○原(茂)
委員 きょうは
予備費を
中心の
質疑をする日なんですが、同僚の
馬場委員から
予備費に関しては専門に申し上げます。私からは、
北富士における
国有財産の
払い下げ処分行政に関するその後の問題を取り上げて、
最後に
大臣からお答えをいただくようにしたいと思います。その後、国債を
中心にいたしまして、現在
大蔵省が何を考え、どうしているかをお聞きしたいのと、また
地震保険についてお
伺いをする、そういう
順序でお
伺いをしてまいります。
最初に、
北富士の
演習場問題でございますが、いままでもう何回となくこの
委員会で論議をしてまいりました。大分前向きの
答弁をいただいてはまいりましたが、その実行に至ってはほとんど見るものがないという状況になっておりますので、この点を主にお尋ねをいたしますが、
最後に四点にわたって御
質問をまとめていたしますから、それは
次長なり
担当局長で御
答弁をいただく、その後五点目に
大臣から締めくくりの御
答弁をちょうだいする、こういう
順序で申し上げますが、特に
大臣は初めてだと思いますので、この問題について
質問申し上げることをあらかじめ申し上げておりましたから多分予備的には
知識をお持ちだと思いますが、私から一応おさらい的に簡潔に経過も含めて申し上げますので、
大臣によくお聞きをいただきたい、こう思うわけです。
四月十一日の当
委員会におきまして、私は、きょうこの問題を取り上げるということを予告いたしておきました。
北富士の
返還国有地二百十四ヘクタール、ここで現在繰り広げられております不毛な
紛争と申しますか、まことに終わりのめどのつかない
紛争がいま行われておりますが、この問題に関する
大蔵当局の
責任ある
答弁をいただきたいというのが、きょうの
趣旨でございます。
いま申し上げたように、
大蔵大臣にはこの
北富士問題は初めてだと思いますので、これまでの
大蔵当局の
国有財産処分行政の
経緯を少しく振り返りつつ、
問題点を整理し、現在
北富士で惹起しております
紛争を速やかに
解決し、これ以上拡大させることのないように、具体的な
対応策をもぜひ示していただきたいというのが、私のせんじ詰めた
質問になるわけであります。
あらかじめお断りしておきますが、先ほど申し上げたように、きょうはほかの問題にも少し時間をとりたいと存じます。どうか
答弁なさる際にも、当然の
前提となっているような事実や、いままで何回も繰り返しましたあたりまえのことあるいは理論を
まくら言葉にされることのないように、ひとつ
答弁される側にも十分にお気をつけいただきたいと存じます。私もできるだけ時間をかけないように、
質問点はここだというふうに
最後にまとめてお
伺いをいたす予定です。
さて、御
承知のように、
北富士演習場返還国有地の二百十四ヘクタールは、
昭和五十二年九月に
山梨県へ、
林業事業を行うためという
用途指定を付して
払い下げられました。現在
山梨県が地元の
吉田恩賜林組合と分
収造林契約を締結いたしまして、
造林事業を行っているものであります。
しかし、この
造林事業、具体的には
植林でありますが、これが何の
紛争もなく円滑に行われたかといいますと、決してそうではありません。暴行、傷害、放火等々の
犯罪行為を伴いまして、ようやく形だけは
植林が完了したようになっているだけであります。もちろん、これはもう済んでしまったことであるからもういいではないかと考えたいかもしれませんが、これは決してもういいと言って済むものではありません。
と申しますのも、第一に、かかる
紛争が惹起することがあらかじめわかっていながら、
国有地を
払い下げたということに問題があると言わなければなりません。再三にわたって私はこの問題の起きることを指摘してまいりました。
第二に、
紛争は惹起したがそれは
一過性のもので、これからはもう繰り返されることはないかと言えば、決してそうではなくて、むしろ
紛争は日常的なものになっているというように、いまなお
紛争が拡大されつつあるところに、速やかに
解決を図らなければいけない重大な問題があるわけであります。
