点においてはILOの条約あるいは勧告に定めております水準は十分満たしておりますし、また西欧先進諸国との比較におきましても、労災の給付水準そのものはひけをとらないということに一般的にはなっておると思います。  それから、遺族補償等につきましてあるいは障害補償等につきまして、年金制度が導入されました。したがいまして、自動車損害賠償保険とかそういうような一時金制度と、どのように比較していくかということによって、高い低いの問題がどういうことになろうかという比較の問題は、なかなか一概にはできないと考えております。  ただ、私どもも常に、労災保険の給付につきましては、そのほかのいろいろな制度との整合ということを図る観点から、検討をするということはいたしておりまして、現在もその検討を、実は労使公益構成の審議会の基本問題懇談会というところで御検討いただいているところでございます。
  268. 草川昭三

    ○草川委員 労使で検討される場合にどういうような方向にいくのか、単純にこの年金の金額をアップするのか、あるいは民事訴訟との関係をどう見るのか、非常に重要だと思いますけれども、私の言いますのは、同じ日本の国民で、同じ労働者で、ある企業で働いて、もしも事故があった場合には、上乗せの保険があってそれなりの給付が受けられる、片一方のところではこれこれしかじかでこれしかございませんということは、もう見逃すわけにはいかぬようになってきたんじゃないだろうか。当初のように、上乗せ保険を企業が掛けるのが非常に小さい範囲内ならいいわけですけれども、かなりこれは大企業では広範に対象になってきておるわけですよ。さすれば、働く場所によって給付の内容が違うということは、いや、それは国の立場にとってみれば次元の違う話だというわけにいかぬと思うのですよ、遺族あるいは被害者の立場から言うならば。私はいま言いましたように、いずれこの問題に対する対応は労働省としてきちんと見解を表明していただかなければいかぬ、こういうようなことを強く要望いたしまして、次に移りたい、こういうように思います。  そこで今度は、特別職というのでしょうか、私どもいままで余り触れていなかったわけでございますけれども、防衛庁の職員方々の、一体これは労働災害と言うのかどうか、ちょっとこれは正確な言葉になりませんけれども、非常に自衛隊の方々には平時の危険な作業があると思っておるわけでございます。たとえば最近、不発弾処理に従事をする自衛隊員の方々にかなり事故があったというようなニュースも出ておるわけでございますが、一体自衛隊における平時の危険な作業というようなものはどのようなものがあるか、お聞かせ願いたいと思います。
  269. 澤田和彦

    ○澤田説明員 いま平時におきます自衛隊の先生のおっしゃいます危険な作業というものでございますが、これは、私ども自衛隊は平素から防衛の重責を果たすために訓練を行っております。訓練を行うにつきましては安全管理に万全を期して行ってはおりますが、やはりおのずから限界といいますか、潜在的な危険というものは訓練の中であるわけでございます。  ただ、その中でも、特に訓練その他自衛隊の平時の業務の中で、いま先生のおっしゃるような意味で普通以上に危険かと思われるようなものの例といたしましては、いま先生がおっしゃいました不発弾の処理というようなものがその一つでございます。そのほかには、同じ訓練の中でも、たとえば落下傘で飛びおりる落下傘の降下でありますとか、あるいは掃海艇が機雷を処理しますいわゆる掃海作業でありますとかこういうようなもの、あるいは潜水艦等で特に新しい、初めて試運転しますような場合の航海でありますとか、あるいはこれは病院関係でございますが放射線関係とか、あるいは高圧ガス等を扱う作業とかこういうようなものが、普通のものに比べまして、多少の差はございますが危険性があると考えております。
  270. 草川昭三

    ○草川委員 いまお話しがありました不発弾の処理ですが、実は、私が最初調べておったときには、不発弾処理の事故というのは全然ないという状況だったのですね。ところがごく最近の五月七日でございますか、不発弾で自衛隊員の方が二人亡くなっておるというような例もあるわけでありますが、一体このような例は過去にもあったのかどうか。あるいはまた、不発弾処理についての自衛隊員に対する命令はどういう形で出るのか。自衛隊が不発弾があるから処理をしろという命令を隊員にするのか、あるいは地方自治体が発見して依頼をするのか。こういうような場合のいわゆる不発弾処理の事故責任というのは、本来の自衛隊の業務命令になるのかあるいは依頼をする側にあるのか。そこらあたりはどういうことになるのでしょうか。あるいは、手当は一体幾らぐらいついておるのか。お聞かせ願います。
  271. 児玉良雄

    ○児玉説明員 不発弾等の処理につきましては、自衛隊と地方公共団体、警察その他関係機関が協力して実施しておるところでございますが、自衛隊はこのうち、自衛隊法の規定に基づきまして、陸上において発見されたものについて警察から不発弾があるという通報を受ければ、その都度不発弾処理隊員が現場へ出向きまして、その処理に当たっているというのが不発弾処理の要領でございます。その場合に、不発弾処理隊員に命令するのは当然自衛隊の師団長ということになろうかと思います。  それから、先ほどの不発弾処理隊員に事故が発生したということでございますが、ことし五月上旬に北海道で起こりました事案は、ここで言います不発弾の処理ではございませんで、演習場の整備として、演習場の清掃作業をしております最中に、隊員が不発弾に触れて事故を起こしたというもので、ちょっと性格が違うものでございます。
  272. 草川昭三

    ○草川委員 そういう性格は性格でいいわけでございますが、私は、この不発弾による事故がもしあった場合に、家族がどういうような心境に置かれるかということを考えていきますと、自衛隊の規則に不発弾処理があるからあたりまえだからおやりなさい、何でもかんでも任せるということだけで、本当にいいのかどうかというような感じがするわけでありますし、また事実、隊員の方に私も会ってまいりますと、古い言葉ですけれども、死に装束と言うのですか、当日はさらし木綿と言うのですか、下着もきれいにして、そしていついかなる場合にどういうことがあっても、というような覚悟をして処理に当たられるという話を聞きまして、同じ任務とはいうものの、労働というように言葉を置きかえていくとするならば、これは実は大変なことではないだろうか。もしこれが労働組合というものがあるような職場なら、当然いろいろな意味での防爆装置だとかあるいは処理装置だとかいうようなものについて、大変な処置をしなければやれないような状況だと思うのですね。そういう点についての防爆に対する考え方というものを、私ども同じ人間として考える場合に、もう少ししかるべき方法というものはないのだろうか、こういう感じがするわけです。いわゆる施行規則などについてですね。  それで、不発弾の処理が一番多いのは沖繩だそうです。私も沖繩で不発弾処理をやられた隊員の方に会って聞きましたけれども、沖繩の場合は米軍の残した不発弾がある、それから戦中の旧陸軍、旧海軍の空軍、空軍というよりも、そういう旧軍隊の落としたものが混在をしまして、非常に複雑な状況になっておるというわけですよ。それだけに、不発弾をまず探すのに、この探知器というようなものも予算上非常に不備で、なかなか問題もあるというような話も聞きます。  いろいろなことを聞いてまいりますと、国民のサイドとして、不発弾処理というものを安易に自衛隊に依頼し過ぎるような感じもあるかもわかりません、反省しなければいかぬ場合があるかもわからぬ。あるいはまた、自衛隊の方としても、科学的な防爆装置というものをもう少し検討していく必要があると私は思うのです。いわゆる肉弾だけで、そして油を差してトレンチで逆に発火装置だけを巻き戻すというような、単純な作業だけを隊員に任せておっていいのかどうか。もう少し科学的な不発弾処理というものに力を入れていく必要があるのではないだろうか。こう思うわけですが、その点はどうでしょう。
  273. 児玉良雄

    ○児玉説明員 不発弾の処理につきましては、ただいま御指摘ありましたように、現在、信管の除去作業については特に器材、装備をもってしておるわけではございませんで、きわめて危険な作業であることは事実でございます。  ただ、現在の技術からいたしますと、それ以外に方法がない場合に、やむを得ずそのような作業をしておるということでございます。
  274. 草川昭三

    ○草川委員 ただいまのところではそういうことしかないかもわかりませんけれども現場のそういう任務に当たる隊員の方々の意見も改めてよく聞いていただいて、そしてまた、何らかのしかるべき災害を防ぐような条件を考えて、肉弾だけでやるというようなことをいつまでも放置をしないように、科学的な対応ということをぜひ検討をしていただくことが大切ではないだろうか、こう思います。これは逆に言えば、労働省的にも、防爆と言うのですか災害防止という意味での研究所もあるわけでありますから、そういうところも、自衛隊の不発弾処理ということだけで片づけずに、いろいろなノーハウ、知恵等があったら連携をされたい、こういうことを強く要望しておきたいと思うのです。  それで、実は私も、自衛隊の隊員の方々の労働条件ということについて余り関心がなかったので、非常に申しわけないわけでございますが、ついでに私は、災害派遣の現状等についていろいろな方々の御意見を聞いてきたわけでございます。ここ最近でも災害派遣で自衛隊の方の出動が非常に多いわけでありますが、特別の手当というものは支給されておるのでしょうか。
  275. 澤田和彦

    ○澤田説明員 御説明いたします。  災害派遣でございますが、いわゆる災害派遣命令を受けまして災害派遣地に出動しました自衛隊員につきましては、現在特別の手当というものは残念ながらまだないわけでございます。  ただ、先生承知のように、災害派遣は非常に特異な状況下、つまりどろ水につかりましたり、入浴もできなかったり、あるいは非常に不眠不休、不快困難をきわめるような、ときとしては危険もある、こういう特異な状況下での重労働であるということを考慮いたしまして、特別な手当こそございませんけれども、たとえば食事でございますが、一般隊員の普通の食事は日額で六百七十円ぐらいでございますが、これにプラスいたしまして、災害派遣に出ました隊員には、増加食と称しまして三百円の食事を特別に支給するという措置をとっております。なお、これはいままで百五十円だったわけでございますが、昨年度から倍にふやしたわけでございます。  そのほか、また、たとえば汗にまみれ、どろにまみれということで、下着でございますとかそういう日用品の私物の消耗も激しいということで、これも一回につきまして二百円程度でございますけれども、こういうものを支給しているという現状でございます。
  276. 草川昭三

    ○草川委員 同じ災害出動というのですか、災害時の危険な作業に従事をする場合で地方公共団体の職員の方の例があるわけでございますし、また一般職の国家公務員の場合でも災害対策で従事をする場合があるわけですが、これは自治省の方もお見えになっておられると思うので、自治省としてどういうように把握をされておられますか、この手当については。
  277. 石山努

    ○石山説明員 災害等で出動した場合の救助の措置の問題でございますが、地方公務員については給料のほか諸手当が支給をされておりますけれども、たとえば災害に出動したということだけを要件にして支給される手当というものは、現在のところございません。  ただ、災害時で、たとえば堤防が決壊するおそれがあるというような場合に、これに対する応急作業に従事をするというような、そういう勤務の態様のいかんによりまして、それが危険でありますとかあるいは困難でありますとか、そういうような勤務の場合には、これは災害だけではございませんが、特殊勤務手当が支給をされるという制度になっておりますので、それぞれの勤務の態様のいかんにより、特殊勤務手当の対象となるような勤務に従事した場合には、これに対応するような手当が支給されることがあるということでございます。
  278. 草川昭三

