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1979-04-09 第87回国会 衆議院 社会労働委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十四年四月九日(月曜日)     午後三時一分開議  出席委員    委員長 森下 元晴君    理事 越智 伊平君 理事 竹内 黎一君    理事 戸井田三郎君 理事 村山 富市君    理事 森井 忠良君 理事 古寺  宏君    理事 米沢  隆君       井上  裕君    石橋 一弥君       大野  明君    木野 晴夫君       戸沢 政方君    中村  靖君       葉梨 信行君    村上 茂利君       渡辺 秀央君    安島 友義君       枝村 要作君    大原  亨君       金子 みつ君    川本 敏美君       島本 虎三君    水田  稔君       草川 昭三君    谷口 是巨君      平石磨作太郎君    浦井  洋君       田中美智子君    工藤  晃君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 橋本龍太郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長官田中 六助君  出席政府委員         青少年対策本部         次長      松浦泰次郎君         大蔵省主計局次         長       禿河 徹映君         厚生省社会局長 山下 眞臣君         厚生省児童家庭         局長      竹内 嘉巳君         厚生省保険局長 石野 清治君         厚生省年金局長 木暮 保成君         社会保険庁年金         保険部長    持永 和見君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房老人対策室長 山崎  卓君         法務省民事局第         五課長     田中 康久君         外務省アジア局         北東アジア課長 股野 景親君         大蔵省主税局税         制第一課長   水野  勝君         大蔵省銀行局特         別金融課長   中田 一男君         国税庁直税部法         人税課長    山本 昭市君         医療金融公庫総         裁       北川 力夫君         参  考  人         (年金福祉事業         団理事)    出原 孝夫君         社会労働委員会         調査室長    河村 次郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   金子 みつ君     岡田 春夫君 同日  辞任         補欠選任   岡田 春夫君     金子 みつ君 四月九日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     渡辺 秀央君   水平 豊彦君     中村  靖君 同日  辞任         補欠選任   中村  靖君     水平 豊彦君   渡辺 秀央君     相沢 英之君     ――――――――――――― 三月二十二日  医薬品副作用被害救済基金法案内閣提出第四  六号) 同月三十一日  薬事法の一部を改正する法律案内閣提出第六  一号) 同月二十三日  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (安藤巖紹介)(第二一九五号)  同(荒木宏紹介)(第二一九六号)  同(浦井洋紹介)(第二一九七号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第二一九八号)  同(小林政子紹介)(第二一九九号)  同(柴田睦夫紹介)(第二二〇〇号)  同(瀬崎博義紹介)(第二二〇一号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二二〇二号)  同(田中美智子紹介)(第二二〇三号)  同(津川武一紹介)(第二二〇四号)  同(寺前巖紹介)(第二二〇五号)  同(東中光雄紹介)(第二二〇六号)  同(不破哲三紹介)(第二二〇七号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二二〇八号)  同(正森成二君紹介)(第二二〇九号)  同(松本善明紹介)(第二二一〇号)  同(三谷秀治紹介)(第二二一一号)  同(安田純治紹介)(第二二一二号)  同(山原健二郎紹介)(第二二一三号)  同(安藤巖紹介)(第二三一五号)  同(荒木宏紹介)(第二三一六号)  同(浦井洋紹介)(第二三一七号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第二三一八号)  同(小林政子紹介)(第二三一九号)  同(柴田睦夫紹介)(第二三二〇号)  同(瀬崎博義紹介)(第二三二一号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二三二二号)  同(田川誠一紹介)(第二三二三号)  同(田中美智子紹介)(第二三二四号)  同(津川武一紹介)(第二三二五号)  同(寺前巖紹介)(第二三二六号)  同(東中光雄紹介)(第二三二七号)  同(不破哲三紹介)(第二三二八号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二三二九号)  同(正森成二君紹介)(第二三三〇号)  同(松本善明紹介)(第二三三一号)  同(三谷秀治紹介)(第二三三二号)  同(安田純治紹介)(第二三三三号)  医療保険制度及び建設国民健康保険組合改善  に関する請願池田克也紹介)(第二二一四号)  同(北山愛郎紹介)(第二二一五号)  同(小川国彦紹介)(第二二八一号)  同(吉浦忠治紹介)(第二二八二号)  同(北側義一紹介)(第二三三五号)  同(高沢寅男紹介)(第二三三六号)  健保改悪阻止医療保障制度改善等に関する  請願北山愛郎紹介)(第二二一六号)  薬代、給食費患者負担等医療保険改悪等反対  に関する請願浦井洋紹介)(第二二一七号)  労働行政体制確立等に関する請願浦井洋君  紹介)(第二二一八号)  同(柴田睦夫紹介)(第二二一九号)  同(田中美智子紹介)(第二二二〇号)  豊かな年金制度確立等に関する請願外二件(河  上民雄紹介)(第二二二一号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二二二二号)  同外三件(大島弘紹介)(第二二八三号)  同(渋沢利久紹介)(第二二八四号)  同外五件(野口幸一紹介)(第二三三八号)  健保改悪阻止年金改善等に関する請願田中  美智子君外一名紹介)(第二二二三号)  同(渋沢利久紹介)(第二二八五号)  国立腎センター設立に関する請願石井一君紹  介)(第二二七八号)  同(嶋崎譲紹介)(第二二七九号)  同(奥田敬和紹介)(第二三三四号)  医療保険制度改善に関する請願嶋崎譲紹介)  (第二二八〇号)  雇用の確保及び失業者生活保障等に関する請  願(加藤万吉紹介)(第二二八六号)  旧満州開拓青年義勇隊員処遇改善に関する請  願(中川一郎紹介)(第二二八七号)  同(綿貫民輔紹介)(第二二八八号)  療術法制化阻止及び違法行為取り締まり強化  に関する請願外一件(田川誠一紹介)(第二三  三七号) 同月二十八日  医療保険制度及び建設国民健康保険組合改善  に関する請願井上一成紹介)(第二三六八号)  同(北側義一紹介)(第二三六九号)  同(松本忠助紹介)(第二三七〇号)  同(池田克也紹介)(第二四〇三号)  同(新村勝雄紹介)(第二四〇四号)  同(瀬長亀次郎紹介)(第二四〇五号)  同(田口一男紹介)(第二四〇六号)  同(山花貞夫紹介)(第二四〇七号)  同(和田耕作紹介)(第二四〇八号)  同(楯兼次郎紹介)(第二四五八号)  同(山本政弘紹介)(第二四五九号)  同(池田克也紹介)(第二四九八号)  同(北側義一紹介)(第二四九九号)  同(沢田広紹介)(第二五〇〇号)  同(新村勝雄紹介)(第二五〇一号)  国立腎センター設立に関する請願(稻村佐近四  郎君紹介)(第二三七一号)  同(森喜朗紹介)(第二四一二号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (工藤晃君(共)紹介)(第二三七二号)  同(小林政子紹介)(第二三七三号)  同(不破哲三紹介)(第二三七四号)  同(松本善明紹介)(第二三七五号)  同(井上普方紹介)(第二四〇二号)  腎臓病患者医療及び生活改善に関する請願   (草川昭三紹介)(第二三七六号)  労働行政体制確立等に関する請願外三件(草  川昭三紹介)(第二三七七号)  同(上原康助紹介)(第二四五五号)  医療保険制度改善措置に関する請願伏木和  雄君紹介)(第二三七八号)  療術法制化阻止及び違法行為取り締まり強化  に関する請願伏屋修治紹介)(第二三七九号)  同外七件(渡辺栄一紹介)(第二三八〇号)  同外一件(野田卯一紹介)(第二四一〇号)  療術制度化阻止に関する請願伏屋修治君紹  介)(第二三八一号)  同外一件(渡辺栄一紹介)(第二三八二号)  同外一件(野田卯一紹介)(第二四一一号)  良い医療制度確立に関する請願沢田広紹介)  (第二四〇九号)  同(山本政弘紹介)(第二四六〇号)  豊かな年金制度確立等に関する請願山本政弘  君紹介)(第二四一三号)  民間保育事業振興に関する請願佐野進紹介)  (第二四五六号)  昭和五十四年度保育費増額等に関する請願(佐  野進紹介)(第二四五七号)  旧満州開拓青年義勇隊員処遇改善に関する請  願(伊藤宗一郎紹介)(第二五〇二号)  同(大塚雄司紹介)(第二五〇三号)  同(武田一夫紹介)(第二五〇四号)  国民健康保険制度改正に関する請願大塚雄司  君紹介)(第二五〇五号) 四月三日  労働基準法改悪反対に関する請願沢田広君  紹介)(第二五三九号)  医療保険制度及び建設国民健康保険組合改善  に関する請願新井彬之君紹介)(第二五四〇号)  同(浦井洋紹介)(第二五四一号)  同(柴田睦夫紹介)(第二五四二号)  同(田中美智子紹介)(第二五四三号)  同(馬場猪太郎紹介)(第二五四四号)  同外一件(藤田高敏紹介)(第二五四五号)  同(矢野絢也君紹介)(第二五四六号)  同(吉原米治紹介)(第二五四七号)  同(渡部一郎紹介)(第二五四八号)  同(池田克也紹介)(第二六一七号)  同(木原実紹介)(第二六一八号)  同(後藤茂紹介)(第二六一九号)  同(新村勝雄紹介)(第二六二〇号)  同(北側義一紹介)(第二六八四号)  同(小林政子紹介)(第二六八五号)  同(東中光雄紹介)(第二六八六号)  同(二見伸明紹介)(第二六八七号)  民間保育事業振興に関する請願石井一紹介)  (第二五四九号)  同外一件(川俣健二郎紹介)(第二五五〇号)  同(湯川宏紹介)(第二六二五号)  国民健康保険制度改正に関する請願小川平二  君紹介)(第二五五一号)  国立腎センター設立に関する請願北側義一君  紹介)(第二五五二号)  同外一件(米沢隆紹介)(第二六二六号)  同(北側義一紹介)(第二六八三号)  原子爆弾被爆者等援護法制定に関する請願  (工藤晃君(共)紹介)(第二五五三号)  同(小林政子紹介)(第二五五四号)  同(不破哲三紹介)(第二五五五号)  同(松本善明紹介)(第二五五六号)  同(工藤晃君(共)紹介)(第二六八八号)  同(小林政子紹介)(第二六八九号)  老人医療費有料化反対等に関する請願田中  美智子紹介)(第二五五七号)  同(松本善明紹介)(第二六九四号)  豊かな年金制度確立等に関する請願馬場猪太  郎君紹介)(第二五五八号)  同(後藤茂紹介)(第二六二三号)  旧満州開拓青年義勇隊員処遇改善に関する請  願外一件(藤田義光紹介)(第二五五九号)  同(安倍晋太郎紹介)(第二六一六号)  同(笹山茂太郎紹介)(第二六九〇号)  同(田中美智子紹介)(第二六九一号)  同外二件(二見伸明紹介)(第二六九二号)  療術制度化阻止に関する請願外三件(稲村利  幸君紹介)(第二六二一号)  同(和田耕作紹介)(第二六二二号)  同外四件(武藤嘉文紹介)(第二六九六号)  雇用保障及び労働時間短縮等に関する請願(沢  田広紹介)(第二六二四号)  医療保険制度抜本改正反対等に関する請願  (荒木宏紹介)(第二六八二号)  医療保険制度改善に関する請願寺前巖君紹  介)(第二六九三号)  療術法制化阻止及び違法行為取り締まり強化  に関する請願外三件(武藤嘉文紹介)(第二六  九五号)  健保改悪阻止医療保障制度改善等に関する  請願安田純治紹介)(第二六九七号) 同月四日  雇用安定対策確立に関する請願井出一太郎  君紹介)(第二七三四号)  同(小川平二紹介)(第二七三五号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二七三六号)  同(倉石忠雄紹介)(第二七三七号)  同(小坂善太郎紹介)(第二七三八号)  同(清水勇紹介)(第二七三九号)  同(下平正一紹介)(第二七四〇号)  同(中島衛紹介)(第二七四一号)  同(中村茂紹介)(第二七四二号)  同(羽田孜紹介)(第二七四三号)  同(原茂紹介)(第二七四四号)  同(増田甲子七君紹介)(第二七四五号)  同(向山一人紹介)(第二七四六号)  医療保険制度充実に関する請願井出一太郎  君紹介)(第二七四七号)  同(小川平二紹介)(第二七四八号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第二七四九号)  同(倉石忠雄紹介)(第二七五〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第二七五一号)  同(清水勇紹介)(第二七五二号)  同(下平正一紹介)(第二七五三号)  同(中島衛紹介)(第二七五四号)  同(中村茂紹介)(第二七五五号)  同(羽田孜紹介)(第二七五六号)  同(原茂紹介)(第二七五七号)  同(増田甲子七君紹介)(第二七五八号)  同(向山一人紹介)(第二七五九号)  医療保険制度及び建設国民健康保険組合改善  に関する請願外一件(安宅常彦紹介)(第二八  七七号)  同(池田克也紹介)(第二八七八号)  同(北側義一紹介)(第二八七九号)  同(坂口力紹介)(第二八八〇号)  労働行政体制確立等に関する請願外一件(上  原康助紹介)(第二八八一号)  同外一件(米沢隆紹介)(第二八八二号)  旧満州開拓青年義勇隊員処遇改善に関する請  願(受田新吉紹介)(第二八八三号)  民間保育事業振興に関する請願川合武紹介)  (第二八八四号)  同外一件(砂田重民紹介)(第二八八五号)  同(永末英一紹介)(第二八八六号)  同(山崎平八郎紹介)(第二八八七号)  国立腎センター設立に関する請願河上民雄君  紹介)(第二八八八号)  同(北側義一紹介)(第二八八九号)  雇用保障及び労働時間短縮等に関する請願(沢  田広紹介)(第二八九〇号)  療術制度化に関する請願高鳥修紹介)(第  二八九一号) 三月二十七日  国民健康保険事業国庫負担率引き上げに関す  る陳情書(第一二五  号)  社会保険制度改善に関する陳情書  (第一二六号)  健康保険法等の一部を改正する法律案反対に関  する陳情書外十件  (第一二七号)  医療保険制度改善に関する陳情書外六件  (第一二八号)  老齢者医療保障制度確立に関する陳情書外十  五件(第一  二九号)  国民年金制度改善に関する陳情書外一件  (第一三〇号)  厚生年金引き上げ等に関する陳情書外一件  (第一三一号)  救急医療体制の整備に関する陳情書  (第一三二号)  予防接種費用全額国庫負担制度確立に関する  陳情書(第一三三号)  スモン患者治療費全額国庫負担に関する陳情  書外一件(第  一三四号)  母子家庭医療費無料化に関する陳情書  (第一三五号)  慢性腎炎及びネフローゼ症候群対策確立に関  する陳情書  (第一三六号)  ハンセン病療養対策充実強化に関する陳情  書  (第一三七  号)  療術制度化阻止に関する陳情書外五件  (第一三八号)  精神障害者福祉法制定に関する陳情書外一件  (第一  三九号)  精神薄弱児等福祉対策拡充強化に関する陳情  書外一件  (第一四〇号)  生活保護制度改善に関する陳情書外一件  (第一四一号)  民間社会福祉施設職員処遇改善に関する陳情  書  (第一四二号)  市町村社会福祉協議会法制化等に関する陳情  書外一件  (第一四三号)  保育対策充実強化に関する陳情書外三件  (第一四四号)  母乳育児推進等に関する陳情書  (第一四五号)  飲食店営業における衛生管理体制充実強化に  関する陳情書  (第一四六  号)  上水道事業財政援助措置に関する陳情書  (第一四七号)  亀岡市栢原地区の産業廃棄物処理施設設置計画  中止に関する陳情書外五件  (第一四八号)  雇用対策強化に関する陳情書外四件  (第一四九号)  中高年齢者雇用対策強化に関する陳情書外一  件  (第一五〇号)  季節労働者失業給付金対策等に関する陳情書  外五件(第一  五一号)  身体障害者雇用促進に関する陳情書外一件  (第一五二号)  心身障害者雇用促進に関する陳情書  (第一五三号)  原子爆弾被爆者援護法制定に関する陳情書外  三件(第一五  四号)     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出第二三号)      ――――◇―――――
  2. 森下元晴

    森下委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  この際、お諮りいたします。  ただいま議題となりました本法案審査のため、本日、参考人として年金福祉事業団理事出原孝夫君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森下元晴

    森下委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  4. 森下元晴

    森下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大原亨君。
  5. 大原亨

    大原(亨)委員 先日の質問内容は一応私も検討いたしておるのですが、若干ダブる点もありますけれども、質問いたしたいと思います。  人口が急速に、言うならば革命的に高齢化に向かって進むわけですが、そして経済情勢高度成長時代とは一変いたしておるわけですが、それに対応する社会保障総合対策をどう立てるかということは、非常に大きな課題であります。従来、日本の行政の欠陥は、言うならば中央集権的な画一的な行政、あるいは企業の生産を助長する助長行政縦割り行政、こういう行政のあり方が非常に問われておると思うわけです。たとえば、厚生省でも縦割り行政がないわけではないのであって、薬務局には医薬品産業があるわけです。これは医薬品産業を発展させるというだけではなしに、今度は安全性の観点から見直そう、こういう議論もあります。また通産省は重化学工業禿河主計局次長のところの大蔵省は言うならば金融資本、それから運輸省は陸海空の運輸事業、建設省は土建事業、こういうふうに、高度成長時代にそれぞれの企業助長行政行政がやっておって、政府全体もそういうことに力を入れてきたわけです。列島改造なんかもそうです。しかし、これがいまや完全に限界に来て、言うならば横割り行政というか生活行政というか、そういう生活面あるいは地域において政策を見直していく、こういう時代に入っておると思うのです。そういう政策の軌道を修正することについて、社会保障政策のこれからの検討がどう対応できるかということが大きな問題であると思うのです。たとえばわれわれのきょう議論する年金の問題にいたしましても、年金だけで議論いたしただけでは問題解決にはならない、これは雇用の問題の関係もあれば、医療の問題の関係もあるというわけであります。  そこで私は、この全体の問題についての質疑応答を、総理大臣とやるようなことを官房長官とやりましても時間がむだでございますから、官房長官にそういう資格がないというわけじゃないが、そういうことは離れまして、そういう議論もしたいのだけれども、そういう議論は一応頭の中に置きまして、順次問題点について触れていってみたいと思うのです。  その第一は、健康保険については、厚生大臣は、健康保険法上も設置法上も一定の、政府全体については統合調整する権限があるわけですが、年金については全然ない。もちろん雇用との関係においては全然ないわけですが、たとえば年金は、今度は共済年金については、開始年齢スライド制問題等を中心にいたしまして、政府は別にそれぞれの常任委員会改正案を出しておる。そして、いま審議いたしておる年金については、本年度の改正と一緒に、これからどうするかという大問題を控えておるわけですね。ですから、そういう年金改正については一体どこの官庁、行政機関が全体の調整をする機能を果たすのであるか、こういう問題が一つあるわけです。総理大臣が果たすと言えばいいわけですが、それを補佐する官房長官も責任があるわけです。総理大臣にはそういう抽象的な権能はありましても、内容的な手足はないわけですから、そういう能力はないわけです。大平総理大臣といえどもないわけです。年金についてはそういうことに問題があって、高齢化社会を迎えて非常に大きな問題であると言われながら、一体どこが全体を見ながらこういう情勢の変化に対応して年金改革をやるのか、こういう問題について官房長官から第一にお答えいただければお答えいただきたいと思いますし、また実際上各省の予算を審議しておる大蔵大臣大蔵省からお答えいただければ、その点について事実を事実として述べてもらうならば、国会においてまた問題として議論することができると思います。こういうふうに思いますが、これが第一の質問です。
  6. 田中六助

    田中国務大臣 高齢化社会を控えて年金制度をどういうような機能でどうするかというようなことでございますが、現在、年金制度改革の方向につきましては、近く年金制度基本構想懇談会というものから意見が出るということになっておりますので、政府としてはその意見を踏まえて対処していきたいというふうに考えておりますし、この年金制度全体の総合的なあるいは体系的な見直しにつきましては、大原議員御承知のように、総理府公的年金制度調整連絡会議というのがございますので、その会議の場を活用しながら、政府が一体となって改革機能を進めていきたいというふうに考えております。
  7. 大原亨

    大原(亨)委員 体裁のよろしい答弁をする必要ないのです。事実を答弁してもらえばよろしい。  そこで、そういう総理府にある公的年金制度調整連絡会議というものは具体的にどのように運営されておるのか、そのことを含めて大蔵省、どうですか。
  8. 禿河徹映

    禿河政府委員 先生御指摘のとおり、公的年金制度というのは現在いろいろと制度がいわば分立をいたしておりまして、それに応じまして所管省庁等が分かれております。これももう御存じのとおりでございますが、被用者年金の中でも厚生年金あるいは国民年金厚生省所管ということに相なっておりますし、被用者保険の一つでございます国家公務員共済組合、これは大蔵省所管でございます。また、共済の面で申しますと、同じ共済でも、国家公務員共済以外のたとえば公企体共済法律上の所管といたしましては運輸省、それから地方公務員共済につきましては自治省というふうに分かれておるわけでございます。その辺を総体的にどう見ていくかというのが大きな問題だと思いますが、ただいま官房長官からお話しございましたとおり、総理府にございます公的年金制度調整連絡会議、そういう場を通してこの辺の調整を図っていかれるものと考えております。  その内容につきましては、あるいは厚生省の方からお答えをいただけるかと思います。
  9. 大原亨

    大原(亨)委員 では、最近その会議においてどういう具体的な仕事をしたか、こういうことを御答弁願いたい。
  10. 木暮保成

    ○木暮政府委員 昭和四十八年に厚生年金及び国民年金につきましてスライド制を導入いたしたわけでございますが、このときには連絡調整会議、十数回だったと思いますが、会議をしていただきまして、ほかの制度との調整を図り実施をいたした次第でございます。  また、昭和五十一年度の改正で遺族年金、それから障害年金の通算制度を導入いたしましたけれども、このときもこの連絡会議でいろいろ議論を重ねた結果、各制度一緒にこの通算制度をやるということに踏み切ったわけでございます。  なお、現在の時点では、昨年の制度審議会の意見あるいは厚生大臣の私的諮問機関でございまする基本懇の中間報告等を私どもの方で御報告いたしまして、今後の本意見が出ましたときの予備勉強をしていただいておるという状況でございます。
  11. 大原亨