それでは、なぜこのような問題が生じたのか、そしてそれがなぜ今日まで継続しているのか、その点について
大臣はよく
承知されていないかもしれませんので、この問題が惹起されるに至る
経緯を確認しつつ
質問を行いたいと思いますから、どうか
大臣の御
答弁も、詳しいことはわからないので後日検討した上で
答弁をしたいとかおっしゃることのないように、これから私の確認していきます事実をよくお聞きくださって、直接に私の
質問に答えてくださるようにお願いをいたしたいと思います。
さて、そもそもこの問題が惹起するようになった原因の
本件国有地二百十四ヘクタールがどうして
払い下げられるようになったのかと言えば、現在
山梨県と
契約を結んで
植林を行っている
吉田恩賜林組合が、
昭和四十一年十月三十一日、国を相手として
北富士演習場内における
組合有地等に
自衛隊を立ち入らせて
演習をさせてはならないという
自衛隊違法使用排除の訴訟を提起したのに対して、その訴えは取り下げさせ、かつは
自衛隊が
使用することに応ずることを
前提に、それを
約束してくれるならば
返還国有地を
払い下げるようにするということが防衛施設庁との
密約によって
決定されたのであります。これが事の起こりの初めなんです。私は、その
意味で、この
払い下げは
国有財産を
政策の具に供した典型的なケースであると断ぜざるを得ないのであり、まさしく
財政法あるいは
会計法の精神のじゅうりんでもある。そして、この
払い下げが表面上、よしんば
昭和四十八年三月三十一日の
閣議了解で
決定されたかのごとき
フレームアップを施されたといたしましても、その
違法性、
不当性は消滅することはないと考えます。しかし、ここでの
問題点は、かかる違法、不当な
払い下げを再び指弾するというところにあるのではありません。
そうではなくて、この
払い下げ先がその後、この
吉田恩賜林組合から
山梨県に変更されてしまったという事実によって、この
吉田恩賜林組合が、よし
密約であれ国の
約束違反をなじることのできる
立場にあり、そのために、国としては強く物を申すことができないような
立場になってしまい、この
組合のやることなすこと一切を、違法であろうと不当であろうと黙認してきているということにあるのである。
もしそうだとすれば、
北富士演習場維持のために
払い下げが
決定され、その
不当性、
違法性を指弾されると、その矛先をかわすために
山梨県を
払い下げ先とした。しかし、そうなると
恩賜林組合は黙ってはいない。そこで、
山梨県の一時預かりで県が、事態が鎮静化したなら再
払い下げをするんだということになるのですが、それも法制上無理であることが明らかとなりまして、そこでそのかわりと言ってはどうかと思いますが、
吉田恩賜林組合のやることなすことに一々やかましく物を申さないということで、この
組合の顔を立てようとしているのではないかという疑問を持つわけであります。また、
山梨県に対しても、実際上は
名義人にすぎない、
名義を貸してもらって
払い下げたということであるならば、
大蔵省としても強く物を申すことができますまいし、どうもこの
北富士の
払い下げにまつわるすべての問題は、この点の不明朗さにあると思うよりほかありません。もっと広い
意味で申しますならば、
北富士に関連するほとんどの
行政は、
北富士演習場の
維持確保という一つの
政策によって多くがゆがめられていると申すほかはございません。
今日、私が問題としている
国有財産処分行政上の
責任ということも、かかる
政策によって
大蔵省としては果たしたくても果たせないのか、それともこのような
政策とは全然
関係なく、本来的に果たさなくてよい、果たす必要すらないと考えているのか、ひとつこれを明確にしていきたいと思うのであります。
と申しますのは、御
承知のようにこの二百十四ヘクタールの
土地の
払い下げの直前の
状態というものは、
忍草の
農民、新屋の
農民がそれぞれ
牧草地、
植林地、
畑地として利用している
状態だったのですが、これがそのままの