    ○草川委員 そこで、実際には各地方自治体によってかなり条件が違うと思いますからあれでごさいますが、一応私どももいろいろと聞いてまいりますと、実際そういう場合には、後でそのときの条件に応じていろいろなやりくりをなすってみえるようであります。それはまた非常に結構なことだと思うのですが、特に五十一年、五十二年、五十三年、ここ最近の災害の主なものだけを挙げましてもずいぶんありますし、それから、自衛隊の場合の隊員の派遣も五千名とか二万五千名だとか、伊豆大島近海の地震の場合は二万五千名も動員をされておるわけでございます。私は、こういう単なる、食事の増加食等も大切でございますが、徹夜で勤務をされるわけでありますから、あたりまえと言えばあたりまえの話になるわけでございますが、ぜひ災害派遣手当というようなものを新設したらどうかと思うのですが、何かそういうようなお考えはないでしょうか。
  279. 澤田和彦

    ○澤田説明員 ただいま先生のおっしゃいましたとおり、私ども災害派遣に出ます隊員の労苦を考えますと、特別な食事の支給等では必ずしも十分ではないということは十分考えておりまして、いま先生がおっしゃいましたいわゆる災害派遣手当と申しますか、こういう特殊な勤務に対します手当の新設ということにつきまして、鋭意いま努力しているところでございます。  この場合は、当然一般職におきます、ただいまいろいろ御説明がございましたような特殊な作業手当とのバランス等も必要と思いますが、私ども一応いま考えておりますのは、一口に災害派遣と申しましてもいろいろ態様がございますので、たとえば災害派遣の中でも、濁流の中に身を挺して飛び込むとか猛火の中に飛び込むとか、これは非常にまれなケースかと思いますが、こういう場合には、先ほどちょっとお答えするチャンスがなかったわけでございますが、現在、不発弾等の取り扱いの中で特に危険な信管を除去する作業の際には、日額三千三百円という高いレートの爆発物取扱手当を支給しておりますが、こういうものとのバランスをとる必要があるのじゃないか。それから、そうではなくて、そういう危険は特にございませんが、先ほど申しましたように非常にどろにまみれ、不眠不休でという作業をする場合には、ほかの一般職の職員のこういう特殊な作業の場合に出ます、たとえば一つの例でございますが、特殊現場作業手当というようなもの、いろいろな段階に応じまして日額八百円前後から百数十円前後までランクがございますが、こういうものとのバランスをとって考えるというように、いろいろな案につきまして現在検討して、できるだけ早い時期にこれを実現したいと考えている次第でございます。
  280. 草川昭三

    ○草川委員 いまそういう検討をなすってみえるとするならば、早くそういう対応ができるようなことを要望しておきたいと思います。  もう一つ、いろいろな方とお話しをしておりますと、私どもも昨年来、この社会労働委員会では中高年齢対策、なかんずく定年制延長という問題をいろいろと取り上げてきておるわけでございますが、自衛隊員の停年延長というものは一応昭和五十九年度に計画が完了すると言われておりますけれども、実際上、非常に働き盛りの五十歳くらいで引退をするというのですか、リタイアをされるわけでございます。子供が大学にちょうど入ったか入らぬか、あるいは家を持ちたいということで、なかなか持てないと思いますけれども、ちょうどローンがかかってくるところ、いわゆる五十歳前後というのは私どもの経験から言ったって一番金の要るところです。将来の展望を固めなければいかぬところでやめなければいかぬ、退職しなければいかぬわけです。老後というのですか将来のライフサイクルというのですか、人生の計画が安定できないと、非常に不安がってみえる場合もあるわけであります。  こういう点について、現在、国家公務員の年金制度の改正案が一方の委員会では出ておりますし、そういうこととも関連をするわけでありますけれども、現在の若年停年制というものは、他の公務員に対して著しく不利であることは間違いないわけです。これは承知で入っておるわけですからあたりまえと言えばあたりまえ、そういう任務だと言えばきれいに割り切れることでございますが、しかし、現在のような非常に高度な、近代化したような一つのバウンダリーというのですか環境になってまいりますと、いままでのようなことでいいかどうかという問題が出てまいります。そういう点について、停年延長の全計画の完了が果たしてこれでいいのかどうか、あるいは他の公務員との関係の問題等についてどういうお考えを持ってみえるか、お聞かせを願いたいと思います。
  281. 澤田和彦

    ○澤田説明員 御説明いたします。  ただいま先生指摘のとおりの状況でございまして、現在、自衛官は、他に類を見ないと思いますいわゆる若年停年制のもとにございます。特に任期制の自衛官の大部分を占めます二佐から三曹までの部分につきましては、現在五十歳でございますから、いま先生がおっしゃいましたとおり、いわゆるライフサイクルの上で一番お金のかかるところで強制的に退職せざるを得ないわけでございます。これに対しまして警察官あるいは事務系の公務員等も含めました一般職の公務員について見ますと、これは現在のところ定年制はございませんが、後進に道を譲ると申しますか、それぞれのところにおきますいわゆる慣行上の退職年齢があるわけでございますが、常識的に大体五十六、七歳あるいは七、八歳というところまでは勤められるわけでございます。こういう者と自衛官の中でも五十歳でやめなければいけない人と比較いたしますと、その収入、特に五十歳でやめたときのたとえば退職手当でございますとか、あるいは五十歳でやめましてもお金が要りますので民間に勤めなければなりませんが、再就職が非常にむずかしいために、その賃金が必ずしも満足なものではない。五十歳から五十七歳までのところの、やめた後のその付近までの収入を比較いたしましても、自衛官は非常に不利でございます。  ただ、これにつきましては、いま先生が御指摘になりましたように、私ども防衛庁といたしましては、自衛官の停年延長というものを数年間かかりまして段階的に実施する計画を持っておりまして、今年の十月からその第一年度に着手するわけでございます。六年かかる予定でございますが、これがもし計画どおりに実現いたしますと、いま申し上げました五十歳で停年を迎える人たちは五十三歳まで延びるわけでございます。そういたしますと、いま例で申し上げましたように、一般職の五十六歳とか五十七歳でやめる方と比較しました場合には、いま私が申し上げましたような収入あるいは退職手当上の不利は非常に大幅に改善されるということで、私どもとしましては、とりあえず、停年延長計画の完成にこの問題の大幅な改善の期待をかけているという状況でございます。
  282. 草川昭三

    ○草川委員 ついでにちょっとお伺いをいたします。  これは制度に関連するわけですが、五十九年度の全計画の完了に当たって、五十五年度に准尉と一曹との間に新しい階級、仮称ですけれども曹長というのですか、そういう制度を設置するということが検討されておると言われておるわけですが、その点はどうでしょうか。     〔越智(伊)委員長代理退席、竹内(黎)委員長代理着席〕
  283. 村田直昭

    ○村田説明員 先生ただいま御指摘のように、先ほど説明がありました現在の停年延長計画によりますと、二佐以下の幹部自衛官及び准尉の停年年齢につきましては五十三歳になっておりますが、一曹につきましては五十二歳となっておるわけでございます。また、現在の一曹の平均退官期間が、一曹になってからずっと一曹にいる期間でございますが、相当長期にわたっていることもありまして、こういうことを両方あわせ考えまして、防衛庁としては、准尉と一曹の間に停年年齢を五十三歳とする新階級、これは名称については今後検討するということでございますが、これを設けることを今後の検討課題としておるという状況でございます。
  284. 草川昭三

    ○草川委員 それと、いわゆる二曹、三曹の停年がこの計画の中では五十歳で据え置きになるのですね。これはどうしてかということを私ども質問いたしますと、まあまあ大半の人は、停年年齢の到達までは一曹になるからいいじゃないか、こういうお話のようですが、それも絶対的という条件じゃないわけですから、やはり停年の延長ということならば、二曹も三曹も同様に五十二歳ぐらいを停年延長の対象にすべきではないだろうか、私どもこう思うわけでございます。これは一つの意見でございます。  次に、停年後の再就職に対して防衛庁が一体どのような対策を立ててみえるのか、これも私は聞いてきたわけでございますが、いろいろな隊へ行って聞きましても、専門の担当官というのはいないのですね。たとえば、空も海もいろんなことがございますけれども、かなり国家的なお金を投入して、技術的にも自衛官のポテンシャルというものは高いのですよね。それなりの訓練を受けた方でございますから、民間の企業の中でも、うまい条件に合えば、特に中小企業等においては受け入れるところがあると私は思うのです。     〔竹内(黎)委員長代理退席、委員長着席〕 ところが現実にいろいろと探してまいりますと、自衛官の再就職というものは、ガードマンだとか保険の査定員だとか、そういうところに限定されておるわけですよ。私はそれはもったいないと思うのです。いろいろな意味の特殊技能というものがあるわけですから、そういう特殊技能の一覧表のようなものを逆に労働省の方に持っていく。労働省の方も、一面では技術労働者不足なんですよ。五十歳だとか五十二、三歳のところでは、もう少しうまいことをやれば幾らでも再就職は可能だと思うのです。ここら辺が縦割り行政の根本的な欠陥だと私は思っておるのです。もう少し労働省サイドにもお願いをしなければいけない。あるいはまた、逆に防衛庁の方も積極的にアプローチをする必要がある。しかも、防衛庁の職員というのは任地を異動するわけですし、最終的にやめる場合に、僻地で退職をする場合が多いわけです。工業地帯で退職をするならば、一年間ぐらいに自分も心当たりを探すということもできますけれども、北海道だとか非常に僻地で退職をする場合には、そういう機会が少ないわけです。防衛庁はもう少し専門官を置いて、再就職についてかくかくしかじかの対応策をつくることができるというようなことをしないと、隊員の方々は五十歳で減額年金を受けざるを得ない。減額年金を受ければ受けるだけ、その人はその分だけ不利です。将来の展望というものを安心させることが、隊員の士気を鼓舞することにもなるわけでありますし、また活力を与えることにもなるのではないだろうかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  285. 村田直昭

    ○村田説明員 ただいまの先生の御指摘はまことにごもっともで、私ども常々そのようになるように努力をしておるわけでございます。  御指摘の第一点の、労働省との関係で大いに緊密な関係をつくれということでございますが、退職自衛官の就職援護の問題につきましては、日ごろから労働省と緊密な連絡をとっておりまして、特に再就職の促進等に大変御協力をいただいております。このための組織としては、中央では中央連絡会議、都道府県段階では府県レベルの連絡会議、さらにその下の段階では、職業安定所と地連というわが方の組織がございますが、そういうところに自衛官退職者就職援護部会というものをわざわざ設けまして、労働省との間において緊密な連絡をとって、就職援護を図っておるところでございます。  それから第二点の御指摘の、地方の出身者等がいわゆる工業地帯でやめる者ばかりではないんじゃないか。まさにそのとおりでございまして、地域差というものが大変ございます。そこで、その点につきましては、労働省の広域職業紹介というようなものを大変利用さしておりまして、私どもとしては、そういう退職者の就職希望地というものを把握しまして、それを職業安定所に御連絡し、さらに就職希望地の職業安定所にこれをお送りいただいて、そこでわれわれの援護担当部局、これは地連でございますが、援護担当部局と労働省の職安とが協力していただいて再就職を図るというような努力を常々やっておりまして、その結果、条件等満足とまでいくかどうかはともかくとしまして、一応ほほ全員就職の実現を見ているという状況でございます。  御指摘のとおり非常に重要な事項でございますので、今後ともなお一層努力してまいりたいと考えております。
  286. 草川昭三