    大原(亨)委員 果たして、そういう調整程度で、具体的に関係者の利害関係が非常に強いその問題の調整ができるのかどうかということですね。たとえばいまのような共済年金については、恩給との絡みでずっと経過があってこれが改正され、その部分がまだ残っておるわけです。厚生年金昭和十七年かに発足いたしまして、そして国民年金は三十六年にできたわけですね。これは継ぎはぎをしていったわけです。それを全体としてどうするかということがいま大きな課題になっておるわけですけれども、そういう問題について厚生大臣はほとんど、これは言うなれば、たとえば共済年金改正の例を一つとってみても、らち外にあるのではないか、こういうふうに私は思いますが、いかがでしょう。
  12. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 外見からごらんになって、そういう御議論があるいは出るかもしれません。ただ、この公的年金制度連絡調整会議がスタートいたしましたのは、昭和四十二年の七月の各省事務次官会議の申し合わせからスタートしているわけでございます。そしてそれ以来、いま局長からも申しましたように、スライド制の問題について、それぞれがばらばらでありましたところが合意を得てきた。また、障害年金、遺族年金の通算問題についても合意を得てきたということから、私はこの会議は一定の役割りを果たしてきておると思います。そして、この場を活用していくということは、私どもこれからも当然していかなければならないことだと考えておりますが、同時に、この会議を活用するということは、厚生省として、各種の共済でありますとかその他についての相当な発言の場を有することにもなるわけでありまして、現実に年金制度全体の加入者数の九割を占めておりますのは厚生年金国民年金、船員保険といった制度でありますから、これを所管しております厚生省として、現行の体系の中においてもリーダーシップは十分とり得るものと考えております。  ただ、いま大原さんのお話しにあった恩給との問題になりますと、確かに、今度は逆に援護局の戦傷病者戦没者遺族等援護法等の絡みも出てまいりまして、必ずしも年金と一体で議論をすることばかりが可能な情勢ではないことも御承知のとおりでありますから、その部分については他の問題があることは事実であります。
  13. 大原亨

    大原(亨)委員 それではひとつ端的に質問しますが、共済年金、官民格差の問題で議論があったが、共済年金はいわゆる恩給をもとにいたしました、つまり国との特別権力関係を背景にした、そういう伝統を持っておるわけです。したがって、年金の構造が若干違うわけです。しかし、昭和三十六年に国民年金が発足しまして皆年金になりますと、つまり、これは全部社会保障的な観点で、所得の再配分を通じて国民生活を安定させるというふうな、そういう原則を適用するような観点で公平に国の財源を使っていかなければならぬ、こういう問題があるわけです。その考え方は、共済年金についてもそういう大きな考え方は一致して意識統一をしてやっておるのかどうか、こういう点についてだれでも、自信がある者が答弁をしてください。
  14. 禿河徹映

    禿河政府委員 共済年金は、ただいま御指摘ございましたとおり、仕組みといたしましては社会保険システムというものを導入した点におきまして、従来の恩給というものと全く性格が違うわけでございます。しかしながら、現実に受給者ということになってまいりますと、やはり恩給制度を受け継いだそういう人たちがその恩給に引き続いてこの年金を受ける、こういう形になっておる点におきまして、いわば恩給制度を引き継いできておる面もこれは否定できないところでございます。  かたがた、共済年金制度というものを考えてみますと、御指摘のとおりこれは広い意味におきます公的年金と申しますか、社会保険の中の一つでございますが、やはり公務員という一つの職域保険の色彩も持っております。あるいはまた、先ほど申しましたとおり、恩給制度も引き継いできております。そういう点におきまして現実にはやはり、同じ被用者保険でありながら厚生年金と違う仕組み、あるいは給付の水準なり体系なりというものも一面において持っておるわけでございます。  しかしながら、こういういろいろな制度全般をやはり見直すべきではないかというふうなことで、現在厚生省の方におきましても、年金制度の基本構想懇談会、そこにおきまして一昨年の十二月にその中間報告も出ましたが、それは共済年金も引っくるめた公的年金制度全般についての検討もなされております。そして、恐らく近いうちにその懇談会の御意見も提出されるやに聞いております。そういう点におきまして、共済年金もやはり公的年金制度の一環といたしまして総合的にそこで御検討なされておりますし、今後のあり方についてもいろいろ御建議がいただけるものと、かように考えている次第でございます。
  15. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは、官房長官の時間が限られておるのですが、いまの答弁は主計局次長がどういう責任と権限において答弁したのかわからぬが、だれがやってもいいと言ったら、あなたが立ってやったわけだ。大体年金についてどういう所管の権限があるのか、ぼくは設置法も何も調べたとかそういうことはないけれども、予算編成権で主計局はまあ一番偉いということだろう。  そこで、これは大蔵省は、年金の基本問題懇談会の方針も出ておるし、そしていま御答弁の中には、皆年金になると社会保障的な年金として体系を整備する、恩給というもので経過的に残っているものがあるが、これは既得権やその他として整備をしながら社会保障的に全部見直していく、長期的にはそうなる、こういうふうに考えておるのだと理解をしてよろしいかどうか。権限のない大蔵省に。
  16. 禿河徹映

    禿河政府委員 私、共済年金の方を担当いたしておるものでございますので、共済年金のお尋ねも入っておりましたので、私から御答弁申し上げたような次第でございます。  それで、共済年金の性格をどう考えるべきかという観点からお答えいたしたいと思いますが、これにつきましてはかねがね共済制度の審議会におきましても議論がございまして、確かに公的年金制度の一翼を担うものであると同時に、共済年金企業年金的な色彩もあわせ持つものである、こういうのが大方の御意見でございます。したがいまして社会保障と申しますか、社会保険の中でもそういう保障的な色彩の強い年金と申しますか、公的年金というものに企業年金的な色彩が加わったもの、こういうものであろうかと思います。その公的年金的性格、それが基本であると思いますが、そういう点につきましてはいろいろこれまでの経緯もございます。あるいは仕組みも違っている面もございます。そういうものを今後他の公的年金制度との間にどういうふうに調整を図っていくかということが今後の大きな課題であろう、それは私どもさように考えております。
  17. 大原亨

    大原(亨)委員 ずばり質問するのですが、共済年金開始年齢について五十五歳を六十歳にするというのが出ておるわけです。それは中間報告が出て、近く出る年金の基本構想懇談会の答申との関係はどうなるのであるか。その内容が一部伝えられておるわけです。私も大体知っておるわけです。答申は大体いつ出るのであるか。そして、その中にはいま言ったような点が入っているかどうか。
  18. 木暮保成

    ○木暮政府委員 基本懇の次の会議は四月十八日でございます。この四月十八日で御意見をいただける可能性がかなりある、こういうふうに思っておる次第でございます。  それから、今度の答申に支給開始年齢の問題が出るかどうかということでございますが、御意見をいただかない段階でございますので、その点につきましての御答弁はお許しいただきたいと思いますが、大きな検討事項の一つになっておったということは申し上げられると思います。
  19. 大原亨

    大原(亨)委員 それは議論されていることは大体わかっているのです。委員が出てやっているのだから、ぼくも大体知っているわけだ。だから、そうもったいぶって言う必要はないのだ。そんなことはもう早くから大体決まっておるのだから。  そこで、開始年齢を六十五歳にするという議論は、日本の年金雇用医療との関係等を考えたら大問題なんだな。これは絶対に、簡単に頭の中ではできないのだ。国民年金被用者年金とをどういうふうにするのかという問題と一緒に、これは単なる学者の意見だけではできない。私もいろいろな意見を知っておるけれども。  それでは具体的に聞きますが、官房長官も主計局の禿河次長もそういうことに触れて言っておるが、この懇談会の答申の中には、言うなれば六十五歳ということは開始年齢としては当然である、厚生大臣、どこかで答弁のあったとおり、そういう意味のことが書いてあるわけですね。すでに原案があると言ってもいいと思う、十八日に出るというのですから。決まらなければ原案が出ぬわけだから。そこで、五十五歳との関係はどうなる、開始年齢を五十五歳を六十歳にする関係はどうなる、六十五歳との関係は。これは主計局次長
  20. 禿河徹映

    禿河政府委員 基本懇におきましてどういう内容の支給開始年齢の引き上げについての御答申が出るのか、私どもつまびらかでございませんが、私ども共済年金の方の支給開始年齢につきまして、ただいま共済法の改正関係を御提案申し上げておるわけでございます。これは端的に申しまして、将来の共済年金財政を考えてみました場合に、現在の五十五歳の支給開始年齢をそのまま維持するということは大変な負担をもたらすことになるので、これを引き上げの方向に持っていくべきであろう、ただし、ただいまの五十五歳の支給開始年齢を一気に、たとえば十歳引き上げるとかいうふうなことは大変大きな変革に相なりまして、現在入っております組合員に対する影響も非常に大きい、常識的に見てこれを段階的に五歳引き上げて、現在の厚生年金の支給開始年齢である六十歳を目標にするのが穏当なところであろう、かように考えたわけでございます。かたがた、現実に支給を受けます人たちの新規裁定の年齢を見ましても大体六十歳に到達しておる。そういうふうな点も考え合わせまして、これは六十歳に段階的にかなりの経過期間を置きまして引き上げを図ろう、かようにしておるものでございます。
  21. 大原亨

    大原(亨)委員 それは段階的に他の条件整備と一緒にやるという話はわかるのだが、実際問題として、官房長官、あなたは時間がだんだん迫ってきておるのだが、実際問題として、健康保険でしたらよかれあしかれ、健康保険法改正しましたら全部右へならえするようになっておる。もとが悪いから混乱しておるわけだ。それで年金についても、皆年金になったら統一的な年金制度をつくらなければいかぬわけですよ、税金は国民が負担しておるのだから。企業年金的な性格を加える場合には、それはそれとして理解を得るような方法がないわけではない。しかし年金については、これから議論するが、スライドの問題でも、人事院勧告との関係で賃金スライドをやっておる共済年金と物価スライドの関係、特例措置の今度の改正問題等でも大変な問題です。それから医療との関係高齢化社会、財源問題、これは厚生省だけが、保険局長とかいろいろな関係局長だけが中心となって仕事を進めておったって、実際問題としてはなかなか進みません。やはり高齢化社会に対応する社会保障や福祉を、他の面とどうして総合的に改革すべきかという方針について、内閣がきちっとした方針を出さなかったら、これは絶対に前に進まない。これをしなかったら、いま出しておる健康保険法案は通りやしないですよ。通らなかったらどうするのですか。赤字対策だけであったら絶対に通らない。長期を見通してどういう改革をするのだということがなければ、納得できるような方法がなかったら、そんなことの繰り返しではできませんよ。私は年金にしぼって言っておるのだけれども、年金について、政府全体として大切な問題はどう取り組むのかということについては、その行政機関の問題と一緒に、単に総理府に任せてあるということでなしに、検討する必要がある。単なる調整会議なら意見が一致するでしょう。それは役人の範囲だから。しかしこれは、官僚の範囲ではこういう調整はできない。政治的な決断が要る。それを一体だれがやるのかと言えば、厚生大臣医療なんかを抱えておって大変だし、武見会長のところに行かなければならぬし、むずかしいところだ。その上さらに、年金の問題だって、雇用の問題だって大変だろう。だから、もし皆年金ができて、厚生大臣が権限を持ってやるというふうな年金法であるならば、それは厚生大臣が権限を持ってやる。しかしいまは、やるといったって、関係ないような関係じゃないの。いま共済改正が出て、こっちが大問題になっていますよ。大問題になることで、そういう全体としての制度の統合ということについてやることになるんですが、そういうことについては、官房長官がよく総理大臣を補佐されて、そして、この問題についての制度上の欠陥とこれからの皆年金下にあるべき姿について、あるいは高齢化社会にあるべき姿について、十分検討すべき必要があるのではないかと私は思いますよ。いかがですか。
  22. 田中六助

    田中国務大臣 大原委員のおっしゃるとおり、年金問題は雇用問題などと結びつき合わせて考えなければならない重大な問題でございますし、政治的な決断というものをどうだということでございますが、いま事務当局が答えておりますように、基本懇談会から答申も出ますし、財源というようなことからも十分考えなくちゃいかぬ重大な問題でございますので、その点、総理ともども十分御相談の上、検討していきたいと思います。これは、先ほど事務当局が答えておりましたように段階的に、しかも期間を要する問題ではないかということもありますので、慎重に考えていきたいと思います。
  23. 大原亨

    大原(亨)委員 次の質問の中に入るのですが、官房長官、ことしは国際児童年なんです。それで、いま子供の自殺とか非行とか、非常に大きな社会問題があるわけですよ。これは単に子供の問題だけでなしに、非常に総合的な問題なんですね。その中で、私は児童手当の問題と当面の措置の問題について限定してきょうは質問するのですが、時間がなくてあなたには答弁していただくことはできないが、とにかく、国際児童年のあり方としては、国連憲章や日本が早くからつくっている児童憲章というのがあるのですが、単なる行事に終わらせないで、国際児童年を契機に、子供のあり方をめぐっての日本の児童政策について、政府全体として内容的に全体的に見直していって、制度確立していくという方向づけを考えてもらいたい。これは厚生大臣関係あれば、文部大臣も関係あれば、ずっと皆あるわけです。住宅問題も全部あるわけです。ですからそういうふうに、国際児童年の行事をやればよろしい、こういうことだけではだめだという点で問題が提起されましたら、よく総理大臣とも御協議いただいて、この問題は内閣全体で善処してもらいたい。いかがでしょう。
  24. 田中六助

    田中国務大臣 確かに、国際児童年というようなそういう行事を行事に終わらせることなく、大原委員の御意見も十分踏まえて考えてまいりたいというふうに思います。
  25. 大原亨

    大原(亨)委員 官房長官、どうぞお帰りください。  年金に入る前に、総合的な問題ですが、老人医療をどうするかということと老人所得をどうするかということは非常に関係深い問題です。中高年齢者雇用問題もそうですが、関係深い問題です。その老人医療をどうするかということは、健康保険医療制度を考える際にも前提となる、基礎となる条件の問題です。これは事務当局に任せるだけではなしに、厚生大臣は、内閣においても国務大臣として——この老人医療をどうするかという問題についてはずっと前から、昨年の十月には構想を出して、そしてこれを法律的に予算上具体化するような、そういうことについて着手をしたい、こういうことを明らかにしておるわけですね。ですから、老齢化社会における年金問題を議論しようとすると、やはり老人医療の問題が出てくるわけです。老人医療をどうするか、あるいは核家族下における老人の生活の基盤はどうするか。大平総理大臣は、日本的な福祉社会というわけのわからぬことを言っておられるが、時間があれば私も議論したかったのですが、官房長官がおられぬから、おられぬときに大平総理大臣の悪口を言っても悪いから言わぬが、この老人医療は一体どうするんだ。いかがですか。
  26. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 確かに、いま大原委員が指摘をされましたように、所得保障の将来の姿を考える場合に、あわせて医療保障をどうしていくかということを議論しなければ片手落ちだという御指摘は、私もそのとおりだと思います。ただ、そういう状態でありますだけに、健康保険法そのものの中で、いわゆる十四項目の改正方向をお示しをして、現在も御議論を願いたいとお願いをしているわけでありますが、その一つの柱としての老人保健医療対策というものについては、非常に慎重な取り組みが必要なこともこれは事実であります。  昨年、ちょうど小沢前厚生大臣が退任をされる前に、一つの方向を示唆をされました。そして、事務当局に対して作業を命じていかれたわけであります。これも私は一つの考え方だと思います。ただ同時に、将来にわたって非常に大きな問題になるものでありますだけに、これは関係するところも非常に幅が広い。また、現在あります老人医療の公費負担制度との関連、さらには、将来における健やかに老いるという観点からの若い時代からの予防給付といったものへの取り組み方、相当広範囲な検討を必要とする課題でありますだけに、まだ具体案の作成が当初の予定より大分おくれておることも事実でありまして、この点は予算委員会等でも実はおわびを申し上げたわけでありますが、今後できるだけ早い機会にこの作業の方向をつけたいということで、現在努力をいたしておるという状況でございます。
  27. 大原亨

    大原(亨)委員 主計局次長もちょうどおられるわけですが、たとえば六十五歳以上の高齢者の医療費、高齢者はいまは大体九%弱の比率ですけれども、実際にはこの医療費というのは全体の医療費の二五%ぐらい、どんどん上がって三〇%、四〇%となるわけです。そこで、老人医療について、保険財政とそれから老人医療に対する給付の双方を見通した制度確立をどうするかということは、これは年金制度その他を議論する際に必ず大きな議論になる。  住宅の問題を議論する際もそうでしょう。たとえば一人一人が一人一部屋で住めるような軽費の老人ホームを、核家族の今日、住宅問題のむずかしい今日、小規模でもいいからそれをたくさんつくって、実際に公営住宅などのすぐ近くに老人の住宅をつくる、こういう政策を進めたらどうだ、こういう議論にいたしましてもそうですが、老人医療問題をどうするかという問題で、いまのままで放置しておきますとこれは大変なことになるのではないか。保険制度自体がパンクするのではないか。だから、それは財政面だけではなしに、老人医療の給付をどうするかということを議論しないと、健康保険制度の赤字対策なんか出てこないわけなんだ。それと一緒に年金のあり方等についても、年金との関係医療をどうするか、あるいは住宅をどうするか、こういうものを考えなければいけない。家族制度でやることは本人にとっても好ましいですよ。好ましいが、まるで扶養者に依存するということは今日事実上不可能ですよ。ですから、老人医療をどうするかという問題は非常に重要な問題である。大体いつ構想を出して具体化を進めていくのか、この際にもう少し具体的に答弁してください。
  28. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いま私どもは、昨年の十月に老人保健医療問題懇談会から提出された意見書というものを踏まえて、具体案の作成を急いでおるわけでありますが、まさにいま大原委員が指摘をされたような問題点、これはたとえば考え方としては、核家族化と言うけれども、現実にまだ七五%は老人同居世帯であるということに着目をすれば、逆に、同居世帯をどうやってふやしていくかという観点で住宅政策を考えろというような御意見も実はあるわけでありまして、非常に大きな観点で、国民の全体のニーズというものにも分かれがあるわけであります。それだけに、そういうものの中で一つの共通項をくくり出し、それを皆さんに御提示をするということにつきましてはなかなか困難な問題がありまして、財源負担一つを見ましても、まさに、懇談会そのものでさえ大原委員御承知のように財源負担についての五つの考え方を示してくるような状態でありますだけに、これはもう少し慎重な時間をかしていただきたいということを私はいま皆さんにお願いをしているわけであります。  私どもとしてもこれはできるだけ早い機会に方向はつけたいと思いますが、仮に急いでその中身を示せと言われれば、幾つかの考え方を併記するような形で皆さんの御意見を伺うような状態にならざるを得ません。しかし、それは現実の姿として決して望ましいものではありませんし、作業の過程において幾つか出てきております考え方というものを一つにまとめていくには、もうしばらく時間をかしていただきたいというのが率直なお願いでございます。
  29. 大原亨

    大原(亨)委員 書類としましては「今後の老人保健医療対策のあり方について」、これは五十二年十月に出ていますね。それから、私が質問して答弁しておったら長くなりますからずばり言うのですが、総理府には老人対策室がありまして、昭和四十九年に提言をしているわけですよ。そういう提言や答申があって、大体においてこうあるべきだという方向は出ていると思うのです。だから、それをさてどういうふうに具体化していくかということについて、やはり決断をすることが必要ですね。そして一つの案を出すことが必要です。大体この問題についてはたたき台を出しておいて、そしていろいろな議論を聞きながら、ある場合には修正をしながら法律化していく、予算化していく、年次計画でやっていくというような考え方であったわけです。ですから、これは早く出さないと、それを基礎にして健康保険の財政問題もあれば、医療給付の問題もあるわけですから。  たとえば、老人医療が無料であることは私はいいと思うのです。無料であることについて、一部有料化すべきだという議論もあるわけです。しかし、これは一つの非常に大きな議論の分かれ目。ただし、現在の無料化の中において行われている重複診療や重複投与というようなものについて、保険制度であるからあるいは国民が負担するのであるから、やはりある程度可能な限り給付の面の整理をしなければならぬ、こういう考え方もあるわけです。たとえば、お年寄りで歯の治療で五つも六つも持っている人もあるわけです。二つぐらいまではいいにしても、五つも六つも持ってやるということはやはり重複診療のうちに入る。ですから、そういう医療費のむだについてある程度の整理をしながら、老人については医療だけはいざというときには国民が全部めんどうを見るということで、制度をつくっておく必要があると私は思う。そうしないと、これから所得とかあるいは生きがいとか言いましても、中期的な、長期的な見通しをつけることはできない。  ですから、決断して早く出さないと何にも進まぬということになるのではないかということを私は非常に恐れる。そういう点について私は強く要望しておきますが、厚生大臣、具体的なもう一歩ぐらい進んだ答弁をしてもいいではないですか。いままでの大臣の中で、あなたが一番後退している。
  30. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 後退と言われるかもしれませんが、むしろそれぐらい真剣に考えるべき問題だと私は理解をしておるということであります。ただ、それだけに、できるだけ早く一つの考え方をお示ししたいという気持ちは私も持っておりますので、今後ともできるだけの努力をいたします。
  31. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは逆に質問してみますが、十分検討できるような要項を含めてそういう構想を来年の国会に出せるような、つまり八月なら八月までにとか出しますか。
  32. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私の首が大体いつまであるかもう一つよくわからぬ状態でありますから、何月と言われましても大変困りますけれども、少なくとも私自身の考え方も含めて幾つかの考え方というものが現実にはあるわけであります。小沢大臣の示されたものが具体的に指示をされ、作業を進めておる方向の一つでもございます。そういうものの取りまとめには、できるだけ早い機会にそういう作業を完了をし、世の中に御批判を仰げる体制をつくりたい、そのように思います。(大原(亨)委員「それはいつですか」と呼ぶ)できるだけ早くいたします。
  33. 大原亨

    大原(亨)委員 あなたの任期中ですか。
  34. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 なるべくなら私の首のある間にしたいと思いますが、首がいつまであるかということともこれはかかっておることでありまして、できるだけ首のある問に方向は示したいと考えております。
  35. 大原亨

