○山原
委員 科学技術庁が当時この
調査を依頼するに当たりまして、その二年前の一九五七年にアメリカ原子力
委員会が行いました「公衆災害を伴う原子力発電所事故の
研究」、いわゆるWASH七四〇文書というのがございます。これはブルックヘブン国立
研究所が作成した
報告書でありますが、この手法を参考とするように原産
会議に指示をいたしておるわけです。
そこでアメリカの場合は、このいわゆるブルックヘブン国立
研究所作成のこの文書は公開をされております。すなわちこれは最大想定事故、メルトダウンを想定しまして、その際に二十万キロワットの事故が生じた場合に、即死三千四百人、急性放射性疾患四万三千人、
被害総額約七十億ドルという数字が出ておるわけでございます。これはアメリカの場合はこの大胆な数字というものが公表されておるわけでございます。
これを
日本に単純に当てはめてみますと、
日本の場合は八十万キロワット、百万キロワットというような事態も起こっておりますけれども、単純に
計算しましても、いわゆる炉心溶融が生まれました場合には一万七千人の即死、人口密度等から申しましてもっと大きな
被害が出るであろうということなんです。これは想像されます。
原産
会議の
報告を見ますと、メルトダウンで二十五キロメートルの地点で致死曝射、すなわちこれは東海村を
中心にしますと水戸市がこれに入ります。六十四キロメートルで傷害見込み。それから百六十キロメートルで緊急立ち退き、これは東京都が入るわけです。こういう数字を原産
会議が出しておるわけでございますけれども、これは私ここへ写しを持ってきておりますが、これが
報告書です。この
報告書のうちの国会
審議に供与されたもの、公開されたものはわずかに総論
部分の十七ページでございまして、これは二百数十ページにわたる膨大なもので、この総論
部分の根拠資料がずっと出ているわけです。これが結局幻の
報告書とでもいいましょうか、これが未公開で今日まで来ているわけです。
アメリカの場合はいま言いましたように公開をされて、それに対する災害の体制というものがかなり厳しく組まれておりますが、
日本の場合は、これは少なくとも公開をされていないという状態があるわけです。何しろ十九年前のことでございますから、当時は当時としましても、その後今回のような事故が発生をしてまいりますと、これはやはり問題であって、その後これにかわるような
研究がなされておるとするならばそれはまた別でありますけれども、恐らくこれは
日本においては唯一の
被害想定資料であると思います。
そこで、私はこの内容を見ますと、二百四十四ページにわたるものでございますが、その各論についての公開はなされておりませんけれども、その項目だけ見ましても、事故の種類と
規模、これがAとなっておりまして、Bは想定する原子炉設置点と
周辺の
状況、Cは煙霧の拡散、沈下、Dは放出放射能の人体及び
土地使用に及ぼす
影響、Eは放出放射能の農漁業への
影響、それからFは物的、人的損害額の試算基礎、Gが大型原子炉事故から生じ得る人的、物的の公衆損害の試算結果、こういうふうになっておりまして、当時としましては詳細かつ科学的に検討されたものであると思います。しかも、これは
報告書に書かれておりますように、事故の前提条件については過小評価の側にあるとしておるのでございまして、過大な事故を想定しておるものではないわけでございます。そしてその
被害総額というのが余りにも大きくショッキングなものでございましたから、当時としましてはこれは恐らく、岸内閣のときでございますが、米原子炉メーカーが
日本市場に進出をする時期でございますから、未公開のままに終わったものと思われるわけであります。
ところが、これをよく見ますと、この各論が非常に具体的でありまして、たとえば風向きによってどういうふうになるかというような問題、あるいは原発から出たときの温度によってどのように
被害が異なってくるかという変化の問題、これに対する対処の仕方がここから生まれてくるわけでございます。それからさらに、どういう被曝かによって医学的対応などもこの中に提示をされております。また、農漁業の場合には食物への連鎖
影響についての対応の問題なども出てきておりまして、少なくとも自主、民主、公開の
日本の原子力問題の
立場からするならば、これは当然公開して、注もついて結構でありますけれども、少なくとも
国土庁——
国土庁が生まれたのはその後でありますから当時は
国土庁はなかったわけですけれども、たとえば消防庁あるいは自治省とかそういう地方自治体に関係のあるところにはこれを公開をして、これに基づいて防災対策が立てられるべきではなかったかと私は思うのです。
そういう
意味で、きょうは消防庁もおいでくださっておりますが、消防庁の方におきましてはこういう資料に基づいて防災の対策、対応あるいは応急対策というものがとられておるのか、あるいは避難をする場合にどういうふうにするかというようなことが科学的に検討されておるのかどうか、このような資料の提供を受けたことがあるかどうか、お聞きをいたしたいのです。