    ○草川委員 時間がないのでこれで終わりますが、再就職の状況を調べてまいりますと、都市の近郊で、五十歳過ぎた人で総額十四万から十五万です。そして、若干僻地へ行きますと、僻地というよりも、一般的な都市の近郊へ入りますと、五十歳の方々の再就職条件というのは十万円前後ですよね。これは私は、五十過ぎたような人たちが、たとえ減額支給という年金が片一方にあったとしても、育ち盛りの子供を育てておる、あるいは家の一軒も欲しいという条件にはひどいじゃないか。そういうことでは、隊員の方々も安心して身を挺して——先ほど不発弾処理の一例を挙げたわけでありますけれども、もっと崇高な基本的な任務もあるわけでありますから、ひとつそういうものに対する対応ができる勤務態様、生活環境、将来展望というものをぜひ真剣に考えていただきながら、またわれわれの方も欠けておる点があるとするならば、そういう対応を取り上げることが必要ではないだろうか。こういうことを強く要望をして、ぜひとも、これはたまたま社会労働委員会の場をかりての発言ではございますけれども、かかる優秀な国家的な投資をもって得た有能な技術労働者、技能労働者が、非常に条件が悪いまま、再就職でセールスマン的な仕事に従事するのは国家的な損失でもある、こういう考え方があるわけですから、労働省としても一段と雇用対策の一面を担っていただきたいということを要望して、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  287. 森下元晴

    森下委員長 次に、古寺宏君。
  288. 古寺宏

    ○古寺委員 防衛庁にお尋ねをいたします。  過去五年間における自衛官の公務災害発生状況を見ますと、事故が全然減少していないわけでございますが、これはどういう理由によるものですか。公務災害発生が減少していない原因は何によるものでございますか。
  289. 澤田和彦

    ○澤田説明員 御説明申し上げます。  過去五年間、事故が少しも減少していないといういまの先生のお言葉ではございますが、私ども防衛庁といたしましては、安全対策その他、いわゆる公務災害事故の防止にはできる限りの最善を尽くしておりまして、そう大きな率ではないかもしれませんが、事故の件数といたしましては少しずつ減少しているように私は考えますが、いずれにいたしましても、事故の減少には私ども日夜あらゆる面で努力しているところでございます。
  290. 古寺宏

    ○古寺委員 公務災害で一番多い災害は何でございますか。
  291. 澤田和彦

    ○澤田説明員 原因で申しますと、件数といたしましては、広い意味での訓練関係が一番多い数でございます。その次といたしましては、たとえば整備関係というような順になります。
  292. 古寺宏

    ○古寺委員 いわゆる訓練事故でございますが、この訓練事故の内訳は主にどういう事故でございますか。
  293. 澤田和彦

    ○澤田説明員 お答えいたします。  私どもいわゆる公務災害の認定という立場から分析しているわけでございますが、訓練事故の中で、訓練事故と申しましても、自衛隊はいわば有事に備えました防衛戦闘そのものの戦闘訓練、つまり射撃でありますとかそういう戦闘訓練というような意味での直接の訓練、そのほか、その基礎となりますいわゆる体力練成と申しますか、そういう意味での体力練成のための訓練というように、大きく分かれるかと思いますが、実は事故の、公務災害の発生します中では、比率の大きいのは、激しい戦闘訓練よりも、その基礎となります体力の練成といいますか体育訓練と申しますか、こういう中で、たとえば足を捻挫しますとか、転んですりむきますとか、打撲傷を負いますとか、ひどい場合は骨折しますとか、こういうたぐいのものが比率としましては多うございます。
  294. 古寺宏

    ○古寺委員 そういう打撲でございますとか捻挫でございますとかあるいは骨折、こういうような一つの傾向というものが一貫して繰り返されていると思うのです。そういうものをやはり再発しないように、予防するのが安全管理ではないですか。いかがですか。
  295. 澤田和彦

    ○澤田説明員 いま先生おっしゃいますとおり、こういうものを予防しますのがまさに安全管理であるということは、御指摘のとおりであると思います。  私ども防衛庁といたしましては、隊員のたとえばいま申し上げました練成訓練、体育訓練等を行うに当たりましても、指導教官その他が十分できる限りの安全管理について配意はしてきているわけでございますが、何分にも普通のいわばスポーツとは違いまして、同じ体育訓練と申しましても、整地されていない演習場等で、同じ走るにしましても全力疾走し伏せるというようなことで、特に新しく自衛隊に入りたての新隊員ということもあるかと思いますが、いかに注意しましても、やはり多少の危険といいますか、そういう捻挫あるいは擦過傷という程度の事故というものはある程度避けられないのではないかと思いますが、いずれにしましても、先生おっしゃいますとおり、こういうものを少しでも減少するように、十分これから注意はしていく所存でございます。
  296. 古寺宏

    ○古寺委員 こういう公務災害が発生した場合の対応はどういうふうになっておりますか。中央病院とか地区病院あるいは各部隊には医務室がございますが、そういう事故に十分に対応できるような体制ができていないというふうに私は感じているのでございますが、いかがですか。
  297. 戸田陽

    ○戸田説明員 古寺先生のいまの御質問に衛生課の立場からお答えしたいと思いますが、先ほど人事第三課長がお答えいたしておりましたが、演習とか訓練等におきまして部隊から比較的遠隔地、近くは別でございますが、遠隔地等におきますところの事故があろうかと思います。  御指摘のように、東京には、陸海空三自衛隊共同機関でございますところの自衛隊中央病院がございますし、陸で七つ、海で四つ、さらに空で二つの地区病院を持っております。さらに医務室ということでございますと、細かい数字になりますけれども、陸上自衛隊で百九カ所、海上自衛隊で二十六カ所、航空自衛隊で二十三カ所、合わせて百五十八になろうかと思いますが、そこでは主として隊員の健康管理、さらには、いま御指摘いただきましたような訓練、災害時におきますところの公務災害ばかりか、私傷病等につきましても診療業務を行っております。  もちろん遠隔地にございますと、私ども輸送手段を持っておりますし、陸の場合でございますと、各師団等には衛生隊がございまして、本部におきますところの救急車総隊さらにはジープに積載いたしまして、直ちに後送する。もちろん部隊演習等につきましては若干組織は違っておりますけれども、衛生小隊等が出向いておりますので、必要最小限の治療をして、万全でないかと思いますけれども、後送体制をとる。ケース・バイ・ケースによりまして手当てがおくれたりする場合もあろうかと思いますが、現体制におきましてはより十全な体制をとるべく努力をいたしているところでございます。  以上でございます。
  298. 古寺宏

    ○古寺委員 私が見た範囲では、医療設備とかあるいはまた部隊によってはもうほとんどお医者さんがいません。嘱託のお医者さんです。そういうような体制で、毎年ある程度は減少しているとおっしゃっても、ほとんど横ばい状態で、こういう公務災害に対応できないと私は思う。今後やはりきちっとした医療設備の充実とともに、そういうスタッフをそろえまして対応していかなければいけないと思うのですが、いかがですか。
  299. 戸田陽

    ○戸田説明員 医師を含めまして医療関係者のスタッフの充実の問題でございますが、御指摘いただきましたように、部隊が陸海空、それぞれ僻地等に分かれておりまして、残念ながら現時点におきましては医官の不足が目立っております。  医官の充足対策といたしまして、かねがね衛生貸費学生でございますとか、一般公募の医官の募集等いたしておりますけれども、十分対応できてないのが現状であろうかと思います。  このような意味におきまして、先生すでに御承知かと思いますが、昭和四十九年に埼玉県の所沢に防衛医科大学校を設置をいたしておりまして、おかげさまで、本年昭和五十四年で学年進行満杯になりまして、六年生まで全部でたしか四百二十九名の学生、医者の卵といいますか、現在在学中でございます。来年三月には一期生が、定員は八十名でございますが、初年度でございましたので、校舎の関係等もございますけれども、四十名卒業することになっております。彼らに期待するところが非常に多いわけでございます。  もちろん、それ以外の公募の医官の充実等につきましても努力はいたしますが、最終的には、幹部自衛官たる医師という意味におきまして防衛医科大学校の学生にわれわれは期待をいたしておりまして、防衛医科大学校病院さらには先ほども出ました中央病院等におきましていわゆる二年間の臨床研修をやりました後、つまりいまから三年ぐらい後になろうかと思いますが、医官の不足しておりますところの陸海空の部隊におきまして、幹部自衛官として隊員の診療さらには健康管理、予防衛生といいますか、体力の増強等も含めました健康の増進等の一般業務に従事させたいということで、現在努力をしているところでございます。各部隊におきましても、彼らの卒業を一日も早く待っているのが現状ではないかと思っております。
  300. 古寺宏

    ○古寺委員 卒業した医官は、退官をして普通の一般医師と同じように、よそへ行ってしまうというようなことはないのですか。
  301. 戸田陽

    ○戸田説明員 将来の問題でございますけれども、現在私ども、常日ごろ、背広の立場ではございますけれども所沢へ出向きまして、六年生つまり一期生、五年生の二期生あたりと、いろいろな面で局長以下懇談等をいたしております。彼ら、建学の精神に燃えまして、将来自衛隊の医官として幹部自衛官として勤務したいという非常に強い意志を持って、全寮制で現在教育並びに訓練を受けております。  余分なことであるかもしれませんが、法の決めによりまして在学期間の一・五倍と申しますか、九年間自衛隊員としての勤務の義務がございまして、つまり九年間自衛隊員としてのあれがあるわけでございますが、償還金の問題等につきましては現在細部を詰めておりますけれども、われわれといたしましては一人でも多く、義務年限を含め、さらに将来隊員の健康管理、体力増強のためにも、彼らに残っていただきたいという意味におきまして、現在努力をしているところでございまして、大学校を出まして医師国家試験を受ける資格があるわけでございますので、もちろん一般国民の医療に従事することはできる医師ではございますけれども、職域ということにおきまして彼らに期待をいたしておりまして、現在そういう面で努力を続けておるところでございます。
  302. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、卒業してから、いわゆる医師の国家試験は受験しないのですか。
  303. 戸田陽

    ○戸田説明員 当然でございまして、大学校を卒業いたしますと医師国家試験を受ける受験資格が与えられます。たとえば来年の三月に第一期生が卒業するわけでございまして、例年でございますと春秋二回国家試験がございますが、ことしの場合たしか五十四年の四月の七日、八日に国家試験があったかと思いますが、来年も恐らく春の国家試験はその時期に行われるものと、これは厚生省でお決めいただきますけれども、彼らは全員国家試験を受けて、しかるべき後、医師免許を取った後に、自衛隊中央病院及び防衛医科大学校病院におきましていわゆる臨床研修二年間をさせるということで、国家試験は当然全員受けます。
  304. 古寺宏

