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橋本国務大臣 ただいま議題となりました
医薬品副作用被害救済基金法案について、その提案の理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
医薬品は、今日、医療上必要不可欠なものとして国民の生命、健康の保持及び増進に大きく貢献しているところでありますが、他方、このような医薬品の副作用による健康被害の発生もまた、近年見逃すことのできない問題となっております。
これら医薬品の副作用による健康被害対策の基本は、その発生防止にあることは申すまでもありません。このため、国は、医薬品の承認審査の厳格化、医薬品副作用情報収集体制の整備、既承認医薬品の安全性及び有効性の再評価等各般の対策を進めてまいったところであり、また今般、この観点から、これまでの行政の実績を踏まえて
薬事法改正の実現を図りたいと
考えているところであります。
しかしながら、医薬品の特殊性から、現在の医学、薬学の水準によっては医薬品の副作用による健康被害の発生を完全に防止することはむずかしいことも事実であります。これらの健康被害については、
現行法
制度のもとでは、その救済を円滑に図ることが困難である場合が多いことから、その救済のための
制度を一刻も早く確立することが社会的に強く要請されているところであります。この要請にこたえるため、医薬品の副作用による健康被害に関し所要の給付を行うことを業務とする医薬品副作用被害救済基金を設立することとし、この法案を提案した次第であります。
以下、この法案の主な
内容につきまして御説明申し上げます。
第一に、医薬品副作用被害救済基金は、医薬品の副作用による健康被害の救済について学識経験を有する者が発起人となり、
厚生大臣の認可を受けて設立することとしております。
第二に、医薬品副作用被害救済基金は、医薬品の副作用による疾病、廃疾または死亡につき、医療費、医療手当、障害年金、障害児養育年金、遺族年金、遺族一時金及び葬祭料の給付を行うこととしております。
第三に、医薬品副作用被害救済基金がこれらの給付を行うに当たり、医薬品と健康被害との因果
関係等専門的判定を要すると認められる事項については、同基金の申し出により、
厚生大臣が中央薬事
審議会の
意見を聴いて判定を行うこととしております。
第四に、医薬品の製造業者及び輸入販売業者は、医薬品副作用被害救済基金の業務に要する経費に充てるため、同基金に拠出金を納付しなければならないこととしております。
第五に、著しい健康被害が多発した場合等における医薬品副作用被害救済基金に対する
政府の補助、その他同基金に対する監督命令等所要の規定を設けることとしております。
第六に、この
法律の施行期日は、この
法律の公布の日から起算して六カ月を超えない範囲内において政令で定める日としております。また、救済給付は、医薬品副作用被害救済基金設立の日以降において
厚生大臣が告示で定める日から起算して六カ月を
経過した日以降の医薬品の使用により生じた健康被害について行うこととしております。
以上が、この法案の提案の理由及び
内容の概要であります。
次に、ただいま議題となりました
薬事法の一部を改正する
法律案について、その提案の理由及び
内容の概要を御説明申し上げます。
現行薬事法は、占領下において制定された旧
薬事法を
昭和三十五年に全面的に改めて制定されたものであり、以後ほとんど改正が行われずに今日に至っております。
しかしながら、医薬品を取り巻く環境は、この間に大きく変化してきており、特に
昭和三十六年に発生したサリドマイド事件は、世界的に大きな衝撃を与え、医薬品の有効性と安全性の確保が、各国薬事行政の最重要課題として改めて深く認識されるに至ったわけであります。
このような
状況に対し、諸外国においては、
薬事法の改正を行い、各種の対策を講じてきたところでありますが、わが国においては、新薬承認の厳格化等主として行政指導により各般の施策を積極的に展開してきたところであります。
今回の改正は、これまでの行政指導による施策の実績を踏まえ、さらにその徹底を図ることを主眼とするものであり、したがって、医薬品等の有効性及び安全性の確保がその中心課題となっております。
以下、この
法律案の
内容について、その要旨を御説明申し上げます。
第一に、日本薬局方に収められている医薬品についても原則としてその製造または輸入を承認に係らしめること、承認拒否事由を明示すること等医薬品等の承認に関する規定を整備することとしております。
第二に、すでに承認されている医薬品と有効成分等が明らかに異なる新医薬品については、承認を受けて六年後に、
厚生大臣の再審査を受けなければならないしととするとともに、この間、当該医薬品の使用の成績等に関する
調査を行い、その結果を
厚生大臣に報告しなければならないこととしております。
第三に、
厚生大臣が中央薬事
審議会の
意見を聴いて公示した医薬品については、
厚生大臣の再評価を受けなければならないこととしております。
第四に、
厚生大臣は、薬局等における医薬品の試験検査の実施方法その他薬局開設者、医薬品の製造業者、一般販売業者等がその業務に関し遵守すべき事項を
厚生省令で定めることができることといたしております。
第五に、医薬品等の使用の期限の表示、一定の成分を含有する化粧品及び医薬部外品の成分の表示等医薬品等の表示に関し、所要の規制を行うことといたしております。
第六に、医薬品等による保健衛生上の危害の発生または拡大を防止するために、必要な場合に
厚生大臣が発する緊急命令に関する規定を新たに設けるとともに、承認の取り消し、回収等の規定の整備を行うこととしております。
第七に、医薬品または医療用具の製造業者、卸売一般販売業者等は、薬局、病院等の開設者または医師、薬剤師等の医薬
関係者に対し、医薬品または医療用具の有効性及び安全性等に関し、必要な情報の提供に努めるものとするとともに、薬局開設者等は製造業者等が行う情報の収集に協力するよう努めるものとしております。
第八に、承認申請資料として必要な臨床試験成績の収集を目的とする治験の依頼に関し、治験計画の事前の届け出等所要の規制を行うことといたしております。
第九に、一定の動物用医薬品について、食用に供される肉、乳等への残留を防止する観点から、使用できる対象動物、使用の時期等につき所要の使用規制を行うこととしております。
以上のほか、承認手数料の徴収、罰金の額の引き上げ等所要の規定の整備を行うこととしております。
なお、この
法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとし、また、この
法律の施行に伴い所要の
経過措置を設けることとしております。
以上が、この
法律案の提案理由及びその
内容の概要であります。何とぞ慎重に御
審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。