状態で
山梨県に
払い下げられまして、いま申しました
吉田恩賜林組合が
植林を実行するということになると、これら
農民と
吉田恩賜林組合とが正面からぶつかり合うことになりまして、
たちどころに
紛争が惹起するであろうことはだれの目にも明らかであったのであります。
特に第一期
植林実施区域とされている
土地には
忍草の
農民の
牧草地がありますので、
植林者と
牧草地を
管理育成しているこの
忍草の
農民との対立は、一番
最初に懸念されたところであったわけであります。他の
植栽地、
畑地はそれぞれ第二期、第三期の
実施区域でありますから、その間の
円満解決への
努力ということも考えられるのでありましたが、この
牧草地についてはそんなに時間的余裕があったわけではなかったからであります。
そこで、私は、そもそもこのような
紛争をあえて惹起させるかのごとき
大蔵省の
国有財産処分行政に対しまして、たとえば
払い下げをする年の五十二年五月十六日の本
委員会におきまして、この
払い下げ国有地上の
入会権を
主張し、現に
同地を
使用収益している
忍草農民の存在していることを指摘いたしまして、これらの
農民はいま正しい判断の
もとでの
解決を待っています。暴力で
暴れようとか、血を流すような
紛争をしようなどという考えは全然持っていないということになれば、現在問題があることがわかっている限り、この問題の
解決をする時期はいつか。私は、これまで何年にもわたって、この
国有地払い下げが
解決しなかったが、この
山梨県への
払い下げを機会に、いまこそ問題の
解決に
レールを敷いてやることが、
大蔵省があり、
政治そのものがあり、私
たち政治家、
行政官が存在する
ゆえんを、大衆に信頼をもって知ってもらう
ゆえんだと思う。この
払い下げを契機にして、この問題に今度は終止符を打たせるように、
解決に向かってぴちっと
レールを敷こうと
努力をすべきである。このように、
昭和五十二年の五月十六日のこの
決算委員会で
主張をいたしました。
申すまでもなく、これら
農民は、
同地を
権利に基づいて利用していると
主張しているのであります。本日特に問題としている
牧草地に限って申せば、これら
農民は
入会権に基づいて
牧草を育成していると
主張しているのであります。すでにこれら
農民は、
昭和三十六年九月十二日の
防衛庁長官の覚書を持ち出すまでもなく、旧来の
慣習に基づき
梨ヶ原に立ち入り
使用収益してきた
慣習を持っており、その旨を
政府においても確認し、その
慣習を将来にわたって尊重すると明言した
政府の今日までの
答弁でございました。そしてこの
慣習が
入会慣習であるということも、幾たびも
政府は確認をいたしております。
しかし、
言葉の上で幾らりっぱな
約束をしてもらったといっても、それだけで
忍草農民に確実な
権利、利益を保障することになるものではありません。
近代的土地所有権の確立した今日、
入会権という
土地所有者とは無
関係に存在する
権利をかち取るためにも、守るためにも、いつも
忍草農民はみずから闘わなければならない
状態にありまして、まだ本当にその
権利実現のための
具体的保障をかち取ってはいないのであります。
当然のことながら、すべての
権利はそれが
権利として成立するためにはその
社会的担い手がなければなりません。その
担い手、主体として、
忍草農民が
忍草入会組合という集団を結成しているのであります。
農業をやっていくこと、それで
生活ができ、暮らしていけること、これが悲願ですと
忍草の
人たちは言っています。私はこれは
農民として当然の
要求であると考えておりますが、御
承知のように
北富士におけるいわゆる
農業環境というものは、高冷、火山灰という劣悪な条件にあり、これを補う
採草地、また
現金収入源である桑畑も極端に少なく、そこで
梨ヶ原に入り会うことによって
農業及び
生活が維持できた。それが
北富士の歴史です。それゆえその
梨ヶ原が
演習場となり、その利用が阻害され
演習が激しくなるにつれて、
農業を維持できなくなり、日雇い、