    ○古寺委員 先ほどもちょっと申し上げましたが、現在は非常に使命感に燃えまして、それで国家試験を受け、任官しまして、実際に部隊に配属になります。その場合に、非常に待遇が悪い、それから医務室なんかも部隊では一番おんほろのところにある、医療設備も満足にない、そういうところに行って、幻滅の悲哀を感じて飛び出すなんということはないですかね。
  305. 戸田陽

    ○戸田説明員 いま御指摘いただきましたように、中央病院はもとより、十三の地区病院におきましては、医療設備さらには診断、検査部門の充実に当然努めておりますが、先ほど触れました陸海空の百五十八のいわゆる部隊の医務室におきましては、海空につきましては二十六カ所なり二十三カ所で、比較的数も少のうございますので、ある程度隊舎にいたしましても医療器械等につきましても充実いたしておりますが、何分陸につきましては百九カ所ということで、個所数が非常に多うございます。  私もたびたび部隊に参りまして医務室等を見せていただきますが、中には非常にりっぱなものもございますが、残念ながら、いまおっしゃいましたよう部隊のすみ手というわけじゃございまませんけれども、非常に老朽度の高いといいますか、古い戦前の建物を改装いたしました医務室もございます。  そういう面で、卒業後の若い希望に燃えた彼らが、直ちに医務室勤務に配属になった場合失望してやめはしないかという御懸念のようでございますが、二年間の病院研修におきまして、さらに、まだ最終的には決まっておりませんけれども、自衛隊中央病院を含めて各地区病院へグループで二、三名ずつ配属をいたしまして、卒業後二年なり二年半の医官が一人で参りますといろいろな面で困る点もあろうかと思いますが、グループで親子病院のようなかっこうで、地区病院に配属いたしまして定期的に各部隊に派遣をするというような勤務をとりまして、彼らに失望を与えないように、さらに研修の場を与えると同時に、それと並行いたしまして、年次計画をもちまして陸を中心に、海空もでございますけれども、隊舎はもとより、近代的な医療設備を整えるべく、診断部門、検査部門等につきましても十全の努力を払っていきたい、かように考えております。
  306. 古寺宏

    ○古寺委員 御答弁はまことに結構なんでございますが、いま国会でも問題になっておりますが、飛行機とかそういうものには十分な予算を考えるようでございますが、防衛力の最も大事な人間の問題に対しては、防衛庁のいままでの態度と申しますか方針と申しますか、自衛官、隊員に対する先ほど申し上げました公務災害の予防の問題あるいは管理の問題、それからまた、こういうような医療の面におきましては非常におくれている。やはりまず、自衛官そのものの安全なり健康を防衛しなくて真の国土の防衛なんというのはできない、私はこういうふうに思うのですが、いかがですか。
  307. 戸田陽

    ○戸田説明員 私がお答えすべきでないかもしれませんが、衛生課長という立場で、私もたまたま医師免許を持っておりますので、隊員の健康管理、さらには、御指摘もいただきましたように、いろいろな優秀な装備を使用いたしますのも心身ともに精強なる隊員であろうかと思います。そういう意味におきまして、常日ごろの健康管理はもとより、疾病の予防さらには体力増強ということにおきまして、いま御指摘のような、ともしますと比較的軽視されがちであるような衛生サイドに、重点的なことが置かれなければいけないのじゃなかろうか、私見ではございますけれどもこのように考えておりますし、常日ごろ、私どもの衛生局長さらに衛生部門の者等におきましても、隊員の健康管理を第一義的に、自衛隊として集団としての健康水準の維持管理と向上に努力をいたしておりまして、今後とも、御指摘をいただきました点等につきましては、格段とそういう面でがんばってみたいと思っております。  私の意見も入っておりましたけれども、お答えすべきでなかったかもしれませんが、医師免許を持っておるという立場もございましたので、お答えをさせていただきました。
  308. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、先ほど草川委員からも質問がございましたが、就職援護事業がございますね。この最近五年間の予算額はどういうふうになっておりますか。
  309. 村田直昭

    ○村田説明員 お答えいたします。  最近五年間における防衛庁関係の就職援護予算でございますが、五十年度から順次申し上げますと、昭和五十年度は四億四百万円、五十一年度が四億四千八百万円、五十二年度が六億三千万円、五十三年度が七億八千五百万円、五十四年度がまあちょっと減少したわけでございますが六億九千六百万円でございます。  一貫して重視してまいりました関係で増強を続けておったわけでございますが、五十四年度に減少いたしました理由は、さきに、いわゆる自衛官の停年延長を今年度から実施することとなりました関係で、停年延長の対象となった者が何人か出たわけでございます。そのために、停年延長で退職する者を対象として、いろいろ教育あるいは訓練あるいは職業訓練等を実施しておりました予算が前年度に比して少なくなったということで、八千九百万円、約一一%今年度は減少しておるという状況でございます。
  310. 古寺宏

    ○古寺委員 就職援護事業の中で受託訓練ですね。いろいろな職業訓練校を活用してお願いしている予算額は、どのくらいございますか。
  311. 村田直昭

    ○村田説明員 お答えいたします。  部外の職業訓練校等に委託しております教育訓練関係の費用は約一億一千八百万でございます。五十四年度でございます。
  312. 古寺宏

    ○古寺委員 その人数と、職種はどういう職種でございますか。
  313. 村田直昭

    ○村田説明員 これは、予算額につきましてはいま五十四年度で申し上げましたが、ちょっと資料が古くなりますが、いま集計が出ております昭和五十二年度について申し上げますと、部外に委託している人数は千三百五十七人でございます。それからその科目でございますが、溶接、板金、配管、ブロック建築、機械整備等の科目について、部外に委託しております。
  314. 古寺宏

    ○古寺委員 労働省にお尋ねしますが、自衛隊の任期制あるいは停年制によって今後就職をしなければならない方々の職業訓練に対する対応策は、どういう政策をお持ちですか。
  315. 石井甲二

    ○石井政府委員 お答えいたします。  自衛隊の特に退職自衛隊員の再就職につきましては、一般的には私は三つの対応をしていると思います。  一つは、自衛隊の本来の訓練の中にそれ自体で一つの技能が獲得できる部面がございますから、それが実際の再就職の場につながるという問題が一つあると思います。  それからもう一つは、先ほどもお話しがございましたが、停年がございますが、その停年前に自衛隊自体が職業訓練を実施をしておるわけでありまして、それが先ほど言いました各自衛隊以外の訓練施設に委託をしているわけでありまして、職業訓練の側、つまり労働省側から言いますと、五十四年度約千二百人程度の委託を受けて訓練を実施しておる。それから、五十三年度につきましてもやはり同じくらいの訓練を実際に行っておるわけでございます。  さらにもう一つは、職業訓練全体の受けざらとして、現在中高年の職業訓練を充実しておりますが、一般の求職者と同じような、一つの職業の選択に対応いたしまして現在の職業訓練体制の中でこれを受けていく、こういう三つの道があると思います。  私どもとしましては、自衛隊の隊員の再就職ということについては、常々自衛隊側とも連絡をとりながらやっておるわけでありまして、さらに、今後とも実態に即した運営を図ってまいりたいというふうに考えます。
  316. 古寺宏

    ○古寺委員 職業訓練校というのはやはり定員がございますし、限られた人員によって経営しているわけですね。そうしますと、自衛隊を任期でおやめになるあるいは停年でやめられて再就職したい、しかし限られた科目しかない、ところが中高年の方々にとってはやはり事務的な仕事が欲しいとかいろんな希望があるわけですが、実際にはそれに対応できるような体制が現在できていないわけですね。それから、職業訓練を受けるに当たっても、夜であればそういう訓練を受けられるが昼はできないとか、あるいは昼はできるが夜はできないとか、いろんな拘束があるわけです。  こういう面について、先ほど防衛庁の方からは、労働省の御協力を得て就職援護事業が円滑にいっているというようなお話がありましたが、現実に、私どもが個々に当たっていろいろ調査をしてみますと、非常に問題があるわけでございます。したがいまして、今後非常に停年も早い、あるいはまた、任期制によって若年の方々が再就職をしなければならぬ、こういうような問題があるわけでございますので、労働省としても、もう少し密接に連携をおとりになって、こういうような就職援護事業が円滑にいくように今後きちんとやっていただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  317. 石井甲二

    ○石井政府委員 ただいま先生指摘の、特に自衛隊の退職される方々の御意見を聞いてみますと、わりと事務職、そのほかもございますが、事務的な仕事につきたいという方が非常に多いようでございます。いま先生指摘の問題は、単に自衛隊の受けざらというだけではなしに、現在の全体の中高年、あるいは産業構造が変わってきておりますから、それに対して、第三次産業関係の訓練職種の整備を本格的に考える時期だろうと私は思います。  現在、第三次産業関係の訓練につきましては、五十三年で二万一千五十人を公共訓練施設で訓練をしているわけでございますけれども、実際はそれだけでは——現在の対処の中では特に指導員の問題がございまして、それ以上はなかなか受け入れがむずかしいということがございます。したがいまして、一つは、現在行われている各種学校とかあるいは専修学校というものにできるだけ委託をするということで、問題解決の一助にしたいと思いますし、さらに、御指摘のように夜間やるということもかなり重要な要素でございますので、現在夜間の訓練については実際やっておりませんが、来年度予算も踏まえまして、現実の要請に対応するために、そういう問題も少し考えてまいりたいと考えております。
  318. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がありませんので次に移りますから、防衛庁は結構でございます。  先ほどの本会議でも運輸大臣からお話しがあったわけでございますが、国鉄は倒産企業に等しい、非常に財政事情が厳しいということをおっしゃっているわけであります。東北新幹線は現在盛岡以南の工事が進行しているわけでございますが、五十五年度に開通ができるのかどうか、運輸省にお尋ねします。
  319. 岩橋洋一

    ○岩橋説明員 東北新幹線東京−盛岡間の工事につきましては、四十六年以来鋭意国鉄がやっているわけでございまして、現在のところ五十五年度完成を目途に工事を進めております。ただ、問題となっております大宮以南の点につきましては、公害その他の問題でなかなか地元の御協力が得られないという状況でございますが、残ります約二年程度、国鉄に十分努力をしていただいて、五十五年度完成、五十六年開業ということでまいりたい、かように考えております。
  320. 古寺宏

    ○古寺委員 整備五新幹線の中で特に盛岡以北、北海道新幹線については見通しはいかがですか。
  321. 岩橋洋一

    ○岩橋説明員 盛岡以北の東北新幹線及び青森から札幌までの北海道新幹線につきましては、いわゆる整備五新幹線に含まれるわけでございますが、これにつきましては先生承知のとおり、昨年十月三日に開かれました新幹線整備関係閣僚会議で具体的実施計画が了承されておりますが、これらの計画を進めるに当たりましては、国鉄の財政状況を勘案いたしまして、相当の公的助成及び財源措置といったものがその前提条件になろうかと存じます。現在、関係各省でそれを十分検討するということになっております。  昭和四十八年以来、国鉄と鉄建公団で環境調査を含めた各種調査を行ってきたところでございますが、五十四年度は、国鉄及び公団に対しまして、この整備五線全体に対しまして国費で二十五億円ずつの補助金を出しまして、これによりまして本格的な環境影響評価調査を進めることにしております。  また、この環境影響評価を行うための指針を本年一月二十三日に運輸大臣から通達したところでございます。これとは別に、国土総合開発あるいは新幹線の投資採算等の観点から、関係省庁でさらに徹底した調査を行うということで、国土庁と運輸省にそれぞれ五億円の調査費がつきまして、現在調査に入ったところでございます。  先ほど申し上げました公的助成及び財源措置等が本年じゅうに具体化されました場合には、所要の手続を経まして、地元引き受けの利用債発行による財源で工事に着手できるように、予算的には措置しているところでございます。
  322. 古寺宏