    大原(亨)委員 財源の問題ですけれども、能率的にやるために言うのですが、私ども社会党は方向を決めているわけじゃないのです。決めているわけじゃないのですが、政府のいろいろな機関において、たとえば社会保障制度審議会において、年金の基本的な財源の問題について一つの案を出しているわけです。政府の方としては一般消費税に非常にこだわっておると思うのですよ。しかし、一般消費税はつらつら考えるのにこれは実現できない、皆の反対が強くて、欠陥が多くてできないと思うが、これは大蔵省質問してもいいが時間がないからやらないが、私はこの制度審の出した所得型の付加価値税で、知事会議が自治体の財源として要請していた、つまり事業活動の根っこで取っていく、賃金の全体あるいは利潤、利子、これは法人の課税になるわけですから、地代等を総合的に、分配以前の根っこに、事業活動の中に財源を考えていくという考え方もその一つ、これがいいと言いますとまた逆用されるおそれがあると思うので私は議論いたしませんが、年金の基礎的な部分とそれから老人医療のような全国民が負担するものは、単なる保険料という形ではなしに、やはり国民全体が負担する、法人も当然負担する、こういう知事会議等が出している外形課税的なものを基礎として財源を確立すると、高齢化社会においてあるいは先行き不安の多い社会において一定の目安をつけることができる。そしてその基礎の上に立って、一般の国庫負担についてどうするかということを議論すれば、大蔵省も予算査定ができるのではないか。  だからそういうことを検討して長短を——これは短所もあるわけですから。取るべき税金がさらにある、高度成長時代の財産所得があるわけですからね。それはもちろんそうですけれども、そういう出ている問題については、政府の一つの案にこだわらないで自由に議論をして、そしてよりよい見解を出す。絶対にこれがいいという意見はないわけです。そういう議論を出しながらよりよい議論をみんなが追求していく、そういうことにしなければ、これからの高齢化社会における、文章には書いてある、答申には書いてあるけれども、そういう国民的な合意というものを得ることはできないと思うのです。  大体一般消費税、あんなものはだめですよ。あれはみんな反対している。これは中小企業初め全部反対している。与党でも反対している。あんなものは本当にできっこない。だからもう少し頭を切りかえてやる。大蔵省は私が言ったそういう点を議論したことがあるか。検討したことがあるか。検討したことがあるとするならば、大蔵省においてはどういう考え方を持っているか。
  36. 禿河徹映

    禿河政府委員 確かに御指摘のとおり、これまで急速に進んでまいりました高齢化社会、これからその高齢化現象はさらに進むものと思われます。それに伴いまして、社会保障年金医療、各般におきまして、その費用が非常に大きなものになっていくことは、もうこれは否定できないことであろうと思います。その際の給付あるいは負担の公平というものあるいはその適正化というものを今後どのように進めていくべきかというのは、非常に大きな基本的な問題でございまして、厚生省の御当局におかれましてもいろいろ検討をなされておるところでございます。私ども、その段階におきまして、十分御相談を申し上げながら適正な方途を見出したい、かように考えております。  それに関連いたしまして、社会保障制度審議会から出されましたいわゆる基本年金制度に絡む税の話、あるいは私どもの方でいろいろお願いしております一般消費税の問題等々がございます。税制につきましては私の所管外のことでございまして、責任を持ってどうこうと申し上げるわけにはまいりませんが、いずれにいたしましても、大きな負担が今後かかってくることは事実でございます。社会保障、それを推進するに当たりまして、それをどのように、どのような形で、どの程度負担していくかという観点におきまして、十分これは検討なさるべきことであろう、かように考えております。
  37. 大原亨

    大原(亨)委員 これは具体的にはあなたは賛成ですか、反対ですか。
  38. 禿河徹映

    禿河政府委員 これはと申されましたのは、恐らく制度審で出されましたいわゆる所得型の付加価値税のことであろうと思います。これは、私は個人的に賛成とか反対とかいう立場にも実はございません。しかし、制度審から出されました御意見、大変貴重な御意見だと思っております。  ただ、いろいろの観点からの議論も必要でございます。かたがた、私ども大蔵省の方におきまして、一般消費税ということについて、御批判はちょうだいしておりますが、今後の財政状況等々考えてまいりました場合に、どうしても、この危機的な財政状況を乗り切っていくためには一般消費税をお願いしなくてはならない、こういう立場にございます。  また、社会保障の推進という点から見ましても、やはり一般財源の拡充ということは否定できない必要性を持っておるものと考えております。したがいまして、どの税制がいいか、よりどちらが適合性があるかとかいうふうな問題につきましては、ちょっと私、所管でもございませんので、個人的な御意見は差し控えさしていただきたいと思いますが、いずれにしても、そういう財源の問題といたしまして、非常にシリアスな問題である、かように受けとめております。
  39. 大原亨

    大原(亨)委員 私は、自由競争とか市場原理というものが社会的に政治的に承認される前提というのは、やはり富や所得が公平に分配されて、そして国民生活の安定に役立つというふうに、所得の再配分的な公平なそういう機能が民主的な政治の中で行われないと、資本主義は続かないわけだと思う。そういう考え方から言うならば、一般消費税というのは、これはいろんな経過があってヨーロッパ等でやっておりますけれども、これは取っていくのは頭割りですからね。これを福祉に使うとかいろんなことを言っても、これはいまの段階では、私どもは、そういう議論を私が議論する前の議論として、さらに富と所得を、高度成長時代の所得を厳しい時代に対応して再配分するという心構えが必要だと思う、全体としては。しかしながら、現実には保険料をボーナスからも、健康保険では千分の七十まで取っていくというふうな法律を出しているわけです。そうすると、傷病手当とか年金とかいう関係においての総報酬制はどうかという議論が当然出てくる。皆つながっておるわけです。ですから、そういう場合に、やはり富と所得を公平に再配分するという機能を考えながら、社会保障を安定的な支えとなるように、みんなが安心できる、これで全部というわけにいかなくても、支えとなるような制度をつくることがいまの大きな課題じゃないですか。ですから、そういう点から言えば、もう少し高い観点での議論をしないと、これは、とてもじゃないが、一般消費税にこだわっておったのではだめだ、こういうふうに思います。  むしろ、私が言う議論にぽんと飛びついてきて、私が困るようなことを言うかと思ったら、全然そういう知識も考えもないということで、これはあなたにそういうことを御答弁をいただくことが無理であるということがわかった。  そこで問題は、これは重要な問題ですが、大蔵省が去年出した、私もここで議論したことがある、わが国の社会保障の給付水準は高い、こう言って出した、この中で厚生年金が二十八年加入で十万五千円の問題を出しておるわけです。それから社会保障の給付費、国民所得に対する給付費についての見通しを出しております。ですから、そういう議論を出しているのですが、この議論は一つの議論ではあるのですけれども、日本の社会保障の水準が高いというふうなことをいま言う者はいない。間違いである。  問題は、たとえば、これは私も指摘したのだが、現在給付している年金のほとんどは経過年金なんです。老齢福祉年金と五年年金、十年年金なんです、いまの日本の制度は。当分の間それは続くわけです。それで、厚生年金の二十八年だけを取り上げて、その年金水準で議論するのはおかしいわけです。これが一つ。  それから、たとえ年金医療を含めて社会保障の給付がかなりふくれているにしても、今度は、ふくれているけれども、その内容が問われているのです。内容と制度の整合性が問われているのです。これが一つです。  だから、大蔵省は、何の権威でこんな文書をまき散らしたのか知らぬけれども、大蔵省、あんまり思い上がっちゃいかぬということを私は指摘したい。もう少し事実を、大切な仕事をしておられるのですから、事実をやっぱり調べて、議論が正しく発展するようにしなくてはいかぬ。  そこで、共済年金を含めて、年金基本問題懇談会ではこれからの年金水準を、だんだん本論に入っていきますが、これからの年金水準を現在の年金水準でいいと思っているのかどうか。年金水準、給付水準。これは主計局の次長にひとつ答弁してもらおうか、むずかしい質問だから。
  40. 禿河徹映

    禿河政府委員 大変むずかしい御質問でございますが、それにちょっとお言葉を返すようで大変恐縮でございますが、私ども、制度的に見ました場合に、現在の年金の給付水準は、諸外国に比べてみましても決して遜色のないところまで来ておる、かように考えております。しかしながら、今後の問題といたしまして、現在の給付水準で十分かどうかということに相なりますと、これからやはり経済が発展をし、社会も変わってまいります。それに対応いたしまして見直すべきところは見直していかなくてはならない、かように考えておりますが、制度的に見ました場合に、厚生年金は退職時の給与の大体六割程度に持っていこうじゃないかというふうなことでやってきております。共済の場合は若干それより高いという点はございますけれども、まあそういうレベル、相対的な水準という点におきましては、諸外国に比べましてもかなりの水準に来ておる、かように考えております。
  41. 大原亨

    大原(亨)委員 いま主計局次長から答弁がありましたが、年金懇で近く出される答申の中に、標準報酬の六割、こういう裁定の基準の考え方というものがあらわれておるのかどうか、いかがですか。
  42. 木暮保成

    ○木暮政府委員 基本懇の意見書、間もなくいただけるわけでございますが、まだ正式に基本懇の議決をいただいておりませんので、その点につきましてはお答え申し上げるのをお許しいただきたいと思いますが、現在の厚生年金が標準報酬の六割を目指しておるということ自体は、国際的に見まして遜色のない水準であろうかというふうに思うわけでございます。  それからまた国民年金につきましては、現在経過的年金が支給されている段階でございますが、夫婦でおおむね厚生年金と見合う水準ということにいたしておりますので、これも年金の目指すべき水準とては妥当な線ではないかというふうに思うわけでございます。むしろ、今後人口の老齢化に伴いまして、この水準を維持していくということがかなりむずかしい問題になると考えておるわけでございます。  一方、これも各界から御指摘をいただいておりますが、厚生年金で申し上げれば遺族年金の水準、あるいは国民年金の中で福祉年金等の水準につきましては、今後とも検討をしていく余地があるというふうに考えております。
  43. 大原亨

    大原(亨)委員 給付水準を考える際に、日本には外国にはないボーナスが年二回あるわけです。今度は健康保険の方では総報酬で、上限を設けて千分の七十取るというわけです。総報酬か標準報酬かということは、水準には非常に関係が深いわけです。それを大蔵省はこの文章を書いたときにどういうふうに理解しておられるのかわからぬが、やはり総報酬でやらなければいけないんじゃないか。所得の再配分ということから言うならば、保険料も総報酬で取るが、所得保障も給付の方も総報酬でやるという考え方で制度をやらなければいけないのではないか。その点については、答申やあるいはこれからの厚生省改善の方向においてはどういうふうに考えておられるか。
  44. 木暮保成

    ○木暮政府委員 総報酬制をとるということによりまして負担の公平が保たれる面がございますし、またボーナス等も生活実態からは生活費に充てられているということが多いわけでございますので、年金水準を考えてまいります上に総報酬制をとるということは、一つの考え方だと思うわけでございます。  ただ一方では、企業の中で成績がいい企業にボーナス等が多いということもございますし、またボーナス等が景気によって変動する要素が多いわけでございますので、年金財政の長期の設計としましてボーナスを入れていくということがいいかどうか、あるいはまた給付の公平という面でもボーナスを取り込んでいく方がいいかどうか、若干の問題点はあろうと思います。今後の大きな研究課題というふうに思っておる次第でございます。
  45. 大原亨

    大原(亨)委員 大臣、日本では大体ボーナスを含めて生活設計を考えてやっていっておるわけです。それをもとにして保険料を取るということになれば、いま医療の面でも言っているようなある面においては負担の公平にもなるわけです。給付もその生活実態に基づいて六割を保障するという原則から言うならば、禿河次長、日本の年金水準はいまの標準報酬の六割という考え方よりももう少し上げて考えることが、国際的に見てもやはりその方が文字と内容が合うのではないか、私はそう思うのですよ。給付も生活費の六割は保障していくという考えの方が正しい。それで、年金懇はそういう問題については触れてないと思う。これは厚生省がやることですが、大臣、いまの議論を聞いてどう思いますか。
  46. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは、いまの御議論を承っての一般論としてあくまでもお聞きをいただきたいと思います。  私は、一般論としては、確かに大原さんの御指摘のように、保険料徴収の対象にボーナスを取り込む場合に、年金においてもその部分を考慮しろという御議論はそのとおりだろうと思います。ただこれは、今度は逆に、年金設計の上での技術的な問題としてそれが可能かどうか、いま局長が申しましたように、非常に変動要因の多いボーナスというものを年金設計の中に取り込むことが技術的に可能かどうかという点に、私は問題がかかるような感じがいたします。一般論としては大原委員の御指摘の方向だろうと私も思います。
  47. 大原亨

    大原(亨)委員 時間がないのに議論するのですが、国民年金は、いまのような単一の保険料だったら、これは改善の余地は限られておるのですよ、それは妻も入っていますし、五人未満の労働者も入っているのですから。ですから限られているのですよ。そうすると、不確定要因があってもある程度所得に応じた保険料を出す、そういう仕組みにしないと、一定の国民年金の水準を維持することはできない、こう思うのです。これは一つの問題点です。  そこでもう一つ。これはちょっと順序を踏み外して言っておるわけだけれども、質問が順序どおりいってないが、今度十八日に出る年金懇の最終答申の中に、国民年金の老齢福祉年金、十年年金、五年年金の経過年金の位置づけを将来どうすべきかという問題について、どういうふうに触れてありますか。
  48. 木暮保成

    ○木暮政府委員 今度いただく意見書には五年年金、十年年金の位置づけについても御意見をいただけると思っておりますけれども、何分にも、先ほど申し上げましたように基本懇としましてまだ最終的な結論になっておりませんので、ちょっとお答えを申し上げにくい次第でございます。
  49. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは聞いてみますが、経過年金について年金懇の最終答申は、一定のこういうふうにすべきだという中身を含めた答申になっていますか、そうではありませんか。
  50. 木暮保成

    ○木暮政府委員 福祉年金や五年年金につきまして中間報告では、今後福祉年金、五年年金充実していく上に、年金体系全体としてのバランスを考えなければいけないという意見をいただいておる一方、一般会計のままで今後とも福祉年金等を伸ばしていくのには限界があろう、特定な財源措置が必要であるというふうな報告をいただいておるわけでございます。今度の最終意見もそれに乗っかった御検討をいただいて出てくるというふうに思っております。
  51. 大原亨

    大原(亨)委員 それでは少し順序を変えまして、官房長官がおられるときに国際児童年の話をしたわけですが、そのときに児童手当の話をいたしました。やはり妻の年金権と子の年金権と、この法律案の中に出ておる児童扶養手当は非常に深い関係があります。実際の生活の上では一体の問題であります。それで私は、妻の年金権は後にいたしまして、その質問に入っていきます。  国際児童年で私どもがもう一回議論し直さなければいけないのは、児童手当をどうするかという議論が一つ。十八歳以下の子供が三人いて、十五歳以下の子供に対しまして第三子から出すということになっておるわけですね。非常に複雑であって、しぼりにしぼってあるわけです。これはいまのままにしておきますと、しぼり過ぎて、実際に実在する価値がなくなって、児童手当不要論が当然出てくると思うのです。国際的な水準から見るならば、これは担当局長から答弁してもらっていいのですが、第一子からやっておるところが大体何カ国あって、第二子からやっておるところが何カ国あるか、ことしは国際児童年ですから、そういう点についての簡単な御答弁をいただいておきたいと思うのです。それが一つ。  それからもう一つは、この児童手当の法律ができたのは昭和四十七年でしたかね。これも予算委員会や社労でずいぶん長く議論いたしまして児童手当ができたわけですが、その当時佐藤総理大臣は、小さく生んで大きく育てる、こういうことを言ったわけです。初めは小さく生んでだんだんと大きくしてりっぱなものにします、そしてりっぱな福祉国家にします、こういう議論でありました。議事録に残っています。しかし、これは大きくもならぬし小さくもならぬのです。実際上はインフレで小さくなっているのです、ずっと六千円ですから。それから第一子からという点でも。しかし、これで完全に児童の養育費に充てるというような考えはだれも持ってないわけです。しかしいまは、子供は保育所から幼稚園からといったらものすごい金がかかるわけです。塾などはよけいなことだと言っても、ものすごい教育費がかかっているわけなんです。子供を持っているということは大きな社会的負担になっているわけです。ですから、それが家計への圧迫にもなっているわけですし、賃金体系にも影響しているわけです。ですから、これをきちっと賃金の外に出すような目標を持って第一子、第二子から実行するということは、これから高齢化社会に対応する中高年の雇用とも深い関係があるわけです。だから、第二の問題についても国際児童年に当たってきちっとした考え方をもって処理すべきではないか。第一の問題は担当局長で、第二の問題は厚生大臣
  52. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 第一の問題についてお答えをいたします。  私どもの手元で、現在児童手当を実施している国の数は六十五カ国というふうに見ております。そのうち全国民を対象とする制度を持っておる国が十八カ国、主として被用者を対象とする制度を持っている国が四十七カ国、わが国は全国民を対象とする制度を有する国というふうになろうと思います。それから支給対象児童の範囲で、第一子からというのは六十五カ国のうち五十七カ国、第二子以降が四カ国、第三子以降がわが国を含めまして三カ国、第四子以降が一カ国、かようになっております。
  53. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは、大原委員から国際児童年に関連しての御質問でありますけれども、実は、国際児童年になる以前から何遍も御議論があったことも御承知のとおりであります。ただ、四十七年からというお話でありましたが、これは私が政務次官のときでありますから、たしか四十六年にスタートしたんじゃなかったかと思います。(大原委員「それが正しいかもしらぬ」と呼ぶ)多分正しいと思います。ただ、大原委員は、たとえば企業の家族手当を賃金体系の外に出してしまう、そしてそれを逆に、中高年齢層の賃金負担の軽減にも資しながら、雇用対策という観点も含め、児童手当の支給対象範囲の拡大に使っていく工夫はないかというふうに言われますが、児童手当の支給範囲の拡大というのは、実は児童手当制度におけるまさに基本問題であろうと私は思います。そして、これについてはまず第一に国民のコンセンサスというものが一つの大きな前提でありますし、同時に、現在の日本の賃金体系というものが家族手当というものを含んでおる現状から考えてみますと、家族手当との関連のほかに、税制における扶養控除との調整の問題、また他の社会保障制度、これはもう当然のことでありますけれども、等との関連をどうするか、また給付と費用負担というような問題点をどうとらえるか、検討の課題としては非常に大きな項目が幾つも出てくるわけでございます。  現在中央児童福祉審議会において御審議を願っておるところでありますが、このお答えをいただきました結果として、私どもは十分これに対して慎重な対応をしてまいりたいとは思いますけれども、当面やはり支給範囲の拡大ということはなかなか困難な問題ではないか、そのように思います。大原委員が言われますように、生活実態とすれば御指摘のような点もあろうと思います。しかし、児童手当制度そのものが雇用対策というものを目的としたものではありませんだけに、御指摘のような点も十分に考えてはまいりますが、実現にはなかなか困難な点があろうかと、そのように思います。
  54. 大原亨

    大原(亨)委員 ぼくは、中高年の人が雇用しやすいような社会的な条件をつくるという、総合的にそういう雇用問題の社会保障的な側面を考えるべきではないかと思う。それは外国では年功序列になってない。なってないというより、それほどひどくないわけです。ですから、そういう場合には児童手当の制度が社会的にあるわけです。  それともう一つは、第三子からというのは、これは出発としてはわかるけれども、いまは平均子供は何人ですか。
  55. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 一世帯平均一・九人でございます。
  56. 大原亨

    大原(亨)委員 平均で一・九人であるのに、第三子からというと、外れたのからもらうことになる。だからそれは、三人もうけようというので三人子供が現にいるという人と、これはしくじった、三人生まれたという人などいろいろあるけれども、その第三子からというのではなしに、実際上社会的なニードから言えば、第一子、第二子ということで金額はともかくとして社会的に見るということで、賃金体系との問においても実際上生活に影響するのではないか、こういうことで児童手当を見直す見直すと言うのですが、いつ大体結論を出して、これから児童手当をどうするかということを考えるのか。いま、簡単に言えば事業主負担が多いから、言うなれば外形課税的なものになっていますから、だからこれはやめるべきだというような切り捨て論の方が多いんですが、これは非常に間違った考えではないか。その点の議論は当然のこととして議論が余りないのですが、これは議論を起こさなければいけない、こう思っています。いかがですか。
  57. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、実は別にしくじったわけではなくて四人子供を持っておりますけれども、所得制限のおかげでもらえない方であります。ただ、実際に意識調査を五十一年にやってみました結果からいきますと、ちょっと大原委員の御指摘と実態には差があるように思います。これは五十一年でありますけれども、現状でよろしいというのが四六・八%ありました。それから二人目から欲しいという方は一二・二%ありました。第一子からという方は一五・五%でありました。むしろその意味では、相当多くの方々が現状を是認しておられる、と言っては恐縮でありますが、是認しておられるということも事実でございます。同時に、その支給範囲を拡大した場合、国庫負担のベースで考えてまいりますと、第一子からの支給とした場合には現行の九倍、第二子からの支給とした場合には現行の四倍の国庫負担が必要になるわけでありまして、これは財政的にも確かに大きな問題点になるでありましょう。中央児童福祉審議会の審議経過等を細かく私も存じませんが、昨年一年間におきましても、児童手当部会で何回かの御審議の上、十二月一日には当面の改善策についての意見具申等もいただいたわけでありまして、現在も引き続いて鋭意検討していただいておるというふうに承っております。
  58. 大原亨

