○矢山委員
政府の答弁というものは、都合のいいときには
外国の立法例を引くし、都合が悪いときには
外国の立法例はことさら無視してかかる、そういった習性があるのだが、そのことはそれとして、それはよろしい。
それから、いま
大臣の言われていることは、やっぱり国籍主義を固執するという立場だ。そうすると、国籍主義を固執すれば、相互主義でなければこれは認めないというのがあたりまえの
結論なんです。しかし、そういうことは、過去の経緯なりそういう理屈はわかっておっても、私は、在日韓国人・朝鮮人の場合には国籍主義を固執し、その中で相互主義によらなければ絶対に応じられないのだというような
考え方は、むしろ矛盾しておるのではないかということを申し上げ、そして、それについて世界人権宣言なり
日本政府が批准しようとしておる国際人権規約の問題を出したわけです。だから私は、何も諸
外国がやるまでは
日本もやらぬのだと、こういうのではなしに、国際人権規約を批准しようとするなら、このA規約第九条で定められておるように、これは国籍主義にこだわらないで在日韓国人・朝鮮人に適用したらいいんじゃないか、それを含む在留
外国人、永住をすると考えられる在留
外国人に適用したらいいんじゃないかと思うのです。その場合に、私がこの前説明を聞いたら、いやそれは、
国民年金は強制加入だからなかなかそうはいかぬのだ、強制することはできないのだという議論もありました。しかしながら、二国間条約でいく場合には、アメリカ人のように、実態に合わせて、強制加入でなしに任意加入という方向を
現実にとっているわけだ。アメリカ人の場合には通商航海条約によって
国民年金の加入を認めておる。もし
国民年金の加入を強制しなければならぬのだという立場に立つなら、在日アメリカ人についても強制しなければならぬ。しかしそれは強制をしていない。事実上の問題としては任意加入を認めておる。そういう柔軟性を持って処理しているわけでしょう。そうすれば、在日韓国人・朝鮮人も、その生活の実態に即していった場合に、柔軟性をこの際にこそ発揮すべきじゃないか。しかも、ましてや国際人権規約を批准しようとする
政府は、この際こそ
国民年金の加入へ踏み切るべきじゃないか。私はこうあくまでも主張したいのです。
そこで、時間の関係がありますから、最後にまとめて私の見解を申し上げておきたい。
一つは、在日韓国・朝鮮人約六十五万の存在は、かつての
日本の侵略の結果に基因するんだ、これが第一点です。
それから第二点は、これは法務省の入管白書の中でも
指摘されておりますが、在日朝鮮人・韓国人の
老齢化の問題があります。一九七五年の入管白書によりますと、
昭和三十四年には二十歳未満が四九%であったのが、四十九年には二十歳未満は三七%に落ちております。二十歳から四十歳未満の者が三十四年には二九%であったのが、四十九年には三六%になっております。そして入管の
指摘しておるのは、高齢化が著しく進んでおる、こういうふうに
指摘しておるわけであります。そうするとここに、帰るところを持たない在日朝鮮人・韓国人、
日本に永住をしようとしておる、またそういう生活実態にある在日朝鮮人・韓国人の老後の生活の安定というものが、きわめて重要な問題になってきます。
それから、次の問題です。次は、在日朝鮮人・韓国人の四分の三はすでに
日本で生まれ成長した二世、三世であります。自国語を解しない者も多く、定着化の傾向を強めておる。そして、
日本の地域社会との深い地縁的なつながりをすでに有しており、将来とも深まっていくものと考えられる。これは入管の白書が言っているんです。
続いてまた、入管の白書はこう言っております。「
昭和四十八年の在日韓国・朝鮮人の婚姻数七千四百五十組のうち、配偶者の一方が
日本人の組は、三千五百七十六組で約半数に迫っている。これらの子は、国籍法上、
日本人が父である場合は、当然に
日本国籍を取得するが、母が
日本人の場合は、父の国籍を取得し、
外国人として在留することになる。そして、在日韓国・朝鮮人として出生する者約一万二千人の二割ないし三割は、このような
日本人を母として生まれる子であると推計され、その数は今後増加していくものと予想される。このように血縁的にも
日本人との関係が深まっていくのが、自然のすう勢であろう。以上のようにみてくると、今後の在日韓国・朝鮮人の処遇は、このようなすう勢をも念頭においた適正なものでなければならない。」これは入管の白書で法務省が
指摘しているところであります。
さらに、
日本政府はこれらの人々に対して納税の義務を課しておる。
こういうことをずっと総合的に考えるなら、在日韓国人・朝鮮人に対して、それを含めた在留
外国人に対して、
日本に対する定着性、永住性のある者は
国民年金の加入を認めるべきである、私はこれをあくまでも固執いたします。
しかも、その理由は、
国民年金であろうと
厚生年金であろうと、いろいろな枝葉末節の議論は別として、
年金理論においては
基本においては同じであります。そういう中で、一方において
厚生年金は強制加入、
国民年金は強制排除、そのことによって生じてくる不利益というものは、先ほど脱退
手当金等の問題で議論しましたが、これは莫大な不利益をこうむっているわけであります。こういうところからして、私はあくまでも今後、在日朝鮮人・韓国人に対する、しかもそれは永住性を持った在日韓国人・朝鮮人に対する、あるいはそれらの人を含む在留
外国人に対しても、これは
国民年金の加入を認めるべきである。そしてさらにもっと言うなら、国際人権規約を批准しようとしておる
日本政府の方向とするなら、そういう方向を追求すべきものである。こういうふうに考えるわけでありますが、所見を承って、質問を終わりたいと思います。