    ○古寺委員 青函トンネルは目標どおりに進行いたしますと、昭和五十七年度に完成するという見通しになっておりますが、いかがでございますか。
  323. 川島廣守

    川島参考人 青函トンネルにつきましては、目下のところ予定どおり大変順調に工事が進捗しておりますので、現在のままで参りますれば五十七年度完成は十分できるものと考えております。
  324. 古寺宏

    ○古寺委員 五十七年度に青函トンネルが完成いたしましても、なお北海道新幹線あるいは盛岡以北の東北新幹線の着工がおくれた場合には、この青函トンネルはどのように活用するお考えですか。
  325. 岩橋洋一

    ○岩橋説明員 先生御察知のとおり青函トンネルにつきましては、本来は、在来線と申しますか在来型の鉄道のトンネルということで着工したものでございますが、その後全国新幹線網の建設に伴いまして、新幹線と在来線とが共用するということになっております。したがいまして、トンネルが完成した場合に、それをどのような形で共用するかということはいろいろ勉強する必要がございまして、ただいま経営主体でございます国鉄においていろいろ勉強しておりますが、聞くところによると、いわゆる三線軌条によって行うのが一番有力な案だと聞いております。  ただ、先ほども御説明いたしましたように、東北新幹線の盛岡以北及び北海道新幹線につきましては、整備五新幹線の取り扱いの中でいろいろ進めております関係、また、たとえば現在着工したといたしましても、長大トンネル等の工期のことを考えますと、ただいま公団の総裁がお答えになりました五十七年度に新幹線が完成するということは、ちょっと無理ではないかと考えております。  当面は在来線として在来型の鉄道を入れていき、将来新幹線ができたときにそれも共用するというのが一番よいかと考えております。
  326. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、鉄建公団にお伺いいたしますが、現在鉄建公団に直用の職員と申しますか、臨時の職員で働いている方々が約八百名以上いらっしゃるわけでございますが、このトンネルが完成いたしました後におきましては、このいままで働いてこられた職員はどういうふうになりますか。
  327. 川島廣守

    川島参考人 先生よく御案内のとおりでございまして、現在直轄の作業員が七百八十名前後おるわけでございます。これらの方々はいずれも八年前後の長い間、いわゆる先進導坑と申しまして、一番むずかしい最も危険度の高いところを、わが公団の技術指導のもとに仕事を進めていただいておりまして、全体の先進導坑二十二・三キロでございますが、未掘削の部分五・五キロでございますから、大変順調に工事は進んでおるわけでございます。  それで、いまお尋ねのこれが完成いたしました後の直轄従業員の方々の再雇用の問題でございますが、これは先生よく御案内でございますけれども、いま申しましたようなことで、長い間非常に練度の高い、あるいはなかなか得がたい経験と技能を積まれた人たちでございますので、われわれといたしましては、身につけられました技能と経験をさらによく活用できるような職場、こういうところを何とかして再雇用の新しい職場として確保してあげたい、かように考えておるわけでございます。  現在、七百八十名のうちで男の方が約八割でございまして、二割が女性の方でございます。年齢もいろいろ区々にわたっておりますけれども、そのような年齢構成でございますとかあるいはまた性別でございますとか、それから地元の方が約六割でございますから、再雇用に対しますそれぞれの各個人の御希望等も、当然これはおありのことと思います。  いずれにいたしましても、先行き完成の目安が立っておる現在でございまするので、雇用不安によって勤労意欲が低下するとか、あるいはまた、それが労働安全衛生に悪い影響があるとかということでは困りまするので、それらを踏まえまして、公団としましては関係機関と十分にひとつ協議を遂げ、またそれぞれの御本人方の希望を踏まえまして善処してまいりたい、かように考えて、目下一生懸命勉強しているところでございます。
  328. 古寺宏

    ○古寺委員 この八百名近い職員方々の待遇の問題でございますが、長い方になりますというと十五年近く働いていらっしゃる、平均でも七、八年ぐらいでございますね。その方々がいまだに臨時職員という形で働いていらっしゃるわけです。そうしますというと、ボーナスにいたしましても、あるいは有給休暇にいたしましても、退職金にいたしましても、正職員に比較いたしまして非常に不利な立場にあるわけでございます。いま総裁がおっしゃったように、非常に困難な大事業を今日まで一生懸命皆さんやっていただいたわけでございますので、当然そういう功績のある労働者方々でございますから、再就職の問題、再雇用の問題も考えなければいけませんが、現在の一年更新の臨時職員というこの制度、これを改めるわけにいかないでしょうか。
  329. 川島廣守

    川島参考人 いまお尋ねの問題につきましては、いま直轄作業員といいますかそういう形で作業をいたしておりますのは、この青函トンネルのほか、運輸省の港湾関係の仕事がたしかそうだと思いますけれども、給与あるいは経済的な問題につきましては、毎年契約を直しているわけでございますけれども、その水準の引き上げ等につきましては、私らといたしましては非常に心を砕きまして、入念に毎年話し合いをいたして今日まで来ております。  いまお尋ねがございましたように、給与あるいはまた将来のことでございまするけれども、退職をなさるような場合におきます退職金の問題でございますとか、こういう問題につきましては、現在も内規の基準を持っておりまするけれども、これは元来、持っております内規は公務員に準じましたような基準でございまして、他の職員と比べて大きな隔たりがあるというようなものではございません。  なお、これは在来もそのように努力してまいった経緯でございますけれども、今後も、いまお話しがございましたように、この方々の特殊な作業の内容にかんがみまして一層努力をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  330. 古寺宏

    ○古寺委員 身分とか待遇の問題につきましては、これは労使で決める問題かもしれませんが、少なくとも工期がはっきりしておって、十年なら十年、十五年なら十五年自分はそこで働こうということで、公団の住宅にも入り、そこへできた学校に子弟も入れて、今日まで働いてこられた方々を、臨時作業員としていつまでもつないでおくというのは好ましくないことじゃないか。労働者方々も、何とか正規の職員として採用していただきたいということを、再三再四要望しておったわけです。  最初は就業規則もなかった。現在は、正規の職員と作業員と別々に、労働省の方から指示されてそういう就業規則もつくっておるわけでございますが、やはりこういう長い間、期間がはっきりしてしかも非常に困難な作業に従事している労働者につきましては、十分に立場を尊重して、いろいろ将来のこともございますので職員として採用すべきじゃないか、こう思うのですが、労働省の御意見はどうでございますか。
  331. 小粥義朗

    ○小粥説明員 労働者の方が、その雇用の形態の別によりまして労働条件について異なる扱いを受ける場合、これは製造業の場合等を含めましていろいろ見られるケースでございます。実は、実態的には期間雇用でありながら、更新して常用労働者と同じような形態にありながら、その条件が違うという点の問題を御指摘になったかと思いますが、基準法のたてまえで申しますと、そうした個々の契約の中身までは行政としてもなかなか手が届きにくいわけでございますけれども、少なくとも実態的に常用労働者と同じような形にあれば、たとえば契約終了の際のいろいろな手当の問題であるといったことは常用労働者と同じように扱うということに、たとえば解雇予告の問題にしましても、いたしておりますので、そうした点は遺漏のないようにいたしてまいりたいと思っております。
  332. 古寺宏

    ○古寺委員 次にトンネル工事ですね。いろいろな注入剤とか急結剤を、前から何遍も申し上げておるのですが、使用しているわけでございますが、現在はどういうような化学物質をお使いになっておりますか。
  333. 藤田雅弘

    藤田参考人 お答え申し上げます。  現在使用しておりますのは、御承知のように青函トンネルの中では、注入の作業といって、海底下を掘っておる関係で、水をとめるために、セメントと水ガラスをまぜました溶液を高圧で注入して、止水をしております。それと、掘削しました後直ちに掘りました面が崩れないように、コンクリートの吹きつけをやっております。このコンクリートを早く固めさせるために急結剤を使用しておりますが、この中で、現在はシグニットというのとハーデックスQP500という商品名のものを使っておりまして、いずれもこれは同一成分と聞いておりまして、具体的には炭酸ソーダとアルミ酸ソーダ、苛性ソーダのまざったものだ、こういうぐあいでございます。
  334. 古寺宏

    ○古寺委員 労働省は、この注入剤、急結剤の毒性試験なり、あるいは有害かどうかという調査をなさっておりますか。
  335. 津澤健一

    津澤政府委員 ただいまのところ実施いたしておりません。
  336. 古寺宏

    ○古寺委員 なぜおやりにならないのですか。
  337. 津澤健一

    津澤政府委員 かつて使われましたアクリルアミド等の非常に危険なものと違うという判断もございますが、若干調査不十分なところもございまして、いまだに実施していないわけでございます。
  338. 古寺宏

    ○古寺委員 よく聞こえなかったのですか——いや、結構ですよ。  五十三年の四月に、労働安全衛生法に基づいて労働災害防止計画というのができました。この中に、たとえば建設業の土木工事業で見ますと「施工計画の樹立とセーフティーアセスメントを行う」こういうふうにあるわけですが、これは安全衛生立場からこういうものを書いていらっしゃると思うのですが、きょうの大清水トンネルの問題でもいろいろ問題がございました。事故が起きてからでは遅いのです。ですから、そういうものについてはきちっと調査をして、どういうような成分によって注入剤なりあるいは急結剤なりが使われているかという問題をチェックして、その安全性あるいは毒性試験というものを労働省は当然やらなければいけないと思う。それをまだおやりになっていないわけですね。  そこで、私が次にお尋ねしたいのは、労働省建設業の防止計画の中には、セーフティーアセスメントを行いなさい、実施しなさいというふうに印刷されているのですが、この指針はどうなっておりますか。
  339. 津澤健一

    津澤政府委員 建設業のセーフティーアセスメントにつきましては、ただいまトンネル工事を題材といたしまして、この工事に先立って事前に、工事が行われる段階での安全をどのようにやるかという手法の開発を、専門家に委嘱してやっておる最中でございます。
  340. 古寺宏

    ○古寺委員 そうしますと、少なくとも、現在の建設工事というものはセーフティーアセスメントの指針がまだできていない。そういうアセスメントに基づいた防災計画というものもできていない。したがって、非常に危険な状態にあるということが言えますね。どうですか。
  341. 津澤健一

    津澤政府委員 アセスメント、御案内のように、その工事の着工に先立って事前に安全性を評価するということの総称でございますので、私ども労働省として、これが最もいい方法だという指針はまだ出してはおりませんが、いかなる工事を行います場合でも、工事を行う前にいろいろな調査がございますし、計画がございます。そういう中では、業者みずからがそのような心構えでやってほしいということも、その計画の中では願望しておるところでございますが、しかし、私どもとしては、これがいいやり方だということを早く示さなければなりませんので、ただいまトンネルを対象といたしましたものの作成を急いでおりますが、これが完成いたしますれば、各種の建設工事のアセスメント指針の作成に加速度がかかることになるのではないか、かように考えております。
  342. 古寺宏