土方として
生活を維持していかざるを得なかったのであります。
この
梨ヶ原国有地の
払い下げに当たって、この
国有地が
忍草に最も近いところにあるせいでもありましょうか、
忍草農民は、私
たちを
土方から
もとの
農民、百姓に戻してください、
返還国有地二百十四ヘクタールを分けてくださいと、雨のそぼ降る
東京の
大蔵省前に二カ月間も座り込んでいたことは、いまでも私の記憶に新しいところであります。
農業をやっていくこと、これまでやってきた
農業をこれまでどおりの
慣習に従って行いたいということは、余りにも当然の
要求であり、正しい
要求であると言えないでしょうか。
旧幕時代の農山村の
封建的社会関係と称される
生活形態の中で、
忍草農民はその体験と
知識から
入会権の意識を経験的に身につけ、それを自然なものとして行い、今日までその慣行を継続しているのであって、特定の
理説や権威、権力によってもたらされたものではありません。何も抽象的に
入会権があるのだ、したがって
入会権を
もとに別荘を建てて分譲したり、また
権利の
売買等をやって一もうけの種にしようなどと
忍草農民は言っているわけではございません。
忍草農民にとって
入会権の
主張は、
農民として働くこと、それで
生活ができるようにとの
要求を実現する必要不可欠な
主張なのであり、それなくしては
農業を放棄せざるを得ないという
意味において、本質的な
要求として
主張されているのであります。
言うまでもないことでありますが、法律制度の上で
入会権が保障されているということは、必ずしも
入会権者が現実に
入会権を
主張したりあるいは
主張し得る条件があるということを
意味するものではありません。
入会権があっても、これを
権利として自覚しない者もあり、自覚しながらも
権利の
主張をなし得ないような外部的な諸条件があると考えられる場合が世の中には多く存在しております。
政府、防衛施設庁は、かかる
主張ができないようにいろいろと策動してきたことは事実であります。
それはともかくといたしまして、法律によって保障された
権利でも、これを
権利だとして自覚し守ろうとする意思が存在しない限り、またこの意思を行動にまで移さない限り、また
権利の行使をそれとして承認する社会的条件や社会的意識が存在しなければ、なかなか社会の中に実現され得ないのであります。私は、
忍草農民がきわめて困難な条件の中にあって、それにもかかわらず
入会権のあることを自覚し、これを
主張しようとする意思を持ち、その
権利の行使を承認させ、尊重させようとしていることに対して、法治国家である以上、
大蔵省は慎重に耳を傾ける義務があると考えておるわけであります。
さて、それにもかかわらず、
大蔵省が
行政的判断で一方的に該
権利の消滅、したがって
入会権の不存在を論ずる以上は、いずれが正当な法的判断であるかは結局司法的判断が
決定されるまでは不明であります。
そこで、
大蔵省がかかる司法判断を得ないまま
払い下げるというのであれば、
決算委員会としては、去る
昭和五十二年五月十九日の議決において「
国有財産の処分については、利用権者、地元の意見を十分に尊重すべきである。」とし、
大蔵省に政治的公平の見地から政治上の義務を課したところであります。このことは続いて同月二十四日の衆議院本
会議で議決をされまして、当時の坊
大蔵大臣も福田総理もこれを了承したのであります。
これまでに
大蔵省は、
払い下げ後いろいろとごたごたが残ろうということは考えられるわけであります、その問題については県が
責任を持って対処するからということで、県を相手方として
払い下げると、
昭和五十二年四月二十日の
決算委員会でも
答弁がございました。これは吉岡さんからあったわけでありますが、
最初は、
大蔵省が
払い下げることによって惹起するであろう
紛争についての
国有財産処分行政上の
責任を
山梨県にすりかえようとし、事あるごとに
山梨県が、
山梨県がを連発してまいりました。次いで、
払い下げによって生じる
紛争は、それが予見できる限り生じないように