    大原(亨)委員 それはひとつ速やかにやってもらいたいと思います。  それから、この法律案に出ております母子福祉年金と児童扶養手当のことですが、この問題もいままでちょいちょい議論になっておるのですが、私は集約的に、ダブっておりましてももう一回この点は質問いたします。  御承知のように、母子福祉年金は、今度の政府改正案によりましても約二万三千円が出ることに改正されることになっておるわけですね。それで、いろいろな各方面からの議論を私どもが聞いた場合に、確かに基準法とか恩給その他にも、遺族の問題等にも、ずっと横に影響があるのですが、しかし、十八歳ということになりますと、そうすると、七つ上がりの子供はこれは高等学校を終わっておるわけです。落第しない限り終わっておるわけですけれども、そうでない大部分の者は高等学校の三年の在学中に切られることになるわけです。しかも、私は、この問題について、死別の家庭と生別の家庭の実態がどうかということについて、最も新しい的確な資料があればひとつお答えをいただきたいと思います。できればこれはいますぐやってもらってもよいのですが、ともかくその答えを聞いてから以下申し上げたい。これは年度の途中で切るということになりますと、最近は非常に生別の、夫が蒸発をしたり、妻が蒸発をしたり、あるいは生活に行き詰まって別れたり、子はだれが持つかということになったり、いろいろな問題があり、一方、社会的には九三%も高等学校の就学率があるわけですから、親としては最低子供を高等学校を途中でやめさせないで卒業させたいという気持ちもあるし、また、家庭的に自殺とか非行等の問題にも関係がある、そういう非常に追い詰められた、精神的に動揺している家庭の者たちですから、大変なんですね。ですからいろいろな問題はあるけれども、とにかく真っ先にこの児童扶養手当の問題と母子福祉年金の問題が関係してくるので、そういう児童の枠を、かつて十五歳のときにやったように、十八歳としまして、括弧して、高等学校を正常な形で卒業するまでは見るということにすべきではないか。これは政策上の問題として真剣に考える問題ではないかというふうに思います。これは最初に政府委員に答弁してもらって……。
  59. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 原因別の母子世帯の実態調査というのは四十八年に正式な調査がございまして、これによりますと、総数の中で大体死別世帯が六一・九%、生別世帯が三〇・六%、そのほかに生死不明あるいは未婚の母、それからそれ以外に特殊な事情というのがございます。一般的に言えば、死別世帯が六割、生別世帯が四割というのが常態でございますけれども、最近、途中経過での中間的な数字を見ますと生別がふえてきておる、最近の一番新しい数字を見た限りでは、ややまだ死別世帯の方が多うございますけれども、ほぼ匹敵する程度の数字に近づいたということを私どもは承っております。
  60. 大原亨

    大原(亨)委員 大臣が答弁する前にちょっと。  母子福祉年金は、死別の中でも一定の条件に合う人がもらうわけですね。それから児童扶養手当の受給者ですね。この比率を、これは資料にもありますが、児童扶養手当をもらっておる者は何人で、母子福祉年金をもらっておる者は何人で、どういう傾向にあるということについて、記録に残しておきたいのでお答え願いたい。  それから児童扶養手当については、生き別れが多いわけですから、社会的に申し出るというようなことをちゅうちょする場合等があって、そういうのは非常にむずかしい状況の中で、申し出ておらぬのもあるのではないか。そういう権利者に対して、児童扶養手当をもらえる者に対して的確な行政上の指導が、手続の勧誘、PR等を含めて、できておるのかどうかどいうことが問題になりますが、その点を含めてひとつ御答弁をいただきたい。
  61. 木暮保成

    ○木暮政府委員 母子年金は五十二年度末で十二万八千件でございます。それから、母子福祉年金は同じ時点で四千人でございます。
  62. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 児童扶養手当でございますが、五十三年度末の数字で三十六万件でございまして、五十四年度が約四十万件−四十万七千件を見込んでおります。
  63. 大原亨

    大原(亨)委員 それじゃ、ひとつ大臣、やはりこれは実際上の問題を考えたら、高等学校の途中で二万三千円の収入がなくなると、かなり追い詰められた母子世帯等においては子供を途中でやめさせざるを得ない、こういうことになるのではないか。ですから、これは単なる通り一遍の理屈ではなしに、この点を十分政策的に判断をして一定の方向づけをしてもらいたい、すべきではないか、こう思います。
  64. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 この支給停止の年齢につきましては、かつても本委員会において、与野党全体の合意というものに基づいて十五歳を十八歳に引き上げてきた経緯、大原委員の御指摘のとおりであります。実は、この前同じ問題を田中美智子委員からも御指摘をいただいたわけでありますが、そのときも、実は私も不合理だと思うのだということをお答えをした記憶を持っております。事実、私も、在学中に切れるということについては何らかの対応策がないかということをいままでも考えてみました。ところが、いま大原委員御指摘のように、労働基準法の絡みでありますとか、あるいはその他の関連諸制度との絡みで十八歳という一つの壁がありまして、現在まだこれは確かに抜けておりません。ただ、気持ちの上としては私も同じような気持ちがありますので、なかなか、実際に実施することについては関連諸制度あるいは関連諸法規との問題で困難があろうかと思いますけれども、事務当局に研究を命じてみたい、そのように考えております。
  65. 大原亨

    大原(亨)委員 つまり母子福祉年金と、それからそういう立場の児童を扶養する手当、児童扶養手当については、たとえばサラリーマン金融の不幸な原因になったり、いろんな社会問題を私も知っておるわけですから、ですから、大臣は前向きにこの問題には取り組む、こういうことですが、この問題はいろんな制度との並びがありますけれども、まずこの問題について政策的な判断から、やはり一定の前向きの結論をできるだけ近い機会に出してもらいたい。たとえば来年の予算編成期、再計算期、こういういろいろなことがあるのですが、その二つの段階があるのですけれども、できるだけ早い機会に、いまのこの審議中に修正してもよろしいけれども、それができなければできるだけ早い機会にやる、こういう御意見であるというふうに理解してよろしいか。
  66. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 非常に変な議論をいたしますと、実は高等学校三年というものを、仮にたとえば定時制に行っておられたらどうするんだとか、実はいままでにもいろんな議論が行われてきたわけであります。また、いままでの私どもが議論をしてまいりました過程においても、労働基準法との絡みというのは一つの非常に大きな問題点として存在をしたことも、これは大原委員もよく御承知のとおりであります。ですから、私も実際問題として、関連諸制度とどう調整をするかという点には事務的には相当な苦労があるのではないだろうかと思いますし、その実現性の困難というものもよく承知をいたしております。それでもなおかつ、とにかく研究させてみたいということを申し上げておるわけでありまして、いつまでと時間を切られますと、かえって私ども、非常に現在の諸制度に縛られて、関係各省との折衝の時間もないというような中では、否定的なお答えをせざるを得なくなりますので、むしろ多少時間の余裕をいただきたい、そのように思います。
  67. 大原亨

    大原(亨)委員 いまのお答えは、実施する方向で努力をするということですね。
  68. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、私自身が不合理だと思って何遍も聞きましたということを申し上げておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  69. 大原亨

    大原(亨)委員 しつこいようですが、私が言う意味で、実施するように努力をするんでしょう。
  70. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 実施するようにはいままでもやってみたのですが、うまくいきませんでしたから、もう一息やってみたい、そういうことです。
  71. 大原亨

    大原(亨)委員 今度の予算審議中に起きました年金修正の問題があるのですが、大体私どもの理解する限りでは、老齢福祉年金をやると五年年金にかかわるわけですね。それで、十年年金をどうするかということは非常に大きな問題です。これは年金を審議する際に、経過年金全体で整合性のある議論をしなければならぬと思うのですね。だから実際的に、社会党に対しても皆さんの方はそういう答弁をちゃんとしているわけですが、しかし内容については規定をしておりません。いろいろな議論があることも承知しております。しかし、今回の処理の問題と近い処理の問題とを含めまして、経過年金、十年年金の処理をどうするかという問題をやはり考えないといけない。これは年金懇においても、年金懇は余りはっきりした答申は出しておりません。恐らく経過年金について十八日には出さないでしょう。そこで具体的な積み上げが必要だと思うのですが、経過年金全体をどうするかという問題で、十年年金は非常にウエートが高いわけですから、その問題を含めてどういうふうに処理をしていくかということについて見解を聞きます。
  72. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今回予算審議の過程におきまして、各野党からの予算修正についての御要望に対して、自由民主党が話し合いを進められたその過程において、高度の政治的な判断の上で、自由民主党から、社会労働委員会の議を経て国会の結論が得られれば、老齢福祉年金の月額を八月から二万円に引き上げ、老齢福祉年金以外の福祉年金、五年年金及び福祉年金に連動する児童扶養手当等についても、これに準じて引き上げる用意があるという処理案を、各党に文書で提出をされた経緯というものは私どもも存じております。いま現在、私どもとしても、この社会労働委員会で御審議をいただいております年金法の一部改正法案等の御審議の中で、その内容が固まりました時点で、それに対して誠意を持って対応してまいりたい、これは従来からも申し上げてまいりました。ただ、同時に、今回の修正というものは、財政再計算を行わないままに福祉年金を二万円に引き上げて、それに伴う最小限の手当てをされるというふうに承知をいたしております。  今後の五年年金あるいは十年年金の経過年金の水準をどういうふうにしていくかという点につきましては、拠出制年金と無拠出制年金のバランスのあり方でありますとか、経過年金の水準のあり方等について、現在、本当に近々、答申をいただけることになっている年金制度基本構想懇談会の御報告というものを待ち構えておるわけでありますから、これを踏まえて、また国民年金審議会等の関係審議会の御意見も伺いながら、今後の方向を定めてまいりたい、そのように考えております。
  73. 大原亨

    大原(亨)委員 審議会、審議会と言って、自分では知りながら、みんな逃げるんだね。逃げるんだけれども、総合的な年金懇の最終答申には、経過年金については具体的なことには触れていないんですよ。頭をひねっているが、もし何だったら触れるように言ってください。触れていないんですよ。ですからわれわれは、法案審議に当たっては、こういう現実の政治的な措置を踏まえて将来どうするんだということを議論しなければ、政策の整合性はならないわけです。ですから、私は当然に、再計算の時期を早めるなり、そうして全体の見直しをする目標を立てるべきだと思う。これはせっかくの機会ですから、こういう議論をするときには大蔵省を置いておけばよかったんですが、それをやらないと政策議論としてはおかしいことになってしまうのですよ。つまりこの法律案議論のときに、この法律案はどうあるべきかということで、経過年金の位置づけが非常に重要になってくる、将来経過年金についてどうするんだということを踏まえることになる、こういうことであって、じゃ、これを踏まえて来年は整合性のある、いま大臣が答弁されたようなことについてきちっとしたものを出しましょう、こういうふうに理解してよろしいか。
  74. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは大原委員、御質問の方に少々無理があるわけでありまして、まだ、与野党間の最終的におまとめになる実質的な話し合いの結論というものを、現在審議の途中で、私どもが存じておらぬわけであります。ただ、それを踏まえて申し上げます限り、いまも申し上げましたように、政府としては整合性のある年金法の改正を御審議を願ったところでありますが、今回国会の御意思による与野党の合意によっての修正ということで、福祉年金のかさ上げに連動し、最小限度の手当てを行われるということでありますから、私どもとして、それが仮に再計算の時期に影響するものであるかどうか、あるいは再計算の時期を拘束しない程度のものであるかどうか、最終的なものを拝見した上でないとこれはお答えができないわけでありまして……(大原(亨)委員「大変なことをあなたは言っている」と呼ぶ)大変ではないのです。これはまじめな話でございまして、与野党の修正の結論というものをちょうだいした上でなければ、いまのような御質問に対してお答えをすること自体の方が大変ではないかと私は思います。
  75. 大原亨

    大原(亨)委員 つまりこの問題は、一定の合意について案が出て、現行提出しておる法律案との関係を踏まえながら審議しなければ結論が出ぬということになれば、きょう採決できないよ、そんなことでは。
  76. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いや、採決とかなんとかよりも、社会労働委員会の議として結論の出た修正案というものは、まだいまの時点で私どもはちょうだいしておらないわけでありますから、それをちょうだいした時点でのお話を、逆に事前に想定して答えろと言われるのは、ちょっと無理じゃないでしょうか。
  77. 大原亨

    大原(亨)委員 ぼくが言っておるのは、その中でいろいろ議論されておることはみんな知っておるわけですよ。そこで十年年金を含めて経過年金をどうするかということについては、十八日に出る答申、皆さんが言っておる答申の中には具体的にないから、議論されておる経過を私どもがたどってみると、そんなものは秘密でも何でもないから、経過の中にないから、だからそのことについては、政府は十年年金の問題を含めて来年どうするのだ。この機会に、逆に言うならば、当然にそのことについて、今度の合意や修正を踏まえて、そして改善をすることは当然であると思いますぐらいは答弁をしたっていい。そういう答弁をすることが審議じゃないですか。そういうこともできないのだったら、すべてができてから、そしてこれは全体としてどうするのだという議論をしなければしょうがないことになる。
  78. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、そういうふうな御質問の形であればそれはまた別であります。ただ、先ほどのように修正の中身に触れてお話がありますと、私どもは現在修正案をいただいておらないわけでありますから、そういうお答えを申し上げざるを得ないわけであります。  ですから、私どもは、この国会における御議論の終結の時点において、社会労働委員会で御結論をお出しになる年金改正案及び基本構想懇談会から出てまいりますお答えというものを、これは当然突き合わせて今後の対応策を考えなければなりません。ただ、その場合に、仮に十年年金年金額に触れるような部分になりますと、これは拠出制国民年金全体の計算方式の問題から始まるわけでありまして、これを行うためには保険料負担の水準を含めた将来の財政見通し等の検討も必要でありますし、さらにまた障害年金や母子年金等にも影響するような問題であります。現在の時点においてまだそこまでの十分な検討はいたしておらないところでございます。
  79. 大原亨

    大原(亨)委員 問題点だけ指摘しておきますよ。ぼくが言っておるのは、つまり一定の、たとえば福祉年金をかさ上げをするということはみんなどの党も言っているんだから、それは賛成なんですよ。そのかさ上げするということは、一つは経過年金の位置づけを水準を上げようということなんです。これは年金改革の方向づけをしようということなんです。だから恐らく、触れるか触れないかという問題を含めてですが、触れないであろうと思われる十年年金の問題を含めて、じゃ、今回できなかったならば将来どうすべきなのかということについて、厚生大臣としては、そういう政党間の話し合いを踏まえて、一定の見解を述べてもいいんじゃないかと私は言っているわけだ。それをあなたは、これは重要な問題になっておる、他に波及することも多いと言われたわけだが、しかしそれを来年なら来年はやります、こういう議論ですか。
  80. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ですから、これはたとえば五年年金の金額が果たしてどういう金額に定まるのか、仮に現在私どもが政府案として提出をいたしております限りにおきましては、老齢福祉年金と五年年金との間には二百八円のすき間があるわけでありますが、そのすき間が一体どう変わるのかとか、あるいは変わらないのか、その結果十年年金と五年年金の間の差がどういう金額になるのか、そういった状態を踏まえての問題点でありますから、そうした問題を踏まえ、同時に、基本構想懇談会からの御答申というものもいただいた時点で、私どもとしては改めて十分検討いたしたい、そのように思います。
  81. 大原亨

    大原(亨)委員 基本構想懇談会のことは、私の言うことについて局長はちょっと不満らしいけれども、私は中身を大体知っているのですよ。審議の経過は秘密じゃないから、答申の中身、十八日に出る中身はわかっているのだ。これは経過年金や遺族年金等については余り具体的に触れてないのです。抽象的に触れてあるだけです。ですから私どもは、経過年金をどうするのだという問題について議論しようというわけです。これは後へ問題として残しておきます。  次に妻の年金権の問題ですけれども、国民年金の妻の任意加入、この問題については当然に大きな問題になってきたし、それから、年金懇はもう答申ができておるはずですが、これもやはり具体的に触れていないと私は思う。私が聞いた経過では触れてない。これはほとんどの妻、もう七割以上が任意加入しているわけだから、後へ引くわけにはいかないのです。これは保険料負担をどうするか、国民年金の構造をどうするかという問題にも関係しておるのです。この問題について一定の結論を出さなければ、一年一年ずっと既成事実ができてくるのですからね。給付の二分の一を任意加入している者については出す、任意加入していない者については出さない、そうすると空期間の計算をする際に、免除のときと同じように、今度は三分の一を二分の一として計算する、そういう方法もあるわけです。国民が税金を払っているという立場から見るならば、空期間の問題とも関係をいたしまして、この制度については一定の方向を出さなければいかぬ。これは国会において審議する上においては当然責任のあることではないかと思う。妻の任意加入の問題は、これから再計算期や根本的な改正方向の中でどうするのかということ、どういう心組みで臨んでおるのかという点をはっきりすべきではないか。単にこれはむずかしいからほおかむりでいこうということは許せない、こういう私の質問ですよ。いかがですか。
  82. 木暮保成

    ○木暮政府委員 国民年金に被用者の妻が任意加入する制度があるわけでございますが、これはいまお話しのようにだんだん加入者が多くなりまして、現在の段階では七百万人を超えておるわけでございます。被用者の妻の総数というのがはっきりわかりませんけれども、一千万人程度というふうに思っておりますので、七割方あるいは八割方の方が加入をしておるということでございます。  それで、当初、この制度ができましたのは、厚生年金の遺族年金の水準がその当時余り高くなかったことを背景といたしまして、特に離婚の場合には年金が全然なくなるというようなことがあってつくられたというふうに聞いておるわけでございますが、現在はそういう立法当時と違いまして、ほとんど大部分の被用者の妻が加入しておるということになってきておるわけでございます。  そこで、幾つかの問題が出てくるわけでございますが、一つは、厚生年金なり国民年金なりがだんだん充実してまいりますと、特にまた厚生年金で遺族年金の水準の引き上げを行うということになりますと、厚生年金の遺族年金と被用者の妻が自分で加入している老齢年金、二つをあわせてもらうということになるわけでございまして、現在の給付水準でも将来かなり大変だという見通しでございますので、そういう観点からは、二つの年金が一人の方にあわせて支給されるような状態が恒常的になりますと、財政的に非常にむずかしいことになろうかと思うわけでございます。また、年金財政全体の問題を離れましても、個々の家庭にとりましても、奥さんが任意加入をしている場合と奥さんが任意加入していない場合では、世帯の年金保障に非常に開きが出てくるという問題が出てくるわけでございます。  一方、費用負担の面を考えましても、国民年金の保険料をだんだん上げていくということになりますと、いままで被用者の妻の方が加入をしていたわけでございますが、夫が厚生年金の保険料を納め、かつ、奥さんが家計の中から国民年金の保険料を納めるというようなことになりますと、その保険料が家計上大きな負担になってくるわけでございますし、また、国庫負担の立場を考えましても、厚生年金国民年金と一つの世帯に二重の国庫負担が出てくるというようなことになるわけでございまして、これは何とか裁きをつけないと、年金全体の問題としてにっちもさっちもいかない問題というふうに思うわけでございます。この点につきましては、基本懇でも一番時間をかけた議論の事項でございまして、近くその御意見がいただけるわけでございますが、その意見を踏まえまして、年金局といたしましても最重大課題ということで取り組んでいきたいというふうに思っております。
  83. 大原亨

    大原(亨)委員 年金年金懇と言うけれども、年金懇は、任意加入はずっと続けるべし、強制加入すべし、あるいは廃止すべしという結論を出すのですか。出すのならいいですよ、私は黙っていますよ。出さないということを私が大体想定しているからこういう議論をしているのだ。これは国会で議論しなければならぬ。しかもこれはすでに出ている。既成事実があるのだから、国民の立場から見たら、ずるずる始まりましてここまで来たというのは、政府としてもこの既成事実を無視することができない一面があるわけですよ。そうするならば、入っていない人に対しても何らかの措置をとるということが皆年金のもとにおける当然の制度じゃないですか。その点についてはきちっと私の質問に納得できるように処置しますか。
  84. 木暮保成

    ○木暮政府委員 近く基本懇の御意見がいただけるわけでございますが、どういう御意見が出るか、それを前提としてお答えするわけにいきませんけれども、いかなる御意見が出ようとも、この問題はこれから年金制度の最重点でございますので、御意見を踏まえまして、年金局といたしましては最重要課題ということで取り組んでいきたいというふうに思っております。
  85. 大原亨

    大原(亨)委員 時間が大分来ましたので、次に年金の積立金の問題です。きょうはせっかく参考人の方が見えておりますので、質問をしなければ失礼になりますから。  それで、積立金との関係が深いのは、ひとつその前提で、既裁定年金のスライド財源はだれが負担するのか。
  86. 木暮保成

    ○木暮政府委員 厚生年金の場合には二割国庫負担、それから国民年金は基本的には三分の一国庫負担があるわけでございますが、国庫負担を含めまして、保険料と両方で負担をしていくということでございます。
  87. 大原亨

    大原(亨)委員 それは年金に加入した際には、国民年金厚生年金もすべてそうですが、年金の保険料を払うということは平準保険料という観念があるけれども、いまの制度は積立方式なんですね。積立方式であるということになれば、スライドというのは物価のスライドですから、消費者物価が上がったために年金が減価するのに対して、既裁定の分まで全部積み立てた中から持っていくわけですから、それは積立制度をとっている上から言っても、そういういまのような答弁はおかしいのじゃないですか。
  88. 木暮保成

    ○木暮政府委員 国民年金の場合には発足当初完全積立方式をとっておったわけでございますが、その後国民年金の給付水準を改善していく一方、負担につきましては、当時の年金給付がまだ件数が少ないようなこともございましたし、一方ではまた、国民年金の階層の方の負担ということも考えまして、政策的に平準保険料以下にとどめるというようなことをしてきたわけでございます。厚生年金も、御承知のように戦後の再建のときから修正積立方式をとっておりまして、現在の時点では厚生年金は平準保険料の約六〇%という保険料水準をとっておるわけでございます。言いかえますと、その残りの分は後代負担ということで財政の計画を立てているわけでございまして、一般の給付費と同様に、スライド財源につきましても保険料と国庫負担で見ていくということでよろしいのではないかというふうに考えております。
  89. 大原亨

    大原(亨)委員 年金スライドをやったのは画期的な制度改正であって、その後狂乱物価時代を経て、一定の年金の信用を維持した、年金に対する関心が高まったんですね。これはいいことだった。  そこで私は、物価スライドに要する保険給付費の推計をとってみましたら、その制度ができてから十九年で厚生年金は物価スライドに要する保険給付費として五百五十一億円、五十年度は九百三十億円、五十二年度は千七十二億円、五十三年度が九百八十九億円で、五十四年度は七百三十五億円というふうに、逆に年金のスライドに伴う年金財政からの持ち出しが莫大な金額になっているわけですね、あなたも御承知のように。だから、これは単にいまの説明だけでは納得いかないのではないか。これは議論の時間がないからはしょっていきます。  問題は、厚生年金の本年度の積立金は幾らであるか。それから国民年金の本年度の積立金は幾らであるか。累計は幾らであるか。これは私は大体を知っておりますが、年金積立金の運用について大切なことですから答弁してください。
  90. 木暮保成