    ○古寺委員 青函トンネルを初めとして、隧道工事で発生しているじん肺の発生状況はどうなっていますか。
  343. 津澤健一

    津澤政府委員 隧道建設工事関連の建設業におきまする最近のじん肺の発生状況を申し上げますと、五十年は、適用事業所三百四十八に対しまして、そこの従事労働者数が一万六百五十一、健診受診者が六千八百四十七、その中で有所見者が七百二、有所見率にいたしますと一〇・二%、これが五十年の数字でございます。五十一年を飛ばさせていただきますが、五十二年におきましては、適用事業所三百三十六、従事労働者九千七百二十九、健診受診者五千六百九十二、有所見者四百六十三、有所見率八・一%、このように相なっております。
  344. 古寺宏

    ○古寺委員 もしこの注入剤とかあるいは急結剤の中に発がん性の物質が含まれていると仮定しますね。そうしますと、将来、トンネル工事が終わってから、じん肺はもちろん何年か後にがん発病する方もいらっしゃるわけですから、当然そういうようなことも危惧されるわけでございますが、毒性試験については労働省として行う意思がございますか。
  345. 林部弘

    ○林部説明員 既存の物質で安全性のすでに確認されているものについての調査ということは、一般的にはないのでございますけれども、新しく製品が開発されるような段階におきましては有害性についてのチェックをするということが、一昨年の安全衛生法の改正の際にそういうような条文が取り入れられておりますし、それから、既存の物質でありましても、将来科学的な根拠をもってそういう問題が学問的に明らかになった場合については、そういう物質についてもさかのぼって調査をするということはあり得ると思います。  ただ、先ほど先生のお話しのございました物質につきましては、成分として、先ほど出ておりましたようなものについての発がん性というのはいまのところ問題になっていないと思うのでございますが、将来もし新たな製品が出てくる場合には、そういうようなものにまぜられる前の段階で安全性についてのチェックが行われる、そういう仕組みになっております。
  346. 古寺宏

    ○古寺委員 きょうは時間がないので次の機会に譲りますが、実は、大清水トンネル事故が発生する直前に、私は現地に参りまして、あそこの河川が汚染をされて全く魚の棲まない川になる、また水道の水源が枯渇をして他の水源を求めなければいけない、いろいろな問題がございまして、工事事務所にもお寄りしまして安全衛生の問題についてもお尋ねをいたしたところが、心配がない、こういうお答えだったわけでございますが、その後におきまして大きな事故が発生したわけでございます。  青函トンネルにつきましても私は機会あるごとにいろいろとお願いを申し上げてまいったわけでございますが、現在の排水の状況をお聞きいたしましても、やはり海草とか沿岸の公害と申しますか、やはりまだそういういろいろ心配な問題があるわけです。したがって、そういうような環境に対して影響のあるものが、人体に影響がないとはこれは断言ができない。  いま薬害の問題で同じこの委員会がいろいろやっておりますが、キノホルムなんかも、これは局方の薬品であったわけでございますけれども、ああいうような大きな事故が起きております。  したがって、これは既存の物質であるから心配がないというように簡単に片づけないで、そういう粉じんを吸ったりいろいろな危険な作業をしていらっしゃるわけですから、将来のことを十二分に配慮をして、そういう現在使われている成分については、さらによく公団側ともお話しをして、そして、そういう物質が人体に影響がないかどうかという試験をやっておく必要があるのじゃないか、こう思うのですが、いかがでございましょうか。
  347. 津澤健一

    津澤政府委員 先生指摘のように、有害のものがどこにどういうふうにあるかということは、常に注意しておかなければならないということは確かでございます。私どもといたしましても、万が一にもそのようなものがないように、御趣旨のように公団側ともよく連絡をとりまして、そのような有害性がないかどうかについての調査を進めるよう検討いたしたいと思います。
  348. 古寺宏

    ○古寺委員 それじゃ、時間ですから終わります。
  349. 森下元晴

    森下委員長 次に、田中美智子君。
  350. 田中美智子

    田中(美)委員 きょうの委員会大臣の出番が大変少ないようで、御退屈していらっしゃるような感じにお見受けしました。きょうはぜひ大臣に篤と聞いていただきたいし、大臣の決断を仰ぎたいということが中心ですので、十分に誠実に聞いて、誠実に判断していただきたいというふうに思います。  まず、残業、深夜業を含む長時間労働が過酷な労働であることは当然ですが、人間の生活リズムを狂わせた労働条件というものと相まって、健康破壊をもたらしている新たな職業病というような状態が出ているというふうに思います。こうした問題が最も顕著にあらわれているのが、新しい職場といいますか、民間放送のキー局の現場で非常に出ているように私は思います。その点を少し大臣に聞いていただきたいわけです。  民間キー局における在職死亡者ですね、まだ職場をやめないうちに亡くなった方、これが日本テレビで約十年間に二十七名の方が亡くなっています。若い人は三十一歳から五十五歳という中で平均年齢が四十一・三歳、このほとんど九〇%近くがですね、八八%が現業の方たちなわけです。この現業が一番ひどい状態になっているというふうに私は思います。  それから、TBSでは十年間に二十五名が在職死亡している。それから、フジテレビでは約五年間に十三名が在職死亡。テレビ朝日、これが約九年間に十五名在職死亡している。これらは、それぞれの職場の方に調べていただいた数です。  それから、民放労連が行った民放四局、これを見ましても、この六年間に四十八名在職死亡している。やはり平均年齢が四一・二歳というふうな状態が出ています。  この病気の中身というものも、脳出血だとか、脳溢血だとか、脳内出血だとか、腎不全だとか、心不全だとか、蜘蛛膜下出血とか非常に多岐にわたっている。そういう内部疾患を起こしているわけです。そういうのでころりと死んでいるわけです。これは大変な数ではないかとまず思います。なぜこんなに死亡者が出るのか。これは氷山の一角で、その下に非常な健康破壊があるのではないかという、一つのバロメーターにこの数字は見ることができないかと私は思うわけです。  どのような労働条件になっているのかというのを見てみますと、まず残業時間が非常に長い、長時間労働だということです。  これは、労働省がお出しになっております毎月勤労統計、毎勤統計と言われているこれの五十二年度の月間の残業時間、この平均のを見てみますと、十二時間となっています。月に十二時間が大体いま平均、これがいいか悪いか別としまして、一応日本の場合に十二時間だということが労働省の数字で出ているわけです。  それが、これはいま私が持っております日本テレビの資料です。同じ五十二年と五十年です。これを見てみますと、これは七月の例ですね。八十時間以上というのが約二百人の労働者のうち四十五人、多い人は百六十八時間、百三十四時間、百二十四時間、百二十三時間、百十九時間というふうにずっとずらりと名前が並んでいます。これは五十二年の十一月、制作室の八十時間以上の人、六十名ですね。約二百人のうち六十名が八十時間以上やっています。日本全体の平均が十二時間なのに、ここでは八十時間以上やっているのですね。これも最高百七十七時間、百六十八、百六十七、百四十六、百四十三、百三十七、百三十七、百三十六、百三十三と、ずっとこういう残業時間ですね。  それから、これは五十二年の十二月、これを見ましても、二百人中五十二人が八十時間以上の残業をしている。驚くのには、一番多い人が二百七十一時間の残業です。二百七十一、百八十五、百八十一、百七十一、百六十二、百四十六、百三十七、ずっとこう並んでいるわけですね。一日八時間としましても、六日間、これで月幾らになるか。それで約百九十時間ぐらいなわけですから、これで見ますと、一カ月に二カ月分の労働時間を働いている。それ以上の人があるということですね、二百七十一なんということは。これはまさに殺人的な、中身がどうかということは別にしましても、時間を見ただけでも殺人的な状態が出てきている。  三六協定では三十時間というふうに言われているのですけれども、これは明らかに労働基準法違反ではないかと思いますが、これが事実であるならば、労基法違反ではないでしょうか。大臣、どうお考えになりますか。
  351. 小粥義朗

