○松本(操)政府委員 日本時間でございますが、去る五月二十六日午前五時、シカゴのオヘア空港で起こりました、アメリカン航空所属のDC10型機の
事故に関連いたしまして御報告を申し上げます。
事故が起こりましたのは五月二十六日午前五時。
事故の
状況は、シカゴ・オヘア空港を離陸直後のアメリカン航空所属のDC10でございまして、その時点において、目撃者の証言あるいは撮影されました写真等によりますと、
左側の翼の下に懸垂されておりましたエンジンが脱落をいたしました。この脱落したエンジンがさらに機体の一部に当たったようでございますが、この点は必ずしも確認をされておりません。結果的には、当該航空機は操縦の自由を失って飛行場の場外直近のところに墜落をいたしまして、
関係者を含めまして二百七十三名が死亡するという非常に大きな悲惨な
事故になったわけでございます。
わが国といたしましては、この問題を承知いたしましたのが土曜日でございましたけれ
ども、月曜日直ちに、私
どもの方の大臣が
関係の三社の社長を呼びまして、外国で起こった
事故ではあるけれ
ども、DC10型機というものは日本国内にもあるわけでございますので、また、類似のいわゆるワイドボデーと称される機材もあるわけでございますので、そういったような点を念頭に置いて、各社とも、いやしくも航空機の整備に係る、あるいは運航に係る問題において
事故を発生することのないよう、さらに念には念を入れてそういった方面に励むようにということを
指示をいたした次第でございます。
米国におきましては、NTSB、つまり日本で申しますと
事故調査委員会のようなところが直ちにこの
事故の
調査に携わったわけでございますが、
事故の直後に、このエンジンと翼とをつないでおりますパイロンという部材がございますが、このパイロンと翼をつなぐところにボルトが何本かあるわけです。そのうちのボルトが一本折損されて
事故現場の近傍から発見されたということに非常に重点を置きまして、この発動機支持構造部、つまりパイロンと主翼とを結合しておりますエンジンの推力を伝達する機構のボルトの折損ということがこの
事故の大きな原因ではないかというとりあえずの判断から、このボルトに重点を置きました点検を
指示するいわゆる耐空性改善命令というものを二十九日の深夜になって発行したわけでございます。
このアメリカ連邦航空局の発しました
指示は、当然のことながらアメリカの国籍機についてのみ有効でございますけれ
ども、私
どもといたしましては、事の重大性にもかんがみまして、これに直ちに対応した
措置をとることといたしました。すなわち、日本航空が所有しております国内線用六機、国際線用三機の九機のすべての航空機に対し、二十九日じゅうに連邦航空局の
指示したような点検及び所要の整備を行うということを
指示したわけでございます。日本航空はこれに従いまして、二十九日の夜までにすべての機材について点検を行いました。
点検のやり方といたしましては、ボルトを抜いてチェックするというのではなくて、積極的にボルトを全部新品と取りかえてしまうという作業を行わせたわけでございます。
ところが、アメリカ連邦航空局の方は、この二十九日の
指示を出しました後にもさらにいろいろと
調査を続けておったようでございますが、
事故を起こしましたアメリカン航空の
事故機の
調査の結果及び二十九日の米国連邦航空局の耐空性改善命令に従って点検をしておりましたユナイテッド航空という別の会社の同じDC10の航空機のチェック、この両方の検討結果から、最初に
指示をしました推力用のボルトではなくて別のところに大きな原因があるのではないか、こういう疑いを抱いたようでございます。で、三十日の午前二時に、とりあえず追って
指示のあるまでDC10型機の全面的運航停止を命ずる、こういう
措置をとったわけでございます。
私
どもといたしましては、実は昨三十日の早朝、いろいろな
方法でこの
指示の
内容を承知をいたしましたので、直ちに日本航空に口頭をもって
指示し、追ってこれは文書で確認したわけでございますけれ
ども、日本航空に所属する九機のすべてのDC10についての運航の停止を命じました。そのうちの一機は、たまたまアンカレジに向け運航中でございましたので、アンカレジへ着いた時点で運航を停止させまして、旅客を全部おろし、旅客は振りかえ輸送をするということにいたしました。したがって、昨三十日、日航のDC10が全部運休しましたので、約二千八百人の旅客が振りかえ輸送あるいは乗りかえ輸送、こういったような問題が生じたわけでございますが、ともかくそういうふうにいたしますとともに、日本航空に対しては予備的な点検を
指示したわけでございます。
と申しますのは、連邦航空局が追って
指示するまでということで何を具体的に
指示してくるのかが、その時点では必ずしもはっきりいたしませんでした。その後、昼過ぎになりまして、私
どもはテレックスでその
指示の
内容を承知したわけでございます。これによりますと、先に発しておりました推力用のボルトのほかに、このパイロンそのものの構造についてチェックをせよ、こういうことでございます。
やや技術的になって恐縮でございますが、エンジンを翼の下につり下げますためにパイロンという部材が入っておるわけでございますが、このDC10のパイロンというのはちょうど鉄橋の構造を思っていただければよろしいのでございますけれ
ども、短い部材は組み合わせまして、それをボルトで締めつけるという、ボックスガーダーと申しますか、そういったような構造になっておるわけでございます。特にその翼に密着してくっついております部分について、約百本のボルトで締めつけてある部分があるわけでございますが、その締めつけてある百本のボルトの中に緩みあるいは欠損、こういうのが生じているのを発見したようでございます。さらにまた、この百本のボルトで一枚の板を締めつけておるわけでございますが、この一枚の板に亀裂が入っているのも発見されたようでございます。