    ○木暮政府委員 五十三年度末で、両方合わせまして二十二兆九千億だと思います。
  91. 大原亨

    大原(亨)委員 それで国民年金厚生年金の比率は。大体でよろしいです。
  92. 木暮保成

    ○木暮政府委員 厚生年金が二十兆九千億円、国民年金が二兆二亘二十億円でございます。合わせて二十二兆九千億円でございます。
  93. 大原亨

    大原(亨)委員 それで、問題は積立金の運用なんですが、たとえばいまのような制度でもよろしいから、原則的に自主運用的な形態でやるべきではないか。共済年金の方はほとんど自主運用でやっているわけです。これが一つ。  それから、こういう議論の中で年金福祉事業団のウエートがかなり高くなっているわけですね。年金福祉事業団の融資以外に還元をされないそういう厚生年金の該当者、国民年金の保険料を払った人、これは政府の負担になっても事業主の負担になっても、事業主とか政府には返らぬわけですから、やはりその積立金は被保険者の、加入者の福祉のために使うということで出しておるわけですから、これはもう少し制度を整備をしましてそしてやるべきではないか。その一つの方法としては、年金福祉事業団の運営の仕方がある。もう一つの方法は、還元融資の中に、きょうせっかく北川医療金融公庫総裁が見えておるから、たとえば医療金融公庫にしましても、これからはお医者さんがふえて、開業医が非常にアンバランスに都市に集中するわけですから、この積立金は被保険者、加入者のものですから、いまの厚生年金国民年金の比率において、医療機関の融資にいたしましても、審議会等にその意見が反映できるような機関をつくってやるべきではないか。いまのように、自由開業医制というようなことはともかくとして、都市にずっと集中するあるいは人口過密のところというか増加地帯に医療機関がない、こういうふうな不均衡な状況を是正するような方向でこの医療金融公庫の運営ができないのか、現在そういうところには反映しないような仕組みではないか、厚生年金国民年金の積立金の運用が。だから、大蔵省に任すというその形態、一元的にということだろうけれども、郵便貯金その他との関係で、いいかげんな表をつくって、還元しておりますという説明をするんだけれども、禿河主計局次長もここまでおればよかったんだけれども、そういうインチキをやって、そして厚生省の役人が方々に天下って、そしてこの積立金を使って、そういう問題があるわけだ。だから厚生省が、こういう場合には、天下るのが悪いとは全然言わぬから、しかし大蔵省がこんなものについて大きな顔をして、自分の財源のような顔をするのはおかしいと思うのです。附帯決議にも何回も出ておるが、住宅とか直接加入者の利益になるような、運営においても、医療金融公庫等へ出しているんだが、そのときに意見が反映するようなことをやらないで、このゆがんだ政策の手段に使われるようなことは、これは加入者にとってみてがまんがならぬことじゃないですか。つまり私が言っているのは、積立金がどんどん積まれているように見えるけれども、そこからスライドの財源を取っている、それはおかしいじゃないか。これは裏返してみると、積立金を被保険者の加入者のために純粋に手続上も合意を得るような方法でやるべきじゃないか。この制度について根本的に変える必要があるのではないか。最後の方は厚生大臣
  94. 木暮保成

    ○木暮政府委員 積立金の運用につきましては、いつも御指摘をいただいておるわけでございますが、何分非常に巨額な積立金でございますと同時に、将来の年金の原資でございますので、何よりも安全、確実に運用するということが必要であろうと思うわけでございます。さらに、でき得る限り有利に運用するということが要求されると思いますけれども、現在の段階で資金運用部に預託をいたしておりまするけれども、この方法が安全、確実という点はもちろん、やはりほかの方法に比べまして有利という点もある程度満足させられる方法だというふうに考えておるわけでございます。  それで、これは厚生年金で申せば事業主と被保険者の方々の拠出でございますし、国民年金で言えばこれも被保険者の方の拠出でございますので、その運用につきましては、これらの方々の意見が十分反映するというふうにしなければならないと思っておるわけでございますが、この点につきましては、御承知のように昭和三十六年までは資金運用部の審議会はほとんど役人で構成をされておったわけでございます。国民皆年金昭和三十六年に厚生省から大蔵省に要請をいたしまして、公益委員のみ七人からなる審議会に改組してもらったわけでございます。この七人につきましては、厚生年金国民年金意見を代表していただけるような方を必ず入れてもらうということで、現在まで来ておるわけでございます。  さらに、昭和四十九年には、厚生大臣の私的諮問機関といたしまして年金懇をつくりまして、公益の方あるいは厚生年金国民年金の拠出者の意見を反映できる方々にお集まりをいただきまして、この資金運用の基本につきまして予算要求時点、それから予算ができました時点、その他必要に応じて御参集をいただいて御意見をいただき、その線で運んできておるわけでございます。  現在の時点では、年金の三分の一を還元融資に使うということでございますが、この点につきまして折衝を続けてまいりまして、本年は四五・四%を還元融資に使うというところまで来ておるわけでございます。  それで、年金福祉事業団と医療金融公庫につきまして御質問があったようでございますが、年金福祉事業団につきましては、住宅融資を中心といたしまして被保険者に還元する措置をとってきておりますし、医療金融公庫につきましても、特に病床不足地域等の貸し出しに重点を置きまして、融資を行っておるところでございます。
  95. 北川力夫

    ○北川説明員 ただいま年金局長からお答えがあったとおりでございます。  私どもの方の公庫もちょうどこの七月で十九年になりますが、三十五年の皆保険前夜にできまして以来、これはもう先生十分に御承知のとおり、できるだけ全国的に病床が均等化するように、そういった意味合いで融資を行っておりまして、公庫業務といたしましては、最も重要な基準として、新しい医療機関の新設あるいは増設に対しまして、現在、病院につきましては公的病院に対する医療法上の規制と同様の基準数値を採用いたしまして、この基準数値を超えております地域については、医療の適正配置の観点から、新増設の融資を一切行っておりません。そういう意味合いで、私的な病院あるいは診療所の病床がまんべんなく普及するように、十分な配慮をいたしておる所存でございます。
  96. 大原亨

    大原(亨)委員 もう時間が来ました。  児童家庭局長、十八歳未満の問題で議論したときに一つ重要な点を忘れておったので、いままでも何回も議論したことがあるのだけれども、つまり母子世帯に対して高校三年生の途中で切られる、その切られた人たちに対して世帯更生貸付金を出す際に、その趣旨が十分徹底するように、つまりサラリーマン金融ローンとかそういうところへ行っちゃいかぬわけですから、そういう場合には貸付資金の運用を十分にやる。全体とすれば、サラリーローンその他の対策というものは、実際はそういう所得に応じてうんと資金を増大すべきなんですよ。これは十八歳未満の問題に関係をして、私は後回しにしておったので、この問題についてきちっと徹底をするようにしてもらいたい。  それから、貸し付けの期間としては政令は二十年というふうになっているわけです。実際上は、運転をよくするためという理屈をつけながら第一線では十年以下にしているわけです。そういう点は、どこがいいかは別にしまして、恐らくそうだと思いますので、この点についてひとつ遺憾のないように、制度ができるまでの経過措置をこの貸付金で処理をするということについて、きちっと答弁をしていただきたい。
  97. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 母子福祉年金あるいは児童扶養手当という問題との絡みで、先ほど先生から御質問がございましたが、制度的な問題はともかくといたしまして、当面行政措置として、母子福祉の貸付金の増額を今年度も二十億から二十五億にふやしたわけでございます。特にいま御指摘のような点を配意いたしまして、今年度増額されました五億円についても年度の第一、第二・四半期には配分することになっております。いわば三、四以降に十分その資金を留保いたしまして、先生の御心配になるようなことの起きないように、また貸し付け期間の二十年の問題につきましても、確かに一部、資金の回転を早めるというようなこともございまして、あるいはまた借り受ける方の方の希望も横にありまして、若干ゆとりを持ってまいる、ゆとりといいますかフリーハンドを地方自治体が持っている場合もございます。ただそれも、借り受ける側の方の希望に即すものならともかく、その意に反して不当に短い期間でということの起こらないように、十分留意をして行政指導してまいりたい、かように考えております。
  98. 大原亨

    大原(亨)委員 以上で終わります。
  99. 森下元晴

    森下委員長 次に、草川昭三君。
  100. 草川昭三

    草川委員 公明党・国民会議草川昭三でございます。  私は、まず最初に、社会保険業務の問題、あるいはまた年金の相談体制等、あるいは税金との関係、住宅資金の貸付枠の問題等を前段に行いまして、中段で在日外国人の方々の国民年金の取り扱いの問題、そして最後に厚生年金の地方自治体に対する還元融資制度のあり方、主に三つの山で質問をさしていただきたいと思います。  まず最初に、年金基金について大臣にお伺いをしたいわけでございます。  一昨年の十二月に社会保障制度審議会の年金の建議が出、さらにその財政的な裏打ちとして年金税としての付加価値税の提案がなされる、あるいはまた、厚生省年金懇の中間報告を中心として年金制度の統合、再編成、こういうものが非常にやかましく、にわかに論議をされてきておるわけでございます。  このように公的年金が財政的に大変であるということ、あるいはまた、一方では高齢化社会になってくるわけでございますので、定年と年金をつなぐ要請というのは非常に強くなってきておるわけでございますが、必ずしも私的年金とは言い切れない企業年金をどう見るかという点が、実はますます非常に重要な課題になってきておるわけです。  そういう意味では、私も過日予算委員会で、雇用問題の集中審議の際に、定年制の引き上げと企業年金との関係について大臣の見解をいただいたわけでございますが、改めて厚生年金基金の運営についての見解をお伺いしたいと思います。
  101. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先般の予算委員会における草川さんの御指摘は、いまお話がありましたように、厚生年金基金というものがもっと積極的に活用できないか、谷間を埋めることができないかという角度からの御指摘だったと思います。そのときに私は、これは非常に興味のある御提案ではないだろうか、また、今後において私どもが一つの考え方として参考にするに足る考え方ではないだろうかということをお答えを申し上げました。これはもうあなたがよく御承知のように、厚生年金基金の性格が、厚生年金本体の報酬比例部分の一部を代行して、それを上回る企業年金給付を行い、加入員等の生活の安定と福祉の向上を目的とするということになっております。  民間企業において、今後労働力人口の高齢化に伴って急激に増大していくと予想される退職金の支給に備えて、その費用負担の平均化でありますとか、従業員の退職後の所得保障の観点から、企業年金に対する関心が非常に高まっておることも事実でございまして、そういう意味では厚生年金基金の役割りというものは今後一層増大していくでありましょうし、また重視していく必要があると私ども考えております。  すでに、厚生年金基金の年金給付のうち、代行給付部分を上回る加算部分については、労使の合意に基づいて、ある程度企業独自の自主性に応じた給付の設計ができることになっておるわけでありますし、またそういう方向も現実にある程度出てきております。  現在、厚生年金基金の加算部分の給付設計について、一層弾力的にこれを取り扱うとすれば、たとえば定年年齢と年金支給開始年齢との谷間の部分を厚生年金基金で給付する方法、あるいは企業が実施している退職基金制度などを厚生年金基金に導入しやすくする方法といったようなことを考えていくことによって、厚生年金基金をより有効に活用する方向というものについて私どもも検討を続けているわけでありまして、より一層前向きに検討していきたい、そのように考えております。
  102. 草川昭三

    草川委員 いま大臣の方から、いわゆる谷間を埋めるために少し前向きにこの問題を取り上げていきたい、こういうお話がありました。これは実はまた年金と税金との関係になるので、ちょっと大蔵省の方お見えになりますか。いわゆる本来は老齢年金あるいは通算老齢年金の非課税という問題は、前からほかの委員の方々も言われておるわけでございますが、ただいまのところ全面的に非課税扱いという方向にはなってないわけでございます。実は私は、いまおっしゃられたように、いわゆるこの企業年金、まあいろいろな設計の仕方があるわけでございますが、少なくとも退職一時金の受給の方が、年金受給の場合よりも実際に所得税法上は有利じゃないだろうかと思うのですよ。だからそこらあたりを、どういうんでしょうか、当初は、税制上の優遇措置が企業年金の社外積立金を促進したことも私は事実だと思うわけです。それで今後ますます、国は、企業年金社会保障の補完の役割りをある程度担わせなければいけないような方向が実際に来ると思うのですね。企業としても、正直なことを申し上げまして、三十年とか三十五年の勤続になってまいりますと、Aクラスの企業ならば一千五、六百万円になるのじゃないでしょうか、あるいはもう二千万円近い退職金になってくるわけでございますから、なかなか退職一時金の負担ということにも問題が出てくるような気がするわけでございますが、年金受給に際して、所得税の課税を退職一時金と同等の条件に企業年金の方も優遇していかないといけないような気がするわけでございますが、その点について大蔵省の方はどういうふうなお考えを持っておりますでしょうか。
  103. 水野勝

    ○水野説明員 確かに先生お話しのように、退職一時金につきましては退職所得控除、それから二分の一課税とか、そういった特別な優遇措置がとられておるわけでございますが、一方、年金につきましても、それは給与所得といたしまして、年々給与所得控除の適用がございますし、また年々その所得につきまして本人の基礎控除でございますとか扶養控除、そういったものも年金の場合には毎年適用になるという点もまた一方あるわけでございます。したがいまして、一時金と年金とを比べましてどちらが税制上有利であるかということにつきましては、いろいろの計算があるわけでございますが、私ども必ずしも年金の方が不利になっているというふうにも考えていないわけでございまして、いろいろな配慮のもとに勤労者の方がお選びになっているのではなかろうか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  104. 草川昭三

    草川委員 では、もう少し前にさかのぼりまして、年金と税金との関係についてお伺いしたいわけですが、年金受給者に対する課税対象者の推移というものが漸次ふえてきておるというふうに概念的にはとらえられておるわけですが、たとえば五十年に何人か、五十二年に何人か、五十三年に何人ぐらいいわゆる年金受給者に対する課税対象がふえているか、推移表をお知らせください。
  105. 山本昭市

    山本説明員 お答え申し上げます。  源泉徴収の対象となります年金、恩給の受給者数につきまして、昭和五十年以降の数字を申し上げますと、昭和五十年二百五十万人、五十一年二百七十一万人、五十二年二百七十八万人でございますが、これらの受給者のうち所得税の対象となっておる者が何人であるかにつきましては、国税庁といたしまして計数を持ち合わせていないわけでございます。
  106. 草川昭三

    草川委員 国税庁として、年金受給者に対する課税対象者の数字を全くつかんでないといういまの御答弁ですが、私どもこれは必ずしも正確なものではないかもわかりませんけれども、五十年には課税対象者が大体二千人くらいだったが、それが五十三年には十七万人くらいにふえてきておるというような、これは「中高年コーナー、老後のお金 年金第一部」という新聞の中に書いてあるわけです。これも解説記事ですから何もでたらめな数字ではないと思うのですけれども、この中に「五十年は約二千人だったが、五十二年には約九万人、五十三年には約十七万人にものぼっている。」という解説記事があるのですが、大体この数字に、アバウトで結構でございますが、傾向はこのようなものでございますか、どうですか。
  107. 山本昭市

    山本説明員 ただいま私が申し上げました数字は公的年金企業年金、それから恩給受給者のすべての合計の数でございまして、その中で何人の方が課税対象になったかということは、実は国税庁としてはその計数を持ち合わせていないということでございます。したがいまして、先生いまおっしゃいました千人オーダーの数字と申しますのは、ちょっと私どもといたしまして、それが課税対象人員としてどのようなものであったかということにつきましては、確たるお答えはできないわけでございます。
  108. 草川昭三

    草川委員 確たる答えがないというお話でございますから、これはきょうはこれ以上私はお聞きいたしませんけれども、いずれにいたしましても年金額がふえてきていることは事実でございますから、対象者はこれからますますふえるであろうという傾向は間違いがないことだと思いますね。そうでしょう、それは。
  109. 山本昭市

    山本説明員 対象者の人数につきましてはわからないのでございますが、税額を全体押えておりますので申し上げますと、五十年が二百二十七億でございます。五十一年が四百二十一億でございます。五十二年が六百十七億というこういう数字でございますので、この計数から御推量いただきたいと思います。
  110. 草川昭三

    草川委員 いまのように総額の数字が新しく出たわけでございますが、いまのお話の中でももう三倍にふえてきておるわけですから、この課税対象人員も、そういう形で比例をしてふえておると見ても間違いないでしょう。いずれにいたしましても、年金受給者の年齢ということから考えますと、改めていわゆる控除額というものをふやしていく方向に私はぜひ持っていっていただきたいと思うわけであります。外国の例等もずいぶんありますけれども、これはひとつ非課税措置というものを講ずるよう強くこの際は申し入れておきたいと思います。  同時に、最初の企業年金の方に戻りますけれども、少なくとも、いまの国税庁のお話だと明確にどちらが、一時金の方がプラスなのか年金受給の方がマイナスになるのかわからないというようなお話一でございますが、私は、これからの退職金のあり方、あるいはまた老後の年金受給との谷間を埋める企業年金のあり方というものを考えると、やはりトー−タルとして優遇措置を厚生省の方も考えながら、引き出しながら、これが一つのいわゆる設計ということになると思うのですけれども、そういうも・のを含めながら、つなぎの基金あるいは企業年金、こういうようなものを考えてもらいたいと思うわけであります。そのような点についてもう一回ひとつ御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  111. 木暮保成

    ○木暮政府委員 企業年金をこれから盛んにしていくために、税の問題もあろうかと思いますが、この点につきましては、主税局と今後とも連絡をとっていきたいと思います。  また、退職金と年金関係でございますが、現在わりあい若齢で退職をするというようなことでございますと、まだ子弟の育英費がかかるとか、あるいは住宅ローンが残っているというようなことで、一時金で受けたいということになろうかと思います。  また、企業年金の今後の課題でございますが、企業年金の実質価値をどうやって維持していくか、という問題があるわけでございますが、この点が一うまくいきますと年金の方を選ぶということにもなっていくと思います。税金の問題と絡めまして研究をしてまいりたいと思います。
  112. 草川昭三

    草川委員 では、これでこの件は終わりますから、大蔵省の方は結構でございます。     〔委員長退席、戸井田委員長代理着席〕  では続いて、いわゆる社会保険事務の執行体制の確立についてお伺いをしたいと思いますが、特に年金の支給等の問題について国民の非常に大きな関心を呼んでおることは、もうすでに明らかなことでございますが、これらの対応施策として、国においては昭和五十四年度から六カ年計画で、中央と全国の社会保険事務所とを通信回線、いわゆる新事務処理方式がオンラインとして発表されておるわけでございますが、五十四年度開始で五十カ所の地方の社会保険事務所とオンライン化をするということが、五十四年度の予算で発表されておるわけでございます。この前期計画というものが五十四年度から五十六年度、後期計画として五十七年度から五十九年度に分けまして、厚生年金保険、船員保険及び国民年金に関する年金相談照会業務あるいは健康保険及び厚生年金保険の保険料徴収業務等の計画が出ておるわけでございますが、実は私どもも現地で調べてみますと、かなり膨大ですし、窓口で年金の相談、照会をやられる方々が非常に多いわけですね。これは厚生省の方の資料でございますけれども、五十三年の三月末現在で、年金受給権者数は、厚生年金で三百二十八万人、国民年金で四百七十四万人という、社会保険事務所が全国で二百四十九カ所あるわけでございますが、この程度のスピードで本当にいいかどうかということが一つありますね。これは私ども、労働省の労働保険の方のセンターを過日調査に行ってまいりましたが、やはり準備に約十年間かかると言っていますね。厚生省はそういう意味では非常に立ちおくれがあると思うのですが、この立ちおくれの原因が一体どこにあったのかということもひとつお聞かせ願いたいわけでございますが、五十四年度で都道府県別に五十カ所の内訳というのがまだ発表されておりませんので、ぜひこの内訳を発表していただきたいのですが、たとえば東京で何カ所あるいは愛知、静岡、三重、岐阜、こんなようなところで何カ所ぐらい、それから大阪も大きいわけですから、大阪で何カ所ぐらいの新しい保険事務所数を五十四年度で行うのか、お聞かせ願いたいと思います。
  113. 持永和見

    ○持永政府委員 御指摘のように、五十四年度からオンラインのスタートを切る予定で、現在実施県と社会保険事務所の個所数を一応三月一日付で発表しておりますが、先生御指摘の東京でございますけれども、東京については四社会保険事務所、それから愛知県が同じく四社会保険事務所、それから大阪が三社会保険事務所、こういう予定でございます。
  114. 草川昭三

    草川委員 ついでに静岡、三重をちょっと言ってください。
  115. 持永和見

    ○持永政府委員 静岡は四カ所でございます。それから三重が二カ所でございます。
  116. 草川昭三

    草川委員 岐阜もついでに。
  117. 持永和見

    ○持永政府委員 岐阜は二カ所でございます。
  118. 草川昭三

    草川委員 その計画の今度の内容でございますが、たとえば庁舎整備等がどのような規模で行われるのか、一カ所あたりの予算額をお聞かせ願います。
  119. 持永和見

    ○持永政府委員 先生も御承知のように、現在の社会保険事務所の庁舎が非常に狭隘で、かつ老朽化いたしております。オンラインをやりますと、やはり相当の新しいコンピューター機器の端末装置その他を導入しなければなりませんので、そういう意味合いと、それから国民の来訪者の方々にとっても非常に不便をおかけしている現状でございますので、したがいまして、社会保険事務所につきまして、五十三年度から大体四カ年計画でその整備を図ることにいたしております。  内容といたしましては、やはりスペースを広くしてサービスを向上するというのを主眼といたしておりまして、大体一カ所当たり、これは平均して、土地の値段それから新築か改築かあるいは借り上げ方式か、そういったことによっていろいろ値段も変わってまいると思いますけれども、新築の場合で申し上げますと大体一億円から一億五千万円、こういう予算をかけて庁舎を整備いたす予定でございます。
  120. 草川昭三

    草川委員 一億から一億五千万の予算で一つの社会保険事務所を改築するというお話でございますが、たとえば東京四とか愛知県四とかというお話がございましたが、具体的にはその事務所がどこにどのような形で決定をされるのでしょうか、それをお聞かせ願います。
  121. 持永和見