    ○小粥説明員 三六協定で月間の残業時間のリミット三十時間と協定しておきながら、それを超えるいま御指摘のたとえば百数十時間という残業をしているとすれば、これは基準法の違反になります。
  352. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、早速これは事実であるか調査をしていただきたい。労働基準法違反であるならば、正しく監督をしていただきたいというふうにお願いいたします。  それから、連動というのがあります。大臣御存じだと思いますが、これはこういう表になっているわけですけれども、夜中まで働きますね。そうすると、たとえばこれはあるカメラマンの一週間ですね。これをとりますと、日曜日に出勤して十四時間半働いているのです。普通世間では常識八時間と、こう言っているのですからね。十四時間半働いているということは、もう夜中の十二時、一時というふうな時間まで働いている。そうすると、その翌日また十五時間半働いているのですよ。そうすると、夜の十一時、十二時になって、それでちょっと寝て、朝またもう六時半ごろ会社に出てきているわけですね。そしてまた月曜日に十五時間半働いている。それで今度は火曜日には十五時間働く。水曜日には十四時間三十分働く。これはあるカメラマンの実際の数字ですね。そして、木曜日に初めて休日になった。今度金曜日九時間、土曜日七時間、合計しますと七十七時間働いているのです。  もう一人は音響をやっている方、この方の中から事例を出したので、特にひどい事例ではないのです、大体皆同じような事例ですので。これも、日曜日に十七時間五十分働いている。十七時間労働するということは、明け方までまさに徹夜して働いているのですね。そして、翌日の月曜日は当然休むべきなのに八時間働いている。今度火曜日には十六時間働いている。水曜日には十五時間半働いている。木曜日には七時間半働いている。金曜日には八時間半働いている。土曜日には八時間働いている。これを合計しますと八十二時間二十分です。  いま日本の労働時間が、大臣御存じだと思いますが、四十八時間というのは世界に比べて恥ずかしい、長過ぎるじゃないか、これを短くせよと言っているときに、一週間に八十二時間二十分も働いているという現状、これは日本テレビの例です。こういう現状になっているということは、この死亡の数を見ましても、いかに健康破壊が進むかということは、これは医学以前の問題だと思います。常識で考えて、医者に健康破壊するかどうかなんて聞かなくても、それ以前の問題だと思うのです。週八十二時間二十分も働いているという人たちが一人や二人ではないわけですから。いまそういう事例をちょっと出したわけです。  それで、こういうものを御存じかと思いますけれども、これは日本民間放送労働組合連合会というのが「民放労働者の健康問題」というのを調査したものです。恐らく御存じだと思います。  これを見ましても、体が「なんとなくすぐれない」とか「現在医療中」こういう人を合わせますと五〇%いる。それから自覚症状で活力の低下を訴えている方が男で三四%、女で四三%、集中力が低下しているは男の方が二九%、女が三一%、身体的違和感、これは情緒不安定になったり自律神経がおかしくなるのが男が一九%、女が二三%、それから疲れがたまっていくは男が五一%、女が五〇%と出ているわけです。  五〇%とか四〇%とか数字が出ていますけれども、これは庶務のような事務的な仕事をしている、それほど残業の長くない人も入った調査なんですね。ですから、ほとんどは現業の人だということになりますと、こうした何となくすぐれないとかいう自覚症状の人が八〇%、九〇%も出ているということが、これで推測できると思うのです。いま私はこの調査の中を抜粋したわけですね。  それで「過去一カ年間の罹病延べ率」を見てみますと、銀行が非常に労働時間が長くて過酷だというようなことを聞いているわけですけれども、これとの比較が出ているわけですね。これを見ますと、大体二十代で民放一二一%、銀行が六八%、三十代で民放は一四六%、銀行八六%、四十代で民放一五〇%、銀行八九%ということで、労働条件がひどいと言われている銀行に比べて一・七倍、二倍近い罹病延べ率がこれで出ているわけです。  この調査を労働科学研究所、御存じだと思いますが、そこの遠藤主任研究員がこれを細かく分析していらっしゃるわけですね。これを見ますとこう書いていますね。  「二〇歳代からすでに過労→蓄積疲労→慢性疲労→疾病化といった不健康化のライフサイクルを余儀なくされており、成人病の発生が一般的には四〇歳代であるものが、民放では三〇歳代に現れている。まさに早老現象である。」また「民放労働者の不健康状態があらゆる面にいちじるしい。従来、もっとも悪いといわれていた銀行労働者よりも、はるかに悪い。」というふうに細かく分析していますけれども、こういうコメントを言っていられるわけですね。これを見ましても、いかに民放の現業部門というのは健康破壊が進んでいるか。  特にこういう歴史的に新しい職場といいますか、日本テレビですと二十五年だそうでありますけれども、最初始まったときには労働者がみんな若いわけですね。二十代の人が圧倒的に多い。そこで進んだものですから、めちゃくちゃやっても、若さで持ちこたえていったわけですね。それが二十五年たつと二十歳の人が四十五になります。労働省あたりでも魔の三年などと言われて、昭和三年の方あたりがころっといくというような話がありますけれども、いま昭和三年の人というのは五十歳ですからね。それが民放では三十歳代でそういう現象が出ているということです。そういうことは、いかにいままでひどい労働条件をこらえてきたか。それを労働省も全く放置し、会社もそれをいいことに、ずっとしてきたということです。それが普通の、一般労働者が若い人から年輩の人までいるという形になって、急に死亡者が三十代、四十代、五十代でころころ出る、いろいろな疾病が出てくる、私はそういう状態になっているのではないかと思います。  これは日本テレビの事例なんですけれども、それでは日本テレビの利益はどうなっているか、これをちょっと見てみたわけです。こんなひどい労働条件で労働者をこき使わなければ立ち行かないような企業なのだろうかということで、ちょっと調べてみました。  そうしますと、昭和四十五年、一九七〇年から七八年までの数字をとってみましたら、七〇年には経常利益が五億円だったのですね。それが七八年には百三十億円の利益を上げています。ということは、わずか八年間に二十六倍という利益を上げているのですね。特に四十八年あたりから何倍かに上がりまして、一昨年と去年と比べても一・五倍、七六年と七八年を比べても約三・何倍というふうに、利潤が億の単位で飛躍的に上がっているわけです。それに内部留保も八年の間に大体五・五倍たまってきています。  それに比例して労働者の数を見てみますと、七〇年のときには千五百二十二名だったものが、七八年には千二百九十三名というふうに労働者の数は減っているのですね。ですから、この数字を見ただけでも、この数字の裏にどのような過酷な労働条件があるかということが想像できると思うわけです。  これは私が調べたところですので、労働省としてもぜひキー局の現場というのを調査していただきたい。先ほど小粥さんおっしゃったように、このような残業、これはちゃんと残業手当が払われているわけですから、記録はちゃんとあるわけですので、これをごらんになりまして、労働基準法違反ならちゃんと正すような指導をしていただきたい。そのためにどんな労働条件になっているか、ただ残業時間だけじゃなくて、一切の健康破壊を起こすような状態というものをきちっと調査をしていただきたいと思います。大臣、よろしいでしょうか。
  353. 小粥義朗

    ○小粥説明員 各種の勤務条件とそれが疾病その他の罹病を促すという相互の関係はいろいろあろうかと思いますが、そうした点にまで個々に入りますと、たとえば健康診断の結果であるとかいうことを個々に見なければいけなくなりますので、カルテ自体の個人の秘密にわたる問題等もありますから、行政的にできる範囲はおのずから限られてくるかと思いますが、御指摘のような基準法違反の実態については、当然われわれとしても監督しなければならないものでございますから、その点は十分監督をいたしたいと思います。
  354. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、どうですか。
  355. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 政府委員が答えたとおり、実態調査いたします。
  356. 田中美智子

    田中(美)委員 それでは、調査できましたら、早速にその結果を私のところに報告していただきたいと思います。よろしいですね。——うなずくだけでなく、議事録に残りますので、答えていただきたい。
  357. 小粥義朗

    ○小粥説明員 監督の結果については、先生に御報告いたしたいと思います。
  358. 田中美智子

    田中(美)委員 このような労働条件の中から、死亡者の数は先ほど出ましたけれども、新しい病気が出ている。このような一週間に八十二時間も働くというようなひどい状態になってきますと、死亡者を見ましても病気が多岐にわたっている。  労災の問題になるわけですけれども、たとえば昔からあるような、けがをして手が折れたとか足がどうかなったとかいうのは、客観的にはっきりわかるのですね。そういう労災。それから頸腕とか腰痛とかいうのはわからなかったので、初め労働省はなかなか労災認定しなかったわけですよ。私たちは、婦人に多かったということもありまして、ずいぶんがんばって、職業病だということでいろいろと国会でも質問に取り上げたわけですけれども、これはいま認定基準の中にも、頸腕だとか腰痛というのは、こういう場合は職業病だと出てきていますね。こういうのは、どちらかというと、けがをして手が取れたというのではなくて、一定時間の中に密度が非常に濃い労働をした。それで、体の一部分を非常に使うということから病気になる。ですから、病名が腰痛とか頸腕とか非常にはっきりしているわけですね。しかし、生活リズムを壊した長時間労働というのはどこにくるかわからないわけですね。結局その人の持っている弱いところにそれが出てくるわけです。だから死因の病名がまちまちだ。みんな内部疾患なわけです。私などは戦後の栄養失調で片肺がありませんので、気管が弱いわけです。こうしていれば健康に働いていけるわけですけれども、週八十二時間も働きますとまず気管が悪くなってくるわけですね。そういうふうに、健康なんだけれどもどこかにちょっと弱点があるということは、だれでもあるのではないかと思うのです。そういうところに、こうした週八十二時間なんという労働をすると出てくるわけです。ですから頸腕とか腰痛のように、この仕事をしたらこの病気になるというふうにはきちっと出てこないわけです。それで、労災の認定が非常にむずかしいということが出てくると思うのですね。こういう新しい環境の労働条件の変化、変化というのは、非常に悪い変化をそのままに放置しているのですけれども、こういうものを考慮に入れなければ、労災というのは労災にならないと私は思うのです。  たとえばカメラマンが週八十二時間も働き続けさせられた、それで脳出血になった、こう言いますと、カメラをいじっていれば脳出血になるのかという医学的な診断はできないわけです。そういうことで、労働条件のリズムを壊した、生活のリズムを壊した長時間労働というものがそれぞれの人に病気をあらわしてくるということ、これは新しい職業病ではないか。こういったものが出ないように指導していくのが労働省の役割りだと思うわけですけれども、出たものに対しては古い頭で考えないで、そうした状態を加味して労災の認定をしていくということを検討していただきたい。これは大臣に言っているわけです。  その典型的な事例が、日本テレビの樋口義一さんという方にあらわれていると私は思います。簡単に申しますので、大臣よく聞いていていただきたいと思います。  この人は四十三歳で、日本テレビに入って二十年です。昭和三十四年に入社してから大体八年後、こうした労働条件でやっている間に、自分は気がつかなかったわけですが、会社の健康診断で肝機能に障害があるとチェックでひっかかりました。そこで、薬を飲みながらいままでと同じような労働条件で働いていたわけです。そうしましたら、ちょうど一年たって、また健康診断でひっかかったわけです。そのときにはもう慢性肝炎になっていたわけですね。そしてすぐ入院だ、それは大変だということになった。自分自身は、自覚症状というのはかったるいとかなんとかという気持はあったけれども、高熱が出るだとかひっくり返るだとかいうことでないものですから、ずっと働き続けてこられたわけです。それで早速入院した。そして四十四年の八月に退院するわけです。それから四時間制限勤務で一カ月ほど勤務したわけですけれども、やはりまずいというのでまた自宅療養をなさるわけです。  この間、会社は、これは会社が働かせ過ぎたのだから当然企業内の労災だというふうに認めたわけです。ですから有給休暇制をとりまして、この間ずっと平均賃金が支払われる。四十二年から四十五年、この間ずっと企業内労災の扱いをされていたわけなんです。ですから、この病気は新しい職業病の一つであるということを会社が認めたわけです。  四十五年九月一日から、いよいよ元気になられて四時間制限勤務という形で、現業でないところの整備課というところに配転されたわけです。ここまではいいわけなんですよね。ここまではいいということもないですけれども、その前の労働が非常に過酷だったわけです。しかし一応会社はそれを反省して労災に認定し、そうして一応元気になって出てこられてから、軽労働のところにつけたわけです。それからというものは、産業医の診察を受け、二週間に一遍血液検査もし、産業医の指示のもとに働いていたわけです。しかしこの四時間制限勤務というのはわずか三カ月しか守られなかった。肝臓の病気は、私は医者でありませんのではっきりはわかりませんが、普通世間で言うのでは、かぜが治っていくようにそうころっと完全に治るというものではない。肝臓病というのは一度かかるとなかなか治らない。そこから悪くしないようにすることがむしろ大事だと言われている病気ですね。そういう人が四時間の制限勤務で軽労働に行ったわけですけれども、わずか三カ月で、四カ月日ごろから現場の仕事をプラスアルファし始めたわけです。四カ月目にはだんだん仕事量がふえていく。翌年の四十六年一月というのは五カ月目になりますが、休日出勤までさせる。それからというものはずっと残業です。四時間勤務というのはいつの間にか取り払って、八時間勤務にして、その上にまだ働くということですから、これは医者がいいと言っていないのです。医者は許可していないのです。産業医が知っているわけですから、その産業医の言うことを会社は全く無視して働かしていったわけです。それで残業の時間は、ここにありますけれども、大体一年間で平均してみますと一カ月二十時間の残業をしております。四時間勤務と医者に言われている人が一カ月二十時間残業している。毎勤統計では十二時間ですから、一般労働者の平均よりも多いわけですね。そういう状態にさせられて、四十九年六月に静脈瘤破裂という形で吐血して、社内で働いているときに倒れてしまうわけです。  この食道静脈瘤吐血というのは、慢性肝炎だったものが急激に肝硬変になっていった。肝硬変を持っていると静脈瘤が破裂するということがあるのだそうです。主婦の友の「家庭医学全書」みたいなのを見てみますと、静脈瘤吐血というのは肝硬変の末期的なものであるというふうな書き方がされているわけです。幸いこの方は死なないで助かることはできたわけですけれども、こういう状態を会社側は——その間に社長がかわっているわけですね。社長がかわると、慢性肝炎のときには企業内労災と認められた人が、今度は肝硬変に急激に変化したのを、労災じゃない、労働省に判断してもらおうというので、これを労基署に申請したところが、業務外になったというのはよく御存じだと思います。  それで、なぜかということなんですけれども、御存じのようにここに「職業病の新認定基準通達集」というのがあります。これを見てなさるというのを聞きましたので、これを私も見てみました。  そうしますと、基発第百十六号、認定基準ですね。これの3のマル4のホというところに、基礎疾病または既存疾病があった場合、特に当該災害が疾病の自然的発生または自然的増悪に比し著しく早期に発症、または急速に増悪せしめる原因となったものとするに足るだけの強度があった場合には業務内だ、労災に適用するという意味のことが書かれているわけです。強度が必要だ、こう言っているのですね。この「強度」というのは非常に抽象的です。こうたたいたのが強度か、うんとこうたたくのが強度か、それともこうたたくことが強度か、これはわかりませんね。しかし、いまの樋口さんの場合、四時間勤務というので、医者はこれを解除してないのですね。私は、これを見まして、涙が出るほど本当に腹が立ったのです。  というのは、四十九年に吐血していらっしゃるのですね。四十八年にはもう慢性肝炎が肝硬変になっている。それで、産業医が本人に対して軽労働に回してもらえ、そしてそれは二月十三日に言っているのですね。二月十九日にはまだ注意をして、食後には一時間休まなければだめだ、病気はどんどん進んでいるということを本人に言っているわけですね。だから会社は十分知っているわけなんです。それなのに、まだそのような過酷な労働を強いていたということが、肝硬変の末期に近いような症状を通してひっくり返った。これが強度と言えないでしょうか。それについての御意見を、強度と思えるか思えないか、それを大臣に伺いたいと思います。私がいま言ったことで判断してください。違っているかもしれませんからね。こういう状態だったら強度と言えるのではないか。
  359. 原敏治