努力しなければならないとする
行政上の
責任は、
大蔵省固有の、
払い下げを行う担当省の
責任であるとするたび重なる私の指摘に対しまして、何分地元問題は直接
大蔵省がやるよりは
山梨県がやる方がよろしいであろうという判断が先にございまして、県からもそういう希望がございますと言って、とりあえず
大蔵省固有の
行政上の
責任を認めつつ、その
紛争回避への具体的
努力というものは
大蔵省より
山梨県の方が確実にできるであろうという判断の
もとに、
大蔵省が直接行動をとらずして
山梨県に行わしめると明言してきたのであります。この
答弁は
昭和五十二年八月二十三日のこの
決算委員会の記録にございます。
そして、
大蔵省固有の
責任の果たし方及びその担保として、一つには、
払い下げに当たっては、
山梨県が円満に地元問題を
解決するために万全の
努力を払うという条件がついておるし、したがって、
山梨県は
大蔵省にかわって万全に
紛争を生じさせない
努力をするだろうということであります。
そして二つ目には、この本地をめぐる種々の地元問題につきましては、
山梨県に対して地元
関係者と十分に話し合い、円満に
解決するように指導してまいりたい、これも五十二年十一月十七日の当
決算委員会で坊
大蔵大臣から
答弁がございました。
つまり、
大蔵省としても、直接行動をとってもらうのは
山梨県であるが、それは
大蔵省のかわりであるのであるから十分指導していくと論じ、この方法をもって十全なものとしてきたのであります。
だが、冒頭申しましたように、
紛争は惹起いたしました。暴行、傷害、放火等々。しかも、きわめて重大なことは、
払い下げに即して付された
林業事業第一次
実施区域を
牧草地として利用していた
忍草農民に一言の話し合いもすることなく、あまつさえ暴力的にブルドーザーで一挙に
牧草地を壊滅する挙に出たのであります。ここには、さきに述べた県の
円満解決の
努力などは一つだになく、万全の
努力を払うという条件がついていることなどは白々しい限りと言ってもいいほどであり、また
大蔵省が
山梨県を、
忍草農民と話し合いによるなど
円満解決すべく指導した
努力の跡も全くないのであります。
一体
大蔵省の
責任はどうなっているのか。事実
大蔵省は何もしていないと思う。したがって、この点についての
大蔵省の
行政上の
責任を私は厳しく追及しておるのであります。直ちに
大蔵省が
責任を持って
忍草農民と話し合いをし、その損失などを補てんするように
山梨県などを指導し、さらには
忍草農民の利用を、話し合いによって結論がつかぬ以上、
紛争惹起前の
状態に戻すべきことを
要求いたしたいのであります。これが少なくとも
大蔵省のとるべき最小限の
責任だと思うのでありますが、
大蔵当局の
答弁としては、この
牧草地については
円満解決の対象ではないと言って逃げようとするかもしれません。
その根拠とするところは、
大蔵省が本件
国有地払い下げに当たって
国有財産中央審議会に諮問したが、その答申書には、檜丸尾の立木、新屋の農地という地元問題があると言っているので、その点だけをとらえて言っているのかもしれません。そして、これが現在
山梨県が諸懸案問題と言っているところのものであるから、もし
大蔵省がかかる
答弁をするとするなら、それはいわゆる不当分類の虚偽であると私は考えます。
言うまでもなく、
大蔵省の負うべき
責任の対象は、
払い下げによって生ずるであろうと予見される
紛争について、それが生じないように
努力すべき
行政上の
責任の対象であり、
昭和五十二年九月の
払い下げ時点で、
農民が
権利に基づくものとして利用しているところすべてを含んでいるはずだからであります。
払い下げ時点において
忍草農民は
入会権に基づく利用として
牧草を栽培しておりました。したがって、
払い下げ時点においては
忍草の
牧草地すなわち栽培
牧草地あるいは採草
牧草地及び新屋の
畑地という利用状況こそ、
植林事業の実施が行われれば明らかに破壊され、
紛争になるであろうと考えられたものであります。これがいわゆる地元問題だったのであります。