    ○持永政府委員 先ほど申し上げましたように、まず私どもの基本姿勢といたしまして、このオンラインの計画を前期三カ年計画でやることになっております。前期三カ年計画を漸次段階的にやっていくわけでございますが、基本的には、まずできるだけ被保険者、それから受給権者、そういった方たちの密集している都道府県を選んで、ブロック別に選定をいたしたつもりでございます。この後、具体的に、各都道府県の中でどこの社会保険事務所から初年度実施していくかということにつきましては、やはりいま申し上げました受給権者あるいは被保険者、そういった方々ができるだけ多いところを中心にしていくのが、やはり国民の側にとっても、できるだけ早くこういったオンラインのサービスのメリットを受けられるというような基本的な考え方を持っておりまして、しかし具体的には、各都道府県におきましてそれぞれの地域的な実情もいろいろおありになるかと思います。また、いま申し上げましたように、これをやります場合には、社会保険事務所の庁舎がそういった機器導入にふさわしいように整備されておらなければならない、こういう問題がございますので、各都道府県におきます地域の実情あるいは庁舎整備の動向、そういったものをにらみながら、各都道府県と私どもの方とで具体的、個別的に相談をいたして決定していきたいと思っておりますが、大体五月中ぐらいにはおよそのめどをつけたいというふうに考えております。
  122. 草川昭三

    草川委員 五月中ぐらいにめどがつき、そしていつごろ、たとえば四カ所でも二カ所でもいいのですけれども、それがいつごろ実際便利に稼働するようになるのか。たとえばことしの秋か来年の春か、そういう程度でいいですから、時期的なことをお知らせ願いたい。  それから具体的に実際のメリットですが、利用者ですね、いわゆる受給権者の方が、たとえばもういま新聞なんかでも厚生年金の受給の相談なんかが多いのですけれども、実際窓口へ行って物すごく並ばなければいかぬ、あるいは現在だと、受付へ行って書いていただいて、中央のセンターへ行ってそれが返ってくる間に、郵送ですから非常に時期がかかるのですが、たとえば現在一カ月か二カ月ぐらいかかるのが、それが今度の場合は本当にメリットとしてその場で返事が来るのか、そこの点をお聞かせ願います。
  123. 持永和見

    ○持永政府委員 本年度のスケジュールでございますが、いま申し上げましたように大体五月中ぐらいに社会保険事務所の個別の選定をいたしまして、その後要員の養成あるいは電電公社におきます配線その他の設備の工事、そういったものがありまして、できるだけ順調にいきますれば、ことしの秋ぐらいから早いところは稼働できるかと思います。いずれにいたしましても、五十の社会保険事務所につきましては、五十四年度中に稼働を開始するという前提で、作業を鋭意進めていきたいというふうに考えております。  それから、このオンラインの効果でございますが、受給権者なり被保険者側からの効果という点でございますけれども、大きく言って二つあるかと思います。  その一つは、まず、いま先生おっしゃいましたように、現在年金に関する相談が非常にふえております。この年金に関する相談というのは、どちらかと申しますと、最近のは特に個別的あるいは具体的な、自分の年金はどうなるかとかあるいは年金はもらえるだろうか、もらえないだろうかといったような、非常に個別的、具体的な相談がふえております。これに対しまして、現在の社会保険事務所では、そういった被保険者の記録あるいは受給権者の記録、そういったものを全く持っておりませんために、一々中央の社会保険庁の業務課に問い合わせまして、それで回答をしなければならない、こういうような実態でございます。  今回のオンライン計画によりますと、先生のお話しもありましたように、通信回線で社会保険庁とそれから社会保険事務所を直結いたしまして、社会保険事務所には端末装置といたしましてVDT、ビデオデータターミナル装置と言っておりますが、一種のディスプレイ、テレビの画面みたいな装置を端末装置として設置いたします。そういたしますと、その中に、業務課で持っております記録の内容がボタンを押せば即時に映し出るというようなものでございまして、それによって、個々の被保険者の方々の記録あるいは受給者の方々の記録が即時に出てまいります。そういう意味合いで、そこで直接個別的、具体的な相談に応じることができるというメリットが一つ大きなものとしてあるかと思います。  それからもう一つは、これは後期計画でございますけれども、後期計画になりますと、そういった端末装置を使いまして、現在郵送で送っておりますいろいろな裁定請求書でございますとか、あるいは諸変更、住所変更とかあるいは氏名変更とか支払い期間の変更とか、そういったものを現在社会保険事務所から郵送で業務課に送って処理いたしておりますけれども、これを機械でオンラインで即時に処理するということであります。そういたしますと、そういった全体の業務の効率化の中で、現在の裁定事務、大体平均三カ月ぐらい、私どもできるだけの努力をいたしておるつもりでございますが、それでも三カ月ぐらいかかっておりますけれども、これを一月ぐらいまでは短縮することができるというようなことで、そういった裁定の迅速化に対する国民の要望にこたえられるんじゃないかというふうに考えております。
  124. 草川昭三

    草川委員 じゃあその件はぜひまた——過日、社会保険庁の場合はインプットで間違って税金を引いたという件もあるわけですし、労働省の例で言えば十年ぐらい準備が必要ですよというようなことを言っておりますから、ぜひ間違いのないようにやっていただきたいと思います。  では次に移りますが、厚生年金年金住宅の還元融資のことの具体的なことについてお伺いします。  現在、年金住宅融資の手続をやろうと思いますと、これだけたくさんの書類が要るわけですよ。これを財団法人年金住宅福祉協会へ行って購入をして、いろんな手続が必要でございます。住宅の融資でございますから、そんなに簡単なものではないことは百も承知でございますけれども、その内容を見てまいりますといろいろと問題があると思うのです。たとえば金利は年五・五五%、二十年以上なら五百万円までの融資を受けられるのでございますが、年金住宅福祉協会というものを通じて申し出をしなければならぬわけですね。この協会指定の住宅ローンの保証保険にも入らなければいけない、そして保証金もここで入れなければいかぬ、こういうことになります。保証金を入れるということはいいわけですけれども、融資金の二%相当額を協会に提出をしなければいけないわけでございますが、これは必要がないのじゃないだろうかという提案なんです。なぜかといえば、住宅ですから非常に厳重なチェックがあるわけです。担保も取るわけです。片や住宅金融公庫の方も取るわけでございますし、そういうようなことを考えますと、その前提でお尋ねするわけですが、これが年金福祉事業団への償還をするわけですが、一体債務不履行に基づく不履行の実績は実際あるのかないのか、お聞かせを願いたい。
  125. 木暮保成

    ○木暮政府委員 住宅の貸し付けは、原則といたしましては、事業主の方にお貸しして従業員の方に転貸をしていただくということでやっておるわけでございますが、事業主の方でそういう事務ができない場合がございまして、いま先生の御指摘のような公益法人に、そういう方々のために事務をやってもらっておるわけでございます。  それで履行遅滞の事例、個々の民法法人につきまして全部把握はいたしておりませんが、一、二の法人につきましては、私ども調べたものがあるわけでございます。仮にA協会と申しますが、A協会で見ますと、五十四年二月末の数字でございますが、一カ月の履行遅滞が十五人、三カ月の人は一人というような状況でございます。  それからB協会ということで申し上げますと、一カ月の遅滞の方が十一人、二カ月の遅滞の方が三人、三カ月以上はゼロということでございます。  それからまた、民法法人から年金福祉事業団に対する各期の償還状況でございますが、現在のところ遅滞なく行われておりますので、余りそういう例はないのではないかと思います。
  126. 草川昭三

    草川委員 いわゆる不履行の実績、一カ月遅れ、二カ月遅れは別といたしまして、いわゆる完全な不履行の実績がないならば二%相当額の保証金はもう必要ないのではないかと思いますが、その点の見解はどうでしょうか。
  127. 木暮保成

    ○木暮政府委員 私どもも民法法人の貸し付けの実態をいろいろ調査しておるわけでございますが、この預かり保証金につきましては、現在原則としてやめるように指導いたしております。ただ、個々の公益法人の業務内容が違いまして、一挙に廃止ということにはなかなかまいらないと思いますけれども、指導方針としてはこれをやめるよう、すぐやめられないところもできるだけ早い機会にやめてもらうよう、そういう指導をいたしておるところでございます。
  128. 草川昭三

    草川委員 この年金住宅福祉協会に対する保証金を速やかにやめさせるように、協会の運営もあると思いますけれども、とられるよう要望しておきたいと思います。  時間がございませんのではしょりまして、いわゆる永住権を持つ在日の外国人の方々に対する年金の受給という問題について、触れてみたいと思うのです。  過日、私は、この社会労働委員会で、在日韓国人の方々の切々たる訴えの手紙を披露したことがございます。  戦前に強制的に日本に連れてこられ、そして非常な差別というのでしょうか、劣悪なる条件の中で働き、そして戦後はまた大変な苦しみの中で、それでも日本に居住するという意思で、税も払い、社会的な責任も果たしながら、今日まできておるわけであるけれども、なぜわれわれだけが就職差別を受けたり、あるいは国民年金の適用が受け入れられないのかという、歴史的な経過というものを前提に訴えがございまして、私も非常に心を打たれまして、この問題を、歴史的な背景から、われわれももう少し考えてみる必要があるのではないだろうかと思う。特に一九六五年に締結された日韓基本条約の協定の前文に、安定した生活を営むという精神が明記をされておるわけでございますが、この点について、厚生省は、年金法に基づく基本的な考え方から加入を相変わらず拒む態度であるのかどうか、まずその点についてお聞かせ願います。
  129. 木暮保成

    ○木暮政府委員 在日韓国人の方々、それから在日朝鮮人の方々が歴史的に置かれました環境につきましては、私どもよく承知をいたしておるわけでございます。しかし一方、国民年金の立場から申しますと、これは一般的な社会保障制度でございますので、特定の国籍の方だけ別扱いにするということはできませんで、外国人一般の問題というふうに取り上げざるを得ないというのが一つあるわけでございます。  それで、外国人一般の方の問題ということで取り上げてみますと、御承知のように、国民年金の場合には二十五年間の資格期間が必要であるわけでございます。それで、この二十五年の非常に長い資格期間が満たせませんと、せっかく年金を適用いたしましても老齢年金に結びつかないという実態があるわけでございまして、外国人に一般的に強制することはいかがか、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、日韓の国交が結ばれますときに、在日韓国人の方々の法的地位につきまして両国間の協議が行われまして、基本的な緊急な生活の必要には対処するということで、生活保護あるいは国民健康保険それから義務教育等につきましては、在日韓国人の方々にも適用していくということが決まっておるわけでございまして、そういう意味では、緊急の生活上の必要には日本の社会保障制度が対応できているというふうに考えておるわけでございます。
  130. 草川昭三

    草川委員 非常に単純な質問をしますけれども、厚生年金は強制加入ですよ。たとえば民間に在日韓国人あるいは朝鮮人の方々が働かれた場合厚生年金は強制であり、国民年金は加入資格がないわけでございますけれども、その厚生年金だって二十年でしょう。五年間の差が縮まればこちらも入れるということですか。その点については、厚生年金はなぜいいのかということを……。
  131. 木暮保成

    ○木暮政府委員 厚生年金の場合には、健康保険、労災あるいは雇用保険と一緒に、いわゆる労働者保護立法ということでできておる制度でございまして、一定の職場に働く方々が、働いている期間に病気の場合もございましょうし、けがをする場合もございましょうし、失業する場合もあるということで、そういう労働者保護立法ということで強制適用にいたしておるわけでございます。そういう観点から事業主が二分の一の費用を負担する、こういうことになっておるわけでございます。  なお、そういう場合でも、老齢年金に結びつくまで厚生年金に入ってないということが起こり得るわけでございまして、そういう方々にとりましては、一定の条件で脱退手当金等を差し上げるというような制度になっておるわけでございます。
  132. 草川昭三

    草川委員 いまの局長の答弁は、私ども納得するというわけじゃないわけですよ。いまおっしゃられたのは一般論としてあるわけですよ、いわゆる日本国民に対する年金という問題について。しかし、こういう歴史的な背景のある方々に対する処置として、一方では厚生年金は強制適用でありながら、国民年金は別だ、国籍条項によって別だということについては、私はそれは理解ができません。  そしてさらに、いまのお話しから、じゃ、職域年金に加入をしておる在日外国人、これはいろいろな方々がお見えになりますけれども、一体どれだけいるのか、これはつかんでおみえになりますか。
  133. 木暮保成

    ○木暮政府委員 その点は把握しておりません。
  134. 草川昭三

    草川委員 在留外国人統計というのが法務省にあると思うのですけれども、外国人統計等にあらわれておる就労状況から見れば、私はわかると思うのですよ。それは正確なものでなくても、大体概況はつかむことができると思うのです。これはいま一つの質問をしましたけれども、厚生省がそういう数字の把握をある程度してないということは、やはりこの問題について熱心な取り組みをしてないということにつながると思うのです。これはもう過去長いのいろいろな要求というのがあるわけですから、少しこの点については前向きに取り組んでもらわなければいかぬと私は思うのですね。  それから同時に、いま局長は、脱退一時金制度がある、こう言われましたね。もちろんそれは脱退一時金があるわけでございますけれども、これは六十歳になった時点に本人が申請をしなければいかぬ。ところが、現実に日本にお見えになります永住権を持ったこれらの方々の状況を見ますと、民間企業なんかでも必ずしもAクラスの企業に働いてみえるというのは少ないわけです。やはり、就職差別が現実にあるわけです。どうしても弱小な、条件が悪いところに入らざるを得ない。そうすると倒産の条件なんかも多く、比較的転職をする回数というのは多いわけですよ。そうこうしておる間に、必ずしも厚生年金の適用事業場だけではなくて、自営業をやってみたり何かしますから、ついつい脱退一時金の資格権利というのを放棄してしまう、これは十分あり得ると思うのです。あるいはまた、女性の場合もそうだと思うのです。従来女性の場合は特例措置があったわけでございますけれども、昨年からですか、一般と同じようになりましたね。これも若い間の支給というものを六十まで覚えておるというわけにはなかなかまいりませんから、どうしても権利放棄をするということが多いと思います。そういう方々に対して一体これからどういう指導をされるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  135. 木暮保成

    ○木暮政府委員 いま先生のおっしゃるような実態はあろうかと思います。私どもといたしましては、なかなかむずかしいあれでございますが、今後ともPRとか制度の普及に努めてまいりたいというように思っております。
  136. 草川昭三

    草川委員 そういう制度のPRそのものをぜひやってもらいたいわけでありますが、それよりも、やはり基本的には同様な取り扱いをするということにぜひ前向きの姿勢を持ってもらいたいと思うのです。  そこで外務省にお伺いをしたいわけでございますが、外務省はお見えになっていますね。——在日韓国人の待遇に関する日韓実務者会談が開かれたと思うのですけれども、それはいつごろのことか、あるいはそこで韓国側からどういう要望があったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  137. 股野景親

    股野説明員 お答え申し上げます。  この在日韓国人の福祉増進の問題につきましては、従来在日韓国人の皆さんからのいろいろな御要望が出されておった、これは先生御指摘のとおりでございますが、そのほかに、韓国政府からも屡次私ども日本側に対してこの点の要望が寄せられております。例年開かれております日韓閣僚会議でも、韓国側からこのような要望が寄せられている次第でございますが、そういうものを踏まえまして、昭和五十一年の十一月でございますが、日韓問で実務者の話し合いをこの問題について持ったことがございます。この日韓間の実務者の話し合いと申しますのは、いわゆる交渉という形ではございませんで、韓国側が韓国側の要望を日本側の実務者に伝える、日本側の実務者はそれを聴取しながら、日本側の制度を説明してあわせて韓国側の要望に留意する、こういう性質の会議がただいま申し上げました昭和五十一年の十一月に開催されたわけでございます。その際、国民年金の問題につきましても、韓国側から、日韓協定によって永住権を持っている在日韓国人に対して国民年金法の適用をしてほしい、こういう要望があったわけでございますが、そもそも、この福祉全体の問題につきましては、日本側の国内のそれぞれの制度の問題もございます。そこで、それぞれの制度についての問題点を説明するということで、厚生省側の実務者から、この韓国側の要望に対して、日本側のこの制度の現状とその中における韓国人に当面適用することのむずかしい点の御説明があった、こう承知しております。
  138. 草川昭三

    草川委員 そのときに厚生省は、いまのお話によりますとむずかしいというようなことを言われたようでございますけれども、今度厚生省にお聞きしますが、そのときに、十一月二十九日の実務者会談で、厚生省は、かかる韓国側の要望について、今後国民年金制度を考えていく際に、韓国側の要望については留意することとしたい旨を説明した、こうわれわれは聞いておるわけですが、どういうことを言われたのですか。
  139. 木暮保成

    ○木暮政府委員 ただいま外務省から申し上げました五十一年の会議につきましては、私どもも担当者が出席いたしておるわけでございます。外務省からもお話しがございましたように、国民年金の現状、それから国民年金の性格等を御説明いたしまして、外国人に国民年金を適用するのは非常にむずかしいということを申し上げたわけでございますが、韓国側からはしばしば御要望のある事項でございまして、この点につきましては私どもも留意をして、今後の国民年金制度の検討の際に参考としたい、こういう趣旨で発言をしたのだろうと思います。
  140. 草川昭三

    草川委員 韓国側の方から非常に繰り返し、日本に在留しておみえになる方々の生活実態ということを中心に、過去の歴史的な背景等からお訴えがあるわけです。訴えというのか、申し入れがあるわけですよ。それに対して、それはなかなか困難だという答弁を繰り返しておみえになるわけでございますが、これは、実は後ほどもお伺いしますけれども、世界人権宣言等も一方の委員会では審議をしようという段階で、私は、厚生省としては非常に前向きな態度じゃないと思うのです。  そこで、もう一回外務省にお伺いをしますけれども、今度は、日韓閣僚会議というのがあるわけです。七八年九月に第十回日韓定期閣僚会議が開かれておりますが、この会議の中で、私の方からこれを読みますから、こういうことが事実かどうかということだけ返事をしてもらえばいいのですが、「韓国側閣僚は、在日韓国人の福祉増進に関連した諸問題に関し、日本政府の格別な配慮を要望し、これに対し日本側閣僚は、」これは外務大臣のことだと思いますが「引き続き好意的に検討することを約束した。」こういう一つのメモがあるわけですが、このことに間違いはないですか。
  141. 股野景親

    股野説明員 ただいま先生御指摘のとおり、昨年の九月四日にソウルで発表されました第十回日韓閣僚会議の共同コミュニケの中に、ただいま先生のお読みになられました内容が盛り込まれてございます。
  142. 草川昭三

    草川委員 ということになると、先ほど年金局長がおっしゃられた非常に消極的な態度というのは、これと食い違うわけですが、この閣僚会議の方が後に開かれているわけですから、厚生省として、そういうような話し合いは困るというようなことでも言われたのですか。
  143. 木暮保成

    ○木暮政府委員 いま外務省から御説明申し上げた経緯は私ども承知をいたしておるわけでございますが、この文言を見ましても「福祉増進に関連した諸問題」ということで、包括的な問題というふうに取り上げているわけでございます。  また国民年金の適用問題でございますが、前に申し上げましたとおり、単に適用するということでは必ずしも年金権に結びつかない、在日韓国人の方の福祉に結びつかないという面があるわけでございまして、そこが困難な問題であるわけでございます。
  144. 草川昭三

    草川委員 それは非常におかしい答弁でございまして、毎年この閣僚会議も開かれるわけですし、実務者会談も一定の時期で開かれておるけれども、毎回のようにその点は具体的に出ているわけですよ。ですから、いまのような答弁では私は納得できません。  そこで、早く終わるつもりだったのですが、時間がございませんので厚生大臣にお伺いしますけれども、国際人権規約の批准がいま外務委員会にかかっているわけです。ほとんどの先進諸国というのはこれを批准しておるわけです。それで具体的には、この第九条の社会保障の項で、この規約の当事国は、すべての者が社会保険を含む社会保障を受ける権利を有することを認めるとあるわけです。だから、いまの年金局長の言われるのとは明らかに食い違っているわけですよ、この人権規約の方とは。社会保険を含む社会保障を受ける権利を有することを認めるという、この人権規約は、政府の方として認めようじゃないかといって、いま審議の対象になっているわけです。  大臣にお伺いしますが、日本は先進国と思われますか、それとも先進国でないと思われますか。
  145. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 公正に見れば、大半の部分は先進国でありますけれども、多少先進国でない部分もあろうかと思います。ただ、そういう冗談半分のように聞かれてはこれは困るのでありまして、非常にアンバランスな部分があることは事実なのであります。  ただ、いまお話しになりました人権規約の問題について、私どもは、社会保障に関する部分について留保するなどということはなしに、批准をするつもりでおります。というのは、御承知のとおり、人権規約は外国人を含むすべての人々に対して社会保障についての権利を認めるという規定と同時に、その実現については漸進的に達成することも規定をされておるわけであります。  日本の社会保障制度につきましては、その大部分が外国人に適用されておることも御承知のとおりでありまして、全体としては、この人権規約に係る内容をほぼ私どもは実現しておるというふうに考えております。  現在外国人に適用されていない制度につきまして、たまたま国民年金がいま例示で出ておるわけでありますけれども、それぞれの制度の性格とか実施に伴う技術的問題点を踏まえ、さらに国際慣行でありますとかILOの社会保障関係の条約等を参考にして、私どもは国際人権規約の趣旨に沿うように努力していくつもりであります。ただし、それは一遍に批准と同時に即刻やれということではない、漸進的に努力をしていくということでありますから、場合によりましては、それぞれの当該国において、今度はその国に居住するであろう日本人が受けられる権利の問題ともこれは絡むことでありまして、そうした点を十分に考えて私どもは進んでまいりたい、そのように思っているわけであります。
  146. 草川昭三

    草川委員 いま大臣の方から、留保条件なしにこの人権規約を批准をしながら、漸進的に取り上げていきたい、こういう非常に前向きな答弁があったと思うのですね。  いま大臣は、先進国として非常にアンバランスの問題があるとおっしゃいましたが、アンバランスの問題は主として社会保障関係だと思うのですよ。あるいはスト権問題もあるかもわかりませんけれども。そういう意味で、せっかく留保なしに批准の意向を大臣は示されたわけですが、その場合に、では今度は年金局長にお伺いしますけれども、私の先ほどの質問について、同様な趣旨で前向きに対処されるのかどうか、お聞かせ願います。
  147. 木暮保成

    ○木暮政府委員 ただいま大臣からお答えがございましたように、国際人権規約につきましては留保しないで批准したい、こういう態度でございます。それは、漸進的にやればいいという規定がございますので、これが批准された暁には、その線で私どもも検討してまいりたいと思います。  御参考までに申し上げますと、スウェーデンやオランダはすでにこの人権条約を批准をいたしております。批准をいたしておりますけれども、被用者保険の方はもちろん国籍を問わずに適用しておりますが、日本の国民年金に当たる部分につきましてはまだ国籍要件を外せないでいるというようなこともございます。そこら辺につきまして私どももいろいろ勉強してまいりたいというふうに考えております。
  148. 草川昭三