    ○原説明員 先生指摘昭和三十六年の基発第百十六号の通達というのは、これは脳卒中や急性心臓死等の循環器系の認定基準でございまして、樋口さんの死因——業務上疾病に関しましての請求原因でありますところの事案には該当いたしてないと私どもは考えております。
  360. 田中美智子

    田中(美)委員 樋口さんは死んでおりませんよ。死因ではありませんよ。いまちゃんと六時間制限勤務で働いておられる方ですから、お間違いないように。  それで、どうして労災にならないのかと言っているわけですよ。それでは基準はないじゃないか。そうでしたら、新しい基準をつくらなければならないじゃないか。そういう状態をほったらかして、労働基準法違反をずっと続けたのをほったらかしておいて、それで基準がないからこれは労災ではないと、どういうわけでしょうか。
  361. 原敏治

    ○原説明員 申しわけございませんでした。樋口さんの請求は、死亡をしていないのでございまして、肝硬変あるいは静脈瘤によるところの吐血ということでの請求でございましたので、訂正させていただきます。  先ほども申しましたように、先生指摘通達は脳卒中等の認定基準でございまして、肝硬変等に関しますところの認定基準は現在のところ定められておりません。肝硬変等が疲労なりあるいは強度のストレス等の集積によって発症するのではないかという一部の医学上の見解もございますが、私ども、このような医学的な知見がいまだ確立した段階に至ってないと考えておりまして、認定基準ができていないところでございます。
  362. 田中美智子

    田中(美)委員 原さん、もう結構です。  これは大臣に聞きたいのですけれども、先ほどから何遍も言っていることは、労働密度が濃かった場合に、部分的にここを使うから頸腕になったとか、ここを使うから腰痛になったという場合には、病名が出るわけです。しかし、週八十二時間も働かせるようなことをしたら弱いところに出てくるではないかと言っているのですね。ですから、肝硬変がどうだとか脳卒中がどうだとかという問題ではなくて、これは職業から来ているのではないかと言っているわけです。医学以前の問題ではないか。そういう意味で、この樋口さんの問題はどう考えても職業病ではないか。職業から来ているのではないか。  これにはたくさんの、たくさんでもありませんが、いろいろな調査が出ております。これは前に一度私が国会で、深夜労働の問題を取り上げたことがあるわけです。石田博英労働大臣のときに、フランスのビスマール教授が二万人の夜間労働者調査結果で、一般の労働者よりも寿命が十年短かくなっている、そういう結果も私は国会で言いました。  それから、一九七六年にアメリカで開かれた人間工学会というところで、西ドイツのルーチンフランツという方が夜間労働の研究を発表しているのです。繰り返し繰り返し夜間労働をしても、人間の生体リズムというものは夜間型の生体リズムにはならない、位相逆転していないということを、七六年の学会で発表しているのです。だから、自分で夜中に働いたり朝働いたりということがなれたつもりでいても、人間の生体リズムというものはやはり昼間働いて夜寝るという、これは絶対逆転しないという報告が出ているわけです。  それから、そういうことから、労働省に初めてですが深夜労働の調査をしていただいている。これは私は、実態がある程度見られる調査であったというふうに見ています。この中には、残念ながら新聞や印刷関係がほとんどです。それで民放のキー局の深夜労働の調査が出ていないわけです。本当ならこの中に入ってもいいものですね。出ていない。こういう殺人的な状態になっているわけですが。  また、日本では産業衛生学会が、交代勤務委員会というところで調査をして、勧告を出しているのは御存じだと思います。この勧告では、交代勤務制をやるというときには週四十時間にしなさいとか、年間百五十時間に足切りせよとか言っている。樋口さんは、四十時間勤務の制限の人が年間二百二十時間ぐらい残業をやっているのですよ。それから、深夜勤務は原則として一晩のみにとどめるようにとか、勤務時間の間隔時間は原則として十六時間以上とし、十二時間以下となることは厳に避けなければならないとも言っている。これは夜中まで働いたら、その次働くまでの時間まで五、六時間寝て、どうしてもここには十六時間、少なくとも十二時間以上はあけなければいけないとか、有給休暇は四週間は絶対要るとかいうような意見書が、これは労働省に出しているはずです。労働省がこれに対応しなければ、労働条件悪化の中でどんどん人は死んでいく。死ぬような病気にどんどんなっていく。そして、これは基準にありませんから労災になりませんというのでは、労働者は踏んだりけったりではないか。  第一、この基発百十六号というのは昭和三十六年、私が見ましても、これしか当てはまるものはないわけですよ。ですから、ここで見ると「強度」だ。この「強度」は樋口さんの場合に当てはまらないということはおかしいと私は思うのです。これは見直すべきですよ。新しい労働のいろいろなものが出ているわけですから、これは「等」と書いてあります。「脳卒中、急性心臓死等」と書いてありますから「等」の中に何が入るのかわかりませんが、これでは非常に不十分だというふうに思うわけです。ですから、ぜひこの基準を大至急見直していただきたい。そして、基準をきちっとつくっていただきたい。つくってくれと言ったって、あしたすぐできるわけじゃないから、それまでの間の経過措置というのは、現場をきちっと調査してやっていただきたい。  樋口さんがどんな労働条件で働いたかということは、これは医証を見てもどういう現場というのはほとんど言ってないわけですからね。そんなことで簡単にやられたんでは、労働者の命というのは古ぞうきんみたいなものですわ。これを守るのが労働省じゃないですか。守っていただきたいと思うのです。本当にこの人は殺されてしまうと私は思います。いま六時間を守っていますし、みんなが一生懸命守らせようとしています。しかし、今度前のようにやられたら死んでしまいますよ。そういう意味で、この人を守るということから、大臣は、しっかりともう一度労働条件を調べていただきたいと私は思うのです。よろしいでしょうか。うなずくだけじゃなくて、大臣
  363. 岩崎隆造

    ○岩崎政府委員 ちょっと私から、事務的な検討の段階のことを御説明申し上げたいと思います。  いま先生いろいろと御指摘いただきました。私どもも現在時間短縮の問題につきましては行政指導を強力に進めているわけでございますが、その中で、過度な長時間労働を常態的にしたような労働条件、あるいは交代制勤務の場合の予備員のないような形での長時間にわたる労働、それから深夜労働のもたらす健康に対する影響、それは先ほど御指摘の産業衛生学会の御意見等もありました。私どももいま部内的にいろいろと、その問題については強い問題意識を持って、専門家の御意見等も伺いながら検討し始めております。  それから、先ほどありました認定基準の問題でありますが、これは労災保険のたてまえが業務上の災害ないし疾病についての補償をするということになっております関係上、特に職業性疾病につきましては、どこまでが業務上か外かということが非常にボーダーライン的にむずかしくなるわけでございまして、先ほど御指摘のように頸肩腕症候群あるいは腰痛のように、ある程度医学的知見が集積されたものについては、逐次認定基準の整備を図っているわけでございます。先ほどの脳卒中とか心臓疾患、そういうものが業務上になるかどうかということは、三十六年のその当時の最新の医学的知見に基づいたものでございますから、その後の医学の進歩によりまして、医学的知見の新しいものが得られれば、それについて当然見直しもあり得ることですし、それから先ほど御指摘のような肝硬変とかの問題につきましても、そういった専門家の医学的知見の集積が得られればそれは漸次整備を図っていく、こういう性質のものでございます。  私も専門家でございませんので、いまの段階で必ずしも正しいお答えになるかどうかわかりませんが、いままで私どもが基準をつくっております以上の医学的知見の最新のものが得られないということで、現在そういう段階にとどまっておるわけでございます。今後ともに、もちろん検討は進めてまいりたいと思っております。
  364. 栗原祐幸

    栗原国務大臣 私、ずっと聞かしていただきました。そして私の感想を言うと、もしこれは事実だとするならば、ずいぶん大変なことだと思いますよ。ですから、実態を調査いたしたいと思います。  大体労働組合というのがここにはあるのかどうかということ、私はそれがまず最初に頭の中に浮かんできた。ですから、いまの田中さんのお話しはそれなりに承りまして、実態をよく調査して、その上でいろいろ処置すべきことは処置しなければいけないと思っています。  樋口さんの場合につきましても、お気持ちはよくわかります。ただ、この樋口さんの場合は、審査をしてはねられて、また不服の申し立てをやっているそうですな。それぞれ専門家の方々がやられておりますので、あなたのきょうの御発言というのは、その専門家の方々にもこういう御意見があったということは伝えたいと思います。そして、その上で専門家の方々の御判断をいただくことが適切だと思いますので、さようにいたしたいと思います。
  365. 田中美智子

    田中(美)委員 この状態をしっかりと専門家の方に知らせてから、やっていただきたいと思うのです。医証を求めるにしても何にしても、現場状況を知らせないで、ただ電気技師をしていたら肝硬変になるか、カメラをやっていたら脳卒中になるかというようなおかしな認め方ではなくて、いま話したような状況を見て、誠実にこの樋口さんの問題に対処していただきたい。私は、いまここで結論を出してくれと言いません。私の調べたことは事実であるかどうかということも調べていただきたいし、樋口さんの問題だけでなくて、たくさんの労働者がこういう条件にいるわけですから、調査した結果をぜひ私のところに知らせていただきたいと思います。  それでは、質問を終わります。
  366. 森下元晴

    森下委員長 次回は、明後三十一日木曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十五分散会      ————◇—————