このことについては、
大蔵省も当然の
前提として、たとえば
昭和五十二年六月八日の本
委員会において、吉岡理財局
次長は、「
忍草の
入会権なり新屋の永小作権というものについては、
権利としては消滅しておると考えております。ただ、そこに
植林された樹木があり、開墾された畑があるという事実は
承知しておるわけで、ですから、それについて地元問題として県が円満な
解決に
努力するよう、国としても十分に指導していかなければならぬと考えておるわけでございまして、それを、
権利がないから切り捨て御免でいいんだというふうに考えておるわけではございません。」
決算委員会の記録の二十六号の十四ページに吉岡さんのはっきりした
答弁がございました。
また、
払い下げ直前の五十二年八月二十三日の本
委員会において、同じく川崎理財局
次長は、二百十四ヘクタールには土丸尾地区の耕作地、檜丸尾地区の
牧草栽培地、
植林地が存在している事実を
承知しているのかという私の
質問に対しまして、事実は知っているが
権利はないのでといままで
主張してまいりましたのが
大蔵省の
立場でございます、事実は認めますが
権利はないといまも考えていますと言って、これは
決算委員会の記録の二号二十八ページにございますが、当然のことながら、この
牧草地が
円満解決の
前提となっていることをはっきり言明いたしておりました。
ところが、
山梨県等が一挙に
忍草の
牧草地を有無を言わせずに暴力的に壊滅させてしまったので、この始末をいかにしたら
大蔵省が
責任を負わないでつけることができるかどうかということで、
大蔵省は
払い下げ前に論じていた地元問題と、
払い下げ後に
山梨県が審議会の答申書に沿ったものと称し
植栽地と
畑地だけとする諸懸案問題と称しているものとを、同一なものであるとして、地元問題の内容を諸懸案問題にすりかえんとしているかのごときであります。そう見るより方法がないと私は存じます。
あるいはまた、
牧草地には仮処分が下っていたということを理由とするかもしれません。だが、この仮処分の申請は
昭和五十一年五月十五日、
決定は同年六月十日ですが、いずれも中央審の答申前のことである。そして、その
決定の内容は、
忍草農民が入会地と
主張している
梨ヶ原で開墾、整地、耕作をしてはならないという現状不変更の命令である。既墾の部分について
牧草の収去を命ずるものではございません。
牧草の除去権を国に与えるものでもございませんでした。しかも、
牧草収穫はこれを
忍草農民ができるということについての法的障害になる
決定でもございません。逆に言えば、
牧草を適法に除去しなければ
山梨県は適法に
植林を行えるものではないということが明らかになったのであります。
紛争を惹起することなく適法に
植林を実行せんというのであれば、
山梨県はどうしても
忍草農民との話し合いによって除去してもらう以外に道はなかったのであります。したがって、この仮処分の
決定が存在することをもって、
牧草地を地元問題から外して、地元問題は現実的には中央審の指摘した諸懸案問題であるということにする根拠には全くなり得ないのであります。
以上を
前提といたしまして、
大蔵省の
責任と今後の具体的な
対応策を、次の項目に即して明らかにしていただきたいと思うのであります。
その第一は、
忍草の
牧草地、すなわち栽培
牧草地、採草放牧地の問題について、
大蔵省は
責任を持って今後再び
紛争が起こらないように指導すべきだと考えますが、その指導をしていただけますか。いままではやっておりませんでしたがいかがでしょうかが、第一点であります。
二つ目に、指導がない限り必ず不毛な
紛争が継続いたしまして、
植林もできなければいわゆる入会利用もできないといった、全く無
意味な不毛な
状態が続くと思います。したがって、指導しないというのであればその理由をお聞かせいただきたい。指導をするとすれば、その調整の基準をどこに置くのか、これもまたついでに明らかにしていただく。
この二点をまず先にお答えをいただきたい。