    草川委員 いま大臣のそういう答弁、それからスウェーデンの若干水をかけるような御発言がございましたけれども、それはその国の他の社会保障の面の有利さということを考えないと、その問題だけ取り上げては問題がある、私はこう思います。  そこで、時間がございませんので、最後に児童手当のことについてお聞かせ願いたいと思います。  この児童手当についても、地方自治体で、外国人適用のいろいろな要望が出ておると思うのです。特に国籍制限の廃止要望が市町村、自治体等から大分出ておると思いますが、現在市町村でどの程度実施されておるか、児童手当、パーセントだけで結構ですから、何割くらい児童手当を採用しておるか。  それからついでに、地方自治体の決議要望についてどのようなお考えを持っておみえになるのか。  その二つだけ聞いて、私の質問を終わります。
  149. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 まず、児童手当の外国人適用に関する要望書として、私ども地方公共団体から要望書をいただいておりますが、全国市長会、大阪府市長会、町村長会等、四団体からの要望書が出ております。  それから、児童手当に類似いたしました制度を外国人に適用している地方公共団体の数でございますが、外国人に適用いたしておりますのは一都七十一市町村というふうに理解しております。
  150. 草川昭三

    草川委員 いずれにしましても、このような要望もたくさん出ておるわけでございますし、先ほど大臣がおっしゃられましたように、国際人権規約の批准が一方の委員会では提案されておるような状況でございますので、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  151. 戸井田三郎

    ○戸井田委員長代理 次に、古寺宏君。
  152. 古寺宏

    ○古寺委員 年金制度基本構想懇談会の最終報告が十八日に出る予定になっておりますが、この答申を受けた後で、年金の抜本改正はどのような内容で、いつから実施するお考えか、承りたいと思います。
  153. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 いま古寺委員御指摘のとおり、次回は四月十八日に年金制度基本構想懇談会の開会日取りが設定をされておりまして、私どもとしては、そこで御答申がいただけることを期待しておるわけでございます。  ただ、これはまだ、その御答申の内容そのものも、私ども、最終的なものとしてお示しをいただいておる状況ではありませんし、また、先ほど本委員会の御議論の中におきましても、国会における年金法の修正のいかん、その推移によって、どういう影響が出てくるのかというような御指摘もいただきましたとおりに、私どもとしてはこれに幾つかの問題点を抱えるわけでございます。それだけに、私どもとしては、この報告書をちょうだいいたしますと、それを踏まえて関係審議会等にもお諮りをするなど、各方面の御意見を伺いながら、同時に、その年金制度の基本的な改正に取り組んでいきたいと考えておるわけでありまして、いまの時点におきましては、まだ、その改正内容がどうなるかとか、あるいはその実施時期がいつになるかというようなことを正確に申し上げられる状況にはございません。  ただ、少なくとも法律案として国会にお示しをいたします以前の段階において、これは将来に非常に大きな影響を及ぼす問題でありますだけに、厚生省としての考え方について合意ができ次第、いろいろな方法で御意見を承ることができるような方法を講じていきたい、そのように考えております。
  154. 古寺宏

    ○古寺委員 この答申の内容につきましては、改革の必要性と基本的な考え方、今後の改革の方向、長期的及び当面の改革の進め方の三つを柱にしている。その内容は税方式をとらず、社会保険方式を中心にし、また制度の分立を前提にして、制度問に存在する不均衡の是正を図り、一人一年金制度を目指すものとなるというが、制度審議会の建議の関係はどういうふうになっているわけでございますか。
  155. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 実は、大変申しわけありませんが、その基本構想懇談会の答申がどういう答申になるかということを現時点において私は存じません。それだけに、いま古寺さんが御指摘になりましたような方向になるのかどうかにつきましても、確たる自信はございませんけれども、そういうことを前提にお聞きをいただきますと、現行の年金制度につきましては、公明党を初め、国会においても各政党からいろいろなお考えを御提示いただいておりますし、また、社会保障制度審議会からの御建議でありますとか、あるいは労働団体がそれぞれのお立場からまとめられたものとか、いろいろな角度の御意見が現実にすでに存在をするわけでございます。  それだけに、私は、これについてはいろいろな考え方があろうと思いますし、社会保障制度審議会の御意見というもの、これはやはり現実に今後考えていく上での一つの大きな参考の御意見だと私どもは考えております。  現実に長い歴史、沿革を有しております日本の年金制度でありますだけに、そういった事態も十分考えなければなりません。そうした考え方の上で、基本構想懇談会から御報告をちょうだいいたしました時点において、私どもとしては、当然それについていろいろな角度からの検討を加えながら、関係方面への御意見を伺いたいと思うわけであります。  これはたとえて申しますと、富士山の頂上は同じ頂上でありましても、登りには須走口もあれば吉田口もある。登り道によってずいぶん手間のかかり方も違う。あるいはヘリコプターで一遍に頂上におりてしまうようなこともあるかもしれません。たとえとしては非常に適切を欠くかもしれませんが、同じ山の頂に立つにもいろいろな方法があるのと同じように、途中の考え方についてはいろいろなものが出てくるのは、むしろ、われわれが今後いろいろ案を取りまとめていく上に非常に参考になる、一つの貴重な御意見として私は受けとめたいと思っております。
  156. 古寺宏

    ○古寺委員 私がこの問題を提起しているのは、いわゆる基本年金構想とか基礎年金構想とかのわが党の政策もございます。また制度審議会では一つの建議を出しておられるわけでございますが、いまの大臣の御答弁ですと、頂上は同じなんであるから、その過程においてはいろいろな方法がある、こうおっしゃっております。しかしながら、この前の予算委員会のときにも、大臣は、制度審議会の建議というものは十二分に尊重なさる、こういう御答弁があったわけですね。ところが三年間、この基本懇がいろいろと今日まで議論をして、答申がまとまらないその理由の一つには、いわゆる制度審の委員として、先ほど申し上げました基本年金構想をお持ちの方と、また現行の八つの制度をそのまま温存しながらこの不均衡、格差の是正を図っていくというお考えの方々とがいらっしゃる。それがなかなか議論がかみ合わない。しかしながら、厚生当局は、この制度審が出しております建議とは違う方向の、いわゆるいま私が読み上げましたような方向に最終的な答申をまとめようと、いろいろ工作をしていらっしゃる。こういうことを仄聞をしているわけでございます。  そこで、私がお尋ねしたいのは、いままでのいわゆる基礎年金構想あるいは基本年金構想、こういうものについてはこれは間違った考えであるという行き方でいくのか、そういうものを全く無視した抜本改正というものを厚生当局は考えていらっしゃるのか、ここがお聞きしたいわけです。
  157. 木暮保成

    ○木暮政府委員 基本懇でいろいろな問題につきまして御議論をいただいておるわけでございます。大臣からもお話し申し上げましたように、非常に多岐にわたる、また技術的にもむずかしい問題でございますので、先生方の御議論が時間がかかっているのは事実でございますが、私ども事務当局といたしまして、ただいま先生のおっしゃるような立場にはございません。御意見がいただけましたならば、それを踏まえまして今後の年金改正に取り組みたいというふうに考えております。
  158. 古寺宏

    ○古寺委員 それでは、制度審議会の建議とそれからこの年金懇の最終答申、最終報告というものが全く食い違った方向で結論が出た場合には、じゃ、どちらを尊重なさいますか。
  159. 木暮保成

    ○木暮政府委員 まだ年金懇の答申をいただいておらない段階でございますので、お答えがむずかしいわけでございますが、制度審議会の意見でございますが、これは基礎年金、基本年金をこしらえまして、各種年金の底上げを図るということを一つのねらいといたしておるわけでございます。また、財源を所得型の付加価値税に求めまして、年金財政の長期安定を図るというようなことをねらっておるわけでございます。一方また、日本の人口の今後の老齢化を考えまして、支給開始年齢はだんだん六十五の方に持っていかざるを得ないというような御意見を出しておられるわけでございます。  いま申し上げた制度審議会の年金の底上げをする、あるいは長期の財政の安定を図る、さらには年金支給開始年齢の見直しをするというような点では、富士山の頂上と申しますか、そういうねらいはどなたも年金議論をされる場合共通をしているところであろうと思いまして、全くうらはらの答申が出るということはあり得ないのじゃないかというふうに思っております。
  160. 古寺宏

    ○古寺委員 あり得ないと思う、こうおっしゃいますが、いろいろ私どもがお聞きしている範囲では、いわゆる制度審の建議と違う方向へこの報告が動いている、こういうことを承っているわけなんです。したがいまして、制度審の建議とこの年金懇の報告の内容が食い違った場合に、いままでいろいろ国民から言われておりますところの基本年金構想、基礎年金構想、こういうものが全くここで打ち消されてしまうのか、無視された違う方向へいくのか、その点を承りたい。
  161. 木暮保成

    ○木暮政府委員 基本懇の御意見をまだいただいておりませんので、お答えしにくいわけでございますが、今後の年金のあり方としまして、それぞれの年金が一定の価値のある額を持つべきであるというような基本構想のねらい、それからまた、各年金制度のアンバランスを基本年金という形で是正していく、あるいは財源的に、その基本年金の部分に付加価値税を入れていくということによって、長期安定を図る、付加価値税ができるかどうかという点がありますけれども、財政の長期安定を図る、そういうような将来の改革の方法につきましては、制度審議会、基本懇以外の方々も御異論がないところだろうと思うわけでございまして、何分まだ意見をいただいておらない段階でございますけれども、全く違った方向の御意見が出るということはないのじゃないかというふうに思っております。
  162. 古寺宏

    ○古寺委員 「国民年金弘報」というこの新聞に載っていますよ。おたくではこれをとっていないのですか。概略ですが内容まで書いてあるじゃないですか。不勉強じゃないですか。
  163. 木暮保成

    ○木暮政府委員 ちょっとここではよく見えないのですけれども、「国民年金弘報」の中で、そこの事務局長と基本懇の委員の先生の対談の記事ではないかと思いますが、そうでございますれば私も拝見したわけでございますが、その先生の個人の意見を述べられたものだろうと思いますし、また、それにいたしましても、ただいま申し上げましたような制度審議会のねらっておるところをねらっているというふうに理解できる記事だろうと思います。
  164. 古寺宏

    ○古寺委員 あの対談は、あれは一月号なんです。私がいま持ってきた新聞は四月一日号でございます。内容が全然違うのです。内容が詳しく書いてあります。税方式はとらない、社会保険方式でいくんだと書いているのですよ。そういう方向で一生懸命、最終報告なるものを行政当局が根回しをして、いままとめていらっしゃるわけでしょう。そういう作業をしていらっしゃるわけです。ですから、私どもが心配するのは、そういう基本年金構想、基礎年金構想というものが全く無視された形で今後年金行政が進められるとするならば、これは重大な問題だと思う。その点についてそういうことはないだろうという御答弁でございますが、私が心配しているのは、制度審議会の方から出ている建議とそれから年金懇の方の最終意見とが全く食い違った場合に、どちらを尊重するか、大臣の私的諮問機関である年金懇の意見をとるか、それとも公的な立場にある制度審の建議をとるか、その点をお伺いしているわけです。
  165. 木暮保成

    ○木暮政府委員 何分にもまだ基本懇の意見をいただいておりませんし、基本懇自体最終決定をされているわけではございませんので、お答えしにくいわけでございますが、基本懇の意見をいただきました際は、制度審議会を初め各政党、各団体からも御意見をいただいておるわけでございますから、制度審議会、各団体の御意見も基本懇で御議論いただいておるわけでございますので、そういうものを踏まえまして厚生省としては取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。
  166. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、やはりこの新聞によりますと、五十五年度に財政再計算を行うという大臣の談話が載っているわけでございますが、国民年金の保険料が現在上がっておりますので、死亡一時金をもう少し増額していただきたいという意見が非常に強いわけでございますが、この点についてはお考えでございますか。
  167. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 局長からお答えを申し上げます前にちょっと私から申し上げたいと思いますが、私は、五十五年に再計算を行うと決定しておるわけでもございませんし、また、五十五年に再計算を行うと談話を発表した記憶もございません。ただ、私は、国会で予算審議の過程において、自由民主党から公明、民社両党に対して、年金の修正に用意ありというお答えをいたしました段階で、その内容いかんによっては再計算年次を繰り上げる必要があるかもしれないということは確かに申しました。ただし、いま断定的に五十五年に再計算をするという前提で御質問いただいたわけでございますけれども、私は、ここに記者クラブの方々もたくさんおられますが、いかなる会見の場においても、五十五年に再計算を行うという意思を発表したことはございませんので、その点はちょっと正確にいたしておきたいと思います。
  168. 木暮保成

    ○木暮政府委員 被保険者の方が亡くなられた場合に、年金の立場から一番大切な問題は、遺族の方の生活の保障をどうするかということでございます。そういう観点からいたしますと、母子年金とかそれからまた、配偶者の方の生活費の支えになります老齢年金とか、そういうものは非常に大きなウエートを持つ給付だろうと思います。国民年金の財政事情がだんだん苦しくなってまいりますので、財源の効率的な使用を考えなければなりませんので、私どもといたしましては、母子年金あるいは老齢年金充実の方に財源を回し、死亡一時金は、当時国民年金が発足いたしますときに、掛け捨てをきらう国民感情を考慮して設けられたものでございますが、そういう例外的な給付でございますので、資源の有効配分の上からは、先ほど申し上げましたように、死亡一時金よりもむしろ母子年金、老齢年金の方に重点を置いて考えていきたいというふうに思っております。
  169. 古寺宏

    ○古寺委員 大臣は、これは後でお読みになればわかるのですが、私は決してうそを申し上げているわけではないのです。読み上げますと「しかし、今回の自公民合意によって、一部の年金を引き上げると、年金体系のバランスを著しく崩してしまうので、五十五年度にはこうした体系全般の見直しを含めた、年金財政の再計算を実施する必要性がいよいよ濃化したと判断して、このほど事務当局に準備を指示した。」こういうふうに書かれてあるわけです。
  170. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 そこにそう書いてあるのも事実でありましょうけれども、これは新聞記者の諸君もそこにおるわけでありまして、私は、確かに、五年年金、十年年金と係属してこれが修正の対象になるようであれば、本当に年金体系の全面的な変更でありますから、再計算を至急やらなければならぬということは確かに申した記憶がございます。そういう場合であればということでありまして、どうもちょっと、その記事は、大変失礼でありますが、私はそういう言い方をしたようには記憶をいたしておりません。ですから、修正の内容の波及によっては確かに年金体系に著しいアンバランスを来す可能性がある、その場合には再計算年次を繰り上げてでも対応しなければならぬということは確かに私は申しておったわけでありまして、これは十年年金等を意味して申しておったことは事実でございます。ただ、そこに書いておることも事実でありましょうけれども、私の申しておるのもこれは事実でありまして、その点は、記者の方々が記事をまとめられる段階で、一字一句を書かれるわけではありませんから、要約をされておるうちに、ちょっと私のニュアンスと違ったような形になっておるのかもしれませんが、その点は、私はいま申し上げたようなことをいままでも申してきております。
  171. 古寺宏

    ○古寺委員 この問題は、これをやっていると時間がなくなりますので。  次に移りますが、無年金者でございますね。無年金者は、昨年一年間で相当年金権を新たに獲得したようでございますが、今後の見通しはどうなっているか。それから、この無年金者をなくするような方策としてどういうことをお考えになっているか。これを承りたいと思います。
  172. 持永和見

    ○持永政府委員 御承知のように、無年金者対策といたしまして、昨年の七月から国民年金の保険料の特例納付を実施してきているところでございます。現在、大体昨年末まで六カ月ぐらい経過した時点の実績を私どもつかんでおりますけれども、これによりますと、五十三年十二月までの六カ月間で約三十一万件の納付件数でございます。納付した件数が三十一万件でございまして、前回の特例納付、四十九年でございますけれども、このときの六カ月の件数は二十三万件でございますから、実績としてこれを上回るかなり良好な実績を示しておるのじゃないかと思います。  具体的には、この特例納付に対しまして、今回が最後ということで、いろいろな形での勧奨を行っております。一つは、一般的な政府広報あるいは市町村、都道府県といったような公共の広報機関を活用いたしました一般的な広報のほかに、国民年金にすでに入っておりまして保険料を納めていない、いわゆる滞納している人たちに対しましては、社会保険事務所からリストアップをいたしまして、具体的に納付勧奨を行っております。また、国民年金にまだ加入していない、国民年金の対象者ではあるようだが加入していない、こういう人につきましては、市町村の方で具体的に名簿をリストアップしまして、それぞれの人たちに対しまして加入の勧奨を行っているというようなことで、これが最後の機会ということでございますので、できる限りのそういった広報あるいは具体的な勧奨、そういった面での努力を行っているという状況でございます。
  173. 古寺宏

    ○古寺委員 この無年金者の特例納付に係る世帯更生資金の貸付制度、これは前の小沢大臣からもお話があったわけでございますが、どのような条件をお考えでしょうか。
  174. 山下眞臣

    ○山下政府委員 この特例納付に対します世帯更生資金の貸し付けの種類といたしましては、福祉資金という資金を考えておるわけでございます。現在の福祉資金の貸付条件は限度額十二万円でございまして、据え置期間六カ月、それから償還期限三年、利子が年三%、こういうことでございます。この世帯更生資金の各種貸付資金の条件の改善につきましては、例年、予算が成立いたしました段階で関係機関と相談をいたしまして決めるわけでございます。ちなみに、五十三年度におきましては六月末に改定をいたしております。  しかしながら、本年度につきましては、御指摘の年金のための貸し付けということが始まるわけでございますので、これはできるだけ急げ、こういう御指示を大臣からちょうだいいたしておるところでございまして、先週予算も成立いたしましたので、これの内容の改善につきまして、鋭意いま詰めておるという状況でございまして、そう遠くない時期に改定をいたして実施の運びにしたい、かように考えているわけでございます。
  175. 古寺宏

    ○古寺委員 ことしの予算を見ますと、前年度より相当伸びてはおりますが、全部の無年金者が皆この資金を活用するという問題ではないのですが、非常に額が限定されているように考えるわけなのです。ですから、この条件につきましては、十分無年金者を救済するような方向で、新しい条件を御検討いただきたいということをお願い申し上げたいわけです。  それと同時に、免除制度というのがございますね。法定免除、申請免除、この免除制度ですね。たとえば所得が低い人ですとか、生活保護の方ですとかにはこういう免除制度がございますね。この免除を受けた方が受給する場合には、年金額は幾ら支給になるのですか。
  176. 木暮保成

    ○木暮政府委員 免除期間につきましては、通常の年金額の三分の一が出るわけでございます。
  177. 古寺宏

    ○古寺委員 現在、七十万円以下の人は免除の対象になる。私は、これを少なくともまず百五万円ぐらいにアップすべきである。それから、免除者に対する支給額が非常に低いわけですね。ですから無年金者がどんどんふえて、そして免除の申請をしないわけです。その一番大きな問題は何かといいますと、現在、わが国の国民年金制度は定額なのです。そのために、年間五千万円の所得のある人も百万円の所得の人も全部三千三百円の保険料を納めればいい、こういうことで、所得の高い人はそんな安い年金には入れぬ、こう言うんですね。ところが一方、低所得の家庭へ行きますと、三千三百円と申しましても、三人家族がいれば九千九百円でございましょう。そして、これをまとめて三カ月なら三カ月に一遍保険料を払う、こういうように現在の国民年金制度そのものに非常にいろいろな欠陥があるわけです。いまの免除の問題は、低所得の人ですね。それから一方では、この所得比例方式がないですから、結局は高額所得者はなかなか加入しない。ですから、所得の高い人も、所得の低い人も、また中間層も国民年金になかなか加入しない。そのために無年金者が出るわけです。ですから、PRをして無年金者を新しく加入させることも大事でございますが、と同時に、現在の国民年金制度の中にある、無年金者を発生するような原因になっている欠陥をやはり厚生省としては十分分析をして、当面それに対応しての制度改正というものは、これは行っていかなければいけないのじゃないか。そういうふうに考えるのですが、いまの問題についてどうですか。
  178. 木暮保成

    ○木暮政府委員 国民年金の保険料のあり方というのは、国民年金の基本問題の一つだというふうに私どもも思っております。いま定額保険料をとっておるわけでございますので、御指摘のように高額所得者には楽かもしれませんが、低所得者にはかなりつらいという場合が出てくると思うわけでございます。  それで、免除の制度でございますが、これは先輩が残した仕事でございますので言ってもいいのだろうと思いますが、非常にきめ細かくできた制度だと思います。これは諸外国には例のない制度でございまして、免除の手続をとれば三分の一の年金は出るということをまずやっておりますし、また将来所得がよくなりました場合には、十年間に限りまして、十年前の保険料で追納ができるというような措置がとられておりまして、国民年金制度は、諸外国の例に比べましてもきめ細かくできているというふうに思っておるわけでございます。  しかし、国民年金の財政状況、将来を考えますと非常に厳しいものがございますので、できれば所得のある方からはもっと保険料を取りたいという気持は率直に言って私どももあるわけでございますが、現在は定額の保険料ということで事務体制ができておるわけでございますので、高額の所得を一つ一つとらえまして保険料を徴収するということは、事務機構の根本からの見直しをしなければならないという問題が一方にあるわけでございます。  それに関連しまして、事務機構を拡大して強制的にやるということではなくて、高額の所得の人には手を挙げてもらって高い保険料を納めてもらうと同時に、これに見返りとなる給付をしたらどうかという御提案もあるわけでございますが、そのことにつきましては、ただいま先生もお話しございましたように、高額の保険料を払った方には魅力のある給付をしなければならないというふうなことにもなりまして、国民年金の財政全体からは、まあ卑俗な言葉で言えば潤わないということにもなるわけでございます。  いろいろ問題点があるわけでございますが、御指摘の点は、国民年金の将来を考えた場合確かに一番基本的な問題でございますので、さらに研究を続けてまいりたいというふうに思っております。
  179. 古寺宏