そこで、そういう点にさらに十分注意をして点検をするという具体的な
指示が出てまいったわけでございまして、これに従いまして私
どもの方も直ちに、運航を停止しておりました日本航空のDC10に対して、この
指示に従った点検、整備を行うよう
指示をしたわけでございます。その結果、あらかじめ準備をしておりましたので、作業は意外に早く進んだわけでございまして、大体昨日の夜十時ごろには一応のチェックと整備を終わったわけでございます。
およそ、航空機を運航させるに当たりましては、運輸大臣から資格を付与されました確認整備士が、整備が完全に行われたことを確認する必要がございます。私
どもといたしましては、これらの九機につきましての整備の概要と、確認整備士がこれを確認したということを文書をもって報告させることをしたわけでございますが、本日午前一時ごろ、日本航空の方から担当の専務の名において、九機のうち八機については完全に点検を終わり、整備を終わった。一機につきましては、これはたまたま成田に駐機しておる航空機でございますが、この飛行機を近くモーゼスレークに持ってまいりまして、パイロットの訓練用に使うということもあって、単に
指示されました個所だけでなくて、それ以外の部材についても、この際
徹底した整備を行いたいということで、営業用に運用しておりませんので、一応別扱いといたしまして、八機について、けさ早く運航の許可をしたわけでございます。したがって、本日早朝からは、予定どおり運航をしておるわけでございます。
この八機について、どういうふうなことであったかの結果を概略申し上げますと、五機については何らの異常を認めておりません。一機につきましては、エンジンをつっておりますパイロンの中に、ある部材があるわけでございますが、この右及び左のエンジンにつきまして、締めつけの力が緩んで
部品の位置が多少ずれているというのが発見されましたので、これの位置を直してもとどおりきちんと締めつけるという
措置をとりました。それからもう一機につきましても、一基のエンジンについて、百本のボルトのうち二本が多少緩んでおるということが発見されましたので、これは、所定の締めつけ力で締め直すという
措置をとりました。もう一機につきましては、一基のエンジンについて、ただいま申し上げましたようなファスナーが一本破損をしておりましたので——ファスナーというのは締めつけボルトでございますが、この締めつけボルトの破損が発見されましたので、これを新品と交換して、正規の締めつけ力で締め直すという
措置をとりました。現在、成田に駐機しておりますモーゼスレーク用の機材につきましては、同じようにファスナー、締めつけボルトが、左のエンジン、右のエンジンのパイロンに関連して、一本または二本破損をしておったわけでございますが、実はこれも新品に交換をしてございます。ございますけれ
ども、この飛行機は、別の部分につきましても整備を行っておりますので、現時点では、まだ飛行の許可を発するに至っておりません。今後どうするかということでございますが、DC10につきましては、個々の部材につきまして百時間ごとまたは十日目ごとのいずれか早い方に、この部分について点検をせよという新しい
指示が連邦航空局から出されておりますので、今後当分の間、この
方法によってパイロンと翼との取りつけ部分についてチェックを行わせるということにしてまいる所存でございます。
なお、冒頭申し上げました、大臣が
関係三社を呼んで
指示しましたことに対する回答といたしまして、いま私
どもが各社に具体的に
指導しておりますのは、このDC10のみならず、他の機材にもいろいろな
問題点があるのではないかということを念頭に置いて、従来から実施してまいりましたような整備を励行することはもちろんでございますが、こういう
事故があったということを念頭に置いて、さらに具体的、技術的な面を追求し、どういうふうな
方法で、どういう部材について整備の精度を上げていくかという点について報告をしろ、こういうことを言うてございます。したがいまして、一概に
大型機がすべてエンジンのつり下げ部分について問題があるとは申せないと思います。これはDC10と、たとえばジャンボジェットでは、非常に構造が違っておりますので、DC10のやり方をそのままジャンボに持ってくるというわけにはまいりません。そこら辺のところを技術的に詰める必要がございます。ただ、これらの航空機はいずれも外国製の航空機と、とりわけアメリカ製の航空機でございますので、私
どもの方で強度計算その他細かな点をチェックしているわけではございません。したがって、アメリカの連邦航空局の責任者においてどういうふうな見解を持っているかということを、正式に外務省を通して現在問い合わせております。
一方、われわれといたしましても、これらの航空機の運航について、ある程度の知識、経験というものを持つに至っております。とりわけDC8のようなものについては、長い間の経験というものを十分に持っておりますので、これらについてはいまさら外国の援助を受ける必要はないと確信いたしておりますけれ
ども、使用してからわりあい日にちのたっていない航空機につきましては、基本的な点について、
使用者側からだけの判断でいろいろと対応策を講じることが、万一片手落ちになることがあるといけませんので、ただいま申し上げましたように、連邦航空局の意向な
ども確認し、早急に具体策を立てて、これらの問題について具体的に処置する点があれば、直ちに取りかかるようにしたい、このように考えておる次第でございます。
以上、大変簡略でございましたけれ
ども、二十六日に発生いたしましたアメリカにおける
事故に関連いたしまして、どのような
措置をとったかを御報告申し上げました。ありがとうございました。
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