    ○古寺委員 基本懇の最終報告の中にそういう問題が報告されるかどうかはわかりませんが、無年金者が出るような現在の制度、仕組み、これはやはり改善していかなければいけないと思う。  それから、現在母子の年金はございます。ところが、父子年金というのはないのですね。奥さんが亡くなった、子供を残していった、ところが再婚したくともなかなかお嫁さんに来てくれる方がいらっしゃらない。非常に苦労していらっしゃる。母子年金はあるけれども、父子の、いわゆる男性の場合にはそういう制度がない。この点につきましても、男女同権ではなくて非常に不平等ではないかというお話があるのですが、この点についてはどういうふうにお考えですか。
  180. 木暮保成

    ○木暮政府委員 年金は、被保険者が死亡されたり、障害になったということで所得がなくなる、あるいは減るというような場合に対応するということだろうと思います。そういう意味では、父親が亡くなった場合には所得がなくなることに連らなる場合が多いわけでございますので、所得保障を目指す年金としては当然やらなければならないことだと思いますが、母親が亡くなりましたときは父親が生きておりますので、所得の中断ということにはならないのだろうと思います。そこで、所得がございますので、いわば年金の出番はないというふうに従来考えてきたわけでございまして、その子供さんの世話は、保育行政とかそういう面の問題になるのではないかというふうに思っております。  ただ、やはり男女平等ということで、年金制度でもいろいろな点で見直しをすべきだということになってきております。たとえば、厚生年金の支給開始年齢が男子と女子で違うとか、保険料も男子と女子で違うとか、いろいろな問題がございまして、今後の検討課題の一つだというふうに考えております。
  181. 古寺宏

    ○古寺委員 それから婦人の年金権の問題ですが、この前も大臣は予算委員会で、これは国民年金があるから心配ないのだというふうにおっしゃいましたが、離婚をしまして、国民年金に加入する年齢をもう過ぎている方が実際にたくさんいらっしゃるのですね。そういう方々のために婦人の年金権の確立が必要なのだということを私は申し上げたわけでございますが、この点についてはいかがですか。     〔戸井田委員長代理退席、委員長着席〕
  182. 木暮保成

    ○木暮政府委員 婦人の年金の問題につきましては、私どももこれからの年金制度の大きな課題だと思っております。  それで一つは、厚生年金の場合に遺族年金が五割でございます。寡婦加算等の措置はとっておりますけれども、被保険者たる夫を亡くした後の遺族の給付としては、五割では低いのではないかという問題があるわけでございます。  また、いま御指摘のように高齢で離婚をされた場合には、その後国民年金に入りましても余り額の高い年金に結びつかないということがございますので、その点も今後の課題だというふうに私ども思っております。  これは基本懇でも一番御議論をいただいている点の一つでございますので、いつも同じ答えになって恐縮でございますが、基本懇の意見をいただきましたならば、これも重要な課題として私ども取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  183. 古寺宏

    ○古寺委員 先日のこの委員会におきまして、今後の年金財政を考えた場合、厚生年金の支給開始年齢を六十五歳にしたいというような大臣の御発言があったようでございますが、この点についてはいかがですか。
  184. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 現在の人口の高齢化のスピード、またそれによる年金受給期間の増大、あるいは将来における保険料負担というようなことを考えてまいりますと、確かに支給開始年齢の引き上げという問題は避けて通れない将来の問題であると私は思います。  ただ、そこに至ります過程においては、いま年金そのものがすでに定着をし、老後生活の一つの柱として確立をしつつあるわけでありますから、個人の老後設計をすっかり変えてしまう要素にもなり得るわけでありまして、当然そうした点に対する十分な配慮も必要でありますし、また、雇用政策との関連も考慮をしていかなければなりません。ですから、実施に当たって十分な配慮を必要とすることも間違いありませんが、同時に、やはり将来避けて通れない課題だ、そのように考えております。
  185. 古寺宏

    ○古寺委員 何をお聞きしてもみな基本懇にいってしまいますので。  次に、オンライン計画につきましては、先ほど草川委員から御質問がございまして、全国の計画の資料を草川委員は持っているのですが、私には下さらないのです。それで、いまよく見ましたところが、札幌はございますが、北海道ですとか青森県ですとか秋田県ですとか岩手県ですとか沖繩とか、まあ大臣のところもそれに入っているらしいけれども、こういう非常に不便な遠隔地ほど電話料はかかる、人件費もかかるということでもう大変なんですよ。現在すでにオンライン化されている地域にどんどんふやして、一番必要としているそういう不便な地域を全く無視しているというのはどういうお考えなのですか。これは差別ですか。
  186. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 心情的には古寺委員の御質問は私も同感でありまして、実は私の県も入っておらぬわけであります。  ただ、現実問題として、そのオンライン化を進めてまいりまして、端末機その他を入れてまいりますためには、従来の庁舎整備のおくれておりますところでありますと、これは現実に入りません。機械の性能その他から考えてもこれは無理であります。また同時に、やはりそれによって恩典を受けられる方の多いところからやっていくというのは、ある程度これは仕方のないことだろうと思います。社会保険事務所をたとえば一県に一つずつモデル的にやるというような考え方もそれはあるかもしれませんが、これは効率の問題からいっても非常に無理のあることでありますし、私は、その意味においては、ある程度年金受給者の方々、また加入者の方々の集中しておる地域、また庁舎整備の先行しておる地域を今回は選定したんだと思いまして、実は岡山県のないのもあきらめておるわけであります。  ですから、今後において、古寺さんの御指摘のような点は、むしろオンライン化の順番の問題と同時に、実は社会保険事務所の統廃合、整備、新設といった問題の基本的なところから始まることでありまして、そうした点から十分気をつけて今後も進めてまいりたい、そのように思います。
  187. 古寺宏

    ○古寺委員 本当に厚生省というのは思いやりのないお役所だと私は思うのですよ。私どもの地方へ参りますと、雪が降ります。もう交通が大変な状態なんですよ。それを社会保険事務所まで出かけて行って、年金の相談をして、裁定が出るのがもう三カ月とか半年もかかるわけですね。その間の時間や経費を考えますと、そういう地域にこそ早くそういうシステムをつくって、皆さんが年金にどんどん加入できるような措置を講ずべきであって、何でも一律に考えて、もう電話料の少ないところも何倍も電話料のかかるところも、それからまた、雪がどんどん降って大変なところも、みんな画一化した考えでやっているでしょう。こういう机上の計画じゃいかぬと思うのですよ。ですから、こういう点はやはり実情に合った計画というものを推進していただきたい、そういうことを特に要望しておきます。  それから、これはいまの問題とも関連しますが、先ほどの新聞をまた読みますと、今度の三党による年金改正の動きがあったので、当然この社会労働委員会では生活保護基準をもっとアップしなければならないという議論が出るだろうと、それを期待しているような大臣の談話が載っているのです。ですから、今回の年金は修正されることになっておりますが、生活保護基準については現在の政府案をアップするお考えがあるのか、まずこれが一つ。  それからもう一つは、前大臣の小沢大臣が、いわゆる級地の見直しですね。昭和五十年からいままでの四級地というのはなくなりまして、全部三級地以上になりました。それで、各都道府県の県庁所在地とかそういうところは、いままで三級地であったものが二級地に昇格をしたわけです。ところが、現実に生活水準も同じ、人口規模も同じという都市がたくさんあるわけですね。そういう級地の見直しについては前向きに検討するということを前の大臣はお約束になったわけなんですよ。ですから、この生活保護基準というものについて、新しい橋本大臣は、新聞に発表しているようにこの基準の改定をなさるのか。そこまでいかなくとも、前の大臣のいわゆる前向きに検討なさるというお話を引き継いで、検討なさるお考えがあるのか。  いまここに竹内委員もおりますが、青森県で申し上げますと、二級地というのは青森市ですね。県庁所在地。ところが、弘前市ですとかあるいは八戸市というようなところは生活水準はもうほとんど変わらない。ところが生活保護で申しますと、二級地と三級地では約九%違うのです。青森県の額で申し上げますと、四人家族で一級地は十一万四千三百四十円、二級地で十万四千五十三円、三級地で九万三千七百五十三円、こういうふうになっているのです。ですから、いままでのようなお恵み的生活保護じゃなくて、やはり生活の実態に合った生活費を保障してあげる、そういう思いやりが必要ではないかと思いますので、この二点について大臣からひとつ承りたいと思います。
  188. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 今後、よほどマスコミの方々とお話をするときには一言一句正確に、気をつけて私もしゃべり、また正確に記事にしてもらうように、私もこれは努めなければいかぬといま心配をいたしております。  確かに一時期、古寺さん御承知のように、生活保護基準の変更等の御議論が、修正の御論議の与野党のお話し合いの中であったことは事実であります。ですから、もしそうなれば、当然私どももそれに対応しなければならぬと考えておりました。  ただ、基本的には、従来福祉年金の額その他が改正をされました機会は、予算審議の折にも往々にしてあったわけであります。これがたとえば減税等と並行して行われていた場合が一般でありました。そしてその意味では、税負担にたえられない方々に対して減税を行えば、減税をされた方々には戻りがあるけれども、それ以下の方々に対しての恩典がないということから、生活保護基準の改定をそれに連動させたことも事実でございます。生活保護基準自体は改定しなかったと思います、一時金等で対応したと思いますが、そういうことをしたことも事実であります。  ただ今回は、減税等を伴わない年金制度のその枠内における年金額の改定と福祉年金額の改定、またそれに連動する最小限のものの手直しというように、与野党のお話が進められておるように私どもは聞いておりまして、そういう観点で年金の審議が行われ、結論をお出しになるとすれば、生活保護についての対応は、生活保護費そのものは今回も十二分に私どもは改定をいたしておるつもりでありますので、それ以上の改定を行うつもりはございません。  それから、いまの級地問題のお話は、確かに四級地を早く三級地に全部直せという御指摘をいただきまして、昨年いっぱいでこれを全部終了したところであります。実は、私の住んでおります町も三級地でございます。その三級地であるから、それを人口規模という点からだけで二級地に一律に引き上げるというような考え方は私は持っておりません。ただ、今後ともに、これは個別の市町村について、人口の増加でありますとかあるいはその地域における経済社会条件の変動が著しいような場合に、これを見直していくということは当然でありまして、そうした観点からの努力は今後ともいたしてまいりたいと思います。
  189. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、これは前の質問をまた繰り返すようなことになりますが、児童手当制度でございますね。これはILOの百二号条約の中で、わが国はまだ受諾していないわけでございますが、五十一年時点でもって、この国際的な水準でまいりますと、児童手当の予算はわが国の場合は約六千億必要。ところが、わが国の実際の予算は幾らかと申しますと約一千七百億。この金額で申しますと、いかにわが国の児童手当に対する予算が少ないかということがもう明らかにわかるわけでございまして、先ほどいろいろな理由はお話しございましたが、児童手当部会においてもいろいろ検討しているようでございますが、少なくとも先ほどお話があった先進国並み、あるいは国際的な最低保障の線からいくならば、当然わが国の児童手当の予算というものも第二子、第一子まで拡大をして、諸外国並みの六千億円ぐらいまでは持っていくべきではないか、こう考えるのですが、いかがですか。
  190. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 古寺さんよく御承知の上でのお尋ねでありますので、細かいところまで繰り返すつもりはありませんが、現在、私ども自身、中央児童福祉審議会において児童手当についての御議論を願っており、昨年の暮れにも中間の御意見をちょうだいをいたしたわけであります。  ただ、五十一年の意識調査によりますと、むしろ現在の第三子の支給範囲というものを支持する方の方が現実に多かった。四六・八%の方が現行の基準でよろしい。二人目から出すべきだという御意見が一二・二%でありました。第一子からという方は一五・五%という状況であったわけでございます。  日本の場合におきましては、御承知のように給与の形態がほかの国々と相当な違いがありまして、家族手当の問題でありますとか、あるいは税制における扶養控除との調整の問題でありますとか、こうした問題を考えてまいりますと、検討する課題が非常に多いわけでありまして、私どもは、いま直ちに、御指摘のような方向に児童手当制度を向けていかなければならないとは考えておらないわけであります。
  191. 古寺宏

    ○古寺委員 いまは考えないとおっしゃるけれども、先ほどの意識調査も問題があると思うのです。必要とするという人ほど本当に必要なんだと私は思うのです。ですから、パーセンテージが低いからそれはもう児童手当の増額は要らないとか、あるいは拡大は要らないというような考えにはならないというふうに私は思います。  そこで、外国人に対して児童手当を適用すべきであるというふうに要望されているわけですが、この点はいかがですか。
  192. 竹内嘉巳

    竹内政府委員 児童手当制度の外国人適用の問題でございますけれども、これも現在、児童手当制度の問題についての基本的なあり方の御審議をいただいておるわけで、その中でいわば一連の問題として、当然これは国際人権規約の基準等も絡み合わせまして、政府自体として一つの方向がだんだん見出されようとしております。私どもも、そういった中で、この問題について十分周囲の状況も判断しながら検討してまいりたい、かように考えております。
  193. 古寺宏

    ○古寺委員 これも草川委員から先ほど質問があったわけでございますが、在日外国人、特に朝鮮人、韓国人に対する国民年金法の適用の問題でございますが、現在米国人に対しては適用になっているわけでございましょう。いかがですか。
  194. 木暮保成

    ○木暮政府委員 アメリカとの関係では、日米通商友好条約で、社会保障につきまして内国民待遇を与えるという規定がございます。それに基づきまして、その条約ができた後発足いたしました国民年金も適用いたしております。
  195. 古寺宏

    ○古寺委員 全方位外交ですから、いずこの国ともみんな、国際化社会を迎えて仲よくしなければいけないわけですが、特に在日外国人の中でも韓国の方あるいは朝鮮の方というのは、非常に歴史的な背景から言ってもわが国に近いわけでしょう。そういう方々から再三再四要望されていながら、米国の方はこういう条約に基づいてやっておりますが、韓国や朝鮮の方々に対してはいまだに適用しない、こういう姿勢は私はいかぬと思うのです。やはり積極的に前向きに、仮に国際人権条約とかそういうものが批准にならなくとも、こういうものは前向きにやろうと思えばできるわけです。よその厚年にしても雇用保険にしてもみんな適用になっているわけでしょう。国年だけが除外されているのです。ですから、これだって厚生省がやろうと決めればできる問題ですから、この問題についてどうですか。
  196. 木暮保成

    ○木暮政府委員 先ほど来御議論があるところでございますが、国民年金は一般的な社会保障制度でございますので、外国人一般の問題ということで取り上げる以外にないわけでございます。在日韓国人の方だけあるいは在日朝鮮人の方だけを国民年金の上で考慮するというわけにはいかないわけでございます。一般外国人の問題としてとらえた場合に、国民年金につきましては二十五年間の資格期間が設けられておりますので、二十五年間の長い資格期間を満たさない場合には年金に結びつかないという技術的な問題があるわけでございます。そういうことで、国民年金はいまは日本国籍のない方は入れないという立場に立っておるわけでございます。  ただいま御指摘のありました厚生年金被用者保険ということでございまして、これは失業保険とかあるいは健康保険あるいは労災保険と一緒に、労働者保護という観点からできている制度でございまして、事業主も二分の一の負担をしておるという制度でございます。これは諸外国を見ましても、被用者保険は全部国籍を問わないという形になっております。国民年金に相当するような制度は諸外国は余りないわけでございますが、スウェーデンとかオランダとか、そういうところは国民年金に当たる制度は国籍要件を問う等というようなことがあるわけでございます。いろいろ技術的な問題がございますので、今後の検討課題というふうにさせていただきたいと思います。
  197. 古寺宏

    ○古寺委員 次に、橋本厚生大臣は母子保健制度の抜本改正を行う、この前予算委員会のときこういう御答弁があったわけでございますが、その基本的な考え方、どういうふうにお考えになっているかを承りたいと思います。
  198. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 現行の母子保健法は、ちょうど私が初めて当選をいたしましたころに論議になりまして、その後間もなく制定をされたわけでありますが、その当時におきましては、まだ日本においては、残念ながら、妊産婦死亡率あるいは新生児死亡率等も非常に欧米諸国に対比して高い状態でありました。また、妊産婦の栄養管理そのものが一つの母子保健法をつくらなければならない意義として訴えられるような状態で、当時の日本はあったわけであります。  ところが、そういう状態から今日までの時間が経過をいたしてまいりますと、社会情勢経済情勢も大きく変化をいたしておりますし、制定当時に問題とされておりました乳児死亡率でありますとか周産期死亡率でありますとかは、大きく改善向上をされてまいりました。また妊産婦死亡率についても、たとえば妊娠中毒症とか出血死の死亡率が高いという問題はありますが、ほぼ世界の平均並みのところまでまいっております。  これから先の日本として、高齢化社会というものの到来が非常に騒がれておるわけでありますが、二十一世紀に入ってしばらくいたしますと静止人口状態になってしまうわけでありまして、むしろ、少し生まれて少し死ぬという傾向が定着してしまう状態にあるわけであります。そういう時点において、果たしていままでの母子保健法がそのまま今後も継続して使えるものであろうかどうか、私どもとしてはそうした点も考えておりました。  国際児童年がちょうどことし参りましたのを一つの契機として、日本の母子保健対策というものを全面的に見直してまいりたい。その中において、当然母子保健法そのものも将来において改正をしなければならぬわけでありまして、これについて、一両年の時間をかけて基本的に問題を洗い直し、将来に対応できる母子保健制度をつくりたいというのが私どもの念願であります。
  199. 古寺宏

    ○古寺委員 わが党は母子保健法の改正案をすでに提案しているわけです。ことしが国際児童年に当たるというので、これから検討をして改正に取りかかるというのでは遅きに失していると私は考えますので、早急に作業を進めて、五十五年度から実施ができるような体制にひとつ進んでいっていただきたいということを強く要望を申し上げまして、質問を終わります。(拍手)
  200. 森下元晴

    森下委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  201. 森下元晴

    森下委員長 この際、委員長の手元に、戸井田三郎君、村山富市君、古寺宏君、米沢隆君、浦井洋君及び工藤晃君から、本案に対する修正案が提出されております。  提出者からその趣旨の説明を聴取いたします。戸井田三郎君。     —————————————
  202. 戸井田三郎

    ○戸井田委員 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、  一 老齢福祉年金の額を二十一万六千円(月額一万八千円)から二十四万円(月額二万円)に引き上げること。  二 障害福祉年金の額を一級障害について三十二万四千円(月額二万七千円)から三十六万円(月額三万円)に、二級障害について二十一万六千円(月額一万八千円)から二十四万円(月額二万円)に、それぞれ引き上げること。  三 母子福祉年金及び準母子福祉年金の額を二十八万八百円(月額二万三千四百円)から三十一万二千円(月額二万六千円)に引き上げること。  四 国民年金の五年年金の額を昭和五十四年八月分から、昭和五十四年度における物価スライド後の額と二万四千円(月額二千円)とを合算した額に引き上げること。  五 児童扶養手当の額を児童一人の場合月額二万三千四百円から二万六千円に、児童二人の場合月額二万五千四百円から二万八千円に、それぞれ引き上げること。  六 特別児童扶養手当の額を障害児一人につき月額一万八千円から二万円に、重度障害児一人につき月額二万七千円から三万円に、それぞれ引き上げること。  七 福祉手当の額を月額七千円から八千円に引き上げること。以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  203. 森下元晴

    森下委員長 これにて、修正案の趣旨の説明は終わりました。  この際、本修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において御意見があれば、これを聴取いたします。橋本厚生大臣
  204. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ただいまの修正案につきましては、政府としては特に異存はございません。     —————————————
  205. 森下元晴

    森下委員長 これより本案及びこれに対する修正案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、戸井田三郎君外五名提出の修正案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  206. 森下元晴

    森下委員長 起立総員。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいまの修正部分を除いた原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  207. 森下元晴

    森下委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  208. 森下元晴

    森下委員長 この際、戸井田三郎君、村山富市君、古寺宏君、米沢隆君、浦井洋君及び工藤晃君から、本案に対し、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者からその趣旨の説明を聴取いたします。村山富市君。
  209. 村山富市

    ○村山(富)委員 私は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党、日本共産党・革新共同及び新自由クラブを代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     国民年金法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるよう配慮すべきである。  一 公的年金制度全体を通じ、各制度間の関連と将来にわたる人口の老齢化の動向を勘案しつつ、その基本的なあり方について検討を急ぎ、年金制度の抜本的な改善を図ること。  一 妻の年金権のあり方については、速やかに遺族年金改善国民年金の妻の加入権など総合的な見地からその改善に努めること。    在職老齢年金制度の支給制限、公的年金等の併給調整については、そのあり方を検討すること。  一 いわゆる経過年金については、その水準のあり方を早急に明らかにするとともに、その一環として福祉年金充実を図ること。  一 今回の物価スライドに対する特例措置は評価する。来年度以降の物価スライドの基準については、現行法の改定について検討すること。  一 本格的な年金時代を迎えるに当たり、受給者、被保険者に個別的かつ具体的に対応できる年金相談体制を早急に整備するとともに、業務処理体制の強化を図り、もって国民に対するサービスの向上に一層努めること。  一 年金の給付については、老後の生活安定を図る立場から、業務処理体制の整備とあわせて支払期月、支払回数及び支払方法の制度問の整合について検討すること。  一 すべての年金は、非課税とするように努めること。  一 五人未満事業所の従業員に対する厚生年金の適用の問題について、具体的方策を樹立し、その適用の促進に努めること。  一 積立金の管理運用については、被保険者の福祉を最優先とし、被保険者住宅資金の転貸制度の普及になお一層努力するとともに、積立金の民主的運用に努めること。また、高齢化社会に対応する三世代同居住宅の促進に特段の配慮をすること。  一 母子福祉年金、児童扶養手当の支給要件となる子の年齢の「満十八歳未満」を「高等学校卒業までの間」とするよう検討すること。  一 国際児童年に当たり、児童手当については、長期的展望に立って基本的検討を前向きに進めること。  一 在留外国人については、その歴史的社会的背景や生活実態等を考慮し、わが国の社会保障制度の適用を改善するよう検討すること。 以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  210. 森下元晴

    森下委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  211. 森下元晴

    森下委員長 起立総員。よって、本案については戸井田三郎君外五名提出の動議のごとく附帯決議を付することと決しました。  この際、厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。橋本厚生大臣
  212. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして努力をいたす所存でございます。     —————————————
  213. 森下元晴

    森下委員長 なお、ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 森下元晴

    森下委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  215. 森下元晴

    森下委員長 次回は、明十日火曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後七時九分散会      ————◇—————